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特表2023-545347改変セリンプロテアーゼプロタンパク質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】改変セリンプロテアーゼプロタンパク質
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/57 20060101AFI20231023BHJP
   C12N 9/64 20060101ALI20231023BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231023BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231023BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231023BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 38/48 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C12N15/57 ZNA
C12N9/64 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/48 100
A61P35/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023512012
(86)(22)【出願日】2021-08-18
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021046467
(87)【国際公開番号】W WO2022040288
(87)【国際公開日】2022-02-24
(31)【優先権主張番号】63/067,059
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523054012
【氏名又は名称】オンチレス・ファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Onchilles Pharma, Inc.
(71)【出願人】
【識別番号】501242712
【氏名又は名称】ザ ユニヴァーシティー オヴ シカゴ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー,レブ
(72)【発明者】
【氏名】ナソフ,マーク
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA33
4B065CA44
4C084AA02
4C084AA07
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084BA44
4C084DC03
4C084MA66
4C084NA14
4C084NA15
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
(57)【要約】
腫瘍部位プロテアーゼによって切断可能な異種プロテアーゼ切断部位を含むブタ膵臓エラスターゼ(PPE)プロタンパク質などの改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、並びにがんなどの疾患を治療するための関連する医薬組成物及び使用方法が提供される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
N末端からC末端の配向で、シグナルペプチド、改変活性化ペプチド、及びペプチダーゼドメインを含む、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質であって、前記改変活性化ペプチドが、メタロプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、及びシステインプロテアーゼから選択されるプロテアーゼによって切断可能である異種プロテアーゼ切断部位を含む、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項2】
前記セリンプロテアーゼが、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)、ヒト好中球エラスターゼ(ELANE)、ヒトカテプシンG(CTSG)、及びヒトプロテイナーゼ3(PR3)から選択される、請求項1に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項3】
表S1から選択される配列と少なくとも80、85、90、95、98、又は100%同一であり、前記異種プロテアーゼ切断部位を含むか、又はそれを保持するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項1又は2に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項4】
前記メタロプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼが、マトリクスメタロプロテアーゼ-12(MMP12)、カテプシンD(CTSD)、カテプシンC(CTSD)、及びカテプシンL(CTSL)から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項5】
前記異種プロテアーゼ切断部位が、表S3から選択される、請求項4に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項6】
前記異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号8のMMP12切断部位である、請求項4に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項7】
前記異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号11のCTSD切断部位である、請求項4に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項8】
前記異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号13のCTSC切断部位である、請求項4に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項9】
前記異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号14のCTSL切断部位である、請求項4に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項10】
インビトロ又はインビボでセリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)に実質的に結合しない、請求項1~9のいずれか一項に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項11】
前記セルピンが、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)を含む、請求項10に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項12】
セリンプロテアーゼとしてそのプロタンパク質形態で実質的に不活性である、請求項1~11のいずれか一項に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項13】
任意選択的にインビボでがん又は腫瘍部位において、前記異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、前記プロタンパク質に対して増加したセリンプロテアーゼ活性を有する活性ペプチダーゼドメイン(又は活性セリンプロテアーゼドメイン)を生成する、請求項1~12のいずれか一項に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項14】
前記活性ペプチダーゼドメインの前記セリンプロテアーゼ活性が、前記プロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する、請求項13に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項15】
任意選択的にインビボでがん又は腫瘍部位において、前記異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、前記プロタンパク質に対して増加したがん細胞死滅活性を有する活性ペプチダーゼドメイン(又は活性セリンプロテアーゼドメイン)を生成する、請求項1~14のいずれか一項に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項16】
前記活性ペプチダーゼドメインの前記がん細胞死滅活性が、プロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する、請求項15に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質。
【請求項17】
前記セリンプロテアーゼが、PPEであり、前記活性ペプチダーゼドメインが、配列番号1の残基31~266と少なくとも80、85、90、95、98、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になるか、
前記セリンプロテアーゼが、ヒトELANEであり、前記活性ペプチダーゼドメインが、配列番号2の残基30~247と少なくとも80、85、90、95、98、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になるか、
前記セリンプロテアーゼが、ヒトCTSGであり、前記活性ペプチダーゼドメインが、配列番号3の残基21~243と少なくとも80、85、90、95、98、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になるか、又は
前記セリンプロテアーゼが、ヒトPR3であり、前記活性ペプチダーゼドメインが、配列番号4の残基28~248と少なくとも80、85、90、95、98、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になる、請求項5~16のいずれか一項に記載の改変セリンプロテアーゼ。
【請求項18】
N末端からC末端の配向で、シグナルペプチド、配列番号6(野生型PPE活性化ペプチド)に対する改変活性化ペプチド、及びPPEペプチダーゼドメインを含む、改変ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)プロタンパク質であって、前記改変活性化ペプチドが、トリプシンによって実質的に切断可能ではなく、メタロプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、及びシステインプロテアーゼから選択されるプロテアーゼによって切断可能である異種プロテアーゼ切断部位を含む、改変PPEプロタンパク質。
【請求項19】
前記プロテアーゼが、マトリクスメタロプロテアーゼ-12(MMP12)、カテプシンD(CTSD)、カテプシンC(CTSC)、及びカテプシンL(CTSL)から選択される、請求項18に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項20】
前記異種プロテアーゼ切断部位が、表S3から選択されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項18又は19に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項21】
前記異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号8~10から選択され、MMP12によって切断可能であるか、
前記異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号11~12から選択され、CTSDによって切断可能であるか、
前記異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号13であり、CTSCによって切断可能であるか、又は
前記異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号14~16から選択され、CTSLによって切断可能である、請求項20に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項22】
前記シグナルペプチドが、配列番号5に記載されるアミノ酸配列、又はそのバリアントを含み、前記PPEペプチダーゼドメインが、配列番号7に記載されるアミノ酸配列、又は配列番号7と少なくとも80、85、90、95、98、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項18~21のいずれか一項に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項23】
表S4から選択される配列と少なくとも80、85、90、95、98、又は100%同一であり、かつ前記異種プロテアーゼ切断部位を保持するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる、請求項18~22のいずれか一項に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項24】
インビトロ又はインビボでセリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)に実質的に結合せず、任意選択的に、前記セルピンが、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)を含む、請求項18~23のいずれか一項に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項25】
セリンプロテアーゼとしてそのPPEプロタンパク質形態で実質的に不活性である、請求項18~24のいずれか一項に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項26】
任意選択的にインビボでがん又は腫瘍部位において、前記異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、前記PPEプロタンパク質に対して増加したセリンプロテアーゼ活性を有する活性PPEペプチダーゼドメイン(又は活性PPEタンパク質)を生成する、請求項18~25のいずれか一項に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項27】
前記活性PPEタンパク質の前記セリンプロテアーゼ活性が、前記PPEプロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する、請求項26に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項28】
任意選択的にインビボでがん又は腫瘍部位において、前記異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、前記PPEプロタンパク質に対して増加したがん細胞死滅活性を有する活性PPEペプチダーゼドメイン(又は活性PPEタンパク質)を生成する、請求項18~27のいずれか一項に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項29】
前記活性PPEタンパク質の前記がん細胞死滅活性が、前記PPEプロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する、請求項28に記載の改変PPEプロタンパク質。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、任意選択的に改変PPEプロタンパク質をコードする組換え核酸分子、前記組換え核酸分子を含むベクター、又は前記組換え核酸分子若しくは前記ベクターを含む宿主細胞。
【請求項31】
改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、任意選択的に改変PPEプロタンパク質を生成する方法であって、前記プロタンパク質の発現に好適な培養条件下で、請求項30に記載の宿主細胞を培養することと、前記プロタンパク質を培養物から単離することと、を含む、方法。
【請求項32】
請求項1~29のいずれか一項に記載の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、任意選択的に改変PPEプロタンパク質、又は前記プロタンパク質をコードする発現可能なポリヌクレオチドと、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項33】
がんを治療する、その症状を改善する、かつ/又はその進行を低減することを必要とする対象において、それを行う方法であって、請求項32に記載の医薬組成物を前記対象に投与することを含む、方法。
【請求項34】
前記がんが、原発性がん又は転移性がんであり、黒色腫(任意選択的に転移性黒色腫)、乳がん(任意選択的にトリプルネガティブ乳がん、TNBC)、腎臓がん(任意選択的に腎細胞がん)、膵臓がん、骨がん、前立腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、中皮腫、白血病(任意選択的にリンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、又は再発性急性骨髄性白血病)、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝細胞腫(肝細胞がん)、肉腫、B細胞悪性腫瘍、卵巣がん、結腸直腸がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原発性CNSリンパ腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)、膀胱がん、子宮がん、食道がん、脳がん、頭頸部がん、子宮頸がん、精巣がん、甲状腺がん、及び胃がんのうちの1つ以上から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、任意選択的に前記改変PPEプロタンパク質が、細胞又は組織、任意選択的にがん又は腫瘍細胞又は組織における前記異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断によって活性化されて、活性ペプチダーゼドメイン、任意選択的に活性PPEペプチダーゼドメインを生成し、前記活性ペプチダーゼドメインが、前記プロタンパク質に対して、増加したセリンプロテアーゼ活性及び/又はがん細胞死滅活性を有する、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記活性ペプチダーゼドメインが、対照又は参照に対して、約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上、前記対象におけるがん細胞死滅を増加させる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記活性ペプチダーゼドメインが、任意選択的に生存腫瘍の量又は腫瘍量の統計的に有意な減少、任意選択的に少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%以上の腫瘍量の減少によって示される、前記対象における腫瘍退縮を結果的にもたらす、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
非経口投与によって前記医薬組成物を前記対象に投与することを含む、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記非経口投与が、静脈内投与である、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年8月18日出願の米国特許出願第63/067,059号に対する米国特許法第119条(e)に基づく利益を主張し、参照によりその全体が組み込まれる。
【0002】
配列表に関する記載
本出願と関連付けられた配列表は、紙のコピーの代わりにテキスト形式で提供され、
これによって参照により本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名前は、OPNI_002_01WO_ST25.txtである。テキストファイルは、約35KBであり、2021年8月16日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出された。
【背景技術】
【0003】
背景
本開示は、腫瘍部位プロテアーゼによって切断可能な異種プロテアーゼ切断部位を含むブタ膵臓エラスターゼ(PPE)プロタンパク質などの改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、並びにがんなどの疾患を治療するための関連する医薬組成物及び使用方法に関する。
【0004】
遺伝子又は分子プロファイリングを使用することによって、特定の患者群に対して効率又は治療上の利益を最適化するように設計された精密医療は、がんの治療について大きな成功を得ている。(i)がんの発生リスクをもたらし、(ii)腫瘍成長に影響を与え、(iii)転移を調節する特定のゲノム異常を識別することは、がんがどのように診断されるかを定義し、標的療法がどのように開発及び実装されるかを決定し、がん予防戦略を形成する。
【0005】
がんにおける精密医療の必要性は、主に、腫瘍細胞を健康な非がん細胞と区別する、腫瘍細胞の標的化可能な特性を識別することができないことに基づく。実際に、放射線及び/又は化学療法は、大部分のがん細胞ではないにしても、多数のがん細胞を効果的に死滅させる能力を有するが、それらの有効性は、非がん細胞に対する細胞傷害性作用によって著しく制限される。これらの所見は、放射線療法及び化学療法によって標的化される特性である急速な細胞分裂が、広範な副作用を制限するために必要とされる特異性を達成するには、がん細胞に十分固有ではないことを示す。
【0006】
特定のセリンプロテアーゼ酵素は、がん細胞に選択的に毒性を有するが、正常又は他の健康な細胞には比較的非毒性であることが示されている。しかしながら、当技術分野には、そのような選択的ながん細胞毒性が可能である最適な酵素を識別し、そのような酵素の臨床的有用性を改良する必要性がある。
【発明の概要】
【0007】
本開示の実施形態は、N末端からC末端の配向で、シグナルペプチド、改変活性化ペプチド、及びペプチダーゼドメインを含む、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質であって、改変活性化ペプチドが、メタロプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、及びシステインプロテアーゼから選択されるプロテアーゼによって切断可能である異種プロテアーゼ切断部位を含む、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、セリンプロテアーゼが、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)、ヒト好中球エラスターゼ(ELANE)、ヒトカテプシンG(CTSG)、及びヒトプロテイナーゼ3(PR3)から選択される。
【0008】
いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質が、表S1から選択される配列と少なくとも80、85、90、95、98、又は100%同一であり、異種プロテアーゼ切断部位を含むか、又はそれを保持するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0009】
いくつかの実施形態では、メタロプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼが、マトリクスメタロプロテアーゼ-12(MMP12)、カテプシンD(CTSD)、カテプシンC(CTSD)、及びカテプシンL(CTSL)から選択される。特定の実施形態では、異種プロテアーゼ切断部位は、表S3、例えば、配列番号8のMMP12切断部位、配列番号11のCTSD切断部位、配列番号13のCTSC切断部位、又は配列番号14のCTSL切断部位から選択される。
【0010】
いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質が、インビトロ又はインビボでセリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)に実質的に結合せず、任意選択的に、セルピンが、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)を含む。いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質が、セリンプロテアーゼとしてそのプロタンパク質形態で実質的に不活性である。いくつかの実施形態では、例えば、インビボでがん又は腫瘍部位において、異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、プロタンパク質に対して増加したセリンプロテアーゼ活性を有する活性ペプチダーゼドメイン(又は活性セリンプロテアーゼドメイン)を生成する。いくつかの実施形態では、活性ペプチダーゼドメインのセリンプロテアーゼ活性が、プロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する。
【0011】
いくつかの実施形態では、例えば、インビボでがん又は腫瘍部位において、異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、プロタンパク質に対して増加したがん細胞死滅活性を有する活性ペプチダーゼドメイン(又は活性セリンプロテアーゼドメイン)を生成する。いくつかの実施形態では、活性ペプチダーゼドメインのがん細胞死滅活性が、プロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する。
【0012】
いくつかの実施形態では、
セリンプロテアーゼが、PPEであり、活性ペプチダーゼドメインが、配列番号1の残基31~266と少なくとも80、85、90、95、98、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になるか、
セリンプロテアーゼが、ヒトELANEであり、活性ペプチダーゼドメインが、配列番号2の残基30~247と少なくとも80、85、90、95、98、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になるか、
セリンプロテアーゼが、ヒトCTSGであり、活性ペプチダーゼドメインが、配列番号3の残基21~243と少なくとも80、85、90、95、98、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になるか、又は
セリンプロテアーゼが、ヒトPR3であり、活性ペプチダーゼドメインが、配列番号4の残基28~248と少なくとも80、85、90、95、98、若しくは100%同一であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、若しくはそれから本質的になる。
【0013】
特定の実施形態は、改変ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)プロタンパク質であって、N末端からC末端の配向で、シグナルペプチド、配列番号6(野生型PPE活性化ペプチド)に対する改変活性化ペプチド、及びPPEペプチダーゼドメインを含み、改変活性化ペプチドが、トリプシンによって実質的に切断可能ではなく、メタロプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、及びシステインプロテアーゼから選択されるプロテアーゼによって切断可能である異種プロテアーゼ切断部位を含む、改変PPEプロタンパク質を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼが、マトリクスメタロプロテアーゼ-12(MMP12)、カテプシンD(CTSD)、カテプシンC(CTSC)、及びカテプシンL(CTSL)から選択される。いくつかの実施形態では、異種プロテアーゼ切断部位が、表S3から選択されるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0015】
いくつかの実施形態では、
異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号8~10から選択され、MMP12によって切断可能であるか、
異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号11~12から選択され、CTSDによって切断可能であるか、
異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号13であり、CTSCによって切断可能であるか、又は
異種プロテアーゼ切断部位が、配列番号14~16から選択され、CTSLによって切断可能である。
【0016】
いくつかの実施形態では、シグナルペプチドが、配列番号5に記載されるアミノ酸配列、又はそのバリアントを含み、PPEペプチダーゼドメインが、配列番号7に記載されるアミノ酸配列、又は配列番号7と少なくとも80、85、90、95、98、又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、改変PPEプロタンパク質が、表S4から選択される配列と少なくとも80、85、90、95、98、又は100%同一であり、異種プロテアーゼ切断部位を保持するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0017】
いくつかの実施形態では、改変PPEプロタンパク質が、インビトロ又はインビボでセリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)に実質的に結合せず、任意選択的に、セルピンが、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)を含む。いくつかの実施形態では、改変PPEプロタンパク質が、セリンプロテアーゼとしてそのPPEプロタンパク質形態で実質的に不活性である。
【0018】
いくつかの実施形態では、例えば、インビボでがん又は腫瘍部位において、異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、PPEプロタンパク質に対して増加したセリンプロテアーゼ活性を有する活性PPEペプチダーゼドメイン(又は活性PPEタンパク質)を生成する。いくつかの実施形態では、活性PPEタンパク質のセリンプロテアーゼ活性が、PPEプロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する。
【0019】
いくつかの実施形態では、例えば、インビボでがん又は腫瘍部位において、異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、PPEプロタンパク質に対して増加したがん細胞死滅活性を有する活性PPEペプチダーゼドメイン(又は活性PPEタンパク質)を生成する。いくつかの実施形態では、活性PPEタンパク質のがん細胞死滅活性が、PPEプロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する。
【0020】
また、本明細書に説明される、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、例えば、改変PPEプロタンパク質をコードする組換え核酸分子、組換え核酸分子を含むベクター、又は組換え核酸分子若しくはベクターを含む宿主細胞もまた含まれる。特定の実施形態は、本明細書に説明される、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、例えば、改変PPEプロタンパク質を生成する方法であって、プロタンパク質の発現に好適な培養条件下で、請求項に記載の宿主細胞を培養することと、プロタンパク質を培養物から単離することと、を含む、方法を含む。
【0021】
特定の実施形態は、本明細書に説明される、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、例えば、改変PPEプロタンパク質、又はプロタンパク質をコードする発現可能なポリヌクレオチドと、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物を含む。
【0022】
特定の実施形態は、がんを治療する、その症状を改善する、かつ/又はその進行を低減することを必要とする対象において、それを行う方法であって、本明細書に説明される医薬組成物を対象に投与することを含む、方法を含む。いくつかの実施形態では、がんが、原発性がん又は転移性がんであり、黒色腫(任意選択的に転移性黒色腫)、乳がん(任意選択的にトリプルネガティブ乳がん、TNBC)、腎臓がん(任意選択的に腎細胞がん)、膵臓がん、骨がん、前立腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、中皮腫、白血病(任意選択的にリンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、又は再発性急性骨髄性白血病)、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝細胞腫(肝細胞がん)、肉腫、B細胞悪性腫瘍、卵巣がん、結腸直腸がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原発性CNSリンパ腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)、膀胱がん、子宮がん、食道がん、脳がん、頭頸部がん、子宮頸がん、精巣がん、甲状腺がん、及び胃がんのうちの1つ以上から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、例えば、改変PPEプロタンパク質が、がん又は腫瘍細胞又は組織などの細胞又は組織における異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断によって活性化されて、活性ペプチダーゼドメイン、例えば、活性PPEペプチダーゼドメインを生成し、活性ペプチダーゼドメインが、プロタンパク質に対して、増加したセリンプロテアーゼ活性及び/又はがん細胞死滅活性を有する。いくつかの実施形態では、活性ペプチダーゼドメインが、対照又は参照に対して、約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上、対象におけるがん細胞死滅を増加させる。いくつかの実施形態では、活性ペプチダーゼドメインが、任意選択的に生存腫瘍の量又は腫瘍量の統計的に有意な減少、任意選択的に少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%以上の腫瘍量の減少によって示される、対象における腫瘍退縮を結果的にもたらす。
【0024】
いくつかの実施形態は、非経口投与によって医薬組成物を対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、非経口投与は、静脈内投与である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】活性化PPEタンパク質が、がん細胞を死滅させるが、正常又は非がん細胞に対して非毒性であることを示す。無血清培地(SFM)、活性化ネイティブPPE(PPE)、活性化組換え型PPE(rPPE)、及びトリプシンを用いたヒトがん細胞(MDA-MB-231、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞株、MEL888、黒色腫細胞株、及びA549、肺腺がん細胞株)、並びに非がん細胞(HMDM、又は健康なドナーから単離されたヒト単球由来マクロファージ)の治療が示されている。
図2】PPEプロタンパク質(pro-rPPE)がA1ATに結合しないことを示す。結果は、A1AT溶液からの単離後のpro-rRPEに対するプロテアーゼ活性の完全な回復を示し、pro-rPPEがA1ATに結合しないことを示唆している。対照的に、活性化PPE(rPPE)のプロテアーゼ活性は、同一の手順に供されたときに、A1ATによって減弱された。挿入図:A1ATの精製前及び精製後のpro-rRPEに対する免疫ブロット。
図3A-3B】MMP12プロテアーゼが、変異体2(3A)及び変異体3(3B)として指定される例示的な改変PPEタンパク質を切断したことを示す。図3Aはまた、トリプシンが対照としての野生型PPEを切断したことを示す。
図4A】例示的な改変PPEタンパク質が、MMP12によるインキュベーション後に触媒的に活性であったことを示す。
図4B】例示的な改変PPEプロタンパク質が、MMP12とのインキュベーション後に触媒的に活性であり、MMP7とのインキュベーション後に部分的に活性であり、トリプシンとのインキュベーション後又はプロテアーゼなしで触媒的に不活性であったことを示す。対照的に、野生型PPEプロタンパク質は、トリプシンとのインキュベーション後に触媒的に活性であったが、MMP12とのインキュベーション後又はプロテアーゼなしで触媒的に不活性であった。
図5】例示的な改変PPEタンパク質が、MMP12プロテアーゼとのインキュベーション(及びそれによる活性化)後に有意ながん細胞死滅活性を実証したことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に説明されるものと同様又は同等に同様又は同等の任意の方法、材料、組成物、試薬、細胞が、本開示の主題の実施又は試験に使用され得るが、好ましい方法及び材料が説明されている。本明細書に引用される特許及び特許出願を含むがこれに限定されない、全ての刊行物及び参考文献は、あたかも個々の刊行物又は参考文献が、参照により本明細書に完全に記載されるものとして組み込まれることを具体的かつ個別に示すかのように、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本出願が優先権を主張する任意の特許出願はまた、刊行物及び参考文献について上記に説明された様式で、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0027】
標準的な技術は、組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、及び組織培養及び形質転換(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション)に使用され得る。酵素反応及び精製技術は、製造業者の仕様に従って、又は当技術分野で一般的に達成されるか、又は本明細書に説明されるように実施され得る。これら及び関連する技術及び手順は、概して、当技術分野で周知の従来的な方法に従って、かつ本明細書全体を通して引用及び考察される様々な一般的及びより具体的な参考文献に説明されるように実施され得る。具体的な定義が提供されない限り、本明細書に説明される分子生物学、分析化学、合成有機化学、並びに薬用及び医薬化学と関連して利用される命名法、並びにそれらの実験室手順及び技術は、当技術分野で周知であり、一般的に使用されるものである。標準的な技術は、組換え技術、分子生物学的、微生物学的、化学合成、化学分析、医薬調製、製剤、及び送達、並びに患者の治療に使用され得る。
【0028】
本開示の目的のために、次の用語が以下に定義される。
【0029】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、記事の文法的物体のうちの1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。例として、「要素」は、「1つの要素」、「1つ以上の要素」、及び/又は「少なくとも1つの要素」を含む。
【0030】
「約」という用語は、測定又は定量化方法に対する誤差の固有のバラツキを含む値、例えば、参照数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さに対して、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1%程度だけ変化する量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、サイズ、量、重量、又は長さを示すために使用される。
【0031】
「拮抗薬」は、別の薬剤又は分子の生理学的作用を妨害するか、又は別様に低減する生物学的又は化学薬剤を指す。いくつかの事例では、拮抗薬は、他の薬剤又は分子に特異的に結合する。完全及び部分拮抗薬が含まれる。
【0032】
「作用薬」は、別の薬剤又は分子の生理学的作用を増大又は増強させる、生物学的又は化学薬剤を指す。いくつかの事例では、作用薬は、他の薬剤又は分子に特異的に結合する。完全及び部分作用薬が含まれる。
【0033】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸」という用語は、天然起源及び非天然起源のアミノ酸、並びにアミノ酸類似体及び模倣体の両方を意味することが意図される。天然起源のアミノ酸は、タンパク質生合成中に利用される20(L)アミノ酸、並びに、例えば、4-ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリシン、デスモシン、イソデスモシン、ホモシステイン、シトルリン、及びオルニチンなどの、他のものを含む。非天然起源のアミノ酸は、例えば、当業者に知られている、(D)-アミノ酸、ノルロイシン、ノルバリン、p-フルオロフェニルアラニン、エチオニンなどを含む。アミノ酸類似体は、天然及び非天然起源のアミノ酸の改変形態を含む。そのような改変は、例えば、アミノ酸に対する、又はアミノ酸の誘導体化による、化学基及び部分の置換若しくは交換を含み得る。アミノ酸模倣体は、例えば、参照アミノ酸の電荷及び電荷間隔特性などの、機能的に同様の特性を呈する有機構造を含む。例えば、アルギニン(Arg又はR)を模倣する有機構造は、同様の分子空間に位置し、かつ天然起源のArgアミノ酸の側鎖のe-アミノ基と同じ程度の可動性を有する、正電荷部分を有することになる。模倣体はまた、アミノ酸又はアミノ酸官能基の最適な間隔及び荷電相互作用を維持するように、制約された構造を含む。当業者は、どの構造が機能的に等価なアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣体を構築するかを知っているか、又は決定することができる。
【0034】
本明細書で使用される場合、疾患、又は有害反応を発症する「リスクがある」対象は、検出可能な疾患、又は疾患の症状を有してもよく、又は有しなくてもよく、本明細書に説明される治療方法の前に、検出可能な疾患又は疾患の症状を示してもよく、又は示さなくてもよい。「リスクがある」は、本明細書に説明される、かつ当技術分野で公知の疾患の発症と相関する測定可能なパラメータである1つ以上のリスク因子を対象が有することを示す。これらのリスク因子のうちの1つ以上を有する対象は、疾患を発症するより高い確率を有するか、又はこれらのリスク因子のうちの1つ以上を有していない対象よりも有害反応を有する。
【0035】
「生体適合性」は、細胞又は対象の生物学的機能に対して概して有害ではなく、かつアレルゲン性及び病的状態を含む、いかなる程度の許容できない毒性も結果的にもたらさないことになる、材料又は化合物を指す。
【0036】
「結合」という用語は、例えば、塩架橋及び水架橋などの相互作用を含む、共有結合性、静電性、疎水性、並びにイオン性及び/又は水素結合の相互作用に起因する、2つの分子間の直接的な関連を指す。
【0037】
「コーディング配列」とは、遺伝子のポリペプチド生成物のコードに寄与する任意の核酸配列を意味する。対照的に、「非コーディング配列」という用語は、遺伝子のポリペプチド生成物のコードに直接寄与しない任意の核酸配列を指す。
【0038】
本開示全体を通して、文脈上別段の解釈が必要とされない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」という単語は、記述されたステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素のグループを含むことを暗示するが、他のステップ若しくは要素又はステップ若しくは要素のグループの除外を暗示するものではないと理解されるであろう。
【0039】
「からなる」とは、「からなる」という語句に続くものを含み、かつそれらに限定されることを意味する。したがって、「からなる」という語句は、列挙された要素が、必要又は必須であり、他の要素が存在しなくてもよいことを示す。「から本質的になる」とは、語句の後に列挙された任意の要素を含み、列挙された要素について本開示に明記された活性又は作用を妨害しないか、又はそれらに寄与しない、他の要素に限定されることを意味する。したがって、「から本質的になる」という語句は、列挙された要素が、必要又は必須であるが、他の要素は、任意選択であり、列挙された要素の活性又は作用に実質的に影響するか否かに応じて、存在してもよく、又は存在しなくてもよいことを示す。
【0040】
「エンドトキシン非含有」又は「実質的にエンドトキシン非含有」という用語は、概して、エンドトキシンの最大微量(例えば、対象に対して臨床的に有害な生理学的効果を有していない量)、及び好ましくは検出不可能な量のエンドトキシンを含有する、組成物、溶媒、及び/又は血管に関する。エンドトキシンは、細菌、典型的にはグラム陰性細菌などの、特定の微生物と関連付けられた毒素であるが、エンドトキシンは、Listeria monocytogenesなどのグラム陽性細菌に見出され得る。最もよく見られるエンドトキシンは、様々なグラム陰性細菌の外膜に見出されるリポ多糖類(LPS)又はリポオリゴ糖類(LOS)であり、疾患を引き起こすこれらの細菌の能力における中心的な病原性の特徴を表す。ヒトにおける少量のエンドトキシンは、有害な生理学的影響の中でも、発熱、血圧の低下、並びに炎症及び凝固の活性化を生じ得る。
【0041】
それゆえに、医薬品生産では、たとえ少量であってもヒトに有害作用を引き起こし得るため、多くの場合、薬物生成物及び/又は薬物容器からエンドトキシンの大部分又は全ての痕跡を除去することが望ましい。300℃を超える温度が、典型的に、大部分のエンドトキシンを分解するために必要とされるため、脱パイロジェンオーブンがこの目的に使用され得る。例えば、シリンジ又はバイアルなどの一次包装材料に基づいて、250℃のガラス温度及び30分の保持時間の組み合わせは、多くの場合、エンドトキシンレベルの3logの低減を達成するのに十分である。例えば、本明細書に説明され、かつ当技術分野で公知のクロマトグラフィー及び濾過方法を含む、エンドトキシンを除去する他の方法が企図されている。
【0042】
エンドトキシンは、当技術分野で公知の通例の技術を使用して検出され得る。例えば、カブトガニ由来の血液を利用するLimulus Amoebocyte Lysateアッセイは、エンドトキシンの存在を検出するための非常に高感度のアッセイである。この試験では、非常に低いレベルのLPSが、この反応を増幅する強力な酵素カスケードに起因して、リムルスライセートの検出可能な凝固を引き起こし得る。エンドトキシンは、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)によっても定量化され得る。実質的にエンドトキシン非含有であるため、エンドトキシンレベルは、約0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.08、0.09、0.1、0.5、1.0、1.5、2、2.5、3、4、5、6、7、8、9、又は10EU/mg未満の活性化合物であり得る。典型的には、1ngのリポ多糖類(LPS)は、約1~10EUに相当する。
【0043】
「半数効果濃度」又は「EC50」という用語は、本明細書に説明される薬剤(例えば、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、又はその活性/活性化ペプチダーゼドメイン)の濃度を指し、この薬剤は、いくつかの指定された曝露時間の後のベースラインと最大との間の中間で応答を誘導し、したがって、等級化された用量応答曲線のEC50は、その最大効果の50%が観測される化合物の濃度を表す。EC50はまた、インビボで最大効果の50%を取得するために必要な血漿濃度も表す。同様に、「EC90」は、その最大効果の90%が観察される薬剤又は組成物の濃度を指す。「EC90」は、「EC50」及びHill勾配から計算され得るか、又は当技術分野の通例の知識を使用して、データから直接決定され得る。いくつかの実施形態では、薬剤のEC50は、約0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90、100、200、又は500nM未満である。いくつかの実施形態では、薬剤は、約1nM以下のEC0値を有することになる。
【0044】
薬剤の「半減期」は、薬剤がその薬理学的、生理学的、又は他の活性を、生物の血清若しくは組織への投与時、又は任意の他の定義された時点におけるそのような活性と比較して、半分失うのにかかる時間を指し得る。「半減期」はまた、薬剤の量又は濃度が、生物の血清若しくは組織に投与時のそのような量若しくは濃度と比較して、又は任意の他の定義された時点と比較して、生物の血清又は組織に投与される開始量の半分だけ低減されるのにかかる時間を指し得る。半減期は、血清及び/又は任意の1つ以上の選択された組織で測定され得る。
【0045】
「異種」という用語は、野生型ポリペプチド又はコードするポリヌクレオチドとは異なる供給源、例えば、野生型とは異なる種に由来する特徴、又は非天然起源の操作された特徴に由来する、ポリペプチド又はコードするポリヌクレオチドの特徴又は要素(例えば、プロテアーゼ切断部位)を指す。
【0046】
「調節する」及び「変化する」という用語は、典型的には、対照と比較して統計的に有意な又は生理学的に有意な量又は程度で、「増加する」、「増強する」、又は「刺激する」、並びに「減少する」、又は「低減する」ことを含む。「増加」、「刺激」、又は「増強」された量は、典型的には、「統計的に有意」な量であり、組成物なし(例えば、薬剤の非存在)又は対照組成物によって生成される量よりも、約又は少なくとも約1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、又は1000倍多い増加を含み得る。「減少」又は「低減」された量は、典型的には、「統計的に有意」な量であり、組成物なし(例えば、薬剤の非存在)又は対照組成物によって生成される量よりも、約又は少なくとも約1.1、1.2、1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、又は1000倍未満の減少を含み得る。比較及び「統計的に有意な」量の例が本明細書に説明されている。
【0047】
「ポリペプチド」、「タンパク質」、及び「ペプチド」の用語は、互換的に使用され、任意の特定の長さに限定されないアミノ酸のポリマーを指す。「酵素」という用語は、ポリペプチド又はタンパク質触媒を含む。本明細書で使用される場合、「プロタンパク」、「プロ酵素」、又は「酵素前駆体」は、活性化ペプチドのプロテアーゼ切断によって典型的に活性化されて、活性タンパク質又は酵素を生成する、不活性(又は実質的に不活性)タンパク質又は酵素を指す。用語は、ミリストイル化、硫酸化、グリコシル化、リン酸化、及びシグナル配列の付加又は欠失などの改変を含む。「ポリペプチド」又は「タンパク質」という用語は、アミノ酸の1つ以上の鎖を意味し、各鎖は、ペプチド結合によって共有結合されたアミノ酸を含み、当該ポリペプチド又はタンパク質は、ペプチド結合によって一緒に非共有結合及び/又は共有結合された複数の鎖を含み得、天然タンパク質、すなわち、天然起源の、特に非組換え細胞によって生成されるタンパク質、又は遺伝子操作又は組換え細胞の配列を有し、天然タンパク質のアミノ酸配列を有する分子、又は天然配列の1つ以上のアミノ酸からの欠失、それらへの付加、及び/若しくはそれらの置換を有する分子を含む。特定の実施形態では、ポリペプチドは、1つ以上の組換えDNA分子を含む組換え細胞によって生成される「組換え」ポリペプチドであり、典型的には、異種ポリヌクレオチド配列、又はそうでなければ細胞内に見出されないポリヌクレオチド配列の組み合わせから作製される。
【0048】
「ポリヌクレオチド」及び「核酸」という用語は、mRNA、RNA、cRNA、cDNA、及びDNAを含む。用語は、典型的には、少なくとも10塩基の長さのヌクレオチドの高分子形態、リボヌクレオチド若しくはデオキシヌクレオチドのいずれか、又はいずれかのタイプのヌクレオチドの改変形態を指す。用語は、一本鎖及び二本鎖の形態のDNAを含む。「単離されたDNA」及び「単離されたポリヌクレオチド」及び「単離された核酸」という用語は、特定の種の総ゲノムDNAを含まずに単離された分子を指す。したがって、ポリペプチドをコードする単離されたDNAセグメントは、1つ以上のコーディング配列を含有し、更に、そのDNAセグメントが取得される種の総ゲノムDNAから実質的に離れて単離されるか、又はそこから自由に精製される、DNAセグメントを指す。また、ポリペプチドをコードしない非コーディングポリヌクレオチド(例えば、プライマ、プローブ、オリゴヌクレオチド)も含まれる。また、例えば、発現ベクター、ウイルスベクター、プラスミド、コスミド、ファージミド、ファージ、ウイルスなどを含む組換えベクターも含まれる。
【0049】
追加のコーディング又は非コーディング配列は、必須ではないが、本明細書に説明されるポリヌクレオチド内に存在し得、ポリヌクレオチドは、必須ではないが、他の分子及び/又は支持材料に結合され得る。したがって、ポリヌクレオチド又は発現可能なポリヌクレオチドは、コーディング配列自体の長さにかかわらず、他の配列、例えば、発現制御配列と組み合わせられ得る。
【0050】
「発現制御配列」は、核酸、又はプロモーター、リーダー、エンハンサー、イントロン、RNA、若しくはDNA結合タンパク質に対する認識モチーフ、ポリアデニル化シグナル、ターミネータ、配列内リボソーム進入部位(IRES)、分泌シグナル、細胞内局在化シグナルなどの、対応するアミノ酸の調節配列を含み、それらは、宿主細胞内のコーディング配列の転写若しくは翻訳、又は細胞内若しくは細胞の場所に影響する能力を有する。例示的な発現制御配列は、Goeddel;Gene Expression Technology:Methods in Enzymology185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)に説明されている。
【0051】
「プロモーター」は、細胞内のRNAポリメラーゼに結合することと、下流(3’方向)コーディング配列の転写を開始することと、を行うことができるDNA調節領域である。本明細書で使用される場合、プロモーター配列は、転写開始部位によってその3’末端で結合され、上流(5’方向)に延在して、バックグラウンドを上回る検出可能なレベルで転写を開始するために必要な最小数の塩基又は要素を含む。転写開始部位(ヌクレアーゼS1とのマッピングによって簡便に定義される)は、プロモーター配列、及びRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)内に見出され得る。真核生物プロモーターは、多くの場合、常にではないが、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含有し得る。原核生物プロモーターは、-10及び-35コンセンサス配列に加えて、シャインダルガノ配列を含有する。
【0052】
様々な異なる源からの構成的、誘導性、及び抑制性プロモーターを含む、多数のプロモーターが当技術分野で周知である。代表的な供給源としては、例えば、ウイルス、哺乳類、昆虫、植物、酵母、及び細菌細胞型)が挙げられ、これらの供給源からの好適なプロモーターは、容易に利用可能であるか、又はオンラインで公開されている配列に基づいて、又は、例えば、ATCCなどの寄託物、及び他の商業的若しくは個々の供給源から合成的に作製され得る。プロモーターは、一方向性(すなわち、一方向に転写を開始する)又は二方向性(すなわち、3’又は5’方向のいずれかに転写を開始する)であってもよい。プロモーターの非限定的な例としては、例えば、T7細菌発現系、pBAD(araA)細菌発現系、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーターが挙げられる。誘導性プロモーターとしては、Tet系(米国特許第5,464,758号及び同第5,814,618号)、Ecdysone誘導性系(No et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(1996)93(8):3346-3351、T-RExTM系(Invitrogen Carlsbad,CA)、LacSwitch(登録商標)(Stratagene,(San Diego,CA)、及びCre-ERT tamoxifen誘導性リコンビナーゼ系(Indra et al.Nuc.Acid.Res.(1999)27(22):4324-4327;Nuc.Acid.Res.(2000)28(23):e99、米国特許第7,112,715号、及びKramer&Fussenegger,Methods Mol.Biol.(2005)308:123-144)、又は所望の細胞における発現に好適な当技術分野で公知の任意のプロモーターが挙げられる。
【0053】
「発現可能なポリヌクレオチド」は、少なくとも1つのコーディング配列、及び任意選択的に少なくとも1つの発現制御配列、例えば転写及び/又は翻訳調節要素を含むcDNA、RNA、mRNA又は他のポリヌクレオチドを含み、これらは、細胞、例えば、対象の細胞への導入時にコードされたポリペプチド(例えば、改変PPEプロタンパク質などの、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質)を発現し得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、発現可能なポリヌクレオチドは、改変RNA又は改変mRNAポリヌクレオチド、例えば、非天然起源のRNA類似体である。特定の実施形態では、改変RNA又はmRNAポリペプチドは、1つ以上の改変又は非天然塩基、例えば、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)、及び/又はウラシル(U)以外のヌクレオチド塩基を含む。いくつかの実施形態では、改変mRNAは、1つ以上の改変又は非天然ヌクレオチド間結合を含む。コードされた治療用ポリペプチドを送達するための発現可能なRNAポリヌクレオチドは、例えば、Kormann et al.,Nat Biotechnol.29:154-7,2011、並びに米国特許出願第2015/0111248号、同第2014/0243399号、同第2014/0147454号、及び同第2013/0245104号に説明されており、それらは、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0055】
いくつかの実施形態では、発現可能なポリヌクレオチドを送達するために利用され得る様々なウイルスベクターとしては、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、アデノ関連ウイルス(AAV)ベクター、及びレトロウイルスベクターが挙げられる。いくつかの事例では、レトロウイルスベクターは、マウス若しくは鳥類レトロウイルスの誘導体であるか、又はレンチウイルスベクターである。単一の外来遺伝子が挿入され得るレトロウイルスベクターの例としては、限定されるものではないが、Moloneyマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、Harveyマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MuMTV)、SIV、BIV、HIV、及びRous Sarcoma Virus(RSV)が挙げられる。いくつかの追加のレトロウイルスベクターは、複数の遺伝子を組み込み得る。これらのベクターの全ては、形質導入細胞が識別及び生成され得るように、選択可能なマーカーの遺伝子を伝達又は組み込み得る。特定の標的細胞上の受容体のためのリガンドをコードする別の遺伝子とともに、関心対象のポリペプチド配列をウイルスベクターに挿入することによって、例えば、ベクターが、標的特異的にされ得る。レトロウイルスベクターは、例えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドを挿入することによって、標的特異的にされ得る。例示的な標的化は、抗体を使用してレトロウイルスベクターを標的化することによって達成され得る。当業者であれば、レトロウイルスベクターの標的特異的送達を可能にするためにレトロウイルスゲノムに挿入され得る特定のポリヌクレオチド配列を知っているか、又は過度の実験なしで容易に確認し得る。
【0056】
特定の事例では、本明細書に説明される発現可能なポリヌクレオチドは、細胞内、潜在的には核などの特定の区画内における局在化のために操作されるか、又は細胞からの分泌、若しくは細胞の原形質膜への転座のために操作される。例示的な実施形態では、発現可能なポリヌクレオチドは、核局在化のために操作される。
【0057】
本明細書で言及される「単離された」ポリペプチド又はタンパク質という用語は、対象タンパク質が、(1)典型的には自然界で見出されることになる少なくともいくつかの他のタンパク質を含まないこと、(2)同じ供給源由来、例えば、同じ種由来の他のタンパク質を本質的に含まないこと、(3)異なる種由来の細胞によって発現され、(4)少なくとも約50%のポリヌクレオチド、脂質、炭水化物、又は天然で関連付けられている他の物質から分離されていること、(5)「単離されたタンパク質」が天然で関連付けられているタンパク質の一部分と関連付けられていないこと(共有又は非共有相互作用によって)、(6)天然では関連付けられていないポリペプチドと操作可能に関連付けられていること(共有又は非共有相互作用によって)、又は(7)天然起源ではないことを意味する。そのような単離されたタンパク質は、合成起源であり得るゲノムDNA、cDNA、mRNA、若しくは他のRNA、又はそれらの任意の組み合わせによってコードされ得る。特定の実施形態では、単離されたタンパク質は、その使用(治療的、診断的、予防的、研究又はその他)を妨害することになる、その自然環境中に見出されるタンパク質若しくはポリペプチド又は他の汚染物質を実質的に含まない。
【0058】
特定の実施形態では、組成物中の任意の所与の薬剤の「純度」が定義され得る。例えば、特定の組成物は、限定を意味するものではないが、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、化合物を分離、識別、及び定量化するために生化学及び分析化学で頻繁に使用されるカラムクロマトグラフィーの周知形態によって、測定された際、タンパク質ベース又は重量ベースで少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の純度であるポリペプチド薬剤などの薬剤を含み得、その間の全ての少数及び範囲を含む。
【0059】
「参照配列」という用語は、一般に、別の配列が比較されている核酸コード配列、又はアミノ酸配列を指す。本明細書に説明される全てのポリペプチド及びポリヌクレオチド配列は、参照配列として含まれており、これは、名前によって説明されたもの、並びに表及び配列リストに説明されるものを含む。
【0060】
特定の実施形態は、本明細書に説明されるタンパク質/ポリペプチドの生物学的に活性な「バリアント」及び「断片」、並びにそれをコードするポリヌクレオチドを含む。「バリアント」は、参照ポリペプチド又はポリヌクレオチド(例えば、表及び配列リストを参照されたい)に対する1つ以上の置換、付加、欠失、及び/又は挿入を含有する。バリアントポリペプチド又はポリヌクレオチドは、本明細書に説明されるように、参照配列との少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列の同一性又は類似性又は相同性を有し、その参照配列の活性を実質的に保持するアミノ酸又はヌクレオチド配列を含む。また、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150以上のアミノ酸又はヌクレオチドの付加、欠失、挿入、又は置換によって参照配列からなるか、又はそれらとは異なり、その参照配列の少なくとも1つの活性を実質的に保持する配列が含まれる。特定の実施形態では、付加又は欠失は、C末端及び/又はN末端の付加及び/又は欠失を含む。
【0061】
本明細書で使用される場合、「配列同一性」、又は、例えば、「50%同一の配列」を含む用語は、比較の窓にわたってヌクレオチド単位又はアミノ酸単位で配列が同一である範囲を指す。したがって、「配列同一性のパーセンテージ」は、比較の窓にわたって2つの最適に整列された配列を比較することと、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、G、I)又は同一のアミノ酸残基(例えば、Ala、Pro、Ser、Thr、Gly、Val、Leu、Ile、Phe、Tyr、Trp、Lys、Arg、His、Asp、Glu、Asn、Gln、Cys、及びMet)が両方の配列で発生する位置の数を決定して、合致した位置の数を求めることと、合致した位置の数を、比較の窓内の位置の総数(すなわち、窓サイズ)で除算することと、結果を100で乗算して、配列同一性のパーセンテージを求めることと、によって計算され得る。比較窓を整列させるための配列の最適な整列は、アルゴリズムのコンピュータ化された実装(Wisconsin Genetics Software Package Release7.0、Genetics Computer Group、575Science Drive Madison,Wis.,USAのGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)によって、又は選択された様々な方法のいずれかによって生成される、検査及び最良の整列(すなわち、比較窓にわたって最高のパーセンテージの相同性を結果的にもたらす)によって実施され得る。例えば、Altschul et al.,Nucl.Acids Res.25:3389,1997によって開示されるように、プログラムのBLASTファミリーも参照され得る。
【0062】
「溶解性」という用語は、液体溶媒中に溶解し、均質な溶液を形成するための、本明細書に説明される薬剤の特性を指す。溶解性は、典型的には、溶媒の単位体積当たりの溶質の質量(溶媒1kg当たりの溶質のg、g/dL(100mL)、mg/mLなど)、モル濃度、モル濃度、モル濃度画分、又は濃度の他の同様の説明のいずれかによって、濃度として表現される。溶媒の量当たり溶解し得る溶質の最大平衡量は、温度、圧力、pH、及び溶媒の性質を含む、指定された条件下におけるその溶媒中のその溶質の溶解性である。特定の実施形態では、溶解性は、生理学的pH、又は他のpH、例えば、pH5.0、pH6.0、pH7.0、pH7.4、pH7.6、pH7.8、又はpH8.0(例えば、約pH5~8)で測定される。特定の実施形態では、溶解性は、水、又はPBS若しくはNaCl(NaPO有り又は無し)などの生理学的緩衝液中で測定される。特定の実施形態では、溶解性は、比較的低いpH(例えば、pH6.0)及び比較的高い塩(例えば、500mM NaCl及び10mM NaPO)で測定される。特定の実施形態では、溶解性は、血液又は血清などの生物学的流体(溶媒)中で測定される。特定の実施形態では、温度は、約室温(例えば、約20、21、22、23、24、25℃)又は約体温(37℃)とすることができる。特定の実施形態では、薬剤は、室温で又は37℃で、少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、40、50、60、70、80、90又は100mg/mlの溶解性を有する。
【0063】
「対象」又は「それを必要とする対象」又は「患者」又は「それを必要とする患者」は、ヒト対象などの哺乳類対象を含む。
【0064】
「実質的に」又は「本質的に」は、例えば、所与の量のうち、ほぼ全体又は完全、例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上を意味する。
【0065】
「統計的に有意」とは、結果が偶然に生じた可能性が低かったことを意味する。統計的有意性は、当技術分野で公知の任意の方法によって決定され得る。一般的に使用される有意性の尺度は、帰無仮説が真であった場合に、観察された事象が発生することになる頻度又は確率である、p値を含む。得られたp値が有意性レベルよりも小さい場合、帰無仮説が棄却される。単純な場合、有意性レベルは、0.05以下のp値で定義される。
【0066】
「治療反応」は、1つ以上の治療薬の投与に基づく症状の改善(持続しているか否か)を指す。
【0067】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」、「治療用量」、「予防有効量」、「診断有効量」は、投与後に所望の生物学的応答を引き出すために必要とされる薬剤の量である。
【0068】
本明細書で使用される場合、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)又は細胞の「治療」は、個体又は細胞の自然経過を変化させる試みに使用される任意のタイプの介入である。治療は、限定されるものではないが、医薬組成物の投与を含み、予防的に、又は病理学的事象の開始若しくは病原体との接触の後のいずれかに実施され得る。また、治療される疾患若しくは状態の進行率の低減、その疾患若しくは状態の発症の遅延、又はその発症の重症度の低減に向けられ得る、「予防的」治療も含まれる。「治療」又は「予防」は、必ずしも、疾患若しくは状態、又はその関連付けられた症状の完全な根絶、治癒、又は予防を示すものではない。
【0069】
「野生型」という用語は、集団で最も頻繁に観察され、したがって、遺伝子の「正常」又は「野生型」形態を任意に設計される、遺伝子又は遺伝子生成物(例えば、ポリペプチド)を指す。
【0070】
本明細書の各実施形態は、別途明示的に記載されない限り、全ての他の実施形態に適用されるものである。
【0071】
改変セリンプロテアーゼプロタンパク質
本開示の実施形態は、代替的なプロテアーゼ、例えば、がん組織又は腫瘍部位において比較的高いレベルで見出されるプロテアーゼによって切断可能である異種プロテアーゼ切断部位を含む、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質に関する。セリンプロテアーゼは、タンパク質中のペプチド結合を切断する酵素のクラスであり、セリンは、酵素の活性部位で求核アミノ酸として機能する。一般に、セリンプロテアーゼは、シグナルペプチド、天然又は野生型のプロテアーゼ切断部位を含む活性化ペプチド、及び活性ペプチダーゼドメインから構成される不活性「プロタンパク質」(又は「プロ酵素」、「酵素前駆体」)として産生される。プロタンパク質は、活性化ペプチドのトリプシン切断によって活性化されて、酵素的に活性なペプチダーゼドメインを放出する。
【0072】
本明細書に説明されるように、特定のセリンプロテアーゼは、腫瘍との直接接触又は腫瘍への投与(例えば、腫瘍内投与)の際に、それらの遺伝的異常に関係なく、がん細胞を死滅させることができ、非がん性又は健康な細胞に対して比較的無害である(例えば、実施例1、WO2018/232273、及びWO/2020/132465参照)。しかしながら、インビボにおけるそのようなセリンプロテアーゼの抗腫瘍有効性に対する1つの障壁は、非経口投与が、がん組織又は腫瘍部位において、比較的低いレベルの成熟又は活性ペプチダーゼドメインを達成することである。ここで、高血液又は血清レベルのセリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)は、成熟又は活性ペプチダーゼドメインの触媒活性及びがん細胞死滅能を阻害又は別様に害する。例えば、アルファ-1アンチトリプシンの血液又は血清レベル(A1AT、UniProtKB-P01009)は、約300mg/dLである。
【0073】
しかし、A1ATなどのセルピンは、完全長セリンプロテアーゼプロタンパク質に結合しないか、又はそれらを阻害せず、成熟又は活性ペプチダーゼドメインのみに結合するか、又はそれらを阻害する。したがって、「プロタンパク質」(又は「プロ酵素」、「酵素前駆体」)としての全身送達は、血液中のセルピンへの結合及びセルピンによる不活化から、活性ペプチダーゼドメインを保護する。しかしながら、野生型セリンプロテアーゼプロタンパク質は、その大部分ががん組織又は腫瘍において非常に低いレベルで存在する特定の循環プロテアーゼによって活性化される。一例として、野生型ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)プロタンパク質は、トリプシンによって活性化されるが、トリプシンは、がん組織又は腫瘍において存在しないか、又は非常に低いレベルのみで存在する。野生型セリンプロテアーゼプロタンパク質は、全身投与後にがん組織又は腫瘍部位で選択的に活性化されないが、代わりに、例えば、血液中で全身的に活性化され、セルピンは、その触媒活性及びがん細胞死滅能に結合し、かつそれを害することになる。
【0074】
上記のように、それゆえに、本開示の実施形態は、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質に関し、天然プロテアーゼ切断部位を含有する活性化ペプチドが置換又は別様に改変され、その結果、それは、好適な条件下で(例えば、インビボ、インビトロで、例えば、比色基質活性アッセイを使用して、実施例を参照されたい)その天然プロテアーゼによって切断可能ではない(又は実質的に切断可能ではない)が、代わりに、がん組織又は腫瘍部位において比較的高いレベルで存在するプロテアーゼによって切断可能である。特定の実施形態は、N末端からC末端の配向で、シグナルペプチド、改変活性化ペプチド、及びペプチダーゼドメインを含む、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質であって、改変活性化ペプチドが、腫瘍部位プロテアーゼ、例えば、メタロプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼによって切断可能である異種プロテアーゼ切断部位を含む、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を含む。特定の実施形態では、異種プロテアーゼ切断部位は、マトリクスメタロプロテアーゼ-12(MMP12)、カテプシンD(CTSD)、カテプシンC(CTSC)、又はカテプシンL(CTSL)によって切断可能である。
【0075】
このように改変され得るセリンプロテアーゼの例としては、ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)、ヒト好中球エラスターゼ(ELANE)、ヒトカテプシンG(CTSG)、及びヒトプロテイナーゼ3(PR3)が挙げられる。例示的な野生型セリンプロテアーゼのアミノ酸配列が、以下の表S1に提供される。
【表1】
【0076】
したがって、特定の実施形態では、改変セリンプロテアーゼは、表S1から選択される配列と少なくとも80、85、90、95、98、又は100%同一(又はその中の推論される任意の範囲若しくは値)であり、かつメタロプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、及びシステインプロテアーゼから選択されるプロテアーゼによって切断可能である異種プロテアーゼ切断部位を含むアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又は本質的にそれからなる。特定の実施形態では、異種プロテアーゼ切断部位は、MMP12、CTSD、CTSC、又はCTSLによって切断可能である。例示的な異種プロテアーゼ切断部位が、表S3に提供され、配列番号8のMMP12切断部位、配列番号11のCTSD切断部位、配列番号13のCTSC切断部位、及び配列番号14のCTSL切断部位を含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質が、インビトロ又はインビボでセリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)に実質的に結合せず、例えば、セルピンが、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)である。いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質が、セリンプロテアーゼとしてそのプロタンパク質形態で実質的に不活性である。
【0078】
特定の実施形態では、例えば、インビボでがん又は腫瘍部位において、異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、プロタンパク質に対して増加したセリンプロテアーゼ活性を有する活性ペプチダーゼドメイン(又は活性セリンプロテアーゼドメイン)を生成する。特定の実施形態では、活性ペプチダーゼドメインのセリンプロテアーゼ活性が、プロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する。いくつかの実施形態では、任意選択的にインビボでがん又は腫瘍部位において、異種プロテアーゼ切断部位のプロテアーゼ切断が、プロタンパク質に対して増加したがん細胞死滅活性を有する活性ペプチダーゼドメイン(又は活性セリンプロテアーゼドメイン)を生成する。いくつかの実施形態では、活性ペプチダーゼドメインのがん細胞死滅活性が、プロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する。
【0079】
特定の実施形態では、セリンプロテアーゼが、PPEであり、活性ペプチダーゼドメインが、配列番号7、又は配列番号1の残基31~266と少なくとも80、85、90、95、98、又は100%同一(又はその中の推論可能な任意の範囲若しくは値)であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。いくつかの実施形態では、セリンプロテアーゼが、ヒトELANEであり、活性ペプチダーゼドメインが、配列番号2の残基30~247と少なくとも80、85、90、95、98、又は100%同一(又はその中の推論可能な任意の範囲若しくは値)であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。いくつかの実施形態では、セリンプロテアーゼが、ヒトCTSGであり、活性ペプチダーゼドメインが、配列番号3の残基21~243と少なくとも80、85、90、95、98、又は100%同一(又はその中の推論可能な任意の範囲若しくは値)であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。いくつかの実施形態では、セリンプロテアーゼが、ヒトPR3であり、活性ペプチダーゼドメインが、配列番号4の残基28~248と少なくとも80、85、90、95、98、又は100%同一(又はその中の推論可能な任意の範囲若しくは値)であるアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。
【0080】
特定の実施形態は、トリプシンによって切断可能ではないが、代替的なプロテアーゼ、例えば、がん組織又は腫瘍部位において比較的高いレベルで見出されるプロテアーゼによって切断可能である、配列番号6の野生型活性化ペプチドに対する改変活性化ペプチドを含む、改変ブタ膵臓エラスターゼ(PPE)プロタンパク質に関する。上記のように、PPEは、シグナルペプチド、活性化ペプチド、及びペプチダーゼドメインから構成される不活性プロタンパク質(又はプロ酵素、不活性酵素前駆体)として生成される。野生型PPEプロタンパク質は、活性化ペプチドのトリプシン切断によって活性化されて、酵素的に活性なPPEペプチダーゼドメイン、又はPPEタンパク質を放出する。野生型PPEのアミノ酸配列及びそのドメインが表S2に提供される。
【表2】
【0081】
したがって、特定の実施形態は、活性化ペプチドがトリプシンによって切断可能ではない(又は実質的に切断可能ではない)が、代わりに、がん組織又は腫瘍部位において比較的高いレベルで存在するプロテアーゼによって切断可能であるように、活性化ペプチドが置換又は別様に改変されている、改変PPEプロタンパク質を含む。例えば、特定の改変活性化ペプチドは、メタロプロテアーゼ、アスパルチルプロテアーゼ、又はシステインプロテアーゼによって切断可能である異種プロテアーゼ切断部位を含む。特定の実施形態では、異種プロテアーゼ切断部位は、MMP12、CTSD、CTSC、又はCTSLによって切断可能である。例示的なプロテアーゼ切断部位のアミノ酸配列が、表S3に提供される。
【表3】
【0082】
特定の実施形態では、改変活性化ペプチドは、表S3から選択されるアミノ酸配列を含む、それからなる、又はそれから本質的になる異種プロテアーゼ切断部位を有する。例えば、いくつかの実施形態では、改変活性化ペプチドが、配列番号8~10から選択され、かつMMP12によって切断可能であるプロテアーゼ切断部位を含むか、又は改変活性化ペプチドが、配列番号11~12から選択され、かつCTSDによって切断可能であるプロテアーゼ切断部位を含むか、又は改変活性化ペプチドが、配列番号13から選択され、かつCTSCによって切断可能であるプロテアーゼ切断部位を含むか、又は改変活性化ペプチドが、配列番号14~16から選択され、かつCTSLによって切断可能であるプロテアーゼ切断部位を含む。
【0083】
本明細書に説明される、異種プロテアーゼ切断部位を有する改変PPEプロタンパク質の実施例が、以下の表S4に提供される。
【表4】
【0084】
いくつかの事例では、表S4の改変PPEプロタンパク質のうちの任意の1つ以上が、本開示の実施形態に含まれる。したがって、特定の実施形態では、改変PPEプロタンパク質が、表S4から選択されるアミノ酸配列、又は表S4から選択される配列と少なくとも80、85、90、95、98、99、若しくは100%同一(又はその中の推論される任意の範囲若しくは値)であり、かつ異種プロテアーゼ切断部位(下線付き)を保持するアミノ酸配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる。特定の実施形態では、表S4からの野生型シグナルペプチドは、改変されるか、又は異なるシグナルペプチドで別様に置換される。いくつかの事例では、表S4の改変PPEプロタンパク質のうちの任意の1つ以上が、本開示の特定の実施形態から除外される。
【0085】
いくつかの実施形態では、PPEプロタンパク質は、野生型PPEペプチダーゼドメイン(配列番号7)を含み、いくつかの実施形態では、PPEペプチダーゼドメインは、例えば、配列番号7と少なくとも80、85、90、95、98、99、又は100%同一(又はその中の推論可能な任意の範囲若しくは値)であるアミノ酸配列を含み、かつセリンプロテアーゼ活性及び/又はがん細胞死滅活性を有するアミノ酸配列を含む、バリアント又はその断片である。特定のPPEペプチダーゼドメインバリアント(配列番号7の)は、野生型PPEペプチダーゼドメインのものに対して、増加したがん細胞死滅活性、及び/又は低減されたヒトアルファ-1アンチトリプシン(A1AT)タンパク質への結合若しくはそれとの相互作用を有する。バリアントの特定の例としては、Q211、T55、D74、R75、S214、R237、及びN241のうちの1つ以上から選択される残基に少なくとも1つの変化を有するPPEペプチダーゼドメインが挙げられ、残基ナンバリングは、配列番号1(野生型PPEプロタンパク質)によって定義される。特定の実施形態では、少なくとも1つのアミノ酸変化が、Q211F、T55A、D74A、R75A、R75E、Q211A、S214A、R237A、N241A、及びN241Yのうちの1つ以上から選択され、残基ナンバリングが、配列番号1によって定義されている。
【0086】
特定の実施形態では、切断前に、改変PPEプロタンパク質が、インビトロ又はインビボでセリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)に実質的に結合せず、例えば、セルピンが、アルファ-1アンチトリプシン(A1AT)である。いくつかの実施形態では、切断前に、改変PPEプロタンパク質が、セリンプロテアーゼとしてそのプロタンパク質形態で実質的に不活性である。
【0087】
いくつかの実施形態では、例えば、インビボでがん又は腫瘍部位において、改変活性化ペプチドのプロテアーゼ切断が、改変PPEプロタンパク質に対して増加したセリンプロテアーゼ活性を有する活性PPEペプチダーゼドメイン(活性PPEタンパク質とも呼ばれる)を生成する。いくつかの実施形態では、活性PPEタンパク質のセリンプロテアーゼ活性が、改変PPEプロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する。いくつかの実施形態では、活性PPEタンパク質は、野生型活性PPEタンパク質(例えば、配列番号7)と同じ又は実質的に同じセリンプロテアーゼ活性を有する。いくつかの実施形態では、活性PPEタンパク質は、野生型活性PPEタンパク質(配列番号7)の約又は少なくとも約50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000%以上のセリンプロテアーゼ活性を有するバリアントである。
【0088】
いくつかの実施形態では、例えば、インビボでがん又は腫瘍部位において、改変活性化ペプチドのプロテアーゼ切断が、PPEプロタンパク質に対して増加したがん細胞死滅活性を有する活性PPEペプチダーゼドメイン(又は活性PPEタンパク質)を生成する。特定の実施形態では、活性PPEタンパク質のがん細胞死滅活性が、PPEプロタンパク質のものに対して約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上増加する。いくつかの実施形態では、活性PPEタンパク質は、野生型活性PPEタンパク質(例えば、配列番号7)と同じ又は実質的に同じがん細胞死滅活性を有する。いくつかの実施形態では、活性PPEタンパク質は、野生型活性PPEタンパク質(配列番号7)の約又は少なくとも約50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、又は1000%以上のがん細胞死滅活性を有するバリアントである。
【0089】
セリンプロテアーゼ活性及びがん細胞死滅活性は、当技術分野の通例の技術に従って測定され得る。例えば、セリンプロテアーゼ活性は、発色基質活性アッセイ(N-メトキシスクシニル-Ala-Ala-Pro-Val pニトロアニリド)を使用して監視され得、がん細胞死滅活性は、インビトロ又はインビボで測定され得る。
【0090】
使用方法及び医薬組成物
特定の実施形態は、疾患又は状態を治療する、その症状を改善する、かつ/又はその進行を低減することを必要とする対象において、それを行う方法であって、本明細書に説明される、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、例えば、改変PPEプロタンパク質を含む組成物を対象に投与することを含む、方法を含む。特定の実施形態では、疾患は、がんであり、すなわち、それを必要とする対象は、がんを有するか、又はがんを有する疑いがあるか、又はがんを有するリスクがある。上記のように、組成物が、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質(不活性形態)を含み、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質が、組成物を必要とする対象のがん組織又は腫瘍部位における改変活性化ペプチドのプロテアーゼ切断によって活性化されて、活性ペプチダーゼドメイン、又は活性タンパク質を生成する。
【0091】
特定の実施形態では、がんは、原発性がん又は転移性がんである。いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫(任意選択的に転移性黒色腫)、乳がん(任意選択的にトリプルネガティブ乳がん、TNBC)、腎臓がん(任意選択的に腎細胞がん)、膵臓がん、骨がん、前立腺がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん(NSCLC)、中皮腫、白血病(任意選択的にリンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、又は再発性急性骨髄性白血病)、多発性骨髄腫、リンパ腫、肝細胞腫(肝細胞がん)、肉腫、B細胞悪性腫瘍、卵巣がん、結腸直腸がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、原発性CNSリンパ腫、原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫)、膀胱がん、子宮がん、食道がん、脳がん、頭頸部がん、子宮頸がん、精巣がん、甲状腺がん、及び胃がんのうちの1つ以上から選択される。
【0092】
いくつかの実施形態では、上記のように、がんは、転移性がんである。上記のがんに加えて、例示的な転移性がんとしては、限定なしで、とりわけ、骨、肝臓、及び/又は肺に転移した膀胱がん、骨、脳、肝臓、及び/又は肺に転移した乳がん、肝臓、肺、及び/又は腹膜に転移した結腸直腸がん、副腎、骨、脳、肝臓、及び/又は肺に転移した腎臓がん、副腎、骨、脳、肝臓、及び/又は他の肺の部位に転移した肺がん、骨、脳、肝臓、肺、及び/又は皮膚/筋肉に転移した黒色腫、肝臓、肺、及び/又は腹膜に転移した卵巣がん、肝臓、肺、及び/又は腹膜に転移した膵臓がん、副腎、骨、肝臓、及び/又は肺に転移した前立腺がん、肝臓、肺、及び/又は腹膜に転移した胃がん、骨、肝臓、及び/又は肺に転移した甲状腺がん、並びに骨、肝臓、肺、腹膜、及び/又は膣に転移した子宮がんが挙げられる。
【0093】
がんを治療するための方法は、他の治療法と組み合わせられ得る。例えば、本明細書に説明される併用療法は、対症療法、放射線療法、外科手術、移植、ホルモン療法、光線力学療法、抗生物質療法、又はそれらの任意の組み合わせを含む、他の治療的介入の前、最中、又は後に対象に投与され得る。対症療法は、脳浮腫、頭痛、認知機能障害、及び嘔吐を低減するためのコルチコステロイドの投与、並びに発作を低減するための抗痙攣薬の投与を含む。放射線療法は、全脳照射、分割放射線療法、及び定位放射線手術などの放射線手術を含み、これは、従来の手術と更に組み合わせられ得る。
【0094】
特定の実施形態は、したがって、がんを治療するか、その症状を改善するか、又はその進行を阻害することを必要とする対象において、それを行う方法であって、少なくとも1つの追加の薬剤、例えば、免疫療法薬、化学療法薬、ホルモン治療薬、及び/又はキナーゼ阻害薬と組み合わせて、本明細書に説明される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を対象に投与することを含む、方法を含む、がんを治療するための併用療法を含む。いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を投与することは、追加の薬剤(例えば、免疫療法薬、化学療法薬、ホルモン治療薬、及び/又はキナーゼ阻害薬)単独と比較して、約又は少なくとも約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000%以上、追加の薬剤に対するがんの感受性を増強する。
【0095】
特定の併用療法は、1つ以上のがん免疫療法薬、又は「免疫療法薬」を採用する。特定の事例では、免疫療法薬は、例えば、がん関連又はがん特異的免疫応答を増加又は維持するために、対象の免疫応答を調節し、それによって、増加した免疫細胞阻害又はがん細胞の低減を結果的にもたらす。例示的な免疫療法薬は、ポリペプチド、例えば、抗体及びその抗原結合断片、リガンド、及び小ペプチド、並びにそれらの混合物を含む。また、免疫療法薬は、小分子、細胞(例えば、T細胞などの免疫細胞)、様々ながんワクチン、遺伝子療法、又は腫瘍溶解性ウイルスなどのウイルス剤を含む他のポリヌクレオチド系薬剤、及び当技術分野で公知の他のものである。したがって、特定の実施形態では、がん免疫療法薬は、免疫チェックポイント調節薬、がんワクチン、腫瘍溶解性ウイルス、サイトカイン、及び細胞系免疫療法のうちの1つ以上から選択される。
【0096】
特定の実施形態では、がん免疫療法薬は、免疫チェックポイント調節薬である。特定の例としては、1つ以上の阻害性免疫チェックポイント分子の「拮抗薬」、及び1つ以上の刺激性免疫チェックポイント分子の「作用薬」が挙げられる。一般的に、免疫チェックポイント分子は、シグナル(共刺激分子)を上向きにするか、又はシグナルを下向きにするかのいずれかの免疫系の構成要素であり、その標的化は、がん細胞が、免疫チェックポイント分子の天然機能を妨害し得るため、がんにおける治療可能性を有する(例えば、Sharma and Allison,Science.348:56-61,2015、Topalian et al.,Cancer Cell.27:450-461,2015、Pardoll,Nature Reviews Cancer.12:252-264,2012を参照されたい)。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント調節薬(例えば、拮抗薬、作用薬)は、本明細書に説明される1つ以上の免疫チェックポイント分子に「結合」又は「特異的に結合する」。
【0097】
いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント調節薬は、1つ以上の阻害性免疫チェックポイント分子の拮抗薬又は阻害薬である。例示的な阻害性免疫チェックポイント分子としては、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)、プログラム細胞死リガンド2(PD-L2)、プログラム細胞死1(PD-1)、T細胞活性化のVドメインIg抑制因子(VISTA)、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)、トリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼ(TDO)、T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、B及びTリンパ球減衰因子(BTLA)、CD160、並びにIg及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)が挙げられる。
【0098】
特定の実施形態では、薬剤は、PD-1(受容体)拮抗薬又は阻害薬であり、その標的化は、腫瘍環境中の免疫機能を回収させることが示されている(例えば、Phillips et al.,Int Immunol.27:39-46,2015を参照されたい)。PD-1は、免疫グロブリンスーパーファミリーに属し、T細胞及びプロB細胞上に発現される細胞表面受容体である。PD-1は、2つのリガンド、PD-L1及びPD-L2と相互作用する。PD-1は、例えば、T細胞の活性化を低減又は防止することによって、阻害性免疫チェックポイント分子として機能し、それにより、自己免疫を低減させ、自己免疫寛容を促進する。PD-1の阻害効果は、調節性T細胞(抑制性T細胞)におけるアポトーシスも低減しながら、リンパ節における抗原特異的T細胞のアポトーシスを促進する二重機構を少なくとも部分的に通じて達成される。PD-1拮抗薬又は阻害薬のいくつかの例としては、PD-1に特異的に結合し、その免疫抑制活性、例えば、その下流シグナル伝達、又はPD-L1とのその相互作用のうちの1つ以上を低減する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる。PD-1拮抗薬又は阻害薬の具体的な例としては、抗体ニボルマブ、ペムブロリズマブ、PDR001、MK-3475、AMP-224、AMP-514、及びピジリズマブ、並びにそれらの抗原結合断片が挙げられる(例えば、米国特許第8,008,449号、同第8,993,731号、同第9,073,994号、同第9,084,776号、同第9,102,727号、同第9,102,728号、同第9,181,342号、同第9,217,034号、同第9,387,247号、同第9,492,539号、同第9,492,540号、及び米国特許出願第2012/0039906号、同第2015/0203579号を参照されたい)。
【0099】
いくつかの実施形態では、薬剤は、PD-L1拮抗薬又は阻害薬である。上記のように、PD-L1は、PD-1受容体の天然リガンドのうちの1つである。PD-L1拮抗薬又は阻害薬の一般的な例としては、PD-L1に特異的に結合し、その免疫抑制活性、例えば、PD-1受容体へのその結合のうちの1つ以上を低減する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる。PD-L1拮抗薬の具体的な例としては、抗体アテゾリズマブ(MPDL3280A)、アベルマブ(MSB0010718C)、及びデュルバルマブ(MEDI4736)、並びにその抗原結合断片が挙げられる(例えば、米国特許第9,102,725号、同第9,393,301号、同第9,402,899号、同第9,439,962号を参照されたい)。
【0100】
いくつかの実施形態では、薬剤は、PD-L2拮抗薬又は阻害薬である。上記のように、PD-L2は、PD-1受容体の天然リガンドのうちの1つである。PD-L2拮抗薬又は阻害薬の一般的な例としては、PD-L2に特異的に結合し、その免疫抑制活性、例えば、PD-1受容体へのその結合のうちの1つ以上を低減する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる。
【0101】
特定の実施形態では、薬剤は、VISTA拮抗薬又は阻害薬である。VISTAは、約50kDaのサイズであり、免疫グロブリンスーパーファミリー(1つのIgVドメインを有する)及びB7ファミリーに属する。それは、白血球で主に発現し、その転写は、p53によって部分的に制御される。VISTAがT細胞上のリガンド及び受容体の両方として作用して、T細胞エフェクタ機能を阻害し、末梢性免疫寛容を維持し得るという証拠がある。VISTAは、骨髄由来抑制細胞及び調節性T細胞などの腫瘍浸潤リンパ球において高レベルで生成され、抗体による阻害は、黒色腫及び扁平上皮細胞がんのマウスモデルにおける遅延された腫瘍成長を結果的にもたらす。例示的な抗VISTA拮抗薬抗体としては、例えば、参照によりその全体が組み込まれるWO2018/237287に説明される抗体が挙げられる。
【0102】
いくつかの実施形態では、薬剤は、CTLA-4拮抗薬又は阻害薬である。CTLA4又はCTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)は、CD152(分化152のクラスタ)としても知られ、例えば、抗原提示細胞の表面上でCD80又はCD86に結合したときに阻害性シグナルをT細胞に送信することによって、阻害性免疫チェックポイント分子として機能するタンパク質受容体である。一般的な例のCTLA-4拮抗薬又は阻害薬としては、CTLA-4に特異的に結合する抗体又は抗原結合断片又は小分子を含む。特定の例は、抗体イピリムマブ及びトレメリムマブ、並びにその抗原結合断片を含む。イピリムマブの活性の少なくとも一部は、CTLA-4を発現する抑制因子Tregの抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)死滅によって介在されると考えられる。
【0103】
いくつかの実施形態では、薬剤は、IDO拮抗薬若しくは阻害薬、又はTDO拮抗薬若しくは阻害薬である。IDO及びTDOは、免疫阻害特性を有するトリプトファン分解酵素である。例えば、IDOは、T細胞及びNK細胞を抑制し、Treg及び骨髄由来抑制細胞を生成及び活性化し、腫瘍血管新生を促進することが知られている。IDO及びTDO拮抗薬又は阻害薬の一般的な例としては、IDO又はTDOに特異的に結合し(例えば、Platten et al.,Front Immunol.5:673,2014を参照されたい)、1つ以上の免疫抑制活性を低減又は阻害する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる。IDO拮抗薬又は阻害薬の具体的な例としては、インドキシモド(NLG-8189)、1-メチル-トリプトファン(1MT)、β-カルボリン(norharmane、9H-ピリド[3,4-b]インドール)、ロスマリン酸、及びepacadostat(例えば、Sheridan,Nature Biotechnology.33:321-322,2015を参照されたい)が挙げられる。TDO拮抗薬又は阻害薬の具体的な例としては、680C91及びLM10が挙げられる(例えば、Pilotte et al.,PNAS USA.109:2497-2502,2012を参照されたい)。
【0104】
いくつかの実施形態では、薬剤は、TIM-3拮抗薬又は阻害薬である。T細胞免疫グロブリンドメイン及びムチンドメイン3(TIM-3)は、活性化ヒトCD4+T細胞上で発現され、Th1及びTh17サイトカインを調節する。TIM-3はまた、そのリガンドであるガレクチン-9との相互作用により細胞死を引き起こすことによって、Th1/Tc1機能の負の調節因子としても作用する。TIM-3は、抑制性腫瘍微小環境に寄与し、その過剰発現は、様々ながんにおける不良な予後と関連付けられる(例えば、Li et al.,Acta Oncol.54:1706-13,2015を参照されたい)。TIM-3拮抗薬又は阻害薬の一般的な例としては、TIM-3に特異的に結合し、その免疫抑制活性のうちの1つ以上を低減又は阻害する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる。
【0105】
いくつかの実施形態では、薬剤は、LAG-3拮抗薬又は阻害薬である。リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)は、活性化T細胞、ナチュラルキラー細胞、B細胞、及び形質細胞様樹状細胞上で発現される。T細胞の細胞増殖、活性化、及び恒常性を、CTLA-4及びPD-1と同様の様式で負に調節し(例えば、Workman and Vignali.European Journal of Immun.33:970-9,2003、及びWorkman et al.,Journal of Immun.172:5450-5,2004を参照されたい)、Treg抑制機能において役割を果たすことが報告されている(例えば、Huang et al.,Immunity.21:503-13,2004を参照されたい)。LAG3はまた、CD8+T細胞を免疫寛容原性状態に維持し、PD-1と組み合わせて、CD8 T細胞疲弊を維持する。LAG-3拮抗薬又は阻害薬の一般的な例としては、LAG-3に特異的に結合し、その免疫抑制活性のうちの1つ以上を阻害する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる。具体的な例としては、抗体BMS-986016、及びその抗原結合断片が挙げられる。
【0106】
いくつかの実施形態では、薬剤は、BTLA拮抗薬又は阻害薬である。B-及びT-リンパ球減衰因子(BTLA、CD272)の発現は、T細胞の活性化中に誘導され、腫瘍壊死ファミリー受容体(TNF-R)及びB7ファミリーの細胞表面受容体との相互作用を介してT細胞を阻害する。BTLAは、ヘルペスウイルス侵入メディエータ(HVEM)としても知られる腫瘍壊死因子(受容体)スーパーファミリーメンバー14(TNFRSF14)に対するリガンドである。BTLA-HVEM複合体は、例えば、ヒトCD8+がん特異的T細胞の機能を阻害することによって、T細胞免疫応答を負に調節する(例えば、Derre et al.,J Clin Invest120:157-67,2009を参照されたい)。BTLA拮抗薬又は阻害薬の一般的な例としては、BTLA-4に特異的に結合し、その免疫抑制活性のうちの1つ以上を低減する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる。
【0107】
いくつかの実施形態では、薬剤は、HVEM拮抗薬又は阻害薬、例えば、HVEMに特異的に結合し、BTLA又はCD160とのその相互作用を妨害する拮抗薬又は阻害薬である。HVEM拮抗薬又は阻害薬の一般的な例としては、HVEMに特異的に結合し、任意選択的に、HVEM/BTLA及び/又はHVEM/CD160の相互作用を低減し、それによって、HVEMの免疫抑制活性のうちの1つ以上を低減する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる。
【0108】
いくつかの実施形態では、薬剤は、CD160拮抗薬又は阻害薬、例えば、CD160に特異的に結合し、HVEMとのその相互作用を妨害する拮抗薬又は阻害薬である。CD160拮抗薬又は阻害薬の一般的な例としては、CD160に特異的に結合し、任意選択的に、CD160/HVEMの相互作用を低減し、それによって、その免疫抑制活性のうちの1つ以上を低減又は阻害する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる。
【0109】
いくつかの実施形態では、薬剤は、TIGIT拮抗薬又は阻害薬である。T細胞Ig及びITIMドメイン(TIGIT)は、様々なリンパ細胞の表面に見出される共阻害性受容体であり、例えば、Tregsを介して、抗腫瘍免疫を抑制する(Kurtulus et al.,J Clin Invest.125:4053-4062,2015)。TIGIT拮抗薬又は阻害薬の一般的な例としては、TIGITに特異的に結合し、その免疫抑制活性のうちの1つ以上を低減する、抗体又は抗原結合断片又は小分子が挙げられる(例えば、Johnston et al.,Cancer Cell.26:923-37,2014を参照されたい)。
【0110】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント調節薬は、1つ以上の刺激性免疫チェックポイント分子の作用薬である。例示的な刺激性免疫チェックポイント分子としては、CD40、OX40、グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、CD137(4-1BB)、CD27、CD28、CD226、及びヘルペスウイルス侵入メディエータ(HVEM)が挙げられる。
【0111】
いくつかの実施形態では、薬剤は、CD40作用薬である。CD40は、抗原提示細胞(APC)及びいくつかの悪性腫瘍で発現される。そのリガンドは、CD40L(CD154)である。APCでは、ライゲーションが、共刺激分子の上向き調節を結果的にもたらし、抗腫瘍免疫応答におけるT細胞支援の必要性を潜在的にバイパスする。CD40作用薬療法は、APC成熟及び腫瘍からリンパ節へのそれらの移動に重要な役割を果たし、結果として高い抗原提示及びT細胞活性化をもたらす。抗CD40作用薬抗体は、動物モデルにおいて実質的な応答及び持続的な抗がん免疫、細胞傷害性T細胞によって少なくとも部分的に媒介される効果を生成する(例えば、Johnson et al.Clin Cancer Res.21:1321-1328,2015、及びVonderheide and Glennie,Clin Cancer Res.19:1035-43,2013を参照されたい)。CD40作用薬の一般的な例としては、CD40に特異的に結合し、その免疫刺激活性のうちの1つ以上を増加させる、抗体又は抗原結合断片又は小分子又はリガンドを含む。具体的な例としては、CP-870,893、dacetuzumab、Chi Lob7/4、ADC-1013,CD40L,rhCD40L、及びそれらの抗原結合断片が挙げられる。CD40作用薬の具体的な例としては、限定されるものではないが、APX005(例えば、US2012/0301488を参照されたい)及びAPX005M(例えば、US2014/0120103を参照されたい)を含む。
【0112】
いくつかの実施形態では、薬剤は、OX40作用薬である。OX40(CD134)は、エフェクタ及びメモリーT細胞の増殖を促進し、T調節性細胞の分化及び活性を抑制する(例えば、Croft et al.,Immunol Rev.229:173-91,2009を参照されたい)。そのリガンドは、OX40L(CD252)である。OX40シグナル伝達は、T細胞活性化及び生存の両方に影響するため、リンパ節における抗腫瘍免疫応答の開始、及び腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫応答の維持において重要な役割を果たす。OX40作用薬の一般的な例としては、OX40に特異的に結合し、その免疫刺激活性のうちの1つ以上を増加させる、抗体又は抗原結合断片又は小分子又はリガンドを含む。具体的な例としては、OX86、OX-40L、Fc-OX40L、GSK3174998、MEDI0562(ヒト化OX40作用薬)、MEDI6469(マウスOX4作用薬)、及びMEDI6383(OX40作用薬)、並びにその抗原結合断片が挙げられる。
【0113】
いくつかの実施形態では、薬剤は、GITR作用薬である。グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)は、T細胞の増殖を増加させ、Tregの抑制活性を阻害し、Tエフェクタ細胞の生存を延長する。GITR作用薬は、Treg系列安定性の喪失を通して抗腫瘍応答を促進することが示されている(例えば、Schaer et al.,Cancer Immunol Res.1:320-31,2013を参照されたい)。これらの多様な機構は、GITRが、リンパ節における免疫応答の開始、及び腫瘍組織における免疫反応の維持において重要な役割を果たすことを示す。そのリガンドは、GITRLである。GITR作用薬の一般的な例としては、GITRに特異的に結合し、その免疫刺激活性のうちの1つ以上を増加させる、抗体又は抗原結合断片又は小分子又はリガンドを含む。具体的な例としては、GITRL、INCAGN01876、DTA-1、MEDI1873、及びそれらの抗原結合断片が挙げられる。
【0114】
いくつかの実施形態では、薬剤は、CD137作用薬である。CD137(4-1BB)は、腫瘍壊死因子(TNF)受容体ファミリーのメンバーであり、CD137の架橋は、T細胞増殖、IL-2分泌、生存、及び細胞溶解活性を増強する。CD137介在性シグナル伝達はまた、活性化誘導細胞死からCD8+T細胞などのT細胞を保護する。CD137作用薬の一般的な例としては、CD137に特異的に結合し、その免疫刺激活性のうちの1つ以上を増加させる、抗体又は抗原結合断片又は小分子又はリガンドを含む。具体的な例としては、CD137(又は4-1BB)リガンド(例えば、Shao and Schwarz,J Leukoc Biol.89:21-9,2011を参照されたい)、及び抗体utomilumabが挙げられ、それらの抗原結合断片を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、薬剤は、CD27作用薬である。CD27の刺激は、ナイーブT細胞の抗原特異的増殖を増加させ、T細胞メモリー及びT細胞免疫の長期維持に寄与する。そのリガンドは、CD70である。作用薬抗体を用いたヒトCD27の標的化は、T細胞活性化及び抗腫瘍免疫を刺激する(例えば、Thomas et al.,Oncoimmunology.2014;3:e27255.doi:10.4161/onci.27255、及びHe et al.,J Immunol.191:4174-83,2013を参照されたい)。CD27作用薬の一般的な例としては、CD27に特異的に結合し、その免疫刺激活性のうちの1つ以上を増加させる、抗体又は抗原結合断片又は小分子又はリガンドを含む。具体的な例としては、CD70、並びに抗体のvarlilumab及びCDX-1127(1F5)が挙げられ、それらの抗原結合断片を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、薬剤は、CD28作用薬である。CD28は、CD4+T細胞、いくつかのCD8+T細胞で構成的に発現する。そのリガンドは、CD80及びCD86を含み、その刺激は、T細胞増殖を増加させる。CD28作用薬の一般的な例としては、CD28に特異的に結合し、その免疫刺激活性のうちの1つ以上を増加させる、抗体又は抗原結合断片又は小分子又はリガンドを含む。具体的な例としては、CD80、CD86、抗体TAB08、及びその抗原結合断片が挙げられる。
【0117】
いくつかの実施形態では、薬剤は、CD226作用薬である。CD226は、TIGITとリガンドを共有する刺激受容体であり、TIGITとは反対に、CD226の関与は、T細胞活性化を増強する(例えば、Kurtulus et al.,J Clin Invest.125:4053-4062,2015、Bottino et al.,J Exp Med.1984:557-567,2003、及びTahara-Hanaoka et al.,Int Immunol.16,533-538,2004を参照されたい)。CD226作用薬の一般的な例としては、CD226に特異的に結合し、その免疫刺激活性のうちの1つ以上を増加させる、抗体又は抗原結合断片又は小分子又はリガンド(例えば、CD112、CD155)を含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、薬剤は、HVEM作用薬である。ヘルペスウイルス侵入メディエータ(HVEM)は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー14(TNFRSF14)としても知られ、TNF受容体スーパーファミリーのヒト細胞表面受容体である。HVEMは、T細胞、APC、及び他の免疫細胞を含む様々な細胞上に見出される。他の受容体とは異なり、HVEMは、休止T細胞上で高レベルで発現され、活性化時に下向き調節される。HVEMシグナル伝達は、T細胞活性化の早期段階において、及びリンパ節における腫瘍特異的リンパ球集団の増殖中に、重要な役割を果たすことが示されている。HVEM作用薬の一般的な例としては、HVEMに特異的に結合し、その免疫刺激活性のうちの1つ以上を増加させる、抗体又は抗原結合断片又は小分子又はリガンドを含む。
【0119】
特定の実施形態では、免疫療法薬は、二重特異性又は多重特異性抗体である。例えば、特定の二重特異性又は多重特異性抗体は、(i)1つ以上の阻害性免疫チェックポイント分子に結合し、それらを阻害し、かつ(ii)1つ以上の刺激性免疫チェックポイント分子に結合し、それらを作用させることができる。特定の実施形態では、二重特異性又は多重特異性抗体は、(i)PD-L1、PD-L2、PD-1、CTLA-4、IDO、TDO、TIM-3、LAG-3、BTLA、CD160、及び/又はTIGITのうちの1つ以上に結合し、それらを阻害し、かつ(ii)CD40、OX40グルココルチコイド誘導性TNFRファミリー関連遺伝子(GITR)、CD137(4-1BB)、CD27、CD28、CD226、及び/又はヘルペスウイルス侵入メディエータ(HVEM)のうちの1つ以上に結合し、それらを作用させる。
【0120】
いくつかの実施形態では、免疫療法薬は、がんワクチンである。特定の実施形態では、がんワクチンは、Oncophage、ヒトパピローマウイルスHPVワクチン、任意選択的に、Gardasil若しくはCervarix、B型肝炎ワクチン、任意選択的に、Engerix-B、Recombivax HB、若しくはTwinrix、及びsipuleucel-T(Provenge)のうちの1つ以上から選択されるか、又はヒトHer2/neu、Her1/EGF受容体(EGFR)、Her3、A33抗原、B7H3、CD5、CD19、CD20、CD22、CD23(IgE受容体)、MAGE-3、C242抗原、5T4、IL-6、IL-13、血管内皮成長因子VEGF(例えば、VEGF-A)VEGFR-1、VEGFR-2、CD30、CD33、CD37、CD40、CD44、CD51、CD52、CD56、CD74、CD80、CD152、CD200、CD221、CCR4、HLA-DR、CTLA-4、NPC-1C、テナシン、ビメンチン、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)、アルファ-フェトタンパク質、インスリン様成長因子1(IGF-1)、炭酸脱水酵素9(CA-IX)、がん胎児性抗原(CEA)、グアニリルシクラーゼC、NY-ESO-1、p53、サバイビン、インテグリンαvβ3、インテグリンα5β1、葉酸受容体1、膜貫通糖タンパク質NMB、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAP)、糖タンパク質75、TAG-72、MUC1、MUC16(若しくはCA-125)、ホスファチジルセリン、前立腺特異的膜抗原(PMSA)、NR-LU-13抗原、TRAIL-R1、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー10b(TNFRSF10B若しくはTRAIL-R2)、SLAMファミリーメンバー7(SLAMF7)、EGP40汎がん抗原、B細胞活性化因子(BAFF)、血小板由来成長因子受容体、糖タンパク質EpCAM(17-1A)、プログラム死1、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ(PDI)、再生肝ホスファターゼ3(PRL-3)、前立腺酸性ホスファターゼ、Lewis-Y抗原、GD2(神経外胚葉由来の腫瘍に発現するジシアロガングリオシド)、グリピカン-3(GPC3)、及びメソテリンのうちの1つ以上から選択されるがん抗原を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、免疫療法薬は、腫瘍溶解性ウイルスである。いくつかの実施形態では、腫瘍溶解性ウイルスは、talimogene laherparepvec(T-VEC)、coxsackievirus A21(CAVATAK(商標))、Oncorine(H101)、pelareorep(REOLYSIN(登録商標))、Seneca Valley virus(NTX-010)、Senecavirus SVV-001、ColoAd1、SEPREHVIR(HSV-1716)、CGTG-102(Ad5/3-D24-GMCSF)、GL-ONC1、MV-NIS、及びDNX-2401のうちの1つ以上から選択した。
【0122】
特定の実施形態では、がん免疫療法薬は、サイトカインである。例示的なサイトカインとしては、インターフェロン(IFN)-α、IL-2、IL-12、IL-7、IL-21、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が挙げられる。
【0123】
特定の実施形態では、がん免疫療法薬は、細胞系免疫療法、例えば、リンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、及び/又は樹状細胞(DC)などのエクスビボ由来免疫細胞を含む、免疫細胞を利用する療法である。いくつかの実施形態では、リンパ球は、T細胞、例えば、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を含む。例えば、養子T細胞及びNK細胞免疫療法の説明について、June,J Clin Invest.117:1466-1476,2007、Rosenberg and Restifo,Science.348:62-68,2015、Cooley et al.,Biol.of Blood and Marrow Transplant.13:33-42,2007、及びLi and Sun,Chin J Cancer Res.30:173-196,2018を参照されたい。いくつかの実施形態では、T細胞は、少なくとも1つのがん抗原に対して向けられるがん抗原特異的T細胞を含む。いくつかの実施形態では、がん抗原特異的T細胞は、キメラ抗原受容体(CAR)改変T細胞、T細胞受容体(TCR)改変T細胞、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、及びペプチド誘導T細胞のうちの1つ以上から選択される。特定の実施形態では、CAR改変T細胞は、CD-19に向かって標的化される(例えば、Maude et al.,Blood.125:4017-4023,2015を参照されたい)。いくつかの事例では、エクスビボ由来免疫細胞は、治療される患者から取得される自己細胞である。
【0124】
特定の併用療法は、1つ以上の化学療法薬、例えば、小分子化学療法薬を用いる。化学療法薬の非限定的な例としては、とりわけ、アルキル化剤、抗代謝物質、細胞傷害性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害薬(タイプ1又はタイプII)、及び微小管阻害剤が挙げられる。
【0125】
アルキル化剤の例としては、ナイトロジェンマスタード(例えば、メクロレタミン、シクロホスファミド、ムスチン、メルファラン、クロラムブシル、イホスファミド、及びブスルファン)、ニトロソウレア(例えば、N-ニトロソ-N-メチル尿素(MNU)、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(MeCCNU)、フォテムスチン、及びストレプトゾトシン)、テトラジン(例えば、ダカルバジン、ミトゾロミド、及びテモゾロミド)、アジリジン(例えば、チオテパ、マイトマイシン、ジアジコン(AZQ))、シスプラチン及びその誘導体(例えば、カルボプラチン及びオキサリプラチン)、並びに非古典的アルキル化剤(任意選択的に、プロカルバジン及びヘキサメチルメラミン)が挙げられる。
【0126】
抗代謝物質の例としては、抗葉酸剤(例えば、メトトレキサート及びペメトレキセド)、フルオロピリミジン(例えば、5-フルオロウラシル及びカペシタビン)、デオキシヌクレオシド類似体(例えば、アンシタビン、エノキタビン、シタラビン、ゲムシタビン、デシタビン、アザシチジン、フルダラビン、ネララビン、クラドリビン、クロファラビン、フルダラビン、及びペントスタチン)、並びにチオプリン(例えば、チオグアニン及びメルカプトプリン)が挙げられる。
【0127】
細胞傷害性抗生物質の例としては、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ピラルビシン、アクラルビシン、及びミトキサントロン)、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、並びにアクチノマイシンが挙げられる。トポイソメラーゼ阻害薬の例としては、カンプトテシン、イリノテカン、トポテカン、エトポシド、ドキソルビシン、ミトキサントロン、テニポシド、ノボビオシン、メルバロン、及びアクラルビシンが挙げられる。
【0128】
微小管阻害剤の例としては、タキサン(例えば、パクリタキセル及びドセタキセル)並びにビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン)が挙げられる。
【0129】
本明細書に説明される様々な化学療法薬は、本明細書に説明される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質のうちのいずれか1つ以上と組み合わせられ得、本明細書に説明される方法又は組成物のうちのいずれか1つ以上に従って使用され得る。
【0130】
特定の併用療法は、少なくとも1つのホルモン治療薬を用いる。ホルモン治療薬の一般的な例としては、ホルモン作用薬及びホルモン拮抗薬を含む。ホルモン作用薬の特定の例としては、黄体ホルモン(プロゲスチン)、副腎皮質ホルモン(例えば、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン)、インスリン様成長因子、VEGF由来の血管新生及びリンパ管新生因子(例えば、VEGF-A、VEGF-A145、VEGF-A165、VEGF-C、VEGF-D、PIGF-2)、線維芽細胞成長因子(FGF)、ガレクチン、肝細胞成長因子(HGF)、血小板由来成長因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子(TGF)-ベータ、アンドロゲン、エストロゲン、並びにソマトスタチン類似体が挙げられる。ホルモン拮抗薬の例としては、アロマターゼ阻害薬などのホルモン合成阻害薬、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)作用薬(例えば、リュープロリド、ゴセレリン、トリプトレリン、ヒストレリン)が挙げられ、それらの類似体を含む。また、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM、例えば、タモキシフェン、ラロキシフェン、トレミフェン)及び抗アンドロゲン(例えば、フルタミド、ビカルタミド、ニルータミド)などの、ホルモン受容体拮抗薬も含まれる。
【0131】
ホルモン受容体に向けられた抗体などのホルモン経路阻害薬も含まれる。例としては、シクツムマブ、ダロツズマブ、フィギツムマブ、ガニツムマブ、イスティラツマブ、及びロバツムマブなどのIGF受容体の阻害薬(例えば、IGF-IR1)、アラシズマブペゴル、ベバシズマブ、イクルスクマブ、ラムシルマブなどの血管内皮成長因子受容体1、2又は3(VEGFR1、VEGFR2又はVEGFR3)の阻害薬、フレソリムマブ及びメテリムマブなどのTGF-ベータ受容体R1、R2、及びR3の阻害薬、ナキシタマブなどのc-Metの阻害薬、セツキシマブ、デパツキシズマブマフォドチン、フツキシマブ、イムガツズマブ、ラプリツキシマブエムタンシン、マツズマブ、モドツキシマブ、ネシツムマブ、ニモツズマブ、パニツムマブ、トムゾツキシマブ、及びザルツムマブなどのEGF受容体の阻害薬、アプルタマブイクサドチン及びベマリツズマブなどのFGF受容体の阻害薬、並びにオララツマブ及びトベツマブなどのPDGF受容体の阻害薬が挙げられる。
【0132】
本明細書に説明される様々なホルモン療法薬は、本明細書に説明される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質のうちのいずれか1つ以上と組み合わせられ得、本明細書に説明される方法又は組成物のうちのいずれか1つ以上に従って使用され得る。
【0133】
特定の併用療法は、チロシンキナーゼ阻害薬を含む、少なくとも1つのキナーゼ阻害薬を用いる。キナーゼ阻害薬の例としては、限定なしで、アダボセルチブ、アファニチブ、アフリベルセプト、アキシチニブ、ベバシズマブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セツキシマブ、コビメチニブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、アントレクチニブ、エルダフィチニブ、エルロチニブ、フォスタミチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ラニビスマブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、SU6656、トファチニブ、トラステズマブ、バンデタニブ、及びベムアフェニブが挙げられる。
【0134】
本明細書に説明される様々なキナーゼ阻害薬は、本明細書に説明される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質のうちのいずれか1つ以上と組み合わせられ得、本明細書に説明される方法又は組成物のうちのいずれか1つ以上に従って使用され得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明される方法及び組成物は、対照又は参照と比較して、約又は少なくとも約2倍、5倍、10倍、50倍、100倍、500倍、又は1000倍以上、対象におけるがん細胞死滅を増加させる。いくつかの実施形態では、本明細書に説明される方法及び組成物は、対象の生存期間中央値を、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、15週間、20週間、25週間、30週間、40週間以上増加させる。特定の実施形態では、本明細書に説明される方法及び組成物は、対象の生存期間中央値を、1年、2年、3年以上増加させる。いくつかの実施形態では、方法及び医薬組成物は、無増悪生存期間を、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間以上増加させる。特定の実施形態では、本明細書に説明される方法及び医薬組成物は、無増悪生存期間を、1年、2年、3年以上増加させる。
【0136】
特定の実施形態では、本明細書に説明される方法及び組成物は、例えば、生存腫瘍量の統計的に有意な減少、例えば、腫瘍量の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%以上の減少、又は変化した(例えば、統計的有意性を有して減少する)スキャン寸法によって示される腫瘍退縮を結果的にもたらすのに十分である。特定の実施形態では、本明細書に説明される方法及び組成物は、安定を結果的にもたらすのに十分である。特定の実施形態では、本明細書に説明される方法及び組成物は、当業者の臨床医に公知の特定の疾患適応症の症状における臨床的に関連する低減を結果的にもたらすのに十分である。
【0137】
上記のように、ヒト又は非ヒト哺乳類疾患の治療又は試験のためのインビボ用途では、本明細書に説明される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、概して、投与前に、動物用治療組成物を含む、1つ以上の治療用又は医薬組成物に組み込まれる。
【0138】
したがって、特定の実施形態は、本明細書に説明されるように、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を含む医薬又は治療用組成物に関する。いくつかの事例では、医薬又は治療用組成物は、薬学的又は生理学的に許容される担体又は賦形剤と組み合わせられた、本明細書に説明される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質のうちの1つ以上を含む。特定の医薬又は治療用組成物は、本明細書に説明される少なくとも1つの追加の薬剤、例えば、免疫療法薬、化学療法薬、ホルモン治療薬、及び/又はキナーゼ阻害薬を更に含む。
【0139】
いくつかの治療用組成物は、1つの改変セリンプロテアーゼプロタンパク質のみを含む(及び特定の方法を利用する)。特定の治療用組成物は、少なくとも2つ、3つ、4つ、又は5つの異なる改変セリンプロテアーゼプロタンパク質の混合物を含む(及び特定の方法を利用する)。
【0140】
特定の実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を含む医薬又は治療用組成物は、タンパク質ベース又は重量ベースで実質的に純粋であり、例えば、組成物は、タンパク質ベース又は重量ベースで少なくとも約80%、85%、90%、95%、98%、又は99%の純度を有する。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、当技術分野で公知のように、凝集体を形成しない、所望の溶解性を有する、かつ/又はヒトにおける使用に好適である免疫原性プロファイルを有する。したがって、いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を含む治療用組成物は、実質的に凝集体非含有である。例えば、特定の組成物は、約10%未満(タンパク質ベース)の高分子量凝集タンパク質、又は約5%未満の高分子量凝集タンパク質、又は約4%未満の高分子量凝集タンパク質、又は約3%未満の高分子量凝集タンパク質、又は約2%未満の高分子量凝集タンパク質、又は約1%未満の高分子量凝集タンパク質を含む。いくつかの組成物は、その見かけの分子量に対して少なくとも約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、又は約95%の単一分散である改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、約又は少なくとも約0.1mg/ml、0.2mg/ml、0.3mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6、0.7、0.8、0.9、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、11、12、13、14、又は15mg/mlに濃縮され、生物学的使用のために製剤化される。
【0143】
治療用又は医薬組成物を調製するために、有効又は所望量の1つ以上の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質が、特定の薬剤及び/又は投与様式に好適であることが当業者に公知の任意の医薬担体又は賦形剤と混合される。医薬担体は、液体、半液体、又は固体であってもよい。非経口、皮内、皮下、又は局所適用に使用される溶液又は懸濁液としては、例えば、無菌希釈剤(水など)、食塩水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、PBS)、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶剤、抗菌剤(ベンジルアルコール、メチルパラベンなど)、抗酸化剤(アスコルビン酸及び重亜硫酸ナトリウムなど)及びキレート剤(エチレンジアミン四酢酸(EDTA)など)、緩衝液(酢酸塩、クエン酸塩及びリン酸塩など)が挙げられ得る。静脈内投与(例えば、IV注入)の場合、好適な担体としては、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、並びにグルコース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、及びそれらの混合物などの、増粘及び可溶化剤を含有する溶液が挙げられる。
【0144】
純粋な形態で、又は適切な治療用若しくは医薬組成物で、本明細書に説明される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質の投与は、同様の有用性を送達するための薬剤の許容される投与様式のいずれかを介して実施され得る。治療用又は医薬組成物は、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質含有組成物を適切な生理学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤と組み合わせることによって調製され得、錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座薬、注射、吸入剤、ゲル、微粒子、及びエアロゾルなどの固体、半固体、液体、又はガス形態の調製物に製剤化され得る。加えて、他の薬学的に活性な成分(本明細書の他の箇所に説明されるような他の小分子を含む)、並びに/又は塩、緩衝液、及び安定剤などの好適な賦形剤は、必須ではないが、組成物内に存在し得る。
【0145】
投与は、経口、非経口、経鼻、静脈内、皮内、筋肉内、皮下、又は局所を含む様々な経路によって達成され得る。好ましい投与様式は、治療又は予防される状態の性質に依存する。特定の実施形態は、IV注入による投与を含む。
【0146】
担体は、例えば、用いられる用量及び濃度で、それに曝されている細胞又は哺乳動物に非毒性である、薬学的又は生理学的に許容される担体、賦形剤、又は安定剤を含み得る。多くの場合、生理学的に許容される担体は、水性pH緩衝溶液である。生理学的に許容される担体の例としては、リン酸塩、クエン酸、及び他の有機酸などの緩衝液、アスコルビン酸を含む抗酸化剤、低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質、ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸、グルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む単糖類、二糖類、若しくは他の糖質、EDTAなどのキレート剤、マンニトール若しくはソルビトールなどの糖アルコール、ナトリウムなどの塩形成対イオン、並びに/又はポリソルベート20(TWEEN(商標))ポリエチレングリコール(PEG)、ポリオキサマー(PLURONICS(商標))などの非イオン界面活性剤などが挙げられる。
【0147】
いくつかの実施形態では、1つ以上の薬剤は、例えば、コアセルベーション技術によって又は界面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン-マイクロカプセル、及びポリ-(メチルメタシレート)マイクロカプセル)中、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミン微小球、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、及びナノカプセル)中、又はマクロエマルジョン中に内包され得る。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Oslo,A.,Ed.,(1980)に開示されている。粒子又はリポソームは、他の治療又は診断薬を更に含み得る。
【0148】
精密な用量及び治療の持続期間は、治療される疾患の機能であり、公知の試験プロトコルを使用して、又は当技術分野で公知のモデルシステムで組成物を試験し、そこから外挿することによって、経験的に決定され得る。対照臨床試験もまた、実施され得る。用量はまた、緩和される状態の重症度によって変化し得る。医薬組成物は、概して、望ましくない副作用を最小化しながら、治療的に有用な効果をもたらすように製剤化され、投与される。組成物は、1回投与されてもよく、又は時間間隔で投与される、いくつかのより小さい用量に分割されてもよい。任意の特定の対象について、特定の投与レジメンは、個々の必要性に応じて経時的に調整され得る。
【0149】
したがって、これら及び関連する治療用又は医薬組成物を投与する典型的な経路としては、限定なしで、経口、局所、経皮、吸入、非経口、舌下、口腔、直腸、膣、及び鼻腔内が挙げられる。本明細書で使用される場合、非経口という用語は、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は注入技術を含む。本開示の特定の実施形態による治療用又は医薬組成物は、その中に含有される活性成分が、対象又は患者への組成物の投与時に生体利用可能になることを可能にするように製剤化される。対象又は患者に投与されることになる組成物は、1つ以上の投与単位の形態をとり得、例えば、錠剤は、単一投与単位であってもよく、エアロゾル形態の本明細書に説明される薬剤の容器は、複数の投与単位を保持してもよい。そのような剤形を調製する実際の方法は、当業者には既知であるか、又は明らかであり、例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition(Philadelphia College of Pharmacy and Science,2000)を参照されたい。投与される組成物は、典型的には、関心対象の疾患又は状態の治療のための、本明細書に説明される治療有効量の薬剤を含有することになる。
【0150】
治療用又は医薬組成物は、固体又は液体の形態であってもよい。一実施形態では、担体は、微粒子であり、その結果、組成物は、例えば、錠剤又は粉末形態である。担体は、液体であってもよく、組成物は、例えば、経口油、注射可能な液体、又はエアロゾルであり、これは、例えば、吸入投与に有用である。経口投与用に意図されるとき、医薬組成物は、好ましくは、固体又は液体形態のいずれかであり、半固体、半液体、懸濁液、及びゲル形態は、本明細書において固体又は液体形態のいずれかとみなされる形態内に含まれる。特定の実施形態は、無菌の注射可能な溶液を含む。
【0151】
経口投与のための固体組成物として、医薬組成物は、粉末、顆粒、圧縮された錠剤、ピル、カプセル、チューインガム、ウエハなどに製剤化され得る。そのような固体組成物は、典型的には、1つ以上の不活性希釈剤又は食用担体を含有することになる。加えて、次のうちの1つ以上が存在し得る:カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントゴム、又はゼラチンなどの結合剤、デンプン、乳糖、又はデキストリンなどの賦形剤、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモジェル、コーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム又はステロテックスなどの滑沢剤、コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤、ショ糖又はサッカリンなどの甘味料、ペパーミント、サリチル酸メチル、又はオレンジ香料などの香味料、及び着色料。医薬組成物が、カプセル、例えば、ゼラチンカプセルの形態であるとき、上記タイプの材料に加えて、ポリエチレングリコール又はオイルなどの液体担体を含有し得る。
【0152】
治療用又は医薬組成物は、液体、例えば、エリキシル、シロップ、溶液、エマルション、又は懸濁液の形態であってもよい。液体は、2つの例として、経口投与又は注射による送達のためのものであってもよい。経口投与用に意図されるとき、好ましい組成物は、本化合物に加えて、甘味料、防腐剤、染料/着色及び香味料のうちの1つ以上を含有する。注射によって投与されることが意図される組成物では、界面活性剤、防腐剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、緩衝液、安定剤、及び等張剤のうちの1つ以上が含まれてもよい。
【0153】
液体治療用又は医薬組成物は、それらが溶液、懸濁液、又は他の同様の形態であるか否かにかかわらず、次のアジュバントのうちの1つ以上を含み得る:注射用水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンゲル溶液、等張塩化ナトリウム、溶媒若しくは懸濁媒体として機能し得る合成モノ若しくはジグリセリドなどの固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の溶媒などの無菌希釈剤、ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの酸化防止剤、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩などの緩衝液、塩化ナトリウム又はブドウ糖などの等張化剤。非経口調製物は、ガラス又はプラスチックで作製されたアンプル、使い捨てシリンジ、又は複数回投与バイアルに封入され得る。生理食塩水は、好ましいアジュバントである。注射可能な医薬組成物は、好ましくは、無菌である。
【0154】
非経口投与又は経口投与のいずれかに意図される液体治療用又は医薬組成物は、好適な用量が取得されることになるように、ある量の薬剤を含有するべきである。典型的には、この量は、組成物中の関心対象の薬剤の少なくとも0.01%である。経口投与に意図される場合、この量は、組成物の重量の0.1~約70%となるように変化し得る。特定の経口治療用又は医薬組成物は、関心対象の薬剤の約4%~約75%を含有する。特定の実施形態では、治療用又は医薬組成物及び調製物は、非経口用量単位が希釈前の関心対象の薬剤の0.01~10重量%を含有するように調製される。
【0155】
治療用又は医薬組成物は、局所投与に意図され得、その場合、担体は、溶液、エマルション、軟膏、又はゲル塩基を好適に含み得る。塩基は、例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、ミツロウ、鉱油、水及びアルコールなどの希釈剤、並びに乳化剤及び安定剤のうちの1つ以上を含み得る。増粘剤は、局所投与のための治療用又は医薬組成物中に存在し得る。経皮投与に意図される場合、組成物は、経皮パッチ又はイオントフォレシスデバイスを含み得る。
【0156】
治療用又は医薬組成物は、例えば、直腸内で溶解し、薬物を放出することになる、座薬の形態における、直腸投与に意図され得る。直腸投与のための組成物は、好適な非刺激性賦形剤として油性塩基を含有し得る。そのような塩基は、限定なしで、ラノリン、ココアバター、及びポリエチレングリコールを含む。
【0157】
治療用又は医薬組成物は、固体又は液体の用量単位の物理的形態を改変する様々な材料を含み得る。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含み得る。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には、不活性であり、例えば、糖、シェラック、及び他の腸溶性コーティング剤から選択され得る。あるいは、活性成分は、ゼラチンカプセル内に封入され得る。固体又は液体形態の治療用又は医薬組成物は、薬剤に結合し、それによって、化合物の送達を支援する構成要素を含み得る。この能力で作用し得る好適な構成要素としては、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体、1つ以上のタンパク質又はリポソームが挙げられる。
【0158】
治療用又は医薬組成物は、エアロゾルとして投与され得る投与単位から本質的になり得る。エアロゾルという用語は、コロイド状の性質のものから加圧パッケージからなる系まで及ぶ様々な系を示すために使用される。送達は、液化又は圧縮ガスによって、又は活性成分を分注する好適なポンプ系によって行われ得る。エアロゾルは、活性成分を送達するために、単相、二相、又は三相系で送達され得る。エアロゾルの送達は、必要な容器、活性化剤、弁、サブ容器などを含み、これらは、一緒にキットを形成し得る。過度の実験なしで、当業者は、好ましいエアロゾルを決定し得る。
【0159】
本明細書に説明される組成物は、時間放出製剤又はコーティングなどの、体からの急速な除去に対して薬剤を保護する担体を用いて調製され得る。そのような担体は、限定されるものではないが、インプラント及びマイクロカプセル送達系などの制御された放出製剤、並びにエチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、ポリオルトエステル、ポリ乳酸及び当業者に公知の他のものなどの、生分解性の生体適合性ポリマーを含む。
【0160】
治療用又は医薬組成物は、当医薬技術分野で周知の方法論によって調製され得る。例えば、注射によって投与されるように意図された治療用又は医薬組成物は、溶液を形成するために滅菌蒸留水を有する、塩、緩衝液、及び/又は安定剤のうちの1つ以上を含み得る。界面活性剤は、均質な溶液又は懸濁液の形成を促進するために添加され得る。界面活性剤は、水性送達系における薬剤の溶解又は均質な懸濁を容易にするために、薬剤と非共有結合的に相互作用する化合物である。
【0161】
治療用又は医薬組成物は、治療有効量で投与され得、用いられる特定の化合物の活性、化合物の作用の代謝安定性及び長さ、年齢、体重、健康全般、性別、及び対象の食事、投与モード及び投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、特定の障害又は状態の重症度、治療を受けている対象を含む、様々な因子に依存して変化することになる。いくつかの事例では、治療有効日用量は、(70kgの哺乳動物に対して)約0.001mg/kg(すなわち、約0.07mg)~約100mg/kg(すなわち、約7.0g)であり、好ましくは、治療有効用量は、(70kgの哺乳動物に対して)約0.01mg/kg(すなわち、約0.7mg)~約50mg/kg(すなわち、約3.5g)であり、より好ましくは、治療有効用量は、(70kgの哺乳動物に対して)約1mg/kg(すなわち、約70mg)~約25mg/kg(すなわち、約1.75g)である。いくつかの実施形態では、治療有効用量は、毎週、隔週、又は毎月投与される。特定の実施形態では、治療有効用量は、例えば、約1~10若しくは1~5mg/kg、又は約1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10mg/kgの用量で、毎週、隔週、又は毎月投与される。
【0162】
本明細書に説明される併用療法は、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、及び追加の治療薬(例えば、免疫療法薬、化学療法薬、ホルモン治療薬、キナーゼ阻害薬)を含有する単一の医薬剤形の投与、並びに改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、それ自体の別個の医薬剤形における追加の治療薬を含む組成物の投与を含み得る。例えば、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、及び追加の治療薬は、食塩水溶液若しくは他の生理学的に許容される溶液などの単一の非経口用量組成物で一緒に対象に投与され得るか、又は各薬剤は、別個の非経口剤形で投与される。別個の剤形が使用される場合、組成物は、本質的に同時に、すなわち、同時に、又は別個に時差のある時間、すなわち、順次及び任意の順序で投与され得、併用療法は、全てのこれらのレジメンを含むと理解される。
【0163】
また、(a)本明細書に説明される少なくとも1つの改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、及び任意選択的に、(b)少なくとも1つの追加の治療薬(例えば、免疫療法薬、化学療法薬、ホルモン治療薬、キナーゼ阻害薬)を含む、患者ケアキットも含まれる。特定のキットでは、(a)及び(b)は、別個の治療用組成物中にある。いくつかのキットでは、(a)及び(b)は、同じ治療用組成物中にある。
【0164】
本明細書のキットはまた、治療される適応症、又は所望の診断用途に、好適な又は所望される、1つ以上の追加の治療薬又は他の構成要素を含み得る。本明細書のキットはまた、意図される送達様式(例えば、ステント、移植可能なデポ)を容易にするために必要な又は所望される1つ以上のシリンジ又は他の構成要素を含み得る。
【0165】
いくつかの実施形態では、患者ケアキットは、組成物のための別個の容器、仕切り、又は区画、及び情報資料を含有する。例えば、組成物は、ボトル、バイアル、又はシリンジ内に含有され得、情報資料は、容器と関連して含有され得る。いくつかの実施形態では、キットの別個の要素は、単一の分離されていない容器内に含有される。例えば、組成物は、ボトル、バイアル、又はシリンジ内に含有され、そこに、標識の形態で情報資料が付着されている。いくつかの実施形態では、キットは、複数の(例えば、パックの)個々の容器を含み、各々が、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質のうちの1つ以上の単位剤形(例えば、本明細書に説明される剤形)、及び任意選択的に、少なくとも1つの追加の治療薬を含む。例えば、キットは、複数のシリンジ、アンプル、ホイルパケット、又はブリスターパックを含み、各々が、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質、及び任意選択的に、少なくとも1つの追加の治療薬の単一単位用量を含有する。キットの容器は、気密性、防水性(例えば、水分の変化又は蒸発に対して不浸透性)、及び/又は耐光性であってもよい。
【0166】
患者ケアキットは、任意選択的に、組成物の投与に好適なデバイス、例えば、シリンジ、吸入剤、点滴器(例えば、点眼器)、スワブ(例えば、綿棒若しくは木製綿棒)、又は任意のそのような送達デバイスを含む。いくつかの実施形態では、デバイスは、定量用量の薬剤を分注する移植可能なデバイスである。また、例えば、本明細書に説明される構成要素を組み合わせることによって、キットを提供する方法も含まれる。
【0167】
発現及び精製系
特定の実施形態は、本明細書に説明される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を発現及び精製するための方法及び関連組成物を含む。そのような組換え改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、例えば、Sambrook,et al.,(1989,上記)、特にセクション16及び17、Ausubel et al.,(1994,上記)、特にチャプター10及び16、並びにColigan et al.,Current Protocols in Protein Science(John Wiley&Sons,Inc.1995-1997)、特にチャプター1、5及び6に説明されるような標準プロトコルを使用して、簡便に調製され得る。一般的な例として、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、(a)1つ以上の調節要素に動作可能にリンクされる、本明細書に説明された改変セリンプロテアーゼプロタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列を含むベクター又は構築物を調製するステップ(例えば、表S4を参照されたい)と、(b)ベクター又は構築物を宿主細胞に導入するステップと、(c)改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を発現するように宿主細胞を培養するステップと、(d)宿主細胞から改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を単離するステップと、のうちの1つ以上を含む手順によって調製され得る。
【0168】
所望のポリペプチドを発現するために、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、適切な発現ベクター、すなわち、挿入されたコーディング配列の転写及び翻訳に必要な要素を含有するベクターに挿入され得る。当業者に周知である方法が、関心対象のポリペプチド及び適切な転写及び翻訳制御要素をコードする配列を含有する発現ベクターを構築するために使用され得る。これらの方法は、インビトロ組換えDNA技術、合成技術、及びインビボ遺伝子組換えを含む。そのような技術は、Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual(1989)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(1989)に説明されている。
【0169】
様々な発現ベクター/宿主系が既知であり、ポリヌクレオチド配列を含有及び発現するために利用され得る。これらとしては、限定されるものではないが、組換えバクテリオファージ、プラスミド、若しくはコスミドDNA発現ベクターを用いて形質転換された細菌などの微生物、酵母発現ベクターを用いて形質転換された酵母、ウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系、ウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス、CaMV、タバコモザイクウイルス、TMV)若しくは細菌発現ベクター(例えば、Ti又はpBR322プラスミド)を用いて形質転換された植物細胞系、又は哺乳類細胞、より具体的にはヒト細胞系を含む、動物細胞系が挙げられる。
【0170】
発現ベクター中に存在する「制御要素」又は「調節配列」は、ベクターのそれらの非翻訳領域--エンハンサー、プロモーター、5’及び3’非翻訳領域--であり、転写及び翻訳を実施するために宿主細胞タンパク質と相互作用する。そのような要素は、それらの強度及び特異性において変化し得る。利用されるベクター系及び宿主に応じて、構成的及び誘導性プロモーターを含む任意の数の好適な転写及び翻訳要素が使用され得る。例えば、細菌系でクローン化するとき、PBLUESCRIPTファージミド(Stratagene、La Jolla,Calif.)又はPSPORT1プラスミド(Gibco BRL、Gaithersburg,Md.)などのハイブリッドlacZプロモーターなどの誘導性プロモーターが使用され得る。哺乳類細胞系では、哺乳類遺伝子からの又は哺乳類ウイルスからのプロモーターが概して好ましい。ポリペプチドをコードする配列の複数のコピーを含有する細胞株を生成する必要がある場合、SV40又はEBVに基づくベクターは、適切な選択可能なマーカーとともに有利に使用され得る。
【0171】
細菌系では、いくつかの発現ベクターが、発現したポリペプチドに意図される使用に応じて、選択され得る。例えば、大量に必要とされるとき、容易に精製される融合タンパク質の高レベルの発現を指示するベクターが使用され得る。そのようなベクターとしては、限定されるものではないが、多官能性E.coliクローン化、及びBLUESCRIPT(Stratagene)などの発現ベクターが挙げられ、関心対象のポリペプチドをコードする配列は、ハイブリッドタンパク質が生成されるように、アミノ末端Metの配列と、β-ガラクトシダーゼの後続の7つの残基とで、フレーム内でベクターに連結され得る、pINベクター(Van Heeke&Schuster,J.Biol.Chem.264:5503 5509(1989))など。pGEXベクター(Promega、Madison,Wis.)もまた、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)を用いて融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現するために使用され得る。一般に、そのような融合タンパク質は、可溶性であり、グルタチオン-アガロースビーズへの吸着、続いて、遊離グルタチオンの存在下における溶出によって、溶解した細胞から容易に精製され得る。そのような系で作製されたタンパク質は、関心対象のクローン化されたポリペプチドが、自由にGST部分から放出され得るように、ヘパリン、トロンビン、又は因子XAプロテアーゼ切断部位を含むように設計され得る。
【0172】
特定の実施形態は、E.coliベースの発現系を用いる(例えば、Structural Genomics Consortium et al.,Nature Methods.5:135-146,2008を参照されたい)。これら及び関連する実施形態は、好適な発現ベクターを生成するために、部分的又は全体的にライゲーション非依存的なクローン化(LIC)に依存し得る。特定の実施形態では、タンパク質発現は、T7 RNAポリメラーゼ(例えば、pETベクターシリーズ)によって制御され得る。これら及び関連する実施形態は、発現宿主株BL21(DE3)、T7介在性発現をサポートし、改善された標的タンパク質安定性のためにlon及びompTプロテアーゼが欠損している、BL21のλDE3溶原菌を利用し得る。また、ROSETTA(商標)(DE3)株及びロゼッタ2(DE3)株などの、E.coliではほとんど使用されないtRNAをコードするプラスミドを担持する発現宿主株も含まれる。細胞溶解及びサンプル処理もまた、BENZONASE(登録商標)ヌクレアーゼ及びBUGBUSTER(登録商標)Protein Extraction Reagentの商標の下で販売された試薬を使用して改善され得る。細胞培養について、自動誘導培地は、高スループット発現系を含む多くの発現系の効率を改善し得る。このタイプの培地(例えば、OVERNIGHT EXPRESS(商標)Autoinduction System)は、IPTGなどの人工誘導剤の添加なしで、代謝シフトを介してタンパク質発現を徐々に誘導する。特定の実施形態は、ヘキサヒスチジンタグ(商標HIS・TAG(登録商標)融合物の下で販売されたものなど)、次いで、固定化金属親和性クロマトグラフィー(IMAC)精製、又は関連技術を用いる。しかしながら、特定の態様では、臨床グレードのタンパク質は、親和性タグの使用なしで、又は使用なしで、E.coli含有体から単離され得る(例えば、Shimp et al.,Protein Expr Purif.50:58-67,2006を参照されたい)。更なる例として、特定の実施形態は、低温におけるEscherichia coli中のタンパク質過剰発現が、それらの溶解性及び安定性を改善するため、コールドショック誘導性E.coli高収率生産系を採用し得る(例えば、Qing et al.,Nature Biotechnology.22:877-882,2004を参照されたい)。
【0173】
また、高密度細菌発酵系も含まれる。例えば、高細胞密度のRalstonia eutrophaの培養は、150g/Lを超える細胞密度におけるタンパク質生産、及び10g/Lを超える力価における組換えタンパク質の発現を可能にする。
【0174】
酵母Saccharomyces cerevisiaeでは、アルファ因子、アルコールオキシダーゼ、及びPGHなどの構成的又は誘導性プロモーターを含有するいくつかのベクターが使用され得る。レビューについて、Ausubel et al.(上記)及びGrant et al.,Methods Enzymol.153:516-544(1987)を参照されたい。また、Pichia pandoris発現系も含まれる(例えば、Li et al.,Nature Biotechnology.24,210-215,2006、及びHamilton et al.,Science,301:1244,2003を参照されたい)。特定の実施形態は、とりわけ、ヒト化N-グリコシル化経路を有する酵母を含む、タンパク質を選択的にグリコシル化するように操作される酵母系を含む(例えば、Hamilton et al.,Science.313:1441-1443,2006、Wildt et al.,Nature Reviews Microbiol.3:119-28,2005、及びGerngross et al.,Nature-Biotechnology.22:1409-1414,2004、米国特許第7,629,163号、同第7,326,681号、及び同第7,029,872号を参照されたい)。単に例として、組換え酵母培養物は、とりわけ、Fernbach Flask又は15L、50L、100L、及び200Lの発酵装置で成長させられ得る。
【0175】
植物発現ベクターが使用される場合、ポリペプチドをコードする配列の発現は、いくつかのプロモーターのいずれかによって駆動され得る。例えば、CaMVの35S及び19Sプロモーターなどのウイルスプロモーターは、単独で、又はTMVからのオメガリーダー配列(Takamatsu、EMBO J.6:307-311(1987))と組み合わせて使用され得る。あるいは、RUBISCOの小さいサブユニットなどの植物プロモーター又はヒートショックプロモーターが使用され得る(Coruzzi et al.,EMBO J.3:1671-1680(1984)、Broglie et al.,Science224:838-843(1984)、及びWinter et al.,Results Probl.Cell Differ.17:85-105(1991))。これらの構築物は、直接的なDNA形質転換又は病原体介在性トランスフェクションによって、植物細胞に導入され得る。そのような技術は、いくつかの一般に入手可能なレビューに説明されている(例えば、Hobbs in McGraw Hill,Yearbook of Science and Technology,pp.191-196(1992)を参照されたい)。
【0176】
昆虫系もまた、関心対象のポリペプチドを発現するために使用され得る。例えば、1つのそのような系では、Autographa californica nuclear polyhedrosis virus(AcNPV)が、Spodoptera frugiperda細胞又はTrichoplusia細胞において外来遺伝子を発現するためのベクターとして使用される。ポリペプチドをコードする配列は、ポリヘドリン遺伝子などのウイルスの非必須領域にクローン化され、ポリヘドリンプロモーターの制御下に置かれ得る。ポリペプチドコード配列の挿入に成功すると、ポリヘドリン遺伝子を不活性し、コートタンパク質を欠く組換えウイルスを生成することになる。次いで、組換えウイルスは、例えば、関心対象のポリペプチドが発現され得る、S.frugiperda細胞又はTrichoplusia細胞を感染させるために使用され得る(Engelhard et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91:3224-3227(1994))。また、SF9、SF21、及びT.ni細胞を利用するものを含む、バキュロウイルス発現系も含まれる(例えば、Murphy and Piwnica-Worms,Curr Protoc Protein Sci.Chapter5:Unit5.4,2001を参照されたい)。昆虫系は、哺乳類系と同様である翻訳後改変を提供し得る。
【0177】
哺乳類宿主細胞では、いくつかのウイルスベースの発現系が一般的に利用可能である。例えば、アデノウイルスが発現ベクターとして使用される場合、関心対象のポリペプチドをコードする配列は、後期プロモーター及び三分割リーダー配列からなるアデノウイルス転写/翻訳複合体に連結され得る。ウイルスゲノムの非本質的なE1又はE3領域への挿入が、感染した宿主細胞でポリペプチドを発現することができる生存ウイルスを取得するために使用され得る(Logan&Shenk,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.81:3655-3659(1984))。加えて、Rous sarcoma virus(RSV)エンハンサーなどの転写エンハンサーが、哺乳類宿主細胞における発現を増加させるために使用され得る。
【0178】
有用な哺乳類宿主細胞株の例としては、SV40(COS-7、ATCC CRL1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚性腎臓株(293or293cells sub-cloned for growth in suspension culture,Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977))、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10)、マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980))、サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL70)、アフリカンミドリザル腎臓細胞(VERO-76、ATCC CRL-1587)、ヒト子宮頸がん細胞(HELA、ATCC CCL2)、イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL34)、スイギュウラット肝臓細胞(BRL3A、ATCC CRL1442)、ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL75)、ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB8065)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562、ATCC CCL51)、TR1細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982))、MRC5細胞、FS4細胞、及びヒト肝細胞がん株(Hep G2)が挙げられる。他の有用な哺乳類宿主細胞株としては、DHFR-CHO細胞(Urlaub et al.,PNAS USA77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、並びにNSO及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が挙げられる。タンパク質生産に好適な特定の哺乳類宿主細胞系のレビューについては、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.255-268を参照されたい。特定の好ましい哺乳類細胞発現系は、CHO及びHEK293細胞ベースの発現系を含む。哺乳類発現系は、当技術分野で公知のものの中でもとりわけ、例えば、T字フラスコ、ローラボトル、若しくは細胞工場における付着した細胞株、又は、例えば、1L及び5Lスピナ、5L、14L、40L、100L及び200L撹拌タンクバイオリアクタ、若しくは20/50L及び100/200LのWAVEバイオリアクタの懸濁培養物を利用し得る。
【0179】
また、タンパク質の無細胞発現も含まれる。これら及び関連する実施形態は、典型的には、精製されたRNAポリメラーゼ、リボソーム、tRNA、及びリボヌクレオチドを利用し、これらの試薬は、細胞から、又は細胞ベースの発現系からの抽出によって生成され得る。
【0180】
特定の開始シグナルもまた、関心対象のポリペプチドをコードする配列のより効率的な翻訳を達成するために使用され得る。そのようなシグナルとしては、ATG開始コドン及び隣接配列が挙げられる。ポリペプチド、その開始コドン、及び上流配列をコードする配列が、適切な発現ベクター内に挿入される場合、追加の転写又は翻訳制御シグナルが必要とされなくてもよい。しかしながら、コード配列、又はその一部分のみが挿入される場合、ATG開始コドンを含む外因性翻訳制御シグナルが提供されるべきである。更に、開始コドンは、挿入全体の翻訳を確保するために、正しいリーディングフレーム内にあるべきである。外因性翻訳要素及び開始コドンは、天然及び合成の両方の様々な起源のものであり得る。発現の効率は、文献(Scharf.et al.,Results Probl.Cell Differ.20:125-162(1994))に説明されるものなどの、使用される特定の細胞系に適切であるエンハンサーの包含によって増強され得る。
【0181】
加えて、宿主細胞株は、挿入された配列の発現を調節するか、又は発現されたタンパク質を所望の様式で処理するその能力のために選択され得る。ポリペプチドのそのような改変としては、限定されるものではないが、アセチル化、カルボキシル化、グリコシル化、リン酸化、脂質化、及びアシル化などの翻訳後改変が挙げられる。タンパク質の「プレプロ」形態を切断する翻訳後処理もまた、正しい挿入、フォールディング、及び/又は機能を容易にするために使用され得る。細菌細胞に加えて、そのような翻訳語活性のための特定の細胞機構及び特徴的な機構を有するか、又は欠くことさえある、酵母、CHO、HeLa、MDCK、HEK293、及びW138などの異なる宿主細胞が、外来タンパク質の正しい改変及び処理を確保するために選択され得る。
【0182】
長期の高収率の組換えタンパク質の生産に関して、安定発現が、概して好ましい。例えば、関心対象のポリヌクレオチドを安定的に発現する細胞株は、ウイルス複製起点及び/又は内因性発現要素、並びに選択可能なマーカー遺伝子を、同一又は別個のベクター上に含有し得る発現ベクターを使用して形質転換され得る。ベクターの導入後、細胞は、選択的培地に切り換えられる前に、濃縮された培地で約1~2日成長することを可能にされ得る。選択可能なマーカーの目的は、選択に対する耐性を付与することであり、その存在は、導入された配列を首尾よく発現する細胞の成長及び回収を可能にする。安定的に形質転換された細胞の耐性クローンは、細胞型に適切な組織培養技術を使用して増殖され得る。一過性のトランスフェクション又は感染などの一過性の生産もまた、用いられ得る。一過性の生産に好適な例示的な哺乳類発現系としては、HEK293及びCHOベースの系が挙げられる。
【0183】
任意の数の選択系が、形質転換又は形質導入された細胞株を回収するために使用され得る。これらとしては、限定されるものではないが、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler et al.,Cell11:223-232(1977))及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Lowy et al.,Cell22:817-823(1990))遺伝子が挙げられ、これらは、それぞれ、tk-又はaprt-細胞に採用され得る。また、代謝拮抗剤、抗生物質、又は除草剤耐性が、選択の基礎として使用され得る;例えば、メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Wigler et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.77:3567-70(1980))、アミノグリコシド、ネオマイシン及びG-418に対する耐性を付与するnpt(Colbere-Garapin et al.,J.Mol.Biol.150:1-14(1981))、並びにそれぞれクロルスルフロン及びホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼに対する耐性を付与するals又はpat(Murry、上記)。追加の選択可能な遺伝子、例えば、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB、又は細胞がヒスチノールの代わりにヒスチジンを利用することを可能にするhisDが説明されている(Hartman&Mulligan,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:8047-51(1988))。可視マーカーの使用は、緑色蛍光タンパク質(GFP)及び他の蛍光タンパク質(例えば、RFP、YFP)、アントシアニン、β-グルクロニダーゼ及びその基質GUS、並びにルシフェラーゼ及びその基質ルシフェリンなどのマーカーが、形質転換体を識別するためだけではなく、特定のベクター系に起因する一過性の又は安定タンパク質発現の量を定量化するためにも広く用いられている(例えば、Rhodes et al.,Methods Mol.Biol.55:121-131(1995))。
【0184】
また、高スループットタンパク質生産系、又はマイクロ生産系も含まれる。特定の態様は、例えば、金属キレート改変摺動表面又はMagneHis Ni-Particles上のタンパク質発現及び精製のためのヘキサヒスチジン融合タグを利用し得る(例えば、Kwon et al.,BMC Biotechnol.9:72,2009、及びLin et al.,Methods Mol Biol.498:129-41,2009を参照されたい)。また、高スループット無細胞タンパク質発現系も含まれる(例えば、Sitaraman et al.,Methods Mol Biol.498:229-44,2009を参照されたい)。
【0185】
ポリヌクレオチドコードされた生成物の発現を、生成物に特異的な結合剤、又はポリクローナル若しくはモノクローナル抗体などの抗体を使用して、検出及び測定するための様々なプロトコルが、当技術分野で公知である。例としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウエスタンイムノブロット、放射免疫測定(RIA)、及び蛍光活性化セルソーティング(FACS)が挙げられる。これら及び他のアッセイは、他の場所の中でも、Hampton et al.,Serological Methods,a Laboratory Manual(1990)、及びMaddox et al.,J.Exp.Med.158:1211-1216(1983)に説明されている。
【0186】
幅広い標識及びコンジュゲーション技術が、当業者に公知であり、様々な核酸及びアミノ酸アッセイに使用され得る。ポリヌクレオチドに関連する配列を検出するための標識化されたハイブリダイゼーション又はPCRプローブを生成するための手段としては、オリゴ標識、ニック翻訳、エンド標識、又は標識化されたヌクレオチドを使用するPCR増幅が挙げられる。あるいは、配列、又はその任意の部分が、mRNAプローブの生産のためにベクター内にクローン化され得る。そのようなベクターは、当技術分野で公知であり、市販されており、T7、T3、又はSP6などの適切なRNAポリメラーゼ及び標識化されたヌクレオチドの添加によって、インビトロでRNAプローブを合成するために使用され得る。これらの手順は、様々な市販のキットを使用して実施され得る。使用され得る好適なレポータ分子又は標識としては、放射性核種、酵素、蛍光剤、化学発光剤、又は発色剤、及び基質、補因子、阻害薬、磁気粒子などが挙げられる。
【0187】
関心対象の1つ以上のポリヌクレオチド配列で形質転換された宿主細胞は、細胞培養物からのタンパク質の発現及び回収に好適な条件下で培養され得る。特定の実施形態は、無血清細胞発現系を利用する。例としては、HEK293細胞、及び無血清培地中で成長し得るCHO細胞が挙げられる(例えば、Rosser et al.,Protein Expr.Purif.40:237-43,2005、及び米国特許第6,210,922号を参照されたい)。
【0188】
組換え細胞によって生成される改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、使用される配列及び/又はベクターに応じて、細胞内に分泌又は含有され得る。当業者によって理解されるように、ポリヌクレオチドを含有する発現ベクターは、原核又は真核細胞膜を介して、コードされたポリペプチドの分泌を指示するシグナル配列を含有するように設計され得る。他の組換え構築物が、可溶性タンパク質の精製及び/又は検出を容易にすることになるポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に、関心対象のポリペプチドをコードする配列を結合するために使用され得る。そのようなドメインの例としては、切断可能及び切断不可能な親和性精製、並びにアビジン、FLAGタグ、ポリヒスチジンタグ(例えば、6xHis)、cMycタグ、V5-タグ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグ、及びその他などの、エピトープタグが挙げられる。
【0189】
組換え細胞によって生成されるタンパク質は、当技術分野で公知の様々な技術に従って精製及び特徴化され得る。タンパク質精製を実施し、タンパク質純度を分析するための例示的なシステムとしては、高速タンパク質液体クロマトグラフィー(FPLC)(例えば、AKTA及びBio-Rad FPLCシステム)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)(例えば、Beckman及びWaters HPLC)が挙げられる。精製のための例示的な化学物質としては、当技術分野で公知のものの中でもとりわけ、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、Q、S)、サイズ排除クロマトグラフィー、塩勾配、親和性精製(例えば、Ni、Co、FLAG、マルトース、グルタチオン、タンパク質A/G)、ゲル濾過、逆相、セラミックHYPERD(登録商標)イオン交換クロマトグラフィー、及び疎水性相互作用カラム(HIC)が挙げられる。また、典型的には、タンパク質組成物の純度を測定するために、生産又は精製プロセスの任意のステップの間に利用され得る、SDS-PAGE(例えば、クマシー、銀染色)、イムノブロット、Bradford、及びELISAなどの分析方法も含まれる。
【0190】
また、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を濃縮するための方法、及び濃縮された可溶性の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を含む組成物も含まれる。いくつかの態様では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質のそのような濃縮溶液は、約又は少なくとも約5mg/mL、8mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、20mg/mL以上の濃度のタンパク質を含む。
【0191】
いくつかの態様では、そのような組成物は、実質的に単一分散であってもよく、これは、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質が、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、動的光散乱、又は分析的超遠心分離によって評価されたときに、1つの見かけの分子量形態で主に(すなわち、少なくとも約90%以上)存在することを意味する。
【0192】
いくつかの態様では、そのような組成物は、少なくとも約90%の純度、又はいくつかの態様では、少なくとも約95%の純度、又はいくつかの実施形態では、少なくとも98%の純度を有する。純度は、当技術分野で公知の任意の通例の分析方法を介して決定され得る。
【0193】
いくつかの態様では、そのような組成物は、存在するタンパク質の総量と比較して、約10%未満の高分子量凝集体含有量を有するか、又はいくつかの実施形態では、そのような組成物は、約5%未満の高分子量凝集体含有量を有するか、又はいくつかの態様では、そのような組成物は、約3%未満の高分子量凝集体含有量を有するか、又はいくつかの実施形態では、約1%未満の高分子量凝集体含有量を有する。高分子量凝集体含有量は、例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、動的光散乱、又は分析的超遠心分離によるものを含む、様々な分析技術を介して決定され得る。
【0194】
本明細書に企図される濃度アプローチの例としては、凍結乾燥が挙げられるが、これは、典型的には、溶液が、関心対象のタンパク質以外の可溶性成分をほとんど含有しないときに用いられる。凍結乾燥は、多くの場合、HPLC後に実施され、混合物から大部分又は全ての揮発性成分を除去し得る。また、限外濾過技術も含まれ、これは、典型的には、タンパク質溶液を濃縮するために1つ以上の選択的透過性膜を用いる。膜は、水及び小分子が通過し、タンパク質を保持することを可能にし、溶液は、他の技術の中でもとりわけ、機械的ポンプ、ガス圧力、又は遠心分離によって膜に対して押し付けられ得る。
【0195】
特定の実施形態では、組成物中の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、当技術分野の通例の技術に従って測定される際、少なくとも約90%の純度を有する。診断組成物又は特定の医薬若しくは治療用組成物などの、特定の実施形態では、組成物中の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、少なくとも約95%、又は少なくとも約97%若しくは98%若しくは99%の純度を有する。参照又は研究試薬として使用されるときなどの、いくつかの実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、より低純度のものであってもよく、少なくとも約50%、60%、70%、又は80%の純度を有し得る。純度は、全体として、又は他のタンパク質などの選択された成分に対して測定されてもよく、例えば、タンパク質ベースの純度であってもよい。
【0196】
精製された改変セリンプロテアーゼプロタンパク質はまた、それらの生物学的特徴に従って特徴化され得る。結合親和性及び結合動態は、標識されていない相互作用物質のリアルタイムの検出を可能にする光学現象である表面プラズモン共鳴(SPR)を利用するBiacore(登録商標)及び関連技術などの、当技術分野で公知の様々な技術に従って測定され得る。SPRベースのバイオセンサは、親和性及び動態の両方の観点から、活性濃度、スクリーニング、及び特徴化の決定に使用され得る。1つ以上の生物活性の存在又はレベルは、本明細書に説明されるように、インビトロ又は細胞ベースのアッセイに従って測定され得、それらは、生物活性の蛍光又は発光指標などの、読み出し又は指標に任意選択的に機能的に結合される。
【0197】
特定の実施形態では、上記のように、組成物は、例えば、約95%のエンドトキシン非含有、好ましくは約99%のエンドトキシン非含有、より好ましくは約99.99%のエンドトキシン非含有を含む、実質的にエンドトキシン非含有である。エンドトキシンの存在は、本明細書に説明される当技術分野の通例の技術に従って検出され得る。特定の実施形態では、改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、実質的に無血清培地中の哺乳類又はヒト細胞などの真核細胞から作製される。特定の実施形態では、本明細書に記載されるように、組成物は、約10EU/mg未満のタンパク質、又は約5EU/mg未満のタンパク質、約3EU/mg未満のタンパク質、又は約1EU/mg未満のタンパク質のエンドトキシン含有量を有する。
【0198】
特定の実施形態では、組成物は、約10%重量/重量未満の高分子量凝集体、又は約5%重量/重量未満の高分子量凝集体、又は約2%重量/重量未満の高分子量凝集体、又は約1%重量/重量未満の高分子量凝集体を含む。
【0199】
例えば、特性の中でもとりわけ、タンパク質純度、サイズ、溶解性、及び凝集の程度を評価するために使用され得る、タンパク質ベースの分析アッセイ及び方法も含まれる。タンパク質純度は、いくつかの方式で評価され得る。例えば、純度は、一次構造、高次構造、サイズ、電荷、疎水性、及びグリコシル化に基づいて評価され得る。一次構造を評価するための方法の例としては、N-及びC-末端配列決定、並びにペプチドマッピングが挙げられる(例えば、Allen et al.,Biologicals.24:255-275,1996を参照されたい)。高次構造を評価するための方法の例としては、円二色性(例えば、Kelly et al.,Biochim Biophys Acta.1751:119-139,2005を参照されたい)、蛍光分光法(例えば、Meagher et al.,J.Biol.Chem.273:23283-89,1998を参照されたい)、FT-IR、アミド水素-重水素交換動態、示差走査熱量分析、NMR分光、立体構造感受性抗体による免疫応答が挙げられる。高次構造はまた、pH、温度、又は添加された塩などの、様々なパラメータの関数として評価され得る。サイズなどのタンパク質特性を評価するための方法の例としては、分析的超遠心分離及びサイズ排除HPLC(SEC-HPLC)が挙げられ、電荷を測定するための例示的な方法としては、イオン交換クロマトグラフィー及び等電点電気泳動が挙げられる。疎水性は、例えば、逆相HPLC及び疎水性相互作用クロマトグラフィーHPLCによって評価され得る。グリコシル化は、薬物動態(例えば、クリアランス)、立体構造又は安定性、受容体結合、及びタンパク質機能に影響し得、例えば、質量分析法及び核磁気共鳴(NMR)分光法によって評価され得る。
【0200】
上記のように、特定の実施形態は、他の用途の中でもとりわけ、純度、サイズ(例えば、サイズ均質性)、若しくは凝集の程度などのタンパク質特性を評価するための、及び/又はタンパク質を精製するための、SEC-HPLCの使用を含む。ゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)及びゲル透過クロマトグラフィー(GPC)も含むSECは、溶液中の分子が、それらのサイズに基づいて、又はより具体的には、それらの流体力学的体積、拡散係数、及び/又は表面特性に基づいて、多孔質材料で分離されるクロマトグラフィー方法を指す。プロセスは、生体分子を分離し、ポリマーの分子量及び分子量分布を決定するために一般的に使用される。典型的には、生物学的又はタンパク質試料(本明細書に提供され、当技術分野で公知のタンパク質発現方法に従って生成されるタンパク質抽出物など)は、定義された固定相(多孔質材料)、好ましくは、試料中のタンパク質と相互作用しない相を有する選択されたサイズ排除カラム内に装填される。特定の態様では、固定相は、ガラス又はスチールカラム内で高密度三次元マトリクスに充填された不活性粒子から構成される。移動相は、純水、水性緩衝液、有機溶媒、又はそれらの混合物であり得る。固定相粒子は、典型的には、特定のサイズを下回る分子が進入することのみを可能にする小さい細孔及び/又はチャネルを有する。したがって、大きい粒子は、これらの細孔及びチャネルから除外され、固定相とのそれらの制限された相互作用は、実験の開始時に、それらを「完全に除外された」ピークとして溶出させる。細孔内に収まり得るより小さい分子は、流れている移動相から除去され、固定相細孔に固定化されるのにそれらが費やす時間は、部分的に、それらが細孔内にどの程度まで浸透するかに依存する。移動相の流れからのそれらの除去は、それらにカラムから溶出するのにより長い時間をかけさせる、それらのサイズの違いに基づいて粒子間の分離を結果的にもたらす。所与のサイズ排除カラムは、分離され得る分子量の範囲を有する。全体的に、上限よりも大きい分子は、固定相によって捕捉されないことになり、下限よりも小さい分子は、固相に完全に入り、単一のバンドとして溶出することになり、範囲内の分子は、流体力学的体積などのそれらの特性によって定義される異なる速度で溶出することになる。医薬タンパク質を用いた実際のこれらの方法の例については、Bruner et al.,Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis.15:1929-1935,1997を参照されたい。
【0201】
臨床適用のためのタンパク質純度もまた、例えば、Anicetti et al.(Trends in Biotechnology.7:342-349,1989)によって検討されている。タンパク質純度を分析するためのより最近の技術としては、限定なしで、タンパク質及び核酸の迅速分析のための自動化されたプラットフォームであるLabChip GXIIが挙げられ、これは、タンパク質の力価、サイズ設定、及び純度分析の高スループット分析を提供する。特定の非限定的な実施形態では、臨床グレードの改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、方法の中でもとりわけ、少なくとも2つの直交するステップでクロマトグラフィー材料の組み合わせを利用することによって取得され得る(例えば、Therapeutic Proteins:Methods and Protocols.Vol.308,Eds.,Smales and James,Humana Press Inc.,2005を参照されたい)。典型的には、タンパク質薬剤は、当技術分野で公知の技術及び本明細書に説明される技術に従って測定されるとき、実質的にエンドトキシン非含有である。
【0202】
タンパク質溶解性アッセイもまた、含まれる。そのようなアッセイは、例えば、組換え生産のための最適な成長及び精製条件を決定するために、緩衝液の選択を最適化するために、並びに改変セリンプロテアーゼプロタンパク質及びそのバリアントの選択を最適化するために、利用され得る。溶解性又は凝集は、温度、pH、塩、及び他の添加剤の存在又は非存在を含む、様々なパラメータに従って評価され得る。溶解性スクリーニングアッセイの例としては、とりわけ、限定なしで、濁度又は他の測定をエンドポイントとして使用してタンパク質溶解性を測定するマイクロプレートベースの方法、精製された組換えタンパク質の溶解性の分析のための高スループットアッセイ(例えば、Stenvall et al.,Biochim Biophys Acta.1752:6-10,2005を参照されたい)、インビボにおけるタンパク質フォールディング及び溶解性を監視及び測定するために遺伝子マーカータンパク質の構造的補完を使用するアッセイ(例えば、Wigley et al.,Nature Biotechnology.19:131-136,2001を参照されたい)、及び走査型電気化学顕微鏡(SECM)を使用したEscherichia coliにおける組換えタンパク質溶解性の電気化学スクリーニング(例えば、Nagamine et al.,Biotechnology and Bioengineering.96:1008-1013,2006を参照されたい)が挙げられる。増加した溶解性(又は低減された凝集)を有する改変セリンプロテアーゼプロタンパク質は、当技術分野の通例の技術に従って識別又は選択され得、タンパク質溶解性のための単純なインビボアッセイを含む(例えば、Maxwell et al.,Protein Sci.8:1908-11,1999を参照されたい)。
【0203】
タンパク質溶解性及び凝集はまた、動的光散乱技術によっても測定され得る。凝集は、可溶性/不溶性、共有結合/非共有結合性、可逆的/不可逆的、並びに天然/変性相互作用及び特徴を含む、いくつかのタイプの相互作用又は特徴を包含する一般用語である。タンパク質治療薬について、凝集体の存在は、典型的には、凝集体が免疫原性反応(例えば、小さい凝集体)を引き起こし得るか、又は投与時の有害事象(例えば、微粒子)を引き起こし得るという懸念のため、望ましくないとみなされる。動的光散乱は、懸濁液中の小さい粒子又は溶液中のタンパク質などのポリマーのサイズ分布プロファイルを決定するために使用され得る技術を指す。この技術は、光子相関分光法(PCS)又は準弾性光散乱法(QELS)とも呼ばれ、散乱光を使用して、タンパク質粒子の拡散速度を測定する。散乱強度の変動が、溶液中の分子及び粒子のブラウン運動に起因して観察され得る。この運動データは、従来、試料に対するサイズ分布を導出するために処理され得、サイズは、タンパク質粒子のストークス半径又は流体力学半径によって与えられる。流体力学サイズは、質量及び形状(形態)の両方に依存する。動的散乱は、広範囲の質量を含有する試料であっても、非常に少量の凝集したタンパク質(重量で<0.01%)の存在を検出し得る。また、例えば、高温における変化のリアルタイム監視に依存する用途を含む、異なる製剤の安定性を比較するためにも使用され得る。したがって、特定の実施形態は、本開示の改変セリンプロテアーゼプロタンパク質を含有する試料中の溶解性及び/又は凝集体の存在を分析するための動的光散乱の使用を含む。
【0204】
上述の実施形態は、理解の明瞭さの目的で、例示及び実施例によってある程度詳細に説明されてきたが、本開示の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変更及び修正がなされ得ることは、当業者には容易に明らかであろう。以下の実施例は、例示によってのみ提供され、限定によって提供されるものではない。当業者は、本質的に類似した結果をもたらすために変更又は修正され得る様々な重要ではないパラメータを容易に認識するであろう。
【実施例
【0205】
実施例1
PPEの活性及び結合特性
PPEのがん細胞死滅活性を試験するために、野生型組換えPPEプロタンパク質(pro-rPPE)を、1/20(w/w)トリプシンを用いて37℃で2時間のインキュベーションによって活性化し、活性PPEタンパク質(rPPE)を生成した。ヒトがん細胞(MDA-MB-231、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)細胞株、MEL888、黒色腫細胞株、及びA549、肺腺がん細胞株)、並びに非がん細胞(HMDM、又は健康なドナーから単離されたヒト単球由来マクロファージ)を、rPPE(50nM)、ネイティブPPE(50nM)、又はトリプシン(1:20w/w、活性化トリプシンの存在に対する対照)の存在下又は非存在下で無血清培地(SFM)を用いて6時間処理した。細胞死滅をカルセインAMによって定量化した。図1に示されるように、活性化PPEの組換え及び天然形態は、様々ながん細胞を選択的に死滅させることができるが、正常又は非がん細胞に対して非毒性である。
【0206】
セルピンA1ATへの結合を試験するために、C末端ヒスタグを有する野生型PPEプロタンパク質(pro-rPPE)を、20倍過剰のA1ATの存在/非存在下で、室温で30分間インキュベートした。インキュベーション後、pro-rPPEをNi-セファロースビーズによって精製した。次いで、精製されたpro-rPPEを、トリプシンを用いて37℃で2時間処理して酵素を活性化し、触媒活性を、比色活性アッセイを使用して評価した。対照として、pro-rPPEを、最初にトリプシンを用いて活性化して、活性rPPEを生成し、次いで、同一のA1AT-結合/精製手順を通じて取得した。図2の結果は、A1AT溶液からの単離後のpro-RPEに対するプロテアーゼ活性の完全な回復を示し、pro-rPPEがA1ATに結合しないことを示唆している。対照的に、活性化rPPEのプロテアーゼ活性は、同一の手順に供されたときに、A1ATによって減弱された。図2の挿入図は、Pro-rRPEの精製前及び精製後のA1ATに対する免疫ブロット化を示す。
【0207】
実施例2
改変PPEプロタンパク質の操作及び試験
改変PPEプロタンパク質(表S4参照)を、改変活性化ペプチド(表S3参照)を含むように操作し、CHO細胞においてN末端Hisタグタンパク質として発現させた。例えば、「変異体2」は、配列番号9(MMP12切断部位、PPE最適化)の改変活性化ペプチドを含むPPEプロタンパク質であり、「変異体3」は、配列番号10(MMP12切断部位、バランス)を含むPPEプロタンパク質である。
【0208】
プロテアーゼ切断を試験するために、野生型PPE及び改変PPEプロタンパク質を、精製されたトリプシン又はヒトMMP12(BioLegend(BioL)又はEnzo Life Sciences(Enzo)、1/50w/w)を用いて、指定された時間、インビトロで37℃でインキュベートし、SDS-PAGE及びCoomassieブルー染色によって、活性PPEペプチダーゼドメイン(又は活性PPEタンパク質)を産生するプロテアーゼ切断の証拠を評価した。図3A及び図3Bは、MMP12プロテアーゼが、変異体2(3A)及び変異体3(3B)として指定される例示的な改変PPEタンパク質を切断したことを示す。図3Aはまた、トリプシンが対照としての野生型PPEを切断したことを示す。
【0209】
野生型PPE及び改変PPEプロタンパク質を、プロテアーゼ活性化後の酵素活性についてインビトロで試験した。1つの実験セットでは、プロテアーゼ消化を、MMP12(BioLegend(BioL)又はEnzo Life Sciences(Enzo)、1/50w/w)を用いて37℃で24時間実施し、触媒又は酵素活性を、比色基質活性アッセイ(N-メトキシスクシニル-Ala-Ala-Pro-Val p-ニトロアニリド、Millipore Sigma)を使用して監視した。図4Aは、対照としての天然PPEの活性と比較して、例示的な改変PPEタンパク質が、MMP12によるインキュベーション後に触媒的に活性であったことを示す。別の実験セットでは、プロテアーゼ消化を、トリプシン(1/50、w/w、2時間、37℃)、ヒトMMP12(Enzo、1/50、w/w、24時間、37℃)、及びヒトMMP7(Millipore Sigma、1/50、w/w、24時間、37℃)で実施し、触媒活性を上記のように評価した。図4Bは、例示的な改変PPEプロタンパク質が、MMP12とのインキュベーション後に触媒的に活性であり、MMP7とのインキュベーション後に部分的に触媒的に活性であり、トリプシンとのインキュベーション後又はプロテアーゼなしで触媒的に不活性であったことを示す。対照的に、野生型PPEタンパク質は、トリプシンとのインキュベーション後に触媒的に活性であり、MMP12とのインキュベーション後又はプロテアーゼなしで触媒的に不活性であった。
【0210】
次いで、改変PPEプロタンパク質を、がん細胞死滅活性についてインビトロで試験した。ヒトがん細胞(MDA-MB-231)を、MMP12プロテアーゼ処理した試験タンパク質を用いて無血清培地中で約12時間インキュベートし、カルセインAMによって細胞生存率を測定することによって、がん細胞死滅活性を評価した。天然PPE酵素及びMMP12酵素単独を対照として含めた。図5に示されるように、例示的な改変PPEタンパク質が、MMP12プロテアーゼとのインキュベーション(及びそれによる活性化)後に有意ながん細胞死滅活性を示した。
【0211】
改変PPEプロタンパク質の活性は、様々ながんモデルを表すがん性マウスへの腫瘍内注射によってインビボで試験される。腫瘍成長、がん細胞アポトーシス、及び免疫細胞応答が監視される。腫瘍内送達モデルで有効性を示す候補は、がん性マウスへの静脈内注射によってインビボで再試験される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
【配列表】
2023545347000001.app
【国際調査報告】