IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イスカル リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】高送りプランジ・フライス工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20231023BHJP
   B23C 5/20 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B23C5/10 D
B23C5/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023513942
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 IL2021051170
(87)【国際公開番号】W WO2022084984
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/093,409
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514105826
【氏名又は名称】イスカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヘクト,ギル
【テーマコード(参考)】
3C022
【Fターム(参考)】
3C022KK01
3C022KK11
3C022KK12
3C022KK14
3C022KK16
3C022KK26
3C022LL03
(57)【要約】
フライス工具(10)は、高送り速度でフライス加工する径方向切れ刃を有する。径方向切れ刃は、第1の副切れ刃と第2の副切れ刃と第3の副切れ刃とを有し、第1の副切れ刃、第2の副切れ刃及び第3の副切れ刃は、フライス工具(10)の長手方向軸(AL)と共に形成した際に比較的小さい角度(それぞれ、k1、k2及び0°)で延在し、これにより、高送り速度を可能にする。
【選択図】図6C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具回転方向及び前記工具回転方向とは反対の工具逆回転方向を有するフライス工具であって、
前記フライス工具は、細長いシャンク部分と、前記シャンク部分に接続される切削部分と、を備え、
前記シャンク部分は、
前記シャンク部分から前記切削部分までの下側方向(DD)、及び前記下側方向(DD)とは反対の上側方向(DU)を画定する長手方向軸(AL)と、
前記長手方向軸に直交し、前記フライス工具から外側の外側径方向(DO)、及び前記外側径方向とは反対の内側径方向(DI)と、を画定し、
前記切削部分は、すくい面と、逃げ面と、前記すくい面と前記逃げ面との交線に沿って形成される切れ刃と、を備え、
前記切れ刃は、径方向切れ刃を備え、
前記径方向切れ刃は、前記長手方向軸(AL)に平行に測定可能な軸方向切れ刃長さLAE及び前記長手方向軸(AL)に直交して測定可能な径方向切れ刃長さLREを有し、
前記すくい面に面する上面図において、前記径方向切れ刃は、
第1の長手方向長さL1及び第1の径方向長さRI、第1の仮想線(IL1)を画定する第1の最上点及び第1の最下点、並びに、前記第1の仮想線(IL1)と前記長手方向軸(AL)との間に形成される第1の副切れ刃角度k1、を有する第1の副切れ刃と、
前記第1の副切れ刃の下方に位置し、第2の長手方向長さL2及び第2の径方向長さR2、第2の仮想線(IL2)を画定する第2の最上点及び第2の最下点、並びに、前記第2の仮想線(IL2)と前記長手方向軸(AL)との間に形成される第2の副切れ刃角度k2、を有する第2の副切れ刃と、
前記第1の副切れ刃及び前記第2の副切れ刃を接続し、第3の長手方向長さL3及び第3の径方向長さR3を有する第3の副切れ刃と、を備え、
前記第1の副切れ刃は、前記下側方向(DD)及び前記外側径方向(DO)で前記第3の副切れ刃に向かって延在し、
前記第2の副切れ刃は、前記上側方向(DU)及び前記外側径方向(DO)で前記第3の副切れ刃に向かって延在し、
前記すくい面に面する前記上面図において、以下の条件の少なくとも1つ:
前記第1の副切れ刃角度k1が条件12°<k1<25°を満たすこと、及び
前記第2の副切れ刃角度k2が条件12°<k2<25°を満たすこと、
が満たされる、フライス工具。
【請求項2】
以下の条件の少なくとも1つ:前記第1の副切れ刃角度が条件15°<k1<22°を満たすこと、及び前記第2の副切れ刃角度が条件15°<k2<22°を満たすこと、が満たされる、請求項1に記載のフライス工具。
【請求項3】
前記フライス工具は、インサートミル・ホルダであり、
前記切削部分は、少なくとも1つのインサート・ポケットを備え、
前記少なくとも1つのインサート・ポケットは、インサート座面と、第1の支持壁と、第2の支持壁と、第3の支持壁と、を有し、
前記すくい面、前記逃げ面及び前記切れ刃は全て、前記少なくとも1つのインサート・ポケット内に組み付けられる切削インサートに属し、
前記切削インサートは、前記すくい面に対向する底面と、前記すくい面及び前記底面の中心を通過するインサート軸と、を更に備え、
前記インサート軸は、上側インサート方向、及び前記上側インサート方向とは反対の下側インサート方向を画定し、
前記逃げ面は、前記すくい面を前記底面に接続し、支持部分を備え、前記支持部分は、第1のインサート当接面と、第2のインサート当接面と、第3のインサート当接面とを備える、請求項1又は2に記載のフライス工具。
【請求項4】
前記切削インサートは、
前記インサートの底面が前記インサート座面に当接し、
前記第1のインサート当接面が前記第1の支持壁に当接し、
前記第2のインサート当接面が前記第2の支持壁に当接し、
前記第3のインサート当接面が前記第3の支持壁に当接する
状態で、前記インサート・ポケットに組み付けられる、請求項3に記載のフライス工具。
【請求項5】
前記切削インサートの底面は、少なくとも1つの安全凹部と共に形成され、
前記インサート・ポケットの前記インサート座面は、安全突起を備え、
前記少なくとも1つの安全凹部は、間隙が前記安全突起の全周囲に依然としてある状態で前記安全突起を収容する、請求項3又は4に記載のフライス工具。
【請求項6】
前記径方向切れ刃が接続される最上コーナの大部分は、前記インサートミル・ホルダの前記切削部分に沿って前記径方向外周面より前記外側方向に更に突出する、請求項3~5の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項7】
前記径方向切れ刃が接続される最下コーナの大部分は、前記インサートミル・ホルダの前記切削部分に沿って前記径方向外周面より前記外側方向に更に突出する、請求項3~6の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項8】
前記最上コーナ及び前記最下コーナは、前記径方向切れ刃に接続され、前記最上コーナは、前記最下コーナの上に前記上側方向で正確に配置される、請求項3~7の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項9】
前記切削インサートは、前記切削インサートを通過するねじのみを介して前記インサート・ポケットに締結される、請求項3~8の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項10】
前記インサート・ポケットは、インサート座面と、前記インサート座面に開口するねじ穴と、を備え、
前記ねじ穴は、穴軸を有し、
前記穴軸は、前記外側径方向で前記インサート座面と共に第1の穴外角a1を形成し、前記第1の穴外角a1は、条件:72°<a1<88°を満たす、請求項3~9の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項11】
前記インサート座面の図において、
前記穴軸は、前記外側径方向で、前記外側径方向で前記穴の中心を通って延在する仮想穴平面(PB)と共に第2の穴外角a2を形成し、前記第2の穴外角a2は、条件:3°<a2<15°を満たす、請求項10に記載のフライス工具。
【請求項12】
前記ねじ穴は、雌ねじ区分と、前記雌ねじ区分より大きい直径を有する逃げ区分と、を備え、
前記逃げ区分は、前記雌ねじ区分よりも前記インサート座面に近接する、請求項10又は11に記載のフライス工具。
【請求項13】
前記第1の支持壁は、前記内側径方向及び前記下側方向の両方に延在し、
前記第2の支持壁は、前記外側径方向及び前記下側方向の両方に延在し、
前記第3の支持壁は、前記第1の支持壁の下方及び前記第2の支持壁の上方に位置し、前記第1の支持壁及び前記第2の支持壁に対して非平行に延在する、請求項3~12の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項14】
第1の外角β1は、前記第1の支持壁と前記第3の支持壁との間に形成され、条件:130°<β1<150°を満たす、請求項3~13の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項15】
第2の外角β2は、前記第2の支持壁と前記第3の支持壁との間に形成され、条件:80°<β2<120°を満たす、請求項3~14の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項16】
前記切削インサートは、非円形形状を有し、前記インサート軸回りに3方向刃先交換可能である、請求項3~15の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項17】
前記内側径方向で前記第2の副切れ刃から延在する第4の副切れ刃を更に備える、請求項1~16の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項18】
前記第4の副切れ刃は、前記内側径方向及び前記上側方向の両方で前記第2の副切れ刃から延在する、請求項17に記載のフライス工具。
【請求項19】
前記逃げ面に面する図において、前記第1の副切れ刃及び前記第2の副切れ刃の少なくとも1つは、まっすぐである、請求項1~18の何れか一項に記載のフライス工具。
【請求項20】
前記第3の長手方向長さL3は、前記第1の長手方向長さL1及び前記第2の長手方向長さL2の両方より短い、請求項1~19の何れか一項に記載のフライス工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、フライス加工方法、及びそのような方法を実行するフライス工具に関する。本方法は、低又は中程度の送り速度のための形状を有するフライス工具の場合でさえ使用し得るが、特定の利点は、高送り速度における方法の使用で見出され、固有形状のフライス工具は、高送り速度で方法を適用するために提供される。
【背景技術】
【0002】
高送りフライス工具は、典型的には、軸方向に向けられた切削構造を特徴とし、この切削構造は、より低速で比較的大きなチップを除去するのではなく、比較的速い材料除去速度で金属又は同様の材料の比較的小さなチップを除去するように設計される。
【0003】
例えば、高送りフライス工具は、典型的には、0.5mm~1mmのチップ負荷範囲内で端面削り動作を実行する。中程度のチップ負荷と主に軸方向に向けられた力との組合せにより、そのようなフライス工具が工作物を機械加工する際の振動を低減させ、高送り速度を可能にする。
【0004】
本出願において、定量的に、「高送り」は、約12°≦k≦25°の条件を満たす浸入角度「k」を含むとみなし得る。
【0005】
インサート・ミルの場合、高送りに対する典型的な稼働条件は、Vc=120~150m/分、Fz=0.5~0.8mm/刃である一方で、ソリッド・エンドミル又は取替え可能ヘッドの場合、高送りに対する典型的な稼働条件は、Vc=150~200m/分、Fz=0.2~1.0mm/刃である。
【0006】
日本特許第3331759号明細書は、下方及び上方フライス加工運動を含むフライス加工方法で使用される円形インサートを開示している。
【0007】
欧州特許出願公開第2266741(A1)号明細書は、「高送り速度」を可能にする、日本特許第3331759号明細書より優れた改良形態であると主張している。非円形切削インサートが採用され、工具本体の後方運動における高送り機械加工の間、切削負荷が、切削インサートを保持する「締結ねじ4」に集中しないようにするため、更なる「締結デバイス5」が開示されている。更に、壁面3B及び先端面が交差する交差部分の厚さを回避するため、傾斜角度θは、好ましくは、10°~25°である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
新しい、改善された高送りフライス工具を提供することは、本発明の一目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による高送りフライス工具は、切削構造が、軸方向に向けられるのではなく、主に径方向に向けられるという点で、大多数の公知の高送りフライス工具とは異なる。
【0010】
したがって、機械加工力は主に径方向で向けられるので、高送りフライス加工動作の実行が可能であることに加えて、公知の従来のフライス工具よりも多様な機械加工動作が可能なフライス工具を達成するため、公知の軸方向高送りフライス加工の防振利益は減少する。
【0011】
更に、一機械加工方向(例えば下側方向)における1セットの副切れ刃、及び異なるフライス加工方向(例えば上側方向)における異なるセットの副切れ刃によるフライス加工によって、理論上、より大きな工具寿命を達成し得る。
【0012】
本発明の第1の態様によれば、フライス工具を使用して工作物をフライス加工する方法が提供され、方法は、第1の軸方向距離DA1の間、下側方向DDで工作物をフライス加工する第1のステップS1と、第1の径方向距離DR1の間、外側径方向DOで工作物をフライス加工する第2のステップS2と、第1の径方向距離DR1の間、フライス工具の長手方向軸に平行に測定可能な第2の軸方向距離DA2の間、下側方向DDとは反対の上側方向DUで工作物をフライス加工する第3のステップS3と、を含む。
【0013】
本発明の別の態様によれば、フライス工具を使用して工作物をフライス加工する方法が提供され、
フライス工具は、工具回転方向及び工具回転方向とは反対の工具逆回転方向を有するとともに、細長いシャンク部分と前記シャンク部分に接続される切削部分とを備え、
シャンク部分は、長手方向軸ALを画定し、長手方向軸ALは、シャンク部分から切削部分までの下側方向DD、及び下側方向DDとは反対の上側方向DUを画定し、
外側径方向DOは、長手方向軸に直交して、フライス工具から外側に画定され、内側径方向DIは、外側径方向とは反対に画定され、
切削部分は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面との交線に沿って形成される切れ刃と、を備え、
切れ刃は、径方向切れ刃を備え、
径方向切れ刃は、長手方向軸ALに平行に測定可能な軸方向切れ刃長さLAE及び長手方向軸ALに直交して測定可能な径方向切れ刃長さLREを有し、
方法は、
第1の軸方向距離DA1の間、下側方向DDで工作物をフライス加工する第1のステップS1と、
第1の径方向距離DR1の間、外側径方向DOで工作物をフライス加工する第2のステップS2と、
長手方向軸ALに平行に測定可能な第2の軸方向距離DA2の間、上側方向で工作物をフライス加工する第3のステップS3と、
を含む。
【0014】
上記態様のいずれかに応じて:
【0015】
上記パターンは、あらゆる開始点で実行し得る(即ち、方法は、第1のステップ、第2のステップ又は第3のステップのいずれか1つで開始し得る)。
【0016】
上記パターンは、繰り返し得る。
【0017】
上記パターンは、フライス工具に相対的であるが、上記パターンが工作物に言及する場合、上記パターンは、斜角で実行し得る(例えば、工作物に対して、フライス工具は、第1のステップの間、下側-外側方向で入り、第2のステップの間、上側-外側方向で入り、第3のステップの間、上側-内側方向で入り得る)。
【0018】
第1のステップは、最初に実施でき、第1のステップの直後に第2のステップが続き、第2のステップの直後に第3のステップが続く。代替的に、第3のステップは、最初に実施でき、第3のステップの直後に第2のステップが続き、第2のステップの直後に第1のステップが続く。
【0019】
第2のステップは、第1のステップ及び第3のステップより小さい距離の機械加工を伴う。
【0020】
第1の軸方向距離DA1は、条件:DA1>LAE、好ましくは、DA1>2LAE、及びより好ましくは、DA1>4LAEを満たし得る。
【0021】
第2の軸方向距離DA2は、条件:DA2>LAE、好ましくは、DA2>2LAE及びより好ましくは、DA2>4LAEを満たし得る。
【0022】
第1の径方向距離DR1は、条件:DR1<LRE、好ましくは、DR1<0.8LREを満たし得る。
【0023】
フライス工具がインサート・ミルである場合、第1のステップ、第2のステップ及び第3のステップの少なくとも1つの稼働条件は、Vc=120~150m/分、Fz=0.5~0.8mm/刃とし得る。
【0024】
フライス工具がソリッド・エンドミルである場合、第1のステップ、第2のステップ及び第3のステップの少なくとも1つの稼働条件は、Vc=120~150m/分、Fz=0.2~1.0mm/刃とし得る。
【0025】
第1のステップは、ヘリカル補間又は下方プランジ加工とし得る。
【0026】
第2のステップは、好ましくは、側方プランジ加工とし得る。
【0027】
第3のステップは、上方プランジ加工とし得る。
【0028】
第3のステップの後、直後に続く、更なる側方プランジ加工のステップがあってよい。更なるステップの後、直後に続く、また別の下方プランジ加工のステップがあってよい。
【0029】
上記方法ステップは、以下で説明する特徴を有するフライス工具のいずれかと共に実行し得る。
【0030】
本発明の別の態様によれば、命令を有するコンピュータ・プログラムが提供され、命令がコンピュータ数値制御旋盤によって実行されると、コンピュータ数値制御旋盤は、上記ステップのいずれか1つによる方法を実施する。
【0031】
本発明の別の態様によれば、以前の態様によるコンピュータ・プログラムを記憶した非一時的コンピュータ可読媒体が提供される。
【0032】
本発明の別の態様によれば、以前の態様によるコンピュータ・プログラムを表すデータ・ストリームが提供される。
【0033】
本発明の別の態様によれば、非一時的メモリ内にコンピュータ支援製造プログラムを備えるソフトウェアが提供され、ソフトウェアは、実行されると、CNC機械に命令して上記ステップのいずれかによる方法を実施するように構成されたGコードを生成する。
【0034】
従来のコンピュータ数値制御旋盤は、従来、上記パターンを実行するようにプログラムされていないことは理解されよう。
【0035】
本発明の別の態様によれば、フライス工具が提供され、
フライス工具は、工具回転方向及び工具回転方向とは反対の工具逆回転方向を有するとともに、径方向切れ刃を備え、
径方向切れ刃は、
第1の長手方向長さL1及び第1の径方向長さRIを有する第1の副切れ刃と、
第1の副切れ刃の下方に位置し、第2の長手方向長さL2及び第2の径方向長さR2を有する第2の副切れ刃と、
第1の副切れ刃及び第2の副切れ刃を接続し、第3の長手方向長さL3及び第3の径方向長さR3を有する第3の副切れ刃と、を備え、
第1の副切れ刃は、下側方向及び外側径方向で第3の副切れ刃に向かって延在し、
第2の副切れ刃は、上側方向及び外側径方向で第3の副切れ刃に向かって延在し、
すくい面に面する図において、以下の2つの条件のうち少なくとも1つ:
第1の条件:第1の副切れ刃は、第1の仮想線IL1を画定する第1の最上点と第1の最下点とを備え、第1の副切れ刃角度k1は、第1の仮想線IL1と長手方向軸ALとの間に形成され、第1の副切れ刃角度k1は、条件:12°<k1<25°、好ましくは、15°<k1<22°を満たすこと、及び
第2の条件:第2の副切れ刃は、第2の仮想線IL2を画定する第2の最上点と第2の最下点とを備え、第2の副切れ刃角度k2は、第1の仮想線IL1と長手方向軸ALとの間に形成され、第2の副切れ刃角度k2は、条件:12°<k2<25°、好ましくは、15°<k2<22°を満たすこと、
が満たされる。
【0036】
本発明の別の態様によれば、フライス工具が提供され、
フライス工具は、工具回転方向及び工具回転方向とは反対の工具逆回転方向を有するとともに、細長いシャンク部分とシャンク部分に接続される切削部分とを備え、
シャンク部分は、長手方向軸ALを画定し、長手方向軸ALは、シャンク部分から切削部分までの下側方向DD、及び下側方向DDとは反対の上側方向DUを画定し、
外側径方向ODは、長手方向軸に直交して、フライス工具から外側に画定され、内側径方向DIは、外側径方向の反対側に画定され、
切削部分は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面との交線に沿って形成される切れ刃と、を備え、
切れ刃は、径方向切れ刃を備え、
径方向切れ刃は、長手方向軸ALに平行に測定可能な軸方向切れ刃長さLAE及び長手方向軸ALに直交して測定可能な径方向切れ刃長さLREを有し、
第1の長手方向長さL1及び第1の径方向長さR1を有する第1の副切れ刃と、
第1の副切れ刃の下方に位置し、第2の長手方向長さL2及び第2の径方向長さR2を有する第2の副切れ刃と、
第1の副切れ刃及び第2の副切れ刃を接続し、第3の長手方向長さL3及び第3の径方向長さR3を有する第3の副切れ刃と、を備え、
第3の長手方向長さL3は、第1の長手方向長さL1及び第2の長手方向長さL2の両方より短く、
第1の副切れ刃は、下側方向及び外側径方向で第3の副切れ刃に向かって延在し、
第2の副切れ刃は、上側方向及び外側径方向で第3の副切れ刃に向かって延在する。
【0037】
本発明の別の態様によれば、フライス工具が提供され、
フライス工具は、工具回転方向及び工具回転方向とは反対の工具逆回転方向を有するとともに、細長いシャンク部分とシャンク部分に接続される切削部分とを備え、
シャンク部分は、
シャンク部分から切削部分までの下側方向DD、及び下側方向DDとは反対の上側方向DUを画定する長手方向軸ALを画定し、
外側径方向DOは、長手方向軸に直交して、フライス工具から外側に画定され、内側径方向DIは、外側径方向とは反対に画定され、
切削部分は、すくい面と、逃げ面と、すくい面と逃げ面との交線に沿って形成される切れ刃と、を備え、
切れ刃は、長手方向軸ALに平行に測定可能な軸方向切れ刃長さLAE及び長手方向軸ALに直交して測定可能な径方向切れ刃長さLREを有する径方向切れ刃を備え、
径方向切れ刃は、
第1の長手方向長さL1及び第1の径方向長さR1を有する第1の副切れ刃と、
第1の副切れ刃の下方に位置し、第2の長手方向長さL2及び第2の径方向長さR2を有する第2の副切れ刃と、
第1の副切れ刃及び第2の副切れ刃を接続し、第3の長手方向長さL3及び第3の径方向長さR3を有する第3の副切れ刃と、を備え、
第3の長手方向長さL3は、第1の長手方向長さL1及び第2の長手方向長さL2の両方より短く、
第1の副切れ刃は、下側方向及び外側径方向で第3の副切れ刃に向かって延在し、
第2の副切れ刃は、上側方向及び外側径方向で第3の副切れ刃に向かって延在し、
すくい面に面する図において、以下の2つの条件のうち少なくとも1つ:
第1の条件:第1の副切れ刃は、第1の仮想線IL1を画定する第1の最上点と第1の最下点とを備え、第1の副切れ刃角度k1は、第1の仮想線IL1と長手方向軸ALとの間に形成され、第1の副切れ刃角度k1は、条件:12°<k1<25°、好ましくは、15°<k1<22を満たすこと、及び
第2の条件:第2の副切れ刃は、第2の仮想線IL2を画定する第2の最上点と第2の最下点とを備え、第2の副切れ刃角度k2は、第2の仮想線IL2と長手方向軸ALとの間に形成され、第2の副切れ刃角度k2は、条件:12°<k2<25°、好ましくは、15°<k2<22°を満たすこと、
が満たされる。
【0038】
本発明の別の態様によれば、以前の態様の何れか一つによるインサートミル・ホルダと、インサート・ポケットに組み付けられる切削インサートと、を備えるフライス工具が提供され、
切削インサートは、すくい面と、すくい面とは反対の底面と、すくい面及び底面の中心を通過し、上側インサート方向及び上側インサート方向とは反対の下側インサート方向を画定するインサート軸と、すくい面を底面に接続する逃げ面と、すくい面と逃げ面との交線に沿って形成される切れ刃と、を備え、
逃げ面は、第1のインサート当接面、第2のインサート当接面及び第3のインサート当接面を備える支持部分を備え、
切削インサートは、インサートの底面がインサート座面に当接し、第1のインサート当接面が第1の支持壁に当接し、第2のインサート当接面が第2の支持壁に当接し、第3のインサート当接面が第3の支持壁に当接する、状態で、インサート・ポケットに組み付けられる。
【0039】
本発明の別の態様によれば、フライス工具が提供され、径方向切れ刃は、インサートミル・ホルダの切削部分に沿って、径方向外周面より外側方向に更に突出する。
【0040】
好ましくは、径方向切れ刃が接続される最上コーナの大部分は、インサートミル・ホルダの切削部分、好ましくは、最上コーナの全体に沿って、径方向外周面より外側方向に更に突出する。
【0041】
好ましくは、径方向切れ刃が接続される最下コーナの大部分は、インサートミル・ホルダの切削部分、好ましくは、最下コーナの全体に沿って、径方向外周面より外側方向に更に突出する。
【0042】
最上コーナは、好ましくは、最下コーナの上に上側方向で正確に位置する。
【0043】
好ましくは、最上コーナ及び最下コーナの少なくとも1つ、好ましくは両方は、丸みのあるコーナである。
【0044】
本発明の別の態様によれば、インサートミル・ホルダと、インサートミル・ホルダのインサート・ポケットに組み付けられる切削インサートと、を備えるフライス工具が提供され、
切削インサートは、すくい面と、すくい面とは反対であり、少なくとも1つの安全凹部と共に形成される底面と、すくい面及び底面の中心を通過し、上側インサート方向及び上側インサート方向とは反対の下側インサート方向を画定するインサート軸と、すくい面を底面に接続する逃げ面と、すくい面と逃げ面との交線に沿って形成される切れ刃と、を備え、
インサート・ポケットは、安全突起を備えるインサート座面と、複数の支持壁と、を備え、
安全凹部は、間隙を安全突起の全周囲に残す状態で、安全突起を収容する。
【0045】
上記態様のいずれかに応じて:
【0046】
切削インサートは、ねじのみを介してインサート・ポケットに締結(又は固着)し得る。言い方を変えれば、各インサート・ポケットは、切削インサートを固着するねじ穴のみを伴って形成される。
【0047】
角度は、条件:k1=k2を満たし得る。
【0048】
逃げ面に面する図において、第1の副切れ刃は、まっすぐであっても、凹形に湾曲してもよい。
【0049】
逃げ面に面する図において、第2の副切れ刃は、まっすぐであっても、凹形に湾曲してもよい。
【0050】
逃げ面に面する図において、第3の副切れ刃は、まっすぐであっても、凹形に湾曲してもよい。
【0051】
すくい面に面する図において、第3の副切れ刃は、まっすぐであっても、凹形に湾曲しても、凸形であってもよい。
【0052】
すくい面に面する図において、第1の副切れ刃は、まっすぐであっても、凸形に湾曲してもよい(凸形の湾曲は図示しない)。
【0053】
すくい面に面する図において、第2の副切れ刃は、まっすぐであっても、凸形に湾曲してもよい(凸形の湾曲は図示しない)。
【0054】
すくい面に面する図において、第3の副切れ刃は、まっすぐであっても、凸形に湾曲してもよい(凸形の湾曲は図示しない)。
【0055】
フライス工具は、内側径方向で第2の副切れ刃から延在する第4の副切れ刃を更に備え得る。好ましくは、第4の副切れ刃は、内側径方向及び上側方向の両方で第2の副切れ刃から延在する。
【0056】
フライス工具は、インサートミル・ホルダとすることができ、切削部分は、少なくとも1つの切削インサート上に形成される。代替的に、フライス工具は、円筒形シャンク部分を有するソリッド・エンドミルとすることができ、切削部分は、少なくとも1つの一体に形成された刃上に形成される。代替的に、フライス工具は、ねじ山付きシャンク部分を有する取替え可能フライス・ヘッドとすることができ、切削部分は、少なくとも1つの一体に形成された刃上に形成される。
【0057】
フライス工具は、以下の特徴のいずれかを有し得る。
【0058】
本発明の別の態様によれば、インサートミル・ホルダが提供され、インサートミル・ホルダは、工具回転方向及び工具回転方向とは反対の工具逆回転方向を有するとともに、細長いシャンク部分と、シャンク部分に接続される切削部分とを備え、
シャンク部分は、長手方向軸ALを画定し、長手方向軸ALは、シャンク部分から切削部分までの下側方向DD、及び下側方向DDとは反対の上側方向DUを画定し、
外側径方向DOは、長手方向軸に直交して、フライス工具から外側に画定され、内側径方向DIは、外側径方向とは反対に画定され、
切削部分は、少なくとも1つのインサート・ポケットを備え、
インサート・ポケットは、インサート座面と、回転方向でインサート座面から突出する下向きの第1の支持壁と、回転方向でインサート座面から突出し、第1の支持壁の下方に位置する上向きの第2の支持壁と、インサート座面に開口し、穴軸を有するねじ穴と、を備え、
穴軸は、外側径方向でインサート座面と共に第1の穴外角a1を形成し、第1の穴外角a1は、条件:72°<a1<88°、好ましくは、75°<a1<85°を満たす。
【0059】
本発明の別の態様によれば、インサートミル・ホルダが提供され、インサートミル・ホルダは、工具回転方向及び工具回転方向とは反対の工具逆回転方向を有するとともに、細長いシャンク部分と、シャンク部分に接続される切削部分と、を備え、
シャンク部分は、長手方向軸ALを画定し、長手方向軸ALは、シャンク部分から切削部分までの下側方向DD、及び下側方向DDとは反対の上側方向DUを画定し、
外側径方向DOは、長手方向軸に直交して、フライス工具から外側に画定され、内側径方向DIは、外側径方向の反対側に画定され、
切削部分は、少なくとも1つのインサート・ポケットを備え、
インサート・ポケットは、インサート座面と、内側径方向及び下側方向の両方で延在する第1の支持壁と、外側径方向及び下側方向の両方で延在する第2の支持壁と、第1の支持壁の下方及び第2の支持壁の上方に位置し、第1の支持壁及び第2の支持壁に対して非平行に延在する第3の支持壁と、を備える。
【0060】
上記態様のいずれかに応じて:
【0061】
ねじ穴は、雌ねじ区分と、雌ねじ区分より大きい直径を有する逃げ区分と、を備え、逃げ区分は、雌ねじ区分よりもインサート座面に近接する。
【0062】
インサート・ポケットは、第3の支持壁を更に備えることができ、第3の支持壁は、第1の支持壁の下方及び第2の支持壁の上方に位置し、第1の支持壁及び第2の支持壁に対して非平行に延在する。
【0063】
第1の支持壁は、第1の最上第1の支持壁点と第1の最下第1の支持壁点とを備え得る。第1の支持壁は、内側径方向及び下側径方向の両方で第1の最上第1の支持壁点から第1の最下第1の支持壁点まで延在する。
【0064】
第2の支持壁は、第2の最上第2の支持壁点と第2の最下第2の支持壁点とを備え得る。第2の支持壁は、外側径方向及び下側方向の両方で第2の最上第2の支持壁点から第2の最下第2の支持壁点まで延在する。
【0065】
第3の支持壁は、第3の最上第3の支持壁点と、第3の最下第3の支持壁点と、を備え得、第3の支持壁は、内側径方向及び下側方向の両方で第3の最上第3の支持壁点から最下第3の支持壁点まで延在する。
【0066】
第1の支持壁は、外側径方向で第2の支持壁より多く延在し得る。
【0067】
第1の支持壁は、内側径方向では第2の支持壁ほど延在しなくてもよい。
【0068】
第1の外角β1は、第1の支持壁と第3の支持壁との間に形成でき、条件:130°<β1<150°、好ましくは135°<β1<145°を満たす。
【0069】
第2の外角β2は、第2の支持壁と第3の支持壁との間に形成でき、条件:80°<β2<120°、好ましくは90°<β2<110°を満たす。
【0070】
インサート・ポケットは、回転方向でインサート座面から突出する安全突起を備え得る。
【0071】
インサート・ポケットは、インサート座面に開口し、穴軸を有するねじ穴を更に備え得る。穴軸は、外側径方向でインサート座面と共に第1の穴外角a1を形成し、条件:72°<a1<88°、好ましくは、75°<a1<85°を満たす。
【0072】
穴軸は、インサート座面の図において、外側径方向で穴の中心を通って延在する仮想穴平面PBと共に第2の穴外角a2を形成し、条件:3°<a2<15°、好ましくは、7°<a2<13°を満たす。
【0073】
本発明の別の態様によれば、2つの以前の請求項の何れか一項に記載のフライス工具を備えるインサート・ポケットに切削インサートを組み付ける方法が提供され、方法は、
インサートの底面がインサート座面に当接するように、切削インサートをインサート・ポケット内に置く第1のステップと、
切削インサートを部分的に締結し、第1のインサート当接面を第1の支持壁と当接させ、第3のインサート当接面を第3の支持壁と当接させる第2のステップと、
切削インサートがインサート座面上で回転するように、切削インサートを完全に締結し、第2のインサート当接面を第2の支持壁と当接させる第3のステップと、
を含む。
【0074】
本発明の別の態様によれば、凸形基本形状を有する片側フライス・インサートが提供され、片側フライス・インサートは、
すくい面と、
すくい面とは反対の底面と、
すくい面及び底面の中心を通過し、上側インサート方向及び上側インサート方向とは反対の下側インサート方向を画定するインサート軸と、
すくい面を底面に接続し、すくい面から底面に内側に収束する逃げ面と、
すくい面と逃げ面との交線に沿って形成される切れ刃と、を備え、
切れ刃は、切削インサートの2つのコーナの間に延在する径方向切れ刃を備え、
径方向切れ刃は、軸方向切れ刃長さLAEと、径方向切れ刃長さLREと、を有し、
第1の長手方向長さL1及び第1の径方向長さRIを有する第1の副切れ刃と、
第1の副切れ刃の下方に位置し、第2の長手方向長さL2及び第2の径方向長さR2を有する第2の副切れ刃と、
第1の副切れ刃及び第2の副切れ刃を接続し、外側径方向に少なくとも部分的に面し、第3の長手方向長さL3及び第3の径方向長さR3を有する第3の副切れ刃と、を備え、
第3の長手方向長さL3は、第1の長手方向長さL1及び第2の長手方向長さL2の両方より短く、
第1の副切れ刃は、下側方向及び外側径方向で第3の副切れ刃に向かって延在し、
第2の副切れ刃は、上側方向及び外側径方向で第3の副切れ刃に向かって延在する。
【0075】
本出願の主題をより良好に理解し、本出願の主題を実際にどのように実行し得るかを示すため、次に、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明による、高送りフライス工具、特に、インサートが組み付けられるインサートミル・ホルダの斜視図である。
図2】本発明による、別の高送りフライス工具、特に、円筒形シャンクを有する一体形成(又は「ソリッド」)エンドミルの斜視図である。
図3】本発明による、また別の高送りフライス工具、特に、ねじ山の付いた短いシャンクを除いては図2と同様の一体形成(又は「ソリッド」)交換可能フライス・ヘッドの斜視図である。
図4A図1のフライス工具のインサートミル・ホルダの切削部分の斜視図である。
図4B図4Aの切削部分の側面図であり、特に、図は、図の底部の中心付近に位置するインサート・ポケットのインサート座面の側部に向けられる。
図4C】4Bの切削部分の底面図である。
図4D図4Aの切削部分の別の側面図であり、特に、図は、図の右下側に位置するインサート・ポケットのインサート座面に向けられる。
図4E】4Dの切削部分の底面図である。
図4F図4Dの線IVF-IVFに沿った断面図である。
図4G】ねじと切削インサートとを更に含むことを除き、図4Fと同様の断面図である。
図5A図1のフライス工具のフライス・インサートの上面図であり、インサートのすくい面に向けられる。
図5B図5Aのフライス・インサートの第1の側面図である。
図5C図5Aのフライス・インサートの第2の側面図である。
図5D図5Aのフライス・インサートの斜視図である。
図5E図5Aのフライス・インサートの底面図である。
図5F】回転しているが、図5Aのフライス・インサートの別の上面図である。
図5G図5Fの線VG-VGに沿った断面図である。
図5H図5Fの線VH-VHに沿った断面図であり、(図4Aに示す)インサート座の安全突起を更に概略的に示す。
図6A図1の切削部分の別の側面図であり、特に、切削インサートの逃げ面に向けられる。切削インサートは、図の底の中心付近に位置する。
図6B図6Aの切削部分の底面図である。
図6C図1の切削部分の側面図であり、図の右下側のフライス・インサートは、図5Aのフライス・インサートと同じ、インサートのすくい面に向けられた上面図の向きを有する。
図6D図6Cの切削部分の底面図である。
図7A】下側方向で工作物をフライス加工する図1のフライス工具の側面図である。
図7B】外側径方向で工作物をフライス加工する図7Aのフライス工具及び工作物の側面図である。
図7C】上側方向で工作物をフライス加工する図7Aのフライス工具、及び工作物の側面図である。
図7D】フライス加工動作又はパターンの概略図である。
図8A図2のフライス工具の一部分の側面図である。
図8B図8Aのフライス工具の底面図である。
図9】凹形湾曲切れ刃及びすくい面が図の中心付近に見えることを除き、図8Aのフライス工具の図及び構造と同様の、別のフライス工具の(逃げ面に向けられた)側面図である。
図10図8Aのフライス工具の図及び構造と同様の別のフライス工具の斜視図であり、フライス工具は、冷却剤構成を更に備える。
図11A】本発明による切れ刃の概略上面図であり、特に、まっすぐな第3の副切れ刃を示す。
図11B】本発明による別の切れ刃の概略上面図であり、特に、凹形に湾曲する第3の副切れ刃を示す。
図11C】本発明による別の切れ刃の概略上面図であり、特に、第1の種類の凸形に湾曲する第3の副切れ刃を示す。
図11D】本発明による別の切れ刃の概略上面図であり、特に、第2の種類の凸形に湾曲する第3の副切れ刃を示す。
図12】まっすぐな凸形に傾斜する湾曲切れ刃及びすくい面が図の中心付近に見えることを除き、図8A及び図9のフライス工具の図及び構造と同様の、別のフライス工具の(逃げ面に向けられた)側面図である。
図13】まっすぐな凸形に傾斜する湾曲切れ刃及びすくい面が図の中心付近に見えることを除き、図8A図9及び図12のフライス工具の図及び構造と同様の、別のフライス工具の(逃げ面に向けられた)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
図1図3を参照すると、本発明による高送りフライス工具10、10’、10’’の3つの異なる例が示される。
【0078】
概して、図1におけるフライス工具10は、細長いシャンク部分12と、シャンク部分12に接続される切削部分14と、を備え、細長いシャンク部分12は、その中心を通じて延在する長手方向軸ALを画定する。
【0079】
切削部分14は、少なくとも1つの径方向切れ刃16を備え、少なくとも1つの径方向切れ刃16の特定形状及び向きは、以下で説明する。
【0080】
特に、図1のフライス工具10の具体的な例において、径方向切れ刃16は、切削インサート18上に形成される。言い方を変えれば、フライス工具10は、インサートミル・ホルダ20と、複数の前記切削インサート18(この非限定的な実施形態では、第1の切削インサート18A、第2の切削インサート18B及び第3の切削インサート18C)と、を備え、前記切削インサート18のそれぞれは、前記特定形状及び向きを有する少なくとも1つの径方向切れ刃16を備える。
【0081】
しかし、本発明による切れ刃は、代替的に、図2及び図3に示すように、フライス工具の一体に形成された切削部分上に形成し得る。
【0082】
詳述すると、図2のフライス工具10’(典型的にはソリッド・エンドミルと呼ばれる)は、基本円筒形形状を有する細長いシャンク部分12’と、シャンク部分12’に接続される切削部分14’と、を備える。
【0083】
切削部分14’は、少なくとも1つの径方向切れ刃16’を備え、少なくとも1つの径方向切れ刃16’は、形状及び向きが図1の径方向切れ刃16に対応し、更に、いわゆる刃18’上に一体に形成される。
【0084】
図3のフライス工具10’’(典型的には交換可能フライス・ヘッドと呼ばれる)は、細長いシャンク部分12’’と、シャンク部分12’’に接続される切削部分14’’と、を備える。
【0085】
切削部分14’’も、少なくとも1つの径方向切れ刃16’’を備え、少なくとも1つの径方向切れ刃16’’は、形状及び向きが図1の径方向切れ刃16に対応し、更に、刃18’’上に一体に形成される。しかし、図2のフライス工具10’とは異なり、シャンク部分12’’は、ねじ型である。以下で理解されるように、本発明は、大きな深さの機械加工用途で特に有利であり、この機械加工用途には、交換可能ヘッドが特に適している。
【0086】
本発明は、主に、切削部分、又はより詳細には、切れ刃の形状及び向きを対象とするので、フライス工具、特に図1の第1の例示的フライス工具10の一例のみを参照して詳細に説明する。この説明は、他の種類のフライス工具、例えば、図2及び図3に示すフライス工具10’、10’’、又は更には切削インサートの種類が異なる(例えば、2方向刃先交換式、4方向刃先交換式等)フライス工具に適用可能であることを理解されたい。
【0087】
次に、図1及び図4A図4Fを参照してインサートミル・ホルダ20を詳細に説明する。
【0088】
前述のように、フライス工具10は、細長いシャンク部分12によって画定される長手方向軸ALを備える。
【0089】
長手方向軸ALは、シャンク部分12から切削部分14までの下側方向DD、及び下側方向DDとは反対の上側方向DUを画定する。
【0090】
外側径方向DOは、長手方向軸ALに直交して、フライス工具10の中心から外側に画定される。内側径方向DIは、外側径方向DOとは反対に画定される。
【0091】
工具回転方向DRは、機械加工中の長手方向軸AL回りのフライス工具10の回転方向として画定され、工具逆回転方向CRは、工具回転方向DRとは反対に画定される。
【0092】
インサートミル・ホルダ20は、長手方向軸ALに沿って延在する径方向外周面22と、基本的に長手方向軸ALに直交して延在する端面24と、を備える。
【0093】
径方向平面PR(図4D)は、長手方向軸ALに直交して延在し、端面24に位置するものとして画定される。
【0094】
より正確には、フライス工具10の場合、インサートミル・ホルダ20は、上記したシャンク部分12と切削部分14とを備える。
【0095】
この例では、切削部分14は、複数の円周方向に離間するインサート・ポケット26(この非限定的な実施形態では、第1のインサート・ポケット26A、第2のインサート・ポケット26B及び第3のインサート・ポケット26C)を備え、インサート・ポケット26は、径方向外周面22と端面24との交線に形成され、溝30(この非限定的な実施形態では、第1の溝30A、第2の溝30B及び第3の溝30C)によって隔てられる。
【0096】
図1に示すように、フライス工具10は、複数の前記切削インサート18を備え、それぞれ、ねじ28によってそれぞれのインサート・ポケット26に固着される。
【0097】
インサート・ポケット26、ねじ28及び切削インサート18のそれぞれは同一であるので、次に、特徴は、あらゆる特定のインサート・ポケット26、ねじ28又は切削インサート18に言及せずに説明される。
【0098】
図6Aも簡単に参照すると、冷却剤通路出口32は、溝30のそれぞれに開口し、径方向切れ刃16に向かって向けられる。
【0099】
各インサート・ポケット26は、ポケット横面34(図4E)と、インサート座面36と、を備える。
【0100】
各インサート・ポケット26、及びより詳細には、各ポケット横面34は、複数の支持壁38(この非限定的ではあるが好ましい実施形態では、第1の支持壁38A、第2の支持壁38B及び第3の支持壁38C)を備える。このインサート・ホルダにおいて、第1の支持壁38Aは、軸方向に最も後方であり(即ち、端面24から最も遠い)、したがって、後方支持壁38Aと呼び得る。第2の支持壁38Bは、軸方向に最も前方であり(即ち、端面24に最も近い)、したがって、前方支持壁38Bと呼び得る。最後に、第3の支持壁38Cは、軸方向に前方支持壁38Bと後方支持壁38Aとの間にあるため、中間支持壁38Cと呼び得る。
【0101】
第1の逃げ凹部40A、第2の逃げ凹部40B、及び第3の逃げ凹部40C(「第1の座下側逃げ凹部40A、第2の座下側逃げ凹部40B、及び第3の座下側逃げ凹部40C」とも呼ばれる)は、インサート座面36と、第1の支持壁38A、第2の支持壁38B及び第3の支持壁38Cのそれぞれとの間に形成される。
【0102】
第4の逃げ凹部42A及び第5の逃げ凹部42B(「第1の座コーナ逃げ凹部42A、第2の座コーナ逃げ凹部42B、及び第3の座コーナ逃げ凹部」とも呼ばれる)は、第1の支持壁38Aと第3の支持壁38Cとの間、及び第2の支持壁38Bと第3の支持壁38Cとの間にそれぞれ形成される。
【0103】
第6の逃げ凹部44A、第7の逃げ凹部44B、及び第8の逃げ凹部44C(「第1の座上側逃げ凹部44A、第2の座上側逃げ凹部44B、及び第3の座上側逃げ凹部44C」とも呼ばれる)は、第1の支持壁38A、第2の支持壁38B及び第3の支持壁38Cのそれぞれの上に形成される。
【0104】
本発明によるインサートミル・ホルダ20が機能することが可能であるためには、例示される第3の支持壁38Cは必須ではないことは理解されよう。しかし、図7Bに示す横向きの機械加工動作のために支持をもたらすことは有益であり、したがって、少なくともこの理由では好ましい。
【0105】
図4Dに注意を向けられたい。第1の(後方)支持壁38Aは、下側径方向DD及び外側径方向DOの両方に面する。第1の支持壁38Aの向きを詳述すると、第1の支持壁38Aは、最前第1の支持壁点38A1と、最下第1の支持壁点38A2と、を備える。第1の支持壁38Aは、内側径方向DI及び下側径方向DDの両方で最上第1の支持壁点38A1から最下第1の支持壁点38A2まで延在する。言い方を変えれば、第1の支持壁38Aは、外側径方向DO及び上側径方向DUの両方で径方向平面PRと共に第1の壁鋭角μ1を形成する。好ましくは、第1の壁角度μ1は、条件:5°<μ1<15°、より好ましくは、8°<μ1<12°を満たす。
【0106】
第2の(前方)支持壁38Bは、第1の(後方)支持壁38Aから下側方向DDに位置する。第2の支持壁38Bは、上側径方向DU及び外側径方向DOの両方に面する。第2の支持壁38Bの向きを詳述すると、第2の支持壁38Bは、最上第2の支持壁点38B1と、最下第2の支持壁点38B2と、を備える。第2の支持壁38Bは、外側径方向DO及び下側径方向DDの両方で最上第2の支持壁点38B1から最下第2の支持壁点38B2まで延在する。言い方を変えれば、第2の支持壁38Bは、外側径方向DO及び下側径方向DDの両方で径方向平面PRと共に第2の壁鋭角μ2を形成し得る。好ましくは、第2の壁角度μ2は、条件:40°<μ2<60°、より好ましくは、45°<μ2<55°を満たす。
【0107】
第1の(後方)支持壁38Aは、外側径方向DOで第2の(前方)支持壁38Bより多く延在する。第1の支持壁38Aは、好ましくは、図示の径方向外周面22まで、外側径方向DOで可能なかぎり延在し、これにより、下側方向DDに機械加工する際により多くの支持を切削インサート18にもたらす。
【0108】
上側方向DUで機械加工する場合、第2の(前方)支持壁38Bは、同様の理由で、好ましくは、径方向外周面22まで可能なかぎり外側径方向DOで同様に延在することが有益であるが、図示のように、第2の支持壁38Bが径方向外周面22まで延在しない図示の例でも有益である。本例では、第2の支持壁38Bは、端面24まで延在し、以下で後述するように、切れ刃68が軸方向副切れ刃86Lを備えることを可能にし(即ち、切れ刃は、端面から下側方向で延在する)、正面フライス動作(傾斜加工、正面加工等)を可能にする。
【0109】
また、第1の(後方)支持壁38Aは、内側径方向DIでは第2の(前方)支持壁38Bほど延在しない。
【0110】
第3の(中間)支持壁38Cは、第1の(後方)支持壁38Aから下側方向DDに位置し、第2の(前方)支持壁38Bから上側方向DUに位置し、第1の支持壁38A及び第2の支持壁38Bに対して非平行に延在する。第3の支持壁38Cは、下側径方向DD及び外側径方向DOの両方に面する。第3の支持壁38Cの向きを詳述すると、第3の支持壁38Cは、最上第3の支持壁点38C1と、最下第3の支持壁点38C2と、を備える。第3の支持壁38Cは、内側径方向DI及び下側径方向DDの両方で最上第3の支持壁点38C1から最下第3の支持壁点38C2まで延在する。言い方を変えれば、第3の支持壁38Cは、外側径方向DO及び上側径方向DUの両方で径方向平面PRと共に第3の壁鋭角μ3を形成し得る。好ましくは、第3の壁角度μ3は、条件:40°<μ3<60°、より好ましくは、45°<μ3<55°を満たす。
【0111】
逆回転方向CRで見ると、又は言い方を変えれば、インサート座面36に面する図(別の言い方をすれば図4Dで例示される図)において、第1の外角β1は、第1の(後方)支持壁38Aと第3の(中間)支持壁38Cとの間に形成され、条件:130°<β1<150°、好ましくは、135°<β1<145°を満たす。
【0112】
逆回転方向で見ると、又は言い方を変えれば、図4Dで例示される図のようにインサート座面36に面する図において、第2の外角β2は、第2の(前方)支持壁38Bと第3の(中間)支持壁38Cとの間に形成され、条件:80°<β2<120°、好ましくは、90°<β2<110°を満たす。
【0113】
これらの値は、図示の、例示する3方向刃先交換式回転対称インサートで好ましく、他のインサート形状(例えば2方向刃先交換式インサート、4方向刃先交換式インサート)では適切に回転し得ることを理解されたい。
【0114】
図4Bに最良に示されるように、各インサート座面36は、中立的に延在する。詳述すると、各インサート座面36は、長手方向軸ALに平行な軸方向平面PAに延在する。インサート座面は、(例えば、チップ排出又は構造強度を支援するために)いわゆる凸向き又は凹向きで傾斜させ、切削インサート及びインサート・ポケットの製造の複雑さを低減し、上側方向及び下側方向の両方でチップを除去する独特の条件を可能にすることは一般的であるが、中立的な向きは、好ましい実施形態のために選択された。
【0115】
しかし、本発明の方法及びフライス工具は、凹若しくは凸傾斜インサート座面又はすくい面と共に実施してもよいことは理解されよう。
【0116】
インサート座面36は、任意で、回転方向で突出する安全突起46を備え得る。
【0117】
インサート座突起は公知であるが、この特定の突起46は、切削インサートに、規定された組付け位置でインサート座面上への組付けをもたらす当接面であることを意図しないという点で、非典型的な安全機能を有する。そうではなく、突起46は、切削インサートから離間しており、所望の当接面が接触を維持することが可能ではない場合のみ切削インサートに接触することを意図する。この非限定的な特徴は、以下で説明する通常とは異なる機械加工方向数のために追加し得る。切削インサートが、ポケット横面に沿って(2つではなく)3つの当接壁に接触するのが望ましい本発明の好ましい構成では、切削インサートに常に接触するように設計された突起を導入すると、確実ではないとしても、以下で説明する所望の3つの接触構成を妨げる可能性があることは理解されよう。
【0118】
特に図4D及び図4Fを参照すると、インサート座面36は、任意で、しかも好ましくは、ねじ穴48と共に形成し得る(ねじ穴48のねじ部は、図示しないが、図4Fに「50」として概略的に示される)。
【0119】
特に、ねじ部50は、ねじ28(図1)の時計回りの回転により、ねじ28をねじ穴48内に更に螺入するような規格の型である。
【0120】
切削インサートには、例えば、切削インサートの上部(図示せず)で当接構成に当接するように構成されたトップクランプ等、他の締結手段が可能であるが、ねじ穴の好ましい実施形態は、例示されるものであることは理解されよう(インサートすくい面にわたるより良好なチップの流れの利点は、ねじ及びねじ穴構成を使用する場合に可能である。依然として、固有の困難は、以下で説明する非典型的な機械加工方向のために克服された)。
【0121】
ねじ穴48は、インサート座面36に開口し、穴軸ABと、ねじ部50を備える雌ねじ区分52と、好ましくは、ねじ部のない逃げ区分54と、を備える。
【0122】
完全を期すため、ねじ28を図4Gにより詳細に示す。ねじ28は、ねじ頭28Aと、ねじ軸ASに沿って延在する、ねじ山付きねじシャンク28B(このねじ部は、図示しないが、「28C」として図4Fに概略的に示される)と、を備える。ねじ頭28A及びねじ山付きねじシャンク28Bの接続領域において、逃げ機能をもたらす首部分28Dがある。特に、首部分28Dに隣接して、ねじ頭28Aには、切削インサート18との連続接触を保証するように設けられた非典型的な球形部分28Eが設けられている。
【0123】
ねじ穴48に固着された際、ねじ28は、穴軸ABと同軸に延在するねじ軸ASを有する。
【0124】
非典型的に、ねじ穴48が、インサート座面36に対して斜めに延在することが選択された。言い方を変えれば、穴軸ABは、インサート座面36に斜めに延在する(したがって、相応して、ねじ28は、切削インサートの底面62に斜めに延在する)。
【0125】
詳述すると、インサート座面36に直交する図において(この場合、図4Fに示す断面図である)、第1の穴外角a1は、インサート座面36に平行なインサート・ホルダの底面図において穴軸ABとインサート座面36との間に画定される。第1の穴外角a1は、条件:72°<a1<88°、好ましくは、75°<a1<85°を満たす。
【0126】
そのような穴軸ABの斜めの向きは、フライス工具10が機械加工のために構成される多数の機械加工方向のために切削インサート上に加えられる異常な力に対して有益である。詳述すると、機械加工中、機械加工力は、切削インサート18をインサート座面36から遠ざけて分離させようとする。ねじ穴48、したがって、ねじ穴48内に組み付けられたねじ28を外側径方向DOに向けることによって、ねじは、(著しいせん断力ではなく)張力下に置かれ、これにより、切削インサート18をインサート座面36と接触する状態で維持することを著しく支援する(構造的に、せん断力は張力よりかなり弱い)。
【0127】
通常、ねじが、最大に可能な程度まで切削力に直接対立しないことが好ましい(即ち、インサート・ポケットの硬質で一体の支持壁が、数百キログラムの力となり得る力を吸収することが好ましい)が、複数の機械加工方向がインサート座面及び支持壁等の斜面をより複雑にする本発明では、この穴軸ABの斜めの向きが、選択した解決策であった。
【0128】
本発明は、図示しない実施形態、例えば、傾斜ポケット当接面と傾斜インサート当接面とを備えるいわゆるあり継ぎ構成、又はトップクランプ、又はレバー・システム等と共に達成することもできるが、好ましい、試験済みのオプションを例示していることは理解されよう。より詳細には、トップクランプは、チップ流がより劣る場合があり、レバー及びあり継ぎ構成は、より高価な製造工程を必要とするため、本発明は、上記したねじ穴設計に限定されない態様で依然として実現可能なオプションである。
【0129】
図4Dに示すように)インサート座面36に面する図において逆回転方向で見ると、第2の穴外角a2は、概略的に示される穴軸ABと仮想穴平面PBとの間に画定され、仮想穴平面PBは、ねじ穴48の中心を通じて、長手方向軸ALに直交して外側径方向DOに延在する(目に見えるように、穴軸AB方向は誇張されている。第2の穴外角a2は、かなり小さく、誇張しなければ、穴軸ABが仮想穴平面PBから分離しているのを見るのは困難であることを記す)。第2の穴外角a2は、条件:3°<a2<15°、好ましくは、7°<a2<13°を満たす。
【0130】
このわずかな角度、即ち、第2の穴外角a2の目的は、以下で更に説明するように、切削インサート18が全ての3つの側壁38と接触するのを支援するためである。
【0131】
ねじ28が屈曲するわずかな自由を可能にし、切削インサート18が前記3つの側壁38に到達するのを可能にするため、ねじの逃げ区分54(並びにねじの首部分28D及び球形部分28E)が開発された。
【0132】
ねじの逃げ区分54は、雌ねじ区分52の最内直径58より大きい逃げ区分直径56を有し、雌ねじ区分52よりもインサート座面36の付近に位置する。インサート座面36に隣接するねじ穴48の拡大直径のために、ねじ頭28A(図1)に、わずかに屈曲する空間がもたらされ、切削インサートを所望の側壁38に向かって付勢する。より正確には、切削インサートは、一対の隣接する側壁38の間に向けられる。規格のねじ方向を使用するこの例では、隣接する対は、第1の(後方)支持壁38A及び第3の(中間)支持壁38Cである。
【0133】
次に、図5A図5Hを参照すると、切削インサート18は、凸状基本形状を有する片側インサートであり、すくい面60と、すくい面60に対向する底面62と、すくい面60及び底面62の中心を通過する(より正確には、底面62に直交して延在する)インサート軸AIと、すくい面60及び底面62に開口するインサート穴64と、逃げ面66と、切れ刃68と、を備える(好ましい実施形態では、切れ刃68は、例示されるように、すくい面60と逃げ面66との交線全体の周囲に延在する)。
【0134】
インサート穴64は、ねじ穴48に関連して上記に示した理由のため、非限定的ではあるが、好ましい特徴であることは理解されよう。
【0135】
すくい面60は、切れ刃68に隣接して延在する凸形ランド70(図5H)を有する。
【0136】
逃げ面66は、すくい面60及び底面62を接続し、すくい面60から底面62に内向きに収束する。詳述すると、図5Hに示すように、逃げ面66の例示的部分66Aは、例示的部分66Aがすくい面60から底面62に延在するにつれて、インサート内側方向DIIに向かう性質がある。インサート内側方向DIIは、インサート軸Alに向かう。
【0137】
完全を期すため、説明の目的で、図5Aでは、インサート下側方向DDI、インサート上側方向DUI及びインサート外側径方向DOIが示される。インサートの方向は、径方向切れ刃16が切削インサートの上面図で参照される方向に対するものであり、図5Aにおける参照は、第1の径方向切れ刃16Aであることは理解されよう。
【0138】
底面62は、3つの安全凹部72を備える(この非限定的ではあるが好ましい3方向刃先交換式切削インサート18の実施形態では、第1の安全凹部72A、第2の安全凹部72B及び第3の安全凹部72Cがある)。言い方を変えれば、安全凹部72の数は、インサート内の径方向切れ刃16の数に対応する。
【0139】
逃げ面66は、張出し部分74と、張出し部分74よりもインサート軸AIに向かって内側に窪んでいる逃げ部分76と、張出し部分74と、張出し部分74よりもインサート軸AIに向かって内側に窪んでいる逃げ部分76との間に延在する支持部分78と、を備える。この好ましいが非限定的な実施形態では、逃げ部分76は、支持部分78よりも内側に窪んでいる。
【0140】
張出し部分74は、すくい面60に最も近接する部分である。張出し部分74は、底面62に向かって内側に傾斜する(又は「逃げが形成される」)。
【0141】
逃げ部分76は、底面62に最も近接する部分である。逃げ部分76は、底面62に向かって内側に傾斜する(又は「逃げが形成される」)。
【0142】
支持部分78は、張出し部分74と逃げ部分76との間に位置する。この非限定的ではあるが好ましい実施形態では、支持部分78(又は支持部分78の少なくとも中心部分80)は、インサート軸AIに平行に延在する。傾斜面と非傾斜面との間には常に移行領域があることは理解されよう。
【0143】
支持部分78は、複数のインサート当接面82(図5Dに概略的に示されるように、第1のインサート当接面82A、第2のインサート当接面82B、第3のインサート当接面82C、第4のインサート当接面82D、第5のインサート当接面82E及び第6のインサート当接面82F)を備える。より正確には、インサート当接面82は、支持部分78の中心部分80によって含まれる。
【0144】
切れ刃68は、すくい面60と逃げ面66との交線に沿って形成される。切削インサート18は3方向刃先交換式(又は120°回転対称)であるので、切れ刃68は、厳密に3つの径方向切れ刃16(即ち、第1の径方向切れ刃16A、第2の径方向切れ刃16B及び第3の径方向切れ刃16C)を備える。
【0145】
本発明は、(図2及び図3の一体型実施形態と同様に)単一径方向切れ刃16と共に実行し得るが、刃先交換式インサートの場合、複数の径方向切れ刃16を有するのにより費用対効果が高いことは理解されよう。
【0146】
径方向切れ刃16に関連して以下で説明する特徴は、概して、特定の径方向切れ刃に関係なく述べられる。そのような特徴は、同一の第1の径方向切れ刃16A、第2の径方向切れ刃16B及び第3の径方向切れ刃16Cのそれぞれに適用されることは理解されよう。
【0147】
より正確には、第1の径方向切れ刃16A、第2の径方向切れ刃16B及び第3の径方向切れ刃16Cのそれぞれは、切れ刃68の丸みのあるコーナ84(この例では、丸みのある第1のコーナ84A、第2のコーナ84B及び第3のコーナ84C)の中心で接続される。
【0148】
より正確には、次に図11Aを参照すると、各径方向切れ刃16は、第1の副切れ刃86Aと、第2の副切れ刃86Bと、第3の副切れ刃86Cと、を備える。図11Aにおいて、径方向切れ刃16は、径方向切れ刃16がソリッド・エンドミル内で取る位置に向けられる。ソリッド・エンドミルは、上側方向DU-下側方向DDに沿って向けられる長手方向軸ALを有する。したがって、第1の副切れ刃86Aを後方副切れ刃86Aと呼び得、第2の副切れ刃86Bを前方副切れ刃86Bと呼び得、第3の副切れ刃86Cを中間副切れ刃86Cと呼び得る。
【0149】
各第1の副切れ刃86Aは、隣接する丸みのある縁部86D(図11Aは、上側コーナを除き、全ての点で同一である一体の刃から取ったため、図11Aに示されない。したがって、図5Aを参照)を備え、縁部86Dは、隣接する丸みのあるコーナ84(この例では第1の丸みのあるコーナ84A)の一部分であり、第1の副切れ刃86Aは、第3の副切れ刃86Cとの移行コーナ86Eで終端する。
【0150】
各第2の副切れ刃86Bは、隣接する丸みのある縁部86Fを備え、縁部86Fは、隣接する丸みのあるコーナ84の一部であり(この例では、この部分は、図5Aの第3の丸みのあるコーナ84Cの正確に半部である)、第2の副切れ刃86Bは、第3の副切れ刃86Cとの移行コーナ86Gで終端する。
【0151】
より正確には、第1の副切れ刃86Aは、第1の丸みのある縁部86D(第1の丸みのあるコーナ84Aの一部、より正確には第1の丸みのあるコーナ84Aの半部である)を備え、第1の移行コーナ86Eまで延在する。第3の副切れ刃86Cは、第1の移行コーナ86Eから第2の移行コーナ86Gまで延在する。第2の副切れ刃86Bは、第2の移行コーナ86Gから延在し、第2の丸みのある縁部86Fを備える(第2の丸みのある縁部86Fは、第3の丸みのあるコーナ84Cの一部、より正確には第3の丸みのあるコーナ84Cの半部である)。
【0152】
以下、説明は、図11Aの径方向切れ刃16及び図5Aの第1の径方向切れ刃16Aの両方に関する。図5Aの径方向切れ刃16Aも、径方向切れ刃16Aが属する切削インサートが、インサートミル・ホルダ内に設置された際に取る位置に向けられることを理解されたい。インサートミル・ホルダは、上側方向DU-下側方向DDに沿って向けられる長手方向軸ALを有する。
【0153】
第1の径方向切れ刃16、16Aは、軸方向切れ刃長さLAEと、軸方向切れ刃長さLAEに直交して測定可能な径方向切れ刃長さLREと、を有する。
【0154】
切削インサート18の例では、軸方向切れ刃長さLAEは、インサート軸AIに直交して測定可能であり、第1の(後方)副切れ刃86A及び第2の(前方)副切れ刃86Bの最外末端88(本明細書では、最上末端88H及び最下末端88Iとも呼ばれる)から延在する。
【0155】
代替的に、図6Aのフライス工具10に示されるように、(切削インサートを有しても、有さなくてもよい)フライス工具の場合、軸方向切れ刃長さLAEは、工具の長手方向軸ALと平行に測定し、径方向切れ刃長さLREは、長手方向軸ALに直交して測定し得る。
【0156】
切れ刃の機能は、(切削インサート上にあるか、刃上にあるかにかかわらず)機械加工方向に関係するので、以下の長さ及び角度は、大部分は、フライス工具の径方向切れ刃に対して説明されるが、必要な変更を加えて、切削インサートに対して同様に測定可能であることは理解されよう。
【0157】
第1の(後方)副切れ刃86Aは、第1の長手方向長さL1と第1の径方向長さR1とを有する。
【0158】
第2の(前方)副切れ刃86Bは、第1の副切れ刃86Aの下方に位置し、第2の長手方向長さL2と第2の径方向長さR2とを有する。
【0159】
第3の(中間)副切れ刃86Cは、第3の長手方向長さL3と第3の径方向長さR3とを有する。
【0160】
第3の長手方向長さL3は、第1の長手方向長さL1及び第2の長手方向長さL2の両方より短い。
【0161】
完全を期すため、図6Aを参照すると、第1の(後方)副切れ刃86Aは、下側方向DD及び外側方向DOで第3の(中間)副切れ刃86Cに向かって延在し、第2の(前方)副切れ刃86Bは、上側方向DU及び外側方向DOで第3の(中間)副切れ刃86Cに向かって延在し、第3の(中間)副切れ刃86Cは、基本的に長手方向軸ALと平行に延在する。
【0162】
次に、便宜的に図5Fを参照すると、第1の径方向縁部16Aの第1の副切れ刃86Aと第2の径方向縁部16Bの第2の副切れ刃86J(即ち、第1の副切れ刃86Aに隣接する主な副切れ刃である)との間の第1の内角θ1は、条件:90°<θ1<110°を満たす。
【0163】
第1の径方向縁部16Aの第2の副切れ刃86Bと第3の径方向縁部16Cの第1の副切れ刃86K(即ち、第2の副切れ刃86Bに隣接する主な副切れ刃である)との間の第2の内角θ2は、条件:90°<θ2<110°を満たす。
【0164】
(刃先交換式インサートを使用する)本例では、第1の内角θ1及び第2の内角θ2は等しい。
【0165】
第3の副切れ刃86Cと第1の副切れ刃86Aとの間の第3の内角θ3は、条件:130°<θ3<150°を満たす。
【0166】
第3の副切れ刃86Cと第2の副切れ刃86Bとの間の第4の内角θ4は、条件:130°<θ4<150°を満たす。
【0167】
図示の例では、第3の内角θ3及び第4の内角θ4は等しいが、これらを等しくなくする理由があり得る。例えば、フライス工具は、上側方向又は下側方向への機械加工時、より激しく稼働する場合があり、角度差Δの根拠となる。しかし、差Δは、好ましくは、依然として両方向での高送りを可能にするわずかな差である。したがって、好ましくは、差Δは、条件:0°<Δ<15°、より好ましくは、0°<Δ<5°を満たす。
【0168】
径方向切れ刃16は、第4の副切れ刃86Lを更に備える。径方向切れ刃16が切削インサート18上に形成される例では、第4の副切れ刃86Lは、異なる径方向切れ刃の副切れ刃とし得る。詳述すると、図5Aにおいて、第1の径方向切れ刃16Aを有効切れ刃として考慮した場合、第1の径方向切れ刃16Aの第4の副切れ刃86Lは、第3の径方向切れ刃16Cの第1の副切れ刃86Aでもある。このことは、図8A及び図11Aに示す第4の副切れ刃86Lと対比し得る。
【0169】
図6Aを参照すると、第4の副切れ刃86Lは、内側径方向DI及び上側方向DUの両方で第2の(前方)副切れ刃86Bから延在する。更に、第4の副切れ刃86Lは、第3の丸みのあるコーナ84Cの半部を備える。
【0170】
上記した、好ましい、例示された第4の副切れ刃86Lが内側径方向DI及び上側方向DUの両方に延在することにより、傾斜加工機能を可能にするが、第4の副切れ刃は、必要な場合、異なる動作に対して異なる形状を有し得る(より大まかにいえば、第4の副切れ刃は、「軸方向切れ刃」である。即ち、径方向切れ刃は、フライス工具の径方向側に沿って延在し、軸方向切れ刃は、軸方向又はフライス工具の端部側に沿って延在する)。
【0171】
図6Cを参照すると、第1の(後方)副切れ刃86Aは、第1の最上点86Mと第1の最下点86Nとを備える。
【0172】
次に、第1の副切れ刃角度k1及び第2の副切れ刃角度k2を説明する。第1の副切れ刃角度k1及び第2の副切れ刃角度k2を決定する目的では、丸みのある縁部(例えば、第1の丸みのある縁部86D及び第2の丸みのある縁部86F)は、考慮すべきではない。したがって、例えば、第1の最上点86Mは、最上末端88Hに相当しない。
【0173】
第1の仮想線IL1は、第1の最上点86M及び第1の最下点86Nを通って延在するものとして画定される。
【0174】
第1の(後方)副切れ刃角度k1は、第1の仮想線IL1と長手方向軸ALとの間に形成される。
【0175】
この角度を示すより従来の方式は、長手方向軸ALに直交するが、第3の(中間)副切れ刃86Cの基本位置と一致するように変位させた線を描くことによる。しかし、両方の方法は、同一の角度値をもたらすため、とりわけ、上記を便宜的に使用する。
【0176】
第2の(前方)副切れ刃86Bは、第2の最上点86Оと第2の最下点86Pとを備え、第2の仮想線IL2は、第2の最上点86О及び第2の最下点86Pによって画定される。
【0177】
第2の(前方)副切れ刃角度k2は、第2の仮想線IL2と長手方向軸ALとの間に形成される。
【0178】
次に、図5Aを参照すると、代替的に、長手方向軸ALを使用する代わりに、切削インサート18単体で第1の副切れ刃角度k1及び第2の副切れ刃角度k2を計算するには、前記末端点86M、86N又は86O、86Pを通って延在する基準線LRを同様に画定し、決定のために使用し得る。
【0179】
上記フライス工具の本例では、μ1=10°、μ2=50°、p3=50°、β1=140°、β2=100°、a1=80°、a2=10°、θ1=100°、θ2=100°、θ3=140°、θ4=140°、Δ=0°、k1=20°、k2=20°、L1=3.2mm、L2=3.2mm、L3=1.1mm、R1=1.1mm、R2=1.1mm、R3=1.1mmである。
【0180】
上記の角度は、高送りフライス加工を促進するために設計されていることは理解されよう。
【0181】
図5Eを参照し、本発明による径方向切れ刃の全体形状に対する代替的な定義を説明する。
【0182】
切れ刃68の仮想外接円CIを提供する(切削インサート18の底面図は、便宜的に使用されるにすぎない)。
【0183】
切削方向DCは、径方向切れ刃16が面する基本方向として画定される。切削方向DCは、上述の外側径方向DOにも相当し、したがって、インサートを設置した際、フライス・インサート・ホルダ長手方向軸ALに直交する。
【0184】
切削方向DCにおける切れ刃68の最前部分、即ち、第3の(中間)副切れ刃86Cは、仮想外接円CIの距離69で内側に窪んでいる。
【0185】
特にソリッド・エンドミルの場合、球状又は他の形状の切削部分があり、第3の副切れ刃に対応する切れ刃は、仮想外接円CIまで延在するか、又は更には仮想外接円CIから外側に突出することを理解されよう。このことにより、これらの工具においてより大きな切れ刃を動作可能にする。しかし、高送り機械加工のために設計されている本発明は、そのような大きな突出がある場合、より緩やかな送り速度で動作させる必要がある。というのは、切れ刃は、必然的に、(少なくとも、上側方向又は下側方向で移動する際に)より大きなチップの機械加工を必要とするためである。言い方を変えれば、本発明のフライス工具の切削部分は、長手方向軸ALに平行な方向で細長くし得る(このことは、長手方向軸に平行な方向より、長手方向軸に直交する方向に細長い公知の面取り工具とは異なる)。
【0186】
上記にもかかわらず、上記で規定された第1の副切れ刃角度k1及び第2の副切れ刃角度k2より大きく(又はこれらのより好ましい値より少なくとも大きい)、したがって、(高送りではなく)中程度の送りに適している角度も、請求する機械加工方法に関連して本発明の範囲内に入り、このことは、特定の切れ刃の特徴とは無関係に新規であると考えられることは理解されよう。同様に、上側方向及び下側方向の両方で切削インサートを支持する固有のインサート・ポケット構成を有するフライス工具及びインサート・ミルの態様も、特定の切れ刃の特徴とは無関係に新規であると考えられる。
【0187】
図6A図6Dも参照しながら、フライス工具10の組立体を説明する。
【0188】
切削インサート18は、インサートの底面62がインサート座面36に当接するようにインサート・ポケット26の1つの中に置かれる。
【0189】
ねじ山付きシャンク28Bは、インサート穴64を通じて延在し、(時計回り回転方向で)ねじ穴48に部分的に螺入される。第2の穴外角a2のために、ねじ頭28Aは、第1のインサート当接面82Aを付勢して第1の(後方)支持壁38Aと当接させ、第3のインサート当接面82Cを付勢して第3の(中間)支持壁38Cと当接させる。
【0190】
通常、(典型的には超硬合金から作製される)切削インサート等の剛性本体及び強固に構成されるインサート座(インサート・ミルは典型的には鉄鋼から作製される)の場合、切削インサートは、(インサート座面に加えて)3つの横当接面と同時に十分に接触することが可能ではない。したがって、第2のインサート当接面82Bと第2の(前方)支持壁38Bとの間に初期の接触はない。
【0191】
その後、ねじ28は、最終的に回すことにより締め付けられ/完全に固定され、第2のインサート当接面82Bを第2の(前方)支持壁38Bと当接させる。
【0192】
このことは、インサートと第2の支持壁及び第3の支持壁との初期の接触、及びねじの反時計回りの回転でも達成し得ることは理解されよう。しかし、このことは、実現可能であるが、規格外のねじ及びねじ穴を必要とし、本発明では必要ではない。
【0193】
更に、上述のように、インサート穴64及びねじ28に様々な修正形態を行い、3つの横ポケット面の接触の保証を支援する。例えば、穴軸AB及び仮想穴平面PBは、第2の穴外角a2で角度が付けられ、新規の逃げ区分54は、十分な遊びがもたらされ、前記当接位置に到達することを保証するように加えられた。
【0194】
更に、固有の機械加工方向及び力を支援するため、ねじ穴48は上述のように第1の穴外角alで角度が付けられる。この角度は、インサート・ポケット26へのインサート18の接続、並びに下側方向DD、外側(即ち、横)方向DO及び上側方向DUのそれぞれで機械加工する際に向上された支持の保証を強化する。
【0195】
安全凹部72は、間隙90(図5H)を安全突起46の全周囲に残す状態で、安全突起46を収容する。このことにより、インサート18が所定の位置を外れて移動する際の一層の予防策を可能にする。前記間隙90が設けられない場合、インサート18を組み付ける際、安全突起46と安全凹部72との間の意図しない初期の接触により、上述の3つの横面(即ち、第1の支持壁38A、第2の支持壁38B及び第3の支持壁38C)との接触を防止し得ることは理解されよう。
【0196】
図6A及び図6Bに注意を向けられたい。インサート18の切れ刃16の側面図は、長手方向軸ALと平行に示される。フライス工具10の性質、即ち、上側方向DU及び下側方向DDの両方で機械加工するように構成される性質のために、このインサート18の中立位置は、(ほとんどのインサート・ミルは典型的にそうであるが、インサート18が凸形又は凹形に傾斜している場合にはあり得る)上側方向DU及び下側方向DDのいずれかで移動する際に不要なチップがフライス工具10に詰まるのを回避するのに好ましい。
【0197】
図7A図7Dを参照すると、工作物102の内壁100上、即ち、既存のいわゆる空洞104における機械加工動作の際のフライス工具10が示される。
【0198】
フライス方法は、コンピュータ数値制御旋盤(即ち、CNC機械(図示せず)。しかし、この用語は、マシニング・センタ又はあらゆる同様のフライス機械まで拡張する)のコンピュータ・プログラム上に事前にプログラムし得る。
【0199】
図7A及び図7Dを参照すると、機械加工動作の第1のステップ(図7Dに「S1」として概略的に示される)が示される。第1のステップS1は、フライス工具10が、長手方向軸ALに平行に測定可能な第1の軸方向距離DA1の間、下側方向DDで内壁100を機械加工する。フライス工具10は、空洞の底部106への機械加工の継続が可能であるが、この例では、事前に停止する。
【0200】
第1の軸方向距離DA1は、径方向切れ刃16からもはや切除されない点までの、切削部分14の長さによってのみ限定されることは理解されよう。
【0201】
第1のステップS1において、第2の(前方)副切れ刃86Bが主に材料を機械加工する(第3の(中間)副切れ刃86Cは、材料をそれほど除去しない)ので、第2の(前方)副切れ刃86Bのみが、工作物102上に機械加工力を加え、その力は、対向する第1の(後方)支持壁38A及び第3の(中間)支持壁38Cに伝達される。第1の(後方)支持壁38A及び第3の(中間)支持壁38Cは、主に、切削インサート18を支持し、第2の(前方)支持壁38Bは、それほど支持をもたらさない。
【0202】
図7B及び図7Dを参照すると、機械加工動作の第2のステップS2が示される。第2のステップS2は、フライス工具が、長手方向軸ALに直交して測定可能な第1の径方向距離DR1の間、外側径方向(横方向)DOで内壁100を機械加工する。第2のステップS2において、径方向切れ刃16全体、即ち、第1の副切れ刃86A、第2の副切れ刃86B及び第3の副切れ刃86Cのそれぞれは、材料を機械加工する。したがって、第1の支持壁38A、第2の支持壁38B及び第3の支持壁38Cは、主に切削インサート18を支持する。
【0203】
好ましくは、第1の径方向距離DR1は、第1の(後方)副切れ刃86A及び第2の(前方)副切れ刃86Bの深さ、即ち、基準線LR(図5A)までに相当するが、隣接する丸みのある縁部86D、86Fと同じ深さであってもよい。同様に、第1の径方向距離DR1は、径方向外周面22と比較される径方向切れ刃16の径方向突起によって制限される。
【0204】
図7C及び図7Dを参照すると、機械加工動作の第3のステップS3が示される。第3のステップS3は、フライス工具10が、長手方向軸ALに平行に測定可能な第2の軸方向距離DA2の間、上側方向DUで内壁100を機械加工する。第3のステップS3において、第1の(後方)副切れ刃86Aが主に材料を機械加工する。第1の(後方)副切れ刃86Aが主に工作物上に機械加工力を加えるため、第2の(前方)支持壁38Bは、主に切削インサート18を(おそらくは、第3の(中間)支持壁38Cからの少量の支援と共に)支持する。
【0205】
第1の軸方向距離DA2は、同様に、径方向切れ刃16から切除される切削部分14の長さによってのみ限定されることは理解されよう。
【0206】
図示のように、フライス工具10を上側方向DUに移動させた後、内壁100は、第2の副切れ刃86Bの形状及び向きに基本的に対応する壁コーナ108を残す。
【0207】
機械加工方向の全てにおいて、ねじ28は、張力状態にあり、切削インサート18とインサート座面36との当接維持を支援する。
【0208】
図7Dを参照すると、上記のステップは繰り返し得ることは理解されよう。例えば、第3のステップS3の後、工作物102の上部に位置することを除き、第2のステップS2と同様に、外側径方向DOで別の第2のステップS4が続く(また、第1の径方向距離DR1と同じ第2の径方向距離DR2を機械加工する)。
【0209】
このパターンは、例えば、更なる下方機械加工ステップS5、次の外側径方向機械加工ステップS6及び次の上方機械加工ステップS7等と共に、以下同様に繰り返し得る。
【0210】
このパターンは、新規の稼働パターンであるとみなされるが、代替的な機械加工ステップを本発明のフライス工具から除外すること、又は更に、代替的な機械加工ステップが本発明のフライス・パターンの一部であることを意味するものではないことは理解されよう。
【0211】
例えば、フライス・パターンは、代替的に、空洞104の底部から開始でき、したがって、方法は、外方(横)の第2のステップS2と共に開始し、第2のステップの直後、上側方向の第3のステップS3が続き、第3のステップS3の直後、例えば、別の外方(横)第2のステップS4が続き、別の外方(横)第2のステップS4の直後、下方ステップS5が続き得る。
【0212】
パターンは、図7Dに示すあらゆるステップで開始し得ることは理解されよう。
【0213】
あらゆるパターンにより、ステップを繰り返し得る。
【0214】
以上のことから、「下への行程」、「横への行程」及び「上への行程」の全ての間のフライス加工によって、切削効率を実現し得ることは明らかである。いくつかの実施形態では、工作物に対するフライス工具の速度は、下への行程でも上への行程でも同じとし得る。
【0215】
ソフトウェア命令は、上記ステップのシーケンスを実行するようにCNCフライス機械に与え得る。従来、そのような機械は、図7Dに示すパターンを実施するように構成されなかった。一つには、この理由は、例えばベクター・ファイルの形態の部分のためのCAD意匠を、Gコード又は標的CNCフライス機械に適した他の言語に変換する従来のコンピュータ支援製造(CAM)プログラムは、連続パターンで上記の3つの行程でフライス加工する可能性を企図するものではないためである。本発明は、非一時的メモリ内にCAMプログラムを備えるソフトウェアを企図し、これにより、工具が、工具の長手方向軸に沿って上側方向で後退する際の工作物のフライス加工を可能にし、したがって、ソフトウェアは、上り行程上でフライス加工を実施するGコード等を生成するように構成される。本発明は、少なくとも、上記のステップS1、S2及びS3のシーケンスを実行するように構成されたCNCフライス盤も企図する。そのようなCNCフライス盤は、命令を記憶した非一時的メモリを有し、命令は、実行されると、上述のステップS1、S2、S3を実行し、任意で、ステップS4、S5、S6及びS7が続く。
【0216】
上記の説明は、簡単のために、既存の空洞104を含む。そのようなフライス工具10は、例えば第1のステップが下方ヘリカル補間動作である第4の副切れ刃86Lの使用によって、空洞を生成し得ることも理解されよう。
【0217】
代替的に、第4の副切れ刃86Lは、傾斜加工動作を実施し得る(この例は、米国特許第9636758号明細書、特に図4Cに関して示される)。
【0218】
特に注目すべきは、本発明のフライス工具10、10’、10’’が、特に汎用性があり、広範囲のフライス加工動作が可能であることである。詳述すると、フライス工具10は、下方プランジ加工(図7Aに示されるようなもの。即ち、長手方向軸回りにのみ少なくとも1つの径方向切れ刃の回転があり、下側方向にのみ径方向切れ刃の並進移動があるような、下側方向での工作物のフライス加工)、側方プランジ加工(図7Bに示されるようなもの。即ち、長手方向軸回りにのみ少なくとも1つの径方向切れ刃の回転があり、外側径方向にのみ径方向切れ刃の並進移動があるような、外側径方向での工作物のフライス加工)、上方プランジ加工(図7Cに示されるようなもの。即ち、長手方向軸回りにのみ少なくとも1つの径方向切れ刃の回転があり、上側方向にのみ径方向切れ刃の並進移動があるような、上側方向での工作物のフライス加工)、溝削り、ランプ・ダウン、ヘリカル補間、下方面取り、上方面取り、下降しながらの端面削り、及び上昇しながらの端面削りが可能である。
【0219】
図6Bを参照すると、図7Cに示す上方プランジ加工動作を実行するには、径方向切れ刃16の上のインサート・ミル10全体に逃げを作製する必要があることは理解されよう。言い方を変えれば、径方向切れ刃16の最上末端88Hは、径方向切れ刃の上の全ての点で、インサート・ミルの径方向外周面22より外側径方向DOに更に突出する。より正確には、第1の(最上)コーナ84Aの大部分は、径方向外周面22より外側径方向DOに更に突出する。
【0220】
本発明によるフライス工具10は、比較的大きな深さのフライス加工に好ましいことがわかっている。したがって、第1のステップでフライス加工される距離は、有利には、条件:DA1>LAE、好ましくは、DA1>2LAE、及びより好ましくは、DA1>4LAEを満たす。同様に、第3のステップでフライス加工される距離は、有利には、条件:DA2>LAE、好ましくは、DA2>2LAE及びより好ましくは、DA2>4LAEを満たし得る。
【0221】
反対に、わずかなチップのみが外側径方向に除去される高送り機械加工(例えば第2のステップS2又はあらゆる同様のステップ)と調和して、フライス加工される距離は、好ましくは、わずかであり、好ましくは、条件:DR1<LRE、好ましくは、DR1<0.8LREを満たす。
【0222】
次に、いくつかの代替的な特徴及び実施形態を説明する。
【0223】
図8A及び図8Bを参照すると、図2のソリッド・エンドミル10’の切削部分14’は、図8Aの中心におけるすくい面60’及び切れ刃68’の側面図から示される。すくい面60’及び切れ刃68’は、長手方向軸ALに平行に延在する。
【0224】
上記のように、この向きは、現在、チップ排出又はチップをカールさせる目的では、機械加工の間の上方及び下方運動のために、凸形又は凹形傾斜すくい面よりかなり好ましい向きである。
【0225】
図9を参照すると、1つの可能なオプションが示される。図示されるのは、すくい面60’’’及び切れ刃68’’’の両方が凹形に湾曲していることを除き、図8Aに示されるものと同様のソリッド・エンドミル14’’’であり、この湾曲は、第3の(中間)副切れ刃からの上側方向及び下側方向の両方で対称である。このことにより、理論上、(上側方向及び下側方向の両方で)フライス加工方向とは反対の方向にチップを偏向させることによって、チップ排出効果を可能にする。
【0226】
この利点にもかかわらず、図9の実施形態は、より複雑な構造であるため、図8Aに例示されるまっすぐな長手方向切れ刃が、製造費用を下げるのに有利である。
【0227】
とはいえ、図12に示すように、1つの実現可能な実施形態を示すソリッド・エンドミル110は、各切れ刃112及びすくい面114を凸形に傾斜させることが示される。このことは、例えば、上方へのチップ排出を支援するために行い得る。
【0228】
同様に、図13において例示されるのは、ソリッド・エンドミル116であり、各切れ刃118及びすくい面120を凹形に傾斜させる1つの実現可能な実施形態を示す。
【0229】
図10を参照すると、図2図8A及び図8Bに示されるものと同様の、本発明による別の切削部分14’’’’が示され、別の切削部分14’’’’は、冷却剤構成を備える(冷却剤出口32’’’’のみによって示される)。冷却剤構成は、好ましくは、上方に位置する冷却剤入口(図示せず)と、下方に位置する冷却剤出口32’’’’と、入口と出口との間に延在する冷却剤通路(図示しないが、好ましくはまっすぐである)と、を備える。
【0230】
図10に開示される実施形態では、冷却剤出口32’’’’は、下に向けられ、エンドミルの底端部に対称に開口している。そのような冷却剤構成は、ソリッド・エンドミルに限定されず、インサート・ミル及び交換可能フライス・ヘッド等の本発明の全ての実施形態が、そのような構成を有し得ることは理解されよう。図10に示す例では、フライス工具回りに対称的に位置する単一冷却剤出口があるが、そのような構成は、対称でなくても、下向きでなくてもよい複数の冷却剤出口を含み得ることも理解されよう。
【0231】
図11Aを参照すると、上記で説明した径方向切れ刃16の概略図が示される。特に、第1の副切れ刃86A、第2の副切れ刃86B、第3の副切れ刃86C及び第4の副切れ刃86Lは、まっすぐである。より詳細には、第3の(中間)副切れ刃86Cは、まっすぐであり、理論上、上側方向及び下側方向でフライス加工する際にワイパを構成する。
【0232】
5軸機械又は同様のCNC機械の場合、そのようなフライス工具は、角度を付けることができ、例えば、まっすぐな第2の(前方)副切れ刃86Bを仕上げ動作で有利に使用し得ることを追加する。
【0233】
以下で比較するため、簡単に繰り返すと、図11Aでは、径方向切れ刃16は、第1の(後方)副切れ刃86Aと、第2の(前方)副切れ刃86Bと、第3の(中間)副切れ刃86Cと、を備える。第1の(後方)副切れ刃86Aは、第1の移行コーナ86Eまで延在する。第3の(中間)副切れ刃86Cは、下側方向DDで第1の移行コーナ86Eから第2の移行コーナ86Gまで延在する。第2の(前方)副切れ刃86Bは、第2の移行コーナ86Gから延在する。
【0234】
対照的に、図11Bを参照すると、凹形に湾曲する第3の(中間)副切れ刃86C’を除き、図11Aの概略図と同様の径方向切れ刃16Dの概略図が示される。より正確には、第1の移行コーナ86E’及び第2の移行コーナ86G’は、凸形に湾曲するが、より大きな第3の副切れ刃86C’の凹形湾曲より小さい。そのような切れ刃の設計は、工作物を機械加工する切れ刃の領域の間の完全な分離を可能にし、理論的に、インサート寿命を延長し、より良好な熱放散を可能にする。
【0235】
図11Cを参照すると、凸形に湾曲する第3の副切れ刃86C’’を除き、以前の切れ刃の設計と同様の径方向切れ刃16Eの概略図が示される。そのような切削設計は、図11Aと同じ第1の移行コーナ86E’’及び第2の移行コーナ86G’’を保持し、凸形に湾曲する第3の副切れ刃86C’’まで接線方向に継続し、より強力な第3の副切れ刃86C’’、及び外側径方向に沿ってわずかに増大する切削深さを可能にする(しかし、このことは、上側方向及び下側方向の機械加工動作において、材料により強く沈み込む第3の副切れ刃に更なる摩耗をもたらすことがある)。
【0236】
図11Dを参照すると、第3の副切れ刃86C’’’の凸形湾曲が、第1の移行コーナ86E’’’及び第2の移行コーナ86G’’’の凸形湾曲より小さい(即ち、まっすぐな線への接近により近い)ことを除き、以前の切れ刃設計と同様の径方向縁部16Fの概略図が示され、これにより、以前の段落で述べた上記摩耗の可能性を軽減する。
【0237】
本発明の他の実施形態は、第1の副切れ刃及び第2の副切れ刃が、すくい面(図示せず)の方を向く図において凸形若しくは凹形に湾曲するか、又は等しくない長さであることを含み得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8A
図8B
図9
図10
図11A-11D】
図12
図13
【国際調査報告】