(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ポートカテーテル組立体の把持、切断及び接続ツール
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
A61B17/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023514807
(86)(22)【出願日】2020-09-09
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 US2020049874
(87)【国際公開番号】W WO2022055481
(87)【国際公開日】2022-03-17
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500295612
【氏名又は名称】バード・ペリフェラル・バスキュラー・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116322
【氏名又は名称】桑垣 衛
(72)【発明者】
【氏名】エバンス、ジョン ジー.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160FF49
(57)【要約】
安定化及びトリミングツール(100)は、クレードル(120)及びクランプデバイス(150)に動作可能に結合されたハンドル(110)を備える。クレードルはカスロック(90)を受承しかつ保持するように構成されており、クランプデバイスはカテーテルを把持するように設計されている。カテーテルの近位端を、カスロックに通すことができるとともに、ツールによって取り外し可能に保持することができる。ツールはさらに、ハンドルに結合されたカテーテル切断機構(150)を備える。カテーテル切断機構は、カテーテルの近位端をトリミングするとともに、カスロックを用いてカテーテルをポートに結合する、ように構成される。次に、ツールは、カスロックを解除し、挿入部位から引き抜くことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルをアクセスポートに結合するための安定化及びトリミングツールであって、
クレードル及びクランプデバイスに動作可能に結合されたハンドルであって、前記クレードルはカスロックを保持するように設計されており、前記クランプデバイスは前記カテーテルを把持するように設計されている、ハンドルと、
前記ハンドルに結合されたカテーテル切断機構であって、前記カテーテル切断機構は、前記ハンドルによる前記カスロック及び前記カテーテルの安定化後に作動されるように構成されている、カテーテル切断機構と、を備える安定化及びトリミングツール。
【請求項2】
前記ハンドルに加えられる第1の圧力が、前記クレードルに圧力を加え、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力が、前記クレードルと前記クランプデバイスとの両方に圧力を加える、請求項1に記載の安定化及びトリミングツール。
【請求項3】
前記クレードルはチャネルを画定し、前記チャネルの内面は、前記カスロックの外側プロファイルを反映するプロファイルを画定する、請求項1または2に記載の安定化及びトリミングツール。
【請求項4】
前記チャネルの前記内面は、テーパ形状を画定する、請求項3に記載の安定化及びトリミングツール。
【請求項5】
前記チャネルの前記内面は、前記カスロックの段差部分に当接するように構成された段差部分を画定する、請求項3に記載の安定化及びトリミングツール。
【請求項6】
前記クランプデバイスは、ゴム又はシリコーン材料で被覆されたクランプ部材の対を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の安定化及びトリミングツール。
【請求項7】
前記カテーテル切断機構は、アクチュエータによって作動される、請求項1~6のいずれか一項に記載の安定化及びトリミングツール。
【請求項8】
前記クレードルは、開位置と閉位置との間で移行可能なジョーの対を含み、これらのジョーは、前記閉位置では、前記クレードル内で前記カスロックを保持するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の安定化及びトリミングツール。
【請求項9】
前記ジョーの対における第1のジョーは、前記クレードルの第1の縁部に回転可能に結合され、前記ジョーの対における第2のジョーは、前記クレードルの第2の縁部に回転可能に結合される、請求項8に記載の安定化及びトリミングツール。
【請求項10】
前記クレードルは、チャネルを画定し、後退位置と伸長位置との間で移行可能なグリップの対を含み、これらのグリップは、前記伸長位置では、前記クレードル内で前記カスロックを保持するように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の安定化及びトリミングツール。
【請求項11】
前記グリップの対は、前記チャネルの軸に対して垂直に延びる軸に沿って前記クレードルと摺動可能に係合される、請求項10に記載の安定化及びトリミングツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポートカテーテル組立体の把持、切断及び接続ツールに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテル、例えば、中心静脈カテーテル(CVC)又は末梢挿入型中心静脈カテーテル(PICC)を留置するとき、脈管構造内において遠位先端部が正確な場所にあることは、カテーテルシステム及び行われる治療の有効性にとって不可欠であり得る。例えば、遠位先端部が十分に遠くまで挿入されていない場合、治療の有効性が低減される。遠位先端部が深くまで挿入され過ぎている場合、遠位先端部は、心不整脈を引き起こす可能性がある。ポートと一体的に形成されるカテーテルは、留置前にカテーテルの長さを推定することを必要とする。カテーテルの長さを推定する際の誤差は、患者にとって非常に有害である可能性がある。
【0003】
近位でトリミング可能なカテーテルポートシステムにより、カテーテルを適切な長さにトリミングする前に、カテーテル部分を留置することが可能になる。この結果、標的場所及びポートに対してカテーテルのサイズを決定する際の精度が高くなる。更に、そのようなポート/カテーテルシステムにより、他の部分の位置決めを妨げることなく、ポート部分又はカテーテル部分の一方の交換が可能になる。しかしながら、次いで、組織ポケット内でカテーテルをポートに取り付けられなければならない。組織ポケットの制限された湿潤環境内だけでカテーテルをトリミングし、かつ、カテーテルをカスロック(cathlock)でポートに取り付けることは、困難である可能性がある。そのようなプロセスは、カテーテルを保持し、カスロックを保持し、カテーテルをトリミングし、カテーテルをポートに取り付け、最後にカスロックを適所にロックするために、いくつかのツールの操作を必要とする可能性がある。これは、複数のツールが一度に挿入されることに起因して、挿入部位に対する外傷のリスクの増大につながる可能性がある。更に、複数のツールを繰り返し挿入する結果、感染のリスクが増大する可能性があり、かつ、そのような複雑な処置は時間がかかる可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に開示される実施形態は、近位でトリミング可能なカテーテル及びポートシステムとともに使用するためのカスロック留置及び取り付けツールを対象とする。有利なことに、ツールは、カテーテルを保持し、カスロックを保持し、カテーテルをトリミングし、カテーテルをポートに取り付け、そして、カスロックを適所にロックするように構成された単一のツールを提供する。これにより、複数のツールの繰り返し挿入を軽減することができ、かつ、近位でトリミング可能なポート/カテーテルシステムを留置することを促進することができる。
【0005】
本明細書には、カテーテルをアクセスポートに結合するための安定化及びトリミングツールであって、クレードル及びクランプデバイスに動作可能に結合されたハンドルであって、クレードルはカスロックを保持するように設計されており、クランプデバイスはカテーテルを把持するように設計されている、ハンドルと、ハンドルに結合されたカテーテル切断機構であって、カテーテル切断機構は、ハンドルによるカスロック及びカテーテルの安定化後に作動されるように構成されている、カテーテル切断機構と、を含む安定化及びトリミングツールが開示される。
【0006】
いくつかの実施形態では、ハンドルに加えられる第1の圧力は、クレードルに圧力を加え、第1の圧力よりも高い第2の圧力が、クレードルとクランプデバイスとの両方に圧力を加える。クレードルはチャネルを画定し、チャネルの内面は、カスロックの外側プロファイルを反映する(mirror)プロファイルを画定する。チャネルの内面は、テーパ形状を画定する。チャネルの内面は、カスロックの段差部分に当接するように構成された段差部分を画定する。クランプデバイスは、ゴム又はシリコーン材料で被覆されたクランプ部材の対を含む。カテーテル切断機構は、アクチュエータによって作動される。クレードルは、開位置と閉位置との間で移行可能なジョーの対を含み、これらのジョーは、閉位置では、クレードル内でカスロックを保持するように構成されている。ジョーの対における第1のジョーは、クレードルの第1の縁部に回転可能に結合され、ジョーの対における第2のジョーは、クレードルの第2の縁部に回転可能に結合される。クレードルは、チャネルを画定し、後退位置と伸長位置との間で移行可能なグリップの対を含み、これらのグリップは、伸長位置では、クレードル内でカスロックを保持するように構成されている。グリップの対は、チャネルの軸に対して垂直に延びる軸に沿ってクレードルと摺動可能に係合される。
【0007】
また、カテーテルをアクセスポートに取り付ける方法であって、患者内に組織ポケットを作成し、当該ポケットにアクセスポートを挿入することであって、アクセスポートはステムを含む、ことと、カテーテルの先端が所望の場所に位置決めされるまで、カテーテルを患者の血管に挿入することと、カテーテルの近位端の上でカスロックを摺動させることと、ツールを用いてカスロック及びカテーテルを把持することと、ツールを使用して、カテーテルの近位部分を除去することと、ステムをカテーテルの開放端に挿入することと、カスロック及びカテーテルをアクセスポートに固定するために、カテーテルの上でカスロックを摺動させることと、を含む方法が開示される。
【0008】
いくつかの実施形態では、ツールは、クレードル及びクランピングデバイスに動作可能に結合されたハンドルを備え、カスロック及びカテーテルを把持することは、カスロックをクレードルに挿入することと、カテーテルの上でクランピングデバイスを位置決めすることと、クレードル及びクランピングデバイスに把持力を加えるためにハンドルを作動させることと、を含む。クレードルはチャネルを画定し、チャネルの内面は、カスロックの外側プロファイルを反映するプロファイルを画定する。チャネルの内面は、テーパ形状を画定する。チャネルの内面は、カスロックの段差部分に当接するように構成された段差部分を画定する。ツールは、ハンドルに結合されたカテーテル切断機構を更に備え、カテーテルの近位部分を除去することは、ハンドルを作動させた後に当該切断機構を作動させることを含む。切断機構は、ハンドルに回転可能に結合された第1の切断部材を含む。切断機構は、はさみ状の機構の、ハンドルに回転可能に結合された第1の切断部材及び第2の切断部材を含む。
【0009】
添付の図面に示されている特定の実施形態を参照して、本開示のより詳細な説明が記載される。これらの図面は本発明の典型的な実施形態のみを表しており、したがって、その範囲を制限するものであるとみなされないことが理解される。本発明の例示的な実施形態は、以下の添付の図面を用いて、追加の特徴および詳細が記載され説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本明細書に開示される実施形態による、クレードルを含む例示的なカスロック留置ツールの左側面図を示す。
【
図1B】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカスロック留置ツールの平面図を示す。
【
図1C】本明細書に開示される実施形態による、例示的なカスロック留置ツールの右側面図を示す。
【
図2A】本明細書に開示される実施形態による、クレードルの一実施形態の拡大詳細図を示す。
【
図2B】本明細書に開示される実施形態による、閉位置におけるクレードルの一実施形態の拡大詳細図を示す。
【
図2C】本明細書に開示される実施形態による、開位置におけるクレードルの一実施形態の拡大詳細図を示す。
【
図2D】本明細書に開示される実施形態による、クレードルの一実施形態の拡大詳細図を示す。
【
図3A】本明細書に開示される実施形態による、開位置における把持機構を含むクレードルの一実施形態の拡大詳細図を示す。
【
図3B】本明細書に開示される実施形態による、閉位置における把持機構を含むクレードルの一実施形態の拡大詳細図を示す。
【
図4A】本明細書に開示される実施形態による、第1の位置における切断機構を含むクレードルの一実施形態の拡大詳細図を示す。
【
図4B】本明細書に開示される実施形態による、第2の位置における切断機構を含むクレードルの一実施形態の拡大詳細図を示す。
【
図5A】本明細書に開示される実施形態による、カスロックの断面図を示す。
【
図5B】本明細書に開示される実施形態による、カスロックの側面図を示す。
【
図5C】本明細書に開示される実施形態による、カスロックの断面図を示す。
【
図5D】本明細書に開示される実施形態による、カスロックの側面図を示す。
【
図5E】本明細書に開示される実施形態による、カスロックの斜視図を示す。
【
図5F】本明細書に開示される実施形態による、カスロックの斜視図を示す。
【
図6A】本明細書に開示される実施形態による、カスロック留置ツールの例示的な使用方法を示す。
【
図6B】本明細書に開示される実施形態による、カスロック留置ツールの例示的な使用方法を示す。
【
図6C】本明細書に開示される実施形態による、カスロック留置ツールの例示的な使用方法を示す。
【
図6D】本明細書に開示される実施形態による、カスロック留置ツールの例示的な使用方法を示す。
【
図6E】本明細書に開示される実施形態による、カスロック留置ツールの例示的な使用方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの特定の実施形態についてより詳細に開示される前に、本明細書において開示されている特定の実施形態は、本明細書において提供されているコンセプトの範囲を限定しないことが理解されるべきである。本明細書において開示されている特定の実施形態は、特定の実施形態から容易に分離でき、本明細書において開示されている他のいくつかの実施形態のいずれかと任意に組み合わせるまたは置き換えることができる特徴を有し得ることも理解されるべきである。
【0012】
本明細書において用いられている用語に関して、用語はいくつかの特定の実施形態を説明することを目的とするものであり、用語は本明細書において提供されているコンセプトの範囲を限定しないことも理解されるべきである。序数(例えば第1、第2、第3など)は一般的に、特徴や段階のグループ内の異なる特徴や段階を区別もしくは識別するために用いられ、連続性や数値による制限を提供しない。例えば、「第1」、「第2」、および「第3」の特徴や段階はその順序で現れる必要はなく、そのような特徴や段階を含む特定の実施形態がその3つの特徴や段階に制限される必要もない。「左」、「右」、「頂」、「底」、「前」、「後」等の表記やそれらに似た語句は便宜上用いられ、例えば、特定の決められた位置、方角、方向等を意味することは意図していない。むしろ、そのような表記は、例えば、相対的な位置、方角、方向等を反映させるために用いられる。「a」、「an」、および「the」の単数形は、文脈が単数であることを明確に示していなければ、複数への参照を含む。
【0013】
例えば、本明細書において開示されているカテーテルの「近位の」、「近位部」、または「基端部」に関しては、カテーテルが患者に対して使用される際に、臨床医の近くに位置することを意図されたカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「近位の長さ」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、臨床医の近くに位置することを意図されたカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「近位端」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、臨床医の近くに位置することを意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの、近位部、基端部、または近位の長さは、カテーテルの近位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの、近位部、基端部、または近位の長さは、カテーテルの近位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別のことを示唆しない限り、カテーテルの、近位部、基端部、または近位の長さは、カテーテルの、末端部、または末端の長さではない。
【0014】
例えば、本明細書において開示されているカテーテルの「遠位の」、「遠位部」、または「先端部」に関しては、カテーテルが患者に対して使用される際に、患者の近くまたは患者の体内に位置することを意図されたカテーテルの部分を含む。同様に、例えば、カテーテルの「遠位の長さ」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、患者の近くまたは患者の体内に位置することを意図されたカテーテルの長さを含む。例えば、カテーテルの「遠位端」は、カテーテルが患者に対して使用される際に、患者の近くまたは患者の体内に位置することを意図されたカテーテルの端部を含む。カテーテルの、遠位部、先端部、または遠位の長さは、カテーテルの遠位端を含み得る。しかしながら、カテーテルの、遠位部、先端部、または遠位の長さは、カテーテルの遠位端を含む必要はない。すなわち、文脈が別のことを示唆しない限り、カテーテルの、遠位部、先端部、または遠位の長さは、カテーテルの、末端部、または末端の長さではない。
【0015】
本明細書で使用される場合、
図6Aに示されるように、長手方向軸は、カテーテルの軸方向長さに沿って延び、横方向軸は、長手方向軸に対して垂直に延び、横断方向軸は、長手方向軸と横方向軸の両方に対して垂直に延びる。本明細書で使用される場合、「テーパ」形状とは、ある軸に沿った断面形状又は直径の減少である。例えば、円錐形状又は円錐台形状などである。本明細書で使用される場合、「動作可能に結合される」は、機構を動作させるように構成された歯車、レバー、機構、付勢部材、電気モータ、配線、スイッチ、電源などを含むことができる。
【0016】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
本開示は、概して、カテーテル80の近位部分に対してカスロック90を安定化させ、ポート70との結合を容易にするためにカテーテル80の一部分をトリミングし、カスロック90を用いてカテーテルをそこに固定するように構成されたカスロック留置ツール(「ツール」)100に関する。
【0017】
近位でトリミング可能なカテーテル及びポートシステムは、患者の脈管構造内でのカテーテルの遠位部分の留置を可能にし、アクセスポート又は同様の医療デバイスを近位端に結合するように構成される。有利なことに、近位端を正確な長さにトリミングし、ポート70に結合する前に、カテーテルの遠位先端部を標的場所に留置することができる。これにより、留置前にカテーテル及びポートシステムのサイズを決定し、これらを結合することによるカテーテルの長さの誤計算が軽減される。更に、カテーテル80の近位端を、組織ポケット内に既に配置されたポート70の場所に嵌合するようにトリミングすることができる。これは、ポート70を組織ポケット内の適所に残したまま、カテーテル80を取り外して交換することができるポートカテーテルシステムに特に関連する可能性がある。取り外し可能なポート/カテーテルシステムは、カテーテル80をポート70のステムに固定するように構成されたカスロック90又は同様のデバイスを含むことができる。
【0018】
本明細書に開示される実施形態は、カテーテル80の近位部分に対してカスロックデバイス(「カスロック」)90を安定化させ、皮下アクセスポート(「ポート」)70への取り付けのためにカテーテル80の近位部分を正確な長さにトリミングするように構成されたツール100を対象とする。有利なことに、本明細書に開示される実施形態は、カテーテルを安定化させ、カスロックを安定化させ、カテーテルをトリミングし、カテーテルをポートに取り付け、カテーテルを適所にロックするための単一のツールを提供する。
【0019】
図1A~
図1Cに示されるように、ツール100は、軸10に沿って延びる軸方向長さを画定するように第1の端部112から第2の端部114まで延びる細長いハンドル110を含むことができる。クレードル120は、ハンドル110の第2の端部114に配置することができ、かつ、カスロック90を内部で保持するように構成することができる。クレードル120は、中心軸10に対して垂直に延びるチャネル軸12を画定するチャネル122を含むことができる。クレードル120は、チャネル軸12に対して平行に延び、かつ、カスロック90のチャネル122への進入又はそこからの退出を可能にするように構成された細長い開口部124を含むことができる。
【0020】
チャネル122の内面126は、カスロック90又はその一部分の外面のプロファイルを反映するプロファイルを画定することができる。したがって、カスロック90は、チャネル122内にしっかりと嵌合して、内部でカスロック90を内部に保持することができる。一実施形態では、クレードルの内面126は、クレードル120とカスロック90との間の摩擦係数を増大させる可能性がある材料又はテクスチャ加工された表面、例えば、シリコーン、ゴムなどを含むことができる。一実施形態では、チャネル122は、チャネル軸12に沿った第1の方向におけるクレードル120に対するカスロック90の移動を制限するように構成されたテーパ状内面126を画定することができる。
【0021】
図5A~
図5Fは、例示的なカスロック90の様々な図を示す。上記のように、チャネル122の内側プロファイルは、カスロック90の外側プロファイルのものと一致することができ、したがって、チャネル122の内側プロファイルは、
図5A~
図5Fに示される例示的なカスロック90のうちの1つ以上を受け入れて保持するように構成することができる。しかしながら、これらの例示的なカスロック90は、限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。一実施形態では、カスロック90は、長手方向軸に沿って延びる実質的に円筒形状を画定することができる。カスロック90の外面の断面形状、すなわち、長手方向軸に対して垂直に延びる断面形状は、円形、楕円形、矩形、丸みを帯びた矩形、又はそれらの組み合わせとすることができる。しかしながら、カスロック90は、任意の規則的又は不規則な閉曲線多角形断面形状を画定し得ることが理解されるであろう。
【0022】
一実施形態では、カスロック90又はその一部分は、近位端と遠位端との間で減少する直径を含むテーパ形状を画定することができる。一実施形態では、カスロック90の外面92は、クレードル120に対するカスロック90の移動を制限するために、チャネル122の当接面に係合するように構成された当接部を画定する1つ以上の段差部分94を画定することができる。段差部分94は、長手方向軸を中心にして、カスロック90の一部分の周りに環状に延びることができる。一実施形態では、カスロックの外面は、クレードル120に対するカスロック90の移動を制限するために、チャネル122の当接面又は凹部に係合するように構成された当接部を画定する1つ以上の凸部(図示せず)を画定することができる。
【0023】
図2A~
図2Dは、クレードル120の更なる実施形態を示す。
図2Aに示されるように、一実施形態では、開口部124の幅xは、カスロック90の断面外径yよりも小さくすることができる。更に、クレードル120の材料は、弾性機械特性を含むことができる。したがって、カスロック90をツール100の軸10に沿って開口部124を通して押し進めることができ、クレードル120は、カスロック90がそこを通過し、チャネル122内に受容されることを可能にするように、わずかに柔軟に変形することができる。カスロック90がチャネル122内に配置されると、クレードルは、未変形の形状を回復し、カスロック90を内部に保持することができる。開口部の縁部、例えば上縁部124A又は下縁部124Bは、カスロック90の外面に当接して、カスロック90がクレードル120から時期尚早に係合解除されるのを防止することができる。同様に、カスロック90は、ツール100の軸10に沿ってカスロック90を押し出すことによって、開口部124を通してチャネル122から引き抜くことができる。これにより、クレードルがわずかに変形して、未変形の形状に戻ってカスロック90を係合解除する前に、カスロック90が開口部124を通過することを可能にすることができる。
【0024】
図2B~
図2Cに示されるように、クレードル90は、開口部124の縁部に回転可能に結合され、かつ、閉位置(
図2B)と開位置(
図2C)との間で移行可能な1つ以上のジョー134を更に含むことができる。一実施形態では、開口部124の幅xは、カスロック90の外径yと同じであってもよく、あるいはそれよりもわずかに大きくすることができる。したがって、開位置において、カスロック90は、開口部124を通って摺動してチャネル122内に受容され得る。クレードル120は、第1のジョー134Aと、開口部124を挟んで第1のジョー134Aの反対側に配置された第2のジョー134Bとを含むことができる。閉位置では、ジョー134A、134Bは、開口部の幅xを、カスロック90の直径yよりも小さい距離に収縮させるように開口部124に向かって内向きに回転し、カスロック90をチャネル122内で保持することができる。一実施形態では、第1のジョー134Aと第2のジョー134Bとは、閉位置では互いに接触することができる。開位置では、ジョー134A、134Bは、開口部124から離れるように外向きに回転することができ、開口部124の幅xが開き、カスロック90のチャネル122への進入/そこからの退出が可能になる。
【0025】
一実施形態では、ジョー134は、ハンドル110の第1の端部112の近位に配置されたアクチュエータ170に動作可能に結合することができる。アクチュエータ170は、本明細書により詳細に記載されるように、ユーザがジョー134を開位置と閉位置との間で移行させることを可能にするように構成されている。一実施形態では、ジョー134は、ジョー134とカスロック90との間の摩擦係数を増大させ、かつ、カスロック90をチャネル122内で保持することを容易にするために、ゴム、シリコーン、又は同様の材料を含むことができる。
【0026】
図2Dに示されるように、一実施形態では、クレードル90は、チャネル122の壁内に配置され、かつ、伸長位置(例えば、第1のグリップ136A)と後退位置(例えば、136B)との間で移行可能な1つ以上のグリップ136、例えば、第1のグリップ136A及び第2のグリップ136Bを更に含むことができる。一実施形態では、グリップ136A、136Bは、両方とも伸長位置にあってもよく、あるいは、両方とも後退位置にあってもよいことに留意されたい。グリップ136は、チャネル軸12と、チャネル122からのカスロック90の進入/退出の方向、すなわち、ツール100の軸10、との両方に対して垂直に延びる軸に沿って、伸長位置と後退位置との間で移行することができる。伸長位置において、グリップ136A、136Bは、カスロック90の外面に衝突し、カスロック90を反対側のグリップ136及び/又はチャネル122の反対側の壁に押し付け、カスロック90をチャネル122内で保持することができる。後退位置において、グリップ136A、136Bをチャネル122の壁内の凹部へと引き込むことができ、カスロック90が解除され、カスロック90のチャネル122への進入/そこからの退出が可能になる。
【0027】
一実施形態では、グリップ136は、ハンドル110の近位端の近位に配置されたアクチュエータ170に動作可能に結合することができる。アクチュエータ170は、本明細書により詳細に記載されるように、ユーザがグリップ136を伸長位置と後退位置との間で移行させることを可能にするように構成されている。一実施形態では、グリップ136は、グリップ136とカスロック90との間の摩擦係数を増大させ、かつ、カスロック90をチャネル122内で保持することを容易にするために、ゴム、シリコーン、又は同様の材料を含むことができる。
【0028】
図1A及び
図3A~
図3Bに示されるように、ツール100は、クレードル120の近位でツール100と動作可能に結合され、かつ、チャネル軸12に沿ってクレードル120を通って延びるカテーテル80の一部分を選択的に保持するように構成されたクランプデバイス(「クランプ」)150を更に含むことができる。クランプ150は、開位置(
図3A)と閉位置(
図3B)との間で移行することができる。クランプ150が開位置にある状態で、カテーテル80の一部分は、チャネル軸12に沿って、妨げられずにチャネル122を通過することができる。閉位置において、クランプ150は、カテーテル80の一部分を把持して、ツール100に対するカテーテル80の移動を阻止することができる。
【0029】
一実施形態では、クランプ150は、第1のクランプ部材150A及び第2のクランプ部材150Bを含むことができる。クランプ150を開位置と閉位置との間で移行させるために、第1のクランプ部材150A又は第2のクランプ部材150Bの一方をツールに回転可能に結合することができる。一実施形態では、クランプ150は、ユーザがクランプ150を開位置と閉位置との間で移行させることを可能にするように、アクチュエータ170に動作可能に結合することができる。一実施形態では、クランプ150は、クランプ150とカテーテル80との間の摩擦係数を増大させる可能性がある材料又はテクスチャ加工された表面、例えば、シリコーン、ゴムなどを含むことができる。一実施形態では、クランプ150は、クランプ150を開位置又は閉位置の一方に向かって付勢するように構成された付勢部材、例えばばねなどを含むことができる。
【0030】
ツール100と摺動可能に係合された摺動部材、カテーテル80の周りを取り囲んで締め付けるように構成されたワイヤ部材、ツール100の一部分に対してカテーテルを圧縮するように構成された圧縮部材、これらの組み合わせなどを含む、様々なクランプ機構が本発明の範囲に含まれることが企図されていることを理解されるであろう。
【0031】
図1A及び
図4A~
図4Bに示されるように、ツール100は、クレードル120の近位でツール100と動作可能に結合され、かつ、チャネル122を通って延びるカテーテル80をトリミングするように構成された切断部材150を更に含むことができる。一実施形態では、切断部材160は、切断部材160の鋭利な切断縁部162が第1の位置(
図4A)と第2の位置(
図4B)との間でチャネル軸12を横切って移行することができるように、ツール100と回転可能に結合することができる。一実施形態では、切断部材160は、ユーザが切断部材160を第1の位置と第2の位置との間で移行させることを可能にするように、アクチュエータ170に動作可能に結合することができる。
【0032】
一実施形態では、切断部材160は、切断部材160を第1の位置又は第2の位置の一方に向かって付勢するように構成された付勢部材、例えばばねなどを含むことができる。例えば、付勢部材は、切断部材160を第1の位置に向かって付勢することができ、ユーザは、切断部材160を第2の位置に移行させ、切断部材160を横切って延びるカテーテル80の一部分を切断するために、アクチュエータ170を作動させることができる。ユーザがアクチュエータ170を解除すると、付勢部材は、切断部材160を第2の位置から第1の位置に移行させることができる。
【0033】
一実施形態では、付勢部材は、切断部材160を第2の位置に向かって付勢することができる。切断部材160は、トリガによって第1の位置で保持することができる。ユーザは、トリガを解除し、付勢部材が切断部材160を第1の位置から第2の位置に移行させるために、アクチュエータ170を作動させることを可能にすることができる。任意選択で、アクチュエータ170は、トリガが切断部材160を第1の位置で保持することができるように、切断部材160を第2の位置から第1の位置にリセットするように構成することができる。
【0034】
ツール100と摺動可能に係合された摺動切断部材、カテーテル80の一部分を通って切断するためにカテーテル80の周りを取り囲んで締め付けるように構成されたワイヤ部材、ツールと回転可能に結合され、かつ、互いに対して反対方向に回転するように構成されたはさみ状の切断部材、それの組み合わせなどを含む、様々な切断機構160が本発明の範囲に含まれ、企図されうることが理解されるであろう。
【0035】
図1A~
図1Cに示されるように、一実施形態では、ツール100は、ジョー134、グリップ136、クランプ機構150、切断部材160、又はこれらの組み合わせのうちの1つを作動させるように構成された1つ以上のアクチュエータ170を含むことができる。一実施形態では、1つ以上のアクチュエータ170は、レバー(例えば、第1のアクチュエータ172)、ボタン(例えば、第2のアクチュエータ174、第3のアクチュエータ176)、スイッチ、ロッカースイッチ、スライダ、スピンナット、これらの組み合わせなどとすることができる。一実施形態では、第1のアクチュエータ172は、ジョー134、グリップ136、又はこれらの組み合わせのうちの1つに動作可能に結合することができる。第2のアクチュエータ174は、クランプ機構150に動作可能に結合することができ、第3のアクチュエータ176は、切断機構160に動作可能に結合することができる。
【0036】
一実施形態では、第1のアクチュエータ172は、ジョー134又はグリップ136のうちの1つ、並びにクランプ機構150に動作可能に結合することができる。例えば、第1のアクチュエータ172を第1の位置から第2の位置に移動させて、ジョー134又はグリップ136のうちの1つを作動させることができ、次いで、第3の位置に移動させて、クランプ機構150を作動させることができる。第2のアクチュエータ174は、切断機構160に動作可能に結合することができる。任意選択で、ツール100は、ツール100の把持及び操作を容易にするように構成されたフィンガーループ190又は同様の構造を含むことができる。
【0037】
本明細書で使用される場合、「動作可能に結合される」は、機構を動作させるように構成された歯車、レバー、機構、付勢部材、ばね、電気モータ、配線、スイッチ、電源などを含むことができる。例えば、アクチュエータ170は、ハンドル110の内部に配置されたアクチュエータアーム(図示せず)の第1の端部に回転可能に結合されたレバーを含むことができる。第1の端部の反対側にあるアームの第2の端部は、ジョー134、グリップ136、クランプ機構150、切断部材160、又はそれらの組み合わせのうちの1つと結合され得る。アクチュエータ170を作動させることにより、ハンドル110の内部でアームを移動させて、本明細書に説明されるように、ジョー134、グリップ136、クランプ機構150、切断部材160、又はそれらの組み合わせのうちの1つを作動させることができ、例えば、ジョーを開放と閉鎖との間で、又はグリップを伸長と後退との間で移行させるなどである。一実施形態では、アクチュエータ170は、モータ、サーボ機構、又は同様のデバイスを作動させるために電気回路を閉じるように構成されたスイッチを含むことができる。モータは、ハンドル110の内部に配置され、本明細書に記載されるように、ジョー134、グリップ136、クランプ機構150、切断部材160、又はそれらの組み合わせのうちの1つを作動させるように構成することができ、例えば、ジョーを開放と閉鎖との間で、又はグリップを伸長と後退との間で移行させるなどである。
【0038】
図6A~
図6Eに示されるように、例示的な使用方法では、本明細書で説明するカスロック留置ツール100は、カスロック90を保持し、カテーテル80の近位部分を安定化させてトリミングし、カテーテルをポート70のステム72に結合し、カスロック90を用いてカテーテル80をそこに固定することができる。一実施形態では、カテーテル80の遠位部分を患者の脈管構造内の標的場所に留置することができる。カテーテル80の近位端は、ポート70を内部に留置した状態で組織ポケットに隣接する切開部位から伸長することができる。
【0039】
図6Aに示されるように、ツール100のクレードル120内にカスロック90を配置することができる。本明細書に記載されるように、チャネル122の形状は、カスロック90がクレードル120内にしっかりと嵌合するように、カスロック90の外側プロファイルを反映することができる。一実施形態では、ユーザは、チャネル122内にカスロック90を保持するために、アクチュエータ170を使用してジョー134又はグリップ136の一方を作動させることができる。一実施形態では、ユーザは、チャネル122内にカスロック90を保持するために、第1のアクチュエータ172を第1の位置から第2の位置へと作動させることができる。次いで、ユーザは、ツール100を操作して、カテーテル80の近位部分を、クレードル120内に配置されたカスロック90の管腔96の中に通すことができる。
【0040】
図6Bに示されるように、ユーザは、ツール100を操作して、カテーテル90の長さに沿った好適な位置に、カスロック90を配置することができる。
図6Cに示されるように、ユーザは、次いで、把持機構150を作動させてカスロック90及びツール100に対してカテーテル80を安定化させるために、1つ以上のアクチュエータ170を作動させることができる。一実施形態では、ユーザは、カテーテル80をカスロック90及びツール100に対して安定させるために、第1のアクチュエータ172を第3の位置へと作動させることができる。
【0041】
次いで、ユーザは、切断機構160を作動させてカテーテル80の近位部分を正確な長さにトリミングするために、アクチュエータ170を作動させることができる。例えば、ユーザは、切断機構160を作動させてカテーテル80の近位部分を正確な長さにトリミングするために、第2のアクチュエータ174を作動させることができる。有利なことに、カスロック90がツール100と係合されているので、カスロック90をカテーテル80に対して正確に位置決めし、次いで、把持機構150によってカテーテル80をカスロック90に対して安定化する場合、切断部材160は、カテーテル80の近位部分を正確な長さにトリミングするために正確に位置決めされる。
【0042】
図6Dに示されるように、次いで、カスロック90とカテーテル80の両方を内部に保持した状態のツール100を使用して、トリミングされたカテーテル80をポートステム72に押し付けてカスロック90を適所に固定し、カテーテル80をポート70に固定することができる。有利なことに、ツール100は、カテーテル80とカスロック90の両方を同時に固定することができ、ユーザが組織ポケット内でカテーテル80及びカスロック90をより容易に操作することが可能になる。更に、ツール100は、カテーテル80/カスロック90を保持し、ポートステム72に押し付けてこの作用を増大させる。
【0043】
図6Eに示されるように、カスロック90が適所にカテーテル80をポートにロックしている状態で、ユーザは、カテーテル80又はカスロック90の一方を解除し、カスロック90からツール100を引き抜くが、開口部124を通してカスロック90を押し出すために、アクチュエータ170(単数又は複数)を作動又は解除することができる。
【0044】
いくつかの特定の実施形態が本明細書で開示されており、それら特定の実施形態が、ある程度詳細に開示されているが、それら特定の実施形態が、本明細書で提供される構想の範囲を限定することは意図されていない。更なる適合及び/又は修正が、当業者には明らかとなる可能性があり、より広範な態様においては、これらの適合及び/又は修正も同様に包含される。したがって、本明細書で提供される構想の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される特定の実施形態からの展開を実施することができる。
【国際調査報告】