(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】FMCW-LIDARシステムの共役焦点面における同軸ローカルオシレータの生成
(51)【国際特許分類】
G01S 17/34 20200101AFI20231023BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G01S17/34
G01S7/481 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023518868
(86)(22)【出願日】2021-09-21
(85)【翻訳文提出日】2023-05-19
(86)【国際出願番号】 US2021051268
(87)【国際公開番号】W WO2022066623
(87)【国際公開日】2022-03-31
(32)【優先日】2020-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521095112
【氏名又は名称】エヴァ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】ガニエ キース
(72)【発明者】
【氏名】アヴチ オグザン
(72)【発明者】
【氏名】ベーザディ ベーサン
(72)【発明者】
【氏名】レズク ミナ
(72)【発明者】
【氏名】ポロック ケビン
(72)【発明者】
【氏名】ヒックス ピエール
(72)【発明者】
【氏名】プラバカール ガウタム
【テーマコード(参考)】
5J084
【Fターム(参考)】
5J084AA05
5J084AA07
5J084AA10
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA31
5J084BA48
5J084BB02
5J084BB15
5J084BB28
5J084BB34
5J084BB35
5J084CA08
5J084EA01
5J084EA22
(57)【要約】
本発明の一態様によるLIDARシステムは、光ビームを放射する光源と、前記光源に連携して前記光ビームを第1焦点面に集束させる自由空間光学系とを備える。ローカルオシレータ(LO)信号は、前記第1焦点面に近接する位置に配置される部分反射面から前記光ビームの部分反射によって生成され、前記光ビームの透過部分は、スキャンターゲット環境に向けられてターゲットリターン信号を発生させる。前記自由空間光学系は、前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を第1焦点面の共役焦点面である第2焦点面に集束させる。前記LIDARシステムはまた、前記共役焦点面である第2焦点面に近接する位置に配置される受光面を有し、この受光面で前記LO信号を前記ターゲットリターン信号に混合してターゲット情報を生成する光検出器を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出および測距(LIDAR)システムであって、
光ビームを放射する光源と、
前記光源に連携して前記光ビームを第1焦点面に集束させるとともに、前記第1焦点面に近接する位置に配置される部分反射面から前記光ビームの部分反射によってローカルオシレータ(LO)信号を発生させ、かつ、前記光ビームの透過部分をスキャンターゲット環境に向けてターゲットリターン信号を発生させ、前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を第1焦点面の共役焦点面である第2焦点面に集束させる、自由空間光学系と、
前記共役焦点面である第2焦点面に近接する位置に配置される受光面を有し、この受光面で前記LO信号を前記ターゲットリターン信号に混合してターゲット情報を生成する光検出器と、を備える、LIDARシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、
前記自由空間光学系は、
前記光ビームを第1レンズ系に伝送するとともに、この第1レンズ系を通して前記光ビームを前記第1焦点面に集束させる偏光ビームスプリッタ(PBS)と、
前記光ビームから前記LO信号を発生させる前記部分反射面を有し、前記LO信号を、前記第1レンズ系を通して前記偏光ビームスプリッタ(PBS)に向けて反射する光学ウィンドウと、を備える、LIDARシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のシステムであって、
前記自由空間光学系は、
前記PBSから向けられる前記LO信号を導く第2レンズ系であって、前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を前記第2焦点面に集束させる第2レンズ系を備える、LIDARシステム。
【請求項4】
請求項3に記載のシステムであって、
前記自由空間光学系は、
前記光ビームの透過部分をコリメートする第3レンズ系と、
前記第3レンズ系と連携して、前記光ビームの透過部分でターゲット環境をスキャンするとともに、このターゲットリターン信号を逆スキャンして前記第3レンズ系を通して第1焦点面に集束させ、かつ、前記第1レンズ系により前記LO信号および前記ターゲットリターン信号をコリメートし、前記PBSにより前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を第2レンズ系に導く光スキャナと、を備える、LIDARシステム。
【請求項5】
請求項2に記載のシステムであって、
前記部分反射面は、前記第1焦点面から離れた位置に配置される、LIDARシステム。
【請求項6】
請求項2に記載のシステムであって、
前記光検出器は、前記第2焦点面から離れた位置に配置される、LIDARシステム。
【請求項7】
光検出および測距(LIDAR)システムにおける方法であって、
第1焦点面に光ビームを集束させるステップ;
前記第1焦点面に近接する位置に配置される部分反射面から前記光ビームの一部を反射させることにより、ローカルオシレータ(LO)信号を生成し、前記光ビームの透過部分をスキャンターゲット環境へ向けるステップ;
前記LO信号および前記光ビームの透過部分によるターゲットリターン信号を、前記第1焦点面に共役な第2焦点面に集束させるステップ;および
前記第2焦点面に近接する位置に配置される光検出器により前記LO信号を前記ターゲットリターン信号に混合し、ターゲット情報を生成するステップ、を備える、LIDARシステムにおける方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
コヒーレント光源で前記光ビームを生成するステップ;
偏光ビームスプリッタ(PBS)を通して前記光ビームを前記第1レンズ系に伝送し、同第1レンズ系を通して前記光ビームを第1焦点面に集束させ、かつ、前記部分反射面を有する光学ウィンドウに前記光ビームを通す一方、前記部分反射面で前記光ビームの一部である前記LO信号を前記第1レンズ系を通して反射させるステップ、を備える、LIDARシステムにおける方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、
前記偏光ビームスプリッタ(PBS)で前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を反射させて第2レンズ系に導き、この第2レンズ系の第2焦点面に前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を集束させる、LIDARシステムにおける方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、
第3レンズ系を用いて前記光ビームの透過部分をコリメートするステップ;
前記光ビームの透過部分でターゲット環境をスキャンするステップ;
前記スキャンによるターゲットリターン信号を逆スキャンするステップ;および、
前記第3レンズ系を用いて前記ターゲットリターン信号を前記第1焦点面に集束させるステップ、を備える、LIDARシステムにおける方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記第1レンズ系を用いて前記LO信号および前記ターゲットリターン信号をコリメートするステップ;および
コリメートされた前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を前記PBSを用いて前記第2レンズ系に導き、これらのLO信号およびターゲットリターン信号を前記第2レンズ系を通して前記第2焦点面に集束させるステップ、を備える、LIDARシステムにおける方法。
【請求項12】
請求項7に記載の方法であって、
前記部分反射面は、前記第1焦点面から離れた位置に配置される、LIDARシステムにおける方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法であって、
前記光検出器は、前記第2焦点面から離れた位置に配置される、LIDARシステムにおける方法。
【請求項14】
光検出および測距(LIDAR)システムであって、
プロセッサと、
このプロセッサによって実行されると、前記LIDARシステムに以下の動作をさせる命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体と、を備える、LIDARシステム。
第1焦点面に光ビームを集束させる。;
前記第1焦点面に近接する位置に配置される部分反射面から前記光ビームの一部を反射させることにより、ローカルオシレータ(LO)信号を生成し、前記光ビームの透過部分をスキャンターゲット環境へ向ける。;
前記LO信号および前記光ビームの透過部分によるターゲットリターン信号を、前記第1焦点面に共役な第2焦点面に集束させる。;および
前記第2焦点面に近接する位置に配置される光検出器により前記LO信号を前記ターゲットリターン信号に混合し、ターゲット情報を生成する。
【請求項15】
請求項14に記載のシステムであって、
コヒーレント光源で前記光ビームを生成し、;
偏光ビームスプリッタ(PBS)を通して前記光ビームを前記第1レンズ系に伝送し、 同第1レンズ系を通して前記光ビームを第1焦点面に集束させ、かつ、前記部分反射面を有する光学ウィンドウに前記光ビームを通す一方、前記部分反射面で前記光ビームの一部である前記LO信号を前記第1レンズ系を通して反射させる、LIDARシステム。
【請求項16】
請求項15に記載のシステムであって、
前記偏光ビームスプリッタ(PBS)で前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を反射させて第2レンズ系に導き、この第2レンズ系の第2焦点面に前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を集束させる、LIDARシステム。
【請求項17】
請求項16に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、前記非一時的なコンピュータ可読媒体の命令により前記LIDARシステムにさらに以下の動作をさせる、LIDARシステム。
第3レンズ系を用いて前記光ビームの透過部分をコリメートする;
前記光ビームの透過部分でターゲット環境をスキャンする;
前記スキャンによるターゲットリターン信号を逆スキャンする;および、
前記第3レンズ系を用いて前記ターゲットリターン信号を前記第1焦点面に集束させる。
【請求項18】
請求項17に記載のシステムであって、
前記プロセッサは、前記非一時的なコンピュータ可読媒体の命令により前記LIDARシステムに以下の動作をさせる、LIDARシステム。
前記第1レンズ系を用いて前記LO信号および前記ターゲットリターン信号をコリメートする;および
コリメートされた前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を前記PBSを用いて前記第2レンズ系に導き、これらのLO信号およびターゲットリターン信号を前記第2レンズ系を通して前記第2焦点面に集束させる。
【請求項19】
請求項14に記載のシステムであって、
前記部分反射面は、前記第1焦点面から離れた位置に配置される、LIDARシステム。
【請求項20】
請求項14に記載のシステムであって、
前記光検出器は、前記第2焦点面から離れた位置に配置される、LIDARシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許法第119条(e)に基づき2020年9月24日に出願された米国特許出願第17/031,515号の優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、光検出および測距(LIDAR)システム全般に関し、詳しくは、自由空間光学系(フリースペースオプティクス)の共役焦点面における同軸ローカルオシレータ(LO)信号の生成に関する。
【背景技術】
【0003】
周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムは、ターゲットに向けて周波数変調された光を照射するために波長可変レーザを使用し、またターゲットからの後方散乱光または反射光を検出するために送信信号(LO信号)のローカルコピーを有するコヒーレント受信器を使用する。そして、同受信器において、同LO信号と、ターゲットまでの往復時間だけ遅延し戻るリターン信号とを混合し、それにより、システムの視野内における各ターゲットまでの距離に比例したビート周波数を生成する。
【0004】
このようなLIDARシステムでは、高速ミラーを備えた光スキャナを使用して視野(FOV)をスキャンし、FOVからのターゲットリターン信号を逆スキャンする。ミラーの速度が増加すると、ターゲットとの信号往復時間中のミラーの動きによりLO信号とターゲットのリターン信号の間に空間的なズレが生じ、その結果、信号を混合するために使用される光検出器の空間混合効率が低下する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、本発明の態様、すなわち、同軸LO信号およびターゲットリターン信号の空間混合効率の低下を改善するためのLIDARシステムおよびその方法に係る各発明の態様について説明する。
【0006】
本発明の一態様によるLIDARシステムは、光ビームを放射する光源と、前記光源に連携して前記光ビームを第1焦点面に集束させる自由空間光学系とを備える。
ローカルオシレータ(LO)信号は、前記第1焦点面に近接する位置に配置される部分反射面から前記光ビームの部分反射によって生成され、前記光ビームの透過部分は、スキャンターゲット環境に向けられてターゲットリターン信号を発生させる。前記自由空間光学系は、前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を第1焦点面の共役焦点面である第2焦点面に集束させる。
前記LIDARシステムはまた、前記共役焦点面である第2焦点面に近接する位置に配置される受光面(検出面)を有し、この受光面で前記LO信号を前記ターゲットリターン信号に混合してターゲット情報を生成する光検出器を備える。
【0007】
本発明の一態様において、前記自由空間光学系は、前記光ビームを第1レンズ系に伝送するとともに、この第1レンズ系を通して前記光ビームを前記第1焦点面に集束させる偏光ビームスプリッタ(PBS)を備える。
前記自由空間光学系はまた、前記光ビームから前記LO信号を発生させる前記部分反射面を有し、かつ前記LO信号を、前記第1レンズ系を通して前記偏光ビームスプリッタ(PBS)に向けて反射する光学ウィンドウを備える。
【0008】
本発明の一態様において、前記自由空間光学系は、前記PBSから向けられる前記LO信号を導く第2レンズ系であって、前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を前記第2焦点面に集束させる第2レンズ系を備える。
【0009】
本発明の一態様において、前記自由空間光学系は、前記光ビームの透過部分をコリメートする第3レンズ系と、前記第3レンズ系と連携して、前記光ビームの透過部分でターゲット環境をスキャンするとともに、このターゲットリターン信号を逆スキャンする光スキャナとを備える。
前記第3レンズ系は、前記ターゲットリターン信号を第1焦点面に集束させ、前記第1レンズ系は、前記LO信号および前記ターゲットリターン信号をコリメートし、前記PBSは、前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を第2レンズ系に導く。
【0010】
本発明の一態様において、前記部分反射面は、前記第1焦点面から離れた位置に配置される。
【0011】
本発明の一態様において、前記光検出器の受光面は、前記第2焦点面から離れた位置に配置される。
【0012】
本発明の一態様によるLIDARシステムにおける方法は、
第1焦点面に光ビームを集束させるステップ;
前記第1焦点面に近接する位置に配置される部分反射面から前記光ビームの一部を反射させることにより、ローカルオシレータ(LO)信号を生成し、前記光ビームの透過部分をスキャンターゲット環境へ向けるステップ;
前記LO信号および前記光ビームの透過部分によるターゲットリターン信号を、前記第1焦点面に共役な第2焦点面に集束させるステップ;および
前記第2焦点面に近接する位置に配置される光検出器により前記LO信号を前記ターゲットリターン信号に混合し、ターゲット情報を生成するステップ、を備える。
【0013】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムにおける方法は、
コヒーレント光源で前記光ビームを生成するステップ;
偏光ビームスプリッタ(PBS)を通して前記光ビームを前記第1レンズ系に伝送し、同第1レンズ系を通して前記光ビームを第1焦点面に集束させ、かつ、前記部分反射面を有する光学ウィンドウに前記光ビームを通す一方、前記部分反射面で前記光ビームの一部である前記LO信号を前記第1レンズ系を通して反射させるステップ、を備える。
【0014】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムにおける方法は、
前記偏光ビームスプリッタ(PBS)で前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を反射させて第2レンズ系に導き、この第2レンズ系の第2焦点面に前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を集束させる。
【0015】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムにおける方法は、
第3レンズ系を用いて前記光ビームの透過部分をコリメートするステップ;
前記光ビームの透過部分でターゲット環境をスキャンするステップ;
前記スキャンによるターゲットリターン信号を逆スキャンするステップ;および、
前記第3レンズ系を用いて前記ターゲットリターン信号を前記第1焦点面に集束させるステップ、を備える。
【0016】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムにおける方法は、
前記第1レンズ系を用いて前記LO信号および前記ターゲットリターン信号をコリメートするステップ;および
コリメートされた前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を、前記PBSを用いて前記第2レンズ系に導き、これらのLO信号およびターゲットリターン信号を前記第2レンズ系を通して前記第2焦点面に集束させるステップ、を備える。
【0017】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムにおける方法は、前記部分反射面が前記第1焦点面から離れた位置に配置される。
【0018】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムにおける方法は、前記光検出器の受光面が前記第2焦点面から離れた位置に配置される。
【0019】
本発明の一態様によるLIDARシステムは、
プロセッサと、
このプロセッサによって実行されると、前記LIDARシステムに以下の動作をさせる命令を格納する非一時的なコンピュータ可読媒体と、を備える。
第1焦点面に光ビームを集束させる。;
前記第1焦点面に近接する位置に配置される部分反射面から前記光ビームの一部を反射させることにより、ローカルオシレータ(LO)信号を生成し、前記光ビームの透過部分をスキャンターゲット環境へ向ける。;
前記LO信号および前記光ビームの透過部分によるターゲットリターン信号を、前記第1焦点面に共役な第2焦点面に集束させる。;および
前記第2焦点面に近接する位置に配置される光検出器により前記LO信号を前記ターゲットリターン信号に混合し、ターゲット情報を生成する。
【0020】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムに命令される動作はまた、以下を含む。
コヒーレント光源で前記光ビームを生成し、;
偏光ビームスプリッタ(PBS)を通して前記光ビームを前記第1レンズ系に伝送し、同第1レンズ系を通して前記光ビームを第1焦点面に集束させ、かつ、前記部分反射面を有する光学ウィンドウに前記光ビームを通す一方、前記部分反射面で前記光ビームの一部である前記LO信号を、前記第1レンズ系を通して反射させる。
【0021】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムに命令される動作はまた、前記偏光ビームスプリッタ(PBS)で前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を反射させて第2レンズ系に導き、この第2レンズ系の第2焦点面に前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を集束させることを含む。
【0022】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムに命令される動作はまた、以下を含む。
第3レンズ系を用いて前記光ビームの透過部分をコリメートする;
前記光ビームの透過部分でターゲット環境をスキャンする;
前記スキャンによるターゲットリターン信号を逆スキャンする;および、
前記第3レンズ系を用いて前記ターゲットリターン信号を前記第1焦点面に集束させる。
【0023】
本発明の一態様において、前記LIDARシステムに命令される動作はまた、以下を含む。
前記第1レンズ系を用いて前記LO信号および前記ターゲットリターン信号をコリメートする;および
コリメートされた前記LO信号および前記ターゲットリターン信号を、前記PBSを用いて前記第2レンズ系に導き、これらのLO信号およびターゲットリターン信号を、前記第2レンズ系を通して前記第2焦点面に集束させる。
【0024】
本発明の一態様において、前記光学ウィンドウの部分反射面は、前記第1焦点面から離れた位置に配置される。
【0025】
本発明の一態様において、前記光検出器の受光面は、前記第2焦点面から離れた位置に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の種々の態様を明確にするために、後述の詳細な説明(実施形態)で参照される図面を示す。なお図中の同一の符号は同一の構成要素である。
【0027】
【
図1】本発明の実施形態によるFMCW-LIDARシステムを示すブロック図である。
【0028】
【
図2】本発明の実施形態によるFMCW-LIDAR波形の一例を示す時間-周波数図である。
【0029】
【
図3】本発明の実施形態によるLIDARシステムの光学系の一例を示すブロック図である。
【0030】
【
図4】本発明の実施形態によるLIDARシステムの光学系の一例を示すブロック図である。
【0031】
【
図5】本発明の実施形態によるLIDARシステムの光学系の一例を示すブロック図である。
【0032】
【
図6】本発明の実施形態によるLIDARシステムの光学系の一例を示すブロック図である。
【0033】
【
図7】本発明の実施形態によるLIDARシステムの光学系の一例を示すブロック図である。
【0034】
【
図8】本発明の実施形態によるLIDARシステムの光学系の一例を示すブロック図である。
【0035】
【
図9】本発明の実施形態によるLIDARシステムの光学系の一例を示すブロック図である。
【0036】
【
図10】本発明の実施形態によるLIDARシステムの光学系の一例を示すブロック図である。
【0037】
【
図11】本開示の実施形態によるLIDARシステムのレンズ系の一例を示すブロック図である。
【0038】
【
図12】本発明の実施形態によるLIDARシステムの光学系の一例を示すブロック図である。
【0039】
【
図13】本発明の実施形態によるLIDARシステムの方法を示すもので、共役焦点面における同軸ローカルオシレータの設定方法の一例を示すフローチャートである。
【0040】
【
図14】本発明の実施形態によるLIDARシステムの処理系を示すもので、共役焦点面における同軸ローカルオシレータの構成例を示すブロック図である。
【0041】
【
図15】本発明の実施形態によるLIDARシステムのマルチビーム光学系の一例を示すブロック図である。
【0042】
【
図16】本発明の実施形態によるLIDARシステムのマルチビーム光学系の一例を示すブロック図である。
【0043】
【
図17】本発明の実施形態によるLIDARシステムのマルチビーム光学系の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態によるLIDARシステムおよびその方法、すなわち、同軸LO信号およびターゲットリターン信号の空間混合効率の低下を改善するためのLIDARシステムおよびその方法について説明する。
本発明の実施形態におけるLIDARシステムは、輸送、製造、計測、医療、セキュリティシステムなど、任意のセンシング市場において実施することができるが、これらに限定されるものではない。その他、実施形態で説明されるLIDARシステムは、自動運転支援システムや自動運転車の空間認識を支援する周波数変調連続波(FMCW)デバイスのフロントエンドの一部として実装される。
図1は、一実施態様によるLIDARシステム100を示している。
LIDARシステム100は、多数の構成要素のいずれか1つまたは複数を含むが、
図1に示すよりも少ない構成要素または追加の構成要素を含んでもよい。
図1に示すように、LIDARシステム100は、フォトニクスチップ上に実装された光学回路101を有する。光学回路101には、能動光学構成要素と受動光学構成要素との組み合わせが含まれている。能動光学構成要素は、光信号などを生成、増幅、および/または検出する。いくつかの例では、能動光学構成要素は、異なる波長の光ビームを有し、1つ以上の光増幅器、1つ以上の光検出器などを含んでいる。
【0045】
自由空間光学系115には、光信号を伝送し、能動光回路の適切な入力/出力ポートに光信号をルーティングして操作するための1つ以上の光導波路が含まれている。自由空間光学系115には、タップ、波長分割マルチプレクサ(WDM)、スプリッタ/コンバイナ、偏光ビームスプリッタ(PBS)、コリメータ、カプラなどの1以上の光学構成要素が含まれている。一態様では、自由空間光学系115には、偏光状態を変換し、受信した偏光を、例えば、PBSを使用して光検出器に導くための構成要素が含まれている。また、自由空間光学系115には、異なる周波数を有する光ビームを軸(例えば、高速軸)に沿って異なる角度で偏向させる回折素子がさらに含まれる場合がある。
【0046】
本実施形態のLIDARシステム100は、1つ以上のスキャニングミラーを有する光スキャナ102を備えている。これらのスキャニングミラーは、スキャニングパターンに従って環境をスキャンする光信号を誘導するために、回折素子の高速軸に直交または実質的に直交する軸(例.低速軸)に沿って回転可能になっている。例えば、スキャニングミラーは、1つ以上のガルバノメータによって回転可能である。
例えば、リターン光ビームは、偏光ビームスプリッタによって光検出器に向けられる。なお、光スキャナ102には、ミラーやガルバノメータに加えて、1/4波長板、レンズ、反射防止コーティングされた光学ウィンドウなどが含まれる場合がある。
【0047】
LIDARシステム100には、光学回路101および光スキャナ102を制御およびサポートするために、LIDAR制御装置110が設けられている。LIDAR制御装置110には、LIDARシステム100に必要な処理装置が含まれている。
一態様では、処理装置は、マイクロプロセッサ、中央処理装置などの1つ以上の汎用処理装置であり、具体的には、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピューティング(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、または他の命令セットを実装するプロセッサ、または命令セットの組み合わせを実装するプロセッサである。
また、上記処理装置は、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:現場プログラム可能ゲートアレイ)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサ等の特殊用途処理装置の1つ以上であってもよい。
【0048】
一態様では、LIDAR制御装置110には、DSPなどの信号処理ユニット112が設けられる。これにより、LIDAR制御装置110は、光学ドライバ103を制御するためのデジタル制御信号を出力する。そのデジタル制御信号は、信号変換ユニット106を介してアナログ信号に変換される。例えば、信号変換ユニット106には、デジタル/アナログ変換器が含まれる。
光学ドライバ103は、光学回路101の能動光学構成要素に駆動信号を供給し、レーザや増幅器などの光源を駆動する。一態様では、複数の光源を駆動するために、複数の光学ドライバ103および信号変換ユニット106を設けてもよい。
【0049】
LIDAR制御装置110はまた、光スキャナ102に対してデジタル制御信号を出力するように構成されている。モーション制御装置105は、LIDAR制御装置110から受信した制御信号に基づいて、光スキャナ102のガルバノメータを制御することができる。具体的には、デジタル/アナログ変換器を使用して、LIDAR制御装置110からの座標ルーティング情報を、光スキャナ102のガルバノメータによって処理可能な信号に変換することができる。
一態様では、モーション制御装置105は、光スキャナ102の構成要素の位置または動作に関する情報をLIDAR制御装置110に送り返すこともできる。具体的には、アナログ/デジタル変換器を使用して、ガルバノメータの位置に関する情報をLIDAR制御装置110が処理可能な信号に順次変換することができる。
【0050】
LIDAR制御装置110は、さらに、入力されたデジタル信号を解析するように構成されている。これに関連して、LIDARシステム100には、光学回路101によって受信された1つ以上のビームを測定するための光受信器104が設けられている。具体的には、光受信器104としての基準ビーム受信器は、能動光学構成要素からの基準ビームの振幅を測定し、アナログ/デジタル変換器により同基準ビーム受信器からの信号を、LIDAR制御装置110によって処理可能な信号に変換する。
また、光受信器104としてのターゲット受信器は、ビート周波数変調光信号の形でターゲットの距離と速度に関する情報を搬送する光信号を計測する。この場合、光信号の反射ビームは、ローカルオシレータ(LO)信号と混合されてもよい。光受信器104には、ターゲット受信器からの信号をLIDAR制御装置110によって処理可能な信号に変換する高速アナログ/デジタル変換器を設けることができる。
一態様では、光受信器104からの信号は、LIDAR制御装置110に受信される前に、信号調整ユニット107による信号調整の対象となり得る。例えば、光受信器104からの信号は、リターン信号の増幅のために信号調整ユニット107のオペアンプに供給され、そのオペアンプによって増幅された信号がLIDAR制御装置110に供給されるようにしてもよい。
【0051】
一部のアプリケーションでは、LIDARシステム100には、環境の画像をキャプチャするように構成された1つ以上の撮像装置108、同システムの地理的位置を提供するように構成された全地球測位システム(GPS)109、または他のセンサ入力を追加的に設けることもできる。
また、LIDARシステム100には画像処理装置114を設けることができる。この場合、同画像処理装置114は、撮像装置108および全地球測位システム(GPS)109から画像および地理的位置を受信し、画像および位置またはそれに関連する情報を、LIDAR制御装置110またはそれに接続された他のシステムに送信するように構成することができる。
【0052】
いくつかの実施形態による動作では、LIDARシステム100は、非縮退光学光源を用いて2次元で距離および速度を同時に測定するように構成される。この機能により、周囲環境の距離、速度、方位角および高さ(標高)について遠距離測定がリアルタイムで可能になる。
【0053】
いくつかの例では、スキャンプロセスは、光学ドライバ103およびLIDAR制御装置110から開始される。LIDAR制御装置110は、光学ドライバ103に1つ以上の光ビームをそれぞれ変調するように指示し、これらの変調信号は光学回路101の受動光学回路を通って自由空間光学系115のコリメータに伝送される。同コリメータは、上記変調信号を光スキャナ102に誘導し、光スキャナ102はモーション制御装置105で事前にプログラムされたパターンで環境をスキャンする。
光学回路101には、光が光学回路101を出る際に光の偏光状態を変換する偏光波長板(PWP)を設けてもよい。この場合、偏光波板は1/4波板または1/2波板、あるいは、ファラデー回転子などの非可逆的偏光回転子を採用することができる。
偏光された光ビームの一部は、光学回路101に戻るように反射される場合もある。例えば、LIDARシステム100で使用されるレンズ系またはコリメート系は、自然な反射特性または反射コーティングを有する場合があり、これにより光ビームの一部が光学回路101に反射される。
【0054】
環境から反射された光信号は、光学回路101を通して受信器(光受信器104)に送られる。このとき、光の偏光状態は変換されているため、光学回路101に反射して戻ってきた偏光光の一部とともに偏光ビームスプリッタで反射される。その結果、反射された光信号は、光源と同じ光ファイバまたは導波路には戻らず、それぞれ別の光受信器に反射される。これらの信号は互いに干渉し、混合(合成)された信号を生成する。
ターゲットから戻ってくる各ビーム信号は、時間シフトされた波形を生成し、これら2つの波形間の時間的位相差によって光受信器(光検出器)で計測されるビート周波数が生成される。
そして、その混合(合成)された信号は光受信器104に反射させることができる。
【0055】
光受信器104で受信したアナログ信号は、ADC(アナログ/デジタル変換器)によりデジタル信号に変換される。次いで、同デジタル信号は、LIDAR制御装置110に送信される。
同装置の信号処理ユニット112は、同デジタル信号を受信しそれらを処理する。
一態様では、信号処理ユニット112は、モーション制御装置105およびガルバノメータ(図示されない)から位置データを受信し、画像処理装置114から画像データを受信する。これにより、信号処理ユニット112は、光スキャナ102が追加ポイントをスキャンする際に、環境内のポイントの距離と速度に関する情報を有する3Dポイントクラウドを生成することができる。
信号処理ユニット112はまた、3Dポイントクラウドを画像データと重ね合わせて、周囲の物体の速度および距離を決定する場合もある。
このLIDAR制御装置110はさらに衛星ベースのナビゲーション位置データを処理して正確な全地球的位置情報を提供する場合もある。
【0056】
図2は、一実施形態において、LIDARシステム100のようなLIDARシステムがターゲット環境をスキャンするために使用可能なFMCWスキャニング信号201の時間-周波数
図200である。この例において、f
FM(t)と表示されたスキャニング信号201は、チャープ帯域幅Δf
Cおよびチャープ周期T
Cを持つ鋸歯状波形(鋸歯「チャープ」)である。
鋸歯の傾きは、k=(Δf
C/T
C)である。
図2にはまた、一実施形態におけるターゲットリターン信号202が示される。f
FM(t-Δt)で示されるターゲットリターン信号202は、スキャニング信号201の時間遅延バージョンであり、Δtは、スキャニング信号201によって照射されたターゲットとの間の往復時間である。この往復時間は Δt=2R/v で与えられる。ここで、R はターゲットの距離、v は光ビームの速度である光速cである。
したがって、同ターゲットの距離R は、R=c(Δt/2) として計算できる。
ターゲットリターン信号202がスキャニング信号と光学的に混合されると、距離依存の差周波数(「ビート周波数」)Δf
R(t)が生成される。ビート周波数Δf
R(t)は、鋸歯の傾きkによって時間遅延Δtと線形の関係にある。
つまり、Δf
R(t)=kΔtとなる。ターゲット距離RはΔtに比例するため、ターゲット距離RはR=(c/2)(Δf
R(t)/k)として計算できる。すなわち、距離Rはビート周波数Δf
R(t)と線形の関係にある。
ビート周波数Δf
R(t)は、例えば、LIDARシステム100の光受信器104でアナログ信号として生成される。このビート周波数は、例えば、LIDARシステム100の信号調整ユニット107内のアナログ/デジタル変換器(ADC)によってデジタル化される。このようにしてデジタル化されたビート周波数信号は、LIDARシステム100内の信号処理ユニット(例えば、信号処理ユニット112)でデジタル処理される。
ただし、ターゲットがLIDARシステム100に対して相対速度を有する場合、ターゲットリターン信号202には一般に周波数オフセット(ドップラーシフト)が含まれることに注意する必要がある。ドップラーシフトは別途検出されてリターン信号の周波数を補正するために使用されるため、
図2では簡略化と説明の容易化のためドップラーシフトは表示されていない。
また、ADCのサンプリング周波数は、エイリアシングを発生させずにシステムで処理可能な最高のビート周波数に決定されることに注意する必要がある。一般的に処理可能な最高周波数はサンプリング周波数の半分(すなわち「ナイキスト限界」)である。例えば、限定はしないが、ADCのサンプリング周波数が1ギガヘルツである場合、エイリアシングなしで処理できる最高ビート周波数(Δf
Rmax)は500メガヘルツである。この限界は、システムの最大ターゲット距離Rmax=(c/2)(Δf
Rmax/k)で決まり、これは鋸歯の傾きkを変更することによって調整することができる。
一例では、ADCからのデータサンプルは連続的であってもよいが、後述する後続のデジタル処理は、LIDARシステム100の所定の周期性に関連付けることができる「時間セグメント」に分割することができる。例えば、限定はしないが、時間セグメントは、チャープ周期T
Cの数、または前述の光スキャナによる方位角方向の回転数に対応する。
【0057】
図3は、一実施形態による光学要素系300を二次元的に示す図である。同システム300は、
図1に示したLIDARシステム100の光学回路101、自由空間光学系115および光スキャナ102の1つまたは複数のコンポーネントを含む場合がある。
【0058】
光学要素系300は、選択された偏光(例えば、s偏光またはp偏光)を有するコヒーレント光ビーム302を生成する光源301を備える。断面A-A(303)によって例示されるように、光ビーム302は、ほぼ円形または楕円形の断面を有する。光源301は、光ビーム302を偏光ビームスプリッタ(PBS)304に導き、光ビーム302の選択された偏光を第1レンズ系305に伝送する。
一実施形態においては、光学ウィンドウ307からの反射偏光を調整するために偏光波板またはファラデー回転子を使用することができる。
また、一実施形態において、光学ウィンドウ307は、前面と背面の反射の空間干渉を除去するように構成されたウェッジガラス(楔形ガラス)を含む。この場合、光学ウィンドウ307は、スキャン速度および/または関心領域に基づいて設定することができる。
このように、ウェッジの方向を変えることで、1つまたは複数の光検出器上のLO信号のシフトを誘導し、スピンポリゴンなどの高速単方向スキャナにおける逆スキャンの遅延によるリターン信号とLO信号の重なり不一致を補償することができる。
【0059】
一実施形態においては、PBS304の代わりにビームスプリッタ(BS)を使用することができる。第1レンズ系305は、光ビーム302を第1焦点面306で集束させるように構成される。なお、レンズ系は、球面および非球面レンズの組み合わせを含む任意の多素子レンズ設計であってもよく、シングル非球面レンズであってもよい。
【0060】
光学ウィンドウ307は、第1焦点面306に位置する部分反射面308を有している。部分反射面308は、光ビーム302の一部を偏光の変化したローカルオシレータ(LO)信号309として第1レンズ系305に向かって反射する。光学ウィンドウ307は、第1レンズ系305の主光軸310に対して実質的に垂直であるため、LO信号309の戻り経路は、光ビーム302の前進経路と実質的に同じである。
図示されないが、光学ウィンドウ307の後面(背面)にも部分反射面を有する場合がある。このため、光ビーム302からの追加のLO信号が光学ウィンドウ307の背面の部分反射面から反射されることがある。一実施形態では、前面からのLO信号309または後面(背面)からの追加のLO信号のどちらかをLO信号として使用することができる。しかしながら、2つのLO信号のうち、1つは焦点内にあり、もう1つは焦点外にある場合があり、その結果、LO信号が競合してショットノイズが増加する可能性がある。そのため、一実施形態では、光学ウィンドウ307の後面(背面)から反射されたLO信号が前面反射(例えばLO信号309)と干渉しないように(またはその逆の場合に)、光学ウィンドウ307がウェッジガラスである場合がある。
【0061】
LO信号309は、第1レンズ系305によってコリメートされ、PBS304に向けて反射される。ここで、PBS304によって変化した偏光のLO信号309は、第2レンズ系311に向けて導かれる。断面B-B 312に示すように、LO信号309は、断面A-A 303と同じまたは類似した、ほぼ円形または楕円形の断面を有する。第2レンズ系311は、LO信号309を第1焦点面306の共役焦点面である第2焦点面313に集束させる。
光検出器314は、第2焦点面313に配置される受光面を有し、LO信号309のエネルギーを受信する。理想的には、LO信号309は第2焦点面313上の1点に焦点を合わせるのが望ましいが、光学部品のアライメント(位置合わせ)に関する実用的な制限により、LO信号309が焦点を外れ、その結果、非ゼロの直径をもって光検出器314の表面(受光面315)に投影316されることになる。
第3レンズ系317および光スキャナ318を含む光学要素系300の他の光学要素については以下に説明する。
【0062】
図4は、一実施形態よる、ターゲット環境320に向けた光ビーム302の全経路を独立した形で示したものである。光ビーム302は、第1焦点面306で収束した後、光学ウィンドウ307で反射されなかった部分が第3レンズ系317に向けて発散する。本実施形態では、第3レンズ系317の焦点距離が第1レンズ系305と同一であり、光ビーム302は第3レンズ系317によってコリメートされる。
図4の断面C-C(319)に示すように、コリメートされた光ビーム302はほぼ円形の断面を有する。
【0063】
コリメートされた光ビーム302は、方位角および仰角方向にターゲット環境320を走査する光スキャナ318によって受信される。ターゲット環境320の物体は、
図5に示すように、光ビーム302の一部をリターン信号321として反射する。
図5では、光ビーム302とは異なる偏光をもつリターン信号321が光スキャナ318によって逆スキャンされる。光スキャナ318における逆スキャンエラーの影響を無視すると(以下で詳細に説明する。)、逆スキャンされるリターン信号321は、
図5の断面D-D(322)によって示すように、第3レンズ系317および第1レンズ系305の主光軸310にほぼ平行な円形断面のコリメートされたビームとなる。
その結果、リターン信号321は第1焦点面306で集束し、第1レンズ系305に向かって発散し、そこで再コリメートされる。再コリメートされたリターン信号321は、その変化した偏光によりPBS304によって反射され、第2レンズ系311に向けられる。
【0064】
第2レンズ系311は、LO信号309に関して説明したように、PBS304で反射されたリターン信号321を第2焦点面313に集束させる。たとえば一実施形態ではリターン信号321を第2焦点面313上の一点に集束させることができる。
【0065】
図6は、光学収差を最小限に抑えるように光学要素が配置される場合の光学要素系300の動作を示す。
一例として、光ビーム、LO信号、およびリターン信号(例えば、
図3および
図4の光ビーム302、LO信号309、およびリターン信号321)はすべて対称に配置される。この配置は、複合ビーム表記を使用して
図6に示される。
例えば、第1焦点面306とターゲット環境320の間のビーム322には出射された光ビーム302と入射されるリターン信号321(例えば、
図5に示されるリターン信号321)の両方が含まれる。第1焦点面306とPBS304の間のビーム323には、出射された光ビーム302、入射されるリターン信号(例えば、
図5に示されるリターン信号321)およびLO信号(例えば、
図3のLO信号309)が含まれる。PBS304と光検出器314の間のビーム324には、LO信号(例えば、
図3のLO信号309)とリターン信号(例えば、
図5のリターン信号321)の両方が含まれる。光学要素系300によるこの例では、LO信号とリターン信号(例えば、
図3および
図5のLO信号309とリターン信号321)は第2焦点面313上の1点に集束することになる。
【0066】
図7は、光学ウィンドウ307が角度Φだけズレた位置にある光学要素系を示している。このような配置のズレが原因で、LO信号309の焦点がリターン信号321の焦点から第2焦点面313上でズレることがある。
光学要素系300の空間混合効率(γ)は、LO信号309のスポットサイズとリターン信号321のスポットサイズとの重なり積分の関数であり、次式で与えられる:
ここで、E
sとE
Loは光検出器上のリターン信号とLO信号の電場プロファイルであり、x
0とy
0はリターン信号のスポット位置とLO信号のスポット位置の変位(ズレ)を表す。また、detは、円形検出器の半径である。
図7に示すように、LO信号スポットとリターン信号スポットが重ならない場合、空間混合効率はゼロに減少することになる。
【0067】
光学ウィンドウ307の配置にズレが生じた場合でも、
図8に示すように、光検出器314の受光面315を第2焦点面313の前方に配置する(または第2焦点面313の後方に配置して類似の非焦点化効果を得る)ことにより、混合効率を最大化することができる。
図8では、複合ビーム324の受光面315への投影(同軸のLO信号309とリターン信号321を含む)が、
図6に示す配置の複合ビーム324のスポット焦点よりも大きな直径を有している。
【0068】
図9は、LO信号309とリターン信号321がズレている場合に、光検出器314を第2焦点面313(共役焦点面)の前方に再配置(第2焦点面から離れた位置)した効果を示している。LO信号309とリターン信号321は、2つの重なり合わない焦点の代わりに、光検出器314の受光面315上に重なり合う領域をもつことになる。これにより、この領域で空間混合が生じてベースバンド信号(ビート周波数)Δf
R(t)を生成することができる。
【0069】
光検出器314(受光面315)を第2焦点面313の前方に配置することで、LO信号309とリターン信号321との誤差スキャンラグによる位置合わせの不一致に対処するための空間混合率を増加させることができる。
約20,000度/秒以上の角速度では、遠距離にあるターゲットからのリターン信号の時間遅延が長くなり、光スキャナ318内でリターン信号321の逆スキャンラグに起因してスキャニングミラーが非常に小さな角度で回転する。これに伴いリターン信号321の角度にズレ(スキュー)が生じた状態で、光スキャナ318によって第3レンズ系317に反射されることがある。
【0070】
このようなズレ(スキュー)の影響を
図10に示した。この例では、リターン信号321が断面G-Gに示すように光ビーム302からズレている。
図11に示すように、このようなズレ(スキュー)角は、第3レンズ系317と第1レンズ系305の組み合わせを通して伝播される。なお
図11では、レンズ系を等価な薄い二重凸レンズで表している。
リターン信号321が主光軸310に対して角度θで平面波として第3レンズ系317に入ると、リターン信号321は第3レンズ系317の焦点距離と角度θによって決まる点で第1焦点面306に集束する。さらに、前述したように、第1レンズ系305と第3レンズ系317の距離はそれぞれの焦点距離の和に等しいため、リターン信号321は第1レンズ系305により主光軸310に対して角度θで再コリメートされる。
【0071】
前述の
図10に示すように、ズレ(スキュー)を生じたリターン信号321とLO信号309は、PBS304に反射され、断面H-Hに示すような重なり合った信号として第2レンズ系311に向けられる。両方の信号は第2焦点面313(共役焦点面)で集束されるが、異なる点で集束される。
ズレ(スキュー)のないLO信号309は、第2レンズ系311の主光軸に集束される一方、ズレ(スキュー)を生じたリターン信号321は、第3レンズ系317が第1焦点面306でリターン信号321をズレて集束させたのと同様に、主光軸からズレた点に集束される。ただし、本実施形態では、光検出器314(受光面315)が第2焦点面313の前方に配置されているため、光検出器314の受光面315上ではLO信号309とリターン信号321が大きく重なり合うことになる。
【0072】
図12は、LO信号309およびリターン信号321が光検出器314の受光面315上で完全に重なり合うように設定された光学要素系300の変形例を示す。
この変形例は、光学ウィンドウ307の部分反射面308を第1焦点面306から第3レンズ系317に向かって距離δ移動(第1焦点面から離れた位置に移動)することによって実現される。なお、同様の効果は、光学ウィンドウ307を第1焦点面306から第1レンズ系305に向かって移動させることでも実現することができる。
このような移動によって光ビーム302は、焦点から発散した後に部分反射面308から反射される。その結果、部分反射面308から反射されたLO信号309は、断面J-Jに示すように、第1焦点面306で反射された場合よりも大幅に直径が大きくなる。
【0073】
図12に示すように、第2レンズ系311は、LO信号309およびリターン信号321を第2焦点面313(共役焦点面)に向けて集束させる。光検出器314の配置とLO信号309の直径の増大とが相俟ってLO信号309とリターン信号321が完全に重なり合い、空間混合効率を最大限に高めることができる。
【0074】
図13は、実施形態による方法を示すもので、共役焦点面で同軸ローカルオシレータ信号を生成するためのLIDARシステムにおける方法400を例示するフローチャートである。
方法400は、ステップ(操作)402で開始され、第1焦点面(例えば焦点面306)で光ビーム(例えば、光ビーム302)を集束する。次いで、ステップ(操作)404で第1焦点面に近接する部分反射面(例えば光学ウィンドウ307上の受光面308)で光ビームの一部を反射することによってローカルオシレータ(LO)信号(例えばLO信号309)を生成し、光ビームの透過した部分を(例えば光スキャナ318によって)スキャンするターゲット環境に向ける。
次いで、ステップ(操作)406で第1焦点面に共役な第2焦点面(例えば第2の焦点面313)にLO信号およびターゲットリターン信号(例えば、リターン信号321)を集束する。
次いで、ステップ(操作)408で第2焦点面に近接する光検出器(例えば光検出器314の受光面315)においてLO信号とターゲットリターン信号とを混合し、ターゲット情報を生成することで方法400を完了する。
【0075】
図14は、実施形態によるLIDARシステムの処理装置を示すもので、共役焦点面における同軸ローカルオシレータ信号を生成するための処理装置500の例を示すブロック図である。
処理装置500はプロセッサ501を備えており、このプロセッサ501は、例えばLIDARシステム100におけるLIDAR制御装置110の信号処理ユニット112に組み込まれる。他の例としてプロセッサ501は、マイクロプロセッサ、中央処理装置などの1つまたは複数の汎用処理装置とすることができる。
より具体的には、プロセッサ501は、複合命令セットコンピューティング(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、または他の命令セットを実装するプロセッサ、または命令セットの組み合わせを実装するプロセッサである場合がある。
プロセッサ501はまた、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ネットワークプロセッサなどの1つまたは複数の特殊目的処理デバイスである場合がある。
【0076】
処理装置500はまた、プロセッサ501に連携するコンピュータ読み取り可能なメモリ502(コンピュータ可読媒体)を備える。メモリ502としては、例えば、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、プログラマブル読み取り専用メモリ(PROM)、消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)などの磁気ディスクメモリ、コンパクトディスク読み取り専用(CD-ROM)やコンパクトディスク読み取り書き込みメモリ(CD-RW)などの光学ディスクメモリ、または任意の他のタイプの非一時的メモリが採用される。
【0077】
一例として、メモリ502には、プロセッサ501によって実行されると、LIDARシステム(例えば、LIDARシステム100)が本開示の実施形態に従って、共役焦点面(例えば第2焦点面313)で同軸ローカルオシレータ信号(例えばLO信号309)を生成する命令が含まれる。
【0078】
図14において、メモリ502には、光ビーム(例えば光ビーム302)を第1焦点面(例えば、焦点面306)に集束させるための命令504、第1焦点面に近接する部分反射面(例えば、光学ウィンドウ307の受光面308)で光ビームの一部を反射してローカルオシレータ(LO)信号(例えばLO信号309)を生成し、光ビームの透過部分を光スキャナ318によってスキャンターゲット環境に向けるための命令506、第1焦点面と共役な第2焦点面(例えば、第2焦点面313)にLO信号とターゲットリターン信号(例えばリターン信号321)を集束させるための命令508、および第2焦点面に近接する光検出器(例えば光検出器314の受光面315)でLO信号とターゲットリターン信号を混合してターゲット情報を生成するための命令510が含まれる。
【0079】
図15は、本開示の実施形態に基づいて、共役面で同軸ローカルオシレータ信号を生成するためのマルチビームLIDARシステム600のブロック図である。
LIDARシステム600は、前述の光学要素系300と機能的に類似するものであり、各FMCW光源601-1~601-n(それぞれが異なる周波数および/または帯域幅で動作し、対応する光ビーム602-1~602-n(総称して光ビーム602)を放射する)を備える。
各光ビーム602は偏光ビームスプリッタ(PBS)604を通過し、対応する第1レンズ系605-1から605-n(総称して第1レンズ系605)に対応する焦点に集束する。光ビーム602の各々は、光学ウィンドウ607上の部分反射面608によって部分的に反射され、各光ビーム602の反射部分は、対応するローカルオシレータ(LO)信号609-1~609-n(総称してLO信号609)となる。
【0080】
LO信号609は、それぞれの第1レンズ系605によってコリメートされ、PBS604によって対応する第2レンズ系611-1~611-n(総称して第2レンズ系611)に向けて反射される。各第2レンズ系611は、対応する各LO信号609を第1焦点面606に共役な第2焦点面613に集束させる。各LO信号609は、その直径がゼロでない状態で、対応する光検出器611-1~611-n(総称して光検出器611)で受信される。
【0081】
各光ビーム602の光学ウィンドウ607(部分反射面608)から反射されなかった透過部分は、第3レンズシステム617によってコリメートされ、光スキャナ618に伝送される。光スキャナ618は、光ビーム602でターゲット環境620をスキャンし、それに対応するターゲットのリターン信号621-1~621-n(総称してリターン信号 621)を逆スキャンする。
リターン信号621は、第3レンズ系617によって第1焦点面606に集束し、その後発散し、対応する第1レンズ系605に入射する。各第1レンズ系605は、対応するリターン信号621をコリメートし、PBS604で反射させて対応する第2レンズ系611に向ける。
各第2レンズ系611は、その対応するリターン信号621を第2焦点面613に集束させる。各リターン信号621は、対応するLO信号609と重なり合った状態で対応する光検出器614で受光される。ここで、リターン信号とLO信号が空間的に混合してターゲット情報が生成される。
【0082】
図16は、本開示の実施形態に基づいて、共役面で同軸ローカルオシレータ信号を生成するためのマルチビームLIDARシステム700のブロック図である。
LIDARシステム700は、前述のLIDARシステム600と全ての点で類似した構成を有するが、同システム700では独立した光学ウィンドウ607-1~607-nが設けられており、各ウィンドウを第1焦点面606からのオフセットに対して独立に調整可能になっている。
【0083】
図17は、本開示の実施形態に基づいて、共役面で同軸ローカルオシレータ信号を生成するためのマルチビームLIDARシステム800のブロック図である。
LIDARシステム800は、前述のLIDARシステム700と全ての点で類似した構成を有するが、同システム800では独立した第3レンズ系617-1~617-nが設けられる。
【0084】
前述した説明では、本発明の実施形態を理解しやすくするために、特定のシステム、構成要素、方法などの具体例を複数示しているが、当業者であればこれらの具体例の説明がなくても本発明を実施しうる。また、公知の構成要素や方法はその詳細が省略されていたり、単純なブロック図の形式で示されることがあるが、これは本発明の理解を容易にするためである。したがって、開示された内容は単に例示であり、一事例は他の例示と異なる場合があっても、本発明の範囲内に含まれると考えられる。
【0085】
本明細書において「一実施形態」または「実施形態」という表現が使用される場合、それらの実施形態に関連して説明された特定の特徴、構造、または特性が少なくとも一つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書のいくつかの箇所で「一実施形態において」または「実施形態において」という表現が現れている場合、必ずしも同じ実施形態を示すものではない。
【0086】
ここで説明されている方法の操作は特定の順序で示されているが、各方法の操作の順序は変更されることがあり、特定の操作を逆順で行ってもよいし、少なくとも一部の操作を他の操作と同時に行ってもよい。異なる操作の指示または補助的な操作は、断続的または交互に行うことができる。
【0087】
上記に記載されている発明の実施例についての説明(要約に記載されている内容を含む)は、詳細で網羅的であることを意図しているものではなく、開示された具体的形態に限定するものでもない。本発明の具体的な実施態様および実施例は、例示の目的で本明細書に記載されているが、当業者が認識する範囲で種々の同等な変更を行うことができる。
ここで使用される「例」または「例示的」の語は、例、実例または説明として役立つことを意味するために使用されている。本明細書において「例」または「例示」と説明された態様または設計は、必ずしも他の態様または設計よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。むしろ、「例」または「例示」という用語の使用は、概念を具体的な形で示すことを意図している。
本明細書において使用される「または」の用語は、排他的な「または」ではなく、包括的な「または」として解釈されることを意図している。
つまり、特に指定されていない限り、あるいは文脈から明らかでない限り、「XはAまたはBを含む」という表現は、自然な包括的順列のいずれかを意味する。つまり、XがAを含む場合、XがBを含む場合、あるいはXがAおよびBの両方を含む場合、前述のいずれの場合にも、「X はAまたはBを含む」という条件を満たすことになる。
さらに、本明細書および添付された特許請求の範囲で使用される冠詞「a」および「an」は、特に指定されていない限り、文脈から単数形であることが明らかでない場合には「1つまたは複数」を意味するものと解釈される。
さらに、本明細書において「第1」、「第2」、「第3」、「第4」のような用語が使用される場合、これらの用語は異なる要素を区別するための識別子として使用されるもので、数字の指定に従って必ずしも順序を示すものではない。
【国際調査報告】