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特表2023-545376スチレン補助のポリオレフィン解重合
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】スチレン補助のポリオレフィン解重合
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/18 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
C08J11/18 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519310
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 IB2021000704
(87)【国際公開番号】W WO2022074462
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/089,706
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】ナギー、サンドール
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、ダニエル、エフ.
(72)【発明者】
【氏名】スミス、クリストファー、ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ラメージ、デイヴィッド、エル.
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401CA70
4F401EA74
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA07Z
(57)【要約】
本明細書には、スチレンオリゴマー又はポリマー及び熱を使用して、ポリオレフィン系材料を有用な石油化学製品に解重合する方法について説明する。スチレンオリゴマー又はポリマーは、解重合の半減期を短縮することによって解重合を改善し、これは、より高い解重合速度及び解重合ユニットにおけるより短い滞留時間をもたらし、それにより、予測可能な解重合を可能にし、生成物中の分岐化又は芳香族化した形成物を減少させる。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系供給流とスチレンオリゴマー又はスチレンポリマーとを、約200℃~約600℃の温度に加熱された解重合ユニットに添加することと、
前記ポリオレフィン系供給流を前記スチレンオリゴマー又は前記スチレンポリマーと反応させて、前記ポリオレフィン系供給流を解重合させることとを含む、ポリオレフィンの解重合方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィン系供給流は前記スチレンオリゴマーと結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スチレンオリゴマーはオリゴスチレンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系供給流は前記スチレンポリマーと結合する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記スチレンポリマーはポリスチレンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系供給流は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオレフィン系供給流はポストコンシューマ廃棄物である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリオレフィン系供給流はポストインダストリアル廃棄物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリオレフィン系供給流は、ポストインダストリアル廃棄物及びポストコンシューマ廃棄物の両方を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリスチレンは、ポストコンシューマ廃棄物、ポストインダストリアル廃棄物、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記スチレンオリゴマー又は前記スチレンポリマーの濃度は、0wt%超~約20wt%である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記スチレンオリゴマー又は前記スチレンポリマーの前記濃度は、約2.5wt%~約5wt%である、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スチレンオリゴマー又はポリマーを使用してポリオレフィン系材料を解重合し、加熱して有用な石油化学製品を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活水準の向上及び都市化の進展により、ポリマー製品、特にポリオレフィンプラスチックに対する需要が高まっている。ポリオレフィンは、その際立った性能及びコスト特性で、商業的プラスチック用途においてよく使用されている。例えば、ポリエチレン(PE)は、強度が高く、非常に強靭で、耐久性に優れているため、最も広く使用され、認知されているポリオレフィンの1つとなっている。これは、様々な用途のために高度に設計されることを可能にする。同様に、ポリプロピレン(PP)は、機械的に強いが可撓性であり、耐熱性があるとともに、塩基や酸などの多くの化学溶媒に対して耐性がある。したがって、ポリプロピレンは、様々な最終用途産業に理想的であり、主に包装及びラベリング、織物、プラスチック部品、及び様々なタイプの再使用可能な容器に使用される。
【0003】
ポリオレフィンプラスチックに対する需要の不利な面は、廃棄物の増加である。ポストコンシューマのプラスチック廃棄物は、通常、埋め立てで終わり、約12%が焼却され、約9%がリサイクルに回される。埋立地では、ほとんどのプラスチックは急速に分解せず、埋立地の過度な負担の主な廃棄物源となっている。また、焼却は、二酸化炭素の形成及び他の温室効果ガスの排出を引き起こすため、プラスチック廃棄物を処理する理想的な解決策ではない。したがって、環境に配慮しながら、埋立地の負担を低減するために、プラスチック廃棄物のリサイクル方法の開発に大きな注目が集まっている。
【0004】
プラスチック廃棄物のリサイクルの欠点は、商業的に使用可能な製品又は所望の製品をうまく製造することが難しいことである。プラスチック廃棄物の回収には、現在、材料の洗浄とその機械的再加工が含まれている。しかしながら、得られた粒子は、依然として、食品残渣、染料、及び香料などの不純物で汚染されている。性能及び外観から、これらの不純物は、ほとんどの用途に適さない。
【0005】
最近の進展は、プラスチック廃棄物を、燃料源又は商業的に重要な原材料などの有用な製品に変換することに集中している。ガス、ガソリン留分、灯油留分、ディーゼル留分、及びワックスの様々な生成物を生成するように、プラスチック廃棄物の流れを熱分解してから触媒解重合する方法が開発されてきた。
【0006】
残念ながら、これらの方法は、ポリオレフィン廃棄物を有用な類別の生成物に完全に分解するには大量のエネルギーが必要であるため、高価で時間がかかる。さらに、副反応が熱分解条件下で起こり、その結果、分岐化及び芳香族化した生成物が形成されるため、反応生成物自体は予測できない。触媒自体も、ポリマー供給物中の不純物によって被毒される傾向がある。
【0007】
ポリマーのリサイクルは進んでいるが、分岐化及び/又は芳香族化した生成物の形成を最小限に抑えた、プラスチックを有用な石油化学製品に転化するためのロバストなプロセスを開発することが引き続き求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、ポリオレフィン系材料を熱的解重合するための改良法を提供する。改良法は、スチレンオリゴマー又はポリマーの存在下で1つ以上のポリオレフィンで供給流を熱的解重合することに依存する。具体的には、スチレンオリゴマー又はポリマー、例えば、オリゴスチレン及びポリスチレンは、解重合ユニットにおいてポリオレフィン系材料と混合され、酸素の非存在下で加熱される。スチレンオリゴマー又はポリマーは、スチレンオリゴマー又はポリマーを含まないポリオレフィン系材料の解重合よりも反応が速い解重合速度(反応はより小さい解重合半減期)でラジカル解重合反応を開始する。このラジカル解重合は、最小限で分岐化又は芳香族化した液体生成物の形成を引き起こす。液体生成物は、次いで、そのまま使用され、又は供給原料を改善するために、オレフィンクラッキングのように、さらに処理されてもよい。
【0009】
本明細書に記載の方法は、ポストインダストリアル廃棄物及びポストコンシューマ廃棄物を含む任意のポリオレフィン系材料を処理するために使用することができる。埋立地の過度な負担及び廃棄物からの原材料生成の可能性を考慮して、ポストコンシューマのポリオレフィン廃棄物の処理は特に重要である。本明細書に記載の方法は、埋立地又は他のリサイクルセンターにおいて、処理センターがポストコンシューマ廃棄物を分別した後に処理して、ポリオレフィン系材料をガラス、セルロース(紙)、ポリエチレン系ポリマーなどの他のリサイクル可能な材料から分離することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、以下の実施形態の任意の組み合わせのいずれかを含む。
【0011】
ポリオレフィン系供給流とスチレンオリゴマー又はスチレンポリマーとを、所定の温度に加熱された解重合ユニットに添加することと、ポリオレフィン系供給流をスチレンオリゴマー又はスチレンポリマーと反応させて、ポリオレフィン系供給流を解重合させることとを含むポリオレフィンを解重合する方法である。
【0012】
ポリオレフィン系供給流とスチレンオリゴマーとを、所定の温度に加熱された解重合ユニットに添加することと、ポリオレフィン系供給流をスチレンオリゴマーと反応させて、ポリオレフィン系供給流を解重合させることとを含むポリオレフィンを解重合する方法である。
【0013】
ポリオレフィン系供給流とスチレンポリマーとを、所定の温度に加熱された解重合ユニットに添加することと、ポリオレフィン系供給流をスチレンポリマーと反応させて、ポリオレフィン系供給流を解重合させることとを含むポリオレフィンを解重合する方法である。
【0014】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、ポリオレフィン系供給流の解重合速度は、スチレンオリゴマー又はスチレンポリマーを含まないポリオレフィン系供給流の解重合速度よりも少なくとも10%高い。
【0015】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、ポリオレフィン系供給流の解重合開始温度は、スチレンオリゴマー又はスチレンポリマーを含まないポリオレフィン系供給流の解重合開始温度よりも少なくとも5%低い。
【0016】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、ポリオレフィン系供給流の解重合半減期は、スチレンオリゴマー又はスチレンポリマーを含まないポリオレフィン系供給流の解重合半減期よりも少なくとも30%低い。
【0017】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、スチレンオリゴマーはオリゴスチレンである。
【0018】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、スチレンポリマーはポリスチレンである。
【0019】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、スチレンオリゴマー及びポリマーは500 Da~20 kDaの平均分子量を有する。
【0020】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、ポリオレフィン系供給流は、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、又はそれらの組み合わせである。
【0021】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、ポリオレフィン系供給流はポストコンシューマ廃棄物である。
【0022】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、ポリオレフィン系供給流はポストインダストリアル廃棄物である。
【0023】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、ポリオレフィン系供給流は、ポストインダストリアル廃棄物及びポストコンシューマ廃棄物の両方を含む。
【0024】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、スチレンポリマーはポストコンシューマ廃棄物、ポストインダストリアル廃棄物、又はそれらの組み合わせである。
【0025】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、スチレンオリゴマーは、ポストコンシューマ廃棄物、ポストインダストリアル廃棄物、又はそれらの組み合わせである。
【0026】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、スチレンオリゴマー又はスチレンポリマーの濃度は0wt%超~約20wt%である。
【0027】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、スチレンオリゴマー又はスチレンポリマーの濃度は約2.5wt%~約5wt%である。
【0028】
本明細書に記載の方法のいずれか1つにおいて、所定の温度は、約200℃~約600℃である。
【0029】
ポリオレフィン系供給流とスチレンオリゴマー又はスチレンポリマーとを、約200℃~約600℃の温度に加熱された解重合ユニットに添加することと、ポリオレフィン系供給流をスチレンオリゴマー又はスチレンポリマーと反応させて、ポリオレフィン系供給流を解重合させることとを含むポリオレフィンを解重合する方法である。いくつかの実施例では、ポリオレフィン系供給流の解重合速度は、スチレンオリゴマー又はスチレンポリマーを含まないポリオレフィン系供給流の解重合速度よりも少なくとも10%高い。さらに、又は代替案として、ポリオレフィン系供給流の解重合開始温度は、スチレンオリゴマー又はスチレンポリマーを含まないポリオレフィン系供給流の開始温度よりも5%低い。
【0030】
本発明の概要は、以下の発明を実施するための形態でさらに説明されるいくつかの概念を紹介するために提供される。本発明の概要は、請求項の主題の主要な特徴や本質的な特徴を特定することを意図したものではなく、請求項の主題の範囲を限定するための補助として使用することを意図したものでもない。
【0031】
定義
本明細書で使用されるように、用語「解重合半減期」(depolymerization half time)又は「解重合の半減期」(half time of depolymerization)は、TGA熱分解反応中に特定の温度で試料の50%質量損失を達成するのに必要な時間を指す。
【0032】
本明細書で使用されるように、「滞留時間」は、解重合ユニットにおいて、1バッチ分のポリマー廃棄物を解重合するのに必要な時間を指す。
【0033】
本明細書で使用されるように、「熱分解」は、酸素の非存在下で起こる熱分解重合反応を指す。
【0034】
本明細書で使用されるように、「ポストコンシューマ廃棄物」は、材料流の最終消費者によって生成される廃棄物を指す。
【0035】
本明細書で使用されるように、「ポストインダストリアル廃棄物」は、製品の製造プロセス中に生成される廃棄物を指す。
【0036】
特に指定しない限り、本明細書における全ての濃度は、重量パーセント(「wt%」)で表す。
【0037】
本明細書で使用されるように、「オリゴマー」は、数個(≦100)の繰り返し単位からなる分子を指す。本明細書で使用されるように、「ポリマー」は、多数(>100)の繰り返し単位からなる分子を指す。オリゴマー及びポリマーの両方は、1つ以上のモノマーから合成することができる。
【0038】
用語「オリゴスチレン」は、スチレンモノマーのみに由来する繰り返し単位を含むオリゴマーを指す。用語「ポリスチレン」は、スチレンモノマーのみに由来する繰り返し単位を含むポリマーを指す。
【0039】
特許請求の範囲又は明細書において、「一」又は「1つ」という単語は、「含む」という用語と組み合わせて使用する場合、文脈上別段の示しがない限り、1つ以上を意味する。
【0040】
「約」という用語は、表示値に測定の誤差限界加えた値または引いた値、又は、10%を加えた値または引いた値を指す。
【0041】
請求項における「又は」という用語は、代替案のみを参照すること又は代替案が相互に排他的であることを明示しない限り、「及び/又は」を意味するために使用される。
【0042】
「備える」、「有する」、「含む」及び「含有する」という用語(並びにそれらの変形)は、オープン連結動詞であり、請求項で使用される場合、他の要素の追加を可能にする。
【0043】
「で構成される」というフレーズは閉じ型であり、追加要素はすべて除外される。
【0044】
「本質的に……から構成される」というフレーズは、追加の材料要素を除外するが、本発明の本質を実質的に変更しない非材料要素を含むことを可能にする。
【0045】
本明細書では、以下の略語が使用される。
【表1】
【発明を実施するための形態】
【0046】
本開示は、スチレンオリゴマー又はポリマーを使用して、ポリオレフィン系材料を商業的に重要な原料にリサイクルするための改良法を提供する。具体的には、解重合ユニットにおいて、スチレンオリゴマー又はポリマーを、少なくとも1つのポリオレフィン系材料を含むポリオレフィン系供給流と混合する。この混合物を加熱すると、熱分解反応が起こり、ここでは、スチレンオリゴマー又はポリマーはポリオレフィン系材料の解重合を引き起こして、最小限で分岐化又は芳香族化した形態を有する有用な液体生成物を生成する。
【0047】
スチレンオリゴマー又はポリマーを使用してポリオレフィンの熱的解重合を改善することには多くの利点がある。上述したように、スチレンオリゴマー又はポリマーは、リサイクルプロセスの触媒ではない。むしろ、スチレンオリゴマー又はポリマーは、開始剤として作用する。より詳細には、スチレンオリゴマー又はポリマーの主鎖中の二重結合(C=C)は、低温でホモリシス開裂を起こし、それにより、芳香族環によって安定化されたラジカルを生成する。次いで、このラジカルは、ポリオレフィンとの連鎖反応を引き起こし、それによって、供給流中のポリオレフィンのラジカル解重合を促進する。これは、解重合中の異性化反応を制限し、スチレンオリゴマー及びポリマーの非存在下で解重合された同じ供給流からの生成物に類似する反応生成物のより単純な混合をもたらす。したがって、ポリマーが所定の供給流組成物の反応生成物は容易に予測可能である。
【0048】
スチレンオリゴマー及びポリマーを使用する別の利点は、特に発泡ポリスチレンフォーム(EPS)の形で、ポストコンシューマ廃棄物及びポストインダストリアル廃棄物として容易に入手可能であることである。過去15年間、世界のEPS産業は、平均19%のポストコンシューマEPSと25%のポストインダストリアルEPSを回収することに工夫してきて、残りの廃棄物は埋立地に埋め立てられている。本発明の方法は、埋立地行きのポリスチレンを、ポストコンシューマポリオレフィン廃棄物及びポストインダストリアルポリオレフィン廃棄物と容易に組み合わせることを可能にする。一例として、埋立地又は他のリサイクルセンターにおいて処理センターによって分離されたポリオレフィン系材料は、解重合ユニットにおいて発泡スチロールカップ及び他のポリスチレン食品容器と組み合わせることができる。したがって、ポリオレフィン系材料が解重合され、リサイクルされるだけでなく、さらに埋立地に置かれるポリスチレンフォームも少なくなる。代替的には、「新しい」ポリスチレン、又は他のスチレンオリゴマー及びポリマーを、本方法において使用するために特別に製造することができる。
【0049】
最後に、スチレンオリゴマー及びポリマーは、他の従来の解重合触媒よりもポリマー供給流中の「毒物」の影響を受けにくいので、ロバストである。これは、他の解重合方法よりも広い範囲のポリオレフィン供給組成物を可能にする。
【0050】
広範囲の重量のスチレンオリゴマー及びポリマーの添加は、ポリオレフィンの解重合速度を改善することができる。いくつかの実施例では、スチレンオリゴマー及びポリマーは、供給流の0wt%超~約50wt%の濃度で存在する。代替的には、スチレンオリゴマー及びポリマーは、0wt%超~約30wt%、約2.5wt%~約10wt%、約5wt%~約20wt%、約15wt%~約30wt%、約25wt%~約50wt%、又は約35wt%~約50wt%の濃度で存在する。他の実施例では、スチレンオリゴマー及びポリマーは、2.5wt%、5wt%、10wt%、15wt%又は20wt%の濃度で存在する。
【0051】
スチレンオリゴマー及びポリマーは、500 Da~20 kDaの平均分子量を有することができる。いくつかの実施例では、添加されるスチレン成分は、例えば、オリゴスチレン及びポリスチレンのようなスチレン繰り返し単位のみを有する。いくつかの実施例では、添加されるスチレン成分は、スチレン以外の1つ以上の他の繰り返し単位を有する。他の実施例では、添加されるスチレン成分は、10~約80個の繰り返し単位を有するオリゴスチレンである。代替的には、オリゴスチレンは10~約50個の繰り返し単位を有する。代替的には、オリゴスチレンは、40~約80個の繰り返し単位を有する。
【0052】
現在説明されている方法は、単一のポリオレフィン成分、又は任意の量のポリオレフィン成分の混合物を有する材料を含む供給流に適用可能である。ポリエチレン(高密度のもの及び低密度のもの)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリブテン-1、ポリイソブテン及びそれらのコポリマーを含むがこれらに限定されない広範なポリオレフィンが供給流中に存在することができる。さらに、廃棄物は、いかなる特定の形態にも限定されず、フィルム、フォーム、織物、又は他の成形材料がこの方法で処理されることができる。供給物は、ポストコンシューマポリオレフィン廃棄物、ポストインダストリアルポリオレフィン廃棄物、又はポストインダストリアルポリオレフィン廃棄物及びポストコンシューマポリオレフィン廃棄物の両方を含むことができる。
【0053】
スチレンオリゴマー及びポリマーと組み合わせたポリオレフィン系材料は、約200℃~約600℃の動作温度を有する解重合ユニットで処理される。代替的には、解重合ユニットの動作温度は、約225℃~約500℃である。さらに別の代替案では、解重合ユニットの動作温度は、約250℃~約450℃、又は約400℃である。
【0054】
解重合ユニットにおいて、ポリオレフィン供給流は、完全に解重合するのに必要な滞留時間を考慮し、バッチ処理される。解重合ユニットの熱伝導性及びスチレンオリゴマー又はポリマーの量に応じて、バッチごとの推定滞留時間は約30分間~約180分間である。代替的には、推定滞留時間は、約60分間である。
【0055】
上記の反応条件下で、スチレンオリゴマー及びポリマーを少量(5wt%未満)さえ含むバッチは、スチレンオリゴマー及びポリマーを添加しないポリオレフィンバッチよりも少なくとも30%低い解重合半減期を有すると予想される。いくつかの実施例では、解重合半減期は少なくとも40%減少する。多量のスチレンオリゴマー及びポリマー(約10wt%~約20wt%)では、解重合半減期は、ポリオレフィン含有量に応じて少なくとも59%減少する。
【0056】
したがって、本開示の解重合方法は、ポリオレフィン系材料を、最小限で分岐化又は芳香族化した形態を有する予測可能な液体生成物に迅速に解重合させることを可能にする。液体生成物は次いで、そのまま使用することができ、又は生成物流の品質を改善するためにさらに処理することができる。また、これらの方法は、埋立地におけるスチレンオリゴマー及びポリマー廃棄物の量を減少させる。
【0057】
実施例
上記した、ポリオレフィンを解重合する方法を使用する添付の特許請求の範囲の実施形態を説明するために、以下の実施例を含む。これらの実施例は、説明を目的としており、添付の特許請求の範囲を不当に制限することを意図していない。当業者は、本明細書に開示される精神及び範囲から逸脱することなく、開示された具体的な実施形態に様々な変更を加えても、同様又は類似の結果を得ることができることを理解するであろう。以下の実施例は、添付の特許請求の範囲を限定又は定義するものとして決して理解されるべきではない。
【0058】
TGA解重合
熱重量分析(TGA)を解重合ユニットとして一連の単一成分ポリオレフィン供給流を処理して、解重合開始剤としてのポリスチレンの効果を調べた。供給物は、高密度ポリエチレン(グレードACP9255、ライオンデルバセル(LyondellBasell)製)又はポリプロピレン(グレードMoplen HP522H、ライオンデルバセル製)からなる。HAAK MiniCTW混合機において、10gのポリオレフィン原料を様々な量のポリスチレン(PS 3010-01、シグマアルドリッチ)と、200℃、200RPMで5分間溶融混合することによって均一な試料を調製した。
【0059】
TGA熱分解反応の場合、調製した試料を、窒素下で、Mettler Toledo TGA/DSC 3+(オハイオ州コロンバスメトラートレド(Mettler Toledo、Columbus、OH))の中において、10K/minで所望の解重合温度まで加熱し、1時間保持した。これらの実施例では、400℃の解重合温度を用いた。特定の温度での解重合半減期(質量が50%減少するのに必要な時間として定義される)は、この値が60分間未満であれば、直接記録され、又は、この値が60分間より大きければ、一次分解動力学の仮定下で、t1/2=0.693/kに従って確定され、ここでは、kは一次速度定数であり、Ln(C0/C)対時間のプロットを用いてグラフで確定されるものである。
【0060】
解重合半減期は、大規模な解重合ユニットにおいて必要とされる滞留時間に対するものである。半減期が短いほど、解重合ユニットにおけるポリマー供給物バッチの滞留時間が短くなり、解重合速度が高くなる。
【0061】
ポリスチレンのHDPEに対する触媒作用を表1に示す。比較例1は、ポリスチレン非存在下で解重合を行った。比較例1の解重合半減期は、400℃で、347分間であった。ポリスチレンの添加は、このHDPE供給物の半減期を減少させた。低いポリスチレン濃度(≦5%)でも、解重合半減期の大幅な減少が見られた。2.5%と低いポリスチレン濃度で40%の半減期減少が観察された。20%のポリスチレン濃度では、半減期は約82%減少した。これは、少量のポリスチレンの添加でさえ、HDPEを有用な石油化学製品に完全に解重合するのに必要な滞留時間を減少させることができることを示している。
【表2】
【0062】
ポリオレフィンがPPになると、解重合半減期の類似した減少が観察される(解重合速度はそれに応じて増加する)。表2に示すように、低いポリスチレン濃度(≦5%)でも、PPの解重合半減期の大幅な減少が観察された。20%のポリスチレン濃度では、解重合半減期は約62%減少した。これは、HDPE流で観察された減少よりも低いが、20wt%のポリスチレンを有するPP流の半減期の減少は、比較例2よりも速い。
【表3】
【0063】
ポリスチレンは、2.5%から20%の濃度までの様々なポリオレフィンの解重合速度の改善を示すことができ、これは、より大規模な反応器中でこれらの化合物を解重合するのに要する時間を短縮することを意味する。
【0064】
20%を超えるポリスチレン濃度もまた、HDPE及びPPの解重合速度を低下させる。しかしながら、この利点は、得られる反応生成物においてより多くの芳香族生成物、すなわちスチレンを生成することによって相殺すされる。芳香族生成物の存在は、得られる供給原料の品質に影響を与える。したがって、反応生成物の最終用途に応じて、反応生成物を水素化するための追加の工程が必要となる場合がある。
【0065】
実施例はポリスチレンを用いて説明されているが、他のスチレンポリマーも使用することができる。さらに、数個から100個までの繰り返し単位を有するスチレンオリゴマー、例えばオリゴスチレンも、ポリオレフィン供給物の解重合速度を低下させることができる。
【0066】
スチレンオリゴマー又はポリマーを使用しない方法と比較する場合、ポリオレフィン流の解重合のためにスチレンオリゴマー又はポリマーを使用する現在説明されている方法は、より低いエネルギー効率(すなわち、より良好なコスト効果)を提供することができる。
【0067】
本願は、特許協力条約に基づいて提出され、2020年10月9日に出願された米国仮特許出願第63/089,706号の優先権を主張し、その全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0068】
連邦政府が援助した研究報告書
該当なし。
【0069】
マイクロフィッシュ付録参照
該当なし。
【国際調査報告】