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特表2023-545382抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用
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  • 特表-抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用 図1
  • 特表-抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用 図2
  • 特表-抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用 図3A
  • 特表-抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用 図3B
  • 特表-抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用 図3C
  • 特表-抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用 図4
  • 特表-抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/68 20170101AFI20231023BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A61K47/68
C07K16/28 ZNA
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/4745
A61K39/395 L
A61K47/22
A61K47/12
A61K47/26
A61K9/19
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519391
(86)(22)【出願日】2021-09-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-27
(86)【国際出願番号】 CN2021122031
(87)【国際公開番号】W WO2022068914
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202011061863.1
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111069020.0
(32)【優先日】2021-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516174219
【氏名又は名称】江蘇恒瑞医薬股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】516174208
【氏名又は名称】上海恒瑞医薬有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI HENGRUI PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】NO. 279 WENJING ROAD, MINHANG DISTRICT, SHANGHAI 200245, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】王 志万
(72)【発明者】
【氏名】呉 ▲ティン▼▲ティン▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 洵
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA29
4C076AA95
4C076BB11
4C076CC27
4C076CC41
4C076DD09
4C076DD38
4C076DD41Z
4C076DD60Z
4C076DD67
4C076EE23
4C076EE59
4C076FF36
4C076FF61
4C076GG06
4C076GG47
4C085AA26
4C085BB11
4C085CC02
4C085CC03
4C085CC08
4C085CC31
4C085DD62
4C085DD63
4C085DD88
4C085EE01
4C085GG06
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA44
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA72
4H045DA76
4H045FA50
(57)【要約】
抗体薬物複合体を含む医薬組成物及びその使用を提供する。具体的に、抗クローディン抗体薬物複合体を含む医薬組成物を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗Claudin18.2抗体薬物複合体及び緩衝剤を含む医薬組成物であって、前記抗Claudin18.2抗体薬物複合体中の抗Claudin18.2抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
i)前記重鎖可変領域は、配列番号5で示される重鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3を有し、前記軽鎖可変領域は、配列番号6で示される軽鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
ii)前記重鎖可変領域は、配列番号3で示される重鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3を有し、前記軽鎖可変領域は、配列番号4で示される軽鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3を有し、
前記緩衝剤はヒスチジン塩緩衝剤、好ましくはヒスチジン-酢酸塩緩衝剤である、
医薬組成物。
【請求項2】
前記抗Claudin18.2抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
iii)前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号15、配列番号16及び配列番号17で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号20で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
iv)前記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号9、配列番号10及び配列番号11で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、前記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号12、配列番号13及び配列番号14で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、
好ましくは、前記抗Claudin18.2抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
v)前記重鎖可変領域は配列番号31で示され、及び前記軽鎖可変領域は配列番号29で示され、又は
vi)前記重鎖可変領域は配列番号26で示され、及び前記軽鎖可変領域は配列番号23で示され、
より好ましくは、前記抗Claudin18.2抗体は、
vii)配列番号49で示される重鎖、及び配列番号47で示される軽鎖、又は
viii)配列番号44で示される重鎖、及び配列番号41で示される軽鎖、
を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗Claudin18.2抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L-Y-D)で示される構造を有し、即ち、
【化1】
そのうち、
Yは、-O-(CR-CR-C(O)-、-O-CR-(CR-、-O-CR-、-NH-(CR-CR-C(O)-及び-S-(CR-CR-C(O)-から選ばれ、
とRは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立的に水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基及びヘテロシクリル基から選ばれ、
又は、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
は、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、
又は、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
又は、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
mは0~4の整数であり、
nは1~10で、nは小数又は整数であり、
Lは、リンカーユニットであり、
Pcは抗Claudin18.2抗体であり、
好ましくは、前記抗Claudin18.2抗体薬物複合体は、下記の式で示される構造を有し、即ち、
【化2】
そのうち、
nは2~8で、nは小数又は整数であり、
Pcは抗Claudin18.2抗体である、
請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記医薬組成物は、界面活性剤を更に含み、
好ましくは、前記界面活性剤はポリソルベートであり、
より好ましくは、前記界面活性剤はポリソルベート80又はポリソルベート20であり、
最も好ましくは、前記界面活性剤はポリソルベート80である、
請求項1~3の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記界面活性剤の濃度は0.05 mg/mL~0.5 mg/mLであり、好ましくは0.1 mg/mL~0.2 mg/mLであり、より好ましくは0.2 mg/mLである、
請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記組成物は、糖を更に含み、
好ましくは、前記糖はスクロース、マンニトール及びトレハロースから選ばれ、
より好ましくは、前記糖はスクロースである、
請求項1~5の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記糖の濃度は20 mg/mL~100 mg/mLであり、好ましくは40 mg/mL~80 mg/mLであり、より好ましくは40 mg/mLである、
請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記抗Claudin18.2抗体薬物複合体の濃度はタンパク質濃度で1 mg/mL~100 mg/mLであり、好ましくはタンパク質濃度で10 mg/mL~30 mg/mLであり、より好ましくはタンパク質濃度で20 mg/mLである、
請求項1~7の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記緩衝剤の濃度は5 mM~50 mMであり、好ましくは10 mM~30 mMであり、より好ましくは30 mMである、
請求項1~8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
pHは5.0~6.5であり、好ましくは5.0~5.5であり、より好ましくは5.0~5.3である、
請求項1~9の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で10 mg/mL~30 mg/mLの前記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.1 mg/mL~0.2 mg/mLのポリソルベートと、(c)40 mg/mL~80 mg/mLの糖と、(d)10 mM~30 mMのヒスチジン塩緩衝剤と、を含み、そのpHは5.0~5.5であり、
好ましくは、下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で20 mg/mLの前記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.2 mg/mLのポリソルベート80と、(c)40 mg/mLのスクロースと、(d)30 mMのヒスチジン-酢酸塩緩衝剤と、を含み、そのpHは5.0~5.3である、
請求項1~10の何れか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
タンパク質濃度で20 mg/mLの抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、
0.2 mg/mLのポリソルベート80と、
40 mg/mLのスクロースと、
30 mMのヒスチジン-酢酸塩緩衝剤と、を含み、
pHは5.0~5.3であり、
前記抗Claudin18.2抗体薬物複合体は、下記の式で示される構造を有し、即ち、
【化3】
そのうち、
nは2~8で、nは小数又は整数であり、
Pcは、配列番号49で示される重鎖、及び配列番号47で示される軽鎖を含む抗Claudin18.2抗体である、
医薬組成物。
【請求項13】
再溶解した後に請求項1~12の何れか一項に記載の医薬組成物を形成することができる、ことを特徴とする
抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤。
【請求項14】
抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法であって、請求項1~12の何れか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む、
方法。
【請求項15】
請求項1~12の何れか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥して得られる、
抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤。
【請求項16】
抗体薬物複合体を含む再溶解溶液であって、請求項13又は15に記載の凍結乾燥製剤を再溶解して調製して得られ、
好ましくは、前記再溶解溶液は、下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で10 mg/mL~30 mg/mLの前記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.1 mg/mL~0.2 mg/mLのポリソルベートと、(c)40 mg/mL~80 mg/mLの糖と、(d)10 mM~30 mMのヒスチジン塩緩衝剤と、を含み、前記再溶解溶液のpHは5.0~5.5であり、
より好ましくは、前記医薬組成物は、下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で20 mg/mLの前記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.2 mg/mLのポリソルベート80と、(c)40 mg/mLのスクロースと、(d)30 mMのヒスチジン-酢酸塩緩衝剤と、を含み、前記再溶解溶液のpHは5.0~5.3である、
ことを特徴とする抗体薬物複合体を含む再溶解溶液。
【請求項17】
請求項1~12の何れか一項に記載の医薬組成物、請求項13又は15に記載の凍結乾燥製剤又は請求項16に記載の再溶解溶液が入った容器を含む、
製品。
【請求項18】
腫瘍又はがんを治療する方法であって、有効量の請求項1~12の何れか一項に記載の医薬組成物、或いは請求項13又は15に記載の凍結乾燥製剤、或いは請求項16に記載の再溶解溶液、或いは請求項17に記載の製品を対象に投与することを含み、
そのうち、前記腫瘍又はがんは、好ましくは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝細胞腫、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイド症及びメルケル細胞がんから選ばれ、
更に好ましくは、前記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれ、前記肺がんは、非小細胞肺がんと小細胞肺がんから選ばれ、前記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年09月30日に提出された中国特許出願(202011061863.1)及び2021年09月13日に提出された中国特許出願(CN202111069020.0)の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、薬物製剤分野に属し、具体的に、抗体薬物複合体を含む医薬組成物、及びその抗がん剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ここでの記載は、必ずしも従来技術を構成するものではなく、本開示に関連する背景情報のみを提供する。
【0004】
クローディン18(Claudin-18、CLDN18)は、ヒトにおいてClaudin18遺伝子によってコードされたタンパク質の一つであり、細胞タイトジャンクションタンパク質ファミリーに属し、層細胞間の分子流動を制御することができる。Claudinタンパク質構造には、4つの膜貫通領域と2つの細胞外ループが含まれる(そのN末端とC末端が細胞質内にある)。
【0005】
Claudin-18は、それぞれClaudin18.1とClaudin18.2という2つのスプライス変異体を有し、2つの配列同士は、第1の細胞外ループのみにおいて8個のアミノ酸の差異を有する。Claudin18.1とClaudin18.2の発現分布は異なっており、Claudin18.1は、正常な肺の細胞において選択的に発現しているが、Claudin18.2は、正常な細胞における発現がひどく制限されているものの、複数種の腫瘍(胃がん、肺がん及び膵臓がんなど)においてアロステリック活性化と過剰発現が頻繁である。Claudin18.2は、胃がんと他のがんの種類の潜在的な治療標的と考えられており、この標的の発見も、胃がんの治療に新たな選択を提供している。
【0006】
抗体薬物複合体(antibody drug conjugate、ADC)は、モノクローナル抗体又は抗体断片を、安定した化学リンカー化合物により生物活性を有する細胞毒素に連結し、抗体の正常な細胞と腫瘍細胞の表面抗原への結合の特異性及び細胞毒性物質の高い有効性を活用していると共に、前者の治療効果が比較的低い、及び後者の毒性と副作用が大きすぎるといった欠陥を回避している。これはつまり、従来の化学療法薬と比べ、抗体薬物複合体が腫瘍細胞とより正確に結合すると共に、正常な細胞への影響を低減することができることを意味する。
【0007】
現在、Claudin18.2を標的とする抗体及びADC薬剤についての特許、例えば、WO2016166122とWO2016165762が報告されている。
【0008】
ADCは、抗体よりも複雑なヘテロ構造を有するため、治療用のADC製剤に更に大きな挑戦をもたらしている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は抗Claudin18.2抗体薬物複合体を含む薬物製剤及びその使用に関する。当該製剤は、安定性が良く、凍結乾燥形態が良いといった利点を有する。
【0010】
本開示は、抗Claudin18.2抗体薬物複合体及び緩衝剤を含む医薬組成物を提供し、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体中の抗Claudin18.2抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
i)上記重鎖可変領域は、配列番号5で示される重鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3を有し、上記軽鎖可変領域は、配列番号6で示される軽鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
ii)上記重鎖可変領域は、配列番号3で示される重鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有するHCDR1、HCDR2及びHCDR3を有し、上記軽鎖可変領域は、配列番号4で示される軽鎖可変領域と同じアミノ酸配列を有するLCDR1、LCDR2及びLCDR3を有し、
上記緩衝剤はヒスチジン塩緩衝剤である。
【0011】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記緩衝剤はヒスチジン-酢酸塩緩衝剤である。
【0012】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
iii)上記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号15、配列番号16及び配列番号17で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、上記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号18、配列番号19及び配列番号20で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含み、又は
iv)上記重鎖可変領域は、それぞれ配列番号9、配列番号10及び配列番号11で示されるHCDR1、HCDR2及びHCDR3を含み、上記軽鎖可変領域は、それぞれ配列番号12、配列番号13及び配列番号14で示されるLCDR1、LCDR2及びLCDR3を含む。
【0013】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体は、マウス抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。
【0014】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体は、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、そのうち、
(1)上記重鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号3で示され、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、及び上記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号4で示され、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、
(2)上記重鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号24で示され、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、及び上記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号21で示され、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、
(3)上記重鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号5で示され、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、及び上記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号6で示され、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、又は
(4)上記重鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号31で示され、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有し、及び上記軽鎖可変領域は、アミノ酸配列が配列番号28で示され、又はそれと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する。
【0015】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体はヒト化抗体であり、上記ヒト化抗体はヒト抗体由来のフレームワーク領域又はそのフレームワーク領域変異体を含み、上記フレームワーク領域変異体は、ヒト抗体の軽鎖フレームワーク領域及び/又は重鎖フレームワーク領域においてそれぞれ多くとも10個のアミノ酸の復帰変異を有する。
【0016】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記フレームワーク領域変異体は、以下の(a)又は(b)から選ばれる変異を含むみ、即ち、
(a)上記軽鎖可変領域は、任意に22S、85I及び87Hから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、及び/又は上記重鎖可変領域は、任意に48I、82T及び69Mから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、又は
(b)上記軽鎖可変領域は、任意に4L又は22Sから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含み、及び/又は上記重鎖可変領域は、任意に38K、40R、48I、66K、67A、69L、71L及び73Kから選ばれる1つ又は複数のアミノ酸復帰変異を含む。
【0017】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記フレームワーク領域変異体は、以下から選ばれる変異を含むみ、即ち、
(a-1)上記軽鎖可変領域は、22S、85I及び87Hのアミノ酸復帰変異を含み、及び上記重鎖可変領域は、48I及び82Tのアミノ酸復帰変異を含み、又は
(b-1)上記軽鎖可変領域は、4Lのアミノ酸復帰変異を含み、
そのうち、上記重鎖可変領域の82Tにおける82は、Kabat規則での第82A位である。
【0018】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、抗Claudin18.2抗体は、以下の何れか一項に示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、即ち、
(vii)上記重鎖可変領域は配列番号3で示され、及び上記軽鎖可変領域は配列番号4で示され、
(viii)上記重鎖可変領域は配列番号24、25、26又は27で示され、及び上記軽鎖可変領域は配列番号21、22又は23で示され、
(ix)上記重鎖可変領域は配列番号5で示され、及び上記軽鎖可変領域は配列番号6で示され、又は
(x)上記重鎖可変領域は配列番号31、32、33又は34で示され、及び上記軽鎖可変領域は配列番号28、29又は30で示され、
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、抗Claudin18.2抗体は、以下の何れか一項に示される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、即ち、
(xi)上記重鎖可変領域は配列番号31で示され、及び上記軽鎖可変領域は配列番号29で示され、又は
(xii)上記重鎖可変領域は配列番号26で示され、及び上記軽鎖可変領域は配列番号23で示される。
【0019】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、抗Claudin18.2抗体は、抗体重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む。
【0020】
幾つかの実施形態において、上記重鎖定常領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4定常領域及びその通常変異体から選ばれ、上記軽鎖定常領域は、ヒト抗体κとλ鎖定常領域及びその通常変異体から選ばれる。幾つかの実施形態において、上記抗体は配列番号7で示される重鎖定常領域及び配列番号8で示される軽鎖定常領域を含む。
【0021】
幾つかの実施形態において、上記抗体は、配列番号35又は42で示されるアミノ酸配列を有する重鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する重鎖、及び配列番号36又は39で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する軽鎖、を含み、或いは配列番号37又は49で示されるアミノ酸配列を有する重鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する重鎖、及び配列番号38又は46で示されるアミノ酸配列を有する軽鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する軽鎖、を含む。
【0022】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、抗Claudin18.2抗体は、以下の何れか一項に示される重鎖及び軽鎖、即ち、
(c)配列が配列番号35で示される重鎖、及び配列が配列番号36で示される軽鎖、
(d)配列が配列番号42、43、44又は45で示される重鎖、及び配列が配列番号39、40又は41で示される軽鎖、
(e)配列が配列番号37で示される重鎖、及び配列が配列番号38で示される軽鎖、又は
(f)配列が配列番号49、50、51又は52で示される重鎖、及び配列が配列番号46、47又は48で示される軽鎖、
を含む。
【0023】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、抗Claudin18.2抗体は、以下の何れか一項に示される重鎖及び軽鎖、即ち、
配列番号44で示される重鎖、及び配列番号41で示される軽鎖、又は
配列番号49で示される重鎖、及び配列番号47で示される軽鎖、
を含む。
【0024】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L-Y-D)で示される構造を有し、即ち、
【化1】
そのうち、
Yは、-O-(CR-CR-C(O)-、-O-CR-(CR-、-O-CR-、-NH-(CR-CR-C(O)-及び-S-(CR-CR-C(O)-から選ばれ、
とRは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立的に水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシアルキル基、シクロアルキル基及びヘテロシクリル基から選ばれ、
又は、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
は、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、
は、水素原子、ハロゲン、ハロアルキル基、重水素化アルキル基、シクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、アルコキシアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基及びヘテロアリール基から選ばれ、
又は、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
又は、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にシクロアルキル基又はヘテロシクリル基を形成し、
mは0~4の整数であり、
nは1~10で、nは小数又は整数であり、
Lは、リンカーユニットであり、
Pcは抗Claudin18.2抗体であり、
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、nは小数又は整数であり、2~8、3~7、3.5~4.5、2、3、3.5、4、4.5、5、6、7、8、9であってもよい。
【0025】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L-Y-D)で示される構造を有し、
そのうち、
Yは、-O-(CR-CR-C(O)-であり、
とRは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立的に水素原子、重水素原子、ハロゲン又はC1-6アルキル基から選ばれ、
は、ハロゲン化C1-6アルキル基又はC3-6シクロアルキル基であり、
は、水素原子、ハロゲン化C1-6アルキル基又はC3-6シクロアルキル基から選ばれ、
或いは、RとRは、それらに連結された炭素原子と共にC3-6シクロアルキル基を形成し、
mは、0又は1である。
【0026】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体は、一般式(Pc-L-Y-D)で示される構造を有し、そのうち、Yは、
【化2】
から選ばれ、
そのうち、YのO末端は、リンカーユニットLに連結される。
【0027】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、リンカーユニット-L-は-L-L-L-L-であり、
は、-(スクシンイミド-3-イル-N)-W-C(O)-、-CH-C(O)-NR-W-C(O)-又は-C(O)-W-C(O)-から選ばれ、そのうち、Wは、C1-8アルキル基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基又は1個~8個の鎖原子をもつ直鎖ヘテロアルキル基から選ばれ、上記ヘテロアルキル基は、N、O又はSから選ばれる1個~3個のヘテロ原子を含み、そのうち、上記C1-8アルキル基、C1-8アルキル基-シクロアルキル基又は1個~8個の鎖原子をもつ直鎖ヘテロアルキル基は、それぞれ独立的に、任意選択的にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、C1-6アルキル基、クロロ1-6アルキル基、重水素化C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で更に置換され、
は、-NR(CHCHO)pCHCHC(O)-、-NR(CHCHO)pCHC(O)-、-S(CH)pC(O)-又は化学結合から選ばれ、そのうち、pは1~20の整数であり、
は、2個~7個のアミノ酸からなるペプチド残基であり、そのうち、上記アミノ酸残基はフェニルアラニン、グリシン、バリン、リジン、シトルリン、セリン、グルタミン酸及びアスパラギン酸から選ばれるアミノ酸から形成されるアミノ酸残基であり、且つ任意選択的にハロゲン、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、C1-6アルキル基、クロロC1-6アルキル基、重水素化C1-6アルキル基、C1-6アルコキシ基及びC3-6シクロアルキル基から選ばれる1つ又は複数の置換基で更に置換され、
は、-NR(CR-、-C(O)NR-、-C(O)NR(CH-又は化学結合から選ばれ、そのうち、tは1~6の整数であり、
、R及びRは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立的に水素原子、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基、重水素化C1-6アルキル基及びC1-6ヒドロキシアルキル基から選ばれ、
とRは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン、C1-6アルキル基、ハロゲン化C1-6アルキル基、重水素化C1-6アルキル基及びC1-6ヒドロキシアルキル基から選ばれる。
【0028】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、リンカーユニット-L-は-L-L-L-L-であり、

【化3】
であり、sは2~8の整数であり、
は化学結合であり、
はテトラペプチド残基であり、好ましくはGGFGのテトラペプチド残基(配列番号55)であり、
は、-NR(CR)t-であり、R、R又はRは相同又は相異であり、且つそれぞれ独立的に水素原子又はC1-6アルキル基であり、tは1又は2であり、
そのうち、上記L末端はPcに連結され、L末端はYに連結される。
【0029】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、-L-は、
【化4】
【0030】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、-L-Y-は任意に、
【化5】
【0031】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体は、以下の何れか一項に示される構造を有し、即ち、
【化6】
そのうち、Pcとnは、一般式(Pc-L-Y-D)に定義される通りである。
【0032】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体は、下記の式で示される構造を有し、即ち、
【化7】
そのうち、
nは2~8で、nは小数又は整数であり、
Pcは抗Claudin18.2抗体である。
【0033】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記医薬組成物は、界面活性剤を更に含む。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート80)、ポロクサマー、Triton、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、オクチルグルコシドナトリウム、ラウリル-スルホベタイン、ミリスチル-スルホベタイン、リノール-スルホベタイン、ステアリン-スルホベタイン、ラウリル-サルコシン、ミリスチル-サルコシン、リノール-サルコシン、ステアリン-サルコシン、リノール-ベタイン、ミリスチル-ベタイン、セチル-ベタイン、ラウラミドプロピル-ベタイン、コカミドプロピル-ベタイン、リノールアミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ベタイン、パルミタミドプロピル-ベタイン、イソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-ジメチルアミン、パルミタミドプロピル-ジメチルアミン、イソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、メチルココイルナトリウム、メチルオレイルタウリンナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンとプロピレングリコールの共重合体などから選ばれる。
【0034】
幾つかの実施形態において、上記界面活性剤はポリソルベートである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤はポリソルベート80又はポリソルベート20である。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤はポリソルベート80である。
【0035】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記界面活性剤の濃度は0.05 mg/mL~0.5 mg/mL又は0.1 mg/mL~0.2 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は0.05 mg/mL、0.1 mg/mL、0.15mg/mL、0.18mg/mL、0.19 mg/mL、0.2 mg/mL、0.21 mg/mL、0.22 mg/mL、0.3 mg/mL、0.4 mg/mL、0.5 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記界面活性剤の濃度は0.2 mg/mLである。
【0036】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記組成物は糖を更に含む。幾つかの実施形態において、上記糖は、通常の組成物(CHO)及びその誘導体から選ばれ、単糖、二糖、三糖、多糖、糖アルコール、還元糖、非還元糖などを含む。上記糖は、グルコース、スクロース、トレハロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、デキストラン、グリセリン、エリトリトール、グリセロール、アラビトール、sylitol、ソルビトール、マンニトール、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンニノトリオース、スタキオース、マルトース、ラクツロース、マルツロース、ソルビトール、マルトースアルコール、ラクトースアルコール、イソ-マルツロースなどから選ばれてもよい。幾つかの実施形態において、上記糖はスクロース、マンニトール及びトレハロースから選ばれる。幾つかの実施形態において、上記糖はスクロースである。
【0037】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記糖の濃度は20 mg/mL~100 mg/mL又は40 mg/mL~80 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記糖の濃度は20 mg/mL、30 mg/mL、40 mg/mL、50 mg/mL、60 mg/mL、70 mg/mL、80 mg/mL、90 mg/mL又は100 mg/mLである。幾つかの実施形態において、糖の濃度は40 mg/mLである。
【0038】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記抗体薬物複合体の濃度はタンパク質(即ち、抗体)濃度で1 mg/mL~100 mg/mL又はタンパク質濃度で10 mg/mL~30 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記抗体薬物複合体の濃度はタンパク質濃度で5 mg/mL、10 mg/mL、20 mg/mL、30 mg/mL、40 mg/mL、50 mg/mL、60 mg/mL、70 mg/mL、80 mg/mL、90 mg/mL又は100 mg/mLである。幾つかの実施形態において、上記薬物複合体の濃度はタンパク質濃度で20 mg/mLである。
【0039】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記緩衝剤の濃度は5 mM~50 mM又は10 mM~30 mMである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤の濃度は5 mM、10 mM、15 mM、20mM、25 mM、30 mM、35 mM、40 mM、45 mM又は50 mMである。幾つかの実施形態において、上記緩衝剤の濃度は30 mMである。
【0040】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、そのうち、上記医薬組成物のpHは5.0~6.5又は5.0~5.5である。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4又は6.5である。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは5.0~5.4である。幾つかの実施形態において、上記医薬組成物のpHは5.0~5.3である。
【0041】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で10 mg/mL~30 mg/mLの上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.1 mg/mL~0.2 mg/mLのポリソルベートと、(c)40 mg/mL~80 mg/mLの糖と、(d)10 mM~30 mMのヒスチジン塩緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHは約5.0~5.5である。
【0042】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で10 mg/mL~30 mg/mLの上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.1 mg/mL~0.2 mg/mLのポリソルベート80と、(c)40 mg/mL~80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mM~30 mMのヒスチジン塩緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHは約5.0~5.5である。
【0043】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、それは下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で20 mg/mLの上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.2 mg/mLのポリソルベート80と、(c)40 mg/mLのスクロースと、(d)30 mMのヒスチジン-酢酸塩緩衝剤と、を含み、上記医薬組成物のpHは5.0~5.3である。
【0044】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体は、下記の式で示される構造を有し、即ち、
【化8】
そのうち、
nは2~8で、nは小数又は整数であり、
Pcは、配列番号49で示される重鎖、及び配列番号47で示される軽鎖を含む抗Claudin18.2抗体であり、上記医薬組成物はタンパク質濃度で20 mg/mLの上記抗体薬物複合体を含み、
上記医薬組成物は、下記の成分、即ち、
0.2 mg/mLのポリソルベート80、40 mg/mLのスクロース及び30 mMのヒスチジン-酢酸塩緩衝剤を含み、上記医薬組成物のpHは5.0~5.3である。
【0045】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の医薬組成物であって、上記医薬組成物は液体製剤である。幾つかの実施形態において、上記液体製剤の溶媒は水である。
【0046】
本開示は、抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤であって、再溶解した後に上記の何れか一項に記載の医薬組成物を形成することができることを特徴とする凍結乾燥製剤を更に提供する。
【0047】
本開示は、上記の何れか一項に記載の医薬組成物の凍結乾燥形態である凍結乾燥製剤を更に提供する。
【0048】
本開示は、抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤を調製する方法であって、上記の何れか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥するステップを含む方法を更に提供する。
【0049】
本開示は、抗体薬物複合体を含む凍結乾燥製剤であって、上記の何れか一項に記載の医薬組成物を凍結乾燥して得られる凍結乾燥製剤を更に提供する。
【0050】
幾つかの実施形態において、上記の何れか一項に記載の凍結乾燥は、順に予備凍結、一次乾燥及び二次乾燥のステップを含む。
【0051】
幾つかの実施形態において、凍結乾燥手順は以下の通りである:温度が5℃の予備凍結、温度が-45℃の予備凍結、温度が-20℃で真空度が20 Paの一次乾燥、及び温度が25℃で真空度が1 Paの二次乾燥。幾つかの実施形態において、凍結乾燥手順は以下の通りである:5℃の温度で10 minの予備凍結、-45℃の温度で50 minの予備凍結、-20℃の温度及び20Paの真空度で120 minの一次乾燥、25℃の温度及び1 Paの真空度で60 minの二次乾燥。
【0052】
幾つかの実施形態において、凍結乾燥製剤は、2℃~8℃で少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも18ヶ月又は少なくとも24ヶ月安定している。幾つかの実施形態において、当該凍結乾燥製剤は、40℃で少なくとも7日間、少なくとも14日間又は少なくとも28日間安定している。
【0053】
本開示は、上記の何れか一項に記載の凍結乾燥製剤の再溶解形態である凍結乾燥製剤を更に提供する。
【0054】
本開示は、抗体薬物複合体を含む再溶解溶液であって、上記の何れか一項に記載の凍結乾燥製剤を再溶解して調製して得られることを特徴とする再溶解溶液を更に提供する。
【0055】
幾つかの実施形態において、上記の再溶解溶液は下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で10 mg/mL~30 mg/mLの上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.1 mg/mL~0.2 mg/mLのポリソルベートと、(c)40 mg/mL~80 mg/mLの糖と、(d)10 mM~30 mMのヒスチジン塩緩衝剤と、を含み、上記再溶解溶液のpHは5.0~5.5である。
【0056】
幾つかの実施形態において、上記の再溶解溶液は下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で10 mg/mL~30 mg/mLの上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.1 mg/mL~0.2 mg/mLのポリソルベート80と、(c)40 mg/mL~80 mg/mLのスクロースと、(d)10 mM~30 mMのヒスチジン塩緩衝剤と、を含み、上記再溶解溶液のpHは5.0~5.5である。
【0057】
幾つかの実施形態において、上記の再溶解溶液は下記の成分、即ち、
(a)タンパク質濃度で20 mg/mLの上記抗Claudin18.2抗体薬物複合体と、(b)0.2 mg/mLのポリソルベート80と、(c)40 mg/mLのスクロースと、(d)30 mMのヒスチジン-酢酸塩緩衝剤と、を含み、上記再溶解溶液のpHは5.0~5.3である。
【0058】
本開示は、上記の何れか一項に記載の医薬組成物、上記の何れか一項に記載の凍結乾燥製剤又は上記の何れか一項に記載の再溶解溶液が入った容器を含む製品を更に提供する。
【0059】
本開示は、腫瘍又はがんを治療する方法であって、対象に有効量の上記の何れか一項に記載の医薬組成物、上記の何れか一項に記載の凍結乾燥製剤、上記の何れか一項に記載の再溶解溶液、又は上記の何れか一項に記載の製品を投与することを含む、方法を更に提供する。
【0060】
幾つかの実施形態において、本開示は、上記の何れか一項に記載の医薬組成物、上記の何れか一項に記載の凍結乾燥製剤、上記の何れか一項に記載の再溶解溶液又は上記の何れか一項に記載の製品の、腫瘍又はがんを治療する薬剤の調製における使用を更に提供する。
【0061】
幾つかの実施形態において、本開示は、薬剤として使用される、上記の何れか一項に記載の医薬組成物、上記の何れか一項に記載の凍結乾燥製剤、上記の何れか一項に記載の再溶解溶液、又は上記の何れか一項に記載の製品を更に提供する。
【0062】
幾つかの実施形態において、上記腫瘍又はがんは、頭頸部扁平上皮がん、頭頸部がん、脳がん、神経膠腫、多形性膠芽腫、神経芽細胞腫、中枢神経系がん、神経内分泌腫瘍、咽頭がん、鼻咽頭がん、食道がん、甲状腺がん、悪性胸膜中皮腫、肺がん、乳がん、肝がん、肝細胞腫、肝細胞がん、肝胆嚢がん、膵臓がん、胃がん、消化管がん、腸がん、結腸がん、大腸がん、腎がん、明細胞腎細胞がん、卵巣がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膀胱がん、前立腺がん、精巣がん、皮膚がん、黒色腫、白血病、リンパ腫、骨がん、軟骨肉腫、骨髄腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、クルッケンベルグ腫瘍、骨髄増殖性腫瘍、扁平上皮がん、ユーイング肉腫、全身性軽鎖アミロイド症及びメルケル細胞がんであることが好ましい。
【0063】
幾つかの実施形態において、上記リンパ腫は、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、縦隔原発大細胞型B細胞リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、T細胞/組織球に富む大細胞型B細胞リンパ腫及びリンパ形質細胞性リンパ腫から選ばれる。
【0064】
幾つかの実施形態において、上記肺がんは、非小細胞肺がん及び小細胞肺がんから選ばれる。
【0065】
幾つかの実施形態において、上記白血病は、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病及び骨髄細胞白血病から選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】ヒト化抗体の細胞レベルでのヒトClaudin18.2との結合のFACS検出結果である。
図2】ヒト化抗体のNUGC4細胞エンドサイトーシス実験である。
図3A-3C】Claudin18.2発現レベルが異なるNUGC4細胞における抗体のADCC効果検出である。図3Aは、野生型NUGC4細胞(Claudin18.2低発現)における抗体のADCC効果検出であり、図3Bは、Claudin18.2中等度発現NUGC4細胞における抗体のADCC効果検出であり、図3Cは、Claudin18.2高発現NUGC4細胞における抗体のADCC効果検出である。
図4】本開示のADC-1の腫瘍阻害実験結果である。
図5】本開示のADC-2の腫瘍阻害実験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
用語
本開示が更に容易に理解されるように、以下、幾つかの技術・科学用語を具体的に定義する。本明細書で別途明示的に定義されていない限り、本明細書に使用される他の技術・科学用語の全ては、当業者に通常理解されている意味を持っている。
【0068】
「抗体薬物複合体(antibody drug conjugate、ADC)」は、抗体又は抗体断片を、安定した化学リンカー化合物により生物活性を有する細胞毒素又は細胞傷害活性を有する小分子薬物に連結し、抗体の腫瘍細胞に対する特異性又は高発現抗原との結合の特異性及び細胞毒素の高い有効性を活用し、正常な細胞への毒性や副作用を回避する。従来の化学療法薬と比べ、抗体薬物複合体は、腫瘍細胞と正確に結合すると共に、正常細胞への影響を低減することができる。
【0069】
「緩衝剤」は、その酸-塩基共役成分の作用によりpHの変化に耐える緩衝剤を指す。pHを適当な範囲に制御する緩衝剤の例は、酢酸塩、コハク酸塩、グルコン酸塩、ヒスチジン塩、シュウ酸塩、乳酸塩、リン酸塩、枸櫞酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、グリシルグリシン及び他の有機酸緩衝剤を含む。
【0070】
「ヒスチジン塩緩衝剤」は、ヒスチジンイオンを含む緩衝剤である。ヒスチジン塩緩衝剤の実例は、ヒスチジン-塩酸塩、ヒスチジン-酢酸塩、ヒスチジン-リン酸塩、ヒスチジン-硫酸塩などの緩衝剤を含み、好ましくはヒスチジン-酢酸塩緩衝剤である。ヒスチジン-酢酸塩緩衝剤は、ヒスチジンと酢酸により調製されたもので、ヒスチジン塩酸塩緩衝剤は、ヒスチジンと塩酸により調製されたものである。
【0071】
「枸櫞酸塩緩衝剤」は、枸櫞酸イオンを含む緩衝剤である。枸櫞酸塩緩衝剤の実例は、枸櫞酸-枸櫞酸ナトリウム、枸櫞酸-枸櫞酸カリウム、枸櫞酸-枸櫞酸カルシウム、枸櫞酸-枸櫞酸マグネシウムなどを含む。好ましい枸櫞酸塩緩衝剤は、枸櫞酸-枸櫞酸ナトリウムである。
【0072】
「コハク酸塩緩衝剤」は、コハク酸イオンを含む緩衝剤である。コハク酸塩緩衝剤の実例は、コハク酸-コハク酸ナトリウム、コハク酸-コハク酸カリウム、コハク酸-コハク酸カルシウム塩などを含む。好ましいコハク酸塩緩衝剤は、コハク酸-コハク酸ナトリウムである。例示的に、上記コハク酸-コハク酸ナトリウムは、コハク酸と水酸化ナトリウムにより調製され、又はコハク酸とコハク酸ナトリウムにより調製されてもよい。
【0073】
「リン酸塩緩衝剤」は、リン酸イオンを含む緩衝剤である。リン酸塩緩衝剤の実例は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム-枸櫞酸などを含む。好ましいリン酸塩緩衝剤は、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウムである。
【0074】
「酢酸塩緩衝剤」は、酢酸イオンを含む緩衝剤である。酢酸塩緩衝剤の実例は、酢酸-酢酸ナトリウム、酢酸-ヒスチジン塩、酢酸-酢酸カリウム、酢酸-酢酸カルシウム、酢酸-酢酸マグネシウムなどを含む。好ましい酢酸塩緩衝剤は、酢酸-酢酸ナトリウムである。
【0075】
「医薬組成物」は、1種又は複数種の本明細書に記載される抗体薬物複合体又はその生理学的/薬学的に許容される塩又はプロドラッグと、生理学的/薬学的に許容されるベクターや賦形剤などの他の化学成分とを含む混合物を示す。医薬組成物は、活性成分の安定性を保持し、生体への投与を促進し、活性成分の吸収に寄与して更に生物活性を発揮するためのものである。
【0076】
本開示において、「医薬組成物」と「製剤」は相互に排他的ではない。
【0077】
本開示に記載される医薬組成物の溶液形態は、特に説明のない限り、その中の溶媒は何れも水である。
【0078】
「凍結乾燥製剤」は、液体若しくは溶液形態の医薬組成物又は液体若しくは溶液製剤に対して真空凍結乾燥工程を行った後に得られた製剤又は医薬組成物を示す。
【0079】
本開示では、含有量範囲又は含有量値が提供されているが、上記含有量範囲又は含有量値は、測定される具体値の許容される誤差範囲をカバーしていることが当業者に理解される。
【0080】
本開示に記載される医薬組成物は、安定的な効果を達成することができ、即ち、その中の抗体薬物複合体は貯蔵された後、基本的にその物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を保持しており、好ましくは、医薬組成物は貯蔵された後、基本的にその物理的・化学的安定性及びその生物学的活性を保持している。貯蔵期間は、一般的に医薬組成物の所定の保存期間によって選択される。現在、タンパク質の安定性を測定する分析技術は多種あり、選択された温度で、選択された期間貯蔵された後の安定性を測定することができる。
【0081】
安定した製剤は、冷蔵温度(2℃~8℃)で少なくとも3ヶ月、好ましくは6ヶ月、より好ましくは1年間、そして更に好ましくは2年間も保存した場合に顕著な変化が認められない製剤である。また、安定した液体製剤は、25℃を含む温度で1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月を含む期間保存した後、所望の特徴を示している液体製剤を含む。安定性の典型的な例としては、SEC-HPLCにより、凝集又は分解を発生した抗体モノマーが通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えないことが測定される。視覚的分析により、製剤は、淡黄色でほぼ無色透明な液体、又は無色、又は清澄からやや乳白色である。上記製剤の濃度、pH及び重量モル浸透圧濃度は、変化が±10%を超えない。通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない減少が見られる。通常、約10%を超えず、好ましくは約5%を超えない凝集が形成される。
【0082】
目視で色及び/又は清澄度が検出され、又はUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)及び動的光散乱(DLS)により測定されたところ、抗体薬物複合体が顕著な凝集増加、沈殿及び/又は変性を示さないと、上記抗体薬物複合体は、薬物製剤において「その物理的安定性を保持している」とする。タンパク質の配座の変化は、蛍光分光法(タンパク質の三次構造を確定するもの)により、及びFTIR分光法(タンパク質の二次構造を確定するもの)により評価されてもよい。
【0083】
抗体薬物複合体が顕著な化学的変化を示さないと、上記抗体は、薬物製剤において「その化学的安定性を保持している」とする。化学的に形態が変化されたタンパク質を検出・定量することにより、化学的安定性を評価することができる。タンパク質の化学構造を常に変化させる分解過程は、加水分解又は切断(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーやCE-SDSなどの方法で評価される)、酸化(例えば、質量分析法又はMALDI/TOF/MSと結合するペプチドマッピング法などの方法で評価される)、脱アミド作用(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、キャピラリーなど電点電気泳動、ペプチドマッピング法、イソアスパラギン酸の測定などの方法で評価される)及び異性化(イソアスパラギン酸の含有量の測定、ペプチドマッピング法などで評価される)を含む。
【0084】
抗体薬物複合体は、既定の時間での生物活性が薬物製剤の調製時に示される生物活性の所定範囲にある場合、上記抗体薬物複合体は、薬物製剤において「その生物活性を保持している」とする。
【0085】
本開示に用いられるアミノ酸の3文字コードと1文字コードは、J. biol. chem、243、p3558(1968)に記載された通りである。
【0086】
本開示の「抗体」という用語は、所望の抗原結合活性が示されれば、最も広い意味で使用され、種々の抗体構造をカバーしており、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、全長抗体又はその抗原結合断片(「抗原結合部分」とも呼ばれる)を含むが、これらに限定されない。全長抗体は、ジスルフィド結合で互いに連結される少なくとも2つの重鎖と2つの軽鎖を含む免疫グロブリン(Ig)である。免疫グロブリンは、重鎖定常領域のアミノ酸組成と配列順序が異なるので、その抗原性も異なる。これにより、免疫グロブリンは、5種類に分けることができ、又は、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEという免疫グロブリンのアイソタイプと呼ばれ、その対応する重鎖はそれぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同一種類のIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成及び重鎖ジスルフィド結合の数と位置の違いによって、更に異なるサブクラスに分けることができ、例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けられてもよい。軽鎖は、定常領域によって、κ鎖又はλ鎖に分けられる。5種類のIgのそれぞれは、κ鎖又はλ鎖を有してもよい。
【0087】
全長抗体の重鎖及び軽鎖は、N末端に近い約110個のアミノ酸配列の変化が大きくて、可変領域(Fv領域と略す)となり、C末端に近い残りのアミノ酸配列が比較的安定的で、定常領域となる。それぞれの重鎖は、重鎖可変領域(VHと略す)と重鎖定常領域(CHと略す)からなる。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3という3つのドメインを含む。それぞれの軽鎖は、軽鎖可変領域(VLと略す)と軽鎖定常領域(CLと略す)からなる。重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、超可変領域(相補性決定領域とも呼ばれ、CDR又はHVRと略す)と、配列が比較的保存的な骨格領域(フレームワーク領域とも呼ばれ、FRと略す)と、を含む。それぞれのVLとVHは、アミノ末端からカルボキシ末端へ、FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4という順に配列される3つのCDRと4つのFRからなる。軽鎖の3つのCDR領域は、LCDR1、LCDR2及びLCDR3を指し、重鎖の3つのCDR領域は、HCDR1、HCDR2及びHCDR3を指す。
【0088】
本開示に記載されるヒト抗体重鎖定常領域及びヒト抗体軽鎖定常領域の「通常変異体」は、従来技術に開示された抗体可変領域の構造と機能を変更しないヒト由来の重鎖定常領域又は軽鎖定常領域の変異体を指し、例示的な変異体は、重鎖定常領域に対して部位特異的改変とアミノ酸置換を行ったIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4重鎖定常領域変異体を含み、具体的な置換は、例えば、従来技術における既知のYTE変異、L234A及び/又はL235A変異、S228P変異、265A(例えば、D265A)及び/又は297A(例えば、N297A)、及び/又はknob-into-hole構造を得た変異(抗体重鎖にknob-Fcとhole-Fcの組み合わせを付与する)であり、これらの変異は、抗体可変領域の機能を変更せずに、抗体に新しい性能を付与することが確認された。
【0089】
「抗原結合断片」又は「機能断片」又は「抗原結合部分」という用語は、抗原に特異的に結合する能力が保たれた完全な抗体の1つ又は複数の断片を指す。全長抗体の断片により抗体の抗原結合機能を果たすことができることが示されている。例示的に、「抗原結合断片」という用語に含まれる結合断片の実例は、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる1価断片であるFab断片と、(ii)ヒンジ領域におけるジスルフィド架橋により連結された2つのFab断片を含む2価断片であるF(ab’)断片と、(iii)VHとCH1ドメインからなるFd断片と、(iv)抗体の単アームのVHとVLドメインからなるFv断片と、(v)VHとVLにより鎖間ジスルフィド結合で形成された安定的な抗原結合断片であるdsFvと、(vi)scFv、dsFv、Fabなどの断片を含む二重抗体、二重特異性抗体及び多重特異性抗体と、を含む。なお、Fv断片の2つのドメインVLとVHは、分離した遺伝子でコードされるが、組換え法により、この2つのドメインは、それらを単一のタンパク質鎖にすることが可能な人工ペプチドリンカーにより結合することができ、そのうち、VLとVH領域はペアになって1価分子を形成し、単鎖Fv(scFv)と呼ばれる(例えば、Bird et al. (1988)Science242:423~426、及びHuston et al.(1988)Proc. Natl. Acad. Sci USA85:5879~5883)を参照)。このような単鎖抗体も、抗体の「抗原結合断片」という用語に含まれる。このような抗体断片は、当業者に知られている通常の技術により得られ、且つ、完全抗体と同じように、断片が機能性によってスクリーニングされる。抗原結合部分は、組換えDNA技術により、又は、完全な免疫グロブリンを酵素的若しくは化学的に切断することにより産生することができる。
【0090】
「アミノ酸差異」又は「アミノ酸変異」という用語は、元のタンパク質又はポリペプチドと比べ、変異体タンパク質又はポリペプチドにアミノ酸の変化又は変異があることを指し、元のタンパク質又はポリペプチドを基にして1つ、2つ、3つ又はそれ以上のアミノ酸の挿入、欠失又は置換が発生されることを含む。
【0091】
「抗体フレームワーク」又は「FR領域」という用語は、可変ドメインVL又はVHの一部であって、当該可変ドメインの抗原結合環(CDR)のステントとして用いられるものを指す。実質的に、それは、CDRを有しない可変ドメインである。
【0092】
「相補性決定領域」、「CDR」又は「超可変領域」という用語は、抗体の可変ドメインにおいて抗原結合を促進する主な6つの超可変領域の1つを指す。通常、それぞれの重鎖可変領域には3つのCDR(HCDR1、HCDR2、HCDR3)があり、それぞれの軽鎖可変領域には3つのCDR(LCDR1、LCDR2、LCDR3)がある。「Kabat」番号付け規則(Kabat et al.(1991)、「Sequences of Proteins of Immunological Interest」、5th edition、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MDを参照)、「Chothia」番号付け規則(Al-Lazikani et al.、(1997)JMB 273:927~948を参照)及びImMunoGenTics(IMGT)番号付け規則(Lefranc M.P.、Immunologist、7、132-136(1999);Lefranc、M.P. et al.、Dev. Comp. Immunol.、27、55~77(2003)を参照)などを含む種々の公知方法の何れか1つによって、CDRのアミノ酸配列境界を決定することができる。例えば、典型的な書式では、Kabat規則によれば、上記重鎖可変領域(VH)におけるCDRアミノ酸残基の番号は31~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)及び95~102(HCDR3)で、軽鎖可変領域(VL)におけるCDRアミノ酸残基の番号は24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)及び89~97(LCDR3)である。Chothia規則によれば、VHにおけるCDRアミノ酸の番号は26~32(HCDR1)、52~56(HCDR2)及び95~102(HCDR3)で、VLにおけるアミノ酸残基の番号は26~32(LCDR1)、50~52(LCDR2)及び91~96(LCDR3)である。KabatとChothiaの両方を組み合わせたCDR定義によって、CDRは、ヒトVHにおけるアミノ酸残基である26~35(HCDR1)、50~65(HCDR2)と95~102(HCDR3)及びヒトVLにおけるアミノ酸残基である24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)と89~97(LCDR3)により構成される。IMGT規則によれば、VHにおけるCDRアミノ酸残基の番号は大体、26~35(CDR1)、51~57(CDR2)及び93~102(CDR3)で、VLにおけるCDRアミノ酸残基の番号は大体、27~32(CDR1)、50~52(CDR2)及び89~97(CDR3)である。IMGT規則によれば、抗体のCDR領域は、プログラムIMGT/DomainGap Alignによって決定することができる。AbM規則によれば、VHにおけるCDRアミノ酸の番号は、26~32(HCDR1)、50~58(HCDR2)及び95~102(HCDR3)であり、VLにおけるアミノ酸残基の番号は、24~34(LCDR1)、50~56(LCDR2)及び89~97(LCDR3)である。本開示の抗体の重鎖可変領域と軽鎖可変領域及びそのCDRは、Kabat番号付け規則に適合する。
【0093】
アミノ酸配列の「同一性」とは、アミノ酸配列のアライメント時に(必要に応じて、配列同一性の百分率が最も大きく達成されるようにギャップを導入する)、第1配列と第2配列における同じアミノ酸残基の百分率を指し、そのうち、保存的置換が配列同一性の一部とは見なされない。アミノ酸の配列同一性の百分率を測定するために、アラインメントは、この分野の技術的範囲における種々の方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2又はMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に取得可能なコンピュータソフトウェアにより、実現することができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、測定アラインメントに適用されるパラメータを決定することができる。
【0094】
本開示に係る工学的な抗体又は抗原結合断片は、通常の方法により調製・精製することができる。例えば、重鎖及び軽鎖をコードするcDNA配列は、クローンニングしてGS発現ベクターに組換えることができる。組換えた免疫グロブリン発現ベクターは、CHO細胞を安定してトランスフェクションすることができる。更に好ましい従来技術の一つとして、哺乳類発現系は、特にFc領域の高度に保存的なN末端部位において、抗体のグリコシル化を引き起こすことになる。抗原に結合する抗体を発現することで、安定的なクローンが得られる。陽性のクローンは、バイオリアクターの無血清培地において培養を拡大することで、抗体を産生する。抗体が分泌された培養液は、通常の技術により精製することができる。例えば、調整された緩衝液を含むA又はG Sepharose FFカラムで精製が行われる。非特異的に結合した成分を洗い流す。更に、pH勾配法により、結合した抗体を溶離し、SDS-PAGEで抗体断片を検出し、収集する。抗体は、通常の方法によりろ過濃縮することができる。可溶性の混合物及び多量体は、分子ふるい、イオン交換などの通常の方法により除去されてもよい。得られた生成物は、直ちに例えば、-70℃で冷凍し、又は凍結乾燥しなければならない。
【0095】
「保存的修飾」又は「保存的置換又は置換」は、類似の特徴(例えば、電荷、側鎖の大きさ、疎水性/親水性、主鎖の立体配座と剛性など)を有する他のアミノ酸でタンパク質中のアミノ酸を置換することで、タンパク質の生物学的活性を変えずに頻繁に変化可能にすることを意味する。当業者に知られているように、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換によって、基本的に生物学的活性を変えることはない(例えば、Watson et al.(1987)Molecular Biology of the Gene、The Benjamin/Cummings Pub.Co.、224ページ、(第4版)を参照)。また、構造又は機能が類似したアミノ酸の置換は、生物学的活性を破壊する可能性が低い。例示的な保存的置換は、以下の通りである。
【0096】
【表1】
【0097】
「裸の抗体」という用語は、異種モジュール(例えば、細胞毒性モジュール)又は放射性マーカーと抱合していない抗体を指す。本開示において、抗体薬物複合体の含有量はタンパク質濃度、即ち、複合体中のタンパク質(抗体部分)の重量/体積で計量される。
【0098】
「リンカーユニット」又は「リンカー」という用語は、一端が抗体又はその抗原結合断片に連結され、他端が薬物に連結された化学構造断片又は結合を指し、他のリンカーに連結された後に薬物に連結されてもよい。本開示の好ましい形態は、L及びL~Lと示され、そのうち、L末端は抗体に連結され、L末端は構造単位Yに連結された後に化合物又は毒素に連結される。リンカーは、伸長体、スペーサー及びアミノ酸ユニットを含み、例えば、US2005-0238649A1に記載された方法のようなこの分野での既知の方法により合成することができる。リンカーは、細胞において薬物を放出しやすくする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸不安定性リンカー(例えば、ヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)リンカー、光不安定性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al.、Cancer Research 52:127-131(1992)、米国特許No.5,208,020)を使用してもよい。
【0099】
「アルキル基」という用語は1個~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基である飽和脂肪族炭化水素基を指し、好ましくは1個~12個の炭素原子を含むアルキル基、より好ましくは1個~10個の炭素原子を含むアルキル基、最も好ましくは1個~6個の炭素原子を含むアルキル基である。その非限定的な実例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、2-エチルペンチル基、3-エチルペンチル基、n-オクチル基、2,3-ジメチルヘキシル基、2,4-ジメチルヘキシル基、2,5-ジメチルヘキシル基、2,2-ジメチルヘキシル基、3,3-ジメチルヘキシル基、4,4-ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、2-メチル-2-エチルペンチル基、2-メチル-3-エチルペンチル基、n-ノニル基、2-メチル-2-エチルヘキシル基、2-メチル-3-エチルヘキシル基、2,2-ジエチルペンチル基、n-デシル基、3,3-ジエチルヘキシル基、2,2-ジエチルヘキシル基、及びその種々の分岐鎖異性体などを含む。より好ましくは、1個~6個の炭素原子を含む低級アルキル基であり、その非限定的な実施例は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、n-ペンチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,2-ジメチルプロピル基、2,2-ジメチルプロピル基、1-エチルプロピル基、2-メチルブチル基、3-メチルブチル基、n-ヘキシル基、1-エチル-2-メチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジメチルブチル基、1,2-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、2,3-ジメチルブチル基などを含む。アルキル基は、置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は任意の利用可能な連結部位で置換されてもよく、上記置換基は、独立的に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基から選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0100】
「ヘテロアルキル基」という用語は、N、O又はSから選ばれる1つ又は複数のヘテロ原子を含むアルキル基を指し、そのうち、アルキル基は、上記に定義された通りである。
【0101】
「アルキレン基」という用語は、親アルカンの同じ炭素原子又は2つの異なる炭素原子から2つの水素原子を除去して誘導された2つの残基を有する飽和の直鎖又は分岐鎖の脂肪族炭化水素基を指す。アルキレン基は、1個~20個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖基であり、好ましくは1個~12個の炭素原子を含み、より好ましくは1個~6個の炭素原子を含むアルキレン基である。アルキレン基の非限定的な実例は、メチレン(-CH-)、1,1-エチリデン(-CH(CH)-)、1,2-エチリデン(-CHCH)-、1,1-プロピリデン(-CH(CHCH)-)、1,2-プロピリデン(-CHCH(CH)-)、1,3-プロピリデン(-CHCHCH-)、1,4-ブチリデン(-CHCHCHCH-)及び1,5-ブチリデン(-CHCHCHCHCH-)などを含むが、これらに限定されない。アルキレン基は置換されても、置換されなくてもよい。置換される場合に、置換基は任意の利用可能な連結点で置換されてもよく、上記置換基は、独立的に、任意選択的にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクリル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基及びオキソ基から選ばれる1つ又は複数の基で置換されることが好ましい。
【0102】
「アルコキシ基」という用語は、-O-(アルキル基)及び-O-(非置換のシクロアルキル基)を指し、そのうち、アルキル基又はシクロアルキル基の定義は上記の通りである。アルコキシ基の非制限的な実例は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、シクロプロポキシ基、シクロブトキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基を含む。アルコキシ基は、任意選択的に置換されても、置換されなくてもよく、置換される場合に、置換基は、独立的にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基から選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0103】
「シクロアルキル基」という用語は、飽和又は部分不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指す。シクロアルキル環は3個~20個の炭素原子を含み、好ましくは3個~12個の炭素原子を含み、より好ましくは3個~10個の炭素原子を含み、最も好ましくは3個~7個の炭素原子を含む。単環式シクロアルキル基の非限定的な実例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロペンテニル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキサジエニル基、シクロヘプチル基、シクロヘプタトリエニル基、シクロオクチル基などを含み、多環式シクロアルキル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のシクロアルキル基を含む。
【0104】
「ヘテロシクリル基」という用語は、3個~20個の環原子を含む飽和又は部分不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指し、そのうち、1つ又は複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であるが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-の環部分を含まず、残りの環原子は炭素である。ヘテロシクリル基は、好ましくは3個~12個の環原子を含み、そのうち、1個~4個はヘテロ原子であり、より好ましいシクロアルキル基環は3個~10個の環原子を含む。単環式ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ホモピペラジニル基などを含む。多環式ヘテロシクリル基は、スピロ環、縮合環及び架橋環のヘテロシクリル基を含む。
【0105】
「スピロヘテロシクリル基」という用語は、単環同士が1つの原子(スピロ原子と称する)を共有する5員~20員の多環式ヘテロシクリル基を指し、そのうち、1つ又は複数の環原子は窒素、酸素又はS(O)(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。それは、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環が1つもない。好ましくは6員~14員であり、より好ましくは7員~10員である。スピロヘテロシクリル基は、環同士の共有するスピロ原子の数によって、モノスピロヘテロシクリル基、ビススピロヘテロシクリル基又はポリスピロヘテロシクリル基に分けられ、好ましくはモノスピロヘテロシクリル基及びビススピロヘテロシクリル基である。より好ましくは、4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員又は5員/6員のモノスピロヘテロシクリル基である。スピロヘテロシクリル基の非限定的な実例は、
【化9】
【0106】
「縮合ヘテロシクリル基」という用語は、各環が系内の他の環と、隣接する原子の対を共有する、5員~20員の多環式ヘテロシクリル系を指す。縮合ヘテロシクリル基において、1つ又は複数の環は、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもなく、そのうち、1つ又は複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。縮合ヘテロシクリル基は、好ましくは6員~14員であり、より好ましくは7員~10員である。構成する環の数によって、縮合ヘテロシクリル基は二環式、三環式、四環式又は多環式に分けることができ、好ましくは二環式又は三環式であり、より好ましくは5員/5員、又は5員/6員の二環式縮合ヘテロシクリル基である。縮合ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、
【化10】
を含む。
【0107】
「架橋シクロアルキル基」という用語は、何れか2つの環が直接連結していない2つの原子を共有する5員~14員の多環式ヘテロシクリル基である。架橋シクロアルキル基は、1つ又は複数の二重結合を含んでもよいが、完全に共役したπ電子系を有する環は1つもなく、そのうち、1つ又は複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)(そのうち、mは0~2の整数である)から選ばれるヘテロ原子であり、残りの環原子は炭素である。架橋シクロアルキル基は、好ましくは6員~14員であり、より好ましくは7員~10員である。構成する環の数によって、架橋シクロアルキル基は二環式、三環式、四環式又は多環式に分けることができ、好ましくは二環式、三環式又は四環式であり、より好ましくは二環式又は三環式である。架橋ヘテロシクリル基の非限定的な実例は、
【化11】
【0108】
上記ヘテロシクリル環は、アリール基、ヘテロアリール基又はシクロアルキル基環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はヘテロシクリル基であり、その非限定的な実例は、
【化12】
などを含む。
【0109】
ヘテロシクリル基は、任意選択的に置換されても、置換されなくてもよい。置換される場合に、置換基は、独立的に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキソ基から選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0110】
「アリール基」という用語は、共役したπ電子系を有する6員~14員の全炭素単環式又は縮合多環式(つまり、隣接する炭素原子対を共有する環)の基を指す。アリール基は、好ましくは6員~10員であり、例えば、フェニル基とナフチル基であり、好ましくはフェニル基である。上記アリール環は、ヘテロアリール基、ヘテロシクリル基又はシクロアルキル基環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はアリール環であり、その非限定的な実例は、
【化13】
を含む。
【0111】
アリール基は置換されても、置換されなくてもよい。置換される場合に、置換基は、独立的にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基から選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0112】
「ヘテロアリール基」という用語は、1個~4個のヘテロ原子、5個~14個の環原子を含む複素芳香族系を指し、そのうち、ヘテロ原子は酸素、硫黄及び窒素から選ばれる。ヘテロアリール基は、5員~10員であることが好ましく、5員又は6員であることがより好ましく、例えば、フラニル基、チエニル基、ピリジル基、ピロリル基、N-アルキルピロリル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、テトラゾリル基などである。上記ヘテロアリール環は、アリール基、ヘテロシクリル基又はシクロアルキル基環に縮合してもよく、そのうち、親構造に連結された環はへテロアリール基環であり、その非限定的な実例は、
【化14】
を含む。
【0113】
ヘテロアリール基は任意選択的に置換されても、置換されなくてもよい。置換される場合に、置換基は、独立的にアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、スルフヒドリル基、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基から選ばれる1つ又は複数の基であることが好ましい。
【0114】
「アミノ保護基」という用語は、分子の他の部位が反応する時に、アミノ基が変化されないように、除去され易い基でアミノ基を保護するものである。非限定的な実施例は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、アセチル基、ベンジル基、アリル基及びp-メトキシベンジル基などを含む。これらの基は、任意選択的にハロゲン、アルコキシ基又はニトロ基から選ばれる1個~3個の置換基で置換可能である。上記アミノ保護基は、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基が好ましい。
【0115】
「シクロアルキルアルキル基」という用語は、アルキル基上の水素が1つ又は複数のシクロアルキル基で置換され、好ましくは1つのシクロアルキル基で置換されたものを指し、そのうち、アルキル基は上記に定義された通りであり、そのうち、シクロアルキル基は上記に定義された通りである。
【0116】
「ハロアルキル基」という用語は、アルキル基上の水素が1つ又は複数のハロゲンで置換されたものを指し、そのうち、アルキル基は、上記に定義された通りである。
【0117】
「重水素化アルキル基」という用語は、アルキル基上の水素が1つ又は複数の重水素原子で置換されたものを指し、そのうち、アルキル基は、上記に定義された通りである。
【0118】
「ヒドロキシ基」という用語は、-OH基を指す。
【0119】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0120】
「アミノ基」という用語は、-NHを指す。
【0121】
「ニトロ基」という用語は、-NOを指す。
【0122】
「任意選択」又は「任意選択的に」は、その後に説明される事象又は状況が生じてもよいが、必ずしも生じなくてもよいことを意味し、この説明は、当該事象又は状況が生じる場合と生じない場合を含む。例えば、「任意選択的に1個~3個の抗体重鎖可変領域を含む」とは、特定の配列の抗体重鎖可変領域が存在してもよいが、必ずしも存在しなくてもよいことを意味する。
【0123】
「置換される」とは、基の中の1つ又は複数の水素原子、好ましくは5個以下、より好ましくは1個~3個の水素原子が互いに独立的に対応する数の置換基で置換されることを指す。無論、置換基は、それらの化学的に可能な部位にしか位置せず、当業者はそれほど努力せずに(実験又は理論により)可能又は不可能な置換を決定することができる。例えば、遊離水素を有するアミノ基又はヒドロキシ基は、不飽和(例えば、オレフィン)結合を有する炭素原子に結合する場合、不安定になる可能性がある。
【0124】
「薬物担持量」という用語は、ADC分子におけるそれぞれの抗体又はその抗原結合断片に負荷された細胞毒性薬物の平均数量を指し、薬物量と抗体量との比率で示されてもよく、薬物負荷量の範囲として、それぞれの抗体又はその抗原結合断片(Pc)が0個~12個、好ましくは1個~10個、より好ましくは2個~8個、最も好ましくは3.5個~4.5個の細胞毒性薬物(D)に連結されてもよい。本開示の実施形態において、薬物担持量はnで示され、例示的なnは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10のうちの1つ又は複数の算出された平均値であってもよい。UV/可視分光法、質量分析、ELISA試験及びHPLCのような通常の方法で、カップリング反応後の各ADC分子の薬物平均数量を同定することができる。
【0125】
本開示の一実施形態において、細胞毒性薬物は、リンカーユニットにより抗体又はその抗原結合断片のN末端アミノ基、リジン残基のε-アミノ基及び/又はメルカプト基にカップリングされている。一般的に、カップリング反応において、抗体にカップリング可能な薬物の分子数は理論上の最大値より少ない。
【0126】
細胞毒性薬物の負荷量は、
(1)連結試薬とモノクローナル抗体とのモル比を制御することと、
(2)反応時間と温度を制御することと、
(3)異なる反応試薬を選択することと、
を含む非限定的な方法で制御することができる。
【0127】
通常の医薬組成物の調製は、中国薬典に示されている。
【0128】
「ベクター」という用語は、本開示の医薬組成物に利用されるものとして、薬物の人体への入り方と体内での分布を変更し、薬物の放出速度を制御し、薬物を標的器官に輸送することができる系を指す。薬物ベクターの放出と標的系により、薬物の分解と損失を低減し、副作用を低下させ、生物学的利用能を向上させることができる。例えば、ベクターとしての高分子界面活性剤は、その独特な両親媒性構造のため、自己集合して様々な形態の凝集体を形成することができ、好ましい実例は、例えば、ミセル、マイクロエマルジョン、ゲル、液晶、ベシクルなどである。これらの凝集体は、薬物分子を封入する能力を有すると共に、膜に対して良好な透過性を有し、良い薬物ベクターとすることができる。
【0129】
「投与」、「与える」及び「処理」は動物、ヒト、実験対象、細胞、組織、器官や生物流体に適用される場合に、外因性薬剤、治療剤、診断薬又は組成物の、動物、ヒト、対象、細胞、組織、器官や生物流体との接触を意味する。「投与」、「与える」及び「処理」は例えば、治療、薬物代謝動態、診断、研究と実験方法を意味してもよい。細胞の処理は、試薬と細胞との接触、及び試薬と流体との接触を含み、ここで、上記流体は細胞と接触する。「投与」、「与える」及び「処理」はまた、試薬、診断、結合組成物により、又は別種の細胞を通じて、体外及びインビトロで例えば細胞を処理することを意味する。「処理」はヒト、獣医学又は研究対象に適用される場合に、治療的処理、予防又は予防的措置、研究と診断的応用を意味する。
【0130】
「治療」は、例えば、本開示の何れか1つの結合化合物の組成物を含む経口又は外用治療剤を患者に与えることを意味し、上記患者は1種又は複数種の疾患症状を有し、既知の上記治療剤は、これらの症状に治療効果を有する。通常、治療を受ける患者又はグループには、1種又は複数種の疾患症状を効果的に緩和する量で治療剤を与えることにより、これらの症状の解消を誘導したり、これらの症状を臨床的に測定可能な任意の程度まで進行しないように抑制したりする。何れかの具体的な疾患症状を効果的に緩和する治療剤の量(「治療有効量」とも呼ばれる)は、患者の疾患状態、年齢と体重、及び薬剤の患者において必要な治療効果を発生させる能力など、種々の要因によって変化することができる。当該症状の重症度や進行状況の評価に医者や他のプロのヘルスケアプロバイダによく用いられる任意の臨床的検出方法により、疾患症状が低減されたか否かを評価することができる。本開示の実施形態(例えば、治療方法又は製品)は、各標的疾患症状の緩和において無効である可能性があるが、この分野で既知の任意の統計学的検定方法、例えばStudent t検定、カイ二乗検定、Mann及びWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H検定)、Jonckheere-Terpstra検定とWilcoxon検定により、統計学的に有意な数の患者において標的疾患症状を低減するはずであることが確認された。
【0131】
「有効量」は、医学的疾患の症状又は病状の改善又は予防に十分な量を含む。有効量は、更に、診断の許容又は促進に十分な量を指す。特定の患者又は獣医対象に用いられる有効量は、例えば、治療すべき病状、患者の全体的な健康状況、投与の方法経路と用量及び副作用の重症度などの要因によって変化することができる。有効量は、顕著な副作用又は毒性作用を回避する最大用量又は投与計画であってもよい。
【0132】
「置換」は、抗体又はADCを溶解する溶媒系の置換を指し、例えば、抗体タンパク質が安定的な製剤に存在するように、製剤を安定化する緩衝系で物理的な操作方式により抗体又はADCを含む高塩又は高浸透圧の溶剤系を置換する。上記物理的な操作方式は、限外ろ過、透析又は遠心分離後の再溶解を含むが、これらに限定されない。
【0133】
実施例
以下、実施例と合わせて本開示を更に説明するが、これらの実施例は本開示の範囲を限定するものではない。本開示の実施例において、具体的な条件が明記されていない実験方法は、一般的に、冷泉港実験室に出版された『抗体技術実験マニュアル』、『分子クローンマニュアル』のような通常の条件に従い、或いは原料又は商品メーカーにより勧められた条件に従う。具体的な供給源が明示されていない試薬は、市販される通常の試薬である。
【0134】
一、抗体薬物複合体
抗Claudin18.2抗体の調製
実施例1-1:Claudin18.2高発現細胞株の構築
Lipofectamine 3000トランスフェクション試薬を使用し、pCDH-hClaudin18.2レンチウイルス発現ベクタープラスミドとpVSV-G又はpCMV-dR8.91レンチウイルス系パッケージングベクターを、ウィルスパッケージング細胞293Tにトランスフェクションし、ウィルスを含有する培地上清を収集し、ろ過して超高速で遠心分離し、濃縮されたウィルスでヒト胃印環細胞がん細胞株NUGC4を感染させ、puromycinで2週間~3週間選別してから、FACSシングルセルソーティングを行った。
【0135】
腫瘍IHC評価点数に基づき、Claudin18.2発現レベルを区別した。腫瘍IHC評価点数が3点である腫瘍Claudin18.2発現レベルに相当する細胞は、高発現細胞であり、腫瘍IHC評価点数が2点である腫瘍Claudin18.2発現レベルに相当する細胞は、中等度発現細胞である。
【0136】
FACSによりレンチウイルスに感染したNUGC4細胞表面のClaudin18.2発現を検出することによって、Claudin18.2発現量が高いNUGC4/hClaudin18.2モノクローナル細胞株を選び出した。同時に、FACSにより野生型NUGC4細胞表面のClaudin18.2発現を検出することによって、Claudin18.2発現量が中等度であるNUGC4クローナル細胞株を選び出したが、野生型NUGC4は、Claudin18.2低発現量細胞であった。
【0137】
選び出されたモノクローナル細胞株を拡大培養し、冷蔵庫に凍結保存して後続の実験に備えた。
【0138】
Claudin18.2 配列Genbank:NP_001002026(配列番号1):
MAVTACQGLGFVVSLIGIAGIIAATCMDQWSTQDLYNNPVTAVFNYQGLWRSCVRESSGFTECRGYFTLLGLPAMLQAVRALMIVGIVLGAIGLLVSIFALKCIRIGSMEDSAKANMTLTSGIMFIVSGLCAIAGVSVFANMLVTNFWMSTANMYTGMGGMVQTVQTRYTFGAALFVGWVAGGLTLIGGVMMCIACRGLAPEETNYKAVSYHASGHSVAYKPGGFKASTGFGSNTKNKKIYDGGARTEDEVQSYPSKHDYV。
【0139】
Claudin18.2 DNA配列(配列番号2):
AGAATTGCGC TGTCCACTTG TCGTGTGGCT CTGTGTCGAC ACTGTGCGCC ACCATGGCCG
TGACTGCCTG TCAGGGCTTG GGGTTCGTGG TTTCACTGAT TGGGATTGCG GGCATCATTG
CTGCCACCTG CATGGACCAG TGGAGCACCC AAGACTTGTA CAACAACCCC GTAACAGCTG
TTTTCAACTA CCAGGGGCTG TGGCGCTCCT GTGTCCGAGA GAGCTCTGGC TTCACCGAGT
GCCGGGGCTA CTTCACCCTG CTGGGGCTGC CAGCCATGCT GCAGGCAGTG CGAGCCCTGA
TGATCGTAGG CATCGTCCTG GGTGCCATTG GCCTCCTGGT ATCCATCTTT GCCCTGAAAT
GCATCCGCATTGGCAGCATG GAGGACTCTG CCAAAGCCAA CATGACACTG ACCTCCGGGA
TCATGTTCAT TGTCTCAGGT CTTTGTGCAA TTGCTGGAGT GTCTGTGTTT GCCAACATGC
TGGTGACTAA CTTCTGGATG TCCACAGCTA ACATGTACAC CGGCATGGGT GGGATGGTGC
AGACTGTTCA GACCAGGTAC ACATTTGGTG CGGCTCTGTT CGTGGGCTGG GTCGCTGGAG
GCCTCACACT AATTGGGGGT GTGATGATGT GCATCGCCTG CCGGGGCCTG GCACCAGAAG
AAACCAACTA CAAAGCCGTT TCTTATCATG CCTCAGGCCA CAGTGTTGCC TACAAGCCTG
GAGGCTTCAAGGCCAGCACT GGCTTTGGGT CCAACACCAA AAACAAGAAG ATATACGATG
GAGGTGCCCG CACAGAGGAC GAGGTACAAT CTTATCCTTC CAAGCACGAC TATGTGTAAT
GCTCTAAGACCTCTCAGCACGGGCGGAAGA AACTCCCGGA GAGCTCACCC AAAAAACAAG
GAGATCCCAT CTAGATTTCT TCTTGCTTTT GACTCACAGC TGGAAGTTAG AAAAGCCTCG
ATTTCATCTT TGGAGAGGCC AAATGGTCTT AGCCTCAGTC TCTGTCTCTA AATATTCCAC
CATAAAACAG CTGAGTTATT TATGAATTAG AGGCTATAGC TCACATTTTC AATCCTCTAT
TTCTTTTTTT AAATATAACT TTCTACTCTG ATGAGAGAAT GTGGTTTTAA TCTCTCTCTC
ACATTTTGAT GATTTAGACA GACTCCCCCT CTTCCTCCTA GTCAATAAAC CCATTGATGA
TCTATTTCCC AGCTTATCCC CAAGAAAACT TTTGAAAGGA AAGAGTAGAC CCAAAGATGT
TATTTTCTGC TGTTTGAATT TTGTCTCCCC ACCCCCAACT TGGCTAGTAA TAAACACTTA
CTGAAGAAGA AGCAATAAGA GAAAGATATT TGTAATCTCT CCAGCCCATG ATCTCGGTTT
TCTTACACTG TGATCTTAAA AGTTACCAAA CCAAAGTCAT TTTCAGTTTG AGGCAACCAA
ACCTTTCTAC TGCTGTTGAC ATCTTCTTAT TACAGCAACA CCATTCTAGG AGTTTCCTGA
GCTCTCCACT GGAGTCCTCT TTCTGTCGCG GGTCAGAAAT TGTCCCTAGA TGAATGAGAA
AATTATTTTT TTTAATTTAA GTCCTAAATA TAGTTAAAAT AAATAATGTT TTAGTAAAAT
GATACACTAT CTCTGTGAAA TAGCCTCACC CCTACATGTG GATAGAAGGA AATGAAAAAA
TAATTGCTTT GACATTGTCT ATATGGTACT TTGTAAAGTC ATGCTTAAGT ACAAATTCCA
TGAAAAGCTC ACTGATCCTA ATTCTTTCCC TTTGAGGTCT CTATGGCTCT GATTGTACAT
GATAGTAAGT GTAAGCCATG TAAAAAGTAA ATAATGTCTG GGCACAGTGG CTCACGCCTG
TAATCCTAGCACTTTGGGAG GCTGAGGAGG AAGGATCACT TGAGCCCAGA AGTTCGAGAC
TAGCCTGGGCAACATGGAGAAGCCCTGTCT CTACAAAATA CAGAGAGAAA AAATCAGCCA
GTCATGGTGG CCTACACCTG TAGTCCCAGC ATTCCGGGAG GCTGAGGTGG GAGGATCACT
TGAGCCCAGGGAGGTTGGGG CTGCAGTGAG CCATGATCAC ACCACTGCAC TCCAGCCAGG
TGACATAGCGAGATCCTGTC TAAAAAAATA AAAAATAAAT AATGGAACAC AGCAAGTCCT
AGGAAGTAGGTTAAAACTAA TTCTTTAAAA AAAAAAAAAA GTTGAGCCTG AATTAAATGT
AATGTTTCCA AGTGACAGGT ATCCACATTT GCATGGTTAC AAGCCACTGC CAGTTAGCAG
TAGCACTTTC CTGGCACTGT GGTCGGTTTT GTTTTGTTTT GCTTTGTTTA GAGACGGGGT
CTCACTTTCC AGGCTGGCCT CAAACTCCTG CACTCAAGCA ATTCTTCTAC CCTGGCCTCC
CAAGTAGCTG GAATTACAGG TGTGCGCCAT CACAACTAGC TGGTGGTCAG TTTTGTTACT
CTGAGAGCTG TTCACTTCTC TGAATTCACC TAGAGTGGTT GGACCATCAG ATGTTTGGGC
AAAACTGAAA GCTCTTTGCA ACCACACACC TTCCCTGAGC TTACATCACT GCCCTTTTGA
GCAGAAAGTC TAAATTCCTT CCAAGACAGT AGAATTCCAT CCCAGTACCA AAGCCAGATA
GGCCCCCTAGGAAACTGAGG TAAGAGCAGT CTCTAAAAAC TACCCACAGC AGCATTGGTG
CAGGGGAACT TGGCCATTAG GTTATTATTT GAGAGGAAAG TCCTCACATC AATAGTACAT
ATGAAAGTGACCTCCAAGGG GATTGGTGAA TACTCATAAG GATCTTCAGG CTGAACAGAC
TATGTCTGGG GAAAGAACGG ATTATGCCCC ATTAAATAAC AAGTTGTGTT CAAGAGTCAG
AGCAGTGAGCTCAGAGGCCC TTCTCACTGA GACAGCAACA TTTAAACCAA ACCAGAGGAA
GTATTTGTGG AACTCACTGC CTCAGTTTGG GTAAAGGATG AGCAGACAAG TCAACTAAAG
AAAAAAGAAAAGCAAGGAGGAGGGTTGAGC AATCTAGAGC ATGGAGTTTG TTAAGTGCTC
TCTGGATTTG AGTTGAAGAG CATCCATTTG AGTTGAAGGC CACAGGGCAC AATGAGCTCT
CCCTTCTACC ACCAGAAAGT CCCTGGTCAG GTCTCAGGTA GTGCGGTGTG GCTCAGCTGG
GTTTTTAATT AGCGCATTCT CTATCCAACA TTTAATTGTT TGAAAGCCTC CATATAGTTA
GATTGTGCTT TGTAATTTTG TTGTTGTTGC TCTATCTTAT TGTATATGCA TTGAGTATTA
ACCTGAATGT TTTGTTACTT AAATATTAAA AACACTGTTA TCCTACAGTT。
【0140】
実施例1-2:抗ヒトclaudin18.2モノクローナル抗体の産生
1 免疫
免疫マウスにより抗ヒトClaudin18.2モノクローナル抗体を産生した。
【0141】
実験用SJL白いマウスは、雌で、6週齢~8週齢(北京維通利華実験動物技術有限公司Charles River Laboratory Animal Technology Co.,Ltd.,Beijing、動物生産ライセンス番号:SCXK(京)2012-0001)であった。飼育環境:SPFグレード。マウスを購入した後、12/12時間の明/暗周期で調節し、温度が20℃~25℃、湿度が40%~60%である実験室環境で1週間飼育した。環境に馴れたマウスは、以下の方案で免疫された。免疫抗原は、huClaudin18.2-HEK293細胞(ヒトClaudin18.2プラスミドをトランスフェクションしたHEK-293安定形質転換細胞株)であった。
【0142】
免疫方案:細胞を初回免疫する前に、TiterMax(R) Gold Adjuvant(Sigma Cat No. T2684)を0.1 mL/匹でマウスの腹膜内(IP)に注射し、30分間後に、各マウスの腹膜内(IP)に、0.1 mLの生理食塩水で1×10/mLの濃度に希釈した細胞液を注射した。細胞を均一に吹き散らした後、0日目、14日目、28日目、42日目、56日目に接種した。21日目、35日目、49日目、63日目に採血し、ELISA方法でマウス血清中の抗体価を決定した。4回目~5回目の免疫後に、血清中の抗体価が高くて安定する傾向があるマウスを選択して脾細胞の融合を行った。脾細胞融合の3日前に追加免疫を行い、腹膜内(IP)に1×10の細胞を注射した。
【0143】
2 脾細胞の融合
PEG媒介性の融合ステップにより、脾リンパ球と骨髄腫細胞Sp2/0細胞(ATCC(R) CRL-8287TM)を融合してハイブリドーマ細胞を得た。ハイブリドーマ細胞は、0.5×10/mL~1×10/mLの密度で、完全培地(20%のFBS、1×HAT、1×OPIを含むIMDM培地)で再懸濁し、100 μL/ウェルで96ウェルプレートに播種し、37℃、5%のCOで3日間~4日間インキュベートした後、HAT完全培地を100 μL/ウェルで補充し、クローンが形成されるまで3日間~4日間培養し続けた。上清を除去し、200 μL/ウェルのHT完全培地(20%のFBS、1×HT、1×OPIを含むIMDM培地)を加え、37℃、5%のCOで3日間インキュベートした後、ELISA検出を行った。
【0144】
3 ハイブリドーマ細胞の選別
ハイブリドーマ細胞の成長密度によって、結合ELISA方法で培養上清を検出した。huClaudin18.2-HEK293細胞との結合能力が強いと共にHEK293細胞との結合がない細胞を選択して、適時に増幅して凍結保存し、単細胞クローンが得られるまで2回~3回サブクローニングした。
【0145】
細胞をサブクローニングするたびに、細胞結合実験を行う必要があった。以上の実験により選別してハイブリドーマクローナルを得て、無血清細胞培養法で抗体を更に調製し、精製実例に従って抗体を精製し、検出例での使用に備えた。
【0146】
実施例1-3:マウス抗体のヒト化
体外活性が高いモノクローナルハイブリドーマ細胞株mAb1901、mAb1902を選び出し、その中のモノクローナル抗体配列をクローニングし、そしてヒト化、組換え発現及び活性評価を行った。
【0147】
ハイブリドーマから配列をクローニングするプロセスは、以下の通りである。対数増殖期のハイブリドーマ細胞を収集し、Trizol(Invitrogen、15596-018)でRNAを(試薬キットの取扱説明書でのステップに従って)抽出し、且つ逆転写した(PrimeScriptTM Reverse Transcriptase、Takara、cat # 2680A)。逆転写で得られたcDNAを、mouse Ig-Primer Set(Novagen、TB326 Rev.B 0503)でPCR増幅し、シークエンシング会社に送ってシークエンシングした。得られたDNA配列に対応するアミノ酸配列は、配列番号3~6で示される通りである。
【0148】
mAb1901マウス重鎖可変領域(配列番号3)
EVQLMESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSDYGIHWVRQAPEMGLEWIAYISRGSSTIYYADTVKGRFTMSRDNAKNTLFLQMTSLRSEDTAMYYCARGGYDTRNAMDYWGQGTSVTVSS;
mAb1901マウス軽鎖可変領域(配列番号4)
DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRASGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYHCQNDLYYPLTFGAGTKLELK;
mAb1902マウス重鎖可変領域(配列番号5)
EVQLQESGAELVKPGASVKLSCKASGYIFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGMIHPNSGSTNYNEKFKGKATLTLDKSSSTAYMQLSSLPSEDSAVYYCARLKTGNSFDYWGQGTTLTVSS;
mAb1902マウス軽鎖可変領域(配列番号6)
DIVLTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQNAYTYPFTFGSGTKLEIK;
上記マウス重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、それぞれ、後述するヒトIgG1抗体の重鎖定常領域とヒトκ軽鎖定常領域に連結されてキメラ抗体であるch1901とch1902を形成した。
【0149】
各抗体の定常領域は、以下の配列から選ばれる。
ヒトIgG1抗体の重鎖定常領域:(配列番号7)
ASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;
ヒトκ軽鎖定常領域:(配列番号8)
RTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0150】
この分野における多くの文献に開示された方法のように、マウスモノクローナル抗体のヒト化を行った。つまり、親(マウス抗体)定常ドメインの代わりに、ヒト定常ドメインを用い、マウス抗体とヒト抗体の相同性に基づき、ヒト生殖細胞系配列を選択し、CDR移植を行った。本発明は、活性が良い候補分子を選択してヒト化し、その結果は、以下の通りである。
【0151】
1、マウス抗体のCDR領域
表1中、VH/VL CDRのアミノ酸残基は、Kabat番号付けシステムによって決定されて注釈されている。
【0152】
マウス抗体のCDR配列は、表1に示す通りである。
【0153】
【表2】
【0154】
2、ヒト生殖細胞系FR領域配列の選択
得られたマウス抗体VH/VL CDRの典型的な構造を基にして、重・軽鎖可変領域配列を抗体Germlineデータベースと比較し、相同性が高いヒト生殖細胞系テンプレートを得た。その中で、ヒト生殖細胞系軽鎖フレームワーク領域は、ヒトκ軽鎖遺伝子に由来した。
【0155】
2.1 mAb1901のヒト化改変及び復帰変異の設計
適切なヒト抗体生殖細胞系を選択し、mAb1901マウス抗体をヒト化改変し、ヒト化可変領域の代わりに、マウス抗体mAb1901のCDR領域を、選択されたヒト化テンプレートに移植し、更にIgG定常領域と組換え、完全な抗体を形成した。同時に、ヒト化抗体のV領域におけるFR領域を復帰変異し、例示的な復帰変異形態及び組合せは、以下の通りである。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
上記の表中、重鎖可変領域は、配列番号7で示されるヒトIgG1重鎖定常領域に連結されて全長抗体の重鎖を形成するのに対応して、軽鎖可変領域は、配列番号8で示されるヒトκ軽鎖定常領域に連結されて全長抗体の軽鎖を形成する。他の実施形態において、重鎖可変領域と軽鎖可変領域は、他の重鎖定常領域と軽鎖定常領域にそれぞれ連結されて全長抗体を形成してもよい。
【0158】
2.2 mAb1902のヒト化改変及び復帰変異の設計
適切なヒト抗体生殖細胞系を選択し、mAb1902マウス抗体をヒト化改変し、ヒト化可変領域の代わりに、マウス抗体mAb1902のCDR領域を、選択されたヒト化テンプレートに移植し、更にIgG定常領域と組換え、完全な抗体を形成した。同時に、ヒト化抗体のV領域におけるFR領域を復帰変異し、例示的な復帰変異形態及び組合せは、以下の通りである。
【0159】
【表5】
【0160】
【表6】
【0161】
上記の表中、重鎖可変領域は、配列番号7で示されるヒトIgG1重鎖定常領域に連結されて全長抗体の重鎖を形成するのに対応して、軽鎖可変領域は、配列番号8で示されるヒトκ軽鎖定常領域に連結されて全長抗体の軽鎖を形成する。
【0162】
キメラ抗体ch1901
ch1901重鎖:(配列番号35)
EVQLMESGGGLVKPGGSLKLSCAASGFTFSDYGIHWVRQAPEMGLEWIAYISRGSSTIYYADTVKGRFTMSRDNAKNTLFLQMTSLRSEDTAMYYCARGGYDTRNAMDYWGQGTSVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;
ch1901軽鎖:(配列番号36)
DIVMTQSPSSLSVSAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLAWYQQKPGQPPKLLIYGASTRASGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYHCQNDLYYPLTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC;
キメラ抗体ch1902
ch1902重鎖:(配列番号37)
EVQLQESGAELVKPGASVKLSCKASGYIFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGMIHPNSGSTNYNEKFKGKATLTLDKSSSTAYMQLSSLPSEDSAVYYCARLKTGNSFDYWGQGTTLTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK;
ch1902軽鎖:(配列番号38)
DIVLTQSPSSLTVTAGEKVTMSCKSSQSLLNSGNQKNYLTWYQQKPGQPPKLLIYWASTRESGVPDRFTGSGSGTDFTLTISSVQAEDLAIYYCQNAYTYPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0163】
【表7】
【0164】
全長抗体の軽重鎖配列は下記の通りである。
【0165】
【表8-1】
【表8-2】
【0166】
【表9】
【0167】
全長抗体の軽重鎖配列は下記の通りである。
【0168】
【表10】
【表11】
【0169】
本開示の陽性対照抗体は、IMAB-362(WO2016166122による)である。
重鎖(配列番号53)
QVQLQQPGAE LVRPGASVKL SCKASGYTFT SYWINWVKQR PGQGLEWIGN
IYPSDSYTNY NQKFKDKATL TVDKSSSTAY MQLSSPTSED SAVYYCTRSW
RGNSFDYWGQ GTTLTVSSAS TKGPSVFPLA PSSKSTSGGT AALGCLVKDY
FPEPVTVSWN SGALTSGVHT FPAVLQSSGL YSLSSVVTVP SSSLGTQTYI
CNVNHKPSNT KVDKRVEPKS CDKTHTCPPC PAPELLGGPS VFLFPPKPKD
TLMISRTPEV TCVVVDVSHE DPEVKFNWYV DGVEVHNAKT KPREEQYNST
YRVVSVLTVL HQDWLNGKEY KCKVSNKALP APIEKTISKA KGQPREPQVY
TLPPSREEMT KNQVSLTCLV KGFYPSDIAV EWESNGQPEN NYKTTPPVLD
SDGSFFLYSK LTVDKSRWQQ GNVFSCSVMH EALHNHYTQK SLSLSPGK;
軽鎖(配列番号54)
DIVMTQSPSS LTVTAGEKVT MSCKSSQSLL NSGNQKNYLT WYQQKPGQPP
KLLIYWASTR ESGVPDRFTG SGSGTDFTLT ISSVQAEDLA VYYCQNDYSY
PFTFGSGTKL EIKRTVAAPS VFIFPPSDEQ LKSGTASVVC LLNNFYPREA
KVQWKVDNAL QSGNSQESVT EQDSKDSTYS LSSTLTLSKA DYEKHKVYAC
EVTHQGLSSP VTKSFNRGEC。
従来の遺伝子クローニング、組換え発現の方法により上記抗体をそれぞれクローニングし、発現し、精製した。
【0170】
抗Claudin18.2 ADC複合体の調製
薬物
本開示の抗Claudin18.2 ADC複合体の薬物部分は、何れの好適な薬物であってもよい。特に好適な薬物は、例えば、PCT公開番号WO2020063676A1(援用により全て本願に組み込まれた)に記載されている。本開示の化合物9-Aは、N-((2R,10S)-10-ベンジル-2-シクロプロピル-1-(((1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル)アミノ)-1,6,9,12,15-ペンタオキソ-3-オキサ-5,8,11,14-テトラアザヘキサデカン-16-イル)-6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル)ヘキサンアミドであり、以下の構造を有する。
【0171】
【化15】

ADC原液の薬物負荷量の分析
1. UV-HPLC方法
コハク酸ナトリウム緩衝液が入ったキュベットを、参照吸収セル及び試料測定吸収セルにそれぞれ置いてから、溶媒ブランクを差し引いた後、試験待ち試料の溶液が入ったキュベットを試料測定吸収セルに置き、280 nm及び370 nmでの吸光度を測定した。
【0172】
結果の算出:紫外線分光光度法(使用機器:Thermo nanodrop 2000紫外線分光光度計)によりADC原液負荷量を測定し、その原理は、ある波長下でのADC原液の全吸光値が薬物とモノクローナル抗体の当該波長での吸光値の和に等しいことであり、即ち、
(1)A280nm=εmab-280bCmab+εDrug-280bCDrug
εDrug-280:薬物の280 nmでの平均モル吸光係数は5100であり、
Drug:薬物の濃度、
εmab-280:モノクローナル抗体原液の280 nmでの平均モル吸光係数は214600であり、
mab:モノクローナル抗体原液の濃度、
b:光路長は1 cmである。
【0173】
同様に、試料の370 nmでの全吸光値方程式を得ることができる:
(2)A370nm=εmab-370bCmab+εDrug-370bCDrug
εDrug-370:薬物の370 nmでの平均モル吸光係数は19000であり、
Drug:薬物の濃度、
εmab-370:モノクローナル抗体の370 nmでの吸光係数は0であり、
mab:モノクローナル抗体原液の濃度、
b:光路長は1 cmである。
(1)と(2)という2つの方程式により、モノクローナル抗体及び薬物の2つの検出波長での吸光係数と濃度データと合わせて、薬物の負荷量を算出することができる。
薬物負荷量=CDrug/Cmab
【0174】
2.RP-HPLC方法
裸の抗体と試験待ちのADC試料(濃度は1 mg/mL)に4 μLのDDT(sigma)を加えて還元し、37℃で1時間水浴した後、取り出してインナーチューブに入れた。高速液体クロマトグラフAgilent 1200で検出し、カラムとしてAgilent PLRP-S 1000A 8 μm 4.6 mm×250 mmを選択し、カラムの温度:80℃、DAD検出器の波長:280 nm、流速:1 mL/min、注入量:40 μLであり、その後、試料と裸の抗体とのスペクトル比較により、軽重鎖の位置を区別し、そして検出試料のスペクトルに対して積分を行い、DAR値を算出した。
【0175】
溶液の調製:
1)0.25 MのDTT溶液:
調製例:5.78 mgのDTTを取り、150 μLの精製水を加えて十分に溶解した後、0.25 MのDTT溶液を取得し、-20℃で保存した。
【0176】
2)移動相A(0.1%のTFA水溶液):
調製例:メスシリンダーで1000 mLの精製水を量り取り、1 mLのTFA(sigma)を加え、十分に均一に混合した後に使用し、2℃~8℃で14日間保存した。
【0177】
3)移動相B(0.1%のTFAアセトニトリル溶液):
調製例:メスシリンダーで1000 mLのアセトニトリルを量り取り、1 mLのTFAを加え、十分に均一に混合した後に使用し、2℃~8℃で14日間保存した。
データ分析:
試料と裸の抗体とのスペクトル比較により、軽鎖と重鎖の位置を区別し、そして検出試料のスペクトルに対して積分を行い、DAR値を算出した。
計算式は、次の通りである。
【0178】
【表12】
【0179】
LCピーク面積の総和=LCピーク面積+LC+1ピーク面積、
HCピーク面積の総和=HCピーク面積+HC+1ピーク面積+HC+2ピーク面積+HC+3ピーク面積、
LC DAR=Σ(連結薬物数×ピーク面積の百分率)/LCピーク面積の総和、
HC DAR=Σ(連結薬物数×ピーク面積の百分率)/HCピーク面積の総和、
DAR=LC DAR+HC DAR。
【0180】
実施例1-4:ADC-1/ADC-2
37℃の条件で、抗体h1902-5を含むPBS緩衝液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝液、10.0 mg/mL、320.0 mL、21.62 μmol)にトリ(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)の水溶液(10 mM、11.03 mL、110.3 μmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。
【0181】
反応液を水浴で25℃に降温し、化合物9-A(350 mg、303 mol)を13.2 mLのアセトニトリルと6.6 mLのDMSOに溶解した後に反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。
【0182】
反応液を限外ろ過膜を通して精製し、小分子を除去した。精製には、50 mMのpH=6.5のPBS緩衝液(4%のアセトニトリル 2%のDMSO)5 Lと10 mMのpH=5.3のコハク酸緩衝液5 Lを順に使用した。その後、精製された溶液にスクロースを60 mg/mLまで、トゥイーン-20を0.2 mg/mLまで加えてADC-1(10 mMのpH=5.3のコハク酸緩衝液、10 mg/mL、2.626 g)を調製し得て、収率が81.81%であった。その後、20 mg/フラスコの凍結乾燥粉末に調製した。
【0183】
UV-HPLCにより平均値を算出した:n=6.8。
上記方法により、抗体h1902-5に代えて、h1901-11を用いて化合物9-Aと合わせてADC-2を調製して得て、n=7.1であった。
【0184】
実施例1-5:ADC-3
37℃の条件下で、抗体h1901-11を含むPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、1 mL、67.5 nmol)に、調製されたTCEPの水溶液(10 mM、10.1 μL、101 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0185】
化合物9-A(0.58 mg、540 nmol)を34 μLのDMSOに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、ADC-3のPBS緩衝液(0.72 mg/mL、11.2 mL)を得て、4℃で貯蔵した。RP-HPLCにより平均値を算出した:n=2.51。
【0186】
実施例1-6:ADC-4
37℃の条件下で、抗体h1901-11を含むPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、1 mL、67.5 nmol)に、調製されたTCEPの水溶液(10 mM、16.9 μL、169 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0187】
化合物9-A(0.73 mg、680 nmol)を43 μLのDMSOに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、ADC-4のPBS緩衝液(0.62 mg/mL、12.5 mL)を得て、4℃で貯蔵した。RP-HPLCにより平均値を算出した:n=4.06。
【0188】
実施例1-7:ADC-5
37℃の条件下で、抗体h1901-11のPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、1 mL、67.5 nmol)に、調製されたTCEPの水溶液(10 mM、35.8 μL、358 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0189】
化合物9-A(1.09 mg、1015 nmol)を64 μLのDMSOに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、ADC-5のPBS緩衝液(0.54 mg/mL、12.5 mL)を得て、4℃で貯蔵した。RP-HPLCにより平均値を算出した:n=6.8。
【0190】
実施例1-8:ADC-6
37℃の条件下で、抗体h1902-5のPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、1.08 mL、72.9 nmol)に、調製されたTCEPの水溶液(10 mM、10.9 μL、109 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0191】
化合物9-A(0.63 mg、587 nmol)を40 μLのDMSOに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、ADC-6のPBS緩衝液(0.7 mg/mL、13.0 mL)を得て、4℃で貯蔵した。RP-HPLCにより平均値を算出した:n=2.69。
【0192】
実施例1-9:ADC-7
37℃の条件下で、抗体h1902-5のPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、1.08 mL、72.9 nmol)に、調製されたTCEPの水溶液(10 mM、18.3 μL、183 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0193】
化合物9-A(0.79 mg、736 nmol)を50 μLのDMSOに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、ADC-7のPBS緩衝液(0.6 mg/mL、14.0 mL)を得て、4℃で貯蔵した。RP-HPLCにより平均値を算出した:n=4.25。
【0194】
実施例1-10:ADC-8
37℃の条件下で、抗体h1902-5のPBS緩衝水溶液(pH=6.5の0.05 MのPBS緩衝水溶液、10.0 mg/mL、1.08 mL、72.9 nmol)に、調製されたTCEPの水溶液(10 mM、38.7 μL、387 nmol)を加え、水浴振とう機に置き、37℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液を水浴で25℃に降温した。
【0195】
化合物9-A(1.18 mg、1099 nmol)を70 μLのDMSOに溶解し、上記反応液に加え、水浴振とう機に置き、25℃で3時間振とうしながら反応させ、反応を止めた。反応液をSephadex G25ゲルカラムで脱塩精製し(溶離相:pHが6.5である0.05 MのPBS緩衝水溶液、0.001 MのEDTA含有)、ADC-8のPBS緩衝液(0.56 mg/mL、14.2 mL)を得て、4℃で貯蔵した。RP-HPLCにより平均値を算出した:n=7.01。
【0196】
実施例1-11:ADC-9
12℃の条件で、抗体h1902-5を含むヒスチジン-醋酸-Tris/EDTA緩衝液(pH 7.2の10 mMのヒスチジン-醋酸-Tris及び2.5 mMのEDTAの緩衝液、20.6 g/L、6.49 L、0.91 mmol)に、調製されたTCEPヒスチジン緩衝液(10 mMのヒスチジン緩衝液、1.717 mM、1.16 L、1.99 mmol)を加え、恒温水浴釜に置き、12℃で2時間撹拌しながら反応させ、反応を止め、中間体I溶液を得た。
【0197】
化合物9-A(4.72 g、4.39 mmol)を0.38 LのDMSOに溶解し、化合物9-AのDMSO溶液を生成した。上記中間体I溶液に0.38 LのDMSOを加えておき、そして上記化合物9-AのDMSO溶液を加え、恒温水浴釜に置き、12℃で1時間撹拌しながら反応させ、反応を止めた。
【0198】
上記反応液をCapto S Impactカチオンクロマトグラフィーカラムにより精製し、それぞれ9つのカラム体積の10%(v/v)のDMSOを含む0.05 Mの醋酸緩衝液(pH=5.0)と6つのカラム体積の0.05 Mの醋酸緩衝液(pH=5.0)で洗浄してから、0.05 Mの醋酸、0.30 Mの塩化ナトリウム緩衝液(pH=5.5)で溶離し、反応液における遊離毒素と残留溶媒を除去した。22℃で、カチオン溶離液に対して7倍体積と同体積の限外ろ過を行い(限外ろ過膜パッケージとして30 KDのポリセルロース膜パッケージを採用した)、生成物ADC-9を得た。RP-HPLCにより平均値を算出した:n=4.1。
【0199】
生物学的評価
試験例1:細胞Cellレベル ELISA結合実験
細胞に基づくELISA実験は、Claudin18.2抗体の結合特性を検出するために使用された。Claudin18.2を安定トランスフェクションして発現したNUGC4細胞を、96ウェル細胞プレート(Corning、3599)に培養し、90%の密度まで成長した時に、4%のパラホルムアルデヒドを加えて細胞を1時間固定し、PBST緩衝液(pH 7.4のPBSに0.05%のTween-20が含まれた)でプレートを3回洗浄した後、PBSで希釈された5%の脱脂乳(光明脱脂粉乳)ブロッキング液を200 μL/ウェルで加え、37℃のインキュベータで2.5時間インキュベートし、又は4℃で一晩(16時間~18時間)放置してブロッキングした。ブロッキングが終了した後、ブロッキング液を捨て、PBST緩衝液でプレートを3回洗浄した後、試料希釈液(pH 7.4のPBSに1%の脱脂乳が含まれた)で希釈された異なる濃度の試験待ち抗体を50 μL/ウェルで加え、37℃のインキュベータで2時間インキュベートした。インキュベートが完了した後、PBSTでプレートを5回洗浄し、試料希釈液で希釈されたHRPで標識したヒツジ抗ヒト二次抗体(Jackson Immuno Research、109-035-003)を100 μL/ウェルで加え、37℃で1時間インキュベートした。PBSTでプレートを6回洗浄した後、50 μL/ウェルのTMB発色基質(KPL、52-00-03)を加え、室温で10 min~15 minインキュベートし、50 μL/ウェルの1 MのHSOを加えて反応を止め、MD Versa Max Tmマイクロプレートリーダーにより450 nmで吸収量を読み取り、Claudin18.2抗体のClaudin18.2への結合EC50値を算出した。
【0200】
【表13】
【0201】
【表14】
【0202】
【表15】
【0203】
試験例2:抗体細胞レベル結合実験
Claudin18.2を安定トランスフェクションして発現したNUGC4細胞をFACS緩衝液(2%のウシ胎児血清(Gibco、10099141)pH 7.4のPBS(Sigma、P4417-100TAB))で1×10/mLの細胞懸濁液に調製し、100 μL/ウェルで96ウェル円形底プレート(Corning、3795)に加えた。上清を遠心分離して除去した後、FACS緩衝液で希釈された異なる濃度の試験待ちのClaudin18.2抗体を50 μL/ウェルで加え、4℃の冷蔵庫に置いて暗所で1時間インキュベートした。FACS緩衝液300 gで3回遠心分離して洗浄した後、作業濃度のAlexa Fluor 488で被覆された抗ヒトIgG(H+L)(invitrogen、A-11013)を加え、4℃の冷蔵庫に置いて暗所で40分間インキュベートした。FACS緩衝液300 gで3回遠心分離して洗浄した後、BD FACS CantoIIフローサイトメーターで幾何平均蛍光強度を検出し、Claudin18.2抗体のClaudin18.2を安定トランスフェクションして発現したNUGC4細胞への結合EC50値を算出し、その結果は図1に示されている。
【0204】
試験例3:抗体のエンドサイトーシス実験
DyLight 488 NHS Ester(thermofisher、46403)で予め標識された試験待ちのClaudin18.2抗体を、5 μg/mLの最終濃度で1×10/mLのClaudin18.2を安定トランスフェクションして発現したNUGC4細胞に加え、氷上に置いて暗所で1時間インキュベートし、予冷したFACS緩衝液(pH 7.4のPBS、2%のウシ胎児血清)で3回遠心分離して洗浄し、上清を除去した後、予熱した完全培地に加え、37℃で5%のCO細胞インキュベーターに置いた。それぞれ0時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間後に細胞を取り出し、氷上に置いて暗所で保存した。試料を全て収集した後、300 gを低温で遠心分離して上清を除去し、溶離緩衝液(pH 1.7の0.05 Mのグリシン、0.1 Mの塩化ナトリウム)を加えた後、室温で7分間インキュベートし、FACS緩衝液300 gで1回遠心分離して洗浄し、BD FACS CantoIIフローサイトメーターで幾何平均蛍光強度を検出し、Claudin18.2抗体の、Claudin18.2を安定トランスフェクションして発現したNUGC4細胞へのエンドサイトーシス効率を算出した。その結果(図2参照)、ヒト化抗体は良い細胞エンドサイトーシス効率を有することが示されている。
【0205】
試験例4:フローサイトメトリーに基づく抗体の親和性の測定
実験当日、HEK293/hClaudin18.2細胞をU底96ウェルプレートに収集し、1ウェルあたり1×10個~2×10個の細胞であった。初期濃度5 μg/mL、2×勾配希釈(12個の濃度点)のClaudin18.2抗体を加え、4℃で1時間インキュベートし、陽性対照をIMAB362とすると共に、抗体が加えられていない陰性対照を設置した。抗体を遠心分離して除去してから、100 μL/ウェルでFITC抗ヒトIgG Fc抗体(200×)を加え、4℃で暗所で30分間インキュベートし、PBS+2%のFBSで2回洗浄した後、フローサイトメトリーを行った。BD FACS CantoIIを起動し、予熱が完了した後、BD FACSDivaソフトウェアをオープンし、新しい実験を確立し、HEK293/hClaudin18.2陰性対照試料を検出し、FSC及びSSC電圧を適切な数値に調整して保存した。QuantumTM FITC-5 MESF Kitの取扱説明書によって、ブランク試料B及び検量線1をそれぞれ検出し、FITC電圧を適切な数値に調整して保存した。保存された電圧で、U底96ウェルプレートにおける試料を検出し、データを記録した。Flowjoソフトウェアで実験データを解析してGeo Mean値を取得し、QuantumTM FITC-5 MESF Kitの取扱説明書によってMESF-Geo Mean検量線をフィッティングし、FITC抗ヒトIgG Fc抗体の濃度蛍光値によって、HEK293/hClaudin18.2細胞と結合したClaudin18.2抗体のモル濃度及び遊離抗体濃度を算出し、Scatchardプロット法で抗体のBmaxと解離定数KDを算出した。結果は表14に示されている。
【0206】
【表16】
【0207】
試験例5:抗体のADCC効果の評価
各種のNUGC4細胞(Claudin18.2高/中等度/低発現)を消化し、1000 rpmで遠心分離した後、再懸濁してカウントした。細胞を3×10細胞/mLの密度で、10%のFBS(ニュージーランド超低IgGウシ胎児血清、Gibco、1921005PJ)が加えられたフェノールレッドフリーRPMI 1640(Gibco、11835-030)に再懸濁した。96ウェルプレート(Corning、3903)において、1ウェルあたり25 μLの細胞(7500個/ウェル)を加えた。抗体を上記フェノールレッドフリー培地において希釈し、3×の抗体希釈液に調製し、細胞プレートに25 μL/ウェルの抗体を加えた。37℃、5%のCOインキュベーターにおいて0.5時間インキュベートした。
【0208】
エフェクター細胞(FcrR3A-V158-NFAT-RE-Jurkat細胞)を収集し、1000 rpmで遠心分離した後、再懸濁してカウントした。細胞を3×10細胞/mLの密度で、10%のFBS(ニュージーランド超低IgGウシ胎児血清)が加えられたフェノールレッドフリーRPMI 1640に再懸濁し、実験プレートにおいて、1ウェルあたり25 μLの細胞(7.5×10個の細胞/ウェル)を加えた。37℃、5%のCOインキュベーターにおいて6時間インキュベートした。
【0209】
実験プレートの各ウェルに75 μL/ウェルのBright-Glo(Promega、E2610)を加え、マイクロプレートリーダー(PerkinElmer、VITOR3)で化学発光(luminescence)を検出した。
【0210】
その結果(表15と図3A図3Cを参照)、Claudin18.2を低(図3A)-中等度(図3B)-高(図3C)という異なるレベルで発現したNUGC4細胞において、抗体h1901-11とh1902-5は、何れも非常に強いADCC活性を示すことが示されている。
【0211】
【表17】
【0212】
試験例6:ADC分子の細胞活性実験
本実験は、CellTiter-Glo Luminescence Cell Viability Assayにより、ADC分子の体外でのヒト胃がん細胞株への傷害作用を検出した。1日目に、NUGC4-claudin18.2低発現、NUGC4-claudin18.2中等度発現、及びNUGC4-claudin18.2高発現細胞を収集し、密度を2.5×10/mLに調整し、90 μL/ウェルで96ウェル白色透明底板に加え、1ウェルあたり約2500個の細胞であった。37℃、5%のCOインキュベーターで一晩培養した。2日目に、U底96ウェルプレートで試料を希釈し、初期濃度5 μM、4×勾配希釈、9つの濃度点であり、細胞プレートに希釈された試料を10 μL/wellで加えた。37℃、5%のCOで6日間培養した。8日目に、細胞培養プレートを取り出し、50 μL/wellのCell Titer-Glo Reagentを加え、室温で2分間~3分間放置し、PHERAstar FS microplate readerでluminescence値を読み取った。GraphPad Prismソフトウェアでデータの分析を行った。結果は表16に示されている。
【0213】
【表18】
【0214】
試験例7:ADC分子の体内薬効の評価
ヒト胃がん細胞NUGC4(Claudin18.2中等度発現)細胞(5×10の50%のmatrigelマトリゲル/匹を含む)をBalb/cヌードの右側肋骨部の皮下に接種し、0日目に群分けし、8匹/群、合計で8群であった。平均腫瘍体積は、約84.41 mmであった。
【0215】
ADCを腹腔内に注射し、合計で3回投与し、各匹に体重によって10 g/0.1 mLで注射し、それぞれ、0日目、4日目、11日目に投与した。
【0216】
群分け当日にADCを腹腔内に注射し、合計で4回投与し、5日おきに投与し、各匹に体重によって10 g/0.1 mLで注射した。
【0217】
腫瘍の体積と体重を週2回計測し、データを記録した。
【0218】
Excel 2003統計ソフトウェアを用いて、平均値をavgで算出し、SD値をSTDEVで算出し、SEM値をSTDEV/SQRTで算出し、群間差P値をTTESTで算出した。
【0219】
腫瘍体積(V)の計算式:V=1/2×L×L
相対体積(RTV)=VT/V0
腫瘍阻害率(%)=(CRTV-TRTV)/CRTV(%)
そのうち、V0、VTは、それぞれ実験開始時(初回投与当日を0日目とした)及び実験終了時の腫瘍体積である。CRTV、TRTVは、それぞれ、実験終了時のブランク対照群(Vehicle)及び実験群の相対腫瘍体積である。結果は、表17と図4図5に示されている。
【0220】
【表19】
【0221】
二、製剤
製剤の調製と検出中に使用された機器及び結果の算出方法は、以下の通りである。
SEC分子排除クロマトグラフィー:
ゲル細孔の孔径のサイズと高分子試料分子のコイル寸法との間の相関関係に基づいて溶質を分離する分析方法である。
【0222】
SEC%(SECモノマーの含有量百分率)=Aモノマー/A全×100%(Aモノマーは試料中のメインピークモノマーのピーク面積であり、A全は全てのピーク面積の和である)。
【0223】
SEC測定用機器:アジレント1260、カラム:waters、XBrige BEH200Å SEC(300 mm×7.8 mm、3.5 μm)。
【0224】
CEキャピラリーゲル電気泳動:
ゲルをキャピラリーに支持媒体として移動して行われる電気泳動であり、一定の電圧で試料の分子量の大きさによって分離する方法である。
【0225】
還元CEの純度百分率=Aメインピーク/A全×100%(Aメインピークは試料中の軽鎖メインピーク+重鎖メインピークのピーク面積であり、A全は全てのピーク面積の和である)。
【0226】
CE測定用機器:Beckman型番:plus800。
【0227】
浸透圧の測定:
凝固点法で浸透圧を測定し、凝固点降下値が溶液のモル濃度に正比例することを基にして、高感度測温素子を使用し、溶液の凝固点を測定し、電気量で浸透圧に変換した。機器メーカー:ルーザーLoser、型番:OM815。
【0228】
タンパク質濃度の測定:
抗体薬物複合体中の薬物は280 nmで吸収されるため、下記の式でタンパク質濃度を補正し、
A280=Cd*ε280d+Cmab*ε280mab;
A370=Cd*ε370d;
Cdは薬物の濃度を表し、Cmabはタンパク質の濃度を表し、ε280dは薬物の280 nmでの吸光係数を表し、ε280mabはタンパク質の280 nmでの吸光係数を表し、ε370dは薬物の370 nmでの吸光係数を表す。ε280mab=1.49 mg-1*cm-1*mL、ε280d =5000(280 nm薬物モル吸光係数)/1074.13(薬物分子量)=4.65 mg-1*cm-1*mL、ε370d=19000(370 nm薬物モル吸光係数)/1074.13(薬物分子量)=17.69 mg-1*cm-1*mLで、以上の吸光係数は質量吸光係数である。
【0229】
タンパク質濃度の測定機器:紫外可視分光光度計、型番:Nano Drop oneC、光路1 mm。
【0230】
実施例2-1:製剤緩衝系とpH値の選別
20 mg/mL(タンパク質濃度)のADC-9と以下の様々な緩衝系、及び0.1 mg/mLのポリソルベート80(PS80)を含む製剤を調製した。
【0231】
1)10 mMのクエン酸-クエン酸ナトリウム(CA)、pH 5.5
2)10 mMのコハク酸-コハク酸ナトリウム(SA)、pH 5.0
3)10 mMのコハク酸-コハク酸ナトリウム、pH 5.5
4)10 mMのヒスチジン塩酸塩(His-HCl)、pH 5.5
5)10 mMのヒスチジン塩酸塩、pH 6.0
6)10 mMのヒスチジン塩酸塩、pH 6.5
7)10 mMのヒスチジン-酢酸塩(His-AA)、pH 5.0
8)10 mMのヒスチジン-酢酸塩、pH 5.5
9)10 mMのリン酸塩(PB)、pH 6.5。
【0232】
それぞれの製剤をろ過し、容器に充填し、プラグを入れ、蓋をして、試料を取って高温安定性(40℃)、振とう(25℃、300 rpm)研究を行い、外観、SEC、還元CEを調べた。結果は表18に示されている。
【0233】
11日間振とうした後、2)、3)、7)、9)番の試料のみは外観が透明になり、40℃で15日間放置した後、1)、2)、3)、7)、8)番の試料は外観が透明になった。即ち、外観から見ると、2)、3)、7)番の試料の製剤は比較的優れている。
【0234】
40℃で15日間放置した後、試料をSECで検出した結果、4)、5)、6)、7)、8)番の試料のモノマーは下げ幅が約4%であり、他の製剤のモノマーは下げ幅が7%~10%である。
【0235】
40℃で15日間放置した後、試料を還元CEで検出した結果、4)、5)、7)、8)番の試料は、メインピークの下げ幅が約1%~2%であり、他の試料よりも優れている。
【0236】
以上のデータをまとめると、7)番の試料である10 mMのHis-AA、pH 5.0製剤は、外観及び各種の化学的検出項目において他の製剤よりも優れているため、10 mMのHis-AA、pH 5.0を最終緩衝液として選択した。
【0237】
【表20】
【0238】
実施例2-2:界面活性剤の種類及び濃度の選別
様々な型番と濃度のポリソルベートを含み、且つ10 mMのHis-AA、pH 5.0の緩衝液、80 mg/mLのスクロース及びタンパク質濃度が20 mg/mLのADC-9を含む製剤を調製した。それぞれの製剤をろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。試料に対して高温安定性研究(40℃)及び凍結融解研究を行った。そのうち、凍結融解研究は5回の凍結融解サイクル(FT5C、35℃~2℃から8℃)を行った後、室温で3日間(25℃、D3)放置し、外観、SEC、還元CEを調べ、具体的な製剤設計は表19に示されている。
【0239】
結果は表20に示されており、実験結果によると、0.2 mg/mLのPS80を用いた製剤は、各条件において外観及び化学的検出項目が最も優れている。
【0240】
以上の結果をまとめると、界面活性剤の種類及び濃度は、0.2 mg/mLのPS80と決定した。
【0241】
【表21】
【0242】
【表22】
【0243】
実施例2-3:糖の種類の選別
スクロース、トレハロース、マンニトールをそれぞれ含み、更に10 mMのHis-AA(pH 5.0)緩衝液、0.2 mg/mLのPS80及び20 mg/mL(タンパク質濃度)のADC-9を含む製剤を調製した。それぞれの製剤をろ過し、容器に充填し、プラグを入れて、蓋をした。試料に対して高温安定性研究(40℃)を行い、-35℃/4℃での凍結融解サイクルをして、室温で3日間放置して研究を行い、外観、SEC、還元CEを調べた。
【0244】
結果は表21に示されている。様々な糖類製剤の凍結融解条件下において、スクロースを使用した試料は、外観がトレハロース又はマンニトールを使用した試料よりも優れている。SEC検出結果によると、スクロース又はトレハロースを使用した試料はマンニトールよりも優れており、40℃で1ヶ月放置した後、スクロースを使用した試料は、外観がトレハロース又はマンニトールを使用した試料よりも優れており、SEC及び還元CEの検出結果によっても、スクロースを使用した試料はトレハロースを使用した試料よりもやや優れている。
【0245】
【表23】
【0246】
スクロース、トレハロース、マンニトールをそれぞれ含み、更に10 mMのHis-AA(pH 5.0)緩衝液、0.2 mg/mLのPS80及び20 mg/mL(タンパク質濃度)のADC-9を含む製剤を調製した。それぞれの製剤をろ過し、容器に充填し、プラグを半分入れ、凍結乾燥し、プラグを入れ、蓋をして、放置して高温安定性(40℃)研究を行い、外観、SEC、還元CEを調べた。凍結乾燥プロセスは、表22の凍結乾燥プロセスパラメータ1を参照する。
【0247】
【表24】
【0248】
40℃で1ヶ月放置した後、SECの検出結果(表23参照)によると、スクロースを使用した試料はトレハロースを使用した試料よりやや優れており、マンニトールを使用した試料より更に優れており、還元CEの検出結果(表23参照)によると、スクロースを使用した試料は、トレハロースを使用した試料と同程度であると共に、マンニトールを使用した試料より優れている。
【0249】
【表25】
【0250】
実施例2-4:凍結乾燥後の試料の外観最適化実験
10 mMのHis-AA、pH 5.0、80 mg/mLのスクロース、0.2 mg/mLのPS80及び20 mg/mL(タンパク質濃度)のADC-9により原液を調製し、ろ過して容器に充填した後、凍結乾燥プロセスパラメータ1に従って凍結乾燥し(表22参照)、凍結乾燥後の試料の外観を調べた。凍結乾燥された試料は表面が平たいな白い固形粉末であるが、固形粉末の底の縁が僅かに縮まれていた。
【0251】
試料の糖の濃度を更に60 mg/mLに下げ、10 mMのHis-AA、pH 5.0、60 mg/mLのスクロース、0.2 mg/mLのPS80及び20 mg/mL(タンパク質濃度)のADC-9により原液を調製し、ろ過して容器に充填した後、表22の凍結乾燥プロセスパラメータ1に従って凍結乾燥した。凍結乾燥された後、固形粉末は表面がしわなく平たいで、固形粉末の底の縁が僅かに縮まれていた。
【0252】
糖の濃度を40 mg/mLに下げたが、この場合、完成品の浸透圧が低すぎて、臨床投与時に浸透圧が低下する恐れがあり、完成品の浸透圧を確保するために、緩衝液のイオン強度を30 mMに向上させた。30 mMのHis-AA、pH 5.0、40 mg/mLのスクロース、0.2 mg/mLのPS80及び20 mg/mL(タンパク質濃度)のADC-9により原液を調製し、ろ過して容器に充填した後、凍結乾燥プロセスパラメータ1に従って凍結乾燥した。凍結乾燥された後、試料固形粉末の表面は窪みなく平たいで、固形粉末の底の縁が無傷であった。
【0253】
3つの製剤の結果は表24に示されている。
【0254】
【表26】
【0255】
実施例2-5:凍結乾燥後の試料の安定性
表25中の製剤に従って原液を調製し、ろ過して容器に充填した後、凍結乾燥プロセスパラメータ1に従って凍結乾燥し(表22参照)、凍結乾燥された試料を40℃、M1の条件下で放置した後、再溶解してその安定性変化を検出した。
【0256】
安定性結果は表25に示されており、3番製剤の凍結乾燥試料は、40℃、M1の条件下で還元CEが約3.7%低下し、残りの2つの製剤は各化学検出項目が何れも顕著な変化がなく、安定性が3番製剤より明らかに優れている。2番製剤は、凍結乾燥前の原液のpHが5.04であり、凍結乾燥後の再溶解溶液のpHが5.27である。
【0257】
【表27】
【0258】
実施例2-6:凍結乾燥製剤の溶液剤の安定性
表26中の製剤に従って製剤を調製し、ろ過し、容器に充填し、プラグを入れ、蓋をした後に-35℃/4℃での凍結融解サイクルを行い、室温で3日間放置して研究を行い、11日間振とう研究及び高温安定性研究(40℃)を行い、対応する条件下での試料の外観、SEC及び還元CEの変化を調べた。
【0259】
安定性結果は表26に示されており、スクロース濃度を低減し、緩衝液のイオン強度を向上させた後、2番製剤は外観及び純度項目の変化において1番製剤と有意差がなく、高温条件下では、還元CEの下げ幅が1番製剤よりやや優れている。
【0260】
【表28】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
【配列表】
2023545382000001.app
【国際調査報告】