(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ベンズアルデヒドオキシムおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 249/08 20060101AFI20231023BHJP
C07C 251/48 20060101ALI20231023BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231023BHJP
【FI】
C07C249/08
C07C251/48
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520225
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-11
(86)【国際出願番号】 EP2021076812
(87)【国際公開番号】W WO2022069553
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・レムビアク
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC59
4H006BA66
4H006BB11
4H006BB15
4H006BB25
4H006BC10
4H006BC31
4H006BC34
4H039CG10
(57)【要約】
本発明は、一般式(I)のベンズアルデヒドオキシムを調製する方法、ならびに農薬および医薬活性物質の合成のための重要な前駆体としてのその使用に関する。
[化1]
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
の化合物の調製方法であって、
式中、
X
2は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X
3は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X
4は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X
5は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X
6は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
一般式(II)
【化2】
(式中、基は先に定義した通りである)
の化合物を、第1の反応ステップでイソプロピルマグネシウムクロリドおよびDMFの存在下で反応させて、対応する付加物(III)を形成し、これを第2の反応ステップで酸およびヒドロキシルアミンを添加してさらに反応させて、一般式(IV)
【化3】
(式中、基は先に定義した通りである)
のアルデヒドとし、その後、一般式(I)の前記化合物を形成する、方法。
【請求項2】
前記基が以下のように定義される、請求項1に記載の方法:
X
2は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X
3は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X
4は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X
5は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X
6は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNである。
【請求項3】
前記基が以下のように定義される、請求項1に記載の方法:
X
2は、Hであり、
X
3は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X
4は、フッ素、Hであり、
X
5は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X
6は、Hである。
【請求項4】
前記基が以下のように定義される、請求項1に記載の方法:
X
2は、Hであり、
X
3は、H、フッ素であり、
X
4は、H、フッ素であり、
X
5は、H、フッ素であり、
X
6は、Hである。
【請求項5】
前記基が以下のように定義される、請求項1に記載の方法:
X
2は、Hであり、
X
3は、フッ素であり、
X
4は、Hであり、
X
5は、フッ素であり、
X
6は、Hである。
【請求項6】
前記反応の前記第1のステップが無水溶媒中で行われることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記反応の前記第1のステップが、トルエンもしくはTHFまたはこれら2つの溶媒の混合物中で行われることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記反応の前記第1のステップが、0℃~30℃の温度で行われ、前記第2のステップにおける反応混合物へのDMFの添加が、イソプロピルマグネシウムクロリドの添加と同じ温度で行われることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
一般式(II)の化合物に対して2.0~1.05当量のイソプロピルマグネシウムクロリドが使用されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一般式(II)の化合物に対して2.0~1.05当量のDMFが使用されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応の前記第2のステップにおいて、硫酸が酸として使用されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記反応の前記第2のステップにおいて、前記ヒドロキシルアミンが(NH
2OH)
2・H
2SO
4の形態で使用されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反応の前記第2のステップにおいて、一般式(II)の化合物に対して0.3~2当量の硫酸が使用されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記反応の前記第2のステップにおいて、一般式(II)の化合物に対して0.5~0.7当量の(NH
2OH)
2・H
2SO
4が使用されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般式(I)のベンズアルデヒドオキシムを調製する方法、ならびに農薬および医薬活性物質の合成のための重要な前駆体としてのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンズアルデヒドオキシムは、農薬(例えば、国際公開第2014/048827号パンフレットまたは国際公開第2019/145245号パンフレット)および医薬(例えば、J.Med.Chem.2003,46,284)としてのフェニルイソオキサゾリン含有活性物質の重要な前駆体である。
【0003】
対応するベンズアルデヒドから出発するベンズアルデヒドオキシムの調製は、文献、例えば、Org.Lett.2001,3,4209(有機溶媒中での塩基の添加を伴う反応)、特開2016-166153号公報(二相系)、米国特許出願公開第2009/0062342号明細書(相間移動触媒および無機塩基を添加した水系)、またはMolecules 2018,23,2545(有機塩基を添加した水系)に何度も記載されている。国際公開第2012/130798号パンフレットおよび国際公開第2014/048827号パンフレットには、3,5-ジフルオロベンズアルデヒドからのオキシムの調製が記載されている。
【0004】
3,5-ジフルオロベンズアルデヒドの調製は、例えば、米国特許第4424229号明細書、米国特許第6287646号明細書、およびグリニャール形成によるマグネシウムを使用したMol.Crystals and Liquid Crystals 2010,528,138に記載されている。別法として、ターボグリニャールの使用が、以前に欧州特許出願公開第1582523号明細書に記載されており、sec-ブチルリチウムの使用が、J.Org.Chem.2011,76,9391に記載されている。さらに、欧州特許出願公開第1389608号明細書は、金属触媒シアン化およびその後の還元によるその調製を記載し、国際公開第2019/224774号パンフレットおよび中国特許出願公開第101565344号明細書は、対応するベンジルアルコールの酸化を記載した。
【0005】
ハロゲン化ベンゼンから出発してベンズアルデヒドを経由して対応するオキシムに至る2つのステップでベンズアルデヒドオキシムを調製するための文献は豊富にある。しかしながら、これらの2つの反応ステップを中間生成物の単離なしに行う方法はまだ記載されていない。アルデヒドの単離は、その揮発性および大気中の酸素による酸化に対するその感受性を理由として重大なステップであり、望ましくない副生成物の形成および収率の低下をもたらす。したがって、単離を回避することが望ましいであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2014/048827号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2019/145245号パンフレット
【特許文献3】特開2016-166153号公報
【特許文献4】米国特許出願公開第2009/0062342号明細書
【特許文献5】国際公開第2012/130798号パンフレット
【特許文献6】米国特許第4424229号明細書
【特許文献7】米国特許第6287646号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第1582523号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第1389608号明細書
【特許文献10】国際公開第2019/224774号パンフレット
【特許文献11】中国特許出願公開第101565344号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】J.Med.Chem.2003,46,284
【非特許文献2】Org.Lett.2001,3,4209
【非特許文献3】Molecules 2018,23,2545
【非特許文献4】Mol.Crystals and Liquid Crystals 2010,528,138
【非特許文献5】J.Org.Chem.2011,76,9391
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の先行技術に照らして、本発明の目的は、活性物質の調製のための重要な中間体を工業規模で得ることができるように、一般式(I)の化合物をより高い収率で、高純度で、環境に優しい方法で得ることができる調製方法を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、一般式(I)
【化1】
の化合物の調製方法であって、
式中、
X
2は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X
3は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X
4は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
X
5は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、塩素、CNであり、
X
6は、H、C
1~C
4アルキル、C
1~C
4フルオロアルキル、C
1~C
4フルオロオキシアルキル、C
1~C
4アルコキシ、フッ素、CNであり、
一般式(II)
【化2】
(式中、基は先に定義した通りである)
の化合物を、第1の反応ステップでイソプロピルマグネシウムクロリドおよびDMFの存在下で反応させて、対応する付加物(III)を形成し、これを第2の反応ステップで酸およびヒドロキシルアミンを添加してさらに反応させて、一般式(IV)
【化3】
(式中、基は先に定義した通りである)
のアルデヒドとし、その後、一般式(I)の化合物を形成する、方法によって達成される。
【0010】
一般式(I)、(II)、(III)、および(IV)の化合物中の基の好ましい定義は以下の通りである:
X2は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X3は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X4は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNであり、
X5は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X6は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、フッ素、メトキシ、CNである。
【0011】
一般式(I)、(II)、(III)、および(IV)の化合物中の基の特に好ましい定義は以下の通りである:
X2は、Hであり、
X3は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X4は、フッ素、Hであり、
X5は、H、メチル、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フッ素、塩素、メトキシ、CNであり、
X6は、Hである。
【0012】
一般式(I)、(II)、(III)、および(IV)の化合物中の基の非常に特に好ましい定義は以下の通りである:
X2は、Hであり、
X3は、H、フッ素であり、
X4は、H、フッ素であり、
X5は、H、フッ素であり、
X6は、Hである。
【0013】
一般式(I)、(II)、(III)、および(IV)の化合物中の基の最も好ましい定義は以下の通りである:
X2は、Hであり、
X3は、フッ素であり、
X4は、Hであり、
X5は、フッ素であり、
X6は、Hである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
方法および中間体の説明
スキーム1
【化4】
一般式(II)の化合物に、第1のステップで、常に冷却しながらイソプロピルマグネシウムクロリドを添加する。イソプロピルマグネシウムクロリドは、市販の溶液の形態、例えば2モルのTHF溶液として直接使用され得るか、またはマグネシウムおよび2-プロピルクロリドの適切な溶媒、例えばTHF溶液から予め形成する。次いで、反応混合物をDMF(N,N-ジメチルホルムアミド)で処理する。対応するDMF付加物(III)が得られ、ここに、後処理をせずに常に冷却しながら、酸水溶液およびヒドロキシルアミン(塩の形態または水溶液として)を添加し、対応するアルデヒド(IV)を連続的に反応させて一般式(I)の化合物を形成する。
【0015】
式(I)の化合物は、幾何異性体の混合物として存在し得る。
【化5】
【0016】
E-異性体とZ-異性体との比は様々であり、一般にE-異性体の方が多量に存在する。
【0017】
反応ステップ1
第1の反応ステップは、適切な溶媒中で行われる。
【0018】
適切な溶媒は、原則として、特定の反応条件下で不活性であるすべての有機溶媒、例えば、脂肪族、脂環式、もしくは芳香族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、および工業グレードの炭化水素、すなわちシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、石油エーテル、リグロイン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン)、脂肪族、脂環式、もしくは芳香族エーテル(例えば、1,2-ジメトキシエタン(DME)、ジグリム、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチル-THF、1,4-ジオキサン、メチルtert-ブチルエーテル(MTBE)、シクロペンチルメチルエーテル、アニソール)、または上記の溶媒の混合物である。好ましくは、第1の反応ステップは、トルエン、キシレン、メシチレン、アニソール、THF、メチルシクロヘキサン、2-メチル-THF、もしくはメチルtert-ブチルエーテル、または前記溶媒の混合物中で行われる。より好ましくは、トルエン、THF、またはトルエンとTHFとの混合物が使用される。より好ましくは、溶媒は無水溶媒である。
【0019】
さらに、イソプロピルマグネシウムクロリドを添加する間、反応混合物を冷却する。好ましくは、反応は、-10℃~20℃の温度で、より好ましくは0℃~15℃の温度で行われる。DMFの添加は、好ましくは-10℃~60℃の温度で、より好ましくは0℃~30℃の温度で行われる。非常に特に好ましくは、反応混合物へのDMFの添加は、イソプロピルマグネシウムクロリドの添加と同じ温度で行われる。ここで、反応ステップ1は、純物質の形態で、または適切な溶媒の溶液として、一般式(II)の化合物をイソプロピルマグネシウムクロリドの溶液に計量添加することによって行われる。好ましくは、反応ステップ1は、イソプロピルマグネシウムクロリドを一般式(II)の化合物の溶液に計量添加することによって行われる。これに続いて、反応混合物をDMFの溶液に計量添加し、より好ましくはDMFを反応混合物に計り入れる。
【0020】
イソプロピルマグネシウムクロリドは、等モル量または過剰量で、好ましくは5.0~1.05当量、より好ましくは2.0~1.05当量で使用される。
【0021】
DMFは、等モル量または過剰量で、好ましくは5.0~1.05当量、より好ましくは2.0~1.05当量で使用される。
【0022】
イソプロピルマグネシウムクロリドは、市販の溶液の形態で、2モルのTHF溶液として使用され得るか、またはその場で自己調製され得る。このために、反応条件下で不活性な適切な有機溶媒、特に好ましくはジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランに金属マグネシウムを最初に投入し、2-クロロプロパンを添加する。当業者に一般に公知の方法によるマグネシウムの活性化、例えばヨウ素、ジブロモメタンによるか、または活性イソプロピルマグネシウムクロリドの添加による活性化が、場合により行われ得る。これに続いて、反応ステップ1が、好ましくは、本発明に従って記載されるイソプロピルマグネシウムクロリドの溶液への一般式(II)の化合物の計量添加によって行われる。
【0023】
反応ステップ2
第2の反応ステップは、水溶液中で行われる。
【0024】
さらに、反応混合物の加水分解中に/酸水溶液および塩または遊離塩基の水溶液の形態のヒドロキシルアミンの添加中に、反応混合物を冷却する。好ましくは、反応は、0℃~40℃の範囲内の温度で、より好ましくは0℃~30℃の温度で行われる。
【0025】
反応ステップ1からの反応混合物の加水分解は、酸水溶液または水の添加によって行われ得、好ましくは、加水分解は、酸水溶液または水への反応混合物の計量添加によって、より好ましくは水への反応混合物の計量添加によって行われる。
【0026】
使用される酸は、好ましくは塩酸水溶液または硫酸水溶液であり、より好ましくは硫酸水溶液である。硫酸は、反応混合物の加水分解前にすでに存在していてもよいが、好ましくは、硫酸は、好ましい条件下での反応混合物の水中での加水分解が行われた後に計り入れられる。硫酸水溶液は、好ましくは1重量%~80重量%の濃度で、より好ましくは10重量%~50重量%の濃度で使用される。好ましくは、0.2~5.0当量の硫酸が使用され、より好ましくは0.3~2当量である。
【0027】
ヒドロキシルアミンは、好ましくは塩化物塩(NH2OH・HCl)もしくは硫酸塩((NH2OH)2・H2SO4)の形態で、純物質の形態もしくは水溶液として、または遊離塩基(NH2OH)の水溶液として使用され、より好ましくは硫酸塩の水溶液として使用される。この溶液は、好ましくは5重量%~40重量%の濃度で、より好ましくは15重量%~35重量%で使用される。好ましくは、0.5~0.7当量の(NH2OH)2・H2SO4が使用され、より好ましくは0.55~0.6当量である。
【0028】
反応が完了すると、一般式(I)の化合物の後処理および単離は、例えば、相分離、適切な有機溶媒による水相の抽出、有機相の水による洗浄、および溶媒の完全または部分的な除去によって行われ得る。一般式(I)の化合物は、固体物質の形態で、または適切な溶媒の溶液として単離され得る。
【0029】
収率は、従来技術との比較で、2ステップで55~79%であるのに対して、2ステップで92~97%である。
【0030】
実施例
本発明は、以下の実施例によってより詳細に説明されるが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0031】
測定方法
生成物を1H/19F NMRによって特徴付けた。
【0032】
実施例1:(1E)-3,5-ジフルオロベンズアルデヒドオキシム(I-1)
メカニカルスターラーを備えた1Lの四つ口フラスコに、アルゴン雰囲気下、1-ブロモ-3,5-ジフルオロベンゼン100.0g(1.0当量)のトルエン(100ml)溶液を投入し、ここに、市販のイソプロピルマグネシウムクロリド(275.3g、THF中2M、1.1当量)279.3mlを10℃未満で1.5時間かけて0~5℃で滴加した。滴加の終わりに、混合物を5℃未満でさらに3時間撹拌し、次いで、N,N-ジメチルホルムアミド40.8g(1.1当量)を10℃未満で60分間かけて計り入れた。この温度でさらに15~20分間撹拌した後、反応混合物を5℃未満に予備冷却した水500mlに30分間かけてゆっくり添加した。この工程の間の内部温度を10℃未満に維持した。添加の終わりに、50%硫酸29.9g(0.3当量)を10℃未満で30分間かけて計り入れた。これに続いて、ヒドロキシルアミン硫酸塩45.8g(0.55当量)の水(120ml)溶液を5℃未満で45分間かけて計量添加し、反応混合物を添加の終わりにさらに3時間撹拌し、その間に温度が20~25℃に上昇した。さらにトルエン100mlを添加した後、相を分離し、有機相を水200mlで洗浄した。100~150mbarおよび40℃で有機相の溶媒を部分的に除去すると、トルエン/THF溶液:240.0g(31.5重量%、収率95%)として生成物が得られた。
1H NMR (600 MHz, CDCl3):δ 6.83 ppm (m, 1H), 7.09 (m, 2H), 7.64 (br s, 1H), 8.06 (s, 1H) ppm.
19F NMR (600 MHz, CDCl3):δ -109.0 (2F) ppm.
【0033】
実施例2:(1E)-3,5-ジフルオロベンズアルデヒドオキシム(I-1)
500ml反応器に、アルゴン下、マグネシウム6.8g(1.1当量)のTHF(10ml)溶液を投入し、これを市販のイソプロピルマグネシウムクロリド2ml(0.01当量、THF中2M)で活性化した。これに続いて、2-プロピルクロリド21.9g(1.1当量)およびTHF65mlを30℃で1時間かけて並行して計量添加した。反応混合物をこの温度でさらに1時間撹拌し、次いで5℃未満に冷却し、1-ブロモ-3,5-ジフルオロブロモベンゼン50.0g(1.0当量)のトルエン(50ml)溶液をこの温度で1時間かけて計り入れ、計量添加の終わりに混合物をこの温度でさらに3時間撹拌し、続いてN,N-ジメチルホルムアミド20.4g(1.1当量)を10℃未満で30分間かけて計量添加した。この温度でさらに15~20分間撹拌した後、反応混合物を5℃未満に冷却した水250mlに30分間かけて添加し、内部温度を10℃未満に維持した。計量添加の終わりに、50%硫酸14.9g(0.3当量)を10℃未満で30分間かけて計り入れた。これに続いて、ヒドロキシルアミン硫酸塩22.9g(0.55当量)の水(50ml)溶液を5℃未満で45分間かけて計量添加し、反応混合物を添加の終わりにさらに3時間撹拌し、その間に温度が20~25℃に上昇した。さらにトルエン50mlを添加した後、相を分離し、有機相を水100mlで洗浄した。100~150mbarおよび40℃で有機相の溶媒を部分的に除去すると、トルエン/THF溶液:150.0g(24.9重量%、収率94%)として生成物が得られた。
【0034】
反応(実施例1および2)は、以下の溶媒中でも同様の方法で行われ得る。
【0035】
【0036】
以下の化合物を、本発明の方法を用いてさらに調製した。
3,5-ジクロロベンズアルデヒドオキシム
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 7.37 (t, J = 1.9 Hz, 1H), 7.45 (br s, 1H), 7.46 (d, J = 7.5 Hz, 2H), 8.03 (s, 1H) ppm.
3-フルオロ-5-メトキシベンズアルデヒドオキシム
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 3.79 (s, 3H), 6.85 (dt, J = 2.3/11.0 Hz, 1H), 6.97-7.01 (m, 2H), 8.11 (s, 1H) ppm.
3-フルオロ-5-メチルベンズアルデヒドオキシム
1H NMR (400 MHz, CDCl3):δ 2.37 ppm (s, 3H), 7.09 (m, 2H), 6.89 (d, J = 9.4 Hz,1H), 7.10-7.14 (m, 2H), 7.46 (br s, 1H), 8.07 (s, 1H) ppm.
【国際調査報告】