(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】オンフィールド位相較正
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20231023BHJP
G01S 13/34 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G01S7/40 108
G01S13/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520297
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 US2021053077
(87)【国際公開番号】W WO2022072771
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】202041042792
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】サンディープ ラオ
(72)【発明者】
【氏名】カーティク サブライ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB17
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AD09
5J070AH35
5J070BA01
(57)【要約】
レーダトランシーバ集積回路(IC)(302)とレーダトランシーバIC(302)に結合されたプロセッサ(308)とを含むレーダシステムが提供される。レーダトランシーバICは、複数のチャープ信号を生成するように構成されるチャープ生成器(314)と、信号位相シフトを誘導するように構成される位相シフタ(316)とを含む。レーダトランシーバICは、複数のチャープ信号に基づいてチャープのフレームを送信し、複数のデジタル信号を生成するように構成され、各デジタル信号は複数のチャープ信号に基づいて受け取られたそれぞれの反射に対応する。プロセッサ(308)は、位相シフタ(316)を制御して、複数のチャープ信号のうちのチャープ信号の第1のサブセットにおける信号位相シフトを誘導し、デジタル信号に基づいて、位相シフタによってチャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される位相シフトを判定するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダシステムであって、
レーダトランシーバ集積回路(IC)と、
前記レーダトランシーバICに結合されるプロセッサと、
含み、
前記レーダトランシーバICが、
複数のチャープ信号を生成するように構成されるチャープ生成器と、
前記複数のチャープ信号を受信するためにチャープ生成器に結合され、信号位相シフトを誘導するように構成される位相シフタと、
を含み、
前記レーダトランシーバICが、
前記複数のチャープ信号に基づいてチャープのフレームを送信し、
各々が前記複数のチャープ信号に基づいて受信されるそれぞれの反射に対応する、複数のデジタル信号を生成する、
ように構成され、
前記プロセッサが、
前記複数のチャープ信号のうちのチャープ信号の第1のサブセットにおいて前記信号位相シフトを誘導するように位相シフタを制御し、
前記複数のデジタル信号に基づいて、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される位相シフトを判定する、
ように構成される、
レーダシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のレーダシステムであって、前記複数のチャープ信号が、チャープ信号の第2のサブセットを更に含み、
前記プロセッサが、前記位相シフタを介してチャープ信号の前記第2のサブセットの前記チャープ信号において第2の位相シフトを誘導するように更に構成される、レーダシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のレーダシステムであって、前記第2の位相シフトがゼロである、レーダシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のレーダシステムであって、前記複数のチャープ信号が、チャープ信号の第2のサブセットを更に含み、
前記チャープ信号の第1のサブセットの前記チャープ信号が、チャープ信号の前記第2のサブセットの前記チャープ信号とインターリーブされる、レーダシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のレーダシステムであって、前記複数のチャープ信号が、チャープ信号の第2のサブセットを更に含み、
前記プロセッサが更に、
前記複数のデジタル信号のデジタル信号の第1のサブセットに基づいて第1の行列を生成することであって、前記デジタル信号の第1のサブセットが、前記チャープ信号の第1のサブセットに基づいて受信される1つ又は複数の反射に対応する、前記第1の行列を生成することと、
前記複数のデジタル信号のデジタル信号の第2のサブセットに基づいて第2の行列を生成することであって、前記デジタル信号の第2のサブセットが、前記チャープ信号の第2のサブセットに基づいて受信される1つ又は複数の反射に対応する、前記第2の行列を生成することと、
を行うように構成される、
レーダシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のレーダシステムであって、前記プロセッサが更に、
前記第1の行列内の各デジタル信号に対してレンジ高速フーリエ変換(FFT)を実施して、前記第1の行列内の各デジタル信号に対して第1のレンジアレイを生成し、
前記第2の行列内の各デジタル信号に対してレンジFFTを実施して、前記第2の行列内の各デジタル信号に対して第2のレンジアレイを生成し、
前記第1のレンジアレイの列に対してドップラーFFTを実施して、第1のレンジドップラーアレイを生成し、
前記第2のレンジアレイ内の列に対してドップラーFFTを実施して、第2のレンジドップラーアレイを生成する、
ように構成される、
レーダシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のレーダシステムであって、前記プロセッサが更に、
前記第1及び第2のレンジ‐ドップラーアレイの各々における1つ又は複数のピークを識別することであって、前記1つ又は複数のピークが、それぞれのレンジ‐ドップラーセルに対応し、また、前記レーダシステムの視野内の1つ又は複数のオブジェクトに対応している、前記1つ又は複数のピークを識別することと、
1つ又は複数の位相シフトを識別することであって、各位相シフトが、前記第1のレンジ‐ドップラーアレイにおける前記1つ又は複数のピークのそれぞれのピークと前記第2のレンジ‐ドップラーアレイにおける対応するピークとの間の位相シフトに対応している、前記1つ又は複数の位相シフトを識別することと、
前記識別された1つ又は複数の位相シフトに基づいて、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される位相シフトを判定することと、
を行うように構成される、
レーダシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のレーダシステムであって、前記プロセッサが、前記識別された1つ又は複数の位相シフトの平均位相シフトを計算するように更に構成され、
前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される前記位相シフトを判定するように構成されている前記プロセッサが、前記平均位相シフトに基づいて、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される前記位相シフトを判定するように構成される、
レーダシステム。
【請求項9】
請求項7に記載のレーダシステムであって、前記プロセッサが、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導された前記判定された位相シフトをコンピュータ可読ストレージメモリに格納するように更に構成される、レーダシステム。
【請求項10】
請求項7に記載のレーダシステムであって、前記プロセッサが、前記信号位相シフトの前記位相と、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される前記判定された位相シフトの前記位相との間の差が、許容値内にあるかどうかを判定するように更に構成され、
前記差が、前記許容値内にない場合、
チャープの反復フレームを送信し、
前記チャープの反復フレームのチャープ信号の第1のサブセットにおいて改変された信号位相シフトを誘導するように位相シフタを制御することであって、前記改変された信号位相シフトが、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導された前記判定された位相シフトに基づいている、前記制御することと、
前記チャープの反復フレームの前記複数のチャープ信号に基づいて受信された反射に対応するデジタル信号に基づいて、前記位相シフタによって前記チャープの反復フレームの前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される反復位相シフトを判定することと、
を行うように構成される、
レーダシステム。
【請求項11】
請求項6に記載のレーダシステムであって、前記プロセッサが、速度誘導位相シフトを補償するために、前記第1及び第2のレンジドップラーアレイにおける位相値を補正するように更に構成される、レーダシステム。
【請求項12】
方法であって、
複数のチャープ信号を生成することと、
位相シフタによって、前記複数のチャープ信号のうちのチャープ信号の第1のサブセットにおける信号位相シフトを誘導することと、
前記複数のチャープ信号に基づいてチャープのフレームの送信を開始することと、
前記チャープのフレームの前記複数のチャープ信号の反射チャープの受信に応答して複数のデジタル信号を生成することと、
複数のデジタル信号に基づいて、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される位相シフトを判定することと、
を含む、方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、前記複数のチャープ信号が、チャープ信号の第2のサブセットを更に含み、前記チャープ信号の第2のサブセットに、前記位相シフタによって誘導される位相シフトがない、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記チャープ信号の第1のサブセットの前記チャープ信号を、チャープ信号の前記第2のサブセットの前記チャープ信号とインターリーブすることを更に含む、方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、
前記複数のデジタル信号のデジタル信号の第1のサブセットに基づいて第1の行列を生成することであって、前記デジタル信号の第1のサブセットが、前記チャープ信号の第1のサブセットに基づいて受信された1つ又は複数の反射に対応する、前記第1の行列を生成することことと、
前記複数のデジタル信号のデジタル信号の第2のサブセットに基づいて第2の行列を生成することであって、前記デジタル信号の第2のサブセットが、前記チャープ信号の第2のサブセットに基づいて受け取られた1つ又は複数の反射に対応する、前記第2の行列を生成することと、
を更に含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記第1の行列内の各デジタル信号に対してレンジ高速フーリエ変換(FFT)を実施して、前記第1の行列内の各デジタル信号に対して第1のレンジアレイを生成することと、
前記第2の行列内の各デジタル信号に対してレンジ高速フーリエ変換(FFT)を実施して、前記第2の行列内の各デジタル信号に対して第2のレンジアレイを生成することと、
前記第1のレンジアレイ内の列に対してドップラーFFTを実施して、第1のレンジドップラーアレイを生成することと、
前記第2のレンジアレイ内の列に対してドップラーFFTを実施して、第2のレンジ‐ドップラーアレイを生成することと、
を更に含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記第1及び第2のレンジ‐ドップラーアレイの各々における1つ又は複数のピークを識別することであって、前記1つ又は複数のピークが、それぞれのレンジ‐ドップラーセルに対応し、また、視野内の1つ又は複数のオブジェクトに対応する、前記1つ又は複数のピークを識別することと、
1つ又は複数の位相シフトを識別することであって、各位相シフトが、前記第1のレンジ‐ドップラーアレイにおける前記1つ又は複数のピークのそれぞれのピークと、前記第2のレンジ‐ドップラーアレイにおける対応するピークとの間の位相シフトに対応する、前記1つ又は複数の位相シフトを識別することと、
前記識別された1つ又は複数の位相シフトに基づいて、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される前記位相シフトを判定することと、
を更に含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記方法が、前記識別された1つ又は複数の位相シフトの平均位相シフトを計算することを更に含み、
前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される前記位相シフトを判定することが、前記平均位相シフトに基づいて、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される前記位相シフトを判定することを含む、方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導された前記判定された位相シフトをコンピュータ可読ストレージメモリに格納することを更に含む、方法。
【請求項20】
請求項12に記載の方法であって、前記方法が、
前記信号位相シフトの前記位相と、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導された前記判定された位相シフトの前記位相との間の差が許容値内にあるかどうかを判定すること、
前記差が許容値内にない場合に、
チャープの反復フレームを送信することと、
前記チャープの反復フレームのチャープ信号の第1のサブセットにおいて改変された信号位相シフトを誘導するように前記位相シフタを制御することであって、前記改変された信号位相シフトが、前記位相シフタによって前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導された判定された位相シフトに基づいている、前記位相シフタを制御することと、
前記チャープの反復フレームの前記複数のチャープ信号に基づいて受け取られた反射に対応するデジタル信号に基づいて、前記位相シフタによって前記チャープの反復フレームの前記チャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される反復位相シフトを判定することと、
を更に含む、方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法であって、速度誘導位相シフトを補償するために、前記第1及び第2のレンジドップラーアレイにおける位相値を補正することを更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
レーダシステムは、電磁波信号を送信し、その信号をレーダシステムの経路内の任意のオブジェクトが反射する。反射された信号を捕捉することによって、レーダシステムが、検出したオブジェクトを評価することができる。
【0002】
ビームフォーミングは、指向性信号送信又は受信のためのセンサアレイと共に用いられる信号処理技法である。適応性又は固定の受信/送信ビームパターンを用いることによって空間選択性が達成される。ドップラー分割多元接続(「DDMA」)もまた信号処理技法であり、受信経路内の一意の送信アレイ要素の識別のためにセンサアレイと共に用いられる。
【0003】
ビームフォーミング又はDDMA技法を用いる電子デバイスは、送信(「TX」)位相シフタを含む。これらの位相シフタはデバイス依存の非線形性を有し、これは、所望のプログラムされた位相と実際のプログラムされた位相との間の非線形マッピングをもたらす。このような非線形性を克服するために、位相シフタを組み込む電子デバイスの製造中に、工場で位相シフタの較正が成され得る。しかしながら、工場での較正は、デバイスの寿命の間の温度/経年変化の影響を捕捉するには不十分であり得る。
【0004】
代替的に、内部ループバック手順を用いて、送信チャネルにおいて生成され、内部ループバック経路を介して受信チャネルに提供されるテスト信号を用いて、各送信チャネルの位相応答を判定することができる。位相応答は、任意のオフセットで位相シフトを較正するように送信信号を調整するために用いることができる。しかしながら、そのようなオンチップループバック較正は、オンボード配路ミスマッチに起因する位相シフトを較正するのに望ましくない場合がある。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、レーダシステムが、レーダトランシーバ集積回路(IC)と、レーダトランシーバICに結合されたプロセッサとを含む。レーダトランシーバICは、複数のチャープ信号を生成するように構成されたチャープ生成器と、信号位相シフトを誘導するように構成された位相シフタとを含む。レーダトランシーバICは、複数のチャープ信号に基づいてチャープのフレームを送信し、複数のデジタル信号を生成するように構成され、各デジタル信号は、複数のチャープ信号に基づいて受信されたそれぞれの反射に対応する。プロセッサは、位相シフタを制御して、複数のチャープ信号のうちのチャープ信号の第1のサブセットにおける信号位相シフトを誘導し、デジタル信号に基づいて、位相シフタによってチャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される位相シフトを判定するように構成される。
【0006】
別の態様において、或る方法が、複数のチャープ信号を生成することと、複数のチャープ信号のうちのチャープ信号の第1のサブセットにおける信号位相シフトを誘導することと、複数のチャープ信号に基づいてチャープのフレームの送信を開始することとを含む。この方法はまた、チャープのフレームの複数のチャープ信号の反射チャープを受信することに応答して複数のデジタル信号を生成することと、デジタル信号に基づいて、位相シフタによってチャープ信号の第1のサブセットにおいて誘導される位相シフトを判定することとを含む。
【0007】
図面において下記のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一例に従った振幅‐時間プロット上のチャープ信号の信号図である。
【0009】
【
図2】一例に従った周波数‐時間プロット上の
図1のチャープ信号の信号図である。
【0010】
【
図3】一例に従ったFMCWレーダシステムのブロック図である。
【0011】
【
図4】別の例に従ったFMCWレーダシステムのブロック図である。
【0012】
【
図5】一例に従ったチャープ送信フレームの一例である。
【0013】
【
図6】一例に従ったアナログ‐デジタルサンプルの行列の一例である。
【0014】
【
図7】一例に従った2D‐FFT行列を図示する図である。
【0015】
【
図8】一例に従った位相シフト較正のための方法のフローチャートである。
【0016】
【
図9】一例に従ったチャープ送信フレームの一例である。
【0017】
【
図10】一例に従ったアナログ‐デジタルサンプルをグループ化する行列の例である。
【0018】
【
図11】一例に従った、
図10の行列に基づく2D‐FFT行列を図示する例である。
【0019】
【
図12】一例に従った、奇数の行を有する2D‐FFTのためのドップラーインデックスのためのインデックス付け方式の例である。
【0020】
【
図13】一例に従った、偶数の行を有する2D‐FFTのためのドップラーインデックスのためのインデックス付け方式の例である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ミリ波(mmWave)は、短波長電磁波を用いるレーダ技術の特別なクラスである。FMCW(frequency-modulated continuous wave)と呼ばれるミリ波技術のクラスでは、FMCWレーダが、レンジならびに角度及び速度を測定するために、周波数変調された信号を連続的に送信する。レーダシステムにおいて、電磁信号が送信され、その信号をレーダシステムの経路内の任意のオブジェクトが反射する。FMCWレーダにおいて用いられる信号では、周波数は時間と共に線形に増加する。このタイプの信号はチャープとも呼ばれる。
図1は、代表的なチャープ信号102の信号
図100を、大きさ(振幅)を時間の関数として用いて図示する。
図2は、
図1のチャープ信号102を、周波数を時間の関数として用いて図示する。チャープ信号102は、開始周波数(fc)200、帯域幅(B)202、及び持続時間(Tc)204によって特徴付けられる。チャープ信号の勾配は、周波数の変化率を捕捉する。
【0022】
図3は、FMCWレーダシステム300のブロック図を図示し、FMCWレーダシステム300は、チャープ信号102などのチャープ信号を送信し、FMCWレーダシステムの経路内の任意のオブジェクトによって反射された信号を捕捉するように構成される。図示のように、レーダシステム300は、レーダトランシーバ集積回路(IC)302と処理ユニット304とを含む。処理ユニット304は、シリアルインタフェース306を介してレーダトランシーバIC302に結合されて、レーダトランシーバIC302にデータを送信し、レーダトランシーバIC302からデータを受信する。一例において、シリアルインタフェース306は、低電圧差動シグナリング(LVDS)インタフェースなどの高速シリアルインタフェースであり得る。別の例において、シリアルインタフェースは低速SPI(serial peripheral interface)であってもよい。
【0023】
トランシーバIC302は、反射されたチャープから複数のデジタル中間周波数(IF)信号(代替的に、デチャープ信号、ビート信号、又は未処理レーダ信号と呼ばれる)を生成する機能性を含む。また、トランシーバIC302は、トランシーバIC内で受信されたレーダ信号の信号処理の一部を実施し、この信号処理の結果をシリアルインタフェース306を介して処理ユニット304に提供する機能性を含み得る。一例において、レーダトランシーバIC302は、各レーダフレームに対してレンジ高速フーリエ変換(FFT)を実施する。別の例において、レーダトランシーバIC302は、各レーダフレームに対してレンジFFT及びドップラーFFTを実施する。
【0024】
処理ユニット304は、レーダトランシーバIC302から受信されたデータを処理して、任意の残りの信号処理を完了し、例えば、任意の検出されたオブジェクトのレンジ、速度、位置、及び/又は角度を判定する機能性を含む。処理ユニット304はまた、検出されたオブジェクトについての情報の後処理、例えば、オブジェクトの追跡、移動の速度及び方向の判定などを実施する機能性を含んでもよい。処理ユニット304は、本明細書で説明する較正の任意の例に従って位相シフタ較正を実施し得る。処理ユニット304は、レーダデータを用いる応用例の処理スループットのために必要に応じて、任意の適切なプロセッサ又はプロセッサの組合せ(プロセッサ308として示される)を含み得る。例えば、処理ユニット304は、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、マイクロコントローラー(MCU)、DSP及びMCU処理の両方を組み合わせたSOC、又は、浮動小数点ゲートアレイ(FPGA)及びDSPを含み得る。処理ユニット304はまた、位相較正データを格納するためのコンピュータ可読ストレージメモリ310を含む。
【0025】
トランシーバIC302は、局部発振器312と、ランプ生成構成要素314と、位相シフタ316と、送信アンテナ318と、受信アンテナ320と、ミキサ322と、アナログデジタルコンバータ(ADC)324と、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)326とを含む。
図3は、単一の代表的な送信チェーン及び受信チェーンを示しているが、幾つかの例において、複数の送信及び受信アンテナをサポートするために複数のチェーンが用いられてもよい。
【0026】
局部発振器312は、基準信号(タイミング及び/又は基準周波数など)をランプ生成構成要素314に提供するように動作可能である。幾つかの例において、局部発振器312自体が、より低い周波数を中心とする周波数ランプを提供し得、それは、ランプ生成構成要素314によって送信の周波数に変換され得る。ランプ生成構成要素314は、結果として得られるランプ信号を、ライン330を介して位相シフタ316に提供するように構成される。位相シフタ316は、例えば、ビームフォーミング又はDDMAレーダ技法などにおいて位相シフトが必要とされる場合に、ライン330上の生成されたランプ信号に位相シフトを適用するように、処理ユニット304によって制御され得る。位相シフタ316は、ランプ信号の位相を変更し得、又はランプ信号が、変更されずにライン332を介して送信アンテナ318に通過することを可能にし得る。レーダシステム300の前の較正に基づいて、処理ユニット304は、位相シフタ316が、送信アンテナ318によって送信された信号における予期される結果を達成する位相シフトを適用するように、所望される特定の位相シフト値について(例えば、ストレージ310からの)位相シフト値にアクセスし得、送信アンテナ318は、それらの信号を無線で送信するように動作可能である。
【0027】
幾つかの例において、一連のチャープ又はチャープされた連続波(CW)信号が、局部発振器312からの入力に基づいてランプ生成構成要素314において生成され、それが送信アンテナ318によって無線で送信される。送信されたチャープ信号は、レーダビームのレンジ及びカバレッジ内の任意のオブジェクトから反射する。
【0028】
受信アンテナ320は、無線で信号を受信し、受信した信号をライン334上のミキサ322に提供するように動作可能である。次いで、ミキサ322はまた、ライン332上でランプ生成構成要素314から信号を受信し、受信アンテナ320からの信号をランプ生成構成要素314からの信号と混合し、得られた混合信号をADC324に送り得る。ADC324は、アナログ信号をデジタル信号に変換するように動作可能である。DSP326は、ライン336を介してADC324から信号を受信し、デジタル信号を処理するように動作可能である。
【0029】
幾つかの例において、送信アンテナ318からの送信チャープ信号はオブジェクトから反射し、反射信号はアンテナ320で受信され、ミキサ322に渡される。ミキサ322は、受信された信号を送信された周波数ランプと混合して、ライン338上にアナログ中間周波数(IF)信号を生成する。アナログIF信号は、ADC324によってサンプリングされ、ライン336上にデジタルIF信号を生成する。デジタルIF信号は、ビーム内のオブジェクトの速度及びレンジを判定するために、DSP326によって処理及び分析される。
【0030】
図3のレーダシステム300は、例えば、同じトランスミッタが位相シフトの有無にかかわらず信号を発信し得るDDMAレーダ技法において用いることができる。ビームフォーミングの例において、
図4が提供される。
図4は、
図3について上記で説明した同様の要素を含み、複数の送信経路を有するレーダシステム400を図示し、経路の1つが、位相シフタ316と送信アンテナ318とライン332とを含み、別の経路が、位相シフタのないライン404によってランプ生成構成要素314に結合される追加の送信アンテナ402を含む。代替的に、位相シフタ(図示せず)が送信アンテナ402に結合され得、活性化されない、又は送信シーケンスにおいてゼロの位相シフトを適用するために活性化され、送信信号の位相シフトが生じない場合がある。また、
図4のレーダシステム400を用いてDDMAレーダ技法が実施され得る。
【0031】
ビーム内のオブジェクトのレンジを判定することは、デジタル化されたサンプルに対してFFT処理を実施することを含み、レンジFFT内のピークの周波数は、シーン内の様々なオブジェクトのレンジに直接対応する。レンジFFTにおけるピークの周波数はオブジェクトのレンジに直接対応し、一方、このピークの位相は、オブジェクトのレンジのわずかな変化に対して極めて敏感である。例えば、波長の1/4(77GHzで約1mm)のオブジェクトの位置の変化が、180度の完全な位相反転に変換される。この位相感度は、振動するオブジェクトの周波数を推定するレーダの能力の基礎である。それは、速度推定のための基礎ともなる。速度次元におけるシーンを分解するために、レーダは、
図5に図示されるようにフレーム502と呼ばれるユニットにおいて、時間的に等間隔のチャープ500のシーケンスを送出し得る。各フレーム502は、等間隔(図示のように)又は非対称間隔であり得るN個のチャープを含み得る。
【0032】
図6は、チャープインデックス602及びADCサンプルインデックス604に従って配置されたフレーム内のN個のチャープに対応するADCサンプルを図示する行列600を図示する。信号処理チェーンにおいて、DSP326などのデバイスが、各チャープ500に対応するデジタル化サンプルに対してレンジFFTを実施し、出力は行列内の連続する行として格納される。行列600の各行は、それぞれのチャープ500からのADCサンプルを含む。連続する行は、チャープ500にわたるデータを含む。その後、ドップラーFFTが行列600の列にわたって実施されて、フレーム502に対応するデジタル化サンプルの2D‐FFTが得られる。
【0033】
図7は、一例に従った、ドップラーインデックス702及びレンジインデックス704に従って配置された2D‐FFT行列700を図示する。2D‐FFT行列700内のピーク706、708、710、712は、検出されたオブジェクトに対応する。2D‐FFT行列における各ピーク706、708、710、712の位置は、オブジェクトの(レーダに対する)レンジ及びドップラーに対応する。2D‐FFT行列700は、「レンジ‐ドップラー」行列と呼ばれることがある。また、2D‐FFT行列700中の各セルは、「レンジ‐ドップラー」セルと呼ばれることがある。
【0034】
図8は、一例に従った位相シフタ較正技法800のフローチャートを図示する。プロセッサ(例えば、
図3、
図3bの処理ユニット304)が、レーダシステムにおいて用いられるランプ信号に特定の位相シフトを適用するよう位相シフタを制御するようにプログラムされ得る。理想的なシステムでは、システムにおいて実現される位相シフトは、所望の位相シフトと一致するか又は実質的に等しくなり得る。しかしながら、デバイス特性、及び特定の位相シフタのためのその他の理想的でないパラメータなどの要因に応じて、プログラムされた位相は、信号に適用される実際の位相ではない場合がある。従って、プロセッサは、特定の位相シフタと共に用いるために工場で較正された較正値を調べて、位相シフタがその信号に所望の位相を適用するように、プログラムされた位相を改変するようにプログラムされ得る。従って、位相シフタの較正は、所望の位相信号修正を達成する際の要因である。しかしながら、位相シフタは、より初期の較正値が古くなるように、経時的に変化し得る。この場合、位相シフタは、ドリフトし得、信号に誤った位相をもう一度適用し始めることがある。従って、位相シフタは、再較正される必要があり得る。加えて、複数のトランスミッタ経路間の配路ミスマッチが、実際の位相シフトと、信号に適用されることが望まれる位相シフトとの間の差に更に寄与する場合がある。技法800は、位相シフタが組み込まれているレーダシステムがその製造施設で較正されているか、又は現場で較正されているかにかかわらず、位相シフタを較正するための方法を提供する。
【0035】
技法800は、交互の位相シフトを有するチャープのフレームの送信の開始802から始まる。ランプ生成構成要素314などのランプ生成器は、一連の同様のチャープを生成するように制御されるが、一連の第1のサブセット(例えば、一連の1つおきのチャープ)が、送信アンテナによって送信される前に第1の位相シフトで改変され、一方、一連の第2のサブセット(例えば、第1のサブセットに属さない一連のチャープ)は未修正であってもよく、又は送信される前に第2の位相シフトで改変されてもよい。
図9を参照すると、交互のチャープフレーム900が一例に従って示されている。チャープ900のフレームにおいて、奇数番号のチャープ901、903、905(例えば、第1、第3、第n-1等)が、位相シフタがランプ生成器からのランプ信号に所望の又は意図された位相シフトを適用することなく、送信される。あるいは、位相シフタは、送信される前に、奇数番号のチャープ901、903、905にゼロの位相シフトを適用するように制御されてもよい。しかしながら、偶数番号のチャープ902、904、906(例えば、第2、第4、第n等)については、ランプ信号が位相シフタによって変更されて、伝送のための位相シフトの所望の値(ΔΦ
setting)を誘導する。このようにして、位相シフトされていないチャープが、位相シフトされたチャープとインターリーブされる。位相シフトの所望の値(ΔΦ
setting)は、較正されるべき値である。代替の例において、奇数番号のチャープ901、903、905は、位相シフトされたチャープで送信され得、偶数番号のチャープ902、904、906は、位相シフトが適用されずに送信され得る。
【0036】
技法800は、送信された奇数及び偶数のチャープ901~906間の位相の実際の差が所望の位相シフト値(ΔΦsetting)に合致しないときに位相シフタを較正するために用いられ得る。特定の位相シフタと共に用いられる各所望の位相シフト値は、位相シフタが各位相に対して同様の効果を示さないことがあるので、別々に較正され得る。しかしながら、一対の較正された値を用いてそれらの間の未較正値を見つけることによる補間を用いて、未較正値に対する位相シフタの効果を近似することができる。
【0037】
再び
図8を参照すると、反射信号が反射チャープから受信されると、デジタルIF信号が生成される(804)。デジタルIF信号は分割され(806)、シフトされていないチャープ(例えば、奇数番号のチャープ901、903、905)からの受信信号のセット、及びシフトされたチャープ(例えば、偶数番号のチャープ902、904、906)からの受信信号のセットに属する信号に基づいて、それぞれのサブフレームにグループ化される。
図10は、分離されたデジタルIF信号から作成された行列1000、1002を図示する。行列1000は、チャープ1、チャープ3、・・・、チャープN-1などの奇数のチャープを含み、行列1002は、チャープ2、チャープ4、・・・、チャープNなどの偶数のチャープを含む。
【0038】
再び
図8を参照すると、各行列1000、1002内のデジタルIF信号に対してレンジFFTが実施されて(808)、各デジタルIF信号に対してレンジアレイが生成される。次いで、ドップラーFFTが、各奇数又は偶数のレンジアレイに対して実施されて(810)、一対のレンジドップラーアレイを生成する。
図11に示されるように、様々なレンジドップラーセルにおいて参照されるピーク1102、1104、1106、1108を有する奇数番号のドップラーFFT 1100が、奇数番号のチャープ行列1000に基づいて生成され、様々なレンジドップラーセルにおいて参照されるピーク1112、1114、1116、1118を有する偶数番号のドップラーFFT 1110が、偶数番号の行列1002に基づいて生成される。
【0039】
図8及び
図11を参照すると、検出アルゴリズムが実施されて、2D‐FFT行列1100、1110内の検出されたオブジェクトを識別する(812)。オブジェクト識別は、行列要素の絶対値をとることによって、複素2D‐FFT行列1100、1110を実数の正の数に変換することを含む。次いで、例えば、一定誤警報率(CRAR)検知などの検知アルゴリズムが、得られた行列に対して実施され、ピーク1102、1112が識別される。ピーク1102、1112は、その後、検出されたオブジェクトとして識別される。幾つかの例において、受信アンテナにわたる2D‐FFT行列の対応する要素の絶対値の合計が計算され、次いで、得られた行列が検出されたオブジェクトを識別するために用いられる。一対の2D‐FFT行列の対応する要素の絶対値(特定の受信アンテナの奇数及び偶数チャープに対応する)を合計し、これを検出に用いることも可能である。
【0040】
検出されたオブジェクトに対応する2D‐FFT行列1100、1110内のセルが識別されると、技法800は、2つの2D‐FFT行列1100、1110間のレンジドップラーセルの対応する位相を比較する(814)。i番目の検出されたオブジェクトについて、対応するセル対(同じレンジインデックス及びドップラーインデックスにおける各2D‐FFT 1100、1110からのもの)の位相間の差又はシフトをΔΦ
iとする。1つのチャープパルスの適用中又は1つのチャープパルスの適用とそれに続くチャープパルスとの間のオブジェクトの移動は、単にオブジェクトがチャープ間を移動したために位相シフタによって誘導される位相シフトとは無関係に、速度誘導位相シフトを誘導する。非ゼロの行のドップラーセル内のオブジェクトについて、速度誘導位相シフトを補償するために位相を補正し得る(816)。この補正は下記のように算出される。
ここで、N
dopplerは、2D‐FFT行列1100、1110のドップラー次元の長さであり、k
doppler_binは、ターゲットに対応するレンジ‐ドップラーセルのドップラーインデックスである。各ΔΦ
iについて、補正された値は、ΔΦ
i,corrと表される。
【0041】
図12は、奇数の行1204を有する2D‐FFT1202のためのドップラーインデックス(k
Doppler_bin)のためのインデックス付け方式1200を図示する。図示のように、第1の行1206(k
doppler_bin=0)が、中央の垂直の行として配置される。行1208及び1210などのゼロドップラー行1206より上の行が正のドップラー(k
Doppler_bin>0)に対応する一方、ゼロドップラー行1206より下の行1212及び1214などの行は、負のドップラー(k
Doppler_bin<0)に対応する。
【0042】
図13は、偶数の行1304を有する2D‐FFT1302のためのドップラーインデックス(k
Doppler_bin)のためのインデックス付け方式1300を図示する。図示のように、行列1302が偶数の行1304を有するので、行1304は中心の行ではない。この場合、行1304の下半分の頂部行に対応する第1の行1306が、中央の垂直の行(k
doppler_bin=0)として配置されている。行1308及び1310などのゼロドップラー行1306より上の行はが正のドップラー(k
Doppler_bin>0)に対応する一方、ゼロドップラー行1306より下の行1312及び1314などの行は、負のドップラー(k
Doppler_bin<0)に対応する。
【0043】
再び
図8を参照すると、幾つかの例において、集合{ΔΦ
1、corr,ΔΦ
2、corr,ΔΦ
3,corr、...}内の外れ値を検出及び除去するために、外れ値検出アルゴリズムが実施される(818)。例えば、外れ値は、それらの信号対雑音比によって、外れ値が予期される値のレンジ外であるという推定等によって、識別され得る。(外れ値が除去されているか又は除去されていない)すべての識別された位相差の平均が下記のように計算される(820)。
ここで、ΣΔΦ
i,corrは全ての補正された値の合計であり、N
objectsは補正された値の数である。
【0044】
ΔΦaveは、ΔΦsettingの意図された設定に対して適用される真の又は実位相シフトの推定値を表す。ΔΦave値とΔΦsettingとの間の差が所望の許容範囲外である(822)場合、技法800は、一例において、802の送信工程に戻り、改変されたΔΦsetting値で再試行し得る。例えば、ΔΦaveが信号に大きすぎる位相シフトを挿入すると判定された場合、ΔΦsettingの値は、余分な位相シフトの差分だけ減少され得、別の反復のために技法800の工程を介して処理され得る。ΔΦaveが所望の許容範囲内に収まるまで、ΔΦsettingを改変する反復を繰り返すことができる。
【0045】
ΔΦave及びΔΦsettingの両方は、ルックアップテーブルなどのコンピュータ可読メモリに格納し得る(824)。このようにして、ルックアップテーブルは、適用された位相シフトΔΦaveと共に位相シフタ設定ΔΦsettingを列挙して作成される。技法800は、ΔΦsettingの他の値について繰り返すことができる。こういったルックアップテーブルは、網羅的である必要はなく、特定の応用例に適用されるべき位相シフトの付近の位相シフトのみを含むように構成し得る(例えば、DDMAのような送信多重化方式を実装することは、位相シフトの特定のセットを含む)。次いで、各応用例はテーブルを検索し、所望の設定に最も近いΔΦaveを有するエントリーを識別し、位相シフタを対応するΔΦsettingに設定するか、又は上述のように値を補間する。複数の受信アンテナが存在する場合、各受信アンテナにおいて生成された2D‐FFTの対について技法800を繰り返すことができ、その推定された位相差を平均計算に含めることができる。
【0046】
技法800は、レーダシステム300及び400が、例えば、システム300及び400がそれらの製造設備を離れた後に、現場でそれらの位相シフタ316を較正するために用いられ得る。技法800は、時間ベースのスケジュールで実行するように又は手動で実行するように、設定し得る。また、技法800は、レーダシステム300及び400の不動性を必要としない。従って、技法800を実施することによるレーダシステム300及び400の位相シフタ316の較正は、例えば、移動する車両に設置されたときなど、レーダシステム300及び400が動いている間に達成し得る。本明細書で説明するように、受信信号が、位相シフトされたチャープ送信に対応するか又は位相シフトされていないチャープ送信に対応するかに基づいて、個別の2D‐FFTを作成することは、各2D‐FFTにおいて検出されたピークが、同じレンジ‐ドップラーセル位置に対応する、2D‐FFTを生成するのに有用である。静止視野の場合、位相シフトが適用されないチャープの1つのセットは、信号伝送タイプ間で視野が変化しないので、位相シフトされたチャープの送信に続いて送信されてもよく、逆もまた同様である。しかしながら、移動する視野の場合(例えば、レーダシステム、視野内のオブジェクト、又は両方が互いに対して位置を変更させる場合)、チャープ信号をインターリーブすることで、1つのタイプのチャープ送信が時間的に他のタイプのチャープ送信に従うときに、結果として生じる2D‐FFT間の視野差を低減され得る。
【0047】
本発明の様々な好ましい実施例の前述の説明は、例示及び説明の目的のために提示されている。これは網羅的なものではなく、記載された正確な形態に本発明を限定するものではなく、上記の教示に照らして多くの改変及び変形が可能なことが明らかである。上述の実施例は、本発明の原理及びその実用的な適用を最も良く説明するために選択され、説明され、それによって、企図される特定の使用に適しているように、他の当業者が、種々の実施において様々な改変を伴って本発明を最も良く利用することが可能となる。本発明の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定義される。
【国際調査報告】