IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーシーピー・アプライド・テクノロジーズ・インコーポレーテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】早強スラグ系セメント質結合剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20231023BHJP
   C04B 7/153 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 22/12 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 18/06 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 24/22 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20231023BHJP
   C04B 40/02 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B7/153
C04B22/06
C04B22/08 Z
C04B22/12
C04B22/10
C04B18/06
C04B24/16
C04B24/12 A
C04B24/22 B
C04B24/26 E
C04B40/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520299
(86)(22)【出願日】2021-10-01
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 US2021053092
(87)【国際公開番号】W WO2022072779
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/086,627
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522045327
【氏名又は名称】ジーシーピー・アプライド・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エステファン,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】バーンズ,エリザベス
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB04
4G112MB06
4G112MB08
4G112MD01
4G112PA26
4G112PB03
4G112PB07
4G112PB08
4G112PB09
4G112PB10
4G112PB25
4G112PB31
4G112PE07
4G112RA05
(57)【要約】
本発明は、24時間で優れた強度を有する、主に粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)を含み、好ましくは、普通ポルトランドセメント(OPC)の量がほとんどない又は最小限でしかない、セメント質結合剤を作るための例示の方法及び添加剤を提供する。OPC製造には、大気中への二酸化炭素放出が関与するため、GGBFS系結合剤組成物の使用は、建設業の持続可能な実践を向上させるとともに、OPCの削除により暗示される強度損失を最小限にすることになる。GGBFS結合剤組成物における強度は、分散剤及び二次活性化剤を含む強度向上成分を組み合わせたアルカリ土類活性化剤により向上する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント質組成物を作る方法であって、以下の成分:
(A)セメント質結合剤成分の合計乾燥重量に基づき粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)を71%~100%の量で含む、セメント質結合剤組成物、
(B)Ca(OH)、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤、及び
(C)(i)ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤、スルホネート型分散剤若しくはホスホネート型分散剤から選択される非PC分散剤、から選択される、少なくとも1種のスラグ分散剤、及び(ii)硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の二次活性化剤、を含む早期強度増進剤成分、
を、水と一緒に混合することを含む、
前記方法。
【請求項2】
前記早期強度増進剤成分は、少なくとも1種のPC型ポリマー分散剤、及びより好ましくは少なくとも2種のPC型ポリマー分散剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
成分Aの前記結合剤組成物は、更に、飛散灰を含み、及び更に、成分A中の前記GGBFS:飛散灰の重量比は、71:29~95:5である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記水並びに前記成分A、B、及びCは、以下の量:水、25%~45%の量;成分Aは、成分Aの前記セメント質結合剤組成物の合計乾燥固体重量に基づき、71%~100%のGGBFSを含む;成分B、0.5%~10%の量;及び成分C、1.5%~6.0%の量;で一緒に混合され、水並びに成分A、B、及びCの前記パーセンテージは、成分Aの合計乾燥重量に基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水並びに成分A、B、及びCは、以下の量:水、25%~40%の量;成分Aは、成分Aの前記セメント質結合剤組成物の合計乾燥固体重量に基づき、96%~100%のGGBFSを含む;成分B、2.0%~8.0%の量;及び成分C、2.0%~5.0%;で一緒に混合され、水並びに成分A、B、及びCの前記パーセンテージは、成分Aの合計乾燥重量に基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水並びに成分A、B、及びCは、以下の量:水、28%~38%の量;成分Aは、成分Aの前記セメント質結合剤組成物の合計乾燥固体重量に基づき、100%のGGBFSを含む;成分B、4.0%~6.0%の量;及び成分C、2.5%~4.5%;で一緒に混合され、水並びに成分A、B、及びCの前記パーセンテージは、成分Aの合計乾燥重量に基づくものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
成分B及びCは、成分Aと、一緒に組み合わされる、又は別々に組み合わされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
成分Bで記載されるとおりのCa(OH)、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される前記少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤成分に加えて、成分Aは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、チオシアン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の活性化剤と組み合わせられる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
成分Aは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、又はそれらの混合物から選択される少
なくとも1種の活性化剤と組み合わせられる、請求項9に記載の方法。
【請求項10】
成分Aは、普通ポルトランドセメント、カルシウムスルホアルミネートセメント、又はそれらの混合物を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記強度向上成分は、3種のモノマー成分A、モノマー成分B、及びモノマー成分Cから得られる少なくとも1種のPC型分散剤ポリマーを含み、モノマー成分Aは、構造式1で表される不飽和カルボン酸モノマーであり、
【化1】
モノマー成分Bは、構造式2で表されるポリオキシアルキレンモノマーであり:
【化2】
モノマー成分Cは、構造式3で表される不飽和カルボン酸エステル又はアミドモノマーであり:
【化3】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、C1-C4アルキル基、又は-COOM基を表し、式中、Mは、水素原子若しくはアルカリ金属を表し;Yは、-(CH-を表し、式中、「p」は、0~6の整数を表し;Zは、-O-、-COO-、-OCO-、-COHN-、又は-NHCO-基を表し;-(AO)は、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブチレンオキシド基、又はそれらの混合物の繰り返しを表し;「n」は、-(AO)-基の繰り返しの平均数を表し、及び10~250の整数であり;Wは、酸素原子又は-NH-基を表し、並びにR11は、C1-C10アルキル基又はC2-C10ヒドロキシアルキル基を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記早期強度増進成分は、式2で表される異なる成分Bモノマーを用いた少なくとも2種の異なる構造を有する少なくとも1種のポリカルボン酸エーテル型分散剤ポリマーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項13】
前記早期強度増進成分は、少なくとも1種のポリカルボン酸型櫛ポリマーを、少なくとも1種の粘度修飾混和材と組み合わせて含み、少なくとも1種の粘度修飾混和材は、好ましくは、バイオポリマー多糖、セルロース型増粘剤、又はそれらの混合物から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1種の分散剤は、ナトリウムナフタレンスルホネートである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
成分Bは、更に、炭酸カルシウム又は炭酸カルシウム源を含み、前記炭酸カルシウムは、成分Aの前記結合剤中、成分Aの合計乾燥重量に基づき0.1~10%の量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
水並びに成分A、B、及びCを一緒に混合して均一なペースト又はスラリーを得た後、前記ペースト又はスラリーを、混合後、30~70℃の温度に供する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法に従って作られた、セメント質組成物。
【請求項18】
以下:
(A)Ca(OH)、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤、
(B)(i)ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤、又はスルホネート型分散剤若しくはホスホネート型分散剤から選択される非PC分散剤、から選択される、少なくとも1種のスラグ分散剤、及び(ii)硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される、少なくとも1種の活性化剤を含む、早期強度増進剤成分、
を含む、粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)結合剤組成物の改質用の混和材パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明者:Pierre Estephane及びElizabeth Burns
【0002】
発明の分野
本発明は、建設材料として有用な水和性セメント質組成物の分野に関し、より詳細には、ポルトランドセメント(OPC)の量がゼロ又はわずかであるにも関わらず優れた強度を有するスラグ系結合剤組成物を得るための方法及び添加剤組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
高炉水砕スラグ(GBFS)は、工業製鉄プロセスの副生成物として得られる。粉砕形状のGBFSは、粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)と呼ばれる。GGBFSは、環境に優しい建設材料の製造に広く使用される。普通ポルトランドセメント(OPC)に代わる代用品として大きな関心を払われてきたのが、アルカリ活性化GGBFS(AAS)材料であるが、これは、強力な結合剤を作るためにアルカリ性溶液を使用する。例えば、非特許文献1を参照。
【0004】
普通ポルトランドセメント(「OPC」又は「ポルトランドセメント」)の量がほとんど又は全く含まれない水和性セメント質組成物は、OPC製造から生じる大量の二酸化炭素排出を回避するという理由で、環境に関する観点から非常に望ましい。
【0005】
特許文献1において、Ballらは、無OPC材料用の活性化剤組成物を教示しており、これは、酸化カルシウム(CaO)又は石灰と、及びポリカルボン酸エーテル系(本明細書中以下、「PC」)スーパー可塑剤とを含む。これらを、粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)及び/又は微粉化燃料灰(PFA)と混合することで、OPCを含有しないセメント質結合剤が得られた。
【0006】
しかしながら、スラグ及び/又は飛散灰を大量に使用する水和性組成物の大きな懸念として、セメント(OPC)に比べた場合の圧縮強度の相対的不足があった。
【0007】
この点について、ある種のアルカノールアミンにより、スラグ、飛散灰、又は他の材料を使用してセメントを置き換えることが可能になることが教示されている。例えば、Myersらの特許文献2及びCheungらの特許文献3を参照。従来の予想では、最高60%のセメントを置き換えることが可能であり、おそらくは楽観的にそれより大量の最高90%が試みられたことがある。
【0008】
地球温暖化についての意識の高まりを受けて、セメント含有パーセントのより低い、更にはOPC不含結合剤組成物を使用するという目的が、コンクリート産業の意識の最前線へと移動し近づいてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】英国特許出願第GB 2525705A号
【特許文献2】米国特許第4,990,190号
【特許文献3】米国特許第6,290,772号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Jeong et al., ‘‘Influence of Slag Characteristics on Development and Reaction Products in CaO-Activated Slag System,’’ Cement and Concrete Composites 72 (ELSEVIER 2016), pages 155-167 (2018)
【発明の概要】
【0011】
発明の概要
本発明は、主たる粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)と、アルカリ土類活性化剤と、及び早期強度増進剤と、を含むセメント質材料を作るための例示の方法及び添加剤組成物を提供し、このセメント質材料は、セメント(OPC)の量がほとんど又は好ましくはまったくなく、それにも関わらず、24時間で優れた強度を有する。
【0012】
セメント質組成物を作る方法であって、以下の成分:
(A)セメント質結合剤組成物、これは、セメント質結合剤成分の合計乾燥重量に基づき、粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)を71%~100%の量で(より好ましくは91%~100%、最も好ましくは97%~100%の量で)含む、と、
(B)少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤、これは、Ca(OH)、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される、と、並びに
(C)早期強度増進剤成分、これは、(i)少なくとも1種のスラグ分散剤、これは、ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤、スルホネート型分散剤(例えば、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、リグニンスルホネート)若しくはホスホネート型分散剤から選択される非PC分散剤、から選択される、及び(ii)少なくとも1種の二次活性化剤、これは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される、を含む、と、
を、水と一緒に混合することを含む、
方法。
【0013】
粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)組成物を改質するための、本発明の例示混和材パッケージは、以下:
(A)少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤、これは、Ca(OH)、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される、と、並びに
(B)早期強度増進剤成分、これは、(i)少なくとも1種のスラグ分散剤、これは、ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤、スルホネート型分散剤(例えば、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、リグニンスルホネート)若しくはホスホネート型分散剤から選択される非PC分散剤、から選択される、及び(ii)少なくとも1種の活性化剤、これは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される、を含む、と、
を含む。
【0014】
上記の例示混和材パッケージにおいて、成分Aの少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤は、乾燥粉末混合物としてパッケージ化することができ、これを、成分Bの早期強度増進剤成分がGGBFS含有結合剤組成物と組み合わされる前、最中、又は後に、GGBFS含有結合剤組成物と組み合わせることができる。成分Bは、液体分散性混和材組成物の形状にあってもよい。
【0015】
本発明の他の例示水和性スラグ系組成物において、耐久性を向上させるため1種又は複数の補助セメント質材料をGGBFS系結合剤に組み合わせてもよい。
【0016】
本発明のさらなる利点及び特長を、本明細書中以下で更に詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、ここから、本発明者らの発明の様々な例示実施形態を記載することにし、その開始にあたり、様々な用語を本明細書中使用されるとおりに定義する。
【0018】
「普通ポルトランドセメント」(OPC)という用語は、本明細書中使用される場合、水和性セメントを含み、これは、水硬性ケイ酸カルシウムと、及び相互粉砕添加剤(interground additive)としての1種又は複数の形状の硫酸カルシウム(例えば、石膏)とからなるクリンカーを粉砕することにより製造される。
【0019】
「セメント質」という用語は、本明細書中使用される場合、水と混合した場合に、細骨材(例えば、砂)、粗骨材(例えば、砕石砂利)、又はそれらの混合物をまとめる結合剤として機能する、GGBFS含有材料を指す。「セメント質」及び「結合剤」という用語は、本明細書中、材料内で硬化プロセスを開始させ及び骨材がひとまとまりになって硬化した塊又は構造体になるのに十分な量の水と混合させた場合に硬化する材料を示すのに、一緒に使用する、更には同義で使用することさえも可能である。「セメント質」という用語は、セメント様の品質を指すが、結合剤組成物内にポルトランドセメント(OPC)が存在することを必要とすることも禁止することもない。
【0020】
本発明の例示実施形態には、極低OPCレベル、特に好ましくはいかなるOPCもないことが関係する。本発明の例示実施形態において、「セメント質」及び「結合剤」は、主たる粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)を含む組成物、並びに補助セメント質結合剤材料とともに使用される場合のGGBFSを指すことになる。
【0021】
特に記載がない限り、成分のパーセンテージは、本明細書中、あらゆる補助セメント質材料及び混和材を含むGGBFS含有セメント質結合剤組成物の合計乾燥重量を基準にして表示されることになる。
【0022】
「水和性」という用語は、本明細書中使用される場合、水との化学的相互作用により硬化するセメント質及び/又は結合剤材料を指すことを意図する。
【0023】
本発明の好適な例示実施形態は、活性化粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)から、任意選択で飛散灰とともに、及び最小限のOPCセメント(すなわち、合計結合剤の乾燥重量の4%以下);より好ましくは、合計結合剤の乾燥重量の2%以下);最も好ましくは、セメント(OPC)量ゼロで、作られた水和性セメント質組成物を含む。
【0024】
例示実施形態において、強度向上成分が使用されることになる。本発明の例示の方法、添加剤組成物、及びスラグ系セメント質組成物に従って、スラグ系結合剤組成物の強度向上に、少なくとも1種の分散剤が使用されることになる。分散剤の例は、少なくとも1種のポリカルボン酸エーテル型ポリマー分散剤(本明細書中以下、「PC」又は「PCE」ポリマー);少なくとも1種の非PC分散剤、例えば、スルホネート又はホスホネート型分散剤;あるいは、PC型及び非PC型分散剤の混合物を含むことができる。
【0025】
非PC型分散剤の例は、ナトリウムナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、及びリグニンスルホネートから選択される既知の水硬性セメント分散剤を含む。そのような分散剤は、セメント産業で一般的に使用される。これらの型の非PC分散剤のナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩が、配合物に一般的に使用される。
【0026】
非PC型分散剤の例として、グルコン酸及びその塩などの炭水化物も挙げることができる。
【0027】
強度向上成分に使用することを企図する好適な分散剤として、ポリカルボン酸エーテル型ポリマー分散剤(「PC」又は「PCE」型ポリマーとして知られる)が挙げられ、これは、水硬性結合剤の強力な分散剤であることが実証済みである。これらは、文献で十分検討されている。例えば、Jeknavorian, A. A., Concrete
International, October 2019, page 49を参照;同じく、Plank, J.; Sakai, E.; Miao, C. W.; Yu, C.; Hong, J. X.; Cement and Concrete Research, 2015, issue 78, pages 81-99)を参照。そのようなPC型分散剤ポリマーは、多種多様な構造体で市販されており、典型的には、2種のモノマー単位(A+B型)でできており、更には3種以上のモノマー単位(A+B+C型)であることさえあり、ラジカル重合用の二重結合が含まれている。そのようなPC型分散剤ポリマーは、場合によっては、エーテル結合により炭素骨格に連結されたオキシアルキレン含有基を有することから、「櫛形」PCポリマーと称することがある。
【0028】
本発明の例示実施形態において、以下で検討されるとおりのモノマーA及びモノマーBを少なくとも含むPC型ポリマー分散剤を使用することができ、さらなる例示実施形態では、少なくとも2種のPC型ポリマーを採用することができ、この場合、第一ポリマーは、モノマーA及びモノマーBから形成され、一方で第二ポリマーは、モノマーA、モノマーB、及びモノマーCから形成される。
【0029】
すなわち、PC型ポリマーの例示モノマー成分Aは、構造式1で表される不飽和カルボン酸モノマーを含み、式中、R、R、Rは、それぞれ、水素原子、C1-C4アルキル基、又は-COOM基を表し、式中、Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。モノマーの例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、又はイタコン酸を挙げることができる
【化1】
【0030】
PC型ポリマー分散剤例の形成用の例示成分モノマーBは、以下の式2で表され、これは、ポリマー骨格に2個の炭素を提供し、モノマーB自身がポリマー又はコポリマーである場合もあることから、マクロモノマー又はマクロマーと呼ばれることが多い。マクロモノマーは、分子量が200~5000ダルトン、より一般的には500~3000ダルトンのポリアルキレンオキシド鎖と、及び重合可能な二重結合とを有する。ポリアルキレンオキシドは、エチレンオキシド(EO)基を多く有することからポリエチレンオキシド(PEO)であることが多いが、他のアルキレンオキシド、例えば、プロピレンオキシド(PO)がマクロマーに含まれることも可能である。重合可能な二重結合とポリアルキレンオキシドの間の連結は、エステル結合(例えば、メタクリル酸のPEOエステル)、又はエーテル結合、例えば、アリル、メタリル、ブチル、若しくはイソプレニルエーテルの場合のものなどが可能である。マクロマー混合物を有利に使用することが可能であり、例え
ば、L.Kuoの米国特許第10,047,008号(本明細書の共通譲受人により所有される)に教示されている。成分Bは、式2で表され、式中、R、R、及びRは、それぞれ独立して、水素原子、C1-C4アルキル基、又は-COOM基を表し、式中、Mは、水素原子若しくはアルカリ金属を表し;Yは、-(CH-を表し、式中、「p」は、0~6の整数を表し;Zは、-O-、-COO-、-OCO-、-COHN-、又は-NHCO-基を表し;-(AO)は、アルキレンオキシド基、例えばエチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブチレンオキシド基、又はそれらの混合物の繰り返しを表し;「n」は、-(AO)-基の繰り返しの平均数を表し、10~250の整数である:
【化2】
【0031】
本発明で有用なPC型分散剤ポリマー例において、モノマーA対モノマーBの比は、典型的には、5:1~1:1、より好ましくは4:1~2:1である。
【0032】
他の例示PC型分散剤ポリマーは、更に、成分モノマーCを含むことができ、モノマーCは、結合剤組成物が水と混合されて水和した後に、ポリマーに分散性を与えるように機能するように、好ましくは加水分解可能である。モノマーCの例は、以下の構造式3で表され、式中、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、C1-C4アルキル基、又は-COOM基を表し、式中、Mは、水素原子若しくはアルカリ金属を表し;Wは、酸素原子又は-NH-基を表し、並びにR11は、C1-C10アルキル基又はC2-C10ヒドロキシアルキル基を表す(例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸プロピル、又は他のアクリル酸エステル)。
【化3】
【0033】
上記したものと類似したPC型分散剤ポリマー例は、特許文献、例えば、Jeknavorianらの米国特許第8,070,875号(本明細書の共通譲受人により所有される)に開示されている。
【0034】
好適なモノマーA対モノマーC比(A:C)は、1:10~5:1の範囲、より好ましくは2:1~1:2の範囲にある。好適なモノマーA+モノマーC対モノマーB比(A+C:B)は、典型的には、5:1~1:1、より好ましくは4:1~2:1の範囲にある。
【0035】
スラグ系セメント質結合剤組成物の強度向上に使用するのに適していると思われる他の例示分散剤として、他の構造体、例えば、ホスホネート含有材料などを挙げることができる。例えば、Goz-Maciejewskaらの米国特許第8,058,337号(本明細書の共通譲受人により所有される)Krausらの米国公開第2019/0010090号を参照。
【0036】
本発明者らは、強度向上成分と組み合わせて又はその一部として、ある種の混和材が、PC型ポリマー分散剤と併用可能であり、例えば、少なくとも1種の消泡剤、粘度修飾剤、殺生物剤、又はそれらの混合物を使用することなどが可能であり、そうすることでさらなる利益が得られると考える。それゆえ、本明細書中記載される例示実施形態は、任意選択で、1種又は複数のそのような追加混和材成分とともに使用してもよい。
【0037】
本発明のスラグ系組成物への使用を企図する消泡剤の例として、コンクリート混和材に使用される従来型消泡剤を挙げることができる。それらは、通常、疎水性であり、HLB値が低く、水溶性に乏しい。例として、鉱物油系消泡剤(例えば、灯油、流動パラフィン);油脂型消泡剤(例えば、動物油及び植物油、ゴマ油、ヒマシ油、並びにそれらのアルキレンオキシド付加物);脂肪酸系エステル消泡剤(例えば、オレイン酸、ステアリン酸付加、並びにそれらのアルキレンオキシド付加物);脂肪酸エステル系消泡剤(例えば、モノリシノレイン酸グリセロール、アルケニルコハク酸誘導体、モノラウリン酸ソルビトール、トリオレイン酸ソルビトール、天然ワックス);オキシアルキレン系消泡剤(例えば、ポリ(オキシエチレン)及びポリ(オキシプロピレン)のブロックコポリマー及びランダムコポリマー、例えば、BASFのPLURONIC(商標)材料;(ポリ)オキシアルキルエーテル(例えば、ジエチレングリコールヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン2-エチルヘキシルエーテル、及び12~14個の炭素原子を持つ高級アルコールのオキシエチレンオキシプロピレン付加物);(ポリ)オキシアルキレン(アルキル)アリールエーテル(例えば、ポリオキシプロピレンフェニルエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル;アルキレンオキシドがアセチレンアルコールに付加重合することにより形成されるアセチレンエーテル、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、及び3-メチル-1-ブチン-3-オール;(ポリ)オキシアルキレン脂肪酸エステル、例えば、オレイン酸ジエチレングリコールエステル、ラウリン酸ジエチレングリコールエステル、及びジステアリン酸エチレングリコール);(ポリ)オキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、(ポリ)オキシエチレンソルビタンモノラウリン酸エステル、(ポリ)オキシエチレンソルビタントリオレイン酸エステル);(ポリ)オキシアルキレンアルキル(アリール)エーテル硫酸エステル塩(例えば、ポリオキシプロピレンメチルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンドデシルフェノールエーテル硫酸ナトリウム);(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸エステル(例えば、(ポリ)オキシエチレンステアリルリン酸);(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン(例えば、ポリオキシエチレンラウリルアミン;及びポリオキシアルキレンアミド);アルコール系消泡剤(例えば、オクチルアルコール、ヘキサデシルアルコール、アセチレンアルコール、及びグリコール);アミド塩基消泡剤(例えば、アクリレートポリアミン);リン酸エステル系消泡剤(例えば、リン酸トリブチル及びリン酸ナトリウムオクチル);金属石鹸系消泡剤(例えば、ステアリン酸アルミニウム及びオレイン酸カルシウム);並びにシリコーン系消泡剤(例えば、ジメチルシリコーンオイル、シリコーンペースト、シリコーンエマルション、有機変性ポリシロキサン)が挙げられる。
【0038】
上記のとおり、PC型ポリマー分散剤などの分散剤は、粘度修飾剤(VMA)と組み合わせて使用される場合もある。VMAの例として、ガム、例えば、ウェランガム、キサンタン(zanthan)ガム、グアーガム、及びジウタン(diutan)ガムがあげら
れる。VMAの他の例として、セルロースエーテル、例えば、ヒドロキシプロピルセルロースが挙げられ、これは、多種多様な分子量及び構造のものが市販されている。例えば、Dow製のMETHOCEL(登録商標)改質セルロース増粘剤、Shin-Etsu製のMETOLOSE(登録商標)増粘剤などである。これらの材料をポリカルボン酸エーテルと共に使用することは、WO20180715259A1に開示されている。
【0039】
本発明者らは、以下のとおり、様々な実施形態例、及びこれら実施形態例の様々な例示態様を用いて、本発明を記載する。
【0040】
第一の例示実施形態において、本発明は、セメント質組成物を作る方法を提供し、本方法は、以下の成分:
(A)セメント質結合剤組成物、これは、セメント質結合剤成分の合計乾燥重量に基づき、粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)を71%~100%の量で(より好ましくは91%~100%、最も好ましくは97%~100%の量で)含む、と、
(B)少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤、これは、Ca(OH)、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される、と、並びに
(C)早期強度増進剤成分、これは、(i)少なくとも1種のスラグ分散剤、これは、ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤、スルホネート型分散剤(例えば、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、リグニンスルホネート)若しくはホスホネート型分散剤から選択される非PC分散剤、から選択される、及び(ii)少なくとも1種の二次活性化剤、これは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される、を含む、と、
を、水と一緒に混合することを含む。
【0041】
第一実施形態の第一態様において、PC型ポリマー分散剤は、非PCT型分散剤、例えば、リグノスルホネート、ナフタレンスルホネート、又はメラミンスルホネートと組み合わせて使用される場合がある。
【0042】
第一実施形態の第二態様において、二次活性化剤は、硝酸カルシウム及びチオシアン酸ナトリウムを含む。
【0043】
第一実施形態の第三態様において、二次活性化剤は、硝酸カルシウム及びメチルジエタノールアミンを含む。
【0044】
第一実施形態の第四態様において、二次活性化剤は、硝酸カルシウム及び塩化カルシウムを含む。
【0045】
第二の例示実施形態は、上記の第一の例示実施形態に基づく場合があり、この第二の例示実施形態において、早期強度増進剤成分は、少なくとも1種のPC型ポリマー分散剤、及びより好ましくは少なくとも2種のPC型ポリマー分散剤を含む。
【0046】
第二の例示実施形態の第一態様において、早期強度増進剤成分は、2種の異なる平均サイズのアルキレンオキシド基を有する少なくとも1種のPC型ポリマー分散剤を含む。
【0047】
第二の例示実施形態の第二態様において、早期強度増進剤成分は、少なくとも2種のPC型分散剤ポリマーを含み、第一PCポリマーは、初期スランプ向上特性を有し、及び第二PCポリマーは、スランプ維持特性を有する。
【0048】
第二の例示実施形態の第三の態様において、早期強度増進剤成分は、異なる初期スラン
プ向上特性又は異なるスランプ維持特性を有し、及びVMA、消泡剤、又はそれらの混合物と更に組み合わせて使用される、少なくとも2種のPC型分散剤ポリマーを含む。
【0049】
第二の例示実施形態の第四態様において、早期強度増進剤成分は、少なくとも1種のPCと、及び消泡剤と、を含み、消泡剤は、(ポリ)オキシアルキレンアルキルアミン、アルキレンオキシドがアセチレンアルコールに付加重合することにより形成されるアセチレンエーテル、例えば、2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、2,5-ジメチル-3-ヘキシン-2,5-ジオール、及び3-メチル-1-ブチン-3-オール、及びリン酸エステル系消泡剤から選択される。
【0050】
第二の例示実施形態の第五態様において、早期強度増進剤成分は、少なくとも1種のPCと、少なくとも1種のガム(例えば、ウェランガム、キサンタンガム、グアーガム、ジウタンガム)と、及び少なくとも1種のセルロースエーテル(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)と、を含む。
【0051】
第三の例示実施形態は、上記の第一から第二を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第三の例示実施形態において、成分Aの結合剤組成物は、更に、飛散灰を含み、成分A中のGGBFS:飛散灰の重量比は、71:29~95:5である。
【0052】
第四の例示実施形態は、上記の第一から第三を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第四の例示実施形態において、水並びに成分A、B、及びCは、以下の量で一緒に混合される:水、25%~45%の量;成分Aは、成分Aのセメント質結合剤組成物の合計乾燥固体重量に基づき71%~100%のGGBFSを含む;成分B、0.5%~10%の量;及び成分C、1.5%~6.0%の量;水並びに成分A、B、及びCの上記パーセンテージは、成分Aの合計乾燥重量に基づく。
【0053】
第五の例示実施形態は、上記の第一から第四を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第五の例示実施形態において、水並びに成分A、B、及びCは、以下の量で一緒に混合される:水、25%~40%の量;成分Aは、成分Aのセメント質結合剤組成物の合計乾燥固体重量に基づき96%~100%のGGBFSを含む;成分B、2.0%~8.0%の量;及び成分C、2.0%~5.0%の量;水並びに成分A、B、及びCの上記パーセンテージは、成分Aの合計乾燥重量に基づく。
【0054】
第六の例示実施形態は、上記の第一から第五を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第六の例示実施形態において、水並びに成分A、B、及びCは、以下の量で一緒に混合される:水、28%~38%の量;成分Aは、成分Aのセメント質結合剤組成物の合計乾燥固体重量に基づき100%のGGBFSを含む;成分B、4.0%~6.0%の量;及び成分C、2.5%~4.5%の量;水並びに成分A、B、及びCの上記パーセンテージは、成分Aの合計乾燥重量に基づく。
【0055】
第七の例示実施形態は、上記の第一から第六を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第七の例示実施形態において、成分B及びCは、一緒に成分Aと組み合わせられるか、別々に成分Aと組み合わせられる。この実施形態の第一態様において、成分Aは、粉末形状で供給される場合があり、一方成分Bは、液体製品の形状で供給される場合がある。
【0056】
第八の例示実施形態は、上記の第一から第七を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第八の例示実施形態において、本発明は、セメント質組成物の作成において含まれる場合がある追加成分を含む。成分Bにおいて記載されるとおりのCa(OH)、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種のアルカリ土
類活性化剤成分の使用に加えて、成分Aは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、チオシアン酸ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される少なくとも2種の活性化剤と組み合わされる。
【0057】
第八の例示実施形態の第一態様において、以下の成分のうち少なくとも1種が、GGBFS含有結合剤組成物に組み合わされ又は混合される場合があり、これら成分の様々な組み合わせもまた一緒に使用される場合がある。好適な量は、成分AのGGBFS含有結合剤組成物の合計乾燥重量に基づく重量パーセンテージで、以下のとおり表される:硝酸カルシウム(好ましくは0.9%~4.9%、より好ましくは1.4%~4.1%、最も好ましくは1.8%~3.7%);亜硝酸カルシウム(好ましくは0.02%~0.12%、より好ましくは0.03%~0.09%、最も好ましくは0.04~0.08%);チオシアン酸ナトリウム(好ましくは0.06%~0.3%、より好ましくは0.08%~0.24%、最も好ましくは0.1%~0.2%);トリエタノールアミン(好ましくは0.02%~0.12%、より好ましくは0.03%~0.09%、最も好ましくは0.04%~0.08%);メチルジエタノールアミン(好ましくは0.01%~0.06%、より好ましくは0.02%~0.05%、最も好ましくは0.02%~0.04%);塩化カルシウム(好ましくは0.9%~4.9%、より好ましくは1.4%~4.1%、最も好ましくは1.8%~3.7%);及び塩化ナトリウム(好ましくは0.9%~4.9%、より好ましくは1.4%~4.1%、最も好ましくは1.8%~3.7%)。
【0058】
第八の例示実施形態の第二態様において、成分AのGGBFS含有結合剤組成物の合計乾燥重量に基づく重量パーセンテージとして表した好適な量は、以下:硝酸カルシウム(好ましくは0.9%~4.9%、より好ましくは1.4%~4.1%、最も好ましくは1.8%~3.7%)及びチオシアン酸ナトリウム(好ましくは0.06%~0.3%、より好ましくは0.08%~0.24%、最も好ましくは0.1%~0.2%)。
【0059】
第八の例示実施形態の第三態様において、成分AのGGBFS含有結合剤組成物の合計乾燥重量に基づく重量パーセンテージとして表した好適な量は、以下:硝酸カルシウム(好ましくは0.9%~4.9%、より好ましくは1.4%~4.1%、最も好ましくは1.8%~3.7%)及びメチルジエタノールアミン(好ましくは0.01%~0.06%、より好ましくは0.02%~0.05%、最も好ましくは0.02%~0.04%)/。
【0060】
第八の例示実施形態の第四態様において、成分AのGGBFS含有結合剤組成物の合計乾燥重量に基づく重量パーセンテージとして表した好適な量は、以下:硝酸カルシウム(好ましくは0.9%~4.9%、より好ましくは1.4%~4.1%、最も好ましくは1.8%~3.7%)及び塩化カルシウム(好ましくは0.9%~4.9%、より好ましくは1.4%~4.1%、最も好ましくは1.8%~3.7%);。
【0061】
第九の例示実施形態は、上記の第一から第八を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第九の例示実施形態において、GGBFS含有成分Aは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の活性化剤と組み合わされる。
【0062】
この第九の例示実施形態の第一態様において、少なくとも1種の活性化剤は、硝酸カルシウム及び亜硝酸カルシウムの両方を含む。
【0063】
第十の例示実施形態は、上記の第一から第九を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第十の例示実施形態において、成分AのGGBFS含有セメント質結合
剤は、普通ポルトランドセメント、カルシウムスルホアルミネートセメント、又はそれらの混合物を含まない。
【0064】
第十一の例示実施形態は、上記の第一から第十を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第十一の例示実施形態において、強度向上成分は、3種のモノマー成分A、B、及びCから得られる少なくとも1種のPC型分散剤ポリマーを含み、モノマー成分Aは、構造式1で表される不飽和カルボン酸モノマーであり、
【化4】
モノマー成分Bは、構造式2で表されるポリオキシアルキレンモノマーであり:
【化5】
モノマー成分Cは、構造式3で表される不飽和カルボン酸エステル又はアミドモノマーであり:
【化6】
式中、R、R、R、R、R、R、R、R、R、及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、C1-C4アルキル基、又は-COOM基を表し、式中、Mは、水素原子若しくはアルカリ金属を表し;Yは、-(CH-を表し、式中、「p」は、0~6の整数を表し;Zは、-O-、-COO-、-OCO-、-COHN-、又は-NHCO-基を表し;-(AO)は、エチレンオキシド基、プロピレンオキシド基、ブチレンオキシド基、又はそれらの混合物の繰り返しを表し;「n」は、-(AO)-基の繰り返しの平均数を表し、及び10~250の整数であり;Wは、酸素原子又は-NH-基を表し、及びR11は、C1-C10アルキル基又はC2-C10ヒドロキシアルキル基を表す。
【0065】
第十二の例示実施形態は、上記の第一から第十一を通じた例示実施形態のいずれかに基
づく場合があり、この第十二の例示実施形態において、強度向上成分は、式2で表される異なる成分Bモノマーを用いた少なくとも2種の異なる構造を有する少なくとも1種のポリカルボン酸エーテル型分散剤ポリマーを含む。
【0066】
第十二の例の実施形態の第一態様において、例示PC分散剤ポリマーは、異なるモノマー成分B基(式2)を有する場合がある。PCポリマーの例は、異なる長さのアルキレンオキシド(AO)基を有する場合がある(例えば、米国特許第10,047,008号を参照)。例えば、PCポリマーは、式1で定義されるとおりのAO基がポリマー構造において異なるサイズを有する、例えば、1つのAO基については整数「n」が8~25の範囲にあり、別のAO基については「n」が、20~100の範囲にあるなどの構造を含む場合がある。ポリマーが「櫛」型のものである場合、それは、櫛が、異なるサイズのAO基で構成される混合(及び相対的に小さい)「歯」を有することを言う場合がある。代替実施形態として、少なくとも2種以上のPCポリマーを使用することができ、2種以上のPCポリマー間で異なるAO基を各PCポリマーが有する。
【0067】
第十三の例示実施形態は、上記の第一から第十二を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第十三の例示実施形態において、早期強度増進成分は、少なくとも1種のポリカルボン酸型櫛ポリマーを、少なくとも1種の粘度修飾混和材(VMA)と組み合わせて含み、VMAは、好ましくは、バイオポリマー多糖(例えば、ジウタンガム、ウェランガム、キサンタンガム)、セルロース型増粘剤(例えば、メチルセルロース増粘剤又は水混和性若しくは適合性を改善するように改質された他のセルロース型増粘剤)、あるいはそれらの混合物から選択される。
【0068】
この第十三の例示実施形態の第一態様において、早期強度増進成分は、少なくとも2種のPC分散剤ポリマーと、及びVMA、消泡剤、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種のさらなる成分と、を含む場合がある。
【0069】
第十四の例示実施形態は、上記の第一から第十三を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第十四の例示実施形態において、強度向上成分は、非PC分散剤、例えば、ナトリウムナフタレンスルホネートを含む。
【0070】
第十五の例示実施形態は、上記の第一から第十四を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第十五の例示実施形態において、成分Bの少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤は、更に、炭酸カルシウム又は炭酸カルシウム源を含み、この炭酸カルシウムは、成分Aの結合剤組成物中、成分Aの合計乾燥重量に基づき0.1~10%の量で存在する。
【0071】
この第十五の例示実施形態の第一態様において、成分Bの少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤は、更に、石灰石又は石灰石充填材を含む。
【0072】
第十六の例示実施形態は、上記の第一から第十五を通じた例示実施形態のいずれかに基づく場合があり、この第十六の例示実施形態において、セメント質組成物を形成する方法は、更に、水並びに成分A、B、及びCを一緒に混合して均一なペースト又はスラリーを得た後、ペースト又はスラリーを30~70℃の温度に供することを含む場合がある。
【0073】
第十七の例示実施形態において、本発明は、上記の第一から第十六を通じた例示実施形態のいずれかに従って作られたセメント質組成物を提供する。セメント質組成物は、骨材と組み合わせて、コンクリート又はモルタル構造体を形成する場合がある。
【0074】
第十八の例示実施形態において、本発明は、粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)結合剤
組成物を改質するための混合物パッケージ(例えば、成分A及び成分Bは別々の容器に収容されているが、2成分製品又はシステムとして販売されている)を提供し、本パッケージは以下:
(A)少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤、これは、Ca(OH)、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される、と、並びに
(B)早期強度増進剤成分、これは、(i)少なくとも1種のスラグ分散剤、これは、ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤、スルホネート型分散剤(例えば、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、リグニンスルホネート)若しくはホスホネート型分散剤から選択される非PC分散剤、から選択される、及び(ii)少なくとも1種の活性化剤、これは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される、及び(iii)少なくとも1種の二次活性化剤、これは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される(二次活性化剤は、第一活性化剤とは異なっていなければならない)、を含む、と、
を含む。
【0075】
第十八の例示実施形態の第一態様において、本発明は、混和材パッケージを提供し、このパッケージにおいて、成分Aの少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤(例えば、Ca(OH)、CaO、MgO、又は混合物)は、乾燥粉末ミックスとしてパッケージ化することができ、これは、成分Bの早期強度増進剤成分をGGBFS含有結合剤組成物と組み合わせる前、最中、又は後に、GGBFS含有結合剤組成物と組み合わせることができる。成分Bは、液体分散性混和材組成物の形状にある場合がある。
【0076】
第二態様において、成分A及び成分Bの一方又は両方は、さらなる混和材成分、例えば、消泡剤(複数可)、粘度修飾剤(複数可)、殺生物剤、石灰(例えば、水和物)、又は混合物を含むことができる。
【0077】
第十八の例示実施形態の第三態様において、本発明は、混和材パッケージを提供し、この場合、早期強度増進剤成分は、以下(i)少なくとも1種のスラグ分散剤、これは、ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤、スルホネート型分散剤(例えば、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、リグニンスルホネート)又はホスホネート型分散剤から選択される非PC分散剤、から選択される;及び(ii)少なくとも1種の活性化剤(及び代替として少なくとも2種以上)、これは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される、を含み、バッチプラントにおいて又はコンクリートミックスが配送及び設置される建設現場においてのいずれかで、コンクリート配送トラックの回転式ミキサードラムに収容される形でコンクリートミックス積荷に導入される。
【0078】
例えば、早期強度増進剤成分は、例えば、結合剤組成物を、打設、注入、ポンピング、噴射、又はいずれにしろ施工する予定の建設現場において、自動コンクリートスランプ監視システムを用いるなどして、トラックのミキサードラムに収容されたスラグ系結合剤組成物に混和される場合がある。Ca(OH)2、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される1種又は複数のアルカリ土類活性化剤は、好ましくは、バッチ化プラントでトラックに収容されたスラグ積荷に加えられるか、そうでなければ早期強度増進剤成分を加える前後いずれかでどこか他の場所においてトラックミキサードラムに加えられる。
【0079】
混合、運送、及び/又は配送中に化学物質を加えるのに適切な自動スランプ監視システ
ムは、GCP Applied Technologies Inc., Cambridge, Massachusetts(USA)から、VERIFI(登録商標)の商品名で市販されている。これらのシステムは、流動混和材がコンクリート積荷に混ざり合っていくのを監視し、及びいつ均一な混合が達成されたか確認するのに適している。VERIFI(登録商標)システムは、水圧センサーを使用し、このセンサーが、ミキサードラムの回転全体にわたり多数回試料抽出することを可能にする。(例えば、米国特許第8,020,431号、同第8,118,473号、同第8,311,678号、同第8,491,717号、同第8,727,604号、同第8,746,954号、同第8,764,273号、同第8,818,561号、同第8,989,905号、同第9,466,803号、同第9,550,312号;PCT/US2015/025054(公開番号第WO 2015/160610 A1号);及びPCT/US2014/065709(公開番号第WO2015073825 A1号)を参照)。あるいは、監視システムは、ミキサードラム内に搭載された力センサーの使用に基づく場合がある。例えば、Bermanの米国特許第8,848,061号及び同第9,625,891号(本明細書の共通譲受人により所有される)、Denis Beaupreらの米国特許第9,199,391号(Command Alkon Inc.)、又はBenegasの米国公開第2009/0171595号及びWO 2007/060272を参照。
【0080】
第十八の例示実施形態の第四態様において、本発明は、混和材パッケージを提供し、この場合、少なくとも1種のスラグ分散剤は、ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤であるか、又はスルホネート型分散剤(例えば、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、リグニンスルホネート)若しくはホスホネート型分散剤から選択される非PC分散剤である。混和材パッケージのこの例は、自動コンクリートスランプ監視システムを用いることにより現場でトラックミキサードラムに収容されたコンクリートミックスに分散剤を導入することを可能にする。少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤(例えば、Ca(OH)2、CaO、MgO、又はそれらの混合物)及び硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される少なくとも1種の活性化剤(及び代替的に2種以上)は、バッチプラントで又は他の場所で、コンクリートミックス積荷に組み込まれる場合がある。
【0081】
第十九の例示実施形態において、本発明は、OPC含有量がほとんど又は全くないセメント質組成物を作るパッケージシステムを提供し、本システムは、少なくとも2種の別々にパッケージ化された成分A及び成分Bを含み、以下
(A)成分Aは、セメント質結合剤組成物を含み、このセメント質結合剤組成物は、セメント質結合剤成分の合計乾燥重量に基づき、粉砕高炉水砕スラグ(GGBFS)を71%~100%の量で(より好ましくは91%~100%、最も好ましくは97%~100%の量で)含み、このセメント質結合剤組成物は、成分Bとは別にパッケージ化されている;
(B)成分Bは、以下の多成分部分を含む(一部の例示実施形態において、それらのうちの一部は、別々の容器に収容されている場合がある):
(i)少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤、これは、Ca(OH)、CaO、MgO、又はそれらの混合物から選択される、と
(ii)少なくとも1種のスラグ分散剤、これは、ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤、スルホネート型分散剤(例えば、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、リグニンスルホネート)若しくはホスホネート型分散剤から選択される非PC分散剤、から選択される、と、及び
(iii)少なくとも1種の二次活性化剤、これは、硝酸カルシウム、亜硝酸カルシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、チオシアン酸ナトリウム、又はそれらの混合物から選択される。
【0082】
前述の実施形態の例の様々な態様において記載したとおり、少なくとも1種の分散剤及び少なくとも1種の二次活性化剤は、配送トラックミキサードラムのコンクリートミックス積荷に導入される場合があり、一方で少なくとも1種のアルカリ土類活性化剤は、バッチプラント又は他の場所で導入される。
【0083】
本発明が、限られた数の例示実施形態を用いて本明細書中記載されているものの、これらの具体的実施形態は、本明細書中それ以外で記載される及び特許請求されるとおりの本発明の範囲を制限することを意図しない。実施形態の例からの修飾及び改変が存在する。さらなる具体的実施例は、特許請求される本発明を解説するために与えられる。当然のことながら、本発明は、実施例で記載される具体的な詳細に制限されない。実施例並びに本明細書の残部における全ての部及びパーセンテージは、特に記載がない限り、重量パーセンテージである。
【0084】
さらに、本明細書又は特許請求の範囲において列挙される数字の範囲、例えば、特性の特定のセット、測定単位、条件、物理的状態、又はパーセンテージを表すものなどは、どのような範囲のものでも、そのような範囲内に含まれる任意の数字を、そのように列挙される任意の範囲内の任意の数字サブセットも含めて、参照することで又はいずれにしろ、文字通り本明細書に明白に組み込むことを意図する。例えば、下限RL及び上限RUを持つ数値範囲が開示される場合は、いかなる場合でも、その範囲内に含まれる任意の数字Rが、具体的に開示されている。詳細には、その範囲内にある以下の数字Rが、具体的に開示されている:R=RL+k(RU-RL)、式中、kは、増分1%を持つ1%~100%の範囲の変数であり、例えば、kは、1%、2%、3%、4%、5%、、、50%、51%、52%、、、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%である。そのうえさらに、上記で計算されるとおりの、任意の2つの値のRで表される任意の数値範囲もまた、具体的に開示されている。
【実施例
【0085】
比較例1、2、3、及び4
当該分野の現状を、比較例1~4を通じて解説する。それぞれの場合において、以下の表に示した比を用いて、以下のとおりにモルタルミックスを調製した。最初に、混合ボウルに水を入れ、続いて液体添加物を入れ、これらを手作業で水に混合し、続いて粉末(例えば、GGBFS、石灰、充填材など)を入れた。これらの材料を、ミキサー中で30秒間混合した。ミキサーは、ブレードを有しており、このブレードが、速度60rpmで、惑星運動で軸方向に回転した。次いで、このミックスに、次の30秒かけて、標準CEN砂1350グラムを加え、その間の混合を追加で4分間続けた。合計で、この混合手順は、約5分間を要した。調製、混合、及び試験の間、モルタルミックスは、約24.0°C±2.0°Cの温度に維持した。
【0086】
水硬性セメントモルタルのフローを、ASTM C1437に記載の手順に従ってフロー金型を用いて試験した。金型にモルタルを充填し、持ち上げてモルタルを離型させて、モルタルが水平表面を横断して流れるようにした。離型したモルタルが金型により規定された当初の高さから崩れ落ちたところで離型したモルタルの拡散した半径を記録した。次いで、モルタルを、寸法40×40×160mmを有する角柱に流し込み、24時間後にモルタルを脱型し、次いで、24時間及び28日圧縮強度試験を行なった。
【0087】
この最初の実施例において、本発明者らは、セメント質混合物にGGBFSが主に使用される場合の早期強度増進の遅さを評価した。全ての試験は、水対結合剤比を0.34として行い、ナトリウムナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物を、モルタルミックス中の高性能減水剤として用いた。結果を、以下の表1に示す。成分重量は、グラム単
位で表示する。
【0088】
比較例1では、700gのGGBFS Iのみを使用したモルタルミックスの24時間での圧縮強度は、極度に低く0.62MPaであった。この供試体は、1日後も依然として湿潤していたことが観察された。
【0089】
比較例2では、GGBFSの10%がCEM Iに置き換えられている。24時間での圧縮強度は、4.0MPaに到達した。
【0090】
比較例3及び4では、700gのGGBFSに非塩化物系活性化剤又は塩化ナトリウム若しくは塩化カルシウムを導入したミックスにおいて、GGBFSミックスは、24時間で適切に硬化したようには見えなかった。圧縮強度は、いずれの場合においても、約1.0MPaと測定された。
【0091】
【表1】
【0092】
なお、これら実施例において記載される比較例及び発明例(本発明の実施形態)では、「二次活性化剤」の組成は、硝酸カルシウムが20.0~50.0%、チオシアン酸ナトリウムが2.0~5.0%、亜硝酸カルシウムが0.5~5.0%、メチルジエタノールアミンが0.1~2.0%、トリエタノールアミンが0.1~2.0%であり、水に混合されており、水は36~79.1%の量になり得る。全てのパーセンテージは、液状での二次活性化剤の合計重量に基づく。塩化ナトリウム又は塩化カルシウムが、上記物のうち1種と別々に使用された場合、これらは、別々に列挙した(ある種の用途では、これらの塩の使用を回避することが望ましい場合があるため)。「二次活性化剤」は、上記で特定される作用剤のうち1種又は2種だけを使用しても機能する可能性があると思われる。
【0093】
比較例5並びに発明例6及び発明例7。
比較例1~4に使用したものと同じ混合手順を用いたが、ただし、表2の材料の量を使用した。表2は、比較例5、並びに発明例6及び発明例7の結果を示す。比較例5は、特
許GB 2525705Aに従って作られた試料に基づくものであり、この特許は、成分Cの活性化剤の使用に言及している。成分C活性化剤は、早期材齢圧縮強度並びに28日圧縮強度に対して累積的影響を有することになる。
【0094】
比較例5では、試料は、GB 2525705Aの教示に従って作られたものであったが、24時間で試験した供試体の平均圧縮強度は(as)1.8MPaであった。供試体は、手で崩れるほど脆弱だった。
【0095】
発明例6は、非塩化物活性化剤を結合剤の重量の2.1パーセンテージで加えることを含むもので、その結果、早期強度は24時間で5.9MPaに到達し、28日で45.6MPaに到達した。比較例5と発明例6の間で圧縮強度に20.0MPaの差があることは、特筆すべきである。
【0096】
発明例7は、塩化物系活性化剤を結合剤の重量の4.2%で含む。試料の圧縮強度は、24時間で9.7MPaに上昇した。
【0097】
【表2】
【0098】
発明例6及び発明例7で作った例示組成物は、表1にまとめた比較例で作った組成物よりも顕著に高い圧縮強度、並びに表2の実施例5にまとめた組成物と比べた場合に驚くほどより高い強度を有した。
【0099】
発明例8
比較例1~4に使用したものと同じ混合手順を用いたが、ただし、表3の材料の量を使用した。この実施例では、飛散灰を、合計結合剤重量に基づき最高25.0%の量で、モルタル試料に導入した。消石灰は、合計結合剤含有量の6.5重量%の使用量で用いた。表3は、発明例8の結果を示し、本発明の例示アプローチが、飛散灰を含有するGGBFSに適用可能であることを示唆する。
【0100】
【表3】
【0101】
試験8では、合計結合剤に基づき最高2.1重量%の量で使用された非塩化物活性化剤の存在において、供試体は、24時間で4.3MPaの圧縮強度及び28日で47.8MPaの圧縮強度が平均して測定され、比較例に照らして非常に良好な結果であった。
【0102】
発明例9~14
比較例1~4に使用したものと同じ混合手順を用いたが、ただし、表4の材料の量を使用した。この実施例では、全ての試験を、水対結合剤の比を0.34~0.37にして行なった。これらの試験において、セメント含有量は、粉末の合計重量に基づき4.0重量%以下に設定した。この量は、これを書いている時点で市場で入手可能などのような種類のセメント化ブレンドよりも低い。発明例9~13には、高性能減水剤としてのナトリウムナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物の使用が含まれていた。試験結果を表4に示す。
【0103】
発明例11(表4)には、ミックスへの生石灰導入が含まれていたが、試験9の結果と比較した場合、24時間圧縮強度に関して注目すべき1.9MPの上昇が存在した。これは、22%の上昇を表していた。圧縮強度の上昇は、28日での圧縮強度の場合に25%に近づいた。
【0104】
発明例12、発明例13、及び発明例14(表4)において、水対結合剤比0.37のミックスに生石灰、消石灰、及び石灰石充填材を同じ添加率で加えた混合物を比較した。これらの材料を加えることで、ある特定の利点が得られた。生石灰は、7日及び28日での圧縮強度を向上させるのに最も寄与したように思われた。しかしながら、混合開始から10分後、ミックスの温度に4℃の上昇が存在した。消石灰及び石灰石充填材は、同等であった。
【0105】
以下の表4は、2種類の異なる量のGGBFSを含み、ナフタレンスルホネートも含有する試料組成物を記載する。
【0106】
【表4-1】
【表4-2】
【0107】
発明例15~17
比較例1~4に使用したものと同じ混合手順を用いたが、ただし、表5の材料の量を使用した。発明例15~17には、高性能減水剤としてのナトリウムナフタレンスルホネートホルムアルデヒド縮合物の使用が含まれていた。
【0108】
発明例15、16、及び17(表5)では、生石灰を組み込んだモルタル試料の性能を、いくつかの生石灰比で、すなわち、粉末材料の合計重量に基づき2.0重量%、4.0重量%、及び6.0重量%でチェックした。発明例16及び17で見られるとおり、パーセンテージ比が高い(6.0%)方が混合開始から10分後のミックス温度が高かったことを除いて、4.0%と6.0%の間に大きな差があるようには思われなかった。残りの試験には、本明細書中以下記載されるとおり、5.0%の比を選択した。
【0109】
【表5】
【0110】
発明例18~21
比較例1~4に使用したものと同じ混合手順を用いたが、ただし、表6の材料の量を使用した。ポリカルボン酸(「PC」)型高性能減水剤混和材を用いてさらなる試験を行なった。発明例18、発明例19、発明例20、及び発明例21を、以下を表6に示す。発明例18では、PC系混和材の使用は、試料の圧縮強度を向上させたと思われる。なぜなら、圧縮強度が、24時間で10.5MPa及び28日で40.6MPaだったことがわかったからである。
【0111】
発明例19では、水対結合剤比が0.34の試料中、PC系混和材、塩化物系活性化剤、生石灰、及び石灰石充填材の組み合わせを使用したところ、圧縮強度は、24時間で23.0MPa及び28日で50.7MPaと測定された。
【0112】
発明例20では、発明例19と同じ成分の組み合わせを用いながら、水対結合剤比を0.28に低下させた。圧縮強度は、24時間で34.4MPa及び28日で69.1MPaと測定された。
【0113】
発明例21は、本質的に発明例19の繰り返しであるが、非塩化物系活性化剤を用いた点が異なっていた。圧縮強度は、24時間で20.8MPa及び28日で47.3MPaと測定された。
【0114】
以下の表に示す例示実施形態において、GGBFSを、ポリカルボン酸エーテル(「PC」)ポリマー型減水剤混和材及び生石灰との組み合わせで試験した。
【0115】
【表6】
【0116】
発明例22
コンクリートの混合手順は、以下のとおりであった:(i)20mm骨材、10mm骨材、砕砂、砂丘砂、粉末形状の全ての材料(GGBFS、石灰、充填材など)を計量した;(ii)必要な水(実験に応ずる)を計量した;(iii)分散剤及び活性化剤を計量した;(iv)骨材及び砂をミキサーに積荷して混合を開始し、混合しながら30秒の間に水の25%を加えた;(iv)骨材に粉末材料を加えて30秒間混合し、混合しながら残りの水を加えた;(v)ミックスに混和材を加え、混合を更に2分間続けた。合計で、この混合手順は3分間を要した。調製、混合、及び試験の間、材料及びコンクリートは、温度を24.0°C±2.0°Cに維持した。
【0117】
発明例22では、コンクリート試験を、内容物が4%CEM I、5%生石灰、及び5%石灰石充填材であるGGBFSミックスで行なった。これは、非塩化物系活性化剤及びPC系分散剤を使用した。2つの供試体を、最初の24時間45℃で硬化させ、24時間後及び28日後に圧縮強度を試験した。結果を表7に示す。
【0118】
以下の表7にまとめるとおり、例示セメント質組成物は、約4重量%のセメントを、骨材と一緒に、スラグ系組成物にブレンドして例示コンクリートを作ることにより、作られ
た。
【0119】
【表7】
【0120】
24時間で到達した早期材齢圧縮強度を試験したところ、23.3MPaであることがわかり、28日圧縮強度を試験したところ、53.8MPaであることがわかった。
【0121】
やや高温で試料を硬化させると、24時間での圧縮強度が47.0%超で改善され34.3MPaまで達することもわかった。28日での強度は大きくは影響されないこともわかった。
【0122】
発明例23、24、及び25
この章は、100%GGBFSを含有するミックスに基づいており、提案される道具及び添加剤を用いて、複数の異なる原料からGGBFSを活性化することを示す。比較例1~4に使用したものと同じ混合手順を用いたが、ただし、表8の材料の量を使用した。
【0123】
発明例23、発明例24、及び発明例25において、PC型分散剤混和材、二次活性化剤、生石灰(酸化カルシウム)、及び石灰石充填材を用いたモルタルミックスにおける、異なるGGBFS原料の活性化効率について、異なるGGBFS原料を試験した。組成物に応じて、各種のGGBFSが、早期材齢圧縮強度に関するPC分散剤の性質又は必要性に応じて、異なって挙動し得るかどうかを特定した。全ての種類が、以下の表8に示すとおり、24時間での圧縮強度を改善した。
【0124】
発明例23では、平均圧縮強度は、24時間で8.9MPaであることがわかり、試験
24では、24時間で19.5MPaという結果であることがわかった。
【0125】
発明例25では、平均圧縮強度は、39時間より前は測定不能であることがわかったが、39時間では、これが31.4MPaであることがわかった。
【0126】
【表8】
【0127】
発明例26~30
発明例22に用いた手順を使用したが、ただし、量は、表9に列挙したものであった。
【0128】
表9から、発明例26では、459kgのGGBFSを単独で使用し、水対セメント比を0.34として、そこに、ポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤、非塩化物活性化剤、及び生石灰を組み合わせた。24時間の圧縮強度は、14.8MPaであったが、供試体を35℃で硬化させた場合は31.8MPaであった。28日では、圧縮強度は、それぞれ、63.8MPa及び70.7MPaに達した。
【0129】
発明例27、発明例28、及び発明例29では、異なる種類のGGBFSを使用し、水対結合剤比を0.34として、そこに、PC型分散剤及び別のPC型分散剤(「PC-2」)、非塩化物活性化剤、生石灰(2.5%)、及び消石灰(2.5%)を組み合わせた
。24時間の圧縮強度結果は、10MPaより高く、17.9MPaに達した。35℃で硬化させると、24時間の結果が顕著に改善され、69%も上昇した。42日の最終強度結果は、3種のGGBFS全てについて、周辺温度で硬化させた供試体及び最初の24時間を35℃で硬化させたもので同等であった。
【0130】
発明例30では、434kgのGGBFSに、水対セメント比を0.38として、並びに2種のポリカルボン酸エーテル(PC)型ポリマー分散剤(PC及びPC-2と指定)、非塩化物活性化剤、生石灰(2.5%)、及び消石灰(2.5%)の例示組み合わせを用いることに基づく、異なるミックス設計を使用した。圧縮強度は、周辺温度で硬化させた供試体について7MPaであり、最初の24時間を35℃で硬化させたものについて14.8MPaであった。42日では、圧縮強度は、それぞれ、46.1MPa及び48.8MPaと測定された。コンクリート製造業者は、2種のPCポリマー、1つ目のPCは最初にスランプを向上させ、2つ目のPCは経時的にスランプを保持することを意図するもの、を使用する場合があることから、本発明者らは、本発明に従うスラグ系材料の例示試験において、1種より多いPCポリマーを使用することの効果を試験することを望んだ。
【0131】
【表9-1】
【表9-2】
【0132】
上記の例及び例示実施形態の詳細は、解説目的で提示されたものであり、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【国際調査報告】