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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】HER2の強力かつ選択的な阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20231023BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20231023BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C07D519/00 311
C07D519/00 CSP
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P15/00
A61P1/00
A61P11/00
A61P5/14
A61K31/519
C07D487/04 143
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521157
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-25
(86)【国際出願番号】 US2021053368
(87)【国際公開番号】W WO2022076304
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/087,517
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/232,450
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】399052796
【氏名又は名称】デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522471559
【氏名又は名称】ナサニエル・エス・グレイ
(71)【出願人】
【識別番号】323011914
【氏名又は名称】ジョン・エム・ハッチャー
(71)【出願人】
【識別番号】323011925
【氏名又は名称】アリッサ・ヴェラノ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル・エス・グレイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エム・ハッチャー
(72)【発明者】
【氏名】アリッサ・ヴェラノ
【テーマコード(参考)】
4C050
4C072
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB08
4C050CC05
4C050EE04
4C050FF03
4C050GG04
4C050HH04
4C072MM02
4C072UU01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB06
4C086GA07
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC06
(57)【要約】
HER2の強力かつ選択的な阻害剤である、化合物ならびにその薬学的に許容される塩及び立体異性体が開示される。また、HER2に関連する疾患及び障害を治療するための、それらを含有する医薬組成物、ならびに化合物を作製及び使用する方法も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される構造を有する化合物、
【化1】
またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体であって、
式中、
Xは、存在しないか、-CH-、-O-、またはC(O)であり、
Aは、存在しないか、ナフチルであるか、N、O、及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5員のヘテロシクリルであるか、または5員もしくは6員環を有し、N、O、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む、縮合ヘテロビシクリルであり、Aは、任意選択的に1個以上のRで置換され、
各Rは、独立して、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、C-Cアルキルアミノ、またはジ-C-Cアルキルアミノであり、
各Rは、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cアルキルアミド、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、C-Cアルキルアミノ、ジ-C-Cアルキルアミノ、C-Cカルボシクリル、または5員もしくは6員のヘテロシクリルであり、Rは、任意選択的に1個以上のRで置換されているか、
または2つのR基が、それらが結合している原子と一緒になって、5~6員のカルボシクリルもしくはヘテロシクリルを形成し、

【化2】
であり、
は、水素、フルオロ、またはメチルであり、
mは、1または2であり、
nは、0、1、または2である、前記化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項2】
Xが、存在しない、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Xが、-CH-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Xが、-O-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
Xが、C(O)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
Aが、任意選択的に1個以上のRで置換されたナフチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Aが、N、O、及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5員のヘテロシクリルであり、Aが、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Aが、
【化3】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
Aが、
【化4】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
Aが、
【化5】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
Aが、
【化6】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
Aが、
【化7】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
Aが、5員及び6員環を有し、N、O、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む、縮合ヘテロビシクリルであり、Aが、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Aが、
【化8】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
Aが、
【化9】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
Aが、
【化10】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
Aが、
【化11】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
Aが、
【化12】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項13に記載の化合物。
【請求項19】
Aが、
【化13】
である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
Aが、
【化14】
である、請求項18に記載の化合物。
【請求項21】
Aが、
【化15】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項18に記載の化合物。
【請求項22】
Aが、
【化16】
である、請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
Aが、2つの6員環を有し、N、O、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む、縮合ヘテロビシクリルであり、Aが、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項1に記載の化合物。
【請求項24】
Aが、
【化17】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、請求項23に記載の化合物。
【請求項25】
各Rが、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cアルキルアミド、ハロ、シアノ、ジ-C-Cアルキルアミノ、C-Cカルボシクリル、または5員もしくは6員のヘテロシクリルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項26】
各Rが、独立して、メチル、エチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシ、シアノ、-OCHF、-OCHF、-NMe
【化18】
である、請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
が、メチルである、請求項26に記載の化合物。
【請求項28】
が、クロロである、請求項26に記載の化合物。
【請求項29】
が、
【化19】
である、請求項26に記載の化合物。
【請求項30】
2つのR基が、それらが結合している原子と一緒になって、5~6員のカルボシクリルまたはヘテロシクリルを形成する、請求項1に記載の化合物。
【請求項31】
2つのR基が、それらが結合している原子と一緒になって、フェニル、ピリジニル、またはジオキソランを形成する、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
が、
【化20】
である、請求項1に記載の化合物。
【請求項33】
が、水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項34】
mが、2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項35】
nが、1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項36】
nが、2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項37】
式Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、またはIh:
【化21】
によって表される、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項38】
が、メチルである、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
が、クロロである、請求項37に記載の化合物。
【請求項40】
nが、1である、請求項37に記載の化合物。
【請求項41】
nが、2である、請求項37に記載の化合物。
【請求項42】
【化22】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体。
【請求項43】
治療有効量の請求項1~42のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容される塩もしくは立体異性体と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項44】
異常なヒト表皮成長因子受容体2(HER2)活性によって特徴付けられるまたは媒介される疾患または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の請求項1~42のいずれか一項に記載の化合物または薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を投与することを含む、前記方法。
【請求項45】
前記疾患または前記障害が、HER2変異の活性によって特徴付けられるまたは媒介される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記HER2変異が、エクソン20挿入変異である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記疾患または前記障害が、がんである、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記がんが、乳癌、卵巣癌、消化管癌、肺癌、結腸癌、子宮内膜癌、または甲状腺癌である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記がんが、非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記NSCLCが、EGFR/ALK/ROS1トリプルネガティブNSCLCである、請求項49に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年10月5日に出願された米国仮出願第63/087,517号、及び2021年8月12日に出願された米国仮出願第63/232,450号の優先権を主張し、その全内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ヒト上皮成長因子受容体2(HER2、ERBB2)の突然変異は、がん原性因子として同定されている。それらは、非小細胞肺癌(NSCLC)の2%~3%に生じ(Shigematsu et al.,Cancer Res.,65(5):1642-1646(2005);Buttitta et al.,Int.J.Cancer,119(11):2586-2591(2006);Tomizawa et al.,Lung Cancer,74(1):139-144(2011);Mazieres et al.,J.Clin.Oncol.,31(16):1997-2003(2013))、EGFR/ALK/ROS1トリプルネガティブNSCLCでは6.7%と高い(Li et al.,BMC Cancer,16(1):828(2016))。加えて、HER2遺伝子の増幅、HER2タンパク質の過剰発現、またはその両方が、HER2陽性として分類される乳癌の約15~25%に生じる(Slamon et al.,Science,235(4785):177-182(1987);Slamon et al.,Science,244(4905):707-712(1989))。HER2変異は、最も一般的には、エクソン20挿入変異からなる(Shigematsu et al.,Cancer Res.,65(5):1642-1646(2005))。最も頻度の高いHER2エクソン20挿入変異は、12塩基対のインフレーム挿入YVMA(p.A775_G776insYVMA)からなり、PI3’K-AKT及びRAS-MAPK経路の下流活性化をもたらす(Tomizawa et al.,Lung Cancer,74(1):139-144(2011))。歴史的に、HER2変異NSCLC患者の全生存期間(OS)中央値は、IV期診断から1.6~1.9年である(Kris et al.,Jama-J.Am.Med.Assoc.,311(19):1998-2006(2014))。アファチニブ、ダコミチニブ、ネラチニブ及びトラスツズマブを含む、HER2変異NSCLC患者におけるHER2標的薬物に関するいくつかの患者報告及び一連の報告は、限定的な臨床活性を示している(De Greve et al.,Lung Cancer,76(1):123-127(2012);Kris et al.,Ann.Oncol.,26(7):1421-1427(2015);Gandhi et al.,J.Clin.Onol.,32(2):68-75(2014));Mazieres et al.,Ann.Oncol.,27(2):281-286(2016))。したがって、化学療法は、この患者集団にとって依然として主要な戦略となっている(Eng et al.,Lung Cancer,99:53-56(2016))。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国仮出願第63/087,517号
【特許文献2】米国仮出願第63/232,450号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Shigematsu et al.,Cancer Res.,65(5):1642-1646(2005)
【非特許文献2】Buttitta et al.,Int.J.Cancer,119(11):2586-2591(2006)
【非特許文献3】Tomizawa et al.,Lung Cancer,74(1):139-144(2011)
【非特許文献4】Mazieres et al.,J.Clin.Oncol.,31(16):1997-2003(2013)
【非特許文献5】Li et al.,BMC Cancer,16(1):828(2016)
【非特許文献6】Slamon et al.,Science,235(4785):177-182(1987)
【非特許文献7】Slamon et al.,Science,244(4905):707-712(1989)
【非特許文献8】Shigematsu et al.,Cancer Res.,65(5):1642-1646(2005)
【非特許文献9】Tomizawa et al.,Lung Cancer,74(1):139-144(2011)
【非特許文献10】Kris et al.,Jama-J.Am.Med.Assoc.,311(19):1998-2006(2014)
【非特許文献11】De Greve et al.,Lung Cancer,76(1):123-127(2012)
【非特許文献12】Kris et al.,Ann.Oncol.,26(7):1421-1427(2015);Gandhi et al.,J.Clin.Onol.,32(2):68-75(2014)
【非特許文献13】Mazieres et al.,Ann.Oncol.,27(2):281-286(2016)
【非特許文献1】Eng et al.,Lung Cancer,99:53-56(2016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
HER2変異に対する活性を有する化合物が、そのような突然変異を内部に持つ腫瘍の治療において拡張された有用性を有し得るため、必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、式(I)の構造によって表される化合物:
【化1】
(式中、R、R、R、X、m、n、及びAは本明細書に定義される通りである)、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体であるに関する。
【0007】
本開示の別の態様は、治療有効量の式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0008】
本開示の更なる態様は、異常なヒト上皮成長因子受容体2(HER2)活性によって特徴付けられるまたは媒介される疾患または障害を治療する方法に関する。
【0009】
いくつかの実施形態において、疾患または障害は、がんである。いくつかの実施形態において、がんは、乳癌、卵巣癌、消化管癌、肺癌、結腸癌、子宮内膜癌、または甲状腺癌である。いくつかの実施形態において、がんは、非小細胞肺癌(NSCLC)またはEGFR/ALK/ROS1トリプルネガティブNSCLCである。
【0010】
実施例で実証されるように、本開示の化合物は、HER2の強力かつ選択的な阻害剤である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本明細書の主題が属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、反対の規定がない限り、以下の用語は、本開示の理解を容易にするために示される意味を有する。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「組成物(a composition)」への言及は、2つ以上のそのような組成物の混合物を含み、「阻害剤(an inhibitor)」への言及は、2つ以上のそのような阻害剤の混合物を含む等である。
【0013】
別段の記載がない限り、「約」という用語は、「約」という用語によって修飾された特定の値の10%以内(例えば、5%、2%、または1%以内)を意味する。
【0014】
「含む(including)」、「含有する(containing)」、または「~によって特徴付けられる(characterized by)」と同義である移行用語「含む(comprising)」は、包括的またはオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素または方法ステップを除外しない。複素環構造内のヘテロ原子の数の文脈で使用される場合、複素環基がその最小数のヘテロ原子であることを意味する。対照的に、移行句「~からなる」は、特許請求の範囲で指定されていない任意の要素、ステップ、または成分を除外する。移行句「~から本質的になる」は、特許請求される化合物の明記される材料またはステップ「及び基本的かつ新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさないもの」に特許請求の範囲を限定する。
【0015】
本明細書に開示される化合物に関して、かつ以下の用語がそれらを更に説明するために本明細書で使用される範囲で、以下の定義が適用される。
【0016】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、飽和直鎖または分岐鎖の一価の炭化水素ラジカルを指す。一実施形態において、アルキルラジカルは、C-C18基である。他の実施形態において、アルキルラジカルは、C-C、C-C、C-C、C-C12、C-C、C-C、C-C、C-C、またはC-C基である(Cアルキルは結合を指す)。アルキル基の例としては、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、i-プロピル、1-ブチル、2-メチル-1-プロピル、2-ブチル、2-メチル-2-プロピル、1-ペンチル、n-ペンチル、2-ペンチル、3-ペンチル、2-メチル-2-ブチル、3-メチル-2-ブチル、3-メチル-1-ブチル、2-メチル-1-ブチル、1-ヘキシル、2-ヘキシル、3-ヘキシル、2-メチル-2-ペンチル、3-メチル-2-ペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3-メチル-3-ペンチル、2-メチル-3-ペンチル、2,3-ジメチル-2-ブチル、3,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルが挙げられる。いくつかの実施形態において、アルキル基は、C-Cアルキル基である。いくつかの実施形態において、アルキル基は、C-Cアルキル基、またはメチル基である。
【0017】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語は、分子の残りの部分をラジカル基に連結し、炭素及び水素のみからなり、不飽和を含まず、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐状の二価の炭化水素鎖、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレン等を指す。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残りの部分に結合させることができ、単結合を介してラジカル基に結合させることができる。いくつかの実施形態において、アルキレン基は、1~8個の炭素原子を含む(C-Cアルキレン)。他の実施形態において、アルキレン基は、1~5個の炭素原子を含む(C-Cアルキレン)。他の実施形態において、アルキレン基は、1~4個の炭素原子を含む(C-Cアルキレン)。他の実施形態において、アルキレンは、1~3個の炭素原子を含む(C-Cアルキレン)。他の実施形態において、アルキレン基は、1~2個の炭素原子を含む(C-Cアルキレン)。他の実施形態において、アルキレン基は、1個の炭素原子を含む(Cアルキレン)。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、少なくとも1個の炭素-炭素二重結合を有する直鎖または分枝鎖の一価の炭化水素ラジカルを指す。アルケニルは、「シス」及び「トランス」方向、または代替的に、「E」及び「Z」方向を有するラジカルを含む。一例では、アルケニルラジカルは、C-C18基である。他の実施形態において、アルケニルラジカルは、C-C12、C-C10、C-C、C-CまたはC-C基である。例としては、エテニルまたはビニル、プロパ-1-エニル、プロパ-2-エニル、2-メチルプロパ-1-エニル、ブタ-1-エニル、ブタ-2-エニル、ブタ-3-エニル、ブタ-1,3-ジエニル、2-メチルブタ-1,3-ジエン、ヘキサ-1-エニル、ヘキサ-2-エニル、ヘキサ-3-エニル、ヘキサ-4-エニル、及びヘキサ-1,3-ジエニルが挙げられる。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する直線状または分岐状の一価の炭化水素ラジカルを指す。一例では、アルキニルラジカルは、C-C18基である。他の例では、アルキニルラジカルは、C-C12、C-C10、C-C、C-CまたはC-Cである。例としては、エチニルプロパ-1-イニル、プロパ-2-イニル、ブタ-1-イニル、ブタ-2-イニル、及びブタ-3-イニルが挙げられる。
【0020】
本明細書で使用される「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は、そこに酸素ラジカルが結合しており、しれが結合点である、上記で定義されるアルキル基を指す。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、tert-ブトキシ等が含まれる。「エーテル」は、酸素によって共有結合された2つのヒドロカルビル基である。したがって、そのアルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニル、及びO-アルキニルのうちの1つによって表すことができるもの等、アルコキシルであるか、またはアルコキシルに類似している。
【0021】
本明細書で使用される場合、「ハロゲン」(または「ハロ」または「ハロゲン化物」)という用語は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。
【0022】
本明細書で使用される場合、「環状基」という用語は、単独で、またはより大きな部分の一部として使用される任意の基を広く指し、飽和、部分飽和、または芳香族環系を含み、例えば、炭素環基(シクロアルキル、シクロアルケニル)、複素環基(ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルケニル)、アリール及びヘテロアリール基である。環状基は、1個以上の(例えば、縮合)環系を有し得る。よって、例えば、環状基は、1個以上の炭素環基、複素環基、アリール基またはヘテロアリール基を含み得る。
【0023】
本明細書で使用される場合、「炭素環式」(また「カルボシクリル」)という用語は、単独で、またはより大きな部分の一部として使用される基を指し、単独またはより大きな部分の一部である、3~20個の炭素原子を有する飽和、部分不飽和、または芳香族環系を含む(例えば、アルキル炭素環基)。用語「カルボシクリル」には、単環系、二環系、三環系、縮合環系、架橋環系、及びスピロ環系、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。一実施形態において、カルボシクリルは、3~15個の炭素原子(C-C15)を含む。一実施形態において、カルボシクリルは、3~12個の炭素原子(C-C12)を含む。別の実施形態において、カルボシクリルは、C-C、C-C10またはC-C10を含む。別の実施形態において、カルボシクリルは、単環として、C-C、C-CまたはC-Cを含む。いくつかの実施形態において、カルボシクリルは、二環として、C-C12を含む。別の実施形態において、カルボシクリルは、スピロ系として、C-C12を含む。単環式カルボシクリルの代表例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、1-シクロペンタ-1-エニル、1-シクロペンタ-2-エニル、1-シクロペンタ-3-エニル、シクロヘキシル、ペルデュウテリオシクロヘキシル、1-シクロヘキサ-1-エニル、1-シクロヘキサ-2-エニル、1-シクロヘキサ-3-エニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、フェニル、及びシクロドデシルが挙げられ、7~12個の環原子を有する二環式カルボシクリルは、[4,3]、[4,4]、[4,5]、[5,5]、[5,6]または[6,6]環系、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン、ナフタレン、及びビシクロ[3.2.2]ノナンを含む。スピロカルボシクリルの代表的な例として、スピロ[2.2]ペンタン、スピロ[2.3]ヘキサン、スピロ[2.4]ヘプタン、スピロ[2.5]オクタン、及びスピロ[4.5]デカンが挙げられる。用語「カルボシクリル」は、本明細書で定義されるアリール環系を含む。カルボシクルという用語はまた、シクロアルキル環(例えば、飽和または部分不飽和の単環、二環、またはスピロカルボシクル)も含む。用語「炭素環基」には、ラジカルまたは結合点が炭素環上にある、1個以上の(例えば、1個、2個、または3個の)異なる環状基(例えば、アリールまたは複素環)に縮合された炭素環も含まれる。
【0024】
したがって、炭素環式という用語はまた、本明細書で使用される場合、式--R-カルボシクリル(式中、Rはアルキレン鎖である)の基を指す、カルボシクリルアルキル基も包含する。炭素環式という用語はまた、本明細書で使用される場合、式--O--R-カルボシクリル(式中、Rはアルキレン鎖である)の酸素原子を介して結合した基を指す、カルボシクリルアルキル基も包含する。
【0025】
本明細書で使用される場合、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される「アリール」(例えば、アルキル基上の末端炭素原子が結合点である「アラルキル」、例えば、ベンジル基)、酸素原子が結合点である「アラルコキシ」、または結合点がアリール基上にある「アロキシアルキル」)という用語は、縮合環を含む単環式、二環式または三環式の炭素環系を含む基を指し、系内の少なくとも1つの環は芳香族である。いくつかの実施形態において、アラルコキシ基は、ベンゾキシ基である。用語「アリール」は、用語「アリール環」と交換可能に使用され得る。一実施形態において、アリールは、6~18個の炭素原子を有する基を含む。別の実施形態において、アリールは、6~10個の炭素原子を有する基を含む。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アントラシル、ビフェニル、フェナントレニル、ナフタセニル、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレニル、1H-インデニル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、ナフチリジニル等が挙げられ、これらは、本明細書に記載の1個以上の置換基によって置換または独立して置換され得る。特定のアリールは、フェニルである。いくつかの実施形態において、アリール基は、ラジカルまたは結合点がアリール環上にある、1個以上の(例えば、1個、2個または3個の)異なる環状基(例えば、炭素環または複素環)に縮合されたアリール環を含む。
【0026】
したがって、アリールという用語は、上記に開示されるように、式--R-アリール(式中、Rは、メチレンまたはエチレン等のアルキレン鎖である)の基を指すアラルキル基(例えば、ベンジル)を包含する。いくつかの実施形態において、アラルキル基は、任意選択的に置換されたベンジル基である。アリールという用語はまた、本明細書で使用される場合、式--O--R--アリール(式中、Rはメチレンまたはエチレン等のアルキレン鎖である)の酸素原子を介して結合した基を指す、アラルコキシ基を包含する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」という用語は、単独で、またはより大きな部分の一部として使用される「カルボシクリル」を指し、飽和、部分不飽和または芳香族環系を含み、1個以上の(例えば、1個、2個、3個、または4個の)炭素原子がヘテロ原子(例えば、O、N、N(O)、S、S(O)、またはS(O))に置き換えられている。用語「ヘテロシクリル」には、単環系、二環系、三環系、縮合環系、架橋環系、及びスピロ環系、ならびにそれらの組み合わせが含まれる。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、3~15員のヘテロシクリル環系を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、3~12員のヘテロシクリル環系を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、3~12員の飽和ヘテロシクリル環系等の飽和環系を指す。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、5~14員のヘテロアリール環系等のヘテロアリール環系を指す。用語「ヘテロシクリル」には、3~8個の炭素及び1個以上の(1個、2個、3個、または4個の)ヘテロ原子を含む、飽和または部分不飽和の、単環、二環、またはスピロ環系である、C-Cヘテロシクロアルキルも含まれる。
【0028】
いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、3~12個の環原子を含み、単環、二環、三環、及びスピロ環系を含み、環原子は炭素であり、1~5個の環原子は、窒素、硫黄、または酸素等のヘテロ原子である。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、窒素、硫黄、または酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を有する3~7員の単環を含む。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、窒素、硫黄、または酸素から選択される1個以上のヘテロ原子を有する4~6員の単環を含む。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、3員の単環を含む。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、4員の単環を含む。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリルは、5~6員の単環を含む。いくつかの実施形態において、ヘテロシクリル基は、0~3個の二重結合を含む。前述の実施形態のいずれかにおいて、ヘテロシクリルは、1個、2個、3個、または4個のヘテロ原子を含む。任意の窒素または硫黄ヘテロ原子が、任意選択的に酸化されてもよく(例えば、NO、SO、SO)、任意の窒素ヘテロ原子が、任意選択的に四級化されてもよい(例えば、[NRCl[NROH)。ヘテロシクリルの代表的な例としては、オキシラニル、アジリジニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、1,2-ジチエタニル、1,3-ジチエタニル、ピロリジニル、ジヒドロ-1H-ピロリル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロチエニル、テトラヒドロチエニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、1,1-ジオキソ-チオモルホリニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、ヘキサヒドロチオピラニル、ヘキサヒドロピリミジニル、オキサジナニル、チアジナニル、チオキサニル、ホモピペラジニル、ホモピペリジニル、アゼパニル、オキセパニル、チエパニル、オキサゼピニル、オキサゼパニル、ジアゼパニル、1,4-ジアゼパニル、ジアゼピニル、チアゼピニル、チアゼパニル、テトラヒドロチオピラニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、1,1-ジオキソイソチアゾリジノニル、オキサゾリジノニル、イミダゾリジノニル、4,5,6,7-テトラヒドロ[2H]インダゾリル、テトラヒドロベンゾイミダゾリル、4,5,6,7-テトラヒドロベンゾ[d]イミダゾリル、1,6-ジヒドロイミダゾール[4,5-d]ピロロ[2,3-b]ピリジニル、チアジニル、チオフェニル、オキサジニル、チアジアジニル、オキサジアジニル、ジチアジニル、ジオキサジニル、オキサチアジニル、チアトリアジニル、オキサトリアジニル、ジチアジアジニル、イミダゾリニル、ジヒドロピリミジル、テトラヒドロピリミジル、1-ピロリニル、2-ピロリニル、3-ピロリニル、インドリニル、チアピラニル、2H-ピラニル、4H-ピラニル、ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ジチアニル、ジチオラニル、ピリミジノニル、ピリミジンジオニル、ピリミジン-2,4-ジオニル、ピペラジノニル、ピペラジンジオニル、ピラゾリジニルイミダゾリニル、3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサニル、3,6-ジアザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、6-アザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、3-アザビシクロ[3.1.1]ヘプタニル、3-アザビシクロ[4.1.0]ヘプタニル、アザビシクロ[2.2.2]ヘキサニル、2-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、8-アザビシクロ[3.2.1]オクタニル、2-アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、8-アザビシクロ[2.2.2]オクタニル、7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザスピロ[3.5]ノナニル、アザスピロ[2.5]オクタニル、アザスピロ[4.5]デカニル、1-アザスピロ[4.5]デカン-2-オンイル、アザスピロ[5.5]ウンデカニル、テトラヒドロインドリル、オクタヒドロインドリル、テトラヒドロイソインドリル、テトラヒドロインダゾリル、1,1-ジオキソヘキサヒドロチオピラニルが挙げられる。硫黄または酸素原子及び1~3個の窒素原子を含む5員のヘテロシクリルの例は、チアゾール-2-イル及びチアゾール-2-イルN-オキシドを含むチアゾリル、1,3,4-チアジアゾール-5-イル及び1,2,4-チアジアゾール-5-イルを含むチアジアゾリル、オキサゾール、例えば、オキサゾール-2-イル、ならびに1,3,4-オキサジアゾール-5-イル及び1,2,4-オキサジアゾール-5-イル等のオキサジアゾールである。2~4個の窒素原子を含む例示的な5員環ヘテロシクリルとしては、イミダゾール-2-イル等のイミダゾリル;1,3,4-トリアゾール-5-イル等のトリアゾリル;1,2,3-トリアゾール-5-イル、1,2,4-トリアゾール-5-イル、及び1H-テトラゾール-5-イル等のテトラゾリルが挙げられる。ベンゾ縮合した5員のヘテロシクリルの代表的な例は、ベンゾオキサゾール-2-イル、ベンズチアゾール-2-イル、及びベンズイミダゾール-2-イルである。例示的な6員のヘテロシクリルは、1~3個の窒素原子と、任意選択的に硫黄または酸素原子、例えば、ピリジル、例えば、ピリド-2-イル、ピリド-3-イル、及びピリド-4-イル等のピリジル;ピリミド-2-イル及びピリミド-4-イル等のピリミジル;1,3,4-トリアジン-2-イル及び1,3,5-トリアジン-4-イル等のトリアジニル;ピリダジニル、特にピリダジン-3-イル、及びピラジニルとを含む。ピリジンN-オキシド及びピリダジンN-オキシド、ならびにピリジル、ピリミド-2-イル、ピリミド-4-イル、ピリダジニル及び1,3,4-トリアジン-2-イル基は、ヘテロシクリル基の更に他の例である。いくつかの実施形態において、複素環基は、1個以上の(例えば、1個、2個または3個の)異なる環状基(例えば、炭素環または複素環)に縮合された複素環を含み、ラジカルまたは結合点は複素環上にあり、いくつかの実施形態において、結合点は、複素環に含まれるヘテロ原子である。
【0029】
したがって、複素環式という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの窒素を含み、ヘテロシクリル基の分子の残りの部分への結合点がヘテロシクリル基中の窒素原子を介してある、ヘテロシクリル基を指す、N-ヘテロシクリル基を包含する。N-ヘテロシクリル基の代表的な例としては、1-モルホリニル、1-ピペリジニル、1-ピペラジニル、1-ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、及びイミダゾリジニルが挙げられる。「複素環式」という用語はまた、本明細書で使用される場合、少なくとも1つのヘテロ原子を含むヘテロシクリル基を指し、ヘテロシクリル基の分子の残りの部分への結合点が、ヘテロシクリル基中の炭素原子を介して存在する、C-ヘテロシクリル基を包含する。C-ヘテロシクリルラジカルの代表的な例としては、2-モルホリニル、2-または3-または4-ピペリジニル、2-ピペラジニル、及び2-または3-ピロリジニルが挙げられる。複素環式という用語はまた、上記で開示されるように、式--R-ヘテロシクリル(式中、Rはアルキレン鎖である)の基を指す、ヘテロシクリルアルキル基を包含する。複素環式という用語はまた、本明細書で使用される場合、式--O--R-ヘテロシクリル(式中、Rはアルキレン鎖である)の酸素原子を介して結合したラジカルを指すヘテロシクリルアルコキシ基を包含する。
【0030】
本明細書で使用される場合、単独でまたはより大きな部分の一部として使用される「ヘテロアリール」(例えば、「ヘテロアリールアルキル」(「ヘテロアラルキル」も含む))、または「ヘテロアリールアルコキシ」(「ヘテロアラルコキシ」も含む)という用語は、少なくとも1つの環が芳香族であり、少なくとも1つのヘテロ原子を含む、5~14個の環原子を有する単環式、二環式または三環式の環系を指す。一実施形態において、ヘテロアリールは、1個以上の環原子が窒素、硫黄、または酸素である5~6員の単環式芳香族基を含む。ヘテロアリール基の代表的な例としては、チエニル、フリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、テトラゾリル、チアトリアゾリル、オキサトリアゾリル、ピリジル、ピリミジル、イミダゾピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、テトラジニル、テトラゾロ[1,5-b]ピリダジニル、プリニル、デアザプリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾイミダゾリル、インドリル、1,3-チアゾール-2-イル、1,3,4-トリアゾール-5-イル、1,3-オキサゾール-2-イル、1,3,4-オキサジアゾール-5-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル、1,3,4-チアジアゾール-5-イル、1H-テトラゾール-5-イル、1,2,3-トリアゾール-5-イル、及びピリド-2-イルN-オキシドが挙げられる。「ヘテロアリール」という用語には、ヘテロアリールが1個以上の環状(例えば、カルボシクリル、またはヘテロシクリル)環に縮合され、ラジカルまたは結合点がヘテロアリール環上にある基も含まれる。非限定的な例としては、インドリル、インドリジニル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾチオフェニル、メチレンジオキシフェニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾジオキサゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル及びピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、または三環式であり得る。いくつかの実施形態において、ヘテロアリール基は、ラジカルまたは結合点がヘテロアリール環上にあり、いくつかの実施形態において、結合点が複素環に含まれるヘテロ原子である、1個以上の(例えば、1個、2個または3個の)異なる環状基(例えば、炭素環または複素環)に縮合されたヘテロアリール環を含む。
【0031】
したがって、ヘテロアリールという用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1つの窒素を含み、ヘテロアリール基の分子の残りの部分への結合点がヘテロアリール基中の窒素原子を介する、上記で定義されるヘテロアリール基を指す、N-ヘテロアリール基を包含する。用語「ヘテロアリール」はまた、本明細書で使用される場合、上記で定義されるヘテロアリール基を指し、ヘテロアリール基の分子の残りの部分への結合点がヘテロアリール基中の炭素原子を介する、C-ヘテロアリール基を包含する。ヘテロアリールという用語はまた、上で開示されるように、式--R-ヘテロアリール(式中、Rは上で定義されるアルキレン鎖である)の基を指すヘテロアリールアルキル基を包含する。「ヘテロアリール」という用語はまた、本明細書で使用される場合、式--O--R-ヘテロアリール(式中、Rは上で定義されるアルキレン鎖である)の酸素原子を介して結合した基を指す、ヘテロアラルコキシ(またはヘテロアリールアルコキシ)基を包含する。
【0032】
別段の記載がない限り、かつ任意の特定の基(複数可)について更に定義されない範囲で、本明細書に記載される基のいずれも置換または非置換であり得る。本明細書で使用される場合、「置換された」という用語は、そのような置換が置換原子及び置換基の許容される原子価に従うこと、及び置換が安定な化合物、すなわち、再構成、環化、除去等による変換を自発的には受けない化合物をもたらすとこと、という暗示的な条件を伴って、全ての許容される置換基を指す。代表的な置換基としては、ハロゲン、ヒドロキシル基、及び任意の数の炭素原子、例えば、1~14個の炭素原子を含む任意の他の有機基が挙げられ、直鎖、分岐状、または環状構造形式でグループ化された酸素、硫黄、及び窒素等の1個以上(例えば、1個、2個、3個、または4個)のヘテロ原子を含み得る。
【0033】
任意の特定の基(複数可)について別途開示されない範囲で、置換基の代表的な例としては、アルキル、置換アルキル(例えば、C-C、C-C、C-C、C-C、C-C、C)、アルコキシ(例えば、C-C、C-C、C-C、C-C、C-C、C)、置換アルコキシ(例えば、C-C、C-C、C-C、C-C、C-C、C)、ハロアルキル(例えば、CF)、アルケニル(例えば、C-C、C-C、C-C、C-C、C)、置換アルケニル(例えば、C-C、C-C、C-C、C-C、C)、アルキニル(例えば、C-C、C-C、C-C、C-C、C)、置換アルキニル(例えば、C-C、C-C、C-C、C-C、C)、環状(例えば、C-C12、C-C)、置換環状(例えば、C-C12、C-C)、炭素環(例えば、C-C12、C-C)、置換炭素環(例えば、C-C12、C-C)、複素環(例えば、C-C12、C-C)、置換複素環(例えば、C-C12、C-C)、アリール(例えば、ベンジル及びフェニル)、置換アリール(例えば、置換ベンジルまたはフェニル)、ヘテロアリール(例えば、ピリジルまたはピリミジル)、置換ヘテロアリール(例えば、置換ピリジルまたはピリミジル)、アラルキル(例えば、ベンジル)、置換アラルキル(例えば、置換ベンジル)、ハロ、ヒドロキシル、アリールオキシ(例えば、C-C12、C)、置換アリールオキシ(例えば、C-C12、C)、アルキルチオ(例えば、C-C)、置換アルキルチオ(例えば、C-C)、アリールチオ(例えば、C-C12、C)、置換アリールチオ(例えば、C-C12、C)、シアノ、カルボニル、置換カルボニル、カルボキシル、置換カルボキシル、アミノ、置換アミノ、アミド、置換アミド、チオ、置換チオ、スルフィニル、置換スルフィニル、スルフォニル、置換スルフォニル、スルフィンアミド、置換スルフィンアミド、スルホンアミド、置換スルホンアミド、ウ尿素、置換尿素、カルバメート、置換カルバメート、アミノ酸,及びペプチド基が挙げられる。
【0034】
一態様では、本明細書において、式(I)で表される化合物
【化2】
またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体であって、
式中、
Xは、存在しないか、-CH-、-O-、またはC(O)であり、
Aは、存在しないか、ナフチルであるか、N、O、及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5員のヘテロシクリルであるか、または5員もしくは6員環を有し、N、O、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む、縮合ヘテロビシクリルであり、Aは、任意選択的に1個以上のRで置換され、
各Rは、独立して、C-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、C-Cアルキルアミノ、またはジ-C-Cアルキルアミノであり、
各Rは、独立して、C-Cアルキル、C-Cアルケニル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cアルキルアミド、ハロ、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、C-Cアルキルアミノ、ジ-C-Cアルキルアミノ、C-Cカルボシクリル、または5員もしくは6員のヘテロシクリルであり、Rは、任意選択的に1個以上のRで置換されているか、
または2つのR基が、それらが結合している原子と一緒になって、5~6員のカルボシクリルもしくはヘテロシクリルを形成し、
は、
【化3】
であり、
は、水素、フルオロ、またはメチルであり、
mは、1または2であり、
nは、0、1、または2である、化合物が提供される。
【0035】
いくつかの実施形態において、Xは、存在しない。
【0036】
いくつかの実施形態において、Xは、-CH-である。
【0037】
いくつかの実施形態において、Xは、-O-である。
【0038】
いくつかの実施形態において、Xは、C(O)である。
【0039】
いくつかの実施形態において、Aは、任意選択的に1個以上のRで置換されたナフチルである。
【0040】
いくつかの実施形態において、Aは、5員及び6員環を有し、N、O、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む、縮合ヘテロビシクリルであり、Aが、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0041】
いくつかの実施形態において、Aは、2つの6員環を含み、N、O、及びSから選択される1~4個のヘテロ原子を含む縮合ヘテロビシクリルであり、Aが、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0042】
いくつかの実施形態において、Aは、N、O、及びSから選択される1~3個のヘテロ原子を含む5員のヘテロシクリルであり、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0043】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化4】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0044】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化5】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0045】
いくつかの実施形態において、Aは、任意選択的に1個以上のRで置換された
【化6】
である。
【0046】
いくつかの実施形態において、Aは
【化7】
である。
【0047】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化8】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0048】
いくつかの実施形態において、Aは、任意選択的に1個以上のRで置換された
【化9】
である。
【0049】
いくつかの実施形態において、Aは
【化10】
である。
【0050】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化11】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0051】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化12】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0052】
いくつかの実施形態においで、Aは、
【化13】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、
【0053】
いくつかの実施形態においで、Aは、
【化14】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている、
【0054】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化15】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0055】
いくつかの実施形態において、Aは、任意選択的に1個以上のRで置換された
【化16】
である。
【0056】
いくつかの実施形態において、Aは、任意選択的に1個以上のRで置換された
【化17】
である。
【0057】
いくつかの実施形態において、Aは
【化18】
である。
【0058】
いくつかの実施形態において、Aは
【化19】
である。
【0059】
いくつかの実施形態において、Aは、任意選択的に1個以上のRで置換された
【化20】
である。
【0060】
いくつかの実施形態において、Aは
【化21】
である。
【0061】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化22】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0062】
いくつかの実施形態において、Aは
【化23】
である。
【0063】
いくつかの実施形態において、Aは、
【化24】
であり、任意選択的に1個以上のRで置換されている。
【0064】
いくつかの実施形態において、Rは、独立して、C-C6アルキル、C-Cアルケニル、C-Cアルコキシ、C-Cハロアルコキシ、C-Cアルキルアミド、ハロ、シアノ、ジ-C-Cアルキルアミノ、C-Cカルボシクリル、または5員もしくは6員のヘテロシクリルである。
【0065】
いくつかの実施形態において、Rは、独立して、メチル、エチル、フルオロ、クロロ、ブロモ、メトキシ、シアノ、-OCHF、-OCHF、-NMe
【化25】
である。
【0066】
いくつかの実施形態において、Rは、メチルである。
【0067】
いくつかの実施形態において、Rは、クロロである。
【0068】
いくつかの実施形態において、Rは、
【化26】
である。
【0069】
いくつかの実施形態において、2つのR基は、それらが結合している原子と一緒になって、5~6員のカルボシクリルまたはヘテロシクリルを形成する。
【0070】
いくつかの実施形態において、2つのR基は、それらが結合している原子と一緒になって、フェニル、ピリジニル、またはジオキソランを形成する。
【0071】
いくつかの実施形態において、Rは、
【化27】
である。
【0072】
いくつかの実施形態において、Rは、水素である。
【0073】
いくつかの実施形態において、mは、2である。
【0074】
いくつかの実施形態において、nは、1である。
【0075】
いくつかの実施形態において、nは、2である。
【0076】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、式Ia~Ih:
【化28】
またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体である。
【0077】
式Ia~Ihのいくつかの実施形態において、Rは、メチルである。
【0078】
式Ia~Ihのいくつかの実施形態において、Rは、クロロである。
【0079】
式Ia~Ihのいくつかの実施形態において、nは、1である。
【0080】
式Ia~Ihのいくつかの実施形態において、nは、2である。
【0081】
式(I)の代表的な化合物は、以下の構造:
【化29-1】
【化29-2】
を有するか、
またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体である。
【0082】
本開示の化合物は、遊離酸もしくは遊離塩基、または薬学的に許容される塩の形態であり得る。本明細書で使用される場合、塩の文脈における「薬学的に許容される」という用語は、化合物の生物学的活性または特性を無効化しない化合物の塩であり、比較的非毒性である化合物の塩を指し、すなわち、塩形態の化合物は、望ましくない生物学的効果(めまいまたは胃の不調等)を引き起こすことも、それが含まれる組成物の他の成分のいずれとも有害な形で相互作用することもなく、対象に投与され得る。「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物を好適な酸または塩基と反応させることによって得られる生成物を指す。本開示の化合物の薬学的に許容される塩の例としては、Li、Na、K、Ca、Mg、Fe、Cu、Al、Zn及びMn塩等の好適な無機塩基に由来する塩が挙げられる。薬学的に許容される非毒性酸付加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、ビタール酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンチシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルカロン酸塩、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、4-メチルベンゼンスルホン酸塩またはp-トルエンスルホン酸塩等で形成されるアミノ基の塩である。本明細書に提供されるある特定の化合物は、リジン、アルギニン、グアニジン、ジエタノールアミンまたはメトホルミン等の様々な有機塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。好適な塩基性塩は、アルミニウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、または亜鉛塩を含む。
【0083】
本開示の化合物は、少なくとも1つのキラル中心を有し得、したがって、本明細書で使用される場合、空間におけるそれらの原子の配向のみが異なる個々の化合物の全ての異性体を包含する立体異性体の形態であり得る。「立体異性体」という用語は、鏡像異性体(化合物の(R-)または(S-)配置を含むエナンチオマー)、化合物の鏡像異性体の混合物(エナンチオマーの物理的混合物、及びラセミ体またはラセミ体混合物)、化合物の幾何(シス/トランスまたはE/Z、R/S)異性体、及び互いの鏡像ではない2つ以上のキラル中心を有する化合物の異性体(ジアステレオ異性体)を含む。化合物のキラル中心は、インビボでエピマー化を受けることができ、したがって、これらの化合物について、化合物の(R-)形態での投与は、化合物の(S-)形態での投与と同等であると考えられる。したがって、本開示の化合物は、個々の異性体の形態で、かつ他の異性体を実質的に含まない形態で、または様々な異性体の混合物、例えば、立体異性体のラセミ混合物の形態で作製及び使用され得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、化合物は、同位体の天然存在量を上回る量、すなわち濃縮された量で、原子の少なくとも1つの所望の同位体置換を有するという点で、同位体誘導体である。一実施形態において、化合物は、重水素または複数の重水素原子を含む。重水素、すなわちH等のより重い同位体による置換は、より高い代謝安定性から得られるある特定の治療上の利点、例えば、インビボ半減期の増加または投与量要件の減少を提供することができ、したがって、いくつかの状況において有利であり得る。
【0085】
本開示の化合物は、異なる条件下で結晶化によって調製することができ、化合物の1つまたは多形の組み合わせとして存在し得る。例えば、異なる多形は、異なる温度で結晶化を行うことによって、または結晶化中に非常に速い冷却から非常に遅い冷却に及ぶ様々な冷却モードを用いることによって、異なる溶媒、または再結晶化のための溶媒の異なる混合物を使用して同定及び/または調製することができる。多形はまた、化合物を加熱または融解し、続いて漸進的にまたは高速で冷却することによって得られる場合もある。多形の存在は、固体プローブNMR分光法、IR分光法、示差走査熱量測定法、粉末X線回折図及び/または他の既知の技術によって決定され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本発明の化合物の共結晶を含む。「共結晶」という用語は、本明細書で使用される場合、本明細書で提供される化合物及び共結晶型を含む化学量論的多成分系を指し、本明細書で提供される化合物及び共結晶形成体は、非共有結合相互作用によって接続される。本明細書で使用される「共結晶形成体」という用語は、本明細書で提供される化合物と分子間相互作用を形成し、それと共結晶化することができる化合物を指す。共結晶形成体の代表的な例としては、安息香酸、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、トランス桂皮酸、2,5-ジヒドロキシ安息香酸、グリコール酸、トランス-2-ヘキサン酸、2-ヒドロキシカプロン酸、乳酸、ソルビン酸、酒石酸、フェルル酸、スベリン酸、ピコリン酸、サリチン酸、マレイン酸、サッカリン、4,4’-ビピリジンp-アミノサリチン酸、ニコチンアミド、尿素、イソニコチンアミド、メチル-4-ヒドロキシベン酸、アジピン酸、テレフタル酸、レゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、ヒドロキシキノール、イソニアジド、テオフィリン、アデニン、テオブロミン、フェナセチン、フェナゾン、エトフィリン、及びフェノバルビタールが挙げられる。
【0087】
合成方法
別の態様では、本開示は、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を作製するための方法に関する。広義には、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体は、化学的に関連する化合物の調製に適用可能であることが知られている任意の方法によって調製され得る。本開示の化合物は、様々な実施例で説明され、本開示の化合物を調製することができる非限定的な方法を例示する合成スキームに関連してよりよく理解されるであろう。
【0088】
医薬組成物
本開示の別の態様は、治療有効量の本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。「薬学的に許容される担体」という用語は、当該技術分野において知られているように、本開示の化合物を哺乳動物に投与するのに好適な、薬学的に許容される材料、組成物またはビヒクルを指す。好適な担体は、例えば、ある臓器または体の一部から別の臓器または体の一部に化合物を運ぶまたは輸送する機能を有するように機能する、液体(水性と非水性の両方、及びそれらの組み合わせ)、固体、カプセル化材料、気体、及びそれらの組み合わせ(例えば、半固体)、ならびに気体を含み得る。担体は、製剤の他の成分に生理学的に不活性かつ適合性であり、対象または患者に有害ではないという意味で「許容される」。製剤の種類に応じて、組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤も含み得る。
【0089】
広義には、本開示の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩、または立体異性体は、混合、溶解、造粒、糖衣錠製造、研和、乳化、カプセル化、封入及び圧縮プロセス等の従来の薬学的慣行に従って、所与の種類の組成物に製剤化され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,Lippincott Williams&Wilkins,2000 and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988-1999,Marcel Dekker,New Yorkを参照)。製剤の種類は、経腸(例えば、経口、頬側、舌下及び直腸)、非経口(例えば、皮下(s.c.)、静脈内(i.v.)、筋肉内(i.m.)、及び胸骨内注射、または注入技術、眼内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮、皮内、膣内、腹腔内、粘膜、鼻腔、気管内注入、気管支注入、及び吸入)及び局所(例えば、経皮)を含み得る投与様式に依存する。一般に、最も適切な投与経路は、例えば、薬剤の性質(例えば、消化管の環境におけるその安定性)、及び/または対象の状態(例えば、対象が経口投与に耐えることができるかどうか)を含む、様々な要因に依存する。例えば、非経口(例えば、静脈内)投与は、単回投与治療及び/または急性状態の場合等に、化合物が比較的迅速に投与され得るという点でも有利であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、化合物は、経口または静脈内投与(例えば、全身静脈内注射)のために製剤化される。
【0091】
したがって、本明細書に提供される化合物は、固体組成物(例えば、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル、キャシェ、及び坐剤)、液体組成物(例えば、化合物が溶解された溶液、化合物の固体粒子が分散された懸濁液、エマルション、及びリポソーム、ミセル、またはナノ粒子を含有する溶液、シロップ及びエリキシル)、半固体組成物(例えば、ゲル、懸濁液及びクリーム)、及び気体(例えば、エアロゾル組成物のための推進剤)に製剤化され得る。化合物はまた、急速放出、中間放出または持続放出のためにも製剤化され得る。
【0092】
経口投与のための固体剤形は、カプセル剤、錠剤、丸剤、散剤、及び顆粒剤を含む。このような固体剤形では、活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム等の担体、ならびにa)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸等の充填剤または増量剤、b)例えば、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、及びアカシア等の結合剤、c)グリセロール等の保湿剤、d)架橋ポリマー(例えば、架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム(クロスカルメロースナトリウム)デンプングリコール酸ナトリウム、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウム、e)パラフィン等の溶液遅延剤、f)四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、g)セチルアルコール及びグリセロールモノステアレート等の湿潤剤、h)カオリン及びベントナイト粘土等の吸収剤、ならびにi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム等の潤滑剤、及びこれらの混合物等の担体と混合される。カプセル剤、錠剤、及び丸剤の場合、剤形は、緩衝剤も含み得る。同様の種類の固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、及び高分子量ポリエチレングリコール等の賦形剤を使用して、軟充填及び硬充填ゼラチンカプセルにおける充填剤としても利用され得る。錠剤、糖衣錠、カプセル剤、丸剤、及び顆粒剤の固体剤形は、腸溶性コーティング及び他のコーティング等のコーティング及びシェルを用いて調製することができる。それらは更に、不透明化剤を含有し得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、本明細書で提供される化合物は、硬ゼラチンカプセルまたは軟ゼラチンカプセルに製剤化され得る。使用され得る代表的な賦形剤には、アルファ化デンプン、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、フマル酸ステアリルナトリウム、無水ラクトース、微結晶セルロース、及びクロスカルメロースナトリウムが含まれる。ゼラチンシェルは、ゼラチン、二酸化チタン、酸化鉄及び着色剤を含み得る。
【0094】
経口投与のための液体剤形は、液剤、懸濁剤、乳剤、マイクロエマルション剤、シロップ剤及びエリキシル剤を含む。化合物に加えて、液体剤形は、当該技術分野で一般的に使用される水性または非水性担体(化合物の溶解度に依存する)、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、及び胡麻油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物等を含有し得る。経口組成物は、湿潤剤、懸濁化剤、着色剤、甘味剤、香味剤、及び芳香剤等の任意の賦形剤も含み得る。
【0095】
非経口投与のための注射可能調製物は、滅菌水溶液または油性懸濁液を含み得る。それらは、好適な分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を使用して、標準技術に従って製剤化され得る。滅菌注射可能調製物はまた、例えば、1,3-ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射可能溶液、懸濁液、またはエマルションであり得る。使用され得る許容可能なビヒクル及び溶媒の中には、水、リンゲル液、U.S.P.、及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。更に、無菌の固定油が、溶媒または懸濁培地として従来用いられる。この目的に関して、合成モノ-またはジグリセリドを含む、任意のブランドの固定油が用いられ得る。更に、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製において使用され得る。注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターを通す濾過によって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射媒体に溶解もしくは分散することができる滅菌固体組成物の形態で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。化合物の効果は、その吸収を遅くすることによって延長され得、これは、液体懸濁液、または低い水溶性を有する結晶性もしくは非晶質材料の使用によって達成され得る。非経口投与された製剤からの化合物の長期吸収は、化合物を油性ビヒクルに懸濁することによっても達成され得る。
【0096】
ある特定の実施形態において、本明細書に提供される化合物は、例えば、多くの場合、デポー調製物または持続放出製剤中で、コンジュゲートを臓器に直接注射することによって、全身的ではなく局所的に投与され得る。特定の実施形態において、長時間作用型製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)によって、または筋肉内注射によって投与される。注射用デポー形態は、生分解性ポリマー、例えば、ポリラクチド-ポリグリコリド、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)中に、化合物のマイクロカプセルマトリックスを形成することによって作製される。化合物の放出速度は、化合物とポリマーの比率、及び使用される特定のポリマーの性質を変化させることによって制御することができる。デポー注射可能製剤は、生体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルション中に化合物を封入することによっても調製される。更に、他の実施形態において、化合物は、標的化薬物送達系、例えば、臓器特異的抗体でコーティングされたリポソームで送達される。そのような実施形態において、リポソームは、臓器を標的とし、臓器によって選択的に取り込まれる。
【0097】
組成物は、頬側または舌下投与のために製剤化されてもよく、その例としては、錠剤、ロゼンジ、及びゲルが挙げられる。
【0098】
本明細書に提供される化合物は、吸入による投与のために製剤化され得る。吸入による投与に好適な様々な形態には、エアロゾル、ミスト、または粉末が含まれる。医薬組成物は、好適な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、または他の好適な気体)を使用して、加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示の形態で送達され得る。いくつかの実施形態において、加圧エアロゾルの投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。いくつかの実施形態において、化合物と、ラクトースまたはデンプン等の好適な粉末基剤との粉末混合物を含有する、例えば、吸入器または注入器に使用するためのゼラチンを含むカプセル及びカートリッジが製剤化され得る。
【0099】
本明細書で提供される化合物は、本明細書で使用される場合、表皮への製剤による皮内投与を指す局所投与用に製剤化され得る。これらの種類の組成物は、典型的には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液及びスプレーの形態である。
【0100】
局所適用のための化合物の製剤化に有用な担体の代表的な例としては、溶媒(例えば、アルコール、ポリアルコール、水)、クリーム、ローション、軟膏、油、石膏、リポソーム、粉末、エマルション、マイクロエマルション、及び緩衝溶液(例えば、低張性または緩衝生理食塩水)が挙げられる。クリームは、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、パルミトオレイン酸、セチル、またはオレイルアルコール等の飽和または不飽和脂肪酸を使用して製剤化され得る。クリームは、ポリオキシ-40-ステアレート等の非イオン性界面活性剤も含有し得る。
【0101】
一部の実施形態において、局所製剤はまた、賦形剤を含んでもよく、その例は浸透促進剤である。これらの薬剤は、好ましくは、全身吸収をほとんどまたは全く伴わずに、角質層を通して薬理学的に活性な化合物を表皮または真皮に輸送することができる。多種多様な化合物が、皮膚を通る薬物の浸透率を高めることにおけるそれらの有効性について評価されてきた。例えば、様々な皮膚浸透促進剤の使用及び試験を調査しているPercutaneous Penetration Enhancers,Maibach H.I.and Smith H.E.(eds.),CRC Press,Inc.,Boca Raton,Fla.(1995)、及びBuyuktimkin et al.,Chemical Means of Transdermal Drug Permeation Enhancement in Transdermal and Topical Drug Delivery Systems,Gosh T.K.,Pfister W.R.,Yum S.I.(Eds.),Interpharm Press Inc.,Buffalo Grove,Ill(1997)を参照されたい。浸透促進剤の代表的な例としては、トリグリセリド(例えば、大豆油)、アロエ組成物(例えば、アロエベラゲル)、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、オクトリフェニルポリエチレングリコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール400、プロピレングリコール、N-デシルメチルスルホキシド、脂肪酸エステル(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸メチル、モノオレイン酸グリセロール、及びモノオレイン酸プロピレングリコール)、及びN-メチルピロリドンが挙げられる。
【0102】
局所及び他の種類の製剤に(それらが適合性である範囲で)含まれ得る更に他の賦形剤の代表的な例としては、防腐剤、抗酸化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、緩衝剤、可溶化剤、皮膚保護剤、及び界面活性剤が挙げられる。好適な防腐剤は、アルコール、四級アミン、有機酸、パラベン、及びフェノールを含む。好適な抗酸化剤は、アスコルビン酸及びそのエステル、亜硫酸水素ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、トコフェロール、及びEDTA及びクエン酸などのキレート剤を含む。好適な保湿剤は、グリセリン、ソルビトール、ポリエチレングリコール、尿素、及びプロピレングリコールを含む。好適な緩衝剤は、クエン酸、塩酸、及び乳酸緩衝剤を含む。好適な可溶化剤は、四級塩化アンモニウム、シクロデキストリン、安息香酸ベンジル、レシチン、及びポリソルベートを含む。好適な皮膚保護剤は、ビタミンE油、アラトイン、ジメチコン、グリセリン、ワセリン、及び酸化亜鉛を含む。
【0103】
経皮製剤は、典型的には、経皮送達デバイス及び経皮送達パッチを使用し、化合物は、親油性エマルションまたは緩衝水溶液中に製剤化され、ポリマーまたは接着剤に溶解及び/または分散される。パッチは、医薬品の連続的、パルス、またはオンデマンド送達のために構築され得る。化合物の経皮送達は、イオン導入パッチによって達成され得る。経皮パッチは、速度を制御する膜を使用することによって、またはポリマーマトリックスもしくはゲル内に化合物を捕捉することによって吸収速度を遅延させる、化合物の制御送達を提供することができる。吸収促進剤を使用して吸収を増加させることができ、その例としては、皮膚を通過するのを補助する吸収可能な薬学的に許容される溶媒が挙げられる。
【0104】
眼科用製剤としては、点眼薬が挙げられる。
【0105】
直腸投与のための製剤としては、カカオバターまたは他のグリセリド等の従来の坐剤基剤、ならびにポリビニルピロリドン、PEG等の合成ポリマーを含有し得る、浣腸、直腸ゲル、直腸フォーム、直腸エアロゾル、及び停留浣腸が挙げられる。直腸または膣内投与のための組成物はまた、化合物を、カカオバター、脂肪酸グリセリドの混合物、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス、及びこれらの組み合わせ等の好適な非刺激性担体及び賦形剤と混合することによって調製することができる坐剤として製剤化されてもよく、これらの全てが周囲温度では固体であるが、体温では液体であり、したがって直腸または膣腔で融解して化合物を放出する。
【0106】
投与量
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、異常なヒト上皮成長因子受容体2(Her2)活性によって特徴付けられるまたは媒介される疾患または障害に罹患している患者において所望の治療応答をもたらすのに有効な、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の量を指す。したがって、「治療有効量」という用語は、投与されると、治療される疾患もしくは障害に正の変化を誘導するか、または疾患もしくは障害の発症もしくは進行を予防するのに十分であるか、または対象において治療される疾患もしくは障害の症状のうちの1つ以上をある程度緩和するか、または病変細胞の増殖を阻害するか、または病変細胞におけるHER2の量を減少させる、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の量を含む。
【0107】
化合物の総1日投与量及びその使用法は、標準的な医療行為に従って、例えば、健全な医学的判断を用いて主治医によって決定され得る。任意の特定の対象のための具体的な治療有効用量は、以下を含む様々な要因に依存する:治療される疾患または障害及びその重症度(例えば、現在の状態);用いられる化合物の活性;用いられる特定の組成物;対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別及び食事;用いられる化合物の投与時間、投与経路、及び排泄速度;治療期間;用いられる特定の化合物と組み合わせてまたは同時に用いられる薬物;ならびに医学分野で周知の同様の因子(例えば、Hardman et al.,eds.,Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10th Edition,McGraw-Hill Press,155-173,2001を参照)。
【0108】
本明細書に提供される化合物は、広い投与量範囲にわたって有効であり得る。いくつかの実施形態において、総1日投与量(例えば、ヒト成の場合)は、約0.001~約1600mg、0.01~約1000mg、0.01~約500mg、約0.01~約100mg、約0.5~約100mg、1~約100~400mg/日、約1~約50mg/日、約5~約40mg/日、及び更に他の実施形態において、約10~約30mg/日の範囲であり得る。個々の投与量は、化合物が1日当たりに投与される回数に応じて、所望の投与量を含むように製剤化され得る。例として、カプセルは、約1~約200mgの化合物(例えば、1、2、2.5、3、4、5、10、15、20、25、50、100、150、及び200mg)を用いて製剤化され得る。いくつかの実施形態において、化合物は、約0.01mg~約200mg/体重kg/日の範囲の用量で投与されてもよい。いくつかの実施形態において、1日当たり1回以上の投与量で、0.1~100、例えば、1~30mg/体重kg/日の用量が有効であり得る。例として、経口投与に好適な用量は、1~30mg/体重kg/日の範囲であり得、静脈内投与に好適な用量は、1~10mg/体重kg/日の範囲であり得る。
【0109】
使用方法
いくつかの態様では、本開示は、HER2を伴う疾患または障害を治療する方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体を投与することを伴う、方法に関する。
【0110】
広義には、本開示の化合物を用いた治療に適し得る疾患または障害は、HER2またはそうでなければ非病理学的状態と比較して機能的に異常なHER2の活性を伴う。「疾患」は、一般に、対象が恒常性を維持することができず、疾患が改善されない場合、対象の健康が悪化し続ける、対象の健康状態とみなされる。対照的に、対象における「障害」とは、対象が恒常性を維持することができるが、対象の健康状態が、障害が存在しない場合よりも好ましくない健康状態である。未治療のままにしておくと、障害が必ずしも対象の健康状態の更なる低下を引き起こすとは限らない。いくつかの実施形態において、式(I)の化合物は、細胞増殖性疾患及び障害(例えば、がんまたは良性新生物)の治療に有用であり得る。本明細書で使用される場合、「細胞増殖性疾患または障害」という用語は、新生物、前がん状態、良性腫瘍、及びがん等の非がん性状態を含む、無秩序もしくは異常な細胞増殖、またはその両方を特徴とする状態を指す。
【0111】
いくつかの実施形態において、疾患または障害は、HER2変異の活性によって特徴付けられるか、または媒介される。
【0112】
いくつかの実施形態において、HER2変異は、エクソン20挿入変異である。
【0113】
本明細書で使用される「対象」(または「患者」)という用語は、示される疾患または障害に罹患しやすい、または罹患している動物界の全てのメンバーを含む。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物、例えばヒトまたは非ヒト哺乳動物である。この方法は、イヌ及びネコ等のコンパニオンアニマル、ならびにウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ等の家畜、ならびに他の飼育動物及び野生動物にも適用可能である。本開示による治療を「必要とする」対象は、特定の疾患または障害に「罹患しているまたは罹患している疑いがある」場合があり、医療専門家が、対象が疾患または障害に罹患していると診断または疑うことができるような、十分な数の危険因子、または十分な数もしくは組み合わせの徴候もしくは症状を有すると確実に診断されているか、またはそうでなければそれらを呈し得る。したがって、特定の疾患または障害に罹患している、及び罹患していると疑われる対象は、必ずしも2つの異なる群ではない。
【0114】
本開示の化合物を用いた治療に適し得る例示的な種類の非がん性(例えば、細胞増殖性)疾患または障害としては、炎症性疾患及び病態、自己免疫疾患、神経変性疾患、心臓疾患、ウイルス性疾患、慢性及び急性腎疾患または傷害、代謝性疾患、ならびにアレルギー及び遺伝性疾患が挙げられる。
【0115】
特定の非がん性疾患及び障害の代表的な例としては、関節リウマチ、円形脱毛症、リンパ増殖性疾患、自己免疫性血液疾患(例えば、溶血性貧血、再生不良性貧血、無汗性外胚葉形成異常症、純赤血球性貧血及び特発性血小板減少症)、胆嚢炎、先端巨大症、リウマチ性脊椎炎、変形性関節症、痛風、強皮症、敗血症、敗血性ショック、涙腺炎、クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、内毒性ショック、子宮内膜炎、グラム陰性敗血症、乾性角結膜炎、毒素性ショック症候群、喘息、成人呼吸窮迫症候群、慢性閉塞性肺疾患、慢性肺炎症、慢性移植片拒絶、化膿性汗腺炎、炎症性腸疾患、クローン病、ベーチェット症候群、全身性エリテマトーデス、糸球体腎炎、多発性硬化症、若年発症糖尿病、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、自己免疫性血管炎、甲状腺炎、アジソン病、扁平苔癬、虫垂炎、水疱性類天疱瘡、尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、腫瘍随伴性天疱瘡、重症筋無力症、免疫グロブリンA腎症、橋本病、シェーグレン症候群、白斑、ウェゲナー肉芽腫症、精巣肉様腫、自己免疫性卵巣炎、サルコイドーシス、リウマチ性心炎、強直性脊椎炎、グレーブス病、自己免疫性血小板減少性紫斑病、乾癬、乾癬性関節炎、湿疹、疱疹状皮膚炎、潰瘍性大腸炎、膵線維症、肝炎、肝線維症、CD14媒介性敗血症、非CD14媒介性敗血症、急性及び慢性腎疾患、過敏性腸症候群、発熱、再狭窄、子宮頸管炎、脳卒中及び虚血傷害、神経外傷、急性及び慢性疼痛、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、慢性心不全、うっ血性心不全、急性冠症候群、悪液質、マラリア、ハンセン病、リーシュマニア症、ライム病、ライター症候群、急性滑膜炎、筋変性、滑液包炎、腱炎、腱鞘炎、ヘルニア状態の、破裂した、または脱出した椎間板症候群、大理石骨病、副鼻腔炎、血栓症、血栓症、肺サルコーシス、骨粗しょう症等の骨吸収性疾患、線維筋痛症、AIDS及び他のウイルス性疾患、例えば、帯状疱疹、単純ヘルペスI型またはII型、インフルエンザウイルス及びサイトメガロウイルス、I型及びII型糖尿病、肥満、インスリン抵抗性、糖尿病性網膜症、22q11.2欠失症候群、アンジェルマン症候群、カナバン病、セリアック病、シャルコー・マリー・トゥース病、色覚異常、ネコ鳴き症候群、ダウン症候群、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病、クラインフェルター症候群、神経線維腫症、フェニルケトン尿症、プラダー・ウィリー症候群、ダウン症候群、嚢胞性線維症、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病、クラインフェルター症候群、神経線維腫症、フェニルケトン尿症、プラダー・ウィリー症候群、ターナー症候群、尿素サイクル異常症、サラセミア、中耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、静脈炎、間質性肺炎、ブドウ膜炎、多発性筋炎、直腸炎、間質性肺線維症、皮膚筋炎、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、筋萎縮性側索硬化症、非社会性、静脈瘤、膣炎、鬱病、及び乳幼児突然死症候群が挙げられる。
【0116】
他の実施形態において、本方法は、がんを有する対象を治療することを対象とする。一般に、本開示の化合物は、がん(原発性及び転移性腫瘍の両方を含む固形腫瘍)、肉腫、黒色腫、ならびに白血病、リンパ腫及び多発性骨髄腫等の血液癌(リンパ球、骨髄及び/またはリンパ節を含む血液に影響を及ぼすがん)の治療に有効であり得る。成人腫瘍/がん及び小児腫瘍/がんが含まれる。がんは、血管新生した腫瘍、またはまだ実質的に血管新生していない腫瘍、または非血管新生腫瘍であり得る。
【0117】
がんの代表的な例としては、副腎皮質癌、エイズ関連癌(例えば、カポジ及びエイズ関連リンパ腫)、虫垂癌、小児がん(例えば、小児小脳星細胞腫、小児小脳星細胞腫)、基底細胞癌、皮膚癌(非黒色腫)、胆道癌、肝外胆管癌、肝内胆管癌、膀胱癌(bladder cancer)、膀胱癌(urinary bladder cancer)、脳癌(例えば、神経膠腫及び神経膠芽腫、例えば、脳幹神経膠腫、妊娠性トロホブラスト腫瘍、神経膠腫、小脳星細胞腫、大脳星細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視経路及び視床下部神経膠腫)、乳癌、気管支腺腫/カルチノイド、カルチノイド腫瘍、神経系癌(例えば、中枢神経系癌、中枢神経系リンパ腫)、子宮頸癌、慢性骨髄増殖性障害、結腸直腸癌(例えば、結腸癌、直腸癌)、真性多血症、リンパ系新生物、菌状息肉腫、セザリー症候群、子宮内膜癌、食道癌、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管癌、眼癌、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫、胆嚢癌、消化管癌(例えば、胃癌、小腸癌、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST))、胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、頭頸部癌、ホジキンリンパ腫、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、肝細胞癌、下咽頭癌、眼内黒色腫、眼球癌、膵島細胞腫瘍(内分泌膵臓)、腎癌(例えば、ウィルムス腫瘍、淡明細胞型腎細胞癌)、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌及び小細胞肺癌)、ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、黒色腫、眼内(眼)黒色腫、メルケル細胞癌、中皮腫、原発不明の転移性扁平上皮性頸部癌、多発性内分泌腺腫瘍(MEN)、骨髄異形成症候群、本態性血小板血症、骨髄異形成・骨髄増殖性症候群、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌(例えば、口癌、口唇癌、口腔癌、舌癌、中咽頭癌、咽頭癌、喉頭癌)、卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍)、膵臓癌、膵島細胞膵臓癌、副鼻腔癌及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、褐色細胞腫、松果体芽腫、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、胸膜肺芽腫、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、子宮癌(例えば、子宮内膜子宮癌、子宮肉腫、子宮体癌)、扁平上皮癌、精巣癌、胸腺腫、胸腺癌、甲状腺癌、腎盂及び尿管ならびに他の泌尿器の移行上皮癌、尿道癌、妊娠性絨毛性腫瘍、膣癌及び外陰癌が挙げられる。
【0118】
本開示の化合物を用いて治療可能であり得る肉腫には、軟部組織癌及び骨癌の両方が同様に含まれ、その代表的な例としては、骨肉腫または骨原性肉腫(骨)(例えば、ユーイング肉腫)、軟骨肉腫(軟骨)、平滑筋肉腫(平滑筋)、横紋筋肉腫(骨格筋)、中皮肉腫または中皮腫(体腔の膜裏)、線維肉腫(線維性組織)、血管肉腫または血管内皮腫(血管)、脂肪肉腫(脂肪組織)、星細胞腫または星細胞腫(脳内に見られる神経原性結合組織)、粘液肉腫(原始胚性結合組織)及び間葉性または混合中胚葉性腫瘍(混合結合組織型)が挙げられる。
【0119】
いくつかの実施形態において、本開示の方法は、血液系、肝臓、脳、肺、結腸、膵臓、前立腺、卵巣、乳房、皮膚、及び子宮内膜の細胞増殖性疾患または障害を有する対象の治療を伴う。
【0120】
本明細書で使用される場合、「血液系の細胞増殖性疾患または障害」は、リンパ腫、白血病、骨髄性新生物、肥満細胞新生物、脊髄形成異常症、良性単クローン性γグロブリン異常症、真性多血症、慢性骨髄性白血病、原発性骨髄線維症、及び本態性血小板血症を含む。したがって、血液癌の代表的な例としては、多発性骨髄腫、リンパ腫(T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫(FL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)及びALK+未分化大細胞リンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(例えば、胚中心B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫または活性型B細胞様びまん性大細胞型B細胞リンパ腫から選択されるB細胞非ホジキンリンパ腫)、バーキットリンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫/ワルデンストレーム高ガンマグロブリン血症、転移性膵臓腺癌、難治性B細胞非ホジキンリンパ腫及び再発性B細胞非ホジキンリンパ腫から選択されるB細胞非ホジキンリンパ腫、小児リンパ腫、ならびにリンパ球性及び皮膚起源のリンパ腫、例えば、小リンパ球性リンパ腫、小児白血病、有毛細胞白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病(例えば、急性単球性白血病)、慢性リンパ性白血病、小リンパ球性白血病、慢性骨髄球性白血病、慢性骨髄性白血病、及び肥満細胞白血病を含む白血病、骨髄性新生物及び肥満細胞新生物が挙げられる。
【0121】
本明細書で使用される場合、「肝臓の細胞増殖性疾患または障害」は、肝臓に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。肝臓の細胞増殖性障害は、肝臓癌(例えば、肝細胞癌、肝内胆管癌及び肝芽腫)、肝臓の前がんまたは前がん状態、肝臓の良性増殖または病変、ならびに肝臓の悪性増殖または病変、ならびに肝臓以外の体内の組織及び臓器における転移性病変を含み得る。肝臓の細胞増殖性障害は、肝臓の過形成、化生、及び異形成を含み得る。
【0122】
本明細書で使用される場合、「脳の細胞増殖性疾患または障害」は、脳に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。脳の細胞増殖性障害としては、脳癌(例えば、神経膠腫、神経膠芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、前庭神経鞘腫、及び原始神経外胚葉性腫瘍(髄芽腫))、脳の前がんまたは前がん状態、脳の良性増殖または病変、ならびに脳の悪性増殖または病変、ならびに脳以外の体内の組織及び臓器における転移性病変を含み得る。脳の細胞増殖性障害は、脳の過形成、化生、及び異形成を含み得る。
【0123】
本明細書で使用される場合、「肺の細胞増殖性疾患または障害」は、肺細胞に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。肺の細胞増殖性疾患は、肺癌、肺の前がん及び前がん状態、肺の良性増殖または病変、肺の過形成、化生、及び異形成、ならびに肺以外の体内の組織及び臓器における転移性病変を含む。肺癌は、あらゆる形態の肺の癌、例えば、悪性肺新生物、上皮内癌、定型カルチノイド腫瘍、及び非定型カルチノイド腫瘍を含む。肺癌は、小細胞肺癌(「SLCL」)、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、扁平上皮癌、腺癌、小細胞癌、大細胞癌、扁平上皮癌、及び中皮腫を含む。肺癌は、「瘢痕癌」、気管支肺胞上皮癌、巨細胞癌、紡錘細胞癌、及び大細胞神経内分泌癌を含み得る。肺癌はまた、組織学的及び超微細構造的な不均一性(例えば、混合細胞型)を有する肺新生物も含む。いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、非転移性または転移性肺癌(例えば、NSCLC、ALK陽性NSCLC、ROS1再構成を有するNSCLC、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌)を治療するために使用され得る。
【0124】
本明細書で使用される場合、「結腸の細胞増殖性疾患または障害」は、結腸癌、結腸の前がんまたは前がん状態、結腸の腺腫性ポリープ及び結腸の異時性病変を含む、結腸細胞に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。結腸癌は、散発性及び遺伝性結腸癌、悪性結腸新生物、上皮内癌、定型カルチノイド腫瘍、及び非定型カルチノイド腫瘍、腺癌、扁平上皮癌、及び扁平上皮癌を含む。結腸癌は、遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、大腸腺腫症、MYH関連ポリポーシス、ガードナー症候群、ポイツ・ジェガース症候群、ターコット症候群及び若年性ポリポーシス等の遺伝性症候群と関連し得る。結腸の細胞増殖性障害はまた、結腸の過形成、化生、または異形成によって特徴付けられ得る。
【0125】
本明細書で使用される場合、「膵臓の細胞増殖性疾患または障害」は、膵臓細胞に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。膵臓の細胞増殖性障害は、膵臓癌、膵臓の前がんまたは前がん状態、膵臓の過形成、膵臓の異形成、膵臓の良性増殖または病変、ならびに膵臓の悪性増殖または病変、ならびに膵臓以外の体内の組織及び臓器における転移性病変を含み得る。膵臓癌は、管腺癌、腺扁平上皮癌、多形性巨細胞癌、粘液性腺癌、破骨細胞様巨細胞癌、粘液性嚢胞腺癌、腺房癌、未分類大細胞癌、小細胞癌、膵芽腫、乳頭状新生物、粘液性嚢胞腺腫、乳頭状嚢胞新生物、及び漿液性嚢胞腺腫、ならびに組織学的及び超微細構造的な不均一性(例えば、混合細胞型)を有する膵臓新生物を含む、全ての形態の膵臓癌を含む。
【0126】
本明細書で使用される場合、「前立腺の細胞増殖性疾患または障害」は、前立腺に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。前立腺の細胞増殖性障害は、前立腺癌、前立腺の前がんまたは前がん状態、前立腺の良性増殖または病変、ならびに前立腺の悪性増殖または病変、ならびに前立腺以外の体内の組織及び臓器における転移性病変を含み得る。前立腺の細胞増殖性障害は、前立腺の過形成、化生、及び異形成を含み得る。
【0127】
本明細書で使用される場合、「卵巣の細胞増殖性疾患または障害」は、卵巣の細胞に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。卵巣の細胞増殖性障害は、卵巣の前がんまたは前がん状態、卵巣の良性増殖または病変、卵巣癌、ならびに卵巣以外の体内の組織及び臓器における転移性病変を含み得る。卵巣の細胞増殖性障害は、卵巣の過形成、化生、及び異形成を含み得る。
【0128】
本明細書で使用される場合、「乳房の細胞増殖性疾患または障害」は、乳房細胞に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。乳房の細胞増殖性障害は、乳癌、乳房の前がんまたは前がん状態、乳房の良性増殖または病変、ならびに乳房以外の体内の組織及び臓器の転移性病変を含み得る。乳房の細胞増殖性障害は、乳房の過形成、化生、及び異形成を含み得る。
【0129】
本明細書で使用される場合、「皮膚の細胞増殖性疾患または障害」は、皮膚細胞に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。皮膚の細胞増殖性障害は、皮膚の前がんまたは前がん状態、皮膚の良性増殖または病変、黒色腫、悪性黒色腫または他の皮膚の悪性増殖もしくは病変、及び皮膚以外の体内の組織及び臓器における転移性病変を含み得る。皮膚の細胞増殖性障害は、皮膚の過形成、化生、及び異形成を含み得る。
【0130】
本明細書で使用される場合、「子宮内膜の細胞増殖性疾患または障害」は、子宮内膜の細胞に影響を及ぼす全ての形態の細胞増殖性障害を含む。子宮内膜の細胞増殖性障害は、子宮内膜の前がんまたは前がん状態、子宮内膜の良性増殖または病変、子宮内膜癌、ならびに子宮内膜以外の体内の組織及び臓器における転移性病変を含み得る。子宮内膜の細胞増殖性障害は、子宮内膜の過形成、化生、及び異形成を含み得る。
【0131】
一部の実施形態において、本開示の化合物は、乳癌、卵巣癌、消化管癌、肺癌、結腸癌、子宮内膜癌、または甲状腺癌を治療するために使用され得る。
【0132】
いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、非小細胞肺癌(NSCLC)またはEGFR/ALK/ROS1トリプルネガティブNSCLCを治療するために使用され得る。
【0133】
本開示の化合物ならびにそれらの薬学的に許容される塩及び立体異性体は、単剤療法として、または併用療法によって、患者、例えば、がん患者に投与され得る。治療は、「最前線/第一選択」、すなわち、単独で、もしくは他の治療と組み合わせて、以前に抗がん治療レジメンを受けたことがない患者の最初の治療としてであってもよいか、または以前に抗がん治療レジメンを受けたことがある患者における治療としての「第二選択」であってもよいか、または単独で、もしくは他の治療と組み合わせて、「第三選択」、「第四選択」等の治療としてであってもよい。治療は、成功しなかった、または部分的に成功したが、特定の治療に非応答性もしくは不耐性になった、以前の治療を受けた患者にも与えることができる。治療はまた、補助療法として、すなわち、現在検出可能な疾患を有しない患者において、または腫瘍の外科的除去後に、がんの再発を予防するために、与えられ得る。したがって、いくつかの実施形態において、化合物は、化学療法、放射免疫療法、外科療法、免疫療法、放射線療法、標的療法、またはそれらの任意の組み合わせ等、以前の治療を受けたことがある患者に投与され得る。
【0134】
本開示の方法は、本発明の化合物またはその医薬組成物を、単回用量、または複数回用量(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、10、15、20、またはそれ以上の用量)で、患者に投与することを伴い得る。例えば、投与頻度は、1日1回から8週間ごとに約1回の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、投与頻度は、1、2、3、4、5、または6週間、1日に約1回の範囲であり、他の実施形態において、3週間(21日間)の毎日の投与に続く7日間のオフ期間を含む、少なくとも1つの28日サイクルを伴う。他の実施形態において、化合物は、2日半にわたって1日2回(BID)(合計5回の用量)、または2日にわたって1日1回(QD)(合計2回の用量)投与され得る。他の実施形態において、化合物は、5日間にわたって1日1回(QD)投与され得る。
【0135】
併用療法
本開示の化合物及びそれらの薬学的に許容される塩または立体異性体は、疾患及び障害の治療において、少なくとも1つの他の活性剤、例えば、抗がん剤またはレジメンと組み合わせてまたは同時に使用され得る。本文脈における「組み合わせて」及び「同時に」という用語は、薬剤が同時投与されることを意味し、これは、同じもしくは別個の剤形による、及び同じもしくは異なる投与様式による、実質的に同時期の投与、または、例えば、同じ治療レジメンの一部として、もしくは連続的治療レジメンによる、順次の投与を含む。したがって、順次投与される場合、第2の薬剤の投与の開始時に、2つの薬剤のうちの第1の薬剤は、場合によっては、治療部位において有効濃度で依然として検出可能である。順序及び時間間隔は、それらが一緒に作用することができるように(例えば、それらが別様に投与された場合よりも増加した利益を提供するように相乗的に)決定され得る。例えば、薬剤は、同時に、または異なる時点で任意の順序で順次投与され得るが、同時に投与されない場合、所望の治療効果を提供するためにそれらは十分に近い時間で投与され得、これは相乗的な様式であり得る。したがって、この用語は、正確に同時に活性剤を投与することに限定されない。
【0136】
いくつかの実施形態において、治療レジメンは、疾患または障害(例えば、がん)の治療に使用することが知られている1つ以上の追加の治療薬と組み合わせた、本開示の化合物またはその薬学的に許容される塩もしくは立体異性体の投与を含み得る。追加の抗がん治療薬の投与量は、既知のまたは推奨される用量と同じであってもよいか、またはそれよりも少なくてもよい。Hardman et al.,eds.,Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis Of Basis Of Therapeutics,10th ed.,McGraw-Hill,New York,2001;Physician’s Desk Reference 60th ed.,2006を参照されたい。例えば、本発明の化合物と組み合わせて使用され得る抗がん剤は、当技術分野で既知である。例えば、米国特許第9,101,622号(その第5.2節)及び米国特許第9,345,705号B2(その第12~18列)を参照されたい。追加の抗がん剤及び治療レジメンの代表的な例としては、放射線療法、化学療法剤(例えば、有糸分裂阻害剤、血管新生阻害剤、抗ホルモン、オートファジー阻害剤、アルキル化剤、挿入抗生物質、成長因子阻害剤、抗アンドロゲン、シグナル伝達経路阻害剤、微小管阻害剤、白金配位錯体、HDAC阻害剤、プロテアソーム阻害剤、及びトポイソメラーゼ阻害剤)、免疫調節剤、治療用抗体(例えば、単一特異性及び二重特異性抗体)、及びCAR-T療法が挙げられる。
【0137】
いくつかの実施形態において、本発明で提供される化合物及び追加の抗がん治療薬は、5分未満間隔、30分未満間隔、1時間未満間隔、約1時間間隔、約1時間~約2時間間隔、約2時間~約3時間間隔、約3時間~約4時間間隔、約4時間~約5時間間隔、約5時間~約6時間間隔、約6時間~約7時間間隔、約7時間~約8時間間隔、約8時間~約9時間間隔、約9時間~約10時間間隔、約10時間~約11時間間隔、約11時間~約12時間間隔、約12時間~18時間間隔、18時間~24時間間隔、24時間~36時間間隔、36時間~48時間間隔、48時間~52時間間隔、52時間~60時間間隔、60時間~72時間、72時間~84時間、84時間~96時間、または96時間~120時間間隔で投与され得る。2つ以上の抗がん治療薬が、同じ患者の来診中に投与されてもよい。
【0138】
いくつかの実施形態において、本開示の化合物及び追加の治療薬(例えば、抗がん治療薬)は、周期的に投与される。がん治療の状況における例として、サイクリング療法は、抗がん治療薬の一方もしくは両方に対する耐性の発達を低減するため、抗がん治療薬の一方もしくは両方の副作用を回避もしくは低減するため、及び/または療法の有効性を改善するために、一定期間にわたって1つの抗がん治療薬を投与し、続いて一定期間にわたって第2の抗がん治療薬を投与し、この連続投与、すなわちサイクルを繰り返すことを伴う。一例では、サイクリング療法は、抗がん治療薬の一方に対する耐性の発達を低減するため、抗がん治療薬の一方の副作用を回避もしくは低減するため、及び/または抗がん治療薬の有効性を改善するために、一定期間にわたって第1の抗がん治療薬を投与し、続いて一定期間にわたって第2の抗がん治療薬を投与し、続いて任意に、一定期間にわたって第3の抗がん治療薬を投与する等、この連続投与、すなわちサイクルを繰り返すことを伴う。
【0139】
いくつかの実施形態において、治療される特定のがんに応じて、本開示の化合物は、パクリタキセル(例えば、卵巣癌、乳癌、肺癌、カポジ肉腫、子宮頸癌、及び膵癌)、トポテカン(例えば、卵巣癌及び肺癌)、イリノテカン(例えば、結腸癌、及び小細胞肺癌)、エトポシド(例えば、精巣癌、肺癌、リンパ腫、及び非リンパ球性白血病)、ビンクリスチン(例えば、白血病)、ロイコボリン(例えば、結腸癌)、アルトレタミン(例えば、卵巣癌)、ダウノルビシン(例えば、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、及びカポジ肉腫)、トラスツズマブ(例えば、乳癌、胃癌、及び食道癌)、リツキシマブ(例えば、非ホジキンリンパ腫)、セツキシマブ(例えば、結腸直腸癌、転移性非小細胞肺癌及び統計部癌)、ペルツズマブ(例えば、転移性HER2陽性乳癌)、アレムツズマブ(例えば、慢性リンパ球性白血病(CLL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)及びT細胞リンパ腫)、パニツマブ(例えば、結腸直腸癌)、タモキシフェン(例えば、乳癌)、フルベストラント(例えば、乳癌)、レトロゾール(例えば、乳癌)、エキセメスタン(例えば、乳癌)、アザシチジン(例えば、骨髄異形成症候群s)、マイトマイシンC(例えば、消化管癌、肛門癌、及び乳癌)、タグチノマイシン(例えば、ウィルムス腫瘍、横紋筋肉腫、ユーイング肉腫、絨毛性新生物、精巣癌、及び卵巣癌)、エルロチニブ(例えば、非小細胞肺癌及び膵臓癌)、ソラフェニブ(例えば、腎臓癌及び肝臓癌)、テムシロリムス(例えば、腎臓癌)、ボルテゾミブ(例えば、多発性骨髄腫及びマントル細胞リンパ腫)、ペグアスパルガーゼ(例えば、急性リンパ芽球性白血病)、Cabometyx(例えば、肝細胞癌、甲状腺髄様癌、及び腎細胞癌)、Keytruda(例えば、子宮頸癌、胃癌、肝細胞癌、ホジキンリンパ腫、黒色腫、メルケル細胞癌、非小細胞肺癌、尿路上皮癌、及び頭頸部の扁平上皮癌)、ニボルマブ(例えば、結腸直腸癌、肝細胞癌、黒色腫、非小細胞肺癌、腎細胞癌、小細胞肺癌、及び尿路上皮癌)、及びレゴラフェニブ(例えば、結腸直腸癌、消化管間質腫瘍、及び肝細胞癌)等の少なくとも1つの他の抗がん剤と組み合わせて使用され得る。
【0140】
医薬品キット
本組成物は、キットまたは医薬システムに組み立てることができる。本開示のこの態様によるキットまたは医薬システムは、箱、カートン、チューブ等の担体またはパッケージを含み、その中に、バイアル、チューブ、アンプル、またはボトル等の1つ以上の容器を密接に収容し、それらは本開示の化合物、または化合物及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を含み、化合物及び担体は、同じまたは別個の容器に配置され得る。本開示のキットまたは医薬システムはまた、化合物及び組成物を使用するための印刷された指示を含み得る。
【0141】
本開示のこれらの態様及び他の態様は、ある特定の実施形態を例示することを意図するが、特許請求の範囲によって定義されるその範囲を限定することを意図しない以下の実施例を考慮すると、更に理解されるであろう。
【実施例
【0142】
実施例1:(R)-N-(4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-2,3-ジメチルフェニル)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド(1)の合成
【化30】
(R)-N-(4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-2,3-ジメチルフェニル)-4-アミノ-1-(ピペリジン-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド塩酸塩(3)。DMF(4mL)中の酸1(150mg、0.414mmol)(PharmablockからのPBLJ7889)の溶液に、アザベンゾトリアゾールテトラメチルウロ ニウムヘキサフルオロホスフェート(HATU、189mg、0.497mmol)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA、144μL、0.828mmol)を加えた。次いで、アニリン2(116mg、0.455mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応混合物をEtOAcで抽出し、HO 3x、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮した。粗残渣をジオキサン(3mL)中4MのHClに溶解し、1時間撹拌した。反応混合物を濃縮して、粗中間体アミン3を淡オレンジ色の固体として得た。
【0143】
(R)-N-(4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-2,3-ジメチルフェニル)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド(1)。0℃のCHCl(3mL、0.12M)中の中間体アミン3(200mg、0.374mmol)の溶液に、トリエチルアミン(EtN、160μL、1.12mmol)及びアクリロイルクロリド(45μL、0.561mmol)を加えた。0℃で15分間撹拌した後、反応混合物を室温まで昇温し、回転蒸発によって濃縮し、分取HPLCによって精製して、化合物(1)を白色固体として得た(1から3つのステップにわたって61mg、14%)。
【0144】
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ10.38-10.09(m,1H),8.95(d,J=7.5Hz,1H),8.56(s,1H),8.38(s,1H),8.28(s,1H),8.10(s,1H),7.39(d,J=8.4Hz,1H),7.10(d,J=8.6Hz,1H),7.03(dd,J=7.5,2.7Hz,1H),6.92-6.66(m,2H),6.16-6.06(m,1H),5.74-5.59(m,1H),4.85-4.68(m,1H),4.62-4.24(m,1H),4.23-4.01(m,1H),3.88-3.36(m,1H),3.27-3.01(m,1H),2.42-2.27(m,1H),2.23(s,3H),2.23-2.17(m,1H),2.15(s,3H),2.03-1.96(m,1H),1.69-1.54(m,1H).LC-MS m/z:(pos)553.55([M+H]
【0145】
実施例2:(R)-N-(4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-3-メチルフェニル)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド(2)の合成
【化31】
(R)-N-(4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-3-メチルフェニル)-4-アミノ-1-(ピペリジン-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド塩酸塩(5)。DMF(3mL)中の酸1(120mg、0.331mmol)の溶液に、HATU(151mg、0.397mmol)及びDIPEA(115μL、0.662mmol)を加えた。次いで、アニリン4(88mg、0.364mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応混合物をEtOAcで抽出し、HO 3x、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮した。粗残渣をジオキサン(3mL)中4MのHClに溶解し、1時間撹拌した。反応混合物を濃縮して、粗中間体アミン5を淡オレンジ色の固体として得た。
【0146】
(R)-N-(4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-3-メチルフェニル)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド(2)。0℃のCHCl(3mL、0.11M)中の中間体アミン5(160mg、0.331mmol)の溶液に、トリエチルアミン(EtN、140μL、0.99mmol)及びアクリロイルクロリド(40μL、0.497mmol)を加えた。0℃で15分間撹拌した後、反応混合物を室温まで昇温し、回転蒸発によって濃縮し、分取HPLCによって精製して、(2)を白色固体として得た(1からの3つのステップにわたって59mg、33%)。
【0147】
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ 10.49-10.25(m,1H),8.94(d,J=7.5Hz,1H),8.49(s,1H),8.38(s,1H),8.29(s,1H),8.17(s,1H),7.91(s,1H),7.80(d,J=8.5Hz,1H),7.22(d,J=8.5Hz,1H),7.02(dd,J=7.5,2.6Hz,1H),6.93-6.73(m,2H),6.19-6.05(m,1H),5.75-5.60(m,1H),4.90-4.49(m,2H),4.33-4.13(m,1H),4.11-3.80(m,1H),3.51-3.33(m,1H),3.30-3.07(m,1H),2.46-2.26(m,1H),2.20(s,3H),2.02-1.85(m,1H),1.71-1.52(m,1H).LC-MS m/z:(pos)539.57([M+H]
【0148】
実施例3:(R)-N-(4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-3-クロロフェニル)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミドの合成
【化32】
(R)-N-(4-([1,2,4]トリアゾロ[1,5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-3-クロロフェニル)-4-アミノ-1-(ピペリジン-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド塩酸塩(7)。DMF(4mL)中の酸1(150mg、0.414mmol)の溶液に、HATU(189mg、0.497mmol)及びDIPEA(144μL、0.828mmol)を加えた。次いで、アニリン6(119mg、0.455mmol)を加え、室温で3時間攪拌した。反応混合物をEtOAcで抽出し、HO 3x、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させ、濾過し、回転蒸発によって濃縮した。粗残渣をジオキサン(3mL)中4MのHClに溶解し、1時間撹拌した。反応混合物を濃縮して、粗中間体アミン7を淡オレンジ色の固体として得た。
【0149】
(R)-N-(4-([1、2、4]トリアゾロ[1、5-a]ピリジン-7-イルオキシ)-3-クロロフェニル)-1-(1-アクリロイルピペリジン-3-イル)-4-アミノ-1H-ピラゾロ[3、4-d]ピリミジン-3-カルボキサミド(3)。0℃のCHCl(3mL、0.13M)中の中間体アミン7(200mg、0.396mmol)の溶液に、トリエチルアミン(EtN、173μL、1.24mmol)及びアクリロイルクロリド(50μL、0.62mmol)を加えた。0℃で15分間撹拌した後、反応混合物を室温まで昇温し、回転蒸発によって濃縮し、分取HPLCによって精製して、(3)を白色固体として得た(1から3つのステップにわたって39mg、17%)。
【0150】
H NMR(500MHz,DMSO-d)δ 10.76-10.47(m,1H),8.97(d,J=7.5Hz,1H),8.50-8.34(m,2H),8.30(s,1H),8.25(s,1H),8.20(s,1H),7.96(dd,J=8.9,2.3Hz,1H),7.48(d,J=8.7Hz,1H),7.07(dd,J=7.5,2.6Hz,1H),6.96(d,J=2.4Hz,1H),6.93-6.70(m,1H),6.13(t,1H),5.68(dd,1H),4.86-4.71(m,1H),4.62-4.25(m,1H),4.25-4.03(m,1H),3.91-3.39(m,1H),3.27-3.01(m,1H),2.46-2.27(m,1H),2.26-2.12(m,2H),2.01-1.85(m,1H),1.74-1.53(m,1H).LC-MS m/z:(pos)559.51([M+H]
【0151】
実施例4:HER2阻害活性
本明細書に提供される化合物のIC50値を、Ba/F3細胞中のキナーゼに対して測定した。表1及び表2は、市販のHER2阻害剤であるTAS0728と比較して、本明細書に開示される化合物のデータを要約したものである。
【化33】
【0152】
EGFR及びHER2の阻害における本出願の代表的な化合物の活性を、Ba/F3細胞のMTSアッセイ(abcam(登録商標))によって試験した。Ba/F3細胞でのアッセイでは、96ウェルプレートにウェルあたり3000個の細胞を播種し、指定された化合物に3.3~10μMの濃度で72時間曝露した。表1及び表2のデータは、本発明の化合物、特に化合物1~3が、EGFR wt及びEGFR変異よりもHer2及びHer2のエクソン20挿入変異の非常に強力かつ選択的な阻害剤であることを示す。
【表1】
【表2】
【0153】
全ての特許刊行物及び非特許刊行物は、本開示が属する当業者の技術レベルを示す。これらの刊行物は全て、あたかも各個々の刊行物が参照により組み込まれるものとして具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0154】
本明細書の開示は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態は、本開示の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の主旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に多数の修正が加えられ得ること、及び他の構成が考案され得ることを理解されたい。
【国際調査報告】