IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッドの特許一覧

特表2023-545419多点フィルタリング液位検出方法および装置
<>
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図1
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図2
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図3A
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図3B
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図4A
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図4B
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図4C
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図4D
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図5A
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図5B
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図6
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図7
  • 特表-多点フィルタリング液位検出方法および装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】多点フィルタリング液位検出方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
G01N35/10 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521310
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 US2021053851
(87)【国際公開番号】W WO2022076616
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/088,934
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ディー・ダンフィー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・エイチ・スプリンクル
(72)【発明者】
【氏名】コリン・インガーソル
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058GB04
(57)【要約】
容器のウェル内の液位を検出する方法。方法は、容器のウェル内の液体の予想液位を調べることと;ウェル内の液体の測定液位を測定および記録することと;追加または除去予定の液体の予想量に基づいてウェル内の液位を変化させることと;多点フィルタリングに少なくとも部分的に基づいて次の予想液位を計算することとを含む。他の態様として、方法を実行するための装置が提供される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェル内の液位を検出する方法であって:
ウェル内の液体の予想液位を調べることと;
液体を含むウェル内に、プローブをウェル深さまで下降させることと;
液体の測定液位を下降から測定および記録することと;
多点フィルタリングに少なくとも部分的に基づいて次の予想液位を計算することと
を含む、前記方法。
【請求項2】
次の予想液位を計算することは、エラー補正を適用することにさらに基づく、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
エラー補正はエラー×ゲインに等しい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
次の予想液位を計算することは、キャリーアウトを考慮することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
多点フィルタリングは中央フィルタを使用して実現される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
中央フィルタは、3つまたはそれ以上の測定液位値から導き出された中央値を使用する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
中央フィルタは、10個またはそれ以上の連続して得られた値の中央値を使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
中央フィルタは、15個またはそれ以上の連続して得られた値の中央値を使用する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
多点フィルタリングは、モードフィルタまたは平均フィルタを使用して実現される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
多点フィルタリングの適用前に外れ値を除去するためのプレフィルタリングを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
プレフィルタリングは、液体を含む容器の状態に基づいて調節されるプレフィルタ限界を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
次の予想液位について次の理論液位からの調節を制限するように、調節限界を使用することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
計算前に、検査のために指定されたある量の液体を吸引することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
ウェル内の液体は試薬液である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
ウェル内の液体は水、廃液、または洗浄液である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
吸引後に吸引品質検証を実行することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
空気が吸引されたことを吸引品質検証が検出したときに、調節によりプローブ位置を下方に調節することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
測定液位の測定は下降中に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ウェル内の液位を検出する方法であって:
容器のウェル内の液体の予想液位を調べることと;
ウェル内の液体の測定液位を測定および記録することと;
追加または除去予定の液体の予想量に基づいてウェル内の液位を変化させることと;
多点フィルタリングに少なくとも部分的に基づいて次の予想液位を計算することと
を含む、前記方法。
【請求項20】
液位検出装置であって:
ウェル内の液体の液位測定値を得るように構成されている液位センサと;
液位測定値を受け、多点フィルタリングモジュールに従って次の予想液位を計算するように構成されているプロセッサと
を含む、前記液位検出装置。
【請求項21】
液体を吸引するように構成されているプローブを含む、請求項20に記載の液位検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月7日に出願された「MULTI-POINT FILTERING LIQUID LEVEL DETECTION METHODS AND APPARATUS」という名称の米国仮特許出願第63/088,934号の優先権を主張し、その開示を、あらゆる目的で参照によって完全に組み入れる。
【0002】
本発明は、一般に、試薬液を容器のウェルから吸引するときのような、液体の吸引に関連付けられた液位を判定するように構成されている方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
全血、血清、血漿、間質液、脳脊髄液、尿などの患者から得られた体液の様々な化学成分を測定するための診断検査室内での検査においては、全自動分析器により、分析を行うのに必要な熟練技術者の数を減らし、検査の精度を向上させ、検査ごとの費用を削減することができる。
【0004】
通常、自動分析器は自動吸引分配装置を含み、これは、容器のウェルから液体(例えば、液体試薬)を吸引し、その液体を反応ベッセル(例えば、キュベット)に分配するように構成されている。吸引分配装置は、通常、ロボットガントリまたはロボットアームなどのロボット機構に取り付けられたピペット(本明細書で「プローブ」とも呼ぶ)を含んで、プローブの規定の動きを可能にし、吸引分配機能を実行して、反応ベッセルへの液体(例えば、試薬)の移送を可能にする。相互汚染を避けるために、試料および試薬の吸引分配動作に別々のプローブを使用してもよい。
【0005】
吸引動作中、コントローラの制御下にあり得るロボット機構が、プローブを試薬容器のウェルの上方に位置させ、その後、プローブが液体試薬に所望のウェル深さまで部分的に浸漬されるまで、プローブをウェル内に降下させることができる。ウェル内の上液面の下までプローブを降下させる深さを、「ウェル深さ(WD)」と呼ぶ。その後、ポンプまたは他の吸引デバイスを起動して、試薬液の一部を容器からプローブの内部へ引き込む(吸引する)。その後、プローブを、プローブ内に試薬液がある状態で容器から上昇(後退)させて、試薬液を検査のために反応ベッセルに移送できるようにする。
【0006】
ウェル内の液体試薬の吸引の補助として、ウェルに含まれる試薬液の上面の位置を判定することが望ましいことがある。例えば、液体試薬の上液面の位置がわかると、空気の吸引を避けるのに役立ち得る。同様に、ウェル内の液体試薬の上面の位置がわかると、プローブを適切なウェル深さに位置付けるのに役立ち得る。一般に、上液面は、容量性センサを組み入れたプローブを使用することによって位置付けられる。液面に接触すると、電気信号の変化が容量測定回路によって検出される。しかしながら、場合によっては、測定が誤っていることがある。例えば、液位検出が、上液面より上方でトリガされることがあり、または場合によっては、まったくトリガされない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、上液面の位置をより正確に判定するための方法および装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
試薬供給容器内の液位の検出は、臨床化学分析器および免疫測定器具(各々を本明細書で「分析器」と呼ぶ)などの多くの種類の診断装置で使用されている。例えば、液位検出を使用して、ウェル内の試薬液の上面液位を検出することができる。本明細書に提示する例は、試薬容器のウェル内の試薬液の液面を検出することに関するが、このような検出方法および装置を、処理水(例えば、脱イオン水)、廃液、またはさらには洗浄液などの他の液体の液位(上面位置)の検出に使用してもよい。
【0009】
一部の実施形態において、容量性液位検出システムを使用して、液位を判定し、表面液位が容量性液位検出システムによって検出される場所に基づいて、プローブを液体中に位置させる。しかしながら、このような容量性液位検出システムは、気泡または静電荷の存在などにより容量性液位検出が誤って作動した場合、または作動すべきときに作動できない場合に、エラーが生じやすい。一部の実施形態において、ロボット移送アームに連結され、ロボット移送アームにより可動であるプローブに組み込まれた容量性センサを使用する液位検出は、不正確なトリガが発生することがある。例えば、プローブの動きを生じさせるロボットの位置決めシステムが、位置センサエラー、断線、または他の部品の誤作動などにより誤作動することがある。その結果、検査が中止され、場合によっては予定変更されるため、時間の無駄になるおそれがある。さらに、複数のウェルを含む試薬パックなどの試薬容器が、間違った液位読取値により、誤って取り外されることがあり、使用可能な試薬がまだ入っている試薬パックを廃棄するおそれがある。したがって、このような誤った液位読取値は、早すぎる試薬パックの交換を開始することによって、試薬のコストを上昇させるおそれがある。
【0010】
検出センサの精度は、ハードウェアの誤作動、環境条件、または容器の異常を含む多くの追加の要因によって影響されることがある。容量性液位検出システムは、広範囲の適用に好適であり得るが、そのような影響を受けやすい。吸引に使用されると、誤った液位検出信号により、プローブが適切な吸引のための位置から外れるため、空気もしくは気泡を吸引することなどにより液体の移送量が不正確になり、または、ウェル内に深く挿入されすぎる可能性により、プローブの外面が試薬液で過剰に汚染されることがある。このようなプローブの外側の過剰な汚染を、本明細書では「キャリーオーバ」と呼ぶ。キャリーオーバは、プローブから滴下し得るが、一般に、試薬液の分配前に分析器の洗浄ステーションでプローブの外側から洗い流される。
【0011】
場合によっては、液位は、予測可能性を有しておらず、すなわち、本質的にランダムである。しかしながら、多くの場合、試薬容器内の液位のように、液位は、表面液位位置の以前の履歴に基づいて、いくらかの予測可能性を有する。これらの場合、液位検出の改良された方法が提供される。改良された液位検出方法は、ウェル内の液位の履歴知識と、ある期間にわたって各吸引により除去される量の推定値とを使用して、各吸引前に生じる予定の予想液位を判定する。特に、方法は、実際に測定された表面位置の値と多点フィルタリング技法とを使用して、現在の液位を判定する。例えば、多点フィルタリング技法は、液位センサの比例制御と正規化された液位出力とをフィードバックとして使用して、特定の補正を含む次の予想液位を生成することにより、液面の実際に測定された液位の測定値とゲイン値に基づく補正係数とに基づいて、予想液位を補正することができる。
【0012】
一部の実施形態において、これにより、液位センサの実際の液位出力読取値のフィルタリングが可能になるため、誤った読取値を検出して最小限に抑えることにより、誤った応答を最小限に抑えるまたは防ぐことができる。一部の実施形態において、多点フィルタが適用される前に明らかに外れている液位値(外れ値)を除去するプレフィルタを設けることにより、不正確な液位センサ読取値への反発性をさらに向上させることができる。
【0013】
方法が、時々、液位の誤った信号または予想しない変化が生じたと判定する(実際の液位の監視により判定される)と、プローブにより予想される次の予想液位が(例えば、下方に)調節されるため、次の吸引は液体内で行われる可能性があり、正常な吸引動作の継続を可能にする。一部の実施形態において、次の液位について理論液位からの調節(偏位)を制限するように、補正限界を使用することができる。
【0014】
本開示の方法および装置の実施形態を、試薬容器から試薬液を吸引するために使用することができるが、本明細書に記載の方法および装置を、液位の変化が検査で使用される液体の量に基づくときのように、液位の変化が半予測可能である場合に、任意の種類の容器内の液位を検出および/または追跡するために使用してもよい。
【0015】
したがって、第1の実施形態において、ウェル内の液位を検出する方法が提供される。方法は、ウェル内の液体の予想液位を調べることと、液体を含むウェル内に、プローブをウェル深さまで下降させることと、液体の測定液位を下降から測定および記録することと、多点フィルタリングに少なくとも部分的に基づいて次の予想液位を計算することとを含む。
【0016】
他の実施形態によれば、液位検出装置が提供される。液位検出装置は、ウェル内の液体の液位測定値を得るように構成されている液位センサと、液位測定値を受け、多点フィルタリングモジュールに従って次の予想液位を計算するように構成されているプロセッサとを含む。一部の実施形態において、プローブは、液体を吸引するように構成されている。
【0017】
さらに別の方法の実施形態において、ウェル内の液位を検出する方法が提供される。方法は、容器のウェル内の液体の予想液位を調べることと、ウェル内の液体の測定液位を測定および記録することと、追加または除去予定の液体の予想量に基づいて、例えば検査などに基づいてウェル内の液位を変化させることと、多点フィルタリングに少なくとも部分的に基づいて次の予想液位を計算することとを含む。
【0018】
本発明を実施するために考えられる最良の形態を含むいくつかの例示的な実施形態を示すことにより、本開示のさらに他の態様、構成、および利点が、以下の詳細な説明から容易に明らかになり得る。本開示は、他の異なる実施形態も可能であり得、そのいくつかの詳細を、すべて本開示の範囲から逸脱することなく、様々な点で修正することができる。したがって、図面および説明は、例示的なものであり、限定的なものと考えるべきではない。本開示は、特許請求の範囲およびその等価物の範囲に含まれるすべての修正、等価物、および代替物を包含するものである。
【0019】
本開示は、以下の図面と併せて詳細な説明を参照することにより、さらによく理解されるであろう。図面は必ずしも原寸に比例していない。本明細書において、同様の数字を使用して同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の実施形態による液位測定を含む吸引装置の概略図である。
図2】本開示の実施形態による、容器のウェル内の液体の液位を検出する方法を示す判定フローチャートである。
図3A】本開示の実施形態による、多点フィルタリングおよびエラー補正を使用して次の予想レベルを計算する方法を示す判定フローチャートである。
図3B】本開示の実施形態による多点フィルタリングの方法を示すフローチャートである。
図4A】本開示の実施形態による多点フィルタリングの方法を示す、データのプロットを示す図である。
図4B】本開示の実施形態による多点フィルタリングの方法を示す、データのプロットを示す図である。
図4C】本開示の実施形態による多点フィルタリングの方法を示す、データのプロットを示す図である。
図4D】本開示の実施形態による多点フィルタリングの方法を示す、データのプロットを示す図である。
図5A】本開示の実施形態による、連続吸引にわたる液位のグラフィカルプロットを示す図である。
図5B】本開示の実施形態による、バルク試薬容器のウェル内に挿入された液位測定部を含む吸引装置の一部の概略図である。
図6】実施形態による、ウェル内の液体の上液面の位置を検出する方法を示すフローチャートである。
図7】本開示の実施形態による、容器のウェル内の液体の液位を検出する方法を示す別のフローチャートである。
図8】実施形態による、ウェル内の液位を検出する方法を示す別のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
上記の問題を考慮して、生体液体中の検体または他の対象成分の存在および濃度を判定するために、分析器により生体液体の分析の一部として使用される液体試薬の液体吸引などにおいて、上液面の位置を正確に判定する必要性が依然として存在する。特に、本明細書に記載の装置および方法は、生体液体および液体試薬が吸引および分配され、液位の正確な測定基準を有することが望ましい、検体測定、検定、免疫測定、または他の検査を実行するように構成されている分析器における使用に有用性がある。
【0022】
一態様において、本開示の実施形態は、試薬液などの液体の容器内の上液面液位を判定する際のエラーを実質的に低減させることができる方法および装置を提供する。特に、本開示の実施形態は、多点フィルタによる正規化された液位読取値のフィルタリングによって液位を正確に判定することができる。本開示は、液体試薬の上液面の位置を検出する例を使用しているが、本開示は、分析器において使用される他の液体、例えば、処理水、時々空にしなければならない廃液レセプタクル内の廃液、ならびにピペットおよび/またはキュベットを洗浄するために使用する洗浄液の位置を正確に判定するために使用してもよく、これに適用可能である。
【0023】
特に、本発明者らは、吸引ポンプ、プローブ、およびプローブを動かすためのロボット装置を含む吸引装置において、誤った測定が行われることがあり、これがその後、次の液面液位に悪影響を与えるため、上面液位の不適切な計算が行われることがあることを見出した。例えば、プローブを試薬液の上面よりも数ミリメートル(例えば、2mm~6mm)下に位置付けて、キャリーアウトを最小限に抑えることが望ましい。しかしながら、測定液位が間違っている場合、例えば、実際の位置と比較して低すぎるように計算された場合には、プローブはウェルに深く潜り込みすぎるように指示され、キャリーアウトの量が過剰になり得る。さらに、コントローラによって、液体試薬をあまりにも早く除去するように指示されることがある。計算された液位が実際の位置と比較して高すぎる場合には、プローブは、空気または気泡を吸引することがある。したがって、多数回の吸引にわたって適切な動作を行い、ウェル内の試薬を完全に使用することを保証するために、正確な液位のアカウンティングを得ることが望ましい。
【0024】
したがって、本明細書の方法および装置は、実施形態により、液位検出の精度を向上させる。本明細書の図1図8を参照しながら、本方法および装置の実施形態のこれらおよびその他の態様ならびに構成について説明する。
【0025】
図1を参照すると、本開示による、液位検出装置101を含む吸引装置100の第1の実施形態が示されている。吸引装置100は、液体試薬107Rなどの液体を吸引するためにプローブ104を必要に応じて動かすように構成されている、任意の適切なロボット102を含むことができる。液体試薬107Rを吸引装置100によって分配することもできる。ロボット102は、1つまたはそれ以上の座標方向、例えばX、Y(紙面に入るおよび紙面から出る方向)ならびに/またはZにおけるプローブ104の運動を実行するように適用されている。ロボット102は、ロボット部材105(例えば、ロボットアーム、ブーム、フレームなど)を含むことができ、このロボット部材105に、プローブ104を運動するように取り付けることができる。図示のようにロボットアームであり得るロボット部材105は、回転アクチュエータ112の動作により固定軸112Aの周りで回転して、例えばX-Y平面における水平運動能力を与えることができる。場合により、または加えて、プローブ104に連結可能なロボット102のリニアアクチュエータなどの適切な垂直アクチュエータ109の動作によって、垂直Z軸に沿ったプローブ104の垂直運動を付与することができる。垂直アクチュエータ109は、ある量の液体試薬107Rを含む1つまたはそれ以上のウェル107Wを有する容器107(例えば、試薬容器)内にプローブ104を降下させ、容器107からプローブ104を上昇させるように動作可能であってよく、少なくとも一部が吸引され、試料容器108に含まれる生体液体の試料108Sと共に、反応ベッセル113に移送および分配されるようになっている。試料108Sは、血液、血清、血漿、脳脊髄液、髄液、間質液、尿などであってよい。他の液体を吸引および分配してもよい。加えて、または場合により、リニアアクチュエータなどのアクチュエータ106を設けて、X軸に沿った運動を付与してもよい。アクチュエータ106、109、112の各々を、コントローラ115の位置制御モジュール114の制御下で適切に作動させて、1次元、2次元、または3次元空間における所望の運動をプローブ104に付与することができる。
【0026】
アクチュエータ106、109、112の各々は、プローブ104を容器107から反応ベッセル113(例えば、キュベット)へ動かすように構成され、動作可能であってよい。別のプローブ(図示せず)または間に洗浄した同じプローブを使用して、試料108Sを試料容器108から吸引し、反応ベッセル113に分配することができる。所望の液体(例えば、液体試薬107R)をプローブ104の内部に吸引するように、吸引装置100を設けることができる。吸引される量は、最大約100μLであってよいが、一部の実施形態においては約25μL未満であってもよい。
【0027】
吸引装置100は、適切なモータ(図示せず)によって駆動することのできるピストン式ポンプなどのポンプ122を含むことができる。他の種類のポンプを使用してもよい。ポンプ122は、所定の期間に、ある吸引速度で液体試薬107Rをプローブ104内に吸引させ、圧力センサ130からライン134内に圧力信号を生み出すように構成される。吸引装置100によって実現可能な吸引速度の範囲は、毎秒約20マイクロリットル~毎秒約500マイクロリットルである。ポンプ122を、中空のテフロン(登録商標)チューブまたは他の適切に可撓性の導管のセクションなどの可撓性チューブ125によって、プローブ104に流体連結することができる。可撓性チューブ125およびプローブ104に、支持液体126(例えば、精製水)を充填して適切な液体支持を提供し、プローブ104の内部通路に液体(例えば、液体試薬107R)を吸引して反応ベッセル113に移送するための適切な真空圧力を発生させることができる。
【0028】
コントローラ115の吸引制御モジュール128は、ポンプ122を制御して所望の量の液体(例えば、液体試薬107R)をプローブ104の内部に引き込む(例えば、吸引する)ように構成され、動作可能であってもよい。コントローラ115の吸引制御モジュール128は、吸引装置100によって実行される分配動作を制御することもできる。吸引装置100は、他の従来の部品、例えば、1つまたはそれ以上の弁、アキュムレータ、分配器、または液体の吸引および分配を実現する他の水圧部品(図示せず)を含むことができる。液体をプローブ104内に吸引するための任意の適切な装置を使用することができる。例えば、使用可能な吸引分配システムが、例えば、米国特許第7,867,769号;米国特許第7,634,378号;米国特許第7,477,997号;米国特許第7,186,378号;米国特許第7,150,190号;および米国特許第6,370,942号に記載されている。
【0029】
実施形態によれば、液体(例えば、液体試薬107R)の吸引の全サイクルは、約300ms未満、またはさらには約200ms未満、または、一部の実施形態において、さらには約100ms未満で完了することができる。一部の実施形態において、吸引サイクルは、約40ms~約200msで完了することができる。他の吸引期間を使用してもよい。
【0030】
1つまたはそれ以上の実施形態によれば、吸引検証モジュール129を使用して、液体吸引の有効性を検証することもできる。例えば、吸引検証モジュール129は、低粘度エラーが存在するかどうかを判定することによって、吸引中にプローブ104内に空気が存在することを判定することができる。低粘度エラーは、吸引が行われ、ある圧力の予め決められたパラメータが満たされていない場合に記録される。低粘度エラーは、液体ではなく空気が吸引されたことを示す。別の例において、吸引検証モジュール129は、プローブ104内に詰まりまたは他の障害物が存在することを判定することができる。
【0031】
より詳細には、可撓性チューブ125内の吸引圧力を、圧力センサ130によって測定することができる。圧力センサ130は、ライン134内に生圧力信号を提供するように動作可能であり、構成されている。圧力センサ130を、可撓性チューブ125に沿った、またはポンプ122もしくはプローブ104に隣接する任意の適切な位置に位置付けることができる。従来通り、ライン134内の生圧力信号を調整するためにセンサ調整部を設けることができる。このセンサ調整部は、例えば、適切な増幅器、A/Dコンバータ、および適切なアンチエイリアスフィルタを含むことができる。
【0032】
本開示の実施形態によれば、図1および図2を参照して説明するように、吸引装置100は液位検出モジュール131をさらに含む。液位検出モジュール131は、ウェル107W内の液体試薬107Rの上液面107Tの液位を正確に判定するように構成されている。液位検出モジュール131は液位センサを含むことができる。液位センサ133は、例えば、プローブ104と一体の容量性センサであってもよく、プローブ先端が液体試薬107Rの上液面107Tに接触すると、電気信号が生成され、この電気信号が、ライン135によって伝えられ、液位検出モジュール131の液位回路136(例えば、容量性液位回路)によって区別される。容量性液位センサおよび容量性液位回路は、例えば、米国特許第4,977,786号、米国特許第5,550,059号、米国特許第7,150,190号、および米国特許第9,863,905号に記載されている。しかしながら、光学センサ、超音波センサ、導電率センサ、または抵抗センサなどの他の種類の液位センサおよび液位回路を使用してもよいことを理解すべきである。
【0033】
液位検出モジュール131は、多点液位フィルタモジュール138をさらに含む。多点液位フィルタモジュール138は、メモリ140から複数の液位読取値を取り出して、それらをコントローラ115のプロセッサ142などにおいて処理する方法200を含むことができる。例えば、一部の実施形態において、現在測定されている液位値および以前に得られた2つまたはそれ以上の液位測定値を使用することができる。特に、多点液位フィルタモジュール138は、コントローラ115内のソフトウェアでフィルタリングが行われるデジタルフィルタを含むことができる。
【0034】
次に、図2を参照しながら、多点液位フィルタモジュール138によって実行される動作およびフィルタリングについて説明する。図2は、液体試薬107Rを含むウェル107Wの液位を判定するときに方法200によって行われる様々な動作のフローチャートを示す。方法200は、ウェル107Wからの吸引が行われる予定であることをコントローラ115が判定したとき、例えば、検査のために試料を受けた分析器において順序付けられた検査が開始されたときに、開始する。方法200は、ブロック202における吸引シーケンスの開始から、ブロック204で、吸引が最初の吸引であるかどうかを判定することができる。答えがはいである場合には、ウェルは満杯であると仮定され、ブロック206で、予想ウェル液位(上液面位置と同義)に理論ウェル液位が割り当てられる。理論液位は、特定の試薬107Rが工場から含む液位、すなわち工場充填液位である。この値は、通常、かなり厳密に制御される。
【0035】
方法200によれば、ブロック204における答えがいいえである場合には、ブロック208で、予想ウェル液位に、方法200によるフィルタリング後にメモリ140に格納された最後の予想ウェル液位が割り当てられる。したがって、はいまたはいいえのいずれの場合にも、次の予想ウェル液位が、理論ウェル液位または最後の予想ウェル液位のいずれかで提供される。次に、ブロック210で、プローブ104を、ロボット102の動作によってウェル深さWDまで下降させる。動作時に、ロボット102は、吸引中、プローブ104を容器107の上方に位置させ、プローブ104を降下させることができる。容器107内への降下を、位置制御モジュール114の制御下で、プローブ104が容器107内の所望のウェル深さWDに到達するまで、垂直アクチュエータ109の動作によって生じさせることができる。
【0036】
ウェル深さWDにあるときに、方法200は、場合により、ウェル107Wが空であるかどうかを確かめるために検査することができる。空であることは、例えば、容器107の底部より数ミリメートル上方の予想液位であると判定される。したがって、方法200は、ブロック212で、ウェル107Wが空であるかどうかを判定する。ウェル107が空である(はい)場合には、ブロック214で操作者に空エラーを発することができ、新しいウェル107Wからの吸引を開始することができるように、または容器107を交換できるようになっている。ウェルが空でない(いいえ)場合には、ブロック216で実際の液位を測定および記録する。実際の液位は、プローブ104が下方に下降されたときに測定される液位である。例えば、プローブ104が上液面107Sに接触すると、液位回路136は、液位センサ133からの静電容量の変化などの変化を検出する。この液位は、実際の液位としてメモリ140に記録される。
【0037】
次にブロック218で、ある量の液体試薬107Rが、検査を実行するためにプローブ104内に吸引される。吸引装置100は、吸引制御モジュール128からの信号により動作して、特定の検査のための所定の量の液体試薬107Rをプローブ104の内部通路へ抜き出すことができる。ポンプ122が動作すると、容器107内の液体試薬107Rの液位を引き下げようとする(吸引する)。吸引制御モジュール128によって測定された所望の量の液体107Rがプローブ104内に受けられたと判定されると、ポンプ122を停止させて、液体試薬107Rのさらなる吸引が行われないようにすることができる。これは、ポンプ122を駆動するモータの適切なフィードバックセンサ(図示せず)によって、したがってポンプ122の位置に関するフィードバックを与えることによって、判定することができる。任意の適切な位置フィードバックを与えることができる。
【0038】
場合により、ブロック220で、吸引品質検証を実行することなどにより吸引が成功したことをさらに判定することが望ましい場合がある。吸引プロセス中、ライン134内の代表的な生の吸引圧力を、圧力センサ130により測定することができる(例えば、測定された吸引圧力)。このライン134内の生の測定圧力を、吸引検証モジュール129によって変換(A/D)、調整、およびフィルタリングして、調整された圧力信号を提供することができる。この調整された圧力信号を調べることによって、吸引品質、特に空気が吸引されたかどうかを正確に判定することができる。吸引検証は、米国特許第7,477,997号、米国特許第7,867,789号、米国特許第7,926,325号、米国特許出願公開第2015/0276534号、および米国特許出願公開第2016/0258972号に記載の方法などの任意の公知の方法により実現することができる。
【0039】
例えば、一部の実施形態において、ブロック220で吸引の有効性(例えば、品質)を検証するために、吸引中にわたって、調整された圧力信号を調整された圧力トレースの評価点で比較する。所望の評価点で、調整された圧力信号を予め決められた閾値と比較する。調整された圧力信号が予め決められた閾値よりも高い場合には、吸引は成功しているとみなすことができる。調整された圧力信号が予め決められた閾値よりも低い値を有する場合には、吸引は成功していないまたは不完全であるとみなすことができる。これは、いくらかの空気が吸引されたことを表すことができる。
【0040】
再び図2を参照すると、ブロック218における吸引後、吸引装置100は、ブロック222で液位検知移行(LLS移行)を探す。ブロック222でLLS移行があるかどうかを判定することは、図1の液位検出モジュール131の液位回路136によりライン135内の信号を調べることを伴う。例えば、プローブ104が下げられると、液位回路136によって検知される、所定の電圧値よりも高い電圧のスパイクは、LLS移行が存在する(はい)ことの肯定的な確認を示すことができる。ブロック222でLLS移行が検出されない(いいえ)場合には、ブロック220からの吸引品質検証を使用して、ブロック224で低粘度が生じたかどうかを判定する。ブロック224における低粘度は、所定の閾値未満であるなど予想値よりも低いライン134内の圧力読取値のように、粘度が予想よりもはるかに低かったことを意味する。ブロック224における低粘度(はい)の標示は、LLS移行が検出されなかったことだけでなく、空気が吸引された可能性があることも示す。この場合、ブロック226で検査が中止され、ブロック230で、次の予想液位に、メモリ140に格納された現在の予想レベル-ΔHが割り当てられる。この場合、ΔHは、現在行われている検査に必要な試薬液107Lの理論量に基づく液位の高さの理論的変化である。
【0041】
ブロック222でLLS移行が見つからず、ブロック224で低粘度が検出されなかった場合には、吸引が行われたが液位センサ133または液位回路136もしくはライン135が誤作動したと想定される。この場合、ブロック228でLL検知事象をエラーとしてログすることができる。しかしながら、この場合、図3で完全に説明するように、補正がゼロにされ、ブロック232で多点フィルタリングに基づいて次の予想液位が計算される。ブロック232における多点フィルタリングに基づく次の予想液位の計算に従って、ブロック234で次の予想液位がメモリ140に記録される。その後、方法200は、新しい検査のための次の吸引に向けてブロック208から継続する。
【0042】
次に、図3を参照しながら、方法200により使用されるブロック232の多点フィルタリングの詳細について説明する。最初に、ブロック336で実際に測定された液位をメモリ140から得る。この測定液位は、ブロック210におけるウェル深さWDへの下降からブロック216(図2)で記録された。位置制御モジュール114からのプローブ104のプローブ先端の位置は、以前に、液体試薬107Rの上液面107Sが液位センサ133および液位検出モジュール131の液位回路136によって検知されたときに記録された。
【0043】
次に、場合により、プレフィルタリングを適用して、実際に測定された液位が理にかなっているかどうかを判定することができる。ブロック338におけるプレフィルタリングは、多点フィルタリングの適用前に外れ値を除去するためのプレフィルタリングを含む。特に、ブロック338で、測定液位が、ブロック340で設定された予め決められたプレフィルタ窓内にあるかどうかを判定する。図5Aに最もよく示すように、ブロック340で、プレフィルタ窓を、測定LL値よりも高い予め設定された+Y値として確立および設定することができる。場合により、予め設定された値は、例えば、ウェル107Wについての以前の吸引中にわたるΔHのすべての理論的変化を合計し、それについての+/-公差を可能にすることによって提供することができる。ブロック340でプレフィルタ窓を予め設定するための他の手段を使用してもよい。ブロック338で、測定液位がブロック340で設定されたプレフィルタ窓内にない(いいえ)ことがわかった場合には、ブロック342で、本明細書で後述予定のゼロの補正が割り当てられる。ブロック338で、測定液位がブロック340で設定されたプレフィルタ窓内にある(はい)と判定された場合には、ブロック344で、多点フィルタリングを使用して測定液位がフィルタリングされる。
【0044】
ブロック344における多点フィルタリングについて、図4A図4Dに関してさらに説明する。本明細書で液位をLLと省略する。同様に、本明細書で複数の液位をLLsと省略する。特に、図4Aは、ウェル107Wの理論LL値を点線トレース440で示し、一連の検査にわたるウェル107Wの実際に測定されたLL値を実線トレース442で示す。図4Bは、ウェル107W内の正規化された理論LL値についてのデータセットを点線トレース440Nで示す。同様に、複数回の検査にわたるウェル107Wの正規化された測定LLデータを実線トレース442Nとして示す。データセット全体が示されている。しかしながら、方法は、新しい各検査データ点についての正規化されたLLを点ごとに計算する。LL値は、以下のような正規化式に従って各検査nについて正規化される。
正規化されたLL=測定LL-理論LL
【0045】
図4Cは、一連の検査にわたる正規化およびフィルタリングされた理論液位を示す点線トレース440NFを示す。図4Cは、一連の検査について正規化およびフィルタリングされた実測値の正規化およびフィルタリングされたデータセットの実線トレース442NFも示す。
【0046】
より詳細には、検査データの多点フィルタリングが図3Bに最もよく示されている。図3Bに示すように、ブロック344の多点フィルタリングは、ブロック346で、上記の式に従って、測定LLを検査のために最初に正規化することを伴う。検査ごとの理論LLの連続記録をメモリ140内に維持することができる。次に、ブロック348で、正規化されフィルタリングされたLLが計算される。正規化されフィルタリングされたLLは、正規化されたデータ点nおよび複数の以前のm-1個の正規化されたデータ点に基づくことができ、mは3またはそれ以上、10またはそれ以上、15またはそれ以上の正規化された測定LLデータ点であるようになっている。m個のデータ点が、点nと共に連続して得られる。一部の実施形態において、多点フィルタは中央フィルタである。特に、中央フィルタは、n値を直接使用するのではなく、最新のn値を含む、以前のm個の正規化された液位測定値すべての中央値を、新しい中央値として使用する。この新しい中央値は、図4Cに示すように、正規化されフィルタリングされたLL値である。したがって、フィルタリングにより、誤ったLL測定値の影響を最小限に抑えることが効果的である。図示するように、データ点nは、以前の検査からの中央データ点の集合の端にある。データ点を含むm個のデータ点の中央値が、固定数mのデータ点の集合として示され、mは経験によって設定することができる。一部の実施形態において、mは、例えば、3~40、またはさらには5~20であってもよい。一部の実施形態において、中央フィルタではなく、m個のデータ点のモード値を使用するモードフィルタを使用してもよく、またはm個のデータ点の平均を使用する平均フィルタを使用してもよいが、中央フィルタが最も望ましい。
【0047】
次に、ブロック350で、正規化されフィルタリングされたLLが非正規化されて、フィルタリングされたLL値を得る。非正規化は、以下の式に従って行われる。
フィルタリングされたLL=フィルタリングされ正規化されたLL+理論LL
【0048】
図4Dは、理論値を加減することによる非正規化されたデータを示す。したがって、点線トレース440Fは、一連の検査にわたるウェル107Wについての非正規化された理論LLを示す。同様に、実線トレース442Fは、一連の検査にわたるウェル107Wについての非正規化されフィルタリングされた測定LLを示す。
【0049】
再び図3Aを参照すると、ブロック344で多点フィルタリングが完了した後、方法は、ブロック352でエラーを判定することができる。エラーの判定は、以下のように計算することができる。
エラー=FLL-予想LL
【0050】
エラーが判定されると、ブロック354で、適用予定のエラー補正を判定することができる。エラー補正を以下のように判定することができる。
エラー補正=ゲイン×エラー
【0051】
ゲインは、実験的に決定される一定値であってよい。ゲインは、例えば、0.05~1.5、またはさらには0.05~0.5の値を有することができる。著しく異なる容器システムに適用される場合、例えばバルク容器内の液位を監視するときには、ゲインと中央フィルタの点の数との両方が、液位の変化率に対するデータ点の数の関数であるため、上記の範囲を外れて変化し得る。
【0052】
次に、次の予想LLn+1値が計算される。次の予想LLn+1を以下のように計算することができる。
【0053】
次の予想LLn+1=予想LL-(検査LLの変化+キャリーアウトLLの変化)+エラー補正
したがって、次の予想LLn+1値は、多点フィルタリングに少なくとも部分的に基づくことができるが、加えて、エラー補正に基づくことができる。検査LLの変化は、検査nのために吸引されている液体試薬107Rの量に基づくLLの低下に基づく。一般的な意味のキャリーアウトは、プローブ104上の試薬キャリーアウトなどによるLLの予想損失、またはさらには蒸発によるLLの損失のアカウンティングである。プローブのキャリーアウトの場合、キャリーアウトLLの変化(キャリーアウト)は、プローブ104の外側の液体試薬107RのキャリーアウトによるLLの変化の量に基づき、これは、プローブ104をウェル深さWD(図1参照)まで動かし、複数回引き抜いて洗浄し、その後、吸引ごとの平均キャリーアウトを判定することに基づいて、実験的に決定された設定値であってよい。蒸発キャリーアウトを実験的に設定してもよい。したがって、一部の実施形態において、キャリーアウトは、試薬キャリーアウトおよび/または蒸発キャリーアウトの両方を含むことができる。したがって、次の予想LLn+1値の計算は、キャリーアウトを考慮することができる。
【0054】
次の予想LLn+1値が計算されると、ブロック358で、次の予想LLn+1値を調節限界と比べて検査することができる。図4Dに示すように、調節限界440Lを、理論値440FよりもXmm低い(例えば、5~10mm低い)nについての値に設定することができる。したがって、ブロック358で次の予想LLn+1が調節限界440L未満である(はい)場合には、ブロック360で次の予想LLn+1がn+1の調節限界に等しくなるように設定される。その後、図2のブロック234でこの限界値が記録される。あるいは、ブロック358で次の予想LLn+1が調節限界440L以上である(いいえ)場合には、図2のブロック234で次の予想LLn+1が記録される。ブロック234は、例示の目的で図3Aにコピーされている。
【0055】
図5Aは、連続吸引にわたるLLのプロット570と、ある異常が生じたときに起きることをグラフで示す。見て取れるように、実測値571が菱形で示されている。正規化されフィルタリングされた中央トレース542が、実線で示されている。上側プレフィルタ572が示され、これは、経験に基づいて、例えば、検査のために正規化されフィルタリングされたLL値より高い値+Yに設定できるプレフィルタ限界を有する。したがって、LL値574のような点は中央フィルタによって無視され、予想LLは、単にΔH+キャリーアウト分だけ下方に調節される。上側プレフィルタ572は、予想LLを液体試薬107Rから引き出すことによる大きいLL検知ノイズまたは気泡を軽減する。
【0056】
+Yに設定されたプレフィルタ限界の単一の上限レベルが図5Aに示されているが、上側プレフィルタ572は、複数のプレフィルタ限界レベルを有することができ、例えば、580でウェル107Wへのアクセスを開始した後に、複数回の吸引のために、より広範囲の+Yのプレフィルタ限界を可能にして、ウェル107W内のより大きい充填変化を可能にする。同様に、点582などで空気吸引により調節が行われた後に、複数回の吸引のために、より広い+Yのプレフィルタ限界値を可能にすることができる。したがって、上側プレフィルタ572は、容器107の状態に基づいて調節できるプレフィルタ限界を含む。例えば、例えば、容器107に最初にアクセスしたときに、容器の状態は満杯であってもよく、または、容器の状態は、点582の後と同様に、空気が吸引されたばかりであってもよい。追加のプレフィルタ限界(図示せず)を、ウェル107Wの底部よりも上方の予め設定された位置に設定することができる。
【0057】
加えて、間違った圧力エラーによりプローブ104を深く押しすぎることを防ぐ、正規化された下側調節限界578が示されている。正規化された予想LLの値は、この正規化された調節限界578と交差することはできない。調節限界を、任意の望ましいレベルXに設定することができ、ここで、Xは、例えば5mm~10mmであってもよい。
【0058】
点580における検査の開始時に見て取れるように、以前に測定されたLL値はないため、予想LLと理論正規化値とは同じである。一部の実施形態において、中央フィルタを、フィルタの約半分を充填するのに十分なゼロ(例えば、15点中央フィルタについて8個のゼロ)でプレポピュレートすることができる。その後、中央フィルタは9番目の点まで反応せず、その後、中央フィルタは、動作を開始し、フィルタリングされた予想LL値542を調節することができる。当然、中央フィルタをより少ないゼロでロードして、より少ない回数の吸引で中央フィルタに反応を開始させてもよい。しかしながら、この代償として、ノイズを除去することができなくなる。場合により、さらに多くのゼロを中央フィルタにプレポピュレートして、フィルタがより多くの回数の吸引後に反応し、ノイズの除去に優れているようにしてもよい。
【0059】
LL測定値582に空気吸引を示す事象も示されている。空気吸引が判定されると、プローブ104は、次の吸引を新しい位置へX/2または他の適切な値だけ下方に調節するため、プローブ104の先端はLLより約X/2だけ下になる。また、プレフィルタ値572が、正規化されフィルタリングされたLLより高い値Yなどにリセットされる。ここでも、3つのデータ点(LL測定値)が中央フィルタに含まれるまで、予想LLと理論LLとは同一であり、その後、中央フィルタリングは、次の予想LLの調節を開始することができる。
【0060】
図5Bは、バルク容器507のウェル507W内に挿入された液位測定部および液位センサ133を含む吸引装置100の一部の概略図である。本明細書に記載の方法200は、わずかな修正により、バルク容器507に含まれるバルク液体507Bの液位の正確な測定に等しく適用できる。方法800は、液体の運動または振動によるバルク液体507Bの波またははねに起因するエラーを除去することができる。さらに、図8における本明細書に記載の方法800は、液体がプローブ104によりアクセスされ吸引されるか分配されるかにかかわらず、処理水容器内の処理液(例えば、脱イオン水)、洗浄液容器内の洗浄液、廃液容器内の廃液、または液位が変化する(例えば、増減する)任意の他の容器の液位の正確な測定に等しく適用できる。これらの例において、方法800は、弁509が開閉したときまたは廃液が注入されたときなどの液体の流入または流出によるバルク液体507Bの波またははねに起因するエラーを除去することができる。
【0061】
次に図6を参照すると、本開示の広範囲の方法が示されている。方法600は、602で、ウェル(例えば、ウェル107W、507W)内の液体(例えば、液体試薬107R)の予想液位を調べることを含む。検査が最初の検査である場合には、液位は理論LLである。少なくとも3つの読取値が取られた後、予想LLは、メモリ140に格納された、フィルタリングされたLLn+1になる。方法600は、ブロック604で、プローブ(例えば、プローブ104)を、液体(例えば、液体試薬107R)を含むウェル(例えば、ウェル107W、507W)内にウェル深さ(WD)まで下降させることをさらに含む。方法600は、ブロック606で、液体(例えば、液体試薬107R)の測定液位(例えば、測定LL)を下降から測定および記録することと;ブロック608で、多点フィルタリングに少なくとも部分的に基づいて次の予想液位(例えば、次の予想LLn+1)を計算することとを含む。しかしながら、計算はエラー補正も含むことができ、すなわち、多点フィルタリングとエラー補正との組合せを含むことができる。多点フィルタリングは図3Bで説明されている。多点フィルタリングとエラー補正との組合せは、図3Aを参照して図示および説明されている。一部の実施形態において、方法600は、ブロック610で、ある量の液体を検査のために吸引することと、ブロック612で、その量の液体を反応ベッセル(例えば、反応ベッセル113)に分配することとを含む。
【0062】
一部の実施形態において、例えば、図5Bに示すようなバルク容器507を使用する例において、プローブ104を使用することなく、バルク液体507Bをバルク容器507に追加するまたはバルク容器507から取り去ることができる。例えば、バルク液体507Bを、バルク容器507の側面または底面に形成された固定ポートまたは噴出口を通って追加するまたは取り去ることができる。例えば、点線で示す弁を弁509として有する固定ポートを使用して、バルク液体507Bを、検査などで使用するためにバルク容器507から引き抜くことができる。同様に、完了したばかりの検査による廃液を追加することができる。さらに、弁509などにより洗浄液を引き抜いて、例えば検査で使用することができる。このようなバルク容器507内の液位は、多点フィルタリングを含む方法を使用してより正確に記録することができる。
【0063】
この例において、上液面の液位LLを検出するためにLLセンサが含まれる。任意の適切なLLセンサを使用することができる。LLセンサは、センサ軸上のフロートなどの定置検知デバイス、容量性センサ、またはさらには、重量を測定および変換して測定LLを得ることができる、重量を測定する精密スケールであってもよい。この場合、重量スケールも、LLセンサであると考えられる。本方法700、800を使用して、次の予想液位(例えば、次の予想LLn+1)を正確に判定し、したがって、より正確な液位の経時的推定を提供することができる。
【0064】
次に図7を参照すると、容器(例えば、バルク容器507)のウェル507W内の液体(例えば、処理液、洗浄液、または廃液)の液位を検出する方法700が示されている。方法700は、必須でない態様が除去され、噴出口に分配すること、またはバルク容器507の側面もしくは底面に位置するポートを通って追加もしくは除去することにより、液体が除去または追加されることを除いて、図2で説明した方法200と同一である。図2と比較すると、ブロック718を除いて同一の数字が同一のブロックに使用され、ブロック718は、プローブ104による吸引とは異なり、検査などに基づく予想液位の変化を有するウェル内の液位の変化を表記している。
【0065】
したがって、広義では、図8に示すように、方法は、ブロック802で、容器(例えば、バルク容器507)のウェル(例えば、ウェル507W)内の液体(例えば、バルク液体507B)の予想液位(例えば、予想LL)を調べることを含む。方法800は、ブロック804で、ウェル(例えば、ウェル507W)内の液体(例えば、バルク液体507B)の測定液位を測定および記録することを含む。方法800によれば、ブロック806は、追加または除去予定の液体の予想量に基づいてウェル内の液位を変化させることを含む。追加または除去予定の液体の予想量は、検査の要件に基づくことができる。例えば、検査は、規定量の処理液を検査のために必要とし得る。同様に、液体が洗浄液である場合には、規定量の洗浄液を洗浄動作のために使用することができる。液体が廃液である場合には、検査ごとに、ウェル507Wに追加される廃液の予想量である規定量の廃液があってもよい。検査は、本明細書で説明したように、生体液体の検査であってもよく、バルク液体507Bが規定量で検査において使用される。したがって、バルク液体507Bが処理液または洗浄液である場合、検査ごとに規定の目標量を使用する必要がある。前の方法のように、方法800は、ブロック808で、多点フィルタリングに少なくとも部分的に基づいて次の予想液位(例えば、次の予想LLn+1)を計算することを伴い、これは図3Bで説明されている。図3Aのブロック352~356に示すように、多点フィルタリングに加えてエラー補正を使用してもよい。ブロック340、338、342およびブロック358、360にそれぞれに示すように、プレフィルタ窓および調節限界を使用してもよい。
【0066】
一部の例示的な実施形態を示したが、当業者は、本開示の範囲内で多くの変形が可能であることを理解するであろう。したがって、特許請求の範囲およびその等価物によって示されるものとしてのみ本開示を限定することが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図6
図7
図8
【国際調査報告】