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▶ ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】新規なヒートパイプ構成
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20231023BHJP
   H01L 23/427 20060101ALI20231023BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F28D15/02 101M
F28D15/02 101Z
F28D15/02 104A
F28D15/02 L ZAB
H01L23/46 B
H05K7/20 R
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521761
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-05-09
(86)【国際出願番号】 US2021055312
(87)【国際公開番号】W WO2022082067
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/121546
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500575824
【氏名又は名称】ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】Honeywell International Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】リウ、タオ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ、ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リン、エンシン
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322DB08
5E322EA11
5E322FA09
5F136CC12
5F136CC26
(57)【要約】

気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプであって、
(a)少なくとも1つの閉鎖式パイプであって、
(i)凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションと流体連通している第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクションと流体連通している少なくとも第2の蒸発器セクションとを含む、少なくとも1つの閉鎖式パイプと、
(b)当該ヒートパイプに収容された冷媒と、
(c)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1の蒸発器セクションに導く少なくとも第1の液体流路と、
(d)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第2の部分を当該第2の蒸発器セクションであって、当該第2の蒸発器セクションが当該第1の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを含む、当該第2の蒸発器セクションに導く少なくとも第2の液体流路とを備える、ヒートパイプが開示される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプであって、
(a)少なくとも1つの閉鎖式パイプであって、
(i)凝縮器セクションと、
(ii)前記凝縮器セクションと流体連通している第1の蒸発器セクションと、
(iii)前記凝縮器セクションと流体連通している少なくとも第2の蒸発器セクションとを含む、少なくとも1つの閉鎖式パイプと、
(b)前記ヒートパイプに収容された冷媒と、
(c)前記凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を前記第1の蒸発器セクションに導く少なくとも第1の液体流路と、
(d)前記凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第2の部分を前記第2の蒸発器セクションであって、前記第2の蒸発器セクションが前記第1の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを含む、前記第2の蒸発器セクションに導く少なくとも第2の液体流路とを備える、ヒートパイプ。
【請求項2】
前記ヒートパイプが、少なくとも部分的に重力を使用して前記凝縮器セクションから前記第1及び前記第2の蒸発器セクションに冷媒液体を戻すように構成される、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記第2の液体流路が、前記ヒートパイプ内に1つ以上の障害物であって、垂直方向に対して斜めに配向され、前記液体冷媒の少なくとも一部を前記凝縮器セクションから前記第2の蒸発器に向かって迂回させる、1つ以上の障害物を備える、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記第2の蒸発器セクションが、前記第1の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを備える、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項5】
前記凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第3の部分を前記第3の蒸発器セクションに導く少なくとも第3の液体流路であって、(i)前記第3の液体流路が、垂直方向に対して斜めに配向され、前記液体冷媒の少なくとも一部を前記凝縮器セクションから前記第3の蒸発器に向かって迂回させる1つ又は複数の障害物を含み、(ii)前記第3の蒸発器セクションが、前記第1の蒸発器セクションとは異なる位置で、かつ前記第2の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを含む、少なくとも第3の液体流路を更に備える、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項6】
前記第2の蒸発器セクション及び/又は前記第3の蒸発器セクションの少なくとも一方が、前記第1の蒸発器セクションの容積の約0.7倍(約70%)以下の総容積を有する、請求項5に記載のヒートパイプ。
【請求項7】
前記液体冷媒が、実質的にR-1233zd(E)からなる、請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項8】
プリント回路基板(PCB)であって、
(a)第1の位置で前記PCBに取り付けられた少なくとも第1の熱発生構成要素と、
(b)前記第1の位置とは異なる第2の位置で前記PCBに取り付けられた少なくとも第2の熱発生構成要素と、
(c)閉鎖式パイプを含む少なくとも1つのヒートパイプであって、
(i)前記ヒートパイプの外側に位置する冷却流体と熱的に連通する凝縮器セクションと、
(ii)前記第1の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)前記凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を前記第1の蒸発器セクション内の前記リザーバに導く第1の液体流路と、
(iii)前記第1のリザーバとは異なる前記ヒートパイプに沿った位置に第2のリザーバを含み、前記少なくとも前記第2の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒の第2の部分を収容する少なくとも第2の蒸発器セクションと、
(iv)前記凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の前記第2の部分を前記第2の蒸発器セクション内の前記リザーバに導く少なくとも第2の液体流路とを含む、少なくとも1つのヒートパイプとを備える、プリント回路基板。
【請求項9】
前記第1又は第2の熱発生構成要素の少なくとも1つが、前記PCB上の5Gチップである、請求項8に記載のPCBを含む電気通信デバイス。
【請求項10】
気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプの使用を含む熱を伝達する方法であって、前記方法が、
(a)閉鎖式ヒートパイプであって、
(i)前記ヒートパイプの外側に位置するヒートシンクと熱伝達連通する凝縮器セクションと、
(ii)前記凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)前記凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第2のリザーバを含む少なくとも第2の蒸発器セクションと、
(iv)前記凝縮器セクションから前記第1のリザーバに導く少なくとも第1の液体流路と、
(v)前記凝縮器セクションから前記第2のリザーバに導く少なくとも第2の液体流路とを含む、閉鎖式ヒートパイプを提供することと、
(b)前記第1のリザーバ内の前記液体冷媒と熱的に接触することによって第1の構成要素又はデバイスを冷却し、前記凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(c)前記第2のリザーバ内の前記液体冷媒と熱的に接触することによって第2の構成要素又はデバイスを冷却し、前記凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(d)前記凝縮器セクション内で冷媒蒸気を凝縮させて凝縮された液体冷媒を生成し、前記第1の液体流路を介して前記凝縮された液体冷媒の第1の部分を前記第1のリザーバに戻し、前記第2の液体流路を介して前記凝縮された液体冷媒の第2の部分を前記第2のリザーバに戻すこととを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(相互参照)
本出願は、2020年10月16日に出願されたPCT/CN2020/121546号の優先的な利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、新規なヒートパイプ構成に関し、特に、それを利用する方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
本明細書で使用される場合、「ヒートパイプ」という用語は、蒸発セクションに液体熱伝達流体を含み、かつ凝縮セクションに蒸気作動流体を含む熱伝達デバイスを意味し、この熱伝達デバイスは、蒸発の動力を使用して蒸気流体を蒸発セクションから凝縮セクションに移動させ、エネルギー入力をほとんど、又は全く使用せずに液体作動流体を蒸発セクションに戻す。
【0004】
ヒートパイプの最も一般的なタイプのうちの1つが図Aに示されており、これは、重力戻りヒートパイプ又はサーモサイフォンヒートパイプとして一般的に知られている。このタイプのヒートパイプは、液体作動流体を凝縮セクションから蒸発セクションに戻すのに、少なくとも部分的に重力に依存する。図Aに示されるように、典型的な構成では、ヒートパイプは、垂直になるように配置された密閉容器であり、蒸発セクションがパイプの下部に位置し、凝縮セクションがパイプの上部に位置する。蒸発セクションは、冷却されるアイテム、物体又は流体から熱を吸収し、それによって沸騰して作動流体の蒸気を形成する液体形態の作動流体を収容する。蒸発セクションにおける作動流体の沸騰は、圧力差を引き起こし、蒸気を凝縮セクションに送る。凝縮セクション内の蒸気作動流体は、選択されたヒートシンク(例えば、周囲空気)に熱を放出し、それによって凝縮して、ヒートパイプの内側表面又はその近傍に液体作動流体を形成する。次いで、この液体は、重力の下で蒸発セクションに戻り、そこに収容された液体作動流体と合流する。
【0005】
前述のように、沸騰は、蒸発セクションの蒸気の質量を増加させ、蒸気の質量は凝縮セクションで減少するため、蒸気を沸騰セクションから凝縮セクションに送る圧力差が作られ、したがって蒸発器セクションから凝縮器セクションに作動流体を輸送するためのエネルギー入力(冷却動作で吸収される熱以外)を必要としない連続した熱伝達サイクルが作られる。
【0006】
いくつかの用途では、ヒートパイプを水平に又は傾斜して配置することが望ましい。ヒートパイプが完全に水平に配置されている場合、ヒートパイプは、毛細管戻りヒートパイプ、又はウィッキングヒートパイプとして知られていることが一般的であり、その一例が図Bに示されている。
【0007】
図Bに示すタイプの配置では、熱が蒸発セクション(図Bの左側に表示)において液体作動流体に吸収され、液体を沸騰させ、これにより、上記のように蒸気を凝縮セクションに移動させる圧力差が提供される。しかしながら、重力のみに依存して凝縮液体作動流体を戻すのではなく、毛細管作用により凝縮作動流体の流れを凝縮セクションから蒸発セクションに戻すウィッキング構造が、容器壁に隣接して設けられている。図Bの毛細管戻りヒートパイプは垂直位置で示されているが、毛細管戻りヒートパイプは、所与の用途に必要とされる必要性及び特定の幾何学的形状及び毛細管力に応じて、事実上任意の配向に配向できることが理解されよう。したがって、本明細書で使用される「毛細管戻り」ヒートパイプという用語は、ヒートパイプの配向とは無関係に毛細管戻り力を有するヒートパイプを含む。
【0008】
作動流体の凝縮液を蒸発セクションに戻すために追加のエネルギーをほとんど又は全く使用しない他のヒートパイプ構成には、電気流体力学ヒートパイプ(動電力を利用する)、電気浸透ヒートパイプ、磁気流体力学ヒートパイプ(磁力を利用する)、浸透ヒートパイプ、及び振動ヒートパイプが含まれる。
【0009】
沸騰及び凝縮の非常に高い熱伝達係数の結果として、ヒートパイプは、非常に効果的な熱伝導体である。したがって、ヒートパイプは、多くの用途、特に電子デバイスの冷却に使用される。ヒートパイプ冷却の1つの重要な用途は、プリント回路基板上に取り付けられた、例えばマイクロチップを含む複数の構成要素から熱を排除することである。例示の目的のために、垂直に取り付けられたプリント回路基板(PCB)C1が存在し、この基板は、プリント回路基板上に取り付けられた、冷却されるべき3つの構成要素C2、C3及びC4を有する。構成要素C2、C3、及びC4は、動作中に熱を発生しており、構成要素C2、C3、及びC4の各々と熱的に連通するように取り付けられた重力戻りヒートパイプC5によってそこから熱を排除する必要がある。従来のヒートパイプに関連する制限のために、これまでは、ヒートパイプの下部は作動流体の液相が主に存在する場所であるため、熱発生構成要素がヒートパイプの下部に確実に隣接できるように、回路基板上に位置するように回路基板の構成を設計することが一般的であった。更に、従来の実施によれば、ヒートパイプ全体の性能にも重要である、凝縮器セクションのサイズ及び性能を犠牲にすることなく、蒸発器セクションのサイズを実質的に拡大させることは不可能であった。
【0010】
本出願人らはまた、本明細書に開示されるような新規なヒートパイプ構成を利用することによって、PCB冷却性能の改善、及びPCBレイアウトを設計するプロセスさえも劇的に改善され得ることを理解するに至った。更に、本発明の新規なヒートパイプ構成は、PCB及び電子システム以外の多くのタイプのデバイス及びシステムを冷却するために有利に使用することができる。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプであって、
(a)少なくとも1つの閉鎖式パイプであって、
(i)凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションと流体連通している第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクションと流体連通している少なくとも第2の蒸発器セクションとを含む、少なくとも1つの閉鎖式パイプと、
(b)当該ヒートパイプに収容された冷媒と、
(c)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1の蒸発器セクションに導く少なくとも第1の液体流路と、
(d)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第2の部分を当該第2の蒸発器セクションであって、当該第2の蒸発器セクションが当該第1の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを含む、当該第2の蒸発器セクションに導く少なくとも第2の液体流路とを備える、ヒートパイプを提供する。
便宜上、この段落によるヒートパイプは、本明細書ではヒートパイプ1と呼ばれる。
【0012】
本発明は、気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプであって、
(a)少なくとも1つの閉鎖式パイプであって、
(i)凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションと流体連通している第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクションと流体連通している少なくとも第2の蒸発器セクションとを含む、少なくとも1つの閉鎖式パイプと、
(b)当該ヒートパイプであって、ヒートパイプが、少なくとも部分的に重力を使用して当該凝縮器セクションから当該第1及び当該第2の蒸発器セクションに冷媒液体を戻すように構成される、当該ヒートパイプ内に収容された冷媒と、
(c)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1の蒸発器セクションに導く少なくとも第1の液体流路と、
(d)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第2の部分を当該第2の蒸発器セクションに導く少なくとも第2の液体流路であって、(i)当該第2の液体流路が、垂直方向に対して斜めに配向され、当該液体冷媒の少なくとも一部を当該凝縮器セクションから当該第2の蒸発器に向かって迂回させる1つ以上の障害物を含み、当該第2の蒸発器セクションが、当該第1の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを含む、少なくとも第2の液体流路とを備える、ヒートパイプを提供する。
便宜上、この段落によるヒートパイプは、本明細書ではヒートパイプ2と呼ばれる。
【0013】
本発明は、気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプであって、
(a)少なくとも1つの閉鎖式パイプであって、
(i)重力を少なくとも部分的に使用して、冷媒液体を当該凝縮器セクションから当該蒸発器セクションに戻す凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションと流体連通している第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクションと流体連通し、当該第1の蒸発器セクションと当該凝縮器セクションとの中間に位置する第2の蒸発器セクションと、
(iv)当該凝縮器セクションと流体連通し、当該第1の蒸発器セクションと当該凝縮器セクションとの中間に位置する、少なくとも第3の蒸発器セクションとを含む、少なくとも1つの閉鎖式パイプと、
(b)当該ヒートパイプであって、ヒートパイプが、少なくとも部分的に重力を使用して当該凝縮器セクションから当該第1、第2、及び第3の蒸発器セクションの各々に冷媒液体を戻すように構成される、当該ヒートパイプ内に収容された冷媒と、
(c)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1の蒸発器セクションに導く少なくとも第1の液体流路と、
(d)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第2の部分を当該第2の蒸発器セクションに導く少なくとも第2の液体流路であって、(i)当該第2の液体流路が、垂直方向に対して斜めに配向され、当該液体冷媒の少なくとも一部を当該凝縮器セクションから当該第2の蒸発器に向かって迂回させる1つ以上の障害物を含み、当該第2の蒸発器セクションが、当該第1の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを含む、少なくとも第2の液体流路と、
(e)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第3の部分を当該第3の蒸発器セクションに導く少なくとも第3の液体流路であって、(i)当該第3の液体流路が、垂直方向に対して斜めに配向され、当該液体冷媒の少なくとも一部を当該凝縮器セクションから当該第3の蒸発器に向かって迂回させる1つ以上の障害物を含み、当該第3の蒸発器セクションが、当該第1の蒸発器セクションとは異なる位置で、かつ当該第2の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを含む、少なくとも第3の液体流路とを備える、ヒートパイプを提供する。便宜上、この段落によるヒートパイプは、本明細書ではヒートパイプ3と呼ばれる。
【0014】
本発明は、気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプであって、
(a)少なくとも1つの閉鎖式パイプであって、
(i)凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションと流体連通している第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクションと流体連通している少なくとも第2の蒸発器セクションとを含む、少なくとも1つの閉鎖式パイプと、
(b)当該ヒートパイプに収容された冷媒と、
(c)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1の蒸発器セクションに導く少なくとも第1の液体流路と、
(d)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第2の部分を当該第2の蒸発器セクションであって、当該第2の蒸発器セクションが当該第1の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを含み、当該第2の蒸発器セクションが第1の蒸発器セクションの容積の約70%以下、又は約60%以下、又は約50%以下、又は約40%以下である総容積を有する、当該第2の蒸発器セクションに導く少なくとも第2の液体流路とを備える、ヒートパイプを提供する。
便宜上、この段落によるヒートパイプは、本明細書ではヒートパイプ4と呼ばれる。
【0015】
本発明は、プリント回路基板(PCB)であって、
(a)第1の位置でPCBに取り付けられた少なくとも第1の熱発生構成要素と、
(b)当該第1の位置とは異なる第2の位置でPCBに取り付けられた少なくとも第2の熱発生構成要素と、
(c)閉鎖式パイプを含む少なくとも1つのヒートパイプであって、
(i)当該ヒートパイプの外側に位置する冷却流体と熱的に連通する凝縮器セクションと、
(ii)当該第1の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1の蒸発器セクション内の当該リザーバに導く第1の液体流路と、
(iii)当該第1のリザーバとは異なる当該ヒートパイプに沿った位置に第2のリザーバを含み、当該少なくとも当該第2の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒の第2の部分を収容する少なくとも第2の蒸発器セクションと、
(iv)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の当該第2の部分を当該第2の蒸発器セクション内の当該リザーバに導く少なくとも第2の液体流路とを含む、少なくとも1つのヒートパイプとを備える、プリント回路基板(PCB)を提供する。
便宜上、本段落によるPCBは、本明細書ではPCB1と呼ばれる。
【0016】
本発明は、プリント回路基板(PCB)であって、
(a)第1の位置でPCBに取り付けられた少なくとも第1の熱発生構成要素と、
(b)当該第1の位置とは異なる第2の位置でPCBに取り付けられた少なくとも第2の熱発生構成要素と、
(c)閉鎖式パイプを含むヒートパイプであって、
(i)当該ヒートパイプの外側に位置する冷却流体と熱的に連通し、蒸気冷媒が液体冷媒に凝縮される凝縮器セクションと、
(ii)当該第1の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションであって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第1の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1の蒸発器セクション内の当該リザーバに導く少なくとも第1の液体流路と、
(iii)当該第1のリザーバとは異なる当該ヒートパイプに沿った位置に第2のリザーバを含み、当該少なくとも当該第2の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒の第2の部分を収容する少なくとも第2の蒸発器セクションであって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第2の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、少なくとも第2の蒸発器セクションと、
(iv)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の当該第2の部分を当該第2の蒸発器セクション内の当該リザーバに導く少なくとも第2の液体流路とを含む、ヒートパイプとを備える、プリント回路基板(PCB)を提供する。
便宜上、本段落によるPCBは、本明細書ではPCB2と呼ばれる。
【0017】
本発明は、プリント回路基板(PCB)であって、
(a)第1の位置でPCBに取り付けられた少なくとも第1の熱発生構成要素と、
(b)当該第1の位置の上方の第2の位置でPCBに取り付けられた第2の熱発生構成要素と、
(c)当該第1の位置の上方の第3の位置でPCBに取り付けられた少なくとも第3の熱発生構成要素と、
(d)閉鎖式パイプを含むヒートパイプであって、
(i)当該ヒートパイプの外側に位置する冷却流体と熱的に連通し、蒸気冷媒が液体冷媒に凝縮される凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションの下方に位置し、当該第1の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションであって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第1の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1の蒸発器セクション内の当該リザーバに導く少なくとも第1の液体流路と、
(iii)当該第1のリザーバの上方の当該ヒートパイプに沿った位置に第2のリザーバを含み、当該第2の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒の第2の部分を収容する第2の蒸発器セクションであって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第2の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、第2の蒸発器セクションと、
(iv)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の当該第2の部分を当該第2の蒸発器セクション内の当該リザーバに導く少なくとも第2の液体流路と、
(v)当該第1のリザーバの上方の当該ヒートパイプに沿った位置に第3のリザーバを含み、当該第3の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒の第3の部分を収容する少なくとも第3の蒸発器セクションであって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第3の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、少なくとも第3の蒸発器セクションと、
(vi)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の当該第3の部分を当該第3の蒸発器セクション内の当該リザーバに導く少なくとも第3の液体流路とを含む、ヒートパイプとを備える、プリント回路基板(PCB)を提供する。
便宜上、本段落によるPCBは、本明細書ではPCB3と呼ばれる。
【0018】
本発明は、プリント回路基板(PCB)であって、
(a)第1の位置でPCBに取り付けられた少なくとも第1の熱発生構成要素と、
(b)当該第1の位置とは異なる第2の位置でPCBに取り付けられた少なくとも第2の熱発生構成要素と、
(c)閉鎖式パイプを含む少なくとも1つのヒートパイプであって、
(i)当該ヒートパイプの外側に位置する冷却流体と熱的に連通する凝縮器セクションと、
(ii)当該第1の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1の蒸発器セクション内の当該リザーバに導く第1の液体流路と、
(iii)当該第1のリザーバとは異なる当該ヒートパイプに沿った位置に第2のリザーバを含み、当該少なくとも当該第2の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒の第2の部分を収容する少なくとも第2の蒸発器セクションであって、当該第2の蒸発器セクションが、第1の蒸発器セクションの容積の約70%以下、又は約60%以下、又は約50%以下、又は約40%以下である総容積を有する、少なくとも第2の蒸発器セクションと、
(iv)当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の当該第2の部分を当該第2の蒸発器セクション内の当該リザーバに導く少なくとも第2の液体流路とを含む、少なくとも1つのヒートパイプとを備える、プリント回路基板(PCB)を提供する。
便宜上、本段落によるPCBは、本明細書ではPCB4と呼ばれる。
【0019】
本発明は、熱を伝達する方法であって、気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプを含み、
(a)閉鎖式ヒートパイプであって、
(i)ヒートパイプの外側に位置するヒートシンクと熱伝達連通する凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第2のリザーバを含む少なくとも第2の蒸発器セクションと、
(iv)当該凝縮器セクションから当該第1のリザーバに導く少なくとも第1の液体流路と、
(v)当該凝縮器セクションから当該第2のリザーバに導く少なくとも第2の液体流路とを含む、閉鎖式ヒートパイプを提供することと、
(b)当該第1のリザーバ内の当該液体冷媒と熱的に接触することによって第1の構成要素又はデバイスを冷却し、当該凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(c)当該第2のリザーバ内の当該液体冷媒と熱的に接触することによって第2の構成要素又はデバイスを冷却し、当該凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(d)凝縮器セクション内で冷媒蒸気を凝縮させて凝縮された液体冷媒を生成し、当該第1の液体流路を介して当該凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1のリザーバに戻し、当該第2の液体流路を介して当該凝縮された液体冷媒の第2の部分を当該第2のリザーバに戻すこととを含む、方法を提供する。
便宜上、この段落による熱伝達方法は、本明細書では熱伝達方法1と呼ばれる。
【0020】
本発明は、熱を伝達する方法であって、
(a)閉鎖式ヒートパイプであって、
(i)ヒートパイプの外側に位置するヒートシンクと熱伝達連通し、蒸気冷媒が液体冷媒に凝縮される凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第2のリザーバを含む第2の蒸発器セクションと、
(v)当該凝縮された液体冷媒の少なくとも一部を当該凝縮器セクションから当該第1のリザーバに導く少なくとも第1の液体流路であって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第1の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、少なくとも第1の液体流路と、
(vi)当該凝縮器セクションから当該第2のリザーバに液体冷媒の少なくとも一部を導く少なくとも第2の液体流路であって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第2の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、少なくとも第2の液体流路とを含む、閉鎖式ヒートパイプを提供することと、
(b)当該第1のリザーバ内の当該液体冷媒と熱的に接触することによって第1の構成要素又はデバイスを冷却し、当該凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(c)当該第2のリザーバ内の当該液体冷媒と熱的に接触することによって少なくとも第2の構成要素又はデバイスを冷却し、当該凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(e)凝縮器セクション内で冷媒蒸気を凝縮させて、当該凝縮された液体冷媒を生成することとを含む、方法を提供する。
便宜上、この段落による熱伝達方法は、本明細書では熱伝達方法2と呼ばれる。
【0021】
本発明は、熱を伝達する方法であって、
(a)閉鎖式ヒートパイプであって、
(i)ヒートパイプの外側に位置するヒートシンクと熱伝達連通し、蒸気冷媒が液体冷媒に凝縮される凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第2のリザーバを含む第2の蒸発器セクションと、
(iv)当該凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第3のリザーバを含む少なくとも第3の蒸発器セクションと、
(v)当該凝縮された液体冷媒の少なくとも一部を当該凝縮器セクションから当該第1のリザーバに導く少なくとも第1の液体流路であって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第1の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、少なくとも第1の液体流路と、
(vi)当該凝縮器セクションから当該第2のリザーバに液体冷媒の少なくとも一部を導く少なくとも第2の液体流路であって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第2の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、少なくとも第2の液体流路と、
(vii)当該凝縮器セクションから当該第3のリザーバに液体冷媒を導く少なくとも第3の液体流路であって、重力が、当該凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒を当該第3の蒸発器セクションに戻す力の少なくとも一部を提供する、少なくとも第3の液体流路とを含む、閉鎖式ヒートパイプを提供することと、
(b)当該第1のリザーバ内の当該液体冷媒と熱的に接触することによって第1の構成要素又はデバイスを冷却し、当該凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(c)当該第2のリザーバ内の当該液体冷媒と熱的に接触することによって少なくとも第2の構成要素又はデバイスを冷却し、当該凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(d)当該第3のリザーバ内の当該液体冷媒と熱的に接触することによって少なくとも第3の構成要素又はデバイスを冷却し、当該凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(e)凝縮器セクション内で冷媒蒸気を凝縮させて、当該凝縮された液体冷媒を生成することとを含む、方法を提供する。
便宜上、この段落による熱伝達方法は、本明細書では熱伝達方法3と呼ばれる。
【0022】
本発明は、熱を伝達する方法であって、気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプを含み、
(a)閉鎖式ヒートパイプであって、
(i)ヒートパイプの外側に位置するヒートシンクと熱伝達連通する凝縮器セクションと、
(ii)当該凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)当該凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第2のリザーバを含む少なくとも第2の蒸発器セクションであって、当該第2の蒸発器セクションが、第1の蒸発器セクションの容積の約70%以下、又は約60%以下、又は約50%以下、又は約40%以下である総容積を有する、少なくとも第2の蒸発器セクションと、
(iv)当該凝縮器セクションから当該第1のリザーバに導く少なくとも第1の液体流路と、
(v)当該凝縮器セクションから当該第2のリザーバに導く少なくとも第2の液体流路とを含む、閉鎖式ヒートパイプを提供することと、
(b)当該第1のリザーバ内の当該液体冷媒と熱的に接触することによって第1の構成要素又はデバイスを冷却し、当該凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(c)当該第2のリザーバ内の当該液体冷媒と熱的に接触することによって第2の構成要素又はデバイスを冷却し、当該凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(d)凝縮器セクション内で冷媒蒸気を凝縮させて凝縮された液体冷媒を生成し、当該第1の液体流路を介して当該凝縮された液体冷媒の第1の部分を当該第1のリザーバに戻し、当該第2の液体流路を介して当該凝縮された液体冷媒の第2の部分を当該第2のリザーバに戻すこととを含む、方法を提供する。
便宜上、この段落による熱伝達方法は、本明細書では熱伝達方法4と呼ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図A】重力戻り戻りヒートパイプの概略図である。
図B】毛細管戻りヒートパイプの概略図である。
図C】3つの熱発生構成要素を収容するプリント回路基板の概略図である。
図1】本発明の一実施形態によるヒートパイプの概略図である。
図1A】実施例1で使用されるヒートパイプの断面の概略図である。
図1B】実施例1で使用されるヒートパイプの断面の概略図である。
図C1】従来のヒートパイプを表すヒートパイプの概略図である。
図C2】比較例1で使用したヒートパイプの断面の概略図である。
図C3】比較例2で使用したヒートパイプの断面の概略図である。
図C4】比較例3で使用したヒートパイプの断面の概略図である。
図2】本発明の一実施形態によるヒートパイプの概略図である。
図2A】本発明の一実施形態によるヒートパイプの概略図であり、その性能が実施例2Aに記載される。
図2B】本発明の一実施形態によるヒートパイプの概略図であり、その性能が実施例2Bに記載される。
図3A】本発明の実施形態によるヒートパイプの概略図である。
図3B】本発明の実施形態によるヒートパイプの概略図である。
図3C】本発明の実施形態によるヒートパイプの概略図である。
図3D】本発明の実施形態によるヒートパイプの概略図である。
図3E】本発明の実施形態によるヒートパイプの概略図である。
図3F】本発明の実施形態によるヒートパイプの概略図である。
図4】本発明の実施形態によるヒートパイプ及び本発明の範囲内にないヒートパイプの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
出願人らは、本明細書に記載のヒートパイプ、デバイス、システム及び/又は方法を使用することによって、特に上記のニーズ及び利点を達成できることができ、かつ/又は低コストで冷却効率及び冷却効果を得ることができることを予想外に見出した。
【0025】
ヒートパイプ
本発明は、優れた熱性能を提供し、好ましい実施形態では、異なる位置に位置する少なくとも2つの熱源を効率的かつ効果的に冷却する能力を提供するヒートパイプを含む。例として、一般的に10で示されたヒートパイプの断面を概略的に示す本明細書の図1を参照されたい。ヒートパイプ10は、長方形の断面を有するものとして概略的に示されているが、当業者であれば、本明細書の教示に合致した多種多様な内部及び外部の形状及び寸法を使用することができ、そのような形状及び寸法はすべて本発明の範囲内であることを理解するであろう。
【0026】
ヒートパイプ10は、好ましくは、パイプ壁外面11A及びパイプ壁内面11Bを含むパイプ壁11によって境界付けられた収容領域を含む。ヒートパイプは、ヒートパイプの一端に位置する第1の蒸発器セクション12Aと、ヒートパイプの他端に位置する凝縮器セクション13とを含む。蒸発器セクション12Aはヒートパイプの一端にあるものとして示され、凝縮器セクションはヒートパイプの他端にあるものとして示されているが、本発明によれば、これらのセクションがヒートパイプのどちらの端にも位置する必要はないことが理解されよう。
【0027】
ヒートパイプ10は、凝縮器セクションと第1の蒸発器セクションとの中間に位置する少なくとも第2の蒸発器セクション12Bを含む。この場合も、当業者であれば、図1に示されるヒートパイプ10は、実質的に真っ直ぐな側壁を有するものとして示されており、したがって、蒸発器セクション12Bは、第1の蒸発器セクション12Aの上方かつ凝縮器セクション13の下方に位置しているが、この配置は必ずしも必要ではないことが理解されよう。図1に示される構成では、第1の蒸発器セクション12Aの上部は、ヒートパイプの約30容積パーセントに位置する水平線30によって表されるが、当業者であれば、この位置は例示を目的としたものであり、必ずしも限定するものではないことを理解されよう。更に、線30は、ヒートパイプが動作していないときのヒートパイプ内のおおよその液体レベルを表し、これは、本明細書ではチャージレベルと呼ばれるが、動作中、液体レベルはこの位置に対応しない場合があることが理解されよう。動作中、熱は、第1の熱源(ヒータ1)からパイプ壁11を通って第1の蒸発器セクション12A内の液体冷媒のリザーバ内に伝達されて、冷媒蒸気を生成し、この冷媒蒸気は、図1において冷媒気泡21として示され、凝縮器セクション13に向かって一般的に上方に流れる。
【0028】
凝縮器セクション13において、ヒートパイプの外面は、凝縮器セクション13におけるヒートパイプ壁11の内面11Bと接触する冷媒蒸気を冷却して凝縮させる、ヒートシンク(例えば、図1に概略的に示されるようなヒートパイプの上部を横切って吹き付けられる周囲空気)の比較的低温にさらされる。凝縮された冷媒液体の第1の部分は、例えば経路14Aとして一般的に示される第1の流路をたどり、第1の蒸発器セクション12Aに収容されたリザーバに戻る。本発明による多くのヒートパイプ構成では、凝縮器セクションから蒸発器セクション12Aに導く複数の流路が存在し、流路14Aは、存在し得る1つの一般的な流路のみとして示されていることが当業者には理解されよう。別の可能な流路は、14Bとして示されるような一般的な経路を含み得る。したがって、冷媒液体のこの少なくとも第1の部分が第1の蒸発器セクションに戻る際に多数の様々な流路をとることができると考えられるが、第1の流路は、重力の影響下で凝縮器セクション13から第1の蒸発器セクション12Aに落下する一連の液滴を単に含むことができる。
【0029】
本発明の重要かつ決定的な態様は、凝縮器セクション13において凝縮された冷媒液体の少なくとも第2の部分を蒸発器セクション12Bに収容されたリザーバに流すように導く又は方向付ける、例えばアイテム15として一般的に示された第2の流路を設けることである。当業者であれば理解できるように、凝縮された液体の一部を捕捉して凝縮器セクションからリザーバに送るために、ヒートパイプに多数の特徴を含めることができる。このような特徴の1つは、例えば、液体冷媒が重力の影響下で凝縮器セクション13から落下する際に通る一般的な流路内に位置した一連の角度付きプラットフォーム、プレート、タイルなど16を含むことができる。これらのプラットフォーム又はプレートは、そのような液滴がヒートパイプの内壁に向かって流れ、第2の蒸発器セクション12Bに収容されたリザーバに流入するように位置し、角度が付けられている。好ましい実施形態では、冷媒蒸気のいくらかの上方への通過を可能にするために、隣接するプラットフォーム、プレートなどの間に小さな隙間が含まれることが好ましい。加えて、各プレートの下縁は、好ましくは、液体流の方向において次のフロープレート、プラットフォームなどの上縁と重なるように整列される。本出願に含まれる教示を考慮すると、当業者は、個々の用途について、蒸発器セクション12Bのリザーバ内への冷媒の所望の流れ、及び所望のレベルの冷媒蒸気流を達成するために、垂直方向の分離の範囲及び垂直方向の重なりの範囲の両方を選択することができるであろう。このようにして、液体冷媒の所望の供給が、第1の蒸発器セクションと凝縮器セクションとの中間点で提供され、好ましい実施形態では、第2の蒸発器セクションは、冷却されるべき熱源、例えば、図1のヒータ2に近接して位置する。したがって、そのような第2の熱源は、冷媒の相変化熱伝達によって冷却されるため、優れた冷却を提供し、これは、従来のヒートパイプ構成で起こり得る第2の熱源からの熱伝達よりもはるかに効果的かつ効率的である。
【0030】
当業者であれば、図1は重力駆動ヒートパイプを開示しているが、本発明は、凝縮した液体の戻りを第1の蒸発器セクションの一般的な方向に駆動する、他の力又は複数の力を有するヒートパイプと共に使用するように容易に適合可能であることを理解するであろう。したがって、本発明は、特に好ましくは毛細管戻りヒートパイプ及び重力/毛細管戻りヒートパイプを含む、上述の液体冷媒駆動力のいずれか1つ又は組み合わせを有するヒートパイプを含む。
【0031】
図2は、一般的に第1の蒸発器セクション12Aを収容するヒートパイプの底部領域から凝縮器セクション13への冷媒蒸気の自由な上方への流れを可能にするための六角形セルの一般的なハニカムグリッドパターンを有するヒートパイプ10を示す。第1の蒸発器セクション12Aの上部は、一般的に、ヒートパイプの約30容積パーセントに位置する水平線によって表される。動作中、熱は、熱源(図示せず)からパイプ壁を通って第1の蒸発器セクション12A内の液体冷媒のリザーバ内に伝達される。冷媒蒸気が生成され、ヒートパイプ内の開いた垂直チャネル及び対角チャネル、すなわち、タイル16の1つ以上によって遮断されていないチャネルを通って凝縮器セクション13へと上方に流れる。凝縮器セクション13において、ヒートパイプの外面は、凝縮器セクション13におけるヒートパイプ壁の内面と接触する冷媒蒸気を冷却して凝縮させる、ヒートシンク(例えば、周囲空気)の比較的低温にさらされる。凝縮された冷媒液体の第1の部分は、例えば14Aのような第1の流路をたどり、第1の蒸発器セクション12Aに収容されたリザーバに戻る。前述のように、液体冷媒が第1の蒸発器セクション12Aに戻る際に、例えば流路14B及び流路14Cなどの代替及び/又は追加の流路をたどることもできる。したがって、冷媒液体のこの第1の部分が第1の蒸発器セクション12Aに戻る際に多数の様々な流路をとることができると考えられるが、第1の流路は、例えば縦列5と縦列6との間の出口及び縦列4と縦列5との間の下部などの1つ以上の開放チャネル、並びに流路14B及び流路14Cによって表されるものを含むがこれらに限定されない、多くの他の潜在的なチャネルを通る、重力の影響下で凝縮器セクション13から第1の蒸発器セクション12Aに落下する一連の液滴を単に含むことができる。
【0032】
本発明の重要かつ決定的な態様は、凝縮器セクション13において凝縮された冷媒液体の少なくとも第2の部分を蒸発器セクション12Bに収容されたリザーバ12B’に流すように方向付ける、図2にアイテム15として一般的に示された少なくとも第2の流路を設けることである。当業者には理解されるように、凝縮された液体の一部を捕捉して凝縮器セクションからリザーバに送るために、ヒートパイプに多数の構造を含めることができる。このような構造の1つは、例えば、液体冷媒が重力の影響下で一般的に流路14に沿って凝縮器セクション13から落下する際に通る一般的な流路内に配置された一連の角度付きプラットフォーム、プレート、タイルなど16を含むことができる。これらのプラットフォーム又はプレートは、好ましくは、そのような液滴がヒートパイプの内壁に向かって流れ、第2の蒸発器セクション12Bに収容されたリザーバ12B’内に流入するように位置し、角度を付けられ、あるいは構成される。好ましい実施形態では、冷媒蒸気のいくらかの上方への通過を可能にするために、プラットフォーム又はプレートの間に小さな垂直方向の隙間が含まれ、液体冷媒を所望の流路に沿って蒸発器セクション12Bのリザーバ内に導くのを助けるために、隣接するプラットフォーム又はプレートの間に小さな垂直方向の重なりが含まれる。このようにして、液体冷媒の所望の供給が、第1の蒸発器セクションと凝縮器セクションとの中間の少なくとも1つの点に提供され、好ましい実施形態では、第2の熱源(図示せず)は、この第2の蒸発器セクションの近傍に位置することができる。したがって、特に、好ましくは、第2の熱源が存在する場合、冷媒の相変化熱伝達によって冷却されるため、本発明のヒートパイプに優れた冷却性能を提供し、これは、従来のヒートパイプ構成で起こり得る熱伝達よりもはるかに効果的かつ効率的である。
【0033】
したがって、ヒートパイプ1~4を含む本ヒートパイプの好ましい態様では、ヒートパイプの内部は、完全に均質ではなく、その代わりに、例えば、グリッド構造に形成された1つ以上の角度付きタイル、プレート、プラットフォーム又は同様の障害物などの、凝縮した冷媒液体の少なくとも一部を第2の蒸発器セクションに導く流路に沿って誘導する傾向がある、グリッド構造に一連の変更を含むハニカムグリッドを含む。例えば、そのような例示的な構造は、凝縮された液体冷媒の一部を第2の蒸発器セクションに導く流路又はチャネルを形成するように配置される。特に、図2に開示された一般的なハニカムパターンは、六角形セル又はアイランド20の6つの縦列を含み、その周りで液体は一般的に下方に流れ、セルの縦列の間の空間は、一般的に液体の下方への流れ及び蒸気の上方への流れを可能にする。例えば、横列5及び横列6の上方から流れる液体は、ヒートパイプの底部に流れて第1の蒸発器セクションに到達することができる。すべての横列及び空間が、従来のヒートパイプごとに実質的に同じである場合、すべての液体は、このようにして、ヒートパイプの底部の第1の蒸発器セクションに流れる。しかしながら、本発明の実施形態によれば、横列のうちのいくつかは、ハニカム構造に組み込まれた重なり合う角度付きタイル又はプレートによって中断される。例えば、図2の縦列4と縦列5の間を流下する液体冷媒の一部は、セルの9番目の横列の角度付きタイル又はプレートに遭遇し、したがって、冷媒液体の少なくとも一部を、第1の蒸発器セクションの上方にあるヒートパイプの側部に向かって、好ましくは第2の熱源に隣接する、ヒートパイプの内面と熱伝達接触する選択された量の液体冷媒を保持するように位置する、第2のリザーバに迂回させる。
【0034】
セル又はアイランド、蒸気チャネル、タイル又はプラットフォーム、及びリザーバに対して異なる形状及びサイズを有する代替的なヒートパイプ構成が、図3A図3Eの各々に示されている。
【0035】
図3Aでは、六角形セル20の横列は、各横列のセルが垂直方向に整列し、各縦列のセルが水平方向に整列する、長方形グリッド配置として知られる配置で整列されており、凝縮された冷媒流体の一部を中間蒸発器12B内のリザーバに送るための一連の角度付きプレート又はタイル16を含む。
【0036】
図3Bでは、ハニカムグリッド配置として知られる配置に整列され、一連の角度付きプレート又はタイル16を有する六角形セル20の横列が、凝縮された冷媒流体の一部を中間蒸発器12B内のリザーバに送るために使用される。
【0037】
図3Cでは、一連の角度付きプレート又はタイル16を有する円形セル20の横列が、凝縮された冷媒流体の一部を中間蒸発器12B内のリザーバに送るために使用される。
【0038】
図3Dでは、一連の角度付きプレート又はタイル16を有する正方形セル20の横列が、凝縮された冷媒流体の一部を中間蒸発器12B内のリザーバに送るために使用される。
【0039】
図3Eでは、図3Fに関連して以下に説明されるように、そのいくつかが切り取られている、角度が付けられ、重なり合う長方形セル20の縦列が、凝縮された冷媒流体を中間蒸発器セクション内のいくつかの中間リザーバに導く流路を形成するために使用される。この実施形態に見られるように、角度付き長方形セルは、図3Fに関連してより詳細に説明されるように、必要な中間冷媒流路を提供するためのレッジ、タイル、プレートなどを提供する。
【0040】
図3Fは、図3Eに示されるヒートパイプの上部の拡大図を提供し、角度付き長方形セル20の5つの縦列は、凝縮された冷媒流体を中間蒸発器セクション内のいくつかの中間リザーバに導く流路を生成するために使用される縦列20A~縦列20Eとして左から右にラベル付けされている。図から分かるように、横列20A及び横列20Eは、ヒートパイプの左側及び右側にあり、これらの長方形セルの各々は、それぞれ左側及び右側の縁部に沿って部分的に切り取られている。動作中、横列20Aと横列20Bとの間のヒートパイプの上部で凝縮された冷媒の大部分、並びに横列20B及び横列20Cの上方で凝縮された冷媒の一部は、蒸発器12Bのリザーバへの流路15Aをたどる傾向がある。同様に、横列20Bと横列20Cとの間のヒートパイプの上部で凝縮された冷媒の大部分、並びに横列20C及び横列20Dの上方で凝縮された冷媒の一部は、蒸発器12Cのリザーバへの流路15Bをたどる傾向がある。この説明を考慮すると、図3Eの構成が、一連の中間蒸発セクション12B~12Jに導く一連の複数の流路を提供することが当業者には理解されよう。
【0041】
ヒートパイプ1~4の各々、並びにPCB1~4及び熱伝達方法1~4の各々に含まれるヒートパイプを含む、本発明のヒートパイプで使用されるタイル及びプレートは、多種多様な角度にわたって角度を付けられてもよいが、好ましい実施形態では、タイルは、凝縮器セクションから第1の蒸発器セクションへの冷媒液体の一般的な流れ方向に垂直な平面に対して、重力戻りヒートパイプを含む多くの用途においては水平面に対して、約10°から約70°の角度を有する。
【0042】
本発明は、ヒートパイプ1~4の各々、並びにPCB1~3及び熱伝達方法1~4の各々に含まれる、本発明のヒートパイプにおいて、凝縮器セクションから第1の蒸発器セクションへの冷媒液体の一般的な流れ方向に垂直な平面に対して、重力戻りヒートパイプを含む多くの用途においては水平面に対して、約20°から約50°の角度で使用されるタイル及びプレートを含む。ヒートパイプ4、熱伝達方法4、及びPCB4の好ましい実施形態では、第2の蒸発器セクションは、図2Bに示されるように、別の蒸発器セクションに導くいかなる流路又はチャネルも含まない。
【0043】
ヒートパイプ1~4の各々、並びにPCB1~4及び熱伝達方法1~4の各々に含まれるヒートパイプを含む、本発明のヒートパイプで使用される充填率は大きく変化し得ると考えられるが、好ましい実施形態では、充填率は約20容積%から約90容積%である。
【0044】
ヒートパイプ1~4の各々、並びにPCB1~4及び熱伝達方法1~4の各々に含まれるヒートパイプを含む、本発明のヒートパイプで使用される充填率は、好ましい実施形態では、約20容積%から約60容積%の範囲である。
【0045】
デバイス及びシステム
本発明は、動作中に冷却を必要とするPCB1からPCB4の各々を備える、デバイス及びシステムを含む。
【0046】
本発明は、PCB1からPCB4の各々を含むプリント回路基板を備える、電気通信デバイス及びシステムを含む。
【0047】
本発明は、5Gチップを含む、PCB1からPCB4の各々を含むプリント回路基板を備える、電気通信デバイス及びシステムを含む。
【0048】
本発明は、ヒートパイプ1から4の各々を備える本発明のヒートパイプによって冷却される、5Gチップを含む。
【0049】
本発明は、ヒートパイプ1からヒートパイプ4の各々を含む本発明のヒートパイプを備える、システム又はデバイスを含む。
【0050】
方法
本発明は、熱伝達方法1から熱伝達方法4の各々を含む本発明の方法を使用して、デバイス若しくはシステム、又はデバイス若しくはシステムの構成要素を冷却するための方法を含む。
【0051】
本発明は、熱伝達方法1から熱伝達方法4の各々を含む本発明の方法を使用して、電気通信デバイス又はシステムを冷却する方法を含む。
【0052】
本発明は、熱伝達方法1から熱伝達方法4の各々を含む本発明の方法を使用して、電気通信デバイス又はシステムを冷却する方法を含む。
【0053】
本発明は、熱伝達方法1から熱伝達方法4の各々を含む本発明の方法を使用して、5Gチップを含む電気通信デバイス及びシステムを冷却する方法を含む。
【0054】
本発明は、プリント回路基板の少なくとも一部を冷却する方法であって、当該プリント回路基板の少なくとも一部を、ヒートパイプ1からヒートパイプ4の各々を含む、本発明のヒートパイプと接触させることを含む、方法を含む。
【0055】
本発明は、プリント回路基板の少なくとも一部を冷却する方法であって、ヒートパイプ1からヒートパイプ5の各々を含む、本発明のヒートパイプと5Gチップを接触させることによって5Gチップを含む、方法を含む。
【実施例
【0056】
比較例1A~1F
本明細書の図C1に一般的に対応するヒートパイプは、図C1に示されるような2つのヒータの代わりに合計3つのヒータバンドが使用されたことを除いて、2つのアルミニウムプレートから形成された。3つのヒータの各々は、それぞれ13.33ワットの電力を有しており、合計の電力は40ワットであった。この例の配置は、例えば、冷却されるべき3つの構成要素があり、プリント回路基板上のこれらの位置に垂直方向に配置されている場合に、存在する状況をシミュレートする。熱電対は、ヒートパイプの底部から垂直方向に測定した次の位置、すなわち、70mm、150mm、210mm、270mm、及び330mmのヒートパイプ壁上の位置に設けられた。
【0057】
以下の表C1に示すように、実施例で説明したヒートパイプ構成を使用して、6つの異なるヒートパイプ充填率を試験した。
【0058】
図C2に示されるように、ヒートパイプの断面は、2つのアルミニウムプレートの間のチャネルが実質的に均一なハニカム構成を有することを示し、結果として、動作中、蒸発セクションのリザーバ内に収容された作動流体R-1233zd(E)は、加熱され、蒸発し、ヒートパイプを通って凝縮器セクションへと一般的に上方に流れる。作動流体が凝縮器セクション内で凝縮されると、作動流体は、液体作動流体を収容する蒸発器セクションに一般的に単に下方に戻るように流れる。ヒートパイプは、約23.7℃の室温で動作した。平衡状態で測定された温度を、以下の表C1に報告する。
【0059】
【表1】
表C1に報告されたデータから分かるように、動作中の平均温度が最も低くなる充填率は60%(実施例C1C)であり、温度差が最も小さくなる充填率は80%(実施例C1B)であった。
【0060】
実施例1A~1F
ヒートパイプの断面が一般的に図1に関連して説明された通りであり、具体的には図1Aに示された通りであったことを除いて、比較例1に説明されたものと同じ全体寸法並びに同じヒータ及び熱電対を有するヒートパイプが形成される。以下の表1に示すように、実施例で説明したヒートパイプ構成を使用して、6つの異なるヒートパイプ充填率を試験した。
【0061】
図1Aに示されるように、ヒートパイプの断面は、2つのアルミニウムプレートの間のチャネルが、凝縮された液体の一部を捕捉し、凝縮器セクションから蒸発器セクション12B~12Eの各々のリザーバに送るハニカム構成を有することを示している。冷媒が凝縮器セクションで凝縮されると、凝縮された作動流体液体の一部は、蒸発器セクション12B~12Eの各々に向かって下方に流れる。
【0062】
ヒートパイプは、約23.7℃の室温で動作した。比較例1からの結果と共に平衡状態で測定された温度を、以下の表1に報告する。
【0063】
【表2】
70mm、150mm、210mm、270mm及び330mmでの垂直位置は、表においてそれぞれ位置1~5として表記されている。
【0064】
上記の表1に報告された結果から分かるように、本発明の記載された実施形態による構成は、試験されたすべての充填率について、より低い平均温度及びより小さい温度差を生成した。更に、従来のヒートパイプからの最良の性能は、平均温度で測定した場合に80%の充填率、及び温度差で測定した場合に60%の充填率で生じた。対照的に、本発明のヒートパイプの最良の性能は、はるかに低い充填率、すなわち、最低平均温度と最低温度差が50%の場合に生じた。したがって、この実施例は、本発明のヒートパイプが少なくとも3つの重要な利点、すなわち、(1)冷却効果の指標となる、より低い平均温度(2)ヒートパイプ内の不要な極端な温度を回避するのに役立ち、したがって、動作性及び機器寿命を改善する、より小さい温度差(3)より良好な性能を達成するために充填率を低減することによる、作動流体のコストの低減、を提供する。
【0065】
比較例2
本明細書の図C1に一般的に対応するヒートパイプは、図C1に示されるような2つのヒータの代わりに合計5つのヒータバンドが使用されたことを除いて、2つのアルミニウムプレートから形成された。
【0066】
ヒートパイプは、底部から上部までおよそ935mmであり、5つのヒータバンドは、およそ図C3に示されるような位置にあった。各ヒータは11ワットの電力を有し、ヒートパイプへの合計の電力は55ワットである。熱電対は、ヒートパイプの底部から垂直方向に測定された次の位置、すなわち、100mm、460mm、600mm、740mm及び880mmのヒートパイプ壁上の位置に提供される。この例の配置は、例えば、冷却されるべき5つの構成要素があり、プリント回路基板上のこれらの位置に垂直方向に配置されている場合に、存在する状況をシミュレートする。作動流体R1233zd(E)の充填率は、熱入力が本質的にヒートパイプの全長に沿って存在することを考慮して、約90%に設定された。この液体レベルは、すべてのヒータがオフの場合、およそ線12Aによって示される。
【0067】
図C3に示されるように、ヒートパイプの断面は、2つのアルミニウムプレートの間のチャネルが実質的に均一なハニカム構成を有することを示し、結果として、動作中、蒸発セクションのリザーバ内に収容された作動流体R-1233zd(E)は、加熱され、蒸発し、ヒートパイプを通って凝縮器セクションへと一般的に上方に流れる。作動流体が凝縮器セクション内で凝縮されると、作動流体は、液体作動流体を収容する蒸発器セクションに一般的に単に下方に戻るように流れる。ヒートパイプは、約26.6℃の室温で動作した。平衡状態で測定された温度を、以下の表C2に報告する。
【0068】
【表3】
【0069】
この例は、100mmの位置におけるヒートパイプの温度が47.4℃であり、100mmの位置と460mmの位置との差は3.9℃であり、これが、動作中のヒートパイプの最大測定温度差であったことを示している。
【0070】
実施例2
ヒートパイプの断面が一般的に図1に関連して説明された通りであり、具体的には図1Bに示された通りであったことを除いて、比較例2に説明されたものと同じ全体寸法並びに同じヒータ及び熱電対を有するヒートパイプが形成される。本発明のヒートパイプのより効率的かつ効果的な構成が使用されたため、試験は、比較例2で使用された充填率の半分未満である40%の充填率で行われた。図1Bに見られるように、2つのアルミニウムプレートの間の構造は、凝縮された液体の一部を捕捉し、凝縮器セクションから蒸発器セクション12B~12Eの各々のリザーバに送る。冷媒が凝縮器セクションで凝縮されると、凝縮された作動流体液体の一部は、蒸発器セクション12B~12Eの各々に向かって下方に流れる。
【0071】
ヒートパイプは、約26.6℃の室温で動作した。比較例2の結果と共に平衡状態で測定された温度を、以下の表2に示す。
【0072】
【表4】
【0073】
上記の表2に報告された結果から分かるように、本発明による構成は、ヒートパイプに沿った各位置でより低い温度を生成し、同等の条件では、比較例2で使用された充填率の半分未満の充填率であっても、本発明によるヒートパイプによってより多くの冷却が提供されることを示している。更に、ヒートパイプのセクション間の温度差は、従来のヒートパイプ構成と比較して、ヒートパイプの特定のセクションについてより低かった。例えば、温度は、100mmの位置から460mmの位置まで3.1℃しか上昇しないが、従来のヒートパイプ構成では、温度が3.9℃上昇しており、このことは、これらの位置の間の冷却効率の優れたレベルを示す。この実施例は、実施例1に関連して上述したのと同じ利点を示す。
【0074】
比較例3A
本明細書の図C1に一般的に対応し、具体的には図C4にあるようなヒートパイプは、2つのアルミニウムプレートから形成され、同じサイズ及び発熱量の2つの熱源を有し、ヒータ1は、ヒートパイプの下半分の片側に隣接して位置し、ヒータ2は、同じ側に隣接するが、ヒートパイプの上半分に沿って位置する。
【0075】
別個の熱電対が、ヒートパイプの底部から上部にかけてほぼ等間隔に配置されたヒートパイプ壁上の7箇所の各々に提供された。ヒートパイプ内の作動流体はR1233zd(E)であり、ヒートパイプ内で最良の性能を提供するのに必要なR1233zd(E)の充填量は63.1グラムであると決定された。
【0076】
更に、1mmのアルミニウムプレートをヒートパイプに使用したのと同じ動作条件下で試験した。これら2つの試験の結果を以下に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
実施例2A及び2B
ヒートパイプの断面が一般的に図1に関連して記載された通りであり、具体的には図2A及び図2Bに示された通りであったことを除いて、比較例3に記載されたものと同じ全体寸法並びに同じヒータ及び熱電対を有する2つのヒートパイプが形成される。特に、図2Aに示されるヒートパイプは、本発明に従って、示されるように、9つの蒸発器セクション及び関連する流路チャネルを有していた。図2Bのヒートパイプは、図2Aのヒートパイプの上部セクションとして本質的に構成された上部セクションを有し、すなわち、図2A及び図2Bのヒートパイプの各々の上部5つの蒸発器セクション及び関連する流路は、図示のように、実質的に同じ寸法及び構成とされた。しかしながら、図2Aのヒートパイプの底部の4つの流路は、図2Bのヒートパイプに従って単一の蒸発器セクションによって置き換えられた。重要なこととして、この単一の下部蒸発器セクションは、図2Aのヒートパイプの4つの下部蒸発器セクションの総容積の半分未満の容積を有するように寸法決めされた。図2A及び図2Bのヒートパイプについての最適化された充填及び性能を、比較例3について繰り返された結果と共に、以下の表に報告する。
【0079】
【表6】
【0080】
上記の結果から分かるように、図2Aのヒートパイプは最も良好に機能し、平均温度差が33.4Cで最も低く、最大温度上昇もわずか5.4Cと最も低かった。この性能は、比較例C3の対象である図C4に示されるように、1mmのアルミニウムプレート及び比較ヒートパイプと比較して予想外に優れている。更に、図2Bのヒートパイプはまた、図C4のヒートパイプよりも予想外に良好に機能し、平均温度差は34Cであり、最大温度差は8Cであった。これらの値の両方は、図C4のヒートパイプよりも予想外に優れている。加えて、図2Bによって表されるタイプの実施形態による温度差によって測定された性能は、図2Aほど良好ではないが、それにもかかわらず、性能は、特に、上記の表におけるすべてのヒートパイプと比較して、図2Bの実施形態に対して実質的に少ない最適な充填に照らして考慮すると、予想外に良好である。図2Bに示されるタイプの本発明のこのヒートパイプは、そのような優れた熱伝達性能を達成するために必要とされる充填が少ないため、比較的低コストで優れた熱伝達性能を達成する能力を有する。
図A
図B
図C
図1
図1A
図1B
図C1
図C2
図C3
図C4
図2
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
【手続補正書】
【提出日】2023-06-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプであって、
(a)少なくとも1つの閉鎖式パイプであって、
(i)凝縮器セクションと、
(ii)前記凝縮器セクションと流体連通している第1の蒸発器セクションと、
(iii)前記凝縮器セクションと流体連通している少なくとも第2の蒸発器セクションとを含む、少なくとも1つの閉鎖式パイプと、
(b)前記ヒートパイプに収容された冷媒と、
(c)前記凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を前記第1の蒸発器セクションに導く少なくとも第1の液体流路と、
(d)前記凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第2の部分を前記第2の蒸発器セクションであって、前記第2の蒸発器セクションが前記第1の蒸発器セクションとは異なる位置に液体冷媒を保持するリザーバを含む、前記第2の蒸発器セクションに導く少なくとも第2の液体流路とを備える、ヒートパイプ。
【請求項2】
プリント回路基板(PCB)であって、
(a)第1の位置で前記PCBに取り付けられた少なくとも第1の熱発生構成要素と、
(b)前記第1の位置とは異なる第2の位置で前記PCBに取り付けられた少なくとも第2の熱発生構成要素と、
(c)閉鎖式パイプを含む少なくとも1つのヒートパイプであって、
(i)前記ヒートパイプの外側に位置する冷却流体と熱的に連通する凝縮器セクションと、
(ii)前記第1の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)前記凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の第1の部分を前記第1の蒸発器セクション内の前記リザーバに導く第1の液体流路と、
(iii)前記第1のリザーバとは異なる前記ヒートパイプに沿った位置に第2のリザーバを含み、前記少なくとも前記第2の熱発生構成要素と熱伝達接触する液体冷媒の第2の部分を収容する少なくとも第2の蒸発器セクションと、
(iv)前記凝縮器セクション内で凝縮された液体冷媒の前記第2の部分を前記第2の蒸発器セクション内の前記リザーバに導く少なくとも第2の液体流路とを含む、少なくとも1つのヒートパイプとを備える、プリント回路基板。
【請求項3】
気体冷媒が凝縮されて液体冷媒を生成する凝縮器セクションを有するタイプのヒートパイプの使用を含む熱を伝達する方法であって、前記方法が、
(a)閉鎖式ヒートパイプであって、
(i)前記ヒートパイプの外側に位置するヒートシンクと熱伝達連通する凝縮器セクションと、
(ii)前記凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第1のリザーバを含む第1の蒸発器セクションと、
(iii)前記凝縮器セクションと流体連通し、液体冷媒を収容する第2のリザーバを含む少なくとも第2の蒸発器セクションと、
(iv)前記凝縮器セクションから前記第1のリザーバに導く少なくとも第1の液体流路と、
(v)前記凝縮器セクションから前記第2のリザーバに導く少なくとも第2の液体流路とを含む、閉鎖式ヒートパイプを提供することと、
(b)前記第1のリザーバ内の前記液体冷媒と熱的に接触することによって第1の構成要素又はデバイスを冷却し、前記凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(c)前記第2のリザーバ内の前記液体冷媒と熱的に接触することによって第2の構成要素又はデバイスを冷却し、前記凝縮器セクションに移動する冷媒蒸気を生成することと、
(d)前記凝縮器セクション内で冷媒蒸気を凝縮させて凝縮された液体冷媒を生成し、前記第1の液体流路を介して前記凝縮された液体冷媒の第1の部分を前記第1のリザーバに戻し、前記第2の液体流路を介して前記凝縮された液体冷媒の第2の部分を前記第2のリザーバに戻すこととを含む、方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正の内容】
図A
図B
図C
図1
図C1
図C2
図C3
図C4
図1A
図1B
図2
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4
【国際調査報告】