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特表2023-545443指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ
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  • 特表-指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ 図1
  • 特表-指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ 図2
  • 特表-指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ 図3
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  • 特表-指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ 図5
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  • 特表-指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ 図7
  • 特表-指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ 図8A
  • 特表-指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ 図8B
  • 特表-指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ 図8C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】指向性ポート開口部を有するカテーテルアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   A61M 39/24 20060101AFI20231023BHJP
   A61M 25/02 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A61M39/24 100
A61M25/02 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522346
(86)(22)【出願日】2021-10-04
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 US2021053336
(87)【国際公開番号】W WO2022081363
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】63/090,585
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/490,989
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イーピン マー
【テーマコード(参考)】
4C066
4C267
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066JJ05
4C066LL07
4C267AA02
4C267AA33
4C267BB03
4C267BB08
4C267CC08
4C267HH08
4C267HH20
(57)【要約】
カテーテルアダプタ(12)と、ポート開口部(28)と、エラストマー性バルブ(24)とを含む血管アクセス装置。カテーテルアダプタは、縦軸(20)に沿って延在し、近位端(14)、遠位端(16)、およびそれらの間に延在する内腔(18)を含む。ポート開口部は、カテーテルアダプタの表面に形成され、カテーテルアダプタのサイドポート(22)および内腔と流体連通する。ポート開口部の構造的形状は、流体を近位方向にて内腔へと導く。エラストマー性ポートバルブは、内腔内に配置され、印加される横方向の力に応じて変形するように構成される。内腔を形成する内壁とエラストマー性ポートバルブの近位側との間に近位隙間を生じさせ、それによって流路を開いてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦軸に沿って延在し、ならびに、近位端、遠位端、およびそれらの間に延在する内腔を含むカテーテルアダプタと、
カテーテルアダプタの表面に形成され、カテーテルアダプタのサイドポートおよび内腔と流体連通し、および内腔内に向かう流体を近位方向に導く構造的形状を含む、ポート開口部と、
前記内腔内に配置され、前記ポート開口部を封止するエラストマー性ポートバルブであって、印加される横方向の力に応じて変形して、前記内腔を形成する内壁と前記エラストマー性ポートバルブの近位側との間に近位間隙を生じさせて、前記近位間隙が流路を開くように構成されている、エラストマー性ポートバルブと
を含むことを特徴とする血管アクセス装置。
【請求項2】
前記構造的形状は、内腔内に向かう流体を近位方向に導く傾斜面を含むことを特徴とする請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記サイドポートの遠位壁から前記ポート開口部へと近位方向に延在することを特徴とする請求項2に記載の血管アクセス装置。
【請求項4】
前記傾斜面は、前記ポート開口部に比較して高い遠位壁上の位置から、ポート開口部に隣接する位置へ向かって、横軸に沿って、横方向に延在することを特徴とする請求項2に記載の血管アクセス装置。
【請求項5】
前記ポート開口部は、前記流路に流体を送達するためのシリンジに連結するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項6】
前記構造的形状は、半円形状およびパイ様の形状のうちの1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項7】
前記構造的形状は、前記ポート開口部の少なくとも一部を横断して延在して、前記ポート開口部を通して前記流体を近位方向に導くリブを含むことを特徴とする請求項1に記載の血管アクセス装置。
【請求項8】
前記ポート開口部は、前記サイドポートの近位壁に近接して配置されることを特徴とする請求項7に記載の血管アクセス装置。
【請求項9】
前記ポート開口部は、前記サイドポートの遠位端の外縁よりも小さい外縁を含み、前記ポート開口部が閉止部および開放部を含むことを特徴とする請求項7に記載の血管アクセス装置。
【請求項10】
血管アクセス装置のサイドポートに輸液装置を連結する工程であって、前記血管アクセス装置は、
縦軸に沿って延在し、ならびに、近位端、遠位端、およびそれらの間に延在する内腔を含むカテーテルアダプタと、
カテーテルアダプタの遠位端から遠位方向に延在するカテーテルと、
カテーテルアダプタの表面から、実質的に縦軸に対して横方向に延在するサイドポートであって、サイドポートは、ポート開口部を通して内腔と連通し、前記ポート開口部は、内腔内に向かう流体を近位方向に導くように設計された構造的形状を有する、サイドポートと、
前記内腔内に配置され、前記ポート開口部を封止するエラストマー性ポートバルブであって、印加される横方向の力に応じて変形するように構成されている、エラストマー性ポートバルブと
を含む工程と、
輸液装置を作動させる工程であって、輸液装置の作動に応じて、エラストマー性ポートバルブの近位端が変形し、エラストマー性ポートバルブの近位端とカテーテルアダプタの内面との間に近位間隙が生じ、流体が近位間隙を通って近位方向に流れる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
輸液装置の作動に応じて、輸液装置を介してエラストマー性ポートバルブに横方向の力が印加され、近位間隙が形成されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
サイドポートに輸液装置を連結する工程は、シリンジの遠位端がポート開口部に隣接して配置されるように、シリンジをサイドポートに挿入することを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
横方向の力を印加することは、シリンジのプランジャを押し下げてエラストマー性ポートバルブを変形させることを含むことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
プランジャの押し下げは、シリンジの遠位端から流体を押し出し、エラストマー性ポートバルブの側面を変形させることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
輸液装置の作動に応じて、流体がポート開口部の構造的形状を通して導かれ、構造的形状が、半円形状、パイ様の形状、およびサイドポートの遠位端よりも小さい外縁を有する円形形状のうちの1つを含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
輸液装置の作動に応じて、流体が、ポート開口部を横断して配置されたリブへと導かれ、リブは、内腔内に向かう流体を近位方向に導く輪郭を含むことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
エラストマー性バルブが摩擦によって内腔内に固定されていることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項18】
輸液装置を作動させることに応じて、流体が傾斜面へと導かれ、傾斜面は、サイドポートの遠位壁からポート開口部へと横方向に延在することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項19】
傾斜面が、約30゜と約80゜の間の角度を含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
傾斜面が曲線を含むことを特徴とする請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、血管アクセス装置、ならびに、それに関連する装置、システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療においては、カテーテルアセンブリを使用して、カテーテルを患者の血管系に適切に配置する。ひとたび適所に配置されたならば、静脈内(すなわち「IV」)カテーテルのようなカテーテルを使用して、通常の生理食塩水、医薬化合物、栄養組成物の流体を、当該治療を必要とする患者へ輸液してもよい。さらに、カテーテルは、循環系からの流体の取り出し、および患者の血管系内の状態の監視を可能にする。
【0003】
一般的に使用されるカテーテルの一種に、オーバー・ザ・ニードルカテーテルがある。その名が示すように、「オーバー・ザ・ニードル」であるカテーテルは、鋭利遠位端を有する誘導針を覆うように取り付けてられもよい。誘導針は、典型的には鋭利遠位端を有し、最小限の抵抗で患者の皮膚および静脈を穿刺して患者の痛みを最小限にする。カテーテルを配置するためのいくつかの技術が当技術分野で実施されているが、多くは一般的に、誘導針の少なくとも一部を標的血管内に挿入する工程と、その後、カテーテルを針の上で滑らせて所定の位置に配置する工程とを含む。静脈内に導入針が設置されたことが確認されたならば、使用者は、静脈内の流れを一時的に遮断して導入針を引き抜き、将来の流体の注入および/または血液の抜き取りのためにカテーテルを所定の位置に残してもよい。
【0004】
一部のカテーテルアセンブリにおいて、カテーテルはカテーテルアダプタの遠位端から延在する。カテーテルアダプタのサイドポートを用いて、カテーテルを通した流体および薬剤の投与を行ってもよい。ポートバルブは、サイドポートを主要流路から分離してもよい。いくつかの場合には、ポートバルブを変形させて、流体および/または薬剤の導入を可能としてもよい。しかしながら、このような変形を高い信頼性で制御することは難しく、ポート開口部の封鎖を意図せずに解除し、輸液または血液の漏れを引き起こすおそれがある。
【0005】
本願で特許請求される内容は、あらゆる欠点を解決する実施形態、あるいは、上述のような環境においてのみ動作する実施形態に限定されない。むしろ、この背景技術は、本明細書に記載されるいくつかの実施形態を実施することができる例示的な技術領域を説明するために提供されるに過ぎない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示は、一般に、血管アクセス装置、ならびに、それに関連する装置、システム、および方法に関する。いくつかの実施形態において、血管アクセス装置は、縦軸に沿って延びるカテーテルアダプタを含んでもよい。カテーテルアダプタのいくつかの実施形態は、近位端、遠位端、およびそれらの間に延在する内腔を含んでもよい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
いくつかの実施形態において、カテーテルアダプタの表面にポート開口部を形成して、カテーテルアダプタのサイドポートおよび内腔を流体連通させてもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部は、内腔内に向かう流体を近位方向に導く構造的形状を含んでもよい。
【0008】
いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブを内腔内に配置して、ポート開口部を封止してもよい。エラストマー性ポートバルブのいくつかの実施形態は、それに加えられる横方向の力に応じて変形するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブの変形は、内腔を形成する内壁とエラストマー性ポートバルブの近位側との間に近位間隙を生じさせ、流路を開いてもよい。
【0009】
いくつかの実施形態において、構造的形状は、内腔内に向かう流体を近位方向に導く傾斜面を含んでもよい。いくつかの実施形態において、傾斜面は、サイドポートの遠位壁からポート開口部へ向かう近位方向に延びてもよい。傾斜面のいくつかの実施形態は、ポート開口部に比較して高い遠位壁上の位置から、ポート開口部に隣接する位置へ向かって、横軸に沿って、横方向に延在してもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部は、流体を流路に送達するためのシリンジに連結されるように構成されてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、構造的形状は、半円形状またはパイ様の形状を含むことができる。いくつかの実施形態において、構造的形状は、ポート開口部の少なくとも一部を横断して延在し、ポート開口部を通して流体を近位方向に導くように配向されるリブを含んでもよい
【0011】
いくつかの実施形態において、ポート開口部を、サイドポートの近位壁に近接して配置してもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部は、サイドポートの遠位端の外縁(periphery)よりも小さい外縁を含んでもよい。この方法において、いくつかの実施形態において、ポート開口部は、閉止部と開放部とを含むことができる。
【0012】
方法のいくつかの実施形態は、輸液装置を血管アクセス装置のサイドポートに連結する工程を含んでもよい。いくつかの実施形態において、血管アクセス装置は、縦軸に沿って延在し、かつ、近位端、遠位端、およびそれらの間に延在する内腔を含むカテーテルアダプタを含んでもよい。いくつかの実施形態において、カテーテルは、カテーテルアダプタの遠位端から遠位方向に延在してもよい。
【0013】
これらの実施形態および他の実施形態において、サイドポートは、カテーテルアダプタの表面から縦軸に対して実質的に横方向に延在してもよい。サイドポートのいくつかの実施形態は、ポート開口部を介して内腔と連通してもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部は、内腔内に向かう流体を近位方向に導くように構成された構造的形状を含んでもよい。いくつかの実施形態において、内腔内に配置され、ポート開口部を封止するエラストマー性ポートバルブをさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブは、摩擦によって内腔内に固定されてもよい。いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブを、それに印加される力に応じて変形するように構成してもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、方法は、輸液装置を作動させる工程をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、輸液装置を作動させる工程に応じて、エラストマー性ポートバルブの近位端が変形し、エラストマー性ポートバルブの近位端とカテーテルアダプタの内面との間に近位間隙を形成してもよい。このようにして、いくつかの実施形態において、流体がエラストマー性ポートバルブおよび内腔を通って近位方向へ流れるような流路を形成することができる。
【0015】
いくつかの実施形態において、輸液装置の作動に応じて、輸液装置を介してエラストマー性ポートバルブに横方向の力が印加され、近位間隙が形成される。いくつかの実施形態において、輸液装置をサイドポートに連結することは、シリンジの遠位端をポート開口部に隣接して配置するように、シリンジをサイドポートに挿入することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、横方向の力を印加することは、シリンジのプランジャを押し下げてエラストマー性ポートバルブを変形させることを含んでもよい。いくつかの実施形態において、プランジャを押し下げることにより、シリンジの遠位端から流体を強制的に送り込み、エラストマー性ポートバルブの側面を変形させてもよい。
【0016】
いくつかの実施形態において、輸液装置を作動させることに応じて、流体は、ポート開口部の構造的形状を通るように導かれてもよい。構造的形状のいくつかの実施形態は、半円形状、パイ様の形状、またはサイドポートの遠位端よりも小さな外縁を有する円形形状を含んでもよい。いくつかの実施形態において、輸液装置を作動させることに応じて、流体は、ポート開口部を横断して配置されるリブへと導かれてもよい。リブのいくつかの実施形態は、内腔内に向かう流体を近位方向に導くための輪郭を含んでもよい。
【0017】
いくつかの実施形態において、輸液装置を作動させることに応じて、流体を、傾斜面へと導いてもよい。傾斜面のいくつかの実施形態は、サイドポートの遠位壁からポート開口部へと横方向に延在してもよい。いくつかの実施形態において、傾斜面は、約30゜と約80゜との間の角度を構成する。いくつかの実施形態において、傾斜面は、曲線を含んでいてもよい。
【0018】
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は、両方ともに例示的かつ説明的であり、特許請求の範囲で規定される本発明を制限するものではないことを理解すべきである。種々の実施形態は、図面に示された配置および器具に限定されないことを理解すべきである。また、実施形態を組み合わせることができ、または他の実施形態を利用することができ、また、特許請求の範囲に記載のない限り、本発明の種々の実施形態の範囲から逸脱することなく構造変更を行うことができることを理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきものではない。
【0019】
例示的な実施形態は、添付図面の使用を通じて、さらなる具体性および詳細をもって説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】いくつかの実施形態にしたがう、カテーテルアダプタの透視図である。
図2】いくつかの実施形態にしたがう、エラストマー性ポートバルブの透視図である。
図3】いくつかの実施形態にしたがう、血管アクセス装置の断面図である。
図4】エラストマー性バルブの間隙を示す、先行技術のカテーテルアダプタの破断図である。
図5】いくつかの実施形態にしたがう、例示的な血管アクセス装置の破断図である。
図6図5のカテーテルアダプタ内に配置されたエラストマー性バルブの拡大破断図である。
図7】いくつかの実施形態にしたがう流体の流れを示す、図6のエラストマー性バルブおよびカテーテルアダプタの断面図である。
図8A】いくつかの実施形態にしたがう、半円形の構造的形状を有する例示的なポート開口部の上面図である。
図8B】いくつかの実施形態にしたがう、偏心同軸円の構造的形状を有する別の例示的なポート開口部の上面図である。
図8C】いくつかの実施形態にしたがう、半円形の構造的形状に統合されたリブを有する別の例示的なポート開口部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、前述のように、カテーテルアダプタ12は、カテーテルを介して流体および薬剤を投与するために使用してもよい。いくつかの実施形態において、カテーテルアダプタ12は、流体および薬剤をカテーテルアダプタ12に導入するためのサイドポート22を含んでもよい。いくつかの実施形態において、サイドポート22は、ポート開口部28から延在してもよい。サイドポート22のいくつかの実施形態は、流体をポート開口部28に導くように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、サイドポート22の近位壁に近接して配置されてもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、サイドポート22の遠位端48の寸法に対して減少した寸法を含んでもよい
【0022】
いくつかの実施形態において、サイドポート22は、カテーテルアダプタ12の表面52から、縦軸20に対して実質的に横方向に延在してもよい。サイドポート22のいくつかの実施形態は、ポート開口部28を介して内腔18と連通してもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、流体がカテーテルアダプタ12の内腔18に入る際に、流体を近位方向に導くように構成された構造的形状を含んでもよい。
【0023】
図2および図3に示すように、ポートバルブ24は、サイドポート22を、ポート開口部28を通る主要流路から分離してもよい。いくつかの実施態様において、ポートバルブ24は、たとえば、ゴムのようなエラストマー材料から形成された中空形状を含んでもよい。このように、ポートバルブ24のいくつかの実施形態は、変形して、流体および/または薬剤がサイドポート22から内腔18へと流れるための流路を提供してもよい。
【0024】
いくつかの実施形態において、ポートバルブ24は、管状であってもよい。いくつかの実施形態において、ポートバルブ24は、摩擦、接着剤、または任意の他の適切な方法または装置により内腔18内に固定されてもよい。いくつかの実施形態において、ポートバルブ24は、エラストマー性であってもよく、印加される横方向の力に応じて変形するように構成されてもよい。このようにして、いくつかの実施形態において、内腔を形成する内壁とエラストマー性ポートバルブの近位側との間に近位間隙が形成され、それによって流路を開いてもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、カテーテルアダプタ12の近位端14の近傍に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、シリンジ38の遠位端を受容するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、横方向の力26は、シリンジまたは他の装置を介してエラストマー性バルブ24に印加されてもよい。
【0026】
たとえば、臨床環境において、臨床医は、シリンジをサイドポート22に連結してもよい。いくつかの実施形態において、サイドポート22は、カテーテルアダプタ12の上部に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、臨床医がシリンジのプランジャを押し下げる際に発生する下方向の圧力は、エラストマー性ポートバルブ24を変形させ、それによってエラストマー性ポートバルブ24とカテーテルアダプタ12との間に間隙を生じさせてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブ24とカテーテルアダプタ12との間の間隙は、サイドポート22と内腔18との間の流路を提供してもよい。いくつかの実施形態において、これは、カテーテルを介した投与のために、流体および/または薬剤のカテーテルアダプタ12への導入を可能にしてもよい。しかしながら、いくつかの場合には、エラストマー性ポートバルブ24の変形は、ポート開口部28の封鎖を不注意に解除させ、輸液または血液の漏れが生じさせるおそれがある。
【0028】
図2を参照すると、エラストマー性ポートバルブ24のいくつかの実施形態は、管状または円筒状の構造、あるいは、それを通る流路を提供するように構成される任意の他の適切な構造を含んでもよい。エラストマー性ポートバルブ24のいくつかの実施形態は、内腔18の内寸に実質的に対応する外寸を含んでもよい。このようにして、エラストマー性ポートバルブ24のいくつかの実施形態は、滑り嵌めまたはプレス嵌めによってカテーテルアダプタ12の内腔18内に保持されてもよい。
【0029】
エラストマー性ポートバルブ24のいくつかの実施形態は、中空であってもよいし、流路を提供するためのチャネルを含んでもよい。いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブ24は、ゴムのような生体適合性エラストマー材料を含んでもよい。
【0030】
図3を参照すると、いくつかの実施形態において、血管アクセス装置10は、縦軸20に沿って延びるカテーテルアダプタ12を含んでもよい。カテーテルアダプタ12のいくつかの実施形態は、近位端14、遠位端16、およびそれらの間に延在する内腔18を含んでもよい。いくつかの実施形態において、カテーテルアダプタ12の近位端14に近接した位置で、カテーテルアダプタ12の表面52にポート開口部28を形成してもよい。ポート開口部28は、内腔18と流体連通してもよい。
【0031】
図4を参照すると、従来の装置におけるエラストマー性ポートバルブ24の変形は、高い信頼性で制御することが難しく、ポート開口部28の封止を解除して輸液または血液の漏れを引き起こすおそれがある。実際、エラストマー性ポートバルブ24の変形は、エラストマー性ポートバルブ24とポート開口部28との相対位置、ならびに、流体の注入速度に基づいて変化するおそれがある。したがって、カテーテルアダプタ12の遠位側において、エラストマー性ポートバルブ24とカテーテルアダプタ12との間に遠位間隙32が生じることは珍しくない。いくつかの場合には、エラストマー性ポートバルブ24の変形により、図4に示すように、近位間隙30と遠位間隙32の両方が形成される。
【0032】
いくつかの場合には、流路が近位端14で閉止されているため、注入された流体は遠位間隙32から流出するおそれがある。これは、流体注入時にエラストマー性ポートバルブ24の近位間隙30側の圧力を高くするおそれがある。別の場合において、遠位間隙32は、流出する流体によってエラストマー性ポートバルブ24に及ぼされる力によって、エラストマー性ポートバルブ24を近位方向に変位させるおそれがある。このような変位は、ポート開口部28の封鎖を解除し、輸液または血液の漏れを引き起こすおそれがある。
【0033】
図5を参照すると、いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブ24は、エラストマー性ポートバルブ24の少なくとも一部がポート開口部28を閉塞し得るように、内腔18内に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28を、サイドポート22の近位壁46に近接して配置してもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、流路に流体を供給するための、シリンジのような輸液装置に連結されるように構成されてもよい。
【0034】
たとえば、いくつかの実施形態において、シリンジをサイドポート22に挿入してもよい。いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブ24は、ポート開口部28を封止してもよい。シリンジのいくつかの実施形態は、エラストマー性ポートバルブ24の上面に横方向の力26を印加し、エラストマー性ポートバルブ24を下方向、すなわち縦軸20に対して横方向に変形させてもよい。エラストマー性ポートバルブ24のいくつかの実施形態は、横方向の力26に応じて、サイドポート22と内腔18との間に近位間隙30を形成し、それによって流路を開いてもよい。
【0035】
前述のように、いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、流体がカテーテルアダプタ12の内腔18に入る際に、流体を近位方向に導くように構成された傾斜面36のような構造的形状を含んでもよい。示されるように、いくつかの実施形態において、傾斜面36は、サイドポート22の遠位壁56からポート開口部28へと近位方向に延在してもよい。傾斜面36のいくつかの実施形態は、ポート開口部28に隣接する位置に対して横方向に高くなった遠位壁56上の位置から斜め方向または横方向にさらに延在してもよい。いくつかの実施形態において、傾斜面36は、約30°と約80°との間の角度で遠位壁56から延在してもよい。いくつかの実施形態において、傾斜面36は、曲線、落差(drop)、または他の適切な構造的変化を含んでもよい。
【0036】
図6を参照すると、いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブ24の変形により、ポート開口部28と内腔18との間に流路を開いてもよい。いくつかの実施形態において、これは、エラストマー性ポートバルブ24とサイドポート22との間に近位間隙30を形成してもよい。いくつかの実施形態において、近位間隙30は、近位側、すなわち、それに結合されるルアーアダプタを有する開口部40に近い側で、流体がカテーテルアダプタ12に入ることを可能してもよい。
【0037】
図7を参照すると、いくつかの実施形態は、注入された流体が近位間隙30を通ってポート開口部28から出る可能性を最大化するための構造的ポート形状を提供する。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、環状であってもよいし、サイドポート22からカテーテルアダプタ12の内腔18への流路を形成するための任意の他の適切な断面形状を含んでもよい。
【0038】
先に説明したように、いくつかの実施形態において、シリンジまたは他の適切な輸液装置をサイドポート22に挿入して、流体の注入、および/またはエラストマー性ポートバルブ24への加圧を行い、それによってサイドポート22とエラストマー性ポートバルブ24との間に近位間隙30を形成してもよい。このようにして、いくつかの実施形態において、サイドポート22から近位間隙30を介してカテーテルアダプタ12の内腔18内に至る流路を形成してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態において、図7に示すように、サイドポート22は、縦軸20に対して実質的に横方向に延在してもよい。いくつかの実施形態において、サイドポート22の遠位壁56は、流体サイドポート22からエラストマー性ポートバルブ24に向かい、内腔18中へと流れる際に、流体を近位方向に導くための傾斜面36を含んでもよい。いくつかの実施形態において、流体は、近位間隙30を通って内腔18に入ってもよい。
【0040】
いくつかの実施形態において、流体は、近位間隙30を通ってエラストマー性ポートバルブ24の表面に衝突する際に進路を変更してもよい。このように、流路のいくつかの実施形態は、最初に近位間隙30を通って近位方向に流れ、その後に方向を変えて、エラストマー性ポートバルブ24および内腔18を通って遠位方向に流れてもよい。
【0041】
図8A図8Cを参照すると、いくつかの実施形態において、構造的ポート形状34は、半円形状、パイ様の形状、またはサイドポート22からポート開口部28の近位側に向かって流体を導くように構成された任意の他の適切な形状60として、カテーテルアダプタ12の表面52内に形成されたポート開口部28を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、サイドポート22の遠位端48の外縁よりも小さい外縁を含んでもよい。このように、いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、閉止部54および開放部58を含むことができる。
【0042】
これらの実施形態および他の実施形態において、形状60の閉止部54は、形状60の開放部58に向かって下方向すなわち横方向に傾斜してもよい。したがって、いくつかの実施形態の閉止部54は、ポート開口部28の開放部58を通るように流体を導いてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、流体を、サイドポート22からカテーテルアダプタ12の内腔18に向かって、近位方向に流れるように導いてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態は、遠位間隙32が発生した場合であっても、遠位方向に高容量の流れが発生する可能性を低減し得る。前述のように、いくつかの実施形態は、傾斜面36、またはポート開口部28の近位側に向かって傾斜した形状60を提供して、遠位間隙32の形成を防ぎ、それによって内腔18内のエラストマー性ポートバルブ24の変位を防止することができる。このように、いくつかの実施形態は、エラストマー性ポートバルブ24の破裂圧も改善し、ポート開口部28からの輸液および/または血液の漏れの可能性を低減させてもよい。
【0044】
いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、サイドポート22の遠位端48に比べて縮小した寸法を有する断面形状60を含んでもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、遠位端48の形状に比べて縮小した寸法およびオフセットを有する円を含んでもよい。これらの実施形態および他の実施形態において、1つまたは複数のリブ44は、ポート開口部28を少なくとも部分的に横断するか、またはポート開口部28に少なくとも部分的に沿って延在して、ポート開口部28の近位側に向かって流体を導いてもよい。いくつかの実施形態において、サイドポート22の遠位端48に関するポート開口部28の形状60および位置は、流体を近位方向に導いて、流体が近位間隙30を通って内腔18に入るようにしてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、ポート開口部28の寸法は、流路を通して流体を注入するのに必要な力に対する不利益なしに、サイドポート22の遠位端48に対して大幅に減少することができる。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、流体が近位間隙30を介して内腔18に入る可能性を高めるために、サイドポート22の近位壁46の近くに位置してもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28のこの位置は、遠位間隙32の形成の可能性をも減少させることができる。
【0046】
方法のいくつかの実施形態は、血管アクセス装置10を提供してもよい。いくつかの実施形態において、血管アクセス装置10は、縦軸20に沿って延在するカテーテルアダプタ12を含んでもよい。カテーテルアダプタ12は、近位端14、遠位端16、およびそれらの間に延在する内腔18を含んでもよい。いくつかの実施形態において、カテーテルは、カテーテルアダプタ12の遠位端16から遠位方向に延在してもよい。
【0047】
これらの実施形態および他の実施形態において、サイドポート22は、カテーテルアダプタ12の表面52から、縦軸20に対して実質的に横方向に延在してもよい。サイドポート22のいくつかの実施形態は、ポート開口部28を介して内腔18と連通してもよい。いくつかの実施形態において、ポート開口部28は、内腔内に向かう流体を近位方向に導くように構成された構造的形状を含んでもよい。いくつかの実施形態は、内腔18内に配置され、ポート開口部28を封止するエラストマー性ポートバルブ24をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブ24は、摩擦、圧入、接着剤、または任意の他の適切な方法もしくは装置を介して、内腔18内に固定されてもよい。いくつかの実施形態において、エラストマー性ポートバルブ24は、印加される力に応じて変形するように構成されてもよい。
【0048】
方法のいくつかの実施形態は、輸液装置を作動させる工程をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態において、輸液装置を作動させることに応じて、エラストマー性ポートバルブ24の近位端が変形し、エラストマー性ポートバルブ24の近位端とカテーテルアダプタ12の内面との間に近位間隙30を形成してもよい。このようにして、いくつかの実施形態は、流体がエラストマー性ポートバルブ24および内腔18を通って近位方向に流れるような流路を形成してもよい。
【0049】
いくつかの実施形態において、輸液装置を作動させる工程は、輸液装置を介してエラストマー性ポートバルブ24に横方向の力を印加して、近位間隙30を形成することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、輸液装置をサイドポート22に連結することは、シリンジ38の遠位端がポート開口部28に接触するように、シリンジ38をサイドポート22に挿入することを含んでもよい。いくつかの実施形態において、横方向の力を印加することは、シリンジ38のプランジャを押し下げてエラストマー性ポートバルブ24を変形させることを含んでもよい
【0050】
いくつかの実施形態において、輸液装置を作動させる工程は、ポート開口部28の構造的形状を通して流体を導くことを含んでもよい。構造的形状のいくつかの実施形態は、半円形状、パイ様の形状、または、サイドポートの遠位端よりも小さい外縁を有する円形の形状を含んでもよい。いくつかの実施形態において、輸液装置を作動させることは、ポート開口部28を横断して配置されるリブ44に向かって流体を導くことを含んでもよい。リブ44のいくつかの実施形態は、内腔18内に向かう流体を近位方向に導くための輪郭を含んでもよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、輸液装置を作動させる工程は、流体を傾斜面36へと導くことを含んでもよい。傾斜面36のいくつかの実施形態は、サイドポート22の遠位壁56からポート開口部28へと、横方向に延在してもよい。いくつかの実施形態において、傾斜面36は、約30゜と約80゜との間の角度を含む。いくつかの実施形態において、傾斜面36は、ポート開口部28を通して近位方向に流体を導くために、曲線、落差(drop)、または、ポート開口部28を通して近位方向に流体を導くのに適当な任意の他の構造的特徴を含んでもよい。
【0052】
前述の一般的な説明と以下の詳細な説明は、両方ともに例示的かつ説明的であり、請求の範囲で規定される本発明を制限するものではないことを理解すべきである。種々の実施形態は、図面に示された配置および器具に限定されないことを理解すべきである。また、実施形態を組み合わせることができ、または他の実施形態を利用することができ、また、特許請求の範囲に記載のない限り、本発明の種々の実施形態の範囲から逸脱することなく構造変更を行うことができることを理解すべきである。したがって、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されるべきものではない。
【0053】
本明細書に記載される全ての例および条件文は、本発明および技術を促進するために本発明者が貢献した概念を読者が理解するのを補助する教育的目的を意図している。本発明は、そのような具体的に記載された例および条件に限定されないものとして解釈されるべきである。本発明の実施形態を詳細に説明したが、本発明の真意よび範囲から逸脱することなく、種々の変更、置換、および改変が可能であることを理解すべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
【国際調査報告】