(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】PD-L1に結合する多重特異性結合化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20231023BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20231023BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20231023BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20231023BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20231023BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20231023BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231023BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20231023BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20231023BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231023BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231023BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C07K16/46
C12N15/13 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C07K16/18
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N1/15
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/395 U
A61K39/395 N
A61K39/395 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522501
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 US2021055225
(87)【国際公開番号】W WO2022082005
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522039821
【氏名又は名称】キューエルエスエフ バイオセラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グー, シェンダ
(72)【発明者】
【氏名】チェン, シハオ
(72)【発明者】
【氏名】シュワイマー, ローレン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB31
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
PD-L1に結合する多重特異性結合化合物が、そのような結合化合物を作製する方法、そのような結合化合物を含む医薬組成物を含む組成物、及びPD-L1の発現によって特徴付けられる障害を治療するためのそれらの使用とともに開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PD-L1及び4-1BBに結合する二重特異性抗体であって、以下:
PD-L1に結合する2つの結合単位であって、それぞれが以下:
重鎖可変領域であって、
配列番号1または4を含むCDR1配列と;
配列番号2または5を含むCDR2配列と;
配列番号3または6を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって、
配列番号7または10を含むCDR1配列と;
配列番号8または11を含むCDR2配列と;
配列番号9または12を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域;を含む前記2つの結合単位;ならびに
4-1BBに結合する2つの結合単位であって、それぞれが単鎖Fv(scFv)を含み、前記単鎖Fv(scFv)が:
重鎖可変領域であって:
配列番号13または16を含むCDR1配列と;
配列番号14または17を含むCDR2配列と;
配列番号15または18を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号19または22を含むCDR1配列と;
配列番号20または23を含むCDR2配列と;
配列番号21または24を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、を含む、前記2つの結合単位、
を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項2】
請求項1に記載の二重特異性抗体であって、PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ以下:
重鎖可変領域であって:
配列番号1を含むCDR1配列と;
配列番号2を含むCDR2配列と;
配列番号3を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号7を含むCDR1配列と;
配列番号8を含むCDR2配列と;
配列番号9を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項3】
請求項1に記載の二重特異性抗体であって、PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ以下:
重鎖可変領域であって:
配列番号4を含むCDR1配列と;
配列番号5を含むCDR2配列と;
配列番号6を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号10を含むCDR1配列と;
配列番号11を含むCDR2配列と;
配列番号12を含むCDR3配列と、を含む軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項4】
請求項1に記載の二重特異性抗体であって、4-1BBに結合する前記2つの結合単位が各々:
重鎖可変領域であって:
配列番号13を含むCDR1配列と;
配列番号14を含むCDR2配列と;
配列番号15を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号19を含むCDR1配列と;
配列番号20を含むCDR2配列と;
配列番号21を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項5】
請求項1に記載の二重特異性抗体であって、4-1BBに結合する前記2つの結合単位が各々:
重鎖可変領域であって:
配列番号16を含むCDR1配列と;
配列番号17を含むCDR2配列と;
配列番号18を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号22を含むCDR1配列と;
配列番号23を含むCDR2配列と;
配列番号24を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項6】
各々の結合単位中の前記CDR1、CDR2、及びCDR3配列が、ヒトVHまたはヒトVLフレームワークに存在する、請求項1~5のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号25を含む重鎖可変領域を含む、請求項7に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号27と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号27を含む軽鎖可変領域を含む、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号26を含む重鎖可変領域を含む、請求項11に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号28と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
PD-L1に結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号28を含む軽鎖可変領域を含む、請求項13に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
4-1BBに結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号29と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
4-1BBに結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号29を含む重鎖可変領域を含む、請求項15に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
4-1BBに結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号31と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項18】
4-1BBに結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号31を含む軽鎖可変領域を含む、請求項17に記載の二重特異性抗体。
【請求項19】
4-1BBに結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号30と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項20】
4-1BBに結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号30を含む重鎖可変領域を含む、請求項19に記載の二重特異性抗体。
【請求項21】
4-1BBに結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号32と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項22】
4-1BBに結合する前記2つの結合単位がそれぞれ、配列番号32を含む軽鎖可変領域を含む、請求項21に記載の二重特異性抗体。
【請求項23】
CH1ドメイン、ヒンジ領域配列、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む重鎖定常領域配列をさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項24】
前記重鎖定常領域配列が野生型ヒトIgG1定常領域配列(配列番号92)を含む、請求項23に記載の二重特異性抗体。
【請求項25】
前記重鎖定常領域配列が、L234A変異、L235A変異、G237A変異、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項24に記載の二重特異性抗体。
【請求項26】
前記重鎖定常領域配列が配列番号93を含む、請求項25に記載の二重特異性抗体。
【請求項27】
軽鎖定常領域配列をさらに含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項28】
前記軽鎖定常領域配列が、ヒトκ軽鎖定常領域配列(配列番号91)を含む、請求項27に記載の二重特異性抗体。
【請求項29】
前記軽鎖定常領域配列が、ヒトλ軽鎖定常領域配列を含む、請求項27に記載の二重特異性抗体。
【請求項30】
4-1BBに結合する前記結合単位のそれぞれにおいて、前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とがリンカー配列によって連結されている、請求項1~29のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項31】
前記リンカー配列がG
4Sリンカー配列(配列番号36)を含む、請求項30に記載の二重特異性抗体。
【請求項32】
前記G
4Sリンカー配列(配列番号36)が、配列番号36、配列番号37、または配列番号38を含む、請求項31に記載の二重特異性抗体。
【請求項33】
前記第2の結合単位のそれぞれが、リンカー配列によって前記重鎖定常領域配列のC末端に連結される、請求項23~32のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項34】
前記リンカー配列がG
4Sリンカー配列(配列番号36)を含む、請求項33に記載の二重特異性抗体。
【請求項35】
前記G
4Sリンカー配列(配列番号36)が、配列番号36、配列番号37、または配列番号38を含む、請求項34に記載の二重特異性抗体。
【請求項36】
PD-L1及び4-1BBに結合する二重特異性抗体であって:
(a)配列番号43の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号41の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号43の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドと;
(d)配列番号41の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと、を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項37】
PD-L1及び4-1BBに結合する二重特異性抗体であって:
(a)配列番号44の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号42の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号44の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドと;
(d)配列番号42の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと、を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項38】
PD-L1及びCD47に結合する二重特異性抗体であって:
PD-L1に結合する第1の結合単位であって、
重鎖可変領域であって:
配列番号1または4を含むCDR1配列と;
配列番号2または5を含むCDR2配列と;
配列番号3または6を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号7または10を含むCDR1配列と;
配列番号8または11を含むCDR2配列と;
配列番号9または12を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域;を含む前記第1の結合単位;ならびに
CD47に結合する第2の結合単位であって、単鎖Fv(scFv)を含み、前記単鎖Fv(scFv)が:
重鎖可変領域であって:
配列番号50または53を含むCDR1配列と;
配列番号51または54を含むCDR2配列と;
配列番号52または55を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号56または59を含むCDR1配列と;
配列番号57または60を含むCDR2配列と;
配列番号58または61を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、を含む、前記第2の結合単位、を含む、
前記二重特異性抗体。
【請求項39】
請求項38に記載の二重特異性抗体であって、PD-L1に結合する前記第1の結合単位が:
重鎖可変領域であって:
配列番号1を含むCDR1配列と;
配列番号2を含むCDR2配列と;
配列番号3を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号7を含むCDR1配列と;
配列番号8を含むCDR2配列と;
配列番号9を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項40】
請求項38に記載の二重特異性抗体であって、PD-L1に結合する前記第1の結合単位が:
重鎖可変領域であって:
配列番号4を含むCDR1配列と;
配列番号5を含むCDR2配列と;
配列番号6を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号10を含むCDR1配列と;
配列番号11を含むCDR2配列と;
配列番号12を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項41】
請求項38に記載の二重特異性抗体であって、CD47に結合する前記第2の結合単位が:
重鎖可変領域であって:
配列番号50を含むCDR1配列と;
配列番号51を含むCDR2配列と;
配列番号52を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号56を含むCDR1配列と;
配列番号57を含むCDR2配列と;
配列番号58を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項42】
請求項38に記載の二重特異性抗体であって、CD47に結合する前記第2の結合単位が:
重鎖可変領域であって:
配列番号53を含むCDR1配列と;
配列番号54を含むCDR2配列と;
配列番号55を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号59を含むCDR1配列と;
配列番号60を含むCDR2配列と;
配列番号61を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項43】
各々の結合単位中の前記CDR1、CDR2、及びCDR3配列が、ヒトVHまたはヒトVLフレームワークに存在する、請求項38~42のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項44】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項39に記載の二重特異性抗体。
【請求項45】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号25を含む重鎖可変領域を含む、請求項44に記載の二重特異性抗体。
【請求項46】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号27と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項39に記載の二重特異性抗体。
【請求項47】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号27を含む軽鎖可変領域を含む、請求項46に記載の二重特異性抗体。
【請求項48】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項39に記載の二重特異性抗体。
【請求項49】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号26を含む重鎖可変領域を含む、請求項48に記載の二重特異性抗体。
【請求項50】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号28と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項39に記載の二重特異性抗体。
【請求項51】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号28を含む軽鎖可変領域を含む、請求項50に記載の二重特異性抗体。
【請求項52】
CD47に結合する前記第2の結合単位が、配列番号62と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項39に記載の二重特異性抗体。
【請求項53】
CD47に結合する前記第2の結合単位が、配列番号62を含む重鎖可変領域を含む、請求項52に記載の二重特異性抗体。
【請求項54】
CD47に結合する前記第2の結合単位が、配列番号64と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項39に記載の二重特異性抗体。
【請求項55】
CD47に結合する前記第2の結合単位が、配列番号64を含む軽鎖可変領域を含む、請求項54に記載の二重特異性抗体。
【請求項56】
CD47に結合する前記第2の結合単位が、配列番号63と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項39に記載の二重特異性抗体。
【請求項57】
CD47に結合する前記第2の結合単位が、配列番号63を含む重鎖可変領域を含む、請求項56に記載の二重特異性抗体。
【請求項58】
CD47に結合する前記第2の結合単位が、配列番号65と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項39に記載の二重特異性抗体。
【請求項59】
CD47に結合する前記第2の結合単位が、配列番号65を含む軽鎖可変領域を含む、請求項58に記載の二重特異性抗体。
【請求項60】
CH1ドメイン、ヒンジ領域配列、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む重鎖定常領域配列をさらに含む、請求項38~59のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項61】
前記重鎖定常領域配列が野生型ヒトIgG1定常領域配列(配列番号92)を含む、請求項60に記載の二重特異性抗体。
【請求項62】
前記重鎖定常領域配列が、L234A変異、L235A変異、G237A変異、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項61に記載の二重特異性抗体。
【請求項63】
前記重鎖定常領域配列が配列番号93を含む、請求項62に記載の二重特異性抗体。
【請求項64】
軽鎖定常領域配列をさらに含む、請求項38~63のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項65】
前記軽鎖定常領域配列が、ヒトκ軽鎖定常領域配列(配列番号91)を含む、請求項64に記載の二重特異性抗体。
【請求項66】
前記軽鎖定常領域配列が、ヒトλ軽鎖定常領域配列を含む、請求項64に記載の二重特異性抗体。
【請求項67】
CD47に結合する前記第2の結合単位において、前記重鎖可変領域と前記軽鎖可変領域とがリンカー配列によって連結されている、請求項38~66のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項68】
前記リンカー配列がG
4Sリンカー配列(配列番号36)を含む、請求項67に記載の二重特異性抗体。
【請求項69】
前記G
4Sリンカー配列(配列番号36)が、配列番号36、配列番号37、または配列番号38を含む、請求項68に記載の二重特異性抗体。
【請求項70】
前記第2の結合単位のそれぞれが、リンカー配列によって前記重鎖定常領域配列のC末端に連結される、請求項60~69のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項71】
前記リンカー配列がG
4Sリンカー配列(配列番号36)を含む、請求項70に記載の二重特異性抗体。
【請求項72】
前記G
4Sリンカー配列(配列番号36)が、配列番号36、配列番号37、または配列番号38を含む、請求項71に記載の二重特異性抗体。
【請求項73】
2つの異なる重鎖ポリペプチドのヘテロ二量体化を促進する1つ以上のノブ・イン・ホール変異を含む重鎖定常領域をさらに含む、請求項38~72のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項74】
PD-L1及びDCD47に結合する二重特異性抗体であって:
(a)配列番号66の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号67の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号68の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと、を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項75】
PD-L1及びDCD47に結合する二重特異性抗体であって:
(a)配列番号69の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号70の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号71の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと、を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項76】
二重特異性抗体であって、PD-L1に結合し、かつ前記二重特異性抗体の重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合した1つ以上のIL15ポリペプチドを含み、
PD-L1に結合する第1の結合単位であって、
重鎖可変領域であって:
配列番号1または4を含むCDR1配列と;
配列番号2または5を含むCDR2配列と;
配列番号3または6を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号7または10を含むCDR1配列と;
配列番号8または11を含むCDR2配列と;
配列番号9または12を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域;を含む前記第1の結合単位;ならびに
配列番号86~90のいずれかと少なくとも95%の同一性を有する配列を含むIL15ポリペプチド、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項77】
請求項76に記載の二重特異性抗体であって、PD-L1に結合する前記第1の結合単位が:
重鎖可変領域であって:
配列番号1を含むCDR1配列と;
配列番号2を含むCDR2配列と;
配列番号3を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号7を含むCDR1配列と;
配列番号8を含むCDR2配列と;
配列番号9を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項78】
請求項76に記載の二重特異性抗体であって、PD-L1に結合する前記第1の結合単位が:
重鎖可変領域であって:
配列番号4を含むCDR1配列と;
配列番号5を含むCDR2配列と;
配列番号6を含むCDR3配列と、を含む前記重鎖可変領域;ならびに
軽鎖可変領域であって:
配列番号10を含むCDR1配列と;
配列番号11を含むCDR2配列と;
配列番号12を含むCDR3配列と、を含む前記軽鎖可変領域、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項79】
前記IL15ポリペプチドが配列番号86~90のいずれか1つの配列を含む、請求項76に記載の二重特異性抗体。
【請求項80】
前記IL15ポリペプチドが、リンカー配列によって前記抗体の前記重鎖ポリペプチドサブユニットに連結されている、請求項76~79のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項81】
前記リンカー配列が、配列番号36、37、38、49、120、121、122、123、124、125、126、127または128のいずれか1つの配列を含む、請求項80に記載の二重特異性抗体。
【請求項82】
前記CDR1、CDR2、及びCDR3配列が、ヒトVHまたはヒトVLフレームワークに存在する、請求項76~81のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項83】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項77に記載の二重特異性抗体。
【請求項84】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号25を含む重鎖可変領域を含む、請求項83に記載の二重特異性抗体。
【請求項85】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号27と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77に記載の二重特異性抗体。
【請求項86】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号27を含む軽鎖可変領域を含む、請求項85に記載の二重特異性抗体。
【請求項87】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項77に記載の二重特異性抗体。
【請求項88】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号26を含む重鎖可変領域を含む、請求項87に記載の二重特異性抗体。
【請求項89】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号28と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項77に記載の二重特異性抗体。
【請求項90】
PD-L1に結合する前記第1の結合単位が、配列番号28を含む軽鎖可変領域を含む、請求項89に記載の二重特異性抗体。
【請求項91】
CH1ドメイン、ヒンジ領域配列、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む重鎖定常領域配列をさらに含む、請求項76~90のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項92】
前記重鎖定常領域配列が野生型ヒトIgG1定常領域配列(配列番号92)を含む、請求項91に記載の二重特異性抗体。
【請求項93】
前記重鎖定常領域配列が、L234A変異、L235A変異、G237A変異、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項92に記載の二重特異性抗体。
【請求項94】
前記重鎖定常領域配列が配列番号93を含む、請求項93に記載の二重特異性抗体。
【請求項95】
軽鎖定常領域配列をさらに含む、請求項76~94のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項96】
前記軽鎖定常領域配列が、ヒトκ軽鎖定常領域配列(配列番号91)を含む、請求項95に記載の二重特異性抗体。
【請求項97】
前記軽鎖定常領域配列が、ヒトλ軽鎖定常領域配列を含む、請求項95に記載の二重特異性抗体。
【請求項98】
2つの異なる重鎖ポリペプチドのヘテロ二量体化を促進する1つ以上のノブ・イン・ホール変異を含む重鎖定常領域をさらに含む、請求項76~97のいずれか1項に記載の二重特異性抗体。
【請求項99】
PD-L1に結合し、各重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合したIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体であって、
(a)配列番号104の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号105の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号105の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと;
(d)配列番号104の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドと、
を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項100】
PD-L1に結合し、各重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合したIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体であって、
(a)配列番号106の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号107の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号107の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと;
(d)配列番号106の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドと、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項101】
PD-L1に結合し、各重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合したIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体であって、
(a)配列番号108の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号109の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号110の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと;
(d)配列番号108の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドと、
を含む前記二重特異性抗体。
【請求項102】
PD-L1に結合し、1つの重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合したIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体であって、
(a)配列番号111の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号112の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号113の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと;
(d)配列番号111の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドと、
を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項103】
PD-L1に結合し、1つの重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合したIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体であって、
(a)配列番号114の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号115の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号116の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと;
(d)配列番号114の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドと、
を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項104】
PD-L1に結合し、各重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合したIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体であって、
(a)配列番号117の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチドと;
(b)配列番号118の配列を含む第1の重鎖ポリペプチドと;
(c)配列番号119の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドと;
(d)配列番号117の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドと、
を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項105】
請求項1~104のいずれか1項に記載の抗体を含む、医薬組成物。
【請求項106】
PD-L1の発現を特徴とする障害の処置方法であって、前記障害を有する対象に、請求項1~104のいずれか1項に記載の抗体、または請求項105に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記処置方法。
【請求項107】
PD-L1の発現を特徴とする障害を処置するための医薬の調製における、請求項1~104のいずれか1項に記載の抗体の使用。
【請求項108】
PD-L1の発現を特徴とする障害の処置に使用するための、請求項1~104のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項109】
前記障害ががんである、請求項106~108のいずれか1項に記載の方法、使用、または抗体。
【請求項110】
請求項1~104のいずれか1項に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド。
【請求項111】
請求項110に記載のポリヌクレオチドを含む、ベクター。
【請求項112】
請求項111に記載のベクターを含む、細胞。
【請求項113】
請求項112に記載の細胞を、前記抗体の発現を許容する条件下で増殖させること、及び前記細胞から前記抗体を単離することを含む、請求項1~104のいずれか1項に記載の抗体の産生方法。
【請求項114】
有効用量の請求項1~104のいずれか1項に記載の抗体、または請求項105に記載の医薬組成物を、必要とする個体に投与することを含む、処置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月16日出願の米国仮特許出願第63/093,109号の出願日の優先権を主張し、この開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、配列表は、参照によりその全体が本明細書に援用される。2021年12月30日に作成された当該ASCIIコピーは、QLS-0002-WO_SL.txtという名称であり、サイズは228,930バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、PD-L1に結合する多重特異性結合化合物に関する。本発明はさらに、そのような結合化合物を作製する方法、そのような結合化合物を含む医薬組成物を含む組成物、及びPD-L1の発現を特徴とする障害を処置するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0004】
がんは世界中で主要な死因である。進行した転移性がんでは、放射線療法及び化学療法などの従来の治療レジメンは、生存期間の延長にわずかな効果しかない。低分子阻害剤及び阻害性モノクローナル抗体などの標的療法は、疾患進行の管理に大きな改善をもたらしたが、それにもかかわらず、特定の変異を有するがんのサブセットまたは標的可能な受容体を過剰発現するがんに限定されている。さらに、腫瘍細胞はさらに変異する場合もあるし、または薬物の阻害効果を回避する別のシグナル伝達経路に切り替える場合もあるので、これらの治療法に対する耐性が一般的である。免疫療法は、体自身の免疫システムを活用することにより、がんと闘う上で新たな可能性を秘めている。たとえば、PD-1及びCTLA-4を標的とするチェックポイント阻害剤は、この分野の研究開発を先導してきた。多重特異性抗体の開発により、新しい治療法が可能になった。
【0005】
PD-L1多重特異性抗体は、PD-L1及び1つ以上の共刺激受容体、例えば、4-1BBを標的とすることを目的としている。このような抗体は、いくつかの方法で機能する。最初に、それらの抗体は、免疫抑制性であるPD-L1を発現する腫瘍細胞に結合する。第2に、それらはPD-L1とその受容体PD-1との相互作用を遮断することにより、標準的なチェックポイント阻害剤の役割を果たす。第3に、4-1BBなどの共刺激標的をT細胞上で架橋し、これが次に、PD-L1を発現する腫瘍細胞の存在下でのみT細胞の増殖を刺激する。さらに、抗体の定常領域は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)などのFcガンマ受容体媒介機能を排除する変異を含んでもよい。したがって、PD-L1に対する多重特異性抗体は、腫瘍組織に限定される強力な免疫応答を有し、スタンドアロンの共刺激抗体でしばしば観察される望ましくない毒性から正常組織を保護する。
【発明の概要】
【0006】
本発明の態様は、PD-L1及び4-1BBに結合する二重特異性抗体を含み、この抗体は、PD-L1に結合する2つの結合単位を含み、このそれぞれが以下:重鎖可変領域であって、配列番号1または4を含むCDR1配列;配列番号2または5を含むCDR2配列;及び配列番号3または6を含むCDR3配列、を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号7または10を含むCDR1配列;配列番号8または11を含むCDR2配列;及び配列番号9または12を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含む2つの結合単位;ならびに4-1BBに結合する2つの結合単位を含み、この2つの結合単位は、各々が単鎖Fv(scFv)を含み、これが、重鎖可変領域であって、配列番号13または16を含むCDR1配列;配列番号14または17を含むCDR2配列;および配列番号15または18を含むCDR3配列を含む:重鎖可変領域;ならびに軽鎖可変領域であって、配列番号19または22を含むCDR1配列;配列番号20または23を含むCDR2配列;及び配列番号21または24を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれ、重鎖可変領域であって、配列番号1を含むCDR1;配列番号2を含むCDR2配列;及び配列番号3を含むCDR3配列を含む重鎖可変領域;ならびに軽鎖可変領域であって、配列番号7を含むCDR1配列;配列番号8を含むCDR2配列;及び配列番号9を含むCDR3を含む軽鎖可変領域、を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれが、重鎖可変領域であって、配列番号4を含むCDR1配列、配列番号5を含むCDR2配列、配列番号6を含むCDR3配列を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号10を含むCDR1配列;配列番号11を含むCDR2配列;及び配列番号12を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、以下:重鎖可変領域であって、配列番号13を含むCDR1配列;配列番号14を含むCDR2配列;及び配列番号15を含むCDR3配列を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号19を含むCDR1配列、配列番号20を含むCDR2配列;及び配列番号21を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、以下:重鎖可変領域であって、配列番号16を含むCDR1配列;配列番号17を含むCDR2配列;及び配列番号18を含むCDR3配列を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号22を含むCDR1配列、配列番号23を含むCDR2配列;及び配列番号24を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、各々の結合単位のCDR1、CDR2、及びCDR3配列はヒトVHまたはヒトVLフレームワーク中に存在する。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号25を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号27と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号27を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号26を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号28と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号28を含む軽鎖可変領域を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号29と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号29を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号31と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号31を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号30と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号30を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号32と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する2つの結合単位はそれぞれ、配列番号32を含む軽鎖可変領域を含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体は、CH1ドメイン、ヒンジ領域配列、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む重鎖定常領域配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域配列は、野生型ヒトIgG1定常領域配列(配列番号92)を含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域配列は、L234A変異、L235A変異、G237A変異、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域配列は、配列番号93を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体は、軽鎖定常領域配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域配列は、ヒトカッパ軽鎖定常領域配列(配列番号91)を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域配列は、ヒトラムダ軽鎖定常領域配列を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、4-1BBに結合する結合単位のそれぞれにおいて、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域がリンカー配列によって連結される。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、G4Sリンカー配列(配列番号36)を含む。いくつかの実施形態では、G4Sリンカー配列(配列番号36)は、配列番号36、配列番号37、または配列番号38を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、第2の結合単位のそれぞれは、リンカー配列によって重鎖定常領域配列のC末端に接続される。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、G4Sリンカー配列(配列番号36)を含む。いくつかの実施形態では、G4Sリンカー配列(配列番号36)は、配列番号36、配列番号37、または配列番号38を含む。
【0016】
本発明の態様には、PD-L1及び4-1BBに結合する二重特異性抗体を含み、これは(a)配列番号43の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号41の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;(c)配列番号43の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチド;及び(d)配列番号41の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドを含む。
【0017】
本発明の態様には、PD-L1及び4-1BBに結合する二重特異性抗体を含み、これは(a)配列番号44の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号42の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;(c)配列番号44の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチド;及び(d)配列番号42の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドを含む。
【0018】
本発明の態様は、PD-L1及びCD47に結合する二重特異性抗体を含み、この抗体は、PD-L1に結合する第1の結合単位を含み、これが以下:重鎖可変領域であって、配列番号1または4を含むCDR1配列;配列番号2または5を含むCDR2配列;及び配列番号3または6を含むCDR3配列、を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号7または10を含むCDR1配列;配列番号8または11を含むCDR2配列;及び配列番号9または12を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含み;ならびにCD47に結合する第2の結合単位を含み、この第2の結合単位は、単鎖Fv(scFv)を含み、これが、重鎖可変領域であって、配列番号50または53を含むCDR1配列;配列番号51または54を含むCDR2配列;および配列番号52または55を含むCDR3配列を含む、重鎖可変領域;ならびに軽鎖可変領域であって、配列番号56または59を含むCDR1配列;配列番号57または60を含むCDR2配列;及び配列番号58または61を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域、を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位を含み、これは以下:重鎖可変領域であって、配列番号1を含むCDR1配列;配列番号2を含むCDR2配列;及び配列番号3を含むCDR3配列、を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号7を含むCDR1配列;配列番号8を含むCDR2配列;及び配列番号9を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は以下:重鎖可変領域であって、配列番号4を含むCDR1配列;配列番号5を含むCDR2配列;及び配列番号6を含むCDR3配列、を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号10を含むCDR1配列;配列番号11を含むCDR2配列;及び配列番号12を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、以下:重鎖可変領域であって、配列番号50を含むCDR1配列;配列番号51を含むCDR2配列;及び配列番号52を含むCDR3配列を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号56を含むCDR1配列、配列番号57を含むCDR2配列;及び配列番号58を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、以下:重鎖可変領域であって、配列番号53を含むCDR1配列;配列番号54を含むCDR2配列;及び配列番号55を含むCDR3配列を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号59を含むCDR1配列、配列番号60を含むCDR2配列;及び配列番号61を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、各結合単位のCDR1、CDR2、及びCDR3配列は、ヒトVHまたはヒトVLのフレームワーク中に存在する。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号25と少なくとも95%の同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号25を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号27と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号27を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号26を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号28と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号28を含む軽鎖可変領域を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、配列番号62と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、配列番号62を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、配列番号64と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、配列番号64を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、配列番号63と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、配列番号63を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、配列番号65と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位は、配列番号65を含む軽鎖可変領域を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、CH1ドメイン、ヒンジ領域配列、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む重鎖定常領域配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域配列は、野生型ヒトIgG1定常領域配列(配列番号92)を含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域配列は、L234A変異、L235A変異、G237A変異、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域配列は、配列番号93を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、軽鎖定常領域配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域配列は、ヒトカッパ軽鎖定常領域配列(配列番号91)を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域配列は、ヒトラムダ軽鎖定常領域配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、CD47に結合する第2の結合単位において、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域がリンカー配列によって連結される。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、G4Sリンカー配列(配列番号36)を含む。いくつかの実施形態では、G4Sリンカー配列(配列番号36)は、配列番号36、配列番号37、または配列番号38を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、第2の結合単位のそれぞれは、リンカー配列によって重鎖定常領域配列のC末端に接続される。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、G4Sリンカー配列(配列番号36)を含む。いくつかの実施形態では、G4Sリンカー配列(配列番号36)は、配列番号36、配列番号37、または配列番号38を含む。いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、2つの異なる重鎖ポリペプチドのヘテロ二量体化を促進する1つ以上のノブ・イン・ホール変異を含む重鎖定常領域をさらに含む。
【0027】
本発明の態様には、PD-L1及びCD47に結合する二重特異性抗体を含み、これは(a)配列番号66の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号67の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;及び(c)配列番号68の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドを含む。
【0028】
本発明の態様には、PD-L1及びCD47に結合する二重特異性抗体を含み、これは(a)配列番号69の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号70の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;及び(c)配列番号71の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドを含む。
【0029】
本発明の態様は、PD-L1に結合し、かつ二重特異性抗体の重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合された1つ以上のIL15ポリペプチドを含む抗体を含み、これには、PD-L1に結合する第1の結合単位を含み、これが:配列番号1または4を含むCDR1配列;配列番号2または5を含むCDR2配列;及び配列番号3または6を含むCDR3配列、を含む重鎖可変領域と;配列番号7または10を含むCDR1配列、配列番号8または11を含むCDR2配列;及び配列番号9または12を含むCDR3配列、を含む軽鎖可変領域と;配列番号86~90のいずれか1つと少なくとも95%の同一性を有する配列を含むIL15ポリペプチドと、を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は以下:重鎖可変領域であって、配列番号1を含むCDR1配列;配列番号2を含むCDR2配列;及び配列番号3を含むCDR3配列、を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号7を含むCDR1配列;配列番号8を含むCDR2配列;及び配列番号9を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は以下:重鎖可変領域であって、配列番号4を含むCDR1配列;配列番号5を含むCDR2配列;及び配列番号6を含むCDR3配列、を含む重鎖可変領域と;軽鎖可変領域であって、配列番号10を含むCDR1配列;配列番号11を含むCDR2配列;及び配列番号12を含むCDR3配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、IL15ポリペプチドは、配列番号86~90のうちのいずれか1つの配列を含む。いくつかの実施形態では、IL15ポリペプチドは、リンカー配列によって抗体の重鎖ポリペプチドサブユニットに連結される。いくつかの実施形態では、リンカー配列は、配列番号36、37、38、49、120、121、122、123、124、125、126、127または128のいずれか1つの配列を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、CDR1、CDR2、及びCDR3配列は、ヒトVHまたはヒトVLのフレームワーク中に存在する。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号25を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号27と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号27を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号26を含む重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号28と少なくとも95%の配列同一性を有する配列を含む軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、PD-L1に結合する第1の結合単位は、配列番号28を含む軽鎖可変領域を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗体は、CH1ドメイン、ヒンジ領域配列、CH2ドメイン、及びCH3ドメインを含む重鎖定常領域配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域配列は、野生型ヒトIgG1定常領域配列(配列番号92)を含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域配列は、L234A変異、L235A変異、G237A変異、またはそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域配列は、配列番号93を含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗体は、軽鎖定常領域配列をさらに含む。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域配列は、ヒトカッパ軽鎖定常領域配列(配列番号91)を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域配列は、ヒトラムダ軽鎖定常領域配列を含む。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗体は、2つの異なる重鎖ポリペプチドのヘテロ二量体化を促進する1つ以上のノブ・イン・ホール変異を含む重鎖定常領域をさらに含む。
【0036】
本発明の態様には、PD-L1に結合し、かつ各重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合されたIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体を含み、これは:(a)配列番号104の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号105の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;(c)配列番号105の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド;及び(d)配列番号104の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。
【0037】
本発明の態様には、PD-L1に結合し、かつ各重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合されたIL15ポリペプチドを含む、二重特異性抗体を含み、これは:(a)配列番号106の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号107の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;(c)配列番号107の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド;及び(d)配列番号106の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。
【0038】
本発明の態様には、PD-L1に結合し、かつ各重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合されたIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体を含み、これは:(a)配列番号108の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号109の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;(c)配列番号110の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド;及び(d)配列番号108の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。
【0039】
本発明の態様には、PD-L1に結合し、かつ1つの重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合されたIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体を含み、これは:(a)配列番号111の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号112の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;(c)配列番号113の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド;及び(d)配列番号111の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。
【0040】
本発明の態様には、PD-L1に結合し、かつ1つの重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合されたIL15ポリペプチドを含む二重特異性抗体を含み、これは:(a)配列番号114の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号115の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;(c)配列番号116の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド;及び(d)配列番号114の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。
【0041】
本発明の態様には、PD-L1に結合し、かつ各重鎖ポリペプチドサブユニットのC末端に融合されたIL15ポリペプチドを含む、二重特異性抗体を含み、これは:(a)配列番号117の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド;(b)配列番号118の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド;(c)配列番号119の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド;及び(d)配列番号117の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。
【0042】
本発明の態様は、本明細書に記載のような抗体を含む医薬組成物を含む。
【0043】
本発明の態様は、PD-L1の発現を特徴とする障害の処置のための方法であって、このような障害を有する対象に対して、本明細書に記載の抗体または本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法に関する。
【0044】
本発明の態様は、PD-L1の発現を特徴とする障害の処置のための医薬の調製における、本明細書に記載の抗体の使用を含む。
【0045】
本発明の態様は、PD-L1の発現を特徴とする障害の処置に使用するための本明細書に記載の抗体を含む。いくつかの実施形態では、障害は、がんである。
【0046】
本発明の態様には、本明細書に記載の抗体をコードするポリヌクレオチド、本明細書に記載のポリヌクレオチドを含むベクター、及び本明細書に記載の特許請求の範囲のベクターを含む細胞を含む。
【0047】
本発明の態様は、抗体の発現を許容する条件下で、本明細書に記載の細胞を増殖させること、及びこの細胞から抗体を単離することを含む、本明細書に記載の抗体の産生方法を含む。
【0048】
本発明の態様は、個体に有効量の本明細書に記載の抗体、または本明細書に記載の医薬組成物を投与することを含む処置の方法を含む。
【0049】
これら及びさらなる態様は、実施例を含め、本開示の残りの部分でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】パネルAは、ヒトPD-L1を発現するHEK293細胞への示された抗体構築物の結合を示すグラフである。パネルBは、ヒト4-1BBを発現するHEK293細胞への示された抗体構築物の結合を示すグラフである。パネルCは、示された抗体構築物についてのヒトPD-L1及びヒト4-1BBのEC50値を示す表である。
【
図2】パネルA及びBは、それぞれHISタグ付きPD-L1及び4-1BBに対する抗体構築物の結合反応速度論を示すグラフである。パネルCは、PD-L1及び4-1BBへの結合についてのKD値を示す表である。
【
図3】パネルAは、cynoPD-L1を発現するHEK293細胞への示された抗体構築物の結合を示すグラフである。パネルBは、cyno 4-1BBを発現するHEK293細胞への示された抗体構築物の結合を示すグラフである。パネルCは、示された抗体構築物についてのcynoPD-L1及びcyno 4-1BBのEC50値を示す表である。
【
図4】パネルAは、PD-L1を発現するHEK293細胞における示された抗体構築物のPD-1遮断活性を示すグラフである。パネルBは、4-1BBを発現するHEK293細胞における示された抗体構築物の4-1BBL遮断活性を示すグラフである。パネルCは、示された抗体構築物についてのPD-1及び4-1BBLのIC50値を示す表である。
【
図5】パネルAは、示された抗体構築物の二機能性ELISA結合を濃度の関数として示すグラフである。パネルBは、示された抗体構築物についてのNF-kBレポーター活性を抗体濃度の関数として示すグラフである。
【
図6】パネルA及びBは、抗CD3抗体(OKT3)で刺激され、次いでPD-L1+A431細胞と共培養されたヒトPBMCからの、それぞれIL2放出及びIFNγ放出を、示した濃度で示した抗体構築物とともに、示すグラフである。パネルCは、抗CD3抗体(OKT3)で刺激され、次いでPD-L1+A431細胞の有無で培養されたヒトPBMCからのIL2放出を、示した濃度で示した抗体構築物とともに、示すグラフである。
【
図7】パネルAは、示された濃度で示された抗体構築物を使用したSEB刺激アッセイにおけるIL2放出を示すグラフである。パネルBは、抗CD3抗体(OKT3)及びPD-L1+A431細胞の存在下でのCD8+T細胞増殖を、示された濃度で示された抗体構築物とともに示すグラフである。
【
図8】パネルAは、指示された用量で指示された抗体構築物による処置を用いた、MC38マウス腫瘍モデルについての初回投与後の日数の関数としての腫瘍体積を示すグラフである。パネルBは、研究の最後に採取された各用量群についての腫瘍浸潤免疫細胞(CD8+T細胞)を示すグラフである。
【
図9】パネルAは、指示された用量で指示された抗体構築物による処置を用いた、A431ヒト腫瘍モデルについての初回投与後の日数の関数としての腫瘍体積を示すグラフである。パネルBは、研究の最後に採取された各用量群についての腫瘍浸潤免疫細胞(CD8+T細胞)を示すグラフである。
【
図10】加速温度ストレス試験から得られたQL301のHPLC-SECプロファイルにおけるモノマー、凝集体及びフラグメントの計算されたパーセンテージを示す表である。
【
図11】パネルAは、ヒト血清中で7日間インキュベーションした後のQL301に対する抗体濃度の関数として、及びストック対照として、二機能性ELISA結合を示すグラフである。パネルBは、SEB刺激アッセイにおけるPBMCからのIL2放出を、示された濃度でヒト血清インキュベーションした及びストック対照QL301抗体を使用した抗体濃度の関数として示すグラフである。
【
図12】パネルAは、PD-L1-CD47二重特異性抗体の模式図である。パネルBは、PD-L1及びCD47へのELISA結合を、抗体濃度の関数として示すグラフである。
【
図13】パネルA~Eは、抗体濃度の関数として示された細胞への示された抗体構築物の結合を示す一連のグラフである。
【
図14】示されたCD47-PD-L1二重特異性抗体構築物による、刺激されたA431細胞に対するPD-1遮断活性を、抗体濃度の関数として示すグラフである。
【
図15】示されたCD47-PD-L1二重特異性抗体構築物による、huPD-L1+HEK293細胞に対するPD-1遮断活性を、抗体濃度の関数として示すグラフである。
【
図16】パネルAは、示されたCD47-PD-L1二重特異性抗体構築物によるA431細胞に対するSIRPα遮断を、抗体濃度の関数として示すグラフである。パネルBは、示されたCD47-PD-L1二重特異性抗体構築物によるhuCD47+CHO細胞に対するSIRPα遮断を、抗体濃度の関数として示すグラフである。
【
図17】パネルAは、指示された濃度で、示されたCD47-PD-L1抗体構築物を使用した、Raji細胞の抗体媒介食作用を示すグラフである。パネルBは、指示された濃度で、示されたCD47-PD-L1抗体構築物を使用した、MM.1S細胞の抗体媒介食作用を示すグラフである。
【
図18】パネルA及びBは、2人の異なるRBCドナーについて、示された抗体濃度で、示されたCD47-PD-L1二重特異性抗体の赤血球への結合を示すグラフである。
【
図19】示された濃度の示された抗体構築物によって誘導された赤血球の血球凝集を示す画像である。
【
図20】パネルA~Fは、ICR-SCIDマウスにおけるA431、hPBMC同時移植腫瘍モデルにおける日数の関数としての腫瘍体積を示す一連のグラフである。投与群G1~G5は、異なる抗体構築物または対照(PBS)を表す。
【
図21】パネルA~Fは、
図20に記載の腫瘍モデルからの有効性評価項目を示すグラフである。
【
図22】パネルA~Fは、NOD-SCIDマウスにおけるA431、hPBMC同時移植腫瘍モデルにおける日数の関数として、腫瘍体積を示す一連のグラフである。投与群G1~G5は、異なる抗体構築物または対照(PBS)を表す。
【
図23】パネルA~Fは、C末端にIL15融合を含む様々な二重特異性抗体構築物の模式図である。
【
図24】パネルA~Cは、示された抗体濃度での、示された細胞への示されたPD-L1-IL15二重特異性抗体構築物の結合を示す一連のグラフである。
【
図25】パネルA~Cは、示された濃度での、示されたPD-L1-IL15二重特異性抗体構築物に応答したNK92またはM07e細胞の増殖の代表的な例を示す一連のグラフである。
【
図26】パネルA及びBは、示された濃度で、示されたPD-L1-IL15二重特異性抗体、またはモノクローナル抗PD-L1もしくはアイソタイプ対照IL15抗体を使用した、MO7e細胞上のpSTAT5の誘導を示すグラフである。
【
図27】パネルA~Cは、示された濃度でのPD-L1-IL15二重特異性抗体曝露に応答した示された細胞型の増殖を示す一連のグラフである。
【
図28】パネルA~Dは、示された濃度でのPD-L1-IL15二重特異性抗体曝露に応答した、示された細胞型の増殖を示す一連のグラフである。
【
図29】パネルA~Dは、示された濃度でのPD-L1-IL15二重特異性抗体曝露に応答した、示された細胞型の増殖を示す一連のグラフである。パネルEは、染色に使用された抗体を示す表である(BioLegendカタログ番号が列挙されている)。
【
図30】パネルA~Eは、示された細胞型、ならびに示されたPD-L1-IL15二重特異性抗体構築物及び投与スケジュールについての時間の関数としての細胞数を示す一連のグラフである。
【
図31】パネルA~Fは、示された細胞型、ならびに示されたPD-L1-IL15二重特異性抗体構築物及び投与スケジュールについて、時間の関数として細胞数を示す一連のグラフである。
【
図32】パネルA~Dは、C57BL/6及びNSGマウスにおける示されたPD-L1-IL15二重特異性抗体構築物の薬物動態特性を示す一連のグラフである。
【
図33】パネルA~Fは、示された用量で、示されたPD-L1-IL15抗体構築物による、PD-L1を発現するMC38マウス結腸癌細胞の腫瘍増殖阻害を示す一連のグラフである。パネルGは、腫瘍体積を、腫瘍再チャレンジ後の日数の関数として示すグラフである。
【
図34】パネルA~Gは、示された用量における、示されたPD-L1-IL15二重特異性抗体構築物についてのヒトPBMC腫瘍モデルと同時移植されたA431異種移植片の腫瘍増殖阻害を示す一連のグラフである。
【
図35】パネルA~Gは、
図34に示される用量で、示されるPD-L1-IL15二重特異性抗体構築物で処置されたヒトPBMC腫瘍モデルと同時移植されたA431異種移植片から単離された腫瘍から採取された細胞の表現型分析を示す一連のグラフである。
【
図36】パネルA~Gは、
図34に示される用量で、示されるPD-L1-IL15二重特異性抗体構築物で処置されたヒトPBMC腫瘍モデルと同時移植されたA431異種移植片から単離された腫瘍から採取された細胞の表現型分析を示す一連のグラフである。
【
図37】パネルA~Eは、C57BL/6マウスにおいて、示された用量で、示されたPD-L1-IL15抗体構築物による、PD-L1を発現するMC38マウス結腸癌細胞の腫瘍増殖阻害を示す一連のグラフである。
【
図38】パネルA~Fは、
図37に示される用量で、示されたPD-L1-IL15二重特異性抗体構築物で処置された、MC38マウス結腸癌腫瘍モデルから単離された腫瘍から採取された細胞の表現型分析を示す一連のグラフである。
【
図39】パネルA~Gは、示された用量で、示されたPD-L1-IL15二重特異性抗体について、CD17-SCIDマウスにおいてヒトPBMCと同時移植されたNCI-H1650細胞の腫瘍増殖阻害を示す一連のグラフである。
【
図40】パネルAは、PD-L1に結合する2つの同一の結合領域、及び4-1BBに結合する2つの同一のscFvを有する二重特異性PD-L1x4-1BB抗体であるQL301のモデルである。パネルBは、QL301二重特異性抗体によって架橋された腫瘍細胞及びT細胞の図である。
【
図41】パネルA及びBは、2人の異なるドナーについて、二重特異性PD-L1xCD47抗体によって媒介されるRBCの食作用の%を示すグラフである。
【
図42】示されたPD-L1-IL15抗体構築物の結合活性を示すグラフである。
【
図43】示されたPD-L1-IL15抗体構築物に応答したNK92細胞の増殖を示すグラフである。
【
図44】パネルA及びBは、本発明のいくつかの実施形態によるPD-L1-4-1BB二重特異性抗体構築物を使用した、アカゲザルにおける反復投与毒物学研究で観察されたAST及びALTレベルを示すグラフである。
【
図45】本発明のいくつかの実施形態によるPD-L1-CD47二重特異性抗体構築物を使用した、NOGマウスの腫瘍モデルにおけるA375腫瘍増殖阻害を示すグラフである。
【
図46】本発明の実施形態によるPD-L1-CD47二重特異性抗体構築物を使用した、NOGマウスの腫瘍モデルにおけるRaji腫瘍増殖阻害を示すグラフである。
【
図47】本発明の実施形態によるPD-L1-CD47二重特異性抗体構築物を用いた、カニクイザルにおける反復投与毒物学研究で観察された赤血球数を示すグラフである。
【
図48】本発明の実施形態による、PD-L1-IL15-T2A構築物のマウス交差反応代用物を使用して、C57BL/6マウスで実施されたMC38腫瘍モデルで観察されたcDC1の刺激を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当該技術分野の技術の範囲内である分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技術を使用する。そのような技術は、“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”,second edition(Sambrook et al.,1989)、“Oligonucleotide Synthesis”(M.J.Gait,ed.,1984)、“Animal Cell Culture”(R.I.Freshney,ed.,1987)、“Methods in Enzymology”(Academic Press,Inc.)、“Current Protocols in Molecular Biology”(F.M.Ausubel et al.,eds.,1987,and periodic updates)、“PCR:The Polymerase Chain Reaction”,(Mullis et al.,ed.,1994)、“A Practical Guide to Molecular Cloning”(Perbal Bernard V.,1988)、“Phage Display:A Laboratory Manual”(Barbas et al.,2001)、Harlow,Lane and Harlow,Using Antibodies:A Laboratory Manual:Portable Protocol No.I,Cold Spring Harbor Laboratory(1998)、及びHarlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory;(1988)などの文献において十分に説明されている。
【0052】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、下限値の単位の10分の1までの、その範囲の上限値から下限値の間の各介在値、ならびにその表示範囲の任意の他の表示値または介在値が、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限値及び下限値は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、また、表示範囲内の任意の具体的な除外限度に従って、本明細書にも包含される。表示範囲がそれらの上限値及び下限値のうちの一方または両方を含む場合、それらの包含される上限値及び下限値のいずれかまたは両方を除外する範囲も本発明に包含される。
【0053】
特に明記しない限り、本明細書の抗体残基は、Kabatナンバリング方式に従って番号付けされる(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。
【0054】
以下の説明では、本発明のより完全な理解を提供するために、多くの具体的な詳細が述べられている。しかしながら、本発明がこれらの具体的な詳細の1つ以上を伴わずに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。他の例では、本発明を曖昧にすることを回避するために、周知の特徴及び当業者に周知の手順は記載されていない。
【0055】
特許出願及び公報を含む、本開示を通じて引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0056】
I.定義
「含む」とは、記載する要素が組成物/方法/キットに必要であることを意味するが、特許請求の範囲内で他の要素が組成物/方法/キットなどを形成するために含まれ得る。
【0057】
「~から本質的になる」とは、記載する組成物または方法の範囲を、本発明の基本的及び新規の特性(複数可)に実質的に影響を及ぼさない特定の物質またはステップに限定することを意味する。
【0058】
「~からなる」とは、特許請求の範囲で指定されていない任意の要素、ステップ、または成分が、組成物、方法、またはキットから除外されることを意味する。
【0059】
本明細書の抗体残基は、Kabatナンバリング方式及びEUナンバリング方式に従って番号付けされている。Kabatナンバリング方式は、一般的に、可変ドメイン内の残基(およそ、重鎖の1~113残基)に言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EUナンバリング方式」または「EUインデックス」は、一般的に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.(上記)で報告されているEUインデックス)。「Kabatに記載のEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。本明細書中で特に明記しない限り、抗体の可変ドメインにおける残基番号への言及は、Kabatナンバリング方式による残基ナンバリングを意味する。本明細書に別段の定めがない限り、抗体の定常ドメインにおける残基番号への言及は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。
【0060】
免疫グロブリンとも称される抗体は、従来、少なくとも1つの重鎖及び1つの軽鎖を含み、重鎖及び軽鎖のアミノ末端ドメインは配列上可変であるため、一般に可変領域ドメイン、または可変重鎖(VH)もしくは可変軽鎖(VH)ドメインと称される。2つのドメインは、従来、特異的結合領域を形成するように会合するが、本明細書で論じられるように、特異的結合は、重鎖のみの可変配列でも得ることができ、抗体の様々な非天然構造が知られており、当該技術分野で使用されている。
【0061】
「機能的」または「生物学的に活性な」抗体または結合化合物とは、構造的、調節的、生化学的または生物物理学的事象において1つ以上の活性を発揮できるものである。例えば、機能的抗体または他の結合化合物は、抗原に特異的に結合する能力を有し得、結合は次いで、シグナル伝達または酵素活性などの細胞または分子事象を誘発または改変させ得る。機能的抗体または他の結合分子はまた、受容体のリガンド活性化を遮断し得る場合もあるし、またはアゴニストもしくはアンタゴニストとして機能する場合もある。抗体または他の結合化合物が、1つ以上の活性を発揮する能力は、ポリペプチド鎖の適切な折り畳み及びアセンブリを含む、いくつかの因子に依存する。
【0062】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広義で使用され、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、一量体、二量体、多量体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、三本鎖抗体、単鎖Fv(scFv)、ナノボディなどを含み、また所望の生物学的活性を示す限り、抗体フラグメントも含む(Miller et al(2003)Jour. of Immunology 170:4854-4861)。抗体は、マウス、ヒト、ヒト化、キメラであっても、または他の種に由来してもよい。
【0063】
抗体という用語は、全長重鎖、全長軽鎖、無傷の免疫グロブリン分子、またはこれらのポリペプチドのいずれかの免疫学的に活性な部分、すなわち、目的とする標的またはその一部の抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含むポリペプチドを指してもよく、そのような標的には、がん細胞、または自己免疫疾患に関連する自己免疫抗体を産生する細胞が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に開示される免疫グロブリンは、低減または増強されたエフェクター細胞活性を提供する、改変されたFc部分を有する操作されたサブクラスを含む、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、またはサブクラスの免疫グロブリン分子であり得る。免疫グロブリンは、任意の種に由来してもよい。
【0064】
本明細書中で使用する「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に同種の抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわち、その集団を構成する個々の抗体は、少量で存在し得る天然に存在する変異の可能性を除いて同一である。モノクローナル抗体は、単一の抗原部位を指向し、高度に特異的である。さらに、異なる決定基(エピトープ)に対して指向される異なる抗体を含む従来の(ポリクローナル)抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して指向される。本発明によるモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができ、例えば、組換えタンパク質産生法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照のこと)を介して作製することもできる。
【0065】
抗体に関連して使用する用語「可変」とは、抗体可変ドメインの特定の部分の配列が抗体間で大きく異なっており、その配列が各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合及び特異性に使用されているという事実を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメイン全体にわたって均等には分布していない。これは、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインのいずれにおいても超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、4つのFRを含み、これらは主にβシート構成を採用し、3つの超可変領域により連結され、これら超可変領域は、βシート構造に連結するループを形成し、ある場合にはその一部を形成するループを形成する。各鎖における超可変領域は、FRによって、他方の鎖の超可変領域と近接して保持されており、抗体の抗原結合部位の形成に寄与している(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗体の抗原への結合に直接関与していないが、抗体の抗体依存性細胞傷害性(ADCC)への関与などの様々なエフェクター機能を呈する。
【0066】
本明細書において使用される場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、一般的に、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、重鎖可変ドメインの残基31~35(H1)、50~65(H2)及び95~102(H3)、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.(1991))及び/または重鎖可変ドメインの「超可変ループ」残基26~32(H1)、53~55(H2)及び96~101(H3)由来の残基、Chothia and Lesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))を含む。「フレームワーク領域」または「FR」残基は、本明細書に定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0067】
例示的なCDRの呼称を本明細書に示すが、当業者であれば、配列の変動性に基づき、最も一般的に使用されているKabat定義(“Zhao et al. A germline knowledge based computational approach for determining antibody complementarity determining regions.” Mol Immunol.2010;47:694-700を参照のこと)を含む、CDRのいくつかの定義が一般的に使用されていることを理解するであろう。Chothia定義は、構造ループ領域の位置に基づいている(Chothia et al. “Conformations of immunoglobulin hypervariableRegions.”Nature. 1989;342:877-883)。目的の代替のCDR定義には、限定されないが、Honegger,“Yet another numbering scheme for immunoglobulin variable domains:an automatic modeling and analysis tool.” J Mol Biol.2001;309:657-670、Ofran et al.“Automated identification of complementarity determining regions(CDRs)reveals peculiar characteristics of CDRs and B cell epitopes.”J Immunol.2008;181:6230-6235、Almagro “Identification of differences in the specificity-determining residues of antibodies thatRecognize antigens of different size:implications for the rational design of antibody repertoires.”J Mol Recognit.2004;17:132-143、及びPadlanet al. “Identification of specificity-determining residues in antibodies.” Faseb J.1995;9:133-139.によって開示された定義が含まれ、これらのそれぞれは、参照により本明細書に具体的に援用される。
【0068】
本明細書で使用される「多重特異性結合化合物」という用語は、2つ以上の抗原結合部位を含む結合化合物を意味する。本発明の実施形態による多重特異性結合化合物は、2つ、3つ、または4つのポリペプチドサブユニットを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる抗体様分子であってもよく、そのいずれも、標的抗原(例えば、PD-L1)に結合親和性を有する1つ以上の可変領域ドメインを含んでもよい。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、一緒に結合単位を形成する一対の可変領域ドメイン(例えば、重鎖可変領域ドメイン及び軽鎖可変領域ドメイン)を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、単鎖Fv(scFv)形式の可変領域ドメインの対を含み、ここで、第1の可変領域ドメイン及び第2の可変領域ドメインはリンカーによって連結され、一緒に結合単位を形成する。本発明の多重特異性結合化合物は、本明細書に記載の特定の構成を含むがこれらに限定されない、結合単位の任意の適切な組み合わせまたは構成を有し得る。
【0069】
本明細書に記載の多重特異性結合化合物は、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEサブクラスを含む任意の免疫グロブリンサブクラスに属し得る。特定の実施形態では、多重特異性結合化合物は、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4サブタイプ、特にIgG1サブタイプのものである。エフェクター機能を改変させるCHドメインの改変は、本明細書にさらに記載される。
【0070】
本明細書中で使用する「インタクトな抗体鎖」とは、全長の可変領域及び全長の定常領域(Fc)を含む抗体鎖である。インタクトな「従来の」抗体は、インタクトな軽鎖及びインタクトな重鎖、ならびに分泌型IgG用の軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン、CH1、ヒンジ、CH2及びCH3を含む。IgMまたはIgAなどの他のアイソタイプは、異なるCHドメインを有してもよい。定常ドメインは、天然配列の定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列の定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。インタクトな抗体は、1つ以上の「エフェクター機能」を有し得、これは、抗体のFc定常領域(天然配列のFc領域またはアミノ酸配列バリアントのFc領域)に起因する生物活性を指す。抗体エフェクター機能の例として、C1q結合、補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、食作用、及び細胞表面受容体の下方調節が挙げられる。定常領域バリアントには、エフェクター特性、Fc受容体への結合などを変化させるバリアントが含まれる。
【0071】
重鎖のFc(定常ドメイン)のアミノ酸配列に応じて、抗体及び様々な抗原結合タンパク質は、異なるクラスとして提供され得る。重鎖Fc領域の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2にさらに分類され得る。異なるクラスの抗体に対応するFc定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれ得る。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成は、周知である。Igの形態には、ヒンジ修飾またはヒンジなしの形態が含まれる(Roux et al(1998)J.Immunol.161:4083-4090、Lund et al(2000)Eur. J.Biochem.267:7246-7256、US2005/0048572、US2004/0229310)。任意の脊椎動物種由来の抗体の軽鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、κ及びλと呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てられ得る。
【0072】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を保有する。エフェクター機能の非限定的な例として、C1q結合、CDC、Fc受容体結合、ADCC、ADCP、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御などが挙げられる。そのようなエフェクター機能は、一般的に、Fc領域が受容体、例えば、FcγRI、FCγRIIA、FcγRIIB1、FCγRIIB2、FCγRIIIA、FCγRIIIB受容体、及び低親和性FcRn受容体と相互作用することを必要とし、そして、当該技術分野で公知の様々なアッセイを使用して評価することができる。「死んだ」または「サイレンシングされた」Fcとは、例えば、血清半減期の延長に関して活性を保持するように変異導入されているが、高親和性Fc受容体を活性化しないか、またはFc受容体に対する親和性が低下しているFcである。
【0073】
「天然配列Fc領域」は、天然で見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域としては、例えば、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびにそれらの天然のバリアントが含まれる。
【0074】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸改変、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)によって天然配列Fc領域のアミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に約1~約10個のアミノ酸置換、及び好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、好ましくは、親ポリペプチドの天然配列Fc領域及び/またはFc領域との少なくとも約80%の相同性、最も好ましくは、それらとの少なくとも約90%の相同性、より好ましくは、それらとの少なくとも約95%の相同性を有する。
【0075】
ヒトIgG1アミノ酸配列は、UniProtKB No.P01857によって提供され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒトIgG2アミノ酸配列は、UniProtKB No.P01859によって提供され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒトIgG3アミノ酸配列は、UniProtKB No.P01860によって提供され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ヒトIgG4アミノ酸配列は、UniProtKB No.P01861によって提供され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0076】
バリアントFc配列は、EUインデックス位置234、235、及び237でのFcγRI結合を減少させるために、CH2領域に3つのアミノ酸置換を含んでもよい(Duncan et al.,(1988)Nature 332:563;Hezareh et al.,(2001)J.Virology 75:12161;米国特許第5,624,821号(これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。いくつかの実施形態では、バリアントFc配列は、以下のアミノ酸置換を含んでもよい:L234A;L235A;及びG237A。これらの3つのアミノ酸置換がIgG1 Fc配列に存在する場合、それらはG1AAAと呼んでもよい。
【0077】
EUインデックス位置330及び331の補体C1q結合部位における2つのアミノ酸置換は、補体結合を低下させる(Tao et al.,J.Exp. Med.178:661(1993)及びCanfield and Morrison,J.Exp. Med.173:1483(1991)を参照のこと)。位置233~236でのヒトIgG1またはIgG2残基ならびに位置327、330及び331でのIgG4残基への置換は、ADCC及びCDCを大幅に低下させる(例えば、Armour KL.et al.,1999 Eur J Immunol.29(8):2613-24、及びShields RL.et al.,2001. J Biol Chem.276(9):6591-604を参照のこと)。
【0078】
他のFcバリアントも可能であるが、これには、ジスルフィド結合を形成し得る領域が欠失しているか、または天然FcのN末端で特定のアミノ酸残基が除去されているか、もしくはメチオニン残基がそれに付加されているバリアントが含まれるが、これらに限定されない。したがって、いくつかの実施形態では、結合化合物の1つ以上のFc部分は、ヒンジ領域に1つ以上の変異を含んでジスルフィド結合を排除してもよい。さらに別の実施形態では、Fcのヒンジ領域は、完全に除去されてもよい。さらに別の実施形態では、結合化合物は、Fcバリアントを含んでもよい。
【0079】
さらに、Fcバリアントは、補体結合またはFc受容体結合をもたらすためにアミノ酸残基を置換(変異)、欠失、または付加することによって、エフェクター機能を除去または実質的に低減するように構築され得る。例えば、限定されないが、欠失を、C1q結合部位などの補体結合部位で行ってもよい。免疫グロブリンFcフラグメントのそのような配列誘導体を調製するための技術は、国際特許公開第WO97/34631及びWO96/32478に開示されている。加えて、Fcドメインは、リン酸化、硫酸化、アシル化、グリコシル化、メチル化、ファルネシル化、アセチル化、アミド化などによって改変されてもよい。
【0080】
「Fc領域を含む抗体」という用語は、Fc領域を含む抗体を指す。Fc領域のC末端リジン(EUナンバリング方式による残基447)を、例えば、抗体の精製中に、または抗体をコードする核酸の組換え操作により除去してもよい。したがって、本発明によるFc領域を有する抗体は、K447を有する抗体を含んでも、または有さない抗体を含んでもよい。
【0081】
本発明の態様は、限定されないが、二重特異性、三重特異性などを含む多重特異性構成を有する結合化合物を含む。二重特異性モノクローナル抗体(BsMAB)、三重特異性抗体などにおいて多種多様な方法及びタンパク質構成が知られており、使用されている。
【0082】
2つ以上の抗体の可変ドメインを組換え融合することによって、多価人工抗体の産生のための様々な方法が開発されている。いくつかの実施形態では、ポリペプチド上の第1及び第2の抗原結合ドメインは、ポリペプチドリンカーによって接続される。そのようなポリペプチドリンカーの1つの非限定的な例は、4つのグリシン残基とそれに続く1つのセリン残基というアミノ酸配列を有するGSリンカーであり、ここで、この配列はn回繰り返され、nは、1~約10の範囲の整数、例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9である(配列番号133)。そのようなリンカーの非限定的な例として、GGGGS(配列番号36)(n=1)及びGGGGSGGGGS(配列番号37)(n=2)が挙げられる。他の適切なリンカーも使用してもよく、例えば、Chen et al.,Adv Drug Deliv Rev.2013 October 15;65(10):1357-69に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に援用される。追加のリンカー配列は、本明細書の他の場所に記載されており、任意の適切な構成で本発明の抗体に組み込んでもよい。
【0083】
本明細書に記載の抗体及び多重特異性結合化合物は、2つの重鎖がジスルフィド結合しているか、またはそうでなければ共有結合もしくは非共有結合で互いに結合している二量体の形態であってもよく、任意選択で、ポリペプチド鎖間の適切な対合を容易にするために、2つ以上のCHドメイン間の非対称界面を含んでもよい(一般には「ノブ・イントゥ・ホール」と呼ばれる)。重鎖ヘテロダイマー化のためのノブ・イントゥ・ホール抗体工学技術は、例えば、Ridgway et al.,Protein Eng.1996 Jul;9(7):17-21、及び米国特許第8,216,805号に考察されており、これらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。非対称界面を含むFc領域は、本明細書では略語「KiH」と呼ばれてもよく、これはノブ・イントゥ・ホールを意味する。例えば、本発明の態様は、非対称界面を含み、本明細書において「G1AAA KiH」と呼ばれる、G1AAA配列などのバリアントFc領域配列を含む。
【0084】
「PD-L1」及び「プログラムされた死リガンド1」という用語には、任意のヒト及び非ヒト動物種のPD-L1タンパク質が含まれ、具体的には、ヒトPD-L1ならびに非ヒト哺乳動物のPD-L1が含まれる。
【0085】
本明細書中で使用する「ヒトPD-L1」という用語には、その供給源または調製様式に関係なく、ヒトPD-L1の任意のバリアント、アイソフォーム及び種相同体(UniProt Q9NZQ7)が含まれる。したがって、「ヒトPD-L1」には、細胞が天然に発現するヒトPD-L1、及びヒトPD-L1遺伝子をトランスフェクトした細胞上で発現するPD-L1が含まれる。
【0086】
「抗PD-L1抗体」、「PD-L1抗体」、「抗PD-L1結合化合物」及び「PD-L1結合化合物」という用語は、本明細書で定義されるヒトPD-L1を含む、PD-L1に免疫特異的に結合する、本明細書で定義される抗体または結合化合物を指して、本明細書では交換可能に使用される。
【0087】
「4-1BB」という用語は、任意のヒト及び非ヒト動物種の4-1BBタンパク質を指し、具体的にはヒト4-1BB及び非ヒト哺乳動物の4-1BBを含む。
【0088】
本明細書中で使用する「ヒト4-1BB」という用語には、その供給源または調製様式に関係なく、ヒト4-1BBの任意のバリアント、アイソフォーム及び種相同体(UniProt Q07011)が含まれる。したがって、「ヒト4-1BB」には、ヒト4-1BB遺伝子でトランスフェクトされた細胞上で発現した細胞及び4-1BBによって自然に発現したヒト4-1BBを含む。
【0089】
「抗4-1BB抗体」、「4-1BB抗体」、「抗4-1BB結合化合物」及び「4-1BB結合化合物」という用語は、本明細書で定義されるヒト4-1BBを含む、4-1BBに免疫特異的に結合する、本明細書で定義される抗体または結合化合物を指して、本明細書では交換可能に使用される。
【0090】
「CD47」及び「白血球表面抗原CD47」という用語は、任意のヒト及び非ヒト動物種のCD47タンパク質を指し、具体的には、ヒトCD47及び非ヒト哺乳動物のCD47を含む。
【0091】
「ヒトCD47」という用語は、本明細書で使用されるとき、ヒトCD47(UniProt Q08722)の任意のバリアント、アイソフォーム、及び種相同体を、その供給源または調製様式に関係なく含む。したがって、「ヒトCD47」には、細胞によって自然に発現したヒトCD47、及びヒトCD47遺伝子でトランスフェクトされた細胞上で発現されたCD47を含む。
【0092】
「抗CD47抗体」、「CD47抗体」、「抗CD47結合化合物」及び「CD47結合化合物」という用語は、本明細書で定義されるヒトCD47を含む、CD47に免疫特異的に結合する、本明細書で定義される抗体または結合化合物を指して、本明細書では交換可能に使用される。
【0093】
「IL15」及び「インターロイキン-15」という用語は、任意のヒト及び非ヒト動物種のIL15タンパク質を指し、ヒトIL15及び非ヒト哺乳動物のIL15を特異的に含む。
【0094】
「ヒトIL15」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒトIL15(UniProt P40933)の任意のバリアント、アイソフォーム、及び種相同体を、その供給源または調製様式に関係なく含む。したがって、「ヒトIL15」には、細胞によって自然に発現されたヒトIL15、及びヒトIL15遺伝子でトランスフェクトされた細胞上で発現されたIL15を含む。
【0095】
多重特異性抗体または多重特異性結合化合物を説明するために本明細書で使用される場合、「IL15」という用語は、
図23のパネルA~Fに構成的に示されるように、IL15タンパク質配列が融合される、ポリペプチドサブユニット(例えば、抗体重鎖または抗体軽鎖)を含む抗体または結合化合物であって、それにより融合IL15タンパク質とIL15受容体との間の相互作用を促進する結合化合物を指す。
【0096】
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」とは、配列をアラインメントし、ギャップを導入して最大配列同一性パーセントを、必要に応じて、達成した後の、配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮しない、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、当該技術分野内の様々な方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公的に入手可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大アラインメントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列をアラインメントするために適切なパラメータを決定し得る。しかしながら、本明細書の目的のためには、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータプログラムALIGN-2を使用して生成される。
【0097】
「単離」抗体または結合化合物とは、その自然環境の成分から、同定及び分離、及び/または回収されたものである。その自然環境の混入成分は、抗体の診断上または治療上の使用を妨げる材料であり、これには、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質が含まれ得る。好ましい実施形態では、抗体を、(1)ローリー法により判定した場合に抗体の95重量%超、最も好ましくは99重量%超になるまで、(2)スピニングカップシーケネータ(spinning cup sequenator)を使用して少なくとも15残基のN末端配列もしくは内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで、または(3)クーマシーブルー、もしくは好ましくは銀染色を用いて還元条件もしくは非還元条件下でのSDS-PAGEによって、均質になるまで精製する。単離された抗体には、抗体の天然の環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内でのin situ抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製工程により調製されるであろう。
【0098】
本発明の結合化合物には、多重特異性結合化合物が含まれる。多重特異性結合化合物は2つ以上の結合特異性を有する。「多重特異性」という用語には、具体的には、「二重特異性」及び「三重特異性」、ならびに高次のポリエピトープ特異性などの高次の独立した特異的結合親和性、ならびに四価抗体及び抗体フラグメントが含まれる。「多重特異性抗体」、及び「多重特異性結合化合物」という用語は、本明細書では最も広義で使用され、2つ以上の結合特異性を有する全ての抗体及び抗体様分子を包含する。本発明の多重特異性抗PD-L1結合化合物としては、具体的には、ヒトPD-L1タンパク質などのPD-L1タンパク質上のエピトープに対して、及び異なるタンパク質、例えば、4-1BBタンパク質またはCD47タンパク質などの上のエピトープに対して、免疫特異的に結合する結合化合物を含む。
【0099】
「エピトープ」とは、単一の抗体分子が結合する抗原分子の表面上の部位である。一般的に、抗原はいくつかまたは多くの異なるエピトープを有し、多くの異なる抗体と反応する。この用語は、具体的には、線状エピトープ及び立体配座エピトープを含む。
【0100】
抗体エピトープは、線状エピトープであっても、または立体配座エピトープであってもよい。直鎖状エピトープは、タンパク質中のアミノ酸の連続配列によって形成される。立体配座エピトープは、タンパク質配列において不連続であるが、タンパク質のその三次元構造への折り畳みの際に一緒になるアミノ酸から形成される。
【0101】
「価」という用語は、本明細書で使用される場合、抗体分子または結合化合物中の特定数の結合部位を指す。
【0102】
「一価」結合化合物は、1つの結合部位を有する。したがって、一価結合化合物はまた、単一特異性でもある。
【0103】
「多価」結合化合物は、2つ以上の結合部位を有する。したがって、「二価」、「三価」、及び「四価」という用語は、それぞれ、2つの結合部位、3つの結合部位、及び4つの結合部位が存在することを指す。したがって、本発明による二重特異性結合化合物は、少なくとも二価であり、三価、四価、またはそうでなければ多価であってもよい。本発明の実施形態による二価結合化合物は、同じエピトープに対する2つの結合部位(すなわち、二価、モノパラトピック)を有してもよいし、または2つの異なるエピトープに対する2つの結合部位(すなわち、二価、二重パラトピック)を有してもよい。
【0104】
多種多様な方法及びタンパク質の構造が公知であり、二重特異性モノクローナル抗体(BsMAB)及び結合化合物、三重特異性抗体及び結合化合物などの調製に使用される。
【0105】
「ヒト抗体」という用語は、本明細書中では、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する抗体を含んで使用される。本明細書のヒト抗体には、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基、例えば、in vitroでのランダムもしくは部位特異的変異誘発によって、またはin vivoでの体細胞変異によって導入される変異が含まれてもよい。「ヒト抗体」という用語は、具体的には、ヒト重鎖可変領域配列を有する抗体及び結合化合物を含む。
【0106】
本明細書で使用される「キメラ」抗体という用語は、ラットまたはマウス抗体などの非ヒト免疫グロブリンに由来する可変配列、及び典型的にはヒト免疫グロブリン鋳型から選択されるヒト免疫グロブリン定常領域を有する抗体を指す。キメラ抗体を生成する方法は、当該技術分野で既知である。例えば、参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる、Morrison,1985,Science 229(4719):1202-7、Oi et al.,1986,BioTechniques 4:214-221、Gillies et al.,1985,J. Immunol. Methods 125:191-202;米国特許第5,807,715号、同第4,816,567号、及び同第4,816,397号を参照されたい。「キメラ抗体」という用語は、具体的には、非ヒト免疫グロブリン由来の可変領域配列及びヒト免疫グロブリン定常領域配列を有する抗体及び結合化合物を含む。
【0107】
本明細書で使用される「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含む抗体または結合化合物を指す。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、CDR領域の全てまたは実質的に全ては、非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、フレームワーク(FR)領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部分、典型的にはヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の配列も含み得る。抗体のヒト化の方法は当該技術分野で公知である。例えば、Riechmann et al.,1988,Nature 332:323-7;米国特許第5,530,101号;同第5,585,089号;同第5,693,761号;同第5,693,762号;及びQueen et al.の米国特許第6,180,370号;欧州特許第239400号;PCT公開WO91/09967;米国特許第5,225,539号;欧州特許第592106号;欧州特許第519596号;Padlan,1991,Mol.Immunol.,28:489-498;Studnicka et al.,1994,Prot. Eng. 7:805-814;Roguska et al.,1994,Proc.Natl.Acad.Sci.91:969-973;及び米国特許第5,565,332号(これらはすべて参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと。
【0108】
本明細書中で使用する場合、「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認知及び活性化段階とは対照的に、免疫応答のエフェクター段階に関与する免疫細胞を指す。いくつかのエフェクター細胞は、特定のFc受容体を発現し、特定の免疫機能を果たす。いくつかの実施形態では、ナチュラルキラー細胞などのエフェクター細胞は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導し得る。例えば、FcRを発現する単球とマクロファージは、標的細胞の特異的な死滅及び免疫系の他の成分への抗原の提示、または抗原を提示する細胞への結合に関与する。いくつかの実施形態では、エフェクター細胞は、標的抗原または標的細胞を貪食し得る。
【0109】
「ヒトエフェクター細胞」は、T細胞受容体またはFcRなどの受容体を発現し、エフェクター機能を果たす白血球である。好ましくは、この細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を果たす。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞、及び好中球が挙げられ、NK細胞が好ましい。エフェクター細胞は、本明細書に記載されるように、その天然源から、例えば、血液またはPBMCから単離され得る。
【0110】
「免疫細胞」という用語は、本明細書では最も広義で使用され、これには、限定するものではないが、骨髄またはリンパ系由来の細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞及び細胞溶解性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多形核細胞、例えば、好中球、顆粒球、肥満細胞、及び好塩基球が挙げられる。
【0111】
抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列のFc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に帰属する生物学的活性を指す。抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合、補体依存性細胞毒性(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体、BCR)の下方制御などが挙げられる。
【0112】
「抗体依存性細胞媒介性細胞毒性」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方で単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)の464ページの表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または第5,821,337号に記載されているようなin vitro ADCCアッセイを行ってもよい。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー細胞が挙げられる。あるいは、またはさらに、目的とする分子のADCC活性を、in vivoで、例えば、Clynes et al. PNAS(USA)95:652-656(1998)に開示されている動物モデルにおいて評価してもよい。
【0113】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」とは、補体の存在下で標的を溶解させる分子の能力を指す。補体活性化経路は、補体系の第1の成分(C1q)が、同種抗原と複合体化した分子(例えば、抗体)に結合することにより開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol. Methods 202:163(1996)に記載されているようなCDCアッセイを行ってもよい。
【0114】
本明細書で交換可能に使用される「指向性T細胞媒介性細胞傷害」及び「再指向性T細胞媒介性細胞傷害」は、架橋分子(例えば、二重特異性抗体)がT細胞(例えば、CD3)上の表面抗原及び標的細胞上の抗原(例えば、がん細胞上の表面抗原)を架橋する細胞媒介反応を指す。T細胞と標的細胞との架橋は、T細胞の細胞毒性活性を介してT細胞による標的細胞の死滅を促進する。リダイレクトされたT細胞媒介性細胞毒性は、例えば、Velasquez et al.,Blood 2018 131:30-38に記載されている。
【0115】
「結合親和性」とは、分子(例えば、抗体)とその結合パートナー(例えば、抗原)との単一結合部位の間の非共有結合相互作用の合計の強度を指す。別途指示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」とは、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般に、平衡解離定数(KD)で表され得る。親和性は、当該技術分野で公知の一般的な方法によって測定することができる。低親和性抗体は、通常、抗原にゆっくり結合し、容易に解離する傾向があり、一方、高親和性抗体は、通常、抗原により早く結合し、結合したままである傾向がある。
【0116】
本明細書中で使用されるとき、「KD」または「KD値」とは、反応速度論様式で、Octet Red96機器(Fortebio Inc.,Menlo Park,CA)を使用して、BioLayer干渉法によって決定される解離定数を指す。例えば、抗マウスFcセンサーにマウス-Fc融合抗原を負荷し、次いで抗体含有ウェルに浸して濃度依存的会合速度(kon)を測定する。抗体解離速度(koff)は最終工程で測定し、センサーを緩衝液のみを含有するウェルに浸す。KDは、koff/konの比である。(さらなる詳細については、Concepcion,J,et al.,Comb Chem High Throughput Screen,12(8),791-800,2009を参照のこと)。
【0117】
用語「治療、処置」、「治療する、処置する」などは、一般的に、所望の薬理学的及び/または生理学的効果を得ることを意味するものとして本明細書中で使用される。その効果は、その疾患または症状を完全にまたは部分的に予防するという観点において予防的であり得、及び/または疾患及び/またはその疾患に起因する副作用の部分的または完全な治癒という観点において治療的であり得る。本明細書中で使用する「治療、処置」は、哺乳動物における疾患の任意の治療を包含し、(a)その疾患にかかりやすい可能性があるが、まだそれを有すると診断されていない対象における発症を予防するか、(b)その疾患を阻害する、すなわち、その発現を阻止するか、または(c)その疾患を軽減する、すなわち、その疾患の退行を引き起こすことを含む。治療剤は、疾患または傷害の発症前、発症中、または発症後に投与してもよい。進行中の疾患の処置で、その処置が患者の望ましくない臨床症状を安定化するか、または軽減するものは、特に興味深い。そのような処置は、影響を受けた組織の機能が完全に失われる前に実施することが望ましい。対象の治療薬は、疾患の症候期の間、及びいくつかの場合では疾患の症候期の後に投与してもよい。
【0118】
「治療有効量」とは、対象に治療効果を与えるために必要な活性薬剤の量を意図している。例えば、「治療有効量」とは、疾患に関連する病理学的症状、疾患の進行もしくは生理学的状態の改善を誘発、寛解、もしくは引き起こすか、または障害に対する耐性を改善する量である。
【0119】
「がん」及び「がん性」という用語は、制御されていない細胞成長を典型的に特徴とする哺乳動物における生理学的状態を指すか、または説明する。「腫瘍」は、1つ以上のがん性細胞を含む。がんの例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病、またはリンパ系悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。そのようながんのより具体的な例としては、扁平上皮細胞癌(例えば、上皮性扁平上皮細胞癌)、皮膚癌、黒色腫、肺癌、例としては、小細胞肺癌、非小細胞肺癌(「NSCLC」)、肺の腺癌、及び肺の扁平上皮癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌または胃の癌、例としては消化管癌、膵臓癌(例えば、膵管腺癌)、膠芽腫、子宮頸癌、卵巣癌(例えば、高異型度漿液性卵巣癌)、肝臓癌(例えば、肝細胞癌hepatocellular carcinoma(HCC))、膀胱癌(例えば、尿路上皮性膀胱癌)、精巣(生殖細胞腫瘍)癌、肝細胞腫、乳癌、脳癌(例えば、星状細胞腫)、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney cancer)または腎臓癌(renal cancer)(例えば、腎細胞癌、腎芽腫またはウィルムス腫瘍)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、及び頭頸部癌が挙げられる。癌の追加の例としては、限定するものではないが、網膜芽細胞腫、テコーマ、アレノ芽細胞腫、肝細胞腫、血液悪性腫瘍、例としては、非ホジキンリンパ腫(NHL)、多発性骨髄腫及び急性血液悪性腫瘍、子宮内膜または子宮癌、子宮内膜症、線維肉腫、絨毛癌、唾液腺癌、外陰癌、甲状腺癌、食道癌、肝癌、肛門癌、陰茎癌、鼻咽頭癌、喉頭癌、カポジ肉腫、黒色腫、皮膚癌、神経鞘腫、乏突起膠腫、神経芽細胞腫、横紋筋肉腫、骨原性肉腫、平滑筋肉腫、及び尿路癌が挙げられる。
【0120】
「転移性癌」という用語は、組織起源のがん細胞が、血管またはリンパ腺によって元の部位から体内の1つ以上の他の部位に伝播し、起源の組織以外の1つ以上の臓器内で1つ以上の二次腫瘍を形成するがんの状態を意味する。顕著な例は、転移性乳癌である。
【0121】
「PD-L1の発現を特徴とする」という用語は、PD-L1発現が、疾患または障害に特徴的な1つ以上の病理学的プロセスに関連するか、または関与する任意の疾患または障害を広く指す。具体的には、限定するものではないが、PD-L1の発現を特徴とする疾患または障害としては、例えば、腫瘍細胞がPD-L1を発現するがん、及び/または腫瘍関連間質がPD-L1の発現を示すがん、及び/またはPD-L1が免疫細胞で発現しているがんが挙げられる。このような障害としては、限定するものではないが、浸潤性乳癌、結腸腺癌、リンパ腫、リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、食道癌、頭頸部扁平上皮癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、膵臓腺癌、直腸腺癌、膀胱尿路上皮癌、子宮頸部扁平上皮癌及び子宮頸部腺癌、胆管癌、多形性膠芽腫、肝細胞癌、中皮腫、メルケル細胞癌、腎細胞癌、肉腫(例えば、未分化肉腫)、皮膚黒色腫、胃腺癌、精巣胚細胞腫瘍、子宮癌肉腫、骨肉腫、神経膠芽腫、黒色腫、卵巣癌、胃癌、及び結腸直腸癌が挙げられる。
【0122】
「細胞増殖性障害」及び「増殖性障害」という用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連付けられる障害を指す。一実施形態では、細胞増殖性障害は、がんである。
【0123】
「腫瘍」は、本明細書に使用されるとき、悪性または良性に関わらず、あらゆる腫瘍性の細胞成長及び増殖、ならびにあらゆる前がん性及びがん性の細胞及び組織を指す。
【0124】
「治療する、処置する」、「治療、処置」及び「治療すること、処置すること」という用語は、本明細書において用いる場合、治療的処置及び予防的な防止的手段の両方を指し、その目的は、標的となる生理学的状態または障害を予防または減速(緩和)することである。処置を必要とする対象としては、特定の状態または障害をすでに有する対象、ならびに障害を有する傾向のある対象、または障害が予防されるべき対象が挙げられる。
【0125】
「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、本明細書中では同じ意味で用いられ、処置について評価されている、及び/または処置されている哺乳動物を指す。一実施形態では、哺乳動物とは、ヒトである。「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、限定されないが、がんを有する個体、自己免疫疾患を有する個体、病原体感染症を有する個体などを包含する。対象はヒトであってもよいが、他の哺乳動物、特にヒトの疾患の実験室モデルとして有用な哺乳動物、例えば、マウス、ラットなども含まれる。
【0126】
「医薬製剤」という用語は、活性成分の生物学的活性が有効になるような形態であり、及び製剤を投与する対象にとって許容できない程度に毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。そのような製剤は、無菌である。「薬学的に許容される」賦形剤(ビヒクル、添加剤)とは、対象哺乳動物に適度に投与して、用いる活性成分の有効用量を提供し得る賦形剤である。
【0127】
「無菌」製剤とは、無菌であるか、またはすべての生存微生物及びそれらの胞子を含まないか、もしくはそれらを本質的に含まない。「凍結」製剤とは、温度が0℃未満の製剤である。
【0128】
「安定」製剤とは、内部のタンパク質が保管時にその物理的安定性及び/または化学的安定性及び/または生物学的活性を本質的に保持する製剤である。好ましくは、製剤は、保管時に、その物理的及び化学的安定性、ならびにその生物学的活性を本質的に保持する。保管期間は、一般的に、製剤の意図される貯蔵寿命に基づいて選択される。タンパク質安定性を測定するための様々な分析技術が当該技術分野で利用可能であり、例えば、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301. Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)及びJones. A. Adv. Drug Delivery Rev.10:29-90)(1993)に概説されている。安定性は、選択された温度において、選択された期間測定され得る。安定性は、凝集体形成の評価(例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、濁度を測定することによって、及び/または目視検査によって)、カチオン交換クロマトグラフィー、イメージキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)またはキャピラリーゾーン電気泳動を使用して電荷不均一性を評定することによって、アミノ末端またはカルボキシ末端配列分析、質量分光分析、還元されたインタクトな抗体を比較するSDS-PAGE分析、ペプチドマッピング(例えば、トリプシンまたはLYS-C)分析、抗体の生物学的活性または抗原結合機能の評価などを含む様々な異なる方法で、質的及び/または量的に評価され得る。不安定性には、凝集、脱アミド化(例えば、Asn脱アミド化)、酸化(例えば、Met酸化)、異性化(例えば、Asp異性化)、クリッピング/加水分解/断片化(例えば、ヒンジ領域の断片化)、スクシンイミド形成、対形成していないシステイン(複数可)、N末端伸長、C末端プロセシング、グリコシル化の差異などのうちのいずれか1つ以上が含まれ得る。
【0129】
II.詳細な説明
PD-L1x 4-1BB二重特異性抗体
本発明の態様は、PD-L1及び4-1BBに結合する多重特異性結合化合物、例えば二重特異性抗体を含む。多重特異性結合化合物は様々な構成を含んでもよく、各結合単位は一組のCDR配列を含んでもよい。PD-L1重鎖CDR配列には、配列番号1~6が含まれる。PD-L1軽鎖CDR配列には、配列番号7~12が含まれる。抗4-1BB重鎖CDR配列は、配列番号13~18を含み、抗4-1BB軽鎖CDR配列は配列番号19~24を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、配列番号1~24のいずれか1つにおいて2つ以下のアミノ酸置換を有するCDR配列を含む。
【0130】
本発明の実施形態による多重特異性結合化合物は、本明細書で提供されるように、重鎖及び軽鎖の可変領域配列の任意の適切な組み合わせを含み得る。抗PD-L1重鎖可変領域配列には、配列番号25及び26が含まれる。抗PD-L1軽鎖可変領域配列には、配列番号27~28が含まれる。抗4-1BB重鎖可変領域配列には、配列番号29、30、45及び46が含まれる。抗4-1BB軽鎖可変領域配列には、配列番号31、32、47及び48が含まれる。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、配列番号25~32及び45~48のいずれか1つの可変領域配列に対して少なくとも約80%の同一性、例えば、約85%、約90%、約95%、約99%、または約99.9%の同一性を有する可変領域配列を含む。
【0131】
本発明の実施形態による多重特異性結合化合物は、本明細書に列挙されるように、1つ以上の抗4-1BB scFv配列を含み得る。抗4-1BB scFv配列には、配列番号129~132が含まれる。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、配列番号129~132のいずれか1つのscFv配列に対して少なくとも約80%の同一性、例えば、約85%、約90%、約95%、約99%、または約99.9%の同一性を有するscFv配列を含む。いくつかの実施形態では、scFv配列は、リンカー配列によってポリペプチドサブユニット(例えば、重鎖または軽鎖ポリペプチドサブユニット)に連結される。リンカー配列の非限定的な例には、配列番号36、37、38、49及び120~128が含まれる。
【0132】
本明細書に記載の多重特異性結合化合物は、臨床的治療剤(複数可)としての有用性に寄与する多くの利点を提供する。この多重特異性結合化合物は、治療上の利点を示す特定の分子の選択を可能にする、さまざまな結合単位構成を有するメンバーを含む。
【0133】
適切な結合化合物は、例えば、
図40のパネルAに示すように、限定されないが、二重特異性結合化合物としての使用を含む、開発及び治療または他の使用のために本明細書に提供される結合化合物から選択され得る。
【0134】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1及び4-1BBに結合し、配列番号43の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド、配列番号41の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、配列番号41の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド、及び配列番号43の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。この二重特異性抗体は、QL301(シグナル配列付き)と呼ばれる。
【0135】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1及び4-1BBに結合し、配列番号44の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド、配列番号42の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、配列番号42の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド、及び配列番号44の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。この二重特異性抗体は、QL301(シグナル配列なし)と呼ばれる。
【0136】
候補タンパク質に対する親和性の決定は、Biacore測定などの当該技術分野において公知の方法を使用して実施され得る。本明細書に記載の多重特異性結合化合物は、約10-6~約10-11、例としては限定するものではないが、約10-6~約10-10;約10-6~約10-9;約10-6~約10-8;約10-8~約10-11;約10-8~約10-10;約10-8~約10-9;約10-9~約10-11;~約10-9~約10-10;またはこれらの範囲内の任意の値を含むKdでPD-L1または4-1BBに対する親和性を有し得る。親和性の選択は、in vitroアッセイ、前臨床モデル、及び臨床試験を含む、PD-L1または4-1BBの生物学的活性を調節するための生物学的評価、ならびに潜在的な毒性の評価によって確認され得る。
【0137】
本明細書に記載の4本鎖ポリペプチドを含むがこれらに限定されない、多重特異性結合化合物の様々な形式が本発明の範囲内である。本明細書における多重特異性結合化合物は、具体的には、PD-L1及び4-1BBに対して結合親和性を有する二重特異性結合化合物(例えば、抗PD-L1×抗4-1BB結合化合物)を含む。そのような二重特異性結合化合物は、
図40のパネルBに示されるように、腫瘍細胞の強力なT細胞媒介死滅を誘導する。
【0138】
PD-L1xCD47 二重特異性抗体
本発明の態様は、PD-L1及びCD47に結合する多重特異性結合化合物、例えば二重特異性抗体を含む。多重特異性結合化合物は様々な構成を含んでもよく、各結合単位は一組のCDR配列を含んでもよい。PD-L1重鎖CDR配列には、配列番号1~6が含まれる。PD-L1軽鎖CDR配列には、配列番号7~12が含まれる。抗CD47重鎖CDR配列は、配列番号50~55を含み、抗CD47軽鎖CDR配列は、配列番号56~61を含む。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、配列番号1~12または50~61のいずれか1つにおいて2つ以下のアミノ酸置換を有するCDR配列を含む。
【0139】
本発明の実施形態による多重特異性結合化合物は、本明細書で提供されるように、重鎖及び軽鎖の可変領域配列の任意の適切な組み合わせを含んでもよい。抗PD-L1重鎖可変領域配列には、配列番号25及び26が含まれる。抗PD-L1軽鎖可変領域配列には、配列番号27~28が含まれる。抗CD47重鎖可変領域配列には、配列番号62~63が含まれる。抗CD47軽鎖可変領域配列には、配列番号64~65が含まれる。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、配列番号25~28及び62~65のいずれか1つの可変領域配列に対して少なくとも約80%の同一性、例えば、約85%、約90%、約95%、約99%、または約99.9%の同一性を有する可変領域配列を含む。
【0140】
本発明の実施形態による多重特異性結合化合物は、本明細書に列挙されるように、1つ以上の抗CD47 scFv配列を含み得る。抗CD47 scFv配列には、配列番号72~75が含まれる。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、配列番号72~75のいずれか1つのscFv配列に対して少なくとも約80%の同一性、例えば、約85%、約90%、約95%、約99%、または約99.9%の同一性を有するscFv配列を含む。いくつかの実施形態では、scFv配列は、リンカー配列によってポリペプチドサブユニット(例えば、重鎖または軽鎖ポリペプチドサブユニット)に連結される。リンカー配列の非限定的な例には、配列番号36、37、38、49及び120~128が含まれる。
【0141】
本明細書に記載の多重特異性結合化合物は、臨床的治療剤(複数可)としての有用性に寄与する多くの利点を提供する。多重特異性結合化合物には、治療上の利点を示す特定の分子の選択を可能にする、さまざまな結合単位構成を有するメンバーを含む。
【0142】
適切な結合化合物は、例えば、
図12のパネルAに示すように、限定されないが、二重特異性結合化合物としての使用を含む、開発及び治療または他の使用のために本明細書に提供される結合化合物から選択され得る。
【0143】
本発明の態様は、多重特異性化合物の所望の成分のヘテロ二量体化を促進するために、それらの重鎖サブユニットの間にノブ・イントゥ・ホール(KiH)界面を含む多重特異性結合化合物を含む(例えば、抗PD-L1結合ドメインを含む第1の重鎖ポリペプチドサブユニット、及び抗CD47結合ドメイン(例えば、抗CD47 scFv)を含む第2の重鎖ポリペプチドサブユニット)。
【0144】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1及びCD47に結合し、かつ配列番号66の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド、配列番号67の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、配列番号68の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドを含む。この分子は、huD39.5.2.3-huG4a_hole_RF_huE15.1_scFvds-huG4a_hingeFc_knob_KiHssと呼ばれる。
【0145】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1及びCD47に結合し、かつ配列番号69の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド、配列番号70の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、配列番号71の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドを含む。この分子は、huD39.5.2.3-huG4a_hole_RF_huE24.6_scFvds-huG4a_hingeFc_knob_KiHssと呼ばれる。
【0146】
候補タンパク質に対する親和性の決定は、Biacore測定などの当該技術分野において公知の方法を使用して実施することができる。本明細書に記載の多重特異性結合化合物は、約10-6~約10-11、例としては、限定するものではないが:約10-6~約10-10;約10-6~約10-9;約10-6~約10-8;約10-8~約10-11;約10-8~約10-10;約10-8~約10-9;約10-9~約10-11;約10-9~約10-10;またはこれらの範囲内の任意の値のKdで、PD-L1またはCD47に親和性を有し得る。親和性の選択は、in vitroアッセイ、前臨床モデル、及び臨床試験を含む、PD-L1またはCD47の生物学的活性を調節するための生物学的評価、ならびに潜在的な毒性の評価によって確認され得る。
【0147】
本明細書に記載の3本鎖または4本鎖ポリペプチドを含むがこれらに限定されない、多重特異性結合化合物の様々な形式が本発明の範囲内である。本明細書における多重特異性結合化合物は、具体的には、PD-L1及びCD47に対して結合親和性を有する二重特異性結合化合物(例えば、抗PD-L1×抗CD47結合化合物)を含む。そのような二重特異性結合化合物は、腫瘍細胞の強力なT細胞媒介死滅を誘導する。
【0148】
PD-L1xIL15結合化合物
本発明の態様は、PD-L1に結合し、IL15受容体との相互作用を促進するIL15領域を含む多重特異性結合化合物、例えば、二重特異性抗体を含む。多重特異性結合化合物は様々な構成を含んでもよく、各PD-L1結合単位は一組のCDR配列を含んでもよい。PD-L1重鎖CDR配列には、配列番号1~6が含まれる。PD-L1軽鎖CDR配列には、配列番号7~12が含まれる。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、配列番号1~12のいずれか1つにおいて2つ以下のアミノ酸置換を有するCDR配列を含む。
【0149】
本発明の実施形態による多重特異性結合化合物は、本明細書で提供されるように、重鎖及び軽鎖の可変領域配列の任意の適切な組み合わせを含んでもよい。抗PD-L1重鎖可変領域配列には、配列番号25及び26が含まれる。抗PD-L1軽鎖可変領域配列には、配列番号27~28が含まれる。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、配列番号25~28のいずれか1つの可変領域配列に対して少なくとも約80%の同一性、例えば、約85%、約90%、約95%、約99%、または約99.9%の同一性を有する可変領域配列を含む。
【0150】
本発明の実施形態による多重特異性結合化合物は、本明細書に列挙されるように、1つ以上の抗IL15配列を含み得る。IL15配列には、配列番号86~90が含まれる。いくつかの実施形態では、多重特異性結合化合物は、配列番号86~90のいずれか1つのIL15配列に対して少なくとも約80%の同一性、例えば、約85%、約90%、約95%、約99%、または約99.9%の同一性を有するIL15配列を含む。いくつかの実施形態では、IL15配列は、リンカー配列によってポリペプチドサブユニット(例えば、重鎖または軽鎖ポリペプチドサブユニット)に連結される。リンカー配列の非限定的な例には、配列番号36、37、38、49及び120~128が挙げられる。
【0151】
本明細書に記載の多重特異性結合化合物は、臨床的治療剤(複数可)としての有用性に寄与する多くの利点を提供する。多重特異性結合化合物は、治療上の利点を示す特定の分子の選択を可能にする、さまざまな結合単位構成を有するメンバーを含む。
【0152】
適切な結合化合物は、例えば、
図23のパネルA~Fに示すように、限定されないが、二重特異性結合化合物としての使用を含む、開発及び治療または他の使用のために本明細書に提供される結合化合物から選択され得る。
【0153】
本発明の態様は、多重特異性化合物の所望の成分のヘテロ二量体化を促進するために、それらの重鎖サブユニットの間にノブ・イントゥ・ホール(KiH)界面を含む多重特異性結合化合物を含む(例えば、抗PD-L1結合ドメイン及び第1のIL15タンパク質を含む第1の重鎖ポリペプチドサブユニット、ならびに抗PD-L1結合ドメイン及び第2のIL15タンパク質を含む第2の重鎖ポリペプチドサブユニット)。
【0154】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1に結合し、2つのIL15タンパク質を含み(各重鎖ポリペプチドサブユニット上のもの)、配列番号104の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド、配列番号105の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、配列番号105の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド、及び配列番号104の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。この分子は、D39.5.2.3-G1AAA-IL15RaSu-IL15-T2Aと呼ばれ、
図23のパネルAに模式的に示されている。
【0155】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1に結合し、2つのIL15タンパク質を含み(各重鎖ポリペプチドサブユニット上のもの)、配列番号106の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド、配列番号107の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、配列番号107の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド、及び配列番号106の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。この分子は、D39.5.2.3-G1AAA-IL15-IL15RaSu-T2Bと呼ばれ、
図23パネルDに模式的に示されている。
【0156】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1に結合し、2つのIL15タンパク質を含み(各重鎖ポリペプチドサブユニット上のもの)、配列番号108の配列を含む第1及び第2の軽鎖ポリペプチド、配列番号109の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、及び配列番号110の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドを含む。この分子は4本鎖分子であり、重鎖ポリペプチド間にKiH界面を含み、ヘテロ二量体化を促進する。この分子は、D39.5.2.3-G1AAA.KiH-IL15+IL15RaSu-T3と呼ばれ、
図23のパネルFに模式的に示されている。
【0157】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1に結合し、1つのIL15タンパク質を含み(1重鎖ポリペプチドサブユニット上)、配列番号111の配列を含む第1及び第2の軽鎖ポリペプチド、配列番号112の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、及び配列番号113の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドを含む。この分子は4本鎖分子であり、重鎖ポリペプチド間にKiH界面を含み、ヘテロ二量体化を促進する。この分子は、D39.5.2.3-G1AAA-IL15RaSu-IL15-T2A-モノと呼ばれ、
図23のパネルBに模式的に示されている。
【0158】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1に結合し、1つのIL15タンパク質を含み(1重鎖ポリペプチドサブユニット上)、配列番号114の配列を含む第1及び第2の軽鎖ポリペプチド、配列番号115の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、及び配列番号116の配列を含む第2の重鎖ポリペプチドを含む。この分子は4本鎖分子であり、重鎖ポリペプチド間にKiH界面を含み、ヘテロ二量体化を促進する。この分子は、D39.5.2.3-G1AAA-IL15-IL15RaSu-T2B-モノと呼ばれ、
図23のパネルEに模式的に示されている。
【0159】
好ましい一実施形態では、二重特異性結合化合物は、PD-L1に結合し、2つのIL15タンパク質を含み(各重鎖ポリペプチドサブユニット上のもの)、配列番号117の配列を含む第1の軽鎖ポリペプチド、配列番号118の配列を含む第1の重鎖ポリペプチド、及び配列番号119の配列を含む第2の重鎖ポリペプチド、及び配列番号117の配列を含む第2の軽鎖ポリペプチドを含む。この分子は4本鎖分子であり、重鎖ポリペプチド間にKiH界面を含み、ヘテロ二量体化を促進する。この分子は、D39.5.2.3-G1AAA-IL15RaSu-IL15-T2A-マスクと呼ばれ、
図23のパネルCに模式的に示されている。
【0160】
候補タンパク質に対する親和性の決定は、Biacore測定などの当該技術分野において公知の方法を使用して実施することができる。本明細書に記載の多重特異性結合化合物は、約10-6~約10-11、例としては、限定するものではないが:約10-6~約10-10;約10-6~約10-9;約10-6~約10-8;約10-8~約10-11;約10-8~約10-10;約10-8~約10-9;約10-9~約10-11;約10-9~約10-10;またはこれらの範囲内の任意の値のKdで、PD-L1に親和性を有し得る。親和性の選択は、in vitroアッセイ、前臨床モデル、及び臨床試験を含む、PD-L1またはIL15の生物学的活性を調節するための生物学的評価、ならびに潜在的な毒性の評価によって確認され得る。
【0161】
本明細書に記載の3本鎖または4本鎖ポリペプチドを含むがこれらに限定されない、多重特異性結合化合物の様々な形式が本発明の範囲内である。本明細書における多重特異性結合化合物には、特に、PD-L1に対する結合親和性を有し、IL15受容体との相互作用を促進する1つ以上のIL15タンパク質を含む二重特異性結合化合物(例えば、抗PD-L1×IL15結合化合物)が含まれる。そのような二重特異性結合化合物は、腫瘍細胞の強力なT細胞媒介死滅を誘導する。
【0162】
以下の表は、本明細書に記載の結合化合物をアセンブルする際に使用される様々な配列を提供する。
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16-1】
【表16-2】
【表17】
【表18】
【表19-1】
【表19-2】
【表20】
【表21】
【表22-1】
【表22-2】
【表22-3】
【表23-1】
【表23-2】
【表23-3】
【表23-4】
【表23-5】
【表23-6】
【表23-7】
【表23-8】
【0163】
結合化合物の調製
本発明の多重特異性結合化合物は、当該技術分野で公知の方法によって調製され得る。例えば、結合化合物及びその抗原結合フラグメントはまた、例えば、哺乳動物細胞(例えば、CHO細胞)、E.coliまたは酵母を含む適切な真核宿主または原核宿主におけるコード化核酸の発現により、組換えDNA技術によって産生され得る。
【0164】
医薬組成物、使用及び処置の方法
本発明の別の態様は、適切な薬学的に許容される担体と混合した本発明の1つ以上の多重特異性結合化合物を含む医薬組成物を提供することである。本明細書で使用される薬学的に許容される担体は、限定されないが、アジュバント、固体担体、水、緩衝液、もしくは治療成分を保持するために当該技術分野で使用される他の担体、またはそれらの組み合わせに例示される。
【0165】
一実施形態では、医薬組成物は、PD-L1及び4-1BBに結合する多重特異性結合化合物を含む。一実施形態では、医薬組成物は、PD-L1及びCD47に結合する多重特異性結合化合物を含む。一実施形態では、医薬組成物は、PD-L1に結合し、1つ以上のIL15タンパク質を含む多重特異性結合化合物を含む。
【0166】
本発明に従って使用される結合化合物の医薬組成物は、所望の純度を有するタンパク質を任意選択の薬学的に許容される担体、賦形剤または安定剤(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)を参照のこと)と混合することによって、例えば、凍結乾燥製剤または水溶液の形態で、貯蔵用に調製される。許容される担体、賦形剤、または安定剤は、使用する用量及び濃度においてレシピエントに対して非毒性であり、これには、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール、メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド、血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、もしくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤、ショ糖、マンニトール、トレハロース、もしくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン、金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体)、及び/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、もしくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0167】
経口投与用の医薬組成物は、好ましくは無菌であり、実質的に等張であり、優良医薬品製造基準(GMP)条件下で製造される。医薬組成物は、単位剤形(すなわち、単回投与の用量)で提供され得る。製剤は、選択される投与経路に依存する。本明細書の結合化合物は、静脈内注射もしくは注入によって投与されても、または皮下投与されてもよい。注射投与に関して、本明細書の結合化合物を、水溶液中、好ましくは生理的に適合する緩衝液中で製剤化して、注射部位の不快感を低減し得る。溶液は、上記のように担体、賦形剤、または安定剤を含有し得る。あるいは、結合化合物は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌された、発熱物質ナシの水での構成のために凍結乾燥された形態であり得る。
【0168】
抗体製剤は、例えば、米国特許第9,034,324号に開示されている。本発明の結合化合物についても同様の製剤を使用してもよい。皮下抗体製剤は、例えば、米国特許出願公開第20160355591号及び米国特許出願公開第20160166689号に記載されている。
【0169】
使用方法
本明細書に記載の多重特異性結合化合物及び医薬組成物は、限定されないが、本明細書に上記される病態及び疾患を含む、PD-L1の発現を特徴とする疾患及び病態の処置に使用され得る。
【0170】
一態様では、本明細書の多重特異性結合化合物及び医薬組成物を使用して、PD-L1の発現を特徴とするがんを処置し得る。本明細書で使用される場合、「PD-L1の発現によって特徴付けられる」がんとしては、限定するものではないが、1つ以上の腫瘍細胞がPD-L1を発現するがん、及び/または腫瘍関連間質がPD-L1の発現を示すがん、及び/または免疫細胞がPD-L1の発現を示すがんが挙げられる。このような障害としては、限定するものではないが、浸潤性乳癌、結腸腺癌、リンパ腫、リンパ系新生物びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、食道癌、頭頸部扁平上皮癌、肺腺癌、肺扁平上皮癌、卵巣漿液性嚢胞腺癌、膵臓腺癌、直腸腺癌、膀胱尿路上皮癌、子宮頸部扁平上皮癌及び子宮頸部腺癌、胆管癌、多形性膠芽腫、肝細胞癌、中皮腫、メルケル細胞癌、腎細胞癌、肉腫(例えば、未分化肉腫)、皮膚黒色腫、胃腺癌、精巣胚細胞腫瘍、子宮癌肉腫、骨肉腫、神経膠芽腫、黒色腫、卵巣癌、胃癌、及び結腸直腸癌が挙げられる。
【0171】
疾患の処置のための本発明の組成物の有効量は、投与手段、標的部位、患者の生理的状態、患者がヒトであるか動物であるか、投与される他の薬剤、及び処置が予防的なものであるか治療的なものであるかを含む、多くの異なる要因によって変化する。通常、患者は、ヒトであるが、非ヒト哺乳動物、例えば、イヌ、ネコ、ウマなどのコンパニオンアニマル、ウサギ、マウス、ラットなどの実験用哺乳動物などもまた、処置され得る。処置用量を漸増させて、安全性及び有効性を最適化し得る。
【0172】
用量レベルは、当業者によって容易に決定され得るが、必要に応じて、例えば、治療への対象の応答を変化させる必要に応じて、変化させてもよい。単一剤形を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、治療する宿主及び特定の投与様式に応じて異なる。一般的に、単位剤形は、約1mg~約500mgの活性成分を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、薬剤の治療用量は、宿主の体重の約0.0001~100mg/kg、より一般的には、0.01~5mg/kgの範囲であり得る。例えば、用量は、1mg/kg体重もしくは10mg/kg体重または1~10mg/kgの範囲内で有り得る。例示的な処置計画は、2週間に1回もしくは1か月に1回または3~6か月に1回の投与を伴う。本発明の治療物質は、通常、複数回投与される。単回投与の間隔は、毎週、毎月または毎年であってもよい。間隔はまた、患者における治療物質の血中レベルを測定することによって指定されるように、不定期であってもよい。あるいは、本発明の治療物質を徐放性製剤として投与してもよく、その場合、あまり頻繁な投与を必要としない。用量と頻度は、患者におけるポリペプチドの半減期に依存して様々に異なる。
【0174】
一般的に、組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかの注射剤として調製され、注射前に液体ビヒクル中に溶解または懸濁するのに適した固体形態もまた、調製することができる。本明細書の医薬組成物は、直接の、または固体(例えば、凍結乾燥)組成物の再構成後の静脈内または皮下投与に適している。調製物はまた、上記で考察したように、アジュバント効果を増強するために、リポソーム、またはポリラクチド、ポリグリコリド、もしくはコポリマーなどの微粒子に乳化してもまたはカプセル化してもよい。Langer,Science 249:1527,1990及びHanes,Advanced Drug Delivery Reviews 28:97-119,1997。本発明の薬剤は、活性成分の徐放またはパルス放出を可能にするような方法で製剤化することが可能な、デポー注射またはインプラント調製物の形態で投与してもよい。医薬組成物は、一般的に、無菌で、実質的に等張であり、米国食品医薬品局のすべての優良医薬品製造基準(GMP)の規制に完全に準拠して製剤化される。
【0175】
本明細書に記載の抗体及び抗体構造の毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって、例えば、LD50(集団の50%に対する致死用量)またはLD100(集団の100%に対する致死用量)を測定することによって決定することができる。毒性と治療効果との間の用量比が、治療指数である。これらの細胞培養アッセイ及び動物実験から得られるデータは、ヒトでの使用に毒性のない用量範囲を策定する際に用いることができる。本明細書に記載の抗体の用量は、好ましくは、毒性がほとんどまたは全くない有効用量を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、用いる剤形及び利用する投与経路に応じて、この範囲内で様々に異なり得る。正確な処方、投与経路、及び投与量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選択され得る。
【0176】
投与用組成物は、一般に、薬学的に許容される担体、好ましくは水性担体に溶解した抗体または他の薬剤(例えば、別の削摩剤)を含むであろう。様々な水性担体、例えば緩衝食塩水などを使用してもよい。これらの溶液は無菌であり、一般的に望ましくない物質を含まない。これらの組成物を、従来の周知の滅菌技法によって無菌化してもよい。組成物は、生理的条件に近づけるために必要とされるような薬学的に許容される補助物質(pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど)を含有し得る。これらの製剤中の活性薬剤の濃度は大きく変動し得、選択された特定の投与様式及び患者のニーズに従って、主に液量、粘度、体重などに基づいて選択される(例えば、Remington’s Pharmaceutical Science(15th ed.,1980)及びGoodman & Gillman,The Pharmacological Basis of Therapeutics(Hardman et al.,eds.,1996))。
【0177】
本発明の活性剤及びその製剤、ならびに使用説明書を含むキットも本発明の範囲内である。キットはさらに、少なくとも1つの追加の試薬、例えば、化学療法薬などを含んでもよい。キットは通常、キットの内容物の使用目的を示すラベルを含む。本明細書中で使用する「ラベル」という用語には、キット上にもしくはキットと共に供給されるか、または他の方法でキットに付随する、あらゆる書面または記録物が含まれる。
【0178】
ここで十分に説明されている本発明は、本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、様々な変更及び修正を行い得ることが当業者に明らかとなるであろう。
【実施例】
【0179】
実施例1:PD-L1または4-1BBを発現するHEK293細胞へのQL301の結合
PD-L1または4-1BBを発現するHEK293細胞を、96ウェルV底プレートに1×10
5の密度で播種した。段階希釈した抗体を細胞に添加し、氷上で30分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後、AF647標識抗ヒトFc二次抗体を加え、氷上で20分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を7AAD生存色素を含むFACS緩衝液に再懸濁し、フローサイトメーターで分析した。結果を
図1のパネルA~Cに示す。
【0180】
実施例2:結合の反応速度論
OctetRED96システムで結合の反応速度論を測定した。抗体をForteBioの抗ヒト Fcキャプチャー(AHC)センサーにロードした後、hisタグ付き組換えPD-L1または4-1BBタンパク質を結合させた。結果を
図2のパネルA~Cに示す。
【0181】
実施例3:PD-L1またはcyno 4-1BBを発現するHEK293細胞へのQL301の結合
カニクイザルPD-L1または4-1BBを発現するHEK293細胞を、96ウェルV底プレートに1×10
5の密度でプレートした。段階希釈した抗体を細胞に添加し、氷上で30分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後、AF647標識抗ヒトFc二次抗体を加え、氷上で20分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を7AAD生存色素を含むFACS緩衝液に再懸濁し、フローサイトメーターで分析した。その結果を
図3のパネルA~Cに示す。
【0182】
実施例4:QL301競合アッセイ
PD-L1または4-1BBを発現するHEK293細胞を96ウェルV底プレートに1×10
5の密度でプレートした。段階希釈した抗体を細胞に添加し、氷上で15分間インキュベートした。Hisタグ付き組換えPD-L1または4-1BBタンパク質を、それぞれのプレートに加え、氷上でさらに15分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後、APC標識抗His-タグ二次抗体を加え、氷上で20分間インキュベートした。FACS緩衝液で2回洗浄した後、細胞を7AAD生存色素を含むFACS緩衝液に再懸濁し、フローサイトメーターで分析した。結果を
図4のパネルA~Cに示す。
【0183】
実施例5:QL301二機能性ELISA及びNF-kBレポーターアッセイ
組換えHisタグ付き4-1BBタンパク質を、室温で一晩、振とうしながら96ウェルプレート上にコーティングした。0.05%のTween-20を含むPBSでプレートを洗浄した後、プレートを2%のBSAで60分間ブロックし、抗体を加え、室温で60分間振とうしながらインキュベートした。洗浄後、ビオチン化組換えPD-L1タンパク質をプレートに加え、室温で60分間インキュベートした。プレートを洗浄し、HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合したストレプトアビジンを添加し、室温で30分間インキュベートした。洗浄後、TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)基質を加え、5~10分間インキュベートして発色させた後、0.16M硫酸を加えて反応を停止させた。プレートリーダーで吸光度を読み取った。レポーターアッセイのために、NF-kB転写制御下のウミシイタケルシフェラーゼレポーター要素も含む4-1BBを発現するHEK293細胞を、96ウェルプレートに1ウェルあたり5×10
4細胞で播種した。親HEK293細胞またはPD-L1を発現するHEK293細胞を、1ウェルあたり同じ細胞数で添加した。次に、段階希釈した抗体を加え、5%のCO
2で37℃で24時間インキュベートした。その後、上清を回収し、96ウェルのホワイトウォールプレートに移し、QuantiLuc試薬(Invivogen)を加えた。発光は、プレートリーダーですぐに読み取った。その結果を
図5のパネルA~Bに示す。
【0184】
実施例6:サイトカイン放出
ヒトPBMCを抗CD3(OKT3)で刺激し、QL301、PD-L1もしくは4-1BBモノクローナル、またはそれらの組み合わせと共に、PD-L1+A431細胞と共にインキュベートした。QL301は、IL2及びIFNγの放出を誘導したが、抗PD-L1もしくは4-1BB単独、または2つの組み合わせでは誘導されなかった。A431細胞が存在しない場合、IL2の誘導は有意に少なかった。その結果を
図6のパネルA~Cに示す。各ドットは、個々のドナーを表し、値は対照抗体の倍数である。
【0185】
実施例7:SEB刺激アッセイにおけるサイトカイン放出
IL2放出は、QL301の存在下でのSEB刺激アッセイでも観察されたが、PD-L1もしくは4-1BBモノクローナル、または2つの組み合わせでは観察されなかった。QL301は、抗CD3(OKT3)及びPD-L1+ A431細胞の存在下でCD8+T細胞増殖を誘導したが、これはPD-L1もしくは4-1BBモノクローナル、または2つの組み合わせでは観察されなかった。その結果を
図7のパネルA~Bに示す。
【0186】
実施例8:MC38腫瘍モデル
ヒトPD-L1を発現するMC38マウスがん細胞を、ヒトPD-L1及び4-1BBのダブルノックインC57BL/6マウスの側腹部に移植した。平均腫瘍体積が約100mm
3に達した後、QL301、PD-L1モノクローナル、または生理食塩水を週2回腹腔内投与した。10mg/kgのQL301は、等モル用量の8mg/kgのPD-L1モノクローナル抗体よりも有意に有効である(p<0.0001、n=6)。研究終了時の腫瘍浸潤免疫細胞の分析では、生理食塩水またはPD-L1モノクローナルと比較して、QL301を投与された動物の腫瘍にCD8+T細胞が多いことが示された(p<0.01)。
その結果を
図8のパネルA~Bに示す。
【0187】
実施例9:A431腫瘍モデル
第2のモデルでは、A431ヒトがん細胞をCB17-SCIDマウスの脇腹にヒトPBMCと同時移植した。MC38-hPD-L1モデルの結果と一致して、QL301は、PD-L1モノクローナル抗体よりも腫瘍増殖抑制効果が高く、腫瘍内のCD8+T細胞の割合が高かった(n=8)。その結果を
図9のパネルA~Bに示す。
【0188】
実施例10:加速温度ストレス試験
42℃で28日間にわたる加速温度ストレステストでは、QL301のHPLC-SECプロファイルの変化は最小限であった(5つの時点のクロマトグラムを重ね合わせたもの)。モノマー、凝集体、及びフラグメントの計算されたパーセンテージは、最初の生産組成の1%以内に留まった。その結果を
図10に示す。
【0189】
実施例11:ヒト血清におけるQL301のインキュベーション
QL301をヒト血清中で7日間インキュベートし、SEB刺激アッセイにおいて、結合及びPBMCからのIL2放出を刺激する能力について試験した。4℃のストック対照と血清でインキュベートした分子のと間に有意な変化は観察されなかった。その結果を
図11のパネルA~Bに示す。
【0190】
実施例12:PD-L1及びCD47へのELISA結合
PD-L1及びCD47へのELISA結合を評価した。Immulon HBX プレートを、2μg/mLのhPDL1-FC(R&DSystems)で4℃で一晩コーティングした。次いで、プレートをPBSTで3回洗浄し、4%のNFDM/PBSで室温で1時間ブロックした。ブロックを除去し、4%のNFDM/PBSで希釈した抗体を加え、室温で1時間インキュベートした。次いでプレートをPBSTで3回洗浄した。1μg/mLのhuCD47-C33S_hisを各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベートし、続いて PBSTで3回洗浄した。抗His-HRP(AbCam、1:20,000)を各ウェルに添加し、室温で45分間インキュベートした。PBSTで6回洗浄した後、アッセイをTBMで発色させ、続いて2N硫酸で発色させた。その結果を
図12のパネルBに示す。
図12のパネルAは、PD-L1×CD47二重特異性抗体の模式図である。
【0191】
実施例13:PD-L1×CD47二重特異性抗体のHEK293細胞への結合
細胞を回収し、FACS緩衝液で1回洗浄した。1ウェルあたり 1×10
5個の細胞を96ウェルV底プレートに分配した。試験抗体の連続希釈物を添加し、氷上で20分間インキュベートした。その細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄した。次に、細胞を50μLの二次抗体、AF647 F(ab’)
2ヤギ抗ヒト IgG、Fc特異的、1:500希釈液(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-606-098)に再懸濁し、氷上で15分間インキュベートした。最後に、細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、7-AADを含む100μLのFACS緩衝液に再懸濁した。その結果を
図13のパネルA~Eに示す。
【0192】
実施例14:PD-1 Fc-ビオチンブロッキング
細胞を回収し、FACS緩衝液で1回洗浄した。1ウェルあたり1.2×10
5個の細胞を96ウェルV底プレートに分配した。0.5μg/mLのPD-1-ビオチン(最終濃度)を細胞に添加し、氷上で5分間インキュベートした。次に、試験抗体の連続希釈物を添加し、氷上で20分間インキュベートした。その細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄した。次に、その細胞を50μLの二次抗体、ストレプトアビジン-APC(R&D、カタログ番号F0050)に10μL/10
6細胞で再懸濁し、氷上で15分間インキュベートした。最後に、細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、7-AADを含む120μLのFACS緩衝液に再懸濁した。その結果を
図14及び
図15に示す。
【0193】
実施例15:SIRPα Fc-ビオチンブロッキング
細胞を回収し、FACS緩衝液で1回洗浄した。ウェルあたり1.2×10
5個の細胞を、96ウェルV底プレートに分配した。1.25μg/mLのSIRPα-ビオチン(最終濃度)を細胞に添加し、氷上で5分間インキュベートした。次に、試験抗体の連続希釈物を添加し、氷上で20分間インキュベートした。その細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄した。次に、細胞を50μLの二次抗体、ストレプトアビジン-APC(R&D、カタログ番号F0050)に10μL/10
6細胞で再懸濁し、氷上で15分間インキュベートした。最後に、その細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、7-AADを含む120μLのFACS緩衝液に再懸濁した。その結果を
図16のパネルA~Bに示す。
【0194】
実施例16:Raji及びMM.1S細胞のPD-L1/CD47媒介食作用
組換えヒトM-CSF(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-096-492)及び組換えヒト IL-10(Miltenyi Biotec、カタログ番号130-098-448)由来のマクロファージを、新たに単離されたヒト末梢血単核細胞(PBMC)から生成した。0日目に非接着細胞を除去した後、Rh M-CSF(20ng/ml)を組織培養フラスコ内の接着細胞に添加し、3日目と7日目に新鮮な培地を補充し、Rh IL-10(10ng/ml)を7日目に添加し、さらに10%熱不活性化FBSを含むRPMI-1640でさらに2日間インキュベートした。次いで、CFSE標識標的細胞(1×10
5細胞/ウェル)及びエフェクター細胞(2.5×10
4細胞/ウェル)を、5%CO
2インキュベーター中で、2時間、96ウェル超低アタッチメントU底プレート(Costar、カタログ番号7007)での試験抗体の連続希釈とともに37℃でインキュベートした。次に、細胞を96ウェルv底PPプレートに移し、スピンダウンしてペレットにし、20%熱不活化FBSを含むDPBSで1回洗浄した。次いで、細胞を20%HI FBSを含むDPBSで再懸濁した。APC結合抗ヒトCD36抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号MA1-10210)を、試験抗体を含むウェルに加え、氷上で30分間インキュベートした。細胞を、20%HI FBSを含む200μLのDPBSで2回洗浄した。最後に、細胞を7-AADを含む緩衝液で再懸濁した。サンプルは、BD LSR Fortessaを使用してフローサイトメトリーで分析し、さらにCD47-PDL1抗体によって誘導されるマクロファージによる標的細胞の食作用を示すLive CFSE/APC二重陽性でFlowJo ゲーティングを使用して分析した。その結果を
図17のパネルA~Bに示す。
【0195】
実施例17:赤血球へのPD-L1/CD47の結合
密度勾配遠心分離による単核球の分離後にバフィーコートから得られたヒト赤血球(RBC)を、50mLコニカルチューブに慎重に移した。RBCをDPBSで3回洗浄し、遠心分離後に上清を注意深く除去した。次に、DPBSを添加して、赤血球の10%溶液を作成した。1ウェルあたり1×10
6個の細胞を96ウェルV底プレートに分配した。試験抗体の連続希釈物を添加し、4℃で30分間インキュベートした。次いで、RBCを、2%FBS及び0.05%アジ化ナトリウムを含む200μLのDPBS(FACS緩衝液)で2回洗浄した。次に、RBCを100μLの二次抗体、AF647 F(ab’)2ヤギ抗ヒト IgG、Fc特異的、1:500希釈液(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-606-098)に再懸濁し、4℃で15分間インキュベートした。最後に、RBCを200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリー分析のために200μLのFACS緩衝液で再懸濁した。その結果を
図18のパネルA~Bに示す。
【0196】
実施例18:CD47抗体によって誘導される赤血球の血球凝集
Stanford Blood Centerから入手した新鮮な全血をDPBSで1:1の比率で希釈した。その後、2μLの希釈血液を96 ウェルU底プレートに分配した。段階希釈した試験抗体50μLを加え、室温で2時間インキュベートした。結果の写真ファイルを撮影した。その結果を
図19に示す。
【0197】
実施例19:ICR-SCIDマウスにおけるA431/hPBMC同時移植腫瘍モデル
各マウスが5×10
6個のA431細胞及び1.5×10
7個のヒトPBMCを受容するように、ICR-SCIDマウスにA431細胞及びヒトPBMCとマトリゲルとの混合物を皮下移植した。腫瘍が平均140mm
3に達したとき、0、4、7、11、及び15日目に、10mg/kg IPの試験抗体または等量のPBSをマウスに投与した(n=8)。腫瘍の増殖及びマウスの体重は、毎週2回モニタリングした。18日目に腫瘍を採取し、リンパ球及び単球の含有量を分析した。その結果を
図20のパネルA~F及び
図21のパネルA~Fに示す。
【0198】
実施例20:NOD-SCIDマウスにおけるA431腫瘍モデル
NOD-SCIDマウスに、マウス1匹あたり5×10
6個のA431細胞を皮下移植した。腫瘍が平均110mm
3に達したとき、0、4、8、11、14及び18日目に、20mg/kg IPの試験抗体または等量のPBSをマウスに投与した(n=6)。腫瘍の増殖及びマウスの体重は、毎週2回モニタリングした。その結果を
図22のパネルA~Fに示す。
【0199】
実施例21:PDL1-IL15抗体は、ヒトまたはカニクイザルPD-L1またはヒトIL2Rβ及びヒトIL2Rγを発現する細胞に結合する
細胞を回収し、FACS緩衝液で2回洗浄した。1ウェルあたり2×10
5個の細胞を、96ウェルV底プレートに分配した。試験抗体の連続希釈物を添加し、氷上で20分間インキュベートした。細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄した。次に、細胞を50μLの二次抗体、AF647 F(ab’)2ヤギ抗hu IgG、Fc特異的、1:500希釈液(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-606-098)に再懸濁し、氷上で25分間インキュベートした。最後に、細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、7-AADを含む100μLのFACS緩衝液に再懸濁した。その結果を
図24のパネルA~Cに示す。
【0200】
実施例22:PD-L1-IL15抗体に応答したNK92またはM07e細胞の増殖
NK92細胞は、12.5%ウマ血清、12.5%ウシ胎児血清、0.2mMイノシトール、0.02mM葉酸、0.1mMの2-メルカプトエタノール、及び100-200U/mLIL-2(Pepro Tech)を補充したMEM-アルファ培地(Gibo、12561056)で培養した。M07e細胞は、20%ウシ胎児血清及び10ng/mLGM-CSFを補充したIMDM(Gibco、12440046)中で培養した。これらの増殖アッセイでは、細胞を採取し、IL2もGM-CSFも含まない適切な培地で2回洗浄した。細胞を20,000細胞/ウェルで白色96 ウェルプレートに分配し、5%CO
2中、37℃で4時間飢餓状態にした。次いで、試験抗体の連続希釈物を添加し、そのプレートをさらに3日間インキュベートした。増殖は、CellTiter-Glo試薬(Promega)を使用して製造元の指示に従って測定した。発光は、FlexStation3で記録した。その結果を
図25のパネルA~Cに示す。
【0201】
実施例23:PD-L1-IL15抗体によるM07e細胞でのpSTAT5の誘導
M07e細胞を採取し、GM-CSFを含まない20%FBSを補充したIMDM 培地で2回洗浄した。細胞は、5%CO
2中、37℃で24時間、GM-CSFを枯渇させ、次いで、96ウェルV底プレートに1ウェルあたり1.5×10
5細胞で分配した。試験抗体の連続希釈物を添加し、5%CO
2中、37℃で20分間インキュベートした。陽性対照として GM-CSFで刺激したウェルについては、10分後にGM-CSFを加え、合計10分間の刺激を行った。インキュベーションが完了しとき、最終濃度が1.5%のパラホルムアルデヒドになるように4%のパラホルムアルデヒドを培養液に直接加えて細胞を固定し、室温で10分間インキュベートした。次に、100μLの氷冷メタノールを加えて細胞を透過処理し、激しくピペッティングして混合した。4°で10分間インキュベートした後、細胞を染色緩衝液(1%BSAを含むPBS)で2回洗浄し、次いで、ヒトFcブロックを含む染色緩衝液50μLで再懸濁した。次に、抗pSTAT5 抗体(AF647マウス抗STAT5 pY694、BDカタログ番号612599)またはアイソタイプ対照(マウス IgG1アイソタイプ対照、BD、カタログ番号557714)を加え、室温で15~30分間インキュベートした。次に、細胞を染色緩衝液で2回洗浄し、LSF Fortessaでの分析のために120uLの染色緩衝液に再懸濁した。その結果を
図26のパネルA~Bに示す。
【0202】
実施例24:PD-L1-IL15抗体は、CD4+及びCD8+T細胞、NKT細胞、及びNK細胞の増殖を増大させる
PBMCは、Miltenyi Biotech Density Centrifugationプロトコルに従って単離された。製造業者のプロトコルに従って、赤血球を、RBC溶解緩衝液(eBiosciences)で溶解した。単離後、PBMCを、2%FBSを加えたPBSで1回洗浄し、2×10
7細胞/mLで再懸濁した。CellTrace Violetは、6μMで調製し、最終濃度 3μMになるようにPBMCに添加した。暗所で室温で10分間インキュベートした後、等量のFBSを添加して反応を停止させた。次に、PBMCを2%FBSを加えたPBSで2回洗浄し、10%熱不活化 FBSを含むRPMIに2×10
6細胞/mLで再懸濁した。次いで、PBMCを96ウェルプレートに1ウェルあたり2×10
5細胞で分配した。次いで、試験抗体の連続希釈物を添加し、プレートを37℃、5%CO
2で5日間インキュベートした。次に、対応するフルオロフォアを有する次のヒトタンパク質に対する抗体で染色することにより、PBMCの増殖を分析した:CD3-BB515、CD4-APC-H7、CD8-APC、CD56-BV786、及びCD25 BUV395。その結果を
図27のパネルA~C、
図28のパネルA~D、及び
図29のパネルA~Eに示す。
【0203】
実施例25:マウスリンパ球数に対するPD-L1-IL15抗体の薬力学
C57BL/6マウスに、試験抗体または等量のPBSをIP投与した(n=3)。1、4、6、8、及び11日目に全血を採取した。マウスFcブロックCD16/CD32クローン2.4G2(BDカタログ番号553142)を、抗凝固処理したマウス全血50μLに、血液50μLあたり1.2~1.5μLで添加し、4℃で5分間インキュベートした。マウスのリンパ球マーカーに対する蛍光色素結合抗体を混合し、血液サンプルに加え、次いでこれを暗所で4℃で15~20分間インキュベートした。インキュベーション後、各サンプルに800μLを加えて激しくボルテックスすることにより、赤血球をBD Lysing Buffer(BD、カタログ番号555899)で溶解した。暗所で室温で15分間インキュベーションした後、サンプルを350×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を、2mLのBD染色緩衝液(BDカタログ番号554657)で1回洗浄し、1サンプルあたり7-AADを含む350μLのBD染色緩衝液及び50μLのカウンティングビーズ(Biolegenカタログ番号424902)と再懸濁する。その結果を
図30のパネルA~Eに示す。
【0204】
実施例26:マウスリンパ球数に対するPD-L1-IL15抗体の薬力学
C57BL/6マウスに、試験抗体(0.5mg/kg)または等量のPBSをIP投与した(n=3)。全血を4時間後と 1、2、3、6、及び8日目に採取した。マウスFcブロックCD16/CD32クローン2.4G2(BDカタログ番号553142)を、血液50μLあたり1.2~1.5μLで50μLの抗凝集マウス全血に加えて4℃で5分間インキュベートした。マウスのリンパ球マーカーに対する蛍光色素結合抗体を混合し、血液サンプルに加え、次いで、これを暗所で4℃で15~20分間インキュベートした。インキュベーション後、各サンプルに800μLを加えて激しくボルテックスすることにより、赤血球を、BD Lysing Buffer(BD、カタログ番号555899)で溶解した。暗所で室温で15分間インキュベーションした後、サンプルを350×gで5分間遠心分離し、上清を捨てた。細胞を、2mLのBD染色緩衝液(BDカタログ番号554657)で1回洗浄し、1サンプルあたり7-AADを含む350μLのBD染色緩衝液及び50μLのカウンティングビーズ(Biolegendカタログ番号424902)と再懸濁した。その結果を
図31のパネルA~Fに示す。
【0205】
実施例27:C57BI/6及びNSGマウスにおけるD39.5-G1AAA-IL15型T2A、T2B、T3及びT2Aモノの薬物動態測定
パネルA~C:研究27:C57BL/6マウス(各時点でn=6、n=3)に0日目に1回IV投与した。全血及び血漿を、4時間目及び1、2、3、6及び8日目に採取した。研究28:NSGマウスにマトリゲルとともにU118細胞(5×10
6細胞/マウス)を移植した。腫瘍が250mm
3に達したとき、腫瘍を有する各マウスを、腫瘍を有しないNSGマウスと群分けした。PBS群には、2匹の非腫瘍担持マウスがいた。0日目に、マウスにヒトPBMCをIV注射した(5×10
6細胞/マウス)。1日目に、マウスに試験抗体または同量のPBSを投与した。2、4、7、及び11日目に全血及び血漿を採取した。パネルD:C57Bl/6 マウス(各時点でn=6、n=3)に0日目に1回IP投与した。全血及び血漿を4時間で、ならびに1、2、3、7及び9日目に採取した。その結果を
図32のパネルA~Dに示す。
【0206】
実施例28:PDL1-G1AAA-IL15-T2AによるヒトPD-L1を発現するMC38マウス結腸癌細胞の腫瘍増殖阻害
MC38-hPDL1細胞を、C57BL/6マウスに、マウスあたり5×10
6細胞を、マトリゲルと共に皮下に移植した。腫瘍が平均165mm
3に達したとき、マウスを無作為化(n=10)し、試験分子または等量のPBSを0、7、及び14日目にIP投与した。腫瘍の増殖及び体重は、毎週2回モニタリングした。その結果を
図33のパネルA~Fに示す。PDL1-G1AAA-IL15-T2A処置後の無腫瘍マウスに、MC38-hPD-L1またはB16F10がん細胞のいずれかを再チャレンジした。データを
図33のパネルGに示す。MC38-hPD-L1は増殖せず、持続的な防御免疫記憶が示唆された。
【0207】
実施例29:ヒトPBMCと同時移植されたA431異種移植片の腫瘍増殖阻害
A431細胞(5×10
6細胞/マウス)をヒトPBMC(15×10
6細胞/マウス)及びマトリゲル(1:1)と混合し、次いでCB17-SCIDマウスに皮下移植した。腫瘍が平均 100mm
3に達したとき、マウスを無作為化(n=8)し、試験分子または等量のPBSを0、6、及び13日目にIP投与した。腫瘍の増殖及び体重は、毎週2回モニタリングした。マウスを安楽死させ、27日目に腫瘍を採取した。腫瘍をホモジナイズし、ヒトT細胞及びNK細胞マーカーCD45、CD3、CD8、CD4、及びCD56について染色した。サンプルは、BD LSR Fortessaを使用したフローサイトメトリーによって分析し、FlowJoを使用してさらに分析した。結果を
図34のパネルA~Gに示す。腫瘍現型分析由来のデータを
図35のパネルA~G及び
図36のパネルA~Gに示す。グループ1、2、3、及び4では、ヒトT細胞、NK細胞、及びNKT細胞が有意に増大した。
【0208】
実施例30:C57BL/6マウスにおいて、PDL1-G1AAA-IL15-T2AによるヒトPD-L1を発現するMC38マウス結腸癌細胞の腫瘍増殖阻害
MC38細胞を、C57BL/6マウスに、マウスあたり0.6×10
6細胞を、マトリゲルと共に皮下に移植した。腫瘍が平均145mm
3に達したとき、マウスを無作為化(PBSについてn=5、n=8)し、試験分子または等量のPBSを0、7、及び14日目にIP投与した。腫瘍の増殖及び体重は、毎週2回モニタリングした。腫瘍をホモジナイズし、マウスT細胞及びNK細胞マーカーCD45、CD90.2、CD8、CD4、及びNK1.1について染色した。サンプルを、BD LSR Fortessaを使用したフローサイトメトリーによって分析し、FlowJoを使用してさらに分析した。その結果を
図37のパネルA~Eに示す。腫瘍現型分析由来のデータを
図38のパネルA~Fに示す。
【0209】
実施例31:CB17-SCIDマウスにおけるヒトPBMCと同時移植されたNCI-H1650細胞の腫瘍増殖阻害
NCI-H1650細胞(10×10
6細胞/マウス)をヒトPBMC(10×10
6細胞/マウス)及びマトリゲル(1:1)と混合し、次いでCB17-SCIDマウスに皮下移植した。腫瘍が平均 95mM
3に達したとき、マウスを無作為化(n=8)し、試験分子または等量のPBSを0、7、及び14日目にIP投与した。腫瘍の増殖及び体重は、毎週2回モニタリングした。その結果を
図39のパネルA~Gに示す。
【0210】
実施例32:CD47-PDL1二重特異性抗体によって誘導される赤血球(RBC)の食作用は、モノクローナル抗CD47抗体の食作用よりも少ない
組換えヒトM-CSF及び組換えヒトIL-10由来マクロファージは、実施例16及び
図17に記載のように生成された。慎重に分離したRBCを、1μMのCellTrace CFSE(ThermoFisher Scientific、カタログ番号C34554)で標識した。CFSE標識RBC(1×10
5細胞/ウェル)及びマクロファージ(2.5×10
4細胞/ウェル)を、5%CO
2中で、2時間、96ウェル超低アタッチメントU底プレート(Costar、カタログ番号REF7007)での試験抗体の連続希釈とともに37℃でインキュベートした。次いで、細胞を96ウェルv底PPプレートに移し、スピンダウンしてペレットにし、20%熱不活化FBSを含むDPBSで1回洗浄した。細胞を20%HI FBSを含むDPBSで再懸濁し、APC結合した抗ヒトCD36抗体(ThermoFisher Scientific、カタログ番号MA1-10210)を試験抗体を含むウェルに加え、氷上で20分間インキュベートした。細胞は、20%HI FBSを含む200μL DPBSで2回洗浄した。最後に、細胞を7-AADを含む緩衝液で再懸濁した。サンプルは、BD LSR Fortessaを使用してフローサイトメトリーで分析し、さらに抗CD47抗体によって誘導されるマクロファージによるRBCの食作用を示す Live CFSE/APC二重陽性でFlowJoゲーティングを使用して分析した。その結果を
図41のパネルA及びBに示す。
【0211】
実施例33:MMP14及びuPAで切断する前後のType2Aマスク抗体のCHOK1-IL2Rb/g細胞への結合。
16μgの各抗体を、塩化亜鉛を補充した、0.4μgのフリン活性化MMP14及び0.4μgのuPAを用いて、37°で一晩消化した。消化後に、CHOK1-IL2Rb/g細胞を回収し、FACS緩衝液で2回洗浄した。1ウェルあたり1×10
5個の細胞を、96ウェルv底プレートに分配した。試験抗体(切断及び未切断)の連続希釈物を添加し、氷上で30分間インキュベートした。その細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄した。次に、細胞を50μLの二次抗体、AF647 F(ab’)2ヤギ抗hu IgG、Fc特異的、1:500希釈液(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号109-606-098)に再懸濁し、氷上で20分間インキュベートした。最後に、細胞を200μLのFACS緩衝液で2回洗浄し、7-AADを含む120μLのFACS緩衝液に再懸濁した。その結果を
図42に示し、IL15RbのD1のみを使用する抗体では結合を減少させない;しかし、IL15Rbでマスキングすると結合が10分の1を超えて減少することが示される。
【0212】
実施例34:MMP14及びuPAによる切断前後のType2Aマスク抗体に応答したNK92細胞の増殖
NK92細胞は、12.5%ウマ血清、12.5%ウシ胎児血清、0.2mMのイノシトール、0.02mMの葉酸、0.1mMの2-メルカプトエタノール、及び100-200U/mlのIL-2(Pepro Tech)を補充したMEM-アルファ培地(Gibo、12561056)で培養した。16μgの各抗体を、塩化亜鉛を補充した、0.4μgのフリン活性化MMP14及び0.4μgのuPAを用いて、37°で一晩消化した。消化後、NK92細胞を回収し、IL2を含まない培養培地で2回洗浄した。その細胞を20,000細胞/ウェルで白色96ウェルプレートに分配し、5%CO
2中、37℃で4時間飢餓状態にした。次いで、試験抗体の連続希釈物を添加し、そのプレートをさらに3日間インキュベートした。増殖は、製造元の指示に従ってCellTiter-Glo試薬(Promega)を使用して測定した。発光は、FlexStation3で記録した。その結果を
図43に示し、IL15Rbによるマスキングが増殖を5~15分の1に減少させることを示している。
【0213】
実施例35:PD-L1×4-1BB二重特異性抗体の4週間反復投与毒物学研究におけるアカゲザルにおけるAST及びALTレベル
PD-L1x4-1BB二重特異性抗体の4週間反復投与毒性研究をアカゲザルで実施し、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)及びアラニントランスアミナーゼ(ALT)レベルを測定した。その結果を
図44のパネルのA及びBに示す。反復投与後にASTまたはALTレベルの慢性的な上昇はなく、3、10、及び30mg/kgのPD-L1x 4-1BBが肝臓への毒性効果を最小限に抑えたことが示唆されている。
【0214】
実施例36:NOGマウスにおけるPD-L1×CD47(QL401)二重特異性抗体によるA375腫瘍増殖阻害
A375細胞の接種前に、ヒトPBMCをNOGマウスに移植した。この腫瘍モデルからの結果を
図45に示す。10mg/kgでのPD-L1xCD47( QL401)の抗腫瘍効果は、マグロリマブ、デュルバルマブ、またはそれらの組み合わせと同等かそれ以上強力であった。
【0215】
実施例37:NOGマウスにおけるPD-L1×CD47(QL401)二重特異性抗体によるRaji腫瘍増殖阻害
Raji細胞の接種前に、ヒトPBMCをNOGマウスに移植した。この腫瘍モデルからの結果を
図46に示す。10mg/kgでのPD-L1xCD47(QL401)の抗腫瘍効果は、マグロリマブと同等であった。
【0216】
実施例38:PD-L1×CD47二重特異性抗体の4週間反復投与毒物学研究におけるカニクイザルでの赤血球数
カニクイザルにおいて、PD-L1x CD47二重特異性抗体を用いた4 週間の反復投与毒性研究を実施した。このモデルからの結果を
図47に示す。PD-L1x CD47を10、30、及び100mg/kgの用量で繰り返し投与した後、赤血球数は正常範囲を有意に下回ることはなかった。
【0217】
実施例39:PDL1-G1AAA-IL15-T2Aのマウス交差反応代用物によるcDC1の刺激
MC38腫瘍細胞を、C57BL/6マウスに移植し、約100mM
3まで増殖させた。マウスは、生理食塩水、非標的IL-15 融合タンパク質、及びPD-PDL1-G1AAA-IL15-T2Aのマウス交差反応性代用物で処置した。腫瘍流出リンパ節を収集し、抗原提示細胞をFACSで分析した。その結果を
図48に示す。PD-L1x IL-15 代用物分子は、従来の樹状細胞 1(cDC1)のより高いパーセンテージを誘導し、抗原提示細胞の刺激による抗腫瘍効果の二次メカニズムが示唆されている。
【0218】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に示され、説明されたが、そのような実施形態が例としてのみ提供されることは、当業者には明らかであろう。当業者であれば、本発明から逸脱することなく、数多くの変形、変更、及び置換を見出すであろう。本明細書に記載する本発明の実施形態に対する様々な代替手段が、本発明の実施において採用され得ることを理解すべきである。以下の特許請求の範囲が本発明の範囲を定義すること、これらの特許請求の範囲内の方法及び構造、ならびにそれらの均等物が、それにより包含されることが意図される。
【配列表】
【国際調査報告】