(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】反射偏光子及びそれを含むディスプレイシステム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/042 20060101AFI20231023BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20231023BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20231023BHJP
G06T 1/00 20060101ALI20231023BHJP
G06V 40/13 20220101ALI20231023BHJP
A61B 5/1172 20160101ALI20231023BHJP
【FI】
G06F3/042 470
G02B5/30
G02B5/22
G06T1/00 420C
G06V40/13
A61B5/1172
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522761
(86)(22)【出願日】2021-09-10
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 IB2021058253
(87)【国際公開番号】W WO2022079507
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ストバー,カール エー.
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ロバート ディー.
(72)【発明者】
【氏名】アチャリャ,バラト アール.
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
4C038
5B047
【Fターム(参考)】
2H148CA04
2H148CA14
2H148CA19
2H149AA02
2H149AB05
2H149BA04
2H149FA01W
2H149FD09
2H149FD14
4C038FF01
4C038FG01
5B047AA25
5B047AB02
5B047BB04
5B047BC04
5B047BC07
(57)【要約】
反射偏光子は、少なくとも約450nm~約900nmに及ぶ第1の波長範囲と少なくとも約1100nm~約1300nmに及ぶ第2の波長範囲とを分離する帯域端を有する第1の偏光状態に対する透過率を有する。第1の偏光状態に対して、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約10%未満の平均透過率を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均透過率を有し、第2の偏光状態に対して、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約40%超の平均透過率を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均透過率を有する。ディスプレイシステムは、反射偏光子と、波長W1を有する赤外光を放射するように構成された赤外光源と、を含む。帯域端は、帯域端波長W2>W1を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイシステムに適用されたユーザの指を感知するためのディスプレイシステムであって、
前記ユーザが見るための画像を生成するように構成されたディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネルに近接して配置された前記ユーザの前記指を感知するためのセンサと、
前記ユーザの前記指に向けて波長W1を有する赤外光を放射するように構成された赤外光源であって、前記センサが、前記指によって反射された前記赤外光の少なくとも一部分を受光及び検出するように構成されている、赤外光源と、
前記ディスプレイパネルと前記センサとの間に配置された反射偏光子であって、実質的に垂直な入射光に対して、
第1の偏光状態に対して、前記反射偏光子の光透過率が、第1の波長範囲と第2の波長範囲とを分離する第1の帯域端を含み、前記第1の波長範囲が少なくとも約450nm~約900nmに及び、前記第2の波長範囲が少なくとも約1100nm~約1300nmに及び、前記第1の帯域端が、前記第1の帯域端に沿った約50%の光透過率に対応する帯域端波長W2を有し、前記反射偏光子が、前記第1の波長範囲内において約10%未満の平均光透過率を有し、前記第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有し、
前記第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態に対して、前記反射偏光子が、前記第1の波長範囲内において約40%超の平均光透過率を有し、前記第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有し、
W2>W1である、反射偏光子と、を備える、ディスプレイシステム。
【請求項2】
前記センサが、前記指から反射され、次いで、約40度超の入射角で前記反射偏光子に入射する光を受光するように配置されている、請求項1に記載のディスプレイシステム。
【請求項3】
W2>960nmかつW1<950nmである、請求項1又は2に記載のディスプレイシステム。
【請求項4】
前記第2の偏光状態に対して、かつ前記第2の偏光状態に平行な入射平面に対して、かつ少なくとも約450nm~約650nmに及ぶ波長範囲に対して、前記反射偏光子が、より小さい入射角で入射する光に対してより大きい平均光透過率を有し、より大きい入射角で入射する光に対してより小さい平均光透過率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項5】
前記より大きい平均光透過率と前記より小さい平均光透過率との間の差が約20%超であり、前記より小さい入射角が約25度未満であり、前記より大きい入射角が約40度~約70度の範囲内にある、請求項4に記載のディスプレイシステム。
【請求項6】
実質的に垂直な入射光に対して、かつ前記第2の偏光状態に対して、前記反射偏光子が、約425nm~約650nmに及ぶ第3の波長範囲において平均光透過率T1を有し、
前記第2の偏光状態に対して、かつ前記第2の偏光状態に平行な入射平面において約60度の入射角で前記反射偏光子に入射する光に対して、前記反射偏光子の前記光透過率が、少なくとも約850nm~約1100nmに及ぶ第4の波長範囲から前記第3の波長範囲を分離する第2の帯域端を含み、前記第2の帯域端に対し前記光透過率が約20%から約80%まで増加する波長範囲に少なくともわたって前記光透過率を波長に相関させる最良の線形フィットが、約3%/nm超の勾配及び約0.9超のr二乗値を有し、前記第3の波長範囲内における前記光透過率に対する最良の二次多項式フィットが、負の二次係数及び約0.9超のr二乗値を有し、前記反射偏光子が、前記第3の波長範囲内において約15%~約35%の平均光透過率T2を有し、前記第4の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有し、T1-T2≧10%である、請求項1~5のいずれか一項に記載のディスプレイシステム。
【請求項7】
ディスプレイシステムに適用されたユーザの指を感知するためのディスプレイシステムであって、
前記ユーザが見るための画像を生成するように構成されたディスプレイパネルと、
前記ディスプレイパネルに近接して配置された前記ユーザの前記指を感知するためのセンサと、
前記ユーザの前記指に向けて975nm未満である波長W1を有する赤外光を放射するように構成された赤外光源であって、前記センサが、前記指によって反射された前記赤外光の少なくとも一部分を受光及び検出するように構成されている、赤外光源と、
前記ディスプレイパネルと前記センサとの間に配置された反射偏光子であって、実質的に垂直な入射光に対して、
第1の偏光状態に対して、前記反射偏光子の光透過率が、第1の波長範囲と第2の波長範囲とを分離する第1の帯域端を含み、前記第1の波長範囲が少なくとも約450nm~約900nmに及び、前記第2の波長範囲が少なくとも約1100nm~約1300nmに及び、前記反射偏光子が、前記第1の波長範囲内において約10%未満の平均光透過率を有し、前記第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有し、
前記第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態に対して、前記反射偏光子が、前記第1の波長範囲内において約40%超の平均光透過率を有し、前記第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する、反射偏光子と、を備え、
前記反射偏光子が、実質的に白色の入射光に対して、かつ前記第2の偏光状態に対して、前記入射光の入射角が前記第2の偏光状態に平行な入射平面及び前記第2の偏光状態に直交する入射平面の各々において0度から約60度まで変化するときに、前記反射偏光子を透過した光と前記入射光との間の色の最大差がCIE 1931 xy色空間上で約0.07以下であるように構成されている、ディスプレイシステム。
【請求項8】
前記第1の帯域端が、前記第1の帯域端に沿った約50%の光透過率に対応する帯域端波長W2を有し、W2>W1である、請求項7に記載のディスプレイシステム。
【請求項9】
合計で少なくとも10を数える複数の交互ポリマー層を含む反射偏光子であって、各ポリマー層が約500nm未満の平均厚さを有し、
実質的に垂直に入射する光に対して、
第1の偏光状態に対して、前記反射偏光子が、約425nm~約650nmに及ぶ第1の波長範囲内において約5%未満の平均光透過率を有し、前記第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態に対して、前記反射偏光子が、前記第1の波長範囲内において約40%超の平均光透過率T1を有し、約60度の入射角で前記反射偏光子に入射する光に対して、
前記第1の偏光状態に対して、かつ前記第1の偏光状態に平行な入射平面に対して、前記反射偏光子が、前記第1の波長範囲内において約5%未満の平均光透過率を有し、
前記第2の偏光状態に対して、かつ前記第2の偏光状態に平行な入射平面に対して、前記反射偏光子の光透過率が、前記第1の波長範囲と少なくとも約850nm~約1100nmに及ぶ第2の波長範囲とを分離する第1の帯域端を含み、前記第1の帯域端に対し前記光透過率が約20%から約80%まで増加する波長範囲に少なくともわたって前記光透過率を波長に相関させる最良の線形フィットが、約3%/nm超の勾配及び約0.9超のr二乗値を有し、前記第1の波長範囲における前記光透過率に対する最良の二次多項式フィットが、負の二次係数及び約0.9超のr二乗値を有し、前記反射偏光子が、前記第1の波長範囲内において約15%~約35%の平均光透過率T2を有し、前記第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有し、T1-T2≧10%である、反射偏光子。
【請求項10】
前記第1の帯域端が、前記第1の帯域端に沿った約50%の光透過率に対応する第1の帯域端波長を有し、前記第1の帯域端波長が少なくとも約700nmである、請求項9に記載の反射偏光子。
【請求項11】
前記第2の偏光状態に対して、かつ前記第2の偏光状態に直交する入射平面において約60度の入射角で前記反射偏光子に入射する光に対して、前記反射偏光子が、前記第1の波長範囲内において約15%~約35%の平均光透過率T3を有し、かつ前記第2の波長範囲内において約60%超の平均光透過率を有する、請求項9又は10に記載の反射偏光子。
【請求項12】
|T3-T2|≦5%である、請求項11に記載の反射偏光子。
【請求項13】
実質的に垂直な入射光に対して、かつ前記第1の偏光状態に対して、前記反射偏光子の前記光透過率が、第3の波長範囲と第4の波長範囲とを分離する第2の帯域端を含み、前記第3の波長範囲が少なくとも約450nm~約900nmに及び、前記第4の波長範囲が少なくとも約1100nm~約1300nmに及び、前記反射偏光子が、前記第3の波長範囲内において約5%未満の平均光透過率を有し、前記第4の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する、請求項9~12のいずれか一項に記載の反射偏光子。
【請求項14】
前記第2の帯域端が、前記第2の帯域端に沿った約50%の光透過率に対応する第2の帯域端波長を有し、前記第2の帯域端波長が約925nm~約1050nmの範囲内にある、請求項13に記載の反射偏光子。
【請求項15】
前記第2の帯域端に対し前記光透過率が約10%から約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって前記光透過率を波長に相関させる最良の線形フィットが、約2%/nm超の勾配及び約0.9超のr二乗値を有する、請求項13又は14に記載の反射偏光子。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
液晶ディスプレイシステムなどのディスプレイシステムは、反射偏光子を含み得る。反射偏光子は、コリメート反射偏光子であり得る。
【0002】
ディスプレイシステムは、指紋検出用の赤外光源及びセンサを含み得る。
【発明の概要】
【0003】
本説明は、概して、反射偏光子及びディスプレイシステムに関する。反射偏光子は、斜めの入射光に対してよりも垂直な入射光に対して高い透過率を有するコリメート反射偏光子であり得る。ディスプレイシステムは、反射偏光子と、ディスプレイパネルと、赤外光源とを含み得る。反射偏光子は、赤外光源からの赤外光の高透過率を可能にしながら、製造ばらつきに対してロバスト性である、視野角による色ずれ(カラーシフト)の低さを提供するように構成され得る。
【0004】
本明細書のいくつかの態様によれば、ディスプレイシステムに適用されたユーザの指を感知するためのディスプレイシステムが提供される。ディスプレイシステムは、ユーザが見るための画像を生成するように構成されたディスプレイパネルと、ディスプレイパネルに近接して配置されたユーザの指を感知するためのセンサと、ユーザの指に向けて波長W1を有する赤外光を放射するように構成された赤外光源と、ディスプレイパネルとセンサとの間に配置された反射偏光子と、を含む。センサは、指によって反射された赤外光の少なくとも一部分を受光及び検出するように構成されている。実質的に垂直な入射光に対して、かつ第1の偏光状態に対して、反射偏光子の光透過率は、第1の波長範囲と第2の波長範囲とを分離する第1の帯域端を含み、第1の波長範囲は少なくとも約450nm~約900nmに及び、第2の波長範囲は少なくとも約1100nm~約1300nmに及ぶ。実質的に垂直な入射光に対して、かつ第1の偏光状態に対して、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約10%未満の平均光透過率を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する。実質的に垂直な入射光に対して、かつ第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態に対して、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約40%超の平均光透過率を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、第1の帯域端は、第1の帯域端に沿った約50%の光透過率に対応する帯域端波長W2を有し、W2>W1である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、W1<975nmであり、反射偏光子は、実質的に白色の入射光に対して、かつ第2の偏光状態に対して、入射光の入射角が第2の偏光状態に平行な入射平面及び第2の偏光状態に直交する入射平面の各々において0度から約60度まで変化するときに、反射偏光子を透過した光と入射光との間の色の最大差がCIE 1931 xy色空間上で約0.07以下であるように構成される。
【0005】
本明細書のいくつかの態様によれば、合計で少なくとも10を数える複数の交互ポリマー層を含む反射偏光子であって、各ポリマー層が約500nm未満の平均厚さを有する、反射偏光子が提供される。実質的に垂直な入射光に対して、かつ第1の偏光状態に対して、反射偏光子は、約425nm~約650nmに及ぶ第1の波長範囲内において約5%未満の平均光透過率を有する。実質的に垂直な入射光に対して、かつ第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態に対して、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約40%超の平均光透過率T1を有する。約60度の入射角で反射偏光子に入射する光に対して、かつ第1の偏光状態及び第1の偏光状態に平行な入射平面に対して、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約5%未満の平均光透過率を有する。約60度の入射角で反射偏光子に入射する光に対して、かつ第2の偏光状態及び第2の偏光状態に平行な入射平面に対して、反射偏光子の光透過率は、第1の波長範囲と少なくとも約850nm~約1100nmに及ぶ第2の波長範囲とを分離する第1の帯域端を有し、第1の帯域端に対し光透過率が約20%から約80%まで増加する波長範囲に少なくともわたって光透過率を波長に相関させる最良の線形フィットは、約3%/nm超の勾配及び約0.9超のr二乗値を有し、第1の波長範囲における光透過率に対する最良の二次多項式フィットは、負の二次係数及び約0.9超のr二乗値を有する。約60度の入射角で反射偏光子に入射する光に対して、かつ第2の偏光状態及び第2の偏光状態に平行な入射平面に対して、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約15%~約35%の平均光透過率T2を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する。T1-T2≧10%である。
【0006】
これら及び他の態様は、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、いかなる場合も、この簡潔な概要は、特許請求の範囲の主題を限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】例示的なディスプレイシステムの概略断面図である。
【
図1B】例示的なディスプレイシステムの概略断面図である。
【
図3】例示的な光学フィルタを通る透過率対波長の概略プロットである。
【
図4】赤外光源からの発光対波長の概略プロットである。
【
図5A】例示的な拡張型照明源の概略断面図である。
【
図5B】例示的な拡張型照明源の概略断面図である。
【
図7】例示的な反射偏光子の層厚さプロファイルを示す。
【
図9】様々な偏光状態及び入射角に対する、例示的な反射偏光子の透過率のプロットである。
【
図10】20度及び60度の入射角に対する、例示的な反射偏光子の透過率のプロットである。
【
図11】60度の入射角に対する、例示的な反射偏光子の帯域端のプロットである。
【
図12】垂直な入射光に対する、例示的な反射偏光子の帯域端のプロットである。
【
図13】60度の入射角に対する、例示的な反射偏光子の透過率のプロットである。
【
図14】CIE xy色空間における入射角による色ずれを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付図面が参照される。図面は、必ずしも縮尺どおりではない。他の実施形態が想到され、本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく実施可能である点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されない。
【0009】
本明細書のいくつかの実施形態によれば、ディスプレイシステムは、ディスプレイシステムに適用されたユーザの指を感知するため(例えば、指紋を検出するため)にディスプレイシステムにおいて使用される赤外光の波長よりも大きい帯域端波長を有する反射偏光子を含む。指センサを備えたディスプレイシステムにおいて使用される反射偏光子は、従来、指感知のために使用される赤外光の波長を下回る帯域端を有するように選択されてきた。しかしながら、これは、帯域端をフィルムのいくつかの領域に対して十分に低い波長にシフトさせて色ずれに大きく影響を与える製造ばらつきにより、高い視野角(例えば、約60度超)において望ましくない色ずれを引き起こす可能性がある。更に、赤外光の波長を下回る帯域端を有することにより、たとえ製造ばらつきがない場合であっても、非常に高い視野角(例えば、約75度以上)において望ましくない色ずれをもたらす可能性がある。帯域端をより高い波長に移動させることは、望ましくない色ずれをもたらすフィルムの領域を低減又は排除することができるが、従来のディスプレイシステムにおける赤外光の透過の低減をもたらす。本明細書のいくつかの実施形態によれば、ディスプレイシステムは、赤外光が斜めの入射角で反射偏光子に入射するように構成することができ、その結果、反射偏光子の帯域端が斜めの入射角で赤外波長未満にシフトする。これにより、たとえ製造ばらつきが生じた場合であっても、及び/又は非常に高い視野角に対しても、反射偏光子を通る赤外光の透過を実質的に低減することなく、視野角による色ずれを小さくすることが可能になる。更に、いくつかの実施形態によれば、反射偏光子は、斜めの入射光に対して、視野角による色ずれの更なる低減をもたらす形状を有する透過スペクトルを有する。
【0010】
図1A~
図1Bは、いくつかの実施形態による、ディスプレイシステム1000、1000’に適用されたユーザ190の指180を感知するためのディスプレイシステム1000、1000’の概略断面図である。ディスプレイシステム1000、1000’は、ユーザ190が見るための画像112を生成するように構成されたディスプレイパネル110と、ディスプレイパネル110に近接して配置されたユーザ190の指180を感知するためのセンサ120と、ユーザ190の指180に向けて波長W1(例えば、
図3及び
図9を参照)を有する赤外光127を放射するように構成された赤外光源125であって、センサ120が指180によって反射された赤外光127の少なくとも一部分を受光及び検出するように構成されている、赤外光源125と、反射偏光子200が本明細書の他の箇所に記載された透過率特性のいずれかを有するように、ディスプレイパネル110とセンサ120との間に配置された反射偏光子200と、を備える。例えば、いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光に対して、第1の偏光状態に対して、反射偏光子の光透過率は、第1の波長範囲と第2の波長範囲とを分離する第1の帯域端を有し、第1の波長範囲は少なくとも約450nm~約900nmに及び、第2の波長範囲は少なくとも約1100nm~約1300nmに及び、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約10%未満の平均光透過率を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有し、第1の偏光状態に直交する第2の偏光状態に対して、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約40%超の平均光透過率を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光に対して、かつ第1の偏光状態に対して、反射偏光子200は、第1の波長範囲と第2の波長範囲とを分離する第1の帯域端を有し、かつ第1の帯域端に沿った約50%の光透過率に対応する帯域端波長W2を有する。いくつかの実施形態では、反射偏光子200は、実質的に白色の入射光に対して、かつ第2の偏光状態に対して、入射光の入射角(表面法線に対する角度)が第2の偏光状態に平行な入射平面(光伝搬方向及び表面法線によって画定される平面)及び第2の偏光状態に直交する入射平面の各々において0度から約60度まで変化するときに、反射偏光子を透過した光と入射光との間の色の最大差がCIE 1931 xy色空間上で約0.07以下であるように構成される。いくつかの実施形態では、W2>W1である。
【0011】
いくつかの実施形態では、赤外光127は、最初に、約40度超の(例えば、約40度~約80度又は約45度~約70度の範囲内の)入射角θ1で反射偏光子に入射する。いくつかの実施形態では、センサ120は、指から反射され、次いで約40度超の(例えば、約40度~約80度又は約45度~約70度の範囲内の)入射角θ2で反射偏光子に入射する光を受光するように配置される。ディスプレイシステム1000に対して、赤外光127は、反射偏光子200を透過し、指180から反射され、反射偏光子200を透過して戻り、次いでセンサ120によって受光される。ディスプレイシステム1000’に対して、赤外光127は、最初に反射偏光子200を透過することなく指180まで透過し、次いで指180から反射され、反射偏光子200を透過し、次いでセンサ120によって受光される。この場合、赤外光127は最初に、入射角θ2で反射偏光子に入射する。いくつかの実施形態では、ディスプレイシステムは、カバーガラス111を含み、ディスプレイパネル110は、カバーガラス111と反射偏光子200との間に配置される。
【0012】
図2は、いくつかの実施形態によるセンサ120の概略断面図である。センサ120は、波長W1を感知する赤外センサであり得る。センサ120は、センサ120’を含み、波長選択性光学フィルタ122及び/又は角度選択性光学フィルタ126を更に含み得る。代替的に、光学フィルタ122及び/又は126は、センサ上に又はセンサに近接して配置された別個の要素であると考えられ得る。光学フィルタ122は、光学フィルタ126とセンサ120’との間に配置されてもよく、又は光学フィルタ126は、光学フィルタ122とセンサ120’との間に配置されてもよい。任意選択的に、光学フィルタ126及び122の一方又は両方を省略してもよい。センサ120’は、例えば、フォトダイオードであってもよく、又はフォトダイオードを含んでもよい。いくつかの実施形態では、センサ120は、斜めの入射角でセンサに入射する光227を実質的に透過し、かつセンサに垂直に入射する光229を実質的に遮断するように適合された角度選択性光学フィルタ126を含む。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、センサ120は、波長W1を実質的に透過し、かつW1よりも100nm超大きい可視波長及び/又は近赤外波長を実質的に遮断する波長選択性光学フィルタ122を含む。角度選択性光学フィルタ126は、マイクロレンズのアレイと、その中にスルーホール(例えば、ピンホール)を有する光学的に不透明なマスク層とを含むことができ、スルーホールはマイクロレンズと1対1の対応関係にあり、光学フィルタ126が主に斜めの入射光を透過するように、マイクロレンズに対して(マスク層に沿って)オフセットされる。そのような光学フィルタは、当該技術分野において既知であり、例えば、国際公開第2020/035768号(Yangら)に記載されている。波長選択性光学フィルタ122は、染料及び/若しくは顔料を有する層を含んでもよく、並びに/又は干渉フィルタを含んでもよい。
【0013】
図3は、いくつかの実施形態による、光学フィルタ122を通る透過率の概略プロットである。いくつかの実施形態では、光学フィルタ122は、約100nm未満、又は約80nm未満の半値全幅124を有する通過帯域123を含む。いくつかの実施形態では、光学フィルタ122は、波長W1を実質的に透過し、波長W2を実質的に遮断する。
【0014】
図4は、波長に対する、赤外光源125からの発光161の概略プロットである。発光161は、ピーク発光波長163においてピーク162を有する。赤外光源によって放射される光の波長W1は、ピーク発光波長163であり得る。いくつかの実施形態では、発光161は、約20nm未満、又は約10nm未満、又は約7nm未満の半値全幅を有する。いくつかの実施形態では、赤外光源125は、例えばレーザダイオードである。いくつかの実施形態では、赤外光源125は、近赤外発光ダイオードである。
【0015】
いくつかの実施形態では、ディスプレイパネル110は、液晶ディスプレイパネルである。そのようなディスプレイパネルは、典型的には、ディスプレイパネルに光を提供するために拡張型照明源(例えば、バックライト)を利用する。いくつかの実施形態では、ディスプレイシステム1000、1000’は、拡張型照明源114を含み、反射偏光子200は、拡張型照明源114とディスプレイパネル110との間に配置される。いくつかの実施形態では、反射偏光子200は、コリメート反射偏光子である。そのような偏光子は、光が再利用されるように、より大きい入射角を有する光を拡張型照明源114に向けて反射して戻すことによって、コリメート効果を提供することができる。液晶ディスプレイ(LCD)は、ディスプレイの軸上輝度を向上させるために輝度向上プリズムフィルム(典型的には交差プリズムフィルム)を含むことが多い。場合によっては、そのようなフィルムは、コリメート反射偏光子が含まれるときには省略することができる。ディスプレイシステム1000、1000’のいくつかの実施形態では、ディスプレイパネル110と拡張型照明源114の背面反射体(例えば、
図5A~
図5Bに示されている反射体117)との間に配置された輝度強化プリズムフィルムは存在しない。
【0016】
図5A~
図5Bはそれぞれ、拡張型照明源214及び214’の概略断面図であり、そのいずれも、いくつかの実施形態による拡張型照明源114に対応することができる。いくつかの実施形態では、拡張型照明源214は、導光体113と、少なくとも1つの光源119と、反射体117を含み、導光体113は、反射体117と反射偏光子200との間に配置される。少なくとも1つの光源119は、導光体113の端部(単数又は複数)に沿って配置された複数の光源(例えば、発光ダイオード)であってもよい。いくつかの実施形態では、拡張型照明源214’は、反射体117と、反射体117に隣接する光拡散体182とを含み、光拡散体182及び反射体117は、長さ及び幅が互いに実質的に同一の広がりを有し、それらの間に光学キャビティ188を画定し、少なくとも1つの光源119がその光学キャビティ内に配置される。
【0017】
各層又は要素の長さ及び幅の少なくとも約60%が他の各層又は要素の長さ及び幅の少なくとも約60%と同一の広がりを有する場合、層又は要素は、長さ及び幅において互いに実質的に同一の広がりを有するものとして説明され得る。いくつかの実施形態では、層又は要素が長さ及び幅において互いに実質的に同一の広がりを有するとして説明される場合、各層又は要素の少なくとも約80%又は少なくとも約90%が、長さと幅において互いに他の各層又は要素の長さ及び幅の少なくとも約80%又は少なくとも約90%と同一の広がりを有する。
【0018】
図6は、いくつかの実施形態による、合計で少なくとも10又は合計で少なくとも100を数え得る複数の交互ポリマー層141、142を含む反射偏光子200の概略断面図であり、各ポリマー層141、142は約500nm未満の平均厚さを有する。反射偏光子は、約500nm超、又は約1マイクロメートル超、又は約2マイクロメートル超の厚さを有する他の層(例えば、スキン層(単数又は複数)又は保護境界層(単数又は複数))を含み得る。層141、142の数は、
図6で概略的に示されているものを大幅に超えてもよい。いくつかの実施形態では、複数の交互ポリマー層141、142の総数は、500~1200の範囲内にある。反射偏光子200の透過スペクトルは、実質的に垂直な入射光150に対して、直交する第1の(例えば、遮断)偏光状態151及び第2の(例えば、通過)偏光状態152に対してそれぞれ指定され得る。透過スペクトルは、代替的に又は追加的に、本明細書の他の箇所で更に説明されるように、斜めの入射角におけるp偏光(入射平面で偏光される)及び/又はs偏光(入射平面に直交するように偏光される)光に対して指定され得る。
【0019】
当該技術分野において既知であるように、交互ポリマー層を含む、反射偏光子フィルムなどの多層光学フィルムを使用して、層厚及び屈折率差を好適に選択することにより、所望の波長範囲で所望の反射率及び透過率を提供することができる。多層光学フィルム及び多層光学フィルムを作製する方法は、例えば、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)、同第6,179,948号(Merrillら)、同第6,783,349号(Neavinら)、同第6,967,778号(Wheatleyら)、及び同第9,162,406号(Neavinら)に記載されている。シャープな帯域端を有する反射偏光子は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第6,967,778号(Wheatleyら)に記載されている。いくつかの実施形態では、反射偏光子200は、コリメート反射偏光子である。コリメート反射偏光子は、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第9,441,809号(Nevittら)及び同第9,551,818号(Weberら)に記載されている。本明細書の反射偏光子に好適な材料としては、これらの参考文献に記載されているポリマーが挙げられる。例えば、反射偏光子には、交互の実質的に等方性の低屈折率層(例えば、アモルファスポリエステル)及び配向された高屈折率層(例えば、複屈折ナフタレン系ポリエステル)が含まれ得る。
【0020】
図7は、例示的な反射偏光子の層厚さプロファイルのプロットである。層厚さプロファイルは、交互ポリマー層141、142が反射偏光子の一方の側から反対の側に順次番号付けされたときの、層厚さ対層番号を指す。より狭帯域及びより広帯域の反射偏光子の層厚さプロファイルが示されている。より狭帯域の反射偏光子は、合計で650の交互ポリマー層141、142を含み、実質的に垂直な入射光150に対して、第1の(例えば、遮断)偏光状態151に対して、901nmの帯域端波長を有していた。より広帯域の反射偏光子は、合計で850の交互ポリマー層141、142を含み、実質的に垂直な入射光150に対して、第1の(例えば、遮断)偏光状態151に対して、986nmの帯域端波長を有していた。
【0021】
いくつかの実施形態では、層厚さプロファイルは、可視波長範囲内又は可視近赤外波長範囲内において下方に凹状の部分と、近赤外範囲から可視波長範囲又は可視近赤外波長範囲を分離するシャープな帯域端とを含む、透過スペクトルを提供するように選択される。いくつかの実施形態では、層厚さプロファイルは、反射偏光子の一方の側に隣接する最も薄いポリマー層から、反射偏光子の反対の側に隣接する最も厚いポリマー層まで実質的に単調に増加し、層厚さプロファイルは、
図7に示されるように概ね下方に凹状の形状を有する。
【0022】
図8A~
図8Bは、異なる入射平面において反射偏光子200に入射する光の概略図である。光150は、反射偏光子200に実質的に垂直に入射し、光159、159’は、入射角θで反射偏光子200に入射する。
図8Aでは、光159は、x-z平面に平行な入射平面において反射偏光子200に入射し、
図8Bでは、光159’は、y-z平面に平行な入射平面において反射偏光子200に入射している。第1の偏光状態151は、反射偏光子200の平面(x-y平面)上に投影された電界が遮断軸(x軸)に沿っている偏光状態として説明することができ、第2の偏光状態152は、反射偏光子200の平面(x-y平面)上に投影された電界が通過軸(y軸)に沿っている偏光状態として説明することができる。x-z入射平面(
図8A)において、第1の偏光状態151はp偏光状態であり、第2の偏光状態152はs偏光状態である。y-z入射平面(
図8B)において、第1の偏光状態151はs偏光状態であり、第2の偏光状態152はp偏光状態である。
【0023】
図9は、様々な偏光状態及び入射角に対する例示的な反射偏光子の透過率のプロットである。T0遮断及びT0通過は、それぞれ、第1の偏光状態(151)及び第2の偏光状態(152)を有する垂直な入射光に対する透過率を示す。Tp60遮断及びTs60遮断は、第1の偏光状態151に対してそれぞれ平行及び直交する入射平面に対して、第1の偏光状態151において60度の入射角で反射偏光子に入射する光の透過率を示す。Tp60通過及びTs60通過は、第2の偏光状態152に対してそれぞれ平行及び直交する入射平面に対して、第2の偏光状態152において60度の入射角で反射偏光子に入射する光の透過率を示す。
図9の反射偏光子には、より広帯域の場合に対して
図7に示される層厚さプロファイルを使用した。より狭帯域の場合に対して
図7に示される層厚さプロファイルを使用する反射偏光子の透過スペクトルは、同様に現れるが、帯域端がより低い波長にシフトされている。
図9に示される透過スペクトルは、従来の光学モデリング技術を使用して計算された。交互層141、142は、アモルファスポリエステル(グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETg))の低屈折率層、及び配向されたポリエチレンナフタレート(PEN)の高屈折率層を含むものとしてモデル化された。低屈折率層は、633nmにおいて1.563の屈折率を有する等方性としてモデル化され、高屈折率層は、633nmにおいてx方向に1.804、y方向に1.615、及びz方向に1.51の屈折率を有するものとしてモデル化された。反射偏光子は、反射偏光子の各側上に500nm厚のPETgスキン層を含むものとしてモデル化された。
【0024】
図9の光透過率210は、帯域端212及び222を含む。帯域端212及び222のいずれか一方は、第1の帯域端と呼ばれることがあり、帯域端212及び222の他の一方は、第2の帯域端と呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、第1の偏光状態151に対して、反射偏光子200の光透過率210は、第1の波長範囲と第2の波長範囲とを分離する第1の帯域端212を有し、第1の波長範囲は少なくとも約450nm~約900nmに及び、第2の波長範囲は少なくとも約1100nm~約1300nmに及ぶ。第1の帯域端212は、第1の帯域端212に沿った約50%の光透過率に対応する帯域端波長W2を有する。実質的に垂直な入射光150に対して、第1の偏光状態151に対して、反射偏光子200は、第1の波長範囲内において約10%未満の平均光透過率を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する。実質的に垂直な入射光150に対して、第1の偏光状態151に直交する第2の偏光状態152に対して、反射偏光子は、第1の波長範囲内において約40%超の平均光透過率を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、かつ第2の偏光状態152に対して、反射偏光子は、約450nm~約650nmの波長範囲内において約50%~約70%の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、かつ第1の偏光状態151に対して、第1の波長範囲内における反射偏光子200の平均光透過率は、約5%未満、又は約3%未満、又は約2%未満である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、かつ第1の偏光状態151に対して、第2の波長範囲内における平均光透過率は、約85%超又は約90%超である。
【0025】
いくつかの実施形態では、第1の波長範囲は、少なくとも約450nm~約925nmに、又は約940nmに、又は約950nmに及ぶ。いくつかの実施形態では、第1の波長範囲は、少なくとも約425nm~約900nmに、又は約925nmに、又は約940nmに、又は約950nmに及ぶ。いくつかのそのような実施形態、又は他の実施形態では、第2の波長範囲は、少なくとも約1100nm~約1350nm、又は少なくとも約1050nm~約1350nmに及ぶ。
【0026】
赤外光源125によって放射される赤外光127の波長W1は、光学フィルタ122の通過帯域の半値全幅124として
図9に示されている。いくつかの実施形態では、W1<975nm、又はW1<960nm、又はW1<950nmである。いくつかの実施形態では、W2>W1である。いくつかの実施形態では、W2-W1>10nm、又はW2-W1>20nm、又はW2-W1>30nmである。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、W2>960nmかつW1<950nmである。
【0027】
図10は、p偏光状態かつ20度及び60度の入射角に対する、
図9の反射偏光子の透過率のプロットである。Tp20通過及びTp60通過はそれぞれ、第2の偏光状態152及び第2の偏光状態152に平行な入射平面に対して、20度及び60度の入射角で反射偏光子に入射する光の透過率を示す。いくつかの実施形態では、第2の偏光状態152及び第2の偏光状態152に平行な入射平面に対して、かつ少なくとも約450nm~約650nmに及ぶ波長範囲に対して、反射偏光子は、より小さい入射角(例えば、20度、又は10度、又は5度)で入射する光に対してより大きい平均光透過率Tpθ1を有し、より大きい入射角(例えば、40度、又は50度、又は60度、又は70度)で入射する光に対してより小さい平均光透過率Tpθ2を有する。いくつかの実施形態では、より大きい平均光透過率Tpθ1とより小さい平均光透過率Tpθ2との間の差は、約20%超又は約25%超であり、より小さい入射角は約25度未満であり、より大きい入射角は約40度~約70度の範囲内(例えば、約60度)である。いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、かつ第2の偏光状態152に対して、反射偏光子200は、約450nm~約650nmの第3の波長範囲内において約50%~約70%の平均光透過率を有する。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、第2の偏光状態152に対して、かつ第2の偏光状態152に平行な入射平面において約60度の入射角で反射偏光子に入射する光に対して、反射偏光子は、第3の波長範囲内において約15%~約35%の、又は約20%~約30%の範囲内の、平均光透過率を有する。
【0028】
いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、かつ第2の偏光状態152に対して、反射偏光子200は、約425nm~約650nmに及ぶ第3の波長範囲において平均光透過率T1を有し、第2の偏光状態152に対して、かつ第2の偏光状態152に平行な入射平面において約60度の入射角で反射偏光子に入射する光159’に対して、反射偏光子の光透過率210は、少なくとも約850nm~約1100nmに及ぶ第4の波長範囲から第3の波長範囲を分離する第2の帯域端222を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、光透過率210は、第3の波長範囲内において概ね下方に凹状の部分、及びシャープな帯域端(単数又は複数)を含む。そのような透過スペクトルは、視野角による低い色ずれをもたらすことが分かっている。
図11~
図12は、光透過率210の一部分のプロットであり、帯域端222及び212をそれぞれ示し、帯域端に対する最良の線形フィット224及び274をそれぞれ示している。
図13は、第2の偏光状態152、かつ60度の入射角で第2の偏光状態152に平行な入射平面において反射偏光子に入射する光に対する、光透過率210の別の部分のプロットである。いくつかの実施形態では、第2の帯域端222に対し光透過率が約20%から約80%まで増加する波長範囲に少なくともわたって光透過率210を波長に相関させる最良の線形フィット224は、約3%/nm超の勾配226及び約0.9超のr二乗値228を有する。いくつかの実施形態では、第3の波長範囲における光透過率210に対する最良の二次多項式フィット234は、負の二次係数235及び約0.9超のr二乗値238を有する。いくつかの実施形態では、第2の偏光状態152に対して、かつ第2の偏光状態152に平行な入射平面において約60度の入射角で反射偏光子に入射する光159’に対して、反射偏光子200は、第3の波長範囲内において約15%~約35%の平均光透過率T2を有し、第4の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有し、T1-T2≧10%である、又はT1-T2は本明細書の他の箇所に記載される範囲内であり得る。いくつかの実施形態では、勾配226は、約3.5%/nm超、又は約3.7%/nm超である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、r二乗値228は、約0.95超、又は約0.98超である。
【0030】
いくつかの実施形態では、反射偏光子200は、合計で少なくとも10を数える複数の交互ポリマー層141、142を含み、各ポリマー層は約500nm未満の平均厚さを有し、その結果、
実質的に垂直な入射光に対して、
第1の偏光状態151に対して、反射偏光子200は、約425nm~約650nmに及ぶ第1の波長範囲内において約5%未満の平均光透過率を有し、
第1の偏光状態151に直交する第2の偏光状態152に対して、反射偏光子200は、第1の波長範囲内において約40%超の平均光透過率T1を有し、
約60度の入射角で反射偏光子に入射する光に対して、
第1の偏光状態151に対して、かつ第1の偏光状態151に平行な入射平面(例えば、
図8Aを参照)に対して、反射偏光子200は、第1の波長範囲内において約5%未満の平均光透過率を有し、
第2の偏光状態152に対して、かつ第2の偏光状態152に平行な入射平面(例えば、
図8Bを参照)に対して、反射偏光子200の光透過率210は、第1の波長範囲と少なくとも約850nm~約1100nmに及ぶ第2の波長範囲とを分離する第1の帯域端222を有し、第1の帯域端に対し光透過率が約20%から約80%まで増加する波長範囲に少なくともわたって光透過率を波長に相関させる最良の線形フィット224は、約3%/nm超の勾配226及び約0.9超のr二乗値228を有し、第1の波長範囲における光透過率に対する最良の二次多項式フィット234は、負の二次係数235及び約0.9超のr二乗値238を有し、反射偏光子200は、第1の波長範囲内において約15%~約35%の平均光透過率T2を有し、第2の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、T1-T2≧10%である。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1の偏光状態151に対して、かつ第1の偏光状態151に直交する入射平面(例えば、y-z平面)において約60度の入射角で反射偏光子200に入射する光に対して、反射偏光子200は、第1の波長範囲内において約5%未満の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、第2の偏光状態152に対して、かつ第2の偏光状態152に直交する入射平面(例えば、x-y平面)において約60度の入射角で反射偏光子200に入射する光に対して、反射偏光子200は、第1の波長範囲内において約15%~約35%の平均光透過率T3を有し、第2の波長範囲内において約60%超の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、T2及びT3は各々、約20%~約30%の範囲内にある。いくつかの実施形態では、|T3-T2|≦8%又は|T3-T2|≦5%である。
【0032】
いくつかの実施形態では、T1は、約50%~約70%の範囲内にある。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、T1-T2≧15%、又はT1-T2≧20%、又はT1-T2≧25%である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、T1-T2≦60%、又はT1-T2≦50%、又はT1-T2≦40%である。
【0033】
いくつかの実施形態では、第1の帯域端222は、第1の帯域端222に沿った約50%の光透過率に対応する第1の帯域端波長W3を有し、第1の帯域端波長W3は、少なくとも約670nm、又は少なくとも約700nm、又は少なくとも約720nmである。
【0034】
いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光に対して、かつ第1の偏光状態151に対して、反射偏光子200は、第1の波長範囲内において約3%未満又は約2%未満の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、約60度の入射角で反射偏光子200に入射する光に対して、第1の偏光状態151かつ第1の偏光状態151に平行な入射平面に対して、反射偏光子200は、第1の波長範囲内において約3%未満、又は約2%未満の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、かつ第1の偏光状態に対して、反射偏光子200の光透過率210は、第3の波長範囲と第4の波長範囲とを分離する第2の帯域端212を有し、第3の波長範囲は少なくとも約450nm~約900nmに及び、第4の波長範囲は少なくとも約1100nm~約1300nmに及び、反射偏光子200は、第3の波長範囲内において約5%未満の平均光透過率を有し、第4の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、かつ第1の偏光状態に対して、反射偏光子200は、第3の波長範囲内において約3%未満又は約2%未満の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、かつ第1の偏光状態に対して、反射偏光子200は、第4の波長範囲内において約85%超又は約90%超の平均光透過率を有する。
【0035】
いくつかの実施形態では、第3の波長範囲は、少なくとも約450nm~約925nmに、又は約940nmに、又は約950nmに及ぶ。いくつかの実施形態では、第3の波長範囲は、少なくとも約425nm~約900nmに、又は約925nmに、又は約940nmに、又は約950nmに及ぶ。いくつかのそのような実施形態、又は他の実施形態では、第4の波長範囲は、少なくとも約1100nm~約1350nmに、又は少なくとも約1050nm~約1350nmに及ぶ。
【0036】
いくつかの実施形態では、実質的に垂直な入射光150に対して、かつ第2の偏光状態152に対して、反射偏光子は、第4の波長範囲内において約80%超の平均光透過率を有する。いくつかの実施形態では、第2の帯域端212は、第2の帯域端に沿った約50%の光透過率に対応する第2の帯域端波長W2を有し、第2の帯域端波長W2は約925nm~約1050nmの範囲内にある。いくつかの実施形態では、第2の帯域端212に対し光透過率が約10%から約70%まで増加する波長範囲に少なくともわたって光透過率を波長に相関させる最良の線形フィット274は、約2%/nm超の勾配276及び約0.9超のr二乗値278を有する。いくつかの実施形態では、第1の帯域端222に対する最良の線形フィット224の勾配226は、第2の帯域端212に対する最良の線形フィット274の勾配276よりも、少なくとも約0.5%/nm、又は少なくとも0.7%/nm、又は少なくとも1%/nmだけ大きい。いくつかの実施形態では、勾配276は、約2.2%/nm超、又は約2.3%/nm超である。いくつかのそのような実施形態では、又は他の実施形態では、r二乗値278は、約0.95超、又は約0.98超である。
【0037】
いくつかの実施形態では、最良の二次多項式フィット234は、正の一次係数236を有する。いくつかの実施形態では、最良の二次多項式フィット234は、約400nm~約550nm、又は約425nm~約500nmの波長W4において最大値239を有する。いくつかの実施形態では、r二乗値238は、約0.95超、又は約0.98超である。
【0038】
図14は、CIE(Commission Internationale de l’eclairage)1931 xy色空間上の概略プロットであり、反射偏光子200に入射する第2の偏光状態152における光に対する入射角θによる色ずれを示している。入射光は、点333によって表される実質的に白色の光であり得る。実質的に白色の光は、例えば、各々が0.29~0.35、又は0.3~0.34の範囲内のCIE 1931 xy座標を有し得る。実質的に白色の光は、例えば、それぞれ0.3127及び0.329のCIE 1931 x及びy座標を有する標準光源D65であり得る。色は、低いか又は0度の入射角における点333により近い点334から、高い入射角における点333からより遠い点335にシフトすることができる。いくつかの実施形態では、反射偏光子200は、実質的に白色の入射光(例えば、点333によって表されている)に対して、かつ第2の偏光状態152に対して、入射光の入射角θが第2の偏光状態152に平行な入射平面及び第2の偏光状態152に直交する入射平面の各々において0度から約60度まで変化するときに、反射偏光子を透過した光と入射光との間の色の最大差ΔがCIE 1931 xy色空間上で約0.07以下、又は約0.06以下、又は約0.05以下であるように構成されている。いくつかの実施形態では、反射偏光子200は、実質的に白色の入射光に対して、かつ第2の偏光状態152に対して、入射光の入射角θが第2の偏光状態152に平行な入射平面及び第2の偏光状態152に直交する入射平面の各々において0度から約75度まで変化するときに、反射偏光子200を透過した光と入射光との間の色の最大差ΔがCIE 1931 xy色空間上で約0.08以下、約0.07以下、又は約0.06以下、又は約0.05以下であるように構成されている。
【0039】
図9の透過スペクトルを有する反射偏光子に対して、標準光源D65光に対して、かつ第2の偏光状態152に対して、60度の入射角に対する入射光と反射偏光子を透過した光との間の計算された色の差Δは、第2の偏光状態152に平行な入射平面(p偏光)に対して0.0495、第2の偏光状態152に直交する入射平面(s偏光)に対して0.0203であった。
【0040】
低減された厚さ及びより低い波長にシフトされた帯域端をもたらし得る、製造ばらつきに対する低い色ずれのロバスト性を試験するために、より狭帯域及びより広帯域に対応する、
図7の層厚さプロファイルを有する反射偏光子に対する色ずれが計算され、5%又は10%だけ低減された厚さを有する反射偏光子に対する色ずれが計算された。入射光は、それぞれ0.3127及び0.329のCIE 1931 x座標及びy座標を与えるように選択された相対強度を有する、赤色、緑色及び青色発光ダイオードのスペクトルを有していた。CIE 1931 xy色空間における色ずれが、60度の入射角に対して、かつ第2の偏光状態152に対して、100%厚さの対応する反射偏光子に対して低減された厚さ(95%厚さ及び90%厚さ)の反射偏光子に対して計算された。より広帯域の反射偏光子に対して、色ずれは、95%厚さ及び90%厚さに対して、かつ第2の偏光状態152に平行及び直交する入射平面の各々に対して、0.044未満であった。より狭帯域の反射偏光子に対して、色ずれは、90%厚さに対してかつ第2の偏光状態152に直交する入射平面(s偏光)に対して、0.0924であり、90%厚さに対してかつ第2の偏光状態152に平行な入射平面(p偏光)に対して、0.1682であった。これらの大きい色ずれは主に、赤色へのシフトを示すCIE x座標における増加によるものであった。その結果は、より広帯域の反射偏光子が、より狭帯域の反射偏光子のそれよりも製造ばらつきに対してよりロバスト性である、低い色ずれを提供することを示している。
【0041】
本明細書で説明される最良の線形フィットは、当該技術分野において既知である線形最小二乗フィットであり得る。最良の多項式フィットは同様に、最小二乗フィットであり得る。そのようなフィットは、残差の二乗の合計を最小限に抑え、残差はデータとフィット曲線(線又は多項式)との差である。最小二乗分析により、決定係数と呼ばれることがあるr二乗値を決定することができる。
【0042】
「約(about)」などの用語は、これらが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者によって理解されよう。特徴部のサイズ、量、及び物理的特性を表す量に適用される「約」の使用が、本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者にとって別途明らかではない場合、「約」とは、特定の値の10パーセント以内を意味すると理解されよう。特定の値の約、ほぼとして与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、それが本明細書に使用及び記載されている文脈において当業者にとって明らかではない場合、約1の値を有する量とは、その量が0.9~1.1の値を有することを意味し、その値が1であり得ることを意味する。
【0043】
「実質的に(substantially)」などの用語は、それらが本明細書に使用及び記載されている文脈において、当業者によって理解されよう。本明細書に使用及び記載されている文脈において「実質的に垂直」の使用が当業者にとって明らかではない場合、「実質的に垂直」とは、垂直から20度以内を意味する。実質的に垂直として記載されている方向は、いくつかの実施形態では、垂直から10度以内、垂直から5度以内、又は垂直若しくは名目上垂直であってもよい。
【0044】
上記において参照された参照文献、特許、又は特許出願の全ては、それらの全体が参照により本明細書に一貫して組み込まれている。組み込まれた参照文献の一部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。
【0045】
図面中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図面中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。特定の実施形態を本明細書において例示し記述したが、図示及び記載した特定の実施形態は、本開示の範囲を逸脱することなく様々な代替及び/又は同等の実施により置き換え可能であることが、当業者には理解されるであろう。本出願は、本明細書で論じられた特定の実施形態のいずれの適応例、又は変形例、又は組み合わせも包含することが意図されている。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されるものとする。
【国際調査報告】