(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】COVID19治療のための医薬品
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20231023BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231023BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231023BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231023BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20231023BHJP
A61K 31/546 20060101ALI20231023BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20231023BHJP
A61K 38/12 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A61K31/496
A61P31/14
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/519
A61K31/546
A61K31/704
A61K38/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522772
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 US2021053914
(87)【国際公開番号】W WO2022081406
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518419057
【氏名又は名称】ナントセル,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブズコ,オレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】田中 志保
(72)【発明者】
【氏名】ニアジ,ケイヴァン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA22
4C084BA24
4C084MA02
4C084NA14
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB06
4C086CC04
4C086CC13
4C086CC15
4C086EA10
4C086MA03
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、COVID19に対する治療の方法に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
SARS-CoV-2ウイルス感染症の治療をそれを必要とする対象において行うための方法であって、ピペラシリン又はその塩、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその塩、及びセフォペラゾン又はその塩からなる群から選択される医薬物質を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記ピペラシリン又はその塩は、注射当たり約2g~約40gの粉末の量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその塩は、約5mg/kg~約50mg/kgの量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記セフォペラゾン又はその塩は、1日当たり約1g~約12gの量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
SARS-CoV-2ウイルス感染症の治療をそれを必要とする対象において行うための方法であって、シレンギチド又はその塩及びヘデラコシド又はその塩からなる群から選択される医薬物質を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項9】
前記シレンギチド又はその塩は、約30mg/体表面積1m
2~約2400mg/体表面積1m
2の量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ヘデラコシド又はその塩は、約35mg/kg~約50mg/kgの量で投与される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
SARS-CoV-2ウイルス感染症の治療をそれを必要とする対象において行うための方法であって、(R,S)-イボシデニブ又はその塩、エバセトラピブ又はその塩、イダサヌトリン又はその塩、及びレルゴリクス又はその塩からなる群から選択される医薬物質を含む有効量の医薬組成物を前記対象に投与することを含む方法。
【請求項14】
前記(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、1日当たり約200mg~約1200mgの量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記エバセトラピブ又はその塩は、1日当たり約30mg~約600mgの量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記イダサヌトリン又はその塩は、1日当たり約120~約300mgの量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記レルゴリクス又はその塩は、1日当たり約20~約360mgの量で投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月15日に提出された米国仮特許出願第63/092,321号明細書に対し、米国特許法第119条(e)の下で優先権の利益を主張する。米国仮特許出願第63/092,321号明細書の全開示は、参照によって本明細書において援用される。
【背景技術】
【0002】
コロナウイルス疾患2019(COVID19)は、新規な突発性急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)によって引き起こされる多臓器疾患である。ほんの数ヶ月で、COVID19は、高齢者及び既存の病気を有する人々にとって、かなり大きな健康上の脅威と認識され、その後、誰にとってもかなり大きな健康上の脅威として認識されるようになった。今のところ、COVID19についてわかっている治療法はない。世界中の医師ら、看護師ら、及び科学者らは、苦しんでいるCOVID19患者を楽にする、疾患症状の重症度を軽くする、及び致命的な転帰を予防するための治療を見つけようと、前例のない迅速な努力をしてきた。
【0003】
COVID19は、当初、呼吸器系に影響を及ぼすと認識されたが、人体におけるあらゆる器官を冒すかもしれない。SARS-CoV-2は、最初に上部呼吸器系を介して対象に感染すると考えられ、続くウイルス感染は、無症状である、軽度の症状を示す、又は重度の症状を示すことがある。軽度の症状は、発熱(>100.4°F)、咳、疲労、体の痛み、悪寒、のどの痛み、鼻水、うっ血、結膜炎、胃腸痛、腹痛、抑うつを含む神経学的症状(neurological)、四肢の刺痛、並びに新たな味覚異常及び嗅覚異常を含む。重度の症状及び合併症は、息切れ(肺炎)、高熱、重度の咳、発作、脳卒中、血栓、持続的な胸痛/胸部圧迫感、めまい、妄想、混乱、起きていることができない、急性呼吸窮迫症候群、急性腎障害、さらなる感染症(ウイルス、細菌、及び真菌)に罹りやすい、心臓の疾患、循環器系の疾患、敗血症、臓器不全を含む。最終的に、COVID19は、死因になることがある。回復した患者の大多数は、今でも、炎症性の肺、心疾患、慢性的な疲労、及び神経学的な問題を含む持続的な症状を、最初の感染から何ヶ月もの間(「ロングホーラー」)、最初は軽度の感染症であった患者でさえ、経験する。
【0004】
SARS-CoV-2は、長さがおよそ29.9kbのエンベロープ非分節プラス鎖RNAウイルスである。新たなウイルス複製、構築、宿主細胞応答抑制、及び最終的な細胞外放出に不可欠ないくつかの非構造タンパク質(nsp1~16)の他に、RNA配列の翻訳によってコードされる主な構造タンパク質に、スパイクタンパク質(S)、小エンベロープタンパク質(E)、膜糖タンパク質(M)、及びヌクレオカプシドタンパク質(N)がある。プロテアーゼMpro、すなわちnsp5は、ウイルスライフサイクルにおいて重要な役割を果たす。nsp5は、自己タンパク質分解し、活性プロテアーゼになり、活性nsp4~16のプロセシングを担う。加えて、nsp5は、宿主細胞免疫性タンパク質(NLRP12、TAB1)及び遺伝子発現調節因子(HDAC2、TRMT1)を切断する可能性がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、COVID19を治療するための方法を提供する。nsp5の活性を阻害することは、SARS-CoV-2感染及びCOVID19進行に対する武器の宝庫で攻撃できる、魅力的な標的である。本出願は、Mpro(nsp5)を標的にする化合物によりCOVID19を治療するための方法を含有する。
【0006】
一態様において、SARS-CoV-2ウイルス感染症の治療をそれを必要とする対象において行うための方法であって、ピペラシリン若しくはその塩、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素(WYE-132)若しくはその塩、又はセフォペラゾン若しくはその塩を含有する有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。
【0007】
一態様において、SARS-CoV-2ウイルス感染症の治療をそれを必要とする対象において行うための方法であって、シレンギチド若しくはその塩又はヘデラコシド若しくはその塩を含有する有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。
【0008】
一態様において、SARS-CoV-2ウイルス感染症の治療をそれを必要とする対象において行うための方法であって、(R,S)-イボシデニブ若しくはその塩、エバセトラピブ若しくはその塩、イダサヌトリン若しくはその塩、又はレルゴリクス若しくはその塩を含有する有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。
【0009】
実施形態において、SARS-CoV-2ウイルス感染又はその症状を治療する1つ以上の追加の化合物が、投与される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、M
pro、すなわちnsp5のプロテアーゼ活性の阻害剤として試験した化合物の表である。10μMでのM
pro(nsp5)に対する各化合物について観察された活性を示す。公表されたIC50値は、わかっている場合に、提供する。
【
図2】
図2は、試験した化合物ごとのM
pro、すなわちnsp5阻害活性パーセントを示す棒グラフである。FRET活性アッセイの条件は、Ma C,et al.Boceprevir,GC-376,and calpain inhibitors II,XII inhibit SARS-CoV-2 viral replication by targeting the viral main protease.Cell Research.(2020)0:1-15に基づく。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書を読み終えた後、種々の代替の実施形態及び代替の適用において本開示を実施する方法が当業者に明らかになる。しかしながら、本発明のすべての種々の実施形態が、本明細書において記載されるというわけではない。本明細書で提示される実施形態は一例として提示されるものにすぎず、限定するものではないことが理解される。このように、種々の代替の実施形態についてのこの詳細な説明は、本明細書において記載される本開示の範囲又は広さを限定するものと解釈されるべきではない。
【0012】
本発明の技術を開示し、説明する前に、下記に記載される態様が、特定の組成物、このような組成物を調製するための方法、又はその使用に限定されず、それ自体、もちろん変更されてもよいことが理解されたい。本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明するためだけのものであり、限定を意図するものではないこともまた理解されたい。
【0013】
詳細な説明は、読者の利便性のためだけに種々のセクションに分けられており、いかなるセクションにおいて見つけられる開示も、別のセクションにおける開示と組み合わせられていてもよい。表題又は副題は、読者の利便性のために本明細書において使用されてもよく、これらは、本開示の範囲に影響を与えることを意図するものではない。
【0014】
定義
特に定義されない限り、本明細書において使用される技術用語及び科学用語はすべて、本開示が属する当技術分野における当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書及び続く特許請求の範囲において、以下の意味を有するように定義されるものとする多くの用語が参照される。
【0015】
本明細書において使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記載するためだけのものであり、限定を意図するものではない。本明細書において使用されるように、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が他に明示しない限り、同様に複数形を含むことを意図する。
【0016】
「任意選択の」又は「任意選択で」は、続いて記載されるイベント又は状況が生じてもよい又は生じなくてもよいこと及び記載によって、イベント又は状況が生じる例及びイベント又は状況が生じない例が含まれることを意味する。
【0017】
用語「約」は、数値的な指定、例えば、温度、時間、量、濃度、及び範囲を含む同様の他のものの前に使用される場合、(+)若しくは(-)10%、5%、1%、又は任意のサブ範囲若しくはその間のサブ値(subvalue)で変動してもよい近似値を示す。好ましくは、用語「約」は、量に関して使用される場合、量が+/-10%変動してもよいことを意味する。
【0018】
「含むこと(Comprising)」又は「含む(comprises)」は、組成物及び方法が、列挙される要素を含むが、他のものを除外しないこと意味することを意図する。「から本質的になること」は、組成物及び方法を定義するために使用される場合、定められた目的のための組み合わせにとって何らかの本質的な重要性のある他の要素を除外することを意味する。したがって、本明細書において定義される要素から本質的になる組成物は、請求される発明の基本的な及び新規な特徴に著しく影響を及ぼさない他の物質又はステップを除外しないであろう。「からなること」は、他の成分の微量を超える要素及び実質的な方法のステップを除外することを意味するものとする。これらの移行句のそれぞれによって定義される実施形態は、本開示の範囲内にある。
【0019】
用語「コロナウイルス」は、オルトコロナウイルス亜科(Orthocoronviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、ニドウイルス目(Nidovirales)、及びリボウイルス域(Riboviria)のRNAウイルスを指す。
【0020】
用語「SARS」又は「突発性急性呼吸器症候群」は、SARS-コロナウイルスによって引き起こされる疾患を指す。
【0021】
用語「SARS-CoV-2」又は「突発性急性呼吸器症候群コロナウイルス2」又は「2019-nCoV」は、COVID19の原因となるコロナウイルスを指す。SARS-CoV-2は、コロナウイルスのオルトコロナウイルス亜科(Orthocoronaviridae)のベータコロナウイルス属(Betacoronavirus)の脂質エンベローププラス鎖一本鎖RNAウイルスである。
【0022】
用語「COVID19」又は「COVID-19」又は「コロナウイルス疾患2019」は、対象におけるSARS-CoV-2感染症によって引き起こされる疾患を指す。
【0023】
用語「Mpro」又は「Mpro」又は「3CLpro」又は「C3様メインプロテアーゼ」又は「メインプロテアーゼ」又は「nsp5プロテアーゼ」は、SARSウイルスポリタンパク質をプロセシングするトリプシン/キモトリプシン様及びピコルナウイルス3C様プロテアーゼを指す。Mpro又はnsp5はまた、ユビキチンをユビキチン化タンパク質から除去することを含め、いくつかの宿主細胞タンパク質をプロセシングする。
【0024】
本明細書において記載される実施例及び実施形態は、例証のためのものにすぎず、それを考慮した種々の修飾又は変化は、当業者に示唆され、本出願の精神及び領域並びに添付の特許請求の範囲の範囲内に含まれることになることが理解される。本明細書において引用されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照によってこれによって援用される。
【0025】
当業者は、本明細書において記載される複合体を作製し、使用することについての記載が、例証を目的とするだけのものであり、本開示がこの例証によって限定されないことを理解するであろう。
【0026】
本明細書において述べられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示についてのみ提供される。このような刊行物が本明細書に添付される特許請求の範囲に対する先行技術を構成することを許可するものとして解釈されるようなものは本明細書にない。本明細書において参照されるすべての刊行物は、すべての組成物、構成成分、試薬、及び方法を含むがこれらに限定されない、それらの教示のすべてについて、それらの全体が参照によって本明細書において援用される。
【0027】
COVID治療方法
一態様において、SARS-CoV-2ウイルス感染症の治療をそれを必要とする対象において行うための方法が、本明細書において提供される。実施形態において、方法は、ピペラシリン又はその塩、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその塩、及びセフォペラゾン又はその塩を含有する有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。実施形態において、ピペラシリン又はその塩は、投与される。実施形態において、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその塩は、投与される。実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、投与される。
【0028】
実施形態において、ピペラシリン又はその塩は、約2グラム(g)~約40gの量で投与される。いくつかの実施形態において、ピペラシリン又はその塩は、約2gの量で投与される。いくつかの実施形態において、ピペラシリン又はその塩は、約3gの量で投与される。いくつかの実施形態において、ピペラシリン又はその塩は、約4gの量で投与される。いくつかの実施形態において、ピペラシリン又はその塩は、約40gの量で投与される。量は、端点を含む、列挙される範囲内の任意の値又はサブ範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、ピペラシリン又はその塩は、静脈内注射を介して投与される。いくつかの実施形態において、ピペラシリン又はその塩は、筋肉内注射を介して投与される。
【0029】
実施形態において、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその塩は、体重1キログラム当たり約5ミリグラム(mg/kg)~約50mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態において、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその塩は、約5mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態において、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその塩は、約50mg/kgの量で投与される。量は、端点を含む、列挙される範囲内の任意の値又はサブ範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその塩は、静脈内注射を介して投与される。いくつかの実施形態において、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその塩は、腹腔内注射を介して投与される。
【0030】
実施形態において、治療の方法は、セフォペラゾン又はその塩が、1日当たり約1g~約12g(g/日)の量で投与される。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、約1g/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、約2g/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、約3g/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、約4g/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、約6g/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、約8g/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、約10g/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、約12g/日の量で投与される。量は、端点を含む、列挙される範囲内の任意の値又はサブ範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、静脈内注射を介して投与される。いくつかの実施形態において、セフォペラゾン又はその塩は、皮下注射を介して投与される。
【0031】
実施形態において、1つ以上の追加の薬剤は、対象に投与されてもよい。1つ以上の追加の薬剤は、SARS-CoV-2感染及び/又はSARS-CoV-2感染の症状を治療してもよい。実施形態において、1つ以上の薬剤は、回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体又は抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、並びに抗SARS-CoV-2ワクチンを含んでいてもよい。実施形態において、列挙される1つ以上の薬剤は、明確に除外されてもよい。
【0032】
一態様において、SARS-CoV-2ウイルス感染症の治療をそれを必要とする対象において行うための方法であって、シレンギチド若しくはその塩又はヘデラコシド若しくはその塩を含有する有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。実施形態において、シレンギチド又はその塩は、投与される。実施形態において、ヘデラコシド又はその塩は、投与される。
【0033】
実施形態において、治療の方法は、シレンギチド又はその塩が、体表面積1m2当たり約30ミリグラム(mg/m2)~約2400mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、シレンギチド又はその塩は、約30mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約60mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約90mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約120mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約240mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約360mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約480mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約600mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約1200mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約1800mg/m2の量で投与される。いくつかの実施形態において、治療の方法は、シレンギチドかその塩が、約2400mg/m2の量で投与される。量は、端点を含む、列挙される範囲内の任意の値又はサブ範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、シレンギチド又はその塩は、静脈内注射を介して投与される。いくつかの実施形態において、シレンギチド又はその塩は、点滴静注を介して投与される。いくつかの実施形態において、シレンギチド又はその塩は、持続点滴静注を介して投与される。いくつかの実施形態において、シレンギチド又はその塩は、腹腔内注射を介して投与される。
【0034】
実施形態において、ヘデラコシド又はその塩は、約35mg/kg~約50mg/kgの量で投与される。いくつかの実施形態において、ヘデラコシド又はその塩は、約30%エタノール抽出物中約35mg乾燥葉の濃度で5mL用量で投与される(5~7.5:1DER)。いくつかの実施形態において、ヘデラコシド又はその塩は、約30%エタノール抽出物中約35mg乾燥葉の濃度で7.5mL用量で投与される(5~7.5:1DER)。いくつかの実施形態において、ヘデラコシド又はその塩は、約35mg/乾燥葉/30%エタノール抽出物の約24滴/用量で投与される(5~7.5:1DER)。いくつかの実施形態において、ヘデラコシド又はその塩は、約30%エタノール抽出物中43mg乾燥葉の約7mg/mLを含有する2.5mL~7.5mL/用量のシロップを介して投与される(5~7.5:1DER)。いくつかの実施形態において、ヘデラコシド又はその塩は、約30%エタノール抽出物中43mg乾燥葉の約7mg/mLを含有する約5mL/用量のシロップで投与される(5~7.5:1DER)。いくつかの実施形態において、ヘデラコシド又はその塩は、約163mg乾燥葉に等価な約26mgを含有するチュアブルロゼンジを介して投与される。量は、端点を含む、列挙される範囲内の任意の値又はサブ範囲であってもよい。
【0035】
一態様において、SARS-CoV-2ウイルス感染症の治療をそれを必要とする対象において行うための方法であって、(R,S)-イボシデニブ若しくはその塩、エバセトラピブ若しくはその塩、イダサヌトリン若しくはその塩、又はレルゴリクス若しくはその塩を含有する有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む方法が、本明細書において提供される。実施形態において、医薬組成物は、(R,S)-イボシデニブ又はその塩を含有する。実施形態において、医薬組成物は、エバセトラピブ又はその塩を含有する。実施形態において、医薬組成物は、イダサヌトリン又はその塩を含有する。実施形態において、医薬組成物は、レルゴリクス又はその塩を含有する。
【0036】
実施形態において、エバセトラピブ又はその塩は、1日当たり約30mg~約600mgの量で投与される。いくつかの実施形態において、エバセトラピブ又はその塩は、約30mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、エバセトラピブ又はその塩は、約100mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、エバセトラピブ又はその塩は、約130mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、エバセトラピブ又はその塩は、約500mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、エバセトラピブ又はその塩は、約600mg/日の量で投与される。量は、端点を含む、列挙される範囲内の任意の値又はサブ範囲であってもよい。いくつかの実施態様において、エバセトラピブ又はその塩は、経口投与される。いくつかの実施形態において、エバセトラピブ又はその塩は、静脈内注射を介して投与される。
【0037】
実施形態において、(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、約100mg/日~約1200mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、約100mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、約200mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、約300mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、約400mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、約500mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、約800mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、約1200mg/日の量で投与される。量は、端点を含む、列挙される範囲内の任意の値又はサブ範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、(R,S)-イボシデニブ又はその塩は、経口投与される。
【0038】
実施形態において、イダサヌトリン又はその塩は、約100mg/日~約300mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、イダサヌトリン又はその塩は、約100mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、イダサヌトリン又はその塩は、約120mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、イダサヌトリン又はその塩は、約150mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、イダサヌトリン又はその塩は、約200mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、イダサヌトリン又はその塩は、1日当たり約10mg/体表面積1m2~約300mg/体表面積1m2の量で投与される。いくつかの実施態様において、イダサヌトリン又はその塩は、約250mg/日の量で投与される。いくつかの実施態様において、イダサヌトリン又はその塩は、約300mg/日の量で投与される。量は、端点を含む、列挙される範囲内の任意の値又はサブ範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、イダサヌトリン又はその塩は、静注療法を介して投与される。いくつかの実施態様において、イダサヌトリン又はその塩は、経口投与される。
【0039】
実施形態において、レルゴリクス又はその塩は、約20~約360mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、レルゴリクス又はその塩は、約20mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、レルゴリクス又はその塩は、約40mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、レルゴリクス又はその塩は、約60mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、レルゴリクス又はその塩は、約80mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、レルゴリクス又はその塩は、約120mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、レルゴリクス又はその塩は、約160mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、レルゴリクス又はその塩は、約180mg/日の量で投与される。いくつかの実施形態において、レルゴリクス又はその塩は、約360mg/日の量で投与される。量は、端点を含む、列挙される範囲内の任意の値又はサブ範囲であってもよい。いくつかの実施態様において、レルゴリクス又はその塩は、経口投与される。
【0040】
実施形態において、1つ以上の列挙される化合物(例えば、ピペラシリン、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素、シレンギチド、(R,S)-イボシデニブ、エバセトラピブ、イダサヌトリン、レルゴリクス、ヘデラコシド、セフォペラゾン、又はその誘導体若しくは塩)は、明確に除外されてもよい。
【0041】
実施形態において、1つ以上の追加の薬剤は、対象に投与されてもよい。1つ以上の追加の薬剤は、SARS-CoV-2感染及び/又はSARS-CoV-2感染の症状を治療してもよい。実施形態において、1つ以上の薬剤は、回復期血漿、抗SARS-CoV-2抗体若しくは抗体様分子、トシリズマブ、アカラブルチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、バリシチニブ、アナキンラ、カナキヌマブ、アプレミラスト、マブリリムマブ、サリルマブ、VIR-7831、REGN-COV2、LY-CoV555、免疫系調節薬、インターフェロン及びインターフェロン様分子、抗凝固薬、腹臥位、抗ウイルス治療薬、レムデシビル、ロピナビル、リトナビル、オセルタミビル、ファビピラビル、ウミフェノビル、コルヒチン、イベルメクチン、抗菌治療薬、ニタゾキサニド、ステロイド、コルチコステロイド、デキサメタゾン、ヒドロキシクロロキン、クロロキン、アジスロマイシン、非ステロイド性抗炎症薬、カルパインプロテアーゼ阻害剤、カテプシンプロテアーゼ阻害剤、ファモチジン、ナファモスタット、カモスタット、アスコルビン酸、亜鉛、RLF-100、トラジピタント、LAU-7b、HFB30132A、AZD7442、CAP-1002、ブリラシジン、STI-1499、エブセレン、ジスルフィラム、チデグルシブ、カルモフール、シコニン、PX-12、N3、又は抗SARS-CoV-2ワクチンを含んでいてもよい。実施形態において、列挙される1つ以上の薬剤は、明確に除外されてもよい。
【0042】
一態様において、SARS-CoV2ウイルスの感染力を低下させるための方法が、提供される。実施形態において、方法は、以下の少なくとも1つとウイルスを接触させることを含む:ピペラシリン、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素、シレンギチド、(R,S)-イボシデニブ、エバセトラピブ、イダサヌトリン、レルゴリクス、ヘデラコシド、セフォペラゾン、又はその誘導体若しくは塩。実施形態において、ウイルスは、ピペラシリン又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、ウイルスは、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、ウイルスは、シレンギチド又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、ウイルスは、(R,S)-イボシデニブ又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、ウイルスは、エバセトラピブ又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、ウイルスは、イダサヌトリン又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、ウイルスは、レルゴリクス又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、ウイルスは、ヘデラコシド又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、ウイルスは、セフォペラゾン又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、列挙される1つ以上の化合物は、明確に除外されてもよい。
【0043】
一態様において、SARS-CoV2 nsp5プロテアーゼの活性を低下させるための方法が、提供される。実施形態において、方法は、以下の少なくとも1つとnsp5プロテアーゼを接触させることを含む:ピペラシリン、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素、シレンギチド、(R,S)-イボシデニブ、エバセトラピブ、イダサヌトリン、レルゴリクス、ヘデラコシド、セフォペラゾン、又はその誘導体。実施形態において、プロテアーゼは、ピペラシリン又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、プロテアーゼは、N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、プロテアーゼは、シレンギチド又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、プロテアーゼは、(R,S)-イボシデニブ又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、プロテアーゼは、エバセトラピブ又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、プロテアーゼは、イダサヌトリン又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、プロテアーゼは、レルゴリクス又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、プロテアーゼは、ヘデラコシド又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、プロテアーゼは、セフォペラゾン又はその誘導体若しくは塩と接触させる。実施形態において、列挙される1つ以上の化合物は、明確に除外されてもよい。
【0044】
以下の実験結果は、例証を目的として提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0045】
実施例1:プロテアーゼMproとの相互作用の可能性についての化合物のインシリコスクリーニング
およそ5000の化合物を、Mproとの相互作用の可能性についてAMBER20(D.A.Case,et al.(2020)AMBER 2020,University of California,San Francisco)によってスクリーニングした。FDAによって又は第2/3相臨床試験において承認された化合物の公開データベース(FDA-Approved Drug Library,cat.no.L1300 and Preclinical/Clinical Compound Library,cat.no.L3900,Selleckchem)及びSARS-CoV-2 Mproについて公表された結晶構造(RCSB Protein Databank Number 6LU7,Z.Jin,et al.Nature 582,289-293(2020))を使用した。
【0046】
AMBER20分析によってMproと相互作用する可能性があることが見出された化合物は、Autodock Vina(O.Trott and A.J.Olson,J.Comp.Chem.31,455-461(2010))を使用してさらに評価した。Autodock Vinaは、どの化合物がMproタンパク質と最も結合しそうかを決定するために、タンパク質と化合物の相互作用及び相互作用によってタンパク質立体配座がどのように変化するかについてモデル化した。良好なスコアを有する化合物は、3D化合物-タンパク質複合体の目視検査によってさらに評価した。目視検査によって、水素結合の形成、予測される結合部位に対する化合物の立体配座、並びに化合物が結合している状態での疎水性及び親水性構成要素の位置どりを含む多数の基準を評価した。
【0047】
最後に、残っている化合物は、分子動態、例えば、化合物がどれくらいの時間、M
proと結合することが予想されるかについて評価した。結果としての候補化合物は、ピペラシリン、WYE-132(N-[4-[1-(1,4-ジオキサスピロ[4.5]デカ-8-イル)-4-(8-オキサ-3-アザビシクロ[3.2.1]オクタ-3-イル)-1H-ピラゾロ[3,4-d]ピリミジン-6-イル]フェニル]-N’-メチル尿素)、シレンギチド、(R,S)-イボシデニブ、エバセトラピブ、イダサヌトリン、シメプレビル、レルゴリクス、ヘデラコシド、及びセフォペラゾンを含んだ。
図1を参照されたい。
【0048】
実施例2:M
pro活性を決定するためのFRETアッセイ
実施例1によって同定された化合物は、インビトロにおいてM
proに結合し、阻害するそれらの能力を決定するために、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)アッセイによって分析した。FRETアッセイ条件は、Ma C,et al.Cell Research.(2020)0:1-15を採用した。M
pro酵素活性は、
図1においてリストされる化合物の存在下において試験し、FRET活性アッセイの結果を、
図2に示す。
【0049】
本明細書に掲げられるすべての刊行物は、参照によって本明細書において援用される。本発明の記載される方法及びシステムの種々の修飾及び変形は、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく当業者らに明らかである。本発明が特定の好ましい実施形態と関連して記載されたが、請求される本発明がそのような特定の実施形態に不当に限定されるべきでないことが理解されるべきである。実際、本発明を実行するための記載されるモードの種々の修飾は、生化学及びバイオテクノロジー又は関連分野における当業者らにとって明白であり、特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
【0050】
参考文献
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【国際調査報告】