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特表2023-545462前頭側頭型認知症を治療及びモニタリングするための方法
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  • 特表-前頭側頭型認知症を治療及びモニタリングするための方法 図1
  • 特表-前頭側頭型認知症を治療及びモニタリングするための方法 図2
  • 特表-前頭側頭型認知症を治療及びモニタリングするための方法 図3A
  • 特表-前頭側頭型認知症を治療及びモニタリングするための方法 図3B
  • 特表-前頭側頭型認知症を治療及びモニタリングするための方法 図3C
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】前頭側頭型認知症を治療及びモニタリングするための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20231023BHJP
   G01N 33/92 20060101ALI20231023BHJP
   G01N 33/66 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
G01N33/92 Z
G01N33/66 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522802
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-08
(86)【国際出願番号】 US2021071835
(87)【国際公開番号】W WO2022082178
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】63/091,815
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/182,567
(32)【優先日】2021-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518086619
【氏名又は名称】デナリ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Denali Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】アスタリータ ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】デヴォス サラ エル.
(72)【発明者】
【氏名】ディ パオロ ギルバート
(72)【発明者】
【氏名】ファン メン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン フェン
(72)【発明者】
【氏名】ローガン トッド ピー.
(72)【発明者】
【氏名】サイモン マシュー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB01
2G045CB03
2G045CB07
2G045DA30
2G045DA61
2G045FB06
2G045FB07
(57)【要約】
本開示は、前頭側頭型認知症(FTD)を治療するために、化合物をスクリーニングするための、または化合物もしくは投与レジメンに対する対象の応答をモニタリングするための方法及び材料を提供する。また、FTDを有する対象を特定及び治療するための方法及び材料もまた提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前頭側頭型認知症(FTD)を有する、または有するリスクのある対象を特定するための方法であって、
(a)対象由来の試験試料中のグルコシルスフィンゴシン(GlcSph)の存在量を測定することと、
(b)(a)で測定された前記GlcSphと1つ以上の参照値との間の存在量の差を比較することと、
(c)前記比較から、前記対象がFTDを有するか、または有するリスクがあるかを判定することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記対象に、FTDを治療するために、GlcSphレベルを改善するための化合物を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前頭側頭型認知症(FTD)を治療するために、化合物を評価するための方法、または、化合物、医薬組成物、もしくはそれらの投与レジメンに対する対象の応答をモニタリングするための方法であって、
(a)FTDを有する対象由来の試験試料においてGlcSphの存在量を測定することであって、前記試験試料または前記対象が、前記化合物またはその医薬組成物で治療されている、測定することと、
(b)(a)で測定された前記GlcSphと1つ以上の参照値との間の存在量の差を比較することと、
(c)FTDを治療するために、前記化合物、前記医薬組成物、またはそれらの投与レジメンが、GlcSphレベルを改善させるかどうかを前記比較から判定することと、
を含む、方法。
【請求項4】
別の試験試料または対象を別の化合物で治療することと、前記GlcSphレベルを改善させる候補化合物を選択することと、をさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
(d)前記化合物を前記試験試料または前記対象に投与する量または頻度を維持または調整することと、
(e)前記化合物を前記試験試料または前記対象に投与することと、
をさらに含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、PGRN、PGRN誘導体、またはそれらの医薬組成物である、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、ソルチリン阻害剤である、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ソルチリン阻害剤が、抗ソルチリン抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
FTDを有する、または有するリスクのある対象が、前記参照値と比較して増加したGlcSphレベルを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
FTDを有する、または有するリスクのある対象の前記試験試料中の前記GlcSphの前記存在量が、前記参照値と比較して少なくとも約1.2倍~約5倍高い、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記改善されたGlcSphレベルが、治療前の前記GlcSphレベルから改善されたものであり、前記改善されたGlcSphレベルは、前記治療前のGlcSphレベルよりも前記参照値により近い、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記改善されたGlcSphレベルが、前記参照値と比較して、15%、10%、または5%未満の差を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記参照値が、前記対象が治療を受ける前の前記対象の試験試料中のGlcSphレベルである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記参照値が、参照対象または参照対象集団から得た参照試料において測定される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記参照対象または前記参照対象集団が、健常対照である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記参照対象または前記参照対象集団が、FTDを有さないか、またはPGRNレベルが低下していない、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
工程(a)が、1種以上のビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)種の前記存在量を測定することをさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記1種以上のBMP種が、BMP(16:0_18:1)、BMP(16:0_18:2)、BMP(18:0_18:0)、BMP(18:0_18:1)、BMP(18:1_18:1)、BMP(16:0_20:3)、BMP(18:1_20:2)、BMP(18:0_20:4)、BMP(16:0_22:5)、BMP(20:4_20:4)、BMP(22:6_22:6)、BMP(20:4_20:5)、BMP(18:2_18:2)、BMP(16:0_20:4)、BMP(18:0_18:2)、BMP(18:0e_22:6)、BMP(18:1e_20:4)、BMP(20:4_22:6)、BMP(18:0e_20:4)、BMP(18:2_20:4)、BMP(18:1_22:6)、BMP(18:1_20:4)、BMP(18:0_22:6)、及び/またはBMP(18:3_22:5)を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記試験試料または前記1つ以上の参照値が、全血、血漿、細胞、組織、血清、脳脊髄液、間質液、唾液、尿、リンパ液、またはそれらの組み合わせを含むか、またはそれらに関連する、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記試験試料または前記1つ以上の参照値が、血漿を含むか、または血漿に関連する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記細胞が、血液細胞、脳細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄由来マクロファージ(BMDM)、網膜色素上皮(RPE)細胞、赤血球、白血球、神経細胞、ミクログリア細胞、大脳皮質細胞、脊髄細胞、骨髄細胞、肝細胞、腎細胞、脾細胞、皮膚細胞、線維芽細胞、心臓細胞、リンパ節細胞、またはそれらの組み合わせである、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記組織が、リンパ節、骨髄、皮膚組織、血管組織、肺組織、脾臓組織、弁組織、またはそれらの組み合わせを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記試験試料が、エンドソーム、リソソーム、細胞外小胞、エクソソーム、微小胞、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記GlcSphの前記存在量が、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC/MS/MS)、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)、ガスクロマトグラフィー-タンデム質量分析法(GC-MS/MS)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、またはそれらの組み合わせを使用して測定される、請求項1~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記GlcSphの前記存在量を測定する場合、内部GlcSph標準物質が使用される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記内部GlcSph標準物質が、前記対象において天然に存在しないGlcSph種を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記内部GlcSph標準物質が、重水素標識GlcSphを含む、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、グラニュリン(GRN)遺伝子において1つ以上の突然変異を有する、請求項1~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記FTDが、PGRNの発現、処理、グリコシル化、細胞取り込み、輸送、及び/または機能に関連する、請求項1~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記FTDが、PGRNレベルの低下に関連する、請求項1~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記対象及び/または前記参照対象が、ヒトまたは非ヒト霊長類である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象がPGRNノックアウトマウスまたはPGRNノックアウトラットである、請求項3~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
対象のFTDを治療するための化合物またはその投与レジメンを試験するためのキットであって、前記対象由来の試験試料においてGlcSphの存在量を測定するためのGlcSph標準物質を含む、キット。
【請求項34】
前記GlcSph標準物質が、前記対象において天然に存在しないGlcSph種を含む、請求項33に記載のキット。
【請求項35】
前記GlcSph標準物質が、重水素標識GlcSphを含む、請求項33または34に記載のキット。
【請求項36】
前記対象から前記試験試料を得るための試薬、前記試験試料を処理するための試薬、前記GlcSphの前記存在量を測定するための試薬、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項33~35のいずれか一項に記載のキット。
【請求項37】
使用説明書をさらに含む、請求項33~36のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月14日に出願された米国仮出願第63/091,815号及び2021年4月30日に出願された米国仮出願第63/182,567号の利益を主張し、それらの開示は、あらゆる目的のためにそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
前頭側頭型認知症(FTD)は、認知症を有する全患者の5~10%、及び65歳前に認知症を発症した患者の10~20%を占める、進行性の神経変性障害である(Rademakers et al.,Nat Rev Neurol.8(8):423-34,2012(非特許文献1))。いくつかの遺伝子がFTDに関連付けられているが、FTDにおいて最も頻繁に変異する遺伝子のうちの1つは、ヒト染色体17q21に位置し、システインリッチなタンパク質であるプログラニュリン(PGRN)(プロエピセリン及びアクログラニンとしても知られる)をコードするGRNである。GRNにおける浸透性の高い突然変異は、家族性FTDの常染色体優性形態の原因として、2006年に最初に報告された(Baker et al.,Nature.442(7105):916-9,2006(非特許文献2)、Cruts et al.,Nature.2006 Aug 24;442(7105):920-4(非特許文献3)、Gass et al.,Hum.Mol.Genet.15(20):2988-3001,2006(非特許文献4))。最近の推定では、GRN変異は、家族歴が陽性であるFTD患者の5~20%、及び孤発性症例の1~5%を占めると示唆されている(Rademakers et al.、上掲)。FTDを治療するための化合物及び関連する療法を評価するための新しい方法(そのような治療に対する患者の応答をモニタリングすることを含む)、ならびにこれらの障害の治療から利益を得ることができる対象を特定するための新しい方法に対する必要性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Rademakers et al.,Nat Rev Neurol.8(8):423-34,2012
【非特許文献2】Baker et al.,Nature.442(7105):916-9,2006
【非特許文献3】Cruts et al.,Nature.2006 Aug 24;442(7105):920-4
【非特許文献4】Gass et al.,Hum.Mol.Genet.15(20):2988-3001,2006
【発明の概要】
【0004】
概要
一態様では、本開示は、前頭側頭型認知症(FTD)を有する、または有するリスクのある対象を特定するための方法を提供し、本方法は、
(a)対象由来の試験試料中のグルコシルスフィンゴシン(GlcSph)の存在量を測定することと、
(b)(a)で測定されたGlcSphと1つ以上の参照値との間の存在量の差を比較することと、
(c)比較から対象がFTDを有するか、または有するリスクがあるかを判定することと、
を含む。
【0005】
この態様のいくつかの実施形態では、方法はさらに、対象に、FTDを治療するためにGlcSphレベルを改善するための化合物を投与することを含む。
【0006】
別の態様では、本開示は、FTDを治療するために、化合物を評価するための方法、または化合物、医薬組成物、もしくはそれらの投与レジメンに対する対象の応答をモニタリングするための方法を提供し、本方法は、
(a)FTDを有する対象由来の試験試料においてGlcSphの存在量を測定することであって、試験試料または対象が、化合物またはその医薬組成物で治療されている、測定することと、
(b)(a)で測定されたGlcSphと1つ以上の参照値との間の存在量の差を比較することと、
(c)FTDを治療するために、化合物、医薬組成物、またはそれらの投与レジメンが、GlcSphレベルを改善させるかどうかを比較から判定することと、
を含む。
【0007】
この態様のいくつかの実施形態では、方法は、別の試験試料または対象を別の化合物で治療することと、GlcSphレベルを改善させる候補化合物を選択することと、をさらに含む。
【0008】
この態様のいくつかの実施形態では、方法は、
(d)化合物を試験試料または対象に投与する量または頻度を維持または調整することと、
(e)化合物を試験試料または対象に投与することと、
をさらに含む。
【0009】
本明細所に記載される方法のいくつかの実施形態では、化合物はソルチリン阻害剤である。ある特定の実施形態では、ソルチリン阻害剤は、抗ソルチリン抗体である。
【0010】
いくつかの実施形態では、FTDを有する、または有するリスクのある対象は、参照値と比較して増加したGlcSphレベルを有する。ある特定の実施形態では、FTDを有する、または有するリスクのある対象の試験試料中のGlcSphの存在量は、参照値と比較して少なくとも約1.2倍~約5倍高い。いくつかの実施形態では、改善されたGlcSphレベルは、治療前のGlcSphレベルから改善されたものであり、改善されたGlcSphレベルは、治療前のGlcSphレベルよりも参照値により近い。特定の実施形態では、改善されたGlcSphレベルは、参照値と比較して、15%、10%、または5%未満の差を有する。
【0011】
いくつかの実施形態では、参照値は、対象が治療を受ける前の対象の試験試料中のGlcSphレベルである。いくつかの実施形態では、参照値は、参照対象または参照対象集団から得た参照試料において測定される。ある特定の実施形態では、参照対象または参照対象集団は、健常対照である。特定の実施形態では、参照対象または参照対象集団は、FTDを有さないか、またはPGRNレベルが低下していない。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法の工程(a)は、1つ以上のビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)種の存在量を測定することをさらに含む。ある特定の実施形態では、1種以上のBMP種は、BMP(16:0_18:1)、BMP(16:0_18:2)、BMP(18:0_18:0)、BMP(18:0_18:1)、BMP(18:1_18:1)、BMP(16:0_20:3)、BMP(18:1_20:2)、BMP(18:0_20:4)、BMP(16:0_22:5)、BMP(20:4_20:4)、BMP(22:6_22:6)、BMP(20:4_20:5)、BMP(18:2_18:2)、BMP(16:0_20:4)、BMP(18:0_18:2)、BMP(18:0e_22:6)、BMP(18:1e_20:4)、BMP(20:4_22:6)、BMP(18:0e_20:4)、BMP(18:2_20:4)、BMP(18:1_22:6)、BMP(18:1_20:4)、BMP(18:0_22:6)、及び/またはBMP(18:3_22:5)を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、試験試料、または、1つ以上の参照値は、全血、血漿、細胞、組織、血清、脳脊髄液、間質液、唾液、尿、リンパ液、またはそれらの組み合わせを含むか、またはそれらに関連する。特定の実施形態では、試験試料、または、1つ以上の参照値は、血漿を含むか、または血漿に関連する。ある特定の実施形態では、細胞は、血球、脳細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄由来マクロファージ(BMDM)、網膜色素上皮(RPE)細胞、赤血球、白血球、神経細胞、ミクログリア細胞、大脳皮質細胞、脊髄細胞、骨髄細胞、肝細胞、腎細胞、脾細胞、皮膚細胞、線維芽細胞、心臓細胞、リンパ節細胞、またはそれらの組み合わせである。ある特定の実施形態では、組織は、リンパ節、骨髄、皮膚組織、血管組織、肺組織、脾臓組織、心臓弁膜組織、またはそれらの組み合わせを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、試験試料は、エンドソーム、リソソーム、細胞外小胞、エクソソーム、微小胞、またはそれらの組み合わせを含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、GlcSphの存在量は、液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)、ガスクロマトグラフィー-タンデム質量分析法(GC-MS/MS)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、及びそれらの組み合わせを使用して測定される。
【0016】
いくつかの実施形態では、GlcSphの存在量を測定する場合に、内部GlcSph標準物質が使用される。ある特定の実施形態では、内部GlcSph標準物質は、対象において天然に存在しないGlcSph種を含む。特定の実施形態では、内部GlcSph標準物質は、重水素標識GlcSphを含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、対象は、グラニュリン(GRN)遺伝子に1つ以上の突然変異を有する。いくつかの実施形態では、FTDは、PGRNの発現、処理、グリコシル化、細胞取り込み、輸送、及び/または機能に関連する。いくつかの実施形態では、FTDは、減少したPGRNレベルに関連している。
【0018】
いくつかの実施形態では、対象及び/または参照対象は、ヒトまたは非ヒト霊長類である。いくつかの実施形態では、対象は、PGRNノックアウトマウスまたはPGRNノックアウトラットである。
【0019】
別の態様では、本開示は、対象のFTDを治療するための化合物またはその投与レジメンを試験するためのキットを提供し、本キットは、対象由来の試験試料においてGlcSphの存在量を測定するためのGlcSph標準物質を含む。
【0020】
この態様のいくつかの実施形態では、GlcSph標準物質は、対象において天然に存在しないGlcSph種を含む。特定の実施形態では、GlcSph標準物質は、重水素標識GlcSphを含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、キットは、対象から試験試料を得るための試薬、試験試料を処理するための試薬、GlcSphの存在量を測定するための試薬、またはそれらの組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態では、キットは、使用説明書をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】遺伝子変異のない臨床的正常対照と比較して、GRN関連FTD患者由来の血漿試料中で有意なGlcSphの増加を示しているが、非GRN FTD患者では示されない。
図2】PGRN誘導体(Fusion1)による治療の後、PGRN誘導体を受けていないGrnKOマウスにおけるGlcSphレベルと比較して、GrnKOマウスの血漿中のGlcSphレベルが有意に減少した。
図3A】6週間の薬物投与後、Fusion1は、GrnKO/hTfR.KIマウスの脳中のGlcSphレベルを回復したが、Fusion2は部分的な効果のみを示した。使用投与量は、5mpkの注射を週1回6週間であった。統計解析は、ダネット多重比較試験を用いたOne-Way ANOVA(n=7~10マウス)であった。**はP<0.01、****はP<0.0001である。
図3B】6週間の薬物投与後、Fusion1とFusion2の両方が、GrnKO/hTfR.KIマウスの肝臓中のGlcSphレベルを完全に回復したことを示す。使用投与量は、5mpkの注射を週1回6週間であった。統計解析は、ダネット多重比較試験を用いたOne-Way ANOVA(n=7~10マウス)であった。**はP<0.01、****はP<0.0001である。
図3C】6週間の薬物投与後、Fusion1とFusion2の両方が、GrnKO/hTfR.KIマウスの血漿中のGlcSphレベルを回復したことを示す。使用投与量は、5mpkの注射を週1回6週間であった。統計解析は、ダネット多重比較試験を用いたOne-Way ANOVA(n=7~10マウス)であった。**はP<0.01、****はP<0.0001である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の詳細な説明
I.導入
GRN遺伝子内の機能損失の突然変異は前頭側頭型認知症(FTD)の一般的な形態に関連している。GRNは、神経突起伸長、神経細胞生存、リソソーム機能、及び炎症に関係している可溶性タンパク質プログラニュリン(PGRN)をコードする。主にPGRNの脳レベルを向上させることに焦点を当てたGRN-関連FTDのために治療手段が開発されているので、候補の治療の発見を促進させるためには、血漿及びCSFなどの体液中の疾患関与バイオマーカーを特定することが重要である。FTDのケースにおいては、一般的にFTDに関連しているか、またはGRN-関連FTDに特異的であるかのいずれかであるバイオマーカーを調査することが重要である。さらに重要なことには、バイオマーカーの発見は、PGRN及び/またはその機能損失に関連した新規の生物学及び生化学の経路を啓発することによって疾患メカニズムを報告することもできる。
【0024】
発明者らは、LC-MSによるターゲットリピドミクス/メタボロミクス分析を実施し、遺伝子変異のない臨床的正常対照と比較して、GRN関連FTD患者(Δ25%、p<0.01)由来の生体試料中(例えば、血漿試料)でグルコシルスフィンゴシン(GlcSph)が有意に増加するが、孤発性FTD患者では増加しないことを発見し、これは、GlcSphが、GRN関連FTDに関係する疾患バイオマーカーであり、かつPGRN機能回復の経路バイオマーカーであることを示している。これらの結果は、約20%のGlcSphレベルの減少は、臨床的正常対照と比較して、GRN関連FTD患者の試料に見られる増加したGlcSphレベルを正常化するであろうことを示している。
【0025】
II.定義
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「細胞」への言及は、2つ以上のそのような細胞などを含み得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「約」及び「およそ」という用語は、数値または範囲で指定された量を修正するために使用される場合、その数値及び当業者に公知の値からの妥当な偏差、例えば、±20%、±10%または±5%が、記載された値の意図する意味の範囲内であることを示す。
【0027】
用語「存在量」は、分子、化合物、または作用物質(例えば、GlcSph)の量または濃度を指す。この用語には、絶対量または絶対濃度、ならびに相対量または相対濃度が含まれる。いくつかの実施形態では、参照標準物質(例えば、内部GlcSph標準物質)は、(例えば、試料中に)存在する分子、化合物、もしくは作用物質の絶対量もしくは絶対濃度を決定するために較正に使用され、及び/または存在する分子、化合物、もしくは作用物質の相対量もしくは相対濃度を決定するために対照に正規化される。
【0028】
用語「グルコシルスフィンゴシン」または「GlcSph」は、式I:
に示される構造を有するリソグリコスフィンゴリピドを指す。
【0029】
用語「ビス(モノアシルグリセロ)リン酸」または「BMP」は、式II:
に示される構造を有する(例えば、後期エンドソーム及びリソソーム内に通常存在するpHで)負に荷電したグリセロリン脂質を指す。
BMP分子は、2つの脂肪酸側鎖を含む。式IIのR及びR’は、独立して選択された飽和または不飽和脂肪族鎖を表し、脂肪族鎖の各々は、典型的には、14、16、18、20、または22個の炭素原子を含有する。脂肪酸側鎖が不飽和の場合、脂肪酸側鎖は、1、2、3、4、5、または6つ以上の炭素-炭素二重結合を含有することができる。さらに、BMP分子は1つまたは2つのアルキルエーテル置換基を含有することができ、ここで、一方または両方の脂肪酸側鎖のカルボニル酸素は2つの水素原子で置き換えられている。特定のBMP種を説明するために本明細書で使用される命名法は、2つの脂肪酸側鎖を有する種を示し、脂肪酸側鎖の構造をBMP形式の括弧内に示す(例えば、BMP(18:1_18:1))。数字は、「脂肪酸炭素原子の数:二重結合の数」の標準的な脂肪酸の表記形式に従う。接頭辞「e-」は、アルキルエーテル置換基の存在を示すために使用され、脂肪酸側鎖のカルボニル酸素は、2つの水素原子で置き換えられている。例えば、「BMP(16:0e_18:0)」中の「e」は、16個の炭素原子を有する側鎖がアルキルエーテル置換基であることを示す。
【0030】
「PGRNレベル」という用語は、対象内または試料(例えば、対象から得た試料)中のいずれかに存在するプログラニュリンの量、濃度、及び/または活性レベルを指す。PGRNレベルは、存在するPGRNの絶対量、絶対濃度、及び/または絶対活性レベルを指すことができるか、あるいは相対量、相対濃度、及び/または相対活性レベルを指すことができる。この用語はまた、存在するPGRNポリペプチド及び/またはPGRN mRNA(例えば、GRN遺伝子から発現されるもの)の量または濃度も指す。
【0031】
「プログラニュリン」または「PGRN」という用語(「プロエピセリン」及び「アクログラニン」としても既知)は、ヒト染色体17q21に位置する遺伝子GRNによってコードされる、システインリッチなタンパク質である。PGRNは、リソソームタンパク質であるとともに、保存されたグラニュリンペプチドの7.5回のタンデム反復からなる分泌タンパク質であり、その各々は、約60アミノ酸長であり、様々な細胞外プロテアーゼ(例えば、エラスターゼ)及びリソソームプロテアーゼ(例えば、カテプシンL)による切断によって放出され得る(Kao et al.,Nat Rev Neurosci.18(6):325-333,2017)。一般に、PGRNは、先天免疫の制御において、ならびにPGRNが様々なカテプシン及び他の加水分解酵素の活性及びレベルを調節するリソソームの機能において、細胞自律的役割及び細胞非自律的役割の両方を果たすと考えられている(Kao et al.、上掲)。PGRNはまた、神経栄養性機能を有し、神経突起伸長及び神経細胞生存を促進する(Kao et al.、上掲)。PGRNポリペプチドは、ヒトPGRN配列を含み得る。PGRNポリペプチドは、例えば、最初の17個のアミノ酸がシグナルペプチドを構成する、未成熟PGRNであり得る。PGRNポリペプチドはまた、例えば、17個のアミノ酸のシグナルペプチドが切断されている、成熟PGRNでもあり得る。他の非限定的な例として、PGRNポリペプチドは、未成熟または成熟した形態のいずれかで、マウス(NCBI参照番号NP_032201.2)、ラット(NCBI参照番号NP_058809.2またはNP_001139314.1)、またはチンパンジー(NCBI参照番号XP_016787144.1またはXP_016787145.1)などの非ヒト種からの配列を含み得る。
【0032】
「プログラニュリン誘導体」または「PGRN誘導体」という用語は、修飾されたPGRNを指す。PGRNに体内の特定の領域を標的とさせる修飾などの、PGRNのドラッガビリティを高めるための修飾、及び/またはその薬物動態学的もしくは薬力学的特性を改善するための修飾を行うことができる。他の修飾を行って、その製造及び/または貯蔵寿命を支援することができる。PGRN誘導体は、Fcポリペプチドの二量体に付着したPGRNを含む、Fc融合タンパク質を含むことができる。
【0033】
「骨髄由来マクロファージ」または「BMDM」という用語は、哺乳動物の骨髄(例えば、対象から得た骨髄)からインビトロで生成されるかまたはそれに由来する、マクロファージ細胞を指す。非限定的な例として、BMDMは、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)などのサイトカインの存在下で、未分化骨髄細胞を培養することによって生成することができる。
【0034】
「治療」、「治療すること」等の用語は、本明細書では、一般に所望の薬理作用及び/または生理作用を得ることを意味するために使用される。「治療すること」または「治療」は、前頭側頭型認知症(FTD)の治療または改善の奏功を示す任意の兆候を指し得、緩和、寛解、患者生存の改善、生存時間もしくは生存率の増大、症状の軽減、または障害に対する患者の忍容性を高めること、変性もしくは衰退の速度を遅くすること、または患者の身体的もしくは精神的健康を改善することなどの任意の客観的または主観的パラメータを含む。症状の治療または改善は、客観的または主観的パラメータに基づくことができる。治療の効果は、その治療を受けていない個体もしくは個体のプールと、または、治療前もしくは治療中の異なる時点での同じ患者と比較することができる。
【0035】
本明細書で互換的に使用される場合、「対象」、「個体」、及び「患者」という用語は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類(例えば、ラット、マウス、及びモルモット)、ウサギ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、及び他の哺乳動物種を含むがこれらに限定されない、哺乳動物を指す。一実施形態では、対象は、ヒトである。
【0036】
本明細書で使用される場合、作用物質の「治療量」または「治療有効量」は、対象において疾患の症状を治療する作用物質の量である。
【0037】
「投与する」という用語は、所望の生物作用点に作用物質、化合物、または組成物を送達する方法を指す。これらの方法としては、局所送達、非経口送達、静脈内送達、皮内送達、筋肉内送達、皮下送達、髄腔内送達、経口送達、結腸送達、直腸送達、または腹腔内送達が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
III.本開示の方法
前頭側頭型認知症(FTD)
前頭側頭型認知症(FTD)は、進行性の神経変性障害である。FTDは、前頭葉及び側頭葉に選択的な影響を呈する、臨床的、病理学的、及び遺伝的に不均一である疾患の範囲を含む(Gazzina et al.,Eur J Pharmacol.817:76-85,2017)。FTDの臨床症状には、行動及び性格の変化、前頭部の実行障害、及び言語機能障害が挙げられる。臨床表現型の相違に基づいて、行動障害型FTD(bvFTD)、及び非流暢/失文法型PPA(avPPA)または意味型PPA(svPPA)のいずれかであり得る原発性進行性失語(PPA)などの、異なる症状が特定されている。これらの臨床症状はまた、大脳皮質基底核症候群(CBS)、進行性核上性麻痺(PSP)、及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの非定型パーキンソニズムと重複する場合がある(Gazzina et al.、上記参照)。FTDは、神経細胞及びアストロサイト中のタウ病変、または神経細胞中の細胞質ユビキチン封入体を含む、様々な神経病理学的特徴を伴う。43kDaの分子量を有するトランス活性化DNA結合タンパク質(TDP-43)は、FTDの症例の大部分ならびにALSにおいて蓄積する、最も顕著なユビキチン化タンパク質病変である(Petkau and Leavitt,Trends Neurosci.37(7):388-98,2014)。FTDは、早発性認知症の重大な原因であり、症例の最大80%が45~64歳の間に発症する。この疾患はまた、顕著な家族性要素を呈し、約30~50%の症例で疾患の家族歴が報告されている(Petkau and Leavitt、上掲)。
【0039】
FTDは家族性及び散発性の両方の形態で発生する。家族性FTDの形態のいくつかは、原因が不明であるが、その他のものは遺伝子変異により発生する。多数の遺伝子中の突然変異はFTDに関連している。GRN、MAPT及びC9ORF72などの遺伝子中の突然変異が最も一般的な遺伝的FTDの原因である。VCP、TARDBP、CHMP2B、SQSTM1、UBQLN1、UBQLN2、TBK1、及びCHCHD10などその他の遺伝子中にまれな突然変異が確認されている。PSEN1、PSEN2、CTSF、CYP27A1などFTDに一般的に関連していない神経変性の疾患遺伝子中の突然変異もまたFTD対象において確認されている(Blauwendraat et al.,Genetics in Medicine 20:240-249,2018)。
【0040】
グルコシルスフィンゴシン(GlcSph)
前頭側頭型認知症(FTD)を有する、もしくは有するリスクのある対象を特定するための方法、及び/または、FTDを治療するために、化合物を評価するための方法、または化合物、医薬組成物、もしくはそれらの投与レジメンに対する対象の応答をモニタリングするための方法を提供し、これらの方法は、対象由来の試験試料中のグルコシルスフィンゴシン(GlcSph)の存在量を測定することを含む。
【0041】
GlcSphはグルコセレブロシダーゼ(GCase)の基質であり、減少したGCase活性を示す、ヒトゴーシェ病患者及びマウスモデルの細胞及び組織中に蓄積することが分かっている。GlcSphの蓄積は、ゴーシェ病に観察される内臓及び神経の病理に関係があるとされる。
【0042】
いくつかの実施形態では、GlcSphの存在量は参照値と比較することができる。いくつかの実施形態では、FTDを有する、または有するリスクのある対象は、参照値と比較して増加したGlcSphレベルを有し、例えば、対象の試験試料中のGlcSphの存在量は、参照値の少なくとも約1.2倍~約5倍、または少なくとも約1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、5倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、5.7倍、5.8倍、5.9倍、6倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍、7倍、7.1倍、7.2倍、7.3倍、7.4倍、7.5倍、7.6倍、7.7倍、7.8倍、7.9倍、8倍、8.1倍、8.2倍、8.3倍、8.4倍、8.5倍、8.6倍、8.7倍、8.8倍、8.9倍、9倍、9.1倍、9.2倍、9.3倍、9.4倍、9.5倍、9.6倍、9.7倍、9.8倍、9.9倍、または10倍であり得る。いくつかの実施形態では、参照値は、治療を受ける前の、FTDを有する、または有するリスクのある対象の試験試料中のGlcSphレベルである。
【0043】
本開示の方法のいくつかの実施形態では、参照値は、参照対象または参照対象集団から得た参照試料において測定される。参照対象または参照対象集団は、健常対照対象または健常対照対象集団であり得る。参照対象または参照対象集団は、FTDを有さないか、またはPGRNレベルが低下していない対象または対象集団であり得る。いくつかの実施形態では、FTDを有する、または有するリスクのある対象が治療を受けた後、対象由来の試験試料中のGlcSphレベルは、対象がなんらかの治療を受ける前の対象由来の試験試料中のGlcSphレベルよりも向上している可能性がある。いくつかの実施形態では、向上したGlcSphレベルは、FTDを有する、または有するリスクのある対象の、対象が治療を受ける前のGlcSphレベルよりも参照値(例えば、健常対照対象または健常対照対象集団から得た参照試料で測定した参照値)により近く、例えば、向上したGlcSphレベルは、参照値と比較して15%、10%、または5%未満の差異を有する。
【0044】
場合によっては、FTDを有する、または有するリスクのある対象において、参照値と比較して増加したGlcSphレベルは、例えば、対象の全血、血漿、細胞、組織、血清、脳脊髄液、間質液、唾液、尿、リンパ液、またはそれらの組み合わせに見出すことができる。特定の実施形態では、増加したGlcSphレベルは対象の血漿に見出すことができる。本開示の方法のいくつかの実施形態では、FTDを有する、または有するリスクのある対象から得た試験試料、または1つ以上の参照値は、血漿を含む、または血漿に関連している可能性がある。
【0045】
さらには、FTDを有する、または有するリスクのある対象において、参照値と比較して増加したGlcSphレベルは、対象の脳、例えば、脳の前頭葉及び/または側頭葉に見出すことができる。特定の実施形態では、増加したGlcSphレベルは、前頭葉の1つ以上の領域、例えば、上前頭回、中前頭回、下前頭回、及び/または、中心前回に見出すことができる。
【0046】
本明細書に記載の方法で使用される、FTDを有する、または有するリスクのある対象から得た試験試料は、血液細胞、脳細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、骨髄由来マクロファージ(BMDM)、網膜色素上皮(RPE)細胞、赤血球、白血球、神経細胞、ミクログリア細胞、大脳皮質細胞、脊髄細胞、骨髄細胞、肝細胞、腎細胞、脾細胞、肺細胞、眼細胞、絨毛膜絨毛細胞、筋細胞、皮膚細胞、線維芽細胞、心臓細胞、リンパ節細胞またはそれらの組み合わせなどの細胞を含むことができる。いくつかの実施形態では、試験試料は、血液細胞を含む。いくつかの実施形態では、試験試料は、脳細胞を含む。
【0047】
本明細書に記載の方法で使用される、FTDを有する、または有するリスクのある対象から得た試験試料は、脳組織、大脳皮質組織、脊髄組織、肝組織、腎組織、筋組織、心臓組織、眼組織、網膜組織、リンパ節、骨髄、皮膚組織、血管組織、肺組織、脾組織、弁組織、またはそれらの組み合わせなどの組織を含むことができる。いくつかの実施形態では、試験試料は、対象の脳の前頭葉または側頭葉由来の脳組織などの脳組織を含む。特定の実施形態では、試験試料に使用される脳組織は、上前頭回、中前頭回、下前頭回、及び/または、中心前回由来であり得る。
【0048】
本明細書に記載の方法で使用される、FTDを有する、または有するリスクのある対象から得た試験試料は、エンドソーム、リソソーム、細胞外小胞、エクソソーム、マイクロベシクル、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0049】
FTDを有する、または有するリスクのある対象由来の試験試料中のGlcSphの存在量を測定するため、及び/または参照値(例えば、参照試料中のGlcSphの存在量を測定する)を決定するために、内部GlcSph標準物質が使用される。例えば、既知量の内部GlcSph標準物質を試料(例えば、試験試料及び/または参照試料)に添加して、較正点として機能させることができ、それによって試料中に存在するGlcSphの量を決定することができる。いくつかの実施形態では、GlcSphを試料から抽出または単離するのに使用する試薬(例えば、メタノール)を、内部GlcSph標準物質で「スパイク」する。典型的には、内部GlcSph標準物質は、対象内で天然に生じないものである。いくつかの実施形態では、内部GlcSphは、実施例に使用されるGlcSph(d5)などの重水素標識GlcSphである。
【0050】
GlcSphを使用した、FTDを有する、または有するリスクのある対象の特定
いくつかの実施形態では、対象由来の試験試料中のGlcSphの存在量が参照値よりも高い場合に、対象はFTDを有する、またはPGRNレベルが低下していると判定される。参照値は、参照対象または参照対象集団、例えば、健常対照、または、FTDを有さない、またはPGRNレベルが低下していない対象から得た参照試料にて測定することができる。さらなる実施形態では、対象が、グラニュリン(GRN)遺伝子中に1つ以上の突然変異を有する場合に、対象はFTDを有する、またはPGRNレベルが低下していると判定される。いくつかの実施形態において、対象由来の試験試料は、血漿試料であり得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、GlcSphの存在量(例えば、試験試料中で測定される)が、参照値(例えば、参照対象または参照対象集団から得た参照試料中で測定した参照値)の少なくとも約1.2倍(例えば、約1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、10倍以上)である場合に、対象はFTDを有する、またはPGRNレベルが低下していると判定される。
【0052】
いくつかの実施形態では、GlcSphの存在量(例えば、試験試料中で測定される)が、参照値(例えば、参照対象または参照対象集団から得た参照試料中で測定した参照値)の少なくとも約1.2倍~約5倍(例えば、少なくとも約1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、または5倍)である場合に、対象はFTDを有する、またはPGRNレベルが低下していると判定される。いくつかの実施形態では、GlcSphの存在量が、参照値(例えば、参照対象または参照対象集団から得た参照試料中で測定した参照値)の約2倍~約3倍(例えば、約2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、または3倍)ある場合に、対象はFTDを有する、またはPGRNレベルが低下していると判定される。
【0053】
ビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される、FTDを有する、または有するリスクのある対象を特定するための方法、及び/または、FTDを治療するために、化合物を評価するための方法、または化合物、医薬組成物、もしくはそれらの投与レジメンに対する対象の応答をモニタリングするための方法において、GlcSphの存在量を測定することに加え、方法は、対象由来の試験試料中の1つ以上のビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)種の存在量を測定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本明細書に提供される方法は、FTDを治療するために1種以上のBMP種レベルを改善させるための化合物を対象に投与することをさらに含む。
【0054】
方法のいくつかの実施形態では、GlcSphの存在量及び1つ以上のBMP種の存在量の両方を、対象由来の同じ試験試料で測定することができる。他の実施形態では、2つの試験試料(例えば、同時に取得した2つの試験試料)を対象から取得することができ、一方の試験試料をGlcSphの存在量を測定するために使用し、もう一方の試験試料を1つ以上のBMP種の存在量を測定するために使用することができる。2つの試験試料は、対象の同じ流体、細胞、または組織(例えば、全血、血漿、細胞、組織、血清、脳脊髄液、間質液、唾液、尿、またはリンパ液)から取得することができる。他の実施形態では、2つの試験試料は、対象の異なる流体、細胞、または組織から(例えば、一方の試料を血漿から、もう一方の試料を脳組織から)取得することができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、GlcSphの存在量を測定することに加え、シングルBMP種の存在量が測定される。いくつかの実施形態では、2種以上のBMP種の存在量が測定される。いくつかの実施形態では、表1のBMP種のうちの少なくとも2、3、4、または5種以上の存在量が測定される。2種以上のBMP種の存在量が測定される場合、異なるBMP種の任意の組み合わせを使用することができる。
【0056】
いくつかの実施形態では、1種以上のBMP種は、2種以上のBMP種を含む。いくつかの実施形態では、1種以上のBMP種は、BMP(16:0_18:1)、BMP(16:0_18:2)、BMP(18:0_18:0)、BMP(18:0_18:1)、BMP(18:1_18:1)、BMP(16:0_20:3)、BMP(18:1_20:2)、BMP(18:0_20:4)、BMP(16:0_22:5)、BMP(20:4_20:4)、BMP(22:6_22:6)、BMP(20:4_20:5)、BMP(18:2_18:2)、BMP(16:0_20:4)、BMP(18:0_18:2)、BMP(18:0e_22:6)、BMP(18:1e_20:4)、BMP(18:3_22:5)、BMP(20:4_22:6)、BMP(18:0e_20:4)、BMP(18:2_20:4)、BMP(18:1_22:6)、BMP(18:1_20:4)、BMP(18:0_22:6)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、1種以上のBMP種は、BMP(18:1_18:1)、BMP(18:0_20:4)、BMP(20:4_20:4)、BMP(22:6_22:6)、BMP(20:4_22:6)、BMP(18:1_22:6)、BMP(18:1_20:4)、BMP(18:0_22:6)、BMP(18:3_22:5)、またはそれらの組み合わせを含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、試験試料は、培養細胞を含み、1種以上のBMP種は、BMP(18:1_18:1)を含む。いくつかの実施形態では、試験試料は、血漿、組織、尿、脳脊髄液(CSF)、及び/または脳組織もしくは肝組織を含み、1種以上のBMP種は、BMP(22:6_22:6)を含む。いくつかの実施形態では、試験試料は、肝組織を含み、1種以上のBMP種は、BMP(22:6_22:6)、BMP(18:3_22:5)、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、試験試料はCSFまたは尿を含み、1種以上のBMP種はBMP(22:6_22:6)を含む。いくつかの実施形態では、試験試料は、ミクログリアを含み、1種以上のBMP種は、BMP(18:3_22:5)を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、2種以上のBMP種の存在量を合計することができ、総存在量を参照値と比較することになる。例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142、143、144、145、146、または147種以上のBMP種(例えば、表1に列挙されているBMP種)の各々の存在量を合計し、次いで、総存在量を参照値と比較することができる。
【0060】
場合によっては、1種以上のBMP種は、ある種類の試料において、例えば、組織ベースの試料または血液試料に対する細胞ベースの試料(例えば、培養細胞)などのように、別の試料と比較した場合、差次的に(例えば、より豊富なまたはより少ない存在量で)発現され得る。したがって、いくつかの実施形態では、1種以上のBMP種の選択(すなわち、存在量の測定のための選択)は、試料の種類に依存する。いくつかの実施形態では、1種以上のBMP種は、例えば、試料(例えば、試験試料及び/または参照試料)が骨髄由来マクロファージ(BMDM)である場合、BMP(18:1_18:1)を含む。他の実施形態では、1種以上のBMP種は、例えば、試料が組織(例えば、脳組織、肝組織)、または血漿、尿、もしくはCSFを含む場合、BMP(22:6_22:6)を含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、内部BMP標準物質(例えば、BMP(14:0_14:0))を使用して、試料において1種以上のBMP種の存在量を測定、及び/または参照値を決定(例えば、参照試料において1種以上のBMP種の存在量を測定)する。例えば、既知量の内部BMP標準物質を試料(例えば、試験試料及び/または参照試料)に添加して、較正点として機能させることができ、それによって試料中に存在する1種以上のBMP種の量を判定することができる。いくつかの実施形態では、BMPを試料から抽出または単離するのに使用する試薬(例えば、メタノール)を、内部BMP標準物質で「スパイク」する。典型的には、内部BMP標準物質は、対象内で天然に生じないものである。
【0062】
BMP種を使用した、FTDを有する、または有するリスクのある対象の特定
本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、FTDを有する、または有するリスクのある対象を特定するためにGlcSphの存在量を使用することに加えて、1種以上のBMP種の存在量も係る対象を特定するために使用することができる。対象は、試験試料における少なくとも1種(例えば、少なくとも1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、または145種以上)のBMP種(例えば、表1に列挙されているBMP種)の存在量が、参照対象または参照対象集団から取得した対応する細胞、組織、または体液参照試料で測定された参照値よりも高い場合(試験試料がBMDMである場合)、または低い場合(試験試料が肝臓、脳、脳脊髄液、血漿、もしくは尿である場合)、FTDを有するか、またはPGRNレベルが低下していると判定される。
【0063】
いくつかの実施形態では、対象は、BMP(16:0_18:1)、BMP(16:0_18:2)、BMP(18:0_18:0)、BMP(18:0_18:1)、BMP(18:1_18:1)、BMP(16:0_20:3)、BMP(18:1_20:2)、BMP(18:0_20:4)、BMP(16:0_22:5)、BMP(20:4_20:4)、BMP(22:6_22:6)、BMP(20:4_20:5)、BMP(18:2_18:2)、BMP(16:0_20:4)、BMP(18:0_18:2)、BMP(18:0e_22:6)、BMP(18:1e_20:4)、BMP(20:4_22:6)、BMP(18:0e_20:4)、BMP(18:2_20:4)、BMP(18:1_22:6)、BMP(18:1_20:4)、BMP(18:0_22:6)、及びBMP(18:3_22:5)からなる群から選択されるBMP種のうちの少なくとも1種(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、または23種すべて)の存在量が、参照対象または参照対象集団から取得した対応する細胞、組織、または体液参照試料で測定された参照値と比較してBMDMにおいて上昇している場合、または肝臓、脳、脳脊髄液、血漿、もしくは尿において減少している場合、FTDを有するか、またはPGRNレベルが低下していると判定される。
【0064】
いくつかの実施形態では、対象は、BMP(18:1_18:1)、BMP(18:0_20:4)、BMP(20:4_20:4)、BMP(22:6_22:6)、BMP(20:4_22:6)、BMP(18:1_22:6)、BMP(18:1_20:4)、BMP(18:0_22:6)及びBMP(18:3_22:5)からなる群から選択されるBMP種のうちの少なくとも1種(例えば、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種または8種すべて)の存在量が、参照対象または参照対象集団から取得した対応する細胞、組織、または体液参照試料で測定された参照値と比較して、BMDMにおいて上昇している場合、または肝臓、脳、脳脊髄液、血漿もしくは尿において減少している場合、FTDを有するか、またはPGRNレベルが低下していると判定される。
【0065】
いくつかの実施形態では、対象は、BMP(18:1_18:1)レベルが、参照対象または参照対象集団から取得した対応するBMDM参照試料で測定された参照値と比較して、BMDMにおいて上昇している場合、FTDを有するか、またはPGRNレベルが低下していると判定される。他の実施形態では、対象は、BMP(22:6_22:6)が、参照対象または参照対象集団から取得した対応する細胞、組織、または体液参照試料で測定された参照値と比較して、血漿、尿、脳脊髄液(CSF)、及び/または脳もしくは肝臓組織において減少している場合、FTDを有するか、またはPGRNレベルが低下していると判定される。他の実施形態では、対象は、BMP(22:6_22:6)レベル及び/またはBMP(18:3_22:5)レベルが肝組織において低下している場合、FTDを有するか、またはPGRNレベルが低下していると判定される。他の実施形態では、対象は、BMP(18:3_22:5)レベルがミクログリアにおいて低下している場合、FTDを有するか、またはPGRNレベルが低下していると判定される。
【0066】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくともBMP種のうちの1つの存在量(例えば、試験試料中で測定される)が、参照対象または参照対象集団から取得した対応する細胞、組織、または体液参照試料で測定された参照値と比較して、少なくとも約1.2倍(例えば、約1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍、7.5倍、8倍、8.5倍、9倍、9.5倍、または10倍以上))BMDMにおいて高い場合、または肝臓、脳、脳脊髄液、血漿、もしくは尿において低い場合、FTDを有するか、またはPGRNレベルが低下していると判定される。
【0067】
いくつかの実施形態では、対象は、少なくともBMP種のうちの1つの存在量(例えば、試験試料中で測定される)が、参照値(例えば、参照対象または参照対象集団から得た対応する細胞、組織または体液参照試料中で測定された対応する参照値)の少なくとも約1.2倍~約5倍(例えば、少なくとも約1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8倍、4.9倍、または5倍)である場合に、FTDを有する、またはPGRNレベルが低下していると判定される。いくつかの実施形態では、対象は、少なくともBMP種のうちの1つの存在量が、参照対象または参照対象集団から取得した対応する細胞、組織、または体液参照試料で測定された参照値と比較して、約2倍~約3倍(例えば、約2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、または3倍)BMDMにおいて高い場合、または肝臓、脳、脳脊髄液、血漿、もしくは尿において低い場合、FTDを有するか、またはPGRNレベルが低下していると判定される。
【0068】
検出技術
いくつかの実施形態では、本開示の方法に従って、質量分析法(MS)を使用して、GlcSphの存在量及び/またはBMPを検出及び/または測定する。任意の好適なMS技術を使用することができる。係る技術としては、限定されないが、単一の質量分析計(例えば、四重極)を使用する単一質量分析法(MS)、及び、一連の質量分析計(例えば、3つの質量分析計)を使用して、複数のラウンドの質量分析法を実施し、典型的には、ラウンドの間に分子断片化ステップを有するタンデム質量分析法(MS/MS)が挙げられる。MS及びMS/MS技術は、液体クロマトグラフィー(LC)(例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC))またはガスクロマトグラフィー(GC)技法と組み合わせることができる。そのような液体クロマトグラフィー-質量分析法(LC-MS)、液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)、ガスクロマトグラフィー-質量分析法(GC-MS)、及びガスクロマトグラフィー-タンデム質量分析法(GC-MS/MS)の方法により、典型的にはMSまたはMS/MS単独で可能であるものよりも強化された質量分解及び質量測定が可能となる。
【0069】
いくつかの実施形態では、抗体ベースの方法を使用して、GlcSph及び/またはBMP種の存在量を検出及び/または測定する。好適な方法の非限定的な例としては、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫蛍光法、及び放射免疫測定法(RIA)技法が挙げられる。ELISA、免疫蛍光法、及びRIA技法を実施するための方法は、当該技術分野において既知である。
【0070】
本開示の方法において、試料が検出に十分な量のGlcSph及び/またはBMPを含み、それによりその存在量を測定することができる限り、任意の数の試料の種類を試験試料及び/または参照試料として使用することができる。非限定的な例としては、血液(例えば、全血、血漿、血清)、細胞、組織、体液(例えば、脳脊髄液、尿、気管支肺胞洗浄液、リンパ液、精液、母乳、羊水)、大便、唾液、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。好適な細胞の種類の非限定的な例としては、血液細胞(例えば、末梢血単核細胞(PBMC)、赤血球、白血球)、神経細胞(例えば、脳細胞、大脳皮質細胞、脊髄細胞)、骨髄由来マクロファージ(BMDM)、骨髄細胞、肝細胞、腎細胞、脾細胞、肺細胞、眼細胞(例えば、網膜色素上皮(RPE)細胞などの網膜細胞)、絨毛膜絨毛細胞、筋細胞、皮膚細胞、線維芽細胞、心臓細胞、リンパ節細胞、またはそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、試料は、細胞の一部を含む。いくつかの実施形態では、試料は、細胞または組織から精製されている。精製試料の非限定的な例としては、エンドソーム、リソソーム、細胞外小胞(例えば、エクソソーム、微小胞)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態では、試料(例えば、試験試料及び/または参照試料)は、血漿を含む。
【0072】
いくつかの実施形態では、試料(例えば、試験試料及び/または参照試料)は、脳細胞または組織を含む。脳細胞または組織は、脳の前頭葉または側頭葉由来であり得る。特定の実施形態では、脳細胞または組織は、脳の前頭葉の上前頭回、中前頭回、下前頭回、または、中心前回由来であり得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、試料(例えば、試験試料及び/または参照試料)は、培養細胞である細胞を含む。非限定的な例としては、BMDM及びRPE細胞が挙げられる。BMDMは、例えば、PBMCを含む試料を入手し、その中に含有される単球を培養することによって得ることができる。
【0074】
好適な組織試料の種類の非限定的な例としては、神経組織(例えば、脳組織、大脳皮質組織、脊髄組織)、肝組織、腎組織、筋組織、心臓組織、眼組織(例えば、網膜組織)、リンパ節、骨髄、皮膚組織、血管組織、肺組織、脾組織、弁組織、及びそれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、試験試料及び/または参照試料は、脳組織または肝組織を含む。
【0075】
治療に対する応答のモニタリング
一態様では、本開示は、対象におけるPGRNレベルをモニタリングするための方法を提供する。別の態様では、FTDを治療するために、化合物、医薬組成物、もしくはそれらの投与レジメンに対する対象の応答、または任意の療法もしくは治療薬に対する応答をモニタリングするための方法が提供される。
【0076】
典型的には、FTDを有する、または有するリスクのある対象由来の試験試料におけるGlcSphの存在量は、1つ以上の参照値(例えば、対応する参照値)と比較することができる。GlcSphの存在量に加えて、FTDを有する、または有するリスクのある対象由来の試験試料における1種以上のBMP種の存在量もまた測定し、1つ以上の参照値(例えば、対応する参照値)と比較することができる。いくつかの実施形態では、GlcSph値及び/またはBMP値は、対象が治療を受ける前に、及び対象が治療を受けた後の1つ以上のより後の時点で測定される。治療後のより後の時点で測定された存在量の値を、治療前の値と比較して、対象が療法に対してどのように応答しているかを判定することができる。より後の時点で測定された存在量の値はまた、健常対照などの参照値と比較して、対象が療法に対してどのように応答しているかを判定することができる。参照値は、対象由来の試験試料の細胞、組織、または体液に対応する、健常対照の細胞、組織、または体液からのものであり得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、参照値は、参照試料において測定されたGlcSphの存在量である。いくつかの実施形態では、参照値は、参照試料において測定された1種以上のBMP種の存在量である。参照値は、測定された存在量の値(例えば、参照試料において測定された存在量の値)である場合もあれば、または測定された存在量の値から導出もしくは外挿される場合もある。いくつかの実施形態では、参照値は、例えば、参照値を複数の試料または対象集団から得る場合、値の範囲である。さらに、参照値は、単一の値(例えば、測定された存在量の値、平均値、もしくは中央値)として、または標準偏差もしくは標準誤差を伴うかもしくは伴わない値の範囲として、表すことができる。
【0078】
2つ以上の試験試料を(例えば、対象から)得る場合、それらを得る時点は、約1、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60分間以上;約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間以上;約1、2、3、4、5、6、もしくは7日間以上;約1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10週間以上;またはさらに長い期間、間隔を空けることができる。3つ以上の試験試料を得る場合、各試験試料を得るときの間の時間間隔は、すべて同じであってもよく、間隔はすべて異なっていてもよく、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、第1の試験試料を、対象がFTDについて治療される前に得(すなわち、治療前の試験試料)、第2の試験試料を、対象がFTDについて治療された後に得る(すなわち、治療後の試験試料)。いくつかの実施形態では、第1の試験試料と第2の試験試料の両方を、対象が治療された後に対象から得る。すなわち、第1の試験試料を、第2の試験試料よりも、治療中のより早い時点で対象から得る。いくつかの実施形態では、2つ以上(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上)の治療前及び/または治療後の試験試料を対象から得る。さらに、得る治療前及び治療後の試験試料の数は、同じである必要はない。
【0080】
方法のいくつかの実施形態では、GlcSphの存在量及び1つ以上のBMP種の存在量の両方を、対象由来の同じ試験試料で測定することができる。他の実施形態では、2つの試験試料(例えば、同時に取得した2つの試験試料、または異なる時間に取得した2つの試験試料)を対象から取得することができ、一方の試験試料をGlcSphの存在量を測定するために使用し、もう一方の試験試料を1つ以上のBMP種の存在量を測定するために使用することができる。2つの試験試料は、対象の同じ流体、細胞、または組織(例えば、全血、血漿、細胞、組織、血清、脳脊髄液、間質液、唾液、尿、またはリンパ液)から取得することができる。他の実施形態では、2つの試験試料は、対象の異なる流体、細胞、または組織(例えば、一方の試料を血漿から、もう一方の試料を脳細胞または脳組織から)から取得することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、測定されたGlcSphの存在量が、対象がいずれの治療も受ける前の対象由来の参照試料から取得した参照値の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%以内である場合、対象は治療に応答していないと判定され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、測定されたGlcSphの存在量が、健常対照対象由来の参照試料から取得した参照値の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%以内である場合、対象は治療に応答していると判定され得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、測定された1種以上のBMP種の存在量が、対象がいずれの治療も受ける前の対象由来の参照試料から取得した参照値の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%以内である場合、対象は治療に応答していないと判定され得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、測定された1種以上のBMP種の存在量が、健常対照対象由来の参照試料から取得した参照値の約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、または20%以内である場合、対象は治療に応答していると判定され得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、測定された1種以上のBMP種の存在量が、参照値よりも約30%、35%、40%、45%、または50%以上高いか、または低い場合、対象は治療に応答していないと判定され得る。
【0086】
対象が、FTDの治療に応答していない場合、いくつかの実施形態では、1つ以上の治療剤(例えば、PGRN)の投与量を変更(例えば、増加)及び/または投与間隔を変更する(例えば、投与間の時間を短縮する)。いくつかの実施形態では、対象が治療に応答していない場合、異なる治療剤が選択される。いくつかの実施形態では、対象が治療に応答していない場合、1つ以上の治療剤を中止する。
【0087】
FTDを治療するための化合物
本明細所に開示される方法のいくつかの実施形態では、FTDを治療するための化合物は、PGRNまたはPGRN誘導体であり得る。PGRN誘導体は、PGRNの修飾された形態を指し、これは、PGRNのドラッガビリティを増加させる、体内の特定の領域にPGRNを標的させる、その薬物動態または薬力学的特性を向上する、その製造及び/または貯蔵寿命を援助するために修飾される。
【0088】
PGRN誘導体は、Fcポリペプチドの二量体に付着したPGRNを含む、Fc融合タンパク質を含むことができる。係る融合タンパク質中に、いくつかの実施形態では、融合タンパク質は1つのPGRN分子及びFcポリペプチドの二量体を含むことができる。例えば、PGRNは、直接またはリンカーを介して、FcポリペプチドのN末端またはC末端に二量体中で融合することができる。他の実施形態では、融合タンパク質は、2つのPGRN分子及びFcポリペプチドの二量体を含むことができる。例えば、第1のPGRNは、直接またはリンカーを介して、第1のFcポリペプチドのN末端またはC末端に二量体中で融合することができ、第2のPGRNは、直接またはリンカーを介して、第2のFcポリペプチドのN末端またはC末端に二量体中で融合することができる。係る融合タンパク質は、国際特許公開第WO2019/246071号に詳しく記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0089】
本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態では、FTDを治療するための化合物は、1つ以上の突然変異をグラニュリン(GRN)遺伝子に有する対象におけるPGRNレベルを増加させることができる、遺伝子治療アプローチにおける野生型PGRNをコードする導入遺伝子を含む発現構築物であり得る。例えば、発現構築物を含む組み換え型アデノ関連ウイルスベクターを使用して、いかなる突然変異も含まない野生型GRN遺伝子を対象に送達することができる。係る遺伝子治療は、例えば、米国特許公開第US2020/0071680号に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0090】
いくつかの実施形態では、FTDを治療するための化合物は、ソルチリン阻害剤、例えば、抗ソルチリン抗体であり得る。ソルチリンは、いくつかのリガンドのレセプターであり、かつまた、分解のためにトランスゴルジネットワークから後期エンドソーム及びリソソームにカーゴを分別選別するよう機能するI型膜貫通タンパク質である。ソルチリンはPGRNに結合し、リソソーム分解のためにそれを標的にすることによって、PGRNのレベルをネガティブに調製する。FTDを治療するために使用されるソルチリン阻害剤とは、ソルチリンとPGRNとの間の相互作用を阻害し、ソルチリンがPGRNに結合することを防止し、及び/またはソルチリンのレベルを減少させることができる化合物を指す。いくつかの実施形態では、ソルチリン阻害剤は、抗ソルチリン抗体であり得る。抗ソルチリン抗体及びそのバリアントは、例えば、国際特許公開第WO2016/164637号及び同WO2020/014617号に記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。WO2016/164637に記載される特定の抗体には、S-2、S-5、S-6、S-8、S-14、S-15、S-15-10-7、S-15-6、S-18、S-19、S-20、S-21、S-22、S-29、S-30、S-45、S-49、S-51、S-57、S-60、S-60-1、S-60-2、S-60-3、S-60-4、S-60-5、S-60-6、S-60-7、60-8、S-60-9、S-61、S-63、S-64、S-65、S-72、S-82、及びS-83と称すクローンが含まれる。WO2020/014617に記載される特定の抗ソルチリン抗体には、S-60、S-60-1、S-60-2、S-60-3、S-60-4、S-60-7、S-60-8、S-60-10、S-60-11、S-60-12、S-60-13、S-60-14、S-60-15[N33(wt)]、S-60-15.1[N33T]、S-60-15.2[N33S]、S-60-15.3[N33G]、S-60-15.4[N33R]、S-60-15.5[N33D]、S-60-15.6[N33H]、S-60-15.7[N33K]、S-60-15.8[N33Q]、S-60-15.9[N33Y]、S-60-15.10[N33E]、S-60-15.11[N33W]、S-60-15.12[N33F]、S-60-15.13[N33I]、S-60-15.14[N33V]、S-60-15.15[N33A]、S-60-15.16[N33M]、S-60-15.17[N33L]、S-60-16;S-60-18、S-60-19、S-60-24と称すクローン、及び末端リジン(例えば、S-60-15.1[N33T])を有するまたは有さないFcLALAPSを有する重鎖を有するバリアントが含まれる。いくつかの実施形態では、抗ソルチリン抗体は、AL101またはAL100である。
【0091】
IV.キット
別の態様では、本開示は、対象(例えば、試験対象及び/または参照対象もしくは参照対象集団)においてPGRNレベルをモニタリングする際に使用するためのキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、(例えば、対象から得た試験試料において、及び/または参照対象もしくは参照対象集団から得た参照試料において)GlcSphの存在量の測定または較正に使用するためのものである。いくつかの実施形態では、キットは、(例えば、試験試料及び/または参照試料などの試料において)GlcSphの存在量を測定または較正するために使用することができる、GlcSph標準物質(例えば、内部GlcSph標準物質)を含む。いくつかの実施形態では、GlcSph標準物質は、対象において天然に存在しないGlcSphを含む。いくつかの実施形態では、GlcSph標準物質は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ、及び/またはブタにおいて天然に存在しないGlcSphを含む。いくつかの実施形態では、GlcSph標準物質は、ヒトにおいて天然に存在しないGlcSphを含む。いくつかの実施形態では、GlcSph標準物質は、実施例に使用されるGlcSph(d5)などの重水素標識GlcSphである。
【0092】
さらに、GlcSphの存在量を測定または較正することに加えて、いくつかの実施形態では、キットはまた、(例えば、対象から得た試験試料において、及び/または参照対象もしくは参照対象集団から得た参照試料において)1種以上のビス(モノアシルグリセロ)リン酸(BMP)種の存在量を測定または較正するために使用するためのものである。いくつかの実施形態では、キットは、(例えば、試験試料及び/または参照試料などの試料において)1種以上のBMP種の存在量を測定または較正するために使用することができる、BMP標準物質(例えば、内部BMP標準物質)を含む。いくつかの実施形態では、BMP標準物質は、対象において天然に存在しないBMP種を含む。いくつかの実施形態では、BMP標準物質は、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類、イヌ、及び/またはブタにおいて天然に存在しないBMP種を含む。いくつかの実施形態では、BMP標準物質は、ヒトにおいて天然に存在しないBMP種を含む。いくつかの実施形態では、BMP標準物質は、BMP(14:0_14:0)を含む。
【0093】
いくつかの実施形態では、キットは、1つ以上の試薬をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、キットは、(例えば、対象から)試験試料及び/または(例えば、参照対象または参照対象集団から)参照試料を得るための試薬、試料を処理する(例えば、試験試料及び/または参照試料からGlcSph及び/またはBMPを単離または精製する)ための試薬、試料(例えば、試験試料及び/または参照試料)においてGlcSph及び/またはBMPの存在量を測定するための試薬、及び/または試料(例えば、試験試料及び/または参照試料)においてGlcSph及び/またはBMPの存在量を較正するための試薬を含む。
【0094】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法を実践するための指示(例えば、プロトコール)を含有する説明用資料(例えば、対象(例えば、試験対象及び/または参照対象もしくは参照対象集団)におけるPGRNレベルをモニタリングするキットを使用するための説明書)をさらに含む。該説明用資料は通常、書かれた資料または印刷物を含むが、それに限定されない。かかる説明を保存し、それらをエンドユーザーに伝えることが可能な任意の媒体が、本開示によって企図される。かかる媒体としては、電子記憶媒体(例えば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(例えば、CD-ROM)等が挙げられるがこれらに限定されない。かかる媒体は、かかる説明用資料を提供するインターネットサイトのアドレスを含む場合がある。
【実施例
【0095】
V.実施例
以下の実施例は例示目的のためのみに提供され、いかなる方法によっても本開示を限定することを意図しない。
【0096】
一般的な手順:LC-MS/MSを使用したヒト血漿中のグルコシルスフィンゴシン(GlcSph)の定量化
LC-MS/MS分析のための試料を調製するために、20μLのアリコートの較正標準物質(STD)、品質管理試料(QC)、及び未知の血漿試料を清潔な96-ウェルプレートに移す。水溶液中の20μLの1%ウシ血清アルブ(BSA)をSTD及びQCに添加する一方で、20μLのメタノールを血漿試料及び血漿マトリックスQCに添加する。10μLの内部標準使用液(0.5%ギ酸及び5mMギ酸アンモニウムを有するアセトニトリル/イソプロピルアルコール/水92.5/5/2.5中の5ng/mLのGlcSph-d5)を各試料に添加し、その後、水中の150μLの1%水酸化アンモニウムを添加してpHを調製する。混合した後、試料をISOLUTE(登録商標)SLE+200μL Supported Liquid Extraction Plate(Biotage,San Jose,CA)に装填する。試料がプレート吸収剤に完全に吸収されたら、酢酸エチルを使用して分析物を清潔な収集プレートに溶離する。溶離液を40℃の浄化窒素ガス流の存在下で完全に乾燥させ、0.5%ギ酸及び5mMギ酸アンモニウムを有する150μLのアセトニトリル/イソプロピルアルコール/水92.5/5/2.5中で再構成した後、分析のために試料をLC-MS/MSに注入した。
【0097】
LC-MS/MS分析を、Sciex API6500 Triple Quad mass spectrometerを備えたExionLC AD UHPLCシステム(AB Sciex,Redwood City,CA)にて実施する。GlcSph及びGlcSph-d5のMRM移行はそれぞれ462.3~282.1及び467.6~287.4である。陽イオンモードでエレクトロスプレイイオン化を実施した。デクラスタリング電位は60vであり、衝突エネルギーは31vである。HPLCクラマトグラフィーをAcquity BEH HILICカラム(1.7μm、100×2.1mm)(Waters Co.,Milford,MA)で確立し、カラムを実施中は55℃に維持する。
【0098】
マトリックス干渉からGlcSphをLC分離するために、水中の0.1%ギ酸及び10mMギ酸アンモニウム(移動相1)及びアセトニトリル中の0.1%ギ酸(移動相2)の2つの移動相を使用する。流量は0.4mL/分である。移動相B濃度を93%に初期設定し、6.5分間維持した後、6.51分に50%に減少させ、0.99分間維持した後、7.51分に93%に増加させる。2.49分間93%で維持した後、勾配は10分に終了する。
【0099】
実施例1.GRN関連FTDのためのバイオマーカーとしてのGlcSph
National Institute on Aging(NIA)により付与される共同契約助成(U24AG21886)の下で政府支援を受けている、National Cell Repository for Alzheimer’s Disease(NCRAD)からの試料を、この研究に用いた。孤発性FTD患者(n=26)、GRN突然変異FTD患者(n=16)、及び臨床的正常対照対象(n=20)から血漿試料を得た。
【0100】
血漿試料を匿名にし、ランダム化し、メタノールで代謝産物/脂質抽出に供し、量的LC-MS/MSプラットフォームで分析した。検体の同一性を標準化合物で確認し、各検体のシグナルを、対応する内部標準物質に対して正規化した。生物統計学者がバイオマーカーデータを分析した。
【0101】
図1に示されるように、遺伝子変異のない臨床的正常対照と比較して、GRN関連FTD患者(P<0.01)由来の血漿試料中でGlcSphの有意な増加がみられるが、非GRN FTD患者にはみられない。
【0102】
実施例2.様々な試料におけるGlcSphの液体クロマトグラフィー質量(LC-MS)分析
組織試料を計量し(20mg)、次いで、TissueLyserホモジナイザー(Qiagen,Valencia,CA,USA)を使用して、重水素標識GlcSph、GlcSph(d5)でスパイクした200mLのメタノール中でホモジナイズした。ホモジネートを、4℃で20分間、14,000rpmで回転させた。次いで、さらなる分析のために、上清をLC-MSバイアルに移した。次いで、LC-MSによるさらなる分析のために、メタノール抽出物を、窒素流存在下で4時間乾燥させ、5mMのギ酸アンモニウム及び0.5%ギ酸を有する100μLの92.5/5/2.5 ACN/IPA/HO中に再懸濁した。
【0103】
生体液(10μL)を、100μLのGlcSph(d5)含有メタノールでタンパク質沈殿させ、4℃で20分間、14,000rpmで回転させた。次いで、さらなる分析のために、上清をLC-MSバイアルに移した。次いで、LC-MSによるさらなる分析のために、メタノール抽出物を、窒素流存在下で4時間乾燥させ、5mMのギ酸アンモニウム及び0.5%ギ酸を有する100μLの92.5/5/2.5 ACN/IPA/HO中に再懸濁した。
【0104】
細胞をPBSでしっかりと洗浄し、内部標準物質としてGlcSph(d5)でスパイクした水:メタノール[1:9、vol:vol]の混合物でGlcSphを抽出した。試料をボルテックス混合し、14,000rpmで20分間、4℃で遠心分離した。次いで、さらなる分析のために、上清をLC-MSバイアルに移した。次いで、LC-MSによるさらなる分析のために、メタノール抽出物を、窒素流存在下で4時間乾燥させ、5mMのギ酸アンモニウム及び0.5%ギ酸を有する100μLの92.5/5/2.5 ACN/IPA/HO中に再懸濁した。
【0105】
エレクトロスプレー質量分析(QTRAP 6500+)とカップリングされた液体クロマトグラフィー(UHPLC Nexera X2)によってGlcSph分析を実施した。各分析について、2~5μLの試料を、45℃で0.48mL/分の流速を使用して、HALO HILIC2.0μm、3.0×150mmカラム(Advanced Materials Technology,PN91813-701)に注入した。移動相Aは、5mMギ酸アンモニウム及び0.5%ギ酸を有する92.5/5/2.5 ACN/IPA/HOで構成された。移動相Bは、5mMギ酸アンモニウム及び0.5%ギ酸を有する92.5/5/2.5 H2O/IPA/ACNで構成された。勾配を次のようにプログラムした:0.0~2.0分は100%B、2.1分に95%B、4.5分に85%B、85%Bで6.0分まで維持、6.1分に0%Bに低下させ、7.0分まで維持、7.1分に100%まで再度上昇させ、8.5分まで維持。エレクトロスプレイイオン化を陽イオンまたは陰イオンモードで実施した。次の設定を適用した:カーテンガス30psi;衝突気体を中に設定;イオンスプレー電圧5500V;温度400℃;イオン源ガス1 50psi;イオン源ガス2 60psi;入口電位10V;及び衝突セル出口電位12.5V。表2は、GlcSph及びGalSph種のLC-MS分析の取得パラメータ及び保持時間(RT)情報を示す。
【0106】
GlcSphを、保持時間及び市販の参照標準物質(Avanti Polar Lipids,Birmingham,AL,USA)のMRM特性に基づいて同定した。定量化を、MultiQuant3.02(Sciex)を使用して内部標準物質GlcSph(d5)に対して実施した。代謝産物を、総タンパク質量、組織重量、または体積のいずれかに対して正規化した。
【0107】
実施例3.GrnKO/hTfR.KIマウスの血漿中のGlcSphの分析
血漿採取ならびに脂質抽出及びGlcSph分析のための処理
GrnKO/hTfR.KIマウスを、国際特許公開第WO2019/246071号に記載されるように生成した。
【0108】
Fusion1を尾静脈を介してGrnKO/hTfR.KIマウスに注入した。致死量のトリブロモエタノールを使用してGrnKO/hTfR.KIマウスを麻酔状態にし、25ゲージ針(参照番号SS-01T2516)に取り付けられた1mLテルモツベルクリン注射器を使用して、全血を心臓穿刺によって採取した。次いで、血液をEDTAコーティングチューブ(Sarstedt Microvette 500 K3E、参照番号201341102)に移し、約10回反転させた。次に、試料を4℃及び12700RPMで7分間回転させた。次に、上清を、低タンパク質結合を有する新しいチューブに移し、急速に冷凍した。脂質を抽出するために、血漿を氷上で解凍し、10μLを96ウェルV型ボトムハーフディープウェルプレート(Waters、参照番号186005837)に移した。内部標準物質を含む、200μLのLC-MSグレードメタノールを血漿試料に添加し、血漿試料を室温で650rmpで、5分間振盪した。次に、試料を-20℃で1時間保管し、タンパク質を沈殿させた。このインキュベーションの後、プレートを20分間、4℃で4,000xgで回転させた。次いで、50μLの上清を抽出しガラスインサートを備えた96ウェルプレート(Analytical Sales&Services、参照番号27350)に移した。次に、試料を窒素流存在下で約2時間乾燥させ、5mMのギ酸アンモニウム及び0.5%のギ酸を有する100μLアセトニトリル/イソプロパノール/水(92.5/5/2.5、v/v/v)中で再懸濁させた。
【0109】
GlcSphのためのLC-MS測定法
GlcSph分析を、エレクトロスプレー質量分析法(Sciex QTRAP6500+、Sciex,Framingham,MA,USA)と連結した液体クロマトグラフィー(Shimadzu Nexera X2 システム、Shimadzu Scientific Instrument,Columbia,MD,USA)により実施した。各分析について、10μLの試料を、45℃で0.45mL/分の流速を使用して、HALO HILIC2.0μm、3.0×150mmカラム(Advanced Materials Technology,PN91813-701)に注入した。移動相Aは、5mMギ酸アンモニウム及び0.5%ギ酸を有する92.5/5/2.5 ACN/IPA/HOで構成された。移動相Bは、5mMギ酸アンモニウム及び0.5%ギ酸を有する92.5/5/2.5 HO/IPA/ACNで構成された。勾配を次のようにプログラムした:0.0~3.1分は100%B、3.2分に95%B、5.7分に85%B、85%Bで7.1分まで維持、7.25分に0%Bに低下させ、8.75分まで維持、10.65分に100%まで再度上昇させ、11分まで維持。エレクトロスプレイイオン化を陽イオンモードで、次の設定を適用して実施した:カーテンガス25;衝突気体を中に設定;イオンスプレー電圧5500;温度350℃;イオン源ガス1 55;イオン源ガス2 60。Analyst1.6.(Sciex)を、多重反応モニタリングモード(MRM)で使用して、以下のパラメータを用いデータ取得を実施した:滞留期間(ミリ秒)及びコリジョンエネルギー(CE);入口電位(EP)10;及びコリジョンセル出口電位(CXP)12.5。GlcSphを、同位体標識内部標準物質GlcSph(d5)を使用して定量化した。MultiQuant3.02(Sciex)を使用して定量化を実施した。
【0110】
血漿中のGlcSphについての結果
GlcSphのレベルを、5mg/kgのFusion1(図2のGrnKO+Fus.1)のIV投与を受けたGrnKO/hTfR.KIマウス(図2のGrnKO)、同腹仔の対照(図2のGrnWT)、及びGrnKO/hTfR.KIマウスの血漿中で評価した。Fusion1は、Fcポリペプチドの二量体に融合されたPGRN分子を含むPGRN誘導体である。特に、Fusion1は、(1)(GS)リンカーを介して二量体中の第1のFcポリペプチドのC末端に融合したPGRN分子、及び(2)二量体中の第2のFcポリペプチドを含む。Fusion1中の第1のFcポリペプチドは、ヘテロ二量体化ならびにL234A及びL235A突然変異(EU番号付けスキームに従った)を促進してエフェクター機能を低減するために、穴突然変異T366S、L368A、及びY407V(EU番号付けスキームに従った)で修飾され、第2のFcポリペプチドは、トランスフェリン受容体(TfR)結合、ノブ突然変異T366W、並びにL234A及びL235A突然変異を可能にする突然変異で修飾される。Fusion1は、国際特許公開第WO2019/246071号(そこでのFusion11に対応)に詳しく記載されており、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0111】
GrnKOマウスにおいて、血漿中のGlcSphレベルが、GrnWTマウスよりも2.4倍高かった。(それぞれ0.456±0.065ng/μL&0.190±0.021ng/μL、p=0.002)。しかし、Fusion1治療を受けた7日後、GrnKOマウスの血漿中のGlcSphレベルが、Fusion1を受けていないGrnKOマウスのGlcSphレベルと比較して、71%減少した(0.2661±0.05218ng/μL、p=0.030)。
【0112】
実施例4.GrnKO/hTfR.KIマウスの脳及び肝臓中のGlcSphの分析
GrnKO/hTfR.KIマウスにおけるGlcSphの発現増加が血漿に特有のものであるのか、または組織でも見出されるのかを判定するために、GrnKO/hTfR.KIマウスにFusion1またはFusion2を週1回の注射で5mpkで6週間投与した、インビボ実験を実施した。Fusion1は、上記実施例3、及び国際特許公開第WO2019/246071号(そこでのFusion11に対応)に記載されている。Fusion2は、Fusion1と同様であるが、Fusion2中の第2のFcポリペプチドはTfRに結合するように修飾されていない。Fusion2は、(1)(GS)リンカー(第1のFcポリペプチドは、ヘテロ二量体化ならびにL234A及びL235A突然変異(EU番号付けスキームに従った)を促進してエフェクター機能(国際特許公開第WO2019/246071号における配列番号215)を低減するために、穴突然変異T366S、L368A、及びY407V(EU番号付けスキームに従った)で修飾される)を介して第1のFcポリペプチドのC末端に融合したPGRN分子、及び(2)ノブ突然変異T366W、並びにL234A及びL235A突然変異(国際特許公開第WO2019/246071号における配列番号262)で修飾された第2のFcポリペプチドを含む。Fusion1がヒトTfRに結合することができるのに対し、Fusion2はできない。GrnKO/hTfR.KIマウスの脳、肝臓及び血漿中のGlcSphレベルを測定し、Fusion1及びFusion2のこの表現型を回復する能力を試験した。
【0113】
血漿採取及びGlcSph分析のための調製を実施例3に記載の通りに実行した。脳及び肝臓組織の採取及びGlcSph分析のための調製は以下に記載の通りである。
【0114】
脳及び肝臓組織収集ならびにGlcSph分析のための処理
組織LC-MS調製について、組織採取中に、約20mg(すなわち、20±2mg)の大脳皮質または肝臓組織を解剖し、秤量し、急速凍結した。内部標準物質でスパイクした400μLのメタノールを各試料に添加し、25Hzで30秒間振盪することによって、3mmタングステンカーバイドビーズで均質化した。次いで、メタノール画分を14,000g、4℃、20分間の遠心分離を介して単離し、その後、上清を96ウェルプレートに移し、-20℃で1時間インキュベートし、その後、さらに4,000g、4℃、20分間の遠心分離にかけ、LC-MS分析のためにガラスバイアルに移した。
【0115】
GlcSphの分析について、メタノール画分のアリコートをNガス存在下で乾燥させ、次に、5mMのギ酸アンモニウム(MSグレード)及び0.5%のギ酸(MSグレード)を有する100μLの92.5/5/2.5 CAN/IPA/H2(MSグレード)中で再懸濁させた。試料をボルテックスし、その後、遠心分離にかけガラスバイアルに移した。GlcSphについてのLC-MS測定法を実施例3に記載の通りに実施した。
【0116】
脳、肝臓及び血漿中のGlcSphについての結果
GrnKO/hTfR.KIマウスは、血漿について観察されたように、対照マウスと比較してより高いGlcSphの脳及び肝臓レベルを有することが見出された。5mpkで6週間融合タンパク質を週1回投与した後、Fusion1がGrnKO/hTfR.KIマウスにおける脳中のGlcSphレベルを完全に回復したことが見出された一方で、Fusion2は、この表現型(図3A)を部分的にのみ回復しており、このことは、TfRに結合する能力がFusion1のインビボでの効果を増加させることを示している。対照的に、Fusion1及びFusion2の両方が、GrnKO/hTfR.KIマウス(図3B)の肝臓中(末梢組織)GlcSphレベルを同程度に回復することができた。Fusion1及びFusion2の両方はまた、GrnKO/hTfR.KIマウス(図3C)の血漿中のGlcSphレベルを回復した。
【0117】
これらのデータを合わせると、脳細胞を含む、GrnKO/hTfR.KIマウス中でGlcSphレベルの増加が広く観察され、ヒトTfRに結合することができる組換えPGRN融合タンパク質が、慢性投与後にGrnKO/hTfR.KIマウス中の血漿、肝臓、及び脳におけるこの異常を訂正することがきることを示す。
【0118】
本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示目的のためのみであり、それらを考慮した様々な修正または変更が当業者に提案され、本出願の趣旨及び範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれるべきであることが理解される。本明細書に引用される配列アクセッション番号の配列は、参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
【国際調査報告】