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特表2023-545471阻害剤分子を使用する高アスペクト比構造のための堆積方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】阻害剤分子を使用する高アスペクト比構造のための堆積方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20231023BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20231023BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231023BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C23C16/44 A
C23C16/455
H01L21/31 B
H01L21/316 X
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522844
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-17
(86)【国際出願番号】 US2021054655
(87)【国際公開番号】W WO2022081620
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】17/072,882
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591036572
【氏名又は名称】レール・リキード-ソシエテ・アノニム・プール・レテュード・エ・レクスプロワタシオン・デ・プロセデ・ジョルジュ・クロード
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】ノ、ウォンテ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジュホ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ジラール、ジャン-マルク
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
5F058
【Fターム(参考)】
4K030AA11
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA18
4K030AA22
4K030BA01
4K030BA02
4K030BA10
4K030BA13
4K030BA18
4K030BA22
4K030BA29
4K030BA42
4K030CA12
4K030FA01
4K030HA01
4K030JA10
4K030JA11
4K030LA15
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB31
5F045AC07
5F045BB19
5F045EE19
5F058BA09
5F058BC03
5F058BF04
5F058BF27
5F058BF29
5F058BF37
5F058BJ06
(57)【要約】

基板において高アスペクト比(HAR)開口上に堆積される膜の厚さ制御を改善するための堆積方法が開示される。この方法は、i)基板を阻害剤の蒸気、前駆体の蒸気、及び共反応物の蒸気に逐次的に又は同時に暴露すること;並びにii)蒸着プロセスによって、望みの通りに厚さが制御された膜を前記HAR開口上に堆積すること;を含み、阻害剤は、O、N、S、P、B、C、F、Cl、Br、又はIを含む。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板において高アスペクト比(HAR)開口上に堆積される膜の厚さ制御を改善するための堆積方法であって、
i)基板を阻害剤の蒸気、前駆体の蒸気、及び共反応物の蒸気に逐次的に又は同時に暴露すること;並びに
ii)蒸着プロセスによって、望みの通りに厚さが制御された前記膜を前記HAR開口上に堆積すること;
を含み、
前記阻害剤がO、N、S、P、B、C、F、Cl、Br、又はIを含む、方法。
【請求項2】
前記基板の温度を室温から650℃までの範囲に維持することをさらに含む、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項3】
前記阻害剤が以下のうちの1種以上から選択される、請求項1に記載の堆積方法:
a)アルコール、ジオール、エーテル、エポキシド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エノール、エステル、無水物、フェノール、置換フェノールを含む酸素系の脂肪族及び芳香族阻害剤;
b)アミン、イミン、イミド、アミド、アジド、シアン酸塩、ニトリル、硝酸塩、亜硝酸塩、窒素含有複素環を含む窒素系の脂肪族及び芳香族阻害剤;
c)チオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、チオシアネート、イソチオシアネート、チオエステルを含む硫黄系の脂肪族及び芳香族阻害剤;
d)ホスフィン、ホスホン酸、ホスホジエステルを含むリン系の脂肪族及び芳香族阻害剤;
e)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボリン酸エステルを含むホウ素系の脂肪族及び芳香族阻害剤;アルカン、アルケン、アルキン、及びベンゼン誘導体を含む炭素系の脂肪族阻害剤;
f)有機分子を含むハロゲン化物、及びIを含む無機ハロゲン化物;又は
g)HO蒸気、Hガス、COガス、CSガス、及び窒素酸化物(NO)ガス;
h)並びにa)~g)の組み合わせ。
【請求項4】
前記阻害剤が、室温から約650℃までの範囲の温度で、プラズマあり又はなしで生成される前記阻害剤の蒸気又はガスのラジカル形態である、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項5】
前記阻害剤が、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、トリエチルアミン(TEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)、又はトリス(2-アミノエチル)アミンから選択される、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項6】
前記前駆体が、アルキルアミン、アルコキシ、アミジナート、又はハライドから選択されるホモレプティック又はヘテロレプティック配位子を含む、遷移金属及び典型元素のアルキルアミノ及びシクロペンタジエンジル誘導体から選択される有機金属前駆体である、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項7】
前記遷移金属及び典型元素が、Hf、Zr、Nb、Ti、ランタニド、希土類、Al、又はSiから選択される、請求項6に記載の堆積方法。
【請求項8】
前記前駆体が、HfCp(NMe、ZrCp(NMe、Nb(=NtBu)Cp(NMe、又はTiCp*(OMe)である、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項9】
前記膜のステップカバレッジが100%以上である、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項10】
前記ステップカバレッジが、前記阻害剤なしのステップカバレッジよりも大きい、請求項9に記載の堆積方法。
【請求項11】
前記膜がシームのない前記HAR開口のギャップフィルである、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項12】
前記ギャップフィルがボトムアップ堆積によって形成される、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項13】
前記HARが5:1~200:1の範囲である、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項14】
前記蒸着プロセスが、ALD、CVD、又はそれらの組み合わせである、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項15】
前記共反応物が、O、O、HO、H、DO、アルコール、NH、N、N、H、プラズマによって生成されたそれらのラジカル又は混合物である、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項16】
前記共反応物が、O又はプラズマによって生成されたOラジカルである、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項17】
前記基板を前記阻害剤、前記前駆体、及び前記共反応物に暴露する順序が:
a)前記阻害剤、前記前駆体、及び前記共反応物に逐次的に;
b)前記前駆体、前記阻害剤、及び前記共反応物に逐次的に;
c)前記前駆体、前記共反応物、及び前記阻害剤に逐次的に;又は
d)前記阻害剤と前記前駆体に同時に、その後前記共反応物に;
を含み、
それぞれの暴露後に、パージガスを使用して、過剰な阻害剤、過剰な前駆体、及び過剰な共反応物のうちの1種以上がパージ及び除去され、
前記パージガスが、N、Ar、Kr、又はそれらの組み合わせから選択される不活性ガスである、請求項1に記載の堆積方法。
【請求項18】
前記膜の成長速度が、前記阻害剤なしの膜の成長速度と比較して低下する、請求項1~17のいずれか一項に記載の堆積方法。
【請求項19】
前記前駆体、前記阻害剤、又はその両方がプラズマで活性化される、又はプラズマで活性化されない、請求項1~17のいずれか一項に記載の堆積方法。
【請求項20】
基板において約5:1~約200:1のアスペクト比で開口上に堆積されるZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜の厚さ制御を改善するための堆積方法であって、
i)テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)及びトリエチルアミン(TEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)及びトリス(2-アミノエチル)アミンからなる群から選択される阻害剤の蒸気に前記基板を暴露すること;
ii)ZrCp(NMe、HfCp(NMe、Nb(=NtBu)Cp(NMe、及びTiCp*(OMe)からなる群から選択される前駆体の蒸気に前記基板を曝露すること;
iii)前記基板を共反応物Oの蒸気に曝露すること;並びに
iv)室温から650℃までの範囲の温度でのALDプロセスにより、前記開口上に堆積された前記ZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜の望まれる厚さ制御が形成されるまで、i)~iii)のステップを繰り返すこと;
を含み、
前記ZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜のステップカバレッジは100%以上であり;
前記前駆体の量に対する前記ZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜の1サイクルあたりの成長(GPC)が低下し;
前記ZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜は、シームがないギャップフィルであり;
各曝露の後、過剰な阻害剤、過剰な前駆体、及び過剰な共反応物が、Nを使用してそれぞれパージ及び除去される;
堆積方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に援用される、2020年10月16日に出願された米国特許出願第17/072,882号に基づく優先権を主張するものである。
【0002】
半導体用途における前駆体に加えて阻害剤分子を使用する高アスペクト比構造のための堆積方法が開示される。特に、開示される方法は、基板において、ステップカバレッジ及びギャップフィルを含む厚さ制御を改善するための、有機金属前駆体と、O、N、S、P、B、C、F、Cl、Br、又はIを含有する阻害剤分子とを使用する蒸着プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
半導体においてデバイスが微細化してきているため、正確な厚さの制御は重要な課題である。原子層堆積(ALD)は、化学蒸着(CVD)よりも、ALDのサイクルあたりの成長(GPC)がCVDの単位時間あたりの成長速度よりもはるかに低いため、望ましい厚さを達成するのが比較的容易であり、この厚さは層ごとの堆積によって制限されてALDサイクル数に対する厚さが非常にはっきりと線形的になるという意味で好ましい場合がある。しかしながら、ALDにおいても、GPCは前駆体の種類、プロセスの種類、及びどの材料を堆積するかに大きく依存する。現在までに、ALDの挙動を維持しながらも所定のプロセスで堆積速度又は厚さを制御するための普遍的な又は容易な方法は報告されていない。ALDにおいてGPCを下げるために、少量の前駆体又は共反応物を適用してサブALD形式を導くことができるものの、GPCはプロセス温度によって大きく変化するため、そのようにすると前駆体の不足により非常に不安定なプロセスになるであろう。
【0004】
半導体においてデバイスサイズが微細化し続けていることから、高アスペクト比(HAR)構造では、ステップカバレッジが集積化の重要な要素である。例えば、半導体基板に狭く深いトレンチが形成され、絶縁材料を使用してギャップフィルが行われ、トレンチを完全に覆うようにトレンチの底面から逐次堆積される絶縁膜が形成される。HARステップ表面上への堆積は、不均一なギャップフィルという課題に直面し、これによりステップカバレッジが不十分になる可能性があり、ボイド及び/又は弱点が含まれることになる可能性がある。
【0005】
半導体においてデバイスサイズが微細化し続けていることから、蒸着は新しい材料の薄膜を堆積するための最も重要な技術の1つである。特に、ALDは、高度にコンフォーマルな堆積のみならずギャップフィルのためにも重要な手段となっている。ギャップフィルのための大きな課題は、2つの層の間に空洞(いわゆるボイド又は、蒸着プロセス中の開口部の狭いラインであるシーム)がないように2つの層を封止することである。通常、高アスペクト比の構造又は複雑な3D構造のギャップを充填することはさらに困難である。
【0006】
厚さ制御、ステップカバレッジ、及びギャップフィルを改善するために、様々な試みが存在する。
【0007】
Abelsonらの米国特許出願公開第20070141779号明細書には、高アスペクト比(HAR)の凹状フィーチャをコーティング及び充填し、連続的なコンフォーマル層又は超コンフォーマル層で構造をコンフォーマル又は超コンフォーマルにコーティング及び/又は均一に充填する方法が開示されており、この中では、CrB膜のボトムアップ成長は、従来の化学蒸着(CVD)法によって、抑制剤としての水素プラズマの助けを得てトレンチ基板上に堆積される。
【0008】
Henriらの米国特許第9564312号明細書には、ケイ素含有膜、例えばSiN膜の原子層堆積(ALD)における選択的阻害が開示されている。選択的阻害は、ケイ素含有前駆体の吸着された層を第2の反応物に曝露する前に、吸着された層を水素含有阻害剤に曝露することを含む。水素含有阻害剤への曝露は、プラズマを用いて行うことができる。
【0009】
Moonらの米国特許第10103026号明細書及び米国特許出願公開第20170040172号明細書には、材料層を形成する方法、より具体的には、他のプロセスパラメータの変動があっても良好なステップカバレッジを有する材料層を安定に製造することが可能な材料層の形成方法が開示されている。
【0010】
Talukdar TK(Doctoral dissertation,University of Illinois at Urbana-Champaign,2018)には、CVDを使用したナノメートルスケール構造のコーティング及び充填について開示されており、この中では、超コンフォーマルCVD法によってトレンチのボトムアップ充填を行うために酸化物が使用されている。
【0011】
Jinらの韓国特許第102095710号明細書には、良好なステップカバレッジを実現するために表面保護材料を使用して薄膜を形成する方法が開示されており、これは、表面保護材料を供給して基板上にこれを吸着させる表面保護材料供給ステップを含んでいる。
【0012】
半導体プロセス分野では、良好なステップカバレッジを有するプロセスの開発に関心が集まっており、原子層堆積(ALD)プロセスの利用が特に注目されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
基板において高アスペクト比(HAR)開口上に堆積される膜の厚さ制御を改善するための堆積方法であって、
i)基板を阻害剤の蒸気、前駆体の蒸気、及び共反応物の蒸気に逐次的に又は同時に暴露すること;並びに
ii)蒸着プロセスによって、望みの通りに厚さが制御された膜をHAR開口上に堆積すること;
を含み、阻害剤は、O、N、S、P、B、C、F、Cl、Br、又はIを含む方法が開示される。
【0014】
開示される堆積方法は、以下の態様のうちの1つ以上を含み得る:
・基板の温度を室温から650℃までの範囲に維持することをさらに含む;
・阻害剤が、以下のうちの1種以上から選択される:
a)アルコール、ジオール、エーテル、エポキシド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エノール、エステル、無水物、フェノール、置換フェノールを含む酸素系の脂肪族及び芳香族阻害剤;
b)アミン、イミン、イミド、アミド、アジド、シアン酸塩、ニトリル、硝酸塩、亜硝酸塩、窒素含有複素環を含む窒素系の脂肪族及び芳香族阻害剤;
c)チオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、チオシアネート、イソチオシアネート、チオエステルを含む硫黄系の脂肪族及び芳香族阻害剤;
d)ホスフィン、ホスホン酸、ホスホジエステルを含むリン系の脂肪族及び芳香族阻害剤;
e)ボロン酸、ボロン酸エステル、ボリン酸エステルを含むホウ素系の脂肪族及び芳香族阻害剤;アルカン、アルケン、アルキン、及びベンゼン誘導体を含む炭素系の脂肪族阻害剤;
f)有機分子を含むハロゲン化物、及びIを含む無機ハロゲン化物;又は
g)HO蒸気、Hガス、COガス、CSガス、及び窒素酸化物(NO)ガス;
h)並びにa)~g)の組み合わせ;
・阻害剤は、室温から約650℃までの範囲の温度で、プラズマあり又はなしで生成される阻害剤の蒸気又はガスのラジカル形態である;
・阻害剤が、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、トリエチルアミン(TEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)、又はトリス(2-アミノエチル)アミンから選択される;
・阻害剤がTHFである;
・阻害剤がDMEである;
・阻害剤がTEAである;
・テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);
・ジメチルエチレンジアミン(DMEDA);
・トリス(2-アミノエチル)アミン;
・前駆体が、アルキルアミン、アルコキシ、アミジナート、又はハライドから選択されるホモレプティック又はヘテロレプティック配位子を含む、遷移金属及び典型元素のアルキルアミノ及びシクロペンタジエンジル誘導体から選択される有機金属前駆体である;
・遷移金属及び典型元素が、Hf、Zr、Nb、Ti、ランタニド、希土類、Al、又はSiから選択される;
・前駆体がZrCp(NMeである;
・前駆体がHfCp(NMeである;
・前駆体がNb(=NtBu)Cp(NMeである;
・前駆体がTiCp*(OMe)である;
・厚さ制御がステップカバレッジの制御である;
・厚さ制御がギャップフィルの制御である;
・望まれる厚さ制御が望まれるステップカバレッジである;
・望まれる厚さ制御が望まれるギャップフィルである;
・ステップカバレッジが100%以上である;
・ステップカバレッジが、阻害剤なしのステップカバレッジよりも大きい;
・膜がシームのないHAR開口のギャップフィルである;
・ギャップフィルがボトムアップ堆積によって形成される;
・HARが5:1~200:1の範囲である;
・基板がパターン化された構造又は3D構造である;
・開口が、前の製造ステップから基板に形成されたホール、ビア、トレンチ、ギャップ、又は開口部である;
・HAR構造上に堆積される膜が、金属膜、金属酸化物膜、ケイ素含有膜、合金などである;
・HAR構造上に堆積される膜がZrOである;
・HAR構造上に堆積される膜がHfOである;
・HAR構造上に堆積される膜がNbである;
・HAR構造上に堆積される膜がTiOである;
・蒸着プロセスが、ALD、CVD、又はそれらの組み合わせである;
・蒸着プロセスが、空間ALD、熱ALD、プラズマ支援ALD、及びプラズマ支援CVDである;
・蒸着プロセスが空間ALDである;
・蒸着プロセスが熱ALDである;
・蒸着プロセスがプラズマ支援ALDである;
・蒸着プロセスがプラズマ支援CVDである;
・共反応物が、O、O、HO、H、DO、アルコール、NH、N、N、H、又はプラズマによって生成されたそれらのラジカルである;
・共反応物が、O又はプラズマによって生成されたOラジカルである;
・基板を阻害剤、前駆体、及び共反応物に暴露する順序が以下を含む:
i)阻害剤、前駆体、及び共反応物に逐次的に;
ii)前駆体、阻害剤、及び共反応物に逐次的に;
iii)前駆体、共反応物、及び阻害剤に逐次的に;又は
iv)阻害剤と前駆体に同時に、その後共反応物に;
・基板を阻害剤、前駆体、及び共反応物に暴露する順序が、阻害剤、前駆体、及び共反応物に逐次的にである;
・基板を阻害剤、前駆体、及び共反応物に暴露する順序が、前駆体、阻害剤、及び共反応物に逐次的にである;
・基板を阻害剤、前駆体、及び共反応物に暴露する順序が、前駆体、共反応物、及び阻害剤に逐次的にである;
・基板を阻害剤、前駆体、及び共反応物に暴露する順序が、阻害剤と前駆体に同時に、その後共反応物にである;
・パージガスを使用して、それぞれの暴露後に過剰な阻害剤、過剰な前駆体、及び過剰な共反応物のうちの1種以上をパージ及び除去することをさらに含み、
パージガスが、N、Ar、Kr、又はそれらの組み合わせから選択される不活性ガスである;
・前駆体の投与時間に伴う膜の成長速度の一貫した低下;
・前駆体の量に対する膜の成長速度の一貫した低下;
・膜の成長速度が、阻害剤なしの膜の成長速度と比較して低下する;
・前駆体の量に対する膜の成長速度が、阻害剤なしと比較して低下する;
・前駆体、阻害剤、又はその両方がプラズマで活性化される;並びに
・前駆体、阻害剤、又はその両方がプラズマで活性化されない。
【0015】
また、基板において約5:1~約200:1のアスペクト比で開口上に堆積されるZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜の厚さ制御を改善するための堆積方法であって、
i)テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)及びトリエチルアミン(TEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)及びトリス(2-アミノエチル)アミンからなる群から選択される阻害剤の蒸気に基板を暴露すること;
ii)ZrCp(NMe、HfCp(NMe、Nb(=NtBu)Cp(NMe、及びTiCp*(OMe)からなる群から選択される前駆体の蒸気に基板を曝露すること;
iii)基板を共反応物Oの蒸気に曝露すること;並びに
iv)室温から650℃までの範囲の温度でのALDプロセスにより、開口上に堆積されたZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜の望まれる厚さ制御が形成されるまで、i)~iii)のステップを繰り返すこと;
を含み、
ZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜のステップカバレッジは100%以上であり;
前駆体の量に対するZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜の1サイクルあたりの成長(GPC)が低下し;
ZrO、HfO、Nb、又はTiOの膜は、シームがないギャップフィルであり;
各曝露の後、過剰な阻害剤、過剰な前駆体、及び過剰な共反応物が、Nを使用してそれぞれパージ及び除去される;
方法も開示される。
【0016】
また、基板において約5:1~約200:1のアスペクト比で開口上に堆積されるZrOの膜の厚さ制御を改善するための堆積方法であって、
i)テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)及びトリエチルアミン(TEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)及びトリス(2-アミノエチル)アミンからなる群から選択される阻害剤の蒸気に基板を暴露すること;
ii)ZrCp(NMeからなる群から選択される前駆体の蒸気に基板を曝露すること;
iii)基板を共反応物Oの蒸気に曝露すること;並びに
iv)室温から650℃までの範囲の温度でのALDプロセスにより、開口上に堆積されたZrO膜の望まれる厚さ制御が形成されるまで、i)~iii)のステップを繰り返すこと;
を含み、
ZrO膜のステップカバレッジは100%以上であり;
前駆体の量に対するZrO膜の1サイクルあたりの成長(GPC)が低下し;
ZrO膜は、シームがないギャップフィルであり;
各曝露の後、過剰な阻害剤、過剰な前駆体、及び過剰な共反応物が、Nを使用してそれぞれパージ及び除去される;
方法も開示される。
【0017】
また、基板において約5:1~約200:1のアスペクト比で開口上に堆積されるHfOの膜の厚さ制御を改善するための堆積方法であって、
i)テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)及びトリエチルアミン(TEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)及びトリス(2-アミノエチル)アミンからなる群から選択される阻害剤の蒸気に基板を暴露すること;
ii)HfCp(NMeからなる群から選択される前駆体の蒸気に基板を曝露すること;
iii)基板を共反応物Oの蒸気に曝露すること;並びに
iv)室温から650℃までの範囲の温度でのALDプロセスにより、開口上に堆積されたHfO膜の望まれる厚さ制御が形成されるまで、i)~iii)のステップを繰り返すこと;
を含み、
HfO膜のステップカバレッジは100%以上であり;
前駆体の量に対するHfO膜の1サイクルあたりの成長(GPC)が低下し;
HfO膜は、シームがないギャップフィルであり;
各曝露の後、過剰な阻害剤、過剰な前駆体、及び過剰な共反応物が、Nを使用してそれぞれパージ及び除去される;
方法も開示される。
【0018】
また、基板において約5:1~約200:1のアスペクト比で開口上に堆積されるNbの膜の厚さ制御を改善するための堆積方法であって、
i)テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)及びトリエチルアミン(TEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)及びトリス(2-アミノエチル)アミンからなる群から選択される阻害剤の蒸気に基板を暴露すること;
ii)Nb(=NtBu)Cp(NMeからなる群から選択される前駆体の蒸気に基板を曝露すること;
iii)基板を共反応物Oの蒸気に曝露すること;並びに
iv)室温から650℃までの範囲の温度でのALDプロセスにより、開口上に堆積されたNb膜の望まれる厚さ制御が形成されるまで、i)~iii)のステップを繰り返すこと;
を含み、
Nb膜のステップカバレッジは100%以上であり;
前駆体の量に対するNb膜の1サイクルあたりの成長(GPC)が低下し;
Nb膜は、シームがないギャップフィルであり;
各曝露の後、過剰な阻害剤、過剰な前駆体、及び過剰な共反応物が、Nを使用してそれぞれパージ及び除去される;
方法も開示される。
【0019】
また、基板において約5:1~約200:1のアスペクト比で開口上に堆積されるTiOの膜の厚さ制御を改善するための堆積方法であって、
i)テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)及びトリエチルアミン(TEA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA);ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)及びトリス(2-アミノエチル)アミンからなる群から選択される阻害剤の蒸気に基板を暴露すること;
ii)TiCp*(OMe)からなる群から選択される前駆体の蒸気に基板を曝露すること;
iii)基板を共反応物Oの蒸気に曝露すること;並びに
iv)室温から650℃までの範囲の温度でのALDプロセスにより、開口上に堆積されたTiO膜の望まれる厚さ制御が形成されるまで、i)~iii)のステップを繰り返すこと;
を含み、
TiO膜のステップカバレッジは100%以上であり;
前駆体の量に対するTiO膜の1サイクルあたりの成長(GPC)が低下し;
TiO膜は、シームがないギャップフィルであり;
各曝露の後、過剰な阻害剤、過剰な前駆体、及び過剰な共反応物が、Nを使用してそれぞれパージ及び除去される;
方法も開示される。
【0020】
表記及び用語
以下の詳細な説明及び特許請求の範囲では、当該技術分野で一般によく知られている多くの略語、記号、及び用語が利用され、また下記の用語を含む。
【0021】
本明細書において使用される場合、不定冠詞「1つの(a)」又は「1つの(an)」は、1つ以上を意味する。
【0022】
本明細書において使用される場合、本文中又は特許請求の範囲中の「約」又は「ほぼ」又は「およそ」は、記載の値の±10%を意味する。
【0023】
本明細書において使用される場合、本文中又は特許請求の範囲中の「室温」は、約20℃~約25℃を意味する。
【0024】
開示される実施形態において使用される場合、R基の記載に関連して使用される場合の「独立して」という用語は、対象のR基が、同じ又は異なる下付き文字又は上付き文字を有する別のR基に対して独立して選択されるだけでなく、その同じR基のあらゆる追加の種類に対しても独立して選択されることを示すものと理解されたい。例えば、式MR (NR(4-x)(ここで、xは、2又は3である)中、2つ又は3つのR基は、互いに又はR若しくはRと同じ場合があるが、同じである必要はない。さらに、別段の明記がない限り、R基の値は、異なる式で使用される場合、互いに独立していると理解すべきである。
【0025】
元素周期表からの元素の標準的な略語が本明細書で使用される。元素がこれらの略語によって言及され得ることは理解されるべきである(例えば、Siはケイ素を指し、Nは窒素を指し、Oは酸素を指し、Cは炭素を指し、Hは水素を指し、Fはフッ素を指す、など)。
【0026】
本明細書で使用される場合、略語「Me」はメチル基を指し;略語「Et」はエチル基を指し;略語「Pr」はプロピル基(すなわちn-プロピル又はイソプロピル)を指し;略語「iPr」はイソプロピル基を指し;略語「Bu」は任意のブチル基(n-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、sec-ブチル)を指し;略語「tBu」は、tert-ブチル基を指し;略語「sBu」はsec-ブチル基を指し;略語「iBu」は、iso-ブチル基を指し;略語「Ph」はフェニル基を指す。
【0027】
「基板」という用語は、その上でプロセスが行われる1つ以上の材料を指す。基板は、その上でプロセスが行われる1つ以上の材料を有するウエハを指す場合がある。基板は、半導体、太陽電池、フラットパネル、又はLCD-TFTデバイスの製造に使用される任意の適切なウエハであってよい。基板は、その前の製造ステップからその上に既に堆積された異なる材料の1つ以上の層も有し得る。例えば、ウエハは、シリコン層(例えば結晶性、非晶質、多孔質など)、ケイ素含有層(例えばSiO、SiN、SiON、SiCOHなど)、金属含有層(例えば銅、コバルト、モリブデン、タングステン、白金、パラジウム、ニッケル、ルテニウム、金など)、有機層(例えばアモルファスカーボン)、又はフォトレジスト、又はそれらの組み合わせを含み得る。さらに、基板は平坦であっても又はパターン化されていてもよい。基板は、MEMS、3D NAND、MIM、DRAM、又はFeRamデバイス用途で誘電体材料として使用される酸化物の層(例えばZrOベースの材料、HfOベースの材料、TiOベースの材料、希土類酸化物ベースの材料、三元酸化物ベースの材料など)又は電極として使用される窒化物ベースの膜(例えばTaN、TiN、NbN)を含み得る。当業者は、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語が、表面上に配置されているか広がっている何らかの材料の厚さを指し、その表面はトレンチ又はラインであってよいことを認識するであろう。本明細書及び特許請求の範囲全体を通して、ウエハ及びその上の任意の関連する層は、基板と呼ばれる。
【0028】
「ウエハ」又は「パターン化されたウエハ」という用語は、基板上のケイ素含有膜のスタックと、パターンエッチングのために形成されたケイ素含有膜のスタック上のパターン化されたハードマスク層とを有するウエハを指す。「ウエハ」又は「パターン化されたウエハ」という用語は、あるアスペクト比を有するトレンチウエハを指す場合もある。
【0029】
「アスペクト比」という用語は、トレンチの幅(又は開口の直径)に対するトレンチ(又は開口)の高さの比率を指す。
【0030】
なお、本明細書においては、「開口」、「ギャップ」、「ビア」、「ホール」、「開口部」、「トレンチ」、及び「構造」という用語は、半導体基板に形成された開口部を指すために交換可能に使用される場合がある。
【0031】
なお、本明細書においては、「膜」及び「層」という用語は交換可能に使用され得る。膜が層に対応するか、又は関連している場合があり、層が膜を指す場合があることが理解される。さらに、当業者は、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語が、表面上に配置されているか広がっている何らかの材料の厚さを指し、その表面はウエハ全体ほどの大きい大きさからトレンチ又はラインほどの小さい大きさであってよいことを認識するであろう。さらに、本明細書で使用される「膜」又は「層」という用語は、ギャップフィル、より具体的にはボトムアップ堆積プロセスによって形成されるギャップフィルを指す場合もある。本明細書における「ギャップ」は、開口部、ビア、ホール、開口部、トレンチなどを指す。
【0032】
なお、本明細書においては、「堆積温度」、「基板温度」、及び「プロセス温度」という用語は交換可能に使用される場合がある。基板温度は、堆積温度又はプロセス温度に対応するか、又は関連付けることができ、堆積温度又はプロセス温度は基板温度を意味し得ることが理解される。
【0033】
なお、本明細書においては、「前駆体」及び「堆積化合物」及び「堆積ガス」という用語は、前駆体が室温及び周囲圧力で気体状態にある場合には交換可能に使用することができる。前駆体は、堆積化合物若しくは堆積ガスに対応するか、又は関連付けることができ、堆積化合物又は堆積ガスは、前駆体を意味し得ることが理解される。
【0034】
本明細書で使用される場合、「NAND」という略語は、「Negated AND」又は「Not AND」ゲートを指し;「2D」という略語は、平坦基板上の2次元ゲート構造を指し;「3D」という略語は、ゲート構造が垂直方向にスタックされた3次元又は垂直ゲート構造を指す。
【0035】
本明細書で使用される「阻害剤」という用語は、改質剤、抑制剤、又は促進剤などを指し、ステップカバレッジを改善するための阻害、抑制、又は促進の概念を含む。阻害剤は、添加剤又は蒸着プロセス時に挿入される化学物質であり、膜の堆積後に除去される。阻害剤は、HAR構造上に堆積された膜のコンフォーマル性を高める、及び/又はギャップフィル用途におけるボイド若しくは弱点を除去するのに役立つ。HAR構造上の阻害剤の厚さは非常に薄い層であってよく、場合によっては1単層以下であってよい。
【0036】
なお、SiNやSiOなどのケイ素含有膜は、それらの適切な化学量論に言及せずに、本明細書及び特許請求の範囲全体に記載されていることに留意されたい。ケイ素含有膜には、結晶質Si、ポリシリコン(p-Si若しくは多結晶質Si)、又は非晶質ケイ素などの純粋なケイ素(Si)層;窒化ケイ素(Si)層;又は酸化ケイ素(Si)層;又はそれらの混合物が含まれてよく、ここでのk、l、m、及びnは、全てを含めて0.1~6の範囲である。好ましくは、窒化ケイ素は、k及びIがそれぞれ0.5~1.5の範囲であるSiである。より好ましくは、窒化ケイ素はSiである。本明細書では、以下の記載におけるSiNは、Si含有層を表すために使用され得る。好ましくは、酸化ケイ素は、nが0.5~1.5の範囲でありmが1.5~3.5の範囲であるSiである。より好ましくは、酸化ケイ素はSiOである。本明細書では、以下の記載におけるSiOは、Si含有層を表すために使用され得る。ケイ素含有膜は、Applied Materials,Inc.によるBlack Diamond II又はIII材料のようなSiOCHの式を有する有機物に基づく又は酸化ケイ素に基づくlow-k誘電体材料などの、酸化ケイ素系誘電体材料であることも可能である。ケイ素含有膜には、a、b、cが0.1~6の範囲であるSiも含まれ得る。ケイ素含有膜は、B、C、P、As、及び/又はGeなどのドーパントも含み得る。
【0037】
範囲は、本明細書において、約ある特定の値から、及び/又は約別の特定の値までとして表現される場合がある。そのような範囲が表現される場合、別の実施形態は、前記範囲内のすべての組み合わせと共に、ある特定の値から、及び/又は別の特定の値までのものであることが理解されるべきである。開示される実施形態で列挙されているあらゆる範囲は、「すべてを含む」という用語が使用されるか否かにかかわらず、それらの終点を含む(すなわち、x=1~4又はxは1~4の範囲であるは、x=1、x=4、及びx=それらの間の任意の数を含む)。
【0038】
本明細書における「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書の様々な場所における「一実施形態では」という語句の出現は、必ずしもすべてが同じ実施形態を指すわけではなく、また別の又は代替の実施形態は、必ずしも他の実施形態と相互に排他的ではない。同じことが「実施」という用語にも当てはまる。
【0039】
本出願で使用される「例示的」という用語は、本明細書では、実施例、実例、又は例示として機能することを意味するために使用される。本明細書で「例示的」と記載されている態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計よりも好ましい又は有利であるものとして解釈されるべきではない。むしろ、例示的という言葉の使用は、具体的な形式で概念を提示することが意図されている。
【0040】
特許請求の範囲における「含む」は、オープンな移行句であり、これは、その後に特定される請求項の要素が非排他的な列挙であることを意味する。すなわち、その他のものを追加的に含めることができ、「含む」の範囲内のままであることができる。「含む」は、より限定的な移行句「から本質的になる」及び「からなる」を必然的に包含するものとして定義される。したがって、「含む」は、「から本質的になる」又は「からなる」に置き換えることができ、「含む」の明示的に定義されている範囲内のままであることができる。
【0041】
さらに、「又は」という用語は、排他的「又は」ではなく、包括的な「又は」を意味することが意図されている。すなわち、別段の明記がない限り、或いは文脈から明らかでない限り、「XはA又はBを使用する」は、自然な包括的順列のいずれかを意味することが意図されている。つまり、XがAを使用する場合、XはBを使用する場合、或いはXがAとBの両方を使用する場合;前述した場合のいずれにおいても「XはA又はBを使用する」が満たされる。加えて、本出願及び添付の特許請求の範囲で使用される冠詞「1つの(a)」及び「1つの(an)」は、別段の明記がない限り、或いは文脈から単数形に関するものであることが明確でない限り、通常「1つ以上」を意味すると解釈されるべきである。
【0042】
本発明の性質及び目的をさらに理解するために、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を参照すべきである。これらの中で、同様の要素には同じ又は類似の参照番号が与えられている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】HAR開口の不十分なステップカバレッジを示す概略図である。
図2】開示される方法による阻害剤を用いたHAR開口のステップカバレッジに対する阻害剤の効果を示す概略図である。
図3a】HAR開口の100%の膜厚比(底部の厚さ/上部の厚さ*100%)の完全なコンフォーマルなステップカバレッジを示す概略図である。
図3b】HAR開口の膜厚比が100%を超える超コンフォーマルなステップカバレッジを示す概略図である。
図3c】ボトムアップ堆積によるギャップフィルプロセスを示す概略図である。
図3d】ボトムアップ堆積によるギャップフィルを示す概略図である。
図4ab図4aは、開示された方法に従って阻害剤、前駆体、及び共反応物を導入する順序についての例示的なタイミングの図である。図4bは、開示された方法に従って阻害剤、前駆体、及び共反応物を導入する順序についての別の例示的なタイミングの図である。
図4cd図4cは、開示された方法に従って阻害剤、前駆体、及び共反応物を導入する順序についての別の例示的なタイミングの図である。図4dは、開示された方法に従って阻害剤、前駆体、及び共反応物を導入する順序についての別の例示的なタイミングの図である。
図5】阻害剤なしのアスペクト比20:1の開口の約60%のステップカバレッジを示すSEM画像である。
図6】阻害剤ジメトキシエタン(DME)を用いたアスペクト比25:1の開口の約100%のステップカバレッジを示すSEM画像である。
図7】阻害剤トリエチルアミン(TEA)を用いたアスペクト比25:1の開口の約100%のステップカバレッジを示すSEM画像である。
図8】阻害剤テトラヒドロフラン(THF)を用いたアスペクト比20:1の開口の約100%のステップカバレッジを示すSEM画像である。
図9】飽和形式での300℃における前駆体投与時間に伴う成長速度の一貫した低下である。
図10】ALD飽和形式での阻害剤(DMEDA)ありのGPCとなしのGPCの比較である。
図11】300℃における11:1のアスペクト比構造でのボトムアップ成長である。
図12】25:1のアスペクト比のパターン化構造における完全なギャップフィルである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
半導体用途において、前駆体に加えて阻害剤分子を使用する高アスペクト比(HAR)構造の堆積方法が開示される。より具体的には、開示される阻害剤堆積方法は、基板における膜のステップカバレッジ又は基板におけるギャップフィルなどの堆積膜の厚さ制御を改善するために、有機金属前駆体と、O、N、S、P、B、C、F、Cl、Br、又はIを含有する阻害剤分子とを使用する蒸着プロセスに関する。開示される阻害剤堆積方法は、厚さ制御、ステップカバレッジ、及びギャップフィルを改善するために、阻害剤を含む蒸着プロセスを含む。さらに、開示される阻害剤堆積方法は、厚さ制御、ステップカバレッジ、及びギャップフィルを改善するために、阻害剤を含むALDプロセスを含む。開示される阻害剤は、ステップカバレッジ及びギャップフィルを含む堆積膜の得られる厚さを改善するための、堆積の阻害、抑制、又は促進の概念を含む。より具体的には、開示される阻害剤堆積方法は、堆積膜の厚さ制御、例えばステップカバレッジ又はギャップフィルを改善するための、HAR構造におけるオーバーハング膜、いわゆる「ピンチオフ」を防止するための、並びに堆積膜及び/又はギャップフィルに形成されるボイド及び/又は弱点を防止するための、阻害剤分子の選択と阻害剤投与量の選択を含む。HAR構造は、前の製造プロセスから基板に製造されたHAR開口、ギャップ、ホール、ビア、トレンチ、開口部などを含む。基板は、通常、前の製造プロセス由来の既に堆積されている異なる材料の1つ以上の層を基板上に有する。
【0045】
開示される堆積前駆体は、有機金属前駆体であってよい。より具体的には、開示される前駆体は、アルキルアミン、アルコキシ、アミジナート、又はハライドから選択されるホモレプティック又はヘテロレプティック配位子を含む、遷移金属及び典型元素のアルキルアミノ及びシクロペンタジエンジル誘導体を含み得る。遷移金属及び典型元素は、Hf、Zr、Nb、Ti、ランタニド、希土類、Al、Siなどであってよい。開示される前駆体は、蒸着プロセスに適している。
【0046】
開示される堆積前駆体としては、蒸着に利用される典型的且つ周知の前駆体が挙げられ、例えば、
M(CpR)(NR’(式中、M=第4族元素であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基であり、R’はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基である);
M(CpR)(OR’)(式中、M=第4族元素であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基であり、R’はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基である);
M(CpR)X(式中、M=第4族元素であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基であり、X=ハライドである);
M(=NtBu)(NR(式中、M=第5族元素であり、R=C~Cのアルキルである);
M(=NtBu)(CpR)(NR’(式中、M=第5族元素であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基であり、R’はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基である);
M(NR(式中、M=第5族元素であり、R=C~Cのアルキルである);
AlR(式中、R=C~Cのアルキルである);
Ln(CpR(式中、Ln=ランタニド元素であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基である);
Ln(CpR(R’-amd)(式中、Ln=ランタニド元素であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基であり、R’はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基である);
Ln(CpR(R’-fmd)(式中、Ln=ランタニド元素であり、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基であり、R’はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基である);
Ln(NR(式中、Ln=ランタニド元素であり、R=C~Cのアルキルである);
ヘキサカルボニル(3,3-ジメチル-1-ブチン)ジコバルト(CCTBA、CAS番号:56792-69-9);
Ru(CpR(式中、R、R、R、R、及びRは、それぞれ独立して、H又はC~Cの直鎖又は分岐アルキル基である);
Ru(R-シクロヘキサジエン)(CO)(式中、R=C~Cアルキルである);
酸素及び塩素とモリブデンとの化合物MoOCl(式中、x>0、y>0である);
有機金属モリブデン化合物;並びに
その他のケイ素含有前駆体である。
【0047】
開示される堆積前駆体の典型的な例としては、アルキルアミン、アルコキシ、アミジナート、又はハライドから選択されるホモレプティック又はヘテロレプティック配位子を含む、遷移金属及び典型元素のアルキルアミノ及びシクロペンタジエンジル誘導体から選択される有機金属前駆体が挙げられ、ここでの遷移金属及び典型元素は、Hf、Zr、Nb、Ti、ランタニド、希土類、Al、又はSiから選択される。
【0048】
開示される堆積前駆体の典型的な例としては、HfCp(NMe、ZrCp(NMe、NbCp(NMe、及びTiCp(NMeが挙げられる。
【0049】
開示される阻害剤堆積方法の最も重要な特徴は、阻害剤の選択である。阻害剤は、堆積プロセスで使用される前駆体と反応してはならず、且つHAR構造の表面に物理吸着され、しかもそれほど強くはない(穏やかな吸収)必要があり、その結果、物理吸着された阻害剤は、その後後続のパージステップによってパージ及び除去することができる。加えて、入ってくる共反応物との不必要な反応を回避するために、阻害剤投与ステップ及びそれに続くパージステップは、前駆体投与ステップ及びパージステップから分離する必要がある。HAR構造では、阻害剤層は、開口部に沿って垂直方向の勾配吸着を形成することができ、上部の入口付近で高吸着、底部深くで低吸着となり(図1参照)、これにより表面の活性結合部位に対して入ってくる前駆体と競合し、結果として改善されたステップカバレッジ及び/又は完全なステップカバレッジ、例えば≧100%のステップカバレッジが得られる(図2並びに図3a及び図3bを参照)。
【0050】
開示される阻害剤は、O、N、S、P、B、C、又はハロゲン元素(例えばF、Cl、Br、I)を含み得る。
【0051】
開示される阻害剤としては、酸素系の阻害剤、窒素系の阻害剤、硫黄系の阻害剤、リン系の阻害剤、ホウ素系の阻害剤、炭素系の阻害剤、ハライド含有有機分子及び無機ハロゲン化物、HO蒸気、Hガス、COガス、CSガス、及び窒素酸化物(NO)ガス、並びに室温以上のあらゆるラジカル形態のガスが挙げられる。
【0052】
開示される酸素系阻害剤としては、アルコール、ジオール、エーテル、エポキシド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エノール、エステル、無水物、フェノール、置換フェノールなどの脂肪族及び芳香族阻害剤が挙げられる。開示される酸素系阻害剤の典型的な例としては、テトラヒドロフラン(THF)、ジメトキシエタン(DME)、ジエチルエーテル、及びジオキサンが挙げられる。
【0053】
開示される窒素系阻害剤としては、アミン、イミン、イミド、アミド、アジド、シアン酸塩、ニトリル、硝酸塩、亜硝酸塩、窒素含有複素環などの脂肪族及び芳香族の阻害剤が挙げられる。開示される窒素系阻害剤の典型的な例としては、トリエチルアミン(TEA)、トリメチルアミン、ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、及びNHが挙げられる。
【0054】
開示される硫黄系阻害剤としては、チオール、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、チオシアネート、イソチオシアネート、チオエステルなどの脂肪族及び芳香族阻害剤が挙げられる。開示される硫黄系阻害剤の典型的な例としては、HS、MeS、EtS、MeS-SMe、及びEtS-SEtが挙げられる。
【0055】
開示されるリン系阻害剤としては、ホスフィン、ホスホン酸、ホスホジエステルなどの脂肪族及び芳香族阻害剤が挙げられる。開示されるリン系阻害剤の典型的な例としては、PH、PMe、及びP(OMe)が挙げられる。
【0056】
開示されるホウ素系阻害剤としては、ボロン酸、ボロン酸エステル、ボリン酸エステルなどの脂肪族及び芳香族阻害剤が挙げられる。開示されるホウ素系阻害剤の典型的な例としては、BMe、BEt、ボラジン、B(OMe)、及びB(OEt)が挙げられる。
【0057】
開示される炭素系阻害剤としては、アルカン、アルケン、アルキン、及びベンゼン誘導体などの脂肪族阻害剤が挙げられる。開示される炭素系阻害剤の典型的な例としては、アセチレン及びアルケンが挙げられる。
【0058】
開示されるハロゲン化物含有有機分子及び無機ハロゲン化物としては、Iが挙げられる。
【0059】
開示される阻害剤は、室温で気体のラジカル形態であってよい。開示される阻害剤は、室温から約650℃までの温度範囲で任意のラジカル形態のガスである。好ましくは、開示される阻害剤は、比較的高い電子陰性度又は孤立電子対を有する表面と相互作用し得る化合物である。例えばTHF、DME、TEAなどである。
【0060】
開示される前駆体及び阻害剤の純度は、95%w/w超(すなわち95.0%w/w~100.0%w/w)、好ましくは98%w/w超(すなわち98.0%w/w~100.0%w/w)、より好ましくは99%w/w超(すなわち99.0%w/w~100.0%w/w)である。当業者であれば、純度がH NMRによって及び質量分析を併用するガス液体クロマトグラフィーによって決定され得ることを認識するであろう。開示される前駆体及び阻害剤は、有機分子、無機分子、及び金属含有分子の不純物を含み得る。これらの不純物の総量は、好ましくは5%w/w未満(すなわち0.0%w/w~5.0%w/w)、好ましくは2%w/w未満(すなわち0.0%w/w~2.0%w/w)、より好ましくは1%w/w未満(すなわち0.0%w/w~1.0%w/w)である。開示される前駆体及び阻害剤は、再結晶、昇華、蒸留によって、及び/又は気液を4Åモレキュラーシーブなどの適切な吸着剤に通すことによって、精製することができる。
【0061】
開示される前駆体及び阻害剤の精製により、金属不純物を0ppbw~1ppmw、好ましくは0~500ppbw(10億分の1重量)レベルにすることもできる。これらの金属不純物には、限定するものではないが、アルミニウム(Al)、ヒ素(As)、バリウム(Ba)、ベリリウム(Be)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、鉛(Pb)、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、カリウム(K)、ナトリウム(Na)、ストロンチウム(Sr)、トリウム(Th)、スズ(Sn)、チタン(Ti)、ウラン(U)、亜鉛(Zn)などが含まれ得る。
【0062】
開示される前駆体及び阻害剤に加えて、共反応物を使用することができる。共反応物は、O、O、HO、H、DO、アルコール、NH、N、N、H、それらのラジカルであってよい。好ましくは、共反応物はO又はNHである。好ましくは、ラジカルは、室温以上で形成されたプラズマによって生成される任意のラジカル形態のガスである。プラズマが関与しないALDプロセスの場合、共反応物のラジカルは、共反応物を反応器に導入する前に形成することができる。好ましくは、共反応物は気体又は蒸気の形態である。液体の共反応物が使用される場合には、共反応物の蒸気形態は、共反応物を反応器に導入する前に生成される必要がある。いくつかの実施形態では、共反応物と阻害剤とは、アンモニアなど同じ分子であってもよい。例えば、アンモニアは、SiN膜を形成するための共反応物として有機金属前駆体と共に使用することができ、その後、アンモニアは、堆積手順の別のステップで阻害剤として使用することができる。
【0063】
開示される共反応物の純度は、95%v/v超又は95体積%超(すなわち95.0%v/v~100.0%v/v)、好ましくは98%v/v超(すなわち98.0%v/v~100.0%v/v)、より好ましくは99%v/v超(すなわち99.0%v/v~100.0%v/v)である。当業者であれば、純度がH NMRによって及び質量分析を併用するガス液体クロマトグラフィーによって決定され得ることを認識するであろう。開示される共反応物は、有機分子の不純物を含み得る。これらの不純物の総量は、好ましくは5%v/v未満(すなわち0.0%v/v~5.0%v/v)、好ましくは2%v/v未満(すなわち0.0%v/v~2.0%v/v)、より好ましくは1%v/v未満(すなわち0.0%v/v~1.0%v/v)である。開示される共反応物は、蒸留によって、及び/又は気液を4Åモレキュラーシーブなどの適切な吸着剤に通すことによって、精製することができる。
【0064】
開示される阻害剤堆積方法は、当業者に公知の任意の堆積方法を使用して、高アスペクト比構造上で膜を堆積し、ギャップを埋めるために使用することができる。適切な蒸着法の例としては、CVD及びALDが挙げられる。例示的なCVD方法としては、熱CVD、プラズマ支援CVD(PECVD)、パルスCVD(PCVD)、低圧CVD(LPCVD)、準大気圧CVD(SACVD)、大気圧CVD(APCVD)、ホットワイヤーCVD(HWCVD、cat-CVDとしても知られ、ホットワイヤーが堆積プロセスのエネルギー源として機能する)、ラジカル組み込みCVD、及びそれらの組み合わせが挙げられる。例示的なALD方法としては、熱ALD、プラズマ支援ALD(PEALD)、空間ALD、ホットワイヤーALD(HWALD)、ラジカル組み込みALD、及びそれらの組み合わせが挙げられる。超臨界流体堆積も使用され得る。堆積方法は、好ましくは、適切なステップカバレッジ及び膜厚制御を得るために、ALD、PE-ALD、又は空間ALDである。
【0065】
開示される阻害剤堆積方法を用いてHAR構造上に堆積される膜は、金属膜、金属酸化物膜、ケイ素含有膜、合金などであってよい。HAR構造上に堆積される例示的な膜は、ZrO及びHfOである。
【0066】
開示される前駆体及び阻害剤は、適切な蒸着法を用いて、そのままの形態で、或いはエチルベンゼン、キシレン、メシチレン、デカリン、デカン、ドデカンなどの適切な溶媒とのブレンドで、供給され得る。開示される前駆体及び阻害剤は、溶媒中に様々な濃度で存在し得る。そのままの又は混合された前駆体及びそのままの又は混合された阻害剤は、それぞれ配管及び/又は流量計などの従来手段によって蒸気形態で反応器中に導入され得る。従来の気化ステップ、例えば直接気化、蒸留、バブリングにより、又は昇華器を用いることにより、そのままの又は混合された前駆体及び阻害剤を気化させることによって蒸気形態を得ることができる。反応器中に導入する前に気化させる場合、そのままの又は混合された前駆体及び阻害剤を液体状態で蒸発器に供給することができる。代わりに、組成物を収容する容器中にキャリアガスを流すことにより、キャリアガスを組成物中にバブリングすることにより、そのままの又は混合された前駆体及び阻害剤を気化させることができる。キャリアガスとしては、Ar、He、N及びそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。キャリアガスのバブリングにより、そのままの又は混合された前駆体及び阻害剤溶液中に存在するあらゆる溶存酸素を除去することもできる。次いで、キャリアガスと前駆体、及びキャリアガスと阻害剤は、それぞれ蒸気として反応器に導入される。同様に、液体の共反応物が使用される場合、蒸気形態の共反応物は、前駆体及び阻害剤と同じ方法で生成される。
【0067】
必要に応じて、前駆体、阻害剤及び共反応物がそれらの液相にあることができ、十分な蒸気圧を有することができる温度まで、開示される前駆体、阻害剤及び共反応物を収容する容器を加熱することができる。容器は、例えば、約0℃~約200℃の範囲内の温度に維持することができる。当業者は、気化させる前駆体の量を制御するために周知の方法で容器の温度を調節できることを認識する。
【0068】
反応器又は反応チャンバーは、限定するものではないが、化合物を反応させ、層を形成させるのに適切な条件下において、平行板型反応器、コールドウォール型反応器、ホットウォール型反応器、枚葉式反応器、多葉式反応器、他のタイプの堆積システムなどの装置内で堆積方法が行われるあらゆるエンクロージャーチャンバーであり得る。当業者は、これらの反応器のいずれかがALD又はCVD堆積プロセスのいずれかのために使用され得ることを認めるであろう。
【0069】
反応器には、膜がその上に堆積される1つ以上の基板が収容される。基板は、プロセスが行われる材料として一般に定義される。基板は、半導体、光起電力、フラットパネル、LCD-TFTのデバイスの製造に使用されるあらゆる適切な基板であり得る。適切な基板の例としては、シリコン、シリカ、ガラスなどのウエハ、GaAsウエハが挙げられる。ウエハは、前の製造ステップでその上に堆積された異なる材料の1つ以上の層を有し得る。例えば、ウエハは、誘電体層を含み得る。さらに、ウエハは、シリコン層(結晶性、非晶質、多孔質など)、酸化ケイ素層、窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層、炭素ドープ酸化ケイ素(SiCOH)層、金属、金属酸化物金属窒化物層(Ti、Ru、Taなど)及びそれらの組み合わせを含み得る。さらに、ウエハは、銅層、貴金属層(例えば、白金、パラジウム、ロジウム、金)を含み得る。ウエハは、マンガン、酸化マンガンなどの障壁層を含み得る。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)[PEDOT:PSS]などのプラスチック層も使用され得る。層は、平面である場合もパターン化される場合もある。パターン化された層は、3D NANDで使用されるInとZrOなどの2つの特定の層の交互の層であってもよい。ウエハは、前の製造ステップで形成された1つ以上の開口を有し得る。開口は、ウエハ又は基板に形成されたホール、ビア、トレンチ、ギャップなどであってよい。開口のアスペクト比は、約5:1~約200:1の範囲であってよい。開示される方法は、ウエハの開口に直接膜を堆積することができる。さらに、当業者であれば、本明細書において使用される「膜」、「層」という用語は、表面上に配置され、広げられるある厚さのある材料を意味し、この表面は、トレンチ、ラインであり得ることを認識するであろう。本明細書及び請求項の全体にわたって、ウエハ及びその上の任意の関連する層が基板と呼ばれる。
【0070】
反応器又はチャンバー内の温度及び圧力は、ALD及びCVDなどの蒸着に適した条件に保持される。換言すると、気化した前駆体、阻害剤及び共反応物を反応器中に導入した後、反応器内の条件は、前駆体の一部が基板上に堆積して層を形成するような条件である。例えば、反応器内の圧力又は堆積圧力は、堆積パラメータに準拠して必要に応じて約10-3Torr~約100Torr、より好ましくは約10-2Torr~約100Torrに維持することができる。反応器の温度は、基板ホルダーの温度の制御、反応器壁の温度の制御のいずれかによって制御することができる。基板の加熱に使用される装置は、当技術分野において周知である。反応器壁は、十分な成長速度において、所望の物理的状態及び組成を有する所望の膜を得るのに十分な温度に加熱される。反応器壁を加熱できる非限定的で代表的な温度範囲としては、室温~約650℃を挙げることができる。プラズマ堆積プロセスが使用される場合、堆積温度は、約100℃~約500℃の範囲であり得る。代わりに、熱プロセスが行われる場合、堆積温度は、約100℃~約600℃の範囲であり得る。プラズマ堆積プロセスが利用される場合、反応器温度は約100℃~約500℃の範囲であってよい。或いは、熱処理が行われる場合、反応器温度は約100℃~約650℃の範囲であってよい。
【0071】
或いは、基板は、十分な成長速度で、望まれる物理的状態及び組成を有する望まれる膜を得るのに十分な温度まで加熱されてもよい。基板を加熱することができる非限定的な例示的な温度範囲には、室温から約650℃までが含まれる。さらに、当業者であれば、反応器の温度及び基板の温度が堆積プロセス中に平衡温度に到達することを認識するであろう。明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、反応器温度及び基板温度は堆積温度を指す。したがって、開示される方法の堆積温度は、室温から約650℃までの範囲である。プラズマ堆積プロセスが利用される場合、堆積温度は約100℃~約500℃の範囲とすることができる。或いは、熱処理が行われる場合には、堆積温度は約100℃~約650℃の範囲であってよい。
【0072】
開示される前駆体、阻害剤、及び共反応物は、阻害剤、前駆体、及び共反応物の様々な供給順序で、同時に(CVD)、又は逐次的に(ALD)反応器に導入され得る。反応器は、阻害剤、前駆体、及び共反応物の導入の間に不活性ガス(例えば、N、Ar、Kr、Xe)でパージされてもよい。或いは、阻害剤、前駆体、及び共反応物を一緒に混合して阻害剤/前駆体/共反応物混合物を形成し、次いで混合物の形態で反応器に導入することができる。或いは、阻害剤と前駆体とを一緒に混合して、混合物の形態で反応器に導入される阻害剤/前駆体混合物を形成することができ、その後共反応物が反応器に導入される。
【0073】
開示されるプロセスでは、基板曝露時間は、0.1秒~30分、好ましくは0.5秒~10分の範囲であってよく;開示される前駆体曝露時間は、0.1秒~30分、好ましくは0.5秒~10分の範囲であってよく;開示される阻害剤曝露時間は、0.1秒~30分、好ましくは0.5秒~10分の範囲であってよく;共反応物曝露時間は、0.1秒~30分、好ましくは0.5秒~10分の範囲であってよい。開示されるプロセスでは、阻害剤の投与量は前駆体の投与量より多くてもよく、その逆であってもよく;阻害剤の投与量は共反応物の投与量より多くてもよく、その逆であってもよい。
【0074】
或いは、気化した阻害剤、前駆体、及び共反応物は、シャワーヘッドの異なるセクターから同時に噴霧することができ(阻害剤、前駆体、及び共反応物を混合せずに)、その下で複数のウエハを保持するサセプターが回転する(空間ALD)。
【0075】
具体的なプロセスパラメータに応じて、堆積は様々な長さの時間にわたって行われ得る。通常、堆積は、膜を生成するために又は必要な特性を有するギャップフィルを生成するために望まれる必要な時間、継続することができる。典型的な膜厚は、具体的な堆積プロセスに応じて、数オングストロームから数百ミクロン、典型的には2~100nmで変化し得る。充填される典型的なギャップ深さは、具体的な堆積プロセスに応じて、数百ナノメートルから数百マイクロメートル、典型的には100nmから100umまで変化し得る。堆積プロセスは、改善された又は完全なステップカバレッジ(例えば≧100%)と、堆積された膜及びギャップフィルに形成されたボイド及び/又は弱点がない望みのギャップフィルとを有する望みの膜を得るために、必要な回数(例えばALDのサイクル)行うこともできる。場合によっては、阻害剤を添加することにより、目標とするステップカバレッジが完全なステップカバレッジ(例えば≧100%)に達しない場合であっても、開示される阻害剤堆積方法は、阻害剤が適用されない場合よりもステップカバレッジ及びギャップフィルを改善することができる。
【0076】
金属酸化物膜を形成する非限定的な例示的なALDプロセスでは、3ステップのプロセスを行うことができる。最初に、ジメトキシエタン(DME)などの開示される阻害剤の気相が反応器に導入され、そこで表面に物理吸着される。次いで、反応器をパージ及び/又は排気することによって、すなわち反応器を不活性ガス(例えばN、Ar、Kr、Xe)でパージするか、或いは高真空及び/又はキャリアガスカーテン下のセクターに基板を通すことによって、過剰の阻害剤を反応器から除去することができる。2番目に、ZrCp(NMeやHfCp(NMeなどの前駆体が反応器に導入され、そこで基板上に吸収(化学吸着及び物理吸着も)される。その後、不活性ガスを使用して反応器をパージすることによって、及び/又は反応器を排気することによって、過剰な前駆体を反応器から除去することができる。3番目に、共反応物(例えばO)が反応器に導入され、そこで吸着された前駆体と反応して膜を自己制限的に表面上に堆積し、物理吸着された阻害剤と反応してこれを表面から除去する。その後、反応器をパージ及び/又は排気することによって、過剰の共反応物が反応器から除去される。望まれる膜がZrOなどの酸化物である場合には、この3ステッププロセス、すなわち阻害剤-前駆体-共反応物は、必要な厚さ及び望まれるステップカバレッジを有する膜が得られるまで、或いはギャップが充填されるまで繰り返すことができる。或いは、この3ステッププロセスの反応器に導入される阻害剤、前駆体、及び共反応物の順序は変更されてもよい。例えば、3ステッププロセスは、前駆体-阻害剤-共反応物を逐次的に;阻害剤-前駆体-共反応物を逐次的に;前駆体-共反応物-阻害剤を逐次的に;阻害剤-共反応物-前駆体を逐次的に;阻害剤と前駆体を同時に、次いで共反応物;などであってよい。この3ステッププロセスは、望まれる膜厚及び膜のコンフォーマル性、並びに望まれるギャップフィルを提供することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、基板の堆積膜のステップカバレッジを改善するために開示される阻害剤を使用する、CVDやALDなどの蒸着プロセスに関する。
【0078】
図1は、HAR開口の不十分なステップカバレッジを示す概略図である。基板102は、その中に開口104を有する。膜106は、ALDなどの蒸着プロセスを使用して、開口104の上部及び側壁に堆積される。この場合、膜106は主に開口の上部に堆積され、開口の底部には膜は堆積されない。これは、堆積前駆体が、堆積プロセス中に開口の深部にアクセスできなかったためである。開口104は、前の製造プロセスから基板102に形成されたホール、ビア、トレンチ、ギャップ、開口部などであってよい。開口104のアスペクト比は、約5:1~約200:1の範囲であってよい。阻害剤の使用なしでは、開口上に堆積された膜106はコンフォーマルではない。ここでのステップカバレッジは、b/a×100%(底部の厚さ/上部の厚さ×100%)として定義され;アスペクト比はL/dとして定義される。示されているように、この阻害剤の使用なしの場合には、b<aであるため、ステップカバレッジは100%未満である。
【0079】
図2は、開示される方法による阻害剤を用いたHAR開口のステップカバレッジに対する阻害剤の効果を示す概略図である。開口204は、前の製造プロセスから基板202に形成されたホール、ビア、トレンチ、ギャップなどであってもい。開口204のアスペクト比は、約5:1~約200:1の範囲であってよい。阻害剤吸着層(図示せず)は、開口に沿って物理吸着の垂直勾配を形成することができ、これは開口の上部の入口付近で高吸着、底部深くで低吸着である。その上に阻害剤が物理吸着されると(図示せず)、入ってくる堆積前駆体は開口のより深い部分にアクセスし、そこに吸着することができる。堆積前駆体の吸着には、物理吸着と化学吸着が含まれる。阻害剤吸着層は、開口の表面の活性な結合部位について入ってくる堆積前駆体と競合し、その結果、堆積前駆体が開口の深部に吸着され得る。開口204の底部における前駆体の濃度は、開口204の上部における前駆体の濃度よりも高い。入ってくる共反応物は、吸着された前駆体と反応し、これによって開口の深部から膜206が形成される。このサイクルを何度も繰り返すことにより、膜206は開口204の深部から開口204の上部に向かって成長していき、徐々に開口の上部入口に到達する。最終的に、膜206は、コンフォーマル膜を有するHAR開口のステップカバレッジが100%(b=a)であることを示す概略図である図3a、及び超コンフォーマル膜を有するHAR開口のステップカバレッジが100%超(b>a)であることを示す概略図である図3bに示されているように、望まれる厚さ及び完全なステップカバレッジを有して形成される。示されているように、開口304は、前の製造プロセスから基板302に形成されたホール、ビア、トレンチ、ギャップなどであってよい。入ってくる共反応物は、吸着された前駆体と反応し、これによって開口の深部から膜306が形成される。このサイクルを何度も繰り返すことにより、膜306は開口304の深部から開口304の上部に向かって成長していき、徐々に開口の上部入口に到達する。ここで、開口を堆積前駆体に曝露する前に、過剰な阻害剤を除去するために、不活性ガス(例えばN、Ar、Krなど)を使用するパージステップが行われる。開口を共反応物に暴露する前に、過剰な堆積前駆体を除去するためにパージステップが行われる。次のサイクルでは、開口を阻害剤に曝露する前に、過剰な共反応物を除去するためにパージステップが行われる。このように、開示される阻害剤堆積方法は、完全なコンフォーマルステップカバレッジ及び超コンフォーマルステップカバレッジ、すなわち約5:1~約200:1の範囲のアスペクト比を有する開口上に≧100%の膜厚のステップカバレッジを生成することができる。
【0080】
このサイクルをさらに何度も繰り返し続けると、膜306は、開口304の深い底部から開口304の上部まで成長していき、開口304が開口304の中間部まで充填されている図3cに示されているように、徐々に開口304が開口304の底部から充填される。このサイクルをさらに何度も繰り返し続けると、図3dに示されているように、膜306は開口304の上部まで成長し続け、開口304を徐々に充填し、ここで開口304が開口304の上部まで充填されて完全に充填される。サイクルは、開口304が完全に充填されるまで停止することができる。
【0081】
図4a~図4dは、開示される阻害剤堆積方法に従って阻害剤、前駆体、及び共反応物を供給する方法及び順序の様々な例示的なタイミングの図であり、ここでは、それぞれの供給材料、すなわち阻害剤、前駆体、及び共反応物はパルス供給され得る。それぞれの供給材料の流量及び供給時間は、図4a~図4cに示されるパルスの高さ及び幅に比例しない場合がある。
【0082】
図4aは、阻害剤-前駆体-共反応物の順序での3ステップの堆積プロセスを表している。金属酸化物膜の形成においてこれは上述したが、より詳細な説明を本明細書で記載する。阻害剤が反応器に導入されると、阻害剤は反応器内の基板の表面に物理吸着され得る。次いで、過剰量の阻害剤が除去されるように反応器をパージガスでパージすることができ、物理吸着した阻害剤は、非常に薄い層、場合によっては1単層以下として残ることができる。
【0083】
その後、前駆体が添加される。前駆体が基板の開口の表面上に物理吸着及び化学吸着され得る一方で、物理吸着された阻害剤層によって基板上での前駆体の化学吸着は制御される。開口の表面のかなりの部分が阻害剤で覆われているため、前駆体は阻害剤を介して表面に物理吸着することができる。反応器を再度パージガスでパージすると、過剰量の前駆体が除去され、前駆体の表面への吸着による吸着層を得ることができる。吸着層は、非常に薄い層のレベルであってよく、1単層以下であってよい。より具体的には、このようにすることで、前駆体の過剰な吸着は、開口の入口及び上部においてかなり抑制され得る。前駆体は、開口の深部までアクセスすることができる。
【0084】
その後、共反応物が添加される。共反応物は、吸着された前駆体と反応して膜を形成し、共反応物と反応してそれを除去することができる。その後、パージすることにより、過剰量の共反応物及び反応副生成物を反応器から除去することができる。
【0085】
図4bは、前駆体-阻害剤-共反応物の順序における3ステップ堆積プロセスを表している。前駆体が最初に反応器に導入される。前駆体は、基板の表面に吸着することができる。この場合、かなりの量の前駆体が基板の開口の表面に直接化学吸着できる一方で、追加の前駆体が化学吸着された前駆体を介して表面に物理吸着され得る。その後、物理吸着した前駆体の一部が化学吸着した前駆体上に残存し得るものの、基板上に物理吸着された前駆体をパージによって部分的に除去することができる。物理吸着された前駆体は過剰に吸着した原料であるため、コンフォーマル膜を形成するためには物理吸着された前駆体を除去する必要がある場合がある。したがって、阻害剤が次のステップで添加される。阻害剤は、ファンデルワールス引力のため前駆体と結合することができる。より具体的には、阻害剤は、前駆体の中心原子と結合することができる。この結合により、物理吸着した前駆体を放出することができ、過剰に吸着された前駆体をほとんど除去することができる。その後、パージすることにより、過剰の阻害剤及び反応副生成物を反応器から除去することができ、1単層以下の非常に薄い層のレベルで前駆体が化学吸着された層を得ることができる。反応副生成物には、阻害剤と前駆体との結合体が含まれ得る。
【0086】
続いて、共反応物が導入される。共反応物は、膜を形成するために単層状態で化学吸着された前駆体と反応することができ、阻害剤は共反応物と反応させて除去することができる。パージすることにより、過剰量の共反応物及び反応副生成物を反応器から除去することができる。
【0087】
図4cは、前駆体-共反応物-阻害剤のシーケンスにおける3ステップ堆積プロセスを表している。この場合、前駆体が最初に添加され、開口の表面上の前駆体の配置は図4bと同じである。次に、過剰な物理吸着された前駆体を除去するためにパージした後、共反応物が導入される。共反応物は、化学吸着している前駆体と反応して膜を形成することができる。次いで、過剰量の反応副生成物を、パージによって反応器から除去することができる。続いて、阻害剤が導入される。阻害剤は、膜に、及び開口の表面上の化学吸着された前駆体に吸着され得る。より具体的には、阻害剤は、前駆体の中心原子と結合することができる。阻害剤は、開口に沿って、上部の入口付近で高吸着、底部深くで低吸着の垂直勾配吸着を形成することができるため、化学吸着された前駆体は、この結合のため開口の上部入口付近で放出されることができ、過剰に吸着された前駆体は、パージによって大部分が除去されることができ、前駆体が1単層以下のレベルで化学吸着された層を得ることができる。反応副生成物には、阻害剤と前駆体との結合体が含まれ得る。
【0088】
図4dは、阻害剤と前駆体を同時に導入し、その後共反応物を添加する堆積プロセスを表している。前駆体は、最初に反応器に同時に導入されると、互いに結合して二量体又は三量体を形成することができる。その後、二量体又は三量体は開口の表面に吸着され、前駆体のより多くの層が過剰に吸着される場合がある。阻害剤と前駆体が同時に添加されると、阻害剤は、前駆体が二量体又は三量体を形成する傾向を減らすことができる。その結果、特に開口の入口付近で、前駆体の過剰な吸着が軽減され得る。パージすることにより、過剰量の前駆体、阻害剤、及び不要な副生成物を反応器から除去することができる。その後、共反応物が添加される。共反応物は、吸着された前駆体と反応して膜を形成することができ、また反応器内の阻害剤は共反応物と反応して除去されることができる。パージすることにより、過剰量の共反応物及び反応副生成物を反応器から除去することができる。
【0089】
図4a~図4dを参照して説明したプロセスは、前駆体の過剰な吸着を防止するために動的に実行されてもよい。パージガスでパージすることにより、過剰量の前駆体、阻害剤、及び共反応物を反応器から除去することができ、不要な副生成物も反応器から除去することができる。
【0090】
反応器に導入される阻害剤、前駆体、及び共反応物の順序及びタイミングの組み合わせは、図4a~図4dに示されているものに限定されない。開示される阻害剤堆積方法は、反応器に導入される阻害剤、前駆体、及び共反応物の順序及びタイミングのあらゆる可能な組み合わせを含む。
【0091】
非限定的な例示的なALDプロセスでは、開示されるALDプロセスは、i)堆積される開口を有する基板が入っている反応器に阻害剤を供給し、阻害剤分子を開口表面に物理吸着させること;ii)阻害剤をパージし、パージガスによって過剰な阻害剤を除去すること;iii)前駆体を反応器に供給し、前駆体分子を開口の表面に吸着させること;iv)前駆体をパージし、パージガスによって過剰な前駆体を除去すること;v)共反応物を反応器に供給し、吸着された前駆体と共反応物を反応させて表面上に膜を形成すること;vi)共反応物をパージし、パージガスによって副生成物及び過剰な共反応物を除去すること;vii)ステップi)~vi)を繰り返して、開口上に堆積される膜の望まれる厚さ、又は基板の望まれるギャップフィルを達成すること;を含む。開示される阻害剤堆積方法によって生成された堆積膜及びボトムアップ堆積されたギャップフィルは、阻害剤なしで生成された堆積膜及びギャップフィルと比較して、改善されたステップカバレッジ及び改善されたギャップフィルを有し、またボイドを有さず、弱点を持たず、及び/又はシームもない。
【0092】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、いわゆる「阻害剤」のステップを挿入することによって、CVD又はALDの利益を失わずにその挙動を維持しながらも蒸着プロセスにおける成長速度又はサイクルあたりの成長(GPC)又は厚さを減少させる新規な方法に関する。開示される方法は、非常に薄い層のより優れた厚さ制御及びギャップフィルの優れた品質のために成長速度又はGPCを調整することに適用することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、開示される方法は、添加剤又は阻害剤を用いるボトムアップ型超コンフォーマル薄膜堆積によってプラズマなしの蒸着法(例えばALD及びCVD)を行うことによる、ギャップフィルの新規な方法に関連する。図3c及び図3dを参照すると、ALDのサイクル数の増加に伴って、基板内のギャップがボトムアップ堆積から充填され得る。サイクル数を調整することにより、開示される阻害剤堆積方法は、堆積される膜厚の制御及びステップカバレッジを改善し、ボトムアップ堆積によるギャップフィルを強化することができる。
【0094】
望まれる膜厚、改善されたステップカバレッジ、及び望まれるギャップフィルが得られた後、堆積膜及びギャップフィルは、熱アニール、ファーネスアニール、ラピッドサーマルアニール、UV電子ビーム硬化、及び/又はプラズマガス曝露などの追加の処理を受けることができる。当業者であれば、これらの更なる処理ステップを行うために用いられるシステム及び方法を認識するであろう。例えば、ZrO膜は、不活性雰囲気、又はO含有雰囲気、それらの組み合わせの下で、約200℃~約1000℃の範囲の温度に0.1秒~約7200秒の範囲の時間にわたって曝露することができる。最も好ましくは、不活性雰囲気下又はO含有雰囲気下において、温度は、400℃で3600秒である。結果として得られる膜は、より少ない不純物を含むことができ、したがって密度を改善して漏れ電流を改善することができる。アニールステップは、堆積が行われる反応チャンバーと同じ反応チャンバー中で行うことができるか、又は別の装置中で行うことができる。上記のいずれかの後処理方法、特に熱アニールは、ZrO膜の炭素及び窒素による汚染の軽減に有効であることが分かっている。これにより、したがって膜の抵抗率が改善される傾向にある。
【実施例
【0095】
以下の非限定的な実施例は、本発明の実施形態を更に例示するために提供される。しかし、これらの実施例は、すべてを含むことを意図するものではなく、本明細書において記載される本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0096】
実施例1:オゾンを用いたZrCp(NMeによるZrOのALDの場合の阻害剤なしのステップカバレッジ。
前駆体容器を80℃に加熱した。Oを共酸化反応物として使用し、ZrCp(NMeを前駆体として使用した。ZrOの膜を、ALDプロセスによって、約20:1のアスペクト比の開口を持つパターン化されたウエハ上に堆積した。反応器圧力は約1Torrに保持した。ステップカバレッジは、約20:1のアスペクト比の開口を有するパターン化されたウエハ上で、200~400℃の温度ウインドウで阻害剤なしの同じ堆積条件で試験した。図5は、阻害剤なしのアスペクト比20:1のホールの約60%のステップカバレッジを示すSEM画像である。
【0097】
実施例2:オゾンを用いたZrCp(NMeによるZrOのALDの場合の阻害剤DMEありのステップカバレッジ。
前駆体容器を80℃に加熱した。Oを共酸化反応物として使用し、DMEを阻害剤として使用し、ZrCp(NMeを前駆体として使用した。ZrOの膜を、ALDプロセスによって、約25:1のアスペクト比の開口を持つパターン化されたウエハ上に堆積した。反応器圧力は約1Torrに保持した。ステップカバレッジは、約25:1のアスペクト比の開口を有するパターン化されたウエハ上で、200~400℃の温度ウインドウで阻害剤ありの同じ堆積条件で試験した。図6は、阻害剤DMEを用いたアスペクト比25:1のホールの約100%のステップカバレッジを示すSEM画像である。
【0098】
実施例3:オゾンを用いたZrCp(NMeによるZrOのALDの場合の阻害剤TEAありのステップカバレッジ。
前駆体容器を80℃に加熱した。Oを共酸化反応物として使用し、TEAを阻害剤として使用し、ZrCp(NMeを前駆体として使用した。ZrOの膜を、ALDプロセスによって、約25:1のアスペクト比の開口を持つパターン化されたウエハ上に堆積した。反応器圧力は約1Torrに保持した。ステップカバレッジは、約25:1のアスペクト比の開口を有するパターン化されたウエハ上で、200~400℃の温度ウインドウで阻害剤ありの同じ堆積条件で試験した。図7は、阻害剤TEAを用いたアスペクト比25:1のホールの約100%のステップカバレッジを示すSEM画像である。
【0099】
実施例4:オゾンを用いたZrCp(NMeによるZrOのALDの場合の阻害剤THFありのステップカバレッジ。
前駆体容器を80℃に加熱した。Oを共酸化反応物として使用し、THFを阻害剤として使用し、ZrCp(NMeを前駆体として使用した。ZrOの膜を、ALDプロセスによって、約25:1のアスペクト比の開口を持つパターン化されたウエハ上に堆積した。反応器圧力は約1Torrに保持した。ステップカバレッジは、約20:1のアスペクト比の開口を有するパターン化されたウエハ上で、200~400℃の温度ウインドウで阻害剤ありの同じ堆積条件で試験した。図8は、阻害剤THFを用いたアスペクト比20:1のホールの約100%のステップカバレッジを示すSEM画像である。
【0100】
実施例5:阻害剤投与のALD
ALDプロセスは300℃で行った。Oを共酸化反応物として使用し、テトラヒドロフラン(THF)を阻害剤として使用した。反応器圧力は約1Torrに保持した。THFの分圧は0.3Torrであった。開口のアスペクト比は25:1であり、臨界寸法(CD)はSiOの層で100nmであった。ALDプロセスは、i)5秒間のTHFフローと30秒間のパージ;ii)1秒間の前駆体フローと30秒間のパージ;iii)1秒間の共反応物のフローと30秒のパージ;を繰り返して実施した。
【0101】
実施例6:HfOのALDの場合の阻害剤テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)を用いた厚さ制御
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルハフニウムHfCp(NMe、共反応物としてのオゾン、及び阻害剤としてのTMEDAを使用してALD試験を行った。阻害ALDでは、反応器圧力は約0.6Torrに固定した。図9は、300℃における前駆体投与時間に伴う成長速度の一貫した低下である。ここでの前駆体投与時間は、原料導入時間(秒)として示されている。
【0102】
実施例7:HfOのALDの場合の阻害剤ジメチルエチレンジアミン(DMEDA)を用いた厚さ制御
トリス(ジメチルアミノ)シクロペンタジエニルハフニウムHfCp(NMe、共反応物としてのオゾン、及び阻害剤としてのDMEDAを使用してALD試験を行った。阻害ALDでは、反応器圧力は約0.6Torrに固定した。図10は、ALD飽和形式での阻害剤(DMEDA)ありのGPCとなしのGPCの比較であり、これは、300℃において前駆体投与時間に伴い成長速度が同様に低下することを示している。ここでの前駆体投与時間は、原料導入時間(秒)として示されている。
【0103】
実施例8:オゾンを用いたシクロペンタジエニル-トリス(ジメチルアミド)ハフニウム(IV)HfCp(NMeによるHfOのALDの場合の、阻害剤トリス(2-アミノエチル)アミンを用いたボトムアップギャップフィル
シクロペンタジエニル-トリス(ジメチルアミド)ハフニウム(IV)を用いてALD試験を行った。前駆体が入っている容器を80℃に加熱し、酸化剤としてOを使用し、阻害剤としてトリス(2-アミノエチル)アミンを使用した。反応器の圧力は約1Torrに固定した。図11は、300℃における11:1のアスペクト比構造でのボトムアップ成長である。開いているCDが減少するのに伴い、ギャップフィルが進行した。図12は、25:1のアスペクト比のパターン化構造における完全なギャップフィルであり、これは、300℃でアスペクト比25:1の構造においてシームのない完全なギャップフィルを示している。
【0104】
本発明の性質を説明するために本明細書に記載され例示された詳細、材料、ステップ及び部品の配置の多くの更なる変更形態は、添付の請求項に示される本発明の原理及び範囲から逸脱せずに当業者によってなされ得ることを理解されたい。したがって、本発明は、前述の実施例及び/又は添付の図面中の特定の実施形態に限定されることを意図するものでない。
【0105】
本発明の実施形態が示されており、説明されているが、本発明の趣旨又は教示から逸脱することなしに、これらの修正が当業者によって行われ得る。本明細書に記載の実施形態は、例示にすぎず、限定ではない。組成物及び方法の多くの変形及び修正が可能であり、それらは本発明の範囲内である。したがって、保護の範囲は本明細書に記載の実施形態に限定されず、特許請求の範囲の主題のすべての均等物を含むことになる特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3a
図3b
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【国際調査報告】