(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】血液障害を処置するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20231023BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20231023BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231023BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20231023BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20231023BHJP
A61P 7/02 20060101ALI20231023BHJP
A61P 7/04 20060101ALI20231023BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20231023BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231023BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20231023BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231023BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231023BHJP
A61P 31/18 20060101ALI20231023BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231023BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231023BHJP
C07K 16/18 20060101ALN20231023BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20231023BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20231023BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20231023BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/7088
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K48/00
A61P7/00
A61P7/02
A61P7/04
A61P7/06
A61P11/00
A61P13/12
A61P31/00
A61P31/12
A61P31/18
A61P31/14
A61P37/02
C07K16/18 ZNA
C12N15/09 100
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522978
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-21
(86)【国際出願番号】 US2021055216
(87)【国際公開番号】W WO2022081997
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516008350
【氏名又は名称】アネクソン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェドノック,テッド
(72)【発明者】
【氏名】サンカラナラヤナン,セテュ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA17
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA51
4C084ZA53
4C084ZA54
4C084ZA55
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4C084ZB33
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4C085AA14
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4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
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4C086AA01
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4C086MA04
4C086MA17
4C086MA65
4C086MA66
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4C086NA14
4C086ZA51
4C086ZA53
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4C086ZA81
4C086ZB07
4C086ZB31
4C086ZB33
4C086ZC55
4H045BA10
4H045CA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は一般に、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、冷式抗体溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA))、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、新生児同種免疫性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、糸球体腎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、感染症、または薬物誘導性血液学的障害)を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法であって、補体経路の阻害剤を対象に投与することを含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液障害を予防し、その発症リスク(risk of developing)を低下させ、またはその処置をする方法であって、C1q阻害剤を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記C1q阻害剤は、抗体、アプタマー、アンチセンス核酸または遺伝子編集剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記阻害剤は、抗C1q抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記抗C1q抗体は、C1qと自己抗体との間またはC1qとC1rとの間、またはC1qとC1sとの間の相互作用を阻害する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記抗C1q抗体は、循環または組織からのC1qのクリアランスを促進する、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記抗C1q抗体は、100nM~0.005nMまたは0.005nM未満の範囲の解離定数(K
D)を有する、請求項3~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記抗C1q抗体は、20:1~1.0:1または1.0:1未満の範囲の結合化学量論でC1qに結合する、請求項3~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体は、6:1~1.0:1または1.0:1未満の範囲の結合化学量論でC1qに結合する抗C1q抗体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体は、2.5:1~1.0:1または1.0:1未満の範囲の結合化学量論でC1qに結合する抗C1q抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体は、C1qに特異的に結合し、その生物学的活性を中和する、請求項3~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記生物学的活性は、(1)自己抗体に対するC1q結合、(2)C1rに対するC1q結合、(3)C1sに対するC1q結合、(4)IgMに対するC1q結合、(5)ホスファチジルセリンに対するC1q結合、(6)ペントラキシン-3に対するC1q結合、(7)C反応性タンパク質(CRP)に対するC1q結合、(8)球状C1q受容体(gC1qR)に対するC1q結合、(9)補体受容体1(CR1)に対するC1q結合、(10)ベータ-アミロイドに対するC1q結合、(11)カルレチキュリンに対するC1q結合、(12)アポトーシス細胞に対するC1q結合、または(13)B細胞に対するC1q結合である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記生物学的活性は、(1)古典的補体活性化経路の活性化、(2)溶解の減少及び/またはC3沈着の減少、(3)抗体及び補体依存性細胞傷害の活性化、(4)CH50溶血、(5)赤血球溶解の減少、(6)赤血球貪食の減少、(7)樹状細胞浸潤の減少、(8)補体媒介性赤血球溶解の阻害、(9)リンパ球浸潤の減少、(10)マクロファージ浸潤の減少、(11)抗体沈着の減少、(12)好中球浸潤の減少、(13)血小板貪食の減少、(14)血小板溶解の減少、(15)移植片生存の改善、(16)マクロファージ媒介性貪食の減少、(17)自己抗体媒介性補体活性化の減少、(18)輸血反応による赤血球破壊の減少、(19)同種抗体による赤血球溶解の減少、(20)輸血反応による溶血の減少、(21)同種抗体媒介性血小板溶解の減少、(22)貧血の改善、(23)好酸球増多症の減少、(24)赤血球上のC3沈着の減少(例えば、RBC上のC3b、iC3bなどの沈着の減少)、(25)血小板上のC3沈着の減少(例えば、血小板上のC3b、iC3bなどの沈着の減少)、(26)アナフィラトキシン生成の減少、(27)自己抗体媒介性発疹形成の減少、(28)自己抗体誘導性エリテマトーデスの減少、(29)輸血反応による赤血球破壊の減少、(30)輸血反応による血小板溶解の減少、(31)肥満細胞活性化の減少、(32)肥満細胞ヒスタミン放出の減少、(33)血管透過性の減少、(34)移植片内皮上の補体沈着の減少、(35)B細胞抗体生成、(36)樹状細胞成熟、(37)T細胞増殖、(38)サイトカイン生成、(39)ミクログリア活性化、(40)アルツス反応、(41)移植片内皮におけるアナフィラトキシン生成の減少、または(42)補体受容体3(CR3/C3)発現細胞の活性化である、請求項10または11に記載の抗体。
【請求項13】
前記CH50溶血は、ヒトCH50溶血を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体は、ヒトCH50溶血の少なくとも約50%~約100%を中和することが可能である、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体は、150ng/ml未満、100ng/ml未満、50ng/ml未満、または20ng/ml未満の用量でCH50溶血の少なくとも50%を中和することが可能である、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、一価抗体、多重特異性抗体、抗体断片、またはその抗体誘導体である、請求項3~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体は、抗体断片であり、前記抗体断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ、または一本鎖抗体分子である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有するHVR-L1、配列番号6のアミノ酸を有するHVR-L2、及び配列番号7のアミノ酸を有するHVR-L3を含む軽鎖可変ドメインを含む、請求項3~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有するHVR-H1、配列番号10のアミノ酸を有するHVR-H2、及び配列番号11のアミノ酸を有するHVR-H3を含む重鎖可変ドメインを含む、請求項3~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体は、配列番号4及び35~38から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%の相同性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、前記軽鎖可変ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有するHVR-L1、配列番号6のアミノ酸を有するHVR-L2、及び配列番号7のアミノ酸を有するHVR-L3を含む、請求項3~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記軽鎖可変ドメインは、配列番号4及び35~38から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体は、配列番号8及び31~34から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%の相同性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、前記重鎖可変ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を有するHVR-H1、配列番号10のアミノ酸を有するHVR-H2、及び配列番号11のアミノ酸を有するHVR-H3を含む、請求項3~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記重鎖可変ドメインは、配列番号8及び31~34から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体は、配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含む抗体断片である、請求項3~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体は、非経口注射または注入によって投与される、請求項3~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記非経口注射または注入は、皮下または筋肉内注射である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記非経口注射または注入は、静脈内注射または注入である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体は、全長抗体である、請求項3~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体は、10mg/kg~150mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって前記対象に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体は、75mg/kg~100mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって前記対象に投与される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体は、週1回投与される、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体は、2週に1回投与される、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体は、月1回投与される、請求項28~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体は、1mg/kg~10mg/kgの間の用量で皮下または筋肉内注射によって前記対象に投与される、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記抗体は、3mg/kg~5mg/kgの間の用量で皮下または筋肉内注射によって前記対象に投与される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記抗体は、毎日投与される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体は、2日に1回投与される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体は、週1回投与される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体は、2週に1回投与される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体は、月1回投与される、請求項34または35に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体は、抗体断片である、請求項3~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体断片は、静脈内注射または注入によって前記対象に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体断片は、筋肉内注射によって前記対象に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体断片は、皮下注射によって前記対象に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体断片は、0.1mg/kg~50mg/kgの間の用量で投与される、請求項41~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体断片は、0.3mg/kg~10mg/kgの間の用量で投与される、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記抗体断片は、毎日投与される、請求項41~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記抗体断片は、2日に1回投与される、請求項41~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記抗体断片は、週1回投与される、請求項41~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記抗体断片は、2週に1回投与される、請求項41~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記抗体断片は、月1回投与される、請求項41~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記抗体断片は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回の用量よりも高い初期予備用量で投与される、請求項47~51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記初期予備用量は、3mg/kg~50mg/kgの間である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記初期予備用量は、3mg/kg~20mg/kgの間である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記抗体断片は、その対応する全長抗体と比較してより短い半減期を有する、請求項41~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記抗体断片は、急速に消失し、それにより前記対象の血液腔外のC1q活性を温存する、請求項41~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記抗体は、前記対象の血液腔内のC1qを選択的に阻害し、それにより前記対象の血液腔外のC1q活性を温存する、請求項41~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記血液腔は、血管内に限定される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記血管は、動脈、細動脈、毛細血管、小静脈、または静脈である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記血液腔は、血清、血小板、内皮細胞、血液細胞、または造血細胞を含む、請求項57~59のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
前記対象の血液腔内のC1qの阻害は、非常に血管に富む組織における組織損傷を減少させる、請求項57~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記非常に血管に富む組織は、腎臓、肺胞、毛細血管床、または糸球体である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記血液障害は、補体媒介性血液障害である、請求項1~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記血液障害は、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、冷式抗体溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、糸球体腎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、感染症、または薬物誘導性血液学的障害である、請求項1~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記感染症は、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、またはコロナウイルスである、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記コロナウイルスは、SARS-CoV、MERS-CoV、HCoV、HKU1、及びSARS-CoV-2から選択される、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記コロナウイルスは、SARS-CoV-2である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記対象は、気道または血液試料から逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって確認されたSARS-CoV-2感染症を有する、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記血液障害は、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)である、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記血液障害は、温式自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)である、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
前記血液障害は、ループス腎炎である、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
前記血液障害は、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)である、請求項64に記載の方法。
【請求項73】
前記血液障害は、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)である、請求項64に記載の方法。
【請求項74】
前記血液障害は、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)である、請求項64に記載の方法。
【請求項75】
前記薬物誘導性血液学的障害は、再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、または血小板減少症である、請求項64に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この特許出願は、2020年10月16日に出願された米国仮特許出願番号63/093,029の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
血液障害は、年齢、人種、性別、及び社会経済的状態の垣根を越えて、毎年世界中で何百万人もの人々に影響を及ぼしている。あらゆる背景の男性、女性、及び小児がこれらの病態に関連する合併症を抱えながら生活しており、その多くは潜在的に生命を脅かす。一般的に血液学的障害と称される血液障害は、処置が困難であり、また、死亡率及び患者のケアの費用の両方の観点から健康上の関心が高まっている。深部静脈血栓症(DVT)からの合併症により、毎年、乳癌、自動車事故、HIVの合計よりも多くの人々が死亡していると推定される。
【0003】
血液障害は、血液の3つの主要な成分:赤血球、白血球、または血小板のいずれかに影響を及ぼし得る。血液障害はまた、血漿として知られている血液の液体部分に影響を及ぼし得る。いくつかの血液障害は、血液中の細胞の数を減少させる。例えば、白血球減少症に罹患した個人は、白血球の数が減少し、感染症にかかりやすくなる。血液傷害を処置するための新たな療法が必要とされている。
【0004】
現在、血液障害のための治療法は存在しない。血液細胞ホメオスタシスの分子メカニズム及び血液障害の病理は不明である。よって、血液障害を予防し、血液障害の発症リスクを低下させ、血液障害を処置するための新たな療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本開示は一般に、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2(COVID))、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法であって、補体経路の阻害剤を対象に投与することを含む、方法を対象とする。
【0006】
血液障害は、血液学的障害と称され得る。血液学的障害には多様な病因が存在するが、いくつかは、補体制御タンパク質を不活性化する変異及び/または自己抗体、ならびに補体カスケードを直接的に活性化する変異によって引き起こされる可能性がある。例えば、補体変異は典型的には、阻害されない補体活性化を引き起こして、血小板、好中球、単球、及びその集合物、ならびに赤血球及び内皮細胞で発生する。これらの細胞での補体活性化は、補体及び組織因子を発現し得る細胞由来微小胞の放出をもたらし、これにより炎症を促進する。赤血球上の補体沈着は、溶血及び血栓形成促進性である赤血球由来微小胞の放出を引き起こす。補体沈着はまた、血管系内の細胞、例えば、内皮細胞上で、または非常に血管に富む組織内で、例えば、毛細血管床、糸球体、肺胞などで発生し得、これは多くの器官において血管損傷をもたらし得る。補体活性化は、補体カスケードの活性化を阻止する阻害剤によって防止され得る。そのような阻害剤は、血液細胞における、または関連する細胞及び血管に富む組織における特定の補体タンパク質の発現を阻止し、補体活性化を誘導するシグナル伝達分子を妨害し、血液細胞における、または関連する細胞及び血管に富む組織における補体阻害剤の発現を上方制御し、またはそうでなければ血液障害または血液学的障害における補体の役割を妨害し得る。
【0007】
したがって、補体活性化経路の阻害は、補体活性化経路を含む補体活性化の早期段階を阻害するための抗体を使用して、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2(COVID))、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をするための有望な治療方策であり得る。具体的には、抗C1q、抗C1r、及び抗C1s抗体は、自己抗体が補体活性化を引き起こすことを防止し得る。
【0008】
本開示は一般に、古典的補体活性化を阻害することによって、例えば、補体因子Clq、Clr、またはClsを、例えば、これらの補体因子のうちの1つ以上に結合するモノクローナル、キメラ、ヒト化抗体、ヒト抗体、抗体断片、抗体誘導体などの抗体の投与を介して阻害することによって、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2(COVID))、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法を対象とする。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab断片などの抗体断片である。
【0009】
いくつかの実施形態では、C1q、C1r、またはC1sなどの補体因子の活性が阻害されて、古典的補体経路の活性化が阻止され、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2(COVID))、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を遅らせ、または予防する。古典的補体経路の阻害は、レクチン補体経路及び代替補体経路をインタクトなままとして、それらの正常な免疫機能を発揮する。血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2(COVID))、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))におけるC1q、C1r、またはC1sなどの補体因子を中和することに関する方法が本明細書に開示される。
【0010】
ある特定の態様では、本明細書では、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2(COVID))、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法であって、補体経路の阻害剤を対象に投与することを含む、方法が開示される。
【0011】
本明細書では、血液障害における補体活性化を阻害する方法であって、有害な補体活性化に罹患している患者に抗Clq抗体、抗Clr抗体、または抗Cls抗体などの抗体を投与することを含む、方法が開示される。方法は、治療剤の投与をさらに含み得る。ある特定の好ましい実施形態では、抗体は、C1q、C1r、またはC1sに結合し、補体活性化を阻害する。
【0012】
いくつかの態様では、血液障害を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法が開示される。そのような方法には、C1q阻害剤を対象に投与することが含まれる。本明細書に記載の本発明の任意の態様に適用され得る多数の実施形態がさらに提供される。例えば、いくつかの実施形態では、C1q阻害剤は、抗体、アプタマー、アンチセンス核酸または遺伝子編集剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗C1q抗体である。抗C1q抗体は、C1qと自己抗体との間またはC1qとC1rとの間、またはC1qとC1sとの間の相互作用を阻害し得、または循環もしくは組織からのC1qのクリアランスを促進し得る。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、100nM~0.005nMまたは0.005nM未満の範囲の解離定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、20:1~1.0:1もしくは1.0:1未満の範囲の結合化学量論、6:1~1.0:1もしくは1.0:1未満の範囲の結合化学量論、または2.5:1~1.0:1もしくは1.0:1未満の範囲の結合化学量論でC1qに結合する。抗体は、C1qに特異的に結合し、その生物学的活性、例えば、(1)自己抗体に対するC1q結合、(2)C1rに対するC1q結合、(3)C1sに対するC1q結合、(4)IgMに対するC1q結合、(5)ホスファチジルセリンに対するC1q結合、(6)ペントラキシン-3に対するC1q結合、(7)C反応性タンパク質(CRP)に対するC1q結合、(8)球状C1q受容体(gC1qR)に対するC1q結合、(9)補体受容体1(CR1)に対するC1q結合、(10)ベータ-アミロイドに対するC1q結合、(11)カルレチキュリンに対するC1q結合、(12)アポトーシス細胞に対するC1q結合、もしくは(13)B細胞に対するC1q結合、または(1)古典的補体活性化経路の活性化、(2)溶解の減少及び/またはC3沈着の減少、(3)抗体及び補体依存性細胞傷害の活性化、(4)CH50溶血、(5)赤血球溶解の減少、(6)赤血球貪食の減少、(7)樹状細胞浸潤の減少、(8)補体媒介性赤血球溶解の阻害、(9)リンパ球浸潤の減少、(10)マクロファージ浸潤の減少、(11)抗体沈着の減少、(12)好中球浸潤の減少、(13)血小板貪食の減少、(14)血小板溶解の減少、(15)移植片生存の改善、(16)マクロファージ媒介性貪食の減少、(17)自己抗体媒介性補体活性化の減少、(18)輸血反応による赤血球破壊の減少、(19)同種抗体による赤血球溶解の減少、(20)輸血反応による溶血の減少、(21)同種抗体媒介性血小板溶解の減少、(22)貧血の改善、(23)好酸球増多症の減少、(24)赤血球上のC3沈着の減少(例えば、RBC上のC3b、iC3bなどの沈着の減少)、(25)血小板上のC3沈着の減少(例えば、血小板上のC3b、iC3bなどの沈着の減少)、(26)アナフィラトキシン生成の減少、(27)自己抗体媒介性発疹形成の減少、(28)自己抗体誘導性エリテマトーデスの減少、(29)輸血反応による赤血球破壊の減少、(30)輸血反応による血小板溶解の減少、(31)肥満細胞活性化の減少、(32)肥満細胞ヒスタミン放出の減少、(33)血管透過性の減少、(34)移植片内皮上の補体沈着の減少、(35)B細胞抗体生成、(36)樹状細胞成熟、(37)T細胞増殖、(38)サイトカイン生成、(39)ミクログリア活性化、(40)アルツス反応、(41)移植片内皮におけるアナフィラトキシン生成の減少、または(42)補体受容体3(CR3/C3)発現細胞の活性化を中和し得る。いくつかの実施形態では、CH50溶血は、ヒトCH50溶血を含む。抗体は、ヒトCH50溶血の少なくとも約50%~約100%を中和することが可能であり得る。抗体は、ヒトCH50溶血の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%を中和することが可能であり得る。抗体は、150ng/ml未満、100ng/ml未満、50ng/ml未満、または20ng/ml未満の用量でCH50溶血の少なくとも50%を中和することが可能であり得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、一価抗体、多重特異性抗体、もしくは抗体断片、またはその抗体誘導体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab断片などの抗体断片である。抗体断片の例は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ、及び一本鎖抗体分子である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有するHVR-L1、配列番号6のアミノ酸を有するHVR-L2、及び配列番号7のアミノ酸を有するHVR-L3を含む軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有するHVR-H1、配列番号10のアミノ酸を有するHVR-H2、及び配列番号11のアミノ酸を有するHVR-H3を含む重鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号4及び35~38から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%の相同性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有するHVR-L1、配列番号6のアミノ酸を有するHVR-L2、及び配列番号7のアミノ酸を有するHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号4及び35~38から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号8及び31~34から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%の相同性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を有するHVR-H1、配列番号10のアミノ酸を有するHVR-H2、及び配列番号11のアミノ酸を有するHVR-H3を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号8及び31~34から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含む抗体断片である。抗体は、皮下もしくは筋肉内注射、または静脈内注射もしくは注入などの非経口注射または注入によって投与され得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体は、全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、10mg/kg~150mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、10mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~40mg/kg、40mg/kg~50mg/kg、50mg/kg~60mg/kg、60mg/kg~70mg/kg、70mg/kg~80mg/kg、80mg/kg~90mg/kg、90mg/kg~100mg/kg、100mg/kg~110mg/kg、110mg/kg~120mg/kg、120mg/kg~130mg/kg、130mg/kg~140mg/kg、または140mg/kg~150mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kg~100mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、10mg/kg、20mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、75mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、100mg/kg、110mg/kg、120mg/kg、130mg/kg、140mg/kg、または150mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。抗体は、週1回、2週に1回、または月1回投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。抗体は、週1回、2週に1回、3週に1回、または月1回投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に週1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に2週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に3週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に月1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に週1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に2週毎に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に3週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に月1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、1mg/kg~10mg/kgの間の用量で皮下または筋肉内注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、1mg/kg~3mg/kg、3mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~7mg/kg、または7mg/kg~10mg/kgの間の用量で皮下または筋肉内注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、3週に1回、または月1回投与される。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、静脈内注射もしくは注入によって、筋肉内注射によって、または皮下注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、0.1mg/kg~50mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、0.1mg/kg~1mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、15mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~25mg/kg、25mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~35mg/kg、35mg/kg~40mg/kg、40mg/kg~45mg/kg、または45mg/kg~50mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、0.3mg/kg~10mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回の用量よりも高い初期予備用量で投与される。いくつかの実施形態では、初期予備用量は、3mg/kg~50mg/kgの間である。いくつかの実施形態では、初期予備用量は、3mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、15mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~25mg/kg、25mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~35mg/kg、35mg/kg~40mg/kg、40mg/kg~45mg/kg、または45mg/kg~50mg/kgの間である。いくつかの実施形態では、初期予備用量は、3mg/kg~20mg/kgの間である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、その対応する全長抗体と比較してより短い半減期を有し、例えば、抗体断片は、急速に消失し、それにより対象の血液腔外のC1q活性を温存し、または抗体は、対象の血液腔内のC1qを選択的に阻害し、それにより対象の血液腔外のC1q活性を温存する。いくつかの実施形態では、血液腔は、動脈、細動脈、毛細血管、小静脈、または静脈などの血管内に限定される。血液腔は、血清、血小板、内皮細胞、血液細胞、または造血細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、対象の血液腔内のC1qの阻害は、非常に血管に富む組織における組織損傷を減少させる。非常に血管に富む組織の例は、腎臓、肺胞、毛細血管床、または糸球体である。
【0016】
いくつかの実施形態では、血液障害は、補体媒介性血液障害である。いくつかの実施形態では、血液障害は、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、冷式抗体溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、糸球体腎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、感染症、または薬物誘導性血液学的障害である。感染症は、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、またはコロナウイルスであり得る。コロナウイルスの例は、SARS-CoV、MERS-CoV、HCoV、HKU1、及びSARS-CoV-2から選択される。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、対象は、気道または血液試料から逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって確認されたSARS-CoV-2感染症を有する。血液障害は、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、温式自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、ループス腎炎、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、または免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)であり得る。薬物誘導性血液学的障害の例は、再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、及び血小板減少症である。
【0017】
いくつかの態様では、血液障害を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法が開示される。そのような方法は、古典的補体経路の阻害剤を対象に投与することを含み、対象は、血液腔を含み、阻害剤は、対象の血液腔内の古典的補体経路を選択的に阻害し、それにより組織内の補体活性を温存する。本明細書に記載の本発明の任意の態様に適用され得る多数の実施形態がさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】抗C1q抗体(Mab1)が、CADにおいて血管内及び血管外の両方のRBC溶解に関連するプロセスを有効に停止させることを示している。抗C1q抗体が、CADを有する患者からの血清の存在下でRBC表面上でC1q、C4d、及びC3b結合/活性化を阻害して血管外溶解を防止することを示している。
【
図1B】抗C1q抗体(Mab1)が、CADにおいて血管内及び血管外の両方のRBC溶解に関連するプロセスを有効に停止させることを示している。抗C1q抗体が、CAD患者からの血清によって開始した赤血球のC5-C9媒介性溶解を阻止して血管内溶解を防止することを示している。
【
図2A】
図2A及び
図2Bは、抗C1q抗体(例えば、Mab1)及び抗C1s(例えば、TNT009)抗体が補体媒介性溶血を阻害することを示している。
図2Aは、抗C1q抗体及びTNT009の両方が赤血球の抗体/補体誘導性溶解を阻害することを示している。
図2Bは、抗C1q抗体のみが標的細胞に対するC1qの上流結合を阻害することを示している。RBCに対するC1q結合は、TNT009によって影響を受けない。C1qは、赤血球に沈着した3つの主要なオプソニン/免疫細胞リガンドのうちの1つである。
【
図2B】
図2A及び
図2Bは、抗C1q抗体(例えば、Mab1)及び抗C1s(例えば、TNT009)抗体が補体媒介性溶血を阻害することを示している。
図2Aは、抗C1q抗体及びTNT009の両方が赤血球の抗体/補体誘導性溶解を阻害することを示している。
図2Bは、抗C1q抗体のみが標的細胞に対するC1qの上流結合を阻害することを示している。RBCに対するC1q結合は、TNT009によって影響を受けない。C1qは、赤血球に沈着した3つの主要なオプソニン/免疫細胞リガンドのうちの1つである。
【
図3】抗C1q抗体(例えば、Mab1)が、古典的補体カスケードを選択的に阻害し、抗C5とは異なり、レクチン経路及び代替経路をインタクトなままとして、正常な免疫機能を発揮することを示している。
【
図4】CAD患者における補体枯渇/消費の血清バイオマーカーを示している。C5ではなくC4及びC2の減少は、早期補体成分の消費と共に早期補体カスケードの過剰活性化を示している。
【
図5】霊長類における抗C1q抗体断片(例えば、FabA)の皮下投与でのRBC溶解の阻害を示している。
【
図6A】CAD患者からのサンプルにおける抗C1q抗体(Mab2)及びFabAでの血清溶血及び補体沈着の用量依存性阻害を示している。Mab2の効果を示している。
【
図6B】CAD患者からのサンプルにおける抗C1q抗体(Mab2)及びFabAでの血清溶血及び補体沈着の用量依存性阻害を示している。FabAの効果を示している。
【
図7A】PF4/ヘパリンが古典的経路によって補体を活性化させることを示している。異なるインキュベーション条件における補体活性化を示すグラフである。健康ドナーからの血漿をEDTA(10mM)もしくはEGTA(10mM)±MgCl2(10mM)と共にまたは緩衝液と共にインキュベーションしてから、PF4/ヘパリンと共にインキュベーションし、補体活性化を抗原~C3e捕捉ELISAアッセイによって測定した。***p<0.0001。3つの異なる場合について試験された3つのドナーを含む代表的な実験からの結果が示されている。
【
図7B】PF4/ヘパリンが古典的経路によって補体を活性化させることを示している。異なるインキュベーション条件における補体活性化を示すグラフである。健康ドナーからの血漿をCl-阻害剤(10及び20IU/mL)と共にまたは伴わずにインキュベーションしてから、PF4/ヘパリンと共にインキュベーションし、PF4/ヘパリンによる補体活性化を抗原-C3c捕捉ELISAアッセイによって決定した。***p<0 0001。
【
図7C】PF4/ヘパリンが古典的経路によって補体を活性化させることを示している。様々なインキュベーション条件におけるB細胞に対する抗PF4/ヘパリン(KKO)の結合を示すヒストグラムである。重複ピークは、緩衝液対照(縞線)と、それに続くPF4、PF4/ヘパリン+EDTA、PF4/ヘパリン+EGTA+MgCl2、及びPF4/ヘパリン+EGTAを表す。ピーク1は、PF4/ヘパリンを表す。
【
図7D】PF4/ヘパリンが古典的経路によって補体を活性化させることを示している。様々なインキュベーション条件におけるB細胞に対する抗C3eの結合を示すヒストグラムである。重複ピークは、PF4/ヘパリン+EDTA、PF4/ヘパリン+EGTA、PF4/ヘパリン+EGTA+MgCl2、及び緩衝液対照(縞線)、及びPF4を表す。ピーク1は、PF4/ヘパリンを表す。
【
図7E】PF4/ヘパリンが古典的経路によって補体を活性化させることを示している。様々な抗体の存在下での補体活性化を示すグラフである。健康ドナーからの血漿を様々な濃度の抗Clq抗体、抗MBL抗体または対照抗体(0~100ug/mL)と共にインキュベーションしてから、PF4/ヘパリンを添加し、PF4/ヘパリンによる補体活性化を抗原-C3c捕捉ELISAアッセイによって決定した。抗体が添加されなかった条件と比較して、*p<0.05、**p<0.001、***p<0.0001。3つの異なる場合について試験された3つのドナーを含む代表的な実験からの結果が示されている。
【
図7F】PF4/ヘパリンが古典的経路によって補体を活性化させることを示している。様々なインキュベーション条件におけるB細胞に対する抗PF4/ヘパリンの結合を示すヒストグラムである。ピークは、緩衝液対照(縞線)、抗Clq+PF4/ヘパリン(ピーク1)、抗MBL+PF4/ヘパリン(ピーク2)、PF4/ヘパリン(ピーク3)、及びMS IgG1+PF4/ヘパリン(ピーク4)を表す。
【
図7G】PF4/ヘパリンが古典的経路によって補体を活性化させることを示している。様々なインキュベーション条件におけるB細胞に対する抗C3cの結合を示すヒストグラムである。ピークは、緩衝液対照(縞線)、抗Clq+PF4/ヘパリン(ピーク1)、抗MBL+PF4/ヘパリン(ピーク2)、PF4/ヘパリン(ピーク3)、及びMS IgG1+PF4/ヘパリン(ピーク4)を表す。
【
図8】PF4/ヘパリンによる補体活性化が血漿/血清IgMレベルと相関することを示している。
図8は、異なるドナーによるPF4/ヘパリン誘導性C’活性化(ELISAベースの抗原捕捉アッセイによって決定される)及びそれらの血漿IgMレベル(プロテオミクス分析によって定量される)を示すグラフである。x軸上の各点について、左の棒はC3eを表し、右の棒はIgMを表す。
【
図9】5+1mg/kg及び5+2mg/kgで投薬された動物における血清遊離FabAレベルを示している。定量の下限=5ng/mL。
【
図10】5+2mg/kgのFabAで処置された動物からの血漿における遊離C1qの減少を示している。定量の下限=1.1μg/mL。
【
図11】FabAの毎日の反復皮下投薬の後に血清溶血が阻害されたことを示している。
【
図12A】Mab1及びFabAについてのクリアランスデータを示している。Mab1 15mpk IVが250,000ng/mLのピーク血清遊離Mab1レベルをもたらすことを示している。遊離薬物レベルは、4日目まで上昇したままであり、5日目に検出未満のレベルまで消失する。
【
図12B】Mab1及びFabAについてのクリアランスデータを示している。FabA 10mpk IVが、12000ng/mLのピーク薬物レベルをもたらし、8時間までに検出限度未満まで低下する薬物レベルで非常に急速に消失することを示している。Fab分子の推定半減期は2~3時間である。
【
図12C】Mab1及びFabAについてのクリアランスデータを示している。FabA 3mpk SCが、遊離薬物レベルの極めて緩やかな増加を示し、単回投薬後24時間の時点で測定可能であることを示している。
【
図13】wAIHA患者からのサンプルにおける補体沈着及び抗C1q抗体(Mab2)での沈着の阻害を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
総論
本開示は一般に、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2(COVID))、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法であって、補体経路の阻害剤を対象に投与することを含む、方法に関する。
【0020】
本発明の血液障害の中には様々な病因が存在する;しかしながら、本発明の血液障害は通常、血液成分及び細胞、ならびに血管系及び非常に血管に富む組織内の関連する細胞での阻害されない補体活性化によって特性化される。これらの細胞での補体活性化は、免疫細胞の動員及び攻撃につながり得る補体成分の沈着をもたらす。それはまた、補体及び組織因子を発現し得る細胞由来微小胞の放出をもたらし、これにより炎症を促進し得る。赤血球上の補体沈着は、血管内または血管外溶血及び/または血栓形成促進性である赤血球由来微小胞の放出を引き起こし得る。補体沈着はまた、血管系内の細胞、例えば、内皮細胞上で、または非常に血管に富む組織内で、例えば、毛細血管床、糸球体、肺胞などで発生し得、これは多くの器官において血管損傷をもたらし得る。赤血球上の補体沈着はまた、血管外クリアランスの向上をもたらし得る。補体活性化は、補体カスケードの活性化を阻止する阻害剤によって防止され得る。そのような阻害剤は、血液細胞における、または血管系の関連する細胞及び非常に血管に富む組織における特定の補体タンパク質の発現を阻止し、補体活性化を誘導するシグナル伝達分子を妨害し、血液細胞における、または関連する細胞及び血管に富む組織における補体阻害剤の発現を上方制御し、またはそうでなければ血液障害または血液学的障害における補体の役割を妨害し得る。
【0021】
例えば、慢性溶血性疾患患者にはしばしば、重度の貧血が現れる。寒冷凝集素症(CAD)及び温式自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)において、赤血球(RBC)に対する自己反応性抗体は、C1q結合及び古典的補体活性化を引き起こす。補体活性化は、RBCクリアランスを引き起こし、慢性貧血をもたらす。補体媒介性赤血球損傷は、C1qが赤血球に結合した自己抗体を認識し、古典的経路を誘発させて赤血球を活性化した補体成分(C1q、C4b、C3b)で被覆し、補体で被覆されたRBCが循環から除去された場合に生じ、貧血をもたらす。CAD及びwAIHAにおいて、RBCは、「血管外溶解」を介してRBCクリアランスを促進する3つの主要な古典的補体「オプソニン」であるC1q、C4b及びC3bで被覆される。C1q、C4b及びC3bは、RBC除去のための細網内皮系によって脾臓及び肝臓において認識される。また、CAD及びwAIHAでは、RBCはC5bで被覆されて、赤血球の膜侵襲複合体(MAC)媒介性溶解を開始させ、直接的な血管内RBC溶解を引き起こす。抗C1qは、CADにおけるRBC溶解に関連する血管内及び血管外の両方のプロセスを有効に停止させる(
図1A~
図1B)。抗C1q抗体は、補体カスケードの主要な「オプソニン」/免疫細胞リガンド(C1q、C4b及びC3b)の沈着を阻害し得る。抗C1q抗体(例えば、配列番号3の重鎖可変ドメイン及び配列番号7の軽鎖可変ドメインを含むMab1抗体)及び抗C1s(例えば、TNT009)抗体はいずれとも、直接補体媒介性溶血を阻害する(血管内溶解の阻害と一致する)(
図2A)一方で、抗C1q抗体のみが、血管外溶解に関与するオプソニンである、標的細胞に対するC1qの上流結合を阻害する(
図2B)。抗C1s抗体はC1q結合を阻止しないが、抗C3は、RBCに対するC1qまたはC4bの結合を阻止せず、抗C5は、RBCに対するC1q、C4bまたはC3b結合を阻害しないであろう。抗C1qのみが、血管外溶血に関与する3つすべてのオプソニンによるRBCの被覆を阻害する。
【0022】
補体経路を(例えば、抗C1q抗体によって)阻害することにより、血管系内または非常に血管に富む組織内の細胞上の補体沈着が停止する。血液障害において、C1qは、損傷組織にまたは損傷組織によって曝露された成分に結合し、細胞表面上のC1q、C4b及びC3b沈着及びさらなる損傷と共に補体活性化を引き起こす。血液腔内または非常に血管に富む組織内の細胞にC1qが結合することを阻止することにより、それは、組織または器官に対するさらなる補体媒介性損傷を阻止する。例えば、ループス腎炎は、血液濾過が行われる腎臓の非常に血管に富む部分内の細胞の表面上でのC1q活性化を阻止することによって処置され得る。
【0023】
抗C1q抗体(例えば、配列番号3の重鎖可変ドメイン及び配列番号7の軽鎖可変ドメインを含むMab1抗体)は、古典的経路を選択的に阻害して、レクチン経路及び代替経路の正常な免疫機能を温存する(
図3)。対照的に、抗C5は、抗C3と同じように、3つすべての経路の溶血活性を阻害する(
図3)。抗C3及び抗C5抗体とは異なり、抗C1q抗体は、レクチン経路及び代替経路をそのままにして、正常な免疫機能を発揮する。CAD患者における補体枯渇/消費の血清バイオマーカーは、追加の評価を提供する。C5ではなくC4及びC2の減少は、早期補体成分の消費と共に早期補体カスケードの慢性過剰活性化と一致する(
図4)。CADは、霊長類におけるRBC溶解を阻害するために抗C1q抗体(例えば、配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含む抗C1q FabであるFabA)の皮下投与によって処置され得る(
図5)。
【0024】
C1qに対するFab対完全抗体(whole antibody)の投与間の差異は、全身性C1q阻害の程度である。全長抗体の長い半減期を考慮すると、抗体は、全長抗体の投与後に長い時間(例えば、数日)、血液腔内に留まる。これにより、抗体は、組織に浸透し、全身にわたってC1q活性を阻害することが可能となる。例えば、10mg/kgの全長抗体は、血液腔内で数日間持続し、組織に浸透して全身にわたってC1qを阻害するための時間を有するであろう。いくつかの状況では、他の場所ではC1q機能を許容しつつ、血管疾患の処置(疾患のための本質的「局所処置」)のためにC1q阻害を血管部分に限定することが好ましい場合がある。この目的のため、高い親和性及びより短い半減期を有するFab断片は、皮下または静脈内に投与される。例えば、10mg/kg(または0.3mg/Kg~20mg/Kg)のFabがIVで与えられる場合、遊離薬物は急速に消失する(≦8時間)-しかしながら、循環中のC1qに結合した薬物は存続するので、C1qは、それが置き換わるまで約24時間阻害されたままである。
【0025】
1つのそのような用途では、CADは、慢性であるが、通常は生命を脅かさない疾患であり、概ね高齢者で生じる。そのような場合、血管腔におけるC1qを選択的に阻害してRBCを保護する一方で、C1qがその正常な免役機能を身体の他の場所で発揮することが可能になるという安全上の利点が存在し得る。この目的は、抗C1q一価Fab(例えば、配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含む抗C1q抗体Fab断片(「FabA」))の皮下自己投与によって達成され得る。一価Fabの極めて高い親和性(10pM)により、薬物は、C1qが循環中で移動している間、C1qにしっかりと結合したままである。遊離薬物(C1qに結合していない)は、循環から急速に消失し、組織に入らない。循環C1qの機能は、血液中のC1qのターンオーバー(24~48時間)で元に戻る(
図5)。抗C1q一価Fabは、例えば、毎日、皮下投薬され得る。抗C1q一価Fabは、24時間毎に(または、Fabコンストラクトがどのくらいの速さで皮膚から吸収されるかに応じて、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回)0.3~10mg/kgで皮下に投薬され、循環中のRBC表面での補体活性化を十分に阻害し、それにより血管内及び血管外の両方のRBC溶解を防止し得る(CADにおいて、「血管外」溶解は、補体で被覆された循環RBCのクッパー細胞の捕捉によって肝臓で生じる)。しかしながら、投与後、抗C1q一価Fab(例えば、配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含む抗C1q抗体Fab断片)は、血液腔中のC1qを選択的に阻害し、それにより循環RBC上の補体沈着を防止する一方で、組織C1qが正常な免疫機能を保持することを可能とする。
【0026】
短い循環半減期を有する、C1qに対する高親和性抗体のFab断片は、毎日の皮下投与で24時間、血液腔中のC1qの活性を十分に抑制し得る。その短い循環半減期は、全身性阻害(すなわち、組織におけるC1qの阻害)の程度を制限し、それにより血液腔外のC1qの機能を温存するであろう。
【0027】
C1q、C1r、またはC1sなどの補体因子の活性の中和は、古典的補体活性を阻害し、血管部分の補体媒介性障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス、例えば、SARS-CoV-2(COVID))、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を遅らせ、または予防する。古典的補体経路の阻害は、レクチン補体経路及び代替補体経路をインタクトなままとして、それらの正常な免疫機能を発揮する。血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))におけるC1q、C1r、またはC1sなどの補体因子を中和することに関する方法が本明細書に開示される。
【0028】
本開示で挙げられるすべての配列は、米国特許出願番号14/933,517、米国特許出願番号14/890,811、米国特許番号8,877,197、米国特許番号9,708,394、米国特許出願番号15/360,549、米国特許番号9,562,106、米国特許番号10,450,382、米国特許番号10,457,745、国際特許出願番号PCT/US2018/022462(これらの各々は、それが開示する抗体及び関連する組成物について参照により本明細書に組み込まれる)から参照により組み込まれる。
【0029】
ある特定の態様では、本明細書では、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法であって、補体経路の阻害剤を対象に投与することを含む、方法が開示される。
【0030】
全長抗体は、組換えDNA操作技術の使用によって調製され得る。そのような操作バージョンには、例えば、天然抗体のアミノ酸配列内にまたはアミノ酸配列への挿入、欠失または変化によって天然抗体可変領域から作製されるものが含まれる。このタイプの特定の例には、1つ目の抗体からの少なくとも1つのCDR及び任意に1つ以上のフレームワークアミノ酸及び2つ目の抗体からの可変領域ドメインの残りを含有するそれらの操作された可変領域ドメインが含まれる。抗体をコードするDNAは、全長抗体をコードするDNAの所望の部分以外のすべてを欠失させることによって調製され得る。キメラ化抗体をコードするDNAは、ヒト定常領域を実質的にまたは独占的にコードするDNA、及びヒト以外の哺乳動物の可変領域の配列に実質的にまたは独占的に由来する可変領域をコードするDNAを組み換えることによって調製され得る。ヒト化抗体をコードするDNAは、対応するヒト抗体領域に実質的にまたは独占的に由来する定常領域及び相補性決定領域(CDR)以外の可変領域をコードするDNA、及びヒト以外の哺乳動物に実質的にまたは独占的に由来するCDRをコードするDNAを組み換えることによって調製され得る。
【0031】
抗体をコードするDNA分子の好適な供給源には、全長抗体を発現するハイブリドーマなどの細胞が含まれる。例えば、抗体は、抗体の重鎖及び/または軽鎖をコードする発現ベクターを発現する宿主細胞から単離され得る。
【0032】
抗体断片及び/または抗体誘導体はまた、抗体可変及び定常領域をコードするDNAの操作及び再発現を含む組換えDNA操作技術の使用によって調製され得る。標準的な分子生物技術は、所望により、さらなるアミノ酸またはドメインを改変、付加または欠失させるために使用され得る。可変または定常領域に対する任意の変化は、依然として、本明細書で使用される用語「可変」及び「定常」領域に包含される。いくつかの例では、CH1ドメインの翻訳が鎖間システインで停止するように、CH1の鎖間システインをコードするコドンの直後に終止コドンを導入することによって抗体断片を生成するためにPCRが使用される。好適なPCRプライマーを設計するための方法は当該技術分野でよく知られており、抗体CH1ドメインの配列は容易に利用可能である。いくつかの実施形態では、終止コドンは、部位特異的変異誘発技術を使用して導入され得る。
【0033】
本開示の抗体は、例えば、IgG、IgM、IgA、IgD及びIgEならびにそのサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む)を含む任意の抗体アイソタイプ(「クラス」)に由来し得る。ある特定の好ましい実施形態では、抗体の重鎖及び軽鎖は、IgGに由来する。抗体の重鎖及び/または軽鎖は、マウスIgGまたはヒトIgGに由来し得る。ある特定の他の好ましい実施形態では、抗体の重鎖及び/または軽鎖は、ヒトIgG1に由来する。さらに他の好ましい実施形態では、抗体の重鎖及び/または軽鎖は、ヒトIgG4に由来する。
【0034】
いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗Clq抗体、抗Clr抗体、または抗Cls抗体などの抗体である。抗C1q抗体は、C1qと自己抗体との間、またはC1qとC1rとの間、またはC1qとC1sとの間の相互作用を阻害し得る。抗C1r抗体は、C1rとC1qとの間、またはC1rとC1sとの間の相互作用を阻害し得る。抗C1r抗体は、C1rの触媒活性を阻害し得、または抗C1r抗体は、pro-C1rの活性プロテアーゼへの処理を阻害し得る。抗C1s抗体は、C1sとC1qとの間、またはC1sとC1rとの間、またはC1sとC2もしくはC4との間の相互作用を阻害し得、または抗C1s抗体は、C1sの触媒活性を阻害し得、またはそれは、pro-C1sの活性プロテアーゼへの処理を阻害し得る。いくつかの例では、抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体は、循環または組織からのC1q、C1rまたはC1sのクリアランスを引き起こす。
【0035】
本明細書で開示される抗体は、例えば、哺乳動物C1q、C1r、またはC1s、好ましくはヒトC1q、C1r、またはC1sに結合する、モノクローナル抗体であり得る。抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗体断片、またはその抗体誘導体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab断片などの抗体断片である。抗体は、ヒトへの投与に好適な十分なヒト配列を有するキメラ抗体であり得る。抗体は、グリコシル化または非グリコシル化であり得;いくつかの実施形態では、抗体は、例えば、CHO細胞における翻訳後修飾によって生成されるグリコシル化パターンで、グリコシル化される。いくつかの実施形態では、抗体は、E.coliで生成される。
【0036】
本開示の抗体はまた、治療剤、例えば、抗炎症タンパク質、神経治療剤、抗ウイルス剤、抗寄生虫剤、抗細菌剤、内分泌薬、代謝薬、マイトトキシン、化学療法薬、またはsiRNAに共有結合され得る。
【0037】
いくつかの実施形態では、本開示の抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体は、赤血球上へのC3沈着を減少させる;例えば、いくつかの実施形態では、本開示の抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体は、RBC上へのC3b、iC3bなどの沈着を減少させる。いくつかの実施形態では、本開示の抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体は、補体媒介性赤血球溶解を阻害する。本明細書に開示される抗体は、血小板上へのC3沈着を減少させ得る;例えば、いくつかの実施形態では、本開示の抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体は、血小板上へのC3b、iC3bなどの沈着を減少させる。
【0038】
本開示の抗体は、C1q、C1r、またはC1sに結合し、その生物学的活性を阻害し得る。例えば、(1)自己抗体に対するC1q結合、(2)C1rに対するC1q結合、(3)C1sに対するC1q結合、(4)ホスファチジルセリンに対するC1q結合、(5)ペントラキシン-3に対するC1q結合、(6)C反応性タンパク質(CRP)に対するC1q結合、(7)球状C1q受容体(gC1qR)に対するC1q結合、(8)補体受容体1(CR1)に対するC1q結合、(9)Bアミロイドに対するC1q結合、または(10)カルレチキュリンに対するC1q結合。他の実施形態では、C1qの生物学的活性は、(1)古典的補体活性化経路の活性化、(2)溶解の減少及び/またはC3沈着の減少、(3)抗体及び補体依存性細胞傷害の活性化、(4)CH50溶血、(5)赤血球溶解の減少、(6)赤血球貪食の減少、(7)樹状細胞浸潤の減少、(8)補体媒介性赤血球溶解の阻害、(9)リンパ球浸潤の減少、(10)マクロファージ浸潤の減少、(11)抗体沈着の減少、(12)好中球浸潤の減少、(13)血小板貪食の減少、(14)血小板溶解の減少、(15)移植片生存の改善、(16)マクロファージ媒介性貪食の減少、(17)自己抗体媒介性補体活性化の減少、(18)輸血反応による赤血球破壊の減少、(19)同種抗体による赤血球溶解の減少、(20)輸血反応による溶血の減少、(21)同種抗体媒介性血小板溶解の減少、(22)貧血の改善、(23)好酸球増多症の減少、(24)赤血球上のC3沈着の減少(例えば、RBC上のC3b、iC3bなどの沈着の減少)、(25)血小板上のC3沈着の減少(例えば、血小板上のC3b、iC3bなどの沈着の減少)、(26)アナフィラトキシン生成の減少、(27)自己抗体媒介性発疹形成の減少、(28)自己抗体誘導性エリテマトーデスの減少、(29)輸血反応による赤血球破壊の減少、(30)輸血反応による血小板溶解の減少、(31)肥満細胞活性化の減少、(32)肥満細胞ヒスタミン放出の減少、(33)血管透過性の減少、(34)移植片内皮上の補体沈着の減少、(35)B細胞抗体生成、(36)樹状細胞成熟、(37)T細胞増殖、(38)サイトカイン生成、(39)ミクログリア活性化、(40)アルツス反応、(41)移植片内皮におけるアナフィラトキシン生成の減少、または(42)補体受容体3(CR3/C3)発現細胞の活性化である。
【0039】
いくつかの実施形態では、CH50溶血は、ヒト、マウス、及び/またはラットCH50溶血を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、CH50溶血の少なくとも約50%~少なくとも約95%を中和することが可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、CH50溶血の50%、60%、70%、80、90%、または100%を中和することが可能である。抗体はまた、150ng/ml未満、100ng/ml未満、50ng/ml未満、または20ng/ml未満の用量でCH50溶血の少なくとも50%を中和することが可能であり得る。
【0040】
補体活性を測定するための他のin vitroアッセイには、補体活性化中に形成する補体成分または複合体の分割生成物の測定のためのELISAアッセイが含まれる。古典的経路を介する補体活性化は、血清中のC4d及びC4のレベルを追跡することによって測定され得る。代替経路の活性化は、循環におけるBbまたはC3bBbP複合体のレベルを評価することによってELISAで測定され得る。in vitro抗体媒介性補体活性化アッセイもまた、C3a生成の阻害を評価するために使用され得る。
【0041】
本開示の抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、多重特異性抗体、その抗体断片、またはその誘導体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab断片などの抗体断片である。
【0042】
本開示の抗体はまた、抗体断片、例えば、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ、または一本鎖抗体分子であり得る。
【0043】
本明細書では、第2の薬剤、例えば、第2の抗体または第2の阻害剤を対象に投与する方法が開示される。抗体は、抗Clq抗体、抗Clr抗体、または抗Cls抗体であり得る。阻害剤は、抗体依存性細胞傷害、代替補体活性化経路の阻害剤;及び/または自己抗体と自己抗原との間の相互作用の阻害剤であり得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を発症する対象のリスクを決定する方法であって、(a)抗体(すなわち、抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体)を対象に投与することであって、抗体は、検出可能な標識に連結されている、投与すること;(b)検出可能な標識を検出して、対象におけるC1q、C1r、またはC1sの量または位置を測定すること;及び(c)C1q、C1r、またはC1sの1つ以上の量または位置を参照と比較することを含み、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を発症するリスクは、C1q、C1r、またはC1sの1つ以上の量または位置と参照との比較に基づいて特性化される、方法が提供される。検出可能な標識は、核酸、オリゴヌクレオチド、酵素、放射性同位体、ビオチンまたは蛍光標識を含み得る。いくつかの例では、抗体は、ビオチン化のプロセスを使用してビオチンなどの補酵素で標識され得る。ビオチンが標識として使用される場合、抗体の検出は、アビジンまたはその細菌性対応物であるストレプトアビジンなどのタンパク質の添加によって達成される(そのいずれかが、検出可能なマーカー、例えば、前述した色素、蛍光マーカー、例えば、フルオレセイン、放射性同位体または酵素、例えば、ペルオキシダーゼに結合され得る)。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片(例えば、Fab、Fab’-SH、Fv、scFv、またはF(ab’)2断片)またはその抗体誘導体である。
【0045】
本明細書に開示される抗体はまた、標識基、例えば、放射性同位体、放射性核種、酵素基、ビオチニル基、核酸、オリゴヌクレオチド、酵素、または蛍光標識に連結され得る。標識基は、潜在的立体障害を減少させるために任意の好適な長さのスペーサー腕部を介して抗体に連結され得る。タンパク質を標識するための様々な方法が当該技術分野で知られており、そのような標識抗体を調製するために使用され得る。
【0046】
様々な投与経路が企図される。そのような投与方法には、局所、非経口、皮下、腹腔内、肺内、髄腔内、鼻腔内、及び病巣内投与が含まれるがこれらに限定されない。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。好適な抗体には、補体成分C1q、C1r、またはC1sに結合する抗体が含まれる。そのような抗体には、モノクローナル抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、抗体断片、及び/またはその抗体誘導体が含まれる。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab断片などの抗体断片である。
【0047】
いくつかの実施形態では、抗体は、組換え手段によって調製、発現、生成または単離され得るヒトモノクローナル抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子またはそれから調製されるハイブリドーマのトランスジェニックまたはトランス染色体である動物(例えば、マウス)から単離された抗体(以下にさらに記載される)、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から単離された抗体、例えば、トランスフェクトーマから単離された抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリから単離された抗体、及び(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段によって調製、発現、生成または単離された抗体である。そのような組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列及び/または非生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域及び定常領域を有する。しかしながら、ある特定の実施形態では、そのような組換えヒト抗体は、in vitro変異誘発(または、ヒトIg配列に対してトランスジェニックな動物が使用される場合、in vivo体細胞変異誘発)を受けてもよく、したがって、組換え抗体のVH及びVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列VH及びVL配列に由来し、関連しているが、in vivoでヒト抗体生殖系列レパートリー内に自然に存在しなくてもよい配列である。
【0048】
いくつかの実施形態では、抗体は、齧歯類(例えば、マウス、ラット、ハムスター及びモルモット)を(1)ヒト血漿または血清からの精製された補体成分の酵素消化に由来する天然補体成分(例えば、C1q、C1r、またはC1s)、または(2)真核生物系または原核生物系のいずれかによって発現した組換え補体成分、またはその誘導断片で免疫することによって樹立され得るヒト化及び/またはキメラモノクローナル抗体である。他の動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒト免疫グロブリンを発現するトランスジェニックマウス、及びヒトBリンパ球が移植された重症複合免疫不全(SCID)マウスが免疫のために使用され得る。
【0049】
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体は、病原体に対する免疫系の反応において免疫グロブリン(Ig)分子として天然に生成される。ヒト血清において8mg/mlの濃度を有する優勢的な形式である約150kDaのIgG1分子は、2つの同一の約50kDaの重鎖及び2つの同一の約25kDaの軽鎖から構成される。
【0050】
ハイブリドーマは、免疫された動物からのBリンパ球をミエローマ細胞と融合させることによって従来の手順によって生成され得る。また、抗C1q、C1r、またはC1s抗体は、ファージディスプレイシステムにおいてヒトBリンパ球からの組換え一本鎖FvまたはFabライブラリをスクリーニングすることによって生成され得る。ヒトC1q、C1r、またはC1sに対するMAbの特異性は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ウエスタンイムノブロッティング、または他の免疫化学的技術によって試験され得る。
【0051】
スクリーニングプロセスにおいて同定された抗体の補体活性化に対する阻害活性は、代替補体経路の場合は未感作ウサギまたはモルモットRBC、または古典的補体経路の場合は感作ニワトリまたはヒツジRBCを使用して溶血アッセイによって評価され得る。古典的補体経路に特異的な阻害活性を示すそれらのハイブリドーマは、限界希釈によってクローニングされる。抗体は、上述したアッセイによってヒトC1q、C1r、またはC1sに対する特異性についての特性化のために精製される。
【0052】
抗C1q、C1r、またはC1s抗体の可変領域の分子構造に基づいて、分子モデリング及び合理的分子設計が使用されて、抗体の結合領域の分子構造を模倣し、C1q、C1r、またはC1sの活性を阻害する小分子が生成され、スクリーニングされ得る。これらの小分子は、ペプチド、ペプチド模倣物、オリゴヌクレオチド、または有機化合物であり得る。模倣分子は、炎症症状及び自己免疫疾患において補体活性化の阻害剤として使用され得る。代替的には、コンビナトリアル化合物のライブラリから好適な小分子を単離するためにその分野で一般的に使用される大規模スクリーニング手順が使用され得る。
【0053】
好適な投薬量は、動物モデル及び臨床試験を使用し、次いで最適な投薬量を決定するための従来の方法論に従うこと、すなわち、様々な投薬量を投与し、どの用量が望ましくない副作用を伴わずに好適な有効性を提供するのかを決定することを含む、多様なよく知られている方法論を使用して当業者によって決定され得る。
【0054】
組換えDNA技術の出現の前は、抗体分子の構造を切断し、分子のどの部分がその様々な機能を担っているのかを決定するために、ポリペプチド配列を切断するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が使用されていた。プロテアーゼパパインでの限定消化は、抗体分子を3つの断片に切断する。Fab断片として知られている2つの断片は同一であり、抗原結合活性を含有する。Fab断片は、抗体分子の2つの同一の腕部に対応し、その各々は、重鎖のVH及びCH1ドメインと対合した完全軽鎖からなる。他の断片は、抗原結合活性を含まないが、容易に結晶化することが当初観察され、この理由からFc断片(結晶化可能断片)と名づけられた。
【0055】
Fab分子は、定常ドメインCH2及びCH3を欠く重鎖を有するIg分子の人工の約50kDaの断片である。2つの異好性(VL-VH及びCL-CH1)ドメイン相互作用は、Fab分子の2つの鎖の構造の基礎にあり、これはCLとCH1との間のジスルフィド架橋によってさらに安定化される。Fab及びIgGは、6つの相補性決定領域(CDR)(3つはそれぞれVL及びVHに由来する(LCDR1、LCDR2、LCDR3及びHCDR1、HCDR2、HCDR3))によって形成される同一の抗原結合部位を有する。CDRは、抗体の超可変抗原結合部位を画定する。最も高い配列バリエーションは、LCDR3及びHCDR3に見られ、これは天然免疫系では、それぞれVL及びJL遺伝子またはVH、DH及びJH遺伝子の再編成によって生成される。LCDR3及びHCDR3は典型的には、抗原結合部位のコアを形成する。6つのCDRを接続し、提示する保存領域は、フレームワーク領域と称される。可変ドメインの三次元構造において、フレームワーク領域は、外側では超可変CDRループによって及び内側では保存ジスルフィド架橋によって連結された2つの対向する逆平行β-シートのサンドイッチを形成する。
【0056】
本明細書では、血液障害、例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症)に罹患している個体を防御または処置するための方法が開示される。血液及び内皮細胞での補体活性化は、血小板、単球、好中球、赤血球ならびに血栓性及び炎症性損傷を促進する内皮細胞を活性化する。これらの知見は、多様な臨床的病態、特に補体活性化が関与する血液障害について広い関連性を有する。補体活性化は、補体タンパク質を補体経路の阻害剤またはアンタゴニストと接触させることによって阻害される。例えば、阻害剤は、補体カスケードの活性化を阻止し得、血液細胞における特定の補体タンパク質の発現を阻止し得、補体活性化を誘導するシグナル伝達分子を妨害し得、血液細胞における補体阻害剤の発現を上方制御し得、また、そうでなければ血液障害における補体の役割を妨害する。補体活性化を防止する能力は、多様な血液障害における正常な血液機能を維持することについて重要な関連性を有する。
【0057】
本開示はまた、a)実施形態のいずれかからの抗体を対象に投与することであって、抗体は、検出可能な標識に連結されている、投与すること;(b)検出可能な標識を検出して、対象における抗体の量または位置を測定すること;及び(c)抗体の量または位置を参照と比較することであって、補体活性化に関連する血液障害を発症するリスクは、参照と比較した抗体の量の比較に基づいて特性化される、比較することによって個体における補体活性化を検出する方法を提供する。例えば、検出可能な標識は、核酸、オリゴヌクレオチド、酵素、放射性同位体、ビオチン、または蛍光標識(例えば、フルオレセイン、ローダミン、シアニン色素またはBODIPY)を含み得る。検出可能な標識は、x線、CT、MRI、超音波、PET及びSPECTのための造影剤を使用して検出され得る。
【0058】
本明細書に記載の様々な実施形態の特性のうちの1つ、いくつかまたはすべては、本明細書で提供される組成物及び方法の他の実施形態を形成するために組み合わされ得ることが理解されるべきである。本発明に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本発明によって具体的に包含され、ありとあらゆる組み合わせが個別にかつ明確に開示されたかのように本明細書に開示される。加えて、様々な実施形態及びそれらの要素のすべての副次的組み合わせも本発明によって具体的に包含され、ありとあらゆるそのような副次的組み合わせが個別にかつ明確に本明細書に開示されたかのように本明細書に開示される。本明細書で提供される組成物及び方法のこれらの及び他の態様は、当業者に明らかになる。
【0059】
本明細書で論述される刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示に対してのみ提供される。本明細書におけるいずれの内容も、本発明が先行発明によりそのような刊行物に先行する資格がないことを認めるものと解釈されるべきではない。さらに、提供される出版物の日付は、実際の出版日とは異なる場合があり、別々に確認する必要があり得る。
【0060】
抗補体C1q抗体
本明細書で開示される抗C1q抗体は、C1qの強力な阻害剤であり、任意の期間にわたってC1q機能の継続的阻害のために投薬され、次いでその活性が重要であり得る時点で正常なC1q機能の回復を可能にするために任意に停止され得る。動物研究において本明細書に開示される抗C1q抗体で得られた結果は、ヒト化またはヒト抗体、ならびにその断片及び/または誘導体を用いて臨床に容易に進展させることができる。
【0061】
C1qは、18個のポリペプチド鎖(6個のC1qのA鎖、6個のC1qのB鎖、及び6個のC1qのC鎖)からなる460kDaの大型多量体タンパク質である。C1r及びC1s補体タンパク質は、C1q尾部領域に結合してC1複合体(C1qr2s2)を形成する。
【0062】
本開示の抗体は、古典的補体活性化経路のC1複合体における補体因子C1q及び/またはC1qを特異的に認識する。結合した補体因子は、限定されないが、任意の哺乳動物生物、例えば、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、またはブタを含む補体系を有する任意の生物に由来し得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「C1複合体」は、限定されないが、1つのC1qタンパク質、2つのC1rタンパク質、及び2つのC1sタンパク質を含み得るタンパク質複合体(例えば、C1qr2s2)を指す。
【0064】
本明細書に開示される抗C1q抗体は、C1複合体形成を阻害し得る。
【0065】
本明細書で使用される場合、「補体因子C1q」は、野生型配列及び天然に存在するバリアント配列の両方を指す。
【0066】
本開示の抗体によって認識される補体因子C1qの非限定的な例は、3つのポリペプチド鎖A、B、及びCを含むヒトC1qである:
【0067】
C1q,鎖A(homo sapiens),アクセッション番号 タンパク質
データベース:NP_057075.1;GenBank番号:NM_015991:
>gi|7705753|ref|NP_057075.1|補体C1q
サブコンポーネントサブユニットA前駆体[Homo sapiens]
(配列番号1)
MEGPRGWLVLCVLAISLASMVTEDLCRAPDGKKGEAGRPGRRGRPGLKGEQGEPGAPGIRTGIQGLKGDQGEPGPSGNPGKVGYPGPSGPLGARGIPGIKGTKGSPGNIKDQPRPAFSAIRRNPPMGGNVVIFDTVITNQEEPYQNHSGRFVCTVPGYYYFTFQVLSQWEICLSIVSSSRGQVRRSLGFCDTTNKGLFQVVSGGMVLQLQQGDQVWVEKDPKKGHIYQGSEADSVFSGFLIFPSA。
【0068】
C1q,鎖B(homo sapiens),アクセッション番号 タンパク質
データベース:NP_000482.3;GenBank番号:NM_000491.3:
>gi|87298828|ref|NP_000482.3|補体Clq
サブコンポーネントサブユニットB前駆体[Homo sapiens]
(配列番号2)
MMMKIPWGSIPVLMLLLLLGLIDISQAQLSCTGPPAIPGIPGIPGTPGPDGQPGTPGIKGEKGLPGLAGDHGEFGEKGDPGIPGNPGKVGPKGPMGPKGGPGAPGAPGPKGESGDYKATQKIAFSATRTINVPLRRDQTIRFDHVITNMNNNYEPRSGKFTCKVPGLYYFTYHASSRGNLCVNLMRGRERAQKVVTFCDYAYNTFQVTTGGMVLKLEQGENVFLQATDKNSLLGMEGANSIFSGFLLFPDMEA。
【0069】
C1q,鎖C(homo sapiens),アクセッション番号 タンパク質
データベース:NP_001107573.1;GenBank番号:NM_001114101.1:
>gi|166235903|ref|NP_001107573.1|補体C1q
サブコンポーネントサブユニットC前駆体[Homo sapiens]
(配列番号3)
MDVGPSSLPHLGLKLLLLLLLLPLRGQANTGCYGIPGMPGLPGAPGKDGYDGLPGPKGEPGIPAIPGIRGPKGQKGEPGLPGHPGKNGPMGPPGMPGVPGPMGIPGEPGEEGRYKQKFQSVFTVTRQTHQPPAPNSLIRFNAVLTNPQGDYDTSTGKFTCKVPGLYYFVYHASHTANLCVLLYRSGVKVVTFCGHTSKTNQVNSGGVLLRLQVGEEVWLAVNDYYDMVGIQGSDSVFSGFLLFPD。
【0070】
したがって、本開示の抗C1q抗体は、C1qタンパク質のポリペプチド鎖A、ポリペプチド鎖B、及び/またはポリペプチド鎖Cに結合し得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗C1q抗体は、ヒトC1qまたはそのホモログ、例えば、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、またはブタC1qのポリペプチド鎖A、ポリペプチド鎖B、及び/またはポリペプチド鎖Cに結合する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはその断片またはその誘導体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab断片などの抗体断片である。
【0071】
好適な抗体には、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法のための、補体C1qタンパク質に結合する抗体(すなわち、本明細書で抗C1q抗体及びC1q抗体とも称される抗補体C1q抗体)及びそのような抗体をコードする核酸分子が含まれる。
【0072】
以下の20段落で挙げられるすべての配列は、米国特許番号9,708,394(それが開示する抗体及び関連する組成物について参照により本明細書に組み込まれる)から参照により組み込まれる。
【0073】
抗体M1(Mab2)の軽鎖及び重鎖可変ドメイン配列
標準的な技術を使用して、抗体M1の軽鎖可変及び重鎖可変ドメインをコードする核酸及びアミノ酸配列を決定した。抗体M1の軽鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、
【0074】
【0075】
軽鎖可変ドメインの超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。いくつかの実施形態では、M1軽鎖可変ドメインのHVR-L1は配列RASKSINKYLA(配列番号5)を有し、M1軽鎖可変ドメインのHVR-L2は配列SGSTLQS(配列番号6)を有し、M1軽鎖可変ドメインのHVR-L3は配列QQHNEYPLT(配列番号7)を有する。
【0076】
抗体M1の重鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、
【0077】
【0078】
重鎖可変ドメインの超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。いくつかの実施形態では、M1重鎖可変ドメインのHVR-H1は配列GYHFTSYWMH(配列番号9)を有し、M1重鎖可変ドメインのHVR-H2は配列VIHPNSGSINYNEKFES(配列番号10)を有し、M1重鎖可変ドメインのHVR-H3は配列ERDSTEVLPMDY(配列番号11)を有する。
【0079】
軽鎖可変ドメインをコードする核酸配列は、
GATGTCCAGATAACCCAGTCTCCATCTTATCTTGCTGCATCTCCTGGAGAAACCATTACTATTAATTGCAGGGCAAGTAAGAGCATTAACAAATATTTAGCCTGGTATCAAGAGAAACCTGGGAAAACTAATAAGCTTCTTATCTACTCTGGATCCACTTTGCAATCTGGAATTCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGTACAGATTTCACTCTCACCATCAGTAGCCTGGAGCCTGAAGATTTTGCAATGTATTACTGTCAACAACATAATGAATACCCGCTCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAGCTGAAA(配列番号12)
と決定した。
【0080】
重鎖可変ドメインをコードする核酸配列は、
CAGGTCCAACTGCAGCAGCCTGGGGCTGAGCTGGTAAAGCCTGGGGCTTCAGTGAAGTTGTCCTGCAAGTCTTCTGGCTACCATTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAAGCAGAGGCCTGGACAAGGCCTTGAGTGGATTGGAGTGATTCATCCTAATAGTGGTAGTATTAACTACAATGAGAAGTTCGAGAGCAAGGCCACACTGACTGTAGACAAATCCTCCAGCACAGCCTACATGCAACTCAGCAGCCTGACATCTGAGGACTCGGCGGTCTATTATTGTGCAGGAGAGAGAGATTCTACGGAGGTTCTCCCTATGGACTACTGGGGTCAAGGAACCTCAGTCACCGTCTCCTCA(配列番号13)
と決定した。
【0081】
物質の寄託
以下の物質は、ブダペスト条約に従ってAmerican Type Culture Collection,ATCC Patent Depository,10801 University Blvd.,Manassas,Va.20110-2209,USA(ATCC)に寄託された:
【0082】
培養物の入手が特許出願の係属中及び30年間、または最新の請求から5年後、または特許の有効期間のうち長い方まで利用可能となることを保証する条件下でM1抗体を生成するハイブリドーマ細胞株(マウスハイブリドーマC1qM1 7788-1(M)051613)がATCCに寄託された。寄託物は、その期間中に生存できなくなった場合に置き換えられる。寄託物は、本出願の対応出願、またはその子孫が出願された国における外国特許法によって要求されるように利用可能である。しかしながら、寄託物の利用可能性は、政府の措置によって付与された特許権を逸脱して本発明を実施するためのライセンスを構成するものではないことが理解されるべきである。
【0083】
本明細書では、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインを含む抗C1q抗体を投与する方法が開示される。抗体は、少なくともヒトC1q、マウスC1q、またはラットC1qに結合し得る。抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、またはヒト抗体であり得る。抗体は、モノクローナル抗体、その抗体断片、及び/またはその抗体誘導体であり得る。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab断片などの抗体断片である。軽鎖可変ドメインは、アクセッション番号PTA-120399で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって生成されるモノクローナル抗体M1のHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含む。重鎖可変ドメインは、ATCCアクセッション番号PTA-120399で寄託されたハイブリドーマ細胞株によって生成されるモノクローナル抗体M1のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインのアミノ酸配列は、HVR-L1の配列番号5、HVR-L2の配列番号6、HVR-L3の配列番号7、HVR-H1の配列番号9、HVR-H2の配列番号10、及びHVR-H3の配列番号11のうちの1つ以上を含む。
【0085】
抗体は、好ましくはHVR-L1 RASKSINKYLA(配列番号5)、HVR-L2 SGSTLQS(配列番号6)、及びHVR-L3 QQHNEYPLT(配列番号7)を保持しつつ、配列番号4と少なくとも85%、90%、または95%同一の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み得る。抗体は、好ましくはHVR-H1 GYHFTSYWMH(配列番号9)、HVR-H2 VIHPNSGSINYNEKFES(配列番号10)、及びHVR-H3 ERDSTEVLPMDY(配列番号11)を保持しつつ、配列番号8と少なくとも85%、90%、または95%同一の重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み得る。
【0086】
本明細書では、C1qと自己抗体との間の相互作用を阻害する抗C1q抗体を投与する方法が開示される。好ましい実施形態では、抗C1q抗体は、循環または組織からのC1qのクリアランスを引き起こす。
【0087】
いくつかの実施形態では、本開示の抗C1q抗体は、C1qとC1sとの間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、C1qとC1rとの間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、C1qとC1sとの間及びC1qとC1rとの間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、C1qと別の抗体、例えば、自己抗体との間の相互作用を阻害する。好ましい実施形態では、抗C1q抗体は、循環または組織からのC1qのクリアランスを引き起こす。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、2.5:1;2.0:1;1.5:1;または1.0:1未満の化学量論でそれぞれの相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、C1q抗体は、およそ等モルの濃度のC1q及び抗C1q抗体で、C1q-C1s相互作用などの相互作用を阻害する。他の実施形態では、抗C1q抗体は、20:1未満;19.5:1未満;19:1未満;18.5:1未満;18:1未満;17.5:1未満;17:1未満;16.5:1未満;16:1未満;15.5:1未満;15:1未満;14.5:1未満;14:1未満;13.5:1未満;13:1未満;12.5:1未満;12:1未満;11.5:1未満;11:1未満;10.5:1未満;10:1未満;9.5:1未満;9:1未満;8.5:1未満;8:1未満;7.5:1未満;7:1未満;6.5:1未満;6:1未満;5.5:1未満;5:1未満;4.5:1未満;4:1未満;3.5:1未満;3:1未満;2.5:1未満;2.0:1未満;1.5:1未満;または1.0:1未満の化学量論でC1qに結合する。ある特定の実施形態では、抗C1q抗体は、20:1~1.0:1または1.0:1未満の範囲の結合化学量論でC1qに結合する。ある特定の実施形態では、抗C1q抗体は、6:1~1.0:1または1.0:1未満の範囲の結合化学量論でC1qに結合する。ある特定の実施形態では、抗C1q抗体は、2.5:1~1.0:1または1.0:1未満の範囲の結合化学量論でC1qに結合する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、C1qとC1rとの間、またはC1qとC1sとの間、またはC1qとC1r及びC1sの両方との間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、C1qとC1rとの間、C1qとC1sとの間、及び/またはC1qとC1r及びC1sの両方との間の相互作用を阻害する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、C1qのA鎖に結合する。他の実施形態では、抗C1q抗体は、C1qのB鎖に結合する。他の実施形態では、抗C1q抗体は、C1qのC鎖に結合する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、C1qのA鎖、C1qのB鎖及び/またはC1qのC鎖に結合する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、C1qのA鎖、B鎖、及び/またはC鎖の球状ドメインに結合する。他の実施形態では、抗C1q抗体は、C1qのA鎖、C1qのB鎖、及び/またはC1qのC鎖のコラーゲン様ドメインに結合する。
【0088】
本開示の抗体が2つ以上の補体因子間の相互作用、例えば、C1q及びC1sの相互作用、またはC1qとC1rとの間の相互作用を阻害する場合、抗体の存在下で生じる相互作用は、本開示の抗体が非存在の対照と比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%減少し得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、2つ以上の補体因子間の相互作用を50%、60%、70%、80%、90%、または100%減少させる。ある特定の実施形態では、抗体の存在下で生じる相互作用は、本開示の抗体が非存在の対照と比べて少なくとも30%~少なくとも99%の範囲の量だけ減少する。
【0089】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が非存在の対照と比べて、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、または少なくとも30%~少なくとも99%の範囲の量だけ、C2またはC4切断を阻害する。C2またはC4切断を測定するための方法は、当該技術分野でよく知られている。C2またはC4切断に関して本開示の抗体のEC50値は、3μg/ml;2.5μg/ml;2.0μg/ml;1.5μg/ml;1.0μg/ml;0.5μg/ml;0.25μg/ml;0.1μg/ml;0.05μg/ml未満であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、およそ等モル濃度のC1q及びそれぞれの抗C1q抗体でC2またはC4切断を阻害する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が非存在の対照と比べて、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、または少なくとも30%~少なくとも99%の範囲の量だけ、自己抗体依存性及び補体依存性細胞傷害(CDC)を阻害する。自己抗体依存性及び補体依存性細胞傷害の阻害に関して本開示の抗体のEC50値は、3μg/ml;2.5μg/ml;2.0μg/ml;1.5μg/ml;1.0μg/ml;0.5μg/ml;0.25μg/ml;0.1μg/ml;0.05μg/ml未満であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、本開示の抗体が非存在の対照と比べて、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも99%、または少なくとも30%~少なくとも99%の範囲の量だけ、補体依存性細胞媒介性細胞傷害(CDCC)を阻害する。CDCCを測定するための方法は、当該技術分野でよく知られている。CDCC阻害に関して本開示の抗体のEC50値は、3μg/ml;2.5μg/ml;2.0μg/ml;1.5μg/ml;1.0μg/ml;0.5μg/ml;0.25μg/ml;0.1μg/ml;0.05μg/ml未満であり得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、CDCCを阻害するが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を阻害しない。
【0092】
ヒト化抗補体C1q抗体
本開示のヒト化抗体は、古典的補体経路のC1複合体における補体因子C1q及び/またはC1qタンパク質に特異的に結合する。ヒト化抗C1q抗体は、ヒトC1q、ヒト及びマウスC1q、ラットC1q、またはヒトC1q、マウスC1q、及びラットC1qに特異的に結合し得る。
【0093】
以下の16段落で挙げられるすべての配列は、米国特許出願番号14/933,517(それが開示する抗体及び関連する組成物について参照により本明細書に組み込まれる)から参照により組み込まれる。
【0094】
いくつかの実施形態では、ヒト重鎖定常領域は、配列番号47のアミノ酸配列、または配列番号47と少なくとも70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%の相同性を有するアミノ酸配列を含むヒトIgG4重鎖定常領域である。ヒトIgG4重鎖定常領域は、Kabat番号付けに従って1つ以上の改変及び/またはアミノ酸置換を有するFc領域を含み得る。そのような場合では、Fc領域は、位置248におけるロイシンからグルタメートへのアミノ酸置換を含み、そのような置換は、Fc領域がFc受容体と相互作用することを阻害する。いくつかの実施形態では、Fc領域は、位置241におけるセリンからプロリンへのアミノ酸置換を含み、そのような置換は、抗体におけるアームスイッチを防止する。
【0095】
ヒトIgG4(S241P L248E)重鎖定常ドメインのアミノ酸配列は、
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTKTYTCNVDHKPSNTKVDKRVESKYGPPCPPCPAPEFEGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK(配列番号47)
である。
【0096】
抗体は、重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを含み得、重鎖可変ドメインは、配列番号31~34のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列、または配列番号31~34のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。ある特定のそのような実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号35~38のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列、または配列番号35~38のいずれか1つから選択されるアミノ酸配列と少なくとも約90%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0097】
重鎖可変ドメインバリアント1(VH1)のアミノ酸配列は、
【0098】
である。VH1の超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0099】
重鎖可変ドメインバリアント2(VH2)のアミノ酸配列は、
【0100】
である。VH2の超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0101】
重鎖可変ドメインバリアント3(VH3)のアミノ酸配列は、
【0102】
である。VH3の超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0103】
重鎖可変ドメインバリアント4(VH4)のアミノ酸配列は、
【0104】
である。VH4の超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0105】
カッパ軽鎖可変ドメインバリアント1(Vκ1)のアミノ酸配列は、
【0106】
である。Vκ1の超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0107】
カッパ軽鎖可変ドメインバリアント2(Vκ2)のアミノ酸配列は、
【0108】
である。Vκ2の超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0109】
カッパ軽鎖可変ドメインバリアント3(Vκ3)のアミノ酸配列は、
【0110】
である。Vκ3の超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0111】
カッパ軽鎖可変ドメインバリアント4(Vκ4)のアミノ酸配列は、
【0112】
である。Vκ4の超可変領域(HVR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0113】
抗体は、HVR-L1 RASKSINKYLA(配列番号5)、HVR-L2 SGSTLQS(配列番号6)、及びHVR-L3 QQHNEYPLT(配列番号7)を保持しつつ、配列番号35~38と少なくとも85%、90%、または95%同一の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み得る。抗体は、好ましくはHVR-H1 GYHFTSYWMH(配列番号9)、HVR-H2 VIHPNSGSINYNEKFES(配列番号10)、及びHVR-H3 ERDSTEVLPMDY(配列番号11)を保持しつつ、配列番号31~34と少なくとも85%、90%、または95%同一の重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含み得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号35の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号31の重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号36の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号32の重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号37の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号33の重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号38の軽鎖可変ドメインアミノ酸配列及び配列番号34の重鎖可変ドメインアミノ酸配列を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、本開示のヒト化抗C1q抗体は、Fab領域を含有する重鎖可変領域及びFc領域を含有する重鎖定常領域を含み、Fab領域は本開示のC1qタンパク質に特異的に結合するが、Fc領域はC1qタンパク質に結合することが不可能である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4アイソタイプに由来する。いくつかの実施形態では、Fc領域は、補体活性を誘導することが不可能であり、及び/または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することが不可能である。いくつかの実施形態では、Fc領域は、限定されないが、アミノ酸置換を含む、1つ以上の改変を含む。ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗C1q抗体のFc領域は、Kabat番号付け慣例に従う位置248またはKabat番号付け慣例に従う位置248に対応する位置で、及び/またはKabat番号付け慣例に従う位置241またはKabat番号付け慣例に従う位置241に対応する位置でアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、位置248または位置248に対応する位置でのアミノ酸置換は、Fc領域がFc受容体と相互作用することを阻害する。いくつかの実施形態では、位置248または位置248に対応する位置でのアミノ酸置換は、ロイシンからグルタメートへのアミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、位置241または位置241に対応する位置でのアミノ酸置換は、抗体におけるアームスイッチを防止する。いくつかの実施形態では、位置241または位置241に対応する位置でのアミノ酸置換は、セリンからプロリンへのアミノ酸置換である。ある特定の実施形態では、本開示のヒト化抗C1q抗体のFc領域は、配列番号47のアミノ酸配列、または配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%の相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0116】
抗C1q Fab断片
組換えDNA技術の出現の前は、抗体分子の構造を切断し、分子のどの部分がその様々な機能を担っているのかを決定するために、ポリペプチド配列を切断するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)が使用されていた。プロテアーゼパパインでの限定消化は、抗体分子を3つの断片に切断する。Fab断片として知られている2つの断片は同一であり、抗原結合活性を含有する。Fab断片は、抗体分子の2つの同一の腕部に対応し、その各々は、重鎖のVH及びCH1ドメインと対合した完全軽鎖からなる。他の断片は、抗原結合活性を含まないが、容易に結晶化することが当初観察され、この理由からFc断片(結晶化可能断片)と名づけられた。Fab分子をIgG分子と比較した場合、Fabは、それらのより高い移動性及び組織浸透能力、それらの減少した循環半減期、抗体エフェクター機能を媒介することなく一価で抗原に結合するそれらの能力、ならびにそれらのより低い免疫原性のため、ある特定のin vivo用途についてIgGよりも優れていることが見出された。
【0117】
Fab分子は、定常ドメインCH2及びCH3によって短縮された重鎖を有するIg分子の人工の約50kDaの断片である。2つの異好性(VL-VH及びCL-CH1)ドメイン相互作用は、Fab分子の2つの鎖の構造の基礎にあり、これはCLとCH1との間のジスルフィド架橋によってさらに安定化される。Fab及びIgGは、6つの相補性決定領域(CDR)(3つはそれぞれVL及びVHに由来する(LCDR1、LCDR2、LCDR3及びHCDR1、HCDR2、HCDR3))によって形成される同一の抗原結合部位を有する。CDRは、抗体の超可変抗原結合部位を画定する。最も高い配列バリエーションは、LCDR3及びHCDR3に見られ、これは天然免疫系では、それぞれVL及びJL遺伝子またはVH、DH及びJH遺伝子の再編成によって生成される。LCDR3及びHCDR3は典型的には、抗原結合部位のコアを形成する。6つのCDRを接続し、提示する保存領域は、フレームワーク領域と称される。可変ドメインの三次元構造において、フレームワーク領域は、外側では超可変CDRループによって及び内側では保存ジスルフィド架橋によって連結された2つの対向する逆平行β-シートのサンドイッチを形成する。Fab及びIgGの抗原結合部位の安定性及び汎用性のこの独自の組み合わせは、疾患の診断、モニタリング、予防、及び処置のための臨床業務においてその成功を強調する。
【0118】
すべての抗C1q抗体Fab断片配列は、米国特許出願番号15/360,549(それが開示する抗体及び関連する組成物について参照により本明細書に組み込まれる)から参照により組み込まれる。
【0119】
ある特定の実施形態では、本開示は、重鎖(VH/CH1)及び軽鎖(VL/CL)を含むC1qタンパク質に結合する抗C1q抗体Fab断片であって、抗C1q抗体Fab断片は、6つの相補性決定領域(CDR)(3つはそれぞれVL及びVHに由来する)(HCDR1、HCDR2、HCDR3、及びLCDR1、LCDR2、LCDR3)を有する、抗C1q抗体Fab断片を提供する。抗体Fab断片の重鎖は、IgG1の第1の重鎖ドメインの後で切断され(配列番号39)、以下のアミノ酸配列を含む:
【0120】
【0121】
配列番号1の相補性決定領域(CDR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0122】
抗体Fab断片の軽鎖ドメインは、以下のアミノ酸配列(配列番号40)を含む:
【0123】
【0124】
配列番号2の相補性決定領域(CDR)は、太字かつ下線の文字で示されている。
【0125】
抗補体C1s抗体
好適な阻害剤には、補体C1sタンパク質に結合する抗体(すなわち、本明細書で抗C1s抗体及びC1s抗体とも称される抗補体C1s抗体)及びそのような抗体をコードする核酸分子が含まれる。補体C1sは、補体カスケードにおいて上流にあり、狭い範囲の基質特異性を有するので魅力的な標的である。さらに、活性化形態のC1sに特異的に結合する抗体(例えば、限定されないが、モノクローナル抗体)を得ることが可能である。
【0126】
以下の2段落で挙げられるすべての配列は、米国特許出願番号14/890,811(それが開示する抗体及び関連する組成物について参照により本明細書に組み込まれる)から参照により組み込まれる。
【0127】
ある特定の態様では、本明細書では、抗C1s抗体を投与する方法が開示される。抗体は、マウス抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体であり得る。いくつかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含み、重鎖は、5/15/2013にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株またはその子孫(ATCCアクセッション番号PTA-120351)によって生成されるマウス抗ヒトC1sモノクローナル抗体5A1のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む。他の実施形態では、軽鎖可変ドメインは、HVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含み、重鎖可変ドメインは、5/15/2013にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株またはその子孫(ATCCアクセッション番号PTA-120352)によって生成されるマウス抗ヒトC1sモノクローナル抗体5C12のHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含む。
【0128】
いくつかの実施形態では、抗体は、C1sまたはC1sプロ酵素に特異的に結合し、その生物学的活性、例えば、C1qに対するC1s結合、C1rに対するC1s結合、またはC2もしくはC4に対するC1s結合を阻害する。生物学的活性は、C1sのタンパク質分解酵素活性、C1sプロ酵素の活性プロテアーゼへの変換、またはC2もしくはC4のタンパク質分解切断であり得る。ある特定の実施形態では、生物学的活性は、古典的補体活性化経路の活性化、抗体及び補体依存性細胞傷害の活性化、またはC1F溶血である。
【0129】
以下の62段落におけるすべての配列は、Van Vlasselaer、米国特許番号8,877,197(それが開示する抗体及び関連する組成物について参照により本明細書に組み込まれる)から参照により組み込まれる。
【0130】
本明細書では、補体成分C1sのドメインIV及びVを包含する領域内のエピトープに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体を投与する方法が開示される。いくつかの場合では、抗体は、補体成分4(C4)に対するC1sの結合を阻害し、及び/またはC1sのプロテアーゼ活性を阻害しない。いくつかの実施形態では、方法は、高いアビディティでC1複合体における補体成分C1sに結合するヒト化モノクローナル抗体を投与することを含む。
【0131】
本明細書では、アミノ酸配列配列番号57を含む抗体軽鎖可変領域の相補性決定領域(CDR)の1つ以上及び/またはアミノ酸配列配列番号58を含む抗体重鎖可変領域のCDRの1つ以上を有する抗C1s抗体を投与する方法が開示される。抗C1s抗体は、ヒトまたはラット補体C1sタンパク質に結合し得る。いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、補体C1sタンパク質によって切断される少なくとも1つの基質の切断を阻害する。
【0132】
ある特定の実施形態では、抗体は、a)配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、及び配列番号56から選択されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域(CDR);及び/またはb)配列番号62、配列番号63、配列番号53、配列番号64、配列番号65:及び配列番号66から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを含む。
【0133】
抗体は、アミノ酸配列配列番号51を有するCDR-L1、アミノ酸配列配列番号52を有するCDR-L2、アミノ酸配列配列番号53を有するCDR-L3、アミノ酸配列配列番号54を有するCDR-H1、アミノ酸配列配列番号55を有するCDR-H2、及びアミノ酸配列配列番号56を有するCDR-H3を含み得る。
【0134】
他の実施形態では、抗体は、配列番号67のアミノ酸配列を有する可変領域の軽鎖CDR、及び/または配列番号68のアミノ酸配列を有する可変領域の重鎖CDRを含み得る。
【0135】
抗体は、補体成分C1sに特異的に結合するヒト化抗体であって、その抗体は、エピトープとの結合についてアミノ酸配列配列番号57または配列番号67を含む抗体軽鎖可変領域のCDRの1つ以上、及び/またはアミノ酸配列配列番号58または配列番号68を含む抗体重鎖可変領域のCDRの1つ以上を含む抗体と競合する、ヒト化抗体であり得る。
【0136】
他の例では、抗体は、補体C1sに特異的に結合するヒト化抗体であり得、その抗体は、a)補体C1sタンパク質内のエピトープに特異的に結合するヒト化抗体であって、抗体が、エピトープとの結合について配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、及び配列番号56から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体と競合する、ヒト化抗体;及びb)補体C1sタンパク質内のエピトープに特異的に結合するヒト化抗体であって、抗体が、エピトープとの結合について配列番号62、配列番号63、配列番号53、配列番号64、配列番号65、及び配列番号66から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを含む抗体と競合する、ヒト化抗体から選択される。いくつかの場合では、抗体は、エピトープとの結合についてa)配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号69、配列番号55、及び配列番号56;またはb)配列番号62、配列番号63、配列番号53、配列番号64、配列番号65、及び配列番号66を含む重鎖及び軽鎖CDRを含む抗体と競合する。
【0137】
抗体は、別々のポリペプチドに存在する軽鎖領域及び重鎖領域を含み得る。抗体は、Fc領域を含み得る。
【0138】
本明細書では、アミノ酸配列配列番号57と90%同一のアミノ酸配列の軽鎖可変領域、及びアミノ酸配列配列番号58と90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗C1s抗体が開示される。
【0139】
抗C1s抗体は、抗原結合断片、Igモノマー、Fab断片、F(ab’)2断片、Fd断片、scFv、scAb、dAb、Fv、シングルドメイン重鎖抗体、シングルドメイン軽鎖抗体、単一特異性抗体、二重特異性抗体、または多重特異性抗体から選択され得る。
【0140】
本明細書では、抗体IPN003(本明細書で「IPN-M34」または「M34」または「TNT003」とも称される)が結合するエピトープへの結合について競合する抗体、例えば、抗体IPN003などの抗体IPN003の可変ドメインを含む抗体を投与する方法が開示される。
【0141】
いくつかの実施形態では、方法は、補体C1sタンパク質内のエピトープに特異的に結合する抗体を投与することを含む。いくつかの実施形態では、単離された抗C1s抗体は、活性化したC1sタンパク質に結合する。いくつかの実施形態では、単離された抗C1s抗体は、不活性形態のC1sに結合する。他の例では、単離された抗C1s抗体は、活性化したC1sタンパク質及び不活性形態のC1sの両方に結合する。
【0142】
いくつかの実施形態では、方法は、C4の切断を阻害するモノクローナル抗体を投与することを含み、単離されたモノクローナル抗体は、C2の切断を阻害しない。いくつかの実施形態では、方法は、C2の切断を阻害するモノクローナル抗体を投与することを含み、単離されたモノクローナル抗体は、C4の切断を阻害しない。いくつかの場合では、単離されたモノクローナル抗体は、ヒト化されている。いくつかの場合では、抗体は、古典的補体経路の成分を阻害する。いくつかの場合では、抗体によって阻害される古典的補体経路の成分はC1sである。本開示はまた、C4の切断を阻害する単離されたモノクローナル抗体、または単離されたモノクローナル抗体を含む薬学的組成物をそれを必要とする個体に投与することによって、補体媒介性疾患または障害を処置する方法であって、単離されたモノクローナル抗体は、C2の切断を阻害しない、方法を提供する。
【0143】
いくつかの実施形態では、方法は、C1sによるC2またはC4の切断を阻害する、すなわち、C2またはC4のC1s媒介性タンパク質分解切断を阻害するモノクローナル抗体を投与することを含む。いくつかの場合では、モノクローナル抗体は、ヒト化されている。いくつかの場合では、抗体は、C1sに対するC2またはC4の結合を阻害することによってC1sによるC2またはC4の切断を阻害する;例えば、いくつかの場合では、抗体は、C1sのC2またはC4結合部位に対するC2またはC4の結合を阻害することによってC2またはC4のC1s媒介性切断を阻害する。よって、いくつかの場合では、抗体は、競合阻害剤として機能する。本開示はまた、C1sによるC2またはC4の切断を阻害する、すなわち、C2またはC4のC1s媒介性タンパク質分解切断を阻害する単離されたモノクローナル抗体をそれを必要とする個体に投与することによって、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を処置する方法を提供する。
【0144】
いくつかの実施形態では、方法は、C1sによるC4の切断を阻害するモノクローナル抗体を投与することを含み、抗体は、C1sによる補体成分C2の切断を阻害せず;すなわち、抗体は、C4のC1s媒介性切断を阻害するが、C2のC1s媒介性切断を阻害しない。いくつかの場合では、モノクローナル抗体は、ヒト化されている。いくつかの場合では、モノクローナル抗体は、C1sに対するC4の結合を阻害するが、C1sに対するC2の結合を阻害しない。いくつかの実施形態では、方法は、C1sによるC4の切断を阻害する単離されたモノクローナル抗体をそれを必要とする個体に投与することによって、補体媒介性疾患または障害を処置することを含み、抗体は、C1sによる補体成分C2の切断を阻害せず;すなわち、抗体は、C4のC1s媒介性切断を阻害するが、C2のC1s媒介性切断を阻害しない。方法のいくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化されている。
【0145】
いくつかの実施形態では、方法は、C1sのドメインIV及びVを包含する領域内のエピトープに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体を投与することを含む。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、
図1に図示され、配列番号70に示されるアミノ酸配列のアミノ酸272~422内のエピトープに特異的に結合する。いくつかの場合では、ヒト化モノクローナル抗体は、
図1に図示され、配列番号70に示されるアミノ酸配列のアミノ酸272~422内のエピトープに特異的に結合し、C1sに対するC4の結合を阻害する。いくつかの実施形態では、方法は、
図1に図示され、配列番号70に示されるアミノ酸配列のアミノ酸272~422内のエピトープに特異的に結合し、C1sに対するC4の結合を阻害するヒト化モノクローナル抗体をそれを必要とする個体に投与することによって、補体媒介性疾患または障害を処置することを含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、方法は、C1sのドメインIV及びVを包含する領域内のコンフォメーションエピトープに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体を投与することを含む。例えば、
図1に図示され、配列番号70に示されるアミノ酸配列のアミノ酸272~422内のコンフォメーションエピトープに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体。いくつかの場合では、ヒト化モノクローナル抗体は、
図1に図示され、配列番号70に示されるアミノ酸配列のアミノ酸272~422内のコンフォメーションエピトープに特異的に結合し、C1sに対するC4の結合を阻害する。いくつかの実施形態では、方法は、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を含み、方法は、
図1に図示され、配列番号70に示されるアミノ酸配列のアミノ酸272~422内のコンフォメーションエピトープに特異的に結合し、C1sに対するC4の結合を阻害するヒト化モノクローナル抗体をそれを必要とする個体に投与することを含む。
【0147】
いくつかの実施形態では、方法は、C1複合体における補体成分C1sに結合するモノクローナル抗体を投与すること含む。C1複合体は、6分子のC1q、2分子のC1r、及び2分子のC1sから構成される。いくつかの場合では、モノクローナル抗体は、ヒト化されている。よって、いくつかの場合では、C1複合体における補体成分C1sに結合するヒト化モノクローナル抗体。いくつかの場合では、抗体は、高いアビディティでC1複合体に存在するC1sに結合する。
【0148】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体(例えば、補体C1sタンパク質におけるエピトープに特異的に結合する対象抗体)は、a)IPN003抗体の1、2、または3つのVL CDRを含む軽鎖領域;及びb)IPN003抗体の1、2、または3つのVH CDRを含む重鎖領域を含み、VH及びVL CDRは、Kabat(Kabat 1991)によって定義されるとおりである。
【0149】
他の実施形態では、抗C1s抗体(例えば、補体C1sタンパク質におけるエピトープに特異的に結合する対象抗体)は、a)IPN003抗体の1、2、または3つのVL CDRを含む軽鎖領域;及びb)IPN003抗体の1、2、または3つのVH CDRを含む重鎖領域を含み、VH及びVL CDRは、Chothia(Chothia 1987)によって定義されるとおりである。
【0150】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体(例えば、補体C1sタンパク質におけるエピトープに特異的に結合する対象抗体)は、a)配列番号51、配列番号52、及び配列番号53から選択される1、2、または3つのCDRを含む軽鎖領域;及びb)配列番号54、配列番号55、及び配列番号56から選択される1、2、または3つのCDRを含む重鎖領域を含む。これらの実施形態の一部において、抗C1s抗体は、ヒト化VH及び/またはVLフレームワーク領域を含む。
【0151】
配列番号51:SSVSSSYLHWYQ;
配列番号52:STSNLASGVP;
配列番号53:HQYYRLPPIT;
配列番号54:GFTFSNYAMSWV;
配列番号55:ISSGGSHTYY;
配列番号56:ARLFTGYAMDY。
【0152】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、及び配列番号56から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを含む。
【0153】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号51、配列番号52、及び配列番号53を含む軽鎖可変領域を含む。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号54、配列番号55、及び配列番号56を含む重鎖可変領域を含む。
【0155】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号51を有するCDR-L1、アミノ酸配列配列番号52を有するCDR-L2、アミノ酸配列配列番号53を有するCDR-L3、アミノ酸配列配列番号54を有するCDR-H1、アミノ酸配列配列番号55を有するCDR-H2、及びアミノ酸配列配列番号56を有するCDR-H3を含む。
【0156】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、配列番号57に示されるアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0157】
配列番号57:
DIVMTQTTAIMSASLGERVTMTCTASSSVSSSYLHWYQQKPGSSPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTFYSLTISSMEAEDDATYYCHQYYRLPPITFGAGTKLELK。
【0158】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、配列番号58に示されるアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0159】
配列番号58:
QVKLEESGGALVKPGGSLKLSCAASGFTFSNYAMSWVRQIPEKRLEWVATISSGGSHTYYLDSVKGRFTISRDNARDTLYLQMSSLRSEDTALYYCARLFTGYAMDYWGQGTSVT。
【0160】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号57と90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号58と90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0162】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号57を含む軽鎖可変領域を含む。
【0163】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号58を含む重鎖可変領域を含む。
【0164】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号57と90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及びアミノ酸配列配列番号58と90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0165】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号57を含む軽鎖可変領域及びアミノ酸配列配列番号58を含む重鎖可変領域を含む。
【0166】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、補体C1sタンパク質内のエピトープに特異的に結合し、抗体は、エピトープとの結合についてアミノ酸配列配列番号57を含む抗体軽鎖可変領域の軽鎖CDR及びアミノ酸配列配列番号58を含む抗体重鎖可変領域の重鎖CDRを含む抗体と競合する。
【0167】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号57を含む抗体軽鎖可変領域の軽鎖CDR及びアミノ酸配列配列番号58を含む抗体重鎖可変領域の重鎖CDRを含む。
【0168】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体(例えば、補体C1sタンパク質におけるエピトープに特異的に結合する対象抗体)は、a)配列番号62、配列番号63、及び配列番号53から選択される1、2、または3つのCDRを含む軽鎖領域;及びb)配列番号64、配列番号65、及び配列番号66から選択される1、2、または3つのCDRを含む重鎖領域を含む。
【0169】
配列番号62:TASSSVSSSYLH;
配列番号63:STSNLAS;
配列番号53:HQYYRLPPIT;
配列番号64:NYAMS;
配列番号65:TISSGGSHTYYLDSVKG;
配列番号66:LFTGYAMDY
【0170】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、配列番号62、配列番号63、配列番号53、配列番号64、配列番号65、及び配列番号66から選択されるアミノ酸配列を有するCDRを含む。
【0171】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号62、配列番号63、及び配列番号53を含む軽鎖可変領域を含む。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号64、配列番号65、及び配列番号66を含む重鎖可変領域を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号62を有するCDR-L1、アミノ酸配列配列番号63を有するCDR-L2、アミノ酸配列配列番号53を有するCDR-L3、アミノ酸配列配列番号64を有するCDR-H1、アミノ酸配列配列番号65を有するCDR-H2、及びアミノ酸配列配列番号66を有するCDR-H3を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、配列番号67に示されるアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0175】
配列番号67:
QIVLTQSPAIMSASLGERVTMTCTASSSVSSSYLHWYQQKPGSSPKLWIYSTSNLASGVPARFSGSGSGTFYSLTISSMEAEDDATYYCHQYYRLPPITFGAGTKLELK。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、配列番号68に示されるアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0177】
配列番号68:
EVMLVESGGALVKPGGSLKLSCAASGFTFSNYAMSWVRQIPEKRLEWVATISSGGSHTYYLDSVKGRFTISRDNARDTLYLQMSSLRSEDTALYYCARLFTGYAMDYWGQGTSVTVSS。
【0178】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号67と90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0179】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号68と90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0180】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号67を含む軽鎖可変領域を含む。
【0181】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号68を含む重鎖可変領域を含む。
【0182】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号67と90%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及びアミノ酸配列配列番号68と90%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0183】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号67と95%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域及びアミノ酸配列配列番号68と95%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0184】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号67を含む軽鎖可変領域及びアミノ酸配列配列番号68を含む重鎖可変領域を含む。
【0185】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、補体C1sタンパク質内のエピトープに特異的に結合し、抗体は、エピトープとの結合についてアミノ酸配列配列番号67を含む抗体軽鎖可変領域の軽鎖CDR及びアミノ酸配列配列番号68を含む抗体重鎖可変領域の重鎖CDRを含む抗体と競合する。
【0186】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、アミノ酸配列配列番号67を含む抗体軽鎖可変領域の軽鎖CDR及びアミノ酸配列配列番号68を含む抗体重鎖可変領域の重鎖CDRを含む。
【0187】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、配列番号67に示されるアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。
【0188】
いくつかの実施形態では、抗C1s抗体は、配列番号68に示されるアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む。
【0189】
抗C1s抗体は、配列番号79に示され、
図2に図示されるアミノ酸配列(VHバリアント1)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0190】
抗C1s抗体は、配列番号80に示され、
図3に図示されるアミノ酸配列(VHバリアント2)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0191】
抗C1s抗体は、配列番号81に示され、
図4に図示されるアミノ酸配列(VHバリアント3)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0192】
抗C1s抗体は、配列番号82に示され、
図5に図示されるアミノ酸配列(VHバリアント4)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0193】
抗C1s抗体は、配列番号83に示され、
図6に図示されるアミノ酸配列(VKバリアント1)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0194】
抗C1s抗体は、配列番号84に示され、
図7に図示されるアミノ酸配列(VKバリアント2)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0195】
抗C1s抗体は、配列番号85に示され、
図8に図示されるアミノ酸配列(VKバリアント3)と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み得る。
【0196】
抗C1s抗体は、表3(
図9)に示される、IPN003親抗体FRアミノ酸配列に対して、フレームワーク(FR)アミノ酸置換のうちの1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12個を含む重鎖可変領域を含み得る。
【0197】
定義
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、1つ以上を意味し得る。本明細書において請求項(複数可)で使用される場合、用語「含む」と併せて使用される場合、用語「a」または「an」は、1つまたは複数を意味し得る。例えば、「抗体」に対する言及は、1つから多くの抗体の言及である。本明細書で使用される場合、「別の」は、少なくとも第2のまたはそれ以上を意味し得る。
【0198】
本明細書で使用される場合、別の化合物または組成物と「併せた」投与は、同時投与及び/または異なる時点での投与を含む。併せた投与はまた、異なる投薬頻度または間隔、及び同じ投与経路または異なる投与経路を使用することを含む、共製剤としての投与または別々の組成物としての投与を包含する。
【0199】
「補体媒介性血液障害」は、循環C1q及び補体活性化によって引き起こされる血管部分または非常に血管に富む組織の障害である。補体活性化は、古典的経路を介して開始し得る。古典的経路は、補体タンパク質C1qと表面結合抗体または表面タンパク質のパッチとの直接的結合によって活性化され得る。
【0200】
用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書で「抗体」と互換的に使用される。本明細書における用語「抗体」は、最も広義に使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、生物学的活性を示す場合に限り抗体断片、及び抗体誘導体を具体的に包含する。
【0201】
基本的な4鎖抗体単位は、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖から構成されるヘテロ四量体糖タンパク質である。VH及びVLが一緒に対合すると、単一の抗原結合部位が形成される。異なるクラスの抗体の構造及び特性については、例えば、Basic and Clinical Immunology,8th Ed.,Daniel P.Stites,Abba I.Terr and Tristram G.Parslow(eds.),Appleton & Lange,Norwalk,CT,1994,page 71 and Chapter 6を参照されたい。
【0202】
任意の脊椎動物種に由来するL鎖は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(「κ」)及びラムダ(「λ」)と呼ばれる2つの明確に異なるタイプのうちの1つに割り当てられ得る。それらの重鎖の定常ドメイン(CH)のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスまたはアイソタイプに割り当てられ得る。5つのクラスの免疫グロブリンが存在する:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM(アルファ(「α」)、デルタ(「δ」)、イプシロン(「ε」)、ガンマ(「γ」)及びミュー(「μ」)と標記される重鎖をそれぞれ有する)。γ及びαクラスは、CH配列及び機能の比較的小さな相違に基づいてサブクラス(アイソタイプ)にさらに分類され、例えば、ヒトは、次のサブクラス:IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2を発現する。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成はよく知られており、一般に、例えば、Abbas et al.,Cellular and Molecular Immunology,4th ed.(W.B.Saunders Co.,2000)に記載されている。
【0203】
「全長抗体」は通常、2つの同一の軽(L)鎖及び2つの同一の重(H)鎖を含む約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有ジスルフィド結合によって重鎖に連結されている一方で、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で異なる。各重鎖及び軽鎖は、規則的間隔の鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一端に可変ドメイン(VH)と、それに続くいくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一端に可変ドメイン(VL)を有し、その他端に定常ドメインを有し、軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列し、軽鎖の可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列している。特定のアミノ酸残基が軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間に界面を形成すると考えられている。
【0204】
「単離された」分子または細胞は、それが生成された環境において通常関連する少なくとも1つの混入分子または細胞から同定及び分離された分子または細胞である。好ましくは、単離された分子または細胞は、生成環境に関連するすべての成分と会合しない。単離された分子または細胞は、天然に見られる形態または状況以外の形態である。そのため、単離された分子は、細胞に天然に存在する分子とは区別され;単離された細胞は、組織、器官、または個体に天然に存在する細胞とは区別される。いくつかの実施形態では、単離された分子は、本開示の抗C1s、抗C1q、または抗C1r抗体である。他の実施形態では、単離された細胞は、本開示の抗C1s、抗C1q、または抗C1r抗体を生成する宿主細胞またはハイブリドーマ細胞である。
【0205】
「単離された」抗体は、その生成環境(例えば、天然または組換え)の成分から同定、分離、及び/または回収されたものである。好ましくは、単離されたポリペプチドは、その生成環境からのすべての他の混入成分と会合しない。組換えトランスフェクション細胞に起因するものなどのその生成環境からの混入成分は、抗体の研究、診断的または治療的使用を典型的に妨げるであろう物質であり、これには酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれ得る。ある特定の好ましい実施形態では、ポリペプチドは、(1)例えば、ローリー法によって決定される、抗体の95重量%超、いくつかの実施形態では、99重量%超になるまで、(2)スピニングカップシークエネーターを使用して、N末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、または(3)クマシーブルー、または好ましくはシルバー染色を使用して、非還元または還元条件下でSDS-PAGEによって均質性が得られるまで、精製されるであろう。単離された抗体には、抗体の天然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換えT細胞内でin situの抗体が含まれる。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドまたは抗体は、少なくとも1つの精製工程を含むプロセスによって調製される。
【0206】
抗体の「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の重鎖または軽鎖のアミノ末端ドメインを指す。重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、それぞれ「VH」及び「VL」と称され得る。これらのドメインは通常、抗体の最も可変性の高い部分であり(同じクラスの他の抗体と比べて)、抗原結合部位を含有する。
【0207】
用語「可変」は、可変ドメインのある特定のセグメントが、抗体によって配列が大幅に異なるという事実を指す。Vドメインは、抗原結合を媒介し、特定の抗体の、その特定の抗原に対する特異性を定義する。しかしながら、可変性は、可変ドメイン全体に均等に分布しているわけではない。むしろ、それは、軽鎖及び重鎖の両方の可変ドメインの両方において、超可変領域(HVR)と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、ベータ-シート構造を接続し、いくつかの場合では、ベータ-シート構造の一部を形成するループを形成する3つのHVRによって接続されたベータ-シート立体配置を大いに採用する4つのFR領域を含む。各鎖内のHVRは、FR領域によって近接して互いに結び付いており、他方の鎖のHVRと共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,MD(1991)を参照されたい)。定常ドメインは、抗原に対する抗体の結合に直接的に関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば、抗体依存性細胞毒性における抗体の関与を示す。
【0208】
本明細書で使用される場合、用語「CDR」または「相補性決定領域」は、重鎖及び軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内に見られる非連続的抗原結合部位を意味することが意図されている。CDRは、Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977);Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of proteins of immunological interest”(1991)(本明細書ではKabat 1991とも称される);Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987)(本明細書ではChothia 1987とも称される);及びMacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996)(定義には、互いに対して比較した場合にアミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる)に記載されている。それにもかかわらず、抗体もしくはグラフト抗体またはそのバリアントのCDRを指すためのいずれの定義の適用も、本明細書で定義及び使用される用語の範囲内であることが意図されている。
【0209】
本明細書で使用される場合、用語「CDR-L1」、「CDR-L2」、及び「CDR-L3」は、それぞれ、軽鎖可変領域における第1、第2、及び第3CDRを指す。本明細書で使用される場合、用語「CDR-H1」、「CDR-H2」、及び「CDR-H3」は、それぞれ、重鎖可変領域における第1、第2、及び第3CDRを指す。本明細書で使用される場合、用語「CDR-1」、「CDR-2」、及び「CDR-3」は、それぞれ、いずれかの鎖の可変領域の第1、第2及び第3CDRを指す。
【0210】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に同種の抗体の集団から得られる抗体を指す、すなわち、その集団の個々の抗体は、微量で存在し得る天然に存在する変異及び/または翻訳後修飾(例えば、異性化、アミド化)を除き、同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一の抗原部位に対して仕向けられている。異なる決定基(エピトープ)に対して仕向けられた異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対して仕向けられている。それらの特異性に加え、モノクローナル抗体は、典型的にはハイブリドーマ培養によって合成され、他の免疫グロブリンが混入されていないので有利である。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に同種の抗体集団として得られるという抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の生成を必要とするものと解釈されるべきではない。例えば、本開示に従って使用されるモノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ方法(例えば、Kohler and Milstein.,Nature,256:495-97(1975);Hongo et al.,Hybridoma,14(3):253-260(1995),Harlow et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2d ed.1988);Hammerling et al.,in:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.,1981))、リコンビナントDNA法(例えば、米国特許番号4,816,567参照)、ファージディスプレイ技術(例えば、Clackson et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 101(34):12467-472(2004);及びLee et al.,J.Immunol Methods 284(1-2):119-132(2004)参照)、及びヒト免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子座または遺伝子の一部または全部を有する動物においてヒトまたはヒト様抗体を生成するための技術(例えば、WO1998/24893;WO1996/34096;WO1996/33735;WO1991/10741;Jakobovits et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);米国特許番号5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;及び5,661,016;Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature 368:856-859(1994);Morrison,Nature 368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnol.14:845-851(1996);Neuberger,Nature Biotechnol.14:826(1996);及びLonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)参照)を含む多様な技術によって生成され得る。
【0211】
用語「全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「完全抗体」は、抗体断片または抗体誘導体とは対照的に、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために互換的に使用される。具体的には、完全抗体は、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものを含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列バリアントであり得る。いくつかの場合では、インタクトな抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有し得る。
【0212】
抗体の「抗体断片」または「抗原結合断片」または「機能的断片」は、インタクトな抗体の一部、好ましくはインタクトな抗体の抗原結合及び/または可変領域または改変されたFcR結合能力を保持するまたは有する抗体のF領域を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;及び線状抗体が含まれる(米国特許5,641,870、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.8(10):1057-1062(1995)参照)。抗体断片の追加の例には、抗体誘導体、例えば、抗体断片から形成される一本鎖抗体分子、一価抗体及び多重特異性抗体が含まれる。
【0213】
「抗体誘導体」は、抗体の抗原結合領域を含む任意のコンストラクトである。抗体誘導体の例には、抗体断片から形成される一本鎖抗体分子、一価抗体及び多重特異性抗体が含まれる。
【0214】
抗体のパパイン消化により、「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合断片と、容易に結晶化する能力を反映して表記される1つの残留「Fc」断片とが生成される。Fabフラグメントは、L鎖全体に加えて、H鎖の可変領域ドメイン(VH)、ならびに1つの重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)からなる。各Fabフラグメントは、抗原結合に関しては一価である、すなわち、単一の抗原結合部位を有する。抗体のペプシン処理は、単一の大型F(ab’)2断片をもたらし、これは、異なる抗原結合活性を有する2つのジスルフィド結合したFab断片にほぼ対応し、依然として抗原を架橋することができる。Fab’断片は、CH1ドメインのカルボキシ末端に、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む、いくつかのさらなる残基を有することにより、Fab断片とは異なる。Fab’-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を持つFab’の本明細書における呼称である。F(ab’)2抗体断片は、元来、間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として生成された。抗体フラグメントの他の化学的カップリングも既知である。
【0215】
Fcフラグメントは、ジスルフィドによって一緒に保持された両方のH鎖のカルボキシ末端部分を含む。抗体のエフェクター機能は、Fc領域における配列によって決定され、この領域はまた、ある特定の細胞型に見られるFc受容体(FcR)によって認識される。
【0216】
本明細書における「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用され、天然配列のFc領域及びバリアントFc領域が含まれる。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、Cys226位のアミノ酸残基から、またはPro230から、そのカルボキシル末端まで伸びると定義される。Fc領域のC末端リジン(EU番号付けシステムによると残基447)は、例えば、抗体の生成もしくは精製の間に、または抗体の重鎖をコードする核酸を組換え操作することによって、除去されてもよい。したがって、インタクトな抗体の組成物は、全K447残基が除去された抗体母集団、除去されたK447残基がない抗体母集団、及びK447残基を有する抗体と有しない抗体との混合物を有する抗体母集団を含んでもよい。本開示の抗体における使用に好適な天然配列のFc領域には、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4が含まれる。
【0217】
「天然配列Fc領域」は、天然で見られるFc領域のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を含む。天然配列ヒトFc領域には、天然配列ヒトIgG1 Fc領域(非A及びAアロタイプ)、天然配列ヒトIgG2 Fc領域、天然配列ヒトIgG3 Fc領域、及び天然配列ヒトIgG4 Fc領域、ならびにそれらの天然に存在するバリアントが含まれる。
【0218】
「バリアントFc領域」は、少なくとも1つのアミノ酸改変、好ましくは1つ以上のアミノ酸置換(複数可)によって天然配列Fc領域のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましくは、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域または親ポリペプチドのFc領域と比較して少なくとも1つのアミノ酸置換、例えば、天然配列Fc領域中または親ポリペプチドのFc領域中に約1~約10個のアミノ酸置換、及び好ましくは約1~約5個のアミノ酸置換を有する。本明細書におけるバリアントFc領域は、好ましくは、天然配列Fc領域及び/または親ポリペプチドのFc領域と少なくとも約80%の相同性、ならびに最も好ましくは、それらと少なくとも約90%の相同性、より好ましくは、それらと少なくとも約95%の相同性を保有する。
【0219】
「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を表す。好ましいFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)と結合し、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び選択的スプライシング形態を含むものであり、FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは主にその細胞質ドメインが異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(「ITAM」)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(「ITIM」)をその細胞質性ドメインに含有する。(例えば、M.Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)参照)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994);及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)でレビューされている。将来特定されるものを含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包含される。FcRは、抗体の血清半減期を増加させ得る。
【0220】
ヒトFcRn高親和性結合ポリペプチドのインビボでのFcRnへの結合及び血清中半減期は、例えば、ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスもしくはトランスフェクトヒト細胞株において、またはバリアントFc領域を有するポリペプチドが投与される霊長類においてアッセイすることができる。WO2004/42072(Presta)は、FcRへの結合が改善また低減された抗体バリアントについて記載している。例えば、Shields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照されたい。
【0221】
「Fv」は、完全な抗原認識部位及び抗原結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。このフラグメントは、1つの重鎖可変領域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインが、非共有結合で緊密に結合した二量体からなる。これらの2つのドメインの折り畳みにより、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗原結合特異性を抗体に与える、6つの超可変ループ(H鎖及びL鎖からそれぞれ3つのループ)が生じる。しかしながら、全結合部位よりも低い親和性であるが、単一の可変ドメイン(または抗原に特異的なHVRを3つしか含まないFvの半分)でさえも、抗原を認識し、それに結合する能力を有する。
【0222】
「sFv」または「scFv」とも短縮される「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に結合されるVH及びVL抗体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、VH及びVLドメイン間にポリペプチドリンカーをさらに含んでおり、sFvが抗原結合に所望される構造を形成することを可能にする。sFvの概説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。
【0223】
「ダイアボディ」という用語は、鎖内ではなく鎖間のVドメイン対合を達成し、それによって二価フラグメント、すなわち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントが得られるように、VHドメインとVLドメインとの間に短いリンカー(約5~10個の残基)を用いてsFvフラグメント(前の段落を参照されたい)を構築することによって調製された小さな抗体フラグメントを指す。二重特異性ダイアボディは、2つの抗体のVH及びVLドメインが異なるポリペプチド鎖に存在している、2つの「交差」sFvフラグメントのヘテロ二量体である。ダイアボディは、例えば、EP 404,097;WO 1993/011161;WO/2009/121948;WO/2014/191493;Hollinger et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 90:6444-48(1993)においてより詳細に記載されている。
【0224】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」は、重鎖及び/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するか、または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である一方で、鎖(複数可)の残りが、別の種に由来するか、または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である抗体(免疫グロブリン)、ならびにそのような抗体の断片を指し、これは、それらが所望される生物学的活性を呈する限りにおいてである(米国特許番号4,816,567;Morrison et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA,81:6851-55(1984))。本明細書における対象となるキメラ抗体には、PRIMATIZED(登録商標)抗体が含まれ、ここで、この抗体の抗原結合領域は、例えば、マカクザルに目的の抗原で免疫付与を行うことによって生成される抗体に由来する。本明細書で使用される場合、「ヒト化抗体」は、「キメラ抗体」のサブセットである。
【0225】
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。いくつかの実施形態では、ヒト化抗体は、レシピエントのHVRからの残基が、所望される特異性、親和性、及び/または能力を有するマウス、ラット、ウサギ、または非ヒト霊長類などの非ヒト種(ドナー抗体)のHVRからの残基で置き換えられている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのFR残基は、対応する非ヒト残基に置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも見られない残基を含み得る。これらの改変は、結合親和性などの抗体の性能をさらに改良するために行われ得る。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的にすべてを含むことになり、ここで、超可変ループのすべてまたは実質的にすべてが、非ヒト免疫グロブリン配列のものに対応し、FR領域のすべてまたは実質的にすべてが、ヒト免疫グロブリン配列のものであるが、FR領域には、結合親和性、異性体化、免疫原性などの抗体の性能を向上させる1つ以上の個々のFR残基置換が含まれてもよい。FRにおけるこれらのアミノ酸置換の数は典型的には、H鎖では6以下、及びL鎖では3以下である。ヒト化抗体はまた、任意に、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含む。さらなる詳細については、例えば、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照されたい。例えば、Vaswani and Hamilton,Ann.Allergy,Asthma & Immunol.1:105-115(1998);Harris,Biochem.Soc.Transactions 23:1035-1038(1995);Hurle and Gross,Curr.Op.Biotech.5:428-433(1994);ならびに米国特許番号6,982,321及び7,087,409も参照されたい。
【0226】
「ヒト抗体」は、ヒトによって生成された抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、及び/または本明細書に開示されるヒト抗体を作製する技術のうちの任意のものを用いて作製されたものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的に除外する。ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリを含む当該技術分野で既知の種々の技術を使用して生成され得る。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991)。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77(1985);Boerner et al.,J.Immunol.,147(1):86-95(1991)に記載の方法も、ヒトモノクローナル抗体の調製に利用可能である。van Dijk and van de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)も参照されたい。ヒト抗体は、抗原攻撃に応答してそのような抗体を生成するように改変されているが、その内因性遺伝子座が無効化されているトランスジェニック動物、例えば、免疫化異種マウス(xenomice)に抗原を投与することにより調製され得る(例えば、XENOMOUSE(商標)技術に関しては、米国特許番号6,075,181及び6,150,584を参照されたい)。例えば、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体についても、Li et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)を参照されたい。
【0227】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」、「HVR」、または「HV」という用語は、配列が超可変性であり、かつ/または構造的に定義されたループを形成する抗体可変ドメインの領域を指す。概して、抗体は、6つのHVRを含み、3つがVHにあり(H1、H2、H3)、3つがVLにある(L1、L2、L3)。天然抗体において、H3及びL3は、これらの6つのHVRのうちで最も高い多様性を呈し、特にH3が、抗体に優れた特異性を与える上で特有の役割を果たすと考えられている。例えば、Xu et al.,Immunity 13:37-45(2000);Johnson and Wu in Methods in Molecular Biology 248:1-25(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003))を参照されたい。実際には、重鎖のみからなる天然に存在するラクダ科抗体は、軽鎖の不在下で機能的であり、安定している。例えば、Hamers-Casterman et al.,Nature 363:446-448(1993)及びSheriff et al.,Nature Struct. Biol.3:733-736(1996)を参照されたい。
【0228】
いくつかのHVR描写が本明細書で使用され、本明細書に包含される。Kabat相補性決定領域(CDR)であるHVRは、配列可変性に基づくものであり、最も一般的に使用されている(上記のKabat et al.)。Chothiaは、そうではなく、構造的ループの位置を指す(Chothia及びLesk J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。AbM HVRは、Kabat CDRとChothia構造的ループとの間の妥協案を示し、Oxford MolecularのAbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「接触」HVRは、利用可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらのHVRの各々由来の残基が以下に記載される。
【0229】
【0230】
HVRは、以下のように「伸長HVR」を含み得る:VLにおける24~36または24~34(L1)、46~56または50~56(L2)、及び89~97または89~96(L3)、ならびにVHにおける26~35(H1)、50~65または49~65(好ましい実施形態)(H2)、及び93~102、94~102、または95~102(H3)。可変ドメイン残基は、これらの伸長HVRの定義の各々について上記のKabat et al.に従って番号付けされる。
【0231】
「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書に定義されるHVR残基以外の可変ドメイン残基である。
【0232】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」という語句、及びそれらの変形は、上記のKabat et al.における抗体の編集物の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに使用される番号付けシステムを指す。この番号付けシステムを使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRもしくはHVRの短縮、またはそれへの挿入に対応するより少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含有し得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従って残基52a)を、そして重鎖FR残基82後に挿入された残基(例えば、Kabatに従って残基82a、82b、及び82c等)を含んでもよい。残基のKabat番号付けは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによって番号付けされた配列との相同領域での整合によって決定され得る。
【0233】
Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメイン内の残基(大体、軽鎖の1~107残基及び重鎖の1~113残基)に言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EU番号付けシステム」または「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及する際に使用される(例えば、上記のKabat et al.で報告されているEU指標)。「KabatにあるようなEU指標」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。本明細書に別途述べられない限り、抗体の可変ドメインにおける残基番号への言及は、Kabat番号付けシステムによる残基番号付けを意味する。本明細書で別途述べられない限り、抗体の定常ドメインにおける残基番号への言及は、EU番号付けシステムによる残基番号付けを意味する(例えば、米国特許公開番号2010-280227参照)。
【0234】
「アクセプターヒトフレームワーク」は、本明細書で使用される場合、ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク由来のVLフレームワークまたはVHフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークは、それと同じアミノ酸配列を含んでもよく、またはそれは既存のアミノ酸配列変化を含有してもよい。いくつかの実施形態では、既存のアミノ酸変化の数は、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、または2以下である。既存のアミノ酸変化がVHに存在する場合、好ましいそれらの変化が位置71H、73H、及び78Hのうちの3つ、2つ、または1つにのみ存在し、例えば、それらの位置のアミノ酸残基は、71A、73T、及び/または78Aであり得る。いくつかの実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークは、配列において、VLヒト免疫グロブリンフレームワーク配列またはヒトコンセンサスフレームワーク配列と同一である。
【0235】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において最も一般的に生じるアミノ酸残基を代表する、フレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループから行われる。一般に、配列のサブグループは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991)にあるようなサブグループである。例には、VLに関するものが含まれ、サブグループは、上記のKabat et al.にあるようなサブグループカッパI、カッパII、カッパIII、またはカッパIVであり得る。さらに、VHについては、サブグループは、上記のKabat et al.にあるようなサブグループI、サブグループII、またはサブグループIIIであり得る。
【0236】
指定された位置における「アミノ酸改変」は、指定された残基の置換もしくは欠失、または指定された残基に隣接する少なくとも1個のアミノ酸残基の挿入を指す。指定された残基に「隣接する」挿入は、その1~2個の残基内への挿入を意味する。挿入は、指定された残基のN末端側またはC末端側であり得る。本明細書における好ましいアミノ酸改変は、置換である。
【0237】
「親和性成熟」抗体は、その1つ以上のHVRに1つ以上の変化を有し、これらの変化が、それらの変化(複数可)を有しない親抗体と比較して、抗原に対する抗体の親和性の向上をもたらすものである。いくつかの実施形態では、親和性成熟抗体は、標的抗原に対するナノモルまたはさらにはピコモルの親和性を有する。親和性成熟抗体は、当該技術分野で公知の手順によって生成される。例えば、Marks et al.,Bio/Technology 10:779-783(1992)は、VH及びVLドメインシャッフリングによる親和性成熟について記載している。HVR及び/またはフレームワーク残基のランダム変異誘発は、例えば、Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809-3813(1994);Schier et al.Gene 169:147-155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994-2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310-9(1995);及びHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889-896(1992)に記載されている。
【0238】
本明細書で使用される場合、用語「特異的に認識する」または「特異的に結合する」は、生物学的分子を含む分子の異種集団の存在下で標的の存在を決定する、標的と抗体との間の引力または結合などの測定可能な及び再生可能な相互作用を指す。例えば、標的またはエピトープに特異的または優先的に結合する抗体は、他の標的または標的の他のエピトープに結合する場合よりも高い親和性、アビディティで、より容易に、及び/またはより長い持続時間でこの標的またはエピトープに結合する抗体である。例えば、第1の標的に特異的または優先的に結合する抗体(または部位)は、第2の標的に特異的または優先的に結合する場合があり、または結合しない場合があることも理解される。このように、「特異的結合」または「優先的結合」は、排他的な結合を(含み得るが)かならずしも必要とするわけではない。標的に特異的に結合する抗体は、少なくとも約103M-1または104M-1、時に約105M-1または106M-1、他の例では約106M-1または107M-1、約108M-1~109M-1、または約1010M-1~1011M-1またはそれ以上の結合定数を有し得る。特定のタンパク質と特異的免疫反応性の抗体を選択するために多様なイムノアッセイ形式が使用され得る。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質と特異的免疫反応性のモノクローナル抗体を選択するために日常的に使用される。特異的免疫反応性を決定するために使用され得るイムノアッセイ形式及び条件の説明については、例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Publications,New Yorkを参照されたい。
【0239】
「同一性」は、本明細書で使用される場合、アライメントされた配列における任意の特定の位置でアミノ酸残基が配列間で同一であることを示す。「類似性」は、本明細書で使用される場合、アライメントされた配列における任意の特定の位置でアミノ酸残基が配列間で類似するタイプのものであることを示す。例えば、ロイシンは、イソロイシンまたはバリンの代わりに用いられ得る。しばしば互いに置換され得る他のアミノ酸には、
-フェニルアラニン、チロシン及びトリプトファン(芳香族側鎖を有するアミノ酸);
-リジン、アルギニン及びヒスチジン(塩基性側鎖を有するアミノ酸);
-アスパルテート及びグルタメート(酸性側鎖を有するアミノ酸);
-アスパラギン及びグルタミン(アミド側鎖を有するアミノ酸);及び
-システイン及びメチオニン(硫黄含有側鎖を有するアミノ酸)
が含まれるがこれらに限定されない。
【0240】
同一性及び類似性の程度は容易に計算され得る(例えば、Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing.Informatics and Genome Projects,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;及びSequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991参照)
【0241】
本明細書で使用される場合、補体タンパク質と第2のタンパク質との間の「相互作用」は、限定されないが、タンパク質-タンパク質相互作用、物理的相互作用、化学的相互作用、結合、共有結合、及びイオン結合を包含する。本明細書で使用される場合、抗体が2つのタンパク質間の相互作用を破壊し、減少させ、または完全に排除する場合、抗体は、2つのタンパク質間の「相互作用を阻害する」。抗体またはその断片が2つのタンパク質のうちの1つに結合する場合、本開示の抗体、またはその断片は、2つのタンパク質間の「相互作用を阻害する」。
【0242】
「遮断」抗体、「アンタゴニスト」抗体、「阻害」抗体、または「中和」抗体は、それが結合する抗原の1つ以上の生物学的活性、例えば、1つ以上のタンパク質との相互作用を阻害または減少させる抗体である。いくつかの実施形態では、遮断抗体、アンタゴニスト抗体、阻害抗体、または「中和」抗体は、抗原の1つ以上の生物学的活性または相互作用を実質的にまたは完全に阻害する。
【0243】
用語「阻害剤」は、標的生体分子の活性または発現を減少させることによるものかどうかにかかわらず、標的生体分子、例えば、mRNAまたはタンパク質の生物学的機能を阻害する能力を有する化合物を指す。阻害剤は、抗体、小分子、または核酸分子であり得る。用語「アンタゴニスト」は、受容体に結合し、受容体の生物学的反応を阻止または減衰させる化合物を指す。用語「阻害剤」はまた、「アンタゴニスト」を指し得る。
【0244】
抗体「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域またはアミノ酸配列バリアントFc領域)に起因するそれらの生物学的活性を指し、抗体アイソタイプによって異なる。
【0245】
本明細書で使用される場合、用語「親和性」は、2つの物質(例えば、抗体及び抗原)の可逆的結合についての平衡定数を指し、解離定数(KD)として表される。親和性は、非関連アミノ酸配列に対する抗体の親和性よりも少なくとも1倍高く、少なくとも2倍高く、少なくとも3倍高く、少なくとも4倍高く、少なくとも5倍高く、少なくとも6倍高く、少なくとも7倍高く、少なくとも8倍高く、少なくとも9倍高く、少なくとも10倍高く、少なくとも20倍高く、少なくとも30倍高く、少なくとも40倍高く、少なくとも50倍高く、少なくとも60倍高く、少なくとも70倍高く、少なくとも80倍高く、少なくとも90倍高く、少なくとも100倍高く、または少なくとも1,000倍高く、またはそれ以上であり得る。標的タンパク質に対する抗体の親和性は、例えば、約100ナノモル濃度(nM)~約0.1nM、約100nM~約1ピコモル濃度(pM)、または約100nM~約1フェムトモル濃度(fM)またはそれ以上であり得る。本明細書で使用される場合、用語「アビディティ」は、2つ以上の物質の複合体が希釈後に解離することに対する抵抗性を指す。用語「免疫反応性」及び「優先的に結合する」は、抗体及び/または抗原結合断片に関して本明細書で互換的に使用される。
【0246】
用語「結合」は、例えば、塩架橋及び水架橋などの相互作用を含む、共有結合性、静電気性、疎水性、及びイオン性及び/または水素結合相互作用による、2つの分子間の直接的会合を指す。例えば、対象抗C1s抗体は、補体C1sタンパク質内のエピトープに特異的に結合する。「特異的結合」は、少なくとも約10-7M以上、例えば、5×10-7M、10-8M、5×10-8M、及びそれ以上の親和性での結合を指す。「非特異的結合」は、約10-7M未満の親和性、例えば、10-6M、10-5M、10-4Mなどの親和性での結合を指す。
【0247】
用語「kon」は、本明細書で使用される場合、抗原に対する抗体の会合についての速度定数を指すことが意図されている。
【0248】
用語「koff」は、本明細書で使用される場合、抗体/抗原複合体からの抗体の解離についての速度定数を指すことが意図されている。
【0249】
用語「KD」は、本明細書で使用される場合、抗体-抗原相互作用の平衡解離定数を指すことが意図されている。
【0250】
本明細書で使用される場合、ペプチド、ポリペプチド、または抗体配列に関して、「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」及び「相同性」は、配列同一性最大パーセントを達成するために、配列を整合させ、必要に応じてギャップを導入した後の、配列同一性の一部としていずれの保存的置換も考慮しない、特定のペプチドもしくはポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である、候補配列におけるアミノ酸残基の割合を指す。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアライメントは、例えば、公共に利用可能なコンピュータソフトウェア、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMEGALIGN(商標)(DNASTAR)ソフトウェアを使用して、当該技術分野における技術内の様々な方法で達成され得る。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライメントを達成するのに必要な当該技術分野で知られている任意のアルゴリズムを含む、アライメントを測定するのための適切なパラメータを決定し得る。
【0251】
「生物学的サンプル」は、個体から得られる多様なサンプルタイプを包含し、診断またはモニタリングアッセイにおいて使用され得る。その定義は、血液及び生物学的起源の他の液体サンプル、固体組織サンプル、例えば、生検試料または組織培養物またはそれに由来する細胞及びその子孫を包含する。その定義にはまた、それらの調達後に任意の方法で、例えば、ポリヌクレオチドなどのある特定の成分について試薬での処置、可溶化、または濃縮によって操作されたサンプルが含まれる。用語「生物学的サンプル」は、臨床サンプルを包含し、培養細胞、細胞上清、細胞ライセート、血清、血漿、生体液、及び組織サンプルも含む。用語「生物学的サンプル」には、尿、唾液、脳脊髄液、間質液、眼液、滑液、血液分画、例えば、血漿及び血清などが含まれる。用語「生物学的サンプル」にはまた、固体組織サンプル、組織培養サンプル、及び細胞サンプルが含まれる。
【0252】
「血液腔」は、その用語が本明細書で使用される場合、血清、血小板、内皮細胞、血液細胞及び他の造血細胞、ならびに対象の循環系を介して自然に流れる他の物質を含む、対象の心血管系の内容物を指す。血液腔を標的とすることは、非常に血管に富む組織、例えば、腎臓、肺胞、毛細血管床、または糸球体に対する効果を有し得る。
【0253】
「単離された」核酸分子は、それが生成された環境において通常関連する少なくとも1つの混入核酸分子から同定及び分離された核酸分子である。好ましくは、単離された核酸は、生成環境に関連するすべての成分と会合しない。本明細書におけるポリペプチド及び抗体をコードする単離された核酸分子は、天然に見られる形態または状況以外の形態である。そのため、単離された核酸分子は、細胞において天然に存在する本明細書における任意のポリペプチド及び抗体をコードする核酸とは区別される。
【0254】
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合は、それが連結された別の核酸を輸送することが可能な核酸分子を指すことが意図されている。ベクターの1つのタイプは、「プラスミド」であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーションされ得る環状二本鎖DNAを指す。ベクターの別のタイプは、ファージベクターである。ベクターの別のタイプは、ウイルスベクターであり、この場合、追加のDNAセグメントがウイルスゲノム内にライゲーションされ得る。ある特定のベクターは、それらが導入される宿主細胞において自己複製が可能である(例えば、細菌の複製起点を有する細菌ベクター及びエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)は、宿主細胞に導入すると宿主細胞のゲノムに組み込まれ得、それにより宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、それらが機能可能に連結された遺伝子の発現を指示することが可能である。そのようなベクターは、本明細書で「組換え発現ベクター」、または単純に「発現ベクター」と称される。通常、組換えDNA技術において有用な発現ベクターはしばしば、プラスミドの形態である。本明細書において、「プラスミド」及び「ベクター」は、プラスミドが最も一般的に使用される形態のベクターであるため互換的に使用され得る。
【0255】
本明細書で互換的に使用される「ポリヌクレオチド」、または「核酸」は、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAを含む。ヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド、リボヌクレオチド、改変ヌクレオチドまたは塩基、及び/またはそれらのアナログ、またはDNAもしくはRNAポリメラーゼによってまたは合成反応によってポリマーに組み込まれ得る任意の基質であり得る。ポリヌクレオチドは、改変ヌクレオチド、例えば、メチル化ヌクレオチド及びそれらのアナログを含み得る。存在する場合、ヌクレオチド構造に対する改変は、ポリマーのアセンブリの前または後に付与され得る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって隔てられていてもよい。ポリヌクレオチドは、合成後に生成される改変(複数可)、例えば、標識へのコンジュゲーションを含み得る。他のタイプの改変には、例えば、天然に存在するヌクレオチドのうちの1つ以上をアナログと置換する「キャップ」、ヌクレオチド間改変、例えば、非電荷性結合(例えば、メチルホスホン酸塩、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメートなど)によるもの、及び電荷性結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)によるもの、例えば、タンパク質(例えば、ヌクレアーゼ、毒素、抗体、シグナルペプチド、ポリ-L-リジンなど)などの懸垂部位を含むもの、挿入剤(例えば、アクリジン、ソラーレンなど)によるもの、キレート剤(例えば、金属、放射活性金属、ホウ素、酸化金属など)を含むもの、アルキル化剤を含むもの、改変結合(例えば、アルファアノマー核酸など)によるもの、ならびにポリヌクレオチド(複数可)の未改変形態が含まれる。さらに、糖内に通常存在するヒドロキシル基のうちのいずれかは、例えば、ホスホン酸基、リン酸基により置き換えられるか、標準的な保護基により保護されるか、もしくは活性化されて追加のヌクレオチドへの追加の結合を生成してもよく、または固体もしくは半固体支持体にコンジュゲーションされてもよい。5’及び3’末端OHは、リン酸化され、またはアミンもしくは1~20個の炭素原子の有機キャッピング基部位と置換され得る。他のヒドロキシルもまた、標準的な保護基に誘導体化され得る。ポリヌクレオチドは、例えば、2’-O-メチル-、2’-O-アリル、2’-フルオロ-または2’-アジド-リボース、炭素環糖アナログ、α-アノマー糖、エピマー糖、例えば、アラビノース、キシロースまたはリキソース、ピラノース糖、フラノース糖、セドヘプツロース、アクリル酸アナログ、及び塩基性ヌクレオシドアナログ、例えば、メチルリボシドを含む、当該技術分野において一般的に知られているリボースまたはデオキシリボース糖のアナログ形態を含み得る。1つ以上のホスホジエステル結合は、代替連結基によって置き換えられ得る。これらの代替連結基には、ホスフェートがP(O)S(「チオエート」)、P(S)S(「ジチオエート」)、(O)NR2(「アミデート」)、P(O)R、P(O)OR’、CO、またはCH2(「ホルムアセタール」)(式中、各RまたはR’は、独立して、H、またはエーテル(-O-)結合を任意に含有する置換もしくは非置換アルキル(1~20C)、アリール、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアラルキルである)によって置き換えられた実施形態が含まれるがこれらに限定されない。ポリヌクレオチドにおけるすべての結合が同一である必要はない。先述の記載は、RNA及びDNAを含む、本明細書で言及されるすべてのポリヌクレオチドに適用される。
【0256】
「宿主細胞」には、ポリヌクレオチド挿入物の組み込みのためのベクター(複数可)のためのレシピエントであり得、レシピエントとなっている個々の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一の宿主細胞の子孫が含まれ、子孫は、天然、突然、または意図的変異のため、必ずしも元の親細胞と(形態においてまたはゲノムDNA相補体において)完全に同一である必要はない場合がある。宿主細胞には、本開示のポリヌクレオチド(複数可)でin vivoでトランスフェクションされた細胞が含まれる。
【0257】
本明細書で使用される「担体」は、用いられる投薬量及び濃度でそれに曝露されている細胞または哺乳動物に対して非毒性の薬学的に許容可能な担体、賦形剤、または安定剤が含まれる。しばしば、生理的に許容可能な担体は、水性pH緩衝液である。生理的に許容可能な担体の例には、緩衝液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸を含む抗酸化剤;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、またはリジン;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖アルコール、例えば、マンニトールまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;及び/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、ポリエチレングリコール(PEG)及びPLURONICS(商標)が含まれる。
【0258】
用語「予防」は、当該技術分野で認識されており、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))などの病態に関連して使用される場合、当該技術分野でよく理解されており、組成物を摂取しない対象と比べて対象における医学的病態の1つ以上の症状の頻度または重症度を減少させ、またはその開始を遅延させる組成物の投与を含む。よって、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))の予防は、例えば、療法を受けなかった対照集団と比べて療法を受けている患者の集団における血小板数を、例えば、統計的に及び/または臨床的に有意な量増加させることを含む。同様に、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))の予防は、療法を受けている患者が血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))または関連する症状を発症する可能性を、療法を受けていない患者と比べて低下させることを含む。
【0259】
用語「対象」は、本明細書で使用される場合、生存している哺乳動物を指し、用語「患者」と互換的に使用され得る。哺乳動物の例には、哺乳動物クラスの任意のメンバー:ヒト、非ヒト霊長類、例えば、チンパンジー、及び他の類人猿及びサル種;牧場動物、例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ;家庭動物、例えば、ウサギ、イヌ、及びネコ;齧歯類、例えば、ラット、マウス及びモルモットを含む実験動物などが含まれるがこれらに限定されない。その用語は、特定の年齢または性別を示さない。
【0260】
本明細書で使用される場合、用語「処置すること」または「処置」は、病態の症状、臨床的兆候、または根底にある病理を減少、停止、または逆行させて、対象の病態を安定化または改善することまたは対象の病態が対象が処置を受けなかった場合と同じ程度悪化する可能性を低下させることを含む。
【0261】
対象の処置方法に関して化合物の「治療的有効量」という用語は、(哺乳動物、好ましくはヒトに対する)所望の投薬レジメンの一部として投与される場合、例えば、任意の医学的処置に適用可能な妥当な利益/リスク比で、疾患または病態が処置されるために、または化粧品目的のために臨床的に許容可能な標準に従う、症状を軽減する、病態を改善する、または疾患病態の発症を遅らせる調製物における化合物(複数可)の量を指す。本明細書における治療的有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、ならびに個体において所望の反応を引き起こすための抗体の能力などの要因に応じて変わり得る。
【0262】
本明細書で使用される場合、特定の疾患、障害、または病態を発症する「リスクのある」個体は、検出可能な疾患または疾患の症状を示してもいなくてもよく、また、本明細書に記載の処置方法の前に検出可能な疾患または疾患の症状を示してもいなくてもよい。「リスクのある」は、個体が、当該技術分野で知られているように、特定の疾患、障害、または病態の発症と相関する測定可能なパラメータである、1つ以上のリスク因子を有することを意味する。これらのリスク因子のうちの1つ以上を有する個体は、これらのリスク因子のうちの1つ以上を有さない個体よりも特定の疾患、障害、または病態を発症する可能性が高い。
【0263】
「慢性」投与は、初期の治療効果(活性)を長期間維持するように、急性様式とは対照的に連続した医薬品(複数可)の投与を指す。「間欠的」投与は、中断することなく連続的に投与されるのではなく、事実上周期的/定期的である処置を指す。
【0264】
本明細書で使用される場合、別の化合物または組成物と「併せた」投与は、同時投与及び/または異なる時点での投与を含む。併せた投与はまた、異なる投薬頻度または間隔、及び同じ投与経路または異なる投与経路を使用することを含む、共製剤としての投与または別々の組成物としての投与を包含する。
【0265】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する当業者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。本明細書に記載のもの類似または同等の任意の方法及び物質も本発明の実践または試験において使用され得るが、好ましい方法及び物質をこれより説明する。本明細書で挙げられるすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれて、刊行物が引用される方法及び/または物質、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual 3d edition(2001)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.;Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.,(2003));the series Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.):PCR 2:A Practical Approach(M.J.MacPherson,B.D.Hames and G.R.Taylor eds.(1995)),Harlow and Lane,eds.(1988)Antibodies,A Laboratory Manual,and Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1987));Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.,1984);Methods in Molecular Biology,Humana Press;Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1998)Academic Press;Animal Cell Culture(R.I.Freshney),ed.,1987);Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press;Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.,1993-8)J.Wiley and Sons;Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.);Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987);PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis et al.,eds.,1994);Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991);Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999);Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997);Antibodies(P.Finch,1997);Antibodies:A Practical Approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989);Monoclonal Antibodies:A Practical Approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000);Using Antibodies:A Laboratory Manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999);The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.,Harwood Academic Publishers,1995);及びCancer:Principles and Practice of Oncology(V.T.DeVita et al.,eds.,J.B.Lippincott Company,1993)に記載されている広く利用されている方法論を開示し、記載する。
【0266】
核酸、ベクター及び宿主細胞
本開示の方法において使用するのに好適な抗体は、例えば、米国特許番号4,816,567に記載されているように、組換え方法及び組成物を使用して生成され得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗体のいずれかをコードするヌクレオチド配列を有する単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗C1q、抗C1rまたは抗C1s抗体のVL/CLを含有するアミノ酸配列及び/またはVH/CH1を含有するアミノ酸配列をコードし得る。いくつかの実施形態では、そのような核酸を含有する1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。そのような核酸を含有する宿主細胞も提供され得る。宿主細胞は、(1)抗体のVL/CLを含有するアミノ酸配列及び抗体のVH/CH1を含有するアミノ酸配列をコードする核酸を含有するベクター、または(2)抗体のVL/CLを含有するアミノ酸配列をコードする核酸を含有する第1のベクター及び抗体のVH/CH1を含有するアミノ酸配列をコードする核酸を含有する第2のベクターを含有し得る(例えば、形質導入されている)。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、E.coliなどの細菌である。
【0267】
抗C1q、抗C1rまたは抗C1s抗体を作製する方法が本明細書に開示される。方法は、抗C1q、抗C1rまたは抗C1s抗体をコードする核酸を含有する本開示の宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することを含む。いくつかの実施形態では、抗体はその後、宿主細胞(または宿主細胞培地)から回収される。
【0268】
本開示のヒト化抗C1q、抗C1rまたは抗C1s抗体の組換え生成のため、抗体をコードする核酸は単離され、宿主細胞においてさらなるクローニング及び/または発現のための1つ以上のベクターに挿入される。そのような核酸は、慣用の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、シーケンシングされ得る。
【0269】
ある特定の実施形態では、本開示は、C1q、C1s、及びC1rタンパク質にそれぞれ結合する抗C1q抗体Fab断片、抗C1s抗体Fab断片、及び抗C1r抗体Fab断片を提供する。これらの抗体の高親和性Fab断片は、血液腔内の補体活性化を選択的に阻害するのに好適である。これらの抗体の高親和性Fab断片は、投与、例えば、皮下、筋肉内及び血管内投与に好適である。
【0270】
本開示の抗体、または本明細書に記載のその断片ポリペプチド(抗体を含む)のいずれかをコードする核酸配列を含有する好適なベクターには、限定されないが、クローニングベクター及び発現ベクターが含まれる。好適なクローニングベクターは、標準的な技術に従って構築され得、または当該技術分野で利用可能な多数のクローニングベクターから選択され得る。選択されるクローニングベクターは、使用されることが意図された宿主細胞に応じて変わり得る一方で、有用なクローニングベクターは通常、自己複製する能力を有し、特定の制限エンドヌクレアーゼのための単一の標的を保有し得、及び/またはベクターを含有するクローンを選択する際に使用され得るマーカーのための遺伝子を有し得る。好適な例には、プラスミド及び細菌ウイルス、例えば、pUC18、pUC19、Bluescript(例えば、pBS SK+)及びその誘導体、mpl8、mpl9、pBR322、pMB9、ColE1、pCR1、RP4、ファージDNA、及びシャトルベクター、例えば、pSA3及びpAT28が含まれる。これらの及び多くの他のクローニングベクターがBioRad、Stratagene、及びInvitrogenなどの商業的ベンダーから利用可能である。
【0271】
対象となる核酸を含有するベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE-デキストラン、または他の物質を用いるトランスフェクション;微粒子銃;リポフェクション;及び感染(例えば、ベクターはワクシニアウイルスなどの感染性物質である)を含む、多数の適切な手段のいずれかによって宿主細胞に導入され得る。ベクターまたはポリヌクレオチドを導入する選択はしばしば、宿主細胞の特徴に依存する。いくつかの実施形態では、ベクターは、本開示の抗C1q、抗C1rまたは抗C1s抗体をコードする1つ以上のアミノ酸配列を含有する核酸を含有する。
【0272】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、原核生物または真核細胞が含まれる。例えば、本開示の抗C1q、抗C1rまたは抗C1s抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合、細菌において生成され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現について(例えば、米国特許番号5,648,237、5,789,199、及び5,840,523;ならびにCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254(E.coliにおける抗体断片の発現について記載している))。他の実施形態では、本開示の抗体は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)において生成され得る(例えば、米国特許出願番号14/269,950、米国特許番号8,981,071、Eur J Biochem.1991 Jan 1;195(1):235-42)。発現後、抗体は、可溶性画分における細菌細胞ペーストから単離され得、さらに精製され得る。
【0273】
抗体スクリーニング
候補抗体は、補体活性化を調整する能力についてスクリーニングされ得る。そのようなスクリーニングは、in vitroモデル、遺伝子変化した細胞もしくは動物、または精製タンパク質を使用して実施され得る。in vitro培養システムなどの多様なアッセイがこの目的のために使用され得る。
【0274】
候補抗体はまた、結合アッセイなどによってコンピュータベースのモデリングを使用して同定され得る。抗体が結合するかどうか、またはそうでなければ補体活性に影響を及ぼすかどうかを決定するために様々なin vitroモデルが使用され得る。そのような候補抗体は、健康ドナーからの血漿を接触させ、補体活性化を(例えば、抗原C3c捕捉ELISAによって)決定することによって試験され得る。そのような抗体は、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))に対する効果についてin vivoモデルでさらに試験され得る。
【0275】
通常、複数のアッセイの混合は、様々な濃度に対する異なった反応を得るために異なる抗体濃度で並行して実行される。典型的には、これらの濃度のうちの1つは、陰性対照として、すなわち、ゼロ濃度または検出レベル未満で機能する。
【0276】
薬学的組成物及び投与
本開示の補体阻害剤(例えば、抗体)は、薬学的組成物の形態で投与され得る。
【0277】
本開示の阻害剤(例えば、抗体、抗体断片及び/または抗体誘導体)の治療製剤は、所望の純度を有する阻害剤を任意の薬学的に許容可能な担体、賦形剤または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.[1980])と混合することによって保存のために凍結乾燥製剤または水溶液の形態で調製され得る。許容可能な担体、賦形剤、または安定化剤は、用いられる投薬量及び濃度でレシピエントに対して非毒性であり、これには緩衝液、例えば、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えば、メチルまたはプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジン;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖、二糖、及び他の炭水化物;キレート剤、例えば、EDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えば、ナトリウム;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(商標)、PLURONICS(商標)またはポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。
【0278】
リポフェクションまたはリポソームもまた、抗体または抗体断片、または抗体誘導体を細胞に送達するために使用され得、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合するエピトープまたは最小断片が好ましい。
【0279】
阻害剤はまた、例えば、コアセルベーション技術によって、または界面重合によって調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセル及びポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル内に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及びナノカプセル)中、またはマクロ乳濁液中に取り込まれ得る。そのような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0280】
投与のために使用される製剤は無菌であり得る。これは、滅菌濾過膜を介する濾過によって容易に達成される。
【0281】
持続放出調製物が調製され得る。持続放出調製物の好適な例には、阻害剤を含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、これらのマトリックスは、成形物品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許番号3,773,919)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸エステルのコポリマー、非分解性エチレン-酢酸ビニル、分解性乳酸-グリコール酸コポリマー、例えば、LUPRON DEPOT(商標)(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射用ミクロスフェア)、及びポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。エチレン-酢酸ビニル及び乳酸-グリコール酸などのポリマーが100日間にわたる分子の放出を可能にする一方で、ある特定のヒドロゲルは、より短い期間にわたってタンパク質を放出する。
【0282】
本開示の抗体、抗体断片及び/または抗体誘導体ならびに組成物は典型的には、局所、非経口、皮下、腹腔内、肺内、鼻腔内、及び病巣内投与を含むがこれらに限定されない様々な経路によって投与される。非経口投与経路には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、または皮下投与が含まれる。
【0283】
薬学的組成物はまた、所望の製剤に応じて、動物またはヒト投与のための薬学的組成物を製剤化するために一般的に使用されるビヒクルとして定義される、希釈剤の薬学的に許容可能な非毒性担体を含み得る。希釈剤は、組み合わせの生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。そのような希釈剤の例は、蒸留水、緩衝水、生理的生理食塩水、PBS、リンゲル液、デキストロース溶液、及びハンクス溶液である。また、薬学的組成物または製剤は、他の担体、アジュバント、または非毒性、非治療性、非免疫原性安定化剤、賦形剤などを含み得る。組成物はまた、おおよその生理的条件のための追加の物質、例えば、pH調整及び緩衝剤、毒性調整剤、湿潤剤及び洗浄剤を含み得る。
【0284】
組成物はまた、例えば、抗酸化剤などの多様な安定化剤のいずれかを含み得る。薬学的組成物がポリペプチドを含む場合、ポリペプチドは、ポリペプチドのin vivo安定性を向上させるか、またはそうでなければその薬理学的特性を向上させる(例えば、ポリペプチドの半減期を増加させる、その毒性を低下させる、他の薬物動態及び/または薬力学的特性を向上させる、または溶解性もしくは取り込みを向上させる)様々なよく知られている化合物と複合体化され得る。そのような改変または錯化剤の例には、スルフェート、グルコネート、シトレート及びホスフェートが含まれる。組成物のポリペプチドはまた、それらのin vivo属性を向上させる分子と複合体化され得る。そのような分子には、例えば、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、他のペプチド、イオン(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン)、及び脂質が含まれる。様々なタイプの投与に好適な製剤に関するさらなる指針は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Company,Philadelphia,Pa.,17th ed.(1985)で見ることができる。薬物送達のための方法の簡潔なレビューについては、Langer,Science 249:1527-1533(1990)を参照されたい。
【0285】
活性成分の毒性及び治療的有効性は、例えば、LD50(集団の50%に対して致死的な用量)及びED50(集団の50%において治療的に有効な用量)を決定することを含む、細胞培養及び/または実験動物における標準的な薬学的手順に従って決定され得る。毒性と治療効果との間の用量比は治療指数であり、それは比LD50/ED50として表され得る。高い治療指数を示す化合物が好ましい。
【0286】
細胞培養及び/または動物研究及び/またはヒト臨床試験から得られたデータは、ヒトのための投薬量の範囲を策定する際に使用され得る。活性成分の投薬量は典型的には、低い毒性でED50を含む循環濃度の範囲内に収まる。投薬量は、用いられる投薬形態及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変わり得る。
【0287】
本明細書に記載の薬学的組成物は、多様な異なる方法で投与され得る。例には、経口、鼻腔内、直腸、局所、腹腔内、静脈内、筋肉内、皮下、真皮下、経皮、髄腔内、及び頭蓋内方法を介して薬学的に許容可能な担体を含有する組成物を投与することが含まれる。
【0288】
非経口投与に好適な製剤には、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性滅菌注射溶液、ならびに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定化剤、及び防腐剤を含み得る水性及び非水性滅菌懸濁液が含まれる。
【0289】
薬学的組成物を製剤化するために使用される成分は、好ましくは、高純度のものであり、潜在的に有害な混入物質を実質的に含まない(例えば、少なくとも国の食品(National Food)グレード、通常は少なくとも分析グレード、より典型的には少なくとも薬学的グレード)。さらに、非経口的使用のために意図される組成物は通常、無菌である。所与の化合物が使用前に合成されなければならない限り、得られる生成物は、合成または精製プロセスの間に存在し得る任意の潜在的に毒性の物質、特に任意のエンドトキシンは典型的には実質的に含まれない。非経口投与のための組成物もまた、典型的には実質的に等張性であり、GMP条件下で生成される。
【0290】
本開示の組成物は、任意の医学的に適切な手順、例えば、血管内(静脈内、動脈内、毛細血管内)投与、筋肉内、または皮下を使用して投与され得る。組成物は、自動注入機または注入デバイス、例えば、ミニポンプまたはオンボディ注入機を介して投与され得る。
【0291】
特定の患者に与えられる治療組成物の有効量は、多様な要素に依存し得、そのいくつかは患者毎に異なり得る。適任の臨床医は、患者に投与するための治療剤の有効量を決定することができる。薬剤の投薬量は、処置、投与経路、治療剤の特質、患者の治療剤に対する感受性などに依存する。LD50動物データ、及び他の情報を利用して、臨床医は、投与経路に応じて、個体のための最大安全用量を決定し得る。通常の技術を利用して、適任の臨床医は、日常的な臨床試験の過程で特定の治療組成物の投薬量を最適化することができる。組成物は、一連の複数回の投与で対象に投与され得る。治療組成物に関して、定期的な周期的投与が時に必要とされる場合があり、または望ましい場合がある。治療レジメンは薬剤に応じて変わる;例えば、いくつかの薬剤は、1日1回または1日2回のベースで長期間摂取され得る一方で、より選択的な薬剤は、例えば、1、2、3日またはそれ以上、1週以上、1ヶ月以上などのより規定された期間で1日1回、1日2回、週2回、週1回などで摂取されるように投与され得る。
【0292】
いくつかの実施形態では、抗体は、全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、10mg/kg~150mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、10mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~40mg/kg、40mg/kg~50mg/kg、50mg/kg~60mg/kg、60mg/kg~70mg/kg、70mg/kg~80mg/kg、80mg/kg~90mg/kg、90mg/kg~100mg/kg、100mg/kg~110mg/kg、110mg/kg~120mg/kg、120mg/kg~130mg/kg、130mg/kg~140mg/kg、または140mg/kg~150mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kg~100mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。抗体は、週1回、2週に1回、または月1回投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。抗体は、週1回、2週に1回、3週に1回、または月1回投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に週1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に2週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に3週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に月1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に週1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に2週毎に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に3週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に月1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、1mg/kg~10mg/kgの間の用量で皮下または筋肉内注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、1mg/kg~3mg/kg、3mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~7mg/kg、または7mg/kg~10mg/kgの間の用量で皮下または筋肉内注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回投与される。
【0293】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、静脈内注射または注入によって、筋肉内注射によって、または皮下注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、0.1mg/kg~50mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、0.1mg/kg~1mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、15mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~25mg/kg、25mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~35mg/kg、35mg/kg~40mg/kg、40mg/kg~45mg/kg、または45mg/kg~50mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、0.3mg/kg~10mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回の用量よりも高い初期予備用量で投与される。いくつかの実施形態では、初期予備用量は、3mg/kg~50mg/kgの間である。いくつかの実施形態では、初期予備用量は、3mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、15mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~25mg/kg、25mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~35mg/kg、35mg/kg~40mg/kg、40mg/kg~45mg/kg、または45mg/kg~50mg/kgの間である。いくつかの実施形態では、初期予備用量は、3mg/kg~20mg/kgの間である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、その対応する全長抗体と比較してより短い半減期を有し、例えば、抗体断片は、急速に消失し、それにより対象の血液腔外のC1q活性を温存し、または抗体は、対象の血液腔内のC1qを選択的に阻害し、それにより対象の血液腔外のC1q活性を温存する。いくつかの実施形態では、血液腔は、動脈、細動脈、毛細血管、小静脈、または静脈などの血管内に限定される。血液腔は、血清、血小板、内皮細胞、血液細胞、または造血細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、対象の血液腔内のC1qの阻害は、非常に血管に富む組織における組織損傷を減少させる。非常に血管に富む組織の例は、腎臓、肺胞、毛細血管床、または糸球体である。
【0294】
製剤は、血液腔内を含む、身体内での保持及び安定化のために最適化され得る。いくつかの実施形態では、薬剤が血液腔に投与される場合、薬剤は、血液腔内で保持され、拡散しないことまたはそうでなければ血管外に(例えば、周囲組織に)分布しないことが望ましい。安定化技術には、分子量の増加を達成するために、架橋、多量体化、またはポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、中性タンパク質担体などの基への連結が含まれる。
【0295】
保持を増加させるための他のストラテジーには、生分解性または生体内分解性埋込物における薬剤の取り込みが含まれる。治療的活性剤の放出の速度は、ポリマー性マトリックスを介する輸送速度、及び埋込物の生分解によって制御される。ポリマー障壁を介する薬物の輸送はまた、化合物溶解性、ポリマー親水性、ポリマー架橋の程度、ポリマー障壁が薬物に対してより透過性となるような水吸収時のポリマーの膨張、埋込物の形状などによって影響を受ける。埋込物は、埋込の部位として選択された領域のサイズ及び形状にふさわしい寸法のものである。埋込物は、粒子、シート、パッチ、プラーク、繊維、マイクロカプセルなどであり得、選択された挿入部位と適合する任意のサイズまたは形状のものであり得る。
【0296】
埋込物は、モノリシック(すなわち、ポリマーマトリックスを介して均一に分布した活性剤を有する)であり、または封入され得る(活性剤のリザーバがポリマーマトリックスによって封入される)。用いられるポリマー組成物の選択は、投与の部位、所望の処置期間、患者忍容性、処置される疾患の特質などに応じて異なる。ポリマーの特性には、埋込の部位での生分解性、対象となる薬剤との相溶性、封入の容易性、生理的環境における半減期が含まれる。
【0297】
用いられ得る生分解性ポリマー組成物は、分解された場合にモノマーを含む生理的に許容可能な分解生成物をもたらす有機エステルまたはエーテルであり得る。無水物、アミド、オルトエステルなどが、それ自体でまたは他のモノマーと組み合わせて利用され得る。ポリマーは、縮合ポリマーであり得る。ポリマーは、架橋されていても架橋されていなくてもよい。特に興味深いものは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマーのいずれか)、及び多糖類である。対象となるポリエステルには、D-乳酸、L-乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸のポリマー、ポリカプロラクトン、及びそれらの組み合わせが含まれる。L-乳酸またはD-乳酸を用いることにより、徐々に生分解するポリマーが達成される一方で、分解はラセミ体で実質的に促進される。グリコール酸及び乳酸のコポリマーが特に興味深く、その場合、生分解の速度が乳酸に対するグリコール酸の比によって制御される。最も急速に分解するコポリマーは、おおよそ等量のグリコール酸及び乳酸を有し、いずれのホモポリマーも分解に対してより抵抗性である。乳酸に対するグリコール酸の比はまた、埋込物の脆さに影響を与え、より柔軟性のある埋込物がより大きな形状にとって望ましい。対象となる多糖類には、アルギン酸カルシウム、及び官能化セルロース、特に水不溶性であり、分子量が約5kD~500kDであることによって特性化されるカルボキシメチルセルロースエステルなどがある。生分解性ヒドロゲルも本開示の埋込物に用いられ得る。ヒドロゲルは典型的には、液体を吸収する能力によって特性化されるコポリマー物質である。用いられ得る例示的な生分解性ヒドロゲルは、Heller in:Hydrogels in Medicine and Pharmacy,N.A.Peppes ed.,Vol.III,CRC Press,Boca Raton,Fla.,1987,pp 137-149に記載されている。
【0298】
キット
本開示はまた、薬学的組成物の成分の1つ以上が充填された1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。医薬品または生物学的製品の製造、使用、または販売を規制する政府当局が定めた形式の通知が、そのような容器(複数可)に付属し得、この通知は、ヒトへの投与に対する製造、使用または販売の当局による承認を反映する。
【0299】
本開示のキットは、精製された抗C1q、抗C1rまたは抗C1s抗体を含む1つ以上の容器及び当該技術分野で知られている方法に従って使用するための指示書を含み得る。通常、これらの指示書は、当該技術分野で知られている任意の方法に従って、疾患を処置または診断するための阻害剤の投与の説明を含む。キットは、個体が血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を有するかどうかの同定に基づいて処置に好適な個体を選択する説明をさらに含み得る。
【0300】
指示書は通常、意図された処置のための投薬量、投薬スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、単位用量、バルクパッケージ(例えば、複数用量パッケージ)または副次単位用量であり得る。本開示のキットにおいて供給される指示書は典型的には、ラベルまたはパッケージ挿入物(例えば、キットに含まれる紙シート)上の書面による指示書であるが、機械が読み取り可能な指示書(例えば、磁気または光学的保存ディスク上に保持される指示書)も許容可能である。
【0301】
ラベルまたはパッケージ挿入物は、組成物が血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を処置するために使用されることを示し得る。指示書は、本明細書に記載の方法のいずれかを実施するために提供され得る。
【0302】
本開示のキットは、好ましくは好適な包装内に配置される。好適な包装には、バイアル、ボトル、瓶、フレキシブル包装(例えば、密閉マイラーまたはプラスチックバッグ)などが含まれるがこれらに限定されない。特定のデバイス、例えば、吸入具、鼻投与デバイス(例えば、噴霧器)、自動注入機、または注入デバイス、例えば、ミニポンプまたはオンボディ注入機と組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは、滅菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液袋またはバイアルであり得る)を有し得る。容器はまた、滅菌アクセスポート(例えば、容器は、皮下注射針によって穿刺可能なストッパーを有する静脈用溶液袋またはバイアルであり得る)を有し得る。組成物における少なくとも1つの活性剤は、古典的補体経路の阻害剤である。容器は、第2の薬学的活性剤をさらに含み得る。
【0303】
キットは、追加の成分、例えば、緩衝液及び説明情報を任意に提供し得る。通常、キットは、容器及び容器上のまたは容器に関連するラベルまたはパッケージ挿入物(複数可)を含む。
【0304】
対象となる病態
対象となる代表的な病態には、多様な血液障害及び他の血液学的疾患が含まれる。
【0305】
用語「血液障害」または「血液学的疾患」は、最も広い意味で使用され、それには急性または慢性血液病態を含む任意の病理学的状態が含まれる。そのような疾患は通常、血栓症、炎症及び溶血によって特性化される。
【0306】
補体成分C1q、C1r、またはC1sに結合する抗体、抗体断片及び/または抗体誘導体を投与することを含む、血液障害を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする本方法のための対象となる様々な血液状態。そのような病態には、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症)が含まれる。
【0307】
自己免疫性溶血性貧血(Autoimmune hemolytic anemia)(または「免疫性溶血性貧血」とも称される自己免疫性溶血性貧血(autoimmune hemolytic anaemia)(AIHA))は、対象自身の赤血球(RBC)に対して仕向けられた抗体がそれらを破裂(溶解)させ、不十分な血漿濃度をもたらす場合に生じる。RBCの寿命は、正常な100~120日から重症例ではわずか数日に減少する。RBCの細胞内成分は、循環血液及び組織に放出され、この病態の特徴的症状の一部をもたらす。抗体は通常、高頻度抗原に対して仕向けられ、一般的に同種異系RBC(本人以外に由来するRBC、例えば、輸血の場合)に作用する。AIHAは、温式自己免疫性溶血性貧血または寒冷自己免疫性溶血性貧血(寒冷凝集素症及び発作性寒冷ヘモグロビン尿症を含む)のいずれかとして分類される。これらの分類は、疾患の発病に関与する自己抗体の特性に基づく。各々は、根底にある異なる原因、管理、及び予後を有し、AIHAを有する患者を処置する場合に分類が重要となる。
【0308】
寒冷凝集素症は、身体の免疫系がそれ自身の赤血球を誤って攻撃し、破壊するタイプの自己免疫性溶血性貧血である。罹患したヒトの血液が低温(32°~50°F)に曝露された場合、細菌を正常に攻撃するある特定のタンパク質(IgM抗体)は、それら自体を赤血球に付着させ、それらを互いに結合させて塊とする(凝集)。これは最終的に、赤血球を時期尚早に破壊し(溶血)、貧血ならびに他の関連する兆候及び症状をもたらす。寒冷凝集素症は、原発性(未知の原因)または感染症、別の自己免疫疾患、もしくはある特定のがんなどの根底にある病態に起因する二次性であり得る。処置は、病態の重症度、各ヒトに存在する兆候及び症状、ならびに根底にある原因を含む多くの要素に依存する。
【0309】
兆候及び症状には、例えば、疼痛、疲労感、レイノー症候群、リベド皮膚変化、皮膚潰瘍、発熱、蒼白、黄疸、じんましん皮膚発疹、ヘモグロビン尿症、ヘモグロビン血症、貧血、及び腎臓疾患または急性腎不全が含まれる。症状は、低温への曝露後に生じ得る。
【0310】
対象は、赤血球上の「I抗原」に結合する凝集性自己抗体の存在または量(力価)を検出するためのアッセイを使用してCADを有するものとして同定され得る。抗体は、モノクローナル(例えば、モノクローナルIgMまたはIgA)またはポリクローナルであり得る。対象はまた、完全血球算定(CBC)、尿検査、生化学的研究、及び血液における溶血を試験するためのクームス試験のうちの1つ以上を使用してCADを有するものとして診断され得る。例えば、生化学的研究は、ラクターゼデヒドロゲナーゼレベルの上昇、非抱合ビリルビンレベルの上昇、低いハプトグロビンレベル、及び/または遊離血漿ヘモグロビンの存在を検出するために使用され得、これらのすべては急性溶血の指標であり得る。CADを検出するために使用され得る他の試験には、血清における補体レベルを検出することが含まれる。例えば、溶血の急性期中の消費のため、測定される血漿補体レベル(例えば、C2、C3、及びC4)は、CADで減少する。
【0311】
温暖凝集素溶血性貧血は、自己抗体による健康な赤血球の早期破壊によって特性化される自己免疫性障害である。ほとんどの場合、温式抗体溶血性貧血の原因は未知である。これらの場合は、原発性温式抗体溶血性貧血または特発性温式抗体溶血性貧血と称され得る。障害はまた、より大きな障害の一部として生じ得る。そのような場合は、二次的温式抗体溶血性貧血として知られている。生じる特定の症状は、発症の速度、健康な赤血球の破壊の速度及び根底にある障害の存在によって変化し得、それに依存し得る。一部の個体、特に貧血の発症が緩やかなものは、いかなる明らかな症状も有さない場合がある(無症候性)。罹患した個体は最終的に、皮膚の異常な青白さ(蒼白)、疲労感、労作時の呼吸困難、めまい及び動悸を発症し得る。皮膚及び白目の黄変(黄疸)ならびに脾臓の肥大(脾腫)もまた、温式抗体溶血性貧血を有する個体における一般的な所見である。脾腫により、罹患した個体は、腹部における膨満感または満腹感を有することになり得る。場合により、肝臓の肥大(肝腫大)も一部の症例で生じ得る。重度の症例を有する個体、特に急速(急性)発症を有する個体では、意識の喪失(気絶)、胸部疼痛(狭心症)、異常に急速な心拍(頻拍)、及び心不全を含む、より重篤な合併症を発症し得る。一部の個体は、(IgG抗体によって引き起こされるより一般的な形態とは対照的に)IgM抗体によって引き起こされる稀な形態の温式抗体溶血性貧血を有する。
【0312】
自己免疫性血小板減少症(ITP)は通常、正常な骨髄を有し、血小板減少症の他の原因がない、孤立性血小板数減少(血小板減少症)として知られている。それは、特徴的な紫斑発疹及び出血傾向の増加を引き起こす。2つの異なる臨床的症候群が小児における急性病態及び成人における慢性病態として現れる。急性形態はしばしば、感染症の後に生じ、2ヶ月以内に自然治癒する。慢性免疫性血小板減少症は、6ヶ月よりも長く持続し、具体的な原因は不明である。
【0313】
ITPは、完全血球算定(一般的な血液検査)において少ない血小板数によって診断される。しかしながら、診断は、少ない血小板数の他の原因の除外に依存するので、骨髄生検などの追加の調査が一部の症例で必要であり得る。
【0314】
軽度の症例では、慎重な観察のみが必要とされ得るが、極めて低い数または有意な出血は、コルチコステロイド、静脈内免疫グロブリン、抗D免疫グロブリン、または免疫抑制薬での処置を駆り立て得る。難治性ITP(従来の処置に対して反応性ではない)は、脾臓摘出を必要とし得る。極めて低い数を伴う重度の出血では血小板輸血が使用され得る。時に身体は、異常に大きな血小板を生成することによって補う場合がある。
【0315】
兆候には、あざ(紫斑病)及び点状出血(小さなあざ)の自然形成、特に四肢のもの、鼻孔及び/または歯肉からの出血、ならびに月経過多(過剰な月経出血)が含まれ、これらのいずれかは、血小板数が1μl当たり20,000未満である場合に生じ得る。極めて低い数(1μl当たり<10,000)は、口内または他の粘膜上の血腫(血液の塊)の自然形成をもたらし得る。軽度の裂傷または剥離からの出血時間は通常、長くなる。極端に低い数(1μl当たり<5,000)による重度で致命的な可能性がある合併症には、くも膜下出血または脳内出血(頭蓋骨または脳内の出血)、下部消化管出血または他の内部出血が含まれる。極端に低い数を有するITP患者は、自動車事故で経験され得るように、鈍的腹部外傷によって引き起こされる内部出血を起こしやすい。これらの合併症は、血小板数が1μl当たり20,000を超える場合は可能性が低い。
【0316】
ドナース・ランドスタイナー試験陽性溶血性貧血としても知られている発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)は、IgG自己抗体媒介補体活性化によって誘発される赤血球の血管内破壊によって引き起こされる自己免疫性溶血性貧血である。典型的な症状は、感染性物質への曝露後に小児において生じ、悪寒、発熱、倦怠感、腹痛、背中または脚におけるうずく痛み、吐き気、黄疸、及び暗色尿などの兆候及び症状からなる。
【0317】
PCHは、ドナース・ランドスタイナー試験と呼ばれる特別な試験で診断され、その場合、患者の血清が低温で30分間インキュベートされ、続いて体温まで上昇され、これはin vitroで赤血球の溶血を引き起こす。それは通常、自己回復する急性病態である。しかしながら、ある特定の場合では、急性溶血性発病またはさらに慢性溶血が生じ、ステロイド、免疫抑制剤、または生物学的薬剤、例えば、リツキシマブでの療法を必要とし得る。
【0318】
ヒューズ症候群とも称される抗リン脂質症候群(APS)は、一般に抗リン脂質抗体によって引き起こされる自己免疫性の凝固亢進状態である。APSは、動脈及び静脈における血栓(血栓症)ならびに妊娠関連合併症、例えば、流産、死産、早産、及び重度の妊娠高血圧腎症を誘発する。
【0319】
診断基準は、1つの臨床的事象、すなわち、血栓症または妊娠合併症、及びループス抗凝固因子、または抗β2-糖タンパク質-Iのいずれかの存在を確認する典型的には少なくとも3ヶ月間隔の2回の抗体血液検査を必要とし、β2-糖タンパク質-I抗体は、抗カルジオリピン抗体のサブセットであるため、抗カルジオリピンアッセイは、あまり特異的ではない代用として実施され得る。
【0320】
抗リン脂質症候群は、原発性または二次性であり得る。原発性抗リン脂質症候群は、任意の他の関連する疾患の非存在下で生じる。二次性抗リン脂質症候群は、全身性エリテマトーデス(SLE)などの他の自己免疫疾患と共に生じる。稀な症例では、APSは、全身性血栓症により急速な器官不全をもたらす;これは、「劇症型抗リン脂質症候群」(CAPS)と称され、高い死亡リスクと関連する。抗リン脂質症候群はしばしば、血栓症のさらなる発症のリスクを低下させ、妊娠の予後を改善するために、ヘパリンなどの抗凝固薬での処置を必要とする。
【0321】
エバンス症候群は、典型的には自己免疫性溶血性貧血と免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)との同時または逐次的な関連性によって特性化される慢性血液学的障害である。その症候群は、小児期または成人期の両方で現れ得る。血小板減少症の発症は、AIHAの発症に先行し、または同時に生じ、または後に続く場合がある。症状の重症度及びAIHA及び/またはITPの発症間の遅延は様々である。成人の非同時症例では、発症間の遅延は、平均で4年である。ITPはしばしば、鼻血、点状出血、紫斑病、及び斑状出血を伴う皮膚粘膜出血によって明らかになる。重度の血小板減少症の場合、血尿、消化管出血及び/または脳髄膜出血が稀な症例で観察され得る。
【0322】
エバンス症候群は、非交差反応性自己抗体が、赤血球、血小板、及び時に好中球上の異なる抗原決定基に対して標的化される自己免疫性障害である;しかしながら、正確な病態生理学的メカニズムは不明である。Tヘルパーの減少及びTサプレッサーリンパ球集団の増加の観察により、血球減少症は、T細胞異常に関連し得ることが示唆される。エバンス症候群はしばしば、他の疾患、例えば、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質症候群、自己免疫性リンパ球増殖性症候群、及び分類不能型免疫不全症に関連する。
【0323】
診断は、好中球減少症(好中球数<1500/マイクロL)と関連するまたはしない、貧血(ヘモグロビンレベル<12g/dL)及び血小板減少症(血小板数<100,000/マイクロL)を示す完全血球算定に基づく。上昇した乳酸脱水素酵素(LDH)及び/または直接ビリルビンレベル、及び低下したハプトグロビンレベルは、溶血を示している場合がある。直接抗グロブリン試験(クームス試験)の陽性は、赤血球(RBC)抗原を標的とする抗体の存在を確認する。血小板及び好中球の両方を標的とする自己抗体の存在も観察され得る。
【0324】
鑑別診断には主に、微小血管障害(例えば、血栓性または血小板減少性紫斑病)が含まれる。ほとんどの症例は散発性である。家族性の症例は、主に根底にある原発性免疫不全の背景で例外的に観察された。
【0325】
免疫抑制療法は、ITPのための静脈内免疫グロブリンと組み合わされ得、第一選択の処置を構成する。コルチコステロイド(プレドニゾン)の投与が処置の主力であるが、リツキシマブ、シクロスポリン、アザチオプリン、シクロホスファミド、及びダナゾールなどの他の薬物が難治性症例のために処方され得る。脾臓摘出は第三選択の処置として実施される;しかしながら、長期寛解は頻繁ではなくなり、患者は高い敗血症リスクを示す。重度の症例では、造血幹細胞移植が必要とされ得る。エバンス症候群は、処置にかかわらずAIHA及び/またはITPの寛解及び再燃の交互期間を有し得、これは、重度の血小板減少症及び好中球減少症の場合、重度の出血及び感染症のため、有意な罹患率及び死亡率に関連し得る。
【0326】
胎児及び新生児同種免疫性血小板減少症(FNAIT)とも称される新生児同種免疫性血小板減少症(NAIT)は、血小板数が減少する(血小板減少症)、胎児及び新生児に影響を及ぼす血液障害である。血小板抗原は、父親及び母親の両方から受け継がれる。FNAITは典型的には、父親から受け継がれ、母親には存在しない血小板抗原に特異的な抗体によって引き起こされる。胎児母体輸血(または胎児母体出血)により、これらの抗原は母親の免疫系によって非自己として認識されるようになり、その後、胎盤を通過する同種反応性抗体の生成を伴う。NAITは通常、母親血小板特異的同種抗体及び稀にヒト白血球抗原(HLA)同種抗体(血小板によって発現する)が、血小板が対応する抗原を発現する胎児に胎盤通過することよって引き起こされる。
【0327】
通常、血小板減少症は軽度であり、罹患した新生児は概ね無症候のままである。これらの場合、治療的介入は適用されない。重度の血小板減少症では、新生児は、出産時または出産後数時間で出血性合併症を示し得る。最も重度の合併症は頭蓋内出血であり、症例のおよそ10%で死亡または20%で神経性後遺症をもたらす。
【0328】
NAITの症例の約80%は血小板抗原HPA-1aに対する抗体によって、15%は抗HPA-5bによって、5%は他の抗体(例えば、HPA-1b、HPA-15、HPA-3及びHPA-9b)によって引き起こされる。HPA-1aは、米国の集団の98%に存在し、HPA-1a陰性である女性のおよそ2%は、妊娠中にFNAITのリスクがあり得ることを示唆している。
【0329】
胎児及び新生児の溶血性疾患(HDFN)とは異なり、NAITは、症例の最大で50%において最初の妊娠中に生じ、罹患した胎児は、妊娠中に極めて早期(血小板抗原の発達と一致する妊娠20週程度の早期、及び子宮における時間の大部分)に重度の血小板減少症(<50,000/μL)を発症し得る。通常、血小板減少症は、妊娠が進展するにつれて増加する。最初の妊娠中、NAITはしばしば、新生児が点状出血、打撲傷または頭蓋内出血を含む血小板減少症の典型的な症状を示す場合、出生するまで検出されない。子宮内頭蓋内出血は、罹患した症例の約10%~30%で生じる。NAITは、血小板減少症による頭蓋内出血の症例の大部分において根底にある原因と考えられる。出血のリスクは血小板数と逆相関し、血小板数が100,000/μL未満である場合にリスクが最も高い。
【0330】
NAITの再発は、不適合胎児の後続妊娠(すなわち、標的血小板抗原も保有する後続妊娠)において80%超と推定されている。NAITの後続の症例は、同等またはより重度であり得る。FNAITに対する胎児の反応は様々であり、代償的髄外造血を含み得る。稀に、胎児水腫が発症し得る。胎児貧血(赤血球不適合性の非存在下)も生じ得る。
【0331】
処置方法
補体活性化を阻害する薬剤を投与することによって、血液細胞上の補体の沈着が防止される。そのような薬剤には、抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体阻害剤が含まれる。他の薬剤には、天然補体の発現を上方制御する阻害剤、または血小板もしくは血液細胞(例えば、赤血球、単球、好中球)におけるC1q、C1rまたはC1s合成を下方制御する薬剤、補体活性化を阻止する薬剤、補体活性化のためのシグナルを阻止する薬剤などが含まれ得る。
【0332】
いくつかの態様では、血液障害を予防し、その発症リスクを低下させ、またはその処置をする方法が開示される。そのような方法は、C1q阻害剤を対象に投与することを含む。本明細書に記載の本発明の任意の態様に適用され得る多数の実施形態がさらに提供される。例えば、いくつかの実施形態では、C1q阻害剤は、抗体、アプタマー、アンチセンス核酸または遺伝子編集剤である。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗C1q抗体である。抗C1q抗体は、C1qと自己抗体との間またはC1qとC1rとの間、またはC1qとC1sとの間の相互作用を阻害し得、または循環もしくは組織からのC1qのクリアランスを促進し得る。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、100nM~0.005nMまたは0.005nM未満の範囲の解離定数(KD)を有する。いくつかの実施形態では、抗C1q抗体は、20:1~1.0:1または1.0:1未満の範囲の結合化学量論、6:1~1.0:1もしくは1.0:1未満の範囲の結合化学量論、または2.5:1~1.0:1もしくは1.0:1未満の範囲の結合化学量論でC1qに結合する。
【0333】
方法は、C1q、C1r、またはC1sの生物学的活性を阻害する。例えば、(1)自己抗体に対するC1q結合、(2)C1rに対するC1q結合、(3)C1sに対するC1q結合、(4)ホスファチジルセリンに対するC1q結合、(5)ペントラキシン-3に対するC1q結合、(6)C反応性タンパク質(CRP)に対するC1q結合、(7)球状C1q受容体(gC1qR)に対するC1q結合、(8)補体受容体1(CR1)に対するC1q結合、(9)Bアミロイドに対するC1q結合、または(10)カルレチキュリンに対するC1q結合。他の実施形態では、C1qの生物学的活性は、(1)古典的補体活性化経路の活性化、(2)溶解の減少及び/またはC3沈着の減少、(3)抗体及び補体依存性細胞傷害の活性化、(4)CH50溶血、(5)赤血球溶解の減少、(6)赤血球貪食の減少、(7)樹状細胞浸潤の減少、(8)補体媒介性赤血球溶解の阻害、(9)リンパ球浸潤の減少、(10)マクロファージ浸潤の減少、(11)抗体沈着の減少、(12)好中球浸潤の減少、(13)血小板貪食の減少、(14)血小板溶解の減少、(15)移植片生存の改善、(16)マクロファージ媒介性貪食の減少、(17)自己抗体媒介性補体活性化の減少、(18)輸血反応による赤血球破壊の減少、(19)同種抗体による赤血球溶解の減少、(20)輸血反応による溶血の減少、(21)同種抗体媒介性血小板溶解の減少、(22)貧血の改善、(23)好酸球増多症の減少、(24)赤血球上のC3沈着の減少(例えば、RBC上のC3b、iC3bなどの沈着の減少)、(25)血小板上のC3沈着の減少(例えば、血小板上のC3b、iC3bなどの沈着の減少)、(26)アナフィラトキシン生成の減少、(27)自己抗体媒介性発疹形成の減少、(28)自己抗体誘導性エリテマトーデスの減少、(29)輸血反応による赤血球破壊の減少、(30)輸血反応による血小板溶解の減少、(31)肥満細胞活性化の減少、(32)肥満細胞ヒスタミン放出の減少、(33)血管透過性の減少、(34)移植片内皮上の補体沈着の減少、(35)B細胞抗体生成、(36)樹状細胞成熟、(37)T細胞増殖、(38)サイトカイン生成、(39)ミクログリア活性化、(40)アルツス反応、(41)移植片内皮におけるアナフィラトキシン生成の減少、または(42)補体受容体3(CR3/C3)発現細胞の活性化である。
【0334】
いくつかの実施形態では、CH50溶血は、ヒトCH50溶血を含む。抗体は、ヒトCH50溶血の少なくとも約50%~約100%を中和することが可能であり得る。抗体は、ヒトCH50溶血の約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%を中和することが可能であり得る。抗体は、150ng/ml未満、100ng/ml未満、50ng/ml未満、または20ng/ml未満の用量でCH50溶血の少なくとも50%を中和することが可能であり得る。
【0335】
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、一価抗体、多重特異性抗体、もしくは抗体断片、またはその抗体誘導体である。いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fab断片などの抗体断片である。抗体断片の例は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fv断片、ダイアボディ、及び一本鎖抗体分子である。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号5のアミノ酸配列を有するHVR-L1、配列番号6のアミノ酸を有するHVR-L2、及び配列番号7のアミノ酸を有するHVR-L3を含む軽鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9のアミノ酸配列を有するHVR-H1、配列番号10のアミノ酸を有するHVR-H2、及び配列番号11のアミノ酸を有するHVR-H3を含む重鎖可変ドメインを含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号4及び35~38から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%の相同性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変ドメインを含み、軽鎖可変ドメインは、配列番号5のアミノ酸配列を有するHVR-L1、配列番号6のアミノ酸を有するHVR-L2、及び配列番号7のアミノ酸を有するHVR-L3を含む。いくつかの実施形態では、軽鎖可変ドメインは、配列番号4及び35~38から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号8及び31~34から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%の相同性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変ドメインを含み、重鎖可変ドメインは、配列番号9のアミノ酸配列を有するHVR-H1、配列番号10のアミノ酸配列を有するHVR-H2、及び配列番号11のアミノ酸配列を有するHVR-H3を含む。いくつかの実施形態では、重鎖可変ドメインは、配列番号8及び31~34から選択されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含む抗体断片である。抗体は、皮下もしくは筋肉内注射、または静脈内注射もしくは注入などの非経口注射または注入によって投与され得る。
【0336】
いくつかの実施形態では、抗体は、全長抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、10mg/kg~150mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、10mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~40mg/kg、40mg/kg~50mg/kg、50mg/kg~60mg/kg、60mg/kg~70mg/kg、70mg/kg~80mg/kg、80mg/kg~90mg/kg、90mg/kg~100mg/kg、100mg/kg~110mg/kg、110mg/kg~120mg/kg、120mg/kg~130mg/kg、130mg/kg~140mg/kg、または140mg/kg~150mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kg~100mg/kgの間の用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に投与される。抗体は、週1回、2週に1回、3週に1回、または月1回投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に週1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に2週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に3週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、75mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に月1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に週1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に2週毎に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に3週に1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、100mg/kgの用量で静脈内注射または注入によって対象に月1回投与される。抗体は、週1回、2週に1回、または月1回投与され得る。いくつかの実施形態では、抗体は、1mg/kg~10mg/kgの間の用量で皮下または筋肉内注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、1mg/kg~3mg/kg、3mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~7mg/kg、または7mg/kg~10mg/kgの間の用量で皮下または筋肉内注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回投与される。
【0337】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、静脈内注射もしくは注入によって、筋肉内注射によって、または皮下注射によって対象に投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、0.1mg/kg~50mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、0.1mg/kg~1mg/kg、1mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、15mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~25mg/kg、25mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~35mg/kg、35mg/kg~40mg/kg、40mg/kg~45mg/kg、または45mg/kg~50mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、0.3mg/kg~10mg/kgの間の用量で投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回投与される。いくつかの実施形態では、抗体断片は、毎日、2日に1回、週1回、2週に1回、または月1回の用量よりも高い初期予備用量で投与される。いくつかの実施形態では、初期予備用量は、3mg/kg~50mg/kgの間である。いくつかの実施形態では、初期予備用量は、3mg/kg~5mg/kg、5mg/kg~10mg/kg、10mg/kg~15mg/kg、15mg/kg~20mg/kg、20mg/kg~25mg/kg、25mg/kg~30mg/kg、30mg/kg~35mg/kg、35mg/kg~40mg/kg、40mg/kg~45mg/kg、または45mg/kg~50mg/kgの間である。いくつかの実施形態では、初期予備用量は、3mg/kg~20mg/kgの間である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、その対応する全長抗体と比較してより短い半減期を有し、例えば、抗体断片は、急速に消失し、それにより対象の血液腔外のC1q活性を温存し、または抗体は、対象の血液腔内のC1qを選択的に阻害し、それにより対象の血液腔外のC1q活性を温存する。いくつかの実施形態では、血液腔は、動脈、細動脈、毛細血管、小静脈、または静脈などの血管内に限定される。血液腔は、血清、血小板、内皮細胞、血液細胞、または造血細胞を含み得る。いくつかの実施形態では、対象の血液腔内のC1qの阻害は、非常に血管に富む組織における組織損傷を減少させる。非常に血管に富む組織の例は、腎臓、肺胞、毛細血管床、または糸球体である。
【0338】
いくつかの実施形態では、血液障害は、補体媒介性血液障害である。いくつかの実施形態では、血液障害は、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、冷式抗体溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、糸球体腎炎、抗リン脂質抗体症候群(APS)、感染症、または薬物誘導性血液学的障害である。感染症は、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、またはコロナウイルスであり得る。コロナウイルスの例は、SARS-CoV、MERS-CoV、HCoV、HKU1、及びSARS-CoV-2から選択される。いくつかの実施形態では、コロナウイルスは、SARS-CoV-2である。いくつかの実施形態では、対象は、気道または血液試料から逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によって確認されたSARS-CoV-2感染症を有する。血液障害は、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、温式自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、ループス腎炎、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、または免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)であり得る。薬物誘導性血液学的障害の例は、再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、及び血小板減少症である。
【0339】
方法は、補体活性化に関連する血液学的状態において血液細胞活性化の改善された維持を促進する。血液機能の維持は、未処置の患者に対する血液学的障害における機能的改善を提供する。補体阻害剤(例えば、C1q阻害剤、例えば、抗C1q抗体、抗体断片及び/または抗体誘導体)は、対象における全身性補体阻害を維持するのに有効な量及び頻度で投与され得る。
【0340】
組成物は、in vivo使用のために医師の指導の下で得られ、使用され得ることが企図される。治療製剤の投薬量は、疾患の特質、投与の頻度、投与の様式、宿主からの薬剤のクリアランスなどに応じて広く変わり得る。
【0341】
本明細書で使用される場合、「慢性投与される」、「慢性処置」、「慢性的に処置すること」、またはその類似する文法的類型は、長期間にわたって患者における全身性補体活性を完全にまたは実質的に抑制するために、患者の血液における治療剤のある特定の閾値濃度を維持するために用いられる処置レジメンを指す。したがって、補体阻害剤で慢性的に処置される患者は、2週以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、または52週;1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12ヶ月;または1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、10.5、または12年または患者の人生の残りの間)の期間、患者における全身性補体活性を阻害するまたは実質的に阻害する患者の血液における阻害剤の濃度を維持するのに十分な量の阻害剤及び投薬頻度で処置され得る。いくつかの実施形態では、補体阻害剤は、20%以下(例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、またはさらに5%未満)で血清溶血活性を維持するのに有効な量及び頻度でそれを必要とする患者に慢性投与され得る。いくつかの実施形態では、補体阻害剤は、LDHについて正常な範囲の少なくとも20%以内(例えば、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、またはさらに5%未満)で血清乳酸脱水素酵素(LDH)レベルを維持するのに有効な量及び頻度で患者に投与され得る。
【0342】
いくつかの実施形態では、補体阻害剤は、550IU/L未満(例えば、540、530、520、510、500、490、480、470、460、450、430、420、410、400、390、380、370、360、350、340、330、320、310、300、290、280未満、または270IU/L未満)の血清LDHレベルを維持するのに有効な量及び頻度で患者に投与される。患者における全身性補体阻害を維持するために、補体阻害剤は、例えば、週1回、2週に1回、週2回、1日1回、月1回、または3週に1回、患者に慢性投与され得る。本明細書に記載の方法のいずれかのいくつかの実施形態では、補体阻害剤(例えば、抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体)は、患者の血液中のC1q分子毎につき少なくとも0.7(例えば、少なくとも0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上)の濃度の二価C1q、C1r、またはC1s阻害分子(複数可)(例えば、完全抗C1q抗体)を維持するのに有効な投与の量及び頻度で患者に投与され得る。C1q、C1r、またはC1s阻害剤に関して「二価(divalent)」または「二価(bivalent)」は、C1q、C1r、またはC1s分子に対する少なくとも2つの結合部位を含有するC1q、C1r、またはC1s阻害剤を指す。C1q、C1r、またはC1s阻害剤が一価(例えば、一本鎖抗C1q、抗C1r、もしくは抗C1s抗体またはC1q、C1r、もしくはC1sに結合するFab)である場合、阻害剤は、血液中のC1q、C1r、またはC1s分子毎につき少なくとも1.5(例えば、少なくとも2、2.5、3、3.5、4、4.5、もしくは5またはそれ以上)の一価C1q、C1r、またはC1s阻害剤の濃度を維持するのに有効な量及び頻度で患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、一価C1q、C1r、またはC1s阻害剤は、少なくとも2:1(例えば、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、もしくは少なくとも6:1またはそれ以上)のC1q、C1r、またはC1sに対する一価C1q、C1r、またはC1s阻害剤の比を維持するのに有効な量及び頻度で患者に投与され得る。いくつかの実施形態では、完全(二価)抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも40μg(例えば、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、75、80、85、90、95、100、110、もしくは120μgまたはそれ以上)の抗体の濃度を維持するのに有効な量及び頻度で患者に投与される。好ましい実施形態では、完全抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも50μgの濃度で抗体を維持するための量及び頻度で投与される。好ましい実施形態では、完全抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも100μgの濃度で抗体を維持するための量及び頻度で投与される。いくつかの実施形態では、一価抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体(例えば、一本鎖抗体またはFab断片)は、患者の血液1ミリリットル当たり少なくとも80μg(例えば、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、もしくは170μgまたはそれ以上)の抗体の濃度を維持するのに有効な量及び頻度で患者に投与され得る。
【0343】
特定の患者に与えられる治療組成物の有効量は、多様な要素に依存し得、そのいくつかは患者毎に異なり得る。通常の技術を利用して、適任の臨床医は、日常的な臨床試験の過程で特定の治療用または画像化組成物の投薬量を調整することができる。
【0344】
治療剤、例えば、補体の阻害剤、遺伝子発現の活性化剤などは、適切な薬学的に許容可能な担体または希釈剤との組み合わせによって治療投与のための多様な製剤に組み込まれ得、固体、半固体、液体または気体形態の調製物、例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、軟膏、溶液、座剤、注射剤、吸入剤、ゲル、マイクロスフィア、及びエアロゾルに製剤化され得る。したがって、化合物の投与は、経口、口腔内、直腸、非経口、皮下、腹腔内、皮内、経皮、髄腔内、鼻、気管内などの投与を含む様々な方法で達成され得る。活性剤は、投与後に全身的になり得、または局所的投与、壁内投与の使用、または埋込部位で活性用量を保持するように作用する埋込物の使用によって局在化され得る。
【0345】
組み合わせ処置
本開示の補体阻害剤は、限定されないが、血液障害を処置するための免疫抑制療法などの任意の追加の処置と併せて使用され得る。
【0346】
いくつかの実施形態では、本明細書で開示される抗体、抗体断片及び/または抗体誘導体は、補体活性化の代替経路の阻害剤と組み合わせて投与される。そのような阻害剤には、限定されないが、B因子阻害抗体、D因子阻害抗体、可溶性、膜結合型、タグ付きまたは融合タンパク質形態のCD59、DAF、CR1、CR2、CrryまたはC3の切断を阻止するコンプスタチン様ペプチド、非ペプチドC3aRアンタゴニスト、例えば、SB290157、コブラ毒因子または非特異的補体阻害剤、例えば、ナファモスタットメシル酸塩(FUTHAN;FUT-175)、アプロチニン、K-76モノカルボン酸(MX-1)及びヘパリン(例えば、T.E.Mollnes & M.Kirschfink,Molecular Immunology 43(2006)107-121参照)が含まれ得る。いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、自己抗体とその自己抗原との間の相互作用の阻害剤と組み合わせて投与される。そのような阻害剤には、精製された可溶形態の自己抗原、または抗原模倣物、例えば、ペプチドまたはRNA由来ミモトープ(AQP4抗原のミモトープを含む)が含まれ得る。代替的には、そのような阻害剤には、古典的補体経路を引き起こさずに、自己抗原を認識し、自己抗体の結合を防止する遮断薬が含まれ得る。そのような遮断薬には、例えば、自己抗原結合RNAアプタマーまたはFcドメインにおいてC1q、C1r、またはC1s結合部位を欠く抗体(例えば、C1q、C1r、またはC1sに結合しないように操作されたFab断片または抗体)が含まれ得る。
【0347】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の補体の阻害剤(例えば、C1q、C1r、またはC1sの阻害剤、例えば、抗C1q、抗C1r、もしくは抗C1s抗体もしくは抗原結合断片、またはその抗体誘導体)は、血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を処置し、またはそれらの症状を改善するのに有用な1つ以上の追加の活性剤と共に製剤化され得る。例えば、抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体は、降圧剤、抗凝固剤、及び/またはステロイド(例えば、コルチコステロイド)と共に製剤化され得る。抗凝固剤の例には、例えば、ワルファリン(クマジン)、アスピリン、ヘパリン、フェニンジオン、フォンダパリヌクス、イドラパリヌクス、及びトロンビン阻害剤(例えば、アルガトロバン、レピルジン、ビバリルジン、またはダビガトラン)が含まれる。C1q、C1r、またはC1sの阻害剤(例えば、抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体)はまた、線維素溶解剤(例えば、アンクロド、ε-アミノカプロン酸、抗プラスミン-ai、プロスタサイクリン、及びデフィブロチド)、シクロホスファミド、または抗サイトカイン剤と共に製剤化され得る。抗サイトカイン剤には、例えば、サイトカイン(例えば、IL-13などの炎症誘発性サイトカイン)に結合し、その活性を調節する抗体または可溶性受容体が含まれる。いくつかの実施形態では、阻害剤は、抗CD20剤、例えば、リツキシマブ(Rituxan(商標);Biogen,Cambridge,MA)と共に、またはそれと使用するために製剤化され得る。いくつかの実施形態では、C1q、C1r、またはC1sの阻害剤は、静脈内免疫グロブリン療法(IVIG)または血漿交換と共に対象に投与するために製剤化され得る。
【0348】
C1q、C1r、またはC1sの阻害剤が第2の活性剤と組み合わせて(例えば、併せて)使用される場合、またはC1q、C1r、またはC1sの2つ以上の阻害剤が使用される場合(例えば、抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体)、薬剤は、別々にまたは一緒に製剤化され得る。例えば、それぞれの薬学的組成物は、例えば、投与の直前に混合され、一緒に投与され得、または別々に、例えば、同じまたは異なる回数で投与され得る。
【0349】
組成物は、治療的有効量のC1q、C1r、またはC1sの阻害剤(例えば、抗C1q、抗C1r、もしくは抗C1s抗体もしくは抗原結合断片、またはその抗体誘導体)を含むように抗C1q、抗C1r、または抗C1s抗体を含めて製剤化され得、または組成物は、合計した成分が血液障害(例えば、寒冷凝集素溶血性貧血(寒冷凝集素症)、溶血性貧血、ABO不適合性急性溶血性反応、温暖凝集素溶血性貧血、温式抗体溶血性貧血、温式抗体自己免疫性溶血性貧血(WAIHA)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)自己免疫性血小板減少症、発作性寒冷ヘモグロビン尿症(PCH)、抗リン脂質症候群(APS)、エバンス症候群、ABO不適合性急性溶血性反応、新生児同種免疫性血小板減少症、赤血球同種免疫、フェルティ症候群、抗体媒介性血小板減少症、ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)、ヘパリン誘導性血小板減少症及び血栓症(HITT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、免疫性血小板減少性紫斑病(ITP)、血小板減少症、血栓症、血管炎、ループス腎炎、糸球体腎炎、及び/または抗リン脂質抗体症候群(APS)、自己免疫性障害(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、クローン病、潰瘍性結腸炎)、感染症(例えば、肺炎、マイコプラズマ、単核球症、C型肝炎、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コロナウイルス)、免疫複合体病(例えば、クリオグロブリン血症、血清病、糸球体腎炎)、または薬物誘導性血液学的障害(例えば、ペニシリン、キニーネ、またはヘパリンなどの薬物に由来する再生不良性貧血、無顆粒球症、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少症))を処置するのに治療的に有効となるように、副次的治療量の阻害剤及び副次的治療量の1つ以上の追加の活性剤を含むように製剤化され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、阻害剤が合計で血液障害を処置するために治療的に有効な濃度となるように、C1q、C1r、またはC1sの2つ以上の阻害剤をそれぞれ副次的治療用量で含むように製剤化され得る。治療的有効用量(例えば、抗C5抗体の治療的有効用量)を決定するための方法は、当該技術分野で知られており、本明細書に記載されている。
【0350】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、血液障害のための他の療法と組み合わせて投与され得る。例えば、組成物は、プラスマフェレーシス、IVIG療法、血漿注入、または血漿交換と同時、その前、またはその後に対象に投与され得る。
【実施例】
【0351】
実施例1:抗C1q抗体は、CADからの血液サンプルにおける補体媒介性溶血を阻害する
個々のCAD血清サンプルを、抗C1q抗体漸増を用いた溶血及びFACs実験のために一緒にプールした。溶血は、プールされたCAD血清でRBCを感作することによって実施した(4℃で1時間-10μL血清+10μLのRBC)。溶解は、37℃で35分間、200μLの20xの正常ヒト血清を添加して引き起こした。溶解後、上清を除去し、hRBCを抗C3抗体(CT-C3)、抗C1q抗体、及び抗C4抗体で30分間染色し、1回洗浄し、FACS分析のための蛍光二次抗ヤギ抗体で染色した。
【0352】
CADにおいて、RBCは、「血管外溶解」を介してRBCクリアランスを誘導する3つの主要な古典的補体「オプソニン」であるC1q、C4b及びC3bで被覆される。C1q、C4b及びC3bは、RBC除去のための細網内皮系によって脾臓及び肝臓において認識される。また、CADにおいて、RBCは、直接的「血管内」RBC溶解のための膜侵襲複合体の形成を引き起こすC5bで被覆される。抗C1q抗体は、CAD血清サンプルにおいて血管内及び血管外の両方のRBC溶解プロセスを有効に停止させる。抗C1qは、補体カスケードのすべての主要な「オプソニン」/免疫細胞リガンド(C1q、C4b及びC3b)の沈着を阻害する(
図1A)。全長抗C1q抗体(例えば、配列番号33の重鎖可変ドメイン及び配列番号37の軽鎖可変ドメインを含むMab1抗体)及び抗C1s(例えば、TNT009)抗体は、補体媒介性溶血を阻害する(
図1B)。抗C1q抗体は、溶血の阻害のためのTNT009と少なくとも同等の効力であり(
図2A)、その一方で抗C1q抗体のみが、標的細胞に対するC1qの上流結合を阻害する(
図2B)。抗C1s抗体は、RBCに対するC1q結合を阻害しない。C1qを選択的に阻害することにより、古典的経路によって誘導される溶血が十分に阻害されるが、レクチン経路及び代替経路を介して誘導される溶血は温存される。対照的に、抗C5は、3つすべての経路の溶血活性を阻害する。(
図3)。CAD患者における補体枯渇/消費の血清バイオマーカーは、追加の評価を提供する。C5ではなくC4及びC2の減少は、早期補体成分の消費と共に早期補体カスケードの過剰活性化を示している(
図4)。CADは、霊長類におけるRBC溶解を阻害するために、抗C1q抗体(例えば、配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含む抗C1q抗体Fab断片であるFabA)の皮下投与によって処置され得る(
図5)。
【0353】
実施例2:抗C1q抗体は、CAD患者からの血液サンプルにおける溶血及び補体沈着を阻害する
CAD及び対照血漿サンプル
8人の対象からのヒトCAD血漿サンプルをIRB承認プロトコル下で入手した。対照血清及び血漿サンプルをInnovative Research(Novi,MI)から入手した。
【0354】
ヒトRBCのex vivo感作
ヒトRBC(Innovative Research,MI)を洗浄し、GVB++緩衝液(Comptech,TX)(2mLのGVB++緩衝液における80μLのRBCパック)に浮遊させた。25μLのヒトRBCを25μLの5倍希釈されたCADまたは正常血清と混合し、4Cで30分間インキュベーションした。この工程により、CAD対象からの寒冷凝集素抗体がヒトRBC表面抗原に結合することが可能となる。
【0355】
3人の対象は強固なIgG沈着を示した一方で、7人の対象は強固なIgM沈着を示した。1人の対象は、細胞表面IgG及びIgMの両方について低いシグナルを示した。
【0356】
溶血アッセイ
CAD感作RBCへの正常ヒト血清の添加は、補体動員及び活性化をもたらす。正常ヒト血清(GVB++緩衝液に20倍希釈された)を、GVB++またはGVB-EDTA緩衝液中の感作ヒトRBCに添加した。薬理学研究のため、抗C1q抗体(例えば、配列番号8の重鎖可変ドメイン及び配列番号4の軽鎖可変ドメインを含むMab2抗体)及びFabA(例えば、配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含むFab断片)を、100ug/mL~0.3ug/mLの濃度の範囲で血清に滴加した。RBCを37Cで30分間インキュベーションして、ヒトRBCでの古典的補体カスケードのC1q動員及び活性化を可能とした。
【0357】
GVB-EDTA緩衝液(Comptech,TX)で希釈された血清中でインキュベーションされた感作RBCは、EDTAが補体カスケードを介して溶血の完全阻害をもたらすので、陰性対照であった。水中でインキュベーションされたRBCは、RBCの各々の調製及び実験実行において可能な最大溶解を定義するための陽性対照であった。
【0358】
37Cで30分間のインキュベーションの後、細胞を遠心分離機において2000rpmで5分間遠沈した。上清を透明底96ウェルプレートに移し、415nmにおける吸光度(ヘモグロビンに特異的な吸光度)をプレートリーダー(Spectramax,CA)で読み取って溶血を定量した。古典的補体カスケードによって特異的に作動する溶解の指標を提供するために、GVB-EDTA緩衝液中の血清を有するウェルからの吸光度シグナルをすべての他のウェルから差し引いた。EDTAで補正された吸光度シグナルをプロットし、評価した。薬理学研究のため、各ウェルにおけるシグナルをまた、抗C1q抗体を欠くウェルに対して正規化して、シグナルの変化%をプロットした(
図6A及び6B)。4PL-ロジスティックフィットを実施して、抗C1q MAB2及びFabAでの溶血阻害についてのIC
50を決定した。溶血の阻害についての相対IC
50は、抗C1q MAB2及びFabAの両方について約10nMであった。
【0359】
ヒトRBC上の補体沈着を評価するためのフローサイトメトリー
上記反応で溶解しなかったヒトRBCを1%BSA及び2mMのEDTA(FACS緩衝液)を含有するdPBSで洗浄し、次いで抗C4ヤギポリクローナル抗体(Abcam Ab47788)及び抗C3d特異的ポリクローナルウサギ抗体(Agilent A0063)で氷上で30分間染色した。次いで細胞をFACS緩衝液で洗浄し、遠沈し、次いで二次抗体である抗ヤギAlexa 647コンジュゲート及び抗ウサギAlexa 488コンジュゲート(Thermo,CA)で染色した。氷上で30分間のインキュベーション後、細胞をFACS緩衝液で洗浄し、次いでフローサイトメーター(Novocyte system,ACEA,CA)に入れた。
【0360】
CAD感作工程の後、個々のCAD対象における抗RBC抗体の特質を理解するために、RBC細胞表面IgG及びIgMを、それぞれの蛍光タグ化抗ヒトIgG/IgM抗体で検出した。
【0361】
RBCのフロー分析のため、前方散乱(FSC)及び側方散乱シグナル(SSC)を使用してRBC集団を同定した。シングルセルRBC集団を、FSC面積対FSC幅プロットの斜線に沿って細胞を選択することによって単離した。緑色(488nm)及び遠赤色(647nm)チャネルにおける蛍光シグナルについて陽性のシングルセルRBCを使用して、細胞表面C4及びC3dについて陽性標識された細胞をそれぞれ定義した。C4及びC3d染色についてGVB-EDTA緩衝液を差し引いた%標識細胞を、CADと対照対象との間の差のために評価した。薬理学研究のため、MAB2またはFabAを含有するウェルにおける標識細胞%を抗C1q抗体を欠くウェルに対して正規化し、変化率としてプロットした(
図6A及び6B)。4PL-ロジスティックフィットを実施して、これらの研究におけるMAB2及びFabAでのC4及びC3d沈着の阻害のIC
50を決定した。補体沈着の阻害についての相対IC
50は、抗C1q MAB2及びFabAの両方について約10nMであった。
【0362】
実施例3:ヘパリン誘導性血小板減少症(HIT)を有する患者からの血漿における古典的経路を介するPF4/ヘパリンによる補体活性化
HITにおいて、患者において内因性循環タンパク質PF4と組み合わされた治療投与されたヘパリンに対する抗体が作られた場合、RBCは溶解する。この溶解が代替経路ではなく古典的経路によって媒介されることを確認するために、EDTA及びEGTAを使用した特異的キレート化研究をHIT患者からの血漿を用いてin vitroで実施した。Mg2+に対して感受性である代替経路は、EDTAによって阻害されるが、EGTAによっては阻害されない。
図7Aに示されているように、PF4/ヘパリンの添加前の血漿へのEDTAまたはEGTAの添加は、補体活性化を排除した。さらに、EGTAで処置された血漿のMg2+補充は、PF4/ヘパリンによる補体活性化を救済しなかった。健康ドナーからの血漿をC1阻害剤(10及び20IU/mL)と共にまたは伴わずにインキュベーションしてから、PF4/ヘパリンと共にインキュベーションし、PF4/ヘパリンによる補体活性化を抗原-C3c捕捉ELISAアッセイによって決定した。
図7Bに示されているように、補体活性化は、C1エステラーゼ阻害剤を使用して低下した。フローサイトメトリーを使用して全血アッセイにおいて同様の結果が得られた(
図7C~7D)。健康ドナーからの全血をEDTA(10mM)またはEGTA(10mM)±MgCl
2(10mM)と共にまたは伴わずにインキュベーションしてから、緩衝液または抗原(PF4;25μg/mL±ヘパリン;0.25U/mL)と共にインキュベーションし、B細胞に対するPF4/ヘパリン及びC3cの結合をフローサイトメトリーによって決定した。
【0363】
レクチン経路及び古典的経路の関与を調べるために、健康ドナーからの血漿または全血を様々な濃度のClqに対するモノクローナル抗体(抗C1q Mab、Cell Sciences,Inc.,Newburyport,MA)またはMBLもしくはマウスアイソタイプ対照(0~100μg/mL)と共にプレインキュベーションしてから、PF4/ヘパリンを添加した。PF4/ヘパリンに対する補体活性化反応を、イムノアッセイ(
図7E)またはフローサイトメトリー(
図7F~7G)によって評価した。フローサイトメトリー実験のため、健康ドナーからの全血を、100μg/mLのマウスIgG1または抗MBL抗体または抗Clq抗体と共にインキュベーションしてから、PF4/ヘパリンと共にインキュベーションした。B細胞に対するPF4/ヘパリン及びC3cの結合をフローサイトメトリーによって決定した。
【0364】
抗Clq Mabは、PF4/Hによる補体活性化を濃度依存的に阻害した一方で、抗MBL抗体またはマウスアイソタイプ対照はそうではなかった。また、示されていないデータにおいて、PF4/ヘパリン複合体による補体活性化における個々のレクチンタンパク質であるフィコリン2及び3の関与が排除された。
図8に付随する質量分析データは、レクチンタンパク質と補体活性化表現型との相関関係を示さず、イムノアッセイにおいて補体活性化の喪失に関連するフィコリン2の機能的阻害も示さなかった。
【0365】
これらの研究は、補体が古典的補体経路を介してPF4/ヘパリンによって活性化されることを確立する。また、研究は、循環IgMレベルの有意なドナー変動が、免疫活性化に対する宿主感受性に寄与し、HITを予防するための治療的介入の標的を提供し得ることを実証している。
【0366】
実施例4:抗C1qは、レーザー微小血管損傷モデルにおけるKKO誘導性血栓形成を防止する
ヒト血小板FcγRIIA及びhPF4の両方を発現するヘパリン誘導性血小板減少症/血栓症トランスジェニックマウスモデルがReilly,et al.,Blood.2001 Oct 15;98(8):2442-7に記載されており、この実験で使用される。抗C1q抗体(抗C1q Mab1、Mab2、及びFabならびにアイソタイプ対照)をトランスジェニックマウスに静脈内注射する。抗C1q Mab1、Mab2、Fabまたはアイソタイプ対照のいずれかと、それに続くKKOを摂取したマウスにおける蛍光標識された血小板の結合に基づいて血栓サイズの変化率を測定する。
【0367】
実施例5:抗C1q抗体は、wAIHA患者からの血液サンプルにおける補体沈着を阻害する
2人の対象からのヒトwAIHA血漿サンプルをIRB承認プロトコル下で入手した。対照血清及び血漿サンプルをInnovative Research,MIから入手した。
【0368】
ヒトRBC(Innovative Research,MI)をGVB++緩衝液(Comptech,TX)(10mLのGVB++緩衝液中の0.5mLのタイプO+単一ドナー洗浄RBC)に浮遊させ、2000rpmで5分間遠心分離し、上清をデカンテーションした。細胞をGVB++で0.5mLまで再浮遊させ、1mLのdPBS中の0.5%ブロメライン(w/v)を添加した。細胞を37Cで10分間インキュベーションし、次いで10mLのGVB++緩衝液を添加し、2000rpmで5分間遠心分離した。上清をデカンテーションし、細胞をGVB++で0.5mLまで再浮遊させた。5uLの再浮遊細胞を995uLのGVB++に添加することによって0.5%RBC溶液を作製した。
【0369】
透明底96ウェルプレートを使用し、各ウェルにおいて、以下の試薬を添加した:健康ドナー血清(37.5μL);GVB++中の200μg/mLエクリズマブ(37.5μL);患者血清(7.5μL);薬物を有さないまたは300ug/mLの最終濃度のためのMAB2(1058ug/mL)を有するGVB++(42.5μL);及びGVB++中の0.5%RBC(25μL)。
【0370】
37Cで2時間のインキュベーション後、フロー緩衝液の洗浄液(1%BSAw/v、2mMのEDTA、dPBS)を添加し、遠心分離機において細胞を2000rpmで5分間遠沈した。上清を除去し、ペレットを100μLのフロー染色溶液(1:2000のフルオレセインがコンジュゲーションされた抗C1q(Dako)、1:1500のフィコエリトリンがコンジュゲーションされた抗C3d(Dako)、1:1000のアロフィコシアニンがコンジュゲーションされた抗C4(Abcam))に再浮遊させ、暗所で4Cで30分間染色した。インキュベーション後、150uLのフロー緩衝液の洗浄液を添加し、細胞を2000rpmで5分間遠心分離した。上清を除去し、細胞を125uLのフロー緩衝液に再浮遊させた。
【0371】
RBCのフロー分析のため、前方散乱(FSC)及び側方散乱シグナル(SSC)を使用してRBC集団を同定した。シングルセルRBC集団を、FSC面積対FSC幅プロットの斜線に沿って細胞を選択することによって単離した。遠赤色(647nm)チャネルにおける蛍光シグナルについて陽性のシングルセルRBCを使用して、細胞表面C4について陽性標識された細胞を定義した。GVB EDTAサンプルを補体沈着についての陰性対照として使用した。薬理学研究のため、MAB2を含有するウェルにおける標識細胞%を、抗C1q抗体を欠くウェルと比較し、変化率としてプロットした(
図13)。この図は、wAIHAを有する患者からの血清が、補体活性化及び沈着(C4によって測定される)を引き起こすRBCに対する抗体を含有することを示している。Mab1は、C1qの活性化及びC4の沈着を十分に防止した。
【0372】
実施例6:温式自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)を有する患者における抗C1qモノクローナル抗体(MAB1)の臨床試験。
この臨床試験の主な目的は、温式自己免疫性溶血性貧血(wAIHA)を有する対象におけるMab1(30、50、75または100mg/kg)の2回の週1回静脈内注入の安全性、忍容性、及び有効性を評価することである。
【0373】
研究設計:これは、wAIHAを有する成人男性及び女性対象における反復投薬臨床試験である。この研究は、wAIHAを有する対象におけるMab1の安全性、忍容性、及び有効性を評価するように設計する。対象は、1日目及び8日目にMab1(30、50、75または100mg/kg)のIV注入を受ける。
【0374】
方法論:合計で6~12人のwAIHAを有する対象を各コホート(すなわち、30、50、75及び100mg/kg Mab1)に登録する。すべての対象は、1日目にIV注入を受け、8日目に2回目のIV注入を受ける。
【0375】
スクリーニング来訪(-6週目及び-2週目):すべての対象は、Mab1での投薬前の42日以内に研究スクリーニング手順を受ける。スクリーニングは、インフォームドコンセントの取得、病歴及び研究適格性の評価、ワクチン接種歴のレビュー、ベースラインの健康状態、FACIT疲労質問表の実施、ならびにDAT及び溶血のマーカー(網状赤血球数、ハプトグロビン、LDH及び間接ビリルビン)を含む臨床検査を含む。研究来訪:対象は、1日目及び8日目に30、50、75または100mg/kgのMab1の静脈内注入を受ける。
【0376】
3日目及び4日目に安全性、PK、及びPDのための研究評価をクリニック内または自宅のいずれかで完了させ得る。対象は、15、22、29、36、43、50、57及び71日目に安全性、PK、及びPDのための研究評価を受けるためにクリニックに戻る。
【0377】
研究評価:薬物動態パラメータを連続血清サンプリングによって評価し、薬力学的パラメータを、CH50及びC4、及び血液中の他の補体バイオマーカーの測定、補体成分についての血液細胞フローサイトメトリーならびに疾患関連バイオマーカー(例えば、ヘモグロビン、網状赤血球数、ハプトグロビン、ラクターゼデヒドロゲナーゼ、ビリルビンなど)の減少によって評価する。
【0378】
実施例7:カニクイザルにおける抗C1q抗体Fab断片(「FabA」)の毎日の皮下投薬
カニクイザル(2匹の雌/群)に抗C1q抗体Fab断片(配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含む)(「FabA」)を肩甲骨間の空間に1週間皮下に1回投薬した(1日目に5mg/kg及び6日間連続で2mg/Kg)。以下の時点で血液を採取し、K2Edta血漿及び血清について処理した:予備投薬、投薬後1、3、6、12、及び24時間、ならびに3、4、5、6、7、8、9、及び10日目。2~7日目の血液採取は、それらの日の投薬前に行った。
【0379】
PK及びPD ELISAアッセイ:
血清遊離FabA(PK)、血漿遊離C1q(PD)及び血漿総C1q(PD)のレベルをサンドイッチELISAを使用して測定した。黒色96ウェルプレート(Costar#3925)を重炭酸緩衝液(pH9.4)中の75μLのそれぞれの捕捉タンパク質/抗体(表1)で4Cで一晩被覆した。翌日、プレートをdPBS pH7.4(ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、次いで3%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するdPBS緩衝液でブロッキングした。アッセイ緩衝液(0.3%BSA及び0.1%Tween20を含有するdPBS)中の精製タンパク質(表1)で標準曲線を作成した。研究血清または血漿サンプルをそれぞれの希釈でアッセイ緩衝液中で調製した。ブロッキング緩衝液をタッピングによってプレートから除去した。標準及びサンプルを1ウェル当たり75μLで二連で添加し、PK測定のために300rpmで室温で1時間振盪しながらインキュベーションし、その後、C1qアッセイのために4Cで一晩、続いて37Cで30分間及び室温で1時間インキュベーションした。プレートを0.05%Tween20を含有するdPBSで3回洗浄し、75μLのアルカリホスファターゼがコンジュゲーションされた二次抗体(表1)をすべてのウェルに添加した。プレートを室温で振盪しながら1時間インキュベーションした。プレートを0.05%Tween20を含有するdPBSで3回洗浄し、75μLのアルカリホスファターゼ基質(Life Technologies,T2214)を使用して展開した。室温で20分後、プレートをルミノメーターを使用して読み取った。標準を4PLロジスティックフィットを使用してフィッティングし、未知の濃度を決定した。分析物レベルを希釈について補正し、次いでGraphPad Prismを使用してプロットした。
【0380】
【0381】
すべての処置された動物の血清サンプルにおいて遊離FabAレベルを測定した(
図9)。処置された動物からの血漿サンプルにおいてFabAに結合していないC1qの量を示す血漿遊離C1qレベルを測定した(
図10)。
【0382】
ex-vivo溶血アッセイ:
カニクイザルからの血清サンプルを補体の供給源として使用して、抗体感作ヒツジ赤血球(RBC)に対する補体媒介性溶解活性を追跡した。抗RBC抗体(CompTech#B200)で事前感作したヒツジRBCを、カルシウム及びマグネシウムを含有するゼラチンベロナール緩衝生理食塩水(GVB++)(CompTech#B102)に浮遊させた。RBCをGVB++で3回洗浄して、4~6Cで2000rpmで5分間遠沈することによって、事前溶解したRBDからの任意の非特異的シグナルを除去した。細胞を約2億細胞/mLの最終濃度でGVB++に再浮遊させ、氷上で維持した。ベースライン時及びFabAでの投薬後に採取されたカニクイザル血清サンプルをGVB++に50倍希釈し、50μLをそれぞれ丸底透明プレートに添加した。溶解反応を、50μLのRBCを血清サンプルに添加することによって引き起こし、37Cで20分間インキュベーションした。次いでプレートを2000rpmで5分間遠沈し;上清を透明平底96ウェルプレートに移し、吸光度を415nmでプレートリーダーで読み取った。対照サンプルを、血清を有さない緩衝液対照またはEDTAを含有するGVB緩衝液中で調製された血清サンプルを用いてバックグラウンドシグナルを推定するために実行した。サンプルシグナルからバックグラウンドを差し引き、ベースラインに対して正規化し、次いでベースラインのパーセントとしてプロットして、溶血の時間経過及びFabAの投薬後の溶血の相対的阻害を決定した。
【0383】
血清溶血は、FabAの毎日の反復皮下投薬後に阻害された(
図11)。
【0384】
サルにおける5mg/Kgと、それに続く2mg/KgでのFabAの1日1回の皮下投薬は、最後の投薬後少なくとも1日まで両方の動物群において測定可能な遊離薬物レベルで強固なPKをもたらした。遊離C1qレベルは、5mg/Kg投薬の後に十分に阻害され、1日1回の2mg/Kgの反復投薬では、遊離C1qレベルは、投薬の期間にわたって及び最後の投薬後少なくとも1日まで60~90%の範囲で阻害された。血漿総C1qレベルは、両方の用量群においてこの研究の期間にわたって未変化であり、FabAがC1qターンオーバーに有意に影響を及ぼさないことを示差している。これらの結果は、2mg/kg以上でのFabAの複数のSC投薬が血液における強固な遊離薬物レベルをもたらすことができ、サルにおける遊離C1q及び血清溶血活性を阻害することができることを確認する。
【0385】
実施例8:抗C1q阻害剤の血液対組織分布の評価
規定用量の抗C1q阻害剤(例えば、抗C1q抗体Mab1、Mab2またはFabA)の毎日の皮下(SC)投与が、静脈内注入または注射で送達される抗C1q阻害剤と比較して、組織部分(すなわち、血管外腔)におけるC1qを完全に飽和させ、または阻害するのに十分ではなく、血液(すなわち、血管内腔)におけるC1qの完全飽和及び阻害をもたらすことを実証するためにこの実施例を使用する。
【0386】
動物種。抗C1q阻害剤(複数可)が高い親和性でC1qに結合し、血清における古典的補体カスケードの完全な機能的阻害を示す動物種をまず同定する。
【0387】
抗C1q阻害剤の用量選択:動物をまず、1、3、5及び10mg/Kgの用量の抗C1q FabA(例えば、配列番号39の重鎖Fab断片及び配列番号40の軽鎖Fab断片を含む抗C1q Fab)、及び/または3、5、7及び10mg/Kgの用量の抗C1qモノクローナル抗体(例えば、配列番号8の重鎖可変ドメイン及び配列番号4の軽鎖可変ドメインを含むMab2抗体または配列番号33の重鎖可変ドメイン及び配列番号37の軽鎖可変ドメインを含むMab2抗体)で単回SC注射を介して処置する。並行して、さらなる動物を、比較分子(すなわち、配列番号8の重鎖可変ドメイン及び配列番号4の軽鎖可変ドメインを含むMab2抗体または配列番号33の重鎖可変ドメイン及び配列番号37の軽鎖可変ドメインを含むMab2抗体)で100mg/Kg IVの用量で処置する。血漿サンプルをベースライン、30分、1、4、8時間ならびに2、3、4、5、及び8日目の時点で採取する。血液サンプルを、抗C1q阻害剤/比較分子のレベルならびにC1q及び血清溶血活性の阻害について評価する。遊離薬物レベルが少なくとも24時間の遊離C1qの完全阻害と共に血液において測定可能であるSC用量を決定する。比較抗C1qモノクローナル抗体の100mg/KgでのIV投薬は、単回投薬後少なくとも5~8日間、C1qの完全阻害をもたらす。
【0388】
抗C1q阻害剤のSC用量の組織分布:次に、動物を、選択された用量で抗C1q阻害剤の単回SC注射で処置し、これは、最初の用量選択研究において24時間の血液中のC1qの十分な飽和をもたらす。並行して、さらなる動物を100mg/Kg IVの用量で比較分子で処置する。動物を8時間、2、3、及び4日目の時点で安楽死させる。各時点で血液を採取する。次いで動物を滅菌生理食塩水で灌流して、血管部分から出た血液を完全にフラッシュする。皮膚、皮下脂肪、肝臓、肺及び筋肉を含む組織を採取する。各時点で血液サンプルを抗C1q阻害剤/比較分子のレベルならびにC1q及び血清溶血活性の阻害について評価する。組織サンプル(血液を欠く)をホモジナイズし、各時点で抗C1q阻害剤/比較分子のレベル及び組織C1qの阻害について評価する。抗C1q阻害剤の単回SC投与は、24時間(2日目まで)血液中のC1qの完全飽和及び阻害を示すが、3日目及び4日目では示さない。組織サンプルにおいて、遊離薬物レベルは定量限度未満であり、いずれの時点でも遊離C1qの阻害は観察されない。これらの結果は、抗C1q阻害剤の単回皮下投薬後、薬物レベルが血液では測定可能であるが、組織サンプルでは測定可能ではないことを示している。また、C1qは、血液では十分に阻害されるが、組織サンプルでは阻害されない。
【0389】
抗C1q阻害剤の複数の毎日の固定SC用量の組織分布:選択された用量で1日1回7日間抗C1q阻害剤の単回SC注射で動物を処置する。さらなる動物を、100mg/Kg IVの単回用量で抗C1q比較分子で処置する。動物を2、3、7及び9日目(最後の投薬から2日後)に安楽死させる。各時点で血液を採取する。次いで動物を滅菌生理食塩水で灌流して、血管部分から出た血液を完全にフラッシュする。皮膚、皮下脂肪、肝臓、肺及び筋肉を含む組織を採取する。各時点で血液サンプルを抗C1q阻害剤/比較分子のレベルならびにC1q及び血清溶血活性の阻害について評価する。組織サンプル(血液を欠く)をホモジナイズし、各時点で抗C1q阻害剤/比較分子のレベル及び組織C1qの阻害について評価する。抗C1q阻害分子の単回SC投与は、9日目のサンプル(最後の投薬から2日後に採取された)を除くすべての時点で血液中のC1qの完全飽和及び阻害を示す。組織サンプルでは、遊離薬物レベルは定量限度未満であり、すべての時点で遊離C1qの阻害は観察されない。これらの結果は、抗C1q阻害分子の複数の毎日のSC投与後、薬物レベルが血液では測定可能であるが、組織サンプルでは測定可能ではないことを示している。また、C1qは、規定の用量での抗C1q阻害分子の1日1回のSC投薬で、血液では十分に阻害されるが、組織サンプルではそうではない。
【0390】
実施例9:Mab1及びFabAクリアランスの評価
以下は、Mab1 15mpk IV、FabA 10mpk IV及びFabA 3mpk SCからの図である。
【0391】
カニクイザルにMab1 15mpk IV、FabA 10mpk IV及びFabA 3mpk SCの単回用量で投薬した。経時的に血液サンプルを採取し、血清について処理した。血清の遊離薬物レベルを測定し、以下に示す。Mab1 15mpk IVは、250,000ng/mLのピーク血清遊離Mab1レベルをもたらす(
図12A)。遊離薬物レベルは、4日目まで上昇したままであるが、5日目では検出未満のレベルまで消失する。FabA 10mpk IVは、12000ng/mLのピーク薬物レベルをもたらし、8時間までに検出限度未満まで低下する薬物レベルで非常に急速に消失する(
図12B)。Fab分子の推定半減期は2~3時間である。FabA 3mpk SCは、遊離薬物レベルの極めて緩やかな増加を示し、単回投薬後24時間の時点で測定可能であった(
図12C)。
【0392】
これらの結果は、IVで投薬された完全IgG分子のMab1が、約250ug/mLの血清ピーク薬物レベルを示し、数日の時間枠で徐々に消失したことを実証している。IVで投薬されたFabAは、8時間で完全に消失する約12ug/mLのピーク血清薬物レベルを示す。対照的に、SCで投薬されたFabAは、血清遊離薬物レベルが徐々に緩やかに増加して24時間でピークとなり、約48時間までに消失することを示している。
【0393】
急速なクリアランスは、遊離血清全長抗体レベルと比較して増加した遊離血清Fab断片レベルのクリアランスを指す(
図12)。その長い半減期のため、遊離血清全長抗体レベルは、投与後数日上昇したままである。対照的に、その短い半減期のため、遊離血清Fabレベルは、数時間以内に極めて急速に低下する。すなわち、それは急速に消失する。
【0394】
参照による組み込み
本明細書で引用される特許、公開された特許出願、及び非特許文献の各々は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0395】
均等物
当業者らは、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または単なる通常の実験のみを使用して確認することができるであろう。そのような均等物は、以下の特許請求の範囲に包含されることが意図されている。
【配列表】
【国際調査報告】