(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】オリベトール酸誘導体の製剤および非共有結合性安定化
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20231023BHJP
A61K 31/19 20060101ALI20231023BHJP
A61K 31/352 20060101ALI20231023BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20231023BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20231023BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231023BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231023BHJP
A61K 9/02 20060101ALI20231023BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231023BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231023BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20231023BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20231023BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20231023BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20231023BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231023BHJP
A61P 1/08 20060101ALI20231023BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20231023BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20231023BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20231023BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20231023BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K31/19
A61K31/352
A61K9/12
A61K9/107
A61K9/06
A61K9/08
A61K9/02
A61P43/00 111
A61P1/00
A61P25/24
A61P25/30
A61P25/18
A61P25/08
A61P25/00
A61P1/08
A61K8/02
A61K8/36
A61K8/49
A23L33/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523018
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 US2021055142
(87)【国際公開番号】W WO2022081950
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523133188
【氏名又は名称】アンダーソン デイビッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン デイビッド
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018MD07
4B018ME14
4B018MF10
4C076AA01
4C076AA06
4C076AA12
4C076AA24
4C076AA29
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC16
4C076CC18
4C076FF70
4C076GG12
4C083AC311
4C083AC841
4C083DD17
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA08
4C086GA13
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA31
4C086MA43
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA06
4C086ZA08
4C086ZA12
4C086ZA18
4C086ZA66
4C086ZA71
4C206AA01
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4C206KA12
4C206MA01
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4C206NA14
4C206ZA02
4C206ZA06
4C206ZA08
4C206ZA12
4C206ZA18
4C206ZA66
4C206ZA71
(57)【要約】
酸性カンナビノイドを層状複水酸化物(LFH)中にインターカレートすることにより酸性カンナビノイドを安定化させる方法が提供される。また、LDH-インターカレートされた酸性カンナビノイドを含む組成物と、同組成物を含む生理学的に適合性の製剤と、対象において様々な疾患および状態を治療するために同製剤を使用する方法と、が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性カンナビノイドをインターカレートされた層状複水酸化物(LDH)粒子の形態の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料であって、前記酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子は、
一般式M
II
1-xM
III
x(OH)
2(C
1-)
x・mH
2O、
を有してなり、
前記一般式中、
xは、0.1から0.4までであり、
mは、0から0.50までであり、
M
IIは、Mg
2+と、Co
2+と、Ni
2+と、Cu
2+と、Zn
2+と、Ca
2+と、からなる群から選択されて、
M
IIIは、Al
3+と、Fe
3+と、Cr
3+と、Ga
3+と、Bi
3+と、からなる群から選択されて、
C
1-は、脱プロトン化された酸性カンナビノイドである、
ことを特徴とする酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料。
【請求項2】
M
IIは、Mg
2+またはZn
2+である、
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料。
【請求項3】
M
IIIは、Al
3+である、
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料。
【請求項4】
C
1-は、カンナビジオール酸(CBDA)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビネロール酸(CBNRA)、カンナビノール酸(CBNA)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、またはカンナビジバリン酸(CBDVa)である、
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料。
【請求項5】
C
1-は、テトラヒドロカンナビノレートまたはカンナビジオレートである、
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料。
【請求項6】
自由流動性粉末の形態である、
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料。
【請求項7】
xは、0.14から0.33までである、
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料。
【請求項8】
xは、0.25から0.33までである、
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料。
【請求項9】
mは、0から0.25までである、
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料。
【請求項10】
医薬組成物であって、
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料と、
生理学的に許容される担体と、
を有してなる、
ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項11】
ヒトまたは非ヒト対象への投与のために好適な分注可能なエアロゾル化された製剤である、
請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
担体は、ガス噴射剤である、
請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記ガス噴射剤は、ハイドロフルオロカーボンと、アルカンと、空気と、からなる群から選択される、
請求項12記載の医薬組成物。
【請求項14】
ヒトまたは非ヒト対象への外用投与のために製剤化されている、
請求項10記載の医薬組成物。
【請求項15】
点眼剤として製剤化されている、
請求項14記載の医薬組成物。
【請求項16】
クリーム、ローション、または軟膏として製剤化されている、
請求項14記載の医薬組成物。
【請求項17】
化粧品中に組み込まれている、
請求項14記載の医薬組成物。
【請求項18】
ヒトまたは非ヒト対象への経皮投与のために製剤化されている、
請求項10記載の医薬組成物。
【請求項19】
ヒトまたは非ヒト対象への経口投与のために製剤化されている、
請求項10記載の医薬組成物。
【請求項20】
ヒトまたは非ヒト対象への注射による投与のために製剤化されている、
請求項10記載の医薬組成物。
【請求項21】
ヒトまたは非ヒト対象への点耳投与のために製剤化されている、
請求項10記載の医薬組成物。
【請求項22】
ヒトまたは非ヒト対象への直腸投与のために製剤化されている、
請求項10記載の医薬組成物。
【請求項23】
ヒトまたは非ヒト対象への膣投与のために製剤化されている、
請求項10記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項1記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料を有してなる、
ことを特徴とする着用可能な衣服。
【請求項25】
それを必要とする対象において5-HT1A受容体を伴う疾患または状態を治療する方法であって、
前記対象に治療有効量の請求項1乃至10のいずれか一項に記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料または組成物を投与することを有してなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記疾患または前記状態は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と、拒食症と、うつ病と、薬物中毒と、社交恐怖と、統合失調症と、統合失調感情障害と、双極性疾患と、精神病と、からなる群から選択される、
請求項25記載の方法。
【請求項27】
それを必要とする対象において癲癇を治療する方法であって、
前記対象に治療有効量の請求項1乃至10のいずれか一項に記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料または組成物を投与する工程を有してなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項28】
前記投与する工程は、前記酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料を含浸させた衣服の着用を介して外用で行われる、
請求項27記載の方法。
【請求項29】
それを必要とする対象において疼痛および/または嘔気を治療する方法であって、
前記対象に治療有効量の請求項1乃至10のいずれか一項に記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料または組成物を投与することを有してなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項30】
前記対象は、化学療法を受けているがん患者である、
請求項29記載の方法。
【請求項31】
エアロゾル計量用量吸入器であって、
自由流動性粉末形態において請求項1乃至10のいずれか一項に記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料または組成物を含有する、
ことを特徴とするエアロゾル計量用量吸入器。
【請求項32】
粒子状材料であって、
層状複水酸化物(LDH)粒子中にインターカレートされたオリベトール酸誘導体、
を有してなり、
前記粒子状材料は、M
II
1-xM
III
x(OH)
2(C
1-)
x・mH
2Oにより定義される一般式を有して、
前記一般式中、
M
IIは、Mg
2+と、Co
2+と、Ni
2+と、Cu
2+と、Zn
2+と、Ca
2+と、からなる群から選択されて、
M
IIIは、Al
3+と、Fe
3+と、Cr
3+と、Ga
3+と、Bi
3+と、からなる群から選択されて、
C
1-は、前記オリベトール酸誘導体であり、
xは、0.1から0.4までの範囲内であり、
mは、0から0.5までの範囲内である、
ことを特徴とする粒子状材料。
【請求項33】
xは、0.14から0.33までの範囲内である、
請求項32記載の粒子状材料。
【請求項34】
xは、0.25から0.33までの範囲内である、
請求項32記載の粒子状材料。
【請求項35】
mは、0から0.25までの範囲内である、
請求項32記載の粒子状材料。
【請求項36】
前記オリベトール酸誘導体は、酸性カンナビノイドである、
請求項32記載の粒子状材料。
【請求項37】
前記酸性カンナビノイドは、フィトカンナビノイドである、
請求項36記載の粒子状材料。
【請求項38】
前記酸性カンナビノイドは、カンナビジオール酸(CBDA)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビネロール酸(CBNRA)、カンナビノール酸(CBNA)、アジュレミン酸、カンナビジバリン酸(CBDVA)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、またはカンナビジバリン酸(CBDVa)からなる群から選択される、
請求項36記載の粒子状材料。
【請求項39】
23℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態において前記カンナビノイドの少なくとも50%を保持する、
請求項36記載の粒子状材料。
【請求項40】
前記カンナビノイドは、CBDAである、
請求項39記載の粒子状材料。
【請求項41】
前記カンナビノイドは、THCAである、
請求項39記載の粒子状材料。
【請求項42】
前記カンナビノイドは、CBGAである、
請求項39記載の粒子状材料。
【請求項43】
前記カンナビノイドは、CBNRAである、
請求項39記載の粒子状材料。
【請求項44】
前記カンナビノイドは、CBNAである、
請求項39記載の粒子状材料。
【請求項45】
前記カンナビノイドは、CBDVaである、
請求項39記載の粒子状材料。
【請求項46】
25℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態において前記オリベトール酸誘導体の少なくとも90%の保持を呈する、
請求項32記載の粒子状材料。
【請求項47】
前記オリベトール酸誘導体は、CBDAである、
請求項46記載の粒子状材料。
【請求項48】
前記オリベトール酸誘導体は、THCAである、
請求項46記載の粒子状材料。
【請求項49】
前記オリベトール酸誘導体は、CBGAである、
請求項46記載の粒子状材料。
【請求項50】
前記オリベトール酸誘導体は、CBNRAである、
請求項46記載の粒子状材料。
【請求項51】
前記オリベトール酸誘導体は、CBNAである、
請求項46記載の粒子状材料。
【請求項52】
前記オリベトール酸誘導体は、CBDVaである、
請求項46記載の粒子状材料。
【請求項53】
組成物であって、
Mgと、Coと、Niと、Cuと、Znと、Caと、Alと、Feと、Crと、Gaと、Biと、からなる群から選択される1つ以上の金属原子に対して間欠的なまたはフリッカリングする化学吸着と物理吸着とを呈するオリベトール酸誘導体を有してなり、
25℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態において前記オリベトール酸誘導体の少なくとも90%の保持を呈する、
ことを特徴とする組成物。
【請求項54】
前記オリベトール酸誘導体は、CBDAである、
請求項53記載の組成物。
【請求項55】
前記オリベトール酸誘導体は、THCAである、
請求項53記載の組成物。
【請求項56】
前記オリベトール酸誘導体は、CBGAである、
請求項53記載の組成物。
【請求項57】
前記オリベトール酸誘導体は、CBNRAである、
請求項53記載の組成物。
【請求項58】
前記オリベトール酸誘導体は、CBNAである、
請求項53記載の組成物。
【請求項59】
前記オリベトール酸誘導体は、CBDVaである、
請求項53記載の組成物。
【請求項60】
粉末であって、
請求項32乃至59のいずれか一項に記載の複数の粒子状材料または組成物を有してなり、
前記粒子状材料は、0.1ミクロンから100ミクロンまでの範囲内の直径または最大寸法を有する、
ことを特徴とする粉末。
【請求項61】
前記直径または前記最大寸法は、0.1ミクロンから50ミクロンまでの範囲内である、
請求項60記載の粉末。
【請求項62】
前記直径または前記最大寸法は、0.1ミクロンから10ミクロンまでの範囲内である、
請求項60記載の粉末。
【請求項63】
請求項32乃至62のいずれか一項に記載の粒子状材料、組成物、または粉末を製造する方法であって、
オリベトール酸誘導体を1つ以上の層状複水酸化物(LDH)粒子中にインターカレートすることを有してなる、
ことを特徴とする方法。
【請求項64】
対象への外用適用用の製剤であって、
請求項1乃至9または32乃至52のいずれか一項に記載の複数の複数の粒子状材料と、
医薬的に許容される担体と、
を有してなり、
前記粒子状材料は、0.1ミクロンから100ミクロンまでの範囲内の直径または最大寸法を有する、
ことを特徴とする製剤。
【請求項65】
前記医薬的に許容される担体は、水性液である、
請求項64記載の製剤。
【請求項66】
前記医薬的に許容される担体は、極性溶媒である、
請求項64記載の製剤。
【請求項67】
前記医薬的に許容される担体は、クリームである、
請求項64記載の製剤。
【請求項68】
前記医薬的に許容される担体は、ローションである、
請求項64記載の製剤。
【請求項69】
前記オリベトール酸誘導体は、アモルフルチンである、
請求項32記載の粒子状材料。
【請求項70】
前記アモルフルチンは、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-3-(3-メチル-2-ブテン-1-イル)-6-(2-フェニルエチル)-安息香酸と、3-[(2E)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-イル]-2-ヒドロキシ-4-メトキシ-6-(2-フェニルエチル)-安息香酸と、からなる群から選択される、
請求項69記載の粒子状材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年10月17日に出願された米国仮特許出願第63/093,182号の利益を主張しており、同仮出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、オリベトール酸に由来するおよび/または分子構造中に脱カルボキシル化傾向のある2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸基を含有する治療用カンナビノイドと関連化合物との分野におけるものである。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
抽出を容易にすること(例えば、Downsらの欧州特許出願公開第1536810A2号)と、高いCBD(カンナビジオール)純度の要求をサポートすることと、を含む目的のための、酸性カンナビノイドの故意的な脱カルボキシル化は、いくつかの特許の主題であり、多くのCBD製造設備において標準的に行われている。しかしながら、Guy et alの米国特許出願公開第20190117619号により例示されるように、カルボキシル化されたカンナビノイド、例えば、CBDAとTHCAとは、それらの脱カルボキシル化されたバリアントCBDおよびTHCとは別個の、または同バリアントよりも有意に少ない用量を必要とする一部の有用な特徴と活性とを有することが公知である。特にCBDAの独特の特性は、様々なカンナビノイドベースの産業においてより広く認識されるようになっているため、商業化は、許容される熱安定性を呈するCBDAの安全で有効な製剤の現行の欠如により、著しく妨害される可能性がある。これは、医薬品応用または「医療用カナビス製造物」において特に該当する。天然フィトカンナビノイドCBDAの脱カルボキシル化された形態である、CBDの特に重要な態様の1つは、CBDが血液脳関門を崩壊させることが示されているということであり[Luo et al., Mol Pharm. 2019 Mar 4;16(3):1312-1326]、これは、他のカンナビノイドが脳に入ることを許容し得るが、さらに、通常は血液脳関門により遮断されるであろう広範囲の毒が脳に入ることも許容する。
【0004】
特に、酸性カンナビノイドTHCAおよびCBDAは熱安定性について研究されており[例えば、W. Peschel, Sci. Pharm. 2016,84,567-584を参照]、両方は室温で3か月の間に、80℃で4時間の間に、少なくとも40%分解する(すなわち、60%の保持)。本開示の文脈において、問題となるのは、周囲温度(またはコールドチェーン製造物について、冷却器温度)またはその近くでの活性剤の貯蔵寿命であり、医薬品製造物における貯蔵寿命は、典型的には、活性薬学的成分の10%が分解して損失する期間よりもわずかに短く設定される。それにもかかわらず、当業者は、より短い期間にかけてより高い温度で行われる「加速安定性研究」が、刊行された(または他に既知の)研究との比較を可能として、文献の安定性研究と比較するために本明細書において使用されることを認識するであろう。これらの研究はまた、一部の場合において、製造物の貯蔵寿命の予測(測定自体ではないが)において有用であり得る。Wang et al. [Cannabis and Cannabinoid Research, Volume 1.1,2016,262-271]は、分解速度定数の表現において、115kJ/molの活性化エネルギーと、2.0×1012秒-1の前因子と、を報告したが、これは40℃で4.06週のCBDAの半減期をもたらして、商業的ファインケミカル供給業者Cerilliant Corporation(Analytical Reference Standards division)からのアセトニトリル中での高度に精製されたCBDA標準溶液についての分析の証明書と非常に良好に合致している。そのためCerilliantは、4週にかけて40℃での効力における69.8%の減少を報告した[http://www.cerilliant.com/shoponline/COA.aspx?itemno=8b722e93-d06c-4bf5-91c4-4294235f51d0&lotno=FE04301903を参照]。Citti et al. [Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis 149 (2018) 532-540]は、上昇温度での実際のヘンプオイル中でのCBDA安定性を調べたところ、それらのより高い分解速度は恐らく油中の酸の存在に起因しており、ギ酸は特に強い効果を有することに気付いた。Citti et al.により報告された活性化エネルギーは、そのため89.5kJ/molとより低く、6.9×108 1/秒の前因子を有する。これは、抽出された場合のヘンプオイル中のCBDAについて、80℃において約4.9時間の半減期をもたらす。30℃(86゜F)は、製造物(コールドチェーン製造物を除く)が温暖な気候下で貯蔵施設において長時間にわたり曝露される可能性がある温度を良好に表し得ることを考慮すると、異なる研究者から算出された30℃でのCBDAの半減期はすべて、商業的な貯蔵寿命標準に照らすと、かなり短く、彼らのデータに基づくと、Citti et al.については4.5週、Wang et al.については11.6週、およびCerilliant製造物については約12週と概算される。Cittiの研究はより高い温度で行われたものであり、外挿ははるかにより低い確実性のものであるため、後者2つの概算値は非常に合致しており、はるかにより信頼できると考えられるべきであり。例えば、12週の半減期は、商業的な「標準化された」製造物、またはカルボキシル化された形態のCBDAからの有意な薬理学的効果を特徴とすることを主張する、標準化されているかもしくはそうではない任意の製造物にとって非常に大きな問題であるだけでなく、FDAガイダンスにおいて規範化されていて産業において周知の医薬品標準によっても非常に大きな問題であり、これらのデータにより含意されるような、約2週のうちに10%を上回る分解は、長いマージンで効力の<10%の損失と共に24か月、または18か月、またはさらには12か月の目標を逃すことになる。顕著なことに、Peschelは、40%と90%とのエタノールチンキ中で、冷却器条件(4℃、暗所)における貯蔵であっても、わずか6か月のうちにTHCAの50%を上回る損失を結果としてもたらすことを示しており、すなわち、酸性カンナビノイドのコールドチェーン製造物であっても不安定であり、その理由は、たとえエンドユーザが(製造日から)1か月より前に製造物を受け取り、また、投薬中を除いてそれを冷蔵して保ったとしても、効力の10%の損失が約1か月のうちに予想されるであろうからである。CBDAの急速な分解の1つの帰結は、CBDAが適応症(例えば、嘔気、癲癇、および場合によっては不安)を治療する、鍵ではないとしても、鍵となるカンナビノイドの1つとなる場合において、「標準化されたカンナビノイド調製物」または「標準化されたヘンプ抽出物」という概念は、この高い分解速度に直面して消え失せるということである。
【0005】
アンモニアと、第一級アミンと、第二級アミンと、第三級アミンと、ヒドラジンと、ヒドロキシルアミンと、グアニジン塩とを含む、カンナビノイドカルボン酸(carboxylic cannibinoids)のいくつかの塩は、これらのカンナビノイドの脱カルボキシル化を加速させることが示されている。米国特許出願公開第20150038567A1号を参照。同出願での目的は主に、CBDを「精製する」ことである。
【0006】
溶媒の他に、金属または他に触媒性の表面は、酸性カンナビノイドの脱カルボキシル化をさらに加速させ得る。真性のチンキの場合であっても、Fairbairnと、Liebmannと、Rowanとは、1976年という早い時期に、エタノール中のカンナビノイドの溶液に関して、「エタノール中の溶液は安定であるという先行する主張は、実証されていない」ことを報告した[J. Pharm. Pharmacol,28(1),1-7]。グリコールと、ピリジンと、ニトロベンゼンと、ホルムアミドと、クロロホルムと、ピコリンと、アミンと、酸と、むしろ一般に、水と、多数の他の溶媒とは、不活性雰囲気および周囲温度と140℃との間の温度の条件下で酸性カンナビノイドおよび/または他のベータ-ヒドロキシ酸を不安定化させることが示されている。
【0007】
これらの問題と本明細書において述べられているその他の問題とは、少なくともカンナビノイドの実際の共有結合性修飾なしで、酸性カンナビノイドの安定な製剤を製造する任意の努力を大きく阻害してきた。公知の活性化合物の共有結合性修飾は、2つの一般的種類である、プロドラッグ、または新たな薬物のものであり得る。プロドラッグは、身体中で分解して、それにより元々の薬物を放出することが一般に意図されている。プロドラッグは、バイアルまたは他の容器中でのその貯蔵寿命の間に活性部分に対する最小の分解を示すべきである。典型的には、プロドラッグから薬物へのインビボでの変換は、身体中の酵素の作用を通じたものであり、吸収におけるより大きい対象間およびさらには対象内バラつき、ならびに/または身体中の分布の大きな変化に繋がる。後者の例として、プロポフォールの水溶性プロドラッグは、注射の部位における軽度の疼痛を、その代わりの、特には胸部/肺区画の位置でのより広範な疼痛と交換することが見出された。明確なことに、薬物が共有結合的に修飾された場合に、薬物の毒性プロファイルと潜在的な標的臓器とが変化することがあり、そして変化することが実際に十分に予想され得て、これは、分子中のほぼ任意の種類の共有結合性変化、特には原子または化学基の任意の付加または喪失と共に活性を変化させることが広く公知であるカンナビノイドについて特に当てはまる。何か(投与以外)がプロドラッグまたは任意の共有結合性修飾と共に変化するか否かにかかわらず、プロドラッグ、または任意の新たな化学的実体の規制当局の承認に付随する莫大な時間的および金銭的な支出が、既存の化学的実体(New Chemical Entity)を共有結合的に修飾することの決定において考慮されなければならない。
【0008】
カルボキシレート基のエステル化による酸性カンナビノイドの共有結合性修飾は、安定性における見かけの増加と共に報告されている。Pertwee et al. [Br J Pharmacol. 2018 Jan;175(1):100-112]を参照。しかしながら、その正に定義により、共有結合性修飾は、FDAなどの規制機関の観点において新たな化学的実体を作り出した。これは、NCEが毒性研究の全範囲を経なければならず、そのADME特性(吸収/分布/代謝/排出)ならびに分子の構造を変化させ得る酵素、例えば、CBDAのエステルを脱エステル化し得るエステラーゼの活性における対象間と対象内とのバラつきの効果について特徴付けられなければならないという点において、問題である。さらに、ヘンプ製造物とカナビス製造物との化学修飾はサプリメント/OTC市場において顰蹙を買っており、同市場において、規制と、規制ガイドラインと、産業標準と、公共的意見とは現在、採取後に変化を受けていない植物材料から抽出されたとおりの「天然」カンナビノイドを強く要求している。すなわち、植物(すなわち、成熟芽材料)が一旦採取されたら、乾燥および/または抽出された材料の化学修飾は最小であるべきであり、特にカンナビノイド自体の共有結合性修飾について懸念されている。
【0009】
カンナビノイドについて初歩的な知識を有する者でさえも認識するように、任意のカンナビノイドの共有結合性修飾は、薬理学的活性を変化させる可能性が疑われるべきであるだけでなく、実際にそうであることが予想されるべきである。実際に、CBDAを形成させるためのCBDのカルボキシル化は、ある特定の応用(例えば、嘔吐および癲癇)における効力を1,000倍もの大きさで増加させるようである。同様に、THCのペンチル側鎖のプロピル鎖への短縮は、THCの薬理学的特性に劇的に影響する。このような例は、多く存在しており、例外ではなく規則であるようである。そのため、Pertwee et al.においてCBDAのメチルエステルは、CBDAを上回る増加した熱安定性を示しているが、異なる薬理学的効果および、当然ながら、異なるADMEも有する。
【0010】
投与または消費の多くの経路は、ある特定のカンナビノイドに富んだ抽出物と関連付けられる別の問題、すなわち、不快な味および匂いを有する。カンナビノイドの多くは、口と鼻とに存在するTRPV受容体、特にはTRPV1の活性化因子であることが周知であり、「辛い」(hot)、または「スパイシーで辛い」(spicy-hot)味と、経口ならびに特には舌下投与および頬側投与の結果としてもたらされる匂いとは、組織への放出速度が増加するにつれて、鋭さが増加する。したがって、それらは化学的刺激剤であり、他の嫌な味および匂いはヘンプおよびカナビス抽出物において一般的であり、典型的には、抽出物が濃縮されて、組織濃度が増加するにつれて味は増加的に不快となる。これらの抽出物の「ブティック」応用は現在、これらの嫌な味および匂いにより妨げられている。
【0011】
層状複水酸化物(layered double hydroxide)、またはLDHは、MII
1-xMIII
x(OH)2(An-)x/n・mH2O(式中、MII=Mg、Co、Ni、Cu、Zn、Ca(二価陽イオンとして)であり、MIII=Al、Fe、Cr、Ga(三価陽イオンとして)であり、An-は陰イオン、例えば、CO3
2-、NO3
-、SO4
2-などであり、最も一般的にはx=0.25-0.33である)により与えられる一般式を有する天然のまたは(半)合成のクレイまたはクレイ様材料である。陰イオンは、また有機であってもよく、SDSと、SDBSと、スルホネートと、カルボキシレートと、その他と、を含むいくつかの界面活性剤の他に、いくつかの薬物、例えば、ケトプロフェンが陰イオンとしてLDHにインターカレートされている。LDHは、約3.5meq/gmの典型的な陰イオン交換能力を有する。米国特許第10,906,859号(その全内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる)は、アダマンタンカルボキシレートをインターカレートされた層状複水酸化物(LDH)粒子と、アダマンタンカルボキシレートをインターカレートされたLDH粒子を製造する方法と、を記載している。
【0012】
Kerkenroth et al.の米国特許第9,376,367号は、精製された酸性カンナビノイドを製造する方法であって、同酸性カンナビノイドにおいて、カルボキシル基と会合した陽イオンが、H+と、NH4+と、一価金属イオン、二価金属イオン、または三価金属イオンと、最大48個の炭素原子を含む第一級有機アンモニウムイオン、第二級有機アンモニウムイオン、第三級有機アンモニウムイオン、または第四級有機アンモニウムイオンと、ヒドラジニウムイオン(N2H5+)またはその有機誘導体と、ヒドロキシルアンモニウムイオン(NH3OH+)またはその有機誘導体と、グアニジニウムイオン(CN3H6+)またはその有機誘導体と、N,N-ジシクロヘキシルアミン-H+と、N,N-ジシクロヘキシル-N-エチルアミン-H+と、少なくとも1つの塩基性窒素原子を含む薬学的活性物質のヒドロゲニウム陽イオンと、からなる群から選択される方法を報告している。これらの化合物の記載される目的は、その開示において与えられている。「それゆえ、本発明は、純粋な中性カンナビノイドが単純な方式でそれから取得可能な、天然または合成カンナビノイドカルボン酸のできるだけ純粋な塩、好ましくは結晶性塩の製造方法を提供するという目的に基づく」。そのため、中性の、非カルボキシル化カンナビノイドがその発明の目標であり、ヒトまたは動物での使用のための任意の報告される製剤中の酸性カンナビノイドの増加した安定性についての証拠は、その開示において与えられていない。
【0013】
これを記載している時点において、FDAは、CBD/ヘンプサプリメント分野をより緊密に注視しており、いくつかの用途および動物モデルにおけるCBDA(カンナビジオール酸)の極めて高い効力を必然的に認識しており、すなわち、最終的に、現在のヘンプ製造物中のTHCと同様に、ヘンプ製造物中のCBDAレベルが標準化される、または少なくともある特定の濃度範囲内に維持されなければならないことを、FDAは規定する可能性がある。さらに、化合物がFDA承認済みの薬物製造物中の活性成分として一旦承認されると、その化合物はサプリメント市場においてもはや販売されるべきではないということがFDAのポリシーであり、その結果、Epidiolex(登録商標)(高度に純粋なCBD)の承認は、法的/マーケティングの観点から、CBDを問題があるものとする。
【0014】
この文脈において、燃焼もベイピング(vaped)もされない製造物(CBDへの実質的な変換が熱および/または光に起因して不可避である)中のCBDAの脱カルボキシル化は、効力の観点からだけでなく、規制上の観点からも問題である。数か月の貯蔵寿命にかけて実質的に分解する場合に、製造物の製造日においてよく制御されたCBDA濃度を有する製造物を調製することは、意味をなさない。分解は温度および光依存性であり、したがって高価なコールドチェーンの実施が強制されなければ制御下にないため、そのようなものは、「標準化された」製造物としてFDAから許容されないであろう。米国特許第9955716号は、コールドチェーンを必要とする凍結された「アイスポップ」(ice pop)カンナビノイド製造物を教示している。サプリメント市場、およびさらには外来診療室における現在の慣行および心的態度は、貯蔵場所の制約と、輸送の支出と、顧客の不便(我々のほとんどは車の中に冷却器を有していない)と、製剤柔軟性の欠如と、に起因してコールドチェーン製造物に対して好意的に捉えていない。
【0015】
特に任意の加熱および多くの塩形態に伴う酸性物質の不安定性を考慮すると、カナビス油の中性成分(すなわち、脱カルボキシル化されたカンナビノイド)からの酸性カンナビノイドの分離においても、方法と材料とが現在欠乏している。
【発明の概要】
【0016】
本発明の他の特徴と利点とは、後続する本発明の説明において記載されて、部分的に同説明から明らかとなるか、または本発明の実施により理解され得る。本発明は、本記載と本出願の請求項とにおいて特に指摘される組成物と方法とにより、実現および達成される。
【0017】
脱カルボキシル化する傾向があるオリベトール酸およびその誘導体、特にCBDA、THCA、およびCBGAなどの有用な酸性カンナビノイドから利益を達成する組成物であって、組成物の貯蔵寿命にかけて有意な分解に繋がる脱カルボキシル化速度からこれらの化合物を保護する組成物が見出される必要がある。さらに、組成物は、1つ以上の送達の様式、例えば、舌下、経口、鼻腔内などにおいてヒトおよび/またはペットの消費のために安全であるべきである。CBDAは、その脱カルボキシル化された形態、カンナビジオール(CBD)により共有されないらしい強い効力と広範囲の治療的な利益とを有することが公知である。例えば、カンナビジオール酸は、他のがん細胞に良好に適用され得る明白な機序を介して、高浸潤性MDA-MB-231ヒト乳がん細胞の遊走を阻害する。
【0018】
追加的に、それぞれCBGA/CBGと、CBDA/CBDと、THCA/THCと、の生合成の原因となる植物酵素オリベトール酸ゲラニルトランスフェラーゼ(EC番号2.5.1.102)と、カンナビジオール酸シンターゼ(CBDAシンターゼ、EC番号1.21.3.8)と、テトラヒドロカンナビノール酸シンターゼ(THCAシンターゼ、EC 1.21.3.7)とは、カンナビゲロール酸(CBGA)またはカンナビネロール酸(CBNRA)または他のプレニル化された2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸を通じたオリベトール酸(または修飾されたオリベトール酸)からの経路において、カルボキシレート形態の前駆体のみを受け入れることが公知である。これを念頭に置いて、本発明の目的は、カンナビノイドの製造または生物製造における使用のための、4℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態においてCBDAの少なくとも50%の保持を呈する、CBGA、オリベトール酸、またはこれらの混合物の製剤を提供することである。
【0019】
本発明の目的は、23℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態においてカンナビジオール酸(CBDA)の少なくとも50%の保持を呈する、CBDAを含む消費のために安全な組成物を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、23℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態においてテトラヒドロカンナビノール酸(tetrahydocannabinolic acid:THCA)の少なくとも50%の保持を呈する、THCAを含む消費のために安全な組成物を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、23℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態においてテトラヒドロカンナビノール酸(THCA)の少なくとも80%の保持を呈する、THCAを含む消費のために安全な組成物を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、25℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態において活性の酸性カンナビノイドの少なくとも90%の保持を呈する、前記酸性カンナビノイドを含む消費のために安全な組成物を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、25℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態において前記酸性カンナビノイドの少なくとも90%の保持を呈する、オリベトール酸誘導体を含む組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、23℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態においてCBDAの少なくとも50%の保持を呈する、CBDAと、THCAと、CBGAと、CBNRA(カンナビネロール酸)と、CBNA(カンナビノール酸)と、アジュレミン酸と、CBDVAと、THCVAと、CBDVAと、からなる群から選択される酸性カンナビノイドを含む消費のために安全な組成物を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、1つ以上の(少なくとも1つの)酸性カンナビノイドをインターカレートされた層状複水酸化物を含む組成物であって、これらのカンナビノイドの少なくとも1つが純粋なカンナビノイドよりも有意に高い熱安定性を示して、特に、80℃でのカンナビノイドの半減期が8時間を上回る、好ましくは20時間を上回る、最も好ましくは60時間を上回る、組成物を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、25℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態において2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸の少なくとも50%の保持を呈して、オリベトール酸ゲラニルトランスフェラーゼ(EC番号2.5.1.102)を含むバイオリアクターまたは発酵システムへの1つ以上の2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸の放出のために機能的な、2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸を含む組成物を提供することである。
【0027】
一部の態様において、本発明は、酸性カンナビノイドをインターカレートされた層状複水酸化物(LDH)粒子の形態の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料であって、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子が、一般式:MII
1-xMIII
x(OH)2(C1-)x・mH2O(式中、xは0.1から0.4までであり、mは0から0.50までであり、MIIはMg2+と、Co2+と、Ni2+と、Cu2+と、Zn2+と、Ca2+と、からなる群から選択されて、MIIIはAl3+と、Fe3+と、Cr3+と、Ga3+と、Bi3+と、からなる群から選択されて、ならびにC1-は脱プロトン化された酸性カンナビノイドである)を有する、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料を提供する。酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料のある特定の態様において、MIIは、Mg2+またはZn2+である。さらなる態様において、MIIIは、Al3+である。追加の態様において、C1-は、カンナビジオール酸(CBDA)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビネロール酸(CBNRA)、カンナビノール酸(CBNA)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、またはカンナビジバリン酸(CBDVa)である。一部の態様において、C1-は、テトラヒドロカンナビノレート(tetrahydrocannabinolate)またはカンナビジオレート(cannabidiolate)である。他の態様において、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料は、自由流動性粉末の形態である。一部の態様において、xは、0.14から0.33までである。他の態様において、xは、0.25から0.33までである。他の態様において、mは、0から0.25までである。
【0028】
本発明はまた、医薬組成物であって、酸性カンナビノイドをインターカレートされた層状複水酸化物(LDH)粒子の形態の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料であって、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子が、一般式MII
1-xMIII
x(OH)2(C1-)x・mH2O(式中、xは0.1から0.4までであり、mは0から0.50までであり、MIIはMg2+と、Co2+と、Ni2+と、Cu2+と、Zn2+と、Ca2+と、からなる群から選択されて、MIIIはAl3+と、Fe3+と、Cr3+と、Ga3+と、Bi3+と、からなる群から選択されて、ならびにC1-は脱プロトン化された酸性カンナビノイドである)を有する、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料と、生理学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。一部の態様において、医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト対象への投与のために好適な、分注可能なエアロゾル化された製剤である。一部の態様において、担体は、ガス噴射剤である。追加の態様において、ガス噴射剤は、ハイドロフルオロカーボンと、アルカンと、空気と、からなる群から選択される。さらなる態様において、医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト対象への外用投与のために製剤化されている。一部の態様において、医薬組成物は、点眼剤として製剤化されている。他の態様において、医薬組成物は、クリーム、ローション、または軟膏として製剤化されている。追加の態様において、医薬組成物は、化粧品中に組み込まれている。いっそうさらなる態様において、医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト対象への経皮投与のために製剤化されている。一部の態様において、医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト対象への経口投与のために製剤化されている。ある特定の態様において、医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト対象への注射による投与のために製剤化されている。他の態様において、医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト対象への点耳投与のために製剤化されている。他の態様において、医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト対象への直腸投与のために製剤化されている。追加の態様において、医薬組成物は、ヒトまたは非ヒト対象への膣投与のために製剤化されている。
【0029】
本発明はまた、酸性カンナビノイドをインターカレートされた層状複水酸化物(LDH)粒子の形態の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料を含む着用可能な衣服であって、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子が、一般式MII
1-xMIII
x(OH)2(C1-)x・mH2O(式中、xは0.1から0.4までであり、mは0から0.50までであり、MIIはMg2+と、Co2+と、Ni2+と、Cu2+と、Zn2+と、Ca2+と、からなる群から選択されて、MIIIはAl3+と、Fe3+と、Cr3+と、Ga3+と、Bi3+と、からなる群から選択されて、ならびにC1-は脱プロトン化された酸性カンナビノイドである)を有する、着用可能な衣服を提供する。
【0030】
本発明はまた、それを必要とする対象において5-HT1A受容体を伴う疾患または状態を治療する方法であって、対象に治療有効量の、酸性カンナビノイドをインターカレートされた層状複水酸化物(LDH)粒子の形態の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料を投与することを含み、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子が、一般式MII
1-xMIII
x(OH)2(C1-)x・mH2O(式中、xは0.1から0.4までであり、mは0から0.50までであり、MIIはMg2+と、Co2+と、Ni2+と、Cu2+と、Zn2+と、Ca2+と、からなる群から選択されて、MIIIは、Al3+と、Fe3+と、Cr3+と、Ga3+と、Bi3+と、からなる群から選択されて、ならびにC1-は脱プロトン化された酸性カンナビノイドである)を有する方法と、前述のとおりのならびに請求項2乃至10に記載されているその態様と、を提供する。一部の態様において、疾患または状態は、心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder:PTSD)と、拒食症と、うつ病と、薬物中毒と、社交恐怖と、統合失調症と、統合失調感情障害と、双極性疾患と、精神病と、からなる群から選択される。
【0031】
本発明はまた、それを必要とする対象において癲癇を治療する方法であって、対象に治療有効量の、酸性カンナビノイドをインターカレートされた層状複水酸化物(LDH)粒子の形態の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料を投与することを含み、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子が、一般式MII
1-xMIII
x(OH)2(C1-)x・mH2O(式中、xは0.1から0.4までであり、mは0から0.50までであり、MIIはMg2+と、Co2+と、Ni2+と、Cu2+と、Zn2+と、Ca2+と、からなる群から選択されて、MIIIはAl3+と、Fe3+と、Cr3+と、Ga3+と、Bi3+と、からなる群から選択されて、ならびにC1-は脱プロトン化された酸性カンナビノイドである)を有する方法と、前述のとおりのならびに請求項2乃至10に記載されているその態様と、を提供する。ある特定の態様において、投与する工程は、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH材料を含浸させた衣服の着用を介して外用で行われる。
【0032】
本発明はまた、それを必要とする対象において疼痛および/または嘔気を治療する方法であって、対象に治療有効量の、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子を投与することを含み、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子が、一般式MII
1-xMIII
x(OH)2(C1-)x・mH2O(式中、xは0.1から0.4までであり、mは0から0.50までであり、MIIはMg2+と、Co2+と、Ni2+と、Cu2+と、Zn2+と、Ca2+と、からなる群から選択されて、MIIIはAl3+と、Fe3+と、Cr3+と、Ga3+と、Bi3+と、からなる群から選択されて、ならびにC1-は脱プロトン化された酸性カンナビノイドである)を有する方法と、前述のとおりのならびに請求項2乃至10に記載されているその態様と、を提供する。ある特定の態様において、対象は、化学療法を受けているがん患者である。
【0033】
本発明はまた、自由流動性粉末形態の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子を含有するエアロゾル計量用量吸入器(aerosol metered dose inhaler)であって、酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子が、一般式MII
1-xMIII
x(OH)2(C1-)x・mH2O(式中、xは0.1から0.4までであり、mは0から0.50までであり、MIIはMg2+と、Co2+と、Ni2+と、Cu2+と、Zn2+と、Ca2+と、からなる群から選択されて、MIIIはAl3+と、Fe3+と、Cr3+と、Ga3+と、Bi3+と、からなる群から選択されて、ならびにC1-は脱プロトン化された酸性カンナビノイドである)を有するエアロゾル計量用量吸入器と、前述のとおりおよび請求項2乃至10に記載されているその態様と、を提供する。
【0034】
本発明はまた、層状複水酸化物(LDH)粒子中にインターカレートされたオリベトール酸誘導体を含む粒子状材料であって、粒子状材料が、MII
1-xMIII
x(OH)2(C1-)x・mH2O(式中、MIIはMg2+と、Co2+と、Ni2+と、Cu2+と、Zn2+と、Ca2+と、からなる群から選択されて、MIIIはAl3+と、Fe3+と、Cr3+と、Ga3+と、Bi3+と、からなる群から選択されて、C1-はオリベトール酸誘導体であり、xは0.1から0.4までの範囲内であり、ならびにmは0から0.5までの範囲内である)により定義される一般式を有する粒子状材料を提供する。一部の態様において、xは、0.14から0.33までの範囲内である。他の態様において、xは、0.25から0.33までの範囲内である。追加の態様において、mは、0から0.25までの範囲内である。さらなる態様において、オリベトール酸誘導体は、酸性カンナビノイドである。一部の態様において、酸性カンナビノイドは、フィトカンナビノイドである。さらなる態様において、酸性カンナビノイドは、カンナビジオール酸(CBDA)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビネロール酸(CBNRA)、カンナビノール酸(CBNA)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)またはカンナビジバリン酸(CBDVa)からなる群から選択される。ある特定の態様において、粒子状材料は、23℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態においてカンナビノイドの少なくとも50%を保持する。一部の態様において、カンナビノイドは、CBDAである。他の態様において、カンナビノイドは、THCAである。追加の態様において、カンナビノイドは、CBGAである。一部の態様において、カンナビノイドは、CBNRAである。他の態様において、カンナビノイドは、CBNAである。追加の態様において、カンナビノイドは、CBDVaである。一部の態様において、粒子状材料は、25℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態においてオリベトール酸誘導体の少なくとも90%の保持を呈する。さらなる態様において、オリベトール酸誘導体は、CBDAである。さらなる態様において、オリベトール酸誘導体は、THCAである。他の態様において、オリベトール酸誘導体は、CBGAである。さらに他の態様において、オリベトール酸誘導体は、CBNRAである。さらなる追加の態様において、オリベトール酸誘導体は、CBNAである。他の態様において、オリベトール酸誘導体は、CBDVaである。追加の態様において、オリベトール酸誘導体は、アモルフルチンである。さらなる態様において、アモルフルチンは、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-3-(3-メチル-2-ブテン-1-イル)-6-(2-フェニルエチル)-安息香酸と、3-[(2E)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-イル]-2-ヒドロキシ-4-メトキシ-6-(2-フェニルエチル)-安息香酸と、からなる群から選択される。
【0035】
本発明はまた、Mgと、Coと、Niと、Cuと、Znと、Caと、Alと、Feと、Crと、Gaと、Biと、からなる群から選択される1つまたは複数の金属原子に対して間欠的なまたはフリッカリングする(flickering)化学吸着と物理吸着とを呈するオリベトール酸誘導体を含み、ならびに、25℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態において前記オリベトール酸誘導体の少なくとも90%の保持を呈する、組成物を提供する。一部の態様において、オリベトール酸誘導体は、CBDAである。他の態様において、オリベトール酸誘導体は、THCAである。追加の態様において、オリベトール酸誘導体は、CBGAである。いっそうさらなる態様において、オリベトール酸誘導体は、CBNRAである。他の態様において、オリベトール酸誘導体は、CBNAである。さらなる他の態様において、オリベトール酸誘導体は、CBDVAである。
【0036】
本発明はまた、前記粒子状材料が0.1ミクロンから100ミクロンまでの範囲内の直径または最大寸法を有する、請求項32乃至59のいずれかに記載の複数の粒子状材料または組成物を含む粉末を提供する。一部の態様において、直径または最大寸法は、0.1ミクロンから50ミクロンまでの範囲内である。他の態様において、直径または最大寸法は、0.1ミクロンから10ミクロンまでの範囲内である。
【0037】
本発明はまた、オリベトール酸誘導体を1つ以上の層状複水酸化物(LDH)粒子中にインターカレートすることを含む、先行する段落のいずれかおよび/または請求項32乃至62のいずれかに記載の粒子状材料、組成物、または粉末を製造する方法を提供する。
【0038】
本発明はまた、複数の複数の、前記粒子状材料が0.1ミクロンから100ミクロンまでの範囲内の直径または最大寸法を有する、請求項1乃至9または32乃至52のいずれかおよび/または先行する段落および本明細書中の他の箇所に記載される粒子状材料と、医薬的に許容される担体と、を含む、対象への外用適用用の製剤を提供する。一部の態様において、医薬的に許容される担体は、水性液である。他の態様において、医薬的に許容される担体は、極性溶媒である。追加の態様において、医薬的に許容される担体は、クリームである。いっそうさらなる態様において、医薬的に許容される担体は、ローションである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】「Alleviate X」CBDAに富んだヘンプ抽出物の試料についての、80℃での期間(時間)の関数としてのLn P=Ln{[CBDA]/([CBDA]+[CBD])}のプロット。
【
図2】熱ストレスに伴う1109cm
-1でのピークの進行性喪失を明らかにする、本明細書において「ニートCBDA」と略記されるCBDAに富んだ抽出物対照のFTIRスペクトル。四角はストレスなし、三角は60℃で48時間、丸は60℃で240時間。
【
図3】3つの最も目立つ「CBD単独」分解物位置(3つの破線)における実質的なピークの非存在を示す、LDHインターカレート試料A-19(黒色曲線)と、72時間熱ストレス負荷された試料S-19(灰色曲線)と、のATR-FTIRスペクトル。
【
図4】4つの最も目立つ「キノン単独」分解物位置(4つの破線)における実質的なピークの弱さまたは非存在を示す、LDHインターカレート試料A-19(黒色曲線)と、72時間熱ストレス負荷された試料S-19(灰色曲線)と、のATR-FTIRスペクトル。
【
図5】72時間熱ストレスからの非常に低い程度の分解を指し示すほぼ同一のスペクトルを示す、測定されたスペクトル全体に亘るLDHインターカレート試料A-19(黒色曲線)と、72時間熱ストレス負荷された試料S-19(灰色曲線)と、のATR-FTIRスペクトル。
【
図6】試料A-19(黒色曲線)と、ストレス負荷された試料S-19(点線の曲線)と、ブランクLDHマトリックス(灰色の実線、一番下の曲線)と、のFTIRスペクトルの金属-OH振動領域の拡大図。空のLDHにおける3431からA-19とS-19との両方における3450へのシフトが明確に著明であり、LDHマトリックス自体に対するカンナビノイドインターカレーションの効果を裏付けている。
【
図7A】粉砕も他の粒子サイズ低減も実行されていない、本発明のLDH-CBDAインターカレートから作られた自由流動性粉末の写真。紙面左にある定規上の各々のマーキングは、1ミリメートルである。
【
図7B】
図7Aにおけるものと同じ粉末の写真であるが、粒子の角張った形を明らかにするために拡大されている。紙面左にある定規上の各々のマーキングは、1ミリメートルである。
【
図7C】インターカレートの非常に微細なサイズと角張った形とを実証する、粉砕も他の粒子サイズ低減も実行されていない、本発明の自由流動性粉末の光学顕微鏡写真。特に、一次結晶子(primary crystallite)サイズは、この試料において5ミクロン未満である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
定義
「フィトカンナビノイド」:フィトカンナビノイドは、定義により、カナビス属(Cannabis genus)(アサ科(Cannabaceae family))の植物、すなわち、C.サティバ(C. sativa)と、C.インディカ(C. indica)と、C.ルダレリス(C. rudaleris)と、これらの交雑種と、において生合成されることが周知のカンナビノイドであり、すべてはオリベトール酸または密接に関連するアルキルレゾルシル酸に由来する。
【0041】
「CBDA」:カンナビジオール酸、CAS番号1244-58-2、3-p-メンタ-1,8-ジエン-3-イル-6-ペンチル-ベータ-レゾルシル酸。
【0042】
「THCA」:テトラヒドロカンナビノール酸、CAS番号23978-85-0、(6aR,10aR)-1-ヒドロキシ-6,6,9-トリメチル-3-ペンチル-6a,7,8,10a-テトラヒドロベンゾ[c]クロメン-2-カルボン酸。
【0043】
「CBGA」:カンナビゲロール酸(CAS番号25555-57-1)、3-[(2E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエニル]-2,4-ジヒドロキシ-6-ペンチル安息香酸。
【0044】
「CBNA」:カンナビノール酸(CAS番号2808-39-1)。
【0045】
「CBNRA」:カンナビネロール酸、3-[(2Z)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエニル]-2,4-ジヒドロキシ-6-ペンチル安息香酸。
【0046】
「CBCA」:カンナビクロメン酸(CAS番号185505-15-1)。
【0047】
「THCVA」、「CBDVA」など:略記されたカンナビノイド表記中への文字「V」の挿入は、ペンチル鎖がプロピル鎖により置き換えられていることを指し示す。例えば、CBDVAは3-p-メンタ-1,8-ジエン-3-イル-6-プロピル-ベータ-レゾルシル酸であり、CBGVAはカンナビゲロバリン酸であり、THCVAはテトラヒドロカンナビバリン酸である(THCVA、CAS番号:39986-26-0)、など。
【0048】
これらの定義において、これらの化合物のうちある特定のものは異性体を有して、例えば、有名な例としてはΔ9-THCAとΔ8-THCAとがあり、本開示の目的のためにΔ9--カンナビノイドとΔ8-カンナビノイドとは両方とも単純な「THCA」として処理されることが留意されるべきである。これは、不安定なカルボキシル基からのその距離におけるこの小さいシフトがインターカレーションにおいて、またはインターカレートされたカンナビノイドの安定性において、差異をもたらす可能性が非常に低いためである。治療効果における差異はこの単純な変化と共に確実に起こり得るが、これらの異性体の1つが本発明によるLDHインターカレーションにおいて好適である場合、ほぼ確実に他方もまた同様である。
【0049】
「オリベトール酸」(CAS番号491-72-5):IUPAC推奨名は2,4-ジヒドロキシ-6-ペンチル安息香酸であり、ペンチルレゾルシノール酸とも呼ばれ得る。
【0050】
「修飾されたオリベトール酸」:本開示において、2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸のみが「修飾されたオリベトール酸」と称される。すなわち、ペンチル鎖長および分岐のみが、n-ペンチル(分岐なし、5つの炭素)から2,4-ジヒドロキシ-6-プロピル安息香酸(3つの炭素、分岐なし)などのような化合物へと変更され得る。そのため、「修飾されたオリベトール酸」は、「2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸」と同義であるが、酸性カンナビノイドを含むはるかに広いクラスである「オリベトール酸誘導体」とは同義でない。
【0051】
「オリベトール酸誘導体」:本開示において、「オリベトール酸誘導体」は次の化合物であり、そして次の化合物のみである。
・上記に定義されている「修飾されたオリベトール酸」。
・「修飾されたオリベトール酸」、すなわち、2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸基を保持する化合物であって、一部の場合において、それらの分子構造中で、THCAとCBCAとにおけるように、エーテル結合を形成するためのOH[ヒドロキシル]結合の1つにおける水素の置換を伴うもの。これらは、フィトカンナビノイドと、ある特定の合成カンナビノイドとを含むが、合成カンナビノイドアジュレミン酸は含まれず、その理由は、アジュレミン酸中のカルボン酸基がアルキルレゾルシノール基に結合していないからである。
【0052】
特に、CBDA、TCHA、CBGA、CBNRA、CBNA、CBCA、および「V」または「varin」表記(プロピル側鎖)を伴うこれらの各々の他に、オリベトール酸と2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸とは、すべてオリベトール酸誘導体である。これは、医薬的に許容される塩(例えば、カルボキシレート)におけるように、カルボキシル基がプロトン化(カルボン酸)または脱プロトン化されているかのいずれにおいても該当する。本明細書において「オリベトレート誘導体」という用語は、塩または他のイオン性形態などにおける、カルボキシル基が脱プロトン化されているオリベトール酸誘導体を意味する。すなわち、オリベトレート誘導体は、対応するオリベトール酸誘導体の共役塩基である。
【0053】
常に特有の温度において参照される「半減期」は、インタクトな、変化していない活性剤の50%の保持としても表現される、活性剤の50%がその温度と湿度とにおいて分解物(本明細書のほとんどの実施形態において、脱カルボキシル化されたカンナビノイドまたはキノン分解物)に分解するために要する平均時間である。IUPAC定義は、これと合致しており、次のとおりである。所与の反応について反応物の半減期t1/2は、その濃度が、その初期値と最終(平衡)値との算術平均である値に達するために要する時間である。
【0054】
「貯蔵寿命」:先進国の規制機関は典型的にはリアルタイム安定性のためのFDAガイダンスに準拠しており、FDAガイダンスはある程度まで薬物製造物フォーマット(無菌対非無菌、封入されたバイアル、複数回使用対単回使用など)に依存するが、以下が典型的なものである。「標的安定性は、時点0の+/-10%以内であった最後から2番目の試験された時点である」。当業者は、これが有効な一般的経験則であることと、その10%損失点より長い貯蔵寿命を主張することとが規制上の観点から非常に問題である可能性が高いことを認識する。分解物が特に毒性である場合、許容される分解は、10%未満なことさえあり得る。複雑な放出機序を有する製剤のために、リアルタイムリリースはまた、貯蔵寿命の終わり(すなわち、有効期限の近くまたは有効期限)の試料について研究されるべきである。
【0055】
「物理吸着」:物理吸着のIUPAC定義は、次のとおりである。関与する力が、実在気体の不完全性と凝縮蒸気との原因となるものと同じ種類の分子間力(ファンデルワールス力)であり、ならびに関与する種の電子軌道パターンにおける有意な変化を伴わない吸着。
【0056】
「化学吸着」:化学吸着のIUPAC定義は、次のとおりである。表面上の単層中の吸着剤と吸着質との間の化学結合形成(強い相互作用)の結果としてもたらされる吸着。
【0057】
「LOQ」:高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の技術分野における当業者に公知の正確な意味での定量限界(Limit of Quantification)。
【0058】
「非共有結合性(の)」は、本発明の文脈において特有の意味を有して、長続きする共有結合ではない相互作用または結合(本明細書において、カンナビノイドと層状複水酸化物との間)であって、特に、周囲または周囲付近条件下で1時間より長く連続的に共有結合性に留まらないものを意味する。そのため、1時間より早い時間尺度において、共有結合性吸着と単純な物理吸着(これは共有結合性ではない)との間で「フリッカリング」する結合は、本発明の文脈において非共有結合である。溶媒または哺乳動物中の送達部位に曝露された場合、結合が最終的に壊れて、放出されるカンナビノイドはその天然状態にあり、そのため新たな化学的実体ではない。
【0059】
「流動性粉末」:定性的に、粉末は、生産において直面する条件のうち合理的に代表となる条件(温度および湿度)において、特有の機器またはパッケージング、すなわちカプセル充填機、ブレンダ、またはフィーダホッパなどにおいて十分な流れを示す場合にのみ本開示において「流動性粉末」である。USP 35 General Information / <1174> Powder Flowは、安息角(本質的に、流れが継続する傾斜の角度)を測定する標準化された手順を記載しており、定量的にこの特許開示において、安息角が45度未満、好ましくは35度未満である場合に、粉末は「流動性粉末」である。「流動性粉末」はまた、本明細書において「自由流動性粉末」とも呼ばれ得る。
【0060】
「持続放出」、「制御放出」、「延長放出」、「長期作用性」、「段階放出」、「修飾放出」、「長期化作用」、および「緩慢放出」:投薬形態は、同じ投与の経路においてその従来の、非持続性対応物で通常達成され得るよりも長い時間的期間にわたり連続的なおよび制御された速度で、投薬形態に含有される薬物を放出するように設計されている場合に「持続放出」である。
【0061】
「エアロゾル」:エアロゾルは、圧力下でパッケージ化された投薬形態であって、治療剤と、適切なバルブシステムの発動で放出される噴射剤と、を含有する。エアロゾルは、皮膚への外用適用の他に、鼻(鼻エアロゾル)、口(舌エアロゾル)、または肺(吸入エアロゾル)中への局所適用のために意図される。これらの製造物は、連続送達または計量用量送達のいずれかを可能にするバルブが装着されていてもよい。
【0062】
「フィルム」:フィルムは、口腔中に置かれる薄いシートである。それらは、1つ以上の層を含有する。層は、薬物物質を含有してもよく、または含有しなくてもよい。
【0063】
「ゲル」:ゲルは、小さい無機粒子の懸濁液または液体が浸透した有機分子のいずれかからなる半固体系である。
【0064】
「経皮」:経皮送達システムは、インタクトな皮膚に適用された場合に、皮膚を通じて全身循環へと活性剤を送達するように設計された自己完結型の投薬形態である。
【0065】
「極性溶媒」:極性溶媒は、一般に約40以上の誘電定数を有する、大きい部分電荷または双極子モーメントを有して、水と混和性である溶媒の種類である。原子間の結合は、非常に異なるが、測定可能な電気陰性度を有する。極性溶媒は、イオンと他の極性化合物とを溶解できる。毒性または反応性化合物を含まない極性溶媒は、水と、ホルムアミドと、N-メチルホルムアミドと、ジメチルホルムアミド(DMF)と、ジメチルスルホキシド(dimelthylsulfoxide:DMSO)と、N-メチルアセトアミドと、ジメチルアセトアミド(dimethyacetamide)と、N-メチルピロリドン(NMP)と、グリセロールと、炭酸プロピレンと、これらの混合物と、を含む。
【0066】
「アモルフルチン」:アモルファ・フルティコサ(Amorpha fruticosa)において見出されるイソプレノイドで置換された安息香酸誘導体のクラスのいずれか。2-ヒドロキシ-4-メトキシ-3-(3-メチル-2-ブテン-1-イル)-6-(2-フェニルエチル)-安息香酸であるアモルフルチンA(Amofrutin A)と、3-[(2E)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-イル]-2-ヒドロキシ-4-メトキシ-6-(2-フェニルエチル)-安息香酸であるアモルフルチンBとは、現行で文献における2つの最も頻出するアモルフルチンである。アモルフルチンは、本明細書におけるオリベトール酸誘導体の定義に入り、PPARγへの結合で強力な活性を有して、特にそれらの脱カルボキシル化されたアナログよりも高い効力を有することが公知である。
【0067】
本開示において、脱プロトン化された酸性カンナビノイドと、アモルフルチンと、他のオリベトール酸誘導体と、の様々な短縮された表記が交換可能に使用されて、ここでCBDAの場合が例示される。脱プロトン化されたCBDAのより長い名称はカンナビジオレート(陽イオン性対イオンが一般に存在することが留意される)であり、簡潔性のために本開示はこの陰イオンの表記として、CBDA-、CBDA1-,C1-(「C」が「カンナビノイド」もしくは他のオリベトール酸誘導体の短縮であるLDH化学記載において)を使用する。または一部の場合において、LDH-CBDAが使用されて、ここで明確にCBDAはほぼ完全に脱プロトン化された(陰イオン性の)形態で存在して、LDHは当然ながら正味で陽イオン性である。当業者は、これらが酸性化合物のいわゆる共役塩基を表すことを認識する。
【0068】
発明の詳細な説明
酸性カンナビノイドは、本開示において、a)2,4-ジヒドロキシ-6-アルキル安息香酸基と、b)オリベトレートのプレニル化に由来する、カンナビゲロール酸(CBGA)に関するカノニカルなカンナビノイド構造と、c)オリベトール酸の安息香酸骨格の4(パラ)位および特には2(オルト)位におけるOH置換に起因する脱カルボキシル化傾向と、の中心的な重要性のある3つの主な物理化学的特徴を有する。カンナビジオール酸(CBDA)は、マウスと臨床モデルとにおいて、マイクログラム/mL(mcg/mL)の用量での制吐および抗癲癇効果を含む、一部の適応症と状態とにおいて強力な治療効果を有することで公知である(例えば、国際公開第2017/025712号を参照)。最大900mgのCBD用量を利用して、本質的に効果なしと報告している、不安の急性治療におけるEpidiolex(登録商標)として公知の極めて高純度のCBD薬物製剤を使用した臨床試験の最近の失敗(NCT02902081を参照)は、Epidiolex(登録商標)の厳密な精製の間のはるかに強力なカンナビノイドの除去に起因すると本開示において考えられる。この精製は、CBDサプリメント市場において典型的なものをはるかに超えている。実際に、ヘンプ由来製造物の治療効果の多くはカンナビジオール(CBD)に起因するのではなく、むしろ、多くの場合に「不純物」とみなされているCBDAに起因しており、これらの効果は他のカンナビノイド、例えば、THC、CBD、またはテトラヒドロカンナビノール酸(THCA)の補助を必要とし得るが、CBDAは前述の適応症のためにこれらすべての中で最も強力であるというこの特許の教示と合致する。この結論は、したがってこの特許開示のまさに基礎のある程度において、高純度CBD製造物を主張するためにヘンプオイルからCBDAを除去および廃棄する無数の方法を開発してきた、「CBD」および「ヘンプオイル」産業において現在研究しているほぼすべての者にとって非常に驚くべきことと考えられる。例えば、米国特許出願公開第20180016216号を参照。
【0069】
細胞培養[例えば、米国特許第10,704,066号を参照]およびバイオリアクターベースの方法などの技術によるカンナビノイドの製造におけるフィードストックのために潜在的な重要性をそれ自体有するオリベトール酸は、2位と4位とにヒドロキシル(OH)基を有して、ベータ-レゾルシル酸の3位アルキル化誘導体として見られてもよい。ベータ-レゾルシル酸は、サリチル酸と共通して、周囲温度で週(weeks)の時間尺度にわたって脱カルボキシル化する傾向を有しており、微量の酸または重金属(特に銅イオン)はこの速度を劇的に増加させ得る。カナビス植物が多くの重金属について非常に強い蓄積性であり、カナビス抽出物が少なくとも少量のギ酸を一般に含有するという事実は、この問題を増幅する。容易に利用可能なカルボキシル基でのサリチル酸のメチル化は、安定性を大きく増大させる。同様に、メチルカンナビジオレートを形成させるためのカンナビジオール酸のメチル化が、米国特許出願公開第20190091144号において教示されている。しかしながら、本質的にあらゆる観点から、これは、無数の点、すなわち、天然産物(本開示において植物性化学物質)ではなく、異なる薬物動態および恐らくは薬力学も有して、FDAにより既に薬物と考えられていて、血液脳関門に影響するという点において、CBDAとは異なる新たな化合物を作り出す。
【0070】
Epidiolex(登録商標)がFDAにより薬物として認識された場合に、現行の法律は、活性化合物(明確にはCBD、上記を参照)がOTCサプリメントとしてもはや利用可能であるべきでないことを規定する。これを記載している時点において、CBDAはFDAにより薬物として認識されていない。したがって、実質的にCBDを含まない、およびCBDAの共有結合性修飾を含まない、CBDAの安定的で安全な製剤が非常に望まれている。
【0071】
本明細書において検討されている酸性カンナビノイドであるCBDAとTHCAとの加速熱安定性研究は、これらの2つの化合物の半減期が40℃で約4週および30℃で約12週に過ぎず、これはニート物質の他に、ヘンプオイル自体を含む多くの溶液について当てはまることで実質的に合致している。これは、コールドチェーンが強制されなければ、任意の現行の製剤中のこれらの化合物の半減期が、信頼性をもって約4か月より長くはなり得ないことを意味する。さらに、医薬品またはより厳しく規制された応用のために、制御されなければならないものは半減期(50%の分解)ではなく、むしろ10%分解点であり、コールドチェーンなしでこれは、CBDAまたはTHCAの任意の先行技術製剤を用いて、1か月よりはるかに長きにわたり信頼性をもって維持され得ないであろう。そしてこれは、例えば、鋼との短い接触であってもこれらの化合物を急速に脱カルボキシル化し得ることが公知である、カンナビノイド抽出および製剤の調製の間にこれらの化合物について不可避的に起こる脱カルボキシル化の考慮さえしていない。
【0072】
主要な安定性問題および制限に加えて、酸性カンナビノイドはまた、悪名高く粘着性の材料であり、典型的には水中で極めて低い溶解度を有しており、これらの化合物の製剤化および投与において問題を引き起こす問題となり、特に酸性カンナビノイドのカルボキシル基は粘着性に強く寄与し得る。これは、緩慢放出を欠いた単純な経口製剤中のカンナビノイドの低いバイオアベイラビリティによりさらに複雑化されて、加熱に伴う不安定性は、喫煙およびベイピングなどの一般的な「送達」方法を制限するか、または不可能にする。酸性カンナビノイドのニートな製剤または溶液製剤と関連付けられる不快な感覚刺激性および安全性の問題としては、不快な味と、口中で「辛い」感覚を作り出すTRPV1活性化と、不快な匂いと、カナビス植物と同植物中のカルボキシル化された化合物との過剰蓄積性に起因する重金属による夾雑の傾向と、が挙げられる。カンナビノイドを可溶化するために最も一般的に使用される担体液体、すなわち中鎖トリグリセリド(MCT油)および関連する油はそれら自体、周囲温度での経時的な酸化および脱エステル化またはトランスエステル化(例えば、トリグリセリドのアシル鎖の、酸性カンナビノイドによる置換)などの不安定性を被る。また、MCT油の1つ以上のアシル鎖の脱エステル化からの遊離脂肪酸の生成は、経時的にpHを低下させて、したがって本発明の酸不安定カンナビノイドの安定性を直接的に低減させる。
【0073】
本発明は、酸性カンナビノイドのいくつかの固有の不安定性と、製剤化困難性と、不快な感覚刺激特性と、を克服できる。驚くべきことに、MII
1-xMIII
x(OH)2(C1-)x・mH2O(式中、MIIはMg2+と、Co2+と、Ni2+と、Cu2+と、Zn2+と、Ca2+と、からなる群から選択されて、MIIIは、Al3+と、Fe3+と、Cr3+と、Ga3+と、Bi3+と、からなる群から選択されて、C1-は脱プロトン化された酸性カンナビノイドであり、xは好ましくは0.25から0.33までの範囲内であり、mは約0.5未満である)により与えられる一般式を有するインターカレートされた陰イオン性クレイまたはクレイ様材料を含む、ある特定の組成物は、脱カルボキシル化と他の分解反応とに対する強く増強された安定性と、インターカレートの乾燥粉末フォーマットに起因する製剤化および送達の容易性と、ほとんどでないにしても、多くのカンナビノイドと関連付けられることが公知の不快な味および匂いの縮小と、を呈することを本発明者は見出した。
【0074】
本発明のLDHにより提供される保護マトリックスは、一部の実施形態において、酸性カンナビノイドに伴う感覚刺激性の問題(不良な味、不良な匂い、粘着性など)の有意な低減の他に、調整可能な放出特徴を与え得るが、脱カルボキシル化の問題における付随する改善を必ずしも伴わないことが留意されるべきである。理論により縛られることを望まないが、脱カルボキシル化に対する安定性における有意な改善は、追加の特徴、すなわちカンナビノイドとLDHとの間の好都合な結合の種類およびエネルギーを必要として、これは以下においてより詳細に議論されており、結合の種類およびエネルギーを測定および推定する方法もまた提供されている。
【0075】
材料および方法
本発明のインターカレートされた材料は、いくつかの単純で安価な経路を介して製造可能であり、その1つ(「共沈殿」法)は、以下の実施例1において明示的に報告されている。別の経路において、ヒドロタルサイトは、例えば、450℃のマッフル炉中での数時間の加熱により、最初にか焼される。この二重のオキシヒドロキシ(通常は「混合された酸化物」と呼ばれる)は、「記憶効果」(memory effect)として公知のものを通じて、元々のLDH構造を再生させる能力を有する。すなわち、か焼の間に作り出される混合された酸化物は、元々のヒドロタルサイトの十分な構造的態様を保持するようであり、正しい条件が与えられれば元々のヒドロタルサイトを再生させる傾向がある。この反応は、本発明においてオリベトレート誘導体の存在下で、周囲温度またはその付近において行われる(すなわち、脱カルボキシル化を引き起こし得る高温を必要としない)。これは典型的には水性媒体中で行われるが、カンナビノイドの極めて低い水溶解度と極性溶媒の意図しないインターカレーションとにより引き起こされる問題は、このアプローチを困難なものにする。か焼されたヒドロタルサイトは市販されており、か焼の工程を省いて、コストを潜在的に低減させる。
【0076】
使用されるヒドロタルサイトの元々の部分が、ある量(Xモルとする)のインターカレートされた酢酸イオンを含有する場合、好ましくは、Xモルよりもわずかに過剰な陰イオン性界面活性剤(もしくはより一般的にはトータルで陰イオン性の基、界面活性剤は多価であり得るため)が使用されるべきであり、またはオリベトレート誘導体が界面活性剤の以前のインターカレーションなしにインターカレートされる場合、過剰な誘導体もまた好都合である。当然、質量作用の法則は、混合された酸化物と界面活性剤との間の平衡の他に、界面活性剤の陰イオンと、特にカーボネートなどの、存在する他の陰イオンと、の間の競合を支配するため、所望される陰イオンの濃度が相対的に高いことがほとんどの場合において好ましい。化学量論量の混合された酸化物を用いた、濃縮された系、例えば、水中の10%の界面活性剤を使用する学術研究において、反応は通常少なくとも8時間行われるが、産業製造のための条件が一旦最適化されれば、はるかに短い持続期間が可能である。製造物がインサイチュで生産される場合(次に議論される)を除いて、反応工程における有機陰イオン(界面活性剤またはオリベトレート誘導体)濃度は、少なくとも0.1%、より好ましくは1%以上であることが好ましい。
【0077】
より直接的で潜在的により安価な、有機物をインターカレートされたLDHを調製する方法は、文献に記載されており、本発明の高感受性オリベトレート誘導体に対して本開示において適合される。Jobbagy and Regazzoni(2004)における共沈殿と、Iyi et al.(2009)における均質沈殿方法とは、本発明の実施において好ましい方法である。以下の実施例セクションは、容易に拡張可能で単純な共沈殿製造方法を記載する。亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、または他の二価金属イオンもしくは三価金属イオンの水溶性塩が脱炭酸塩水に溶解されて、硝酸イオンは有機イオン、例えば、カンナビジオレートイオン(CBDA1-)により相対的に容易に置換されるため、硝酸塩が特に好都合である。本発明において、オリベトレート部分の酸触媒された脱カルボキシル化を回避するために、この溶液のpHを中性近くまで上昇させることが必要であり得る。次いで、激しい撹拌、最小の(またはそらした)照明、不活性気体の下で、洗浄を含むすべての工程において脱炭酸水を使用して、溶解したCBDA(または他のオリベトール酸誘導体)を含有する溶媒は、7より高い、好ましくは約8と11との間、より好ましくは約8.5と10.5との間のpHを維持するために、金属硝酸塩溶液および強塩基、通常は脱炭酸水中のNaOHの添加に交互に曝露される。インターカレートされたLDHのほとんどの報告された共沈殿調製物は、水中で可溶性(塩形態として)である有機陰イオンをインターカレートすることに集中していたことが留意される。本発明において、関心対象のオリベトレート誘導体のほとんどは、水中で非常に低い溶解度を有しており、これは一般に1ミリグラム/ミリリットルよりはるかに低く、CBDAについて概算される3マイクログラム/リットルもの低さである。そのような低い溶解度は、有機溶媒が用いられない場合、有効量の活性剤を可溶化するために莫大な体積の水が必要となることを意味しており、これは生産を複雑化して、反応速度を大きく緩慢化させて、水中の炭酸塩の制御を必要とする。
【0078】
本発明において、これらの障害とその他とは、2相系を使用することにより回避されて、同2相系において、金属塩は当然ながら水性溶液を介して、またはグリセロールなどの極性(共)溶媒を使用して導入されて、オリベトール酸誘導体は、非極性溶媒または溶媒混合物を介して導入される。したがって、反応物と、インターカレートする化合物と、の間の十分な接触を得るために、強い混合が必要となる。別の可能なアプローチは、オリベトレートのための水混和性溶媒を使用することであるが、金属塩と陰イオン性カンナビノイドとを同時に可溶化できるように機能可能な1相溶媒混合物を見出すことが困難であり得て、その理由は特に、一部の目立つ極性または両親媒性溶媒、例えば、ホルムアミドが、LDH中にインターカレートすることが公知であるからである。多くの極性溶媒は、サリチル酸などのベータ-ヒドロキシ安息香酸誘導体の分解を加速させ得ることもまた公知である。そのような溶媒は、アルコール(特にはグリコール)、ピリジン、ニトロベンゼンなどを含む。また、界面活性剤の使用は一般に問題であり、その理由は、a)多くの界面活性剤は、インターカレーションのために陰イオン性カンナビノイドと競合することがあり、b)そのような反応混合物から本発明を抽出するその後のワークアップは、永続性のあるエマルションの形成に起因して界面活性剤により複雑化され得るからである。反応期間後に、溶媒を除去するため、ならびに(脱炭酸)水と(散布される)溶媒との両方でのインターカレートされたLDH材料の洗浄を補助するために、穏やかな遠心分離および/または濾過が次に使用されるが、除去されない陰イオン、例えば、金属硝酸塩が使用される場合の硝酸イオンは、所望される陰イオンと交換して、カンナビノイドをLDHから追い出すことが可能であり、非極性溶媒が残存する場合にそれを可溶化することさえあり得るため、反応後の洗浄は不可欠な工程であることが強調されなければならない。凍結乾燥(フリーズドライ)は、水を除去するための別の手段を提供するが、当然ながら硝酸ナトリウムなどの水溶性物質が残り、再び潜在的な問題を課す。直前に記載されたとおりに、および以下において実証されるように、反応が実行されて、インターカレートされたLDHが適正に洗浄される場合、本発明のカンナビジオレート(CBDA1-)などの非揮発性有機陰イオンは、LDH中に有効に封入される。
【0079】
例えば、前述の2相方法において、カンナビノイドを可溶化するために使用される液体は、好ましくは、中鎖トリグリセリド(MCT)または他のココナッツ油抽出物と、アニソールと、ピネンと、ジブチルエーテルと、キシレンと、アリルベンゼンと、トリクロロエチレン(安定化されたもの)と、これらの混合物と、からなる群から選択される。好ましくは、溶媒または溶媒ミックスの誘電定数は、4に近く、最も好ましくは2.5から4.5までの範囲内である。
【0080】
空気中または製剤中の二酸化炭素への曝露は、LDH粒子の内部から表面へと所望される有機陰イオンを移動させる可能性があり、同表面において、同陰イオンは、脱カルボキシル化と酸化とから同様に保護され得ない。幸運なことに、水中でのカンナビノイドの超低溶解性は、界面活性剤または可溶化性の液体の非存在下で、酸性カンナビノイドがLDHよりも好都合な環境を与える移動場所を有さず、また自明な(non-trivial)速度で蒸発するにはあまりに低すぎる蒸気圧を有する(例えば、周囲温度における、CBDの蒸気圧は3×10-6Paと概算される)ことを意味する。実験的に、これは本研究において見られて、本研究において、シクロヘキサン洗浄液の遠心分離工程中に温度が上昇した場合(その冷蔵における遠心分離機の機能不良に起因する)にCBDAは分解することが見出されたが、溶媒が依然として存在したため(シクロヘキサン)、形成されたLDHは、脱インターカレーション、続いて分解からCBDAを十分に保護し得なかったが、最終の洗浄および乾燥されたインターカレートの類似した温度への曝露は、はるかに長い時間的期間(日対分)にかけてごくわずかな分解を誘導した。そのため、製造の観点から、カンナビノイドのための任意の有機溶媒が除去されるまでは、カンナビノイドは「安全」でないと念頭に置かれなければならない。同様に、LDHを出て、例えば、溶媒または界面活性剤に富んだ水性媒体に入る短い移動であっても、酸素が存在する場合に(例えば、溶解した空気、同伴した空気など)、カンナビノイドの急速な酸化を結果としてもたらし得て、インターカレートされたカンナビノイドの酸化は、強い酸化剤の存在下であっても強く遅延されることが以下の実施例5に示されている(週対秒)。CO2および/または酸素が乾燥インターカレート粉末についてさえ分解(非常に遅い分解であるが)を誘導する可能性に起因して、医薬品応用のために、インターカレートされたLDHまたはその製剤は、気密な容器中にパッケージ化されること、好ましくは不活性気体で充填されることが推奨される。
【0081】
粒子の外側表面からの活性剤(酸性カンナビノイド)の実質的な除去は、表面に吸着した活性剤を移動させ得るが、LDHに有意に入るためには大きすぎる高分子量の陰イオンの使用を通じて可能であり得る。そのような陰イオンの1つの例は、ポリアクリレート(すなわち、脱プロトン化された形態、もしくは塩の形態のポリアクリル酸)、またはより好ましくは、中性単量体とのポリアクリレートのコポリマ(例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート)である。したがって、コーティングを伴う一部の応用において、単一の工程において、活性剤の表面除去と生体接着性ポリマでの粒子コーティングとの両方をもたらすことが可能であり得る。
【0082】
生産の状況において、粒子サイズ制御は、相対的な利点および欠点と共にいくつかの方法により得られ得る。一部の方法において、インターカレートされたLDHの相対的に大きい(超ミクロン(supermicron))粒子凝集物が合成されて、これらは次いで、分散ベースの方法、例えば、マイクロ流動化(microfluidization)(高速度均質化)、超音波処理、またはXu et al. [J. Phys. Chem. B (2006) 110:16923]により記載される熱水処理のいずれかにより、段々と微細な粒子に破壊される。Xuの熱水方法において、迅速な核生成条件下で作り出されて、そのため小さい一次結晶子サイズを有する、凝集したLDHは先ず、未反応成分を除去するために水で洗浄されて、洗浄された粉末は次いで2時間から4時間の加熱により水中に分散される。これより短い時間は不十分であり、4時間より長い時間は粒子サイズにおける段階的な増加を結果としてもたらす。機序は、一次結晶子を架橋する非晶性領域の除去であると考えられて、その後にサブミクロン粒子は、例えば、正のゼータ電位により、分散体中で安定化され得る。Xuの刊行物において、相間陰イオンは、本発明の実施形態におけるものとは異なる種類であり、陰イオン性界面活性剤またはオリベトレート誘導体ではなく、低MW陰イオン基、例えば、ニトレート、カーボネート、クロリド、アセテートなどであった。
【0083】
製造手段に戻ると、インターカレーション工程からの未加工分散体はまた、粉末粉砕方法を使用して微粒子化され得る。ナノ結晶サイズ(約400nm未満)への粉砕は、現在ではよく開発された技術であり、そのため、有機媒体を含む様々な粉砕媒体(研磨材粒子)が利用可能である。本発明者は、数ミクロンより大きい粒子サイズが致命的でないにしても許容できない静脈内注射において許容されるナトリウムダントロレンのFDA承認済みのナノ結晶製剤を作り出すために、そのような粉砕方法を記載および使用した。米国特許第7,758,890号とその系列のその他とを参照する。
【0084】
合成経路に関するバリエーションは、ますます利用可能となっており、例えば、Iyi et al. [J. Coll. Int. Sci. (2009) 340:67]の2009年の方法がある。その方法において、界面活性剤をインターカレートされたLDHの合成は単一の工程において進行して、ヘキサメチレントリアミンなどのアンモニア放出試薬が必要となる。
【0085】
水は、界面活性剤をインターカレートされたLDH分散体の連続相、または「担体」のための唯一の選択肢ではない。半透明のものを含む、インターカレートされたLDH粒子の分散体は、有機溶媒を使用して容易に得られる。インターカレートのための他のマトリックスは、本明細書の他の箇所において議論されている。
【0086】
粒子を固体または固体様マトリックス、例えば、ポリマ(好ましくは、水または体液、例えば、胃酸または唾液中に容易に可溶性のもの)中に包埋することは、製造物の容易性または輸送のため、超微細粉末と関連付けられる損失と健康的危険性とを最小化する一方で、固体または粗い粉末としての使用を許容するため、ならびに安定性と、所望される生体接着特徴と、所望される放出特徴と、を提供するLDH粒子のための保護マトリックスを提供するために有益であり得る。特に、低い酸素透過性、好ましくは10-15cm3(STP)cm/(cm2秒Pa)未満の酸素透過性を有する材料中に粒子を包埋することは、キノンと、CBNと、他の酸化分解物と、への酸性カンナビノイドの酸化を予防できる。粉末化された添加剤をポリマ中に包埋する当技術分野において周知の方法は、乾燥した粉末に応用され得る。代替的に、高価な乾燥工程を必要とすることなく、単量体、架橋剤、および/または機能化された(一般に架橋可能な)ポリマは、粒子の分散体に加えられて、その後に架橋されて、インターカレートされたLDH粒子が包埋されたハイドロゲルまたはオルガノゲルを形成し得る。架橋間の平均距離が平均粒子サイズよりも小さいような、十分に高い架橋密度の場合、粒子はゲル中に固定化される。拡散を介するゲルからの粒子放出を可能とするために、より低い架橋密度が使用され得るが、ローディングが高すぎるような場合にゲルは物理的完全性を喪失する傾向がある。LDH粒子を包埋するために有用であり得る、低環境負荷で、費用効果の高い水溶性ポリマは、アクリレート、アクリルアミド、PVP、ポリエチレングリコール(約800より高いMW)などの合成ポリマと、アカシア、ガムトラガカント、キサンタン、カラヤ、およびアカシア/トラガカント混合物などのこれらの組合せなどの天然ポリマと、の両方を含む。ある特定のそのようなガムは、例えば、頬側送達のために頬側組織への、生体接着を提供し得て、多くの適応症(例えば、癲癇)におけるCBDAの高い効力は、組織中への長期持続性の放出が、粘着剤でコーティングされたインターカレート製剤の薄層(1mm未満、または好ましくは約200ミクロン未満の厚さ)のみを必要とし得ることを意味する。PLAおよびPLGAなどの加水分解性ポリマは、薬物送達において極めて普及しているが、それらが(所望される)生分解を受けた場合に酸性条件を作り出すことが公知であり、そのためその中の活性剤の酸不安定な性質に起因して、本発明において望ましくない。マトリックスは必ずしもポリマである必要はなく、単塩などの単純な結晶性材料と、糖/サッカリドなどの有機固体と、有機化合物の二価塩(例えば、N-アセチルトリプトファン亜鉛、例えば、米国特許第6,981,995号を参照、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる)とは、また、1つ以上の体液(胃酸、唾液、血液、リンパ液)との接触がマトリックスを溶解または分解して、包埋されたLDH粒子を放出するまで、LDH粒子を一緒に結合させるために使用され得る。
【0087】
腸溶性コーティングは、本発明の粒子に応用されて、腸送達と関連付けられる利点を生み出し得る。例えば、Eudragit(登録商標)S 100は、本発明の粒子またはフィルムをコーティングまたは被包するために使用され得る。腸溶性コーティングは、好ましくは、Eudragit(商標)と、酢酸フタル酸セルロースと、酢酸コハク酸セルロースと、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースと、ヒプロメロースアセテートサクシネートと、ポリ酢酸フタル酸ビニルと、シェラックと、酢酸トリメリット酸セルロースと、ゼインと、これらの混合物またはコポリマと、からなる群から選択されるコーティングを含む。
【0088】
コーティングが適用されない場合、酸性カンナビノイドと、鋼を含むある特定の金属と、の間の接触は、脱カルボキシル化速度を強く増加させ得ることが示されているため、本発明の実施形態のパッケージ化において注意されなければならない。これは、反応の金属触媒作用に起因するようである。そのため、LDH中のインターカレーションが鋼または他の触媒性金属とのCBDAの直接的な接触からのある程度の保護を提供するが、金属表面または粒子状物質の存在下には依然として危険がある場合がある。その理由は、任意の所与の瞬間において有意な割合のCBDAがLDH粒子の表面にある場合があり、これは粒子サイズが低減される場合に特に該当するからである。本発明の製剤と接触する任意のパッケージング材料の内側表面は、金属を含むべきではない。追加的に、調製のためのガラス製品の使用は、金属成分の使用よりも好ましい。
【0089】
脱カルボキシル化に加えて、THCAはまた、CBDAよりもはるかに容易に(CBNAまたはCBNへの)酸化を受けるため、LDHインターカレーションを使用するTHCAの製剤化は、CBDAの場合におけるよりも厳格な不活性気体による空気の排除を必要とし得ることが留意されるべきである。しかしながら、本明細書において報告される製剤化方法は、酸化速度が低い周囲温度またはその付近で行われ得るため、これは、困難な工学課題でない可能性が高い。
【0090】
本明細書に示されるように、CBDA安定性は、以下の実施例1において製造された亜鉛-アルミニウムLDH中のインターカレーションを通じて10倍を上回って改善される。CBDAとTHCAとの脱カルボキシル化率は類似しているため(大まかに2以内の係数)、類似した亜鉛-アルミニウムLDHもまたTHCAを安定化させ得る。また、実施例4に記載される迅速なFTIR方法、および/または実施例5における迅速で容易な比色分析試験を使用して、当業者は、以下の方法またはそのバリエーションを使用することにより、他のカンナビノイドのための本発明の機能的なインターカレートを見出し得る。
・工程1.実施例1において使用される同じ方法とパラメータとを使用して、特に、実施例1において与えられるモル比において、二価陽イオンとしてのZn+2と、三価陽イオンとしてのAl3+と、を使用する。
・工程2.それぞれ実施例4と実施例5とに記載されているFTIRおよび/または比色分析を使用して、カンナビノイドの単座ボーダーライン化学吸着(FTIRを用いる)、ならびに/またはFast Blue BBと塩化第二鉄試験とに対する強く遅延された応答の証拠を調べる。
・工程3.工程2が(そのレベルにおいて)成功を指し示す場合、熱ストレス負荷、続いて分解の特徴付け(FTIR、NMR、HPLCなど)、または場合により本格的なArrhenius研究に進む。
・工程4.失敗の場合、最適なインターカレートが特定の応用のために見出されるまで、二価陽イオンおよび/または三価陽イオンの異なる選択を使用して工程1から工程3を繰り返す。
【0091】
ほとんどの応用において、相対的な毒性の他に、イオン硬度は、一般に最終の陽イオンの選択において重要な要因である。本発明において好ましい二価陽イオンは、イオンの「硬度」の減少の順に列記されるZn2+と、Ca2+と、Mg2+とであり、一般的に述べると、より硬いイオンは、より軟らかいイオンを含む同じLDHよりも、より低い水溶解度と、インターカレートの使用のための周囲条件付近において重要性はより低いが、(熱および/または酸性での)より高いLDH安定性と、をもたらす。本発明における好ましい三価陽イオンは、Al3+であり、より低い好ましさにおいてBi3+である。他の選択は、強い酸化剤(例えば、Cu2+およびFe3+)であるか、またはオリベトール酸誘導体および類縁体と強い共有結合、例えば、次サリチル酸ビスマス中の結合を容易に形成するため、一般により低い望ましさであるが、前述のとおり、新たな化学的実体を作り出すため、カンナビノイドとの純粋な共有結合は回避されるべきである。好ましい三価陽イオンとしてのAl3+の限定の下での作業は、三価イオンを制御する硬質と軟質との微調整が限定され得ることを意味する。しかしながら、LDH内の他の結合と構造とは、LDHと、インターカレートされる陰イオンと、の間の結合を天然にモジュレートして、実際にZn2+からMg2+への切換えは、金属-CBDA結合の強さ、および場合により結合の種類にさえも強く影響することが本研究において見られて、FTIRにより分析された1つのMg-Al LDH試料は、単座ではなく二座、および以下に議論されるデルタ値により指し示されるようにCBDAへのかなりより弱い結合の証拠を示した。
【0092】
追加的に、2つ以上の二価イオンの混合物は、結合強度を調整する試みで使用されてもよい。例えば、単独の二価金属イオンとしてのZn2+が高すぎる結合強度(LDHからの放出を困難にして遅くする)を生成する一方、Mg2+が低すぎる結合強度(そのため脱カルボキシル化から酸性カンナビノイドの保護に失敗した)を生成することが見出される場合、Zn2+とMg2+との混合物は両方の問題を解決し得る。その推論は、最終のLDHにおいて、任意の所与の(現時点で単一に荷電した)アルミニウム部位における電場が、単一の(以前に二価の)MII原子だけでなく、アルミニウム結合/吸着部位の周囲の複数の亜鉛および/またはマグネシウム原子により影響されて、すなわち、2つの別個の部位の集団を作り出すこととは対照的に、カンナビノイドの結合/吸着に対するそれらの効果が「ブレンド」されるということである。
【0093】
リアルタイムリリース試験(RTRT)は、本発明を含む製剤に対して行われるべきであり、ここで水中でのカンナビノイドの極めて低い溶解度が念頭に置かれなければならず、その結果、単純なパドル-ホイール装置がリザーバとして水で満たされる。むしろ、レシーブ媒体は、界面活性剤、脂質(例えば、リポソーム、もしくはMCT油などの乳化された脂質)、または有機(共)溶媒のいずれかを含有しなければならない。代替的に、哺乳動物組織、特には身体中の標的吸収部位の代表となる組織は、受取環境、例えば(無毛マウス、またはその他からの)皮膚の基礎であり得る。好ましくは、満了付近(すなわち、貯蔵寿命の終わりまたはその付近)における放出速度は、初期時点における活性剤放出速度の15%以内、またはより好ましくは10%以内であり、一部の場合において、これは規制機関により要求され得る。
【0094】
追加の賦形剤および製剤。本発明のある特定の実施形態は、医薬組成物としての送達(投与)のために好適であり、医薬品製造および品質制御などの厳密な基準に適合している。さらに、店頭(OTC)販売および使用のために意図される実施形態さえも、特定の重要性を持つ少なくとも一部の医薬品基準に準拠すること、例えば、同じまたは類似した投与の経路を有する少なくとも1つの医薬品製造物における使用の歴史を有する賦形剤に準拠することにより、有意に利益をもたらし得る。そのような組成物は、少なくとも1つのLDH-インターカレートされたオリベトール酸誘導体、すなわち、異なる活性剤のために異なるLDH組成を必要とし得る、またはそうでなくてもよい、活性剤(または活性のモジュレーター)としての異なるオリベトール酸誘導体の1つまたは1つより多く(複数、例えば、2つもしくはより多く、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10もしくはより多く、または抽出物の酸性画分)を一般に含む。よって、本発明は、そのような製剤/組成物を包含する。これらの組成物は、本明細書に記載されている1つ以上の賦形剤(不活性添加剤)と、一部の場合において、薬理学的に好適な(生理学的に適合性の)担体と、を含み得る。次の議論の目的のために、本発明の実施形態において、コーティング、マトリックス、および液体担体として使用される賦形剤を大まかに区分することが最良である。
【0095】
層状複水酸化物から出る活性剤(オリベトール酸誘導体)の分子の移動は、当然ながら、哺乳動物による使用の時点におけるその活性剤分子のインビボ放出のために必要である。しかしながら、投与の前(すなわち、貯蔵寿命の間)の日(days)および(より現実的に)週(weeks)の間同じ層状複水酸化物から出る同じ活性剤分子の時期尚早の放出は、強く回避されるべきである。その単純な理由は、時期尚早に放出された活性剤は、その分子が保護LDHの外側に位置する場合には常に、投与前に週にわたって分解し得るからである。さらに、異なる活性剤をインターカレートするために異なるLDH組成が使用される場合、1つのLDH粒子を出て異なる組成の別のLDH粒子に入る移動は、活性剤が「新たな」粒子中で同様に安定でない可能性があるため、有害効果を有し得る。
【0096】
これを念頭に置いて、ならびにコーティングと、マトリックスと、液体担体と、に使用される賦形剤の有用な区分に戻って、製剤の3つの一般的なクラスが本発明のために同定され得る。
・コーティングされていないLDH粒子。これは任意選択的に、活性剤の可溶化を可能とする液体を実質的に含まない液体またはゲル中に分散されており、その結果、LDH粒子の外側の任意の位置において活性剤の溶解度は約100マイクログラム/mL未満、好ましくは約10マイクログラム/mL未満である。そのため、ある特定の液体担体(主に水性溶液)と、ある特定のマトリックス(例えば、ハイドロゲル)とは許容されるが、いずれも、約0.1%より多くの、例えば、液体モノ-グリセリド、ジ-グリセリド、もしくはトリ-グリセリド、脂肪族アルコール、または水溶性界面活性剤を含有するべきではない。
・固体もしくは半固体分散体中の、または固体担体に吸着された、コーティングされていないLDH粒子。
・固体でコーティングされたLDH粒子であって、コーティング材料中の活性剤の溶解度が、意図される貯蔵温度において貯蔵寿命の間に約100マイクログラム/mL未満、好ましくは約10マイクログラム/mL未満であるもの。前記固体でコーティングされたLDH粒子は、任意選択的に、液体、半固体、もしくは固体中に分散されているか、または固体担体に吸着している。
【0097】
そのため最後の分類である固体でコーティングされたインターカレートされたLDH粒子は、非常に広範囲の担体とマトリックスとの使用を許容するが、投与で剥がれる粒子コーティングを必要とするか、または代替的に、固体コーティングの少なくとも有意な部分を剥がして、それにより活性剤の放出を可能とする第2組成物と投与の直前に合わせられて、第2組成物もまた活性剤のための溶媒であることが許容される。後者の例として、固体コーティングはトリラウリンであり得て、第2組成物はトリオレイン(CBDAおよび他のカンナビノイドのための溶媒)であり得る。クロロブタノールなどの、2と6との間、より好ましくは4と8のとの間の鎖長を有するアルコールは特に有用であり得て、その理由は、コーティングを可溶化することに加えて、これらのアルコールは層状複水酸化物を層状に剥離できるからである。いずれのコーティングが使用されてもそのために非溶媒であるように選択される、固体でコーティングされたLDH粒子のための(少なくとも一部の投与の経路のための)医薬的に許容される担体として役立ち得る材料の一部の例は、アルミナ(吸着基質タイプの担体として)、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)、緩衝物質(例えば、Tween(商標) 80、ホスフェート、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム)、飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、または亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマ、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、羊毛脂、糖、例えば、ラクトース、グルコース、およびスクロース;デンプン、例えば、コーンスターチおよびジャガイモデンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロース;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えば、ココアバターおよび坐剤ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;コーン油およびダイズ油;グリコール;例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝化剤、例えば、水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;パイロジェン非含有水;等張食塩水;リンゲル溶液;エチルアルコール、ならびにリン酸緩衝溶液を含むが、これらに限定されない。他の非毒性の適合性滑沢剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムの他に、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤および芳香剤、防腐剤および抗酸化剤もまた、製剤者の判断にしたがって、第3(「固体でコーティングされたインターカレート」)分類の組成物中に存在し得る。一部の態様において、固体でコーティングされたLDHインターカレート粒子は計量された投薬のために好適な方式において分注可能なエアロゾル化された形態において製剤化されて、担体は空気である。
【0098】
コーティングされていないLDH粒子が固体もしくは半固体分散体中に包埋されているか、または固体担体に吸着されている第2分類において、インターカレートされたLDH(特に超微細なインターカレートされたLDH粒子)と、活性剤のための溶媒である液体または半固体と、の間の直接的な接触がないことを確実にするように注意が必要である。これは、先行する段落からの以下の賦形剤がこのアプローチにおいて、インターカレートされたLDHのコーティングされていない粒子と実質的に接触するべきでないことを意味する。ペパーミント油;ココアバターおよび坐剤ワックス;油、例えば、ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、ダイズ油、ココナッツ油、およびMCT油;プロピレングリコール;エステル、例えば、オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;ラウリル硫酸ナトリウム;飽和植物性脂肪酸の部分的グリセリド混合物、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマ、ならびに羊毛脂。追加的に、任意の実際的な定義により、固体と半固体分散体とは、活性剤のための溶媒であるか否かにかかわらず、任意の液体を実質的に含むべきではないことを当業者は認識しており、これはこの第2分類におけるリストをさらに低減させる。
【0099】
一部の態様において、そのような組成物は、液体溶液もしくは懸濁液として、または固体投薬形態、例えば、錠剤、丸剤、および粉末などとして調製される。投与前の液体中への溶解、または懸濁のために好適な固体形態もまた想定される。好適な賦形剤は、例えば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、およびエタノールなど、またはこれらの組合せを含む。追加的に、組成物は、湿潤または乳化剤などの微量の助剤物質、pH緩衝化剤、および防腐剤などを含有してもよい。経口形態の組成物を投与することが所望される場合、様々な増稠剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤などが加えられる。本発明の組成物は、投与に好適な形態の組成物を提供するように任意のそのような追加の成分を含有してもよい。
【0100】
計量された投薬のための装置と方法(例えば、計量用量吸入器)とは当技術分野において公知であり、例えば、発行された米国特許第11,109,622号と、第7,143,765号と、第5,575,280号と、第5,332,378号(これらの各々の全内容は参照により全体として本明細書に組み込まれる)と、において記載されている。一部のMDIにおいて、単純に空気の代わりに、フルオロカーボンなどの噴射剤が使用される。
【0101】
医薬組成物は、接種または注射(例えば、腹腔内、筋肉内、皮下、耳内、関節内、および乳腺内など)と、外用適用(例えば、皮膚、耳、または傷害(例えば、創傷および熱傷)などの区画の上または中へのクリーム、洗浄剤またはローションの外用適用)と、上皮または粘膜皮膚内壁を通じた吸収(例えば、頬側、経鼻、経口、経膣、直腸、および胃腸粘膜など)によるものと、を含むがこれらに限定されない任意の好適な経路によりインビボで投与されてもよい。他の好適な手段としては、吸入(例えば、計量された投薬のためのエアロゾル化された分注可能なミストまたはスプレーとして)、経口的または頬側(例えば、丸剤、錠剤、カプセル、液体などとして)、膣内、鼻腔内、直腸内(例えば、坐剤を介して)、ドレッシング、包帯、または衣類に組み込まれたもの(例えば、固体形態はドレッシング中に直接的に含まれてもよく、製剤を含浸させた糸または紡績糸が衣服を生産するために使用されてもよい)などが挙げられるが、これらに限定されない。製剤は、緩慢または延長放出製剤でもよい。好ましい実施形態において、投与の様式は、経皮(例えば、フィルム、パッチ、生地/衣服、スプレー、もしくはクリームによる)、舌下、または頬側である。追加的に、組成物は、他の処置様式と組み合わせて投与されてもよい。
【0102】
本発明の応用
カンナビジオレートをインターカレートされたLDH粒子などの非共有結合的に安定化されたオリベトール酸誘導体を含有する組成物が一旦得られたら、これは、ヒトもしくは動物に、または他の応用において細胞培養もしくはバイオリアクターシステムに投与され得る。この文脈において、LDHマトリックスは、一般に安全であるとみなされる(Generally Regarded As Safe:GRAS)材料から作られているだけでなく、本明細書に示されるように、無機固体と、特にZnAl層状複水酸化物と、の特徴である非常に好都合な熱安定性を呈することが留意されるべきである。
【0103】
組成物は、分散体形態において調製されてもよく、または乾燥粉末フォーマットが所望される場合には乾燥されてもよい。選択は、特定の状況に特有の多くの要因に依存して、同要因は、例えば、増加した移動のリスク(本明細書において議論されている)と、分散体を乾燥させるコストの増分と対比した、乾燥粉末の輸送コストに対する(相対的に濃縮された)液体分散体の輸送のコストの増分と、である。乾燥粉末が好ましい状況において、乾燥前の分散体に1つ以上の崩壊剤を加えることは、有利であり得る。有用な崩壊剤は、クロスカルメロースと、アルファ化デンプンと、デンプングリコール酸ナトリウムと、ダイズ多糖と、パパインと、マンニトールを含むが、これらに限定されない。
【0104】
製造された粒子により直面するpH条件は極めて重要なことはなく、その理由は、LDHは非常に酸性のpHを除いて一般に安定であるからである。実際に、Iyi et al. [Chem. Mater. (2004) 16:2926]は、0.0025Nの塩酸中であっても、塩分が非常に高い場合(その場合、陰イオン交換が起こる)でなければ、LDHは相対的に安定であることを示した。一般に、本発明のほとんどの応用において、酸性条件は、最終の完成した製剤において最小化または回避されるべきであり、その理由は、ある特定の酸は、移動して酸性カンナビノイドと接触して、脱カルボキシル化を引き起こし得るからでる。これは、高MWではない酸について特に該当して、すなわち、約2,000未満のMWを有する酸は、一般に回避されるか、または脱プロトン化された塩形態においてのみ存在するべきである。
【0105】
高濃度の活性オリベトレート誘導体は、1つ以上のLDH-カンナビノイドをインターカレートされた層状複水酸化物を含む粉末に低減された場合に、本発明において可能である。特に、0.1wt%と20wt%との間のカンナビノイド濃度は本発明の実施において容易に達成可能であり、0.1%、または1mg/gmの低いローディングであっても、LDH-CBDAの角砂糖サイズの投薬形態中で1mgのCBDAを提供して、これを記載している時点における証拠は、1mg用量のCBDAは嘔気と癲癇となどの多くの応用に有効であり得るということである(例えば、Stottの米国特許出願公開第20180228751号を参照)。追加的に、上に参照される3.5meq/グラムのローディングは、達成された場合、50wt%をちょうど上回るローディングをもたらす。
【0106】
層状複水酸化物MgAl-LDH-CO3はヒトにおいて制酸剤として広く投与されており、多数の研究は、このLDHが消費において安全であり、身体から急速に消失されることを示している。100nmから200nmのサイズ範囲内のLDHナノ粒子であっても、ヒト肺細胞培養物において、細胞増殖と、膜損傷と、炎症応答と、の観点において非常に低い細胞傷害性を呈することが示されている。サプリメント市場(すなわち、必ずしもより精巧な医薬品応用ではない)における本発明のLDHの応用に対して、ナノメートルサイズへの粉砕は過剰であり、5ミクロンより大きい粒子サイズは経口投与において最も好ましいものであり得る。
【0107】
外側コーティングなどの他の要素を有するものであっても、本発明のインターカレートされたLDH製剤が個体(または哺乳動物)に(治療応用において一般にそうであるように)毎日投薬される場合、以下の理由から、投薬は、初期発現まで恐らくはより長い時間にわたることを除いて、ヘンプオイルおよび他のCBDA製造物と非常に類似したものであるべきである。同じ薬物の2つの製剤が同じ1日当たりの用量で与えられて、製剤が単純に通過して薬物を放出することなく排出されるものでなければ、より遅い放出の効果は単に、a)効果の初期発現のより長い時間(これは、放出が数日を要する場合、数日延長され得る)と、b)定常状態が一旦達成された際の、より一定の血中濃度と、である。理由は単純であり、大まかに1週または2週の投薬後に、同じ量の薬物が放出されており、排出は、仮に影響されるとしても薬物製剤により微量のみ影響される。確かに、この経験則は特別な場合において例外を有するが、本発明者は、少なくとも1日毎の経口投薬において、本発明の応用においてこれらが重要な役割を果たすことを予見していない。これは、既知の薬物または活性剤の新たな製剤の用量を見出すという課題を大きく単純化する。
【0108】
所望される薬理学的(治療的)効果のための製剤のスクリーニングは、ヒトまたは動物モデル試験の前であっても、インビトロ試験が良好なインビボ/インビトロ相関(IVIVC)と共に利用可能な場合に、可能であり得る。例えば、適応症が癲癇である場合、アメーバを利用した1つの既知のスクリーニングが後述のとおり記載される。
【0109】
頬側送達を使用する、不安と、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と、潜在的に他の気分障害と、に対するLDH-インターカレートされたCBDAの効果を確立するために設計された臨床試験の概略がこれより与えられる。背景として、NCT02902081において、高度に精製された形態のカンナビジオール(CBD)、すなわち0.1%未満のCBDAであるように徹底的に精製されたEpidiolex(登録商標)が、経口的に38人のヒト対象に900ミリグラムもの高い用量で与えられたところ、有意な治療効果は、International Affective Picture Systemにおいて、情動に対して見られず、覚醒の測定は300mgと、600mgと、900mgと、の用量において影響されないままであった。薬物製造物が、実施例1において使用されたモル比および他のパラメータ(すなわち、モル比)、または場合により、より最適化されたそのバリエーションを用いて調製されるCBDA-インターカレートされた亜鉛-アルミニウムLDHに基づく頬側スプレーであることを除いて、全体的な試験設計と基準とを含む、同じ評価方法論(IAPS)が本発明の試験に使用される。このインターカレートの緩慢放出な頬側標的化スプレー製剤は、NCT02902081において使用された経口CBDを上回る多くの利点を与え得る。
・CBDよりも潜在的にはるかに高い薬物効力。
・特にCNSへの、単純な経口製剤を上回る改善されたバイオアベイラビリティ。
・脂質細胞膜と、カンナビノイドを可溶化するコンパートメントと、の直接的な接触に起因する、より一定の放出速度および血中レベル。
・血液脳関門崩壊の潜在的な回避。
・味マスキング(頬側送達の選択により自明に部分的に相殺される利点)。
・「必要に応じた使用」(use-as-needed)の薬物動態について相対的に急速な発現を伴う、使用と投薬との容易性および柔軟性。
・水性反応媒体と、非毒性溶媒(例えば、脂肪)と、周囲反応温度と、の(CBDA自体の他に)3つの反応物のみを必要とする、生産の容易性および柔軟性。
・低コストの賦形剤/反応物、すなわち、金属硝酸塩の価格は活性剤の(回避できない)コストと比較して非常に小さく、溶媒もまた安価である。
・製造コスト/ソーシングコストにおける潜在的なさらなる低減、およびインターカレーションが酸性カンナビノイドCBDAを選択的に抽出して、CBDを拒絶するために使用される場合(CBD:CBDA比は天然の供給源の抽出物において高度に可変的であるため重要である)の課題における潜在的なさらなる低減。
・本明細書において詳細に叙述されているFTIRおよび比色分析などの迅速なQC手法の利用可能性。
・少なくとも40mg/mLの、200mg/mLから400mg/mLまでが容易に達成可能な、製剤の粒子(急速に吸収される液体担体をカウントしないが、任意のコーティングをカウントする)中の最終CBDA濃度を伴う、相対的に高い薬物ローディング。
【0110】
CBDA-LDHインターカレートが(無菌生産の要求なしで)一旦製造されたら、洗浄および乾燥された粒子は、10ミクロンに標的化された体積加重サイズ平均まで粉砕されて、これは、計量用量吸入器(MDI)からの、頬側および上咽頭領域中への最大の沈着ならびに気管支中への最小または少なくとも許容される沈着に対応する。約4.7ミクロンの粒子サイズを下回ると気管支吸収が大きく増加するため、好ましくは、体積加重サイズ分布のD90は50ミクロン未満であり、D10は約5ミクロンより大きい。可能な場合、共沈殿の動態は、一次結晶子サイズが10ミクロンに非常に近いように調整されて、例えば、結晶サイズにおいて狭い分布を生成する均質な核生成の方法が公知である。標準的なMDI材料と方法論とを使用して、CBDA血中レベルなどの1つ以上の生理学的なまたは薬理学的なエンドポイントについて、先ず、10ミクロンの粉末が好ましくは哺乳動物モデルで試験される。吸収が成功と考えられて、最終的にバイオアベイラビリティの概算値が決定される場合、粉末の用量は、既知のCBDAローディングならびに所望されるCBDA血中レベル、および/またはAUC(時間に対する血中レベルプロファイルの曲線下面積)から算出される。現行の知識に基づいて、900mgではなく、1mgのオーダーのより多くが、所望の送達用量である。本明細書において議論されるように、塩形態で、そのため実質的に脱プロトン化されている、十分に高いMWの(好ましくは2,000MWより高い)、アルギン酸ナトリウムのコーティングなどの生体接着性ポリマは、本発明のインターカレートをコーティングして、生体接着を提供するため、すなわち、頬側または咽頭などの組織への付着を促進するために、使用され得る。(カーボポールポリマもまた、一般的に使用される生体接着性コーティングであるが、少なくともフィルムとして適用された場合に、組織上で拡大して付着を壊す傾向があるため、頬側送達に良好に適さず、粒子状スプレーであっても、高い十分な表面被覆において吸着されるフィルムを生成し得ることが公知である)。スプレー乾燥、化学的沈殿、コアセルベーション、エマルション重合などを含む、いくつかの拡張可能な、長年確立された粒子コーティングの方法が、経済的な様式で、制御された10ミクロンサイズのポリマでコーティングされたLDHインターカレート粒子を製造するために応用され得ることを当業者は認識する。アルギン酸ナトリウムは塩基性であり、2,000より高いMWであるように選択されるため、それは、本明細書における議論のとおり、製造物の貯蔵寿命の間、CBDAに対する最小の脱カルボキシル化の脅威を示して、製剤中にいかなる有機液体も存在しないこともまた、CBDAの脱インターカレーションとLDHを出る移動との最小のリスクを示すはずである。要約すると、本発明の範囲内にあるものは、効力の<10%の損失と共に少なくとも6か月の貯蔵寿命について本明細書において実証された、熱的および酸化安定性を有するCBDAの容易におよび経済的に生産可能な計量用量吸入器製剤であり、これは高いCBDAローディング、ならびに標的化された組織、すなわち頬側(および鼻)組織と上気道とへの送達と、少なくとも中程度の付着と、のために適した粒子サイズと表面特徴とを有する自由流動性粉末である。他の酸性カンナビノイドもまた、そのように製剤化可能であり得る。CBDAおよび潜在的に本発明のこの(または類似した)実施形態のための、文献において少なくとも何らかのサポートを有する、潜在的な応用は、慢性と急性との両方の広範囲の気分障害と不安障害とを含み、これは心的外傷後ストレス障害(PTSD)と、拒食症と、うつ病と、薬物中毒と、社交恐怖と、統合失調症と、双極性疾患と、精神病と、一般に5-HT1A受容体が関与する適応症と、により例示される。
【0111】
さらに、例えば、がん患者において、嘔気と予期嘔気(条件付けゲーピング(conditioned gaping))とを治療する本発明に基づく製造物の開発の概略がこれより提供される。背景として、確立された動物モデル(例えば、Bolognini D. et al., Br J Pharmacol. 2013;168(6)を参照)は、CBDAが、0.01mg/Kgもの低い用量で、マウスとトガリネズミとにおいて塩化リチウムおよびシスプラチン誘導性嘔吐の他に、乗り物酔いを抑制して、CBDよりもはるかに強力であることを証明していることを示しており、同じ参照された刊行物はまた、最適化研究における候補製剤の単純なスクリーニングのための基礎を提供する詳細なインビトロ受容体結合/放出(displacement)研究を含む。薬物(CBDA)を添加した衣服を製造する前述のアプローチは、この適応症のためのCBDAハット/キャップまたは圧縮スリーブを製造するために使用され得るが、注射を必要とすることなく可能な限り迅速な放出動態を有する製造物は、CBDAのためにフェンタニルまたはニトログリセリン(両方ともそれぞれKowの分配係数=860と42とを有しており、かなり疎水性である)と類似して舌下製剤であるべきである。舌下使用のための錠剤の生産を可能にする記載は、Capellaの米国特許第6,500,456B1号において提供されており、それにおいて構築された生産方法は本発明の粉末に応用されて、本明細書に記載されるように生産および試験される。Capellaは、一部の錠剤組成物においてニトログリセリンの移動に起因する内容物均一性の喪失を扱っているが、油性および強イオン性成分(例えば、ステアリン酸マグネシウム)が回避されることを条件として、その問題はCBDAインターカレートの場合においてより小さいことが予想される。製剤スクリーニングにより決定されるような崩壊のために必要な場合の、そのような錠剤のための好ましい(固体)賦形剤はそのため、ラクトースと、(ヒュームド)シリカと、アルファ化デンプンと、モノステアリン酸グリセリルと、からなる群から選択される。シリカは、そのためアルカリ金属塩よりもはるかに好ましい。ポリエチレングリコールは、グリコールが脱カルボキシル化を誘導できるため、分子が3,000より大きいMWであり、好ましくは末端キャッピングされたものでなければ、回避されることが良い。
【0112】
また、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)の神経保護PPARgアゴニスト活性がTHCのそれよりもはるかに強力であることが公知である、ハンチントン病、ならびに場合により他の神経変性と神経炎症性疾患との治療または予防におけるTHCAの経口送達のための本発明の一実施形態の開発のための概略がこれより与えられる。開発を始めるために、場合により実施例1におけるものとは異なる、層状複水酸化物組成物は、より高い温度、例えば、80℃での熱ストレス負荷と、比色分析と、分光法(例えば、FTIR、NMRなど)と、を含む本明細書に記載される手順と迅速スクリーニング方法とを使用して、THCA-LDHインターカレートの熱安定性について広範囲の組成物をスクリーニングすることにより見出される。安定化された製剤が一旦見出されたら、粉砕されたTHCA-LDHインターカレートは、Eudragit S100などの腸溶性コーティングで粒子をコーティングするために、微粒子コーティングの確立された手段、例えば、スプレー乾燥を使用してコーティングされる。よく確立された圧縮方法を使用して、錠剤は次いでコーティングされた粒子から作られて、当業者に公知のように滑沢剤と崩壊剤との使用が適正に注目される。錠剤は次いで、安定性試験、放出試験、動物試験、そして最後に臨床試験に進められる。
【0113】
本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、当然に変更され得ることが理解されるべきである。本明細書において使用される学術用語は特定の実施形態を記載する目的のために過ぎず、限定的であることは意図されず、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ限定されることもまた理解されるべきである。
【0114】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間の、文脈が他に明確に規定しなければ下限の単位の10分の1までの、各々の介在する値、およびその記載される範囲内の任意の他の記載されるかまたは介在する値は、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、より小さい範囲内に独立して含まれてもよく、これもまた本発明に包含されるが、記載される範囲における任意の特に除外される限度に従う。記載される範囲が限度の1つまたは両方を含む場合、それらの含まれる限度のいずれかまたは両方を除外した範囲もまた本発明に含まれる。
【0115】
他に定義されなければ、本明細書において使用されるすべての科学技術用語は、本発明が属する技術分野の当業者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。代表的で実例的な方法と材料とが本明細書において記載されて、本明細書に記載されるものと類似または同等の方法と材料ともまた本発明の実施または試験において使用され得る。
【0116】
本明細書において参照されるすべての刊行物と特許とは、各々の個々の刊行物または特許が参照により組み込まれることを明確におよび個々に示されたかのように、参照により本明細書に組み込まれて、刊行物が参照される関連において、方法および/または材料を開示および記載するために参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の参照は出願日の前のその開示についてであり、本発明は先行発明を理由としてそのような刊行物に先行する権利がないという承認として解釈されるべきではない。さらに、提供される刊行日は公的に利用可能となった実際の日とは異なることがあり、独立して確認される必要があり得る。
【0117】
本明細書と添付の請求項とにおいて使用される場合、単数形「a」,「an」と、「the」とは、文脈において他に明確に規定されなければ、複数の指示対象を含むことが留意される。請求項は、任意の任意選択的な要素を除外するように記載され得ることがさらに留意される。そのため、この陳述は、請求項の要素の記載との関連での「単独で」および「のみ」などのような排他的な学術用語の請求項における記載、または「否定的」限定、例えば、「[特定の特徴または要素]が非存在である」、「[特定の特徴または要素]を除いて」、もしくは「[特定の特徴または要素]が存在しない(含まれない、など)」の使用のためのサポートとして役立つことが意図される。
【0118】
本開示を読んだ当業者に明らかなように、本出願において記載および図示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴に対して容易に分離または組合せが可能な別々の構成要素と特徴とを有する。任意の記載される方法は、記載される事象の順序において、または論理的に可能な任意の他の順序において実行され得る。
【0119】
本発明は、本発明をさらに説明する以下の非限定的な実施例によりさらに記載されて、同実施例は、本発明の範囲を限定することは意図されず、またそのように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0120】
実施例1.
本明細書においてLDH-CBDA1-と略記される、本発明のZn-Al型のカンナビジオレートをインターカレートされた層状複水酸化物を、硝酸亜鉛とアルミニウムとを使用して共沈殿により製造した。カンナビジオレートイオンは、MCT中の「Alleviate X」CBDA製剤(101 CBD、Ventura、CA)から直接的に提供された。0.37グラムの量の硝酸亜鉛六水和物と、0.156gmの硝酸アルミニウム九水和物とを、4mLの脱炭酸水に不活性気体下で溶解させた。水酸化ナトリウムの2M溶液もまた、窒素流下で脱炭酸水を使用して調製した。約4分の1の硝酸塩溶液を先ずNaOHで中性付近に調整して、強酸性条件へのCBDAの曝露を回避したところ、少量のみの沈殿物が結果としてもたらされて、強い磁気撹拌でのMCT中のCBDAの溶液との接触を硝酸塩溶液のこの中和の数秒以内に行った。強い撹拌と共に、窒素雰囲気下で、およびCBDA/MCT油相の混合物を水性相との接触状態に撹拌により連続的に保って、(酸性)硝酸塩溶液を(塩基性)NaOH溶液と交互にアリコートに加えて、最終pHを約10.5として、pHの上昇によりLDHを沈殿させた。沈殿したLDHの微粒子サイズは、遠心分離前に観察された固体の非常に遅い沈降により指し示された。カンナビノイドに起因して、混合物は緑がかった黄色であったが、遠心分離なしで、有色のカンナビノイドがどのように、存在する様々な相の間で分布しているのかを決定することはできなかった。
【0121】
反応の開始の20時間後に、反応混合物全体を3,000rpmで冷蔵式床型遠心分離機(refrigerated floor centrifuge)中で30分間遠心分離した。3つの領域が明確に分離された。上領域は厚く、MCT油中に分散された層状複水酸化物の緑がかった黄色の分散体である。黄緑色の呈色は、これらのLDH固体が水性溶液の上に遠心分離するため、これらのLDH固体の密度が約1gm/mL未満であるらしいという事実と組み合わせて、これらのLDH固体が有機材料、すなわちカンナビジオレート陰イオンを実質的にインターカレートされていることを強く指し示す。中央領域は、ほぼ無色の水であった。下層もまたLDH粒子に富んでいた。試験管のデジタル写真を撮影して、PHP Toolsウェブサイトにおいて2つのLDH層の色について分析したところ、報告された主要な色コードは、低密度LDH層について#d8d890であり、高密度の下相について、オフホワイト色#f0f0d8と#d8d8c0との50:50の混合であった。
【0122】
CMYK値の観点において、上層は{0%、0%、33%、15%}(高い黄色成分が留意される)であった一方、下層(#f0f0d8を使用)は{0%、0%、10%、6%}であり、自明にほぼ白色であった。
【0123】
最初の遠心分離後に、中央の水性相をシリンジにより除去して、窒素をスパージされたシクロヘキサンを加えて(3.9gm)、激しく振盪した。シクロヘキサンは、そのMCT混和性溶媒中のカンナビジオレートの含意される相対的に低い溶解度に起因して洗浄液として選択されて、それぞれ25.8と16.8とであるCBDAとシクロヘキサンとのヒルデブラント溶解度パラメータは9だけ異なる。これにより、この洗浄工程でMCTを除去することが可能となる。この洗浄および淡い色のMCT相の除去後に、脱炭酸水での別の洗浄を行い、続いて遠心分離と水相のデカントとを行った。結果としてもたらされたLDHに富んだ分散体を次いで窒素下で乾燥させた。次いで、最終的な粉末の色について先ず調べたところ、CMYK値は0|3|10|4(色コード#f4eddc)であり、これはほぼ完全に白色であり、酸化または酸化的脱カルボキシル化と関連付けられるピンクがかった呈色の証拠はほとんどまたは全くなかった。大気中酸素の存在下で作った異なるバッチにおいて、0|12|18|5のCMYK値(色コード#f1d3c5)で、4倍高いマゼンタの寄与があった強いピンク色が結果としてもたらされた。
【0124】
洗浄および乾燥された分散体に対して、透過光モードにおいて20×対物レンズと共にNikon Optiphot顕微鏡を使用して光学顕微鏡観察を行った。
図7A-
図7Cは、例示的な顕微鏡写真を示す。これは、角張っていて、大まかに六角形様の断面の結晶を明確に示した。一次結晶子サイズは、1ミクロンと5ミクロンとの間であった。穏やかな超音波処理は、これらの一次結晶子の凝集の程度を低減させて、より微細な固体の外見をもたらした。これはすべて、Zn-Al層状複水酸化物材料の既知の挙動と合致する。
【0125】
積み重ねられた証拠は、本発明の一実施形態、すなわちカンナビジオレートイオンをインターカレートされたZn-Al層状複水酸化物材料がこの実施例において製造されたことを、明確に示す。次いで、薄層クロマトグラフィー(TLC)を使用して、この製剤の熱安定性を半定量的に分析して、次いでATR-FTIRで分析したところ、本発明者が知る限りで熱安定性データが報告されている任意のCBDA含有製剤よりも安定性がはるかに良好であることが示されて、文献から既知のそれらの研究の中での安定性データ(例えば、CBDAの半減期)の合致は、本明細書において与えられる理由から、本発明の使用なしでは、実質的に改善することが非常に困難であるベンチマークを提供すると認識している。
【0126】
実施例2.
TLCを使用して前述のLDH-CBDA-製剤を分析して、結果をCitti et al.とWang et al.とのグループからの安定性データと比較した。分析により最良に表されるパラメータは、モル濃度を使用して、Pと呼称される指標、すなわち熱ストレス時間の関数としてのCBDA効力保持により与えられる。
P=[酸性CBDA]/([酸性CBDA + 脱カルボキシル化CBD])。
【0127】
THCAおよびTHC、ならびに場合により他のカンナビノイドの存在は指標Pに潜在的に影響し得るが、これは本明細書における重要性はより低く、その理由は以下のとおりである。
a)THCとTHCAとの初期量は「Alleviate X」チンキにおいて非常に低く、これらの化合物は、MCTチンキ中でいかなる実質的な量でも作り出され得ない。
b)THCAがより豊富に存在したとしても、THCへのTHCAの脱カルボキシル化速度はCBDへのCBDAの脱カルボキシル化速度から大きく異ならないことが既知である(100℃でのCBDAとTHCAとの脱カルボキシル化の1次速度定数kの値は、それぞれ4.13×10-4および4.93×10-4として報告されている。後者については、[Perrotin et al., Journal of Molecular Structure 987 (2011) 67-73]を参照)。
そのため、この場合におけるPは、より従来的な表記を使用して、CANA/CANtotに近いことが予想される。
【0128】
CBDAに富んだヘンプ抽出物(供給元:101 CBD、Ventura、CA)からのものを含むカンナビノイド含有試料を薄層クロマトグラフィー(TLC)プレート上で比較して、ヘンプからの抽出の数週以内に得られたことが推測され得るベンダーの分析と結果を比較した。使用したTLCカンナビノイド方法は、Meatherall and Garriott [Journal of Analytical Toxicology, Vol. 12, May/June 1988]から採用した。採取された量を3:1のクロロホルム:メタノール混合物に溶解させて、次いでガラスキャピラリーチューブを介してシリカベースのTLCプレートに移した。体積により、移動相は、ヘキサンと、1-ペンタノールと、氷酢酸と、の90:9:1の液体混合物であった。溶媒前面が十分に進行するために約1時間が必要であった。次いでTLCプレートを除去して、ヒートガンで乾燥させて、次いで水性トリエチルアミン溶液中への浸漬により染色して、すすぎ、過マンガン酸ベースの染色剤で、または一部の場合において、Fast Blue BBで、周知の赤みがかったおよびオレンジ色のカンナビノイドシグネチャーを裏付けるFast Blue BB染色剤溶液で染色した。
【0129】
未処理の「Alleviate X」チンキについて、約4:1のCBDA:CBD比が、オンラインサービス「JustQuantify」を使用して、TLCスポットの客観的な同定および定量化を用いて、TLCプレート分析下での直接的な実験により本開示において確認されて、特に4.73:1(またはP=0.825)の実験的に測定された比が結果としてもたらされた。これは、供給業者により述べられた比と明確に合致しており、供給業者は、彼らのウェブサイト上で分析を提供しており、これを記載している時点において、同分析は、4.10(またはP=0.804)のCBDA:CBD比を指し示している。本質的にすべての非酸性カンナビノイド、ほとんどの場合CBD、一部の場合THCおよびCBNは、溶媒前面まで移動して、すなわち、1.0に近い相対的な保持を呈した一方、Meatherall and Garriottにより報告されたように、酸性カンナビノイドは約0.85のRf値と共に後れを取った。
【0130】
次いで、60mgのLDH-CBDAの試料、すなわち実施例1からの材料を、試験管上部空間中の不活性気体と共に、80℃のオーブン中で64時間保持した。冷却後に、以下の共溶媒をこの60mgの試料に加えてLDHを層状に剥離させて、カンナビノイドを放出させた。TLC用のプレップへの63mgのペンタノール、76mgの氷酢酸、103mgのジメチルホルムアミド(DMF)、および最後に187mgの3:1のクロロホルム:メタノールの混合物。決定的なことに、最終溶液は完璧に透明であり、検出可能な懸濁した固体も外来相もなかった。
【0131】
101CBDから受領したままの未加工チンキを、先ず80℃で2時間および4.5時間ストレス負荷して、次いでこれらのストレス負荷された試料とストレス負荷されていない試料とを、前述のTLC方法により分析した。TLCプレートの写真の「JustQuantify」オンライン分析からの出力を、加熱された時間(hr)に対するLn(P)、およびMicrosoft Office Excelを使用して計算された回帰直線として
図1に示す。グラフから、分解定数はこの80℃の温度において約k=0.22/時間、または6.2×10
-5秒
-1と決定されて、これはWang et al.により報告された値5.35×10
-5秒
-1と非常に合致している。半減期は、3.1時間であると概算される(Wangの概算値は3.6時間である)。
【0132】
驚くことに、この同じ80℃の温度に64時間供された、実施例1に記載されるように調製されたインターカレートされたLDHの試料は、効力の40.4%のみの喪失を意味するP=0.596のTLC結果を与える。すなわち、本発明によるこの製剤の半減期は64時間を上回り、k=2.2×10-6秒-1または0.008時間-1の算出された分解定数から、86時間として最良に概算される。そのため、本発明によるこの製剤は、CBDAの半減期を約17の係数で増加させた。
【0133】
本発明により独特に可能とされるCBDAの半減期における約17倍の増加は、周囲により近い温度に大まかに外挿され得る。Wangのデータは臨界的な10%分解点に達する前に25℃で約3.7週に外挿しており、この数値はWang、Citti、Ceriliant Analytical Reference Standards Inc.、および本研究においておおよそ同じであったため、純粋なCBDAと、アセトニトリル溶液と、ヘンプオイルと、CBDAに富んだヘンプ抽出物と、を含む広範囲の先行技術の製剤から再現的であると思われることが留意される。直接的にそれらのデータに対して比を取ることにより、本データは、同じ外挿パラメータを使用して、63週、すなわち1年を上回る10%の分解までの概算される時間をもたらす。したがって、既に本発明は、例えば、この10%の限度が保証する製造物信頼度の高い程度を例示する、静脈内薬物製剤において標準となる安全性のハードルである、12か月のうちの<10%の分解という厳格なFDAガイダンスの下であっても通年の貯蔵寿命をもたらすことが見積もられる。
【0134】
LDHは不透明であるため、本発明によるLDH中の被包はまた、光促進性分解からの強い保護を提供することもまた指摘されるべきである。これは、主なストレス因子が光(特にUV)であるのか否か、または光が熱ストレスと共に働くのか否かにかかわらず、本発明によるLDH中の被包は分解速度を減少させ得ることを意味する。微細な一次結晶子は光を散乱させて、LDH組成物それ自体は、UV光の有意な吸収を有して、追加の光防護を提供する[例えば、Mohsin et al., Int J Nanomedicine. 2018; 13: 6359-6374の
図9を参照]。さらに、Eusolex
R 232などの酸性基を有するUV吸収剤は、本発明において、カンナビノイドと共にインターカレートされ得る。
【0135】
追加的に、本実施例において製造されたカンナビノイドをインターカレートされたLDHは、未加工カンナビノイド単離物の不快な匂いと嫌な味とを欠いていることが見出された。そのため、本発明により可能となる潜在的な医薬製造物は、舌下形態、頬側フィルムおよびスプレー、ならびに液体において製剤化される広範囲の経口製造物を含む。追加的に、潜在的な消費者飲料は分散されたLDH-カンナビノイドを含有して、そのような飲料は、ワインと、非炭酸飲料と、コーヒーと、茶と、スポーツドリンクと、を潜在的に含む。炭酸飲料は、インターカレートされたLDHの有効性の一部に干渉し得て、その理由は、二酸化炭素と炭酸イオンとがLDHに対して非常に強い親和性を有して、カンナビノイド陰イオンを置換するそれらの能力が、水中でのカンナビノイドの低い溶解性により限定され得るが、他の味成分(例えば、多くの炭酸飲料、例えば、Coca-Cola(登録商標)中の精油)、またはより強い飲料中のアルコールの存在が、この溶解性を増加させて、「遊離」カンナビノイド(インターカレートされていない)を結果としてもたらし得るからである。本発明の別の応用は、一般的なカンナビノイドの嫌な味とTRPV1誘導性「熱」とを招くことがない、凍結されたトリーツ(treats)、例えば、アイスクリームへのカンナビノイド機能性の提供におけるものである。
【0136】
実施例3.
この実施例は、アサ科(Cannabaceae)植物と、細胞培養、酵母発酵、および化学合成を含むがこれらに限定されないカンナビノイドの他の供給源と、から発生した複雑なカンナビノイド混合物からの、非酸性化合物よりも酸性カンナビノイドを選択的に抽出する本発明の方法と材料との能力を実証する。
【0137】
1.0gmの量の、カンナビゲロール酸に富んだヘンプ由来単離物(CBGA>95%)を3mLのクロロホルムに溶解させて、2相系の疎水性相を形成させた。水性相は、60mLの脱炭酸水中に溶解した5グラムの酢酸亜鉛二水和物と、2.1グラムの硝酸アルミニウム九水和物と、からなるものであった。次いで水酸化ナトリウム溶液(1M)を加えて、pHを6.5にした後に、クロロホルム相に加えた。磁気撹拌棒で混合物を強く撹拌して、2つの相を合わせた。次いでNaOH溶液を最終pH10まで徐々に加えて、LDHの沈殿を引き起こした。8時間の反応時間後に、混合物を3,000RPMで20分間遠心分離して、その後に沈殿物を温かい空気流下で乾燥させた。過剰な水溶性反応物を洗浄除去する必要はないと考えられたが、これは、それらがカンナビノイド分析に対してほとんど効果を有しないことが予期されたからである。材料を分析の時点まで凍結点未満で保持した。
【0138】
分析のために、イソプロピルアルコールと塩酸とを逐次的に適用して、(インターカレートされた)LDHを層状に剥離して、無機マトリックス(すなわち、LDH)の溶解を通じてカンナビノイドを放出させた。次いで、ギ酸を使用する周知の「Dutch」方法を使用してHPLCを行った。
【0139】
以下の表は、製造されたLDH-インターカレートと比較された、CBGAに富んだ出発「単離物」のHPLC分析の結果を示して、濃度は重量パーセントにおいて与えられている。表から明らかなように、本発明のLDH-インターカレート中に検出されたカンナビノイドは、CBGAと、少量のCBGと、のみであった。そのため、本発明は強いローディング(9wt%を上回る)のCBGAを抽出したが、非酸性CBDおよびCBCは、出発単離物中に存在したにもかかわらず、インターカレート中に検出され得なかった。インターカレート中のCBGの存在に関して、2つの事実が留意されるべきである。第1に、CBGはCBGAの脱カルボキシル化生成物であり、したがって、インターカレートされたCBGAのわずかな分解により製造されて、製造におけるCBGのいかなる直接的なインターカレーションも必要としなかった可能性がある。そして第2に、単離物中のすべてのCBG(0.20%)がインターカレートされていたとしても、それはインターカレート測定における0.26%のCBGを占めておらず、すなわち、CBGの少なくとも一部はCBGAの何らかの分解に由来していなければならない。手順がギ酸を伴い、本明細書に記載される無水ペンタノールベースの方法に固執しなかったため、ほとんどではないにしても、一部の分解は、溶媒ミックスを使用して、その後のHPLCのために活性剤を放出および溶解させた工程の間に実際に起こったと考えられる。また、CBGAのインターカレーションがこの実験において確認されたが、これは、CBGAが脱カルボキシル化または酸化から実質的に保護されることを必ずしも意味しないことが留意されるべきである。その理由は、それぞれ7個と10個との回転可能な結合を有する、CBDAからより柔軟な分子CBGAへと切り換えられて、カンナビノイド-LDH結合へのより大きい立体障害、ならびに異なるpKa(それぞれ3.4および2.9)などが結果としてもたらされて、LDHへの結合の分子的構成と強さとが必要とされるようなものでないことがあるためである。特に、例えば、後述のとおり記載されるように、139cm-1に近いFTIR測定のデルタ(Δ=νas-νs)の値により同定された、48kJ/molに近い結合エネルギーを有する単座結合は、脱カルボキシル化と酸化とに対する高い安定性と相関することと、潜在的にそれを保証することと、が本明細書において示されている。
【0140】
【0141】
そのため、本発明の方法と材料とを使用して、複雑な混合物/抽出物から選択的に酸性カンナビノイドを抽出して、ならびに同時にこれらの酸性カンナビノイドを製剤化して、すなわち単一の工程における精製と製剤化との両方が潜在的に可能であり得る。特に本明細書において実証された2相反応の使用と共に、酸性カンナビノイド標的を含有する有機相はまた、非酸性化合物を含むことができ、非酸性化合物は、最小にのみインターカレートされて、遠心分離および/または濾過の何らかの組合せによりLDH-インターカレートが一旦採取されたら有機相中に実質的に残されることになる。実際に、場合により穏やかにのみ希釈されているか、または未希釈でさえある、粗ヘンプオイル抽出物を有機相全体として使用することが可能であり得る。カンナビノイドを可溶化するために、植物それ自体からのものでさえある、テルペンを使用する方法がこの分野において公知で利用されており、LDH前駆体を含有する水性相と、植物化学環境中のカンナビノイドを含有する第2相と、を伴う本発明を製造するさらに別の方法が提供される。CBDA、CBGA、THCA、CBCA、CBDVA、THCVA、もしくは他の天然または合成の酸性カンナビノイドまたは陰イオン性カンナビノイド、もしくはこれらの混合物の抽出/製剤化、または植物抽出物からのアモルフルチンの抽出および製剤化におけるそのような方法は、蒸留、分取HPLC、または他の方法(多くの場合に熱を必要として、そのため脱カルボキシル化を促進するか、または毒性有機溶媒を必要とする)に基づく抽出方法よりも効率的で経済的であり得て、さらには、抽出された最終酸性カンナビノイドの安定化された粉末製剤を製造できる。考えられるところでは、そのような方法は、連続モードの操作においてさえ実行可能であり、ヘンプオイル(またはテルペンで可溶化されたカンナビノイド)のストリームは、LDH形成性条件と直面し得る(例えば、水性溶液中の二価硝酸塩と三価硝酸塩とが油ストリームおよび添加された塩基と接触し得る)。
【0142】
本発明は、アサ科の植物抽出物からだけでなく、酵母、細菌、真菌(例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris))、潜在的に遺伝子改変された生物を使用して作り出されたカンナビノイドに富んだ排出物からも酸性カンナビノイドを抽出および/または製剤化するために使用され得る。例えば、細菌ザイモモナス・カンナビノイディス(Zymomonas cannabinoidis)、遺伝子編集されたバージョンのザイモモナス・モビリス(Zymomonas mobilis)は、フルスペクトルのカンナビノイドを産生するように操作されている。カンナビノイド混合物を製造する方法については、例えば、米国特許出願公開第20160010126A1号と国際公開第2017139496A1号とを参照。
【0143】
微細な自由流動性粉末は、多くの種類の製剤のための優れた出発点であり、丸剤と、懸濁液と、分散体と、他の粒子状形態と、の製剤化において使用される、ある特定の方法と機器とのために必要とされることが医薬品分野において広く認識されている。幸運なことに、本明細書において報告される実験において製造されるインターカレートされたLDHは、実際に自由流動性粉末であり、CBDAと、THCAと、(より低い程度で)CBGAと、の現行の形態である粘着性で脂様の単離物と鮮明に対照的である。理論により縛られることを望まないが、これらのカンナビノイドに極めて粘着性という評判を与えるタール様化合物は、粉末を構成する固体粒子の表面上に高発現されないようである。これは、インターカレートの純白色の外見によりサポートされる。すなわち、LDH中にインターカレートされたタール状化合物は、その粘着性と変色とがLDHにより「隠される」ようである一方、同じ化合物が粒子または固体の外側表面に結局存在する場合にLDHを使用したとしても粘着性と(場合により)変色とが予想されて、そのため、粉末における粘着性の非存在は、以下の実施例5において比色分析試験により本明細書において実証されるように、酸性カンナビノイドが固体粒子の内部に限局されており、仮に移動があったとしても、非常に緩徐にのみ表面に移動することを指し示すと思われる。本発明の特定の方法と組成物とが粉末において問題がある量の粘着性を結果としてもたらす場合、インターカレートされた活性剤の抽出を最小化するために迅速に働く脱炭酸溶媒で粉末を洗浄することにより、粘着性を低減させることが可能であるはずである。
【0144】
対照的に、本発明の微細粉末フォーマットを使用する代わりに、より大きいインターカレートされたLDHは、ゼロから、すなわち、錠剤圧縮方法の必要性なしに、製造が可能である。これは、舐めることができる「キャンディー様」製造物を含むがこれに限定されない固体であり、ある特定のOTC(店頭)応用において適切であり得る固体の巨視的な塊として有用であり得る。実際に、医薬品を含むロリポップは、(主に小児使用のための)病院用製造物として有効とされてさえいる。
【0145】
実施例4.
減衰全反射FTIR(ATR-FTIR)を使用して、先行する実施例に記載されている亜鉛-アルミニウム層状複水酸化物中にインターカレートされたCBDAに富んだのカナビス抽出物を用いて、本発明の熱ストレス負荷実施形態と未熱ストレス負荷実施形態との両方を分析した。次いで、スペクトルをストレス負荷されたおよびストレス負荷されていない両方の試料で、同じ抽出物でのスペクトルと比較した。ピーク位置の解釈に関する情報を、CBDAとCBDとの他に、関連化合物に関する公開された文献における単純な分析により得た。
【0146】
FTIRスペクトルをThermofisher Nicolet iS50分光計において減衰全反射(ATR-FTIR)法を使用して収集した。ATR結晶はダイヤモンドであり、検出器は重水素化硫酸トリグリシン(DTGS)検出器であった。データ収集では、データの間隔が0.241cm-1である分解能2と共に32回の走査を使用した。進化したATR補正データ処理において、試料の屈折率を1.5に設定したが、これは、いずれもダイヤモンドの屈折率よりも十分に低い水酸化亜鉛(1.38)と、様々なLDH(1.54-1.55)と、CBD(1.55)と、の既知の屈折率を考慮して適切である。
【0147】
CBD、またはカルボキシル基を欠いた他の分解生成物へのCBDAの脱カルボキシル化は、当然ながら、CBDA分子上のカルボキシル関連基についてのFTIRピーク位置と強度とにおける何らかの変化に繋がらなければならない。これらのピークは、例えば、文献データから容易に見出されて、同データにおいて、CBDAスペクトルにおけるある特定のピーク位置は、特にそれがCBDスペクトル中に本質的に存在せず、追加的にカルボン酸のFTIR分析に関する大量の知識によりサポートされる場合に、変化する。本研究と刊行された文献との両方は、脱カルボキシル化でシフトする8つのカルボキシル関連ピークが存在することで合致しており、これらは以下の表1に列記されている。
【0148】
表1.
ニートCBDAについてのスペクトルにおいて見られる主なカルボキシル関連ピークについての位置(cm
-1)と、相対強度(括弧内、vw=非常に弱い(very weak)からvs=非常に強い(very strong)まで)と、提案される振動の割当(通常のFTIR表記)と、のピークは、酸性カンナビノイドと層状複水酸化物との間の強い静電相互作用に起因して、LDH中へのインターカレーションで位置をシフトすることが予想され得る。
【0149】
これらの8つのカルボキシル関連ピークは、本発明の一実施形態の調製物において、2つの可能な機序に起因して、2つの別個の仕方で変化可能であることが強調されなければならない。
・インターカレーション(環境のイオン性における劇的な変化):観察されるピーク位置におけるシフト、または、
・脱カルボキシル化(カルボキシル基の喪失):観察されるピーク強度の喪失。
【0150】
次いで、ニートCBDAに関する熱ストレスデータを使用して、この実験的研究において特に使用されたCBDAと機器とでのこれらの重要なピークの実験的測定と正確な位置とを実証することにより始めることが有用である。そのため、
図2は、非製剤化対照であるCBDAに富んだ抽出物における、1109のピークに対する熱ストレスの例示的な効果を示す。このピークの外側においてストレス負荷と非ストレス負荷とのデータは、ほぼ同一であることが留意される。
【0151】
これらの8つのカルボキシル関連ピークの初期位置が実験的に検証されたため、注目はこれより、a)LDH中へのインターカレーション時と、b)結果としてもたらされる本発明の一実施形態であるCBDA-LDHインターカレートへのストレス負荷後と、におけるこれらのピークの挙動に向けられる。ストレス負荷されたおよびストレス負荷されていない、実施例1において製造されたCBDA-LDHインターカレートは、以下のとおりであった。
試料A-19:実施例1において製造されたストレス負荷されていないインターカレート(一部の図の標識において試料「A」に単純化されている)。
試料S-19:60℃で72時間ストレス負荷された、実施例1において製造された熱ストレス負荷されたインターカレート(一部の図の標識において試料「S」に単純化されている)。
【0152】
以下の表2において、ニートCBDAとLDH-インターカレート試料A-19とについて、CBDAスペクトルにおいて見られる8つのカルボキシル関連ピークは、合理的に割り当てられ得る近くの位置にシフトしたか、または1621cm-1におけるCBDAピークの場合と同様、以下の本文中で1621のピークについて示されるように、任意の割当が独立してサポートされなければならないほどに遠くにシフトした。1800cm-1までの領域における14の非カルボキシル関連ピークは以下において、インターカレーションにおいて波数を有意にシフトさせないことが見られて、ピーク強度における強い変化は、反射率/吸光度特性と、環境変化(静電、誘電性など)と、に対するLFHマトリックスの強い効果に起因する可能性が高い。
【0153】
表2.
試料A-19とニートCBDAとについての観察されたピーク。カルボキシルOH基を伴う振動は試料A-19において存在せず(または非常に弱い強度で存在し)、そのためカンナビノイドの酸性基は脱プロトン化されていることが裏付けられることが留意されるべきである。同様に、脱プロトン化された、または金属が結合したカルボキシレート基に割り当てられるA-19におけるピークは、ニートCBDAにおいて存在しない。すべてのピーク位置は、cm
-1の波数である。
【0154】
本明細書において、「CBD単独」ピーク位置は、CBDのスペクトルにおいて観察されるが、純粋なCBDAにおいて観察されない位置を指し示す。これらの位置のうち最も目立つものは、1027cm
-1と、1220cm
-1と、1525cm
-1と、である。
図3は、試料A-19と熱ストレス負荷されたS-19とにおけるこれらの分解物ピークの非存在を実証して、これらのピークの3つすべては、CBDが存在する場合に同時に存在するはずであることが念頭に置かれるべきである。
【0155】
CBDAの脱カルボキシル化は、酸化-脱カルボキシル化機序に適合できて、また酸化されて、公開された刊行物において現在十分に特徴付けられていないいくつかのキノン分解物を形成できるという事実に起因して、キノン、例えば、カンナビキノンの証拠についてA-19スペクトルとS-19スペクトルとをチェックすることは重要である。カンナビキノンについて予想されるピーク位置は、1050cm
-1と、1150cm
-1と、1377cm
-1と、1643cm
-1とであり、再び、本明細書において「キノン単独」ピークと称される、これらのすべてのピークは、強く有色のキノンが存在する場合に、存在するはずである。少量のキノンの存在を指摘する証拠があるが、ピークの弱い強度、最も顕著には1050cm
-1におけるものは、これらの試料におけるピンクがかった呈色の非存在と共に、低い程度のキノン形成を指し示す(
図4)。
【0156】
CBD、またはキノンへのごくわずかな脱カルボキシル化が
図4に示されており、そのため最小の脱カルボキシル化と限られた酸化とを指し示しているため、これらのストレス負荷されたおよびストレス負荷されていないインターカレート試料についてのスペクトルは、非常に近いことが予想され得て、実際に、
図5は、測定された全スペクトルにかけてのストレス負荷されていない試料A-19と、熱ストレス負荷されたS-19と、の間の非常に緊密な関係性を示す。
【0157】
LDHインターカレートのFTIR調査は、無機LDHマトリックスそれ自体に起因して、(かなりブロードの)ピークにおける有意なシフトを一般に示している。今回の場合において、両方の試料A-19とS-19とに対する空のLDHについての約3431cm
-1から3450cm
-1へのシフトは、CBDA-イオンとLDHマトリックスとの間の強い静電相互作用を指し示して、もう一度再び、ストレス負荷されたインターカレートと、ストレス負荷されていないインターカレートと、の間の緊密なマッチを裏付ける(
図6)。
【0158】
さらなる研究において、空のLDH、すなわち、いかなるカンナビノイドも存在しないものもまた、60℃で100時間熱ストレス負荷したところ、3431cm-1におけるピークの位置における変化は観察されない。ストレス負荷されたおよびストレス負荷されていないLDHブランクの両方におけるそのピーク位置は、3431cm-1において同一であった。これは、ストレス負荷されていない試料「A」について見られたシフトと共に、このピークにおけるシフトが熱ストレスに起因せず、むしろインターカレートされた酸性カンナビノイドの効果に起因したことを実証するため、本質的に重要である。
【0159】
これはまた、周知のカルボキシレートのパラメータΔ=νas-νsにおける変化と合致する。このパラメータは、カルボキシル基の状態における変化と相関していることが公知である。我々の対照非製剤化CBDAについて、Δ=1621-1501=120cm-1であり、プロトン化された二量体配置におけるカルボキシレートについての値は、通常は121cm-1に非常に近いことが公知である。そのため、対照91% CBDAは、有機カルボン酸において一般的な通常のνas|νs分割にフィットする。鮮明に対照的に、インターカレートされたCBDAは、1553へのνasの強いシフトと、Δ=1553-1395=158cm-1をもたらす1395における1つの見かけのnsピークとを、Δ=1553-1414=139cm-1をもたらす1414における第2の見かけのピークと共に示す。興味深いことに、Δ値のこのパターンは、アセテートカルボキシレート基に吸着した一価Cu1+(第一銅;Cu(I))イオンについて報告されているΔ値を定量的に模倣して、同報告において、測定されたΔ=139cm-1は、単座の化学吸着したイオンに起因するとして解釈されて、Δ=159cm-1は、単座の物理吸着したイオンに起因するとして解釈された。LDHマトリックス中のアルミニウムイオンが主に1+価形態であるため、第一銅-カルボキシレート相互作用は、本明細書において報告される場合に非常に関連する。Δ=1437cm-1の近くのピークは、炭素環構造のν(C-C)に割当可能であることもまた留意されるべきである。文献において一般に一致しているように、約0.5eVまたは48kJ/molより高い結合エネルギーは、物理吸着から化学吸着への分割線であり、実際に化学吸着した第一銅-カルボキシレート結合は、50kJ/molに非常に近い結合エネルギーを有することが報告されている。
【0160】
理論により縛られることを望まないが、LDH中のアルミニウムイオンに化学吸着したカンナビジオレート陰イオンの存在は、少なくとも2つの理由から、結合したまさにカルボキシレートに対するLDHマトリックスの強力な安定化効果を説明できる可能性がある。第1に、LDHは、マトリックスの内側で容易に拡散できる化学種に関して選択的であるため、分解性種、例えば、二原子(もしくは他の形態)の酸素、「他の」重金属夾雑物、または他の有機物を除外し得る。そして第2に、多くの理由から、カルボキシレート基への強い結合は、立体的に、またはCBDA反応性に対する強い静電相互作用の効果によりCBDAの脱カルボキシル化に干渉し得る。他の安定化方法論(例えば、Andersonの米国特許第8,858,927号を参照。その全内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる)から公知のように、別の種、ここでは場合により、物理吸着したカンナビジオレートの追加の存在は、1つの形態において結晶化なしで十分な安定化を提供する「フリッカリングする」または間欠的な結合を作り出すことができて、これは、可能であったとしても、活性剤の放出を邪魔することが予想され得る。
【0161】
本発明の一部の実施形態において、FTIRにより測定される場合の1つの対称性カルボキシル振動νsについてのピークの位置を、非対称性カルボキシル振動νasについてのピークの位置から引くことにより得られるデルタ(Δ=νas-νs)の値は、周囲温度において約130cm-1と148cm-1との間、一部の実施形態において約135cm-1と143cm-1との間、一部の実施形態において約137cm-1と141cm-1との間である。
【0162】
本発明の一部の実施形態において、デルタ(Δ=νas-νs)の1つの値は、周囲温度において約130cm-1と148cm-1との間であり、酸性カンナビノイドの一時的であるが有意な化学吸着を指し示して、Dの第2の値もまた約150cm-1と175cm-1との間で同じスペクトルにおいて存在して、酸性カンナビノイドの一時的であるが有意な物理吸着を指し示す。
【0163】
本発明の一部の実施形態において、デルタ(Δ=νas-νs)の1つの値は周囲温度において約135cm-1と143cm-1との間であり、酸性カンナビノイドの一時的であるが有意な化学吸着を指し示して、Dの第2の値もまた約150cm-1と175cm-1との間で同じスペクトルにおいて存在して、酸性カンナビノイドの一時的であるが有意な物理吸着を指し示す。これは、実際の振動それ自体と関連付けられる時間尺度よりも遅い時間尺度(前記時間尺度は少なくともいくつかの振動期間に対応する)において、酸性カンナビノイドの間の結合の物理吸着状態と化学吸着状態との間の進行中のシフト、または「フリッカリング」を指し示す。結合のこの普通でないおよび驚くべき状態を指し示す、NMRなどの他の測定はまた、あるいは代替的に、酸性カンナビノイドと層状複水酸化物とを含む組成物中の本発明の存在を確立するために使用され得る。
【0164】
表2に見られるように、ニートCBDAのデルタの値はνas-νs=1621-1501=120cm-1である。これがH結合したカルボン酸、すなわち、それらのプロトン化された二量体形態におけるものと関連付けられる値であることは、偶然の一致ではない。これは正に、ニート形態のカンナビジオール酸について予想されるとおりである。
【0165】
このFTIR分析は、そのため以下を示す。
・60℃で72時間後の全スペクトルにかけてのピーク位置における有意な変化がなく、ピーク強度における軽微な変化のみ。
・ストレス負荷されていない試料A-19とストレス負荷された試料S-19との両方のスペクトルにおいて、シフトせずに、CBDA非カルボキシレートピークがすべて存在して、説明される。
・スペクトルは「CBD単独」分解物ピークの系統的存在(systematic presence)を示さない。
・スペクトルはCBQキノン分解物ピークの系統的存在を示さない。
・スペクトルはMCT残留溶媒ピークの系統的存在を示さない。
・スペクトルは無機残留物(硝酸塩、炭酸塩など)の低いレベルを指し示す。
・カルボキシレート特異的ピークの位置へのシフト、特に対称および非対称カルボキシル振動νsとνasとが同定されており、一価金属陽イオン(Cu1+)-カルボキシレート結合位置についての既知の位置にかなり近くで適合する。
・ボーダーライン化学吸着である単座結合の証拠がある。
【0166】
要約すると、この分析は、本発明の一実施形態、すなわち約3の亜鉛:アルミニウムモル比を有する亜鉛-アルミニウム層状複水酸化物のギャラリー内にインターカレートされた酸性カンナビノイドを含み、単座化学吸着と合致する約139cm-1のデルタ値と、単座物理吸着と合致する約158cm-1の別のデルタ値と、の両方をもたらすFTIRピークを呈する組成物は、酸化と脱カルボキシル化との両方からのカンナビノイドの保護を提供して、そのため劇的に改善された安定性を結果としてもたらすことを示す。その結果はまた、本明細書におけるTLC分析の他に、本明細書において示される比色分析とも合致する。本明細書の他に、一般にカルボキシレートのFTIR分析において使用される場合、デルタはD=nas-nsである。
【0167】
実施例5.
いくつかの比色測定を、前述の実施例1において製造された粉末化CBDA-LDHインターカレートに対して行った。
【0168】
Fast Blue BB試験は、カンナビノイドにとってよく確立された指標であり、CBDについて数秒のうちに深い赤みがかった色、CBDAについて数秒のうちに強いオレンジ色または黄-オレンジ色をもたらす(またはカンナビノイドがTLCプレート上にある場合に数分)。これは、Fast Blue BB半(塩化亜鉛)塩、次いでこの試験の水性試薬中に軽く分散させたインターカレートに応用された比色試験を使用してCBDおよびCBDA標準品について確認された。以下の表に見られるように、粉末(沈降で試験管の底にある)における深い呈色は、表3に示されるように、2週の期間にわたって非常に緩徐にのみ進行した。
【0169】
【0170】
Fast Blue BBと反応させた場合の本発明の粉末の色分析は、CBDAの単純溶液における通常は数秒の反応時間と比較して、数週を要する、本発明のCBDA-LDHインターカレートとのFast BB色素の極めて遅い反応を実証する。
【0171】
これは、CBDAがインターカレートされた粉末のギャラリー領域中に主に埋められており、その結果、色素が非常に緩徐にのみ移動してカンナビジオレートに達してそれと反応できるか、またはカンナビジオレートが粒子の表面に向かって移動して色素に対してより接近可能となることを実証する。
【0172】
塩化第二鉄試験
カンナビノイドのための周知の塩化第二鉄試験は、上記で使用された色素(MWは約416)などのより高いMWを有する化合物を必要とせず、また本発明の文脈において最も重要なことに、酸化からの保護についての試験である。ニートCBDAは黄色またはピンクがかった黄色の変色を生成して、ピンク(CMYK値において有意なマゼンタ値により表される)のほとんどは、カンナビノイドの酸化により生成されるキノンから発生する。実際にこの試験において、ニートCBDA標準品は、CMYK=0|31|65|0に対応する、色コード#ffb159を有する強い呈色を生成した。対照的に、塩化第二鉄試験を本発明のCBDA-LDHインターカレート粉末に応用したところ、CMYK=0|6|36|21に対応する軽微に過ぎない色変化#cabe81がもたらされて、はるかにより低い黄色(/マゼンタ)変色を明確に実証した。このように、この試験は、塩化第二鉄などの強い酸化剤が、非製剤化CBDAよりはるかに遅い速度で製剤化CBDAを酸化できるに過ぎないことを実証する。
【0173】
実施例6.
癲癇(および他の痙縮)の治療におけるCBDAの経皮持続放出送達のための、本発明のCBDAベースの製造物を確立する経路が、可洗性衣服が送達ビヒクルとして使用される場合を基に記載される。この種類のビヒクルは、靴下と、圧縮リスク(compression risk)と、膝袖と、を現行で含むいくつかのフォーマットにおいて特許付与(Anderson et al.の米国特許第9,669,012号を参照、その全内容は、参照により本明細書に全体が組み込まれる)および商業化されており、一部の点において経皮パッチに類似しているが、通気性(非閉塞性)と、乾燥と、快適性と、見た目の良さと、通常の日毎のルーチンの一部であることと、標準的な洗濯機サイクルにおおける可洗性と、などの多くの点において、ビヒクルはパッチから根本的に異なる。生産は、先ず、好都合には5ミクロンから50ミクロンの粒子サイズまで、粉末(ここでは本明細書に記載されるように作られる乾燥CBDA-LDHインターカレート)を粉砕すること、次いで特許第9,669,012号において叙述される方法と実施とにしたがって、粉砕された粉末を、単量体またはプレポリマなどの(粘性の)重合可能な液体中に、乾燥状態の点まで重合を可能とするために十分な長さの期間にわたり分散させることと、からなる。分散体(または懸濁液)は、ナイロンが最も一般的に使用される選択された紡績糸に適用されて、直ちに重合(またはプレポリマもしくは架橋可能なガムの場合、架橋)させられる。これを記載している時点において、紫外光を介する開始が最も一般的であり、本開示が光および(少なくともある特定の)酸化条件からのインターカレートされたCBDAの強い保護を実証することを想起すると、この開始方法は、CBDAの控えめに過ぎない分解を引き起こすことが予想可能であり、相対的に高い分子量(訳3,000MWから10,000MW)のプレポリマを選択することにより、要求されるUV曝露を短くすることができる。さらに、本明細書において議論されるように、CBDAと共にインターカレートされて、マトリックス反応に対するそれらの効果を最小化できる、商業的に入手可能なラジカルスカベンジャーがある。UVの他に、別の可能な重合方法は、空気中の湿度との接触で重合する液体の使用を通じたものであり、他の穏やかな化学が無数の種類のプレポリマを架橋するために利用可能である。これは、標準的な産業機器を使用して衣服を編むために要求される物理的特性(紡績糸へのポリマの強い付着を含む)を維持しながら行うことができて、その結果、包埋された本発明のCBDA-LDH粒子を含有する紡績糸は、圧縮スリーブ中に編まれて、これは次いでスリーブと接触した皮膚にCBDAを送達する。ヒトまたは哺乳動物において抗痙攣効果について強く予測的な確立されたインビトロおよび非哺乳動物インビボスクリーニング方法は、学術と特許文献とから公知であり、例えば、上で参照されたStottの米国特許出願公開第20180228751号に記載される、アメーバの属を使用するディクチオステリウム・ディスコイデウム(Dictyostelium discoideum)ベースのスクリーニングがある。そのような試験は、インターカレートおよび粉砕された本発明の実施形態に応用され得る。小児におけるレノックス-ガストー症候群は、この実施形態の優れた適応症であり得て、その理由は、親が、成人の管理下において日中用錠剤を用意することとは対照的に、単純に子供に衣服を着用させることにより子供がCBDAの安定した投薬を得ていることを確実にすることができて、またCBDAはこれらの適応症において非常に高い効力を有することが示されているからである。
【0174】
本発明はそのいくつかの例示的な実施形態の観点において記載されたが、当業者は、本発明が添付の請求項の精神および範囲内での修飾と共に実施され得ることを認識する。よって、本発明は、前述のとおりの実施形態に限定されるべきではなく、本明細書において提供される記載の精神および範囲内のそのすべての修飾および均等物をさらに含むべきである。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状材料であって、
層状複水酸化物(LDH)粒子中にインターカレートされたオリベトール酸誘導体、
を有してなり、
前記オリベトール酸誘導体は、酸性カンナビノイドまたはアモルフルチンである、
ことを特徴とする粒子状材料。
【請求項2】
前記オリベトール酸誘導体は、カンナビジオール酸(CBDA)と、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)と、カンナビゲロール酸(CBGA)と、カンナビネロール酸(CBNRA)と、カンナビノール酸(CBNA)と、アジュレミン酸と、カンナビジバリン酸(CBDVA)と、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)と、カンナビジバリン酸(CBDVa)と、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-3-(3-メチル-2-ブテン-1-イル)-6-(2-フェニルエチル)-安息香酸と、3-[(2E)-3,7-ジメチル-2,6-オクタジエン-1-イル]-2-ヒドロキシ-4-メトキシ-6-(2-フェニルエチル)-安息香酸と、からなる群から選択される、
請求項1記載の粒子状材料。
【請求項3】
23℃で6か月間維持された場合に、カルボキシル化された非分解形態において前記カンナビノイドの少なくとも50%を保持する、
請求項1記載の粒子状材料。
【請求項4】
前記粒子状材料中の少なくとも一部の粒子は、
一般式M
II
1-xM
III
x(OH)
2(C
1-)
x・mH
2O、
を有してなり、
前記一般式中、
xは、0.1から0.4までであり、
mは、0から0.50までであり、
M
IIは、Mg
2+と、Co
2+と、Ni
2+と、Cu
2+と、Zn
2+と、Ca
2+と、からなる群から選択されて、
M
IIIは、Al
3+と、Fe
3+と、Cr
3+と、Ga
3+と、Bi
3+と、からなる群から選択されて、
C
1-は、脱プロトン化された酸性カンナビノイドである、
請求項1記載の粒子状材料。
【請求項5】
M
IIは、Mg
2+またはZn
2+である、
請求項4記載の粒子状材料。
【請求項6】
M
IIIは、Al
3+である、
請求項4記載の粒子状材料。
【請求項7】
C
1-は、カンナビジオール酸(CBDA)、テトラヒドロカンナビノール酸(THCA)、カンナビゲロール酸(CBGA)、カンナビネロール酸(CBNRA)、カンナビノール酸(CBNA)、カンナビジバリン酸(CBDVA)、テトラヒドロカンナビバリン酸(THCVA)、またはカンナビジバリン酸(CBDVa)である、
請求項4記載の粒子状材料。
【請求項8】
自由流動性粉末の形態である、
請求項4記載の粒子状材料。
【請求項9】
組成物であって、
請求項1記載の粒子状材料と、
担体と、
を有してなる、
ことを特徴とする組成物。
【請求項10】
前記担体は、飲料である、
請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記担体は、ガス噴射剤と、クリームと、ローションと、軟膏と、点眼剤と、経口溶液と、点耳溶液と、坐剤と、注射可能な溶液と、化粧品と、経膣的に送達可能な溶液と、衣服と、からなる群から選択される、
請求項9記載の組成物。
【請求項12】
対象において5-HT1A受容体が関与する疾患または状態の処置に使用される、
請求項1記載の粒子状材料。
【請求項13】
前記疾患または前記状態は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と、拒食症と、うつ病と、薬物中毒と、社交恐怖と、統合失調症と、統合失調感情障害と、双極性疾患と、癲癇と、疼痛と、嘔気と、精神病と、からなる群から選択される、
請求項12記載の粒子状材料。
【請求項14】
請求項1記載の粒子状材料の粉末であって、
前記粒子状材料の粒子は、5ミクロン未満の一次結晶子サイズを有するか、または0.1ミクロンから100ミクロンまでの範囲内の直径または最大寸法を有する、
ことを特徴とする粉末。
【請求項15】
請求項4記載の酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粉末を含む粒子状材料、組成物、または粉末を製造する方法であって、
カンナビジオレートイオンを含む材料を、硝酸アルミニウム溶液と、硝酸亜鉛溶液と、塩基と、を用いて共沈殿させることと、
前記酸性カンナビノイドをインターカレートされたLDH粒子を溶液から回収することと、
を有してなる、
ことを特徴とする方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
本発明はまた、粒子状材料が0.1ミクロンから100ミクロンまでの範囲内の直径または最大寸法を有する、請求項1乃至9または32乃至52のいずれかおよび/または先行する段落および本明細書中の他の箇所に記載される複数の粒子状材料と、医薬的に許容される担体と、を含む、対象への外用適用用の製剤を提供する。一部の態様において、医薬的に許容される担体は、水性液である。他の態様において、医薬的に許容される担体は、極性溶媒である。追加の態様において、医薬的に許容される担体は、クリームである。いっそうさらなる態様において、医薬的に許容される担体は、ローションである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0152
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0152】
以下の表2において、ニートCBDAとLDH-インターカレート試料A-19とについて、CBDAスペクトルにおいて見られる8つのカルボキシル関連ピークは、合理的に割り当てられ得る近くの位置にシフトしたか、または1621cm-1におけるCBDAピークの場合と同様、以下の本文中で1621のピークについて示されるように、任意の割当が独立してサポートされなければならないほどに遠くにシフトした。1800cm-1までの領域における14の非カルボキシル関連ピークは以下において、インターカレーションにおいて波数を有意にシフトさせないことが見られて、ピーク強度における強い変化は、反射率/吸光度特性と、環境変化(静電、誘電性など)と、に対するLDHマトリックスの強い効果に起因する可能性が高い。
【国際調査報告】