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特表2023-545523過酸化水素を生成するための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】過酸化水素を生成するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C01B 15/023 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
C01B15/023 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523091
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 CN2021123748
(87)【国際公開番号】W WO2022078427
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202011095895.3
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503191287
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司
(71)【出願人】
【識別番号】509059424
【氏名又は名称】中国石油化工股▲ふん▼有限公司石油化工科学研究院
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】高国華
(72)【発明者】
【氏名】田雅楠
(72)【発明者】
【氏名】楊克勇
(72)【発明者】
【氏名】宗保寧
(57)【要約】
過酸化水素を生成するための方法及びシステムを開示する。前記方法が以下の工程を含む:1)アルキルアントラキノンを含有する作動溶液を、水素付加触媒粒子および水素が存在する条件で水素化反応させ、分離して循環スラリーおよび水素化溶液を得て、かつ循環スラリーをリサイクルする工程;2)前記水素化溶液を2つの流れに分け、水素化溶液の第1の流れを再生して、再生水素化溶液を得る工程;3)第2の流れの水素化溶液と再生水素化溶液とを酸素含有ガスと接触させて酸素反応させ、酸化溶液を得る工程;4)および、前記酸化溶液に対して抽出分離を実施して、過酸化水素を含む抽出液とラフィネートとを得て、前記ラフィネートをリサイクルする工程。前記方法は反応器床の温度差を実質的になくし、水素化反応選択性、装置効率、および水素化効率を効果的に高め、水素付加触媒の寿命を延ばすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、過酸化水素を生成するための方法:
1)アルキルアントラキノンを含有する作動溶液を水素化反応器に供給し、水素付加触媒粒子および水素が存在する条件でアルキルアントラキノンを水素化反応させて水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子を含むスラリーを得て、当該スラリーから水素付加触媒粒子を回収して水素付加触媒粒子に富む循環スラリーおよび水素付加触媒粒子を実質的に含まない水素化溶液を得て、前記循環スラリーを前記水素化反応器に戻す工程;
2)前記水素化溶液を2つの流れに分け、水素化溶液の第1の流れを再生して水素化溶液の第1の流れに含まれる副生成物の少なくとも一部をアルキルアントラキノンに変換させて、再生水素化溶液を得る工程;
3)第2の流れの水素化溶液および前記再生水素化溶液を酸素含有ガスと接触させて酸化反応させ、過酸化水素とアルキルアントラキノンとを含有する酸化溶液を得る工程;および
4)前記酸化溶液に対して抽出分離を実施して、過酸化水素を含む抽出液と、アルキルアントラキノンを含むラフィネートとを得て、前記ラフィネートを作動溶液の一部として使用するために水素化反応器に戻す工程;
ここで、前記循環スラリーの体積流量と前記作動溶液の体積流量との比率は6~20:1であり、好ましくは8~18:1であり、前記第1の流れの水素化溶液の質量流量と第2の流れの水素化溶液の質量流量との比率は10~50:50~90であり、好ましくは15~40:60~85である。
【請求項2】
前記工程1)の前記の水素化反応がスラリー床反応器中で実施され、
好ましくは、前記の水素化反応の条件は、0.03~0.35MPa、好ましくは0.05~0.2MPaの圧力;40~70℃、好ましくは45~65℃の温度;25~700:1、好ましくは30~500:1である作動溶液の質量流量の水素付加触媒の質量流量に対する比率;4~14:1、好ましくは5~10:1である前記水素の標準体積流量の作動溶液の体積流量に対する比率を含み、
好ましくは、前記の水素化反応はさらに水素含有テールガスを生成し、かつ前記工程1)は前記水素含有テールガスを排出すること、および/または前記水素含有テールガスを圧縮し、次いで前記水素化反応器に戻すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程1)が第1の冷却溶液を得るために前記循環スラリーに対して第1の冷却を実施すること、および前記第1の冷却溶液を前記水素化反応器に戻すことをさらに含み、
好ましくは、前記第1の冷却溶液の温度は40~70℃であり、好ましくは45~65℃である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記工程2)の前記再生が再生反応器中で実施され、当該再生反応器は固定床反応器、スラリー床反応器またはそれらの組み合わせから選択され、
好ましくは、前記再生反応器が固定床反応器である場合、再生触媒が改質アルミナであり、より好ましくは、当該改質アルミナは、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択される少なくとも1つの金属によって改質されたアルミナであり、
好ましくは、前記再生反応器がスラリー床反応器である場合、前記再生触媒が改質分子篩であり、より好ましくは、当該改質分子篩はアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択される少なくとも1つの金属によって改質された分子篩である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程3)が、前記酸化反応の前に、前記の水素化溶液の第2の流れと再生水素化溶液とを混合して混合溶液を得て、当該混合溶液に対して第2の冷却を実施し、第2の冷却溶液を得ることをさらに含み、
好ましくは、前記工程3)が、前記酸化反応の前に、前記第2の冷却溶液を第1のpH調節剤と混合して調節溶液を得ること、次いで、任意選択的に、前記調節溶液を濾過することをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程4)で使用される抽出剤が、水と選択可能な第2のpH調節剤とを含み、
好ましくは、前記工程4)が、前記抽出を行う前に、前記酸化溶液に対して第3の冷却を実施して、第3の冷却溶液を得ることをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工程4)が、少なくとも10%質量流量のラフィネートを真空乾燥して残留液を得ること、前記残留液および残りのラフィネートを水素化反応器に一緒に戻すことをさらに含み、
好ましくは、少なくとも30%質量流量の前記ラフィネートを真空乾燥し、
好ましくは、前記真空乾燥では水および/または有機物をさらに生成し、かつ前記工程4)は前記水および/または有機物を循環させることをさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
水素化ユニット、再生ユニット、酸化ユニットおよび分離ユニットを含む、過酸化水素を生成するためのシステムであって:
前記水素化ユニットは、水素付加触媒粒子および水素が存在する条件でアルキルアントラキノンを含む作動溶液を水素化反応させて水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子を含むスラリーを得て、得られた当該スラリーから水素付加触媒粒子を回収して水素付加触媒粒子に富む循環スラリーおよび水素付加触媒粒子を実質的に含まない水素化溶液を得て、前記循環スラリーを再循環させるように構成されており、
前記再生ユニットは、前記水素化溶液の一部を再生してその中に含まれる副生成物の少なくとも一部をアルキルアントラキノンに変換させて、再生水素化溶液を得るように構成されており、
前記酸化ユニットは、前記水素化溶液の残りの部分および前記再生水素化溶液を酸素含有ガスと接触させて酸素反応させ、過酸化水素及びアルキルアントラキノンを含む酸化溶液を得るように構成されており、および
前記分離ユニットは、前記酸化溶液に対して抽出分離を実施して、過酸化水素を含む抽出液と、アルキルアントラキノンを含むラフィネートとを得て、前記ラフィネートを前記水素化ユニットに戻すように構成されている、システム。
【請求項9】
前記水素化ユニットが作動溶液入口、水素含有ガス入口、水素化溶液出口および任意選択の水素含有テールガス出口を備え、
前記再生ユニットは水素化溶液入口および再生水素化溶液出口を備え、
前記酸化ユニットは水素化溶液入口、酸素含有ガス入口、酸化溶液出口および酸素含有テールガス出口を備え、
前記分離ユニットは酸化溶液入口、抽出剤入口、抽出液出口およびラフィネート出口を備え、
ここで、前記水素化ユニットの水素化溶液出口は前記再生ユニットおよび酸化ユニットの水素化溶液入口とそれぞれ連通し、前記再生ユニットの再生水素化溶液出口は前記酸化ユニットの水素化溶液入口と連通し、前記酸化ユニットの酸化溶液出口は前記分離ユニットの酸化溶液入口と連通し、前記ラフィネート出口は前記水素化ユニットの作動溶液入口と連通している、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記水素化ユニットがスラリー床反応器形態の水素化反応器およびフィルターを含み、前記水素化反応器は反応ゾーンおよび気液分離ゾーンを含み、かつ作動溶液入口、少なくとも1つの水素含有ガス入口、循環スラリー入口、スラリー出口および水素含有テールガス出口を有し、前記フィルターはスラリー入口、循環スラリー出口及び水素化溶液出口を有し、ここで、前記水素化反応器のスラリー出口は前記フィルターのスラリー入口と連通し、前記フィルターの循環スラリー出口は前記水素化反応器の循環スラリー入口と連通し、かつ任意選択的に、前記水素化反応器の水素含有テールガス出口は、前記水素化反応器の1つの水素含有ガス入口と連通しており、
好ましくは、前記水素化ユニットがコンプレッサをさらに備え、水素含有テールガスを圧縮して前記水素化反応器にリサイクルするために、前記コンプレッサは前記水素化反応器の水素含有テールガス出口と前記水素化反応器の1つの水素含有ガス入口と連通しており、
好ましくは、前記水素化ユニットが第1の冷却器をさらに備え、前記循環スラリーを前記水素化反応器にリサイクルする前にそれを冷却するために、前記第1の冷却器は前記フィルターの循環スラリー出口と前記水素化反応器の循環スラリー入口と連通している、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
前記再生ユニットが再生反応器を含み、当該再生反応器は水素化溶液入口および再生水素化溶液出口を有し、
好ましくは、前記再生ユニットが熱交換器をさらに備え、再生される水素化溶液と前記再生水素化溶液との間で熱交換を行うために、前記熱交換器は前記水素化ユニットの水素化溶液出口と、前記再生反応器の水素化溶液入口と、および前記再生反応器の再生水素化溶液出口と連通しており、
より好ましくは、前記再生ユニットが加熱器をさらに備え、熱交換後に水素化溶液を加熱するために、前記加熱器は、前記熱交換器の水素化溶液出口と前記再生反応器の水素化溶液入口と連通している、請求項8~10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記酸化ユニットが酸化反応器を含み、当該酸化反応器が水素化溶液入口、酸素含有ガス入口、酸化溶液出口および酸素含有テールガス出口を有し、
好ましくは、前記酸化ユニットが第2の冷却器をさらに備え、前記水素化溶液の残りと前記再生水素化溶液とを混合させて得られた混合溶液を冷却するために、前記第2の冷却器は前記水素化ユニットの水素化溶液出口と、前記再生ユニットの再生水素化溶液出口と、および前記酸化反応器の水素化溶液入口とに連通しており、
より好ましくは、前記酸化ユニットが精密フィルターをさらに備え、冷却後の混合溶液を濾過するために、前記精密フィルターは前記第2の冷却器の出口と前記酸化反応器の水素化溶液入口と連通している、請求項8~11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記分離ユニットが抽出塔を含み、当該抽出塔が酸化溶液入口、抽出剤入口、抽出液出口およびラフィネート出口を有し、
好ましくは、前記分離ユニットが第3の冷却器をさらに備え、前記酸化溶液に対して冷却を行うために、当該第3の冷却器は前記酸化ユニットの酸化溶液出口と前記抽出塔の酸化溶液入口と連通しており、
好ましくは、前記分離ユニットは真空乾燥塔をさらに備え、少なくとも10%質量流量の前記ラフィネートを真空乾燥して、得られた残留液を前記水素化ユニットに戻すために、当該真空乾燥塔は前記抽出塔のラフィネート出口と前記水素化ユニットの作動溶液入口と連通しており、
より好ましくは、少なくとも10%質量流量の前記ラフィネートを真空乾燥することにより得られた水および/または有機物を前記抽出塔に戻すために、前記真空乾燥塔が前記抽出塔の抽出剤入口または酸化溶液入口と連通している、請求項8~12のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は2020年10月14日に出願された、出願番号が202011095895.3で、発明の名称が過酸化水素を生成するための方法およびシステムである特許出願の優先権を主張し、その内容の全てが本書に含まれる。
(技術分野)
本出願は過酸化水素を生成するための領域に関し、具体的には、過酸化水素を生成するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素はオキシドールとも呼ばれ、グリーンな化学工業製品であり、その生成および使用中に汚染がほとんどなく、したがって「クリーンである」化学工業製品と呼ばれる。これは、酸化剤、漂白剤、消毒剤、脱酸剤、重合開始剤および架橋剤として使用することができ、化学工業、製紙、環境保護、電子、食品、医薬、紡績、鉱業、農業廃棄物処理などの産業において広く使用されている。
【0003】
アントラキノン法は工業的に過酸化水素を生成するための主流的な方法であり、生産量では過酸化水素の99%以上が世界中でアントラキノン法によって生成されている。通常、既存のアントラキノンプロセスは水素化、酸化、抽出および循環作動溶液の後処理などの工程を含み、ここで、アルキルアントラキノンを含有する作動溶液と水素とは、触媒が収納されている水素化反応器内で水素化反応が行われ、対応する水素化アントラキノンが生成され、得られた溶液を水素化溶液と呼ぶ。酸素化反応器内において、水素化溶液は酸素含有雰囲気(例えば、空気)の中で酸化反応を行い、水素化アントラキノンを元のアルキルアントラキノンに戻し、同時に過酸化水素を生成し、得られた溶液を酸化溶液と呼ぶ。水中での過酸化水素の溶解度と作動溶液での溶解度が異なることと、作動溶液および水の密度の差を利用して、酸化溶液中の過酸化水素を純水で抽出し、水で抽出した後に得られた作動溶液(ラフィネートとも呼ばれる)は後処理工程を経て再利用する。中国で一般的に使用されている後処理プロセスはHをKCO溶液で乾燥させて脱水することにより分解し、沈殿によりアルカリを分離した後、粘土床内の活性アルミナを用いて分解生成物を吸着させることにより再生することを含む。
【0004】
中国で使用されている過酸化水素の生成技術は固定床水素化プロセスを採用しており、操作が簡単で触媒分離が不要であるという利点があるが、多くの欠点もある。
【0005】
(1)反応床層には大きな温度上昇(8~10℃)とローカルホットスポットとが存在するため、水素化効率は制限され(6~8g/L)、装置効率は低くなる。高い水素化効率を有する同様の規模の装置と比較して、作動溶液の循環量がより多く、ポンプの電力消費がより高い。
【0006】
(2)触媒は不活性化されやすく、定期的に再生または交換しなければならず、水蒸気を消費するだけでなく、作動溶液および触媒の貴金属の流失を引き起こす。現在中国で使用されている固定床水素化プロセスでは、触媒は3~6ヶ月に1回、水蒸気によって再生される必要がある。
【0007】
(3)作動溶液は分解しやすく、工業的には大量の活性アルミナを使用して循環作動溶液を連続的に再生し、活性アルミナを頻繁に交換する必要があり、その結果、大量の固体有害廃棄物が発生し、作動溶液の損失に遭遇する。例えば、1トンの過酸化水素生成物が生成されるのに、5kgの活性アルミナが消費され、3kgの作動溶液が失われる。
【0008】
(4)装置の安全性が悪く、循環作動溶液中の飽和水分を除去し、作動溶液の再生を強化するために炭酸カリウム乾燥塔を採用する必要がある。過酸化水素はアルカリによって分解されるため、潜在的に深刻な安全上のリスクがある。過酸化水素装置では毎年安全事故が発生しており、安全事故の80%は酸化ユニットおよび抽出ユニットへのアルカリの漏洩によるものである。
【0009】
スラリー床水素付加プロセスを採用することにより、装置の生成効率を大幅に改善し、触媒および循環作動溶液の使用量を低減し、生産コストを低減し、水素化効率を向上させ(>10g/L)、かつ触媒を連続的に導入および引き抜くことによって触媒の活性の低減を相殺することができる。一方、スラリー床プロセスではアントラキノンの均一な水素化反応を可能にし、反応過程中のローカルホットスポットの形成によって引き起こされる作動溶液の分解を回避することができる。
【0010】
中国特許CN1233451Cには連続的に操作するスラリー床プロセス反応器が開示されており、反応器内は、床層を加熱/冷却するための熱交換管部材を1または複数層有し、自動洗浄が可能な液体固体分離器部材を1または複数層有する。ただし、反応器は複雑な構造を有し、多量の支持部材を反応器内に配置する必要があり、反応器内の流れパターンは栓流と類似し、複数層の熱交換部材が配置されているにもかかわらず、床層に温度差が依然として存在する。液体固体分離器部材は反応器内に配置されているため、オーバーホールが容易ではなく、液体固体分離器部材が分解および洗浄される必要があるとき、装置全体が停止される必要があり、柔軟性が悪い。
【0011】
中国特許CN1108984Cは、少なくとも一部が未還元の作動溶液を、γ-アルミナを主成分とする触媒と40~150℃で接触させて、作動溶液中の副生成物を再生する、作動溶液の再生法を開示している。作動溶液の再生は「未還元」、すなわち水素付加の前であるとき、γ-アルミナ触媒が不可避的に相当量の微粉末を生成し、これがスラリー床反応器内に入るとフィルターをブロックすることがある。作動溶液を40~150℃のγ-アルミナ触媒と接触させると、水素付加副生成物を再生させるだけでなく、二次副反応も発生し、得られた副生成物がスラリー床反応器に入り、水素付加触媒の活性に影響を及ぼす可能性がある。
【0012】
中国特許CN204237558Uには、アルカリ塔および真空乾燥機を含む、アントラキノン法を用いた過酸化水素生成プロセスの後処理装置が開示されている。中国特許出願CN1334235Aには、アントラキノン法を用いた過酸化水素生成のための後処理技術が開示されており、水素化によって必要とされるアルカリ度を確保し、作動溶液中の過酸化水素の一部を分解するために、水素化に戻された作動溶液の酸性度を中和するために定量的アルカリ注入を採用する。その後、真空乾燥によって水分を除去する。この2つの後処理技術は両方とも、アルカリ液をシステムに導入する必要があり、安全性が悪く、深刻な潜在的な安全性に関するリスクがある。
【0013】
したがって、過酸化水素を生成するための安全で、安定で、効率的な方法およびシステムが、当該分野において依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0014】
本出願の目的は反応器床の温度差を実質的になくし、水素化選択性、装置効率、および水素化効率を効果的に高め、および/または水素付加触媒の寿命を延ばすなど、上述の従来技術の1または複数の欠点を克服することができる、過酸化水素を生成するための方法およびシステムを提供することである。一方、前記システムはアルカリの漏洩によって引き起こされる深刻な潜在的安全性に関するリスクもなくし、装置を簡素化し、システムの安全性を効果的に向上させることもできる。
【0015】
上記目的を実現するために、一態様では、本出願は以下の工程を含む、過酸化水素を生成するための方法を提供する。
【0016】
1)アルキルアントラキノンを含有する作動溶液を水素化反応器に供給し、水素付加触媒粒子および水素が存在する条件でアルキルアントラキノンを水素化反応させ、水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子を含むスラリーを得て、当該スラリーから水素付加触媒粒子を回収して、水素付加触媒粒子に富む循環スラリーおよび水素付加触媒粒子を実質的に含まない水素化溶液を得て、前記循環スラリーを前記水素化反応器に戻す工程;
2)前記水素化溶液を2つの流れに分け、水素化溶液の第1の流れを再生して、水素化溶液の第1の流れに含まれる副生成物の少なくとも一部をアルキルアントラキノンに変換させ、再生水素化溶液を得る工程;
3)第2の流れの水素化溶液および再生水素化溶液を酸素含有ガスと接触させて酸化反応させ、過酸化水素とアルキルアントラキノンとを含有する酸化溶液を得る工程;および
4)酸化溶液を抽出分離して、過酸化水素を含む抽出液と、アルキルアントラキノンを含むラフィネートとを得て、前記ラフィネートを作動溶液の一部として使用するために水素化反応器に戻す工程;
ここで、前記循環スラリーの体積流量と前記作動溶液の体積流量との比率は6~20:1であり;
前記第1の流れの水素化溶液の質量流量と第2の流れの水素化溶液の質量流量との比率は10~50:50~90である。
【0017】
好ましくは、工程1)が、第1の冷却溶液を得るために前記循環スラリーに第1の冷却を実施する工程と、前記第1の冷却溶液を水素化反応器に戻す工程とをさらに含む。より好ましくは、前記第1の冷却溶液の温度は40~70℃である。
【0018】
別の態様では、本出願が水素化ユニット、再生ユニット、酸化ユニットおよび分離ユニットを含む、過酸化水素を生成するためのシステムを提供し;
前記水素化ユニットは、水素付加触媒粒子および水素が存在する条件で、アルキルアントラキノンを含む作動溶液を水素化反応させ、水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子を含むスラリーを得て、得られた当該スラリーから水素付加触媒粒子を回収して、水素付加触媒粒子に富む循環スラリーおよび水素付加触媒粒子を実質的に含まない水素化溶液を得て、前記循環スラリーを再循環させるように配置されており;
前記再生ユニットは、前記水素化溶液の一部を再生して、その中に含まれる副生成物の少なくとも一部をアルキルアントラキノンに変換させ、再生水素化溶液が得られるように配置されており;
前記酸化ユニットは、水素化溶液の残りの部分および再生水素化溶液を、酸素含有ガスと接触させて酸化反応させ、過酸化水素及びアルキルアントラキノンを含む酸化溶液を得るように配置されており、かつ
前記分離ユニットは、前記酸化溶液を抽出分離して、過酸化水素を含む抽出液と、アルキルアントラキノンを含むラフィネートとを得て、前記ラフィネートを前記水素化ユニットに戻すように配置されている。
【0019】
従来技術と比較して、本出願の方法およびシステムは、以下の利点を有する。
【0020】
1)本出願においては、循環スラリーが作動溶液中に特定の質量流量比で戻され、混合され、特に第1の冷却後の循環スラリーをスラリー床反応器に戻すため、反応器内の状態は完全混合流に近く、反応器床層の温度差は実質的になくなり、水素付加選択性、装置効率及び水素化効率が向上され、特に水素化効率は10~18g/Lに到達でき;
2)本出願の方法では、まず、アルキルアントラキノンの水素化反応を行い、その後、水素化溶液の一部を再生することにより、再生触媒の粉塵のスラリー床反応器への進入、およびフィルターの閉塞を回避することができ、二次副生成物による水素付加触媒の活性低下を防止することができ、水素付加触媒の寿命を伸ばし、活性喪失触媒の再生に伴うコストおよび損失を低減することができ;
3)本願においては、10~50%質量流量の水素化溶液を再生反応器に通すことにより、作動溶液の所望の再生効果が得られるので、高い水素化効率で装置を運転させつつ、40~80%質量流量の作動溶液の再生触媒量を低減することができ、廃棄物固形分の発生を大幅に低減することができ、装置の経済性及び環境保護性を大幅に向上させることができ;
4)本出願の方法およびシステムは、アルカリ塔の使用を完全に排除することができ、装置内の全酸環境を提供することができ、スラリー床の水素付加反応の安定性を保証しながら、システム内のアルカリ漏洩によって引き起こされる深刻な潜在的安全性に関するリスクを排除することができ、過酸化水素生成装置の本質的安全性を大幅に向上させることができ、特に、ラフィネートの少なくとも一部を真空乾燥して、有効かつ環境に優しい、有効利用のための残留液、水および/または有機物が得られる。
【0021】
本出願の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明において詳しく説明する。
【0022】
本明細書の一部を形成する図面は、本出願の理解を助けるために提供され、限定的であるとみなされるべきではない。本出願は、以下の詳細な説明と組み合わせて図面を参照して解釈することができる。図面は以下である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本出願の過酸化水素を生成するための方法およびシステムの好ましい実施形態の概略図である。
図2】本出願の過酸化水素を生成するための方法およびシステムのさらに好ましい実施形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここに記載の発明を実施するための形態は、本出願の説明および解釈の目的のみで、本出願を限定するものではない。
【0025】
本文に記載されるすべての具体的な数値(数値範囲の端点を含む)は、その精確な値に限定されず、当該精確な値に近い全ての値、例えば当該精確な値の±5%以内の全ての値をさらに包含すると解釈されるべきである。さらに、掲載された数値範囲に関して、範囲の端点間、各端点と範囲内の任意の具体的な値との間および各具体的な値同士の間で任意の組み合わせを行って、1または複数の新しい数値範囲が得られ、これらの新しい数値範囲も本出願において具体的に記載されているとみなされるべきである。
【0026】
特に明記しない限り、本文で使用される用語は当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有し、用語が本文で定義され、その定義が当該分野における通常の理解と異なる場合、本文の定義に従う。
【0027】
なお、本出願において、特に明記しない限り、前記「水素化効率」とは、作動溶液の体積に対する水素化溶液の酸化後に得られる過酸化水素の重量を、単位g/Lで表したもの、すなわち、酸化工程において、水素化溶液に含まれる水素化アントラキノンの転化率および収率を100%とした場合、1Lの作動溶液から酸化過程終了時に得られる過酸化水素の量(g)である。
【0028】
本出願では、特に明記しない限り、提示した全ての圧力値はゲージ圧である。
【0029】
本出願において、明示的に説明した内容以外、言及されていないいかなることまたは事項はいかなる変更もなしに、当該分野で知られているものを直接適用できる。さらに、本文に記載される実施形態のいずれも、本文に記載される1または複数の実施形態と自由に組み合わせることができ、そのようにして得られる技術的解決策または考えは、本出願の元の開示または元の説明の一部とみなされ、そのような組み合わせが明らかに不合理であることが当業者に明らかでない限り、本明細書に開示または予期されていない新規事項であると見なされるべきではない。
【0030】
教科書および学術論文を含むがこれらに限定されない、本文に言及される特許および非特許文献の全ては、参照によりその全体が本文に組み込まれる。
【0031】
上記のように、第1の態様において、本出願は、以下の工程を含む、過酸化水素を生成するための方法を提供する。
【0032】
1)アルキルアントラキノンを含有する作動溶液を水素化反応器に供給し、水素付加触媒粒子および水素が存在する条件でアルキルアントラキノンを水素化反応させ、水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子を含むスラリーを得て、当該スラリーから水素付加触媒粒子を回収して、水素付加触媒粒子に富む循環スラリーおよび水素付加触媒粒子を実質的に含まない水素化溶液を得て、前記循環スラリーを前記水素化反応器に戻す工程;
2)前記水素化溶液を2つの流れに分け、水素化溶液の第1の流れを再生して、水素化溶液の第1の流れに含まれる副生成物の少なくとも一部をアルキルアントラキノンに変換させ、再生水素化溶液を得る工程;
3)第2の流れの水素化溶液および再生水素化溶液を酸素含有ガスと接触させて酸化反応させ、過酸化水素とアルキルアントラキノンとを含有する酸化溶液を得る工程;および
4)酸化溶液を抽出分離して、過酸化水素を含む抽出液と、アルキルアントラキノンを含むラフィネートとを得て、前記ラフィネートを作動溶液の一部として使用するために水素化反応器に戻す工程。
【0033】
本出願によれば、通常、前記作動溶液はアルキルアントラキノン化合物を有機溶剤に溶解させることによって生成される溶液であり、アルキルアントラキノン化合物は、当該分野で従来使用されているものであってもよく、本出願では特に限定されない。好ましくは、前記アルキルアントラキノン化合物は、2-アルキル-9,10-アントラキノン(すなわち、2-アルキルアントラキノン)、9,10-ジアルキルアントラキノン(すなわち、ジアルキルアントラキノン)および対応するそれらの5,6,7,8-テトラヒドロ誘導体からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。さらに好ましくは前記2-アルキル-9,10-アントラキノンにおいて、アルキル基はC1-C5アルキル基であってもよく、その非限定的な例としてはメチル、エチル、sec-ブチル、tert-ブチル、tert-アミルおよびイソアミルが挙げられる。前記9,10-ジアルキルアントラキノンにおいて、前記2つのアルキル基は互いに同一であるかまたは異なり、C1-C5アルキル基から独立して選択され、例えば、メチル、エチルまたはtert-ブチルから選択される。特に好ましくは、前記9,10-ジアルキルアントラキノンの2つのアルキル基が1,3-ジメチル、1,4-ジメチル、2,7-ジメチル、1,3-ジエチル、2,7-ジ(tert-ブチル)または2-エチル-6-tert-ブチルであってよい。
【0034】
本出願によれば、前記作動溶液に使用される有機溶剤は、当該分野で従来使用されているものであってもよく、本出願では特に限定されない。好ましい実施形態において、前記有機溶剤は、非極性化合物と極性化合物との混合物である。好ましくは、非極性化合物が140℃より高い沸点を有する石油留分であり得る。その主成分はC9以上の芳香族炭化水素(重芳香族炭化水素)、例えば、トリメチルベンゼンの異性体、テトラメチルベンゼンの異性体、tert-ブチルベンゼンの異性体、メチルナフタレンの異性体およびジメチルナフタレンの異性体である。好ましくは、前記極性化合物が飽和アルコール、カルボン酸エステル、リン酸エステル、四置換尿素及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。通常、前記飽和アルコールはC7-C11飽和アルコールであり、その非限定的な例としては、ジイソブチルカルビノール、3,5,5-トリメチルヘキサノールおよびイソヘプタノールが挙げられる。前記カルボン酸エステルは例えば、メチルシクロヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、ブチルベンゾエート及びエチルヘプタノエートのうちの少なくとも1つである。前記リン酸エステルは例えば、トリオクチルホスフェート、トリ-2-エチルブチルホスフェート、トリ-2-エチルヘキシルホスフェート、トリ-n-オクチルホスフェートのうちの少なくとも1つである。前記四置換尿素は例えば、テトラ-n-ブチル尿素である。
【0035】
本出願によれば、好ましくは、前記水素付加触媒が当該分野で従来使用されている任意の懸濁可能な触媒系であり得る。例えば、前記水素付加触媒は担持触媒および/または非担持触媒から選択され得る、好ましくは担持触媒である。さらに好ましくは、前記担持触媒が担体と活性金属とを含み、前記活性金属は、第VIII族金属、第IB族金属、第IIB族金属またはそれらの組み合わせから選択され、好ましくは白金、ロジウム、パラジウム、コバルト、ニッケル、ルテニウム、銅、レニウムまたはそれらの組み合わせから選択される。前記担体は活性炭、炭化ケイ素、アルミナ、一酸化ケイ素、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウムまたはそれらの組み合わせから選択され、好ましくはアルミナ、シリカまたはそれらの組み合わせから選択される。さらにより好ましくは、前記水素付加触媒の重量を基準にして、当該水素付加触媒が、0.01~30wt%、好ましくは0.01~5wt%、より好ましくは0.1~5wt%の活性金属含有量を有する。
【0036】
好ましい実施形態において、前記水素付加触媒の粒径は、0.1~5000μm、好ましくは0.1~500μm、より好ましくは1~200μmである。
【0037】
本出願によれば、工程1)において、前記作動溶液中のアルキルアントラキノン化合物は水素付加触媒粒子が存在する条件で水素と水素化反応させられ、水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子を含むスラリーが得られ、ここで、前記水素化アントラキノンは、例えばエチル水素アントラキノンなど、酸化によって過酸化水素を生成することができる水素化生成物を指し、前記副生成物は、例えばテトラヒドロアルキルアントラキノン、オクタヒドロアルキルアントラキノン、デカヒドロアルキルアントラキノン、アルキルヒドロキシアントロン、アルキルアントロンなど、酸化によって過酸化水素を生成することはできない水素化生成物を指す。
【0038】
好ましい実施形態において、生成効率および水素化効率をさらに改善し、生産コストを低減するため、工程1)の水素化反応はスラリー床反応器中で実施される。前記スラリー床反応器の具体的な形態は本出願において特に限定されず、例えば機械的撹拌ケトルおよび、ガスリフトなどの公知の方法によってスラリー循環の駆動力を提供する他の形態の反応器であってもよい。
【0039】
さらに好ましい態様において、工程1)の水素化反応の条件は、0.03~0.35MPa、好ましくは0.05~0.2MPaの圧力;40~70℃、好ましくは45~65℃の温度;25~700:1、好ましくは30~500:1の水素付加触媒の質量流量に対する作動溶液の質量流量の比率;4~14:1、好ましくは5~10:1の作動溶液の体積流量に対する水素の標準体積流量の比率を含む。
【0040】
好ましい実施形態において、工程1)における前記循環スラリーの体積流量と前記作動溶液の体積流量との比率は、6~20:1、好ましくは8~18:1、より好ましくは12~18:1、例えば12~15:1である。
【0041】
本出願において、工程1)で用いられる水素付加触媒粒子の回収方法は、固液分離により前記スラリーを分離して水素化溶液と循環スラリーとを得ることができる限り、特に限定されない。ここで、前記水素化溶液は、水素化アントラキノン化合物および水素化副生成物を含み、水素付加触媒粒子を実質的に含まない有機溶液であり、前記循環スラリーは、前記水素付加触媒粒子に富む有機スラリーであり、水素付加触媒粒子を除いて水素化溶液と同じ組成を有していてもよい。
【0042】
本出願によれば、工程1)で使用される水素付加触媒粒子の回収、すなわちスラリーの固液分離は、水素化反応器の内部または外部で実施することができ、好ましくは水素化反応器の外部で実施する。好ましい実施形態において、前記スラリーの固液分離は、水素化反応器の外部のフィルター中で、より好ましくは自動逆洗フィルター中で実施される。
【0043】
さらに好ましい実施形態では、2~50個、好ましくは4~40個の自動逆洗フィルターを使用することができる。複数のフィルターが設けられている場合、操作がより便利であり、取り付けおよび保守も便利であり、スラリー床反応器の長期安定運行を達成することができる。好ましくは、それぞれのフィルターがフィルター圧力差検出器と自動逆洗切換弁とを独立して備え、フィルター圧力差を利用して多数のフィルターの交互のオンライン自動逆洗を実現することができる。
【0044】
本出願によれば、自動逆洗フィルターに使用されるフィルター媒体は、セラミック、焼結ステンレス鋼などの多孔質金属または他の材料などの任意の公知のフィルター材料から作製され得る。フィルター媒体は水素付加触媒粒子を通過させないような孔径を有するべきであり、したがって、孔径は水素付加触媒粒子の平均粒径および粒径分布に依存する。例えば、フィルター媒体の孔径は、0.1~200μm、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは0.5~50μmの範囲であってよい。
【0045】
本出願によれば、前記自動逆洗フィルターに使用される逆洗流体は、液体または気体、好ましくは液体であってもよい。例えば、前記液体は、新鮮な作動溶液および/または濾過された水素化溶液、好ましくは濾過された水素化溶液であってよい。
【0046】
好ましい実施形態では、工程1)における水素化反応はまた水素含有テールガス、すなわち水素化反応後に残存する水素含有ガスが得られ、かつ前記工程1)は前記水素含有テールガスを排出すること、および/または水素含有テールガスを圧縮し、次いで前記水素化反応器に戻すこと、好ましくは水素含有テールガスを圧縮し、次いで前記水素化反応器に戻すこと、例えば前記水素含有テールガスを圧縮し、次いでそれを前記水素供給物に戻すことをさらに含む。
【0047】
本出願において、前記水素化反応器の床温度をさらに低下させるために、前記循環スラリーの温度は水素化反応の温度と同じになるように調整され得る。好ましい実施形態では、前記工程1)は、第1の冷却溶液を得るために前記循環スラリーに対して第1の冷却を実施すること、および当該第1の冷却溶液を水素化反応器に戻すことをさらに含む。さらに好ましくは、前記第1の冷却溶液の温度が40~70℃、好ましくは45~65℃である。
【0048】
本出願によれば、工程2)において、水素化溶液の第1の流れ(本文では略して溶液Aとも呼ばれる)は再生触媒と接触して反応し、溶液A中のアルキルアントラキノンの水素化反応によって生成された副生成物の少なくとも一部を再生し、アルキルアントラキノン化合物に変換して再生された水素化溶液を得る。
【0049】
好ましい実施形態では、前記水素化溶液の第1の流れ(すなわち、溶液A)の質量流量と水素化溶液の第2の流れ(本文では略して溶液Bとも呼ばれる)の質量流量との比率は10~50:50~90、より好ましくは15~40:60~85、さらにより好ましくは15~30:70~85、例えば15~25:75~85である。前記のような特定の溶液Aと溶液Bとの質量流量の比率を使用することにより、作動溶液の再生効率を保証し、高い水素化効率を有する装置の長期安定運転を保障すると共に、作動溶液の再生に使用される再生触媒の量を低減し、廃棄固形物の発生を低減することができる。
【0050】
好ましい実施形態では、工程2)の前記再生反応が再生反応器中で実施され、当該再生反応器は固定床反応器、スラリー床反応器またはそれらの組み合わせから選択される。
【0051】
本出願によれば、前記再生触媒は、当該分野に慣用されている各種の再生触媒であってもよく、溶液Aを再生水素化溶液に変換できるものであれば特に限定されない。好ましくは、再生触媒が改質アルミナ、改質分子篩またはそれらの組み合わせから選択される。好ましい実施形態では、前記再生反応器が固定床反応器である場合、前記再生触媒が改質アルミナであり、当該改質アルミナは、アルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択される少なくとも1つの金属が改質されたアルミナである。前記再生反応器はスラリー床反応器である場合、前記再生触媒は改質分子篩であり、当該改質分子篩はアルカリ金属、アルカリ土類金属および希土類金属から選択される少なくとも1つの金属が改質された分子篩である。
【0052】
好ましい実施形態では、前記再生反応の条件が60~120℃、好ましくは80~100℃の温度;0.05~0.5MPa、好ましくは0.05~0.3MPaの圧力;再生触媒に対する前記溶液Aの質量比が0.1~10:1、好ましくは0.3~5:1を含む。前記の好ましい反応条件は、溶液Aの再生反応を促進するのに有利である。
【0053】
更なる好ましい実施形態において、再生反応の条件を満たすために、前記工程2)は、前記溶液Aと再生水素化溶液の少なくとも一部との間で熱を交換して熱交換溶液を得ること、次いで、得られた熱交換溶液に対して再生反応を実施することをさらに含む。ここで、前記熱交換過程においては、前記溶液Aは加熱され、再生水素化溶液は冷却され、前記熱交換溶液は、加熱された溶液Aを指す。
【0054】
さらに好ましい実施形態において、工程2)は、熱交換された溶液を加熱し、次いで再生反応を実施することをさらに含む。本出願では、前記溶液Aが熱交換および加熱させられることで溶液Aが再生反応条件に到達し、蒸気消費を節約することができる。
【0055】
好ましい実施形態において、工程3)で使用される酸素含有ガスの酸素含有量は、20~100体積%である。例えば、前記酸素含有ガスは酸素、空気または酸素と不活性ガスとの混合物から選択されてもよく、当該不活性ガスは窒素、ヘリウム、アルゴン、およびネオンから選択される少なくとも1つであってよく、好ましくは窒素である。特に好ましくは、前記酸素含有ガスは空気である。
【0056】
本出願によれば、工程3)において、溶液Bおよび再生水素化溶液を、酸素含有ガス中の酸素と接触させて反応させ、ここで、水素化アントラキノンが酸化されてアルキルアントラキノンおよび過酸化水素を得て前記酸化溶液を得る。
【0057】
好ましい実施形態において、工程3)の酸化反応は、酸化反応器中で実施され、当該酸化反応器は気泡塔、充填塔、プレート塔および撹拌釜からなる群から選択され得る。
【0058】
好ましい実施形態において、工程3)の酸化反応の条件には、30~60℃、好ましくは40~55℃の温度;0.1~0.5MPa、好ましくは0.2~0.5MPaの圧力が含まれる。前記好ましい反応条件は水素化溶液の酸化反応に有利であり、酸化液中の過酸化水素の含有量を向上させる。
【0059】
好ましい実施形態では、酸化反応の条件を満たすために、前記工程3)は、前記酸化反応の前に、前記溶液Bと再生水素化溶液とを混合して混合溶液を得ること、当該混合溶液に対して第2の冷却を実施し、第2の冷却溶液を得ることをさらに含む。好ましくは、前記第2の冷却溶液の温度が40~55℃、好ましくは40~50℃である。
【0060】
本出願によれば、酸化過程中の過酸化水素の分解を回避するために、前記溶液Bと再生水素化溶液とが混合されて得られた混合溶液、または前記第2の冷却溶液は、好ましくはわずかに酸性の状態で酸化反応させられる。好ましい実施形態では、前記工程3)は、前記酸化反応の前に、前記混合溶液または前記第2の冷却溶液を第1のpH調節剤と混合して調節溶液を得る工程をさらに含む、ここで、前記第1のpH調節剤は有機酸、無機酸、またはそれらの組み合わせから選択することができ、好ましくは無機酸である。前記無機酸は、好ましくはリン酸、塩酸、硫酸、硝酸またはそれらの組み合わせから選択され、より好ましくはリン酸である。さらに好ましくは、前記調節溶液中の酸含有量は1~10mg/L、好ましくは3~7mg/Lである。本願においては、前記調節溶液中の酸含有量が前記要件を満たす限り、前記第1の調節剤の使用量に特に制限はない。
【0061】
さらに好ましい実施形態では、前記第1のpH調節剤は水溶液の形態で存在し、さらに好ましくは、前記第1のpH調節剤の水溶液中の無機酸および/有機酸の質量濃度は40~90%である。
【0062】
好ましい実施形態では、前記工程3)は、前記酸化反応前に、前記溶液Bと再生水素化溶液とが混合されて得られた混合溶液、前記第2の冷却溶液または前記調節溶液を濾過することをさらに含む。前記濾過の目的は、酸化反応器に入る水素化溶液中に含まれる触媒微粒子、特に磨耗によって形成される水素付加触媒粒子を除去し、その固体粒子の量が10mg/Lを超えないことを確保し、ひいては酸化反応器の安全性を保証することにある。
【0063】
好ましい実施形態では、工程3)における酸化反応では、酸素含有テールガス、すなわち酸化反応後に残存する酸素含有ガスを生成し、かつ工程3)は、前記酸素含有テールガスを排出すること、および/または酸素含有テールガスを圧縮して前記酸化反応器に戻すこと、好ましくはテールガス処理後に直接酸素含有テールガスを排出することをさらに含む。前記テールガス処理は例えば、凝縮、カーボンファイバー吸着等により有機物を回収することにより行ってもよいし、直接燃焼により行ってもよい。
【0064】
本出願によれば、工程4)において、前記酸化溶液を抽出剤と接触させて液液抽出を行い、過酸化水素を含有する抽出液およびアルキルアントラキノンを含有するラフィネートを得る。好ましくは、前期抽出剤は水であり、前記抽出液は過酸化水素水溶液である。
【0065】
好ましい実施形態において、工程4)の前記抽出は、抽出塔中で実施される。
【0066】
本出願によれば、抽出過程中の過酸化水素の分解を回避するために、酸化溶液は好ましくはわずかに酸性の条件で抽出される。好ましい実施形態では、工程4)で使用される抽出剤が水と第2のpH調節剤とを含む。当該第2のpH調節剤は有機酸、無機酸またはそれらの組み合わせ、好ましくは無機酸から選択される。前記無機酸は、好ましくはリン酸、塩酸、硫酸、硝酸またはそれらの組み合わせから選択され、より好ましくはリン酸である。
【0067】
さらに好ましい実施形態において、前記抽出剤中の酸含有量は、100~200ppm、好ましくは120~180ppmである。本出願において、前記第2のpH調節剤の使用量は抽出剤中の酸含有量が前記要件を満たすことができれば、特に限定されない。
【0068】
好ましい実施形態では、前記第2のpH調節剤は水溶液の形態で存在し、前記第2のpH調節剤において、無機酸および/有機酸の質量濃度は40~90%である。
【0069】
好ましい実施形態では、前記抽出の条件には25~60℃、好ましくは40~50℃の温度;0.01~0.15MPa、好ましくは0.05~0.12MPaの圧力が含まれる。
【0070】
好ましい実施形態では、前記抽出の条件を満たすために、前記工程4)は前記抽出を行う前に、前記酸化溶液に対して第3の冷却を実施して、第3の冷却溶液を得ることをさらに含む。好ましくは、第3の冷却液の温度が40~55℃、好ましくは40~50℃である。
【0071】
本出願によれば、工程4)で得られたラフィネートは、水素化反応のために、作動溶液の一部として用いるために、工程1)に再循環させることができる。好ましい実施形態では、前記工程4)は、少なくとも10%質量流量のラフィネートを真空乾燥して残留液を得る工程、前記残留液および残りのラフィネートを水素化反応器に一緒に戻す工程をさらに含み、さらに好ましくは少なくとも30%質量流量の前記ラフィネートを真空乾燥する工程を含む。
【0072】
本出願において、前記ラフィネートを前記水素化反応器に戻す場合、前記循環作動溶液は前記ラフィネートを指し、少なくとも10%質量流量の前記ラフィネートを真空乾燥し、得られた残留液および残りのラフィネートを水素化反応器に戻す場合、前記循環作動溶液は残留液および残りのラフィネートを指す。
【0073】
さらに好ましい実施形態では、工程4)において、ラフィネートの少なくとも一部を加熱し、次いで真空乾燥するか、またはラフィネートの少なくとも一部を循環作動溶液と熱交換し、次いで加熱器によって加熱し、次いで真空乾燥する。
【0074】
さらに好ましい実施形態において、前記真空乾燥は真空乾燥塔中で実施され、ここで、前記真空乾燥塔は充填塔、篩板塔などの任意の公知の形態の塔または分離缶であってよい。さらに好ましくは、前記真空乾燥の条件には45~120℃、好ましくは45~100℃の温度、-100kPa~-50kPa、好ましくは-98kPa~-81kPa、より好ましくは-98kPa~-86kPaの圧力を含む。
【0075】
さらに好ましい実施形態では、前記真空乾燥では水および/または有機物も生成され、抽出剤の消費をさらに節約するために、前記工程4)は前記水および/または有機物を循環させることをさらに含む。真空乾燥により除去された水及び/又は有機物の有効利用により、材料損失が生じず、排水が発生しないので、本方法は有効で環境に優しい。
【0076】
本願発明者らは研究によって以下のことを発見した。水素化溶液の一部(すなわち、溶液A)の再生反応と組み合わせて、循環スラリーと作動溶液との体積流量の特定の比率を採用すること、前記の水素化溶液の一部と水素化溶液の残りの部分(すなわち、溶液B)との質量流量の特定の比率、すなわち、溶液Aと溶液Bとの質量流量の比率を採用すること、およびラフィネートを水素化反応に戻し、特に少なくとも10%質量流量の前記ラフィネートを真空乾燥させて、得られた残留液を水素化反応に戻すことにより、反応選択性および装置の生成効率の向上に有利であり、10~18g/Lの高い水素化効率を達成でき;水素付加触媒の寿命を延ばし、活性喪失触媒の再生によるコストおよび損失を低減することができ;スラリー床中での水素化反応の安定性を保証しながら、過酸化水素生成装置の本質的な安全性を向上させ、かつ環境に優しくて有効である。
【0077】
第2の態様では、本出願が水素化ユニット、再生ユニット、酸化ユニットおよび分離ユニットを含む、過酸化水素を生成するためのシステムを提供し;
前記水素化ユニットは、水素付加触媒粒子および水素が存在する条件で、アルキルアントラキノンを含む作動溶液を水素化反応させ、水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子を含むスラリーを得て、得られた当該スラリーから水素付加触媒粒子を回収して、水素付加触媒粒子に富む循環スラリーおよび水素付加触媒粒子を実質的に含まない水素化溶液を得て、前記循環スラリーを再循環させるように構成されており;
前記再生ユニットは、前記水素化溶液の一部を再生して、その中に含まれる副生成物の少なくとも一部をアルキルアントラキノンに変換させ、再生水素化溶液を生成するように構成されており;
前記酸化ユニットは、水素化溶液の残りの部分および再生水素化溶液を、酸素含有ガスと接触させて酸素反応させ、過酸化水素及びアルキルアントラキノンを含む酸化溶液を得るように構成されており;および
前記分離ユニットは、前記酸化溶液の抽出分離を実施して、過酸化水素を含む抽出液と、アルキルアントラキノンを含むラフィネートとを得て、前記ラフィネートを前記水素化ユニットに戻すように構成されている。
【0078】
好ましい実施形態では、前記水素化ユニットが作動溶液入口、水素含有ガス入口、水素化溶液出口および任意選択した水素含有テールガス出口を備える。前記再生ユニットは水素化溶液入口および再生水素化溶液出口を備える。前記酸化ユニットは水素化溶液入口、酸素含有ガス入口、酸化溶液出口および酸素含有ガス出口を備える。前記分離ユニットは酸化溶液入口、抽出剤入口、抽出液出口およびラフィネート出口を備える。ここで、前記水素化ユニットの水素化溶液出口は前記再生ユニットおよび酸化ユニットの水素化溶液入口とそれぞれ連通し、前記再生ユニットの再生水素化溶液出口は前記酸化ユニットの水素化溶液入口と連通し、前記酸化ユニットの酸化溶液出口は前記分離ユニットの酸化溶液入口と連通し、前記ラフィネート出口は前記水素化ユニットの作動溶液入口と連通する。
【0079】
好ましい実施形態では、前記水素化ユニットがスラリー床反応器形態の水素化反応器およびフィルターを含み、前記水素化反応器は反応ゾーンおよび気液分離ゾーンを含み、かつ作動溶液入口、少なくとも1つの水素含有ガス入口、循環スラリー入口、スラリー出口および水素含有テールガス出口を有する。作動溶液、循環スラリーおよび水素は対応する入口を通って水素化反応器の反応筒(すなわち、反応ゾーン)に入り、反応筒中の水素付加触媒粒子と接触して水素化反応を行い、アルキルアントラキノンは水素付加によりアントラキノンになるとともに、上向きに流動する。反応ストリームは反応筒の頂部開口から気液分離ゾーンに流入し、気液分離後、水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子を含むスラリーがスラリー出口から排出され、水素含有テールガスが気液分離ゾーンの頂部の水素含有テールガス出口から排出された後、水素含有テールガスは選択可能に冷却された後、ガス増圧装置に入り、次いで、1つの水素含有ガス入口に戻される。スラリー床反応器からのスラリーはフィルター内で濾過され、清液は水素化ユニットから水素化溶液出口を通って取り出される。フィルターの循環スラリー出口から流出した循環スラリーは外部循環として反応器の反応筒に戻され、継続的に反応に参加する。より好ましくは、水素化反応器が予備固液分離ゾーンをさらに含み、スラリーは予備固液分離ゾーンにおいて予備分離された後、さらなる分離のためにスラリー出口からフィルターに入る。
【0080】
さらなる好ましい実施形態では、前記水素化ユニットがコンプレッサをさらに備え、前記コンプレッサは前記水素化反応器の水素含有テールガス出口と前記水素化反応器の1つの水素含有ガス入口と連通するか、または前記コンプレッサは前記水素含有テールガスを圧縮して前記水素化反応器にリサイクルするために、前記水素化反応器の水素含有テールガス出口と前記水素化反応器の1つの水素含有テールガス入口と連通する。
【0081】
さらなる好ましい実施形態では、前記水素化ユニットが第1の冷却器をさらに備え、前記第1の冷却器は前記フィルターの循環スラリー出口と前記水素化反応器の循環スラリー入口と連通し、前記循環スラリーに対して第1の冷却を行って第1の冷却溶液が得られ、第1の冷却溶液を水素化反応器にリサイクルする。
【0082】
好ましい実施形態では、前記再生ユニットが再生反応器を含み、当該再生反応器は前記再生ユニットの水素化溶液入口および再生水素化溶液出口に対応する水素化溶液入口および再生水素化溶液出口を有する。
【0083】
さらに好ましい実施形態では、前記再生ユニットが熱交換器をさらに備え、前記熱交換器は前記水素化ユニットの水素化溶液出口と、前記再生反応器の水素化溶液入口と、前記再生反応器の再生水素化溶液出口と連通し、再生される水素化溶液(すなわち、溶液A)と前記再生水素化溶液との間で熱交換を行う。
【0084】
さらに好ましい実施形態では、前記再生ユニットが加熱器をさらに備え、前記加熱器は熱交換後に水素化溶液を加熱するために、前記熱交換器の水素化溶液出口と前記再生反応器の水素化溶液入口と連通する。
【0085】
好ましい実施形態では、前記酸化ユニットが酸化反応器を含み、当該酸化反応器が前記酸化ユニットの水素化溶液入口、酸素含有ガス入口、酸化溶液出口および酸素含有テールガス出口に対応する水素化溶液入口、酸素含有ガス入口、酸化溶液出口および酸素含有テールガス出口を有する。
【0086】
前記酸化反応器は、撹拌釜、充填塔およびプレート塔などの任意の既知の形態の反応器であってよい。前記酸化反応器には、充填材、ふるい板、ガス分配器、液体分配器などの気液分配装置を設けることができる。酸化反応器における気液接触方式は順流であってもよいし、逆流または交差流であってもよい。
【0087】
本出願によれば、前記酸化反応器は、1台または複数台であってもよい。複数台の酸化反応器の場合、酸化される流れは、複数の酸化反応器に直列または並列方式で入ってもよく、前記酸素含有ガスも、複数の酸化反応器に直列または並列方式で入ってもよい。
【0088】
本出願において、前記酸化反応器は内部または外部の熱交換器を備えてもよく、または複数の酸化反応器の間に熱交換器を設けて、酸化反応中に発生する反応熱を取り除き、酸化反応器における過熱の発生を回避してもよい。酸化反応器は、酸化溶液がガスによってシステムから取り出されることによって引き起こされる作動溶液の損失を回避するために、酸化溶液を酸素含有テールガスから分離するための内部または外部気液分離器を備えることができる。
【0089】
さらなる好ましい実施形態では、前記酸化ユニットが第2の冷却器をさらに備え、前記第2の冷却器は前記水素化ユニットの水素化溶液出口と、前記再生ユニットの再生水素化溶液出口と、前記酸化反応器の水素化溶液入口とに連通し、前記の水素化溶液の残り(すなわち、溶液B)と再生水素化溶液とを混合させて得られた混合溶液を冷却し、第2の冷却後に第2の冷却溶液が得られ、次いで、前記酸化反応器に入る。
【0090】
さらに好ましい実施形態では、前記酸化ユニットが精密フィルターをさらに備え、前記精密フィルターは第2の冷却後の混合溶液を濾過するために、前記第2の冷却器の出口と前記酸化反応器の水素化溶液入口と連通する。
【0091】
好ましい実施形態では、前記分離ユニットが抽出塔を含み、当該抽出塔が前記分離ユニットの酸化溶液入口、抽出剤入口、抽出液出口およびラフィネート出口と対応する酸化溶液入口、抽出剤入口、抽出液出口およびラフィネート出口を有する。
【0092】
本出願によれば、前記抽出塔は、充填塔、篩板塔、噴射塔、パルス充填塔などの任意の既知の形式の塔であってもよい。抽出塔において、液体分配器が設けられてもよく、前記酸化溶液と抽出剤とは、抽出塔において逆流方式で接触する。
【0093】
さらに好ましい実施形態では、前記分離ユニットが第3の冷却器をさらに備え、前記第3の冷却器は前記酸化ユニットの酸化溶液出口と前記抽出塔の酸化溶液入口と連通し、前記酸化溶液に対して第3の冷却を行い、次いで、それを抽出塔に入れる。
【0094】
本出願では、前記第1の冷却器、第2の冷却器および第3の冷却器は任意の既知の形式の熱交換器であってよく、好ましくは第1の冷却器、第2の冷却器および第3の冷却器はそれぞれ独立して、固定管板熱交換器、二重管熱交換器、板式熱交換器およびコイル熱交換器からなる群から選択され、より好ましくは固定管板熱交換器である。
【0095】
さらなる好ましい実施形態において、前記分離ユニットは真空乾燥塔をさらに備え、前記真空乾燥塔は前記抽出塔のラフィネート出口と前記水素化ユニットの作動溶液入口と連通し、少なくとも10%質量流量の前記ラフィネートを真空乾燥し、得られた残留液およびラフィネートの残りを前記水素化ユニットに戻す。
【0096】
さらなる好ましい実施形態では、前記真空乾燥塔が前記抽出塔の抽出剤入口または酸化溶液入口と連通し、少なくとも10%質量流量の前記ラフィネートが真空乾燥されて得た水および/または有機物を前記抽出塔に戻す。好ましくは、前記真空乾燥塔が前記抽出塔の抽出剤入口または酸化溶液入口と連通し、少なくとも30%質量流量の前記ラフィネートが真空乾燥されて得た水および/または有機物を前記抽出塔に戻す。
【0097】
以下、図面を参照して、本出願に係る過酸化水素を生成するための方法及びシステムの好ましい実施形態について説明する。
【0098】
図1に示すように、本出願の方法の好ましい実施形態において、アルキルアントラキノンを含む作動溶液1および水素2が、水素付加触媒粒子が存在する条件で、水素化反応器3において水素化反応され、水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子のスラリーならびに水素含有テールガス4を含むものが得られ、前記水素含有テールガス4を排出および/または圧縮し、次いで水素化反応器3に戻す。前記スラリーは水素化反応器3の外部のフィルター3’で触媒回収されて、水素付加触媒粒子に富む循環スラリー5および水素付加触媒粒子を実質的に含まない水素化溶液6が得られ、前記循環スラリー5は任意に冷却され、前記水素化反応器3に戻される。前記水素化溶液6は2つの流れ、すなわち、水素化溶液の第1の流れ7(すなわち、溶液A)および水素化溶液の第2の流れ8(すなわち、溶液B)に分けられる。溶液A(7)を再生反応器9で再生して、溶液Aに含まれる副生成物をアルキルアントラキノンに変換し、再生水素化溶液10が得られ、前記再生水素化溶液10を溶液B(8)と混合させて混合溶液11を得た。前記混合溶液11と酸素含有ガス12とを酸化反応器13の中で酸化反応させて、過酸化水素とアルキルアントラキノンとを含む酸化溶液14と酸素含有テールガス15とを得た。酸化溶液14は、抽出塔16において抽出剤17で抽出され、過酸化水素を含有する抽出液18とアルキルアントラキノンを含有するラフィネート19とが得られる。任意選択的に、前記ラフィネート19の少なくとも一部を真空乾燥塔20で真空乾燥して、水および/または一部の有機物を除去して残留液21が得られ、任意選択的に、除去された水および/または有機物22を抽出塔16に戻す。前記残留液21及びラフィネート19の残りは、循環作動溶液23として水素化反応器3に戻される。
【0099】
したがって、図1に示す好ましい実施形態では、本発明のシステムが以下の順で接続される、水素化反応器3およびフィルター3’を含む水素化ユニットと、再生反応器9を含む再生ユニットと、酸化反応器13を含む酸化ユニットと、抽出塔16および任意選択の真空乾燥塔20を含む分離ユニットとを含む。前記水素化ユニットは作動溶液入口、水素含有ガス入口、水素化溶液出口および任意選択の水素含有テールガス出口を有し、前記再生ユニットは水素化溶液入口および再生水素化溶液出口を有し、前記酸化ユニットは水素化溶液入口、酸素含有ガス入口、酸化溶液出口および酸素含有テールガス出口を有し、前記分離ユニットは酸化溶液入口、抽出剤入口、抽出液出口およびラフィネート出口を有し;
ここで、前記水素化ユニットの水素化溶液出口は前記再生ユニット及び酸化ユニットの水素化溶液入口にそれぞれ連通され、前記再生ユニットの再生水素化溶液出口は前記酸化ユニットの水素化溶液入口に連通され、前記酸化ユニットの酸化溶液出口は前記分離ユニットの酸化溶液入口に連通され、前記分離ユニットのラフィネート出口は前記水素化ユニットの作動溶液入口に連通され;
前記水素化反応器3は前記水素化ユニットの作動溶液入口及び水素含有ガス入口に対応する作動溶液入口と水素含有ガス入口とを有し、また、循環スラリー入口、スラリー出口及び水素含有テールガス出口を有し、前記フィルター3’はスラリー入口、循環スラリー出口及び前記水素化ユニットの水素化溶液出口に対応する水素化溶液出口を有し、ここで、前記水素化反応器のスラリー出口は前記フィルターのスラリー入口と連通し、前記フィルター3’の循環スラリー出口は前記水素化反応器3の循環スラリー入口と連通し、任意選択的に、前記水素化反応器3の水素含有テールガス出口は、前記水素化反応器3の水素含有ガス入口と連通する。
【0100】
図2に示すように、本出願の方法のさらに好ましい実施形態では、アルキルアントラキノンを含有する作動溶液1および水素2が、水素付加触媒粒子が存在する条件で水素化反応器3において水素化反応され、水素化アントラキノン、副生成物および水素付加触媒粒子のスラリーならびに水素含有テールガス4を含むものが得られ、前記水素含有テールガス4が圧縮機24によって圧縮され、前記水素化反応器3に戻される。前記スラリーは水素化反応器3の外部のフィルター3’で触媒回収されて、水素付加触媒粒子に富む循環スラリー5および水素付加触媒粒子を実質的に含まない水素化溶液6が得られ、前記循環スラリー5は第1の冷却器25によって冷却され、次いで、前記水素化反応器3に戻される。前記水素化溶液6は2つの流れ、すなわち、溶液A7および溶液B8に分けられる。溶液A7は、熱交換器26において再生反応器9からの再生水素化溶液10と熱交換され、熱交換後、加熱器27により溶液A7が加熱され、再生反応器9に入って再生され、それに含まれる副生成物がアルキルアントラキノンに変換されて再生水素化溶液10が得られる。熱交換後、再生水素化溶液10を溶液B8と混合させて混合溶液11を得た。前記混合溶液11は、第2の冷却器28で冷却され、次いで、第1のpH調節剤29と混合され、調節溶液が得られる。得られた精密フィルター30で濾過した後、酸化反応器13において酸素含有ガス12と酸化反応され、過酸化水素とアルキルアントラキノンを含む酸化液14と酸素含有テールガス15とが得られる。前記酸化溶液14は、第3の冷却器31によって冷却され、抽出塔16において抽出剤17で抽出され、過酸化水素を含有する抽出液18およびアルキルアントラキノンを含有するラフィネート19が得られる。任意選択的に、前記ラフィネート19の少なくとも一部を真空乾燥装置20によって真空乾燥して、水および/または一部の有機物を除去して残留液21が得られ、除去された水および/または有機物22を任意選択的に抽出塔16に戻す。残留液21及びラフィネート19の残りは、循環作動溶液23として水素化反応器3に戻される。
【0101】
したがって、図2に示すさらなる好ましい実施形態では、本出願のシステムが以下の順で接続される水素化反応器3、フィルター3’、圧縮機24および第1の冷却器25を含む水素化ユニットと、再生反応器9、熱交換器26および加熱器27を含む再生ユニットと、酸化反応器13、第2の冷却器28および精密フィルター30を含む酸化ユニットと、抽出塔16、第3の冷却器31および任意選択の真空乾燥塔20を含む分離ユニットとを備え;
前記水素化反応器3は前記水素化ユニットの作動溶液入口及び水素含有ガス入口に対応する作動溶液入口と水素含有ガス入口とを有し、また、循環スラリー入口、スラリー出口及び水素含有テールガス出口を有し、前記フィルター3’はスラリー入口、循環スラリー出口及び前記水素化ユニットの水素化溶液出口に対応する水素化溶液出口を有し、前記水素化反応器3のスラリー出口は前記フィルター3’のスラリー入口に連通され、前記水素化反応器3の水素含有テールガス出口は圧縮機24を通して前記水素化反応器3の水素含有ガス入口に連通され、前記フィルター3’の循環スラリー出口は第一冷却器25を通して前記水素化反応器の循環スラリー入口に連通され;
前記再生反応器9は前記再生ユニットの水素化溶液入口及び再生水素化溶液出口に対応する水素化溶液入口及び再生水素化溶液出口を有し、前記熱交換器26は前記水素化ユニットの水素化溶液出口、前記再生反応器の水素化溶液入口及び前記再生反応器の再生水素化溶液出口と連通され、前記加熱器27は前記熱交換器26の水素化溶液出口と前記再生反応器9の水素化溶液入口と連通され;
前記酸化反応器13は前記酸化ユニットの水素化溶液入口、酸素含有ガス入口、酸化溶液出口および酸素含有テールガス出口に対応する水素化溶液入口、酸素含有ガス入口、酸化溶液出口および酸素含有テールガス出口を有し、前記第2の冷却器28は前記水素化ユニットの水素化溶液出口、前記再生ユニットの再生水素化溶液出口および前記精密フィルター30と連通され、前記精密フィルター30は前記第2の冷却器28の出口と前記酸化反応器の水素化溶液入口と連通され;
前記抽出塔16は前記分離ユニットの酸化溶液入口、抽出剤入口、抽出液出口およびラフィネート出口に対応する酸化溶液入口、抽出剤入口、抽出液出口およびラフィネート出口を有し、前記第3の冷却器31は前記酸化ユニットの酸化溶液出口と前記抽出塔の酸化溶液入口と連通され、前記真空乾燥塔20は前記抽出塔16のラフィネート出口と前記水素化ユニットの作動溶液入口と連通され、任意選択的に、前記真空乾燥塔は前記抽出塔の抽出剤入口または酸化溶液入口とさらに連通している。
【実施例
【0102】
以下に実施例を挙げて本願を詳細に説明するが、本願はこれらに限定されるものではない。
【0103】
以下の実施例及び比較例では、水素付加触媒は担持触媒であり、ここで、担体はアルミナであり、活性金属はパラジウムであり、水素付加触媒の重量を基準にして、前記活性金属の含有量は2wt%であった。
【0104】
以下の実施例および比較例では、前記作動溶液は、質量比が59:21:9:6:5の重質芳香族化合物、トリオクチルホスフェート、エチルアントラキノン、テトラヒドロエチルアントラキノンおよびアミラントラキノンからなる。
【0105】
以下の実施例及び比較例では、水素化効率の測定方法は以下のことを含む。5mLの水素化溶液を分液漏斗に投入し、10mLの重質芳香族化合物及び20mLの1+4HSO溶液(水に対するHSOの体積比率1:4)を加え、発泡のためにOを混合溶液に通し、混合溶液の色が明黄色又は橙黄色(約10~15min)になるまで酸化させ、反応液を純水で4~5回、水約20mLずつで洗浄抽出し、抽出液を0.1mol/LのKMnO標準溶液で浅い赤い色になるまで滴定し、30秒間で色あせないと終了する。
【0106】
計算方式:水素化効率(g/L)=KMnO標準溶液の濃度(0.1mol/L)×KMnO標準溶液の体積(mL)×17.01/5。
【0107】
以下の実施例及び比較例では、水素付加選択性は以下のように算出した。
【0108】
水素付加選択性=測定された水素化効率/理論的に計算された水素化効率、
理論的に計算された水素化効率=消費された水素の体積量/22.4×34.02/作動溶液の体積量。
【0109】
〔実施例1〕
(1)水素付加触媒が存在する条件で、水素含有ガス入口を通してスラリー床反応器に42Nm/hの水素を供給し、対応する入口を通してスラリー床反応器に4.8m/hの作動溶液と57.6m/hの循環スラリーを供給し、ここで、スラリー床反応器内の反応筒の直径は300mmであり、水素化反応は、60℃の温度、0.3MPaの圧力および水素付加触媒の質量流量に対する作動溶液の質量流量の比率が110:1の条件で行われ、スラリーおよび水素含有テールガスを得た。
【0110】
前記スラリーを、並列に接続された3つのフィルターを通して濾過し、水素化溶液を逆洗液体として使用し、自動逆洗プログラムを用いて連続自動逆洗を行って、水素化溶液および循環スラリーを得た。濾過された触媒微粒子に富む循環スラリーを第1の冷却器によって59.3℃に冷却し、スラリー床反応器の反応筒に再循環させて引き続き反応に関与させる。ここで、循環スラリーと作動溶液との体積流量比率は12:1であった。
【0111】
(2)活性アルミナを充填した水素化粘土床(直径800mm、高さ1500mm)を介してA溶液(15%質量流量の水素化溶液)を再生反応させて再生水素化溶液を得た。ここで、再生反応温度が90℃、圧力は自然発生圧力、再生触媒に対するA溶液の質量比率が2:1である。
【0112】
(3)工程2)で得られた再生水素化溶液とB溶液(85%質量流量の水素化溶液)との混合溶液を第2の冷却器で45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量濃度が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を精密濾過器で濾過した後、酸化反応器に供給して、温度が50℃、圧力が0.3MPaの条件で、260Nm/hの空気と酸化反応を行い、酸素含有テールガスと酸化溶液を得た。
【0113】
(4)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が120ppmの酸性水溶液に希釈し、50℃の抽出温度、塔頂圧力が常圧の条件、質量流量比率が25:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、過酸化水素溶液とラフィネートを得た。
【0114】
(5)前記ラフィネートを真空乾燥塔で脱水し、得られた残留液を循環作動溶液として水素化反応ユニットに再循環させた。ここで、真空乾燥塔の圧力は-96kPaで、温度は70℃である。
【0115】
実験結果:スラリー床反応器の軸方向昇温は0.9℃、水素化溶液の水素化効率は13~13.2g/L、水素付加選択率>99%、装置は3200h運転、35%質量濃度の過酸化水素溶液をトータルで560t得た。その間に1tの活性アルミナを交換した。スラリー床反応器の触媒の活性と選択率は安定で、活性喪失現象は見られず、スラリー床反応器中の反応溶液の有効アントラキノン(すなわち、エチルアントラキノン、テトラヒドロエチルアントラキノン、アミラントラキノン)の含有量は安定であった。
【0116】
〔実施例2〕
(1)水素付加触媒が存在する条件で、ガス入口を通してスラリー床反応器に39Nm/hの水素を供給し、対応する入口を通してスラリー床反応器に4.8m/hの作動溶液と28.8m/hの循環スラリーを供給し、ここで、スラリー床反応器内の反応筒の直径は300mmであり、水素化反応は、60℃、0.3MPaおよび水素付加触媒の質量流量に対する作動溶液の質量流量の比率が110:1の水素付加反応条件で行われ、スラリーおよび水素含有テールガスを得た。
【0117】
前記スラリーを、並列に接続された4つのフィルターを通して濾過し、水素化溶液を逆洗液体として使用し、自動逆洗プログラムを用いて連続自動逆洗を行って、水素化溶液および循環スラリーを得る。濾過された触媒微粒子に富む循環スラリーを第1の冷却器によって58.5℃に冷却し、反応筒に再循環させて引き続き反応に関与させる。ここで、循環スラリーと作動溶液との体積流量比率は6:1であった。
【0118】
(2)活性アルミナを充填した水素化粘土床(直径800mm、高さ1500mm)を介してA溶液(15%質量流量の水素化溶液)を再生反応させて再生水素化溶液を得た。ここで、再生反応温度が90℃、圧力は自然発生圧力、再生触媒に対するA溶液の質量比率が2:1である。
【0119】
(3)工程2)で得られた再生水素化溶液とB溶液(85%質量流量の水素化溶液)との混合溶液を第2の冷却器で45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量濃度が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を精密濾過器で濾過した後、酸化反応器に供給して、温度が48℃、圧力が0.3MPaの条件で、230Nm/hの空気と酸化反応を行い、酸素含有テールガスと酸化溶液を得た。
【0120】
(4)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が150ppmの酸性水溶液に希釈し、質量流量比率が27:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、過酸化水素溶液とラフィネートを得た。
【0121】
(5)前記ラフィネートを真空乾燥塔で脱水し、得られた残留液を循環作動溶液として水素化反応ユニットに再循環させた。ここで、真空乾燥塔の圧力は-96kPaで、温度は50℃である。
【0122】
実験結果:スラリー床反応器の軸方向昇温は1.5℃、水素化溶液の水素化効率は11.7~11.8g/L、水素付加選択率>98%、装置は3200h運転、35%質量濃度の過酸化水素溶液をトータルで506t得た。その間に1.3tの活性アルミナを交換した。スラリー床反応器の触媒の活性と選択率は安定で、活性喪失現象は見られず、作動溶液の有効アントラキノンの含有量は比較的に安定であった。
【0123】
〔実施例3〕
(1)水素付加触媒が存在する条件で、ガス入口を通してスラリー床反応器に35Nm/hの水素を供給し、対応する入口を通してスラリー床反応器に4.8m/hの作動溶液と38.4m/hの循環スラリーを供給し、ここで、スラリー床反応器内の反応筒の直径は300mmであり、水素化反応は、60℃、0.3MPaおよび水素付加触媒の質量流量に対する作動溶液の質量流量の比率が110:1の水素付加反応条件で行われ、スラリーおよび水素含有テールガスを得た。
【0124】
前記スラリーを、並列に接続された3つのフィルターを通して濾過し、水素化溶液を逆洗液体として使用し、自動逆洗プログラムを用いて連続自動逆洗を行って、水素化溶液および循環スラリーを得る。濾過された触媒微粒子に富む循環スラリーを第1の冷却器によって59℃に冷却し、反応筒に再循環させて引き続き反応に関与させる。ここで、循環スラリーと作動溶液との体積流量比率は8:1であった。
【0125】
(2)活性アルミナを充填した水素化粘土床(直径800mm、高さ1500mm)を介してA溶液(10%質量流量の水素化溶液)を再生反応させて再生水素化溶液を得た。ここで、再生反応温度が60℃、圧力は自然発生圧力、再生触媒に対するA溶液の質量比率が2:1である。
【0126】
(3)工程2)で得られた再生水素化溶液とB溶液(90%質量流量の水素化溶液)との混合溶液を第2の冷却器で45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量濃度が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を精密濾過器で濾過した後、酸化反応器に供給して、温度が48℃、圧力が0.3MPaの条件で、209Nm/hの空気と酸化反応を行い、酸素含有テールガスと酸化溶液を得た。
【0127】
(4)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が180ppmの酸性水溶液に希釈し、質量流量比率が30:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、過酸化水素溶液とラフィネートを得た。
【0128】
(5)前記ラフィネートを真空乾燥塔で脱水し、得られた残留液を循環作動溶液として水素化反応ユニットに再循環させた。ここで、真空乾燥塔の圧力は-96kPaで、温度は50℃である。
【0129】
実験結果:反応器の軸方向昇温は1.2℃、水素化溶液の水素化効率は10.7~10.8g/L、水素付加選択率は98.5%であった。装置は3200h運転、35%質量濃度の過酸化水素溶液をトータルで468t得た。その間に1.3tの活性アルミナを交換した。スラリー床反応器の触媒の活性が13%減少し、選択率が1.4%減少し、活性喪失現象は見られ、作動溶液中の有効アントラキノンの含有量が5%減少した。
【0130】
〔実施例4〕
(1)水素付加触媒が存在する条件で、水素含有ガス入口を通してスラリー床反応器に42Nm/hの水素を供給し、対応する入口を通してスラリー床反応器に4.8m/hの作動溶液と86.4m/hの循環スラリーを供給し、ここで、スラリー床反応器内の反応筒の直径は300mmであり、水素化反応は、60℃の温度、0.3MPaの圧力および水素付加触媒の質量流量に対する作動溶液の質量流量の比率が110:1の水素付加条件で行われ、スラリーおよび水素含有テールガスを得た。
【0131】
前記スラリーを、並列に接続された3つのフィルターを通して濾過し、水素化溶液を逆洗液体として使用し、自動逆洗プログラムを用いて連続自動逆洗を行って、水素化溶液および循環スラリーを得る。濾過された触媒微粒子に富む循環スラリーを第1の冷却器によって冷却し、スラリー床反応器の反応筒に再循環させて引き続き反応に関与させる。ここで、循環スラリーと作動溶液との体積流量比率は18:1であった。
【0132】
(2)活性アルミナを充填した水素化粘土床(直径800mm、高さ1500mm)を介してA溶液(15%質量流量の水素化溶液)を再生反応させて再生水素化溶液を得た。ここで、再生反応温度が90℃、圧力は自然発生圧力、再生触媒に対するA溶液の質量比率が2:1である。
【0133】
(3)工程2)で得られた再生水素化溶液とB溶液(85%質量流量の水素化溶液)との混合溶液を第2の冷却器で45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量濃度が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を精密濾過器で濾過した後、酸化反応器に供給して、温度が50℃、圧力が0.3MPaの条件で、260Nm/hの空気と酸化反応を行い、酸素含有テールガスと酸化溶液を得た。
【0134】
(4)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が120ppmの酸性水溶液に希釈し、50℃の抽出温度、塔頂が常圧、質量流量比率が25:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、過酸化水素溶液とラフィネートを得た。
【0135】
(5)前記ラフィネートを真空乾燥塔で脱水し、得られた残留液を循環作動溶液として水素化反応ユニットに再循環させた。ここで、真空乾燥塔の圧力は-96kPaで、温度は70℃である。
【0136】
技術効果の実験結果:スラリー床反応器の軸方向昇温は0.7℃、水素化溶液の水素化効率は13~13.2g/L、水素付加選択率>99%、装置は3200h運転、35%質量濃度の過酸化水素溶液をトータルで560t得た。その間に700kgの活性アルミナを交換した。スラリー床反応器の触媒の活性と選択率は安定で、活性喪失現象は見られず、スラリー床反応器中の反応溶液の有効アントラキノンの含有量は安定であった。
【0137】
〔実施例5〕
(1)水素付加触媒が存在する条件で、水素含有ガス入口を通してスラリー床反応器に40Nm/hの水素を供給し、対応する入口を通してスラリー床反応器に4.8m/hの作動溶液と57.6m/hの循環スラリーを供給し、ここで、スラリー床反応器内の反応筒の直径は300mmであり、水素化反応は、60℃の温度、0.3MPaの圧力および水素付加触媒の質量流量に対する作動溶液の質量流量の比率が110:1の水素付加条件で行われ、スラリーおよび水素含有テールガスを得た。
【0138】
前記スラリーを、並列に接続された3つのフィルターを通して濾過し、水素化溶液を逆洗液体として使用し、自動逆洗プログラムを用いて連続自動逆洗を行って、水素化溶液および循環スラリーを得る。濾過された触媒微粒子に富む循環スラリーを第1の冷却器によって冷却し、スラリー床反応器の反応筒に再循環させて引き続き反応に関与させる。ここで、循環スラリーと作動溶液との体積流量比率は12:1であった。
【0139】
(2)活性アルミナを充填した水素化粘土床(直径800mm、高さ1500mm)を介してA溶液(40%質量流量の水素化溶液)を再生反応させて再生水素化溶液を得た。ここで、再生反応温度が90℃、圧力は自然発生圧力、再生触媒に対するA溶液の質量比率が5.3:1である。
【0140】
(3)工程2)で得られた再生水素化溶液とB溶液(60%質量流量の水素化溶液)との混合溶液を第2の冷却器で45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量濃度が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を精密濾過器で濾過した後、酸化反応器に供給して、温度が50℃、圧力が0.3MPaの条件で、238Nm/hの空気と酸化反応を行い、酸素含有テールガスと酸化溶液を得た。
【0141】
(4)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が120ppmの酸性水溶液に希釈し、50℃の抽出温度、塔頂が常圧、質量流量比率が26:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、過酸化水素溶液とラフィネートを得た。
【0142】
(5)前記ラフィネートを真空乾燥塔で脱水し、得られた残留液を循環作動溶液として水素化反応ユニットに再循環させた。ここで、真空乾燥塔の圧力は-96kPaで、温度は70℃である。
【0143】
技術効果の実験結果:スラリー床反応器の軸方向昇温は0.9℃、水素化溶液の水素化効率は12~12.2g/L、水素付加選択率>98.7%、装置は3200h運転、35%質量濃度の過酸化水素溶液をトータルで526t得た。その間に1.3tの活性アルミナを交換した。スラリー床反応器の触媒の活性と選択率は安定で、活性喪失現象は見られず、スラリー床反応器中の反応溶液の有効アントラキノンの含有量は安定であった。
【0144】
〔比較例1〕
(1)水素付加触媒が存在する条件で、ガス入口を通してスラリー床反応器に24.5Nm/hの水素を供給し、対応する入口を通してスラリー床反応器に4.8m/hの作動溶液と38.4m/hの循環スラリーを供給し、ここで、スラリー床反応器内の反応筒の直径は300mmであり、水素化反応は、60℃、0.3MPaおよび水素付加触媒の質量流量に対する作動溶液の質量流量の比率が110:1の水素付加反応条件で行われ、スラリーおよび水素含有テールガスを得た。
【0145】
前記スラリーを、並列に接続された3つのフィルターを通して濾過し、水素化溶液を逆洗液体として使用し、自動逆洗プログラムを用いて連続自動逆洗を行って、水素化溶液および循環スラリーを得る。濾過された触媒微粒子に富む循環スラリーを第1の冷却器によって冷却し、反応筒に再循環させて引き続き反応に関与させる。ここで、循環スラリーと作動溶液との体積流量比率は8:1で、水素化溶液は再生されずに直接酸化ユニットに入った。
【0146】
(2)工程1)で得られた水素化溶液を第2の冷却器で45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量濃度が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を精密濾過器で濾過した後、酸化反応器に供給して、操作温度が45℃、圧力が0.3MPaの条件で、145Nm/hの空気と酸化反応を行い、酸素含有テールガスと酸化溶液を得た。
【0147】
(3)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が185ppmの酸性水溶液に希釈し、質量流量比率が35:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、過酸化水素溶液とラフィネートを得た。
【0148】
(5)前記ラフィネートを真空乾燥塔で脱水し、得られた残留液を循環作動溶液として水素化反応ユニットに再循環させた。ここで、真空乾燥塔の圧力は-96kPaで、温度は50℃である。
【0149】
実験結果:水素化溶液の水素化効率は7.1~7.3g/Lにしか維持されず、水素付加選択性<97%、装置300h運転、27.5%質量濃度の過酸化水素溶液をトータルで37t得た。スラリー床反応器の触媒の活性は20%減少し、選択性は1.8%減少し、活性喪失現象は明らかで、作動溶液の有効アントラキノンの含有量は10%減少した。
【0150】
〔比較例2〕
(1)水素付加触媒が存在する条件で、ガス入口を通してスラリー床反応器に33Nm/hの水素を供給し、対応する入口を通してスラリー床反応器に4.8m/hの作動溶液と38.4m/hの循環スラリーを供給し、ここで、スラリー床反応器内の反応筒の直径は300mmであり、水素化反応は、60℃、0.3MPaおよび水素付加触媒の質量流量に対する作動溶液の質量流量の比率が110:1の水素付加反応条件で行われ、スラリーおよび水素含有テールガスを得た。
【0151】
前記スラリーを、並列に接続された3つのフィルターを通して濾過し、水素化溶液を逆洗液体として使用し、自動逆洗プログラムを用いて連続自動逆洗を行って、水素化溶液および循環スラリーを得る。濾過された触媒微粒子に富む循環スラリーを第1の冷却器によって冷却し、反応筒に再循環させて引き続き反応に関与させる。ここで、循環スラリーと作動溶液との体積流量比率は8:1で、水素化溶液は再生されずに直接酸化ユニットに入った。
【0152】
(2)工程1)で得られた水素化溶液を第2の冷却器で45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量濃度が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を精密濾過器で濾過した後、酸化反応器に供給して、操作温度が50℃、圧力が0.3MPaの条件で、195Nm/hの空気と酸化反応を行い、酸素含有テールガスと酸化溶液を得た。
【0153】
(3)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が180ppmの酸性水溶液に希釈し、質量流量比率が26:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、過酸化水素溶液とラフィネートを得た。
【0154】
(4)前記ラフィネートを真空乾燥塔で脱水し、得られた残留液を循環作動溶液として水素化反応ユニットに再循環させた。ここで、真空乾燥塔の圧力は-96kPaで、温度は50℃である。
【0155】
(5)工程4)で得られた循環作動溶液を、並列に接続された4つの作動溶液再生反応器を通し、得られた再生作動溶液を水素化反応器に再循環させる。ここで、再生反応器は活性アルミナで充填された水素化粘土床(直径800mm、高さ1500mm)であり、再生反応温度は60℃であった。
【0156】
実験結果:水素化溶液の水素化効率は9.8~10g/Lに維持され、水素付加選択性<98%、装置は300h運転、27.5%質量濃度の過酸化水素溶液をトータルで50t得た。スラリー床反応器の触媒の活性は19%減少し、選択性は1.8%減少し、活性喪失現象は明らかで、作動溶液の有効アントラキノンの含有量は5%減少した。
【0157】
〔比較例3〕
(1)水素付加触媒が存在する条件で、ガス入口を通してスラリー床反応器に33Nm/hの水素を供給し、対応する入口を通してスラリー床反応器に4.8m/hの作動溶液を供給し、ここで、スラリー床反応器内の反応筒の直径は300mmであり、水素化反応は、60℃、0.3MPaおよび水素付加触媒の質量流量に対する作動溶液の質量流量の比率が110:1の水素付加条件で行われ、スラリーおよび水素含有テールガスを得た。
【0158】
前記スラリーを、内部フィルターで濾過し、水素化溶液を逆洗液体として使用し、自動逆洗プログラムを用いて連続自動逆洗を行って、濾過して水素化溶液を得た。内部コイルクーラーにより反応温度を制御した。
【0159】
(2)活性アルミナを充填した水素化粘土床(直径800mm、高さ1500mm)を介してA溶液(15%質量流量の水素化溶液)を再生反応させて再生水素化溶液を得た。ここで、再生反応温度が90℃である。
【0160】
(3)工程2)で得られた再生水素化溶液とB溶液(85%質量流量の水素化溶液)との混合溶液を第2の冷却器で45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量濃度が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を精密濾過器で濾過した後、酸化反応器に供給して、操作温度が50℃、圧力が0.3MPaの条件で、195Nm/hの空気と酸化反応を行い、酸素含有テールガスと酸化溶液を得た。
【0161】
(4)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が150ppmの酸性水溶液に希釈し、質量流量比率が26:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、過酸化水素溶液とラフィネートを得た。
【0162】
(5)前記ラフィネートを真空乾燥塔で脱水し、得られた残留液を循環作動溶液として水素化反応ユニットに再循環させた。ここで、真空乾燥塔の圧力は-96kPaで、温度は70℃である。
【0163】
実験結果:反応器の軸方向昇温は5℃、水素化溶液の水素化効率は9.8~9.9g/Lだけで、水素付加選択性<97%、装置は300h運転、27.5%質量濃度の過酸化水素溶液をトータルで50t得た。その間に500kgの活性アルミナを交換した。スラリー床反応器の触媒の活性は15%減少し、選択性は1.5%減少し、活性喪失現象があり、作動溶液の有効アントラキノンの含有量は5%減少した。
【0164】
〔比較例4〕
(1)水素付加触媒が存在する条件で、ガス入口を通してスラリー床反応器に34Nm/hの水素を供給し、対応する入口を通してスラリー床反応器に4.8m/hの作動溶液と19m/hの循環スラリーを供給し、ここで、スラリー床反応器内の反応筒の直径は300mmであり、水素化反応は、60℃、0.3MPaの水素付加反応条件で行われ、スラリーおよび水素含有テールガスを得た。
【0165】
前記スラリーを、並列に接続された3つのフィルターを通して濾過し、水素化溶液を逆洗液体として使用し、自動逆洗プログラムを用いて連続自動逆洗を行って、水素化溶液および循環スラリーを得る。濾過された触媒微粒子に富む循環スラリーを第1の冷却器によって冷却し、反応筒に再循環させて引き続き反応に関与させる。ここで、循環スラリーと作動溶液との体積流量比率は4:1であった。
【0166】
(2)活性アルミナを充填した水素化粘土床(直径800mm、高さ1500mm)を介してA溶液(15%質量流量の水素化溶液)を再生反応させて再生水素化溶液を得た。ここで、再生反応温度が90℃、圧力は自然発生圧力、再生触媒に対するA溶液の質量比率が2:1である。
【0167】
(3)工程2)で得られた再生水素化溶液とB溶液(85%質量流量の水素化溶液)との混合溶液を第2の冷却器で45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量濃度が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を精密濾過器で濾過した後、酸化反応器に供給して、操作温度が48℃、圧力が0.3MPaの条件で、205Nm/hの空気と酸化反応を行い、酸素含有テールガスと酸化溶液を得た。
【0168】
(4)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が150ppmの酸性水溶液に希釈し、質量流量比率が25:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、過酸化水素溶液とラフィネートを得た。
【0169】
(5)前記ラフィネートを真空乾燥塔で脱水し、得られた残留液を循環作動溶液として水素化反応ユニットに再循環させた。ここで、真空乾燥塔の圧力は-96kPaで、温度は50℃である。
【0170】
実験結果:反応器の軸方向昇温は3~4℃、水素化溶液の水素化効率は10.4~10.5g/Lだけで、水素付加選択性<97%、装置は300h運転、27.5%質量濃度の過酸化水素溶液をトータルで52t得た。その間に350kgの活性アルミナを交換した。スラリー床反応器の触媒の活性は14%減少し、選択性は1.3%減少し、活性喪失現象があり、作動溶液の有効アントラキノンの含有量は比較的に安定であった。
【0171】
〔比較例5〕
(1)22Nm/hの純水素、4.8m/hの作動溶液を固定床反応器(直径300mm、高さ8000mmの固定床反応器、平均粒径3~5mmの水素付加触媒粒子を充填)の中で、40~60℃と0.3MPaの反応条件下反応させたあと、気液分離を行い、水素含有テールガスを外部に排出した。
【0172】
(2)1台の活性アルミナを充填した水素化粘土床(直径800mm、高さ1500mm)を介してA溶液(15%質量流量の水素化溶液)を再生反応させて再生水素化溶液を得た。ここで、再生反応温度が90℃、圧力は自然発生圧力、再生触媒に対するA溶液の質量比率が2:1である。
【0173】
(3)工程2)で得られた再生水素化溶液とB溶液(85%質量流量の水素化溶液)との混合溶液の一部を除熱後に反応器に再循環させ、混合溶液の他の一部を45℃に冷却して第2の冷却液を得られ、これに質量分数が85%のリン酸溶液を注入してリン酸含有量が5mg/Lの調節溶液を得た。前記調節溶液を酸化反応器に供給し、酸化反応器において、100Nm/hの空気と反応を行い、過酸化水素を含む酸化溶液を得た。
【0174】
(4)85%質量濃度のリン酸水溶液をリン酸含有量が150ppmの酸性水溶液に希釈し、質量流量比率が38:1で、抽出塔内で酸化溶液と酸性水溶液を抽出し、最終生成物として27.5%の過酸化水素溶液を得た。ラフィネートを合一器で脱水し、炭酸カリウム乾燥塔に供給してさらに脱水・再生した。その後活性アルミナを充填した3つの作動溶液粘土床(直径800mm、高さ1500mm)で再生処理をし、最後に水素化反応器に再循環させた。
【0175】
実験結果:固定床反応器の床層の入口と出口の温度上昇は7~8℃、水素化溶液の水素化効率は6.0~6.4g/L、水素付加選択性は89~92%、装置は3200h運転、27.5%の濃度の過酸化水素溶液をトータルで340t得た。その間に1.7tの活性アルミナを交換した。固定床反応器中の触媒の活性喪失現象が見られ、床層入口温度は始動時の45℃から58℃に上昇した。
【0176】
実施例1~5と比較例1~5とを比較して分かるように、本出願の方法を過酸化水素の生成に用いた場合、10g/L以上の水素化効率及び98%を超える水素付加選択性を得ることができ、反応器床の軸方向温度差を実質的になくすことができ、その結果、水素化反応選択性、装置効率及び水素化効率を効果的に向上させることができ、触媒の使用寿命を延ばすことができる。
【0177】
実施例1と比較例5とを比較して分かるように、本出願の過酸化水素の生成方法は水素化効率を効果的に向上させ、水素付加選択性を明らかに向上させ、触媒の使用寿命を延ばし、装置の生産能力を110%向上させ、生成物1トン当たりの活性アルミナの消費量を72%低減し、装置の廃棄固体の量を大幅に低減することによって、良好な経済的および社会的利益を有する。
【0178】
以上、本出願は好ましい実施形態を詳しく説明したが、前記実施形態に限定されることはない。本出願の技術思想の範囲内で、本出願の技術案を様々な簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更は本出願の保護範囲内に属される。
【0179】
なお、上記実施形態で説明した様々な技術的特徴を矛盾なく任意の適切な態様で組み合わせることができ、不必要な繰り返しを避けるために、本出願では様々な可能な組み合わせを説明しないが、そのような組み合わせも本出願の範囲内に含まれるものとする。
【0180】
また、本出願の各実施形態は本出願の趣旨を逸脱しない範囲で任意に組み合わせることが可能であり、これらを組み合わせた実施形態を本出願の開示内容とする。
図1
図2
【国際調査報告】