(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】自動車両の照明装置の動的セルフレベリングを行うための方法および自動車両の照明設備
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/08 20060101AFI20231023BHJP
B60Q 1/10 20060101ALI20231023BHJP
B60Q 1/12 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B60Q1/08
B60Q1/10
B60Q1/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523107
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021078704
(87)【国際公開番号】W WO2022079295
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】モアメド-マルワン、シャワ
【テーマコード(参考)】
3K339
【Fターム(参考)】
3K339AA02
3K339BA01
3K339BA21
3K339BA22
3K339BA24
3K339BA25
3K339BA26
3K339CA01
3K339DA01
3K339DA02
3K339GA14
3K339GB01
3K339HA12
3K339HA13
3K339JA02
3K339KA01
3K339KA07
3K339KA40
3K339LA02
3K339LA06
3K339LA11
3K339LA16
3K339LA21
3K339LA31
3K339MA01
3K339MA03
3K339MA10
3K339MC43
3K339MC44
3K339MC52
3K339MC56
3K339MC58
3K339MC99
(57)【要約】
本発明は、自動車両の照明装置(10)の動的セルフレベリングを行うための方法を提供する。その方法は、ある水平角(ha)で光パターンを放つように構成された照明装置(10)を設ける段階と、それぞれがトレーニングデータを生じさせるように構成された複数のセンサー(4,5,6)と、トレーニングデータを受け取るように構成された制御装置(3)とを設ける段階と、センサーデータに応じた水平角についての予測ルールを生成するように制御装置をトレーニングする段階と、センサー(4,5,6)から現実のセンサーデータを受け取る段階と、現実のセンサーデータを予測ルールと照らし合わせて照明装置の水平角を予測し、その結果としてバイアス値を得る段階とを備える。最後に、バイアス値に応じて自動車両の照明装置の姿勢が補正される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車両の照明装置(10)の動的セルフレベリングを行うための方法であって、
- ある水平角(ha)で光パターンを放つように構成された前記照明装置(10)を設ける段階と、
- それぞれがトレーニングデータを生じさせるように構成された複数のセンサー(4,5,6)と、前記トレーニングデータを受け取るように構成された制御装置(3)とを設ける段階と、
- センサーデータに応じた前記水平角についての予測ルールを生成するように前記制御装置をトレーニングする段階と、
- 前記センサー(4,5,6)から現実のセンサーデータを受け取る段階と、
- 前記現実のセンサーデータを前記予測ルールと照らし合わせて前記照明装置の前記水平角を予測し、その結果としてバイアス値を得る段階と、
- 前記バイアス値に応じて前記自動車両の照明装置(10)の前記光パターンを補正する段階と、
を備えた方法。
【請求項2】
前記光パターンは、ハイビーム光パターン、ロービーム光パターン、またはスポット光パターンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数のセンサーには少なくとも、ジャイロスコープ(4)、カメラ(5)、および加速度計(6)が含まれる、請求項1および2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記カメラは赤外線カメラである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記複数のセンサーには、ブレーキセンサー、アクセルセンサー、およびステアリングセンサーのうち少なくとも1つが含まれる、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記制御装置をトレーニングする段階は、
- 様々なセンサーからのデータの時間的な遷移を含むトレーニングデータをもたらす副段階と、
- 前記トレーニングデータに基づいて前記水平角の最初の推定値を前記制御装置に算出させる副段階と、
- 水平角の現実の値で前記水平角の最初の推定値をテストする副段階と、
- 前記センサーのうちの1つにおける前記時間的な遷移を変化させ、推定値を算出して当該推定値をテストする段階を繰り返す副段階と、
を備えている、請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記制御装置をトレーニングする段階は、機械学習アルゴリズムの使用を含んでいる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光パターンを補正する段階は、前記照明装置の姿勢を変更することを含んでいる、請求項1から7のうちのいずれか一項の方法。
【請求項9】
前記光パターンを補正する段階は、前記照明装置の光度を変更することを含んでいる、請求項1から8のうちのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の方法の各段階を遂行するための手段を備えたデータ処理要素。
【請求項11】
制御装置によって実行されたときに請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の方法の各段階を前記制御装置に遂行させる命令を備えたコンピュータープログラム。
【請求項12】
- 自動車両の照明装置(10)と、
- それぞれがセンサーデータを得るように構成された、ジャイロスコープ(4)、カメラ(5)、および加速度計(6)と、
- 前記センサーデータを受け取って請求項1から9のうちのいずれか一項に記載の方法の各段階を遂行するように構成された制御装置(3)と、
を備えた自動車両の照明設備。
【請求項13】
光源同士の配列が、少なくとも2000個のソリッドステート光源(2)を備えたマトリックス配置となっている、請求項12に記載の自動車両の照明装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車両の照明装置の分野、より特定的には、これらの装置における安全性考慮の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車両の照明の市場は、最も競争の激しいものの1つと考えることができ、新たな照明機能が絶えず求められている。
【0003】
一部の照明モジュールでは、2つ以上の異なる機能をもたらすことが求められる。この目標を達成するため、市場にはロービーム機能とハイビーム機能とを組み合わせる多くの選択肢が存在している。
【0004】
現行の装置は、ビームをうまく調節して幻惑を防止するよう、レベリング(照射方向調節)ないしはエーミング(光軸調整)用の構造を設けることを必要としている。更に、スマート機能の良好な動作のためには、ビームの確実な調節も必要である。
【発明の概要】
【0005】
目下の解決策は、車両の傾きを検知して、その傾きを相殺するように照明装置の傾きを調節するために、機械的なセンサー類を必要とするものである。
【0006】
本発明は、この問題に対する代替的な解決策を、自動車両の照明装置の動的セルフ(自動)レベリングを行うための方法であって、
- ある水平角で光パターンを放つように構成された照明装置を設ける段階と、
- それぞれがトレーニングデータを生じさせるように構成された複数のセンサーと、トレーニングデータを受け取るように構成された制御装置とを設ける段階と、
- センサーデータに応じた水平角についての予測ルールを生成するように制御装置をトレーニングする段階と、
- センサーから現実のセンサーデータを受け取る段階と、
- 現実のセンサーデータを予測ルールと照らし合わせて照明装置の水平角を予測し、その結果としてバイアス値を得る段階と、
- バイアス値に応じて自動車両の照明装置の光パターンを補正する段階と、
を備えた方法によって提供するものである。
【0007】
この方法は、照明装置の光パターンのレベリングを担っている制御装置の反応における待ち時間を減少させる。制御装置のインテリジェントトレーニングのおかげで、システムの方法は、光パターンの向きを予想し、動的セルフレベリングを行って正確なエーミングを達成することができる。かくして、ある一定の基準を保つよう、ヘッドランプに影響を与える静荷重や動荷重を相殺するのである。
【0008】
幾つかの特定の実施形態において、光パターンは、ハイビーム光パターン、ロービーム光パターン、またはスポット光パターンである。
【0009】
これらの型式の投射は、現行の照明装置では極めて一般的であり、本発明の方法で用いられ得るものである。
【0010】
幾つかの特定の実施形態において、複数のセンサーには少なくとも、ジャイロスコープ、カメラ、および加速度計が含まれる。
【0011】
これらのセンサーは、トレーニングに適合した役に立つデータを制御装置に与えてくれる。
【0012】
幾つかの特定の実施形態において、カメラは赤外線カメラである。これが、視認性の低い条件にあっても制御装置が精確なデータを受け取ることを助けてくれる。
【0013】
幾つかの特定の実施形態において、複数のセンサーには、ブレーキセンサー、アクセルセンサー、およびステアリングセンサーのうち少なくとも1つが含まれる。
【0014】
これらの(運転者の動作の情報をもたらす)センサーもまた、車両の挙動への運転の影響を制御装置が予想するのにかなり役立つものである。
【0015】
幾つかの特定の実施形態において、制御装置をトレーニングする段階は、
- 様々なセンサーからのデータの時間的な遷移を含むトレーニングデータをもたらす副段階と、
- トレーニングデータに基づいて水平角の最初の推定値を制御装置に算出させる副段階と、
- 水平角の現実の値で水平角の最初の推定値をテストする副段階と、
- センサーのうちの1つにおける時間的な遷移を変化させて、推定値を算出して当該推定値をテストする段階を繰り返す副段階と、
を備えている。
【0016】
このような制御装置のトレーニングのやり方は、光パターンの角度を改善されたやり方で予見する能力を制御装置にもたらすが故に、有用なのである。
【0017】
幾つかの特定の実施形態において、制御装置をトレーニングする段階は、機械学習アルゴリズムの使用を含んでいる。
【0018】
対応した結果が検証されたならば、本発明の方法の対応する各段階に制御装置の値が用いられる。
【0019】
幾つかの特定の実施形態において、光パターンを補正する段階は、照明装置の姿勢を変更することを含んでいる。
【0020】
これは、水平角に直接影響を及ぼすように照明装置を傾けることによる、パターンを補正する典型的なやり方である。
【0021】
幾つかの特定の実施形態において、光パターンを補正する段階は、照明装置の光度を変更することを含んでいる。
【0022】
これは、特に照明装置が光ピクセル同士のマトリックス配置を備えている場合における、光パターンを適合させる代替的なやり方である。照明装置を傾けることの影響を模擬するように、光ピクセルの一部が減光されたり消灯されたりし得るのである。
【0023】
更なる発明態様において、本発明は、第1の発明態様による方法の各段階を遂行するための手段を備えたデータ処理要素、および制御装置によって実行されたときに第1の発明態様による方法の各段階を制御装置に遂行させる命令を備えたコンピュータープログラムを提供するものである。
【0024】
更なる発明態様において、本発明は、
- 自動車両の照明装置と、
- それぞれがセンサーデータを得るように構成された、ジャイロスコープ、カメラ、および加速度計と、
- センサーデータを受け取って第1の発明態様による方法の各段階を遂行するように構成された制御装置と、
を備えた自動車両の照明装置を提供するものである。
【0025】
幾つかの特定の実施形態においては、光源同士の配列が、少なくとも2000個のソリッドステート光源を備えたマトリックス配置となっている。
【0026】
用語「ソリッドステート(solid state)」は、電力を光へと変換するために半導体を用いるソリッドステート電界発光によって放出される光を表す。白熱照明に比べて、ソリッドステート照明は、熱の発生を減少させ、より少ないエネルギー消散で可視光を作り出す。ソリッドステート電子照明装置の概して小さな嵩は、もろいガラス管/球や長細いフィラメント線に比べて、衝撃や振動に対してより強い耐性を与えるものである。それらはまた、フィラメントの蒸発を排除して、発光装置の寿命を延長させる可能性を有している。これらの型式の照明における幾つかの例は、光源として、電気フィラメント、プラズマ、またはガスではなく、半導体発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、または高分子発光ダイオード(PLED)を備えている。
【0027】
別様に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術的、科学的用語を含む)は、当該技術において通例であるように解釈されるべきものである。更に、一般的な語法による用語類も、やはり関連技術において通例であるように解釈されるべきであって、本明細書で明確にそう定義されない限り、理想化されたり過度に形式的であったりする意味に解釈されるべきではない。
【0028】
この本文において、用語「備える/含む(comprises)」や、その派生語(例えば「備えている/含んでいる(comprising)」など)は、排他的な意味に理解されるべきではない。即ち、これらの用語は、説明されたり定義されたりするものが更なる要素や段階などを含み得るという可能性を排除するように解釈されるべきではないのである。
【0029】
本明細書を完全なものとするよう、また本発明のより深い理解に備えるために、一連の図面が提供される。当該図面は、本明細書の不可欠な部分を成し、本発明の実施形態を示しているが、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきではなく、単に本発明を如何にして実施することができるかの例示として解釈されるべきである。図面は、以下の各図を含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明による自動車両の照明装置の概略斜視図。
【
図2a】光パターンの水平角haが変化し得る様々な状況での光パターンの方向を示す図。
【
図2b】光パターンの水平角haが変化し得る様々な状況での光パターンの方向を示す図。
【
図2c】光パターンの水平角haが変化し得る様々な状況での光パターンの方向を示す図。
【0031】
例示の諸実施形態における各要素には、適切な場合には図面および詳細な説明を通じて常に同じ参照符号が付されている。
【符号の説明】
【0032】
1 ヘッドランプ
2 LED
3 制御装置
4 ジャイロスコープ
5 カメラ
6 加速度計
100 自動車両
【発明を実施するための形態】
【0033】
当業者が本明細書に記載されたシステムやプロセスを具現化して実施するのを可能とするに足るほど詳細に例示の諸実施形態が説明される。各実施形態は、多くの代替形態で提供することができ、本明細書に記載された例に限定して解釈されるべきではない、ということを理解するのが重要である。
【0034】
従って、実施形態は種々のやり方で改変することができ、種々の代替形態をとることができるが、それらのうちの特定の諸実施形態を、例として図面に示すと共に以下で詳細に説明する。開示された特定の形態に限定する意図はない。それどころか、添付の特許請求の範囲内に入っている全ての改変、均等物、および代替物が包含されるべきである。例示の諸実施形態における各要素には、適切な場合には図面および詳細な説明を通じて常に同じ参照符号が付されている。
【0035】
図1は、本発明による自動車両の照明装置の概略斜視図を示している。
【0036】
このヘッドランプ1は、自動車両100内に設置されると共に、
- 光パターンをもたらすように企図された、LED2同士のマトリックス配置と、
- 各LED2の作動の制御を果たすための制御装置3と、
- それぞれがセンサーデータを得るように構成された、ジャイロスコープ4、カメラ5、および加速度計6と、
を備えている。
【0037】
この図には示されていないが、ブレーキセンサー、アクセルセンサー、およびステアリングセンサーもシステムに備えられている。
【0038】
このマトリックス配置は、2000ピクセルを超える解像度を有した、高解像度モジュールである。ただし、投射モジュールを製造するために用いられる技術に制限があると考えられるものではない。
【0039】
図2aから
図2cは、光パターンの水平角haが変化し得る様々な状況での光パターンの方向を示している。
【0040】
図2aは、車両が休止しているときの光パターンの標準的な投射を示している。
図2bは、車両が急加速を受けているときの水平角のずれを示し、
図2cは、車両が急制動を受けているときの水平角のずれを示している。
【0041】
これらの図の示すものは、光パターンの水平角が変動を被り得る様々な状況の例示に過ぎない。それらの変動が、(光パターンが上方へ傾いたとすれば)幻惑を引き起こしたり、(光パターンが下方へ傾いたとすれば)視覚的な不便性を引き起こしたりし得るのである。
【0042】
制御装置は、自動車両のヘッドランプ内への設置前に、幾つかの機械学習段階を含むトレーニングプロセスを経てきている。そのプロセスでは、複数のセンサーによってもたらされるトレーニングデータで制御装置がトレーニングされる。
【0043】
最初のトレーニングプロセスは、基準となる部分の姿勢の識別に関するものである。このトレーニングプロセスは、
- 様々なセンサーからのデータの時間的な遷移を含むトレーニングデータをもたらすこと、
- トレーニングデータに基づいて、水平角の最初の推定値を制御装置に算出させること、
- 水平角の現実の値で、水平角の最初の推定値をテストすること、
- センサーのうちの1つにおける時間的な遷移を変化させ、推定値を算出して当該推定値をテストする段階を繰り返すこと、
を備えている。
【0044】
トレーニングプロセスが終了したならば、予測ルールが作り出され、制御装置が
図1の自動車両100内に設置されてヘッドランプ10の発光の制御を行う。いずれにせよ、これらのトレーニングおよびテストのプロセスは、制御装置の設置前に代えて、制御装置の作動中に行うこともできるであろう。
【0045】
制御装置3は、車両内に設置されたとき、以下の各段階、
- 各センサーから現実のセンサーデータを受け取る段階、
- 現実のセンサーデータを予測ルールと照らし合わせて照明装置の水平角を予測し、その結果としてバイアス値を得る段階、および、
- バイアス値に応じて自動車両の照明装置の光パターンを補正する段階、
に従って、光パターンを予測し、光パターンに作用する。
【0046】
制御装置がバイアス値を検出したとき、この図の特定の実施形態においては(光モジュールが光ピクセル同士のマトリックス配置を備えているので)光パターンを補正する段階は、照明装置の光度を変更することを含む(照明装置を傾けることの影響を模擬するように、光ピクセルの一部が減光されたり消灯されたりし得る)。
【国際調査報告】