(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】摩擦スペーサー
(51)【国際特許分類】
F16B 43/00 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
F16B43/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523137
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 FR2021051788
(87)【国際公開番号】W WO2022079392
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517093647
【氏名又は名称】セントレ テクニーク デ インダストリーズ メカニークス
【氏名又は名称原語表記】CENTRE TECHNIQUE DES INDUSTRIES MECANIQUES
【住所又は居所原語表記】52, Avenue Felix Louat F-60300 Senlis France
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ デルシャー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ジェイ
【テーマコード(参考)】
3J034
【Fターム(参考)】
3J034AA07
3J034BA03
(57)【要約】
2つの機械部品間に介設され、前記2つの機械部品間の力を伝達可能な摩擦スペーサーであって、前記摩擦スペーサーは、厚みを決定する相互に反対側に位置する2つの表面(18)を有する平坦部(20)と、前記表面(18)の少なくとも一つから突出する複数の突起(16)とを具備し、前記複数の突起中の前記突起(16)は前記相互に反対側に位置する表面(18)の少なくとも一つから所定の平均高さだけ伸延する。前記平坦部(20)と前記突起(16)は同じ金属材料からなり、前記同じ金属材料は前記平坦部(20)と前記突起(16)との間を連続的に伸延する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの機械部品間に介設され、前記2つの機械部品間の力を伝達可能な摩擦スペーサーであり、前記摩擦スペーサーは、厚みを決定する相互に反対側に位置する2つの表面(18)を有する平坦部(20)と、前記表面(18)の少なくとも一つから突出する複数の突起(16)とを具備し、前記複数の突起中の前記突起(16)は前記相互に反対側に位置する表面(18)の少なくとも一つから所定の平均高さだけ伸延し、前記平坦部(20)と前記突起(16)は同じ金属材料からなり、前記同じ金属材料は前記平坦部(20)と前記突起(16)との間を連続的に伸延するようにした前記摩擦スペーサーにおいて、
前記突起(16)の前記所定の平均高さと前記平坦部(20)の前記厚みと前記突起の前記所定の平均高さの合計との比は1/2から1/10の間の値であり、かつ
前記突起16の前記所定の平均高さは30μmから500μm間の値であることを特徴とする前記摩擦スペーサー。
【請求項2】
前記比が、1/3~1/6の範囲の値であることを特徴とする請求項1記載の摩擦スペーサー。
【請求項3】
前記突起(16)は前記少なくとも一つの表面(18)上に均一に配置されていることを特徴とする請求項1または2記載の摩擦スペーサー。
【請求項4】
前記平坦部(20)は、前記相互に反対側に位置する2つの表面からそれぞれ突出する二組の複数の伸延突起を有することを特徴とする請求項1から3のうち、いずれかの項に記載の摩擦スペーサー。
【請求項5】
前記複数の突起(16)は、前記少なくとも一つの表面(18)上で、1平方センチメートル当たり、500個から5000個の突起からなることを特徴とする請求項1から4のうち、いずれかの項に記載の摩擦スペーサー。
【請求項6】
前記複数の突起(16)は、前記少なくとも一つの表面(18)上で、1平方センチメートル当たり、2000個から5000個の突起からなることを特徴とする請求項5記載の摩擦スペーサー。
【請求項7】
前記金属材料は鋼であることを特徴とする請求項1から6のうち、いずれかの項に記載の摩擦スペーサー。
【請求項8】
前記突起は、他の金属材料によって被覆されていることを特徴とする請求項1から7のうち、いずれかの項に記載の摩擦スペーサー。
【請求項9】
前記他の金属材料は、窒化クロムであることを特徴とする請求項8記載の摩擦スペーサー。
【請求項10】
素地平坦部(10)は、相互に反対側に位置する2つの穴あき面(12、14)を有し、前記各突起(16)は前記穴あき面の少なくとも一つにおいて整形されて、前記複数の突起(16)を形成することを特徴とする請求項1から9のうちいずれかの項に記載の摩擦スペーサーを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの機械部品間(機械要素間)に介在させ、それらの機械部品間の相対移動を防止するのに適した摩擦スペーサーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、2つの部品を強制的に相互に当接させて固定位置に保持し、互いを相対的に移動させようとする力に抵抗できるようにすることを目的として、ねじ締め部品を用いている。この2つの部品間の相対移動に対する抵抗は,2つの部品の互いの締付け力(クランプ力)と、2つの部品間の界面における接着係数との積である。
また、2つの部品間に摩擦スペーサーを介設することが知られている。この場合、摩擦スペーサーは、両部品間の相対的移動に対してより効果的に抵抗することができ、または、部品に機械的応力を生じさせがちな締付け力を軽減することができる。このように、これらの摩擦スペーサーは、部品間の接着係数より高い接着係数を部品との間に有する。
【0003】
締付けワッシャまたは摩擦ワッシャとして知られる摩擦スペーサーは、環状形状を有する鋼板から成る。鋼板の両面はニッケル層によって被覆されており、ニッケル層にはダイヤモンド粒子が埋設されている。
【0004】
そのようなスペーサーは、米国特許明細書6,347,905に記載されている。
【0005】
ダイヤモンド粒子はワッシャから突出し、スペーサーをこれらの部品間に緊締状態に挟着(クランプ)した際、部品の表面に嵌入される。確かに、ダイヤモンドはモース硬度で最も高い硬度を有する。従って、スペーサーと部品との間における接着係数または静的摩擦係数はかなり増大する。
【0006】
そのようなスペーサーの製造は比較的複雑である。その理由は少なくとも3つの材料、すなわち、鋼、ニッケルおよびダイヤモンド粒子を用いる必要があるからである。さらに、ダイヤモンド粒子は、平均相当直径が1ミクロンメータで、それぞれ異なった形状を有し、スペーサーの表面にランダムに散乱した状態で配置されている。従って、スペーサーの表面において異なった形状および寸法を有するこれらの粒子の不均一な分散配置は、静的摩擦係数を部分ごとに異ならせることになる。さらに問題となるのは、2つの部品間の動きを阻止する特性は、ダイヤモンド粒子と、金属材料である鋼とニッケルとの間の結合特性に依存するということである。
【0007】
本発明は上記した問題を解決するためなされたものであり、より簡単に製造でき、かつ、その表面の機械的性質をより均質なものとした摩擦スペーサーを提供することを目的とする。
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明の第1の側面は、2つの機械部品間(機械要素間)に介設され、前記2つの機械部品間で力を伝達可能な摩擦スペーサーを提供することにある。摩擦スペーサーは、同摩擦スペーサーの厚みを決定する相互に反対側に位置する2つの表面を有する平坦部と、前記表面の少なくとも一つから突出する複数の突起とを具備する。前記複数の突起において、前記突起は、前記相互に反対側に位置する表面の少なくとも一つから所定の平均高さだけ伸延する。前記平坦部と前記突起は同じ金属材料からなり、前記同じ金属材料は前記平坦部と前記突起との間を連続的に伸延する。前記突起の前記所定の平均高さと、前記平坦部の前記厚みと前記突起の前記所定の平均高さの合計との比は、1/2から1/10の間の値に設定される。前記突起の前記所定の平均高さは、好ましくは、30μmから500μm間の値である。
【0009】
このように、本発明の一つの特徴は、平坦部からなる本体と、同本体から突出する突起とからなる摩擦スペーサーを提供することにあり、これらの平坦部と突起とは、両者間に材料の不連続性を生じない形態で同一材料からなる。以下の説明を参照して更に詳細に説明されるように、そのような技術的特徴は、表面にそれぞれ整形された突起を有する素地平坦部(ブランクの平坦部)を用いることによって得られる。このように、平坦部と突起とは単一部材を形成する。
【0010】
したがって、突起の金属材料は、平坦部に向けて連続的に伸延する。その結果、突起と平坦部との連結は、従来のダイヤモンド粒子と環状鋼板の連結よりも優れたものとなる。更に、後述するように、そのようなスペーサーはより簡単に製造することができる。
【0011】
金属部品は、それぞれ、本発明に係る摩擦スペーサーが、平面的に取り付けられる平坦な支持面を形成することに留意すべきである。たとえば、金属部品のうち、一つの金属部品は、オリフィスが開口する支持面を有する。一方、もう一つの支持部品はネジ頭部の下部からなる。摩擦スペーサーは環状であり、支持面とネジ頭部間に緊締状態に挟着(クランプ)される。ネジは、摩擦スペーサーを貫通し、その後、オリフィス及び機械部品の支持面に嵌入される棒状部を有する。
【0012】
また、高さの比を所定の値に設定することによって、突起と平坦部間に十分な接着を確保し、スペーサーに応力が生じた場合に、突起が平坦部から脱離するのを防止することができる。
【0013】
さらに、突起の高さを30μmから500μm間に設定することによって、いかなる形態の支持面にも好適に取り付けることができる。
【0014】
これらの突起の高さは、組み立てられる機械部品の種類によって決定される。このように、例えば、塗膜を有する支持面上に、300μmに近い長さの突起を有する摩擦スペーサーを取り付けることができる。一方、比較的硬い鋼からなるむき出しの支持面上に、例えば、50μmに近い長さの突起を有する摩擦スペーサーを取り付けることができる。
【0015】
本発明の特に効果的な実施例によれば、上記した比は1/3から1/6の間の値であり、このような値とすることによって接着力を更に増大することができる。このように、突起の高さを所定の平均高さに設定し、突起は3mmの最大厚みと90μmの最少厚みを有する。このように、スペーサーはその寸法を再度変更することなく、設計前のネジ組立体に取り付けることができる。
【0016】
また、本発明の好適な実施例によれば、上記した突起を表面の少なくとも一つの上に均等に配置することができる。換言すれば、突起は一定のピッチで相互に間隔を開けて配置される。このように、突起は平坦部の表面上に均等に配置されるので、局部にわたって一定の表面特性を確保することができる。更に、後述するように、突起は同じ幾何学的配置を有するので、更に表面局部特性の均等化を向上することができる。その結果、突起はほとんど偏りなく同じ高さで表面から伸延する。換言すれば、ほとんど偏りがないので、突起は30μmから500μmの高さを有する。
【0017】
これらの特徴によって、次のことが理解される。すなわち一方が他方に対して押圧された2つの機械部品間に嵌入されたスペーサーは、均等な接触圧によって、スペーサーの全表面上に突起と同じ形状の窪みを所定箇所に形成することができる。従って、接着係数がスペーサーの全表面において均一になる。
【0018】
本発明の他の実施例によれば、突起が、漸次的にピッチが増大するようにして、前記表面の少なくとも一つの表面上に配置される。このように、特に接触圧が均一でない場合でも、全接触表面上に実質的に均一な接着係数を維持することができる。
【0019】
更に、本発明の更に他の実施例によれば、突起は、前記表面の少なくとも一つの上に漸次的に拡大する幾何学的配置を有する。換言すれば、突起は、例えば、その表面において、同じ方向に幾何学的形状が漸次的に目立つようになる。
【0020】
好ましくは、突起を幾何学的に配置するとともに、突起は、上記表面の少なくとも一つ上に、ピッチを漸次的に大きくしながら間隔を開けて配置されている。
【0021】
更に、前記平坦部は、好ましくは、前記相互に反対側に位置する2つの表面からそれぞれ突出する2つの複数の伸延突起を有する。このように、摩擦スペーサーが2つの機械部品間に嵌入されると、相互に反対側に位置する2つの表面上に設けられた突起は2つの機械部品と理想的に協働することになる。
【0022】
また、特に有利な変形例として、前記複数の突起は上記表面の少なくとも一つにおいて、1平方センチメートル当たり500個から5000個の間の突起である。例えば、支持面が被膜を有する場合、上限値に近い長さ、すなわち300μmに近い長さを有し、かつ、下限値に近い突起数、すなわち、1平方センチメートル辺り、例えば、600個の突起を有するスペーサーを選択することができる。
【0023】
更に、特に有利な変形例によれば、上記複数の突起は、上記表面の上記少なくとも一つにおいて、上記複数の突起は、1平方センチメートル辺り2000個から5000個の突起である。このように、機械部品において最適の突起のための凹部を形成する。突起の密度が、上記した制限範囲にない場合は、静的摩擦係数が実質的に軽減する。このことは、支持面が被覆されていない場合に特に明らかとなる。
【0024】
更に、突起の高さを、前記突起の設定平均高さと、前記平坦部の厚みと前記突起の前記平均高さの合計との比を設定することによって、比較的薄い摩擦スペーサーを得ることができる。以下に説明するように、そのような厚みは有益であり、ネジで緊締した組合体の当初の寸法決定から独立して、摩擦スペーサーを取り付けることができる。
【0025】
更に、摩擦スペーサーを製造するために用いる金属材料は好ましくは鋼である。しかし、他の金属材料を用いることもできる。
【0026】
更に、本発明の他の実施対応によれば、突起を他の金属材料、たとえば、窒化クロムによって被覆してもよい。このような被膜によって、突起の硬度を増大することができる。
【0027】
本発明の第二の側面は、上記した摩擦スペーサーを製造する方法を提供することにある。そのような摩擦スペーサー製造方法は、以下の工程からなる。すなわち、摩擦スペーサー製造方法は、相互に反対側に位置する2つの穴あき面を有する素地平坦部を準備する工程と、前記各突起を前記穴あき面の少なくとも一つにおいて整形して前記複数の突起を形成する工程とを具備する。このように、相互に反対側に位置する2つの穴あき面を有する素地平坦部から出発して、前記面の少なくとも一つを機械加工して各突起を整形する。換言すれば、各突起周りの金属材料を除去することによって、突起が前記表面から、除去した金属材料を取り除いた形態で出現することになる。
【0028】
金属材料を除去して、前記した整形を行うために、異なった工作機械を用いてもよい。例えば、フェムト秒レーザーを用いてもよい。
【0029】
フェムト秒レーザーを用いることによって、突起を高精度で整形でき、かつ、単位面積辺りの突起の数を増大することができる。従って、この種のレーザーを用いることによって、準線からなる多角形曲線を有する円錐状突起を整形することができる。例えば、正方形または長方形の基部を有する円錐状突起を形成することができる。換言すれば、突起はピラミッド形状を有する。そのような突起の有利性として、突起は尖った先端を有する。このような突起は摩擦スペーサーが押圧される表面の材料により、より効果的に、かつ、より深く確実に貫通することができる。従って、摩擦に対する抵抗を更に増大することができる。
【0030】
本発明の他の技術的特徴および効果は,添付図を参照して例示的にかつ制限されることなく記載される本発明に特有の実施例の以下に述べる説明から明らかとなる。
図1は本発明にかかる摩擦スペーサーを製造するための穴あき部材の模式的かつ斜視図的上面図である。
図2は変形後の
図1に示す物体の表面の高倍率の拡大模式図である。
図3は
図2に示すIII-III面で切断して得られた模式的断面図である。
図4は本発明の物体の取り付け状態を示す模式図である。
【0031】
図1は穴あき部材を形成する、鋼製の素地平坦環状部(ブランクの平坦な環状部)10を上から見た図である。素地平坦環状部10は2つのそれぞれ反対側面を形成する面12、14を有する。図示する素地平坦環状部10は中心Cを有する。素地平坦環状部10の内径R1は2mmであり、素地平坦環状部10の外側半径R2は6mmである。素地平坦環状部10の厚みeは0.3mm、すなわち300μmである。
【0032】
上記した構成によって本発明の目的を達成するべく、素地平坦環状部10の表面12は機械加工されて、後述するように複数の突起が形成される。このようにして、本発明にかかる摩擦スペーサーを得ることができる。
【0033】
本発明の第1の変形例によれば、フェムト秒レーザーが用いられる。すなわち、フェムト秒レーザーはその特性によって、10-15秒の範囲の超短パルスを発生することができる。従って、フェムト秒レーザーはマイクロマシン加工に完全に適している。
【0034】
本発明の第1の変形例によれば、あらかじめプログラムされたプログラムによって実行される制御装置によって制御されるロボットによって駆動されるフェムト秒レーザーを用いることにより、素地平坦環状部10の2つの面12のうち、一つの面12が機械加工され、その面状で、突起を、その高さが実質的に75μmになるように、かつ、その基部においてその直径が実質的に50μmになるように、整形することができる。
【0035】
このように、約0.6平方mm
2の面12の一部を部分的に拡大して示す
図2において、それぞれ実質的に截頭円錐突起を形成する複数の突起16は、摩擦スペーサーの平均平面上に正方形のマス目模様状に広がっている。すなわち、突起16は、それぞれ直交する2つの方向に広がり、両方向において同一の距離で相互に間隔をあけて配置される。
図2に示すように、面12上に形成された複数の全ての突起16は、実質的に同一形状および同一寸法を有する。
【0036】
また、突起16は、表面18から75μmの高さhで上方に伸延する。これらの突起16は、実質的に150μmの間隔Lをあけて相互に離隔して配置されている。第1の変形例によれば、直交する二方向のそれぞれの突起16間の間隙Iは、実質的に、100μmである。また、突起16の基台、すなわち、表面18での突起16の直径は、すべて実質的に50μmである。
【0037】
このような寸法を考慮すると、表面18上の1平方センチメートル当たりの突起16の数を、4450個の範囲に設定することができる。
【0038】
従って、
図2に示す平面をIII-III面で切断して得られる断面を部分的に示す
図3を参照して説明すると、マイクロマシン加工を施した後に得られる摩擦スペーサーは、平坦部20と、平坦部20の表面18から突出する突起16とを有する。突起16の高さhとスペーサーの厚みe間の比を、その後測定する。このように75μmの突起16の高さhは、素地平坦環状部10の厚みeと関連しているのみならず、マシン加工された面12と反対側の面14から突起16の頂部まで伸延する距離にも関連し、それは300μmである。本実施例に記載されている例では、その比は、4分の1、すなわち、0.25である。
【0039】
また、材料、すなわち、鋼を除去するマイクロマシン加工を考慮すると、材料は上記した平坦部20と突起16との間を連続的に伸延することになる。このように、平坦部の材料が、突起16に向けて、非連続的ではなく、かつ、金属学的干渉を生じることなく、伸延することになる。従って、突起16は平坦部20に強固に連結される。
【0040】
また、素地平坦環状部10に用いる鋼は比較的に硬く、硬度は、ビッカース硬度計で測定して380HVより高い。
【0041】
さらに、フェムト秒レーザーによるマシン加工は、加工後の残りの部分の鋼の金属学的性質に影響を及ぼすことはなく、結果として、加工後の残りの部分の硬度を維持することができる。言い換えると、特に、表面18から突出する突起16は、380HVより高い硬度を維持する。このような特性は、以下に詳細に説明するように、特に有益である。
【0042】
第2の変形例では、突起16は、また、表面から75μmの高さを越えて伸延する。しかし、これらの突起16は、200μmの間隔をあけて配置されており、第1の変形例によれば、直交する二方向でこれらの突起16を分離する間隙は、突起16の直径である50μmを考慮して、実質的に150μmである。従って、表面上で、1平方センチメートルの数は2500個である。
【0043】
2つある第3の変形例では、突起は、表面から100μmの高さを超えて伸延し、1つ目の第3の変形例における表面上の突起の配置は、第1の変形例における表面上の突起の配置と実質的に等しく、2つ目の第3の変形例における表面上の突起の配置は、第2の変形例における表面上の突起の配置と実質的に等しい。
【0044】
また、第1変形例によれば、フェムト秒レーザー加工が行われると、
図1における対象物である面12と反対側にある面14もマシン加工される。例えば、上記した3つの変形例と同様に、突起は、同一の幾何学的配置又は配列で、他の面14上に整形される。
【0045】
本発明の第2の変形例によれば、精密電気化学的マシン加工を行うことによって、素地平坦環状部の表面に突起を形成する。
【0046】
上記した精密電気化学的マシン加工を行うに際しては、セル(細穴)が、円形道具(円形工具)の加工面(作業面)に形成される。円形道具の加工面は平坦であり、環状形状を有している。円形道具の寸法は、実質的に、
図1に示す、素地平坦環状部の寸法と等しい。
【0047】
このように、セルが円形道具の加工面上に形成されている。これらのセルは截頭円錐形状を有し、実質的に、75μmより大きい深さを有する。これらのセルの円周は、加工面において、実質的に、50μmより大きい。これらのセルは、相互に直交する2つの方向に広がり、両方向に、同じ間隔をあけて、即ち、150μmをあけて、配置されている。このように、1平方センチメートル当たりのセルの密度は4450個である。
【0048】
その後、上記形式の素地平坦環状部が円形道具の加工面と対向するように調整され、素地平坦環状部と円形道具は電気的に結合される。次に、素地平坦環状部と円形道具は、相互に正弦波運動に従って並行駆動され、両者間に電位差を生じ、両者間に電解液が循環する。その結果、セルと反対側の素地平坦環状部の表面を除いて、素地平坦環状部の表面の金属が溶解する。このような処理工程を経て、一定の形状と、1平方センチメートル当たり4450個の密度とを有する突起が形成される。このような突起は、上記した第1変形例によって、または、第1変形例に従って形成された突起と、ほとんど同じである。
【0049】
この第2変形例によれば、突起が突出する平坦環状部と同じ金属学的特性を有する突起を得ることができる。
【0050】
また、この方法を用いることによって、平坦部分の表面に、特に大型のシリーズからなる摩擦スペーサーを安価なコストで形成することができる。
【0051】
もちろん、本発明の第2変形例において、摩擦スペーサーの突起と対応するセルを道具の加工面に形成することによって、平坦部の表面に、高さと直径について所望の寸法を有する突起を、所望の密度で得ることができる。
【0052】
更に、平坦部を反転して、同一の工程によって、平坦部の他の面を機械加工することができる。
【0053】
本発明に関する変形例を説明してきたが、これらの変形例とは無関係に、好適には、相互に反対側に位置する2つの面にそれぞれ突起を設けた円形摩擦スペーサーを得ることができる。
【0054】
また、本発明に関する変形例を説明してきたが、これらの変形例とは無関係に、1つの特定の実施例によれば、素地平坦環状部に、微細な幾何学的模様と寸法を有する突起が、複数の半径円上に形成されている。更に、これらの突起は、同じ半径円に沿って伸延し、かつ、素地平坦環状部の中心から外部に向けて、漸次的に半径円間のピッチを大きくしながら、半径方向に間隔をあけて配置される。このように、突起の密度を、素地平坦環状部の中心から外側に向けて漸次的に小さくすることができる。
【0055】
他の実施例によれば、素地平坦環状部上で、突起が複数の半径円に沿って形成され、突起間のピッチは一定であり、かつ、突起の寸法は半径方向に漸次的に大きくしている。
【0056】
更に、特に有益な実施形態によれば、突起を有する平坦部に所定の処理を施して、平坦部と突起の硬度を更に増大することができる。このように、例えば、0.15μmから15μm間の厚みを有するセラミック被覆層を、平坦部の表面と突起上に熱蒸着する。例えば、窒化クロム層を蒸着する。
【0057】
更に、本発明に係る摩擦スペーサーは、上記した平坦環状部の寸法や形状に限定されない。
【0058】
一例として、本発明に関わる摩擦スペーサーを、相対的に薄くすることができる。このようにすることによって、ボルト締めされた組立体を新規設計において組立体の構成要素の寸法を再度調整することなく、ボルト締めされた組合体に取り付けることができる。言い換えれば、ネジを用いた組立体であって経時的にネジが緩みがちなネジを用いた組立体がすでに存在する場合は、その組立要素やそのための機能に問題を生じることなく、本発明に係る摩擦スペーサーを同組立体に取り付けることができる。
【0059】
図4を参照して本発明によって得られた円形摩擦スペーサーをテストする手順を説明する。この手順は、測定装置30を用いて行われる。測定装置30は、2つの金属板、すなわち上部金属板32と下部金属板34からなる組み合わせを具備する。上部板32は、係留端36と、オリフィス39が貫通する第1対向端38を有する。下部板34は、もう一つのオリフィス41が貫通する第2端40と、第2端と反対側に設けた牽引端42とを有する。
【0060】
テストに供される本発明に係る摩擦スペーサーが、2つの端部38、40間に介設される。調節可能なクランプ部品46がオリフィス39、41に嵌入され、かつ、摩擦スペーサー44に挿通される。上記した構成において、クランプ部品46によって軸方向張力Ftが生じ、テストに供される摩擦スペーサー44のそれぞれの側に設けた2つの端部38、40が押圧された場合を考える。この場合、その後、軸方向張力Ftに直交する方向において、下部板34の牽引端42に力Frが生じると、2つの板32、34間に相対運動が生じることが判明した。この相対運動からら静摩擦係数μ0を演繹する。
【0061】
また、本発明に係る摩擦スペーサーにおいて、静摩擦係数μ0は0.3より高いことが判明した。この結果は、通常の静摩擦係数μ0、すなわち、鋼に対する鋼の静摩擦係数が0.2の範囲にあることと比較して有利である。
【0062】
また、他の比較試験において、引張強度はテストされないが、回転力、すなわち、トルクがテストされる。回転力をテストするために、2つの板32、34を、クランプ部品46の軸周りに相対的に回転させる。その後、2つの板32、34間に相対運動を生じる回転トルクが発生したことが判明した。
【0063】
更に、本発明の他の変形例によれば、本実施例では図示されていないが、角錐状の突起が設けられる。これらの突起は、支持面を形成する材料に凹部を容易に形成することができる点で有利である。これによって、摩擦抵抗が増大する。
【0064】
好ましくは、突起の上記した構成は、フェムト秒レーザーによって直接的に形成できる。
【国際調査報告】