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特表2023-545540エナメルペースト組成物およびそのコーティング方法、ならびに化学的強化ガラス基板
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  • 特表-エナメルペースト組成物およびそのコーティング方法、ならびに化学的強化ガラス基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】エナメルペースト組成物およびそのコーティング方法、ならびに化学的強化ガラス基板
(51)【国際特許分類】
   C03C 8/22 20060101AFI20231023BHJP
   C03C 8/16 20060101ALI20231023BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C03C8/22
C03C8/16
C03C21/00 101
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523209
(86)(22)【出願日】2021-09-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021076616
(87)【国際公開番号】W WO2022078748
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】2016442.2
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521544562
【氏名又は名称】フェンジ・エイジーティ・ネザーランズ・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Fenzi AGT Netherlands B.V.
(71)【出願人】
【識別番号】523134794
【氏名又は名称】マックスフォード・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Maxford Technology Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】エメリアノヴァ,スヴェトラーナ
(72)【発明者】
【氏名】ローンチェンス,ジャン リュック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァッラ,マクセンス
(72)【発明者】
【氏名】リィ,クァフォン
(72)【発明者】
【氏名】シュー,レン
【テーマコード(参考)】
4G059
4G062
【Fターム(参考)】
4G059AA20
4G059AC16
4G059HB03
4G059HB14
4G059HB23
4G062AA09
4G062BB01
4G062DA04
4G062DA05
4G062DA06
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DD01
4G062DD02
4G062DD03
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4G062DE02
4G062DE03
4G062DF01
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4G062EA10
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4G062EB03
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4G062KK05
4G062KK07
4G062KK10
4G062MM07
4G062NN29
4G062NN33
(57)【要約】
ガラス基材コーティング用ペーストであって、コーティング後、焼成に供され、イオン交換により化学的強化に付され、エナメルコーティング、化学的強化されたガラス製品を形成し、ペーストは、有機キャリア液、第1軟化点を有する第1無機フリット、および第2軟化点を有する第2無機フリットを含んで成り、第1無機フリットの軟化点は、第1無機フリットの軟化点よりも低い温度で第2無機フリットが軟化されおよび焼結され得るように第2無機フリットの軟化点よりも高く、第1無機フリットはイオン交換され第1無機フリットを化学的強化することができる交換可能なイオンの含有量を含んで成る、ペースト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材コーティング用ペーストであって、コーティング後に、焼成に付され、およびイオン交換により化学的強化され、エナメルコーティング、化学的強化されたガラス製品を形成し、前記ペーストは、
有機キャリア液、
第1軟化点を有する第1無機フリット、および
第2軟化点を有する第2無機フリット、
を含んで成り、
前記第1無機フリットの前記軟化点は、前記第2無機フリットが前記第1無機フリットの前記軟化点よりも低い温度で軟化されおよび焼結され得るように、前記第2無機フリットの前記軟化点よりも高く、
前記第1無機フリットは、イオン交換され前記第1無機フリットを化学的強化できる交換可能なイオンの含有量を含んで成る、ペースト。
【請求項2】
前記第1無機フリットがガラスフリットである、請求項1に記載のペースト。
【請求項3】
前記第1無機フリットは、アルミノシリケートガラスフリットであり、任意に50~70重量%のSiOおよび15~25重量%のAlを含んで成る、請求項2に記載のペースト。
【請求項4】
前記第1無機フリットが、化学的強化するための交換性イオン含有量としてアルカリ金属イオンを含んで成る、請求項1~3のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項5】
前記第1無機フリットの前記交換性イオン含有量が、カリウムイオンを含んで成る溶融浴に入れた場合にカリウムイオンで交換可能なナトリウムイオンの含有量である、請求項4に記載のペースト。
【請求項6】
前記第1無機フリットが、15重量%、12重量%、10重量%もしくは9重量%以下;6重量%、7重量%、もしくは8重量%以下;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせで定義される範囲内の等価酸化物の重量で定義される交換可能なイオン量を含んで成る、請求項1~5のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項7】
前記第1無機フリットは、500℃、550℃、575℃、600℃、650℃、700℃、750℃、もしくは800℃以上;1000℃、900℃、もしくは850℃以下;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせで定義される範囲内の軟化点を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項8】
前記ペーストは、50重量%、40重量%、30重量%、20重量%、もしくは15重量%以下;2重量%、5重量%、8重量%、もしくは10重量%以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせで定義される範囲内の前記第1無機フリットの量を前記ペーストの固形分の重量%で含んで成る、請求項1~7のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項9】
前記第2無機フリットはガラスフリットである、請求項1~8のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項10】
前記第2無機フリットは、ケイ酸ビスマスガラスフリットまたはホウケイ酸亜鉛ガラスフリットであり、好ましくは40~70重量%のBiおよび10~40重量%のSiOを含んで成るケイ酸ビスマスガラスフリットである、請求項9に記載のペースト。
【請求項11】
前記第2無機フリットはまた、前記第2無機フリットを化学的強化することができる交換可能なイオンの含有量を含んで成る、請求項1~10のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項12】
前記第2無機フリットの前記交換可能なイオンの含有量は、前記第1無機フリットの前記交換可能なイオンの含有量よりも低い、請求項11に記載のペースト。
【請求項13】
前記第2無機フリットは、6重量%、5重量%、4重量%もしくは3.5重量%以下;0重量%、1重量%、2重量%、もしくは2.8重量%以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせで定義される範囲内の等価酸化物の重量で定義される交換可能なイオンの量を含んで成る、請求項1~12のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項14】
前記第2無機フリットは、650℃、600℃、575℃、550℃、もしくは500℃以下;350℃、375℃、400℃、425℃、450℃、もしくは475℃以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせで定義される範囲内で軟化点を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項15】
前記第2無機フリットは、前記ペースト組成物内で、700℃から850℃の範囲の焼結温度を有する、請求項1~14のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項16】
前記第1無機フリットは、700℃から850℃の範囲の温度で燒結可能性はない、請求項1~15のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項17】
前記ペーストは、80重量%、60重量%、50重量%、45重量%もしくは43%以下;20重量%、30重量%もしくは40重量%以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせで定義される範囲内の前記ペーストの固形分の重量%として前記第2無機フリットの量を含んで成る、請求項1~16のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項18】
前記第1無機フリットは、前記第2無機フリットの熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を有する、請求項1~17のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項19】
さらに顔料を含んで成る、請求項1~18のいずれか1項に記載のペースト。
【請求項20】
ガラス基材をコーティングし、化学的強化する方法における、請求項1~19のいずれか1項に記載のペーストの使用。
【請求項21】
ガラス基材をコーティングする方法であって、
請求項1~19のいずれか1項に記載のペーストをガラス基材上に堆積すること、
前記ガラス基材を加熱してエナメルコーティングガラス基材を形成する前記ペーストの前記第2無機フリットを燒結すること、ならびに
前記エナメルコーティングガラス基材をイオン交換プロセスに付して、前記基材における前記交換可能なイオンの含有量の少なくとも一部を前記第1無機フリットと交換して前記エナメルコーティングガラス基材を化学的強化すること、
を含んで成り、
前記ガラス基材は、イオン交換され前記ガラス基材を化学的強化できる交換可能なイオンの含有量を含んで成り、前記ガラス基材は、前記ペーストの前記第2無機フリットの軟化点よりも高い軟化点を有する、方法。
【請求項22】
前記ガラス基材は、前記第1無機フリットと同じ交換可能なイオンを含んで成る、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ガラス基材は、アルミノシリケートガラスである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記ガラス基材は、15重量%、12重量%、10重量%もしくは9重量%以下;6重量%、7重量%、もしくは8重量%以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせで定義される範囲内の等価酸化物の重量で定義される交換可能なイオンの量を含んで成る、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記ガラス基材は、500℃、550℃、575℃、600℃、650℃、700℃、750℃、もしくは800℃以上;1000℃、900℃、もしくは850℃以下;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせで定義される範囲内の軟化点を有する、請求項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ガラス基材は、前記第2無機フリットよりも前記第1無機フリットにより密接に一致している熱膨張係数を有する、請求項21~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ガラス基材は、前記ペーストにおいて前記第1無機フリットと同じ材料を形成される、請求項21~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記加熱することは、前記第1無機フリットまたは前記ガラス基材の前記軟化点を超えることなく、前記ペーストの前記第1および第2無機フリットの軟化温度の間の温度まで前記ガラス基材を加熱して前記エナメルコーティングガラス基材を形成する前記第2無機フリットを焼成することを含んで成る、請求項21~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記ガラス基材は、前記イオン交換プロセスに前記ガラス基材を付して前記ガラス基材を化学的強化する前に、前記ペーストを前記基材に堆積する後に、さらにプレス曲げに付して前記ガラス基材を成形する、請求項21~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記基材は、前記第2無機フリットを焼成して前記エナメルコーティングを前記ガラス基材に形成するのと同時に、プレス曲げによって成形される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記イオン交換プロセスは、前記エナメルコーティングガラス基材を鋳造されたイオン交換浴に設置することを含んで成る、請求項21~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
請求項21~31のいずれか1項に記載の方法で製造されたコーティングガラス製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
本明細書は、エナメルペースト組成物およびガラス基板をコーティングし化学的強化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
エナメルは、例えば、ガラス、金属、セラミックのような基材への装飾またはコーティングに広く使用されている。用途としては、食器、看板、タイル、電子機器カバーガラス、自動車用ガラス、建築用ガラスなどである。エナメルは、例えば、電子機器のカバーガラスおよび自動車のフロントガラスのような、窓および画面に使用されるガラスシートの周囲にカラーボーダーを形成する際に特に有用である。カラーボーダーは外観を向上させ、紫外線による下地接着剤の劣化を防ぐことができる。さらに、バスバーおよび配線の接続部を隠すこともできる。
【0003】
エナメルは通常、顔料およびガラスフリットを含んで成る。一般的には、ペーストおよびインクとして有機キャリア液中で基板(例えばガラス表面)に、例えばスクリーン印刷およびインクジェット印刷によって塗布される。本明細書では、「ペースト」という用語を使用するものとし、これには、例えばインクジェット印刷用のインクとも呼ばれ得る組成物が含まれることが理解されるであろう。
【0004】
よって、エナメルペーストは、液体分散媒中に分散された顔料およびガラスフリットの粒子を含んで成る。ペーストのコーティングを基材に塗布した後、ペーストは通常乾燥され、塗布されたコーティングは焼成を受け、すなわち、熱処理を受けてフリット粒子の少なくとも一部が軟化して融合し(または溶融し;fuse)、基材に融合し、それによって基材に付着したエナメルコーティングが形成される。焼成中、顔料自体は通常軟化せず、フリットによって、あるいはフリットとともに基板に固定される。
【0005】
ある用途に使用されるガラス板は、加圧成形プロセスに付して、ガラスを所望の最終形状に曲げる。一般に、そのようなガラス板は、高温でのプレス曲げに供される前に、印刷プロセスで所望の領域にペーストが塗布される。このプロセスで使用される高温により、コーティングは焼成され、ガラスシートは軟化し、その後、成形金型(forming die or mould)を使って所望の最終形状に成形することができる。加圧成形は、例えば、自動車の窓、電子機器のカバー画面、ガラス瓶の製造、建築用ガラス、および家電用ガラスなどに使用される。これらの例では、装飾的および/または機能的な理由から、エナメルを塗布することが望ましい場合もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような方法の問題点として、プレス曲げ加工中にエナメルが金型に付着し、エナメルのコーティングが損傷することがある。そのため、エナメルペーストは、金型への付着の問題を緩和するために、プレス曲げ温度で低粘着になるように配合する必要がある。
【0007】
上記に加えて、多くの用途では、強度を向上させたガラス製品を製造することが望ましいとされている。これは、所定の用途で強度を向上させるため、および/または、より薄いガラスを利用できるようにするため、所望のレベルの強度を保持しながら、材料要件を節約し、重量を減らすために必要となる場合がある。この点に関して、化学的強化することができるガラス材料が開発されている。そのようなガラス材料は、イオン交換プロセスにおいて、より大きなイオンと交換可能なイオンを含んで成る。例えば、ガラス材料は、カリウムイオンと交換可能なナトリウムイオンを含んで成る場合がある。よって、化学的強化は、例えば、ナトリウムのような小さなイオンを例えばカリウムのような大きなイオンと交換することで、ガラスの表面を丈夫にすることである。このイオン交換により、表面に高圧縮の薄い層ができ、その結果、中心部に張力のある層ができる。このプロセスは、ガラスを溶融塩浴(例:溶融KNO)に浸すことで行われる。
【0008】
非平面の化学的強化ガラスが必要な用途では、ガラスをプレス曲げ加工して所望の形状にした後、化学的強化プロセスに付され得る。この順序は、強化前のガラスをプレス曲げすることが容易であるため、好ましい。 さらに、化学的強化後にプレス曲げを行うと、最終製品の強度が低下する可能性がある。
【0009】
携帯電話のカバー画面には、そのような成形され化学的強化されたガラス画面が望まれている。近年では、3D形状のガラスカバー画面を使用する動きがある。例えば、画面の縁は、美観のため、および/または鋭利な縁を避けるために湾曲させ得る一方、ガラス画面をモバイル機器の外縁まで延ばし、所定の端末サイズに対して画面面積を増加させることを可能にする。また、デバイスが落下するか、そうでなければ衝撃力を受けた場合の破損を緩和するために、より高い強度の画面を有することが望まれる。さらに、薄型画面を必要とする薄型軽量デバイスを提供することが望まれている。化学的強化は、堅牢なモバイル機器に必要な強度を達成しつつ、ガラスの厚さを減らすのに役立つ。
【0010】
そのような形成され化学的強化されたガラス画面はまた、他の用途でも望まれる。例えば、自動車では、安全基準を維持または向上させながら、より効率的で低重量の車両を求める動きがある。化学的強化ガラスウィンドウを使用することで、高い強度性能を維持したまま、より薄くより軽い窓を提供することができる。これらの特徴はまた、電気自動車および水素燃料電池車の性能向上にも貢献することが望まれている。
【0011】
そのような用途ではまた、しばしば化学的強化されたガラスにエナメルコーティングを施す必要がある。そのようなエナメルコーティングは、化学的強化の後に施されることがある。しかしながら、化学的強化されたガラス基板上でエナメルペーストを焼成すると、一般にガラス基板の強度が低下する。例えば、化学的強化されたガラス基板を加熱してエナメルコーティングを焼成すると、ガラス基板内でイオンが移動し、ガラス基板に付与されていた化学的強化が低下することがある。
【0012】
一つの方法として、このような高温での焼成を必要としないコーティングを利用することが考えられる。例えば、エナメルの代わりに有機インクを使用し得る。しかしながら、このような有機インクは、エナメルコーティングほど硬くなく、耐傷性もない。さらに、化学的強化の前にガラスを整形するプロセスがあると、整形および化学的強化のステップ後にコーティングを施すには、非平面基板に印刷する必要があり、時間およびコストがかかる。
【0013】
そのため、化学的強化の前に、また非平面製品の場合は成形プロセスの前に、ガラス基板がまだ平面で強化されていない形態でエナメルコーティングが適用されるようにエナメルコーティングを適用することが望ましい。
【0014】
この点に関して、US9487439B2は、ガラス基板を装飾し強化する方法を提案しており、その方法は以下を含んで成る:
a.ガラス基板にエナメル組成物を塗布すること、該エナメル組成物は、顔料と、少なくとも1つの交換可能なアルカリ金属イオンを含む45~100重量%のガラスエナメルフリットとを含み、
b.ガラスエナメルフリットを流動させ焼結させ、それによってガラス基板に付着した着色エナメルを形成するのに十分な焼成温度で、ガラス基板を焼成すること、ならびに
c.エナメル化されたガラス基板を溶融塩の浴中に置くこと、該溶融塩は、ガラス中の交換可能なアルカリ金属イオンよりも大きな1価の金属イオンを含み、
ガラスエナメルフリットは、着色エナメルがガラス基板上の装飾機能層として残存するように、溶融浴の温度とガラス基板の軟化点の間にある軟化点を有する。
【0015】
US9487439B2は、
「有用なフリットは、溶融イオン交換浴の温度と基板ガラスの軟化点との間の範囲に入る軟化点を有することになる。例えば、イオン交換に一般的に使用される溶融硝酸カリウム浴は、一般に約350~約400℃の範囲で操作される。ソーダ石灰基板ガラスは、一般に約600℃~約700℃の温度で処理される。したがって、このようなシステムの軟化点のウィンドウは、約425℃~約575℃である。」
を特定する。
【0016】
エナメルペースト用ガラスフリットの主な特徴は、(i)基板を損傷することなく基板で焼成できるように、基板の軟化点よりも低い軟化点を有していなければならず、(ii)化学的強化プロセス中にエナメルコーティングが溶融浴によって損傷しないように、溶融浴の温度よりも高い軟化点を有していなければならず、(iii)ガラスフリットは、エナメルコーティング内のガラスが化学的強化され得るような交換可能なイオンを含んで成ければならず、ならびに(iv)ガラスフリットは、基板ガラスの熱膨張係数に近い熱膨張係数(CTE)を有すべきであること、を含む。
【0017】
US9487439B2は、ガラスフリットのための多数の潜在的な酸化物成分、およびこれらの成分のための潜在的な数量の範囲を挙げている。これらの成分および数量は、ガラス装飾に有用な無鉛フリットの典型であることが示されている。US9487439B2のすべての実施例は、ペースト中に市販の無鉛ナトリウム含有ガラスフリットを使用している。
【0018】
発明の概要
本発明者らは、例えば、携帯電話のカバーガラスおよび自動車用途のような特定の要求の高い用途のガラス製品のコーティングおよび化学的強化のためのすべての要件を適切に満たす市販のフリットを特定することが困難であることを見出した。良好なエナメルコーティングを形成するためのフリットの要求と、非常に強いエナメルコーティングのガラス製品を提供するためのフリットの要求との間の妥協が必要である。良好なエナメルコーティングを形成し、その後化学的強化プロセスを経た基材にエナメルコーティングを形成できる軟化点の要件を満たす市販のフリットは、要求される用途の要件に対して十分に強くないガラス製品になることが分かっている。
【0019】
したがって、様々な化学的強化されたガラス基材上で良好な処理を行い、改善された特性を有するコーティングされたガラス物品をもたらすエナメル形成組成物が必要とされている。特に、エナメルが、化学的強化に供される基材上に容易に印刷でき、優れた靭性および強度を有するコーティングガラス製品をもたらす、エナメル形成組成物に対する必要性がある。エナメルはまた、良好な物理的、光学的、および化学的特性を有する、良質なコーティングを提供すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本明細書は、これらの問題に対処することを目的とする。特に、本明細書では、エナメルペーストが、少なくとも2つの無機フリットを用いて配合される解決策を説明する:改善された靭性および強度を提供するように調整され、特定の例では、基材(例えば、Corning(商標)からのGorilla(商標)ガラス)に用いられる同じ材料の粉末状である第1フリット;ならびに焼成時に良質な焼結エナメルコーティングを提供するように調整された、より低い軟化温度を有するが、コーティングおよび焼成後に行われる化学的強化プロセスによって損傷を受けないように、十分に高い軟化温度を有する第2フリット。
【0021】
ペーストのフリットの配合に基材と同一か類似の材料を使用することは、焼成および化学的強化後のエナメルコーティング製品の靭性および強度を向上させるのに有利であることが分かっている。この材料は、基材の化学的強化に使用される化学的強化プロセスに対して、すでに最適化されている。そのため、コーティングには理想的な選択と言える。また、コーティングと基材に同一または類似の材料を使用することはまた、コーティングと基材との良好な熱膨張係数のマッチングを確保する。
【0022】
もちろん、コーティングと基板に同じ無機材料を使用する場合の問題は、コーティング中のフリットが基板も軟化させないと焼結できないことである。そのため、本明細書では、ペースト組成物中に、基板および第1フリットの軟化点よりも低い温度で焼結可能なより低い軟化点の第2フリットを有するペーストを提供する。この結果、焼結した第2フリットの連続マトリックスに埋め込まれた第1フリットの粒子を含んで成るエナメルコーティングが得られる。第2フリットの焼結中に第1フリットが軟化して焼結することはなく、滑らかで良質なエナメルコーティングを達成されることを確保するため、第1フリットを加工して粒径の小さい微粉末を提供し得る。
【0023】
第1フリットは、コーティング焼結ステップ中にその軟化点に達して焼結しておらず、焼結した第2フリットの中に分散した離散的な粒子として残っているという事実にもかかわらず、かなりの量の第1フリットをペースト製剤に組み込むことができ、しかも良質のエナメルコーティングを達成できることが判明している。
【0024】
さらに、第1フリットが未焼結のままであるにもかかわらず、化学的強化後の最終的なエナメルコーティングガラス製品の靭性/強度が向上することが判明している。理論に拘束されるわけではないが、1つの可能なメカニズムは、基材と同一または類似の材料である第1フリットが、基材材料と同一または類似の方法で強化されることである。より小さいイオンがより大きいイオンと置換されるイオン交換プロセスは、基板のコーティングされていない表面領域と同様の方法で、エナメルの表面に高圧縮の薄い層を形成する。別のメカニズムとしては、化学的強化ステップの前に、第1および第2のフリット間のin-situ(その場)イオン交換が起こりえることである。前述のメカニズムの1または複数が、エナメルコーティングの化学的強化に寄与する可能性がある。基礎となるメカニズムにかかわらず、エナメルコーティングの化学的強化は、エナメルコーティングを破壊することなく達成できることが判明している。加えて、エナメルと基材の特性のより良いマッチングが達成され、化学的強化されたエナメルコーティングされたガラス製品の改良につながる。
【0025】
実際、分析結果は、第2(より低い軟化点)フリットがエナメルコーティング形成中の焼結助剤として作用するだけでなく、マルチフリットシステムの化学的強化メカニズムにおいて重要な役割を果たすことを示している。このように、第2(より低い軟化点)フリットの組成は、第1(より高い軟化点)フリットと組み合わせて、化学的強化プロセスにより最適化されたマルチフリットシステムを提供するように配合することができる。この点に関して、第2フリットは、有利には、(例えば、40~70重量%のBiおよび10~40重量%のSiOを含んで成る)ケイ酸ビスマスガラスフリットまたはホウケイ酸亜鉛ガラスフリットである。さらに、第1フリットは、有利には(例えば、50~70重量%のSiOおよび15~25重量%のAlを含んで成る)アルミノシリケートガラスフリットである。アルミノシリケートガラスフリットと、ケイ酸ビスマスガラスフリットまたはホウケイ酸亜鉛ガラスフリットとの組み合わせは、化学的強化プロセスに最適化される点で特に有利であることが判明している。
【0026】
有利には、成形ガラス製品の場合、ペースト中の第2フリットを焼結するステップは、ガラス基板のプレス曲げ加工と同時に行われる。このように、このプロセスは、平坦で未強化ガラス基板上にデュエルフリットペーストを堆積/印刷すること;予備焼成して、ペーストのキャリア液体成分を除去すること;(例えば700℃~800℃の間の)高温でプレス曲げして基板を成形し、基板の成形中にコーティング中の第2フリットを焼結してエナメルコーティングを形成すること;次にエナメルコーティングしたガラス基板を、例えば、溶融塩浴に沈めることによって化学的強化に付することを含んで成る。このようにして得られたエナメルは、要求の厳しい最終用途の要件を満たす機械的および光学的特性を示す。例えば、得られたエナメルは、5未満の除外L値測定と3を超える光学密度を示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図面の簡単な説明
本発明をより良く理解するため、また、本発明がどのように実施され得るかを示すために、本発明の特定の実施形態が、添付の図面を参照して、例示としてのみ説明される。
図1図1は、ガラス基板をエナメルコーティングし化学的強化するための基本的なプロセスステップのフロー図である。
図2図2は、図1に示すプロセスを用いて形成されたエナメルコーティングされ化学的強化されたガラス製品の概略図である。
図3図3は、ガラス基板へのエナメルコーティング、プレス曲げ、および化学的強化の基本的なプロセスステップを示すフロー図である。
図4図4は、図3に示すプロセスを用いて形成された、成形され、エナメルコーティングされ、および化学的強化されたガラス製品の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
詳細な説明
本明細書は、ガラス基板をコーティングするためのペーストを提供し、コーティング後、焼成とイオン交換による化学的強化とに付され、エナメルコーティングされた、化学的強化されたガラス製品を形成する。ペーストは、有機キャリア流体、第1軟化点を有する第1無機フリット、および第2軟化点を有する第2無機フリットを含み、第1無機フリットの軟化点は、第2無機フリットが第2無機フリットの軟化点よりも低い温度でかつコーティングが適用される基材の軟化点よりも低い温度で軟化および焼結され得るように、第2無機フリットの軟化点より高い。
【0029】
「軟化点」はガラス材料分野でよく知られ、よく使われるパラメータであることに留意する必要がある。軟化点とは、フリットの軟化または変形の兆候が観察される最初の温度を意味する。これは、ホットステージ顕微鏡(HSM)を用いて測定することができる。加えてまたは代替として、ダイラトメトリー軟化点とは、フリットの粘度が1011.3dPa・sとなる温度であり、ダイラトメトリーで測定することもできる。
【0030】
ペースト中の無機フリットを定義する代替的または追加的な方法は、ガラス転移温度の観点である。この場合、第1無機フリットのガラス転移温度は、第2無機フリットのガラス転移温度より高い。他の点では、ペーストは、本明細書に記載されたものと同じ方法で定義することができる。
【0031】
追加のフリットを混合物に添加して、エナメルの熱膨張係数を改善することができまたは得られる混合物の流動性を改善することができる。第1無機フリットは、例えばin-situイオン交換によって、および/またはエナメルコーティングが配置されるガラス基板を化学的強化するために使用される同じプロセス中に、イオン交換してエナメルコーティング中のフリットを化学的強化することができる交換可能なイオン含有量を含んで成る。第2無機フリットはまた、第1無機フリットに加えて、第2無機フリットをイオン交換して化学的強化し得る交換性イオン含有量を含んで成り得る。しかしながら、第2無機フリットの組成は、ガラス強化のために最適化されているのではなく、むしろその焼結特性のために調整されなければならないため、第2無機フリットの化学的強化特性(少なくとも第1フリットと分離して)は、第1無機フリットよりも一般的に低いものである。このように、第2無機フリットの交換可能なイオンの含有量は、通常、第1無機フリットの交換可能なイオンの含有量よりも低く、および/または周囲のガラスマトリックスは、イオン交換が、少なくとも第1フリットの分離において、第1無機フリットおよびガラス基板材料の場合と同じ程度の化学的強化を生成しないようになっている。とはいえ、先に述べたように、予備的な分析研究ではまた、マルチフリットシステムに存在する場合、第2(低軟化点)フリットは、予想以上に化学的強化メカニズムによく寄与し、第2フリットの交換性イオン含有量が第1フリットの交換性イオン含有量よりも低くても、化学的強化プロセスにおいて第1フリットと同様に重要である可能性も十分にあることが示されている。
【0032】
概要セクションで示したように、ある例によれば、第1無機フリットは、エナメルコーティングが施されるガラス基板と同じ材料で作ることができる。しかしながら、他の例では、第1無機フリットは、それが、in-situイオン交換によっておよび/またはエナメルコーティングが施されるガラス基材を化学的強化するために用いられる同じプロセス中に、エナメルコーティング中のフリットを化学的強化するためにイオン交換することができる交換可能なイオンの含有量を有するように適合される材料である限り、基材のものとは異なる材料で作られ得る。すなわち、第1無機フリットは、化学的強化性能に適合した材料であり、基板上で焼結するために低い軟化点を有することを必要としない。例えば、第1無機フリットは、従来のエナメルコーティング形成に関連する軟化および流動の特性ではなく、化学的強化性能に適合/最適化された、基板と同じ材料または別のタイプのガラス材料で形成し得る。
【0033】
イオン交換によって化学的強化されるガラス材料の能力を決定する1つの要因は、明らかに、ガラス材料内の交換可能なイオンの量および種類である。この点に関して、第1の無機フリットは、6重量%以上、7重量%以上、もしくは8重量%以上;15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下もしくは9重量%以下;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の等価酸化物の重量で定義される交換可能なイオンの量を含んで成り得る。この点に関して、ガラス組成物は、従来、ガラス組成物を製造するために使用される酸化物成分の重量パーセントによって定義されることに留意されたい。 このように、交換可能なイオンの含有量を、ガラス材料の製造に使用された等価な酸化物含有量という観点から定義することが適切である。
【0034】
交換可能なイオンの含有量は、例えば、リチウムおよび/またはナトリウムのようなアルカリ金属イオンによって提供され得る。特に有用なのは、カリウムイオンを含む溶融浴に入れたときにナトリウムイオン含有量がカリウムイオンと交換可能な高ナトリウム含有ガラスである。例えば、交換可能なイオンがナトリウムイオンであると、第1無機フリットは、7~10重量%のNaOを含み得る。とはいえ、他のイオン交換系を利用することも想定される。例えば、セシウムイオンを使用してガラスを化学的強化することも知られている。
【0035】
ガラス材料の化学的強化は、その交換性イオン含有量、例えば、アルカリ金属含有量およびより具体的にはナトリウム含有量だけに支配されるわけではないことに注意することが重要である。化学的強化の量はまた、交換性イオンを取り囲むガラスマトリックスに依存する。溶融イオン交換浴中においてイオンが交換される量、深さ、および速度には、周囲のガラスマトリックスが影響する。 さらに、周囲のガラスマトリックスは、イオンの交換によって発生するストレスの量に影響する。このように、ガラス材料を調整して化学的強化の能力を最適化することは、単に交換可能なイオン(例えばナトリウム)の含有量が高いガラス材料を選択すればよいというものではないことに留意する必要がある。
【0036】
特定の例によれば、第1無機フリットは、50~70重量%のSiOおよび15~25重量%のAlを任意に含んで成るアルミノシリケートガラスフリットであり得る。先に示したように、アルミノシリケートガラスフリットは、先に定義したように、NaO含有量の形態の交換性イオン含有量を含み得る。加えて、第1の無機フリットは、以下の1または複数(または、1または2以上)をさらに含んで成る:1~5重量%のLiO;0.2~2重量%のKO;0~1重量%のCaO;0~1重量%のMgO;0~1重量%のZrO;0~1重量%のB;および1~5重量%のP。これらの成分および量は、例えば、Corning(商標)のGorilla(商標)ガラスのような化学的強化のために調整された市販のガラス材料に相当する。
【0037】
エナメルコーティングを形成する際に、第1無機フリットが軟化および焼結する必要はなく、ペースト中の第2無機フリットによってこれらの要件が満たされるため、第1無機フリットはガラス基板の軟化点よりも低い軟化点を有する必要はない。第1無機フリットは、500℃以上、550℃以上、575℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、もしくは800℃以上;1000℃以下、900℃以下、もしくは850℃以下;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の軟化点を有し得る。特定の例では、例えば、第1フリットが基板と同じ材料で作られていると、第1無機フリットの軟化点は、ガラス基板の軟化点と同じかまたは実質的に同じである。
【0038】
エナメルコーティングの化学的強化の改善に加えて、第1無機フリットは、基板とのより良い熱膨張係数の一致をエナメルコーティングに提供する機能がある。ガラス基板は、第2無機フリットよりも第1無機フリットとより密接に一致する熱膨張係数を有することができる。これは、通常、第1無機フリットが第2無機フリットの熱膨張係数よりも低い熱膨張係数を有することを意味する。基板が第1無機フリットと同じ材質で作られていると、基板および第1無機フリットの材質は同じ熱膨張係数を示すことになる。
【0039】
ペーストは、ペーストの固形分に対する重量パーセントとして、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20w重量%以下もしくは15重量%以下;2重量%以上、5重量%以上、8重量%以上もしくは10重量%以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の第1無機フリットの量を含み得る。下限値は、最終用途で所望の強度/靭性を達成するために必要な化学的強化ガラスの量によって決定される。上限値は、美観、物理的、光学的、および化学的特性が良好な良質のエナメルコーティングを提供しつつ、エナメル組成物に装填できるこのような材料の量によって決定される。
【0040】
先に示したように、エナメルペースト組成物の第2無機フリットは、第1ガラスフリットおよび基材よりも低い軟化温度を有し、焼成時に良質の焼結エナメルコーティングを提供するために選択されるものである。第2無機フリットは、コーティングおよび焼成の後に行われる化学的強化処理によって損傷を受けないように、依然として十分に高い軟化温度を有していなければならない。このように、第2無機フリットは、溶融イオン交換浴の温度によって下端が定義され、ガラス基板の軟化点によって上端が定義される必要な温度ウィンドウ内で、従来のエナメルコーティング形成に関連する軟化および流動特性を有するものであるが、エナメルコーティングに用いられるより従来のガラスフリットとして選択することが可能である。
【0041】
つまり、第2無機フリットは、最終製品の特性を最適化するために、第1無機フリットおよびガラス基材との相性を最適化するように調整することができる。先に示したように、第2フリットは、エナメルコーティング中の焼結助剤としての機能に加えて、化学的強化プロセスにおいて役割を果たすことができる。第2無機フリットは、例えば、ケイ酸ビスマスガラスフリットであってよく、40~70重量%または45~70重量%のBiおよび/または10~40重量%または20~40重量%のSiOを含んで成ってもよい。あるいは、第2フリットは、ホウケイ酸亜鉛ガラスフリットであってもよい。第2無機フリットは、第1無機フリットに加えて、第2無機フリットを化学的強化するためにイオン交換され得る交換性イオン含有物を含んでいてもよい。ただし、第2無機フリットの交換性イオン含有量は、通常、第1無機フリットの交換性イオン含有量よりも低い。例えば、第2無機フリットは、0重量%以上、1重量%以上、2重量%以上、もしくは2.8重量%以上;6重量%以下、5重量%以下、4重量%以下、もしくは3.5重量%以下;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の等価酸化物の重量で定義される交換性イオンの量を含み得る。特定の例では、第2無機フリットは、1~5wt%のNaOを含んで成る。
【0042】
さらに、第2無機フリットは、以下のうちの1または複数をさらに含むことができる:2.5~5.5重量%のB;3~5重量%のLiO;1~2重量%のZnO;0~1重量%のP;0~1重量%のMgO;および0~1重量%のCuO。第2無機フリットのためのこれらの成分および量は、Corning(商標)のGorilla(商標)ガラスで形成された第1無機フリットおよびガラス基板と組み合わせて使用するのに適していることが判明している。また、この製剤はまた、同様の化学的強化されたガラス材料に使用するのに適していることが想定される。
【0043】
先に示したように、第2無機フリットは、下端が溶融イオン交換浴の温度によっておよび上端がガラス基板の軟化点によって定義される温度ウィンドウ内で、エナメルコーティング形成のための軟化および流動特性を有するように選択されるべきである。選択される特定の材料とその材料の軟化点は、基板、第1ガラスフリットの材料、および溶融イオン交換浴の使用温度に多少依存し、これらの選択は第2無機フリットを焼結するための温度ウィンドウを設定することになるからである。しかしながら、典型的には、第2無機フリットは、ペースト/エナメル組成物内で、650℃以下、600℃以下、575℃以下、550℃以下、もしくは500℃以下;350℃以上、375℃以上、400℃以上、425℃以上、450℃以上、もしくは475℃以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の軟化点を有するように選択される。
【0044】
第2無機フリットの軟化点は、その焼結温度より低いべきである。典型的には、第2無機フリットは、700℃および850℃(任意に700℃および800℃)の範囲内の焼結温度を有するべきである。この点で、第2無機フリットは、それ自体、より低い温度範囲内で融合され得るが、それが第1フリット(および、例えば、顔料のようなペーストの他の成分)と共に使用される場合、化学的強化プロセスに適切な焼結温度範囲を提供することに留意されたい。すなわち、第2フリットは、ペースト/エナメル中の他の成分と一緒に使用される場合にのみ、化学的強化プロセスに適した焼結温度ウィンドウを提供するので、本明細書に記載される第2フリットの焼結挙動は、この文脈で理解されるべきである。第2フリットの軟化および焼成の挙動は、ペースト/エナメル中の他の成分と組み合わせた場合に必要な特性を提供するように選択されなければならない。さらに、典型的には、第1無機フリットはこの温度では焼結しないため、第2無機フリットは第1無機フリットの未焼結粒子の周囲で焼結し、第2無機フリットは第1無機フリットの粒子が分布する連続溶融焼結ガラスマトリックス(continuous, fused, sintered glass matrix)を形成する。
【0045】
前述のように、特定の用途では、ペーストは色が濃く、L値が低いエナメルコーティングを提供すべきである。低いL値を達成するためには、第2フリットの結晶化挙動が重要であることが分かった。したがって、第2フリットは、低結晶性フリットであるように選択され得る。
【0046】
ペーストは、ペーストの固形分の重量パーセントとして、80重量%以下、60重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、もしくは43重量%以下;20重量%以上、30重量%以上、もしくは40重量%以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の量の第2の無機フリットを含んで成り得る。下限値は、第1無機フリットの粒子が分布する連続溶融焼結ガラスマトリックスを形成するのに必要な第2無機フリットの量によって決定される。上限値は、化学的強化後に所望の強度を達成するために必要とされる第1無機フリットの量に依存する。
【0047】
特定の用途によれば、ペーストは、プレス曲げ装置にくっつくことなく、700℃から850℃(任意に700℃から800℃)の範囲の温度で焼成およびプレス曲げできることが望ましい。このように、第2無機フリットは、この温度範囲内で焼結し、この焼結温度で粘着防止特性を有するように配合されるべきである。
【0048】
着色エナメルコーティングが望まれる用途では、ペーストはさらに顔料を含んで成ってもよい。顔料のタイプは、最終用途に望まれる色、光学密度などに依存する。特定の用途では、顔料は、Cr、Cu、Co、およびMnのうちの1または複数を含んで成り得る。さらに、ペーストは、ペーストの固形分の重量パーセントとして、30重量%以下、25重量%以下、もしくは22重量%以下;10重量%以上、15重量%以上もしくは19重量%以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の顔料の量を含んで成り得る。
【0049】
ペーストはまた、例えば、ZnOおよびSiOを含むシードフリットを含んで成り得る。ペーストは、ペーストの固形分の重量パーセントとして、20重量%以下、15重量%以下、もしくは12重量%以下;5重量%以上、7重量%以上、もしくは9重量%以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内のシードフリットの量を含んで成り得る。
【0050】
上述のペースト組成物は、ガラス基板をコーティングして化学的強化する方法に使用され得る。ガラス基板は、電子デバイスのカバーガラス、携帯電話のカバーガラス、自動車の窓、または建築の窓であり得る。
【0051】
本明細書はまた、ガラス基板をコーティングする方法であって、
本明細書に記載のペーストをガラス基板上に堆積させること、
ガラス基板を加熱してペーストの第2の無機フリットを焼結し、エナメルコーティングされたガラス基板を形成すること、ならびに
エナメルコーティングされたガラス基材をイオン交換プロセスに付して、基材中の交換可能なイオンの含有物の少なくとも一部と第1無機フリットを交換して、エナメルコーティングされたガラス基材を化学的強化すること
を含んで成り、
ガラス基板は、ガラス基板を化学的強化するためにイオン交換することができる交換可能なイオン含有物を含み、ガラス基板は、ペーストの第2無機フリットの軟化点よりも低い軟化点を有する
方法を提供する。
【0052】
前述の方法では、ガラス基板は、第1無機フリットと同じ交換可能なイオンを、同じまたは同様の量で含んで成り得る。例えば、ガラス基板は、15重量%以下、12重量%以下、10重量%以下、もしくは9重量%以下;6重量%以上、7重量%以上、もしくは8重量%以上;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の等価酸化物の重量によって定義される量の交換可能なイオンを含んで成り得る。特定の例によれば、ガラス基板は、7~10重量%のNaOを含んで成る。
【0053】
同様に、ガラス基板の軟化点は、第1無機フリットの軟化点と同じかまたは類似であり得る。すなわち、ガラス基板は、500℃以上、550℃以上、575℃以上、600℃以上、650℃以上、700℃以上、750℃以上、もしくは800℃以上;1000℃以下、900℃以下、もしくは850℃以下;または前述の上限値および下限値の任意の組み合わせによって定義される範囲内の軟化点を有し得る。
【0054】
ガラス基板は、第2無機フリットよりも第1無機フリットにより近い熱膨張係数を有し得る。
【0055】
基板はまた、第1無機フリットの材料を形成する成分と同一または類似の他の成分を有し得る。例えば、基板はアルミノシリケートガラスであり得、例えば50~70重量%のSiOおよび15~25重量%のAlを含んで成り得る。加えて、ガラス基板は、以下のうちの1または複数をさらに含んでもよい:1~5重量%のLО、0.2~2重量%のKО、0~1重量%のCaO、0~1重量%のMgO、0~1重量%のZrO、0~1重量%のB、および1~5重量%のP。これらの成分および量は、例えば、Corning(商標)のGorilla(商標)ガラスなどを化学的強化するために調整された市販のガラス材料と同等である。特定の例によれば、ガラス基板は、ペースト中の第1無機フリットと同じ材料で形成される。
【0056】
エナメルコーティングを形成する方法では、加熱ステップは、例えば、700℃~800℃の範囲の温度まで加熱すること、ガラス基板を、ペーストの第1および第2の無機フリットの軟化温度の間の温度まで加熱して、第1の無機フリットまたはガラス基板を軟化させることなく、エナメルコーティングガラス基板を形成する第2無機フリットを焼結することを含んで成る。
【0057】
この方法は、ガラス基板を成形するためのプレス曲げステップをさらに含むことができる。この点に関して、ガラス基板にペーストを塗布した後、ガラス基板をイオン交換処理してガラス基板を化学的強化する前に、ガラス基板をさらにプレス曲げ加工してガラス基板を成形する。ガラス基板上にエナメルコーティングを形成するために第2無機フリットを焼結するのと同時に、プレス曲げによって基板を成形することが好ましい。このようにして、コーティングは、エナメルコーティングを形成するための追加の処理ステップを必要とせずに、基材の成形と同時に焼結される。
【0058】
エナメルコーティングの焼結およびガラス基板の成形の後、エナメルコーティングされた製品は、イオン交換による化学的強化に付される。イオン交換プロセスは、エナメルコーティングされたガラス基材を溶融イオン交換浴、例えば、KNOの溶融浴に入れることを含んで成る。得られたコーティングおよび化学的強化ガラス製品は、他のエナメルコーティングおよび化学的強化ガラス製品と比較して強度および靭性が改善されていることが判明しており、さまざまな用途での使用に有利である。例えば、コーティングされたガラス製品は、電子デバイスのカバーガラス、携帯電話のカバーガラス、自動車の窓、または建築窓のうちの1つであり得る。
【0059】
図1は、エナメルコーティングおよびガラス基板の化学的強化の基本的なプロセスステップのフロー図を示す。方法は、以下のステップを含んで成る:
(a)ガラス材料で作られた、未強化で平坦なガラス基板から開始する。ガラス材料は、溶融塩浴に入れるとより大きなイオン(例えば、カリウムイオン)と交換できる小さなイオン(例えば、ナトリウムイオン)を有するように配合されている。ガラス基板の材料はまた、イオン交換を可能にしかつ交換が起こると表面層に応力を発生させるマトリックス構造を有し、ガラス基板の強度/靭性を高める。基板に適したガラス材料の例は、Corning(商標)のGorilla(商標)ガラスである。
(b)第1および第2のフリット成分を含んで成るエナメルペーストを平坦な未強化ガラス基板上に印刷する。前述のように、第1フリット成分は、化学的強化のために選択され、基板の材料と同様または同じ組成および特性を有する。対照的に、第2フリットは、基板上で焼結された場合に良質のエナメルコーティングを提供するように選択された組成および特性を有する。
(c)エナメルペーストの液状キャリア成分を除去するために予備焼成する。エナメルコーティングを形成する場合、堆積後に基板上のペーストを加熱して、主焼成ステップの前に液体キャリアを蒸発させるのが典型的である。この加熱は、主焼成/焼結温度よりも低い温度である。
(d)予備焼成の後、主焼成ステップを実施して、エナメルペーストの第2フリット成分を焼結し、ガラス基板上に焼結エナメルコーティングを形成する。このステップでは、エナメルコーティングの第2フリットが軟化して流動し、フリット粒子が融合してエナメルコーティングを形成する連続ガラスマトリックスになる。典型的には、第1フリットはこのステップ中に軟化し流動しないがむしろ、第1フリットは第2フリットによって形成された連続ガラスマトリックスに埋め込まれた離散粒子として残る。
(e)最後に、コーティングされたエナメルコーティングガラス基板は、溶融塩浴に沈めることによって化学的強化される。ガラス基板中の小さいイオンおよびエナメルコーティングの第1フリット成分は、ガラス基板およびエナメルコーティングを強化し強くする表面層に応力を発生するより大きなイオンと交換される。(前の焼成ステップで焼結コーティングに形成された)エナメルコーティングの第2フリット成分はまた、ある量の交換可能なイオンを含み得るが、そのようなイオンの量および/または応力の量および/または第2フリットで生成される強化/強くする成分は、一般に、基板および第1フリット成分の量よりも少なくなる。
【0060】
図2は、図1に示すプロセスを使用して形成された、エナメルコーティングされた化学的強化ガラス製品の概略図を示す。これは例示的な図面のみであり、縮尺通りではないことに留意されたい。製品は、化学的強化ガラス基板2およびエナメルコーティング4を含んで成る。エナメルコーティング4は、第2フリットによって形成される連続ガラスマトリックス8内に配置された第1フリット6の粒子を含んで成る。
【0061】
図3は、ガラス基板の、エナメルコーティング、プレス曲げ、および化学的強化の基本的なプロセスステップのフロー図を示す。プロセスは、図1に示したプロセスと非常に似ているが、ステップ(d)で、コーティングされたガラス基板を焼成してエナメルコーティングを形成し、さらにプレス曲げしてコーティングされたガラス基板を、例えば、モバイル電子デバイスや自動車の窓用の成形カバー画面のような最終用途向けに、所望の形状(非平面)に成形する点が異なる。この点に関して、エナメルペーストの第2のフリット成分は、基板の加熱および成形に使用される温度で焼結されるように選択される。
【0062】
図4は、図3に示すプロセスを使用して形成された、成形されたエナメルコーティングされた化学的強化ガラス製品の概略図を示す。構造は、図2に示されている製品に似ているが、成形された非平面基板を備える。製品は、化学的強化された成形ガラス基板2およびエナメルコーティング4を含んで成る。エナメルコーティング4は、第2フリットによって形成された連続ガラスマトリックス8内に配置された第1フリット6の粒子を含んで成る。
【0063】
先に示したように、本明細書に記載のペースト組成物、コーティングおよび化学的強化方法論は、さまざまな用途で使用することができる。1つの用途は、湾曲した3D携帯電話のカバー画面である。近年、特定のメーカーが、例えば、ゴリラガラス5製で、特に画面の端が湾曲している画面を組み込んだ携帯電話のデザインを導入している。Gorillaガラス5の3Dフォーミングおよび成形プロセスは750℃を超える温度で実行する必要があるため、有機インクはこのような極端な条件に耐えられないため、メーカーは曲げプロセスの後に有機インクで基板を装飾する必要がある。有機インク堆積のための3D加飾技術も開発されているが、これは複雑なプロセスであり、製造プロセスのボトルネックの一つとなっている。
【0064】
本明細書は、曲げプロセス(グラファイト型で760℃)および化学的強化プロセス(溶融KNOで)の両方に適合し、強靱な/強いコーティングされた製品となるエナメルペースト組成物を提供することによりこの3D装飾の問題を解決する主な課題の1つは、Gorillaガラス5および化学的強化の使用によって提供される高いガラス強度/靭性を維持することである。エナメルの使用はガラスを弱める傾向があるため、この弱化を制限することが重要である。市販の携帯電話の前面カバーガラスは、通常、600MPaの破損値を有する。プロセスステップは、図3に示されるステップに対応する。このプロセスは、スクリーン印刷によって本明細書に記載のエナメルペーストで装飾された板ガラスから始まる。150℃で数分間乾燥させた後、エナメルを予備焼成し、コーティングされた製品をグラファイト型で760℃で曲げる。コーティングされたガラスの成形後、化学的強化のために、コーティングされたガラスを溶融KNO浴(450℃)で24時間処理する。
【0065】
この3D携帯電話ガラス製造プロセスでは、エナメルには次の特性がある:
-700℃~850℃の間の焼成温度(例えば、700℃~800℃)
-700℃~850℃(例えば、700℃~800℃)の間のノンスティック特性
-低ガラス弱体化
-溶融KNO処理に対する耐性。
【0066】
この用途のために開発された1つのエナメル組成物は、2つの異なるガラス成分、顔料、およびシード成分を含んで成る。ガラス成分の1つ(エナメルペーストの固形分の~42重量%)は、アルカリ金属含有量が比較的低い(基材およびエナメル組成物の他のガラス成分と比較して低い)ケイ酸ビスマス系ガラスフリットである。このガラスフリットは、化学的強化に使用される溶融KNO浴の温度よりも高く、Gorillaガラス基板の軟化点よりも低い軟化点を有する。エナメルペーストのもう一方のガラス成分(エナメルペーストの固形分の~25重量%)は、コーティングされる基板と同じゴリラガラス、つまりカリウムでイオン交換してガラスを化学的強化するためのナトリウム含有量の高いガラスの粉砕ガラス粉末で形成される。エナメルペーストにゴリラガラスを含めることにより、エナメルコーティングによる基材のガラスの脆弱化が少なくなることがわかっている。エナメルペーストが基材よりも低い温度で軟化して流動する必要があるため、エナメル組成物全体をゴリラガラスで作ることはできる。そのため、エナメル組成物の2-ガラス成分の特徴は、本明細書のエナメル組成物の重要な特徴であり、エナメルペーストの焼結ガラス成分がエナメルペーストの固形分に占める割合は、エナメルペーストに非焼結ゴリラガラス成分を添加しない場合よりも少ない。焼結中、ビスマスシリケートベースのガラスフリットのみが焼結され―焼結温度は、エナメルペーストのゴリラガラス成分を焼結するために必要な温度よりも低い。
【0067】
開発された一連のペースト組成物の1つは、次の成分を含む(量のパーセンテージは、ペーストの全固形分に対するものであり、液体キャリア成分は含まれない)。
【0068】
【0069】
前述のペースト組成物に使用されるビスマスシリケートガラスの組成は以下の通りである(重量%):
【0070】
Gorilla(商標)ガラスの組成は次の通りである(重量%):
【0071】
シードの組成は次の通りである(重量%):
【0072】
顔料の組成は次の通りである(重量%):
【0073】
その後の研究により、シード材料は組成物に必須ではないため、省略できることが示された。さらに、異なるフリットおよび顔料を使用して、ペースト組成物の異なる例が開発されている。以下の表1は、ペースト組成物の13の異なる例を示す。フリットA~Iの組成を表2に示す。表3は、Gorillaガラス基板上で800℃で焼成した後に得られるアイテムの光学特性を示す。特定の用途では、より暗い色(より低いL値)およびより高い光学濃度(より高いOD)が好まれる。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
このように、一連のエナメルコーティング組成物が、ガラス基板のコーティングに使用するために開発されており、ガラス基板は、その後プレス曲げされ、化学的強化プロセスに付される。エナメル組成物は、良好な美的外観を保持しながら、その後の処理ステップを乗り切る。さらに、エナメルコーティングは良好な機械的接着特性を保持する。さらに、最終用途にとって重要なことは、コーティングされた物品は、以前のエナメルコーティングされ化学的強化された物品と比較して高い機械的強度を有することであり、エナメルコーティングのない化学的強化ガラス基板と比較すると強度が大幅に低下することが判明した。最後に、組成を調整することにより、オブスキュレーション用途向けの暗色の高光学密度コーティングを含む一連の光学特性を実現できることが示されている。
【0078】
本発明は、特定の実施例を参照して特に示され説明されたが、当業者には、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における様々な変更がなされ得ることが理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】