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特表2023-545546遺伝子発現調節のための非アニオン性ポリヌクレオチド類似体のペプチドに基づく導入
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】遺伝子発現調節のための非アニオン性ポリヌクレオチド類似体のペプチドに基づく導入
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/87 20060101AFI20231023BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20231023BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20231023BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20231023BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20231023BHJP
   C07K 14/11 20060101ALI20231023BHJP
   C07K 14/21 20060101ALI20231023BHJP
   C07K 14/34 20060101ALI20231023BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20231023BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20231023BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 31/675 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231023BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C12N15/87 Z ZNA
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
C07K7/08
C07K14/00
C07K14/11
C07K14/21
C07K14/34
C12Q1/02
C12Q1/68
A61K31/7088
A61K31/7125
A61K31/675
A61K48/00
A61K47/42
A61P31/12
A61P35/00
A61P29/00
A61P17/06
A61P17/04
A61P37/08
A61P1/04
A61P27/02
A61P17/02
A61P17/00
A61P43/00 105
A61P11/00
A61P11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523269
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 CA2021051458
(87)【国際公開番号】W WO2022077121
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】63/093,295
(32)【優先日】2020-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/104,263
(32)【優先日】2020-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517354065
【氏名又は名称】フェルダン・バイオ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-パスカル・レペティット-ストファエス
(72)【発明者】
【氏名】ナンシー・メシエ
(72)【発明者】
【氏名】ディヴィッド・グアイ
(72)【発明者】
【氏名】トマス・デルジュディス
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ・バーボー
(72)【発明者】
【氏名】ステファニー・アレ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ08
4B063QQ13
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QQ79
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR48
4B063QR72
4B063QR77
4B063QR80
4B063QS34
4B063QS36
4B063QS38
4B063QX01
4C076CC04
4C076CC10
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC18
4C076CC27
4C076EE41N
4C076FF34
4C084AA13
4C084NA11
4C084NA14
4C084ZA08
4C084ZA33
4C084ZA59
4C084ZA68
4C084ZA89
4C084ZB11
4C084ZB13
4C084ZB26
4C084ZB33
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA38
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA11
4C086NA14
4C086ZA08
4C086ZA33
4C086ZA59
4C086ZA68
4C086ZA89
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB26
4C086ZB33
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA15
4H045BA16
4H045BA18
4H045BA19
4H045BA30
4H045BA50
4H045CA01
4H045CA11
4H045DA83
4H045DA86
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを合成ペプチドシャトル剤を介して真核細胞の細胞質/核コンパートメントに送達するための組成物及び方法が本明細書で記載される。非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは電荷-中性又はカチオン性であり得、合成ペプチドシャトル剤は、正に帯電した親水性外面及び疎水性の外面の両方を有する両親媒性のアルファヘリックスモチーフを含むペプチドであり、合成ペプチドシャトル剤は、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴに共有結合によって結合していないか、又は生理学的条件下で切断可能に結合している。非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、遺伝子発現の改変のために細胞内標的RNAにハイブリダイズする電荷-中性又はカチオン性アンチセンス合成オリゴヌクレオチド(ASO)であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞内送達のための非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ、及び前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴと独立しているか又は共有結合されていない合成ペプチドシャトル剤を含む組成物であって、合成ペプチドシャトル剤が正に帯電した親水性の外面、及び疎水性の外面の両方を有する両親媒性のアルファヘリックスモチーフを含むペプチドであり、合成ペプチドシャトル剤が、合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、真核細胞における前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞質/核送達を増加させる、組成物。
【請求項2】
非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、電荷-中性又はカチオン性アンチセンス合成オリゴヌクレオチド(ASO)である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、
(a)ホスホロジアミデート骨格、アミド(例えば、ペプチド)骨格、メチルホスホネート骨格、中性ホスホトリエステル骨格、スルホン骨格若しくはトリアゾール骨格を有する電荷-中性ポリヌクレオチド類似体カーゴ;又は
(b)アミノアルキル化ホスホラミデート骨格、グアニジウム骨格、S-メチルチオウレア骨格若しくはヌクレオシルアミノ酸(NAA)骨格を有するカチオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ
である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)、ペプチド核酸(PNA)、メチルホスホネートオリゴマー又は短鎖干渉リボ核酸中性オリゴヌクレオチド(siRNN)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、5~50マー、5マー~75マー又は5マー~100マーである、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、細胞膜透過性ペプチド、オクタグアニジンデンドリマー又は他の細胞内送達部分に共有結合されていない、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
シャトル剤が、
(1)少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19、又は20アミノ酸長であり、
(2)両親媒性のアルファヘリックスモチーフであって、
(3)正に帯電した親水性の外面、及び疎水性の外面
を有する両親媒性のアルファヘリックスモチーフを含むペプチドであり、
次のパラメーター(4)~(15):
(4)疎水性の外面が、ターン当たり3.6残基を有するアルファヘリックスのオープンシリンダー表示に基づいて、ペプチドのアミノ酸の12~50%に相当する空間的に隣接するL、I、F、V、W、及び/又はMアミノ酸からなる高度疎水性コアを含む;
(5)ペプチドが3.5~11の疎水性モーメント(μ)を有する;
(6)ペプチドが生理学的pHで少なくとも+3又は+4の予測実効電荷を有する;
(7)ペプチドが8~13の等電点(pI)を有する;
(8)ペプチドが、35%~65%のアミノ酸:A、C、G、I、L、M、F、P、W、Y及びVの任意の組合せから構成される;
(9)ペプチドが、0%~30%のアミノ酸:N、Q、S及びTの任意の組合せから構成される;
(10)ペプチドが、35%~85%のアミノ酸:A、L、K又はRの任意の組合せから構成される;
(11)少なくとも5%のLがペプチド中に存在するという条件で、ペプチドが、15%~45%のアミノ酸:A及びLの任意の組合せから構成される;
(12)ペプチドが、20%~45%のアミノ酸:K及びRの任意の組合せから構成される;
(13)ペプチドが、0%~10%のアミノ酸:D及びEの任意の組合せから構成される;
(14)ペプチド中のA及びL残基のパーセンテージ(A+L%)と、ペプチド中のK及びR残基のパーセンテージ(K+R)との差異が、10%以下である;並びに
(15)ペプチドが、10%~45%のアミノ酸:Q、Y、W、P、I、S、G、V、F、E、D、C、M、N、T及びHの任意の組合せから構成される
の内の少なくとも5つが満たされる、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
(a)シャトル剤が、少なくとも6個の、少なくとも7個の、少なくとも8個の、少なくとも9個の、少なくとも10個の、少なくとも11個の、又は全てのパラメーター(4)~(15)を満たす;
(b)シャトル剤が、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30アミノ酸の最小長、及び40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、60、65、70、80、90、100、110、120、130、140、又は150アミノ酸の最大長を有するペプチドである;
(c)前記両親媒性のアルファヘリックスモチーフが、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0の下限値と、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9、又は11.0の上限値との間の疎水性モーメント(μ)を有する;
(d)前記両親媒性のアルファヘリックスモチーフが、正に帯電した親水性外面を含み、この外面が、100度の連続アミノ酸間の回転角度を有するアルファヘリックス及び/又はターン当たり3.6残基を有するアルファヘリックスに基づいて、(i)ヘリカルホイール投影図上で、少なくとも2個、3個又は4個の隣接する正に帯電したK及び/又はR残基;及び/又は(ii)ヘリカルホイール投影図上で、3個から5個のK及び/又はR残基を含む6個の隣接する残基のセグメントを含む;
(e)前記両親媒性のアルファヘリックスモチーフが、疎水性の外面を含み、この疎水性の外面は、100度の連続アミノ酸間の回転角度を有するアルファヘリックス及び/又はターン当たり3.6残基を有するアルファヘリックスに基づいて、(i)ヘリカルホイール投影図上で、少なくとも2個の隣接するL残基;及び/又は(ii)ヘリカルホイール投影図上で、L、I、F、V、W、及びMから選択される少なくとも5個の疎水性の残基を含む10個の隣接する残基のセグメントを含む;
(f)前記疎水性の外面が、シャトル剤のアミノ酸の12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、又は20%から25%、30%、35%、40%、又は45%に相当する空間的に隣接するL、I、F、V、W、及び/又はMアミノ酸から構成される高度疎水性コアを含む;
(g)シャトル剤が、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0の下限値と、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、又は10.5の上限値との間の疎水性モーメント(μ)を有する;
(h)シャトル剤が、+3、+4、+5、+6、+7、+8、+9、から+10、+11、+12、+13、+14、又は+15の予測実効電荷を有する;
(i)シャトル剤が、10~13の予測pIを有する;又は
(j)(a)~(i)の内の任意の組合せである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記シャトル剤が、以下のパラメーターの少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、又は全てを満たす、請求項7又は8に記載の組成物:
(8)シャトル剤が、36%~64%、37%~63%、38%~62%、39%~61%、又は40%~60%のアミノ酸:A、C、G、I、L、M、F、P、W、Y、及びVの任意の組合せから構成される;
(9)シャトル剤が、1%~29%、2%~28%、3%~27%、4%~26%、5%~25%、6%~24%、7%~23%、8%~22%、9%~21%、又は10%~20%のアミノ酸:N、Q、S、及びTの任意の組合せから構成される;
(10)シャトル剤が、36%~80%、37%~75%、38%~70%、39%~65%、又は40%~60%のアミノ酸:A、L、K、又はRの任意の組合せから構成される;
(11)シャトル剤が、15%~40%、20%~40%、20%~35%、又は20%~30%のアミノ酸:A及びLの任意の組合せから構成される;
(12)シャトル剤が、20%~40%、20%~35%、又は20%~30%のアミノ酸:K及びRの任意の組合せから構成される;
(13)シャトル剤が、5%~10%のアミノ酸:D及びEの任意の組合せから構成される;
(14)シャトル剤中のA及びL残基パーセンテージ(A+L%)と、シャトル剤中のK及びR残基のパーセンテージと(K+R)の差異が、9%、8%、7%、6%、又は5%以下である;並びに
(15)シャトル剤が、15~40%、20%~35%、又は20%~30%のアミノ酸:Q、Y、W、P、I、S、G、V、F、E、D、C、M、N、T、及びHの任意の組合せから構成される。
【請求項10】
前記シャトル剤が、ヒスチジンリッチドメインを含み、任意選択でヒスチジンリッチドメインが、
(i)シャトル剤のN末端に向けて及び/又はC末端に向けて配置される;
(ii)少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%若しくは少なくとも90%のヒスチジン残基を含む、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、若しくは少なくとも6個のアミノ酸のストレッチであり、及び/又は少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、若しくは少なくとも9個の連続するヒスチジン残基を含む;又は
(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記シャトル剤が、セリン及び/又はグリシン残基に富むフレキシブルリンカードメイン(例えば、シャトル剤のN末端セグメントとC末端セグメントとを分離している;又は中央の両親媒性カチオン性アルファヘリックスドメインのN末端及び/若しくはC末端に配置されている)を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記シャトル剤が、次記のアミノ酸配列を含む又はそれからなる、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物:
(a)[X1]-[X2]-[リンカー]-[X3]-[X4](式1);
(b)[X1]-[X2]-[リンカー]-[X4]-[X3](式2);
(c)[X2]-[X1]-[リンカー]-[X3]-[X4](式3);
(d)[X2]-[X1]-[リンカー]-[X4]-[X3](式4);
(e)[X3]-[X4]-[リンカー]-[X1]-[X2](式5);
(f)[X3]-[X4]-[リンカー]-[X2]-[X1](式6);
(g)[X4]-[X3]-[リンカー]-[X1]-[X2](式7);又は
(h)[X4]-[X3]-[リンカー]-[X2]-[X1](式8),
(i)[リンカー]-[X1]-[X2]-[リンカー](式9);
(j)[リンカー]-[X2]-[X1]-[リンカー](式10);
(k)[X1]-[X2]-[リンカー](式11);
(l)[X2]-[X1]-[リンカー](式12);
(m)[リンカー]-[X1]-[X2](式13);
(n)[リンカー]-[X2]-[X1](式14);
(o)[X1]-[X2](式15);又は
(p)[X2]-[X1](式16)、
式中:
[X1]が、次記から選択され:2[φ]-1[+]-2[φ]-1[ζ]-1[+]-;2[φ]-1[+]-2[φ]-2[+]-;1[+]-1[φ]-1[+]-2[φ]-1[ζ]-1[+]-;及び1[+]-1[φ]-1[+]-2[φ]-2[+]-;
[X2]が、次記から選択され:-2[φ]-1[+]-2[φ]-2[ζ]-;-2[φ]-1[+]-2[φ]-2[+]-;-2[φ]-1[+]-2[φ]-1[+]-1[ζ]-;-2[φ]-1[+]-2[φ]-1[ζ]-1[+]-;-2[φ]-2[+]-1[φ]-2[+]-;-2[φ]-2[+]-1[φ]-2[ζ]-;-2[φ]-2[+]-1[φ]-1[+]-1[ζ]-;及び-2[φ]-2[+]-1[φ]-1[ζ]-1[+]-;
[X3]が、次記から選択され:-4[+]-A-;-3[+]-G-A-;-3[+]-A-A-;-2[+]-1[φ]-1[+]-A-;-2[+]-1[φ]-G-A-;-2[+]-1[φ]-A-A-;又は-2[+]-A-1[+]-A;-2[+]-A-G-A;-2[+]-A-A-A-;-1[φ]-3[+]-A-;-1[φ]-2[+]-G-A-;-1[φ]-2[+]-A-A-;-1[φ]-1[+]-1[φ]-1[+]-A;-1[φ]-1[+]-1[φ]-G-A;-1[φ]-1[+]-1[φ]-A-A;-1[φ]-1[+]-A-1[+]-A;-1[φ]-1[+]-A-G-A;-1[φ]-1[+]-A-A-A;-A-1[+]-A-1[+]-A;-A-1[+]-A-G-A;及び-A-1[+]-A-A-A;
[X4]が、次記から選択され:-1[ζ]-2A-1[+]-A;-1[ζ]-2A-2[+];-1[+]-2A-1[+]-A;-1[ζ]-2A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[ζ]-A-1[ζ]-A-1[+];-2[+]-A-2[+];-2[+]-A-1[+]-A;-2[+]-A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-2[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[+]-1[ζ]-A-1[+]-A;-1[+]-1[ζ]-A-2[+];-1[+]-1[ζ]-A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[+]-2[ζ]-A-1[+];-1[+]-2[ζ]-2[+];-1[+]-2[ζ]-1[+]-A;-1[+]-2[ζ]-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[+]-2[ζ]-1[ζ]-A-1[+];-3[ζ]-2[+];-3[ζ]-1[+]-A;-3[ζ]-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[ζ]-2A-1[+]-A;-1[ζ]-2A-2[+];-1[ζ]-2A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-2[+]-A-1[+]-A;-2[+]-1[ζ]-1[+]-A;-1[+]-1[ζ]-A-1[+]-A;-1[+]-2A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];及び-1[ζ]-A-1[ζ]-A-1[+];並びに
[リンカー]が、次記から選択され:-Gn-;-Sn-;-(GnSn)n-;-(GnSn)nGn-;-(GnSn)nSn-;-(GnSn)nGn(GnSn)n-;及び-(GnSn)nSn(GnSn)n-;
式中:
[φ]は、アミノ酸:Leu、Phe、Trp、Ile、Met、Tyr、又はVal、好ましくはLeu、Phe、Trp、又はIleであり;
[+]は、アミノ酸:Lys又はArgであり;
[ζ]は、アミノ酸:Gln、Asn、Thr、又はSerであり;
Aは、アミノ酸Alaであり;
Gは、アミノ酸Glyであり;
Sは、アミノ酸Serであり;
nは、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、又は1~3の整数である。
【請求項13】
シャトル剤が、
(i)配列番号1~50、58~78、80~107、109~139、141~146、149~161、163~169、171、174~234、236~240、242~260、262~285、287~294、296~300、302~308、310、311、313~324、326~332、338~342、344、若しくは353~364のいずれか1つのアミノ酸配列;
(ii)配列番号1~50、58~78、80~107、109~139、141~146、149~161、163~169、171、174~234、236~240、242~260、262~285、287~294、296~300、302~308、310、311、313~324、326~332、338~342、344、若しくは353~364のいずれか1つと、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個以下のアミノ酸で相違するアミノ酸配列(例えば、任意のリンカードメインを除く);
(iii)配列番号1~50、58~78、80~107、109~139、141~146、149~161、163~169、171、174~234、236~240、242~260、262~285、287~294、296~300、302~308、310、311、313~324、326~332、338~342、344、若しくは353~364のいずれか1つと少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるアミノ酸配列(例えば、任意のリンカードメインを除いて計算される);
(iv)配列番号1~50、58~78、80~107、109~139、141~146、149~161、163~169、171、174~234、236~240、242~260、262~285、287~294、296~300、302~308、310、311、313~324、326~332、338~342、344、若しくは353~364のいずれか1つと、保存的アミノ酸置換のみで(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個以下の保存的アミノ酸置換で、好ましくは任意のリンカードメインを除く)相違するアミノ酸配列であって、各保存的アミノ酸置換が、同じアミノ酸クラス内のアミノ酸から選択され、アミノ酸クラスが脂肪族:G、A、V、L、及びI;ヒドロキシル又は硫黄/セレン含有:S、C、U、T、及びM;芳香族:F、Y、及びW;塩基性:H、K、及びR;酸性及びそれらのアミド:D、E、N、及びQである、アミノ酸配列;又は
(v) (i)~(iv)の内の任意の組合せを含むか又はそれからなる、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
シャトル剤が合成ペプチドシャトル剤のバリアントを含むか又はそれからなり、バリアントは、少なくとも1つのアミノ酸が、置き換えられるアミノ酸と同様の物理化学的特性(例えば、構造、疎水性、又は電荷)の側鎖を有する対応する合成アミノ酸で置き換えられることを除き、請求項1又は7から13のいずれか一項に規定の合成ペプチドシャトル剤と同一であり、バリアントが、合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、真核細胞における前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞質/核送達を増加させ、好ましくは、合成アミノ酸の置き換えが、
(a)α-アミノグリシン、α,γ-ジアミノ酪酸、オルニチン、α,β-ジアミノプロピオン酸、2,6-ジアミノ-4-ヘキシン酸、β-(1-ピペラジニル)-アラニン、4,5-デヒドロ-リジン、δ-ヒドロキシリジン、ω,ω-ジメチルアルギニン、ホモアルギニン、ω,ω'-ジメチルアルギニン、ω-メチルアルギニン、β-(2-キノリル)-アラニン、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸、α-メチルヒスチジン、2,5-ジヨードヒスチジン、1-メチルヒスチジン、3-メチルヒスチジン、スピナシン、4-アミノフェニルアラニン、3-アミノチロシン、β-(2-ピリジル)-アラニン、若しくはβ-(3-ピリジル)-アラニンのいずれか1つで塩基性アミノ酸を置き換える;
(b)デヒドロアラニン、β-フルオロアラニン、β-クロロアラニン、β-ロドアラニン、α-アミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、β-シクロプロピルアラニン、アゼチジン-2-カルボン酸、α-アリルグリシン、プロパルギルグリシン、tert-ブチルアラニン、β-(2-チアゾリル)-アラニン、チアプロリン、3,4-デヒドロプロリン、tert-ブチルグリシン、β-シクロペンチルアラニン、β-シクロヘキシルアラニン、α-メチルプロリン、ノルバリン、α-メチルバリン、ペニシラミン、β,β-ジシクロヘキシルアラニン、4-フルオロプロリン、1-アミノシクロペンタンカルボン酸、ピペコリン酸、4,5-デヒドロロイシン、アロイソロイシン、ノルロイシン、α-メチルロイシン、シクロヘキシルグリシン、シス-オクタヒドロインドール-2-カルボン酸、β-(2-チエニル)-アラニン、フェニルグリシン、α-メチルフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、β-(3-ベンゾチエニル)-アラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-ブロモフェニルアラニン、4-tert-ブチルフェニルアラニン、α-メチルトリプトファン、β-(2-ナフチル)-アラニン、β-(1-ナフチル)-アラニン、4-ヨードフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、4-メチルトリプトファン、4-クロロフェニルアラニン、3,4-ジクロロ-フェニルアラニン、2,6-ジフルオロ-フェニルアラニン、n-in-メチルトリプトファン、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸、β,β-ジフェニルアラニン、4-メチルフェニルアラニン、4-フェニルフェニルアラニン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ-フェニルアラニン、若しくは4-ベンゾイルフェニルアラニンのいずれか1つで非極性(疎水性)アミノ酸を置き換える;
(c)β-シアノアラニン、β-ウレイドアラニン、ホモシステイン、アロスレオニン、ピログルタミン酸、2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸、シトルリン、チオシトルリン、ホモシトルリン、ヒドロキシプロリン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、β-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)-アラニン、2-メルカプトヒスチジン、β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-セリン、β-(2-チエニル)-セリン、4-アジドフェニルアラニン、4-シアノフェニルアラニン、3-ヒドロキシメチルチロシン、3-ヨードチロシン、3-ニトロチロシン、3,5-ジニトロチロシン、3,5-ジブロモチロシン、3,5-ジヨードチロシン、7-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソ-キノリン-3-カルボン酸、5-ヒドロキシトリプトファン、チロニン、β-(7-メトキシクマリン-4-イル)-アラニン、若しくは4-(7-ヒドロキシ-4-クマリニル)-アミノ酪酸のいずれか1つで極性非荷電アミノ酸を置き換える;及び/又は
(d)γ-ヒドロキシグルタミン酸、γ-メチレングルタミン酸、γ-カルボキシグルタミン酸、α-アミノアジピン酸、2-アミノヘプタン二酸、α-アミノスベリン酸、4-カルボキシフェニルアラニン、システイン酸、4-ホスホノフェニルアラニン若しくは4-スルホメチルフェニルアラニンのいずれか1つで酸性アミノ酸を置き換える、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
シャトル剤が、細胞膜透過性ドメイン(CPD)、細胞膜透過性ペプチド(CPP)又はタンパク質導入ドメイン(PTD)を含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
シャトル剤が、エンドソーム漏出ドメイン(ELD)に融合されたCPDを含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
シャトル剤が、エンドソーム漏出ドメイン(ELD)、及び/又は細胞膜透過性ドメイン(CPD)を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
(i)前記ELDが、エンドソーム溶解性ペプチド;抗菌性ペプチド(AMP);直鎖状カチオン性アルファヘリックス抗菌性ペプチド;セクロピン-A/メリチンハイブリッド(CM)ペプチド;pH依存性膜活性ペプチド(PAMP);ペプチド両親媒性物質;インフルエンザ血球凝集素(HA)のHA2サブユニットのN末端に由来するペプチド;CM18;ジフテリア毒素Tドメイン(DT);GALA;PEA;INF-7;LAH4;HGP;H5WYG;HA2;EB1;VSVG;シュードモナス毒素;メリチン;KALA;JST-1;C(LLKK)3C;G(LLKK)3G若しくはそれらの任意の組合せであるか又はそれに由来する;
(ii)前記CPDが、細胞膜透過性ペプチド若しくは細胞膜透過性ペプチド由来のタンパク質導入ドメイン;TAT;PTD4;ペネトラチン;pVEC;M918;Pep-1;Pep-2;キセントリー;アルギニンストレッチ;トランスポータン;SynB1;SynB3;若しくはそれらの任意の組合せであるか又はそれに由来する;又は
(iii)(i)及び(ii)の両方である、請求項15から17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
シャトル剤が環状ペプチドであり、及び/又は1つ又は複数のD-アミノ酸を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
シャトル剤が、前記シャトル剤を欠く対応する陰性対照よりも少なくとも3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、若しくは10倍、真核細胞で細胞内送達される非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの導入効率及び/又は総量を増加させる、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
シャトル剤が、1つ又は複数のアミノ酸に対する化学修飾を更に含み、化学修飾が、合成ペプチドシャトル剤の導入活性を破壊しない、請求項1から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
化学修飾が、シャトル剤のN末端及び/又はC末端にある、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
化学修飾が、アセチル基(例えば、N末端アセチル基)、システアミド基(例えば、C末端システアミド基)、又は脂肪酸(例えば、C4~C16脂肪酸、好ましくはN末端)の付加である、請求項21又は22に記載の組成物。
【請求項24】
組成物中の非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ及び/又は合成ペプチドシャトル剤の濃度が、少なくとも1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40μMである、請求項1から23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
(i)真核細胞における遺伝子発現の調節(例えば、遺伝子発現ノックダウン、スプライシングの改変(例えば、エクソンスキッピング)、miRNA活性及び/若しくは成熟の改変、翻訳フレームシフト誘導、RNA編集干渉、又はポリAテーリングの改変)における使用のため;
(ii)治療における使用のためであって、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、真核細胞における治療に関連する標的RNAの遺伝子発現を調節する、使用のため;
(iii)抗ウイルス剤としての使用のためであって、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴがビルレンス及び/若しくは病原性のために必要なウイルス遺伝子の遺伝子発現を調節する、使用のため;
(iv)診断剤として非治療用非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを送達する際における使用のため;
(v)医薬若しくは診断剤(例えば、局所、経腸/消化管(例えば、経口)、若しくは非経口投与のために製剤化される)の製造における使用のため;
(vi)がん(例えば、皮膚がん、基底細胞癌、母斑基底細胞癌症候群)、炎症若しくは炎症関連疾患(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、蕁麻疹、ドライアイ疾患、萎縮型若しくは滲出型加齢黄斑変性、指潰瘍、日光角化症、特発性肺線維症)、疼痛(例えば、慢性若しくは急性)、又は肺に影響を及ぼす疾患(例えば、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、若しくは特発性肺線維症)を治療する工程における使用のため;又は
(vii)(i)~(vi)の内の任意の組合せである、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
真核細胞が、動物細胞、哺乳動物細胞、ヒト細胞、幹細胞、初代細胞、免疫細胞、T細胞、NK細胞、樹状細胞、上皮細胞、皮膚細胞、胃腸細胞、肺細胞又は眼の細胞である、請求項1から24のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項25に記載の使用のための組成物。
【請求項27】
真核細胞における遺伝子発現を改変するための方法であって、
(a)細胞内送達のための非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを提供する工程であって、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、真核細胞において目的のRNAにハイブリダイズするように設計される、工程;
(b)前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴと独立しているか若しくは共有結合されていない合成ペプチドシャトル剤を提供する工程;
(c)真核細胞を、前記合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの導入効率及び/若しくは細胞質/核送達を増加させるのに十分な濃度の合成ペプチドシャトル剤の存在下で、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴと接触させる工程
を含み、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、細胞質/核送達時に目的のRNAにハイブリダイズし、それにより遺伝子発現の改変に影響を及ぼす、方法。
【請求項28】
インビトロ方法(例えば、治療目的及び/又は診断目的のため)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
インビボ方法(例えば、治療目的及び/又は診断目的のため)である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
(i)非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、請求項1から6のいずれか一項に規定の通りである;
(ii)合成ペプチドシャトル剤が、請求項1若しくは7から23のいずれか一項に規定の通りである;
(iii)真核細胞が、請求項24に規定の濃度の非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ及び/若しくは合成ペプチドシャトル剤と接触される;
(iv)方法が、請求項25に規定の使用のためである;
(v)真核細胞が、請求項26に規定の通りである;又は
(vi)(i)~(v)の内の任意の組合せである、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが、ヘッジホッグ経路の遺伝子を標的にする非アニオン性アンチセンスオリゴヌクレオチドである、請求項1から26のいずれか一項に記載の組成物又は請求項27から30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
非アニオン性アンチセンスオリゴヌクレオチドが、ノックダウンのためにGli1を標的にする、請求項31に記載の組成物又は請求項31に記載の方法。
【請求項33】
非アニオン性アンチセンスオリゴヌクレオチドが、配列番号365~368のいずれか1つのポリヌクレオチド配列にハイブリダイズする、請求項32に記載の組成物又は請求項32に記載の方法。
【請求項34】
組成物又は方法がゴーリン症候群及び/又は基底細胞癌の治療のためである、請求項31から33のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項31から33のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞内送達に関する。より具体的には、本記載は、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞内送達のための合成ペプチドシャトル剤の使用に関する。
【0002】
本記載は、その内容が全体として参照により本明細書に組み込まれている多数の文書に言及する。
【背景技術】
【0003】
ほとんどの非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、それらの細胞内送達に関連する課題に悩まされており、しばしば送達部分へのそれらの共有結合コンジュゲーションを必要とし、それによってそれらの合成及び商品化を更に複雑にしている。非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞質/核送達を増加させる向上した方法は非常に望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/161516号
【特許文献2】国際公開第2018/068135号
【特許文献3】CA 3,040,645
【特許文献4】国際公開第2020/210916号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】https://www.donarmstrong.com/cgi-bin/wheel.pl
【非特許文献2】http://lbqp.unb.br/NetWheels/
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
合成ペプチドシャトル剤は、広範囲の標的真核細胞の細胞質及び/又は核に迅速であり、効率的にタンパク質カーゴを導入することがすでに報告されている、最近定義されたペプチドファミリーを表す。伝統的な細胞膜透過性ペプチドに基づく細胞内送達戦略とは対照的に、合成ペプチドシャトル剤は、それらのポリペプチドカーゴに共有結合されてない。実際に、シャトル剤をそれらのカーゴに共有結合することは、それらの導入活性に悪影響を一般に有する。このようなペプチドシャトル剤の第一世代は、国際公開2016/161516号に記載され、ペプチドシャトル剤は、細胞膜透過性ドメイン(CPD)に操作可能に連結されたエンドソーム漏出ドメイン(ELD)を含む。その後、国際公開第2018/068135号は、第1世代ペプチドシャトル剤の毒性を低減しながら、タンパク質カーゴの導入(transduction)を向上させる目的のみで、一組の15の設計パラメーターに基づいて合理的に設計された合成ペプチドシャトル剤を更に記載した。
【0007】
細胞膜透過性ペプチド(CPP)は、DNA/RNAを細胞内に送達するためのトランスフェクション戦略において数十年にわたって使用されてきたが、CPP由来のCPDを含有する第1世代合成ペプチドシャトル剤は、DNAカーゴがエンドソームに大部分がトラップされたままで、遺伝子発現のためにプラスミドDNAカーゴを核に効率的に形質導入することができなかった。その後の実験は、第2世代合成ペプチドシャトル剤も遺伝子発現のためにプラスミドDNAを核に効率的に形質導入するために好適でないことを明らかにした。更に、正に帯電した小分子でコートすることによってDNA/RNAの負に帯電したリン酸骨格を中和することを含む戦略は、エンドソーム捕捉が問題であり続けて、シャトル剤媒介カーゴ導入を顕著に改善できなかった。これは、ポリヌクレオチドのシャトル剤媒介導入のために、単なる電荷中和以上のものが必要であったことを示唆している。
【0008】
本開示は、合成ペプチドシャトル剤が、真核細胞における遺伝子発現の改変に影響を与えるために十分な量で、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを細胞質/核コンパートメントに急速かつ効率的に導入する能力を有するとの驚くべき発見に関する。
【0009】
一態様では、本明細書には、細胞内送達のための非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ、及び前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴと独立しているか又は共有結合されていない合成ペプチドシャトル剤を含む組成物であって、合成ペプチドシャトル剤が正に帯電した親水性の外面、及び疎水性の外面の両方を有する両親媒性のアルファヘリックスモチーフを含むペプチドであり、合成ペプチドシャトル剤が、合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、真核細胞における前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞質/核送達を増加させる、組成物が記載される。
【0010】
さらなる態様では、本明細書には、真核細胞における遺伝子発現を改変するための方法が記載され、方法は:(a)細胞内送達のための非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを提供する工程であって、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴが真核細胞において目的のRNAにハイブリダイズするように設計される工程;(b)前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴと独立しているか若しくは共有結合されていない合成ペプチドシャトル剤を提供する工程;(c)真核細胞を、前記合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、電荷-中性ポリヌクレオチド類似体カーゴの導入効率及び/若しくは細胞質/核送達を増加させるのに十分な濃度の合成ペプチドシャトル剤の存在下で非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴと接触させる工程を含み、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、細胞質/核送達時に目的のRNAにハイブリダイズし、それにより遺伝子発現の改変に影響を及ぼす。
【0011】
一般的定義
表題及びその他の識別子、例えば、(a)、(b)、(i)、(ii)等は、単に、本明細書及び特許請求の範囲の読み取りを容易にするために提示される。本明細書及び特許請求の範囲における表題及びその他の識別子の使用は、工程又は要素が、アルファベット順又は番号順で、又はそれらが提示される順序で実施されることを必ずしも必要としない。
【0012】
単語「1つの(a)」又は「1つの(an)」の使用は、特許請求の範囲及び/又は明細書において、用語「含んでいる(comprising)」とともに使用される場合には、「1つ」を意味し得るが、「1つ又は複数の」、「少なくとも1つの」及び「1つ又は2つ以上の」の意味とも一致する。
【0013】
用語「約」は、本明細書で使用される場合、値が、値を決定するために使用されているデバイス又は方法の誤差の標準偏差を含むことを示す。一般に、技術用語「約」は、最大10%の起こり得る変動を指定するものとする。したがって、値の1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10%の変動が、用語「約」中に含まれる。別に示されない限り、範囲の前の用語「約」の使用は、範囲の両端に適用される。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲において、使用されるように、単語「含んでいる(comprising)」(及び「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」等の、含んでいるの任意の形態)、「有している(having)」(及び「有する(have)」及び「有する(has)」等の有しているの任意の形態)、「含んでいる(including)」(及び「含む(includes)」及び「含む(include)」等の、含んでいるの任意の形態)又は「含有している(containing)」(及び「含有する(contains)」及び含有する(contain)等の、含有しているの任意の形態)は、包括的又はオープンエンドであり、さらなる列挙されていない要素又は方法工程を排除しない。
【0015】
本明細書で使用される場合、「タンパク質」又は「ポリペプチド」又は「ペプチド」は、任意の種類の修飾(例えば、アセチル化、リン酸化、グリコシル化、硫酸化(sulfatation)、SUMO化、プレニル化、ユビキチン化等といった化学又は翻訳後修飾)を含む場合も、含まない場合もある、アミノ酸の任意のペプチド連結している鎖を意味する。更に明瞭にするために、修飾が本明細書に記載のシャトル剤のカーゴ導入活性を破壊しない限り、タンパク質/ポリペプチド/ペプチド修飾が想定される。例えば、本明細書に記載されるシャトル剤は、直鎖状又は環状であり得て、1つ又は複数のD-又はL-アミノ酸で合成され得、及び/又は脂肪酸(例えば、それらのN末端)にコンジュゲートされ得る。本明細書に記載されるシャトル剤はまた、置き換えられるアミノ酸と同様の物理化学的特性(例えば、構造、疎水性、又は電荷)の側鎖を有する対応する合成アミノ酸で置き換えられる少なくとも1つのアミノ酸を有し得る。
【0016】
本明細書で使用される場合、「ドメイン」又は「タンパク質ドメイン」は、一般に、特定の官能基又は機能を有するタンパク質の一部を指す。いくつかのドメインは、タンパク質の残部から分離された場合にその機能を保存し、したがって、モジュール方式で使用され得る。多数のタンパク質ドメインのモジュール特性は、本記載のシャトル剤内のそれらの配置により可撓性を提供し得る。しかしながら、いくつかのドメインは、シャトル剤の特定の位置に(例えば、N末端又はC末端領域に又はその間に)遺伝子操作された場合により良好に機能し得る。その内因性タンパク質内のドメインの位置は、ドメインが、シャトル剤内で遺伝子操作されるべき場所の指標及びリンカーのどの種類/長さが使用されるべきであるかの指標となることもある。標準組換えDNA技術は、本開示を考慮して本記載のシャトル剤内のドメインの配置及び/又は数を操作するために当業者により使用され得る。更に、シャトル剤の観点において、ドメインの各々の機能性(例えば、細胞膜を横切る細胞浸透、エンドソームエスケープ及び/又は細胞質へのアクセスを促進する能力)を評価するために、本明細書に開示される、並びにその他の当該技術分野において公知であるアッセイが使用され得る。また、標準的な方法を用いて、シャトル剤のドメインが、細胞内に送達されるべきカーゴの活性に影響を及ぼすか否かを評価することができる。この関連で、表現「作動可能に連結された」とは、本明細書で使用される場合、本記載のシャトル剤の観点で、ドメインのその意図される機能(例えば、細胞浸透、エンドソームエスケープ及び/又は細胞内ターゲッティング)を実施する能力を指す。より明確にするために、表現「作動可能に連結された」とは、それらの間の特定の順序又は距離に制限されない、2種以上のドメイン間の機能的結合を定義することを意味する。
【0017】
本明細書で使用される場合、「合成ペプチド」、「合成ペプチドシャトル剤」又は「合成ポリペプチド」等の表現において使用される用語「合成」は、インビトロで製造され得る(例えば、化学的に合成される、及び/又は組換えDNA技術を使用して製造される)天然に存在しない分子を指すことが意図される。種々の合成調製物の純度は、例えば、高性能液体クロマトグラフィー解析及び質量分析法により評価され得る。化学合成アプローチは、それらが、大規模な組換えタンパク質精製工程(例えば、臨床使用のために必要とされる)の必要性を排除し得るため、細胞発現系(例えば、酵母又は細菌タンパク質発現系)よりも有利であり得る。対照的に、より長い合成ポリペプチドは、より複雑であり得、及び/又は化学合成アプローチによって、製造するのに費用がかさみ得、このようなポリペプチドは、細胞発現系を使用してより有利に製造され得る。一部の実施形態では、本記載のペプチド又はシャトル剤は、組換え宿主細胞から発現されるのとは対照的に、化学的に合成(例えば、固相又は液相ペプチド合成)され得る。一部の実施形態では、本記載のペプチド又はシャトル剤は、N末端メチオニン残基を欠き得る。当業者は、本記載の合成ペプチド又はシャトル剤を、1つ若しくは複数の修飾されたアミノ酸(例えば、天然に生じないアミノ酸)を使用することによって、又は本記載の合成ペプチド若しくはシャトル剤を化学的に修飾することによって、安定性の特定の必要性又はその他の必要性に合うように適応させることができる。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「独立した」とは、一般に、互いに共有結合によって結合していない、又は分子若しくは薬剤(例えば、シャトル剤及びカーゴ)が投与後に(例えば、還元性細胞環境に曝露される場合、及び/又は、細胞内に送達される前、同時若しくは直後に)結合の切断を通じて互いから離れるような切断可能な結合を介して一過的に共有結合され得る分子又は薬剤を指すことが意図される。例えば、表現「独立したカーゴ」は、細胞膜を越える導入の時点で本記載のシャトル剤と共有結合によって結合していない(例えば、融合していない)、細胞内に送達される(導入される)カーゴを指すことが意図される。一部の態様では、カーゴと独立している(と融合していない)シャトル剤を有することは、シャトル剤の汎用性を増加させることによって、例えば、(シャトル剤とカーゴとの間の共有結合の場合に固定比率に限定されるのとは対照的に)カーゴに対するシャトル剤の比率を容易に変化させることができることにより有利であり得る。一部の態様では、標的細胞との接触でそれらが互いに離れるように切断可能な結合を介してシャトル剤をそのカーゴに共有結合することは、製造及び/又は制御の観点から有利であり得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、表現「であるか又はに由来する」又は「に由来する」は、タンパク質ドメインの活性を抑制しない、保存的アミノ酸置換、欠失、修飾、並びにバリアント又は機能性誘導体等の所与のタンパク質若しくはペプチド(例えば、本明細書に記載されるシャトル剤)又はそれらのドメイン(例えば、CPD又はELD)の機能性バリアントを含む。
【0020】
本記載の他の目的、利点及び特徴は、添付の図面を参照して、例示の目的のみで与えられたその特定の実施形態の以下の非制限的説明を読むと、より明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】フローサイトメトリーによって評価された、第1世代の「ドメインに基づく」及び合理的に設計された合成ペプチドシャトル剤を介するPMO-FITCカーゴのHeLa細胞における細胞内送達を示す図である。結果は、少なくとも2回実施された実験から算出された平均である。
図2】フローサイトメトリーによって評価された、アンチセンスPMOをHeLa細胞の細胞質に導入し、それによりGFP遺伝子発現のノックダウンを可能にする合成ペプチドシャトル剤FSD10の能力を示す図である。結果は、少なくとも2回実施された実験から算出された平均である。
図3】ウエスタンブロットによって評価された、DU145細胞におけるGli1タンパク質発現のノックダウンのために、Wnt1及びGli1を標的にするアンチセンスPMOを導入する合成ペプチドシャトル剤FSD250の能力を示す図である。結果は、少なくとも2回実施された実験から算出された平均である。
図4】ウエスタンブロットによって評価された、DU145細胞におけるGli1タンパク質発現のノックダウンのために、Gli1を標的にするアンチセンスPMOを導入する合成ペプチドシャトル剤FSD250の能力を示す図である。結果は、少なくとも2回実施された実験から算出された平均である。
図5】ヨウ化プロピジウム(PI)及びGFP-NLS導入活性のための候補ペプチドシャトル剤の大規模スクリーニングの結果を示す図である。結果は、少なくとも2回実施された実験から算出された平均である。
図6】ヨウ化プロピジウム(PI)及び/又はGFP-NLS導入活性のための候補ペプチドシャトル剤のさらなるスクリーニングの結果を示す図である。結果は、少なくとも2回実施された実験から算出された平均である。
図7】HeLa細胞にアンチセンスPMO及びPNAを導入する合成ペプチドシャトル剤FSD250の能力を示す図である。図7Aは、フローサイトメトリーによる、細胞内送達の結果を示す。図7Bは、フローサイトメトリーによる、細胞の生存率の結果を示す。結果は、少なくとも2回実施された実験から算出された平均である。
図8】フローサイトメトリーによる、合成ペプチドシャトル剤FSD250によるPMOの細胞内送達へのネイキッドDNA(図8A)及びRNA(sgRNA;図8B)の阻害効果の結果を示す図である。
図9】His-CM18-PTD4(第1世代シャトル剤)と比較した、RH-30細胞においてアンチセンスPMOを導入する第2世代合成ペプチドシャトル剤FSD10及びFSD250の能力を示す図である。図9Aは、フローサイトメトリーによる、細胞内送達の結果を示す。図9Bは、フローサイトメトリーによる、細胞の生存率の結果を示す。結果は、少なくとも2回実施された実験から算出された平均である。
図10】VivoPMO-Gli1と比較した、合成ペプチドシャトル剤FSD250を用いたPMO-Gli1の導入後のRH-30細胞におけるGli1ノックダウンの結果を示す。図10Aは、Gli1及びGAPDH(対照)についてのウエスタンブロットの結果を示す。図10Bは、図10Aの対応するウエスタンブロットのデンシトメトリースキャン分析の結果を示す。
図11】Endoporter(商標)と比較した、HeLa細胞においてアンチセンスPMOを導入する合成ペプチドシャトル剤FSD396の能力を示す図である。未処理(図11A)、PMO-FITC処理(図11B)、PMO-FITC + FSD396 (図11C)、及びPMO-FITC + Endoporter (図11D)の代表的な免疫蛍光顕微鏡画像が示されている。
図12】合成ペプチドシャトル剤FSD250を用いた導入後だけの、ヒトDU145細胞において、Gli1をノックダウンするためにGli1を標的にする4種の異なるPMOの能力を示す図である。Gli1及びアクチニン(対照)についての代表的ウエスタンブロット並びに対応するデンシトメトリースキャン分析が示されている。
図13】合成ペプチドシャトル剤FSD250を用いた基底細胞癌型腫瘍外植片へのPMO-Gli1導入の結果を示す図である。PMO-Gli1-Cy5及びFSD250、又はPMO-Gli1-Cy5単独での処理後の、Cy5 (左)、Cy5+DAPI (核染色;中央)及びCy5+DAPI+Nomarski (すなわち、微分干渉顕微鏡[DIC]) (右)の代表的な蛍光顕微鏡画像が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
配列表
この出願は、2021年10月15日に作製されたコンピュータ可読形式の配列表を含む。コンピュータ可読形式は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0023】
【表1-1】
【0024】
【表1-2】
【0025】
【表1-3】
【表1-4】
【0026】
詳細な説明
一部の態様では、本明細書には、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ導入のための組成物及び方法が記載される。方法は、一般に、標的真核細胞を、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ、及び非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴと独立しているか又は共有結合されていない合成ペプチドシャトル剤を含む組成物と接触させる工程を含み、合成ペプチドシャトル剤は、真核細胞において前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞質/核送達を増加させる。
【0027】
非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ
一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、電荷-中性又はカチオン性アンチセンス合成オリゴヌクレオチド(ASO)であり得る。一部の実施形態では、ASOは、電荷-中性又はカチオン性スプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)であり得る。一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、ホスホロジアミデート骨格、アミド(例えば、ペプチド)骨格、メチルホスホネート骨格、中性ホスホトリエステル骨格、スルホン骨格又はトリアゾール骨格を有する電荷-中性ポリヌクレオチド類似体カーゴであり得る。一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、アミノアルキル化ホスホラミデート骨格、グアニジウム骨格、S-メチルチオウレア骨格又はヌクレオシルアミノ酸(NAA)骨格を有するカチオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴであり得る。一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)、ペプチド核酸(PNA)、メチルホスホネートオリゴマー又は短鎖干渉リボ核酸中性オリゴヌクレオチド(siRNN)であり得る。一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、5~50マー(mer)、5マー~75マー又は5マー~100マーであり得る。一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、細胞膜透過性ペプチド、オクタグアニジンデンドリマー又は他の細胞内送達部分に共有結合されていない。一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、細胞膜不透過性であるか、又は低い膜透過性を有し(例えば、細胞膜を自由に拡散することができないカーゴの物理化学的特性による)、本明細書に記載されるペプチドシャトル剤は、その細胞内送達及び/又は細胞質/核へのアクセスを促進するか又は増加させる。一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、細胞膜透過性であるカーゴであり得、本明細書に記載されるペプチドシャトル剤は、それにもかかわらず、その細胞内送達及び/又は細胞質へのアクセスを増加させる。一部の実施形態では、本明細書に記載されるペプチドシャトル剤は、カーゴ単独の投与と比較して、その意図された生物学的効果を達成するために投与されるのに必要なカーゴの量又は濃度を低減することができる。
【0028】
一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、治療に関連する標的RNAの遺伝子発現を改変する任意の疾患又は状態を治療するための薬物であり得る。一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、がん(例えば、皮膚がん、基底細胞癌、母斑基底細胞癌症候群)、炎症若しくは炎症関連疾患(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、蕁麻疹、ドライアイ疾患、萎縮型若しくは滲出型加齢黄斑変性、指潰瘍、日光角化症、特発性肺線維症)、疼痛(例えば、慢性若しくは急性)、又は肺に影響を及ぼす疾患(例えば、嚢胞性線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、若しくは特発性肺線維症)を治療するための薬物であり得る。
【0029】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、例えば、治療に関連する標的mRNAのスプライシングを修正するか、又は変更するための、スプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)であり得る。一部の実施形態では、標的mRNAは、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)であり得、本明細書に記載される組成物又は方法は、嚢胞性線維症の治療のためであり得る(例えば、嚢胞性線維症対象の肺への投与を介して)。この関連で、合成ペプチドシャトル剤は、難治性気道上皮細胞への組換えタンパク質カーゴの効率的な送達を可能にすることが示された(Krishnamurthyら、2018)。
【0030】
一部の実施形態では、本明細書に記載される非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、細胞膜透過性若しくはカチオン性ペプチド、オクタグアニジンデンドリマー又は他の細胞内送達部分に共有結合されていない。例えば、ペプチドコンジュゲートホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PPMO)及びVivo-Morpholinoにおいて使用されてきたこのような従来の送達戦略は、PMOの合成プロセスにさらなる複雑さを加える。対照的に、本明細書に記載される合成ペプチドシャトル剤は、未修飾又は「ネイキッド」非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを有利に導入でき、製造及び製剤化を大いに促進する。
【0031】
合理的設計パラメーター及びペプチドシャトル剤
一部の態様では、本明細書に記載されるシャトル剤は、標的真核細胞における非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ、タンパク質カーゴ又は両方に対する導入活性を有するペプチドであり得る。一部の実施形態では、本明細書に記載されるシャトル剤は、好ましくは、以下の15の合理的設計パラメーターのうちの1つ若しくは複数又は任意の組合せを満たす。
【0032】
(1)いくつかの実施形態では、シャトル剤は、少なくとも12、13、14、15、16、17、18、19又は20アミノ酸長のペプチドである。例えば、ペプチドは、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29又は30個のアミノ酸残基の最小長及び35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145又は150個のアミノ酸残基の最大長さを含み得る。いくつかの実施形態では、より短いペプチド(例えば、17~50個又は20~50個のアミノ酸の範囲の)は、化学的合成手法により、より容易に合成され、精製され得、臨床使用により適し得る(細胞発現系から精製しなければならない組換えタンパク質とは対照的に)ので特に有利であり得る。本記載における数及び範囲は、5の倍数として列挙されることが多いが、本記載は、そのように制限されてはならない。例えば、本明細書に記載される最大長さは、本記載において、56、57、58…61、62等の長さも包含し、本記載において、列挙されないことは、単に簡潔さのためであると理解されなければならない。同じ論拠は、本明細書で記載される同一性の%にも当てはまる。
【0033】
(2)いくつかの実施形態では、ペプチドシャトル剤は、中性phで両親媒性のアルファヘリックスモチーフを含む。本明細書で使用される場合、表現の「アルファヘリックスモチーフ」又は「アルファヘリックス」は、別段の指定がない限り、100度の連続アミノ酸間の回転角度を有する右巻きコイル状若しくはスパイラル構造(らせん体(helix))及び/又はターン当たり3.6残基を有するアルファヘリックスを意味する。本明細書で使用される場合、表現の「アルファヘリックスモチーフを含む」又は「両親媒性のアルファヘリックスモチーフ」等は、ペプチドがシャトル剤として細胞中で使用される場合に実際に取るかどうかに関係なく、ペプチド一次アミノ酸配列に基づく生物学的設定で本記載のペプチド(又はペプチドのセグメント)が取ると予測される3次元構造を意味する。更に、本記載のペプチドは、種々のペプチドの位置で1つ又は複数のアルファヘリックスモチーフを含み得る。例えば、国際公開第2018/068135号中のシャトル剤FSD5は、その長さ全体にわたりアルファヘリックスを取ることが予測される(国際公開第2018/068135号の図49Cを参照されたい)が、国際公開第2018/068135号のシャトル剤FSD18は、ペプチドのN及びC末端領域に向いた2つの別々のアルファヘリックスを含むことが予測される(国際公開第2018/068135号の図49Dを参照されたい)。いくつかの実施形態では、本記載のシャトル剤は、例えば、国際公開第2018/068135号の図49E及び49Fに示すようなベータシートモチーフを含むと予測されない。タンパク質及びペプチド中のアルファヘリックス及びベータシートの存在を予測する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、1つのこのような方法は、新規ペプチド構造予測のためのオンライン情報源(http://bioserv.rpbs.univ-paris-diderot.fr/services/PEP-FOLD/)である、PEP-FOLD(商標)を用いた3Dモデリングに基づくものである(Lamiable et al.,2016;Shen et al.,2014;Thevenet et al.,2012)。ペプチド及びタンパク質中のアルファヘリックスの存在の他の予測方法が既知であり、当業者なら容易に利用できる。
【0034】
本明細書で使用される場合、表現の「両親媒性の」は、疎水性及び親水性要素(例えば、ペプチドを構成するアミノ酸の側鎖に基づいて)の両方を有するペプチドを意味する。例えば、表現の「両親媒性のアルファヘリックス」又は「両親媒性アルファヘリックスモチーフ」は、らせん体を形成するアミノ酸の側鎖の性質に基づいて、非極性疎水性面及び極性親水性面を有するアルファヘリックスモチーフを取ると予測されるペプチドを意味する。
【0035】
(3)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、R及び/又はK残基に富むもの等の正に帯電した親水性の外面を有する両親媒性のアルファヘリックスモチーフを含む。本明細書で使用される場合、表現の「正に帯電した親水性外面」は、アルファヘリックスホイール投影図に基づいて、両親媒性アルファヘリックスモチーフの片側にクラスター化された少なくとも3個のリシン(K)及び/又はアルギニン(R)残基の存在を意味する(例えば、国際公開第2018/068135号の図49Aの左パネルを参照されたい)。このようなヘリカルホイール投影図は、Don Armstrong及びRaphael Zidovetzkiによって作製されたオンラインヘリカルホイール投影図ツール(例えば: https://www.donarmstrong.com/cgi-bin/wheel.plで入手可能)又はMolら、2018によって開発されたオンラインツール(例えば、http://lbqp.unb.br/NetWheels/で入手可能)等の種々のプログラムを用いて作製し得る。いくつかの実施形態では、両親媒性のアルファヘリックスモチーフは、正に帯電した親水性外面を含み、この外面は、100度の連続アミノ酸間の回転角度を有するアルファヘリックス及び/又はターン当たり3.6残基を有するアルファヘリックスに基づいて、(a) ヘリカルホイール投影図上で、少なくとも2個、3個又は4個の隣接する正に帯電したK及び/又はR残基;及び/又は(b)ヘリカルホイール投影図上で、3個から5個のK及び/又はR残基を含む6個の隣接する残基のセグメントを含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、疎水性の外面を含む両親媒性のアルファヘリックスモチーフを含み、疎水性の外面は、100度の連続アミノ酸間の回転角度を有するアルファヘリックス及び/又はターン当たり3.6残基を有するアルファヘリックスに基づいて、(a)ヘリカルホイール投影図上で、少なくとも2個の隣接するL残基;及び/又は(b)ヘリカルホイール投影図上で、L、I、F、V、W、及びMから選択される少なくとも5個の疎水性の残基を含む10個の隣接する残基のセグメント、を含む。
【0037】
(4)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、空間的に隣接する高度疎水性残基(例えば、L、I、F、V、W、及び/又はM)から構成される高度疎水性コアを有する両親媒性アルファヘリックスモチーフを含む。いくつかの実施形態では、例えば、国際公開第2018/068135号の図49A、右パネルに示すように、ターン当たり3.6残基を有するアルファヘリックスのオープンシリンダー表現に基づいて、高度疎水性コアは、空間的に隣接し、ヒスチジンリッチドメインを除外して計算して(下記参照)、ペプチドのアミノ酸の12~50%に相当するL、I、F、V、W、及び/又はMアミノ酸から構成され得る。いくつかの実施形態では、高度疎水性コアは、ペプチドのアミノ酸の12.5%、13%、13.5%、14%、14.5%、15%、15.5%、16%、16.5%、17%、17.5%、18%、18.5%、19%、19.5%、又は20%から25%、30%、35%、40%、又は45%に相当する空間的に隣接するL、I、F、V、W、及び/又はMアミノ酸から構成され得る。より具体的には、高度疎水性コアパラメーターは、最初に、ペプチドのアミノ酸をオープンシリンダー表現に配置し、その後、国際公開第2018/068135号の図49A、右パネルに示すように、連続した高度疎水性残基(L、I、F、V、W、M)の領域を描写することにより計算し得る。この描写された高度疎水性コアに含まれる高度疎水性残基の数は、その後、ヒスチジンリッチドメイン(例えば、N及び/又はC末端ヒスチジンリッチドメイン)を除くペプチドの合計アミノ酸長さで除算される。例えば、国際公開第2018/068135号の図49Aに示したペプチドの場合、描写した高度疎水性コア中に8個の残基が、及びペプチド中に25個の合計残基(末端の12個のヒスチジンを除く)が存在する。したがって、高度疎水性コアは32%(8/25)である。
【0038】
(5)疎水性モーメントは、アミノ酸の側鎖の疎水性のベクトル和から計算される、らせん体、ペプチド、又はその一部の両親媒性の尺度に関する(Eisenberg et al.,1982)。ポリペプチドの疎水性モーメントを計算するためのオンラインツールは、http://rzlab.ucr.edu/scripts/wheel/wheel.cgi.から利用可能である。高疎水性モーメントは強力な両親媒性を示すが、低疎水性モーメントは不十分な両親媒性を示す。いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、3.5~11(μ)の疎水性モーメントを有するペプチド又はアルファヘリックスドメインからなり得る又はそれを含み得る。いくつかの実施形態では、シャトル剤は、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0の下限値と、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、10.9、又は11.0の上限値との間の疎水性モーメントを有する両親媒性アルファヘリックスモチーフを含むペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、シャトル剤は、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0の下限値と、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10.0、10.1、10.2、10.3、10.4、又は10.5の上限値との間の疎水性モーメントを有するペプチドであり得る。いくつかの実施形態では、疎水性モーメントは、ペプチドに存在し得る全てのヒスチジンリッチドメインを除外して、計算される。
【0039】
(6)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、K、R、D、及びE残基の側鎖から計算して、生理学的pHで、少なくとも+3又は+4の予測される実効電荷を有し得る。例えば、ペプチドの実効電荷は、生理学的pHで少なくとも+5、+6、+7、少なくとも+8、少なくとも+9、少なくとも+10、少なくとも+11、少なくとも+12、少なくとも+13、少なくとも+14又は少なくとも+15であり得る。これらの正電荷は、一般に、負に帯電したアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸残基とは対照的に、正に帯電したリシン及び/又はアルギニン残基のより多い存在により付与される。
【0040】
(7)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、8~13、好ましくは10~13の予測等電点(pI)を有し得る。ペプチド又はタンパク質の等電点を計算及び/又は測定するプログラム及び方法は、当技術分野において既知である。例えば、pIは、http://web.expasy.org/protparam/で入手可能なProt Paramソフトウェアを用いて計算し得る。
【0041】
(8)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、35~65%の疎水性残基(A、C、G、I、L、M、F、P、W、Y、V)から構成され得る。特定の実施形態では、ペプチドシャトル剤は36%~64%、37%~63%、38%~62%、39%~61%、40%~60%のアミノ酸:A、C、G、I、L、M、F、P、W、Y、及びVの任意の組合せから構成され得る。
【0042】
(9)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、0~30%の中性親水性残基(N、Q、S、T)から構成され得る。特定の実施形態では、ペプチドシャトル剤は、1%~29%、2%~28%、3%~27%、4%~26%、5%~25%、6%~24%、7%~23%、8%~22%、9%~21%、又は10%~20%のアミノ酸:N、Q、S、及びTの任意の組合せから構成され得る。
【0043】
(10)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、35~85%のアミノ酸:A、L、K及び/又はRから構成され得る。特定の実施形態では、ペプチドシャトル剤は36%~80%、37%~75%、38%~70%、39%~65%、又は40%~60%のアミノ酸:A、L、K、又はRの任意の組合せから構成され得る。
【0044】
(11)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、15~45%のアミノ酸:A及び/又はLから構成され得る。但し、ペプチド中に少なくとも5%のLが存在する。特定の実施形態では、ペプチドシャトル剤は、15%~40%、20%~40%、20~35%、又は20~30%のアミノ酸:A及びLの任意の組合せから構成され得る。但し、ペプチド中に少なくとも5%のLが存在するという条件下の場合である。
【0045】
(12)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、20~45%のアミノ酸:K及び/又はRから構成され得る。特定の実施形態では、ペプチドシャトル剤は、20%~40%、20~35%、又は20~30%のアミノ酸:K及びRの任意の組合せから構成され得る。
【0046】
(13)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、0~10%のアミノ酸:D及び/又はEから構成され得る。特定の実施形態では、ペプチドシャトル剤は、5~10%のアミノ酸:D及びEの任意の組合せから構成され得る。
【0047】
(14)いくつかの実施形態では、ペプチドシャトル剤中のA及び/又はLのパーセンテージと、K及び/又はRのパーセンテージとの絶対的差異は、10%以下であり得る。特定の実施形態では、ペプチドシャトル剤中のA及び/又はLのパーセンテージと、K及び/又はRのパーセンテージとの絶対的差異は、9%、8%、7%、6%、又は5%以下であり得る。
【0048】
(15)いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、10%~45%のアミノ酸:Q、Y、W、P、I、S、G、V、F、E、D、C、M、N、T、又はH(すなわち、A、L、K、又はR以外)から構成され得る。特定の実施形態では、ペプチドシャトル剤は、15~40%、20%~35%、又は20%~30%のアミノ酸:Q、Y、W、P、I、S、G、V、F、E、D、C、M、N、T、及びHの任意の組合せから構成され得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、少なくとも1個の、少なくとも2個の、少なくとも3個の、少なくとも4個の、少なくとも5個の、少なくとも6個の、少なくとも7個の、少なくとも8個の、少なくとも9個の、少なくとも10個の、少なくとも11個の、少なくとも12個の、少なくとも13個の、少なくとも14個の、又は全ての本明細書に記載のパラメーター(1)~(15)を満たす。特定の実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、パラメーター(1)~(3)の全てを満たし、また、少なくとも6個の、少なくとも7個の、少なくとも8個の、少なくとも9個の、少なくとも10個の、少なくとも11個の、又は全ての本明細書に記載のパラメーター(4)~(15)を満たす。
【0050】
いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、1個のみのヒスチジンリッチドメインを含み、1個のヒスチジンリッチドメインの残基は、本明細書に記載のパラメーター(1)~(15)の計算/評価に含めてよい。いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、2個以上のヒスチジンリッチドメインを含む場合、1個のヒスチジンリッチドメインの残基のみを、本明細書に記載のパラメーター(1)~(15)の計算/評価に含めてよい。例えば、本記載のペプチドシャトル剤が、最初のN末端を向いたヒスチジンリッチドメインの及びC末端を向いて第2のヒスチジンリッチドメインの2個のヒスチジンリッチドメインを含む場合、最初のヒスチジンリッチドメインのみを、本明細書に記載のパラメーター(1)~(15)の計算/評価に含めてよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、機械学習又はコンピュータ支援設計手法を実行して、本明細書に記載のパラメーター(1)~(15)の1個又は複数を満たすペプチドを生成し得る。パラメーター(1)及び(5)~(15)等のいくつかのパラメーターは、コンピュータ支援設計手法でより実施し易いが、パラメーター(2)、(3)及び(4)等の構造的パラメーターは、マニュアル設計手法により適用し易い。したがって、いくつかの実施形態では、1個又は複数のパラメーター(1)~(15)を満たすペプチドは、コンピュータ支援及びマニュアル設計手法を組み合わせて生成し得る。例えば、本明細書(又はその他のもの)で効果的シャトル剤として機能することが示される複数のペプチドの複数の配列アラインメント分析は、いくつかのコンセンサス配列-すなわち、共通に認められる疎水性、カチオン性、親水性のアラニン及びグリシンアミノ酸の交互変化のパターンの存在を明らかにした。これらのコンセンサス配列の存在は、構造的パラメーター(2)、(3)及び(4)を満たすように(すなわち、両親媒性のアルファヘリックス形成、正に帯電した面、及び12%~50%の高度疎水性コアを)誘発する可能性がある。したがって、これらの及びその他のコンセンサス配列を機械学習及び/又はコンピュータ支援設計手法に採用して、1個又は複数のパラメーター(1)~(15)を満たすペプチドを生成し得る。
【0052】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のペプチドシャトル剤は、以下のアミノ酸配列を含むか又はこれらからなり得る:
(a)[X1]-[X2]-[リンカー]-[X3]-[X4](式1);
(b)[X1]-[X2]-[リンカー]-[X4]-[X3](式2);
(c)[X2]-[X1]-[リンカー]-[X3]-[X4](式3);
(d)[X2]-[X1]-[リンカー]-[X4]-[X3](式4);
(e)[X3]-[X4]-[リンカー]-[X1]-[X2](式5);
(f)[X3]-[X4]-[リンカー]-[X2]-[X1](式6);
(g)[X4]-[X3]-[リンカー]-[X1]-[X2](式7);
(h)[X4]-[X3]-[リンカー]-[X2]-[X1](式8);
(i)[リンカー]-[X1]-[X2]-[リンカー](式9);
(j)[リンカー]-[X2]-[X1]-[リンカー](式10);
(k)[X1]-[X2]-[リンカー](式11);
(l)[X2]-[X1]-[リンカー](式12);
(m)[リンカー]-[X1]-[X2](式13);
(n)[リンカー]-[X2]-[X1](式14);
(o)[X1]-[X2](式15);又は
(p)[X2]-[X1](式16),
式中、
[X1]は、次記から選択される:2[Φ]-1[+]-2[Φ]-1[ζ]-1[+]-;2[Φ]-1[+]-2[Φ]-2[+]-;1[+]-1[Φ]-1[+]-2[Φ]-1[ζ]-1[+]-;及び1[+]-1[Φ]-1[+]-2[Φ]-2[+]-;
[X2]は、次記から選択される:-2[Φ]-1[+]-2[Φ]-2[ζ]-;-2[Φ]-1[+]-2[Φ]-2[+]-;-2[Φ]-1[+]-2[Φ]-1[+]-1[ζ]-;-2[Φ]-1[+]-2[Φ]-1[ζ]-1[+]-;-2[Φ]-2[+]-1[Φ]-2[+]-;-2[Φ]-2[+]-1[Φ]-2[ζ]-;-2[Φ]-2[+]-1[Φ]-1[+]-1[ζ]-;及び2[Φ]-2[+]-1[Φ]-1[ζ]-1[+]-;
[X3]は、次記から選択される:-4[+]-A-;-3[+]-G-A-;-3[+]-A-A-;-2[+]-1[Φ]-1[+]-A-;-2[+]-1[Φ]-G-A-;-2[+]-1[Φ]-A-A-;又は2[+]-A-1[+]-A;-2[+]-A-G-A;-2[+]-A-A-A-;-1[Φ]-3[+]-A-;-1[Φ]-2[+]-G-A-;-1[Φ]-2[+]-A-A-;-1[Φ]-1[+]-1[Φ]-1[+]-A;-1[Φ]-1[+]-1[Φ]-G-A;-1[Φ]-1[+]-1[Φ]-A-A;-1[Φ]-1[+]-A-1[+]-A;-1[Φ]-1[+]-A-G-A;-1[Φ]-1[+]-A-A-A;-A-1[+]-A-1[+]-A;-A-1[+]-A-G-A;及びA-1[+]-A-A-A;
[X4]は、次記から選択される:-1[ζ]-2A-1[+]-A;-1[ζ]-2A-2[+];-1[+]-2A-1[+]-A;-1[ζ]-2A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[ζ]-A-1[ζ]-A-1[+];-2[+]-A-2[+];-2[+]-A-1[+]-A;-2[+]-A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-2[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[+]-1[ζ]-A-1[+]-A;-1[+]-1[ζ]-A-2[+];-1[+]-1[ζ]-A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[+]-2[ζ]-A-1[+];-1[+]-2[ζ]-2[+];-1[+]-2[ζ]-1[+]-A;-1[+]-2[ζ]-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[+]-2[ζ]-1[ζ]-A-1[+];-3[ζ]-2[+];-3[ζ]-1[+]-A;-3[ζ]-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-1[ζ]-2A-1[+]-A;-1[ζ]-2A-2[+];-1[ζ]-2A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];-2[+]-A-1[+]-A;-2[+]-1[ζ]-1[+]-A;-1[+]-1[ζ]-A-1[+]-A;-1[+]-2A-1[+]-1[ζ]-A-1[+];及び1[ζ]-A-1[ζ]-A-1[+];及び
[リンカー]は次記から選択される:-Gn-;-Sn-;-(GnSn)n-;-(GnSn)nGn-;-(GnSn)nSn-;-(GnSn)nGn(GnSn)n-;及び(GnSn)nSn(GnSn)n-;
式中、[Φ]はアミノ酸:Leu、Phe、Trp、Ile、Met、Tyr、又はVal、好ましくはLeu、Phe、Trp又はIleであり;[+]は、アミノ酸:Lys又はArgであり;[ζ]は、アミノ酸:Gln、Asn、Thr、又はSerであり;Aはアミノ酸:Alaであり;Gはアミノ酸:Glyであり;Sはアミノ酸:Serであり;nは、1~20、1~19、1~18、1~17、1~16、1~15、1~14、1~13、1~12、1~11、1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~1~4、又は1~3の整数である。
【0053】
一部の実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、配列番号1~50、58~78、80~107、109~139、141~146、149~161、163~169、171、174~234、236~240、242~260、262~285、287~294、296~300、302~308、310、311、313~324、326~332、338~342、344若しくは353~364のいずれかのアミノ酸配列、又は国際公開第2018/068135号に開示される配列番号104、105、107、108、110~131、133~135、138、140、142、145、148、151、152、169~242、及び243~10242のいずれか1つのアミノ酸配列、若しくはその機能性バリアントと少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、若しくは99%同一であるペプチドを含むか又はそれからなり得る。一部の実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、FSD5、FSD16、FSD18、FSD19、FSD20、FSD22及びFSD23の各ペプチドに見出された、国際公開第2018/068135号の配列番号158及び/又は159のアミノ酸配列モチーフを含み得る。一部の実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、国際公開第2018/068135号の配列番号159のアミノ酸配列モチーフに機能し得るように連結された国際公開第2018/068135号の配列番号158のアミノ酸配列モチーフを含み得る。本明細書で使用される場合「機能性バリアント」とは、1つ又は複数の保存的アミノ酸置換によって参照ペプチドと異なる、カーゴ導入活性を有するペプチドを指す。本明細書において機能性バリアントの文脈で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」とは、1つのアミノ酸残基が類似の側鎖を有する別のアミノ酸残基で置き換えられるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野において十分に定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン、及び場合によりプロリン)、ベータ-分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。
【0054】
一部の実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、国際公開第2018/068135号の配列番号57~59、66~72、又は82~102のいずれか1つのアミノ酸配列の1つ又は複数を含まない。一部の実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、国際公開第2018/068135号に開示される配列番号104、105、107、108、110~131、133~135、138、140、142、145、148、151、152、169~242、及び243~10242のいずれか1つのアミノ酸配列の1つ又は複数を含まない。むしろ、一部の実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、このような先に記載されたシャトル剤ペプチドのバリアントに関することができ、バリアントは、改善された導入活性(すなわち、より確実に非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを導入することができる)のために更に操作される。
【0055】
一部の実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、真核細胞モデル系(例えば、不死化された真核細胞株)又はモデル生物において測定した場合、「代理」カーゴについての導入効率及び/又はカーゴ送達スコアの最小閾値を有し得る。「導入効率」という表現は、例えば、フローサイトメトリー、免疫蛍光顕微鏡法、及びカーゴ導入効率を評価するために使用することができる他の適切な方法(例えば、国際公開第2018/068135号に記載される)によって決定することができる、目的のカーゴが細胞内に送達される標的細胞集団のパーセンテージ又は比率を指す。一部の実施形態では、導入効率は、カーゴ陽性細胞のパーセンテージとして表され得る。一部の実施形態では、導入効率は、カーゴ及びシャトル剤の非存在下(「無処理」;NT)又はシャトル剤の非存在下(「カーゴ単独」)を除き、同一の条件下で評価された適切な陰性対照に対して倍増(又は倍減)として表され得る。
【0056】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるシャトル剤は:
(i)配列番号1~50、58~78、80~107、109~139、141~146、149~161、163~169、171、174~234、236~240、242~260、262~285、287~294、296~300、302~308、310、311、313~324、326~332、338~342、344、若しくは353~364のいずれか1つのアミノ酸配列;
(ii)配列番号1~50、58~78、80~107、109~139、141~146、149~161、163~169、171、174~234、236~240、242~260、262~285、287~294、296~300、302~308、310、311、313~324、326~332、338~342、344若しくは353~364のいずれか1つと、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個以下のアミノ酸で相違するアミノ酸配列(例えば、任意のリンカードメインを除く);
(iii)配列番号1~50、58~78、80~107、109~139、141~146、149~161、163~169、171、174~234、236~240、242~260、262~285、287~294、296~300、302~308、310、311、313~324、326~332、338~342、344若しくは353~364のいずれか1つと少なくとも50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%若しくは99%同一であるアミノ酸配列(例えば、任意のリンカードメインを除いて計算される);
(iv)配列番号1~50、58~78、80~107、109~139、141~146、149~161、163~169、171、174~234、236~240、242~260、262~285、287~294、296~300、302~308、310、311、313~324、326~332、338~342、344若しくは353~364のいずれか1つと、保存的アミノ酸置換のみで(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9若しくは10個以下の保存的アミノ酸置換で、好ましくは任意のリンカードメインを除く)相違するアミノ酸配列であって、各保存的アミノ酸置換は、同じアミノ酸クラス内のアミノ酸から選択され、アミノ酸クラスは:脂肪族:G、A、V、L、及びI;ヒドロキシル又は硫黄/セレン含有:S、C、U、T、及びM;芳香族:F、Y、及びW;塩基性:H、K、及びR;酸性及びそれらのアミド:D、E、N、及びQである、アミノ酸配列;又は
(v)(i)~(iv)の内の任意の組合せ、を含むか又はそれらからなる。
【0057】
一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの送達のための本明細書に記載されるシャトル剤は、好ましくは、細胞膜透過性ドメインを欠くか、又はエンドソーム漏出ドメインに融合された細胞膜透過性ドメインを欠く第2世代シャトル剤である。一部の実施形態では、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの送達のために特に好適な本明細書に記載されるシャトル剤は、好ましくは、シャトル剤が細胞あたりでより多い合計数のカーゴ分子を送達することを意味する、比較的高い送達スコアを有するものである。本明細書に記載される合成ポリヌクレオチド類似体が、それらの標的細胞内RNA分子にハイブリダイズすることで立体障害によって機能する(すなわち、1つのカーゴ分子が1つの細胞内RNA分子に結合する)ことから、より高い送達スコアを有するシャトル剤がそのような適用のために特に有利であることが予測される。一部の実施形態では、本明細書 (及び/又は、先のパラグラフにおいて上に列挙された配列番号)に記載されるシャトル剤は、少なくとも10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195又は200のPI及び/又はGFPカーゴの送達についての標準化された平均送達スコアを有して、図5に列挙されているものである。
【0058】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるシャトル剤は、合成ペプチドシャトル剤のバリアントを含むか又はそれからなり、バリアントは、少なくとも1つのアミノ酸が、置き換えられるアミノ酸と同様の物理化学的特性(例えば、構造、疎水性、又は電荷)の側鎖を有する対応する合成アミノ酸で置き換えられることを除き、本明細書に規定される合成ペプチドシャトル剤と同一であり、バリアントは合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、真核細胞における前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞質/核送達を増加させる。
【0059】
化学修飾及び合成アミノ酸
一部の実施形態では、本記載のシャトル剤は、本明細書に記載されるペプチドのオリゴマー(例えば、二量体、三量体等)を含み得る。このようなオリゴマーは、同じか又は異なるタイプのシャトル剤モノマーを共有結合すること(例えば、ジスルフィド架橋を用いて、モノマー配列に導入されるシステイン残基を連結すること)によって構築することができる。一部の実施形態では、本記載のシャトル剤は、N末端及び/又はC末端のシステイン残基を含み得る。
【0060】
一部の実施形態では、本記載のシャトル剤は、環状ペプチドを含むか又はそれからなり得る。一部の実施形態では、環状ペプチドは、シャトル剤のN末端に向かって配置された第1の残基と、シャトル剤のC末端に向かって配置された第2の残基との間の共有結合を介して形成され得る。一部の実施形態では、第1及び第2の残基は、シャトル剤のN末端及びC末端に位置する隣接する残基である。一部の実施形態では、第1及び第2の残基は、アミド結合を介して連結されて環状ペプチドを形成することができる。一部の実施形態では、環状ペプチドは、シャトル剤内の2つのシステイン残基間のジスルフィド結合によって形成され得、2つのシステイン残基は、シャトル剤のN末端及びC末端に向かって配置される。一部の実施形態では、シャトル剤は、N末端及びC末端に隣接するシステイン残基を含み、又は含むように操作され得、ジスルフィド結合を介して連結されて環状ペプチドを形成する。一部の実施形態では、本明細書に記載される環状シャトル剤は、分解(例えば、プロテアーゼによる)に対してより耐性であり得、及び/又は対応する直鎖状ペプチドよりも長い半減期を有し得る。
【0061】
一部の実施形態では、本記載のシャトル剤は、1つ又は複数のD-アミノ酸を含み得る。一部の実施形態では、本記載のシャトル剤は、シャトル剤のN末端及び/又はC末端におけるD-アミノ酸を含み得る。一部の実施形態では、シャトル剤は、D-アミノ酸のみで構成され得る。一部の実施形態では、1つ又は複数のD-アミノ酸を有する本明細書に記載されるシャトル剤は、分解(例えば、プロテアーゼによる)により耐性であり得、及び/又はL-アミノ酸のみで構成される対応するペプチドよりも長い半減期を有し得る。
【0062】
一部の実施形態では、本記載のシャトル剤は、1つ又は複数のアミノ酸に対する化学的修飾を含み得、化学的修飾は、合成ペプチドシャトル剤の導入活性を破壊しない。本明細書で使用される場合、用語「破壊」は、化学修飾が、本明細書に記載されるペプチドシャトル剤のカーゴ導入活性を不可逆的に消失させることを意味する。本明細書に記載されるペプチドシャトル剤のカーゴ導入活性を一時的に阻害し、減弱し、又は遅延させ得る化学的修飾は、本記載のシャトル剤に対する化学的修飾に含まれ得る。一部の実施形態では、本明細書に記載されるシャトル剤のいずれか1つに対する化学修飾は、シャトル剤のN末端及び/又はC末端であり得る。化学修飾の例としては、アセチル基(例えば、N末端アセチル基)、システアミド基(例えば、C末端システアミド基)、又は脂肪酸(例えば、C4~C16、C6~C14、C6~C12、C6~C8、又はC8脂肪酸、好ましくはN末端である)の付加が挙げられる。
【0063】
一部の実施形態では、本記載のシャトル剤は、標的真核細胞における非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴに対する導入活性を有するシャトル剤バリアントを含み、バリアントは、少なくとも1つのアミノ酸が、置き換えられるアミノ酸と同様の物理化学的特性(例えば、構造、疎水性、又は電荷)の側鎖を有する対応する合成アミノ酸又はアミノ酸類似体で置き換えられることを除き、本記載のいずれかのシャトル剤と同一である。一部の実施形態では、合成アミノ酸の置き換えは、
(a)α-アミノグリシン、α,γ-ジアミノ酪酸、オルニチン、α,β-ジアミノプロピオン酸、2,6-ジアミノ-4-ヘキシン酸、β-(1-ピペラジニル)-アラニン、4,5-デヒドロキシリジン、δ-ヒドロキシリジン、ω,ω-ジメチルアルギニン、ホモアルギニン、ω,ω'-ジメチルアルギニン、ω-メチルアルギニン、β-(2-キノリル)-アラニン、4-アミノピペリジン-4-カルボン酸、α-メチルヒスチジン、2,5-ジヨードヒスチジン、1-メチルヒスチジン、3-メチルヒスチジン、スピナシン、4-アミノフェニルアラニン、3-アミノチロシン、β-(2-ピリジル)-アラニン、若しくはβ-(3-ピリジル)-アラニンのいずれか1つで塩基性アミノ酸を置き換える;
(b)デヒドロアラニン、β-フルオロアラニン、β-クロロアラニン、β-ヨードアラニン、α-アミノ酪酸、α-アミノイソ酪酸、β-シクロプロピルアラニン、アゼチジン-2-カルボン酸、α-アリルグリシン、プロパルギルグリシン、tert-ブチルアラニン、β-(2-チアゾリル)-アラニン、チアプロリン、3,4-デヒドロプロリン、tert-ブチルグリシン、β-シクロペンチルルアラニン、β-シクロヘキシルアラニン、α-メチルプロリン、ノルバリン、α-メチルバリン、ペニシラミン、β,β-ジシクロヘキシルアラニン、4-フルオロプロリン、1-アミノシクロペンタンカルボン酸、ピペコリン酸、4,5-デヒドロロイシン、アロイソロイシン、ノルロイシン、α-メチルロイシン、シクロヘキシルグリシン、シス-オクタヒドロインドール-2-カルボン酸、β-(2-チエニル)-アラニン、フェニルグリシン、α-メチルフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、β-(3-ベンゾチエニル)-アラニン、4-ニトロフェニルアラニン、4-ブロモフェニルアラニン、4-tert-ブチルフェニルアラニン、α-メチルトリプトファン、β-(2-ナフチル)-アラニン、β-(1-ナフチル)-アラニン、4-ヨードフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、4-メチルトリプトファン、4-クロロフェニルアラニン、3,4-ジクロロ-フェニルアラニン、2,6-ジフルオロ-フェニルアラニン、n-イン-メチルトリプトファン、1,2,3,4-テトラヒドロノルハルマン-3-カルボン酸、β,β-ジフェニルアラニン、4-メチルフェニルアラニン、4-フェニルフェニルアラニン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロ-フェニルアラニン、若しくは4-ベンゾイルフェニルアラニンのいずれか1つで非極性(疎水性)アミノ酸を置き換える;
(c)β-シアノアラニン、β-ウレイドアラニン、ホモシステイン、アロ-スレオニン、ピログルタミン酸、2-オキソチアゾリジン-4-カルボン酸、シトルリン、チオシトルリン、ホモシトルリン、ヒドロキシプロリン、3,4-ジヒドロキシフェニルアラニン、β-(1,2,4-トリアゾール-1-イル)-アラニン、2-メルカプトヒスチジン、β-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-セリン、β-(2-チエニル)-セリン、4-アジドフェニルアラニン、4-シアノフェニルアラニン、3-ヒドロキシメチルチロシン、3-ヨードチロシン、3-ニトロチロシン、3,5-ジニトロチロシン、3,5-ジブロモチロシン、3,5-ジヨードチロシン、7-ヒドロキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、5-ヒドロキシトリプトファン、チロニン、β-(7-メトキシクマリン-4-イル)-アラニン、若しくは4-(7-ヒドロキシ-4-クマリニル)-アミノ酪酸のいずれか1つで極性の非荷電アミノ酸を置き換える;及び/又は
(d)γ-ヒドロキシグルタミン酸、γ-メチレングルタミン酸、γ-カルボキシグルタミン酸、α-アミノアジピン酸、2-アミノヘプタン二酸、α-アミノスベリン酸、4-カルボキシフェニルアラニン、システイン酸、4-ホスホノフェニルアラニン、若しくは4-スルホメチルフェニルアラニンのいずれか1つで酸性アミノ酸を置き換える。
【0064】
ヒスチジンリッチドメイン
いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、1つ又は複数のヒスチジンリッチドメインを更に含み得る。いくつかの実施形態では、ヒスチジンリッチドメインは、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%又は少なくとも90%のヒスチジン残基を含む、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個又は少なくとも6個のアミノ酸のストレッチであり得る。いくつかの実施形態では、ヒスチジンリッチドメインは、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個 少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個又は少なくとも9個の連続するヒスチジン残基を含み得る。理論に束縛されるものではないが、シャトル剤中のヒスチジンリッチドメインは、エンドソームの酸性条件下での、そのイミダゾール基のプロトン化によって、エンドソームにおいて、プロトンスポンジとして作用し得、エンドソーム膜不安定化の別の機序を提供し、したがって、エンドソームにより捕捉されたカーゴが、サイトゾルに到達する能力を更に促進する。いくつかの実施形態では、ヒスチジンリッチドメインは、ペプチドシャトル剤のN及び/又はC末端に位置し得る又はN及び/又はC末端を向いて位置し得る。
【0065】
リンカー
いくつかの実施形態では、本記載のペプチドシャトル剤は、1つ又は複数の好適なリンカー(例えば、フレキシブルポリペプチドリンカー)を含み得る。いくつかの実施形態では、このようなリンカーは、2つ以上の両親媒性のアルファヘリックスモチーフ(例えば、国際公開第2018/068135号の図49Dのシャトル剤FSD18を参照されたい)を離れさせ得る。いくつかの実施形態では、リンカーを用いて、更に2つのドメイン(CPD、ELD、又はヒスチジンリッチドメイン)を相互から分離できる。いくつかの実施形態では、リンカーは、回転能力を有さない小さい疎水性アミノ酸(グリシン等)及び安定性及び可動性を付与する極性セリン残基の配列を付加することにより形成され得る。リンカーは、柔らかく、シャトル剤のドメインが動くのを可能にし得る。いくつかの実施形態では、プロリンは、大きな立体構造剛性を付加する場合があるので回避され得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、セリン/グリシンリッチリンカー(例えば、GS、GGS、GGSGGGS、GGSGGGSGGGS等)であり得る。いくつかの実施形態では、適したリンカーを含むシャトル剤の使用は、カーゴを、付着細胞ではなく懸濁細胞に送達するために有利であり得る。いくつかの実施形態では、リンカーは、-Gn-;-Sn-;-(GnSn)n-;-(GnSn)nGn-;-(GnSn)nSn-;-(GnSn)nGn(GnSn)n-;又は(GnSn)nSn(GnSn)n-を含む又はこれらからなり、Gはアミノ酸Glyであり;Sはアミノ酸Serであり、nは1~5の整数である。一部の実施形態では、フレキシブル及び/又は親水性アミノ酸(例えば、グリシン/セリンリッチストレッチ)の短いストレッチ又は「リンカー」は、本明細書に記載されるシャトル剤のN末端、C末端若しくはN末端及びC末端の両方に、又は本明細書に記載されるC末端切断シャトル剤に付加されてよい。一部の実施形態では、このようなストレッチは、そうでなければ水溶液に不溶性であるか、又は不十分にだけ溶けるシャトル剤の、特に短いシャトル剤(例えば、強く疎水性の部分を含む両親媒性アルファヘリックス構造を有する)の溶解を促進し得る。一部の実施形態では、シャトル剤ペプチドの溶解度を増加させることは、カーゴ導入結果を不明瞭にする及び/又はシャトル剤を治療適用に不適合にする場合がある有機溶媒(例えば、DMSO)の使用を回避できる。
【0066】
ドメインに基づくペプチドシャトル剤
一部の態様では、本明細書に記載されるシャトル剤は、国際公開第2016/161516号に記載されるシャトル剤であり得、細胞膜透過性ドメイン(CPD)に作動可能に連結されたエンドソーム漏出ドメイン(ELD)を含む。
【0067】
エンドソーム漏出ドメイン(ELD)
いくつかの態様では、本記載のペプチドシャトル剤は、エンドソーム脱出及び細胞質区画へのアクセスを促進するためにエンドソーム漏出ドメイン(ELD)を含み得る。本明細書で使用される場合、表現「エンドソーム漏出ドメイン」は、エンドソームにより捕捉されたカーゴに、細胞質区画に到達する能力を付与するアミノ酸の配列を指す。理論に束縛されるものではないが、エンドソーム漏出ドメインは、短い配列(ウイルス又は細菌ペプチドに由来することが多い)であり、これは、エンドソーム膜の不安定化及びエンドソーム内容物の細胞質への放出を誘導すると考えられている。本明細書で使用される場合、表現「エンドソーム溶解性ペプチド」は、エンドソーム膜不安定化特性を有するペプチドのこの全般的なクラスを指すものとする。したがって、いくつかの実施形態では、本記載の合成ペプチド又はポリペプチドベースのシャトル剤は、エンドソーム溶解性ペプチドであるELDを含み得る。このようなペプチドの活性は、例えば、国際公開第2016/161516号の実施例2に記載されるカルセインエンドソーム脱出アッセイを使用して評価され得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、ELDは、pH依存性膜活性ペプチド(PMAP)又はpH依存性溶解性ペプチド等の酸性pHで膜を破壊するペプチドであり得る。例えば、ペプチドGALA及びINF-7は、pHの低下が、それらが含有するアミノ酸の電荷を修飾する場合にアルファヘリックスを形成する両親媒性ペプチドである。理論に束縛されるものではないが、より詳しくは、GALA等のELDは、pHの低減によるコンホメーション変化後に、膜脂質の細孔及びフリップフロップの形成によって、エンドソーム漏出を誘導することが示唆される(Kakudo,Chaki et al.,2004,Li,Nicol et al.,2004)。対照的に、INF-7等のELDは、エンドソーム膜中に蓄積すること及びそれを不安定化することによって、エンドソーム漏出を誘導することが示唆されている(El-Sayed,Futaki et al.,2009)。したがって、エンドソーム成熟の過程で、同時におこるpHの低下が、ペプチドの構造の変化を引き起こし、これが、エンドソーム膜を不安定化し、エンドソーム内容物の放出につながる。同一原理が、シュードモナスの毒素Aに当てはまると考えられる(Varkouhi,Scholte et al.,2011)。pHの低下後、毒素のトランスロケーションドメインの構造が変化し、細孔が形成されたエンドソーム膜へのその挿入が可能となる(London 1992,O'Keefe 1992)。これは最終的に、エンドソーム不安定化をもたらし、エンドソームの外側へ複合体を移動させる。上記のELDは、本記載のELD並びにその作用機序が十分に明らかにされ得ないエンドソーム漏出のその他の機序内に包含される。
【0069】
いくつかの実施形態では、ELDは、直鎖状カチオン性アルファヘリックス抗菌性ペプチド(AMP)等の抗菌性ペプチド(AMP)であり得る。これらのペプチドは、細菌膜と強力に相互作用するその能力のために自然免疫応答において、重要な役割を果たす。理論に束縛されるものではないが、これらのペプチドは、水溶液中で無秩序な状態をとるが、疎水性環境においては、アルファヘリックス二次構造をとると考えられる。後者の構造は、通常の濃度依存性膜破壊特性に寄与すると考えられる。エンドソーム中に特定の濃度で蓄積すると、一部の抗菌ペプチドは、エンドソーム漏出を誘導し得る。
【0070】
いくつかの実施形態では、ELDは、セクロピン-A/メリチンハイブリッド(CM)ペプチド等の抗菌性ペプチド(AMP)であり得る。このようなペプチドは、膜破壊能力を有する、最小の最も有効なAMP由来ペプチドの中1つであると考えられる。セクロピンは、グラム陽性及びグラム陰性菌の両方に対して膜撹乱能を有する抗菌ペプチドのファミリーである。セクロピンA(CA)、第1の特定された抗菌ペプチドは、直鎖状構造を有する37個のアミノ酸から構成される。メリチン(M)、26個のアミノ酸のペプチドは、ハチ毒において、見られる細胞膜溶解性因子である。セクロピン-メリチンハイブリッドペプチドは、どの抗菌剤においても望ましい特性である、真核細胞に対する細胞毒性を有さない(すなわち、非溶血性の)短い効率的な抗生物質ペプチドを生成するとわかっている。これらのキメラペプチドは、セクロピンAの親水性N末端ドメインの、メリチンの疎水性N末端ドメインとの種々の組合せから構築され、細菌モデル系で試験されてきた。2つの26マー、CA(1-13)M(1-13)及びCA(1-8)M(1-18)(Boman et al.,1989)が、メリチンの細胞傷害性効果を伴わずに、天然セクロピンAのより広範な、改善された効力を実証するとわかっている。
【0071】
より短いCMシリーズペプチドを製造しようとする試みでは、Andreuら、1992の著者は、26マー(CA、1-8)M、1-18等のハイブリッドペプチドを構築し、それらを、20マー(CA、1-8)M、1-12、18マー(CA、1-8)M、1-10並びに6種の15マー(CA(1-7)M(1-8)、CA(1-7)M(2-9)、CA(1-7)M(3-10)、CA(1-7)M(4-11)、CA(1-7)M(5-12)及びCA、1-7)M、6-13と比較した。20及び18マーは、CA(1-8)M(1-18)と比較して同様の活性を維持した。6種の15マーの中でも、CA(1-7)M(1-8)は、低い抗菌活性を示したが、その他の5種は、溶血性効果を有さない26マーと比較して、同様の抗生物質効力を示した。したがって、いくつかの実施形態では、本記載の合成ペプチド又はポリペプチドベースのシャトル剤は、上記のもの等のCMシリーズペプチドバリアントであるか、又はそれに由来するELDを含み得る。
【0072】
いくつかの実施形態では、ELDは、メリチン(YGRKKRRQRRR)の残基2~12と融合している、セクロピン-A(KWKLFKKIGAVLKVLTTG)の残基1~7から構成されるCMシリーズペプチドCM18であり得る[C(1-7)M(2-12)]CM18は、細胞膜透過性ペプチドTATと融合される場合には、独立に細胞膜を越え、エンドソーム膜を不安定化し、一部のエンドソームにより捕捉されたカーゴが、サイトゾルに放出されることを可能にする(Salomone et al.,2012)。しかし、著者の実験の一部における、フルオロフォア(atto-633)と融合されたCM18-TAT11ペプチドの使用は、フルオロフォア自体の使用が、例えば、エンドソーム膜の光化学的破壊によるエンドソーム溶解(endosomolysis)に寄与するとわかったので(Erazo-Oliveras et al.,2014)、フルオロフォアに対するペプチドの寄与についての不確実性を強める。
【0073】
いくつかの実施形態では、ELDは、国際公開第2016/161516号の配列番号1のアミノ酸配列を有するCM18、又は国際公開第2016/16516号の配列番号1に対して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、85%、90%、91%、92%、93%、94%若しくは95%の同一性を有し、エンドソーム溶解活性を有するそのバリアントであり得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、ELDは、エンドソーム中に蓄積するとエンドソーム膜不安定化を引き起こし得る、インフルエンザ血球凝集素(HA)のHA2サブユニットのN末端に由来するペプチドであり得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、本記載の合成ペプチド又はポリペプチドベースのシャトル剤は、表Iに示されるELDであるか、又はそれに由来するELD、又はエンドソーム脱出活性及び/若しくはpH依存性膜破壊活性を有するそのバリアントを含み得る。
【0076】
【表2】
【0077】
いくつかの実施形態では、本記載のシャトル剤は、1種又は複数のELD又はELDのタイプを含み得る。より詳しくは、それらは、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種又はそれ多くのELDを含み得る。いくつかの実施形態では、シャトル剤は、1~10種のELD、1~9種のELD、1~8種のELD、1~7種のELD、1~6種のELD、1~5種のELD、1~4種のELD、1~3種のELD等を含み得る。
【0078】
いくつかの実施形態では、本記載のシャトル剤内のその他のドメイン(CPD、ヒスチジンリッチドメイン)に対するELDの順序又は配置は、シャトル剤の折返し輸送能力が保持される限り変わってもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、ELDは、表I中に列挙されるいずれか1種のバリアント又は断片であり、エンドソーム溶解活性を有し得る。いくつかの実施形態では、ELDは、L国際公開第2016/16516号の配列番号1~15、63若しくは64のいずれか1種のアミノ酸配列又は国際公開第2016/16516号の配列番号1~15、63若しくは64のいずれか1種に対して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、85%、90%、91%、92%、93%、94%若しくは95%同一であり、エンドソーム溶解活性を有する配列を含み得る、又はそれからなり得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、本記載のシャトル剤は、国際公開第2016/16516号の配列番号1~15、63、又は64の内のいずれか1つの配列番号の内の1つ又は複数のアミノ酸配列を含まない。
【0081】
細胞浸透ドメイン(CPD)
いくつかの態様では、本記載のシャトル剤は、細胞浸透ドメイン(CPD)を含み得る。本明細書で使用される場合、表現「細胞浸透ドメイン」とは、CPDを含有する高分子(例えば、ペプチド又はタンパク質)に、細胞に導入される能力を付与するアミノ酸の配列を意味する。
【0082】
いくつかの実施形態では、CPDは、細胞膜透過性ペプチド又は細胞膜透過性ペプチドのタンパク質導入ドメインであり得る(又は由来し得る)。細胞膜透過性ペプチドは、さまざまなカーゴ(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、小分子化合物又はそうでなければ膜不透過性であるその他の高分子/化合物)を細胞内にうまく送達するためのキャリアとして機能し得る。細胞膜透過性ペプチドは、塩基性アミノ酸に富み、高分子と融合される(又は、そうではなく作動可能に連結される)と、細胞内への内部移行を媒介する短いペプチドを含むことが多い(Shaw,Catchpole et al.,2008)。最初の細胞膜透過性ペプチドは、転写のHIV-1トランスアクチベーター(Tat)タンパク質の細胞浸透能力を解析することにより特定された(Green and Loewenstein 1988,Vives,Brodin et al.,1997)。このタンパク質は、その細胞膜内への挿入及び細孔の形成を促進する「TAT」と名付けられた短い親水性アミノ酸配列を含有する。この発見以来、多数のその他の細胞膜透過性ペプチドが報告されてきた。この関連で、いくつかの実施形態では、CPDは、表IIに記載されるような細胞膜透過性ペプチド又は細胞膜透過性活性を有するそのバリアントであり得る。
【0083】
【表3】
【0084】
理論に束縛されるものではないが、細胞膜透過性ペプチドは、細胞膜と相互作用し、その後、ピノサイトーシス又はエンドサイトーシスによって、細胞膜を通過すると考えられる。TATペプチドの場合には、その親水性及び電荷は、その細胞膜内の挿入及び細孔の形成を促進すると考えられる(Herce and Garcia 2007)。疎水性ペプチド内のアルファヘリックスモチーフ(例えば、SP)も、細胞膜内に細孔を形成すると考えられる(Veach、Liuら、2004)。
【0085】
いくつかの実施形態では、本記載のシャトル剤は、1種若しくは複数のCPD又はCPDのタイプを含み得る。より詳しくは、それらは、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種又は少なくとも5種又はそれより多いCPDを含み得る。いくつかの実施形態では、シャトル剤は、1から10種の間のCPD、1から6種の間のCPD、1から5種の間のCPD、1から4種の間のCPD、1から3種の間のCPD等を含み得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、CPDは、国際公開第2016/16516号の配列番号17のアミノ酸配列を有するTAT、又は国際公開第2016/16516号の配列番号17に対して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%若しくは95%の同一性を有し、細胞膜透過性活性を有するそのバリアント、或いは国際公開第2016/16516号の配列番号18のアミノ酸配列を有するペネトラチン、又は国際公開第2016/16516号の配列番号18に対して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%若しくは95%の同一性を有し、細胞膜透過性活性を有するそのバリアントであり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、CPDは、国際公開第2016/16516号の配列番号65のアミノ酸配列を有するPTD4、又は国際公開第2016/16516号の配列番号65に対して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%若しくは95%の同一性を有するそのバリアントであり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、本記載のシャトル剤内のその他のドメイン(ELD、ヒスチジンリッチドメイン)に対するCPDの順序又は配置は、シャトル剤の折返し導入能力が保持される限り変わってよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、CPDは、表IIに記載されるいずれか1種のバリアント又は断片であり、細胞膜透過性活性を有し得る。いくつかの実施形態では、CPDは、国際公開第2016/16516号の配列番号16~27若しくは65のいずれか1種のアミノ酸配列又は国際公開第2016/16516号の配列番号16~27若しくは65のいずれか1種に対して少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、85%、90%、91%、92%、93%、94%若しくは95%同一であり、細胞膜透過性活性を有する配列を含み得る、又はからなり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、本記載のシャトル剤は、国際公開第2016/16516号の配列番号16~27又は65の内の1つ又は複数のアミノ酸配列を含まない。
【0091】
方法、キット、使用、組成物、及び細胞
一部の実施形態では、本記載は、標的真核細胞の細胞外空間から細胞質及び/又は核に非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを送達するための方法に関する。方法は、シャトル剤の非存在下と比較して、標的真核細胞を、前記カーゴの導入効率を増加させるのに十分な濃度で、シャトル剤の存在下でカーゴと接触させる工程を含む。一部の実施形態では、シャトル剤の存在下での標的真核細胞とカーゴの接触は、前記シャトル剤の非存在下と比較して、少なくとも10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、又は100倍だけ前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの導入効率の増加をもたらす。
【0092】
一部の実施形態では、本記載は、標的真核細胞の細胞質及び/又は核への非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの導入効率を増加させるための方法に関する。本明細書で使用される場合、表現「導入効率の増加」とは、目的のカーゴ(例えば、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ)が細胞内に送達される標的細胞集団のパーセンテージ又は比率を改善する、本記載のシャトル剤の能力を指す。免疫蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー、及び他の適切な方法を用いて、カーゴ導入効率を評価することができる。一部の実施形態では、本記載のシャトル剤は、例えば、免疫蛍光顕微鏡法、フローサイトメトリー、FACS、及び他の適切な方法によって測定した場合、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%の導入効率を可能にすることができる。一部の実施形態ではて、本記載のシャトル剤は、例えば、国際公開第2018/068135号の実施例3.3aに記載されたアッセイによって、又は当該技術分野において公知である別の適切なアッセイによって測定した場合、少なくとも25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%又は95%の細胞生存率とともに、前述の導入効率のうちの1つを可能にし得る。
【0093】
標的細胞導入効率を増加させることに加えて、本記載のシャトル剤は、目的のカーゴ(例えば、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ)の標的細胞の細胞質及び/又は核への送達を容易にし得る。この点に関して、ペプチドを使用して標的細胞の細胞質及び/又は核に細胞外カーゴを効率的に送達させることは困難であり得る。これは、カーゴが、しばしば、細胞膜を通過した後、細胞内エンドソームにトラップされるようになるためであり、その細胞内利用可能性を制限し、その最終的な代謝分解をもたらす可能性があるからである。例えば、HIV-1 Tatタンパク質由来のタンパク質導入ドメインの使用は、カーゴを細胞内小胞に大量に隔離する結果となることが報告されている。一部の態様では、本記載のシャトル剤は、エンドソームでトラップされたカーゴがエンドソームからエスケープし、細胞質コンパートメントへのアクセスを得る能力を促進し得る。この点に関し、例えば、「非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞質への導入効率を増加させる」という語句における「細胞質へ」という表現は、本記載のシャトル剤が、細胞内に送達された目的のカーゴがエンドソームの閉じ込めからエスケープされ、細胞質及び/又は核コンパートメントへのアクセスを得ることを可能にする能力を指すことが意図される。目的のカーゴが細胞質へのアクセスを得た後、それは細胞内標的(例えば、細胞質、核、核小体、ミトコンドリア、ペルオキシソームで)に自由に結合することができる。一部の実施形態では、したがって、「細胞質へ」という表現は、細胞質への送達だけでなく、最初にカーゴが細胞質コンパートメントへのアクセスを得ることを必要とする他の細胞内コンパートメントへの送達も含むことが意図される。
【0094】
一部の実施形態では、本記載の方法は、インビトロ方法(例えば、治療目的及び/又は診断目的のため)である。他の実施形態では、本記載の方法は、インビボ方法(例えば、治療目的及び/又は診断目的のため)である。一部の実施形態では、本記載の方法は、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ及び合成ペプチドシャトル剤の局所、経腸/消化管(例えば、経口)、又は非経口投与を含む。一部の実施形態では、本明細書には、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ及び合成ペプチドシャトル剤の局所、経腸/消化管(例えば、経口)、又は非経口投与のために製剤化された組成物が記載される。
【0095】
一部の実施形態では、本記載の方法は、標的真核細胞を、本明細書に定義されるシャトル剤又は組成物、並びに非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴと接触させる工程を含み得る。一部の実施形態では、シャトル剤、又は組成物は、標的真核細胞をその混合物に曝露する前に、カーゴと予めインキュベートして混合物を形成することができる。一部の実施形態では、シャトル剤のタイプは、細胞内に送達されるカーゴの同一性及び/又は物理化学的特性に基づいて選択され得る。他の実施形態では、シャトル剤のタイプは、細胞内に送達されるカーゴの同一性及び/又は物理化学的特性、細胞のタイプ、組織のタイプ等を考慮に入れるように選択され得る。
【0096】
一部の実施形態では、方法は、シャトル剤、又は組成物による標的細胞の複数の処理(例えば、1日あたり1、2、3、4回以上、及び/又は所定のスケジュール)を含み得る。このような場合、シャトル剤又は組成物のより低い濃度が望ましい場合がある(例えば、毒性を低減するため)。一部の実施形態では、細胞は、懸濁細胞又は接着細胞であり得る。一部の実施形態では、当業者は、シャトル、ドメイン、使用、及び方法の異なる組合せを用いて、所望の生存率で特定の細胞に非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを送達する特定の必要性に適合するように、本記載の教示を適応させることができる。
【0097】
一部の実施形態では、本記載の方法は、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを細胞内にインビボで細胞に送達する方法に適用することができる。このような方法は、非経口投与又は組織、臓器、若しくは系への直接注射によって達成することができる。
【0098】
一部の態様では、本記載の組成物又は合成ペプチドシャトル剤は、標的真核細胞への非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ(例えば、治療的に又は生物学的に関連するRNA分子を標的にする)の導入効率を増加させるためのインビトロ法又はインビボ法における使用のためであり得、合成ペプチドシャトル剤又は合成ペプチドシャトル剤バリアントは、合成ペプチドシャトル剤又は合成ペプチドシャトル剤バリアントの非存在下と比較して、標的真核細胞へのカーゴの導入効率並びに細胞質及び/又は核送達を増加させるのに十分な濃度で使用されるか、又は使用のために製剤化される。
【0099】
一部の実施形態では、本記載の組成物又は合成ペプチドシャトル剤は、治療に使用することができ、合成ペプチドシャトル剤又は合成ペプチドシャトル剤バリアントは、治療上関連する非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを標的真核細胞の細胞質及び/又は核に導入し、合成ペプチドシャトル剤又は合成ペプチドシャトル剤バリアントは、合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、標的真核細胞へのカーゴの導入効率を増加させるのに十分な濃度で使用される(又は使用のために製剤化される)。
【0100】
一部の態様では、本明細書には、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを標的真核細胞に導入するのに使用するための組成物が記載され、組成物は、薬学的に適切な賦形剤とともに製剤化された合成ペプチドシャトル剤を含み、組成物中の合成ペプチドシャトル剤の濃度は、前記合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、投与時に前記標的真核細胞へのカーゴの導入効率並びに細胞質送達及び/又は核送達を増加させるのに十分である。一部の実施形態では、組成物は、カーゴを更に含む。一部の実施形態では、組成物は、投与又は治療的使用の前に、カーゴと混合され得る。
【0101】
一部の態様では、本明細書には、治療に使用するための組成物が記載され、組成物は、合成ペプチドシャトル剤によって標的真核細胞に導入される非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴとともに製剤化された合成ペプチドシャトル剤を含み、組成物中の合成ペプチドシャトル剤の濃度は、前記合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、投与時に前記標的真核細胞へのカーゴの導入効率並びに細胞質送達及び/又は核送達を増加させるのに十分である。
【0102】
一部の態様では、本明細書には、細胞内送達のための非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴ、及び前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴと独立しているか又は共有結合されていない合成ペプチドシャトル剤を含む組成物であって、合成ペプチドシャトル剤が正に帯電した親水性の外面、及び疎水性の外面の両方を有する両親媒性のアルファヘリックスモチーフを含むペプチドであり、合成ペプチドシャトル剤が、合成ペプチドシャトル剤の非存在下と比較して、真核細胞における前記非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの細胞質/核送達を増加させる、組成物が記載される。一部の実施形態では、本明細書に記載される組成物及び/又はシャトル剤は、有機溶媒(例えば、DMSO)を含まないか、又は治療用若しくはヒトでの使用のために適切でない濃度の有機溶媒を含まない。一部の実施形態では、本明細書に記載されるシャトル剤は、水溶解度を考慮して有利に設計され、それにより有機溶媒を使用する必要性を排除する。
【0103】
一部の実施形態では、シャトル剤又は組成物及び非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、血清の存在下又は非存在下で標的細胞に曝露され得る。一部の実施形態では、方法は、臨床的又は治療的使用に適切であり得る。
【0104】
一部の実施形態では、本記載は、標的真核細胞の細胞外空間から細胞質及び/又は核に非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴを送達させるためのキットに関する。一部の実施形態では、本記載は、標的真核細胞の細胞質への非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴの導入効率を増加させるためのキットに関する。キットは、シャトル剤、又は本明細書に定義される組成物、及び適切な容器を含み得る。
【0105】
一部の実施形態では、標的真核細胞は、動物細胞、哺乳動物細胞、又はヒト細胞であり得る。一部の実施形態では、標的真核細胞は、幹細胞(例えば、胚性幹細胞、多能性幹細胞、誘導多能性幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞、造血幹細胞、末梢血幹細胞)、初代細胞(例えば、筋芽細胞、線維芽細胞)、免疫細胞(例えば、NK細胞、T細胞、樹状細胞、抗原提示細胞)、上皮細胞、皮膚細胞、胃腸細胞、粘膜細胞、又は肺(肺)細胞であり得る。一部の実施形態では、標的細胞は、エンドサイトーシスのための細胞装置(すなわち、エンドソームを産生する)を有するものを含む。
【0106】
一部の実施形態では、本記載は、本明細書に定義される合成ペプチドシャトル剤を含む単離された細胞に関する。一部の実施形態では、細胞は、多能性幹細胞であり得る。しばしばDNAトランスフェクションに耐性であるか又はそれに適さない細胞は、本記載の合成ペプチドシャトル剤の興味深い候補であり得ることが理解される。
【0107】
一部の実施形態では、本記載は、本明細書に記載される組成物又は方法に関し、非アニオン性ポリヌクレオチド類似体カーゴは、ヘッジホッグ経路の遺伝子を標的にする非アニオン性アンチセンスオリゴヌクレオチドである。一部の実施形態では、非アニオン性アンチセンスオリゴヌクレオチドは、ノックダウンのためにGli1を標的にする。一部の実施形態では、非アニオン性アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号365~368のいずれか1つのポリヌクレオチド配列にハイブリダイズする(例えば、細胞質中で、又は細胞質条件下において)。一部の実施形態では、本明細書に記載される非アニオン性アンチセンスオリゴヌクレオチドは、配列番号365~368のいずれか1つにハイブリダイズする配列を含む。一部の実施形態では、本記載は、本明細書に記載される組成物又は方法、ゴーリン症候群及び/又は基底細胞癌の治療のための組成物又は方法に関する。
【実施例
【0108】
(実施例1)
材料及び方法
本明細書に記載又は明記されていない全ての材料及び方法は、一般的に、国際公開第2018/068135号、CA 3,040,645又は国際公開第2020/210916号において実施されたようなものであった。
【0109】
材料及び試薬
【0110】
【表4】
【0111】
細胞株及び培養条件
細胞を製造業者の指示に従って培養した。
【0112】
【表5】
【0113】
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー導入プロトコール
フルオロフォアFITCで標識したホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO-FITC)を滅菌水中1mMに調製した。HeLa細胞を、実験の前日に、96ウェルディッシュに播種した(20000細胞/ウェル)。合成ペプチドシャトル剤(7.5、10又は20μM)及びPMO-FITC(6μM)を含む各送達混合物を調製し、RPMI-1640培地で50μLに達成させた。細胞をPBSで1回洗浄し、シャトル剤/PMO-FITC又はPMO-FITC単独を細胞に5分間添加した。次に、10%FBSを含有する100μLのDMEMを混合物に添加し、除去した。細胞をPBSで1回洗浄し、10%FBSを含有するDMEM中でインキュベートした。フローサイトメトリーにより2時間のインキュベーション後に細胞を分析した。
【0114】
GFPdレポーターHeLa細胞におけるアンチセンスGFP-PMO導入プロトコール
カーゴのストック溶液は、PMOストック(水中1mM);siRNAストック(60mM KCl、6mM HEPES-pH7.5及び0.2mM MgCl2中100μM)として調製した。
【0115】
送達 HeLa-plex-TetO-GFPd細胞を、実験の前日に、96ウェルディッシュに播種した(20000細胞/ウェル)。合成ペプチドシャトル剤(7.5μM)及びPMO(0.1若しくは10μM)を含む各送達混合物を調製し、RPMI-1640培地で50μLに達成させた。細胞をPBSで1回洗浄し、シャトル剤/PMO又はPMO単独を細胞上に5分間添加した。次に、10%FBSを含有する100μLのDMEMを混合物に添加し、除去した。細胞をPBSで1回洗浄し、10%FBSを含有するDMEM中でインキュベートした。フローサイトメトリーによる5時間のインキュベーション後、細胞を分析した。
【0116】
トランスフェクション HeLa-plex-TetO-GFPd細胞を、実験の前日に、96ウェルディッシュに播種した(20000細胞/ウェル)。siRNA(2.5pmol)を、Lipofectamine(商標)RNAiMax試薬を製造業者の指示に従って使用してトランスフェクトした。Lipofectamine(商標)RNAiMaxをOpti-MEMに希釈した(25μL中0.3μL)。siRNAストックを最初にRNAse不含有水中10μMに希釈し、次に2.5pmol(0.25μL)を25μL Opti-MEMに添加した。希釈したLipofectamine(商標)RNAiMaxを、希釈したsiRNAと混合し(最終濃度50nM)、5分間、室温でインキュベートした。細胞をPBSで1回洗浄し、10%FBSを含有する100μLのDMEMを細胞に添加した。Lipofectamine(商標)RNAiMax中に希釈したsiRNAを細胞に添加した。24時間後、培地を100μLの10% FBS含有する新鮮DMEMと交換した。細胞をトランスフェクション48時間後にフローサイトメトリーによって分析した。
【0117】
DU145細胞におけるGli1発現をノックダウンするためのアンチセンスPMO導入プロトコール
DU145細胞をトリプシン処理し、実験の前日に、24ウェルディッシュに播種した(500000細胞/ウェル)。合成ペプチドシャトル剤(5μM)、及びPMO-FITC (6μM)を単独で、又は標的タンパク質の発現をノックダウンするように設計したアンチセンスPMO(6μM)とともに含む各送達混合物を調製し、プレーンRPMI-1640培地で1mLに達成させた。細胞をPBSで1回洗浄し、送達混合物を細胞上に5分間添加した。次に、10%FBSを含有する2mLのRPMI-1640を混合物に添加し、除去した。未処理細胞をRPMI-1640のみとともにインキュベートした。細胞を10%FBSを含有する新鮮RPMI-1640中でインキュベートした。48時間後、培地を除去し、細胞をトリプシン処理の前にPBSで1回洗浄した。細胞を採取し、遠心分離によって回収し、PBSで洗浄し、再懸濁した。次に、PMO-FITC陽性及びPMO-FITC陰性細胞をFACS (BD FACS Aria Fusion)によって選別及び回収した。FITC陽性及びFITC陰性細胞試料を遠心分離によって回収し、50μLタンパク質抽出RIPA緩衝液(150mM NaCl、1% Nonidet(商標)P-40、0.1%SDS、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、25mM Tris)に再懸濁した。合計タンパク質濃度をBCAタンパク質アッセイキットを用いて測定した。全ての条件について、10μgのタンパク質を4X Laemmeli及びRIPA緩衝液を用いて40μLの最終用量に調製した。次にタンパク質試料を90℃で加熱し、8%SDS-PAGEゲルを通じて分離した。次にタンパク質を0.2μM PVDF膜に一晩(25ボルト)で移行させた。膜を5%ウシ血清アルブミン、Tris緩衝生理食塩水、0.1% Tween(登録商標)20溶液(5%BSA/TBS-T)を使用して1時間ブロックした。ブロッキング後、膜を抗アルファアクチニン(D6F6)一次抗体を1:1000で含有する5% BSA/TBS-T溶液を用いて1時間インキュベートした。アルファアクチニンタンパク質は、細胞溶解物中に存在し、ローディング対照として役立つ。続いて膜を1:500に希釈した抗Gli1一次抗体を含有する5% BSA/TBS-T溶液を用いて一晩インキュベートした。次に膜をHRPコンジュゲートヤギ抗ウサギ二次抗体5% BSA/TBS-T溶液の1:5000希釈物での1時間インキュベーションに供した。化学発光検出をClarity(商標)Western ECL Substrate及びChemiDoc(商標)XRS装置を使用して実施した。Gli1及びアルファ-アクチニンデンシトメトリーをImageJ(商標)ソフトウェアを使用して評価した。
【0118】
ヨウ化プロピジウム又はGFP-NLS導入プロトコール
HeLa細胞を、実験の前日に、96ウェルディッシュに播種した(20000細胞/ウェル)。合成ペプチドシャトル剤(10μM)及びヨウ化プロピジウム(PI) (10μg/mL)又はGFP-NLS (10μM)を含む各送達混合物を調製し、PIのためにリン酸緩衝生理食塩水(PBS)又はGFP-NLSのためにRPMI-1640培地で50μLに達成させた。細胞を1回洗浄し、シャトル剤/PI又はシャトル剤/GFP-NLSを細胞に1分間(PI)又は5分間(GFP-NLS)添加した。次に、10%FBSを含有する100μLのDMEMを混合物に添加し、除去した。細胞をPBSで1回洗浄し、10%FBSを含有するDMEM中でインキュベートした。フローサイトメトリーによる2時間のインキュベーション後、細胞を分析した。PI又はGFP-NLS処理の1時間後に細胞を分析した。
【0119】
(実施例2)
合成ペプチドシャトル剤:細胞内送達ペプチドの新規クラス
シャトル剤と呼ばれる合成ペプチドは、真核細胞の細胞質/核コンパートメントにポリペプチドカーゴを急速に導入する能力を有する細胞内送達ペプチドの新規クラスを示す。伝統的な細胞膜透過性ペプチドに基づく細胞内送達戦略とは対照的に、合成ペプチドシャトル剤は、それらのポリペプチドカーゴに共有結合されていない。実際に、切断可能でない手段でシャトル剤をそれらのカーゴに共有結合することは、一般にそれらの導入活性に悪影響を有する。
【0120】
第1世代の合成ペプチドシャトル剤は、国際公開第2016/161516号に記載されており、細胞膜透過性ドメイン(CPD)に作動可能に連結されたエンドソーム漏出ドメイン(ELD)を有する複数のドメインに基づくペプチドから構成され、任意選択で1つ又は複数のヒスチジンリッチドメインを更に含む。シャトル剤媒介カーゴ導入は、従来の細胞膜透過性ペプチドのものと同様の機構介して生じると最初は考えられたが、細胞質/核コンパートメントへのカーゴ送達の速度及び効率は、完全なエンドソーム形成を必要とすることなく細胞膜を越える更に直接的な送達機構からの強い寄与を示唆する(DelGuidiceら、2018)。したがって、第1世代シャトル剤を出発点として使用する、大規模な反復性の設計及びスクリーニングプログラムを、細胞毒性を低減する一方で、ポリペプチドカーゴの急速かつ効率的な導入のためのシャトル剤を最適化するために試みた。プログラムは、合成ペプチドおよそ11,000個のマニュアル及びコンピュータ支援設計/モデリング、並びに数百の異なるペプチドの合成、及び複数の細胞及び組織において種々のポリペプチドカーゴを急速かつ効率的に導入するそれらの能力についての試験を含んだ。文献から周知の細胞膜透過性ペプチド(CPD)とエンドソーム溶解性ペプチド(ELD)との融合物としてシャトル剤を考慮するよりむしろ、各ペプチドは、それらの予測される三次元構造及び物理化学的特性に基づいて全体的に考慮された。設計及びスクリーニングプログラムは、ポリペプチドカーゴについて第1世代シャトル剤を超える向上された導入/毒性プロファイルを有するシャトル剤の合理的な設計を決定し、国際公開第2018/068135号に記載された15個のパラメーターのセットによって規定される第2世代の合成ペプチドシャトル剤を結果としてもたらした。これらの第2世代合成ペプチドシャトル剤を設計し、ポリペプチドカーゴの急速な(すなわち、典型的には5分間未満)導入について経験的にスクリーニングし、それにより原型的なCPDを欠くように主に設計した。
【0121】
(実施例3)
合成ペプチドシャトル剤による細胞質/核コンパートメントへのネイキッドDNA/RNAカーゴの非効率的な送達
細胞膜透過性ペプチド(CPP)は、DNA/RNAを細胞内に送達するためのトランスフェクション戦略において数十年にわたって使用されてきた。CPPを使用するポリヌクレオチドの送達は、CPPがそれらのポリヌクレオチドカーゴに共有結合しているか、又は静電気的に結合しているかのいずれかで2つのカテゴリーに分けられる。前者の合成における複雑さの増加は顕著なハードルである一方で、後者はCPPのカチオン性の性質及びDNA/RNAの負に帯電したリン酸骨格を考慮すると比較的単純である。それにより、第1世代合成ペプチドシャトル剤のスクリーニングの際に実験は、シャトル剤が遺伝子発現のためのプラスミドDNAカーゴを核に効率的に導入できたかどうかを決定するために実施した。国際公開第2016/161516号の実施例7.2は、第1世代シャトル剤CM18-TAT-CysがGFPをコードする蛍光標識プラスミドDNAを細胞内送達することを実際に可能にした、これらのトランスフェクション実験の結果を報告した。しかし、GFP発現は、細胞の0.1%においてだけ検出し(国際公開第2016/161516号の表7.1を参照されたい)、内部移行されたプラスミドDNAが、細胞質/核コンパートメントへのアクセスを得ることなくエンドソームにトラップされたままであることを強く示唆している。国際公開第2018/068135号の実施例7.3は、GFPをコードするプラスミドで細胞を良好にトランスフェクトする複数の第1及び第2世代合成ペプチドシャトル剤の能力を再考した。結果は同様であった-GFP発現は全てのシャトル剤について細胞の1%未満で検出された(国際公開第2018/068135号の表7.2を参照されたい)。これらの結果は、合成ペプチドシャトル剤が、真核細胞の細胞質/核にDNA/RNAを導入するために好適でないことを示唆している。
【0122】
DNA/RNAカーゴを細胞質/核コンパートメントに送達しようと試みるいくつかの戦略が行われたが不成功に終わった。興味深いことに、GFP及びポリヌクレオチドカーゴの両方を同時導入することを試みる実験では、ポリヌクレオチドの存在が濃度依存的にGFPカーゴの導入効率を減少させることが観察された。ポリヌクレオチドの阻害効果がおそらく負に帯電したリン酸骨格によると仮定して、本発明者らは、導入前に正に帯電した小分子でポリヌクレオチドをコーティングすることによって負電荷を中和することを試みた。検討された正に帯電した小分子は、1,3-ジアミノグアニジンモノヒドロクロリド;3,5-ジアミノ-1,2,4-トリアゾール;グアニジンヒドロクロリド;及びL-アルギニンアミドジヒドロクロリドを100nM~10mMの範囲の濃度で含んだ。しかし、これらの戦略は、エンドソーム捕捉問題であり続けて、DNA/RNAカーゴの細胞質/核送達を顕著に改善できず、これは、シャトル剤媒介導入のために、単なる電荷中和以上のものが必要であったことを潜在的に示唆している。
【0123】
(実施例4)
合成ペプチドシャトル剤は、FITC標識電荷-中性ポリヌクレオチド類似体の細胞内送達を可能にする。
ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー(PMO)は、立体障害を介して遺伝子発現を改変するためのアンチセンスオリゴヌクレオチドとして有用な短い1本鎖ポリヌクレオチド類似体である。それらの分子構造は、ホスホロジアミデート基を通じてメチレンモルフォリン環の骨格に結合したDNA/RNA核酸塩基を含有する。それらの電荷中性構造のために、DNA/RNAのため開発された多数の細胞内送達系(例えば、カチオン性脂質;カチオン性細胞膜透過性ペプチドを用いた静電カップリング)は、PMOの細胞内送達のために好適でない。このように、8個のグアニジウム頭部に(Vivo-morpholinos)又は細胞膜透過性ペプチド(PPMO)にPMOを共有結合させることを含んで、PMOの修飾形が細胞内送達のために開発された。しかし、直接注射戦略以外に、遺伝子発現を改変することができる未修飾PMOの良好な細胞質送達の報告はほとんどない。
【0124】
合成ペプチドシャトル剤がPMOを細胞内に送達できるかどうかを調査するために、HeLa細胞を、7.5、10又は20μMの第1及び第2世代合成ペプチドシャトル剤の代表的なメンバーの存在下で、フルオロフォアで共有結合で標識された6μMの25マーPMO分子(「PMO-FITC」;配列番号348)を含有するプレーンRPMI培地に5分間曝露した。結果を図1に示し、平均細胞生存率(「平均生存率」)及び「PMO+細胞の平均%」(PMO-FITCカーゴについて陽性の生存細胞の数)を国際公開第2018/068135号に記載のようにフローサイトメトリーによって評価した。「平均送達スコア」は、全てのカーゴ陽性細胞の中で、細胞あたりに送達されたカーゴ(PMO-FITC)の総量のさらなる指標を提供し、生存PMO-FITC+細胞について測定された平均蛍光強度(少なくとも重複試料の)に、生存PMO-FITC+細胞の平均パーセンテージを乗じ、100,000で除することによって算出した。最後に「送達-生存率スコア」を各ペプチドについて、平均生存率に平均送達スコアを乗じ、10を乗じることによって算出し、それらの導入活性及び毒性の両方に関するシャトル剤の順位付けを可能にする。図1の行はそれらの送達-生存率スコアに関して最低から最高に並べ替えた。
【0125】
陰性対照として含まれるのは、「カーゴ単独」(ペプチドの非存在下でPMO-FITCを用いてインキュベートした細胞)及び「FSD10スクランブル」(一次アミノ酸配列が、全てのシャトル剤に共通のカチオン性両親媒性構造を破壊するように「シャッフル」されていることを除いて、シャトル剤FSD10と同じアミノ酸組成を有する対照ペプチド)である。図1の結果は、タンパク質カーゴの導入のために設計された第2世代シャトル剤は、導入効率(PMO+細胞の平均%)及び各細胞に送達されたカーゴの平均量(送達スコア)の両方の観点において-一般に第1世代シャトル剤より優れていることを示す。PMO及び他のアンチセンスオリゴヌクレオチド類似体の効果が細胞内濃度に依存すると仮定すると、後者は遺伝子発現の改変の目的のために特に有利である。実験に含まれる第1世代シャトル剤CM18-ペネトラチン-cys、CM18-TAT及びHis-CM18-PTD4は、試験した最低濃度(7.5μM)でより高い毒性(すなわち、50%未満の平均生存率)を示し、それにより図1から除外した。そのような第1世代シャトル剤が、同じHeLa細胞にGFP-NLSを送達するために生存率への相当の悪影響を伴うことなく高濃度で使用されてきたことから、この結果は、予測外であった。試験した多数の他のシャトル剤が、同じレベルの毒性を伴うことなくPMO+細胞のはるかに高い平均%及び平均PMO送達スコアを示したことから、毒性の増加がPMO-FITCカーゴの毒性だけであるとは考えられない。これらの結果は、毒性が各シャトル剤とPMO-FITCカーゴとの間の相互作用による可能性があり、シャトル剤/カーゴ「マッチング」が導入活性と同様に毒性目的で検討される場合があることを示唆している。
【0126】
まとめると、図1の結果は、導入効率、細胞あたりに送達されるカーゴの量、及び毒性の観点で第2世代シャトルが、一般に第1世代シャトルよりも性能が優れていて、合成ペプチドシャトル剤がPMO-FITCカーゴを細胞内に送達することができることを示している。
【0127】
(実施例5)
合成ペプチドシャトル剤FSD10は、細胞質にアンチセンスPMOを導入し、HeLa細胞におけるGFP遺伝子発現のノックダウンを可能にする。
エンドソーム捕捉は、ネイキッドDNA/RNAカーゴのシャトル剤媒介導入に関して問題であることが見出された(実施例3)。実施例4及び図1に示すフローサイトメトリー結果は、カーゴが細胞質/核又はエンドソームに捕捉されたかどうかにかかわらず、PMO-FITCカーゴについて陽性の細胞を検討する。更に、他のグループからの近年の報告は、疎水性フルオロフォア(例えば、テトラメチルローダミン)が脂質二重層と相互作用し、膜不安定化を促進する場合があることを示した(Brockら、2018)。それにより、シャトル剤が、標的遺伝子の発現をノックダウンする生物学的に活性の形態で未標識PMOカーゴを細胞質/核コンパートメントに送達できることを確認するために実験を実施した。
【0128】
約2時間の短い半減期を有するように操作されたGFPのバリアント(「GFPd」)を安定に発現するHeLa細胞から構成される「HeLa plex TetO GFPd」細胞株を作製した。HeLa plex TetO GFPd細胞を、合成ペプチドシャトル剤を含むか、又は含まずに、GFPdの発現をノックダウンするように設計されたアンチセンスPMO分子(「PMO-GFP」;配列番号345)、又はGLI1発現を標的にするオフターゲットアンチセンスPMO分子(「PMO-GLI1」;配列番号346)のいずれかをさまざまな濃度で含有するプレーンRPMI培地に5分間曝露した。さらなる対照として、アンチセンスと同じ配列を有するsiRNA(「siRNA-GFP」;配列番号349)及び非特異的(「siRNA-Gli1」;配列番号350)PMO分子を含め、市販のカチオン性脂質ベースの送達系(Lipofectamine(商標)RNAiMax)を介して送達した。導入/トランスフェクションに続いて、細胞を洗浄し、増殖培地で培養し、次に、ノックダウン効果を観察するために適切な時期に(PMO処理について5時間、又はsiRNA処理について48時間) GFPd発現への影響を評価するためにフローサイトメトリーによって分析した。
【0129】
図2に示すように、未処理HeLa plex TetO GFPd細胞は、65%の平均GFP+細胞のベースラインを有し、細胞をPMOカーゴ単独(シャトル剤を伴わない)に曝露することは、このことについては変化を生じなかった。興味深いことに、細胞を7.5μMのシャトル剤FSD10の存在下で10μMのPMO-GFPカーゴに曝露することは、GFP+細胞のパーセンテージの34%への減少を生じた。GFPd発現への影響が陰性対照PMO非特異的カーゴを用いて観察されなかったことから、効果はPMO-GFPカーゴに特異的であった。最終的に効果は、GFPd発現におけるノックダウンがPMO-GFPカーゴ濃度を0.1μMに低下させることによって失われたことから、用量依存性であった。
【0130】
(実施例6)
合成ペプチドシャトル剤FSD250は、アンチセンスPMOを細胞質に導入し、DU145細胞におけるGli1発現のノックダウンを可能にする。
ヒトDU145細胞を、Gli1タンパク質の発現をノックダウンするように設計されたアンチセンスPMO分子(「PMO-Gli1」;配列番号346)、又はWnt1タンパク質の発現をノックダウンするように設計されたアンチセンスPMO分子(「PMO-Wnt1」;配列番号347)のいずれか6μMを含有するプレーンRPMI培地に、5μMの合成ペプチドシャトル剤FSD250の存在下で5分間曝露した。トレーサーPMO-FITC分子(6μM)も、同じ細胞集団内で導入されていない細胞からの導入された細胞の蛍光励起細胞分取(FACS)を可能にするように両方の条件で含めた。導入48時間後、細胞をフローサイトメトリーにより分析し、次にFACSによってFITC陽性集団とFITC陰性集団とに分離した。
【0131】
PMO-Gli/PMO-FITCの導入について、平均%PMO-FITC+細胞は37%であり、生存率は95.8%であった。PMO-Wnt1/PMO-FITCの導入について、平均%PMO-FITC+細胞は36.8%であり、生存率は75.7%であった。未処理細胞について、平均%PMO-FITC+細胞は0.6%であり、生存率は91.3%であった。
【0132】
次に、FITC+及びFITC-細胞集団を溶解し、SDS-PAGEによって分離し、抗Gli1ポリクローナル抗体、ローディング対照として抗アクチニンポリクローナル抗体並びに適切な酵素コンジュゲート第2抗体を使用するウエスタンブロット分析に供した。各バンドについてのデンシトメトリースキャン値を含めて、結果を図3に示す。図3は、Gli1タンパク質発現が、非導入細胞(「FITC-細胞」)と比較して導入細胞(「FITC+細胞」)において、アンチセンスPMO-Wnt1及びアンチセンスPMO-Gli1のシャトル剤媒介細胞内送達によってノックダウンされたことを明確に示す。予測されたように、Gli1ノックダウン効果は、同じシグナル伝達経路の一部であるWnt1 mRNAのノックダウンを介するGli1の間接的ノックダウンよりも、PMO-Gli1でのGli1 mRNAの直接的ノックダウンにおいて強かった。
【0133】
(実施例7)
合成ペプチドシャトル剤FSD250は、アンチセンスPMOを細胞質に導入し、DU145細胞でGli1発現のノックダウンを可能にする
ヒトDU145細胞をPMO-Gli1 (配列番号346)又はPMO-GFP (配列番号345)のいずれか6μMを含有するプレーンRPMI培地に、3.75μMの合成ペプチドシャトル剤FSD250の存在下で5分間曝露した。トレーサーPMO-FITC分子も、導入されていない細胞からの導入された細胞のFACSによる分離を可能にするように両方の条件(及び追加的な陰性対照として単独)で含めた。導入48時間後、細胞をFACSによってFITC陽性集団とFITC陰性集団とに分離した。
【0134】
PMO-FITCのみの導入について、平均% PMO-FITC+細胞は44.1%であり、生存率は77.7%であった。PMO-Gli1/PMO-FITCの導入について、平均%PMO-FITC+細胞は36.0%であり、生存率は61.1%であった。PMO-GFP/PMO-FITCの導入について、平均% PMO-FITC+細胞は48.9%であり、生存率は77.0%であった。未処理細胞について、平均%PMO-FITC+細胞は0.1%であり、生存率は84.5%であった。
【0135】
次に、FITC+及びFITC-細胞集団を溶解し、SDS-PAGEによって分離し、抗Gli1ポリクローナル抗体、ローディング対照として抗アクチニンポリクローナル抗体並びに適切な酵素コンジュゲート第2抗体を使用するウエスタンブロット分析に供した。それらそれぞれのアクチニンローディング対照バンドに標準化した各バンドについての相対的デンシトメトリースキャン値を含めて、結果を図4に示す。図4は、Gli1タンパク質発現が、アンチセンスPMO-Gli1のシャトル剤媒介細胞内送達によってノックダウンされたが、トレーサーPMO-FITC単独又はPMO-GFPとともに導入された細胞ではされなかったことを明確に示す。
【0136】
(実施例8)
ヨウ化プロピジウム(PI)及びGFP-NLS導入活性についての候補ペプチドシャトル剤の大規模スクリーニング
300を超える候補ペプチドシャトル剤の専有ライブラリーを、実施例1に一般的に記載されるように、フローサイトメトリーを用いて、HeLa細胞におけるヨウ化プロピジウム(PI;小分子カーゴ)とGFP-NLS導入活性の両方について並行してスクリーニングした。PIは、ゲノムDNAに結合した後にのみ、20~30倍の増強された蛍光及び最大励起/発光スペクトルの検出可能なシフトを示すことから、カーゴとして使用した-特性は、エンドソームでトラップされたカーゴを、細胞質/核コンパートメントにアクセスさせるエンドソームで放出されたカーゴから区別するのに特に適している。したがって、エンドソームにトラップされたままであるいずれのPIも核に到達せず、増強された蛍光もスペクトルシフトも示さないため、細胞内送達及びエンドソームの逃避はともにフローサイトメトリーによって測定可能である。
【0137】
スクリーニングされた多数のペプチドのために、陰性対照を各実験バッチについて並行して行い、細胞をシャトルペプチド又はカーゴに曝露しない「無処置」(NT)対照、並びに細胞をシャトル剤の非存在下でカーゴに曝露する「カーゴ単独」対照を含んだ。結果は、図5に示され、「導入効率」は、カーゴ(PI又はGFP-NLS)に対して陽性である全生存細胞のパーセンテージを指す。「平均送達スコア」は、全てのカーゴ陽性細胞の中で、細胞あたりに送達されたカーゴの総量のさらなる指標を提供する。平均PI又はGFP-NLS送達スコアは、生存PI+又はGFP+細胞について測定された平均蛍光強度(少なくとも重複試料の)に、生存PI+又はGFP+細胞の平均パーセンテージを乗じ、GFP送達については100,000で除した値、又はPI送達については10,000で除した値を算出した。次に、各候補シャトル剤についてのPI及びGFP-NLSの平均デリバリースコアを、各実験バッチについて並行して行われた「カーゴ単独」陰性対照についての平均送達スコアで除することによって標準化した。したがって、図5における「標準化された平均送達スコア」は、「カーゴ単独」の陰性対照に比べて、平均送達スコアが倍増したことを示す。
【0138】
陰性対照で観察されたバッチ間の変動は、GFP-NLSでは比較的小さかったが、カーゴとしてのPIではかなり高かった。例えば、「カーゴ単独」陰性対照の導入効率の変動は、GFP-NLSで0.4%~1.3%、PIで0.9%~6.3%の範囲であった。更に、並行して(例えば、FSD174スクランブル;データは示さず)試験されたいくつかの陰性対照ペプチド(すなわち、GFP導入活性が低い又はないことが公知であるペプチド)の導入効率は、時として、「カーゴ単独」陰性対照よりもPI(ただしGFP-NLSではない)の方が、場合によっては5%も低い導入効率を示したが、これはおそらくPIとペプチドの間の非特異的相互作用によるものである。この現象は、GFP-NLS導入実験では観察されなかった。前述のことは、少なくともPIについてのシャトル剤導入効率は、「カーゴ単独」条件よりもむしろ陰性対照ペプチドのそれとより適切に比較され得ることを示唆した。
【0139】
少なくとも20%の平均PI導入効率を有する図5の候補ペプチドシャトル剤の中には、20残基未満の長さを有するペプチド:FSD390(17aa)、FSD367(19aa)、及びFSD366(18aa)が含まれた。また、少なくとも20%の平均PI導入効率を有する候補ペプチドシャトル剤の中には、非生理的アミノ酸類似体(例えば、L-2,4-ジアミノ酪酸残基で置き換えられるリジン残基(K)を除いてFSD395に対応するFSD435)又は化学修飾(例えば、N-末端オクタン酸修飾を除いてFSD10に対応するFSD438;(2-ナフチル)-L-アラニン残基で置き換えられるフェニルアラニン残基(F)を除いてFSD222に対応するFSD436;N-末端アセチル基及びC-末端システアミド基を有することを除いてFSD168に対応するFSD171のいずれかを含むペプチドが含まれた。これらの結果は、生理学的アミノ酸及び/又は化学的修飾の代わりに非生理的アミノ酸又はその類似体の使用に耐えるためのペプチドシャトル剤プラットフォーム技術の確実性を確認する。
【0140】
追加的なスクリーニングアッセイを図6に示すようなさらなるシャトル剤を用いて実施した。結果の中に、導入活性を有することが以前示された長いシャトル剤の切断型であるいくつかの活性シャトル剤があった: FSD10-15 (15aa)及びFSD418-12-2 (12aa)、FSD418 (15aa)、CM18 (18aa)及びペネトラチン(16aa)。
【0141】
(実施例9)
合成ペプチドシャトル剤は、HeLa細胞においてPMO及びPNAを効率的に導入する。
HeLa細胞を、いくつかの変更を含めて実施例1に記載した導入プロトコールに一般的に記載されるように、10μMのPMO-FITC又は蛍光標識ペプチド核酸(PNA) (PNA TelC-Alexa 488;カタログ番号F1004; PNA BIO Inc.社)を用いて導入した。使用したシャトルペプチドはFSD250(5μM)であり、細胞をカーゴ及びシャトル剤と2分間接触させ、1時間のインキュベーション後に細胞をフローサイトメトリーによって分析した。更に、培養培地へのDMFの含有が50%未満の細胞生存率を生じることから、製造者に推奨されたジメチルホルムアミド(DMF)の代わりに水中にPNAを再可溶化した。図7Aのカーゴ導入結果は、FSD250が、シャトル剤の非存在下(「PMO単独」及び「PNA単独」;「NT」=未処理細胞)と比較して、PMO(「FSD250+PMO」送達)及びPNA(「FSD250+PNA」)カーゴの両方の細胞内送達を大きく増加させたことを実証した。細胞生存率は、図7Bに示すように試験した全ての条件で高いままであった。カーゴとして蛍光標識siRNAを導入する試みでFSD250を用いる並行実験は、5%のみの細胞内送達を生じた(データは示さず)。これらの結果は、PMOに加えて合成ペプチドシャトル剤もPNA等の他の非アニオン性ポリヌクレオチド類似体を急速かつ効率的に導入できることを示唆している。
【0142】
(実施例10)
PMOカーゴのシャトル剤媒介導入へのネイキッドDNA/RNAの効果
ネイキッドDNA/RNAカーゴは、それら自体が合成ペプチドシャトル剤の不十分なカーゴであることが示されているが(実施例3及び9)、本実施例は、PMOカーゴのシャトル剤媒介導入へのトランスでのそれらの潜在的なドミナントネガティブな効果を評価する。簡潔には、RH-30細胞(24ウェルディッシュ中150,000細胞/ウェル)を、6μMのPMO-FITC及び5μMの合成ペプチドシャトル剤FSD250の送達混合物に2分間、RPMI中で、培地に添加されたDNAオリゴヌクレオチド又はsgRNAの増加させた量の存在下で、接触させた。次に細胞を洗浄し、増殖培地でインキュベートし、次に1時間後にフローサイトメトリーによる分析のために回収した。図8の結果は、PMO-FITC導入効率の低減が1.5μgのDNAオリゴ(3μg/mL)(図8A)及び2μgのsgRNA(4μg/mL)(図8B)の存在下で観察されたことを示している。試験した全ての条件で細胞生存率は、75%超のままであった。
【0143】
(実施例11)
第1及び第2世代合成ペプチドシャトル剤によるPMOカーゴ導入の比較
一般的に、第2世代合成ペプチドシャトル剤は、第1世代シャトル剤よりも高いカーゴ導入効率を示す。本実施例は、第1世代シャトル剤を含む原型CPDのPMO導入活性を2つの合理的に設計された第2世代合成ペプチドシャトル剤のものと比較する。簡潔には、RH-30細胞(96ウェルディッシュ中20,000細胞/ウェル)を6μMのPMO-FITC、及び第1世代シャトル剤His-CM18-PTD4又はCPDを欠いた2つの第2世代合成ペプチドシャトル剤(FSD250及びFSD10)の濃度を増加させて含む送達混合物と、RPMI中で2分間接触させた。細胞を洗浄し、完全培地中でインキュベートし、次に1時間後にフローサイトメトリーによる分析のために回収した。PMO-FITC導入効率を図9Aに示し、細胞生存率を図9Bに示す。図9Aの結果は、FSD250及びFSD10が、PMO-FITCカーゴについてHis-CM18-PTD4よりも高い導入効率をもたらしたことを示す。
【0144】
(実施例12)
合成ペプチドシャトル剤媒介PMO導入の自己内部移行VivoPMOとの比較
Gli1ノックダウン実験を、未修飾PMOに対して、細胞への進入を促進するように末端オクタグアニジンデンドリマーを用いて化学修飾されたPMOである市販で入手可能な自己内部移行Vivo-Morpholino (VivoPMO)のシャトル剤媒介導入を比較するために実施例6に一般的に記載されるように実施した。簡潔には、RH-30細胞を、RPMI中で5μMの合成ペプチドシャトル剤FSD250の存在下で又は非存在下で、6μMのカーゴ(PMO-Gli1又はVivoPMO-Gli1のいずれか)の送達混合物と2分間接触させた。次に細胞を洗浄し、完全培地中でインキュベートし、次に、24時間後に抗Gli1ポリクローナルAb (Abcam社ab273018、150 kDa)、抗GAPDH Ab(Abcam社ab181602、37kDa)及び抗ウサギHRP二次Abを使用するウエスタンブロットによるGli1タンパク質発現分析のために回収した。ウエスタンブロット結果を図10Aに示し、対応するデンシトメトリースキャンニング分析を図10Bに示す。Gli1タンパク質のノックダウンは、FSD250及びPMO-Gli1カーゴの両方で処理した細胞においてだけ観察された。VivoPMO-Gli1単独に曝露された細胞において観察されたGli1ノックダウンの欠如は、図10での2分間のインキュベーション時間がVivoPMOの自己内部移行のためには不十分であったことを示唆している。実際に、これは、エンドサイトーシスを介する十分な自己内部移行を達成するためにVivoPMOについて製造者が推奨する2~4時間のインキュベーション時間と一致している。これにも関わらず図10の結果は、VivoPMOの遅いエンドサイトーシス依存性細胞内送達対、合成ペプチドシャトル剤を使用して観察される急速かつ効率的なPMO導入の間の内部移行動態における大きな差異を強調している。
【0145】
(実施例13)
合成ペプチドシャトル剤媒介PMO導入とEndoporter媒介細胞内PMO送達との比較
HeLa細胞におけるPMOカーゴ送達実験を、合成ペプチドシャトル剤媒介PMO導入をEndoporter媒介細胞内PMO送達と直接比較するために実施した。シャトル剤媒介導入のためにHeLa細胞を10μMのPMO-FITCにRPMI中で2.5、5、7.5又は10μMの第2世代シャトル剤FSD396の存在下で5分間曝露した。Endoporter媒介送達のためにHeLa細胞を10μMのPMO-FITCに増殖培地中で2.5、5、7.5又は10μMの市販で入手可能なEndoporter(商標)ペプチド(GeneTools社、LLC)の存在下で少なくとも24時間の製造者が推奨する最短インキュベーション時間曝露した。洗浄工程後、送達結果を免疫蛍光顕微鏡を介して細胞内PMO-FITC蛍光を観察することによって比較し、結果を図11に示す。PMO-FITCカーゴ単独に曝露したHeLa細胞(図11B)は、48時間後に未処理細胞(図11A)と比較してわずかな細胞内送達を示しただけであった。FSD396が5分間のインキュベーション後にPMO-FITCのロバストな細胞内送達を誘導した(図11C)一方で、同等のレベルの細胞内PMO-FITCは、48時間インキュベーション後にEndoporterペプチドで達成されただけであった(図11D)。更に、Endoporter処理細胞は、未処理細胞(図11A)、カーゴ単独で処理された細胞(図11B)又はシャトル剤処理細胞(図11C)では観察されなかった望ましくない形態学的な変化を示した。大きなPMO-FITC凝集物もEndoporter処理細胞において観察され、洗浄工程によって細胞から除去できなかった。
【0146】
(実施例14)
Gli1ノックダウンは、BCC細胞株においてアポトーシスの増加を引き起こすが、正常なヒト皮膚細胞株では引き起こさない。
母斑基底細胞癌又は基底細胞癌母斑症候群(BCCNS)としても周知のゴーリン症候群は、異常なヘッジホッグ(Hh)経路シグナル伝達に関連する遺伝疾患であり、顔面、手、背中及び首に基底細胞癌(BCC)の高頻度の増殖を生じる。ゴーリン症候群を罹患した患者は、表皮と真皮との間に位置する皮膚の基底細胞層に由来する病変を1年あたり30カ所に至って発症する場合がある。ゴーリン患者は、Hh経路の恒常的な活性化を生じる遺伝子変異を有する。Gli1は、Hh経路の決定因子の発現に関与する転写因子であり、それによりHhシグナル伝達の主要制御因子と見なされ得る。
【0147】
2つのヒト皮膚細胞株へのGli1ノックダウンの影響を評価した:正常なヒト皮膚由来の皮膚上皮様細胞株(NCTC-2544)及びヒト基底細胞癌細胞株(UW-BCC1)。正常由来NCTC-2544細胞及びBCC由来UW-BCC1細胞を自己内部移行VivoPMO-Gli1 (15μM)に完全細胞培養培地中で24又は48時間曝露した。Gli1タンパク質発現のおよそ60%ノックダウンが48時間後にウエスタンブロットによって観察された。並行して、細胞アポトーシスのパーセンテージを蛍光標識アネキシン-Vを用いてフローサイトメトリーによって測定した。興味深いことに、VivoPMO-Gli1での処理は、48時間後に、陰性対照VivoPMOで処理した11%だけのアポトーシス性細胞と比較して、68~72%のアポトーシス性UW-BCC1細胞を生じた。対照的にVivoPMO-Gli1での処理は、48時間後に、3~6%だけのアポトーシス性NCTC-2544細胞及び陰性対照VivoPMOで処理した細胞における2%だけのアポトーシスを生じた。これらの結果は、基底細胞癌についての治療のためのGli1特異的PMOの細胞内送達を介するGli1ノックダウンを支持する。
【0148】
(実施例15)
Gli1ノックダウンのためのPMOの設計、合成及びシャトル媒介導入
ヒトGli1遺伝子の5'非翻訳領域又は開始コドンに近位の異なる領域を標的にする4つの異なるPMOを設計し、合成した。Gli1開始コドンからのそれらの距離の昇順で、合成された4つのPMOは:PMO-Gli1_Opt (配列番号365に結合し、Gli1開始コドンをまたいでいる); PMO-Gli1_Opt1 (配列番号366に結合する); PMO-Gli1_Opt2 (配列番号367に結合する);及びPMO-Gli1_Opt3(配列番号368に結合する)。RH-30細胞をシャトル剤FSD250とともに4つのPMOカーゴ(6μM)のそれぞれ、又は陰性対照PMO-FITC(6μM)で実施例12に記載のように導入した。導入実験における全体的な導入効率は、PMO-FITC対照カーゴで導入した細胞のフローサイトメトリーによる概算としておよそ80%であった。細胞を送達後24時間で採取し、Gli1タンパク質発現のノックダウンをウエスタンブロットによって評価した(図12)。シャトル剤とともに導入された場合に4つ全てのPMOがGli1タンパク質発現をノックダウンしたが、シャトル剤の非存在下では最小のノックダウンが観察された。Gli1及び対照アクチニンバンドのデンシトメトリー分析は、4つのPMOがGli1発現を未処理細胞のものの27~45%にノックダウンしたことを明らかにした(図12)。導入実験をPMO-Gli1_Optの濃度を増加させて反復し、Gli1ノックダウンが用量依存性であることを見出した:0.325、0.75、1.5、3及び6μMのPMO-Gli1_Optは、Gli1レベルを未処理細胞のもののそれぞれ48%、43%、34%、33%及び22%にノックダウンした。
【0149】
(実施例16)
患者由来腫瘍外植片の基底細胞のGli1のノックダウンのためのPMOのシャトル媒介導入
Mohs型手術後に新たに得られた基底細胞癌型腫瘍をワイヤーメッシュ上で表面を空気に曝露して完全DMEM培養培地中でインキュベートした。表皮及び真皮にカーゴが送達されるように、腫瘍をPBS 1Xで洗浄し、外植片の角質層を以下のパラメーターに従ってPantec PLEASE(商標)レーザーで透過処理する:ポア密度2.5%、1パルス/ポア、アレイサイズ14mm、ポア深さ20μm(4.9J/cm2、0.8W)。次に外植片を半分に分割し、一片を25μMのPMO-Gli1-Cy5及び40μMのFSD250を含有するPBS 1x-2%ヒドロキシエチルセルロースの溶液で処理し、もう一片をPMO-Gli1-cy5だけを含有する同じ溶液(シャトル剤を含まない;対照)で処理した。処理後、腫瘍を4時間、37℃でインキュベートし、4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定し、次に30%ショ糖で処理し、OCT(最適切断温度)で凍結した。10μm切片をカバーガラスに移し、蛍光顕微鏡分析のためにProLong(商標) Diamondで処理した。図13に示すように、PMO-Gli1-cy5及びシャトル剤の組合せで処理した半分の腫瘍で蛍光レベルの増加が、特に表皮のレベルで、PMO-Gli1-Cy5単独で処理したもう1片の腫瘍と比較して観察された。更に、腫瘍のインキュベーション後に、真皮及び表皮の細胞を、サーモリシン及びトリプシンでの酵素処理によって単離し、37℃、5% CO2中で更に培養した。Gli1タンパク質のレベルを、固定並びに単離した皮膚及び上皮細胞の抗Gli1-Alexa 647抗体での標識後に、培養のさまざまな時点で細胞蛍光測定によって測定した。腫瘍の処理後のインキュベーション24から48時間の間に、Gli1タンパク質のレベルは、フローサイトメトリーによる測定で(データは示さず)、PMO-Gli1及びシャトル剤組合せで処理した培養細胞において相当に減少(50%)した。
【0150】
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【国際調査報告】