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特表2023-545561ブラジャー製品用アダプティブストラップ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ブラジャー製品用アダプティブストラップ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41C 3/12 20060101AFI20231023BHJP
   A41C 3/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A41C3/12 D
A41C3/00 A
A41C3/00 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523614
(86)(22)【出願日】2022-09-16
(85)【翻訳文提出日】2023-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2022119189
(87)【国際公開番号】W WO2023041000
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】63/245,206
(32)【優先日】2021-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523137876
【氏名又は名称】フォー ケイ ニッターズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】FOUR K KNITTERS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100163991
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 慎司
(72)【発明者】
【氏名】チャン,カン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,シロン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジファン
(72)【発明者】
【氏名】チュン,スイ ルン
【テーマコード(参考)】
3B131
【Fターム(参考)】
3B131AA11
3B131AB02
3B131AB09
3B131BA11
3B131BA21
3B131BA41
3B131BB11
3B131CA23
(57)【要約】
静的負荷中における第1の強度モジュラスxと、少なくとも約3Hzの振動の動的負荷中における少なくとも2xの第2の強度モジュラスと、を有する少なくとも1つのアダプティブ材料層を有する、ブラジャー用のアダプティブストラップ。アダプティブ層は、2つ以上の弾性ファブリック層の間に挟まれている。アダプティブストラップは、着用者の低活動時には初期長さの100%まで伸長可能であるが、着用者の激しい活動時には50%以下しか伸長できない。それにより、運動中のサポートと日常的な使用中の快適さとを提供する。一態様では、アダプティブ材料は、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、ポリマーマトリクス、ホウ酸、及び任意のフィラーを反応させることによって形成される反応生成物である。アダプティブ材料は、弾性ファブリック層内において、その場で硬化される。
【選択図】図1A






【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラジャー用のアダプティブストラップであって、
静的負荷中における第1の強度モジュラスxと、少なくとも約3Hzの振動の動的負荷中における少なくとも2xの第2の強度モジュラスと、を有する少なくとも1つのアダプティブ材料層と、
2つ以上の弾性ファブリック層と、
を含み、
前記アダプティブ材料層の各々は、前記アダプティブストラップが、着用者の活動が少ない間は初期長さの100%まで伸張可能であるが、着用者の活発な活動の間は50%を超えて伸張できないようにして、前記弾性ファブリック層のうち2つの間に挟まれている、
ブラジャー用のアダプティブストラップ。
【請求項2】
前記アダプティブストラップは、2mm未満の厚さを有している、請求項1に記載のブラジャー用のアダプティブストラップ。
【請求項3】
前記アダプティブストラップは、10%の静的伸張において少なくとも7Nの荷重強度を有している、請求項1に記載のブラジャー用アダプティブストラップ。
【請求項4】
前記アダプティブストラップは、10%の静的伸張及びそれに続く3.0Hzにおける振動伸張において、少なくとも15Nの荷重強度を有している、請求項1に記載のブラジャー用アダプティブストラップ。
【請求項5】
請求項1に記載のブラジャー用アダプティブストラップを調製する方法であって、
i)1つ又は複数のシラノール末端ポリジメチルシロキサン、ポリマーマトリクス材料、及びホウ酸を、反応温度で一定の反応時間に亘って混合して複合体を得ることと;
ii)室温で前記複合体と硬化剤と混合して未硬化アダプティブ材料を形成することと;
iii)前記未硬化アダプティブ材料を暫定シェルに充填することと;
iv)暫定的に充填された前記未硬化アダプティブ材料を、1つ又は複数の中空ファブリック構造に挿入することと;
v)前記未硬化アダプティブ材料が前記中空ファブリック構造の中空空間を実質的に満たすまで、前記中空ファブリック構造中に前記アダプティブ材料を組み入れることと;
vi)前記中空ファブリック構造から前記暫定シェルを除去することと;
vii)前記アダプティブストラップを形成するために、前記中空ファブリック構造内の前記未硬化アダプティブ材料を硬化させることと、
を含んだ方法。
【請求項6】
前記シラノール末端ポリジメチルシロキサン、ポリマーマトリクス、ホウ酸、及び硬化剤は、5:100:0.02:0.5~100:100:1:3の重量範囲内にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シラノール末端ポリジメチルシロキサンが、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーの1つ又は複数から選択され、フェニルが0~18%のモル比であり、ビニルがモル比で0~15%である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記シラノール末端ポリジメチルシロキサンの平均分子量は、650~139,000g/molである、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記ホウ酸は、エタノール溶液中において1重量%~10重量%の重量比で提供される、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記硬化剤は、過酸化物、架橋剤、触媒のうちの1つ又は複数を含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項11】
前記複合体は、1つ又は複数のフィラーを更に含んでいる、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーマトリクスは、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、又はそれらの組み合わせから選択され、約40ショアA~80ショアAの硬度を有している、請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記硬化剤は過酸化物であり、前記過酸化物は、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、又はジベンゾイルペルオキシドのうちの1つ又は複数である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記硬化剤は、架橋剤であり、前記架橋剤は、少なくとも2つのSiH基を有する1つ又は複数の水素化ケイ素化合物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記硬化剤は、触媒であり、前記触媒は、パラジウム、ロジウム、又は白金の1つ又は複数である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記複合体を得るための前記反応温度は、約80℃~200℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
前記複合体を得るための前記反応時間は、約0.5~8時間である、請求項5に記載の方法。
【請求項18】
硬化温度がほぼ室温又は25℃~200℃である、請求項5に記載の方法。
【請求項19】
硬化時間が約0.5~24時間である、請求項5に記載の方法。
【請求項20】
前記フィラーは、二酸化シリカ、二酸化チタン、オレイン酸グリセリル、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
960周後の2.0Hzにおける引張強度が4MPaを超え、10%のひずみ下での静的状態における引張強度が1MPa以上である、請求項1乃至4の何れか1項記載の、又は、請求項5乃至20の何れか1項に記載の方法によって調製された、ブラジャー用のアダプティブストラップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照:
本出願は、2021年9月17日に出願された米国仮出願第63/245,206号の優先権を主張し、その開示の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、着用時の快適性を確保するために静的拡張(staticextension)時には低い引張強度を有するが、乳房を充分に支持するために振動伸張(oscillationstretching)時には比較的高い強度を生み出す、ブラジャー製品用のアダプティブストラップに関する。
【背景技術】
【0003】
現代の都市に住む人々は、生活の質を向上させるために健康に注意を払うようになり、運動は重要な日常活動となっている。女性の生理的特徴のひとつは、乳房が大胸筋から垂れ下がった腺器官であり、骨や筋肉の支えがないことである。運動や日常的な動作は必然的に乳房の振動を引き起こし、乳房の振動が時間とともに繰り返されると、乳房がたるみやすくなり、運動中の動きに影響を与える他、運動後の痛みの原因にもなる。その結果、運動/日常動作時に乳房の位置を維持し、その振動を防止できるスポーツ下着が登場してきた。
【0004】
日常生活での快適さから、運動時に普通のブラを選ぶ女性もいる。しかし、そのようなブラは、運動中のサポートが不十分である。スポーツブラは、通常のブラよりもサポート力が高く、胸のずれを抑えることができる。ほとんどのスポーツブラは、引張強度の高い伸縮性のある生地を使用している。このようなブラは、乳房を十分に支えることができるが、肩ひもが皮膚に食い込んだり擦れたりするなどの問題を引き起こす可能性がある。これらの問題を軽減するために独自の製品が開発されているが、これらの製品は高価であり、耐振動性能が限られている。その結果、前述の欠点を克服するブラジャー用のアダプティブストラップが必要とされている。本発明は、この必要性に対処するものである。
【0005】
US2020/0345082A1は、生地をせん断増粘液(STF)に浸すことによって作られた移動反応性運動用アパレルを記載している。STF処理には、未処理の布を希釈したSTFバスに浸し、布に付着した液体の量を測定し、処理した布から希釈剤を除去することが含まれる。しかしながら、STFに含まれる希釈剤の比率は、1:1から10:1の範囲の高さである。加えて、希釈剤は、可燃性で気化しやすいメタノール、エタノール、イソプロパノール、及びメチルエチルケトンを含み得る。希釈剤の用量及び種類によっては、処理を行うのが危険である。
【0006】
CN111134409Aは、強い動的共有結合若しくは強い動的超分子作用、又は強い動的共有結合及び強い動的超分子作用の両方に基づく動的ダイラタンシー(dilatancy)を含む自己適応性アパレルを開示している。しかしながら、低速及び高速の特定のパラメータ、低速及び高速の引張における引張応力の速度など、アパレルの主要なパフォーマンスパラメータは公開されていない。ひとつの好ましい実施形態では、ストラップの伸びは高く、高速引張応力で最大102%であり、これは乳房の変位に起因する大きな痛みを依然として引き起こすであろう。更に、運動中の乳房の動きは、単独の一定速度での単純な線形変位ではなく、振動運動である。したがって、一定速度でのモジュラス評価は、実際の使用シナリオと一致しない場合がある。
【発明の概要】
【0007】
そのため、運動時及び/又は日常動作時に乳房を十分に支持するために、振動時に比較的高い強度を提供しながら、着用時の快適性を確保するために、静的伸長時の引張強度が低いブラジャーを提供するアダプティブブラジャーストラップに適用するための材料が必要とされている。本発明では、アダプティブストラップは、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、ポリマーマトリクス、フィラー、ホウ酸、及び硬化剤から製造される弾性ファブリック及びポリマー複合体を含んでいる。本発明のブラストラップは、異なる活動において充分な支持を提供する適応性能を示す。
【0008】
一側面において、本発明は、静的負荷中における第1の強度モジュラスxと、少なくとも約3Hzの振動の動的負荷中における少なくとも2xの第2の強度モジュラスと、を有する少なくとも1つのアダプティブ材料層を含む、ブラジャー用のアダプティブストラップを提供する。前記アダプティブ材料層の各々は、前記アダプティブストラップが、着用者の活動が少ない間は(during lower wearer activity)初期長さの100%まで伸張可能であるが、着用者の活発な活動の間は(during vigorous wearer activity)50%を超えて伸張できないようにして、2つの弾性ファブリック層の間に挟まれている。
【0009】
更なる側面において、前記アダプティブストラップは、2mm未満の厚さを有している。
【0010】
更なる側面において、前記アダプティブストラップは、10%の静的伸張において少なくとも7Nの荷重強度を有している。
【0011】
更なる側面において、前記アダプティブストラップは、10%の静的伸張及びそれに続く3.0Hzにおける振動伸張において、少なくとも15Nの荷重強度を有している。
【0012】
更なる側面において、本発明は、ブラジャー用のアダプティブストラップを準備する方法を含んでいる。1つ又は複数のシラノール末端ポリジメチルシロキサン、ポリマーマトリクス材料、及びホウ酸が、反応温度で一定の反応時間に亘って混合され、複合体を得る。室温で前記複合体と硬化剤と混合して、未硬化アダプティブ材料を形成する。未硬化アダプティブ材料は、暫定シェルに充填され、1つ又は複数の中空構造に挿入され、中空構造内の中空空間を実質的に埋めるまで、中空構造内に組み入れられる(worked into the hollow fabric structure)。暫定シェルは、中空ファブリック構造から取り除かれ、硬化されて、アダプティブストラップを形成する。
【0013】
前記シラノール末端ポリジメチルシロキサン、ポリマーマトリクス、ホウ酸、及び硬化剤は、5:100:0.02:0.5~100:100:1:3の重量範囲内にあってもよい。
【0014】
前記シラノール末端ポリジメチルシロキサンが、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、ビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーの1つ又は複数から選択されてもよく、フェニルが0~18%のモル比であり、ビニルがモル比で0~15%であってもよい。
【0015】
前記シラノール末端ポリジメチルシロキサンの平均分子量は、650~139,000g/molであってもよい。
【0016】
前記ホウ酸は、エタノール溶液中において1重量%~10重量%の重量比で提供されてもよい。
【0017】
前記硬化剤は、過酸化物、架橋剤、又は触媒のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0018】
複合体は、1つ又は複数のフィラーを更に含んでいてもよい。
【0019】
前記フィラーは、二酸化シリカ、二酸化チタン、オレイン酸グリセリル、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0020】
前記ポリマーマトリクスは、シリコーンゴム、天然ゴム、合成ゴム、又はそれらの組み合わせであってもよく、約40ショアA~80ショアAの硬度を有していてもよい。
【0021】
前記硬化剤は過酸化物であってもよく、前記過酸化物は、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、又はジベンゾイルペルオキシドのうちの1つ又は複数であってもよい。
【0022】
前記硬化剤は、架橋剤であってもよく、前記架橋剤は、少なくとも2つのSiH基を有する1つ又は複数の水素化ケイ素化合物から選択されてもよい。
【0023】
前記硬化剤は、触媒であってもよく、前記触媒は、パラジウム、ロジウム、又は白金の1つ又は複数であってもよい。
【0024】
前記複合体を得るための前記反応温度は、約80℃~200℃であってもよい。
【0025】
前記複合体を得るための前記反応時間は、約0.5~8時間であってもよい。
【0026】
硬化温度は、ほぼ室温又は25℃~200℃であってもよい。
硬化時間は、約0.5~24時間であってもよい。
【0027】
ブラジャー用のアダプティブストラップは、960周(circles)後における引張強度が4MPaを超え、10%のひずみ下での静的状態における引張強度が1MPa以上であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1Aは、ブラジャー製品のアダプティブストラップのための材料の概略構造を示している。
図1B図1Bは、スポーツブラにおける図1Aの材料/アダプティブストラップの可能性のある位置を示している。
図2図2は、本発明におけるブラジャー用アダプティブストラップのプロセスフローチャートを示している。
図3図3は、本発明の一実施形態によるアダプティブストラップを製造する作製プロセスを示している。
図4図4は、例1のストラップの引張ひずみ曲線である。
図5図5は、例1においてDMAによって測定されたストラップの動的機械的特性である。
図6図6は、例2のストラップの引張ひずみ曲線である。
図7図7は、例2においてDMAによって測定されたストラップの動的機械的特性である。
図8図8は、例3においてDMAによってテストされたブラジャーのためのアダプティブストラップの引張強度の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、ブラジャー用のアダプティブストラップを提供する。一側面において、図1に示されているアダプティブストラップのための材料100は、少なくとも1つのアダプティブ材料層10と、2つの弾性ファブリック層20と、を含んでいる。アダプティブ材料層10の各々は、弾性ファブリック層20のうちの2つの間に挟まれている。一実施形態における材料100の厚さは、2ミリメートル以下になるように選択される。本明細書で使用される「アダプティブ材料」という用語は、静的荷重条件下では低い引張強度を有し、高速振動中には高い引張強度を有する材料を意味している。このようにして、この素材は荷重条件に「適応(adapt)」し、通常の動きの間の着用者に対しては素材が一般的に柔らかく伸縮性のある快適性を提供する一方で、動的荷重の増加に対応して弾性率が高くなるため、激しい運動の間においては乳房に高い支持レベルを提供する。一般に、アダプティブ材料は、静的負荷中における第1の強度モジュラス「x」と、少なくとも約3Hzの振動の動的負荷中における少なくとも「2x」の第2の強度モジュラスと、を有している。材料100の例示的な機械的特性は、一側面においては、10%の静的伸張で7N以上の負荷強度である。別の側面において、材料100は、10%の静的伸張及びそれに続く3.0Hzにおける振動伸張において、少なくとも15Nの荷重強度を示す。
【0030】
乳房は運動中におよそ8の字又は「バタフライ」パターンで動くため、本発明のアダプティブストラップは、図1Bに示されているように、肩ひもだけでなく、サイドバンド、背中を横切るバンド、及び乳房の下の下部支持バンドにも使用することができる。ブラによって支えられる乳房の大きさ(例えば、より多くのアダプティブストラップ/バンド)や、ブラが使用するために設計された活動の強さ(ランニング-より多くのストラップ/バンド-、ヨガ又は乳房の動きが少ないその他の活動-より少ないストラップ/バンド)に応じて、本発明のアダプティブストラップを使用するための他の構成も可能である。
【0031】
アダプティブ材料10は、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、ポリマーマトリクス、ホウ酸、及び任意のフィラーを反応させることによって形成される反応生成物であって、以下でより詳しく説明されるように、硬化された複合体を得るための反応生成物を含んでいる。弾性ファブリック層20は、エラスタン(ブランド名LYCRA及びSPANDEXを含むポリエーテル-ポリ尿素共重合体)、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、並びにこれらのポリマーの混合物及びブレンドで作られたファブリックのうちの1つ又はそれ以上から選択されてもよい。シリコーン、天然ゴム/ラテックス、及びポリウレタンベースのエラストマーを含むエラストマー材料(並びに上記の弾性材料とエラストマーとの混合物/ブレンド)も使用され得る。典型的には、材料100の弾性部分20は、静的負荷状態で初期の長さの100%まで縦方向に伸張可能であるように選択される。
【0032】
一実施形態では、本発明のアダプティブストラップを作成するためのファブリック100は、アダプティブ層10が弾性層20によって形成されたシェルで硬化された状態で、その場で(insitu)形成されてもよい。有利なことに、これにより、弾性層20とアダプティブ層10との間の結合が強化され、複合体料100が層剥離し難くなる。更に、アダプティブ層10が別々に形成された場合、最終的な衣服に組み立てることが困難な場合があることから、このin-situ技術は、衣服の製造を簡素化する。図3に見られるように、ブラジャー用のアダプティブストラップを準備する例示的な方法は、以下を含んでいる:1)シラノール末端ポリジメチルシロキサン、ポリマーマトリクス、ホウ酸、及び任意にフィラーを、共に反応温度で一定の反応時間に亘って(以下の実施例で更に詳しく議論する)混合して、複合体を得る;2)室温で前記複合体と硬化剤と混合して未硬化アダプティブ材料を形成する;3)未硬化アダプティブ材料を管状又は他の形状の取り外し可能なシェル200(例えば、図3に示すようなプラスチックチューブ)に充填する;4)管状シェルに充填された前記未硬化アダプティブ材料を、スポーツブラに使用される支持ストラップ又はバンド形状に形成された1つ又は複数の中空ファブリック構造に挿入する;5)前記未硬化アダプティブ材料が前記中空ファブリック構造の中空空間内を実質的に満たすまで、前記中空ファブリック構造から管状シェルをわずかに押し入れ及び引き出す;6)前記中空ファブリック構造から前記暫定管状シェルを除去する;7)前記アダプティブストラップを形成するために、前記中空ファブリック構造内の前記未硬化アダプティブ材料をその場で硬化させる。
【0033】
一実施形態では、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、ポリマーマトリクス、ホウ酸、硬化剤、及び任意のフィラーは、5:100:0.02:0.5:0~100:100:1:3:10の重量範囲内にある。
【0034】
前記シラノール末端ポリジメチルシロキサンは、シラノール末端ポリジメチルシロキサン、シラノール末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、又はビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーの1つ又は複数から選択されてもよく、フェニルが0~18%のモル比であり、ビニルがモル比で0~15%であってもよい。シラノール末端ポリジメチルシロキサンの平均分子量は、650~139,000g/molである。典型的には、前記ホウ酸は、エタノール溶液中において1重量%~10重量%の重量比で提供される。硬化剤は、過酸化物、架橋剤、触媒、及びそれらの組み合わせを含んでいてもよい。前記過酸化物は、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、及びジベンゾイルペルオキシドのうちの1つ又は複数であってもよい。架橋剤は、少なくとも2つのSiH基を有する水素化ケイ素化合物から選択してもよい。触媒は、パラジウム、ロジウム、及び白金のうちの1つ又は複数であってもよい。
【0035】
複合体を得るための反応温度は、約80℃~200℃で、約0.5~8時間である。硬化温度は、室温又は25℃~約200℃程度であり、硬化時間は約0.5~24時間程度である。
【実施例
【0036】
以下の実施例は、本開示を説明するために提示される。これらは、いかなる仕方によっても、限定的な意図ではない。
【表1】
【0037】
例1
この例では、以下のように、本発明の方法に従って、アダプティブストラップを製造した。
1)均一に混合するために、ホウ酸をエタノールに溶解して10wt.%溶液を形成した。
2)次に、9.974gのシラノール末端ポリジメチルシロキサン、0.26gのホウ酸溶液、ポリマーマトリクスとして100gのビニルシリコーンゴム(ショアAは60)を混合し、120℃で6時間攪拌して複合体を形成した。ここで、シラノール末端ポリジメチルシロキサンの分子量は、49000g/molである。
3)上記の複合体(110g)と2gの白金触媒とを、密閉式ミキサーを用いて、50r/minで5分間混合した。
4)次いで、混合物を、スパンデックス及びポリエステル繊維から作られた弾性ファブリック部分20を有する管状ストラップに注入した。ストラップを混合物と共に室温で24時間保管して硬化させ、厚さ1.46mmのアダプティブストラップを形成した。
【0038】
ストラップの引張ひずみ曲線を図4に示す。図4に示すように、10%の静的歪みでのアダプティブストラップの引張力は6.49Nである。ストラップの動的機械的特性は、図5に示すように、DMAによって測定される。3.0Hz振動の振幅8%における10%静的伸びでの引張力の計算値は16.32Nである。
【0039】
例2
この例では、以下のように、本発明の方法に従って、アダプティブストラップを製造した。
1)10gのシラノール末端ポリジメチルシロキサン(MW:約650g/mol)、10gのシラノール末端ポリジメチルシロキサン(MW:約13900g/mol)、20gのシラノール末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体(18%ジフェニルシロキサン)、20gのビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体(15%ビニルメチルシロキサン)、2.88gのホウ酸、17gの二酸化ケイ素(フィラー)、3gの二酸化チタン(フィラー)を混合し、200℃で2時間撹拌し、次に3gのオレイン酸グリセリル(フィラー)を混合して、複合体を形成した。
2)次いで、100gのビニルシリコーンゴム(ポリマーマトリクス)(ショアAは60)、30gの上記複合体、1gの2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン(硬化剤)を、50r/minの密閉式ミキサーで5分間混合した。
3)混合物は、外側の弾性材料組成がスパンデックス及びナイロン繊維である管状ストラップに注入された。ストラップを混合物と共に室温で24時間保管して硬化させ、厚さ1.46mmのアダプティブストラップを形成した。
【0040】
ストラップの引張ひずみ曲線を図6に示す。図6に示すように、10%の歪みでのアダプティブストラップの引張力は6.95Nである。ストラップの動的機械的特性は、図7に示すように、DMAによって測定される。3.0Hz振動での振幅8%における10%静的伸びでの引張力の計算値は16.96Nである。
【0041】
例3
この例では、以下のように、本発明の方法に従って、アダプティブストラップを製造した。
1)10gのシラノール末端ポリジメチルシロキサン(MW:約650g/mol)、10gのシラノール末端ポリジメチルシロキサン(MW:約13900g/mol)、20gのシラノール末端ジフェニルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体(18%ジフェニルシロキサン)、20gのビニルメチルシロキサン-ジメチルシロキサン共重合体(15%ビニルメチルシロキサン)、2.88gのホウ酸、17gの二酸化ケイ素(フィラー)、3gの二酸化チタン(フィラー)を混合し、200℃で2時間撹拌し、次に3gのオレイン酸グリセリルを混合して、複合体を形成した。
2)次いで、100gのビニルシリコーンゴム)(ショアAは60)(ポリマーマトリクス、30gの上記複合体、1gの2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン(硬化剤)を、50r/minの密閉式ミキサーで5分間混合した。
3)混合物を、スパンデックス及びナイロン繊維のファブリック組成を有する管状ストラップに注入した。ストラップを混合物と共に室温で24時間保管して硬化させ、アダプティブストラップを形成した。
【0042】
ブラジャーのアダプティブストラップは、4mm×8mmの寸法にカットされている。振動の機械的特性を正確に分析するために、動的機械分析(DMA)を使用する。図8に示すように、対照サンプルにおける周波数の影響は明らかではないが、本アダプティブストラップの機械的特性には、周波数が大きな影響を与え得る。960周(circles)した後でも、アダプティブストラップは、引張強度に関して非常に安定している。
【0043】
利点
本発明の利点には、以下が含まれる:1)様々な活動中に十分なサポートを提供するアダプティブ(適応)性能を備えたブラジャー用のアダプティブストラップ;2)アダプティブブラストラップ用の材料の新しい配合;3)アダプティブブラストラップを作成するための単純化された注入プロセス;4)アダプティブブラストラップの迅速な回復(recovery)と安定したパフォーマンス。
【0044】
本明細書で使用するとき、「ほぼ」、「基本的に」、「実質的に」、及び「約」という用語は、小さな変動を記述及び説明するために使用される。事象又は状況と組み合わせて使用される場合、この用語は、事象又は状況が明瞭に(precisely)発生する場合と、事象又は状況がほぼ(approximately)発生する場合を指す場合とがある。所与の値又は範囲に関して本明細書で使用される用語「約」は、一般に、所与の値又は範囲の±10%、±5%、±1%、又は±0.5%の範囲を意味している。範囲は、本明細書では、1つの端点から別の端点まで、又は、2つの端点の間として示され得る。別段の指定がない限り、本開示で開示されるすべての範囲には、端点が含まれる。「実質的に同一平面上にある」という用語は、同じ平面に沿って配置された数マイクロメートル(μm)以内、例えば、同じ平面に沿って配置された10μm以内、5μm以内、1μm以内、又は0.5μm以内の2つの表面を指し得る。「実質的に」同じ数値又は特性に言及する場合、その用語は、値の平均の±10%、±5%、±1%、又は±0.5%以内の値を指す場合がある。
【0045】
本発明の上述の説明は、例示及び説明の目的で提供されたものである。網羅的であること、又は、開示された正確な形態に本発明を限定することは意図されていない。当業者には、多くの修正及び変形が明らかであろう。
【0046】
本開示は、その特定の実施形態を参照して説明及び図示されてきたが、これらの説明及び図示は限定的ではない。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、均等物を代用することができることを当業者は理解すべきである。図面は必ずしも一定の縮尺で描かれているとは限らない。製造プロセス及び公差により、本開示における芸術的演出(artistic renditions)と実際の装置との間に区別があり得る。特に図示されていない本開示の他の実施形態が存在し得る。明細書及び図面は、限定的なものではなく、例示的なものと見なされるべきである。特定の状況、材料、物質の組成、方法、又はプロセスに関して、本開示の目的、精神、及び範囲に適合させるために変更を加えることができる。そのような変更はすべて、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。本明細書に開示された方法は、特定の順序で実行される特定の操作を参照して説明されてきたが、これらの操作は、本開示の教示から逸脱することなく、同等の方法を形成するために結合、再分割、又は再順序付けされ得ることが理解されるであろう。したがって、本明細書で具体的に示されない限り、操作の順序及びグループ化は、限定的なものではない。

図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】