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特表2023-545581カンプトテシン系誘導体及びそのリガンド-薬物複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】カンプトテシン系誘導体及びそのリガンド-薬物複合体
(51)【国際特許分類】
   C07D 491/22 20060101AFI20231023BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231023BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C07D491/22 CSP
A61K47/68
A61K31/4745
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 E
A61K39/395 L
A61K39/395 C
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023546378
(86)(22)【出願日】2021-10-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 CN2021122823
(87)【国際公開番号】W WO2022078260
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202011086123.3
(32)【優先日】2020-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523135920
【氏名又は名称】シーチュアン バイリ ファーム シーオー. エルティーディー
(71)【出願人】
【識別番号】522263714
【氏名又は名称】バイリ-バイオ(チェンドゥ)ファーマスーティカル シーオー.,エルティーディー.
【住所又は居所原語表記】139 Baili Road, Wenjiang District, Chengdu, Sichuan 611130, the People’ s Republic of China.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ツー, イ
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ワイリィ
(72)【発明者】
【氏名】ツー, ギリ
(72)【発明者】
【氏名】ユウ, ティエンジ
(72)【発明者】
【氏名】ジョー, シー
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ショウワン
【テーマコード(参考)】
4C050
4C076
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C050AA01
4C050BB04
4C050CC07
4C050DD08
4C050EE02
4C050FF05
4C050GG04
4C050HH01
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC22
4C085CC23
4C085EE01
4C085EE05
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB22
4C086GA13
4C086GA14
4C086GA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA10
4C086NA13
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、カンプトテシン系誘導体及びそのリガンド-薬物複合体を開示する。本発明は、より優れた抗腫瘍カンプトテシン系ADC薬物を開示し、より高い安全性、有効性を有し、臨床ニーズをより適切に満たすことができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Dで表されるカンプトテシン系誘導体、その薬学的に許容される塩、又は溶媒和物。
【化1】
(式中、
【化2】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、
Rは、水素、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
Xは、-C(O)-CR-(CR-O-、-C(O)-CR-(CR-NH-又は-C(O)-CR-(CR-S-から選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリルであり、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
mは、0-4の整数から選択される。)
【請求項2】
は、C1-3アルキルから選択される、請求項1に記載のカンプトテシン系誘導体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項3】
は、C1-3アルキル又はフッ素原子から選択される、請求項1に記載のカンプトテシン系誘導体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項4】
前記カンプトテシン系誘導体は、下式Dで表される構造を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のカンプトテシン系誘導体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【化3】
(式中、
【化4】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、
Rは、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
Xは、-C(O)-CR-(CR-O-、-C(O)-CR-(CR-NH-又は-C(O)-CR-(CR-S-から選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリルであり、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
mは、0-4の整数から選択される。)
【請求項5】
前記Rは、C1-3アルキルから選択される、請求項4に記載のカンプトテシン系誘導体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項6】
前記Xは、非制限的に
【化5】
から選択され、
ここで、左側の波線はカンプトテシン系誘導体に結合され、右側の波線は結合ユニットに結合される、請求項4に記載のカンプトテシン系誘導体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項7】
前記化合物は、非制限的に
【化6】
から選択され、
ここで、Rは、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択される、請求項1に記載のカンプトテシン系誘導体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項8】
前記化合物は、非制限的に、
【化7】
から選択される、請求項7に記載のカンプトテシン系誘導体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のカンプトテシン系誘導体を含むリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物。
【化8】
(式中、
【化9】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し
Rは、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
Xは、-C(O)-CR-(CR-O-、-C(O)-CR-(CR-NH-又は-C(O)-CR-(CR-S-から選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリルであり、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
mは、0-4の整数から選択され、
Lは、-L-L-L-L-である。)
【請求項10】
-L-は、-L-L-L-L-であり、
ここで、L端は、リガンドAbに結合され、L端は、Xに結合される、請求項9に記載のリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項11】
は、非制限的に
【化10】
から選択される、請求項9又は10に記載のリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項12】
は、-NC(R)C(O)、-NR(CHC(O)-、-NR(CHCHO)CHC(O)-、-S(CHC(O)-又は化学結合から選択され、ここで、oは、0-20の整数から選択され、pは、0-20の整数から選択され、
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、ヘテロアルキル、カルボキシル、アミノ、置換アミノから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
とLは、N原子を共用する、請求項9又は10に記載のリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項13】
は、アミノ酸からなるペプチド残基から選択され、ここで、アミノ酸は、さらに重水素原子、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、カルボキシル、アルキル、置換アルキル、アルコキシ、シクロアルキル又は置換シクロアルキルから選択される1つ又は複数の置換基で置換されていてもよい、請求項9又は10に記載のリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項14】
L3は、好ましくは、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、バリン(V)、リジン(K)、シトルリン、セリン(S)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)から選択される1つ、2つ又は複数のアミノ酸からなるペプチド残基である、請求項9又は10に記載のリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項15】
は、-NR(CR10-、-C(O)NR-、-C(O)NR(CH-又は化学結合から選択され、qは、0-6の整数から選択され、
、R及びR10は、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択される、請求項9又は10に記載のリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項16】
前記結合ユニットL-は、非制限的に
【化11】
から選択され、ここで、左側の波線はリガンド部分に結合され、右側の波線はXに結合される、請求項9又は10に記載のリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項17】
前記リンカー-薬物複合体は、非制限的に
【化12】
から選択され、ここで、1位炭素原子は、R絶対配置又はS絶対配置を有する、請求項16に記載のリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項18】
前記リガンド-薬物複合体は、下記式Iで表される構造を含む、請求項9から17のいずれか1項に記載のリンカー-薬物複合体を含むリガンド-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【化13】
(式中、
【化14】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、
Rは、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
Xは、-C(O)-CR-(CR-O-、-C(O)-CR-(CR-NH-又は-C(O)-CR-(CR-S-から選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリルであり、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
Abは、リガンドユニットであり、抗体、抗体断片、標的タンパク質、Fc-融合タンパク質などから選択され、
Lは、Abに結合されるユニットであり、Xは、薬物部分修飾ユニットであり、
mは、0-4の整数から選択され、nは、1-20の整数又は小数から選択される。)
【請求項19】
Abは、抗体であり、そのヘテロ原子を介して結合ユニットと連結結合を形成可能であり、前記抗体は、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、抗体断片、二重特異性抗体及び多重特異性抗体から選択される、請求項18に記載のリガンド-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項20】
前記抗体又はその抗原結合断片は、非制限的に、抗EGFRvIII抗体、抗DLL-3抗体、抗PSMA抗体、抗CD70抗体、抗MUC16抗体、抗ENPP3抗体、抗TDGF1抗体、抗ETBR抗体、抗MSLN抗体、抗TIM-1抗体、抗LRRC15抗体、抗LIV-1抗体、抗CanAg/AFP抗体、抗cladin 18.2抗体、抗Mesothelin抗体、抗HER2(ErbB2)抗体、抗EGFR抗体、抗c-MET抗体、抗SLITRK6抗体、抗KIT/CD117抗体、抗STEAP1抗体、抗SLAMF7/CS1抗体、抗NaPi2B/SLC34A2抗体、抗GPNMB抗体、抗HER3(ErbB3)抗体、抗MUC1/CD227抗体、抗AXL抗体、抗CD166抗体、抗B7-H3(CD276)抗体、抗PTK7/CCK4抗体、抗PRLR抗体、抗EFNA4抗体、抗5T4抗体、抗NOTCH3抗体、抗Nectin 4抗体、抗TROP-2抗体、抗CD142抗体、抗CA6抗体、抗GPR20抗体、抗CD174抗体、抗CD71抗体、抗EphA2抗体、抗LYPD3抗体、抗FGFR2抗体、抗FGFR3抗体、抗FRα抗体、抗CEACAMs抗体、抗GCC抗体、抗Integrin Av抗体、抗CAIX抗体、抗P-cadherin抗体、抗GD3抗体、抗Cadherin 6抗体、抗LAMP1抗体、抗FLT3抗体、抗BCMA抗体、抗CD79b抗体、抗CD19抗体、抗CD33抗体、抗CD56抗体、抗CD74抗体、抗CD22抗体、抗CD30抗体、抗CD37抗体、抗CD47抗体、抗CD138抗体、抗CD352抗体、抗CD25抗体又は抗CD123抗体から選択される、請求項19に記載のリガンド-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項21】
前記リガンド-薬物複合体は、非制限的に
【化15】
から選択され、ここで、Abは、リガンドユニットであり、nは、1-20の整数又は小数から選択され、
1位炭素原子は、R絶対配置又はS絶対配置を有する、請求項19又は20に記載のリガンド-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物。
【請求項22】
請求項9から17のいずれか1項に記載のリンカー-薬物複合体、又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の製造方法であって、
前記製造方法は、結合ユニットLと、一般式Dで表される化合物との置換反応により、一般式L-X-Dで表されるリンカー-薬物複合体を含むステップを含み、前記置換反応の反応式は、
【化16】
であり、ここで、
【化17】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、
、L、R、R、R、R10、q及びXは、一般式L-X-Dにおけるものと同じである、製造方法。
【請求項23】
請求項18から21のいずれか1項に記載のリガンド-薬物複合体、又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の製造方法であって、
前記製造方法は、還元された抗体、抗体断片又はその抗原結合断片と、一般式L-X-Dとをカップリング反応させることにより、一般式 Ab-L-X-Dで表されるリガンド-薬物複合体を得るステップを含み、前記カップリング反応の反応式は、
【化18】
であり、ここで、
【化19】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、あ
Ab、L、X、R及びnは、一般式Iにおけるものと同じである、製造方法。
【請求項24】
前記薬学的に許容される塩は、構造式中の酸性官能基と形成したナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩若しくはマグネシウム塩など;又は構造中の塩基性官能基と形成した酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、乳酸塩、オレイン酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、ギ酸塩、グルタミン酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩若しくはp-トルエンスルホン酸塩を含む、請求項1から23のいずれか1項に記載のカンプトテシン系誘導体、リンカー-薬物複合体、リガンド-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物。
【請求項25】
治療有効量の請求項1から24のいずれか1項に記載のカンプトテシン系誘導体、リンカー-薬物複合体、リガンド-薬物複合体若しくはその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項26】
腫瘍を治療又は予防するための薬物の製造における、請求項1から24のいずれか1項に記載のカンプトテシン系誘導体、リンカー-薬物複合体、リガンド-薬物複合体、又はその互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒化合物、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤の使用。
【請求項27】
前記腫瘍は、固形腫瘍及び血液腫瘍である、請求項26に記載の使用。
【請求項28】
前記腫瘍は、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、前立腺がん、腎臓がん、尿路がん、膀胱がん、肝臓がん、胃がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、食道がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、骨がん、皮膚がん、甲状腺がん、膵臓がん、黒色腫、神経膠腫、神経芽腫、多形神経膠芽腫、肉腫、リンパ腫又は白血病である、請求項27に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カンプトテシン系誘導体及びそのリガンド-薬物複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
標的薬の新しい形態として、リガンド-薬物複合体(antIbody drug conjugate,ADC)は通常、抗体又は抗体系リガンド、低分子薬、及びリガンドと薬物とを結合する結合ユニットの3つの部分で構成される。抗体薬物複合体は、抗体の抗原に対する特異的識別を利用し、薬物分子を標的細胞に輸送し、薬物分子を効果的に放出し、治療目的を達成する。2011年8月、米国食品医薬品局(FDA)は、ホジキンリンパ腫及び再発性変性大細胞型リンパ腫(ALCL)の治療のためにSeattle GenetIcsによって開発された新しいADC薬であるAdcetrIsTMの市販を承認した。この薬物の安全性及び有効性は、臨床使用によって実証されている。
【0003】
抗腫瘍特性を有する小分子化合物であるカンプトテシン(イリノテカン、エキサテカン、SN38などを含む)は、DNAトポイソメラーゼIを阻害することによって抗腫瘍効果を示す。多くのカンプトテシン薬は臨床現場で広く使用されており、主な適応症は骨がん、前立腺がん、乳がん、膵臓がんなどである。現在臨床使用中のイリノテカンとは異なり、エキサテカンは酵素により活性化する必要がない。また、イリノテカンの薬効本体であるSN-38や、臨床で使用されているトポテカンと比較して、エキサテカンのポイソメラーゼIに対してより強い阻害活性を有し、インビトロで様々ながん細胞に対してより強い損傷を与える。特に、P糖タンパク質の発現は、SN-38などに耐性のあるがん細胞にも効果を示している。エキサテカンは、単独の化学療法薬としては成功に販売されておらず、その高い細胞活性により治療域が狭くなることが推測されている。
【0004】
抗体薬物複合体(ADC)類薬物の優位性は、水溶性の増大、標的性の改善、抗原への特異的結合、標的細胞の周囲への薬物の輸送、標的細胞近傍への薬物の放出による腫瘍細胞の死滅、毒副作用の低減にある。カンプトテシン系薬物は、ADC薬物においtかなりな見込みを有する。現在、エキサテカンを毒素とする抗体結合薬物trastuzumab deruxtecan(商品名:Enhertu)は、2019年12月20日に米国FDAによって市販を承認されており、最初の市販カンプトテシン系ADC薬物として、ADC分野におけるこのような薬物の創薬能力及び応用見通しは十分に証明されている。
【0005】
Enhertuは、HER2標的に対するADC薬物であり、単一の抗体に約8つのエキサテカン誘導体(DAR=8)が結合されている。しかし、その研究開発会社である第一三共も、安全性のため、DAR値を減少させる必要があることを認識した。第一三共が発表した臨床中のADC :DS-1062は、DAR値が4に減少した。DAR値の減少により、治療効果が低下する可能性がある。そのため、より安全なカンプトテシン系誘導体を開発する必要がある。
【0006】
ADC薬物では、安全性を保証するために、薬物のDAR値を減少させる。その結果、治療効果が低下する。薬物の溶解性は、DAR値に影響を与える要因の一つであり、ADC薬物の傍観者効果に影響を与える要因でもある。カンプトテシン系薬物は、臨床に広く使用されているが、その低い水溶性は、依然として解決すべき問題である。水溶性が低い薬物について、薬物の水溶性を向上させることにより薬物の物理性質及び体内での代謝状況を改善することができ、これによって、薬効を向上させ、治療効果を強化し、薬物の用量を減少させ、コストを削減することができる。低い水溶性により、ADCの凝集度が増加するため、正常細胞によってエンドサイトーシスされやすく、毒・副作用が発生するか、又は代謝されやすく、半減期が短くなる。
【0007】
本社の研究過程において、エキサテカンのアミノ鏡像異性体化合物は、エキサテカンよりも顕著に優れた水溶性を有することを意外と見出した。それにより合成した誘導体は、同様により優れた水溶性を有し、より優れた抗腫瘍カンプトテシン系ADC薬物を製造することができ、より高い安全性、有効性を有し、臨床ニーズをより適切に満たすことができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明によれば、一般式Dで表されるカンプトテシン系誘導体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物が提供される。
【化1】
ここで、
【化2】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、
Rは、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
Xは、-C(O)-CR-(CR-O-、-C(O)-CR-(CR-NH-又は-C(O)-CR-(CR-S-から選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリルから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
mは、0-4の整数から選択される。
【0009】
好ましくは、Rは、C1-3アルキルから選択される。
【0010】
好ましくは、Rは、C1-3アルキル又はフッ素原子から選択される。
【0011】
カンプトテシン系誘導体は、下式Dで表される構造を有する。
【化3】
ここで、
【化4】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、
Rは、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
Xは、-C(O)-CR-(CR-O-、-C(O)-CR-(CR-NH-又は-C(O)-CR-(CR-S-から選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリルであり、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
mは、0-4の整数から選択される。
【0012】
好ましくは、前記Rは、C1-3アルキルから選択される。
【0013】
好ましくは、前記Xは、非制限的に
【化5】
から選択され、ここで、左側の波線はカンプトテシン系誘導体部分に結合され、右側の波線は結合ユニットに結合される。
【0014】
好ましくは、前記化合物は、非制限的に
【化6】
から選択され、ここで、Rは、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択される。
【0015】
さらに好ましくは、前記化合物は、非制限的に
【化7】
から選択される。
【0016】
本発明は、カンプトテシン系誘導体を含むリンカー-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物を提供する。
【化8】
8
ここで、
【化9】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、
Rは、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリール;
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
Xは、-C(O)-CR-(CR-O-、-C(O)-CR-(CR-NH-又は-C(O)-CR-(CR-S-から選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリルから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
mは、0-4の整数から選択され、
Lは、-L-L-L-L-である。
【0017】
好ましくは、-L-は、-L-L-L-L-であり、ここで、L端はリガンドAbに結合され、L端はXに結合される。
【0018】
さらに好ましくは、L非制限的に
【化10】
から選択される。
【0019】
さらに好ましくは、Lは、-NC(R)C(O)、-NR(CHC(O)-、-NR(CHCHO)CHC(O)-、-S(CHC(O)-又は化学結合から選択され、ここで、oは0-20の整数から選択され、pは0-20の整数から選択される。
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、ヘテロアルキル、カルボキシル、アミノ、置換アミノから選択される。
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択される。
とLはN原子を共用する。
【0020】
さらに好ましくは、Lは、アミノ酸からなるペプチド残基から選択される。選択的に、アミノ酸は、さらに重水素原子、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、カルボキシル、アルキル、置換アルキル、アルコキシ及びシクロアルキル或者置換シクロアルキルから選択される1つ又は複数の置換基で置換され、好ましくは、フェニルアラニン(F)、グリシン(G)、バリン(V)、リジン(K)、シトルリン、セリン(S)、グルタミン酸(E)又はアスパラギン酸(D)から選択される1つ、2つ又は複数のアミノ酸から形成されるペプチド残基から選択される。
【0021】
さらに好ましくは、Lは、-NR(CR10-、-C(O)NR-、-C(O)NR(CH-又は化学結合から選択され、qは、0-6の整数から選択される。
、R及びR10は、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択される。
【0022】
好ましくは、前記結合ユニットL-は、非制限的に
【化11】
から選択され、ここで、左側の波線はリガンド部分に結合され、右側の波線はXに結合される。
【0023】
さらに好ましくは、前記リンカー-薬物複合体は、非制限的に
【化12】
から選択され、ここで、1位炭素原子は、R絶対配置又はS絶対配置を有する。
【0024】
本発明は、リンカー-薬物複合体を含むリガンド-薬物複合体、その薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物をさらに提供する。前記リガンド-薬物複合体は、式Iで表される構造を有する。
【化13】
式 I
ここで、
【化14】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、
Rは、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、重水素化アルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
Xは、-C(O)-CR-(CR-O-、-C(O)-CR-(CR-NH-又は-C(O)-CR-(CR-S-から選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、
は、水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、重水素化アルキル、ハロゲン化アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルコキシアルキル、ヘテロシクリル、アリール、置換アリール又はヘテロアリールから選択され、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
、Rは、同じであってもよく異なっていてもよく、それぞれ独立して水素原子、重水素原子、ハロゲン、アルキル、ハロゲン化アルキル、重水素化アルキル、アルコキシ、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシアルキル、シクロアルキル又はヘテロシクリルであり、或いは
、R及びそれらに結合した炭素原子は、C3-6シクロアルキル、シクロアルキルアルキル又はヘテロシクリルを構成し、
Abは、リガンドユニットであり、抗体、抗体断片、標的タンパク質、Fc-融合タンパク質などから選択され、
Lは、Abに結合されるユニットであり、Xは、薬物部分修飾ユニットであり、
mは、0-4の整数から選択され、nは、1-20の整数又は小数から選択される。
【0025】
好ましくは、前記リガンドは、マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体、抗体断片、二重特異性抗体及び多重特異性抗体から選択される。
【0026】
さらに好ましくは、前記抗体又はその抗原結合断片は、非制限的に、抗EGFRvIII抗体、抗DLL-3抗体、抗PSMA抗体、抗CD70抗体、抗MUC16抗体、抗ENPP3抗体、抗TDGF1抗体、抗ETBR抗体、抗MSLN抗体、抗TIM-1抗体、抗LRRC15抗体、抗LIV-1抗体、抗CanAg/AFP抗体、抗cladin 18.2抗体、抗Mesothelin抗体、抗HER2(ErbB2)抗体、抗EGFR抗体、抗c-MET抗体、抗SLITRK6抗体、抗KIT/CD117抗体、抗STEAP1抗体、抗SLAMF7/CS1抗体、抗NaPi2B/SLC34A2抗体、抗GPNMB抗体、抗HER3(ErbB3)抗体、抗MUC1/CD227抗体、抗AXL抗体、抗CD166抗体、抗B7-H3(CD276)抗体、抗PTK7/CCK4抗体、抗PRLR抗体、抗EFNA4抗体、抗5T4抗体、抗NOTCH3抗体、抗Nectin 4抗体、抗TROP-2抗体、抗CD142抗体、抗CA6抗体、抗GPR20抗体、抗CD174抗体、抗CD71抗体、抗EphA2抗体、抗LYPD3抗体、抗FGFR2抗体、抗FGFR3抗体、抗FRα抗体、抗CEACAMs抗体、抗GCC抗体、抗Integrin Av抗体、抗CAIX抗体、抗P-cadherin抗体、抗GD3抗体、抗Cadherin 6抗体、抗LAMP1抗体、抗FLT3抗体、抗BCMA抗体、抗CD79b抗体、抗CD19抗体、抗CD33抗体、抗CD56抗体、抗CD74抗体、抗CD22抗体、抗CD30抗体、抗CD37抗体、抗CD47抗体、抗CD138抗体、抗CD352抗体、抗CD25抗体或抗CD123抗体から選択される。
【0027】
さらに好ましくは、前記リガンド-薬物複合体は、非制限的に
【化15】
から選択される。ここで、Abはリガンドユニットであり、nは1-20の整数又は小数から選択され、1位炭素原子は、R絶対配置又はS絶対配置を有する。
【0028】
本発明は、リンカー-薬物複合体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の製造方法をさらに提供する。以下のステップを含む。
【化16】
結合ユニットLと、一般式Dで表される化合物との置換反応により、一般式L-X-Dで表されるリンカー-薬物複合体を得る。
ここで、
【化17】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、L、L、R、R、R、R10、q及びXは、一般式L-X-Dにおけるものと同じである。
【0029】
本発明は、リガンド-薬物複合体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物の製造方法をさらに提供し、以下のステップを含む。
【化18】
還元された抗体、抗体断片又はその抗原結合断片と、一般式(L-X-D)とのカップリング反応により、一般式Ab-L-X-Dで表されるリガンド-薬物複合体を得る。
ここで、
【化19】
に結合した不斉炭素原子は、R絶対配置を有し、Ab、L、X、R及びnは、一般式Iにおけるものと同じである。
【0030】
カンプトテシン系誘導体、リンカー-薬物複合体、リガンド-薬物複合体、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物において、前記薬学的に許容される塩は、構造式中の酸性官能基と形成したナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩若しくはマグネシウム塩など;又は構造中の塩基性官能基と形成した酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、リンゴ酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硫酸水素塩、リン酸塩、乳酸塩、オレイン酸塩、アスコルビン酸塩、サリチル酸塩、ギ酸塩、グルタミン酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩若しくはp-トルエンスルホン酸塩を含む。
【0031】
本発明は、治療有効量の前記カンプトテシン系誘導体、リンカー-薬物複合体、リガンド-薬物複合体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0032】
本発明は、腫瘍を治療又は予防するための薬物の製造における、カンプトテシン系誘導体、リンカー-薬物複合体、リガンド-薬物複合体、その互変異性体、メソ体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは溶媒化合物、及び薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤の使用を提供する。
【0033】
好ましくは、前記腫瘍は、乳がん、卵巣がん、子宮頸がん、子宮がん、前立腺がん、腎臓がん、尿路がん、膀胱がん、肝臓がん、胃がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、食道がん、肺がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、骨がん、皮膚がん、甲状腺がん、膵臓がん、黒色腫、神経膠腫、神経芽腫、多形神経膠芽腫、肉腫、リンパ腫又は白血病などの固形腫瘍又は血液腫瘍である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な説明
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の通常の技術者によって一般的に理解されるものと同じである。本明細書に記載されているものと類似又は同等の任意の方法及び材料もまた、本開示の実施又は試験に使用することができるが、例示的な方法及び材料は、本明細書に記載されている。本発明を説明及び主張する際に、以下の用語は、以下の定義に従って使用される。
【0035】
本明細書に商品名称が使用される際に、この商品名称に係る製品の製剤、ジェネリック医薬品、及び有効成分の部分を含めることを意図している。
【0036】
反対に述べられていない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語は、以下に記載されるのと同じ意味を有する。
【0037】
「リガンド」という用語は、標的細胞に関連する抗原又は受容体を認識して結合することができる高分子化合物を指す。リガンドの役割は、リガンドが結合する標的細胞集団に薬物を提示することである。このようなリガンドは、タンパク質ホルモン、レクチン、成長因子、抗体、又は細胞に結合できる他の分子を含むが、これらに限定されない。本発明の実施形態において、リガンドはAbで表される。リガンドは、リガンド上のヘテロ原子を介して結合ユニットに結合することができる。好ましくは抗体又はその抗原結合断片である。前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体及びマウス抗体から選択され、好ましくはモノクローナル抗体である。
【0038】
リガンドユニットは、標的部分に特異的に結合する標的化剤である。リガンドは、細胞成分に特異的に結合するか、又は細胞成分若しくは他の目の標的分子に結合することができる。標的部分又は標的は通常、細胞表面上である。いくつかの実施形態において、リガンドユニットの機能は、リガンドユニットと相互作用する特定の標的細胞集団に薬物ユニットを送達することである。リガンドは、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、及び糖などの非タンパク質を含むが、これらに限定されない。適切なリガンドユニットは、例えば、全長(無傷)抗体及びその抗原結合断片などの抗体を含む。リガンドユニットは、非抗体標的化剤である実施形態において、ペプチド若しくはポリペプチド、又は非タンパク質分子であってもよい。このような標的化剤の例には、インターフェロン、リンホカイン、ホルモン、成長及びコロニー刺激因子、ビタミン、栄養素輸送分子、又は他の任意の細胞結合分子若しくは物質が含まれる。いくつかの実施形態において、結合ユニットは、リガンドの硫黄原子に共有結合する。いくつかの態様では、硫黄原子は、システイン残基の硫黄原子であり、抗体の鎖間ジスルフィド結合を形成する。別の態様では、硫黄原子は、リガンドユニットが導入されたシステイン残基の硫黄原子であり、抗体の鎖間ジスルフィド結合を形成する。別の態様では、硫原子は、リガンドユニットが(例えば、部位特異的変異誘発又は化学反応により)導入されたシステイン残基の硫黄原子である。別の態様では、結合ユニットに結合した硫黄原子は、抗体の鎖間ジスルフィド結合のシステイン残基及びリガンドユニットが(例えば、部位特異的変異誘発又は化学反応により)導入されたシステイン残基から選択される。いくつかの実施形態において、Kabat EA et al.,(1991),Sequences of proteIns of ImmunologIcal Interest, FIfth EdItIon, NIH publIcatIon 91-3242.2記載のEUインデックス番号システムが使用される。
【0039】
本明細書において、「抗体」又は「抗体ユニット」という用語は、それが属する範囲内において、抗体構造の任意の部分を含む。このユニットは、受容体、抗原、又は標的細胞集団が保有する他の受容体ユニットと結合し、反応的に関連し、或いは複合体を形成することができる。抗体は、治療又は生物学的修飾される細胞集団の一部と結合し、複合体を形成し、又は反応することができるいかなるタンパク質又はタンパク質様分子であってもよい。本発明において、抗体薬物複合体を構成する抗体は、元の野生状態の抗原結合能力を維持することができる。したがって、本発明の抗体は、好ましくは、抗原に特異的に結合することができる。係る抗原は、例えば、腫瘍関連抗原(TAA)、細胞表面受容体タンパク質及び他の細胞表面分子、細胞生存の調節因子、細胞増殖の調節因子、組織の成長と分化に関連する分子(既知又は予測可能な機能性があるもの)、リンホカイン、サイトカイン、細胞周期調節に関与する分子、血管新生に関与する分子、及び血管新生に関連する分子(既知又は予測可能な機能性があるもの)。本明細書に記載のように、腫瘍関連因子は、クラスター分化因子(CDタンパク質など)であってもよい。
【0040】
抗体薬物複合体に使用される抗体には、細胞表面受容体及び腫瘍関連抗原に対する抗体が含まれるが、これらに限定されない。このような腫瘍関連抗原は当技術分野で周知であり、抗体を調製するための当技術分野で周知の方法及び情報によって調製することができる。がんの診断と治療のための効果的な細胞レベルの標的を開発するために、研究者は膜貫通型又は他の腫瘍関連ポリペプチドを見つけている。これらの標的は、1つ又は複数の非がん細胞の表面ではほとんど又はまったく発現しないが、1つ又は複数のがん細胞の表面で特異的に発現することができる。通常、このような腫瘍関連ポリペプチドは、非がん細胞の表面と比較して、がん細胞の表面でより過剰発現されている。このような腫瘍関連因子を特定することで、抗体によるがん治療の特異的標的特性を大幅に改善することができる。便宜上、当該技術分野でよく知られている抗原関連の情報(名前、その他の名称、GenBankアクセッション番号など)を以下に示す。腫瘍関連抗原に対応する核酸及びタンパク質配列は、Genbankなどの公開データベースで見つけることができる。抗体標的に対応する腫瘍関連抗原は、全てのアミノ酸配列変異体及びアイソタイプを含み、参考文献に確認された配列と少なくとも70%,80%,85%,90%,又は95%の同一性を有し、或いは参考文献に記載の腫瘍関連抗原の配列と完全に一致する生物学的特性及び特徴を有する。
【0041】
「阻害」又は「抑制」という用語は、検出可能な量を減少させること、又は完全に防ぐことを指す。
【0042】
「がん」という用語は、無秩序な細胞増殖を特徴とする生理学的状態又は疾患を指す。「腫瘍」にはがん細胞が含まれます。
【0043】
「自己免疫疾患」という用語は、個人自身の組織又はタンパク質を標的とすることに起因する疾患又は障害である。
【0044】
「薬物」という用語は、Dとして示され得る細胞毒性薬物を指し、腫瘍細胞の正常な成長を強力に妨害することができる化学分子である。細胞毒性薬は、原則として、十分に高い濃度で腫瘍細胞を殺すことができるが、特異性がないため、腫瘍細胞を殺す一方で、正常細胞のアポトーシスを引き起こし、深刻な副作用を引き起こす恐れがある。この用語は、細菌、真菌、植物若しくは動物に由来の小分子毒素又は酵素活性毒素などの毒素、放射性同位元素(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、BI212、P32及びLu176の放射性同位元素)、毒性薬物、化学療法薬、抗生物質、及びリボリシンを含むが、毒性薬物であることが好ましい。
【0045】
「結合ユニットユニット」、「結合ユニット断片」又は「結合ユニット」という用語は、片端がリガンドに結合し、他端が薬物に結合する化学構造断片又は結合であり、他の結合ユニットに結合してから薬物に結合してもよい。
【0046】
結合ユニットは、ストレッチャ、スペーサ及びアミノ酸ユニットを含み、当該技術分野に既知の方法(例えば、US2005-0238649A1に記載の方法)に従って合成することができる。結合ユニットは、細胞内での薬物の放出を促進する「切断可能な結合ユニット」であり得る。例えば、酸に不安定な結合ユニット(例えば、ヒドラゾン)、プロテアーゼ感受性(例えば、ペプチダーゼ感受性)結合ユニット、光に不安定な結合ユニット、ジメチル結合ユニット、又はジスルフィド含有結合ユニットを使用することができる(CharI et al.Cancer Research 52:127-131,1992;U.S. Patent No.5,208,020)。
【0047】
細胞内の薬物放出のメカニズムによって、本明細書に記載の「結合ユニット」又は「抗体薬物複合体の結合ユニット」は、切断不可な結合ユニットと切断可能な結合ユニットの2種類に分けられる。切断不可な結合ユニットを含む抗体薬物複合体の薬物放出メカニズムは、以下の通りである。複合体が抗原に結合して細胞に取り込まれた後、抗体はリソソーム内で酵素的に加水分解され、低分子薬、結合ユニット及び抗体アミノ酸残基からなる活性分子を放出する。これによる薬物分子構造の変化は、その細胞毒性を低下させることがないとともに、活性分子が帯電しているため(アミノ酸残基)、近隣する細胞に浸透することがない。従って、このような薬物は、標的抗原(抗原陰性細胞)を発現しない隣接する腫瘍細胞を殺さない(傍観者効果;bystander effect)(Ducry et al.,2010,BIoconjugate Chem.21:5-13)。
【0048】
「リガンド薬物複合体」という用語は、抗体が安定した結合ユニットを介して生物活性を有する薬に結合することをいう。本発明において、「リガンド薬物複合体」は、抗体薬物複合体(antIbody drug conjugate,ADC)は、好ましくはモノクローナル抗体又は抗体断片を安定した結合ユニットにより生物活性を有する毒性薬物に結合することをいう。
【0049】
本明細書で使用されるアミノ酸の3文字コード及び1文字コードは、J.boy.Chem.1968,243,3558に記載されているとおりである。
【0050】
「アルキル」という用語は、飽和脂肪族炭化水素基を指し、炭素数1-20の直鎖又は分岐状基、好ましくは炭素数1-12のアルキル基、より好ましくは炭素数1-10のアルキル基、最も好ましくは炭素数1-6のアルキル基を含む。非限定的な例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチル、n-ヘプチル、2-メチルヘキシル、3-メチルヘキシル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,3-ジメチルペンチル、2,4-ジメチルペンチル、2,2-ジメチルペンチル、3,3-ジメチルペンチル、2-エチルペンチル、3-エチルペンチル、n-オクチル、2,3-ジメチルヘキシル、2,4-ジメチルヘキシル、2,5-ジメチルヘキシル、2,2-ジメチルヘキシル、3,3-ジメチルヘキシル、4,4-ジメチルヘキシル、2-エチルヘキシル、3-エチルヘキシル、4-エチルヘキシル、2-メチル-2-エチルペンチル、2-メチル-3-エチルペンチル、n-ノニル、2-メチル-2-エチルヘキシル、2-メチル-3-エチルヘキシル、2,2-ジエチルペンチル、n-デシル、3,3-ジエチルヘキシル、2,2-ジエチルヘキシル、及びその分岐異性体等が挙げられる。より好ましくは炭素数1-6の低級アルキル基であり、非限定的な例として、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、n-ヘキシル、1-エチル-2-メチルプロピル、1,1,2-トリメチルプロピル、1,1-ジメチルブチル、1,2-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、4-メチルペンチル、2,3-ジメチルブチルなどが挙げられる。アルキル基は、置換又は非置換であってもよい。置換されている場合、置換基は、いずれかの使用可能な結合点で置換され得る。前記置換基は、好ましくはそれぞれ独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキシ基から選択される1つ又は複数である。
【0051】
「置換アルキル」という用語は、アルキル基における水素が置換基で置換されることをいう。文脈で別段の定めがない限り、アルキル基の置換基は、-ハロゲン、-OR'、-NR'R''、-SR'、-SIR'R''R'''、-OC(O)R'、-C(O)R'、-COR'、-CONR'R''、-OC(O)NR'R''、-NR''C(O)R'、-NR'-C(O)NR''R'''、-NR''C(O)R'、-NH-C(NH)=NH、-NR'C(NH)=NH、-NH-C(NH)=NR'、-S(O)R'、-S(O)R'、-S(O)NR'R''、-NR'S(O)R''、-CN和-NOから選択される。置換基の数は0-(2m'+1)であり、ここで、m'はこの基における炭素原子の合計である。R'、R''及びR'''はそれぞれ独立して水素、非置換C1-8アルキル基、非置換アリール基、1-3個のハロゲンで置換されたアリール基、非置換C1-8アルキル基、C1-8アルコキシ基若しくはC1-8チオアルコキシ基、又は非置換アリール基-C1-4アルキル基である。R'及びR''が同一の窒素原子に結合した場合、この窒素原子と一緒に3-,4-,5-,6-又は7-員環を形成することができる。例えば、-NR'R''は、1-ピロリジニル基及び4-モルホリニル基を含む。
【0052】
「ヘテロアルキル」という用語は、N、O及びSから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含むアルキル基を指す。アルキル基は、上記と同義である。
【0053】
「アルキレン」という用語は、主体アルカンの同じ炭素原子又は異なる炭素原子から2つの水素原子を除去して得られた2つの残基を有する飽和直鎖又は分岐脂肪族炭化水素基を指し、炭素数1-20の直鎖又は分岐状基、好ましくは炭素数1-12、より好ましくは炭素数1-6のアルキレン基を含む。アルキレン基の非限定的な例は、メチレン基(-CH-)、1,1-エチレン基(-CH(CH)-)、1,2-エチレン基(-CHCH)-、1,1-プロピレン基(-CH(CHCH)-)、1,2-プロピレン基(-CHCH(CH)-)、1,3-プロピレン基(-CHCHCH-)、1,4-ブチレン基(-CHCHCHCH-)及び1,5-ブチレン基(-CHCHCHCHCH-)を含むが、これらに限定されない。アルキレン基は置換でも非置換でもよい。置換されている場合、置換基は、いずれかの使用可能な結合点で置換され得る。前記置換基は、好ましくはそれぞれ独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基、オキシ基から選択される1つ又は複数である。
【0054】
「アルコキシ」という用語は、-O-(アルキル)及び-O-(シクロアルキル)基を指す。アルキル基又はシクロアルキル基は上記と同義である。アルコキシ基の例には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシが含まれるが、これらに限定されない。アルコキシ基は置換でも非置換でもよい。置換されている場合、置換基は、いずれかの使用可能な結合点で置換され得る。前記置換基は、好ましくはそれぞれ独立してアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、ハロゲン、メルカプト基、ヒドロキシル基、ニトロ基、シアノ基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルコキシ基、ヘテロシクロアルコキシ基、シクロアルキルチオ基、ヘテロシクロアルキルチオ基から選択される1つ又は複数である。
【0055】
「シクロアルキル」という用語は、飽和又は一部が不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指す。シクロアルキル環は、3-20、好ましくは3-12、より好ましくは3-10、最も好ましくは3-8個の炭素原子を含む。単環式シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプチル、シクロヘプタトリエニル、シクロオクチルなどを含むが、これらに限定されない。単環式シクロアルキル基は、スピロ、縮合又はブリッジ環のシクロアルキル基を含む。
【0056】
「ヘテロシクリル」という用語は、飽和又は一部が不飽和の単環式又は多環式環状炭化水素置換基を指し、3-20個の環構成原子を含み、そのうちの1つ又は複数の環構成原子は窒素、酸素及びS(O)(mは0-2の整数である)から選択されるヘテロ原子であるが、-O-O-、-O-S-又は-S-S-の環部分が除かれ、残りの環構成原子は炭素である。好ましくは3-12個の環構成原子を含み、そのうちの1~4個はヘテロ原子である。より好ましくはシクロアルキル環は3-10個の環構成原子を含む。単環式ヘテロシクリル基の例は、ピロリジニルアルキル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ホモピペラジニル基を含むがこれらに限定されない。多環式ヘテロシクリル基は、スピロ、縮合又はブリッジ環のヘテロシクリル基を含む。
【0057】
「スピロヘテロシクリル」という用語は、5員から20員の単環の間で1つの原子(スピロ原子と呼ばれる)を共有する多環式複素環基を指し、その1つまたは複数の環原子は、窒素、酸素又はS(O)m(ここで、mは0から2の整数である)から選択されるヘテロ原子であり、他の環原子は、炭素である。1つ以上の二重結合を含んでもよいが、いずれの環も完全に共役電子系を持っていない。好ましくは6から14員、より好ましくは7から10員である。環間に共有されるスピロ原子の数によって、スピロヘテロシクリルは、モノヘテロシクリル、ジスピロヘテロシクリル又はポリスピロヘテロシクリルに分けられ、好ましくはモノスピロヘテロシクリル又はジスピロヘテロシクリルであり、より好ましくは4員/4員、4員/5員、4員/6員、5員/5員又は5員/6員モノスピロヘテロシクリルである。
【0058】
「シクロアルキルアルキル」という用語は、アルキル基が1つ又は複数、好ましくは1つのシクロアルキルで置換されたものを指す。アルキル基及びシクロアルキル基は上記と同義である。
【0059】
「ハロゲン化アルキル」という用語は、アルキル基が1つ又は複数のハロゲンで置換されたものを指す。アルキル基は上記と同義である。
【0060】
「重水素化アルキル」という用語は、アルキル基が1つ又は複数の重水素原子で置換されていることをいう。アルキル基は上記と同義である。
【0061】
「ヒドロキシル」という用語は、-OH基を指す。
【0062】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を指す。
【0063】
「アミノ」という用語は、-NHを指す。「ニトロ」という用語は、-NOを指す。
【0064】
「アミド」という用語は、-C(O)N-(アルキル)又は(シクロアルキル)基を指し、アルキル基、シクロアルキルは上記と同義である。
【0065】
「カルボン酸エステル」という用語は、-C(O)O-(アルキル)又は(シクロアルキル)基を指し、アルキル基、シクロアルキルは上記と同義である。
【0066】
本発明は、重水素化形態をさらに含む。炭素原子に結合した各水素原子は、それぞれ独立して重水素原子で置換することができる。当業者は、関連文献に従って重水素化化合物を合成することができる。重水素化化合物を合成する際に、市販の重水素化出発物質を使用してもよく、常法により重水素化試薬を用いて合成してもよい。重水素化試薬には、重水素化メタノール、重水素水、重水素化ボラン、トリ重水素化ボランテトラヒドロフラン溶液、重水素化アルミニウムリチウム、重水素化ヨードエタン及び重水素化ヨードメタンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0067】
「抗体」という用語は、鎖間ジスルフィド結合によって連結した2本の同じ重鎖及び2本の同じ軽鎖からなるテトラペプチド鎖構造である免疫グロブリンを指す。免疫グロブリンの重鎖定常領域におけるアミノ酸の組成と配列が異なるため、その抗原性も異なる。これによって、免疫グロブリンは、IgM、IgD、IgG、IgA及びIgEの5つの種類又はアイソタイプに分けられる。対応する重鎖は、それぞれμ鎖、δ鎖、γ鎖、α鎖及びε鎖である。同じタイプのIgは、そのヒンジ領域のアミノ酸組成の違い、及び重鎖のジスルフィド結合の数と位置に応じて、異なるサブクラスに分類することができる。例えば、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4に分けられる。軽鎖は、定常領域の違いにより、κ鎖又はλ鎖に分類される。5種類のIgのそれぞれにはκ鎖又はλ鎖を有することができる。本発明に記載の抗体は、好ましくは標的細胞上の細胞表面抗原に対する特異的な抗体である。非制限的な実施例において、抗体は、抗EGFRvIII抗体、抗DLL-3抗体、抗PSMA抗体、抗CD70抗体、抗MUC16抗体、抗ENPP3抗体、抗TDGF1抗体、抗ETBR抗体、抗MSLN抗体、抗TIM-1抗体、抗LRRC15抗体、抗LIV-1抗体、抗CanAg/AFP抗体、抗cladIn 18.2抗体、抗MesothelIn抗体、抗HER2(ErbB2)抗体、抗EGFR抗体、抗c-MET抗体、抗SLITRK6抗体、抗KIT/CD117抗体、抗STEAP1抗体、抗SLAMF7/CS1抗体、抗NaPI2B/SLC34A2抗体、抗GPNMB抗体、抗HER3(ErbB3)抗体、抗MUC1/CD227抗体、抗AXL抗体、抗CD166抗体、抗B7-H3(CD276)抗体、抗PTK7/CCK4抗体、抗PRLR抗体、抗EFNA4抗体、抗5T4抗体、抗NOTCH3抗体、抗NectIn 4抗体、抗TROP-2抗体、抗CD142抗体、抗CA6抗体、抗GPR20抗体、抗CD174抗体、抗CD71抗体、抗EphA2抗体、抗LYPD3抗体、抗FGFR2抗体、抗FGFR3抗体、抗FRα抗体、抗CEACAMs抗体、抗GCC抗体、抗IntegrIn Av抗体、抗CAIX抗体、抗P-cadherIn抗体、抗GD3抗体、抗CadherIn 6抗体、抗LAMP1抗体、抗FLT3抗体、抗BCMA抗体、抗CD79b抗体、抗CD19抗体、抗CD33抗体、抗CD56抗体、抗CD74抗体、抗CD22抗体、抗CD30抗体、抗CD37抗体、抗CD138抗体、抗CD352抗体、抗CD25抗体又は抗CD123抗体のうちの1つ又は複数である。好ましくは、トラスツズマブ(Trastuzumab,商品名HerceptIn)、ペルツズマブ(Pertuzumab;2C4とも呼ばれる。商品名Perjeta)、ニモツズマブ(NImotuzumab,商品名:泰欣生)、EnoblItuzumab、EmIbetuzumab、Inotuzumab、PInatuzumab、BrentuxImab、Gemtuzumab、BIvatuzumab、Lorvotuzumab、cBR96及びGlematumamabである。
【0068】
「溶媒和物」という用語は、本発明のリガンド薬物複合体と1種又は複数種の溶媒分子から形成された薬学的に許容される溶媒和物を指す。溶媒分子の例には、水、エタノール、アセトニトリル、イソプロパノール、DMSO、酢酸エチルが含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
「薬物担持量」という用語は、式I分子中の各抗体に担持される細胞毒性薬の平均数量を指し、薬物量と抗体量との比として示されてもよい。薬物担持量の範囲として、各抗体(Ab)に0-12、好ましくは1-10個の細胞毒性薬(D)が結合することができる。本発明の実施形態において、薬物担持量はnで示され、例えば1,2,3,4,5,6,7,8,9,10の平均値であってもよい。UV/可視光分光法、質量分析、ELISA試験及びHPLCなどの常法によりカップリング反応後のそれぞれのADC分子上の薬物の平均数を測定することができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、細胞毒性薬物は、結合ユニットを介してリガンドのN端アミノ及び/又はリジン残基のε-アミノに結合される。一般的に、カップリング反応において抗体に結合可能な薬物分子の数は、理論上の最大値よりも小さい。
【0071】
以下の非制限的な方法によりリガンド細胞毒性薬複合体の担持量を制御することができる。
(1)結合ユニット試薬とモノクローナル抗体とのモル比を制御する。
(2)反応時間及び温度を制御する。
(3)異なる反応試薬を選択する。
通常の医薬組成物の製造は、中国薬局方を参照されたい。
【0072】
「薬学的に許容される塩」又は「製薬上に許容される塩」という用語は、本発明のリガンド薬物複合体の塩又は本発明に記載の化合物の塩を指す。このような塩は、哺乳動物に使用されるときに安全性及び有効性を有するとともに、適切な生物活性を有する。本発明のリガンド薬物複合体は、少なくとも1つのカルボキシルを有するため、塩基と塩を形成することができる。薬学的に許容される塩の非制限的な例には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが含まれる。
【0073】
「薬学的に許容される塩」又は「製薬上に許容される塩」という用語は、本発明のリガンド薬物複合体の塩又は本発明に記載の化合物の塩を指す。このような塩は、哺乳動物に使用されるときに安全性及び有効性を有するとともに、適切な生物活性を有する。本発明の抗体薬物複合体化合物は、少なくとも1つのアミノ基を含むため、酸と塩を形成することができる。薬学的に許容される塩の例には、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、アスコルビン酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、ソルビン酸塩、リン酸水素塩、リン酸二水素塩、サリチル酸塩、クエン酸水素塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、メシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
「酸性アミノ酸」とは、アミノ酸の等電点が7未満のアミノ酸を指す。酸性アミノ酸の分子には、通常、1以上のカルボキシル基などの酸性基を有し、構造的には、効果的にイオン化されて 負イオンになることで親水性を向上させることができる。酸性アミノ酸は、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸に分けられ得る。
【0075】
「天然アミノ酸」とは、生合成により得られるアミノ酸を指す。天然アミノ酸は、一般的にL型であるが、例外があり、例えば、グリシンであり、天然に存在するものと生体内で合成されるものを含む。
【0076】
「非天然アミノ酸」とは、合成により得られるアミノ酸を指す。
【0077】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、これらの実施例は本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。以下の実施例において特定の条件が示されていない試験方法は、通常、従来の条件に従うか、又は製造業者によって提案された条件に従う。特に明記しない限り、すべてのパーセンテージ、割合、比率又は部は重量によるものである。
【0078】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての専門的及び科学的用語は、当技術分野でよく知られているものと同じ意味を有する。また、記載されたものと類似又は同等の任意の方法及び材料は、全て本発明の方法に適用できる。本明細書に記載の好ましい実施方法及び材料は例示的なものに過ぎない。
【0079】
実施例1:エキサテカン鏡像異性体化合物1の合成
【化20】
1Lの丸底フラスコに化合物SM-1(N-(8-アミノ-6-フルオロ-5-メチル-1-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2-イル)アセトアミド;購入)(6.25g,25.0mmol)、SM-2((S)-4-エチル-4-ヒドロキシ-7,8-ジヒドロ-1H-ピランO[3,4-F]インドキサジン-3,6,10(4H)-ケトン;購入)(7.25g,27.5mmol)、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(1.26g,5.0mmol)を入れ、500mLトルエンを加え、加熱還流しながら5時間反応させ、SM-2が10%未満になるまでHPLCにより反応を監視し、反応を停止させた。降温し、溶液体積が半分になるまで減圧濃縮し、氷水浴中で撹拌しながら2時間晶析し、ろ過し、30mLトルエンで3回分けて濾過ケーキを洗浄し、真空乾燥し、化合物Ac-1(10.68g,89%)を得た。LC-MSの結果は、[M+H]:478.2であった。
【0080】
Ac-1(10.68g,22.5mmol)、メタンスルホン酸(55mL)、水(110mL)及びトルエン(55mL)を1L丸底フラスコに混合し、加熱還流した。4時間後、TLCにより反応を監視し、原料が完全に反応した後、反応系を室温に冷却した。室温下で反応系に500mLメタノールをゆっくりと滴下し、撹拌し続け、滴下終了後に、一晩撹拌し、反応系をそのまま吸引濾過し、メタノールで濾過ケーキを洗浄し、濾液を収集し、濾過ケーキを乾燥させ、灰白色固体化合物である化合物1の異性体エキサテカンを得た。濾液を減圧濃縮し、分取液体クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥し、淡茶色固体(5.07g,41%)を得た。LC-MSの結果は、[M+H]:436.2であった。
【0081】
実施例2:化合物2の合成
【化21】
25ml丸底フラスコに化合物1(トリフルオロ酢酸塩の形態)(100.0mg,0.188mmol)、グリコール酸(43.0mg,0.565mmol)、HATU(107.2mg,0.282mmol)、HOBt(38.1mg,0.282mmol)及び5ml超乾燥DMFを入れ、フラスコ口を液封した。フラスコを氷水浴に置いて10分間撹拌し、その後、DIEA(94uL,0.565mmol)を加えた。TLCにより反応の進行を監視し、約3時間反応させた。反応が完全に終了した後、反応液を分取分離し、分取液を35℃で真空濃縮し、凍結乾燥し、白色固体化合物2(63.8mg,収率69.7%)を得た。LC-MSの結果は、[M+H]:493.9であった。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 8.39(d, J=9.0 Hz, 1H), 7.68(d, J=10.9 Hz, 1H), 7.29(s, 1H), 6.51(s, 1H), 5.53(dt, J=9.1, 6.0 Hz, 1H), 5.41(s, 2H), 5.12(d, J=19.1 Hz, 1H), 4.92(d, J=18.9 Hz, 1H), 3.99(s, 2H), 3.10(qt, J=16.7, 6.1 Hz, 2H), 2.29(d, J=1.8 Hz, 3H), 2.16(q, J=6.4 Hz, 2H), 2.00-1.81(m, 2H), 0.91(t, J=7.3 Hz, 3H).
【0082】
実施例3:化合物3の合成
【化22】
25ml丸底フラスコに化合物1(トリフルオロ酢酸塩の形態)(100.0mg,0.188mmol)、L-乳酸(56.6mg,0.565mmol)、HATU(107.2mg,0.282mmol)、HOBt(38.1mg,0.282mmol)及び5ml超乾燥DMFを入れ、フラスコ口を液封した。フラスコを氷水浴に置いて10分間撹拌し、その後、DIEA(94uL,0.565mmol)を加えた。TLCにより反応の進行を監視し、約3時間反応させた。反応が完全に終了した後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、吸引濾過により淡黄色の粗生成物を得た。粗生成物をTLC分取用プレートにより掻き取って分離し、42.0mg淡黄色固体化合物3(収率46.1%)を得た。
【0083】
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 8.46(d, J=9.2 Hz, 1H), 7.71(d, J=10.9 Hz, 1H), 7.29(s, 1H), 6.53(s, 1H), 5.68(d, J=4.9 Hz, 1H), 5.54(q, J=7.3 Hz, 1H), 5.42(s, 2H), 5.20(d, J=19.0 Hz, 1H), 4.93(d, J=18.9 Hz, 1H), 4.20-4.08(m, 1H), 3.25-3.01(m, 2H), 2.32(s, 3H), 2.14(q, J=6.5 Hz, 2H), 1.96-1.80(m, J=7.1 Hz, 2H), 1.42(d, J=6.8 Hz, 3H), 0.90(t, J=7.2 Hz, 3H).
【0084】
実施例4:化合物4の合成
【化23】
25ml丸底フラスコに化合物1(トリフルオロ酢酸塩の形態)(100.0mg,0.188mmol)、D-乳酸(56.6mg,0.565mmol)、HATU(107.2mg,0.282mmol)、HOBt(38.1mg,0.282mmol)及び5ml超乾燥DMFを加え、フラスコ口を液封した。フラスコを氷水浴に置いて10分間撹拌した後、DIEA(94uL,0.565mmol)を加えた。TLCにより反応の進行を監視し、約3時間反応させた。反応が完全に終了した後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、吸引濾過により淡黄色の粗生成物を得た。粗生成物をTLC分取用プレートにより掻き取って分離した後、ジクロロメタン及びメタノールで固体をスラリー化して精製し、16.8mg淡黄色固体化合物4(収率18.4%)を得た。LC-MS結果は、[M+H]:508.2であった。
【0085】
実施例5:化合物5及び化合物6の合成
【化24】
25ml丸底フラスコに化合物1(トリフルオロ酢酸塩の形態)(200mg,0.377mmol)、トリフルオロ乳酸(162.8mg,1.13mmol)、HATU(214.8mg,0.565mmol)、HOBt(76.3mg,0.565mmol)及び5ml超乾燥DMFを入れ、フラスコ口を液封した。フラスコを氷水浴に置いて10分間撹拌した後、DIEA(187uL,1.13mmol)を加えた。TLCにより反応の進行を監視し、約6時間反応させた。反応が完全に終了した後、反応液を分取液体クロマトグラフィーにより分離精製し、分取液を35℃で真空濃縮し、凍結乾燥し、49.7mg淡黄色固体化合物5(収率48.7%)及び60.5mg淡黄色固体化合物6(収率59.3%)を得た。
【0086】
化合物5:
LC-MSの結果は、[M+H]:562.2であった。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 9.00(d, J=8.7 Hz, 1H), 7.78(d, J=10.9 Hz, 1H), 7.31(s, 1H), 7.19(d, J=6.9 Hz, 1H), 6.54(s, 1H), 5.59(dt, J=10.1, 5.3 Hz, 1H), 5.43(s, 2H), 5.16(q, J=19.2 Hz, 2H), 4.63(p, J=7.6 Hz, 1H), 3.14(s, 2H), 2.38(s, 3H), 2.16(p, J=7.1 Hz, 2H), 1.87(hept, J=7.1 Hz, 2H), 0.88(t, J=7.3 Hz, 3H).
【0087】
化合物6:
LC-MSの結果は、[M+H]:562.2であった。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 8.97(d, J=8.6 Hz, 1H), 7.78(d, J=11.0 Hz, 1H), 7.31(s, 1H), 7.26(d, J=6.7 Hz, 1H), 6.54(s, 1H), 5.57(dt, J=9.5, 5.3 Hz, 1H), 5.43(s, 2H), 5.24-5.03(m, 2H), 4.63(p, J=7.4 Hz, 1H), 3.14(t, J=6.5 Hz, 2H), 2.38(d, J=1.9 Hz, 3H), 2.28-2.07(m, 2H), 1.95-1.78(m, J=7.1 Hz, 2H), 0.88(t, J=7.3 Hz, 3H).
【0088】
実施例6:化合物7及び化合物8の合成
【化25】
25ml丸底フラスコに化合物1(トリフルオロ酢酸塩の形態)(200mg,0.377mmol)、1-ヒドロキシシクロプロパンカルボン酸(131.2mg,1.13mmol)、HATU(214.8mg,0.565mmol)、HOBt(76.3mg,0.565mmol)及び5ml超乾燥DMFを加え、フラスコ口を液封した。フラスコを氷水浴に置いて10分間撹拌した後、DIEA(187uL,1.13mmol)を加えた。TLCにより反応の進行を監視し、約6時間反応させた。反応が完全に終了した後、反応液に水を加えて固体を析出させ、飽和塩化アンモニウム水溶液で2回洗浄し、純水で1回洗浄し、吸引乾燥した後、ジクロロメタン及びメタノールで固体を溶解した。TLC分取用プレートにより掻き取って分離し、81.0mg淡黄色固体化合物7(収率82.4%)及び60.0淡黄色固体化合物8(収率61.8%)を得た。
【0089】
化合物7:
LC-MS結果は、[M+H]:534.2であった。
1H NMR(400 MHz, d6DMSO) δ 8.40(d, J=9.0 Hz, 1H), 7.78-7.62(m, 1H), 7.29(s, 1H), 6.52(s, 1H), 5.58(dt, J=5.3, 1.4 Hz, 1H), 5.53(q, J=7.5 Hz, 1H), 5.42(s, 2H), 5.26-4.91(m, 2H), 3.62(t, J=5.8 Hz, 1H), 3.23-3.02(m, 2H), 2.30(d, J=3.2 Hz, 3H), 2.14(q, J=7.9, 7.0 Hz, 2H), 1.90(p, J=7.0 Hz, 2H), 1.29-1.19(m, 3H), 0.91(t, J=7.3 Hz, 3H), 0.57-0.37(m, 4H).
化合物8:
LC-MS結果は、[M+H]:534.2であった。
【0090】
実施例7:化合物9の合成
【化26】
【0091】
25ml丸底フラスコに化合物1(トリフルオロ酢酸塩の形態)(100.0mg,0.188mmol)、1-(ヒドロキシメチル)シクロブタンカルボン酸(43.0mg,0.565mmol)、HATU(107.2mg,0.282mmol)、HOBt(38.1mg,0.282mmol)及び5ml超乾燥DMFを入れ、フラスコ口を液封した。フラスコを氷水浴に置いて10分間撹拌した後、DIEA(94uL,0.565mmol)を加えた。TLCにより反応の進行を監視し、約6時間反応させた。反応が完全に終了した後、反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて固体を析出させ、吸引乾燥して個体を得た。固体を2回水洗し、酢酸エチルで1回洗浄し、ジクロロメタンで1洗浄した。100.0mg灰白色固体化合物9(収率98.0%)を得た。LC-MS結果は、[M+H]:548.2であった。
1H NMR(400 MHz, DMSO-d6) δ 7.99(d, J=8.6 Hz, 1H), 7.69(d, J=10.9 Hz, 1H), 7.29(s, 1H), 6.52(s, 1H), 5.53(dt, J=8.7, 5.5 Hz, 1H), 5.42(s, 2H), 5.21-4.93(m, 3H), 3.63(d, J=4.8 Hz, 2H), 3.10(t, J=6.2 Hz, 2H), 2.39-2.24(m, 5H), 2.12(q, J=6.3 Hz, 2H), 1.99-1.70(m, 6H), 0.91(t, J=7.3 Hz, 3H).
【0092】
実施例8:化合物M1の合成
【化27】
5000mL一ツ口フラスコにN-フルオレニルメチルオキシカルボニル-グリシン-グリシン(100g,282mmol,1.0eq;購入)、四酢酸鉛(175g,553mmol,1.4eq)、2000mL乾燥テトラヒドロフラン及び670mLトルエンを加え、均一に撹拌し、窒素ガス保護下で85℃に加熱し、2.5h反応させた。TLCにより監視し、原料が完全に反応した後、室温に冷却し、濾過し、濾液を減圧濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物M1(91g)を得た。LC-MS:[M+NH386.0。
【0093】
実施例9:化合物M2の合成
【化28】
1000mL一ツ口フラスコに化合物SM-3(49.9g,100.0mmol,1.0eq,本社の特許出願CN108452321に開示された方法により合成)、ペンタフルオロフェノール(18.5g,110.0mmol,1.1eq)、DCC(20.64g,110.0mmol,1.1eq)及びTHF(500mL)を加え、室温で1h反応させ(TLCにより完全に反応したことを監視する)、濾過により不溶物を除去し、得られた濾液を濾液Aとして記録し、2-8℃で保存し、使用に備えた(溶媒を直接取って使用する。0.2Mで計算して使用する)。LC-MS:[M+H]565.2。
【0094】
実施例10:化合物Ln-D1の合成
【化29】
【0095】
ステップ1:化合物1aの合成
500ml丸底フラスコにM1(15.00g,40.75mmol)及び150mlのTHFを入れ、氷水浴下で15min撹拌した。p-トルエンスルホン酸一水和物(775.0mg,4.08mmol)を加え、引き続き10min撹拌した。フラスコの上部に定圧滴下漏斗を取り付け、グリコール酸ベンジル(11.6ml,81.50mmol)を滴下した。滴下終了後に、氷水浴下で引き続き撹拌し、約3時間完全に反応した。TLCにより原料がなくなったことを確認した後、炭酸水素ナトリウムで反応をクエンチし、混合液を酢酸エチルで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離した。分離して9.06g白色固体を得た(収率46.9%)。
【0096】
ステップ2:化合物1bの合成
1号50ml丸底フラスコに1a(5.34g,11.26mmol)及び25mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌した。トリエチルアミン(1854uL,12.39mmol)を滴下し、約5h反応させた後、TLCにより原料がなくなったかを監視し、完全に反応した後に使用に備えた。2号100ml丸底フラスコにM4(4.65g,11.25mmol)、PyBop(7.03g,13.52mmol)、DIEA(2226uL,13.56mmo)及び20mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌し、完全に反応した1号フラスコ中の反応液を2号反応フラスコ中に滴下した。HPLCにより原料がなくなったかを監視し、反応が完全に終了した後、HPLC分取により分離した。凍結乾燥して製品である4.83g白色固体(収率66.3%)を得た。
【0097】
ステップ3:化合物1cの合成
50mL一ツ口フラスコに1b(500.0mg,0.772mmol)、5%のPd/C(500.0mg,100%m)及び10mlのDCMを入れ、水素バルーンを添加して水素置換し、室温下で約3時間反応させた。HPLCにより完全に反応したことを確認した後、濾過して濾液を得た。粗製品1cを得てそのまま次の反応に使用した。
【0098】
ステップ4:化合物1dの合成
粗製品1cを氷水浴に置き、DIPEA(0.14mL,0.82mmol)を加え、さらに化合物M2(4.0mL,0.8mmol)を加え、加えた後、室温に昇温させて1h反応させた。HPLCにより反応終了を監視し、液相を精製し、分取液を得た後、凍結乾燥して370.2mg白色固体(収率59.7%)を得た。LC-MS:[M+H]+804.4。
【0099】
ステップ5:化合物1eの合成
10ml一ツ口フラスコに1d(260.0mg,0.281mmol)、化合物1(149.3mg,0.281mmol)、HATU(160.4mg,0.422mmol)、HOBt(57.0mg,0.422mmol)及び5mlのDMFを入れ、氷水浴下で10min撹拌し、HPLCにより完全に反応したことを確認した後、分取分離し、分取液を凍結乾燥して368.0mg黄色固体(収率97.3%)を得た。LC-MS:[M+H]1221.5
【0100】
ステップ6:化合物Ln-D1の合成
25ml一ツ口フラスコ加入1e(368mg,0.289mmol)、臭化亜鉛(1301.0mg,5.78mmol)及び15mlニトロメタンを入れ、室温下で撹拌した。HPLCにより原料が完全に反応したことを確認した後、反応液を濃縮した後、HPLC分取により精製し、分取液を凍結乾燥し、120mg黄色固体(収率38.5%)を得た。LC-MS:[M+H]1065.4。
【0101】
実施例11:化合物Ln-D2の合成
【化30】
【0102】
ステップ1:化合物2aの合成
250ml丸底フラスコにM1(7.45g,20.3mmol)及び120mlのTHFを加え、氷水浴下で15min撹拌した。p-トルエンスルホン酸一水和物(385.0mg,2.03mmol)を加え、引き続き10min撹拌した。フラスコの上部に定圧滴下漏斗を取り付け、グリコール酸ベンジル(6.0ml,41.5mmol)を滴下し、速度を2秒1滴に制御した。滴下終了後に、氷水浴下で引き続き撹拌し、約3時間完全に反応した。TLCにより原料がなくなったことを確認した後、炭酸水素ナトリウムで反応をクエンチし、混合液を酢酸エチルで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離して4.82白色固体(収率49%)を得た。
【0103】
ステップ2:化合物2bの合成
1号25ml丸底フラスコに2a(2.53g,5.20mmol)及び10mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌した。DBU(900uL,6.0mmol)を滴下し、約0.5h反応させ、TLCにより原料がなくなったかを監視し、完全に反応した後に使用に備えた。2号50ml丸底フラスコにM4(2.31g,5.6mmol)、PyBop(3.50g,6.8mmol)、DIEA(1115uL,6.8mmo)及び10mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌し、完全に反応した1号フラスコ中の反応液を2号反応フラスコに滴下した。HPLCにより原料がなくなったかを監視し、待反応が完全に終了した後、HPLC分取により分離した。凍結乾燥して2.53g白色固体(収率74%)を得た。
【0104】
ステップ3:化合物2cの合成
50mL一ツ口フラスコに2b(500.0mg,0.76mmol)、5%Pd/C(500.0mg,100%m)及び10mlのDCMを入れ、水素バルーンを添加して水素置換し、室温下で約3時間反応させた。HPLCにより完全に反応したことを確認した後、濾過して濾液を得た。粗製品2cをそのまま次の反応に使用した。
【0105】
ステップ4:化合物2dの合成
粗製品2cを氷水浴に置き、DIPEA(0.12mL,0.70mmol)を加え、さらに化合物M2(4.0mL,0.8mmol)を加え、加えた後、室温に昇温させて1h反応させた。HPLCにより反応終了を監視し、液相を精製し、分取液を得て凍結乾燥し、378.2mg白色固体(収率62%)を得た。LC-MS:[M+H]818.3。
【0106】
ステップ5:化合物2eの合成
10ml一ツ口フラスコに2d(228mg,0.28mmol)、化合物1(148.3mg,0.28mmol)、HATU(160.1mg,0.42mmol)、HOBt(57.2mg,0.42mmol)及び5mlのDMFを入れ、氷水浴下で10min撹拌し、DIEA(140uL,0.84mmol)を滴下し、引き続き反応させ、HPLCにより完全に反応したことを確認した後、分取分離し、分取液を凍結乾燥して269.5mg黄色固体(収率78%)を得た。LC-MS:[M+H]1235.5。
【0107】
ステップ6:化合物Ln-D2の合成
25ml一ツ口フラスコに2e(269.5mg,0.22mmol)、臭化亜鉛(1012.9mg,0.44mmol)及び10mlニトロメタンを入れ、室温下で撹拌した。HPLCにより原料が完全に反応したことを確認した後、反応液を濃縮した後、HPLC分取により精製し、分取液凍結乾燥し、96.3mg黄色固体(収率41%)を得た。LC-MS:[M+H]1079.4。
【0108】
実施例12:化合物Ln-D3の合成
【化31】
実施例11の合成経路及び方法により化合物L-D3(93.8mg)を得た。LC-MS:[M+H]1079.4。
【0109】
実施例13:化合物Ln-D4及びLn-D5の合成
【化32】
【0110】
ステップ1:化合物3aの合成
100ml丸底フラスコにM1(2.87g,7.79mmol)、トリフルオロ乳酸ベンジル(3.65g,15.59mmol)、無水酢酸亜鉛(2.86g,15.59mmol)及び30mlトルエンを加え、窒素ガス保護下、100℃で反応させた。TLCにより反応の進行を監視し、約5h反応させた。完全に反応した後、濾過し、濾液を濃縮して粗生成物である油状物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、白色固体1.51g(収率35.7%)を得た。
【0111】
ステップ2:化合物3bの合成
1号50ml丸底フラスコに3a(2.82g,5.20mmol)及び10mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌した。DBU(0.949g,6.24mmol)を滴下し、約0.5h反応させ、TLCにより原料がなくなったかを監視し、完全に反応した後に使用に備えた。2号50ml丸底フラスコにM4((2.36g,5.71mmol)、PyBop(3.25g,6.24mmol)、HOBt(0.84g,6.24mmol)、DIEA(1000uL,6.24mmol)及び10mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌し、完全に反応した1号フラスコ中の反応液を2号反応フラスコに滴下した。HPLCにより原料がなくなったかを監視し、反応が完全に終了した後、HPLC分取により分離した。DCMで分取液を3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、有機相を濃縮し、真空乾燥して2.32g白色固体(収率62%)を得た。
【0112】
ステップ3:化合物3cの合成
50mL一ツ口フラスコに3b(500.0mg,0.70mmol)、5%Pd/C(500.0mg,100%m)及び10mlのDMFを入れ、室温下で約3時間反応させた。HPLCにより完全に反応したことを確認した後、濾過して濾液を得、粗製品3cをそのまま次の反応に使用した。
【0113】
ステップ4:化合物3dの合成
粗製品3cを氷水浴に置き、DIPEA(0.12mL,0.70mmol)を加え、さらに入化合物M2(4.0mL,0.8mmol)を加え、加えた後、室温に昇温させて1h反応させた。HPLCにより反応終了を監視し、液相を精製し、分取液を得て凍結乾燥して280.0mg白色固体(収率46%)を得た。LC-MS:[M+H]872.3。
【0114】
ステップ5:化合物3eの合成
10ml一ツ口フラスコに3d(280.0mg,0.241mmol)、化合物1(142.2mg,0.241mmol)、HATU(137.6mg,0.362mmol)、HOBt(38.9mg,0.362mmol)及び5mlのDMFを入れ、氷水浴下で10min撹拌し、DIEA(120uL,0.723mmol)を滴下して引き続き反応させ、HPLCにより完全に反応したことを確認した後、分取分離し、分取液を凍結乾燥して154.1mg黄色固体3e(収率73.6%;LC-MS:[M+H]1289.5)、62.5mg黄色固体iso-3e(収率29.8%、LC-MS:[M+H]1289.5)を得た。
【0115】
ステップ6:化合物Ln-D4及びLn-D5の合成
25ml一ツ口フラスコに3e(154.1mg,0.118mmol)、臭化亜鉛(532.5mg,2.36mmol)及び10mlニトロメタンを入れ、室温下で撹拌した。HPLCにより原料が完全に反応したことを確認した後、反応液を濃縮した後、HPLC分取により精製し、分取液を凍結乾燥し、82.0mg黄色固体(収率60%)を得た。LC-MS:[M+H]1133.4。
【0116】
25ml一ツ口フラスコにiso-3e(62.5mg,0.048mmol)、臭化亜鉛(216.0mg,0.959mmol)及び7mlニトロメタンを入れ、室温下で撹拌した。HPLCにより原料が完全に反応したことを確認した後、反応液を濃縮した後、HPLC分取により精製し、分取液を凍結乾燥し、96.3mg黄色固体(収率41%)を得た。LC-MS:[M+H]1133.4。
【0117】
実施例14:化合物Ln-D6及びLn-D7の合成
【化33】
【0118】
ステップ1:化合物4aの合成
250ml丸底フラスコにM1(3.75g,10.19mmol)及び50mlのTHFを入れ、氷水浴下で15min撹拌した。p-トルエンスルホン酸一水和物(194.0mg,1.02mmol)を加え、引き続き10min撹拌した。フラスコの上部に定圧滴下漏斗を取り付け、2-シクロプロピル-2-ヒドロキシ酢酸ベンジル(4.34g,20.4mmol)を滴下して約6hで完全に反応させた。TLCにより原料がなくなったことを確認した後、炭酸水素ナトリウムで反応をクエンチし、混合液を酢酸エチルで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離して2.13g白色固体(収率41%)を得た。
【0119】
ステップ2:化合物4bの合成
1号50ml丸底フラスコに4a(2.80g,5.38mmol)及び10mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌した。DIEA(0.981g,6.45mmol)を滴下し、約0.5h反応させ、TLCにより原料がなくなったかを監視し、完全に反応した後に使用に備えた。2号100ml丸底フラスコにM4(2.22g,5.38mmol)、PyBop(3.35g,6.45mmol)、HOBt(0.87g,6.45mmol)、DIEA(1000uL,6.45mmol)及び10mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌し、完全に反応した1号フラスコ中の反応液を2号反応フラスコに滴下した。HPLCにより原料がなくなったかを監視し、反応が完全に終了した後、HPLC分取により分離した。凍結乾燥して2.63g白色固体(収率61%)を得た。
【0120】
ステップ3:化合物4cの合成
50mL一ツ口フラスコに4b(1003.1mg,1.46mmol)、5%Pd/C(1004.2mg,100%m)及び15mlのDMFを入れ、水素バルーンを添加して水素置換し、室温下で約3時間反応させた。HPLCにより完全に反応したことを確認した後、濾過して濾液を得、粗製品4cをそのまま次の反応に使用した。
【0121】
ステップ4:化合物4dの合成
粗製品4cを氷水浴に置き、DIPEA(0.26mL,1.6mmol)を加え、さらに化合物M2(8.0mL,1.6mmol)を加え、その後、室温に昇温させて2h反応させた。HPLCにより反応終了を監視し、液相を精製し、分取液を得て凍結乾燥して945.1mg白色固体(収率76%)を得た。LC-MS:[M+H]844.4。
【0122】
ステップ5:化合物4eの合成
10ml一ツ口フラスコに4d(422.0mg,0.50mmol)、化合物1(265.5mg,0.50mmol)、HATU(285.1mg,0.75mmol)、HOBt(101.3mg,0.75mmol)及び5mlのDMFを入れ、氷水浴で10min撹拌し、DIEA(248uL,1.50mmol)を滴下して引き続き反応させ、HPLCにより完全に反応したことを確認した後、分取分離し、分取液を凍結乾燥して268.0mg黄色固体(収率42%)を得た。LC-MS:[M+H]1261.5。
【0123】
ステップ6:化合物Ln-D6及びLn-D7の合成
50ml一ツ口フラスコに4d((268.0mg,0.204mmol)、臭化亜鉛(1168.1mg,5.187mmol)及び10mlニトロメタンを入れ、室温下で撹拌した。HPLCにより監視し、完全に反応した後、反応液を濃縮した後、HPLC分取により精製し、分取液を凍結乾燥してLn-D6黄色固体68.0mg(収率28%,LC-MS:[M+H]1105.4)、Ln-D7黄色固体82.0mg(収率35%,LC-MS:[M+H]1105.4)を得た。
【0124】
実施例15:化合物Ln-D8の合成
【化34】
【0125】
ステップ1:化合物5aの合成
250ml丸底フラスコにM1(3.74g,10.16mmol)及び50mlのTHFを入れ、氷水浴下で15min撹拌した。p-トルエンスルホン酸一水和物(193.1mg,1.02mmol)を加え、引き続き10min撹拌した。フラスコの上部に定圧滴下漏斗を取り付け、1-(ヒドロキシメチル)シクロブタンカルボン酸ベンジル(4.59g,20.3mmol)を滴下した。滴下終了後に、氷水浴下で引き続き撹拌し、約5hで完全に反応した。TLCにより原料がなくなったことを確認した後、炭酸水素ナトリウムで反応をクエンチし、混合液を酢酸エチルで3回抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離して4.60g白色固体(収率82%)を得た。
【0126】
ステップ2:化合物5bの合成
1号50ml丸底フラスコに5a(4.38g,8.29mmol)及び20mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌した。DBU(1363uL,9.11mmol)を滴下し、約0.5h反応させ、TLCにより原料がなくなったかを監視し、完全に反応した後に使用に備えた。2号50ml丸底フラスコにM4(3.42g,8.29mmol)、PyBop(5.17g,9.95mmol)、HOBt(1.34g,9.95mmol)、DIEA(1640uL,9.95mmol)及び30mlのDMFを入れ、氷水浴下で15min撹拌し、完全に反応した1号フラスコ中の反応液を2号反応フラスコに滴下した。HPLCにより原料がなくなったかを監視し、反応が完全に終了した後、HPLC分取により分離した。凍結乾燥して4.60g白色固体(収率68%)を得た。
【0127】
ステップ3:化合物5cの合成
50mL一ツ口フラスコに5b(1041.5mg,1.26mmol)、5%Pd/C(1056.7mg,100%m)及び10mlのDMFを入れ、水素バルーンを添加して水素置換し、室温下で約3時間反応させた。HPLCにより監視し、反応が完全に終了した後、超音波で水素ガスを除去した。濾過して濾液を得、粗製品5cをそのまま次の反応に使用した。
【0128】
ステップ4:化合物5dの合成
粗製品5cを氷水浴に置き、DIPEA(0.24mL,1.4mmol)を加え、さらに入化合物M2(7.0mL,1.4mmol)を加え、加えた後、室温に昇温させて1h反応させた。HPLCにより反応終了を監視し、液相を精製し、分取液を得て凍結乾燥して803.5mg白色固体(収率64%)を得た。LC-MS:[M+H]858.4。
【0129】
ステップ5:化合物5eの合成
10ml一ツ口フラスコに5d(201.3mg,0.203mmol)、M2アミノ異性体(100.0mg,0.203mmol)、HATU(107.4mg,0.304mmol)、HOBt(38.2mg,0.304mmol)及び5mlのDMFを入れ、氷水浴下で10min撹拌し、DIEA(248uL,1.50mmol)を滴下して引き続き反応させ、HPLCにより完全に反応したことを確認した後、分取分離し、分取液を凍結乾燥して219.1mg黄色固体(収率84%)を得た,LC-MS:[M+H]1275.5。
【0130】
ステップ6:化合物Ln-D8の合成
50ml一ツ口フラスコに5d(219.1mg,0.170mmol)、臭化亜鉛(765.3mg,3.40mmol)及び20mlニトロメタンを入れ、室温下で撹拌した。HPLCにより監視し、完全に反応した後、反応液を濃縮した後、HPLC分取により精製し、分取液を凍結乾燥し、黄色固体120.2mg(収率62%)を得た。LC-MS:[M+H]1119.4。
【0131】
実施例16:化合物Ln-D9の合成
【化35】
【0132】
ステップ1:化合物1fの合成
50mL一ツ口フラスコに1b(500.0mg,0.772mmol)、5%Pd/C(500.0mg,100%m)及び10mlのDMFを入れ、水素バルーンを添加して水素置換し、室温下で約3時間反応させた。HPLCにより監視し、反応が完全に終了した後、超音波で水素ガスを除去した。濾過して濾液を得て粗製品1cを得た。氷水浴下で濾液に順にMC(280.1mg,0.9mmol),DIEA(235mg,1.8mmol)を加え、窒素ガス保護下で加えた後、室温に昇温させて1h反応させ、HPLCにより監視し、分取液体クロマトグラフィーにより精製し、凍結乾燥して化合物1f(268.9mg,86%)を得た。MS:[M+H]617.2。
【0133】
ステップ2:化合物Ln-D9の合成
10ml一ツ口フラスコに1f(268.9mg,0.44mmol)、エキサテカンメシル酸塩(233.8mg,0.44mmol,購入)、HATU(190.5mg,0.50mmol)、HOBt(67.8mg,0.50mmol)及び5mlのDMFを入れ、氷水浴下で10min撹拌し、DIEA(140uL,0.84mmol)を滴下して引き続き反応させ、HPLCにより完全に反応したことを確認した後、分取分離し、分取液を凍結乾燥して254.3mg黄色固体(収率56%)を得た。LC-MS:[M+H]1034.4。
【0134】
実施例17:対照化合物の合成
特許CN111689980及びWO2020063676に記載の方法により以下の化合物を合成した
【表1】
【0135】
実施例18:カップリング(結合)によるADC薬物の一般製造方法
予備精製後のモノマー率が95%を超える抗体Abを、限外濾過遠心分離チューブによりリン酸緩衝液(濃度10mg/mL)に移した。抗体モル数の20倍のTCEPを加え、室温で10h反応させて抗体鎖間のジスルフィド結合を断裂させた。抗体モル数の20倍の結合ユニット毒素を加え、室温で2h反応させた。反応終了後に、カットオフ分子量30KDaの限外濾過遠心分離チューブを用いて溶液をPBSに交換し、結合していないペイロードを除去した。液交換後のADCサンプルを0.22ミクロン滅菌フィルターで濾過し、使用まで保存した。
【0136】
カップリング用payload化合物Ln-D1、Ln-D2、Ln-D4、Ln-D5、Ln-D6、Ln-D7、Ln-D8及びLn-D9を、本実施例18に記載のカップリング一般法により抗体分子Ab(抗体分子Abは、それぞれA:Trastuzumab抗体、B:Cetuximab抗体であってもよい)とカップリングした。カップリング生成物に対して、逆相高速液体クロマトグラフィーにより、その平均薬物/抗体比(DAR)値を測定した。得られたADC薬物分子の関連情報及びpayload分子の対応状況を下表に示す。
【表2】
【0137】
実施例19:カンプトテシンキラル誘導体のlogP値試験
logP 値は、化合物の水溶性、膜透過性、体内ADME過程、及び化合物の受容体に対する親和性に密接に関係し、化合物が生物膜を透過する過程において重要な作用を有する。カンプトテシン薬物のn-オクタン(油)及び水中での分布係数を測定してlogP値を得た。薬物を研究した結果を下表に示す。
【表3】
【0138】
以上のLogP結果から分かるように、本発明の化合物は、より低いLogP値を有し、水溶性がより良好である。
【0139】
実施例20:ADCの血漿凝集、分解試験
無菌で特定量のADCサンプルを取り、血漿におけるADCの最終濃度が0.6mg/mlとなるようにヒトIgGが除去されたヒト血漿に加えた。各ADCは、それぞれ3チューブ調製し、37℃水浴に置いてインキュベートし、それぞれ0h、72h、7dインキュベートした後、ADCサンプルを取り出し、各チューブにProteinA(MabSelect SuRe TMLX Lot:#10221479GE,PBSで洗浄したものを取り)100μLを加え、縦型ミキサーで揺動して2h吸着し、洗浄、溶出及びTris-HCl中和のステップを行い、インキュベートした後のADCが得られ、特定の時間インキュベートしたADCサンプルをSEC検出し、凝集分解状況を測定した。
【表4】
【0140】
ADC-1のpayloadは、市販抗腫瘍薬物Enhertuと一致する。ADC薬物の血漿中での凝集及び分解の試験から分かるように、カンプトテシンキラル誘導体ADCの凝集及び分解は、ADC-1よりも顕著に低く、より優れた物理的及び化学的特性を有し、血漿中でより安定して存在することができる。
【0141】
実施例21:カンプトテシンキラル誘導体の細胞活性試験
以下の実験過程によりカンプトテシンキラル誘導体の細胞毒性活性を測定した。
カンプトテシンのキラル誘導体化薬物をそれぞれA431、MDA-MB-468、SK-BR-3、Bxpc-3及びSW620腫瘍細胞に加え、72時間後に、細胞の生存率を測定した。細胞のインビトロ実験に基づいて細胞の生存率、細胞毒性、及び本発明のカンプトテシン薬物によって誘導されるプログラム細胞死を測定した。
【0142】
細胞増殖試験によりカンプトテシン薬物のインビトロ有効性を測定した。CellTiter 96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assayは市販品(Promega Corp.,Madison,WI)である。CellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution Cell Proliferation Assay(a)は、比色法により細胞増殖及び細胞毒性試験における生細胞数を検出する検出試薬である。この試薬は、新しいテトラゾール化合物[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム, 内塩;MTS]及び電子カップリング剤(phenazine ethosulfate;PES)を含む。PESは、強化された化学安定性を有することで、MTSと混合して安定した溶液を形成する。試薬中のMTS(Owen's reagent)は、細胞によって生物還元されて色があるホルマザン生成物になり、そのまま培地に溶解することができる。このような変換は、代謝が活発する細胞のデヒドロゲナーゼによるNADPH又はNADHの作用下で完成する可能性がある。検出する際に、適量のCellTiter96(登録商標)Aqueous One Solution Reagentをそのまま培養プレートウェルの培地に入れ、1-4時間インキュベートし、マイクロプレートリーダーにより490nmでの吸光度の値を読み取ればよい。
【0143】
490nmで検出されたホルマザン生成物の量は、培養中の生細胞数と比例する。MTSのホルマザン生成物が組織培地に可溶であるため、CellTiter 96(登録商標)Aqueous One Solution Assayは、MTT又はINT法と比較して操作ステップが少ない。
【0144】
本発明において、A431、MDA-MB-468、SK-BR-3、Bxpc-3及びSW620をインビトロ有効性検出の研究系として使用する。96ウェルプレートにおいて、適切な細胞密度で均一に接種し、COインキュベーター(37℃)でインキュベートした。24時間後、顕微鏡下で細胞状態が正常であることを確認し、カンプトテシン薬物を加えた。培地でカンプトテシン薬物(初期濃度1uM、7倍希釈、8つの濃度点;最後の2列はそれぞれ対照群(即ち、細胞+培地,薬物処理なし)及びブランク群(即ち、細胞なし、培地のみ含有;バックグラウンド除去用))を希釈し、薬物を均一に混合した後、薬物を対応する細胞ウェルに加え、COインキュベーター(37℃)に入れて3日間インキュベートした。3日間後、各ウェルに20ulのMTS(Promegm,G3581)を加えて2時間反応させ、マイクロプレートリーダー(Molecular Device,型番:SpectraMAX190)により490nMで読み取った。ミトコンドリア内のデヒドロゲナーゼの活性を検出することでIC50を計算して細胞の増殖に対するカンプトテシン薬物の阻害作用を評価した。対応するカンプトテシンキラル誘導体IC50(nM)の測定結果を下表に示す。
【表5】
【0145】
Dxdは、市販された抗がんADC薬物Enhertuの活性成分であり、高活性のカンプトテシン系薬物である。本発明者らは、細胞活性実験により本発明に記載のカンプトテシンキラル誘導体が代表的な腫瘍細胞BXPC-3、A431、SW620、MDA-MB-468及びSK-BR-3のいずれにもDxd以上の細胞活性を示すことを実証した。
【0146】
実施例22:ADCのインビトロ血漿安定性
無菌で特定量のADCサンプルを取り、ADCの最終濃度が0.6mg/mlとなるようにヒトIgGが除去された無菌ヒト血漿に入れた。各ADCは、3チューブ調製し、37℃水浴に置いてインキュベートし、それぞれ0h、72h、7d時間インキュベートした後、ADCサンプルを取り出し、各チューブにProteinA(MabSelect SuRe TMLX Lot:#10221479GE,PBSで洗浄したものを取る)100μLを入れ、縦型ミキサーで揺動して2h吸着し、洗浄、溶出及びTris-HCl中和のステップを行った後、インキュベートされたADCを得た。特定時間インキュベートされたADCサンプルについてRP-HPLCによりDAR値を測定し、サンプルの血漿安定性を判定した。実験の結果から分かるように、本発明のADCは、血漿インキュベーションの過程においてほとんど損失しないか、又は損失が非常に少なく、血漿中で良好な安定性を有する。早期分解により毒性が発生する可能性が低い。
【0147】
【表6】
【0148】
実施例23:ADC抗腫瘍細胞活性試験
本発明において、MDA-MB-468、BT474をインビトロ有効性検出の研究系として使用する。適量の腫瘍細胞系を96ウェルプレートに均一に接種し、COインキュベーターに入れてインキュベートした。24時間後に、顕微鏡下で細胞状態が正常であることを確認した後、薬物を加えて処理した。培地で薬物(ADC薬物の初期濃度が500nM、希釈倍数が7倍で、合計8つの濃度点あり、毒素と抗体との理論カップリング比(DAR)が8:1で、実際なカップリング比が約7.5:1であるため、毒素の初期濃度は4.0μMで、7倍の濃度勾配で希釈し、8つの濃度点ある)を希釈し、均一に混合した後、対応する細胞ウェルに加え、その後の2列はそれぞれ対照群(即ち、細胞+培地,薬物処理なし)及びブランク群(即ち、細胞なし、培地のみ含有、バックグラウンド除去用)であった。COインキュベーター(37℃)に入れて5日間インキュベートした。5日間後、各ウェルに20μLのMTS(Promega,G3581)を加え、2時間反応させ、マイクロプレートリーダー(Molecular Device,型番:SpectraMAX190)により波長490nmでの吸光の値を読み取った。ミトコンドリア内のデヒドロゲナーゼの活性を検出することでIC50を計算して腫瘍細胞の増殖に対するADC薬物の阻害作用を評価した。
【0149】
【表7】
【0150】
ADC-1は、市販抗腫瘍薬物Enhertuである。上記のADC細胞活性試験により分かるように、本発明に記載のカンプトテシンキラル誘導体薬物は、結合ユニットLを介して抗体にカップリングされた後、多くの腫瘍細胞系においても良好な抗腫瘍活性を示し、ADC-1と比較して、一部のADC活性はより優れ、臨床応用価値は非常に高い。
【0151】
実施例24:ADCインビボ薬効実験
本発明において、単一腫瘍NCI-N87腫瘍担持ヌードマウスモデルを構築してADCカップリング薬物のインビボ有効性を評価した。即ち、5×10個のNCI-N87細胞を4~6週齢のBALB/cヌードマウスの右肩に皮下接種し、マウス腫瘍の平均体積が162mmになった後、腫瘍のサイズによって5匹/群でランダムに群分けし、0、7、14、21日目にそれぞれブランク対照(緩衝液ブランク)及び3mg/kg用量の抗体薬物複合体ADC-1、ADC-2、ADC-3、ADC-5、ADC-6、ADC-7を静脈注射した。腫瘍体積の測定データは、測定時の腫瘍平均体積であり、マウスの体重変化を記録し、ADC薬物のインビボ有効性及び初期毒性を観察した。
【0152】
【表8】
【0153】
ADC-1は、市販された抗腫瘍薬物Enhertuである。上記のADCマウスインビボ薬効実験により、本発明に記載のカンプトテシンキラル誘導体薬物は、結合ユニットLを介して抗体にカップリングされた後、腫瘍担持マウスにおいて明らかな抗腫瘍活性を示し、平均腫瘍体積がブランク対照よりも顕著に小さいことが実証された。ADC-1と比較して、ADC-2の活性は同じレベルであり、ADC-5はより高く、ADC-7は優れた活性を示した。マウスの体重は、投薬期間中で顕著な変化がなく、群内でマウスの死亡がないため、本発明に記載のカンプトテシンキラル誘導体薬物は、良好な安全性を有し、研究応用価値は非常に高い。
【国際調査報告】