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特表2023-545584クリーンルームシステムおよびそのようなクリーンルームシステムを制御するためのコンピュータ実行方法
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  • 特表-クリーンルームシステムおよびそのようなクリーンルームシステムを制御するためのコンピュータ実行方法 図1
  • 特表-クリーンルームシステムおよびそのようなクリーンルームシステムを制御するためのコンピュータ実行方法 図2
  • 特表-クリーンルームシステムおよびそのようなクリーンルームシステムを制御するためのコンピュータ実行方法 図3a
  • 特表-クリーンルームシステムおよびそのようなクリーンルームシステムを制御するためのコンピュータ実行方法 図3b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】クリーンルームシステムおよびそのようなクリーンルームシステムを制御するためのコンピュータ実行方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
F24F7/06 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547747
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021078358
(87)【国際公開番号】W WO2022079121
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】20202396.6
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523143822
【氏名又は名称】ニューロプラスト ベヘール ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】デ ミュンター、ヨハネス ペトルス ヨーゼフ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ラング、エッケハルト
【テーマコード(参考)】
3L058
【Fターム(参考)】
3L058BF09
(57)【要約】
【解決手段】本発明は、微粒子が極めて少ない条件下で、一連の製造工程に従って医薬品を製造するためのクリーンルーム設備に関する。本開示の第1の態様では、クリーンルーム模擬システムが提案される。例えばこのシステムは、微粒子が極めて少ない条件下で、一連の製造工程に従って医薬品を製造するためのクリーンルームシステムであって、複数の空調されたコンパートメントを含むクリーンルーム設備を少なくとも1つ備える。複数の空調されたコンパートメントの各々は、製造工程を実行するための装置を備える。複数の空調されたコンパートメントは、互いに機械的に接続される。クリーンルーム設備を通って製造工程が実行される向きで見たとき、複数の空調されたコンパートメントは、空気中の単位体積あたり許される微粒子の数およびサイズに関するクリーンルーム分類基準が緩いものから厳しいものの順に配置されて構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粒子が極めて少ない条件下で、一連の製造工程に従って医薬品を製造するためのクリーンルームシステムであって、
複数の空調されたコンパートメントを含むクリーンルーム設備を少なくとも1つ備え、
前記複数の空調されたコンパートメントの各々は、前記製造工程を実行するための装置を備え、
前記複数の空調されたコンパートメントは、互いに機械的に接続され、
製造工程が前記クリーンルーム設備を通って実行される向きで見たとき、前記複数の空調されたコンパートメントは、空気中の単位体積あたり許される微粒子の数およびサイズに関するクリーンルーム分類基準が緩いものから厳しいものの順に配置されることを特徴とするクリーンルームシステム。
【請求項2】
前記各クリーンルーム設備の現地に配置された少なくとも1つのクリーンルーム設備制御ユニットと、
前記各クリーンルーム設備とは別の場所に配置されたクリーンルームシステム制御ユニットと、
をさらに備え、
前記クリーンルーム設備制御ユニットの各々と前記クリーンルームシステム制御ユニットとは、データ通信ネットワークを介して動作可能に相互接続され、
前記クリーンルーム設備制御ユニットは、
関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造工程に関連するパラメータデータを取得して蓄積し、
前記データ通信ネットワークを介して、前記パラメータデータを前記クリーンルームシステム制御ユニットに送信するように構成され、
前記クリーンルームシステム制御ユニットは、
前記データ通信ネットワークを介して、前記クリーンルーム設備制御ユニットから送信されたパラメータデータを受信し、
受信したパラメータデータを所定の参照パラメータデータと比較し、
比較結果に基づいて、関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造を制御することを特徴とする請求項1に記載のクリーンルームシステム。
【請求項3】
前記複数の空調されたコンパートメントの各々は、関連するクリーンルーム分類条件を満たすHEPAまたはULPAエアフィルターを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のクリーンルームシステム。
【請求項4】
2つの機械的に接続された空調されたコンパートメントの間に少なくとも1つの空気透過性通路をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のクリーンルームシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの空気透過性通路は、空気透過性ドアとして形成され、
前記空気透過性ドアは、開閉可能またはスライド可能に、前記空調されたコンパートメントに取り付けられることを特徴とする請求項4に記載のクリーンルームシステム。
【請求項6】
前記複数の空調されたコンパートメントの各々は、空調されたコンパートメントで実行される製造工程に関連する少なくとも1つのパラメータを検出し、検出されたパラメータに関するパラメータデータを生成するための少なくとも1つの検出器を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のクリーンルームシステム。
【請求項7】
前記少なくとも1つの検出器は、前記空調されたコンパートメント内の製造デバイスに備えられていることを特徴とする請求項6に記載のクリーンルームシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの検出器は、圧力計、温度計、湿度計、空気組成検出器、ビデオカメラまたは時間量測定器であることを特徴とする請求項6または7に記載のクリーンルームシステム。
【請求項9】
前記複数の空調されたコンパートメントは、製造工程に関係する少なくとも1つのパラメータに関する設定データを入力し、前記空調されたコンパートメントで実行される製造工程に関係する少なくとも1つのパラメータに関するパラメータデータを表示するための入力/出力インタフェースを備えることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のクリーンルームシステム。
【請求項10】
前記複数の空調されたコンパートメントの少なくとも1つは、グローブボックスとして構成されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のクリーンルームシステム。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載された特徴を有するクリーンルーム設備。
【請求項12】
請求項1から10のいずれかに記載された特徴を有するクリーンルーム設備で使われる空調されたコンパートメント。
【請求項13】
請求項1から10のいずれかに記載のクリーンルームシステムを制御するためのコンピュータ実行方法であって、
前記少なくとも1つのクリーンルーム設備とは別の場所で、前記少なくとも1つのクリーンルーム設備で医薬品を製造するための一連の製造工程をモニタするステップと、
関連するクリーンルーム設備で実行される製造工程に関係するパラメータに関するパラメータデータを取得するステップと、
前記少なくとも1つのクリーンルーム設備とは別の場所で、取得したパラメータデータと所定の参照パラメータデータとを比較するステップと、
比較結果に基づいて、関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造を制御するステップと、
を含むことを特徴とするコンピュータ実行方法。
【請求項14】
前記医薬品の製造を制御するステップは、
取得したパラメータデータが所定の参照パラメータデータと一致しないとき、関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造を中断するステップと、
前記少なくとも1つのクリーンルーム設備とは別の場所で、一連の製造工程および関連するクリーンルーム設備におけるパラメータデータを検証するステップと、
前記少なくとも1つのクリーンルーム設備とは別の場所で、一連の製造工程および関連するクリーンルーム設備におけるパラメータデータを適用するステップと、
関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造を再開するステップと、
を含むことを特徴とする請求項13に記載のコンピュータ実行方法。
【請求項15】
コンピュータで実行されたとき、前記コンピュータに請求項13または14のいずれかに記載のコンピュータ実行方法のステップを実行させる命令を含むことを特徴とするコンピュータプログラムプロダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子極めて少ない環境での製造工程が必要とされる医薬品等を製造するためのクリーンルーム設備に関する。特に本発明は、このようなクリーンルーム設備を実現するクリーンルームシステム、およびそのようなクリーンルームシステムを制御する(特に医薬品等の製造工程を監視する)ためのコンピュータ実行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルームまたはクリーンルーム設備はよく知られており、特別な工業製品(集積回路、CRT、LCD、OLEDおよびマイクロLEDディスプレイ等)の製造または科学研究の一部をなす。クリーンルームは、微粒子(埃、空中浮遊有機物、気化粒子等)の量が非常に少なく維持されるように設計される。通常クリーンルームは、所定の分子基準で、空気中の単位体積あたりの粒子数を用いて定量化された清浄度レベルを有する。
【0003】
クリーンルームは非常に大きいことがある。例えば、製造設備全体がクリーンルームに含まれることにより、その床面積が数千平方メートルにおよぶこともある。こうしたクリーンルームは、半導体製造、太陽電池パネル、再充電可能バッテリー、LED、LCDおよびOLEDディスプレイの製造、バイオテクノロジー、ライフサイエンス等、環境汚染に非常に敏感な分野で広く使われる。
【0004】
クリーンルーム設備内の環境汚染を防ぐために、必要な内部清浄度レベルを維持する目的で、広範囲にわたる技術的手法が適用される。こうした手法の1つに、クリーンルーム設備に流入する外気の濾過および冷却がある。このとき使われるフィルターは、埃を除去するために、ますます細かくなっている。またクリーンルーム設備内の空気は、ファンフィルターユニットを通して、常時再循環されている。こうしたファンフィルターユニットは、汚染物質を除去するための高性能微粒子エアフィルター(HEPA)や超低粒子エアフィルター(ULPA)を含む。
【0005】
またクリーンルーム内の空中浮遊物を最小化するために、特別な照明装置、壁、機材などといった素材が使われる。さらに、クリーンルーム内の温度および湿度のレベルは常時制御され、望ましくない静電気が発生するとイオン化バーを用いて中性化される。
【0006】
クリーンルーム内部を望ましい清浄度に維持するための別の技術的手法として、出入りする担当者のためのエアロック(ときにエアシャワーを含む)がある。これに加えて担当者は、クリーンルーム設備に入る際の微粒子持ち込みのリスクを最小化するために、フード、マスク、グローブ、ブーツ、カバーオールなどといった防塵服を身につける必要がある。さらにクリーンルーム設備は、国際標準化された分類基準に従い、医薬品、集積回路、CRT、LCD、OLED、マイクロLEDディスプレイなどの製造の開始が許可される前に、監督当局による現場試験および承認が必要がある。
【0007】
クリーンルームは、国際標準化された分類または清浄度等級に従って分類される。クリーンルームシステムは、清浄度分類(クラスA、B、CまたはD。ここで、クラスAは最上級の清浄度を示し、クラスDは最下級の清浄度を示す)に応じて異なるコンパートメント(人または物品の清浄度等級によって異なる)を有する。クラスCまたはDのクリーンルームに入る前には、人は何度か防塵服を身につける必要があり、物品は何度か開梱される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のすべてが要因となって、クリーンルーム設備の構築は複雑かつ高価となり、熟練した担当者に対する高度な訓練、長期間におよぶ保守、クリーンルーム内作業時間の限定などが必要となる。さらにこのような複雑なクリーンルームの構築には大きな床面積が必要であり、特にこれは発展途上国のハイテク産業の参入を阻む要因となる。
【0009】
本発明は、より簡易で経済的な模擬クリーンルーム設備を与えることを目的とする。この設備は、構築が困難だった場所にも構築でき、より柔軟な環境で運用でき、床面積を縮小できつつ、国際標準化された分類における最も厳しい清浄度等級に対応できる。
【0010】
本発明の別の利点は、従業員が防塵服を身につける必要がなく、加圧された室内で作業する必要もないことにある。これにより、従来のクリーンルームの制限を克服でき、製品の安全性を損なうことなく、より効率的な作業が可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1の態様では、クリーンルーム模擬システムが提案される。例えばこのシステムは、微粒子が極めて少ない条件下で、一連の製造工程に従って医薬品を製造するためのクリーンルームシステムであって、複数の空調されたコンパートメントを含むクリーンルーム設備を少なくとも1つ備える。複数の空調されたコンパートメントの各々は、製造工程を実行するための装置を備える。複数の空調されたコンパートメントは、互いに機械的に接続される。製造工程がクリーンルーム設備を通って実行される向きで見たとき、複数の空調されたコンパートメントは、空気中の単位体積あたり許される微粒子の数およびサイズに関するクリーンルーム分類基準が緩いものから厳しいものの順に配置される。
【0012】
クリーンルーム設備をモジュール的に構成する(このクリーンルーム設備は複数の空調されたコンパートメントを含むクリーンルーム設備を少なくとも1つ備え、複数の空調されたコンパートメントの各々は、製造工程を実行するための装置を備え、複数の空調されたコンパートメントは、互いに機械的に接続される)ことにより、クリーンルーム設備の構築に伴う複雑さを軽減することができる。空気中の単位体積あたり許される微粒子の数およびサイズに関して、厳しい(または最も厳しい)条件を要求する製造工程は、技術的により複雑で高度な(従って高価な)空調されたクリーンルームコンパートメントで実行される。一方、比較的緩い(従って、より多数またはサイズの大きい微粒子の存在が許される)条件下で実行される製造工程に使われる空調されたクリーンルームコンパートメントは、技術的により簡易なものであってもよい。これにより、前述のクリーンルーム設備を備えたクリーンルームシステムを、比較的緩い条件で所定のエリア(国)に構築でき、最も厳しいクリーンルーム分類基準に従うコンパートメントを一部のコンパートメントに限定することができる。
【0013】
さらに、他の複雑な技術的手法(例えば、エアロック等)を省略することができるので、担当者は防塵服を身につける必要がなくなる。これにより、クリーンルームシステムまたは設備の運用が著しく簡易化される。さらに上記の利点は、担当者が加圧された環境で作業をしなくていよいことに拡張される。またクリーンルーム設備の床面積を縮小することができるので、クリーンルーム全体の効率が向上する。
【0014】
一連の製造工程に従う医薬品等の製造プロセスの管理および品質の全体を維持するために、あるクリーンルームシステムは、各クリーンルーム設備の現地に配置された少なくとも1つのクリーンルーム設備制御ユニットと、各クリーンルーム設備とは別の場所に配置されたクリーンルームシステム制御ユニットと、をさらに備える。クリーンルーム設備制御ユニットの各々とクリーンルームシステム制御ユニットとは、データ通信ネットワークを介して動作可能に相互接続される。クリーンルーム設備制御ユニットは、関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造ステップに関連するパラメータデータを取得して蓄積し、データ通信ネットワークを介して、前記パラメータデータを前記クリーンルームシステム制御ユニットに送信するように構成される。クリーンルームシステム制御ユニットは、データ通信ネットワークを介して、クリーンルーム設備制御ユニットから送信されたパラメータデータを受信し、受信したパラメータデータを所定の参照パラメータデータと比較し、比較結果に基づいて、関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造を制御する。
【0015】
これにより、高度で分散的な医薬品等の製造システムが構築できる。ここでは、関連するクリーンルーム設備での様々な製造工程パラメータがリアルタイムで測定され、これがオフサイトの中央システム制御ユニットに送信され、所定(所望)の製造工程パラメータと比較される。このオフサイトでの制御は、オフサイトのクリーンルームシステム制御ユニットで作業する熟練の担当者によって実行されてもよい。この場合、こうした熟練の担当者は、実際の製造工程が実行されるクリーンルーム設備に配置する必要はない。
【0016】
関連するクリーンルーム設備で実行される製造工程は、測定または検出した製造工程パラメータと、所定(所望)の製造工程パラメータと、の比較に基づいて制御することができる。製造工程のこうした制御は、例えば、製造された医薬品等の品質許可および(使用または販売のための)リリース、製造工程の適合、または、比較の結果測定された製造工程パラメータが規格外だった場合は製造工程の(一時的または永久的な)中断などを含んでもよい。
【0017】
さらなる例では、複数の空調されたコンパートメントの各々は、関連するクリーンルーム分類条件を満たすHEPAまたはULPAエアフィルターを備える。これにより、クリーンルーム設備全体を、最高レベルの(または最も厳しい)クリーンルーム分類基準に従って構築する必要がなくなる。この場合、このような最高レベルの(または最も厳しい)クリーンルーム分類基準に従う(すなわち、空気中の単位体積あたり許される微粒子の数およびサイズに関して最も厳しい)必要のある製造工程に関する部分のみを、当該基準を満足するように構築すればよい。
【0018】
本開示のさらなる例では、クリーンルームシステムは、2つの機械的に接続された空調されたコンパートメントの間に少なくとも1つの空気透過性通路をさらに備える。これにより、要求される空気環境に応じて製造工程が実行できるように、中間生成物を、比較的多数のサイズの大きい微粒子が存在する空調されたコンパートメントから、より少数かつサイズの小さい微粒子のみが存在する空調されたコンパートメントに向けて送ることができる。
【0019】
好ましくは、少なくとも1つの空気透過性通路は、空気透過性ドアとして形成される。この空気透過性ドアは、開閉可能またはスライド可能に、空調されたコンパートメントに取り付けられる。これにより、少なくとも1つの空気透過性通路(または、コンパートメント間のエアロック)は、コンパートメント間に圧力の連続が形成され、空気が逆流せず、空気に関する微粒子、温度、湿度および圧力の規格が満足されるように構築される。
【0020】
本開示のさらなる例では、複数の空調されたコンパートメントの各々は、空調されたコンパートメントで実行される製造ステップに関連する少なくとも1つのパラメータを検出し、検出されたパラメータに関するパラメータデータを生成するための少なくとも1つの検出器を備える。さらに、この少なくとも1つの検出器は、空調されたコンパートメント内の製造デバイスに備えられている。これにより、医薬品等の製造工程の複数の段階の継続的なモニタリングが可能となる。さらに、クリーンルームシステム内での、製造工程品質の連続的かつリアルタイムな検証が可能となる。必要であれば、熟練した担当者による製造工程の遠隔制御が可能となる。こうした熟練の担当者は、実際の製造工程が実行されるクリーンルーム設備に配置する必要はない。
【0021】
いくつかの例では、少なくとも1つの検出器は、圧力計、温度計、湿度計、空気組成検出器、ビデオカメラまたは時間量測定器である。
【0022】
製造工程現場での監視・制御を改善するために、複数の空調されたコンパートメントは、製造ステップに関係する少なくとも1つのパラメータに関する設定データを入力し、空調されたコンパートメントで実行される製造ステップに関係する少なくとも1つのパラメータに関するパラメータデータを表示するための入力/出力インタフェースを備えてもよい。この監視・制御は、必要であれば、技術的熟練度が比較的低い担当者が行ってもよい。
【0023】
クリーンルームシステムおよびクリーンルーム設備の好ましい例(製造工程に必要な最適なクリーンルーム空気条件の制御を可能とする)では、複数の空調されたコンパートメントの少なくとも1つは、グローブボックスとして構成される。空調されたコンパートメントをグローブボックスとして構成することにより、クリーンルーム設備全体の床面積を著しく縮小することができる。
【0024】
本発明はまた、本開示に係るクリーンルーム設備および空調されたコンパートメントに関する。
【0025】
本発明のさらなる例では、本開示に係るクリーンルームシステムを制御するためのコンピュータ実行方法が提案される。この方法は、
前記少なくとも1つのクリーンルーム設備とは別の場所で、前記少なくとも1つのクリーンルーム設備で医薬品を製造するための一連の製造ステップをモニタするステップと、
関連するクリーンルーム設備で実行される製造ステップに関係するパラメータに関するパラメータデータを取得するステップと、
前記少なくとも1つのクリーンルーム設備とは別の場所で、取得したパラメータデータと所定の参照パラメータデータとを比較するステップと、
比較結果に基づいて、関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造を制御するステップと、
を含む。
【0026】
特に本方法における医薬品の製造を制御するステップは、
取得したパラメータデータが所定の参照パラメータデータと一致しないとき、関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造を中断するステップと、
前記少なくとも1つのクリーンルーム設備とは別の場所で、一連の製造ステップおよび関連するクリーンルーム設備におけるパラメータデータを検証するステップと、
前記少なくとも1つのクリーンルーム設備とは別の場所で、一連の製造ステップおよび関連するクリーンルーム設備におけるパラメータデータを適用するステップと、
関連するクリーンルーム設備で実行される医薬品の製造を再開するステップと、
を含む。
【0027】
上記のステップにより、異なる場所に配置された複数のクリーンルーム設備を備えた高度で分散的な医薬品等の製造システムの設定が可能になる。ここでは、関連するクリーンルーム設備での様々な製造工程パラメータがリアルタイムで測定され、これがオフサイトの中央システム制御ユニットに送信され、所定(所望)の製造工程パラメータと比較される。このオフサイトでの制御は、オフサイトのクリーンルームシステム制御ユニットで作業する熟練の担当者によって実行されてもよい。この場合、こうした熟練の担当者は、実際の製造工程が実行されるクリーンルーム設備に配置する必要はない。
【0028】
本開示に係るコンピュータ実行方法では、複数の関連するクリーンルーム設備で実行される製造工程は、測定または検出した製造工程パラメータと、所定(所望)の製造工程パラメータと、の比較に基づいてリアルタイムに制御され、データ通信ネットワークを介して送信されてもよい。製造工程のこうした制御は、例えば、製造された医薬品等の品質許可および(使用または販売のための)リリース、製造工程の適合、または、比較の結果測定されたプロセスパラメータが規格外だった場合は製造ステップの(一時的または永久的な)中断などを含んでもよい。
【0029】
本開示はまた、コンピュータプログラムまたはコンピュータプログラムプロダクトに関する。これらは、コンピュータで実行されたとき、前記コンピュータに本開示に係るコンピュータ実行方法のステップを実行させる命令を含む。本開示はまた、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。この記録媒体は、コンピュータで実行されたとき、前記コンピュータに本開示に係るコンピュータ実行方法のステップを実行させる命令を含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
以下、図面を参照して本発明を説明する。
図1】本開示に係るクリーンルームシステムで使われるクリーンルーム設備を示す図である。
図2】本開示に係る複数のクリーンルーム設備を実現するクリーンルームシステムおよび本開示に係るコンピュータ実行方法を示す図である。
図3a】先行技術に係るクリーンルーム設備の床面を示す図である。
図3b】本開示に係るクリーンルーム設備の床面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の適切な理解のために、以下の詳細な説明では、本発明の対応する要素または部品には図面において同一の符号を付す。
【0032】
図1は、本開示に係るクリーンルーム設備(100)を示す図である。このクリーンルーム設備は、クリーンルーム環境に関する国際標準化された分類の最上級の清浄度を満足しつつ、床面積を極めて縮小できることで特徴づけられる。
【0033】
図2は、データ通信ネットワーク200bを用いて中央クリーンルームシステム制御ユニット1001と通信可能な複数のクリーンルーム設備(100、100、100、…、100)を実現する、本開示に係るクリーンルームシステム1000および本開示に係るコンピュータ実行方法を示す図である。
【0034】
図1のクリーンルーム設備100は、例えば医薬品等の製造に使うことができる。通常こうした製造プロセスは、非常に低微粒子レベルの単一のクリーンルーム(最も厳しいクリーンルーム分類に従う)環境で、高度な資格を持つ担当者や複雑な(クリーンルーム)装置などの助けを借りて実行する必要のある一連の製造工程を含む。エアロックや防塵服の着用が必要なことから、既知のクリーンルームシステムおよび設備は、非常に大きな床面積を必要とする。
【0035】
一般にこのような既知のクリーンルーム設備は、構築やサイズの面で複雑かつ高価である上、熟練した専門家による運用や長期間の保守が必要である。図3aに、先行技術に係る既知のクリーンルーム設備を示す。既知のクリーンルーム設備500は、複数の空調されたコンパートメント501、502、503、504で構成される。矢印は、低クラスのコンパートメント(ルーム501)を通って、最高クラス(クラスCまたはD)のコンパートメント504までの人のアクセスの向きを示す。
【0036】
最初のアクセスルーム501は通常はいわゆるロッカールームであり、防塵服やオーバーシューズが用意されている。ルーム501から第1ガウンルーム502へは、エアロック(図示しない)を通ってアクセスできる。ルーム502は、例えば低クラスのクリーンルーム分類(例えば、クラスDまたはE)に従う。ルーム502を通って(再びエアロックを介して)、クラスDまたはCの第2ガウンルーム503にアクセスできる。最後に担当者は、実際のクリーンルーム504(クラスCまたはB)に入ることができる。
【0037】
最も厳しいクリーンルーム清浄分類(クラスA)が必要な製造工程は、特別に設計されたクリーンルームキャビネット505で、隔離して実行される。
【0038】
ルーム506は、通常のオフィスワークに使用され、クリーンルーム仕様を必要としない。従ってルーム506は、ルーム501-505と完全に隔離される。これにより汚染が予防され、ルーム501、502、503、504内の清浄な空気環境が保たれる。
【0039】
次に図1を参照して、改良されたクリーンルーム設備を提案する。クリーンルーム設備100は、複数の空調されたコンパートメントで構成される。ここには、3つの空調されたコンパートメント101、102、103を示す。ただしクリーンルーム設備100は、例えば5つ(この場合は、101、102、103、104、105)以上といった、より多くの空調されたコンパートメントで構成することもできる。逆に、2つ(101、102)の空調されたコンパートメントだけで構成することも可能である。一般に任意の数のコンパートメントを、クリーンルームシステムに組み入れることができる。
【0040】
通常、複数の空調されたコンパートメント101、102、103の各々は、特定の製造工程の少なくとも1つを実行できるように装備される。このとき、複数の空調されたコンパートメント101、102、103の各々は、空調されたコンパートメント101、102、103内で保たれるべき空気条件の下で、(1つ以上の)特定の製造工程を実行できるよう、クリーンルーム分類に従って構成される。
【0041】
空調されたコンパートメント101、102、103内で保たれるべき空気条件の下で、(1つ以上の)特定の製造工程を実行できるように、各空調されたコンパートメントに専用の(クリーンルーム)装備または装置10が備えられてもよい。図1では単一の符号10が付されているが、空調されたコンパートメント101、102、103の各々に配置された(クリーンルーム)装備または装置10の各々は、異なる製造工程を実行することができる。
【0042】
図1に示されるように、複数の空調されたコンパートメント101、102、103は、互いに機械的に接続される。これにより、1つの完全なクリーンルーム設備100が形成される。クリーンルーム設備100の壁100c-100d/空調されたコンパートメント101、102、103は、各コンパートメント101、102、103の空間を形成する。この空間は、符号101b、102b、103bで示される。完全なクリーンルーム設備100は、サポート100aを用いてサポート面1の上に配置される。サポート100aは、クリーンルーム設備100を操作する担当者に応じて、高さ設定手段100bを用いて高さ調整することができる。
【0043】
一般に、完全なクリーンルーム設備100のグランドフロアの床面は長方形である。空調されたコンパートメント101、102、103の各々は、4つのサポートまたは脚100aを用いてサポート面1の上に設置される。クリーンルーム設備100を操作する担当者は、クリーンルーム設備100を形成する複数の空調されたコンパートメントの外部(隣)に常駐する(図3bを参照)。
【0044】
相互接続された空調されたコンパートメント101、102、103の各々は、各製造工程に要求されるクリーンルーム分類に従って構成される。この例では、関連する分類は、高いレベル(クラスA)から低いレベル(クラスCまたはD)におよぶ。これらは、製造工程の流れる方向で見て、各コンパートメント内の空気中の単位体積当たり許される微粒子の数および大きさの観点で定められる。図1では、一連の製造工程は右から左に向かい、最初に第1空調されたコンパートメント101(クラスCまたはD)、次に中間の空調されたコンパートメント102(クラスB)、最後に最終空調されたコンパートメント103(クラスA)の順に流れる。
【0045】
これは、第1の空調されたコンパートメント101が比較的緩いクリーンルーム空気条件(空気中の単位体積あたり多数かつ大きなサイズの粒子を許す)を持つ一方、空調されたコンパートメント103は最も厳しいクリーンルーム空気条件(空気中の単位体積あたり非常に少数かつ非常に小さなサイズの粒子しか許さない)を持つことを意味する。中間の空調されたコンパートメント102のクリーンルーム空気条件は、第1の空調されたコンパートメント101または第3の空調されたコンパートメント103の条件であってもよい。しかし一般には、中間の空調されたコンパートメント102で許される空気中の単位体積あたりの粒子の数およびサイズは、第1の空調されたコンパートメント101と第3の空調されたコンパートメント103との中間である。
【0046】
一例では、空調されたコンパートメント101、102、103は、EU GMP分類を満足する。すなわち、第1の空調されたコンパートメント101は最も緩いクリーンルーム空気条件(EU GMP等級ではクラスCまたはD)に分類され、第2の空調されたコンパートメント102はEU GMPではクラスBに分類され、第3の空調されたコンパートメント103はEU GMPではクラスA(最も厳しい)に分類される。
【0047】
この場合、図1の例では、空調されたコンパートメント101はEU GMP等級C/Dの半閉鎖型の微生物学的安全キャビネットとして構築され、空調されたコンパートメント102および103はEU GMP等級A/Bのグローブボックス(グローブ150で示される)として構築される。構築上の違いはまた、各空調されたコンパートメント101、102、103に関するクリーンルーム分類を定義し、従って各空調されたコンパートメント内で保たれるクリーンルーム空気条件で実行される製造工程のタイプを定義する。
【0048】
開放型の処理は少なくともクラスBまたはAの環境で行う必要があるが、閉鎖型の処理はクラスCまたは最下級のクラスDで行ってもよいことに注意されたい。
【0049】
各空調されたコンパートメント101、102、103は、(半)閉鎖型のボックスであり、好ましくは透明(例えばポリメチルメタクリレート製)の壁100c、100dで形成される。これにより、空間101b、102b、103bが閉じこめられる。さらに各空調されたコンパートメント101、102、103は、閉鎖領域101a、102a、103aを備える。これらは、ボックス型の空調されたコンパートメントの上(図1参照)またはボックス型の空調されたコンパートメントの下に配置される。閉鎖領域101a、102a、103aは、各空調されたコンパートメントに関連する部品、例えば、エアフィルター111、112、113、エアフィルターポンプユニット121、122、123、入力/出力インタフェース131、132、133および検出器101c、102c、103cなどを収容する。
【0050】
空調されたコンパートメント101、102、103内では、不活性雰囲気が形成される。通常これは外気より高圧に保たれるため、圧力の連続が形成される。これにより、微小な漏れがある場合も、外気は、流入することなく、不活性ガスが空調されたコンパートメントから流出する。こうした圧力の連続のおかげで、製造工程を実行中、空調されたコンパートメント101、102、103内への外気の流入および汚染の発生が防止される。さらに、製造工程を実行中の汚染が最小化される。この目的のために、各空調されたコンパートメント101、102、103には、流入空気を濾過するためのエアフィルター111、112、113が与えられる。エアフィルター111、112、113は、エアフィルターポンプユニット121、122、123とともに、外気が空間101b、102b、103bに流入する前に、所望のクリーンルーム空気条件に従うように流入空気を濾過する。
【0051】
空調されたコンパートメント101(EU GMP等級C/D)、空調されたコンパートメント102(EU GMP等級B)および空調されたコンパートメント103(EU GMP等級A)の例では、各エアフィルター111、112、113は、各空調されたコンパートメントに関するEU GMP等級に従う。特にエアフィルター111、112、113は、クリーンルーム空気条件に従うHEPAまたはULPAエアフィルターデバイスである。
【0052】
図1には示されないが、エアフィルター111、112、113に加えて、各空調されたコンパートメント101、102、103は、各エアフィルター111、112、113を通過した後空調されたコンパートメント内に流入する空気を殺菌するための、紫外線を放射するUV放射源を与えられてもよい。
【0053】
前述のように、空調されたコンパートメント101、102、103内には不活性雰囲気が形成され、外気より高圧に保たれる。これにより、微小な漏れがある場合も、外気は、流入せずに、不活性ガスが空調されたコンパートメントから流出する。空調されたコンパートメント101、102、103はそれぞれ異なるクリーンルーム空気条件(国際的に承認されたクリーンルーム標準(例えば、EU GMP等級、US FED STD 209E、BS5295標準、USP800標準など))を有する。従って空調されたコンパートメント101、102、103もまた、内部空間101b、102b、103b内で異なる圧力が保たれる。これにより、比較的緩いクリーンルーム空気条件の空調されたコンパートメントから、より厳しいクリーンルーム空気条件の空調されたコンパートメントに向けて流入する空気が汚染(望ましくない)されなくてすむ。
【0054】
以上説明したように、図1の例では、第1の空調されたコンパートメント101が最も緩いクリーンルーム空気条件を有し、第3の空調されたコンパートメント103が最も厳しいクリーンルーム空気条件を有する。このとき、空調されたコンパートメント103内の圧力は空調されたコンパートメント102内の圧力より高く、空調されたコンパートメント102内の圧力は空調されたコンパートメント101内の圧力より高い。すべての空調されたコンパートメント内の圧力は、外気の圧力より高い。これにより、第1の空調されたコンパートメントから第2の空調されたコンパートメントに向けて流入する空気、および、第2の空調されたコンパートメントから第3の空調されたコンパートメントに向けて流入する空気の望ましくない汚染が防止される。
【0055】
空調されたコンパートメント103(高圧力)、空調されたコンパートメント102(中間圧力)および空調されたコンパートメント101(最低圧力だが外気圧より高い)の間で異なる圧力の連続があることより、空調されたコンパートメント103から空調されたコンパートメント101に向かう内部気流が形成される。この気流は、最後に外気に流出する(図1では「流出空気」で示される)。このように、クリーンルーム設備100内の気流の向きは、製造工程がクリーンルーム設備100を通って実行される向き(空調されたコンパートメント101から空調されたコンパートメント103に向かう)と逆になる。
【0056】
2つの機械的に接続された空調されたコンパートメントの間(ここでは、空調されたコンパートメント101-102および102-103)に空気透過性通路140が設けられる。これにより、製造中、中間生成物は、第1の空調されたコンパートメント101から第2の空調されたコンパートメント102に送られ、その後第3の空調されたコンパートメント103に送られる。さらにこの空気透過性通路140があることにより、空気は、空調されたコンパートメント103(高圧力レベル)から、空調されたコンパートメント102(中間圧力レベル)を通って、空調されたコンパートメント101(最低圧力レベル)に向けて通り抜けることができる。
【0057】
このように、空気透過性通路140および平衡した圧力の連続と、各コンパートメントで濾過された流入空気と、の組み合わせにより、各製造工程に応じた安全かつ清浄な処理環境が保証される。
【0058】
空気透過性通路140は、透過性ドアとして形成される。例えばこうしたドアは、ヒンジ140aの周囲で開閉可能であり、空調されたコンパートメント101、102、103内に取り付けられる。好ましくは空気透過性通路140は、ヒンジ点140aの周囲で開閉可能またはスライド可能であり、クリーンルーム設備100の中間壁要素100dに取り付けられる。空気透過性通路140は、中間壁要素100dに存在する開口部100fを封止する。これには、重力や磁気継手などの封止手段を用いてもよいし、開口部100fに隣接するスライダーを用いてもよい。後者の場合、中間壁要素100dは、このスライダー内を、上または下方向にスライド可能である。
【0059】
製造中、クリーンルーム設備100を形成する複数の空調されたコンパートメントの脇にいる担当者は、中間生成物を、第1の空調されたコンパートメント101から、1つ以上の中間の空調されたコンパートメント102を介して、最終空調されたコンパートメント103に向けて送ることができる。最も厳しいクリーンルーム空気条件を有する最終空調されたコンパートメントでは、中間生成物または生成物は、最終製造工程の処理(例えば、殺菌処理や梱包処理)を受ける。最終製品または製品は、品質検査を受けた後、製造時とは逆向きに、開口部100fを通って、第1の空調されたコンパートメント101に送られる。その後製品は、第1の空調されたコンパートメント101を通ってクリーンルーム設備100を出て、さらなる処理を受ける(例えば、病院または患者のもとに送られる)。
【0060】
医薬品等の製造プロセスの適切なモニタリングができるように、クリーンルーム設備100の複数の空調されたコンパートメント101、102、103は、少なくとも1つ(好ましくは複数)の異なるタイプの検出器101c、102c、103cを備える。検出器101c、102c、103cは、空調されたコンパートメント101、102、103内で実行される製造工程に関する少なくとも1つのパラメータを検出し、検出されたパラメータに関するパラメータデータを生成する。
【0061】
図1に示されるように、複数の検出器101c、102c、103cは、空調されたコンパートメント101、102、103の閉鎖領域101a、102a、103aに設置される。検出器101c、102c、103cは、圧力計、温度計、湿度計、空気/粒子組成検出器、フィルター状態検出器、時間量測定器などであってもよいが、これらに限定されない。各空調されたコンパートメントの空間101d、102d、103d内の圧力、温度、湿度、空気組成、エアフィルター111、112、113およびエアフィルターポンプユニット121、122、123のフィルター状態を検出または計測することにより、空調されたコンパートメント内の局所的気候状態に関するリアルタイムかつ正確な情報を与えることができる。
【0062】
時間量(例えば、空気透過性通路140の開放時のトリガー時間、空気透過性通路101、102、103に設けられた装備または装置10の起動時間など)を測定することにより、製造工程の精度に関する重要な情報を与えることができる。
【0063】
実行される製造工程に関して、検出またはモニタされる別の態様またはパラメータは、製造工程を実行中の各空調されたコンパートメントの内部空間101d、102d、103dの視覚映像であってもよい。これは、製造工程の実行中にビデオカメラ130によって撮影される。
【0064】
製造工程を実行中の内部空間101d、102d、103dの視覚映像は、出力スクリーン(これは、関連する空調されたコンパートメントの入力/出力インタフェースの一部である)にリアルタイムに表示されてもよい。これにより、他の担当者が、空調されたコンパートメントの内部空間における個別の製造工程を遠隔でモニタすることができる。
【0065】
さらに、検出器が空調されたコンパートメント101、102、103内の製造デバイス10に備えられている場合は、製造プロセス自身に関する追加的なパラメータ情報を与えることができる。こうした追加的なパラメータ情報は、例えば、製造中の医薬品の材料パラメータ(濃度、温度等)、製造パラメータ、ボリュームパラメータ、フローパラメータ(生物学的製品/医薬品がチューブ内で処理される場合)、圧力や温度などの密閉パラメータ(密閉が必要な小袋包装体の場合)などである。
【0066】
複数の検出器101c、102c、103cを用いて検出されたすべてのパラメータデータ(または生のソースデータ)は、関連する空調されたコンパートメントの入力/出力インタフェースの出力スクリーンにリアルタイムで表示することができる。各入力/出力インタフェースの出力スクリーンは、タッチ操作スクリーンであってもよい。この場合、現場の担当者が、モニタされる(または特定の関連する空調されたコンパートメントで実行される製造工程に関係する)パラメータに関する設定データを入力することができる。入力/出力インタフェース131、132、133を用いて設定可能・リアルタイムに表示/モニタ可能なパラメータデータは、例えば、エアフィルター111、112、113およびエアフィルターポンプユニット121、122、123の濾過状態、空調されたコンパートメントの空間101b、102b、103b内の温度、圧力、湿度、空気組成などであってもよい(ただし、これらに限られない)。
【0067】
クリーンルーム設備100の複数の空調されたコンパートメントで実行される製造プロセスのより効率的な制御に関し、クリーンルーム設備100はまた、クリーンルーム設備制御ユニット200を備える。クリーンルーム設備制御ユニット200は、各クリーンルーム設備の現地に配置される。この実施の形態では、クリーンルーム設備制御ユニット200は、クリーンルーム設備100のフレームまたはハウジングの内部に設置される。図1に示されるように、クリーンルーム設備制御ユニット200は、関連する空調されたコンパートメント101、102、103で実行される医薬品等の製造工程に関連するパラメータについてのすべての種類のパラメータデータを取得し蓄積するように構成される。
【0068】
これに関し、クリーンルーム設備制御ユニット200は、信号線10bを介して、複数の検出器101c、102c、103c(圧力、温度、湿度、空気組成、時間量)および/またはエアフィルター111、112、113および/またはエアフィルターポンプユニット121、122、123および/またはカメラ130および/または空気透過性通路140および/または少なくとも1つの装置10に接続され、検出されたパラメータに応答して生成された様々なパラメータデータを蓄積する。これらのパラメータデータは、製造プロセス中に、クリーンルーム設備制御ユニット200内の好適なストレージ装置にリアルタイムに蓄積できる。
【0069】
パラメータデータのストレージデバイス(クリーンルーム設備制御ユニット200内にある)への蓄積は、リアルタイムに、かつ追加情報の蓄積と同時に実行可できる。こうした追加情報には、例えば、関連するデータスタンプやタイムスタンプ(これらは、パラメータデータが生成されたときのデータ/時間を表す)、関連する製造工程を実行した(当該パラメータデータの生成に関して責任のある)担当者の識別コード(IDコード)などがある。
【0070】
リアルタイムに収集され蓄積されたすべてのパラメータデータは、追加的なデータ/タイプスタンプ(必要な場合は担当者のIDコード)とともに、製造された医薬品等の製造バッチに関する電子ログを形成する。電子ログはまた、当該パラメータデータが規格外であるかを示す情報を含んでもよい。電子ログは、モニタリングおよび所望/所定の製造プロセスパラメータとの比較のため、電子ファイルとしてクリーンルームシステム制御ユニット1001に送信されてもよい。これらの詳細は図2に示される。
【0071】
信号線10b、装置10の動力線および内部空間101b、102b、103bに存在する他の周辺ケーブルは、各空調されたコンパートメント101、102、103の壁100cに存在するケーブルガイド開口100eを通じて内部空間101b、102b、103bの外に安全にガイドされる。ケーブルガイド開口100eは、信号線10bを含むケーブル外周を、各内部空間101b、102b、103bの局所的気候状態に悪影響を与えることなく通すための小さな開口が与えられる。
【0072】
代替的に、クリーンルーム設備制御ユニット200は、データ通信インタフェース200aを与えられてもよい。これにより、複数の検出器101c、102c、103c(圧力、温度、湿度、空気組成、時間量)および/またはエアフィルター111、112、113および/またはエアフィルターポンプユニット121、122、123および/またはカメラ130および/または空気透過性通路140および/または少なくとも1つの装置10との間のデータ交換が可能となる。これらもまた同様にデータ通信インタフェースを与えられる(例えば、各閉鎖領域101a、102a、103aに付された符号121a、122a、123a、あるいは複数の装置10に関連する符号10a)。
【0073】
本開示によれば(図2および3bに示されるように)、図1で詳細に示される1つ以上のクリーンルーム設備100は、クリーンルームシステム(図2では符号1000で示され、図3bでは符号1000’で示される)内に設置されてもよい。この例では、本開示に係るクリーンルームシステム1000(1000’)は、クリーンルーム設備100、100、100、…、100を実現する。各クリーンルーム設備100、100、100、…、100はそれぞれ互いに独立に動作し、医薬品等と製造する。これらの医薬品等は、同一または異なる医薬品等である。
【0074】
クリーンルームシステム1000(1000’)は、複数のクリーンルーム設備100、100、100、…、100の隣に、クリーンルームシステム制御ユニット1001を備える。クリーンルームシステム制御ユニット1001は、各クリーンルーム設備100、100、100、…、100と別の場所に設置される。各クリーンルーム設備100、100、100、…、100は、自分自身のクリーンルーム設備制御ユニット200、200、200、…、200を備える(これらについては、上で詳述した通りである)。クリーンルーム設備制御ユニット200、200、200、…、200と遠隔のクリーンルームシステム制御ユニット1001とは、データ通信ネットワーク200bを介して動作可能に相互接続される。
【0075】
これに関し、各クリーンルーム設備制御ユニット200、200、200、…、200は、データ通信インタフェース200aを与えられる。一方、遠隔のクリーンルームシステム制御ユニット1001は、データ通信インタフェース1001aを与えられる。好ましくは、クリーンルームシステム1000(1000’)は、ワールドワイドウェブを介したクラウドベースの(しかし個人情報の保護された)データ通信ネットワーク200bを与える。
【0076】
複数のクリーンルーム設備制御ユニット200、200、200、…、200は、データ通信ネットワーク200bを介して中央クリーンルームシステム制御ユニット1001と通信する。そしてデータ通信ネットワーク200bを介して、複数の個別のパラメータデータ(これについては、電子ログファイル(データ/タイムスタンプおよびIDコードを含む)の形で概説した)をクリーンルームシステム制御ユニット1001に送信する。実例では、遠隔のクリーンルームシステム制御ユニット1001は、欧州に配置される。一方、複数の自律的に動作可能なクリーンルーム設備100、100、100、…、100は、同一または異なる医薬品等を現地生産するために、他の国(例えばアフリカ、南米、アジア等)に配置される。この例は、図に2に示される。
【0077】
図3bの例では、複数の自律的に動作可能なクリーンルーム設備100、100、100、…、100は、符号1000’で示されるように、同じ場所または地理的位置に配置される。また図3bでは、各クリーンルーム設備100、100、100、…、100を操作する担当者は、各空調されたコンパートメント101、102、103の外(隣)に常駐する。複数の空調されたコンパートメント101、102、103のみが加圧された内部雰囲気を持ち、ビルの空間1000’自体は加圧されていない。従って、担当者は加圧された環境で働く必要がないので、労働環境が改善される。さらに担当者は防塵服を身につける必要がないので、クリーンルームシステムおよび設備の操作が著しく簡易化され、着替えも不要となる。
【0078】
本開示によれば、遠隔のクリーンルームシステム制御ユニット1001は、データ通信ネットワーク200bを介して、1つ以上のクリーンルーム設備制御ユニット200、200、200、…、200から(電子ログファイルの形で)送信されたパラメータデータを受信し、当該パラメータデータを所定の参照パラメータデータと自動的に比較するように構成される。
【0079】
送信されたパラメータデータの受信は自動化でき、同様に受信したパラメータデータと所定の参照パラメータデータとの比較も、コンピュータソフトウェアプログラムまたはプロダクトを用いて自動化できる。こうしたコンピュータソフトウェアプログラムまたはプロダクトは命令を含む。この命令は、コンピュータ(例えば、遠隔のクリーンルームシステム制御ユニット1001)で実行されたとき、遠隔のクリーンルームシステム制御ユニット1001に本開示に係るコンピュータ実行方法のステップを実行させる。
【0080】
代替的に、クリーンルームシステム制御ユニット1001の一部であるコンピュータ読み取り可能なストレージ媒体が命令を含んでもよい。この命令は、クリーンルームシステム制御ユニット1001で実行されたとき、クリーンルームシステム制御ユニット1001にコンピュータ実行方法のステップを実行させる。
【0081】
別の代替例では、このオフサイトでの制御は、オフサイトのクリーンルームシステム制御ユニット1001で働く熟練した担当者により実行可能である。これは、実際の製造プロセスが実行されるクリーンルーム設備100、100、100、…、100のサイトで行われる必要はない。
【0082】
例えば、クリーンルームシステム制御ユニット1001は、測定/検出されたプロセスパラメータデータと所望/所定のプロセスパラメータとの比較に基づいて、関連するクリーンルーム設備100、100、100、…、100における製造プロセスを制御できる。製造プロセスのこうした制御は、例えば、製造された医薬品等の品質許可および(使用または販売のための)リリース、製造プロセスの適合、または、比較の結果測定されたプロセスパラメータが規格外だった場合は製造工程の(一時的または永久的な)中断などを含んでもよい。クリーンルーム設備100、100、100、…、100が厳しいクリーンルーム空気条件で動作する場合、これが要求条件となる。この場合、医薬品等を製造するための複数の製造工程は、厳しいEU GMP要求条件に従う必要がある。
【0083】
例えば、得られたパラメータデータが所定の参照パラメータデータにと一致しない場合、クリーンルーム設備100、100、100、…、100の1つにおける製造工程を一時的または永久的に中断することが決定されてもよい。ここで一致しない場合とは、例えば、比較の結果に一致が見られなかった場合や十分な不一致があった場合のことをいう。例えば、得られたパラメータデータが所定の参照データの周辺の所定の範囲(例えば±1%-±5%等)に入らなかった場合などである。
【0084】
後者の例では、クリーンルームシステム制御ユニット1001から、クリーンルーム設備100、100、100、…、100での医薬品等の製造プロセスが中断されてもよい。この中断は、自動的であってもよいし、クリーンルームシステム制御ユニット1001にいる担当者からの命令(例えば、適切なコマンド命令を生成し、データ通信ネットワーク200bを介してクリーンルームシステム制御ユニット1001から関連するクリーンルーム設備100、100、100、…、100に送信する)によるものであってもよい。
【0085】
例えばコマンド命令は、特定の装置10をシャットダウンすることにより、当該装置により実行される製造工程を中断するものであってもよい。同様に、コマンド命令が関連するクリーンルーム設備に送られ、(例えば、空気透過性通路140の閉鎖手段を遠隔起動することにより)1つ以上の空気透過性通路140を開状態から閉状態に変更し、製造仕様を満たさない医薬品等の製造を防ぐものであってもよい。
【0086】
比較に基づいて関連するクリーンルーム設備100、100、100、…、100における製造プロセスが中断すると、クリーンルームシステム制御ユニット1001は(クリーンルームシステム制御ユニット1001単独で、または関連する担当者とともに)、少なくとも1つのクリーンルーム設備から離れた場所で、一連の製造工程および関連するクリーンルーム設備100、100、100、…、100のパラメータデータを検証することができる。
【0087】
これにより、クリーンルームシステム制御ユニット1001にいる担当者は、製造プロセス全体を検証し、製造エラーまたは製造機能不全をチェックし、一連の製造工程および関連するクリーンルーム設備におけるパラメータデータを適用することができる。これは例えば、入力/出力インタフェース1002(これは、設定データを入力するための、または関連するパラメータデータを表示するためのタッチ操作スクリーンを含んでもよい)を用いて行ってもよい。最終的に、製造エラーまたは製造機能不全(これが原因で、取得されたパラメータデータと所定の参照パラメータデータとの不一致による中断が発生した)が解決されると、関連するクリーンルーム設備で行われる医薬品等の製造を再開できる。
【0088】
空調されたコンパートメント101、102、103はビデオカメラ130を備えることができるので、クリーンルームシステム制御ユニット1001にいる担当者は、遠隔のクリーンルーム設備100との間にビデオリンクを設定でき、関連する空調されたコンパートメントの内部空間を視覚的に検証できる。必要であれば、ビデオリンクを介して遠隔のクリーンルーム設備100を操作する担当者に適切な命令を与えることにより製造プロセスを再開できる。
【0089】
上記の開示から、クリーンルーム設備全体の床面積を大幅に縮小したクリーンルームシステムおよびクリーンルーム設備が得られる。なぜなら、エアロック等の複雑な技術的手段を省略できるからである。さらに現場の担当者は防塵服を身につける必要がない。これにより、このようなクリーンルームシステムおよび設備の操作が著しく簡易化できる。さらに医薬品等の製造プロセスの管理・品質全体を維持しつつ、世界的に様々な場所で医薬品等を製造できる。
【0090】
厳しく品質管理された条件を満たす製造設備を持てるという後者の利点は、特に医薬品製造において有用である。医薬品はオンデマンドで製造する必要があり、病院や患者に迅速に届けなければならないので、その製造には時間的に制限された効率性が求められるからである。
図1
図2
図3a
図3b
【国際調査報告】