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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-30
(54)【発明の名称】組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20231023BHJP
   A61K 31/4985 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231023BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20231023BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/4985
A61P43/00 121
A61K45/06
A61P25/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023547754
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2021078714
(87)【国際公開番号】W WO2022079302
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】2016490.1
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2111343.6
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523141172
【氏名又は名称】パーパスフル アイケイイー
【氏名又は名称原語表記】PURPOSEFUL IKE
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ドラカキス、ゲオルギオス
(72)【発明者】
【氏名】コメニディス、ハラランポス
(72)【発明者】
【氏名】ツィリキ、ヨルギア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084AA20
4C084NA14
4C084ZA181
4C084ZC412
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA05
4C086ZA18
4C086ZC75
(57)【要約】
本発明は、FMR1介在自閉症および脆弱X症候群(FXS)の治療、管理、または改善における使用のための組成物であって、前記組成物が麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物を含む、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
FMR1介在自閉症の治療、管理、または改善における使用のための組成物であって、前記組成物は、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物を含む、組成物。
【請求項2】
前記麦角アルカロイドが、メシル酸エルゴロイドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記FMR1介在自閉症が、脆弱X症候群(FXS)に関連する、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
脆弱X症候群(FXS)の治療、管理、または改善における使用のための組成物であって、前記組成物は、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物を含む、組成物。
【請求項5】
前記1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物が、メシル酸エルゴロイドを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
約1mg~約3mgの範囲の1日用量で投与される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記1つまたは複数の麦角アルカロイドを含む組成物が、それを必要とする患者に1mg TIDの用量で投与される、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記麦角アルカロイドの誘導体および模倣物が、以下:メチセルジド、ジヒドロエルゴタミン、リスリドエルゴタミンニセルゴリン、ジヒドロエルゴクリスチン、ジヒドロエルゴコルニン、ジヒドロエルゴクリプチン、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン、カベルゴリン、ペルゴリド、ブロモクリプチン、リゼルグ酸ジエチルアミド、テルグリド、およびメテルゴリンのうちの1つまたは複数から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物が、ジヒドロエルゴコルニン、ジヒドロエルゴクリスチン、およびジヒドロエルゴクリプチンの実質的に等比の調製物を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物は、別の薬学的有効成分と別々に、一緒に、または連続して投与するためのものである、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
そのFMR1遺伝子配列が変異を含む個体において自閉症の治療、管理、または改善における使用のための組成物であって、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物を含む、組成物。
【請求項12】
前記変異が以下:
a.FMR1遺伝子の5’-非翻訳領域における(CGG)nトリヌクレオチドリピートの伸長およびその後のメチル化、
b.FMR1における遺伝子内点変異または欠失、
c.I304N変異、
d.G266E変異、または
e.S27X変異
のうちの1つを含む、請求項11に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記麦角アルカロイドが、メシル酸エルゴロイドを含む、請求項11または請求項12に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記FMR1介在自閉症が、脆弱X症候群(FXS)に関連する、請求項11~13のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
約1mg~約3mgの範囲の1日用量で投与される、請求項11~14のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記麦角アルカロイドの誘導体および模倣物が、以下:メチセルジド、ジヒドロエルゴタミン、リスリドエルゴタミンニセルゴリン、ジヒドロエルゴクリスチン、ジヒドロエルゴコルニン、ジヒドロエルゴクリプチン、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン、カベルゴリン、ペルゴリド、ブロモクリプチン、リゼルグ酸ジエチルアミド、テルグリド、およびメテルゴリンのうちの1つまたは複数から選択される、請求項11~15のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物が、ジヒドロエルゴコルニン、ジヒドロエルゴクリスチン、およびジヒドロエルゴクリプチンの実質的に等比の調製物を含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物は、別の薬学的有効成分と別々に、一緒に、または連続して投与するためのものである、請求項11~17のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の組成物および薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項20】
FMR1介在自閉症の治療、管理、または改善における使用のための、SSRIと、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物を含む組成物との組合せ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、神経障害および発達障害の治療、管理、または改善における使用のための組成物に関し、特に様々な自閉症疾患、または自閉症が公知の構成要素である疾患の治療、およびまた脆弱X症候群(FXS)の治療のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)をコードする遺伝子の変異による不活性化は、発作、睡眠障害、不安、易刺激性、自閉症、軽度から重度の認知障害、および知的障害を含む様々な症状を引き起こす。この一連の症状は、脆弱X症候群(FXS)として知られている。
【0003】
FXSは、FMR1遺伝子(Xq27.3)の5’-非翻訳領域における(CGG)nトリヌクレオチドリピートの漸進的伸長およびその後のメチル化による、FMR1遺伝子の転写サイレンシングにより引き起こされる。これらの完全変異は、前突然変異(55~200のCGGリピート)と呼ばれる不安定な対立遺伝子から生じる。まれに、FXSは、遺伝子内FMR1点変異または欠失に起因することが示された。FMR1は、ニューロンの樹状突起におけるタンパク質合成および他のシグナル経路を制御するRNA結合タンパク質であるFMRPをコードしている。FMR1のサイレンシングは、海馬を含む脳全体のシナプス可塑性および変調を低減すると考えられる。
【0004】
ヒトにおける本症候群は、遺伝子メチル化、不活性化、および結果として生じる脆弱X精神遅滞タンパク質発現(FMRP)の損失をもたらす、X染色体に位置するFmr1遺伝子の5’非翻訳領域における不安定なCGGトリプレットの伸長(200を超えるリピート)により引き起こされる。FMRPは、翻訳制御因子として機能し、発生の間にシナプス刈り込みに関与するものを含む多くのタンパク質の合成に影響を与える(ラザック(Razak)、2020)。メタ解析では、完全変異型FXS対立遺伝子を持つ人の頻度は、およそ、男性7000人中1人であり、女性11,000人中1人であると推定される(ハンター(Hunter)、2014)。FXSは、男性において深刻な衰弱をもたらす。一般に、女性は、肺発生の初期にランダムに起こるX染色体不活性化から生じるモザイク現象のために、男性よりも影響を受けにくい(エムイー ガーニー(ME Gurney)、2017)。
【0005】
脆弱X症候群(FXS)は、可変の臨床表現型を示す。男性では、疾患は小児期に現れ、発達の調査事項に遅れが見られる。知的障害の重症度は可変であり、作業および短期記憶、実行機能、言語、数学、ならびに視空間の能力について問題を含み得る。行動異常は、軽度(例えば、不安、気分不安定)から重度(例えば、攻撃的行動、自閉症)までの場合がある。自閉症様行動は、手をばたつかせる、不十分なアイコンタクト、手の噛みつき、視線回避、社会恐怖症、社会性およびコミュニケーションの欠陥、ならびに触覚防衛反応(tactile defensiveness)を含み得る。女性では、知的障害および行動障害は通常軽度であり、大抵は内気、社会不安、および正常なIQを持ちながらの軽度の学習問題からなるが、25%の女児はIQが70未満である。注意欠陥多動性障害(ADHD)は、男性の89%超、女性の30%超に見られ、行動の脱抑制は、非常に一般的である。再発性耳炎(60%)および発作(16~20%)が観察される場合もある。FXS患者は、知的障害、言語習得の遅れ、社会的相互作用の不足、過覚醒、過敏性、反復的行動、睡眠の乱れ、注意欠陥多動性障害(ADHD)、および自閉症を含む様々な神経精神医学的症状を示す。これらの行動変化は、fmr1遺伝子の欠失により様々な行動の表現型を示す成体雄Fmr1ノックアウト(KO)マウスで最も広くモデル化されている。変異マウスは、オープンフィールド試験において過覚醒を示し、社会的相互作用が損なわれ、精製綿を与えたとき巣を作ることが少なく、ケージの寝床にビー玉を埋めることが少ない。X染色体が1本であるため、男性のFXS患者は通常、女性の患者よりも重度の症状に苦しむため、すべての研究で成体雄マウスを使用した。FXS患者およびfmr1 KOマウスの両方において、他のニューロンからの興奮性入力の原則的な受け手である樹状突起棘の密度、サイズ、形状、および成熟度に変化があることが判明している(エムイー ガーニー(ME Gurney)、2017)。
【0006】
FXSの患者は、ADHDと過覚醒との組合せを有することが最も多いが、スミス・マギニス症候群およびXYYを有する男性などの他の障害でも、同様の不安定な行動をとる場合がある(ハガーマン(Hagerman)、1999)。気分の問題および不安は、胎児性アルコール症候群(FAS)、ウィリアムス症候群(WS)、FXS、トゥレット症候群、および一部の性染色体障害で一般的であり、その特定および精神薬理学的治療は、患者の幸福度を劇的に高め、一部の場合では攻撃性または爆発を著しく低減する場合がある(ハガーマン(Hagerman)、1999)。最後に、比較的高頻度な精神病的観念化の範囲における思考の著しい歪みが、抗精神病薬物がこれらの歪みおよび全体的な機能レベルを著しく改善する可能性があるため、FAS、FXS、心外顔面症候群(VCFS)、およびプラダーウィリ症候群(PWS)を含むいくつかの障害で研究されている。
【0007】
複数の研究が、CGG-リピート伸長変異以外のFMR1遺伝子内のバリアントが、FMRPの機能障害を引き起こす可能性があることを示唆している(スール(Suhl)、2015)。I304N変異と同様に、G266E変異はKHドメインの保存されたアミノ酸内にあり、患者の知的障害および行動障害の原因となっている可能性が非常に高い。S27X変異は、トランケーションが非常に深刻であり、患者由来の細胞株でFMRPが欠損していることから、患者の症状の根源となっている可能性も非常に高い。
【0008】
自閉症スペクトラム障害(ASD)の遺伝的基盤は、非常に不均一であり、その原因には数100種類の遺伝子が関与している。興味深いことに、ほとんどの遺伝子が初期発生の段階で発現プロファイルを示し、その機能性は、細胞接着および移動、細胞骨格制御、シナプス形成、ならびにキナーゼシグナル伝達に強い濃縮を共有している(ピントら(Pinto et al.)、2010、ギルバートおよびマン(Gilbert and Man)、2017)。これらのASD遺伝子は、FMR1、LIS1、MECP2、PTEN、SHANK1/2/3、TAOK2、TSC1/2、ニューロリギン、ニューレキシン、KIAA2022/KIDLIA(ギルバートおよびマン(Gilbert and Man)、2016)およびUBE3A/E6-関連タンパク質(E6AP)を含む。
【0009】
FXS患者は、重度の認知障害、自閉症的行動、例えば、攻撃性、社会不安、および型にはまった行動、注意欠陥多動性障害、てんかん、および異常な身体的特徴、例えば巨大精巣に及ぶ、他のASDと重なる様々な知的障害を示す(ハガーマン(Hagerman)、1997)。FXSおよびASDの患者は、常同症、儀式、強迫、強迫観念、および自傷を含む様々な反復的行動を示す。同様の表現型が、ASD:アンゲルマン症候群(AS)、レット症候群(RS)、フェラン・マクダーミド症候群(PMS)、ピット・ホプキンス症候群(PTHS)(これらに限定されるものではないが)において生じる。
【0010】
FXSを治療するための多大な努力は数多くの研究を含み、広く成功してはおらず、追加の新しい療法の探求に至っている。管理は症状に基づいたものであり、集学的なアプローチが必要である。言語療法、理学療法、感覚統合療法、ならびに個別の教育計画および行動的介入が、注意欠陥多動性障害への興奮薬、不安、うつ病、強迫性障害への選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、ならびに自傷および攻撃的行動への非定型抗精神病剤などの薬物と組み合わされる場合がある。FXSの新しい標的治療法が研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、自閉症およびFXSなどの神経障害および発達障害の現在の治療法の問題点の1つまたは複数を克服することである。本発明のさらなる目的は、FMR1遺伝子変異を介する自閉症の治療法を提供することである。本発明の好ましい目的は、FXSの治療法を提供することである。治療法が既存の薬学的有効成分に基づくものであれば、有益である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、FMR1介在自閉症の治療、管理、または改善における使用のための組成物であって、前記組成物が、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物(mimetics)を含む、組成物が提供される。
【0013】
本発明の関連する態様によれば、そのような予防、管理、および/または治療を必要とする個体における、治療有効量の1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物の投与を含む、FMR1介在自閉症の治療、管理、または改善の方法が提供される。
【0014】
本発明の関連する、しかしさらなる代替的な態様によれば、個体におけるFMR1介在自閉症の治療、管理、または改善のための医薬の製造における、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物の使用が提供される。
【0015】
FMR1介在自閉症は、以下:
a.FMR1遺伝子の5’-非翻訳領域における(CGG)nトリヌクレオチドリピートの伸長およびその後のメチル化、
b.FMR1における遺伝子内点変異または欠失、
c.I304N変異、
d.G266E変異、または
e.S27X変異
のうちの1つを含む変異を含むFMR1遺伝子配列に起因する可能性がある。
【0016】
本発明の関連する、しかし依然として代替的な態様によれば、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物、および薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0017】
本明細書で使用する場合、用語「治療(treatment)」、「治療すること(treating)」、「治療する(treat)」などは、所望の薬理効果および/または生理的効果を得ることを指す。効果は、疾患もしくはその症状を完全にもしくは部分的に予防するという観点では予防的であり、ならびに/または疾患および/もしくは疾患に寄与する悪影響の部分的もしくは完全な治癒という観点では治療的であり得る。「治療」は、本明細書で使用する場合、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を対象とし、(a)疾患に罹患する可能性があるが、まだそれを有すると診断されていない対象において疾患が生じるのを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発生を阻止することまたは遅らせること、および(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退縮を引き起こすことを含む。
【0018】
本明細書で使用する、用語「対象」または「個体」は、任意のヒトまたは非ヒト動物を含む。用語「非ヒト動物」は、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどのすべての哺乳動物を含む。
【0019】
FMR1介在自閉症は、脆弱X症候群(FXS)に関連し得る。
本発明の第2の態様によれば、脆弱X症候群(FXS)の治療、管理、または改善における使用のための組成物であって、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物を含む、組成物が提供される。
【0020】
本発明の関連する態様によれば、そのような予防、管理、および/または治療を必要とする個体における、治療有効量の1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物の投与を含む、脆弱X症候群(FXS)の治療、管理、または改善の方法が提供される。
【0021】
本発明の関連する、しかしさらなる代替的な態様によれば、個体における脆弱X症候群(FXS)の治療、管理、または改善のための医薬の製造における、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物の使用が提供される。
【0022】
本発明の関連する、しかし依然として代替的な態様によれば、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物、および薬学的に許容される担体、賦形剤、または希釈剤を含む医薬組成物が提供される。
【0023】
当業者(skilled addressee)は、組成物の最適用量が、第1および第2の態様の両方について確立される必要があることを理解するであろう。しかし、1つまたは複数の麦角アルカロイドを含む組成物は、約1~10mg、適切には1~5mg、適切には2~4mgの範囲の1日用量で、例えば、1日につき約3mgまたは1日につき3mgで投与される。一部の実施形態では、組成物は、約3mgおよび約5mgの範囲の1日用量で投与される。
【0024】
上述の1つまたは複数の麦角アルカロイドを含む組成物の1日用量は、単回の1日用量で投与されてもよい。適切には、1日用量は、1~5回の1日用量で、適切には、2~4回の1日用量でまたは3回の1日用量で投与される。一部の実施形態では、1つまたは複数の麦角アルカロイドを含む組成物が、例えばおよそ8時間の間隔で、1mg TID(ter in die/1日3回)の用量で、したがって1日につき3mgの総用量で、投与される。
【0025】
適切には、これらの1日用量は、組成物中の麦角アルカロイドのものである。適切には、これらの1日用量は、メシル酸エルゴロイドのものである。
麦角アルカロイドは、メシル酸エルゴロイド(ergoloid mesylates)を含み得る。1つまたは複数の麦角アルカロイドを含む組成物は、メシル酸エルゴロイドから本質的になる、またはそれからなり得る。従って、本発明は、FMR1介在自閉症の治療、管理、または改善における使用のためにメシル酸エルゴロイドを提供し、適切には、前記治療は、1~5mgの範囲の1日用量のメシル酸エルゴロイド、適切には約3mgまたは3mgの1日用量を、それを必要とする患者に投与することを含む。好ましくは、100mg TIDの用量で。
【0026】
麦角アルカロイドの誘導体および模倣物は、以下:メチセルジド、ジヒドロエルゴタミン、リスリドエルゴタミンニセルゴリン、ジヒドロエルゴクリスチン、ジヒドロエルゴコルニン、ジヒドロエルゴクリプチン、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン、カベルゴリン、ペルゴリド、ブロモクリプチン、リゼルグ酸ジエチルアミド、テルグリド、およびメテルゴリンのうちの1つまたは複数から選択され得る。好ましくは、麦角アルカロイドの誘導体および模倣物は、ジヒドロエルゴコルニン、ジヒドロエルゴクリスチンおよびジヒドロエルゴクリプチンのほぼ等比調製物を含む。
【0027】
メシル酸エルゴロイド[https://www.drugbank.ca/drugs/DB01049]は、3種類のエルゴタマントリオン(ergotamantrione):ジヒドロエルゴコルニン、ジヒドロエルゴクリスチン、およびジヒドロエルゴクリプチンの等比調製物である[トンプソン(Thompson) 1990]。これらの成分すべては、Claviceps purpureaという菌により産生され、すべて4環性化合物6-メチルエルゴノビンの誘導体である[ピレイ(Pillay) 2013]。この菌の誘導体は、約350種類の物質であることが確認されており、その中から、メシル酸エルゴロイド混合物の成分が二水素化麦角アルカロイド誘導体から構成される[パーチェソン(PERCHESON) 1954]。メシル酸エルゴロイドの混合物は、Novartisにより最初に開発され、1953年11月5日に米国食品医薬品局(FDA)が承認したが、この特定の製剤は現在製造中止となっている[https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm?event=overview.process&ApplNo=009087]。その後1991年に、メシル酸エルゴロイドの混合物はSun Pharmaceutical Industriesに再取得され、FDAにより承認された[https://www.accessdata.fda.gov/scripts/cder/daf/index.cfm?event=overview.process&ApplNo=009087]。
【0028】
メシル酸エルゴロイドは、ドーパミン、セロトニン、アルファおよびベータアドレナリン受容体タンパク質群に関与する公知のメカニズムを有する。それは、OPRM1との生物活性が予測される。メシル酸エルゴロイドは、血漿中半減期が3.5時間であり、一方で終末相半減期が13時間であることが報告されている[セイファート(Seyffart) 1992]。メシル酸エルゴロイドは、8時間毎に3×0.5~0.6mgで1日につき1.5(1~3)mgの試験的成人投与量が提案されている。
【0029】
好ましくは、麦角アルカロイドは、メシル酸エルゴロイド混合物の成分:エピクリプチン(epicriptine)、ジヒドロ-アルファ-エルゴクリプチン、ジヒドロエルゴコルニン、およびジヒドロエルゴクリスチンのうちの1つまたは複数から選択される。特定の実施形態では、麦角アルカロイドは、エピクリプチン、ジヒドロ-アルファ-エルゴクリプチン、ジヒドロエルゴコルニン、およびジヒドロエルゴクリスチンから選択されるメシル酸エルゴロイド混合物の成分のうちの1つを含む。他の実施形態では、麦角アルカロイドは、エピクリプチン、ジヒドロ-アルファ-エルゴクリプチン、ジヒドロエルゴコルニン、およびジヒドロエルゴクリスチンから選択される2つ以上を含む。代替的な実施形態では、麦角アルカロイドは、エピクリプチン、ジヒドロ-アルファ-エルゴクリプチン、ジヒドロエルゴコルニン、およびジヒドロエルゴクリスチンの混合物を含む。
【0030】
当業者は、麦角アルカロイドの誘導体および模倣物が同様の効能を有し、本発明と併せて採用され得ることを容易に理解するであろう。麦角アルカロイドの誘導体および模倣物は、以下:メチセルジド、ジヒドロエルゴタミン、リスリドエルゴタミンニセルゴリン、ジヒドロエルゴクリスチン、ジヒドロエルゴコルニン、ジヒドロエルゴクリプチン、エルゴメトリン、メチルエルゴメトリン、カベルゴリン、ペルゴリド、ブロモクリプチン、リゼルグ酸ジエチルアミド、テルグリド、およびメテルゴリンのうちの1つまたは複数から選択され得る。麦角アルカロイドの誘導体および模倣物は、麦角アルカロイドそのものと同様の表現型効果を引き起こすことが予想される。
【0031】
麦角アルカロイドの誘導体および模倣物の詳細は、以下の通りである。
メチセルジド(CAS ID 361-37-5、DrugBank DB00247):メチセルジド(代替名マレイン酸メチセルジド)は、片頭痛および他の血管性頭痛の予防、ならびにカルチノイド症候群においてセロトニンの拮抗に使用される麦角由来処方薬である。
【0032】
ジヒドロエルゴタミン(CAS ID 511-12-6、DrugBank DB00320):エルゴタミンの9,10アルファ-ジヒドロ誘導体。血管収縮薬として、特に片頭痛の治療に使用される。スマトリプタンと同様の効能を有する。吐き気が一般的な副作用である。
【0033】
リスリド(CAS ID 18016-80-3、DrugBank DB00589):ドーパミンD2受容体の作動薬(ドーパミン作動薬)として作用する麦角誘導体である。また、ドーパミンD1受容体では拮抗薬として、いくつかのセロトニン受容体では作動薬(セロトニン作動薬)として作用することがある。イソエルゴリン(iso-ergoline)系の抗パーキンソン剤であり、ドーパミン作動性のエルゴリンパーキンソン薬に化学的に関連している。リスリドは、遊離塩基として、およびマレイン酸水素塩として記載される。
【0034】
エルゴタミン(CAS ID 113-15-5、DrugBank DB00696):アルファ-1選択的アドレナリン作動薬であり、片頭痛の治療に一般的に使用される。エルゴタミンは、エルゴペプチン(ergopeptine)であり、アルカロイドの麦角ファミリーの一種であり、エルゴリンと構造的および生化学的に密接に関連している。いくつかの神経伝達物質と構造的な類似性を有し、血管収縮薬としての生物学的活性を有する。
【0035】
ニセルゴリン(CAS ID 27848-84-6、DrugBank DB00699):ニセルゴリンは、老年認知症を治療するために使用される麦角誘導体である。具体的には、血管抵抗を減少させ、脳の動脈血流を増加させ、脳細胞による酸素およびグルコースの利用を向上させる。脳血管拡張薬として、および末梢血管疾患において使用されている。脳血管疾患における認知障害を改善することが示唆されている。
【0036】
ジヒドロエルゴクリスチン(CAS ID 17479-19-5、DrugBank DB13345):ジヒドロエルゴクリスチンは、麦角アルカロイドである。ジヒドロエルゴコルニンおよびジヒドロエルゴクリプチンと並んで、メシル酸エルゴロイドの成分の1つである。半合成麦角アルカロイドであり、したがって、アルカロイドであるエルゴリンにより形成される構造骨格によって特徴付けられる。
【0037】
ジヒドロエルゴコルニン(CAS ID 25447-65-8、DrugBank DB11273):ジヒドロエルゴコルニンは、麦角アルカロイドである。ジヒドロエルゴクリスチンおよびジヒドロエルゴクリプチンと並んで、エルゴロイドの3成分のうちの1つである。ジヒドロエルゴコルニンは、非常に大きな降圧効果を示す二水素化麦角化合物のうちの1つである。麦角の粗抽出物およびその後精製したエルゴコルニンの人工的誘導体である。
【0038】
ジヒドロエルゴクリプチン(CAS ID 25447-66-9、DrugBank DB13385):ジヒドロエルゴクリプチンは、抗パーキンソン剤として使用されるエルゴリン化学系のドーパミン作動薬であり、特にパーキンソン病の初期段階における単独療法として有効である。ジヒドロエルゴクリスチンおよびジヒドロエルゴコルニンと並んで、エルゴロイドの3成分のうちの1つである。
【0039】
エルゴメトリン(CAS ID 60-79-7、DrugBank DB01253):エルゴノビンとしても公知のエルゴメトリンは、産後の大量膣出血を治療するために、子宮の収縮を引き起こすために使用される薬物である。子宮の筋肉を収縮させることにより作用する。
【0040】
メチルエルゴメトリン、(CAS ID 113-42-8、DrugBank DB00353):メチルエルゴメトリンは、麦角で発見されたサイケデリックアルカロイドであるエルゴメトリンの合成類似体である。エルゴリンファミリーの一員であり、LSD、エルギン、エルゴメトリン、およびリゼルグ酸と化学的に類似している。その分娩誘発特性から、産科での医療用途がある。CH2基を1つ多く含むエルゴノビンの同族体。
【0041】
カベルゴリン(CAS ID 81409-90-7、DrugBank DB00248):麦角誘導体であるカベルゴリンは、D受容体に対する強力なドーパミン受容体作動薬である。麦角誘導体であるカベルゴリンは、長時間作用性ドーパミン作動薬およびプロラクチン阻害剤である。高プロラクチン血症障害(hyperprolactinemic disorder)およびパーキンソン症候群を治療するために使用される。カベルゴリンは、ドーパミンD2受容体に対する強力な作動薬活性を有する。
【0042】
ペルゴリド(CAS ID 66104-22-1、DrugBank DB01186):ペルゴリドは、パーキンソン病の治療のために一部の国で使用されるエルゴリンベースの長時間作用性ドーパミン受容体作動薬である。ドーパミンD2およびD3、アルファ2-およびアルファ1-アドレナリン、ならびに5-ヒドロキシトリプタミン(5-HT)受容体に作用する麦角誘導体である。パーキンソン症候群の対症療法におけるレボドパ/カルビドパとの補助療法として必要とされた。ペルゴリドは、ドーパミンとして作用して受容体活性を増加させるが、心臓弁膜症のリスクを増加させることが判明した。
【0043】
ブロモクリプチン(CAS ID 25614-03-3、DrugBank DB01200):ブロモクリプチンは、半合成麦角アルカロイド誘導体、および強力なドーパミン作動活性を有するドーパミン作動薬である。下垂体腫瘍、パーキンソン病、高プロラクチン血症、悪性症候群、および2型糖尿病の治療に使用される。パーキンソン症候群の徴候および症状の管理に必要とされる。ブロモクリプチンはまた、プロラクチン分泌を阻害し、高プロラクチン血症に伴う機能障害を治療するために使用される場合がある。一部の先端巨大症の患者では、ソマトトロピン(成長ホルモン)分泌の持続的な抑制も引き起こす。ブロモクリプチンは、肺線維症と関連している。
【0044】
リゼルグ酸ジエチルアミド(CAS ID 50-37-3、DrugBank DB04829):リゼルグ酸ジエチルアミドは、口語的にアシッド(acid)としても公知であり、幻覚薬である。作用には、一般に、思考、感情、および周囲に対する意識の変化が含まれる。散大瞳孔、血圧上昇、および体温上昇が、典型的な副作用である。
【0045】
テルグリド(CAS ID 37686-84-3、DrugBank DB13399):trans-ジヒドロリスリド(trans-dihydrolisuride)としても公知のテルグリドは、エルゴリンファミリーのセロトニン受容体拮抗薬およびドーパミン受容体作動薬である。高プロラクチン血症の治療においてプロラクチン阻害剤として承認され、使用されている。
【0046】
メテルゴリン(CAS ID 17692-51-2、DrugBank DB13520):メテルゴリンは、麦角由来向精神薬であり、様々なセロトニンおよびドーパミン受容体のリガンドとして作用する。メテルゴリンは、比較的低濃度で様々な5-HT受容体サブタイプでの拮抗薬であり、ドーパミン受容体での作動薬である。その使用は、様々な臨床状況、例えば、季節性感情障害の治療、プロラクチン放出へのその阻害効果によるプロラクチンホルモン制御、女性の月経前不快気分障害、および抗不安治療において研究されている。
【0047】
一部の実施形態では、この第1の態様のFMR1介在自閉症の治療、管理、もしくは改善における使用のための組成物は、他の化合物および/または組成物の治療を既に受けている個体に組成物を投与することを含み得る。適切には、個体は、選択的セロトニン再取込み阻害剤(SSRI)、例えば、フルボキサミンを既に受けている。本発明の組成物を用いた治療から利益を得る可能性がある個体は、自閉症または他の疾患の治療としてSSRI化合物を既に受けている可能性が高い場合がある。したがって、本発明の組成物は、FMR1介在自閉症の治療、管理、または改善において、有利には、SSRIと共投与され、SSRIの存在下で有効であり得る。
【0048】
したがって、本発明は、FMR1介在自閉症の治療、管理、または改善における使用のための、SSRIと、1つまたは複数の麦角アルカロイド、その誘導体または模倣物を含む組成物との組合せを提供することができる。そのような実施形態では、SSRIは、そのSSRIの典型的な1日用量で投与されてもよく、1つまたは複数の麦角アルカロイドを含む組成物は、上述の1日用量で投与されてもよい。適切には、そのような実施形態では、1つまたは複数の麦角アルカロイドを含む組成物は、メシル酸エルゴロイドである。
【0049】
本発明の特定の態様、実施形態、または実施例と併せて記載された特徴(feature)、整数、特性(characteristic)、化合物、分子、化学部位または基は、それと互換性がない限り、本明細書に記載された任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であることが理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図を含む)に開示されたすべての特徴、および/またはそのように開示された任意の方法または工程のすべてのステップは、そのような特徴および/または工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わせてもよい。本発明は、任意の前述の実施形態の詳細に限られない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約、および図面を含む)に開示された特徴の任意の新規の1つ、もしくは任意の新規の組合せ、またはそのように開示された任意の方法もしくは工程のステップの任意の新規の1つ、もしくは任意の新規の組合せに及ぶ。
【0050】
本発明の実施形態は、以下の図を参照し、図示されるように、例示としてのみ以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】WT-V、KO-V、スマトリプタン、オキシトリプタン、エルゴロイド、および組合せ(エルゴロイドとスマトリプタン、エルゴロイドとオキシトリプタン)のオープンフィールドを示す棒グラフの図。
図2】WT-V、KO-V、スマトリプタン、オキシトリプタン、エルゴロイド、および組合せ(エルゴロイドとスマトリプタン、エルゴロイドとオキシトリプタン)の常同症(stereotype)を示す棒グラフの図。
図3】WT-V、KO-V、スマトリプタン、オキシトリプタン、エルゴロイド、および組合せ(エルゴロイドとスマトリプタン、エルゴロイドとオキシトリプタン)の社交性(sociability)を示す棒グラフの図。
図4】WT-V、KO-V、スマトリプタン、オキシトリプタン、エルゴロイド、および組合せ(エルゴロイドとスマトリプタン、エルゴロイドとオキシトリプタン)の新規物体認識(NOR)を示す棒グラフの図。
図5】WT-V、KO-V、スマトリプタン、オキシトリプタン、エルゴロイド、および組合せ(エルゴロイドとスマトリプタン、エルゴロイドとオキシトリプタン)の新奇食物摂取抑制(hyponeophagia)を示す棒グラフの図。
図6】WT-V、KO-V、スマトリプタン、オキシトリプタン、エルゴロイド、および組合せ(エルゴロイドとスマトリプタン、エルゴロイドとオキシトリプタン)の日常生活試験を示す棒グラフの図。
図7】WT-V、KO-V、エルゴロイド/フルボキサミンの組合せ、およびエルゴロイド/オキシトリプタン/フルボキサミンの組合せのオープンフィールドの結果を示す棒グラフの図。
図8】WT-V、KO-V、エルゴロイド/フルボキサミンの組合せ、およびエルゴロイド/オキシトリプタン/フルボキサミンの組合せの巣作りの結果を示す棒グラフの図。
図9】WT-V、KO-V、エルゴロイド/フルボキサミンの組合せ、およびエルゴロイド/オキシトリプタン/フルボキサミンの組合せの社交性の結果を示す棒グラフの図。
図10】WT-V、KO-V、エルゴロイド/フルボキサミンの組合せ、およびエルゴロイド/オキシトリプタン/フルボキサミンの組合せの常同症の結果を示す棒グラフの図。
図11】WT-V、KO-V、エルゴロイド/フルボキサミンの組合せ、およびエルゴロイド/オキシトリプタン/フルボキサミンの組合せの新奇食物摂取抑制の結果を示す棒グラフの図。
図12】WT-V、KO-V、エルゴロイド/フルボキサミンの組合せ、およびエルゴロイド/オキシトリプタン/フルボキサミンの組合せのNORの結果を示す棒グラフの図。
図13】WT-V、KO-V、エルゴロイド/フルボキサミンの組合せ、およびエルゴロイド/オキシトリプタン/フルボキサミンの組合せの恐怖条件付けの結果を示す棒グラフの図。
図14】WT-V、KO-V、エルゴロイド/フルボキサミンの組合せ、およびエルゴロイド/オキシトリプタン/フルボキサミンの組合せの居住者侵入者の結果を示す棒グラフの図。
【発明を実施するための形態】
【0052】
実施例
【実施例1】
【0053】
FXSおよびASDにおける表現型効果に対するメシル酸エルゴロイド、オキシトリプタン、およびスマトリプタンに関する研究
トリプトファンは、片頭痛の強度および持続時間を減少させることが示されている(タイタスら(Titus et al.)、1986)。しかし、L-トリプトファンを含んだアミノ酸飲料を投与された患者の群から、いくつかの議論の余地がある結果が報告された(ドラモンド(Drummond)、2006)。後の研究は、脳のセロトニン合成の減少が羞明および他の片頭痛に関する症状を強め、したがって片頭痛の病因に寄与する可能性があることを示唆している。
【0054】
ホーキンス(Hawkins)(2020)は、自閉症と、5歳から5-HTPを用いて治療された生涯にわたる重度の不眠症の病歴のある15歳の男性の症例を報告した。不眠症に対する5-HTPの典型的な用量は、夕方に投与される50~200mgである。5-HTPは、睡眠スケジュールを安定化させ、レム睡眠を増加させることが示されている。
【0055】
さらに、自閉症の脳では、セロトニンの前駆体であるアミノ酸トリプトファンのレベルが正常よりも低く、トリプトファンが不足している食事が自閉症症状を悪化させることが示されている(ボックトら(Boccuto et al.)、2013)。
【0056】
シナプス後部区画の5-HT7セロトニン受容体の刺激が、FXSマウス脳の海馬スライスにおいてmGluR-LTDを逆転させることが示され、5-HT7受容体作動薬がFXSの新規の治療ツールとして予想される可能性があることを示唆した(コスタら(Costa et al.)、2012)。
【0057】
これらの同じ著者は、5-HT7受容体に対する非常に高い結合親和性および選択性、ならびにFXSの療法のための新規の薬理学的ツールとして使用される可能性がある、誇張されたmGluR-LTDをレスキューする能力を有する2つの新規分子を特徴付けた(コスタら、2015)。
【0058】
セロトニン作動性シグナル伝達を増加させることは、BDNFのレベルを増加させ、GluA1受容体の数およびGlutA1-LTPを増加させ、シナプスにおけるセロトニンのレベルを増加させ、ドーパミン作動性システムを強化することにより、FXSにおいて混乱させられた神経生物学を潜在的にレスキューする可能性がある。これらのメカニズムは、シナプスの可塑性および脳の発達を向上させると考えられる。他の効果は、セロトニンの皮質非対称性の均衡化および全体的な神経保護効果を含み得る(ハンソン(Hanson)およびハガーマン(Hagerman)、2014)。
【0059】
自閉症症候群においてセロトニン代謝が加速される可能性が、リトヴォら(Ritvo et al.)により研究されている(1971)。これらの研究者は、5-HTの血中濃度を低下させることにより臨床的改善をもたらす試みで、L-ドーパを4人の自閉症の小児に投与した。5-HTの濃度は著しく減少したが、行動の変化は観察されなかった。リトヴォら(1971)の研究と併せて、本研究の知見は、自閉症児が5-HT代謝の操作に基づく療法から利益を得る可能性が高いという奨励にはならなかった(スヴェルドら(Sverd et al.)、1978)。
【0060】
自閉症患者は、プラセボ効果とは無関係に、正常対照よりもスマトリプタンに大きな反応を示す。また、正常対照におけるスマトリプタン対プラセボGH反応の差がより穏やかであることと対照的に、自閉症またはアスペルガー障害の患者では、スマトリプタンに対するGH反応がプラセボに対するものよりも著しく大きい。これは、自閉症患者では、5-HT機能異常が抑制性5-HT1d受容体の過感受性を反映している可能性を示唆している。これらの知見は、自閉症またはアスペルガー障害の患者の前頭および視床の脳領域で5-HT合成が減少しているという以前の知見(ノヴォトニーら(Novotny et al.)、2000)と一致している。
【0061】
結果は、反復的行動の重症度(YBOCS-強迫準尺度(compulsion-subscale)により測定される)は、他の行動的側面(ADI-Rアルゴリズム準尺度により測定されるコミュニケーションおよび社会的欠陥)とは異なり、スマトリプタン誘発成長ホルモン反応と並行することを示す。これは、5HTシステムの特定の構成要素(5HT 1d受容体)が、自閉症性障害の1つの特定の行動要素(反復的行動)を媒介する役割を果たし、したがって自閉症の異種性に影響を与える可能性を示唆している(ホランダーら(Hollander et al.)、2000)。
【0062】
動物試験
Fmr1ノックアウトマウスは、ヒトの表現型を再現し、想定される薬物治療の評価の有益な前臨床モデルである。20年以上前、最初の動物モデルであるFmr1ノックアウト(KO)マウスが記載された。Fmr1 KOは、エクソン5に挿入を保持する(バッカーら(Bakker et al.)、1994)。Fmr1 mRNAは依然として存在するが、タンパク質ヌル(protein null)である(ヤンら(Yan et al.)、2004)。これらのマウスは、C57/Bl6またはFVB系統に戻し交配されている。Fmr1 KO2は、Fmr1のプロモータおよび第1のエクソンの欠失により生成されたFmr1のヌル対立遺伝子である(ミエンジェスら(Mientjes et al.)、2006)。これは、タンパク質およびmRNAの両方がヌルである。この変異は、以下に説明されるFmr1 cKOに存在するloxP部位のCre介在切除により生じる変異と同じである(我々は、これらおよび他のFXSのマウスモデルを所有している)。
【0063】
Fmr1ノックアウトマウスにおけるGSK3の抑制制御の低下は、いくつかの社会化欠陥に寄与する可能性があり、そのリチウム治療は特定の社会化障害を改善する可能性がある(マインズら(Mines et al.)、2010)。Fmr1 KOマウスは、特に多動性が共存するときに、ASDのいくつかの社会的側面を研究するのに有用である可能性がある(ソ-レンセンら(Sorensen et al.)、2015)。
【0064】
脆弱X症候群は、自閉症に非常によく似た総体的徴候を有し、この障害に利用可能な有効な遺伝子マウスモデルであるFmr1 KOマウスもまた自閉症のモデルとしての可能性が大いに見込まれている(ベルナデット(Bernadet)およびクルーシオ(Crusio)、2006)。
【0065】
MeCP2 mRNAはFMRPの基質として同定された。このX連結MeCP2遺伝子は、自閉症的特徴を伴う別の神経発達障害であるRSにおいて変異している。ヌル処理したFmr1 KOマウス脳ではMeCP2タンパク質のレベルが上昇した(アーセノールトら(Arsenault et al.)、2016)。
【0066】
Fmr1 KOマウスのシナプトノイロゾーム(synaptoneurosomes)において、mGluR5刺激によるalphaCaMKIIおよびPSD-95のタンパク質合成が損なわれている。さらに、MeCP2のCAMKII依存的リン酸化は、これらのシナプスタンパク質を、自閉症に関連する別の単一の遺伝子障害であるRS、および脳由来神経成長因子(BDNF)の転写制御と結び付ける。結果は、自閉症は、関連している原因が異質であるにも関わらず、発達の間のシナプスの破壊が共通の臨床像を生み出す、シナプス疾患(synapsopathy disease)であることを示唆している。後者は、脆弱Xの治療が、自閉症の他の原因の治療にも有効である可能性を示唆している(ドーレン(Dolen)およびベア(Bear)、2009)。
【0067】
成体のFmr1 KOマウスは、WTマウスと比較して、海馬における選択されたサイトカインのベースライン遺伝子発現の減少を示した。炎症性サイトカインIL-6およびTNF-αは、Fmr1 KOマウスにおいて著しく減少した。炎症性サイトカインは、多くの炎症反応ならびに認知および行動に影響を与える能力を有する下流のCNSシグナル伝達カスケードの増幅に関与している(ホッジズら(Hodges et al.)、2017)。
【0068】
Fmr1-KOのレイヤー4のネットワークは、視床皮質入力および歪んだ感覚コード化に反応して、スパイク出力の著しい変化を示す。このレイヤー4の感覚コード化精度の発達的な低下は、Fmr1-KOマウスで観察されるレイヤー4からレイヤー2/3への接続のその後の発達的な変化および可塑性、ならびに感覚の過敏性の基盤となる回路機能障害に寄与することになる。自閉症のマウスモデルにおいて、感覚機能障害と社会的および反復的行動との間に因果関係が存在する(ドマンスキーら(Domanski et al.)、2019)。
【0069】
健康な海馬のニューロン(いわゆる場所細胞)は、空間探索の間に場所に関連した活性を示し、その発火場は、時間が経過しても安定している傾向がある。アーバブら(Arbab et al.)は、Fmr1-KOの空間表現の安定性の低下および特異性の減少を見出し、これはFXSにおいて観察される認知機能障害の潜在的なバイオマーカーに相当し、感覚情報を抽象的表現に統合し、この概念的記憶をうまく保持する能力に関する情報を提供する。Fmr1-KOマウスにおけるCA1場所細胞活性の特異性および安定性の低下が、その後の探索セッション内および探索セッション間の両方で判明し、一方でこれらのマウスは比較的温存された場所の場反応(field response)を示し、その行動および発火率パラメータはWTマウスと大きく相違しない(アーバブら、2018)。
【0070】
成体Fmr1 KOマウスの粗シナプトノイロゾーム分析は、Ube3aタンパク質の著しい減少を示した。さらに、mGluR1/5刺激に反応したUbe3aの翻訳の鈍化が観察された。ASの症例の大部分は、染色体15q11-13に位置するUBE3A遺伝子の欠失または変異から生じる(フィロノヴァ(Filonova)、2014)。
【0071】
実験中は、FVB系統に戻し交配したFmr1 KOマウスおよびWTの同腹仔を使用した。TransnetXY Automated Genotyping(www.transnetyx.com/)(TRANSNETYX,INC.、8110 Cordova Rd.Suite 119、Cordova、TN 38016、USA)をジェノタイピングに使用した。動物を14日間前処理した。スマトリプタンおよびエルゴロイドの有効成分は、水担体中にあり、一方でオキシトリプタンはメタノール担体中にあった。
【0072】
マウスはプラスチックケージ(35×30×12cm)に5匹ずつ収容した。室温(21±2℃)、相対湿度(55±5%)、12時間の明暗サイクル(午前7時~午後7時点灯)、および空気交換(1時間につき16回)は、自動的に制御された。動物は、市販のフードペレットおよび水に自由に接近することができた。試験は明期に実施した。AGS実験には、処理群につき10匹のマウスを使用した。実験を、UK Animals(Scientific Procedures)Act、1986の要件に従って実施した。
【0073】
すべての実験は、実験者が遺伝子型および薬物治療について盲検化された状態で実施された。別々の研究者が、投与溶液の調製およびコード化、マウスの研究治療群への割り付け、動物への投与、ならびに聴原発作データの回収を行った。
【0074】
行動分析
行動試験を2週目に実施した。行動試験は以下の通りである:1.多動性:オープンフィールド;2.常同症(stereotypy):セルフグルーミング;3.社交性:3室分割試験(three chamber partition test);4.記憶および学習:新規物体認識;5.不安:新奇食物摂取抑制、および6.日常生活試験:ビー玉埋め。
【0075】
多動性については、オープンフィールド試験(OFT)がマウスおよびラットの両方で探索行動および一般的な活動の共通の尺度であり、活動の質および量の両方を測定することができる。主に、オープンフィールド(OF)は、一般的に正方形、長方形、円形の囲いであり、周囲に脱出を防ぐ壁を有する。また、OFTは、化合物の鎮静効果、毒性効果、刺激効果を評価する仕組みとして一般的に使用されている(グールド(Gould) 2009)。
【0076】
社交性については、3室分割試験が利用される。クローリーの社交性および社会的新規性選好プロトコル(Crawley’s sociability and preference for social novelty protocol)として公知の3室パラダイム試験は、これまでにいくつかの近交系マウス系統および変異マウス系統で社会的所属および社会的記憶を研究するために採用され、成功している。この試験の主な原理は、2回の実験セッション中に、対象マウスが3つの箱の区画のいずれかで過ごすことを自由に選択することに基づいており、馴染みのない1匹または2匹のマウスと間接的に接触することも含む(カイダノビッチ-ベイリン(Kaidanovich-Beilin)、2011)。
【0077】
記憶および学習については、環境中の新規物体を認識するげっ歯類動物の能力を評価するために、新規物体認識(NOR)課題を使用した。NOR課題では、正の強化因子も負の強化因子も存在せず、この方法は、げっ歯類動物が示す新規物体に対する自然な選好を評価する。課題の手順は3つの段階:馴化、習熟、および試験段階からなる(アントゥネス(Antunes) 2012)。
【0078】
不安については、新奇食物摂取抑制試験を実施した。マウスおよびラットは、胃の噴門括約筋が硬いため嘔吐することができず、潜在的な食物毒性の問題を克服するために、まずは新規物質をごく少量だけ摂取するという戦略を発展させた。それから、動物がその物質が安全で栄養があるかどうかを判断するまで、摂取量を徐々に増やしていく。そこで、昔のネズミ捕りは、まず、毒素の運搬手段となるオートミールなどの口当たりの良い物質を、出没した場所に置いたのである(ディーコン(Deacon)2011)。
【0079】
常同症については、セルフグルーミングを評価した。動物のセルフグルーミングは、衛生状態の維持、ならびに体温調節、社会的コミュニケーション、および脱覚醒(de-arousal)を含む他の生理的に重要な工程に関わる生得的な行動である。覚醒したげっ歯類動物で最も頻繁に観察される行動の1つであり、特徴的な頭尾の前進を伴う、パターン化された連続的構成を有する(カルエフ(Kalueff) 2016)。
【0080】
日常生活試験については、げっ歯類動物では実験室環境で飼育されている場合でも巣作りは生得的な行動であるため、巣作りを評価した。その全体的な幸福度の評価基準として、および認知力の低下の可能性を予測するための補助的な評価として、合成材料および/または天然材料(麻ひも、ティッシュ、綿、紙、および干し草など)が提供される。通常は、巣を作らないなどの巣作り行動の変化は、健康または幸福の変化を示す。さらに、巣作り行動は多くの環境的および生理的課題(challenges)、ならびに病理学的疾患状態の基盤となる多くの遺伝子変異に敏感である(ガスキル(Gaskill) 2013)。
【0081】
ヒトおよびげっ歯類動物の行動には同等性があり、これによって、動物モデルを使用して薬学的有効成分がヒトの状態の治療においてどのように有効であるかを解釈することが可能である。いくつかの同等性は、以下の通りである。
【0082】
社会的相互作用:不十分なアイコンタクト、患者が一人でいることを好む。スタンフォードビネー知能尺度またはヴァインランド社会的成熟尺度による発達指数(DQ)/知能指数(IQ)/社会的指数(SQ)。(IQボーダーライン知能:71~89)。
【0083】
コミュニケーションおよび/または言語における問題:発話の遅延、患者が耳が聞こえないふりをする。脳幹誘発反応聴力検査(BERA)を使用した聴覚評価
反復的行動および/または明らかな強迫観念:常同行動、極度の不穏状態、および/または多動性。多動性を評価するためにコナーズ尺度(Connor’s scale)が使用される:>12
用語「破壊的な行動」は、当技術分野におけるその通常の意味を有する。また、反復的行動を含む場合もある。また、気分の変動、易刺激性、自傷、および攻撃性を含む場合もある。
【0084】
用語「記憶喪失」は、当技術分野におけるその通常の意味を有する。短期的または長期的に情報を保持することができないことを指す。また、記憶障害と呼ばれる場合もある。認知能力、実行能力、および言語能力、実行機能および視覚的記憶の困難を含む場合がある。また、短期記憶とも呼ばれる作業記憶(すなわち、同じまたは他の情報を処理しながら、情報を一時的に記憶すること)の困難、および音韻記憶(または言語性作業記憶)の困難を含む場合もある。
【0085】
用語「社会不安」は、当技術分野におけるその通常の意味を有する。また、社会的相互作用の困難または低社交性と呼ばれることもある。社会不安は、不十分なアイコンタクト、視線嫌悪、社会的相互作用を始めるまでの時間が長い、社会的回避または引きこもり、および仲間関係の形成の難しさを有することを含む場合がある。
【0086】
用語「多動性」は、当技術分野におけるその通常の意味を有する。多動性は、集中力が続く時間が非常に短いこと、視覚、聴覚、触覚、および嗅覚刺激に対する過敏性、転導性、衝動性、不穏状態、および/または過剰活動を有することを含む場合がある。
【0087】
治療レジーム
OX(オキシトリプタン)、SU(スマトリプタン)、ER(メシル酸エルゴロイド、本明細書ではエルゴロイドとも呼ばれる)でのマウスの治療は、以下の表1に示すマトリックスに従った。
【0088】
【表1】
【0089】
結果
マウスの行動試験の結果は、以下の表2~12に提供される。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
【表5】
【0094】
【表6】
【0095】
【表7】
【0096】
【表8】
【0097】
【表9】
【0098】
【表10】
【0099】
【表11-1】
【0100】
【表11-2】
【0101】
【表12-1】
【0102】
【表12-2】
【0103】
行動に関するマウス実験の詳細な結果を、以下の表13~20に詳述する。
【0104】
【表13】
【0105】
【表14】
【0106】
【表15】
【0107】
【表16】
【0108】
【表17】
【0109】
【表18】
【0110】
【表19】
【0111】
【表20】
【0112】
行動実験により、エルゴロイドはFMR1マウスのFXS表現型を改善したため、FXSおよびFMR1介在自閉症の有用で有効な治療として採用される可能性があることが確認された。
【実施例2】
【0113】
FXSおよびASDにおける表現型効果に対するメシル酸エルゴロイド、オキシトリプタン、およびSSRIに関する研究
実施例1についての上述の実験手順を以下の試験で使用し、これに加えて以下に説明する2つのさらなる行動試験を追加した。SSRI(選択的セロトニン再取込み阻害剤)を、メシル酸エルゴロイドおよびオキシトリプタンと共投与し、SSRI治療を既に受けている対象に対するメシル酸エルゴロイドおよびオキシトリプタンの治療の効果を評価した。
【0114】
行動分析
居住者-侵入者試験および恐怖条件付け試験を追加して、実施例1で上述したように、行動試験を2週目に実施した。
【0115】
居住者-侵入者(resident-intruder)試験:
攻撃性は、居住対象を数分間慣らしたケージ内で評価した。その後、馴染みのない動物を試験ケージに導入し、攻撃潜時(latency)をベースライン値(WTおよびKO)と比較して測定する。
【0116】
恐怖条件付け試験:
1~2分間の馴化の後、マウスは1秒間の電気ショック(0.2~0.3mA)を数回受ける。試験段階時、マウスを同じ部屋にショックなしで戻す。静止時間を測定する。
【0117】
治療レジーム
メシル酸エルゴロイド、オキシトリプタン、およびSSRIの3つの組合せを、メシル酸エルゴロイドおよびSSRIの2つの組合せ(ならびにWT、KO対照)と比較した。
【0118】
OX(オキシトリプタン)、ER(メシル酸エルゴロイド)、およびFL(フルボキサミン)でのマウスの治療は、以下の表21に示すマトリックスに従った。3つの組合せでは、メシル酸エルゴロイド2mg/kg、オキシトリプタン40mg/kg、およびフルボキサミン(SSRI)40mg/kgの投与を行った。
【0119】
【表21】
【0120】
結果
マウスの行動試験の結果は、以下の表22~30に提供される。
以下の表22は、異なる治療による緩和された表現型の概要を示す。
【0121】
【表22】
【0122】
【表23】
【0123】
【表24】
【0124】
【表25】
【0125】
【表26】
【0126】
【表27】
【0127】
【表28】
【0128】
【表29】
【0129】
【表30】
【0130】
これらの行動実験により、メシル酸エルゴロイドは、SSRIであるフルボキサミンと同時に投与されるとき、特に、オキシトリプタンと共投与されるとき、FMR1マウスのFXS表現型を改善したため、フルボキサミンなどのSSRIを既に受けている患者のFXSおよびFMR1介在自閉症の有用で有効な治療として採用される可能性があることが確認された。
【実施例3】
【0131】
製剤および治療の例
以下にいくつかの製剤例が提案された投与レジームと共に提供される。これらは例示目的であって、臨床試験を含み得るさらなる実験の間に最適化されることが理解されるであろう。簡潔にするため、製剤は、非有効成分(例えば、薬学的に許容される担体または賦形剤など)を規定しない。
【0132】
製剤3A-メシル酸エルゴロイド-FMR1介在自閉症治療用経口錠剤
【0133】
【表31】
【0134】
製剤3B-メシル酸エルゴロイド-FMR1介在自閉症治療用経口錠剤
【0135】
【表32】
【0136】
製剤3C-メシル酸エルゴロイド-脆弱X症候群(FXS)治療用経口錠剤
【0137】
【表33】
【0138】
製剤3D-メシル酸エルゴロイド-脆弱X症候群(FXS)治療用経口錠剤
【0139】
【表34】
【0140】
当業者は、治療有効用量は、当然、選択した薬学的有効成分の活性および形式によって決まることを、当然理解するだろう。
前述の実施形態は、特許請求の範囲により与えられる保護の範囲を限定することを意図しておらず、むしろ、本発明をどのように実施することができるかの例を説明することを意図している。
【0141】
参考文献
【0142】
【表35-1】
【0143】
【表35-2】
【0144】
【表35-3】
【0145】
【表35-4】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】