(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】光学的太陽光反射装置用多層コーティング
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20231024BHJP
B32B 7/027 20190101ALN20231024BHJP
【FI】
B32B9/00 A
B32B7/027
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022573521
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 IB2021058690
(87)【国際公開番号】W WO2022064419
(87)【国際公開日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102020000022435
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518160436
【氏名又は名称】レオナルド・エッセ・ピ・ア
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】シメオーニ,ミルコ
(72)【発明者】
【氏名】ウルバーニ,アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】メンガリ,サンドロ
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA17B
4F100AA19B
4F100AA20B
4F100AA28D
4F100AB01A
4F100AB03B
4F100AB10B
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4F100AG00A
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4F100AR00A
4F100AR00B
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4F100AT00
4F100BA05
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4F100GB07
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4F100JD10
4F100JD11
4F100JD12
4F100JJ10
(57)【要約】
本発明は、基板(9)と、表面(6)の熱制御のための多層コーティング(1)を含む製品であって、前記表面上に蒸着されることが意図された第1の内側層(2)と、前記第1の内側層(2)上に適用された第2の中間層(3)と、前記第2の中間層(3)上に適用された第3の外側層(4)を含み:前記第1の内側層(2)が、導電性ナノ粒子と誘電性ナノ粒子の共分散体を含み、前記導電性ナノ粒子の体積分率が、前記第1の内側層の厚さに沿って前記第2の中間層(3)から遠ざかるに従って増加し;前記第2の中間層が複数の層を含み、可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の少なくとも1つの層(3’)が、可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の少なくとも1つの層(3”)と交互に配置され、且つ、可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の各層(3’)の屈折率が、可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の各隣接層(3”)の屈折率よりも高く;および、前記第3の外側層(4)が、1×10
-3Ω・cm未満の抵抗率を有する可視域で透明な導電性酸化物で作られている製品に関する。また、その製品を含む光学的太陽光反射装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(9)と、前記基板(9)の表面(6)の熱制御のための多層コーティング(1)を含む製品であって、
前記表面上に蒸着されることが意図された第1の内側層(2)と、前記第1の内側層(2)上に適用された第2の中間層(3)と、前記第2の中間層(3)上に適用された第3の外側層(4)を含み:
- 前記第1の内側層(2)が、導電性ナノ粒子と誘電性ナノ粒子の共分散体を含み、前記導電性ナノ粒子の体積分率が、前記第1の内側層の厚さに沿って前記第2の中間層(3)から遠ざかるに従って増加し;
- 前記第2の中間層が複数の層を含み、少なくとも1つの可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の層(3’)が、少なくとも1つの可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の層(3”)と交互に配置され、且つ、各々の可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の層(3’)の屈折率が、各々の隣接する可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の層(3”)の屈折率よりも高く;および
- 前記第3の外側層(4)が、1×10
-3Ω・cm未満の抵抗率を有する可視域で透明な導電性酸化物で作られている、製品。
【請求項2】
前記導電性ナノ粒子が、アルミニウム、Al
xO、TiN、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛アルミニウム、鋼、Ti、Mo、希土類、遷移金属およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記誘電性ナノ粒子が、Al
2O
3、Al、SiO
2、Ta
2O
5、ZrO
2、Nb
2O
5、Y
2O
3、TiO
2、AlN及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
前記誘電性ナノ粒子がAl
2O
3で作られ、前記導電性ナノ粒子がAl
xOまたはAlで作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
前記第1の内側層(2)が、1~4ミクロンの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記第1の内側層(2)が、0.5~0.8の半球放射率を有することを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項7】
前記第2の中間層(3)が、5~15ミクロンの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項8】
前記第2の中間層(3)が、45~150層の可視域で透明な誘電体の層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項9】
前記第2の中間層(3)が、SiO
2、MgF
2、Ta
2O
5、ZrO
2、TiO
2、Nb
2O
5、Y
2O
3、YF
3およびそれらの混合物からなる群から選択される材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項10】
前記可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の層(3’)の屈折率と、前記可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の層(3”)の屈折率の差が、少なくとも0.5であることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項11】
前記可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の層(3’)が、1.6~2.5の可視域での屈折率を有することを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の層(3”)が、1.2~1.7の可視域での屈折率を有することを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項13】
前記第3の外側層(4)が、酸化インジウムスズ、アルミナドープ酸化亜鉛、酸化カドミウムおよびその合金、酸化亜鉛およびその合金、酸化スズおよびその合金、アンチモンおよびフッ素ドープ酸化スズからなる群から選択される材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項14】
前記第3の外側層(4)が、10
3~10
6Ω/sqの表面抵抗率を有していることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の製品を含む、光学的太陽光反射装置(5)。
【請求項16】
前記基板(9)が、フレキシブル基板(9)であることを特徴とする、請求項15に記載の光学的太陽光反射装置(5)。
【請求項17】
前記フレキシブル基板(9)が、金属フィルム、ポリマーフィルム、複合材またはフレキシブルガラスであることを特徴とする、請求項16に記載の光学的太陽光反射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2020年9月23日に出願されたイタリア特許出願第102020000022435号の優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の技術分野
本発明は、一般に、熱光学特性を有する多層コーティングに関する。
【0003】
本発明は、これに制限されるものではないが、宇宙分野、例えば、ラジエータパネル、もしくはアンテナを含む宇宙船の部品、または温度変化の緩和を必要とする他の外部構造物のためのコーティングの製造に有利な用途が判明した。
【0004】
特に、本発明は、これに制限されるものではないが、光学的太陽光反射装置の製造に有利な用途が判明した。
【背景技術】
【0005】
人工衛星の熱制御システムは、宇宙船または人工衛星と外部環境との間で交換される熱を調節するように設計された、表面が空間に面する1つ以上のラジエータパネルを含む。より具体的には、熱制御システムは、主に宇宙船が高温相で過熱しないように設計されているので、ラジエータパネルの表面は、太陽熱の放射を反射し、船上で発生した熱を放射状に放散することが必要である。
【0006】
これらの必要条件は、2つの熱光学パラメータ:太陽熱吸収率αおよび半球放射率εに基づいて規定されている。
【0007】
ラジエータパネル表面では、太陽熱吸収率αはできるだけ低く(一般に≦0.20)、半球放射率εはできるだけ高く(一般に≧0.80)、両値とも衛星寿命(静止軌道上の通信衛星では15年)の間は一定でなければならない。
【0008】
これに加えて、ラジエータパネルの表面は、電子、陽子、およびイオン化粒子との相互作用によって発生する電荷を大量に消散できなければならない。そうしないと、静電放電を引き起こし、搭載機器が損傷する可能性がある。
【0009】
表面の熱光学特性を制御する経済的な方法は、有機マトリックスに組み込まれた無機粒子からなる白色塗料をパネルに塗布することである。しかし、白色塗料は静電気消散性に乏しく、通常は経年劣化する。特に、有機マトリックスと紫外線および粒子との相互作用により、αが徐々に増加する。また、放射線または温度変化に長時間さらされることで、基材への接着性が低下する可能性がある。
【0010】
表面特性を制御するためのより良いアプローチは、ラジエータパネルを光学的太陽光反射装置(OSR)で覆うことである。OSRは2種類が現在市販されており、石英OSRと第2のフレキシブル表面反射鏡(SSM)である。
【0011】
石英OSRは、厚さ約100~200ミクロンの約40×40mmの小さな石英タイルで、ラジエータに面した面をインコネルで保護した銀の金属ミラーで被覆されている。石英基板は高い値のεを提供し、金属層は低い値のαを提供する。外側に面した面は電荷を消散させるために透明で導電性の酸化物の薄い層で覆われている。
【0012】
タイルをパネルに接着するために、手動またはロボットで塗布される導電性樹脂が使用される。石英OSRは、優れた熱光学特性と宇宙環境での耐久性を示すが、調達、適用、打ち上げコストが高く、壊れやすく、平面的なラジエータにしか適用できない。
【0013】
フレキシブルSSMは、石英OSRと同じ構造と動作原理に基づいているが、石英基板は、フッ素化エチレンポリマー(FEP)の透明シートに置き換えられている。フレキシブルSSMは比較的安価で、平面パネルまたは曲面パネルのいずれにも使用および適用が容易である。しかし、FEPフィルムは、宇宙環境、特に紫外線(フィルムを脆くし、不透明にする)および原子状酸素(フィルムを侵食する)と相互作用するため、急速に老朽化する傾向がある。
【0014】
フィルムの外側に面した面にUVフィルターを付けて耐久性を向上させる試みは、部分的にしか成功しなかった。FEP上の無機層の接着不良が原因の一つと考えられる。一般に、フレキシブルSSMは5~6年を超える宇宙ミッションには推奨されない。
【発明の概要】
【0015】
発明の目的と概要
そのため、石英OSRの熱光学特性と宇宙での耐久性に、フレキシブルSSMの使いやすさと低コストを組み合わせた新しいクラスのコーティングの必要性が当技術分野で感じられる。
【0016】
したがって、本発明の目的は、熱光学特性および宇宙での耐久性が改善され、既知のコーティングの欠点がない新規のコーティングを提供することである。
【0017】
この目的は、請求項1に記載の多層コーティング、請求項13に記載の製品、および請求項14に記載の光学的太陽光反射装置に関する本発明によって達成される。
【0018】
特に、本発明の第1の態様によれば、前記表面上に蒸着されることが意図された第1の内側層と、前記第1の内側層上に適用された第2の中間層と、前記第2の中間層上に適用された第3の外側層を含む表面の熱制御のための多層コーティングが提供される。多層コーティングは、以下の通りである:
【0019】
- 前記第1の内側層は導電性ナノ粒子と誘電性ナノ粒子の共分散体を含み、前記導電性ナノ粒子の体積分率は、前記第1の内側層の厚さに沿って前記第2の層から遠ざかるに従って増加する;
【0020】
- 前記第2の中間層は複数の層を含み、可視域で透明な屈折率が高い誘電体材料の少なくとも1つの層が、可視域で透明な屈折率が低い誘電体材料の少なくとも1つの層と交互に配置され、可視域で透明な屈折率が高い誘電体材料の各層の屈折率が、可視域で透明な屈折率が低い誘電体材料の各隣接層の屈折率よりも高い;および
【0021】
- 前記第3の外側層は、1×10-3Ω・cm未満の抵抗率を有する透明な導電性酸化物で作られている。
【0022】
用語「可視域で透明」は、可視スペクトル領域で1×10-3未満、好ましくは1×10-4未満の吸光係数を有する材料を意味する。
【0023】
有利には、本発明のコーティングは完全に無機のコーティングである。このコーティングは空間からの応力に耐性があり、この用途に必要な熱光学および電荷消散性の要件をすべて満たしている。さらに、紫外線、原子状酸素、低エネルギー荷電粒子との直接的な相互作用から基板を保護する。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、上記の多層コーティングを含む製品が提供される。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、上記の多層コーティングを含む光学的太陽光反射装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、本発明による多層コーティングの概略図を示す。
【
図2】
図2は、本発明による光学的ソーラーラジエータを含むラジエータパネルの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の好ましい実施形態の詳細な説明
ここで、本発明を当業者が製造および使用できるように、添付の図面を参照して本発明を詳細に説明する。説明された実施形態の様々な変更は、当業者には直ちに明らかであり、開示された一般原理は、添付の図面に定義された本発明の保護範囲から逸脱することなく、他の実施形態および用途に適用することができる。
【0028】
したがって、本発明は、説明され、示された実施形態に限定されると考えるべきではなく、説明され、クレームされた特徴に従って最も広い保護範囲が認められるべきである。
【0029】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明の技術分野における当業者によって一般的に使用されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、提供された定義を含む本発明が拘束力を持つ。さらに、実施例は単に例示を目的として提供されており、限定と見なしてはならない。
【0030】
本明細書に記載された実施形態の理解を容易にするために、いくつかの特定の実施形態を参照し、それらを説明するために特定の用語を使用する。本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0031】
多層コーティング1
図1を参照;本発明の多層コーティング1は、スパッタリングまたは他の物理蒸着技術によって製造することができる熱光学特性を有するコーティングであり、機能的および構造的に異なる3つの層からなる:
- 被覆される基板の表面に蒸着された、赤外線放射体として機能する第1の内側層2;
- 第1の内側層2の上に配置された、太陽光反射体として機能する第2の中間層3;および
- 外側に、すなわち空間に向かって面する、静電気消散体として機能する第3の外側層4。
【0032】
第1の内側層2 - 赤外線放射体
第1の内側層2は、導電性ナノ粒子と誘電性ナノ粒子の共分散体で作られている。これらの材料は、CERMETとしても知られるセラミック金属複合材料である。
【0033】
第1の内側層2は勾配がある。すなわち、導電性ナノ粒子の体積分率は、第1の内側層2の厚さに沿って、第2の中間層3との界面から遠ざかるように増加する。一実施形態では、導電性ナノ粒子の体積分率は、内側層2の厚さに沿って、基板との界面における最大値≧70%から、中間層3との界面における最小値≦30%まで、増加する。
【0034】
一実施形態では、導電性ナノ粒子の体積分率は、第1の内側層2の厚さに沿って、第2の中間層3との界面から遠ざかるように連続的に増加する。別の実施形態では、導電性ナノ粒子の体積分率は、小さな不連続なステップで増加する。
【0035】
赤外線吸光係数も同じ傾向を示す:内側層2と第2中間層3との界面では低く、内側層2の基板側を向いた界面では高くなる。この構成は、電磁トラップを作り出し、空間からの放射は、界面で反射することなく、徐々に密になる媒体中で吸収される。一実施形態では、第1の内側層2は、3~20ミクロン以上の赤外線放射を効果的に吸収する。
【0036】
以下の点が考慮される:
- 吸収率と放射率は、Kirchoffの法則により等価である;
- 宇宙船のラジエータパネルの動作温度は約300Kである;および
- 300Kでの黒体の放射率のピークは波長10ミクロンにあり、
したがって、第1の内側層2は、高い半球放射率εによって特徴付けられる。
【0037】
第1の内側層2の第2の関連する特徴は、機械的タイプのものである。多孔性または柱状構造を有する多くの黒色コーティングとは異なり、第1の内側層2はコンパクトで硬く、様々な基板材料に対して優れた接着性を示す。さらに、その勾配のある組成のおかげで、基板(より高いCTE)と第2の中間層3(より低いCTE)の間の熱膨張係数(CTE)のずれを補償するのに有効である。
【0038】
第1の内側層2は、裸の基板上に直接蒸着してもよいし、熱機械結合および基板への接着を促進するアルミナまたは他の材料の中間層を介在させて蒸着してもよい。
【0039】
一実施形態では、第1の内側層2は、1~4ミクロンの厚さを有し、0.5~0.8の半球放射率を有する。
【0040】
一実施形態では、第1の内側層2は、アルミニウム、AlxO(すなわち亜酸化アルミニウム)、TiN、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛アルミニウム、鋼、Ti、Mo、希土類、遷移金属およびそれらの組み合わせからなる群から選択される導電性材料、好ましくはアルミニウムおよびAlxOを用いて作製される。
【0041】
一実施形態では、第1の内側層2は、Al2O3、Al、SiO2、Ta2O5、ZrO2、Nb2O5、Y2O3、TiO2及びそれらの組み合わせからなる群から選択される誘電性材料、好ましくはAl2O3を使用して作られている。
【0042】
第1の内側層2は、蒸着中に材料の酸化状態を徐々に変化させることによって、単一の供給源からの反応性スパッタリングによって製造することができる。別の実施形態では、層は、2つ以上の異なる供給源からの異なる材料の共蒸着によって製造される。
【0043】
第2の中間層3 - 太陽光反射体
第2の中間層3は、第1の内側層2の上に配置され、太陽光反射体として機能する。それは、高屈折率材料層3’と低屈折率材料層3”が交互に配置された誘電性の透明材料の一連の層で構成されている。
【0044】
高屈折率材料層3’は、すべて同じ材料または異なる材料で製造できる。用語「高屈折率」は、可視域での屈折率が1.6~2.5であることを意味する。
【0045】
また低屈折率材料層3”も、すべて同じ材料または異なる材料で製造できる。用語「低屈折率」は、可視域での屈折率が1.2~1.7であることを意味する。
【0046】
中間層3がその機能を果たすためには、高屈折率を有する各層3’が、低屈折率を有する隣接する層3”の屈折率よりも高い屈折率を有することが必要である。一実施形態では、層3’の屈折率と層3”の屈折率の間のこの差は、少なくとも0.5であり、好ましくは0.7である。
【0047】
用語「透明」は、可視スペクトル領域で1×10-3未満、好ましくは1×10-4未満の吸光係数を有する材料を意味する。
【0048】
高屈折率層3’と低屈折率層3”の間の界面における電磁波の建設的および破壊的干渉を利用して、太陽光スペクトルで高い反射率を発生させる。
【0049】
第2の中間層3の一連の材料は、光学設計者に知られているいくつかのアプローチの1つに従って設計することができる。例えば、1/4波長シーケンスまたは準周期的なフィボナッチシーケンスまたはルゲートフィルタおよび/またはハイブリッドソリューションを使用する。
【0050】
1/4波長アプローチでは、第2の中間層3は、太陽スペクトルの様々な部分を反射するいくつかのフィルタの重ね合わせによって生じる。各フィルタは、性能を向上させるために数回繰り返すことができる3層ユニット(U)をベースにしている。以下の標準記法を使用する:
- 1Hは、中心波長の1/4に等しい光学的厚さを有する高屈折率材料の層を示す;および
- 1Lは、フィルタの中心動作波長の1/4に等しい光学的厚さを有する低屈折率材料の層を示す。
フィルタの基本単位Uは、次の関係を使用して構築される:
【0051】
【0052】
各フィルターは、基本ユニットを2~5回繰り返すことで得られる。太陽スペクトルの様々な領域を反射するために、様々なフィルタが使用される。全体として、第2の中間層3は、100nmから1500nmまでのUV-VIS-NIRスペクトル全体を均一にカバーするように、様々な波長を中心とする15~50個のフィルタの重ね合わせに由来する。
【0053】
第2の中間層3は、第1の内側層2上に直接蒸着してもよいし、2層間の熱光学的および/または機械的結合を改善するアルミナまたは他の材料の中間層を介在させて蒸着してもよい。
【0054】
一実施形態では、第2の中間層3の材料は、UV-VIS-NIRスペクトルの光学コーティングを構築するために一般的に使用される材料であり、SiO2、MgF2、Ta2O5、ZrO2、TiO2、Nb2O5、Y2O3、YF3およびそれらの混合物を含む。
【0055】
一実施形態では、第2の中間層3は反応性スパッタリングによって蒸着される。
【0056】
一実施形態において、第2の中間層3は45~150層からなり、5~15ミクロンの総厚を有し、滑らかな表面上で0.20÷0.05以下の範囲でαを保証する。
【0057】
第2の中間層3は、本発明の多層コーティングの放射率を常に上昇させる効果がある。しかし使用する材料と総厚によって、程度の差はあるが、その効果は強かったり弱かったりする場合がある。
【0058】
第3の外側層4 - 静電気消散体
第3の外側層4は、1×10-3Ω・cm未満の抵抗率と、可視領域で1×10-3未満、好ましくは1×10-4未満の吸光係数を有する透明な導電性酸化物で作られている。
【0059】
好ましい実施形態では、透明な導電層は、酸化インジウムスズ、アルミナドープ酸化亜鉛、酸化カドミウムおよびその合金、酸化亜鉛およびその合金、酸化スズおよびその合金、アンチモンおよびフッ素ドープ酸化スズからなる群から選択される透明な導電性酸化物で作られている。
【0060】
外側層4は、第2の中間層3上に直接蒸着してもよいし、または、特に、本発明の多層コーティングの上層を原子状酸素による腐食から保護するために用いることができる、SiO2、アルミナ、もしくは、UV-VIS-NIRスペクトルで透明な他の材料で作られている中間層を介在させて蒸着してもよい。
【0061】
一実施形態では、第3の外側層4は、第2の中間層の上にスパッタリングによって蒸着することができ、10÷50nmの厚さ及び103÷106Ω/sqの表面抵抗率を有し得る。
【0062】
本発明の多層コーティングの用途
本発明の多層コーティング1は、例えばラジエータパネル、またはアンテナを含む宇宙船の部品もしくは温度変化の緩和を必要とする他の外部構造物などの製品を製造するために使用することができ、多層コーティングは、被覆される基板に適用される。
【0063】
多層コーティング1は、熱光学特性が変更された表面、例えば、ラジエータパネルまたはアンテナのアルミニウムまたは炭素繊維強化ポリマー外皮に直接適用することができる。コーティングの適用は、製品の最終的な組み立て、すなわち、製品の外皮とハニカム構造の結合の前に行うこともできる。コーティングの性能αを改善するために、コーティングを適用する前に被覆する表面を研磨することができる。
【0064】
別の実施形態では、本発明の多層コーティングは、フレキシブルな光学的太陽光反射装置を製造するために使用することができる。
【0065】
この目的のために、多層コーティングは、フレキシブル基板、好ましくは金属フィルム、ポリマーフィルム、複合材(特にCFRP)またはフレキシブルガラス上に蒸着される。続いて、コーティングが蒸着された面とは反対側のフィルムの面が、例えば導電性樹脂または感圧接着剤(PSA)を用いて、ラジエータパネルまたは宇宙船の別の外面に接着さされる。
【0066】
一実施形態では、フレキシブル基板はポリイミドまたはポリエーテルケトン(PEEK)で作られており、フィルムの厚さは25~100ミクロンである。
【0067】
別の実施形態では、フレキシブル基板は、フッ素化エチレンポリマー(FEP)、ポリカーボネート、ポリエチレン、または宇宙での使用に適した他のポリマー、チタン、アルミニウムまたは他の金属材料、グラファイト、CFPRまたは他の複合材料、超薄型フレキシブルガラスで作られている。
【0068】
基板はコーティングのための柔軟な支持体としてのみ機能し、もはや光学的に透明である必要はない。これにより、既知のフレキシブルSSMに使われていたFEPを、より安価でコーティングが容易な他の種類のポリマーに置き換えることができる。
【0069】
一実施形態では、本発明の多層コーティングで被覆されていないフレキシブル基板の表面は金属化され、外側を向く光学的太陽光反射装置の表面と、被覆される表面の方を向く表面の間の電気接触は、小さな貫通孔の経路(いわゆる穴あき相互接続)を介して決定される。
【0070】
図2は、本発明によるフレキシブル光学的太陽光反射装置5を組み込んだソーラーラジエータ100の例示的な実施形態を示す。
【0071】
特に、フレキシブル光学的太陽光反射装置5は、感圧接着剤の層7によってソーラーラジエータ100の外面(外皮)6に適用される。
【0072】
フレキシブル光学的太陽光反射装置5は、ポリマーシート9上に蒸着された多層コーティング1からなる第1の外側部分を備える。ラジエータ100の外皮6の方を向いたポリマーフィルムの表面は、金属層8で被覆され、この金属層は接着剤層7に接触している。
【0073】
本発明による光学的太陽光反射装置は、フレキシブルSSMの典型的な平面または曲面のいずれかへの使いやすさと適用性を、石英OSRの熱光学特性と空間的耐久性に組み合わせて、軌道上での15年間のミッションに関わる装置への適用に適したものとなる。さらに、本発明による光学的太陽光反射装置の総コストは、当技術分野で知られているフレキシブルOSRのコストと同様であるが、石英OSRのコストよりもはるかに低い。
【0074】
本発明の多層コーティングは、好ましくは、半球放射率が0.1~0.8である。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(9)と、前記基板(9)の表面(6)の熱制御のための多層コーティング(1)を含む製品であって、
前記表面上に蒸着されることが意図された第1の内側層(2)と、前記第1の内側層(2)上に適用された第2の中間層(3)と、前記第2の中間層(3)上に適用された第3の外側層(4)を含み:
- 前記第1の内側層(2)が、導電性ナノ粒子と誘電性ナノ粒子の共分散体を含み、前記導電性ナノ粒子の体積分率が、前記第1の内側層の厚さに沿って前記第2の中間層(3)から遠ざかるに従って増加し
、前記第1の内側層(2)が、0.5~0.8の半球放射率を有し;
- 前記第2の中間層が複数の層を含み、少なくとも1つの可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の層(3’)が、少なくとも1つの可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の層(3”)と交互に配置され、且つ、各々の可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の層(3’)の屈折率が、各々の隣接する可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の層(3”)の屈折率よりも高く;および
- 前記第3の外側層(4)が、1×10
-3Ω・cm未満の抵抗率を有する可視域で透明な導電性酸化物で作られている、製品。
【請求項2】
前記導電性ナノ粒子が、アルミニウム、Al
xO、TiN、酸化インジウムスズ、酸化亜鉛アルミニウム、鋼、Ti、Mo、希土類、遷移金属およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記誘電性ナノ粒子が、Al
2O
3、Al、SiO
2、Ta
2O
5、ZrO
2、Nb
2O
5、Y
2O
3、TiO
2、AlN及びそれらの組み合わせからなる群から選択される材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
前記誘電性ナノ粒子がAl
2O
3で作られ、前記導電性ナノ粒子がAl
xOまたはAlで作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項5】
前記第1の内側層(2)が、1~4
マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項6】
前記第2の中間層(3)が、5~15
マイクロメートルの厚さを有することを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項7】
前記第2の中間層(3)が、45~150層の可視域で透明な誘電体の層を含むことを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項8】
前記第2の中間層(3)が、SiO
2、MgF
2、Ta
2O
5、ZrO
2、TiO
2、Nb
2O
5、Y
2O
3、YF
3およびそれらの混合物からなる群から選択される材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項9】
前記可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の層(3’)の屈折率と、前記可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の層(3”)の屈折率の差が、少なくとも0.5であることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項10】
前記可視域で透明な可視域で高屈折率の誘電体材料の層(3’)が、1.6~2.5の可視域での屈折率を有することを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項11】
前記可視域で透明な可視域で低屈折率の誘電体材料の層(3”)が、1.2~1.7の可視域での屈折率を有することを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項12】
前記第3の外側層(4)が、酸化インジウムスズ、アルミナドープ酸化亜鉛、酸化カドミウムおよびその合金、酸化亜鉛およびその合金、酸化スズおよびその合金、アンチモンおよびフッ素ドープ酸化スズからなる群から選択される材料で作られていることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項13】
前記第3の外側層(4)が、10
3~10
6Ω/sqの表面抵抗率を有していることを特徴とする、請求項1に記載の製品。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか1項に記載の製品を含む、光学的太陽光反射装置(5)。
【請求項15】
前記基板(9)が、フレキシブル基板(9)であることを特徴とする、請求項
14に記載の光学的太陽光反射装置(5)。
【請求項16】
前記フレキシブル基板(9)が、金属フィルム、ポリマーフィルム、複合材またはフレキシブルガラスであることを特徴とする、請求項
15に記載の光学的太陽光反射装置。
【国際調査報告】