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特表2023-545600空調システムおよび冷凍システムのための酸およびハロゲン化物の除去
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】空調システムおよび冷凍システムのための酸およびハロゲン化物の除去
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/08 20060101AFI20231024BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20231024BHJP
   B01D 15/00 20060101ALI20231024BHJP
   F25B 43/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B01J20/08 B
B01J20/28 Z
B01D15/00 J
F25B43/00 S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023504287
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-01-20
(86)【国際出願番号】 US2021054895
(87)【国際公開番号】W WO2022081789
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】63/092,542
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513307933
【氏名又は名称】パーカー-ハネフィン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】PARKER-HANNIFIN CORPORATION
【住所又は居所原語表記】6035 Parkland Blvd. Cleveland, OH 44124 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】バナジー,デバシス
(72)【発明者】
【氏名】コイル,エリック・アール
【テーマコード(参考)】
4D017
4G066
【Fターム(参考)】
4D017AA03
4D017BA20
4D017CA05
4D017CB01
4D017DA01
4D017EA05
4G066AA20B
4G066AB01D
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA23
4G066BA26
4G066BA41
4G066CA07
4G066CA31
4G066DA10
4G066FA37
(57)【要約】
フルオロヨードカーボンを含む冷媒の分解によって生成される酸およびハロゲン化物を除去するためのフィルタ-ドライヤコアが記載され、フィルタ-ドライヤコアは、ガンマ相活性アルミナおよびモレキュラシーブを含む成形コアを備える。モレキュラシーブは、3~4オングストロームの孔サイズ、および300~800m/gの表面積を有し、および/または、アルミナは、平均ビーズ直径が0.1~10mmのビーズ状で提供される。アルミナ表面積は、140~250m/gであり得、平均孔サイズは、6nm~16nmであり得る。コア内のモレキュラシーブの割合は0~40%であり、コアの残りはアルミナである。コアの表面積を増加させるために、フィルタ-ドライヤコアは、コアを通って長手方向に延在する複数の適切な形状のチャネルを画定し得、中央本体から延在するフィンを有し得るか、または、複数のロッドとして構成され得る。冷媒システムは、冷媒が流れる冷媒循環路と、冷凍システムから汚染物質を除去するために冷媒との接触のために構成されたフィルタ-ドライヤコアを含むフィルタ-ドライヤユニットとを含む。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロヨードカーボンを含む冷媒の分解によって生成される酸およびハロゲン化物を除去するためのドライヤコアであって、ガンマ相活性アルミナおよびモレキュラシーブを含む成形コアを備えた、ドライヤコア。
【請求項2】
前記モレキュラシーブは、3~4オングストロームの孔サイズ、および300~800m/gの表面積を有する、請求項1に記載のドライヤコア。
【請求項3】
前記アルミナは、平均ビーズ直径が0.1~10mmのビーズ状または粒状で提供される、請求項1または請求項2に記載のドライヤコア。
【請求項4】
コア表面積は140~250m/gであり、平均孔サイズは6nm~16nmである、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のドライヤコア。
【請求項5】
前記コア内のモレキュラシーブの割合は0~40%であり、前記コアの残りはアルミナである、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のドライヤコア。
【請求項6】
前記コアは、前記コアを通って長手方向に延在する複数のチャネルを画定する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のドライヤコア。
【請求項7】
前記複数のチャネルは、規則的パターンで構成される、請求項6に記載のドライヤコア。
【請求項8】
前記規則的パターンは、菱形と砂時計とが交互するチャネル、六角形チャネル、または三角形チャネルのうちの1つである、請求項7に記載のドライヤコア。
【請求項9】
フィルタ-ドライヤコアは、中央本体から延在するフィンを有する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のドライヤコア。
【請求項10】
前記フィルタ-ドライヤコアは、複数のロッドとして構成される、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のドライヤコア。
【請求項11】
前記フィルタ-ドライヤコアは、アルミナコアによる冷媒添加剤の吸着を阻止するための添加剤吸着阻止剤を含む、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のドライヤコア。
【請求項12】
前記添加剤吸着阻止剤は、オイルである、請求項11に記載のドライヤコア。
【請求項13】
前記添加剤吸着阻止剤は、液体炭化水素である、請求項11に記載のドライヤコア。
【請求項14】
前記添加剤吸着阻止剤は、平均孔サイズが6nm~16nmであるガンマ相アルミナである、請求項11に記載のドライヤコア。
【請求項15】
前記フィルタ-ドライヤコアは、酸吸着が前記フィルタ-ドライヤコア内で飽和に達したときを示すための変色指示薬を含む、請求項1から請求項14のいずれか一項に記載のドライヤコア。
【請求項16】
前記変色指示薬は、前記ガンマ相活性アルミナに直接スプレーされるpH指示薬である、請求項15に記載のドライヤコア。
【請求項17】
冷媒システムであって、
冷媒が流れる冷媒循環路と、
冷凍システムから汚染物質を除去するために前記冷媒との接触のために構成された請求項1から請求項16のいずれか一項に記載のドライヤコアを含むフィルタ-ドライヤユニットとを備える、冷媒システム。
【請求項18】
前記フィルタ-ドライヤユニットは、前記ドライヤコアを支持する外部ハウジングを含む、請求項17に記載の冷媒システム。
【請求項19】
前記冷媒循環路は、前記冷媒が流れる冷媒流体導管ループに沿って配置された圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む、請求項17または請求項18に記載の冷媒システム。
【請求項20】
前記フィルタ-ドライヤユニットは、前記冷媒流体導管ループに沿って前記凝縮器の下流に配置される、請求項19に記載の冷媒システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、一般に有毒な汚染物質の除去に関し、特に、空調システムおよび冷凍システムで使用されるフルオロヨードカーボン冷媒(たとえば、CFIベースの冷媒)の化学分解によって形成される強酸およびハロゲン化物イオンの除去に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化に対処するために、低い「地球温暖化係数」(GWP)を有する物質を利用するように、様々な業界で圧力がかかっている。「地球温暖化係数」(GWP)は、温室効果ガスを、二酸化炭素に対する特定の時間軸まで大気中に閉じ込める、熱の尺度として定義されているパラメータである。家庭用ACシステムの地球温暖化に対処するために、低いGWP(<750)の冷媒が主に使用されることが一般的に理解されている。新しい冷媒の多くの新しい混合および化学作用が導入されており、化学的適合性および長期的性能に関する課題および懸念が生じている。
【0003】
そのような新しい混合冷媒の1つのクラスは、フルオロヨードカーボン分子を含む。フルオロヨードカーボン分子には、典型的なフルオロカーボン冷媒の炭素-フッ素(C-F)結合よりもはるかに弱い炭素-ヨウ素(C-I)結合が含まれているため、GWPが低くなる。しかしながら、フルオロヨードカーボン冷媒を使用すると、限定されないが、過剰な熱、湿気、および光露出などの条件で、化学的に不安定になる可能性がある。フルオロヨードカーボンタイプの分子の分解により、強酸およびヨウ化物イオンが形成される。これら有害成分の除去は、冷媒の長期安定性のために重要である。比較的新しいフルオロヨードカーボン冷媒混合の使用から、酸およびヨウ化物を除去するための現在の解決策は、不十分なままである。現在のフィルタ-ドライヤコアは、広く採用されているフルオロカーボン冷媒の有害成分を除去するように十分に設計されているが、遊離ヨウ化物が溶液中に留まることができる量に関する厳しい制限があるため、従来のコア構成では、フルオロヨードカーボンで構成された冷媒を使用するには不十分であることが証明されている。
【発明の概要】
【0004】
したがって、当該技術分野では、より新しい空調システムおよび冷凍システムにおいて、特に、過剰な温度および/または湿気、または他の望ましくない環境条件が存在する場合に、使用されるフルオロヨードカーボン冷媒分子の化学分解によって形成される強酸およびハロゲン化物イオン(および特にヨウ化物イオン)を除去するための強化されたメカニズムが必要とされている。強酸と、その場で生成されたヨウ化物との除去は、一般に、特定のアルミナグレードおよびモレキュラシーブで作られた成形コアを使用して実行される。発明者らは、酸およびヨウ化物の除去を促進する特定の結合剤を有する成形ドライヤコアの形態の材料溶液を開発した。本願の実施形態の成形コアは、最大露出表面積を有するように設計されている点で、従来の成形コアとは異なる。
【0005】
本願の例示的な実施形態は、ガンマ相活性アルミナおよびモレキュラシーブを含む成形ドライヤコアを含む。モレキュラシーブは、一般に、3~4オングストロームの孔サイズ、および300~800m/gの表面積を有する。アルミナは、平均ビーズ直径が0.1~10mmのビーズ状で提供される。例示的な実施形態では、コア表面積は140~250m/gであり、平均孔サイズは6nm~16nmである。コア内のモレキュラシーブの割合は0~40%であり、コアの残りはアルミナである。ヨウ化物および他の関連する酸性汚染物質の吸着の動力学は、最適な吸着のための主要な要素であり、材料が冷媒の流れに曝される面積は、特定の用途に対して最大化される。空調および冷凍システムからのヨウ化物などの汚染物質の除去動力学は、システムの最適な寿命にとって重要である。汚染物質を十分な速さで除去しないと、システムの銅管の内面に、望ましくないヨウ化金属が堆積するなど、システムの適切な機能に悪影響を与える可能性がある。
【0006】
したがって、本発明の態様は、フルオロヨードカーボンを含む冷媒の分解によって生成される酸およびハロゲン化物を除去するための、たとえばフィルタ-ドライヤコアなどのドライヤコアであり、ドライヤコアは、ガンマ相活性アルミナおよびモレキュラシーブを含む成形コアを備える。例示的な実施形態では、モレキュラシーブは、3~4オングストロームの孔サイズ、および300~800m/gの表面積を有し、および/または、アルミナは、0.1~10mmの平均ビーズ直径を有するビーズ状または粒状の形態で提供される。コア表面積は、140~250m/gであり、平均孔サイズは6nmを超え、より具体的には6nm~16nmである。コア内のモレキュラシーブの割合は、0~40%であり、コアの残りは、アルミナである。コアの表面積を増加させるために、ドライヤコアは、コアを通って長手方向に延在する複数の適切な形状のチャネルを画定し得るか、または、ドライヤコアは、中央本体から延在するフィンを有し得るか、または、ドライヤコアは、複数のロッドとして構成され得る。本発明の別の態様は、冷媒が流れる冷媒循環路と、冷凍システムから汚染物質を除去するために冷媒との接触のために構成された実施形態のいずれかによるドライヤコアを含むフィルタ-ドライヤユニットとを含む冷媒システムである。
【0007】
本発明のこれら特徴およびさらなる特徴は、以下の説明および添付図面を参照することによって明らかになるであろう。説明および図面において、本発明の特定の実施形態は、本発明の原理が適用され得る手法のいくつかを示すものとして詳細に開示されたが、本発明は、それに応じて範囲が限定されないことが理解される。むしろ、本発明は、本明細書に添付された特許請求の範囲の主旨および用語の範囲内にあるすべての変更、修正、および等価物を含む。1つの実施形態に関して説明および/または図示される特徴は、1つまたは複数の他の実施形態において同じ手法または類似の手法で、および/または、他の実施形態の特徴と組み合わせて、またはその代わりに使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1の断面形状を有する複数のチャネルを含むフィルタ-ドライヤコアの第1の構成を示す図である。
図2図2は、第2の断面形状を有する複数のチャネルを含むフィルタ-ドライヤコアの第2の構成を示す図である。
図3図3は、第3の断面形状を有する複数のチャネルを含むフィルタ-ドライヤコアの第3の構成を示す図である。
図4図4は、中央本体から延在するフィンを含むフィルタ-ドライヤコアの第4の構成を示す図である。
図5図5は、複数のロッドとして構成されたフィルタ-ドライヤコアの第5の構成を示す図である。
図6図6は、冷媒を受け取るように構成されたフィルタ-ドライヤユニットを含む冷媒システムを示す概略図である。
図7図7は、本願の例示的な実施形態によるフィルタ-ドライヤユニットの断面図を示す図である。
図8図8は、本願のフィルタドライヤコアの例示的なヨウ化物除去動力学のグラフ描写図である。
図9図9は、本願のフィルタドライヤコアの大容量用途のための例示的なヨウ化物除去動力学のグラフ描写図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、図面を参照して本願の実施形態を説明するが、図面全体を通して、同様の要素を表すために同様の参照番号が使用される。図は、必ずしも一定の縮尺ではないことを理解されたい。
【0010】
本願の実施形態は、新しい空調システムおよび冷凍システムにおいて、特に過剰な温度および/または湿気、または他の望ましくない環境条件が存在する場合に、使用されるフルオロヨードカーボン冷媒分子の化学分解によって形成される強酸およびハロゲン化物イオン(および特にヨウ化物イオン)を除去するための強化されたメカニズムを提供する。強酸と、その場で生成されたヨウ化物との除去は、一般に、特定のアルミナグレードおよびモレキュラシーブで作られた成形コアを使用して実行される。本発明者らは、酸およびヨウ化物の除去を促進する特定の結合剤を有する成形ドライヤコアの形態の材料溶液を開発した。本願の実施形態の成形ドライヤコアは、最大露出表面積を有するように設計されているという点で、従来の成形コアとは異なる。
【0011】
例示的な実施形態は、ガンマ相活性アルミナおよびモレキュラシーブを含む成形ドライヤコアを含む。ガンマ相活性アルミナは、本発明者らによって、従来のフィルタドライヤコア材料と比較して、優れたコア材料であると判定された。ガンマ相活性アルミナは、たとえばベーマイト相アルミナなどの活性アルミナの他の相と比較して、より多くの活性部位を有するため、ガンマ相活性アルミナは、同様の実験条件下で、より多くの吸着挙動を示す。ガンマ相活性アルミナは、たとえば金属含浸アルミナなどの他の形態のアルミナベースの材料よりも優れた化学的適合性も示す。
【0012】
より具体的には、活性アルミナとも呼ばれる多孔質アルミナ材料は、ベーマイト、バイヤライト、およびギブサイトなどのアルミニウム水和物、または他の独自の化学的方法から得られる。初期のアルミニウム水和物の化学的性質に基づいて、熱処理は、表面および化学的に結合した水分子の除去、つまり脱水、および脱ヒドロキシル(-OH基の除去)によって、アルミナの異なる相をもたらす。異なる相は、γ(ガンマ)、η(イータ)、δ(デルタ)、およびθ(シータ)相を含み、他の相もある。これら相の主な違いは、結晶構造の変化に伴って残る水および水酸基の量である。たとえば、ベーマイトは、斜方晶系の結晶構造を有するが、δ-アルミナは、欠陥スピネル、立方結晶構造を有する。同様に、バイヤライトは、単斜晶系の結晶構造を有するが、加熱されたバイヤライト、つまりη相は、立方結晶形態を有する。
【0013】
活性γ-アルミナ(ガンマアルミナ)の使用は、代替相と比較して、ドライヤコア構造の文脈において有意な利点を有することが本発明者によって実証された。アルミニウム金属中心の形態のルイス酸性部位、および-OHおよび-酸化物基の形態のルイス塩基性部位の数は、他の相のベーマイトベースの活性アルミナよりも著しく多い。これらルイス酸性および塩基性部位は、Fなどの無機陰イオンおよびHなどの酸性イオンを効率的に吸着できる。一般に、さらに加熱すると、水分子が除去されてルイス酸性および塩基性部位がより多く生成されるが、これにはさらなる加熱が必要であり、大規模な製造では法外なコストがかかる可能性があり、これにより、活性化されたγ-アルミナのルイス酸性および塩基性部位の数が多くなり、代替アルミナ相と比較して有利になる。さらに、γ-アルミナは、ヨウ化物や酸分子などの陰イオンを吸着する優れた容量を有することが分かった。γ-アルミナのビーズ状または粒状バージョンは、たとえば、ベーマイト形態のアルミナを加熱することによって、またはベーマイトアルミナの粉末をγ-形態に加熱し、次いでアルミナを凝集させることによって、作成することができる。
【0014】
モレキュラシーブは、一般に、3~4オングストロームの孔サイズ、および300~800m/gの表面積を有する。アルミナは、平均ビーズ直径が0.1~10mmのビーズ状または粒状で提供される。例示的な実施形態では、アルミナ表面積は140~250m/gであり、平均孔サイズは6nmを超え、より具体的には6nm~16nmである。コア内のモレキュラシーブの割合は0~40%であり、コアの残りはアルミナである。ヨウ化物および他の関連する酸性汚染物質の吸着の動力学は、溶液からの酸およびヨウ化物のより迅速な除去を含む最適な性能のための主要な要素であり、特定の用途に対して、材料が冷媒の流れに曝される領域が最大化される。
【0015】
図1図5は、コアの表面積を最大化するための、たとえばフィルタ-ドライヤコアなどのドライヤコアのいくつかの例示的な設計または構成を示す。これらの例は非限定的であることを理解されたい。例示的な実施形態では、ドライヤコアは、コアを通って長手方向に延在する複数のチャネルを画定することによって表面積を増大させる。たとえば、図1は、コアを通って長手方向に延在する菱形および砂時計のチャネルが交互する規則的パターンを有するフィルタ-ドライヤコア10の例を示す。図2は、コアを通って長手方向に延在する六角形チャネルの規則的パターンを有するフィルタ-ドライヤコア20の例を示す。図3は、コアを通って長手方向に延在する三角形チャネルの規則的パターンを有するフィルタ-ドライヤコア30の例を示す。コア表面積を増大させるために、長手方向チャネルの他の規則的パターンまたは不規則的パターンが採用され得、特定の実施に適応するように成形される。
【0016】
例示的な実施形態では、ドライヤコアは、コアの外表面積を増大させることによって表面積を増大させる。たとえば、図4は、中央本体から延在するフィンの規則的パターンを有するフィルタ-ドライヤコア40の例を示す。図5は、複数のロッドとして構成されたフィルタ-ドライヤコア50の例を示し、表面積は、個々のロッドの外面として増大している。コア表面積を増大させるために、外部または外側表面領域の他の規則的パターンまたは不規則的パターンが採用され得、特定の実施に適応するように成形される。
【0017】
性能を向上させるために、追加の構成要素材料が、コア材料に追加され得る。典型的な冷媒は、高温での安定性に問題が生じる可能性があり、冷媒の分解を抑えるために、様々な添加剤が使用され得る。本願のドライヤコアの文脈では、特定の従来の安定性添加剤が、アルミナを含むコア材料に吸着される可能性があるという問題が生じる可能性がある。例示的な実施形態では、コア材料は、コア内の添加剤の吸着を阻止し、特に、アルミナコア材料内の冷媒添加剤の吸着を阻止するために、たとえばオイルなどの添加剤吸着阻止剤をアルミナに事前に加えることによって強化され得る。
【0018】
より具体的には、添加剤吸着阻止剤で、アルミナの孔表面を塞ぐと、サイズ排除原理によって、酸およびヨウ化物を吸着するアルミナの能力が高まる。鉱酸およびヨウ化物のより小さな動力学的直径を考慮して、これら分子の吸着動力学は妨げられそうにないが、はるかに大きい動力学的直径を有する添加剤は厳しく制限される。多くの場合、システム添加剤は、アルミナコア材料に吸着され、添加剤が分解する可能性があり、これは、添加剤機能の損失や、フィルタコア材料の酸/ヨウ化物容量の損失など、複数の課題につながる。機能の損失を防ぐために、フィルタコア材料には、液体炭化水素、または添加剤吸着阻止剤として機能するポリオールエステルオイル(POE)などの冷媒オイルが事前に加えられ得る。液体炭化水素は、POEなどの冷媒システムオイルと混和する必要がある。そのような液体炭化水素の例は、ヘキサン、ヘプタン、および分子サイズおよび形状が目標アルミナの孔サイズ、形状、および体積に相応する脂肪族/芳香族炭化水素族の他の分子を含む。冷媒添加剤とアルミナとの間の相互作用が、液体炭化水素とアルミナとの間の相互作用と同様であるが、酸とアルミナとの間の相互作用がより強いことを考慮すると、添加剤は、吸着されないか、または、添加剤吸着の減速が発生し、これは、システムの性能および長期的なシステムの健全性に有益である。炭化水素に加えて、冷媒およびシステムオイルと混和性があり、システムに取り付けられた膨張デバイスを詰まらせない他の液体化学物質が使用され得る。小鎖炭化水素が、添加剤吸着阻止剤として使用される場合、使用される割合は、その特定の炭化水素の標準的なLFL(低可燃性レベル)を大幅に下回り、液体化学物質は、すべてのシステム構成要素との相性がよい必要がある。上記の特性を有する様々な化学物質が、記載されたコア要素と共に使用され得る。
【0019】
代替的な戦略は、調整された孔サイズを有するガンマ相活性アルミナ材料を使用することである。ヨウ化物イオンおよび酸性イオンのサイズが小さいことを考慮すると、分子は、動力学的直径に関して、より大きくなる傾向がある添加剤分子よりも優先的にそれらを吸着できる。アルミナ材料は、モレキュラシーブ材料と比較して、厳密な孔サイズ分布を有していないが、焼成温度および時間を注意深く制御することにより、必要に応じて孔サイズ分布を、6nmの下限に向かって調整できる。たとえば、添加剤阻止アルミナ材料は、6nmから16nmの平均孔サイズを有することができる。
【0020】
他の例示的な実施形態では、ドライヤコア材料は、コアが酸分子で飽和し、新しいフィルタが必要になったことを示すためにアルミナに添加されるフェノールフタレインなどの変色指示薬を含み得る。フィルタは、酸およびヨウ化物を吸着し、総容量は有限である。フィルタ材料による酸およびヨウ化物の吸着に関して、寿命または飽和点を示す指示薬または溶液は、システムの寿命を延ばす効果的な手法である。システム内での酸の生成を考慮して、フィルタの寿命を表すために、γ-アルミナに加えられたpH指示薬を使用することができる。pH指示薬は、溶液のpHを視覚的に測定するために使用されるハロクロミック化合物を含む。冷媒の非水性の性質を考慮して、pH指示薬を、γ-アルミナ材料に直接スプレーすることができる。pH指示薬は、主に、アルミナの表面塩基性OH基と相互作用し、塩基性領域において呈色する。システム運転中にフィルタが酸分子を吸着すると、フィルタコア材料内のアルミナ材料のすべての結合部位が消費されるや否や、過剰なH/Hが、指示薬と相互作用し、色を酸性領域に向かって変化させる。これは、フィルタの容量が使い果たされ、フィルタを交換する必要があることを示す。コア溶液は、システム内のハードシェルの内側にあると予想されるため、円形または他の形状の高圧ガラス窓を、シェルに取り付けて指示薬を視覚化することができる。
【0021】
図1図5および図7のいずれかに示されるフィルタ-ドライヤコア構成は、たとえば、空調、ヒートポンプ、および冷凍システム用途において、特にフィルタ-ドライヤユニットへ適用され得る。上述の構成および変形は、フィルタ-ドライヤユニットの形態のVRF(可変冷媒流量)またはVRV(可変冷媒量)システムのオイルラインにも使用できる。図6を参照して示すように、例示的な冷凍システム60の概略図が示される。例示的な冷凍システム60は、冷媒流体導管ループ70に沿って配置された圧縮機62、凝縮器64、膨張弁66、および蒸発器68を有する冷媒循環路を含む。通常運転中、冷媒は、冷媒流体導管ループ70に沿って連続的に流れる。冷凍システム60はさらに、冷媒が通過するフィルタ-ドライヤユニット72を含む。フィルタ-ドライヤユニット72は、圧縮空気を受け取るために冷媒流体導管ループ70に沿って凝縮器64の下流に配置され得る。他の例示的な用途では、フィルタ-ドライヤユニット72は、冷媒流体導管ループ70の他の部分に沿って使用するのに適している場合がある。
【0022】
図7は、本願の例示的な実施形態によるフィルタ-ドライヤユニット72の断面図を示す図である。フィルタ-ドライヤユニット72は、当該技術分野で使用される任意の適切な金属または硬質プラスチック材料などの硬質材料で形成された外部ハウジング74を含む。外部ハウジング74は、冷凍システム70内の構成要素の凍結および腐食を引き起こすか、または、システムの潤滑剤と反応して、構成要素の動作に悪影響を与える可能性のある望ましくない有機酸を形成する可能性のある、水分のような汚染物質を、冷凍システムから除去するために、冷媒との接触のために構成されたフィルタ-ドライヤコア材料76を支持する。フィルタ-ドライヤユニット72は、冷媒を乾燥させるために有効に使用される。コア材料76は、上述のようにガンマ相活性アルミナコアとして構成され得、図1図5の実施形態のいずれかに従って成形および構成され得る。
【0023】
図8は、本願のフィルタドライヤコアの例示的なヨウ化物除去動力学のグラフ描写図である。特に、図8は、本願のフィルタドライヤコア構成を使用して達成することができるヨウ化物量を百万分率対時間で示す。図8の左部分は、棒グラフ形式を有し、図8の右部分は、比較可能な結果を線グラフ形式で示す。図8の例では、開始ヨウ化物量は180ppmであり、そのような180ppmの開始ヨウ化物量は、約4時間後に19ppmのヨウ化物まで低下し、ヨウ化物量は、約8時間後に検出限界を下回る。そのような結果は、従来の構成と比較して、強化されたヨウ化物除去を提供する。
【0024】
図9は、本願のフィルタドライヤコアの大容量用途のための例示的なヨウ化物除去動力学のグラフ描写図である。図8と同様に、図9は、本願のフィルタドライヤコア構成を使用して達成することができるヨウ化物量を百万分率対時間で示す。図9の例では、大容量用途が示されているので、開始ヨウ化物量は11000ppmである。そのような11000ppmの開始ヨウ化物量は、約1日後に890ppmのヨウ化物まで低下し、ヨウ化物量は、7日後に37ppmまで低下する。したがって、大容量環境下での結果は、わずか1日で90%以上のヨウ化物の減少を示す。そのような結果はまた、従来の構成と比較して、強化されたヨウ化物除去を提供する。
【0025】
したがって、本発明の態様は、フルオロヨードカーボンを含む冷媒の分解によって生成される酸およびハロゲン化物を除去するための、たとえばフィルタ-ドライヤコアなどのドライヤコアであり、ドライヤコアは、ガンマ相活性アルミナおよびモレキュラシーブを含む成形コアを備える。例示的な実施形態では、モレキュラシーブは、3~4オングストロームの孔サイズ、および300~800m/gの表面積を有し、および/または、アルミナは、0.1~10mmの平均ビーズ直径を有するビーズ状で提供される。アルミナ表面積は、140~250m/gであり、平均孔サイズは、6nmを超え、より具体的には6nm~16nmである。コア内のモレキュラシーブの割合は、0~40%であり、残りはアルミナである。コアの表面積を増加させるために、フィルタ-ドライヤコアは、コアを通って長手方向に延在する複数の適切な形状のチャネルを画定し得るか、またはフィルタ-ドライヤコアは、中央本体から延在するフィンを有し得るか、またはフィルタ-ドライヤコアは、複数のロッドとして構成され得る。フィルタ-ドライヤコアはさらに、アルミナコア内の冷媒添加剤の吸着を阻止するための、オイルのような添加剤吸着阻止剤と、および/または、酸吸着がコア内で飽和に達したときを示すための変色指示薬とを含み得る。
【0026】
本発明の別の態様は、冷媒が流れる冷媒循環路と、冷凍システムから汚染物質を除去するために冷媒との接触のために構成された実施形態のいずれかによるドライヤコアを含むフィルタ-ドライヤユニットとを含む冷媒システムである。例示的な実施形態では、フィルタ-ドライヤユニットは、ドライヤコアを支持する外部ハウジングを含み得る。冷媒循環路は、冷媒が流れる冷媒流体導管ループに沿って配置された圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含み得、フィルタ-ドライヤユニットは、冷媒流体導管ループに沿って凝縮器の下流に配置され得る。
【0027】
本発明は、特定の1つまたは複数の実施形態に関して示され説明されたが、本明細書および添付図面を読んで理解することにより、同等の変更および修正が当業者によって想起されることは明らかである。特に、上記の要素(構成要素、アセンブリ、デバイス、組成物など)によって実行される様々な機能に関して、そのような要素を説明するために使用される用語(「手段」への言及を含む)は、特に断りのない限り、本明細書に示された本発明の例示的な1つまたは複数の実施形態における機能を実行する、開示された構造と構造的に同等ではない場合であっても、説明された要素の特定の機能を実行する任意の(すなわち、機能的に同等である)要素に対応することが意図されている。それに加えて、本発明の特定の特徴は、いくつかの例示された実施形態のうちの1つまたは複数のみに関して上述されたが、そのような特徴は、任意の所与のまたは特定の用途によって望ましく、有利であり得るので、他の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合わされ得る。
図1
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図7
図8
図9
【国際調査報告】