(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】トンネル掘削シールド
(51)【国際特許分類】
E21D 9/04 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
E21D9/04 A
E21D9/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023512670
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(85)【翻訳文提出日】2023-04-11
(86)【国際出願番号】 IB2021058359
(87)【国際公開番号】W WO2022058885
(87)【国際公開日】2022-03-24
(32)【優先日】2020-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521437758
【氏名又は名称】ハイパートンネル アイピー リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,スティーブ
(72)【発明者】
【氏名】ミークス,アラン
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB01
2D054AC20
(57)【要約】
回転切削ホイールが前面に付けられた大きい金属製の円筒形シールドを備え、かつ(任意選択で地盤/土壌条件に依拠して、排出するためにスラリーと混合させる)掘削土が蓄積されるチャンバを含んだ、トンネル掘削機(TBM)が公知である。しかしTBMは、トンネル掘削における停止と起動の性質、及び単一のTBMは、異なる岩盤/土壌のタイプの間(特に厳しい破砕層及びせん断岩石層)では容易に移行できないことを含む、様々な不利点を有する。本発明は、先端から突出するよう配置された、ジェットグラウトツールが設けられた、トンネル掘削シールドを提供する。このように、トンネルが掘削される地盤物質の質は、掘削プロセスの一部として力学的に改善され得る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削シールドであって、
内部をトンネルの崩壊から防護するよう構成された、前記トンネルの掘削中に使用するための、可動防護構造体と、
前記可動防護構造体の先端から、前記トンネルが掘削される地盤の中に突出するよう配置された、少なくとも1本の誘導プローブと、
地盤の質を改善するために、グラウトを地盤の中に注入するよう構成された、少なくとも1本の誘導プローブに位置された、ジェットグラウトツールと、
を備える、トンネル掘削シールド。
【請求項2】
ジェットグラウト中に注入された物質の中に、補強構成要素を入れるよう構成された、請求項1に記載のトンネル掘削シールド。
【請求項3】
少なくとも1本の前記誘導プローブは、複数の誘導プローブを備え、各誘導プローブにはジェットグラウトツールが設けられ、前記ジェットグラウトツールは同時に起動されるよう構成された、請求項1または2に記載のトンネル掘削シールド。
【請求項4】
少なくとも1本の前記誘導プローブは、複数の誘導プローブを備え、各誘導プローブにはジェットグラウトツールが設けられ、前記ジェットグラウトツールは独立して起動されるよう構成された、請求項1または2に記載のトンネル掘削シールド。
【請求項5】
トンネルを建設する方法であって、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載のトンネル掘削シールドを提供するステップと、
トンネルの内部を崩壊から防護するために、掘削するトンネル内で防護構造体を動かすステップと、
前記可動防護構造体の先端から、前記トンネルが掘削される地盤の中に、少なくとも1本の誘導プローブを突出させるステップと、
ジェットグラウトツールを使用することで地盤の質を改善するために、グラウトを地盤の中に注入するステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的にトンネル掘削シールドに関し、それだけに限らないが、特に長いキロメートルの延長を有するトンネル建設における利用を見出す。
【背景技術】
【0002】
回転切削ホイールが前面に付けられた大きい金属製の円筒形シールドを備え、かつ(任意選択で地盤/土壌条件に依拠して、排出するためにスラリーと混合した)掘削土が蓄積されるチャンバを含んだ、トンネル掘削機(TBM)が公知である。チャンバの後には、背後のコンクリート製トンネル壁に対してTBMを前方へ押し出すために使用される、液圧ジャッキのセットが存在する。トンネル壁は、TBMが前方へ動く際にセグメントで設定される。一旦TBMが1つのセグメントの延長を掘削すると、TBMは停止して、新しいトンネルリングが、プレキャストコンクリートセグメントを利用した組立工によって施工される。シールドの背後で、トンネルの仕上げ部の内側において、一般的にTBMシステムの一部と考慮される、泥除去部、適用できる場合はスラリー用パイプライン、制御室、プレキャストセグメントを搬送するためのレール、など別の作業機構が確認され得る。しかしTBMは、トンネル掘削における停止と起動の性質、及び単一のTBMでは、異なる岩盤/土壌のタイプの間(特に厳しい破砕層及びせん断岩石層)では容易に移行できないこと、を含む様々な不利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の第1の態様によると:トンネルの崩壊から内部領域を防護するよう構成された、トンネル掘削中に使用するための可動防護構造体;トンネルが掘削されることになる地盤の中に、可動防護構造体の先端から突出するよう配置された、少なくとも1本の誘導プローブ;及び、地盤の質を改善するために、地盤の中にグラウトを注入するよう構成され、少なくとも1本の誘導プローブに位置された、ジェットグラウトツール、を備えたトンネル掘削シールドを提供する。
【0004】
このように、トンネルが掘削されている地盤物質の質は、掘削プロセスの一部として力学的に改善され得る。
【0005】
圧力グラウト及びジェットグラウトは公知の技術であり、そこではグラウトが地盤物質(例えば土壌、砂、及び/または岩)の中に注入され、その質を改善し、例えば断層を修正し、その強度を改善し、及び/またはそこを通した水流を低減させる。このようなグラウト技術は、大規模構造物(建物、橋梁など)の基礎周り、ならびに大型パイプ及びトンネルを含んだ地下構造物の周り、に使用されることが多い。一般に圧力グラウトにおいて、グラウトは、現存の物質を乱すことなく安定化させるために、地盤物質の中に注入され、任意の相互接続された細孔及び空洞を充填する。対照的に、一般にジェットグラウトは、比較的高速のジェットグラウトを用いて実現される。それは、地盤物質を浸食し、地盤物質を原位置で有意に混合するために使用され、しばしは特定の形状(柱及び/またはプラットフォーム)を形成する。
【0006】
防護構造体は中空であり得、及び/または外側シェル及び内部空洞を備え得る。その中に、機械(トンネル掘削シールドの一部も形成し得る)が位置され得る。防護構造体は、実質的に管状、すなわち実質的にその軸方向延長に沿って延びた壁を有し得る。これらの壁は、それらの高さに依拠して、(軸方向延長に沿って)様々な距離に延び得る。例えば、構造体の上部分は、構造体の底部分よりも長く延び、それによって上部分は底部分よりも突出し、その下での作業を可能にする(または、上部分が底部分よりも延びない場合は、その上での作業を可能にする)。代替として、構造体が実質的にプリズム形状となるよう、壁は同じ距離を延びてもよい(しかし、作業を実施するために開放端部を有する)。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、新しいトンネルの建設、ならびに現存のトンネルの拡張、及び/または再ライニング、及び/または補修の工程に、使用され得る。
【0008】
トンネル掘削シールドは、第1の所定の経路に沿った第1のボアが、地盤を通して穿孔され得る状況で、使用され得る。第1のボアは、掘削されるトンネル径よりも実質的に小さい径、例えば少なくとも1/10未満、詳細には少なくとも1/25未満、より詳細には少なくとも1/100未満の径を有し得る。地盤を通して第2の所定の経路それぞれに沿って、複数の第2のボアが穿孔され得る。第2の所定の経路の各々は、それらの間で実質的にプリズム形状の領域を画定するために、第1の所定の経路に対して実質的に平行である。すなわち、各ボアを互いのボアに接続する仮想平面が提供された場合、最も外側の仮想平面は、プリズム形状の領域を形成する境界を定める面を画定するために、協働し得る。穿孔方向に対して垂直である、プリズム形状の領域における全ての断面は、同一とし得る。プリズム形状の領域の延長に沿った任意のポイントにおいて、このような断面がとられ、かつ各ボアを互いのボアに接続した仮想平面が提供された場合、最も外側の仮想ラインは、境界を定める多角形を画定するために協働し得る。
【0009】
このような穿孔は、例えばHDD、または石油及びガス産業で使用される方向性穿孔の形態である、方向性ボーリングを含み得る。加えて、鉱業、オイル及びガス、ならびに建設産業で使用されるような、様々な方向性ボーリング技術を含み得る。例えば、水平方向性穿孔(HDD)は、パイプ等を設定するために使用される。HDDは、100~1200mmの径で800mの長さまでのみ、精確な穴を好適にボーリングすることができる。代替として方向性穿孔は、オイル及びガス産業で使用され、より長い穴をボーリングすることができる。
【0010】
穿孔作業は、予め建設したトンネル入口及び/もしくは出口から、中間に位置された立坑から、ならびに/または地表から、実施され得る。代替または追加として、穿孔作業は、トンネル掘削シールドから実施され得る。方向性ボーリング/穿孔技術が、シールド技術と組み合わされることによって、穿孔は、シールドの各誘導プローブから実施され得る。それによって、穿孔が完了する前にシールドが前進するのを可能にする。
【0011】
第1のボア、及び/または複数の第2のボアの各々は、実質的に円形の断面、ならびにその径よりも大きい桁の延長を有する、穴及び/または立坑を備え得る。例えば、各ボアは、100~1200mmの径を有し得る。各ボアは、少なくとも25m、少なくとも50m、少なくとも100m、少なくとも200m以上の延長を有し得る。
【0012】
本方法は、第1の所定の経路(及び任意選択で第2の所定の経路)を判断することを含み得る。しかしこれは、従来の方法で成される。
【0013】
実質的にプリズム形状の領域は、複数の第2のボアのみによって画定され得るか、または複数の第2のボア及び第1のボアを共に組み合わせることによって、画定され得る。例えば、2本の第2のボアと組み合わせた第1のボアは、三角形のプリズム領域を形成し得る。別の例にように、3本の第2のボアのみで三角形のプリズム形状を形成し、第1のボアはこの三角形のプリズム形状の領域内に位置され得る。代替として、互いに対して適切に設置された場合、3本の第2のボアは、第1のボアと共に立方体(正方形のプリズム形状)の領域を形成し得る。
【0014】
プリズム形状の領域は、湾曲し得る。すなわちこの領域は、その全延長に沿って、幾何学的形状(例えば三角形、正方形など)で、規則正しいか、またはそうではない断面を有し得る(その幾何学形状及びその形状のサイズは、その延長に沿って一定であり得る)。しかし、この領域を基礎とする経路は直線ではなくてもよく、曲線であってもよい。
【0015】
第1のボアは、単一の第1のボアか、または複数の第1のボア(例えば2本または3本の第1のボア)を備え得る。第1のボアは、リードボアを備え得る。リードボアは、プリズム形状の領域の周囲から離隔され、プリズム形状の領域における内側部分を貫通して位置され得る。
【0016】
第1のボアからのデータが、貫通して穿孔が実施された物質を判断するために、収集され得る。
【0017】
複数の第2のボアは、トンネルの外形を形成し得る。すなわち、複数の第2の経路は、提案されたトンネルの壁に沿って突出し得る。疑義が生じるのを避けるために、建設中に、トンネル外形に寄与しないか、または、追加及び/もしくは別個のトンネル外形に寄与する、形成された他のボアが存在し得る。
【0018】
トンネルの断面は円形であって良い。しかし、矩形、半円形、アーチ側、平坦な底部など(非円形断面が好ましい)他の断面も可能である。円形または湾曲した壁は、形成されるトンネルの安定性を向上させ得るが、これが(例えば第1/第2のボアから得られたデータから)不必要とされたとき、平坦な床部が、人、掘削装備、及び土砂用カートの容易な運動を促進させるため、及び/または(例えば道路面として、もしくは軌道のための)トンネルの最終使用に好適となるよう、選択され得る。
【0019】
第1及び/または第2のボアは、例えば(埋め殺しの)パイプまたはライナーを用いてライニングされ得る。このように、各ボアの完全性が保護され得る。第1のボアは、複数の第2のボアの穿孔が開始される前、及び/または完了された後に、ライニングされ得る。同様に、第2のボアのうち少なくとも1本は、第1のボアの穿孔が開始される前、及び/または完了された後に、ライニングされ得る。ライニングは、ボア全体をライニングすること、またはボアの一部のみをライニングすることから構成される。任意のボアのライニングは、掘削に先立ち、除去されるか、部分的に除去され得る。
【0020】
第1及び第2のボアの全て、またはいくつかは、同時に穿孔され得る。または各ボアは別々に穿孔され得る。これは、各ボアの完全性にリスクがある場合に、砂/土を貫通して穿孔するとき、特に重要となり得る。
【0021】
実質的にプリズム形状の領域内の物質を掘削して、トンネルを形成することは、トンネル掘削シールドから実施される。
【0022】
シールドの形状は、トンネルの外形、すなわち掘削する領域の断面と一致する。誘導プローブは、第1及び/または第2のボア内に適合するようサイズが決められ得る。詳細には、これらの誘導プローブは、所定の経路から各ボアの位置に、例えば50cmまで、より詳細には30cmまでの、いくらかの変動が許容されるよう、サイズが決められ得る。
【0023】
誘導プローブは、シールドを所定の位置に誘導するよう構成され得る。詳細には、誘導プローブは、シールドの位置付けを制御及び/または監視できるように、ボアの中に突出するよう構成され得る。
【0024】
誘導プローブは、後退可能及び/または別の方法で取り外し可能とし得る。このように、許容外の逸脱が発生した伸縮は、一時的に関連の誘導プローブを(再係合され得るときまで)後退/除去することによって、及び(例えばロードヘッダユニットで見られるような、ブームに取付けられた切削ヘッドなど)代替の手段で掘削することによって、対処され得る。
【0025】
誘導プローブは後退可能であってもよく、それによってシールドの移動を必要とせずに、誘導プローブは取り除くことができるか、またはツールを交換できる。
【0026】
少なくとも1本の誘導プローブは、1本だけの誘導プローブ、または例えば2本、3本、4本、5本、6本、またはそれより多くの、複数の誘導プローブを備え得る。
【0027】
誘導プローブのいくつか、または全ては、第1のボア及び複数の第2のボアそれぞれに整合されるように、防護構造体に配置され得る。
【0028】
誘導プローブは、防護構造体から外側に延び得る。使用中、ならびに掘削するトンネル及び/または地盤の中に動くとき、防護構造体の先端部は、その構造体の前部において構造体の縁部とし得る。
【0029】
地盤または地盤物質は、例えば岩、土壌、砂、砕石、及び/または他の沖積堆積物など、任意の形態の地下(例えば地中)物質であってよく、その中にトンネルは掘削される(及び/または掘削されることになる)。
【0030】
ジェットグラウトツールは、グラウト、ならびに/または、エポキシ樹脂、ポリウレタンフォーム、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、セメント系グラウト、及び水溶液などの改良物質、を備え得る物質を供給するよう、構成され得る。グラウトは、セメント系、樹脂系、または化学薬品溶液、とし得る。グラウトは、セメント系、樹脂系、または化学薬品溶液、とし得る。
【0031】
トンネル掘削シールドは、ジェットグラウト施工中に注入した物質の中に、補強構成要素を入れるよう構成され、それはボア内の領域を含み得る。したがってトンネル掘削シールドは、補強構成要素を展開するための挿入装置を、さらに備え得る。補強構成要素は、緊張下でグラウトを強化または補助するために、グラウト内で緊張デバイスとして作用するよう、構成され得る。補強構成要素は、鉄筋を含み得る。すなわち金属(例えば鋼製)棒材(例えばネジ山付き、またはねじ山無し)及び/またはワイヤメッシュなど、を含み得る。代替または追加として、補強構成要素は、ケーブル及び/またはケーブルボルトを含み得る。
【0032】
トンネル掘削シールドは、プリズム形状の領域における断面に準拠するよう(及び/または概ね/実質的に準拠するよう)形状付けられ得る。例えば、プリズム形状の領域における断面が、実質的に正八角形であったなら、トンネル掘削シールドは、円形形状(もしくは八角形、または円形と八角形との間の任意の形状)の、先端部を有し得る。
【0033】
防護構造体は、その軸に沿って内部手段または外部手段によって動かされ得るという点で、可動とし得る。すなわち、防護構造体は、掘削するトンネルに沿って動かされ得る。
【0034】
トンネル掘削シールドは、内部/外部の動力運動源(例えば動力駆動ホイールまたはキャタピラ軌道)を備え得る。それは、掘削開始の前に、初めにデバイスをトンネル切羽の開始点に整合させるとき、ならびに/または掘削中に必要に応じてトンネル掘削シールドを逆にするため、及び/もしくは再整合させるために、使用され得る。
【0035】
シールドは、ドラグラインシールドを備え得る。本方法は、物質を貫通してシールドを引くことをさらに含み得る。ドラグラインシールドは、従来のトンネル掘削シールドと、ドラグライン掘削機技術との組み合わせとし得る。そのためトンネル掘削シールドは、防護構造体を引張るために使用され得るケーブル/ロープ/チェーン(通常はウインチによって制御される)を備える。ケーブル/ロープ/チェーンは、第1及び/第2のボアを通されるが、ドラグラインシールドはトンネル内に置かれ、位置付けは不要であるので、位置付けブームは必要ない。
【0036】
ドラグラインシールドは、複数のケーブルによって物質を貫通して引かれ得る。複数のケーブルの各ケーブルは、第1のボア及び複数の第2のボアそれぞれを貫通する。
【0037】
このように、シールドの前進は、確実かつ継続的となり得る。各ケーブルは、それぞれの誘導プローブに装着され得る。シールドを前方に引くために、ウインチは、複数のケーブルの、それぞれのケーブル、または複数のケーブルのうち、2本以上のケーブルに作用し得る。ウインチは、ボアの反対側の端部(例えば開放端部)において提供され得る。
【0038】
各ケーブルにおける異なる緊張量で、シールドを導くことを可能にするよう、各ケーブルは独立して制御され得る。それぞれの緊張は、プローブが位置付けられたボアに対する、それぞれのプローブ箇所を監視することによって判断され得る。しかし代替または追加として、支持構造物の位置を監視するなど、緊張を判断する他の方法が利用され得る。このような監視は、センサ及び/または制御システムを使用して、手動及び/または自動で実行され得る。
【0039】
複数のケーブルの各ケーブルは、第1のボア及び複数の第2のボアそれぞれを通して、ダウンホールに固定されたケーブル戻りキャリッジに渡され、それぞれのボアを通してドラグラインシールドに戻され得る。
【0040】
このように、ウインチは、シールドの背部または内部に設けられ、各ボアが完成する前にシールドの動作を可能にし得る。
【0041】
ケーブル戻りキャリッジは、締付システムを備え得る。この締付システムは、ボアの壁と係合し、ボアの中に設置される。締付システムは、命令によって係合及び係合解除するよう、遠隔で操作可能であってよく、それによって締付システムを、必要に応じて新たな箇所に移動させることができる。
【0042】
掘削残土は、例えば機械掘削機を用いて、連続的にローディング機構の上に除去され得る。しかし好ましい実施形態において、シールドは、掘削したトンネルを通した前方への動きが、掘削した掘削残土をローディング機構の上に持ち上げるよう、形状付けられる。詳細には、掘削残土を持ち上げる作用は、ブルドーザまたはドラグラインバケットの作用と類似する。
【0043】
シールドからの掘削残土の除去は、従来に方法によるものであってもよく、重機を置くことが可能なトンネル床まで運んで戻される。重機は、ゼロエミッションで自立式の、電力式または液圧式牽引車両を備え得る。これらの車両は、例えば使用される場合はプレキャストのライニングセグメントなどの材料を、施工領域に運び、同様に掘削残土を撤去し得る。これら車両は、作業を再開する前に、必要な場合は自動的に充電ポイントまで戻るよう構成され得る。
【0044】
最下のボア(例えばトンネルの床に沿ったボア)は、掘削残土がシールドに入るポイントの背後で、(例えば掃除で)きれいに掃除され、それによってシールドの車台(例えばホイール/スキッド)は、埋め殺しライナーから所定の位置に残された、起伏の多いハーフパイプの中を進み得る。このように、シールドが前進する際に、レールを設定または延伸させる必要はない。
【0045】
緩い砕片は、掃除及び(トンネル掘削シールドの一部を形成し得る)コンベアベルトを介して、かき集められ除去され得る。このコンベアベルトは、物質をトンネルから除去するために防護構造体の後方へ送る。トンネル掘削シールドは、ロードヘッダ、バックホウ、及び例えば構造体の前部の中に構築される類似の機械を備え、物質の破砕してコンベアシステム上に動かす補助をし得る。この機械は、例えばトンネルの外側に位置された制御ブースと通信する、カメラ、光、及びレーダ/ライダ走査システムを用いて、トンネルの外側からオペレータによって制御され得る。それによって、人が機械に乗ることなく、安全にデバイスを操作することを可能にする。吹付コンクリートのライニングは、防護構造体の後方に取付けられた機械を使用して、ロボット制御で送達され得る。これらのデバイスは、防護構造体に直接装着されてもよく、及び/または防護構造体の後方を近くで追尾するトレイラに取付けられてもよい。代替または追加として、トンネル掘削シールドは、ロボット式ロックボルトデバイス、及び/またはコンクリートのスリップフォームデバイスを、類似の方法で備え得る。
【0046】
シールドの動作は、トンネルが掘削される際に、トンネルをライニングすることを含み得る。例えばトンネルは、シールドが前方へ動かされる際に、シールドの直ぐ背後にライニングされ得る。
【0047】
トンネルライニングの選択肢として、(防水ライニングを含むか、または含まない)プレキャストコンクリートセグメント、(例えば鉄筋を使用するモジュール式シャッター設計の型枠を含む)現場打ちコンクリート、及び/または、例えば(防水膜が適用された吹付を伴うか、または伴わず、任意選択でルーフボルト、ワイヤメッシュ、もしくはスチールリブ/鉄筋を組み込んだ)「ショットクリート(shotcrete)」などの吹付コンクリートが挙げられる。
【0048】
考える限りでは、本発明を、木材、レンガ積み、ブロック積み、石積み、トンネル工法におけるパイプ、及び/または鋳鋼製/鉄製セグメントの、トンネルライニングと共に使用することもできる。
【0049】
例えば、トンネルライニングの構成は、吹付が適用された防水膜(例えばBASF(登録商標)の吹付が適用された防水膜は、連続的な防水システムを構成し、吹付コンクリートと原位置コンクリートとを組み合わせて作業するよう編成され、複合構造の建設を容易にする)、及び繊維補強コンクリートによる内側仕上げ吹付、を含み得る。代替として、地盤が、より大きい構造的完全性を必要とする場合、現場打ち工法が好ましい場合がある。
【0050】
動作は、連続的なコンクリート形成プロセスをさらに含む。詳細には、シールドが前進する際に、古いコンクリートは固化しており、一連の連続した再使用可能な金属製型枠のうち最後のものは前方へ動かされ、前部に位置付けられてもよく、そこでほぼノンストップのプロセスで打設が続くことになる。水及びセメントは、施工領域に運び込まれ、コンクリートは、可能であれば掘削した骨材を使用して掘削作業の近くで混合され得る。型枠は、1セクションに3または4ピースで、概ね10mの延長であり、使用中は10以上のセグメントを伴うことが想定される。これは、シールドの背後におけるトンネルの90mまででは、型枠を所定の位置に有して、前部において新しいコンクリートを打設し、後部においてコンクリートが固化し、そこで型枠セグメントのセットが取り外されて、連続サイクルにおいて、前部に渡されることを意味する。コンクリートが最も古く、かつ固化した場所の型枠ユニットを前方へ動かして、プロセスの前部において再展開させるよう、型枠は互いに対して通過することができる。型枠と、コンクリートが打設される表面との間の密閉が、空圧ガスケットを用いて作られ得る。一旦、最新の型枠が設置され、ガスケットが膨張すると、その前のガスケットは収縮されることになり、それによって打設は継続する。このプロセスは単純に繰り返され得る。
【0051】
方向性ボーリング及び掘削からの掘削残土は、コンクリート生成のために使用され得る。このコンクリートは、(予め組み立てられたライナーが使用される場合の)トンネルスキンと、シェルとの間の空間にポンプで運ばれ、それらの間の空隙を充填して、構造をさらに安定化させることができる。代替または追加として、このような掘削残土(例えば岩の破片)を、可動及び再使用可能型枠、または吹付コンクリートなど他のライニング工法を使用して、トンネルライニングを形成するよう、コンクリートを現場で生成するために必要な骨材の一部として使用され得る。
【0052】
連続プロセスにおいて、コンクリートが固化する際にコンクリートを保護する金属プレートまたは構造体を伴い、シールドが前方へ動きながら、平坦な床が打設され得る。シールドは、床において方向性穿孔されたボアのいくつかを、軌道またはレールとして利用し得る(必要な数は、シールドの設計によって判断される)。これらは、全てのトンネル工事が終了し、シールドが取り除かれると、充填されるか、または他の目的に使用することができる。
【0053】
誘導プローブ、または追加の誘導プローブには、(任意選択で相互交換可能な)ツールが装備され得る。これらツールは、第1及び/または第2のボア内から掘削可能にする。詳細には、例えばディスクカッター、回転カッターのシリンダまたはコーン、作業の対象となる物質に好適な歯状物を伴うチェーンソータイプのアーム、高圧水、プラウブレード、音響破砕技術、及び必要に応じてトンネルの外周周り及び内側の両方に向けて非常に大きな圧力を加えて、除去する物質をさらに緩めて破壊する、液圧スプリッタなどの、様々な異なるツールが様々な物質に使用するために利用され得る。
【0054】
ツール(ジェットグラウトツールを含む)のうちいくつか、または全ては、少なくとも1本のプローブに位置され得る。すなわち、誘導プローブの前部(すなわち防護構造体の先端に対して反対側の端部)に取付けられ得る。代替または追加として、ツールは、誘導プローブの側部に取付けられ得る。または、ツールが従来の穿孔装備と同様に、遠隔操作できるよう、誘導プローブに装着され得る。
【0055】
ツールは、互いに同時に起動され得るか、または独立して起動され得る。
【0056】
崩壊/崩落技術を、軟質及び/または緩い物質を掘削するために使用できる。このタイプの作業のため、誘導プローブは、シールドが前進する際にプラウブレード及び/またはリーミングツールに適合され得る。
【0057】
シールドが前進する際に、レーザアレイを使用して、新たに露出された掘削外面を常に走査し、物質が残されて外周からトンネルの中に突出し、シールドの前進を妨害するか、または邪魔をすることのないことを保証し得る。地中探知レーダ(または他のこのような遠隔検知技術)も、新たに露出されたトンネルの、掘削残土が覆った領域で使用され得る。
【0058】
本方法は、このような領域が検出されたときに、例えば空気穿孔機もしくは交換可能な切削ヘッド、または他の好適なツールと共に取付けられた、ロボット式アームを使用することによって除去することを、さらに含み得る。
【0059】
シールドは、傾斜の付いた先端縁部を有し得る。その角度は、掘削する物質の性質に基づいて従来の方法によって選択することができる。詳細には、傾斜の付いた先端縁部は、掘削するトンネルに向かって上方に傾斜する。
【0060】
シールドは、液圧ラムによって押し込まれ得る。
【0061】
任意の1本、または各ボアは、ライナーによってライニングされ得る。このライナーは、埋め殺しライナーで構成され得る。このライナーは、固体壁を備え得る。代替として、ライナーは予め孔が開けられ得る。このように、現場の時間及びコストは、基礎地盤が良好に理解された状況において、避けられ得る。予め孔が開けられたライナーは、孔を覆う外側スリーブを備え得る。このように、物質または水が、制御されない方法でボアの中に入るのを防止し得る。
【0062】
装備は、従来の方法でライナーを貫通し、所望の箇所における作業を実施し得る。この装備は、戻りキャリッジ、穿孔ヘッド、及び/または孔開けガンを含み得る。詳細には、孔開けガン(液圧破砕産業で従来使用されるような)は、ライナーを貫通して、所望の箇所でライナーに孔を開け得る。孔開けガンは、複数の形状の装薬、ドリル、ブレード、ニードル、及び/またはパイプ壁に孔を開けるために好適な他のデバイス、を備え得る。孔開けガンは、ライナーを越えて物質を弱体化するよう構成され得る。すなわち装薬は、物質を破砕するよう作用し得る。孔開けは、例えばプリズム形状の領域に向けて内側に面するよう、プリズム形状の領域から外側に離れて面するよう、及び/またはプリズム形状の領域の外形に沿って横断するよう、ライナーに対して所望の箇所に形成され得る。
【0063】
基礎地盤は、物質の掘削効率を向上させるために、物質の掘削に先立って、処置され得る。
【0064】
処置は、実質的にプリズム形状の領域内の物質を、音波/液圧破砕することを含み得る。
【0065】
この領域内の物質が比較的硬い場合、加圧水を、例えば孔を介して導入し、物質の破砕を生じさせ得る。天然ガスまたはオイルを移送するための、水力破砕作業とは異なり、破砕部を開けておくための液圧破砕プロパント(砂または酸化アルミニウムのいずれか)の小さい粒子を導入する必要はない。
【0066】
音波/液圧破砕技術を、孔を介して適用することで、例えば領域の中など、特定の予め決められた方向にのみ破砕を発生させることが可能である。
【0067】
シールドの前において、リーミングツールはボアを貫通し、埋め殺しライニングを破壊して、掘削する物質が崩壊/崩落し、それによって除去プロセス補助し得る。リーミングツールは、誘導プローブに装着され得るか、またはシールドの使用に先行して渡され得る。
【0068】
処置は、実質的にプリズム形状の領域の外側における基礎地盤を、安定化することを含み得る。
【0069】
このように、領域の外側における物質が比較的脆弱で、空洞を含み、不安定または浸水した場合、物質を安定化させることができる。装備をボアの下に設置して、基礎地盤を安定化させ得る。
【0070】
安定化は、例えばポンプで冷却剤をライナーに通し、可能であれば孔を通してライナーから出ることによる、地盤凍結技術を介するものであってよい。凍結及び他の安定化技術は、一時的とし得る。
【0071】
恒久的な安定化が、例えば化学薬品送達ノズル(例えば伸縮自在アーム内)を介して、化学安定剤を注入することによって実現され得る。使用される安定剤の量及びタイプは、安定化させる地盤によって判断することになり、必要に応じて制御することができ、セメント、または任意の他の材料を備え得る。任意の他補材料として、マイクロセメント、(コロイド状シリカとして公知の)鉱物グラウト、感水性のポリウレタン(水の浸入に対抗する、素早く反応する発泡用樹脂)、素早く反応する非感水性の任意のポリ尿素シリケートシステム(空隙を充填するための膨張発泡体)、アクリル樹脂、ジェットグラウトすなわちソイルクリート(Soilcrete)(登録商標)として良く知られる、設計した特性に地盤を硬化させる原位置施工など、が挙げられる。
【0072】
実質的にプリズム形状の領域の外側における、基礎地盤の安定化は、完全に防止するとまではいかないが、さらなる水の浸入を大幅に軽減させ得る。掘削するトンネルの範囲内に残る、いかなる地下水も、最下のボアを介して排水することができる。
【0073】
上述のような安定化または脆弱化は、シールドを用いて同時にもたらすことができ、それによって地盤造成を、シールドの前進を開始する前に完全に完了させる必要はない。
【0074】
詳細には、(例えばジェットグラウトツールを用いた)安定化は方向性とし得る。すなわち安定化は、実質的にプリズム形状の領域の外側で行われ、破砕は、実質的にプリズム形状の領域の内側で行われ得る。実質的にプリズム形状の領域の外側における、基礎地盤の安定化を使用して、掘削に先立ってトンネルの当初の外側構造(シェル)を形成することができる。
【0075】
トンネルの掘削は、プリズム形状の領域内の物質を掘削するステップのみを含み得るか、またはボアの穿孔及び/もしくはトンネルのライニングなど、他のステップを含み得る。
【0076】
本発明の第2の態様によると、トンネルを建設する方法が提供される。この方法は:第1の態様によるトンネル掘削シールドを提供するステップ;トンネルの内部領域を崩壊から防護するために、掘削されるトンネル内で防護構造体を動かすステップ;可動防護構造体の先端からトンネルが掘削される地盤の中に、少なくとも1本の誘導プローブを突き出すステップ;及びジェットグラウトツールを使用して地盤の質を改善するために、地盤の中にグラウトを注入するステップ、を含む。
【0077】
本発明の、上記及び他の特性、特徴、及び利点は、本発明の原理を例として示す添付の図面を共に用いて、以下の詳細な説明から明確になろう。この説明は、例のためのみに与えられ、本発明の範囲を限定するものではない。以下で言及する参照図は、添付の図面を指す。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【
図1】円形ボアによって画定されたトンネルの外形を示す図である。
【
図3】
図1に類似した、完成したトンネル外形を示す図である。
【
図5】ダウンホールのケーブル戻りキャリッジを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
本発明を、特定の図面に対して説明するが、本発明はそれらではなく、特許請求の範囲のみによって限定される。示される図面は概略に過ぎず、非限定である。各図面は、本発明の全ての特徴を含み得ず、したがって必ずしも本発明の実施形態であると考慮する必要はない。図面において、いくつかの要素のサイズは誇張され、例示目的のため、縮尺に則っていない場合がある。寸法及び関連の寸法は、本発明の実施に対して実際の縮小に対応していない。
【0080】
さらに、明細書及び特許請求の範囲における、第1の、第2の、第3の、等の用語は、類似の要素間を区別するために使用され、ランク付けまたは任意の他の方法における、時間的、空間的のいずれの順番も、必ずしも表わさない。このように使用される用語は、適切な状況において交換可能であり、その動作は、本明細書で説明または例示する以外の順番も可能であることを、理解されたい。同様に、特定の順番で説明または請求する方法ステップは、異なる順番で動作することが、理解され得る。
【0081】
さらに、本明細書及び特許請求の範囲における、上、下、上方、下方などの用語は、説明目的で使用され、必ずしも相対位置を表わすためのものではない。このように使用される用語は、適切な状況において交換可能であり、その動作は、本明細書で説明または例示する以外の方向も可能であることを、理解されたい。
【0082】
特許請求の範囲において使用される用語「備えた、含んだ(comprising)」は、その後に列挙される手段に限定されるように解釈するべきではなく、他の要素またはステップを排除しないことに、留意されたい。したがってそれは、述べた特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素の存在を言及したように特定するよう解釈されるが、1つもしくは複数の他の特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素、または、それらのグループの存在もしくは追加を、除外しないよう解釈するべきである。したがって、「A手段及びB手段を備えたデバイス」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみで構成されたデバイスに限定するべきではない。本発明に関して、デバイスの単なる関連構成要素が、A及びBであることを意味する。
【0083】
同様に、本明細書で使用される用語「接続された(connected)」は、直接的な接続のみに限定されるものと解釈するべきではないことに、留意されたい。したがって、表現の範囲「デバイスBに接続されたデバイスA」は、デバイスAの出力部がデバイスBの入力部に直接的に接続されるデバイスまたはシステムに、限定されるべきではない。それは、Aの出力部とBの入力部との間に経路が存在し、それは他のデバイスまたは手段を含む経路であってよいことを意味する。「接続された」は、2つ以上の要素が、直接的に物理的接触もしくは電気的接触しているかのいずれか、または、2つ以上の要素が互いに直接接触していないが、やはり互いに協働もしくは相互作用していることを、意味し得る。例えば、ワイヤレス接続が企図される。
【0084】
この明細書全体の、「実施形態」または「態様」に対する参照は、実施形態または態様と共に説明した、特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態または態様に含まれることを意味する。したがって、「1つの実施形態において」、「実施形態において」、または「態様において」という、本明細書の全体の様々な位置に現出するフレーズは、同じ実施形態または態様の全てを必ずしも指しておらず、様々な実施形態または態様を指し得る。さらに、本発明の、任意の1つの実施形態または態様における、特定の特徴、構造、または特性は、任意の好適な方法で、本発明の、別の実施形態または態様の、任意の他の特定の特徴、構造、もしくは特性と組み合わされてよく、それは、1つまたは複数の実施形態もしくは態様において、本開示から当業者には明確となろう。
【0085】
同様に、説明において、本発明の様々な特徴は、本開示を簡素化し、1つまたは複数の様々な発明の態様を理解する目的で、時としてそれらを単一の実施形態、図面、または説明において共にグループ化されることを、理解されたい。しかし本開示の方法は、請求する発明が、各請求項に明示的に列挙されるよりも、多くの特徴を必要とする意図を反映するものと解釈するべきではない。さらに、任意の個々の図面または態様の説明は、必ずしも本発明の実施形態であると考える必要はない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、発明の態様は、上記で開示した単一の実施形態の、全ての特徴よりも少なくなる。したがって、「発明を実施するための形態」の後の「特許請求の範囲」は、ここで明示的にこの「発明を実施するための形態」に組み込まれ、各請求項は、本発明の別個の実施形態として、それ自体で自立する。
【0086】
さらに、本明細書で説明するいくつかの実施形態が、他の実施形態に含まれたいくつかの特徴を含む一方で、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、本発明の範囲内であることを意味し、当業者には理解されるように、さらに別の実施形態を形成する。例えば、以下の特許請求の範囲において、任意の請求された実施形態を、任意の組み合わせで使用することができる。
【0087】
本明細書で提供される説明において、多くの特定の詳細が記載される。しかし、本発明の実施形態は、これら特定の詳細なしでも実施され得ることを理解されたい。他の例において、公知の方法、構造、及び技術は、この説明の理解を不明瞭にしないよう、詳細に示されていない。
【0088】
本発明の説明において、反対に述べない限り、パラメータの許容範囲で、上限または下限における代替の値の開示は、それらの値のうち一方が他方よりもより好ましい表示と結合され、上記の代替のより好ましいものとあまり好ましくないものとの間にある、上記のパラメータの各中間値は、上記のあまり好ましくない値に対して、かつ上記のあまり好ましくない値と上記の中間値との間にある各値に対しても、それ自体好ましいことを暗黙の表現として解釈される。
【0089】
用語「少なくとも1つの」の使用は、特定の状況において1つのみを意味し得る。用語「任意の」は、特定の状況において「全て」及び/または「各々」を意味し得る。
【0090】
次に本発明の原理を、例示的な特徴に関する少なくとも1枚の図面の「発明を実施するための形態」によって説明する。他の配置が、基礎となるコンセプトまたは技術的教示から逸脱することなく、当業者の理解に従って構成され得ることは明確である。本発明は、添付の特許請求の範囲における条件によってのみ限定される。
【0091】
図1は、円形ボアによって画定されたトンネルの外形を示す図である。3本の中央リードボア10が、トンネルの経路に沿って穿孔される。それらの周りで、形状を画定する複数のボア20が穿孔され、平坦な下部床を有するアーチ形状のトンネル外形を形成する。トンネルの勾配角は、対象となるトンネルの特定の要件に対して最適化され、例えば垂直とされ得る。
【0092】
図2は、山腹30の中に穿孔中の、リードボア10及び形状を画定するボア20の側面図であり、各ボア10、20の延長は、それらの最終的延長よりも短い。理解され得るように、ボアのうちいくつかは、他のボアと同時に穿孔され、いくつかは他のボアが開始される前に完了され、及び/または、いくつかは部分的に穿孔され、他のボアが継続される間に中断され得る。
【0093】
図3は、
図2の山腹30における、
図1に類似した、完成したトンネル100外形を示す図である。形状を画定するボア20及び掘削によって画定された外形80の外側において、基礎地盤は補強/安定化されており、トンネルを取り囲む補強領域90を形成する。適用され得るライニングの選択肢の例が、外側コンクリートライニング120を伴い表示される。外側コンクリートライニング120は、必要に応じて防水膜115によって、内側コンクリートライニング110から分離される。
【0094】
多くの他のトンネルライニング及び仕上げ方法が利用可能である。例えば、仮設で再使用可能な金属製型枠が、トンネル内に設置され得る。コンクリート120は、型枠の背後に適用され、トンネルの円滑な内壁を形成する。一旦コンクリート120が完全に硬化すると、仮設の型枠を取り外して、トンネルの別のセクションに再使用され、内壁として円滑なコンクリート120を残し得る。
【0095】
任意選択で、掘削中に、トンネルの床において形状を画定するボア20の内2本が残され、溝/トラフ130として作用して、機械(特にドラグラインシールド)をトンネルに沿って誘導するために役立ち得る。トンネル掘削が完了すると、これらの溝/トラフ130を後日充填することができる。
【0096】
図4は、ドラグラインシールドの側面図である。矢印200は、掘削中におけるドラグラインシールドの運動の方向を示す。ドラグラインシールドの外形は、所定の外側トンネル形状と一致する。シールドの先端202における傾斜角は、対象となるトンネルの特定の要件に最適化され、例えば垂直とされ得る。
【0097】
トンネルを貫通するシールドの推進は、ドラグラインシールドを押し出す液圧ラム206を介して、及び/または、(ライニングされた/ライニングされない)ボアを通り抜けてドラグラインシールドを前方へ引くウインチまで延びた、誘導プローブの端部に装着されたケーブル208を介して、成され得る。後者は、連続的な動きを促進させるので、好ましい方法である。
【0098】
トンネルの床に沿った、形状を画定する下部のボアは、掘削残土がシールドに入るポイントの背後で、きれいに掃除され、それによってドラグラインシールドのホイール210(または代替として車台)は、埋め殺しライナーから所定の位置に残された起伏の多いハーフパイプの中を進むことができる。ドラグラインシールドが前進する際に、レールを設定または延伸させる必要はない。
【0099】
シールドの先端面における誘導プローブ204は、形状を画定するボアと整合し、かつその中に延びる。誘導プローブ204は、それらが形状を画定するボアと係合するよう離隔され、かつサイズを決められる。ドラグラインシールドは、次に所定のトンネル形状を貫通して、前方へ動く。ボアの精度が非常に精確である一方で、誘導プローブ204は、ボアの経路が目標のコースから逸脱した、いくらかの変動を許容できることになる。許容外の逸脱が発生した、短い伸長は、ロードヘッダユニットに見られるようなブームに取付けられた切削ヘッド212など、他の手段による掘削期間の後で、再係合され得るときまで、誘導プローブが後退するのを確認できる。
【0100】
誘導プローブ204には交換可能なツールが装備される。それらツールは、状況によって、粗くまたは細かくするのを可能にする。これらは、限定ではないが、ディスクカッター、回転カッター、シリンダまたはコーン、掘削する物質に好適な歯状物を有するチェーンソータイプのアーム、高圧水、プラウブレード214、及び(形状を画定するボアの埋め殺しライナーを除去することに加えて)除去する物質をさらに緩くして破壊するために、トンネル外形の円周/外周に沿っても、及び/または(トンネルの内部に向かって)内側にもどちらにも、所望の方向に膨大な圧力を加えることができる、液圧スプリッタ216、を含む。
【0101】
崩壊/崩落技術は、特にトンネルの外周における外側の領域が安定化されていて、自己支持シェルを形成する場合、掘削する軟質及び/または緩い物質に使用することができる。このタイプの作業のため、誘導プローブは、ドラグラインシールドが前進する際にプラウブレード214と適合される。
【0102】
レーザアレイ(図示せず)は、掘削で新たに露出された外面を常に走査218し、ドラグラインシールドの前進を妨害するか邪魔するような物質が、内側に突出して残されないことを保証する。地中探知レーダも、新たに露出されたトンネルの、掘削残土が覆った領域で使用され得る。任意のこのような領域が見つかった場合、前進を妨害することなく、空圧穿孔もしくは交換可能な切断ヘッド、または他の好適なツールが取付けられた、1つまたは複数のロボット式アーム212によって、直ちに取り組むことになる。
【0103】
ドラグラインシールドの防護下で作業すると、掘削残土はシールドの内側におけるローディング機構222の上に(必要に応じて機械掘削機220によって補助されて)連続的に掘削される。ローディング機構222の上に積載することは、ブルドーザのように、主に掘削残土を貫通して前方へ動くドラグラインシールドの作用によるものであってよい。掘削残土の除去は、従来の方法による。掘削残土はコンベア224上で後方へ動かされ、そこでは、新たに展開されたトンネル床に重機を載せることができる。
【0104】
図5は、ダウンホールのケーブル戻りキャリッジの図であり、キャリッジハウジング250を伴って透視的に示す。ライニングされたボアの壁と係合し、このボアの中で配置された締付システム252は、ハウジング250に配設される。締付システム252は、オペレータによって係合または係合解除され、キャリッジをボア内で動かして、ウインチを使用する準備のために、所定の位置に固定することができる。ケーブルの第1の端部254は、シールドに接続される。ケーブルの第2の端部256は、ウインチに装着される。ウインチがケーブルの第2の端部256に巻きつくと、キャリッジ内の一連の滑車258は、ケーブルの方向を逆転させ、それによってシールドはケーブルの第1の端部254によって引かれる。
【手続補正書】
【提出日】2022-07-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘削シールドであって、
内部をトンネルの崩壊から防護するよう構成された、前記トンネルの掘削中に使用するための、可動防護構造体と、
前記可動防護構造体の先端から、前記トンネルが掘削される地盤の中に突出するよう配置され
、前記シールドを所定の位置の中に誘導するよう構成された、少なくとも1本の誘導プローブと、
地盤の質を改善するために、グラウトを地盤の中に注入するよう構成された、少なくとも1本の誘導プローブに位置された、ジェットグラウトツールと、
を備える、トンネル掘削シールド。
【請求項2】
ジェットグラウト中に注入された物質の中に、補強構成要素を入れるよう構成された、請求項1に記載のトンネル掘削シールド。
【請求項3】
少なくとも1本の前記誘導プローブは、複数の誘導プローブを備え、各誘導プローブにはジェットグラウトツールが設けられ、前記ジェットグラウトツールは同時に起動されるよう構成された、請求項1または2に記載のトンネル掘削シールド。
【請求項4】
少なくとも1本の前記誘導プローブは、複数の誘導プローブを備え、各誘導プローブにはジェットグラウトツールが設けられ、前記ジェットグラウトツールは独立して起動されるよう構成された、請求項1または2に記載のトンネル掘削シールド。
【請求項5】
トンネルを建設する方法であって、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載のトンネル掘削シールドを提供するステップと、
トンネルの内部を崩壊から防護するために、掘削するトンネル内で防護構造体を動かすステップと、
前記可動防護構造体の先端から、前記トンネルが掘削される地盤の中に、少なくとも1本の誘導プローブを突出させるステップと、
少なくとも1本の前記誘導プローブを使用して、前記シールドを所定の位置の中に誘導するステップと、
ジェットグラウトツールを使用することで地盤の質を改善するために、グラウトを地盤の中に注入するステップと、
を含む、方法。
【国際調査報告】