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特表2023-545623オブジェクトの向きを追跡するための方法、トラッカシステム、およびヘッドまたはヘルメットマウントディスプレイ
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  • 特表-オブジェクトの向きを追跡するための方法、トラッカシステム、およびヘッドまたはヘルメットマウントディスプレイ 図1
  • 特表-オブジェクトの向きを追跡するための方法、トラッカシステム、およびヘッドまたはヘルメットマウントディスプレイ 図2
  • 特表-オブジェクトの向きを追跡するための方法、トラッカシステム、およびヘッドまたはヘルメットマウントディスプレイ 図3
  • 特表-オブジェクトの向きを追跡するための方法、トラッカシステム、およびヘッドまたはヘルメットマウントディスプレイ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】オブジェクトの向きを追跡するための方法、トラッカシステム、およびヘッドまたはヘルメットマウントディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G01P 13/02 20060101AFI20231024BHJP
   G09G 5/00 20060101ALI20231024BHJP
   G06F 3/01 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
G01P13/02 Z
G09G5/00 550C
G09G5/00 510A
G06F3/01 510
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023516226
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 GB2021052310
(87)【国際公開番号】W WO2022053795
(87)【国際公開日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】2014242.8
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】20275140.0
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390038014
【氏名又は名称】ビ-エイイ- システムズ パブリック リミテッド カンパニ-
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS plc
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】トライソル、サイモン
【テーマコード(参考)】
2F034
5C182
5E555
【Fターム(参考)】
2F034AA19
2F034DC02
5C182AB25
5C182AB35
5C182AC01
5C182BA29
5C182BA46
5C182CB42
5C182CC24
5C182DA44
5C182DA65
5E555AA21
5E555AA64
5E555BA08
5E555BB08
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA44
5E555CB21
5E555CC22
5E555DA08
5E555FA00
(57)【要約】
ユーザの頭部の向きが、振動力またはバフェッティング力とユーザの身体との接触点から、ユーザの身体を伝わる上記力によって不随意に変化しているときに、ユーザの頭部の意図された向きおよび/または位置を決定するための方法が提供される。この方法は、上記力による接触点における力の変数を決定することと、第1の入力と、第1の出力と、フィルタ係数入力と、少なくとも1つのフィルタ係数と、を備える適応フィルタを使用して、感知された変数による所定の時刻におけるユーザの頭部の向きの不随意成分を予測すること、ここにおいて、第1の出力は、向きの不随意成分に等しく、第1の入力は、力の変数を備える、と、少なくとも1つの追跡システムを使用して、所定の時刻におけるユーザの頭部の向き変数を決定することと、フィルタ係数入力に等しい第3の値を提供するために、第2の値から第1の値を減算すること、第1の値は、第1の出力に等しく、第2の値は、向き変数に等しい、と、フィルタ係数入力に基づいて、少なくとも1つのフィルタ係数を更新することと、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの頭部の向きが、振動力またはバフェッティング力と前記ユーザの身体との接触点から、前記ユーザの身体を伝わる前記力によって不随意に変化しているときに、前記ユーザの頭部の意図された向きおよび/または位置を決定するための方法であって、前記方法は、
前記力による前記接触点における力の変数を決定することと、
前記感知された変数による、所定の時刻における前記ユーザの頭部の向きの不随意成分を予測すること、前記予測することは、第1の入力と、第1の出力と、フィルタ係数入力と、少なくとも1つのフィルタ係数と、を備える適応フィルタを使用し、ここにおいて、前記第1の出力は、前記向きの不随意成分に等しく、前記第1の入力は、前記力の変数を備える、と、
少なくとも1つの追跡システムを使用して、前記所定の時刻における前記ユーザの頭部の向き変数を決定することと、
前記フィルタ係数入力に等しい第3の値を提供するために、第2の値から第1の値を減算すること、前記第1の値は、前記第1の出力に等しく、前記第2の値は、前記向き変数に等しい、と、
前記フィルタ係数入力に基づいて、前記少なくとも1つのフィルタ係数を更新することと、
前記第3の値に基づいて、前記ユーザの頭部の意図された向きおよび/または位置を決定することと、
を備える方法。
【請求項2】
前記力による前記接触点における前記力の変数を決定することは、前記第1の出力を予測する前に、前記力の変数に第1のバンドパスフィルタを適用することを備え、前記第1の入力は、前記フィルタリングされた力の変数を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの追跡システムを使用して、前記所定の時刻における前記ユーザの頭部の前記向き変数を決定することは、前記向き変数に第2のバンドパスフィルタを適用することを備え、前記第2の値は、前記フィルタリングされた向き変数を備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ユーザの頭部の前記向きの不随意成分を予測することは、前記力の変数を時間遅延させることを備え、第1の入力は、前記時間遅延された力の変数を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、
第2の入力および第2の出力と、少なくとも1つの第2のフィルタ係数と、を備える第2のフィルタを適用することをさらに備え、ここにおいて、前記第2の入力は、前記力の変数を備え、前記第2の出力は、前記ユーザの頭部の意図された向きを備え、前記少なくとも1つの第2のフィルタ係数は、前記第1のフィルタの前記少なくとも1つのフィルタ係数に実質的に等しい、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの追跡システムを使用して、前記所定の時刻における前記ユーザの頭部の前記向き変数を決定することは、
予測頭部向きを決定するために、頭部トラッカを使用することと、
前記予測期間に等しい遅延を前記予測頭部向きに適用することと、
遅延された修正子を取得するために、前記向き変数から前記遅延された予測頭部向きを減算すること、ここにおいて、前記第2の値は、前記遅延された修正子を備える、と、
をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記予測頭部向きを前記第2の出力と合計することをさらに備える、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記力の変数は、前記接触点における力を決定するために使用される、感知位置、感知速度を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ユーザは、振動力またはバフェッティング力を受ける座席に着座しており、前記接触点は、前記座席である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記力の変数を決定することは、前記接触点における回転性変位を感知することを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記力の変数を決定することは、前記接触点における線形変位を感知することを備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記適応フィルタを使用して予測することは、
前記接触点から前記ユーザの頭部までの力の人体による伝達をモデル化するように前記適応フィルタを構成することと、
前記力の変数を前記構成された適応フィルタに入力することであって、それによって、前記所定の時刻における前記ユーザの頭部の前記向きの不随意成分を決定する、入力することと、
を備える、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記適応フィルタは、複数の係数によって定義される再帰的最小二乗(RLS)フィルタを備える、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記適応フィルタを使用して予測することは、
前記RLSフィルタの前記複数の係数を使用して、有限インパルス応答(FIR)フィルタを構成することと、
前記座席加速度計からの出力を、前記FIRフィルタに入力することであって、それによって、前記ユーザの頭部の予測不随意変位を決定する、入力することと、
を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記接触点は、前記ユーザに対してロケーションが実質的に固定されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の方法を行うように構成された処理手段を備える、ユーザの頭部の向きを決定するためのトラッカシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、オブジェクトの向きを追跡する方法、トラッカシステム、およびヘッドまたはヘルメットマウントディスプレイシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、航空機で使用されるヘルメットマウントディスプレイ(HMD)システムは、シンボルなどの画像アーチファクトをユーザの外界の視界に重ねて表示するように配置されている。このようなシンボルは、地上の特徴、例えば地平線の位置を示すマーカを含み得るか、または、それらは、コックピット内部に対して所定の位置にロックされて見えるように意図された仮想ヘッドアップディスプレイにおいてコックピット計器および飛行情報を描写し得る。
【0003】
1つの既知の例では、追跡システムが、常時ヘルメットの向きを追跡するために設けられている。追跡された向きは、ディスプレイシステムが、ユーザの頭部の動きに関係なく空間に固定されて見えるようにシンボルの位置を更新することを可能にするのに十分な頻度で、ヘルメットマウントディスプレイシステムに供給される。
【0004】
ヘルメットの着用者が、例えば、座席を通じて、振動またはバフェッティング(buffeting)にさらされる場合、結果として生じるヘルメットの突然の動きは、そのようなディスプレイシステムにおいて空間内に固定されて見えるように意図されたシンボルの表示において、許容できない不安定性を引き起こし得る。
【0005】
次に、本発明の例となる実施形態を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本開示によるトラッカシステムによって実装され得るような制御システムの簡略化された例を示す。
図2図2は、本開示によるトラッカシステムに組み込まれ得るような構成要素の例となる配置を示す。
図3図3は、本開示によるトラッカシステムに組み込まれ得るような構成要素の更なる例となる配置を示す。
図4図4は、本開示による組み合わされた予測頭部向きトラッカシステム400の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ヘルメットマウントまたはヘッドマウントディスプレイシステム、例えば、本出願人によるWO2017/042578A1として公開された特許出願に記載されているようなヘルメットマウントディスプレイシステムは、表示用の画像における画像アーチファクトの位置を計算する際に、関連付けられたヘルメット/頭部トラッカシステムの出力に依拠する。ヘルメット/頭部の変化する向きは、ディスプレイシステムが、ユーザの頭部の動きに関係なく、ユーザの外界の視界に対して空間に固定されて見えるように特定のシンボル、例えば地平線の位置を更新することを可能にするのに十分な頻度で、トラッカシステムによって決定される。特に、WO2017/042578A1に記載されているシステムでは、ディスプレイにおけるそのようなシンボルの正確な位置決めは、トラッカセンサがヘルメットの向きの最新の測定値を計算するためのデータを提供してから短時間後にヘルメットの向きを予測する追跡システムに依拠する。これは、ヘルメットの向きにおける変化を考慮して、特定のシンボルの位置を再計算する際のディスプレイシステムにおけるレイテンシが、シンボルの再位置決めが着用者の頭部の実際の位置に遅れをとるように見えることを引き起こさないことを確実にするためである。
【0008】
トラッカシステムにおける予測機能は、着用者が乗って移動している車両の振動によって引き起こされ得るような、急速なヘルメットの動きの、ある特定のランダムパターンによって中断され(disrupted)得る。振動変位は、ユーザの身体を通じてその頭部に伝わり得、したがって、不随意回転頭部運動(involuntary rotary head movement)を、着用者の頭部の任意の随意回転運動に加え得る。随意および不随意回転運動の組合せは、ヘルメットトラッカシステムセンサによって検出され、感知された向きの変化は、トラッカシステムの予測機能によって使用され、望ましくない結果を伴う。関連付けられたディスプレイシステムによる使用が意図されたヘルメットの向きを予測するために、トラッカシステムにおいて使用されるべきセンサデータから、振動の影響を軽減することを可能にする新しい技法が必要とされる。
【0009】
このような問題に対する1つの可能な解決策は、ディスプレイにおいてシンボルを再位置決めするときに、不随意であろうと随意であろうと、あらゆる動きが考慮に入れられ得るように、ディスプレイシステムにおけるレイテンシを低減させることであると考えられ得る。しかしながら、ディスプレイシステムのレイテンシは、ディスプレイデバイスの応答時間および処理の速度を含む、技術によって強く制限され、振動運動またはバフェッティング運動に正確に応答するために必要とされるレベルを低減させることが困難である。
【0010】
図1は、振動システム100を例示する。振動システム100は、座席上のユーザなどの身体に作用する並進振動110を備える。身体は、身体伝達関数120を有する。身体伝達関数120は、並進振動を入力として使用したときに、身体伝達関数が頭部角振動130を出力する、関数である。身体伝達関数120は、ユーザと、座席の特性と、に依存し得る。したがって、ユーザの振動並進(vibrational translation)を軽減するための解決策が、身体伝達関数を推定しようと試みることである。
【0011】
図2は、いくつかの例による頭部トラッカシステム200を例示する。頭部トラッカシステムは、少なくとも1つの振動センサ210と、非振動頭部トラッカ220と、適応フィルタ230と、を備える。
【0012】
プラットフォームの振動は、ユーザの振動を引き起こし、これは、少なくとも1つの振動センサ210によって決定され得る。振動センサ210は、力の変数(force variable)を出力する。少なくとも1つの振動センサ210は、身体上へと付与される振動力が、少なくとも1つの振動センサ210の力の変数の出力に基づいて決定され得るように、ユーザとプラットフォームとの間の接触点に、またはその近くに位置し得る。
【0013】
図1に関連して説明したように、身体伝達関数120を推定することによって、ユーザの頭部の意図された向きが計算され得る。しかしながら、上述したように、非振動頭部トラッカ220は、プラットフォームの振動並進を軽減するのに適していない。非振動頭部トラッカ220は、現在の時刻におけるユーザの頭部の非予測向きを出力し、すなわち、現在の時刻より先の時刻(time ahead of)における向きではなく、現在の時刻での向きの出力である。
【0014】
力の変数は、適応フィルタ230への入力として使用される。フィルタ係数は、適応フィルタ230の出力と非振動頭部トラッカ220からの出力との比較240に基づく。適応フィルタ230の出力は、身体伝達関数の推定を提供する。推定された身体伝達関数は、ユーザの意図された向きを導出するために使用され得る。
【0015】
いくつかの例では、振動センサ210は、加速度計を備え得る。いくつかの例では、振動センサ210は、速度センサを備え得、出力は、加速度を得るために微分され得る。いくつかの例では、振動センサ210は、変位センサを備え得、センサの出力は、加速度を得るために二重微分され得る。センサの出力が微分されるいくつかの例では、微分された出力はまた、ノイズを除去するためにバンドパスフィルタを使用してフィルタリングされ得る。
【0016】
いくつかの例では、加速度計上のバンドパスフィルタは、25Hzに周波数を制限(limit)し得る。25Hzは、著しい振動が頭部に伝達される周波数を上回り、また、典型的なシステムの更新レート(典型的に、100Hzより大きい)の半分を下回る。下側周波数は、必要とされる正確な低い周波数ダイナミック(exact low frequency dynamics)に依存することになる値に設定され、典型的に1Hzである。
【0017】
いくつかの例では、適応フィルタ230は、振動センサ210の出力から導出された力の測定値を受け取り得る。いくつかの例では、このフィルタは、振動センサ210の出力から導出された加速度の測定値を受け取り得る。
【0018】
いくつかの例では、非振動頭部トラッカ220は、ジャイロセンサを備え得る。ジャイロセンサは、ユーザの頭部の予測向きもしくは非予測向き、および/またはユーザの向きもしくは姿勢の予測変化レートもしくは非予測変化レートを出力し得る。いくつかの例では、非振動頭部トラッカ220は、WO2017/042578A1に記載されているものと同様のシステムを備え得る。
【0019】
いくつかの例では、適応フィルタ230は、再帰的最小二乗(RLS)フィルタを備え得、ここで、RLSフィルタの定数は、比較240の出力に基づくようなものである。
【0020】
いくつかの例では、比較器240は、適応フィルタ230の出力と非振動頭部トラッカ220の出力との間の差を計算し得る。
【0021】
図3は、いくつかの例による頭部振動予測システム300を例示する。頭部振動予測システム300は、図2を参照して説明した頭部トラッカシステム200と同様である。同様の特徴は、図2と同じ参照符号を使用する。
【0022】
頭部振動予測システム300は、振動センサ210と、遅延310と、適応フィルタ230と、FIRフィルタ320と、予測的非振動頭部トラッカ(predictive non-vibrational head tracker)330と、比較器240と、を備える。
【0023】
振動センサ210は、ヘッドマウントディスプレイのユーザに対するプラットフォームの接触点における振動を測定し、振動に関連付けられた力の変数を決定するように構成されている。
【0024】
予測的非振動頭部トラッカ330は、現在の時刻より所定の予測時間先におけるユーザの予測向きを決定し、WO2017/042578A1に記載されているような頭部トラッカと同様であり得る。
【0025】
所定の予測時間に実質的に等しい遅延310が、振動センサ210の出力に加えられる。遅延された振動センサ出力は、適応フィルタ230への入力として与えられ、ここで、フィルタの係数は、比較器240の出力に基づく。比較器240は、予測的非振動頭部トラッカ330および適応フィルタ230の出力を入力として受け取る。遅延を加えることは、適応フィルタ230に、現在の時刻より先の時刻における身体伝達関数を予測することを強いる。
【0026】
適応フィルタ230からのフィルタ係数は、FIRフィルタ320に与えられ、振動センサ210の非遅延出力は、FIRフィルタ320への入力として与えられ、これは、出力として現在の頭部振動を提供する。
【0027】
頭部振動予測システム300の効果は、適応フィルタ230が、現在の時刻より所定の時間先の身体伝達関数の予測を提供することであり、この時間は、遅延310に等しい。次いで、適応フィルタ230からのフィルタ係数は、FIRフィルタ320に出力され、これは、適応フィルタ230が身体伝達関数を予測するという事実よって、いずれの遅れも打ち消されるので、実質的な遅れなしの予測頭部振動を提供する。
【0028】
いくつかの例では、フィルタが、振動センサ210の出力および/または予測的非振動頭部トラッカ330の出力に適用され得る。フィルタは、バンドパスフィルタであり得る。フィルタは、接触点における力または姿勢/頭部の向きの測定または決定の結果であり得るノイズを除去するために使用され得る。
【0029】
いくつかの例では、適応フィルタ230は、RLSフィルタを備え得る。
【0030】
いくつかの例では、予測的非振動頭部トラッカ330は、少なくとも1つのジャイロセンサを備え得る。いくつかの例では、予測的非振動頭部トラッカ330は、WO2017/042578A1に記載されているような頭部トラッカを備え得る。
【0031】
いくつかの例では、比較器240は、適応フィルタ230の出力と予測的非振動頭部トラッカ330の出力との間の差を計算し得る。
【0032】
図4は、いくつかの例による、組み合わされた予測頭部向きトラッカシステム400を例示する。組み合わされた予測頭部向きトラッカシステム400は、図3を参照して説明した頭部振動予測システム300と同様であり、同様の特徴は、同じ参照符号を使用する。
【0033】
組み合わされた予測頭部向きトラッカシステム400は、予測的非振動頭部トラッカ330を備える。予測的非振動頭部トラッカは、予測頭部向き420と、非予測頭部向きと、を出力するように構成されている。予測頭部向き420は、現在の時刻より所定の予測時間先の頭部の向きの予測である。非予測頭部向き415は、予測なしで得られた頭部の向きである。
【0034】
所定の予測時間に等しい遅延310が、予測頭部向き420に加えられ、次いで、遅延された予測頭部向きは、比較器425によって、非予測頭部向き415と比較される。遅延310は、予測時間に等しいので、比較器425の出力430は、予測頭部向き310の誤差に等しい。比較器425は、遅延された予測頭部向きと非予測頭部向き415との間の差を求め得る。
【0035】
頭部の向きは、デカルト座標によって表され得るか、または、航空機のヨー角、ロール角、およびピッチ角との便宜上、極座標で表され得る。
【0036】
組み合わされた予測頭部向きトラッカシステム400はまた、複数の座席振動センサ475を備える。各座席振動センサ475は、座席とユーザとの間の接触点における力に関連する力の変数を決定するように構成されている。接触点は、ユーザに対して定位置に実質的に固定され得るが、接触点の移動は、ユーザの移動の自由に依存し得ることを理解されたい。いくつかの用途は、使用者が他の用途よりも確実に座席に拘束されることを必要とする。さらに、接触点は、点としてモデル化され得るが、実際の用途では、力は、有限領域にわたって作用し得る。
【0037】
座席センサ475は、力センサ、加速度センサ、速度センサまたは位置センサを備え得る。座席センサ475または関連デバイスは、受け取った情報を力の測定値に変換するように構成され得る。
【0038】
組み合わされた予測頭部向きトラッカシステム400はまた、複数の振動予測ブロック460を備え、各回転軸(例えば、ピッチ、ロール、およびヨーのうちの少なくとも1つ)に対して1つの振動予測ブロック460があり、代替として、各直交方向/軸に対して1つのブロック460があり得る。各別個の振動予測ブロック460は、図4に例示されるように、複数の座席振動センサ475のうちの少なくとも1つから力の変数情報を受け取り、予測的非振動頭部トラッカ330から向き情報を受け取る。
【0039】
各振動予測ブロックは、同様に挙動するので、単一の振動予測ブロック460についてのみ説明する。受け取られた3次元の力の変数は、センサ情報からノイズを除去するために、バンドパスフィルタ470を使用してフィルタリングされる。次いで、フィルタリングされた力の変数は、遅延310を使用して遅延され、ここで、遅延310は、予測的非振動頭部トラッカ330の予測期間に等しい。次いで、遅延された力の変数は、3つのRLSフィルタ435のセットへの入力として与えられる。各RLSフィルタは、x、yまたはz座標情報(または極座標などのその他任意の直交座標)のうちの1つを受け取る。
【0040】
3つのRLSフィルタ435の出力は、加算器240によって、比較器の出力430から減算され、加算器240の出力は、3つのRLSフィルタのフィルタ係数を得るために使用される。次いで、これら係数は、複数のFIRフィルタ440に与えられ、これは、いかなる遅延もない、フィルタリングされた座席センサ出力を入力として有する。次いで、FIRフィルタ440の出力は、振動補正(vibration correction)446を提供するために、加算器445によって合計される。次いで、振動補正446は、組み合わされた予測頭部向き455を得るために、加算器450によって、予測的非振動頭部トラッカ330からの予測頭部向き420と合計される。
【0041】
以下の式は、フィルタの入力および出力を定義するために使用され得る。しかしながら、これらは、フィルタの出力を定義する式の一例にすぎない。四元数表現などの回転の他の表現もまた、使用され得る。
【0042】
以下において:
P=プラットフォーム軸、
D=ディスプレイ軸、
p=予測向き
np=非予測向き
t=予測時間
c=補正向き
[PD]=時刻nでのプラットフォーム軸におけるディスプレイ軸の向き
【0043】
予測向きにおいて必要とされる補正は、以下によって与えられる:
【0044】
【数1】
【0045】
ここで、
【0046】
【数2】
【0047】
は、非予測向きであり、
【0048】
【数3】
【0049】
は、予測出力の遅延されたバージョンである。
【0050】
3つの直交軸の周りの小角度回転(ω、ω、ω)の場合、対応する回転行列は、以下によって近似され得る:
【0051】
【数4】
【0052】
したがって、式1および式2を等式化すること(equating)によって、3つのRLSフィルタの「所望の出力」(ω、ω、ω)が得られ得る。
【0053】
以下において、
、AおよびAは、x軸、y軸およびz軸における加速度であり、
pは、フィルタ次数であり、4に設定され、
φは、忘却係数(forgetting factor)であり、
は、出力であり、ここで、i=x、y、およびzは、3つの直交軸x、yおよびzの周りの、出力レート推定値を示し、
nは、現在の時刻インデックスである
【0054】
3つの入力RLSフィルタの各セットは、出力yを有し得、以下によって定義される:
【0055】
【数5】
【0056】
【数6】
【0057】
【数7】
【0058】
【数8】
【0059】
【数9】
【0060】
【数10】
【0061】
【数11】
【0062】
小角度の場合、対応する回転行列
【0063】
【数12】
【0064】
は、式2によって得られ得、ここで、ωは、RLSフィルタ(y)からの出力である。
【0065】
現在の補正されたトラッカ予測出力は、以下によって与えられる:
【0066】
【数13】
【0067】
第2の解決策は、第1の解決策と組み合わせて、頭部角度予測を使用することであり得る。上記で参照したような既知のトラッカシステムは、ある将来の時点におけるヘルメットの向きを予測する際に使用するための予測アルゴリズムにレートデータを与えるために、ヘルメットの動きのジャイロセンサを使用する。しかしながら、(望ましくない画像アーチファクトを被ることなく)良好な予測を達成するためには、予測時間が制限される必要がある。最小の達成可能なレイテンシが与えられると、シンボルによる表示(symbology)の安定性を改善するために、予測アルゴリズムに対する更なる改善が必要とされる。シンボルの安定性は、性能およびユーザ受容性基準の重要な要素であり、シンボルは、随意であろうと不随意であろうと、ヘルメットの動きに関係なく、空間における固定位置にロックされているかのように見える必要がある。
【0068】
図2図4を参照して上述した構成要素は、実際には、オプションで、チップセット、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、グラフィックス処理ユニット(GPU)などとして提供される、単一のチップもしくは集積回路または複数のチップもしくは集積回路によって実装され得ることが理解されよう。1つまたは複数のチップは、1つまたは複数のデータプロセッサ、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ、ベースバンド回路、および無線周波数回路のうちの少なくとも1つまたは複数を具現化するための回路(ならびに場合によってはファームウェア)を備え得、これらは、例示的な実施形態に従って動作するように構成可能である。この点に関して、例示的な実施形態は、(非一時的な)メモリに記憶されかつプロセッサによって実行可能なコンピュータソフトウェアによって、またはハードウェアによって、または有形に記憶されたソフトウェアおよびハードウェア(ならびに有形に記憶されたファームウェア)の組合せによって、少なくとも部分的に実装され得る。図面を参照して本明細書で説明された実施形態の少なくともいくつかの態様は、処理システムまたはプロセッサにおいて行われるコンピュータプロセスを備えるが、本発明はまた、コンピュータプログラム、特に、本発明を実施するように適合されたキャリア上またはキャリア内のコンピュータプログラムにも及ぶ。プログラムは、非一時的なソースコード、オブジェクトコード、部分的にコンパイルされた形態などのコード中間ソースおよびオブジェクトコードの形態であり得るか、または本発明によるプロセスの実装での使用に好適なその他任意の非一時的な形態であり得る。キャリアは、プログラムを搬送可能な任意のエンティティまたはデバイスであり得る。例えば、キャリアは、ソリッドステートドライブ(SSD)または他の半導体ベースのRAM、例えばCD-ROMまたは半導体ROMなどのROM、磁気記録媒体、一般的な光メモリデバイスなどのような、記憶媒体を備え得る。
【0069】
本明細書で説明された例は、本発明の実施形態の例示的な例として理解されるべきである。更なる実施形態および例が想定される。任意の1つの例または実施形態に関連して説明された任意の特徴は、単独でまたは他の特徴と組み合わせて使用され得る。加えて、任意の1つの例または実施形態に関連して説明された任意の特徴はまた、例または実施形態のその他任意のものの任意の組合せ、あるいは例または実施形態のその他任意のものの1つまたは複数の特徴との組合せにおいて使用され得る。さらに、当業者には明らかなように、本明細書に記載されていない変形および修正も、特許請求の範囲に定義される本発明の範囲内で用いられ得る。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】