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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/06 20060101AFI20231024BHJP
   C09J 175/08 20060101ALI20231024BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C09J175/06
C09J175/08
C09J11/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519077
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(85)【翻訳文提出日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 US2021047915
(87)【国際公開番号】W WO2022072090
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】63/086,295
(32)【優先日】2020-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】517222199
【氏名又は名称】ダウ キミカ デ コロンビア ソシエダ・アノニマ
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】グオ、インゾン
(72)【発明者】
【氏名】カサルビアス、フアン カルロス
(72)【発明者】
【氏名】ミヤケ、ケビン ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】トレス シプロ、マテウス バティスタ
(72)【発明者】
【氏名】カルドナ ヒメネス、エルキン ダビド
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF111
4J040EF131
4J040EF281
4J040EF301
4J040JA13
4J040KA14
4J040KA25
4J040KA26
4J040KA29
4J040KA31
4J040KA35
4J040KA38
4J040KA42
4J040LA07
4J040LA08
4J040MA02
4J040MA10
4J040MA16
4J040MB02
4J040NA06
(57)【要約】
(A)少なくとも1種のイソシアネート成分及び(B)少なくとも1種のポリオール成分を含む二成分型無溶剤ポリウレタン接着剤組成物。イソシアネート成分(A)は、(Ai)ポリイソシアネートと(Aii)イソシアネート反応性成分との反応生成物であるイソシアネートプレポリマーを含み、イソシアネート反応性成分は、(Aiia)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリオール、(Aiib)2より大きい官能価を有する少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び(Aiic)少なくとも1種の疎水性ポリオールを含む。ポリオール成分(B)は、(Bi)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオール、(Bii)天然油とエステル交換された少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び(Biii)少なくとも1種のリン酸エステルポリオールを含む。(I)無溶剤接着剤組成物を形成するように、上記反応物(成分(A)及び(B))を混合する工程と、(II)無溶剤接着剤組成物の層を第1の基材の表面に塗布する工程と、(III)第1の基材上の無溶剤接着剤組成物の層を第2の基材の表面と接触させて積層体を形成する工程と、(IV)無溶剤接着剤組成物を硬化させる工程とを含む、積層体を形成するための方法も開示される。上記無溶剤接着剤組成物を含む積層体も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分型無溶剤接着剤組成物であって、
(A)少なくとも1種のイソシアネート成分であって、
(Ai)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(Aii)少なくとも1種のイソシアネート反応性成分であり、
(Aiia)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリオール、
(Aiib)2より大きい官能価を有する少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び
(Aiic)少なくとも1種の疎水性ポリオール
を含む、イソシアネート反応性成分と
の反応生成物であるイソシアネートプレポリマーを含む、イソシアネート成分と、
(B)少なくとも1種のポリオール成分であって、
(Bi)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオール、
(Bii)天然油とエステル交換された少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び
(Biii)少なくとも1種のリン酸エステルポリオール
を含む、ポリオール成分と
を含む、二成分型無溶剤接着剤組成物。
【請求項2】
前記イソシアネートプレポリマー中の成分(Ai)である前記ポリイソシアネートが、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート又は変性4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネートである、請求項1に記載の二成分型無溶剤接着剤組成物。
【請求項3】
前記イソシアネート反応性成分中の前記2より大きい全体官能価を有するポリオールが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の二成分型無溶剤接着剤組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート反応性成分中の前記疎水性ポリオールが、ポリエステルポリオールである、請求項1~3のいずれか一項に記載の二成分型無溶剤接着剤組成物。
【請求項5】
前記天然油がヒマシ油である、請求項1~4のいずれか一項に記載の二成分型無溶剤接着剤組成物。
【請求項6】
前記天然油とエステル交換された芳香族ポリエステルポリオールが疎水性である、請求項1~5のいずれか一項に記載の二成分型無溶剤接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリオール成分中の前記天然油とエステル交換された芳香族ポリエステルポリオールが、主鎖中に4個以上の炭素を有する芳香族/アルキレンジオール又はグリコールから作製される、請求項1~6のいずれか一項に記載の二成分型無溶剤接着剤組成物。
【請求項8】
前記リン酸エステルポリオールが、三官能性プロピレングリコール、ポリリン酸、及びポリイソシアネートから作製され、前記リン酸エステルポリオールが、前記リン酸エステルポリオールの重量を基準として、3重量パーセント未満のリン酸含有量、及び25℃において40,000ミリパスカル秒未満の粘度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の二成分型無溶剤接着剤組成物。
【請求項9】
前記イソシアネート成分(A)対前記ポリオール成分(B)の重量比[A:B]が、1:1.5~2:1であり、イソシアネート(NCO)指数は、1.6~1である、請求項1~8のいずれかに記載の二成分型無溶剤接着剤組成物。
【請求項10】
積層構造体を形成するための方法であって、
(I)無溶剤接着剤組成物を形成するように、反応物を混合する工程であって、前記反応物が、
(A)少なくとも1種のイソシアネート成分であって、
(Ai)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(Aii)少なくとも1種のイソシアネート反応性成分であり、
(Aiia)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリオール、
(Aiib)2より大きい官能価を有する少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び
(Aiic)少なくとも1種の疎水性ポリエステルポリオール
を含む、イソシアネート反応性成分と
の反応生成物であるイソシアネートプレポリマーを含む、イソシアネート成分と、
(B)少なくとも1種のポリオール成分であって、
(Bi)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオール、
(Bii)天然油とエステル交換された少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び
(Biii)少なくとも1種のリン酸エステルポリオール
を含むポリオール成分と
を含む、工程と、
(II)前記無溶剤接着剤組成物の層を第1の基材の表面に塗布する工程と、
(III)前記第1の基材の表面上の前記無溶剤接着剤組成物の層を第2の基材の表面と接触させて積層体を形成する工程と、
(IV)前記接着剤組成物を硬化させる工程と、
を含む、積層構造体を形成するための方法。
【請求項11】
前記反応物を混合する工程が、1:1.5~2:1の重量比で前記イソシアネート成分及び前記ポリオール成分を混合することをさらに含み、イソシアネート(NCO)指数は、1.6~1である、請求項10に記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項12】
前記イソシアネート反応性成分中の前記芳香族三官能性ポリオールが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項10又は11に記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項13】
前記イソシアネート反応性成分中の前記疎水性ポリオールが、ポリエステルポリオールである、請求項10~12のいずれか一項に記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項14】
前記2より大きい官能価を有するポリエーテルポリオールが、グリセリン開始ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド又はこれらの混合物である、請求項10~13のいずれか一項に記載の積層構造体を形成する方法。
【請求項15】
前記ポリオール成分中の前記芳香族疎水性ポリエステルポリオールが、天然油とエステル交換された芳香族ポリエステルポリオールから作製される、請求項10~14のいずれか一項に記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項16】
前記天然油がヒマシ油である、請求項10~15のいずれか一項に記載の積層構造体を形成する方法。
【請求項17】
前記ポリオール成分中の前記疎水性ポリエステルポリオールが、モノマー単位中に4個以上の炭素原子を有する芳香族/アルキレンジオールとジカルボン酸とから作製される、請求項10~16のいずれかに記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項18】
前記リン酸エステルポリオールが、三官能性プロピレングリコール、ポリリン酸、及びポリイソシアネートから作製され、前記リン酸エステルポリオールが、前記リン酸エステルポリオールの重量を基準として、3重量パーセント未満のリン酸含有量、及び25℃において40,000ミリパスカル秒未満の粘度を有する、請求項10~請求項17のいずれか一項に記載の積層構造体を形成するための方法。
【請求項19】
請求項10~18のいずれか一項に記載の方法によって形成される積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関し、より詳細には、本発明は、例えば包装用途で使用される積層フィルムと共に使用するための二成分型無溶剤ポリウレタン系積層用接着剤組成物に関する。本発明はさらに、開示された二成分型無溶剤ポリウレタン系積層用接着剤組成物を含む積層構造体を形成する方法、このような方法を用いて製造された積層体自体、及びこのような積層体から製造された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において知られているように、二成分型(2K)ポリウレタン接着剤組成物は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との反応混合物に基づく。2つの成分を一緒に混合すると、反応して硬化ポリウレタン接着剤を形成し、当該反応により、2つ以上の種類の基材に強力な接着性の結合を形成することができる。これまで、様々な2K型ポリウレタン接着剤組成物が、多種多様な目的のために製造されてきた。例えば、接着剤組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、金属、メタライズ、紙、又はセロハンなどの基材を一緒に結合させて、複合フィルム、すなわち、積層体を形成するために使用される。異なる最終使用用途における接着剤の使用は概ね知られている。例えば、接着剤は、包装産業において、特に食品包装のために使用されるフィルム/フィルム及びフィルム/箔積層体の製造に使用することができる。積層用途で使用される接着剤、すなわち「積層用接着剤」は、全般に、溶剤系、水系、及び無溶剤(又は溶剤を含まない)の3つのカテゴリーに分類することができる。接着剤の性能は、カテゴリーによって、また接着剤が適用される用途によって変わる。
【0003】
無溶剤積層用接着剤は、有機溶剤又は水性担体のいずれも用いずに、固形分最大100パーセント(%)を塗布することができる。塗布時に有機溶剤又は水を接着剤から乾燥する必要がないため、これらの接着剤は積層機器の高いラインスピードで稼働させることができ、積層体の製造にあたる高い生産性を提供する。溶媒系及び水系の積層用接着剤は、接着剤の塗布後、別の積層体に積層して積層構造体を形成するまでに溶剤又は水が効果的に乾燥し、接着剤をコーティングした基材から除去することのできる稼働速度によって制限される。さらに、無溶剤積層接着剤は、環境面、健康面、及び安全面での利点を提供する。
【0004】
無溶剤積層用接着剤のカテゴリーには多くの種類がある。1つの特定の種類としては、塗布の前に予混合された2Kポリウレタン系積層用接着剤が挙げられる。典型的には、2Kポリウレタン系積層用接着剤は、イソシアネート含有プレポリマー及び/又はポリイソシアネートを含む第1の構成成分と、ポリオール又は2種以上のポリオールの組み合わせを含む第2の構成成分と、を含む。具体的には、第2の構成成分は、1分子当たり2個以上のヒドロキシル基で官能化されたポリエーテル及び/又はポリエステルを含む。第1のイソシアネート構成成分及び第2のポリオール構成成分は、所定の比率で組み合わされて、又は「予混合」されて、積層用接着剤組成物を形成する。次いで、接着剤組成物は、別の基材に積層されて積層構造体を形成し得る基材上に塗布され得る。積層構造体は、食品包装用途での使用に好適ないくつかの積層フィルムを含み得る。
【0005】
結合強度、加工性及び耐薬品性は、要求の厳しい食品包装用途、例えば、熱間充填、ボイルインバッグ、及びレトルト用途に使用される無溶剤接着剤のための重要な特性である。既存の2K無溶剤接着剤を含む新たに積層された構造体は、典型的には、2つの成分がその場で分子量及び結合強度を徐々に増大させるため、何時間もの間、即時結合又は「グリーン強度」を示さない。さらなる加工の前に分子量が増大するのを待つことは、フィルム加工業者にとって制約であり、フィルム加工業者は、追加の加工、例えば最終積層フィルムのスリッティングのために、少なくとも3日以上待つ必要があることが多い。加えて、既存の無溶剤接着剤は、典型的には、架橋が硬化後に分子量及び乾燥結合を増大させるとしても、溶剤系接着剤と比較して乏しい製品耐性を示す。
【0006】
インク汚れ耐性及び耐熱性は、包装用途に使用される無溶剤接着剤にとってさらなる重要な特性である。さらに、世界的な食品安全規制は、より強力になって包装産業を追い立てつつある。したがって、速い硬化、速い第一級芳香族アミン(「PAA」)の崩壊、及び世界的な規制を満たす能力は、フィルム加工業者にとってのさらなる考慮事項である。
【0007】
したがって、改善された結合強度、耐薬品性及び耐熱性、インク汚れ耐性、並びに加工性を示す2K無溶剤積層用接着剤組成物、並びにそれを含む積層体の製造方法が望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、(A)少なくとも1種のイソシアネート成分と、(B)少なくとも1種のポリオール成分とを含む新規な2K(すなわち、2液系)無溶剤積層用接着剤組成物に関する。いくつかの実施形態において、イソシアネート成分(A)は、(Ai)少なくとも1種のポリイソシアネートと、(Aii)少なくとも1種のイソシアネート反応性成分との反応生成物である少なくとも1種のイソシアネートプレポリマーを含む。いくつかの実施形態において、イソシアネート反応性成分(Aii)は、以下の成分、すなわち、(Aiia)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオール、(Aiib)2より大きい官能価を有する少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び(Aiic)少なくとも1種の疎水性ポリオールを含む。いくつかの実施形態において、ポリオール成分(B)は、(Bi)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオール、(Bii)天然油とエステル交換された少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び(Biii)少なくとも1種のリン酸エステルポリオールを含む。いくつかの実施形態において、芳香族ポリエステルポリオール成分(Bii)は、疎水性ポリエステルポリオールを含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、成分(A)であるイソシアネートプレポリマーを製造するのに有用な成分(Ai)であるポリイソシアネートは、4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート若しくは変性4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート又はそれらの混合物などの少なくとも1種の芳香族ポリイソシアネートである。
【0010】
いくつかの実施形態において、成分(Aii)であるイソシアネート反応性成分を生成するのに有用な、成分(Aiia)である2より大きい官能価を有するポリオールは、少なくとも1種のポリエーテルポリオールを含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、成分(Aii)であるイソシアネート反応性成分を生成するのに有用な、成分(Aiib)である2より大きい官能価を有する芳香族ポリエステルポリオールは、少なくとも1種のフタレート系ポリエステルポリオールであり、例えば、トリメチロールプロパン及びジオール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、2-メチルプロパンジオール、又はこれらの2つ以上の混合物と反応させた、例えば、イソフタレート、無水フタル酸、テレフタレート、又はこれらの2つ若しくは3つの混合物である。
【0012】
いくつかの実施形態において、成分(Aii)であるイソシアネート反応性成分を生成するのに有用な成分(Aiic)である疎水性ポリオールは、アジピン酸、フタル酸、アゼライン酸、セバシン酸、18個未満の炭素の炭素原子を有するジカルボン酸、又はそれらの混合物などのジカルボン酸と反応させた、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、若しくは18個未満の炭素の複数の炭素原子を有するジオール、又はそれらの2つ以上の混合物から作製される少なくとも1種のポリエステルポリオールである。いくつかの実施形態において、疎水性ポリオールはポリブチレンオキシドである。
【0013】
いくつかの実施形態において、イソシアネート反応性成分(Aii)を製造するのに有用な成分、すなわち、成分(Aiia)である2より大きい官能価を有するポリオール、成分(Aiib)である、2より大きい官能価を有する芳香族ポリエステルポリオール、及び成分(Aiic)である疎水性ポリオールは、混合物を成分(Ai)に添加する前に、一緒に混合されて成分(Aii)を形成でき、次いで、成分(Aii)を形成する混合物を、その後、成分(Ai)と混合することができる。他の実施形態において、成分(Aiia)、Aiib)及び(Aiic)は、それぞれ個々に別々に成分(Ai)に添加し、実質的に同時に成分(Ai)と混合して互いに反応させてイソシアネート成分(A)を形成することができる。
【0014】
いくつかの実施形態において、成分(Bi)である、2より大きい官能価を有するポリエーテルポリオールは、例えば、グリセリン開始ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンオキシド、ポリブチレンオキシド又はそれらの混合コポリマーである。
【0015】
いくつかの実施形態において、成分(Bii)であるエステル交換ポリオールを作製するために使用される天然油は、ヒマシ油であり、いくつかの実施形態において、成分(Bii)は、ダイマージオールなどの変性天然油である。
【0016】
いくつかの実施形態において、成分(Biii)であるリン酸エステルポリオールは、三官能性プロピレングリコール、ポリリン酸、及びポリイソシアネートから作製され、リン酸エステルポリオールは、リン酸エステルポリオールの重量に基づいて3重量パーセント(重量%)未満のリン酸含有量、及び摂氏25度(℃)で40,000ミリパスカル秒(mPa.s)未満の粘度を有する。
【0017】
上記積層体を形成するための方法も開示する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1つの一般的な実施形態において、本発明は、二成分(2K)型ポリウレタン(PU)積層用接着剤組成物を含み、より具体的には、本発明は、(A)少なくとも1種のイソシアネート成分(又はイソシアネート基含有成分)と、(B)少なくとも1種のポリオール成分(又はヒドロキシル基含有成分)とを含む2K PU積層用接着剤を含む。いくつかの実施形態において、成分は混合されて、例えば、食品包装用途に適合された積層構造体において使用可能な硬化性接着剤組成物を形成する。
【0019】
一般に、成分(A)であるイソシアネート基含有成分は、単一化合物又は1つ以上の化合物の混合物(又はブレンド)であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、イソシアネート成分は、成分(A)であるイソシアネートプレポリマーを含む。好ましい実施形態において、成分(A)であるイソシアネートプレポリマーは、(Ai)ポリイソシアネートと(Aii)イソシアネート反応性成分との反応生成物である。
【0020】
本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート基を含む任意の化合物である。例えば、ポリイソシアネートは、ダイマー、トリマーなどを含むことができる。さらに、本開示による使用に適したポリイソシアネートは、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及びこれらのうちの2つ以上の組み合わせからなる群から選択され得る。「芳香族ポリイソシアネート」は、1つ以上の芳香族環を含有するポリイソシアネートである。「脂肪族ポリイソシアネート」は、芳香族環を含まない。「脂環式ポリイソシアネート」は、化学鎖が環状構造を有する脂肪族ポリイソシアネートのサブセットである。
【0021】
適切な芳香族ポリイソシアネートとしては、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート(「2,4-TDI」)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「2,4’-MDI」)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(「4,4’-MDI」)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(「TODI」)、ポリカルボジイミド変性4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
適切な脂肪族ポリイソシアネートは、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)及び1,4-ジイソシアナトブタンなど、直鎖状又は分岐状アルキレン残基中に3~16個の炭素原子、又は4~12個の炭素原子を有する。好適な脂環式ポリイソシアネートは、シクロアルキレン残基中に4~18個の炭素原子、又は6~15個の炭素原子を有する。脂環式ジイソシアネートは、イソホロンジイソシアネート(「IPDI」)、1,3/1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,3-/1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、及びジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(「H12MDI」)などの、環式結合したNCO基及び脂肪族結合したNCO基の両方を指す。
【0023】
好適な脂肪族及び脂環式ポリイソシアネートには、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチルジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(「TIN」)などのノナントリイソシアネート、ウンデカンジ-及びトリイソシアネート並びにドデカンジ-及びトリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(「IPDI」)、ヘキサメチレンジイソシアネート(「HDI」)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(「H12MDI」)、2-メチルペンタンジイソシアネート(「MPDI」)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(「TMDI」)、ノルボルナンジイソシアネート(「NBDI」)、キシリレンジイソシアネート(「XDI」)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、並びにそれらのダイマー、トリマー、及びそれらの2つ以上の混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
本開示による使用に好適な追加のポリイソシアネートとしては、4-メチルシクロヘキサン-1,3-ジイソシアネート、2-ブチル-2-エチルペンタメチレンジイソシアネート、3(4)-イソシアナトメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート、2-イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、2,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、1,4-ジイソシアネート-4-メチルペンタン、及びこれらの2つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
いくつかの実施形態において、上記のポリイソシアネートは、単官能性イソシアネートと一緒に混合され得る。
【0026】
本開示による使用に適したポリイソシアネートの市販の例には、商品名、ISONATE(商標)125M、ISONATE(商標)143L、及びISONATE(商標)50OPで販売される製品が含まれ、すべてThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0027】
いくつかの実施形態において、ポリイソシアネートと反応してイソシアネートプレポリマーを形成するイソシアネート反応性成分(Aii)は、(Aiia)2より大きい官能価を有する第1のポリエーテルポリオールを含む。いくつかの実施形態において、2より大きい官能価を有するポリオールは、例えば、2より大きいヒドロキシル官能価を有することができる。本明細書で使用される「ヒドロキシル官能価」という用語は、分子上のイソシアネート反応性部位の数を指す。ポリオールの場合、平均ヒドロキシル官能価は一般に、OHの総モルをポリオールの総モルで割ったものである。いくつかの実施形態において、2より大きい官能価を有するポリオールは、少なくとも1種のポリエーテルポリオールである。本開示による使用に適した2より大きい官能価を有するポリオールの市販の例には、商品名、VORANOL(商標)CP-1055、及びVORANOL(商標)232-034Nで販売される製品が含まれ、それぞれThe Dow Chemical Companyから入手可能である。
【0028】
いくつかの実施形態において、ポリイソシアネートと反応してイソシアネートプレポリマーを形成するイソシアネート反応性成分(Aii)は、(Aiib)2より大きい官能価を有する第2の芳香族ポリエステルポリオールを含む。いくつかの実施形態において、2より大きい官能価を有する芳香族ポリエステルポリオールは、例えば、2より大きいヒドロキシル官能価を有することができる。いくつかの実施形態において、2より大きい官能価を有する芳香族ポリエステルポリオールは、イソフタレートから誘導され、300グラム/モル(g/mol)~600g/molの当量を有する。本明細書で使用する場合、化合物の「当量」は、反応性部位当たりの化合物の分子量(すなわち、ポリオールのヒドロキシル官能価で除した分子量)を指す。いくつかの実施形態において、2より大きい官能価を有する芳香族ポリエステルポリオールは、ジエチレングリコール(「DEG」)、トリメチロールプロパン、フタレートアジペート系材料である。
【0029】
いくつかの実施形態において、ポリイソシアネートと反応してイソシアネートプレポリマーを形成するイソシアネート反応性成分(Aii)は、(Aiic)第3の疎水性ポリオールを含む。いくつかの実施形態において、疎水性ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、及びこれらの混合物からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、イソシアネート反応性成分の疎水性ポリオールは、ジオール及びジカルボン酸から作製されるポリエステルポリオールである。本開示による使用に好適なジオールの例としては、ネオペンチルグリコール、2-メチルプロピレンジオール、ヘキサンジオール、及び主鎖に6個の炭素原子~16個の炭素原子を有する他のアルキレンジオールが挙げられる。いくつかの実施形態において、イソシアネート反応性成分の疎水性ポリオールは、300g/mol~600g/molの当量を有する。いくつかの実施形態において、疎水性ポリオールは3の官能価を有する。いくつかの実施形態において、疎水性ポリオールは、ヘキサンジオールアジペート系材料である。いくつかの実施形態において、本発明における使用に適したジカルボン酸の例としては、アドピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、18個未満の炭素原子を有するジカルボン酸、又はこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、疎水性ポリオールは、例えば、ポリブチレンオキシドである。
【0030】
いくつかの実施形態において、それぞれイソシアネート反応性成分(Aii)中の(Aiia)2より大きい官能価を有するポリエーテルポリオール、(Aiib)2より大きい官能価を有する芳香族ポリエステルポリオール、及び(Aiic)疎水性ポリオールは、同じポリエステルポリオールである。すなわち、いくつかの実施形態において、単一種のポリエステルポリオールは芳香族であり、2より大きい官能価を有し、疎水性である。芳香族ポリエステルポリオールは、イソフタレート無水物、オルトフタレート無水物、テトラフタレート無水物、及びこれらの2つ以上の混合物から誘導することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、イソシアネートプレポリマーのイソシアネート反応性成分(Aii)の平均ヒドロキシル価は、例えば、一実施形態において、プレポリマー1グラム当たり50ミリグラムの水酸化カリウム(mg KOH/g)~150mg KOH/g、又は、別の実施形態において、85mg KOH/g~140mg KOH/g、なお別の実施形態において、90mg KOH/g~120mg KOH/gであり得る。いくつかの実施形態において、イソシアネート反応性成分の各ヒドロキシル官能基の平均モル質量は、例えば、一実施形態において510g/mol~700g/mol、又は別の実施形態において560g/mol~660g/mol、又はなお別の実施形態において590g/mol~620g/molである。いくつかの実施形態において、イソシアネート反応性成分の平均官能価は、例えば、一実施形態において2~3、又は別の実施形態において2.1~2.9、又はなお別の実施形態において2.2~2.8であり得る。
【0032】
ポリイソシアネート基を有する化合物、例えばイソシアネート成分のイソシアネートプレポリマーは、パラメータ「%NCO」によって特徴付けることができ、それは化合物の重量に基づいたポリイソシアネート基の重量基準の量である。パラメータ%NCOは、ASTM D2572-97の方法によって測定される。いくつかの実施形態において、イソシアネートプレポリマーは、少なくとも10重量%の%NCO含有量を有する。いくつかの実施形態において、イソシアネートプレポリマーは、18%を超えない%NCO含有量を有する。いくつかの実施形態において、イソシアネートプレポリマーは、10%~18%の%NCO含有量を有する。いくつかの実施形態において、イソシアネートプレポリマーは、11%~16%の%NCO含有量を有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、イソシアネートプレポリマーは、ASTM D2196の方法によって測定して、25℃で8,000mPa.s未満の粘度を有し、いくつかの実施形態において、イソシアネートプレポリマーは、25℃で5,000mPa.s未満の粘度を有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、イソシアネートプレポリマー中に存在するポリエステルポリオール(すなわち、2より大きい官能価を有するポリオール、2の官能価を有する芳香族ポリエステルポリオール、及び/又は疎水性ポリオールのいずれか)は、イソシアネートプレポリマーの重量に基づいて、少なくとも10重量%のイソシアネートプレポリマーを含む。
【0035】
無溶剤接着剤組成物は、(Bi)2より大きい官能価を有するポリエーテルポリオール、(Bii)エステル交換からの芳香族疎水性ポリエステルポリオール、及び(Biii)リン酸エステルポリオールを含むポリオール成分(B)をさらに含む。いくつかの実施形態において、ポリオール成分は、例えば、一実施形態において2~8、又は別の実施形態において2.1~7の平均官能価を有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、イソシアネート成分(A)と反応して硬化性接着剤組成物を形成するポリオール成分(B)は、(Bi)2より大きい平均官能価を有するポリエーテルポリオールを含む。いくつかの実施形態において、2より大きい官能価を有するポリエーテルポリオールは、例えば、2より大きいヒドロキシル官能価を有することができる。いくつかの実施形態において、2より大きい官能価を有するポリエーテルポリオールは、100g/mol~1,600g/molの当量を有する。いくつかの実施形態において、2より大きい官能価を有するポリエーテルポリオールは、200g/mol~400g/molの当量を有する。本開示による使用に適した2より大きい官能価を有するポリオールの市販の例には、The Dow Chemical Companyから入手可能である、商品名、VORANOL(商標)CP-450、VORANOL(商標)CP-775、VORANOL(商標)CP-1055で販売される製品が含まれる。いくつかの実施形態において、2より大きい平均官能価を有するポリエーテルポリオールは、三官能性及び二官能性ポリプロピレンオキシドの混合物、例えば、VORANOL(商標)CP-1055、VORANOL(商標)CP-450、VORANOL(商標)CP-775又はこれらの混合物とブレンドされたVORANOL(商標)220-110である。
【0037】
いくつかの実施形態において、イソシアネート成分と反応して硬化性接着剤組成物を形成するポリオール成分は、(Bii)天然油とエステル交換された芳香族ポリエステルポリオールを含む。いくつかの実施形態において、天然油はヒマシ油である。いくつかの実施形態において、エステル交換芳香族ポリエステルポリオールは、100~600g/molの当量を有する。いくつかの実施形態において、ポリオール成分のエステル交換芳香族ポリエステルポリオールは疎水性であり、
ASTM D2196の方法によって測定して、25℃で3,000mPa.s未満の粘度を示す。本開示による使用に適したエステル交換芳香族ポリエステルポリオールの市販の例には、The Dow Chemical Companyから入手可能なMOR-FREE(商標)C-156及びStepan Companyから入手可能なSTEPANOL(商標)BC-180の商品名で販売される製品が含まれる。
【0038】
いくつかの実施形態において、イソシアネート成分と反応して硬化性接着剤組成物を形成するポリオール成分は、(Biii)三官能性プロピレングリコール、ポリリン酸、及びポリイソシアネートから作製されるリン酸エステルポリオールを含む。本開示による使用に適した三官能性プロピレングリコールの市販の例には、商品名、VORANOL(商標)CP-450、VORANOL(商標)CP-260、VORANOL(商標)CP-755、及びVORANOL(商標)CP-1055で販売される製品が含まれ、それぞれDow Chemical Companyから入手可能である。いくつかの実施形態において、リン酸エステルポリオールは、リン酸エステルポリオールの重量を基準として4重量%未満のリン酸含有量、又はリン酸エステルポリオールの重量を基準として0重量%~3重量%のリン酸含有量、又はリン酸エステルポリオールの重量を基準として1.5重量%~2.5重量%のリン酸含有量を有する。いくつかの実施形態において、リン酸エステルポリオールは、ASTM D2196の方法で測定して、25℃で40,000mPa.s未満、又は25℃で35,000mPa.s未満の粘度を有する。いくつかの実施形態では、リン酸エステルポリオールは、330g/mol未満のヒドロキシル当量を有する。いくつかの実施形態において、リン酸エステルポリオールは、リン酸エステルの重量を基準として、2,000g/mol未満の当量を有する三官能性ポリエーテルポリオールを0重量%~10重量%有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、ポリオール成分中に存在するポリエステルポリオール(すなわち、天然油とエステル交換された芳香族ポリエステルポリオール及び/又は疎水性ポリエステルポリオール)は、ポリオール成分の重量を基準として、ポリオール成分の少なくとも15重量%を構成する。
【0040】
本発明は二成分系を対象とするものの、本発明の無溶剤積層用接着剤組成物は、本無溶剤積層用接着剤組成物の優れた利点/特性を維持しながら、特定機能の性能を利用可能にするために、多種多様な任意選択的な添加剤である成分(C)と共に配合することができる。接着剤の任意成分をイソシアネート成分(A)に添加してもよく、又は接着剤の任意成分をポリオール成分(B)に添加してもよく、又は、接着剤の任意成分を、イソシアネート成分(A)及びポリオール成分(B)の両方に添加してもよい。例えば、いくつかの実施形態において、1種以上の任意の添加剤がイソシアネート成分及び/又はポリオール成分中に含まれてもよい。そのような任意の添加剤の例としては、触媒、粘着付与剤、可塑剤、レオロジー調整剤、接着促進剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、界面活性剤、湿潤剤、消泡剤、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
広い一実施形態において、本発明の二成分系無溶剤積層用接着剤組成物の製造方法は、(A)少なくとも1種のイソシアネート成分と、(B)少なくとも1種のポリオール成分とを混合、混和又はブレンドすることを含む。
【0042】
好ましい実施形態において、成分(A)は、(Ai)少なくとも1種のポリイソシアネートと、(Aii)少なくとも1種のイソシアネート反応性成分とを含み、イソシアネート反応性成分(Aii)は、(Aiia)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオール、(Aiib)2より大きい官能価を有する少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び(Aiic)少なくとも1種の疎水性ポリエステルポリオールを含み、ポリオール成分(B)は、(Bi)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオール、(Bii)天然油とエステル交換された芳香族ポリエステルポリオールからの少なくとも1種の疎水性ポリエステルポリオール、及び(Biii)少なくとも1種のリン酸エステルポリオールを含む。
【0043】
1つの一般的な実施形態において、二成分型無溶剤接着剤組成物を形成するための方法は、イソシアネート成分(A)とポリオール成分(B)との反応混合物を混合することを含む。イソシアネート成分(A)は、イソシアネートプレポリマー、すなわち、ポリイソシアネートとイソシアネート反応性成分とを反応させることによって調製されるプレポリマー反応生成物を含む。いくつかの実施形態において、イソシアネート反応性成分は、2より大きい官能価を有するポリオール、2より大きい官能価を有する芳香族ポリエステルポリオール、及び疎水性ポリオールを含む。接着剤組成物は、2より大きい官能価を有するポリエーテルポリオール、天然油とエステル交換された芳香族ポリエステルポリオール、及びリン酸エステルポリオールを含むポリオール成分(B)を含む。
【0044】
1つ以上の追加の任意選択的な成分が、所望に応じて接着剤配合物に添加されてもよい。例えば、成分(A)及び(B)は、上述の所望の濃度で、一実施形態において5℃~50℃、及び別の実施形態において20℃~45℃の温度で、共に混合することができる。成分の混合順は重要ではなく、2つ以上の成分を一緒に混合した後、残存成分を加えることができる。接着剤配合成分は、任意の公知の混合プロセス及び装置によって共に混合され得る。概して、成分(A)と成分(B)とを互いに別々に調製し、成分を当技術分野で公知のように別個の好適な貯蔵容器で各々保存する。接着剤の他の成分及び任意の添加剤は、第1の成分(A)又は第2の成分(B)の一部分として存在し得る。本接着剤組成物を塗布する前は、2つの成分を別々に保存し、塗布中又は塗布直前に初めて互いに混合する。
【0045】
別の一般的な実施形態において、本発明の二成分型無溶剤接着剤組成物を使用して積層体を形成する方法は、(1)接着剤組成物の層を第1の基材の表面に塗布する工程と、(2)接着剤の層を第2の基材の表面と接触させて複合積層体を形成する工程と、(3)接着剤組成物を硬化させて2つの基材を互いに結合させる工程とを含む。
【0046】
本発明の2K無溶剤積層用接着剤組成物は、有利には、無溶剤積層用接着剤組成物を使用して製造される積層体の特性の向上を提供する、又は様々な物品に有用な箔系若しくは金属化フィルム系積層構造体(例えば、箔/ナイロン)のPAA崩壊、結合強度、耐熱性、製品耐性などの積層体の特性を維持する。例えば、本発明の2K接着剤組成物は様々な用途に使用することができる。本発明の接着剤は、包装用途において特に有用であり得る。
【0047】
好ましい一実施形態において、本発明の積層体を形成する方法は、
(I)無溶剤接着剤組成物を形成するように、反応物を混合する工程であって、前記反応物が、(A)少なくとも1種のイソシアネート成分であって、(Ai)少なくとも1種のポリイソシアネートと、(Aii)少なくとも1種のイソシアネート反応性成分であり、(Aiia)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオール、(Aiib)2より大きい官能価を有する少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び(Aiic)2の官能価の少なくとも1種の疎水性ポリオールを含む、イソシアネート反応性成分との反応生成物であるイソシアネートプレポリマーを含む、イソシアネート成分と、(B)少なくとも1種のポリオール成分であって、(Bi)2より大きい官能価を有する少なくとも1種のポリエーテルポリオール、(Bii)天然油とエステル交換された少なくとも1種の芳香族ポリエステルポリオール、及び(Biii)少なくとも1種のリン酸エステルポリオールを含む、ポリオール成分とを含む、工程と、
(II)工程(I)の無溶剤接着剤組成物の層を第1の基材の表面に塗布する工程と、
(III)工程(II)からの第1の基材の表面上の無溶剤接着剤組成物の層を第2の基材の表面と接触させて積層体を形成する工程と、
(IV)接着剤組成物を硬化させる工程と、を含む。
【0048】
本発明のプロセスによって製造される本発明の二成分型無溶剤積層用接着剤組成物は、従来の接着剤配合物と比較して、いくつかの有利な特性及び利点を有する。例えば、無溶剤積層用接着剤によって示される特性のいくつかには、金属化層と箔層構造との間の良好な接着(結合強度)、耐薬品性などの良好な製品耐性、良好なインク汚れ耐性、デジタルインク印刷構造のための良好な接着、より速いPAA崩壊(例えば、本発明の接着剤の2日間の硬化後、現在の規制要件を満たす)、及び良好な耐熱性、食品包装用の包装物品を形成する際に使用するための積層フィルムを製造するためのプロセスにおいて有益である特性を挙げることができる。
【0049】
例えば、無溶剤積層用接着剤によって示される結合強度は、完全硬化後の箔積層構造に対して、一実施形態において、一般に、25.4ミリメートル当たり1,000グラム(g/25.4mm)以上(≧)、別の実施形態において、≧1,100g/25.4mmであり、なお別の実施形態において、≧1,200g/25.4mmであり得る。いくつかの実施形態において、無溶剤積層用接着剤によって示される結合強度は、1,000g/25.4mm~10,000g/25.4mmであり得る。
【0050】
無溶剤積層用接着剤によって示される製品耐性、例えば耐薬品性は、そのような製品又は化学物質に曝露された後の結合強度に関して、一般に、例えば60℃で100時間のモートンソース(Morton sauce)エージング後に、一実施形態において≧100g/25.4mm、別の実施形態において≧120g/25.4mm、なお別の実施形態において≧150g/25.4mm結合強度であり得る。いくつかの実施形態において、無溶剤積層用接着剤によって示される製品耐性を確立する結合強度は、100g/25.4mm~10,000g/25.4mmであり得る。好ましい実施形態において、無溶剤積層用接着剤は、例えば、様々な物品に有用な箔系又は金属化フィルム系積層構造体(例えば、箔/ナイロン)に有用であるのに十分な製品耐性を有する。
【0051】
有利なことに、印刷された構造体のための本発明の無溶剤積層用接着剤は、インク汚れを示さない。
【0052】
さらに、本発明の無溶剤積層用接着剤によって、速いPAA崩壊が示される。例えば、接着剤のPAA崩壊は、2日間の硬化後、一実施形態において2ppb未満、別の実施形態において0.5ppb未満、なお別の実施形態において0.2ppb未満であり得る。いくつかの実施形態において、2日間の硬化後の接着剤のPAA崩壊は、0.0001ppb以上2ppb未満であり得る。加えて、接着剤のPAA崩壊は、一実施形態において2日以下、別の実施形態において1日以下、なお別の実施形態において半日以下で0.0001ppb以上2ppb未満であり得る。
【0053】
無溶剤積層用接着剤によって示される別の有利な特性は、デジタルインク印刷構造接着の結合強度の増加又は維持であり、これは、一実施形態において≧300g/25.4mm、別の実施形態において≧400g/25.4mm、なお別の実施形態において≧500g/25.4mmであり得る。いくつかの実施形態において、無溶剤積層用接着剤によって示されるデジタルインク印刷構造体多の結合強度は、300g/25.4mm~10,000g/25.4mmであり得る。
【0054】
別の実施形態において、本発明の無溶剤積層用接着剤の耐熱特性は、増加又は維持することができ、物品又は製品を所定の温度で所定の時間ヒートシールプロセスに供した後における物品又は製品の結合強度によって測定することができる。本発明の接着剤の耐熱性は、一般に、印刷されていない構造体に対して一実施形態において≧5,000g/25.4mm、別の実施形態において≧5,500g/25.2mm、なお別の実施形態において≧6,000g/25.4mmであり得る。積層構造体のヒートシール試験の破壊モードは、積層構造体の全フィルム引裂(WFT)として示される。
【0055】
粘度もまた、本発明の接着剤の別の有益な特性である。例えば、接着剤の混合粘度は、一実施形態において25℃で500mPa.s~10,000mPa.s、別の実施形態において25℃で600mPa.s~8,000mPa.s、及びなお別の実施形態において25℃で800mPa.s~5,000mPa.sであり得る。
【0056】
本発明の無溶剤積層用接着剤を使用して積層体を形成する方法も開示される。好ましい実施形態において、上述の混合されたイソシアネート成分及びポリオール成分を含む二成分型無溶剤積層用接着剤組成物は、25℃で液体状態である。接着剤組成物が25℃で固体であっても、接着剤組成物を必要に応じて25℃超に加熱して、接着剤組成物を液体状態にすることができる。液体状態では、接着剤組成物は、基材層の表面上により容易に塗布(表面コーティング)することができる。いくつかの実施形態において、混合接着剤組成物の層は、ポリマーフィルムなどの第1の基材の表面に塗布される。「フィルム」は、1つの寸法が0.5ミリメートル(mm)以下であり、他の2つの寸法が両方とも1センチメートル(cm)以上である任意の構造体である。「ポリマーフィルム」は、単一のポリマー又は2種以上のポリマーの混合物から作製されるフィルムである。
【0057】
接着剤組成物を第1のフィルム基材に塗布する前に、接着剤のイソシアネート成分及びポリオール成分を一緒に混合して、硬化性接着剤反応混合物を形成する。いくつかの実施形態において、硬化性接着剤混合物中のイソシアネート成分対ポリオール成分の重量比は、1:1.5~2:1であり、NCO指数は、1.6~1である。いくつかの実施形態において、フィルム基材に塗布した接着剤のコーティング重量は、一実施形態において1.4g/m~3.5g/m、又は別の実施形態において、1.6g/m~3.0g/mである。いくつかの実施形態において、第1の基材は、アルミニウム箔若しくは金属化ポリマーフィルム又はPETフィルム又はOPPフィルム又はナイロンフィルムであり得る。いくつかの実施形態において、混合接着剤組成物は、1つの好ましい実施形態において、室温(すなわち、約25℃)から50℃以上までの任意の温度で第1の基材に塗布される。
【0058】
いくつかの実施形態において、第2の基材又はフィルムの表面を、接着剤の硬化前に第1の基材上の硬化性接着剤混合物の層と接触させて、未硬化複合積層体を形成する。いくつかの実施形態では、未硬化積層体は、例えば加熱されていてもされていなくてもよいニップローラに通すことによって、加圧することができる。いくつかの実施形態では、未硬化積層体を加熱して、硬化反応を促進することができる。しかしながら、未硬化積層体は、室温で2日以内に完全硬化に達することができる。
【0059】
本開示による使用のための好適な基材(例えば、第1の基材及び第2の基材)としては、紙、織布及び不織布、金属箔、ポリマー、並びに金属被覆ポリマーなどのフィルムが挙げられるが、これらに限定されない。フィルムは、任意選択的に、その上に画像がインクで印刷される表面を有し、インクは接着剤組成物と接触していてもよい。ポリマーフィルムは、接着剤組成物の塗布及びフィルムの積層の前にコロナ処理される。
【0060】
一般に、本発明の無溶剤積層用接着剤組成物を使用した2つの基材の結合は、大量の積層製品の製造のために工業規模で実施することができる。有利には、2つの成分は、成分が使用される準備ができるまで、ドラム又はホボック(hob bocks)などの別々の容器に充填され、保存される。上述のように、接着剤組成物の塗布前に、2つの成分は別々に保存され、接着剤の塗布中又は塗布直前に初めて、2つの成分が互いに混合される。塗布の間、成分は、供給ポンプを用いて保存容器から押し出され、工業生産において二成分型接着剤の混合に一般的に使用されるような混合装置へと供給ラインを介して計量される。例えば、2つの成分の混合は、スタティックミキサーを介して、又はダイナミックミキサーによって行うことができる。2つの成分を混合するとき、2つの成分が可能な限り均質に混合されることを確実にするように注意する。2つの成分が十分に混合されなければ、有利な混合比からの局所的な偏りが存在することになり、これは、接着剤を使用して作製される、結果として得られる製品の機械的特性の悪化に関して影響を有し得る。混合品質を視覚的にチェックするために、2つの成分が2つの異なる色を有する場合、有利であり得る。良好な混合は、混合された接着剤が目に見える縞又はシミのない均質な混合色を有する場合に存在すると見なされる。接着剤の所望の目標性能を達成するために、2つの成分の混合比を制御及び維持することが好ましい。
【0061】
本発明の2Kポリウレタン接着剤は、例えば、積層フィルムツーフィルム又はフィルムツー箔複合体を含む全てのクラスの積層体に使用することができ、接着剤は、3つの性能レベル、すなわち、「汎用」、「中性能」、及び「高性能」積層体を必要とする包装用途に使用することができる。典型的には、最終包装製品及びその充填プロセスが、様々な用途で使用される接着材料のタイプを決定する。例えば、汎用積層体は、フィルムツーフィルム又はフィルムツー紙複合体を含み、典型的には、室温で保存される乾燥食品を包装するために使用される。中性能積層体は、典型的には、脂肪又は酸性食品の包装、低温殺菌温度までの温度処理、及び箔積層体において使用される。また、高性能積層体は、典型的には、ボイルインバッグ用途、熱間充填、140℃までなどの高温での滅菌プロセス、医薬品などに使用される。
【0062】
いくつかの実施形態において、本発明の2Kポリウレタン接着剤は、例えば、高性能食品包装用途、及び液体又は固体洗剤、農化学薬品、肥料などの非食品材料の工業包装の用途に使用することができる。
【実施例
【0063】
以下の本発明の実施例(発明実施例)及び比較実施例(比較例)(まとめて「実施例」)は、本発明をさらに詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。他に指示がない限り、すべての部及びパーセンテージは重量による。
【0064】
実施例で使用した様々な原材料を表Iに示す。
【表1】

表Iの注釈:「Funct.」=「官能価」
OH価(「OH#」)は、1グラムのポリオール又は他のヒドロキシル化合物中のヒドロキシル含有量に相当する水酸化カリウムのミリグラム数を表す。
「NT」:試験せず
【0065】
接着剤成分の調製
イソシアネートプレポリマー1(「IP1」)の合成
表IIは、IP1を製造するための関連原材料を記載する。IP1は、以下のように合成される。
1,061.9グラム(g)のISONATE(商標)125Mを、窒素パージ下で3,000ミリリットル(mL)のガラス反応器に添加する。次いで、反応器の温度を、45℃に設定する。355.3gのVORANOL(商標)232-034N、383.2gのDEGアジペート系材料、及び7.8gのMOR-FREE(商標)117を反応器に添加する。次に、60℃に予熱した191.8gのヘキサンジオールアジペート系材料を反応器に添加し、それによって反応器温度をゆっくり78℃にし、温度を2時間(hr)にわたって78℃~79℃の間で安定させる。得られたIP1は、ASTM D2572-97に従って測定して14.4パーセント(%)の%NCO、及びASTM D2196に従って測定して25℃で3,775 mPa.sの粘度を有する。
【0066】
イソシアネートプレポリマー2(「IP2」)の合成
表IIはまた、IP2を製造するための関連原材料も記載する。IP2は、以下のように合成される。
1,002gのISONATE(商標)125Mを窒素パージ下で3,000mLガラス反応器に添加する。次いで、反応器温度を45℃に設定する。562gのVORANOL(商標)232-034N及び240gのDEGアジペート系材料を反応器に添加する。次に、60℃に予熱した196gのヘキサンジオールアジペート系材料を反応器に添加し、それによって反応器温度をゆっくりと78℃にし、温度を78℃~79℃で2時間安定させる。得られたIP2は、ASTM D2572-97に従って測定して13.5%の%NCO、及びASTM D2196に従って測定して25℃で2,885mPa.sの粘度を有する。
【表2】
【0067】
PUプレポリマー1(「IP3」)の合成
表IIIは、IP3を製造するための関連原材料を記載する。IP3は、表IIIに記載される特定の量で材料を混合することによって調製される。
【表3】
【0068】
リン酸エステルポリオール1(「PEP1」)の合成
表IVは、PEP1を製造するための関連原材料を記載する。PEP1は、以下のように合成される。
窒素パージ後、110.2gのVORANOL(商標)CP-450と3gのポリリン酸とを窒素パージ下、室温で反応器に添加する。次いで、反応器温度を100℃に設定し、反応器内容物を1時間撹拌する。反応器温度を50℃に下げ、次いで36.8gのISONATE(商標)125Mを反応器に導入する。反応器の温度は、発熱反応により約94℃に上昇する。反応温度を76℃から79℃に30分間制御し、次いで150gのMOR-FREE(商標)C-156を反応器に導入し、反応器温度を78℃で90分維持する。得られたPEP1は、246g/モルOHの当量、及びASTM D2196の方法に従って測定して、50℃で3,637mPa.sの粘度を有する。
【0069】
リン酸エステルポリオール2(「PE2」)の合成
表IVはまた、PEP2を製造するための関連原材料も記載する。PEP2は、以下のように合成される。
窒素パージ後、55.1gのVORANOL(商標)CP-450及び1.5gのポリリン酸を窒素パージ下、室温で反応器に加える。次いで、反応器温度を100℃に設定し、反応器内容物を1時間撹拌する。反応器温度を50℃に下げ、次いで18.4gのISONATE(商標)を反応器に導入する。反応器の温度は、発熱反応により80℃に上昇する。反応温度を78℃で2時間制御する。得られたPEP2は、
ASTM D4274に従って186g/モルOHの当量、及びASTM D2196に従って測定して25℃で25,300mPa.sの粘度を有する。
【0070】
リン酸エステルポリオール3(「PEP3」)の合成
表IVはまた、PEP3を製造するための関連原材料も記載する。PEP3は、以下のように合成される。
窒素をパージした後、856.9gのVoranol CP-450及び19.4gのポリリン酸を窒素下、室温で反応器に充填し、次いで反応器を1時間撹拌しながら100℃に加熱する。反応器を50℃に冷却した後、123.7gのIsonate 125M MDIを撹拌下で反応器に投入し、温度を発熱反応により80℃まで上昇させた。次いで、反応温度を78℃に2時間制御する。得られた生成物を反応器から排出した。生成物の当量は270mgKOH/gであり、生成物の粘度は室温で18,580mPa・sであった。生成物のブルックフィールド粘度をASTM D2196に従って25℃で測定し、生成物のOH#をASTM D4274に従って測定した。
【表4】
【0071】
中間体成分(「IC」)合成の準備
中間共反応物配合物として使用される中間体成分は、以下のように調製される。ヒマシ油566g及び芳香族ポリエステルポリオール(例えば、DEGアジペート-イソフタレート系材料)434gを反応器に投入し、材料が室温で均一に混合されるまで、反応混合物を220℃に2時間加熱する。次いで、得られた反応器内容物を60℃に冷却する。得られた中間共反応物配合物を反応器から取り出し、配合物を使用する。上記のように調製された中間共反応物配合物(本明細書では「IC」)として使用される得られた中間体成分は、
ASTM D4274に従って測定して、150mgKOH/gのOH#、及びASTM D2196に従って25℃で測定して875mPa.sの粘度を有する。
【0072】
共反応物1~6(「CR1~CR6」)の調製
表Vは、CR1~CR6の各々を製造するために一緒にブレンドされた関連材料を記載する。CR1~CR6は、特定のポリオールを特定のリン酸エステルポリオールと高速ミキサー中で、例えば2,000回転毎分(rpm)で1分間ブレンドすることによって配合される。
【表5】

*ポリリン酸重量パーセントに基づく。
【0073】
共反応物7(「CR7」)の調製
表VIは、本明細書において「CR7」と称される共反応物成分を製造するために一緒にブレンドされた関連材料を記載する。
【表6】

接着剤組成物の調製
実施例1~7(「発明実施例~発明実施例7」)
表VIIは、発明実施例1~発明実施例7を記載しており、これらは、積層体フィルムと共に使用するための本発明の二成分型無溶剤ポリウレタン系積層用接着剤組成物の各々を製造するために一緒にブレンドされた関連成分を含む。各発明実施例は、特定の重量比で高速ミキサーで、例えば2,000rpmで1分間ブレンドしたイソシアネートプレポリマー(例えば、IP1、IP2、IP3)と共反応物(例えば、CR1~CR6)とのブレンドを含む。上記のように、例示的共反応物は、1種以上のポリオール及びリン酸エステルのブレンドを含む。
【0074】
一緒にブレンドされた成分IP3及びCR7を含む実施例8(「発明実施例8」)は、デジタル印刷された積層フィルムと共に使用するための積層加工中に、フルスケールプラントSchiaviラミネータ(Schiaviによって製造された)において行われた。
【表7】
【0075】
比較実施例A~E(「比較例A~比較例E」)
表VIIIは、積層体フィルムと共に使用するための比較用二成分型無溶剤ポリウレタン系積層用接着剤組成物の各々を製造するために一緒にブレンドされた関連成分を含む比較例A~比較例Eを記載している。比較例A~比較例Eの各々は、高速ミキサー中で、例えば、2,000rpmで1分間、特定の重量比で一緒にブレンドされたイソシアネートプレポリマー及びポリオール成分を含むイソシアネート成分のブレンドを含む。各実施例の混合比は表VIIIにさらに記載されている。各イソシアネート成分及び各ポリオール成分は、The Dow Chemical Companyから市販されている。
【0076】
一緒にブレンドされたMOR-FREE(商標)698及びMOR-FREE(商標)CR60、並びに一緒にブレンドされたCOIM 5448及びCOIM 5558の成分をそれぞれ含む比較実施例F及びG(「比較例F」及び「比較例G」)を、デジタル印刷された積層体フィルムと共に使用するために製造するための積層加工の間に、フルスケールプラントSchiaviラミネータにおいて実施した。
【表8】
【0077】
積層体の調製
発明実施例及び比較例は、手動積層によって調製されたPrelam AL箔//GF-19ポリエチレンシーラントフィルム積層構造体において評価する。Prelam AL箔フィルムは、9ミクロン(μm)の厚さを有する軟質積層グレードAMCOR(商標)アルミニウム箔に積層された12μmの厚さを有するポリエチレンテレフタレートフィルムである。GF-19フィルムは、約38μmの厚さを有する、スリップ添加剤を含有する直鎖状低密度ポリエチレンシーラントフィルムである。実施例の接着剤組成物は全て、2.6g/m~2.8g/mの範囲のコーティング重量で積層構造体の表面上に塗布する。
【0078】
結合強度試験
90度T型剥離試験を、25.4ミリメートル(mm)幅のストリップに切断された積層体試料に対して行い、254ミリメートル毎分(mm/分)の速度で、50Nのロードセルを備えたTHWING ALBERT(商標)INSTRON剥離試験機で試験した。積層体を形成する2つのフィルムが分離する、すなわち剥離した場合は、積層体の引っ張り中の力の平均を記録する。フィルムのうちの1つが伸張又は破断した場合、最大の力又は破断時の力を記録する。記録する破断時の力の値は、3つの別々の積層体試料について行われた試験の平均である。T型剥離試験は、例えば、積層体が作製されてから6時間後、1日後、7日後、及び14日後のような時間間隔で行われる。
【0079】
耐熱性試験
耐熱性試験は、25.4mm幅のストリップに切断されたポリエチレン側でヒートシールされた試料に対して行い、試料は、204℃で1秒間、SENCORP(商標)12ASL/1ヒートシーラーで試験する。次に、結合強度試験において上述したのと同じ条件下で、25.4mm幅のストリップに切断されたポリエチレン側のヒートシールされた試料に対して結合強度試験を行う。記録された破断時の力の値は、三連の試料に対して行った試験の平均である。
【0080】
PAAレベル試験
食品模擬物質中のPAAのレベルは、PAAのジアゾ化によって分析し、その結果、PAAの濃度を比色的に決定することができる。試験溶液中に存在する芳香族アミンを塩化物溶液中でジアゾ化し、続いてN-(1-ナフチル)-エチレンジアミンジヒドロクロリドとカップリングさせて、紫色の溶液を得る。色の濃縮は、固定相抽出カラムを用いて行われる。PAAの量は、550ナノメートル(nm)の波長での光度測定により決定する。
【0081】
PAA試験のための物品調製
上記のように調製された積層体は、パウチなどの物品を製造するために使用される。パウチは、上述の積層体を用いて、積層体の中央部分から約30.5cm×16.5cm幅のストリップを切断することによって形成する。各ストリップを14cm×16.3cmの表面積を形成するように折り畳み、折り畳んだストリップの開いた長手方向の各縁に沿って約1cmの縁をヒートシールして、14cm×14.3cmの内表面積を有するパウチを形成する。縁をヒートシールするために使用する機器は、Brugger HSG-Cヒートシーラーである。積層体のストリップのシール条件は、1.3×10Pa~1.5×10Paの圧力及び130℃~160℃の温度である。
【0082】
実施例の各フィルムには、約14.0cm×14.3cmの内表面積を各々が有する4つのパウチ(2つのブランク及び2つの試験パウチ)を使用する。それぞれの積層体の形成時から2日後に、各パウチを形成する。周囲雰囲気下の室温で積層体を保管した後、パウチを形成する。
【0083】
試験のために、各パウチには、食品の模擬物質として使用する、100mlの3%酢酸水溶液を充填する。パウチを空気循環オーブン中70℃で2時間貯蔵する。パウチを室温に冷却した後、100mLの試験溶液を12.5mLの塩酸溶液(1N)と混合し、2.5mLの亜硝酸ナトリウム溶液(溶液100mL当たり0.5g)をパウチに添加する。次いで、パウチの内容物を10分間反応させる。スルファミン酸アンモニウム(5mL、水溶液100mL当たり2.5g)をパウチに添加し、10分間反応させる。カップリング試薬(5mL、水溶液100g当たり1gのN-(1-ナフチル)-エチレンジアミンジヒドロクロリド)をパウチに添加し、2時間反応させる。添加する度に、得られた混合物をガラス棒で撹拌する。「ブランクパウチ」には、亜硝酸ナトリウムを除いた100mLの試験溶液を上記の誘導体試薬と混合する。
【0084】
試験溶液をODS固相抽出カラム(ODS逆相、C18エンドキャップ)を通して溶出することによって濃縮し、吸光係数を分光光度計(Perkin Elmerから入手可能なSpectrophotometer Lambda)を使用して550nmで測定する。
【0085】
分光光度計のカラムを、最初に10mLのメタノール、続いて10mLの溶出溶媒、次いで10mLの塩酸水溶液(0.1N)を用いて調整する。あらかじめ3mLの塩酸水溶液(0.1N)で2回すすいだガラスビーカーを使用して、各誘導体化試料をカラムに添加する。カラムを真空(約2.5mmHg)吸引に供して、全てのリンスを1分間除去する。次いで、5mLの溶出溶媒をカラムに添加し、10mLの溶出液が回収されるまでこの工程を繰り返す。
【0086】
PAAの濃度を測定するために、反応生成物の吸光係数を、試薬ブランク溶液及び並行して処理される既知濃度の塩酸アニリンを有する一連の標準物質に対して、5cmセルにおいて550nmで測定する。
【0087】
性能結果
表IXは、実施例に記載されるように調製された積層体のそれぞれを試験することによって得られた実施例のそれぞれの様々な性能結果を記載する。
【表9】

表IXに関する注記
25℃及び湿度50%の環境で2日間硬化させた後に測定された第一級芳香族アミン(PAA)。
モートンソースエージング:15.2cm×10.2cmのパウチに100mLの1/1/1モートンソース(トウモロコシ油1重量部、ケチャップ1重量部、
酢1重量部)を充填し、オーブンで60℃で100時間加熱した後、結合強度について試験した。
0.75cm~1cmの面積の試料に45~60の角度で15.2cmの綿棒で50gの標準重量を用いて、以下のようにインク汚れ耐性試験を実施する:1分間の汚染後、最初の5サイクルの擦り付けをし、次に室温で20分間の汚染後、5サイクルの擦り付けをする。評価に関しては、0はインクに損傷なし、1はインクのわずかな除去、2はインクの著しい除去、3はインクの完全な除去である。インクコーティングされた基材は、フレキソ印刷機によりポリウレタン溶剤ベースのインクで印刷されている、Flexaから市販されているものである。
7日間の硬化後、25.4mm幅のストリップを用いて0.276mPaで1秒間204℃、PEを箔/PE構造体のPEにシールし、直ちに手で剥離して剥離面積%又は層間剥離がないことを読み取る。ヒートシール後に結合試験を行い、結合強度及び破壊モードを読み取った。「WFT」は、フィルム構造全体が裂けることを示す。「DL」は層間剥離を示す。
【0088】
表IXに示されるように、発明実施例は、比較例と比較して優れた第一級芳香族アミンの崩壊を示す。特に、各発明実施例は、硬化の2日後に0.2ppb未満の第一級芳香族アミンを示す。加えて、発明実施例は、各間隔で良好な結合強度を示し、特に1日目、7日目及び14日目の試験で、比較例より性能が優れている。モートンエージング試験では、発明実施例は、比較例によって示されたものよりも1桁強い結合を示す。さらに、発明実施例は、インク損傷を示さないか、又はわずかなインク除去を示すが、比較例からは、インクは、試験後に完全に除去される。また、発明実施例は試験後に層間剥離しなかったが、比較例の各々は層間剥離を示した。
【0089】
デジタル印刷構造体用途のための試験試料積層体の性能を、フルスケールプラントSchiaviラミネータにおいて、ラミネータの計量ロールが40℃の温度であり、ラミネータのニップロールが40℃の温度であり、印刷された12μm PET//LEPE 25μm、印刷された12μm PET//PET及び15μm BOPP//25μm PE構造体において250メートル毎分(m/分)の稼働速度でラミネータを稼働して評価した。発明実施例の試験積層体を比較例F:MOR-FREE 698/MOR-FREE(商標)CR60(混合比:100/50)及び比較例G:COIM 5448/5558(混合比:100/90)と比較した。
【表10】

デジタル印刷-ほぼ完全に白色で印刷されている、
デジタル印刷-主な色は赤及び黒である
【表11】

デジタル印刷-ほぼ完全に白色で印刷。
デジタル印刷-主な色は赤及び黒である
【表12】

「Dig.ink」は「デジタルインク」の略である。
【表13】

「Dig.ink」は「デジタルインク」の略である。
【国際調査報告】