IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エヴォックス・セラピューティクス・リミテッドの特許一覧

特表2023-545658増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞
<>
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図1
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図2
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図3
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図4
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図5
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図6
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図7
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図8
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図9
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図10
  • 特表-増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】増強された薬物動態を示す、操作された細胞外小胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/88 20060101AFI20231024BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231024BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20231024BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20231024BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231024BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231024BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20231024BHJP
   A61K 38/17 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
C12N15/88 Z
C12N15/63 Z
C12N15/11 Z
C07K19/00
A61K48/00
A61K9/00
A61K47/42
A61K35/76
A61P3/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P13/12
A61P1/16
A61P9/00
A61P35/00
A61P31/00
A61P37/02
A61P29/00
C12N5/10
A61K38/17
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519528
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-03-28
(86)【国際出願番号】 EP2021076845
(87)【国際公開番号】W WO2022069577
(87)【国際公開日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】2015399.5
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】518259431
【氏名又は名称】エヴォックス・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ダヌ・グプタ
(72)【発明者】
【氏名】サミル・エル・アンダロッシ
(72)【発明者】
【氏名】オスカー・ヴィクランダー
(72)【発明者】
【氏名】ジョエル・ノルディン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA60
4C076AA29
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC11
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC27
4C076CC31
4C076EE41
4C076FF68
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA44
4C084DC01
4C084DC22
4C084NA12
4C084NA13
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA02
4C084ZA36
4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA94
4C084ZB07
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZB31
4C084ZC21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA12
4C087NA13
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA02
4C087ZA36
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA94
4C087ZB07
4C087ZB11
4C087ZB26
4C087ZB31
4C087ZC21
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、種々の重篤な疾患の治療に対する治療モダリティとしての操作された細胞外小胞(EV)に関する。より具体的には、本発明は、その半減期を延長し、その生体内分布を変化させ、遺伝的疾患だけではなく、本質的に全ての療法分野にわたってより広範囲な用途に適した様々な種類の薬物を運ぶことができる新規治療モダリティをもたらす、操作されたEVを製造するための新規アプローチに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチドカーゴを含む送達ベクターであって、前記ポリヌクレオチドカーゴが、目的のタンパク質(POI)を含む融合タンパク質をコードし、細胞外小胞(EV)を産生する細胞によって前記融合タンパク質へと翻訳されるように整列され、前記翻訳が、前記融合タンパク質を含む少なくとも1つのEVの産生をもたらす、送達ベクター。
【請求項2】
前記送達ベクターが、脂質ナノ粒子(LNP)、ウイルス様粒子(VLP)、細胞透過ペプチド(CPP)、ポリマー又は薬学的に許容される担体からなる群から選択されるウイルスベクター又は非ウイルスベクターである、請求項1に記載の送達ベクター。
【請求項3】
前記ポリヌクレオチドカーゴが、メッセンジャーRNA(mRNA)、環状mRNA、Doggybone(登録商標)DNA(dbDNA(登録商標))、直鎖DNA、環状DNA、プラスミドDNA、直鎖RNA、環状RNA、自己増幅RNA若しくはDNA、ウイルスゲノム、又は上述のいずれかの修飾態様である、請求項1又は2に記載の送達ベクター。
【請求項4】
前記融合タンパク質が、少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つのPOIを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の送達ベクター。
【請求項5】
前記少なくとも1つのEVが、患者由来EVである、先行請求項のいずれか一項に記載の送達ベクター。
【請求項6】
前記患者由来EVが、肝臓細胞由来EV、脳細胞由来EV、又は筋肉細胞由来EVである、請求項5に記載の送達ベクター。
【請求項7】
前記融合タンパク質が、少なくとも1つの標的化ドメイン、少なくとも1つのエンドソーム脱出ドメイン、少なくとも1つの切断可能ドメイン、少なくとも1つの自己切断ドメイン、血漿タンパク質に結合可能な少なくとも1つのドメイン、及び/又は少なくとも1つのリンカーを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の送達ベクター。
【請求項8】
前記送達ベクターが、LNPであり、前記ポリヌクレオチドカーゴが、mRNA又はプラスミドDNAである、先行請求項のいずれか一項に記載の送達ベクター。
【請求項9】
前記ポリヌクレオチドカーゴが、mRNAであり、前記融合タンパク質が、前記POIに連結したEVポリペプチドを含み、前記POIが、酵素である、先行請求項のいずれか一項に記載の送達ベクター。
【請求項10】
前記融合タンパク質が、自己切断ドメイン及び/又は血漿タンパク質に結合可能なドメインを更に含む、請求項9に記載の送達ベクター。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の送達ベクターを含む、薬学的組成物。
【請求項12】
医薬に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の送達ベクター。
【請求項13】
遺伝的疾患、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、中枢神経系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、心血管疾患、がん、感染性疾患、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患の治療に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の送達ベクター、又は請求項11に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
疾患、障害又は状態を治療する方法に使用するための、請求項1~10のいずれか一項に記載の送達ベクター、又は請求項11に記載の薬学的組成物であって、前記方法が、前記送達ベクター又は薬学的組成物を患者に投与することを含み、前記患者の標的細胞が、前記ポリヌクレオチドカーゴを前記融合タンパク質へと翻訳し、前記標的細胞が、前記融合タンパク質を含むEVを産生する、送達ベクター又は薬学的組成物。
【請求項15】
前記標的細胞が、肝臓細胞、脾臓細胞、肺細胞、筋肉細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、胃腸細胞、中枢神経系細胞、骨髄細胞、腫瘍細胞、免疫系細胞、又はEVを分泌可能な任意の他の組織の細胞である、請求項14に記載の使用のための送達ベクター又は薬学的組成物。
【請求項16】
前記中枢神経系細胞が、脳細胞である、請求項15に記載の使用のための送達ベクター又は薬学的組成物。
【請求項17】
患者においてEVを産生する方法であって、前記方法が、請求項1~10のいずれか一項に記載の送達ベクター、又は請求項11に記載の薬学的組成物を前記患者に投与することを含み、前記患者における標的細胞が、前記EVを産生し、前記EVが、少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つのPOIを含む融合タンパク質を含む、方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つのPOIを、タンパク質系の薬物カーゴ及び/又はRNA系の薬物カーゴと相互作用させ、これらを前記EVに輸送することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の方法によって得ることができる、EV。
【請求項20】
医薬に使用するための、請求項19に記載のEV。
【請求項21】
遺伝的疾患、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、中枢神経系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、心血管疾患、がん、感染性疾患、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患の治療に使用するための、請求項19に記載のEV。
【請求項22】
疾患、障害又は状態を治療することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、前記方法が、請求項1~10のいずれか一項に記載の送達ベクター、又は請求項11に記載の薬学的組成物を前記対象に投与することを含み、前記対象における標的細胞が、前記ポリヌクレオチドカーゴを前記融合タンパク質へと翻訳し、少なくとも1つのEVを産生し、前記少なくとも1つのEVが、POIを含む融合タンパク質を含む、方法。
【請求項23】
前記疾患、障害又は状態が、欠陥遺伝子から生じる遺伝的疾患、障害又は状態であり、前記POIが、前記欠陥遺伝子に対応するタンパク質である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記POIが、細胞内若しくはリソソーム酵素、又は膜タンパク質である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記融合タンパク質が、自己切断ポリペプチドを介してEVポリペプチドに連結した前記POIを含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記遺伝的疾患、障害又は状態が、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、リソソーム蓄積障害、神経筋疾患、又は神経変性疾患である、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記EVが、EVポリペプチド及びPOIを含む融合タンパク質を含む、遺伝的に操作された患者由来EV。
【請求項28】
前記POIが、前記患者の変異した遺伝子、欠失した遺伝子、下方調節された遺伝子、又はその他の欠陥遺伝子によってコードされるタンパク質に対応する、請求項27に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
【請求項29】
前記POIが、酵素、トランスポーター、シャペロン、膜貫通タンパク質、構造化タンパク質、核酸結合タンパク質、ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、及び/又はタンパク質結合タンパク質である、請求項27又は28に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
【請求項30】
前記融合タンパク質及び/又は前記POIが、前記患者に対して異種である、請求項27~29のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
【請求項31】
前記EVが、前記患者において2時間を超える、6時間を超える、又は24時間を超える血漿半減期を有する、請求項27~30のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
【請求項32】
前記血漿半減期が、前記融合タンパク質及び/又は前記POIの存在について血漿をアッセイすることによって測定可能である、請求項31に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
【請求項33】
前記EVが、前記患者の細胞において前記融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを翻訳することによって得ることができる、請求項27~32のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
【請求項34】
前記EVが、肝臓細胞由来EVである、請求項27~33のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
【請求項35】
医薬に使用するための、請求項27~34のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
【請求項36】
遺伝的疾患、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、中枢神経系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、心血管疾患、がん、感染性疾患、自己免疫疾患及び/又は炎症性疾患の治療に使用するための、請求項27~34のいずれか一項に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の重篤な疾患の治療に対する治療モダリティとしての操作された細胞外小胞(EV)に関する。より具体的には、本発明は、EVの薬物動態及び生体内分布を調整するためのEVのインビボ産生に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞外小胞(例えばエキソソーム)は、ほとんどの細胞型によって産生され、細胞間のタンパク質及びペプチド、核酸、脂質、及び様々な他の生体分子のための身体の天然輸送システムとして機能するナノメートルサイズの小胞である。EVは、いくつかの潜在的な治療用途を有し、操作されたEVは、タンパク質生物学的製剤、核酸治療薬、遺伝子編集剤、及び低分子薬物のための送達ビヒクルとして既に調査されている。しかしながら、EVは、標的組織に迅速に取り込まれるため、エキソソーム療法薬の臨床応用は、比較的頻繁な投薬を必要とする可能性が高い。EV(すなわち、操作されているか、又は操作されていないかにかかわらず、所与のEVの集団)は、通常、哺乳動物において数分間の範囲の血漿半減期を有し、この短い半減期は、全身静脈内投与の際には特に明らかである。
【0003】
EV製造は、エキソソーム療法薬の分野の先駆けとなる初期の学術刊行物から大きな発展を遂げてきた(例えば、Alvarez-Erviti et al.,Nature Biotechnology,2011)。しかしながら、EVの製造、並びに及び上流及び下流の処理(精製を含む)のスケールアップは、特に、精製中にEV表面に付与される変化を低減し、大きな患者集団における商業的使用の準備ができるようにするために、依然として更なる開発を必要とする。
【0004】
これらの欠点にもかかわらず、EVは、生物学的障壁を越えて薬物カーゴ分子を送達するための新規薬物モダリティとして依然として顕著な可能性を有しており、EV療法薬のモジュール性は、他のモダリティ及び送達系と比べて、EVの比類なき利点である。本発明は、EVの送達特性及びその固有のモジュール性を維持しつつ、短い血漿半減期の課題、及び大規模なEV製造に関連する困難に対処するものであり、それによって、EV系の療法薬への新しいアプローチを可能にする。
【発明の概要】
【0005】
したがって、EVの半減期、生体内分布及び製造に伴う上に特定した問題を克服することが、本発明の目的である。
【0006】
第1の態様では、本発明は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドカーゴを含む送達ベクターを含む組成物であって、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への翻訳が、上述の融合タンパク質を含む少なくとも1つのEVの産生をもたらす、組成物に関する。インビボでの細胞によるポリヌクレオチドカーゴの翻訳は、問題の融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVの産生をもたらし、融合タンパク質を運ぶ操作された自己EVの形態における遺伝的に操作された送達モダリティのインサイチュ産生をもたらす。重要なことに、融合タンパク質は、それ自体が薬物(例えば、限定されないが、酵素、トランスポーター、転写因子、シャペロン等)のいずれかであるか、又は薬物(例えば、限定されないが、mRNA、shRNA等)に結合し、その後の送達のために、操作されたEVにそれを輸送する能力を有する、目的のタンパク質(protein of interest)(POI)を含む。
【0007】
第2の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物(すなわち、ポリヌクレオチドが発現されると、融合タンパク質の翻訳及び融合タンパク質を含む操作された(すなわち、修飾された)EVの生成を引き起こす、融合タンパク質をコードする送達ベクター及びポリヌクレオチドを含む組成物)を含む、薬学的組成物に関する。
【0008】
第3の態様では、本発明は、医薬に使用するための本発明による組成物に関する。より具体的には、本明細書の組成物は、本質的に任意の疾患、障害、状態、又は病気、好ましくは、遺伝的疾患、遺伝性疾患(遺伝的疾患及び非遺伝的遺伝性疾患の両方を含む)、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、がん、自己免疫疾患、心血管疾患、中枢神経系疾患、感染性疾患、及び炎症性疾患からなる群から選択されるものの治療に使用するためのものであり得る。更なる態様では、本発明は、本発明の組成物を製造する方法に関する。
【0009】
更に別の態様では、本発明は、哺乳動物細胞においてEVポリペプチド及びPOIを含む融合タンパク質を含む少なくとも1つの遺伝的に操作されたEVを産生する方法に関する。この方法は、哺乳動物細胞(例えば、ヒト細胞)と、本明細書に記載の組成物とを接触させることを含み、哺乳動物細胞が、ポリヌクレオチドカーゴを対応する融合タンパク質へと翻訳し、融合タンパク質、それによってPOIを含む哺乳動物細胞由来EVの産生をもたらすことができる。上述のように、哺乳動物細胞は、哺乳動物の身体の任意の細胞、例えば、肝細胞又は肝臓マクロファージ(例えば、クッパー細胞)等の肝臓細胞であり得る。肝臓以外の器官における様々な他の細胞及び細胞型はまた、本発明の本質的に自己であるが遺伝的に操作されたEVの「インサイチュバイオリアクター」としても機能し得る。
【0010】
更なる態様では、本発明は、融合タンパク質を含む患者由来EVを産生する方法であって、融合タンパク質が、少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つのPOIを含み、本方法が、患者の細胞に、本発明による組成物を投与するステップを含み、それによって、患者の細胞が、患者由来EVを産生する、方法に関する。したがって、患者由来EVは、インビボで産生され、遺伝的に修飾された患者由来EVである。これらの患者由来EVは、順にPOI(これも患者に対して異種であり得る)を含む翻訳された融合タンパク質への設計されたポリヌクレオチドの発現から生じるという事実の結果として、患者に対して異種である。しかしながら、重要なことに、融合タンパク質及び/又はPOI(及び/又はPOIによって結合される任意の他の薬物)が、患者に対して異種であるにもかかわらず、EVは、同時に、これらが患者のために患者によって産生されるという意味で、自己である。このことは、「正常な」細胞機構が、操作されたEVの発現/産生に利用される場合の高収率、広範囲にわたる生体内分布をもたらすと推測される、自己EVプロファイルに起因する免疫沈黙、循環中の長い半減期、及び効率的な障壁の通過及び薬物送達を含め、多くの利点を有する。遺伝的に操作されたEVのインビボ産生は、エクスビボで産生されたEVの患者への投与によるカーゴの送達と比較して、以下の理由で有益である。a)EVは、精製プロセスによって損傷を受けないため、その天然タンパク質の完全なコロナを保持し、したがって、レシピエント細胞によるEVの取り込みに有益であるため、生物学的に非常に活性である可能性が高く、b)EVのインビトロ精製プロセスは、大きすぎるEV又は小さすぎるEVの特定の集団を必然的に除外するため。EVが、このインサイチュ法によってインビボで産生される場合、EVの完全なスペクトルが、患者細胞において生成し、放出され、特定の融合タンパク質が特定のサイズのEVに優先的に組み込まれることが知られているため、広範囲にわたるカーゴを確実にロードすることができる。したがって、このインサイチュ送達方法は、各産物の精製プロセスを変更する必要なく、非常に広範囲にわたるカーゴの送達のための汎用性の高いプラットフォーム技術を可能にする。したがって、更なる態様では、本発明は、少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つのPOIを含む融合タンパク質を含む患者由来EV(及びデフォルトでは、このようなEVの集団でもある)であって、患者由来EVが上述の方法によって製造されるものに関する。本発明は更に、本明細書に記載の多くの疾患において、医薬に使用するためのこのような遺伝的に操作された患者由来EVに関する。
【0011】
別の態様では、本発明は、疾患、障害又は状態を治療することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、上述の方法が、本発明の組成物を対象に投与することを含み、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への翻訳が、POIを含む融合タンパク質を含む少なくとも1つのEVの産生をもたらす、方法に関する。任意の疾患、障害、又は状態が、治療に好適な標的として企図される。
【0012】
更なる態様では、本発明は、欠陥遺伝子から生じる遺伝的疾患、障害又は状態を治療する方法に関する。遺伝子欠陥は、変異、欠失、先端切断、重複、染色体損傷、欠失又は重複を含む多くの形態をとっていてもよく、遺伝子欠陥は、単一遺伝子性又は多遺伝子性であり得る。単一遺伝子性欠陥は、本発明の患者由来の遺伝的に操作されたPOIを保有するEVによる治療に特に適している。遺伝子欠陥から生じる疾患を治療するための方法は、対象に、本発明による組成物を投与することを含み、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への発現/翻訳は、POIを含む少なくとも1つの細胞外小胞(EV)の産生をもたらし、POIは、対象の欠陥遺伝子に対応するタンパク質である。
【0013】
別の態様では、本発明は、患者の標的細胞、標的器官若しくは器官系、標的区画、又は標的組織にPOIを送達する方法に関する。POIを送達する方法は、患者の細胞(多くの場合、プロデューサー細胞と呼ばれる)に、本発明による組成物を投与するステップを含み、それによって、患者のプロデューサー細胞は、POIを含む融合タンパク質を含む患者由来EVを産生し、患者由来EVは、POIを標的細胞に送達する。非常に驚くべきことに、本願発明者らは、本発明による遺伝的に操作された患者由来EVが、エクスビボ産生された遺伝的に操作されたEVと比較して(エクスビボ産生された患者由来の遺伝的に操作されたEVと比較した場合であっても)、循環中でかなり長い半減期を有することを発見した。この驚くべき技術的効果は、EVが患者の体内でインビボで(インサイチュとも呼ばれる)産生されることと組み合わせて、EVが患者特異的(自己)であるという事実に応じたものである可能性が高く、例えば血管を介して全身循環に入るとすぐに、患者に特異的なコロナが、遺伝的に操作されたEVと会合すると推測される。宿主におけるタンパク質コロナ(すなわち、自己コロナ)の形成は、いずれかの理論に拘束されることを望むものではないが、操作された自己EV(異種カーゴ分子を含む)が免疫不全性になり、患者において顕著に長い血漿半減期をもたらすと推測される。一例として、遺伝的に操作された対象由来EVの集団の半減期は、通常は24時間よりも長く、これは、対応するインビトロ製造されたEVの半減期の少なくとも10倍であり、より好ましくは100倍の長さである。しかしながら、本願発明者らは、インビボでの血漿半減期が72時間を超え、更に長く延長されることを観察した。ここで再び、精製されたEVに対するEVのインビボ産生の利点が適用され、エクスビボで産生されたEVと比較して、インサイチュ産生されたEVによって観察される、より大きな治療効果が説明される。簡単に言うと、これらの利点は、a)EVが、精製プロセスによって損傷を受けないため、その天然タンパク質の完全なコロナを保持し、したがって、生物学的に非常に活性である可能性が高く、b)プラットフォーム技術の汎用性に起因して、ある範囲の異なるカーゴ(POI)の効果的な送達が可能であることを意味する、任意のEVサブ集団の消失が存在しないことを含む。
【0014】
本明細書で簡潔に要約され、以下により詳細に記載されるような本発明は、例えばPOIの形態の薬物を含む融合タンパク質を保有する遺伝的に操作された対象由来(すなわち、自己)EVのインサイチュでの産生をもたらす細胞工学の顕著な偉業に基づいている。本発明は、操作されたEV療法薬への完全に新規のアプローチを表し、より少ない投薬頻度、より低い商品コスト、PK/PDプロファイル及び生体内分布の増強を可能にし、また、操作されたEV療法薬開発の観点での段階的な変化である、自己の操作されたEVのスケール変更可能な製造及び適用を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】インサイチュで操作されたEVの産生概念を説明する概略図であり、それによって、インビボで一過性に操作された患者細胞は、操作されたEVを産生し、すなわち、患者自身がエキソソームを産生し、薬物を手の届きにくい器官に送達する能力を利用することで、所望の薬物(目的のタンパク質(POI)の形態で)及び任意選択的に操作されたEVの薬理学的活性を増強するための追加の部分を含有するように設計された他の患者特異的な自己EVの長期的に持続する操作された融合タンパク質を保有するEVの産生をもたらす。
図2】インサイチュで産生される治療的な遺伝的に操作されたEVが、大腸炎のマウスモデルにおいて長期的な治療効果を提供することができることを示すインビボデータ。
図3】肝臓中でインサイチュで産生されるEVが、広範囲にわたる器官において、及び血漿中で長期間にわたって検出可能であることを示すインビボ生体内分布データ。
図4】POIを含む融合タンパク質を保有する自己の対象特異的EVが、エクスビボで産生されたEVと比較して、有意に改善した半減期を有することを示す、(i)マウス細胞から分泌され、POIとしてヒトCD63及び酵素NanoLuciferaseを含む融合タンパク質を保有するように一過性の遺伝的に操作されたマウスのインサイチュで産生されたEV、並びに(ii)全く同じ融合タンパク質を保有するインビトロで製造されたEVの投与の時間経過に伴うマウス血漿における酵素活性のレベルの比較。
図5】EVポリペプチド及びPOIを含む融合タンパク質へのアルブミン結合ドメインの付加が、インサイチュで産生されたインサイチュ産生された遺伝的に操作されたEVの半減期を更に延長することを示す、インビボ生体内分布及び半減期データ。
図6】脂質ナノ粒子(LNP)によるmRNAの送達を介するインサイチュエキソソーム産生後のnanoluc融合タンパク質(ヒトCD63-luc、ヒトCD63-ABD-luc、又はluc単独)を発現するEVのインビボ生体内分布。
図7】LNPによるmRNA送達後に産生されるインサイチュで操作されたEVの半減期に対するアルブミン結合ポリペプチドの効果。
図8】精製されたEVに対する、インサイチュの血漿動態の比較。
図9】様々な異なるEVポリペプチドを含む融合タンパク質が、カーゴも送達することができるという証拠。
図10】大腸炎の治療のための療法スーパーレプレッサーikBaタンパク質のインサイチュEV送達。
図11】インサイチュで産生されたEVが、大腸炎モデルにおいて炎症性サイトカインレベルを低減するという証拠。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、EVベースの薬物開発の主な欠点に対処する、EV療法薬の開発に対する新規かつ独創的なアプローチに関する。インビトロ細胞培養物においてエクスビボで操作されたEV療法薬を製造する代わりに、本発明の背後にいる本願発明者らは、インビボ設定でインサイチュで遺伝的に操作された患者由来EVによって、これらの遺伝的に操作されたEVが、薬物動態及び生体内分布の両方に関連して、エクスビボで製造されたEVとは異なる挙動をするという、注目に値する発明を行った。初代細胞又は細胞株からインビトロで製造されたEVを投与するときにみられる急速な血漿クリアランスは、本願発明者らが示されるように、所与の薬物カーゴを保有する遺伝的に操作されたEVが、インビボで器官系に存在する標的細胞をEV産生のためのバイオリアクターに変えることによってインサイチュで作製されるときに、完全に無効化される。このことは、少なくともEVポリペプチド及び目的のタンパク質(POI)を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物を標的細胞に送達する本発明の方法によって達成される。ポリヌクレオチド構築物を送達すると、標的細胞機構は、ポリヌクレオチド構築物を融合タンパク質へと翻訳し(必要な場合には、すなわち、ポリヌクレオチド構築物がmRNAではない場合には、転写し)、上述の融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVの細胞からの産生、及び最終的には分泌をもたらす。タンパク質に含まれるPOIは、それ自体が薬物(例えば、酵素補充療法のための治療用酵素)であってもよく、又は薬物、すなわち、薬理学的に活性な薬剤、例えば、別のタンパク質若しくは核酸等に結合し得る。これにより、(ポリヌクレオチド及び送達ベクターに応じて、一過性かつ安定的に)POIを保有する遺伝的に操作されたEVの産生がもたらされ、これらは患者によって標的細胞から循環に分泌され、これらのEVは、エクスビボ産生された遺伝的に操作されたEVよりもかなり長い循環半減期及び異なる生体内分布プロファイルを有する。
【0017】
便宜上及び明確にするために、本明細書で使用される特定の用語をまとめて、以下に説明する。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0018】
本発明の特徴、態様、実施形態、又は代替物がマーカッシュ群に関して説明される場合、当業者は、本発明がそれによってマーカッシュ群メンバーの任意の個々のメンバー又は下位群に関しても説明されることを認識するであろう。当業者は、本発明がそれによって、マーカッシュ群メンバーの個々のメンバー又は下位群の任意の組み合わせに関しても記載されることを更に認識するであろう。加えて、本発明の態様及び/又は実施形態のうちの1つに関連して説明される実施形態及び特徴はまた、本発明の全ての他の態様及び/又は実施形態において準用されることに留意されたい。例えば、かかる融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組成物と組み合わせて本明細書に記載される融合タンパク質は、本明細書の他の全ての態様、教示、及び実施形態、例えば、遺伝的に操作されたEVに関する態様及び/若しくは実施形態、並びに/又は医薬におけるそれらの用途とともに開示され、これに関連し、適用可能であり、かつ適合性があると理解されるべきである。更に、特定の態様と組み合わせて記載される特定の実施形態、例えば、組成物及び薬学的組成物に関する態様に関連して記載される異なるウイルス性送達ベクター及び非ウイルス性送達ベクターは、全ての他の態様及び/又は実施形態、例えば、治療方法及び/又はかかる組成物の医学的用途に関するものとともに開示され、これに関連し、適用可能であり、かつ適合性があると理解されるべきである。更に、本明細書で言及される全てのEVポリペプチド及び目的のタンパク質(POI)を、任意の順序、配列で、又は任意のドメイン、領域、若しくはその伸長部を使用して、融合タンパク質の作製のための従来の戦略を使用して、融合タンパク質に自由に組み合わせることができる。非限定的な例として、本明細書に記載のEVポリペプチドを、1つ以上のPOIとの任意の組み合わせで自由に組み合わせてもよく、任意選択的に、他のポリペプチドドメイン、領域、配列、ペプチド、及び本明細書の基、例えば、リンカー配列、自己切断ドメイン、エンドソーム脱出ドメイン、RNA結合ドメイン、標的化部分、及び/又は血漿タンパク質に対する結合を媒介するドメイン等と組み合わせてもよい。更に、任意及び全ての特徴(例えば、マーカッシュ群の任意及び全てのメンバー)は、任意及び全ての他の特徴(例えば、任意の他のマーカッシュ群の任意及び全てのメンバー)と自由に組み合わせることができ、例えば、任意のEVポリペプチドを、任意のPOIと組み合わせてもよく、次いで、任意の他のポリペプチドドメイン、核酸薬物カーゴ等の他の薬物カーゴ(例えば、mRNA、shRNA、miRNA、自己増幅RNA等のRNA分子)、又は本明細書の任意の他の態様及び/又は実施形態との組み合わせで、組み合わせ、使用するか、又は適用してもよい。更に、本明細書の教示が単数形のEV及び/又は別個のナノ粒子様小胞としてのEVを指す場合、全てのそのような教示は、複数のEV及びEV集団に同様に関連し、適用可能であることが理解されるべきである。一般的な注釈として、本発明によるEVポリペプチド、POI、追加のポリペプチドドメイン及び部分(例えば、限定されないが、標的化ドメイン、切断可能ドメイン、RNA結合ドメイン、自己切断ドメイン、エンドソーム脱出ドメイン、血漿タンパク質結合ドメイン、リンカー等)、並びに全ての他の態様、実施形態、及び代替物を、本発明の範囲及び要旨から逸脱することなく、ありとあらゆる可能な組み合わせで自由に組み合わせてもよい。更に、本発明の任意のポリペプチド若しくはポリヌクレオチド、又は任意のポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列(それぞれアミノ酸配列若しくはヌクレオチド配列)は、任意の所与の分子がそれに関連する所望の技術的効果を実行する能力を保持する限り、元のポリペプチド、ポリヌクレオチド及び配列から大幅に逸脱し得る。それらの生物学的特性が維持される限り、本出願によるポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド配列は、可能な限り高い配列同一性又は類似性が好ましいが(例えば、60%、70%、80%、又は例えば90%以上)、天然配列と比較して最大50%(例えば、BLAST又はClustalWを使用して計算される)逸脱してもよい。相同性を決定するために、当該技術分野の標準的な方法を使用してもよい。例えば、PILEUPアルゴリズム及びBLASTアルゴリズムを使用して、相同性を計算するか、又は配列をアラインメントして、同一性又は類似性を決定することができる。いくつかのポリペプチドの組み合わせ(すなわち、融合)は、それぞれのポリペプチドの特定のセグメントが置き換えられてもよく、先端切断されてもよく、及び/若しくは修飾されてもよいこと、かつ/又は配列が、他のアミノ酸伸長部の挿入によって中断されてもよいことを暗示し、これは、重要な特性(例えば、EVポリペプチドの文脈において、融合タンパク質をEVに輸送する能力、又は酵素であるPOIの文脈において、その酵素活性)が保存されているか、又は少なくとも実質的に維持されている限り、天然配列からの逸脱がかなりのものであってもよいことを意味する。したがって、それらのポリヌクレオチド配列が、DNA若しくはRNAであるか、又はその2つの組み合わせであるかどうか、また、それらが転写及び翻訳を必要とするか、若しくは対応する融合タンパク質への単なる翻訳を必要とするかにかかわらず、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に同様の論法が当然適用される。遺伝子、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質に関連して本明細書で言及される任意の受入番号又は配列番号は、単なる例として、単なる情報のためとみなされ、全ての遺伝子、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は、当業者がそれらを理解するように、通常の意味を付与されるものとする。したがって、上述のように、当業者はまた、本発明が、本明細書において言及されている特定の配列番号及び/又は受入番号のみを包含するだけではなく、それらのバリアント及び誘導体をも包含するということを理解するであろう。本明細書において言及される全ての受入番号は、UniProtKB受入番号であり、本明細書で述べられている全ての遺伝子、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ヌクレオチド、及びポリヌクレオチドは、当業者によって理解されるように、それらの従来の意味に従って解釈されるべきである。
【0019】
「EV」又は「細胞外小胞」又は「エキソソーム」という用語は、本明細書で互換的に使用され、任意の形態で細胞から得ることができる任意の種類の小胞、例えば、微小胞(例えば、細胞の形質膜から産生された任意の小胞)、エキソソーム(例えば、エンドソーム、リソソーム、及び/若しくはエンドリソソーム経路に由来する任意の小胞、並びに/又は細胞の形質膜若しくは任意の他の膜に由来する任意の小胞)、ARMM(アレスチンドメイン含有タンパク質1(ARRDC1)媒介性小胞、微小胞の形態である)等に関すると理解され得る。エキソソーム、微小胞、及びARRDC1媒介性小胞(ARMM)は、特に好ましいEVを表すが、他のEVもまた、様々な状況で有利であり得る。本発明のEV、エキソソーム等は、遺伝的に修飾され得る。「遺伝的に操作された」、又は単に「修飾された」若しくは「操作された」という用語も使用され得る。「遺伝的に修飾された」及び「遺伝的に操作された」EVという用語は、EVが、遺伝的に修飾/操作された細胞に由来することを示す。細胞及びそこから得られる遺伝的に操作されたEVの遺伝子操作は、典型的には、EVポリペプチドを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの翻訳(及び必要な場合には、その前の転写)の結果であり、細胞に導入されると、上述の融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVの産生(遺伝的に操作/修飾された細胞による)をもたらす。
【0020】
EVのサイズは、大幅に変化し得るが、EVは、典型的には、ナノサイズの流体力学半径、すなわち、1000nm未満の半径を有する。エキソソームは、多くの場合、30~300nm、典型的には40~250nmの範囲のサイズを有し、これは、療法用の目的にとって非常に好適なサイズ範囲である。明らかに、EVは、肝臓等の器官がEV産生のための高度に生産的な器官であるにもかかわらず、インビボで任意の細胞型に由来してもよい。
【0021】
EVの医学的及び科学的な使用及び用途を説明する場合、当業者には、本発明は通常、複数のEV、すなわち、数千、数百万、数十億、又は更には数兆のEVを含み得るEVの集団に関することが明らかであろう。EVは、単位体積当たり(例えば、1ml当たり、又は1L当たり)、10、10、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1018、1025、1030個のEV(多くの場合、「粒子」と呼ばれる)等の濃度、又はより大きい、より小さい、若しくはその中間の任意の他の数等の濃度で存在し得る。同じように、例えば、特定のPOIとともに特定の融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVに関連し得る「集団」という用語は、かかる集団を一緒に構築する複数のエンティティを包含することが理解されるべきである。言い換えれば、個々のEVは、複数で存在する場合、EV集団を構成する。したがって、当然、本発明は、当業者に明らかであるように、個々のEV及びEVを含む集団の両方に関する。
【0022】
本明細書において互換的に使用される「ポリヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチドカーゴ」という用語は、リボ核酸(RNA)ヌクレオチド、デオキシリボ核酸(DNA)ヌクレオチド、DNAヌクレオチド及びRNAヌクレオチドの任意の組み合わせ、並びにRNAヌクレオチド及び/又はDNAヌクレオチドの任意の修飾形態の形態であり得る、少なくとも10個のヌクレオチドモノマーを含むバイオポリマーに関すると理解されたい。ポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖であってもよく、種々の二次及び三次構造を有する、直鎖又は環状であってもよい。天然に存在するか、又は天然に存在しないかにかかわらず、任意のポリヌクレオチドは、本発明の趣旨において、ポリヌクレオチドであると理解されるべきである。ポリヌクレオチドの好ましい実施形態としては、直鎖mRNA、環状mRNA、直鎖DNA、環状DNA、プラスミドDNA、直鎖RNA、環状RNA、ドギーボーンDNA(dbDNA)、自己増幅RNA若しくはDNA、ウイルスゲノム(一本鎖若しくは二本鎖、RNAで構成されるか、若しくはDNAで構成される)、又は上述のいずれかの修飾態様、並びに任意の他の好適なポリヌクレオチドカーゴが挙げられる。より具体的には、本明細書で使用される場合、「mRNA」は、天然に存在し得るか、又は天然に存在し得ないメッセンジャーリボ核酸を指す。例えば、mRNAは、1つ以上の核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、又はリンカー等の修飾された及び/又は天然に存在しない構成要素を含み得る。mRNAは、キャップ構造、鎖終結ヌクレオシド、ステムループ、ポリA配列、及び/又はポリアデニル化シグナルを含み得る。本発明のmRNAは、通常、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有し、本発明の文脈において、ポリペプチドは、典型的には、融合タンパク質であり、上述の融合タンパク質は、ひいては、目的のタンパク質(POI)を含む。mRNAの翻訳、例えば、哺乳動物細胞内のmRNAのインビボでの翻訳は、ポリペプチド、すなわち、本発明の態様及び実施形態による、POIを含む融合タンパク質を産生し得る。有利な一実施形態では、1つより多いPOI(例えば、2つ、3つ、若しくは4つ、又はそれより多いPOI)、又は1つのPOI及び第2のタンパク質若しくはRNA分子をコードするために、1つより多いポリヌクレオチドが、組成物に含まれ、ここで、第2のタンパク質又はRNA分子は、薬物である(すなわち、実際の薬理学的/治療活性を有する)。一例として、2つのmRNA、又は2つのpDNAプラスミド、又は1つのpDNAプラスミド及び1つのmRNAポリヌクレオチド等が、本明細書の組成物に含まれてもよい。いくつかの実施形態では、POIの補助によって操作されたEVへと輸送されるPOI及びmRNAを含む融合タンパク質を含む、遺伝的に操作されたインサイチュで産生された患者特異的EVの産生を駆動するために、POIを含む融合タンパク質のためのmRNAコードと、POIが相互作用するように設計されているmRNA分子のためのpDNAポリヌクレオチドコードとを有することが有利な場合がある。上のことからわかるだろうが、本発明によるポリヌクレオチドの多数の態様、代替物、及びバリアントが本明細書に提供され、本発明の固有の能力によって、インサイチュで操作されたEV産生技術を介して多数の薬物カーゴを可能にすることができる。自己増幅RNAをポリヌクレオチドカーゴとして使用する利点は、自己増幅RNAが組織に送達されると、RNAの複数のコピーが作製され、RNAテンプレートの増幅特性の補助によって、POIの更に多くのコピーが作製されることである。重要なことに、自己増幅RNAレプリコンは、感染性ではなく、細胞を溶解せず、確実にタンパク質発現を持続させる。したがって、増幅により、非常に高いRNAコピー数が得られ、それによって、はるかに低い用量で効果的なタンパク質産生を達成する。
【0023】
「翻訳」及び「発現」という用語は、本明細書において互換的に使用され、対応するポリヌクレオチドから産生されるポリペプチドをもたらす様々なステップに関連し、それらを含むと理解されるべきであり、限定されないが、(i)複製(例えば、通常はレプリソームと呼ばれる因子群の一部を形成する、例えば、DNAポリメラーゼを用いた、自身のDNA産生コピー)、(ii)転写(例えばRNAポリメラーゼ及び他の因子を用いた、DNAテンプレートからのRNA(例えばプレmRNA)の産生)、(iii)RNAからmRNAへのプロセシング(スプライシングを介する(例えばプレmRNA)、5’キャップ及びポリAテールの付加、及び他の形態のRNAプロセシング)、(iv)並びにリボソーム機構を用いた、mRNAから対応するタンパク質への翻訳を含む。したがって、本発明に使用される「翻訳」という用語は、mRNAをタンパク質に変換する実際の翻訳プロセスを含む、ポリヌクレオチド中の情報を対応するタンパク質に変換する際の全てのステップを包含する。
【0024】
「投与」及び「投与する」という用語は、対象、例えば患者に組成物を提供する異なる手段に関すると理解されるべきである。投与は、様々な異なる投与経路を介して、また、様々な異なる投薬及び/又は治療計画を介して、組成物を対象に提供することを含み得る。本発明の組成物の単回用量は、特定の文脈において、十分なものであってもよいが、ほとんどの疾患及び状態において、複数回用量が想定される。複数の用量はまた、複数の異なる経路、例えば、静脈内及び髄腔内の組み合わせ、又は皮下及び筋肉内の組み合わせを介して投与され得る。本発明で企図される投与経路としては、限定されないが、例えば、耳介(耳)、頬側、結膜、皮膚、歯、電気浸透、子宮頸管内、副鼻腔内、気管内、腸内、硬膜外、羊膜外、体外、血液透析、浸透、間質性、腹腔内(intra-abdominal)、羊膜内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、心臓内、軟骨内、仙骨内、陰茎海綿体内、腔内、大脳内、脳室内、嚢内、大槽内、結腸内、角膜内、歯冠内(歯)、冠動脈内、海綿体内、皮内、椎間板内、管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、回腸内、病巣内、管腔内、リンパ管内、髄内、髄膜内、筋肉内、眼内、卵巣内、心膜内、腹腔内(intraperitoneal)、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、鼻腔内、脊髄内、滑膜内、精巣内、髄腔内、胸腔内、尿細管内、腫瘍内、鼓膜内、子宮内、血管内、静脈内、静脈内ボーラス、静脈内点滴、心室内、膀胱内、硝子体内、イオン浸透法、灌注、喉頭、経鼻、経鼻胃、密封包帯技術、眼、経口、口腔咽頭、その他のもの、非経口、経皮、関節周囲、硬膜外、神経周囲、歯周、経直腸、呼吸器(吸入)、眼球後方、軟組織、くも膜下、結膜下、皮下、舌下、粘膜下、局所、経皮、経粘膜、経胎盤、経気管、経鼓膜、尿管、尿道、及び/又は膣の投与、及び/又は上述の投与経路の任意の組み合わせ等の経路を介した投与が挙げられ、典型的には、治療される疾患、患者集団の特徴、及び/又は患者由来の遺伝的に操作されたEV自体の所望の特徴に依存する。静脈内(IV)、皮下(SC)、髄腔内(IT)、脳室内(ICV)、大槽内(ICM)、腹腔内(IP)、及び筋肉内(IM)は、本発明による好ましい投与経路の1つである。
【0025】
第1の態様では、本発明は、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドカーゴを含む送達ベクターを含む組成物であって、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への翻訳が、上述の融合タンパク質を含む少なくとも1つのEVの産生をもたらす、組成物に関する。上述のように、インビボでの細胞によるポリヌクレオチドカーゴの翻訳は、問題の融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVの産生をもたらし、これが、インビボで細胞中で起こる場合に、EV生物発生プロセスの一部としてEVに組み込まれると推測される。ポリヌクレオチドカーゴを、様々なウイルス性又は非ウイルス性送達ベクターを使用して標的細胞に送達することができ、ベクターの選択は、所望の標的細胞型及び器官、ポリヌクレオチドのサイズ、ポリヌクレオチドが、DNA若しくはRNA、又はその両方で構成されるかどうか、投薬頻度(非ウイルスベクターの代わりにウイルスベクターを使用することによって有意に低下させることができる)、時間経過に伴う再投与の必要性、並びに発現レベル、毒性、免疫原性、及び多くの他の因子に関連する考慮事項を含む多数のパラメータに依存する。代替の実施形態では、ポリヌクレオチドカーゴ、例えば、修飾mRNA、自己増幅RNA、又はプラスミドDNAを、その単語の従来の意味で送達ベクターを使用することなく、遺伝的に操作されたEVを保有する融合タンパク質のインサイチュ産生のために標的細胞に送達することができる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、ポリヌクレオチドのICV、IT、又はICM投与を介する、例えば、筋肉組織(IM)へ、心臓へ、固形腫瘍若しくは任意の他のがん性組織へ、又は脳を含む中枢神経系への直接的な、薬学的に許容される担体のみにおけるポリヌクレオチドの直接投与に関する。例えば、LNP又はポリマー系ベクターが存在しない場合であっても、ポリヌクレオチドカーゴが製剤化される薬学的組成物は、本発明の全ての意図及び目的のために送達ベクターとして機能する。特定の組織への局所投与に加えて、ポリヌクレオチドの全身投与もまた、本明細書で企図される。1つの特に適切なアプローチは、流体力学的投与であってもよく、ポリヌクレオチドを肝臓細胞に送達するために静脈内で行い、又は腸管投与を介して行い、ポリヌクレオチドを内皮細胞及び胃腸系の他の細胞に送達することを可能にしてもよい。上述のように、ポリヌクレオチドから薬学的組成物への直接的な(例えば、生理食塩水溶液、又は任意の他の生理学的に好適な溶液中で直接的な)製剤化は、POIを含む融合タンパク質を保有する操作されたEVへと翻訳されるポリヌクレオチドの重要な特性が維持される限り、非ウイルス性送達ベクター及び問題のポリヌクレオチドを含む組成物の使用と同等であると考えられる。
【0026】
好ましい実施形態では、組成物は、非ウイルスベクターを含む。本発明に好適な非ウイルスベクターとしては、脂質系送達ベクター、例えば、脂質ナノ粒子、リポソーム、リポプレックス、リピドイド、脂質エマルション、カチオン性脂質、双性イオン性脂質、又は任意の他の種類の脂質系送達ベクターが挙げられる。更に、ポリマー系送達ベクターも、本発明の適用に適している。これらのポリマー系ベクターとしては、例えば、ポリプレックス及びポリアミンが挙げられる。他の形態の送達ベクターとしては、ペプチド系ベクター、例えば、細胞透過ペプチド(CPP)送達ベクター(カーゴとのポリプレックスを形成し得るCPPを含む)、又はインビボでのポリヌクレオチドカーゴの送達に適した任意の他の非ウイルス性送達ベクターが挙げられる。
【0027】
ナノ粒子組成物の形態の脂質含有送達ベクターは、細胞及び/又は細胞内区画への輸送ビヒクルとして、様々な異なる種類のポリヌクレオチド、特に、その修飾態様を含むDNA及びメッセンジャーRNA(mRNA)のために非常に有効であることが証明されている。これらの脂質ベースの送達ベクターは、一般に、1つ以上の「カチオン性」及び/又はアミノ(イオン化可能)脂質、多価不飽和脂質を含むリン脂質、構造化脂質(例えば、ステロール)、及びポリエチレングリコール(PEG脂質)を含有する脂質を含む。カチオン性及び/又はイオン化可能脂質としては、例えば、それらをカチオン性にするために容易にプロトン化されるアミン含有脂質が挙げられる。脂質又は脂質様材料(リピドイド)を用いることにより、様々な送達ベクター、例えば、リポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)、脂質エマルション、脂質インプラント等を調製することができる。例えば、N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジオレオイルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパンクロリド(DOTAP)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)は、古典的なカチオン性脂質として、DNA及びmRNA及びDOTMA、DOTAP、DOPEを送達するために広く使用されており、コレステロールは、mRNAを樹状細胞、マクロファージ、及び肺内皮細胞等に送達するために使用されてきた。リピドイド、LNP、及び他の種類の脂質ベースの送達ベクターを形成するために使用することができる他の脂質ベースの化合物としては、DlinDMA、Dlin-MC3-DMA、脂質テールにエステル及びアルキンを含む骨格修飾を有するDlin-MC3-DMA、C12-200、cKK-E12、5A2-SC8、7C1、及び1,3,5-トリアジナン-2,4,6-トリオン(TNT)誘導体、MC3、XTC2等が挙げられる。例えば、これらの脂質又はリピドイドに基づいて、ヘルパー脂質、PEG-脂質及びコレステロールに対する主要脂質のモル比を調節し、ヘルパー脂質又はPEG-脂質を変化させ、別の構成要素(例えば、プロタミン)を添加することによって、効果的で非常に効果的なmRNA送達及び融合タンパク質発現を達成することができる。
【0028】
リポソームは、本発明の文脈において、ポリヌクレオチドとともに組成物の一部を形成するのに好適な、一種の非ウイルス性の脂質ベース送達ベクターである。リポソームに組み込まれたポリヌクレオチドは、リポソームの内部空間中に、リポソームの二重層膜内、又はリポソーム膜の外側表面と会合して、完全又は部分的に位置していてもよい。リポソームは、標的細胞への核酸の導入を容易にすることができるが、コポリマーとしてのポリカチオン(例えば、ポリL-リジン及びプロタミン)の添加は、いくつかの種類のカチオン性リポソームの送達効率を容易にすることができ、いくつかの場合では、顕著に増強することができる。本発明の好ましい実施形態では、脂質ベースの送達ベクターは、脂質ナノ粒子として製剤化される。本明細書で使用される場合、「脂質ナノ粒子」という語句は、1つ以上の脂質(例えば、カチオン性脂質、非カチオン性脂質、及びPEG修飾脂質)を含む送達ベクターを指す。好適な脂質の例には、例えば、ホスファチジル化合物(例えば、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴ脂質、セレブロシド、及びガングリオシド)が含まれる。また、単独で、又は他の移送ビヒクルと組み合わせた状態で、移送ビヒクルとしてのポリマーの使用も企図される。好適なポリマーには、例えば、ポリアクリレート、ポリアルキシアノアクリレート(polyalkycyanoacrylate)、ポリラクチド、ポリラクチド-ポリグリコリドコポリマー、ポリカプロラクトン、デキストラン、アルブミン、ゼラチン、アルギネート、コラーゲン、キトサン、シクロデキストリン、デンドリマー、及びポリエチレンイミンが含まれ得る。本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」という語句は、選択されたpH、例えば、生理的pHで正味の正電荷を保有するいくつかの脂質種のいずれかを指す。企図される脂質ナノ粒子は、1つ以上のカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及びPEG修飾脂質を使用する、様々な比率の多成分脂質混合物を含むことによって調製され得る。いくつかのカチオン性脂質が文献に記載されており、その多くは市販されている。他の適切な脂質としては、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-l-イル)テトラコサ-15,18-ジエン-1-アミン(HGT5000)、(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-4,15,18-トリエン-l-アミン(HGT5001)、及び(15Z,18Z)-N,N-ジメチル-6-((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イル)テトラコサ-5,15,18-トリエン-1-アミン(HGT5002)が挙げられる。いくつかの実施形態では、カチオン性脂質N-[l-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、又は「DOTMA」が使用される。DOTMAは、単独で製剤化することができ、又は中性脂質、ジオレオイルホスファチジル-エタノールアミン若しくは「DOPE」、又は他のカチオン性脂質若しくは非カチオン性脂質と組み合わせて、リポソーム若しくは脂質ナノ粒子にすることができる。他の好適なカチオン性脂質としては、例えば、5-カルボキシスペルミルグリシンジオクタデシルアミド又は「DOGS」、2,3-ジオレイルオキシ-N-[2(スペルミン-カルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパンアミニウム又は「DOSPA」、1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウム-プロパン又は「DODAP」、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン又は「DOTAP」が挙げられる。他の企図されるカチオン性脂質としては、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン又は「DSDMA」、1,2-ジオレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン又は「DODMA」、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン又は「DLinDMA」、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン又は「DLenDMA」、N-ジオレイル-N,N-ジメチルアンモニウムクロリド又は「DODAC」、N,N-ジステアリル-N,N-ジメチルアンモニウムブロミド又は「DDAB」、N-(1,2-ジミリスチルオキシプロパ-3-イル)-N,N-ジメチル-N-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド又は「DMRIE」、3-ジメチルアミノ-2-(コレスタ-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-l-(cis,cis-9,12-オクタデカジエノキシ)プロパン又は「CLinDMA」、2-[5’-(コレスタ-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-l-(cis,cis-9’、l-2’-オクタデカジエノキシ)プロパン又は「CpLinDMA」、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン又は「DMOBA」、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン又は「DOcarbDAP」、2,3-ジリノレオイルオキシ-Ν,Ν-ジメチルプロピルアミン又は「DLinDAP」、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン又は「DLincarbDAP」、l,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン又は「DLinCDAP」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[l,3]-ジオキソラン又は「DLin-DMA」、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[l,3]-ジオキソラン又は「DLin-K-XTC2-DMA」、及び2-(2,2-ジ((9Z,12Z)-オクタデカ-9,l2-ジエン-1-イル)-l,3-ジオキソラン-4-イル)-N,N-ジメチルエタンアミン(DLin-KC2-DMA))、又はこれらの混合物も挙げられる。本発明によって、コレステロールベースのカチオン性脂質の使用も企図される。このようなコレステロール系カチオン性脂質は、単独で、又は他のカチオン性脂質若しくは非カチオン性脂質と組み合わせて使用され得る。好適なコレステロール系カチオン性脂質としては、例えば、DC-Choi(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレステロール)、l,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジンが挙げられる。他の好適なカチオン性脂質としては、ジアルキルアミノ系、イミダゾール系、及びグアニジニウム系脂質が挙げられる。例えば、特定の実施形態は、1つ以上のイミダゾール系カチオン性脂質、例えば、イミダゾールコレステロールエステル又は「ICE」脂質を含む組成物に関する。
【0029】
同様に、特定の実施形態は、HGT4003カチオン性脂質2-((2,3-ビス((9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-l-イルオキシ)プロピル)ジスルファニル)-N,N-ジメチルエタンアミンを含む脂質ナノ粒子に関する。他の実施形態では、本明細書に記載の組成物及び方法は、1つ以上の切断可能脂質、例えば、切断可能ジスルフィド(S-S)官能基を含む1つ以上のカチオン性脂質又は化合物(例えば、HGT4001、HGT4002、HGT4003、HGT4004、及びHGT4005)を含む脂質ナノ粒子に関する。単独で、又は好ましくは、送達ベクターを含む他の脂質(例えば、脂質ナノ粒子)と一緒に組み合わせた、N-オクタノイル-スフィンゴシン-l-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)-2000](C8 PEG-2000セラミド)を含む、ポリエチレングリコール(PEG)修飾リン脂質及び誘導体化セラルミド(PEG-CER)等の誘導体化脂質の使用も、本発明によって企図される。企図されるPEG修飾脂質としては、限定されないが、C6~C20の長さのアルキル鎖を有する脂質に共有結合した、長さが最大5kDaのポリエチレングリコール鎖が挙げられる。かかる構成要素の添加により、複雑な凝集が防止される可能性があり、また、循環寿命を増加させ、標的細胞への脂質-ポリヌクレオチド組成物の送達を増加させる手段を提供する可能性があり、又はそれらをインビボで製剤から迅速に交換するために選択し得る。特に有用な交換可能な脂質は、より短いアシル鎖(例えば、C14又はC18)を有するPEG-セラミドである。本発明のPEG修飾リン脂質及び誘導体化脂質は、脂質系送達ベクターに存在する総脂質の約0%~約20%、約0.5%~約20%、約1%~約15%、約4%~約10%、又は約2%のモル比を含み得る。代替の実施形態では、非ウイルス性の脂質系送達ベクターはまた、非カチオン性脂質を使用してもよい。本明細書で使用される場合、「非カチオン性脂質」という語句は、任意の中性脂質、双性イオン性脂質、又はアニオン性脂質を指す。本明細書で使用される場合、「アニオン性脂質」という語句は、選択されたpH、例えば、生理的pHで正味の負電荷を保有するいくつかの脂質種のいずれかを指す。非カチオン性脂質としては、限定されないが、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン 4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチル PE、16-O-ジメチルPE、18-1-trans PE、l-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジエタノールアミン(SOPE)、コレステロール、又はこれらの混合物が挙げられる。このような非カチオン性脂質を、単独で使用してもよいが、好ましくは、他の賦形剤、例えば、カチオン性脂質と組み合わせて使用される。カチオン性脂質と組み合わせて使用される場合、非カチオン性脂質は、送達ベクター中に存在する総脂質の5%~約90%、又は好ましくは約10%~約70%のモル比を含まれ得る。好ましくは、脂質ナノ粒子は、複数の脂質及び/又はポリマー構成要素を組み合わせることによって調製される。例えば、送達ベクターは、CI 2-200、DOPE、chol、DMG-PEG2Kを40:30:25:5のモル比で、又はDODAP、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2Kを18:56:20:6のモル比で、又はHGT5000、DOPE、chol、DMG-PEG2Kを40:20:35:5のモル比で、又はHGT5001、DOPE、chol、DMG-PEG2Kを40:20:35:5のモル比で使用して調製され得る。脂質ナノ粒子を含むカチオン性脂質、非カチオン性脂質、及び/又はPEG修飾脂質の選択、並びにそのような脂質の互いに対する相対的モル比は、選択される脂質の特徴、意図される標的細胞の性質、送達されるポリヌクレオチド(典型的には修飾mRNA)の特徴に基づいている。追加の考慮事項としては、例えば、アルキル鎖の飽和、並びに選択された脂質のサイズ、電荷、pH、pKa、膜融合性、及び毒性が挙げられる。したがって、モル比は、それに応じて調節され得る。例えば、複数の実施形態では、脂質ナノ粒子中のカチオン性脂質の割合は、10%より大きく、20%より大きく、30%より大きく、40%より大きく、50%より大きく、60%より大きく、又は70%より大きくてもよい。脂質ナノ粒子中の非カチオン性脂質の割合は、5%より大きく、10%より大きく、20%より大きく、30%より大きく、又は40%より大きくてもよい。脂質ナノ粒子中のコレステロールの割合は、10%より大きく、20%より大きく、30%より大きく、又は40%より大きくてもよい。脂質ナノ粒子中のPEG修飾脂質の割合は、1%より大きく、2%より大きく、5%より大きく、10%より大きく、又は20%より大きくてもよい。特定の実施形態では、本発明の脂質ナノ粒子は、以下のカチオン性脂質のうちの少なくとも1つを含む。C12-200、DLin-KC2-DMA、DODAP、HGT4003、ICE、HGT5000、又はHGT5001。複数の実施形態では、送達ベクターは、コレステロール及び/又はPEG修飾脂質を含む。いくつかの実施形態では、送達ベクターは、DMG-PEG2Kを含み、いくつかの実施形態では、送達ベクターは、以下の脂質製剤のうちの1つを含む。C12-200、DOPE、chol、DMG-PEG2K;DODAP、DOPE、コレステロール、DMG-PEG2K;HGT5000、DOPE、chol、DMG-PEG2K、HGT5001、DOPE、chol、DMG-PEG2K。
【0030】
好ましい実施形態では、本発明の脂質ベースの送達ベクターは、PEG修飾セラミド、PEG修飾ジアルキルアミン、PEG修飾ジアシルグリセロール、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン、PEG修飾ホスファチジン酸、及びPEG修飾ジアルキルグリセロールからなる非限定的な群から選択されるPEG脂質を使用し、一方で、構造化脂質は、コレステロールフェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、ウルソール酸、又はアルファ-トコフェロールを含み得る。脂質構成要素は、1つ以上のリン脂質、例えば、1つ以上の(ポリ)不飽和脂質を含み得る。一般に、かかる脂質は、リン脂質部分及び1つ以上の脂肪酸部分を含み得る。
【0031】
上述のように、ポリマーベースの非ウイルス性送達ベクターもまた、ポリヌクレオチド、特にmRNA及びプラスミドDNAの送達ベクターとして本発明で企図される。ポリマーは、生分解性及び/又は生体適合性であってもよく、限定されないが、ポリアミン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカルバメート、ポリ尿素、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリアセチレン、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリイソシアネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びポリアリレートから選択されてもよい。例えば、ポリマーは、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、エチレン酢酸ビニルポリマー(EVA)、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(L-乳酸-コ-グリコール酸)(PLLGA)、ポリ(D,L-ラクチド)(PDLA)、ポリ(L-ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-カプロラクトン)、ポリ(D,L-ラクチド-コーカプロラクトン-コ-グリコリド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-PEO-コ-D,L-ラクチド)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-PPO-コ-D,L-ラクチド)、ポリアルキルシアノアクラレート(polyalkyl cyanoacralate)、ポリウレタン、ポリ-L-リジン(PLL)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ポリエチレングリコール、ポリ-L-グルタミン酸、ポリ(ヒドロキシ酸)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、ポリ(エステルアミド)、ポリアミド、ポリ(エステルエーテル)、ポリカーボネート、ポリアルキレン、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン、ポリアルキレングリコール、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリアルキレンオキシド(PEO)、ポリアルキレンテレフタレート、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル)、ポリハロゲン化ビニル、例えば、ポリ塩化ビニル)(PVC)、ポリビニルピロリドン、ポリシロキサン、ポリスチレン(PS)、ポリウレタン、誘導体化セルロース、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸のポリマー、例えば、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)(PMMA)、ポリ(エチル(メタ)アクリレート)、ポリ(ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(イソブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(ヘキシル(メタ)アクリレート)、ポリ(イソデシル(メタ)アクリレート)、ポリ(ラウリル(メタ)アクリレート)、ポリ(フェニル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、ポリ(オクタデシルアクリレート)、及びそのコポリマー及び混合物、ポリジオキサノン及びそのコポリマー、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリプロピレンフマレート、ポリオキシメチレン、ポロキサマー、ポリオキサミン、ポリ(オルト)エステル、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-コ-カプロラクトン)、及びトリメチレンカーボネートを含み得る。
【0032】
本発明の別の実施形態では、組成物の送達ベクターは、ウイルス性送達ベクター、すなわち、ポリヌクレオチドカーゴを運ぶように修飾されたウイルスである。好適なウイルスベクターとしては、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス、水疱性口内炎ウイルス、ワクシニアウイルス、アルファウイルス、フラビウイルス、ロタウイルス、レトロウイルス、単純ヘルペスウイルス、呼吸器多核体ウイルス、ウイルス様粒子(VLP)、又はポリヌクレオチドカーゴに好適な任意の他のウイルス性送達ベクターが挙げられる。好ましい実施形態では、本発明のウイルス性送達ベクターは、AAV又はレンチウイルスである。AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9を含む多くの天然血清型で存在し、これらは全て、本発明のポリヌクレオチドのための好適なウイルス担体である。また、様々な組換え及び修飾AAV血清型が存在し、これらの全てのバリアントも、本発明の文脈における適用に適する。AAV血清型の選択は、主に、ポリヌクレオチドカーゴで形質導入することを望む標的細胞に関連する考慮事項によって行われる。例えば、AAV7、AAV8、及びAAV9は、肝臓に形質導入する際に非常に効率的であり、これは、ポリヌクレオチドカーゴの転写及び翻訳の結果として、融合タンパク質を含む操作されたEVの産生をもたらすため、本発明の好ましい実施形態である。AAV1、AAV6、AAV7、AAV8、及びAAV9は、問題の融合タンパク質を含む操作されたEVの産生のために筋肉細胞を標的化することができるため、これも好適なウイルスベクターである。中枢神経系細胞の標的化は、AAV1、AAV2、AAV4、AAV5、AAV8、及びAAV9を使用して最もよく達成され、これにより、中枢神経系における療法用途のために、POIを含む融合タンパク質を含む操作されたEVの産生がもたらされ得る。レンチウイルスは、本発明のポリヌクレオチドのための別の適切なウイルス性送達ベクターであり、AAVよりも大きな導入遺伝子(すなわち、ポリヌクレオチド)を運ぶことができるという利点を有する。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の送達ベクターは、ウイルス様粒子(VLP)である。VLPは、天然ウイルスの組織及び構成を模倣する、20~800nmの範囲のサイズを有する自己組織化したポリペプチド構造であるが、ウイルスゲノムを欠いているため、より安全かつより安価な薬物送達小胞を産生する可能性を有する。VLPは、自然に組織化する少なくとも1つの構成要素から形成される、自己組織化した粒子であり、その構成要素は、ポリペプチド又は非ペプチド化合物であり得る。VLPは、1つ以上のペプチドで構成されていてもよく、1つ以上のペプチドは、同じポリペプチドであってもよく、又は異なるポリペプチドであってもよい。ポリペプチドは、ウイルス構造化ポリペプチドであってもよく、したがって、VLPは、ウイルス粒子に類似していてもよい。ウイルス構造化ポリペプチドは、天然に存在するウイルスポリペプチド又はその修飾ポリペプチドであり得る。ウイルスポリペプチドは、カプシド及びエンベロープタンパク質を含む、天然に存在するウイルス構造化ポリペプチドであってもよい。例えば、エンベロープタンパク質は、E3、E2、6K、及びE1からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質を含んでいてもよく、並びに/又はカプシドタンパク質は、VP1、VP2、VP3、又はVP4のうちの少なくとも1つであり得る。VLPを構成するウイルスタンパク質は、限定されないが、C型肝炎、アルファウイルス、Parvoviridae(例えば、アデノ随伴ウイルス)、Retroviridae(例えば、HIV)、Flaviviridae(例えば、C型肝炎ウイルス)、Paramyxoviridae(例えば、ニパ)、及びバクテリオファージ(例えば、Qβ、AP205)を含む多種多様なウイルスファミリーに由来し得る。VLPは、細菌、哺乳動物細胞株、昆虫細胞株、酵母及び植物細胞を含む複数の細胞培養系において産生され得る。
【0034】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクター及び非ウイルスベクターを、有利には、例えば、AAV等のウイルス及び脂質ナノ粒子又はその類似のもの、又は任意の種類の非ウイルス性送達ベクターと組み合わせたウイルス構成要素を含む、ハイブリッドベクターに組み合わせてもよい。一般に、ウイルス性送達技術及び非ウイルス性送達技術は両方とも、標的細胞に対するポリヌクレオチドの送達について、よく知られており、十分に理解されており、したがって、当業者は、GMP製造を実施するために商業的エンティティからの契約製造サービスを活用する方法を含め、これらのベクターの製造プロセスに十分に精通している。
【0035】
所望の送達ベクターに応じて、本発明の組成物のポリヌクレオチドカーゴは、RNA又はDNA、又はRNA及びDNAの両方を含んでいてもよく、これらは両方とも、一本鎖又は二本鎖のいずれかであり得る。例えば、組成物が、AAVウイルスの形態のウイルス性送達ベクターを利用する場合、ポリヌクレオチドは、AAVゲノムのフォーマットである一本鎖DNAであることが必要であり、一方で、ウイルス性送達ベクターが、レンチウイルス等のレトロウイルスである場合、ポリヌクレオチドは、一本鎖RNA分子である。本発明の組成物が、ウイルス性送達ベクターを利用している場合、操作されたEVのインビボでの所与の標的細胞からの産生は、EV産生細胞の本質的に安定な形質導入の結果として、長期間にわたって持続される。例えば、AAVウイルスベクターの場合、導入遺伝子の発現は、特に、非分裂組織において、数十年間続く場合がある。しかしながら、(治療用POIを送達するための)融合タンパク質から、組成物がポリヌクレオチドを送達する細胞によって産生される操作されたEVへの短期間の一過性の発現及び翻訳が望ましい場合、LNP、リポソーム、ポリマー系ベクター又はCPP等の非ウイルスベクターが好ましい場合がある。一本鎖の直鎖又は環状mRNA又はDNA(例えば、プラスミドDNA)は、LNP若しくはリポソーム系送達ベクターと組み合わせって、又はCPPベクターとともに、特に有利な実施形態である。mRNAポリヌクレオチドは、好ましくは、より一般的に、安定性を増加させ、免疫原性を低下させ、PK/PD特性を改善するように修飾される。したがって、本発明のポリヌクレオチドカーゴは、限定されないが、直鎖mRNA、環状mRNA、直鎖DNA、環状DNA、プラスミドDNA、直鎖RNA、環状RNA、自己増幅RNA若しくはDNA、ウイルスゲノム、又は上述のいずれかの修飾態様、並びに任意の他の好適なポリヌクレオチドカーゴからなる群から選択され得る。
【0036】
特定の実施形態では、送達ベクターは、LNPであり、カーゴ核酸は、mRNAであるか、送達ベクターは、LNPであり、カーゴ核酸は、プラスミドであるか、送達ベクターは、VLPであり、カーゴ核酸は、mRNAであるか、又は送達ベクターは、LNPであり、カーゴ核酸は、プラスミドである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態では、組成物のポリヌクレオチドカーゴによってコードされる融合タンパク質は、少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つの目的のタンパク質(POI)を含む。EVポリペプチドは、本質的に、所与のEV産生細胞によって産生されるEVへと融合タンパク質を輸送することができるアミノ酸の任意のタンパク質、領域、ドメイン、モチーフ、又は配列若しくは伸長部である。EVポリペプチドという用語の一般性を限定することなく、本発明による融合タンパク質に含まれる好ましいEVポリペプチドは、膜貫通EVポリペプチドであり得る。具体的な好ましいEVポリペプチドは、以下の非限定的な例からなる群から選択され得る。CD9、CD53、CD63、CD81、CD54、CD50、FLOT1、FLOT2、CD49d、CD71、CD133、CD138、CD235a、AAAT、AT1B3、AT2B4、ALIX、アネキシン、BASI、BASP1、BSG、シンテニン-1、シンテニン-2、Lamp2、Lamp2a、Lamp2b、TSN1、TSN3、TSN4、TSN5 TSN6、TSN7、TSPAN8、TSN31、TSN10、TSN11、TSN12、TSN13、TSN14、TSN15、TSN16、TSN17、TSN18、TSN19、TSN2、TSN4、TSN9、TSN32、TSN33、TNFR、TfR1、シンデカン-1、シンデカン-2、シンデカン-3、シンデカン-4、、CD37、CD82、CD151、CD224、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、CLIC1、CLIC4、インターロイキン受容体、CD2、CD3エプシロン、CD3ゼータ、CD13、CD18、CD19、CD30、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD53、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD 274、CD362、COL6A1、AGRN、EGFR、FPRP、GAPDH、GLUR2、GLUR3、GP130、GPIアンカータンパク質、GTR1、HLAA、HLA-DM、HSPG2、ITA3、ラクトアドヘリン、L1CAM、LAMB1、LAMC1、LIMP2、MYOF、ARRDC1、ATP2B2、ATP2B3、ATP2B4、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、ATP1A2、ATP1A3、ATP1A4、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、ATP1A1、ATP1B3、ATP2B1、LFA-1、LGALS3BP、Mac-1アルファ、Mac-1ベータ、MFGE8、MARCKSL1等のミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)タンパク質ファミリーのメンバー、マトリックスメタロプロテイナーゼ-14(MMP14)、PTGFRN、BASP1、MARCKS、MARCKSL1、、PRPH2、ROM1、SLIT2、SLC3A2、SSEA4、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、TFR1、UPK1A、UPK1B、VTI1A、VTI1B、及び任意の他のEVポリペプチド、並びにそれらの任意の組み合わせ、誘導体、ドメイン、バリアント、変異体、又は領域。その機能を変化させるために、EVポリペプチドの野生型配列に、変異、先端切断、リンカー又は付加物を導入してもよく、例えば、本発明による好ましい変異体は、235位のチロシンをアラニンで置き換えたテトラスパニンCD63の変異である(CD63/Y235Aと示される)。EVタンパク質の使用は、EVへの融合タンパク質のローディングを駆動する効果を有し、その結果、POIがEVに位置し、その後、EV産生細胞によって分泌されるだけではなく、融合タンパク質を含むEVの産生も、送達されたポリヌクレオチドカーゴを発現し、翻訳するためにEV産生細胞に対して及ぼされる圧力によって増加する。特に有利なEVポリペプチドとしては、CD63、CD81、CD9、CD82、CD44、CD47、CD55、LAMP2B、LIMP2、ICAM、インテグリン、ARRDC1、シンデカン、シンテニン、PTGFRN、BASP1、MARCKS、MARCKSL1、TfR、及びAlix、並びにそれらの誘導体、ドメイン、バリアント、変異体、又は領域が挙げられる。いくつかの実施形態では、遺伝的に操作されたEVへの融合タンパク質のローディングを増強するために、EVポリペプチドを、種々のサイトカイン受容体からの膜貫通ドメイン(例えば、TNFR及びgp130)と組み合わせてもよい。
【0038】
本発明による融合タンパク質に含まれるPOIは、通常、酵素、受容体、腫瘍抑制因子又は転写因子等の核酸相互作用タンパク質、又は所与の疾患の文脈における薬理学的効果を媒介することができる任意の他の適切なタンパク質等の薬理学的に活性な薬剤である。POIは、酵素、トランスポータータンパク質、膜貫通タンパク質、構造化タンパク質、転写因子タンパク質、腫瘍抑制タンパク質、核タンパク質、受容体タンパク質、タンパク質結合タンパク質、核酸結合タンパク質、ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、シャペロンタンパク質、翻訳調節タンパク質、転写規則タンパク質、毒素タンパク質、結合タンパク質、分子担体タンパク質、免疫系タンパク質、代謝タンパク質、シグナル伝達タンパク質、核酸結合タンパク質、ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、及びタンパク質結合タンパク質、又は任意の他の種類のタンパク質等の非限定的な例からなる群から選択され得る。好ましい実施形態では、POIは、酵素、トランスポーター、シャペロン、膜貫通タンパク質、構造化タンパク質、腫瘍抑制剤等の核酸結合タンパク質、転写因子、ヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cas6、メガヌクレアーゼ等)、リコンビナーゼ、及びタンパク質結合タンパク質からなる群から選択される療法用タンパク質である。
【0039】
本発明の融合タンパク質は、有利な実施形態では、操作されたEVに、インビボでの薬理学的挙動、薬物動態的挙動、又は生体内分布挙動を増強するための追加の特性を付与することを意図した様々なドメインを更に含み得る。例えば、融合タンパク質は、例えば、標的化ペプチド、一本鎖抗体誘導体(例えば、VHH、VNAR、アルファボディ、アフィボディ、センチリン、重鎖のみの抗体、ヒューマボディ、又はナノボディ)、又は任意の他の形態の標的化エンティティの形態で標的化ドメインを含有するように設計することができる。融合タンパク質に融合した標的化部分を有する融合タンパク質の非限定的な例は、血液脳関門上のトランスフェリン受容体を標的化するVHHと、EVポリペプチドLamp2B及び所与のPOI、好ましくは、中枢神経系において薬理学的活性を有するものとの間の融合である。更に、標的化部分を使用して、EVを細胞、細胞内位置、組織、器官、又は他の身体区画に標的化し得る。標的化され得る器官及び細胞型としては、脳、神経細胞、血液脳関門、筋肉組織、眼、肺、肝臓、腎臓、心臓、胃、腸、膵臓、赤血球細胞、B細胞及びT細胞を含む白血球細胞、リンパ節、骨髄、脾臓、並びにがん細胞が挙げられる。標的化は、例えば、標的化ペプチドの使用等の様々な手段によって達成することができる。かかる標的化ペプチドは、数アミノ酸長~数百アミノ酸長のいずれかの範囲、例えば、3~200個のアミノ酸、3~100個のアミノ酸、5~30個のアミノ酸、5~25個のアミノ酸の間隔、例えば7個のアミノ酸、12個のアミノ酸、20個のアミノ酸等であってもよい。本発明の標的化ペプチドはまた、受容体、受容体リガンド等の全長タンパク質を含み得る。例示的な標的化部分としては、RVG、NGF、メラノトランスフェリン及びscFv FC5等の脳標的化部分が挙げられる。ペプチド及び筋肉標的化には、筋肉特異的ペプチド(MSP)等の部分が含まれる。
【0040】
別の有利な実施形態では、融合タンパク質は、融合タンパク質からのPOIの放出を可能にするために、少なくとも1つの切断可能ドメインを更に含む。切断可能ドメインの非限定的な例としては、アミノ酸配列中にプロテアーゼ切断部位を有するドメイン、又は自己切断性であるシス切断ドメインが挙げられる。本発明による好適な放出ドメインは、インテイン等のシス切断配列、Kaede、KikGR、EosFP、tdEosFP、mEos2、PSmOrange、GFP様Dendraタンパク質であるDendra及びDendra2、CRY2-CIBN等の光誘導性の単量体又は二量体の放出ドメインであり得る。代替的に、核局在化シグナル(NLS)-核局在化シグナル結合タンパク質(NLSBP)(NLS-NLSBP)放出系を用いてもよい。プロテアーゼ切断部位もまた、融合ポリペプチドの所望の機能性に応じて、プロテアーゼトリガー性放出等のために融合タンパク質に組み込まれ得る。核酸カーゴ(例えば、mRNA)に結合し、これをEVに輸送するPOIの場合には、特定の核酸切断ドメインが含まれてもよい。核酸切断ドメインの非限定的な例としては、エンドヌクレアーゼ、例えば、Cas6、Cas13、操作されたPUFヌクレアーゼ、部位特異的RNAヌクレアーゼ等が挙げられる。自己切断ドメインの好ましい実施形態としては、インテイン等のシス切断ドメインが挙げられる。自己切断ドメインは、標的細胞区画、例えば、細胞質、ミトコンドリア、核、及び/又はエンドリソソーム系において可溶性である必要がある酵素と組み合わせたときに、特に有利である。かかる融合タンパク質の非限定的な例としては、EVポリペプチドCD63、CD9、CD81、Lamp、PTGFRN、MARCKS、MARCKSL1、BASP1、自己切断インテイン、及びPOI、例えば、リソソーム蓄積障害(LSD)酵素、尿素サイクル酵素、又は先天性代謝異常において破壊若しくは変異される任意の酵素(かかる酵素の非限定的な例としては、N-アセチルグルタミン酸合成酵素、カルバモイルリン酸合成酵素、オルニチントランスカルバモイラーゼ、カルバミルリン酸合成酵素、アルギノコハク酸シンターゼ、アルギノコハク酸合成酵素、アルギニノコハク酸リアーゼ(argininosuccinic acid lyase)(アルギニノコハク酸リアーゼ(argininosuccinate lyase)としても知られている)、アルギナーゼ、ミトコンドリアオルニチントランスポーター、オルニチントランスロカーゼ、シトリン、フェニルアラニンデヒドロキシラーゼ、シスタチオニンベータシンターゼ、メチルマロニルCoAムターゼ、メチルマロニルCoAエピメラーゼ、イミグルセラーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロン酸-2-スルファターゼ、イデュルスルファーゼ、アリールスルファターゼ、ガルスルファーゼ、酸アルファグルコシダーゼ(GAA)、スフィンゴミエリナーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、ガラクトシルセラミダーゼ、セラミダーゼ、アルファ-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リソソーム酸リパーゼ、酸スフィンゴミエリナーゼ、NPC1、NPC2、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニド-N-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン 6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、ヒアルロニダーゼ、アルファN-アセチルノイラミニダーゼ、GlcNAcホスホトランスフェラーゼ、ムコリピン1、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、パルミトイルタンパク質チオエステラーゼ1、トリペプチジルペプチダーゼ1、バッテニン、リンクリン(linclin)、アルファ-D-マンノシダーゼ、ベータ-マンノシダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、アルファ-L-フコシダーゼ、シスチノシン、カテプシンK、シアリン、及びヘキソアミニダーゼ)、並びに/又は任意の他の細胞内酵素若しくはタンパク質が挙げられる。
【0041】
更に、操作されたEVの循環時間及び具体的には血漿半減期を更に延長するために、融合タンパク質は、好適な血漿及び/又は血液タンパク質に結合するポリペプチドドメインを更に含み得る。これの例示的な実施形態は、細胞によって産生され、細胞外環境に分泌される操作されたEVが、血清アルブミン(ヒト態様であるヒト血清アルブミン)に結合するために、アルブミン結合ポリペプチドの融合タンパク質に含めることである。アルブミン結合ポリペプチド又はアルブミン結合ドメイン(ABD)という用語は、本明細書において互換的に使用され、アルブミンに結合することができる任意のタンパク質、ペプチド、抗体若しくはナノボディ、又はその断片若しくはドメインに関すると理解することができる。ABDは、任意の種に由来し得る。好ましくは、ABPは、ヒト血清アルブミンに対して特異的な結合親和性を有する。一般に知られているABDは、Peptostreptococcus magnus由来のPABタンパク質、並びにC群及びG群の連鎖球菌由来のプロテインGに由来するアルブミン又はABDに対して上昇される抗体又はナノボディであり、これらの両方は、高い親和性でアルブミンに結合する。ABDは、例えばグラム陽性細菌によって発現されることが多い様々な表面タンパク質にみられる小さな3個の螺旋のタンパク質ドメインである。天然にみられるアルブミン結合ドメインは、異なるアルブミンに対するより広範な特異性、安定性の増加、免疫原性の低下、又は結合親和性の改善を達成するために、特異的変異誘発によって操作されてもよい。本発明の融合タンパク質に含まれるABDはまた、抗体、scFv)、ナノボディ、重鎖抗体(hcAb)、VHH若しくはVNAR等の一本鎖ドメイン抗体(sdAb)、又はアルブミンに結合することができるこれらの断片であり得る。sdAb及び抗体断片は、融合タンパク質に他の追加のドメインを導入することが可能なその小さなサイズ、並びに単純な構築物設計及び発現/翻訳に起因して、特に好ましい。アルブミン結合を媒介するために、本発明によるABDは、ポリヌクレオチド内に操作され、したがって、得られる融合タンパク質は、EVの表面上に存在するため、主に循環系にみられるアルブミンに結合することができる。ABDは、任意の数の方法でEVの表面上に提示されてもよい。ただし、ABDは、アルブミンと結合することができるようにEVの外側表面上に露出している。
【0042】
重要なことに、本発明の組成物は、インビボでのEV産生細胞へのポリヌクレオチド構築物のウイルス性及び非ウイルス性送達を可能にし、POIがその中に組み込まれたEVの産生をもたらし、したがって、最終的に様々な標的組織へのPOIのEV媒介性送達をもたらす。インサイチュ又は内因性の薬物送達に対するこのアプローチは、EV療法薬に対する完全に新しいアプローチを表し、操作されたEVに、薬理学的に活性な薬剤(POIの形態で、又はPOIがEVに結合し、EVに輸送する薬剤の形態で)、及び対象自体のEVの特徴の両方を付与し、患者からのEVの採取を必要とすることなく、本質的に自己のEV療法を可能にする。POIを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組成物を利用する能力は、得られた患者由来EVが本質的に良好に忍容性であるだけではなく、それらはまた、優れたPK/PD特性を示し、製造するためのコストが著しく低く、修飾mRNAが、組成物中で非ウイルスベクターとともにポリヌクレオチドカーゴとして使用される場合に、例えばmRNA療法薬に匹敵する商品コストを有することを意味する。本発明の好ましい実施形態では、組成物に含まれるポリヌクレオチドから産生される融合タンパク質を含むEVは、患者細胞特異的EVであり、好ましくは、肝臓細胞、筋肉細胞及び/又は中枢神経系若しくは脳の細胞等の細胞型に由来する。したがって、好ましい代替物としては、限定されないが、遺伝的に操作された患者由来EVが挙げられ、好ましくは、患者の肝臓細胞由来の遺伝的に操作されたEV(すなわち、遺伝的に操作された患者肝臓細胞由来EV)、患者のCNS若しくは脳細胞由来のもの(すなわち、遺伝的に操作された患者CNS又は脳細胞由来EV)、又は患者の筋肉細胞由来のもの(すなわち、遺伝的に操作された患者筋肉細胞由来EV)が挙げられる。
【0043】
好ましい実施形態では、本発明の組成物は、脂質ナノ粒子である送達ベクターと、mRNA、自己増幅RNA又はプラスミドDNAのいずれかであるポリヌクレオチドカーゴと、を含む。プラスミドDNA(pDNA)は、エピソームによって標的細胞に送達され、対応する融合タンパク質の長期発現をもたらし、融合タンパク質を含む操作されたEVの産生をもたらす能力のために、有利である。ポリヌクレオチドが、二本鎖DNAで構成されるpDNAである場合、ポリヌクレオチドは、分子生物学のセントラルドグマの従来のステップ、すなわち、DNAからRNAへの転写、その後、種々のプロセシングステップ及びRNA(すなわち、mRNA)から得られた融合タンパク質への翻訳を介して、対応する融合タンパク質へと変換される必要がある。明確にするために、本発明の文脈で使用される翻訳及び発現という用語(本明細書で互換的に使用される)は、DNAからRNAへの転写、RNAからDNAへの逆転写(レンチウイルス等のレトロウイルスによって実行されるような)、RNAからmRNAへのプロセシング、mRNAから融合タンパク質への翻訳、及び任意の他の中間ステップ又はプロセスを含め、ポリヌクレオチド配列(DNA、RNA、又はその2つの組み合わせを含み得る)をアミノ酸配列に変換するのに必要な全てのステップを含むと理解すべきである。pDNAに加えて、融合タンパク質を翻訳し、それによって、融合タンパク質を含む操作されたEVを作製する持続的な能力を有する他の形態のポリヌクレオチドが存在する。そのような他の形態の長期的なポリヌクレオチドには、自己増幅RNA、ウイルスゲノム、環状mRNA、エピソーム、カプシドを含まないAAVゲノム、及び他の形態のポリヌクレオチド等の自己複製ポリヌクレオチドが含まれる。
【0044】
上述のように、本発明の好ましい実施形態は、ポリヌクレオチドとしての脂質ナノ粒子送達ベクター及びmRNAである。mRNAは、天然に存在するか、又は天然に存在しないmRNAであり得る。mRNAは、1つ以上の修飾された核酸塩基、ヌクレオシド、又はヌクレオチドを含み得る。mRNAの核酸塩基は、プリン若しくはピリミジン等の有機塩基、又はその誘導体である。核酸塩基は、標準的塩基(例えば、アデニン、グアニン、ウラシル、及びシトシン)、又は限定されないが、アルキル、アリール、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルキルオキシ、及び/又はチオ置換を含む1つ以上の置換又は修飾、1つ以上の縮合環又は開環、酸化、及び/又は還元を含む非標準的塩基若しくは修飾された塩基であり得る。したがって、核酸塩基は、アデニン、グアニン、ウラシル、シトシン、7-メチルグアニン、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、チミン、シュードウラシル、ジヒドロウラシル、ヒポキサンチン、及びキサンチンからなる非限定的な群から選択され得る。mRNAのヌクレオシドは、糖分子(例えば、ペントース、リボース、アラビノース、キシロース、グルコース、ガラクトース、又はそれらのデオキシ誘導体等の5炭素糖又は6炭素糖)を核酸塩基と組み合わせて含む化合物である。ヌクレオシドは、標準的ヌクレオシド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、5-メチルウリジン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、デオキシウリジン、及びチミジン)若しくはそれらの類似体であってもよく、又は限定されないが、アルキル、アリール、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルキルオキシ、及び/又はチオ置換を含む1つ以上の置換又は修飾、1つ以上の縮合環又は開環、酸化、及び/又は核酸塩基及び/若しくは糖構成要素の還元を含んでいてもよい。mRNAのヌクレオチドは、ヌクレオシド及びホスフェート基又は代替基(例えば、ボラノホスフェート、チオホスフェート、セレノホスフェート、ホスホネート、アルキル基、アミデート、及びグリセロール)を含有する化合物である。ヌクレオチドは、標準的ヌクレオチド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、5-メチルウリジン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジン、デオキシウリジン、及びチミジンモノホスフェート)若しくはそれらの類似体であってもよく、又は限定されないが、アルキル、アリール、ハロ、オキソ、ヒドロキシル、アルキルオキシ、及び/又はチオ置換を含む1つ以上の置換又は修飾、1つ以上の縮合環又は開環、酸化、及び/又は核酸塩基、糖、及び/若しくはホスフェート若しくは代替構成要素の還元を含んでいてもよい。ヌクレオチドは、1種以上のホスフェート基又は代替基を含み得る。例えば、ヌクレオチドは、ヌクレオシド及びトリホスフェート基を含み得る。「ヌクレオシドトリホスフェート」(例えば、グアノシントリホスフェート、アデノシントリホスフェート、シチジントリホスフェート、及びウリジントリホスフェート)は、標準的ヌクレオシドトリホスフェート、又はその類似体若しくは誘導体を指していてもよく、本明細書に記載の1つ以上の置換又は修飾を含み得る。例えば、「グアノシントリホスフェート」は、標準的グアノシントリホスフェート、7-メチルグアノシントリホスフェート、又は本明細書に包含される任意の他の定義を含むと理解されるべきである。mRNAは、5’非翻訳領域、3’非翻訳領域、及び/又はコード配列若しくは翻訳配列を含んでいてもよく、これらが翻訳され、本発明の融合タンパク質を作製する。mRNAは、数十、数百、又は数千の塩基対を含む任意の数の塩基対を含み得る。任意の数(例えば、全て、いくつか、又はなし)の核酸塩基、ヌクレオシド、又はヌクレオチドは、標準的種、置換されたもの、修飾されたもの、又はそれ以外の天然に存在しないものの類似体であり得る。特定の実施形態では、特定の核酸塩基の種類の全てが修飾され得る。例えば、mRNA中の全てのシトシンは、5-メチルシトシンであり得る。いくつかの実施形態では、mRNAは、5’キャップ構造、鎖終結ヌクレオチド、ステムループ、ポリA配列、及び/又はポリアデニル化シグナルを含み得る。キャップ構造又はキャップ種は、その5’末端でmRNAをキャップするリンカーによって連結される2つのヌクレオシド部分を含み、天然に存在するキャップ、天然に存在しないキャップ若しくはキャップ類似体、又は逆転防止キャップ類似体(ARCA)から選択され得る化合物である。キャップ種は、1つ以上の修飾されたヌクレオシド及び/又はリンカー部分を含み得る。例えば、天然のmRNAキャップは、その5’位にあるトリホスフェート結合(例えばm7G(5’)ppp(5’)G、一般的にm7GpppGと書かれる)によって連結する、グアニンヌクレオチド及び7位でメチル化されたグアニン(G)ヌクレオチドを含み得る。キャップ種はまた、逆転防止キャップ類似体であってもよい。考えられるキャップ種の非限定的な例としては、m7GpppG、m7Gpppm7G、m73’dGpppG、iri27’03’GpppG、iri27’03’GppppG、iri27’02’GppppG、m7Gpppm7G、m73’dGpppG、iri27’03’GpppG、iri27’03’GppppG、及びm27 02’GppppGが挙げられる。mRNAは、代わりに、又は追加的に、鎖終結ヌクレオシドを含み得る。例えば、鎖終結ヌクレオシドは、それらの糖基の2’位及び/又は3’位で脱酸素化されたヌクレオシドを含み得る。このような種としては、3’-デオキシアデノシン(コルジセピン)、3’-デオキシウリジン、3’-デオキシシトシン、3’-デオキシグアノシン、3’-デオキシチミン、及び2’,3’-ジデオキシヌクレオシド、例えば、2’,3’-ジデオキシアデノシン、2’,3’-ジデオキシウリジン、2’,3’-ジデオキシシトシン、2’,3’-ジデオキシグアノシン、及び2’,3’-ジデオキシチミンが挙げられ得る。mRNAは、代わりに、又は追加的に、ヒストンステムループ等のステムループを含み得る。ステムループは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又はそれ以上のヌクレオチド塩基対を含み得る。例えば、ステムループは、4、5、6、7、8、9個のヌクレオチド塩基対を含み得る。ステムループは、mRNAの任意の領域に位置していてもよい。例えば、ステムループは、非翻訳領域(5’非翻訳領域若しくは3’非翻訳領域)、コード領域、又はポリA配列若しくは尾部の中に、その前に、又はその後に位置してもよい。mRNAは、代わりに、又は追加的に、ポリA配列及び/又はポリアデニル化シグナルを含み得る。ポリA配列は、アデニンヌクレオチド、又はその類似体若しくは誘導体を完全に、又はほとんど含み得る。ポリA配列は、mRNAの3’非翻訳領域に隣接して位置する尾部であってもよい。本発明の修飾されたmRNAは、コード領域(融合タンパク質をコードし、コドン最適化され得る)に加えて、ステムループ、鎖終結ヌクレオシド、miRNA結合部位、ポリA配列、ポリアデニル化シグナル、3’及び/又は5’非翻訳領域(3’UTR及び/若しくは5’UTR)及び/又は5’キャップ構造のうちの1つ以上を含み得る。上述のように、様々なヌクレオチド修飾が、好ましくは、mRNAに組み込まれ、翻訳の増加、免疫原性の低下、及び安定性の増加のために、mRNAを修飾する。好適な修飾されたヌクレオチドとしては、限定されないが、N1-メチルアデノシン(m1A)、N6-メチルアデノシン(m6A)、5-メチルシチジン(m5C)、5-メチルウリジン(m5U)、2-チオウリジン(s2U)、5-メトキシウリジン(5moU)、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)が挙げられる。これらのmRNA修飾のうち、m5C及びψは、mRNAの免疫原性を低下させるとともにインビボでの翻訳効率を増加させるため、最も好ましい。本発明の好ましい実施形態では、本明細書の組成物は、ポリヌクレオチドカーゴとして修飾mRNAを含むLNP又はリポソーム等の非ウイルス性送達ベクターを含み、mRNAが、少なくとも50%のm5C及び50%のψ若しくはm1ψ、好ましくは少なくとも75%のm5C及び75%のψ若しくはm1ψ、更により好ましくは90%のm5C及び90%のψ若しくはm1ψ、又は更により好ましくはm5C及びψ若しくはm1ψを使用した100%の修飾を有するように修飾される。かかる修飾mRNAポリヌクレオチドは、好ましくは、(i)EVポリペプチド、例えば、テトラスパニン(例えば、CD63、CD81、CD9)、PTGFRN、又はLamp2、(ii)自己切断ポリペプチドドメイン、例えば、シス切断ドメイン、例えば、インテイン、及び(iii)先天性代謝異常から選択される疾患において欠損している酵素の形態であるPOI、例えば、PAH、ASL、ASS、GAA、GLA等を含む融合タンパク質をコードする。別の好ましい実施形態では、構成要素(i)、(ii)及び(iii)を、(iv)操作されたEVの外表面に発現する標的化エンティティと更に組み合わせ、それによって、好ましい標的細胞及び/又は組織への送達を誘導することができ、(v)血清アルブミンに結合するポリペプチドドメインと更に組み合わせ、POIを含む操作されたEVの既に長い半減期を更に延長することができる。
【0045】
第2の態様では、本発明は、本明細書に記載の組成物(すなわち、ポリヌクレオチドが発現されると、融合タンパク質の翻訳及び融合タンパク質を含むEVの生成を引き起こす、融合タンパク質をコードする送達ベクター及びポリヌクレオチドを含む組成物)を含む、薬学的組成物に関する。本発明の組成物は、既に薬学的目的に好適であるが、更なるステップでは、薬学的に許容される製剤に製剤化され得る。例えば、本発明の組成物は、限定されないが、生理食塩水、分散媒体、希釈剤、分散助剤、懸濁剤、造粒助剤、崩壊剤、充填剤、流動剤、液体ビヒクル、結合剤、表面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、緩衝剤、潤滑剤、油、保存剤、及び他の種を含む水性溶媒等の1つ以上の溶媒を含む、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤又は補助成分を用いて製剤化され得る。ワックス、バター、着色剤、及びコーティング剤等の賦形剤も含まれ得る。例示的な賦形剤としては、分解又は活性の喪失を低減することを意図した賦形剤、例えば、タンパク質、例えば、ヒト血清アルブミン、ポリオール、例えば、グリセロール、ソルビトール及びエリスリトール、アミノ酸、例えば、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、プロリン、グリシン、ヒスチジン及びメチオニン、ポリマー、例えば、ポリビニルピロリドン及びヒドロキシプロピルセルロース、界面活性剤、例えば、ポリソルベート80、ポリソルベート20及びプルロニックF68、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸及びアルファ-トコフェロール(ビタミンE)、緩衝剤、例えば、酢酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、ヒスチジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)、金属イオン/キレート剤、例えば、Ca2+、Zn2+及びEDTA、シクロデキストリン系、例えば、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン、並びにその他、例えば、ポリアニオン及び塩、安定化剤又は増量剤、例えば、ラクトース、トレハロース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、グリセロール、アルブミン、ゼラチン、マンニトール及びデキストラン、又は保存剤、例えば、ベンジルアルコール、m-クレゾール、フェノール、2-フェノキシエタノールが挙げられる。組成物及び薬学的組成物という用語は、本明細書において互換的に使用され、上述の組成物のうちの1つが企図されるとき、上述の組成物のうちの他方も企図される。
【0046】
本発明の薬学的組成物は、静脈内製剤、非経口製剤、又は任意の種類の修飾放出製剤として製剤化され得ることが想定され、経口製剤(錠剤、カプセル、又は液体)も可能である。特定の実施形態では、薬学的組成物は、液体形態である。投薬計画は、送達されるカーゴ、治療される疾患、及び当業者によって容易に決定されるであろう任意の追加の投与される療法に依存する。本発明の組成物は、複数回、すなわち、1回を超えるが、通常2回を超えて投与されるか、又は潜在的には慢性の長期治療のために、すなわち、慢性治療計画の一部として投与される(すなわち、数十~数百~数千回投与される)ことが想定される。投薬量は、ベクター及び/又はカーゴに依存し得るが、当業者によって容易に決定されるであろう。例示的な例としては、LNPの場合、0.001~10mg/kg(例えば、0.1~5mg/kg)の範囲、AAVの場合、1×10~1×1015vg/kg(例えば、1×1011~1×1013)の範囲、及びsaRNAの場合、0.001~10mg/kg(例えば、0.1~5mg/kg)の範囲が挙げられる。
【0047】
第3の態様では、本発明は、医薬に使用するための本発明による組成物に関する。好適な製剤、投与経路、投薬量、計画等は、本明細書に開示される薬学的組成物について記載されている通りである。より具体的には、本明細書の組成物は、本質的に任意の疾患、障害、状態、又は病気、好ましくは、遺伝的疾患、遺伝性疾患(遺伝的疾患及び非遺伝的遺伝性疾患の両方を含む)、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、がん、自己免疫疾患、心血管疾患、中枢神経系疾患、感染性疾患、及び炎症性疾患からなる群から選択されるものの治療及び/又は予防に使用するためのものであり得る。遺伝子欠陥から生じる多数の疾患、すなわち、所与のタンパク質の置き換え(遺伝子欠陥の結果として欠損しているか、又は欠陥がある)が、欠陥遺伝子によってコードされるべきであるタンパク質に対応するPOIを含む融合タンパク質を送達することによって達成することができる、このような疾患は、本発明の組成物及び得られる操作されたEVによる治療に特に適している。そのような操作されたEVに基づく補充療法は、本質的にEV媒介性タンパク質補充療法であるとみなすことができ、POIを、遺伝子欠陥を有する対象(すなわち、PKU、ASA、MMA、OTC、NPC、ポンペ病、ファブリー病、ゴーシェ病等の例えば先天性代謝異常を患う患者)の細胞によって分泌される操作されたEV中に存在するPOIの補助によって、細胞外環境だけではなく、細胞内(リソソームを含む)及び/又は膜環境へと送達することができるという固有の利点を有する。治療は、疾患、障害、状態、又は病気の緩和、及び/又は症状の改善を含み得る。予防は、疾患、障害、状態、又は病気の部分的又は完全な予防を含み得る。任意の成人又は小児のヒト患者集団は、治療又は予防のために考慮され得る。
【0048】
更なる実施形態では、本発明は、疾患の治療方法に使用するための本明細書の組成物であって、本方法が、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への翻訳の結果として、融合タンパク質を含むEVを産生し、分泌することができる標的細胞に組成物を投与することを含む、組成物に関する。上に示すように、ポリヌクレオチドから融合タンパク質への翻訳(組成物の送達のために標的細胞によって分泌される操作されたEVにロードされる)は、mRNAからタンパク質への実際の翻訳の前の様々なステップ、例えば、逆転写、転写、スプライシング、及び他の形態のRNAプロセシング、並びに自己複製ポリヌクレオチドカーゴの場合には、複製も含み得る。重要なことに、本発明の組成物を患者の標的細胞に投与することで、ポリヌクレオチドカーゴの翻訳の結果として、融合タンパク質を含む患者由来の操作されたEVを産生する患者の標的細胞をもたらし、このことはPOIを有する融合タンパク質が、EV中に存在し、次いで、患者の体内で局所的に、及び/又は全身的のいずれかで分泌されることを意味している。POIを含む融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVの産生は、POI(POI自体又はPOIが相互作用する任意の他の薬剤のいずれか)によって媒介される薬理学的活性が、本発明の組成物の標的である細胞に限定されるだけでなく、EVの天然の送達能力が、問題のPOIの送達のために利用されることを意味する。重要なことに、ポリヌクレオチドの発現から産生される融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVは、エクスビボ(すなわち、インビトロ)で産生されるEVと比較して、かなり延長された循環半減期を有する。このことは、患者由来EVの相同性の性質の結果であると推測されるが、患者の体内でインサイチュで産生され、分泌されたときに、遺伝的に操作された患者由来EVを覆い、及び/又はそれと会合すると予測される宿主因子の別個のコロナにも関連している可能性が高い。エクスビボで製造された遺伝的に操作されたEVは、この重要な属性を欠いており、したがって、インビボで異なる有利ではない生体内分布/薬物動態プロファイルを示す。
【0049】
重要なことに、商品コスト(COG)の観点から、本発明による治療方法は、インビトロでの遺伝的に操作されたEVの製造をスケールアップする必要はなく、適切な送達ベクターにおいて適切なポリヌクレオチドカーゴ分子の規制対応(すなわち、GMP)製造のみ、例えば、脂質ナノ粒子にロードされた修飾mRNAの製造を必要とする。このことは、COGが、従来のEV製造の場合と比べて、低く保たれる可能性があることを意味しており、また、組成物の繰り返し投与が、薬理学的及び薬学的に有利であるだけではなく、技術的及び商業的に実現可能であることも意味する。所望のPK/PDアウトカムに応じて、繰り返し投与は、同じ標的器官中の同じ標的細胞に対するものであってもよく、又は他の標的器官中の他の標的細胞に焦点を当てるものであってもよい。
【0050】
POIの薬理学的(すなわち、治療)活性が、EV送達によって媒介されるため、有意なEV産生を、好ましくは長期間にわたって刺激することが重要である。特定の標的器官は、高いEV産生をもたらすため、好ましい。有利な実施形態では、本発明の組成物は、肝臓、脾臓、肺、筋肉組織、中枢神経系の組織、骨髄、及び/又は好ましくは長時間にわたってEVを高速で分泌することができる任意の他の組織等の標的器官に対して、疾患の治療方法の一部として送達される。肝臓、特に、肝臓の肝細胞及び/又はマクロファージ(例えば、クッパー細胞)が、POIを含む融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVの全身循環への分泌のための「インサイチュバイオリアクター」として機能し、それによって、例えば、遺伝的疾患(例えば、尿素サイクル障害、リソソーム蓄積障害、又は他の先天性代謝異常)のための操作されたEV媒介性タンパク質補充療法の形態での全身薬理活性を媒介することができるため、肝臓は、本発明の組成物にとって好ましい標的器官である。
【0051】
別の態様では、本発明は、本発明の組成物を製造する方法に関する。この製造する方法は、典型的には、(i)適切なポリヌクレオチドカーゴを提供するステップと、(ii)ポリヌクレオチドカーゴを、選択される送達ベクターに組み込むステップと、を含む。上述のように、特定の組成物、特に、LNP又はリポソーム等の脂質ベースの送達ベクターに組み込まれる修飾mRNAが好ましい。mRNA含有組成物を製造するための方法は、(i)好適なヌクレオチド修飾を有するインビトロ転写(IVT)されたmRNAポリヌクレオチドカーゴ、及び高い翻訳を補助するためのポリヌクレオチドの適切な構成要素(例えば、UTR、5’キャップ、ポリ(A)テール等の上に詳細に記載するもの)を提供するステップと、(ii)LNP、リピドイド、リポプレックス、リポソーム、又は脂質エマルション等の好適な脂質ベースの送達ベクター中でIVT mRNAポリヌクレオチドカーゴを製剤化するステップと、を含み得る。当業者は、例えば、修飾mRNAポリヌクレオチドの長さ、修飾パターン、二次構造、及び標的細胞型等の因子に応じて使用する最適なLNP製剤をよく知っている。
【0052】
なお別の態様では、本発明は、哺乳動物細胞においてEVポリペプチド及びPOIを含む融合タンパク質を含む少なくとも1つのEVを産生する方法であって、本方法が、哺乳動物細胞を本明細書に記載の組成物と接触させた状態にすることを含み、哺乳動物細胞が、ポリヌクレオチドカーゴを対応する融合タンパク質へと翻訳することができ、融合タンパク質を含む哺乳動物細胞由来EVの産生をもたらす、方法に関する。上述のように、哺乳動物細胞は、哺乳動物の身体の任意の細胞、例えば、肝細胞又は肝臓マクロファージ(例えば、クッパー細胞)等の肝臓細胞であり得る。肝臓以外の器官における様々な他の細胞及び細胞型はまた、本発明の遺伝的に操作されたEVを産生する方法にとって重要である、「インサイチュバイオリアクター」として機能し得る。他の細胞型としては、筋肉細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、ニューロン、星状細胞、グリア細胞、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ、好中球、骨芽細胞、破骨細胞、脂肪細胞、内皮細胞、上皮細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、及び本質的に哺乳動物(例えば、ヒト)の身体の任意の細胞が挙げられる。
【0053】
更なる態様では、本発明は、少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つのPOIを含む融合タンパク質を含む患者由来EVを産生する方法であって、本方法が、患者の細胞に、本発明による組成物を投与するステップを含み、それによって、患者の細胞が、患者由来EVを産生する(すなわち、エクスビボ産生以外のEVのインビボ産生)、方法に関する。好適な製剤、投与経路、投薬量、計画等は、本明細書に開示される薬学的組成物について記載されている通りである。したがって、患者由来EVは、遺伝的に修飾された患者由来EVである。これらの患者由来EVは、順にPOI(これも患者に対して異種であり得る)を含む翻訳された融合タンパク質への設計されたポリヌクレオチドの発現から生じるという事実の結果として、患者に対して異種である。上述のように、患者細胞は、任意の細胞、好ましくは、肝細胞又は肝臓マクロファージ(例えば、クッパー細胞)等の肝臓細胞であり得る。肝臓以外の器官における様々な他の細胞及び細胞型はまた、本発明の患者に由来する遺伝的に操作されたEVを産生する方法にとって重要である、「インサイチュバイオリアクター」として機能し得る。他の細胞型としては、筋肉細胞、心筋細胞、平滑筋細胞、ニューロン、星状細胞、グリア細胞、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ、好中球、骨芽細胞、破骨細胞、脂肪細胞、内皮細胞、上皮細胞、腎臓細胞、膵臓細胞、及び本質的に患者の身体の任意の細胞が挙げられる。したがって、更なる実施形態では、本発明は、少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つのPOIを含む融合タンパク質を含む患者由来EVであって、患者由来EVが上述の方法によって製造されるものに関する。本発明は更に、医薬に使用するための、より具体的には、遺伝的疾患、遺伝性疾患、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、がん、感染性疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、及び炎症性疾患、並びにこれらの患者由来EVが薬理学的効果を発揮し得る任意の他の疾患からなる非限定的な群から選択される疾患の治療及び/又は予防に使用するためのこのような遺伝的に操作された患者由来EVに関する。
【0054】
別の態様では、本発明は、患者の標的細胞、標的器官若しくは器官系、標的区画、又は標的組織にPOIを送達する方法に関する。POIを送達する方法は、患者の細胞(多くの場合、プロデューサー細胞と呼ばれる)に、本発明による組成物を投与するステップを含み、それによって、患者のプロデューサー細胞は、POIを含む融合タンパク質を含む患者由来EVを産生し、患者由来EVは、POIを標的細胞に送達する。好適な製剤、投与経路、投薬量、計画等は、本明細書に開示される薬学的組成物について記載されている通りである。プロデューサー細胞による遺伝的に操作された患者由来EVのインビボ産生は、POIを含む患者特異的な(すなわち、自己の)操作されたEVをもたらし、次いで、患者由来の遺伝的に操作されたEVの標的である細胞に送達される。所与の標的細胞に対する患者由来EVの標的化は、所与の細胞型への固有の標的化の結果であってもよく、かつ/又は遺伝的に操作されたEVに対する標的化部分の導入の結果であってもよく、これは、通常、POIも含む融合タンパク質に標的化ポリペプチドを含ませることによって行われる。活性な操作された標的化の一例は、肝臓細胞に対するポリヌクレオチドを含む本発明の組成物の送達の結果として肝臓細胞において翻訳される、融合タンパク質への脳を標的とするポリペプチドの導入、その後の薬理学的効果を発揮するための融合タンパク質及びPOIを含む遺伝的に操作されたEVの産生であり得る。POIが送達される標的細胞は、プロデューサー細胞型と同じ細胞型、又は異なる細胞型であってよい。本発明の標的細胞としては、限定されないが、肝臓の細胞、脳細胞を含む中枢神経系細胞、免疫細胞、腫瘍細胞、筋肉細胞、腎臓細胞、膵臓の細胞、心臓の細胞、肺細胞、骨髄由来細胞、又は任意の他の細胞型が挙げられる。同様に、POIを含む融合タンパク質を含む遺伝的に操作された患者由来EVを産生するためのプロデューサー細胞は、本質的に哺乳動物の体内の任意の細胞であってもよく、例えば、肝臓の細胞、脳細胞を含む中枢神経系細胞、免疫細胞、腫瘍細胞、筋肉細胞、腎臓細胞、心臓の細胞、膵臓の細胞、肺細胞、骨髄由来細胞、又は任意の他の細胞型であってもよい。上述のように、本発明の好ましい実施形態は、(i)mRNA、環状mRNA、直鎖DNA、環状DNA、ドギーボーンDNA(dbDNA)、DNAプラスミド、直鎖RNA、環状RNA、自己増幅RNA若しくはDNA、ウイルスゲノム、又は上述のいずれかの修飾態様から選択されるポリヌクレオチドカーゴと、(ii)脂質系ベクターである非ウイルス性送達ベクターと、を含む組成物であって、これらの非ウイルス性送達組成物が、プロデューサー細胞からのEVの分泌を介する、標的細胞にPOIを送達するための方法の文脈でも好ましい、組成物に関する。上述のように、本発明のいくつかの実施形態では、非ウイルス性送達ベクターは、例えば、脂質系ベクター、ポリマー系ベクター、ペプチド系ベクター、又はベクターの任意の他の活性形態から選択される必要はないが、上述の非ウイルスベクターは、ポリヌクレオチドカーゴを標的細胞に送達することにより、ポリヌクレオチドによってコードされる融合タンパク質を保有する操作された自己患者由来EVへのポリヌクレオチド構築物の発現がもたらされる限り、任意の薬学的に許容される担体、例えば、生理食塩水溶液又は類似物から選択することができる。
【0055】
いくつかの好ましい実施形態では、1つより多いポリヌクレオチド、例えば、1つより多いmRNA(すなわち、異なるタンパク質をコードする2つ以上のmRNA)、又は1つのmRNA、自己増幅RNA及び1つのpDNAポリヌクレオチドが、本発明による組成物に含まれる。単に生理学的及び薬学的に許容される担体に基づく送達ベクターを含む、非ウイルス性送達ベクターは、このような組み合わせポリヌクレオチド療法のための好ましい送達ベクターである。薬物カーゴ(例えば、酵素又は膜貫通タンパク質等)をその後にコードするmRNAに対して結合するPOIを含む融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVをインビボで産生する能力は、比較的低い商品コストで、自己の長く続く安全なアプローチを介して、目的の組織に対する上述のmRNA薬物カーゴのEV媒介性送達に対する高度に洗練されたアプローチである。
【0056】
別の態様では、本発明は、疾患、障害又は状態を治療及び/又は予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、上述の方法が、本発明の組成物を対象に投与することを含み、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への翻訳が、POIを含む融合タンパク質を含む少なくとも1つのEVの産生をもたらす、方法に関する。任意の疾患、障害、又は状態が、治療及び/又は予防に好適な標的として企図される。治療は、疾患、障害若しくは状態の緩和、及び/又は症状の改善を含み得る。予防は、疾患、障害若しくは状態の部分的又は完全な予防を含み得る。任意の成人又は小児のヒト患者集団は、上に定義した任意の投与経路又は投薬計画を介して、本発明の方法による治療又は予防のために考慮され得る。好適な製剤、投与経路、投薬量、計画等は、本明細書に開示される薬学的組成物について記載されている通りである。
【0057】
更なる態様では、本発明は、欠陥遺伝子から生じる遺伝的疾患、障害又は状態を治療する方法に関する。遺伝子欠陥は、変異、欠失、先端切断、重複、染色体損傷、欠失又は重複を含む多くの形態をとっていてもよく、遺伝子欠陥は、単一遺伝子性又は多遺伝子性であり得る。単一遺伝子性欠陥は、本発明の患者由来の遺伝的に操作されたPOIを保有するEVによる治療に特に適している。遺伝子欠陥から生じる疾患を治療するための方法は、対象に、本発明による組成物を投与することを含み、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への発現/翻訳は、POIを含む少なくとも1つの細胞外小胞(EV)の産生をもたらし、POIは、対象の欠陥遺伝子に対応するタンパク質である。好適な製剤、投与経路、投薬量、計画等は、本明細書に開示される薬学的組成物について記載されている通りである。非限定的な例として、本発明の組成物は、自己切断インテインを介して酵素PAHの形態でPOIに融合するEVポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み得る。フェニルケトン尿症(PKU)という疾患に罹患する患者にこの組成物を投与すると、PAH含有融合タンパク質の翻訳、及びPAH酵素がロードされる遺伝的に操作された患者由来EVの産生がもたらされるだろう。患者由来EVは、例えば、患者の肝細胞等の肝臓細胞によって産生することができ、肝臓由来PAH含有EVが分泌され、次いで、活性なPAH酵素を他の肝臓細胞及び身体の他の細胞にも送達する。インテインは、EVポリペプチドとPOI(例えば、PAH酵素等のようなもの)との間に挿入されると、POIの放出を引き起こし、酵素がEV及び/又は標的細胞に遊離の可溶性形態で存在することを確実にする、自己切断ポリペプチドである。
【0058】
したがって、本発明の複数の実施形態では、POIは、細胞内酵素若しくはリソソーム酵素、又は任意の他の形態のタンパク質、例えば、膜結合タンパク質若しくは膜貫通タンパク質であり得る。上述のように、POIは、自己切断ポリペプチド、例えば、インテイン又は他のシス切断ポリペプチドを介してEVポリペプチドに有利に連結される。本発明の方法は、様々な遺伝的疾患の治療に非常に適しており、単一遺伝子性疾患は、本発明の方法に基づく治療に特に適している。遺伝的疾患、障害又は状態は、特に、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、リソソーム蓄積障害、神経筋疾患、又は神経変性疾患から選択され得るが、本質的に、単一遺伝性又は多遺伝性のいずれの遺伝的疾患であってもよい。重要なことに、本発明は、EV産生細胞の独創的な操作を介して、天然の薬物送達ビヒクルとして全身的に生体利用可能な患者由来EVを分泌する、POIを含む操作された(すなわち、修飾された)患者由来EV産物の作製による、これらの疾患の治療に対する新しいアプローチを可能にする。
【0059】
別の態様では、本発明は、遺伝的に操作された患者由来EVであって、上述のEVが、EVポリペプチド及びPOIを含む融合タンパク質を含む、遺伝的に操作された患者由来EVに関する。上述のように、患者由来のインビボ産生された遺伝的に操作されたEVは、エクスビボで製造された遺伝的に操作されたEVと比較して、異なる生体内分布プロファイルを有するだけではなく、これらのPOIを含む患者由来の遺伝的に操作されたEVが、本質的に患者の体内で製造されるため、製造のCOGは有意に低く、POIを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを含む組成物の送達の補助によって、患者の体内で局所的及び/又は全身的に分泌される融合タンパク質及びPOIを含む操作されたEVをもたらす。本発明の好ましい実施形態では、遺伝的に操作された患者由来EVは、患者の変異、欠失、下方調節、又は他の方法で欠損した遺伝子によってコードされるタンパク質に対応するPOIを含む。このことは、操作された患者由来EVが、標的組織に欠損/血管タンパク質を送達する操作されたEVに基づく自己タンパク質補充療法を本質的に形成することを意味する。一般に、POIは、本質的に、例えば、酵素、トランスポーター、シャペロン、膜貫通タンパク質、構造化タンパク質、核酸結合タンパク質、ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、及びタンパク質結合タンパク質、並びに所与の疾患の文脈で薬理学的効果を媒介することができる任意の他のタンパク質からなる非限定的な群から選択される、任意の目的のタンパク質であってもよい。本発明の融合タンパク質は、典型的には、患者に対して異種であり、すなわち、それらは、患者のゲノムによって天然ではコードされない。これは、POIを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドカーゴを作製するために適用される遺伝子操作戦略の結果である。一例として、テトラスパニンEVポリペプチド(テトラスパニンは、この融合タンパク質が、任意の哺乳動物系に天然で存在しないため、本発明の目的にとって好ましい種類のEVポリペプチドである)と、所与の酵素(例えば、酵素PAH又は尿素サイクル酵素)との間の融合タンパク質は、全てのヒトを含む全ての哺乳動物に対して本質的に異種である。更に、POIは、それ自体が患者にとって異種である場合があり、これは、POIが遺伝子疾患の文脈でタンパク質補充療法として機能することを意図している疾患において、当てはまる場合がある。変異又は欠失又は同様のものから生じる遺伝的疾患を患う患者は、身体の細胞内に野生型タンパク質を全く有していない可能性があり、このことは、これらの場合に、患者に対して異種である融合タンパク質に加えて、POIも、患者にとって異種であることを意味している。
【0060】
非常に驚くべきことに、本願発明者らは、本発明による遺伝的に操作された患者由来EVが、エクスビボ産生された遺伝的に操作されたEVと比較して(エクスビボ産生された患者由来の遺伝的に操作されたEVと比較した場合であっても)、循環中でかなり長い半減期を有することを発見した。この驚くべき技術的効果は、EVが患者の体内でインビボで(インサイチュとも呼ばれる)産生されることと組み合わせて、EVが患者特異的(自己)であるという事実に応じたものである可能性が高く、例えば血管を介して全身循環に入るとすぐに、患者に特異的なコロナが、遺伝的に操作されたEVと会合すると推測される。非常に驚くべきことに、遺伝的に操作された対象由来EVの集団の対象における血漿半減期は、通常は12時間よりも長く、これは、対応するインビトロ製造されたEVの半減期の少なくとも10倍であり、好ましくは50倍の長さ、好ましくは100倍の長さ、好ましくは200倍の長さ、更により好ましくは300倍の長さ、更になお好ましくは500倍の長さである。したがって、本発明の実施形態では、遺伝的に操作された患者由来EVは、2時間より長く、好ましくは6時間より長く、更により好ましくは24時間より長く、更により好ましくは48時間より長い血漿半減期を有する。患者由来インサイチュEVの血漿半減期は、少なくとも約12、18、24、48、36、72、100、150、200、250、300、又はそれより長い時間、例えば、約5~10時間、約10~15時間、約5~20時間、約24~48時間、約24~72時間、約12~72時間、約12~100時間、約12~200時間、又は約12~300時間であり得る。遺伝的に操作された患者由来EVの血漿半減期は、融合タンパク質の存在について、及び/又はPOIの存在について(例えば、採血によって)血漿をアッセイすることによって容易に測定することができる。eGFP及びルシフェラーゼ等のレポータータンパク質をPOIとして使用して、遺伝的に操作された患者由来EVの循環時間及び半減期をアッセイし、決定することを容易にすることができる。
【0061】
上述のように、これらのインサイチュで産生された患者由来EVは、患者の細胞において、POI及びEVポリペプチドを両方とも含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを発現させる/翻訳することによって、POIを含む融合タンパク質を含むように遺伝的に操作され、POIを含むEVの細胞による産生がもたらされる。EVポリペプチドは、本発明の組成物が送達されるEV産生細胞において形成されるEVへとPOIを「ロードする」、すなわち、輸送するために使用され得る任意のポリペプチドから本質的に選択され得る。EVポリペプチドの非限定的な例としては、CD9、CD53、CD63、CD81、CD54、CD50、FLOT1、FLOT2、CD49d、CD71、CD133、CD138、CD235a、AAAT、AT1B3、AT2B4、ALIX、アネキシン、BASI、BASP1、BSG、シンテニン-1、シンテニン-2、Lamp2、Lamp2a、Lamp2b、TSN1、TSN3、TSN4、TSN5 TSN6、TSN7、TSPAN8、TSN31、TSN10、TSN11、TSN12、TSN13、TSN14、TSN15、TSN16、TSN17、TSN18、TSN19、TSN2、TSN4、TSN9、TSN32、TSN33、TNFR、TfR1、シンデカン-1、シンデカン-2、シンデカン-3、シンデカン-4、、CD37、CD82、CD151、CD224、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、CLIC1、CLIC4、インターロイキン受容体、CD2、CD3エプシロン、CD3ゼータ、CD13、CD18、CD19、CD30、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD53、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD 274、CD362、COL6A1、AGRN、EGFR、FPRP、GAPDH、GLUR2、GLUR3、GP130、GPIアンカータンパク質、GTR1、HLAA、HLA-DM、HSPG2、ITA3、ラクトアドヘリン、L1CAM、LAMB1、LAMC1、LIMP2、MYOF、ARRDC1、ATP2B2、ATP2B3、ATP2B4、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、ATP1A2、ATP1A3、ATP1A4、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、ATP1A1、ATP1B3、ATP2B1、LFA-1、LGALS3BP、Mac-1アルファ、Mac-1ベータ、MFGE8、MARCKSL1等のミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)タンパク質ファミリーのメンバー、マトリックスメタロプロテイナーゼ-14(MMP14)、PTGFRN、BASP1、MARCKS、MARCKSL1、PTGFRN、PRPH2、ROM1、SLIT2、SLC3A2、SSEA4、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、TFR1、UPK1A、UPK1B、VTI1A、VTI1B、及び任意の他のEVポリペプチド、並びにそれらの任意の組み合わせ、誘導体、ドメイン、バリアント、変異体、又は領域が挙げられる。
【0062】
本発明は、EVポリペプチドに関連するような有意なモジュール性及び任意選択性を可能にするだけではなく、多くの種類のタンパク質を、本発明の文脈においてPOIとして使用することができる。好適なPOIの非限定的な例としては、酵素、トランスポーター、シャペロン、膜貫通タンパク質、構造化タンパク質、核酸結合タンパク質、ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、及びタンパク質結合タンパク質、並びに薬理学的効果自体を媒介することができるか、又は薬理学的効果を媒介する別の薬剤に結合することができる本質的に任意の他のタンパク質が挙げられる。例えば、POIは、所与のRNAカーゴ分子(例えば、mRNA又はshRNA又はmiRNA)に結合し、RNAカーゴを遺伝的に操作された患者由来EVを輸送するRNA結合タンパク質であり得る。POIを使用することによって、インサイチュで産生された遺伝的に操作されたEVに追加の薬理学的に活性なカーゴ生体分子を組み込む能力は、多数の応用を可能にする。一実施形態では、第1のポリヌクレオチドを介してPOIを含む融合タンパク質のEVローディングを可能にし、第2のポリヌクレオチドを介して、POIによって結合する別のタンパク質のEVローディングを可能にし、したがって、インビボでEV産生細胞によって産生されるEVにロードされるために、1つより多いポリヌクレオチドカーゴを本明細書の組成物に組み込むことができ、第3及び更なるポリヌクレオチドを介して、追加のカーゴ分子がEVにロードされてもよい。有利な一実施形態では、本発明の組成物に含まれるポリヌクレオチドカーゴは、POI(その後はRNA結合タンパク質である)を含む融合タンパク質と、mRNA、shRNA、又はmiRNA等のRNA分子との両方をコードする。POIがRNA結合タンパク質であることは、このRNA結合タンパク質が、所与のRNA分子上の特定の配列、例えば、mRNAのUTRに結合するように設計され得ることを意味する。このモジュール式操作アプローチは、インサイチュで産生された患者由来の操作されたEVが、そのPOIを利用して、所与のmRNAカーゴに結合し、身体内の標的組織へのmRNAのEV媒介性輸送を可能にすることを意味している。上の実施例と同様に、POI及びRNA薬物分子(すなわち、mRNA、自己増幅RNA、shRNA、又はmiRNA)は、POIの形態でのタンパク質、及び例えばmRNAの形態でのRNA分子の両方をコードすることができる単一ポリヌクレオチド(例えば、DNAプラスミド、又はポリヌクレオチドの任意の他の形態によってコードされ得る。更に、バイシストロン及び他の形態のマルチシストロンポリヌクレオチドを利用して、1つより多いPOIをコードしてもよく、例えば、その後に問題の薬物を形成する別のタンパク質に結合するPOIをコードしてもよい。
【0063】
EVポリペプチド及びPOIに加えて、上述のように、追加のポリペプチドドメインは、有利には、例えば、(i)細胞型特異的標的化を媒介するための標的化ポリペプチド、(ii)血清アルブミンに結合することによって、更になお延長された血漿半減期を可能にするための血清アルブミン結合ドメイン、(iii)融合タンパク質からPOIを放出するような、シス切断ポリペプチド(例えば、インテイン)等の放出ポリペプチド、(iv)核酸由来分子の種々の形態の結合のための核酸結合ドメイン等に対して、融合タンパク質に含まれ得る。上述のように、本質的に任意の細胞型は、本明細書に記載の組成物のポリヌクレオチドの翻訳の結果として、遺伝的に操作された患者由来EVを産生することができるが、特定の細胞は、EV収率の観点から特に生産的である。肝臓は、かなりの量のEVを分泌する代謝的に活性な器官であり、POIを含む融合タンパク質を含む操作された患者由来EVの産生のための効率的な「インサイチュ」(互換的に「インビボ」と呼ばれる)バイオリアクターとして使用することができる。本発明のための特定の有用性を有する肝臓細胞としては、肝細胞及び肝臓マクロファージが挙げられる。
【0064】
本発明による遺伝的に操作された患者由来EVは、医薬に使用するための重要な有用性を有する。より詳細には、遺伝的に操作された患者由来EVは、遺伝的疾患、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、がん、感染性疾患、自己免疫疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、心血管疾患、及び炎症性疾患、並びに好適なPOIが薬理学的効果を発揮し得る任意の他の疾患からなる非限定的な群から選択される疾患の治療に使用するためのものであり得る。本発明の患者由来EVが有利に適用され得る疾患の非限定的な例としては、以下の例が挙げられる。クローン病、1型糖尿病、グレーブス病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス)潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、サルコイドーシス、特発性肺線維症、乾癬、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、インターロイキン-1受容体拮抗分子欠損症(DIRA)、子宮内膜症、自己免疫性肝炎、強皮症、筋炎、脳卒中、急性脊髄損傷、血管炎、ギラン・バレー症候群、急性心筋梗塞、ARDS、敗血症、髄膜炎、脳炎、肝不全、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、腎不全、心不全、又は任意の急性若しくは慢性器官不全及び関連する基礎病因、移植片対宿主病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー及び他の筋ジストロフィー、炭水化物代謝障害を含む先天性代謝異常、例えば、G6PD欠損症ガラクトース血症、遺伝性フルクトース不耐症、フルクトース1,6-ジホスファターゼ欠損症及び糖原病、有機酸代謝異常症(有機酸尿症)、例えばアルカプトン尿症、2-ヒドロキシグルタル酸尿症、メチルマロン酸若しくはプロピオン酸血症、多発性カルボキシラーゼ欠損症、アミノ酸代謝異常症、例えばフェニルケトン尿症(PKU)、メープルシロップ尿症、グルタル酸血症1型、アミノ酸症、例えば遺伝性チロシン血症、非ケトーシス型高グリシン血症、及びホモシスチン尿症、遺伝性チロシン血症、ファンコーニ症候群、原発性乳酸アシドーシス、例えばピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ及びチシトクロムオキシダーゼ欠損症、脂肪酸酸化障害及びミトコンドリア代謝障害、例えば短鎖、中鎖、及び長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症(ベータ酸化欠損症としても知られる)、ライ症候群、中鎖アシル-コエンザイムA脱水素酵素欠損症(MCADD)、MELAS、MERFF、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、急性間欠性ポルフィリン症等のポルフィリン代謝障害、レッシュ・ナイハン症候群等のプリン又はピリミジン代謝障害、先天性リポイド過形成症等のステロイド代謝障害、先天性副腎過形成症、カーンズ・セイヤー症候群等のミトコンドリア機能障害、ツェルベルガー症候群及び新生児性副腎白質ジストロフィー等のペルオキシゾーム機能障害、先天性副腎過形成症又はスミス・レムリ・オピッツ、メンケス症候群、新生児ヘモクロマトーシス症、尿素サイクル異常症、例えばN-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症、カルバモイルリン酸合成酵素欠損症、オルニチントランスカルバモイラーゼ欠損症、シトルリン血症(アルギニノコハク酸合成酵素欠損症)、アルギニノコハク酸尿症(アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症)、アルギニン血症(アルギナーゼ欠損症)、高オルニチン血症、高アンモニア血症、ホモシトルリン尿症(HHH)症候群(ミトコンドリアオルニチントランスポーター欠損症)、シトルリン血症II(シトリン欠損症、アスパラギン酸・グルタミン酸トランスポーター)、リジン尿性タンパク質不耐症(y+Lアミノ酸トランスポーター1の変異、オロト酸尿症(酵素ウリジン一リン酸合成酵素の欠損症、UMPS)、全てのリソソーム蓄積症、例えば、アルファ-マンノース症、ベータ-マンノース症、アスパチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシド蓄積症、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病I型、ゴーシェ病II型、ゴーシェ病III型、GM1ガングリオシドーシスI型、GM1ガングリオシドーシスII型、GM1ガングリオシドーシスIII型、GM2-サンドホフ病、GM2-テイ-サックス病、GM2-ガングリオシドーシス、ABバリアント、ムコリピドーシスII型、クラッベ病、リソソーム酸リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、MPS I-ハーラー症候群、MPS I-シェイ症候群、MPS I-ヒューラー-シェイ症候群、MPS II-ハンター症候群、MPS IIIA-サンフィリポ症候群A型、MPS IIIB-サンフィリポ症候群B型、MPS IIIB-サンフィリポ症候群C型、MPS IIIB-サンフィリポ症候群D型、MPS IV-モルキオA型、MPS IV-モルキオB型、MPS IX-ヒアルロニダーゼ欠損症、MPS VI-マロトー-ラミー、MPS VII-スライ症候群、ムコリピドーシスI-シアリドーシス、ムコリピドーシスIIIC、ムコリピドーシスIV型、ムコ多糖症、マルチプルスルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチン症T1、神経セロイドリポフスチン症T2、神経セロイドリポフスチン症T3、神経セロイドリポフスチン症T4、神経セロイドリポフスチン症T5、神経セロイドリポフスチン症T6、神経セロイドリポフスチン症T7、神経セロイドリポフスチン症T8、神経セロイドリポフスチン症T9、神経セロイドリポフスチン症T10、ニーマン・ピック病A型、ニーマン・ピック病B型、ニーマン・ピック病C型、ポンペ病、濃化異骨症、サラ病、シンドラー病及びウォルマン病等、嚢胞性線維症、原発性線毛機能不全症、肺胞タンパク症、ARC症候群、レット症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、GBA関連パーキンソン病、ハンチントン病及び他のトリヌクレオチド反復関連疾患を含む神経変性疾患、プリオン病、前頭側頭型認知症を含む認知症、ALS、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、がん悪液質、食欲不振、2型糖尿病、肢帯型2A、肢帯型2D、脊髄性筋萎縮症呼吸窮迫症I型(SMARD1)、球脊髄性筋萎縮症(SBMA)、並びに各種がん。事実上全ての種類のがん、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん腫、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星細胞腫、小脳若しくは大脳、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨腫瘍、脳幹神経膠腫、脳がん、脳腫瘍(小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上衣腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉腫瘍、視経路及び視床下部神経膠腫)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児、消化管)、原発不明がん腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、皮膚T細胞性リンパ腫、線維形成性小円形細胞腫瘍、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん(眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、胆嚢がん、胃(Gastric)(胃(Stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(頭蓋外、性腺外、又は卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫(脳幹の神経膠腫、大脳星状細胞腫、視経路及び視床下部神経膠腫)、胃カルチノイド、ヘアリー細胞白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、膵島細胞がん腫(膵臓内分泌部)、カポジ肉腫、腎臓がん(腎細胞がん)、咽頭がん(Laryngeal Cancer)、白血病((急性リンパ芽球性(急性リンパ球性白血病とも呼ばれる)、急性骨髄性(急性骨髄性白血病とも呼ばれる)、慢性リンパ球性(慢性リンパ球性白血病とも呼ばれる)、慢性骨髄性(慢性骨髄性白血病とも呼ばれる)、ヘアリー細胞白血病))、口唇口腔がん、脂肪肉腫、肝臓がん(原発性)、肺がん(非小細胞、小細胞)、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキン、髄芽腫、メルケル細胞がん、中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮がん、口腔がん(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫、菌状息肉腫、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性白血病(myelogenous leukemia)、慢性骨髄性白血病(chronic myeloid leukemia)(急性、慢性)、骨髄腫、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん腫、神経芽細胞腫、口腔がん(oral cancer)、口腔咽頭がん、骨肉腫/骨の線維性組織球腫、卵巣がん、卵巣上皮がん(表面上皮-間質性腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、膵島細胞がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん(pharyngeal cancer)、褐色細胞腫、松果体星細胞腫、松果体胚細胞腫、松果体芽細胞腫及びテント上原始神経外胚葉腫瘍、下垂体腺腫、胸膜肺芽腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん(腎臓がん)、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、カポジ肉腫、軟部組織肉腫、子宮肉腫)、セザリー症候群、皮膚がん(非黒色腫、黒色腫)、小腸がん、扁平上皮がん、頸部扁平上皮がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉腫瘍、精巣がん、咽頭がん(Throat cancer)、胸腺腫及び胸腺がん、甲状腺がん、腎盂及び尿管の移行細胞がん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、並びに/又はウィルムス腫瘍が、本発明について関連性のある疾患標的である。
【0065】
本発明の別の態様では、上述のように、患者由来の遺伝的に操作されたEVは、対象(例えば、患者)に組成物を投与することを含む方法によって製造されてもよく、ポリヌクレオチドカーゴ(組成物に含まれる)の対応する融合タンパク質への発現/翻訳は、後でPOIを含む融合タンパク質を含む患者由来の遺伝的に操作されたEVの集団の産生をもたらす。重要なことに、ウイルス性又は非ウイルス性のナノ粒子送達方法を使用してポリヌクレオチド送達のための組成物を設計し、製造する能力は、COGを低下させつつ、操作されるEVのモジュール性及び汎用性を利用して、操作されたEVの循環半減期を延長させ、先天的又は適応的免疫原性又はインビトロで製造されたEV療法薬に関連する任意の他の安全性懸念のリスクを最小化するか、又は完全に除外することを可能にする。
【0066】
当業者は、本明細書に記載されるように、本発明に従って特定の実施形態と同等の日常的な実験を超えない実験を使用して認識するか、又は確認することができるであろう。本発明の範囲は、上述の説明によって限定されることを意図するものではなく、以下の実施例及び実験によって限定されることを意図するものではない。本発明及びその種々の態様、実施形態、代替案、選択肢、及び変形例は、ここで、本明細書に含まれる非限定的な実施例を用いて更に例示及び説明され、これらの実施例は、本発明の範囲及び要旨から逸脱することなく、日常的な実験を超えない実験を使用して、大きく修正され得る。
【0067】
実施例1:インサイチュで産生された遺伝的に操作された療法的EVは、大腸炎のマウスモデルにおいて、長期的な薬理学的/治療効果を提供する
EVポリペプチド(この実験では、種々のテトラスパニン(CD9、CD63及びCD81)が陽性の結果で試験され、データはCD63について示される)とともに融合タンパク質に含まれるPOIとしてTNFRデコイを含むように操作されたEVの治療効果を試験するために、これらのEVがインビボ(インサイチュ)で産生される場合に、大腸炎のマウスモデルを使用した。TNBS誘発性大腸炎は、IBD患者にみられるサイトカイン急増、下痢、体重減少、及び胃腸の炎症をシミュレートする、よく理解されたBalb/Cマウスモデルである。産生されたEVは、大腸炎モデルにおいて炎症を弱めるシグナル伝達不能なTNF受容体を発現するように設計され、遺伝的に操作された。
【0068】
図2は、TNFRデコイを送達する2つの異なる方法の比較を示す。第1に、マウスの肝臓細胞(肝臓マクロファージ及び肝細胞の両方の組み合わせであると推測される)を形質転換するためのプラスミド含有薬物送達組成物の非ウイルス性投与により、第2に、TNFRデコイを含むように操作されたEVの静脈内投与による。上述のように、プラスミドDNAポリヌクレオチドカーゴから発現される融合タンパク質は、テトラスパニンの形態のEVポリペプチドを、POIとしてのTNF受容体と融合させることに基づいていた。
【0069】
治療群は、次の通りであった。
a)ポリヌクレオチドカーゴとしてのプラスミドDNAの非ウイルス性送達であって、pDNAが、EVポリペプチドに融合したシグナル伝達不能なTNF受容体(POIとしてのTNFデコイ)を含むもの(データはCD63について示される)。
b)同じTNFRデコイ融合タンパク質を含むインビトロ産生されたEVのIV注射。
c)ポリヌクレオチドカーゴとしてのプラスミドDNAの非ウイルス性送達であって、pDNA構築物が、POIをコードしないが、単にEVポリペプチドをコードするもの(データはCD63について示される)(陰性対照として)。
d)融合タンパク質中の目的のTNFRタンパク質を欠く、インビトロ産生されたEVのIV注射(陰性対照として)。
【0070】
図2は、pDNAポリヌクレオチドを含む組成物の非ウイルス性投与によるTNFRの送達が、POIを含む融合タンパク質を保有する自己の遺伝的に操作されたEVの産生をもたらし、POIが、TNBS誘導性大腸炎に対する長期的な保護を特異的に付与し、エクスビボで製造され、IV投与を介して全身的に投与された操作されたEVを上回ることを示す。操作されたEVの治療は、繰り返し投薬を必要とし、依然としてインサイチュで産生された自己の操作されたEVと同じ薬理学的効果を達成しないが、一方で、ポリヌクレオチドカーゴとしてTNFR-CD63プラスミドを含む組成物の単回の非ウイルス性投与は、初期治療及びチャレンジ治療から9日後であっても、治療的に有効であり、第2の大腸炎の誘導と同時に送達されたエクスビボで製造されたEVと比較して、改善された治療効果を提供することに留意することは重要である。
【0071】
実施例2:肝臓においてインサイチュで産生された操作されたEVが、広範囲にわたる器官及び血漿において検出可能であることを示す生体内分布実験。
肝臓細胞由来の操作されたEV産生の概念実証として、NMRIマウスに、流体力学的注入(HI)によって、ヒトCD63-NanoLuc pDNA又はNanoLucのみのpDNAを注射した。HI投与は、プラスミドDNAポリヌクレオチドを、肝臓に、具体的には肝細胞に送達し、肝臓細胞において、融合タンパク質CD63-NanoLuc又はNanoLucのみを産生する。次いで、CD63-NanoLuc pDNAポリヌクレオチドで形質転換されたマウスは、EVポリペプチド(融合タンパク質を自己生成したEVに輸送する)の補助によって、ヒトCD63-Nanoluc融合タンパク質を含む自己の操作されたEVを産生する。NanoLucのみのプラスミドポリヌクレオチドカーゴで形質転換されたマウスの肝臓は、NanoLucのみを発現し、それらの肝臓細胞によって産生されたEV内に能動的にロードされる。
【0072】
48時間後に器官/血漿を採取し、これを分析して、異なる器官に存在するNanoLucの相対発光単位(RLU)を決定した。図3は、組織中のRLU/肝臓中のRLUを示し、インサイチュで操作されたEVの産生を支える脳、筋肉及び血漿等の組織への肝臓からの明確な分布シフトを示しており、融合タンパク質を含むEVが、肝臓細胞によって産生され、放出され、次いで他の器官によって取り込まれることを示している。
【0073】
血漿中のヒトCD63-NanoLuc EVの存在は、インサイチュでの産生及び放出を確認するものであり、生成されたEVが、血漿中で少なくとも48時間持続したことを示しており、このことは、それらの半減期が、エクスビボで製造されたEVの血漿半減期よりも有意に長いことを意味している。ヒトCD63-NanoLuc融合タンパク質をコードする修飾mRNAポリヌクレオチド(シュードウリジン(ψ)及び5-メチルシチジン(m5C)修飾を有する)のLNP(具体的にはDLin-MC3-DMA)媒介性送達により、同様のデータが得られ、同様の生体内分布プロファイルが観察され、インビトロで製造された操作されたEVと比較して、肝臓細胞由来の操作されたEVの半減期が延長された。
【0074】
実施例3:(i)ヒトCD63-NanoLucを含むマウスでインサイチュ産生されたEV、及び(ii)対応するインビトロ製造されたEVの時間経過に伴うマウス血漿における酵素活性のレベルの比較
インサイチュの自己産生された操作されたEVに対する、IV注射による操作されたEVの半減期を調べるために、NMRIマウスに、EV融合タンパク質をコードするベクター及びポリヌクレオチドカーゴを含む組成物をIV注射したか、又はEV融合タンパク質をコードするベクター及びポリヌクレオチドカーゴを含む組成物の非ウイルス性送達法(この場合には、mRNA及びpDNAのHIのLNP媒介性送達)を介してインサイチュで産生させた。血漿を、フローサイトメトリー分析のために様々な時点で採取し、循環中の操作されたEVの量を決定した。血漿中の操作されたEVの存在を、APCで標識された抗ヒト汎テトラスパニン抗体を使用してフローサイトメトリーによってアッセイした。
【0075】
第1の実験では、10^11個の標識されていないHEK293 EVをマウスにIV注射し、次いで10~60分目に安楽死させ、血漿を採取し、フローサイトメトリーによって分析した。図4は、IV注射された標識されていないヒトEVを、10分後にマウス血漿において検出することができ、そのレベルが、バックグラウンドよりも十分に高いことを示す。しかしながら、60分目の時点までに、EVは、細胞に急速に取り込まれ、既に血漿中のより低レベルの検出に近づいている。
【0076】
第2の実験では、ヒトCD63-NanoLucポリヌクレオチドの非ウイルス性投与を、NanoLucのみの場合と比較した。図4はまた、インサイチュで産生された自己の遺伝的に操作されたヒトCD63-NanoLuc EVが、48時間後でさえ、血漿中に豊富に存在したことを示している。この2つの実験を比較すると、インサイチュで産生されたEVに対し、エクスビボで製造されたEVのIV注射におけるAPC+事象/uLは、48時間後のインビボで操作されたマウスにおけるEVのレベルが、エクスビボで製造されたEVの注射から10分後よりも高かったことを示すことがわかるだろう。この効果は、様々な送達方法を用いて4回繰り返して観察された。
【0077】
実施例4:アルブミン結合ポリペプチドが、インサイチュ産生された操作されたEVの半減期に対して及ぼす効果
アルブミン(通常、融合タンパク質の形態で)の存在は、注射された生物学的製剤薬物の循環時間を増加させることができることが知られている。本願発明者らの一人はまた、EVアルブミン結合ポリペプチド(多くの場合、アルブミン結合ドメイン(ABD)と呼ばれる)の表面上の操作によって、アルブミンをEVの外表面に接続させることによってその半減期を増加させることができるアプローチを以前に発明し、特許を取得した。ABD操作されたEVの半減期の延長及び生体内分布の変化は、EVが、EVポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、POI、及びその後に自己の産生された遺伝的に操作されたEVの外側に配置されたABDドメインを含む組成物の非ウイルス性又はウイルス性の送達の後に、インサイチュで産生されたときにもみられると予測された。この戦略を試験するために、ヒトCD63-ABD-NanoLuc、CD63-NanoLuc、又はNanoLucプラスミドのみをコードするpDNAを含む組成物の送達の非ウイルス性方法(HI及びLNP媒介性送達)をマウスで試験した。組成物の投与の72時間後に、NanoLucレベルをアッセイし、分析した。
【0078】
図5は、CD63-ABD融合タンパク質を含む自己の遺伝的に操作されたEVのインサイチュでの産生が、両方のCD63構築物による組織分布の改善をもたらしたが、構築物中にABDドメインが存在すると、脾臓における取り込みが少なくなり、より重要なことに、血漿においてかなり高いEVレベルが生じることを示しており、このことは、構築物中にABDが存在すると、インサイチュで産生された操作されたEVの血漿半減期を増加させることを意味している。72時間目に検出されたABD EVのほぼ100%が、依然として循環中にあった。このことは、ABDが、血漿濃度を大きく増加させ、それによって、インサイチュで産生されたEVの循環時間を有意に増加させることによって、EVの両方の生体内分布を変化させるのに有益であることを示す。この発見は、肝外疾患、例えば、操作されたEVが所与の薬物カーゴ(例えば、POI、又はPOIが結合することができ、薬理学的効果を発揮することができる任意の他の薬剤)を組織関門(例えば、血液脳関門)を通って送達することが必要な疾患及び状態の治療に特に有用である。しかしながら、循環時間の増加は、任意の器官に対する標的化送達にとって重要であり、インサイチュでの操作されたEVの産生と組み合わせてABDを組み込むことによって肝臓クリアランスを低下させる能力は、変革的なアプローチを表す。
【0079】
実施例5:追加の送達方法による種々のポリヌクレオチド酸カーゴの送達
流体力学的注射及びLNPによるmRNA/pDNA送達によって送達されるプラスミドが、インビボで肝臓細胞を形質転換して、強力かつ長く続く治療効果を有する治療用の操作されたEVを産生することができたという発見に続き、カーゴとのポリプレックスを形成するためのウイルスベクター送達(例えば、AAV若しくはレンチウイルス)、又は他の脂質系送達ベクター(例えば、他のLNP、リピドイド、又はリポソーム))、又はタンパク質/ペプチド系送達ビヒクル(例えば、CPP)等の他の送達機構を用いて、プラスミド又は任意の他の種類のポリヌクレオチドカーゴ(mRNA、自己複製RNA、裸のAAVゲノム等を含む)を送達することもできると仮定された。また、広範囲にわたる異なるポリヌクレオチドカーゴの送達が、肝臓だけではなく、他の器官にも可能であると考えられ、その結果、他のEV産生細胞型の中で、インサイチュでの産生が、脳又は中枢神経系、筋肉細胞、又は免疫系細胞等の器官から可能である。
【0080】
a)LNPによるmRNA送達
上述のように、LNP媒介性mRNA送達は、mRNAポリヌクレオチドによってコードされる融合タンパク質を含む遺伝的に操作されたEVを効率的に産生することが示されている。mRNAの送達を徹底的に最適化するために、修飾mRNAの多数の態様を合成し(例えば、mRNA供給業者TriLinkによって)、脂質ナノ粒子へと製剤化し得る。以下の修飾mRNA構築物を、例えば、5-メチルシチジン(m5C)、5-メチルウリジン(m5U)、2-チオウリジン(s2U)、5-メトキシウリジン(5moU)、シュードウリジン(ψ)、及び/又はN1-メチルシュードウリジン(m1ψ)を使用した様々な程度の修飾により合成してもよい。
●NanoLuc mRNA
●ヒトCD63-Nanoluc mRNA
●ヒトCD63-Nanoluc-ABD mRNA
●マウスCD63-Nanoluc mRNA
●マウスCD63-Nanoluc-ABD mRNA
【0081】
次いで、これらのmRNA構築物を、脂質ベースの非ウイルス性送達ベクター(例えば、DlinDMA、Dlin-MC3-DMA、C12-200、cKKE12、5A2-SC8、又は7C1)へと製剤化し、マウス及び非ヒト霊長類において試験することができる。修飾mRNAと非ウイルス性の脂質ベースの送達ベクターとを組み合わせた、最適化された組成物は、EVポリペプチド及びPOI融合タンパク質を含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドカーゴの送達及び翻訳の増強をもたらすことができ、得られる自己の操作されたEVの分泌は、時間経過に伴って更に高く、より持続する(すなわち、例えば、実施例2~4にみられる、更により好ましいPK/PDプロファイル)という仮説が成り立つ。
【0082】
b)CPPによるCNSへのmRNA送達
細胞透過ペプチドによってCNSに送達されるmRNAの局所送達の有効性を試験するために、修飾mRNAを合成し(例えば、mRNA供給業者TriLinkによって)、CPP送達ビヒクル(Pepfect peptides、TP10、トランスポータン、ペンテトラチン、Tat、又は他のCPPを含む)と一緒に製剤化し得る。以下の修飾mRNA構築物を、例えば、5-メチルシチジン(m5C)、5-メチルウリジン(m5U)、2-チオウリジン(s2U)、5-メトキシウリジン(5moU)、シュードウリジン(ψ)、及び/又はN1-メチルシュードウリジン(m1ψ)を使用した様々な程度の修飾により合成してもよい。
●NanoLuc mRNA
●ヒトCD63-Nanoluc mRNA
●ヒトCD63-Nanoluc-ABD mRNA
【0083】
脳を含む中枢神経系等の特定の器官へのCPPによるmRNAの送達が、実施例2~4において持続的なEV産生のためにプラスミドDNA及びmRNAを肝臓に送達することが示されている非ウイルス性送達方法と同じ方法で、インサイチュで長く続く操作されたEVの産生がもたらされるという仮説が成り立つ。mRNA(又は本発明による任意の他のポリヌクレオチドカーゴ)の局所送達の利点は、アクセスすることが困難な器官(例えば、脳)への単回送達が、脳の場合には血液脳関門による保護を介する等、その他の方法では循環する薬物によるアクセスから保護され得るか、又は除外され得る部位/器官で、mRNA又は他のポリヌクレオチドからインサイチュで治療用の操作されたEVを産生することを可能にすることである。このことは、目的の器官(例えば、脳)への単回注射が、BBBによる保護に起因して通常可能であるよりもはるかに高いレベルの融合タンパク質を保有する産生された操作されたEVが標的細胞によって取り込まれることを可能にするだけではなく、目的の器官によって、薬物(すなわち、POI、又はPOIが相互作用する任意の他の薬物)を保有するインサイチュで産生されたEVの持続的な送達を確実にすることを意味する。
【0084】
c)EVをコードするポリヌクレオチドの送達のためのウイルス性送達ベクター
EVポリペプチド及びPOIを含む融合タンパク質をコードする一本鎖DNA又はRNAポリヌクレオチドを、ウイルス、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)又はレンチウイルスに組み込んでもよい。次いで、このウイルス性「EV遺伝子療法」アプローチ(例えば、有利には、レンチウイルス又は上で言及した肝臓向性AAV血清型を使用する肝臓指向性遺伝子療法に焦点を当てて適用されてもよく、又はCNS向性AAV血清型を利用することによってCNSに焦点を当ててもよい)を使用して動物モデルを治療して、実施例2~4の非ウイルス性投与の代わりに、ポリヌクレオチドカーゴを送達して、肝臓、CNS、又は更に筋肉細胞(又は適切なウイルスベクターによって標的化され得る任意の器官中の任意の他の細胞型)を形質転換し、様々な種類のペイロードを保有し、改善された半減期を示す、自己の操作されたEV療法薬を産生することができることを示し得る。
【0085】
実施例6:脂質ナノ粒子(LNP)によるmRNAの送達後のインサイチュ産生されたエキソソームのインビボ生体内分布。
上の実施例に詳細に示されるように、流体力学的注射によるプラスミドDNAの送達の成功に続いて、本願発明者らは、必要とされる融合タンパク質をコードする代替核酸カーゴを送達し、代替ビヒクルによってこのような核酸を追加的に送達するときに、この効果を達成することができるかを確認したいと考えた。
【0086】
脂質ナノ粒子によるmRNAの送達は、HIによって送達されるプラスミドDNAと同等に効果的であり得るという仮説が成り立った。この理論を試験するために、本願発明者らは、ヒトCD63-ABD-luc、ヒトCD63-luc、マウスCD63-ABD-luc、マウスCD63-luc、又はlucのみをコードするmRNAが、脂質混合物(リン脂質、イオン化可能脂質、コレステロール、及びPEG脂質)及びmRNAを、ナノ流体デバイスを介して通過させることによって、LNPに封入する実験を設計した。その理論の実現可能性を証明するために、マウスを、mRNAを封入したLNPの静脈内投与によって治療した(1mg/kg、1群当たり5匹のマウス)。次いで、送達されたmRNAから翻訳されたnanolucルシフェラーゼの生体内分布を、エクスビボルシフェラーゼアッセイによって72時間後に分析した。簡潔に述べると、採取した組織を、Qiagen Tissue Lyser IIを使用して、PBS中の1mlの0.1%TritonX-100に溶解させた。次いで、組織溶解物を、0.1%のTritonX-100で1:10に希釈し、10μlの組織溶解物を、提供された緩衝液(Nano-Glo Luciferase Assay System:Promega)で1:50に希釈した30μLのNano-Glo基質とともに、白色96ウェルプレートに加えた。
【0087】
図6のデータは、脂質ナノ粒子に封入されたmRNA(ヒトCD63-luc、ヒトCD63-ABD-luc又はlucのみをコードする)の送達後のインサイチュで産生されたEVの生体内分布を示す。この図は、mRNAの送達(及び以前の実験によるプラスミド送達)によって、インサイチュでのエキソソームの産生が可能であることを示し、更に、mRNAであるか、又はプラスミドであるかにかかわらず、インサイチュでの構築物の送達が、LNPへの封入によって、広範囲にわたる異なる器官型に対して可能であることを示す。
【0088】
器官及び血漿中のNanoLucの存在は、融合タンパク質を含むEVのインサイチュでの産生及び放出を確認するものであった。このことはまた、生成されたEVが、血漿中で少なくとも72時間持続したことを示し、このことは、その半減期が、エクスビボで製造されたEVの血漿半減期よりも有意に長いことを意味している。更に、このことは、CD63-ABD融合タンパク質を含む自己の遺伝的に操作されたEVのインサイチュでの産生が、両方のCD63構築物による組織分布の改善をもたらし、構築物中にABDドメインが存在すると、血漿においてかなり高いEVレベルが生じることを示しており、このことは、構築物中にABDが存在すると、インサイチュで産生された操作されたEVの血漿半減期を増加させることを意味している。このことは、ABDが、血漿濃度を大きく増加させ、それによって、インサイチュで産生されたEVの循環時間を有意に増加させることによって、EVの両方の生体内分布を変化させるのに有益であることを示す。ここでも再び、この発見は、肝外疾患、例えば、操作されたEVが所与の薬物カーゴ(例えば、POI、又はPOIが結合することができ、薬理学的効果を発揮することができる任意の他の薬剤)を組織関門(例えば、血液脳関門)を通って送達することが必要な疾患及び状態の治療に特に有用である。
【0089】
実施例7:LNPによるmRNA送達後に産生されるインサイチュで操作されたEVの半減期に対するアルブミン結合ポリペプチドの効果
インサイチュで構築物をコードするmRNAの送達が、72時間以上の長い血漿半減期を有するインサイチュで産生されたEVをもたらしたことを示す図6のデータに続いて、本願発明者らは、より詳細な動態を試験するための時間経過実験を使用して、アルブミン結合ドメイン(ABD)をインサイチュで構築物に組み込むことによって、図5(実施例4)でみられるものと同様の結果を達成することができるかどうかを調べたいと考えた。
【0090】
ABDドメインが、インサイチュでEVの血漿半減期をここでも再び増加させるかどうかを試験するために、ヒトCD63-ABD-luc、ヒトCD63-luc、マウスCD63-ABD-luc、マウスCD63-luc、又はnanolucのみをコードするmRNAを封入したLNP(1mg/kg)のIV投与によってマウスを処置した(1群当たりN=5)。LNPに封入されたmRNAは、脂質混合物(リン脂質、イオン化可能脂質、コレステロール、及びPEG脂質)及びmRNAを、ナノ流体デバイスを介して通過させることによって調製した。次いで、翻訳された構築物のルシフェラーゼレベルを、24時間後、48時間後、及び72時間後に血漿において分析した。簡潔に述べると、採取した組織を、Qiagen Tissue Lyser IIを使用して、PBS中の1mlの0.1%TritonX-100に溶解させた。次いで、組織溶解物を、0.1%のTritonX-100で1:10に希釈し、10μlの組織溶解物を、提供された緩衝液(Nano-Glo Luciferase Assay System:Promega)で1:50に希釈した30μLのNano-Glo基質とともに、白色96ウェルプレートに加えた。
【0091】
発現動態の結果を図7に示す。図7は、CD63-ABD融合タンパク質を含む自己の遺伝的に操作されたEVのインサイチュでの産生が、血漿におけるこれらのEVの保持の改善をもたらし、以前の所見を裏付けるものであることを示す。このことは、図5及び6に示すデータと同様に、構築物中のABDの存在が、インサイチュで産生された操作されたEVの血漿内半減期を増加させたことを示す。この発見は、肝外疾患、例えば、操作されたEVが所与の薬物カーゴ(例えば、POI、又はPOIが結合することができ、薬理学的効果を発揮することができる任意の他の薬剤)を組織関門(例えば、血液脳関門)を通って送達することが必要な疾患及び状態の治療に特に有用である。しかしながら、循環時間の増加は、任意の器官に対する標的化送達にとって重要であり、インサイチュでの操作されたEVの産生と組み合わせてABDを組み込むことによって肝臓クリアランスを低下させる能力は、変革的なアプローチを表す。
【0092】
実施例8:精製されたEVに対する、インサイチュの血漿薬物動態の比較
mRNAの送達後に産生されるEVのインサイチュでの血漿薬物動態を更に調べるために、精製されたEVに対し、インサイチュの薬物動態を比較する実験を行った。簡潔に述べると、マウスに、ヒトCD63-luc(2mg/kg)をコードするmRNAを封入したLNP、又は1×1011のヒトCD63-luc操作されたHEK293T EVを封入したLNPのいずれかを注射した。動物を異なる時点で採血し、血漿をルシフェラーゼアッセイによって分析して、EVレベルを決定した。
【0093】
図8は、EVが、a)インサイチュで構築物をコードするmRNAの送達後のインサイチュ(インビボ)産生によって産生されたか、又はb)精製されたEVがエクスビボで産生され(細胞培養物から産生され)、次いで、IV注射によって投与されたときに、CD63-Nanoluc構築物を発現するEVの血漿薬物動態の比較を示す。
【0094】
インサイチュで産生されたEVに対して、エクスビボで製造されたEVの結果を比較することによって、インビボで操作されたマウスにおけるEVのレベルが、エクスビボで製造されたEVが送達された場合よりも一貫して高いことがわかるだろう。この効果は、24時間の時間経過に伴って、より顕著になる。
【0095】
実施例9:代替EVポリペプチドを含む融合タンパク質の試験
次いで、本願発明者らは、様々な代替EVタンパク質を試験して、どのEVタンパク質が、インサイチュの文脈で使用するのに最良の足場であるかを調査した。以下の構築物を試験した。
TfR VHH IL6ST ABD FDN TFR Nluc
TfR VHH IL6ST ABD FDN NST TFR Nluc
TfR VHH IL6ST ABD LZ TFR Nluc
TfR VHH ABD PTGFRN Nluc
(TfR VHH=トランスフェリン受容体を標的化するVHH、IL6ST=インターロイキン6シグナル伝達物質、FDN=フォールドオンドメイン、NST=N末端シンテニン、TFR=トランスフェリン受容体、ABD=アルブミン結合ドメイン、LZ=ロイシンジッパー、PTGFRN=プロスタグランジンF2受容体阻害剤、Nluc=nanolucルシフェラーゼ)
【0096】
およそ2ml(体重の8%)の生理食塩水中の上述の構築物をコードする50μgのpDNAを、マウスに静脈内投与した(N=5)。次いで、インサイチュで産生されたEVに組み込まれたnanolucルシフェラーゼの生体内分布を、72時間目に血漿及び組織溶解物において分析した。図9のデータは、上述の構築物をコードするpDNAの送達後のインサイチュで産生されたEVの生体内分布を示す。簡潔に述べると、採取した組織を、Qiagen Tissue Lyser IIを使用して、PBS中の1mlの0.1%TritonX-100に溶解させた。次いで、組織溶解物を、0.1%のTritonX-100で1:10に希釈し、10μlの組織溶解物を、提供された緩衝液(Nano-Glo Luciferase Assay System:Promega)で1:50に希釈した30μLのNano-Glo基質とともに、白色96ウェルプレートに加えた。
【0097】
器官及び血漿中のNanoLucの存在は、異なる融合タンパク質を含むEVのインサイチュでの産生及び放出を確認するものである。このことはまた、生成されたEVが、血漿中で少なくとも72時間持続したことを示す。重要なことに、この図は、インサイチュでのエキソソームの産生が、いくつかの異なるEVタンパク質を使用して、様々な異なる構築物によって達成されることを示しており、この現象が、広範囲にわたる異なるEVタンパク質によって共有されることを示している。
【0098】
実施例10:大腸炎の治療のための治療用タンパク質のインサイチュEV送達。
実施例1に示されるEVのインサイチュによる治療用送達の成功に続き、本願発明者らは、代替のインサイチュで産生されたEVが治療用タンパク質を送達して疾患を治療する能力を試験したいと考えた。
【0099】
大腸炎のTNBS誘導性マウスモデル(Scheiffele et al.,Curr Protoc Immunol.2002,Chapter 15:Unit 15.19)を使用した。このモデルは、IBD患者にみられるサイトカイン急増、下痢、体重減少、及び胃腸の炎症をシミュレートする、よく理解されたBalb/Cマウスモデルである。
【0100】
VSVG-インテイン-スーパーレプレッサーikBa(VSVG=水疱性口内炎ウイルスG、ikBa=B細胞阻害剤アルファにおけるカッパ軽鎖ポリペプチド遺伝子エンハンサーの核内因子)は、NFkBを調整し、炎症を緩和することが知られている。スーパーレプレッサーikBa(治療用POI)に融合したEVタンパク質としてCD63又はVSVGを含む構築物を、自己切断インテインを用いて生成し、POIが可溶性形態で放出可能であるようにした。
【0101】
およそ2ml(体重の8%)の生理食塩水中の構築物(CD63-インテイン-スーパーレプレッサー及びVSVG-インテイン-スーパーレプレッサー)をコードする50μgのpDNAを、マウスにIV注射した(N=9)。24時間後、動物は、TNBS大腸炎を誘導された。その次の5日間、動物の体重を毎日測定し、スコア付けした。結果を図10に提供し、pDNAポリヌクレオチドを含む組成物の非ウイルス性投与によるスーパーレプレッサーの送達が、スーパーレプレッサーを含む融合タンパク質を保有する自己の遺伝的に操作されたEVの産生をもたらし、スーパーレプレッサーが、対照治療に対して、TNBS誘導性大腸炎に対する長期間の保護を付与する治療効果を有していたことを示す。
【0102】
実施例11:インサイチュで産生されたEVは、大腸炎モデルにおいて炎症性サイトカインレベルを低減する
実施例10に記載した実験の後に、本願発明者らは、次いで、実施例10と同じ構築物(CD63-インテイン-スーパーレプレッサー及びVSVG-インテイン-スーパーレプレッサー)で治療した同じ大腸炎モデルを使用して、マウスにおける炎症誘発性サイトカインのレベルを試験した。BALB/cマウスに、0日目に(N=9)、マウス当たり30μlのTNBS+42.1μlの95%エタノール+27.9μlのHOの直腸内投与によって、TNBS大腸炎を誘導した。13種類の異なる炎症誘発性サイトカイン(IL-23、IL-1アルファ、INF-G、GM-CSF、INF-B、IL17A、IL27、IL-10、IL-6、IL-1ベータ、TNF-アルファ、MCP-1及びIL-12p70)の血漿レベルを、5日目のp.d.i.で測定した。図11から、ほぼ全ての炎症誘発性サイトカインのレベルが、インサイチュ産生された、操作されたEVによる治療によって低下し、ここでも再び、これらの患者が産生したEVが、疾患モデルにおいて有益な治療効果を発揮することができることを示すことがわかるだろう。
【0103】
実施形態
1.融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドカーゴを含む送達ベクターを含む組成物であって、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への翻訳が、目的のタンパク質(POI)を含む上述の融合タンパク質を含む少なくとも1つの細胞外小胞(EV)の産生をもたらす、組成物。
2.送達ベクターが、ウイルスベクター又は非ウイルスベクター、例えば、脂質ナノ粒子(LNP)、ウイルス様粒子(VLP)、細胞透過ペプチド(CPP)、ポリマー又は薬学的に許容される担体である、実施形態1に記載の組成物。
3.ポリヌクレオチドカーゴが、メッセンジャーRNA(mRNA)、環状mRNA、Doggybone(登録商標)DNA(dbDNA(登録商標))、直鎖DNA、環状DNA、プラスミドDNA、直鎖RNA、環状RNA、自己増幅RNA若しくはDNA、ウイルスゲノム、又は上述のいずれかの修飾態様、又は任意の他のポリヌクレオチドカーゴである、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物。
4.融合タンパク質が、少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つのPOIを含む、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物。
5.融合タンパク質を含むEVが、患者由来EV、好ましくは肝臓細胞由来EV、脳細胞由来EV、又は筋肉細胞由来EVである、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物。
6.融合タンパク質が、少なくとも1つの標的化ドメイン、少なくとも1つのエンドソーム脱出ドメイン、少なくとも1つの切断可能ドメイン、少なくとも1つの自己切断ドメイン、血漿タンパク質に結合可能な少なくとも1つのドメイン、及び/又は少なくとも1つのリンカーを更に含む、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物。
7.送達ベクターが、脂質ナノ粒子であり、ポリヌクレオチドカーゴが、mRNA又はプラスミドDNAである、先行実施形態のうちのいずれか1つに記載の組成物。
8.mRNAが、酵素であるPOIに連結されたEVポリペプチドを含む融合タンパク質をコードし、任意選択的に、融合タンパク質が、自己切断ドメイン及び/又は血漿タンパク質に結合するドメインを更に含む、実施形態3~7のうちのいずれか1つに記載の組成物。
9.薬学的に許容される製剤に製剤化された、実施形態1~8のうちのいずれか1つに記載の組成物を含む、薬学的組成物。
10.医薬に使用するための、実施形態1~8のうちのいずれか1つに記載の組成物、又は実施形態9に記載の薬学的組成物。
11.遺伝的疾患、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、中枢神経系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、心血管疾患、がん、感染性疾患、自己免疫疾患及び炎症性疾患からなる群から選択される疾患の治療に使用するための、実施形態1~8のうちのいずれか1つに記載の組成物、又は実施形態9に記載の薬学的組成物。
12.治療の方法に使用するための、実施形態1~8のうちのいずれか1つに記載の組成物、又は実施形態9に記載の薬学的組成物であって、本方法が、組成物を患者の標的細胞に投与するステップを含み、それによって、患者の標的細胞が、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への翻訳の結果として、融合タンパク質を含む患者由来EVを産生する、組成物又は薬学的組成物。
13.実施形態12に記載の治療の方法に使用するための、実施形態1~8のうちのいずれか1つに記載の組成物、又は実施形態9に記載の薬学的組成物であって、標的細胞が、肝臓、脾臓、肺、筋肉組織、腎臓、膵臓、胃腸系の細胞、脳、骨髄、腫瘍組織、免疫系細胞を含む中枢神経系の組織の細胞、及び/又はEVを分泌可能な任意の他の組織の細胞である、組成物又は薬学的組成物。
14.少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つのPOIを含む融合タンパク質を含む患者由来EVを産生する方法であって、本方法が、患者の細胞に、実施形態1~8のうちのいずれか1つに記載の組成物、又は実施形態9に記載の薬学的組成物を投与するステップを含み、それによって、患者の細胞が、上述の患者由来EVを産生する、方法。
15.少なくとも1つのEVポリペプチド及び少なくとも1つのPOIを含む融合タンパク質を含む患者由来EVであって、上述の患者由来EVが、実施形態14の方法によって製造される、患者由来EV。
16.POIを、タンパク質系の薬物カーゴ及び/又はRNA系の薬物カーゴと相互作用させ、これらをEVに輸送する、実施形態14~15のうちのいずれか1つに記載の患者由来EV。
17.医薬に使用するための、実施形態14~16のうちのいずれか1つに記載の患者由来EV。
18.遺伝的疾患、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、中枢神経系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、心血管疾患、がん、感染性疾患、自己免疫疾患及び炎症性疾患からなる群から選択される疾患の治療に使用するための、実施形態14~17のうちのいずれか1つに記載の患者由来EV。
19.疾患、障害又は状態を治療することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、上述の方法が、実施形態1~8のうちのいずれか1つに記載の組成物、又は実施形態9に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含み、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への翻訳が、POIを含む融合タンパク質を含む少なくとも1つのEVの産生をもたらす、方法。
20.欠陥遺伝子から生じる遺伝的疾患、障害又は状態を治療する方法であって、上述の方法が、実施形態1~8のうちのいずれか1つに記載の組成物、又は実施形態9に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含み、ポリヌクレオチドカーゴの対応する融合タンパク質への翻訳が、融合タンパク質を含む少なくとも1つのEVの産生をもたらし、融合タンパク質のPOIが、対象の欠陥遺伝子に対応するタンパク質である、方法。
21.POIが、細胞内若しくはリソソーム酵素、又は膜タンパク質である、実施形態20に記載の方法。
22.POIが、自己切断ポリペプチドを介してEVポリペプチドに連結する、実施形態20~21のうちのいずれか1つに記載の方法。
23.遺伝的疾患、障害又は状態が、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、リソソーム蓄積障害、神経筋疾患、又は神経変性疾患である、実施形態20~21のうちのいずれか1つに記載の方法。
24.上述のEVが、EVポリペプチド及びPOIを含む融合タンパク質を含む、遺伝的に操作された患者由来EV。
25.POIが、患者の変異した遺伝子、欠失した遺伝子、下方調節された遺伝子、又はその他の欠陥遺伝子によってコードされるタンパク質に対応する、実施形態24に記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
26.POIが、酵素、トランスポーター、シャペロン、膜貫通タンパク質、構造化タンパク質、核酸結合タンパク質、ヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、及びタンパク質結合タンパク質からなる群から選択される、実施形態24~25のうちのいずれか1つに記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
27.融合タンパク質及び/又はPOIが、患者に対して異種である、実施形態24~26のうちのいずれか1つに記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
28.遺伝的に操作された患者由来EVの集団の患者における血漿半減期が、2時間を超える、好ましくは6時間を超える、更により好ましくは24時間を超える、実施形態24~27のうちのいずれか1つに記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
29.血漿半減期が、融合タンパク質の存在及び/又はPOIの存在について血漿をアッセイすることによって測定される、実施形態24~28のうちのいずれか1つに記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
30.患者由来EVが、患者の細胞において、EVポリペプチド及びPOIを含む融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドを翻訳することによって、融合タンパク質を含むように遺伝的に操作される、実施形態24~29のうちのいずれか1つに記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
31.患者由来EVが、患者肝臓細胞由来EVである、実施形態24~30のうちのいずれか1つに記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
32.医薬に使用するための、実施形態24~31のうちのいずれか1つに記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
33.遺伝的疾患、リソソーム蓄積障害、先天性代謝異常、尿素サイクル障害、神経筋疾患、神経変性疾患、中枢神経系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、心血管疾患、がん、感染性疾患、自己免疫疾患及び炎症性疾患からなる群から選択される疾患の治療に使用するための、実施形態24~32のうちのいずれか1つに記載の遺伝的に操作された患者由来EV。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】