(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】拡散構造を有する3D細胞培養基体を含有する培養容器
(51)【国際特許分類】
C12M 3/00 20060101AFI20231024BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20231024BHJP
【FI】
C12M3/00
C12N5/071
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023519861
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 US2021052546
(87)【国際公開番号】W WO2022072421
(87)【国際公開日】2022-04-07
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】リー,フォン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,グレゴリー ロジャー
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB11
4B029CC02
4B029GB09
4B029GB10
4B029HA10
4B065AA90X
4B065BC41
4B065BC46
4B065CA43
4B065CA44
(57)【要約】
細胞培養装置は、各ウェルが上部、底部、および上部と底部との間に配置された側壁を備え、超低接着表面を構成する内部表面を有する、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレートを含む。複数の足場が、マルチウェル細胞培養プレートのウェル内に配置され、各足場は細胞接着表面を有する。いくつかの実施の形態において、足場は繊維足場から作られる。いくつかの実施の形態において、足場は、人工血管足場から作られる。いくつかの実施の形態において、細胞培養装置は、マルチウェル細胞培養プレート内に配置された複数のヒドロゲル足場を含み、その複数のヒドロゲル足場は、異なる長さのヒドロゲル繊維から作られ、ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部がマルチウェル細胞培養プレート内の異なるウェル内に配置されて、相互接続されたウェルを作り出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞培養装置において、
各ウェルが上部、半球形状を有する底部、および該上部と該底部との間に配置された側壁を備え、細胞非接着性表面を構成する内部表面を持つように作られた、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレート、および
前記マルチウェル細胞培養プレートの前記複数のウェル内に配置された複数の足場であって、少なくとも1つの足場が、該足場の一方の端部が各ウェルの底部分に固定されるように各ウェル内に配置される、複数の足場、
を含み、
各足場が細胞接着表面を備える、細胞培養装置。
【請求項2】
前記底部が複数のマイクロキャビティを含み、該複数のマイクロキャビティの底部分に足場が固定される、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記足場が、約100μmから約1000μmの範囲の平均長さおよび約10μmから約100μmの範囲の平均幅を有する、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記複数の足場の内の1つの足場が1つの繊維足場を含み、該繊維足場が、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリガラクツロン酸、および/またはその組合せから形成される、請求項1から3いずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記繊維足場が、複数の繊維から作られる、請求項4記載の装置。
【請求項6】
前記複数の繊維の各繊維が各ウェルの底部分に固定され、個々の繊維の固定された端部が、各ウェルにおいて約100μmから約200μmだけ互いから距離が置かれている、請求項5記載の装置。
【請求項7】
前記人工血管足場が、互いから約100μmから約200μmで、前記ウェルの底部に固定される複数の個々の中空繊維から作られる、請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記中空繊維が非イオン性高分子から形成され、該非イオン性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはポリガラクツロン酸を含む、請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記人工血管足場が、ヒドロゲルから作られる、請求項7記載の装置。
【請求項10】
三次元(3D)細胞培養物を培養する方法において、
請求項1から9いずれか1項記載の細胞培養装置内に細胞を播種する工程であって、該細胞が、該細胞培養装置内に配置された足場の細胞接着表面に接着する、工程と、
前記細胞培養装置に細胞培養培地を加えて、栄養素と酸素を供給することによって、前記細胞を3D細胞培養物に培養する工程であって、該細胞は、該細胞培養培地の添加または交換中に前記足場に接着したままである、工程と、
前記細胞培養装置の足場に接着した3D細胞培養物を撮像する工程と、
前記足場を必要に応じて消化する工程と、
を含む方法。
【請求項11】
相互接続された細胞培養装置において、
各ウェルが上部、半球形状を有する底部、および該上部と該底部との間に配置された側壁を備え、細胞非接着性表面を構成する内部表面を持つように作られた、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレート、および
前記マルチウェル細胞培養プレート内に配置された、異なる長さのヒドロゲル繊維から作られた複数のヒドロゲル足場であって、該ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、前記マルチウェル細胞培養プレート内の異なるウェル内に配置されて、相互接続されたウェルを作り出す、複数のヒドロゲル足場、
を含む細胞培養装置。
【請求項12】
各ヒドロゲル繊維が、細胞接着性表面を含み、約100μmから約100mmの範囲の長さおよび約10μmの平均幅を有する、請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記ヒドロゲル繊維が、細胞外基質(ECM)タンパク質、脱細胞化組織ECM足場、ECMペプチド結合配列、架橋高分子、および/またはその組合せから形成される、請求項11または12記載の装置。
【請求項14】
前記底部が複数のマイクロキャビティを含み、前記ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部が、異なるマイクロキャビティ内に配置されて、相互接続されたマイクロキャビティを作り出す、請求項11から13いずれか1項記載の装置。
【請求項15】
相互接続された細胞培養装置を形成する方法であって、
各ウェルが上部、各々が半球形状を有する複数のマイクロキャビティを含む底部、および該上部と該底部との間に配置された側壁を備え、超低接着表面を構成する内部表面を有する、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレートを含む細胞培養装置に細胞を播種する工程、
前記細胞培養装置に、複数のヒドロゲル繊維から作られた複数のヒドロゲル足場を供給する工程であって、ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、前記マルチウェル細胞培養プレート内の異なるウェル内に配置されて、相互接続されたウェルを作り出す、工程、および
細胞培養培地を提供して、細胞成長および三次元(3D)細胞培養物の形成のための栄養素と酸素を供給する工程、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2020年9月30日に出願された米国仮特許出願第63/085701号の米国法典第35編第119条の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書は、広く、細胞培養装置に関し、より詳しくは、スフェロイドの細胞培養のための拡散構造を有する装置に関する。
【背景技術】
【0003】
スフェロイドなどの、三次元で培養された細胞は、単層として二次元で培養されたその対応物よりも生体内のような機能を示すことができる。2D細胞培養システムにおいて、細胞は、それらが培養される基体に接着することができる。しかしながら、細胞が、スフェロイド内など、3Dで成長させられる場合、その細胞は、基体に接着せずに、互いに相互作用する傾向にある。よって、3Dで培養された細胞は、細胞コミュニケーションおよび細胞外基質の発生の観点から、生体内組織に非常によく似ている。
【0004】
3D細胞集合体またはスフェロイドは、正常細胞、がん細胞、および細胞株から産生することができる。しかしながら、現在入手できる培養装置では機能的血管構造が欠如しているために、スフェロイドの成長は制限され、このため、スフェロイド内の内部細胞が悪影響を受けてしまう。内部細胞塊は、スフェロイド上の外部細胞と比べて、栄養素と酸素の供給が不均一である。同様に、スフェロイドからの拡散抵抗が増加するために、細胞代謝の老廃物が、スフェロイド内の内部細胞により蓄積する。これらの問題は、壊死性コアの形成の原因となり、このことが、スフェロイドのサイズが直径約500μmに到達した場合の、腫瘍スフェロイド培養に報告されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、これらの制限のない培養装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに述べられたような本開示の実施の形態は、スフェロイド成長を可能にする細胞培養装置を提供する。スフェロイド成長の制限を減少させるかまたはなくし、より組織状の3D培養を確立するために、ここに述べられた装置は、培養装置のウェル内の3D細胞培養物中に拡散構造を導入する。この拡散構造は足場(scaffolds)を備える。実施の形態において、その足場は繊維から作られる。繊維の非限定例としては、プラスチックまたは高分子繊維およびヒドロゲル繊維が挙げられる。繊維は、多孔質、ガス透過性、またはその組合せであり、受動拡散作用様式により3D培養物の内部細胞塊から出入りする栄養素供給と老廃物交換を可能にすることができる。
【0007】
いくつかの実施の形態において、本開示の培養基体は、ここに記載されたような足場を持たない培養容器と比べて、その培養基体が、ウェルの断面容積中で改善された細胞分布、改善された細胞の生存能力、細胞の底に向かう重力の作用による細胞からの改善された老廃物の除去、減少した壊死性コア、または他の属性を含む、改善されたおよび/または調整可能な性質を提供できるように作られる。
【0008】
ある態様において、細胞培養装置は、各ウェルが上部、底部、および上部と底部との間に配置された側壁を備え、超低接着表面を構成する内部表面を有する、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレート;および各足場が細胞接着表面を備える、マルチウェル細胞培養プレートのウェル内に配置された複数の足場を含む。
【0009】
いくつかの実施の形態において、底部は、半球形状を構成する。
【0010】
いくつかの実施の形態において、足場は各ウェル内に配置されている。いくつかの実施の形態において、足場の少なくとも一方の端部は、各ウェルの底部分に固定されている。
【0011】
いくつかの実施の形態において、底部は、複数のマイクロキャビティを含む。いくつかの実施の形態において、足場は、複数のマイクロキャビティの各マイクロキャビティ内に配置されている。いくつかの実施の形態において、足場は、各マイクロキャビティの底部分に固定されている。
【0012】
いくつかの実施の形態において、足場は、約100μmから約3000μmの長さを有する。いくつかの実施の形態において、足場は、約100μmから約1000μmの長さを有する。いくつかの実施の形態において、足場は、約100μmから約500μmの長さを有する。実施の形態において、足場は、少なくとも100μm、少なくとも200μm、少なくとも300μm、少なくとも400μm、少なくとも500μmの長さを有する。実施の形態において、足場は、3000μm以下、2000μm以下、1000μm以下、500μm以下の長さを有する。
【0013】
いくつかの実施の形態において、足場は、約10μmから約100μmの幅を有する。いくつかの実施の形態において、足場は、約10μmから約50μmの幅を有する。いくつかの実施の形態において、足場は、約10μmから約20μmの幅を有する。実施の形態において、足場は、少なくとも10μm、少なくとも15μm、少なくとも20μmの幅を有する。実施の形態において、足場は、100μm以下、50μm以下、20μm以下の幅を有する。
いくつかの実施の形態において、足場は、繊維足場から作られる。いくつかの実施の形態において、繊維足場は、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはポリガラクツロン酸(PGAまたはペクチン)から形成される。PGAが使用される実施の形態において、接着した3D細胞培養物は、足場から放出または収穫されることがある。例えば、足場を消化するために、ペクチナーゼなどの酵素および/またはキレート剤が使用されることがある。いくつかの実施の形態において、足場を穏やかに消化して、3D細胞培養物を放出できる他のヒドロゲルが使用されることがある。
【0014】
いくつかの実施の形態において、繊維足場は、複数のプラスチック繊維または高分子繊維から作られる。いくつかの実施の形態において、複数のプラスチック繊維の各繊維は、各ウェルの底部分に固定されている。いくつかの実施の形態において、個々の繊維は、各ウェル内で約100μmから約200μmだけ互いから距離が置かれている。
【0015】
いくつかの実施の形態において、足場は、人工血管足場から作られる。
【0016】
いくつかの実施の形態において、人工血管足場は、中空繊維から作られる。いくつかの実施の形態において、人工血管足場は、複数の中空繊維から作られる。いくつかの実施の形態において、個々の中空繊維は、互いから約100μmから約200μmだけ離れて固定されている。いくつかの実施の形態において、中空繊維は、非イオン性高分子から形成される。いくつかの実施の形態において、非イオン性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリスチレン、またはポリプロピレンから作られる。
【0017】
いくつかの実施の形態において、中空繊維は、ヒドロゲルコーティングをさらに含む。いくつかの実施の形態において、人工血管足場は、ヒドロゲルから作られる。いくつかの実施の形態において、ヒドロゲルは、細胞外基質(ECM)タンパク質、脱細胞化組織ECM組織、架橋高分子、またはその組合せから作られる。接着性ヒドロゲルの非限定例としては、ECMタンパク質および脱細胞化組織ECM足場が挙げられ、ECMの例としては、多糖グリコサミノグリカン(GAG)、並びにコラーゲン、ラミニン、およびフィブロネクチンなどのタンパク質が挙げられる。非接着性ヒドロゲルの非限定例としては、数ある中でも、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、およびポリアクリルアミドなどの架橋高分子が挙げられる。
【0018】
ある態様において、三次元(3D)細胞培養物を培養する方法が提供される。この方法は、ここに示されたような、1つ以上の実施の形態による細胞培養装置内に細胞を播種する工程であって、細胞が、細胞培養装置内に配置された足場の細胞接着表面に接着する、工程、および細胞培養装置に細胞培養培地を加えて、栄養素と酸素を供給することによって、細胞を3D細胞培養物に培養する工程であって、細胞は、細胞培養培地の添加または交換中に足場に接着したままである、工程を含む。いくつかの実施の形態において、この方法は、細胞培養装置の足場に接着した3D細胞培養物を撮像する工程をさらに含む。
【0019】
ある態様において、相互接続された細胞培養装置は、各ウェルが上部、底部、および上部と底部との間に配置された側壁を備え、超低接着表面を構成する内部表面を有する、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレート;およびそのマルチウェル細胞培養プレート内に配置された、異なる長さのヒドロゲル繊維から作られた複数のヒドロゲル足場であって、ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、マルチウェル細胞培養プレート内の異なるウェル内に配置されて、相互接続されたウェルを作り出す、複数のヒドロゲル足場を含む。
【0020】
いくつかの実施の形態において、底部は、半球形状を構成する。
【0021】
いくつかの実施の形態において、ヒドロゲル繊維は、約100μmから約100mmの範囲の長さを有する。いくつかの実施の形態において、ヒドロゲル繊維は、約10μmの幅を有する。
【0022】
いくつかの実施の形態において、各ヒドロゲル繊維は、細胞接着性表面を含む。いくつかの実施の形態において、ヒドロゲル繊維は、非接着性ヒドロゲルから形成され、接着性基(attachment group)で官能化された表面を含む。接着性基の非限定例としては、ECMタンパク質およびアルギニン・グリシン・アスパラギン酸(RGD)などの接着性ペプチド配列が挙げられる。いくつかの実施の形態において、ヒドロゲル繊維は、ECMタンパク質、脱細胞化組織ECM足場、ECMペプチド配列、および架橋高分子から形成される。接着性ヒドロゲルの非限定例としては、ECMタンパク質および脱細胞化組織ECM足場が挙げられる。ECMの例としては、多糖グリコサミノグリカン(GAG)、並びにコラーゲン、ラミニン、およびフィブロネクチンなどのタンパク質が挙げられる。非接着性ヒドロゲルの非限定例としては、数ある中でも、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、およびポリガラクツロン酸(PGA)などの架橋高分子が挙げられる。
【0023】
いくつかの実施の形態において、ヒドロゲル足場は、ウェル内で固定されていない、または浮遊性である。
【0024】
いくつかの実施の形態において、底部は、複数のマイクロキャビティを含む。いくつかの実施の形態において、ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、異なるマイクロキャビティ内に配置されて、相互接続されたマイクロキャビティを作り出す。
【0025】
ある態様において、相互接続された細胞培養装置を形成する方法が提供される。この方法は、各ウェルが上部、底部、および上部と底部との間に配置された側壁を備え、超低接着表面を構成する内部表面を有する、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレートを含む細胞培養装置に細胞を播種する工程;細胞培養装置に、複数のヒドロゲル繊維から作られた複数のヒドロゲル足場を供給する工程であって、ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、マルチウェル細胞培養プレート内の異なるウェル内に配置されて、相互接続されたウェルを作り出す、工程;および細胞培養培地を提供して、細胞成長および三次元(3D)細胞培養物の形成のための栄養素と酸素を供給する工程を含む。
【0026】
いくつかの実施の形態において、底部は、半球形状を構成する。いくつかの実施の形態において、底部は、複数のマイクロキャビティを含む。
【0027】
ここに記載された実施の形態の追加の特徴と利点は、以下の詳細な説明に述べられており、一部は、その説明から当業者に容易に明白となるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、並びに添付図面を含む、ここに記載された実施の形態を実施することによって、認識されるであろう。
【0028】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、様々な実施の形態を記載しており、請求項の主題の性質および特徴を理解するための概要または骨子を提供する意図があることを理解すべきである。添付図面は、その様々な実施の形態のさらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面は、ここに記載された様々な実施の形態を図示しており、説明とともに、請求項の主題の原理および作動を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図2】ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による、繊維から作られた足場の存在下で培養された細胞の画像
【
図3】ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による、繊維から作られた足場の存在下で培養された細胞の画像
【
図4A】本開示の1つ以上の実施の形態による、マルチウェルマイクロプレートの実施の形態であって、マルチウェルマイクロプレートを示す説明図
【
図4B】本開示の1つ以上の実施の形態による、マルチウェルマイクロプレートの実施の形態であって、マルチウェルマイクロプレートの1つのウェルを示す説明図
【
図4C】本開示の1つ以上の実施の形態による、マルチウェルマイクロプレートの実施の形態であって、
図4Bの囲みC内に示された区域の拡大図
【
図5A】本開示の1つ以上の実施の形態による、数々のマイクロキャビティの実施の形態を示す説明図
【
図5B】本開示の1つ以上の実施の形態による、数々のマイクロキャビティの実施の形態を示す説明図
【
図6A】本開示の1つ以上の実施の形態による、3D細胞培養マイクロプレートの実施の形態の説明図
【
図6B】本開示の1つ以上の実施の形態による、3D細胞培養マイクロプレートの実施の形態の説明図
【
図7】ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による、テザリング繊維を有するウェルの断面側面図
【
図8】ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による、人工血管足場を有するウェルの断面側面図
【
図9】ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による、血管足場の差し込み図を含む、
図8のウェルの上面図
【
図10】ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による、ヒドロゲル足場の側面斜視図
【
図11】ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による、ヒドロゲル足場を有する相互接続されたウェルの上面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
スフェロイドの細胞培養のための従来の装置と容器には、スフェロイドの成長の制限に関連する欠点がある。従来の装置には、機能性血管構造がなく、これにより、スフェロイド内の内部細胞が悪影響を受け、スフェロイドの成長が制限される。スフェロイド上の外部細胞と比べて、内部細胞塊は、栄養素と酸素の供給が不均一である。細胞代謝の老廃物が、スフェロイドからの拡散抵抗が増加するために、スフェロイド内の内部細胞により蓄積する。これらの問題は、壊死性コアの形成の原因となり、このことが、スフェロイドのサイズが直径約500μmに到達した場合の、腫瘍スフェロイド培養に報告されている。
【0031】
スフェロイドの生存能力を、肝がん細胞株を使用して評価した。6ウェルのマイクロプレート用に設計されたマイクロキャビティ挿入物のプロトタイプ(各々が733のマイクロウェルを有する)内に、バルクスフェロイド培養のために、120K細胞/mLでHepG2細胞を播種した。
図1は、9日目のHepG2スフェロイドの明視野像を示している。カルセインAMで染色された9日目のHepG2スフェロイドの蛍光像が示されており、緑色がカルセインAMおよび生細胞を示す-緑色は、黒色の画像背景に対して薄い灰色として示されている。EthD-1で染色された9日目のHepG2スフェロイドの蛍光像が示されており、赤色がEthDおよび死細胞を示す-赤色は、黒色の画像背景に対して中間の灰色として示されている。死細胞(赤色のEthD染色/中間の灰色により示される)および生細胞(緑色のカルセインAM染色/薄い灰色により示されている)の融合蛍光像も、9日目のHepG2スフェロイドについて示されており、これは、黒色の画像背景に対して薄い灰色の外輪の内部に中間の灰色の輪がある、著しい細胞死を示している。このように、
図1に示された9日目のHepG2スフェロイドのスフェロイド生存能力評価は、スフェロイドのコア内に細胞死をはっきりと示している。
【0032】
3Dスフェロイドとして細胞を成長させるための市販されている従来の基体は、一般に、細胞に非接着性である表面コーティングを有する微細構造のピット状形状を有する。細胞は、これらのピットの底に沈み、互いに接着し、次いで、細胞集合体(すなわち、スフェロイド)として成長する。しかしながら、マイクロピットが浅すぎると、スフェロイドは、培地の交換中にピットから容易に外れ、失われ得る。反対に、マイクロピットが深すぎると、マイクロピットを含む容器に細胞培養培地を最初に加える最中に、マイクロピットの容積内に空気を捕捉しないようにするのが難しくなり得る。
【0033】
本開示は、細胞培養中にプラスチック繊維、ヒドロゲルポスト、またはその組合せを3D細胞培養物に導入する細胞培養装置を記載する。その繊維またはポストは、スフェロイドのコアに栄養素を供給できるように、並びに3D細胞培養物の内部細胞塊から老廃物を交換できるように、多孔質またはガス透過性であることがある。老廃物交換は、プラスチック繊維またはヒドロゲルポストの特徴のために、受動拡散作用様式により行われる。
【0034】
ここに記載された実施の形態による装置は、ウェル内またはマイクロキャビティ内に3D細胞塊を固定化する特徴のために、細胞培養操作中のスフェロイドの損失を防ぐ。実施の形態において、ここに記載された装置は、3D細胞培養物内の栄養素、代謝老廃物、および酸素の均一な分布を可能にする人工血管足場の使用により、組織状3D培養物を支援する。さらに、ここに記載された装置の実施の形態は、3D細胞培養物内の壊死性コアの形成を防ぎ、3D形態で生成される人工組織のサイズを増加させるのに役立つ。
【0035】
図2および
図3は、本開示の実施の形態による培養装置のウェル内で培養された細胞の画像を示す。肝臓スフェロイド培養を計画するために、初代ヒト肝細胞(PHH)の2つの異なるドナーロットを使用した。これらの画像は、Corning 96ウェルスフェロイドプレート(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporated)内の超低接着(ULA)表面コーティングで被覆されたウェル内の肝細胞を示している。
図2の画像は、PHHのドナーロット336について28日目に撮影され、
図3の画像は、PHHのドナーロット404について13日目に撮影された。
図2に示されるように、培養装置は、ウェル内に実質的に真っ直ぐな形状のプラスチック繊維を含み、細胞は、プラスチック繊維の長さに沿って細長い3D配置のプラスチック繊維に付着している。
図3に示されるように、培養装置は、ウェル内の湾曲形状のプラスチック繊維を含み、細胞は、繊維の第1の端部から反対の端部までに広がる3D配置のプラスチック繊維に付着している。
図2および
図3のプラスチック繊維は、ウェル内に配置され、培地内に浮遊している。しかしながら、いくつかの実施の形態において、プラスチック繊維は、ウェル内に固定されていることがある。
【0036】
ここに記載された態様において、細胞培養装置内に複数の足場が配置されることがある。この細胞培養装置は、各ウェルが、上部開口、底部、および上部と底部との間に配置された側壁を含む、複数のウェルを備えることがあり、各ウェルは、内部表面が細胞非接着性表面を構成するように作られている。ある実施の形態において、この培養装置の複数のウェルにおける各ウェルは、複数の足場を含むことがある。ある実施の形態において、この培養装置の複数のウェルにおける各ウェルは、少なくとも1つの足場を含むことがある。ある実施の形態において、この培養装置の複数のウェルにおけるウェルの少なくともいくつかは、足場を含む。
【0037】
ある実施の形態において、プラスチック繊維または人工血管足場などのここに記載された足場は、ウェルまたはマイクロキャビティ内に固定されることがある。足場は、足場をウェルまたはマイクロキャビティ内にしっかりと位置付けるどの適切な手段によって固定されてもよい。非限定例において、足場は、接着剤により固定される、もしくはウェルまたはマイクロキャビティに成形または外側被覆(overmolded)されることがある。
【0038】
いくつかの実施の形態において、足場は、マルチウェルプレート内の各ウェルまたはマイクロキャビティ内の実質的に同じ位置に固定され、これにより、3D細胞培養物の効率的な撮像が容易になる。例えば、足場は、各ウェルまたはマイクロキャビティの中央の底部分に固定されることがある。ある実施の形態において、繊維足場の複数の繊維における各繊維は、各ウェルの底部、または底部の一部に固定される。各繊維の端部が底部に固定されることがある。個々の繊維の固定された端部は、隣接して固定された繊維から距離が置かれることがある。例えば、個々の繊維の固定端部は、各ウェルにおいて互いから約100μmから約200μmだけ距離が置かれることがある。いくつかの実施の形態において、プラスチック繊維の少なくとも一方の端部は、ウェルまたはマイクロキャビティ内に固定されることがあり、そのプラスチック繊維は、ウェルまたはマイクロキャビティ内で垂直または実質的に垂直の向きを有することがある。いくつかの実施の形態において、プラスチック繊維の互いに反対の端部が、ウェルまたはマイクロキャビティ内に固定され、そのプラスチック繊維は、ウェルまたはマイクロキャビティにおいて水平または実質的に水平の向きを有することがある。
【0039】
ある態様において、マルチウェルプレートのウェル内に3D細胞培養物拡散構造を含む細胞培養装置が提供される。実施の形態において、拡散構造は、足場を含む。その足場は、テザリングプラスチック繊維の非限定例など、繊維から作られることがある。実施の形態において、ウェルプレートの各ウェル内に足場が配置されることがある。実施の形態において、ウェルプレートの選択されたウェル内に足場が配置されることがある。そのウェルプレートは、マルチウェルプレートにおけるように、複数のウェルを含むことがある。実施の形態において、各ウェルの内部表面は、超低接着(ULA)コーティングで被覆された、または処理された表面の非限定例など、細胞非接着性表面である。足場は、細胞接着性表面を含み、3D細胞培養物に固定点を提供し、これにより、細胞培養過程中により完全な培地交換ができる。3D細胞培養物を固定することによって、培地の交換または化合物の添加の最中など、細胞培養操作またはアッセイ過程中に、3D細胞培養物の移動または損失が防がれる。
【0040】
ここで
図4A、
図4B、および
図4Cを参照すると、マイクロキャビティプレートである細胞培養装置の実施の形態が示されている。96ウェルのマイクロキャビティプレートは、96ウェルの各々に多数の3D細胞培養物を提供するために、各ウェルの底面に数々のマイクロキャビティを有し、各マイクロキャビティは、培養細胞を3D立体構造で成長させるような構造になっている。
図4Aは、数々のウェル110を有するマルチウェルプレート10を示す。
図4Bは、
図4Aのマルチウェルプレート10の1つのウェル101を示す。1つのウェル101は、上部開口118、液体不透過性底面106、および側壁113を有する。
図4Cは、
図4Bの囲みC内に示されたウェル101の底面106の区域の拡大図であり、
図4Bに示された1つのウェルの底面に数々のマイクロキャビティ112を示している。数々のマイクロキャビティ112における各マイクロキャビティ115は、側壁121および液体不透過性底面116を有する。
図4A、
図4B、および
図4Cに示されたマイクロキャビティスフェロイドプレートは、個々のウェル101の底部に数々のマイクロキャビティ112を提供し、マルチウェルプレートの個々のウェルのマイクロキャビティの各々の中で個々の3D細胞培養物を成長させるために使用することができる。このタイプの容器を使用することによって、利用者は、マルチウェルプレートの各ウェル内で多数の3D細胞培養物を成長させ、それによって、長期の生存能力および機能性を維持し、ここに提供されるようなアッセイに使用するための同じ培養および実験条件下で処理できる多数の3D細胞培養物を提供することができる。さらに、このタイプの容器は、培養または試験中にどのような3D細胞培養物の融合も防ぐために、個々の3D細胞培養物間に物理的バリアを提供する。
【0041】
ここで
図5Aを参照すると、数々のマイクロキャビティ112の典型的な実例が示されている。
図5Aは、各々が、上部開口118、底面119、深さd、および側壁121により画成される幅wを有する、マイクロキャビティ115を示している。
図5Aおよび5Bに示されるように、数々のマイクロキャビティは、液体不透過性の凹形弓状底面116を有する。実施の形態において、マイクロキャビティの底面は、円形または円錐形、角度のある、平らな底の、または3D細胞培養物を形成するのに適したどの形状であっても差し支えない。いくつかの実施の形態において、円形底部が好ましい。円形底部119は、垂直側壁が円形底部119に移行するときに、移行区域114を有し得る。この区域は、滑らかなまたは角度のある移行区域であり得る。実施の形態において、「マイクロキャビティ」は、例えば、上部開口118と最下点116、上部開口の中心、および最下点と上部開口の中心との間の中心軸105を画成するマイクロウェル115であり得る。実施の形態において、ウェルは、その軸の周りに回転対称である(すなわち、側壁は円筒形である)。いくつかの実施の形態において、上部開口は、250μmから1mm、またはそれらの測定値内の任意の範囲の上部開口を横切る距離(幅w)を規定する。いくつかの実施の形態において、上部開口から最下点までの距離(深さ「d」)は、200μmと900μmの間、または400μmと600μmの間である。数々のマイクロキャビティは、異なる形状、例えば、放物線、双曲線、逆V字、および同様の断面形状、またはその組合せを有することがある。実施の形態において、マイクロキャビティは、マイクロキャビティが実験台やテーブルなどの表面と直接接触しないようにその下に保護層130を有することがある。いくつかの実施の形態において、ウェルの底部119と保護層との間に空隙110が設けられることがある。実施の形態において、空隙110は、外部環境と連通していても、閉じられていてもよい。いくつかの個々のマイクロキャビティ115の底部に、3D細胞培養物25が示されている。
【0042】
ここで
図5Bを参照すると、数々のマイクロキャビティ112のさらなる典型的な実例が示されている。
図5Bは、数々のマイクロキャビティ112が正弦波形または放物形を有することがあるのを示している。この形状により、丸まった上縁またはマイクロキャビティの縁が作り出され、これにより、実施の形態において、マイクロキャビティの上部での尖った角または90度の角度での空気の捕捉が減少する。
図5Bに示されるように、複数の態様において、マイクロキャビティ115は、上部直径D
上部を有する上部開口、マイクロキャビティの最下点116からマイクロキャビティの上部までの高さH、マイクロキャビティの上部とマイクロキャビティの最下点116との間の中間の高さでの直径D
h、および側壁113を有する。そのような実施の形態において、ウェルの底部は丸まっており(例えば、半球形に丸い)、側壁は、ウェルの底部から上部へと直径が増加し、ウェル間の境界は丸くなっている。それゆえ、ウェルの上部は、直角で終わっていない。いくつかの実施の形態において、ウェルは、底部と上部との間の中間地点での直径D(D
hとも称される)、ウェルの上部での直径D
上部、およびウェルの底部から上部までの高さHを有する。これらの実施の形態において、D
上部は、Dより大きい。
【0043】
ここで
図6Aおよび6Bを参照すると、細胞を3D立体構造で成長させるような構造になっているウェルを含む細胞培養装置、例えば、3D細胞培養プレートの実施の形態が示されている。
図6Aは、3D細胞培養プレート11、この場合には、96ウェルプレートの実施の形態を示し、丸底119は、96ウェルの各々に1つの3D細胞培養物を収容するように作られている。通常、これらのプレートは、ウェル101の上部開口118を上向きにして使用されるが、
図6Aでは、ウェル101の底部の構造を示すために、そのプレートは逆さまに示されている。
図6Bは、フレーム130と、各々が、上部開口118、側壁121、および液体不透過性の凹形弓状底面119を有する、多数のウェル101とを有する3D細胞培養マイクロプレートの実施の形態の図である。3D細胞培養物25が、個々のウェル101の底部に示されている。実施の形態において、フレーム130は、実験台やテーブルなどの表面の上にウェルの底部を保持することがある。いくつかの実施の形態において、ウェルの底部119とプレートの真下の表面との間に、空隙が設けられることがある。実施の形態において、その空隙は、外部環境と連通していても、閉じられていてもよい。
【0044】
実施の形態において、ウェルの少なくとも1つの凹形弓状底面は、例えば、同じウェル内に複数の隣接した凹形弓状底面を有し得る。または、
図4A~Cに示されるように、マルチウェルプレートは、平らな底面を持つウェルを有することがあり、その平らな底面は、同じウェル内に数々の隣接した凹形弓状底面またはマイクロキャビティを有する。実施の形態において、細胞培養装置は、例えば、1つのウェル、もしくは各ウェルの底部または基部にある複数の窪みまたはピットなど、多数の「3D細胞培養ウェル」を有するマルチウェルプレート形態、例えば、マイクロキャビティ3D細胞培養プレートであり得る。いくつかの実施の形態において、その複数の3D細胞培養ウェルは、例えば、単一の3D細胞培養物または3D細胞培養ウェル当たり1つの3D細胞培養物を収容するように作られている。
【0045】
実施の形態において、少なくとも1つの凹形弓状底面または「カップ」を有するマイクロキャビティの底面は、例えば、半球形状、丸まった底部を有する円錐表面、および同様の表面形状、またはその組合せであり得る。マイクロキャビティの底部は、窪み、ピット、および同様の凹形円錐台状起伏表面(relief surface)、またはその組合せのような、3D細胞培養に適した丸い面または曲面で最終的に終端する、終わる、または底に達する。実施の形態において、チャンバ内の各マイクロキャビティの少なくとも1つの凹面は、半球形状面、側壁から底面まで約30から約60度のテーパーを有する円錐面、またはその組合せを含む。いくつかの実施の形態において、少なくとも1つの凹形弓状底面は、例えば、選択されたウェル形状、各ウェル内の凹形弓状面の数、プレート内のウェルの数、および同様の検討事項に応じて、例えば、中間値と中間範囲を含む、約250から約5,000マイクロメートル(すなわち、0.010から0.200インチ)の直径を有する、半球体の水平部分または薄片などの半球体の一部であり得る。他の凹形弓状面は、例えば、放物線、双曲線、逆V字、および同様の断面形状、またはその組合せを有し得る。
【0046】
実施の形態において、ウェルを備えた細胞培養装置、例えば、3D細胞培養プレートまたはマイクロキャビティ3D細胞培養プレートは、細胞非接着性表面をさらに備えることができる。細胞培養プレートの各ウェルは、細胞非接着性表面を備えるように作られた内部表面を含むことがある。例えば、細胞非接着性表面は、少なくとも1つの凹面および/または1つ以上の側壁上など、ウェルの一部の上に、低接着性、超低接着性、または非接着性コーティングを含むことがある。細胞非接着性材料の例としては、ペルフルオロポリマー、オレフィン、または同様の高分子、またはその混合物が挙げられる。他の例としては、アガロース、ポリアクリルアミドなどの非イオン性ヒドロゲル、またはポリエチレンオキシドなどのポリエーテルまたはポリビニルアルコールなどのポリオール、または同様の材料、またはその混合物が挙げられる。
【0047】
実施の形態において、側壁表面(すなわち、周囲)は、例えば、垂直円筒またはシャフト、ウェル上部からウェル底部まで直径が減少する垂直円錐の一部、円錐移行部を有する垂直な正方形シャフトまたは垂直楕円シャフト、すなわち、円錐に移行し、少なくとも1つの凹形弓状面、すなわち、丸い表面または曲面を有する底部で終わる、ウェルの上部で正方形または楕円のシャフト、またはその組合せであり得る。他の説明に役立つ形状例としては、穴あき円筒、穴あき円錐型円筒、最初に円筒で次に円錐、および他の同様の形状、またはその組合せが挙げられる。
【0048】
例えば、細胞非接着性表面または低接着基体、細胞培養物品チャンバの本体部および基部のウェルの曲率、および重力の1つ以上が、腫瘍細胞の3D細胞培養物への自己組織化を誘発し得る。腫瘍細胞は、単層で成長した細胞と比べて、より生体内のような応答を示す分化細胞機能を維持する。実施の形態において、3D細胞培養物は、例えば、3D細胞培養物中の細胞の種類に応じて、非限定例として、中間値と中間範囲を含む、約100から約500マイクロメートル、約150から約400マイクロメートル、約150から約300マイクロメートル、および約200から約250マイクロメートルの直径を持つスフェロイド状形状を有することがある。
【0049】
実施の形態において、ウェルおよび/またはチャンバ内の各マイクロキャビティを含む細胞培養装置は、不透明側壁および/または少なくとも1つの凹面を有するガス透過性かつ液体不透過性底部をさらに備え得る。不透明側壁は、蛍光イメージングが利用される場合、ウェル間またはマイクロウェル間のクロストークを防ぐ。いくつかの実施の形態において、少なくとも1つの凹面を有する底部の少なくとも一部は透明である。そのような特徴を有する細胞培養装置(例えば、マイクロキャビティスフェロイドプレート、マイクロキャビティ挿入物、マイクロキャビティ挿入プレートなど)は、あるマルチウェルプレート(その中で3D細胞培養物を形成し、可視化できる)からアッセイを行うための別のプレートに3D細胞培養物を移送する必要をなくし、したがって時間を節約し、3D細胞培養物を不必要に乱すのを防ぐことを含む、本開示の方法のいくつかの利点を提供することができる。さらに、ガス透過性底部(例えば、特定の規定の厚さでガス透過性を有する高分子から作られたウェルの底部)により、3D細胞培養物は増加した酸素供給を受けることができる。例示のガス透過性底部は、所定の厚さでペルフルオロポリマーまたはポリ4-メチルペンタンなどの高分子から形成することができる。
【0050】
ガス透過性ポリマーの代表的な厚さと範囲は、例えば、中間値と中間範囲を含む、約0.001インチから約0.025インチ、0.0015インチから約0.03インチ(ここで、1インチ=25,400マイクロメートル、0.000039インチ=1マイクロメートル)であり得る。それに加え、またはそれに代えて、ポリジメチルシロキサンポリマーなどのガス透過率の高い他の材料は、例えば、約1インチまでのある厚さで、十分なガス拡散を与えることができる。
【0051】
図7は、拡散構造または足場を含む細胞培養装置におけるウェルまたはマイクロキャビティ300の断面側面図を示す。
図7に示されるように、足場は、ある実施の形態によるテザリング足場またはテザリングプラスチック繊維である。このテザリング足場またはテザリングプラスチック繊維は、細胞接着を可能にする接着性表面を有し、3D細胞培養物を機械的に支持し、固定化する。側壁370が、ウェルまたはマイクロキャビティの上部380と、ウェルまたはマイクロキャビティの底部360との間に配置されている。ウェルまたはマイクロキャビティの底部360は、半球形状を有することがある。ウェルまたはマイクロキャビティの内部表面または内面340は、ULA表面330など、細胞非接着性表面を有することがある。テザリングプラスチック繊維350が、ウェルまたはマイクロキャビティ内に配置されることがあり、これは、3D細胞培養物310の固定地点である。いくつかの実施の形態において、複数のテザリングプラスチック繊維が、ウェルまたはマイクロキャビティ内に配置されることがある。
【0052】
いくつかの実施の形態において、繊維などの足場が、マイクロキャビティの底部に接着され、これにより、マイクロキャビティをより浅くし、それでも、培地交換中に3D細胞培養物を維持することができる。これは、3D細胞培養物は、足場を形成するこれらの繊維またはポストの周りに成長し、いくつかの実施の形態において、それに接着するために起こる。このようにして、容器に培地を最初に導入する最中に、空気の捕捉が取るに足らなくなる。
【0053】
テザリング足場は、どの適切な手段によって、ウェルまたはマイクロキャビティに固定されてもよい。非限定例として、足場は、プラスチック繊維から作られることがあり、これは、プラスチック繊維をウェルまたはマイクロキャビティに成形することによって、固定することができる。培地320は、3D細胞培養物310およびプラスチック繊維350を覆う量でウェルまたはマイクロキャビティ300内に配置される。ウェルまたはマイクロキャビティ300は、内面340上にULA表面330を有し、このULA表面は、細胞がウェルまたはマイクロキャビティの内面に接着するのを防ぐ。
【0054】
ここに記載されたような足場は、一本の繊維または複数の繊維から作られることがある。足場は、3D細胞培養物を形成するために細胞をテザリングすることができるどの適切な材料から形成されてもよい。ある実施の形態において、細胞培養装置の各ウェルは、異なる材料から形成された繊維足場を有することがある。ある実施の形態において、細胞培養装置の各ウェルは、同じ材料から形成された繊維足場を有することがある。例えば、繊維は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリガラクツロン酸(GPAまたはペクチン)、および/またはその組合せから形成されたプラスチック繊維または高分子繊維であることがある。
【0055】
PGAが使用される実施の形態において、接着した3D細胞培養物は、足場から放出または収穫されることがある。例えば、ペクチナーゼなどの酵素および/またはキレート剤を使用して、足場を消化することができる。ここに記載されたような足場を使用する方法は、細胞培養後、または細胞培養中の規定の時間で、酵素および/またはキレート剤を添加することによって、足場が消化される、消化工程を必要に応じて含むことがある。いくつかの実施の形態において、足場を穏やかに消化して、3D細胞培養物を放出することができる他のヒドロゲルが使用されることがある。
【0056】
いくつかの実施の形態において、繊維は、ウェル内で浮遊性であることがある。いくつかの実施の形態において、繊維は、ウェルの一部に固定されることがある。例えば、繊維は、ウェルの底部に一端で固定されることがある。いくつかの実施の形態において、繊維は、実質的に真っ直ぐな形状などに、成形または形成されている、弧状または湾曲形状の形態に成形されている、もしくは円の形状に成形されている。
【0057】
足場は、足場をウェルまたはマイクロキャビティ内に配置できるどのサイズのものであってもよく、細胞培養のために十分な空間を提供することができる。細胞培養装置内に配置された足場は、寸法が様々であってよい。いくつかの実施の形態において、足場は、約100μmから約3000μmの平均長さを有する。いくつかの実施の形態において、足場は、約100μmから約1000μmの平均長さを有する。いくつかの実施の形態において、足場は、約100μmから約500μmの平均長さを有する。いくつかの実施の形態において、足場は、約10μmから約100μmの平均幅を有する。いくつかの実施の形態において、足場は、約10μmから約50μmの平均幅を有する。いくつかの実施の形態において、足場は、約10μmから約20μmの平均幅を有する。
【0058】
ここに記載された実施の形態による細胞培養装置に、細胞培養のためのどの適切なマルチウェルプレートを使用してもよい。いくつかの実施の形態において、細胞培養装置は、6ウェルプレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、または1536ウェルプレートなどのマルチウェルプレートである。ウェルプレートは複数のウェルを備え、ウェルプレート内に配列されたウェルの量は、ウェルプレートのサイズと用途に応じて様々である。いくつかの実施の形態において、細胞培養装置は、マイクロキャビティ挿入物をさらに含む。例えば、ウェルプレートは、九十六(96)ウェルの超低接着表面の無菌スフェロイドマイクロプレート(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporatedから入手できる;カタログ番号4515、4520)であることがある。例えば、ここに記載された実施の形態による足場は、Corning96ウェルまたは384ウェルスフェロイドプレート(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporatedから入手できる)およびElplasiaマイクロキャビティウェルプレート(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporatedから入手できる)など、どの適切なマルチウェルプレートを構成してもよい。ウェルプレートは、ガラス、プラスチック、または同様の材料から製造されることがある。ウェルプレートは蓋を必要に応じて有することがあり、その蓋は、異物が複数のウェルに入るのを防ぐために、ウェルプレートの上部を覆って配置されるように作られている。蓋は、ウェルプレート上にきつく嵌めることができる、もしくはテープ、輪ゴムなどの代替手段によって、ウェルプレートに固定することができる。
【0059】
ウェルプレートは、各ウェル内に配置された細胞培養物を含む。細胞培養物は、ウェルプレートの複数のウェルの各々の中に配置され、成長させられる。培地も、ウェルプレートの複数のウェルの各々の中に配置され、ここで、培地は、細胞培養物を被包し、ウェル内のエア・ポケットを除去するために使用される。細胞培養物は、ある期間(すなわち、6日間まで)に亘り成長させられた後、ウェルプレート内で3D細胞培養物を形成したであろう。ある場合には、細胞培養物は、ウェルプレートをインキュベータ(図示せず)内に配置することによって、成長させられることがある。いくつかの実施の形態において、細胞培養物をウェル内に配置する前に、ウェルプレートを殺菌することがある。
【0060】
本開示の実施の形態による方法は、細胞培養装置で細胞を培養する工程を含むことがある。各ウェルまたはマイクロキャビティ内に足場を含む細胞培養装置において、細胞を3D細胞培養物に培養する工程は、細胞をウェル内に配置された足場に播種する工程を含むことがある。細胞を足場に播種する工程は、足場またはウェルを、細胞を含有する溶液と接触させる工程を含むことがある。細胞を足場に播種する最中に、細胞は、足場の表面に接着する。細胞を足場に播種する工程は、足場を細胞培養培地と接触させる工程をさらに含むことがある。一般に、足場を細胞培養培地と接触させる工程は、培養すべき細胞を、培養すべき細胞が中にある培地を含む環境にある足場上に配置する工程を含む。足場を細胞培養培地と接触させる工程は、細胞培養培地を足場上にピペットで供給する工程、または足場を細胞培養培地内に浸す工程、または細胞培養培地を連続様式で足場に通過させる工程を含むことがある。
【0061】
ある態様において、ここに記載された実施の形態による細胞培養装置は、より組織状の3D培養物を支持するための人工血管足場を含む。人工血管足場は、分岐した、互いに触れた、および/または互いに接触した複数の繊維から作られることがある。この細胞培養装置は、人工血管足場が3D細胞構造の内部細胞塊に酸素と栄養素の拡散を可能にしつつ、代謝老廃物をより容易に外側に(すなわち、ウェルの内側側壁に向かって)拡散させられるので、3D組織状培養物を可能にする。細胞培養装置は、複数のウェルおよび/または複数のマイクロキャビティを有するマルチウェル細胞培養プレートを備える。
【0062】
図8は、ここに示されたか、または記載された1つ以上の実施の形態による人工血管足場を含むウェルまたはマイクロキャビティの断面側面図を示す。
図9は、ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による、血管足場の差し込み図を含む、
図8のウェルまたはマイクロキャビティの上面図を示す。ウェルまたはマイクロキャビティ400は、上部480、底部460、上部480と底部460との間に配置された側壁470を含む。ウェルまたはマイクロキャビティ400は、細胞に非接着性である表面430を有する内面または内側表面440を備えている。いくつかの実施の形態において、細胞非接着性表面430は、超低接着(ULA)表面である。細胞は、細胞培養装置のウェル/マイクロキャビティ中に播種され、細胞培養培地420がウェル/マイクロキャビティ内に配置される。
【0063】
細胞接着性表面を有する人工血管足場455が、ウェル/マイクロキャビティ内に配置され、ウェル/マイクロキャビティの底部460に固定されることがある。この人工血管足場は、接着剤などによって、どの適切な手段により固定されてもよい、もしくは成形または外側被覆によって形成されてもよい。いくつかの実施の形態において、人工血管足場は、細胞接着性表面を有する複数の繊維450から作られる。いくつかの実施の形態において、人工血管足場455の繊維450は、ポストまたは支柱のような形状をしており、ウェル/マイクロキャビティ400の底部460に一端で固定されている。いくつかの実施の形態において、人工血管足場は複数の繊維から作られ、繊維は、互いから約100μmから約200μmの距離で配置されている。
【0064】
人工血管足場455は、栄養素と酸素を運搬する培地の受動拡散を可能にするどの適切な材料から形成されてもよい。例えば、人工血管足場は、ヒドロゲル材料または中空繊維から作られることがある。中空繊維またはヒドロゲル材料は、細胞培養培地420から3D細胞培養物410の内部に栄養素と酸素を運搬する培地の受動拡散を可能にする。人工血管足場は、非イオン性高分子から製造されることがある。非イオン性高分子の非限定例としては、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)(pHEMA)、ポリガラクツロン酸(PGAまたはペクチン)、および/またはその組合せが挙げられる。PGAが使用される実施の形態において、接着した3D細胞培養物は、足場から解放または収穫されることがある。例えば、足場を消化するために、ペクチナーゼなどの酵素および/またはキレート剤が使用されることがある。ヒドロゲル材料は、表面被覆、成形、または足場へのヒドロゲル材料の印刷などによって、人工足場に施すことができる。ヒドロゲルは、当該技術分野で公知のどの材料からなっても差し支えなく、細胞に接着性または非接着性のいずれかであるように製造できる。例えば、いくつかの実施の形態において、ヒドロゲル繊維は、ECMタンパク質、脱細胞化組織ECM足場、ECMペプチド配列、架橋高分子、またはその組合せから形成される。接着性ヒドロゲルの非限定例としては、ECMタンパク質および脱細胞化組織ECM足場が挙げられる。ECMの例としては、多糖グリコサミノグリカン(GAG)、並びにコラーゲン、ラミニン、およびフィブロネクチンなどのタンパク質が挙げられる。非接着性ヒドロゲルの非限定例としては、数ある中でも、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、およびポリガラクツロン酸(PGA)などの架橋高分子が挙げられる。いくつかの実施の形態において、足場を穏やかに消化して、3D細胞培養物を放出できる他のヒドロゲルが使用されることがある。いくつかの実施の形態において、ヒドロゲルは、非接着性ヒドロゲルから形成され、接着性基で官能化された表面を有する。接着性基の非限定例としては、ECMタンパク質およびアルギニン・グリシン・アスパラギン酸(RGD)などの接着性ペプチド配列が挙げられる。
【0065】
ウェル/マイクロキャビティ内に播種された細胞は、人工血管足場に接着するか、または人工血管足場の周りに形成することがある。細胞培養中、細胞は、成長し続けて、足場内の繊維間と人工血管足場の周りに3D細胞塊を形成する。3D細胞塊が細胞培養中に成長するときに、人工血管足場の中空繊維またはヒドロゲル材料は、細胞培養培地420から3D細胞培養物410の内部に栄養素と酸素を運搬する培地の受動拡散を可能にする。人工血管足場の拡散性のために、栄養素と酸素は、3D細胞培養物の体積全体に亘り栄養素と酸素がより均一に供給される。それに加え、人工血管足場により提供される拡散により、代謝老廃物の濃度を3D細胞培養物の体積全体に亘りより均一に激減させることができる。それゆえ、人工血管足場の拡散性のために、壊死性コアが形成される前に、体積がより大きい3D細胞培養物を産生することができる。さらに、人工血管足場は、ウェル/マイクロキャビティ内の3D細胞塊を機械的に支持し、固定化する。3D細胞塊を固定化することによって、3D細胞培養物のイメージングが簡単になる。ウェルまたはマイクロキャビティの多くの異なる部分に焦点を合わせ、3D細胞培養物の存在または位置を探す代わりに、利用者は、3D細胞塊内に埋め込まれている人工血管支持体上に撮像装置の焦点を合わせることができる。さらに、人工血管支持体は、全てのウェルまたはマイクロキャビティにおいて均一な位置に固定されることがある。非限定例として、いくつかの実施の形態において、人工血管支持体は、各ウェルまたはマイクロキャビティ内の中央に集められ、ウェルまたはマイクロキャビティの中央の底部分に固定される。
【0066】
ある態様において、細胞培養装置は、
図10に示されたようなヒドロゲル足場を含む。
図10は、ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による、ヒドロゲル足場600の側面斜視図を示す。ヒドロゲル足場600は、長さが異なるヒドロゲル繊維655、653、657から作られている。例えば、ヒドロゲル繊維653は、ヒドロゲル繊維657より長い長さを有する。足場のヒドロゲル繊維は、細胞接着性表面を有し、3D細胞培養物610が、ヒドロゲル足場に接着した細胞から形成される。
【0067】
ヒドロゲルにより、3D細胞培養物に出入りする化合物の受動拡散が可能になり、よって、気体、栄養素、および代謝老廃物の拡散交換が大幅に改善されるために、壊死性コアの形成をなくすのに役立つ。いくつかの実施の形態において、繊維はヒドロゲル材料から形成される。いくつかの実施の形態において、繊維またはポストは、ポリスチレンのような高分子などの固体材料から形成され、これは、次に、3D細胞培養物のコアに対する拡散交換を可能にするのに十分な厚さでヒドロゲルにより被覆される。ある実施の形態において、ヒドロゲル繊維またはポストは、細胞の播種前、または細胞の播種中に、マイクロキャビティ内に堆積された遊離ヒドロゲル繊維の形態にある。このヒドロゲルは、当該技術分野で公知のどの材料から作られても差し支えなく、細胞に接着性または非接着性のいずれかであるように製造することができる。いくつかの実施の形態において、ヒドロゲル繊維は、細胞外基質(ECM)タンパク質、脱細胞化組織ECM足場、ECMペプチド結合配列、または架橋高分子から形成される。接着性ヒドロゲルの非限定例としては、ECMタンパク質、脱細胞化組織ECM足場、およびECMペプチド配列が挙げられる。ECMの例としては、多糖グリコサミノグリカン(GAG)、並びにコラーゲン、ラミニン、およびフィブロネクチンなどのタンパク質が挙げられる。いくつかの実施の形態において、ヒドロゲル繊維は、非接着性ヒドロゲルから形成され、接着性基で官能化された表面を有する。接着性基の非限定例としては、ECMタンパク質およびアルギニン・グリシン・アスパラギン酸(RGD)などの接着性ペプチド配列が挙げられる。非接着性ヒドロゲルの非限定例としては、数ある中でも、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、およびポリガラクツロン酸(PGA)などの架橋高分子が挙げられる。
【0068】
実施の形態において、ヒドロゲル足場により、
図11に示されるように、装置のウェル/マイクロキャビティ内の3D細胞培養物間にヒドロゲル通路を含む、相互接続された細胞培養装置を形成することができる。相互接続された細胞培養装置を形成するために、3D細胞培養のための培養装置を最初に組み立てる最中に、予め作られたヒドロゲル足場繊維を細胞と混合することができる。その結果、異なるサイズのヒドロゲル足場が、3D細胞培養構造内に存在することになる。例えば、細胞懸濁液およびヒドロゲル足場を含む混合物を調製し、3D細胞培養物のバルク培養のためにマルチウェル細胞培養プレートに施すことができる。3D細胞培養物のバルク培養のためのマルチウェル細胞培養プレートの非限定例としては、Elplasia24ウェルマイクロキャビティプレート(ニューヨーク州コーニング所在のCorning Incorporatedから入手できる)が挙げられる。足場の拡散性のために、栄養素と酸素は、3D細胞培養物の体積全体に亘りより均一に供給され、反対に、代謝老廃物の濃度は、3D細胞培養物の体積全体に亘りより均一に激減もする。これにより、3D細胞培養物内に壊死性コアが形成される前に、体積がより大きい3D細胞培養物を産生することができる。
【0069】
図11は、ここに示されたか記載された1つ以上の実施の形態による相互接続された細胞培養装置700における相互接続されたウェルまたはマイクロキャビティ702~705の上面図を示す。本開示の実施の形態は、マルチウェル細胞培養プレート701を含む。この細胞培養プレートは、複数のウェルおよび/または複数のマイクロキャビティ702、703、704、705を備えることがあり、そのウェルまたはマイクロキャビティの内部表面は、細胞接着を防ぐ非接着性表面をさらに含むことがある。ヒドロゲル足場600を作り出すために、細胞培養プレート701のウェルまたはマイクロキャビティ702~705内に、ヒドロゲル繊維655と共に、細胞710を播種する。
【0070】
ウェルおよび/またはマイクロキャビティ702~705の非接着性表面と、ヒドロゲル繊維655の細胞接着性表面との組合せのために、細胞710は、ヒドロゲル足場600におけるヒドロゲル繊維655の表面に接着する。ウェルまたはマイクロキャビティ702~705内に配置された細胞培養培地720から栄養素が供給されて、細胞710は、ヒドロゲル足場600内のヒドロゲル繊維655の間とその周りに成長し続けて、3D細胞培養物725を形成する。さらに、ヒドロゲル繊維のサイズと長さは異なるので、ある足場の繊維は、隣接するマイクロキャビティ/ウェル内の3D細胞培養物中に埋め込まれることもある。例えば、相互接続された細胞培養装置は、ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部が異なるウェルまたはマイクロキャビティ内に位置付けられているときに作り出される拡散経路またはヒドロゲル通路750から形成される。一例として、ヒドロゲル繊維655aの一端がウェル/マイクロキャビティ702内に位置しており、一方で、ヒドロゲル繊維655aの反対の端部は隣接するウェル/マイクロキャビティ703内に位置しており、ウェルまたはマイクロキャビティ702と703の間にヒドロゲル通路750を作り出す。ヒドロゲル繊維およびヒドロゲル通路は、3D細胞培養物のコアへとそこからの受動拡散を可能にし、栄養素を、3D細胞培養物内、並びに全培養物に亘り、供給できる拡散経路の機能を果たす。さらに、ヒドロゲル繊維は、相互接続されたウェルまたはマイクロキャビティとの物理的接続を提供し、その物理的接続は、培地交換または薬物試験などの操作中に3D細胞培養物が失われるのを防ぐ。
【0071】
以下に限られないが、固定化細胞、初代培養細胞、がん細胞、幹細胞(例えば、胚または人工多能性)などを含む、どの種類の細胞を細胞培養装置の実施の形態において培養してもよい。ここに記載された実施の形態において、三次元細胞培養物が考えられているが、細胞は、本開示の実施の形態による細胞培養装置に導入されるときに、分散(例えば、新たに播種された)、コンフルエント、二次元、三次元、スフェロイドなどを含むどの培養形態にあってもよい。細胞は、哺乳類細胞、鳥の細胞、魚の細胞などであってよい。細胞は、以下に限られないが、腎臓、線維芽細胞、乳腺、皮膚、脳、卵巣、肺、骨、神経、筋肉、心臓、結腸直腸、膵臓、免疫(例えば、B細胞)、血液などを含むどの組織の種類のものであってもよい。いくつかの実施の形態において、細胞培養物は、生細胞培養物である。いくつかの実施の形態において、細胞培養物は、初代ヒト肝細胞(PHH)から作られた肝臓スフェロイドである。しかしながら、他の種類の細胞培養物が考えられ、可能であることを理解すべきである。
【0072】
細胞の成長を支援することのできるどの細胞培養培地を使用してもよい。細胞培養培地は、例えば、以下に限られないが、糖類、塩類、アミノ酸、血清(例えば、ウシ胎仔血清)、抗体、成長因子、分化因子、染料、または他の所望の因子であってよい。例示の細胞培養培地としては、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、ハムF12栄養混合物、最小必須培地(MEM)、RPMI培地、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、Mesencult-XF培地などが挙げられる。さらに、細胞培養培地は、どの所定のスケジュールにしたがって、取り出し、交換してもよい。例えば、細胞培養培地の少なくともいくらかは、1時間毎、または12時間毎、または24時間毎、または2日毎、または3日毎、または4日毎、または5日毎などで、取り出し、交換してもよい。
【0073】
ここに用いられているように、いくつかの実施の形態において、細胞培養物品は、1から約2,000のウェルを含み、各ウェルは、どの他のウェルからも物理的に隔てられている。実施の形態において、ウェルは、マルチウェルプレートのウェルである。例えば、細胞培養装置は、細胞培養表面または底面上に数々のマイクロキャビティを有する、1つのウェルまたはチャンバを備えたフラスコであることがある。細胞培養装置は、1、6、12、24、96、384または1536ウェルを有するマルチウェルプレートであることがある。いくつかの実施の形態において、各ウェルは、約25から約1,000のマイクロキャビティを含む。
【0074】
ここに用いられているように、いくつかの実施の形態において、ウェルは、マルチウェルプレートの形態で設けられた個々の細胞培養環境である。実施の形態において、ウェルは、4ウェルプレート、6ウェルプレート、12ウェルプレート、24ウェルプレート、96ウェルプレート、538ウェルプレート、1536ウェルプレート、または任意の他のマルチウェルプレート形態のウェルであって差し支えない。いくつかの実施の形態において、マルチウェルプレートのウェルは、その1つのウェル内で1つの3D細胞塊として成長するように関心のある細胞を制限するように構造化することができる。例えば、96ウェルプレートのウェル(従来の96ウェルプレートのウェル)は、深さが約10.67mmであり、上部開口が約6.86mmであり、ウェル底部の直径が約6.35mmである。実施の形態において、3D細胞培養プレートは、1つの3D細胞物用の数々の培養チャンバまたはウェルを有するマルチウェルプレートを意味する。すなわち、実施の形態において、マルチウェルプレートは多数のチャンバまたはウェルを有することがあり、各チャンバまたはウェルは、1つの3D細胞培養物または3D細胞塊を収容するように作られている。
【0075】
ここに用いられているように、マイクロウェルまたはマイクロキャビティは、3D立体構造で成長するように関心のある細胞を制限するように構造化されており、寸法または処理、もしくは寸法と処理の組合せを有し、これにより、培養中の細胞が、細胞の二次元シートとしてではなく、3D立体構造で成長するのが支援される。処理の例としては、低結合性溶液による処理、表面を疎水性でなくす処理、殺菌処理が挙げられる。
【0076】
ここに用いられているように、いくつかの実施の形態において、ウェルは、マイクロキャビティの配列または複数のマイクロキャビティを有することがある。実施の形態において、マイクロキャビティまたはマイクロウェルは、例えば、上部開口と最下点、上部開口の中心、および最下点と上部開口の中心との間の中心軸を画成するマイクロウェルであり得る。実施の形態において、マイクロキャビティまたはマイクロウェルは、その軸の周りに回転対称である(すなわち、側壁は円筒形である)。いくつかの実施の形態において、上部開口は、250μmから1mm、またはそれらの測定値内の任意の範囲の上部開口を横切る距離を規定する。いくつかの実施の形態において、上部開口から最下点までの距離(深さ「d」)は、200μmと900μmの間である。いくつかの実施の形態において、上部開口から最下点までの距離(深さ「d」)は、400μmと600μmの間である。いくつかの実施の形態において、上部開口から最下点までの距離(深さ「d」)は、少なくとも200μmである。いくつかの実施の形態において、上部開口から最下点までの距離(深さ「d」)は、少なくとも2500μmである。いくつかの実施の形態において、上部開口から最下点までの距離(深さ「d」)は、少なくとも400μmである。いくつかの実施の形態において、上部開口から最下点までの距離(深さ「d」)は、1mm以下である。いくつかの実施の形態において、上部開口から最下点までの距離(深さ「d」)は、900μm以下である。いくつかの実施の形態において、上部開口から最下点までの距離(深さ「d」)は、600μm以下である。数々のマイクロキャビティは、異なる形状、例えば、放物線、双曲線、逆V字、および同様の断面形状、またはその組合せを有することがある。
【0077】
ここに用いられているように、実施の形態において、ウェルまたはマイクロキャビティの丸底は、例えば、半球体、もしくはウェルまたはマイクロキャビティの底部を構成する半球体の水平部分または薄片などの半球体の一部であり得る。
【0078】
ここに用いられているように、実施の形態において、マイクロキャビティプレートは、各ウェルが数々のマイクロキャビティを有する、数々のウェルを持つマルチウェルプレートを意味する。ここに用いられているように、挿入物は、プレートまたはマイクロキャビティプレートのウェルに嵌まる細胞培養ウェルを意味する。その挿入物は、細胞を培養するためのキャビティを画成する側壁と底面を有する。ここに用いられているように、挿入プレートは、マルチウェルプレートの数々のウェルに嵌まるように構造化された数々の挿入物を含有する挿入プレートを意味する。ここに用いられているように、マイクロキャビティ挿入プレートは、その数々の挿入物における各挿入物が、数々のマイクロキャビティを有する底面を備えた挿入プレートを意味する。
【0079】
ここに用いられているように、実施の形態において、「3D細胞培養物」という用語は、例えば、細胞の平らな二次元(2D)シートではない、培養中の細胞の群であり得る。いくつかの実施の形態において、3D細胞培養物は、細胞の平らな二次元シートではない、3Dスフェロイド状の形状、もしくは培養中の細胞の集合体またはボールに似た形状に似ていることがある。実施の形態において、3D細胞培養物は、1つの細胞型または多数の細胞型からなる。3D細胞培養物が3Dスフェロイド状の形状に似ている実施の形態において、3D細胞培養物は、例えば、3D細胞培養物の細胞型に応じて、中間値と中間範囲を含む、例えば、約100から約500マイクロメートル、より好ましくは約150から約400マイクロメートル、さらにより好ましくは約150から約300マイクロメートル、そして最もより好ましくは約200から約250マイクロメートルの直径を有することがある。
【0080】
ある態様において、細胞培養装置は、各ウェルが、上部開口、底部、および上部と底部との間に配置された側壁を備え、細胞非接着性表面を構成する内部表面を持つように作られた、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレート;および各足場が細胞接着表面を備える、マルチウェル細胞培養プレートの複数のウェル内に配置された複数の足場を含む。その底部は、半球形状を構成することがある。少なくとも1つの足場が、各ウェル内に配置されることがある。複数の足場が、各ウェル内に配置されることがある。複数のウェルの少なくともいくつかのウェルが、中に配置された1つの足場を有することがある。
【0081】
足場の少なくとも一部が、各ウェルの底部、または底部の一部に固定されることがある。足場の少なくとも一方の端部が、各ウェルの底部分に固定されることがある。
【0082】
底部は、複数のマイクロキャビティを含むことがある。足場が、複数のマイクロキャビティの各マイクロキャビティ内に配置されることがある。その足場は、各マイクロキャビティの底部分に固定されることがある。
【0083】
足場は、約100μmから約1000μmの範囲の平均長さを有することがある。足場は、約10μmから約100μmの範囲の平均幅を有することがある。
【0084】
複数の足場の内の1つの足場が、1つの繊維足場を含むことがある。その繊維足場は、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリガラクツロン酸、および/またはその組合せから形成されることがある。繊維足場は、複数の繊維から作られることがある。複数の繊維の各繊維は、各ウェルの底部分に固定されることがある。個々の繊維の固定された端部は、各ウェルにおいて約100μmから約200μmだけ互いから距離が置かれていることがある。
【0085】
ある態様において、複数の足場の内の1つの足場が、人工血管足場を含むことがある。この人工血管足場は、ヒドロゲルから作られることがある。人工血管足場は、中空繊維から作られることがある。人工血管足場は、複数の中空繊維から作られることがある。個々の中空繊維は、互いから約100μmから約200μmで、ウェルの底部に固定されることがある。中空繊維は、非イオン性高分子から形成されることがある。非イオン性高分子は、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリガラクツロン酸、および/またはその組合せを含むことがある。中空繊維は、ヒドロゲルコーティングをさらに含むことがある。
【0086】
ある態様において、三次元(3D)細胞培養物を培養する方法が提供される。この方法は、ここに示された態様のいずれかによる細胞培養装置内に細胞を播種する工程であって、細胞が、細胞培養装置内に配置された足場の細胞接着表面に接着する、工程と、細胞培養装置に細胞培養培地を加えて、栄養素と酸素を供給することによって、細胞を3D細胞培養物に培養する工程であって、細胞は、細胞培養培地の添加または交換中に足場に接着したままである、工程と、足場を必要に応じて消化する工程とを含む。この方法は、細胞培養装置の足場に接着した3D細胞培養物を撮像する工程をさらに含むことがある。
【0087】
ある態様において、相互接続された細胞培養装置が提供される。相互接続された細胞培養装置は、各ウェルが上部、底部、および上部と底部との間に配置された側壁を備え、細胞非接着性表面を構成する内部表面を持つように作られた、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレート;およびそのマルチウェル細胞培養プレート内に配置された、異なる長さのヒドロゲル繊維から作られた複数のヒドロゲル足場であって、ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、マルチウェル細胞培養プレート内の異なるウェル内に配置されて、相互接続されたウェルを作り出す、複数のヒドロゲル足場を含む。底部は、半球形状を構成することがある。ヒドロゲル繊維は、約100μmから約100mmの範囲の長さを有することがある。ヒドロゲル繊維は、約10μmの平均幅を有することがある。各ヒドロゲル繊維は、細胞接着性表面を含むことがある。ヒドロゲル繊維は、細胞外基質(ECM)タンパク質、脱細胞化組織ECM足場、ECMペプチド結合配列、架橋高分子、および/またはその組合せから形成されることがある。ヒドロゲル足場は、ウェル内で固定されていない、または浮遊性であることがある。底部は、複数のマイクロキャビティを含むことがある。ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、異なるマイクロキャビティ内に配置されて、相互接続されたマイクロキャビティを作り出すことがある。
【0088】
ある態様において、相互接続された細胞培養装置を形成する方法が提供される。この方法は、各ウェルが上部、底部、および上部と底部との間に配置された側壁を備え、超低接着表面を構成する内部表面を有する、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレートを含む細胞培養装置に細胞を播種する工程;細胞培養装置に、複数のヒドロゲル繊維から作られた複数のヒドロゲル足場を供給する工程であって、ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、マルチウェル細胞培養プレート内の異なるウェル内に配置されて、相互接続されたウェルを作り出す、工程;および細胞培養培地を提供して、細胞成長および三次元(3D)細胞培養物の形成のための栄養素と酸素を供給する工程を含む。底部は、半球形状を構成することがある。底部は、複数のマイクロキャビティを含むことがある。
【0089】
請求項の主題の精神および範囲から逸脱せずに、ここに記載された実施の形態に、様々な改変および変更を行えることが当業者に明白であろう。それゆえ、本明細書は、ここに記載された様々な実施の形態の改変および変更を、そのような改変および変更が不随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲に入るという前提で、包含することが意図されている。
【0090】
様々な開示された実施の形態は、その特定の実施の形態に関連して記載された特定の特徴、要素、または工程を含むことがあるのが認識されよう。特定の特徴、要素、または工程が、ある特定の実施の形態に関連して記載されているにもかかわらず、様々な説明されていない組合せまたは配列で代わりの実施の形態と交換されてもよいまたは組み合わされてもよいことも認識されよう。
【0091】
ここに用いられているように、名詞は、「少なくとも1つ」の対象を指し、特に明記のない限り、「ただ1つ」に限定されるべきではないことも理解されよう。それゆえ、例えば、「開口」に対する言及は、文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、そのような「開口」を2つ以上有する例を含む。
【0092】
ここに用いられた全ての科学用語と技術用語は、特に明記のない限り、当該技術分野で一般に使用されている意味を持つ。ここに提供された定義は、ここに頻繁に使用されている特定の用語の理解を容易にするためであり、本開示の範囲を限定する意図はない。
【0093】
ここに用いられているように、「有する」、「含む」、「構成する」などは、制約のない意味で使用され、一般に、「含むが、限定されない」ことを意味する。
【0094】
範囲が、「約」ある特定値から、および/または「約」別の特定値まで、とここに表現されることがある。そのような範囲が表現された場合、例は、そのある特定値から、および/または他方の特定値までを含む。同様に、値が、「約」という先行詞を使用して、近似として表現される場合、その特定値が別の態様を形成することが理解されよう。範囲の各々の端点が、他方の端点との関連で、および他方の端点とは関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0095】
ここに表現される全ての数値は、特に明記のない限り、そのように記載されていようとなかろうと、「約」を含むものとして解釈されるべきである。しかしながら、列挙された各数値が、「約」その値と表現されているかいないかにかかわらず、同様に正確に考えられることがさらに理解されよう。それゆえ、「10mm未満の寸法」および「約10mm未満の寸法」の両方は、「約10mm未満の寸法」並びに「10mm未満の寸法」の実施の形態を含む。
【0096】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを必要とすると解釈されることは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に列挙していない場合、または工程が、特定の順序に限定されるべきことが、特許請求の範囲または説明に他に具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も暗示されることは、決して意図されていない。
【0097】
特定の実施の形態の様々な特徴、要素または工程が、「含む」という移行句を使用して開示されることがあるが、「からなる」または「から実質的になる」という移行句を使用して記載されることのあるものを含む、代わりの実施の形態が暗示されることを理解すべきである。それゆえ、例えば、A+B+Cを含む方法に対して暗示される代わりの実施の形態は、方法がA+B+Cからなる実施の形態、および方法がA+B+Cから実質的になる実施の形態を含む。
【0098】
本開示の多数の実施の形態を詳細な説明を記載してきたが、本開示は、開示された実施の形態に限定されず、以下の請求項により述べられ、定義されたような本開示から逸脱せずに、様々な再配置、改変および置換が可能であることを理解すべきである。
【0099】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0100】
実施形態1
細胞培養装置において、
各ウェルが上部、底部、および該上部と該底部との間に配置された側壁を備え、細胞非接着性表面を構成する内部表面を持つように作られた、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレート、および
各足場が細胞接着表面を備える、前記マルチウェル細胞培養プレートの前記複数のウェル内に配置された複数の足場、
を含む細胞培養装置。
【0101】
実施形態2
前記底部が半球形状を構成する、実施形態1に記載の装置。
【0102】
実施形態3
少なくとも1つの足場が各ウェル内に配置される、実施形態1または2に記載の装置。
【0103】
実施形態4
前記足場の少なくとも一方の端部が、各ウェルの底部分に固定される、実施形態3に記載の装置。
【0104】
実施形態5
前記底部が複数のマイクロキャビティを含む、実施形態1から4のいずれかに記載の装置。
【0105】
実施形態6
前記複数のマイクロキャビティの各マイクロキャビティ内に足場が配置される、実施形態5に記載の装置。
【0106】
実施形態7
前記足場が、各マイクロキャビティの底部分に固定される、実施形態6に記載の装置。
【0107】
実施形態8
前記足場が、約100μmから約1000μmの範囲の平均長さを有する、実施形態1から7のいずれかに記載の装置。
【0108】
実施形態9
前記足場が、約10μmから約100μmの範囲の平均幅を有する、実施形態1から8のいずれかに記載の装置。
【0109】
実施形態10
前記複数の足場の内の1つの足場が、1つの繊維足場を含む、実施形態1から9のいずれかに記載の装置。
【0110】
実施形態11
前記繊維足場が、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリガラクツロン酸、および/またはその組合せから形成される、実施形態10に記載の装置。
【0111】
実施形態12
前記繊維足場が、複数の繊維から作られる、実施形態10または11に記載の装置。
【0112】
実施形態13
前記複数の繊維の各繊維が、各ウェルの底部分に固定される、実施形態12に記載の装置。
【0113】
実施形態14
個々の繊維の固定された端部が、各ウェルにおいて約100μmから約200μmだけ互いから距離が置かれている、実施形態13に記載の装置。
【0114】
実施形態15
前記複数の足場の内の1つの足場が、人工血管足場を含む、実施形態1に記載の装置。
【0115】
実施形態16
前記人工血管足場が、中空繊維から作られる、実施形態15に記載の装置。
【0116】
実施形態17
前記人工血管足場が、複数の中空繊維から作られる、実施形態15に記載の装置。
【0117】
実施形態18
個々の中空繊維が、互いから約100μmから約200μmで、ウェルの底部に固定される、実施形態17に記載の装置。
【0118】
実施形態19
前記中空繊維が、非イオン性高分子から形成される、実施形態16に記載の装置。
【0119】
実施形態20
前記非イオン性高分子が、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリスチレン、ポリプロピレン、またはポリガラクツロン酸を含む、実施形態19に記載の装置。
【0120】
実施形態21
前記中空繊維が、ヒドロゲルコーティングをさらに含む、実施形態16に記載の装置。
【0121】
実施形態22
前記人工血管足場が、ヒドロゲルから作られる、実施形態15に記載の装置。
【0122】
実施形態23
三次元(3D)細胞培養物を培養する方法において、
実施形態1から22のいずれかに記載された細胞培養装置内に細胞を播種する工程であって、該細胞が、該細胞培養装置内に配置された足場の細胞接着表面に接着する、工程と、
前記細胞培養装置に細胞培養培地を加えて、栄養素と酸素を供給することによって、前記細胞を3D細胞培養物に培養する工程であって、該細胞は、該細胞培養培地の添加または交換中に前記足場に接着したままである、工程と、
前記足場を必要に応じて消化する工程と、
を含む方法。
【0123】
実施形態24
前記細胞培養装置の足場に接着した3D細胞培養物を撮像する工程をさらに含む、実施形態23に記載の方法。
【0124】
実施形態25
相互接続された細胞培養装置において、
各ウェルが上部、底部、および該上部と該底部との間に配置された側壁を備え、細胞非接着性表面を構成する内部表面を持つように作られた、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレート、および
前記マルチウェル細胞培養プレート内に配置された、異なる長さのヒドロゲル繊維から作られた複数のヒドロゲル足場であって、該ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、前記マルチウェル細胞培養プレート内の異なるウェル内に配置されて、相互接続されたウェルを作り出す、複数のヒドロゲル足場、
を含む細胞培養装置。
【0125】
実施形態26
前記底部が半球形状を構成する、実施形態25に記載の装置。
【0126】
実施形態27
前記ヒドロゲル繊維が、約100μmから約100mmの範囲の長さを有する、実施形態25または26に記載の装置。
【0127】
実施形態28
前記ヒドロゲル繊維が、約10μmの平均幅を有する、実施形態25から27のいずれかに記載の装置。
【0128】
実施形態29
各ヒドロゲル繊維が、細胞接着性表面を含む、実施形態25から28のいずれかに記載の装置。
【0129】
実施形態30
前記ヒドロゲル繊維が、細胞外基質(ECM)タンパク質、脱細胞化組織ECM足場、ECMペプチド結合配列、架橋高分子、および/またはその組合せから形成される、実施形態25から29のいずれかに記載の装置。
【0130】
実施形態31
前記ヒドロゲル足場が、前記ウェル内で固定されていない、または浮遊性である、実施形態25から30のいずれかに記載の装置。
【0131】
実施形態32
前記底部が、複数のマイクロキャビティを含む、実施形態25から31のいずれかに記載の装置。
【0132】
実施形態33
前記ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部が、異なるマイクロキャビティ内に配置されて、相互接続されたマイクロキャビティを作り出す、実施形態32に記載の装置。
【0133】
実施形態34
相互接続された細胞培養装置を形成する方法であって、
各ウェルが上部、底部、および該上部と該底部との間に配置された側壁を備え、超低接着表面を構成する内部表面を有する、複数のウェルを備えたマルチウェル細胞培養プレートを含む細胞培養装置に細胞を播種する工程、
前記細胞培養装置に、複数のヒドロゲル繊維から作られた複数のヒドロゲル足場を供給する工程であって、ヒドロゲル繊維の互いに反対の端部は、前記マルチウェル細胞培養プレート内の異なるウェル内に配置されて、相互接続されたウェルを作り出す、工程、および
細胞培養培地を提供して、細胞成長および三次元(3D)細胞培養物の形成のための栄養素と酸素を供給する工程、
を含む方法。
【0134】
実施形態35
前記底部が半球形状を構成する、実施形態34に記載の方法。
【0135】
実施形態36
前記底部が、複数のマイクロキャビティを含む、実施形態34または35に記載の方法。
【符号の説明】
【0136】
10 マルチウェルプレート
25、310、610、725 3D細胞培養物
101 1つのウェル
105 中心軸
106 液体不透過性底面
110 ウェル
112、115、300、400、702、703、704、705 マイクロキャビティ
113、121、370、470 側壁
114 移行区域
116 液体不透過性底面、凹形弓状底面、最下点
118 上部開口
119 底面、円形底部、丸底
130 保護層
320、420、720 培地
330、430 ULA表面
340、440 内部表面、内面
350 テザリングプラスチック繊維
360、460 底部
380、480 上部
450 繊維
455 人工血管足場
600 ヒドロゲル足場
653、655、657 ヒドロゲル繊維
700 細胞培養装置
710 細胞
【国際調査報告】