(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】分別されていない廃棄物流に対するアップサイクリングプロセス
(51)【国際特許分類】
C08J 11/06 20060101AFI20231024BHJP
C08J 11/10 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C08J11/06 ZAB
C08J11/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023520271
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(85)【翻訳文提出日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 US2021016154
(87)【国際公開番号】W WO2022081195
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523118440
【氏名又は名称】タイムプラスト,インク
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レンドン,マニュエル
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AA13
4F401AA22
4F401BA13
4F401CA67
4F401CA69
4F401CA79
4F401CA91
4F401FA01Z
(57)【要約】
【解決手段】
ポリマーをアップサイクリングするための動的なプロセスである。多様な使用済みの廃棄物流からのポリマーは、混合物の状態で収集される。混合物は押し出され、および重合の寸前である特定のPEワックスを含有する液体添加物と組み合わされる。液体添加物は、低密度ポリエチレン(LDPE)に再重合され、ペレットを形成する。ペレットはリアクタに運ばれ、および適切な溶媒に浸され、LDPEを溶解する。残っているポリマーを互いに段階的かつ整然と分離させ、および、層状基質を生成させることをもたらす。適切な溶媒、酵素、または解重合に適合した化学物質は、適切な解重合剤を含有するタンクに取り付けられた独立したパイプを通じてリアクタへ運ばれる。プロセスは、混合物のポリマーのそれぞれについて、適切な溶媒、酵素、または解重合剤を追加することによって、層状基質を1層ずつ解重合することを繰り返し、この結果、残っているポリマーを整然としたやり方で溶解し、アップサイクリングのための積層ワックス状物質を生成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーをアップサイクリングするためのプロセスであって、
a)多様な使用済みの廃棄物流から混合物を提供する工程と、
b)液体キャリア中に分散されるワックスを使用して、押し出しスクリューによって前記混合物を押し出す工程と、
c)前記液体キャリア中に前記ワックスを、低密度ポリエチレンに再重合させる工程であって、前記混合物と、押し出し工程の終わりに再重合された前記ワックスとの組み合わせのペレットを形成する、工程と、
d)リアクタ内の前記ペレットを適切な溶媒に浸す工程であって、前記再重合されたワックスを溶解し、および前記ポリマーの残りを分離させて、層状基質をもたらす、工程と、
e)前記リアクタを開き、および、蒸留を介して、前記リアクタ内の前記適切な溶媒の残りを回収する工程と、および、
f)前記ポリマーの残りに対して適切な溶媒を追加して、前記層状基質を1層ずつ解重合する工程であって、積層ワックス状物質を生成する、工程、を含むプロセス。
【請求項2】
前記ワックスは、低密度ポリエチレンの分子量の少なくとも50%の分子量を有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ポリマーは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、またはポリ塩化ビニル(PVC)の少なくとも1つである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記混合物は寸断される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記液体添加物は、キャリアとしてのバイオベースの油におけるポリエチレンワックスを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記ポリエチレンワックスは、ポリマーを最初の溶媒に溶解することによって製造される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ポリマーはLDPEであり、および前記最初の溶媒はヘプタンである、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ポリマーは、15~45分の間の時間、前記最初の溶媒に浸され、前記最初の溶媒は、155℃~255℃の温度に維持される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項9】
前記ペレットは、1サイクルごとに1時間、前記適切な溶媒内に浸され続け、前記ポリマーのうちの1つは、1サイクルごとに処理され、および前記適切な溶媒は、155℃~255℃の温度に維持される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記適切な溶媒のための組み合せは、溶媒密度、および溶解している前記ポリマーの密度分離における前記溶媒の密度の役割に基づいて選択される、請求項1のプロセス。
【請求項11】
処理されている前述のポリマーは、前記適切な溶媒内に沈む必要があり、および処理されていない前記ポリマーの残りは、前記適切な溶媒に浮く必要がある、請求項1のプロセス。
【請求項12】
前記ポリマーの残りは、密度によって分離される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
有機物質、金属、およびガラスは、廃棄物流において発見され、さらに密度によって分離される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記ワックス状物質は、新製品を製造するための原材料としての役割を果たす、請求項1に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アップサイクリングプロセス、より具体的には、事前に使用済みプラスチック製品をプラスチックの種類ごとに分別する必要なく、使用済みプラスチック製品に適用可能なプラスチック用のアップサイクリングプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
アップサイクリングプロセスに関する様々な設計が、過去に設計されている。しかし、それらのいずれも、プラスチックを種類ごとに分別することなく溶解と解重合を介してプラスチックを動的にアップサイクリングすることを可能にするプロセスを含んでいない。
【0003】
本出願人によれば、関連する参考文献は混合プラスチック物質を回収するための方法に関する米国特許公開第2003/0146547号明細書に相当すると考えられる。本出願人によれば、別の関連する参考文献は、選択的な溶解によるポリマーの再利用に関する米国特許第5,198,471号を指していると考える。しかし、これらの参考文献のいずれも、多種多様なプラスチックを種類ごとに分別する必要性を排除した動的な解重合を介して行われるプラスチックのアップサイクリングのためのプロセスを教示していない。
【0004】
最も近い主題を記載している他の参考文献では、効率的かつ経済的な形で問題を解決できないある程度複雑な特徴が多くもたらされる。これらの特許はいずれも、本発明の新規な特徴を示唆していない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的の1つは、使用済みプラスチック製品からプラスチックを動的にアップサイクリングするために使用できるプロセスを提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、分別されていない使用済みプラスチック製品に適用することができるプロセスを提供することである。
【0007】
本発明のまた別の目的は、プラスチックの廃棄物および汚染を減らすことに役立つプロセスを提供することである。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、解重合を介してプラスチックをアップサイクリングするためのプロセスを提供することである。
【0009】
本発明のまた別の目的は、実施と維持が安価でありながらその有効性を保持するようなデバイスを提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、本明細書の以下の部分で公開され、そこでは、詳細な説明は、制限を加えることなく、本発明を完全に開示する目的のためになされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
上記の目的、および他の関連する目的を考慮すると、本発明は、添付の図面と合わせて読むことで、以下の記載からより完全に理解されるように、部分の構築および組み合わせの詳細から構成されている。
【
図1】製品をアップサイクリングするためのプロセス(20)のフローチャートを表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、図面を参照すると、本発明が一般に数字(10)で指される場合、それは、プロセス(20)を介して達成されるアップサイクリングされたプラスチック(10)を基本的に含むことが観察され得る。
【0013】
ポリマーのアップサイクリングは、プロセス(20)で達成されるように、追加の廃棄物を減らすことに役立つような方法で、ポリマーが再使用および再利用されることを可能にする。プロセス(20)は、混合物を作るために、多様な使用済みの廃棄物流から様々なプラスチックまたはポリマーを収集および混合することを伴う第1の工程(22)を含む。廃棄物流に含有されるプラスチックは、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、およびポリ塩化ビニル(PVC)であるが、これらに限定されない。第1の工程(22)からの混合物を寸断することは適切であり得る。
【0014】
プロセス(20)は、押し出しスクリュー(extrusion screw)によって、第1の工程(22)からの様々な種類のプラスチックの混合物を処理すること、および押し出すことを伴う第2の工程(24)を含む。第2の工程(24)は、混合物と、ケミカルキャリアとしてキャノーラ油内に特定のポリエチレンワックスを含有している液体添加物とを組み合わせるであろう。ポリエチレンワックスが、重合の寸前であることが理解されるであろう。そのため、ポリエチレンワックスは、特定の方法で、LDPEをヘプタン槽に溶解することにより製造されることを意味している。ヘプタン槽は、LDPEがヘプタン槽内に15~45分の間の時間浸されることで、155℃~255℃の温度で維持されることになっている。
【0015】
ポリエチレンワックスが、液体添加物として混合物に加えられた後に、押し出し熱によって再重合される場合、ポリエチレンワックスは、ポリエチレンワックスをもう一度LDPEにさせる高い分子量を有し得る。プロセス(20)は、第2の工程(24)からのポリエチレンワックスを、LDPE、または再重合されたLDPFに再重合することを伴う第3の工程(26)を含む。第3の工程(26)の間、混合物からのペレットは、押し出しプロセスの終わりに形成され得る。重要なことに、ペレットは、第3の工程(26)からの再重合されたLDPEに加え、様々なプラスチックの不均質な混合物を含有し得る。
【0016】
プロセス(20)は、第3の工程(26)からのペレットをリアクタに導入することを伴う第4の工程(28)をさらに含む。リアクタ内で、解重合が起こるであろう。さらに、第4の工程(28)は、リアクタ内のペレットを、ヘプタン、またはLDPEに再重合されたポリエチレンワックスに適した別の溶媒に浸すことを含む。ヘプタンは、155℃~255℃の温度で維持されるであろう。ペレットは、ヘプタンの中に1時間浸されるであろう。ヘプタンは、多量のヘプタンあるいはLDPEおよびHDPEのための適切な溶媒を含有するタンクからのパイプ、そうでなければ第1のアーム、を介してリアクタに運ばれることが理解されるであろう。ペレットをヘプタン内に浸すことは、LDPEおよびHDPEのすべてを溶解させるであろう。重要なことに、撹拌によって促進され得る、LDPEの第2の工程(24)からの溶媒和は、PET、PP、PVC、およびPSなどのヘプタンによって溶解されなかったポリマーあるいはプラスチックのすべてが互いに徐々に分離することを引き起こし、なぜなら、それらはすべて、同じ成分、つまり再重合されたポリエチレンワックスによって結合されたものであるからである。LDPEが、先に不均質な混合物のポリマー間で分子もつれ因子として機能しているため、分離が起こる。残っているポリマーは、溶媒槽における比重(specific density)、および浮力に基づいて分離され、ならびに、溶媒槽の比重は、動的に計算され、および異なる比重の異なる適切な溶媒を使用することで変更されるものであり、その目標は、種類ごとのポリマー層状配列をさらに押し進める(push)ために、特定のプラスチックを沈ませ、その他を浮かばせることである。これにより、その後の溶媒和プロセスを1つの同じリアクタ内で行うこと、および混合物を化学的に分別することを可能にし得る、規定された組成を有する層状基質をもたらす。
【0017】
層状基質は、例えば、最上部にPP、PPの下層部にPS、PSの下層部にPVC、およびPVCの下層部の底にPETの順になるであろう。PPの密度は、0.895g/cm3~0.923g/cm3と推測される。PSの密度は、1.051g/cm3と推測される。PVCの密度は、1.379g/cm3と推測される。PETの密度は、1.382g/cm3と推測される。
【0018】
プロセス(20)は、第1のアームへのリアクタの接続を開くこと、および、蒸留を介して、第1のアームを用いてリアクタ内に残っているヘプタンを回収することを伴う第5番の工程(32)を含み得る。ポリマーの残っている層のために、リアクタおよび層状基質が、後に解重合をもう一度受けられるようになることを可能にする。このことは、プロセスが、残っているポリマーを整然としたやり方で溶解させることを可能にするということを意味する。
【0019】
プロセス(20)は、層状基質に適用され続けるであろう。第4の工程(28)および第5の工程(32)は、溶解させる次のポリマーのそれぞれと適合性を有するように、様々な溶媒を用いて繰り返されることが、理解されるであろう。プロセス(20)は、第4の工程(28)および第5の工程(32)を繰り返すことを伴う第6の工程(34)を含む。層状基質は、処理されるであろうPPの最上層を有し得る。第1のアームは閉じ、次に、リアクタに取り付けられている第2のアームは開き、第2のアームは、無水フタル酸のようなPPと互換性をもつ第2の溶媒を含有する第2のタンクに接続され得る。層状基質は、PPが溶解されるまで、155℃~255℃の温度で1時間、第2の溶媒に浸され、次に、冷却と沈殿を介して、ワックス状の物質へ変化させられる。直後に、リアクタは開かれ、および揮発温度がリアクタに適用され、蒸留を介して、第2の溶媒を相分離させ(phasing)、第2のアームによって第2の溶媒を回収することにより、第2の溶媒を抽出できる。そのため、層状基質は、ポリマーの追加の層を溶解するために、第3のアームおよび第3の溶媒によって作用させられるようになる。
【0020】
プロセス(20)、より具体的には、第6の工程(34)は、層状基質におけるポリマーの各層が処理されるまで繰り返され得ることが理解されるであろう。各層を異なる溶媒で処理することで、次の層のポリマーを溶解させる。各溶媒は、必要な溶媒(複数可)を含有する異なるタンクに取り付けられた異なるアームを用いて運ばれるであろう。
【0021】
プロセス(20)の最後には、積層ワックス状の物質が生じるであろう。積層ワックス状の物質は、新しいプラスチック製品を製造するための原材料、または潤滑油産業などのような他の産業用の原材料として使用され得る。あるいは、最悪のシナリオとして、積層ワックス状の物質は、ごみ処理地に堆積することができる。積層ワックス状の物質が、より一層圧縮された容積、より良く分散された粒子サイズ、およびより小さい分子量を有し、それゆえに、周囲の環境に対してより無害な化学構造をもたらすため、未処理のプラスチックを用いるよりも良い結果になり得る。
【0022】
他の任意の使用済みの製品からのポリマーは、他の適切な溶媒(複数可)、耐熱性酵素、または、上述のポリマーまたは溶媒に限らず、解重合に適合した任意の化学物質と結合および処理され得ることが理解されるであろう。プロセス(20)は、層状基質における層の数に応じて必要なだけ、繰り返され得る。
【0023】
前述の記載は、本発明の目的および利点についての理解を最も良く伝えるものである。異なる実施形態は、本発明の発明概念で構成され得る。本明細書に開示されたすべての事象は、単に例示的であると解釈されるものであり、限定する意味で解釈されるものでないことが理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0024】
ポリマーをアップサイクリングするためのプロセスは、産業上の利用可能性について、いくつかの実装を有する。プロセスは、使用済みのプラスチック製品からのプラスチックの動的なアップサイクリングを達成することに役立つ。プロセスは、分別されていない使用済みのプラスチック製品に容易に適用され、プラスチックの廃棄物および汚染を減らすことに役立つ。重要なことに、アップサイクリングは、解重合を介して達成される。プロセスは、多様な使用済みの廃棄物流からポリマーを混合物の状態で収集することで始まる。次に、混合物は押し出され、かつ液体添加物と結合され、この液体添加物は、重要なことに、重合の寸前である特定のPEワックスを含有する。次に、液体添加物は、低密度ポリエチレン(LDPE)に再重合され、ペレットを形成する。次に、ペレットは、リアクタで受け取られる。リアクタ内では、ペレットは、LDPEを溶解するためにリアクタ内に含有されている、適切な溶媒、酵素、または解重合に適合した化学物質に浸される。そのため、残っているポリマーを互いに段階的かつ整然と分離させ、および、層状基質を生成する。適切な溶媒、酵素、または解重合に適合した化学物質は、適切な解重合剤を含有するタンクに取り付けられた独立したパイプを介してリアクタへ運ばれる。プロセスは、混合物のポリマーのそれぞれについて、適切な溶媒、酵素、または解重合剤を追加することによって、層状基質を1層ずつ解重合することを繰り返し、この結果、残っているポリマーを整然としたやり方で溶解し、アップサイクリングのための積層ワックス状物質を生成する。
【国際調査報告】