(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】インピーダンス整合音響トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
H04R 19/00 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
H04R19/00 330
H04R19/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521145
(86)(22)【出願日】2021-10-08
(85)【翻訳文提出日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 US2021054088
(87)【国際公開番号】W WO2022076770
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508280195
【氏名又は名称】ザ ジョンズ ホプキンス ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス エドワード ウエスト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー レンノル
(72)【発明者】
【氏名】アデバヨ アヨーラ アイサペ セカンド
(72)【発明者】
【氏名】イアン マクレーン
(72)【発明者】
【氏名】モーニャ エルヒラリ
【テーマコード(参考)】
5D019
5D021
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019AA22
5D019DD01
5D019FF02
5D019FF04
5D021CC04
5D021CC07
(57)【要約】
音響トランスデューサは、エラストマーを含む第1の層を含む。第1の層の音響インピーダンスは、トランスデューサがモニタリングするように構成された媒体の音響インピーダンスに実質的に一致する。トランスデューサは、電極を含む第2の層も含む。トランスデューサは、ポリマーを含む第3の層も含む。第2の層は、少なくとも部分的に第1の層と第3の層の間に位置する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響トランスデューサであって、
エラストマーを含む第1の層であって、該第1の層の音響インピーダンスは、前記トランスデューサがモニタリングするように構成された媒体の音響インピーダンスに実質的に一致する、第1の層と、
電極を備える第2の層と、
ポリマー含む第3の層であって、前記第2の層が少なくとも部分的に前記第1の層と前記第3の層の間に位置する、第3の層と、
を備える音響トランスデューサ。
【請求項2】
前記エラストマーは、ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項3】
前記第1の層は、約2:1~約20:1のモノマー対硬化剤比を有する、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1の層は、前記トランスデューサがモニタリングするように構成された前記媒体の前記音響インピーダンスに前記第1の層の前記音響インピーダンスを実質的に一致させるようにセラミック材料でドープされ、前記第1の層は、前記トランスデューサがモニタリングするように構成された前記媒体の前記音響インピーダンスに前記音響インピーダンスを実質的に一致させるようにドープされた唯一の層である、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項5】
前記第1の層は、前記トランスデューサがモニタリングするように構成された前記媒体の前記音響インピーダンスに前記第1の層の前記音響インピーダンスを実質的に一致させるように、セラミック、二酸化ケイ素、二酸化チタン、チタン酸バリウム又はこれらの組合せでドープされ、前記第1の層は、前記トランスデューサがモニタリングするように構成された前記媒体の前記音響インピーダンスに前記音響インピーダンスを実質的に一致させるようにドープされた唯一の層である、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項6】
前記第1の層は、約1%~約60%の二酸化ケイ素でドープされている、請求項5に記載の音響トランスデューサ。
【請求項7】
前記第1の層は該第1の層の第1の面に複数の微細構造体を備え、前記第1の層の第2の面は、前記第1の面の反対側にあり、前記トランスデューサがモニタリングするように構成された前記媒体に接触して配置されるように構成された、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項8】
前記微細構造体の高さは約50μm~約1mmであり、2つの隣接する前記微細構造体の間隔は約50μm~約1mmである、請求項7に記載の音響トランスデューサ。
【請求項9】
前記第2の層は、該第2の層が山部及び谷部を備えるように微細構造体に実質的に合致し、前記第3の層は実質的に平坦であり、前記第2の層の前記谷部と前記第3の層の間に隙間が存在する、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項10】
前記ポリマーは、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項11】
前記ポリマーは、帯電エレクトレットポリマーを含む、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項12】
導電性金属を含む第4の層をさらに備え、前記第3の層が少なくとも部分的に前記第2の層と前記第4の層の間に位置する、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項13】
他の電極を備える第4の層をさらに備え、前記第3の層が少なくとも部分的に前記第2の層と前記第4の層の間に位置する、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項14】
ポリイミドを含む第5の層をさらに備え、前記第4の層が少なくとも部分的に前記第3の層と前記第5の層の間に位置する、請求項13に記載の音響トランスデューサ。
【請求項15】
エネルギー、信号増幅、信号伝達又はこれらの組合せを与えるように構成された回路を備える第6の層をさらに備え、前記第5の層が少なくとも部分的に前記第4の層と前記第6の層の間に位置する、請求項14に記載の音響トランスデューサ。
【請求項16】
前記音響トランスデューサは電界効果トランジスタ(FET)調整回路に接続されるように構成され、該FET調整回路は前記音響トランスデューサから電気信号を受信して該電気信号を増幅するように構成された、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項17】
前記第2の層に接続された電界効果トランジスタ(FET)調整回路をさらに備え、該FET調整回路は前記第2の層から電気信号を受信して該電気信号を増幅するように構成された、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項18】
前記音響トランスデューサは、人体の音を取得するように構成された聴診器の一部であり、前記媒体は人体を含み、前記音響トランスデューサは、前記聴診器によって出力される信号を損なう前記人体の周囲の周辺環境において生成されたノイズからの干渉を低減する、請求項1に記載の音響トランスデューサ。
【請求項19】
音響トランスデューサであって、
エラストマーを含む第1の層であって、該第1の層は約5:1~約20:1のモノマー対硬化剤比を有し、前記第1の層は約50μm~約1mmの高さを有する複数の微細構造体を備え、前記第1の層は、前記トランスデューサがモニタリングするように構成された媒体の音響インピーダンスに前記第1の層の音響インピーダンスを実質的に一致させるように約1%~約60%の二酸化ケイ素でドープされ、前記第1の層は、前記トランスデューサがモニタリングするように構成された前記媒体の前記音響インピーダンスに一致するように使用される唯一の層である、第1の層と、
電極を備える第2の層であって、該第2の層は、該第2の層が山部及び谷部を備えるように前記微細構造体に実質的に合致する、第2の層と、
ポリマーを含む第3の層であって、該ポリマーはコロナ帯電フッ化エチレンプロピレン(FEP)、コロナ帯電ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)又はこれらの組合せを含み、前記第2の層は少なくとも部分的に前記第1の層と前記第3の層の間に位置し、前記第3の層は実質的に平坦であり、前記第2の層の前記谷部と前記第3の層の間に隙間が存在する、第3の層と、
を備える音響トランスデューサ。
【請求項20】
前記エラストマーは、ポリジメチルシロキサンを含む、請求項19に記載の音響トランスデューサ。
【請求項21】
導電性金属を含む第4の層をさらに備え、前記第3の層が少なくとも部分的に前記第2の層と前記第4の層の間に位置する、請求項19に記載の音響トランスデューサ。
【請求項22】
他の電極を備える第4の層をさらに備え、前記第3の層が少なくとも部分的に前記第2の層と前記第4の層の間に位置する、請求項19に記載の音響トランスデューサ。
【請求項23】
ポリイミドを含む第5の層であって、前記第4の層が少なくとも部分的に前記第3の層と前記第5の層の間に位置する、第5の層と、
エネルギー、信号増幅、信号伝達又はこれらの組合せを与えるように構成された回路を備える第6の層であって、前記第5の層が少なくとも部分的に前記第4の層と前記第6の層の間に位置する、第6の層と、
をさらに備える請求項22に記載の音響トランスデューサ。
【請求項24】
媒体の機械的振動を測定するように構成された音響トランスデューサを構築するステップであって、該トランスデューサを構築するステップは、
前記媒体に少なくとも部分的に基づいて前記トランスデューサの第1の層をドーパントでドープするステップであって、前記第1の層の材料、前記ドーパント又はその両方が前記第1の層の音響インピーダンスを前記媒体の音響インピーダンスに実質的に一致させる、ステップと、
前記第1の層上に少なくとも部分的に第2の層を配置するステップと、
前記第2の層上に少なくとも部分的に第3の層を配置するステップと、
前記第1の層を前記媒体に接触して配置するステップと、
前記トランスデューサを用いて前記媒体の前記機械的振動を測定するステップと、
を備える、方法。
【請求項25】
前記ドーパントを適用するステップは、約1%~約60%のセラミック、二酸化ケイ素、二酸化チタン、チタン酸バリウム又はこれらの組合せを前記第1の層に適用して、前記第1の層の音響インピーダンスを前記媒体の音響インピーダンスに実質的に一致させるステップを備える、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の層はエラストマーを含み、前記ドーパントはセラミック材料を含み、前記第2の層は電極を備え、前記第3の層は帯電エレクトレットポリマーを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記トランスデューサを構築するステップは、前記第1の層の表面に複数の微細構造体を形成するステップをさらに備え、前記微細構造体は約50μm~約1mmの高さを有し、前記第2の層は、該第2の層が山部及び谷部を備えるように前記微細構造体に実質的に合致し、前記第3の層は、前記第2の層の前記谷部と前記第3の層の間に隙間が存在するように実質的に平坦である、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記トランスデューサは、静電変換を用いて、測定された特性を音響信号から電気信号に変換する、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2020年10月9日出願の米国仮特許出願第63/089702号の優先権を主張し、その全体が参照によりここに取り込まれる。
【0002】
(政府の支援)
本出願は、米国国立衛生研究所によって授与された許可HL133043及びMD014104の下に政府の支援によって行われた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0003】
本発明は、概略としてトランスデューサに関する。より詳細には、本発明はインピーダンス整合音響トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0004】
我々は、会話、音楽又は環境雑音のいずれによるものかにかかわらず、多量の音響エネルギーに常時囲まれている。それらの音響波は、捕捉されると、人間及び彼/彼女の周囲について豊富な情報を提供することができ、この情報は多数の用途に利用され得る。第1の例では、身体音は、健康及び診断の詳細を提供し得る。第2の例では、水中の音は、誘導及び追跡に使用され得る。第3の例では、物理的物体からの振動は、構造的モニタリング、及び小型デバイスに給電するためにエネルギーを収集することに関する詳細を提供し得る。
【0005】
現在では、対象となる周波数範囲、必要な感度及びモニタリングされている媒体に応じて、上記用途に使用可能な様々な音響トランスデューサ(例えば、電気力学、電気磁気、静電及び圧電トランスデューサ)がある。この幅広い選択肢にもかかわらず、これらのトランスデューサが抱える問題は、デバイスと、モニタリングされている媒体との間の音響インピーダンス不整合であり、これはトランスデューサ要素におけるエネルギー密度の低下及び他の音源からの干渉をもたらす。
【発明の概要】
【0006】
音響トランスデューサが開示される。トランスデューサは、エラストマーを含む第1の層を含む。第1の層の音響インピーダンスは、トランスデューサがモニタリングするように構成された媒体の音響インピーダンスに実質的に一致する。トランスデューサは、電極を含む第2の層も含む。トランスデューサは、ポリマーを含む第3の層も含む。第2の層は、少なくとも部分的に第1の層と第3の層の間に位置する。
【0007】
音響トランスデューサがさらに開示される。音響トランスデューサは、エラストマーを含む第1の層を含む。第1の層は、約5:1~約20:1のモノマー対硬化剤比を有する。第1の層は、約50μm~約1mmの高さを有する複数の微細構造体を含む。第1の層は、トランスデューサがモニタリングするように構成された媒体の音響インピーダンスに第1の層の音響インピーダンスを実質的に一致させるように、約1%~約60%の二酸化ケイ素でドープされる。第1の層は、トランスデューサがモニタリングするように構成された媒体の音響インピーダンスを整合するのに使用される唯一の層である。音響トランスデューサは、電極を含む第2の層も含む。第2の層は、第2の層が山部及び谷部を含むように微細構造体に実質的に合致する。音響トランスデューサは、ポリマーを含む第3の層も含む。ポリマーは、コロナ帯電フッ化エチレンプロピレン(FEP)、コロナ帯電ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリスチレン(PS)ナノ粒子を有し若しくは有さないスピン若しくはスプレーコーティング環状オレフィンコポリマー(COC)又はこれらの組合せを含む。第2の層は、少なくとも部分的に第1の層と第3の層の間に位置する。第3の層は、実質的に平坦である。第2の層の谷部と第3の層の間には隙間が存在する。
【0008】
方法も開示される。方法は、媒体の機械的振動を測定するように構成されたトランスデューサを構築するステップを含む。トランスデューサを構築するステップは、媒体に少なくとも部分的に基づいてドーパントによってトランスデューサの第1の層をドープするステップを含む。第1の層の材料、ドーパント又はその両方により、第1の層の音響インピーダンスが媒体の音響インピーダンスに実質的に一致する。トランスデューサを構築するステップは、第2の層を少なくとも部分的に第1の層上に配置するステップも含む。トランスデューサを構築するステップは、第3の層を少なくとも部分的に第2の層上に配置するステップも含む。方法は、第1の層を媒体に接触して配置するステップも含む。方法は、トランスデューサを用いて媒体の機械的振動を測定するステップも含む。
【0009】
添付図面は視覚的な表示を与え、それらは、ここに開示される代表的実施形態をより完全に説明するのに使用され、当業者がそれら及びそれらの本来的な有利な効果を理解するのに使用され得る。これらの図面では、同様の符号は、対応する要素を識別する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るトランスデューサの模式断面図である。
【
図2】一実施形態に係る、トランスデューサの第1の層によって取得され得るインピーダンス値の範囲を示すグラフである。
【
図3A】一実施形態に係る、ノイズなしのトランスデューサの音響出力を示すグラフである。
【
図3B】一実施形態に係る、ノイズありのトランスデューサの音響出力を示すグラフである。
【
図3C】一実施形態に係る、ノイズなしの周辺マイクロフォンの音響出力を示すグラフである。
【
図3D】一実施形態に係る、ノイズありの周辺マイクロフォンの音響出力を示すグラフである。
【
図4A】一実施形態に係る、トランスデューサの第3の層の安定性を示すグラフである。
【
図4B】一実施形態に係る、トランスデューサの第3の層の安定性を示すグラフである。
【
図4C】一実施形態に係る、トランスデューサの第3の層の安定性を示すグラフである。
【
図5】一実施形態に係る、1Hzで付与された力に対するトランスデューサの電圧応答の例を示すグラフである。
【
図6】一実施形態に係る、トランスデューサの電圧応答を周波数の関数として示すグラフである。
【
図7】一実施形態に係る、他のトランスデューサを示す模式断面図である。
【
図8】一実施形態に係る、媒体をモニタリングする方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の主題を、本発明の一部であって全部ではない実施形態が示される添付図面を以下に参照して、より完全にここに説明する。同様の符号は、全体を通じて同様の要素を指す。本開示の主題は、多数の異なる形態で実現され得るものであり、ここに説明する実施形態に限定して解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように規定される。実際に、ここに説明する本開示の主題の多数の変形例及び他の実施形態は、上記記載及び関連する図面に提示される教示の利益を受ける、本開示の主題が関係する当業者が想到するものである。したがって、本開示の主題は開示される具体的実施形態に限定されるものではないこと、並びに変形例及び他の実施形態は後続の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることが理解されるべきである。
【0012】
音響インピーダンス(Z)は、材料の密度及びその材料内の/その材料を通る音速の関数である。音が複数の媒体間を伝搬する場合、音響インピーダンスの差により、音響エネルギー(例えば、音波)の少なくとも一部分が境界で反射する。例えば、音が身体(Z=1.54MRayl)と空気(Z=0.0004MRayl)の間又は水(Z=1.50MRayl)とセラミックトランスデューサ(Z>6MRayl)の間を伝搬する場合、入射エネルギーの大部分がトランスデューサによっては捕捉されない場合がある。非常に小さな入射エネルギーしかトランスデューサに伝達されないため、機能的信号を捕捉するのに増幅技術及び非常に高い感度のトランスデューサの双方が使用されることになり、環境発電(エネルギーハーベスティング)は非効率となる。媒体に対して整合しないインピーダンスを有するトランスデューサも、外部ノイズによって損なわれやすくなる。トランスデューサによって捕捉され得る入射エネルギーの量を増加させるため及び/又はノイズの悪影響を減少させるために、整合層が使用され得るが、整合層は、制限された帯域幅、厚さに依存する感度、並びに整合層との及び整合層間の結合の問題といった新たな一連の制限を生じる。
【0013】
これらの問題に対処するため、ここに記載されるシステム及び方法は、改善された音モニタリングのための広い帯域幅の自己給電型インピーダンス整合トランスデューサに向けられる。トランスデューサは、約0.5MRayl~約5MRayl又は約1MRayl~約2.5MRaylの範囲でモニタリングされる媒体の音響インピーダンスに一致するように調整され得る。これにより、信号伝達を最大化し、追加の(例えば、整合)層の必要性をなくす。この範囲の音響インピーダンスは、生体(例えば、皮膚)、淡水、塩水及びほとんどのプラスチックなどの材料を包含する。
【0014】
ある用途では、トランスデューサは、世界的に主な死因のうちの2つである呼吸器疾患及び/又は心血管疾患の生存患者をモニタリングするように特異的に適合され得る。トランスデューサは、オンボード電気回路とともに患者の身体(例えば、胸部)に配置されると、長期間にわたって肺の音及び/又は心臓の音を記録することができ、それは、会話又は周辺ノイズからの干渉なしに、異常の有無について患者を遠隔でモニタリング及び診断するのに使用され得る。トランスデューサは柔軟であり得る。それにより、トランスデューサが快適に装着され、患者の動きに合わせて変形することが可能となる。消費電力が低くかつ環境発電ができることによって、連続的かつ持続可能な使用が可能となる。トランスデューサは、さらに又は代わりに低密度木材上及び/又は水中で使用され得る。
【0015】
トランスデューサは、整合層なしで、モニタリングされている媒体の音響インピーダンスにほぼ一致するように調整され得る1以上のポリマー層を含み得る。これは、その信号対ノイズ比(SNR)を最大化しつつ、トランスデューサから反射していくエネルギーを最小化する。さらに、空気伝播騒音源は、それらのエネルギーが空気-トランスデューサ界面で反射されるので、受動的に排除され、ノイズが観測信号に混入することを防止するようにしてもよい。この受動的なノイズ抑制メカニズムは、計算集約的な並びに/又は高価な信号処理及びノイズキャンセリングアルゴリズムなしに、ノイズキャンセリングを効果的に実施する。
【0016】
トランスデューサは、最小の処理で(例えば、処理なく)、モニタリングされている媒体(例えば、人間の胸部)の音を依然として捕捉しつつも、バックグラウンドノイズの大部分を約80dB以上の音レベルで除去し得る。例えば、トランスデューサは、バックグラウンドノイズの約97%~約99.5%(例えば、98.89%)を71dB~90dB(例えば、85dB)の音レベルで除去することができ、これは聴診器の機能を向上し得る。比較として、従来の聴診器は、ノイズ抑制のための高コストな電気回路のために、同等の性能を約70dBでしか達成しない。言い換えると、トランスデューサは、人体のインピーダンスに調整されて、最小の干渉及び/又は減衰で達成される音響エネルギーの伝達を最大化し得る。例えば、トランスデューサは、人体の音声、人体の内部音(例えば、鼓動、肺の音など)又はそれらの組合せに特異的に調整され得る。
【0017】
トランスデューサの音響インピーダンス整合は、カスタマイズ可能であり得る。より詳細を以下に説明するように、1以上のエラストマーが調整済み音響インピーダンスポリマー層として使用可能であり、それは皮膚に対して相似し、呼吸可能でありかつ安全である。またさらに、トランスデューサは、多様な形状及びサイズで作製可能であり、実装及び一体化をさらに容易化する。トランスデューサの簡素性及び単純な作製は、現行のトランスデューサに対する有利な効果であり、トランスデューサが多様な用途に対して適合可能となる。
【0018】
従来のトランスデューサとは対照的に、ここに記載するトランスデューサは、静電変換の原理を用いて電気的応答(例えば、電圧出力)を生成することができる。これは、ウェアラブルトランスデューサにおいて試作されてきた圧電変換及び摩擦電気変換による方法に対して有利である。静電変換は、摩擦電気変換と比較して、機械的摩耗及び環境条件に影響を受けにくい。静電変換は、圧電変換と比較して、鉛系材料の使用を伴わず、簡単な(例えば、低温、化学物質なしでの)処理で非常に低コストであり、生体適合的であり、音響インピーダンスと電気的出力との間の結合を低下させる。電圧出力は、位置及び電荷移動/再結合に基づくものであり、このように、低周波音が観測/分離され得る。
【0019】
トランスデューサは、柔軟であり、様々な表面に合致可能であり、そのカスタマイズ可能な音響インピーダンス整合を補完する。柔軟な電子部品及び電気回路の出現は、曲面へのトランスデューサの適用を容易化し得る。センサの共形性によって、身体からの音のモニタリングにおける新たなパラダイムがもたらされ、それにより、トランスデューサを皮膚に配置して音声、心臓及び肺からの音を捕捉するのに接着剤が使用可能となる。
【0020】
図1に、一実施形態に係る、媒体102上のトランスデューサ100の模式断面図を示す。トランスデューサ100は、静電トランスデューサであり又はそれを含み得る。媒体102は、人体(例えば、胸部、首、鼻など)であり又はそれを含み得る。他の実施形態では、媒体102は、楽器、木材、水、インフラの構造部材(例えば、建造物、橋梁)、航空宇宙用材料(例えば、アルミニウム、チタン)などであり又はそれを含み得る。一実施形態では、トランスデューサ100は、少なくとも部分的にここに位置する1以上の構成要素(例えば、層)を有するハウジング104を含み得る。他の実施形態では、ハウジング104は、省略され得る。
【0021】
トランスデューサ100は、モニタリングされている媒体102と直接接触するように構成された第1の(例えば、下側の)層110を含み得る。第1の層110は、1以上のエラストマーであり又はそれを含み得る。より詳細には、第1の層110は、調整されたエラストマーマトリクスであり又はそれを含み得る。例えば、第1の層110は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ECOFLEX(登録商標)又はポリウレタンであり又はそれを含み得る。第1の層110は、媒体102のインピーダンスに実質的に一致するように音響インピーダンスを制御(例えば、調整)する特定のパラメータを有するように作製及び/又はドープされた単一の層であり得る。ここで使用されるように、トランスデューサ100(例えば、第1の層110)のインピーダンスは、インピーダンス間の差が約10%、約5%又は約1%未満である場合に媒体102のインピーダンスに実質的に一致する。一実施形態では、トランスデューサ100の音響インピーダンスは、エラストマー及び/又はエラストマーに添加されるナノ粒子添加物(ドーパントともいう)の重量比を変化させることによって制御され得る。ナノ粒子添加物は、セラミック、二酸化ケイ素、二酸化チタン、チタン酸バリウム又はこれらの組合せであり又はそれを含み得る。添加物の濃度は、約1%~約60%であり得る。例えば、添加物の濃度は、約1%~約5%、約5%~約10%、約10%~約20%、約20%~約40%、又は約40%~約60%であり得る。
【0022】
一実施形態では、第1の層110は、媒体102のインピーダンスに一致するように使用/調整される唯一の層であり得る。一方、従来のトランスデューサは、媒体102と検知要素の表面との間に配置された複数の層を含み得る。これらの複数の層は、異なる音響インピーダンスを有し、媒体102のインピーダンスから検知要素のインピーダンスまでの勾配及び/又は段階的移行を与えるように積層される。一方、ここに記載されるトランスデューサ100における第1の層110は、インピーダンス整合を与え、検知要素としても作用し、反射を最小化するとともにエネルギー伝達を最大化する。これは、反射を最小化し得る。言い換えると、ここに記載されるトランスデューサは、各整合層境界において反射が発生する複数の整合層を有する従来のトランスデューサと比較して、モニタリングされている媒体とインピーダンス整合した検知要素との間に単一の層しか有さず、これにより、反射を最小化するとともにエネルギー伝達を最大化する。
【0023】
一実施形態では、第1の層110は、1以上のアレイ化微細構造体112を含み得る。微細構造体112は、媒体102から延在していく突起であり又はそれを含み得る。トランスデューサ100の電気的及び/又は周波数応答は、微細構造体112の形状(例えば、半球状、円錐状、円筒状)及び/又は寸法を維持又は変更することによって制御(例えば、調整)され得る。例えば、微細構造体112の高さ114は約50μm~約1mmであり、2つの隣接する微細構造体112の間隔116は約50μm~約1mmであり得る。
【0024】
トランスデューサ100は、第1の層110に(例えば、その上部に)直接接触するように構成された第2の層120も含み得る。図示するように、第2の層120は、微細構造体112を含む第1の層110の外面に合致し得る。第2の層120は、薄膜堆積電極であり又はそれを含み得る。
【0025】
トランスデューサ100は、第2の層120に(例えば、その上部に)直接接触するように構成された第3の層130も含み得る。図示する実施形態では、第3の層130は、第2の層120の山部に接触するが第2の層120の谷部には接触しないように構成され得る。第3の層130は、帯電エレクトレットポリマー層であり又はそれを含み得る。エレクトレットは、半永久電荷又は双極子分極を有する誘電材料である。エレクトレットは、内部電界及び外部電界を生成し、永久磁石の静電等価物である。例えば、第3の層130は、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、カーボンナノチューブ、他の分極化材料又はこれらの組合せであり又はそれを含み得る。一実施形態では、COCは、スピンコーティング若しくはスプレーコーティングされかつコロナ帯電され、電子スプレーされ、又はエレクトロスピニングされ得る。一実施形態では、FEPフィルムはコロナ帯電されてもよく、これは長時間にわたって保持可能な電荷を捕捉し得る。例えば、室温のFEPは、電荷を約200年間保持するものと推定されている。トランスデューサ100の電気的及び/又は周波数応答は、第3の層130の設計を変更又は維持することによって制御(例えば、調整)され得る。例えば、第3の層130の表面積は、トランスデューサ100の電気的応答を変化させるように変更され得る。
【0026】
トランスデューサ100は、第3の層130に(例えば、その上部に)直接接触するように構成された第4の(例えば、上側の)層140も含み得る。第4の層140は、導電性(例えば、金属)バッキングプレートであり又はそれを含み得る。第4の層140は、トランスデューサ100の挙動を変化させるように第3の層130から分離されてもよい。これは、トランスデューサ100がエネルギーを収集するのに役立ち得る。例えば、これは、第3の層130の外部の電界を両側で増加させ得る。物理的変形(例えば、パターニング、多孔質化など)によって、第3の層130の材料を変更することによって、又はパラメータを変更することによって、より多くの電荷が第3の層130の表面において利用可能となり得る。
【0027】
少なくとも一実施形態において、トランスデューサ100は、中間層125も含み得る。中間層125は、少なくとも部分的に第2の層120と第3の層130の間に位置して、高圧において第2の層120と第3の層130の間の距離及び/又は偏向を維持し得る。中間層125は、空気、窒素、ヘリウム又はこれらの組合せなどのガスであり又はそれを含み得る。ガスは、少なくとも部分的に第2の層120と第3の層130の間に固定/捕捉され得る。他の実施形態では、中間層125は、第1の層110よりも硬質でない多孔質ポリマーであり又はそれを含み得る。多孔質ポリマーは、微細構造体112が崩壊するのを防止し得るが、微細構造体112は多孔質材料の密度に起因して依然として変形し得る。中間層125は、水中の用途に使用され得る。
【0028】
さらに他の実施形態では、トランスデューサ100は、少なくとも部分的に第3の層130と第4の層140の間に位置する他の/異なる中間層(不図示)も含み得る。この中間層は、圧電材料であり又はそれを含んでいればよく、これは環境発電を促進し得る。
【0029】
一実施形態では、トランスデューサ100は、電界効果トランジスタ(FET)調整回路160に接続され得る。調整回路160は、第2の層120及び/又は第4の層140(例えば、いずれか接地されていない方)に接続され得る。調整回路160は、トランスデューサ100からの電気信号を受信し、その信号のインピーダンスを低下させるように構成され得る。言い換えると、調整回路160は、前置増幅器として作用して信号を強化してもよく、その信号は増幅器170に送信され得る。
【0030】
図2は、一実施形態に係る第1の層110(例えば、エラストマー)によって取得され得るインピーダンス値の範囲を示すグラフ200を示す。より詳細には、グラフ200は、様々なレベルの添加物(例えば、二酸化ケイ素)ナノ粒子でドープされた2つの異なるエラストマー基材(例えば、PDMS及びECOFLEX(登録商標))の音響インピーダンスを示す。PDMSは、10~1のモノマー対硬化剤比を有する。PDMSは、0%のSiO
2、10%のSiO
2、20%のSiO
2、30%のSiO
2、40%のSiO
2、50%のSiO
2及び60%のSiO
2でドープされる。ECOFLEX(登録商標)は、0%のSiO
2、33%のSiO
2及び50%のSiO
2でドープされる。さらに、皮膚、軟質木材及び水の3個の基準材料も示される。グラフから分かるように、異なる材料を選択し、ドーパント値を変化させることによって、任意のインピーダンス値が達成され得る。不図示であるが、PDMS及びECOFLEX(登録商標)に加えて、ポリウレタンも、エラストマー基材として使用され得る。
【0031】
音響インピーダンスを測定するために、サンプルは、水中に浸漬された超音波トランスデューサを含む設定において実験的に特徴付けられる。挿入技術は、水を基準として用いて、水中に浸漬された固体媒体を通る縦波超音波の伝達を検討する相対測定法である。
【0032】
図2は、エラストマーマトリクス及びドーパントの可能な組合せのサンプリングのみを含む。異なる密度でのエラストマーの使用を探索することによって、ユーザは、取得され得る音響インピーダンス値の範囲をさらに拡大可能となり得る。一実施形態では、ECOFLEX(登録商標)が、その生体適合性、柔軟性及び洗浄容易性のために選択され得る。
【0033】
図3Aはノイズのない(例えば、45dBSPLの周辺ノイズにおける)トランスデューサ100の音響出力を示すグラフ300Aを示し、
図3Bはノイズを有する(例えば、80dBSPLにおける)トランスデューサ100の音響出力を示すグラフ300Bを示し、
図3Cはノイズのない(例えば、45dBSPLの周辺ノイズにおける)周辺マイクロフォンの音響出力を示すグラフ300Cを示し、
図3Dはノイズを有する(例えば、80dBSPLにおける)周辺マイクロフォンの音響出力を示すグラフ300Dを示し、いずれも実施形態に係るものである。グラフ300A~300Dは、6~10を計数する場合のスペクトログラムである。グラフから分かるように、音響記録の品質は、トランスデューサ100のインピーダンス整合により、非常にノイズの多い環境でも維持される。トランスデューサ100はまた、会話におけるスペクトルパワーの大部分を保存した。トランスデューサ100の周波数応答は、第1の層(例えば、エラストマー110)の構造を変更することによってさらに最適化され得る。
【0034】
安定性及び保存電荷は、サンプル媒体を帯電させるのに使用された継続時間、温度及びグリッド電圧を含むパラメータに基づいて変化し得る。第3の層130の上面は、第4の層140と接触し得る。トランスデューサ100の表面が音響波に起因する機械的振動を受ける場合、第1の層110は同様に振動する。これは、第1の層110の表面上の微細構造体112を変形させ、第1の層110と第3の層130(例えば、エレクトレット膜層)の間の空隙のサイズの変化を生じさせる。空隙の変形は、元の機械的振動に比例する対応の電圧出力をもたらす。
【0035】
図4A~4Cは、本実施形態に係るトランスデューサ100の第3の層130の安定性を示すグラフ400A~400Cを示す。より詳細には、グラフ400A~400Cは、20~30日の期間にわたってモニタリングされた第3の層(例えば、FEP膜)130の表面電位を示す。第1のグラフ400Aにおける第3の層130は、種々のグリッド電圧によって室温で1時間にわたって帯電される。第2のグラフ400Bにおける第3の層130は、2000Vのグリッド電圧によって種々の温度で1時間にわたって帯電される。第3のグラフ400Cにおける第3の層130は、2000Vのグリッド電圧によって室温で種々の継続時間にわたって帯電される。
【0036】
表面電位は、第3の層130に保存された電荷量を示す。コロナ帯電が、電荷を第3の層130に捕捉するのに使用され得る。コロナ帯電は高電圧を点電極に印加して、それがその周囲の空気をイオン化する。イオンは接地サンプルに向けて加速され、電荷が堆積される。コロナ帯電条件は、第3の層130に捕捉された電荷の量及び安定性の双方を高めるように選択される。他の実施形態では、第3の層130は、電子ビーム又は電子スプレーを用いて帯電され得る。FEPの電荷安定性は、室温において100年を超えて安定的となり得る。
【0037】
図5は、実施形態に係る、1Hzで付与された力に対するトランスデューサの電圧応答の例を示すグラフ500を示す。より詳細には、グラフ500は、1Hzで付与された0.3Nの力及び1.3Nの先行載荷によるトランスデューサ100の電圧応答を経時的に示す。継続時間(例えば、4秒)にわたって出力された平均電圧は0.57Vである。微細構造体112のサイズ、形状及び/又は間隔は、トランスデューサ100の電気的応答を最適化するように変更可能である。
【0038】
図6は、一実施形態に係る、トランスデューサ100の電圧応答を周波数の関数として示すグラフ600を示す。機械的負荷の下でトランスデューサ100によって生成された平均電圧は、ロングストローク励振器、ラウドスピーカなどを用いて測定され得る。応力は、特定の周波数及び力において励振器によってトランスデューサ100の片側(例えば、第1の層110)に付与され得る。トランスデューサ100の反対側(例えば、第4の層140)は、付与される力を測定する負荷セルに取り付けられ得る。励振器は、種々の先行載荷力をサンプル媒体に適用するように調整可能である。データは、データ取得システム(DAQ)によって収集され得る。
図6に示すデータでは、電圧応答は、付与される力で正規化される。トランスデューサに付与される平均先行載荷力は1.3Nである。
【0039】
図から分かるように、トランスデューサ100は、低周波に非常に感度が高い。一方、空気伝播騒音用の従来のトランスデューサは、それほど感度が高くない。この増加した感度は、海洋の波のうねり、胸壁音及び動作、材料の振動又はこれらの組合せに応じて高いエネルギー密度を生成する。トランスデューサ100は、微細構造体112の幾何形状及びレイアウト(これらに限定されないが、間隔及び配向を含む)を変更することによって最適化可能である。測定は、より高い周波数に対してより高感度となり得る微細構造体112を圧縮する先行載荷を設定において除去することによっても最適化可能である。
【0040】
図7は、一実施形態に係る、媒体102上の他のトランスデューサ700の模式断面図を示す。トランスデューサ700は、トランスデューサ100に類似し得る。例えば、トランスデューサ700は、第1の層110(例えば、微細構造体112を含む)、第2の層120及び第3の層130を含み得る。ただし、トランスデューサ700は、第4の層140(例えば、導電バッキングプレート)の代わりに、第3の層130上に(例えば、その上部に)位置する第4の層740を含み得る。第4の層740は、薄膜電極であり又はそれを含み得る。例えば、第2の層120及び第4の層740はともに、薄膜電極であり又はそれを含み得る。一実施形態では、第4の層740は、硬質の上側電極であり得る。他の実施形態(不図示)では、第4の層740は、複数の柔軟な上側電極を含み得る。薄膜電子部品に結合された複数の柔軟な上側電極を用いると、トランスデューサ700は完全に共形なデバイスに変形し得る。
【0041】
トランスデューサ700は、第4の層740上に(例えば、その上部に)位置する第5の層750も含み得る。第5の層750は、絶縁層(例えば、ポリイミド)であり又はそれを含み得る。トランスデューサ700は、第5の層750上に(例えば、その上部に)位置する第6の層760も含み得る。第6の層760は、エネルギー、増幅及び伝送電気回路を与え得る柔軟な相互接続部に結合された1以上の回路であり又はそれを含み得る。
【0042】
トランスデューサ100、700は、身体及び電気通信からの音の長期間のモニタリングを向上するためにユーザに装着されることが想定された柔軟性のある生体適合性トランスデューサであり得る。連続的な音響モニタリングは、心不全(HF)、肺炎、コロナウイルス、COPD又は喘息などの疾患に関連する異常を患者に報知するのに使用され得る。具体的に心不全については、世界最多の死亡原因であり、患者が再入院するリスクの高い急性の事象を観察するためには、長期のモニタリングは必須である。心不全の患者の約22%は、退院後1か月以内に再入院する。心不全の有病率は2012年から2030年までに約46%増加すると予測され、関連する医療コストは210億ドルから530億ドルに増加すると予想される。再度の入院はこれらのコストの主な原因であり、年間の心不全の費用の75%超となる。ここに記載するトランスデューサ100、700があれば、患者は、自宅にいながらにして、ノイズ又は無駄なデータを気にすることなく、うっ血の兆候及び肺動脈高血圧の音響シグネチャについてモニタリングを受けることができ、これにより、標準的治療は反応的な入院から予防的な介入に移行する。心疾患及び呼吸器疾患の双方に対して、トランスデューサ100、700は患者の治療を合理化し、再入院コストにおける数百万ドルを節約し、ソーシャルディスタンスの時世において自宅でのモニタリングを提供することができる。
【0043】
電気通信に関して、トランスデューサ100、700は、オンラインミーティング、又は建設作業者、エンジン作業者、軍用航空乗務員及び消防士などの人員に対する高騒音環境における通信を向上するのに使用され得る。トランスデューサ100、700はまた、法執行活動及び秘密軍事作戦など、高い音レベルが望ましくなく、かつ視覚的通信が制限され、断続的であり又は不可能な環境において通信を容易化することもできる。
【0044】
水中音響波は通信の一形態であり、1以上のトランスデューサ100、700がこの通信を容易化するのに使用され得る。従来の水中トランスデューサは、鉛系圧電セラミック材料であるチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって構成され、電気的応答を得るために高電圧及び高温での処理を必要とする。これらのトランスデューサは平均的なコストが2000ドルから3000ドルと高価であり、通常は50000lbを超える重量となり得る1000個以上の大きな群となる。これらの従来のトランスデューサとは対照的に、ここに記載されるトランスデューサ100、700は、鉛系材料を使用しない、より環境に優しい選択肢であり、電気的応答を得るのにわずかな準備しか必要とせず、低コストである。トランスデューサ100、700は、その柔軟性、軽量性、拡縮可能性、及び水に整合される音響インピーダンスのために、船体搭載ソナーアレイに良好に適し得る。
【0045】
図8は、一実施形態に係る、媒体をモニタリングするための方法800のフローチャートを示す。方法800の例示的順序が与えられるが、方法800の1以上のステップが異なる順序で実行されてもよいし、同時に実行されてもよいし、反復されてもよいし、又は省略されてもよい。
【0046】
方法800は、802の時点で、媒体102を識別するステップを含んでもよい。上述したように、一例では、媒体102は、生体であり又はそれを含み得る。例えば、媒体は、トランスデューサ100、700が心臓をモニタリングできるように、生きている人の胸部であり又はそれを含み得る。識別された媒体102は、特定の音響インピーダンスを有する。
【0047】
方法800は、804の時点で、媒体102に少なくとも部分的に基づいて第1の層110を選択するステップも含み得る。より詳細には、これは、媒体102のインピーダンスに少なくとも部分的に基づいて第1の層110として使用する材料を選択するステップを含み得る。例示的材料は、上述されている(例えば、PDMS、ECOFLEX(登録商標)又はポリウレタン)。
【0048】
方法800は、806の時点で、媒体102に少なくとも部分的に基づいて第1の層110上に1以上の微細構造体112を形成するステップも含み得る。微細構造体112の形状及び/又は寸法は、媒体102のインピーダンス及び所望の周波数応答に少なくとも部分的に基づいて選択され得る。
【0049】
方法800は、808の時点で、媒体102に少なくとも部分的に基づいて第1の層110をドープするステップも含み得る。より詳細には、これは、媒体102のインピーダンスに少なくとも部分的に基づいて第1の層110に対するドーパントとして使用する材料を選択するステップを含み得る。例示的材料(例えば、添加物及び/又はドーパント)は、上述されている(例えば、二酸化ケイ素ナノ粒子)。第1の層110をドープすることは、第1の層110のインピーダンスに少なくとも部分的に基づいて第1の層110に適用するドーパントの量及び/又は濃度を選択するステップも含み得る。例は、上記
図2提供されている。
【0050】
第1の層110の材料、ドーパントの材料、ドーパントの量、ドーパントの濃度、ドーパントのサイズ又はこれらの組合せが、トランスデューサ100、700のインピーダンス(例えば、第1の層110のインピーダンス)を媒体102のインピーダンスに実質的に一致させるように選択され得る。
【0051】
方法800は、810の時点で、第1の層110上に第2の層120を配置するステップも含み得る。第2の層120は、微細構造体112に合致し得る。このように、第1の層110及び/又は第2の層120の上面は、山部及び谷部を有し得る。
【0052】
方法800は、812の時点で、第2の層120上に第3の層130を配置するステップも含み得る。少なくとも一実施形態では、第3の層130は、微細構造体112及び/又は第2の層120に合致しなくてもよい。言い換えると、第3の層130は、山部及び谷部を有さなくてもよい。したがって、ガス(例えば、空気)が、第2の層120と第3の層130の間の隙間に捕捉され得る。
【0053】
方法800は、814の時点で、第3の層130上に第4の層140、740を配置するステップも含み得る。方法800は、816の時点で、第4の層140、740上に第5の層750を配置するステップを任意選択的に含み得る。方法800は、818の時点で、第5の層750上に第6の層760を配置するステップを任意選択的に含み得る。
【0054】
上記ステップの1以上が、トランスデューサ100、700を構築/構成するように実行され得る。構築/構成されると、方法800は、820の時点で、トランスデューサ100、700を媒体102に接触させて配置するステップを含み得る。より詳細には、これは、第1の層110の第1の(例えば、下側の)面を媒体102に接触させるステップを含み得る。一例では、これは、第1の層110の下側の面を生体の胸部に結合する(例えば、付着させる)ステップを含み得る。微細構造体112は、第1の層110の第2の(例えば、上側の)面に位置し得る。
【0055】
方法800は、822の時点で、トランスデューサ100、700を用いて媒体102の特性を測定するステップも含み得る。これは、トランスデューサ100、700を用いて、媒体102からの音響信号(例えば、波動)を電気信号に変換するステップを含み得る。
【0056】
トランスデューサ100、700と従来のトランスデューサとの相違
(1)検知用途における高い電気的出力及び安定性のための静電誘導
従来の音響インピーダンス整合トランスデューサは、圧電材料を用いる。圧電材料の出力は、その硬度に比例し、一般に硬度が高いほど音響インピーダンスが増加するが、音響的応答は制限されてしまう。柔軟でかつ生体適合性のある圧電材料の電気的応答も、大きく制限される。圧電材料を用いてトランスデューサの感度を高めるために、剛性がある鉛系セラミックが使用されることが多い。圧電エレクトレットは、圧電体の低い感度を克服するが、帯電時の破壊、空隙の反対側が接触した場合の電荷の中和、及び限られた温度安定性といった限界も有する。摩擦電気材料は、薄くウェアラブルな用途では困難な材料の分離又は分断を必要とする。同様に、摩擦電気ナノ発電機は、機械的限界を有し、湿度による変化など、電気的出力の不安定性のために現実の用途において信頼性が低い。トランスデューサ100、700は、機械的摩耗及び環境条件の影響を受けにくい静電変換によるものである。圧電変換と比較して、静電変換は、鉛系材料の使用を伴わず、簡単な(例えば、低温、化学物質なしでの)処理により、非常に低コストであり、生体適合性があり、音響インピーダンスと電気的出力の間の結合を低下させる。
【0057】
(2)セラミックナノ粒子でのエラストマードーピングによる音響インピーダンス整合
従来のトランスデューサは、整合層に埋め込まれ又はそれと結合された従来の空気系マイクロフォン又は圧電材料の使用によるものである。これらのシステムは、それらの設計(変換用材料と結合用材料の間の更なるインピーダンス不一致)又は制限された帯域幅、厚さに依存する感度及び整合層との結合の問題といった整合層による一連の限界によって制限される。したがって、これらの従来のシステムは、ノイズ除去/抑制を与えない。トランスデューサ100、700は、音響的整合層110を変換用の膜として利用し、伝達の増加のために結合層及び検知層を単一の層に統合する。シリコーンの使用によって任意の3D固体の形状とされてもよく、数か月、数年でさえも安定であり、荒い扱いに対して影響を受けない。それは、準備及び塗布時に非毒性でもある。ただし、トランスデューサ100、700は、さらに又は代わりに、セラミックナノ粒子ドーピングを用いて、意図する媒体の正確な音響パラメータを有する材料を生成し得る。トランスデューサ100、700はまた、1Hz~20kHzの範囲に音波変換を含み得る。
【0058】
(3)機械的及び周波数応答を調整するための微細構造化エラストマー面
トランスデューサ100、700に含まれる微細構造体112は、回復力を与える。力の大きさは、微細構造体112の寸法及び硬度に比例するバネ定数を有するバネとしてモデル化可能である。このように、微細構造体112のサイズ、形状、アスペクト比及び/又は分布が、より高い又はより低い周波数を捕捉するように調整可能である。したがって、トランスデューサ100、700は、感度を高めてトランスデューサの本来のノイズ除去能力を向上するように特定の周波数範囲に対して調整可能である。またさらに、複数のサイズ、形状、アスペクト比及び/又は分布の微細構造体112が、同じトランスデューサ100、700に対して又はアレイ化された態様で実施可能であり、トランスデューサ100、700の帯域幅を増加させる。第1の層110の組成も、さらに周波数応答を調整するとともに、トランスデューサの観測インターフェースの音響インピーダンス及び機械的特性を制御するように調整可能である。第1の層110の音響インピーダンスは、特定の媒体に整合可能であるだけでなく、人体からの音を観測する場合に空気伝播騒音を除去するなど、外部ノイズ源からの干渉を除去するように作製可能でもある。このエラストマーの構造及び機械的特性に対する柔軟性の程度は、多数の環境へのトランスデューサ100、700の幅広い適用を容易化する。
【0059】
(4)曲面への適用のためのシステムの柔軟性
トランスデューサ100、700の柔軟性及び共形性は、流体媒体中及び曲面上の使用のために有用である。従来のトランスデューサは、結合層に続く剛体設計によって制限される。
【0060】
(5)一体化可能な電子部品
トランスデューサ100、700は、その上面に直接一体化された電子部品を有し得る。上述したように、増幅、エネルギー収集及び伝送電気回路は、伸縮可能な相互接続部を用いてトランスデューサ100、700に一体化され得る。
【0061】
上記ステップの1以上は、パーソナルコンピュータ、タブレット、ファブレット、スマートフォン、コンピュータサーバ又は当業者に周知の若しくは想到可能な他の任意のコンピューティングデバイスなどのコンピューティングデバイスに読み込まれた非一時的コンピュータ可読媒体を用いて実施可能である。実際に、当業者に周知の又は想到可能な任意の適切なハードウェア及びソフトウェアが使用され得る。非一時的コンピュータ可読媒体は、患者(PAT)の評価のためのデバイスに組み込まれてもよい。
【0062】
非一時的コンピュータ可読媒体は、コンピュータによって読み出し可能な任意の製品を意味するものと理解される。そのような非一時的コンピュータ可読媒体は、これらに限定されないが、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、オープンリールテープ、カートリッジテープ、カセットテープ又はカードなどの磁気媒体、CD-ROM、書き込み可能コンパクトディスクなどの光媒体、ディスク、テープ若しくはカードの形態の光磁気媒体、並びにパンチカード及び紙テープなどの紙媒体を含む。コンピューティングデバイスは、この目的のために特異的に設計された特殊なコンピュータであってもよい。コンピューティングデバイスは、本発明に固有のものであり、本発明の方法を実施するように特異的に設計されてもよい。
【0063】
本発明の多数の特徴及び有利な効果は詳細な明細書から明らかであり、したがって、後続の特許請求の範囲によって、本発明の主旨及び範囲内に入る全てのそのような本発明の特徴及び有利な効果を包含することが意図される。また、多数の変形例及びバリエーションが当業者に直ちに想到され得るので、本発明を説明及び記載した厳密な構成及び動作に限定するのは望ましくない。したがって、全ての適切な変形例及び均等物は、本発明に依拠し、本発明の範囲内に入る。
【国際調査報告】