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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】誘導加熱式NOx吸着剤
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20231024BHJP
   B01J 35/02 20060101ALI20231024BHJP
   B01J 20/34 20060101ALI20231024BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231024BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20231024BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F01N3/20 K
B01J35/02 G ZAB
B01J20/34 H
B01D53/94 222
F01N3/24 L
F01N3/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521182
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 US2021071714
(87)【国際公開番号】W WO2022076983
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/087,680
(32)【優先日】2020-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505470786
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】ヤングレン,デイビッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,シヤオファン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,シンイー
(72)【発明者】
【氏名】コードル,マシュー ティー.
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G066
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA12
3G091AA18
3G091AB05
3G091AB09
3G091BA03
3G091BA14
3G091CA05
3G091EA19
3G091FC07
3G091GB06
3G091HA20
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148AC04
4D148BA03Y
4D148BA11Y
4D148BA30Y
4D148BA31Y
4D148BA33Y
4D148BA41Y
4D148BB01
4D148BB02
4D148BD01
4D148CA03
4D148CC43
4G066AE19C
4G066CA28
4G066DA02
4G066GA03
4G066GA32
4G169AA03
4G169AA11
4G169BC69A
4G169CA03
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA18
4G169EA27
4G169EB18Y
4G169EE03
(57)【要約】
本出願は、所望の温度で窒素酸化物(NOx)を吸着及び脱離するための物品、システム、及び方法を提供する。触媒物品は、担持材料上に配置された、又は担持材料に含浸された白金族金属(PGM)成分を含むNO吸着剤組成物と、基材とを具備し、触媒物品はさらに、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性材料を含む。触媒物品は、電流を受け取り、それに応答して交流電磁場を発生させるためにそれに関係付けた導体をさらに備え、導体は、発生した交流電磁場が磁性材料の少なくとも一部に適用されるように配置される。この場は、磁性材料を誘導加熱してNO吸着剤組成物を加熱し、NO吸着剤組成物からNOを脱離させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンから出る排気ガス流を処理するための触媒物品から窒素酸化物(NO)を吸着及び脱着する方法であって、
前記排気ガス流を触媒物品と接触させること、
ここで、該触媒物品が、白金族金属(PGM)成分を支持材料上に配置し、又は支持材料に含浸させたNO吸着剤組成物と、基材とを具備し、
ここで、該NO吸着剤組成物は、NOを225℃未満の温度で保存するのに有効であり、
ここで、該触媒物品は、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性材料を具備し;及び
ここで、該触媒物品は、電流を受け取り、それに応答して交流電磁場を発生させるためにそれに関係付けた導体をさらに具備し、該導体は、発生した交流電磁場が前記磁性材料の少なくとも一部に印加されるように配置したものであり;及び
該導体に電流を流すことにより間欠的に導体を励磁させて交流電磁場を発生させ、前記磁性材料を誘導加熱して前記NO吸着剤組成物を225℃を超える温度に加熱し、前記NOx吸着剤組成物からNOを脱離すること
を含む方法。
【請求項2】
前記導体がフィードバック制御に適合し、前記基材が225℃未満の温度を有する場合にのみ、間欠励磁を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記排気ガス流を前記NO吸着剤組成物の下流の選択的接触還元(SCR)触媒組成物と接触させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記NO吸着剤組成物及び前記SCR触媒組成物が同じ基材上にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記NO吸着剤組成物及び前記SCR触媒組成物が別々の基材上にある、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記SCR触媒組成物の温度を監視すること、
ここで、間欠励磁は、前記SCR触媒組成物の温度が予め決められた温度を超えて上昇したときに行う、
をさらに含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記予め決められた温度が約180℃であるか、又は約200℃である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記SCR触媒組成物が前記予め決められた温度を超える限り、前記NO吸着剤組成物を225℃より高い温度に維持することをさらに含む、請求項6~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記SCR触媒組成物が前記予め決められた温度未満であるときに電流を取り除くことをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンから出る排気ガス流を処理するためのシステムであって、
白金族金属(PGM)成分が担体材料上に配置され又は担体材料に含浸させたNO吸着剤組成物、及び基材を具備する触媒物品、
ここで、前記NO吸着剤組成物は、NOを225℃未満の温度で貯蔵するのに有効であり、
ここで、該触媒物品は、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性材料を具備し、
電流を受け取り、それに応答して交流電磁場を発生させるための導体であって、発生した交流電磁場が前記磁性材料の少なくとも一部に印加されるように配置された導体、及び
前記NO吸着剤組成物の下流にあるSCR触媒組成物
を備えたシステム。
【請求項11】
NCR吸着剤組成物及び前記SCR触媒組成物が同一基材上にある、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記NCR吸着剤組成物と前記SCR触媒組成物が別々の基材上にある、請求項11に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月5日に出願した米国仮出願第63/087,680号の優先権の利益を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、エンジン流出物(effluent)の処理に使用するための組成物、かかる組成物の製造及び使用のための方法、並びにかかる組成物を採用する触媒物品及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼルエンジンの排出物(effluent)には、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、未燃焼炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)などがある。NOxは、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)など、窒素酸化物の様々な化学種を表す言葉である。排気粒子状物質の主要な成分の2つは、可溶性有機物画分(SOF)と煤煙画分である。SOFは、煤の上に層状に凝縮し、一般に未燃焼のディーゼル燃料及び潤滑油に由来する。SOFは、ディーゼル排気ガスの温度に応じて、蒸気として、あるいはエアロゾル(凝縮した液体の微小な液滴)としてディーゼル排気中に存在する。すすは、主に炭素粒子で構成されている。排気ガスのHC含有量は、エンジンの種類及び運転パラメータによって異なるが、通常、メタン、エタン、プロパンなどの様々な短鎖炭化水素と、長鎖の燃料系炭化水素を含む。
【0004】
NOx含有ガス混合物を処理して大気汚染を低減するために、様々な処理方法が使用されてきた。内燃機関の排気を処理するために使用する触媒は、エンジン運転の最初の冷間始動期間のような比較的低温の運転期間中は、エンジン排気の温度が効率的な触媒変換が行われるために十分に高い温度ではないため、効果が低い。例えば、このようなことは、下流の触媒部品、特にSCR触媒のような高熱質量フィルターの後に配置される触媒部品について発生し、適切な動作温度に達するまでに数分掛ることがある。
【0005】
スタートアップ条件下で触媒物品を加熱するために、車載の電力を使用することが提案されている。様々な方法には、例えば、加熱要素の抵抗加熱によるガスの予熱(例えば、Gonzeらの米国特許第8,479,496号;Barrientos Betancourtらの米国特許第10,690,031号;Shimasakiらの米国特許第6,112,519号;及びGonzeらの米国特許第8,156,737号参照);触媒基材の直接抵抗加熱(例えば、米国特許出願公開US2011/0072805号及びAchenbachらの米国特許第10,677,127号参照);及びセラミック基材中の導電性要素の抵抗加熱(例えば、Stiglmairらの米国特許第10,731,534号;Noroの米国特許第10,681,779号;Moriらの米国特許第9,845,714号;Yoshiokaらの米国特許第8,784,741号、及びKinoshitaらの米国特許第8,329,110号参照)がある。一例では、電気ヒーター、例えば、触媒基材の外側に巻かれた電線、加熱されたグリッド、又は金属基材自体が発熱体として機能することによって熱を発生させる。このようなシステムの商業化を成功させるためには、必要なエネルギー消費が比較的高いこと、触媒基材を最初に加熱する必要があるため加熱効率が比較的低いことなど、いくつかの課題が存在する。さらに、当技術分野の電気加熱設計のほとんどは金属基材を使用しており、多くのシステムで触媒担体としてより広く採用されているセラミック基材との互換性がない。また、最初の冷間始動期間中の効率低下に対処するために、様々なエンジン管理戦略が提案されている(例えば、Hostらの米国特許第10,138,781号;Joshiらの米国特許第10,082,047号;Remsの米国特許第9,506,426号;McQuillenらの米国特許第10,273,906号;Petersらの米国特許第6,657,315号;Changの米国特許第8,955,473号;及びGlugraらの米国特許第9,382,857号参照)。
【0006】
最近、触媒本体の誘導加熱が検討されている(例えば、CrawfordとDouglasの米国特許第9,488,085号、米国特許第10,132,221号、米国特許第10,352,214号を参照)。現在の技術では、セラミック基材に埋め込んだ導電性エレメントを用い、これを導電体に渦電流を誘導することで加熱している。触媒の非接触誘導加熱にはいくつかの利点がある。触媒本体に直接電気接続する必要がない。触媒のウォッシュコート用のセラミック支持体を組み込んでいる。しかし、現在の技術では、製造するのが複雑であること(セラミック/金属の界面の融合など)と、熱の分布が不均一になることに悩まされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第8,479,496号
【特許文献2】米国特許第10,690,031号
【特許文献3】米国特許第6,112,519号
【特許文献4】米国特許第8,156,737号
【特許文献5】米国特許出願公開US2011/0072805号
【特許文献6】米国特許第10,677,127号
【特許文献7】米国特許第10,731,534号
【特許文献8】米国特許第10,681,779号
【特許文献9】米国特許第9,845,714号
【特許文献10】米国特許第8,784,741号、
【特許文献11】米国特許第8,329,110号
【特許文献12】米国特許第10,138,781号
【特許文献13】米国特許第10,082,047号
【特許文献14】米国特許第9,506,426号
【特許文献15】米国特許第10,273,906号
【特許文献16】米国特許第6,657,315号
【特許文献17】米国特許第8,955,473号
【特許文献18】米国特許第9,382,857号
【特許文献19】米国特許第9,488,085号
【特許文献20】米国特許第10,132,221号
【特許文献21】米国特許第10,352,214号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
当技術分野では、ガソリン又はディーゼルエンジンからのガス状汚染物質のテールパイプ排出、特にエンジンの冷間始動時に発生する破過(breakthrough)排出(例えば、NOx)を低減することが引き続き必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、触媒材料の誘導加熱を促進するように適合した触媒物品、システム、及び関連方法を提供する。いくつかの実施形態では、本開示は、指定された条件下で、そこから窒素酸化物(NOx)を捕捉(吸着)及び脱離(desorbing)し、これによって、触媒物品からの吸着及び/又は脱離の制御を提供する触媒物品を対象とする。このような触媒物品は、例えば、低温でNOxを捕捉し、ある指定された事象まで(例えば、下流のSCR触媒が活性化すると理解される温度などのような、ある温度に達するまで)、捕捉したNOxを保持することができる。このようにして、NOxの還元を促進するのに十分な温度ではない下流のSCRを大量のNOxが通過してしまうのを回避することができる。
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示は、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンから出る排気ガス流を処理するための触媒物品から窒素酸化物(NOx)を吸着及び脱離する方法であって、以下の内容を含む:すなわち、排気ガス流を触媒物品と接触させること、該触媒物品は、白金族金属(PGM)成分を担体材料上に配置し又は担体材料に含浸させたNOx吸着剤組成物と、基材とを含み、ここで、NOx吸着剤組成物は、225℃未満の温度でNOxを貯蔵するのに有効であり、また、ここで、触媒物品は、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性材料を具備するものであり、ここで、触媒物品は、電流を受け取り、それに応答して交番電磁場を発生させるためにそれに関連付けした導体をさらに有し、この導体は、発生した交番電磁場が磁性材料の少なくとも一部に印加されるように配置されている;及び、導体に電流を流すことにより間欠的に励磁させて交流電磁場を発生させ、磁性材料を誘導加熱してNOx吸着剤組成物を、225℃を超える温度に加熱し、NOx吸着剤組成物からNOxを脱離することを含む、方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、導体は、フィードバック制御に適合され、間欠的な励磁は、基材が225℃未満の温度を有する場合にのみ行われる。いくつかの実施形態では、間欠的な励磁は、要求に応じて(on demand)行われる。
【0012】
開示した方法は、いくつかの実施形態では、排気ガス流をNOx吸着剤組成物の下流の選択的接触還元(SCR)触媒組成物と接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、NOx吸着剤組成物及びSCR触媒組成物は、例えば、同じ基材上にあるか、又はそれらは別々の基材上にある。開示した方法は、いくつかの実施形態では、SCR触媒組成物の温度を監視することをさらに含み、この場合、SCR触媒組成物の温度が所定の温度よりも上昇すると、間欠励磁が発生する。いくつかの実施形態においては、この所定の温度は変化する。いくつかの実施形態では、所定の温度は約180℃であり、また、いくつかの実施形態では、所定の温度は約200℃である。
【0013】
いくつかの実施形態において、本方法は、NOx吸着剤組成物を225℃より高い温度に維持することをさらに含み、ここでSCR触媒組成物は所定の温度より高い。いくつかの実施形態において、本方法は、SCR触媒組成物が所定の温度を下回る場合に電流を除去することをさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンから出る排気ガス流を処理するためのシステムを提供する。このシステムは、白金族金属(PGM)成分が担体材料上に配置され又は担体材料に含浸させたNOx吸着剤組成物、及び基材を具備する触媒物品と、ここで、NOx吸着剤組成物は、NOxを225℃未満の温度で貯蔵するのに有効であり、ここで、触媒物品は、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性材料を具備する;電流を受け取り、それに応答して交流電磁場を発生させるための導体であって、発生した交流電磁場が磁性材料の少なくとも一部に印加されるように配置された導体と;NOx吸着剤組成物の下流にあるSCR触媒組成物とを備える。
【0015】
本開示のこれらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下に簡単に説明する添付の図面とともに以下の詳細な説明を読むことによって明らかになる。開示した主題は、上述の実施形態の2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の任意の組合せ、並びに本開示に規定された任意の2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の特徴又は要素の組合せを含む。そのような特徴又は要素が本明細書の特定の実施形態の説明において明示的に組み合わせられているかどうかは問わない。本開示は全体論的に読むべきであることを意図していて、その文脈において明確に指示しない限り、開示した主題の分離可能な特徴又は要素が、その様々な側面及び実施形態のいずれかにおいて、組み合わせ可能であることを意図していると見なされるべきである。本開示の他の態様及び利点は、以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本開示の実施形態の理解に資するため、添付の図面を参照する。ただし、添付の図面は、必ずしも正確な縮尺率で描かれてはいない。参照符号は開示した主題の例示的実施形態の各構成要素を示す。図面は例示的なものにすぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
図1図1は、本明細書に記載の触媒組成物を具備することができるハニカム型基材の斜視図である。
図2図2は、図1に対して拡大し、図1のキャリアの端面に平行な面に沿って切り取った部分断面図であり、図1に示す複数のガス流路の拡大図を示している。
図3図3Aは、流路(チャネル)方向に垂直な触媒基材の部分断面図であって、流路開口部10、基材壁12、及び壁に分散した磁性粒子20を示す図である。
【0017】
図3Bは、流路方向に垂直な触媒基材の部分断面図であって、流路開口部10、基材壁12、及び基材材料の細孔に分散した磁性粒子20を示す図である。
図4図4は、本明細書に開示した誘導加熱を可能にするように機能化された、触媒物品の一実施形態の概略描写を示す図である。
図5図5は、本明細書に開示した触媒物品が採用される排出物処理システムの一実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示について、より詳細に説明する。本明細書の主題は、特定の実施形態について説明してきたが、これらの実施形態は、本開示の原理及び応用例を単に例示するものであると理解されるべきである。本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、本開示の方法及び装置に様々な修正及び変形を加えることができることは当業者には明らかである。したがって、本主題は、添付の特許請求の範囲及びその均等物の範囲内にある修正及び変形を含むことを意図している。本開示は、以下の説明に記載する構成の詳細又は方法工程に限定されるものではないことを理解されたい。本主題は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することが可能である。同じ符号は、全体を通して同じ要素を指す。本明細書及び特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないことを指示しない限り、複数の当該物をも含む。
【0019】
本開示は、一般に、触媒物品からの窒素酸化物(NOx)の吸着及び/又は脱離の制御を包含する、触媒、システム、及び関連方法を提供する。例えば、NOxの吸着及び/又は脱離は、触媒物品の温度、特に、基材に付随するウォッシュコートの形態の触媒組成物の温度を意図的に変更することによって制御される。ここで言及する温度制御は、例えば、電流の印加に応答する触媒物品を採用することによって実現することができる。ここで、その電流は、NOxの脱離が望まれるとき(例えば、下流の選択的接触還元(SCR)触媒が適切な活性に対して十分な温度に達したとき)、触媒物品のウォッシュコート(触媒組成物)を効果的に誘導加熱するように作動することができる。
【0020】
触媒物品は、一般に、電流の印加時に組成物が「加熱可能」(例えば、誘導加熱可能)であると特徴付けることができるように、電流の印加に応答する少なくとも1つの成分を含んでいる必要がある。このような可能性を実現するために、触媒組成物は、いくつかの実施形態では、触媒活性粒子と、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性材料との混合物を含むことができる。この機能を果たすために触媒組成物内に採用することができる特定の成分には、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるBASF社の国際特許出願公開第W02017/195107号に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。別の代替案として、触媒物品は、基材内に磁性材料を含むことができる。これについては、例えば、米国仮出願、Caudleらの出願番号第63/087,640号、2020年10月5日出願、に記載されている。当該文献は参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
【0021】
触媒物品に関連付けした磁性材料の誘導加熱の使用は、触媒物品の触媒組成物に熱を導くための効率的な手段となり得る。「磁性材料」は、強磁性材料、フェリ磁性材料、及び常磁性材料から選択する。本開示による触媒物品に関連する磁性材料の形態は、超常磁性材料として示されるナノ粒子磁性材料を含むような粒子状の形態、又はナノワイヤ、ナノチューブ、シート、もしくは他の形状の形態から選択される。
【0022】
定義
本書において冠詞「a」及び「an」は、文法対象の1つ又は2つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指す。本書で言及するいずれの範囲も包括的である。全体を通して使用する用語「約」は、小さな変動を説明し考慮するために使用する。例えば、「約」は、数値が±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%又は±0.05%修正される場合があることを意味することがある。5の数値はすべて、明示的に示されているか否かにかかわらず、すべて「約」という用語で修飾される。用語「約」によって修正される数値は、そこで特定した値を含む。例えば、「約5.0」は、5.0を含む。
【0023】
「軽減」とは、いかなる手段によっても引き起こされる、量の減少を意味する。
【0024】
「AMO」とは、選択的アンモニア酸化触媒のことであり、アンモニアを窒素に変換するのに適した1つ以上の金属(通常はPtだが、これに限定されない)と選択的接触還元(SCR)触媒とを含有する触媒である。
【0025】
「関連付けした」という用語は、例えば「備える」、「接続する」又は「通信する」、例えば「電気的に接続する」又は「流体的に接続する」又はその他の方法で機能を実行するために接続されることを意味する。「関連付けした」という用語は、例えば1つ以上の他の物品又は要素を介して、直接的に関連すること、又は間接的に関連することを意味する場合がある。
【0026】
「平均粒径」はD50と同義で、粒子集団の半分がこの点を超える粒径を持ち、半分がそれ未満の粒径であることを意味する。粒径は、一次粒子について言う。粒子径は、レーザー光散乱法により、分散液又は乾燥粉末を用いて、例えばASTM法D4464に従って測定することができる。D90粒度分布は、サブミクロンサイズの粒子については走査型電子顕微鏡(SEM)又は透過型電子顕微鏡(TEM)により、また、支持体を含有する粒子(ミクロンサイズ)については粒度分析装置により測定した結果、粒子の90%(数)が特定のサイズを下回るフェレット直径を持っていることを示す。
【0027】
「触媒」とは、化学反応を促進する物質のことである。触媒には、「触媒活性種」と、その活性種を担持又は支持する「担体」が含まれる。例えば、ゼオライトはパラジウム触媒活性種を担持する担体である。同様に、耐火性金属酸化物粒子は白金族金属触媒種の担体となることができる。触媒活性種は、化学反応を促進するものであることから、「プロモーター」とも呼ばれる。例えば、現在のパラジウム含有希土類金属成分は、Pd促進希土類金属成分と称されることがある。「促進希土類金属成分」とは、触媒活性種を意図的に添加した希土類金属成分のことである。
【0028】
本開示における「触媒物品」という用語は、触媒コーティング組成物を有する基材を備える物品を意味する。
【0029】
本明細書及び特許請求の範囲で使用する用語「構成された(した)」は、用語「含む」又は「含有する」と同様に、制限のない用語であることを意図している。用語「構成された(した)」は他の可能な物品又は要素を除外することを意図していない。用語「構成された(した)」は「適合した」と同等である場合がある。
【0030】
「CSF」とは、ウォールフロー型モノリスである触媒スートフィルターのことである。ウォールフローフィルターは、交互に配置された、入口チャネルと出口チャネルとを備えて成り、入口チャネルは出口端で塞がれ、出口チャネルは入口端で塞がれている。入口チャネルに流入した煤を含んだ排気ガス流は、出口チャネルから出る前にフィルター壁を通過するよう強制される。CSFは、すすのろ過及び再生を行うことに加えて、酸化触媒を担持して、CO及びHCをCO及びHOに酸化させるか、NOをNOに酸化させて下流のSCR触媒反応を加速させるか、又は低温で、すす粒子の酸化を促進することができる。SCR触媒組成物は、ウォールフローフィルター上に直接塗布することもでき、これはSCRoFと呼ばれる。
【0031】
「DOC」は、ディーゼルエンジンの排ガス中の炭化水素と一酸化炭素を変換するディーゼル酸化触媒のことである。一般的にDOCは、パラジウム及び/又は白金などの、1種以上の白金族金属、アルミナなどの支持体材料、HC貯蔵用のゼオライト、及び任意で、促進剤及び/又は安定剤を含む。
【0032】
本書で使用する場合、「排出物処理システム」という語句は、2つ以上の触媒成分の組合せを言い、例えば、本書に開示するLNT-LT-NAと(例えば、CSF、DOC、又は選択的接触還元(SCR)触媒物品であることができる)1つ以上の追加の触媒成分との組合せを言う。
【0033】
一般に、「有効(効果的)」という用語は、定義した触媒活性又は貯蔵/放出活性に関して、質量又はモル数で、例えば約35%から100%有効を意味し、例えば約40%、約45%、約50%又は約55%から約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%又は約95%である。
【0034】
用語「排気流」又は「排気ガス流」は、固体又は液体の粒子状物質を含む可能性のある流動する気体の組合せを指す。この流れは、ガス状成分を含み、例えば希薄燃焼エンジンの排気であり、液滴、固体微粒子など、ある種の非ガス状成分を含む場合がある。燃焼エンジンの排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物(CO及びHO)、不完全燃焼の生成物(一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC))、窒素酸化物(NO)、可燃性及び/又は炭素質粒子状物質(すす)、並びに未反応酸素及び窒素をさらに含む。本書において、「上流」及び「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンは上流箇所にあり、テールパイプ及びフィルターや触媒などの汚染軽減物品はエンジンから下流にある。基材の入口端は、「上流」端又は「前方」端と同義である。出口端は、「下流」端又は「後方」端と同義である。上流側ゾーン(領域)は下流側ゾーンの上流にある。上流側ゾーンはエンジン又はマニホールドに近く、下流側ゾーンはエンジン又はマニホールドから遠く離れていることがある。
【0035】
「流体連通する」という用語は、物品が同じ排気ライン上に配置されていることを言い、すなわち、互いに流体連通する物品を共通の排気流が通過することを指すために用いる。流体連通状態にある物品は、排気ライン内で互いに隣接していてもよい。あるいは、流体連通する物品は、「ウォッシュコートモノリス」とも呼ばれる1つ以上の物品によって分離することができる。
【0036】
本開示における「機能性物品」という用語は、その上に配置された機能性コーティング組成物、特に触媒及び/又は吸着剤コーティング組成物を有する基材を備えた物品を意味する。
【0037】
本書で使用する「含浸させる」又は「含浸」は、触媒材料が支持体の多孔質構造に浸透することを意味する。
【0038】
コーティング層に関する用語「上に(on)」及び「一面に(over)」は、同義語として使用することができる。用語「上に直接」は、直接接触していることを意味する。開示した物品は、ある実施形態において、1つのコーティング層を第2のコーティング層の「上に」設けたものとして言及されているが、このような表現は、コーティング層間に直接接触を必要としない(すなわち、「上に」は「直接」に等しくない)、他に介在する層を有する実施形態を包含することを意図している。
【0039】
本書で使用する場合、「促進」という用語は、希土類金属成分に内在する不純物とは対照的に、希土類金属成分に意図的に添加する成分に言及する。「プロモーター」は、所望の化学反応又は機能に対する活性を高める金属である。
【0040】
本書において、「選択的接触還元」(SCR)という用語は、窒素系還元剤を用いて窒素酸化物を二窒素(N)に還元する触媒プロセスを意味する。
【0041】
本書で使用する場合、用語「窒素酸化物」又は「NO」は、NO、NO又はNOなどの窒素の酸化物を指す。
【0042】
本書で使用する場合、「流れ」という用語は、固体又は液体の粒子状物質を含む可能性のある流れる気体の組合せを広く意味する。用語「ガス流」又は「排気ガス流」は、液滴、固体微粒子などの非ガス状成分を巻き込んで含む可能性のある、燃焼エンジンの排気などのガス状成分の流れを意味する。燃焼エンジンの排気ガス流は、典型的には、燃焼生成物(CO及びHO)、不完全燃焼の生成物(一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC))、窒素酸化物(NO)、可燃性及び/又は炭素質粒子状物質(すす)、並びに未反応酸素及び窒素をさらに含む。
【0043】
「実質的にない」とは、例えば「ほとんど、又は全くない」又は「意図的に加えられていない」ことを意味し、微量及び/又は不注意な量しか有しないことを意味する。例えば、特定の実施形態において、「実質的に含まない」とは、示された全組成物の質量を基準として、2質量%未満、1.5質量%未満、1.0質量%未満、0.5質量%未満、0.25質量%又は0.01質量%未満を意味する。
【0044】
本明細書で使用する場合、「基材」という用語は、触媒組成物、すなわち触媒コーティングを、典型的にはウォッシュコートの形態で配置したモノリス材料をいう。1つ又は複数の実施形態において、基材は、フロースルー型モノリス及びモノリス型ウォールフローフィルターを含む。フロースルー基材及びウォールフロー基材は、例えば、参照により本書に組み込まれる国際出願公開第WO2016/070090号にも教示されている。ウォッシュコートは、液体中に特定の固形分(例えば、30~90質量%)の触媒を含むスラリーを調製し、これを基材上に塗布し、乾燥させてウォッシュコート層を設けることによって形成する。「モノリス型基材」とは、入口から出口まで均質で連続した一体型の構造を意味する。ウォッシュコートは、液体溶媒中に一定の固形分(例えば、20~90質量%)の粒子を含有するスラリーを調製し、これを基材上に塗布し、乾燥してウォッシュコート層を設けることにより形成する。
【0045】
本書において、「上流」及び「下流」という用語は、エンジンからテールパイプに向かうエンジン排気ガス流の流れに応じた相対的な方向を指し、エンジンは上流箇所にあり、テールパイプ及びフィルターや触媒などの汚染軽減物品はエンジンから下流にある。
【0046】
本書で使用するように、用語「ウォッシュコート」は、ハニカム型基材などのように、処理するガス流の通過を可能にするに十分な多孔性を有する基材材料に適用される触媒又は他の材料の薄い接着コーティングという当該技術分野における通常の意味を有する。本書で使用され、Heck,Ronald及びFarrauto,Robert,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience、2002年、18~19頁に記載されているように、ウォッシュコート層は、モノリス型基材の表面又は下層のウォッシュコート層上に配置された組成的に異なる材料の層を包含する。基材は、1つ又は複数のウォッシュコート層を有することができ、各ウォッシュコート層は、何らかの方法で異なることがあり(例えば、粒子サイズ又は結晶子相などのその物理的特性が異なることがある)、及び/又は化学触媒機能において異なることがある。
【0047】
本明細書で使用する「質量パーセント」は、特に指示がない場合、揮発物を含まない組成物全体を基準としており、すなわち乾燥固形分に基づいている。特に断りのない限り、部及びパーセントは、すべて、質量基準である。
【0048】
本書に記載した全ての方法は、本書で特に示さない限り、又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で述べる任意の及びすべての具体例、又は例示する表現(例えば、「など」)の使用は、単に材料及び方法をより良く説明することを意図したものであって、別段の主張がない限り、範囲を限定するものではない。本明細書のいかなる文言も、特許請求していない要素が、開示した材料及び方法実施に不可欠であることを示していると解釈すべきではない。本書で言及するすべての米国特許出願、特許付与前の刊行物及び特許は、その全体が参照により本書に組み込まれるものとする。
【0049】
非限定的な実施形態の例
限定するものではないが、本開示についていくつかの実施形態には以下のものが含まれる。
【0050】
1.ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンから出る排気ガス流を処理するのに適合した触媒物品から窒素酸化物(NOx)を吸着及び脱離(又は放出)する方法であって、以下を含む:すなわち、
排気ガス流を触媒物品と接触させることと、該触媒物品は、225℃未満の温度でNOx吸着剤組成物を含み、担体材料上に配置され又は担体材料に含浸された白金族金属(PGM)成分と、基材とを含む、ここで、NOx吸着剤組成物は、225℃未満の温度でNOxを貯蔵するのに有効である、及び
ここで、触媒物品は、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性材料を含み、
ここで、触媒物品は、電流を受け取り、それに応答して交番電磁場を発生させるためにそれに関連付けした導体を有し、導体は、発生した交番電磁場が磁性材料の少なくとも一部に印加されるように配置され;
NO吸着剤組成物を225℃を超える温度に加熱してNOx吸着剤組成物からNOを脱離するために、導体に電流を通して間欠的に励磁させて交流電磁場を生成させ磁性材料を誘導加熱することと
を含む方法。
【0051】
2.前記導体が、フィードバック制御に適合しており、基材が225℃未満の温度を有する場合にのみ、間欠的な励磁を行う、実施形態1に記載の方法。
【0052】
3.前記排気ガス流をNOx吸着剤組成物の下流の選択的接触還元(SCR)触媒組成物と接触させることをさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0053】
4.NOx吸着剤組成物とSCR触媒組成物が同じ基材上にある、実施形態3に記載の方法。
【0054】
5.NO吸着剤組成物とSCR触媒組成物が別々の基材上にある、実施形態3に記載の方法。
【0055】
6.SCR触媒組成物の温度を監視することをさらに含み、SCR触媒組成物の温度が予め決められた温度を超えて上昇したときに、間欠的励磁を起こさせる、実施形態3~5のいずれか1つに記載の方法。
【0056】
7.予め決められた温度が約180℃又は約200℃である、実施形態6に記載の方法。
【0057】
8.SCR触媒組成物が予め決められた温度を超えている限り、NOx吸着剤組成物を225℃より高い温度に維持することをさらに含む、実施形態6~7のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
9.SCR触媒組成物が予め決められた温度未満であるときに電流を取り除くことをさらに含む、実施形態8に記載の方法。
【0059】
10.ディーゼルエンジン又は希薄燃焼ガソリンエンジンから出る排気ガス流を処理するためのシステムであって、以下:
白金族金属(PGM)成分を担体材料上に配置又は担体材料に含浸させてなる、225℃未満の温度でNOx吸着剤組成物と、基材とを具備する触媒物品であって、NO吸着剤組成物が225℃未満の温度でNOxを貯蔵するのに有効である触媒物品と、
ここで、触媒物品が、印加された交流電磁場に応答して誘導加熱することができる磁性材料を具備するものであり、
電流を受け取り、それに応答して交流電磁場を発生させるための導体であって、発生した交流電磁場が磁性材料の少なくとも一部に印加されるように配置される導体と、
NO吸着剤組成物の下流にあるSCR触媒組成物と
を備えたシステム。
【0060】
11.NCR吸着剤組成物及びSCR触媒組成物が同一基材上にある、実施形態10に記載のシステム。
【0061】
12.NCR吸着剤組成物及びSCR触媒組成物が別々の基材上にある、実施形態11に記載のシステム。
【0062】
磁性成分
いくつかの実施形態では、磁性材料のサイズ(例えば、粒子サイズ)は、使用できる磁性材料の種類に直接影響を与える可能性がある。言い換えれば、いくつかの実施形態における磁性粒子は、一般に、その粒子がある特定の(所望の効果をもたらすのに適した)サイズ閾値を超えるものである限り、任意の材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、粒子は少なくとも部分的に導電性材料で形成することができるが、いくつかの実施形態では、非導電性材料を含む粒子(例えば、本質的に非導電性材料からなる粒子)が好適である。いくつかの実施形態では、渦電流を介して誘導結合することができる材料(例えば、金属粒子、ワイヤ片、及び他の金属含有材料が挙げられる)をこの目的のために使用することができる。
【0063】
磁性材料粒子の形態(例えば、形状及びサイズ)は、様々であることができる。粒子は、いくつかの実施形態では、ナノ粒子であるが、それに限定されるものではない。そのため、いくつかの実施形態では、平均粒径は約100nm以下(例えば、約1nm~約100nm)である。いくつかの実施形態では、粒子は、この範囲の小さい方の端部にある。例えば、いくつかの実施形態では、平均粒径は、約60nm以下(例えば、約1nm~約60nm)、又は約50nm以下(例えば、約1nm~約50nm)である。いくつかの実施形態では、粒子は、この範囲の大きい方の端部、例えば、約60nm以上(例えば、約60nm~約100nm又は約80nm~約100nm)である。いくつかの実施形態では、粒子はさらに大きく、例えば、約100nm以上(例えば、約100nm~約500nm、約100nm~約400nm、約100nm~約300nm、約100nm~約200nm、又は約100nm~約150nm)である。いくつかの実施形態では、より良好な加熱がより大きな粒子によって提供され、したがって、そのような実施形態では、約25nm以上の平均粒子径を確保することが有利であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、その粒子は実質的に単分散であるが、本開示はこれに限定されない。いくつかの実施形態では、粒子は二峰性の粒度分布を示す場合がある。特定の実施形態では、磁性材料は超常磁性材料として示されるナノ粒子磁性材料を含む。しかしながら、ある特定の実施形態では、磁性材料は、ナノワイヤ、ナノチューブの形態、又は、磁性材料がその製造時に基材の内部に分散される限り、シートの形態で使用することができる。
【0065】
交流電磁場の存在下で誘導加熱が可能な材料であれば何でも使用できるが、有利な磁性材料としては、遷移金属又は希土類金属を含む材料、特に、そのような遷移金属又は希土類金属を含む酸化物などが挙げられる。「希土類金属」とは、元素周期表で定義される、スカンジウム、イットリウム、ランタン系列、又はその酸化物を指す。希土類金属の例には、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、イットリウム、プラセオジム、サマリウム、ハフニウム、及びこれらの混合物がある。磁性材料の成分として使用することができる遷移金属の例には、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、及び亜鉛がある。遷移金属と希土類金属の混合物を同じ磁性材料に使用することができる。多くの磁性金属の酸化物形態は、本開示における使用にとって特に有利である。金属酸化物は、ンジンからの排出物を処理するために使用される触媒システムによく関連する動作温度で非常に安定である傾向があるからである。特定の実施形態において、触媒物品に関係付けた磁性材料は、超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION粒子)又はネオジム-鉄-ボロン又はサマリウム-コバルト粒子を含む希土類含有微粒子材料を具備する。いくつかの実施形態において、磁性材料は、約5nm~約50nm又は約10nm~約40nmなどの約100nm未満の平均粒径を有するSPION粒子(例えば、酸化鉄(III)粒子)を具備する。
【0066】
磁性材料は、様々な方法で触媒物品と関連付けを行うことができる。例えば、基材にコーティングする前に触媒材料と混和して、磁性材料を含む触媒組成物を得ることによって(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるBASF社の国際特許出願公開第W02017/195107号に概説されている方法に従って)、又は磁性材料をベース(base)材料と組み合わせ、これから基材を形成することによって(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Caudleらの米国仮特許出願第63/087,640号(2020年10月5日出願)に概説されている方法に従って)、関連付けを行う。
【0067】
触媒組成物-NOx吸着剤組成物
本明細書に開示した誘導加熱に適応した触媒物品の触媒材料に関して、材料は、一般に、第1の温度でNOxを吸着し、第2の温度でNOxを脱離することができる、少なくとも1つの成分(本明細書では、「NOx吸着剤組成物」という)、一般に低温NOx吸着剤(LT-NA)組成物又は「受動NOx吸着剤」としても呼ばれる)を含んでなる。このような成分は、典型的には、200℃未満の温度でNOxを貯蔵し、より高い温度で貯蔵したNOxを放出するのに有効である。本開示の目的上、NOx吸着剤は、下流のSCR触媒がNOxを効果的に変換するのに十分な温度になるまで、NOxを吸着/貯蔵するのに適している。そのような時に(以下で本明細書でより完全に説明するように)、NOx吸着剤組成物を具備する触媒物品に電流を流して、NO吸着剤組成物をNOの放出に適した温度に加熱することができる(このNOはその後下流のSCR触媒によって有効に処理することができる)。例えば、いくつかの実施形態では、NO吸着剤組成物は、約180℃未満の温度でNOを貯蔵し(及び約180℃を超える温度でNOを放出し)、約190℃未満の温度でNOを貯蔵し(及び約190℃を超える温度でNOを放出し)、約200℃未満の温度でNOを貯蔵し(及び約200℃を超える温度でNOを放出し)、約210℃未満の温度でNOを貯蔵し(及び約210℃を超える温度でNOを放出し)、又は約225℃未満の温度でNOxを貯蔵する(及び約225℃を超える温度でNOを放出する)ように設計されている。
【0068】
いくつかの実施形態では、NO吸着剤組成物は、NOを貯蔵し、NOをオンデマンドで放出するように設計されている。例えば、いくつかの実施形態(例えば、冷間始動後の状況中)では、LT-NA触媒は、あるレベルまで再びNOで満たされることがあり、オンデマンド脱離をオンにしてこの追加のNOを触媒の外にパージすることができる。このような操作は、ある実施形態では、LT-NA触媒のNO充填レベルを調節して、次の冷間始動の際の十分なNO容量を確保するための手段とすることができる。
【0069】
いくつかの種類のNO吸着剤が知られているが、NO吸着剤組成物は、一般に白金族金属(PGM)成分からなる分子篩(モレキュラーシーブ)を具備する。
【0070】
本明細書で使用する場合、ゼオライト及び他のゼオライト骨格材料(例えば、同形置換材料)などの「分子篩」という用語は、概して四面体型サイトで金属原子(Si、Alなど)に連結した酸素アニオンの広範囲な三次元ネットワークに基づく材料であって、平均細孔サイズ(pore size)は20オングストローム(Å)より大きくない、実質的に均一な細孔分布を有するものをいう。
【0071】
分子篩は、主に、(SiO)/A1O四面体の硬いネットワークによって形成される空隙の形状によって区別することができる。空隙の入り口は、入り口開口部を形成する6、8、10、12又は14個の(SiO)/A1O四面体を構成する6、8、10、12又は14個の酸素原子からなる環で囲まれている。分子篩は、分子篩の種類、分子篩格子に含まれるカチオンの種類と量に応じて、直径が約3~10Åの範囲にある、むしろ均一な細孔サイズを有する結晶性材料である。「8-環」分子篩とは、8-環の細孔開口部と二重6環の二次構成単位を有し、二重6環の構成単位が4つの環で連結されることによって生じるケージ状の構造を有する分子篩のことを言う。分子篩には、小孔、中孔、及び、大孔の分子篩又はその組合せがある。細孔サイズは、環の大きさによって画定される。
【0072】
小孔分子篩は、最大8個の四面体原子によって規定されるチャネルを含む。本明細書で使用する場合、用語「小孔」は、約5オングストロームより小さい、例えば-3.8オングストロームのオーダーの細孔開口部を指す。例示的な小孔分子篩には、骨格構造型ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS.GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON及びこれらの混合物又は連晶(intergrowths)がある。
【0073】
中孔分子篩は、10員環によって画定されるチャネルを有する。例示的な中孔分子篩には、骨格構造型AEL、AFO、AHT、BOF、BOZ、CGF、CGS、CHI、DAC、EUO、FER、HEU、IMF、ITH、ITR、JRY、JSR、JST、LAU、LOV、MEL、MFI、MFS、MRE、MTT、MVY、MWW、NAB、NAT、NES、OBW、PAR、PCR、PON、PUN、RRO、RSN、SFF、SPG、STF、STI、STT、STW、SVR、SZR、TER、TON、TUN、UOS、VSV、WEI、WEN及びこれらの混合物又は連晶がある。
【0074】
大孔分子篩は、12員環によって画定されるチャネルを有する。例示的な大孔分子篩には、骨格構造型AFI、AFR、AFS、AFY、ASV、ATO、ATS、BEA、BEC、BOG、BPH、BSV、CAN、CON、CZP、DFO、EMT、EON、EZT、FAU、GME、GON、IFR、ISV、ITG、IWR、IWS、IWV、IWW、JSR、LTF、LTL4、MAZ、MEI、MOR、MOZ、MSE、MTW、NPO、OFF、OKO、OSI、RON、RWY、SAF、SAO、SBE、SBS、SBT、SEW、SFE、SFO、SFS、SFW、SOF、SOS、STO、SSF、SSY、USI、UWY、VET及びこれらの混合物又は連晶がある。
【0075】
典型的には、例えば、ABW、ACO、AEI、AEL、AEN、AET、AFI、AFN、AFO、AFR、AFS、AFT、AFX、AFY、AHT、APC、APD、ASV、ATN、ATO、ATS、ATT、ATV、AVL、AWO、AWW、BCT、BEA、BEC、BIK、BOG、BPH、BRE、CAN、CAS、SCO、CFI、SGF、CGS、CHA、CHI、CLO、CON、CZP、DAC、DDR、DFO、DFT、DON、EAB、EDI、EEI、EMT、EON、EPI、ERI、ESV、ETR、EUO、FAU、FER、GIS、GME、GON、GOO、HEU、IFR、IFY、IHW、IRN、ISV、ITE、ITH、ITW、IWR、IWW、JBW、KFI、LAU、LEV、LOV、LTA、LTL、LTN、MAZ、MEI、MEL、MER、MFI、MFS、MON、MOR、MOZ、MTF、MTT、MTW、MWF、MWW、NAB、NAT、NES、NPO、NPT、NSI、OBW、OFF、OSI、OSO、OWE、PAR、PAU、PHI、PON、RHO、RON、RRO、RSN、RTE、RTH、RWR、RWY、SAO、SAS、SAT、SAV、SBE、SBS、SBT、SFE、SFF、SFG、SFH、SFN、SFO、SFW、SOS、SSY、STF、STI、STT、TER、THO、TON、TSC、UEI、UFI、USI、UTL、VET、VFI、VNI、VSV、WIE、WEN、YUG、ZON、又はそれらの組合せなどの、いずれの骨格構造型の分子篩でも使用することができる。例えば、特定の実施形態では、分子篩は、CHA(チャバザイト)、FER(フェリエライト)、及びLEV(レビイン)からなる群から選択される骨格構造型を含むことができる。
【0076】
本明細書で使用する場合、「ゼオライト」という用語は、ケイ素及びアルミニウム原子を含む分子篩の特定の例を言う。一般に、ゼオライトは、角を共有するTO四面体(TがA1又はSi、あるいは任意でPである)で構成される開放型三次元骨格構造を有するアルミノシリケートと定義される。アニオン性骨格の電荷とバランスをとるカチオンは骨格の酸素と緩く結合し、残りの細孔容積は水分子で満たされる。非骨格のカチオンは一般的に交換可能であり、水分子は除去可能である。アルミノシリケートゼオライト構造体は、骨格内で同形置換されたリン又は他の金属を含まない。すなわち、「アルミノシリケートゼオライト」とは、SAPO、A1PO及びMeAlPO材料などのアルミノホスフェート材料を除外し、一方、より広い用語「ゼオライト」はアルミノシリケート及びアルミノホスフェートを含む。本開示の目的のため、SAPO、A1PO及びMeAlPO材料は非ゼオライト系分子篩とみなされる。
【0077】
ゼオライトは、共通の酸素原子によって連結されて三次元ネットワークを形成するSiO/A1O四面体を具備することができる。本発明ゼオライトのシリカ対アルミナのモル比(「SAR」)は、広い範囲にわたって変化し得るが、一般に2以上である。例えば、本発明ゼオライトは、約5~約1000、例えば約10~約100又は約10~約50又は約15~約30のSARを有することができる。
【0078】
NO吸着剤組成物の分子篩はPGM成分で含浸されている(すなわち、分子篩はPGM成分-置換の分子篩である)。本明細書で使用するとき、PGM成分による含浸という場合は、PGM成分が分子篩のイオン交換部位又は分子篩内の他の内部場所のいずれかに存在する場合、又は、PGMが分子篩の表面に存在する場合、又は上記の場所の組合せなどの、PGM成分が分子篩と会合する形態のすべてを含む。このように、本明細書で使用するとき、用語「PGM-置換」は用語「イオン交換された」を包含する。本明細書で使用する場合、「イオン-交換された」又は「PGM-交換された」は、PGMが分子篩材料の上又は中に担持されていることを意味する。PGMの少なくとも一部はイオン形態であり、1つ以上の実施形態では、PGMの一部は0価又は金属形態であってもよく、又は金属酸化物凝集体の形態であってもよい。いくつかの実施形態では、開示したNO吸着剤組成物は、PGM成分を「含む」分子篩を含むものとして(又は分子篩と「関連付けた」PGM成分を含むものとして)記載される。このような例では、「含む」(又は「関連付けた」)は、PGM成分が、分子篩のイオン交換部位、分子篩の表面、又はイオン交換部位及び分子篩の表面の両方に存在することを意味すると理解される。いくつかの実施形態において、開示したNO吸着剤組成物がPGMを「含有する」分子篩を含むと記載することがあり、そのような場合、「含有する」は同様に、PGMが分子篩のイオン交換部位に、その表面に、又はそれらの両方のいずれかに存在することを意味するものと理解される。
【0079】
「PGM成分」という用語は、PGM(例えば、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、及び又はプラチナ(Pt))を含む、いずれかの成分を言う。「PGM成分」と言うときは、いずれかの原子価状態のPGMの存在を可能にするが、開示したNOx吸着剤組成物との関連では、PGMは、一般に、NOx吸着を可能にする形態(例えば、イオン交換カチオン形態を含むが、これに限定されない)にある。「白金(Pt)成分」、「ロジウム(Rh)成分」、「パラジウム(Pd)成分」、「イリジウム(Ir)成分」、「ルテニウム(Ru)成分」などの用語は、触媒の焼成又は使用時に、分解するか、又は触媒活性形態に、通常は金属又は金属酸化物に変換する、それぞれの白金族金属化合物、錯体、又は同様のものをいう。本明細書に開示するNOx吸着剤組成物に特定の使用を見出すことができる特定の例示的なPGM成分には、パラジウム、白金、ロジウム、又はそれらの組合せが含まれる。また、いくつかの実施形態では、PGM成分は唯一のPGM成分としてはパラジウムであるが、PGM成分の混合物もまた使用することができる。混合物を使用する場合、PGM成分は2つの異なる白金族金属を、例えば約1:10~約10:1の質量比で含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、PGM成分は白金とパラジウムとである。
【0080】
本明細書に開示するNOx吸着剤組成物の分子篩は、分子篩の細孔内に位置するPGMの量が少なくとも1質量%、例えば少なくとも5質量%、さらに例えば少なくとも10質量%であり、例えば少なくとも25質量%、及び、例えば少なくとも50質量%のPGMが分子篩の細孔内に位置する。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示するNOx吸着剤組成物の分子篩は、更なる金属、例えば、卑金属で置換されてもよい。したがって、NOx吸着剤組成物の分子篩は、分子篩、PGM成分、及び任意で、卑金属を含有することができる。分子篩は、PGM成分と、任意に卑金属を含むと言うことができる。卑金属は、鉄(Fe)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)及びスズ(Sn)、並びにそれらの2つ以上の混合物から選択することができる。いくつかの実施形態では、卑金属は、Fe、Cu、Co、及びそれらの混合物から選択される。あるいは、分子篩は、実質的に卑金属を含有しないものであってもよい。いくつかの実施形態では、分子篩は卑金属を含まない。いくつかの実施形態では、NOx吸着剤組成物はPGM成分を超える更なる活性金属を実質的に含まない。
【0082】
PGM成分の濃度は変化し得るが、典型的には、分子篩の全乾燥質量に対して約0.01質量%~約6質量%である。PGM成分は、分子篩の全乾燥質量を基準として、例えば約0.1%、約0.2%、約0.5%、約0.7%、約0.9%、又は約1.0%、約1.5%、約2.0%、約2.5%、約3.0%、約3.5%、約4.0%、約4.5%、約5.0%、又は約6質量%の範囲で存在してもよい。PGM成分の質量は、金属(例えばパラジウムの質量)として測定され報告される。分子篩の全乾燥質量には、添加/交換された金属(すなわちパラジウム)が含まれる。
【0083】
上記で言及したように、いくつかの実施形態におけるNOx吸着剤触媒組成物は、電磁場の印加によって触媒物品を誘導加熱することができるようにする磁性材料を含む。しかしながら、NOx吸着剤触媒組成物は、すべての実施形態において、磁性材料を含むわけではない(例えば、以下にさらに詳細に説明するように、磁性材料は、その代わりに、基材と関連付けることができる)。
【0084】
本明細書に開示するNO吸着剤組成物は、当技術分野でよく知られたプロセスによって容易に製造することができる。開示するNO吸着剤は、いくつかの実施形態においては、インシピエント湿潤含浸法を介して製造することができる。典型的には、金属前駆体(例えば、PGM成分)を水性又は有機溶液に溶解し、次いで、金属含有溶液を、含浸されるべき材料(例えば、分子篩)に添加する。その材料は、添加する溶液の体積と本質的に同じ細孔容積を有する。毛細管現象により、この溶液がその材料の細孔内に引き込まれる。材料の細孔容積を超える量の溶液を添加すると、溶液の輸送が毛細管現象から拡散現象に変わり、速度が大幅に遅くなる。その後、含浸した材料を乾燥させ、任意で、焼成して溶液中の揮発性成分を除去し、材料の表面に金属を析出させることができる。最大装填量は前駆体の溶液中での溶解度によって制限される。含浸処理した材料の濃度プロファイルは、含浸及び乾燥中の細孔内の物質移動条件に依存する。
【0085】
例えば、PGM成分前駆体(例えば、硝酸パラジウムなど)は、含浸、吸着、イオン交換、インシピエント湿潤、沈殿などによって分子篩に担持させることができる。好適なPGM前駆体の非限定的な例としては、硝酸パラジウム、テトラアンミン硝酸パラジウム、テトラアンミン酢酸白金、及び硝酸白金などが挙げられる。あるいは、上述したようなPGMコロイド分散液を使用することもできる。焼成工程の間、又は少なくとも、触媒の使用の初期段階の間、そのような化合物は、金属又はその化合物の触媒的に活性な形態に変換する。
【0086】
基材
1つ以上の実施形態によれば、NO吸着剤組成物のための基材は、自動車用触媒の製造に通常使用される任意の材料で構成することができ、典型的には、金属又はセラミックのハニカム構造から構成される。基材は、典型的には、触媒組成物を塗布し付着させる複数の壁面を提供し、それによって触媒組成物のキャリアとして機能する。
【0087】
例示的な金属基材は、耐熱金属及び金属合金、例えばチタン及びステンレス鋼、並びに鉄が実質的又は主要な成分である他の合金を具備する。このような合金は、ニッケル、クロム、及び/又はアルミニウムから選択することができ、これらの金属の総量は、有利には、合金の少なくとも15質量%、例えば、10~25質量%のクロム、3~8質量%のアルミニウム、及び最大20質量%のニッケルを含むことができる。合金はまた、マンガン、銅、バナジウム、チタンなどから選ばれる他の金属を少量又は微量含むことができる。表面又は金属キャリアを高温、例えば1000℃以上で酸化して基材の表面に酸化物層を形成し、合金の耐食性を向上させ、金属表面へのウォッシュコート層の付着を容易にすることができる。
【0088】
基材を構成するために用いるセラミック材料には、コージェライト、ムライト、コージェライト-aアルミナ、窒化ケイ素、ジルコンムライト、スポジュメン、アルミナシリカマグネシア、ジルコンシリケート、シリマナイト、マグネシウムシリケート、ジルコン、ペタライト、aアルミナ、アルミノシリケート等から選ばれた適切な耐火物がある。
【0089】
いくつかの実施形態では、上記で言及したように、触媒物品に関係付けた磁性材料が基材自体の中に含まれる。いくつかのそのような実施形態では、磁性材料は、ベース材料前駆体(例えば、セラミック前駆体)の組成物(例えば、溶液又はスラリー)と組み合わせることができる。磁性材料は、典型的には(必ずしもそうではないが)粒子状材料の形態である。このように組み合わせるには、磁性材料の分散を全体的に促進するために、混合、粉砕、振盪などで行うことができる。得られる混合物を基材に成形する(例えば、押出成形又は型への流し込み、次いで焼成及び乾燥することによって)。セラミック基材を製造するための一般的な方法は知られており、例えば、すべてコーニング社の米国特許第5,314,650号、第5,403,787号、第6,455,124号、第8,673,206号及び第9,808,794号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、磁性材料は、予め形成した触媒基材の細孔に導入することができる。図3A及び図3Bは、磁性材料を組み込んだ2つの非限定的な触媒基材を示す基材断面の概略図である。示すように、例示的な基材は、上流から下流端まで基材を通って延びる壁12によって形成された流路10を含み、磁性材料20は、壁12内に分散されるか、又は壁12内の細孔内に分散される。図3Aにおいて、黒は基材の材料を示し、白いドットは磁性材料を示し、図3Bにおいて、黒は基材を示し、白い不規則な部分は基材内の細孔を示し、そこにある黒いドットは磁性材料を示す。さらに詳細は、Caudleらの米国仮特許出願第63/087,640号、2020年10月5日で提供されており、参照されたい。この文献も、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
基材としては、例えば、基材の入口から出口面まで延びる複数の微細で平行なガス流通路があり、その通路は流体の流れに対して開放されている、モノリシックなフロースルー基材のような、適切な基材を使用することができる。入口から出口まで実質的に直線の通路は、通路を流れるガスが触媒材料に接触するように、触媒材料がウォッシュコートとしてコーティングされた壁で規定されている。モノリス基材の流路は、台形、長方形、正方形、正弦波形、六角形、楕円形、円形などから選ばれる任意の適切な断面形状を有することができる薄壁のチャネルである。このような構造は、断面積1平方インチ当たり約60~約1200以上(cpsi)のガス入口開口部(すなわち「セル」)を、より通常は約300cpsi~約600cpsiを含むことができる。フロースルー基材の壁厚は様々であり、その典型的な範囲は0.002インチと0.1インチの間であることができる。代表的な市販のフロースルー基材は、400cpsi及び6ミルの壁厚、又は600cpsi及び4ミルの壁厚を有するコージェライト基材である。しかしながら、開示した主題は、特定の基材のタイプ、材料、又は形状に限定されないことが理解されるであろう。
【0091】
別の実施形態では、基材はウォールフロー基材であってもよく、各通路は、基材本体の一端部で非多孔質プラグにより塞がれ、この場合、両端面では通路が交互に塞がれている。これは、ガスがウォールフロー基材の多孔質壁を通って流れ出口に到達することを必要とする。このようなモノリス基材は、最大で約700cpsi以上、例えば約100cpsi~400cpsi、より典型的には約200cpsi~約300cpsiを含むことができる。セルの断面形状は、上述したように変化し得る。ウォールフロー基材は、典型的には、0.002インチ~0.1インチの壁厚を有する。代表的な市販のウォールフロー基材は多孔質コージェライトから構成されており、その一例は、200cpsiで10ミルの壁厚、又は300cpsiで8ミルの壁厚、及び40~70%の壁気孔率を有する。チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの他のセラミック材料もウォールフローフィルター基材として使用することができる。しかしながら、開示した主題は、特定の基材のタイプ、材料、又は形状に限定されないことが理解されるであろう。基材がウォールフロー基材である場合、それに関連する触媒組成物(例えば、CSF組成物)は、壁の表面上に配置されることに加えて、多孔質壁の細孔構造に浸透し得る(すなわち、細孔開口部を部分的に又は完全に閉塞する)ことに留意されたい。
【0092】
図1及び図2は、本明細書に記載のウォッシュコート組成物でコーティングされたフロースルー基材の形態の例示的な基材2を示す。図1を参照すると、例示的な基材2は、円筒形状で円筒の外面4、上流端面6、及び端面6と同一である対応する下流端面8を有する。基材2は、その中に形成された複数の微細で平行なガスフロー通路10を有する。図2に見られるように、流路10は壁12によって形成され、キャリア2を通って上流端面6から下流端面8まで延びており、流体、例えばガス流の流れを、そのガス流路10を介してキャリア2の長手方向に可能にするために、通路10は塞がれていない。図2により容易に分かるように、壁12は、ガス流通路10が実質的に正多角形の形状を有するように寸法決めされて構成される。示すように、触媒組成物は、所望により、複数の別個の層として塗布することができる。図示した実施形態では、触媒組成物は、担体部材の壁12に付着した別々の底部層14と、底部層14の上に被覆した第2の別々の上部層16の両方からなる。本開示は、1つ以上の(例えば、2、3、又は4)触媒層で実施することができ、図2に図示された2層実施形態に限定されない。
【0093】
ウォッシュコート又は触媒金属成分又は組成物の他の成分の量を説明する際、触媒基材の単位体積当たりの成分の質量単位を用いることが便利である。したがって、本明細書では、グラム/立方インチ(「g/in」)及びグラム/立方フィート(「g/ft」)という単位を、基材の空隙の体積を含む、基材の体積当たりの成分の質量を意味するために使用する。また、その他、g/Lのような体積当たりの質量という単位を時々使用することもある。モノリス型フロースルー基材などの触媒基材上の触媒組成物(触媒金属及び担体材料を含む)の総担持量は、通常、約0.5g/in~約6g/in、例えば、約1g/in~約5g/inである。担体材料を含まないPGM又は卑金属成分の総装填量は、通常、約5g/ft~約200g/ft(例えば、10g/ft~約100g/ft)の範囲である。これらの単位体積当たりの質量は、典型的には、触媒ウォッシュコート組成物による処理の前後で触媒基材を秤量することによって計算され、その処理プロセスには触媒基材を高温で乾燥及び焼成することが含まれるので、これらの質量は本質的に無溶媒の触媒コーティングを表すことに留意されたい。ウォッシュコートスラリーの水分が本質的に全て除去されるからである。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供されるNO吸着剤組成物中のPGM成分の量は、基材の単位体積当たりの質量として表すことができる。例えば、特定の実施形態において、NO吸着剤組成物中のPGM成分の量は、約10g/ft~140g/ft又は約40g/ft~約100g/ft(触媒が配置される下地基材の体積に基づく)。
【0095】
NO吸着剤組成物は、一般に、基材の体積を基準として、例えば、約0.3g/inから5.5g/in、又は、約0.4g/in、約0.5g/in、約0.6g/in、約0.7g/in、約0.8g/in、約0.9g/in又は約1.0g/inから約1.5g/in、約2.0g/in、約2.5g/in、約3.0g/in、約3.5g/in、約4.0g/in、約4.5g/in、約5.0g/in又は約5.5g/inまでの濃度で基材上に存在している。
【0096】
基材被覆方法
触媒組成物は、粉末、ビーズ、又は押し出された顆粒の充填床の形態で使用することができる。しかしながら、ある有利な実施形態では、触媒組成物は基材にコーティングする。触媒組成物は、触媒基材を被覆する目的で、水と混合してスラリーを形成することができる(乾燥形態にある場合)。触媒粒子に加えて、そのスラリーは、任意に、バインダーとしてのアルミナ、会合性増粘剤、及び/又は界面活性剤(アニオン性、カチオン性、非イオン性又は両性界面活性剤を含む)を含有することができる。いくつかの実施形態では、スラリーのpHは、例えば、約3~約5の酸性pHに調整することができる。
【0097】
存在する場合、アルミナバインダーは、典型的には、約0.02g/in~約0.5g/inの量で使用される。アルミナバインダーとしては、例えば、ベーマイト、ガンマーアルミナ、又はデルタ/シータアルミナから選ぶことができる。
【0098】
スラリーは、粒子の混合を促進し、均質な材料を形成するために粉砕することができる。粉砕は、ボールミル、連続ミル、又は他の同様の装置で実施することができ、また、スラリーの固形分は、例えば約20質量%~60質量%、より具体的には約30質量%~40質量%であることができる。一実施形態では、粉砕後のスラリーは、約10ミクロン~約50ミクロン(例えば、約10ミクロン~約20ミクロン)のD90粒子径によって特徴付けられる。D90は、粒子の約90%がより微細な粒子径を有する粒子径として定義される。
【0099】
次いで、スラリーは、当技術分野で知られているウォッシュコート技術を使用して触媒基材上に塗布する。本明細書で使用するとき、用語「ウォッシュコート」は、処理されるガス流のその通過を可能にするために十分に多孔性であるハニカムフロースルーモノリス基材又はフィルター基材などの基材に塗布される材料の薄い、付着したコーティングについての当該分野における通常の意味を有する。本書で使用され、Heck,Ronald及びRobert Farrauto,Catalytic Air Pollution Control,New York:Wiley-Interscience、2002年、18~19頁に記載されているとおり、ウォッシュコート層は、モノリス型基材の表面又は下層のウォッシュコート層上に配置された材料の組成的に異なる層を含む。基材は、1つ以上のウォッシュコート層を含むことができ、各ウォッシュコート層は固有の化学触媒機能を有することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、基材は、スラリー中に1回以上浸漬するか、さもなければスラリーで被覆する。その後、被覆した基材は、一定時間(例えば、1時間~3時間)、高温(例えば、100℃~150℃)で乾燥され、その後、例えば、400℃~600℃で、典型的には約10分~約3時間の加熱によって焼成する。乾燥及び焼成の後、最終的なウォッシュコートコーティング層は、本質的に無溶媒と見なすことができる。
【0101】
焼成後、触媒充填量又は担持量は、基材の被覆後の質量と被覆前の質量との差を計算することにより決定することができる。当業者には明らかなように、触媒担持量は、スラリーレオロジーを変えることによって変更することができる。さらに、被覆/乾燥/焼成工程を必要に応じて繰り返し、コーティングを所望の担持レベル又は厚さに構築することができる。
【0102】
触媒組成物は、単層として又は多層として塗布することができる。同じ触媒材料を繰り返しウォッシュコーティングして担持レベルを高めた結果生じる触媒層は、通常、単一の触媒層とみなされる。別の実施形態では、触媒組成物は、各層が異なる組成を有する複数の層で塗布することができる。さらに、触媒組成物はゾーン分けコートすることができる。これは単一の基材にガス流出物流路に沿って異なる領域で異なる触媒組成物をコートすることができることを意味する。
【0103】
磁性材料を触媒組成物内に組み込む場合、磁性材料を触媒組成物に添加した後、基材を被覆することができる。例えば、粉砕工程の前に、磁性材料をウォッシュコートスラリーに添加するのが好都合である。その結果、粉砕作用がスラリー全体の磁性材料の分散を促進することができる。
【0104】
排出物処理システム
本開示は、また、本明細書に記載の触媒組成物を組み込んだ排出物処理システムを提供する。本明細書に開示した触媒物品は、典型的には、ガソリン又はディーゼル排気ガス排出物を処理するための1つ又は複数の追加構成要素を備えた統合排出物処理システムにおいて使用することができる。そのため、「排気流」、「エンジン排気流」、「排気ガス流」等の用語は、エンジンからの流出物(effluent)だけでなく、本明細書に記載の1つ又は複数の他の触媒システム構成要素の下流の流出物についても言う。
【0105】
図4は、誘導加熱40に適合する本開示のNO吸着剤触媒物品を示す。図示したように、この適合した触媒物品は、触媒物品60(基材と関連付けた本明細書で上述したようなNO吸着剤組成物を含む)を備え、また、触媒物品60は、基材自体中に含まれた及び/又はその上の触媒組成物と関連付けられた磁性材料を具備している。電気コイル62は、触媒物品60に関連する磁性材料の誘導加熱に適合した交流磁場64を提供するために触媒物品60を取り囲んでいる。電気コイル62は、コイルに交流電流を供給することができる電源66に電気的に接続されており、出力電力は通常約5kW~50kWの範囲であり、約100kHz~10000kHzの周波数である。
【0106】
1つの例示的な排出物処理システムを図5に示す。この図は排出物処理システム50の概略図を示しており、矢印52はエンジン流出物(典型的には、NO及び粒子状物質を含むガス状汚染物質)の進行方向を示している。図示したように、このシステム装置は、誘導加熱に適合した、本明細書に開示されるような触媒物品60(基材上にNO吸着剤組成物を含む)を備えている。システム50は、さらに下流SCR触媒70を備えており、これは触媒物品60と流体連通している。下流SCR触媒の組成は様々であり、NOを還元するためのいずれかの成分を含有することができる。特定のSCR組成物は、例えば、Zonesの第4,544,538号及びZonesの第6,709,644号、並びにBullらの米国特許第8,883,119号に記載されているような金属促進分子篩材料(例えば、銅-又は鉄-促進ゼオライト)を含有することができる。これらの文献は参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。しかしながら、SCR組成物は、これに限定されず、代替的に、例えば、混合金属酸化物組成物(例えば、バナジア/チタニア)を含有することもでき、一実施形態では、例えば、参照によりその全体をここに組み込むBASF社の国際特許出願公開番号WO2019/069232に開示されている、ニオビアと卑金属酸化物ドーパントを含有するセリア担体を具備することもできる。
【0107】
SCR触媒70は、一般に、例えばアンモニア又は尿素のような還元剤の存在下でNOの還元を触媒するのに有効である。操作中、還元剤は、典型的には、SCR物品の上流位置からインジェクタを介して排気流に定期的に計量供給する。そのインジェクタはSCR物品と流体連通しており、SCR物品の上流にある(図示せず)。インジェクタは、還元剤貯蔵器及びポンプと関連している場合もある。アンモニアは、定置式発電所の排気を処理するためのSCR反応の典型的な還元剤であり、一方、尿素は、移動式排出物源の排気を処理するために用いられる典型的なSCR還元剤である。尿素は、SCR触媒と接触する前に、又はその触媒上でアンモニアと二酸化炭素に分解され、アンモニアはNOの還元剤として機能する。
【0108】
電気コイル62は、触媒物品60に関連付けた磁性材料の誘導加熱に適合した交流磁場64を提供するために触媒物品60を取り囲んでいる。電気コイル62は、コイルに交流電流を供給することができる電源66に電気的に接続されており、出力電力は通常約5kW~50kWの範囲であり、約100kHz~10000kHzの周波数である。システムは、SCR触媒70に流入するエンジン流出ガスの温度を測定するように配置した任意の温度センサ72をさらに備える。電源66と温度センサ72の両方はコントローラ68に動作可能に接続されており、このコントローラは電源を制御し、センサから温度信号を受信するように構成されている。理解されるであろうが、コントローラ68は、磁性材料の誘導加熱が望まれる時間に電気コイル66に通電する指示をコントローラが電力源に提供できるように適合したハードウェア及び関連ソフトウェアを備えることができる。コントローラは、エンジンの点火に基づく特定の時間帯で(例えば、エンジンの点火に続く設定期間の間、磁性材料を誘導加熱するように適合した制御システムなどのように)、又は予め設定した特定の時間間隔で、例えば、温度センサ72に関連付けした特定の温度設定点に基づくなどの、様々な要因に基づいて誘導加熱の時間帯を選択することができる。
【0109】
有利なことに、コントローラは、SCR触媒70に関連付けした温度センサ72がNOの変換に十分な温度になった時点で触媒物品60を誘導加熱することができるものであって、NOを触媒物品60から脱離させてSCR触媒70で効果的に処理することができるようにする。SCR触媒70が有効となる温度(これは一般に、触媒物品60の誘導加熱が開始され、処理のためにNOを放出するセンサ72で感知される予め決めた温度である)は、採用する正確なSCR触媒組成に応じて変わり得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、この予め決めた温度は、約180℃又は約200℃とすることができる。
【0110】
図示した実施形態は、開示した主題の単なる一例であり、本開示に従って他の構成が可能であることに留意されたい。例えば、別個の「ブリック」上に図示しているが、MX吸着剤組成物及び下流SCR触媒組成物は、いくつかの実施形態では、同じブリック上に、例えば、ゾーン構成で存在することがある。そのような実施形態では、電気コイル66は、ブリックの全体又は一部のみ(例えば、NOx吸着剤組成物が堆積しているブリックの一部のみ)を包囲してもよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、排出物処理システムは、第2の選択的接触還元(SCR)触媒、微粒子フィルターにコーティングされたSCR触媒(SCRoF)、アンモニア又はアンモニア前駆体注入成分、ディーゼル酸化触媒(DOC)、触媒付きすすフィルター(CSF)、又はアンモニア酸化(AMO)触媒の1つ以上をさらに含んでいる。
【0112】
DOC又はCSF触媒は、通常、アルミナなどの金属酸化物担体に含浸させた1種以上のPGM成分を含み、任意で、セリア又はセリア/ジルコニアなどの酸素貯蔵成分(OSC)をさらに含み、通常、炭化水素と一酸化炭素との両方の酸化を実現する。
【0113】
LNT触媒は、一般に、担体上に含浸させた1種以上のPGM成分と、NOを捕捉する成分(例えば、セリア及び/又はアルカリ土類金属酸化物)を含有する。LNT触媒は、リーン条件下でNOを吸着し、リッチ条件下で蓄積したNOを窒素に還元することができる。
【0114】
SCR触媒は、適切な量の酸素の存在下で、還元剤を用いて窒素酸化物を接触還元するように適合している。還元剤としては、例えば、炭化水素、水素、及び/又はアンモニアであることができる。SCR触媒は、通常、銅又は鉄などのプロモーター金属でイオン交換された分子篩(例えば、ゼオライト)を含み、例示的なSCR触媒としては、FeBEA、FeCHA及びCuCHAが挙げられる。
【0115】
TWC触媒とは、炭化水素、一酸化炭素、及び窒素酸化物を実質的に同時に変換する三元変換の機能を有する触媒のことをいう。通常、TWC触媒は、パラジウム及び/又はロジウム、任意で白金などの1つ又は複数の白金族金属と、酸素貯蔵成分とを含む。リッチな条件下では、TWC触媒は通常アンモニアを生成する。
【0116】
AMO触媒は、アンモニア酸化触媒を指し、アンモニアを変換するのに適した1種以上の金属を含有する触媒であり、一般にアルミナ又はチタニアなどの支持体材料に担持される。例示的なAMO触媒は、担持された白金族金属(例えば、アルミナ上に含浸させた白金)と連携した銅ゼオライトを含む。
【0117】
このような触媒組成物を製造する方法は、しばしば、多孔質支持体にPGM又は卑金属溶液を含浸させる工程、及び/又は分子篩を金属前駆体溶液でイオン交換する工程を含む。本明細書で提供した開示のNOx吸着触媒と組み合わせてシステム内で使用することができる触媒組成物を製造するための方法及び他の既知の方法は、当技術分野で一般に知られており、例えば、Bullらの米国特許第9,138,732号及びTrukhanらの米国特許第8,715,618号に記載されている。これら文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。
【0118】
本明細書に開示の主題について、特定の実施形態及びその用途によって説明してきたが、これら実施形態及びその用途に対して、特許請求の範囲に記載された開示の範囲から逸脱することなく、当業者によって多くの修正及び変形を行うことができる。さらに、開示した主題の様々な態様は、本明細書で具体的に説明した用途以外の用途で使用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】