(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】歯の再石灰化
(51)【国際特許分類】
A61C 19/06 20060101AFI20231024BHJP
A61K 8/24 20060101ALI20231024BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A61C19/06 A
A61K8/24
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521281
(86)(22)【出願日】2021-10-18
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2021078737
(87)【国際公開番号】W WO2022089968
(87)【国際公開日】2022-05-05
(32)【優先日】2020-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ホッテンボス バルト
【テーマコード(参考)】
4C052
4C083
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052MM01
4C052MM04
4C052MM05
4C083AB291
4C083AB292
4C083BB55
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE32
4C083EE35
4C083EE38
(57)【要約】
口腔内の歯1に接触して非晶質リン酸カルシウム製剤からのリン酸カルシウムの付着を促す口腔処置装置10が開示される。この装置は、第1電極12と、第1電極から空間的に離れた第2電極14とを有する。第1の電極及び第2の電極の両方は、装置の使用中に第1の電極が歯に近接して配置されるとき、非晶質リン酸カルシウム製剤に接触するよう構成され、第2電極は、少なくともその表面に犠牲物質を含む。口腔処置装置10とACP製剤とを含む部品キット、及び非晶質リン酸カルシウム製剤を用いた歯の再石灰化方法100も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内の歯に接触し、非晶質リン酸カルシウム製剤からのリン酸カルシウムの付着を促す口腔処置装置であって、第1電極と、前記第1電極から空間的に離間した第2電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極に結合された電源とを有し、前記装置の使用中に、前記第1の電極がカソードとして、前記第2の電極がアノードとして機能し、
前記第1電極及び前記第2電極の両方が、前記装置の使用中に前記第1電極が歯に近接して配置されるとき、前記非晶質リン酸カルシウム製剤に接触し、
前記第2電極は、少なくともその表面に犠牲物質を含み、
前記電源が、前記アノード及び前記カソードにわたり電位差を印加し、
前記電位差は、前記カソードにおける水酸化物アニオンの生成によるpHの上昇をもたらし、前記アノードにおける前記犠牲物質のカチオンの生成をもたらすのに十分である、口腔処置装置。
【請求項2】
前記犠牲材料が、亜鉛又は亜鉛合金である、請求項1に記載の口腔処置装置。
【請求項3】
前記第1電極が、ブラシ電極である、請求項1又は2に記載の口腔処置装置。
【請求項4】
前記ブラシ電極が、カーボン製である、請求項3に記載の口腔処置装置。
【請求項5】
前記非晶質リン酸カルシウム製剤を収容するリザーバを更に有する、請求項1乃至4のいずれかに記載の口腔処置装置。
【請求項6】
前記第1の電極及び前記第2の電極が、前記リザーバ内に収容される、請求項5に記載の口腔処置装置。
【請求項7】
前記リザーバが、歯科用トレイであり、前記歯科用トレイは、それぞれが前記第1電極の1つ及び前記第2電極の1つを含む電極対に配置された複数の前記第1電極及び複数の前記第2電極を含み、各電極対が、口腔内の異なる歯に前記非晶質リン酸カルシウム製剤からのリン酸カルシウムの付着を刺激する、請求項5又は6に記載の口腔処置装置。
【請求項8】
前記歯科用トレイが、エラストマー材料から作られる、請求項7に記載の口腔処置装置。
【請求項9】
前記口腔処置装置が、リザーバとインターフェースする結合部材に流体的に結合されたノズルを持つアプリケータであり、前記第1電極は、前記ノズルのオリフィスに近接して配置され、前記第2電極が、前記ノズルの前記第1電極より上流側に配置される、請求項1乃至4のいずれかに記載の口腔処置装置。
【請求項10】
前記口腔処置装置が、電動歯ブラシ又は口腔洗浄器である、請求項1乃至4のいずれかに記載の口腔処置装置。
【請求項11】
前記電位差が、0.5~2Vの範囲である、請求項1乃至10のいずれかに記載の口腔処置装置。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに記載の口腔処置装置と、非晶質リン酸カルシウム製剤とを含む歯の再石灰化キット。
【請求項13】
前記非晶質リン酸カルシウム製剤が、4~6の範囲内のpHを持つ単相製剤である、請求項12に記載の歯の再石灰化キット。
【請求項14】
非晶質リン酸カルシウム製剤を用いた歯の再石灰化方法において、
前記非晶質リン酸カルシウム製剤を歯に適用するステップと、
前記適用された非晶質リン酸カルシウム製剤を、歯に近接した第1電極及び第2電極に接触させるステップであって、前記第2電極が、少なくとも表面に犠牲物質を含む、ステップと、
前記第1電極及び前記第2電極にわたり電位差を印加し、水酸化物アニオンの生成による前記第1電極でのpHの上昇及び前記第2電極における前記犠牲物質のカチオンの生成がもたらされる、ステップとを有する、方法。
【請求項15】
歯の再石灰化処置に使用するための非晶質リン酸カルシウム製剤であって、前記処置が、非晶質リン酸カルシウム製剤を歯に適用すること;前記適用された非晶質リン酸カルシウム製剤を、歯に近接した第1電極及び第2電極に接触させることであって、前記第2電極が、少なくとも表面に犠牲物質を含む、こと;前記第1電極及び前記第2電極にわたり電位差を印加し、水酸化物アニオンの生成による前記第1電極でのpHの上昇及び前記第2電極における前記犠牲物質の及びカチオンの生成がもたらされる、こととを有する、非晶質リン酸カルシウム製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内の歯に接触する非晶質リン酸カルシウム製剤からのリン酸カルシウムの付着を促進するための口腔内処置装置に関し、この装置は、第1電極を有する。
【0002】
本発明は更に、斯かる装置と非晶質リン酸カルシウム製剤とを含む歯の再石灰化キットに関する。
【0003】
本発明は更に、歯の再石灰化方法に関する。
【背景技術】
【0004】
US2010/303925A1は、イオントフォレーシスを適用しながら再石灰化剤を適用することによる、組織の美容及び治療的処置、特に組織の再石灰化を開示する。
【0005】
WO2014/009682A2は、超音波信号及び鉱化剤を適用し、場合によってはイオントフォレーシスと超音波とを組み合わせて生体物質を石灰化する装置及び方法を開示する。
【0006】
WO2006/039278A2は、歯の若返り及び硬組織改質のための方法及び装置を開示する。
【0007】
非晶質リン酸カルシウム(ACP)製剤は、象牙質知覚過敏症又は歯のホワイトニング後の知覚過敏など、歯の知覚過敏を軽減するために口腔ケア分野で広く使用されている。これらの製品が知覚過敏を軽減する1つのメカニズムは、ACP粒子を歯に付着させることで、歯のエナメル質又は象牙質の空隙を塞ぐことによる。空隙は、敏感歯の重要な原因の1つと考えられている。なぜなら、それらは、歯の外側と歯の神経との間に流体力学的な接続を提供し、これは、歯に圧力をかけるとき、又は歯の膨張若しくは収縮を引き起こす高温若しくは低温などの熱ストレスに歯をさらすことにより、痛みをもたらすからである。
図1は象牙質の走査型電子顕微鏡(SEM)写真で、斯かる空隙の形態を示す。4mm程度の長さの孔が、神経を含む歯髄に向かって外側から延在する。一方、
図2は、むし歯のあるエナメル質の断面のSEM画像であり、領域Aは脱灰したエナメル質、領域Bは健全なエナメル質を描いている。脱灰したエナメル質は、数十ミクロンの長さの空隙を持つ可能性がある。表面層は一般的に密度が高く、数ミクロンの長さの空隙が存在する。健全なエナメルは非常に緻密であるが、それでもサブミクロンの孔を持つ多孔質で、時折広いクラックも存在する。
【0008】
ACPは更に、う蝕の発症の原因となる脱灰した歯組織の修復に適用されることができる。これも、患部の歯組織、又は理想的には脱灰した多孔質エナメル質若しくは象牙質の内部にACP粒子を付着することから始まる。付着したリン酸カルシウムは、複数の態様で作用し、むし歯組織の(部分的に)溶解したハイドロキシアパタイト(HA)結晶の再構築に必要なカルシウム及びリン酸のリザーバを提供するので、組織を再石灰化し、酸による攻撃で、まずACPが犠牲になるので、新たな脱灰を防止し、高濃度のカルシウム及びリン酸を提供することで歯から天然のHAを保護することができる。一般的に、フッ素は斯かる製剤にも添加される。なぜなら、それはハイドロキシアパタイトの溶解から更に保護し、より耐酸性の高いフルオロアパタイトへの再石灰化を促進するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
市販のACP除去ジェルは、ACPを歯構造に付着させたままではかなり不効率で、多孔質な対象構造の内部に置くと更に一層不効率である。この製品は、歯に適用する直前又は適用中に、カルシウム成分及びリン酸成分の2つの成分を組み合わせることで作用する。一般的に、斯かる製品はゲル状であり、粘度が高いことを意味する。これは、それらが多孔質な歯構造に流体力学的に移動することを妨げる。斯かる多孔質構造へのカルシウム及びリン酸塩の供給は、拡散に頼らなければならず、そのプロセスは遅い。従って、ACPのほとんどは、多孔質な歯構造の内部で移動する機会を得る前に、すでにゲルの大部分の中に沈殿している。従って、ACPの付着は、歯面への付着に依存して歯とゲルとの界面でのみ起こる。ゲルの大部分は洗い流され、大部分のACP粒子は洗い流され、歯面に十分な付着力を持つものだけが残される。従って、このACP粒子の付着プロセスは、かなり非効率的である。
【0010】
Yu Yuan Zhangらによる「Repair of dentine-related lesions without a drill or injection」、RSC Adv.、2019、9、15099は、懸濁液及びカソードを保持するパーソナライズされた型を用いて、酸エッチングしたウサギ上顎切歯に外因性電場を印加することにより、カゼインフォスポペプチド(CPP)-ACP懸濁液の再石灰化動力学を改善する非侵襲システムを開示する。アノードはウサギの頭の皮膚に付けられた。0.5mA又は1.0mAの定電流の適用により、これらの切歯の酸エッチングされた象牙質は、印加電流に基づき5~8時間後に完全に再石灰化された。これは、水の加水分解によるカソードにおける水酸化物アニオンの形成に起因し、これは、局所的なpHの上昇をもたらし、CPPにおける負電荷の増加がもたらされる。外部電場は、CPP-ACPナノ複合体がカソードから酸エッチングされた象牙質に電気泳動により移動することをもたらす。
【0011】
電気泳動法の欠点は、外部電場が歯を通って延在して展開される必要がある点にあり、これは、敏感な患者に不快感をもたらす可能性がある。更に、口腔外でのアノードを使用は、患者にとって面倒であり、かつ不快である可能性があるため、治療方針の順守が乏しくなる可能性が増加される。
【0012】
本発明は、よりユーザフレンドリな態様で歯面へのACP付着を促進することができる口腔処置装置を提供しようとするものである。
【0013】
本発明は更に、斯かる口腔処置装置を含む歯の再石灰化キットを提供しようとするものである。
【0014】
本発明は更に、非晶質リン酸カルシウム製剤を用いて歯を再石灰化する、よりユーザフレンドリな方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、独立請求項により規定される。従属請求項は、有利な実施形態を規定する。
【0016】
一態様によれば、口腔内の歯に接触して非晶質リン酸カルシウム製剤からのリン酸カルシウムの付着を刺激するための口腔処置装置が提供され、この装置は、第1電極と、該第1電極から空間的に離れた第2電極とを有し、第1の電極と第2の電極の両方は、装置の使用中に第1の電極が歯に近接して配置されるとき、非晶質リン酸カルシウム製剤に接触するよう構成され、第2電極は、少なくともその表面に犠牲物質を含む。
【0017】
本発明は、Zhangらにより開示されたように、歯の近傍のpHを局所的に上昇させ、リン酸カルシウムの付着を促進するため、ACP製剤が電極対に接触され、電気化学反応が第一電極、例えばカソードで水酸化物アニオン(OH-イオン)を形成することをトリガーすることができるという知見に基づかれる。しかしながら、第2電極が口腔の外部に配置される電気泳動を用いるのではなく、第2電極、例えばアノードもACP製剤と接触される。好ましくは、その結果、歯が第1電極と第2電極との間の電流経路の外側に配置され、即ち、第1電極は好ましくは、歯と第2電極との間に位置する。これは、第1電極と第2電極との間に、邪魔のない及び従って導電性の高い電流経路が提供されるという利点を持つ。これは、歯又は体の別の一部が電極の間に位置する構成に比べて、第1電極と第2電極との間に大きな電流が流れることを可能にする。これは、第1電極のpHの更なる上昇のため、リン酸カルシウムの付着を更に促進する。なぜなら、水酸化物アニオンの生成速度は電流の流れに比例するからである。こうして、第1電極と第2電極とが電池等の電源に導電的に結合されるとき、第1電極と第2電極とにわたる電位差が、第1電極及び第2電極の両方で電気化学的な半反応をもたらすことになる。生成された水酸化物イオンを第1電極において中和する可能性があるので、第1電極の相対的な近傍でプロトン(H+イオン)が生成することは好ましくなく、上記第2電極は、少なくともその表面に犠牲物質を有する。例えば、第2電極は犠牲材料のコーティングを有する、又は犠牲材料で作られる。その結果、第2電極での電気化学的半反応が、プロトンの生成ではなく、犠牲物質のカチオンの生成に関係する。これにより、第1電極で生成された水酸化物イオンの中和が妨げられ、特に、電極に電位差を適用する前に、カルシウムイオン及びリン酸イオンの多孔質歯構造への能動又は受動的な拡散が促進される場合、歯面上及び内へのリン酸カルシウムの付着が、第1電極の局所的なpHの上昇により促進される。これは例えば、製剤からの自発的なリン酸カルシウムの沈殿を抑制するのに十分低いpHを持つACP製剤を用いることにより達成され得る。
【0018】
犠牲材料は、マグネシウム、アルミニウム又は亜鉛など、任意の適切な材料であってもよい。好ましくは、犠牲材料は亜鉛又は亜鉛合金である。なぜなら、亜鉛は特に酸化電位が低く、亜鉛イオンが抗菌効果を持ち、そのため、う蝕構造の中にいる細菌を死滅させることができるという追加的な利点を与えるからである。
【0019】
第1電極は好ましくは、再石灰化される歯の歯面に接触する。第1電極と歯面との接触面積を特に大きくするために、第1電極は好ましくはブラシ電極である。斯かるブラシ電極は、任意の適切な材料で作られることができ、炭素材料、例えばグラファイトが特に好適である。
【0020】
好ましい一組の実施形態では、口腔処置装置は、ACP製剤が口腔処置装置で歯に適用され得るように、非晶質リン酸カルシウム製剤を含むリザーバを更に有する。
【0021】
好ましくは、第1電極及び第2電極は、リザーバ内に収容される。例えば、リザーバは、歯科用トレイとすることができ、これは、それぞれ第1電極の1つと第2電極の1つとを含む電極の対に配置される複数の第1電極と複数の第2電極とを有し、各対の電極は、口腔内の異なる歯に非晶質リン酸カルシウム製剤からのリン酸カルシウムの付着を刺激するよう構成される。これは、ACP製剤の口腔内の歯への特にユーザフレンドリで効率的な適用を容易にする。歯科用トレイは、歯科用トレイが患者又はユーザの歯の周りでその形状を成形できるように、エラストマー材料、例えば、ゴム状材料で作られてもよい。これにより、歯科用トレイ(try)が口腔内で快適にフィットすることが確実にされる。
【0022】
代替的に、口腔処置装置は、リザーバとのインターフェースとして機能するよう構成された結合部材に流体的に結合されたノズルを持つアプリケータである。上記第1電極は、上記ノズルのオリフィスに近接して配置され、上記第2電極は、上記ノズルの上記第1電極より上流側に配置される。これは、斯かるアプリケータを用いて口腔内の特定の歯が標的化されることができる利点を持つ。斯かる口腔処置装置において、リザーバは、口腔処置装置と一体的な部分を形成してもよく、例えば、取り外し可能な容器などを形成することができるか、又は代替的に、リザーバは、結合部材を介してノズルに結合され得る別個の実体、例えば、使い捨てカートリッジ等であってよい。
【0023】
代替的な実施形態のセットでは、口腔処置装置は、電動歯ブラシ又は口腔洗浄器であり、この場合、口腔内でのACP製剤の適用は、ACP製剤を電極対に接触させる前に行われることができる。
【0024】
上記口腔処置装置は、各第1電極及び各第2電極に結合された電源を更に有し、その結果、口腔処置装置の使用中に、各第1電極がカソードとして機能し、各第2電極がアノードとして機能し、電源は、アノード及びカソードの各対に電位差を適用し、水酸化物アニオンの形成を通して各カソードでpHの上昇、及び先に説明したようにアノードにおける犠牲物質のカチオンの形成をもたらすよう構成される。斯かる電位差は有利には、0.5~2Vの範囲とすることができる。電位差が0.5V未満の場合、電気化学的半反応の個別の反応速度が低すぎる場合があり、一方、電位差が2Vを超えると、第2電極での酸の生成が競合するなど、好ましくない競合半反応が起こり始めるだけでなく、斯かる電位差により生成される電流がユーザの歯又は体を貫通し、ユーザに顕著な不快感を与える。
【0025】
別の態様によれば、本書に記載のいずれかの実施形態の口腔処置装置と、非晶質リン酸カルシウム製剤とを含む、歯の再石灰化キットが提供される。斯かる歯の再石灰化キットは、例えばう蝕の発症から歯を保護するために、歯の表面及びその上にリン酸カルシウムを効果的に付着させるために有利に使用されることができる。
【0026】
非晶質リン酸カルシウム製剤は、好ましくは4~6の範囲のpHを有する単相製剤であってもよい。これは、異なる相の製剤の混合が要求されないという利点を持つ。一方、この範囲のpHは、製剤からのリン酸カルシウムの最小の沈殿を確実にする。その結果、この沈殿は、ACP製剤が処置されるべき1つ又は複数の歯に適用されると、第1電極におけるpH上昇により効果的にトリガーされることができる。
【0027】
更に別の態様によれば、非晶質リン酸カルシウム製剤を用いた歯の再石灰化方法が提供される。この方法は、非晶質リン酸カルシウム製剤を歯に適用するステップと、適用された非晶質リン酸カルシウム製剤を、歯に近接した第1電極及び第2電極に接触させるステップであって、上記第2電極が、少なくとも表面に犠牲物質を含む、ステップと、第1の電極と第2の電極とにわたり電位差を印加するステップであって、第1の電極における水酸化物アニオンの生成を介して、及び第2の電極における犠牲物質のカチオンの生成を介して、第1の電極におけるpHの上昇がもたらされる、ステップとを有する。斯かる方法を用いると、直接的かつ快適な態様で、効果的に歯が再石灰化されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】う蝕エナメル質の走査型電子顕微鏡像である。
【
図3】実施形態による口腔処置装置の断面表示を概略的に示す図である。
【
図4】別の実施形態による口腔処置装置の透視表示を概略的に示す図である。
【
図5】更に別の実施形態による口腔処置装置の断面表示を概略的に示す図である。
【
図6】更に別の実施形態による口腔処置装置の断面表示を概略的に示す図である。
【
図7】更に別の実施形態による口腔処置装置の断面表示を概略的に示す図である。
【
図8】実施形態による方法のフローチャートである。
【
図9】本発明の概念実証を示す実験結果を表す画像である。
【
図10】本発明の概念実証を示す実験結果を表す画像である。
【
図11】本発明の概念実証を示す実験結果を表す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態が、対応する図面を参照し非限定的な例を用いてより詳細に説明される。
【0030】
図は単なる概略的なものであり、縮尺に合わせて描かれていないことを理解されたい。同一又は類似の部分を示すために図を通して同じ参照番号が使用される点も理解されたい。
【0031】
図3は、実施形態による口腔処置装置10を概略的に示す。本実施形態において、口腔処置装置10は例えば、歯1がう蝕欠損3の発症を示すため、ACP製剤で処置されるべき少なくとも1つの歯1の上に配置することができるアプリケータである。もちろん、歯1は例えば、歯のホワイトニング処置、又は酸環境に長時間さらされることによるエナメル質の侵食から生じる歯の知覚過敏に対抗するためといった、複数の理由で処置され得る。アプリケータは典型的には、処置されるべき歯1に近接して配置されるよう構成された第1の電極12を含む。第1電極12は好ましくは、歯1に接触する。第1の電極12と歯1との間の大きな接触面積を達成するために、第1の電極12は有利には、ブラシ電極の形状をとることができ、これは、任意の適切な材料で作られることができる。特に好適な材料は、グラファイトのような炭素ベース材料である。
【0032】
アプリケータは、第1の電極12から間隔をあけて配置される第2の電極14を更に含む。その結果、第1の電極と第2の電極14との間の短絡が回避される。第2電極14は、アプリケータ内の任意の適切な位置に配置されることができる。例えば、第2電極14は、歯1が第1電極12と第2電極14との間に位置するよう配置され得るか、又は歯1が第1電極12と第2電極14との間の直接の経路の外側にあるように、例えば、第1電極12が第2電極14と歯1との間に位置するよう配置されてもよい。より一般的には、第2電極14は、第1電極12よりも歯1から離れた位置に配置され得る。以下に更に詳細に説明する理由により、第2電極14は、少なくともその表面に犠牲材料を含む。即ち、第2電極14は、犠牲材料で被覆されるか、又は斯かる犠牲材料で形成される。この目的のために、任意の適切な犠牲材料が使用されることができ、適切な犠牲材料の非限定的な例は、マグネシウム、アルミニウム及び亜鉛を含む。亜鉛(及び亜鉛合金)は、亜鉛カチオンが抗菌効果を有することが知られるため特に適切である。その結果、歯1の近傍における斯かる亜鉛カチオンの生成が、歯1上又は歯1内、例えばう蝕欠損部3内に存在する有害細菌を殺すことを支援することができる。
【0033】
第1電極12及び第2電極14は、ACP製剤を収容するためのアプリケータのリザーバ15内に配置される。その結果、アプリケータのリザーバ15に装填されるとき、第1電極12と第2電極14の両方がACP製剤に接触する。
アプリケータの使用中、第1電極12及び第2電極14は、バッテリーなどの電源(図示省略)に導電的に結合され、その結果、第1電極12が負極(カソード)として機能し、第2電極14が正極(アノード)として機能する。
電源はアプリケータの一体化部分を形成してもよいし、又は例えばアプリケータから延びるリード(図示省略)を通して使用前にアプリケータに付けられてもよく、各リードは、第1の電極12及び第2の電極14の1つに導電的に結合される。
電源は、第1電極12と第2電極14とにわたり電位差を生み出し、第2電極14がその犠牲材料として亜鉛を有する場合、以下の電気化学的半反応をトリガーする。
【0034】
【0035】
もちろん、アノード半反応は、当業者に容易に理解されるように、代わりに他の犠牲材料を含むことができる。一般に、口腔処置装置10における第2電極14には、その酸化還元反応に対して水よりも低い標準電極電位を有する生体適合性の高い任意の犠牲材料が使用されることができる。第1電極で加水分解された水は、任意の適切な源、例えば、ACP製剤に含まれる水に由来することができる。
【0036】
重要なことは、第2電極14に犠牲材料を使用することが、この材料が第2電極14での電気化学的半反応における試薬となることをもたらし、これにより、犠牲物質のカチオンの生成が促進され、水の加水分解によるプロトン(H+イオン)の生成が抑制される点にある。これは従って、水酸化物アニオン及びプロトンの水分子への不要な再結合を抑制する。これは、生成された水酸化物アニオンによる第1電極12でのpH上昇に対抗することになる。このpH上昇は、歯面内又は歯面上のリン酸カルシウムの沈殿速度を高めるために必要とされる。更に、プロトンの生成は、一般的に望ましくない。なぜなら、口腔内において酸性状態は避けられるべきだからであり、なぜなら、斯かる酸性状態は、それ自体よく知られるように、エナメル質の侵食をもたらす可能性があるからである。
【0037】
第2の電極14に犠牲材料を用いることの別の利点は、電気化学反応が非常に低い電圧、例えば0.1Vで開始することであるが、リン酸カルシウムの十分な付着速度を確実にするために0.5Vを超える電圧が好ましい。例示的な実施形態では、電源は、1~2Vの範囲で第1の電極12と第2の電極14とにわたり電位差を生じさせるよう構成される。こうして、電源が1つ又は複数の電池を有する場合、長い連続動作時間が確実にされ、口腔処置装置10のユーザが不快感を経験するリスクが最小化される。
【0038】
好ましくは、電位差は、カルシウム、リン酸塩、及び製剤中に存在する場合はフッ化物イオンの歯1の多孔質構造への拡散を可能にするために、歯1へのACP製剤の適用後の短い遅延後に口腔処置装置10の第1電極12及び犠牲第2電極14にわたり適用される。斯かるイオン輸送は、例えば数分の期間にわたる受動的な拡散により、又は能動的な供給により行われることができる。例えば、第1電極12及び第2電極14が適当な構成で配置される場合、リン酸カルシウムの沈殿を促す前述の電気化学反応の開始前に、斯かるイオン輸送を起こさせるため、これらの電極を用いてイオントフォレーシスが適用されることができる。他の適切な能動イオン輸送技術は、当業者には明らかであろう。
【0039】
アプリケータは、任意の適切な材料で作られることができる。好ましくは、アプリケータは、エラストマー材料、例えば、シリコーン系エラストマーのようなゴム状材料で作られる。その結果、歯1の形状に合わせて容易に成形されることができる可鍛性アプリケータが提供される。ACP製剤の粘度に基づき、アプリケータは完全には閉じられない場合がある。なぜならこれは、例えばACP製剤が高粘度である場合には不要だからである。実施形態において、アプリケータの形態の口腔処置装置10は、
図4に概略的に描かれているように、歯科用トレイである。歯科用トレイは、例えば歯科用トレイの第1壁部16に配置された複数の第1電極12と、例えば第1壁部16に対向する歯科用トレイの第2壁部18に配置された複数の犠牲第2電極14とを有する。もちろん、他の電極配置例えば、第2電極14が歯科用トレイの底部19に配置される場合もあり、この底部19は、第1壁部16と第2壁部18とを接続する。リザーバ15は典型的には、歯科用トレイの第1壁部16、対向する第2壁部18及び底部19により囲まれる。これらの部は、歯科用トレイの離散的な部分でなくてもよく、即ち、歯科用トレイは、成形された装置、例えば、先に説明したようにエラストマー材料から成形されたものであってもよいことを理解されたい。
【0040】
複数の第1電極12及び複数の犠牲第2電極14は、電極対の形で配置されることができ、各対は、歯科用トレイにフィットされる歯の1つを処置するよう構成された第1電極12及び第2電極14からなり、その結果、各歯1がこれらの電極対の1つに整列される。電源(図示省略)は、これらの対の各々に同時に対処するよう構成されるか、又は代替的に、例えば特定の歯が対象となるような個別の電極対に対処するよう構成可能であってもよい。この目的のために、動力源を制御するための制御装置(図示省略)は、歯科用トレイにフィットされる歯を可視化することができる。その結果、制御装置のユーザが処置されるべき歯を選択でき、このユーザの選択は、制御装置により、選択された歯に対応する電極対を選択するための制御命令に変換され、その結果、選択された歯に関連する電極対に電位差を選択的に印加することにより、ACPの沈殿が選択された歯でのみ刺激される。
【0041】
図5は、アプリケータの形態の口腔処置装置10の別の例示的な実施形態を概略的に示す。本実施形態において、アプリケータは、リザーバ15を含む本体30を有するハンドヘルド装置である。このリザーバ15は、オリフィス42を持つノズル40に流体的に接続されており、このオリフィスを介してリザーバ15内のACP製剤が患者の歯に適用され得る。ACP製剤は、ポンプ32、例えば親指の圧力などの指圧により作動されることができる手動ポンプにより、リザーバ15からノズルオリフィス42を通して強制的に移動されることができる。ポンプ32は、スイッチ34を作動させてもよく、このスイッチは、コントローラ36を作動させる。コントローラは、ノズルオリフィス42に近接して共に配置される第1電極12及び犠牲第2電極14にわたる電源50からの電位差の供給を制御する。第1電極12は典型的には、第2電極14よりもノズル40から遠く離れて延び、即ち、第2電極14は、第1電極12に対して上流側に配置される。その結果、第1電極12が、第2電極の間に処置される歯の表面に接触することができ、一方第2電極は、堆積したACP製剤と接触したまま、第1電極12よりも処置される歯から遠ざかる。
【0042】
好ましい実施形態における口腔処置装置10は、アプリケータ、より好ましくは歯科用トレー(dray)であるが、他の実施形態も実現可能である。例えば、口腔処置装置10は、
図6に概略的に描かれているような口腔洗浄器、例えば、エアフロス装置又はウォータージェット装置であってもよい。斯かる口腔洗浄器は、ベースユニット20と、チューブ25を介してベースユニット20に流体接続されたハンドヘルドユニット30とを有することができる。ベースユニット20は、ユーザが口腔処置装置10の動作モードを選択することができる例えばダイヤル又はノブといったユーザーインターフェース22を有することができる。ハンドヘルドユニット30は、ノズル構成40を備え、それを介して、流体ストリームが、ユーザにより清掃されるべき歯肉下領域などの歯間領域に向けられることができる。ハンドヘルドユニット30は、斯かる流体ストリームを有効化/無効化するためのスイッチ32を含んでいてもよい。代替的な実施形態では、ベースユニット20は別個の存在として省略され、その機能はハンドヘルドユニット30に統合されてもよい。第1電極12及び犠牲第2電極14は、ノズル構成オリフィス42の近傍に配置されることができ、第1電極12は通常、第2電極14よりもノズル構成から更に離れて延び、その結果、第1電極12が、ユーザの歯に近接してユーザの歯に別途適用されたACP製剤に接触することができる一方、第2電極14もACP製剤に接触するよう構成されるが、第1電極14よりもユーザの歯から大きく離れたところにある。口腔洗浄器は、専用動作モードを持つことができ、このモードでは、流体ストリームが無効にされるが、流体ストリームの生成により適用されたACP製剤を乱すことなく、先に説明したようにACP製剤からのリン酸カルシウムの沈殿を刺激するように第1の電極12及び第2の電極14にわたる電位差の提供が可能にされる。
【0043】
口腔処置装置10は、
図7に概略的に描かれているように、電動歯ブラシ、例えば音波歯ブラシの形態を取ることもできる。本実施形態において、第1電極12及び犠牲第2電極14は、電動歯ブラシの(着脱可能な)ブラシヘッド35に配置されてもよい。ここで(充電式)電源50が、電動歯ブラシの基部に配置される。例えば、第1電極12は、ブラシヘッド35のブラシ毛37の間に位置することができる。一方、第2電極14は、ブラシ毛37とブラシヘッド35との間の界面に位置することができる。その結果、第1電極12が、ユーザの歯に近接してユーザの歯に別途適用されたACP製剤に接触することができる一方、第2電極14もACP製剤に接触するよう構成されるが、第1電極14よりもユーザの歯から大きな距離にある。電動歯ブラシは、専用動作モードを持つことができる。このモードでは、ブラシヘッドが無効にされるが、ブラッシング動作により適用されたACP製剤を乱すことなく、先に説明したようにACP製剤からのリン酸カルシウムの沈殿を刺激するように、第1の電極12及び第2の電極14にわたる電位差の提供が可能にされる。
【0044】
ACP製剤活性化キットは、本書に記載の実施形態のいずれかによる口腔処置装置10をACP製剤、例えばCPP-ACP製剤又は他の任意の適切なACP製剤と組み合わせることにより提供されることができる。ACP製剤は好ましくは、カルシウム源、例えばCaCl2、及びリン酸源、例えばNaH2PO4の両方を含む単相組成物である。例えば、CaCl2及びNaH2PO4の等モル混合物は、約4.2のpHを持つ製剤をもたらす。一方、NaH2PO4は、製剤のpHを上げるためにNa2HPO4と混合されることができ、これは望ましい。なぜなら、酸性が強すぎる製剤はエナメル質の侵食をもたらす可能性があるからである。NaH2PO4とNa2HPO4とを混合することで、製剤中でリン酸カルシウムの顕著な沈殿が起こることなく、製剤のpHが5.5まで上昇されることができることがわかった。単相製剤のpHは、製剤中のリン酸カルシウムの顕著な沈殿を防止する一方で、過度な酸性は、製剤が適用される歯に有害である可能性があるので、製剤が過度に酸性になることを防止するために、4~6の範囲であってもよく、好ましくは4.5~5.5の範囲である。特に、口腔処置装置10による電気化学反応の活性化の前に製剤が一定期間その場に放置される場合、先に説明したように、第1電極12での水酸化物イオンの生成により歯のpHが局所的に約8.5まで増加することがもたらされる。もちろん、他のリン酸塩、例えばカリウム塩、及び他のカルシウム塩、例えば硝酸塩がACP製剤に使用されることができる。更に、フッ化物、増粘剤、ペプチドなどの足場形成剤、防腐剤、呈味成分などがACP製剤に加えられることができる。特に有利な実施形態では、ACP製剤はKNO3を含み、これは、ACP製剤の導電性を高め、(知覚過敏の)歯の神経過敏を軽減する。
【0045】
図8は、本発明の実施形態による方法100のフローチャートである。方法100は、動作101において、ACP製剤と、本書に記載の実施形態のいずれかによる口腔処置装置10とを、例えば部品のキットの形態で、又は別々に提供することから始まる。動作103において、ACP製剤は例えば、口腔処置装置10が歯科用トレイのようなアプリケータである場合には口腔処置装置10と共に、又は別個に、再石灰化される1又は複数の歯に適用される。方法100は好ましくは、オプション動作105を更に含み、この場合、適用されたACP製剤のカルシウムイオン、リン酸イオン、及び存在する場合にはフッ化物イオンが、例えば拡散により、又はイオントフォレーシスを介するといった能動的なイオン輸送により、多孔質歯質構造への輸送が可能にされる。
【0046】
次に、動作107において、適用された非晶質リン酸カルシウム製剤は、処置される歯に近接した第1電極12、及び口腔処置装置10の犠牲第2電極14により接触される。その後、方法100は、動作109に進み、そこでは、電位差が口腔処置装置10の第1電極12と犠牲第2電極14とにわたり印加され、第2電極14における水酸化物アニオンの生成及び犠牲材料のカチオンの生成を通して第1電極12におけるpHの上昇がもたらされる。処置される歯に近接した第1電極12のpHの局所的な上昇が、歯の孔内及び表面におけるリン酸カルシウムの沈殿を促し、歯の再石灰化が行われる。印加された電位差の終了に伴い、方法100は動作111で終了する。
【0047】
概念実証のため、
図9に示すように、多孔質の歯面を模した3つの焼結された多孔質ポリアミド12タイルに市販のACP製剤が付着される実験が行われた。ネガティブコントロールとして、4つ目の焼結された多孔質ポリアミド-12タイル(右上の面)は覆われていない状態で放置された。実験では、左上のタイルにあるACP製剤がポジティブコントロールとして使用された。左下のタイルのACP製剤は、市販のACP製剤の指示通りに使用され、左下のACP製剤は、Pt電極(カソード)及びZn電極(アノード)で接触された。これらの電極にわたり、約6mAの電流に対応する1.5Vの電圧が印加される。これは、Pt電極における即時の泡の発生及びタイルにおける白い沈殿物をもたらす。30分後の結果が、
図10に示され、これは、ACP製剤の使用指示に従った左下のタイル、及び左上のタイル(ポジティブコントロールタイル)と比べて、電気化学反応にさらされた右下のタイルにおいて、リン酸カルシウムの沈殿量の著しい増加を明確に示す。
【0048】
30分後、左下及び右下のタイルのジェルが、ユーザが飲む様子を模したゆっくりと流れる水道水を用いて洗い流され、ユーザの舌の動きを模したティッシュで拭き取られた。その結果が、
図11に示される。左下のタイルは見える沈殿物を示さないが、右下のタイルでは、はっきり見える沈殿物が観察されることができ、これにより、ACP製剤を電気化学反応にさらすことが、ACP製剤を指示通りに使用した場合と比較して、リン酸カルシウムの付着を著しく強化することが実証された。ポジティブコントロールのタイル(左上)は、1週間かけて単に乾燥され、これにより、ACP製剤による最大限の付着が示される。
【0049】
上述した実施形態は、本発明を限定するものではなく、例示するものであり、当業者は、添付の請求項の範囲から逸脱することなく多くの代替実施形態を設計できることに留意されたい。特許請求の範囲において、括弧の間に記載される任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。「有する」という語は、特許請求の範囲に記載された要素又はステップ以外の存在を除外するものではない。要素に先行する"a"又は"an"という単語は、斯かる要素が複数存在することを排除するものではない。相互に異なる従属請求項に記載された手段は、有利に組み合わせられることができる。
【国際調査報告】