(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】口腔流体採取装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 10/00 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
A61B10/00 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521344
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(85)【翻訳文提出日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 IB2021058788
(87)【国際公開番号】W WO2022074501
(87)【国際公開日】2022-04-14
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522236350
【氏名又は名称】ジョンソン アンド ジョンソン コンシューマー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ビナー・カート
(72)【発明者】
【氏名】パウネスキュー・アレクサンドル
(57)【要約】
口腔流体試料採取の方法及び機器が、第1の面及び第2の面を有するシールドと、外側表面を有し、シールドの第1の面から延在するニップル内部を画定するエラストマーニップルと、リザーバ内部を有するリザーバを備える、シールドの第2の面から延在するリザーバ構成要素と、を含む。これらの要素は、ニップル内部から口腔流体採取装置の外部表面上に配設された大気ベントポートへの流動を可能にする第1の組み合わせと、リザーバ内部からニップル内部への流動を可能にする第2の組み合わせと、ニップルの外側表面上に配設された採取ポートからリザーバ内部の出口ポートへの流動を可能にする第3の組み合わせと、を含む複数の流体導管/弁の組み合わせによって相互接続される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔流体採取装置であって、
(a)第1の面及び第2の面を有するシールドと、
(b)外側表面を有し、前記シールドの前記第1の面から延在するニップル内部を画定するエラストマーニップルと、
(c)リザーバ内部を有するリザーバを備える、前記シールドの前記第2の面から延在するリザーバ構成要素と、
(d)前記ニップル内部から前記口腔流体採取装置の外部表面上に配設された大気ベントポートへの流動を動作可能に接続し、可能にする第1の一方向弁を有する第1の流体導管と、
(e)前記リザーバ内部から前記ニップル内部への流動を動作可能に接続し、可能にする第2の一方向弁を有する第2の流体導管と、
(f)前記ニップルの前記外側表面上に配設された採取ポートから前記リザーバ内部の出口ポートへの流動を動作可能に接続し、可能にする第3の一方向弁を有する第3の流体導管と、を備える、口腔流体採取装置。
【請求項2】
前記リザーバ構成要素が、前記シールドに取り外し可能に係合するように配置及び構成されている、請求項1に記載の口腔流体採取装置。
【請求項3】
前記リザーバ構成要素が、少なくとも1つの変形可能ゾーンを更に含む、請求項1に記載の口腔流体採取装置。
【請求項4】
前記リザーバ構成要素が、前記リザーバを封入するためのハウジングを更に備える、請求項1に記載の口腔流体採取装置。
【請求項5】
前記リザーバ構成要素が、前記リザーバ内部に緩衝溶液を配設している、請求項1に記載の口腔流体採取装置。
【請求項6】
前記出口ポートが、前記出口ポート内の液体と前記リザーバ内部の液体との間に空隙を設けるように配置及び構成されている、請求項1に記載の口腔流体採取装置。
【請求項7】
口腔流体採取キットであって、
(a)耐久性構成要素であって、
(i)第1の面及び第2の面を有するシールドと、
(ii)外側表面を有し、前記シールドの前記第1の面から延在するニップル内部を画定するエラストマーニップルと、を備える耐久性構成要素と、
(b)前記シールドに取り外し可能に係合するように配置及び構成された複数の取り付け可能なリザーバ構成要素であって、各取り付け可能なリザーバ構成要素が、リザーバ内部を有するリザーバを備える、複数の取り付け可能なリザーバ構成要素と、を備え、
前記耐久性構成要素への前記複数の取り付け可能なリザーバ構成要素のうちの1つの組み立てが、口腔流体採取装置を規定し、前記口腔流体採取装置が、(1)前記ニップル内部から前記口腔流体採取装置の外部表面上に配設された大気ベントポートへの流動を動作可能に接続し、可能にする第1の一方向弁を有する第1の流体導管と、(2)前記リザーバ内部から前記ニップル内部への流動を動作可能に接続し、可能にする第2の一方向弁を有する第2の流体導管と、(3)前記ニップルの前記外側表面上に配設された採取ポートから前記リザーバ内部への流動を動作可能に接続し、可能にする第3の一方向弁を有する第3の流体導管と、を有する、口腔流体採取キット。
【請求項8】
前記複数の取り付け可能なリザーバ構成要素の各々が、個別に包装されている、請求項7に記載の口腔流体採取キット。
【請求項9】
前記リザーバ構成要素が、少なくとも1つの変形可能ゾーンを更に含む、請求項7に記載の口腔流体採取キット。
【請求項10】
前記リザーバ構成要素が、前記リザーバを封入するためのハウジングを更に備える、請求項7に記載の口腔流体採取キット。
【請求項11】
前記リザーバ構成要素が、前記リザーバ内部に緩衝溶液を配設している、請求項7に記載の口腔流体採取キット。
【請求項12】
前記出口ポートが、前記リザーバ内部の中央部分に配設されている、請求項7に記載の口腔流体採取キット。
【請求項13】
リザーバ部分を検査施設に輸送するための指示を更に含む、請求項7に記載の口腔流体採取キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト被験者から口腔流体試料を得るための装置及び方法に関する。より詳細には、本発明は、乳児及び未熟児を含む被験者から唾液試料を得るための装置、キット及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト体液の分析物検査は、種々の疾患状態の診断を補助するために日常的に使用されている。血液、尿及び唾液の検査はかなり一般的である。検査は、体液の採取を必要とし、その後、採取現場で、あるいはより一般的には承認された検査施設で分析が行われる。
【0003】
他の利点の中でも特に利便性及びコストのために、可能であれば侵襲的血液検査を非侵襲的唾液検査に置き換える動機が存在する。血液検査は、注射器などによる侵襲的な血液採取を必要とする。看護師又は瀉血専門医などの熟練者が、典型的には、血液を採取するときに居合わせなければならない。これは、唾液の非侵襲的採取と比較した場合、検査手順に複雑さ及び費用の両方を加えることになる。
【0004】
加えて、人々の相当な割合が、針への顕著な嫌悪を経験している。幼児、子供、及びある程度の高齢者は、針の使用を嫌がることが多い。
【0005】
以前は血液試料を必要とした多くの状態を診断するために、唾液を使用することにおける進歩にもかかわらず、成人から唾液試料を採取するように設計された装置は、小児及び新生児の患者に使用可能ではない場合がある。これらの患者は、口が小さく、指示に従うことができない。加えて、採取器は、口の中で外れて窒息の危険を引き起こす可能性を回避するように作製されなければならないので、重大な安全上の懸念が生じる。加えて、全ての部品が、口腔への損傷を防止するように設計されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
要約すると、分析物検査のための唾液の非侵襲的採取は、複雑で費用のかかる侵襲的血液採取よりも有利である。特に小児患者及び新生児患者の特別なニーズを満たす、使用に安全な唾液試料採取機器が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特に小児患者及び新生児患者の特別な必要性を満たす、使用に安全な口腔流体試料採取機器を考案した。装置は、第1の面及び第2の面を有するシールドを含む。外側表面を有し、シールドの第1の面から延在するニップル内部を画定するエラストマーニップルと、リザーバ内部を有するリザーバを備える、シールドの第2の面から延在するリザーバ構成要素と、を含む。これらの要素は、ニップル内部から口腔流体採取装置の外部表面上に配設された大気ベントポートへの流動を動作可能に接続し、可能にする第1の一方向弁を有する第1の流体導管と、リザーバ内部からニップル内部への流動を動作可能に接続し、可能にする第2の一方向弁を有する第2の流体導管と、ニップルの外側表面上に配設された採取ポートからリザーバ内部の出口ポートへの流動を動作可能に接続し、可能にする第3の一方向弁を有する第3の流体導管と、を含む、複数の流体導管/弁の組み合わせによって相互接続される。
【0008】
口腔流体を採取する方法は、
(a)上に記載の口腔流体採取装置を包装から取り出すことと、
(b)初期静止容積を有するニップルを被験者の口腔内に挿入することと、
(c)流体をニップル内部から大気ベントポートに押し出すために、ニップルを変形させることと、
(d)ニップルを初期静止容積に向けて拡張させ、それによって、リザーバ内部から流体を引き込み、リザーバ構成要素内の流体圧力を減少させることと、
(e)採取ポートを通して被験者の口腔からリザーバ内部に口腔流体を引き込むことと、を含む。
【0009】
更なる装置、キット、及び方法もまた開示される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の口腔流体採取装置の上部正面斜視図である。
【
図2】
図1の口腔流体採取装置の上部背面斜視図である。
【
図4】
図1の口腔流体採取装置の上部正面分解斜視図である。
【
図5】
図1の口腔流体採取装置の上部背面分解斜視図である。
【
図6】
図1の口腔流体採取装置の部分断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、用語「口腔流体」及びその変化形は、口腔内に存在する体液(液体)に関するものである。口腔流体は、唾液と「口腔粘膜漏出液」との混合物である。唾液は唾液腺によって産生される。口腔粘膜漏出液は、毛細血管から頬粘膜を通過することによって口に入る。
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、用語「採取流体」及びその変化形は、装置によって採取された口腔流体(液体)に関するものである。
【0013】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、用語「エラストマーニップル」及びその変化形は、画定された形状を有し、負荷がかかると変形し、負荷が除去されるとその画定された形状に戻る能力を有する装置ニップルに関するものである。
【0014】
本明細書及び特許請求の範囲で使用されるとき、用語「装置の外部表面」は、エラストマーニップルが被験者の口腔内に配設された状態で、使用中の装置の任意の外向きに配設された表面に関する。
【0015】
本発明は、ヒト被験者、特に幼児から口腔流体試料を得るための装置及び方法に関する。装置は、被験者の非栄養吸啜(non-nutritive suck、NNS)運動を使用して、口腔ケア流体を被験者の口腔から装置内のリザーバに引き込む、装置内の部分真空を生成するように設計される。
【0016】
この装置は、シールドと、シールドの第1の面から延在するエラストマーニップルと、シールドの他方の面から延在するリザーバ部分と、を含む。ニップル及びリザーバは両方とも、それぞれの内部を有し、それぞれの容積を画定する。この装置はまた、3つの流体導管を有し、各流体導管は、それに関連する一方向弁を有する。第1の導管/弁の組み合わせは、ニップルの内部から装置の外部表面に配設された大気ベントポートへの空気流を可能にする。第2の導管/弁の組み合わせは、装置のリザーバからニップルの内部への空気流を可能にする。第3の導管/弁の組み合わせは、ニップルの外側表面上に位置する(使用中に被験者の口腔内に配設される)採取ポートからリザーバへ、リザーバ内に配設された出口ポートへの口腔流体の流動を可能にする。
【0017】
シールドは、被験者が装置全体を口に入れようとするのを防止するように配置及び構成されており、したがって、装置のうちの使用中に口の外側に残る部分から、装置のうちの被験者の口に入れられ得る部分を画定するように機能する。
【0018】
従来のおしゃぶりと同様に、シールドは、使用時に被験者の唇に実質的に平行に配設される一次平面配向を有する。シールドは、任意選択で、被験者が口を通して呼吸する場合に空気を通過させること、又は他の審美的若しくは機能的利益を提供することを可能にし得る、その厚さを貫通する複数の通気孔を含む。
【0019】
シールドを作製する際に使用される材料は重要ではなく、非毒性のプラスチック材料などの従来のおしゃぶりシールド材料を含んでもよい。例示的なプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、低密度ポリエチレン(low density polyethylene、LDPE)、又はポリプロピレン(polypropylene、PP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
シールドは、射出成形、熱成形などを含むがこれらに限定されない任意の有用なプラスチック成形プロセスによって成形されてもよい。
【0021】
エラストマーニップルは、シールドの1つの面から、シールドの一次平面配向に対して実質的に垂直な方向に延在する。エラストマーニップルは、ニップルの外側表面と、ニップルの外側表面に形成されたアパーチャと、を有する。上述したように、エラストマーニップルはまた、ニップル内部を画定する。ニップル内部は中空であり、流体を受け入れることができる空隙である。
【0022】
エラストマーニップルを作製する際に使用される材料は重要ではなく、非毒性のエラストマー材料などの従来のおしゃぶりエラストマーニップル材料を含んでもよい。しかしながら、エラストマーから生産されるエラストマーニップルの剛性を制御して、以下により詳細に説明されるように、ニップルが変形できるようにすることが望ましい。例示的なエラストマー材料としては、ゴム(天然又はラテックス)、シリコーン、又は軟質プラスチックが挙げられるが、これらに限定されない。ゴム、シリコーン、及び軟質プラスチックは、容易に変形可能であり、したがって、それらは、エラストマーニップルが被験者の口の中にあるとき、非栄養吸啜運動(NNS)によって変形される場合に有効である。非栄養吸啜では、被験者の舌は、概して、特徴的蠕動運動(例えば、左から右への波状運動)で移動する。
【0023】
エラストマーニップルは、射出成形、熱成形、液体シリコーン射出成形などを含むがこれらに限定されない任意の有用なプラスチック成形プロセスによって成形されてもよい。
【0024】
シールド及びニップルの両方に同じ材料を選択することが望ましい場合がある。これは、これらの構成要素を統合し、そうでなければ故障点となり得る2つの部品の二次接続を排除するために有用であり得る。このような構造において、シールド及びニップルの両方の材料は、熱可塑性エラストマー、又は低デュロメータポリウレタンなどを含むがこれらに限定されない、シリコーン又は軟質プラスチックであり得る。
【0025】
エラストマーニップルは、2つの要素に使用される材料に依存して変更され得る多くの方法によってシールドに接続され得る。有用な方法としては、機械的締まり嵌め、締結具/クランプ、結合(例えば、接着剤、溶剤、及び/又は超音波を含む熱)が挙げられるが、これらに限定されない。もちろん、エラストマーニップル及びシールドが同じ材料で作製されている場合、それらは単一の操作で一緒に成形され得る。あるいは、シールド及びエラストマーニップルは、シールドに適切な剛性を提供するために、補剛要素上に射出成形され得る。
【0026】
リザーバは、シールドの第2の面と関連付けられ、使用中に被験者の口の外側に配設される。上述のように、リザーバは、リザーバ内部、すなわち、流体を受け入れることができる空隙を画定し、その空隙内に、装置によって採取された唾液などの口腔流体が格納される。
【0027】
リザーバはまた、1つ以上の壁又はその一部分であり得る、少なくとも1つの変形可能ゾーンを有してもよい。周囲条件下のリザーバ内部は、少なくとも1つの変形可能ゾーンが静止状態にある初期リザーバ内部を画定する。装置の動作に関して以下に説明されるように、少なくとも1つの変形可能ゾーンは、特定の動作条件が存在するときにリザーバ容積を初期容積未満に減少させ、通常の動作条件復帰下でリザーバ容積をその静止状態に復帰させることができる。
【0028】
リザーバはまた、非毒性の安定化緩衝溶液を収容してもよい。安定化緩衝液の存在により、分析のために採取された流体は、採取から数日間、又は更には数週間にわたって保存される。緩衝溶液は、リザーバ内部内に配設されてもよく、あるいはリザーバ内部に添加されてもよい。
【0029】
唾液などの口腔流体は、リザーバの内壁に付着し得るタンパク質及び他の生物学的物質を含有するので、これらの内壁は、これらのタンパク質及び他の生物学的物質がそれらに付着するのを防止する物質でコーティングされ得る。
【0030】
検査するために、装置によって採取された口腔流体は、装置から検査施設に移送されなければならない。検査施設は、家庭用検査システムの一部であってもよく、遠隔地にあってもよい。したがって、検査流体は装置から抽出されなければならない。これは、特に検査施設が遠隔地にある場合、装置からリザーバを取り外し、それを検査施設に輸送することによって行われ得る。採取された流体を輸送するのに有用な1つの便利な容器は、リザーバ自体である。あるいは、採取された流体は、リザーバから輸送バイアルに移送されてもよい。最終的に、採取された流体は、注射器又は他の有用な移送手段を介して輸送容器から取り出され得る。
【0031】
リザーバは、シールドに取り外し可能に係合するように配置及び構成されたリザーバ構成要素に含められてもよい。
【0032】
口腔流体の採取を提供することに加えて、リザーバは、液体/気体分離器としても機能する。以下でより詳細に説明されるように、リザーバは、装置によって採取された口腔流体を保持し、装置を通る空気(ガス)流から口腔流体流を分離する。
【0033】
液体/気体分離を補助するために、リザーバは、以下に説明される第2の導管/弁の組み合わせへの採取された流体の移動を制限するためのダムを組み込んでもよい。
【0034】
リザーバを作製する際に使用される材料は重要ではなく、非毒性のプラスチック材料などの従来の材料を含んでもよい。例示的なプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、ポリプロピレン(PP)、又はポリウレタンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
リザーバは、射出成形、熱成形などを含むがこれらに限定されない任意の有用なプラスチック成形プロセスによって成形されてもよい。リザーバはまた、射出成形などの標準的なプラスチック製造技術によって製造され得る。少なくとも1つの変形可能ゾーンは、ゴム、シリコーン、及び熱可塑性エラストマー又は低デュロメータポリウレタンを含むがこれらに限定されない軟質プラスチックなどのエラストマー材料から構成されてもよい。
【0036】
第1の導管/弁の組み合わせは、ニップルの内部から装置の外部表面に配設された大気ベントポートへの空気流を可能にする。装置の特定の細部及び配置に依存して、大気ベントポートは、シールド上に、あるいはリザーバのための任意選択のハウジング上に配設され得る。第1の導管経路に沿った一方向弁の位置は重要ではない。一方向弁は、装置の効果的な衛生化を強化するように配置されてもよい。
【0037】
第2の導管/弁の組み合わせは、装置のリザーバからニップルの内部への空気流を可能にする。ここでも、第2の導管経路に沿った一方向弁の位置は重要ではない。一方向弁は、装置の効果的な衛生化を強化するように配置されてもよい。
【0038】
第2の導管開口部は、採取された流体への露出を最小限にするように設計された位置でリザーバ壁に配設される。
【0039】
第3の導管/弁の組み合わせは、ニップルの外側表面上に位置する(使用中に被験者の口腔内に配設される)採取ポートからリザーバへ、リザーバ内に配設された出口ポートへの口腔流体の流動を可能にする。
【0040】
出口ポートは、出口ポートとリザーバ内の以前に採取された口腔流体の液体表面との間に空隙が設けられるように、リザーバ内部の中央部分に配設されてもよい。したがって、以前に採取された口腔流体は、出口ポートからの新しい口腔流体放出物の流動を遮断しない。
【0041】
図面を参照して以下に説明されるように、第3の導管の出口ポートは、出口ポートと任意の以前に採取された口腔流体との間に空隙が設けられるように、リザーバ内部の中央部分に配設される。
【0042】
一般的に上述された口腔流体採取装置は、唾液及び口腔粘膜漏出液などの口腔流体を採取及び捕捉する。口腔内のガスもまた採取され得るが、装置内の流体導管/弁要素は、概して、大気ベントポートを介してこれらのガスの実質的な量がシステムを通過することを可能にする一方で、口腔流体のみがリザーバ内部に残る。
【0043】
一般的に上述された口腔流体採取装置は、単一の使い捨て装置として製造、包装、及び販売されてもよい。包装は、装置及び/又はその構成要素が製造業者から消費者に発送される際に安全に保たれるので、口腔流体採取装置を損傷による汚染から保護する。
【0044】
しかしながら、好ましいシステムは、耐久性部分と複数の個別に包装されたリザーバ部分とのキットである。このキットでは、耐久性部分は、シールドと、エラストマーニップル(及び関連する導管/弁要素)と、を含み、個別に包装されたリザーバ部分は、リザーバと、リザーバ(及び関連する導管/弁要素)を封入するための任意選択のハウジングと、を含む。したがって、リザーバ部分は、使用のためにその包装から取り出され、耐久性部分とともに組み立てられる。それに代わって、1つの装置が、追加の別個に包装されたリザーバ部分とともに、完全に組み立てられた状態で包装されてもよい。使用後、リザーバ部分は耐久性部分から分解され、採取された流体は、その後、分析のために輸送される。
【0045】
リザーバ部分は、耐久性部分への取り外し可能な係合のために配置及び構成される。したがって、第1のリザーバ部分は、被験者の第1の試料採取のために耐久性部分に係合され、また耐久性部分から取り外され得る。耐久性部分は、適切に洗浄及び/又は消毒され得、第2のリザーバ部分は、被験者の第2の試料採取のために、あるいは更に第2の被験者の試料採取のために、包装解除され、耐久性部分に係合され得る。このような取り外し可能な係合に有用な係合の例としては、ねじ、ピン、バヨネット、フック、及びクランプが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
任意選択により、皮膚接触要素及び口腔接触要素は、使い捨て可能であり得、これには、おそらく、エラストマーニップル及び使用中に唇に向けて配設されるシールドライナー、更に場合によってはリザーバ及び導管も含まれる。一方、構造的なシールド構成要素及びリザーバハウジングは、再利用可能(耐久性)であり得る。これにより、追加の構成要素を耐久性構成要素に組み込むことが可能になる。
【0047】
また、複数の包装されたリザーバ部分及び非耐久性部分を収容する詰め替え包装が消費者に提供されてもよい。
【0048】
消費者に利用可能にされる口腔流体採取キットはまた、分析のためにリザーバを検査施設(検査試験室、病院、診療所、医療検査施設)に送るための1つ以上の容器又は包装を含んでもよい。口腔流体採取キットはまた、リザーバ部分を検査施設に輸送するための指示を有してもよい。したがって、リザーバ部分は、郵送又は配達サービスによる発送のためのキットとして消費者に供給される包装に、密封及び配置されてもよい。供給される包装は、事前に宛先指定されてもよく、また、口腔流体分析に影響を及ぼし得る極端な温度から口腔採取液を保護するように断熱されてもよい。供給される返却包装は、リザーバが極端な温度にさらされていないことを検証するために検査試験室によって使用され得るセンサを任意選択で組み込んでもよい。
【0049】
一般的に上述された口腔流体採取装置は、口腔流体を採取する方法において使用される。最初の時点では、ニップル内部、リザーバ内部、及び被験者の口腔又は口の圧力は等しい。
【0050】
口腔流体採取装置が包装内に配設される場合、口腔流体採取装置及び/又はその構成要素は、包装から取り出される(必要に応じて組み立てられる)。従来のおしゃぶりと同様に、エラストマーニップルは、被験者の口腔内に挿入される。エラストマーニップル上での被験者の非栄養吸啜(NNS)運動は、エラストマーニップルの変形(圧潰)をもたらす。エラストマーニップルを変形させることにより、流体又は空気がニップル内部から大気ベントポートへと押し出され、そこで大気へと排出される。流体が辿る経路は、ニップル内部から、第1の流体導管及び関連付けられた第1の一方向弁に入り、最終的に、装置の外部表面上に配設された大気ベントポートを通して口腔流体採取装置を退出する。第1の一方向弁は、空気が大気ベントポートを介して口腔流体採取装置の外側からニップル内部に逆充填されることを防止する。
【0051】
次に、変形したエラストマーニップルをその元の形状に膨張させる。非栄養吸啜では、乳児の舌は、エラストマーニップル上に負荷を交互に加え、次いで除去する、蠕動運動をなして移動する。エラストマーニップルが再膨張すると、ニップル内部の圧力が減少する。ニップル内部とリザーバ内部との間の圧力を再平衡させるために、ガスはリザーバ内部からニップル内部へ流動しなければならない。ガスが辿る経路は、リザーバ内部から、第2の流体導管及び関連付けられた第2の一方向弁に入り、そして最後にニップル内部に入る。
【0052】
口腔流体採取装置の内部からガスが除去されているので、ニップル内部及びリザーバ内部の圧力は、被験者の口腔内の圧力よりも低い。リザーバ内部と被験者の口腔との間の流体圧力を再平衡させるために、流体又は空気は、リザーバ内部に戻らなければならない。流体源は、被験者の口腔である。口腔流体又は唾液は、被験者の口腔からリザーバ内部に引き込まれる。口腔流体が辿る経路は、口腔から、ニップルの外側表面に位置する採取ポートを通って、第3の流体導管に入り、第3の一方向弁を通って、最終的にリザーバ内部に入る。
【0053】
再び、リザーバはまた、少なくとも1つの変形可能ゾーンを有してもよく、そのゾーンは、変形してリザーバ内部の容積を減少させる。少なくとも1つの変形可能ゾーンがその静止状態に戻るとき、口腔とリザーバ内部との間の圧力差が形成される。上記で議論されたように、リザーバ内部及び被験者の口腔内において流体圧力を再平衡させるために、流体は、上記で議論されたように、被験者の口腔からリザーバ内部に流動する。
【0054】
加えて、リザーバ内の少なくとも1つの変形可能ゾーンは、リザーバ内の適度な真空(負圧)の蓄積を可能にし、特に、採取ポートが被験者の舌によって遮断されている場合、連続的な吸引サイクルは、依然として、ガスをエラストマーニップルから外に移動させる。少なくとも1つの変形可能ゾーンは、各サイクルでより大きく変形し、少なくとも1つの変形可能ゾーン内に機械的応力を蓄積し、次いでこれにより、採取ポートが遮断解除され、少なくとも1つの変形可能ゾーンがその静止状態に戻るとき、増加した負圧が提供され得る。
【0055】
口腔流体採取装置によって採取された口腔流体の分析は、家庭用検査キットなどの採取現場で、あるいは病院、診療所、及び医療検査施設に位置する多数の検査試験室で実施され得る。
【0056】
分析が家庭外の検査試験室で実施される場合、採取された流体は検査場所に発送されなければならない。したがって、採取された流体を収容する装置は、その全体が検査場所に発送され得る。それに代わって、リザーバ部分が、耐久性部分から分離されてもよい。
【0057】
口腔流体の分析を行うために、口腔流体はリザーバから取り出されなければならない。採取された流体は、注射器によって、発送のために密封されたリザーバを穿刺することによって、あるいは耐久性部分からリザーバ部分を取り外すときに作成されるリザーバ内の開口部を通して、リザーバから取り出されてもよい。
【0058】
本開示の主題は、これから、本開示が詳細かつ完全なものにするために提供される添付の図面及び実施例を参照して、以下でより完全に説明される。別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、ここに記載された主題が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されている意味と同一の意味を有する。
【0059】
ここで、同様の参照符合がいくつかの図の全体を通じて対応する部品を示す図面を参照すると、
図1~
図6は、本発明の口腔流体採取装置の図である。
図1及び
図2は、それぞれ、口腔流体採取装置10の上部正面斜視図及び背面斜視図である。
図3は、装置10の側面図である。
図4及び
図5は、それぞれ、上部正面分解斜視図及び背面分解斜視図の装置10である。最後に、
図6は、口腔流体採取装置10の部分断面側面図である。
【0060】
図1において、エラストマーニップル60は、シールド30の第1の面22から延在するように示されている。
図2は、第1の構成要素20の第2の面24から延在するリザーバ構成要素90を示す。
【0061】
図3、すなわち、口腔流体採取装置10の側面図は、第1の構成要素20及びリザーバ構成要素90の2つの部分を有する装置10を示す。
図4及び
図5は、3つの要素、すなわちシールド30、ニップル要素50、及びクランプ70を有する第1の構成要素20を示す。後述されるように、3つの要素は、第1の構成要素20を形成するように組み立てられ得る。
【0062】
シールド30は、第1の面22と、その反対側の第2の面32と、を有する。シールド30はまた、アパーチャ34と、通気孔36と、アライナピン38と、を有する。
【0063】
ニップル要素50は、エラストマーニップル60と、アライナガイド孔58と、を有する。エラストマーニップル60は、被験者の口に向けられたニップルの外側表面62と、ニップル内部66と、を有する。
【0064】
クランプ70は、第1の面72と、第2の面24と、第2の流体導管54と、出口ポート67と、コネクタ73と、アパーチャ74と、アライナガイド孔78と、第1の一方向弁82と、第2の一方向弁84と、第3の一方向弁86と、大気ベントポート88と、を有する。コネクタ73は、クランプ70の第2の面24から延在し、アパーチャ74と出口ポート67とを有するように示されている。第1の一方向弁82、第2の一方向弁84、及び第3の一方向弁86は、クランプ70の第1の面72の表面に配設される。大気ベントポート88は、クランプ70の第2の面24の表面に配設され、大気に露出されている。大気ベントポート88は、クランプ70の第2の面24の表面に配設されているが、口腔流体採取装置10の任意の外部表面上に位置してもよい。
【0065】
口腔流体採取装置10が組み立てられると、3つの流体導管が形成される。これらの流体導管は、構成要素間で流体を運ぶものであり、
図6に示されている。ニップル要素50及びクランプ70が接続されると、ニップル内部66から第1の一方向弁82まで延在する第1の流体導管52が形成される。第1の流体導管52及び第1の一方向弁82は、動作可能に接続し、ニップル内部66から大気ベントポート88への流体の流動を可能にする。
【0066】
第2の流体導管54は、リザーバ内部98から第2の一方向弁84まで延在している。第2の流体導管54及び第2の一方向弁84は、動作可能に接続し、リザーバ内部98からニップル内部66への流体の流動を可能にする。
【0067】
ニップル要素50はまた、第3の流体導管の第1の部分56aを有し、一方、クランプ70は、第3の流体導管の第2の部分56bを有する。口腔流体採取装置10が組み立てられると、第3の流体導管が形成され、口腔流体を被験者の口腔から口腔流体採取装置10のリザーバ構成要素90に運ぶ。
【0068】
シールド30及びクランプ70は、プラスチックなどの幼児に安全な材料から構成されてもよい。
【0069】
ニップル要素50は、ゴム(天然又はラテックス)、シリコーン、又は軟質プラスチックなどの乳児に安全な材料から構成されてもよい。
【0070】
シールド30、ニップル要素50及びクランプ70は、射出成形などの標準的なプラスチック製造技術によって製造されてもよい。
【0071】
口腔流体採取装置10の第1の構成要素20は、以下のように組み立てられる。ニップル要素50は、ニップル要素50のエラストマーニップル60がシールド30のアパーチャ34を通過し、シールド30のアライナピン38がニップル要素50のアライナガイド孔58を通過するように、シールド30と位置合わせされる。ここで、エラストマーニップル60は、シールド30の第1の面22から延在し、したがって、第1の構成要素20の第1の面22から延在する。
【0072】
クランプ70は、クランプ70のアライナガイド孔78がシールド30のアライナピン38と位置合わせされるように、ニップル要素50と位置合わせされる。
【0073】
シールド30と、ニップル要素50と、クランプ70とは、締結具102によって一緒に保持される。シールド30のアライナピン38は内側雌ねじ山を有し、締結具102はねじ締結具である。他のタイプの締結具としては、ボルト及びピンが挙げられる。それに代わって、口腔流体採取装置10の第1の構成要素20の3つの要素は、接着剤、ヒートシールなどを使用して互いに接合されてもよい。
【0074】
図にはまた、口腔流体採取装置10のリザーバ構成要素90が示されている。リザーバ構成要素90は、近位端部91と、遠位端部92と、側部壁96と、アパーチャ94を有するコネクタ93と、を有する。コネクタ93は、リザーバ構成要素90の近位端部91から延在する。リアカバー95は、リザーバ構成要素90の遠位端部92に配設される。リザーバ構成要素90はまた、リザーバ内部98を有し、これは、口腔流体採取装置10によって捕捉された唾液などの口腔流体が貯蔵される空隙容積である。
【0075】
リザーバ構成要素90はまた、射出成形など標準的なプラスチック製造技術によって製造され得る。リアカバー95は、ゴム、シリコーン、及び軟質プラスチックなどのエラストマー材料から構成されてもよく、その結果、リザーバ構成要素90は、少なくとも1つの変形可能ゾーンを有することになる。
【0076】
口腔流体採取装置10の組み立てを完了するために、リザーバ構成要素90がシールド30の第2の面24から延在するように、第1の構成要素20及びリザーバ構成要素90が取り付けられる。クランプ70のコネクタ73の外向き表面には雄ねじが切られており、リザーバ構成要素90上のアパーチャ94の内向き表面には雌ねじが切られている。したがって、第1の構成要素20及びリザーバ構成要素90はともに、口腔流体採取装置10の完成した組立体にねじ留めされる。それに代わって、クランプ70のコネクタ73の外向き表面は、雌ねじが切られていてもよく、リザーバ構成要素90上のアパーチャ94の内向き表面は、雄ねじが切られていてもよい。それに代わって、第1の構成要素20及びリザーバ構成要素90は、一緒にスナップ留めされるか、あるいはコネクタ73とアパーチャ94との間に抵抗嵌合又はバヨネット嵌合が存在する。
【0077】
図6は、口腔流体採取装置10の部分断面側面図である。前述のように、第1の流体導管52は、ニップル内部66から第1の一方向弁82まで延在する。第1の流体導管52及び第1の一方向弁82は、動作可能に接続し、ニップル内部66から大気ベントポート88への流体の流動を可能にする。
【0078】
第2の流体導管54は、リザーバ内部98から第2の一方向弁84まで延在している。第2の流体導管54及び第2の一方向弁84は、動作可能に接続し、リザーバ内部98からニップル内部66への流体の流動を可能にする。
【0079】
第3の流体導管の第1の部分56a及び第3の流体導管の第2の部分56bを含む第3の流体導管は、ニップルの外側表面62上に位置する採取ポート64から第3の一方向弁86及びコネクタ73を通って延在している。第3の一方向弁86は、第3の流体導管の第1の部分56a及び第3の流体導管の第2の部分56bに動作可能に接続され、流体が採取ポート64から出口ポート67を通ってリザーバ内部98へと流動することを可能にする。
【0080】
出口ポート67は、リザーバ内部98の中央部分に配設される。
図6において、「c」と標識された点線の円は、リザーバ構成要素90の近位端部91、遠位端部92、及び側壁96からの直線距離である。点線の円「c」は、近位端部91、遠位端部92、及び側部壁96上の任意の点からの直線距離の75パーセントとして規定される。この作業において、リザーバ内部98の中央部分は、リザーバ構成要素90の近位端部91、遠位端部92及び側壁96上の任意の点から円「c」までの直線距離の25パーセントを超えるリザーバ内部98内の任意の位置として規定される。
【0081】
例えば、
図6において、出口ポート67は、近位端部91上の任意の点から円「c」までの直線距離の約75パーセントより大きく、遠位端部92上の任意の点から円「c」までの直線距離の約100パーセントより大きく、側壁96上の任意の点から円「c」までの直線距離の約60パーセントより大きく配設されている。したがって、出口ポート67は、リザーバ内部98の中央部分に配設されるものとして規定される。
【0082】
リザーバ内部98の中央部分に配設された出口ポート67を有する利点は、リザーバ内部98に採取された口腔流体が、より新しい流体が出口ポート67から流出することを阻止しないことである。
【0083】
加えて、コネクタ73及びその関連するアパーチャ74は、リザーバ内部98の中へと突出し、ダム76を形成する。ダム76は、リザーバ内部98に採取された流体が第2の一方向弁84に接触してリザーバ内部98からニップル内部66へと流動するのを防止するための液体/気体分離バリアを提供する。ニップル内部66内の口腔流体は、口腔流体採取装置10が更なる口腔流体を採取する能力に影響を及ぼし得る。アパーチャ74の中心位置は、リザーバ内部98にあり、また、おしゃぶりがほとんどの配向で動作することを可能にする。
【0084】
図面を参照して説明される口腔流体採取装置10は、分析のために口腔流体を採取する方法において使用され得る。この方法は、一般的に上述されている。以下は、図面に示される装置が、この一般的な方法においてどのように使用され得るかを示す。
【0085】
初期点では、ニップル内部66、リザーバ内部98、及び被験者の(乳児の)口腔又は口内の圧力は等しい。
【0086】
口腔流体採取装置10が包装内に配設されている場合、消費者はまず、口腔流体採取装置10を包装から取り出す。エラストマーニップル60が、被験者の口腔内に挿入される。エラストマーニップル60上での被験者の非栄養吸啜(NNS)運動は、エラストマーニップル60の変形(圧潰)をもたらす。エラストマーニップル60を変形させることにより、流体又は空気がニップル内部66から大気ベントポート88へと押し出され、そこで大気へと排出される。流体が辿る経路は、ニップル内部66から第1の流体導管52に入り、第1の一方向弁82を通り、最後に大気ベントポート88を通って口腔流体採取装置10を退出する。第1の一方向弁82は、空気が大気ベントポート88を介して口腔流体採取装置10の外部からニップル内部66に逆充填されることを防止する。
【0087】
次に、変形したエラストマーニップル60をその元の形状に拡張させる。非栄養吸啜では、乳児の舌は、エラストマーニップル60上に負荷を交互に加え、次いで除去する、蠕動運動をなして移動する。エラストマーニップル60が再膨張すると、ニップル内部66の圧力が減少する。ニップル内部66とリザーバ内部98との間の圧力を再平衡させるために、ガスはリザーバ内部98からニップル内部66へ流動しなければならない。ガスが辿る経路は、リザーバ内部98から第2の流体導管54に入り、第2の一方向弁84を通り、最終的にニップル内部66に入る。
【0088】
口腔流体採取装置10のニップル内部66及びリザーバ内部98からガスが除去されているので、ニップル内部66及びリザーバ内部98の内圧は、被験者の口腔内の圧力よりも低い。ここで、リザーバ内部98と被験者の口腔との間の流体圧力を再平衡させるために、流体又は空気は、リザーバ内部98に戻らなければならない。流体源は、被験者の口腔である。口腔流体又は唾液は、被験者の口腔からリザーバ内部98に引き込まれる。口腔流体が辿る経路は、口腔から、ニップルの外側表面62上に位置する採取ポート64を通り、第3の一方向弁86を通って第3の流体導管(56a及び56b)に入り、最後にリザーバ内部98に入る。
【0089】
前述のように、リザーバ内部98は、口腔流体採取装置10によって捕捉された唾液などの口腔流体が貯蔵される場所である。採取された流体は、ここで、体内の疾患状態の診断を補助するために分析され得る。
【0090】
分析が家庭外の検査試験室で実施される場合、唾液は検査場所に発送されなければならない。口腔流体採取装置10による口腔流体の採取後、装置は、その全体が検査場所に発送されてもよい。それに代わって、口腔流体採取装置10による口腔流体の採取後、第1の構成要素20及びリザーバ構成要素90は、リザーバ構成要素90を第1の構成要素20から取り外すことによって最初に分離されてもよい。クランプ70のコネクタ73の外向き表面には雄ねじが切られており、リザーバ構成要素90上のアパーチャ94の内向き表面には雌ねじが切られている。したがって、第1の構成要素20及びリザーバ構成要素90はともに、口腔流体採取装置10の完成した組立体にねじ留めされる。第1の構成要素20及びリザーバ構成要素90のねじ留めを緩めることは、口腔流体採取装置10の部品を分離する手段である。
【0091】
口腔流体の分析を行うために、流体は、リザーバ構成要素90から取り出されなければならない。いくつかの実施形態では、検査される口腔流体は、注射器を使用してリザーバ構成要素90に穿刺することによって、口腔流体採取装置10のリザーバ構成要素90から取り出される。したがって、第1の構成要素20及びリザーバ構成要素90は、ねじ留めを緩めることによって分離されてもよく、採取された流体を除去するために注射器が使用されてもよい。
【0092】
口腔流体採取キットのリザーバ構成要素90が、分析のために検査試験室(病院、診療所、医療検査施設)に送られることが意図される場合、リザーバ構成要素90及び第1の構成要素20は、十分な口腔流体がリザーバ構成要素90内に採取されたときに分離される。リザーバ構成要素90は、アパーチャ94上に封止手段を配設することによって封止されてもよい。
図4に示されるように、リザーバ構成要素90上のアパーチャ94の内側表面は、雌ねじが切られている。したがって、外部の雄ねじ山を有するプラグが、リザーバ構成要素90を封止するために使用されてもよい。リザーバ構成要素90は、郵便又は配達表面(delivery surface)を通して発送するためのキット供給包装として配設されてもよい。供給される包装は、事前に宛先指定されてもよく、また、口腔流体分析に影響を及ぼし得る極端な温度から、リザーバ構成要素90内に採取された口腔流体を保護するように断熱されてもよい。
【実施例】
【0093】
口腔流体採取装置10が、設計を試験するために製造された。従来のラピッドプロトタイピング技術を使用して、シールド30、クランプ70、及びリザーバ構成要素90を形成した。全ては、商品名VeroWhitePlus RGD835(Stratasys Gmbh、Rheinmunster,DE)として販売されている硬質不透明ポリジェットフォトポリマーを使用して、Objet Polyjetラピッドプロトタイピングマシン(Stratasys Gmbh、Rheinmunster,DE)で製造した。エラストマー構成要素(エラストマーニップル60が示され、後部カバー95が示される)は、プロトタイプ金型及び商品名DragonSkin(商標)30(Smooth-On,Inc.、Macungie,PA)として販売されているシリコーン注型樹脂を使用して成形した。第1の一方向弁82、第2の一方向弁84、及び第3の一方向弁86は、Minivalve,Inc.(Cleveland,OH)によって供給された。これらの構成要素は、4つの標準ステンレス鋼ねじを使用して組み立てられた。組み立てた後、採取ポート64を水のビーカー内に沈め、次いで、連続的な圧縮力をエラストマーニップル60に適用することによって、装置を流体処理能力について試験した。エラストマーニップル60を連続的に圧縮すると、流体流動が発生し、リザーバ構成要素90が流体を蓄積することが観察された。
【0094】
本明細書に開示される特定の実施形態は、本発明のいくつかの態様を例示することを意図するため、本明細書に記載及び特許請求される本発明は、これらの実施形態によって範囲が限定されるものではない。いかなる同等の実施形態も、本発明の範囲内にあることが意図される。実際、本明細書に図示及び説明されたものに加えて、本発明の様々な修正が、前述の説明から当業者には明らかになるであろう。このような修正はまた、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まることが意図される。本明細書で引用された全ての刊行物は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。
【0095】
〔実施の態様〕
(1) 口腔流体採取装置であって、
(a)第1の面及び第2の面を有するシールドと、
(b)外側表面を有し、前記シールドの前記第1の面から延在するニップル内部を画定するエラストマーニップルと、
(c)リザーバ内部を有するリザーバを備える、前記シールドの前記第2の面から延在するリザーバ構成要素と、
(d)前記ニップル内部から前記口腔流体採取装置の外部表面上に配設された大気ベントポートへの流動を動作可能に接続し、可能にする第1の一方向弁を有する第1の流体導管と、
(e)前記リザーバ内部から前記ニップル内部への流動を動作可能に接続し、可能にする第2の一方向弁を有する第2の流体導管と、
(f)前記ニップルの前記外側表面上に配設された採取ポートから前記リザーバ内部の出口ポートへの流動を動作可能に接続し、可能にする第3の一方向弁を有する第3の流体導管と、を備える、口腔流体採取装置。
(2) 前記リザーバ構成要素が、前記シールドに取り外し可能に係合するように配置及び構成されている、実施態様1に記載の口腔流体採取装置。
(3) 前記リザーバ構成要素が、少なくとも1つの変形可能ゾーンを更に含む、実施態様1に記載の口腔流体採取装置。
(4) 前記リザーバ構成要素が、前記リザーバを封入するためのハウジングを更に備える、実施態様1に記載の口腔流体採取装置。
(5) 前記リザーバ構成要素が、前記リザーバ内部に緩衝溶液を配設している、実施態様1に記載の口腔流体採取装置。
【0096】
(6) 前記出口ポートが、前記出口ポート内の液体と前記リザーバ内部の液体との間に空隙を設けるように配置及び構成されている、実施態様1に記載の口腔流体採取装置。
(7) 口腔流体を採取する方法であって、
(a)実施態様1に記載の口腔流体採取装置を包装から取り出すことと、
(b)初期静止容積を有する前記ニップルを被験者の口腔内に挿入することと、
(c)流体を前記ニップル内部から前記大気ベントポートに押し出すために、前記ニップルを変形させることと、
(d)前記ニップルを前記初期静止容積に向けて拡張させ、それによって、前記リザーバ内部から流体を引き込み、前記リザーバ構成要素内の流体圧力を減少させることと、
(e)前記採取ポートを通して前記被験者の口腔から前記リザーバ内部に口腔流体を引き込むことと、を含む、方法。
(8) 前記口腔流体が唾液を含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記リザーバ構成要素を前記シールドから取り外すことを更に含む、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記リザーバ内部に緩衝溶液を加えることを更に含む、実施態様9に記載の方法。
【0097】
(11) 前記リザーバ構成要素が、前記リザーバ内部に緩衝溶液を配設している、実施態様7に記載の方法。
(12) 前記口腔流体を分析することを更に含む、実施態様10又は11に記載の方法。
(13) 口腔流体採取キットであって、
(a)耐久性構成要素であって、
(i)第1の面及び第2の面を有するシールドと、
(ii)外側表面を有し、前記シールドの前記第1の面から延在するニップル内部を画定するエラストマーニップルと、を備える耐久性構成要素と、
(b)前記シールドに取り外し可能に係合するように配置及び構成された複数の取り付け可能なリザーバ構成要素であって、各取り付け可能なリザーバ構成要素が、リザーバ内部を有するリザーバを備える、複数の取り付け可能なリザーバ構成要素と、を備え、
前記耐久性構成要素への前記複数の取り付け可能なリザーバ構成要素のうちの1つの組み立てが、口腔流体採取装置を規定し、前記口腔流体採取装置が、(1)前記ニップル内部から前記口腔流体採取装置の外部表面上に配設された大気ベントポートへの流動を動作可能に接続し、可能にする第1の一方向弁を有する第1の流体導管と、(2)前記リザーバ内部から前記ニップル内部への流動を動作可能に接続し、可能にする第2の一方向弁を有する第2の流体導管と、(3)前記ニップルの前記外側表面上に配設された採取ポートから前記リザーバ内部への流動を動作可能に接続し、可能にする第3の一方向弁を有する第3の流体導管と、を有する、口腔流体採取キット。
(14) 前記複数の取り付け可能なリザーバ構成要素の各々が、個別に包装されている、実施態様13に記載の口腔流体採取キット。
(15) 前記リザーバ構成要素が、少なくとも1つの変形可能ゾーンを更に含む、実施態様13に記載の口腔流体採取キット。
【0098】
(16) 前記リザーバ構成要素が、前記リザーバを封入するためのハウジングを更に備える、実施態様13に記載の口腔流体採取キット。
(17) 前記リザーバ構成要素が、前記リザーバ内部に緩衝溶液を配設している、実施態様13に記載の口腔流体採取キット。
(18) 前記出口ポートが、前記リザーバ内部の中央部分に配設されている、実施態様13に記載の口腔流体採取キット。
(19) リザーバ部分を検査施設に輸送するための指示を更に含む、実施態様13に記載の口腔流体採取キット。
(20) 口腔流体を採取する方法であって、
(a)実施態様13に記載の複数の取り付け可能なリザーバ構成要素のうちの1つを包装から取り出すことと、
(b)ステップ(a)の前記取り付け可能なリザーバ構成要素を前記耐久性構成要素に取り付けることによって、前記口腔流体採取装置を組み立てることと、
(c)初期静止容積を有する前記ニップルを被験者の口腔内に挿入することと、
(d)流体を前記ニップル内部から前記大気ベントポートに押し出すために、前記ニップルを変形させることと、
(e)前記ニップルを前記初期静止容積に向けて拡張させ、それによって、前記リザーバ内部から流体を引き込み、前記リザーバ構成要素内の流体圧力を減少させることと、
(f)前記採取ポートを通して前記被験者の口腔から前記リザーバ内部に口腔流体を引き込むことと、を含む、方法。
【0099】
(21) 前記口腔流体が唾液を含む、実施態様20に記載の方法。
(22) 前記リザーバ構成要素を前記シールドから取り外すことを更に含む、実施態様20に記載の方法。
(23) 前記リザーバ内部に緩衝溶液を加えることを更に含む、実施態様22に記載の方法。
(24) 前記リザーバ構成要素が、前記リザーバ内部に緩衝溶液を配設している、実施態様20に記載の方法。
(25) 前記口腔流体を分析することを更に含む、実施態様23又は24に記載の方法。
【国際調査報告】