(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】作業面上にレーザラインを生成する装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/00 20210101AFI20231024BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20231024BHJP
B23K 26/073 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G02B7/00 A
B23K26/064 A
B23K26/073
G02B7/00 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521407
(86)(22)【出願日】2021-10-07
(85)【翻訳文提出日】2023-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2021077644
(87)【国際公開番号】W WO2022074095
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】102020126267.1
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506065105
【氏名又は名称】トルンプフ レーザー- ウント ジュステームテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】TRUMPF Laser- und Systemtechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Johann-Maus-Strasse 2, D-71254 Ditzingen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ハイメス
(72)【発明者】
【氏名】ユリアン ヘルシュテアン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ヴィマー
【テーマコード(参考)】
2H043
4E168
【Fターム(参考)】
2H043AA02
2H043AA06
2H043AA20
2H043AA23
4E168AC01
4E168AC03
4E168AE05
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA24
4E168DA25
4E168DA26
4E168DA34
4E168DA38
4E168EA09
4E168EA12
(57)【要約】
作業面(14)上にレーザライン(12)を生成する装置は、第1の未処理レーザビーム(20a)を生成するように構成された第1のレーザ光源(16a)を有する。この装置はさらに、第2の未処理レーザビーム(20b)を生成するように構成された第2のレーザ光源(16b)を有する。第1のビーム路(32a)を備えた光学装置(22)は、第1の未処理レーザビーム(20a)を受光し、このビームを第1の光軸(34a)に沿って、第1のコースティクス(38a)および第1のビームプロフィル(40a)を有する第1の照射ビーム(24a)に変形する。光学装置(22)の第2のビーム路(32b)は、第2の未処理レーザビーム(20b)を受光し、このビームを第2の光軸(34b)に沿って、第2のコースティクス(38b)および第2のビームプロフィル(40b)を有する第2の照射ビーム(24b)に変形する。第1の照射ビーム(24a)および第2の照射ビーム(24b)は、オーバーラップしながら作業面(14)に向かって配向されていて、1つの共通の照射方向(18)を規定している。第1のビームプロフィル(40a)および第2のビームプロフィル(40b)は、共通の照射方向(18)に対し垂直に、所定の長軸ビーム幅を持つ長軸と、所定の短軸ビーム幅を持つ短軸とをそれぞれ有する。第1のビームプロフィル(40a)と第2のビームプロフィル(40b)とが合わさって、作業面(14)上にレーザライン(12)を形成する。1つの態様によれば、光学装置(22)は、第1のコースティクス(38a)と第2のコースティクス(38b)とを、照射方向(18)で互いにずらしてポジショニングするように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業面(14)上にレーザライン(12)を生成する装置であって、
当該装置は、第1の未処理レーザビーム(20a)を生成するように構成された第1のレーザ光源(16a)と、第2の未処理レーザビーム(20b)を生成するように構成された第2のレーザ光源(16b)と、光学装置(22)とを備え、
該光学装置(22)は、前記第1の未処理レーザビーム(20a)を受光し、第1の光軸(34a)に沿って、第1のコースティクス(38a)および第1のビームプロフィル(40a)を有する第1の照射ビーム(24a)に変形する第1のビーム路(32a)と、前記第2の未処理レーザビーム(20b)を受光し、第2の光軸(34b)に沿って、第2のコースティクス(38b)および第2のビームプロフィル(40b)を有する第2の照射ビーム(24b)に変形する第2のビーム路(32b)とを備え、
前記第1の照射ビーム(24a)および前記第2の照射ビーム(24b)は、オーバーラップしながら前記作業面(14)に向かって配向されていて、1つの共通の照射方向(18)を規定し、
前記第1の照射ビーム(24a)および前記第2の照射ビーム(24b)は、オーバーラップしながら前記作業面(14)に向かって配向されていて、1つの共通の照射方向(18)を規定し、
前記第1のビームプロフィル(40a)および前記第2のビームプロフィル(40b)は、前記共通の照射方向(18)に対し垂直に、所定の長軸ビーム幅を持つ長軸と、所定の短軸ビーム幅を持つ短軸とをそれぞれ有し、
前記第1のビームプロフィル(40a)と前記第2のビームプロフィル(40b)とが合わさって、前記作業面(14)上に前記レーザライン(12)を形成する、
作業面(14)上にレーザライン(12)を生成する装置において、
前記光学装置(22)は、前記第1のコースティクス(38a)と前記第2のコースティクス(38b)とを、前記照射方向(18)で互いにずらしてポジショニングするように構成されていることを特徴とする、
作業面(14)上にレーザライン(12)を生成する装置。
【請求項2】
前記光学装置は、前記第1のビーム路(32a)に第1のビーム変換器(26a)を、前記第2のビーム路(32b)に第2のビーム変換器(26b)を有し、
前記第1のビーム変換器(26a)は、前記第1の未処理レーザビーム(20a)を変形して、前記第1のビームプロフィル(40a)を生成し、
前記第2のビーム変換器(26b)は、前記第2の未処理レーザビーム(20b)を変形して、前記第2のビームプロフィル(40b)を生成し、
前記第1の光軸(34a)と前記第2の光軸(34b)とが1つの共通のシステム軸(36)を規定し、
前記第1のビーム変換器(26a)および前記第2のビーム変換器(26b)は、前記共通のシステム軸(36)に沿って互いに相対的にずらされて配置されている、
請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記光学装置(22)は、少なくとも1つのビーム変換器(26a,26b)を含み、該ビーム変換器(26a,26b)は、前記第1の未処理レーザビーム(20a)および/または前記第2の未処理レーザビーム(20b)を変形して、相応の前記第1のビームプロフィル(40a)および/または前記第2のビームプロフィル(40b)を生成し、 前記光学装置(22)は、前記第2のビーム路(32b)に光学素子(54)を有し、該光学素子(54)は、前記第2のコースティクス(38b)を前記第1のコースティクス(38a)に対し相対的にずらす、
請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
前記第1のコースティクス(38a)は、照射方向(18)においてプロセスウィンドウ長(46a)を有するプロセスウィンドウ(46a)を規定し、
前記第1のコースティクス(38a)および前記第2のコースティクス(38b)は、前記照射方向(18)において規定された距離(48)だけずらされており、該距離(48)は、前記プロセスウィンドウ長の1.5倍よりも短く、かつ前記プロセスウィンドウ長の0.5倍よりも長く、好ましくは前記プロセスウィンドウ長の1.2倍よりも短く、かつ前記プロセスウィンドウ長の0.8倍よりも長く、特に好ましくは前記プロセスウィンドウ長(46a)の1.1倍よりも短く、かつ前記プロセスウィンドウ長の0.9倍よりも長い、
請求項1から3までのいずれか1項記載の装置。
【請求項5】
前記光学装置(22)は、少なくとも1つのレンズ(30a)を有し、該レンズ(30a)は、前記第1のビームプロフィル(40a)および前記第2のビームプロフィル(40b)の前記短軸に関して優勢な光学的屈折力を有し、
前記レンズ(30a)は、前記短軸に関して所定の実効直径(52)を有し、
前記第1の照射ビーム(24a)および/または前記第2の照射ビーム(24b)は、前記実効直径(52)の50%を超えて、好ましくは70%を超えて、さらに好ましくは90%を超えて、前記レンズを照射する、
請求項1から4までのいずれか1項記載の装置。
【請求項6】
前記第1のビーム路(32a)は第1の中間像を生成し、
前記第2のビーム路は第2の中間像(60)を生成し、
前記第1の光軸および前記第2の光軸は、1つの共通のシステム軸(36)を規定し、前記第1の中間像および前記第2の中間像は、該共通のシステム軸(36)に沿って互いに相対的にずらされて配置されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載の装置。
【請求項7】
前記光学装置は、前記第1のビーム路(32a)に第1のビーム変換器(26a)を、前記第2のビーム路(32b)に第2のビーム変換器(26b)を有し、
前記第2のビーム変換器(26b)は、前記第1のビーム変換器(26a)に対し相対的に、前記第2の光軸(34b)を中心に回転させられている(66)、
請求項1から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
前記光学装置(22)は、前記第1のビーム路(32a)および前記第2のビーム路(32b)に明確な絞りを有することなく、前記第1のビームプロフィル(40a)および前記第2のビームプロフィル(40b)を前記作業面(14)上にフォーカシングする、請求項1から7までのいずれか1項記載の装置。
【請求項9】
前記光学装置(22)は、前記第1のビームプロフィル(40a)および前記第2のビームプロフィル(40b)を、個々の前記長軸および個々の前記短軸において重ね合わせる、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業面にレーザラインを生成する装置に関する。この装置は、第1の未処理レーザビームを生成するように構成された第1のレーザ光源と、第2の未処理レーザビームを生成するように構成された第2のレーザ光源と、光学装置とを備え、この光学装置は、第1の未処理レーザビームを受光し、第1の光軸に沿って、第1のコースティクスおよび第1のビームプロフィルを有する第1の照射ビームに変形する第1のビーム路と、第2の未処理レーザビームを受光し、第2の光軸に沿って、第2のコースティクスおよび第2のビームプロフィルを有する第2の照射ビームに変形する第2のビーム路とを備え、第1の照射ビームおよび第2の照射ビームは、オーバーラップしながら作業面に向かって配向されていて、1つの共通のビーム方向を規定し、第1の照射ビームおよび第2の照射ビームは、オーバーラップしながら作業面に向かって配向されていて、1つの共通の照射方向を規定し、第1のビームプロフィルおよび第2のビームプロフィルは、共通の照射方向に対し垂直に、所定の長軸ビーム幅を持つ長軸と、所定の短軸ビーム幅を持つ短軸とをそれぞれ有し、第1のビームプロフィルと第2のビームプロフィルとが合わさって、作業面上にレーザラインを形成する。
【0002】
かかる装置は、たとえば米国特許出願公開第2014/0027417号明細書に示されている。
【0003】
かかる装置のライン状のレーザ照射は典型的には、ワークピースを加工処理するために使用される。ワークピースをたとえば、支持体材料として用いられるガラスプレート上のプラスチック材料とすることができる。プラスチック材料を特にフィルムとすることができ、このフィルム上で有機発光ダイオード、いわゆるOLED、および/または薄膜トランジスタが製造される。OLEDフィルムは、スマートフォン、タブレットPC、テレビ機器、および画面表示装置を備えた他の機器における最新のディスプレイのために使用される。電子的な構造の製造後、フィルムをガラス支持体から剥がす必要がある。これを細いレーザラインの形態のレーザ照射によって行うことができ、このレーザラインは、規定された速度でガラスプレートに対して相対的に移動させられ、ガラスプレートを貫通してフィルムの固着した結合を剥がす。この種の用途は実際の運用においては、しばしばLLOもしくはLaser Lift Offと呼ばれる。
【0004】
規定されたレーザラインを用いてワークピースを照射することについて、他の用途として考えられるのは、支持体プレート上の非晶質シリコンを1行ずつ溶融させることである。この場合もレーザラインは、規定された速度でワークピース表面に対して相対的に移動させられる。溶融によって、比較的低コストの非晶質シリコンを高価な多結晶シリコンに変換することができる。この種の用途は実際の運用においては、しばしばSolid State Laser AnnealingまたはSLAと呼ばれる。
【0005】
この種の用途のためには、作業面上において以下のようなレーザラインが必要とされる。すなわちこのレーザラインは、一方の方向では、できるかぎり幅の広い作業面を捕捉する目的でできるかぎり長く、これとは対照的に他方の方向では、個々のプロセスに対して必要とされるエネルギー密度を供給する目的で著しく短い。したがって、作業面に対して平行に長く細いレーザラインを生成できる装置が望まれている。レーザラインが延在する方向は、一般にいわゆるビームプロフィルの長軸と呼ばれ、ラインの厚さは短軸と呼ばれる。通常、レーザラインは両方の軸において、それぞれ規定された強度推移を有するのが望ましい。たとえば、レーザラインが長軸においてできるかぎり矩形または場合によっては台形の強度プロフィルを有するのが望ましく、この場合、後者が有利になり得るのは、かかる複数のレーザラインを互いにまとめて、もっと長い全体ラインを形成しようという場合である。短軸においては、用途に応じて矩形の強度プロフィル(いわゆるトップハットプロフィル)、ガウスプロフィル、または別の強度プロフィルが望まれている。
【0006】
国際公開第2018/019374号には、光学装置の光学素子に関する多数の詳細な点を含む適切な装置が開示されている。レーザ源は未処理レーザビームを生成し、長軸を得る目的でこの未処理レーザビームは、いわゆるビーム変換器によって、第1の空間方向において著しく広く扇状に拡開され、次いで均質化される。これに対し垂直に位置する第2の空間方向では、短軸を得る目的でレーザビームがフォーカシングされる。第1の空間方向および第2の空間方向は、レーザビームが作業面に当たるビーム方向に対し垂直に位置している。1つの実施例において示唆されているのは、かかる複数のレーザラインを個々の長軸の方向で互いに並置できる、ということであり、このようにして著しく長いレーザラインが形成される。つまり作業面上にそれぞれ1つのレーザラインを形成する2つの平行な照射ビームは、この実施例では長軸の方向でずらされている。
【0007】
上述の米国特許出願公開第2014/0027417号明細書には、冒頭に述べた形式の装置が開示されており、この場合、第1の照射ビームと第2の照射ビームとが、個々の短軸の方向で互いにずらされている。ここでは第1のビームプロフィルと第2のビームプロフィルとが合わさって、階段状の強度プロフィルを有する1つのレーザラインを形成し、このようにしてワークピースにもたらされるエネルギー自体を、レーザ加工処理の経過中に変化する材料特性に適合させることができる。
【0008】
独国特許出願公開第102018200078号明細書には、短軸に関して光学的屈折力を有するテレスコープ装置を用いてレーザラインを生成する光学装置が開示されている。テレスコープ装置には、光軸に沿って互いに相対的に可動である第1のレンズグループと第2のレンズグループとが含まれている。制御ユニットは、レーザラインの強度およびそのいわゆる半値幅、すなわち強度の50%におけるライン幅(Full Width at Half Maximum,FWHM)を時間的にできるだけ一定に維持する目的で、レーザビーム源がレーザビームを生成する間の運動を制御する。ここで判明したのは、レーザビームの生成中に光学装置の特性が変化する可能性がある、ということである。特に、レーザビームに起因する光学素子の加熱によって、装置の光学特性を変化させるいわゆる熱レンズが形成される可能性がある。独国特許出願公開第102018200078号明細書によれば、このことから生じる焦点ポジションの変化を、テレスコープレンズを互いに相対的に変位させることによって、補償するまたは少なくとも低減することが提案されている。
【0009】
この解決手段の欠点は、テレスコープレンズのポジション調整のために必要とされる機械的なコストである。この運動は摩耗を引き起こすおそれがあり、かつ/または光学装置の誤調整を引き起こすおそれがある。このことに鑑み本発明の課題は、代替的な手法で作業面をこの装置の作業領域内に維持するために役立つ、冒頭で述べた形式の装置を提供することである。
【0010】
本発明の1つの態様によれば、この課題を解決するために、冒頭で述べた形式の装置が提示され、この場合、光学装置は、第1のコースティクスと第2のコースティクスとを、照射方向で互いにずらしてポジショニングするように構成されている。
【0011】
レーザビームのコースティクスは、光学装置の出口からいわゆるビーム焦点への、すなわち最小ビーム直径の場所への、しかも照射方向もしくはビーム伝播方向におけるビーム直径の推移を表す。ビームコースティクスはビームウエストと呼ばれることも多く、したがってコースティクスはレーザビームのビームウエストを含む。よって、好ましい実施例において、特に第1の照射ビームおよび第2の照射ビームのビームウエストが、照射方向もしくはビーム伝播方向で互いに相対的にずらされている。したがって光学装置はこの実施例の場合、第1の照射ビームのビームウエスト(第1のビームウエスト)と第2の照射ビームのビームウエスト(第2のビームウエスト)とを、照射方向で互いにずらしてポジショニングするように構成されている。好ましい実施例において、第1のコースティクスと、第2のコースティクスとは、とりわけ短軸においてコースティクスを観察した場合には、照射方向で互いにずらされているが、長軸においてコースティクスを観察した場合にはまったく、またはせいぜいかろうじて僅かにずらされているだけである。
【0012】
この新たな装置により、短軸におけるビームプロフィルのフォーカシングを生じさせる光学装置もしくは光学素子の互いに相対的な機械的調整を、省略することが可能になる。それというのも、短軸において(さらに長軸においても)ずらされたコースティクスがオーバーラップするからである。その結果、ワークピースを加工するためのプロセスウィンドウが拡大される。熱レンズまたはその他の作用に起因するフォーカスドリフトが生じたとしても、レーザ動作中に機械的に追従調整することなく、ワークピースをプロセスウィンドウ内に保持することができる。
【0013】
したがって好ましくは、ビームプロフィルの短軸に関して光学的屈折力を有する光学素子は、互いに相対的に固定された距離を有する。いくつかの好ましい実施例において、光学素子はそれぞれ定置されている。これによって機械的な摩耗が少なくなり、さらに機械的運動に起因して光学装置が誤調整されるリスクも少なくなる。
【0014】
むしろこの新たな装置は、以下では一部では長手方向とも称するビーム方向において、少なくとも2つのオーバーラップさせられ互いにずらされたコースティクスによって、プロセスウィンドウを所期のように拡大する、という着想に基づいている。したがって好ましい実施例において、新たな装置は、レーザ光源の動作出力および/または動作持続時間に応じた光学素子の加熱に起因するフォーカスドリフトを、意図的に甘受している。ただし光学装置は所期のように、フォーカスポジションのドリフトが生じたとしてもビームプロフィルがプロセスウィンドウ内にとどまるように、一緒に形成されるビームプロフィルのビーム品質を、特に短軸において低減するように構成されている。機械的な追従の代わりに、光学装置は、互いにずらされた2つのコースティクスによって所期のように、いっそう深い被写界深度に合わせて設計されている。
【0015】
したがって新たな装置は、被写界深度とフォーカスシフトとの比に好影響を及ぼす光学装置を有する。装置のプロセスウィンドウは、従来技術の装置に比べて拡大されている。機械的な追従制御およびこれに付随する欠点を回避することができる。よって、上述の課題は完全に解決されている。
【0016】
1つの好ましい実施形態において、光学装置は、第1のビーム路に第1のビーム変換器を、第2のビーム路に第2のビーム変換器を有し、第1のビーム変換器は、第1の未処理レーザビームを変形して、第1のビームプロフィルを生成し、第2のビーム変換器は、第2の未処理レーザビームを変形して、第2のビームプロフィルを生成し、第1の光軸と第2の光軸とが1つの共通のシステム軸を規定し、第1のビーム変換器および第2のビーム変換器は、共通のシステム軸に沿って互いに相対的にずらされて配置されている。
【0017】
この実施形態の場合、照射ビームごとに「固有の」ビーム変換器が用意されており、その際に(少なくとも)2つのビーム変換器が、共通のシステム軸に沿って互いにずらされているようにして、第2のコースティクスに対し相対的に第1のコースティクスのオフセットが達成される。この実施形態は、第1のビーム路と第2のビーム路とをその他の点で同じように実装することができる、という利点を有する。特に、2つのレーザ部分ビームに影響を及ぼし、したがって(少なくとも)2つの照射ビームを成形する装置の光学素子を、互いに平行にポジショニングすることができる。これによって、新たな装置の製造および保守が容易になる。しかもこの実施形態の場合には、長軸において一緒に形成されるビームプロフィルにほとんど影響が及ぼされない。
【0018】
さらなる実施形態において、光学装置は少なくとも1つのビーム変換器を含み、このビーム変換器は、第1の未処理レーザビームおよび/または第2の未処理レーザビームを変形して、相応の第1のビームプロフィルおよび/または第2のビームプロフィルを生成し、さらに光学装置は、第2のコースティクスを第1のコースティクスに対し相対的にずらす光学素子を、第2のビーム路に有する。
【0019】
この実施形態の場合、第1のビーム路に比べて第2のビーム路が少なくとも1つの付加的な光学素子を有するようにして、第2のコースティクスに対し相対的な第1のコースティクスのオフセットが達成される。よって、第1のビーム路と第2のビーム路とをそれぞれ異なったものとすることができる。付加的な光学素子を、少なくとも1つのビーム変換器の上流または下流に配置することができる。よって、この実施形態の実施例は基本的に、第1の照射ビームおよび第2の照射ビームのためのビーム路が1つの共通のビーム変換器の下流で初めて異なるように、2つの照射ビームに対し共通のビーム変換器を含むことができる。この実施形態の別の実施例において、光学装置は、第1のビーム路および第2のビーム路の各々に1つのビーム変換器を含む。この実施形態のいくつかの好ましい実施例において、付加的な光学素子をテレスコープとすることができ、このテレスコープは、第1のコースティクスのポジションに比べて第2のコースティクスのポジションをシフトさせる。この実施形態が有する利点とは、付加的な光学素子を用いることで、既存の設計をベースに新たな装置の実装を比較的簡単に行うことができる、ということである。
【0020】
さらなる実施形態において、第1のコースティクスは、照射方向で所定のプロセスウィンドウ長を有するプロセスウィンドウを規定し、第1のコースティクスおよび第2のコースティクスは、照射方向において規定された距離だけずらされており、この距離は、プロセスウィンドウ長の1.5倍よりも短く、かつプロセスウィンドウ長の0.5倍よりも長く、好ましくはプロセスウィンドウ長の1.2倍よりも短く、かつプロセスウィンドウ長の0.8倍よりも長く、特に好ましくはプロセスウィンドウ長の1.1倍よりも短く、かつプロセスウィンドウ長の0.9倍よりも長い。
【0021】
この実施形態の場合、コースティクスの互いに相対的オフセットは、光学装置の被写界深度のオーダにある。この場合、被写界深度を、照射方向に沿った短軸におけるビーム幅FWHMのパーセンテージ偏差に関して規定することができる。特に、短軸ビーム幅がビームウエストでの短軸ビーム幅に比べて1%だけ、または1%~10%の間の他のパーセント値だけ広くなっている、短軸コースティクスのポイント間の距離として、被写界深度を規定することができる。この実施形態は、手間のかかる分析において、第1のコースティクスに対し相対的な第2のコースティクスのオフセットに関して、とても有利な寸法であることが判明した。それというのも、この寸法によって、ビームプロフィルの長軸ひいてはレーザラインの品質に対し極めて僅かな影響しか伴わずに、プロセスウィンドウの関連する拡大が可能になるからである。
【0022】
さらなる実施形態において、光学装置は、少なくとも1つのレンズを有し、このレンズは、第1のビームプロフィルおよび第2のビームプロフィルの短軸に関して、優勢な光学的屈折力を有し、このレンズは、短軸に関して所定の実効直径を有し、さらに第1の照射ビームおよび/または第2の照射ビームは、実効直径の50%を超えて、好ましくは70%を超えて、さらに好ましくは90%を超えて、このレンズを照射する。
【0023】
この実施形態の場合、少なくとも1つのレンズは、公知の装置において一般的であるよりも広い面積で照射される。換言すれば、少なくとも1つのレンズはその周縁領域に至るまで照射される。フォーカシングすべきレーザビームによる少なくとも1つのレンズの大面積の照射は、一方では、少なくとも1つのレンズが局所的にそれほど強く加熱されないという結果をもたらす。よって、この実施形態は有利には、装置の動作中の熱レンズの形成およびフォーカシングドリフトを低減するのに役立つ。しかもこの実施形態によれば、新たな装置のいっそうコンパクトな構造形態が可能になる。なぜならば、コースティクスのオフセットを有利には、被写界深度のサイズにすることができ、いっそう浅い被写界深度の場合には、これを相応にいっそう小さく選択することができるからである。この場合には、光学装置の結像スケールゆえにたとえば、第2のビーム変換器に対し相対的な第1のビーム変換器の上述のオフセットも小さく選択することができる。この実施形態は、SLA用途のために、もっと一般的には、ビームプロフィルが短軸においてトップハット特性を有する用途のために、特に有利である。
【0024】
さらなる実施形態において、第1のビーム路は第1の中間像を生成し、第2のビーム路は第2の中間像を生成し、第1の光軸と第2の光軸とが1つの共通のシステム軸を規定し、第1の中間像および第2の中間像は、この共通のシステム軸に沿って互いに相対的にずらされて配置されている。
【0025】
この実施形態も、ビームプロフィルが短軸においてトップハット特性を有する用途のために、特に有利である。コースティクスの相対的オフセットを、この場合に容易に、中間像のシフトによって達成することができる。プロセスウィンドウもしくは各ビーム路のプロセスウィンドウ内のウエスト位置によって、対物レンズ上流に位置する共役面が規定される。この共役面を、上流に配置された光学系の有利な実施形態によってシフトさせることができる。いくつかの好ましい実施例において、光学装置は、第2のビーム路に短軸テレスコープを含み、この短軸テレスコープは、第1のビーム路における対応する短軸テレスコープに比べて、共通のシステム軸に沿ってシフトされている。有利にはこのシフトを、新たな装置の取り付け時および調整時に実施することができ、このことによって安価な実装が可能になる。好ましくは、このシフトは、テレセントリック条件を維持しながら実装されている。この実施形態によって、第1のコースティクスおよび第2のコースティクスの分離した画像位置が生成される。
【0026】
さらなる実施形態において、光学装置は、第1のビーム路に第1のビーム変換器を、第2のビーム路に第2のビーム変換器を有し、第2のビーム変換器は、第1のビーム変換器に対し相対的に、第2の光軸を中心に回転させられている。
【0027】
好ましくは、この実施形態における光学装置は、複数のレンズを備えたコリメーション光学系を含み、このコリメーション光学系は、個々の未処理レーザビームが個々のビーム変換器に入射する前に個々の未処理レーザビームをコリメートする。有利には、第2のビーム路におけるレンズのうちの少なくとも1つは、第1のビーム路における対応するレンズに対し相対的に、第2の光軸に沿ってシフトされており、したがって平行なビーム路における個々の未処理レーザビームのコリメーションは互いに異なっている。この実施形態によれば、ビームコースティクスの相対的シフトが極めて効率的な手法で可能になる。
【0028】
さらなる実施形態において、光学装置は、第1のビーム路および第2のビーム路に明確な絞りを有することなく、第1のビームプロフィルおよび第2のビームプロフィルを作業面にフォーカシングする。
【0029】
この実施形態は、LLO用途に特に有利である。この実施形態によれば、たとえばスリット絞りのような明確な絞りを省略することによって、レーザエネルギーを僅かな損失で効率的に作業面に伝達することが可能になる。
【0030】
さらなる実施形態において、光学装置は、第1のビームプロフィルおよび第2のビームプロフィルを、個々の長軸および個々の短軸において重ね合わせる。
【0031】
この実施形態の場合、第1のビームプロフィルおよび第2のビームプロフィルは、長軸においても短軸においても広範囲にわたり、特に90%を超えて、上下に重なり合っている。この実施形態によれば、レーザラインが長軸においても短軸においても重なり合って形成される。この実施形態は、長軸においては著しく均一な強度分布を生じさせ、短軸においては規定された強度分布を生じさせるのに有利に役立つ。
【0032】
自明のとおり、これまで挙げてきた特徴、および以下でこれから説明する特徴は、それぞれ記載された組み合わせに限らず、他の組み合わせでも、または単独の形態でも、本発明の範囲を逸脱することなく適用可能である。
【0033】
図面には本発明の実施例が示されており、それらについて以下の記載で詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1a】新たな装置の第1の実施例を簡略化して示す図である。
【
図1b】新たな装置の第1の実施例を簡略化して示す図である。
【
図2】第1の実施例およびさらなる実施例を説明するために、ビームプロフィルを簡略化して示す図である。
【
図3】照射方向に互いにずらされて配置された、新たな装置のいくつかの実施例による2つのビームウエストを、簡略化して示す図である。
【
図4a】新たな装置の第2の実施例を概略的に示す図である。
【
図4b】新たな装置の第2の実施例を概略的に示す図である。
【
図5】新たな装置のさらなる実施例を説明するために、著しく簡略化して示す図である。
【
図6a】新たな装置のさらなる実施例を概略的に示す図である。
【
図6b】新たな装置のさらなる実施例を概略的に示す図である。
【0035】
図1aおよび
図1bには、新たな装置の第1の実施例がその全体として参照符号10で示されている。
図1aには、レーザライン12を上から見た簡略化された図面で装置10が示されており、レーザライン12はここでは作業面14の領域内に配置されている。装置10は、第1のレーザ光源16aおよび第2のレーザ光源16bを有し、これらの第1のレーザ光源16aおよび第2のレーザ光源16bをたとえば、赤外領域またはUV領域でレーザ光を生成するそれぞれ1つの固体レーザとすることができる。たとえばレーザ光源16a,16bは、1030nmの範囲の波長を有するそれぞれ1つのNd:YAGレーザを含むことができる。さらなる実施例において、レーザ光源16a,16bは、150nm~350nm、500nm~530nmまたは900nm~1070nmの波長を有するレーザ光をそれぞれ生成するダイオードレーザ、エキシマレーザまたは固体レーザを含むことができる。さらに新たな装置の実施例は、Nd:YAGレーザ、ダイオードレーザ、エキシマレーザまたは固体レーザを含むことができ、これらのレーザの未処理レーザビームは、たとえばスプリッタミラー(ここでは図示せず)によって2つの部分ビームに分割され、このようにして以下で説明する光学装置のための入力ビームとして2つの未処理レーザビームが供給される。よって、第1のレーザ光源16aおよび第2のレーザ光源16bは、ここに示されていないいくつかの実施例において、ビームスプリッタ素子が後段に設けられたただ1つのレーザ光源を表すことができる。さらに新たな装置の実施例は、ただ2つのレーザ光源よりも多くのレーザ光源を含むことができる。
【0036】
図1bには、装置10が側方から、すなわちレーザライン12の短軸に向かって見た視点で、示されている。以下では、作業面14に向かう照射方向18が座標軸zで表される。レーザライン12はx軸の方向に延在しており、ライン幅はy軸の方向で観察される。よって、以下ではx軸は長軸を表し、y軸は作業面上に形成されたビームプロフィルの短軸を表す(
図2)。
【0037】
レーザ光源16a,16bはここでは、それぞれ1つの未処理レーザビーム20a,20bを生成する。2つの未処理レーザビーム20a,20bは、光学装置22によって照射ビーム24a,24bに変形される。光学装置22はここでは、第1の未処理レーザビーム20aを(長軸に相応する)x方向において拡張する第1のビーム変換器26aと、第2の未処理レーザビーム20bをx方向に拡張する第2のビーム変換器26bとを含む。好ましい実施例において、ビーム変換器26a,26bをそれぞれ、冒頭で挙げた国際公開第2018/019374号においてビーム変換器について詳しく説明されているように、実装することができる。よって、ビーム変換器26a,26bはそれぞれ、実質的に互いに平行に位置する前面と背面とを備えた、透明でモノリシックなプレート状部材を含むことができる。プレート状部材を、個々の未処理レーザビーム20a,20bに対し鋭角(
図1b参照)で配置することができる。前面および背面は、それぞれ1つの反射性コーティングを有することができ、これによって個々の未処理レーザビーム20a,20bは、個々の前面において斜めにプレート状部材内に入射させられ、プレート状部材内で複数回反射させられてから、プレート状部材の背面において扇状に拡開されて出射させられる。
【0038】
光学装置22はさらに、複数の光学素子28a,28b(ここではごく簡略的に示されている)を備えた長軸光学系28を含み、これらの光学素子は、変形された第1の未処理レーザビーム20aおよび変形された第2の未処理レーザビーム20bを、長軸においてさらに成形する。特にこの長軸光学系28はそれぞれ、1つまたは複数のマイクロレンズアレイ(ここには図示せず)と、主として長軸において正の光学的屈折力を有する1つまたは複数のレンズとを、未処理レーザビーム20a,20bごとに含むことができる。特に、マイクロレンズアレイおよび1つまたは複数のレンズは、それぞれシリンドリカルレンズを含むことができ、これらのシリンドリカルレンズは、y軸に沿って延在し、かつ光学的屈折力を主として長軸に関して有する。マイクロレンズアレイおよび1つまたは複数のレンズは特に、結像ホモジナイザを成すことができ、この結像ホモジナイザは、2つの照射ビーム24a,24bの各々で長軸において有利なトップハット強度プロフィルを得る目的で、未処理レーザビーム20a,20bをそれぞれ長軸において均質化する。
【0039】
光学装置22はさらに、複数の光学素子30a,30b(ここでは著しく簡略化されて示されている)を備えた短軸光学系30を含み、これらの光学素子30a,30bは、変形された第1の未処理レーザビーム20aおよび変形された第2の未処理レーザビーム20bを、短軸においてさらに成形する。
図1bにおいて見て取れるように、第1のビーム変換器26a、長軸光学系28aの光学素子および短軸光学系の光学素子30aは、第1の光軸34aを有する第1のビーム路32aを成している。第2のビーム変換器26b、長軸光学系28bの光学素子および短軸光学系の光学素子30bは、第2の光軸34bを有する第1のビーム路32bを成している。いくつかの好ましい実施例において、光軸34a,34bは互いに平行に延在している。ただし原則的には、光軸34a,34bが互いに斜めに延在している、ということも可能である。光軸34a,34bは、1つの共通のシステム軸36を規定し、このシステム軸36は、図示の実施例において、光軸34a,34bに対し平行に、かつこれらの光軸の間において中心に延在している。通常、共通のシステム軸36は、照射方向18と一致している。この軸は、装置10および/または光学装置22の対称軸を成すことができる。
【0040】
図1aおよび
図1bに示されているように、第1のビーム変換器26aおよび第2のビーム変換器26bは、この実施例では(共通のシステム軸36に関して)距離38だけ互いにずらされて配置されている。その結果、ビーム路32a,32bによってそれぞれ1つのビームコースティクス38a,38bが生成され、その際にビームコースティクス38a,38bは、
図1bに示されているように、(少なくとも短軸に関して)照射方向に互いにずらされている。ただしビームコースティクス38a,38bは、作業面の領域内で重なり合っており、したがって1つの共通のビームプロフィルを成している。
【0041】
図2には、かかるビームプロフィル40が簡略化された図面で示されている。ビームプロフィル40は、x軸およびy軸に沿った個々のポジションに応じて、作業面14上におけるレーザ放射の強度Iを表している。図示されているように、装置10のビームプロフィル40は、x方向において所定の長軸ビーム幅を持つ長軸42と、y方向において所定の短軸ビーム幅を持つ短軸44とを有する。短軸ビーム幅33をたとえば、半値幅(FWHM)として規定することができ、または90%の強度値同士の幅(Full Width at 90% Maximum,FW@90%)として規定することができる。ビームプロフィル40を、ここに簡略化されて示されている短軸における台形状の強度推移とは異なり、ガウスプロフィルまたはトップハットプロフィルとすることができる(後者は実際には当然ながら有限の側縁勾配を有する)。理想的には、作業面の領域において照射ビーム24a,24bが合同に重なり合っているため、ビームプロフィル40は、相応の照射ビーム24a,24bの2つのほぼ同一のビームプロフィル40a,40bから形成される。ワークピース(ここでは図示せず)を加工するために、ビームプロフィル40は典型的には、x方向と交差して作業面14に対し相対的に、特にy方向で、移動させられる。
【0042】
図3には、互いにずらされた2つのビームコースティクス38a,38bの重なり合いが、簡略化された図面で示されている。2つのビームコースティクス38a,38bの各々は、ビームウエスト42aもしくは42bを含み、これらのところで個々の照射ビーム24a,24bは、それぞれ最小ビーム直径を有する。しかも、互いにずらされた2つのビームコースティクス38a,38bの各々は、たとえばレイリー長に基づき規定可能な被写界深度を有する。いくつかの実施例において、被写界深度は、照射方向18に沿った短軸におけるビーム幅FWHMまたはFW@90%Maximumのパーセンテージ偏差に関して規定されている。特に、個々の短軸ビーム幅が個々のビームウエスト42a,42bでの短軸ビーム幅に比べて1%だけ、または1%~10%の間の他のパーセント値だけ広くなっている、短軸コースティクス38a,38bのポイント間の距離として、被写界深度を規定することができる。被写界深度によって、個々の照射ビーム24a,24bごとに、プロセスウィンドウ長46a,46bを有するそれぞれ1つのプロセスウィンドウが規定される。
【0043】
図3に示されているように、光学装置22はいくつかの実施例において、第1のビームコースティクス38aおよび第2のビームコースティクス38bを、ほぼ被写界深度46a,46bのオーダにある距離48だけずらすように構成されている。照射方向18にずらされたビームコースティクス38a,38bの重なり合いによって、装置10は1つの拡大されたプロセスウィンドウ50を有する。
【0044】
図1bには参照符号52によって、好ましくは円筒形であるレンズ30aの実効直径が短軸に関して示されている。いくつかの好ましい実施例において、変形すべきレーザビームは、レンズ30aと、たとえばレンズ30bなど光学装置22の対応するさらなるレンズとを、周縁領域に至るまで、つまりたとえば実効直径52の70%またはそれどころか90%を超えて照射する。その結果として、照射ビーム24a,24bの被写界深度が低減されることになり、このことは、ビーム変換器のオフセット38を最小にするために有利である。たとえば距離38を、いくつかの実施例において、約100μmのビームコースティクス38a,38bの距離48を得るために、約250mm付近とすることができる。なぜならば距離48は、オフセット38と回折次数M
2との積に相当するからである。回折次数は、ビームウエストのところで同じ直径を有する理想的なガウスビームの発散角と比べた実際のレーザビームの発散角を表す。
【0045】
図4aおよび
図4bには、ここでは参照符号10’が付された新たな装置のさらなる実施例が示されている。なお、同じ参照符号はこれまでと同じ要素を表す。
図4aおよび
図4bによる実施例の場合、ビームコースティクス38a,38bのオフセットは、第2のビーム路32bに配置されている付加的な光学素子54を用いて達成される。いくつかの実施例において付加的な光学素子54を、
図4bに示されているように、第2のビーム路32bにおいてビーム変換器26bの下流に配置することができる。他の実施例において付加的な光学素子54を、第2のビーム路32bにおいてビーム変換器26bの上流に配置することができる。いくつかの好ましい実施例において、付加的な光学素子54を、第1の付加的な光学素子54aと第2の付加的な光学素子54bとを有するテレスコープ装置とすることができる。付加的な光学素子54a,54bを、特にレンズ素子またはミラー素子とすることができる。付加的な光学要素54ゆえに、ビーム変換器26a,26bを、システム軸36に関して「同じ高さに」、つまりは相対的オフセット38なしで、配置することができる。
図4bに示されているように、付加的な光学素子54は、とりわけビームプロフィル40の短軸に影響を及ぼす光学的屈折力を有する。
【0046】
図5には、新たな装置のさらなる実施例が、短軸に関してビーム路32bの簡略化された図面で示されている。ここでは、長軸におけるビーム成形用の光学素子は、簡略化のために図示されていない。その他の点では、同じ参照符号はこれまでと同じ要素を表す。この実施例においてビーム路32bは、レンズ素子56,58を備えた短軸テレスコープを含み、この短軸テレスコープは、ビーム路32bに沿ってビーム変換器26bの中間像60を生成する。中間像60は、さらなるレンズ素子62を用いて作業面14上に結像される。かかる実施例は、とりわけSLA用途において望まれているように、作業面14の領域内のビームプロフィルが短軸においてトップハットプロフィルであるようにすべきである場合に、特に有利である。ビームコースティクス38bのオフセットはここでは、
図1aおよび
図1bに関して先に説明したように、ビーム変換器26bのオフセットを介して達成することができ、かつ/または中間像60のシフトによって達成することができ、このことを、レンズ素子56,58による短軸テレスコープの適切な調整および/または寸法設定によって行うことができる。
【0047】
図6aおよび
図6bには、新たな装置のさらなる実施例が示されている。同じ参照符号はこれまでと同じ要素を表す。
図6aおよび
図6bによる実施例の場合には、
図6bにおいて矢印66で示唆されているように、第2のビーム路32bにおけるビーム変換器26bが、第1のビーム路32aにおけるビーム変換器26aに比べて、z軸を中心に回転させられていることにより、ビームコースティクス38a,38bの相対的オフセットが達成される。z軸を中心とした回転66は、出射側のビームパケットの垂直方向のオフセットを結果として引き起こし、作業面14における短軸ビームプロフィルの側縁勾配に影響を及ぼす。これに関する詳細は、独国特許発明第102018115126号明細書ならびに本出願人の同じ優先権の国際公開第2019/243042号に記載されており、これらはここで参照したことにより本明細書に組み込まれるものとする。しかもこの実施例の場合、装置は、個々のビーム変換器26a,26bの上流にそれぞれ1つのコリメーション光学系68a,68bを有する。個々のコリメーション光学系68a,68bは個々の未処理レーザビーム20a,20bを、それらが個々のビーム変換器26a,26bに入射する前にコリメートする。この実施例の1つの好ましい変形実施形態において、個々のコリメーション光学系68a,68bは、複数のレンズ70a,72aもしくは70b,72bを含む。有利には、第2のビーム路32bにおけるレンズのうちの少なくとも1つ、たとえばレンズ70b、は、z方向において対応するレンズ70aに対し相対的にシフトされており、したがって平行なビーム路32a,32bにおける個々の未処理レーザビーム20a,20bのコリメーションは互いに異なっている。レンズ70bのシフトによるコリメーションの変形実施形態によって、ビーム変換器26bの回転66と共働して、コースティクス38bの著しく有利なシフトがもたらされる。いくつかの実施例において、レンズ70a,72aもしくは70b,72bは、それぞれ1つのテレスコープ装置を成すことができる。変更されたコリメーションを、仮想的に個々のビーム変換器26bの上流に位置させることもできる。
【国際調査報告】