(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)阻害剤による自己免疫疾患の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/455 20060101AFI20231024BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20231024BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231024BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20231024BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231024BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20231024BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20231024BHJP
A61K 31/52 20060101ALI20231024BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
A61K31/455
A61P37/06
A61P43/00 111
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P25/00
A61P1/04
A61P43/00 121
A61K31/52
A61K45/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023521726
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 SG2021050625
(87)【国際公開番号】W WO2022081095
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】10202010254Q
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(31)【優先権主張番号】10202012817S
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)掲載アドレス; (1)https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-to-develop-aslan003-as-next-generation-dhodh-inhibitor-in-autoimmune-conditions/ (2)https://aslanpharma.com/wp-content/uploads/2020/10/201016-ASLAN003-Development.pdf 掲載年月日;令和2年(2020年)10月16日 (2)掲載アドレス; (1)https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-reports-third-quarter-2020-financial-results-and-provides-corporate-updates/ (2)https://aslanpharma.com/wp-content/uploads/2020/10/ASLAN-3Q20-Financial-Release_.pdf 掲載年月日;令和2年(2020年)11月9日 (3)掲載アドレス; (1)https://aslanpharma.com/aslan-pharmaceuticals-announces-loan-facility-providing-up-to-45-million-from-k2-healthventures/ (2)https://aslanpharma.com/wp-content/uploads/2021/07/ASLAN-Pharmaceuticals-Announces-Loan-Facility-Providing-Up-To-45-Million-From-K2-HealthVentures.pdf 掲載年月日;令和3年(2021年)7月13日
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523066185
【氏名又は名称】アスラン ファーマスーティカルズ ピーティーイー エルティーディー
(71)【出願人】
【識別番号】598032139
【氏名又は名称】アルミラル・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】Almirall, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムーア,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エンドウ,イサナ
(72)【発明者】
【氏名】ファース,カール
(72)【発明者】
【氏名】ドイル,スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】ゴデザート マリナ,ヌリア
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZA021
4C084ZA661
4C084ZA681
4C084ZA961
4C084ZB081
4C084ZB151
4C084ZC201
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC19
4C086CB07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA02
4C086ZA66
4C086ZA68
4C086ZA96
4C086ZB08
4C086ZB15
4C086ZC20
4C086ZC75
(57)【要約】
患者における自己免疫疾患を治療する方法であって、治療有効量のDHODH阻害剤又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。自己免疫疾患の治療に好適な製剤又は組成物も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己免疫疾患を治療する方法であって、治療有効量のDHODH阻害剤2-(3,5-ジフルオロ-3’メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項2】
自己免疫疾患の治療に使用するための、DHODH阻害剤2-(3,5-ジフルオロ-3’メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
自己免疫疾患の治療のための医薬品の製造における、DHODH阻害剤2-(3,5-ジフルオロ-3’メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸又はその薬学的に許容される塩の、使用。
【請求項4】
前記自己免疫疾患が、化膿性汗腺炎、強皮症(全身性強膜炎)、扁平苔癬、モルフェア、乾癬、1型真性糖尿病、自己免疫甲状腺炎、グレーブス病、子宮内膜症、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、軸性脊椎炎、若年性関節炎、回帰性リウマチ、乾癬性関節炎、関節リウマチ(RA)、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス(SLE)、未分化結合組織疾患(UCTD)、多発性硬化症、パターンII、レストレスレッグス症候群、視神経炎、ブドウ膜炎、強膜炎、モーレン潰瘍、メニエール病、グレーブス眼症(Graves’ opthalmopathy)、視神経脊髄炎、スザック症候群、及びエリテマトーデス(lupus erythrematosus)を含むか、又はそれらからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項5】
前記自己免疫疾患が、多発性硬化症、関節リウマチ、並びに潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患を含むか、又はそれらからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項6】
前記自己免疫疾患が、以下、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ankylosing spondilytis)、多発性硬化症、ウェゲナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、乾癬、サルコイドーシス多関節型若年性特発性関節炎、潰瘍性大腸炎若しくはクローン病などの炎症性腸疾患、ライター症候群、線維筋痛症、又は1型糖尿病のうちの1つ以上ではない、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項7】
前記自己免疫疾患が、一次進行型多発性硬化症などの多発性硬化症である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項8】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項9】
前記自己免疫疾患が、炎症性腸疾患、例えば、セリアック病、クローン病、又はクローン病などの潰瘍性大腸炎である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項10】
前記自己免疫疾患が、異常なT細胞及び/又はB細胞活性化を特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項11】
前記自己免疫疾患が、重度である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項12】
前記DHODH阻害剤が、単剤療法として用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項13】
前記DHODH阻害剤が、併用療法に用いられる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項14】
前記併用療法が、独立して、
i.コルチコステロイド(例えば、経口プレドニゾン及び静脈内メチルプレドニゾロン)、血漿交換(プラズマフェレーシス)、インターフェロンベータ薬、酢酸グラチラマー、フィンゴリモド、フマル酸ジメチル、フマル酸ジロキシメル(diroximel fumarate)、テリフルノミド、シポニモド、クラドリビン、オクレリズマブ、ナタリズマブ、抗CD20剤又はそのバイオシミラー、例えば、リツキシマブ、アレムツズマブ、及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、
ii.多発性硬化症の症状を緩和又は低減するための治療、例えば、筋弛緩剤(バクロフェン、チザニジン、及びシクロベンザプリンなど)、疲労を低減するための薬(アマンタジン、モダフィニル、及びメチルフェニデートなど)、及び歩行速度を上げるための薬(ダルファンプリジンなど)、
iii.抗うつ剤、例えば、デュロキセチン、及び三環系抗うつ剤、例えば、クロミプラミン、
iv.インターフェロンベータ(IFN-β)、例えば、インターフェロンベータ-1a又はインターフェロンベータ-1b、
v.抗CD20剤又はそのバイオシミラー、例えば、Rituxan(リツキシマブ)、リツキシマブバイオシミラー、Gazyva、Kesimpta、Ocrevus(オクレリズマブ)、Ruxience、Truxima、Zevalin、Arzerra、AcellBia、HLX01、Reditux、Ritucad、及びZytux、並びに
vi.ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、例えば、イブルチニブ、アカラブルチニブ、ザヌブルチニブ(Zanubrutinib)、エボブルチニブ(Evobrutinib)、ABBV-105、フェネブルチニブ(Fenebrutinib)、GS-4059、スペブルチニブ(Spebrutinib)、及びHM71224から選択される治療を含む、請求項13に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項15】
前記併用療法が、メトトレキサートを含まない、請求項13又は14に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項16】
前記併用療法が、アザチオプリンなどのプリン合成阻害剤を含む、請求項13~15のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項17】
前記DHODH阻害剤が、1日当たり1mg~400mg、例えば、1日当たり100mg~400mg、例えば、100mg、200mg、300mg、又は400mgの範囲の用量で投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【請求項18】
前記DHODH阻害剤が、毎日、例えば、毎日1回投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、単独で又は別の療法と組み合わせて、自己免疫疾患の治療のためのDHODH阻害剤の使用に関する。
【0002】
【背景技術】
【0003】
自己免疫疾患病理は、異常なT細胞及び/又はB細胞で身体が自らを攻撃することを特徴とする。「自己免疫疾患」は多くの特定の疾患を網羅するが、生物学的プロセスを駆動するいくつかの基本的に類似する基礎となる機序がある。多くの自己免疫疾患の一般的な症状には、疲労、関節の痛み及び腫れ、皮膚の問題、異常な痛み又は消化問題、再発する発熱、腺の腫れが含まれる。
【0004】
自己免疫疾患の危険因子には、遺伝学(特に多発性硬化症(MS))、肥満、喫煙、並びにある特定の薬、例えば、抗生物質、スタチン、及び血圧を下げるために使用されるいくつかの薬が含まれる。
【0005】
結果として生じる疾患は、診断、治療が困難であり、非常に衰弱性である可能性がある。自己免疫疾患の患者のための満たされていない真のニーズがある。MSが明らかに重度である場合のいくつかの症例では、アプローチは、患者の免疫系を一掃し、幹細胞移植を行うことである。これは、危険で困難かつ高価な手技であり、最終手段の治療である。
【0006】
プリン及びピリミジンヌクレオチドは、DNA及びRNA合成、並びに膜脂質生合成及びタンパク質グリコシル化において重要な役割を果たす。それらは、成熟Tリンパ球の発達及び生存のために必要である。Tリンパ球の活性化は、プリン及びピリミジンプールの増加に関連しており、これは、次いで、デノボプリン及びピリミジン合成に関与する重要な酵素の活性の著しい増加をもたらす。
【0007】
ピリミジンは、T細胞のライフサイクルの初期から中間S相への進行を制御するために重要であると考えられている。ピリミジンの阻害はまた、活性化T細胞のアポトーシスを引き起こす。
【0008】
同様に、ピリミジンの生合成はまた、活性化B細胞のライフサイクルにおいても重要である。
【0009】
理論に拘束されることを望まないが、本発明者らは、ピリミジンの生合成の遮断が、自己免疫疾患において異常な活性を有する活性化T細胞及び/又はB細胞における細胞周期停止及び/又はアポトーシスを引き起こすと考えている。
【0010】
ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)は、ピリミジン生合成経路の第4のステップ、すなわち、フラビンモノヌクレオチド中間体を介したユビキノン(補因子Q)への電子伝達と同時に、ジヒドロオロテートのオロテートへの変換を触媒する酵素である(Loffler MoI Cell Biochem, 1997)。ピリミジン源としてこのデノボ経路のみを有する寄生虫(Plasmodium falciparum) (McRobert et al MoI Biochem Parasitol 2002)及び細菌(E.coli)とは対照的に、哺乳類細胞は追加のサルベージ経路を有する。
【0011】
恒常性増殖の間、DHODHとは独立したサルベージ経路は、ピリミジン塩基の細胞供給に十分であるようである。しかし、高い回転率を有する細胞では、増殖するにはデノボ経路が必要である。これらの細胞において、DHODH阻害剤は、DNA合成を抑制し、最終的に細胞増殖を抑制することによって、細胞周期の進行を停止させる(Breedveld F.C. Ann Rheum Dis 2000)。
【0012】
電子伝達鎖複合体IIIの構成要素であるミトコンドリアシトクロムbc1の阻害が、p53の活性化をもたらし、続いて、アポトーシスの誘導をもたらすといういくつかの示唆がある。ミトコンドリア呼吸鎖は、ミトコンドリア酵素ジヒドロオロト酸デヒドロゲナーゼ(DHODH)を介して、デノボピリミジン生合成経路に結合される。
【0013】
各DHODH阻害剤の薬物プロファイルは非常に異なり、例えば、レフルノミドの副作用としては、動脈性高血圧、骨髄抑制、吐き気、及び脱毛が挙げられる。ブレキナルは、一般に、分子がインビボで必要な活性を欠くことを臨床試験が示唆しているため、モデル化合物としてのみ用いられる。ビドフルジムス(Vidofludimus)は、活性化リンパ球からの炎症促進性サイトカイン(IL-17など)の産生を阻害する次世代DHODH阻害剤である。しかしながら、後者はDHODH活性とは無関係であると考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
DHODH阻害剤は、治療薬として関心のあるものであったが、インビボで有効な治療薬を提供するために、全ての必要な基準のバランスをとる分子を見つけることが困難であった。
【0015】
本開示は、多発性硬化症、自己免疫皮膚疾患、及び炎症性腸疾患(例えば、クローン病)などの自己免疫疾患の治療における、特定のDHODH阻害剤ASLAN003の使用を提供する。
【0016】
ASLAN003は、自己免疫疾患、すなわち、異常なT細胞及び/又はB細胞の基礎原因に対する活性を有し、これは、意外にも、インビボで、オフターゲット効果、特に肝毒性が最小限である、自己免疫疾患に対する広範囲の活性に変わる。ASLAN003は、DHODHに高い親和性を有し、臨床において有効である。ASLAN003は、次世代DHODH阻害剤であり、忍容性が高く、患者に優れた結果をもたらす。それは、病状を制御し、その進行を停止させ、かつ/又は疾患を寛解の状態に変える、患者の生活の質に好影響を与える能力を有する。有利に、代謝負荷が低い健康な細胞は、一般に、治療による影響を受けない。治療のバランスのとれた特徴は、患者にとって非常に有益である。
【0017】
理論に拘束されることを望まないが、一実施形態では、本治療は、疾患修飾であると考えられる。つまり、治療期間後、身体は、例えば、療法の施行を継続する必要がないか、又は維持のために低用量で療法が継続される場合、自らリセットし、自己免疫疾患を寛解させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示は、以下の段落に要約されている。
1.患者における自己免疫疾患を治療する方法であって、治療有効量のDHODH阻害剤2-(3,5-ジフルオロ-3’メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸又はその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
1A 自己免疫疾患を有する患者又はその疑いのある患者における使用するための、DHODH阻害剤2-(3,5-ジフルオロ-3’メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸又はその薬学的に許容される塩。
1B 自己免疫疾患の治療のための医薬品の製造における、DHODH阻害剤2-(3,5-ジフルオロ-3’メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸又はその薬学的に許容される塩の、使用。
2.自己免疫疾患が、化膿性汗腺炎、強皮症(全身性強膜炎)、扁平苔癬、モルフェア、乾癬、1型真性糖尿病、自己免疫甲状腺炎、グレーブス病、子宮内膜症、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、軸性脊椎炎、若年性関節炎、回帰性リウマチ、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス(SLE)、未分化結合組織疾患(UCTD)、多発性硬化症、パターンII、レストレスレッグス症候群、視神経炎、ブドウ膜炎、強膜炎、モーレン潰瘍、メニエール病、グレーブス眼症、視神経脊髄炎、スザック症候群、及びエリテマトーデスを含むか、又はそれらからなる群から選択される、段落1、1A又は1Bに記載の方法、阻害剤、又は使用。
3.自己免疫疾患が、炎症性腸疾患、例えば、セリアック病、クローン病、クローンなどの潰瘍性大腸炎である、段落1、1A、又は1Bのいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
4.自己免疫疾患が、皮膚障害である、段落1、1A、又は1Bのいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
5.自己免疫疾患が、異常なT細胞応答を特徴とする、段落1、1A又は1B~4のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
6.自己免疫疾患が、異常なB細胞応答を特徴とする、段落1、1A又は1B~5のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
7.自己免疫疾患が、例えば、標準治療薬によって十分に制御されない、段落1、1A又は1B~6のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
8.自己免疫疾患が、重度である、段落1、1A又は1B~7のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
9.自己免疫疾患が、以下、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎(ankylosing spondilytis)、多発性硬化症、ウェゲナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、乾癬、サルコイドーシス多関節型若年性特発性関節炎、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎及びクローン病など)、ライター症候群、線維筋痛症、又は1型糖尿病のうちの1つ以上ではない、段落1、1A又は1B~8のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
10.自己免疫疾患が、炎症性腸疾患、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び/又はセリアック病(並びにそれらの合併症、例えば、関節炎、ブドウ膜炎、結節性紅斑、及び黄疸)を含む大腸炎である、段落1、1A又は1B~8のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
11.自己免疫疾患が、皮膚障害、例えば、アトピー性皮膚炎(自己免疫プロゲステロン皮膚炎を含む)、乾癬、紅斑(結節性紅斑を含む)、強皮症、及びループスである、段落1、1A又は1B~8のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
12.自己免疫疾患が、関節リウマチである、段落1、1A又は1B~8のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
13.自己免疫疾患が、多発性硬化症である、段落1、1A又は1B~8のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
14.多発性硬化症が、再発寛解型多発性硬化症である、段落13に記載の方法、阻害剤、又は使用。
15.多発性硬化症が、二次進行型多発性硬化症である、段落13又は14に記載の方法、阻害剤、又は使用。
16.多発性硬化症が、一次進行型多発性硬化症である、段落13に記載の方法、阻害剤、又は使用。
17.症状の重症度が低減される、例えば、運動機能、痙攣、筋痙攣、及び/又は硬直が、治療によって改善される、段落13~16のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
18.再発の頻度又は重症度が、治療によって低減される、段落13~17のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
19.異常なT細胞活性化が最小限に抑えられ、例えば、T細胞ライフサイクルの初期から中間S相への進行が阻害される、段落1~18のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
20.メモリーT細胞の活性化が減少している、段落19に記載の方法、阻害剤、又は使用。
21.TH1 T細胞の異常な活性化が阻害される、段落19又は20に記載の方法、阻害剤、又は使用。
22.TH2 T細胞の活性化が阻害されない、段落1、1A又は1B~21のいずれか1つに記載の方法。
23.異常なB細胞活性化が阻害され、例えば、細胞ライフサイクルにおけるS相の進行を制限することによって阻害される、段落1、1A又は1B~22のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
24.刺激における異常な免疫細胞のアポトーシス、段落1、1A又は1B~23のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
25.治療が、自己免疫疾患の再燃のためである、段落1、1A又は1B~24のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
26.治療が、例えば1用量当たり100~400mg(例えば、1日当たり)、特に1用量当たり300~400mg(例えば、1日当たり)を少なくとも一定期間にわたって継続され、任意選択で、例えば1用量当たり100~200mg(例えば、1日当たり)を維持する、段落1、1A又は1B~25のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
27.治療が、間欠的であるか、又は期間後、例えば、定義されたエンドポイントの後に、中止される、段落1、1A又は1B~25のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
28.DHODH阻害剤が、単剤療法として用いられる、段落1、1A又は1B~27のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
29.DHODH阻害剤が、併用療法に用いられる、段落1、1A又は1B~27のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
30.併用療法が、独立して、コルチコステロイド(例えば、経口プレドニゾン及び静脈内メチルプレドニゾロン)、血漿交換(プラズマフェレーシス)、インターフェロンベータ薬、酢酸グラチラマー、フィンゴリモド、フマル酸ジメチル、フマル酸ジロキシメル(diroximel fumarate)、テリフルノミド、シポニモド、クラドリビン、オクレリズマブ、ナタリズマブ、抗CD20剤又はそのバイオシミラー、例えば、リツキシマブ、アレムツズマブ、及びブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤から選択される治療を含む、段落29に記載の方法、阻害剤、又は使用。
31.併用療法が、多発性硬化症の症状を緩和又は低減するための治療、例えば、筋弛緩剤(バクロフェン、チザニジン、及びシクロベンザプリンなど)、疲労を低減するための薬(アマンタジン、モダフィニル、及びメチルフェニデートなど)、及び/又は歩行速度を上げるための薬(ダルファンプリジンなど)を含む、段落29又は30に記載の方法、阻害剤、又は使用。
32.併用療法が、抗うつ剤、例えば、三環系抗うつ剤、例えば、クロミプラミンを含む、段落29~31のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
33.併用療法が、デュロキセチンを含む、段落29~32のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
34.組み合わせが、ミラベグロン及び/又はデスモプレシンを含む、段落29~33のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
35.併用療法が、インターフェロンベータ(IFN-β)、例えば、インターフェロンベータ-1a又はインターフェロンベータ-1bを含む、段落29~34のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
36.併用療法が、抗CD20剤又はそのバイオシミラー、例えば、Rituxan(リツキシマブ)、リツキシマブバイオシミラー、Gazyva、Kesimpta、Ocrevus(オクレリズマブ)、Ruxience、Truxima、Zevalin、Arzerra、AcellBia、HLX01、Reditux、Ritucad、又はZytuxを含む、段落29~35のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
37.併用療法が、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、例えば、イブルチニブ、アカラブルチニブ、ザヌブルチニブ(Zanubrutinib)、エボブルチニブ(Evobrutinib)、ABBV-105、フェネブルチニブ(Fenebrutinib)、GS-4059、スペブルチニブ(Spebrutinib)、又はHM71224を含む、段落29~36のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
38.併用療法が、メトトレキサートを含まない、段落29~37のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
39.併用が、アザチオプリンなどのプリン合成阻害剤を含む、段落29~38のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
40.併用が、生物学的治療薬、例えば、抗体又はその結合断片、特に、デュピルマブ、又は抗IL-13Rα1抗体若しくはその抗原結合断片、例えば、ASLAN004を含み、それらのうちのいずれか1つの薬学的製剤を含む、段落29~39のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
41.DHODH阻害剤が、1日当たり1mg~400mg、例えば、1日当たり100mg~400mg(例えば、1日当たり100mg、200mg、300mg、又は400mg)の範囲の用量で投与される、段落1、1A又は1B~40のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
42.DHODH阻害剤が、毎日、例えば、毎日1回投与される、段落1、1A又は1B~41のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
43.患者が、ヒトである、段落1、1A又は1B~42のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
44.患者が、少なくとも40歳、例えば、45歳、少なくとも50歳、少なくとも55歳、少なくとも60歳、少なくとも65歳、少なくとも70歳、少なくとも75歳の年齢を有する、段落1、1A又は1B~43のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
45.患者が、併存疾患を有する、段落1、1A又は1B~44のいずれか1つに記載の方法、阻害剤、又は使用。
46.併存疾患が、肥満、アレルギー、喘息、COPD、糖尿病、腎不全、心疾患(心不全を含む)、がん、認知症、肝疾患、及びそれらの組み合わせから選択される、段落45に記載の方法、阻害剤、又は使用。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】多発性硬化症の実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)モデルにおけるASLAN003(LAS186323)のインビボ研究の結果を示すグラフである。これは、ASLAN003が投与されたときの用量依存的応答を示す。
【
図2】各処置群の臨床スコア曲線下面積(AUC)の平均を示すグラフである。
【
図4】経時的な疾患の進化を示すグラフである。Y軸=臨床スコア、X軸=治療日、V=ビヒクル、F=陽性対照F、T=陽性対照T、L=ASLAN003(LAS186323)。イニシャルの後の数字は、投与されたmg/kgでの化合物の毎日の経口毎日用量に対応する。
【
図5】血液細胞数を示すグラフである。Y軸=細胞数、WBC=白血球、RBC=赤血球、HGB=ヘモグロビン、NEUT=好中球、LYMPH=リンパ球。各細胞型について、左から右へのバーは以下のとおりである:ナイーブ、V、F-0.1、T-1、T-3、T-10、L-1、L-3、L-10、及びL-15。 V=ビヒクル、F=陽性対照、T=陽性対照、L=ASLAN003(LAS186323)。イニシャルの後の数字は、投与されるmg/kgでの化合物の毎日の経口毎日用量に対応する。
【
図6】関節リウマチ(RA)アジュバント誘導関節炎(AIA)モデルにおける各処置群の(AUC)スコアを示すグラフである。T-3:3mg/kgでの陽性対照T、Bonferroniの事後検定を用いた一元配置ANOVA、*p<0.05
【
図7】RA AIAモデルにおける各処置群のX線スコアを示すグラフである。T-3:3mg/kgでの陽性対照T。
【
図8A】デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導炎症性腸疾患(IBD)モデルにおける各処置群の体重を示すグラフ*である。
【
図8B】DSS誘導IBDモデルにおける各処置群の体重の変化%を示すグラフ*である。
【
図9A】DSS誘導IBDモデルにおける各処置群の便の粘稠性スコアを示すグラフ*である。
【
図9B】DSS誘導IBDモデルにおける各処置群の血便スコアを示すグラフ*である。
【
図10】DSS誘導IBDモデルにおける各治療群の疾患活動指数(DAI)を示すグラフ*である。
【
図11】DSS誘導IBDモデルにおける各処置群の腸透過性試験(FITC濃度)の結果を示すグラフ*である。
【
図12A】DSS誘導IBDモデルにおける各処置群の結腸重量を示すグラフ*である。
【
図12B】DSS誘導IBDモデルにおける各処置群の結腸の長さを示すグラフ*である。
【
図12C】DSS誘導IBDモデルにおける各処置群の結腸の重量/長さを示すグラフ*である。
【
図12D】DSS誘導IBDモデルにおける各処置群の脾臓重量を示すグラフ*である。
【
図13】DSS誘導IBDモデルにおける各処置群の糞便データにおけるリポカリンを示すグラフ*である。*エラーバーは、平均(SEM)からの標準誤差を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
2-(3,5-ジフルオロ-3’-メトキシビフェニル-4-イルアミノ)ニコチン酸(本明細書ではASLAN003と称される)は、以下の構造を有する。
【化1】
自己免疫疾患
本明細書で使用される自己免疫疾患は、個体の免疫系が誤ってその個体自身の正常な「健康な」細胞を標的とし、特に異常なT細胞及び/又はB細胞活性化を特徴とする、任意の疾患又は状態を指す。
【0021】
本明細書で用いられる異常なT細胞及び/又はB細胞活性化は、異常なT細胞及び/又はB細胞活性化、特に、異常な細胞が自己又は自己抗原を認識する場合を指す。
【0022】
重度の自己免疫疾患は、疾患が標準治療医薬品/治療によって制御されていない場合である。
【0023】
再燃は、疾患の悪化期間である。
【0024】
本明細書で用いられる「十分に制御されない」とは、標準治療薬が症状を軽減又は制御できない場合、特に患者の生活の質が悪影響を受ける場合を指す。
【0025】
本明細書で用いられる「定義されたエンドポイント」は、臨床的に定義されたポイント、例えば、寛解又は安定した疾患を指す。
【0026】
一実施形態では、ASLAN003は、例えば、低用量で維持療法に用いられる。本明細書で用いられる維持療法は、疾患を安定させるか、又は疾患を寛解状態に保つための継続療法、例えば、投与される用量が低く、特に頻繁である場合を指す。例えば、1日に1回又は2回与えられる100~200mgの用量は、維持療法として使用され得る。
【0027】
一実施形態では、自己免疫疾患は、自己免疫皮膚疾患、すなわち、皮膚、特にループスなどの真皮及び/又は表皮に現れる又は提示される自己免疫疾患である。
【0028】
したがって、一実施形態では、自己免疫疾患は、急性播種性脳脊髄炎(adem)、急性壊死性出血性白質脳炎、アジソン病、副腎不全、コルチゾール低下症(hypocortisolism)、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、脊椎関節炎、シュトリュンペル・マリー病、抗GBM/抗TBM腎炎、抗リン脂質症候群(aps)、自己免疫血管浮腫、自己免疫再生不良性貧血、自己免疫自律神経障害、自己免疫肝炎、自己免疫高脂血症、自己免疫免疫不全、自己免疫内耳疾患(AIED)、自己免疫リンパ増殖性症候群(ALPS)、カナル-スミス症候群、自己免疫心筋炎、自己免疫卵巣炎、自己免疫膵炎(AIP)、自己免疫多腺症候群(I、II、及びIII型)、自己免疫網膜症(AR)、自己免疫血小板減少性紫斑病(ATP)、自己免疫甲状腺疾患、自己免疫蕁麻疹、軸索/神経性ニューロパチー、バロー病、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、慢性再発性多巣性骨髄炎(CRMO)、チャーグ-ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡/良性粘膜性類天疱瘡(CP)、クローン病、炎症性腸疾患、大腸炎(潰瘍性大腸炎を含む)、腸炎、回腸炎、コーガン症候群、寒冷凝集素病、先天性心ブロック、コクサッキー心筋炎、クレスト病、クリオグロブリン血症、脱髄性ニューロパチー、疱疹状皮膚炎、デューリング病、皮膚筋炎、糖尿病、I型、円板状エリテマトーデス(DLE)、ドレスラー症候群、子宮内膜症、表皮水疱症(EB)及び後天性表皮水疱症(EBA)、好酸球性胃腸炎、食道炎、好酸球性筋膜炎、シュルマン症候群、結節性紅斑、実験的アレルギー性脳脊髄炎、エバンス症候群、線維化性肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、糸球体腎炎(非増殖性:巣状分節性糸球体硬化症及び膜性糸球体腎炎。増殖性:IgA腎症)、グッドパスチャー症候群、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)(以前はウェゲナー肉芽腫症と呼ばれた)、グレーブス病、ギラン-バレー症候群、ミラーフィッシャー症候群、急性運動性軸索型ニューロパチー、急性運動感覚性軸索型ニューロパチー、急性汎自律性ニューロパチー、ビッカースタッフ型脳幹脳炎、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、溶血性貧血、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、妊娠性疱疹、低ガンマグロブリン血症、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、IgA腎症(IGAN)、バージャー症候群、咽頭炎併発糸球体腎炎、IgA天疱瘡、IgG4関連硬化性疾患、免疫調節性不妊症、封入体筋炎、インスリン依存性真性糖尿病、間質性膀胱炎、アイザック症候群、ニューロミオトニア、若年性関節炎、若年性筋炎、川崎症候群、ランバート-イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質結膜炎、線状IgA皮膚病(LAD)、類天疱瘡、ループス(SLE)、ライム病、メニエール病、顕微鏡的多発血管炎(MPA)、混合性結合組織病(MCTD)、単クローン性免疫グロブリン異常症、モーレン潰瘍、ムッハ-ハーベルマン病、多発性硬化症、重症筋無力症、筋炎、ナルコレプシー、視神経脊髄炎(デビック)、ニューロミオトニア、アイザック症候群(後天性、腫瘍随伴、遺伝性)、好中球減少症、眼部瘢痕性類天疱瘡、視神経炎、卵巣炎、オプソクローヌス-ミオクローヌス症候群、精巣炎、回帰性リウマチ、panda(ストレプトコッカスに関連する小児自己免疫精神神経障害)、腫瘍随伴性自己免疫多臓器症候群(PAMS)、腫瘍随伴性小脳変性症、腫瘍随伴性天疱瘡(PNP)、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、パリーロンバーグ症候群、パーソネージ-ターナー症候群、扁平部炎(末梢性ブドウ膜炎)、妊娠性類天疱瘡(PG)、尋常性天疱瘡(PV)、落葉状天疱瘡(PF)、末梢性ニューロパチー、静脈周囲性脳脊髄炎、悪性貧血、Poems症候群、結節性多発動脈炎(PAN)、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎、心筋梗塞後症候群、心膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎原発性胆汁性肝硬変、アノー症候群、原発性硬化性胆管炎(PSC)、硬化性胆管炎、乾癬、乾癬性関節炎、壊疽性膿皮症、赤芽球癆、ラスムッセン脳炎、慢性限局性脳炎(CFE)、レイノー現象、反応性関節炎、ライター症候群、レコベリン関連網膜症(RAR)、反射性交感神経性ジストロフィー、ライター症候群、再発性多発性軟骨炎、レストレスレッグス症候群、後腹膜線維症、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、シュミット症候群、強膜炎、強皮症、全身性硬化症、シェーグレン症候群、精子及び精巣自己免疫、スティッフパーソン/マン症候群、亜急性細菌性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎、閉塞性血栓性血管炎、バージャー病、血小板減少性紫斑病(TTP)、トロサ-ハント症候群、横断性脊髄炎、未分化結合組織疾患(UCTD)、ブドウ膜炎、高安動脈炎、側頭動脈炎、バージャー病、皮膚血管炎、川崎病、結節性多発性動脈炎、ベーチェット症候群、チャーグ-ストラウス症候群、皮膚血管炎、ヘノッホ-シェーンライン紫斑病、顕微鏡的多発血管炎、ウェゲナー肉芽腫症、ゴルファーの血管炎、小水疱性皮膚病、並びにウェゲナー肉芽腫症(現在は多発血管炎性肉芽腫症(GPA)と呼ばれる)を含むか、又はそれらからなる群から選択される。
【0029】
一実施形態では、自己免疫疾患は、ANCA血管炎、IgA腎症(バージャー)、尋常性天疱瘡/水疱性類天疱瘡、ITP、原発性胆汁性肝硬変、自己免疫甲状腺炎(バセドウ病)、橋本病、ループス腎炎、膜性糸球体腎炎(又は膜性腎症)、APS、重症筋無力症、視神経脊髄炎、原発性シェーグレン、自己免疫好中球減少症、自己免疫膵炎、皮膚筋炎、自己免疫ブドウ膜炎、自己免疫網膜症、ベーチェット病、IPF、全身性硬化症、肝線維症、自己免疫肝炎、原発性硬化性胆管炎、グッドパスチャー症候群、肺胞蛋白症、慢性自己免疫蕁麻疹、乾癬、関節リウマチ、乾癬性関節炎、軸性脊椎関節炎、移植(GvHDを含む)、喘息、COPD、巨細胞性動脈炎、難治性自己免疫血球減少症、エバンス症候群(自己免疫溶血性貧血)、I型糖尿病、サルコイドーシス、多発筋炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、セリアック病、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、巣状分節性糸球体硬化症、慢性ライム病(ライムボレリア症)、扁平苔癬、スティッフパーソン症候群、拡張型心筋症、自己免疫(リンパ球性)卵巣炎、後天性表皮水疱症、自己免疫萎縮性胃炎、悪性貧血、アトピー性皮膚炎、アテローム性動脈硬化症、多発性硬化症、ラスムッセン脳炎、ギラン-バレー症候群、後天性ニューロミオトニア、及び脳卒中を含むか、又はそれらからなる群から選択される。
【0030】
一実施形態では、自己免疫疾患は、化膿性汗腺炎、強皮症(全身性強膜炎)、扁平苔癬、モルフェア、乾癬、1型真性糖尿病、自己免疫甲状腺炎、グレーブス病、子宮内膜症、セリアック病、クローン病、潰瘍性大腸炎、軸性脊椎炎、若年性関節炎、回帰性リウマチ、乾癬性関節炎、関節リウマチ、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス(SLE)、未分化結合組織疾患(UCTD)、多発性硬化症、パターンII、レストレスレッグス症候群、視神経炎、ブドウ膜炎、強膜炎、モーレン潰瘍、メニエール病、グレーブス眼症(Graves’ opthalmopathy)、視神経脊髄炎、スザック症候群、及びエリテマトーデス(lupus erythrematosus)を含むか、又はそれらからなる群から選択される。
【0031】
一実施形態では、自己免疫疾患は、扁平苔癬、化膿性汗腺炎、セリアック病、潰瘍性大腸炎、クローン病、グレーブス病、自己免疫甲状腺炎、子宮内膜症、多発性硬化症、及び視神経炎を含むか、又はそれらからなる群から選択される。
【0032】
多発性硬化症(MS)は、脳及び脊髄の神経細胞を絶縁するミエリン鞘が損傷する疾患である。損傷の結果、神経系が適切に信号を伝達する能力が破壊される。これは、次に、一連の深刻な身体的及び精神的問題、例えば、複視、片目の失明、筋力低下、感覚又は協調の問題、発話の問題、急性又は慢性の痛み、膀胱及び腸の困難、うつ病、並びに気分変動を引き起こす。
【0033】
この状態は、ほとんどの場合、数日間にわたって臨床的に孤立した症候群として始まり、大部分は運動又は感覚の問題に苦しむ。症状の経過は、最初は、再発として知られる数日から数ヶ月続く突然の悪化のエピソードとして起こり、ほとんどの場合改善が続く、又は回復期間なしに時間の経過とともに徐々に悪化する、のいずれかの2つのパターンで起こる。再発は一般に予測不可能であり、警告なしに起こる。
【0034】
多発性硬化症の原因は現在のところ不明であるが、基礎となる機序は、個体自身の免疫系によるミエリン鞘の破壊であると考えられており、すなわち、多発性硬化症は少なくとも部分的に自己免疫疾患と考えられている。これは、中枢神経系に影響を及ぼす最も一般的な免疫媒介性障害であり、世界で約230万人が罹患している。しかしながら、多くの罹患者の生活に深刻な悪影響を及ぼす自己免疫疾患がいくつかある。
【0035】
一実施形態では、自己免疫疾患は、多発性硬化症(MS)である。多発性硬化症は、一般に、臨床的に孤立した症候群(CIS)、再発寛解型MS(RRMS)、一次進行型MS(PPMS)及び二次進行型MS(SPMS)の4つの変異型のうちの1つとして更に分類される。したがって、一実施形態では、自己免疫疾患は、CIS、RRMS、PPMS、及びSPMSを含む群から選択される。
【0036】
再発寛解型MS(RRMS)は、予測不可能な再発に続いて、疾患活性の新たな徴候がなく、数ヶ月から数年の比較的静かな期間(寛解)を特徴とする。この状態は、進行性の持続的な脱髄、及び関連する軸索喪失を典型とする。一実施形態では、自己免疫疾患は、RRMSである。
【0037】
再発又は悪化(本明細書では再燃とも呼ばれる)とも呼ばれる発作には、部分的又は完全な回復(寛解)の期間が続く。寛解期には、全ての症状が消失するか、又はいくつかの症状が継続して永続的になる可能性がある。しかしながら、寛解の期間中に疾患の明らかな進行はない。RRMSは、更に、活性(再発及び/又は特定の期間にわたる新たなMRI活性の証拠)又は非活性、並びに悪化(再発後の障害の確認された増加)又は悪化しない、のいずれかとして特徴付けることができる。
【0038】
再発寛解型サブタイプは、通常、臨床的に孤立した症候群(CIS)から始まる。CISでは、人は脱髄を示唆する発作を起こすが、多発性硬化症の基準を満たしていない。CISを経験した人の30~70%は、後にMSを発症する。一実施形態では、自己免疫疾患は、CISである。
【0039】
一次進行型MS(PPMS)は、約10~20%の個人に発生し、最初の症状の後に寛解はない。これは、発症からの障害の進行を特徴とし、寛解及び改善がないか、又はごくまれな軽微な寛解及び改善を伴う。一実施形態では、自己免疫疾患は、PPMSである。
【0040】
二次進行型MS(SPMS)は、最初の再発寛解型MSを有するものの約65%に発生し、最終的には、任意の明白な寛解期間なしに急性発作の間に進行性の神経学的低下を有する。時折再発及び軽微な寛解が現れることがある。SPMSは、更に、活性(再発及び/又は特定の期間中の新たなMRI活性の証拠)又は非活性、並びに進行(再発又は新たなMRI活性の有無にかかわらず、時間の経過とともに障害蓄積の証拠)又は進行なし、のいずれかとして特徴付けることができる。一実施形態では、自己免疫疾患は、SPMSである。
【0041】
一実施形態では、疾患は、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチーである。
【0042】
一実施形態では、疾患は、横断性脊髄炎である。
【0043】
一実施形態では、疾患は、視神経脊髄炎である。
【0044】
一実施形態では、自己免疫疾患は、以下、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、多発性硬化症、ウェゲナー肉芽腫症、全身性エリテマトーデス、乾癬、サルコイドーシス、多関節型若年性特発性関節炎、潰瘍性大腸炎及びクローン病などの炎症性腸疾患、ライター症候群、線維筋痛症、並びに1型糖尿病のうちの1つ以上である。一実施形態では、自己免疫疾患は、それらのうちのいずれでもない。
【0045】
一実施形態では、自己免疫疾患は、乾癬性関節炎である。一実施形態では、自己免疫疾患は、乾癬性関節炎ではない。
【0046】
一実施形態では、自己免疫疾患は、強直性脊椎炎である。一実施形態では、自己免疫疾患は、強直性脊椎炎ではない。
【0047】
一実施形態では、自己免疫疾患は、多発性硬化症である。一実施形態では、自己免疫疾患は、多発性硬化症ではない。
【0048】
一実施形態では、自己免疫疾患は、ウェゲナー肉芽腫症である。一実施形態では、自己免疫疾患は、ウェゲナー肉芽腫症ではない。
【0049】
一実施形態では、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデスである。一実施形態では、自己免疫疾患は、全身性エリテマトーデスではない。
【0050】
一実施形態では、自己免疫疾患は、乾癬である。一実施形態では、自己免疫疾患は、乾癬ではない。
【0051】
一実施形態では、自己免疫疾患は、サルコイドーシスである。一実施形態では、自己免疫疾患は、サルコイドーシスではない。
【0052】
一実施形態では、自己免疫疾患は、多関節型若年性特発性関節炎である。一実施形態では、自己免疫疾患は、多関節型若年性特発性関節炎ではない。
一実施形態では、自己免疫疾患は、潰瘍性大腸炎又はクローン病などの炎症性腸疾患である。一実施形態では、自己免疫疾患は、潰瘍性大腸炎又はクローン病などの炎症性腸疾患ではない。
【0053】
一実施形態では、自己免疫疾患は、ライター症候群である。一実施形態では、自己免疫疾患は、ライター症候群ではない。
【0054】
一実施形態では、自己免疫疾患は、線維筋痛症である。一実施形態では、自己免疫疾患は、線維筋痛症ではない。
【0055】
一実施形態では、自己免疫疾患は、1型糖尿病である。一実施形態では、自己免疫疾患は、1型糖尿病ではない。
【0056】
一実施形態では、自己免疫疾患は、関節リウマチなどの関節炎である。一実施形態では、自己免疫疾患は、は、関節リウマチなどの関節炎ではない。
【0057】
製剤
DHODH阻害剤は、例えば、DHODH酵素の活性を阻害、例えば低減又は遮断する部分(例えば、化合物)である(その定義については、背景を参照されたい)。
【0058】
一実施形態では、DHODH阻害剤は、薬学的製剤として提供される。
【0059】
本発明の薬学的組成物は、これらに限定されないが、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮(transdermal)、経皮(transcutaneous)(例えば、WO98/20734を参照)、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸内、局所、舌下、膣内、又は直腸経路を含む任意の数の経路によって投与され得る。
【0060】
一実施形態では、薬学的製剤は、患者による摂取のための経口投与用である(例えば、錠剤、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、及び懸濁液として製剤化される)。
【0061】
賦形剤としては、ラクトース、デキストリン、グルコース、スクロース、ソルビトール、デンプン、糖、糖アルコール、及びセルロースが挙げられ得る。
【0062】
投与のための他の好適な形態としては、非経口投与、例えば、ボーラス注射又は連続注入などの注射又は注入が挙げられる。
【0063】
製品が注射又は注入のためのものである場合、それは、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルションの形態をとり得、それは、懸濁剤、防腐剤、安定化剤、及び/又は分散剤などの製剤(formulatory agent)を含み得る。あるいは、分子は、適切な滅菌液体とともに使用する前、再構成のための乾燥形態であってもよい。治療用組成物中の薬学的に許容される担体は、水、食塩水、グリセロール、及びエタノールなどの液体を更に含み得る。加えて、補助物質(例えば、湿潤剤、乳化剤、潤滑剤、又はpH緩衝物質)が、かかる組成物中に存在してもよい。
【0064】
薬剤的に許容できる担体の徹底的な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company,N.J.1991)を利用できる。
【0065】
治療
本明細書で用いられる治療とは、患者が疾患又は障害、例えば、自己免疫疾患(特に、本明細書に開示されるもの)を有し、本開示による医薬品が、疾患を安定化させる、疾患を遅延させる、疾患を緩和する、疾患を寛解させる、疾患を寛解状態で維持する、又は疾患を治癒するために投与される場合を指す。本明細書で用いられる治療とは、治療又は予防のための、本開示による医薬品の投与を含む。
【0066】
治療又は療法は、予防的に用いることができる。
【0067】
本明細書で用いられる治療有効量とは、副作用を最小化しながら、望ましい生理学的効果を生じる範囲の量である。
【0068】
本明細書で用いられる疾患修飾療法とは、免疫系が自らリセットして再びバランスをとることを可能にし、それによって治療後により正常に機能する療法を指す。
【0069】
本開示のDHODH阻害剤又はそれを含む製剤は、1日当たり1mg~400mg、例えば、1日当たり10mg~400mg、1日当たり50mg~400mg、1日当たり100mg~400mg、1日当たり150mg~400mg、1日当たり200mg~400mg、1日当たり250mg~400mg、1日当たり300mg~400mg、又は1日当たり350mg~400mgの範囲の用量で投与され得る。
【0070】
特に、1日当たり100mg~400mgの範囲の用量が投与される。
【0071】
したがって、毎日用量は、例えば、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、300mg、310mg、320mg、330mg、340mg、350mg、360mg、370mg、380mg、390mg、又は400mgであり得る。
【0072】
一実施形態では、治療は、毎日、例えば毎日1回又は2回投与される。
【0073】
一実施形態では、治療は、毎日1回である。
【0074】
一実施形態では、ASLAN003は、例えば、錠剤又はカプセル又はカプレットとして経口投与される。
【0075】
本明細書で用いられる併存疾患とは、患者が第2の又は基礎疾患(underlying health condition)に罹患していることを指す。
【0076】
本明細書で用いられる(更なる療法を含む)併用療法では、2つ以上の治療レジメンが用いられ、特に、同時に用いられる。治療は、別個の製剤であってもよく、又は共製剤化されてもよい。それらは、同時に、又は異なる時間に投与され得る。しかしながら、患者において、治療の薬理学的効果が共存するであろう。
【0077】
本明細書で用いられる更なる療法とは、DHODH阻害剤に加えての療法を指す。
【0078】
かかる更なる療法は、非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、スタチン(シンバスタチンなどのHMG-CoAレダクターゼ阻害剤を含む)、生物学的薬剤(生物剤)、ステロイド、免疫抑制剤、サリチル酸塩、及び/又は殺菌剤が挙げられるが、これらに限定されない抗炎症剤であり得る。
【0079】
非ステロイド性抗炎症剤には、代謝拮抗剤(例えば、メトトレキサート)及び抗炎症性金薬剤(金チオリンゴ酸ナトリウム、アウロチオマラート(aurothiomalate)、又はオーラノフィンなどの金塩を含む)が含まれる。生物剤としては、抗--TNF剤(アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、抗IL-1試薬、抗IL-6試薬、抗CD20剤、抗B細胞試薬(例えば、リツキシマブ)、抗T細胞試薬(抗CD4抗体)、抗IL-15試薬、抗CLTA4試薬、抗RAGE試薬)、抗体、可溶性受容体、受容体結合タンパク質、サイトカイン結合タンパク質、機能が変更又は減弱された変異タンパク質、RNAi、ポリヌクレオチドアプタマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド、又はオメガ3脂肪酸が挙げられる。コルチゾン、プレドニゾロン、又はデキサメタゾンを含むステロイド(コルチコステロイドとしても知られている)も、併用療法で用いることができる。
【0080】
本開示による併用療法に使用するための免疫抑制剤としては、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸が挙げられる。前記併用療法に使用するためのサリチル酸塩としては、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸コリン、及びサリチル酸マグネシウムが挙げられる。殺菌剤には、キニン及びクロロキンが含まれる。
【0081】
非ステロイド性抗炎症剤、ステロイド剤などについて、本明細書で用いられる抗炎症剤は、炎症を低減する部分を指す。
【0082】
一実施形態では、併用療法は、抗CD20剤又はそのバイオシミラー、例えば、Rituxan(リツキシマブ)、リツキシマブバイオシミラー、Gazyva、Kesimpta、Ocrevus(オクレリズマブ)、Ruxience、Truxima、Zevalin、Arzerra、AcellBia、HLX01、Reditux、Ritucad、又はZytuxを含む。
【0083】
一実施形態では、併用療法は、独立して、コルチコステロイド(例えば、経口プレドニゾン及び静脈内メチルプレドニゾロン)、血漿交換(プラズマフェレーシス)、インターフェロンベータ薬、酢酸グラチラマー、フィンゴリモド、フマル酸ジメチル、フマル酸ジロキシメル、テリフルノミド、シポニモド、クラドリビン、オクレリズマブ、ナタリズマブ、及びアレムツズマブから選択される治療を含む。
【0084】
一実施形態では、併用療法は、多発性硬化症の症状を緩和又は低減するための治療、例えば、筋弛緩剤(バクロフェン、チザニジン、及びシクロベンザプリンなど)、疲労を低減するための薬(アマンタジン、モダフィニル、メチルフェニデート、又は歩行速度を上げるための薬(ダルファンプリジンなど)を含む。
【0085】
一実施形態では、併用療法は、大麻又はその誘導体、例えば、大麻油を含む。
【0086】
一実施形態では、併用療法は、第2のDHODH阻害剤を含む。一実施形態では、更なる療法は、テリフルノミドを含む。一実施形態では、更なる療法は、ビドフルジムスを含む。一実施形態では、併用療法は、第2のDHODH阻害剤を含まない。実施形態では、併用療法は、テリフルノミド及び/又はビドフルジムスを含まない。
【0087】
一実施形態では、併用療法は、例えば、アレムツズマブ、avonex、betaferon、クラドリビン、ダクリズマブ、フマル酸ジメチル、extavia、フィンゴリモド、酢酸グラチラマー、ナタリズマブ、オクレリズマブ、plegridy、rebif、シポニモド、及びそれらのうちの2つ以上の組み合わせから選択される疾患修飾療法を含む。
【0088】
一実施形態では、更なる療法は、インターフェロンベータ(IFN-β)、例えば、インターフェロンベータ-1a又はインターフェロンベータ-1bを含む。したがって、一実施形態では、更なる療法は、インターフェロンベータ-1 aを含む。代替的な実施形態では、更なる療法は、インターフェロンベータ-1bを含む。
【0089】
一実施形態では、併用療法は、ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤、例えば、イブルチニブ、アカラブルチニブ、ザヌブルチニブ、エボブルチニブ、ABBV-105、フェネブルチニブ、GS-4059、スペブルチニブ、及び/又はHM71224を含む。
【0090】
一実施形態では、更なる療法は、酢酸グラチラマーを含む。一実施形態では、更なる療法は、ナタリズマブを含む。一実施形態では、更なる療法は、ミトキサントロンを含む。一実施形態では、更なる療法は、フィンゴリモドを含む。一実施形態では、更なる療法は、シポニモドを含む。一実施形態では、更なる療法は、フマル酸ジメチルを含む。一実施形態では、更なる療法は、アレムツズマブを含む。一実施形態では、更なる療法は、シクロホスファミドを含む。一実施形態では、更なる療法は、クラドリビンを含む。一実施形態では、更なる療法は、オクレリズマブを含む。一実施形態では、更なる療法は、フマル酸ジメチルを含む。一実施形態では、更なる療法は、ダクリズマブを含む。一実施形態では、更なる療法は、アザチオプリンを含む。一実施形態では、更なる療法は、メトトレキサートを含む。代替的な実施形態では、更なる療法は、メトトレキサートを含まない。一実施形態では、更なる療法は、ラキニモド(lacquinimod)を含む。
【0091】
本明細書の文脈において含む(comprising)とは、「含む(including)」を意味することが意図される。
【0092】
技術的に適切な場合、本発明の実施形態を組み合わせることができる。
【0093】
実施形態は、特定の特徴/要素を含むものとして本明細書に記載されている。本開示はまた、当該特徴/要素からなる、又は本質的にそれらからなる別個の実施形態にも及ぶ。
【0094】
特許及び出願などの技術参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
本明細書に具体的かつ明示的に列挙される任意の実施形態は、単独で、又は1つ以上の更なる実施形態と組み合わせて、免責事項の基礎を形成することができる。
【0096】
本出願は、2020年10月15日に出願されたシンガポール出願第10202010254Q号、及び2020年12月21日に出願された同第10202012817S号からの優先権を主張し、両方とも参照により本明細書に組み込まれる。これらの文書は、補正の基礎として使用され得る。
【0097】
背景には技術情報が含まれており、修正のための基礎として使用され得る。
【0098】
本発明は、以下の実施例を参照して説明される。これらは、単なる例示であり、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0099】
実施例1 多発性硬化症EAEモデルにおけるASLAN003のインビボ研究
実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)は、ヒト多発性硬化症(MS)などの脱髄疾患の十分に研究された動物モデルである。EAEは、精製されたミエリン構成要素、中枢神経系(CNS)抽出物、又はアジュバント中で乳化された合成された特定のペプチドを感受性動物に注射することによって誘導される。ペプチドは、例えば、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、又はプロテオリピドタンパク質(PLP)に由来する。
【0100】
多発性硬化症に対するASLAN003の効果を調査するために、ASLAN003を、疾患誘導後8日目から1日当たり1mg/kg、3mg/kg、10mg/kg、又は15mg/kgの用量で、EAEモデルに経口投与した。ビヒクル対照が含まれた。
【0101】
図1に、結果を示す。見てわかるように、ASLAN003(LAS186323)は、ビヒクル対照と比較して臨床スコアを顕著に低減する。加えて、ASLAN003は、用量依存的様式で、疾患の進行を停止させるように見える。
【0102】
したがって、データは、多発性硬化症などの自己免疫疾患を治療するためのASLAN003の可能性の強力な証拠を提供する。
【0103】
実施例2 陽性対照Tと比較したEAEモデルにおけるASLAN003のインビボ研究
1.実験プロトコル
1.1.EAEの誘導及び臨床スコア
EAEの誘導には、2mg/mlの濃度で0.9%の生理食塩水中に懸濁したモルモットミエリン塩基性タンパク質(MBP)(Sigma、M2295)を使用した。この溶液を、等体積の、4mg/mlの熱不活性化Mycobacterium tuberculosis H37Ra(Difeo Laboratories、Ref. 231141)を含むフロイント完全アジュバント(Sigma、F5881)で乳化した。雄のLewisラットを、100μg/ラットで、MBPを含むエマルションを用いて、右及び左後足蹠に皮下注射することにより、0.1mlのエマルションで免疫化した。
【0104】
疾患が誘導されなかったナイーブ動物群を、比較目的のための健康な対照として各EAE実験(n=5)に含めた。
【0105】
個々の動物は、以下のように、0から5のスケールでスコアリングされた神経学的障害の臨床徴候について毎日検査された。
【表1】
疾患の臨床徴候は、誘導後8~9日目に観察された。約10%の動物が臨床症状を示したとき、異なる群(n=7~8)に無作為化され、処置が開始された。
【0106】
疾患が進行するにつれて、障害が回復の可能性をほとんど示さなかった場合、動物福祉基準に従って、スコアが4の動物を屠殺した。屠殺又はEAE関連の自然死に起因する死亡率は、所与の日に5として記録された。この死亡スコアは引き続き臨床評価に含まれたが、体重測定を繰り越すことはできなかった。
【0107】
1.2.化合物
LAS 186323(ASLAN003)、陽性対照T、及び陽性対照Fを毎日新しく調製し、0.5%メチルセルロース及び0.1%Tween 80含有水中に指定された用量で懸濁し、10ml/kgの体積で強制経口投与により投与した。
【0108】
1.3.血液細胞数
アッセイの終了時、最後の投与の24時間後に、光麻酔下で全ての動物から血液試料を後眼窩神経叢から得た。全血球数を決定するために、試料を使用した(XT-2000i/XT-1800i、Sysmex Corporation)。全ての細胞型について絶対値が報告された。
【0109】
1.4.CNSの組織学
実験の終了時、動物は失血によって殺され、剖検は盲検的に行われた。EAE動物の脊髄(CNS;脊髄、延髄、小脳)を得、PBS中4%ホルマリンに固定し、パラフィンに包埋した。6μm厚の切片を調製し、次いでヘマトキシリン及びエオシンで染色した。組織学的スコアを以下のように評価した:
0:病変なし、
1:切片全体において低細胞密度の細胞浸潤を伴う孤立性病変、
2:少数の領域の各々において適度の細胞浸潤を伴う少数の病変、
3:大規模な細胞浸潤及び随伴浮腫を伴うほぼ全ての領域における多くの病変(Kataoka、2005)。
【0110】
2.結果
2.1.臨床スコア
記載されるように、障害の評価を毎日行い、各動物の臨床スコアを得た。臨床スコアの曲線下面積(AUC)は、実験に沿って記録されたデータから各動物について生成した。ビヒクル群のAUCの平均に対して、全ての動物についてAUCの阻害率を計算した。治療及び用量当たりの平均阻害率を計算した。
【0111】
図2は、各治療群:ビヒクル(V)及びLAS186323(ASLAN003)(L)の臨床スコアAUCの平均を示す。イニシャルの後の数字は、投与されたmg/kgでの化合物の毎日の経口毎日用量に対応する。
【0112】
図4は、経時的な疾患の進化を示す。各ポイントは、その特定の治療日の臨床スコア(Y軸)の平均を表す(X軸)。ビヒクル(V)、陽性対照(F)、陽性対照(T)、及びLAS186323(L)。イニシャルの後の数字は、投与されたmg/kgでの化合物の毎日の経口毎日用量に対応する。
【0113】
以下の表2は、臨床有効性の尺度である臨床スコアの阻害率を示す。
【表2】
陽性対照Tについて適切なED
50は計算することができないが、1.5mg/kgの推定値が算出されている。線形回帰によって計算されたASLAN003のED
50は、2.7mg/kg/日である。
【0114】
2.2.CNS組織学的評価
図3は、CNS組織学的スコアを示す。臨床スコアの改善と組織学的スコアの対応が観察された。陽性対照T及びASLAN003の両方で良好な用量応答が得られ、前者の化合物についてより急激な勾配が観察された。試験された最高用量では、陽性対照T又はASLAN003で処置された動物は、ビヒクル処置された動物と比較して、顕微鏡的CNS病変において顕著な改善を示した。
【0115】
2.3.血液細胞数
最後の投与の24時間後に血液試料を収集し、上述のように血液細胞の計数を行った。
図5は、処置群当たりの細胞における絶対細胞数の数x10
3/μlを示す。陽性対照Fの全リンパ球数に対する顕著な効果は、その作用機序により、予想通り観察された。好中球の数の低減は、陽性対照Tを10mg/kgで、及びASLAN003を3及び15mg/kgで処置した動物において観察されたが、10mg/kgでは観察されなかった。しかしながら、ビヒクルに対して統計的に有意な差は観察されなかった。赤血球数(RBC)に対する軽度の用量応答が、陽性対照Tで観察された。
【0116】
3.結論
上記の結果に基づいて、ASLAN003は、確立された疾患を有する動物への経口経路によって1日1回投与される場合、用量依存的様式でEAE Lewisラットモデルにおける疾患進行を阻害するように見える。外部神経学的症状の改善は、CNSにおける顕微鏡的損傷の減少に対応する。ASLAN003による処置は、血球数に顕著な影響を及ぼさなかった。
【0117】
実施例3-関節リウマチ(RA)AIAモデルにおけるASLAN003対陽性対照Tのインビボ研究
アジュバント誘導関節炎(AIA)は、完全フロイントアジュバント(CFA)の平面内注射によってラットにおいて誘導される関節リウマチ(RA)の実験モデルである。疾患は、注射された足の強い炎症で進行する。CFAによって引き起こされる全身炎症及び免疫学的変化は、誘導後7日目から10日目までの対側足の炎症に変わる。
【0118】
臨床における有効性を予測するAIAモデルの能力は十分に確立されている。
【0119】
したがって、ASLAN003のRAに対する効果を調査するために、AIAラットモデルにASLAN003を投与した。
【0120】
1.実験プロトコル
1.1.試験化合物
指定された用量で、0.5%メチルセルロース及び0.1%Tween 80含有水中の懸濁液として、ASLAN003を毎日新しく調製し、10ml/kgの体積で強制経口投与により投与した。
【0121】
1.2 動物
体重175~200gの雄のWistarラットを使用した。
【0122】
1.3 関節炎の誘導
15mlのパラフィン油(Merck、#7162)及び数滴の蒸留水を添加することにより、Mycobacterium tuberculosis H37 RA(Difco、#231141)の乾燥抽出物75mgの懸濁液を調製した。CFA中のMycobacteriumの濃度は5mg/mlであった。懸濁液を10分間超音波処理し、プロセス全体を通してシェーカー内で維持した。ラットに麻酔をし、0.1mlのCFA懸濁液をラットの後左足に足底内注射した。
【0123】
疾患誘導の10日後、全てのラットの後足の炎症を、プレチスモメトリー(Ugo Basile、#7140)により測定した。炎症はmlで表された。投与初日の1日目に、両足の体積が類似したラット(n=6~7)を処置群に割り当てた。
【0124】
ラットには、10日間連続して、毎日午前中にCFA懸濁液を投与した。体重を毎日測定し、1日おきに足の体積を測定した。処置後11日目(最後の投与の24時間後)に、ラットに麻酔をし、その眼窩後神経叢から血液試料を収集して細胞数を決定し、次いで屠殺した。X線分析を行うために後足を切除し、知らない科学者によって盲検的に放射線損傷のスコアが行われた。
【0125】
放射線学的スコアは、個々の全ての足のX線画像から評価された5つの異なるパラメータの合成物である。5つのパラメータは、骨の脱灰、骨膜炎、関節腔の狭窄、嚢胞性変性、及び軟組織の炎症である。各パラメータに、観察された重症度に比例する0~4の値が割り当てられた。5つのパラメータのスコアの合計は、各動物の放射線学的スコアを提供する。
【0126】
1.4 計算
各動物について、炎症を右足体積の曲線下面積(AUC)として測定した。AUCは、mlでの足の炎症対日数での時間をプロットすることによって計算した。ビヒクル処置群の平均値も得た。
【0127】
処置の有効性は、各動物の阻害%対ビヒクルの平均として計算した。各治療群の平均を計算した。所与の化合物及び用量について2回以上の実験を行った場合、平均の平均±標準誤差(SEM)を計算した。
【0128】
放射線学的スコアの阻害に対する処置の効果は、処置群に属する全ての動物の放射線学的スコアの、ビヒクル処置群の平均に対する阻害%を計算することによって測定した。いくつかの実験が行われた場合、提供される値は個々の実験及びSEMの平均値である。
【0129】
2.結果
図6は足の炎症のAUCを示し、以下の表3は、AUCの数値が2~5回の独立した実験からの平均±SEM値として表されるAUC値の阻害%として十分であったことを示す。
【表3】
3及び10mg/kgのASLAN003は、ビヒクル処置ラットと比較して右足の腫れを顕著に低減させた。より高い抗炎症効果を示す最も低いAUC値は、10mg/kgの陽性対照T及びASLAN003で処置した群において達成された。
【0130】
ASLAN003の4.6mg/kgのED50値を計算するために、2~5回の独立した実験からの足体積の平均低減%を使用した。
【0131】
以下の表4は、異なる処置群についての白血球(WBC)及び血小板数を示す。異なる処置群間の血球数の比較は、関節炎の誘導がWBC及び血小板の両方において顕著な増加を引き起こすことを示す(ビヒクル対ナイーブラット)。3mg/kgの陽性対照T又は10mg/kgのASLAN003で処置した関節炎ラットでは、ビヒクルに対するWBC数の顕著な低減が観察された。同じ用量で、ASLAN003はまた、ビヒクル処置ラットに対して血小板の数を顕著に減少させた。
【表4】
【表5】
結果は、3mg/kgの陽性対照T及び10mg/kgのASLAN003の両方の平均スコアが、ビヒクル処置ラットのスコアよりも低かったが、差は統計学的に変わらなかったことを示す。
【0132】
3.結論
毎日1回経口投与されたASLAN003は、確立された関節炎を有するラットの足に抗炎症効果を示す。末梢血中のWBC及び血小板の数の用量依存的減少も観察され、これは、試験された最高用量で統計的有意性に達した。ASLAN003は、足の放射線学的スコアを改善し、疾患修飾の可能性を示す。
【0133】
結論として、この研究は、RAの有効な治療としてのASLAN003の可能性を実証する。
【0134】
実施例4-デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘導炎症性腸疾患(IBD)マウスモデルにおけるASLAN003対陽性対照Vのインビボ研究
1.実験プロトコル
1.1 動物
6~7週齢の雄のC57BL/6マウスを、Shanghai Lingchang Bio Tech Co.Ltd、Chinaから調達した。
【0135】
1.2 処置スケジュール、試料収集、及びパラメータ
動物を、体重に基づいて群に無作為化した。
群01:精製水、自由、1~8日目:ビヒクル、5mL/kg、PO、QD、0~9日目、n=6
群02:3%DSS含有水、自由、1~8日目:ビヒクル、5mL/kg、PO、QD、0~9日目、n=8
群03:3%DSS含有水、自由、1~8日目:陽性対照V、20mg/kg、PO、QD、0~9日目、n=8
群04:3%DSS含有水、自由、1~8日目:ASLAN003、低用量、PO、QD、0~9日目、n=8a
群05:3%DSS含有水、自由、1~8日目:ASLAN003、高用量、PO、QD、0~9日目、n=8
略語:QD=毎日1回、PO=強制経口投与。
【0136】
研究期間:順化期の3週間、及び0日目から10日間の処置期(0~10日目)。
【0137】
大腸炎モデル誘導:急性実験的大腸炎を誘導するために、群02~05のマウスに、7日間(1~7日目)、3%DSS含有精製水に自由にアクセスさせ、続いて2日間(9~10日目)精製水を与えた。DSSを含む飲料水は2日に1回交換した。群01のマウスを、1~7日目の間、対照として精製で保持した。
【0138】
測定される生存中のパラメータ:
・水及び食餌の摂取量は、0~10日目の間、毎日1回監視した。
・体重は、0~10日目の間、毎日1回測定し、毎日2回の臨床モニタリングを行った。
・便の観察は、0~10日目の間、毎日1回実施した。大腸炎の誘導を定量化するために、疾患活動性指数(DAI)を決定した。
・腸透過性を0日目及び9日目に評価した。
・0日目、4日目、8日目、及び10に、リポカリン-2検出のために糞便を収集した。
【0139】
研究終了:マウスを10日目に屠殺し、屠殺した動物に対して以下を行った。
採血
・マウスから血液採取して血清を調製し、潜在的なサイトカインアッセイのために-60℃~-80℃で保存した。
【0140】
結腸収集
・全結腸(盲腸から肛門まで)を収集し、回盲弁から肛門までの長さを測定した。
・各マウスの全結腸の写真を1枚撮影した。
・結腸を腸間膜境界に沿って開放し、生理食塩水ですすぎ、拭き取って乾かし、その重量を測定した。
・結腸を「スパイラルスイスロール」として処理し、10%中性緩衝ホルマリンで24~48時間固定し、ヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色及び病理組織学的評価のためにパラフィン(マウス当たり1ブロック)に包埋した。
【0141】
脾臓重量
・脾臓を解剖し、その組織重量を測定して記録し、その後廃棄した。
【0142】
【0143】
図8A及び8Bは、研究の経過にわたる動物の体重測定値を示す。体重の減少は、DSS誘導ビヒクル群2及び2つのASLAN003処置群4及び5で類似したが、体重の減少は、陽性対照V処置群3で最も急性であった。
【0144】
図9A及び9Bは、研究の経過にわたる動物の便スコアを示す。
図9Aのより高い便の粘稠性スコアは、より低い便の粘稠性を示し、一方、
図9Bのより高い血便スコアは、より多くの血便が観察されることを示す。
【0145】
見てわかるように、陽性対照V処置群3は、研究の初期段階で他のDSS誘導動物と比較して全体的な便の粘稠性が低く、その後、10日目に最終的に最も良好な便の粘稠性を達成した。ASLAN003、75mg/kg群5は、2~9日目に全体的な便の粘稠性が最も良好であり、その後、10日目にビヒクル群2及びASLAN003、25mg/kg群4と類似する便の粘稠性スコアで試験を終了した。
【0146】
血便に関して、結果は、ASLAN003、75mg/kg処置群5が、研究の過程にわたって血便の発生率が最も低かったことを示唆する。興味深いことに、陽性対照V処置群3は、血便の発生率が最も高く、ビヒクル処置群2を上回っているようにさえ見えた。
【0147】
図10は、研究の過程にわたる動物の疾患活動性指数(DAI)を示す。DAIは、患者の大腸炎を評価するために使用されるスコアリング方法であり、体重減少、便の粘稠性、及び出血に基づく総合スコアである。結果は、陽性対照V処置群3において、DAIが最も増加した後、最終的に研究の10日目までに、ビヒクル群2及びASLAN003、25mg/kg群4と類似するレベルに低下したことを示す。加えて、結果は、ASLAN003、75mg/kg群5の10日間にわたるDAIの全体的な増加が低く、また10日目のDAIスコアが他の全ての治療群と比較して低いことを示すように見える。
【0148】
図11は、研究の0日目及び9日目の動物の腸透過性(FITC-デキストラン濃度)の結果を示す。ASLAN003、25mg/kg処置群4及びビヒクル群2は、9日目に類似するFITC-デキストラン濃度測定値を有するように見える。意外にも、陽性対照V処置群3は、9日目に他の全ての処置群よりも顕著に測定値が高く、この群の動物の腸透過性が対照群1と比較して顕著に変化したことを示唆する。
【0149】
図12は、研究終了時の異なる治療群の結腸及び脾臓の測定結果を示す。
図12Cのように結腸の重量及び長さの両方を考慮すると、結果は、結腸/長さ測定値が、ビヒクル群2並びにASLAN003処置群4及び5についてかなり類似することを示すように見える。陽性対照V処置群3は、対照群1とより類似する結腸/長さ測定値を有した。
【0150】
図12Dは、ASLAN003、75mg/kg処置群5が、対照群1と最も類似する脾臓重量を有し、他の処置群が互いに同等の脾臓重量を有することを示唆するように見える。
【0151】
図13は、研究の経過にわたる動物の糞便データにおけるリポカリンを示す。リポカリンは、腸炎症の感受性の非侵襲的なバイオマーカーである。結果は、ASLAN003処置群4及び5が、ビヒクル処置群2よりも腸炎症が少なかったことを示す。逆に、陽性対照V処置群3は、ビヒクル処置群2と比較して、腸炎症の程度がより大きいことを示すように見えた。
【0152】
要約すると、結果は以下を示す。
1.ASLAN003処置群4及び5は、DSS誘導ビヒクル群2と比較して、DAI、便の粘稠性、血便、及び糞便中のリポカリンの改善を示した。
【0153】
2.特に、ASLAN003、75mg/kg処置群5は、他のDSS誘導群と比較して、DAIの全体的な増加が最も低く、全体的な便の粘稠性が最も高く、血便の発生率が最も低く、糞便中のリポカリンが最も低かった。この治療群の脾臓重量はまた、対照群1と最も類似していた。
【0154】
3.陽性対照V処置群3は、他のDSS誘導群と比較して、体重の減少が最大であり、DAIの全体的な増加が最大であり、全体的な便の粘稠性が最も低く、血便の発生率が最も高く、腸透過性が最も高く、糞便中のリポカリンが最も高かった。この処置群の結腸/長さ測定値はまた、対照群1と最も類似していた。
【0155】
これらの結果は、ASLAN003処置動物が、対照と比較して様々な異なるパラメータの改善を示し、ASLAN003が炎症性腸疾患の治療に有用である可能性が強いことを示唆することを実証する。結果はまた、ASLAN003の使用、特により高い75m/kgの濃度での使用が、対照と比較して動物に大きな改善をもたらしたことを示す。予想外に、結果は更に、陽性対照V処置動物が、試験したパラメータのいくつかについて、ビヒクル群2と比較して、あまり望ましくない転帰を有したことを示唆する。
【国際調査報告】