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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】分離装置および分離方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20231024BHJP
   B01D 15/14 20060101ALI20231024BHJP
   B01D 15/22 20060101ALI20231024BHJP
   B01D 15/38 20060101ALI20231024BHJP
   G01N 30/60 20060101ALI20231024BHJP
   C12M 1/28 20060101ALI20231024BHJP
   C07K 1/16 20060101ALI20231024BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C12M1/00
B01D15/14
B01D15/22
B01D15/38
G01N30/60 A
G01N30/60 B
C12M1/28
C07K1/16
C12N15/10 110Z
C12N15/10 112Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023521970
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(85)【翻訳文提出日】2023-04-05
(86)【国際出願番号】 US2021053751
(87)【国際公開番号】W WO2022076543
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】63/087,996
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/166,431
(32)【優先日】2021-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】523127981
【氏名又は名称】フィネクサス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PHYNEXUS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゴー,ギフン
(72)【発明者】
【氏名】アプラオン,ドン・ビィ
(72)【発明者】
【氏名】フアン,ファニー
(72)【発明者】
【氏名】ジェルド,ダグラス・ティ
【テーマコード(参考)】
4B029
4D017
4H045
【Fターム(参考)】
4B029AA09
4B029AA21
4B029AA27
4B029BB20
4B029CC01
4B029GB05
4B029HA05
4D017AA08
4D017AA09
4D017AA11
4D017BA07
4D017CA05
4D017CA12
4D017CA13
4D017CB01
4D017DA03
4D017EA05
4D017EB01
4H045AA20
4H045AA30
4H045AA40
4H045GA20
4H045GA21
(57)【要約】
本発明は、タンパク質または核酸などの生体分子を分離するための容易に自動化される方法に関する。より具体的には、本発明は、底部液体入口/出口を備え、分離媒体を受け入れるように適合された少なくとも1つのカラムを備える分離装置に関する。細長いフリットの少なくとも一部は、カラム側壁に実質的に平行に配置され、分離媒体を底部液体入口/出口から隔離している。細長いフリットは、管として成形されてもよく、試料処理中に分離媒体をカラム内に保持するのに役立つ多孔性を有するべきである。さらに、本発明は、液体から少なくとも1つの標的分子を分離する方法に関し、この方法は、底部液体入口/出口および任意選択的に頂部液体入口を備えた少なくとも1つのカラムを提供することを含む。カラムは分離媒体を保持し、細長いフリットの少なくとも一部は、分離媒体を底部液体入口/出口から隔離するために、カラム側壁に実質的に平行に配置されている。液体試料は、底部液体入口/出口への流体の吸引および底部液体入口/出口からの流体の分注、頂部液体入口で液体を添加すること、またはそれらの任意の組合せを含む方法で前記カラム内で処理される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部液体入口/出口(1a)を備え、分離媒体を受け入れるように適合された少なくとも1つのカラムを備える分離装置であって、
細長いフリット(6)の少なくとも一部が、カラム側壁(2a)に実質的に平行に配置され、前記底部液体入口/出口(1a)から分離媒体(7)を隔離する、分離装置。
【請求項2】
前記カラムが鉛直に配置されるとき、前記細長いフリット(6)は前記カラム内で水平に配置されない、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記カラムが鉛直に配置されるとき、前記細長いフリット(6)の少なくとも一部が、前記カラムの水平面に対して約45~90°の範囲内の角度で配置される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記細長いフリット(6)は、垂直であるとともに前記カラム側壁(2a)に平行である液体流を可能にするように配置される、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
頂部液体入口(1b)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
上部フリット(5)が、前記カラムにおいて、前記カラムが前記上部フリット(5)の下方に分離媒体(7)を受け入れることを可能にする位置に配置されている、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記上部フリット(5)は、前記カラムにおいて、前記上部フリット(5)の下方に分離媒体(7)および自由空間からなる体積を生じる位置に配置されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記細長いフリット(6)はメッシュ(10)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記メッシュ(10)は、少なくとも1つの孔(8)を含む中空支持体(9)によって位置が維持される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記中空支持体(9)は、円形、長円形、三角形、または他の角のある断面によって画定される、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記細長いフリット(6)は管状支持体(9)からなり、前記メッシュ(10)は、前記分離媒体(7)に面する側で前記管状支持体(9)上に巻き付けられている、請求項8~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記カラムの底部が管状カラム端部(4)を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
前記管状カラム端部(4)の長さは、前記カラムの長さの約3分の1を構成する、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記管状カラム端部(4)および前記細長いフリット(6)は一体部品として配置される、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
前記カラムは、傾斜したカラム底壁(2b)を有して配置される、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記カラムは液体処理システム内に配置される、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記カラムの上端と前記カラムの下端との間に液体を通す手段を備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項18】
前記手段は正または負の圧力を提供する、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記手段は圧送手段を備える、請求項17に記載の装置。
【請求項20】
並列処理のために配置された2つ以上のカラムを備える、先行する請求項のいずれか1項に記載の装置。
【請求項21】
液体から少なくとも1つの標的分子を分離する方法であって、前記方法は、底部液体入口/出口(1a)および任意選択的な頂部液体入口(1b)を備える少なくとも1つのカラムを提供することであって、前記カラムは分離媒体(7)を保持し、細長いフリット(6)の少なくとも一部が、カラム側壁(2a)に実質的に平行に配置され、前記底部液体入口/出口(1a)から前記分離媒体(7)を隔離する、提供することと、前記カラム内の液体試料を、前記底部液体入口/出口(1a)からの流体の吸引および前記底部液体入口/出口(1a)への流体の分注、および/または前記頂部液体入口(1b)で液体を添加すること、またはそれらの任意の組合せを含む方法で処理することと、を含む、方法。
【請求項22】
前記方法は、
a)底部液体入口/出口(1a)および任意選択的に頂部液体入口(1b)を備える少なくとも1つのカラムを提供するステップであって、前記カラムは分離媒体(7)を保持し、細長いフリット(6)が、カラム側壁(2a)に実質的に平行に配置され、前記底部液体入口/出口(1a)から前記分離媒体(7)を隔離する、提供するステップと、
b)他の分子との混合物として前記少なくとも1つの標的分子を含む液体を提供するステップと、
c)前記液体中に前記カラムの前記底部液体入口/出口(1a)を入れるステップと、
d)吸引段階において、前記カラムの前記底部液体入口/出口(1a)から、前記カラム側壁(2a)に実質的に垂直な流れの方向に前記細長いフリット(6)を通って液体を通すために、前記カラムに負の圧力を印加するステップと、
を含むことにより、液体流は前記分離媒体(7)を分散させ、任意選択的に、前記分離媒体(7)による標的分子の捕捉のための時間を与える、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
e)分注段階において、前記カラム側壁(2a)に実質的に垂直な流れの方向に前記細長いフリット(6)を通って前記カラムの前記底部液体入口/出口(1a)へ向かって液体を通すために、前記カラムに正の圧力を印加するステップと、
f)前記カラムの前記底部液体入口/出口(1a)を出る液体を収集するステップと、
前記ステップに続いて任意選択的に、
g)前記分離媒体から標的分子を解放する溶出液を用いてステップd)およびf)を繰り返すステップと、
h)前記カラムの前記底部液体入口/出口(1a)を介して解放された標的分子を含む溶出液を収集するステップと、続いて任意選択的に、溶出された標的分子を回収および/または分析するステップと、
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
標的分子が、タンパク質もしくは核酸、またはそのフラグメントなどの生体分子である、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
標的分子が、Fabフラグメントなどのペプチドおよび抗体からなる群から選択されるタンパク質である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
標的分子が、プラスミドである、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
ステップb)で提供される前記液体は、細胞培養に、または化学合成方法に由来する、請求項21~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
ステップd)で、約100mL~約200mL、約500mL~約2.5L、または約2.5L~約5Lの範囲などの、20mL~5Lの範囲内の液体体積が吸引される、請求項21~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ステップd)およびf)の前記正の圧力および前記負の圧力は、置換ポンプによって提供される、請求項22~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ステップa)で、少なくとも2つのカラムが提供され、後続のステップで並列に処理される、請求項21~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記少なくとも2つのカラムは、アフィニティー媒体およびイオン交換媒体などの互いに異なる官能基を有する分離媒体(7)を備える、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ステップd)で、異なる液体が少なくとも2つの別個のカラム内に吸引される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
ステップd)は、前記吸引される液体に少なくとも1回往復流を印加することを含む、請求項21~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
請求項1~20のいずれか1項に記載の分離装置が使用される、請求項21~33のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2020年10月6日に出願された米国仮特許出願第63/087,996号および2021年3月26日に出願された米国仮特許出願第63/166,431号の利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、好ましくは自動化された液体処理による、標的分子の分離の分野に関する。より具体的には、本発明は、例えば並列処理によって、標的分子の効率的な分離を可能にする分離装置に関する。本発明はまた、標的分子を分離する方法、例えば、100mL~5Lの範囲にあり得る試料体積中の標的分子を含む液体試料を自動的に処理する方法を包含する。
【背景技術】
【0003】
背景
従来のクロマトグラフィーカラムは、頂部フリットおよび底部フリットに含まれる媒体の充填ベッドで構築され得る。カラムの特定の範囲は、PhyTip(登録商標)ピペットチップカラム(Phynexus Inc.、phynexus.com)であり、これはピペットチップカラム本体で構築されている。フリットは、2つのフリットの間にカラム媒体が置かれたチップの頂部遠位端および底部遠位端に設置される。現在、市販されている最大のPhyTip(登録商標)ピペットチップカラムは20mLである。
【0004】
クロマトグラフィーの分野では、より大きなベッド体積は、上部フリットの上方のチャンバ空間の量を制限し、したがって処理することができる試料体積を制限することが知られている。しかしながら、潜在的により深刻な問題は、ベッド体積が増加するにつれてカラムの背圧が劇的に増加し、カラムを通って圧送される試料および緩衝液の流量が遅くなることである。大きな試料体積が望ましいが、カラムチャンバの体積と流量の両方を制限することにより、大きい試料体積を処理する能力が損なわれる。
【0005】
米国特許第9,733,169号は、化学分析のための試料調製中に使用される抽出装置に関する。より具体的には、米国特許第9,733,169号によれば、従来のピペット抽出製品、例えば、使い捨てピペット抽出製品、例えば、米国特許第6,566,145号では、ピペットチップの内部に緩く収容された吸着剤を使用し、吸着剤は、下部スクリーンまたはフィルタ、および上部多孔質バリアを使用して収容される。このタイプのピペットチップ抽出装置は分散型SPEを利用し、「分散型」という用語は、ピペットチップ内に吸引された液体溶液と完全に混合されている固相吸着剤を指す。
【0006】
しかしながら、米国特許第9,733,169号によれば、そのような使い捨てピペット抽出は、狭くて低容積のチップではうまく機能しない。実際、そのような使い捨てピペット抽出は、96ウェルプレートおよびロボット工学に一般的に使用されるように、1mLピペットチップに組み込まれると再現不可能であり得ると述べられている。
【0007】
この問題を克服するために、吸引および分注時に吸着剤が溶液と混合されることを確実にし、液体溶液を通過させるが吸着剤の通過を防止する中間多孔質バリアを組み込むことによってこの問題を克服することが提案されている。
【0008】
‘169特許によれば、提案された中間バリアは、液体溶液の一部が多孔質膜によって必然的に捕捉されるため、回収の損失を引き起こす可能性がある。さらに、そのようなバリアの存在は、背圧の問題を引き起こす。
【0009】
したがって、‘169特許の目的は、低背圧で再現可能な化学分析のために液体試料溶液を処理するために使用することができる分散型SPE装置を提供することである。
【0010】
この目的のために、‘169特許は、約1mL以下の容積を有するピペットチップと、その狭い(下)端に下部バリアと、その広い開口部(上端)に多孔質上部バリアとを含み、バリア間に緩い吸着剤を有するピペットチップ装置を記載している。吸着剤と液体との乱流混合を提供するために、‘169特許は、ピペットチップの内部にバッフルシステムを提案している。
【0011】
さらに、大規模精製のための自動化システムは、Phynexus Inc.から市販されており(https://phynexus.com/wp-content/uploads/AutoPlasmid_MMG_Automated_Plasmid_Purification_v52019.pdf)、プラスミドDNAの完全自動化マキシプレップ、メガプレップおよびギガプレップスケールの精製を提供する。PhyNexus AutoPlasmid MMGは、デュアルフロークロマトグラフィーを使用し、上下の低デッドボリュームのフリットを含む200+または1000+PhyTipカラムを備える。
【0012】
国際公開第01/88185号は、器具に組み込むことができ、液体試料中の核酸を固体汚染物質から分離するために使用することができるフィルタ要素に関する。具体的には、記載されたフィルタ要素は、約10~約200ミクロンの孔径を有する剛性多孔質構造を有する材料から形成されてもよく、フィルタ要素は、端壁と、端壁の平面から延在する1つまたは複数の側壁とを有し、その結果、核酸および固体汚染物質を含む液体試料が要素に導入されると、核酸を含む液体は、固体汚染物質が保持されながら、側壁および/または端壁を通って濾過される。一実施形態では、記載されたフィルタ要素は管状であり、閉じた端部を有するので、液体および固体材料を含む試料がフィルタ要素に接触すると、例えば、フィルタが保持されているピペットチップまたはシリンジに引き込まれると、液体は側壁を通って管の開放端部から出て濾過されるが、固体材料は最初に蓄積し、端壁に保持される。
【0013】
欧州特許第2177915号は、カラムチップ処理装置および方法に関する。その目的は、パッキンと、処理対象である流体との接触を強化し、高効率な反応と正確な処理を実現することである。パッキンを形成するビード体積とチップ形状の容器の容量との間の比を変化させることによって、特に、チップ形状の容器内で密に密閉された状態ではなく間隙を許容する比を与えるパッキン体積を選択することによって、カラムチップに液体乱流を発生させることができる流量で吸引または排出を行うことができ、パッキンと対象流体との間の十分な接触が確保され、それによって非常に効率的な処理が可能になる。また、細孔径や部品面積当たりの細孔数を考慮することで、適切な吸引または排出流量を決定することができる。
【0014】
しかしながら、大量の試料のより高速でより効率的な液体処理の絶えず増大する要求のために、この分野では、大きい液体試料体積を処理する能力を改善し、カラムの背圧を増加させることなく試料および緩衝液がカラムを通って流れる速度を増加させる必要がある。
【0015】
上記の種類の処理に適した試料は、一般に、タンパク質、核酸および関連分子などの生体分子を含む。そのような分子は、細胞療法および遺伝子療法などの多くの異なる用途を標的とする。アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターに基づく遺伝子治療は、現在、多くの成功を報告している。2つのAAVベースの遺伝子治療が現在FDAに承認されている:稀な遺伝性網膜ジストロフィーについては2017年のLuxturna、脊髄性筋萎縮症については昨年のZolgensma。さらに、幼児期の失明、血友病および他の多くの疾患の治療のためのAAVベクターに基づく臨床試験から肯定的な結果が報告されている。
【0016】
AAVの精製方法は、現在および主に、各AAVキャプシドの固有の特性を対象としたアフィニティークロマトグラフィーに基づいている。アフィニティー樹脂の一例は、AVB Sepharoseである。AVB Sepharoseは、ラクダ科由来の単一ドメイン抗体断片に基づく。AVB Sepharoseにおいて使用されるリガンドを、野生型AAVに自然にさらされたラマから単離した。したがって、多くのAAV血清型がこの樹脂に結合する。他の樹脂としては、POROS(商標)Capture Select(商標)AAV Resin(Thermo Fisher)がある:AAV8、AAV9およびAAVX。
【0017】
イオン交換クロマトグラフィー分離法をウイルス精製に使用することができる。例えば、電荷差に基づく方法は、AAVキャプシドを含有するゲノムベクターからの空のAAVキャプシドの分離に有用であり得る。アフィニティーおよびイオン交換クロマトグラフィーを組み合わせてもよい。
【0018】
インフルエンザなどからの哺乳動物ウイルス精製は、混合モードCHT(セラミックヒドロキシアパタイト)媒体を用いて実施され得る。CHT媒体は、BioRadから入手可能な混合モードのカルシウム親和性/陽イオン交換支持体の群である。多くのウイルスの高い負の表面電荷は、CHTカルシウム部位に強く結合することを可能にし、高収率の精製を可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概要
本発明の第1の態様は、底部液体入口/出口を備え、分離媒体を受け入れるように適合された少なくとも1つのカラムを備える分離装置であって、細長いフリットの少なくとも一部が、カラム側壁に実質的に平行に配置され、底部液体入口/出口から分離媒体を隔離する。
【0020】
本発明の第2の態様は、液体から少なくとも1つの標的分子を分離する方法であって、この方法は、底部液体入口/出口および任意選択的に頂部液体入口を備える少なくとも1つのカラムを提供することであって、このカラムは分離媒体を保持し、細長いフリットの少なくとも一部が、カラム側壁に実質的に平行に配置され、底部液体入口/出口から分離媒体を隔離する、提供することと、前記カラム内の液体試料を、底部液体入口/出口からの流体の吸引および底部液体入口/出口への流体の分注、頂部液体入口で液体を添加すること、またはそれらの任意の組合せを含む方法で処理することと、を含む。
【0021】
本発明のさらなる実施形態、詳細および利点は、従属請求項ならびに本出願の明細書全体から明らかになるであろう。
【0022】
定義
「分離媒体」という用語は、本明細書では、粒子が多孔質であり、分離官能基を含む粒子形態のクロマトグラフィー媒体などの任意の従来の固相媒体に使用される。クロマトグラフィー媒体は、一般に、有機または無機固体粒子を含む媒体に分類される。有機分離媒体は、多くの場合、アガロースおよびデキストロースなどの天然ポリマーと、スチレンおよびジビニルベンゼン(DVB)などの合成ポリマーと、に分割される一方、無機媒体は、シリカおよび珪藻土などの固相を含む。分離官能基は、表面に結合した配位子、および/または標的分子に利用可能であり、標的分子と相互作用することができる固体支持体の化学的実体であってもよい。
【0023】
媒体の「ベッド」という用語は、液体流によってまだ分散されていない分離媒体の層に対して本明細書で広く使用される。したがって、本明細書で使用される「ベッド」は、印加された外圧によって充填されている必要はなく、当業者が理解するように、本明細書に記載されるカラム内を下方に通過する液体によって多かれ少なかれ高密度に充填されるか、または単に沈降され得る。
【0024】
「分散媒体」という用語は、本明細書では、液体などの流体の流れによって分散された媒体に使用される。「分散」媒体粒子は自由に動き、充填ベッドとして存在しない。
【0025】
「垂直」流という用語は、本明細書では、カラム(カラム壁)の側面の方向に多かれ少なかれ分離媒体中に細長いフリットの側面を出る流れに使用される。
【0026】
「往復流」としても知られる「デュアルクロマトグラフィーフロー」という用語は、液体をカラムに2回以上出入りさせ、カラムの遠位端に出入りさせる。
【0027】
「ウイルス」という用語は、他の生物の生細胞内でのみ複製する超顕微鏡的感染因子である。偏性細胞内寄生生物として、ウイルスはそれらの生活環を完了するために細胞宿主に感染しなければならず、それはそれらがそれら自体の再生のために宿主細胞の分子機構を共選択または「ハイジャック」することによって達成される。感染細胞の内部または細胞に感染する過程ではないが、ウイルスは独立したビリオンの形態で存在する。ほとんどのビリオンは、構造が非常に単純であり、物理的に微細であり、平均して典型的な細菌のサイズのわずか1%である。ウイルスは地球上のほぼすべての生態系に見られ、動物および植物から細菌および古細菌などの微生物まで、あらゆる種類の生物に感染する。本出願の目的のために、ウイルスという用語は、ウイルス(複数)、ビリオン(単数)およびビリオン(複数)という用語を含む。
【0028】
試料の体積を記述するために本明細書で使用される用語の、「マキシプレパレーション」(略して「マキシプレップ」)、「メガプレパレーション」(略して「メガプレップ」)、および「ギガプレパレーション」(略して「ギガプレップ」)は、プラスミド分離の分野で一般的に使用される通りに本明細書で使用される。
【0029】
したがって、「マキシプレップ」スケールは、一般に、100~200mLの開始培養試料体積を含み、期待DNA収量は500~850μgであり、「メガプレップ」スケールは、一般に、500mL~2.5Lの開始培養試料体積を含み、期待DNA収量は1.5~2.5mgであり、「ギガプレップ」スケールは、一般に、2.5~5Lの開始培養試料体積を含み、期待DNA収量は7.5~10mgである。テラプレパレーションという用語は、ギガプレパレーションの10倍である。
【0030】
「軸流」という用語は、本明細書では半径流とは対照的に使用され、鉛直に配置されたクロマトグラフィーカラム内で上端から下端のいずれかに流れる流れを指すか、またはその逆である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による分離装置のカラムにおいて、液体流が底部液体入口1aから液体吸引段階中に上方にどのように導かれるかを示す図である。
図2図1と同じカラムにおいて、液体の分注中に液体が反対方向に、すなわちカラムの頂部液体入口1bから底部液体出口1aに向かってどのように流れることができるかを示す図である。
図3】分離媒体7に配置された、ここでもチューブフリットとして成形された細長いフリット6の拡大図である。フリット液体通路11は、孔として概略的に示されている(サイズは寸法では示されていない)。傾斜したカラム側壁2bは、カラムの下端に現れている。
図4】細長いフリット6が管状中空支持体9の周りにメッシュ10を巻き付けることによってどのように組み立てられ得るかを示す図である。図4aにおいて、中空支持体は、流体の通過を可能にする孔8を有するものとして示されている。図4bにおいて、チューブフリット(本発明による細長いフリット6の一例)は、多孔質メッシュ10が巻き付けられた管状中空支持体9から組み立てられている。
図5】本発明によるプラスミド精製の一般的な性能を概説する表である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
以下、図面を参照して本発明を説明する。上記からわかるように、第1の態様において、本発明は、底部液体入口/出口1aを備え、分離媒体を受け入れるように適合された少なくとも1つのカラムを備える分離装置に関し、細長いフリット6の少なくとも一部が、カラム側壁2aに実質的に平行に配置され、底部液体入口/出口1aから分離媒体7を隔離する。
【0033】
したがって、寸法、特に多孔度を適切に選択することによって、細長いフリット6は、分離媒体7がカラムから出るのを防止することができる。
【0034】
底部入口/出口1aは、カラムの内外への液体の通過に適合され、液体の吸引および分注を可能にする。さらに、本カラムは、カラム内への液体の通過、すなわちトップダウン流に適合した頂部液体入口1bを備えてもよい。
【0035】
これに関連して、「カラム側壁」2aという用語は、本明細書ではカラム底壁2bと表されるカラムの任意の傾斜した頂部または端部ではなく、カラム本体の平行な(例えば、管状)壁を意味すると理解される。言い換えると、本発明による細長いフリット6の少なくとも一部は、カラム内に実質的に鉛直に設置される。当業者には明らかなように、カラムは動作中に鉛直に設置される。
【0036】
細長いフリット6は、本発明によれば、液体が試料処理中にカラムを通過するときにカラム壁2に対して実質的に垂直な液体流の方向を提供するように配置される。換言すれば、液体が細長いフリット6を横切ると、その流れの方向は、鉛直に設置されたカラムで見た場合に、実質的に水平になる。さらに、細長いフリットは、以下のより詳細な開示から明らかになるように、いかなる固体汚染物質も収集しないように配置される。
【0037】
本発明による鉛直に配置された分離カラム内の液体流は、液体が細長いフリット6を任意選択的に往復モードで通過するときに流れの方向が変化するので、垂直流と軸流との組合せとなる。一実施形態では、液体流は、カラムの下部で軸流であり、カラムの上部で垂直流であり、その間に遷移液体流領域がある。有利には、特にカラムのチャンバへの入口において、細長いフリットが作動しているカラムの外縁に沿ったデッドフロー領域は存在しないか、またはほとんど存在しない。
【0038】
本発明に従って提供される流れは、液体が底部から吸引されるときに分離媒体7の分散を可能にし、次いで分離媒体7による標的分子の効率的な混合および捕捉を提供する。
【0039】
液体がカラムから底部入口/出口1aに分注されると、分離媒体は沈降する。これに関連して、「底部入口/出口」1aは、図面からわかるように、カラムの遠位端に位置することが理解される。
【0040】
当業者には理解されるように、分離媒体7は、多かれ少なかれ高密度に充填されたベッドとしてカラム内に設置されてもよく、これは有利には上記のように得られた上向きの流れによって分散されてもよく、液体が分注されるにつれて再充填されてもよく、またはより沈降した形態に戻ってもよい。有利なベッド体積は、約20、15、10、5、3、2および1mL、または50および100μL程度の小さいサイズから、最大約100mL、約1Lおよび約10Lのより大きなサイズおよび最大約50、100、または200Lのさらに大きなサイズまでであってもよい。有利な分離ベッドは、20、10および5mLからなる群から選択される体積のものである。本発明の第2の態様に関連して以下でより詳細に説明するように、本発明によるカラムは、往復流を可能にする。
【0041】
これに関連して、「カラム壁に実質的に平行」という用語は、上述の流れの方向を提供する角度で設置されるなど、鉛直に(直立して)配置されたカラムにおいて水平でなく配置されるものとして理解されるべきである。例えば、細長いフリット6の少なくとも一部は、カラムが鉛直に配置されていると仮定して、水平面に対して約45~90°などのより広い範囲内の角度で配置されてもよい。
【0042】
これに関連して、「~の少なくとも一部」という用語は、試料処理中にカラムを通過するときにカラム側壁2aに対して実質的に垂直に向けられた、全体の流れの一部を構成する液体流を提供する広義の意味で理解されるべきである。
【0043】
上部フリット5は、上記カラムにおいて、カラムが下方に分離媒体7を受け入れることを可能にする位置に配置されていてもよい。したがって、分離媒体7を保持し、液体試料処理中に分離媒体7がカラム頂部に到達するのを防止するために、従来のように上部フリット5が使用される。
【0044】
本発明によれば、本明細書ではカラムチャンバ3と表される容積は、図1および図2に示すように、上部フリット5の上方のカラム内に配置されてもよい。したがって、液体流は、分離媒体7を分散させた後、頂部フリット5を通ってカラムチャンバ3内へと上方に向けられる。カラムチャンバ3の容積は、例えば約40mLであってもよく、試料液の40mLアリコートの処理を可能にする。しかしながら、本発明によるカラムは、実質的に任意の体積の分離媒体7を含む、実質的に任意のサイズおよびカラムチャンバサイズに構成され得る。
【0045】
当業者が理解するように、効率的な処理のための本質的な要因は、カラムへの液体流が、分離媒体7を少なくともある程度分散させるのに十分な強さでなければならないことである。当業者はまた、より大きなカラムおよびより低い吸引背圧がより速い液体流を必要とすることを理解するであろう。
【0046】
本明細書に記載の例示的な実施形態では、液体流量は100mL/分であった。
さらに、本発明による前記上部フリット5の設置は、図1および図2からわかるように、分離媒体7ならびに前記上部フリット5の下方の自由空間を可能にすることができる。換言すれば、分離媒体7が充填ベッドの形態などでカラム内に配置されている場合、分離媒体7と上部フリット5との間に自由体積が利用可能になる。処理中、前記体積は、上記のように、分散分離媒体で多かれ少なかれ占有される。
【0047】
試料処理中、本発明による分離媒体7の分散は、液体試料と分離媒体との効率的な混合を可能にする。そのような混合中、生体分子などの試料からの分子は、選択された分離媒体の種類に応じて、例えばイオン相互作用によって、疎水性相互作用によって、「錠と鍵」タイプの親和性相互作用によって、媒体の利用可能な表面積と相互作用する。したがって、生体分子などの標的分子は、任意の一般的に知られている分離原理に従って、結合、捕捉または保持され得る。
【0048】
本発明によるカラムは、粒子クロマトグラフィー媒体などの特定の試料の処理に適した任意の分離媒体7を保持することができる。当業者には理解されるように、上部フリット5の多孔性ならびに細長いフリット6の特性は、処理中に分離媒体7を所定の位置に保持するように適合されるべきである。
【0049】
したがって、本発明による細長いフリット6は、意図された分離に適合した寸法を有するメッシュ10を備えることができる。
【0050】
細長いフリット6のメッシュ10は、液体がメッシュ10を通過することを可能にする適切な位置および適切なサイズの1つまたは複数の孔8を備える適切に設置された中空支持体9によって所定の位置に維持されてもよい。
【0051】
例えば、メッシュ10は、細長いフリット6を横切って実質的に垂直な上述の有利な流れを可能にする位置に保持されるように、支持体9に十分に近い任意の場所に設置されてもよい。したがって、メッシュ10は、支持体9に取り付けられてもよく、支持体9上にコーティングされてもよく、または支持体9の周りに巻き付けられてもよい。当業者が理解するように、そのような支持体9は、プラスチックなどの意図されたプロセスの条件に対して不活性である任意の適切な材料から作製されてもよい。
【0052】
具体的には、支持体9は、液体流が一端で入り、支持されたメッシュ10の長さにわたって出ることを可能にするために中空であるべきである。支持体9は、円形、長円形、三角形、または管状支持体を生じる実質的に円形の断面などの他の角のある断面によって画定されてもよい。
【0053】
さらに、所望の流れを可能にするために、支持体9は、孔8などの何らかの種類の液体通路を含むべきである。図4に示すように、本発明による細長いフリット6は、均一に設置された孔8を含む管状支持体9を含むことができ、その上にメッシュ10が巻き付けられている。
【0054】
細長いフリットの様々な設計が本発明に包含される。例えば、上述のように、細長いフリットは、管状、または少なくとも部分的に管状であってもよい。細長いフリットまたはその一部は、その下端がその上端よりも小さい直径、または、その上端がその下端よりも小さい直径を有する管など、可変断面を有するように設計されてもよい。そのような設計における直径は、定率で変化し、円錐または上下逆の円錐に似ていてもよい。あるいは、バルブ、または上述のように細長いフリットを少なくとも部分的に通過する液体流を提供する限り、任意の他の形状として設計されてもよい。
【0055】
図1図3から明らかなように、本発明による装置のカラムには、管状カラム端部4が設けられてもよい。管状カラム端部4は、従来のカラムと比較して比較的長くてもよく、例えば、カラムの長さの約3分の1などの適切な部分を構成する長さであってもよい。当業者は、カラム端部4ならびにカラム底壁2bの長さを所望のプロセスに適合させることができる。有利には、本出願の他の箇所で説明するように、細長い管は、実際のカラム長よりも短い長さになるように配置され、図面に示すように、液体および分散媒体が細長いフリットの上端より上方にあるカラムの一部を提供する。したがって、特定の実施形態では、細長いフリットは、その上に分離媒体が提供される端部を有する。さらに、そのような細長いフリットは、液体が実質的に鉛直に流れることを可能にし、それによってフリット内の固体汚染物質の収集が回避される。
【0056】
図1図3に示すように、管状カラム端部4および細長いフリット6は、液体がいずれかの方向に両方を通って流れることを可能にする一体部品(1つの単一部品、または管、または融着部品)として配置されてもよい。
【0057】
本発明のカラムは、有利には、液体処理システムに適合するように寸法決めされる。そのようなシステムは、クロマトグラフィーおよび生体分子処理などの他の分離の分野で従来使用されており、適切なソフトウェアを使用してプロセスの全部または一部を制御するコンピュータを含むことができる。
【0058】
したがって、本発明による装置は、カラムの上端と下端との間で液体を通過させるための手段を備えることができ、この手段は正および負の圧力を提供することができる。
【0059】
当業者には理解されるように、前記手段は、置換ポンプなどのポンプであってもよい。
代替的に、または追加的に、トップダウン流、すなわちカラムの頂部液体入口1bに液体を添加し、液体が重力または圧送のいずれかによって下降することを可能にするための特定の手段が提供される。当業者には理解されるように、本発明による装置は、トップダウンおよび/または吸引/分注、またはそれらの任意の混合または組合せで使用することができる。本発明は、例えば、試料および溶出液の両方が底部液体入口/出口1aで吸引および分注され、洗浄液が頂部液体入口1bで添加され、例えば重力によってカラムを通過することができるプロセスを提供することができる。そのような洗浄工程では、頂部液体入口1bを使用した便利な洗浄を可能にするためにカラムを液体処理工程から取り出し、完了した洗浄後に再挿入して、例えば標的分子を溶出するステップを進めることができる。
【0060】
上述のように、カラム内に存在する分離媒体7は、液体吸引中、すなわちポンプの上昇行程中に分散され得る。この分散は、試料とカラム媒体との接触を促進し、標的分子の捕捉は、多くの従来技術の方法よりも速く、より完全になる。
【0061】
ポンプの下降行程において、カラムベッドは再充填し、流体はベッドを通って流れる。液体流は方向転換し、分離媒体に対して垂直に移動し、細長いフリットを通ってカラムの端部から出て戻る。このプロセスは、必要に応じて何度でも繰り返すことができる。したがって、本発明の装置は、有利には、デュアルフロークロマトグラフィー(DFC)としても知られる「往復」流で使用することができる。
【0062】
本発明は、液体試料の自動処理における背圧を低下させ、カラムへの迅速な流れ、したがって効率的な試料処理を可能にすることが示されている。
【0063】
最後に、本発明による分離装置のカラム容積を本設計によって増加させることにより、最大40mLの試料を一度に処理することができる。
【0064】
本発明による装置は、自動処理などの並列処理のために配置された2つ以上のカラムを備えることができる。
【0065】
本発明による装置は、生体分子を捕捉し、洗浄し、回収するために開発されている。換言すれば、装置は、標的分子の分析に先行する試料処理プロトコルの1つまたは複数のステップに使用され得る。代替的に、本発明は、複合液体内容物からの標的分子の分離に使用されてもよく、本発明の装置は、精製の1つまたは複数のステップで使用されてもよく、任意選択的に、遠心分離、クロマトグラフィー、濾過などの生体分子の精製の従来のステップと組み合わされてもよい。
【0066】
したがって、第2の態様において、本発明は、液体から少なくとも1つの標的分子を分離する方法に関し、この方法は、底部液体入口/出口1aおよび任意選択的に頂部液体入口1bを備える少なくとも1つのカラムを提供することであって、このカラムは分離媒体7を保持し、細長いフリット6の少なくとも一部が、カラム壁2に実質的に平行に配置され、底部液体入口/出口1aから分離媒体7を隔離する、提供することと、前記カラム内の液体試料を、底部液体入口/出口1aからの流体の吸引および底部液体入口/出口1aへの流体の分注、頂部液体入口1bで液体を添加すること、または底部液体入口/出口1aおよび頂部液体入口1bを使用することの任意の組合せを含む方法で処理することと、を含む。
【0067】
より具体的には、本発明の方法は、以下のステップ、すなわち、
a)底部液体入口/出口1aを備え分離媒体7を保持する少なくとも1つのカラムを提供するステップであって、細長いフリット6の少なくとも一部が、カラム壁2に実質的に平行に配置され、底部液体入口/出口1aから分離媒体7を隔離する、提供するステップと、
b)他の分子との混合物として前記少なくとも1つの標的分子を含む液体を提供するステップと、
c)前記液体中にカラムの底部液体入口/出口1aを入れるステップと、
d)吸引段階において、カラムの底部液体入口/出口1aから、カラム壁2に実質的に垂直な流れの方向に細長いフリット6を通って液体を通すために、カラムに負の圧力を印加することにより、液体流は分離媒体7を分散させ、任意選択的に、分離媒体7による標的分子の捕捉のための時間を与えるステップと、
を含み得る。
【0068】
本方法は、以下のさらなるステップ、すなわち、
e)分注段階において、カラム壁2に実質的に垂直な流れの方向に細長いフリット6を通ってカラムの底部液体入口/出口1aへ向かって液体を通すために、カラムに正の圧力を印加するステップと、
f)カラムの底部液体入口/出口1aを出る液体を収集するステップと、
を含み得る。
【0069】
任意選択的に、上記のステップの後に、
g)分離媒体7から標的分子を解放する溶出液を用いてステップd)およびf)を繰り返すステップと、
h)カラムの底部液体入口/出口1aを介して解放された標的分子を含む溶出液を収集するステップと、続いて任意選択的に、溶出された標的分子を回収および/または分析するステップと、
が続く。
【0070】
標的分子の分析は、任意の従来のまたは有利な方法、例えば、質量分析(MS)を含んでいてもよく、任意選択的に、クロマトグラフィー、例えばHPLCと組み合わされてもよい。
【0071】
さらに、この方法は、試料、洗浄液および/または溶出液の往復流を使用することができる。往復流は、デュアルクロマトグラフィーとしても知られており、これまでこの分野の当業者に周知であり、例えば、往復流による処理が詳細に記載されている米国特許第7,482,169号を参照されたい。
【0072】
上述したように、液体をカラムの頂部液体入口1bに添加することもできるため、当業者は、特定の状況に適合した柔軟な方法で液体流の方向を変えることができる。
【0073】
当業者が理解するように、試料の吸引後に1つまたは複数の洗浄ステップが含まれてもよい。このような洗浄ステップは、吸引ステップと同様に行うことができる。洗浄には1つまたは複数の種類の緩衝液を使用してもよく、これらの洗浄は連続ステップで行ってもよい。
【0074】
当業者には理解されるように、洗浄は、流体がカラムの頂部液体入口1bに導入される流体のトップダウン流で実行されてもよい。流体は、重力流によってカラムを通って流れてもよく、またはポンプが係合してカラムを通る流体流を強制的に流してもよい。
【0075】
溶出はまた、往復流体流またはトップダウン流体流で実施されてもよい。
標的分子は、タンパク質もしくは核酸などの生体分子、またはそのフラグメントであり得る。
【0076】
例えば、標的分子は、Fabフラグメントなどのペプチドおよび抗体からなる群から選択されるタンパク質であり得る。
【0077】
あるいは、標的分子は、DNAまたはRNA分子、例えばプラスミド、例えば接合性または非接合性プラスミドであり得る。
【0078】
ステップb)で提供される液体は、細胞培養または化学合成に由来し得る。
ステップd)において、液体体積は、約20mL~約1Lの範囲内であってもよく、吸引される。例えば、40mLの液体試料を、用途に応じて吸引してもよく、または任意のより大きな体積を吸引してもよい。
【0079】
ステップd)およびf)の正および負の圧力は、置換ポンプなどの適切なポンプによって提供されてもよい。
【0080】
ステップa)では、少なくとも2つのカラムが提供され、後続のステップで並列に処理され得る。
【0081】
カラムは、異なる分離媒体を含むことができ、および/または異なる液体を別個のカラムに吸引することができる。液体と分離媒体との間の接触時間を増加させるために、デュアルフロークロマトグラフィー(DFC)としても知られる「往復」流を試料の吸引および/または溶出に利用することができる。
【0082】
本方法において、本発明による分離装置を使用してもよい。したがって、第1の態様の装置に関連して本明細書で提供されるすべての詳細は、本方法に適用可能であることができ、逆もまた同様である。
【0083】
本発明の一態様では、上記の生体分子は、DNAまたはRNAなどの遺伝物質の担体であり得る。担体は、改変ウイルスまたは非改変ウイルスであり得る。
【0084】
これに関連して、「非改変ウイルス」という用語は、タンパク質コーティングおよび/または脂質エンベロープによってカプセル化された少なくとも1つの遺伝子を保有するウイルスとして理解され、このウイルスは生きている宿主の細胞内で複製することができる。
【0085】
「改変ウイルス」という用語は、本明細書では、その天然の状態と比較して改変された任意のウイルス、例えば弱毒化ウイルスをもたらす機能的改変、または構造的改変として理解される。「改変ウイルス」という用語は、変異ウイルス形態も含む。
【0086】
具体的には、本発明に従って分離される標的分子は、複製欠損非エンベロープウイルスであり、線状一本鎖DNA(ssDNA)ゲノムを有するアデノ随伴ウイルス(AAV)であり得る。
【0087】
それらは複製することができないので、AAVは、例えば遺伝子治療またはワクチン接種の状況において、遺伝物質を輸送するためのベクターとして一般的に使用される。
【0088】
したがって、特定の態様では、本発明は、本出願に記載の分離装置を使用して、好ましくはDNAまたはRNAの形態の遺伝情報のキャリアを分離する方法に関する。有利には、前記担体は、アデノ随伴ウイルス(AAV)などのウイルスである。
【0089】
本発明は、遺伝情報を含むウイルスの分離を含む。代替形態では、本発明は、ウイルスエンベロープ、すなわち遺伝情報を含まないウイルスの分離を含む。後者の種類の「空のウイルス」は、ワクチンまたは遺伝子治療用途におけるベクターとして有用であり、そのユーザが所望の結果を得るために任意の関連する遺伝物質を挿入することを可能にする。
【0090】
本分離装置は自動処理に容易に適合可能であるため、本発明のこの態様は、ワクチンまたは遺伝子治療製剤の製造のための自動化プロセスの1つのステップを構成し得る。
【0091】
したがって、この態様において、本発明は、底部液体入口/出口を備え、分離媒体を含む少なくとも1つのカラムを使用してウイルスを分離する方法に関し、細長いフリットの少なくとも一部が、カラム壁に実質的に平行に配置され、底部液体入口/出口から分離媒体を隔離する。
【0092】
カラムは、本出願に記載の分離装置の一部であってもよい。そのようなカラムの例示的な体積は、例えば1または2リットルのチャンバサイズの範囲内であることができ、ベッドサイズは、下端で10または20mLであることができ、最大200または400mLの体積の分離媒体であることができる。しかし、3または4リットル以上のチャンバ容積など、より大きなカラムも同様に有用である。本発明のこの態様は、当分野で一般的に使用される直径1メートルのカラムなどのより大きなバイオ製造サイズにも適用することができる。
【0093】
上記の担体は、ウイルス、例えばアデノ随伴ウイルス(AAV)またはその一部もしくはフラグメントであり得る。そのようなAAVは、遺伝情報を含むことができ、または、当業者に周知の技術を使用して、必要に応じてDNAまたはRNAを挿入することができる遺伝情報を有しないウイルスであり得る。
【0094】
イオン交換担体は、任意のウイルスに適用され得る。他の親和性担体をウイルスに適用してもよい。これは、ウイルスの表面上のタンパク質を選択する親和性基を開発し、これらの基を分離媒体に付着させることを含む。
【0095】
この態様で使用される分離媒体は、アガロースまたはセルロースなどの天然ポリマーを含み得る。そのような分離媒体は当業者に周知であり、例えば、哺乳動物細胞培養物に由来する試料がカラムに適用されるアフィニティークロマトグラフィーを使用して、本明細書で論じられる担体の捕捉ステップのために得ることができる。そのような試料は、細胞を除去するために前処理されていてもよく、これは、その中で産生された担体を細胞培養物中に分泌する哺乳動物細胞の場合に好ましい。
【0096】
したがって、本発明は、分離媒体がウイルスを捕捉するように特別に設計されたリガンドを含むアフィニティークロマトグラフィー法を含む。
【0097】
本発明のこの態様の利点は、圧力が低くなるため、プラスチックおよびカラムライナーを使用できることであり、これは、現在使用されているステンレス鋼と比較して、ウイルスベクターなどの脆弱な生体分子を分離する場合の利点である。また、本明細書に記載のカラムに分離媒体を提供することは、均一にも圧力下にも要件充填がないため、非常に容易である。
【0098】
図面の詳細な説明
図1は、本発明による分離装置のカラム1において、使用時に液体流が底部液体入口1aから液体吸引段階中に上方にどのように導かれるかを示すために提供されている。どのように液体が吸引され、カラム端部4の内側を通過し、カラム端部4と一体化された中空管として示されている細長いフリット6に入るかは、吸引された液体が上部フリット5に対して、または分離媒体7の表面に対して、実質的に垂直な角度で流れた場合に明らかである。
【0099】
ポンプ(図示せず)をカラム頂部に取り付けて、負および正の圧力を印加することができる。分散モードでは、カラム頂部に負の圧力が印加され、遠端のカラムに液体が流入する。液体は、細長いフリット6を通ってカラムに流入し、分離媒体7を分散させる。流れは、カラムチャンバ3内に進行し続ける。分散分離媒体7は、上部フリット5によってカラム内に収容されている。典型的なカラムは、全長が206mmであり、端部管の長さが67mmであり、カラム本体の直径が35mmである。
【0100】
カラムへの液体の流入により分離媒体7が分散され、プラスミド等の標的分子をより迅速に捕捉することができる。
【0101】
図2は、図1と同じカラムにおいて、液体の分注中に液体が反対方向に、すなわちカラムの頂部から下部液体出口に向かってどのように流れることができるかを示す。細長いフリット6およびカラム端部4を介してカラムを出るために、液体がどのようにして細長いフリット6を上部フリット5に対して実質的に垂直な角度で通過するかは明らかである。
【0102】
カラムからの液体流は、多かれ少なかれ充填ベッドなどの元の状態と同様の分離媒体を再充填させる。
【0103】
図3は、分離媒体7に配置された、ここでもチューブフリットとして成形された細長いフリット6の拡大図である。フリット液体通路11は、孔8として概略的に示されている(サイズは寸法では示されていない)。ここに示される実施形態では、底部孔8はより大きく、逆流モード(液体を分注する)でのカラムのより良好な排出を可能にする。孔の数、サイズおよび密度は、特定のカラム実施形態および分離媒体を分散させるためのポンプの強度に応じて変化する。当業者には理解されるように、孔のサイズが減少するにつれて、液体流の速度が増加し、これにより細長いフリットの分散能力が増加する。
【0104】
図3はまた、平行なカラム壁2が終端し、下壁が鉛直に対して約45°の傾斜を有するという本発明の装置のカラムの有利な特徴を示している。下壁の前記傾斜は変化してもよいが、鉛直に対して95°ではないことが有利である。
【0105】
図4は、細長いフリット6が管状中空支持体9の周りにメッシュ10を巻き付けることによってどのように組み立てられ得るかを示す。
【0106】
図4aにおいて、中空支持体9は、流体の通過を可能にする孔8を有するものとして示されている。
【0107】
図4bにおいて、チューブフリット(本発明による細長いフリット6の一例)は、多孔質メッシュ10が巻き付けられた管状中空支持体9から組み立てられている。具体的には、メッシュ10で覆われた各孔8は、フリット液体通路11を構成する。したがって、メッシュ10に起因して、中空支持体9の孔8は、分離媒体7がカラムから出ることを許容しない。
【0108】
図5は、特に、チューブフリットとして設計された細長いフリットを有する3つのサイズについて想定される、本発明によるプラスミド精製の一般的な性能を概説する表である。
【0109】
実験部
本実施例は、例示のみを目的として提供されており、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。以下および本出願の他の箇所に提供されるすべての参考文献は、参照により本明細書に含まれる。
【実施例1】
【0110】
実施例1.プラスミド精製のための自動化機器における5mLベッド体積カラムを使用するマキシプレップ精製プロセス
【0111】
【表1】
【0112】
緩衝液は、以下からなる。
再懸濁緩衝液:50mM トリスHCl、pH8.0;10mM EDTA
溶解緩衝液:0.2M NaOH;2.5% SDS
沈殿緩衝液:2.04M KOAc、pH4.5
エンドトキシン除去緩衝液:界面活性剤
平衡緩衝液:50mM トリスHCl、pH7.0
洗浄緩衝液:50mM トリスHCl、pH7.0;300mM NaCl
溶出緩衝液:50mM トリスHCl、pH8.5;500mM NaCl
緩衝液アリコート(手動)
以下の表に従って緩衝液をアリコートすると、体積は1つの試料に十分である。
【0113】
29μLの0.1mMチモールフタレインを再懸濁緩衝液に添加する。
使用前に緩衝液を推奨温度で一晩保存する。
【0114】
細胞溶解液の調製(手動)
3gの湿潤した完全に解凍した大腸菌細胞ペレットを秤量する。
【0115】
RNase(20mg)を再懸濁緩衝液に添加し、よく混合する。
RNaseを添加した再懸濁緩衝液を細胞ペレットに添加し、激しく振盪してペレットを分割する。
【0116】
溶解緩衝液を細胞混合物に添加し、溶液が完全に青色になるまで(約20~30回)混合物を静かにひっくり返す。
【0117】
沈殿緩衝液を細胞混合物に添加し、溶液が完全に白色になり、もはや青色が観察されなくなるまで(約20回)混合物を静かにひっくり返す。
【0118】
細胞溶解物と細胞残屑との分離が観察されるまで、細胞ボトルを逆さに保つ。
細胞溶解物試料を機器サンプルボックス内のフィルタに静かに注ぎ、細胞溶解物を細胞破片から分離する。
【0119】
最終的に収集された細胞溶解物試料は、約60~80mLになる。
自動化された機器:プラスミド精製のための完全に自動化された機器をPhynexus(http/phynexus.com)から入手し、本明細書で使用される試料体積に適合させ、その下端にチューブフリットとして設計された細長いフリットを備えた。具体的には、本明細書で使用されるチューブフリットは、図面に従って設計した。
【0120】
再濾過:
濾過後の試料体積:60~80mL
サンプルボックスから20mL吸引し、フィルタの上に速度=30mL/分で20mLを排出する。
【0121】
10回の追加でこれを行う。
インキュベーション:
ERBエンドトキシン除去緩衝液15mLをサンプルボックスに移す。
【0122】
30分遅延。
カラム平衡化:
チューブフリットカラムを係合させる。
【0123】
30mLのEQBを吸引および排出する(4回)。
捕捉:
30mLの半透明の溶解物を吸引し、第1の位置A1B1に排出する。
【0124】
25mLを7回吸引および排出する。
各サイクル後に休止を入れる(アガロースゲルのための試料を収集するため)。
【0125】
洗浄:
30mLの洗浄緩衝液を吸引および排出する。
【0126】
洗浄緩衝液リザーバーから30mLの洗浄緩衝液を吸引する。
30mLの洗浄緩衝液をWASTE位置に排出する。
【0127】
60mLの洗浄緩衝液にする。
アガロースゲルのための洗浄試料を収集するために休止を入れる。
【0128】
溶出:マキシプレップ
溶出緩衝液から30mL吸引する。
【0129】
30mLの溶出緩衝液を他のコニカルチューブに排出する。
20mLを収集し、濃度は150μg/mLである。
【実施例2】
【0130】
実施例2.ギガプレップおよびメガプレップスケールのプラスミド精製を精製するための緩衝液体積およびペレット重量
この実施例2では、実施例1に記載の機器を使用した。
【0131】
【表2a】
【0132】
再濾過
40mLの半透明の溶解物を試料リザーバーから第1の位置(A1B1)に移す。
【0133】
20mLの半透明の溶解物を吸引し、フィルタ上に20mL(30mL/分)排出する。
【0134】
これを10回繰り返す。
インキュベーション
25mLのエンドトキシン除去緩衝液(ERB)を試料リザーバーに添加する。
【0135】
28分間インキュベートする。
平衡化
カラムは30mLの平衡緩衝液を4サイクル吸引および排出する。
【0136】
捕捉
30mLの溶解物をサンプルボックスから位置A1B1~A4B4に移す。
【0137】
各サイクルは25mL(500mL/分)を吸引し、25mL(70mL/分)を排出する。
【0138】
カラムは、A1B1、A2B2、A3B3、およびA4B4でそれぞれ8、4、2、および2サイクルを実行する。
【0139】
【表2b】
【0140】
溶出:ギガプレップ
溶出緩衝液から30mL吸引する。
【0141】
30mLの溶出緩衝液を他のコニカルチューブに排出する。
次の試料アリコートに対してプロセスを繰り返す。
【0142】
表2b:試料体積ギガプレップスケール
【実施例3】
【0143】
実施例3.メガプレップスケールのプラスミド精製のための緩衝液体積およびペレット重量
この実施例3では、実施例1に記載の機器を使用した。
【0144】
【表3】
【実施例4】
【0145】
実施例4.wtAd5 AAVウイルスの精製
ウイルス粒子に結合または部分的に結合することができる官能基または固体表面を有する任意の固相分離媒体を本発明のカラムに使用することができる。
【0146】
この例では、血清型特異的捕捉選択樹脂AAV8およびAAV9をwtAd5 AAVウイルスの精製に使用する。AAVベクターは一過性トランスフェクションによって作製される。HEK293細胞を、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI)、および3つのプラスミドの1:1:1比(逆方向末端反復配列[ITR]ベクター、AAV rep/cap、およびAdヘルパープラスミド)を使用してトランスフェクトする。トランスフェクトした細胞をピューロマイシンの存在下で増殖させ、wtAd5ウイルスによる感染後にAAV産生性についてスクリーニングする。細胞ペレットを遠心分離によって回収する。細胞ペレットを20mMトリス[pH7.5]、150mM NaCl、10mM MgClに再懸濁する。ベンゾナーゼおよび0.1% Triton X-100を懸濁細胞に添加し、混合物を37℃で15分間インキュベートして細胞を溶解する。溶解した混合物を遠心分離し、上清を除去する。上清を濾過して、AAVベクターを含有する清澄化細胞溶解物を生成する。
【0147】
チャンバ容積50mLの2つのチューブフリットカラムに、各々10mLのAAV8およびAAV9捕捉媒体を充填する。カラムを100mL/分で往復流で動作させる。カラムをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)pH7~7.5で平衡化した。
【0148】
他の例では、カラムを10~50mMリン酸ナトリウムまたはトリスpH6~8で平衡化してもよい。0.1~0.2M NaClまたはKClをコンディショニング緩衝液に添加して、タンパク質/タンパク質相互作用による非特異的吸着を防止してもよい。
【0149】
rAAVベクターを含有する40mLの清澄化細胞溶解物をカラムに装填する。カラムは完全に装填されている。試料ウイルスの添加アリコートを必要に応じて添加して、カラムに完全に装填する。ウイルスの装填後、未結合の非ウイルス材料をカラムから洗浄する。
【0150】
一般に、40mL洗浄を2回使用する。高不純物レベルを有する試料は、新鮮な廃棄溶液によるより多くの洗浄ステップを必要とし得る。2次洗浄または中間洗浄による洗浄は、不純物除去を向上させ、特に目的のタンパク質および不純物との相互作用がある場合に不純物クリアランスをより予測可能にすることができる。
【0151】
2次洗浄の選択肢は、最大1MのNaClの高塩洗浄を含む。トリス緩衝液を添加してpHの効果を試験してもよい。他の添加剤は、最大0.05%(v/v)のTween20などの界面活性剤を含む。最大0.2MのMgClなどのカオトロピック塩を添加してもよい。しかしながら、リン酸塩を含有する緩衝液は、Mg2+カチオンによる沈殿を防止するために回避されなければならない。ウイルスの脂質およびキャプシド構造が損傷を受けない限り、最大20%のエタノールを添加してもよい。
【0152】
標的ウイルス粒子は、それらの結合および溶出挙動が異なり、最適な溶出条件は実験的に決定される。出発点は、50~100mMクエン酸pH3.0であり得る。これをpH2に低下させることができる。使用され得る他の溶出緩衝液成分は、リン酸塩、塩酸、グリシン、酢酸塩、または低pHで十分に緩衝する他の成分を含む。他の添加剤は、最大2MのpH7のMgClおよび/または最大50%のプロピレングリコールであり得る。これらの成分の組合せを使用して、溶出条件を最適化することができる。
【0153】
段階勾配溶出を使用して不純物を除去し、濃縮溶出画分を得る。完全装填カラムを使用する。そうでなければ、溶出中の再結合事象のためにウイルスの効率的な放出がない可能性がある。回収したウイルスを直ちに中和して、低pHでの一部の分子の変性を防ぐ。溶出したウイルス溶液を、1M pH8.7のトリスHClを添加することによって中和した。
【実施例5】
【0154】
実施例5.インフルエンザおよびデングウイルスの精製
CHT XT媒体(BioRad)を使用したインフルエンザウイルスおよびデングウイルスの1ステップ精製。50mLチャンバを有するチューブフリットカラムに20mLの媒体を充填した。2つの試料は、直径80~120nmのssRNAインフルエンザウイルスおよび直径50nmのssRNAデングウイルスである。
【0155】
インフルエンザウイルス、A/California/07/2009株の産生を、225mLフラスコ中の10%ウシ胎児血清(FBS)およびL-グルタミンを含有する最少必須培地(MEM;Gibco)中でMOCK細胞上で培養する。細胞がほぼコンフルエントになったら、インフルエンザウイルスを、トリプシン、ペニシリンおよびストレプトマイシン(flu培地)を含む75mlのD-MEM/F-12における1:3000希釈で細胞単層に接種する。上清を3、4、および11日目に回収し、0.45μmフィルタを通して清澄化する。
【0156】
デングウイルスの産生:2型ThNH7/93株をC6/36細胞上で培養する。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中100μg/mlのポリ-L-リシンでプレコートした225mLフラスコ中で細胞を増殖させる。細胞を、10%FBSを含有する改変EMEM最少必須培地(MP Biomedicals)中、28℃で1週間培養する。コンフルエンスに達した後、デングウイルス2型を、0.5%FBSおよびMEMビタミン溶液(lnvitrogen Corporation)を含有する改変EMEM 75mL中の細胞単層上に1:1000希釈で接種し、次いで28℃で培養する。3日目に培地を交換し、7日目に培養液(約75mL)を回収した。培養液を0.45μmフィルタで濾過して、細胞および大きな細胞残屑を除去した。
【0157】
カラムを100mL/分で往復流で動作させる。ウイルス精製は、インフルエンザウイルスについては表4に、デングウイルスについては表5に示すように行う。
【0158】
【表4】

【0159】
【表5】
【0160】
洗浄および装填条件は、ウイルスの収量および純度を最適化するために変更され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】