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特表2023-545807調整可能な抵抗素子を備えるデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】調整可能な抵抗素子を備えるデバイス
(51)【国際特許分類】
   G11C 13/00 20060101AFI20231024BHJP
   G11C 11/54 20060101ALI20231024BHJP
   H10B 63/00 20230101ALI20231024BHJP
   H10N 70/20 20230101ALI20231024BHJP
   H10N 70/00 20230101ALI20231024BHJP
   H10N 99/00 20230101ALI20231024BHJP
【FI】
G11C13/00 480K
G11C11/54
G11C13/00 230
H10B63/00
H10N70/20
H10N70/00 Z
H10N99/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023522541
(86)(22)【出願日】2021-10-05
(85)【翻訳文提出日】2023-04-12
(86)【国際出願番号】 IB2021059115
(87)【国際公開番号】W WO2022084779
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】17/074,763
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(74)【復代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【復代理人】
【識別番号】100118108
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 洋之
(72)【発明者】
【氏名】カーグ、ジークフリート
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー、ゲルハルト、イングマー
【テーマコード(参考)】
5F083
【Fターム(参考)】
5F083FZ10
5F083GA30
5F083JA37
5F083JA38
5F083JA39
5F083JA40
5F083JA42
5F083JA43
5F083JA60
(57)【要約】
デバイスは、少なくとも1つの調整可能な抵抗素子を含む。各調整可能な抵抗素子は、第1の端子、第2の端子、および第1の端子と第2の端子との間に配置された誘電体層を備える。デバイスは、少なくとも1つ電気セット・パルスを抵抗素子に加えて、誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成するように構成される。デバイスは、少なくとも1つの電気リセット・パルスを加えて導電フィラメントの酸素空隙のサブセットを変位させるように構成される。少なくとも1つの電気リセット・パルスは、導電フィラメントの温度を上げ、導電フィラメントの酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分と、導電フィラメントの酸素空隙のサブセットを変位させるように構成された第2の部分とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの調整可能な抵抗素子を備えるデバイスであって、
各調整可能な抵抗素子は、
第1の端子と、
第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に配置された誘電体層とを備え、
少なくとも1つ電気セット・パルスを前記少なくとも1つの抵抗素子に加えて、前記誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成し、
少なくとも1つの電気リセット・パルスを前記少なくとも1つの抵抗素子に加えて、前記導電フィラメントの前記酸素空隙のサブセットを変位させるように構成され、前記少なくとも1つの電気リセット・パルスは、
前記導電フィラメントの温度を上げ、前記導電フィラメントの前記酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分と、
前記導電フィラメントの前記酸素空隙の前記サブセットを変位させるように構成された第2の部分とを含む、デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電気リセット・パルスの前記第1の部分は、第1のピーク振幅および第1の持続時間を有し、
前記少なくとも1つの電気リセット・パルスの前記第2の部分は、第2のピーク振幅および第2の持続時間を有し、
前記第1のピーク振幅は、前記第2のピーク振幅より大きく、前記第1の持続時間は、前記第2の持続時間より短い、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1のピーク振幅は、前記第2のピーク振幅よりも少なくとも2倍大きい、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の持続時間は、前記第1の持続時間よりも少なくとも5倍長い、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1のピーク振幅は、0.1ボルトから2ボルトの間の範囲内であり、前記第2のピーク振幅は、0.02ボルトから1ボルトの間の範囲内であり、前記第1の持続時間は、1ナノ秒から100ナノ秒の間の範囲内であり、前記第2の持続時間は、5ナノ秒から1000ナノ秒の間の範囲内である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの調整可能な抵抗素子は、
少なくとも1つの電気セット・パルスの印加に応答して複数のセット抵抗状態を提供し、
少なくとも1つの電気リセット・パルスの印加に応答して複数のリセット抵抗状態を提供するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記誘電体層は、金属酸化物材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記金属酸化物材料は、遷移金属酸化物である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記金属酸化物材料は、ペロブスカイト遷移金属酸化物である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記金属酸化物材料は、
ABO3-δペロブスカイトであって、Aは、アルカリ土類金属、希土類元素またはそれらの組み合わせであり、Bは、遷移金属元素である、前記ABO3-δペロブスカイト、
チタン酸ランタンまたはストロンチウムあるいはその両方(La,Sr)TiO3-δ、
チタン酸イットリウムまたはカルシウムあるいはその両方(Y,Ca)TiO3-δ、
マンガン酸ランタンまたはストロンチウムあるいはその両方(La,Sr)MnO3-δ
マンガン酸プラセオジムまたはカルシウムあるいはその両方(Pr,Ca)MnO3-δ
マンガン酸カルシウム(Pr,Ca)MnO3-δ
コランダム、
酸化バナジウムまたはクロムあるいはその両方(V,Cr)3-δ
二元遷移金属酸化物、
酸化ニッケルNiO1-δ
酸化チタンTiO2-δ、
酸化ハフニウムまたはジルコニウムあるいはその両方(Hf,Zr)O2-δおよび
酸化セリウムCeO2-δから成る群から選択される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の端子および前記第2の端子の少なくとも一方は、金属、金属酸化物、導電性カーボン、アモルファス・カーボンのうちの1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の端子および前記第2の端子の少なくとも一方は、Ti、TiN、Ta、TaN、W、Cu、PtおよびWO3、RuO2およびITOなどの何らかの金属酸化物から成る群から選択された材料を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記誘電体層は、1ナノメートルから50ナノメートルの間の厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスは、セット・パルスおよびリセット・パルスを印加すると二方向抵抗曲線を提供するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスは、前記第1の端子および前記第2の端子の少なくとも一方に電気プログラミング・パルスとして前記電気セット・パルスおよび前記電気リセット・パルスを加えるために制御ユニットを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記制御ユニットは、反復プログラムおよび検証手順によって前記抵抗素子の抵抗状態をプログラムするように構成される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記制御ユニットは、前記1つまたは複数の抵抗素子の抵抗状態を読み取るために、読み取りモードにおいて読み取り電圧を前記第1の端子および前記第2の端子に加えるように構成される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記デバイスは、ニューロモーフィック・ネットワークのためのシナプスとして構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
調整可能な抵抗素子をプログラミングするための方法であって、前記調整可能な抵抗素子は、第1の端子、第2の端子、および前記第1の端子と前記第2の端子との間の誘電体層を備え、前記方法は、
少なくとも1つの電気セット・パルスを前記調整可能な抵抗素子に加えて、前記誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成することと、
少なくとも1つの電気リセット・パルスを加えて前記導電フィラメントの前記酸素空隙のサブセットを変位させることであって、前記少なくとも1つの電気リセット・パルスは、
前記導電フィラメントの温度を上げ、前記導電フィラメントの前記酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分と、
前記導電フィラメントの前記酸素空隙の前記サブセットを変位させるように構成された第2の部分とを含む前記こととを含む、方法。
【請求項20】
少なくとも1つの調整可能な抵抗素子を備えるデバイスを操作するためのコンピュータ・プログラム製品であって、各調整可能な抵抗素子は、第1の端子、第2の端子、および前記第1の端子と前記第2の端子との間に配置された誘電体層を備え、前記コンピュータ・プログラム製品は、それと共に具現化されるプログラム命令を有するコンピュータ可読ストレージ媒体を備え、前記プログラム命令は、
少なくとも1つの電気セット・パルスを前記少なくとも1つの抵抗素子に加えて、前記誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成することと、
少なくとも1つの電気リセット・パルスを加えて前記導電フィラメントの前記酸素空隙のサブセットを変位させることであって、前記少なくとも1つの電気リセット・パルスは、
前記導電フィラメントの温度を上げ、前記導電フィラメントの前記酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分と、
前記導電フィラメントの前記酸素空隙の前記サブセットを変位させるように構成された第2の部分とを含む前記こととを含む方法を制御ユニットに実行させるように前記制御ユニットによって実行可能である、コンピュータ・プログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は顕著なことには、1つまたは複数の調整可能な抵抗素子を備えるデバイスを対象としている。本開示はさらに、調整可能な抵抗素子をプログラミングするための方法、ニューロモーフィック・ネットワーク、および1つまたは複数の調整可能な抵抗素子を備えるデバイスを操作するためのコンピュータ・プログラム製品にも関する。
【背景技術】
【0002】
ナノスケール・メモリ・デバイスは、その抵抗が加えられる電気信号の履歴に依存しており、例えば脳に触発されたコンピューティングおよびメムコンピューティングなどの新しいコンピューティング・パラダイムにおいて重要な構築ブロックとなるための可能性を有する。筆頭である解決策の1つが抵抗RAM(RRAM)である。それは、例えば、ソフト・ブレイクダウンと呼ばれるプロセスを使用する、HfO2などの誘電体における酸素空隙のフィラメントの形成を伴う。フィラメントは、動作中、その後閉じられる(SET)または広げられる(RESET)。強力な還元金属、例えばチタンなどを電極の1つとして使用してフィラメントの形成を増進してもよい。
【発明の概要】
【0003】
本開示の実施形態は、調整可能な抵抗素子をプログラミングするための方法、ニューロモーフィック・ネットワーク、および1つまたは複数の調整可能な抵抗素子を備えるデバイスを操作するためのコンピュータ・プログラム製品を含む。
【0004】
本開示の一部の実施形態によると、デバイスは、1つまたは複数の調整可能な抵抗素子を備える。調整可能な抵抗素子は、第1の端子、第2の端子、および第1の端子と第2の端子との間に配置された誘電体層を備える。デバイスは、1つまたは複数の電気セット・パルスを1つまたは複数の抵抗素子に加えて、誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成し、1つまたは複数の電気リセット・パルスを加えて導電フィラメントの酸素空隙のサブセットを変位させるように構成される。電気リセット・パルスは、導電フィラメントの温度を上げ、導電フィラメントの酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分と、導電フィラメントの酸素空隙のサブセットを変位させるように構成された第2の部分とを含む。
【0005】
本開示の別の実施形態によると、方法は、調整可能な抵抗素子をプログラムするのに使用される。調整可能な抵抗素子は、第1の端子、第2の端子、および第1の端子と第2の端子との間の誘電体層を備える。方法は、1つまたは複数の電気セット・パルスを1つまたは複数の抵抗素子に加えて、誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成することと、1つまたは複数の電気リセット・パルスを加えて導電フィラメントの酸素空隙のサブセットを変位させることとを含む。電気リセット・パルスは、導電フィラメントの温度を上げ、導電フィラメントの酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分を含む。電気リセット・パルスはさらに、導電フィラメントの酸素空隙のサブセットを変位させるように構成されている第2の部分を含む。
【0006】
本開示の別の実施形態によると、コンピュータ・プログラム製品を使用して、1つまたは複数の調整可能な抵抗素子を備えるデバイスを操作する。調整可能な抵抗素子は、第1の端子、第2の端子、および第1の端子と第2の端子との間に配置された誘電体層を備える。コンピュータ・プログラム製品は、それと共に具現化されるプログラム命令を有するコンピュータ可読ストレージ媒体を備える。プログラム命令は、1つまたは複数の電気セット・パルスを1つまたは複数の抵抗素子に加えて、誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成するステップと、1つまたは複数の電気リセット・パルスを加えて導電フィラメントの酸素空隙のサブセットを変位させるステップとを含む方法を制御ユニットに実行させるように、デバイスの制御ユニットによって実行可能である。電気リセット・パルスは、導電フィラメントの温度を上げ、導電フィラメントの酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分と、導電フィラメントの酸素空隙のサブセットを変位させるように構成された第2の部分とを含む。
【0007】
本開示の実施形態は、添付の図面を参照して例示的で非制限的な例を利用して以下により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一部の実施形態によるデバイスのブロック図である。
図2】本開示の一部の実施形態による調整可能な抵抗素子の概略断面図である。
図3A】本開示の一部の実施形態による第1のリセット抵抗状態における調整可能な抵抗素子の概略断面図である。
図3B】本開示の一部の実施形態による第1のセット抵抗状態における調整可能な抵抗素子の概略断面図である。
図3C】本開示の一部の実施形態による第2のセット抵抗状態における調整可能な抵抗素子の概略断面図である。
図3D】本開示の一部の実施形態による第3のセット抵抗状態における調整可能な抵抗素子の概略断面図である。
図3E】本開示の一部の実施形態による第2のリセット抵抗状態における調整可能な抵抗素子の概略断面図である。
図3F】本開示の一部の実施形態による第3のリセット抵抗状態における調整可能な抵抗素子の概略断面図である。
図3G】本開示の一部の実施形態による第1のリセット抵抗状態にある調整可能な抵抗素子の図である。
図4】本開示の一部の実施形態による調整可能な抵抗素子の電流と電圧の特徴を描く図である。
図5】本開示の一部の実施形態による抵抗素子の抵抗曲線の実例となる例を描く図である。
図6】本開示の一部の実施形態による実例となるリセット・パルスを描く図である。
図7】本開示の一部の実施形態による別の実例となるリセット・パルスを描く図である。
図8】本開示の一部の実施形態によるセット・パルスの一例を描く図である。
図9】本開示の一部の実施形態によるニューロモーフィック・ネットワークを描く図である。
図10】本開示の一部の実施形態による調整可能な抵抗素子をプログラミングするための方法の実例となるフロー・チャートを描く図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を通して、同一または同様の参照番号は、同一または同様の要素を表している。
【0010】
本発明に記載される実施形態は種々の修正形態および代替の形態に修正可能であるが、その詳細は一例によって図面に示されており、詳細に記載される。しかしながら記載される特定の実施形態は、限定する意味で採用されるべきではないことを理解されたい。反対に、その意図は、本開示の範囲内にある全ての修正形態、均等物、および代替形態を網羅することである。
【0011】
本開示の態様は、一般にコンピューティングの分野に関し、詳細には、1つまたは複数の調整可能な抵抗素子を備えるデバイスに関する。本開示は、そのような用途に必ずしも制限されるものではなく、本開示の種々の態様は、この文脈を使用する様々な例の考察を通して理解されてよい。
【0012】
低抵抗状態の設定は、セット信号の電流コンプライアンスを使用して十分に制御され得るように示されているが、セルをより高い抵抗にリセットすることは、はるかに柔軟性に欠ける。より詳細には、特定の高抵抗状態(HRS)に単にリセットすることは通常は、実現可能である。したがって、抵抗素子および関連するデバイスのさらなる改善に対する要望がある。
【0013】
図1図10を参照すると、本開示の実施形態の一部の一般的態様および用語が記載される。
【0014】
本開示の一部の実施形態によると、抵抗材料は、電気信号をそこに加えることによって変化させることができる電気抵抗を有する材料として定義されてよい。電気信号は、例えば、デバイスを通って流れる電流または抵抗材料に加えられる電圧であってよい。電流または電圧あるいはその両方は、例えば、パルスの形態で抵抗素子に加えられてよい。結果として、抵抗素子の電気抵抗は、抵抗メモリ素子に加えられる電気信号の履歴に依存する。
【0015】
抵抗材料は、詳細には、メモリ素子として使用されてよい。したがって、抵抗メモリ素子は、電流または電場の印加の下でその抵抗を変化させる材料に生じる物理的現象に基づいている。変化は、通常不揮発性で可逆性である。抵抗メモリ素子のいくつかの等級が知られており、金属酸化物からカルコゲニドまで及んでいる。典型的な抵抗メモリ素子は、金属構成要素が電極として機能する金属/絶縁体/金属構造体であり、絶縁体は、抵抗スイッチング材料である。このような抵抗メモリ素子は、電力消費の観点での優れた性能、集積密度の可能性、保持力および耐久性を呈する。
【0016】
抵抗メモリ・デバイスについて1つのとりわけ見込みのある例は、抵抗ランダム・アクセス・メモリ(RRAM)である。これは、基本のストレージ・ユニット(「セル」)が一対の電極の間に位置するRRAM材料を含む不揮発性メモリ技術である。このようなセル内のRRAM材料は、電流に対して高い抵抗性を通常提示する電気絶縁母材である。しかしながら、RRAM母材、または母材と電極材料の組み合わせの特性により、RRAMセルの特定の特性は、適切な電気信号、とりわけ電圧を電極に加えることによって導電性の経路を高抵抗母材内に形成することができることである。この導電経路は、電極間の方向に母材を通って延びる。導電経路は、別の「RESET」信号を電極に加え、セルを高抵抗のRESET状態に戻すことによって壊したり、排除したりすることができる。こうして、SETパルスおよびRESETパルスの1つまたは複数のデータ書き込み動作における適切な印加によって、個々のセルをある程度まで異なる抵抗値を有する状態にプログラムすることができる。プログラムされたセル状態は、セル状態についての測定基準としてセル抵抗を使用して読み取り動作において特定することができる。読み取り電圧を電極に印加すると、セルを通って流れる電流は、セルの抵抗に依存し、これによりセル電流を測定してセル状態を特定することができる。読み取り電圧は典型的には、読み取り動作がプログラムされたセル状態を乱すことがないように、プログラミングに使用される書き込み電圧よりかなり低い。
【0017】
導電経路は、一般的にはRRAMセル内でいくつかの異なる機構のいずれかによって形成することができるが、本開示の実施形態は、とりわけ、絶縁母体における酸素イオンの移動から生じる酸素空隙による導電経路の形成を使用する。
【0018】
用語「セット・パルス」は一般的にはパルスを指す、またはより一般的には電気信号を指し、これは、とりわけ抵抗素子の電極/端子間に酸素空隙のフィラメントを形成することによって抵抗素子の電気抵抗を低下させる。
【0019】
用語「リセット・パルス」は一般的にはパルスを指す、またはより一般的には電気信号を指し、これは、とりわけ導電フィラメントのサイズまたは抵抗性を小さくすることによって抵抗素子の電気抵抗を高める。
【0020】
用語「抵抗素子のリセット抵抗状態」は一般的には、1つまたは複数のリセット・パルスの印加後の抵抗状態を指す。リセット抵抗状態は、高抵抗状態(HRS)として一般に表示されてもよい。
【0021】
用語「抵抗素子のセット抵抗状態」は一般的には、1つまたは複数のセット・パルスの印加後の抵抗状態を指す。セット抵抗状態は、低抵抗状態(LRS)として一般に表示されてもよい。
【0022】
本開示の実施形態によると、リセット・パルスは、セット・パルスとは異なる極性を有する。
【0023】
図1は、抵抗デバイス10の簡素化された概略ブロック図を描く。本開示の少なくとも一部の実施形態では、抵抗デバイス10は、抵抗メモリ・デバイス10であってよい。メモリ・デバイス10は、以下に記載される抵抗メモリ素子の1つまたは複数の集積アレイにデータを記憶するための多重レベルの抵抗メモリ11を含む。メモリ11へのデータの読み取りおよび書き込みは、制御ユニット12によって実行される。制御ユニット12は、データ書き込み動作中に抵抗メモリ素子をプログラミングし、データ読み取り動作中に素子状態を検出するための読み取り測定値を作成するために、一般的に既知の形態の回路を備える。これらの動作中、制御ユニット12は、抵抗メモリ11におけるワードおよびビット・ラインのアレイに適切な制御信号を加えることによって、個々の抵抗メモリ素子に対処することができる。デバイス10へのユーザ・データの入力は、書き込み信号として、詳細には書き込み電圧として抵抗メモリ11に提供される前に、エラー修正目的のコーディングなど、何らかの形態の書き込み処理を受ける場合がある。同様に、抵抗メモリ11から受け取った読み取り信号は、例えば、元の入力ユーザ・データを回復させるために、コードとワードの検出またはエラー修正あるいはその両方のための制御ユニット12の読み取り処理モジュールによって処理されてもよい。
【0024】
図2は、本開示の少なくとも1つの実施形態による調整可能な抵抗素子20の簡素化された断面図を描く。調整可能な抵抗素子20は、第1の端子21、第2の端子22および誘電体層23を備える。誘電体層23は、金属酸化物材料を含んでよい。金属酸化物材料は、とりわけ遷移金属酸化物であってよい。少なくとも1つの実施形態によると、遷移金属酸化物は、ABO3-δペロブスカイトであって、Aは、アルカリ土類金属、希土類元素またはそれらの組み合わせであり、Bは、遷移金属元素である。例は、チタン酸ランタンまたはストロンチウムあるいはその両方(La,Sr)TiO3-δ、チタン酸イットリウムまたはカルシウムあるいはその両方(Y,Ca)TiO3-δ、マンガン酸ランタンまたはストロンチウムあるいはその両方(La,Sr)MnO3-δ、あるいはマンガン酸プラセオジムまたはカルシウムあるいはその両方(Pr,Ca)MnO3-δである。本開示の実施形態に有利に使用されてよいさらなる遷移金属酸化物は、酸化バナジウムまたはクロムあるいはその両方(V,Cr)3-δなどのコランダムを含む。有利に使用することができる他の材料は、酸化ニッケルNiO1-δ、酸化チタンTiO2-δ、酸化ハフニウムまたはジルコニウムあるいはその両方(Hf,Zr)O2-δおよび酸化セリウムCeO2-δなどの二元遷移金属酸化物を含む。好ましくは、金属酸化物材料は、例えば、室温で10-9cm/Vsまたはそれより高い酸素空隙の比較的高い可動性を有する材料である。
【0025】
第1の端子21および第2の端子22は、金属、金属酸化物または導電性カーボンもしくはアモルファス・カーボンを含んでもよい、またはそれらで構成されてもよい。第1の端子21および第2の端子22は、Ti、TiN、Ta、TaN、W、Cu、Pt、およびWO3、RuO2およびITOなどの何らかの金属酸化物あるいはアモルファスCを含んでもよい、またはそれらで構成されてもよい。誘電体層23は好ましくは、1nmから50nmの間のz方向の特定の厚さを有して具現化されてよい。
【0026】
誘電体層23は、電気プログラミング信号、例えば電流または電圧を印加すると、酸素空隙の導電フィラメントを形成するように構成される。
【0027】
本開示の一部の実施形態によると、複数の抵抗素子20が抵抗メモリ11に実装されてもよく、メモリ・デバイス10の制御ユニット12は、抵抗状態を書き込むために1つまたは複数の書き込み信号、とりわけ書き込み電圧を書き込みモードにおいて第1の端子21および第2の端子22に加えるように構成されてよい。加えて、制御ユニット12は、抵抗状態を読み取るために、読み取り信号、とりわけ読み取り電圧を読み取りモードにおいて第1の端子21および第2の端子22に加えてもよい。
【0028】
書き込み信号は、とりわけ電気セット・パルスおよび電気リセット・パルスとして具現化されてよい。電気セット・パルスを抵抗素子に加えることによって、酸素空隙の1つまたは複数の導電フィラメントを誘電体層23内に形成することができる。これは、抵抗素子20の電気抵抗の低下を生じさせる。さらに、1つまたは複数の電気リセット・パルスを抵抗素子20に加えることによって、導電フィラメントの酸素空隙のサブセットが移動されて、または換言すると変位されて、導電フィラメントのサイズまたは抵抗性を小さくし、これによって抵抗素子20の抵抗性を高めてもよい。
【0029】
本開示の少なくとも一部の実施形態によると、制御ユニット12は、とりわけ反復プログラムおよび検証手順によって抵抗素子20の抵抗状態をプログラムしてもよい。
【0030】
抵抗素子20の抵抗状態のプログラミングは、図3A図3Gを参照してより詳細に説明される。
【0031】
図3Aは、第1のリセット抵抗状態RESET 1における調整可能な抵抗素子20の概略断面図を描く。第1のリセット抵抗状態RESET 1では、第1の端子21と第2の端子22との間に酸素空隙の導電フィラメントは全く存在しない、または前の導電フィラメントは(図3Gに示されるように)少なくとも分断されている。
【0032】
第1のリセット抵抗状態RESET 1は、抵抗素子20の初期状態であるとみなされてよく、いかなる電場またはいかなる電気プログラミング・パルスも抵抗素子20に加えられていない状態を意味する。さらに、第1のリセット抵抗状態RESET 1は、1つまたは複数の電気リセット・パルスを抵抗素子20に加えることによって到達することができる。これらの電気リセット・パルスは、抵抗素子20をその元の状態に戻すことができる。
【0033】
第1のリセット抵抗状態はまた、完全なリセット状態またはフル・リセット状態を指す場合もあり、第1の端子21と第2の端子22との間に酸素空隙のフィラメント/経路が存在しないことを示している。
【0034】
図3Bは、第1のセット抵抗状態SET 1における調整可能な抵抗素子20の概略断面図を示す。第1のセット抵抗状態SET 1は、1つまたは複数のセット・パルスを加えることによって到達されてよい。1つまたは複数のセット・パルスは、第1の端子21と第2の端子22との間の誘電体層23内に酸素空隙のフィラメント30bを形成する。導電フィラメント30bを形成するための対応するプロセスは、ソフト・ブレイクダウンと呼ばれる。
【0035】
図3Bから図3Gには、単一の導電フィラメント30b~g(総称して導電フィラメント30と呼ばれる)が示されているが、セット・パルスはまた、それぞれのデバイス/セル幾何形状に応じて酸素空隙の複数の平行導電フィラメントを形成する場合もあることに留意されたい。
【0036】
図3Bに示されるフィラメント30bは、例示の幅w1を有して図示されるように比較的小さい。
【0037】
図3Cは、第2のセット抵抗状態SET 2における調整可能な抵抗素子の概略断面図を示す。第2のセット抵抗状態SET 2は、第1のセット抵抗状態SET 1から始めて、1つまたは複数のセット・パルスを第1の端子21および第2の端子22に加えることによって到達されてよい。第1のセット抵抗状態SET 1(図3Bに図示される)の導電フィラメント30bと比べると、第2のセット抵抗状態SET 2の導電フィラメント30cは、より大きくなっている。より具体的には、第2のセット抵抗状態における導電フィラメント30cは、第1のセット抵抗状態における導電フィラメント30bよりもより大きな数の酸素空隙を含む。これは、とりわけ第2のセット抵抗状態における導電フィラメント30cのより大きな幅およびより大きな断面をもたらしてよい。これは、例示の幅w2で図示される。
【0038】
図3Dは、第3のセット抵抗状態SET 3における調整可能な抵抗素子の概略断面図を示す。第3のセット抵抗状態SET 3は、第2のセット抵抗状態SET 2から始めて、1つまたは複数のセット・パルスを第1の端子21および第2の端子22に加えることによって到達されてよい。第2のセット抵抗状態SET 2(図3Cに図示される)の導電フィラメント30cと比べると、導電フィラメント30dは、より大きくなっている。より具体的には、第3のセット抵抗状態における導電フィラメント30dは、第2のセット抵抗状態における導電フィラメント30cよりもより大きな数の酸素空隙を含む。これは、とりわけ第3のセット抵抗状態における導電フィラメント30dのより大きな幅およびより大きな断面をもたらしてよい。これは、例示の幅w3で図示される。
【0039】
次に図3Eを参照すると、第2のリセット抵抗状態RESET 2が示される。第2のリセット抵抗状態RESET 2は、第3のセット抵抗状態SET 3から始まって、1つまたは複数のリセット・パルスを加えることによって到達されてよい。リセット・パルスは一般に、導電フィラメント30eの酸素空隙のサブセットを変位させる。そのような酸素空隙の変位は一般に、フィラメント30eのサイズを縮小する。換言すると、酸素空隙の変位は、フィラメント30eをより小さくする、または導電性を低下させる、あるいはその両方である。とりわけ、リセット・パルスは、第1の端子21から離れるようにずれるように酸素空隙をトリガするように本開示の実施形態に従って構成される。換言すると、リセット・パルスは、第1の端子21に近い酸素空隙を変位させる、または移動させる。より一般的には、リセット・パルスは、アノードとして動作する電極から離れるようにずれるように酸素空隙をトリガするように本開示の実施形態に従って構成される。
【0040】
したがって、リセット・パルスによる酸素空隙の変位は、特に第1の端子21の近傍でフィラメント30eのサイズを縮小する。これは、第1の端子21の近傍におけるより小さいサイズのセグメント32aと、第2の端子22の近傍におけるより大きなサイズのセグメント32bとを有するフィラメント30eによって簡素化された例示の方法で図3Eに図示される。実施形態によると、フィラメント30eのセグメント32aは、第2のリセット抵抗状態RESET 2において、第2のセット抵抗状態SET 2におけるフィラメント30cの幅w2に対応する幅w2を有してよく、フィラメントのセグメント32bは、第2のリセット抵抗状態RESET 2において、第3のセット抵抗状態SET 3におけるフィラメント30dの幅w3に対応する幅w3を有してよい。当然のことながら、上記で既に言及したように、セグメント32aおよび32bは、本開示の実施形態による調整可能な抵抗素子の全体の動作を説明する目的のために簡素化されたやり方で図示される。
【0041】
第2のリセット抵抗状態RESET 2の公称抵抗値は、第2のセット抵抗状態SET 2の公称抵抗値に対応してよい、またはそれに近くてもよい。
【0042】
図3Fを次に参照すると、第3のリセット抵抗状態RESET 3が示される。第3のリセット抵抗状態RESET 3は、第2のリセット抵抗状態RESET 2から始めて、1つまたは複数のリセット・パルスを加えることによって到達されてよい。リセット・パルスは、第1の端子21から離れるようにずれるようにさらなる酸素空隙をトリガするように本開示の実施形態に従って構成される。したがって、リセット・パルスは、第1の端子21の近傍においてフィラメント30fのサイズをさらに縮小する。
【0043】
これは、フィラメント30fの簡素化された例示の方法で図3Fに図示される。第3のリセット抵抗状態RESET 3において、フィラメント30fは、第1のセット抵抗状態SET 1におけるフィラメント30bの幅w1に対応する幅w1を有するセグメント32aと、第3のセット抵抗状態SET 3におけるフィラメント30dの幅w3に対応する幅w3を有するセグメント32bとを有する。したがって、第3のリセット抵抗状態RESET 3の公称抵抗値は、第1のセット抵抗状態SET 1の公称抵抗値に対応してよい、またはそれに近くてもよい。
【0044】
図3Gを次に参照すると、再び第1の(フル)リセット抵抗状態RESET 1にある調整可能な抵抗素子が示される。第1のリセット抵抗状態RESET 1は、第3のリセット抵抗状態RESET 3から始めて、1つまたは複数のリセット・パルスを加えることによって到達されてよい。リセット・パルスは、第1の端子21から離れるようにずれるようにさらなる酸素空隙をトリガするように本開示の実施形態に従って構成される。したがって、リセット・パルスは、第1の端子21の近傍においてフィラメントのサイズをさらに縮小する。より詳細には、追加のリセット・パルスが、第1の端子21に隣接する、またはその近くの領域内のフィラメント30gを広げる、または換言するとフィラメントを遮断する。したがって、第1の端子21と第2の端子22との間にもはや完全な導電フィラメントは存在しない。フィラメント30gのセグメント32bは、第2の端子22に隣接する領域またはそれに近い領域内に留まってよく、フィラメント30gの断裂は、抵抗素子20の公称抵抗の有意な増加に対応してよい。したがって、図3Aに図示された抵抗素子20および図3Gに図示された抵抗素子20の公称抵抗状態は、互いと実質的によく似ていてよく、よって、これらは両方とも第1のリセット抵抗状態RESET 1と共通して呼ばれる。
【0045】
本開示の実施形態によると、リセット抵抗状態RESET 1、RESET 2およびRESET 3はまた、高抵抗状態HRS 1、HRS 2およびHRS 3とそれぞれ呼ばれてもよい。
【0046】
本開示の実施形態によると、セット抵抗状態SET 1、SET 2およびSET 3はまた、低抵抗状態LRS 1、LRS 2およびLRS 3とそれぞれ呼ばれてもよい。この点において、用語「高抵抗状態」は、リセット信号/リセット・パルスの印加後に到達される状態を指し、用語「低抵抗状態」は、セット信号/セット・パルスの印加後に到達される状態を指す。
【0047】
図4は、本開示の実施形態による調整可能な抵抗素子の電流と電圧の特徴を描いている。詳細には、図4は、多数の高抵抗状態の取得の実現可能性を図示する。リセット信号/リセット・パルスを使用して、3つの異なるリセット抵抗状態/高抵抗状態HRS 1、HRS 2およびHRS 3をプログラムすることができる。さらに、単一のタイプのセット・パルス(図4の単位では1に調節された電流コンプライアンスで)が使用され、セット抵抗状態/低抵抗状態LRS 3をもたらす。リセット抵抗状態の公称値は、上記で言及したようにセット抵抗状態の公称値に一部対応してもよい。
【0048】
図5は、本開示の実施形態による抵抗素子の抵抗曲線の一例を描いている。y軸は抵抗を示し、x軸は、抵抗素子に加えられたセット・パルスまたはリセット・パルスの数を示す。抵抗素子の抵抗は、複数のセット抵抗状態のうちの最も低い1つRSETLと、複数のリセット抵抗状態のうちの最も高い1つRRESETとの間で変更することができる。図3Aから図3Gに図示されるような例を参照すると、対応する調整可能な抵抗素子は、最も低いセット抵抗状態RSET3と最も高いリセット抵抗状態RRESET1との間で変更されてよい。
【0049】
リセット・パルスを加えることによって、抵抗を高めることができる。反対に、セット・パルスを加えることによって、抵抗を低下させることができる。この点において、本開示の実施形態は、抵抗素子の抵抗値の二方向プログラミングを促進する、抵抗素子の非ヒステリシスな挙動を提供してよい。換言すると、本開示の実施形態によると、抵抗素子は、セット・パルスおよびリセット・パルスの印加時に実質的に対称な二方向抵抗曲線を提供する。したがって本開示の実施形態は、2端子デバイスとして継続的に調整可能な抵抗器を提供してよい。
【0050】
図6は、本開示の少なくとも1つの実施形態による一例のリセット・パルス600を描く。水平軸は、任意の単位における時間tを示し、垂直軸は、任意の単位におけるリセット・パルス600の電圧Vを示す。リセット・パルス600は、温度上昇と電場が誘発したイオン・ドリフトの作用を切り離すように形成される。リセット・パルス600は、第1の持続時間Tにわたって広がる第1の部分601、換言すると第1の信号セグメント601と、第2の持続時間Tにわたって広がる第2の部分602、換言すると第2の信号セグメント602とを含む。
【0051】
第1の部分601は、導電フィラメント30(図3B図3Gに示されるものなど)の温度を上げ、導電フィラメント30の酸素空隙の可動性を高めるように適合される。第2の部分602は、導電フィラメント30の酸素空隙のサブセットを変位させるように構成される。より具体的には、第2の部分602は、アノードとして動作する端子から離れるように酸素空隙を移動させるように構成される。リセット・パルス600は、多数のリセット抵抗状態をプログラムすることができるように形成され、抵抗の増分式の増加は、フル・リセットなしで直接達成することができる。
【0052】
電気リセット・パルス600の第1の部分601は、第1のピーク振幅Vpeak1を有し、電気リセット・パルス600の第2の部分602は、第2のピーク振幅Vpeak2を有する。第1のピーク振幅Vpeak1は、第2のピーク振幅Vpeak2より大きく、第1の持続時間Tは、第2の持続時間Tより短い。
【0053】
第1の部分601は一般に、より大きい振幅、より短い持続時間の信号で構成される。この信号セグメントは、導電フィラメント30における/その周囲の温度を上げることになる。これは、この領域内の酸素空隙の可動性を高める。しかしながらこの第1の信号セグメント601の持続時間は、酸素空隙に基本的にずれる時間がなく、故に基本的に所定の場所に留まるように短くなるように選択されている。
【0054】
第2の部分602は、より小さい振幅、より長い持続時間の信号で構成される。この信号セグメントは、酸素空隙のずれをもたらす。
【0055】
本開示の実施形態による抵抗素子は、第1の信号セグメント601によって生じた導電フィラメント30における、またはその周囲の上昇した温度が前記第1の信号セグメントを超えるしばらくの間の持続時間にわたって留まることを利用する。これは、とりわけ抵抗素子の材料の低い熱伝導率によって確立されてよい。したがって、導電フィラメント30における/その周囲の温度および付随する酸素空隙の可動性は、第2の信号セグメント602においても高いままである。
【0056】
第2の信号セグメント602のより小さい振幅、および付随するよりゆっくりとした酸素空隙のずれる速度ならびにより長い持続時間は、その後、酸素空隙の十分に制御された変位を可能にする。結果として、抵抗素子の抵抗状態は、セット・パルスによって増分式に低下され、リセット・パルスによって増分式に増加させることができる。換言すると抵抗素子の抵抗状態は、十分に制御された方法で修正することができる。
【0057】
本開示の実施形態による抵抗素子は、RRAMセルの抵抗の増分式の増加を獲得するために完全なリセットを必要とする従来のRRAMよりも高い耐久性を提供してよい。
【0058】
本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第1のピーク振幅Vpeak1は、第2のピーク振幅Vpeak2よりも少なくとも2倍大きい。本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第1のピーク振幅Vpeak1は、第2のピーク振幅Vpeak2よりも少なくとも3倍大きい。本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第1のピーク振幅Vpeak1は、第2のピーク振幅Vpeak2よりも少なくとも4倍大きい。本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第1のピーク振幅Vpeak1は、第2のピーク振幅Vpeak2よりも少なくとも5倍大きい。
【0059】
本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第2の持続時間Tは、第1の持続時間Tよりも少なくとも5倍長い。本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第2の持続時間Tは、第1の持続時間Tよりも少なくとも10倍長い。
【0060】
本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第1のピーク振幅は、0.1ボルトから2ボルトの間の範囲内である。
【0061】
本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第2のピーク振幅は、0.02ボルトから1ボルトの間の範囲内である。
【0062】
本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第1の持続時間は、1ナノ秒から100ナノ秒の間の範囲内である。
【0063】
本開示の少なくとも1つの実施形態によると、第2の持続時間は、5ナノ秒から1000ナノ秒の間の範囲内である。
【0064】
図7は、本開示の少なくとも1つの実施形態による例示のリセット・パルス700を描く。水平軸は任意の単位における時間tを示し、垂直軸は、任意の単位におけるリセット・パルス700の電圧Vを示す。
【0065】
リセット・パルス700は、第1の持続時間Tにわたって広がる第1の部分701、または換言すると第1の信号セグメント701と、第2の持続時間Tにわたって広がる第2の部分702、または換言すると第2の信号セグメント702とを含む。第1の部分701は、導電フィラメント30の温度を上げ、導電フィラメント30の酸素空隙の可動性を高めるように適合される。第2の部分702は、導電フィラメント30の酸素空隙のサブセットを変位させるように構成される。より具体的には、第2の部分702は、アノードとして動作する端子から離れるように酸素空隙を移動させるように構成される。
【0066】
電気リセット・パルス700の第1の部分701は、第1のピーク振幅Vpeak1を有し、これは、短い期間にわたって一定に維持される。電気リセット・パルス700の第2の部分702は、第2のピーク振幅Vpeak2を有し、これは、リセット信号600の第2のピーク振幅Vpeak2図6に示される)より低い。より低い第2のピーク振幅Vpeak2は、リセット信号600の第2の持続時間Tより長い、リセット信号700の第2の持続時間Tによって補償される。
【0067】
図6および図7に示されるリセット・パルス600および700の形状は、単なる実例となる例であり、その形状は、それぞれの用途の必要性に従って適合されてよいことに留意されたい。本開示の他の実施形態によると、温度上昇および酸素空隙のずれの所望の切り離しを達成するために種々の他の形状が使用されてもよい。
【0068】
図8は、本開示の一実施形態によるセット・パルスの信号800の実例となる例を描く。信号800のセット・パルスは、一定のピーク振幅Vpeakで実質的に矩形の形態を有する。本開示の少なくとも1つの実施形態によると、所望のセット抵抗状態のプログラミングは、2つのセット・パルスのこの例でのように、多数の連続するセット・パルスの印加を含んでもよい。
【0069】
図6図7および図8は、本開示の実施形態によるリセット・パルスおよびセット・パルスの絶対電圧レベルの実例となる例を描くことに留意されたい。上記で言及したように、セット・パルスおよびリセット・パルスは、異なる極性を有する。
【0070】
本開示の少なくとも1つの実施形態によると、セット・パルスのピーク振幅Vpeakの絶対値は、リセット・パルスの第1のピーク振幅Vpeak1の絶対値と、第2のピーク振幅Vpeak2の絶対値との間にあってよい。
【0071】
図9は、本開示の少なくとも1つの実施形態によるニューロモーフィック・ネットワーク900を描く。ニューロモーフィック・ネットワーク900は、入力層910と、隠れ層920と、出力層930とを備える。入力層910は、複数の入力ノード911を備え、出力層930は複数の出力ノード931を備える。隠れ層920は、複数のニューロン940と、複数のシナプス950とを備える。シナプス950の各々は、例えば上記に記載した抵抗素子20などの抵抗素子として具現化されてよい。本開示の実施形態による調整可能な抵抗素子は、特有のリセット・パルスによってイネーブルにされる二方向プログラミングを鑑みてシナプスとして機能するようにとりわけ適合されている。したがって、そのようなアナログ・ニューロモーフィック・ネットワークでは、シナプス・アレイは、先の技術でのような2つの抵抗素子の代わりに単一の抵抗素子で実装されてよい。結果として、本開示は、より高密度のアレイを促進する。
【0072】
図10は、調整可能な抵抗素子をプログラミングするための方法1000の例示のフロー・チャートを描く。
【0073】
動作1010において、方法1000は、1つまたは複数の電気セット・パルスを1つまたは複数の抵抗素子に加えて、誘電体層内に複数の酸素空隙を含む導電フィラメントを形成し、これにより抵抗を低下させることを含む。
【0074】
動作1020において、方法は、1つまたは複数の電気リセット・パルスを加えて、導電フィラメントの酸素空隙のサブセットを変位させ、これにより抵抗を高めることを含む。
【0075】
本発明は、統合の任意の可能な技術的な詳細レベルでのシステム、方法、またはコンピュータ・プログラム製品あるいはその組み合わせであってよい。コンピュータ・プログラム製品は、プロセッサに本発明の態様を実行させるためにそこにコンピュータ可読プログラム命令を有するコンピュータ可読ストレージ媒体(または複数の媒体)を含んでよい。
【0076】
コンピュータ可読ストレージ媒体は、命令実行デバイスによる使用のために命令を保持し記憶することができる有形のデバイスであり得る。コンピュータ可読ストレージ媒体は、例えばこれに限定されるものではないが、電子ストレージ・デバイス、磁気ストレージ・デバイス、光学ストレージ・デバイス、電磁ストレージ・デバイス、半導体ストレージ・デバイスまたは上述の任意の好適な組み合わせであってよい。コンピュータ可読ストレージ媒体のより具体的な例の非排他的なリストは以下の、携帯型コンピュータ・ディスケット、ハード・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リードオンリ・メモリ(ROM)、消去可能プログラマブル・リードオンリ・メモリ(EPROMまたはフラッシュ・メモリ)、静的ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、携帯型コンパクト・ディスク・リードオンリ・メモリ(CD-ROM)、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、メモリ・スティック、フロッピー(R)・ディスク、記録された命令を有するパンチカードまたは溝に浮き彫りにされた構造などの機械的にコード化されたデバイスおよび上述の任意の好適な組み合わせを含む。コンピュータ可読ストレージ媒体は、本開示に使用されるように、電波または自由に伝播する他の電磁波、導波管または他の伝送媒体を通じて伝播する電磁波(例えば、光ファイバ・ケーブルを通過する光パルス)またはワイヤを通じて伝送される電気信号など、それ自体で一時的な信号であるものとはみなすべきではない。
【0077】
本開示に記載されるコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ可読ストレージ媒体からそれぞれのコンピューティング・デバイス/処理デバイスにダウンロードすることができる、あるいはネットワークを介して、例えば、インターネット、ローカル・エリア・ネットワーク、ワイド・エリア・ネットワークまたは無線ネットワークあるいはその組み合わせを介して、外部コンピュータもしくは外部ストレージ・デバイスにダウンロードすることもできる。ネットワークは、銅製の伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイヤーウォール、スイッチ、ゲートウェイ・コンピュータまたはエッジ・サーバあるいはその組み合わせを含んでもよい。各コンピューティング・デバイス/処理デバイスにおけるネットワーク・アダプタ・カードまたはネットワーク・インターフェースは、コンピュータ可読プログラム命令をネットワークから受け取り、コンピュータ可読ストレージ媒体に記憶するためのコンピュータ可読プログラム命令をそれぞれのコンピューティング・デバイス/処理デバイス内で転送する。
【0078】
本発明の動作を行うためのコンピュータ可読プログラム命令は、アセンブラ命令、命令セットアーキテクチャ(ISA)命令、機械命令、機械依存命令、マイクロコード、ファームウェア命令、状態設定データ、集積回路用の構成データ、あるいは1つまたは複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書かれたソース・コードまたはオブジェクト・コードのいずれかであってよく、Smalltalk(R)、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同様のプログラミング言語などの手続きプログラミング言語が含まれる。コンピュータ可読プログラム命令は、ユーザのコンピュータ上で全体的に、ユーザのコンピュータ上で部分的に、スタンドアローン・ソフトウェア・パッケージとして、ユーザのコンピュータ上で部分的におよびリモート・コンピュータ上で部分的に、またはリモート・コンピュータもしくはサーバ上で全体的に実行されてもよい。後者のシナリオでは、リモート・コンピュータは、任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続されてもよく、そのようなネットワークとしては、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)またはワイド・エリア・ネットワーク(WAN)が含まれており、あるいは、接続は、外部のコンピュータに対して(例えば、インターネット・サービス・プロバイダを使用してインターネットを通じて)行われてもよい。一部の実施形態では、本願の発明の態様を実行するために、例えば、プログラマブル論理回路、フィールドプログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)またはプログラマブル論理アレイ(PLA)などを含む電子回路が、コンピュータ可読プログラム命令の状態情報を利用することによって電子回路を個人のものにすることによって、コンピュータ可読プログラム命令を実行してもよい。
【0079】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)およびコンピュータ・プログラム製品のフローチャート図またはブロック図あるいはその両方を参照して本明細書に記載されている。フローチャート図またはブロック図あるいはその両方の各ブロック、ならびにフローチャート図またはブロック図あるいはその両方におけるブロックの組み合わせは、コンピュータ可読プログラム命令によって実施することができることが理解されよう。
【0080】
これらのコンピュータ可読プログラム命令は、命令がコンピュータまたは他のプログラマブル・データ処理装置のプロセッサを介して実行され、フローチャートまたはブロック図あるいはその両方の1つのブロックもしくは複数のブロックで指定された機能/動作を実施するための手段を作り出すために、コンピュータまたはマシンを生成するための他のプログラマブル・データ処理装置のプロセッサに提供されてもよい。これらのコンピュータ可読プログラム命令はまた、命令が記憶されたコンピュータ可読ストレージ媒体は、フローチャートまたはブロック図あるいはその両方の1つのブロックもしくは複数のブロックで指定された機能/動作の態様を実施する命令を含む製造品を備えるように、特定のやり方で機能するために、コンピュータ、プログラマブル・データ処理装置または他のデバイスあるいはそれらの組み合わせを指示することができるコンピュータ可読ストレージ媒体に記憶されてもよい。
【0081】
コンピュータ可読プログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラマブル装置または他のデバイス上で実行される命令がフローチャートまたはブロック図あるいはその両方の1つのブロックもしくは複数のブロックで指定される機能/動作を実施するために、コンピュータ、他のプログラマブル・データ処理装置、または他のデバイスにロードされて、コンピュータ、他のプログラマブル装置または他のデバイス上で一連の動作のステップを実行させ、コンピュータ実装プロセスを生成してもよい。
【0082】
図中のフローチャートおよびブロック図は、本発明の様々な実施形態による、システム、方法およびコンピュータ・プログラム製品の可能な実施のアーキテクチャ、機能性および動作を図示している。この点において、フローチャートまたはブロック図のそれぞれのブロックは、モジュール、セグメント、または命令の一部を表すことがあり、それらは、指定された論理機能を実施するための1つまたは複数の実行可能な命令を含む。一部の代替の実装形態では、ブロックに記述された機能は、図に記述された順序以外で発生する場合がある。例えば、連続して示された2つのブロックは、実際には1つのステップとして達成されてもよいし、同時に実行されてもよいし、ほぼ同時に実行されてもよいし、部分的にまたは全体が一時的に重複するやり方でも達成されてもよい、あるいはブロックはときには、含まれる機能性に応じて、逆の順序で実行されてもよい。ブロック図またはフローチャート図あるいはその両方の各ブロック、およびブロック図またはフローチャート図あるいはその両方におけるブロックの組み合わせは、指定された機能または動作を実行する、あるいは専用のハードウェアおよびコンピュータ命令の組み合わせを実行する専用のハードウェアベースのシステムによって実施される場合もあることにも留意されたい。
【0083】
本発明の種々の実施形態の記載は、例示の目的で提示されており、開示される実施形態に対して排他的であったり、開示される実施形態を限定することは意図されていない。多くの修正形態および変形形態が、記載される実施形態の範囲から逸脱することなく当業者には明らかになるであろう。本明細書で使用される専門用語は、実施形態の原理、実際の用途、または市場で見いだされる技術に対する技術的改善を最適に説明するために選択された、または当業者が本明細書に開示される実施形態を理解することを可能にするために選択された。
【0084】
一般に、一実施形態に関して記載される修正は、必要に応じて別の実施形態に適用されてもよい。
【0085】
上記に記載される実施形態に加えて、これより少ない動作ステップ、これより多い動作ステップまたは異なる動作ステップを有する他の実施形態が企図される。また、一部の実施形態は、異なる順序で上記の動作ステップの一部または全てを実行してもよい。さらに、多数の動作が、同時に起きてもよいし、より大きなプロセスの内部の一部として起きてもよい。モジュールは、一部の実施形態に従って実例となるようにリストにされ記載されており、特定のモジュールの必要性あるいは他の潜在的なモジュール(または特有のモジュールに適用されるような機能/目的)の排他性を示すことは意味していない。
【0086】
上述では、種々の実施形態が参照されている。しかしながら本開示は、具体的に記載される実施形態に限定されないことを理解されたい。代わりに、記載される特徴および要素のいかなる組み合わせも、異なる実施形態に関連しても、そうでなくても、本開示を実装および実施するために企図されている。多くの修正形態および変形形態が、記載される実施形態の範囲から逸脱することなく当業者には明らかになり得る。さらに本開示の実施形態は、他の可能な解決策に対する、または従来技術に対する利点を達成し得るが、特定の利点が所与の実施形態によって達成されようと、そうでなかろうと、本開示を限定するものではない。したがって、記載される態様、特徴、実施形態および利点は単なる例示であり、特許請求の範囲に明白に記載される場合を除いて添付の特許請求の範囲の要素または限定とみなされない。
【0087】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを記載する目的であり、種々の実施形態の限定であることは意図されていない。本明細書で使用される際、文脈がそうでないことを明白に指摘していなければ、単数形「1つの」(a)「1つの」(an)および「その」(the)は、同様に複数形を含むことが意図されている。用語「含む」(includes)または「含んでいる」(including)あるいはその両方は、この明細書で使用されるとき、記述される特徴、整数、ステップ、動作、要素または構成要素あるいはその組み合わせの存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素またはそのグループあるいはその組み合わせの存在または追加を排除するものではないことをさらに理解されたい。種々の実施形態の一例の実施形態の先の詳細に記載された記述において、添付の図面が参照されており(そこでは同様の数字は同様の要素を表している)、この図面はこの明細書の一部を形成し、そこでは、種々の実施形態が実施され得る特有の一例の実施形態が例証として示される。これらの実施形態は、当業者が実施形態を実施することを可能にするために十分に詳細に記載されたが、他の実施形態が使用されてもよく、論理的、機械的、電気的および他の変更が、種々の実施形態の範囲から逸脱することなく行われてもよい。先の記載において、種々の実施形態の完全な理解を提供するために多くの具体的な詳細が説明された。但し、種々の実施形態は、これらの具体的な詳細なしで実施されてもよい。他の例では、よく知られた回路、構造および技術は、実施形態を曖昧にしないために詳細に示されていない。
【0088】
本明細書で使用される際、「いくつかの」(a number of)は、項目を参照して使用されるとき、1つまたは複数の項目を意味する。例えば、「いくつかの異なるタイプのネットワーク」は、1つまたは複数の異なるタイプのネットワークである。
【0089】
異なる参照番号は、異なる文字が後に続く(例えば100a、100b、100c)、または異なる数字が後に続く句読点が後に続く(例えば100-1、100-2または100.1、100.2)共通の数字を含む場合、文字または次に続く数字なしでの参照符号のみの使用(例えば100)は、要素のグループを全体として、グループの任意のサブセットとして、またはグループの一例の見本として指す場合がある。
【0090】
さらに、フレーズ「少なくとも1つの」は、項目のリストと共に使用されるとき、リストされた項目のうちの1つまたは複数の異なる組み合わせを使用することができ、リスト中の各項目のうちの1つのみが必要とされる場合があることを意味する。換言すると、「少なくとも1つの」は、項目の任意の組み合わせおよび任意の数の項目が、リストから使用される可能性があるが、リスト中の項目の全てが必要とされるわけではないことを意味する。項目は、特定の対象、物またはカテゴリであり得る。
【0091】
例えば、限定ではなく、「項目A、項目Bまたは項目Cのうちの少なくとも1つ」は、項目Aを含む場合、項目Aと項目Bとを含む場合、または項目Bを含む場合がある。この例はまた、項目A、項目Bおよび項目Cを含む場合、または項目Bと項目Cとを含む場合もある。当然のことながら、これらの項目のいかなる組み合わせも存在する場合がある。一部の実例となる例では、「少なくとも1つの」は、例えば限定ではなく、項目Aのうち2つ、項目Bのうち1つ、および項目Cのうち10個、項目Bのうち4つと項目Cのうちの7つ、あるいは他の好適な組み合わせであり得る。
【0092】
本明細書において使用される際の用語「実施形態」の異なる例は、必ずしも同じ実施形態を参照するわけではないが、それらはそうである場合もある。本明細書に図示される、または記載される任意のデータおよびデータ構造は単なる例であり、他の実施形態では、異なる量のデータ、データのタイプ、フィールド、フィールドの数およびタイプ、フィールド名、列の数およびタイプ、レコード、エントリまたはデータの編成が使用されてよい。加えて、任意のデータは、論理と組み合わされてもよく、その結果別個のデータ構造は必要とされない場合がある。先に詳細に記載した記述は、したがって限定する意味では採用されない。
【0093】
本開示が特有の実施形態の観点で記載されてきたが、その代替形態および修正形態は当業者に明らかになることが予想される。したがって、以下の特許請求の範囲は、本開示の真の範囲内にあるように、そのような代替形態および修正形態を全て網羅するように解釈されることが意図されている。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2023-04-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの調整可能な抵抗素子を備えるデバイスであって、
各調整可能な抵抗素子は、
第1の端子と、
第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子との間に配置された誘電体層とを備え、
少なくとも1つ電気セット・パルスを前記少なくとも1つの抵抗素子に加えて、前記誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成し、
少なくとも1つの電気リセット・パルスを前記少なくとも1つの抵抗素子に加えて、前記導電フィラメントの前記酸素空隙のサブセットを変位させるように構成され、前記少なくとも1つの電気リセット・パルスは、
前記導電フィラメントの温度を上げ、前記導電フィラメントの前記酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分と、
前記導電フィラメントの前記酸素空隙の前記サブセットを変位させるように構成された第2の部分とを含む、デバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つの電気リセット・パルスの前記第1の部分は、第1のピーク振幅および第1の持続時間を有し、
前記少なくとも1つの電気リセット・パルスの前記第2の部分は、第2のピーク振幅および第2の持続時間を有し、
前記第1のピーク振幅は、前記第2のピーク振幅より大きく、前記第1の持続時間は、前記第2の持続時間より短い、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記第1のピーク振幅は、前記第2のピーク振幅よりも少なくとも2倍大きい、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の持続時間は、前記第1の持続時間よりも少なくとも5倍長い、請求項2に記載のデバイス。
【請求項5】
前記第1のピーク振幅は、0.1ボルトから2ボルトの間の範囲内であり、前記第2のピーク振幅は、0.02ボルトから1ボルトの間の範囲内であり、前記第1の持続時間は、1ナノ秒から100ナノ秒の間の範囲内であり、前記第2の持続時間は、5ナノ秒から1000ナノ秒の間の範囲内である、請求項2に記載のデバイス。
【請求項6】
前記少なくとも1つの調整可能な抵抗素子は、
少なくとも1つの電気セット・パルスの印加に応答して複数のセット抵抗状態を提供し、
少なくとも1つの電気リセット・パルスの印加に応答して複数のリセット抵抗状態を提供するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記誘電体層は、金属酸化物材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記金属酸化物材料は、遷移金属酸化物である、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記金属酸化物材料は、ペロブスカイト遷移金属酸化物である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記金属酸化物材料は、
ABO3-δペロブスカイトであって、Aは、アルカリ土類金属、希土類元素またはそれらの組み合わせであり、Bは、遷移金属元素である、前記ABO3-δペロブスカイト、
チタン酸ランタンまたはチタン酸ストロンチウムあるいはその両方(La,Sr)TiO3-δ、
チタン酸イットリウムまたはチタン酸カルシウムあるいはその両方(Y,Ca)TiO3-δ、
マンガン酸ランタンまたはマンガン酸ストロンチウムあるいはその両方(La,Sr)MnO3-δ
マンガン酸プラセオジムまたはマンガン酸カルシウムあるいはその両方(Pr,Ca)MnO3-δ
マンガン酸カルシウムCaMnO3-δ
コランダム、
酸化バナジウムまたは酸化クロムあるいはその両方(V,Cr)3-δ
二元遷移金属酸化物、
酸化ニッケルNiO1-δ
酸化チタンTiO2-δ、
酸化ハフニウムまたは酸化ジルコニウムあるいはその両方(Hf,Zr)O2-δおよび
酸化セリウムCeO2-δから成る群から選択される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第1の端子および前記第2の端子の少なくとも一方は、金属、金属酸化物、導電性カーボン、アモルファス・カーボンのうちの1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第1の端子および前記第2の端子の少なくとも一方は、Ti、TiN、Ta、TaN、W、Cu、PtおよびWO3、RuO2およびITOなどの何らかの金属酸化物から成る群から選択された材料を含む、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記誘電体層は、1ナノメートルから50ナノメートルの間の厚さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスは、セット・パルスおよびリセット・パルスを印加すると二方向抵抗曲線を提供するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスは、前記第1の端子および前記第2の端子の少なくとも一方に電気プログラミング・パルスとして前記電気セット・パルスおよび前記電気リセット・パルスを加えるために制御ユニットを備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項16】
前記制御ユニットは、反復プログラムおよび検証手順によって前記抵抗素子の抵抗状態をプログラムするように構成される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記制御ユニットは、前記1つまたは複数の抵抗素子の抵抗状態を読み取るために、読み取りモードにおいて読み取り電圧を前記第1の端子および前記第2の端子に加えるように構成される、請求項15に記載のデバイス。
【請求項18】
前記デバイスは、ニューロモーフィック・ネットワークのためのシナプスとして構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項19】
調整可能な抵抗素子をプログラミングするための方法であって、前記調整可能な抵抗素子は、第1の端子、第2の端子、および前記第1の端子と前記第2の端子との間の誘電体層を備え、前記方法は、
少なくとも1つの電気セット・パルスを前記調整可能な抵抗素子に加えて、前記誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成することと、
少なくとも1つの電気リセット・パルスを加えて前記導電フィラメントの前記酸素空隙のサブセットを変位させることであって、前記少なくとも1つの電気リセット・パルスは、
前記導電フィラメントの温度を上げ、前記導電フィラメントの前記酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分と、
前記導電フィラメントの前記酸素空隙の前記サブセットを変位させるように構成された第2の部分とを含む前記こととを含む、方法。
【請求項20】
少なくとも1つの調整可能な抵抗素子を備えるデバイスを操作するためのコンピュータ・プログラム製品であって、各調整可能な抵抗素子は、第1の端子、第2の端子、および前記第1の端子と前記第2の端子との間に配置された誘電体層を備え、前記コンピュータ・プログラム製品は、それと共に具現化されるプログラム命令を有するコンピュータ可読ストレージ媒体を備え、前記プログラム命令は、
少なくとも1つの電気セット・パルスを前記少なくとも1つの抵抗素子に加えて、前記誘電体層内に複数の酸素空隙を有する導電フィラメントを形成することと、
少なくとも1つの電気リセット・パルスを加えて前記導電フィラメントの前記酸素空隙のサブセットを変位させることであって、前記少なくとも1つの電気リセット・パルスは、
前記導電フィラメントの温度を上げ、前記導電フィラメントの前記酸素空隙の可動性を高めるように適合された第1の部分と、
前記導電フィラメントの前記酸素空隙の前記サブセットを変位させるように構成された第2の部分とを含む前記こととを含む方法を制御ユニットに実行させるように前記制御ユニットによって実行可能である、コンピュータ・プログラム製品。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0024】
図2は、本開示の少なくとも1つの実施形態による調整可能な抵抗素子20の簡素化された断面図を描く。調整可能な抵抗素子20は、第1の端子21、第2の端子22および誘電体層23を備える。誘電体層23は、金属酸化物材料を含んでよい。金属酸化物材料は、とりわけ遷移金属酸化物であってよい。少なくとも1つの実施形態によると、遷移金属酸化物は、ABO3-δペロブスカイトであって、Aは、アルカリ土類金属、希土類元素またはそれらの組み合わせであり、Bは、遷移金属元素である。例は、チタン酸ランタンまたはチタン酸ストロンチウムあるいはその両方(La,Sr)TiO3-δ、チタン酸イットリウムまたはチタン酸カルシウムあるいはその両方(Y,Ca)TiO3-δ、マンガン酸ランタンまたはマンガン酸ストロンチウムあるいはその両方(La,Sr)MnO3-δ、あるいはマンガン酸プラセオジムまたはマンガン酸カルシウムあるいはその両方(Pr,Ca)MnO3-δである。本開示の実施形態に有利に使用されてよいさらなる遷移金属酸化物は、酸化バナジウムまたは酸化クロムあるいはその両方(V,Cr)3-δなどのコランダムを含む。有利に使用することができる他の材料は、酸化ニッケルNiO1-δ、酸化チタンTiO2-δ、酸化ハフニウムまたは酸化ジルコニウムあるいはその両方(Hf,Zr)O2-δおよび酸化セリウムCeO2-δなどの二元遷移金属酸化物を含む。好ましくは、金属酸化物材料は、例えば、室温で10-9cm/Vsまたはそれより高い酸素空隙の比較的高い可動性を有する材料である。
【国際調査報告】