(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】車両の搭載システムに送信されるべき情報項目を選択するための方法および関連デバイス
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20231024BHJP
G01C 21/28 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G08G1/09 H
G08G1/09 F
G01C21/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523260
(86)(22)【出願日】2021-09-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2021076227
(87)【国際公開番号】W WO2022078729
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オーブ, コリン
(72)【発明者】
【氏名】ボンディエ, セドリック
(72)【発明者】
【氏名】ペロー, エリク
(72)【発明者】
【氏名】セシア, ステファニア
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB33
2F129BB49
2F129BB66
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5H181AA01
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5H181LL09
(57)【要約】
本発明は、選択された情報項目を車両に搭載されている少なくとも1つのシステムに送信する目的で、車両から離れて位置する送信器によって発せられた複数の情報項目の中から情報項目を選択するための方法に関し、本方法は、以下のステップを提供する:a)受信された情報の絶対位置に従って運動進路のマップ上のそれぞれの情報項目の位置を推定するステップ(E1)、b)少なくとも1つの搭載システムが送信されることを望む情報項目を位置付けるべき少なくとも1つの関心対象の場所を決定するステップ(E2)、c)ステップa)において確立されたマップ上の受信された情報項目の推定位置と、ステップb)において識別された関心対象の場所とに従って、搭載システムに送信すべき情報項目を、受信された情報項目から選択するステップ(E3)。本発明はまた、選択された情報項目を車両に搭載されているシステムに送信する目的で、車両から離れて位置する送信器によって発せられた複数の情報項目の中から情報項目を選択するためのデバイスに関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)に搭載されている少なくとも1つの運転者支援システム(20、21、22)に選択された情報項目を送信する目的で、前記車両(1)から離れて位置する送信側(100)から時間tに受信された複数の情報項目の中から前記情報項目を選択するための方法であって、
a)前記時間tに受信された前記情報項目の絶対位置(Zi)に応じて、走行レーンマップにおけるそれぞれの前記受信された情報項目の位置を推定することと、
b)前記少なくとも1つの搭載システム(20、21、22)が、優先的に送信されるのを確かめたい前記情報項目が位置しなければならない少なくとも1つの関心対象の場所を決定することと、
c)前記ステップa)において確立されたマップ上の前記受信された情報項目の推定位置(Xi)およびステップb)で決定された前記関心対象の場所に応じて、前記搭載システムに送信されるべき情報項目を、前記受信された情報項目の中から選択することと
を行うようになされ、ステップa)において、前記時間tに受信された前記それぞれの情報項目の位置が、迅速な実行を伴う簡略化された手続きまたはより遅い実行を伴う複雑な手続きの中から選定された位置特定手続きを使用して、前記マップ内で推定され、前記位置特定手続きは、取られたルートに沿った走行レーンのネットワークの密度値に応じて選定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記位置特定手続きの前記選定がさらに、前記時間tに受信された前記情報項目の前記絶対位置(Zi)に関連する統計誤差に応じて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記簡略化された位置特定手続きが、それぞれの走行レーンへの前記受信された情報項目の前記絶対位置の直交射影と、前記受信された情報項目を前記マップ内で位置付けるための最短の直交射影の選択とを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記複雑な位置特定手続きが、一方では、前記マップの相対的に広い領域に、他方では、前記時間tに先行する時間に受信された前記情報項目によって採用された相対的に多数の過去の位置に基づいて、前記時間tに受信された前記情報項目の前記絶対位置(Zi)を投影するのに適している前記走行レーン(Ri)を決定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記複雑な位置特定手続きが、前記時間tに受信された前記情報項目の前記絶対位置(Zi)に関連する前記統計誤差に応じて、前記マップの前記領域のサイズおよび考慮されるべき前記過去の位置の数がパラメータ化される、パラメータ化ステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記複雑な位置特定手続きがさらに、初期化ステップであって、前記時間tに先行する前記時間のうちの1つにおいて採用された前記過去の位置のそれぞれについて、考慮されるべき前記位置が、前記時間tに先行する前記時間に受信された前記情報項目の前記絶対位置(Zi(t-1))であるかまたは前記マップ内の推定位置(Xi(t-1))であるかが選定される初期化ステップを含み、前記選定が、前記推定位置(Xi(t-1))に関連する信頼度(L(Ri(t-1)))に応じて行われる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
ステップb)において、前記関心対象の場所が、一方では、時間tにおける前記車両の前記位置に、他方では、前記時間tにおける前記車両の参照ルートに応じて、考慮されるべき前記走行レーン部分(Ri)を示す空間フィルタによって画定される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記空間フィルタが、走行レーンセグメント(idx)とノードとのサブセットを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記空間フィルタが、
前記マップ内の参照位置、
前記参照位置から測定された、前記車両の前記参照ルート上の最大距離、
考慮されるべき隣接走行レーンの等級、および
場合により、前記参照位置から測定された、前記隣接走行レーン内の最大距離
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記選択された情報項目を車両に搭載されている運転者支援システム(20、21、22)に送信する目的で、前記車両(1)から離れて位置する送信側(100)から時間tに受信された複数の情報項目の中から情報項目を選択するためのデバイス(10)であって、
走行レーンのマップと、前記搭載システム(20、21、22)に優先的に送信されるべき前記情報項目が位置しなければならない少なくとも1つの関心対象の場所と、前記時間tに受信された前記情報項目の絶対位置(Zi)とを記憶するように構成された、メモリユニット(11)と、
前記マップ内のそれぞれの受信された情報項目の位置を推定するように構成されるとともに、前記受信された情報項目の前記マップ内での前記推定位置と、前記メモリユニット(11)に記憶された前記関心対象の場所とに応じて、前記搭載システム(20、21、22)に優先的に送信されるべき前記受信された情報項目を選択するように構成された、制御ユニット(12)と、
を備え、前記制御ユニット(12)が、迅速な実行を伴う簡略化された手続きまたはより遅い実行を伴う複雑な手続きの中から選定された位置特定手続きを使用して、前記マップ内で、前記それぞれの受信された情報項目の位置を推定するように構成され、前記位置特定手続きが、取られたルートに沿った走行レーンのネットワークの密度値に応じて選定される、デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、自動車両が外界と通信することを可能にするシステムに関する。本発明は、より具体的には、車両に搭載されている少なくとも1つの運転者支援システムに選択された情報項目を送信する目的で、車両から離れて位置する送信側から時間tに受信された複数の情報項目の中から情報項目を選択することに関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、情報項目を選択するための方法と、情報項目を選択するためのデバイスとに関する。
【0003】
本発明は、詳細には、車両と通信する送信側が他の車両である技術(V2V)、車両と通信する送信側が道路インフラストラクチャである技術(V2I)、車両と通信する送信側がネットワーク送信器である技術(V2N)、および車両と通信する送信側が歩行者である技術(V2P)を包含する、一般に「V2X」と称される技術との関連で車両によって受信される情報項目の選択に有利に適用可能である。
【背景技術】
【0004】
現在、多くの車両は、危険な運転状況においてまたは単純に運転快適性を高めるために、運転者が運転している間に運転者を支援することを可能にする、搭載運転者支援システムを備えている。たとえば、以下の搭載システム、すなわち、A地点からB地点に至るためのルートを運転者がたどるのを助ける、ナビゲーションシステム、高度運転者支援システム(ADAS:advanced driver assistance system)、または、車両が運転されている間に警告を表示するダッシュボード、が知られている。効果的に動作するために、搭載システムは、近くでもさらに遠くでも、車両の環境を探査および分析しなければならない。この目的で、車両は、車両の周囲に関する情報を収集する物理センサを備えている。自身の環境の知識をさらに向上させるために、車両はV2X技術を備えることもあり、その効力により、車両は、車両から離れて位置する送信側から、たとえば、他の車両から(V2V)、道路インフラストラクチャから(V2I)、ネットワークから(V2N)または歩行者などの他の道路ユーザから(V2P)、メッセージを受信する。これらの送信側から受信されるメッセージは、たとえば以下のような様々な情報項目を含む:送信側の絶対位置(GPS座標における)、この位置の信頼度、送信側の運動の速度、送信側の加速度および/もしくはそれの運動の方向、または、送信側がその運動中に遭遇したもしくは生み出した危険(滑りやすい道路、危険なカーブ、事故、交通渋滞など)。したがって、増加しつつある数の車両におけるV2X技術の配備で、最終的に車両において毎秒受信される情報項目の数は、それぞれの搭載システムに対してそれに有用な情報項目のみを送信するように、受信された情報項目を選択することが必要になる程であり、そうでない場合、搭載システムの動作が飽和して減速するリスクが生じることが推定される。
【発明の概要】
【0005】
これに関連して、本発明は、この搭載システムが情報項目を処理するのをより簡単にするために、および搭載システムの動作が減速するのを防ぐために、搭載システムにとって最も有用でない情報項目を取り除くかまたはその優先度を下げることを可能にする情報項目を選択するための方法を提供する。より具体的には、本発明によれば、導入部で定義されたような方法が提供され、この方法において、以下を行うようになされる:
a)時間tに受信された情報項目の絶対位置に応じて、走行レーンマップにおけるそれぞれの受信された情報項目の位置を推定すること、
b)少なくとも1つの搭載システムが、優先的に送信されるのを確かめたい情報項目が位置しなければならない少なくとも1つの関心対象の場所を決定すること、および
c)ステップa)で確立されたマップ内の受信された情報項目の推定位置におよびステップb)で決定された関心対象の場所に応じて、搭載システムに送信されるべき情報項目を、受信された情報項目の中から選択すること。
【0006】
走行レーンによって意味されるものは、モータ付きでもそうでなくとも車両によって、または歩行者によって取られることが可能な任意のタイプの道路または進路である。
【0007】
したがって、本発明により、関心対象の場所の外に位置する情報項目は、搭載システムに送信されないか、または本システムによって優先事項ではないと見なされる。これは、搭載システムによって処理されるべき情報項目の数を減らすこと、および最重要の情報項目のみを保存することを可能にする。
【0008】
以下は、本発明による方法の他の有利なおよび限定されない特徴であり、これらの特徴は、個々にまたは任意の技術的に可能な組合せで実行され得る:
- ステップa)で、時間tに受信されたそれぞれの情報項目の位置が、迅速な実行を伴う簡略化された手続きまたはより遅い実行を伴う複雑な手続きの中から選定された位置特定手続きを使用して、マップ内で推定され、その位置特定手続きは、車両の参照ルートに沿った走行レーンのネットワークの密度値に応じて選定される、
- 位置特定手続きの選定がさらに、時間tに受信された情報項目の絶対位置に関連する統計誤差に応じて行われる、
- 簡略化された位置特定手続きは、それぞれの走行レーンへの受信された情報項目の絶対位置の直交射影と、受信された情報項目の位置をマップ内で推定するための最短の直交射影の選択とを含む、
- 複雑な位置特定手続きは、一方では、マップの相対的に広い領域に、他方では、時間tに先行する時間に受信された情報項目によって採用された相対的に多数の過去の位置に基づいて、時間tに受信された情報項目の絶対位置を投影することが適切な走行レーンを決定する、
- 複雑な位置特定手続きは、時間tに受信された情報項目の絶対位置に関連する統計誤差に応じて、マップの領域のサイズおよび考慮されるべき過去の位置の数がパラメータ化される、パラメータ化ステップを含む、
- 複雑な位置特定手続きはさらに、初期化ステップであって、時間tに先行する時間のうちの1つにおいて採用された過去の位置のそれぞれについて、考慮されるべき位置が、時間tに先行する時間に受信された情報項目の絶対位置であるかまたはマップ内の推定位置であるかが選定される初期化ステップを含み、その選定は、推定位置に関する信頼度に応じて行われる、
- ステップb)において、関心対象の場所は、一方では、時間tにおける車両の位置に、他方では、時間tにおける車両の参照ルートに応じて、考慮されるべき走行レーン部分を示す、空間フィルタによって画定される、
- 空間フィルタは、走行レーンセグメントのリストを含む、
- 空間フィルタは、以下を含む:
マップ内の参照位置、
参照位置から測定された、車両の参照ルート上の最大距離、
考慮されるべき隣接走行レーンの等級、および
場合により、参照位置から測定された、隣接走行レーン内の、最大距離。
本発明はまた、選択された情報項目の車両に搭載されている運転者支援システムへの送信を目的として、車両から離れて位置する送信側から時間tに受信された複数の情報項目の中から情報項目を選択するためのデバイスを提供し、デバイスは以下を含む、:
- 走行レーンのマップと、搭載システムに優先的に送信されるべき情報項目が位置しなければならない、少なくとも1つの関心対象の場所と、時間tに受信された情報項目の絶対位置とを記憶するように構成されたメモリユニット、
- マップ内のそれぞれの受信された情報項目の位置を推定するように構成されるとともに、受信された情報項目のマップ内での推定位置と、メモリユニットに記憶された関心対象の場所とに応じて、搭載システムに優先的に送信されるべき受信された情報項目を選択するように構成された制御ユニット。
【0009】
非制限的な例を用いて与えられる、添付の図面を参照して以下に続く説明は、本発明が何で構成されるかおよび本発明がどのように実行され得るかの理解を容易にすることになろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明による方法の主なステップの図である。
【
図3】本発明による方法のステップa)に含まれるサブステップの図である。
【
図4】時間tに受信されたすべての情報項目、すなわち、搭載システムに送信されることになる、選択された情報項目と、搭載システムに送信されないことになる、選択されない情報項目、が示された、マップの一例の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、選択された情報項目を車両1に搭載されている少なくとも1つの運転者支援システムに送信する目的で、車両1から離れて位置する送信側100から時間tに受信された複数の情報項目の中から、情報項目を選択するためのデバイス10を示す。単純化するために、車両に搭載されている運転者支援システムは、残りの記述において、「搭載システム20、21、22」と称される。
【0012】
車両1は、走行レーンから形成された道路ネットワークを進むつもりであると見なされ、送信側100は、この道路ネットワークの関係者、たとえば、他の車両、道路インフラストラクチャ、または歩行者などのネットワークのユーザ、であると見なされる。車両1および送信側100はすべて、所謂「V2X」技術を備えており、それにより、それらは、情報項目を含むメッセージを送信および受信することができる。走行レーンは、たとえば、主な街路、小さな公道、大きな公道および高速道路、並びに歩行者通路および自転車通路である。
【0013】
受信された情報項目は、たとえば、以下の情報項目である:送信側の絶対位置(GPS座標における)、この位置の信頼度、送信側の運動の速度、送信側の加速度および/もしくはそれの運動の方向、または、送信側がそれの運動中に遭遇したもしくは生み出した危険(滑りやすい道路、危険なカーブ、事故、交通渋滞など)。
【0014】
ここで、車両1は、搭載システムとして、運転者がA地点からB地点に至るためのルートをたどるのを手伝うナビゲーションシステム20、高度運転者支援システム(ADAS)21、および、車両が運転されている間に警告を表示するダッシュボード22を備えている。
【0015】
デバイス10は、有線またはワイヤレス通信を用いて、好ましくは有線通信を用いて、搭載システム20、21、22のそれぞれと通信するように構成されている。
【0016】
搭載システム20、21、22のそれぞれは、正確に動作するために、特定の情報項目を必要とする。しかしながら、それは、すべての送信側100からの時間tに受信されたすべての情報項目を必ずしも必要としない。したがって、搭載システム20、21、22は、潜在的には情報項目の性質に関して、送信側の性質に関して、または、これは本発明の対象である、車両1に関する情報項目の位置に関して、送信されるのを確かめたい情報項目を車両1に指示する。
【0017】
本発明によるデバイス10は、送信側100と搭載システム20、21、22との間の中間フィルタであり、搭載システム20、21、22のそれぞれにそれが送信されるのを確かめたい空間情報項目のみを送信するように、送信側100から受信された情報項目を空間的にソートするように構成される。
【0018】
たとえば、ナビゲーションシステム20は、一般に、車両1から相対的に遠い情報項目に関心を持ち、一方、車両の非常に近くに位置する情報項目は、あまり関心を引かない。たとえば、車両1の前の約30kmの交通渋滞の存在がナビゲーションシステム20の関心を引く。ダッシュボード22の方は、車両1に非常に近い情報項目を使用することを好み、一方、非常に遠く離れた情報項目は、それにとって殆ど役に立たない。たとえば、車両1から数十メートルまたは数百メートル以下に位置する情報項目は、ダッシュボード22にとって関心があるが、さらに遠く離れて位置する情報項目は関心を引かない。ADAS21は、車両に非常に近い情報項目と車両から中間距離に位置する情報項目との両方を使用するが、車両1から相対的に遠くに位置する情報項目は使用しない。たとえば、ADAS21は、それから数キロメートルまでに位置する情報項目を使用するが、それ以上遠いものは使用しない。指標を与えるために、都市のまたは都市部周辺の環境において、情報項目は、それが車両から0メートルと150から200メートルとの間に位置するときには、車両の近くに、すなわち、従来の車両センサ30の可視の範囲に、それが車両から200メートルと1から2キロメートルとの間に含まれるときには中間距離に、それが2キロメートルより離れて位置するときには遠くにあると見なされる。距離のこれらの指標は道路のトポロジと車両の速度とに依存することが理解されなければならない。車両が、高速道路を時速130kmで走行しているとき、これらの指標は、増やさなければならない。いずれの場合にも、これらの指標は、本発明の文脈において制限的であると考えられてはならない。
【0019】
送信側100によって送信された情報項目は、比較的長距離のワイヤレス通信を介して、たとえば無線波を介して、車両1によって、特にデバイス10によって、受信される。
【0020】
図1に示すように、本発明によるデバイス10は、以下を備える:
- 走行レーンのマップと、搭載システム20、21、22に送信されるべき情報項目が位置しなければならない、関心対象の少なくとも1つの場所と、時間tに受信された第iの情報項目の絶対位置Ziとを記憶するように構成された、メモリユニット11、並びに、
- マップ上の送信側100から受信されたそれぞれの受信された情報項目の位置を推定するように、そして、マップ内の情報項目の推定位置Xiに、およびメモリユニット11に記憶された関心対象の場所に応じて、搭載システム20、21、22に送信されるべき情報項目を選択するように構成された、制御ユニット12。
【0021】
図1に示すように、メモリユニット11は、制御ユニット12と通信するように構成される。この通信は、有線通信またはワイヤレス通信である。好ましくは、メモリユニット11および制御ユニット12は、車両1に搭載されており、有線通信を介して通信する。
【0022】
制御ユニット12は、計算を実行するように構成された少なくとも1つのコンピュータを備える。
【0023】
図1に示すように、本発明によるデバイス10は、車両1に直接に関するある種の情報項目、特に、以下で車両の「運転シナリオ」と称されるもの、を取得することを目的に、車両の少なくとも1つのセンサ30と通信するようにさらに構成される。
【0024】
たとえば、デバイス10は、ここで、車両1の絶対位置を配信する車両のGPSセンサと、または、車両1の速度を与える速度センサと、通信するように構成される。ここでも、たとえば、デバイス10はまた、車両の参照ルート、すなわち、時間tに車両1によって取られた実際のルートまたは車両1が時間tに取りそうな最も可能性の高いルート、を与える、搭載ナビゲーションシステム20(その場合、ナビゲーションシステム20はセンサであると考えられる)と通信するように構成される。ナビゲーションシステム20が最も可能性の高いルートを決定するやり方は、本発明の一部を形成せず、詳しく説明されない。ナビゲーションシステム20がオンにされていないとき、デバイス10は、たとえば、車両1が時間tに取りそうな最も可能性の高いルートの形で車両の参照ルートを計算するように構成された(センサとしての)コンピュータと通信するように構成される。車両1が取りそうな最も可能性の高いルートは、この場合、統計方式で定義され、車両が使用されるたびに再計算される。コンピュータがこのルートを計算するやり方は、それ自体知られており、本発明の一部を形成しない。
【0025】
さらに、デバイス10は、主なステップが
図2の図式に示されている本発明による方法を実行するように構成される。
【0026】
より正確には、デバイス10は、選択された情報項目を搭載システム20のうちの少なくとも1つに送信する目的で、車両1から離れて位置する送信側100から、時間tに、受信された複数の情報項目の中から情報項目を選択するための方法を実行するように構成され、この方法においては、以下を行うようになされる:
a)時間tに受信された情報項目の絶対位置Ziに応じて、メモリユニット11に記憶された走行レーンマップにおいてそれぞれの受信された情報項目の位置Xiを推定すること(
図2のブロックE1)、
b)少なくとも1つの搭載システム20、21、22が、送信されるのを確かめたい情報項目が位置しなければならない少なくとも1つの関心対象の場所を決定すること(
図2のブロックE2)、
c)ステップa)において確立されたマップ内の受信された情報項目の推定位置Xiと、ステップb)で決定された関心対象の場所とに応じて、搭載システム20、21、22に送信されるべき情報項目を、受信された情報項目の中から選択すること(
図2のブロックE3)。
【0027】
ステップa)、b)およびc)は、より具体的には、デバイス10の制御ユニット12によって実行される。
【0028】
実際には、ステップa)およびb)は、独立しておよび互いに並行して実行され得るが、ステップc)は、必ずステップa)およびb)の後に実行される。
【0029】
ステップb)において、制御ユニット12は、一方では、関心対象の場所を定義する希望リストを搭載システム20、21、22のそれぞれから受信し、他方では、車両の運転シナリオに関するデータを車両1のセンサ30から受信する。
【0030】
運転シナリオは、たとえば、以下のパラメータのうちの1つまたは複数を含む:車両の速度、外部気象条件、車両が都市環境を走行しているかまたは高速道路を走行しているか、車両の参照ルート、交通密度、速度制限、車両内にある物理センサの数および性質、および、時間tにおける走行レーンのネットワークの複雑性。
【0031】
関心対象の場所は、それらの空間原点に応じて、ある種の情報項目を優先的に受信するまたはしないという搭載システム20、21、22の希望を反映する。
【0032】
たとえば、ADAS21は、車両が時速70km未満で進んでいる場合には車両1の周りの半径200メートル以内に位置するすべての情報項目を、そして、車両が時速70km超で進んでいる場合には車両の周りの半径700メートル以内に位置するすべての情報項目を常に受信することをADAS21は望むと制御ユニット12に指示することができ、半径400メートル以内に位置する情報項目は他よりも優先されることになる、ということが理解される。ADAS21は、たとえば、ADAS21が、車両が都市環境内にあるときにのみ、車両1によって取られる参照ルートの走行レーンに隣接するレーンに由来するすべての情報項目を取得することを望むという、他の条件を追加することができる。ADAS21はさらに、気象条件に応じてADAS21が情報項目を受信することを望む関心対象の場所の半径のサイズを構成することができる。たとえば、ADAS21は、悪い気象条件の場合に、情報項目がそこに由来しなければならない関心対象の場所の半径を増したい旨を指示することができる。
【0033】
他の搭載システム20、22のそれぞれが、それにより、各自の条件をデバイス10の制御ユニット12に指示し、それ故に、制御ユニット12は、搭載システム20、21、22に送信されることができるために情報項目が由来しなければならない関心対象の場所を確立するために制御ユニット12が考慮しなければならないすべての基準を知る。
【0034】
制御ユニット12は、次いで、搭載システム20、21、22の希望を車両1の周囲の空間内で具体的に画定する空間フィルタを、関心対象の場所および車両1の運転シナリオに基づいて、搭載システム20、21、22のそれぞれについて決定する。実際には、空間フィルタが、搭載システム20、21、22がそれに関して情報項目を受信したいマップの走行レーン部分を指示する。
【0035】
空間フィルタは、一方では、時間tにおける車両の位置に、他方では、時間tにおける車両の参照ルート、すなわち、実際のルートまたは時間tに車両1によって取られている最も可能性の高いルート(このルートはたとえばナビゲーションシステム20によって与えられる)に依存する。
【0036】
車両1の位置は、緯度、経度および標高で与えられる、車両1の絶対位置であるか、またはマップ内の車両の推定位置であるかのいずれかであり、推定位置は車両1の絶対位置から取得される。ここで、時間tにおける車両1の絶対位置および車両1の参照ルートは、それぞれ、GPSセンサ30およびナビゲーションシステム20によって配信される。一変形形態として、車両の参照ルートは、コンピュータによって与えられ得る。
【0037】
「明示的」変形形態と呼ばれる、実施形態の第1の変形形態によれば、マップは、走行レーンセグメントおよびノードのセットとして定義される。索引idxによって識別される、それぞれのセグメントは、交点を有さない走行レーン部分またはセクションを表し、任意のサイズであってよい。それぞれのノードは、1つまたは複数の走行レーンの間の交点を表す。したがって、異なる索引idxの2つのセグメントは、ノードによって分けられる。
【0038】
この第1の変形形態によれば、それぞれの時間tにおける関心対象の場所を画定する空間フィルタは、走行レーンセグメントとノードとのサブセットを含む。
【0039】
「暗黙的」変形形態と呼ばれる、実施形態の第2の変形形態によれば、空間フィルタは、以下を含む:
- 一般に車両1の位置である、マップ内の参照位置、
- 参照位置から測定された、車両1の参照ルート上の最大距離、
- 考慮されるべき隣接走行レーンの等級、および
- 場合により、参照位置から測定された、隣接走行レーン内の最大距離。
【0040】
参照ルートに隣接する走行レーンは、直接的にまたは間接的に、この参照ルートをさえぎるものであると見なされる。第1級の隣接走行レーンは、参照ルートを直接横切る走行レーンに対応し、一方、第2級の隣接走行レーンは、第1級の隣接走行レーンを横切る走行レーンである。言い換えれば、参照ルートから出る任意の走行レーンは、第1級の隣接走行レーンであり、第1級の隣接走行レーンから出る任意の走行レーンは、第2級の隣接走行レーンである。
【0041】
これらの暗黙的情報項目から、制御ユニット12は、どの走行レーンセクションが搭載システム20、21、22にとって関心があるかを決定することができる。
【0042】
どの変形形態が想定されても、一方では、運転シナリオは変化するため、そして他方では、車両1は移動するため、空間フィルタは時間とともに変化する。
【0043】
したがって、制御ユニット12は、車両の運転シナリオおよび車両1の位置を所与として空間フィルタが適切であるかどうかを極めて規則的にチェックする。
【0044】
好ましくは、制御ユニット12は、単一の空間フィルタではなく、車両の行程全体にわたって車両1の運転シナリオに対応する空間フィルタのセットFを、ステップb)において決定し、それぞれの空間フィルタは車両1の参照ルートの部分に関連している。
【0045】
また、メモリユニット11が空間フィルタの複数のセットFxをメモリに有するようになされ、それぞれのセットFxは、たとえば、車両のある種の頻発する行程に、またはある特定の時間帯に対応する。
【0046】
制御ユニット12は、すると、メモリにおいて空間フィルタのセットFxの中から車両の行程の1つの部分に対応する空間フィルタを選定することができるので、これは、制御ユニット12が時間tにおける空間フィルタを決定することを容易にし、セットは車両1によって取られる全体の行程に関連している。
【0047】
制御ユニット12はまた、行程全体に関連する空間フィルタのセットFが適切であるかどうかまたはそれが変更される必要があるかどうかをチェックする。この検証は、たとえば、極めて規則的に、または参照ルートに関する車両の行程の修正が発生した場合に限り、実施される。
【0048】
それぞれのセットの空間フィルタが、車両の行程の履歴に、および/または特にそれぞれの空間フィルタの可能性を考慮する学習方法に基づいて、メモリユニット11において記憶および更新される。
【0049】
したがって、ステップb)の終わりに、制御ユニット12は、それぞれの搭載システムが処理することになる情報項目が由来しなければならない地理的ロケーションを、一つの空間フィルタまたは空間フィルタのセットの形で知っている。
【0050】
それに関して、ステップa)は、車両1によって時間tに受信された情報項目を位置特定するものであり、この位置特定動作は、大部分について、2つの段階を有する:
- 最良の候補、すなわち、受信された情報項目が由来する傾向がある最も可能性のある走行レーンセクション、を、複数の可能な走行レーンセクションの中から選択することが、先ず必要であり、次いで、
- 最良の候補が可能な走行レーンの中から見つけられた後は、マップにおいて情報項目の推定位置Xiを決定するために、受信された情報項目の絶対位置Ziをこの走行レーンセクションに投影することが必要である。
【0051】
本発明による方法のステップa)について、そこに含まれている主なサブステップの概観を与える、
図3を参照してここでさらに詳しく説明する。
【0052】
図3のブロックA1によって表された、選択する第1のサブステップの間に、以下が行われるようになされる:
- 可能な走行レーンセクションの中から最良の候補を選択するために制御ユニット12によって実行されることになる位置特定手続きを選定し、次に、
- この走行レーンセクションに関して時間tに受信された情報項目を位置特定する。
【0053】
より正確には、時間tに受信されたそれぞれの情報項目について、制御ユニット12は、迅速な実行を伴う簡略化された位置特定手続き(
図3の進路i)またはより遅い実行を伴う複雑な位置特定手続き(
図3の進路j)の中から、実行されるべき位置特定手続きを選定する。その選定は、車両1によって取られる参照ルートに沿った走行レーンのネットワークの密度値に応じて行われる。
【0054】
ここで、走行レーンのネットワーク(または道路ネットワーク)の密度値は、所与のエリアにおける走行レーンの全長に対応する。この密度値は、TR/m2で与えられる。密度値は、相対的に大きいエリアについて評価され、エリアのサイズは運転シナリオに依存する。密度値は、たとえば、マップに基づいておよび/またはマップの所与のエリア内の様々な走行レーンセクションの間の交点(ノード)の数に基づいて、評価される。この密度値は、道路ネットワークの複雑性の指示を与える。低い値は、あまり複雑でない道路ネットワークに、たとえば農村領域に、対応し、一方、高い値は、複雑な道路ネットワークに、たとえば都心領域に、対応する。先験的に、情報項目が、互いに近い多数の別個の走行レーンセクションに由来した傾向がある限りにおいて、道路ネットワークが複雑であるほど、情報項目は位置特定するのが難しくなる。
【0055】
それ故に、密度値が所定の最大閾値より高いとき、制御ユニット12は、複雑な位置特定手続きと称される位置特定手続きを選定するようにプログラムされる(
図3の進路j)。計算的により資源集約的であり、したがってより遅い、この手続きは、多数の候補走行レーンセクションが存在するときに位置突き止めの精度および信頼度を最大にする目的で、優先権を与えられる。対照的に、密度値が、所定の最小閾値より低いとき、制御ユニット12は、簡略化された位置特定手続きと称される位置特定手続きを選定するようにプログラムされる(
図3の進路i)。簡略化された手続きは、計算的に資源集約的ではなく、したがって、実行が速い。
【0056】
位置特定手続きの選定はさらに、時間tに受信された情報項目の絶対位置Ziに関連する統計誤差に応じて行われる。
【0057】
具体的には、密度値が最小閾値と最大閾値との間に含まれるとき、制御ユニット12は、絶対位置Ziに関する信頼リングを使用して、簡略化された位置特定手続きと複雑な位置特定手続きのうちのどちらが実行されなければならないかを選定する。
【0058】
実際には、それぞれの受信された情報項目は、情報項目を送信した送信側100のGPSによって配信された、絶対位置Ziに関連している。この絶対位置Ziは、緯度、経度および標高に関して与えられる。受信された情報項目の送信側100は、相対的に高いまたは低い信頼度を有する絶対位置Ziを与える。したがって、絶対位置Ziは、一般に楕円形に形成され、誤差の分散を表す、信頼リングに関連している。信頼リングが大きいほど、絶対位置Ziの信頼度は低くなり、したがって、絶対位置Ziに関連する統計誤差は高くなる。対照的に、信頼リングが小さいほど、絶対位置Ziの信頼度は高くなり、したがって、絶対位置Ziに関連する統計誤差は低くなる。
【0059】
密度値が最小閾値と最大閾値との間に含まれるとき、制御ユニット12は、絶対位置Ziに関連する統計誤差を所定の最小誤差値と比較する。絶対位置Ziに関連する統計誤差が、最小誤差値より低いとき、制御ユニット12は、簡略化された位置特定手続き(
図3の進路i)を選ぶ。対照的に、絶対位置Ziに関連する統計誤差が、最小誤差値より高いとき、制御ユニット12は、複雑な位置特定手続き(
図3の進路j)を選ぶ。ここで、第iの情報項目の絶対位置Ziに関連する統計誤差は、前述の信頼リングに依存すると考えられる。たとえば、統計誤差は、信頼リングに含まれるすべての位置のセットの分散、または、実際には、信頼リングに含まれるすべての位置のセットの標準偏差である。
【0060】
実際には、複雑な位置特定手続きは、具体的に、情報項目を動的に位置特定するのに、すなわち、時間とともに移動する情報項目を位置特定するのに、適しており、一方、簡略化された位置特定手続きは、静的情報項目との関連で十分であることが判明し得る。
【0061】
簡略化された位置特定手続きが制御ユニット12によって選定されるとき、
図3の進路iが実行される。
【0062】
簡略化された位置特定手続きは、データを取得する第1のステップ(
図3のブロックI1)を含み、このステップ中に、制御ユニット12は、情報項目がそこから送られてきた傾向があるすべての可能な走行レーンセクションを、メモリユニット11から取得する。
【0063】
実際には、第1のステップ(ブロックI1)で、制御ユニット12は、制御ユニット12が情報項目を位置特定しようとする検索領域を決定する。第1の変形形態によれば、制御ユニット12は、次いで、方法のステップb)において、時間tに、使用された空間フィルタのセットFに含まれたすべての走行レーンセクションをメモリユニット11から取得し、そして、受信された情報項目の絶対位置Ziを所与として関連している、Rk,iとして参照されるkセクション、特に、絶対位置Ziの近くで位置特定されたものを、マップのこれらの走行レーンセクションの中から選択する。
【0064】
第1のステップ(ブロックI1)の第2の変形形態によれば、制御ユニット12は、ステップb)において使用された空間フィルタのセットFの空間フィルタに含まれるすべての走行レーンセクションRk,iを取得する。この第2の変形形態によれば、検索領域は、そのとき、車両行程のすべての走行レーンセクションRk,iを含む。
【0065】
第1のステップ(ブロックI1)を実行するために使用することが想定されるどちらの変形形態でも、それぞれの走行レーンセクションRk,iは、係数-a/bおよび-c/bを有する線形方程式によって記述され、セグメントとして数学的に定義される。
【0066】
セグメントRk,iの開始点Sk,iおよび終了点Ek,iは、(Sk,i;Ek,i)∈Rk,iによって記述される。
【0067】
簡略化された位置特定手続きは、そのとき、直交射影のステップ(
図3のブロックI2)を含み、このステップ中に、制御ユニット12は、先行するステップ(I1)で取得されたそれぞれの走行レーンセクションRk,iへの受信された情報項目の絶対位置Ziの直交射影の演算を実行する。
【0068】
制御ユニット12は、次いで、以下の計算を実行することによって、絶対位置Ziと走行レーンRk,iへのそれの直交射影との間の距離d(Zi、Rk,i)を計算する。
[計算1]
【0069】
セグメントRk,iと絶対位置Ziの直交射影との間の交点が、閉形式を使用して、直接見つけられる。交点は、Ik,iと称される。
【0070】
Tは、走行レーンセクションが保持されるべき候補と見なされるべきかどうかに関して、絶対位置Ziとそれの直交射影との間の許容最大距離である。言い換えれば、走行レーンセクションRk,iは、以下の方程式を遵守するとき且つそのときに限り、可能な候補であると見なされる。
[計算2]
f(Zi,Rk,i)=d(Zi,Rk,i)<T AND Ik,i∈(Sk,i;Ek,i)∀k,i
【0071】
簡略化された位置特定手続きは、決定ステップ(
図3のブロックI3)を最後に含み、このステップ中に、制御ユニット12は、保持された走行レーンセクションの中から最良の候補を選択する。実際には、最良の候補は、マップの走行レーンセクションのうちの1つに関する受信された情報項目を位置付けるために必要とされる最短の直交射影に対応するものである。
【0072】
絶対位置Ziを有する情報項目が由来したものとしての最良の候補走行レーンセクションRiを選択するために、制御ユニット12は、以下の計算を実行する。
[計算3]
Ri=argmin{Rk,i∈F}with f(Zi,Rk,i)<T
【0073】
マップ内の情報項目の推定位置Xiは、そのとき、走行レーンセクションRiとこのセクションRiへの絶対位置Ziの直交射影との間の取得された交点Ik,iであると見なされることになる。言い換えれば、マップ内の情報項目の推定位置Xiは、絶対位置Ziの周囲の走行レーンセクションへの最短の直交射影の結果である。
【0074】
制御ユニット12は、そのとき、どの走行レーンセクションRiに受信された情報項目が由来したか、および走行レーンセクションRiのどの推定位置Xiに情報項目が由来したかを、信頼度L(Ri)で知る。
【0075】
情報項目が由来した走行レーンRiの決定に関する信頼度L(Ri)は、それ自体が知られた方式で計算される。たとえば、この信頼度L(Ri)は、2つの別個の計算によって与えられ得る。第1の計算によれば、それぞれの候補走行レーンセクションRi,k,jについて、信頼度L(Ri,k,j)は、絶対位置がZiであるとすると推定位置XiがセクションRi,k,jにある事後確率と、jとは異なるmを有するすべての他の候補走行レーンセクションRi,k,mについて計算されたすべての他の確率の最大値との間の比率である。第2の計算によれは、それぞれの候補走行レーンRi,k,jについて、信頼度L(Ri,k,j)は、絶対位置がZiであるとすると推定位置XiがセクションRi,k,jにある事後確率と、jとは異なるmを有するすべての他の候補走行レーンセクションRi,k,mについて計算されたすべての他の確率の平均値との間の比率である。
【0076】
図3のブロックA2によって表された、簡略化されたロケーション方法の最後のステップにおいて、情報項目が由来した走行レーンの決定に関する信頼度L(Ri)が、所定の信頼度閾値Th2と比較される。所定の信頼度閾値Th2は、0以上であり、これは、最良の候補走行レーンセクションのうちの1つが選定されることを保証する。所定の信頼度閾値Th2は、実際には、絶対位置Ziに関する信頼リングのサイズと、それが情報項目を位置特定しようとした検索領域のサイズとに依存する。
【0077】
信頼度L(Ri)が所定の信頼度閾値Th2より高い場合、メモリユニット11は、信頼度L(Ri)で、時間tに受信された情報項目は走行レーンRiに由来したこと、および、情報項目が、さらに具体的にはこの時間tにマップの推定位置Xiにおいて位置特定されたことを記録する。したがって、メモリユニット11において、時間tおよび受信された情報項目と関連するのは、絶対位置Zi、推定位置Xi、情報項目の送信側100が位置特定された走行レーンセクションRi、および信頼度L(Ri)である。
【0078】
慣例により、別段の指示がない限り、テキストで使用される表記Xi、Zi、Ri、L(Ri)は、時間tにおけるパラメータに対応し、表記Xi(t)、Zi(t)、Ri(t)、L(Ri(t))と等しい、ということを理解されたい。
【0079】
複雑な位置特定手続きが制御ユニット12によって選定されるとき、
図3の進路jが実行される。複雑な位置特定手続きは、隠れマルコフモデル(HMM:hidden Markov model)と呼ばれるそれ自体が知られたアルゴリズムを使用するが、結果の信頼度を下げずに、または少なくとも信頼度の損失を最小限に抑えながら、計算時間が最適化されることを可能にするこのアルゴリズムの実行の前の予備ステップを含む。
【0080】
このアルゴリズムは、受信された情報項目が見つかる傾向がある最良の走行レーンセクションと、情報項目がこのセクションで実際に見つかる確率とをもたらす能力を有する。最良のセクションを見つけるために、制御ユニット12は、情報項目の過去の位置(およびこれらの位置の信頼度)を使用して、情報項目によって作られた最も可能性の高い行程を推定する。結果に達するために、アルゴリズムは、確率を、それぞれの候補走行レーンセクションと、時間t-1における1つの候補セクションから時間tにおける別の候補セクションへの情報項目の移行に関連する移行確率とに帰する。
【0081】
時間tに受信された情報項目の絶対位置Ziが投影されるべき走行レーンセクションRiを見つけるために、複雑な位置特定手続きは、一方では、セクションがその中で探し求められるべきマップの相対的に広い領域、他方では、情報項目の行程をたどると考えられるべきである時間tに先行する時間に情報項目によって採用された相対的に多数の過去の位置を決定する。
【0082】
言い換えれば、複雑な位置特定手続き(
図3の進路j)は、パラメータ化する第1のサブステップ(
図3のブロックJ1)を含み、このステップ中に、制御ユニット12は、一方では、すべての候補走行レーンセクションが含まれることになるマップの領域、他方では、候補のうちの最良のものを決定するために使用されるべき時間tに先行する時間において受信情報項目によって採用された過去の位置の数を決定する。
【0083】
したがって、パラメータ化ステップの間に、制御ユニット12は、マップの領域のサイズと、最良の候補を評価するために考慮されるべき過去の位置の数とをパラメータ化する。
【0084】
領域のすべての走行レーンセクションの中から最良の候補が探し求められるマップの領域が大きいほど、最良の候補を見つける可能性は高くなるが、評価されるべき走行レーンセクションの数が多くなり、したがって、計算時間がより長くなる。実際には、検索領域のサイズをパラメータ化するために、制御ユニット12は、情報項目の絶対位置Ziに関する信頼リングが乗じられる乗法因子である、パラメータCを設定する。したがって、検索領域は、信頼リングのC倍と等しくなる。パラメータCは、少なくとも2と等しい。
【0085】
情報項目によって採用された過去の位置を使用して、制御ユニット12は、情報項目のコースをたどる能力を有する。HMMの効力により、制御ユニット12は、情報項目がこれらの走行レーンセクションのうちの1つに由来することはほぼ不可能であると考えるので、制御ユニット12は、最初は候補であった走行レーンセクションのうちのいくらかを除去する能力を有する。通過された位置の数が多いほど、制御ユニット12によってたどられるコースは正確になり、したがって、すべての可能なセクションの中から最良の候補を見つける可能性は高くなる。実際には、制御ユニット12が考慮しなければならない過去の位置の数をパラメータ化するために、制御ユニット12は、過去の位置の数に対応するパラメータMを設定する。パラメータMは、少なくとも2と等しい。
【0086】
パラメータMおよびCは、時間tに受信された情報項目の絶対位置Ziに関する信頼リングに応じて、パラメータ化される。より正確には、絶対位置Ziに関する信頼リングの結果として生じる統計誤差は、所定の最大誤差値と比較される。絶対位置Ziに関連する統計誤差が、最大誤差値よりも高いとき、制御ユニット12は、好ましくは、マップ内の大きい検索領域をパラメータ化し、多数の過去の位置が使用されることになる。たとえば、制御ユニット12は、3または5と等しくなるようにパラメータCを、そして、4、6または10と等しくなるようにパラメータMを設定する。絶対位置Ziに関連する統計誤差が、最大誤差値より低いとき、制御ユニット12は、好ましくは、より小さい検索領域をパラメータ化し、より少ない数の過去の位置が使用されることになる。たとえば、制御ユニット12は、2または3と等しくなるようにパラメータCを、そして、2または4と等しくなるようにパラメータMを設定する。1つの想定可能な変形形態によれば、制御ユニット12が、多数の過去の位置および小さい検索領域をパラメータ化することができ、逆もまた同様であるように、パラメータCおよびMは、互いに相関関係がなくてもよい。それでもなお、パラメータMおよびCのパラメータ化は、情報項目の送信側100のGPSによって配信された絶対位置Ziに関する信頼リングに、および所定の最大誤差値を有するこの信頼リングの結果として生じる統計誤差の比較にやはり依存する。
【0087】
複雑な位置特定手続き(
図3の進路j)は、初期化ステップ(
図3のブロックJ2)をさらに含み、このステップ中に、考慮されるべき位置が、時間tに先行する時間に受信された情報項目のマップにおいて絶対位置Ziであるかまたは推定位置Xiであるかが、時間tに先行する時間のうちの1つにおいて採用された過去の位置のそれぞれについて選定され、その選定は、絶対または推定位置ZiまたはXiのそれぞれに関する信頼度に応じて行われる。
【0088】
より正確には、それは、時間tに先行する時間に受信された情報項目の位置として保持される最高の信頼度を有する絶対位置Ziまたは推定位置Xiである。したがって、推定位置Xiに関する信頼度L(Ri)がゼロに近い(または所定の閾値より低い)ときには、絶対位置Ziが、時間tに先行する時間に受信された第iの情報項目について保持される位置であり、一方、推定位置Xiに関する信頼度L(Ri)が高い(所定の閾値より高い)ときには、推定位置Xiが、時間tに先行する時間に受信された第iの情報項目について保持される位置である。
【0089】
実際には、以下に詳しく説明するように、推定位置Xiに関する信頼度が、方法の終わりに計算される(
図3のブロックJ4)。
【0090】
先行する時間に取得された結果は、それらが関連しているとき、潜在的に再使用されることになるので、初期化ステップ(ブロックJ2)は、計算の複雑性および数を低減することによって、方法の実行の速度が上げられることを可能にする。
【0091】
初期化ステップJ2は、パラメータ化ステップJ1の後に実行される。
【0092】
複雑な位置特定方法は、そのとき、情報項目がそれが送られた時間t-1と時間tとの間、静止したままであったかどうかを評価することにあるステップ(
図3のブロックJ3)を含む。
【0093】
これを行うために、ブロックJ3のステップにおいて、情報項目の絶対位置Zi(t)とZi(t-1)とが比較される。
【0094】
より正確には、制御ユニット12は、絶対位置Zi(t)とZi(t-1)との間の距離を閾値Th1と比較する。絶対位置の間の距離が閾値Th1より小さい場合、そのとき、制御ユニット12は、情報項目は移動しなかったと見なす。
【0095】
実際には、絶対位置の間の距離は、以下によって計算される:
[計算4]
||Zi(t)-Zi(t-1)||2
【0096】
そうすることで、制御ユニット12は、不必要な計算を回避し、時間t-1に実行された計算結果を直接取得する。
【0097】
情報項目が移動しなかったまたは殆ど移動しなかったと、制御ユニット12によって、見なされた場合、次いで、
図3のブロックJ5によって表されたステップにおいて、制御ユニット12は、時間tに送信側が位置特定された走行レーンセクションRi(t)は時間t-1に送信側が位置特定された走行レーンセクションRi(t-1)と同一であり、時間tに最良の候補として選ばれた走行レーンセクションの信頼度L(Ri(t))は時間t-1に最良の候補として選ばれた走行レーンセクションの信頼度L(Ri(t-1))と等しく、時間tに受信された情報項目の推定位置Xi(t)は時間t-1に受信された情報項目の推定位置Xi(t-1)と等しいと決定する。これは、以下によって表される:
[計算5]
R
i(t)=R
i(t-1);L(R
i(t))=L(R
i(t-1));X
i(t)=X
i(t-1)
【0098】
対照的に、絶対位置の間の距離が閾値Th1より大きい場合、次いで、制御ユニットは、HMMを実行する(HMMは隠れマルコフモデルを表すことが想起されよう)。
【0099】
ブロックJ4のステップにおいて、HMMアルゴリズムは、受信された情報項目が見つかる傾向がある最良の走行レーンセクション、および情報項目がこのセクションで実際に見つかる確率Prob(Rk,i|Z)をもたらす。前述のように、最良のセクションを見つけるために、制御ユニット12は、情報項目の過去の位置(およびこれらの位置の信頼度)を使用して、情報項目によって進まれる最も可能性の高い行程を推定する。HMMは、確率を、それぞれの候補走行レーンセクションと、時間t-1における候補セクションと時間tにおける候補セクションとの間の情報項目の遷移に関連する遷移確率とに帰する。実際には、HMMは、以下に応じて、受信された情報項目がそのセクションで実際に見つかる確率を計算する:
- 距離(ユークリッド距離または大円に基づく距離)、および
- 遷移確率。
【0100】
遷移確率を記述する表現は、文献で見つけることができ、それ自体知られている。
【0101】
したがって、アルゴリズムは、情報項目の運動を最もよく表す候補セクションのシーケンスを確立する。
【0102】
起こり得る誤差およびフォールスアラームという2つの影響は、取得される結果の可能な限り高い信頼度を獲得するために、最小限に抑えられなければならない。
【0103】
起こり得る誤差p(error
i)は、情報項目の絶対位置Ziが、それが実際にセクションRk,iに由来するときに、アルゴリズムによって正しい走行レーンセクションRk,iに位置付けられない確率として定義される。数学的には、起こり得る誤差は以下のように表される。
[計算6]
【0104】
フォールスアラームP
falseは、それが実際には別の走行レーンセクションRk,iに由来するときに、受信された情報項目の絶対位置Ziが、アルゴリズムによって、走行レーンセクションRiと関連付けられる確率として定義される。数学的には、フォールスアラームは以下のように表される。
[計算7]
【0105】
ブロックJ4のステップにおいて、制御ユニット12は、アルゴリズムによって出力された結果の信頼度を推定するために、一連の計算を実行する。
【0106】
信頼度推定値は、アルゴリズムが情報項目を正しい走行レーンセクションと関連付けたアルゴリズムの信頼度を示す。
【0107】
信頼度L(Ri)は、以下の方程式を使用して測定される。
[計算8]
【0108】
信頼度L(Rk,i)が高いほど、可能な走行レーンセクションRk,iの中の最良の候補がアルゴリズムの終わりに見つかっている可能性が高くなる。したがって、最良の候補セクションRk,iは、最高の信頼度L(Rk,i)に関連する候補セクションである。
【0109】
図3でブロックJ6によって表された、以下のステップでは、制御ユニットが、マップにおいて、時間tに受信された第iの情報項目の推定位置Xiを決定する。これを行うために、情報項目が由来した走行レーンセクションRi(このセクションはすべてのセクションRk,iから選ばれている)を知って、制御ユニット12は、絶対位置ZiをセクションRiに直角に投影する。
【0110】
簡略化された位置特定手続きに関連して詳細に記述されたステップと同一である、最後のステップにおいて、制御ユニット12は、メモリユニット11において、時間tに受信された情報項目について取得された新しい「データ」、すなわち、情報項目の送信側100が位置した走行レーンセクションRi(t)、このセクションの決定の信頼度L(Ri(t))、および、そのセクションに関する情報項目の推定位置Xi(t)、を実装することが必要かどうかを推定する(
図3のブロックA2)。
【0111】
方法のステップa)により、情報項目は、より高精度でおよびより低コストで位置特定される。
【0112】
ステップc)において、本発明による方法は、ステップa)およびb)の結果を結合する。したがって、すべての受信された情報項目がステップa)においてマップ上で位置特定され、それぞれの搭載システム20、21、22に関連する空間フィルタがステップb)から知られており、制御ユニット12は、これらの情報項目のみを搭載システム20、21、22に発送するために、どの受信された情報項目が、空間フィルタ内部に位置する走行レーンセクションで位置特定されたかをチェックする。
【0113】
受信された情報項目が、空間フィルタの外に位置する走行レーンセクションで位置特定された場合、その情報項目は、搭載システム20、21、22に送信されない。対照的に、受信された情報項目が、空間フィルタ内に位置する走行レーンセクションで位置特定された場合、この情報項目は、それを処理することができることになる、搭載システム20、21、22に送信される。
【0114】
図4は、デバイス10によって受信された情報項目のすべてが示された、マップの1つの例を示す。車両1のロケーションは、十字形の印が付けられている。情報項目は、空の円、塗りつぶした円、または星印の入った円によって表されている。実際には、空の円によって表された情報項目のみが、ここでは、搭載システム20、21、22のうちの1つに送信され、塗りつぶした円によって表された情報項目は、車両によって取られる最も可能性の高いルートの走行レーンと決して交わらない走行レーンに位置し、一方、星印の入った円によって表された情報項目は、搭載システム20、21、22にとって関心のある車両からあまりに遠くに位置している。
【0115】
本発明は、記述および図示された実施形態に決して制限されず、本発明による任意の変形形態の実装は、当業者の能力の範囲内にある。
【0116】
特に、車両1は、それらの性質におよび/またはそれらを送った送信側100のタイプに応じて、送信側100から受信された情報項目をソートするように構成された処理装置を備えることが想定可能である。たとえば、本発明によるデバイスが、車両1の搭載システムのうちの少なくとも1つにとって関心のある傾向がある性質の情報項目のみを受信するように、処理装置は、本発明によるデバイスの上流に配置される。本発明によるデバイスが、処理装置の上流に配置された場合、これは完全に想定可能であり、デバイスは、すべての受信された情報項目を、それらがそれらの性質またはそれらの送信側の性質に応じて、フィルタ処理される前に、空間的に識別する。本発明によるフィルタとデバイスとの通信は、好ましくは有線通信である。
【0117】
別の想定可能な変形形態によれば、ステップc)で、空間フィルタの外に位置する走行レーンセクションで位置特定された情報項目は、搭載システムに全く送信されないのではなく、他の情報項目よりも至急ではなく処理されなければならないという指示とともに、搭載システムに送信され得る。したがって、本発明により、受信された情報項目を、マップ上のそれらのロケーションに応じて、優先度のおよび重要性の順に分類することが可能である。
【国際調査報告】