(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】修飾されたIL-2分子及びその用途
(51)【国際特許分類】
C07K 14/55 20060101AFI20231024BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20231024BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20231024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231024BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20231024BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20231024BHJP
C12N 15/26 20060101ALN20231024BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231024BHJP
【FI】
C07K14/55 ZNA
C07K19/00
C07K14/54
A61P35/00
A61K38/20
A61K38/17
C12N15/26
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523307
(86)(22)【出願日】2021-10-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 CN2021124246
(87)【国際公開番号】W WO2022078518
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202011113975.7
(32)【優先日】2020-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111201233.4
(32)【優先日】2021-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】522118506
【氏名又は名称】リートー ラボラトリーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LETO LABORATORIES CO., LTD
【住所又は居所原語表記】Room A0928, Building Science and Technology complex, 7 North Agricultural Road, Huilongguan Town, Changping District, Beijing 100026, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ イャォ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ユィ
(72)【発明者】
【氏名】リウ ホイジエ
(72)【発明者】
【氏名】ピァオ ジンホア
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ジィェンジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン チィウレイ
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン グオヨン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ティェンフゥ
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA14
4C084DA46
4C084NA14
4C084ZB261
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA04
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA21
(57)【要約】
本発明では、修飾されたIL-2分子を開示し、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介するIL-2分子中の領域を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介するIL-15分子中の領域に置換することを含み、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介するIL-15分子中の領域が9個以上のアミノ酸残基を含む。さらに、本発明では、前記修飾されたIL-2分子と、IL15Rα(sushiドメイン)又はその変異体とを含むタンパク質ヘテロ二量体が開示されている。 本発明における修飾されたIL-2分子及び/又はそれを含むタンパク質ヘテロ二量体によって、IL2Rαとの親和性を著しく低下させ、これによって臨床治療における副作用を大きく軽減し、良好な創薬可能性を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾されたIL-2分子であって、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介するIL-2分子中の領域を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介するIL-15分子中の領域に置換することを含み、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する前記IL-15分子中の領域は、9個以上のアミノ酸残基を含む、ことを特徴とする修飾されたIL-2分子。
【請求項2】
前記修飾によって、IL2Rαに対する前記修飾されたIL-2分子の親和性を低下させることができる、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項3】
前記修飾によって、IL2Rαに対する前記修飾されたIL-2分子の親和性を排除することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項4】
前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ループM又はその変異体を含み、前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項5】
前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ループN又はその変異体を含み、前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項6】
前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ヘリックスB又はその変異体を含み、前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項7】
前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ループM又はその変異体と、ヘリックスB又はその変異体とを含み、前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含み、前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項8】
前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ヘリックスB又はその変異体と、ループN又はその変異体とを含み、前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含み、前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項9】
前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ループM又はその変異体と、ループN又はその変異体とを含み、前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含み、前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項10】
前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、N末端からC末端まで、ループM又はその変異体と、ヘリックスB又はその変異体と、ループN又はその変異体とを順に含み、前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含み、前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含み、前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項11】
前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ループm又はその変異体を含み、前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項12】
前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ループn又はその変異体を含み、前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項13】
前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ヘリックスb又はその変異体を含み、前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項14】
前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ループm又はその変異体と、ヘリックスb又はその変異体とを含み、前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含み、前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項15】
前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ヘリックスb又はその変異体と、ループn又はその変異体とを含み、前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含み、前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項16】
前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ループm又はその変異体と、ループn又はその変異体とを含み、前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含み、前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項17】
前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、N末端からC末端まで、ループm又はその変異体と、ヘリックスb又はその変異体と、ループn又はその変異体とを順に含み、前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含み、前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含み、前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項18】
前記修飾は、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm又はその変異体に置換することを含み、前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含み、前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項19】
前記修飾は、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のヘリックスB又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換することを含み、前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含み、前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項20】
前記修飾は、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループN又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループn又はその変異体に置換することを含み、前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含み、前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項21】
前記修飾は、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm又はその変異体に置換することと、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のヘリックスB又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換することとを含み、前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含み、前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含み、前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含み、前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項22】
前記修飾は、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のヘリックスB又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換することと、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループN又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループn又はその変異体に置換することとを含み、前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含み、前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含み、前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含み、前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項23】
前記修飾は、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm又はその変異体に置換することと、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループN又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループn又はその変異体に置換することとを含み、前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含み、前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含み、前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含み、前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項24】
前記修飾は、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm又はその変異体に置換することと、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のヘリックスB又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換することと、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループN又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループn又はその変異体に置換することとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項25】
前記修飾によって、前記修飾されたIL-2分子がIL15Rα又はIL15Rαのsushiドメインに結合できる、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項26】
前記修飾は、IL-2分子中のループX又はその変異体を、IL-15分子中のループx又はその変異体に置換することをさらに含み、前記ループxは、SEQ ID NO. 10によって示される配列を含み、前記ループXは、SEQ ID NO.3によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項27】
前記修飾は、IL-2分子中のヘリックスC又はその変異体を、IL-15分子中のヘリックスc又はその変異体に置換することをさらに含み、前記ヘリックスcは、SEQ ID NO. 11によって示される配列を含み、前記ヘリックスCは、SEQ ID NO.4によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項28】
前記置換を含まないIL-2分子と比べ、前記置換は前記修飾されたIL-2分子の安定性を向上させることができる、ことを特徴とする請求項26又は請求項27に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項29】
前記修飾は、IL-2分子のヘリックスD領域においてアミノ酸置換を行うことをさらに含み、置換後のアミノ酸が前記ヘリックスbにおける第43位のフェニルアラニンと芳香環相互作用を形成できることによって、疎水性コアを安定させ、ここで、アミノ酸の位置は、天然IL-15分子アミノ酸配列に基いて、KABAT番号のEUインデックスによって確定され、前記ヘリックスDは、SEQ ID NO. 6によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1-27のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項30】
前記天然IL-15分子アミノ酸配列はSEQ ID NO. 13によって示される、ことを特徴とする請求項29に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項31】
前記アミノ酸置換は、W121Fを含み、ここで、アミノ酸の位置は、天然IL-2分子アミノ酸配列に基づいて、KABAT番号のEUインデックスによって確定される、ことを特徴とする請求項29に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項32】
前記天然IL-2分子アミノ酸配列はSEQ ID NO. 7によって示される、ことを特徴とする請求項31に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項33】
SEQ ID NO. 14によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項32に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項34】
請求項1-32のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子と、IL15Rα又はその変異体とを含むことを特徴とするタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項35】
前記IL15RαはSEQ ID NO. 16によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項34に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項36】
請求項1-32のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子と、IL15Rα受容体のsushiドメイン又はその変異体とを含む、ことを特徴とするタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項37】
前記sushiドメインは、SEQ ID NO. 15又はSEQ ID NO. 20によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項35に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項38】
IL2Rα受容体に結合することなく、IL-2分子に比べ、IL2Rβとの親和性がより高く、前記IL-2分子が天然IL-2分子及びその機能性変異体を含む、ことを特徴とする請求項34又は35に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項39】
前記IL15Rα変異体は、Fc断片を含む、ことを特徴とする請求項34に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項40】
前記Fc断片は、前記IL15RαのC末端に位置する、ことを特徴とする請求項39に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項41】
前記Fcは、ヒトIgG1Fc、ヒトIgG4Fc及びネズミIgG2aa.1Fcのいずれか一種を含む、ことを特徴とする請求項39又は請求項40に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項42】
前記FcはSEQ ID NO. 18によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項40に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項43】
IL2Rα受容体に結合することなく、IL-2分子に比べ、IL2Rβとの親和性がより高く、前記IL-2分子が天然IL-2分子及びその機能性変異体を含む、ことを特徴とする請求項36又は請求項37に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項44】
前記sushiドメイン変異体は、Fc断片を含む、ことを特徴とする請求項36に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項45】
前記Fc断片は、前記sushiドメインのC末端に位置する、ことを特徴とする請求項44に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項46】
前記Fcは、ヒトIgG1Fc、ヒトIgG4Fc及びネズミIgG2aa.1Fcのいずれか一つを含む、ことを特徴とする請求項44又は請求項45に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項47】
前記FcはSEQ ID NO. 18、SEQ ID NO. 24又はSEQ ID NO. 25によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項45に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項48】
SEQ ID NO. 14によって示される配列と、SEQ ID NO. 19、SEQ ID NO. 21又はSEQ ID NO. 22によって示される配列とを含む、ことを特徴とする請求項45に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項49】
請求項1-33のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子をコードすることを特徴とする核酸分子。
【請求項50】
a)請求項1-33のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子、及びb)請求項34-48のいずれか1項に記載のIL15Rα若しくはその変異体、又は前記sushiドメイン若しくはその変異体をコードすることを特徴とする核酸分子の組み合わせ。
【請求項51】
請求項49に記載の核酸分子、又は請求項48に記載の核酸分子の組み合わせを含むことを特徴とするベクター。
【請求項52】
請求項1-33のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子をコードする核酸分子と、請求項34-48のいずれか1項に記載のIL15Rα若しくはその変異体、又は前記sushiドメイン若しくはその変異体をコードする核酸分子とは、同じベクターに位置することを特徴とする請求項51に記載のベクター。
【請求項53】
第1ベクターと第2ベクターとを含み、前記第1ベクターは、請求項1-33のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子をコードする核酸分子を含み、前記第2ベクターは、請求項34-48のいずれか1項に記載のIL15Rα若しくはその変異体、又は前記sushiドメイン若しくはその変異体をコードする核酸分子を含む、ことを特徴とする請求項52に記載のベクター。
【請求項54】
請求項1-33のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子、請求項34ー48のいずれか1項に記載のタンパク質ヘテロ二量体、請求項49に記載の核酸分子、請求項50に記載の核酸分子の組み合わせ、又は請求項51ー53のいずれか1項に記載のベクターを含む、ことを特徴とする細胞。
【請求項55】
請求項1-33のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子、請求項34ー48のいずれか1項に記載のタンパク質ヘテロ二量体、請求項49に記載の核酸分子、請求項50に記載の核酸分子の組み合わせ、請求項51-53のいずれか1項に記載のベクター、又は請求項53に記載の細胞を含む、ことを特徴とする薬物組成物。
【請求項56】
請求項1-33のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子、請求項34ー48のいずれか1項に記載のタンパク質ヘテロ二量体、請求項49に記載の核酸分子、請求項49に記載の核酸分子の組み合わせ、請求項51-53のいずれか1項に記載のベクター、請求項54に記載の細胞を、腫瘍の予防及び/又は治療に使用される薬物の製造に用いられる用途。
【請求項57】
前記腫瘍は、肛門がん、胆道がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん、頭頸部扁平上皮がん、肝臓がん、固形腫瘍、メルケル細胞がん、中皮腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、腎細胞がん、皮膚扁平上皮がん、小細胞肺がん、胸腺がん、甲状腺がん、結腸がん、及び/又はメラノーマを含む、ことを特徴とする請求項56に記載の用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物医薬分野に属し、具体的に修飾されたIL-2分子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
公開資料により、2017年2月の世界保健機関公開データから以下のことが判明された。世界で毎年1400万を超えるがん症例が新たに発生しており、2030年では2100万以上に増加すると予測されている。毎年880万人ががんでなくなり、世界がん死亡者数が合計死亡者数の約6分の1を占める。がんの予防と治療は、医学分野において早急に解決すべき世界的な課題である。
【0003】
現段階で、がん治療に用いられる従来の方法は、外科手術療法、化学療法、ホルモン療法及び放射線療法である(例えば、Stockdale,1998年『Principles of Cancer Patient Management』、『Scientific American: Medicine』の第3巻、Rubenstein・Federman編、第12章第IV節を参照できる)。しかし、患者の健康状況又は疾患の末期段階により、外科手術を実施できない可能性があり、手術をしたとしてもがん細胞を患者体内から完全に排除できないことが多い。放射線療法について、放射に対する腫瘍組織の敏感性が正常組織より高い場合のみ有効であり、高用量の放射線療法はひどい副作用を引き起こすことが多い。ホルモン療法は、単一の薬剤として使用されることが少なく、有効であり得るが、通常、他の治療によりほとんどのがん細胞が排除されてから、がん再発の予防や遅らせることに用いられている。また、化学療法は、患者が短時間で抗がん剤の耐性を得る可能性があることが最も大きな課題である。
【0004】
また、免疫調節因子(例えば、インターロイキン)も動物モデルやがん患者に適用でき、抗腫瘍作用を果たせる。上記の従来療法の欠点を回避できるが、応用免疫調節因子に関連する全身性毒性や副作用により、その使用が大きく制限されている。したがって、免疫調節因子の毒性や副作用を低減できる有効な治療法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
従来技術に存在している課題を踏まえ、本発明による1つの観点では、修飾されたIL-2分子が提供される。前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介するIL-2分子中の領域を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介するIL-15分子中の領域に置換することを含む。IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する前記IL-15分子中の領域は、9個以上のアミノ酸残基を含む。
【0006】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する前記IL-15分子中の領域は、連続したアミノ酸配列である。
【0007】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する前記IL-15分子中の領域は、連続したアミノ酸配列ではない。
【0008】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する前記IL-15分子中の領域は、1つ以上の連続しないアミノ酸位置を含む。
【0009】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する前記IL-2分子中の領域は、連続したアミノ酸配列である。
【0010】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する前記IL-2分子中の領域は、連続したアミノ酸配列ではない。
【0011】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する前記IL-2分子中の領域は、1つ以上の連続しないアミノ酸位置を含む。
【0012】
いくつかの実施態様において、前記修飾によって、IL2Rαに対する前記修飾されたIL-2分子の親和性を低下させることができる。
【0013】
いくつかの実施態様において、前記修飾によって、IL2Rαに対する前記修飾されたIL-2分子の親和性を排除することができる。
【0014】
いくつかの実施態様において、前記親和性は、バイオレイヤー干渉法(biolayer interferometry, BLI)によって測定される。
【0015】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ループM(loop M)又はその変異体を含む。前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含む。
【0016】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ループN(loop N)又はその変異体を含む。前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む。
【0017】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ヘリックスB又はその変異体を含む。前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含む。
【0018】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ループM(loop M)又はその変異体と、ヘリックスB又はその変異体とを含む。前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含む。前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含む。
【0019】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ヘリックスB又はその変異体と、ループN(loop N)又はその変異体とを含む。前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含む。前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む。
【0020】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、ループM(loop M)又はその変異体と、ループN(loop N)又はその変異体とを含む。前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含む。前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む。
【0021】
いくつかの実施態様において、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、N末端からC末端まで、ループM(loop M) 又はその変異体と、ヘリックスB又はその変異体と、ループN(loop N)又はその変異体とを順に含む。前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含む。前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含む。前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む。
【0022】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ループm(loop m)又はその変異体を含む。前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含む。
【0023】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ループn(loop n)又はその変異体を含む。前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含む。
【0024】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ヘリックスb又はその変異体を含む。前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含む。
【0025】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ループm(loop m)又はその変異体と、ヘリックスb又はその変異体とを含む。前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含む。前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含む。
【0026】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ヘリックスb又はその変異体と、ループn(loop n)又はその変異体とを含む。前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含む。前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含む。
【0027】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、ループm(loop m)又はその変異体と、ループn(loop n)又はその変異体とを含む。前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含む。前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含む。
【0028】
いくつかの実施態様において、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、N末端からC末端まで、ループm(loop m)又はその変異体と、ヘリックスb又はその変異体と、ループn(loop n)又はその変異体とを含む。前記ループmはSEQ ID NO. 8によって示される配列を含み、前記ヘリックスbはSEQ ID NO. 9によって示される配列を含み、前記ループnはSEQ ID NO. 12によって示される配列を含む。
【0029】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM(loop M)又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm(loop m)又はその変異体に置換することを含む。
【0030】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のヘリックスB又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換することを含む。
【0031】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループN( loop N)又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループn(loop n)又はその変異体に置換することを含む。
【0032】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM( loop M)又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm(loop m)又はその変異体に置換すること、及び、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のヘリックスB又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換することを含む。
【0033】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のヘリックスB又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換すること、及び、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループN(loop N)又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループn(loop n)又はその変異体に置換することを含む。
【0034】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM(loop M)又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm(loop m)又はその変異体に置換すること、及び、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループN(loop N)又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループn(loop n)又はその変異体に置換することを含む。
【0035】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM(loop M)又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm(loop m)又はその変異体に置換すること、前記ヘリックスB又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換すること、及び、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループN(loop N)又はその変異体を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループn(loop n)又はその変異体に置換することを含む。
【0036】
いくつかの実施態様において、前記修飾によって、前記修飾されたIL-2分子がIL15Rα又はIL15Rαのsushiドメインに結合できる。
【0037】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL-2分子中のループX(loop X)又はその変異体を、IL-15分子中のループx(loop x)又はその変異体に置換することを含む。前記ループxは、SEQ ID NO. 10によって示される配列を含む。ループXは、SEQ ID NO.3によって示される配列を含む。
【0038】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL-2分子中のヘリックスC又はその変異体を、IL-15分子中のヘリックスc又はその変異体に置換することを含む。前記ヘリックスcは、SEQ ID NO. 11によって示される配列を含む。前記ヘリックスCは、SEQ ID NO.4によって示される配列を含む。
【0039】
いくつかの実施態様において、前記置換を含まない修飾されたIL-2分子と比べ、前記置換は前記修飾されたIL-2分子の安定性を向上させることができる。
【0040】
いくつかの実施態様において、前記修飾は、IL-2分子のヘリックスD領域においてアミノ酸置換を行うことを含む。置換後のアミノ酸が前記ヘリックスbにおける第43位のフェニルアラニン(F)と芳香環相互作用を形成できることによって、疎水性コアを安定させる。ここで、アミノ酸の位置は、天然IL-15分子アミノ酸配列に基いて、KABAT番号のEUインデックスによって確定される。前記ヘリックスDは、SEQ ID NO. 6によって示される配列を含む。
【0041】
いくつかの実施態様において、前記天然IL-15分子アミノ酸配列はSEQ ID NO. 13によって示される。
【0042】
いくつかの実施態様において、前記アミノ酸置換は、W121Fを含む。ここで、アミノ酸の位置は、天然IL-2分子アミノ酸配列に基づいて、KABAT番号のEUインデックスによって確定される。
【0043】
いくつかの実施態様において、前記天然IL-2分子アミノ酸配列はSEQ ID NO. 7によって示される。
【0044】
いくつかの実施態様において、前記修飾された天然IL-2分子はSEQ ID NO. 14によって示される配列を含む。
【0045】
本発明による別の観点では、本発明においてタンパク質ヘテロ二量体が提供され、本発明に記載の修飾されたIL-2分子と、IL15Rα又はその変異体とを含む。または、前記タンパク質ヘテロ二量体は、本発明に記載の修飾されたIL-2分子と、IL15Rα受容体のsushiドメイン又はその変異体とを含む。
【0046】
いくつかの実施態様において、前記IL15RαはSEQ ID NO. 16によって示される配列を含む。
【0047】
いくつかの実施態様において、前記sushiドメインは、SEQ ID NO. 15又はSEQ ID NO. 20によって示される配列を含む。
【0048】
いくつかの実施態様において、前記タンパク質ヘテロ二量体は、IL2Rα受容体に結合することなく、IL-2分子に比べ、IL2Rβとの親和性がより高い。前記IL-2分子は、天然IL-2分子及びその機能性変異体を含む。
【0049】
いくつかの実施態様において、前記天然IL-2分子の機能性変異体は、前記修飾されたIL-2分子を含む。
【0050】
いくつかの実施態様において、前記IL15Rα変異体又は前記sushiドメイン変異体は、Fc断片を含む。
【0051】
いくつかの実施態様において、前記Fc断片は、前記IL15Rα又は前記sushiドメインのC末端に位置する。
【0052】
いくつかの実施態様において、前記Fcは、ヒトIgG1Fc、ヒトIgG4Fc及びネズミIgG2aa.1Fcのいずれか一種を含む。
【0053】
いくつかの実施態様において、前記Fcは、SEQ ID NO. 18、SEQ ID NO. 24又はSEQ ID NO. 25に示す配列を含む。
【0054】
いくつかの実施態様において、前記タンパク質ヘテロ二量体は、SEQ ID NO. 14に示す配列、及びSEQ ID NO. 19、SEQ ID NO. 21又はSEQ ID NO. 22に示す配列を含む。
【0055】
いくつかの実施態様において、本発明に記載の修飾されたIL-2分子と前記タンパク質ヘテロ二量体は、修飾されていないIL-2分子と比較し、Treg細胞の増殖活性を低下させることができる。
【0056】
本発明による別の観点では、本発明に記載の修飾されたIL-2分子をコードする核酸分子が提供される。
【0057】
本発明による別の観点では、a)本発明に記載の修飾されたIL-2分子、及びb)本発明に記載のIL15Rα若しくはその変異体、又は前記sushiドメイン若しくはその変異体をコードする核酸分子の組み合わせが提供される。
【0058】
本発明による別の観点では、本発明に記載の核酸分子又は本発明に記載の核酸分子の組み合わせを含むベクターが提供される。
【0059】
いくつかの実施態様において、本発明に記載の修飾されたIL-2分子をコードする核酸分子と、本発明に記載のIL15Rα若しくはその変異体、又は前記sushiドメイン若しくはその変異体をコードする核酸分子とは、同じベクターに位置する。
【0060】
いくつかの実施態様において、前記ベクターは第1ベクターと第2ベクターとを含む。前記第1ベクターは、本発明に記載の修飾されたIL-2分子をコードする核酸分子を含む。前記第2ベクターは、本発明に記載のIL15Rα若しくはその変異体、又は前記sushiドメイン若しくはその変異体をコードする核酸分子を含む。
【0061】
本発明による別の観点では、本発明に記載の修飾されたIL-2分子、本発明に記載のタンパク質ヘテロ二量体、本発明に記載の核酸分子、本発明に記載の核酸分子の組み合わせ、又は本発明に記載のベクターを含む細胞が提供される。
【0062】
本発明による別の観点では、本発明に記載の修飾されたIL-2分子、本発明に記載のタンパク質ヘテロ二量体、本発明に記載の核酸分子、本発明に記載の核酸分子の組み合わせ、本発明に記載のベクター、又は本発明に記載の細胞を含む薬物組成物が提供される。
【0063】
本発明による別の観点では、本発明に記載の修飾されたIL-2分子、本発明に記載のタンパク質ヘテロ二量体、本発明に記載の核酸分子、本発明に記載の核酸分子の組み合わせ、本発明に記載のベクター、本発明に記載の細胞の薬物製造における用途が提供される。ここで、前記薬物は、腫瘍の予防及び/又は治療に用いられる。
【0064】
いくつかの実施態様において、前記腫瘍は、肛門がん、胆道がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん、頭頸部扁平上皮がん、肝臓がん、固形腫瘍、メルケル細胞がん、中皮腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、腎細胞がん、皮膚扁平上皮がん、小細胞肺がん、胸腺がん、甲状腺がん、結腸がん、及び/又はメラノーマを含む。
【0065】
臨床では、低用量のIL-2の条件下で、それがTreg細胞の表面上のα鎖を有する高親和性受容体に優先的に結合し、これにより免疫抑制が発生し、治療の効果を達成できない。高用量のIL-2は、大量のエフェクターT細胞を活性化することによって、Tregの活性化がもたらす免疫抑制を中和するが、それと同時に、より多くの毒性や副作用及びアポトーシス(activation induced cell apoptosis)が発生する。本発明において、IL-2におけるその受容体α鎖に結合するポリペプチド配列を、IL-15におけるその受容体α鎖に結合するポリペプチド配列に置換することによって、α受容体との結合を低減又は排除し、制御性T細胞の増殖活性を促進するIL-2の機能を弱める効果がある。これと同時に、内皮細胞α受容体への結合を低減することによって、IL-2治療が引き起こす毒性や副作用を軽減又は排除する。以上のメリットにより、本発明で提供される修飾されたIL-2分子は、幅広い臨床応用の将来性が見込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1において、IL-2/15キメラ1及びsushi-Fcタンパク質のヘテロ二量体精製物に対し、SEC-HPLCによる同定の結果図である。
図1aは複合体1で、
図1bは複合体2で、
図1cは複合体3である。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1において、IL-2/15キメラ2及びsushi-hIgG4Fcタンパク質のヘテロ二量体精製物に対し、SEC-HPLCによる同定の結果図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施例4において、複合体1タンパク質のCTLL-2(T細胞)に対する増殖作用の結果図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施例6における予測毒物学実験結果である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例7における、代表的な癌に対する複合体の抗腫瘍効果図である。
【
図6】
図6は、IL-2及びIL-15の4ヘリックス構造の模式図であり、IL-2の4つのαヘリックスをそれぞれヘリックスA/B/C/Dとし、IL-15の4つのαヘリックスをそれぞれヘリックスa/b/c/dとしている。
【
図7】
図7は、IL-15及びIL-2が各受容体と形成した複合体の構造的重ね合わせの比較概略図であり、中央のIL-2又はIL-15領域において、 灰色はIL-2を表し、黒色はIL-15を表す。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本発明において、「IL-2」という用語は通常、天然インターロイキン-2又はその機能性変異体を指す。天然インターロイキン-2は、主にT細胞からなる(B細胞、NK細胞及び単核-マクロファージでも生成できる)サイトカインであり、Tリンパ細胞及びNK細胞の正常機能を維持することにおいて、重要な役割を果たす球状糖タンパク質である。1976年に発見され、当時、T細胞成長因子(TCGF)と呼ばれていた。人間において、IL-2は、4番染色体上の遺伝子によってコードされる。IL-2は、133個のアミノ酸残基からなるポリペプチドであり、分子量が約15kDであり、第58位、105位及び125位にそれぞれ位置する3つのシステイン残基を有する。翻訳後修飾は、第3位のThrグリコシル化、第58位と105位のシステイン残基によって形成されたジスルフィド結合、さらに、その機能に欠かせない、主に4つのαヘリックス及び複数の結合配列(loop)からなる高級構造を含む(Bazan等,Science257,410-413 (1992))。 例えば、本発明において(
図6に示すように)、IL-2におけるN末端からC末端までの4つのαヘリックスを、順に、ヘリックスA、ヘリックスB、ヘリックスC、ヘリックスDとする。ヘリックスAB間の結合配列(loop、ループ)をループMとする。ヘリックスBC間の結合配列(loop、ループ)をループXとする。ヘリックスCD間の結合配列(loop、ループ)をループNとする。 例えば、ヘリックスBは、SEQ ID NO.2によって示されるアミノ酸配列を含んでもよく、ヘリックスCは、SEQ ID NO.4によって示されるアミノ酸配列を含んでもよく、ヘリックスDは、SEQ ID NO.6によって示されるアミノ酸配列を含んでもよく、ループMは、SEQ ID NO.1によって示されるアミノ酸配列を含んでもよく、ループXは、SEQ ID NO.3によって示されるアミノ酸配列を含んでもよく、ループNは、SEQ ID NO.5によって示されるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0068】
IL-2は、IL-2受容体(IL2R)に結合することでその作用を媒介する。天然IL-2受容体は3つのサブユニットからなり、それぞれα(CD25)、β(CD122)及びγ(CD132)受容体サブユニット(
図7に示す)である。ここで、α受容体は、主に制御性T細胞(Treg)と一部の内皮細胞(endothelial cells)の表面に発現し、β及びγ受容体サブユニットは、エフェクターT細胞(Teff)とNK細胞に多く発現する。異なる受容体サブユニットの複合体形態に対し、IL-2の親和性が異なる。α、β及びγ受容体サブユニットからなる複合体に対するIL-2の親和性がもっとも高く、β及びγ受容体サブユニットからなる複合体に対するIL-2の親和性が中程度(約100倍低下)である。IL-2と2つの形態の受容体サブユニットと組み合わせ、結合した後は、いずれもシグナルを伝達できる(Minami等,Annu Rev Immunol 11,245-268 (1993))。
【0069】
本発明において、「IL-15」という用語は通常、天然インターロイキン-15又はその機能性変異体を指す。インターロイキン15(IL-15)は一種のサイトカインであり、活性化した単核-マクロファージ、上皮細胞又は線維芽細胞など、多くの細胞から生成される。天然ヒトインターロイキン15成熟ペプチドは、114個のアミノ酸を含み、約12-14kDであり、4つのαヘリックス及び複数の結合配列(loop)からなり、そして4つのシステイン残基を含む。ここで、Cys35とCys85、Cys42とCys88が結合し、形成された2対の分子内ジスルフィド結合が、IL-15の立体構造及び生物学的活性の保持のために重要な役割を果たしている(Lowe D.C., et al J. Mol. Biol. 406:160-175,2011)。例えば、本発明において(
図6に示す)、IL-15におけるN末端からC末端までの4つのαヘリックスを、順に、ヘリックスa、ヘリックスb、ヘリックスc、及びヘリックスdとし、ヘリックスab間の結合配列(loop、ループ)をループmとし、ヘリックスbc間の結合配列(loop、ループ)をループxとし、ヘリックスcd間の結合配列(loop、ループ)をループnとする。例えば、ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9に示すアミノ酸配列を含むことができ、ヘリックスcは、SEQ ID NO.11に示すアミノ酸配列を含むことができ、ループmは、SEQ ID NO.8に示すアミノ酸配列を含むことができ、ループxは、SEQ ID NO.10に示すアミノ酸配列を含むことができ、ループnは、SEQ ID NO.12に示すアミノ酸配列を含むことができる。
【0070】
IL-15は、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞の発育及び増殖を促進するなど、個体の正常な免疫反応において作用する。IL-15とIL-2は、IL2/15β鎖及びγ鎖受容体が共通しているが、α鎖受容体が異なるため(
図7に示す)、IL-2はTreg細胞及びアポトーシス(AICD)を活性化させることができる。同ファミリーのIL-15には、Treg活性化及びAICDの機能がなく(Waldmann TA et al, Nature Reviews Immunol 6:595-601, 2006)、また、異なる受容体サブユニットからなるため、IL-15は、NK細胞の増殖及びメモリーT細胞の維持に対する作用がより顕著である。したがって、本発明では、IL-2及びIL-15の特性を利用し、IL-2における部分配列をIL-15の部分配列に置換し、IL2Rα受容体との結合を遮断し、IL2/15Rβ及びγ受容体との結合を保持する。
【0071】
本発明において、「IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域」という用語は通常、IL-15分子(天然IL-15分子又はその機能性変異体を含む)において、IL-15分子をその受容体αサブユニットに結合させることができる配列の全部又はその中の一部を指す。前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、IL-15分子のポリペプチド配列における連続するアミノ酸配列であってもよく、その連続しないアミノ酸配列であってもよく、例えば、隣接しない複数のアミノ酸部位の組み合わせである。
【0072】
本発明において、「IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域」という用語は通常、IL-2分子(天然IL-2分子又はその機能性変異体を含む)において、IL-2分子をその受容体αサブユニットに結合させることができる配列の全部又はその中の一部を指す。前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、IL-2分子のポリペプチド配列における連続するアミノ酸配列であってもよく、その連続しないアミノ酸配列であってもよく、例えば、隣接しない複数のアミノ酸部位の組み合わせである。
【0073】
本発明において、「バイオレイヤー干渉法(biolayer interferometry,BLI)」という用語は生物膜層干渉法とも言われ、通常、生物分子間の動力学実験及び定量検測実験に多く用いられる実験法を指す。例えば、それを利用し、生物分子間の相互作用をリアルタイムで検出できることによって、タンパク質、核酸及びその他の生物分子の動力学定数の測定に多く用いられている。例えば、結合速度定数(Ka)、解離速度定数(Kd)及び親和性定数(KD)を含む動力学情報を提供できる。例を挙げると、その原理は、生物分子Aがバイオセンサ末端(例えば、材質が光ファイバーである)に結合し、バイオレイヤーを生成できる。センサ末端の分子Aと検測対象の分子Bと結合するとき、センサ末端の分子量が変化し、これにより、バイオレイヤーの厚さが変化することと、光がセンサのバイオレイヤーを通過した後、透過及び反射によって干渉光波が形成され、バイオレイヤーの厚みの変化により、干渉光波に相対的変位が発生することと、生物分子が結合する前後の干渉光波が分光器によって検測され、形成された干渉スペクトルのリアルタイム変位(nm)によって示され、最後に、分子が結合する前後のスペクトルの変化に基づいて検測対象の分子を分析することとを含む。
【0074】
本発明において、「天然」又は「天然の」という用語は、通常、自然界に存在する物質(例えば、タンパク質、核酸などの化合物分子)を指し、分離、同定を経て、人工的にその構造を変えられていないものである。例えば、「天然IL-15分子」、「天然IL-2分子」である。
【0075】
本発明において、「変異体」という用語は、通常、天然ポリペプチド配列においてアミノ酸修飾をし(例えば基の置換など)、又は1つ若しくは複数のアミノ酸の挿入、置換、及び/又は欠失(例えば、一部の切り詰めたアミノ酸配列の欠失)をすることにより、ポリペプチド配列を得ることを指す。元の天然ポリペプチド配列の機能を全部又は部分的に保持してもよく、元の天然ポリペプチド配列の機能を保持しなくてもよく、又は、元の天然ポリペプチド配列より改善された機能を有してもよい(例えば、対応する配位子又は受容体との親和性の向上)。ここで、元の天然ポリペプチド配列の機能を全部又は部分的に保持する変異体、又は元の天然ポリペプチド配列より改善された機能を有する変異体は、「機能性変異体」と呼ばれてもよい。例えば、前記機能性変異体は、元の配列に比べてよりよい生物活性(又は機能)を有してもよい。例えば、前記保持は、必ずしも完全保持でなくてもよい。例えば、前記機能性変異体は、元の配列機能を基本的に保持できる。例えば、元の配列の機能の少なくとも50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%を保持する。例えば、元の配列の機能の105%、110%、115%、125%、140%、160%、180%、200%、230%、260%を有する。例えば、前記機能性変異体のアミノ酸配列は、元のアミノ酸配列と少なくとも70%,75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%が同じであってもよい。
【0076】
本発明において、「C末端」という用語は通常、ポリペプチド鎖の2つの末端のうちの1つを指す。この末端のアミノ酸残基は、遊離αカルボキシル基(-COOH)を有する。
【0077】
本発明において、「N末端」という用語は通常、ポリペプチド鎖の2つの末端のうちの1つを指す。この末端のアミノ酸残基は、遊離αアミノ基(-NH2)を有する。
【0078】
本発明において、「N末端からC末端まで、…を順に含む」という用語は通常、含まれる各配列断片又は要素の位置的順序関係を指す。ここで、各配列断片又は要素は、必ずしも直接結合でなくてもよい。
【0079】
本発明において、「薬物組成物」という用語は通常、患者、例えば人間である患者への投与に適する組成物に関するものを指す。例えば、本発明に記載の薬物組成物は、本発明に記載の核酸分子、本発明に記載のベクター及び/又は本発明に記載の細胞、並びに任意選択の薬学的に許容される補助剤を含んでよい。また、前記薬物組成物は、一種又は複数種の(薬学的に有効な)担体、安定剤、賦形剤、希釈剤、可溶化剤、界面活性剤、乳化剤及び/又は防腐剤の適切な製剤を含んでもよい。組成物の許容される成分は、使用される薬剤投与量及び濃度において被投与者に無毒である。本発明の薬物組成物は、液体、冷凍及び凍結乾燥の組成物を含むがこれらに限定されない。
【0080】
本発明において、「ベクター」という用語は通常、タンパク質をコードするポリヌクレオチドをその中に挿入し、そしてタンパク質の発現を可能にする核酸運搬手段を指す。ベクターは、宿主細胞を形質変換、伝達又はトランスフェクションすることによって、有するDNA要素の宿主細胞内における発現を可能にする。例えば、ベクターは、プラスミド、ファージミド、コスミド、人工染色体(例えば、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はP1派生人工染色体(PAC))、及びバクテリオファージ(例えば、λバクテリオファージ又はM13バクテリオファージ及びウイルスベクター等)を含む。ベクターは、プロモーター配列、転写開始配列、エンハンサー配列、選択要素、及びレポーター遺伝子を含む、発現を制御する複数種の要素を含むことが可能である。また、ベクターは複製開始点を含んでもよい。ベクターは、細胞への進入を補助する成分をさらに含むことが可能である。例えば、ビリオン、リポソーム又はタンパク質キャプシドを含むが、これらの物質に限定されない。
【0081】
本発明において、「予防」という用語は通常、本発明に記載の疾患及び病症の発生を予防できるように、組成物を健康な患者へ予防的に投与することを指す。また、「予防」という用語は、治療されるアレルギー性疾患の前段階にある患者へのこのような組成物を予防的に投与することを指す。「予防」という用語は、発生する可能性を100%排除する必要はない。さらに具体的に、「予防」は前記薬物組成物又は方法が存在する前提で、発生する可能性が低くなったことを意味する。
【0082】
本発明において、「治療」という用語は通常、治療薬を患者へ投与又は供給することを指す。または、治療薬を患者から分離された組織又は細胞株へ投与又は供給する。疾患を患い、疾患の症状又は疾患の傾向が現れる当該患者の疾患、疾患の症状又は疾患の傾向を治療、治癒、軽減、緩和、改変、挽回、改善、向上又は影響することを目的とする。病状の改善、病巣の排除、予後の改善を含んでよい。
【0083】
本発明において、「腫瘍」と「がん」という用語は通常、正常な成長及び/又は発育において、増殖制御が少なくとも部分的に喪失した細胞を指す。例えば、一般的な腫瘍又はがん細胞は、通常、接触阻止を失っており、浸潤性及び/又は転移の能力を有することが可能である。
【0084】
本発明のいくつかの実施態様において、生物情報学及びタンパク質工学技術を利用し、IL-2分子において、IL2Rαへの結合に主に関与するアミノ酸をIL-15の対応する配列に置換し、すなわち、IL-2分子におけるヘリックスAとヘリックスBとの間のループM(SEQ ID NO.1)、ヘリックスB(SEQ ID NO.2)、及びヘリックスCとヘリックスDとの間のループN(SEQ ID NO. 5)をIL-15の対応する配列(すなわち、ループm(SEQ ID NO. 8)、ヘリックスb(SEQ ID NO. 9)、及びループn(SEQ ID NO. 12)に置換する。これによって、IL2RαへのIL-2の結合を遮断する。さらに、IL-2/15キメラ(修飾されたIL-2分子)構造の安定性を向上させるために、IL-2のヘリックスBとヘリックスCとの間のループX(SEQ ID NO.3)、ヘリックスC(SEQ ID NO. 4)をIL-15のループx(SEQ ID NO. 10)、ヘリックスc(SEQ ID NO. 11)に置換し、さらに、ヘリックスDにおける第115位トリプトファン(W)をフェニルアラニン(F)に突然変異させ、導入されたIL-15ヘリックスbにおける第55位フェニルアラニン(F)と芳香環相互作用を形成すると同時に疎水コアを安定させることを目的とする。これにより、4ヘリックスバンドル構造を安定させ、最終的に、新たに形成されたタンパク分子IL-2/15キメラがIL2Rα受容体に結合しないが、β鎖及びγ鎖受容体との結合を保持することを実現する。
【0085】
臨床では、低用量のIL-2の条件下で、Treg細胞の表面上のα鎖を有する高親和性受容体に優先的に結合し、これにより免疫抑制が発生し、治療の効果を達成できない。高用量のIL-2は、大量のエフェクターT細胞を活性化することによって、Tregの活性化がもたらす免疫抑制を中和するが、それと同時に、より多くの毒性や副作用及びアポトーシス(activation induced cell apoptosis)が発生する。本願で採用される技術的解決手段は、α受容体との結合を低減又は排除することで、制御性T細胞の増殖活性を促進するIL-2の機能を弱めるのに有利である。それと同時に、内皮細胞α受容体への結合を少なくし、これによって、IL-2治療が引き起こす毒性や副作用を軽減又は排除する。IL-15には、Treg活性化及びAICDの機能(Waldmann TA et al, Nature Reviews Immunol 6:595-601, 2006)がないため、そして、異なる受容体サブユニットからなるため、IL-15は、NK細胞増殖及びメモリーT細胞の維持により明らかな作用が見られる。したがって、本発明はIL-2及びIL-15の特性を利用し、IL2Rα受容体との結合を遮断し、IL2/15Rβ及びγ受容体との結合を保持する。
【0086】
いくつかの実施形態において、IL-2に導入されたIL-15タンパク質配列はIL15Rαに結合できるため、IL15Rα受容体(sushiドメイン)とIL-2/15キメラが共発現し、ヘテロダイマー複合体を形成する。これにより、IL-2/15キメラを安定させると同時に、IL2/15Rβ受容体との親和性を向上でき、よりよい生物作用能を得られる。さらに、Fcは、sushiドメイン(例えば、SEQ ID NO.15又はSEQ ID NO.20)のC末端で融合発現し、長時間作用することが可能となる。Fcは、ヒトIgG1Fc、ヒトIgG4Fc又はマウスIgG2aa.1Fcであってもよい。
【0087】
以下、実施例と併せて本発明をさらに説明する。これらの実施例は例示するためのものであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0088】
以下の実施例において、具体的な条件が記載されていない実験方法は、例えば、Sambrookなどの分子クローニング:実験室マニュアル(New York: Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)に記載されている条件のような一般的な条件、又はメーカー推薦の条件に従う。使用する試薬は、特別に説明していない限り、いずれも市販又は公開ルートで入手できるものである。
【0089】
実施例1 哺乳類細胞からのIL-2/15キメラの製造
1.1発現プラスミドの合成及び構築
蘇州金唯智生物科学技術有限会社に依頼し、IL-2/15キメラ1(SEQ ID NO.14)、sushi-hIgG1Fc(SEQ ID NO.19)、sushi-hIgG4Fc(SEQ ID NO. 21)、sushi-mIgG2aa.1Fc(SEQ ID NO. 22)の4つのタンパクの標的遺伝子断片をそれぞれ合成し、pZDベクターのEcoRIとHindIII部位との間にクローニングし、4つの発現プラスミドを得た。番号は、それぞれPM619、PM432、PM657、PM599である。プラスミドPM619をもとに、『分子クローニング』に記載されている方法に沿って点突然変異を行い、第115位(天然IL-2分子アミノ酸配列の第121位に対応)フェニルアラニン(F)をトリプトファン(W)に突然変異させ、IL-2/15キメラ2(SEQ ID NO. 23)のプラスミドを得た。プラスミドの番号はPM824である。合成又は構築したプラスミドをそれぞれDH10Bに形質変換し、配列決定し、保存した。
【0090】
1.2プラスミド抽出及びHEK293細胞の準備
1.2.1プラスミド抽出
『Qiagen Mini-prep Kit』と『Qiagen Endofree Maxi-prep Kit』に記載の手順に従って、以上の2種のIL-2/15キメラ及び3種のsushi-Fcのプラスミドの製造を行った。
【0091】
1.2.2 HEK293細胞の準備
密度が1-1.2×106 /mLである新たに継代したHEK293細胞(National Research Council, Canada)を一過性発現に使用した。
【0092】
1.3 HEK293一過性発現
1.3.1試薬調製
A)G418溶液について、250mgのGeneticinTMをはかり、4.5mlの超純水を加え、溶解させ、超純水を5mlに定容し、0.22μmの濾過膜で濾過し、-20℃で保存した。
B)PEI溶液について、50mgのPEIをはかり、45mlの超純水に加え、溶解させ、1M NaOHでpHを7.0に調整し、超純水を50mlに定容し、0.22μmの濾過膜で濾過し、-20℃で保存した。
C)培地について、1LのFreeStyleTM 293 Expression Mediumに、10mlのPluronicdTM F-68及び500μLのG418を加えた。
D)プラスミドを2mLの脱エンドトキシン遠心管の中に予め準備した。
E)トランスフェクションに必要な体積に応じて、新たに継代した1-1.2×106個/mLの細胞懸濁液を準備した。
【0093】
1.3.2トランスフェクション試薬-プラスミド複合体の調製
A液:プラスミド 1 μg/mL + Opti-MEMTM 33.3 μL/mL
B液:PEI 2 μg/mL + Opti-MEMTM 33.3 μL/mL
1 mLのB液を1 mLのA液に入れ、均一に混合し、10分間インキュベートした後、細胞懸濁液を加えた。
【0094】
IL-2/15キメラ1と3種のsushi-Fcをそれぞれ質量比1:1で混合し(総量1 μg/mL)、トランスフェクションした。IL-2/15キメラ2とsushi-hIgG4Fcを質量比1:1で混合し(総量1 μg/mL)、トランスフェクションした。
【0095】
1.3.3液体の交換
115rpm、36.8℃、5% CO2で4時間培養した後、800gで5分間遠心分離し、PluronicdTM F-68及びG418を添加していないFreeStyleTM 293 Expression Mediumに換えた。
【0096】
1.3.4培養の発現及び採取
115rpm、36.8℃、5% CO2 で5日間培養した後、8500rpmで15分間遠心分離し、細胞上清を収集し、精製した。
【0097】
1.4精製調製
IL-2/15キメラ1は、sushi-hIgG1Fc、sushi-hIgG4Fc及びsushi-mIgG2aa.1Fcとそれぞれ共発現し、発現過程において、ヘテロダイマーの複合体を形成でき、それぞれを、複合体1、複合体2、複合体3とした。3種の複合体は、いずれもFcタグを有する。Mabselect sure (Protein A,GE healthcare)を用いてアフィニティ精製した。精製方法は精製充填マニュアルを参照できる。そして、ゲル濾過クロマトグラフィー(Superdex200 pg,GE Healthcare)を経て、さらに精製して、純度の高い蛋白質を得て、ポリマーを取り除いた。高効率液相クロマトグラフィーモレキュラーシーブカラム(SEC-HPLC)を用いて純度を分析し、結果を
図1(a~c)に示した。精製後のタンパク質のSEC主ピークは単一ピークであり、IL-2/15キメラ1は3種のSushi-Fcのそれぞれと複合体を形成したことを示した。純度は高く、ポリマー及び断片は全体に5%未満であった。液相クロマトグラフィー質量分析方法により、精製されたタンパク質に2つの成分が含まれ、すなわちSushi-Fc及びIL-2/15であることがわかった。タンパク質発現及び精製が成功したことを示した。IL-2/15キメラ2も、sushi-hIgG4Fcと共発現し、複合体を形成し、精製された(
図2に示す)。
【0098】
実施例2 大腸菌からのIL-2/15キメラの製造
2.1 発現プラスミドの合成及び構築
蘇州金唯智生物科学技術有限会社に依頼し、IL-2/15キメラ1遺伝子断片(SEQ ID NO.26)を合成して、pET41aベクターのNdeIとXhoI部位との間にクローニングし、発現プラスミドを得た。番号は、1187である。
【0099】
2.2 大腸菌におけるIL-2/15キメラの発現及び精製
『分子クローニング』に記載の手順に従って、プラスミドの抽出を行い、菌株BL21(DE3)の形質変換発現を行った。IL-2/15キメラ1の発現を、タンパク質の原核生物発現の従来の方法に沿って行ってから、伝統的な変性及び再生の技術とクロマトグラフィーなどの技術(例えば、Yunier Rodriguez-Alvarez et al, Preparative Biochemistry and Biotechnology, 47:9, 889-900を参照)によって、精製し、比較的純粋なキメラタンパク質を得た。
【0100】
実施例3 IL2Rα及びIL2/15RβへのIL-2/15キメラの結合能の測定
バイオレイヤー干渉法(biolayer interferometry,BLI)を利用し、標的タンパク質と受容体との親和性を測定した。(Estep, P等人,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning.MAbs,2013.5(2):p.270-8)の方法を参照しながら行われた。実験に使われる受容体タンパク質IL-15Rα-his、IL2Rα-his及びIL2/15Rβ-Fc/Fcは、いずれも当社で製造されたものであり、IL2Rα結合を有さないIL-2誘導体及びIL2Rα結合を有さないIL-2複合体は、いずれも公開特許公報CN111018961Aの記載に従って製造した。IL-15(N72D)/sushi-hIgG1Fc複合体は、文献(K.-p. Han et al. / Cytokine 56 (2011) 804-810)の記載に従って製造した。緩衝液の配合は、10mM HEPES、150mM NaCl、3 mM EDTA、0.1% BSA及び0.05% tween20とした。受容体タンパク質は、対応するセンサにそれぞれ予め固定化しておき、次いで確立された方法で(Estep, Pなど,High throughput solution Based measurement of antibody-antigen affinity and epitope binning. MAbs, 2013. 5(2): p.270-8を参照)、baseline、loading、baseline、Association及びDissociationのステップで行った。データ取得及び分析作業は、それぞれFortebio Octet RED96ソフトウェアData acquisition 11.0及びData analysis 11.0を採用して行った。結果は表1に示したように(数値が小さいほど親和性が強い)、IL-2に比較し、IL-2/15キメラ1、IL-2/15キメラ1-sushi-Fc(複合体1、複合体2又は複合体3)はIL2Rα受容体に結合しない。IL-15に比較し、IL-2/15キメラ1とIL-15Rα受容体との親和性は10倍未満を低下し、複合体1、複合体2又は複合体3はIL-15Rαに結合しない。IL2/15Rβとの親和性の比較について、IL-2/15キメラ1は、IL-15より明らかに弱く、IL-2より少し弱い。複合体1、複合体2又は複合体3の親和性は、IL-2又はIL-15より強く、IL-15(N72D)/sushi-hIgG1Fc複合体より弱い。
【表1】
【0101】
実施例4 T細胞増殖の促進の実験
CTLL-2(T細胞)の増殖実験は、一般的に用いられている細胞レベルでインターロイキン刺激免疫細胞活性を測定する実験である。本実施例では、CTLL-2細胞の増殖実験によって、実施例1で製造されたIL-2/15キメラ1の生物活性を測定した。FBS及びRat-T-Stimを含有する培養液を用いてCTLL-2細胞((ATCCから購入、品番No. ATCC(登録商標) TIB-214
TM))を再懸濁した。21000個/ウェルに定量したCTLL-2細胞を96ウェル培養プレートに接種した。これと同時に、陽性対照(IL-2)と測定対象試料の複合体1タンパク質をそれぞれ段階希釈し、プレートに添加した。初期作業濃度を0.0078125 nMとし、希釈濃度ごとにいずれも3ウェル設けた。培養液対照ウェル(100 μL細胞+100 μL培養液)をさらに設けた。37度、5%CO
2で72時間インキュベートした。その後、各ウェルにCellTiter96(登録商標) AQueous One Solution Reagent(Promegaから購入、品番Cat# G3581))を20μl 加え、37度、5%CO
2で2~4時間インキュベートした。マイクロプレートリーダーで波長490 nmにおける吸光度(A)を測定し、EC50値を計算した。結果は表2及び
図3に示すとおりであり、複合体1タンパク質により、CTLL-2(T細胞)の増殖活性が明らかに促進され、その活性は陽性対象IL-2よりも高い。
【表2】
【0102】
実施例5 Mo7e細胞増殖の促進の実験
(IL-2/15Rβ及びγ受容体を発現する)Mo7e細胞株を、37度、5%CO2で、完全培地(RPMI1640+10%FBS+GM-CSF(10 ng/mL))において、培養した。対数増殖期の細胞を得た。PBSで細胞を2回洗浄して、サイトカインを洗い流し、次いでサイトカインを含まない培地に細胞を再懸濁した。サイトカインを含まない培地で細胞密度を調整し、96ウェル細胞培養プレートに接種した。各ウェルに90 μLを接種した。細胞は合計5000個であった。後で使用するために、96ウェルプレートにおける細胞を37度、5%CO2で培養した。10倍薬物溶液を調製し、最終作業濃度が0.020116 μMで、9つの濃度、3.16倍希釈をした。その後、10 μLの各連続希釈試料を、96ウェル細胞プレートの対応する実験ウェルに移し、薬物濃度ごとに3ウェル設けた。薬物が加えられた96ウェルプレートにある細胞を、37度、5%CO2で継続して72時間培養した。その後、CTG(Celltiter Glo assay kit,Promega)分析を行った。各ウェルに、同じ体積のCTG溶液を入れた。発光信号を安定させるように、細胞プレートを室温で20分間放置した。発光値を読み取り、データを収集した。GraphPad Prism 7.0ソフトウェアでデータを分析し、非線形S曲線回帰法でデータをフィッティングして用量-反応曲線を得て、EC50値を算出した。
【0103】
細胞生存率(%)= (Lum薬物測定対象-Lum培地対照)/ (Lum溶剤対照-Lum培地対照)×100%。
【0104】
本実験において、hIgG1とhIgG4は対照として、いずれも細胞の増殖を促進できなかった。結果から見ると、IL-2/15キメラ1単独の活性は、IL-15とIL-2の間にあり、IL-15の活性よりも約10倍低かった。IL-2/15キメラ1とSushiとの複合体は、IL-15(N72D)/ sushi-hIgG1Fc複合体よりも弱い活性を示した。以前、IL-2/15Rβγ受容体アゴニストが、臨床的に、高すぎた活性によって薬物毒性を引き起こしたことがあったため、IL-2/15キメラ1とSushiとの複合体の安全性がより優れると思われる。
【表3】
【0105】
実施例6 カニクイザルの予測毒物学的試験
実験では、複合体2とIL-15(N72D)/sushi-hIgG1Fc複合体との2群に分けられた。各群に、オスとメスがそれぞれ1匹ずつ含まれ、用量1 mg/kgを静脈注射で投与し、週に1回、合計2回投与した。動物の臨床症状を毎日観察し、体重をはかり、薬物の耐性について分析した。
【0106】
実験により、複合体2の群のメスは第2~4日に少量の黄色軟便がみられるが、メスもオスも14日間の体重が比較的安定しており(
図4に示す)、1mg/kgの用量に対して耐性があることがわかった。一方、IL-15(N72D)/sushi-hIgG1Fc複合体の群のメス及びオスは、第3~4日に、活力の欠如、自発的な活動の減少、少量/中量の黄色軟便、及び眼窩陥凹がみられた。そして、第4日に死亡した。このように、1mg/kgの用量に対して耐性がないことが示された。
【0107】
実施例7 マウス皮膚メラノーマB16F10を皮下移植したC57BL/6マウス腫瘍モデルにおけるIL-2/15キメラ複合体の薬物動力学的評価
5.0×10
6細胞/mLのB16F10細胞懸濁液を、均一になるようにピペッティングし、氷の上に置いた。マウスの右側の後肢を除毛し、ヨードフォア綿球で消毒した。1 mLの注射器で、マウスの右側の後肢に0.1 mLの細胞懸濁液を5×10
5細胞/点で皮下注射した。腫瘍細胞を接種した日に、マウスの体重に応じてランダムに3群に分け、各群5匹とした。群を分けた日を実験Day0とし、群を分けた翌日(Day1)から薬物を投与した。投与及び群の詳細は表4に示す。
【表4】
【0108】
腫瘍を接種した後、マウスの腫瘍成長状況、運動能力、食物摂取、体重、目、被毛、及びその他の異常行為を定期的にチェックし、人道的エンドポイントを与えた。各群に投与した後、マウスの腫瘍の体積を週2回測定した。腫瘍の体積の測定は、双方向測定法を採用し、腫瘍の長径と短径をノギスで測定し、腫瘍の長径をa、短径をbとして、式T = 0.5 × a × b2 で腫瘍の体積を算出した。
【0109】
相対的腫瘍抑制率TGI(%):TGI=1-T/C(%)T/C%は相対的腫瘍増殖率であり、即ち、ある時点での対照群に対する治療群の相対腫瘍体積又は腫瘍重量の百分率である。TとCは、それぞれ、治療群と対照群のある特定時点での相対腫瘍体積(RTV)である。計算式は以下の通りである。T/C % = TRTV / CRTV×100%(TRTV:治療群平均RTV ;CRTV:溶媒対照群平均RTV;RTV=Vt-V0,V0は群を分けた時の当該動物の腫瘍体積であり、Vtは治療後の当該動物の腫瘍体積である)。
【0110】
結果を
図5に示している。本実験では、マウスメラノーマB16F10細胞を皮下接種したC57BL/6メスマウスモデルにおいて、試薬を単独に投与した場合の薬効を検証した。ここで、G1対照群の動物は、Day13に、動物平均腫瘍体積が2942±545.3 mm
3であった。G2は、複合体2を2 mg/kg BIWでDay13まで投与され、当該群のTGI%は95%で、対照群に比べて非常に顕著な差異(p<0.01)がみられた。G3は、複合体3を2 mg/kg BIWでDay13まで投与され、当該群のTGI%は92%で、対照群に比べて非常に顕著な差異(p<0.01)がみられた。データにより、マウスメラノーマ腫瘍細胞B16F10を接種したC57BL/6マウスモデルにおいて、13日間投与した実験では、複合体2又は複合体3の試薬はいずれも強い薬効が示されており、対照群に比べて統計学的差異がみられた(p<0.01)。複合体2と複合体3とは、差異を示さず、いずれも明らかな腫瘍抑制作用を有した。
【配列表フリーテキスト】
【0111】
配列番号14:Amino acid sequence of IL-2/IL-15 chimera 1
配列番号19:Amino acid sequence of Sushi-hlgG1Fc
配列番号21:Amino acid sequence of Sushi-hIgG4Fc
配列番号22:Amino acid sequence of Sushi-mlgG2aa.1Fc
配列番号23:Amino acid sequence of IL-2/15 chimera 2
配列番号26:Amino acid sequence of synthesized IL-2/15 chimera 1
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2023-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾されたIL-2分子であって、前記修飾は、IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介するIL-2分子中の領域を、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介するIL-15分子中の領域に置換することを含み、IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する前記IL-15分子中の領域は、9個以上のアミノ酸残基を含む、ことを特徴とする修飾されたIL-2分子。
【請求項2】
前記修飾によって、IL2Rαに対する前記修飾されたIL-2分子の親和性を低下させ
、又は排除することができる、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項3】
前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域は、N末端からC末端まで、ループM又はその変異体と、ヘリックスB又はその変異体と、ループN又はその変異体とを順に
、一部又は全部含み、前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含み、前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含み、前記ループNは、SEQ ID NO. 5によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項4】
前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域は、N末端からC末端まで、ループm又はその変異体と、ヘリックスb又はその変異体と、ループn又はその変異体とを順に
、一部又は全部含み、前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含み、前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含み、前記ループnは、SEQ ID NO. 12によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項5】
前記修飾は、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm又はその変異体に置換することと、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のヘリックスB又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換することとを含み、前記ループmは、SEQ ID NO. 8によって示される配列を含み、前記ループMは、SEQ ID NO. 1によって示される配列を含み、前記ヘリックスbは、SEQ ID NO. 9によって示される配列を含み、前記ヘリックスBは、SEQ ID NO. 2によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項6】
前記修飾は、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループM又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループm又はその変異体に置換することと、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のヘリックスB又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のヘリックスb又はその変異体に置換することと、前記IL2RαへのIL-2分子の結合を媒介する領域内のループN又はその変異体を、前記IL15RαへのIL-15分子の結合を媒介する領域内のループn又はその変異体に置換することとを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項7】
前記修飾によって、前記修飾されたIL-2分子がIL15Rα又はIL15Rαのsushiドメインに結合できる、ことを特徴とする請求項1に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項8】
前記修飾は、IL-2分子中のループX又はその変異体を、IL-15分子中のループx又はその変異体に置換することをさらに含み、前記ループxは、SEQ ID NO. 10によって示される配列を含み、前記ループXは、SEQ ID NO.3によって示される配列を含む、ことを特徴とする
請求項6に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項9】
前記修飾は、IL-2分子中のヘリックスC又はその変異体を、IL-15分子中のヘリックスc又はその変異体に置換することをさらに含み、前記ヘリックスcは、SEQ ID NO. 11によって示される配列を含み、前記ヘリックスCは、SEQ ID NO.4によって示される配列を含む、ことを特徴とする
請求項6に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項10】
前記置換を含まないIL-2分子と比べ、前記置換は前記修飾されたIL-2分子の安定性を向上させることができる、ことを特徴とする
請求項8又は請求項9に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項11】
前記修飾は、IL-2分子のヘリックスD領域においてアミノ酸置換を行うことをさらに含み、置換後のアミノ酸が前記ヘリックスbにおける第43位のフェニルアラニンと芳香環相互作用を形成できることによって、疎水性コアを安定させ、ここで、アミノ酸の位置は、天然IL-15分子アミノ酸配列に基いて、KABAT番号のEUインデックスによって確定され、前記ヘリックスDは、SEQ ID NO. 6によって示される配列を含む、ことを特徴とする
請求項8又は請求項9に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項12】
前記アミノ酸置換は、W121Fを含み、ここで、アミノ酸の位置は、天然IL-2分子アミノ酸配列に基づいて、KABAT番号のEUインデックスによって確定される、ことを特徴とする
請求項11に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項13】
SEQ ID NO. 14によって示される配列を含む、ことを特徴とする
請求項12に記載の修飾されたIL-2分子。
【請求項14】
請求項8、9、11、12、13のいずれか1項に記載の修飾されたIL-2分子と、IL15Rα
、sushiドメイン又はその変異体とを含むことを特徴とするタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項15】
前記sushiドメインは、SEQ ID NO. 15又はSEQ ID NO. 20によって示される配列を含む、ことを特徴とする
請求項14に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項16】
IL2Rα受容体に結合することなく、IL-2分子に比べ、IL2Rβとの親和性がより高く、前記IL-2分子が天然IL-2分子及びその機能性変異体を含む、ことを特徴とする
請求項14に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項17】
前記sushiドメイン変異体は、Fc断片を
含み、好ましくは、前記Fc断片は、前記sushiドメインのC末端に位置する、ことを特徴とする請求項14に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項18】
前記Fcは、ヒトIgG1Fc、ヒトIgG4Fc及びネズミIgG2aa.1Fcのいずれか一つを含
み、ヒトIgG1Fc、ヒトIgG4Fc及びネズミIgG2aa.1Fcは、それぞれ、SEQ ID NO. 18、SEQ ID NO. 24又はSEQ ID NO. 25によって示される配列を含む、ことを特徴とする請求項17に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項19】
SEQ ID NO. 14によって示される配列と、SEQ ID NO. 19、SEQ ID NO. 21又はSEQ ID NO. 22によって示される配列とを含む、ことを特徴とする
請求項17に記載のタンパク質ヘテロ二量体。
【請求項20】
請求項19に記載のタンパク質ヘテロ二量体
を含む、ことを特徴とする
薬物。
【請求項21】
腫瘍の予防及び/又は治療に使用される
ことを特徴とする請求項20に記載の薬物の
用途。
【請求項22】
前記腫瘍は、肛門がん、胆道がん、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、胃がん、頭頸部扁平上皮がん、肝臓がん、固形腫瘍、メルケル細胞がん、中皮腫、非小細胞肺がん、卵巣がん、腎細胞がん、皮膚扁平上皮がん、小細胞肺がん、胸腺がん、甲状腺がん、結腸がん、及び/又はメラノーマを含む、ことを特徴とする
請求項21に記載の用途。
【国際調査報告】