IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ミストリー ジェイシュクマール ディラージラールの特許一覧 ▶ ミストリー アブヒシェック ジェイシュクマールの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ダイヤモンドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/04 20060101AFI20231024BHJP
   C01B 32/26 20170101ALI20231024BHJP
   C30B 25/16 20060101ALI20231024BHJP
   C23C 16/27 20060101ALI20231024BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C30B29/04 E
C01B32/26
C30B25/16
C23C16/27
C23C16/511
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523647
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 IN2021050982
(87)【国際公開番号】W WO2022079735
(87)【国際公開日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】202021044550
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523138150
【氏名又は名称】ミストリー ジェイシュクマール ディラージラール
【氏名又は名称原語表記】MISTRY, Jayeshkumar Dhirajlal
【住所又は居所原語表記】8/9, Shubham Bungalows, Near Sangam Society, Behind Rajhans Ornate Mall, Parle-Point, Surat, Gujarat, India
(71)【出願人】
【識別番号】523138161
【氏名又は名称】ミストリー アブヒシェック ジェイシュクマール
【氏名又は名称原語表記】MISTRY, Abhishek Jayeshkumar
【住所又は居所原語表記】8/9, Shubham Bungalows, Near Sangam Society, Behind Rajhans Ornate Mall, Parle-Point, Surat, Gujarat, India
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミストリー ジェイシュクマール ディラージラール
(72)【発明者】
【氏名】ミストリー アブヒシェック ジェイシュクマール
【テーマコード(参考)】
4G077
4G146
4K030
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077AA03
4G077BA03
4G077DB19
4G077EA02
4G077EA05
4G077EA06
4G077EA07
4G077EC01
4G077EC09
4G077EG04
4G077EH06
4G077EH09
4G077TA04
4G077TB02
4G077TC01
4G077TC03
4G077TC06
4G077TC08
4G077TC10
4G077TF01
4G146AA04
4G146AB05
4G146AC30B
4G146AD01
4G146BA12
4G146BA48
4G146BB15
4G146BB23
4G146BC09
4G146BC23
4G146BC24
4G146BC25
4G146BC33B
4G146BC38B
4G146DA03
4G146DA16
4G146DA47
4G146DA48
4K030AA09
4K030AA14
4K030AA16
4K030AA17
4K030BA28
4K030FA01
4K030GA02
4K030JA06
4K030JA09
4K030JA10
4K030JA12
(57)【要約】
本発明は、マイクロ波プラズマ化学蒸着法(MPCVD)でダイヤモンドを製造する方法を開示する。本方法は、水素プラズマ雰囲気下の1以上の加熱されたダイヤモンド・シードを有するチャンバーに対して、水素1単位に対して3%~12%のアルゴン、水素1単位に対して1%未満の酸素、および500ppm未満の窒素の混合物を含む校正ガスを使用する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波プラズマ化学蒸着法(MPCVD)でダイヤモンドを製造する方法であって、
水素プラズマ雰囲気下の1以上の加熱されたダイヤモンド・シードを有するチャンバーに、水素1単位に対して3%~12%のアルゴン、水素1単位に対して1%未満の酸素、および500ppm未満の窒素の混合物を含む校正ガスを導入し、
ダイヤモンド・シード上に炭素を蒸着させるためにメタンを添加する
ことを含む方法。
【請求項2】
前記チャンバー内の保持プレートの上に前記ダイヤモンド・シードが静置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記保持プレートがモリブデン製である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記校正ガスが真空チャンバーに導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記校正ガスが水素1単位に対して3%~8%のアルゴンと、水素1単位に対して0.05%~1%の酸素と、5~500ppm窒素とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
水素1単位に対して2%~7%のメタンを添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
マイクロ波プラズマ化学蒸着法(MPCVD)でダイヤモンドを製造する方法であって、
チャンバー内の保持プレート上に複数の基質を静置し、
チャンバーを真空にし、
マイクロ波によって水素プラズマを発生させ、
前記水素プラズマで前記チャンバー内の基質を加熱し、
前記チャンバーに校正ガスを加え、前記校正ガスが水素1単位に対して3%~12%のアルゴン、水素1単位に対して1%未満の酸素、および500ppm未満の窒素の混合物を含み、
前記基質の上に炭素を蒸着させるためにメタンガスを前記混合物に添加する
ことを含む方法。
【請求項8】
成長温度を900℃~1100℃に維持する、請求項1または7に記載の方法。
【請求項9】
前記チャンバー内の真空の基底圧が1.0×10-5mbar以下である、請求項1または7に記載の方法。
【請求項10】
前記チャンバー内の圧力が160mbar~200mbarの範囲内である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
水素1単位に対して2%~7%の量で前記メタンガスを添加し、前記基質は1以上のダイヤモンド・シードである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記ダイヤモンドの成長速度が8~20μm/hrである、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
水素1単位に対して3%~12%のアルゴンと、水素1単位に対して1%未満の酸素と、500ppm未満の窒素とを含む校正ガス。
【請求項14】
前記校正ガスが、水素1単位に対して3%~8%のアルゴンと、水素1単位に対して0.05%~1%の酸素と、5~500ppm窒素とを含む、請求項13に記載の校正ガス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はダイヤモンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドを得るための最も一般的な方法の1つは、採鉱によって天然に製造されたダイヤモンドを得る方法である。しかし、このような天然から発見されたダイヤモンドには、独自の制約がある。採鉱/天然で発見されたダイヤモンドの品質は一定ではない、即ち、石の間で透明度、カラーまたはサイズが同じではない。
【0003】
採鉱/天然で発見されたダイヤモンドの透明度、カラーまたはサイズが一定ではないため、科学および種々の工業目的で使用するための、高光学精度のダイヤモンドの製造は困難であった。
【0004】
第2の不一致は品質である。鉱山で発見されるダイヤモンドの品質は常にばらついている。加えて、採鉱は、地殻の破壊を生じるため、環境に影響を与える。また、炭鉱の労働者に呼吸器の問題を発生し、爆風は火事さえも発生し得るため、人の命が犠牲になり得る。
【0005】
ダイヤモンドを製造するための公知の合成方法の1つがマイクロ波プラズマ化学蒸着法(MPCVD)である。この方法は、単純な炭化水素ガスおよび水素を約800℃~1200℃の特定温度で用いてダイヤモンドを基質上に蒸着させることを含む。
【0006】
MPCVD法で製造されるダイヤモンドのカラー、透明度、サイズといった品質は、必要に応じて制御可能である。従って、高光学グレードのダイヤモンドといった、工業グレードのダイヤモンドの要求を満たすことが容易になる。さらに環境保全に寄与し、炭鉱労働者の健康被害を止めることができる。
【0007】
しかし、ダイヤモンド製造のためのマイクロ波プラズマ化学蒸着法(MPCVD)法には、蒸着速度が遅いという欠点があり、その蒸着速度は時速約1マイクロメートルから時速約3マイクロメートルである。成長速度が遅いということは、基質上の平坦な炭素の蒸着にも関わらず、所望のサイズを得るためにより多くの時間が必要となる。
【0008】
従って、より大きな蒸着速度を達成するために、この方法では窒素ガスを導入する。この方法で窒素ガスの導入によって得られる蒸着速度は、1時間当たり50ミクロンまたはそれ以上となる。速い成長速度を有するということは、所望のサイズを達成するために必要な時間が節約される。しかし、窒素ガスは、カラーのグレードを下げることでダイヤモンドの品質を低下させる。
【0009】
従って、蒸着を安定化しながらも、ダイヤモンドの品質に影響することなく基質温度を安定な範囲に維持するためには、蒸着が中央/中庸な速度となるように方法に係るガス量または他のパラメーター(圧力や出力など)を制御する必要がある。
【発明の概要】
【0010】
本発明の一態様は、マイクロ波プラズマ化学蒸着法(MPCVD)でダイヤモンドを製造する方法を含む。当該方法は、水素プラズマ雰囲気下の1以上の加熱されたダイヤモンド・シードを有するチャンバーに、水素1単位に対して3%~12%のアルゴン、水素1単位に対して1%未満の酸素、および500ppm未満の窒素の混合物を含む校正ガスを導入し、続いてダイヤモンド・シード上に炭素を蒸着させるためにメタンを添加することを含む。
【0011】
本発明の他の態様においては、水素1単位に対して3%~12%のアルゴン、水素1単位に対して1%未満の酸素、および500ppm未満の窒素を含む校正ガスを開示する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態においては、ダイヤモンドの製造方法が開示される。ダイヤモンドはマイクロ波プラズマ化学蒸着法(MPCVD)で製造される。当該方法は、水素プラズマ雰囲気下の1以上の加熱されたダイヤモンド・シードを有するチャンバーに校正ガスを導入する工程を含む。当該校正ガスは、水素1単位に対して3%~12%のアルゴン、水素1単位に対して1%未満の酸素、および500ppm未満の窒素の混合物を含む。校正ガスをチャンバーに導入する工程に続き、ダイヤモンド・シード上に炭素を蒸着させるためにメタンを添加する。
【0013】
一実施形態においては、校正ガスは真空チャンバー(vacuum applied chamber)に導入される。
【0014】
ダイヤモンド・シードはチャンバー内の保持プレート(holder plate)上に静置される。チャンバーは1以上の保持プレートを含む。保持プレートは好ましくはモリブデン製である。
【0015】
本発明の好ましい実施形態においては、マイクロ波プラズマ化学蒸着(MPCVD)技術でダイヤモンドを製造する方法が提供される。当該方法は、一または複数の基質(ダイヤモンド・シード)をチャンバー内の保持プレート上に静置し、次にチャンバーを真空にすることを含む。さらにマイクロ波によって水素プラズマを発生させ、チャンバー内に導入し、ダイヤモンド・シードを加熱する。水素プラズマは約1KWのマイクロ波、約0~5mbarの圧力下で発生させる。この後、両方のパラメーターを徐々に所望の設定点まで増加させる。加熱温度は750~900℃の範囲に維持する。上記工程に続いて、校正ガスをチャンバーに導入する。メタンをチャンバーに添加し、校正ガスと混合すると、炭素がダイヤモンド・シード上に蒸着されてダイヤモンドが製造または成長する。
【0016】
シードを静置させ、シードから保持プレートへの導電性を高めるために特別に作られた粘着剤である導電性ペーストを使用する。この特別なペーストは、特別なエポキシと金のコロイド溶液を含む。
【0017】
校正ガスは、水素1単位に対して3%~12%のアルゴン、水素1単位に対して1%未満の酸素、および500ppm未満の窒素の混合物を含む。
【0018】
本発明の一実施形態において、アルゴンは、水素1単位に対して3%~8%存在する。
【0019】
本発明の一実施形態において、酸素は、水素1単位に対して0.05%~1%存在する。
【0020】
本発明の一実施形態において、窒素は5~500ppm存在する。
【0021】
メタンは、ガスの状態で、水素1単位に対して2%~7%の量で添加されることが好ましい。
【0022】
チャンバー内の基底圧が1.0×10-5mbar以下となるように真空にする。
【0023】
チャンバー内の圧力は160mbar~200mbarの範囲内である。
【0024】
本発明の一実施形態において、校正ガスは、水素1単位に対して3%~12%のアルゴンと、水素1単位に対して1%未満の酸素と、500ppm未満の窒素とを含む。
【0025】
本発明の一実施形態において、校正ガスは、水素1単位に対して3%~8%のアルゴンと、水素1単位に対して0.05%~1%の酸素と、5~500ppm窒素とを含む。
【0026】
本発明の一実施形態において、校正ガスの製造方法は、水素1単位に対して3%~8%のアルゴンと、水素1単位に対して0.05%~1%の酸素と、5~500ppm窒素とを混合することを含む。
【0027】
校正ガスは、ダイヤモンド・シードの表面の硬化(curing)および成長表面の活性化を補助する。
【0028】
炭素蒸着工程は、校正ガスを水素およびメタン等の他のガスとの反応に使用することで制御し、安定化させる。ガスの組み合わせは、ダイヤモンドの成長している格子構造中の不純物の存在が最小または無視できる量になるようなパーセンテージにする。
【0029】
蒸着工程は、早すぎず、遅すぎない、非常に穏やかな、安定した速度で行う。成長は、激しく変化する(Δ200℃)ことのない、非常に平均的な温度、即ち、900℃~1100℃の成長温度で達成される。蒸着工程を最小の圧力範囲である160mbar~200mbarで実行することで、一定した結果の繰り返しを得る。
【0030】
校正ガスの使用は、メタン(CH)内のC-H結合が容易に切断されるように補助する原子状水素(H)の運動を励起することで、プラズマの励起を補助する。校正ガスは、内包物を防止するために炭素原子の蒸着を安定化させるのを補助する。使用するガスの組み合わせは、成長格子構造中の不純物の存在が最小または無視できる量になるようなパーセンテージにする。中庸な成長速度で成長しているダイヤモンドは、ダイヤモンドに良好なカラーを与える。ダイヤモンドの中庸な成長速度と、校正ガスの使用は、良好なカラーと炭素原子の安定な蒸着を確実にし、さらにダイヤモンドの高い透明度をもたらす。
【0031】
ダイヤモンドの品質は、成長速度や温度といった因子に依存する。成長速度は、チャンバー内の雰囲気の窒素含有量に依存する。アルゴンガスはさらに水素プラズマの励起を補助する。アルゴン原子の方が大きいため、原子状水素はアルゴン原子へと流れ続け、過活性状態となる。そのため、これらの過活性水素原子がメタン由来の炭素原子を分解しやすくなる。
【0032】
当該方法は、ダイヤモンドの中庸な成長速度の達成を補助し、その成長速度は8~20μm/hrである。成長速度は、チャンバー内の窒素およびメタンの量に依存する。ダイヤモンドの中庸な成長速度は、優れたカラーと透明度のダイヤモンドを得るために有利である。
【実施例
【0033】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、限定するものではない。
【0034】
実施例1: ダイヤモンドの製造方法
厚さ400μmの9個のダイヤモンド・シードをモリブデン保持プレートに静置した。保持プレートをチャンバー内に保持した。シードの位置を固定し、シードからプレートへの熱伝導を高めるために、上述した特別な粘着ペーストを使用した。保持プレートから冷却ステージへの熱伝達は熱分離方法を用いて制御した。成長表面の温度を維持するためにこの方法を使用した。チャンバーを正しく閉じ、真空にした。達成された真空は5.0×10-3mbarの近傍であった。マイクロ波でプラズマを発生させることによりチャンバー内で水素プラズマを発生させた。チャンバー内の加熱温度を750℃~900℃の範囲内に維持した。水素1単位に対して8%のアルゴン、水素1単位に対して0.2%の酸素、および100ppmの窒素の混合物を含む校正ガスをチャンバーに流した。水素1単位に対して5%の量のメタンガスをチャンバー内に流した。炭素蒸着がダイヤモンド・シード上に観察された。ダイヤモンド・シードの成長表面の温度を950℃~1050℃の間に維持した。蒸着は、14μm/hr~15μm/hrの成長速度で観察された。蒸着を400時間実施し、7カラットの粗ダイヤモンドを各シードから得、サイズのばらつきの平均は約10%であった。得られたダイヤモンドのカラーは薄茶色であった。
プラズマの発生に使用した動力は4.30KWであり、チャンバー内の雰囲気の分圧は170mbarであった。
【0035】
実施例2: ダイヤモンドの製造方法
厚さ300μmの21個のダイヤモンド・シードをモリブデン保持プレートに静置した。保持プレートをチャンバー内に保持した。シードの位置を固定し、シードからプレートへの熱伝導を高めるために、上述した特別な粘着ペーストを使用した。保持プレートから冷却ステージへの熱伝達は熱分離方法を用いて制御した。成長表面の温度を維持するためにこの方法を使用した。チャンバーを正しく閉じ、真空にした。達成された真空は5.0×10-3mbarの近傍であった。マイクロ波でプラズマを発生させることによりチャンバー内で水素プラズマを発生させた。チャンバー内の加熱温度を750℃~900℃の範囲内に維持した。水素1単位に対して5%のアルゴン、水素1単位に対して0.2%の酸素、および50ppmの窒素の混合物を含む校正ガスをチャンバーに流した。水素1単位に対して6%の量のメタンガスをチャンバー内に流した。炭素蒸着がダイヤモンド・シード上に観察された。ダイヤモンド・シードの成長表面の温度を950℃~1050℃の間に維持した。蒸着は、11μm/hr~12μm/hrの成長速度で観察された。蒸着を400時間実施し、5カラットの粗ダイヤモンドを各シードから得、サイズのばらつきの平均は約10%であった。得られたダイヤモンドのカラーは、実施例1と比べてより薄い薄茶色であった。プラズマの発生に使用した動力は4.30KWであり、チャンバー内の雰囲気の分圧は170mbarであった。
【0036】
実施例3: ダイヤモンドの製造方法
厚さ300μmの12個のダイヤモンド・シードをモリブデン保持プレートに静置した。保持プレートをチャンバー内に保持した。シードの位置を固定し、シードからプレートへの熱伝導を高めるために、上述した特別な粘着ペーストを使用した。保持プレートから冷却ステージへの熱伝達は熱分離方法を用いて制御した。成長表面の温度を維持するためにこの方法を使用した。チャンバーを正しく閉じ、真空にした。達成された真空は5.0×10-3mbarの近傍であった。マイクロ波でプラズマを発生させることによりチャンバー内で水素プラズマを発生させた。チャンバー内の加熱温度を750℃~900℃の範囲内に維持した。水素1単位に対して4%のアルゴン、水素1単位に対して0.2%の酸素、および250ppmの窒素の混合物を含む校正ガスをチャンバーに流した。水素1単位に対して6%の量のメタンガスをチャンバー内に流した。炭素蒸着がダイヤモンド・シード上に観察された。ダイヤモンド・シードの成長表面の温度を950℃~1050℃の間に維持した。蒸着は、17μm/hr~19μm/hrの成長速度で観察された。蒸着を200時間実施し、5.5カラットの粗ダイヤモンドを各シードから得、サイズのばらつきの平均は約10%であった。得られたダイヤモンドのカラーは、実施例1と比べてより濃い茶色であった。
プラズマの発生に使用した動力は4.80KWであり、チャンバー内の雰囲気の分圧は175mbarであった。
【0037】
実施例4: ダイヤモンドの製造方法
厚さ300μmの12個のダイヤモンド・シードをモリブデン保持プレートに静置した。保持プレートをチャンバー内に保持した。シードの位置を固定し、シードからプレートへの熱伝導を高めるために、上述した特別な粘着ペーストを使用した。保持プレートから冷却ステージへの熱伝達は熱分離方法を用いて制御した。成長表面の温度を維持するためにこの方法を使用した。チャンバーを正しく閉じ、真空にした。達成された真空は5.0×10-3mbarの近傍であった。マイクロ波でプラズマを発生させることによりチャンバー内で水素プラズマを発生させた。チャンバー内の加熱温度を750℃~900℃の範囲内に維持した。水素1単位に対して5%のアルゴン、水素1単位に対して0.2%の酸素、および30ppmの窒素の混合物を含む校正ガスをチャンバーに流した。水素1単位に対して6%の量のメタンガスをチャンバー内に流した。炭素蒸着がダイヤモンド・シード上に観察された。ダイヤモンド・シードの成長表面の温度を950℃~1050℃の間に維持した。蒸着は、9μm/hr~11μm/hrの成長速度で観察された。蒸着を500時間実施し、9カラットの粗ダイヤモンドを各シードから得、サイズのばらつきの平均は約10%であった。得られたダイヤモンドのカラーは、実施例2と比べてより薄い薄茶色であった。
プラズマの発生に使用した動力は4.90KWであり、チャンバー内の雰囲気の分圧は175mbarであった。
【0038】
実施例5: 校正ガスの製造方法
アルゴン、酸素および窒素を混合することで、校正ガスを製造した。ガスを以下の割合で混合し、校正ガスを得た。
A. 水素1単位に対して8%のアルゴン、水素1単位に対して0.2%の酸素、および100ppmの窒素。
B. 水素1単位に対して5%のアルゴン、水素1単位に対して0.2%の酸素、および50ppmの窒素。
C. 水素1単位に対して4%のアルゴン、水素1単位に対して0.2%の酸素、および250ppmの窒素。
D. 水素1単位に対して5%のアルゴン、水素1単位に対して0.2%の酸素、および30ppmの窒素。
【0039】
米国特許第6,858,078号明細書に開示された方法においては、ダイヤモンドの製造方法は水素雰囲気下、水素1単位に対して1~5%の窒素および水素1単位に対して6~12%のメタンで実施された。水素1単位に対して1~3%の酸素は存在し得る。成長温度は900~1400℃である。1000℃未満の温度では、得られるダイヤモンドが球形の黒いダイヤモンド様炭素(DLC)であることが見いだされた。1000℃~1100℃の間の温度は濃い茶色のダイヤモンドを製造した。
【0040】
上記と比べ、本発明の方法においては、1000℃未満の温度と、水素1単位に対して3%~12%のアルゴン、水素1単位に対して1%未満の酸素、および500ppm未満の窒素の混合物を含む校正ガスの存在下で、僅かに茶色味を帯びた、単結晶のダイヤモンドがもたらされた。温度が1000℃~1100℃のときは、極僅かな茶色味を帯びた単結晶のダイヤモンドまたはほとんど茶色味はなく、非常に薄い黄色味を帯びたダイヤモンドが得られた。上記実施例は製造されたダイヤモンドの色を示す。
【0041】
上記実施例の本発明の方法を高温で実施すると、下記に示すような望ましくない結果が得られた。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例の上記結果は、校正ガスを用いた本発明の方法は、従来の方法と比べて、透明度とカラーが良好で、最小又は無視できる程度の欠陥しかない単結晶ダイヤモンドをもたらすことを示した。表1に示されるように、より高温で方法を実施すると、欠陥を有する、望ましくない多結晶ダイヤモンドが得られた。
【0044】
本発明に関する上記説明は、本発明を説明するためのものであり、限定を意図するものではない。当業者が、本発明の精神および実態を組み込んだ、開示した実施形態の変更を行う可能性もあることから、本発明はその開示範囲内の全てを包含する理解されるべきである。
【国際調査報告】