(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】CD14プロモーターを有する組換えアデノ随伴ウイルスベクターおよびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/864 20060101AFI20231024BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20231024BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20231024BHJP
C12N 7/01 20060101ALI20231024BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20231024BHJP
A61K 35/15 20150101ALI20231024BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20231024BHJP
A61K 39/02 20060101ALI20231024BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20231024BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231024BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20231024BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20231024BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20231024BHJP
【FI】
C12N15/864 100Z
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/12
C12N7/01
C12N1/21
A61K35/15
A61K39/00 H
A61K39/02
A61K39/12
A61P35/00
A61P37/04
A61K38/19
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023523665
(86)(22)【出願日】2021-10-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 US2021054975
(87)【国際公開番号】W WO2022081839
(87)【国際公開日】2022-04-21
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523138356
【氏名又は名称】アヴォサイト, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】チャン, アイチュアン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, チュアンシン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ヨン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA94Y
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4C084AA02
4C084DA01
4C084NA14
4C084ZB09
4C084ZB26
4C085AA03
4C085BA07
4C085BA51
4C085BB01
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BB65
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB09
4C087ZB26
(57)【要約】
本開示は、CD14+細胞において外因性核酸配列を特異的に発現するrAAVベクターおよびrAAVビリオンを提供する。rAAVベクターまたはビリオンは、例えば、がん抗原、ウイルス抗原、および/または細菌抗原をコードする外因性核酸配列を単球および樹状細胞において特異的に発現させるのに有用である。rAAVを形質導入したCD14+細胞は、抗原特異的T細胞応答を誘導する抗原提示細胞として使用することができる。本開示はさらに、rAAVビリオンを産生する方法および免疫療法の方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの逆方向末端反復(ITR)配列をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターと、外因性核酸配列に作動可能に連結されたCD14プロモーターとを含むポリヌクレオチドであって、前記CD14プロモーターがCD14発現細胞において特異的に前記外因性核酸の発現を誘導する、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
前記CD14プロモーターがヒトCD14プロモーター配列である、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
前記CD14プロモーターが配列番号1を含む、請求項1または2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
前記CD14プロモーターが、配列番号1の378~386位、404~410位および533~538位に少なくともヌクレオチドを含む、請求項1または2のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
前記CD14発現細胞が、単球、マクロファージまたは樹状細胞である、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
前記rAAVベクターが、5’→3’方向に、第1のITR、前記外因性核酸配列に作動可能に連結された前記CD14プロモーター、ポリアデニル化シグナル配列、および第2のITRを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
前記ITR配列がAAV-2 ITRである、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
前記第1のITR配列および前記第2のITR配列がAAV-2 ITRである、請求項6に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
前記rAAVベクターがプラスミドである、請求項1~8のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記プラスミドが、ヒトCD14転写プロモーター、AAV2型逆方向末端反復(ITR)配列、マルチクローニングサイト配列(MCS)、SV40後期ポリA配列、抗生物質耐性遺伝子、および前記プラスミドが宿主細胞において複製することを可能にする遺伝子エレメントを含む、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
前記rAAVベクターがエンハンサー領域をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
前記外因性核酸配列が、マルチクローニングサイト(MCS)、制限酵素標的配列、および/またはポリペプチドをコードする配列を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項13】
前記外因性核酸配列が、ポリペプチドをコードする配列を含み、前記ポリペプチドが、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、癌遺伝子産物、ウイルス抗原、細菌抗原、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせの全部または一部を含む、請求項12に記載のポリヌクレオチド。
【請求項14】
前記外因性核酸配列が、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原または癌遺伝子産物をコードする配列を含み、前記腫瘍抗原、腫瘍関連抗原または癌遺伝子産物が、α-フェトプロテイン(AFP)、Bメラノーマ抗原(BAGE/CT2.1)、分化抗原群20(CD20)、CD269、G250(炭酸脱水酵素IX/CA IX)、HM1.24、CD154、前立腺がん関連抗原、乳がん関連腫瘍関連抗原、がん精巣抗原(CT)ファミリーのメンバー、ヒトメラノーマ関連抗原(MAGE)ファミリーのメンバー、MART 1、SAGE 1、癌胎児性抗原(CEA)、HER-2/neu、サイトケラチン19(CK19、K19、cyfra21-1)、サバイビン、ムチン-1(MUC-1、CA 15-3)、扁平上皮癌(SCC)抗原、または任意の抗原断片および/またはそれらの組み合わせを含む、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項15】
(a)前記前立腺がん関連抗原が、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)もしくは前立腺酸ホスファターゼ(PAP)抗原、または任意の抗原断片および/もしくはそれらの組み合わせであり、
(b)前記乳がん関連腫瘍関連抗原が、乳房上皮抗原46(BA46、ラクトアドヘリン)またはその任意の抗原断片であり、
(c)前記がん精巣抗原(CT)ファミリーのメンバーが、ニューヨーク食道扁平上皮癌-1(NY-ESO-1)(CT6.1)、ADAM2(CT15)、SPA17(CT22)、またはSPANX-A 1(CT11.1)、または任意の抗原断片および/もしくはそれらの組合せであり、または
(d)前記ヒトメラノーマ関連抗原(MAGE)ファミリーのメンバーが、MAGE-A1/CT1.1、MAGE-A2/CT1.2、MAGE-A3/CT1.3、MAGE-A4/CT1.4、MAGE-B1/CT3.1、MAGE-C1/CT7.1、MAGE-C2/CT 10、MAGE-C3/CT7.2もしくはMAGE-E1、または任意の抗原断片および/もしくはその組合せである、請求項14に記載のポリヌクレオチド。
【請求項16】
前記腫瘍抗原、腫瘍関連抗原または癌遺伝子産物が、PSA、PSMA、PAP、PSCA、BA46、CEA、HER-2/neu、CK19、サバイビン、MUC-1、SCC、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-C2、NY-ESO-1、ADAM2、SPA17もしくはSPANX-A1、または任意の抗原断片および/もしくはそれらの組み合わせである、請求項14または15に記載のポリヌクレオチド。
【請求項17】
前記外因性核酸配列がウイルス抗原をコードする配列を含み、前記ウイルス抗原が、B型肝炎ウイルス(HBV)抗原、C型肝炎ウイルス(HCV)抗原、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記HPV抗原がE6抗原またはE7抗原である、請求項17に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記E6抗原またはE7抗原が、HPV血清型16、18、30、31、33、35、39、45、51、52、56、58、61、またはそれらの任意の組み合わせに由来する、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
前記外因性核酸配列が、サイトカインをコードする配列を含み、前記サイトカインが、GM-CSF、TNF-α、TNF-β、IL-2、IL-4、IL-5、IL-7、IL-9、TGF-β、IFNγ、IL-10、IL-13、IL-15、IL-18、IL-25、IL-27、およびアンフィレグリン、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項13に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ビリオン。
【請求項22】
前記ビリオンが、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはそれらの任意の組み合わせのカプシドタンパク質を含む、請求項21に記載のrAAVビリオン。
【請求項23】
前記ビリオンがAAV2のカプシドタンパク質を含む、請求項21または22に記載のrAAVビリオン。
【請求項24】
前記ビリオンが、以下:前記CD14プロモーター以外のプロモーターおよびAAV構造遺伝子のうちの1つまたは複数を含まない、請求項21~23のいずれかに記載のrAAVビリオン。
【請求項25】
AAV構造遺伝子がAAV2のRepおよびCap遺伝子を含む、請求項24に記載のrAAVビリオン。
【請求項26】
rAAVビリオンを産生する方法であって、請求項1~20のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドをパッケージング細胞に導入するステップを含み、前記パッケージング細胞がヘルパー遺伝子をコードする1つまたはそれを超える核酸配列を含む、方法。
【請求項27】
前記ヘルパー遺伝子が、AAV RepおよびCap遺伝子ならびにアデノウイルスVA、E2A、E3およびE4遺伝子を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記パッケージング細胞が前記ヘルパー遺伝子を安定的に発現する、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヘルパー遺伝子が、単一のプラスミド上にコードされる、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ヘルパー遺伝子が2つ以上のプラスミドに含まれる、請求項26~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記RepおよびCap遺伝子が第1のヘルパープラスミド上にコードされ、前記VA、E2A、E3およびE4遺伝子が第2のヘルパープラスミド上にコードされる、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記ヘルパー遺伝子が、請求項1~20のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドで前記パッケージング細胞に共トランスフェクトされる、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記rAAVベクターが、前記RepおよびCap遺伝子を含むプラスミドで共トランスフェクトされ、前記パッケージング細胞がアデノウイルスに感染される、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記パッケージング細胞が、HEK 293、HeLa、またはHT1080細胞である、請求項26~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
請求項1~20のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを含む、単離された細胞の集団。
【請求項36】
前記細胞がCD14を発現する、請求項35に記載の単離された細胞の集団。
【請求項37】
前記細胞が、ポリペプチドをコードする前記外因性核酸配列を発現する、請求項35または36に記載の単離された細胞の集団。
【請求項38】
前記細胞が、単球、樹状細胞またはマクロファージである、請求項35~37のいずれか1項に記載の単離された細胞の集団。
【請求項39】
前記細胞がパッケージング細胞である、請求項35に記載の単離された細胞の集団。
【請求項40】
前記細胞がHEK293細胞である、請求項35または39に記載の単離された細胞の集団。
【請求項41】
請求項35~38のいずれか1項に記載の単離された細胞を含む医薬組成物であって、前記細胞が、前記外因性核酸配列によってコードされる前記ポリペプチドに対する抗原特異的免疫応答を生成するためにT細胞を活性化するのに有効である、医薬組成物。
【請求項42】
前記ポリペプチドが、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、癌遺伝子産物、ウイルス抗原、または細菌抗原である、請求項41に記載の医薬組成物。
【請求項43】
前記ポリペプチドが、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原または癌遺伝子産物であり、前記腫瘍抗原、腫瘍関連抗原または癌遺伝子産物が、α-フェトプロテイン(AFP)、Bメラノーマ抗原(BAGE/CT2.1)、分化抗原群20(CD20)、CD269、G250(炭酸脱水酵素IX/CA IX)、HM1.24、CD154、前立腺がん関連抗原、乳がん関連腫瘍関連抗原、がん精巣抗原(CT)ファミリーのメンバー、ヒトメラノーマ関連抗原(MAGE)ファミリーのメンバー、MART 1、SAGE 1、癌胎児性抗原(CEA)、HER-2/neu、サイトケラチン19(CK19、K19、cyfra21-1)、サバイビン、ムチン-1(MUC-1、CA 15-3)、扁平上皮癌(SCC)抗原、または任意の抗原断片および/またはそれらの組み合わせである、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項44】
(a)前記前立腺がん関連抗原が、前立腺特異抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)もしくは前立腺酸ホスファターゼ(PAP)抗原、または任意の抗原断片および/もしくはそれらの組み合わせであり、
(b)前記乳がん関連腫瘍関連抗原が、乳房上皮抗原46(BA46、ラクトアドヘリン)またはその任意の抗原断片であり、
(c)前記がん精巣抗原(CT)ファミリーの前記メンバーが、ニューヨーク食道扁平上皮癌-1(NY-ESO-1)(CT6.1)、ADAM2(CT15)、SPA17(CT22)、またはSPANX-A 1(CT11.1)、または任意の抗原断片および/もしくはそれらの組合せであり、または
(d)前記ヒトメラノーマ関連抗原(MAGE)ファミリーの前記メンバーが、MAGE-A1/CT1.1、MAGE-A2/CT1.2、MAGE-A3/CT1.3、MAGE-A4/CT1.4、MAGE-B1/CT3.1、MAGE-C1/CT7.1、MAGE-C2/CT 10、MAGE-C3/CT7.2もしくはMAGE-E1、または任意の抗原断片および/もしくはその組合せである、請求項43に記載の医薬組成物。
【請求項45】
前記腫瘍抗原、腫瘍関連抗原または癌遺伝子産物が、PSA、PSMA、PAP、PSCA、BA46、CEA、HER-2/neu、CK19、サバイビン、MUC-1、SCC、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-C2、NY-ESO-1、ADAM2、SPA17もしくはSPANX-A1、または任意の抗原断片および/もしくはそれらの組み合わせである、請求項43または44に記載の医薬組成物。
【請求項46】
前記ポリペプチドがウイルス抗原であり、前記ウイルス抗原が、B型肝炎ウイルス(HBV)抗原、C型肝炎ウイルス(HCV)抗原、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項42に記載の医薬組成物。
【請求項47】
前記HPV抗原がE6抗原またはE7抗原である、請求項46に記載の医薬組成物。
【請求項48】
前記E6抗原またはE7抗原が、HPV血清型16、18、30、31、33、35、39、45、51、52、56、58、61、またはそれらの任意の組み合わせに由来する、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
前記細胞が、単球、樹状細胞、またはそれらの組み合わせである、請求項41~48のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
免疫療法の方法であって、請求項35~38に記載の単離された細胞の集団または請求項41~49のいずれか1項に記載の医薬組成物を、それを投与すること必要とする対象に投与し、それによって免疫応答を刺激するステップを含む、方法。
【請求項51】
前記対象がヒトである、請求項50に記載の免疫療法の方法。
【請求項52】
前記単離された細胞の前記集団が前記対象由来であった、請求項50または51に記載の免疫療法の方法。
【請求項53】
請求項1~20のいずれか1項に記載の外因性核酸配列によってコードされる前記ポリペプチドを発現する細胞を標的とする抗原特異的T細胞を含む医薬組成物であって、前記T細胞が請求項35~38のいずれか1項に記載の細胞によって活性化されている、医薬組成物。
【請求項54】
免疫療法の方法であって、請求項53のいずれか1項に記載の医薬組成物を、それを投与することを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項55】
前記対象がヒトである、請求項54に記載の免疫療法の方法。
【請求項56】
前記抗原特異的T細胞が前記対象由来であった、請求項54または55に記載の免疫療法の方法。
【請求項57】
ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を含む医薬組成物であって、前記PBMCが、請求項35~38のいずれか1項に記載の細胞によって活性化されている抗原特異的T細胞を含む、医薬組成物。
【請求項58】
免疫療法の方法であって、請求項57に記載の医薬組成物を、それを投与することを必要とする対象に投与するステップを含む、方法。
【請求項59】
前記対象がヒトである、請求項58に記載の免疫療法の方法。
【請求項60】
前記PBMCが前記対象由来であった、請求項58または59に記載の免疫療法の方法。
【請求項61】
免疫療法の方法であって
a.対象の末梢血単核細胞(PBMC)に請求項21~25のいずれかに記載されるrAAVビリオンを感染させて感染PBMCを生成するステップと、
b.分化サイトカインを添加して前記感染PBMCの単球を樹状細胞(DC)に分化させるステップと、
c.活性化サイトカインを添加して前記感染PBMCの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を活性化して活性化CTLを生成するステップと、
d.必要に応じて、前記感染PBMCから活性化CTLを単離するステップと、
e.有効量の、活性化CTLまたは単離された活性化CTLを含む前記感染PMBCを前記対象に投与するステップと
を含む、方法。
【請求項62】
改変された抗原提示細胞(APC)を産生する方法であって、i)CD14
+細胞を提供するステップと、
ii)前記CD14
+細胞を、ポリペプチドをコードする配列を発現するのに十分な、請求項21~25のいずれか1項に記載のrAAVと接触させるステップと、
iii)前記ポリペプチドを発現するのに十分な時間、ステップii)の前記CD14
+細胞を培養するステップと
を含む、方法。
【請求項63】
前記CD14+細胞が、単球または樹状細胞である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記単球が、末梢血単核細胞(PBMC)の集団にある、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記単球が、単離された単球である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記単球を樹状細胞にさらに分化させる、請求項63~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記単球を外因性サイトカインと接触させることによって、前記単球を樹状細胞に分化させる、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
外因性サイトカインをコードするポリヌクレオチドを前記単球に導入することによって、前記単球を樹状細胞に分化させ、それによって前記単球に外因性サイトカインを発現させる、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記外因性サイトカインをコードする前記ポリヌクレオチドがプラスミドまたはrAAVビリオンである、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
前記rAAVビリオンが、請求項21~25のいずれか1項に記載のrAAVビリオンである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記外因性サイトカインを前記細胞培養物に添加する、請求項67に記載の方法。
【請求項72】
前記外因性サイトカインが、GM-CSF、IL-4、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項67~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記外因性サイトカインが、GM-CSF、IL-4およびTNF-αである、請求項63~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
抗原特異的T細胞を産生する方法であって、
i)ナイーブT細胞を提供するステップと、
ii)前記ナイーブT細胞を請求項62~73のいずれか1項に記載の方法によって産生された改変APCと接触させるステップと、
iii)ステップii)の前記T細胞を活性化サイトカインと接触させるステップと
を含む、方法。
【請求項75】
前記活性化サイトカインがIL-2、IL-7、またはその両方である、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
抗原特異的T細胞がCD4
+T細胞またはCD8
+T細胞である、請求項74または75に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表に関する記載
本出願に関連する配列表は、紙媒体の代わりにテキスト形式で提供され、本明細書に参照により組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は100239_401WO_SEQUENCE_LISTING.txtである。テキストファイルは7.6KBで、2021年9月15日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【0002】
背景
技術分野
本発明は、分子生物学、免疫学、免疫療法、および遺伝子治療の分野に関する。具体的には、本発明は、CD14プロモーター領域を有する組換えアデノ随伴ウイルスベクターおよびその実用的な用途に関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の説明
アデノ随伴ウイルス(AAV)2型ゲノムは、約4.7キロベース長である一本鎖デオキシリボ核酸(ssDNA)で構築されている。AAVゲノムは、AAV DNA鎖の両端に逆方向末端反復(ITR)配列(145塩基)と、2つのオープンリーディングフレーム(ORF):rep遺伝子およびcap遺伝子とを含む。AAVゲノムの左側にはp5、p19、およびp40プロモーターがあり、そこから異なる長さの2つの重複mRNAを産生することができる。
【0004】
AAVは非病原性ウイルスであるため、遺伝子治療および免疫療法のウイルスベクターとして利用されている。AAVおよび組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)は、体細胞、神経細胞、および血球などの様々なヒト細胞に広く感染する(形質導入する)能力を有する。rAAVは、ポリペプチドに翻訳され得る外因性RNAを発現し得る。rAAVのこの感染性の性質は、多くの疾患の遺伝子治療において利点を有する。しかしながら、rAAVベクターは通常、AAVプロモーター、CMVプロモーター、SV40初期プロモーターなどの構成的プロモーターを含み、すべてまたは多くの組織での遺伝子の発現を促進することができる。構成的プロモーターを有するrAAVは、非標的細胞に感染しかつ外因性遺伝子の産物を非標的細胞において発現させることによって、望ましくないオフターゲット効果を発生させる可能性がある。したがって、臨床処置において、構成的プロモーターを有するrAAVは、毒性作用の潜在的な危険性を含む、処置の目的とは無関係の有害反応または副作用をもたらし得る。したがって、処置の安全性、精度、および有効性が改善されたrAAVベクターが当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔な概要
本開示は、2つの逆方向末端反復(ITR)配列をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターと、外因性核酸配列に作動可能に連結されたCD14プロモーターとを含むポリヌクレオチドであって、CD14プロモーターがCD14発現細胞において特異的に外因性核酸の発現を誘導する、ポリヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、CD14プロモーターは、ヒトCD14プロモーター配列である。いくつかの実施形態では、CD14プロモーターは、配列番号1を含む。いくつかの実施形態では、CD14プロモーターは、配列番号1の378~386位、404~410位および533~538位に少なくともヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、CD14発現細胞は、単球、マクロファージ、または樹状細胞である。いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、5’→3’方向に、第1のITR、外因性核酸配列に作動可能に連結されたCD14プロモーター、ポリアデニル化シグナル配列、および第2のITRを含む。いくつかの実施形態では、外因性核酸配列は、マルチクローニングサイト(MCS)、制限酵素標的配列、および/またはポリペプチドをコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、ポリペプチドをコードする配列は、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、癌遺伝子産物、ウイルス抗原、細菌抗原、サイトカイン、またはそれらの任意の組み合わせの全部または一部をコードする。
【0006】
いくつかの実施形態では、本開示は、2つのITR配列を含むポリヌクレオチドと、外因性核酸配列に作動可能に連結されたCD14プロモーターとを含むrAAVビリオンであって、CD14プロモーターがCD14発現細胞において特異的に外因性核酸の発現を誘導する、rAAVビリオンを提供する。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはそれらの任意の組み合わせのカプシドタンパク質を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるrAAVベクターをパッケージング細胞に導入するステップを含む、rAAVビリオンを産生する方法であって、パッケージング細胞がヘルパー遺伝子をコードする1つまたはそれを超える核酸配列を含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、ヘルパー遺伝子は、AAV RepおよびCap遺伝子ならびにアデノウイルスVA、E2A、E3およびE4遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンを産生する方法は、ヘルパー遺伝子を本明細書に開示されるrAAVベクターと共にパッケージング細胞に共トランスフェクトするステップを含む。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞は、HEK293、HeLaまたはHT1080細胞である。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示されるrAAVベクターのいずれか1つを含む単離細胞の集団を提供する。いくつかの実施形態では、細胞はCD14を発現する。いくつかの実施形態では、細胞は、単球、樹状細胞、またはマクロファージである。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される単離されたrAAV形質導入CD14+細胞を含む医薬組成物であって、細胞が外因性核酸配列によってコードされるポリペプチドに対する抗原特異的免疫応答を生成するためにT細胞を活性化するのに有効である、医薬組成物を提供する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、癌遺伝子産物、ウイルス抗原、または細菌抗原である。いくつかの実施形態では、細胞は、単球、樹状細胞、またはマクロファージである。
【0010】
いくつかの実施形態では、本開示は、本明細書に開示される外因性核酸配列によってコードされるポリペプチドを発現する細胞を標的とする抗原特異的T細胞を含む医薬組成物であって、T細胞が本明細書に開示されるrAAV形質導入CD14+細胞のいずれか1つの細胞によって活性化されている、医薬組成物を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態では、本開示は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を含む医薬組成物であって、PBMCが本明細書に開示されるrAAV形質導入CD14+細胞によって活性化された抗原特異的T細胞を含む、医薬組成物を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は、免疫療法の方法であって、本明細書に開示される単離された細胞の集団または本明細書に開示される医薬組成物を、それを投与することを必要とする対象に投与し、それによって免疫応答を刺激するステップを含む、免疫療法の方法を提供する。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0013】
いくつかの実施形態では、本開示は、免疫療法の方法であって、a.対象のPBMCを本明細書に開示されるrAAVビリオンで感染させて、感染PBMCを生成するステップと、b.分化サイトカインを添加して感染PBMCの単球を樹状細胞(DC)に分化させるステップと、c.活性化サイトカインを添加して感染PBMCの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を活性化して活性化CTLを生成するステップと、d.必要に応じて、感染PBMCから活性化CTLを単離するステップと、e.有効量の、活性化CTLまたは単離された活性化CTLを含む感染PMBCを対象に投与するステップとを含む、免疫療法の方法を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、本開示は、改変された抗原提示細胞(APC)を産生する方法であって、i)CD14+細胞を提供するステップと、ii)CD14+細胞を、ポリペプチドをコードする配列を発現するのに十分な、本明細書に開示されるrAAVビリオンと接触させるステップと、iii)ポリペプチドを発現するのに十分な時間、ステップii)のCD14+細胞を培養するステップとを含む、改変された抗原提示細胞(APC)を産生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、CD14+細胞は単球または樹状細胞である。いくつかの実施形態では、単球はPBMCの集団にある。いくつかの実施形態では、単球は単離された単球である。いくつかの実施形態では、単球を樹状細胞にさらに分化させる。いくつかの実施形態では、単球を外因性サイトカインと接触させることによって、単球は樹状細胞に分化させる。いくつかの実施形態では、外因性サイトカインは、GM-CSF、IL-4、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0015】
いくつかの実施形態では、本開示は、抗原特異的T細胞を産生する方法であって、i)ナイーブT細胞を提供するステップと、ii)ナイーブT細胞を本明細書に開示される産生された改変APCと接触させるステップと、iii)ステップii)のT細胞を活性化サイトカインと接触させるステップとを含む、抗原特異的T細胞を産生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、活性化サイトカインは、IL-2、IL-7、またはその両方である。いくつかの実施形態では、抗原特異的T細胞はCD4+T細胞またはCD8+T細胞である。
【0016】
本開示のいくつかの実施形態は、例として示されており、添付の図面によって限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、外因性遺伝子を発現させるための例示的なAAV/ヒトCD14プロモーターベクター(例示的なpAAV-CD14p)の概略図を示す。
【0018】
【
図2】
図2は、ヒトCD14プロモーターDNAをハイフィデリティPCRで増幅した後のゲル電気泳動結果を示す。
【0019】
【
図3】
図3は、SV40後期ポリ-A DNAをハイフィデリティPCRで増幅した後のゲル電気泳動結果を示す。
【0020】
【
図4】
図4は、例示的なpAAV-CD14pプラスミドを制限エンドヌクレアーゼで消化した後のゲル電気泳動結果を示す。
【0021】
【
図5】
図5は、参照野生型配列(GenBankアクセッション番号HQ199230.1)と比較した、例示的なpAAV-CD14pプラスミドにおけるヒトCD14プロモーターDNA(配列番号1)の配列のアラインメントを示す。
【0022】
【
図6】
図6は、感染性ウイルス粒子を調製する例示的なプロセスの概略図を示す。
【0023】
【
図7】
図7Aは、前立腺特異的抗原(PSA)または前立腺特異的膜抗原(PSMA)を発現するrAAV-CD14p/外因性遺伝子ウイルスのrAAVウイルス力価(コピー/ml)を示す。
図7Bは、IL-4またはIL-12を発現するrAAV-CD14p/外因性遺伝子ウイルスのrAAVウイルス力価を示す。
【0024】
【
図8】
図8Aは、末梢血リンパ球、単球、および樹状細胞におけるCD14プロモーター駆動発現増強緑色蛍光タンパク質(eGFP)を示す。
図8Bは、HEK 293細胞におけるCD14プロモーター駆動eGFP発現の欠如を示す。
【0025】
【
図9】
図9は、細胞培養の3日目にrAAV-CD14p/抗原rAAVによって形質導入された単球および樹状細胞(DC)に発現する抗原のフローサイトメトリー検出の結果を示す。PAP:前立腺酸ホスファターゼ抗原;CEA:癌胎児性抗原;CK19:サイトケラチン19抗原;MAGE-A3:メラノーマ抗原ファミリーA3抗原;Muc-1:ムチン1抗原。
【0026】
【
図10】
図10は、細胞培養の5日目にそれぞれのrAAV-CD14p/サイトカインrAAVによって形質導入されたDCにおけるフローサイトメトリー検出サイトカインの結果を示す。GM-CSF:顆粒球マクロファージコロニー刺激因子。
【0027】
【
図11】
図11は、rAAV-CD14p/抗原rAAVを形質導入したDC細胞のCD1a、CD40、CD80およびCD86マーカーのフローサイトメトリー検出の結果を示す。SP17:精子タンパク質17。
【0028】
【
図12】
図12は、rAAVを形質導入したDCのIL-12およびIL-10発現レベルのフローサイトメトリー検出の比較を示す。PSCA:前立腺幹細胞抗原;HPV16 E6-E7:ヒトパピローマウイルス16型E6およびE7抗原。
【0029】
【
図13】
図13は、DC培養の6日目に残存する単球数をフローサイトメトリーで検出した結果を示す。SCC:扁平上皮癌抗原;NY-ESO-1:ニューヨーク食道扁平上皮癌-1抗原。
【0030】
【
図14】
図14は、rAAV-CMVp/抗原rAAVを形質導入したDCと比較した、rAAV-CD14p/抗原rAAVを形質導入したDCによってプライミングされたTリンパ球のIFN-γ発現レベルをそれぞれ示す。HPV18 E6-E7:ヒトパピローマウイルス18型E6およびE7抗原;MAGE-C2:メラノーマ抗原ファミリーC2抗原。
【0031】
【
図15】
図15は、rAAV-CD14p/抗原rAAVを形質導入したDC、rAAV-p5/抗原rAAVを形質導入したDCまたはrAAV-CMVp/抗原rAAVを形質導入したDCによってプライミングされたCD69+/CD8+Tリンパ球の数をそれぞれ示す。BA46:乳房上皮抗原46(ラクトアドヘリン)。
【0032】
【
図16】
図16は、抗MHCクラスI抗体で処理したrAAV-CD14p/抗原rAAVを形質導入したDCまたはrAAVを形質導入したDCによって誘発させた細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の殺傷活性を示す。K562、Hela、THP-1またはHEK 293細胞の殺傷率は、3つの異なるrAAV-CD14p/抗原rAAVを形質導入したDCに曝露したCTLによって死滅させたこれらの細胞の平均値である。
【0033】
【
図17】
図17は、rAAV-CD14p/抗原rAAVを形質導入したDCおよびrAAV-CMVp/抗原rAAVを形質導入したDCによって誘発させたCTLの殺傷活性の比較を示す。
【0034】
【
図18】
図18は、rAAV形質導入前およびrAAV-CD14p/CK19、rAAV-p5/CK19、rAAV-CD14p/muc-1、rAAV-CMVp/muc-1を形質導入した後の14日目の末梢血単核細胞(PBMC)中のCD3
+Tリンパ球の割合をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
単球または樹状細胞(DC)などのCD14+細胞における作動可能に連結されたポリヌクレオチドの標的化および/または特異的発現を促進することができる分化抗原群(cluster of differentiation)の抗原14(CD14)プロモーターを含む組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターが本明細書で提供される。外因性遺伝子および/またはコード配列をrAAVベクターに挿入することができる。CD14+細胞に感染し、CD14プロモーターに作動可能に連結された外因性遺伝子および/またはコード配列を導入し、それによってCD14+細胞における外因性遺伝子および/またはコード配列の標的化および/または特異的発現を促進することができるrAAVビリオン(例えば、rAAV-CD14p)も提供される。外因性遺伝子および/またはコード配列の例としては、野生型、切断型または変異体腫瘍抗原遺伝子、腫瘍関連抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、サイトカインおよび目的の他のポリペプチドをコードする配列が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示されるrAAVベクターおよびビリオンは、単球およびDCを形質導入して、悪性腫瘍、ウイルスまたは細菌感染性疾患、および他の疾患を処置または予防するために使用することができる免疫応答を誘導するのに有用である。組織または細胞特異的CD14プロモーターを使用して、本明細書に開示されるrAAVベクター、組成物、方法は、非標的細胞での発現に起因し得る合併症を低減しながら、CD14+細胞における目的のポリヌクレオチド配列の標的化および/または特異的発現の利点を提供する。
【0036】
定義
本明細書において、任意の濃度範囲、パーセンテージ範囲、比の範囲、または整数範囲は、他に指示がない限り、列挙された範囲内の任意の値または部分範囲を含むと理解されるべきである。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、他に指示がない限り、示された範囲または値の±20%を意味する。
【0037】
また、「または」という用語は、文脈上別段の指示がない限り、「および/または」(すなわち、選択肢のいずれか1つ、両方、またはそれらの任意の組み合わせを意味する)を含むその意味で一般的に使用されることに留意されたい。
【0038】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。
【0039】
「備える(include)」、「有する(have)」、「含む(comprise)」という用語およびそれらの変形は同義的に使用され、非限定的であると解釈されるべきである。
【0040】
本明細書で使用される「それらの組み合わせ(a combination thereof)」という用語は、その用語の前に列挙された項目のすべての可能な組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、またはそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABCのいずれか1つを指すことが意図されている。同様に、本明細書で使用される「それらの組み合わせ(combinations thereof)」という用語は、その用語の前に列挙された項目のすべての可能な組み合わせを指す。例えば、「A、B、C、およびそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、およびABCのすべてを指すことが意図されている。
【0041】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」および「オリゴヌクレオチド」という用語は互換的に使用され、直鎖もしくは環状のコンホメーションで、一本鎖もしくは二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、遺伝子または遺伝子断片のコード領域または非コード領域、連鎖解析から定義される遺伝子座(loci)(遺伝子座(locus))、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボソームRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。本開示の目的のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定すると解釈されるべきではない。これらの用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分において修飾されたヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート骨格)を包含し得る。一般に、特定のヌクレオチドの類似体は、同じ塩基対合特異性を有し、すなわち、Aの類似体はTと塩基対合する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に使用される。この用語はまた、1つまたはそれを超えるアミノ酸が対応する天然由来のアミノ酸の化学的類似体または修飾誘導体であるアミノ酸ポリマーにも適用される。
【0043】
一般に、本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、それが連結されている別のポリヌクレオチドを輸送することができるポリヌクレオチドを指す。ベクターとしては、一本鎖、二本鎖または部分二本鎖であるポリヌクレオチド分子;1つまたはそれを超える自由末端を含むポリヌクレオチド分子、自由末端を含まないポリヌクレオチド分子(例えば、円形);DNA、RNA、または両方を含むポリヌクレオチド分子;および当技術分野で公知の他の様々なポリヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。ベクターの1つの種類は「プラスミド」であり、これは、標準的な分子クローニング技術などによって、追加のDNAセグメントを挿入することができる環状二本鎖DNAループを指す。別の種類のベクターはウイルスベクターであり、ウイルス由来のDNAまたはRNA配列がウイルスにパッケージングするためにベクター中に存在する(例えば、アデノ随伴ウイルス)。ウイルスベクターとしては、宿主細胞への形質導入のためにウイルスによって担持されるポリヌクレオチドも含まれる。
【0044】
「トランスフェクション」および「形質導入」という用語は交換可能であり、外因性DNA配列が真核細胞に導入されるプロセスを指す。トランスフェクションは、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、遺伝子銃送達、リポフェクション、スーパーフェクションなどを含むいくつかの方法のいずれか1つによって達成することができる。形質導入は、一般に、ウイルスベクター、例えばAAV、レトロウイルス、レンチウイルスまたはアデノウイルスベクターによって達成される真核細胞への外因性DNA配列の導入を指す。
【0045】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」は、ポリヌクレオチドまたはポリペプチドをコードするDNA配列を含む。したがって、遺伝子は、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、および/または変異体を発現するか、または発現するように適合されたcDNA配列、ゲノム配列、およびより小さな操作された遺伝子セグメントを含み得るが、必ずしもこれらに限定されない。
【0046】
本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(mRNAまたは他のRNA転写物などに)転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAが続いてペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質に翻訳されるプロセスを指す。転写物およびコードされたポリペプチドは、集合的に「発現産物」と呼ばれ得る。
【0047】
本明細書で使用される場合、「特異的発現」、「標的化発現」および「特異的に発現する」は互換的に使用され、特定の標的組織または標的細胞型におけるポリヌクレオチドまたはポリペプチドの発現を指すが、非標的組織または非標的細胞型では発現が欠如しているかまたは検出不能な発現を指す。特異的発現は、通常、「組織特異的プロモーター」または「細胞特異的プロモーター」によって駆動される。「組織特異的プロモーター」は、1つまたは少数の標的組織でその制御下にある遺伝子を発現するが、他の組織では発現しない。「細胞特異的プロモーター」は、1つまたは少数の特定の細胞型においてその制御下にある遺伝子を発現するが、他の細胞型では発現しない。組織特異的プロモーターおよび細胞特異的プロモーターの両方は、本明細書で使用される場合、「特異的プロモーター」と呼ばれ得る。特異的プロモーターは、転写の活性化因子および/または抑制因子として作用することができる1つまたはそれを超える特定の転写因子と相互作用する特定のDNA配列を含む。特異的プロモーターは、特定の細胞型および/または組織においてのみポリヌクレオチドの発現を駆動する。例えば、特異的プロモーターは、T細胞または上皮細胞ではなく、単球および/またはDCにおいてポリヌクレオチドの特異的発現を駆動することができる。特異的プロモーターの例は、CD14プロモーターである。
【0048】
本明細書で使用される場合、「作動可能に連結された」とは、ベクターが宿主細胞に導入された場合に、例えば宿主細胞においてヌクレオチド配列の発現を可能にする様式で、目的のヌクレオチド配列がプロモーターなどの調節エレメント(複数可)に連結されていることを意味することを意図する。
【0049】
「調節エレメント」という用語は、プロモーター、エンハンサー、内部リボソーム進入部位(IRES)、および他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナルおよびポリU配列などの転写終結シグナル)を含むことが意図される。そのような調節エレメントは、例えば、Goeddel(1990)Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Califに記載されている。調節エレメントには、組織特異的発現を指示するものが含まれる。
【0050】
本明細書で使用される「rAAVビリオン」または「rAAV粒子」という用語は、本明細書に記載されるrAAVベクターをカプシド形成する少なくとも1つのAAVカプシドタンパク質を含むカプシドを含む感染性ウイルス粒子を指す。好ましくは、ベクターは、rAAVビリオンが標的細胞に感染(形質導入)した後に発現される外因性および/または異種核酸配列を含む。
【0051】
本明細書で使用される場合、「外因性」とは、細胞またはウイルスに通常は存在しないが、1つまたはそれを超える遺伝的、生化学的または他の方法によって細胞またはウイルスに導入されることができる核酸配列またはポリペプチドを指す。例えば、外因性核酸配列は、細胞に導入された感染性ウイルスベクター、プラスミド、またはエピソームの一部であり得る。外因性核酸配列の更なる例は、ウイルスポリヌクレオチド配列に導入された哺乳動物ポリヌクレオチドである。外因性核酸配列またはポリペプチドの別の例は、同等の細胞において検出可能なレベルで通常発現されない細胞に導入された核酸配列またはポリペプチドであるか、あるいは野生型ポリヌクレオチドまたはポリペプチドの変異体形態および/または切断型形態である。
【0052】
本明細書で使用される「抗原」という用語は、1つまたはそれを超えるMHC受容体、抗体、または他の抗原結合部分によって結合されることができる1つまたはそれを超えるエピトープを含む分子を指す。例えば、抗原が提示されると、抗原は宿主の免疫系を刺激して細胞抗原特異的免疫応答を引き起こすことができる。抗原はまた、それ自体で、または別の分子と組み合わせて存在する場合、細胞性免疫応答を誘発する能力を有することができる。例えば、腫瘍細胞抗原は、T細胞受容体(TCR)によって認識され得る。抗原は、タンパク質の野生型、変異体、または切断型のバージョンであり得る。さらに、抗原は、組換えDNAまたはゲノムDNAに由来し得る。病原性生物のゲノムのヌクレオチド配列もしくは部分ヌクレオチド配列、または免疫応答を誘発するタンパク質の遺伝子もしくは遺伝子の断片を含む発現DNAは、抗原の合成をもたらすことが当技術分野で認識されている。さらに、本開示は、遺伝子またはcDNAの核酸配列全体の使用に限定されない。したがって、2つ以上の遺伝子またはcDNAの部分核酸配列の使用が本明細書で企図され、これらの核酸配列は、所望の免疫応答を誘発するために様々な組み合わせで配置される。
【0053】
「抗原提示細胞」または「APC」という用語は、少なくとも1つの抗原または抗原断片をその細胞表面上(もしくは細胞表面)に表示、取得、または提示することができる様々な細胞のいずれかである。そのような細胞は、本明細書に開示され、当技術分野で公知の方法を使用して同定することができる。当業者によって理解され、本明細書で使用されるように、特定の実施形態では、例えばクラスII主要組織適合性分子または複合体(MHCII)と共に抗原を免疫細胞に表示または提示する細胞は、抗原提示細胞である。
【0054】
本明細書で使用される場合、「CD14陽性」または「CD14+」細胞は、CD14遺伝子を天然に発現する細胞を指す。CD14+細胞の例としては、単球、DCおよびマクロファージが挙げられる。当技術分野で公知の遺伝子発現を検出するための任意の方法、例えば、フローサイトメトリー、免疫組織化学染色、蛍光顕微鏡法、ウエスタンブロット、ノーザンブロットおよび逆転写PCRを使用してCD14発現を検出することができる。フローサイトメトリーによって検出される場合、マーカーについて「陽性」の細胞集団とは、アイソタイプコントロールによる染色について見出されるレベルを超える細胞集団の均一なモノクローナル抗体染色を指す。いくつかの実施形態では、参照集団と比較したMFIの少なくとも2倍の増加は、細胞がマーカーの発現に関して陽性であることを示す。例えば、マーカーについて陽性である細胞集団は、アイソタイプコントロールと比較して、2倍~4倍、4倍~10倍、10倍~100倍、および100倍~1,000倍、1,000倍~10,000倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、25倍、30倍、35倍、40倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍、500倍、600倍、700倍、800倍、900倍、1,000倍、5,000倍、10,000倍またはそれよりも高いMFIを示すことができる。
【0055】
「単球」は、マーカーCD14を発現し、樹状細胞またはマクロファージに分化することができる免疫細胞である。CD14に加えて、単球は、CD11b、CCR2、およびCD16の少なくとも1つを発現する。
【0056】
「樹状細胞」または「DC」は、インビボ、インビトロ、エクスビボ、または宿主もしくは対象に存在する、または単球もしくは造血幹細胞に由来し得る抗原提示細胞である。樹状細胞およびそれらの前駆体は、末梢血および骨髄ならびに様々なリンパ器官、例えば脾臓、リンパ節から単離することができる。DCは、樹状細胞体から離れて複数の方向に延びる薄いシート(ラメリポディア)を有する特徴的な形態を有する。DCは、MHCクラスIIおよびMHCクラスI拘束性システム(Santambrogioら、PNAS 96(26):15050-55,1999)の両方のための強力なプロフェッショナル抗原提示細胞である。典型的には、樹状細胞は、高レベルのMHCおよび共刺激(例えば、B7-1およびB7-2)分子を発現する。樹状細胞は、T細胞の抗原特異的分化を誘導することができ、インビトロおよびインビボで細胞傷害性Tリンパ球応答を開始することができる。
【0057】
本明細書で使用される場合、「分化サイトカイン」という用語は、単球の樹状細胞への分化を促進することができるサイトカインを指す。サイトカインを分化させる例としては、GM-CSF、IL-4およびTNF-αが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
本明細書で使用される場合、「活性化サイトカイン」という用語は、細胞傷害性Tリンパ球などの抗原特異的Tリンパ球の活性化を促進することができるサイトカインを指す。サイトカインを活性化する例としては、IL-2およびIL-7が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
「がん」および「腫瘍」という用語は、本明細書では互換的に使用され、制御されない成長、分化の欠如、局所組織浸潤、および/または転移をもたらす細胞の過剰増殖を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「処置」、「処置する」、「処置された」または「処置すること」という用語は、そのような用語が適用される疾患、障害、または状態の進行を逆転すること、緩和すること、阻害すること、該疾患、障害、または状態の可能性を防ぐことまたは減少させることを含み得る。例えば、がんに関して使用される場合、この用語は、一般に、疾患および/または症状の進行を逆転、緩和、阻害することを指す。感染性疾患に関して使用される場合、例えば、この用語は、感染と戦うための、例えば、感染を減少させるかもしくは排除するための、または感染が悪化するのを防ぐための、対象が感染した後の処置、ならびに病原体による感染に対する対象の耐性を増加させるか、または換言すれば、感染に起因する病気の徴候を示す可能性を減少させる予防的処置を指すことができる。
【0061】
「有効量」または「治療有効量」とは、対象(例えば、ヒト)に投与された場合、疾患の処置を補助するのに十分な、本明細書に記載の組成物の量を指す。「治療有効量」を構成する組成物の量は、細胞および/またはrAAV調製物、症状およびその重症度、投与様式、ならびに処置される対象の体重および年齢に応じて変わるが、当業者は、自身の知識および本開示を考慮して日常的に決定することができる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「免疫応答を誘導する」という用語は、抗原特異的細胞媒介性免疫応答を活性化および/または促進する能力を指す。例えば、本開示の組成物は、免疫応答を増強および/または活性化することができる。免疫応答は、エクスビボおよび/またはインビボで誘導することができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」とは、本明細書に開示される処置、治療、細胞組成物、および/またはrAAV組成物を受けることを必要としている1つまたはそれを超える個体のことを指す。本開示に従って処置され得る対象は、一般にヒトである。しかしながら、更なる対象としては、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、またはモルモットが含まれる。対象は男性または女性であり得、乳児、若年、青年、成人、および老人の対象を含む任意の適切な年齢であり得る。
【0064】
本明細書で使用される場合、「薬学的または薬理学的に許容され得る」という用語は、動物またはヒトに投与した場合に、有害な、アレルギーまたは他の不都合な反応を引き起こさない分子実体および組成物を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」は、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などを含む。薬学的に活性な物質のためのそのような媒体および剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の培地または剤が本発明のベクターまたは細胞と適合しない限り、治療用組成物におけるその使用が企図される。補助有効成分も組成物に組み込むことができる。
【0065】
本明細書で使用される場合、「試料」は、細胞の集団が単離され、富化され、または枯渇され得る細胞源(例えば、生体組織)を指す。いくつかの実施形態では、試料は、一般に、前もって処理されていないか、または最小限に処理されている。例えば、試料は、非動員血液(non-mobilized blood)、非動員アフェレーシス産物、動員末梢血、動員アフェレーシス産物、骨髄、臍帯血、末梢血単核細胞(PBMC)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、試料は、密度勾配、Ficoll、Percoll、赤血球低張溶解、塩化アンモニウム-カリウム(ACK)緩衝液での処理、pH平衡等張緩衝液への洗浄、またはそれらの任意の組み合わせによって調製もしくは最小限に処理される。いくつかの実施形態では、試料は、単一の組織採取によって提供される。いくつかの実施形態では、試料は、1つまたはそれを超える組織採取によって提供される。
【0066】
組換えAAVベクター
本明細書で提供されるAAVベクターは、内部CapおよびRep遺伝子ならびに他の内因性DNA部分を欠失させ、ITR間に外因性核酸配列を挿入することによってAAVゲノムの内部非反復部分を欠失させることによって目的の遺伝子を送達するように操作されている。外因性遺伝子は、CD14発現(CD14+)標的細胞における特異的発現を駆動することができるCD14プロモーターに作動可能に連結されている。したがって、本開示は、2つのITR配列をコードする組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターと、外因性核酸配列に作動可能に連結されたCD14プロモーターとを含むポリヌクレオチドであって、CD14プロモーターがCD14+細胞において外因性核酸の特異的発現を誘導する、ポリヌクレオチドを提供する。CD14プロモーターは、CD14陽性細胞において外因性核酸配列の発現を特異的に駆動する任意の哺乳動物CD14プロモーターであり得る。いくつかの実施形態では、CD14プロモーターは、ヒトCD14プロモーター配列である。ヒトCD14プロモーターは、配列番号1を含むか、または配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の配列同一性を有する一方、CD14+細胞における特異的発現を駆動することができる。配列番号1の位置を参照すると、CD14プロモーターは、TATAボックス(481~486位)、C/EBP部位(378~386位)、Sp1結合部位(404~410位および533~538位)、Myb部位(42~47位および457~463位)、AP-1部位(113~121位、127~133位、および288~293位)、AP-2部位(276~283位および356~364位)ならびにCDP(CCATT置換タンパク質)部位(164~168位)を含む。特定の実施形態では、CD14プロモーターは、CD14の組織特異的発現を調節するC/EBP部位およびSp1部位を含む。いくつかの実施形態では、CD14プロモーターは、配列番号1の378~386位、404~410位および533~538位に少なくともヌクレオチドを含む。CD14発現細胞の例としては、単球、樹状細胞、およびマクロファージが挙げられる。
【0067】
いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、5’→3’方向に、第1のITR、外因性核酸配列に作動可能に連結されたCD14プロモーター、ポリアデニル化シグナル配列、および第2のITRを含む。いくつかの実施形態では、ITR配列は、AAV-2 ITR配列であるか、またはAAV-2 ITR配列に由来する。いくつかの実施形態では、第1のITR配列および第2のITR配列は、AAV-2 ITRであるか、またはAAV-2 ITRに由来する。いくつかの実施形態では、ITR配列は、任意の他のAAV血清型、例えばAAV1、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9およびAAVrh.10に由来する。理論に束縛されることを望むものではないが、ITR配列は、第1および第2のITRに挟まれた配列の効率的な分裂増殖(multiplication)のために左右対称であることが望ましいと考えられる。ポリアデニル化シグナル配列の例としては、SV40後期ポリアデニル化シグナル、ヒト成長ホルモンポリアデニル化シグナル、およびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが挙げられる。いくつかの実施形態では、rAAVベクターはエンハンサー配列をさらに含む。エンハンサーは当技術分野で周知であり、プロモーターからの転写を増加させる遺伝エレメントである。エンハンサー配列は、CD14プロモーターによって駆動される発現の特異性に有意に影響を与えない。エンハンサーの例としては、シミアンウイルス40(SV40)エンハンサー、サイトメガロウイルス(CMV)前初期エンハンサーおよびHACNS1(CENTG2)エンハンサーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
いくつかの実施形態では、rAAVベクターは、「pAAV-CD14p」(すなわち、AAV ITR配列およびCD14プロモーターを含有するプラスミド)とも呼ばれるプラスミドベクターである。いくつかの実施形態では、プラスミドベクターは、ヒトCD14転写プロモーター、AAV2型逆方向末端反復(ITR)配列、マルチクローニングサイト配列(MCS)、SV40後期ポリA配列、抗生物質耐性遺伝子、例えばβ-ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性遺伝子、Amp
r)、およびプラスミドが大腸菌で複製することを可能にする遺伝子エレメント(DH5αなど)を含む。例示的なプラスミドベクターを
図1に示す。いくつかの実施形態では、プラスミドは配列番号2の配列を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターはAAVビリオンにカプシド形成される。
【0069】
特定の実施形態では、外因性核酸配列がマルチクローニングサイト(MCS)を含む。MCS配列は当技術分野で周知であり、ポリリンカーと呼ばれることもある。MCS配列は、通常、制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素としても知られる)によって標的化され得る制限部位として知られるいくつかのユニークな配列を含むDNAの短いセグメントである。MCSは、最大1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはそれを超えるユニークな制限部位を含み得る。当技術分野で公知の任意の制限部位を使用することができる。制限部位の例としては、AbsI、AscI、AvrII、BclI、BstZ17I、BstBI、Bst98I、BmgBI、BglII、ClaI、FseI、MluI、MreI、NdeI、NheI、NsiI、SnaBI、EcoRI、EcoRII、BamHI、HindIII、TaqI、NotI、HinFI、Sau3AI、PvuII、SmaI、HaeIII、Hgal、Alul、EcoRV、EcoP15I、KpnI、PstI、PmeI、RsrII、SacI、SalI、ScaI、SpeI、SphI、StuI、SgrDI、SrfI、XhoI、およびXbaI.が挙げられる。更なる制限部位および制限酵素は、その全体が参照により本明細書に組み込まれるREBASEデータベースに列挙されている。
【0070】
いくつかの実施形態では、外因性核酸配列は、RNAおよび/またはポリペプチドをコードする配列を含む。特定の実施形態では、RNAおよび/またはポリペプチドをコードする配列がMCSに挿入される。RNAの例としては、mRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、およびリボザイムが挙げられる。いくつかの実施形態では、外因性核酸配列は抗原ポリペプチドをコードする。抗原ポリペプチドの例としては、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、癌遺伝子産物、ウイルス抗原、細菌抗原、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、抗原ポリペプチドは、全長タンパク質、タンパク質の抗原断片、切断型タンパク質、および/またはタンパク質の変異体形態であり得る。
【0071】
樹状細胞を含む細胞は、本質的に任意の細胞翻訳産物(例えば、タンパク質)からペプチドのレパートリーを天然に産生し、ペプチド/MHC複合体を介して細胞の表面にペプチドを提示する。内因性および/または外因性タンパク質のタンパク質分解は、MHC分子に結合してペプチド/MHC複合体を形成し得るより小さなペプチドを産生する。次いで、ペプチド/MHC複合体は細胞表面に輸送される。循環する細胞傷害性T細胞の表面上のT細胞受容体(TCR)は、T細胞指向性免疫応答を引き起こす腫瘍抗原またはウイルスタンパク質などのペプチドの存在についてペプチド/MHC複合体をプローブする。細胞の表面上でのペプチドの産生および提示のための細胞プロセスは、例えば、「Janeway’s Immunobiology」9th Ed.(2016)に要約されている。
【0072】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、または癌遺伝子産物は、当技術分野で公知の任意のそのような抗原ポリペプチドまたはその断片であり得る。腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、または癌遺伝子産物の例としては、α-フェトプロテイン(AFP)、Bメラノーマ抗原(BAGE/CT2.1)、分化抗原群20(CD20)、CD269、G250(炭酸脱水酵素IX/CA IX)、HM1.24、CD154、前立腺がん関連抗原(例えば、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺酸ホスファターゼ(PAP)抗原)、乳がん関連腫瘍関連抗原(例えば乳房上皮抗原46(BA46、ラクトアドヘリン))、がん精巣抗原(CT)ファミリー(例えば、ニューヨーク食道扁平上皮癌-1(NY-ESO-1)(CT6.1)、ADAM2(CT15)、SPA17(SP17、CT22)、SPANX、例えば、Spanx-A1(CT11.1))、ヒトメラノーマ関連抗原(MAGE)ファミリー(例えばMAGE-A1/CT1.1、MAGE-A2/CT1.2、MAGE-A3/CT1.3、MAGE-A4/CT1.4、MAGE-B1/CT3.1、MAGE-C1/CT7.1、MAGE-C2/CT10、MAGE-C3/CT7.2、MAGE-E1)、MART1、SAGE 1、癌胎児性抗原(CEA)、HER-2/neu、サイトケラチン19(CK19、K19、cyfra21-1)、サバイビン、ムチン-1(MUC-1、CA15-3)、扁平上皮癌(SCC)抗原、または任意の抗原断片および/もしくはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、当技術分野で公知の任意のウイルス抗原であり得る。ウイルス抗原の例としては、B型肝炎ウイルス(HBV)抗原、C型肝炎ウイルス(HCV)抗原、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス、麻疹ウイルス、ロタウイルス、または任意の抗原断片および/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、HPV抗原は、E6ポリペプチド、E7ポリペプチド、またはそれらの任意の抗原断片である。特定の実施形態では、外因性核酸配列は、E6ポリペプチドおよびE7ポリペプチド、またはそれらの抗原断片をコードする配列を含む。特定の実施形態では、E6またはE7抗原は、HPV血清型16、18、30、31、33、35、39、45、51、52、56、58、61、または任意の抗原断片および/またはそれらの組み合わせに由来する。いくつかの実施形態では、HBV抗原は、HBsAg、HBeAg、HBcAgおよび/またはHBxAgである。いくつかの実施形態では、HCV抗原は、C、E1、E2、NS1、NS2、NS3、NS4および/またはNS5抗原である。いくつかの実施形態では、HIV抗原は、gag抗原、pol抗原および/またはenv抗原である。いくつかの実施形態では、CMV抗原は、pp65抗原、pp150抗原、および/またはgB抗原である。いくつかの実施形態では、EBV抗原は、LMP-1抗原、LMP-2A抗原、LMP-2B抗原、EAR抗原、EAD抗原、VCA抗原、MA抗原、EBNA1抗原、EBNA2抗原、EBNA3抗原、EBNA3 B抗原、および/またはEBNA3C抗原である。
【0074】
いくつかの実施形態では、細菌抗原は、当技術分野で公知の任意の細菌抗原であり得る。細菌抗原を誘導し得る細菌の例としては、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)、ヘリコバクター、カンピロバクター、クロストリディウム属、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia burgdorfei)、プラスモディウム属、コレラ菌(Vibrio cholera)、大腸菌(Escherichia coli)、赤痢菌(Shigella)、腸チフス菌(Salmonella typhi)、および淋菌(Neisseria gonorrhea)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、結核菌抗原は、MPT44抗原、MPT45抗原、MPT59抗原、MPT64抗原、Ag85B抗原、Rv3117抗原、および/またはESAT-6抗原である。
【0075】
表1は、出願の時点で入手可能な代表的な抗原およびUniProtUKアクセッション番号のリストを提供する。バージョン番号は、データベースに提供された配列のバージョンを指す。既知および予測されるアイソフォームについてのUniProtUKアクセッション番号も提供される。
【0076】
【0077】
いくつかの実施形態では、外因性核酸配列はサイトカインをコードする。サイトカインは、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。サイトカインの例としては、GM-CSF、TNF-α、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、TGF-β、当技術分野で公知の他のTh1サイトカイン、例えばIFNγ、IL-2、IL-10、IL-18およびIL-27、当技術分野で公知の他のTh2サイトカイン、例えばIL-5、IL-9、IL-10、IL-13、IL-25、およびアンフィレグリン、ならびに/またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
特定の実施形態では、rAAVベクターは、内部リボソーム進入部位(IRES)配列をさらに含む。IRES配列を使用して、多重遺伝子またはポリシストロン性メッセージを作り出すことができる。IRES配列は、RNAおよび/またはポリペプチドをコードする外因性核酸配列に作動可能に連結することができる。複数の外因性核酸配列を一緒に転写することができ、各々がIRESによって分離され、ポリシストロン性メッセージを作り出す。IRES配列のおかげで、各オープンリーディングフレームは、効率的な翻訳のためにリボソームにアクセス可能である。少なくとも2つのRNAおよび/またはポリペプチド(各々が参照により組み込まれる米国特許第5,925,565号および同第5,935,819号を参照されたい)をコードする単一のメッセージを転写するために単一のプロモーターを使用して、複数の遺伝子を効率的に発現させることができる。
【0079】
本開示によれば、rAAVプラスミドベクターは、式「pAAV-[プロモーター]/[ペイロード]」に従って命名される。したがって、「pAAV-CD14p/外因性遺伝子」とは、外因性核酸配列に作動可能に連結されたCD14プロモーターを含むrAAVプラスミドベクターを指し、CD14プロモーターおよび外因性核酸配列は、配列の5’および3’領域に位置するITR配列に挟まれている。更なる例としては、rAAVプラスミドベクターを指すpAAV-CD14p/抗原およびpAAV-CD14p/サイトカインが挙げられ、CD14プロモーターは、それぞれ抗原またはサイトカインをコードする核酸配列に機能的に連結されている。さらに、特定のポリペプチドをコードする外因性配列を含むrAAVプラスミドベクターは、外因性配列の名称を含む。例えば、PSAをコードする外因性核酸に作動可能に連結されたCD14プロモーターを含むrAAVプラスミドベクターは、「pAAV-CD14p/PSA」と呼ばれる。rAAVプラスミドベクターの例としては、pAAV-CD14p/AFP、pAAV-CD14p/BA46、pAAV-CD14p/CT2.1、pAAV-CD14p/CEA、pAAV-CD14p/CD20、pAAV-CD14p/CD269、pAAV-CD14p/CK19、pAAV-CD14p/G250、pAAV-CD14p/HPV16-E6、pAAV-CD14p/HPV16-E7、pAAV-CD14p/HPV16-E6-E7、pAAV-CD14p/HPV18-E6、pAAV-CD14p/HPV18-E7、pAAV-CD14p/HPV18-E6-E7、pAAV-CD14p/HER2、pAAV-CD14p/HM1.24、pAAV-CD14p/LMP-1、pAAV-CD14p/MAGE-A1、pAAV-CD14p/MAGE-A2、pAAV-CD14p/MAGE-A4、pAAV-CD14p/MAGE-B1、pAAV-CD14p/MAGE-C1、pAAV-CD14p/MAGE-E1、pAAV-CD14p/MART1、pAAV-CD14p/MUC-1、pAAV-CD14p/CT6.1、pAAV-CD14p/PSA、pAAV-CD14p/PAP、pAAV-CD14p/PSMA、pAAV-CD14p/PSCA、pAAV-CD14p/SAGE1、pAAV-CD14p/SCC、pAAV-CD14p/SPANX、pAAV-CD14p/SPA17、およびpAAV-CD14p/サバイビンが挙げられる。
【0080】
rAAVビリオン
特定の実施形態では、外因性核酸配列に作動可能に連結されたCD14プロモーターを含むrAAVビリオンであって、CD14プロモーターがCD14+細胞において特異的に外因性核酸の発現を誘導する、rAAVビリオンが本明細書に開示される。rAAVビリオンは、本明細書で提供される実施形態および実施例に開示されるポリヌクレオチド配列のいずれかを含むことができる。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、本明細書に開示される腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、癌遺伝子産物、ウイルス抗原、細菌抗原、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかなどの抗原ポリペプチドをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、rAAVビリオンは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAVrh.10、AAV11、またはそれらの任意の組み合わせのカプシドタンパク質を含む。特定の実施形態では、rAAVビリオンは、AAV2、AAV3、AAV5、AAV6、またはそれらの任意の組み合わせのカプシドタンパク質を含む。特定の実施形態では、rAAVビリオンは、AAV2のカプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、rAAVベクターのITR配列のウイルス起源がカプシド配列のウイルス起源に対して異種であるキメラrAAVビリオンが使用される。例としては、AAV2に由来するITRと、AAV5、AAV6、AAV8またはAAV9に由来するカプシド(すなわち、それぞれAAV2/5、AAV2/6、AAV2/8およびAAV2/9)とを有するキメラウイルスが挙げられる。特定の実施形態では、rAAVビリオンは、CD14プロモーター以外のプロモーターを含まない。特定の実施形態では、rAAVビリオンは、AAV構造遺伝子、すなわちRepおよび/またはCap遺伝子を含まない。本開示によれば、rAAVビリオンは、式「rAAV-[プロモーター]/[ペイロード]」に従って命名される。rAAVビリオンの例としては、rAAV-CD14p/AFP、rAAV-CD14p/BA46、rAAV-CD14p/CT2.1、rAAV-CD14p/CEA、rAAV-CD14p/CD20、rAAV-CD14p/CD269、rAAV-CD14p/CK19、rAAV-CD14p/G250、rAAV-CD14p/HPV16-E6、rAAV-CD14p/HPV16-E7、rAAV-CD14p/HPV16-E6-E7、rAAV-CD14p/HPV18-E6、rAAV-CD14p/HPV18-E7、rAAV-CD14p/HPV18-E6-E7、rAAV-CD14p/HER2、rAAV-CD14p/HM1.24、rAAV-CD14p/LMP-1、rAAV-CD14p/MAGE-A1、rAAV-CD14p/MAGE-A2、rAAV-CD14p/MAGE-A4、rAAV-CD14p/MAGE-B1、rAAV-CD14p/MAGE-C1、rAAV-CD14p/MAGE-E1、rAAV-CD14p/MART1、rAAV-CD14p/MUC-1、rAAV-CD14p/CT6.1、rAAV-CD14p/PSA、rAAV-CD14p/PAP、rAAV-CD14p/PSMA、rAAV-CD14p/PSCA、rAAV-CD14p/SAGE1、rAAV-CD14p/SCC、rAAV-CD14p/SPANX、rAAV-CD14p/SPA17、およびrAAV-CD14p/サバイビンが挙げられる。
【0081】
一態様では、pAAV-CD14p/外因性プラスミドをパッケージング細胞に導入するステップを含むrAAVビリオンを産生する方法であって、パッケージング細胞がヘルパー遺伝子をコードする1つまたはそれを超える核酸配列を含む、方法が本明細書に開示される。感染性rAAVビリオンを産生するために、適切なパッケージング細胞株を、本明細書の実施形態および実施例に開示されるrAAVベクターのいずれかを含むプラスミドでトランスフェクトすることができる。パッケージング細胞株は、他のAAV遺伝子、すなわちRepおよびCapをコードするがITR配列を欠くヘルパープラスミドを含む。パッケージング細胞株はまた、ヘルパーウイルス遺伝子、例えば感染性ビリオンの産生に必要なアデノウイルス遺伝子をコードするプラスミドを含有する。例えば、ヘルパープラスミドは、アデノウイルス、例えばアデノウイルス5型のVA、E2A、E3およびE4遺伝子を含み得る。ヘルパーウイルス遺伝子は、rAAVベクターの複製およびヘルパープラスミドからのAAV遺伝子の発現を促進する。ヘルパープラスミドは、ITR配列の欠如のために有意な量でパッケージングされない。特定の実施形態では、ヘルパー遺伝子は、単一のプラスミド上に含まれる。他の実施形態では、ヘルパー遺伝子は、2つ以上のプラスミド(例えば、2つのプラスミド)上に含まれる。いくつかの実施形態では、pAAV-CD14p/外因性プラスミドを、ヘルパー遺伝子を含む1つまたはそれを超えるプラスミドでパッケージング細胞に共トランスフェクトする。あるいは、パッケージング細胞株にヘルパーとしてアデノウイルスを感染させてもよい。いくつかの実施形態では、pAAV-CD14p/外因性プラスミドを、RepおよびCap遺伝子を含むプラスミドでパッケージング細胞に共トランスフェクトし、細胞をアデノウイルスに感染させる。アデノウイルスによる汚染は、例えば、アデノウイルスがAAVよりも感受性である熱処理によって低減することができる。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞は哺乳動物細胞である。rAAVビリオンを産生するために使用することができるパッケージング細胞の例としては、HEK293、HeLaおよびHT1080細胞が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、パッケージング細胞はHEK293T細胞である。パッケージング細胞株はまた、AAV RepおよびCap遺伝子ならびにアデノウイルスVA、E2A、E3およびE4遺伝子を含む1つまたはそれを超えるベクターで安定にトランスフェクトまたは形質導入することができる。細胞へのポリヌクレオチドの送達のための更なる方法は、当技術分野で公知である。本明細書に開示されるrAAVビリオンは、標的細胞がRepおよびCap遺伝子ならびにアデノウイルスヘルパー遺伝子を欠くので、複製して標的細胞(例えば、単球およびDC)中に子孫感染ビリオンを形成することができない。
【0082】
改変抗原提示細胞の産生方法および抗原特異的T細胞の産生方法
外因性核酸配列をCD14+標的細胞において特異的に発現させるために本明細書で提供されるrAAVベクターを使用する方法が本明細書で開示される。いくつかの実施形態では、改変APCを産生する方法であって、i)CD14+細胞を提供するステップと、ii)CD14+細胞を、ポリペプチドをコードする外因性核酸配列を発現するのに十分な量で、本明細書に開示されるrAAVベクターのいずれかと接触させるステップと、iii)ポリペプチドを発現するのに十分な時間、ステップii)のCD14+細胞を培養するステップとを含む、改変APCを特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する特異的に発現する産生する方法が提供される。CD14+細胞は、単球または樹状細胞であり得る。rAAVベクターは、本明細書の実施形態のいずれかに開示されるrAAVビリオンまたはrAAVプラスミドであり得る。rAAVビリオンがCD14+細胞を形質導入するのに十分な時間、CD14+細胞をrAAVビリオンと共培養することによって、CD14+細胞をrAAVビリオンと接触させることができる。あるいは、CD14+細胞をrAAVプラスミドでトランスフェクトすることができる。
【0083】
いくつかの実施形態では、単球は末梢血単核細胞(PBMC)の集団にある。いくつかの実施形態では、単球は単離された単球である。いくつかの実施形態では、単離された単球は試料から単離される。いくつかの実施形態では、単離された単球はPBMCの集団から単離される。単球は、当技術分野で公知の任意の方法を使用してPBMCの集団から単離することができる。例えば、PBMCは、密度勾配遠心分離によって血液試料から得ることができる。次いで、タグ、標識またはビーズに連結された抗CD14抗体(および/または他の適切な単球マーカー)を使用して単球を選別することができる。次いで、単球を、例えば蛍光活性化細胞選別(FACS)または磁気ビーズ分離を使用して選別または単離する。あるいは、単球は、PBMC試料から非単球を選別および除去するために抗CD3抗体を使用してPBMCから分離することができる。単球は、当技術分野で公知の接着培養分離技術を使用してCD3+リンパ球から分離することもできる。
【0084】
いくつかの実施形態では、上記のステップii)は、単球を樹状細胞に分化させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、単球を樹状細胞に分化させるのに十分な時間、単球をサイトカインと接触させることによって、単球を樹状細胞に分化させる。いくつかの実施態様では、サイトカインを細胞培養物に添加する。いくつかの実施形態では、単球を、外因性サイトカインをコードするポリヌクレオチドを単球に導入することによって樹状細胞に分化させ、それによって単球に外因性サイトカインを発現させる。外因性サイトカインをコードする核酸は、プラスミドまたはrAAVビリオンであり得る。いくつかの実施形態では、外因性サイトカインをコードする核酸は、CD14プロモーターに作動可能に連結される。培地に添加されるか、または核酸配列にコードされるサイトカインは、GM-CSF、IL-4、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。単球を樹状細胞に分化させるのに十分な時間は、当業者が容易に決定することができる。いくつかの実施形態では、単球を樹状細胞に分化させるのに十分な時間は、1~8日、2~7日、または3~6日である。いくつかの実施形態では、単球を樹状細胞に分化させるのに十分な時間は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日または8日である。また、当該技術において公知の単球を樹状細胞に分化させる方法のいずれを用いてもよい。
【0085】
抗原特異的T細胞を産生する方法も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、抗原特異的T細胞を産生する方法は、i)ナイーブT細胞を提供するステップと、ii)ナイーブT細胞を本明細書の実施形態および実施例に記載される任意の改変APCと接触させるステップと、iii)ステップii)のT細胞を活性化サイトカインと接触させるステップとを含む。好ましくは、改変APCは、抗原ポリペプチドをコードする外因性核酸を特異的に発現させる改変樹状細胞である。活性化サイトカインは、培養培地中のT細胞に添加することができる。活性化サイトカインは、IL-2、IL-7、またはその両方であり得る。いくつかの実施形態では、抗原特異的T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの混合物である。いくつかの実施形態では、改変樹状細胞は、IL-12をコードし、IL-12ポリペプチドを発現する核酸配列に機能的に連結されたCD14プロモーターを含むrAAVベクターをさらに含み、それによりCD8+T細胞増殖を増強する。
【0086】
いくつかの実施形態では、抗原特異的T細胞を産生する方法は、i)CD14+単球およびCD3+T細胞を含むPBMCの集団を提供するステップと、ii)PBMCの集団を、ポリペプチドをコードする外因性核酸配列を発現するのに十分な量で、本明細書の実施形態および実施例に開示されるrAAVベクターのいずれかと接触させるステップと、iii)単球をサイトカインと接触させ、単球を樹状細胞に分化するのに十分な時間培養することによって、PBMC中の単球を樹状細胞に分化させるステップと、iv)分化樹状細胞およびCD3+T細胞を活性化サイトカインと接触させ、分化樹状細胞およびCD3+T細胞を、抗原特異的T細胞を産生するのに十分な時間培養するステップとを含む。いくつかの実施形態では、単球をサイトカインと接触させることによって、単球を樹状細胞に分化させる。サイトカインは、GM-CSF、IL-4、TNF-α、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、単球を樹状細胞に分化させるのに十分な時間は、1~8日、2~7日、または3~6日である。いくつかの実施形態では、単球を樹状細胞に分化させるのに十分な時間は、少なくとも1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日または8日である。活性化サイトカインは、IL-2、IL-7、またはその両方であり得る。いくつかの実施形態では、分化樹状細胞およびCD3+T細胞を培養することによって抗原特異的T細胞を産生するのに十分な時間は、1~12日間、2~10日間、または3~6日間である。いくつかの実施形態では、分化樹状細胞およびCD3+T細胞を培養することによって抗原特異的T細胞を産生するのに十分な時間は、少なくとも1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間または12日間である。抗原特異的T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの混合物であり得る。
【0087】
医薬組成物および処置方法
医薬組成物および疾患の処置方法も本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、改変APCの集団であって、改変APCが本明細書の実施形態および実施例に開示される改変APCのいずれかであり、T細胞を活性化して、CD14プロモーターに作動可能に連結された外因性核酸配列によってコードされるポリペプチドに対する抗原特異的免疫応答を生成するのに有効である、改変APCの集団と、薬学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物が提供される。改変APCは、単球、樹状細胞、またはそれらの組み合わせであり得る。いくつかの実施形態では、改変APCは単球から分化した樹状細胞である。いくつかの実施形態では、改変APCは単離された単球である。いくつかの実施形態では、改変APCは単離された樹状細胞である。いくつかの実施形態では、改変APCはPBMCの混合物中にある。いくつかの実施形態では、改変APCはCD3+T細胞との混合物中にある。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、改変APCと抗原特異的T細胞との混合物を含む。いくつかの実施形態では、抗原特異的T細胞は、CD4+T細胞、CD8+T細胞、またはそれらの混合物である。
【0088】
いくつかの実施形態では、医薬組成物の改変APCは、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、癌遺伝子産物、ウイルス抗原または細菌抗原を特異的に発現する。
【0089】
いくつかの実施形態では、腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、または癌遺伝子産物は、当技術分野で公知の任意のそのような抗原ポリペプチドまたはその断片であり得る。腫瘍抗原、腫瘍関連抗原、または癌遺伝子産物の例としては、α-フェトプロテイン(AFP)、Bメラノーマ抗原(BAGE/CT2.1)、分化抗原群20(CD20)、CD269、G250(炭酸脱水酵素IX/CA IX)、HM1.24、CD154、前立腺がん関連抗原(例えば、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)および前立腺酸ホスファターゼ(PAP)抗原)、乳がん関連腫瘍関連抗原(例えば乳房上皮抗原46(BA46、ラクトアドヘリン))、がん精巣抗原(CT)ファミリー(例えば、ニューヨーク食道扁平上皮癌-1(NY-ESO-1)(CT6.1)、ADAM2(CT15)、SPA17(SP17、CT22)、SPANX、例えば、Spanx-A1(CT11.1))、ヒトメラノーマ関連抗原(MAGE)ファミリー(例えばMAGE-A1/CT1.1、MAGE-A2/CT1.2、MAGE-A3/CT1.3、MAGE-A4/CT1.4、MAGE-B1/CT3.1、MAGE-C1/CT7.1、MAGE-C2/CT10、MAGE-C3/CT7.2、MAGE-E1)、MART1、SAGE 1、癌胎児性抗原(CEA)、HER-2/neu、サイトケラチン19(CK19、K19、cyfra21-1)、サバイビン、ムチン-1(MUC-1、CA15-3)、扁平上皮癌(SCC)抗原、または任意の抗原断片および/もしくはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
いくつかの実施形態では、ウイルス抗原は、当技術分野で公知の任意のウイルス抗原であり得る。ウイルス抗原の例としては、B型肝炎ウイルス(HBV)抗原、C型肝炎ウイルス(HCV)抗原、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗原、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス、麻疹ウイルス、ロタウイルス、または任意の抗原断片および/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、HPV抗原は、E6ポリペプチド、E7ポリペプチド、またはそれらの任意の抗原断片である。特定の実施形態では、外因性核酸配列は、E6ポリペプチドおよびE7ポリペプチド、またはそれらの抗原断片をコードする配列を含む。特定の実施形態では、E6またはE7抗原は、HPV血清型16、18、30、31、33、35、39、45、51、52、56、58、61、または任意の抗原断片および/またはそれらの組み合わせに由来する。いくつかの実施形態では、HBV抗原は、HBsAg、HBeAg、HBcAgおよび/またはHBxAgである。いくつかの実施形態では、HCV抗原は、C、E1、E2、NS1、NS2、NS3、NS4および/またはNS5抗原である。いくつかの実施形態では、HIV抗原は、gag抗原、pol抗原および/またはenv抗原である。いくつかの実施形態では、CMV抗原は、pp65抗原、pp150抗原、および/またはgB抗原である。いくつかの実施形態では、EBV抗原は、LMP-1抗原、LMP-2 A抗原、LMP-2B抗原、EAR抗原、EAD抗原、VCA抗原、MA抗原、EBNA1抗原、EBNA2抗原、EBNA3抗原、EBNA3B抗原、および/またはEBNA3C抗原である。
【0091】
いくつかの実施形態では、細菌抗原は、当技術分野で公知の任意の細菌抗原であり得る。細菌抗原を誘導し得る細菌の例としては、結核菌、ヘリコバクター、カンピロバクター、クロストリディウム属、ジフテリア菌、百日咳菌、ボレリア・ブルグドルフェリ、プラスモディウム属、コレラ菌、大腸菌、赤痢菌、腸チフス菌、および淋菌が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、結核菌抗原は、MPT44抗原、MPT45抗原、MPT59抗原、MPT64抗原、Ag85B抗原、Rv3117抗原、および/またはESAT-6抗原である。
【0092】
いくつかの実施形態では、外因性核酸配列はサイトカインをコードする。サイトカインは、インターロイキン、インターフェロン、腫瘍壊死因子、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。サイトカインの例としては、GM-CSF、TNF-α、IL-12、IL-4、IL-7、IL-12、IL-15、IL-18、TGF-β、当技術分野で公知の他のTh1サイトカイン、例えばIFNγ、IL-2、IL-10、IL-18およびIL-27、当技術分野で公知の他のTh2サイトカイン、例えばIL-5、IL-9、IL-10、IL-13、IL-25、およびアンフィレグリン、ならびに/またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0093】
本明細書に開示されるrAAVビリオン、改変APCおよび活性化T細胞は、疾患および障害を処置するために使用することができる。いくつかの実施形態では、免疫療法の方法であって、有効量の本明細書に開示されるrAAVビリオンのいずれかを、それを投与することを必要とする対象に投与し、それによって免疫応答を刺激するステップを含む、免疫療法の方法が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、免疫療法の方法であって、有効量の本明細書に開示されるrAAVベクターのいずれかおよび/または本明細書に開示される医薬組成物のいずれかを含む細胞(例えば、単離された細胞)のいずれかを、それを投与することを必要とする対象に投与し、それによって免疫応答を刺激するステップを含む、免疫療法の方法が提供される。いくつかの実施形態では、免疫療法の方法であって、有効量の本明細書に記載の改変APCのいずれかによって活性化された抗原特異的T細胞の集団および本明細書に記載のrAAVベクターのいずれかによってコードされた抗原を発現する標的細胞を投与するステップを含む、免疫療法の方法が提供される。いくつかの実施形態では、免疫療法の方法であって、有効量の集団PBMCを投与するステップであって、PBMCが、本明細書に記載の改変APCのいずれかによって活性化された抗原特異的T細胞および本明細書に記載のrAAVベクターのいずれかによってコードされた抗原を発現する標的細胞とを含む、免疫療法の方法が提供される。いくつかの実施形態では、対象はヒトである。いくつかの実施形態では、単離された細胞の集団は、処置される対象または処置中の対象から得られた試料に由来した。
【0094】
いくつかの実施形態では、末梢静脈血は、処置される患者(例えば、がん患者)から採取され、末梢血単核細胞を単離するために使用され得る。単離された末梢血単核球をインビトロ(例えば、細胞培養プレートまたはペトリ皿において)で培養し、次いで、末梢血単核球中の単球を末梢血リンパ球から分離することができる。次いで、単球を本明細書に提供されるrAAVビリオンに感染させ、続いてサイトカインの存在下でDCに分化させることができる。成熟(例えば、6日間培養)後、DCを採取し、上記のように調製した末梢血リンパ球の培養物に添加して混合培養物を生成することができる。混合培養物を十分な時間(例えば、6~12日間)培養した後、混合培養物中の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を採取し、患者に投与してもよい(例えば、静脈内投与を介して)。
【0095】
いくつかの関連する実施形態では、末梢静脈血は、処置される患者(例えば、がん患者)から採取され、末梢血単核細胞を単離するために使用され得る。単離された末梢血単核細胞(PBMC)を、本明細書に提供されるrAAVビリオンに感染させることができ、感染したPBMCの単球は続いてサイトカイン(例えば、GM-CSF、IL-4およびTNF-α)の存在下でDCに分化し得る。さらに、サイトカイン(例えば、IL-2およびIL 7)を培養PBMCに添加してCTLを活性化することができる。次いで、PBMCから採取された活性化CTLまたは活性化CTLを含む、得られたPBMCを患者に投与することができる(例えば、静脈内投与を介して)。
【0096】
いくつかの実施形態では、本開示は、免疫療法の方法であって、
a.対象の末梢血単核細胞(PBMC)に本明細書で提供されるrAAVビリオンを感染させて感染PBMCを生成するステップと、
b.分化サイトカイン(例えば、GM-CSF、IL-4およびTNF-α)を添加して感染PBMCの単球を樹状細胞(DC)に分化させるステップと、
c.活性化サイトカイン(例えば、IL-2およびIL7)を添加して感染PBMCの細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を活性化して活性化CTLを生成するステップと、
d.必要に応じて、感染PBMCから活性化CTLを単離するステップと、
e.有効量の、活性化CTLまたは単離された活性化CTLを含む感染PMBCを対象に投与するステップと
を含む、免疫療法の方法を提供する。
【0097】
いくつかの実施形態では、免疫療法を必要とする対象は、がん、腫瘍、ウイルス感染または細菌感染と診断されている。
【0098】
いくつかの実施形態では、がんは、急性リンパ球性がん、急性骨髄性白血病、肺胞横紋筋肉腫、膀胱がん、骨がん、脳がん、乳がん、肛門、肛門管、直腸のがん、眼のがん、肝内胆管のがん、関節のがん、頸部、胆嚢または胸膜のがん、鼻、鼻腔または中耳のがん、口腔のがん、外陰のがん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性がん、結腸がん、食道がん、子宮頸がん、線維肉腫、消化管カルチノイド腫瘍、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、腎臓がん、喉頭がん、白血病、液体腫瘍、肝臓がん、肺がん、リンパ腫、悪性中皮腫、肥満細胞腫、黒色腫、多発性骨髄腫、鼻咽頭がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がん、膵臓がん、腹膜、網、および腸間膜がん、咽頭がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓がん、皮膚がん、小腸がん、軟部組織がん、固形腫瘍、胃がん、精巣がん、甲状腺がん、尿管がん、および/または膀胱がんである。いくつかの実施形態では、がんは、AFP陽性肝がん;BA46陽性乳がん;CT2.1陽性悪性黒色腫肺がん、胃がん、または他のCT2.1陽性悪性がん;CEA陽性肺がん、結腸がん、乳がん、または他のCEA陽性がん;CD20陽性悪性胸腺腫、リンパ腫、骨髄腫および他のCD20陽性肉腫;CD269陽性肝臓がん、CK19陽性肺がん、結腸がん、乳がんおよび他のCK19陽性がん;G250陽性悪性消化管腫瘍、腎臓がん、黒色腫および他のG250陽性がん;HPV-16 E6陽性子宮頸がんおよび他のHPV-16 E6陽性悪性腫瘍;HPV-16 E7陽性子宮頸がんおよび他のHPV-16 E7陽性悪性腫瘍;HPV-16 E6およびE7陽性子宮頸がんならびに他のHPV-16 E6およびE7陽性悪性腫瘍;HPV-18 E6陽性子宮頸がんおよび他のHPV-18 E6陽性悪性腫瘍;HPV-18 E7陽性子宮頸がんおよび他のHPV-18 E7陽性悪性腫瘍;HPV-18 E6およびE7陽性子宮頸がんならびに他のHPV-18 E6およびE7陽性悪性腫瘍;HER2/neu陽性乳がん、肺がん、胃腸腫瘍、腎臓がん、黒色腫および他のHER2/neu陽性悪性腫瘍;HM1.24陽性多発性骨髄腫、骨髄腫、およびリンパ腫;LMP-1陽性鼻咽頭癌およびリンパ腫;MAGE-A1陽性肺がん、胃腸腫瘍、腎臓がん、黒色腫および他のMAGE-A1陽性悪性腫瘍;MAGE-A2陽性肺がん、胃腸腫瘍、腎臓がん、黒色腫および他のMAGE-A2陽性悪性腫瘍;MAGE-A4陽性肺がん、胃腸腫瘍、腎臓がん、黒色腫および他のMAGE-A4陽性悪性腫瘍;MAGE-B1陽性肺がん、胃腸腫瘍、腎臓がん、黒色腫および他のMAGE-B1陽性悪性腫瘍;MAGE-C1陽性肺がん、胃腸腫瘍、腎臓がん、黒色腫および他のMAGE-C1陽性悪性腫瘍;MAGE-C1陽性肺がん、胃腸腫瘍、腎臓がん、黒色腫および他のMAGE-C1陽性悪性腫瘍;MART1陽性黒色腫および他のMART1陽性悪性腫瘍;MUC-1陽性悪性腫瘍;NY-ESO-1陽性悪性腫瘍;PSA陽性前立腺がん;PAP陽性前立腺がん;PSMA陽性前立腺がん、肺がん、乳がん、腎臓がんおよび他のPSMA陽性悪性腫瘍;PSCA陽性前立腺がん;SAGE1陽性肉腫、黒色腫および他のSAGE 1悪性腫瘍;SCC陽性扁平上皮癌;SPANX-A1陽性腺癌、肉腫および黒色腫;SPA17陽性腺癌、肉腫および黒色腫;ならびにサバイビン陽性悪性腫瘍である。
【0099】
いくつかの実施形態では、ウイルス感染は、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス、麻疹ウイルスまたはロタウイルスによる感染である。
【0100】
いくつかの実施形態では、細菌感染は、結核菌、ヘリコバクター、カンピロバクター、クロストリディウム属、ジフテリア菌、百日咳菌、ボレリア・ブルグドルフェリ、プラスモディウム属、コレラ菌、大腸菌、赤痢菌、腸チフス菌、および淋菌による感染である。
【実施例】
【0101】
実施例1
例示的なpAAV-CD14pの産生
本開示前の組換えアデノ随伴ウイルスベクターの多くに共通する特徴は、プロモーターが、CMVプロモーター、SV40初期プロモーター、AAV p5プロモーターなどの構成的プロモーターであることであった。以前のrAAVベクターによって導入された外因性遺伝子は、様々なヒト細胞で発現され得る。しかしながら、本開示に記載される例示的なpAAV-CD14pベクターは、これらのプロモーターを有しない。むしろ、本開示のrAAVベクターは、組織特異的または細胞特異的なCD14プロモーターを有する。本明細書で提供されるrAAVベクターによって運ばれる外因性遺伝子は、単球およびDCなどのCD14+細胞で特異的に発現されるが、CD14陰性(CD14-)細胞では有意および/または検出可能な発現はない。
【0102】
図1は、例示的なAAV/ヒトCD14プロモーターベクター(例示的なpAAV-CD14p)の概略図を提供する。このrAAVベクターは、ヒトCD14転写プロモーター(614bp)、AAV2型逆方向末端反復(ITR)配列(各々145塩基)、マルチクローニングサイト配列(MCS)、SV40後期ポリA配列(256bp)、β-ラクタマーゼ遺伝子(アンピシリン耐性遺伝子、Amp
r)、およびプラスミドが大腸菌で複製することを可能にする遺伝子エレメント(DH 5αなど)から構成される。
【0103】
例示的なrAAVベクターを以下のように調製した:完全なAAV-2ゲノムを含むpCAAV-2プラスミドを調製し、出発点として使用した。AAV-2ゲノム配列(GenBank:J01901.1)を参照として使用して、pCAAV-2プラスミドを2つの制限エンドヌクレアーゼ(BmgB IおよびSnaB I)で消化して、nt 165からnt 4493までのAAV-2のすべてのプロモーターおよび構造遺伝子(RepおよびCap)を欠失させて、ウイルスITR配列のみが保持されるようにした(nt 1-164およびnt 4494-4675)。
【0104】
ヒトCD14ゲノム配列(GenBank:HQ199230.1)を、CD14プロモーターを標的とするPCRプライマーを構築するための参照として使用した。プライマー配列を以下に提供する:
上流プライマー:5’-atgacgtggtgccaacagatgaggttc-3’(配列番号4;nt 2986-3004;BmgB Iリンカー);
下流プライマー:5’-attacgtagcagatctagtctctagaggtcgataagtcttccgaac-3’(配列番号3;nt 3599-3580;MCS(SnaB I、Bgl II、Xba I)リンカー)。
【0105】
全DNAをヒト単球から単離し、CD14プロモーターDNAをハイフィデリティPCRで増幅した(
図2)。精製したCD14プロモーターDNAを制限エンドヌクレアーゼBmgB IおよびSnaB Iで消化し、次いで制限エンドヌクレアーゼ消化pCAAV-2プラスミドに連結した。次に、SV40後期ポリA DNA配列をプラスミドに挿入し(
図3)、例示的なpAAV-CD14pベクターを産生した。
【0106】
例示的なpAAV-CD14pプラスミドへのCD14プロモーターの挿入を、制限酵素消化分析によって確認した。具体的には、例示的なpAAV-CD14pをBmgBIおよびSnaBIで消化し、ゲル電気泳動を行った。
図4は、CD14プロモーターDNAの適切なサイズのバンドを示す。さらに、例示的なpAAV-CD14pを配列決定して、ヒトCD14プロモーターが正しく配置されており、変異が導入されていないことを確認した(ベクター中のCD14プロモーター配列とGenBank中のDNA配列との間のアラインメント:
図5の(HQ199230.1)を参照されたい)。本明細書で提供される例示的なpAAV-CD14pプラスミドは、外因性遺伝子をMCS(例えば、pAAV-CD14p/外因性遺伝子)に挿入するように適宜改変され得る。
【0107】
実施例2:
感染性ビリオンの産生
アデノ随伴ウイルスは複製不全ウイルスであり、感染性ビリオンを組み立てるには自然界のヘルパーウイルス(アデノウイルスなど)が必要である。
図6は、野生型ヘルパーウイルスを含まず、複製コンピテントAAV-2を混入させずに、感染性rAAV(rAAV-CD14p/外因性遺伝子)ビリオンを調製する概略図を示す。pHelperプラスミドを構築し、これはAAVビリオンの組み立てに必要なアデノウイルス5型のVA、E2A、E3およびE4遺伝子ならびにAAV2型のRepおよびCap遺伝子を含む。pAAV-CD14/外因性遺伝子プラスミドをpHelperプラスミドでHEK 293細胞に共トランスフェクトした。感染性rAAVビリオンは、トランスフェクト細胞の培養の72~96時間後に生成された。rAAVビリオンの力価を、ドットブロットハイブリダイゼーションアッセイを使用して検出した。ヒトCD14プロモーターを標的とするジゴキシゲニン(DIG)標識DNAプローブを使用してrAAVビリオンを検出し、ローディング標準と比較した。
図7は、高力価の感染性rAAVビリオンを示す。したがって、本データは、例示的なpAAV-CD14pおよびpHelperプラスミド系が細胞培養においてrAAVビリオンを効果的に産生したことを実証している。
【0108】
実施例3
単球の単離および樹状細胞への分化
末梢静脈血を対象から採取した。Ficollを用いて末梢静脈血からPBMCを分離した。いくつかの実験では、接着細胞(単球)を非接着細胞(リンパ球)から分離するための培養方法を使用して単球をPBMCから分離した。簡潔には、PBMCを細胞培養培地(AIM-V培地GIBCO)に懸濁し、組織培養フラスコに添加した。次いで、PBMCを、単球がフラスコの底に接着するまで、37℃、5%CO2で2~4時間培養した。非接着細胞(リンパ球)を除去し、更なる実験のために保存した。接着細胞(単球)を培養で維持した。代替として、いくつかの実験では、滅菌抗CD14抗体標識磁気ビーズを使用して単球をPBMCから分離した。このプロセスにより、PBMC由来の単球を含有する画分およびリンパ球を含有する画分が得られた。
【0109】
次に、GM-CSF、IL-4およびTNF-αを含むサイトカインを連続的に添加すして単球のDCへの分化を誘導することによって、単球をDCに分化させた。0日目に、GM-CSF(800IU/mL)およびIL-4(1000IU/mL)を培地に添加した。培地を2日ごとに新鮮な培地およびサイトカインで置き換えた。5日目に、TNF-α(100IU/mL)を培地に添加した。分化培養は、細胞培養の6日目に成熟DCをもたらした。
【0110】
実施例4
CD14プロモーターはCD14発現細胞における外因性遺伝子発現を特異的に駆動する
次に、外因性遺伝子の発現に対するCD14プロモーターの特異性を試験した。最初に、実施例1に記載されるように例示的なpAAV-CD14pプラスミドにeGFPをクローニングして、pAAV-CD14p/eGFPを生成した。次に、pAAV-CD14p/eGFPおよびpHelperを上記のようにHEK 293細胞に共トランスフェクトすることによって感染性ビリオンを生成し、rAAV-CD14p/eGFPビリオンを採取した。
【0111】
次に、CD14
+単球およびDCにAAV-CD14p/eGFPウイルスを形質導入した。CD14
-末梢血リンパ球およびHEK 293細胞に、対照としてrAAV-CD14p/eGFPウイルスを形質導入した。eGFPの発現を蛍光顕微鏡法によって評価した。細胞がrAAV-CD14p/eGFPウイルスに感染してから72時間後、eGFPはCD14
+単球および樹状細胞で特異的に発現し、CD14
-リンパ球およびHEK 293細胞では発現しなかった(
図8)。したがって、データは、CD14プロモーターがCD14
+細胞における外因性遺伝子産物の発現を特異的に駆動することを実証している。
【0112】
実施例5
rAAV-CD14p/抗原ビリオンによって形質導入された単球および樹状細胞における抗原の発現
がん抗原の発現を試験するために、rAAV-CD14p/抗原ビリオンを、PSA、PSMA、PAP、CEA、CK19、MAGE-A3、サバイビンまたはMuc-1をそれぞれコードするDNA配列を、上記の方法を使用して実施例1に記載の例示的pAAV-CD14pプラスミドにクローニングすることによって生成した。これらのビリオンは、それぞれrAAV-CD14p/PSA、rAAV-CD14p/PSMA、rAAV-CD14p/PAP、rAAV-CD14p/CEA、rAAV-CD14p/CK19、rAAV-CD14p/MAGE-A3、rAAV-CD14p/サバイビン、およびrAAV-CD14p/Muc-1と呼ばれる。
【0113】
単球およびDCにおける抗原ペイロードのCD14プロモーター(CD14p)媒介発現を評価するために、単球にrAAV-CD14p/抗原ビリオンを形質導入し、培養中にDCに分化させた。まず、ヒト対象の末梢静脈血からPBMCを得た。実施例3に記載したようにPBMCから単球を分離し、細胞培養培地中で培養した。単球を分離した後、異なるrAAV-CD14p/抗原ウイルスを直ちに添加して50のMOIで単球培養物を分離し、実施例3に記載されているようにサイトカインを培養培地に添加して単球のDCへの分化を誘導した。
【0114】
異なるrAAV-CD14p/抗原ビリオンによって形質導入された単球およびDCにおける抗原の発現を、フローサイトメトリーを使用して形質導入後細胞培養の3日目に評価した。フローサイトメトリーの結果は、細胞の抗原の発現率が79.6%~91.7%の範囲であったことを示している(
図9)。データは、抗原発現の率が高く、rAAV-CD14p/抗原ビリオンの形質導入効率も高いことを示す。
【0115】
実施例6
rAAV-CD14p/サイトカインビリオンによって形質導入された樹状細胞におけるサイトカインの発現
サイトカインの発現を試験するために、rAAV-CD14p/サイトカインビリオンを、GM-CSFまたはIL-4をそれぞれコードするDNA配列を、上記の方法を使用して例示的なpAAV-CD14pプラスミドにクローニングすることによって生成した。これらのビリオンは、それぞれrAAV-CD14p/GM-CSFおよびrAAV-CD14p/IL-4と呼ばれる。CD14プロモーターではなく構成的p5プロモーターまたはCMVプロモーター、すなわちrAAV-p5/GM-CSFおよびrAAV-CMVp/IL-4を含む対照ベクターも産生した。
【0116】
単球をPBMCから分離し、rAAV-CD14p/サイトカインビリオンを形質導入し、上記のようにGM-CSF、IL-4およびTNF-αを用いたDC分化培養で培養した。形質導入の5日後、ルーチンのフローサイトメトリーを使用して、DCにおけるサイトカイン遺伝子の発現を検出した(
図10)。rAAV-CD14p/サイトカインウイルスを形質導入したDCにおけるサイトカイン発現のレベルは、形質導入されていない対照のものよりも有意に高かった(p<0.05)。フローサイトメトリーの結果はまた、rAAV-CD14p/サイトカイン遺伝子ウイルスのトランスフェクション効率が高かったことを実証している。驚くべきことに、構成的p5プロモーターまたはCMVプロモーターを有するrAAVビリオンの形質導入効率は、rAAV-CD14p/サイトカイン遺伝子ウイルスよりも有意に低かった(p=0.02~0.04)。
【0117】
実施例7
rAAV-CD14p/抗原を形質導入した細胞上での樹状細胞マーカーの発現
抗原特異的CTLのDC活性化に重要なマーカーの発現をフローサイトメトリーによって評価した。ヒトCD1a、CD40、CD80およびCD86は、DCのマーカーである。CD1aは、分化の初期に発現されるDCマーカーである。CD1a+DCは、刺激時に有意な量のIL-12 p70を産生し、IFN-γ産生CD4+T細胞を生成する。CD40、CD80およびCD86分子は、T細胞のDC刺激のための重要な共刺激分子として働く。CD80、CD86およびCD40の発現増加は、堅牢なCTL応答の生成に寄与する。CD40-CD40Lは、共刺激分子の対であり、それらの相互作用は、成功した適応免疫応答、特にCD8+CTLの発達にとって重要である。CD80は、DC機能およびCTL活性化における重要な成分である。DC上のMHCクラスII-ペプチド複合体がTヘルパー細胞上の受容体と相互作用すると、CD80はCD28を介してDCとCD8+Tリンパ球との間の相互作用を可能にする。CD28を介した相互作用は、Tリンパ球のCTLへの分化をシグナル伝達するのに役立つ。CD86は、Tリンパ球の活性化および生存に重要な共刺激シグナルを提供する。
【0118】
図11は、rAAV-CD14p/抗原ビリオンによって形質導入されたDCのCD1a、CD40、CD80およびCD86レベルが非常に高かったことを示す。rAAVを形質導入したDCのCDマーカーの高い発現レベルは、DCが免疫応答、特に抗原特異的CTL応答を刺激するように機能し得ることを示している。
【0119】
実施例8
rAAVを形質導入したDCにおけるIL-12およびIL-10の発現
IL-12およびIL-10の発現を、rAAV-CD14p/抗原ビリオンを形質導入したDCにおいて測定した。IL-12およびIL-10は、DC媒介性免疫応答において対照的な役割を果たすと考えられる。DCにおけるIL-12の高発現は、Th1応答を増強し、CTL増殖を増加させると考えられる。対照的に、IL-10の発現はTh2応答を増強すると考えられる。rAAV-CD14p/HPV16 E6-E7またはrAAV-CD14p/PSCAビリオンを形質導入したDCを、AAVタイプp5プロモーターまたはCMVプロモーターを有するビリオン、すなわちrAAV-p5/HPV16 E6-E7またはrAAV-CMVp/PSCAを形質導入したDCと比較した。p5プロモーターまたはCMVプロモーターは、CD14陰性細胞を含む様々なヒト細胞において外因性遺伝子を発現することができる。単球をPBMCから分離し、rAAVビリオンで形質導入し、上記のようにDCに分化させた。
図12に示すように、rAAV-CD14p/抗原ビリオン形質導入DCによって発現されたIL-12のレベルは、対照のレベルよりも有意に高かった(p<0.05)。
【0120】
データは、rAAV-CD14p/抗原遺伝子ウイルスによって単球およびDCをトランスフェクトした後、IL-12の発現レベルが上方制御され、IL-10の発現レベルが下方制御されたことを示している。rAAV-CD14p/抗原ビリオンを形質導入したDCは、AAVタイプp5プロモーターまたはCMVプロモーターを有するrAAVによってトランスフェクトされたDCよりも、抗原特異的CTLの殺傷能力を増強するのにより効率的であった。
【0121】
実施例9
DCへの単球の分化効率
ヒトCD14
+単球を、上記のようにGM-CSF、IL-4およびTNF-αの存在下で培養して、細胞をDCに分化させた。細胞培養6日目に多数のDCが検出された。分化効率を評価するために、培養中の残存する単球の数をフローサイトメトリーによって検出した。結果は、rAAV-CD14p/抗原ビリオンによって形質導入された残存する単球の数が、rAAV-p5/抗原ビリオンまたはrAAV-CMVp/抗原ビリオンによって形質導入された残存する単球の数よりも有意に低いことを示した(p<0.05)(
図13)。これらの結果は、予想外にも、ヒトCD14
+単球にrAAV-CD14p/抗原ビリオンを形質導入することによって、より多くのDCを得ることができることを示している。
【0122】
実施例10
リンパ球におけるIFN-γ発現のDC誘導
Th1応答を活性化するrAAV形質導入DCの能力を、DC細胞をリンパ球と共培養し、IFN-γ発現を測定することによって評価した。IFN-γは重要なTh1サイトカインである。Tリンパ球によるIFN-γの発現は、抗原特異的CTLが抗原陽性標的細胞を死滅させる能力と正の相関がある。
【0123】
単球にrAAV-CD14p/抗原ビリオンまたはrAAV-CMVp/抗原ビリオンを形質導入し、上記のように分化培養で6日間培養した。単球に、rAAV-CD14p/HPV18 E6-E7、rAAV-CD14p/CEA、rAAV-CD14p/MAGE-C2、rAAV-CMVp/HPV18 E6-E7、rAAV-CMVp/CEA、またはrAAV-CMVp/MAGE-C2を形質導入した。細胞培養の6日目に、DCを採取し、単球と同じドナーから採取したリンパ球と混合した。DCおよびリンパ球をIL-7(80IU/mL)およびIL-2(100IU/mL)の存在下で共培養した。培地およびサイトカインを2日ごとに交換した。細胞培養14日目にリンパ球を採取し、フローサイトメトリーによりIFN-γの発現レベルを測定した。
【0124】
結果は、rAAV-CD14p/抗原遺伝子ウイルスをトランスフェクトしたDCによって活性化されたTリンパ球によって発現されるIFN-γレベルが、rAAV-CMVp/抗原遺伝子ウイルスをトランスフェクトしたDCによって活性化されたTリンパ球によって発現されるIFN-γレベルよりも有意に高かったことを示している(
図14;p<0.05)。これは、rAAV-CMVp/抗原DCの数と比較してrAAV-CD14p/抗原形質導入DCの数が多く、その結果、CTLの生成が増加したためである可能性がある。換言すれば、CD14プロモーターを有するrAAVは、驚くべきことに、リンパ球がIFN-γを発現するように誘導するのにより効率的である。
【0125】
実施例11
CD69およびCD8のリンパ球発現
CD69およびCD8の発現レベルを、rAAV-CD14/抗原ビリオン形質導入DCと共培養したTリンパ球において評価した。CD69は、CTL(CD8+Tリンパ球)の早期活性化のマーカーである。単球にrAAV-CD14p/抗原ビリオン、rAAV-CMVp/抗原ビリオン、またはrAAV-p5/抗原ビリオンを形質導入し、上記の分化培養で6日間培養した。より具体的には、単球にrAAV-CD14p/HPV16 E6-E7、rAAV-CD14p/CK19、rAAV-CD14p/BA46、rAAV-CMVp/HPV16 E6-E7、rAAV-p5/CL19またはrAAV-CMVp/BA46を形質導入した。細胞培養6日目にDCを採取し、単球と同じドナーから採取したリンパ球と混合した。DCおよびリンパ球を、上記のようにIL-7およびIL-2の存在下で共培養した。DCおよびTリンパ球共培養の14日目に、フローサイトメトリーを使用して、T細胞集団中のCD69+/CD8+Tリンパ球の数を検出した。
【0126】
結果は、rAAV-CD14p/抗原遺伝子ウイルスをトランスフェクトしたDCによって活性化されたCD69
+/CD8
+Tリンパ球の数が、rAAV-p5/抗原遺伝子ウイルスまたはrAAV-CMVp/抗原遺伝子ウイルスをトランスフェクトしたDCによって活性化されたCD69
+/CD8
+Tリンパ球の数よりもはるかに多いことを示した(
図15)。データは、rAAV-CD14p/抗原ビリオンが、標的細胞に対する強固な殺傷活性を有するTリンパ球の生成において、p5またはCMV駆動ビリオンよりも効率的であることを示している。
【0127】
実施例12
標的細胞の細胞傷害性Tリンパ球殺傷
単球をrAAVビリオンによって形質導入し、上記のようにDCに分化させた。DCを上記のようにドナーリンパ球と共培養した。単球にrAAV-CD14p/HPV16 E6-E7、rAAV-CD14p/PSMAまたはrAAV-CD14p/MAGE-A3を形質導入した。DCおよびTリンパ球の共培養の14日目に、細胞を採取した。CTLを、それぞれのウイルス抗原または腫瘍抗原を発現する腫瘍組織から単離された細胞、すなわちHPV-16 E6およびE7抗原陽性子宮頸がん細胞、PSMA陽性前立腺がん細胞、およびMAGE-A3陽性非小細胞肺腺癌細胞と共培養した。ルーチンのクロム(51Cr)放出アッセイを使用して、rAAV-CD14p/抗原形質導入DCによってプライミングされたCTLの殺傷活性を分析した。
【0128】
図16は、rAAV-CD14p/抗原形質導入DCによってプライミングされたCTLの腫瘍抗原陽性およびウイルス抗原陽性標的細胞の一回の殺傷の割合が約50.2%~67.2%であったことを示す。対照実験では、CTLとの共培養の6時間前に抗ヒトMHCクラスI抗体を細胞培養物に添加し、腫瘍抗原陽性およびウイルス抗原陽性標的細胞の一回の殺傷の割合は約12.3~16.6であった。したがって、抗MHC-I抗体は、抗原陽性細胞の殺傷を劇的に減少させた(
図16)。さらに、一連の抗原陰性対照細胞は殺傷されなかった(
図16)。結果は、rAAV-CD14p/抗原形質導入DC細胞が、MHC-I拘束性様式で標的細胞の抗原特異的CTL殺傷を活性化することができたことを実証している。
【0129】
次に、rAAV-CD14p/HPV18 E6-E7、rAAV-CD14p/CEA、rAAV-CD14p/PSA、rAAV-CMVp/HPV18 E6-E7、rAAV-CMVp/CEA、またはrAAV-CMVp/PSAを形質導入したDCによって活性化されたCTL殺傷を比較した。改変DCを生成し、上記のようにドナーリンパ球と共培養した。CTLを、それぞれのウイルス抗原または腫瘍抗原を発現する腫瘍組織から単離された細胞、すなわちHPV-18 E6およびE7抗原陽性子宮頸癌細胞、PSA陽性前立腺癌細胞、およびCEA陽性非小細胞肺腺癌細胞と共培養した。CTLと抗原発現標的細胞との共培養および
51Cr放出アッセイによって殺傷活性を評価した。rAAV-CD14p/抗原形質導入DCによって誘発させたCTLによって殺傷された標的細胞の割合は、rAAV-CMVp/抗原形質導入DCによって誘発させたCTLによって殺傷された標的細胞の割合よりも有意に高かった(p<0.05)(
図17)。結果は、驚くべきことに、rAAV-CMVp/抗原形質導入DCによって活性化されたCTLよりも、rAAV-CD14p/抗原形質導入DCによって活性化されたCTLの方が、より強固な抗原特異的殺傷活性を示している。
【0130】
実施例13
標的細胞の細胞傷害性Tリンパ球殺傷
PBMCの混合培養におけるrAAV-CD14p/抗原特異性を評価するために実験を行った。ヒトPBMCは、主にリンパ球と少数の単球とから構成される。CD3は、Tリンパ球のマーカーである。この研究では、ヒトPBMCをrAAVに直接感染させた。rAAVは、rAAV-CD14p/抗原ウイルス、rAAV-CMVp/抗原ウイルス、またはrAAV-p5/抗原ウイルスであった。より具体的には、rAAV-CD14p/CK19、rAAV-CD14p/muc-1、rAAV-p5/CK19またはrAAV-p5/muc-1。GM-CSF、IL-4およびTNF-αをPBMC培養物に添加して、単球のDCへの分化を促進した。培養6日目に、IL-2およびIL7を上記のように添加した。細胞培養培地およびサイトカインを2日ごとに交換した。14日目に、PBMCを採取し、CD3+Tリンパ球の数をフローサイトメトリーによって分析した。
【0131】
結果(
図18)は、rAAV-CD14p/抗原形質導入PBMC中のCD3
+Tリンパ球の数が、0日目の形質導入前のCD3
+細胞の数と比較して14日目までに増加したことを実証している。対照的に、rAAV-p5/抗原およびrAAV-CMVp/抗原を形質導入したPBMC中のCD3
+細胞の数は有意に減少した。rAAV-p5/抗原またはrAAV-CMVp/抗原を形質導入したPBMC中のCD3
+細胞数の減少は、活性化CTLによる標的に対してだけでなくそれ以外の組織に対する殺傷の結果であると考えられる。p5プロモーターおよびCMVプロモーターは構成的プロモーターであるので、rAAV-p5/抗原またはrAAV-CMVp/抗原ビリオンによって形質導入されたCD3
+細胞も抗原を発現し、抗原特異的CTLによって標的とされる。対照的に、CD14プロモーターは、DCにおける抗原の発現を特異的に駆動する。したがって、rAAV-CD14p/抗原ビリオンはCD3
+Tリンパ球に感染し得るが、CD3
+細胞は抗原を発現せず、培養中に抗原特異的CTLによって殺傷されない。
【0132】
したがって、この研究は、細胞免疫療法におけるrAAV-CD14p/抗原ビリオンの適用がより安全であることを示唆するだけでなく、CTLを調製するための新規かつ迅速な方法も提供する。この研究の結果によれば、PBMCから単球を最初に分離することなく、rAAV-CD14p/抗原遺伝子ウイルスにPBMCを直接感染させてCTLを調製することができる。対照的に、DCによって活性化されたCTLを調製する以前の方法は、PBMCから単球を分離する最初のステップが必要であった。
【0133】
上記の様々な実施形態を組み合わせて、更なる実施形態を提供することができる。本明細書で言及され、かつ/または2020年10月15日に出願された米国仮特許出願第63/092,239号を含む出願データシートに列挙された米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物はすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、必要に応じて、さらに別の実施形態を提供するために様々な特許、出願および刊行物の概念を使用するように変更することができる。
【0134】
これらおよび他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではなく、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲と共にすべての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。したがって、特許請求の範囲は本開示によって限定されない。
【配列表】
【国際調査報告】