IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティーの特許一覧

特表2023-545852養子細胞療法のための注射可能なヒドロゲル
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-31
(54)【発明の名称】養子細胞療法のための注射可能なヒドロゲル
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/12 20150101AFI20231024BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231024BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 38/19 20060101ALI20231024BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20231024BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20231024BHJP
【FI】
A61K35/12
A61K9/51
A61P37/04
A61K9/08
A61K47/38
A61P35/00
A61K39/395 N
A61K38/19
A61K35/17
A61K47/60
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023524096
(86)(22)【出願日】2021-10-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 US2021055897
(87)【国際公開番号】W WO2022087164
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】63/094,243
(32)【優先日】2020-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】グロスコフ アビゲイル ケイト
(72)【発明者】
【氏名】アペル エリック アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】マッコール クリスタル
(72)【発明者】
【氏名】ラバニエ ローエイ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA65
4C076AA95
4C076CC07
4C076CC27
4C076EE24
4C076EE32
4C076EE41
4C076FF70
4C084AA02
4C084DA01
4C084MA28
4C084MA38
4C084MA66
4C084NA13
4C084ZB07
4C084ZB26
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB43
4C087BB64
4C087MA28
4C087MA38
4C087MA66
4C087NA13
4C087ZB07
4C087ZB26
(57)【要約】
免疫療法送達システムは、ヒドロゲルと、ヒドロゲル中にカプセル化された細胞を含む免疫調節性カーゴ、細胞への接着および細胞の放出を可逆的に行うように構成された、ヒドロゲル中の細胞接着モチーフ、ならびにヒドロゲル中にカプセル化された免疫調節性カーゴと、を含む。ヒドロゲルは、複数のナノ粒子と非共有結合的に架橋されたポリマーを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のナノ粒子と非共有結合的に架橋されたポリマーを含む、ヒドロゲル;
該ヒドロゲル中にカプセル化された細胞を含む、第1の免疫調節性カーゴ;
該細胞への接着および該細胞の放出を可逆的に行うように構成された、該ヒドロゲル中の細胞接着モチーフ;ならびに
該ヒドロゲル中にカプセル化された第2の免疫調節性カーゴ
を含む、免疫療法送達システム。
【請求項2】
細胞接着モチーフが、細胞への接着および細胞の放出を可逆的に行うように構成されたペプチドを含む、請求項1記載の免疫療法送達システム。
【請求項3】
細胞接着モチーフが、細胞上のインテグリンに結合するように構成される、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項4】
細胞接着モチーフが、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)ペプチドを含む、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項5】
ナノ粒子が、細胞接着モチーフを含む、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項6】
ナノ粒子が、細胞接着モチーフを提示するように構成される、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項7】
細胞に養子細胞が含まれる、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項8】
細胞に、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞またはキメラ抗原受容体(CAR)ナチュラルキラー細胞が含まれる、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項9】
第2の免疫調節性カーゴにタンパク質が含まれる、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項10】
第2の免疫調節性カーゴにサイトカインが含まれる、請求項1~8のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項11】
ヒドロゲルが、5%未満のポリマーを含む、請求項1~10のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項12】
ヒドロゲルが、1.5%~3%のポリマーを含む、請求項1~10のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項13】
ヒドロゲルが、約2%のポリマーを含む、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項14】
ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項15】
ポリマーが、疎水性脂質ドデシル鎖を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含む、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項16】
ナノ粒子が、ポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)を含む、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項17】
ナノ粒子が、ポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)に結合された細胞接着モチーフを含む、請求項16記載の免疫療法送達システム。
【請求項18】
ナノ粒子が、10:90~90:10の比の、細胞接着モチーフを伴うポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)および細胞接着モチーフを伴わないポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)を含む、請求項17記載の免疫療法送達システム。
【請求項19】
ナノ粒子が、25:75~75:25の比の、細胞接着モチーフを伴うポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)および細胞接着モチーフを伴わないポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)を含む、請求項17記載の免疫療法送達システム。
【請求項20】
ヒドロゲルが、4~12%のナノ粒子を含む、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項21】
ヒドロゲルが、シアシニング性かつ自己修復性である、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項22】
前記ヒドロゲルの入った注射器またはカテーテルをさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システム。
【請求項23】
前記請求項のいずれか一項記載の免疫療法送達システムを患者に送達する段階;および
前記ヒドロゲルから該患者体内に細胞を放出する段階
を含む、疾患を治療する方法。
【請求項24】
1日~4週間続く期間にわたってヒドロゲルから細胞を放出する段階をさらに含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
免疫療法送達システムが、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の期間にわたって細胞を放出する、請求項23または24記載の方法。
【請求項26】
第2の免疫調節性カーゴを用いて細胞を活性化する段階をさらに含む、請求項23~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
ヒドロゲル中の細胞の数を増やす段階をさらに含む、請求項23~26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
疾患が固形腫瘍がんである、請求項23~27のいずれか一項記載の方法。
【請求項29】
細胞が自己由来である、請求項23~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
細胞が自家である、請求項23~28のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
細胞が、腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する、請求項23~30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
患者もしくはドナーから細胞を取り出す段階;
該取り出された細胞を単離する段階;
細胞の数をインビトロで増やす段階;
取り出された、かつ/もしくは増やされた該細胞を改変する段階;および/または
送達する段階の前に、ヒドロゲル中に該細胞をカプセル化する段階
をさらに含む、請求項23~31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
細胞が、連続的に、ヒドロゲル中の細胞接着モチーフに結合しおよびそれから脱離する、請求項23~32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
送達する段階が、注射器またはカテーテルを介して免疫療法送達システムを送達することを含む、請求項23~33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
送達する段階が、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、および皮下からなる群より選択される経路によって患者に免疫療法送達システムを送達することを含む、請求項23~34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
患者に免疫療法送達システムを送達する段階が、治療を必要とする患者のある領域に局所的に該システムを送達することを含む、請求項23~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
患者に免疫療法送達システムを送達する段階が、患者の固形腫瘍がんに該システムを送達することを含む、請求項23~36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
患者に免疫療法送達システムを送達する段階が、治療を必要とする患者のある領域から遠い位置に該システムを送達することを含む、請求項23~35のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
疾患が、固形腫瘍がんを含み、患者に免疫療法送達システムを送達する段階が、該固形腫瘍がんから遠い該患者体内の位置に該システムを送達することを含む、請求項23~35のいずれか一項または請求項37記載の方法。
【請求項40】
患者に免疫療法送達システムを送達する段階が、該患者の全身に該システムを送達することを含む、請求項23~35または請求項37~39のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる、2020年10月20日に出願された「Injectable Hydrogels for Adoptive Cell Therapy」という表題の米国仮特許出願第63/094,243号に対して優先権を主張する。
【0002】
参照による引用
本明細書中で言及されるすべての刊行物および特許出願は、個々の刊行物または特許出願のそれぞれが参照により組み入れられることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、その全体が参照により組み入れられる。
【0003】
分野
細胞および免疫調節性カーゴを送達するためにヒドロゲルを利用する、システム、方法、および組成物(キットを含む)が、本明細書において説明される。これらの方法および組成物は、がんを治療するため、および特に固形腫瘍を治療するための免疫療法ニッチとして特に有用であり得る。
【背景技術】
【0004】
背景
アメリカ人の推定1820万人、すなわちおよそ19人に1人が、がん患者またはがん生存者である。これらのがんの多くは、固形腫瘍である。がん患者の固形腫瘍に治療的細胞をターゲティングするための細胞工学アプローチが、開発されてきた。1つのアプローチにおいて、治療的細胞は、注入プロセスによって血液中に送達される。しかし、固形腫瘍は、多くのチェックポイント阻害物質による稠密で厳しい環境を有しており、注入された治療的細胞がこれらの固形腫瘍を見付けそれらに進入することができない場合がある。
【0005】
がん治療のための治療的細胞には、患者に由来する免疫細胞が含まれ得る。養子細胞療法(ACT)は、がんを治療するための有望な戦略である。ACTプロセスでは、免疫細胞を患者から採取し、単離し、がんとの闘いを助ける受容体を用いて操作し、増殖させ、次いで、治療物質として患者に注入する。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、がん細胞において過剰発現される抗原を標的とするように操作された免疫細胞である。ACTの使用は、B細胞白血病およびリンパ腫を含む血液がんを治療する際に幅広く有効であるが、固形腫瘍の治療においては限定的な成功しかこれまでに得られていない。B細胞悪性腫瘍を治療するためのいくつかの療法が、最近、米国食品医薬品局(U.S. FDA)によって承認され、この成功を固形腫瘍用途にも応用しようとする多数の協調的取り組みが進行中である。あいにく、限定的な成功しか得られておらず、その理由は、例えば、これらの治療戦略が成功するには典型的に多数のCAR-T細胞が必要とされ、これには、比較的長期間、例えば7~10日間の、高価かつ複雑かつ大きな労働力を要する細胞のエクスビボ増殖が必要とされることにある。さらに、細胞を長期にわたってエクスビボ増殖することにより、しばしば、移入されたCAR-T細胞のエフェクター能力が限定され得る。したがって、必要とされるCAR-T細胞用量を減らすことによってエクスビボ増殖時間を短くするための戦略は、CAR-T療法の臨床応用および幅広い普及に役立つと思われる。さらに、治療に必要な細胞用量を減らすと、例えばサイトカインストームおよび神経毒性といったこれまで治療に関連付けられてきた重度の副作用が軽減する可能性も高いと思われる。
【0006】
現在、CAR-T細胞は、静脈内(IV)注入によって血液を介して送達されている。血液がんを治療するためにはT細胞が固形腫瘍微小環境を発見し進入する必要がないことから、これは、血液がんを治療する際には有効であり得るが、固形腫瘍では有効ではない。残念ながら、静脈内注入によって投与されたT細胞はまた、しばしば、肺内に閉じ込められ、固形腫瘍に対する不十分な進入を示す。腫瘍の近くにT細胞を送達するための、局所領域的な細胞送達方法(特に、生体材料スキャフォールドを活用するもの)の使用は、腫瘍部位でのT細胞の局所増殖の増進を示して、腫瘍への進入を改善し、固形腫瘍の治療を改良する。あいにく、局所領域的なACTのために開発された生体材料スキャフォールドには、腫瘍部位に到達するための侵襲的な外科埋め込み処置を要することなどの制約があり、このことが、これらの方法の応用および使用を妨げている。
【0007】
さらに、CAR-T細胞は活性化されなければならず、CAR-T細胞は、腫瘍部位で完全に活性化された状態である場合に、最も効果的であり得る。具体的なCAR-T活性化に必要とされる高いサイトカイン局所濃度は、全身に送達された場合には著しく毒性である。現在、これらの毒性を回避するために、患者への送達前に限って高濃度のサイトカインのもとでT細胞を増殖させる。サイトカインを送達するための局所領域的アプローチは、全身的なサイトカイン曝露を限定し、かつ毒性を低下させ、したがって、インビボで養子T細胞を高度に活性化された状態で維持する可能性を示すと思われる。
【0008】
さらに、T細胞疲弊は、(例えばサイトカインによる)長期の抗原刺激に起因する、T細胞のエフェクター機能の漸次消失を表し、T細胞疲弊は、患者に再発を招き得る。通常、効率的なT細胞活性化は、次の3種のシグナルを必要とする:T細胞受容体シグナル伝達(1)、共刺激分子による活性化(2)、および免疫刺激性サイトカイン(3)。シグナル(1)およびシグナル(2)は、いくつかの細胞工学アプローチによって実現されているが、シグナル(3)は現在の治療戦略では依然としてほとんど未達成である。T細胞の持続性は、長続きする応答のための重要な臨床的決定因子であり得、固形腫瘍を対象とする臨床試験において特に不十分であった。したがって、T細胞をサイトカインまたはサイトカインシグナル伝達ドメインで補ってT細胞の持続性を高めるための多数の戦略が、探索されてきた。サイトカインは、天然の状態では著しく局所的なシグナル伝達事象であり、血液注入によって高濃度で患者に送達された場合には、サイトカインは著しく毒性であり得る。サイトカインIL-15、IL-2、IL-12、およびIL-7はどれも、有望な結果を示しているが、CAR-T療法の援助に関しては別個のメカニズムを示している。サイトカインを送達することへの局所的アプローチは、いくらかの有効性を示しているが、これらの技術は、大規模なサイトカイン操作およびサイトカインに結合するある種の生物学的シグネチャーの存在を必要とした。生体材料およびヒドロゲルは、細胞を刺激性因子に局所的に曝露して該細胞を普通は調節するリンパ節の環境に類似した人工的環境を作り出すための、魅力的な工学的機会をもたらす。
【0009】
したがって、これらおよび他の制限に対処するための新しい治療が必要とされている。これらおよび他の制限に対処し得る方法および器具が、本明細書において説明される。
【発明の概要】
【0010】
開示の概要
細胞および他のカーゴなどの免疫調節性カーゴをカプセル化および送達するために有用なヒドロゲルを利用する、システム、方法、および組成物(キットを含む)が、本明細書において説明される。細胞および他のカーゴは、免疫療法を必要としている患者に送達される免疫調節性構成要素であってよい。ヒドロゲルシステムは、細胞への接着および細胞の放出を可逆的に行い、かつ細胞がヒドロゲルを通って移動し出て行くことを可能にするように構成された、細胞接着モチーフを含むことができる。患者に送達された場合、これらのシステムは、細胞ニッチ(例えば、免疫細胞のための免疫細胞ニッチ)の役割を果たして、ある期間(例えば、時間、日、週、月)にわたってゆっくりと細胞を放出し、患者に送達し得る。ヒドロゲルシステムはまた、インビボで細胞を刺激するための第2の免疫調節性カーゴ(例えばサイトカイン)を含んでよく、かつヒドロゲルからの細胞放出の前にそうしてもよい。ヒドロゲルは、物理的に架橋され、かつ相対的に小さな細孔/メッシュを有してよい。驚くべきことに、ヒドロゲルシステムは、サイトカインなどの何らかのカーゴをヒドロゲル中に保ちつつ、サイトカインよりずっと大型の分子、例えば細胞の放出を促進および制御するように構成され得る。サイトカインなどの何らかの免疫調節性カーゴに対しては、ヒドロゲルの相対的に小さな細孔/メッシュサイズにより、(例えば、免疫調節性カーゴがヒドロゲルに結合されていない場合でさえ)、該免疫調節性カーゴがヒドロゲルの外に拡散するのを防ぐことができる。一部の分子、例えば、ある種の濃度のサイトカインは、患者にとって毒性であり、多様な有害作用を引き起こす可能性があるため、本明細書において説明されるヒドロゲルシステムは、関連する毒性を伴わない、治療的に有用な量の免疫細胞の送達を促進し得る。これらのシステムは、細胞を維持するための小型の栄養物の拡散を可能にし得る。これらの方法および組成物は、がんを治療するため、および特に固形腫瘍を治療するための免疫療法ニッチとして特に有用であり得る。
【0011】
ヒドロゲルシステムに由来する細胞は、多数が腫瘍に到達することに加えて、活性化される必要もある場合があり、活性化のタイミングおよび活性化シグナルが重要であり得る。T細胞疲弊は、(例えばサイトカインによる)長期の抗原刺激に起因する、T細胞のエフェクター機能の漸次消失を表し、T細胞疲弊は、再発を招き得る。通常、効率的なT細胞活性化は、次の3種のシグナルを必要とする:T細胞受容体シグナル伝達(1)、共刺激分子による活性化(2)、および免疫刺激性サイトカイン(3)。シグナル(1)およびシグナル(2)は、細胞工学アプローチによって実現されているが、シグナル(3)は現在の治療戦略では依然としてほとんど未達成である。T細胞の持続性は、長続きする応答のための決定的に重要な臨床的決定因子であり得、固形腫瘍を対象とする臨床試験において特に不十分であった。したがって、サイトカインまたはサイトカインシグナル伝達ドメインでT細胞を補ってそれらの持続性を高めるための多数の戦略が、探索されている。サイトカインは、天然の状態では著しく局所的なシグナル伝達事象であり、注入によって高濃度で患者に送達された場合には、サイトカインは著しく毒性であり得る。IL-15、IL-2、IL-12、およびIL-7はどれも、有望な結果を示しているが、CAR-T療法の援助に関しては別個のメカニズムを示している。サイトカインを送達することへの局所的アプローチは、いくらかの有効性を示しているが、技術は、大規模なサイトカイン操作およびサイトカインに結合するある種の生物学的シグネチャーの存在を必要とした。生体材料およびヒドロゲルは、細胞を刺激性因子に局所的に曝露してリンパ節の環境に類似した人工的環境を作り出すための、魅力的な工学的機会をもたらす。以前の生体材料アプローチでは、インビトロ増殖およびインビボ治療の両方のために活性化シグナルを材料に結合させたが、本発明者らは、ヒドロゲルメッシュサイズが十分に小さく設計された場合には、刺激性分子を材料に単に混合し、同時に局所的シグナル伝達および拡散の減速を引き続き実現することが可能であることを提唱する。
【0012】
注射可能なポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルを用いる、CAR-T細胞送達のための新しい方法が、本明細書において説明される。これらのヒドロゲルは、細胞をカプセル化し、簡単な注射によって腫瘍部位に(局所的に)送達するために、拡大縮小可能な化学および迅速な配合を有利に利用し得る(図1Eを参照されたい)。ほとんどのヒドロゲルシステムと比べて小さい孔径を有し、拡散が制限されるため、これらのヒドロゲルは、単純な混合により、養子細胞を活性化するための局所的シグナルを保持することができる。このモジュールシステムを用いて、様々なサイトカインを治療に組み入れて、さらなるモジュール式の個別化された治療を可能にすることができる。ヒドロゲルの網様構造をまとめている超分子の一時的相互作用は、注入後の急速な(即時の)自己修復、および注入またはカテーテル送達により身体の多くの部分の腫瘍に達するためのアクセスを可能にすることができる。本明細書において説明される新規の細胞送達戦略を用いた場合に、従来の方法と比べて、腫瘍と闘う際の有効性が上昇することが実証された。
【0013】
通常、免疫療法送達システムは、ヒドロゲル、ヒドロゲル中にカプセル化された細胞を含む第1の免疫調節性カーゴ、細胞への接着および細胞の放出を可逆的に行うように構成された、ヒドロゲル中の細胞接着モチーフ、ならびにヒドロゲル中にカプセル化された第2の免疫調節性カーゴ、を含む。ヒドロゲルは、複数のナノ粒子と非共有結合的に架橋されたポリマーを含む。
【0014】
この態様および他の態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。細胞接着モチーフは、細胞への接着および細胞の放出を可逆的に行うように構成されたペプチドを含むことができる。細胞接着モチーフは、細胞上のインテグリンに結合するように構成され得る。細胞接着モチーフは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)ペプチドを含むことができる。ナノ粒子は、細胞接着モチーフを含むことができる。ナノ粒子は、細胞接着モチーフを提示するように構成され得る。
【0015】
この態様および他の態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。細胞には、養子細胞が含まれ得る。細胞には、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞またはキメラ抗原受容体(CAR)ナチュラルキラー細胞が含まれ得る。
【0016】
この態様および他の態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。第2の免疫調節性カーゴには、タンパク質が含まれ得る。第2の免疫調節性カーゴには、サイトカインが含まれ得る。
【0017】
この態様および他の態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。ヒドロゲルは、5%未満のポリマーを含むことができる。ヒドロゲルは、1.5%~3%のポリマーを含むことができる。ヒドロゲルは、約2%のポリマーを含むことができる。ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むことができる。ポリマーは、疎水性脂質ドデシル鎖を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むことができる。
【0018】
ナノ粒子は、ポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)を含むことができる。ナノ粒子は、ポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)に結合された細胞接着モチーフを含むことができる。ナノ粒子は、10:90~90:10の比の、細胞接着モチーフを伴うポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)と細胞接着モチーフを伴わないポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)とを含むことができる。ナノ粒子は、25:75~75:25の比の、細胞接着モチーフを伴うポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)と細胞接着モチーフを伴わないポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)とを含むことができる。
【0019】
ヒドロゲルは、4~12%のナノ粒子を含むことができる。ヒドロゲルは、シアシニング性かつ自己修復性であることができる。
【0020】
この態様および他の態様は、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。免疫療法送達システムは、ヒドロゲルの入った注射器またはカテーテルを含むことができる。
【0021】
通常、疾患を治療する方法は、前述した免疫療法送達システムのいずれかを患者に送達する段階;および細胞をヒドロゲルから患者の体内に放出する段階を含む。
【0022】
この方法および他の方法は、1日~4週間続く期間にわたってヒドロゲルから細胞を放出する段階を含むことができる。
【0023】
この方法および他の方法は、免疫療法送達システムが少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間の期間にわたって細胞を放出する場合を含むことができる。
【0024】
この方法および他の方法は、第2の免疫調節性カーゴを用いて細胞を活性化する段階をさらに含むことができる。この方法および他の方法は、ヒドロゲル中の細胞の数を増やす段階をさらに含むことができる。
【0025】
この方法および他の方法において、疾患は、固形腫瘍がんであることができる。
【0026】
この方法および他の方法において、細胞は、自己由来であることができる。この方法および他の方法において、細胞は、自家であることができる。
【0027】
この方法および他の方法において、細胞は、腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を発現することができる。
【0028】
この方法および他の方法は、患者またはドナーから細胞を取り出す段階;取り出された細胞を単離する段階;取り出された細胞を(例えば受容体を用いて)改変する段階;細胞の数をインビトロで増やす段階;および/または送達する段階の前に、ヒドロゲル中に細胞をカプセル化する段階、のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0029】
この方法および他の方法において、細胞は、連続的に、ヒドロゲル中の細胞接着モチーフに結合しおよびそれから脱離することができる。
【0030】
この方法および他の方法において、送達する段階は、注射器またはカテーテルを介して免疫療法送達システムを送達することを含むことができる。
【0031】
この方法および他の方法において、送達する段階は、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、および皮下からなる群より選択される経路によって患者に免疫療法送達システムを送達することを含むことができる。
【0032】
この方法および他の方法において、送達する段階は、治療を必要とする患者のある領域に局所的に、患者に免疫療法送達システムを送達することを含むことができる。この方法および他の方法において、送達する段階は、患者の固形腫瘍がんに免疫療法送達システムを送達することを含むことができる。
【0033】
この方法および他の方法において、送達する段階は、患者に免疫療法送達システムを送達することを含むことができる。この方法および他の方法において、送達する段階は、治療を必要とする患者のある領域から遠い位置に該システムを送達することを含むことができる。この方法および他の方法において、疾患が固形腫瘍がんを含む場合、免疫療法送達システムを患者に送達する段階は、固形腫瘍がんから遠い、患者体内の位置に該システムを送達することを含むことができる。この方法および他の方法において、免疫療法送達システムを患者に送達する段階は、患者の全身に該システムを送達することを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本明細書において説明される方法および装置の特徴および利点についての、より深い理解は、例示的な態様を説明する下記の詳細な説明ならびにそれらの添付図を参照することにより得られるであろう。
図1-1】図1A~1Tは、ポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルの形成を示す。PNPヒドロゲルは、CAR-T細胞移動および小型サイトカインの放出を制御することができる。図1A~1Cは、生体高分子および分解性ナノ粒子の自己組立による、CAR-T細胞および刺激性サイトカインをカプセル化するためのPNPヒドロゲルの形成を示す。図1Aは、ドデシル修飾ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC-C12)出発物質の形成を概略的に示す。図1Bは、ポリポリ(エチレングリコール)-ブロックポリラクチド(PEG-b-PLA)出発物質の形成を概略的に示す。図1Cは、免疫療法において使用するための注射可能なヒドロゲル中に細胞および調節物質をカプセル化するためのプロセスを概略的に示す。図1Dは、がん治療のための細胞の全身投与を示す従来の静脈内(IV)注入を概略的に示す。図1Eは、患者に制御送達するためのヒドロゲル中にカプセル化された細胞および調節物質を含む本明細書において説明される免疫療法送達システムを用いる、細胞の局所投与の例を概略的に示す。図1F~1Rは、固形腫瘍にCAR-T細胞を送達するための送達方法を概略的に示す。図1Fは、すべての研究のために使用されたB7H3 CAR構築物の概略図を示す。図1Gは、B7H3 CAR-T細胞が効率的に形質導入されることを示す。B7H3 CAR-T細胞の形質導入効率は、B7H3-Fcを用いる染色によって測定される。図1Hは、一方の注射器(左)に入れた生体高分子溶液と他方の注射器(右)に入れたRGD修飾ナノ粒子、細胞、およびサイトカインの溶液とをルアーロックミキサーを用いて混合することによる、PNPヒドロゲルの配合を示す。図1Iは、図1Hに示される溶液を30秒間そっと混合した後、細胞を均一にカプセル化する固体様のPNPヒドロゲルが形成される(右の注射器)ことを示す。図1Jは、細胞が搭載されたPNPヒドロゲルの、26G針を通した、支持体の上への注射を示す。図1Kは、強固な固体様のヒドロゲルデポーが図1Jに示される支持体上で形成され、該デポーが重力によって顕著に流れないことを示す。図1Lは、指定された配合の範囲内のPNPヒドロゲル内でのCAR-T細胞運動性を評価するためのインビトロ実験の仕組みの概略図を示す。図1M~1Oは、様々なヒドロゲル組成物における、移動するCAR-T細胞の軌跡を示す。図1Mは、PNP-1-1ヒドロゲルにおける、移動するCAR-T細胞の軌跡を示す。図1Nは、PNP-1-5ヒドロゲルにおける、移動するCAR-T細胞の軌跡を示す。図1Oは、PNP-2-10ヒドロゲルにおける、移動するCAR-T細胞の軌跡を示す。PNP-1-1、PNP-1-5、PNP-2-10ヒドロゲル配合物を試験した。その際、1番目の数字はHPMC-C12ポリマーの重量%であり、2番目の数字はNPの重量%である。これらの軌跡は、可視化を容易にするために共通の起点からプロットした。各グリッドの幅は50μmである。図1Pは、細胞移動実験(すべての試料について、n>150個の細胞;平均値±s.e.m.)によって定量された、様々なPNPヒドロゲル配合物におけるCAR-T細胞移動の速度を示す。図1Q~1Tは、本明細書において説明されるPNPシステムが、制御された量のCAR-T細胞をある期間にわたって放出できることを示す。図1Qは、ある期間にわたって細胞放出を測定するための試験装置を概略的に示す。100万個のCAR-T細胞を、3種の異なるヒドロゲル配合物および溶媒ボーラス群に搭載した。ある期間に各試料から放出された細胞の数を計数した。図1Rは、図1Qに示される仕組みからある期間に放出された細胞の累積数を示す。図1Sは、PNP 1-5が8日後に最多数の細胞を含むことを示す。図1Sは、図1Qに示される試験装置で試験された3種の異なるヒドロゲル配合物のそれぞれにおける、8日目に残存している細胞の数を示す。図1Tは、図1Qに示される試験装置で試験された3種の異なるヒドロゲル配合物に含まれる細胞が依然として生存可能であることを示す。
図1-2】図1-1の説明を参照のこと。
図1-3】図1-1の説明を参照のこと。
図1-4】図1-1の説明を参照のこと。
図1-5】図1-1の説明を参照のこと。
図1-6】図1-1の説明を参照のこと。
図1-7】図1-1の説明を参照のこと。
図1-8】図1-1の説明を参照のこと。
図1-9】図1-1の説明を参照のこと。
図2図2Aは、本明細書において説明されるヒドロゲル送達システムを用いてCAR-T細胞によって動物を処置した後に、生存率および腫瘍の減少または消失が改善したことを示す。図2Aは、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞を用いる免疫療法処置後の、発光性髄芽腫腫瘍を有する動物モデルにおける、ある期間にわたる腫瘍を対象とした動物全身発光イメージングの結果を示す。ナノ粒子と非共有結合的に架橋されたポリマーを有するヒドロゲル中のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞による処置またはPBSによる処置の後、腫瘍は検出不可能であった。未処置の動物は死亡した。図2Bは、本明細書において説明されるポリマー-ナノ粒子ヒドロゲル送達システムを用いて送達されたCAR-T細胞からの着実なキメラ抗原受容体(CAR)T細胞増殖を示す。図2Bはまた、腫瘍を標的とするCAR-T細胞の移動も示す。発光性のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞が髄芽腫腫瘍動物モデルに送達された後に、動物の全身をイメージングして、ある期間にわたって該細胞を検出した。図2Cは、本明細書において説明されるポリマー-ナノ粒子ヒドロゲル送達システムを用いてキメラ抗原受容体(CAR)T細胞で動物を処置すると、腫瘍が消失するかまたは腫瘍が減少して検出不可能になることを示す。図2Cは、様々な処置の場合の、ある期間にわたる腫瘍発光の定量を示す。各線は、個々のマウスに相当する。グラフの下側部分の網掛けは、試料採取期間中の平均バックグラウンドノイズを表す。
図3図3Aは、ヒドロゲル中にIL-15サイトカインを含めると、本明細書において説明されるポリマー-ナノ粒子ヒドロゲル送達システムを用いてキメラ抗原受容体(CAR)T細胞で動物を処置した後に腫瘍が減少または消失することを示す。2×106個のキメラ抗原受容体(CAR)T細胞を、様々な処置戦略を用いて動物モデルの髄芽腫腫瘍に送達し、これらの動物をルミネセンスイメージングに供した。図3Bは、様々な処置の場合の、ある期間にわたる腫瘍発光の定量を示す。各線は、個々のマウスに相当する。グラフの下部の網掛けは、試料採取期間中の平均バックグラウンドノイズを表す。
図4図4A図4Bは、腫瘍から遠くに送達される本明細書において説明されるポリマー-ナノ粒子ヒドロゲル送達システムを用いて、髄芽腫腫瘍動物モデルに由来する動物をキメラ抗原受容体(CAR)T細胞で処置すると、腫瘍が消失するかまたは腫瘍が減少して検出不可能になることを示す。図4Aは、ポリマー-ナノ粒子ヒドロゲル送達によるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の全身送達後に腫瘍を検出するための、ある期間にわたる動物全身のイメージングを示す。図4Bは、ポリマー-ナノ粒子ヒドロゲル送達によるキメラ抗原受容体(CAR)T細胞の全身送達後の、ある期間にわたる腫瘍発光の定量を示す。各線は、個々のマウスに相当する。
図5-1】図5A図5Kは、PNPヒドロゲルによって治療有効性が高まりCAR-T細胞増殖が増進することを示す。図5Aは、以下を含む様々な送達方法で投与される2×106個のCAR-T細胞でマウス中の皮下ヒト髄芽腫を処置するがん実験の実験予定表を示す:(i)静脈内ボーラス、(ii)皮下ボーラス、(iii)0.25ug IL-15を含む皮下ボーラス送達、(iv)PNP-1-5ヒドロゲル、および(v)0.25μg IL-15を含むPNP-1-5ヒドロゲル。結果を図5B図5Jに示している。図5Bは、全実験群の腫瘍を対象とする発光イメージングの結果を全時点について示す。図5Cは、全実験群のイメージングデータの定量を示し、赤色の網掛けは、データのバックグラウンドシグナルを表す(いずれの群もn=8~10、2回の実験)。図5Dは、各処置における治癒までの日数を示し、該日数は、インビボイメージング装置のバックグラウンドシグナルより低いレベルに発光シグナルが低下し、かつ留まる時間と定義される(いずれの群もn=8~10、2回の実験;平均値±s.d.)。図5Eは、対応する全実験群における、CAR-T細胞を対象とする発光イメージングの結果を示す。図5Fは、全実験群のイメージングデータの定量を示し、グラフの下側の網掛けは、データのバックグラウンドシグナルを表す(いずれの群もn=3~6、2回の実験)。図5Gは、21日後のCAR-T細胞の発光シグナルを示す(いずれの群もn=3~6、2回の実験;平均値±s.d.)。図5Hは、CAR MFIの結果を示す(いずれの群もn=3;平均値±s.d.)。図5Iは、CD3+T細胞の総数を示す(いずれの群もn=3のレプリケート;平均値±s.d.)。図5Jは、CD4+およびCD8+の相対的含有量の解析の結果を示す(いずれの群もn=3の平均値)。図5Kは、MED8A腫瘍モデルにおける処置後10日目にPNP-1-5ゲルから抽出された、エクスビボで増殖させたCAR-T細胞のメモリーCAR-T細胞サブセットから得られた結果を示す(いずれの群もn=3のレプリケートの平均値)。
図5-2】図5-1の説明を参照のこと。
図5-3】図5-1の説明を参照のこと。
図5-4】図5-1の説明を参照のこと。
図5-5】図5-1の説明を参照のこと。
図5-6】図5-1の説明を参照のこと。
図6-1】図6A図6Fは、PNPヒドロゲルが、マウスにおいて遠位の皮下ヒト髄芽腫を処置するにあたって有効であることを示す。図6Aは、マウスにおける皮下腫瘍の配置および遠位の皮下処置を示す概略図を示す。図6Bは、実験の予定表および処置配置についての概略図を示し、その際、マウスは、(i)2×106個のCAR-T細胞および0.25μg IL-15の遠位皮下ボーラス注射または(ii)2×106個のCAR-T細胞および0.25μg IL-15を含むPNP-1-5ヒドロゲルのいずれかを施された。図6C図6Fは、図6A図6Bに示される実験の結果を示す。図6Cは、インビボイメージングによる腫瘍の代表的な発光イメージングの結果を示す(各群n=5のマウス)。図6Dおよび図6Eは、両実験群(図6Dの遠位ボーラス、ならびに図6Eの2×106個のCAR-T細胞および0.25μg IL-15を含むPNP-1-5ヒドロゲル)についてのイメージングデータの定量結果を示し、グラフの下側の網掛けは、データのバックグラウンドシグナルを表す(n=5のマウス)。図6Fは、各処置における治癒までの日数を示し、該日数は、発光シグナルがインビボイメージング装置のバックグラウンドシグナルより低いレベルに低下した時間と定義される(平均値±s.d.)。
図6-2】図6-1の説明を参照のこと。
図7】HPMCへのドデシル側鎖の結合が成功していることを示す。トレースAは、ドデシル/-イソチオシアナート出発物質を対象とする1H-NMR(DMSO-d6)を示す。トレースBは、ヒプロメロース(HPMC)出発物質を対象とする1H-NMR(DMSO-d6)を示す。トレースCは、ドデシル修飾されたHPMC(HPMC-C12)を対象とする1H-NMR(DMSO-d6)を示し、これは、ドデシル側鎖上の末端メチル基の出現を0.86ppmの位置に示していることから、HPMCへのドデシル側鎖の結合が成功していることが分かる。
図8図8A図8Dは、ポリマーおよびナノ粒子を様々な重量パーセントで含むPNPヒドロゲル配合物のレオロジーを示す。1番目の数字はポリマーの重量パーセントを表し、2番目の数字はナノ粒子の重量パーセントを表す。図8Aは、全配合物についての25℃での周波数スイープ(ひずみ=1%)を示す。図8Bは、120秒までの定常状態検出を用いた25℃での全配合物についてのフロースイープを示す。図8Cは、全配合物についての25℃での振幅スイープ(w=10rad/s)を示す。図8Dは、3種の配合物についてのレオロジーパラメーターの概要を示す。
図9図9A図9Cは、RGD結合型ナノ粒子を使用することおよび1mL当たり2000万個の細胞をカプセル化することの効果を調査する、PNP-1-5ヒドロゲル配合物についてのレオロジーを示す。図9Aは、全配合物についての25℃での周波数スイープ(ひずみ=1%)を示す。図9Bは、全配合物についての25℃でのフロースイープを示す。全配合物についての25℃での振幅スイープ(w=10rad/s)。図9Cは、ひずみの関数として弾性率を示す。
図10】光退色後蛍光回復(FRAP)実験を用いて測定された、RGD機能的ナノ粒子を含むヒドロゲル配合物PNP-1-1、PNP-1-5、およびPNP-2-10のヒドロゲルマトリックス自己拡散性を示す。
図11図11A図11Bは、PNPヒドロゲルによってインビボ条件下でのIL-15の安定性が向上することを示す。図11Aは、4日の期間にわたって緩衝液中に浸された100μLのPNP-1-5ヒドロゲル中での、0.25μg IL-15の保持比率を調査する研究の結果を示す。データは、4日間にわたって回収された総量および4日目の時点にゲル中になお残存しているIL-15の量に対して標準化される。このプロット図において、丸い点は実験データを表し、滑らかな線は、収集されたデータへの一相指数関数的減少フィットを表す。図11Bは、PNPヒドロゲルによってインビボ条件下でのIL-15の安定性が向上することを示す。これらの研究では、0.25μgのIL-15を各試料に添加したが、37℃での試料のインキュベーションの結果、各種の配合物中で引き続き活性であることが判明したのは該タンパク質の一部のみであった。37℃で4日間、生理食塩水中で経時変化した活性IL-15の(最初に添加された量と比較した)比率(%)、37℃での(4日間にわたる)放出研究の全期間にわたって回収された活性IL-15の比率(%)、および(37℃での)ゲルからの放出研究の4日目に回収された活性IL-15の比率(%)から、放出研究中に回収されたIL-15のうちで引き続き活性であったIL-15の比率は、PNPヒドロゲル群の方が高いことが示された。これらの研究から、IL-15に対するPNPヒドロゲルの強力な安定化効果が実証される。
図12】PNP-1-5ヒドロゲル中にカプセル化された場合にCAR-T細胞増殖にIL-15が与える影響を評価するためのWSTアッセイ法の結果を示す。IL-15を含まない対照に対する相対的シグナル(プレートリーダーを用いてOD=450nmでの吸光度を読み取った)を報告した。データは、平均値±s.d.として示している。この研究に基づき、IL-15濃度2.5μg/mLを、本明細書において説明されるインビボ研究のために使用した。
図13図13A図13Cは、PNPヒドロゲル構造内のナノ粒子にRGDを結合させると、これらのヒドロゲル中にカプセル化されたCAR-T細胞の移動が増えることを示す。図13Aは、RGD部分の結合がある場合とない場合の、PNP-1-5ヒドロゲル配合物内でのCAR-T細胞の速度を示す(データは、平均値/pmSEMとして示している)。図13Bは、図に示された、RGDを有するPNP-1-5ヒドロゲル配合物内での、移動するCAR-T細胞の軌跡を示す。図13Cは、図に示された、RGDを有していないPNP-1-5ヒドロゲル配合物内での、移動するCAR-T細胞の軌跡を示す。これらの軌跡は、可視化を容易にするために共通の起点からプロットしている。各グリッドは50μmである。
図14図14A図14Bは、1mL当たり細胞2000万個の量でカプセル化され3日間培養された、IL-15が搭載されたPNPゲルにおける、ミトコンドリア生合成の主要調節因子であるPGC-1αの発現の増大を示す。様々なPNPヒドロゲル配合物中にカプセル化されたCD8+T細胞(図14A)およびCD4+T細胞(図14B)におけるPGC-1α染色のMFI。示されているデータは、平均値±SEMである。
図15】IL-15を含むPNP-1-5ヒドロゲルに1mL当たり細胞2000万個の量で混合して送達されるCAR-T細胞と比べた、CARを有していないT細胞(モックT細胞)を含む対照群の結果を示す。インビボイメージングシステムを用いた腫瘍イメージング。これらの研究において、対照群については1回の実験を行いn=5であり、PNP-1-5 IL-15群については2回の実験を行いn=8(n=3およびn=5)である。
図16A図16A図16Dは、PNPヒドロゲル中の800万個のCAR-T細胞および翻訳的に関連性のある対照を送達するインビボ実験の結果を示す。図16Aは、インビボイメージングシステムを用いた腫瘍イメージングの結果を示す(いずれの群もn=5、1回の実験)。図16Bは、腫瘍イメージングによる発光シグナルの、対応する定量の結果を示す。図16Cは、インビボイメージングシステムを用いたCAR-T細胞イメージングを示す。図16Dは、CAR-T細胞イメージングによる発光シグナルの、対応する定量の結果を示す(いずれの群もn=5、1回の実験)。
図16B図16Aの説明を参照のこと。
図16C図16Aの説明を参照のこと。
図16D図16Aの説明を参照のこと。
図17図17A図17Bは、異なる送達方法を用いた場合の、インビボでのIL-15の薬物動態を示す。図17Aは、PNP-1-5ヒドロゲル、皮下生理食塩水ボーラス、および静脈内生理食塩水ボーラスの皮下注射によって送達された場合の、48時間にわたるIL-15血清中濃度の結果を示す。これらの研究では、すべての群において0.25μgの用量のIL-15が投与された。データは、平均値±s.d.として示している。(いずれの群もn=3、1回の実験)。図17Bは、異なる送達方法における、48時間の評価期間にわたる対応する曲線下面積(AUC)を示す。データは、平均値±s.d.として示している(いずれの群もn=3、1回の実験)。
図18】PNP1-5 IL-15処置によって治癒が増えることを示す。図18は、実験期間中に治癒したマウスの比率を示している(n=8~10のマウス)。これらの研究において、「治癒した」とは、インビボイメージング装置のバックグラウンドシグナルより低いレベルに低下し、かつ留まる、発光腫瘍シグナルを示すことと定義された。
図19-1】図19A図19Fは、PNP-1-5 IL-15処置の結果として生じる、細胞増殖の顕著な増加を示す。CAR-T細胞(200万個)をIL-15と同時送達し、これは、0.25μgの用量のIL-15を、静脈内にまたはPNPヒドロゲル内に同時カプセル化して送達した。図19Aは、インビボイメージングシステムを用いた腫瘍イメージングの結果を示す。図19Bは、腫瘍イメージングによる発光シグナルの、対応する定量を示す(PNP-1-5 IL-15群についてはn=8、2回の実験;IV群についてはn=9、1回の実験)。図19Cは、各処置による急性毒性が原因で死亡したマウスのパーセントを示す。図19Dは、各群について実験データに基づいて予測される、治癒までの日数を示す。図19Eは、インビボイメージングシステムを用いたCAR-T細胞イメージングを示す(いずれの群もn=5)。図19Fは、CAR-T細胞イメージングによる発光シグナルの、対応する定量を示す(PNP IL-15群についてはn=6、2回の実験;IV IL-15群についてはn=5、1回の実験)。図19Gは、各実験群におけるCAR-T細胞増殖の傾きを示し、これにより、PNP-1-5 IL-15処置の結果として生じる、細胞増殖の顕著な増加が実証される。
図19-2】図19-1の説明を参照のこと。
図19-3】図19-1の説明を参照のこと。
図20図20A図20Bは、200万個のCAR-T細胞とIL-15の同時送達について、PNPヒドロゲル中の用量が0.25ug/マウスの場合または2.5ug/マウスの場合を比較するインビボ実験の結果を示す。図20Aは、インビボイメージングシステムを用いた腫瘍イメージングの結果を示す。図20Bは、腫瘍イメージングによる発光シグナルの、対応する定量を示す。これらの実験において、0.25μg群については2回の実験を行いn=8(n=5およびn=3)であり、2.5μg群については1回の実験を行いn=5である。
図21A図21A図21Bは、PNP-1-5ヒドロゲル中の0.25μg IL-2または0.25μg IL-15のいずれかとCAR-T細胞(200万個)との同時送達を比較するインビボ実験の結果を示す。図21Aは、インビボイメージングシステムを用いた腫瘍イメージングの結果を示す。図21Bは、腫瘍イメージングによる発光シグナルの、対応する定量を示す(IL-15群についてはn=8、2回の実験;IL-2群についてはn=5、1回の実験)。図21Cは、インビボイメージングシステムを用いたCAR-T細胞イメージングの結果を示す(いずれの群もn=5)。図21Dは、CAR-T細胞イメージングによる発光シグナルの、対応する定量を示す。これらの研究において、IL-15群については2回の実験を行いn=6(n=3およびn=3)であり、IL-2群については1回の実験を行いn=5である。
図21B図21Aの説明を参照のこと。
図21C図21Aの説明を参照のこと。
図21D図21Aの説明を参照のこと。
図22-1】図22A図22Fは、インビボでの5日間の後に外植した、CAR-T細胞(200万個)およびIL-15を含むPNP-1-5ヒドロゲルの組織像を示す。図22A図22Cは、様々な倍率(スケールバーによって示している)下でのヘマトキシリン-エオシン染色の画像を示し、最高倍率の画像は、ヒドロゲルの中央に、顕著なマトリックス沈着の徴候を有する細胞を示している。図22D図22Fは、様々な倍率(スケールバーによって示している)下でのCD3染色(ピンク)の画像を示す。
図22-2】図22-1の説明を参照のこと。
図23-1】図23A図23Fは、様々な送達方法でのCAR-T細胞(200万個)を用いた処置後3日目の血液において測定されたマウス炎症性サイトカインレベルの結果を示し、これらは、未処置マウス(1群当たりn=3のマウス)について測定された値を基準として報告された。低IL-15群には、0.25μg/マウスのIL-15を与えた(有効性研究に相当する用量)。高IL-15群には、2.5μg/マウスのIL-15を与えた。図23Aは、TNFaについての結果を示す。図23Bは、IL-6についての結果を示す。図23Cは、IL-1Bについての結果を示す。図23Dは、GM-CSFについての結果を示す。図23Eは、IFNgについての結果を示す。図23Fは、IL-10についての結果を示す。
図23-2】図23-1の説明を参照のこと。
図24-1】図24A図24Fは、様々な送達方法でのCAR-T細胞(200万個)を用いた処置後3日目の血液において測定されたヒト炎症性サイトカインレベルを示し、これらは、未処置マウス(1群当たりn=3のマウス)について測定された値を基準として報告された。低IL-15群には、0.25μg/マウスのIL-15を与えた(有効性研究に相当する用量)。高IL-15群には、2.5μg/マウスのIL-15を与えた。図24Aは、TNFaについての結果を示す。図24Bは、IL-6についての結果を示す。図24Cは、IL-1Bについての結果を示す。図24Dは、GM-CSFについての結果を示す。図24Eは、IFNgについての結果を示す。図24Fは、IL-10についての結果を示す。
図24-2】図24-1の説明を参照のこと。
図25A図25A図25Cは、PNPヒドロゲルから抽出されたCAR-T細胞におけるT細胞活性化マーカー発現についての解析結果を示す。図25Aは、PD1染色のMFIを示す。図25Bは、4-1BB染色のMFIを示す。図25Cは、CD39染色のPDIを示す。上の図はCD4+PDIを示し、下の図はCD8+PDIを示す。CAR-T細胞は、MED8A腫瘍モデルにおける処置後10日目に採取した。データは、平均値±SEMとして示している(n=3)。
図25B図25Aの説明を参照のこと。
図25C図25Aの説明を参照のこと。
図26A図26A図26Dは、CAR-T細胞で処置されたマウスから得られたT細胞メモリーサブセットの解析結果を示す。T細胞メモリーサブセットは、CD62L染色およびCD45RA染色に基づいて測定し、図26A(血液CD8+細胞)および図26B(血液CD4+細胞)は、血液試料についての結果を示す。図27C(脾臓CD8+細胞)および図27D(脾臓CD4+細胞)は、脾臓試料についての結果を示す。試料は、MED8A腫瘍モデルにおけるCAR-T細胞投与後10日目に採取した。データは、平均値±SEMとして示している(n=3)。これらの結果は、上から下に、EM、TCM、TSCM、およびEF/EMRAである。
図26B図26Aの説明を参照のこと。
図26C図26Aの説明を参照のこと。
図26D図26Aの説明を参照のこと。
図27図27Aおよび図27Bは、CAR-T細胞で処置されたマウスに由来するT細胞の計数結果を示す。MED8A腫瘍モデルにおけるT細胞投与後10日目に採取された、図27A(血液試料)および図27B(脾臓試料)に由来するT細胞の定量。データは、平均値±SEMとして示している(n=3)。
図28】実験期間中に治癒したマウスの比率を示している(どちらの群もn=5のマウス)。これらの研究において、「治癒した」とは、インビボイメージング装置のバックグラウンドシグナルより低いレベルに低下し、かつ留まる、発光腫瘍シグナルを示すことと定義された。
図29A図29Aおよび図29Bは、腫瘍(右側腹部の皮下)から遠い、反対側の(左)側腹部に皮下投与された場合の、CAR-T細胞増殖を比較するインビボ実験の結果を示す。CAR-T細胞(200万個)を、PNP-1-5ヒドロゲルまたは生理食塩水ボーラスに混合して、0.25μg/マウスの用量のIL-15と同時投与した。図29Aは、インビボイメージングシステムを用いたCAR-T細胞イメージングを示す(いずれの群もn=5)。図29Bは、CAR-T細胞イメージングによる発光シグナルの、対応する定量を示す(いずれの群もn=5)。
図29B図29Aの説明を参照のこと。
図30A図30A図30Eは、遠位で処置したマウスから得られたCAR-T細胞の計数値およびメモリーサブセットを示す。図30Aは、血液に由来するCAR-T細胞の総量の定量結果を示す。CD62L染色およびCD45RA染色に基づいて測定された、血液試料(図30Bおよび図30C)ならびに脾臓試料(図30Dおよび図30E)に由来するCAR-T細胞メモリーサブセット。CAR-T細胞は、MED8A腫瘍モデルにおける処置後10日目に採取した。データは、平均値±SEMとして示している(n=3)。結果は、上から下に、EM、TCM、TSCM、およびEF/EMRAである。
図30B図30Aの説明を参照のこと。
図30C図30Aの説明を参照のこと。
図30D図30Aの説明を参照のこと。
図30E図30Aの説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0035】
詳細な説明
養子細胞療法(ACT)は、がんを治療するための有望な戦略である。ACTプロセスでは、免疫細胞を患者から採取し、単離し、がんと闘うために受容体を用いて操作し、増殖させ、次いで、治療物質として患者に注入する。キメラ抗原受容体(CAR)T細胞は、がん細胞において過剰発現される抗原を標的とするように操作されている。この戦略は、B細胞白血病およびリンパ腫を含む血液がんを治療する際に幅広く有効であるが、固形腫瘍の治療においては限定的な成功しかこれまでに得られていない。B細胞悪性腫瘍を治療するためのいくつかの療法が、最近、米国食品医薬品局(US FDA)によって承認され、この成功を固形腫瘍用途にも応用しようとする多数の協調的取り組みが進行中である。あいにく、現在の治療戦略が成功するには多数のCAR-T細胞が必要とされることが典型的であり、これには、7~10日間の、高価かつ複雑かつ大きな労働力を要する細胞のエクスビボ増殖が必要とされる。さらに、長期にわたってエクスビボ増殖することにより、しばしば、移入されるCAR-T細胞のエフェクター能力が限定され得る。したがって、必要とされるCAR-T細胞用量を減らすことによってエクスビボ増殖時間を短くするための戦略は、CAR-T療法の臨床応用および幅広い普及に役立つと思われる。さらに、治療に必要な細胞用量を減らすと、サイトカインストームおよび神経毒性といった治療に付随する重度の副作用が軽減する可能性も高いと思われる。
【0036】
現在、CAR-T細胞は、例えば図1Dに示されるように、血管28を介して静脈内(IV)注入によって送達されており、これは、T細胞が固形腫瘍微小環境を発見し進入する必要がないことから、血液がんを治療する際には有効である。残念ながら、このようにして投与されたT細胞14は、しばしば、肺内に閉じ込められ、固形腫瘍に対する不十分な進入を示す。局所領域的な細胞送達方法、特に、生体材料スキャフォールドを活用するものは、腫瘍部位でのT細胞の局所増殖の増進を示して、腫瘍への進入を改善し、固形腫瘍の治療を改良する。あいにく、局所領域的なACTのために開発された生体材料スキャフォールドは、腫瘍部位に到達するための侵襲的な外科埋め込み処置を要し、このことが、応用を妨げている。
【0037】
CAR-T細胞は、腫瘍部位で完全に活性化された状態である場合に、最も効果的であり得る。ある種のCAR-T活性化に必要とされる高いサイトカイン局所濃度は、全身に送達された場合には著しく毒性である。現在、これらの毒性を回避するために、送達前に限って、高濃度のサイトカインのもとでT細胞を増殖させる。サイトカインを送達するための局所領域的アプローチは、全身的なサイトカイン曝露を限定し、かつ毒性を低下させ、したがって、インビボで養子T細胞を高度に活性化された状態で維持する可能性を示す。
【0038】
CAR-T細胞およびサイトカインの両方の送達に関する局所領域的な研究からこれらの有望な結果が得られたことから、これらの次世代生体材料が、CAR-T細胞および刺激性分子の制御された同時送達のための治療戦略を変える可能性がある。細胞および他のカーゴをカプセル化および送達するために有用なヒドロゲルを利用する、システム、方法、および組成物(キットを含む)が、本明細書において説明される。細胞および他のカーゴは、免疫療法の療法を必要としている患者に送達される免疫調節性構成要素であってよい。
【0039】
定義:
養子細胞移入とは、患者体内に免疫細胞が移入されることを意味する。養子細胞は、患者または別の対象から単離され、遺伝子改変され、インビトロで継代(増殖)され、かつ患者体内に移入されてよい。移入され得る養子細胞には、リンパ球(T細胞)、ナチュラルキラー細胞、樹状細胞、および幹細胞が含まれる。
【0040】
ナチュラルキラー(NK)細胞とは、特異的な抗原刺激の非存在下で、かつ主要組織適合性複合体(MHC)クラスに基づく拘束を受けずに、標的細胞を通常は死滅させる、免疫システムの細胞を意味する。標的細胞は、がん細胞または腫瘍細胞であってよい。ナチュラルキラー細胞は、歴史的に見ると、CD56表面マーカーの存在およびCD3表面マーカーの非存在という特徴を示し、他の形態のナチュラルキラー細胞もまた、特徴を明らかにされている。通常、ナチュラルキラー細胞は、その中でナチュラルキラー細胞が濃縮された不均一な細胞集団である。内因性NK細胞は、患者の自己由来治療または同種治療を目的とするものであってよい。
【0041】
自己由来とは、それらの細胞を有するかまたは受けとる予定である同一人物に由来する細胞に関係する。T細胞は個体に遺伝的に一致しているため、自己由来T細胞の移入は、細胞を受けとる人物における移植片対宿主病(GvHD)のリスクを低下させる。
【0042】
同種とは、それらの細胞を受けとる予定であるレシピエントとは異なるドナーに由来する細胞に関係する。T細胞は個体に遺伝的に一致しているため、同種T細胞の移入は、移植片対宿主病(GVHD)と呼ばれる非常に重篤な併発症を引き起こす可能性がある。T細胞(例えばCAR-T細胞)を複雑な遺伝子編集プロセスに供して、同種細胞移入時のGVHDのリスクを低下させることができる。T細胞は個体に遺伝的に一致しているが、ナチュラルキラー細胞はそうではない。したがって、ドナーのナチュラルキラー細胞は、移植片対宿主病(GvHD)についての心配をせずにレシピエントに注射することができる。また、このことは、同種CAR-T細胞が経る複雑な遺伝子編集プロセスを同種CARナチュラルキラー細胞は経る必要がないことも意味する。
【0043】
移植片対宿主病(GVHD)とは、ある種の同種細胞移入の、重篤になる可能性がある併発症を意味する。移植片対宿主病は、軽度、中等度、重度、または生命を脅かす程度であり得る。レシピエントの体は、宿主細胞を異物とみなし、それらを攻撃して、皮膚、消化管、または肝臓に対して一連の影響、例えば、発疹、水疱、悪心、嘔吐、腹部痙攣、食欲不振、下痢、肝損傷、および黄疸をもたらす。
【0044】
サイトカインとは、免疫システムでの細胞シグナル伝達において重要な生物学的分子の一般的なクラスを意味する。サイトカインは、もともとは、免疫システムの特定の細胞によって分泌される約5kDa~約20kDaのサイズの小型タンパク質として同定された。サイトカインは、標的細胞上のそれ自身の受容体を介して作用し、これらの受容体には、免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーおよび腫瘍壊死因子(TNF)のメンバーが含まれる。サイトカインは一般名称である;他の名称は、推測されるそれらの機能、分泌する細胞、または作用の標的に基づいて定義される。例えば、リンパ球によって作られるサイトカインは、リンフォカインと呼ぶこともできる。リンフォカインの多くは、白血球によって分泌されるだけでなく、白血球の細胞応答に影響を及ぼすこともできるため、これらはインターロイキン(IL)としても公知である。単球またはマクロファージによって分泌されるサイトカインは、モノカインと呼ばれる。そして、ケモカインは、走化活性を有するサイトカインである。サイトカインの例には、IL-2、IL-12、IL-15、IL-18、およびIL-21が含まれる。
【0045】
インテグリンとは、細胞外リガンド、細胞リガンド、および可溶性リガンドに結合するための膜貫通細胞表面受容体を意味する。インテグリンは、αサブユニットおよびβサブユニットを有するヘテロ二量体タンパク質として特徴付けられており、αサブユニットおよびβサブユニットは、異なるドメイン構造を有している。種々のαサブユニットおよびβサブユニットは、それぞれ、種々のβサブユニットおよびαサブユニットとヘテロ二量体を形成し得る。例えば、β1は、α1、α2、α3、およびα4と(個別に)ヘテロ二量体を形成し得る。関心対象のインテグリンには、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)に結合するものが含まれる。
【0046】
物理的架橋は、架橋を意味し、もつれた鎖、水素結合、疎水性相互作用、およびポリマー中での結晶形成が含まれ得る。
【0047】
固形腫瘍とは、細胞の異常な固形のかたまりを意味する。このかたまりは、液体も嚢胞も含まない。固形腫瘍には、肉腫、例えば、血管、骨、脂肪組織、靭帯、リンパ管、筋肉、または腱において発生する腫瘍、およびがん腫、例えば、皮膚、腺、および器官内壁を含む上皮細胞において発生する腫瘍が含まれる。
【0048】
腫瘍内とは、腫瘍の内部を意味する。
【0049】
免疫療法とは、免疫応答を誘導、促進、抑制、または別のやり方で変更することを含む方法による、疾患または病態の治療または予防を意味する。
【0050】
キメラ抗原受容体(CAR)とは、細胞内シグナル伝達ドメインに融合された細胞外抗原結合ドメインを有する、人工的に構築されたハイブリッドタンパク質またはポリペプチドを意味する。細胞外抗原結合ドメインは、抗原に対して特異的である抗体の抗原結合ドメイン(例えば、単鎖可変断片(scFv))であることができる。scFvドメインは、腫瘍特異的抗原を含む任意の抗原を認識するように操作することができる。細胞内シグナル伝達ドメインは、細胞シグナル伝達ドメインまたは細胞活性化ドメインに連結することができる。CARは、モノクローナル抗体の抗原結合特性を利用して、MHCに拘束されない様式で、細胞の特異性および反応性を選択された標的に向ける能力を有する。MHCに拘束されないこの抗原認識は、抗原プロセシングに依存せずに抗原を認識し、それによって腫瘍エスケープの主要メカニズムを迂回する能力を、CAR発現細胞に与える。関心対象のCARを、T細胞またはナチュラルキラー(NK)細胞において発現させて細胞障害性を高める。
【0051】
腫瘍特異的抗原とは、がん細胞または新生細胞上に存在するが、がん細胞と同じ組織または系統に由来する正常細胞上では検出されない抗原を意味する。本明細書において使用される場合、腫瘍特異的抗原とは、腫瘍関連抗原、すなわち、がん細胞と同じ組織または系統に由来する正常細胞と比べた場合に、より高いレベルでがん細胞上で発現される抗原も意味する。がんにおいて、腫瘍細胞と同じ組織に由来する正常細胞とを区別する表現型変化は、特定の遺伝子産物の発現についての1つまたは複数の変化に関連付けられていることが多く、該変化には、正常細胞の表面構成要素の減少または他の構成要素(すなわち、対応する正常な非がん組織では検出不可能な抗原)の増加が含まれる。腫瘍特異的抗原は、腫瘍表現型のマーカーとして役立ち得る。腫瘍特異的抗原の例には、次の3つの主要グループに割り当てられたものが含まれる:がん/精巣特異的抗原(例えば、MAGE、BAGE、GAGE、PRAME、およびNY-ESO-1)、メラニン細胞分化抗原(例えば、チロシナーゼ、Melan-A/MART、gp100、TRP-1、およびTRP-2)、ならびに変異した抗原または異常に発現された抗原(例えば、MUM-1、CDK4、β-カテニン、gp100-in4、p15、およびN-アセチルグルコサミン転移酵素V)。
【0052】
薬物とは、体内に導入された場合に生理学的作用を有する医薬品または他の物質を意味する。
【0053】
有効量とは、所望の治療的効果を実現するのに十分な、組成物または物質の量、例えば、がん細胞または疾患(例えばがん)に関連する1つもしくは複数の症状の改善をもたらす量を意味する。対象に投与される第1の免疫調節性カーゴ(例えば細胞)または第2の免疫調節性カーゴ(例えばサイトカイン)の量は、がんの種類および進行、ならびに個体の特徴、例えば、全体的健康状態、年齢、性別、体重、および薬物に対する耐性に左右され得る。該量はまた、疾患の程度、重症度、および種類にも左右され得る。当業者は、これらおよび他の因子に応じて適切な投与量を決定することができるであろう。本明細書において説明される(ユーザーインターフェースを含む)方法のいずれも、ソフトウェア、ハードウェア、またはファームウェアとして実現されてよく、かつプロセッサー(例えば、コンピューター、タブレット、スマートフォンなど)が実行可能な指示一式を保存する非一時的コンピューター可読記憶媒体として説明されてよい。該非一時的コンピューター可読記憶媒体は、プロセッサーによって実行される場合、プロセッサーに、表示する段階、使用者と情報交換する段階、解析する段階、(タイミング、頻度、強さなどを含む)パラメーターを変更する段階、決定する段階、または警告する段階などを非限定的に含む段階のいずれかの実施を制御させる。
【0054】
細胞の単離とは、組織試料(例えば、血液組織、胎盤組織)から細胞を引き離すかまたはそうでなければ取り出し、かつ該細胞を該組織中の他の細胞または非細胞物から分離させる工程を意味する。単離された細胞は、通常、他の細胞型の混入がなく、通常、繁殖および増殖させることができる。
【0055】
単離された細胞、例えば、単離されたT細胞は、組織、例えば、該細胞の由来元である血液または胎盤に含まれる他の異なる細胞から実質的に分離されている細胞を含む。細胞は、細胞集団、または該細胞集団の由来元である細胞が、天然では一緒に存在している細胞、すなわち、異なるマーカープロファイルを示している細胞のうち少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または少なくとも99%が、例えば、細胞の採取および/または培養の間に細胞から除去される場合、「単離されて」いる。いくつかの態様において、単離された細胞は、細胞の解析、生産、または増殖のための細胞の利用を邪魔しないごく少数の他の細胞型の存在下で存在する。単離された細胞の集団は、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、98%、もしくは99%の純度、またはその任意の区間の純度であってよい。特定の態様において、単離された細胞の集団は、少なくとも98%または少なくとも99%の純度である。本明細書において使用される場合、「単離された細胞の集団」という用語は、該細胞集団の由来元である組織、例えば血液の他の細胞から実質的に分離されている細胞集団を意味する。
【0056】
説明
第1の免疫調節性カーゴ、例えば細胞、および免疫調節性カーゴ、例えば細胞調節物質を送達するために、注射可能かつ自己修復するポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルを用いる免疫療法送達システムが、本明細書において説明される。ポリマー-ナノ粒子ヒドロゲルは、ポリマー構成物質がポリマーとナノ粒子間の動力学的な非共有結合性相互作用によってつなぎ合わされているタイプの超分子ヒドロゲルである。このようなポリマー-ナノ粒子ヒドロゲルは、従来の共有結合的架橋ヒドロゲルの有利な特徴の多くの恩恵を受けることができ、例えば、高い薬物積載能力、生物学的カーゴのカプセル化のための穏やかな条件、カーゴの持続的送達、および力学的に調節可能であることである。さらに、従来の共有結合的架橋ヒドロゲルとは違って、ポリマー-ナノ粒子ヒドロゲルは、シアシニングおよび自己修復の特性の寄与により、免疫療法として容易に投与することができる。シアシニングは、粘度がずり速度に応じて変わる(例えば、剪断ひずみ下で低下する)物質(例えば流動体)を含む。本明細書において説明されるポリマー-ナノ粒子ヒドロゲルの製造方法は、拡大縮小可能であり、それゆえ応用性が高く、ポリマー、ナノ粒子(NP)、第1の免疫調節性カーゴおよび第2の免疫調節性カーゴの水溶液を単純に混合する段階を含む。図1A図1Cは、ポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルの例を概略的に示す。ポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルは、ポリマー、例えば、図1Aに示されるHPMC-C1210、図1Bに示されるPEG-PLA NP12などのナノ粒子、CAR-T細胞14、および図1Cに示されるサイトカイン16を含む。図1Cはまた、CAR-T細胞14およびサイトカイン16が搭載されたPNPヒドロゲル18も示す。PNPヒドロゲル18は、メッシュ様のヒドロゲル構造を作り出す架橋20を含む。メッシュ様のヒドロゲル構造は、CAR-T細胞14を含み、かつ保持する。
【0057】
本明細書において説明されるポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲル免疫療法送達システムは、複数のナノ粒子と非共有結合的に架橋されたポリマー、細胞への接着および細胞の放出を可逆的に行うように構成された、ヒドロゲル中の細胞接着モチーフ、ヒドロゲル中にカプセル化された細胞を含む第1の免疫調節性カーゴであって、該細胞の少なくとも一部分が細胞接着モチーフに接着している、該第1の免疫調節性カーゴ、ならびにヒドロゲル中にカプセル化された第2の免疫調節性カーゴ、を含む。
【0058】
細胞接着モチーフは、細胞への接着および細胞の放出を可逆的に行うように構成された、ペプチドであってよい。一部の細胞は、細胞接着モチーフによってヒドロゲルに接着され、その後、ヒドロゲルから放出され、体内で移動、例えば、固形腫瘍の方へ移動または固形腫瘍中に移動する。細胞は、複数の細胞接着モチーフへの接着およびそれからの放出を連続的に行うことにより、ヒドロゲルを通って移動し得る。細胞接着モチーフは、細胞のための「つかまり所」の役割を果たし得る。細胞と細胞接着モチーフの間の引力が、ヒドロゲルを通して細胞を「引っ張る」ことができ、このプロセスは、複数回繰り返され得る。このように、細胞は、共有結合を壊す必要なしに、ヒドロゲルを通って移動し得る。細胞接着モチーフは、複数の様々な細胞への接着および細胞の放出を可逆的に行い得る。細胞接着モチーフは、特異的または一般的であってよい。細胞接着モチーフは、細胞上の結合パートナーに結合するように構成され得る。例えば、細胞接着モチーフは、細胞上のインテグリン(例えば、インテグリンに特異的に結合する)または他の細胞外基質受容体に結合し得る。細胞接着モチーフは、細胞結合タンパク質の一部分または全体を含んでよい。例えば、細胞接着モチーフは、フィブロネクチン、ビトロネクチン、または別の細胞外基質分子の一部分または全体を含んでよい。
【0059】
例示的な細胞接着モチーフは、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)ペプチド、すなわち、細胞外基質糖タンパク質フィブロネクチン中に存在する細胞接着モチーフである。T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞はインテグリンを発現し、アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)ペプチドは、該インテグリンによって認識される。他の細胞接着モチーフおよび結合パートナーもまた、使用することができる。例えば、細胞を遺伝子改変して、ヒドロゲルに結合させた細胞接着モチーフに対する結合パートナーを発現させることができる。
【0060】
細胞接着モチーフは、ヒドロゲルに共有結合的または非共有結合的に結合されてよい。いくつかの例において、細胞接着モチーフは、ナノ粒子に共有結合的に結合される。いくつかの例において、ナノ粒子は、細胞接着モチーフを提示する。細胞接着モチーフは、ナノ粒子の外側に配置されてよい。アルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)ペプチドを、ナノ粒子ポリマー、例えば、ナノ粒子上のポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)分子に結合させることができる。
【0061】
図1Q~1Tは、本明細書において説明されるPNPシステムが、制御された量のCAR-T細胞をある期間にわたって放出できることを示す。図1Qは、ある期間にわたって細胞放出を測定するための試験装置60を概略的に示す。CAR-T細胞がヒドロゲル配合物18中に搭載され、該ヒドロゲル配合物が試験装置60中のホルダー内に入れられる。細胞は、ヒドロゲル配合物18を通って移動し、矢印によって示されるようにホルダーの底面から出て行き、そこで計数される。
【0062】
いくつかの変形例において、免疫療法送達システムの細胞接着モチーフには、複数の様々な種類の細胞接着モチーフが含まれ得る。
【0063】
いくつかの例において、免疫療法送達システムはナノ粒子を含んでよく、その際、該ナノ粒子中のポリマーは、10:90~90:10の比または25:75~75:25の比の、細胞接着モチーフを伴うポリマーおよび細胞接着モチーフを伴わないポリマーを有する。いくつかの具体例において、免疫療法送達システムは、10:90~90:10の比の、細胞接着モチーフを伴うポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)および細胞接着モチーフを伴わないポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)を含む、ナノ粒子中のポリマーを含んでよい。いくつかの例において、ナノ粒子は、25:75の比~75:25の比の、細胞接着モチーフを伴うポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)および細胞接着モチーフを伴わないポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)を含む。前述したように、本明細書において説明されるPNPヒドロゲル免疫療法送達システムは、細胞を含む第1の免疫調節性カーゴを含むことができる。第1の免疫調節性カーゴは、ヒドロゲルに可逆的に結合させることができる。例えば、細胞は、細胞接着モチーフに可逆的に(例えば非共有結合的に)結合させることができる。いくつかの態様において、細胞は、免疫システムの養子細胞、例えばT細胞またはナチュラルキラー細胞である。関心対象の細胞を遺伝子改変して、例えば、その表面でキメラ抗原受容体(CAR)を発現させることができる。
【0064】
同じく前述したように、本明細書において説明されるPNPヒドロゲル免疫療法送達システムは、第2の(第3、第4、などの)免疫調節性カーゴを含むことができる。第2の免疫調節性カーゴは、ペプチド/タンパク質であることができ、またはペプチド/タンパク質以外の構成要素であることができる。第2の免疫調節性カーゴは、ヒドロゲル中の別の構成要素上で作用するように、例えば、ヒドロゲル中にカプセル化された細胞上で作用するように、構成されてよい。免疫調節性カーゴは、例えば細胞を活性化することによって、該細胞を調節するように構成されてよい。免疫調節性カーゴは、例えば、免疫刺激性サイトカインなどのサイトカインであることができる。ヒドロゲル中のサイトカインは、ヒドロゲル中の細胞を刺激し、かつ/または増殖させる役割を果たし得る。例えば、サイトカインは、ヒドロゲル中の免疫細胞、例えばT細胞またはナチュラルキラー細胞を刺激することができる。細胞がヒドロゲル中で増殖および分裂するとき、利用可能なサイトカインが、例えば、患者の体内への細胞放出の前に、ヒドロゲル中の細胞を活性化することができる。
【0065】
サイトカインなどの免疫調節性カーゴは、細胞または免疫のニッチまたはデポーとして機能するPNPヒドロゲル免疫療法送達システムを助けて免疫細胞を刺激することができ、該免疫細胞は、数時間、数日間、数週間、または数ヶ月間にわたって、例えば、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、または少なくとも4週間にわたって、ヒドロゲルから放出されることが可能である。免疫療法物質は、これらの期間にわたって、例えば2~3週間にわたって、PNPヒドロゲル免疫療法送達システムから送達されることが可能である。
【0066】
PNPヒドロゲル免疫療法送達システムは、第2(第3、第4など)の免疫調節性カーゴ、例えばサイトカインの実質的な移動を防ぐように構成され得る。例えば、ヒドロゲル中の物理的架橋は、サイトカインなどの第2の免疫調節性カーゴがヒドロゲルを通って拡散することまたはヒドロゲルから実質的に放出されることを防ぎ得る。したがって、いくつかの例において、サイトカインなどの第2の免疫調節性カーゴを用いて細胞などの第1の免疫調節性カーゴを活性化するために、ヒドロゲル中の共有結合が壊される必要はない。有利には、PNPヒドロゲルは、第2の免疫調節性カーゴ(例えばサイトカイン)のカプセル化を継続するため、該カーゴから患者の体を保護して、十分に高用量の該カーゴを免疫療法カーゴ(例えば細胞)に送達しつつ毒性を防ぐことができる。いくつかの変形例において、第2の(または付加的な)免疫調節性カーゴは、ヒドロゲル中の別の構成要素に作用するように構成されるのではなく、またはそのように構成されることに加えて、ヒドロゲルの外側の物質に作用するように構成されてよい。例えば、付加的な免疫調節性カーゴは、有効用量の活性な作用物質、例えば薬物を含んでよい。
【0067】
本明細書において説明されるシアシニング性かつ自己修復性のポリマーナノ粒子ヒドロゲルは、単純な混合によって生物学的カーゴを搭載できる能力のおかげで、好都合な材料特性および拡大縮小可能かつ融通のきく寛容な合成アプローチを有し、このことによって、養子細胞のカプセル化および送達に非常に適している。カーゴが搭載されたヒドロゲルは、注射可能であり、かつ低圧力下で固体様構造を保持することができるため、体内での新しい刺激性微環境の創出および免疫療法物質の持続的送達が可能になる。ポリマーナノ粒子ヒドロゲルは、例えば、送達ビヒクルとしてのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を置き換えるために使用することができ、かつ任意の免疫療法とともに使用することができる。これらの材料における独特の動力学的な網様構造再編成により、大型カーゴの意外な放出および小型カーゴの保持が可能になり、これらの大型カーゴおよび小型カーゴのサイズまたは化学的構成は甚だしく異なってよい。
【0068】
いくつかの態様において、本明細書において説明されるポリマーナノ粒子ヒドロゲルは、1種または複数種のポリマーで作られていてよく、該ポリマーは、例えば、セルロース誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、もしくはヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、またはヒアルロン酸(HA)であり、任意で、ヘキシル(-C6)、オクチル(-C8)、デセイル(-C10)、ドデシル(-C12)、フェニル(Ph)、アダマンチル、テトラデシル(-C14)、オレイル、またはコレステロールなどの疎水性部分で修飾されていてもよい(例として、5~30%の修飾、例えば5~25%、例えば約10~15%または25%の修飾)。1つの特定の態様において、HPMCは、ドデシルによって10~15%修飾されている。別の特定の態様において、HECは、ドデシルによって25%修飾されている。別の特定の態様において、HECは、コレステロールによって10%修飾されている。さらに、ポリマーは、100nm未満、例えば30~50nm、例えば約40nmの直径を有するナノ粒子などのナノ粒子と混合することもできる。これらのナノ粒子は、疎水性コアを有するコアシェルナノ粒子、例えば、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(乳酸)(PEG-PLA)ナノ粒子またはポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(カプロラクトン)(PEG-PCL)ナノ粒子であることができる。
【0069】
さらに、いくつかの態様において、PNPヒドロゲルは、1重量%より多いポリマー、例えば、1重量%より多く5重量%より少ない、例えば、1.5~3重量%のポリマー、例えば約2重量%のポリマーで作られていてよい。いくつかの態様において、PNPヒドロゲルは、4~12%のナノ粒子、例えば8~11%、例えば10%のナノ粒子を含むことができる。ナノ粒子の比率(%)をこれらの範囲内に有することは、PNPが安定であり続けることを確実にする助けとなる。本明細書において使用される場合、「X:Yゲル」とは、X重量%のポリマーおよびY重量%のナノ粒子を意味することができる。本明細書において説明されるPNPヒドロゲルは、非共有結合によって溶解するように構成されている。本明細書において説明されるPNPヒドロゲルは、その全体が参照により本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2017/0319506号およびWO公報第2020/072495号に記載されているヒドロゲルの特徴および/または特性のいずれかを、さらにまたは代わりに含むことができる。
【0070】
また、本明細書において説明されるPNPヒドロゲル免疫療法送達システムのいずれかを患者に送達する段階、および細胞をヒドロゲルから放出する段階を含む、疾患を治療する方法も、本明細書において説明される。図1Eは、患者の脳30の腫瘍22にPNPヒドロゲル免疫療法送達システムを送達する段階を概略的に示す。図1Eは、注射器などの送達器具46を用いてPNPヒドロゲル18が送達される様子を例示する。PNPヒドロゲル18は、腫瘍22の隣に送達される。いくつかの変形例において、方法は、PNPヒドロゲル(および付随するCAR-T細胞14)を、腫瘍中に、腫瘍の上部に、腫瘍の一部もしくは全体の周辺に、または腫瘍から遠い場所に送達する、PNPヒドロゲルを含む。PNPヒドロゲル18は、CAR-T細胞18を放出する(CAR-T細胞18は、PNPヒドロゲル18からはい出る)。CAR-T細胞受容体15は、腫瘍細胞24上の抗原26に結合する。この方法は、1日~4週間の範囲の期間、または少なくとも1日、少なくとも2日間、少なくとも3日間、少なくとも4日間、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも3週間、もしくは少なくとも4週間、またはこれらの間の任意の期間、ヒドロゲルから細胞を放出する段階をさらに含んでよい。本明細書において説明される方法のいずれかは、免疫調節性カーゴを用いて細胞を活性化する段階を含んでよい。本明細書において説明される方法のいずれかは、ヒドロゲル中の細胞の数を、例えば、2倍、3倍、5倍、10倍、または100倍に増やす段階を含んでよい。本明細書において説明される方法のいずれかは、がんおよび/または固形腫瘍を治療する段階を含んでよい。本明細書において説明される方法のいずれかは、T細胞またはナチュラルキラー細胞などの養子細胞を放出する段階を含んでよい。本明細書において説明される方法のいずれかは、腫瘍抗原を認識するキメラ抗原受容体(CAR)を発現する細胞を放出する段階を含んでよい。本明細書において説明される方法のいずれかは、同種細胞または自己由来細胞を放出する段階を含んでよい。本明細書において説明される方法のいずれかは、患者またはドナーから細胞をさらに取り出す段階;取り出された細胞を単離する段階;インビトロで細胞数を増やす段階;および送達する段階の前にヒドロゲル中に細胞をカプセル化する段階、をさらに含んでよい。本明細書において説明される方法のいずれかは、注射器またはカテーテルを介して免疫療法送達システムを送達することを含んでよい。本明細書において説明される方法のいずれかは、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、および皮下からなる群より選択される経路によって患者に免疫療法送達システムを送達することを含んでよい。免疫療法送達システムは、治療を必要とする患者のある領域に局所的に、患者に送達されてよい。治療を必要とする患者のある領域は、がん性の領域、ほくろ、ポリープ、固形がん腫瘍、良性増殖、もしくは非良性増殖、がん性領域、または前がん性領域であってよい。いくつかの例において、免疫療法送達システムは、固形腫瘍がん中への注射などによって、患者の固形腫瘍がん(脳腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍など)に送達されてよい。固形腫瘍がんは、生検(例えば、骨髄生検、内視鏡生検、切除生検もしくは切開生検、穿刺吸引細胞診、パンチ生検、薄片生検、皮膚生検)、内視鏡検査(例えば、膀胱鏡検査、結腸鏡検査、S状結腸鏡検査)、イメージング(例えば、透過イメージング(例えば、X線、コンピューター断層撮影(CT)もしくはコンピューター体軸断層撮影(CAT)スキャン、蛍光透視法)、反射イメージング(例えば超音波)、もしくはエミッションイメージング(例えば磁気共鳴画像法(MRI))、触診、または外科手術によって検出され得る。
【0071】
この方法および他の方法において、送達する段階は、患者に免疫療法送達システムを送達することを含む。この方法および他の方法において、送達する段階は、治療を必要とする患者のある領域から遠い1つまたは複数の位置にシステムを送達することを含む。治療を必要とする患者のある領域は、がん性の領域、ほくろ、ポリープ、固形がん腫瘍、良性増殖、もしくは非良性増殖、がん性領域、または前がん性領域であってよい。この方法および他の方法において、疾患は固形腫瘍がんを含み、免疫療法送達システムを患者に送達する段階は、固形腫瘍がんから遠い、患者体内の位置にシステムを送達することを含む。先に示したように、治療を必要とする患者のある領域から遠い位置にシステムを送達する段階は、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、および皮下などの経路によって送達することを含むことができる。いくつかの例において、患者に免疫療法送達システムを送達する段階は、1つの位置、複数の位置への送達、および/または全身送達を含んでよい。免疫療法物質が複数の位置に送達される場合、これらの位置は、局所、遠方、または局所と遠方の両方であってよい(免疫療法物質は、1つまたは複数の局所的位置および1つまたは複数の遠方の位置に送達されてよい)。
【0072】
免疫療法送達にとって有用であり得るキットもまた、本明細書において説明される。キットは、ポリマー前駆物質、ナノ粒子前駆物質、および/または細胞接着モチーフを含んでよい。一部のキットは、免疫調節性カーゴを含んでよい。一部のキットにおいて、ポリマー前駆物質には、疎水性脂質ドデシル鎖を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)が含まれる。一部のキットは、細胞接着モチーフを伴わないポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)を含む第1のポリマー前駆物質;および細胞接着モチーフを伴うポリ(エチレングリコール)-bポリ(乳酸)(PEG-PLA)を含む第2のポリマー前駆物質を含む。いくつかの変形例において、細胞接着モチーフは、第2のポリマー前駆物質に共有結合的または非共有結合的に結合されてよい。いくつかの変形例において、免疫調節性カーゴは、サイトカイン、例えばインターロイキン、例えばIL-15を含む。
【実施例
【0073】
実験:
このヒドロゲルシステムでは、イソシアナートカップリング化学反応を用いて、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を疎水性脂質ドデシル鎖(C12)で修飾した。直径約40nmのPEG-PLAナノ粒子(NP)を、ナノ沈殿技術を用いて調製して、親水性PEGを主成分とする外層および疎水性PLAを主成分とするコアを有するコアシェルナノ粒子(NP)を得た。細胞の接着および生存能力を増大させるために、細胞接着モチーフのアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)を、あらかじめ、銅触媒による「クリック」反応によってPEG-PLA共重合体の親水性末端に結合した。RGDで官能化したPEG-PLAポリマー(RGD-PEG-PLA)と未修飾PEG-PLAポリマーの25:75の物理的混合物を用いて、ナノ粒子(NP)を作出した。HPMC-C12ポリマーとPEG-PLA NPの水溶液を混合することによって、ポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルを形成させる(図1A)。細胞は、ナノ粒子(NP)およびポリマー溶液を混合する前にナノ粒子水性相に容易に懸濁される。これらの構成要素が混合されると、疎水的に修飾されたHPMCポリマーとPEG-PLAナノ粒子(NP)の表面との動力学的な多価相互作用によって物理的架橋およびヒドロゲル形成が引き起こされる。本明細書において、本発明者らは、1重量%のHPMC-C12および5重量%のナノ粒子を含む配合物を重点的に取り扱う。超分子ポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルプラットフォームは、シアシニングの挙動を示して、直径の小さい針による注射を可能にし、かつカプセル化された細胞を注射器中での強烈な機械的力から保護する。
【0074】
腫瘍部位に局所的にCAR-T細胞を送達するためのこの治療戦略の効果を調査するために、ヒト髄芽腫の異種移植モデルをNSGマウスにおいて実践した。このモデルは、静脈内送達される細胞によっては治療が比較的困難な症例として選択した。処置前にB7H3 CAR 41BBZ CAR-T細胞を10日間増殖させた。腫瘍の大きさの発光モニタリングを可能にするために、ルシフェラーゼを発現するように腫瘍を操作し、一方で、ナノ-ルシフェラーゼを発現するようにT細胞を操作した。従来のIV、局所的生理食塩水(PBS)ボーラス注射、およびポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲル中にカプセル化された細胞の局所注射(100uL注射剤)を含む様々な治療戦略を用いて、マウス1匹につき8×106個のCAR-T細胞を送達した。腫瘍およびT細胞をある期間にわたってモニターして、治療有効性を評価した(図2A図2C)。実験の最後の時点で、局所PBS戦略およびポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲル戦略のどちらも、腫瘍の治療に成功していた。興味深いことに、ポリマー-ナノ粒子ヒドロゲル群の方が、より後の時点に、非常に堅調なT細胞増殖を示した。これらの結果は、T細胞が増殖し、ポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルから移動して腫瘍を標的とできることを裏付ける。
【0075】
このモデルをさらに調べるために、次の研究では、マウス1匹につき2×106個という少用量の細胞を、様々な治療戦略を用いて送達した。さらに、IL-15を含む3群をこの研究に含めた。IL-15を、局所PBS注射剤には1種類の濃度(2.5ug/mL)で、ポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲル配合物には2種の異なる濃度(2.5ug/mLおよび25ug/mL)で、添加した。腫瘍をある期間にわたってモニターして、治療有効性を評価した(図3A図3B)。実験の最後の時点で、IL-15を含むポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲル群だけが、腫瘍を完全に根絶した。IL-15を含むPBS群では腫瘍が存在したことから、ヒドロゲルはおそらく、IL-15を局所的に保持して、局所的な細胞増殖を促進した。
【0076】
ポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲル免疫療法を、処置部位から遠い腫瘍を治療するために使用可能であるかをさらに見極めるために、CAR-T細胞を含むポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルを腫瘍部位から遠くに配置した。CAR-T細胞を含むポリマー-ナノ粒子(PNP)ヒドロゲルを、マウスの腫瘍位置と反対の遠位側の皮下空間に注射したことを除いて、ヒドロゲルは、本明細書に記載のとおり調製し、ヒト髄芽腫の異種移植モデルに送達した(例えば、図2A~2Cで説明されている)。生物発光を利用して、ある期間にわたって腫瘍を測定した。また、前述の内容と同様に、CAR-T細胞の生理食塩水(PBS)ボーラス注射を実施した(図4Aの左側および図4Bの上側を参照されたい)。図4Aおよび図4Bは、ヒドロゲル処置を受けたマウスが、生理食塩水(PBS)ボーラス注射を用いて処置したマウスと比べて、より優れた治療結果を示したことを示す。2日目~34日目のマウスのイメージング結果を図4Aに示している。図4Bの生物発光イメージングの尺度(y軸)は、図2Cおよび図3Bに示されるものと同様であり、日数で表されるある期間にわたる(x軸)、関心領域(ROI)における全光子束を示す。
【0077】
総じて、がん療法に有用な送達戦略が、本明細書において開示される。有利なことに、本明細書において説明されるPNPヒドロゲル免疫療法送達システムは、がん療法として効果的に使用することができる。いくつかの態様において、このヒドロゲルシステムは、最小限の化学を使用し、迅速な配合を可能にし、かつ治療用のサイトカインのモジュール式の個別化された組込みを可能にする。いくつかの例において、処置は、腫瘍部位への単純な注射によって実施されてよい。この方法は、CAR-T細胞および他の養子細胞の送達用途、例えば、内因性または改変されたナチュラルキラー細胞の送達に適用することができる。
【0078】
これらの課題に取り組むために、本発明者らは、注射可能なポリマーナノ粒子(PNP)ヒドロゲルに基づく、CAR-T細胞送達のための生体材料プラットフォームを工学的に作った(図1A~1T)。これらのヒドロゲルは、自由自在に拡大縮小できる化学的性質を活かし、かつ穏やかな条件下で配合できるため、治療的細胞の手軽なカプセル化が容易になり、同時に、それらは注射可能であるため、腫瘍への細胞の局所領域的送達が可能になる(図1C)。これらのヒドロゲルを作製するために、ドデシル修飾したヒドロキシプロピルメチルセルロースの溶液(HPMC-C12;図1A)を、ポリ(エチレングリコール)-b-ポリ(乳酸)を含む生分解性ナノ粒子(NP)(PEG-PLA NP)の溶液と混合した。混合すると、HPMC-C12ポリマーとPEG-PLA NPとの動力学的な多価相互作用によって物理的架橋および強固なヒドロゲルの形成が引き起こされる(図1C)。PNPヒドロゲルは、ある範囲の温度にわたって、その特性を保持し、それらの物理的架橋は、針またはカテーテルによる手軽な注射を可能にし、かつ長期および制御された時間尺度にわたって局所的シグナル伝達を保つことができる。細胞の運動性および生存能力を増大させるために、細胞接着モチーフのアルギニン-グリシン-アスパラギン酸(RGD)を、ナノ沈殿に先立って、「クリック」反応を用いてPEG-PLA共重合体の親水性末端に結合した。本発明者らは、HPMC-C12と混合する前に、RGD-PEG-PLA NP溶液中に細胞を容易に懸濁できることを以前に示している。
【0079】
免疫賦活性分子を緩徐に送達すること、一方でT細胞の生存能力を維持するマトリックスを工学的に作ることのどちらにも、材料設計の難題がつきものである。これまでに報告されている生体材料は、インビトロ増殖およびインビボ処置のどちらのためにも材料スキャフォールドに活性化シグナルを結合させる必要があったが、本発明者らは最近、PNPヒドロゲル内部の動力学的ポリマーメッシュを十分に小さく設計して、タンパク質の長期保持を実現しつつ、細胞運動性を引き続き与えることができることを示した。したがって、本発明者らは、CAR-T細胞とともに増殖性サイトカインなどの免疫賦活性シグナルをカプセル化するとインビボでのT細胞増殖が促進されるという仮説を立てている。
【0080】
本発明者らは、ヒドロゲル配合物が、カプセル化した際に材料特性およびCAR-T細胞運動性にどのように影響を及ぼすかを明らかにしようと努めた(図1O図1P図8A図10)。本発明者らは、順により硬い次の3種のPNPヒドロゲル配合物を調製した:PNP-1-1、PNP-1-5、PNP-2-10。ここで、1番目の数字はHPMC-C12の重量%を示し、2番目の数字はNPの重量%を示す(残りの重量%は生理食塩水である)。配合物中のポリマーおよびNPの濃度が上昇すると、マトリックスの動力学的メッシュサイズが小さくなって、ゲルの硬さが増し、マトリックスの自己拡散性が低下する(図8A図10)。以前の研究によって、ヒドロゲル環境内にカプセル化されたT細胞の移動がゲルのメッシュサイズおよび硬さに大きく左右されることが示唆されているため、本発明者らは、カプセル化されたCAR-T細胞の運動にPNPヒドロゲルの動力学的材料特性がどのように強く影響するかを理解するための細胞移動実験を実施した(図1L~1P)。図1Lは、細胞運動性を試験するための、ふた56を有する試験装置50を示す。CAR-T細胞14を含むPNPヒドロゲルを試験装置50中に入れる。照明器52は放射線を送達し、細胞の運動(挿入図の矢印40によって示される)が検出される。PNPヒドロゲル構造にRGDを結合すると、T細胞運動性は向上し(図13A~13C)、細胞移動速度は、ヒドロゲルメッシュサイズおよびマトリックス自己拡散性の低減に伴って遅くなった(図1O)。これらの研究に基づいて、PNP-1-5配合物が、生理学的に適切な硬さならびに中程度の細胞移動特徴およびマトリックス自己拡散性特徴を有することから、これを後続の研究のために選択した。
【0081】
本発明者らは、CAR-T細胞と刺激性サイトカイン、例えばIL-15とを同時カプセル化することにより、ヒドロゲル内でのCAR-T増殖が増進されるであろうと考えた。IL-15は、T細胞メモリーの維持を支援することも判明している強力なT細胞活性化因子である。さらに、IL-15は小さく(<15kDa)かつ不安定であるため、残念ながらたったの1.5時間という短い消失半減期をヒトにおいて示し、持続的送達の恩恵を受けると思われる。本発明者らは、最初に、PNP-1-5ヒドロゲルがIL-15保持の延長を実現してCAR-T活性化を強化し得るかどうかを明らかにしようと努めた。インビトロ放出研究により、IL-15がPNP-1-5ヒドロゲル内に4日を超える期間にわたって保持されて、2.6日の放出半減期を示すことが実証された(図11A~11B)。本発明者らはまた、PNPヒドロゲルカプセル化によってIL-15の安定性が有意に向上することも発見した。このことは、PNPヒドロゲルによって、カプセル化されたバイオテクノロジー製品の安定性を向上させることが可能であるという以前の知見を裏付けるものである。さらに、インビトロ実験により、PNP-1-5ヒドロゲル中にCAR-T細胞およびIL-15を同時カプセル化すると、ヒドロゲル内でのT細胞増殖(図12)とPGC-1α、すなわちミトコンドリア生合成の主要調節因子の発現(図14A~14B)の両方が促進され、それらの代謝適合性が高まり得ることが実証された。
【0082】
固形腫瘍に対するCAR-T細胞治療を改良するPNPヒドロゲルの能力を評価するために、皮下ヒト髄芽腫固形腫瘍モデルにおいて、PNPヒドロゲル中のヒトB7H3 CAR-T細胞をNSGマウスの腫瘍周囲に送達し、治療的に関連する対照と比較した(図5A)。この皮下固形腫瘍モデルは、最近の局所領域的送達研究で使用されているアクセス不可能な脳腫瘍モデルまたは眼腫瘍モデルとは対照的に、身体の開放的かつアクセス可能かつ一般化可能な場所に相当する。デュアルルシフェラーゼインビボイメージングシステムを用いて、腫瘍およびCAR-T細胞を同時に追跡および定量した。PNPヒドロゲルによって、ボーラス治療法および静脈内治療法と比べて、治療が改良された(図5B~5C、図15)。より多くのCAR-T細胞を各処置で用いる研究におけるボーラス対照およびIV対照は、引き続き、治癒できないことを示すか、または遅い速度で治癒したことから、細胞数の少ないPNPヒドロゲル群の方がこれらの対照より効率が良いという用量節約的な効果が示唆された(図16A~16D)。
【0083】
PNPヒドロゲルにIL-15を混合すると、治療が改良された(図5B~5C)。同時送達されたIL-15用量は、最近のヒト臨床試験におけるrhIL-15の最大耐容皮下用量をマウスに換算した値を下回っていた(補足説明1)。ゲルから放出された場合のIL-15の全身レベルは、ボーラス投与および静脈内投与と比べて、インビボで上昇したままであった(図17A~17B)。動物モデルへの副作用、主に、NSGマウスにおけるヒトT細胞のACTによく起こる移植片対宿主病(GVHD)の発生により、研究期間は30日間に制限された。全体として、IL-15を含むPNP-1-5ヒドロゲルは、治癒率および治療の一貫性を向上させ、すべてのマウスが12日目までに完全に治癒した(図5C~5D、図18)。他の群はすべて、より低い有効性および一貫性が劣る結果を示した。静脈内IL-15を含む処置もまた、調査した。最初は、有効性は、IL-15を含むPNP-1-5ヒドロゲルの場合と同程度であったが、処置後最初の3日間をマウスの20%は生き延びず、これは血液中サイトカイン濃度の急上昇に起因する可能性があった。生き残った数匹のマウスもまた、腫瘍再発を示した(図19A~19G)。PNPヒドロゲルに含ませた高濃度のIL-15およびCAR-T細胞を同時送達した場合(図20A~20B)、ならびにPNPヒドロゲルに含ませたIL-15の同時送達のように、PNPヒドロゲルに含ませたIL-2、すなわち別の一般的な活性化サイトカインとCAR-T細胞とを同時送達した場合(図21A~21D)に、同様に有効な結果が観察された。
【0084】
CAR-T細胞をPNPヒドロゲルに含めて送達した場合、特にIL-15と同時送達した場合、増大したT細胞増殖もまた、観察された(図2E~2G)。PNP-1-5とIL-15を用いた場合、IV対照と比べて100倍を超える、T細胞増殖の増加が起こった(図2G)。より高用量のT細胞を送達した場合、およびPNPヒドロゲルに含めてIL-2とCAR-T細胞を同時送達した場合、増殖の増加を伴う同様の結果が観察された(図16A~16D、図21A~21D)。ゲルは、より後の時点に甚だしく増加したT細胞増殖を示し、GVHDの発症を招く可能性があった。イメージングデータは、10日目~21日目の間に、右皮下側腹部上のゲルから脾臓へとT細胞シグナルの主要位置が動いたことを示しており、腫瘍根絶の時間と一致した。組織学的検査により、この生体材料に対して不都合な免疫応答はないこと、および注入後数日間、CAR-T細胞がゲル内およびゲル周辺に依然として存在することを確認した(図22A~22F)。さらに、炎症性サイトカイン解析によって、この治療方法がマウスサイトカインまたはヒトサイトカインの急増を誘発しないことも確認した(図23図24)。
【0085】
PNP-1-5ゲルに含めて同時送達されたCAR-T+IL-15において認められる有効性向上のメカニズムに関して理解を深めるために、処置後10日目に、T細胞のエクスビボ解析を実施した。この解析により、IL-15と同時カプセル化されたT細胞の、増大したCAR発現(図5H)、持続率の上昇(図5I)、ならびにCD8+サブセット(図5J)およびTSCMサブセット(図5K)の比率の上昇が明らかにされた。すべてのCAR-T群が、同じようなレベルの活性化マーカー4-1BB、LAG-3、およびPD-1を有していたが、IL-15を同時送達すると、腫瘍反応性T細胞のマーカーとして最近現れたCD39の発現が増大した(図25A~25C)。IL-15が同時送達されると、PNP CAR-T処置マウスの血液試料および脾臓試料中のT細胞数が増加したのに対し、メモリーサブセットは、これらの部位において、どの群を比べても類似していた(図26A~26Dおよび図27A~27B)。
【0086】
腫瘍周囲にヒドロゲルを送達することに加えて、ゲルから放出されたT細胞が腫瘍に直接的に流れでないように、ヒドロゲルをマウスの遠位側腹部の皮下に送達する実験もまた、実施した(図6A~6Fおよび図28)。イメージング研究によって、IL-15を含むヒドロゲルは、遠位ボーラス対照よりも改善した腫瘍排除をもたらすことが明らかになり、これら2種の処置は、同様の全体的T細胞増殖ならびに血液中および脾臓中での同様のT細胞サブセット分布を示したにも関わらず、この結果であった(図29A~29Bおよび図30)。マウスがGVHDを発症するのは大幅に遅くなっていたため、これらの研究は、以前の研究よりも長い期間行われた。さらに、遠位ヒドロゲル処置は、腫瘍周囲ヒドロゲル処置と比べて、有効性を遅れて示したが、すべてのマウスが最終的に治癒した。これらの有望な結果から、このヒドロゲル処置が、転移性がんまたはアクセス不可能な腫瘍を治療する際に将来使用され得ることが示唆される。
【0087】
直接的にも文脈によっても別段の定めがない限り、後述する材料および方法を、本明細書において説明される実験を実施するために使用した。
【0088】
材料:すべての化学物質、試薬、および溶媒は、Sigma-Aldrich、Acros、またはAlfa Aesarから試薬グレートのものを購入し、別段の指定がない限り、受けとったまま使用した。ガラス器具および撹拌子を180℃でオーブン乾燥した。指定された場合、凍結、汲み出し、および解凍を3サイクル行って、溶媒を脱気した。HPMC-C12、PEG-PLA、およびRGD-PEG-PLAを合成し、以前に説明されていたようにして特徴決定した。文献の手順に従い、RGD-PEG-PLAポリマー:PEG-PLAポリマーの50:50混合物を用いてナノ沈殿によりNPを調製し、動的光散乱法によってNPのサイズおよび分散度の特徴を明らかにした(直径=35nm、PDI=0.02)。
【0089】
ヒドロゲル配合物および細胞カプセル化:以前に説明されているようにして、手順に従い、解析した。HPMC-C12をリン酸緩衝食塩水に6重量%となるように溶解し、1mL容のルアーロック注射器に充填した。最終的なヒドロゲル中で所望の濃度に達する数の細胞を含む細胞ペレットを、リン酸緩衝食塩水中に懸濁させた。次いで、PBSに溶かした20重量%ナノ粒子溶液を細胞懸濁液に添加した。RGDと純粋なNPの20:80混合物を用いて、RGDを含む研究用ヒドロゲルを形成させて、ゲル中濃度0.5mMの結合RGDを得た。CAR-T細胞/ナノ粒子溶液を1mL容のルアーロック注射器に充填した。次いで、細胞/ナノ粒子注射器をメス-メス型のミキシングエルボに連結し、該エルボの他方の端を通って視認できるようになるまで、該エルボ中に溶液を移した。次いで、HPMC-C12ポリマーを含む注射器を該エルボ、該エルボの他方の端に結合した。次いで、2種の溶液をエルボに通して行ったり来たりさせて、該溶液が完全に混ざり細胞が搭載された均一なPNPヒドロゲルを形成するまで、30秒~1分間、そっと混合した。ヒドロゲル調製時に、IL-15(R&D Systems)をナノ粒子とともに混合した。
【0090】
ヒドロゲルのレオロジー的特徴付け:応力制御されたTA InstrumentsのDHR-2レオメーターにおいて、600μmのギャップで直径20mmの鋸歯状平行板を用いて、レオロジー的試験を実施した。実験はすべて、25℃で実施した。周波数スイープは、ひずみ1%で実施した。振幅スイープは、10rad/sの周波数で実施した。フロースイープは、120秒以内に10%範囲内の5点を得る定常状態検出を用いて、高ずり速度から低ずり速度まで実施した。
【0091】
細胞株:MED8Aは、S. Chesier(Stanford University, Stanford, CA)が快く提供してくれた。MED8A-GFP-Fluc細胞を、20%FBS、100U/mLペニシリン、100μg/mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、および10mM HEPES(Gibco)を添加したDMEM中で培養した。STR DNAプロファイリングを1年に1回行い(Genetica Cell Line testing)、マイコプラズマの有無をルーチン的に検査した。細胞株は、37℃、5%CO2環境において培養した。
【0092】
プラスミド構築およびウイルス作製:MSGVレトロウイルスベクター中でMGA271 scFvをCD8αヒンジおよび膜貫通型4-1BB同時刺激ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、ブタテッショウウイルス-1 2A(P2A)リボソームスキッピング配列、およびnanolucを融合することによって、B7H3 CAR-P2A-Nlucプラスミドを構築した。構築されたAntares-P2A-mNGは、P2A配列およびmNeonGreenをAntaresのc末端に融合することによって構築した。以前に説明されているようにして、RD114エンベローププラスミドでトランスフェクトした293GPパッケージング細胞および対応するプラスミド構築物を用いて、レトロウイルス上清を作製した。
【0093】
CAR-T細胞の単離:IRB免除プロトコールのもとで、Stanford Blood Centerから購入したバフィコートからT細胞を単離した。RosetteSepヒトT細胞濃縮キット(Stem Cell Technologies)およびSepMate-50チューブを用いるネガティブ選択を実施して、初代ヒトT細胞を精製した。T細胞を、1~2×107細胞/mLの濃度でCryoStor CS10培地中に凍結保存した。
【0094】
CAR-Tの製造:初代ヒトT細胞を0日目に解凍し、3:1のビーズとT細胞の比率で抗CD3/CD28 Dynaビーズ(Thermo Fisher)を用いて活性化し、AIM V+5%熱不活化FBS、100U/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン、2mM L-グルタミン、10mM HEPES、および100U/mL rhIL-2中で培養した。2日目に、対応するウイルス1mLを3200RPMで2時間回転させることにより、ウイルスで被覆したウェルを、12ウェルの非tcレトロネクチンコーティング(Takara/Clontech)プレートにおいて調製した。次いで、T細胞をこれらのプレート上で24時間培養した。この形質導入プロセスは、3日目以降に行った。4日目にビーズを磁気的に除去し、インビボ実験のためには10日目まで、インビトロ実験のためには10日目~14日目まで、細胞を増殖させた。2種のウイルスを同時形質導入するために、2日目にAntares-P2A-mNGで、かつ3日目にB7H3 CAR-P2A-Nlucで、T細胞に形質導入した。
【0095】
エクスビボCAR-T細胞解析:移入されたT細胞をエクスビボ解析するために、T細胞投与後10日目にマウスを安楽死させた。ゲルを採取し、力学的解離によってT細胞を抽出した(gentleMACSディソシエーター、Miltenyi)。単細胞懸濁液をろ過し、フローサイトメトリーのために染色した。
【0096】
フローサイトメトリー:DyLight 650マイクロスケール抗体標識キット(Thermo Fisher)を用いて蛍光標識した組換えB7H3-Fc(RD Systems)を用いて、B7H3 CARを検出した。以下の抗体を用いてT細胞を染色した:BUV395マウス抗ヒトCD4(クローンSK3、BD)、BUV805マウス抗ヒトCD8(クローンSK1、BD)、BV605マウス抗ヒトCD62L(クローンDREG-56、BD)、およびBV711マウス抗ヒトCD45RA(クローンHI100、BD)。CountBright絶対計数ビーズ(Thermo Fisher)を用いてCAR-T細胞定量を実施した。BD Fortessaを用いてフローサイトメトリーを実施し、FlowJoバージョン10.7.1を用いて解析した。
【0097】
WST増殖アッセイ法:100μLのPNP-1-5ヒドロゲルを、様々な濃度のIL-15(0、0.25μg/mL、および2.5μg/mL)とともに、細胞50万個/mLの濃度で、96ウェルプレートのウェルに載せた。100μLのCAR-T細胞培地を各ゲルの上に重ね入れ、37℃および5%CO2で培養した。1日後、培地を除去し、100μLの新しい培地および10μLのWST試薬を各ウェルに添加した(WST-1細胞増殖試薬、ab155902)。WST溶液中での2時間のインキュベーション後、プレートリーダーを用いて、10秒間の振盪後にOD=450nmで吸光度を読み取った。
【0098】
CAR-T細胞移動の研究:生細胞イメージングを、ライブイメージング(37℃、5%CO2)に適した、温度/インキュベーター制御装置を装備したレーザー走査型共焦点顕微鏡(Leica SP8)を用いて行った。20×空気対物レンズ、NA=0.75を用いて、約60μmのスタック画像を5時間(10分間隔で)取得した。イメージングパラメーターを調整して、光退色を最小化し、細胞死を回避した。移動研究の完了後、mCherryで標識した細胞の重心を、Imaris(Bitplane)のスポット検出機能を用いて追跡した。分裂が不十分な細胞および細胞片は解析から除外し、必要に応じてドリフト補正を実行した。カスタムMATLABスクリプトを用いて、細胞移動の軌跡を復元した。
【0099】
光退色後の蛍光回復:HPMC-C12濃度およびNP濃度が異なる3種の異なるPNPヒドロゲル配合物を調製した(PNP-2-10、PNP-1-5、およびPNP-1-1)。文献プロトコール21に従って、フルオレセインイソチオシアナートをHPMC-C12に結合させた。ゲルをスライドガラス上に載せ、共焦点顕微鏡LSM780を用いてイメージングした。低強度レーザーを用いて試料をイメージングして、初期の蛍光レベルを観察した。次いで、円形領域を退色させるために、レーザーを最大強度に切り換え、直径25μmの関心領域(ROI)に10秒間焦点を合わせた。次いで、蛍光データを4分間記録して、指数関数的な蛍光回復曲線を作成した。試料は、各ゲルの様々な領域から採取した(n=5~9)。下記の式に基づいて、拡散係数を算出した。
τ1/2上式で、定数D=τDであり、その際、τ1/2は半回復時間、τDは特性拡散時間であり、どちらもZENソフトウェアによって得られ、ωは、退色させたROIの半径(12.5μm)である。
【0100】
インビボ実験アプローチ:実験はすべて、承認済みのプロトコールに従った。5×105個のMED8A-GFP-Fluc細胞を、50:50の比率のマトリゲル(Cultrex Pathclear)とリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に混合し、処置の5日前に、NSGマウスの右側腹部に皮下注射した。処置の1日前に、マウスをイメージングし、腫瘍量がおよそ等しい群に分けた。以前に説明されているようにして、注射の1時間前に、組織培養フード内で、1mL容注射器に入れたリン酸緩衝生理食塩水またはPNPヒドロゲル中にCAR-T細胞をカプセル化した。研究範囲の各実験群に対して、1本の注射器を準備した。各注射器において300μLの余分なゲルを調製した。2倍体積量のボーラス対照および静脈内対照を調製した。注射器を氷冷しながら動物施設へ輸送した。100μLのリン酸緩衝生理食塩水またはPNPヒドロゲルを各マウスに送達した。皮下注射は、21Gのルアーロック注射器に入れて行った。
【0101】
インビボイメージング:腫瘍をイメージングするために、リン酸緩衝生理食塩水に加えたD-ルシフェリンのカリウム塩(Goldbio)を150mg/kgでマウスに腹腔内注射した。5分後、イソフルランガスでマウスに麻酔をかけ、インビボイメージングシステム(Spectral Imaging Instruments Lago-X)により、30秒の曝露時間を用いてイメージングした。シグナルは、ピーク強度における関心領域中の全光子束/秒として定量した。関心領域は、マウス全身を囲む同一サイズの長方形型の箱と定義した。定量の際のバックグラウンドシグナルは、発光シグナルを有していない同じ大きさの長方形型の箱におけるすべてのイメージング実験を通して観察された最大シグナルと定義した。腫瘍をイメージングするために、リン酸緩衝生理食塩水に加えて40倍に希釈したナノ-ルシフェリン(NanoLuc, Promega)をマウスに腹腔内注射した。5分後、イソフルランガスでマウスに麻酔をかけ、インビボイメージングシステム(Spectral Imaging Instruments Lago-X)により、30秒の曝露時間を用いてイメージングした。シグナルは、ピーク強度における関心領域中の全光子束/秒として定量した。関心領域は、マウス全身を囲む同一サイズの長方形型の箱と定義した。
【0102】
組織学的検査: 処置の5日目に、解剖によってマウスからゲルを外植し、最適切削温度コンパウンド(OCT)中で凍結した。すべての試料は、Stanford Animal Histology Servicesによって処理され、染色された。IL-15を含むPNP-1-5ヒドロゲルから2つのレプリケートを採取し、PNP-1-5ヒドロゲルから2つのレプリケートを採取した。
【0103】
インビトロでのサイトカイン放出:毛細管に、0.25μg IL-15を含む100μLのPNPヒドロゲルを充填した。300μLのリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を各ゲルの上に載せた。試料を37℃で保存して、生理学的環境を模倣した。各時点に、長い針を用いてPBSを完全に除去し、その後の解析のために-80℃で保存した。その後、PBSを交換した。製造業者の取扱い説明書に従い(R&D Systems ヒトIL-15 Quantikineアッセイ法)、ELISAによって、IL-15濃度を測定した。Synergy H1マイクロプレートリーダー(BioTek)によって、450nmでの吸光度を測定した。4日目の最後に、ゲルを希釈し、残存するサイトカインについて解析した。検量線からサイトカイン濃度を算出した。ゲル中の質量は、研究期間中に放出緩衝液中に放出された総質量と研究の最後にゲル中に残ったサイトカインから逆算した値として求めた。半減期は、指数関数的減少に当てはめることによって算出した。
【0104】
インビボでのサイトカイン放出:指定された時間に尾静脈採血によって血清を採取し、-80℃で保存した。製造業者の取扱い説明書に従い(R&D Systems ヒトIL-15 Quantikineアッセイ法)、ELISAによって、血清中IL-15濃度を測定した。Synergy H1マイクロプレートリーダー(BioTek)によって、450nmでの吸光度を測定した。検量線からサイトカイン濃度を算出した。
【0105】
炎症性サイトカイン解析:各マウスから48時間後に血液60μLを採取した(各群n=3)。試料は、Stanford Human Immune Monitoring Centerによって処理され、解析された。試料は、未処置マウスと比べて報告される。
【0106】
治癒率の解析:治癒までの時間が処置間で異なるかを試験するために、本発明者らは、SAS University Editionにおいて打ち切りデータに対して最尤法パラメトリック回帰(PROC LIFEREG)を用いた。シグナルが1.5×106p/sに達し、それより下で留まった場合、マウスを治癒したものとして数えた。移植片対宿主病、腫瘍の大きさ、またはCOVID-19による停止の結果としての早期の研究終了の理由から安楽死させたマウスは、右側打ち切りとした。IV処置群のマウスで実験終了前に治癒したものはなく、すべて打ち切られた。したがって、IV処置はこの解析から除外した。一部の群は、複数回の実験実行にわたって評価したため、実験コホートを、定まったブロック(制御)因子としてモデルに含めた。最初の腫瘍サイズもまた、ブロック因子としてモデルに含めた。最小二乗平均を用いて、個々の治療による治癒までの時間を比較し、テューキー・クレーマーの事後検定を用いて、多重比較を補正した。
【0107】
CAR-T細胞増殖解析:統計学的解析のために、T細胞発光の測定値は、等分散性の仮定を満たすための追加のlog10変換を必要とした。CAR-T細胞集団の増大が処置によって異なるかを試験するために、本発明者らは、SAS University Editionにおいて制限付き最尤法(REML)混合モデルを用いた。マウスは変量効果対象として含め、実験コホートは、定まったブロック(制御)因子として含めた。処置と時間の相互作用に基づいて、処置によって腫瘍増殖の推移が変わるかどうかを調べた。ボンフェローニ補正を用いて、多重比較を補正した(α=0.0033)。
【0108】
統計学的方法:誤差はすべて、別の方法で報告されない限り、標準偏差として報告される。
【0109】
ヒトでのrhIL-15等価用量の算出:多くのCAR-T療法がリンパ球除去を要するが、リンパ球除去がrhIL-15の最大耐量にどのように影響を及ぼすかについての調査はほとんどされておらず、したがって、本発明者らの研究での投与量は、入手可能な文献に基づいている。最近のヒト臨床試験での1日当たりの皮下最大耐量は、2μg/kg/日である。本発明者らは、12.3を掛けることによってこの用量をマウスの規模に調整して、24.6μg/kg/日を得ることができる。マウスの体重を約0.02kgと想定して、1匹のマウスに1回量で0.492gを与える。本発明者らは、自分達の研究において、この用量の約半分である0.25μgを皮下投与することを選んだ。この用量は、ヒトに静脈内送達される場合のrhIL-15の最大耐量である0.3μg/kg/日に対する2等価量の0.073μgを超えていることに留意されたい。
【0110】
CAR-T療法は、B細胞悪性腫瘍において顕著な抗腫瘍効果をもたらしたのに対し、固形腫瘍での臨床活性は限定的であった。この原因の一つは、T細胞の活性化および存続を阻害し機能障害を促進する因子を含み得る、不都合な固形腫瘍微小環境である。本発明者らの新規なゲルベースの送達方法は、移入されたT細胞の増殖およびその蓄積の維持ならびに有効性の向上を助ける局所的ニッチを提供する。付加的な因子、例えば、内因性免疫細胞の動員を助けて応答をさらに増幅しエピトープ拡散を促進し得る免疫賦活物質およびチェックポイント阻害剤を含む配合物を調査するために、今後の研究が必要とされている。
【0111】
本明細書において説明される、PNPヒドロゲル中のCAR-T細胞およびサイトカインの同時送達は、固形腫瘍を治療するための戦略となる。この拡大縮小可能かつ注射可能な物質は、侵襲性を最小限に抑えたCAR-T細胞送達を提供して、固形腫瘍の治療を改良し、かつ有効な治療に必要とされる細胞数、およびその結果として、長い製造期間に伴う費用を減らす。インビトロ研究によって、ヒドロゲル配合物の設計基準を明らかにした。PNPヒドロゲルは、CAR-T細胞およびサイトカインを同時にゆっくりと放出し、サイトカインの安定性を高め、かつ局所的なT細胞増殖を増進させて、有効性の向上をもたらすことができる。PNPヒドロゲルは、腫瘍局所および腫瘍の遠位のどちらでも、CAR-T細胞治療を改良した。PNPヒドロゲルは、局所的固形腫瘍および遠位固形腫瘍を治療するための有効なCAR-T細胞送達に対する未達成のニーズに取り組むものである。
【0112】
ある特徴または要素が別の特徴または要素の「上」にあると本明細書において言及される場合、それは、他方の特徴もしくは要素の上に直接的に存在することができ、または介在する特徴および/もしくは要素が存在してもよい。対照的に、ある特徴または要素が別の特徴または要素の「上に接して」あると言及される場合、介在する特徴も要素も存在しない。ある特徴または要素が別の特徴または要素に「接続され(connected)」、「結合され(attached)」、または「連結され(coupled)」ていると言及される場合、それは、他方の特徴もしくは要素に直接的に接続、結合、もしくは連結されることができ、または介在する特徴もしくは要素が存在してもよい。対照的に、ある特徴または要素が別の特徴または要素に「直接的に接続され」、「直接的に結合され」、または「直接的に連結され」ていると言及される場合、介在する特徴も要素も存在しない。1つの態様に関して説明または示したが、このように説明または示される特徴および要素は、他の態様に適用され得る。別の特徴に「隣接して」配置される構造または特徴への言及が、該隣接する特徴に部分的に重なるまたはその下に横たわる部分を有してよいこともまた、当業者には理解されるであろう。
【0113】
本明細書において使用される専門用語は、特定の態様を説明する目的のためにすぎず、本発明を限定することは意図しない。例えば、本明細書において使用される場合、単数形の「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈において特に別段の指示がない限り、複数形もまた含むと意図される。本明細書において使用される場合、「含む(comprises)」および/または「含んでいる(comprising)」という用語は、記載される特徴、段階、操作、要素、および/または構成要素の存在を明示するが、1つまたは複数の他の特徴、段階、操作、要素、構成要素、および/またはそれらの群の存在も追加も除外しないことが、さらに理解されるであろう。本明細書において使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目の1つまたは複数の任意およびすべての組合せを含み、「/」と略されてもよい。
【0114】
「下に(under)」、「下方に(below)」、「下部の(lower)」、「上に(over)」、および「上部の(upper)」などの空間的に相対的な用語は、本明細書において、図に示されるように、1つの要素または特徴の、別の要素または特徴に対する関係を説明するための記載を容易にするために使用されてよい。空間的に相対的な用語は、図に示された向きに加えて、使用または作動中の装置の様々な向きを包含すると意図されることが理解されるであろう。例えば、図中の装置が反転された場合、他の要素または特徴の「下に」または「真下に(beneath)」と記載されている要素は、該他の要素または特徴の「上に」向きづけられることになる。したがって、「下に」という例示的な用語は、上と下の向きの両方を包含することができる。装置は別の方法で(90度回転させるかまたは他の向きに)向きづけられてもよく、本明細書において使用される空間的に相対的な記述語は、状況に応じて解釈されてよい。同様に、「上方に」、「下方に」、「垂直方向の」、および「水平方向の」などの用語も、特に具体的な指示がない限り、説明のみを目的として本明細書において使用される。
【0115】
「第1の」および「第2の」という用語は、様々な特徴/要素(段階を含む)を説明するために本明細書で使用され得るが、これらの特徴/要素は、文脈において特に指示がない限り、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの特徴/要素を別の特徴/要素と区別するために使用され得る。したがって、本発明の教示から逸脱することなく、以下に論じる第1の特徴/要素を第2の特徴/要素と呼ぶことが可能であり、同様に、以下に論じる第2の特徴/要素を第1の特徴/要素と呼ぶことも可能である。
【0116】
本明細書および以下の特許請求の範囲の全体を通して、文脈において特に指示がない限り、「含む(comprise)」という語ならびに「含む(comprises)」および「含んでいる(comprising)」などの変形は、様々な構成要素が、方法および物品(例えば、組成物、および器具を含む装置、ならびに方法)において一緒に使用され得ることを意味する。例えば、「含んでいる(comprising)」という用語は、任意の記載された要素または段階を包含することを意味するが、他のいかなる要素も段階も除外しないことを意味するものと理解される。
【0117】
通常、本明細書において説明される装置および方法のいずれも包括的であると理解されるべきであるが、構成要素および/または段階のすべてまたは部分集合は、代替的に排他的であってもよく、様々な構成要素、段階、下位構成要素、または下位段階「からなる(consisting of)」または代わりに「から本質的になる(consisting essentially of)」と表現されてもよい。
【0118】
実施例において使用される場合を含めて、本明細書および特許請求の範囲において使用される場合、かつ特に明示的な指示がない限り、すべての数字は、単語「約(about)」または「およそ(approximately)」が明示的に存在しない場合であっても、該用語が前に置かれているかのように解釈されてよい。「約」または「およそ」という表現は、大きさおよび/または位置を説明する場合に、説明される値および/または位置が、値および/または位置についての妥当な予想範囲内にあることを示すために、使用され得る。例えば、ある数値は、記載される値(または値の範囲)の±0.1%、記載される値(または値の範囲)の±1%、記載される値(または値の範囲)の±2%、記載される値(または値の範囲)の±5%、記載される値(または値の範囲)の±10%などである値を有し得る。 本明細書で与えられる任意の数値はまた、文脈において特に指示がない限り、約またはおよその、その値を含むと理解されるべきである。例えば、値「10」が開示される場合には、「約10」もまた、開示される。本明細書において挙げられる任意の数値範囲は、その中に包含されるすべての部分範囲を含むと意図される。値が開示される場合、当業者によって適切に理解されるように、その値「以下」、「その値以上」、および値の間の存在し得る範囲も同じく開示されることもまた、理解される。例えば、値「X」が開示される場合、「X以下」および「X以上」(例えば、Xが数値である場合)もまた、開示される。本出願の全体を通して、データがいくつかの異なる形式で提供されること、ならびにこのデータが、終点および開始点、ならびにデータ点の任意の組合せに対応する範囲を表すこともまた、理解される。例えば、特定のデータ点「10」および特定のデータ点「15」が開示される場合、10および15より大きい、10および15以上、10および15未満、10および15以下、ならびに10および15に等しい値、さらに10~15が、開示されるとみなされることが理解される。2つの特定の単位の間の各単位も開示されることもまた、理解される。例えば、10および15が開示されている場合、11、12、13、および14もまた開示されている。
【0119】
様々な例示的な態様を前述したが、特許請求の範囲によって説明される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な態様に対して、いくつかの変更のいずれかを加えてよい。例えば、様々な説明された方法段階が実行される順序は、代替の態様ではしばしば変更されてもよく、他の代替の態様では、1つまたは複数の方法段階が完全に抜かされてもよい。様々な装置およびシステムの態様についての任意選択の特徴は、一部の態様には含まれ、他の態様には含まれなくてもよい。したがって、前述の説明は、主に例示的な目的で提供され、特許請求の範囲において記載される本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0120】
本明細書に含まれる実施例および例示は、限定ではなく例証として、主題が実行され得る具体的な態様を示す。上述のように、本開示の範囲から逸脱することなく、構造的および論理的な置換および変更を行うことができるように、他の態様を利用し、それから導くことができる。本発明の主題のそのような態様は、本明細書において、「発明」という用語によって個別にまたはまとめて言及することができ、これは便宜のためにすぎず、実際に複数が開示されている場合に、本出願の範囲を任意の単一の発明または発明の概念に自発的に限定することを意図しない。したがって、特定の態様を本明細書において例示し説明してきたが、同じ目的を達成するために計画された任意の構成で、示された特定の態様を置き換えてもよい。本開示は、様々な態様のありとあらゆる改変または変形を包含することを意図している。上記の態様の組合せ、および本明細書において具体的に説明されていない他の態様は、上記の説明を再検討すると、当業者には明らかになると考えられる。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図1-9】
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図5-3】
図5-4】
図5-5】
図5-6】
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17
図18
図19-1】
図19-2】
図19-3】
図20
図21A
図21B
図21C
図21D
図22-1】
図22-2】
図23-1】
図23-2】
図24-1】
図24-2】
図25A
図25B
図25C
図26A
図26B
図26C
図26D
図27
図28
図29A
図29B
図30A
図30B
図30C
図30D
図30E
【国際調査報告】